帝都櫻大戰⑩〜誰も望まぬ破壊
●破滅は桜と共に現れた
その日、封神武侠界の人界全域は突如として桜色に染まる。何も知らぬ分からぬ民草は、突然の異常に驚きつつも、その妖艶な美しさに酔いしれる。
だが、そんな彼らの表情はたちまちのうちに驚愕と恐怖に塗り替えられることになる。突如咲き乱れた桜──幻朧桜──と時を同じく、エンシェント・レヰス『
護国鉄神零號』の巨体が出現したのだ。
この危機に対し、皇帝司馬炎の対応は速かった。すぐさま大陸全土の非常事態とし、集めてきた武侠英傑達を終結させたのだ。だが。
「ぐあああ!! な、なんという強さだ……っ!」
「……許せ、異世界の者達よ。我が体内に搭載された八億の魂は、既にオブリビオン化によって邪悪に歪められ始めている……我は、それを止めることが出来ない……! このままでは我は、お前たちの世界を
破壊してしまう……」
零號の慟哭が戦場に響く。世界の滅びという悲劇を、その悲しみと苦しみと怒りと憎しみを何より知るのは、彼の中に収められた
鋼鉄共栄圏の魂たちに違いない。そして零號こそが、世界を滅ぼした『敵』を倒すために生み出された存在。
であるにも関わらず、今の彼は、そして八億の魂たちは、世界を滅ぼす先兵と化してしまっているのだ。その尊厳を、存在意義の全てを穢された巨大な鉄の兵は、しかし攻撃の手を緩める事叶わず、暴れまわる。
「誰か、誰か、我を止めてくれ……!」
「お望みとあらば……首塚の一族よ私に続け! 鉄の城が如きあの威容、私達の呪詛にて大地に縫い付けよ!」
嘆く零號の前に新たな集団が現れる。その中心には色鮮やかな着物をまとった美しい女性。整った顔立ちに真剣な表情を浮かべ零號を見上げている。彼女こそはサムライエンパイアの将軍様御局、斎藤・福だ。
福を中心に陣を敷く者達が祈りを捧げると、その瞬間、何処からともなく現れた無数の鎖が、幾重にも幾重にも零號の体に巻き付いていく。鋼の四肢を首を抑え込んでいく。
「何だこの鎖は!? 動きが封じられる……!」
ギシギシと軋みをあげながら拘束されていく零號。だが、完全に動きは止まらない。鎖が引きちぎられる事もないようだが、完全に縫い留める事も出来ていない。
「魔空安土城をも引き摺り下ろした呪詛で、僅かに鈍る程度とは……」
零號の様子に福は背中に冷たい物が走るのを感じる。かつて一つの城を完全に拘束せしめたこのユーベルコードを受けて尚動ける鉄の巨人。それは見かけ以上の『重さ』を持っている、と。
「八億の魂を搭載した我は『世界そのもの』。これだけでは止められぬ」
「……いいえ、いいえ! それでも、幾つもの戦場を駆け抜け、数多の世界を救ってきた猟兵の皆様ならば!」
(「けれど……今の随伴者の数では、長くは持ちませぬ。よろしくお頼み申し上げます」)
諦念を含む零號の声を前に、福は不安を押し殺し啖呵を切るのだった。
●鋼鉄の巨人を破壊せよ
「お手隙の猟兵の皆さん、お力をお貸しいただけませんか?」
真月・真白(真っ白な頁・f10636)はグリモアベースの一角で猟兵に声をかける。集まった者達に礼をして、本体を開き説明を始めた。
「帝都櫻大戦が続いていますが、ここにきて戦線が他世界にまで拡大してしまいました」
サクラミラージュ以外の12の世界に幻朧桜が咲き乱れ、『エンシェント・レヰス』達が侵攻を始めたのだ。
かつては幻朧帝イティハーサを封印するために尽力したかの者達も、今やオブリビオンとして幻朧帝復活のために活動させられてしまっている。
「今回皆さんには、封神武侠界に出現したエンシェント・レヰス『
護国鉄神零號』の撃破をお願いします」
滅びた世界八億人の魂を収めた鋼鉄の巨人、それが護国鉄神零號だ。本人は望んでいないが世界を滅ぼすためにその力を全力で振るっている。
「封神武侠界には、キャンピーくんの力で、斎藤・福さんと首塚の一族の随伴者のみなさんが転移しています」
福は『随伴者の数に応じて拘束力を増すユーベルコード』を用いて、零號の動きを封じんとしている。
「……ですが、想定以上に零號が強大な存在であったのか、校則の力はあくまで動きを鈍らせる程度に留まっています」
それでも『動きが鈍った隙を狙って攻撃する』のは千載一遇のチャンスなのは間違いない。あるいは何らかの手段で、首塚の一族の随伴者を増やす』ことができれば、零號の動きを更に鈍らせたり、最終的に止める事も、非常に困難ではあるが不可能ではないかもしれない。
「零號自身も、己を倒し宿す魂たちに平穏が訪れることを望んでいます。どうか悲劇の鉄巨人を倒し、これ以上の滅びを回避してください。よろしくおねがいします」
説明を終えた真白は本体を閉じる。深々と一礼すると、転移の準備にはいるのだった。
えむむーん
閲覧頂きありがとうございます。えむむーんと申します。
●シナリオの概要
一章ボス戦のみです。封神武侠界に出現したエンシェント・レヰス『|護国鉄神零號』を撃破してください。
この世界にはサムライエンパイアから斎藤・福と首塚の一族がキャンピーくんによって送り込まれ、彼女のユーベルコードで零號の動きは鈍くなっています。
今回のプレイングボーナスは……敵の動きが鈍った隙を狙って攻撃する/何らかの手段で、首塚の一族の随伴者を増やす。です。
なお、グリモア猟兵のテレポートは猟兵にしか使えないので、グリモア猟兵PCの方であっても、『グリモア由来のテレポート』で非猟兵の首塚の一族を連れてくることは出来ない、とさせてください。
逆に言えば、それ以外の方法なら割と何でも(面白いと思ったら)大丈夫だと思います。
●合わせ描写に関して
示し合わせてプレイングを書かれる場合は、それぞれ【お相手のお名前とID】か【同じチーム名】を明記し、なるべく近いタイミングで送って頂けると助かります。文字数に余裕があったら合わせられる方々の関係性などもあると嬉しいです。
それ以外の場合でも私の独断でシーン内で絡ませるかもしれません。お嫌な方はお手数ですがプレイングの中に【絡みNG】と明記していただけるとありがたいです。
それでは皆さまのプレイングをおまちしております、よろしくお願いします!
第1章 ボス戦
『護国鉄神零號』
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POW : 零式噴進飛翔拳
かつて喰らった「【鋼鉄共栄圏の人々】」の魂を纏い、2倍ダメージ・2回攻撃・自動反撃を有した【ロケットパンチ】を装備する。
SPD : 八岐大蛇機関砲
【自在に射角調整が可能な蛇型四連機関砲】を最大レベル秒間連射し続け、攻撃範囲にダメージと制圧効果(脱出・侵入を困難にする)を与える。
WIZ : 護国熱血破壊砲
装備武器から【護国英霊波導砲】を発射する。自身の【放熱装置】削減量に応じ、威力・速度・発射数が増加する。
👑11
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御桜・八重
ホウキングに跨り、零號目掛けて一直線。
地上の首塚の一族の人達に行ってきますと目礼。
動きが鈍くなってもロケットパンチは関係ない。
まともに喰らえば一発アウトだろう。
まともに喰らえば。
「あなたを止めるよ!」
まっすぐ突っ込めば飛んでくるロケットパンチ。
「ひらひら変われ、花吹雪!」
当たる直前に花弁に変化。腕が通り過ぎる前に再度実体化。
表面の凸凹にしがみつき、小柄な体で零号の視界から逃れる。
急加速に耐えながら腕が体に戻り始めるのを待ち、
加速が乗ったところでホウキングのブースター点火。
猛加速で腕ごと零號に突っ込む!
自分のパンチでも、動きが鈍っている今ならきっと躱せない。
「お願い、聞き届けたよ!」
●舞い散る桜花弁が惑わす
猟兵の到来を待ちながら、鎖を出し続ける斎藤・福と首塚の一族達。
だが、そのユーベルコードを以てしても護国鉄神零號の動きは完全に抑え込めていない。とうとう、零號の零式噴進飛翔拳の射程範囲に福達が収まってしまう。その時、天空を一条の光が走った。
「来てくださったのですね、猟兵の方……!」
(「行ってきます
……!」)
見上げる福へ、光放つ箒に跨った御桜・八重(桜巫女・f23090)が目礼する。
「六番目の猟兵確認。攻撃目標の変更。気を付けるのだ、猟兵よ」
鎖に妨害されながらもゆっくりと拳を八重に向ける零號。本心で警戒を促すも、収められた八億の魂からの命令を拒むことは出来ないのだ。
(「動きが遅くなっても、きっとあのロケットパンチは関係ない。まともに喰らったら一発アウトね……まともに喰らえば……っ!」)
「あなたを止めるよ!」
「だめだ猟兵、その軌道では」
零式噴進飛翔拳の危険性をきちんと認識しても尚、八重は真っすぐに突っ込んでいく。そして真正面から撃ち込まれる鉄の拳。巨大な鉄の塊であるそれを、お互いに加速し向かいあうこの状況で回避することなど、もはや不可能。零式噴進飛翔拳自身の破壊力に、真っ向からぶつかる八重の速度が加われば一貫の終わり。誰もがそう思った。その時。
「ひらひら変われ、花吹雪!」
八重の姿が消えた。拳に潰されたのではない、桜の花びらをぱっと散らせて、消えてしまったのだ。
「猟兵、消失。捜索、何処に消えた」
(「く、ううぅぅぅ……っ!」)
八重の姿は、高速で飛ぶ拳の、指の一角にいた。僅かな凹凸に指をかけ、足をかけ、暴風にかき乱されながら必死しがみ付いていた。
(「ここまでは、上手くいった」)
零式噴進飛翔拳激突の瞬間。八重はその身を桜の花びらに変じさせた。そして完全に拳が飛び去ってしまう前に実体化し、しがみ付いたのだ。
(「あと、少し……っ」)
体にかかるGの変化で、八重は腕が本体に戻る機動に入ったと感じた。風圧に耐えながら薄目をあければ零號の巨体がもうすぐそこに迫っていた。
「……今っ、ホーキングブースタ点火!!」
零號本体に向けて進む加速が十分になったと判断した八重は一気に箒を加速させる。オーラを吹き出し加速する箒が腕を押し、従来の想定を超えた猛加速で零號へと迫る。
「なんだと!?」
本来なら腕にドッキングするはずだった拳は、そのまま零號のボディを直撃した。平時ならば回避もできたかもしれないが、鎖によって動きを遅くさせられているこの状態ではどうにもならなかった。
「お願い、聞き届けたよ!」
自身の兵装による一撃をその身に受けて、黒煙をあげる零號へ、八重は宣言する。自信の在り様を捻じ曲げられ、望まない
破壊を行おうとする事態を嘆き悲しみ、誰かに止めてくれと頼んだ鉄の巨人の、その願いのために八重は全身全霊をかけたのだ。
「感謝する……桜の猟兵よ」
八重の髪を彩る桜の飾りを機械の瞳に映し、零號は礼を述べた。
大成功
🔵🔵🔵
レイヴァ・エレウネラ
常時適用(体質):【硬化/通常攻撃無効/激痛耐性】
ボクは同伴者を増やせるような能力はないから隙を見て撃破に貢献したいかな。
UCで身体能力を強化して、【怪力/グラップル/連続コンボ/2回攻撃/部位破壊】で格闘攻撃を仕掛けるよ。
護国鉄神零號も動きが攻撃はしてくると思うけど元々の体質による頑強性をUCで大幅ブーストしているので受け止められると思うよ。
こうして隙を見て攻撃しつつ首塚の一族のUCで一際動きが鈍ったタイミングが出来たらチャンス!
【龍眼】を多数展開しそこからエネルギー弾を放ちつつ、ボク自身も格闘攻撃で連続攻撃…可能ならば他UCと併用可能な『弾幕武闘・嵐戦』で一気に破壊したいな!
●龍の力比べ
「おお~、でっかいなぁ……相手にとって不足ない、かな」
聳え立つ護国鉄神零號の姿を前にレイヴァ・エレウネラ(恐れ知らずな外界の女神・f44350)は軽い口調で言うと、軽く腕を回しながら近づいていく。その足取りは軽く、一見して警戒しているようにもみえない。まるでちょっと散歩でもしているかのようだった。
「猟兵よ、我はまだ活動が可能である。不用意に近づくことは推奨しない」
オブリビオンと化して敵対しながらも、零號はレイヴァを気遣う。だが同時に、その拳は固く握られレイヴァを狙って突き出される。
「そっかぁ、もっと人数がいるんだっけ? でもボクは同伴者を増やせるような能力はないから」
──隙を見て撃破に貢献したいかな。
その言葉を紡ぐや否や、先ほどまでの歩みは一変、腰を低く落とし前かがみになってレイヴァは駆けだした。
「警告、対象猟兵の非物質的質量、急速に増大。脅威と認定」
走り込んでくるレイヴァの姿に零號は緊張感を高める。見た目は何も変わらぬ人の女の姿。だが、魔力、精神力、あるいは神威とでもいうべき、目に見えぬ『何か』が突如として膨れ上がるのを計測したのだ。そう、まるで今さっきまで人の皮をかぶっていた怪物が、ほんの少しだけ、その鋭い鍵爪の先、あるいはごつごつとした頭部の角の先端、そういったものをチラリと見せたかのような、威圧感。
「ふぅん? もしかして、
わかった?」
金色の瞳を細めて、レイヴァは笑った。その顔めがけて巨大な拳が発射される。
「あは、きゃーっちっ!」
その瞬間、あり得ない事が起きた。ロケットエンジンが火を噴き、恐るべき速度と質量で襲い掛かった巨人の拳が、レイヴァに抱きかかえられた。レイヴァの足元が砕け沈む。荷重は、確かにかかっている。それでも彼女は涼しい顔だ。
「驚愕」
「ふふ、驚いて隙ができたね」
零號の人工頭脳は一瞬フリーズした。確かに人としては異常な何かを見せてはいた。それでもまさか己の拳を受け止められるとは想定していなかったのだ。
その隙を、レイヴァは見逃さない。拳を放り捨てると自身の周囲に複数の球体上のエネルギーを出現させ、零號にとびかかった。
まるで瞳のようにみえるエネルギー球から、破壊的なエネルギー弾が降り注ぎ。
「ほらほら! いくよ!」
レイヴァの脚が鋼鉄の装甲を蹴り砕き、殴る拳が穿つ。
「ぐおおおぉ!」
「もっともっと殴り合おうよ!」
レイヴァの攻撃は止まらない、一つ一つが重い一撃が、嵐のように、弾幕のように襲い掛かってくる。
レイヴァの猛攻によって零號はかなりの損傷を負うことになった。
大成功
🔵🔵🔵
ミュー・ティフィア
首塚の一族の随伴者の数が増えればいいんですね?それならなんとかなるかも。
精霊転身・光と地の歌姫!
『それで?何を創るのかしら?』
映した相手の能力全てを再現した分身を無数に生み出す鏡を。あ、分身は3分で消えるように。
『つまり光と風の歌姫の他人にも使える版ってことね』
爆発はしないですけどね!
能力全てが再現されるなら首塚の一族の随伴者としての性質も再現される。つまり拘束力も増します!
零號の動きを完全に封じたら攻撃開始です!
ポリフォニーとリチェルカーレを用いた限界突破火属性全力魔法にパルティータの自動射撃!
さらにプレリュードで鎧を砕き、魔力爆発で傷口を抉ります!
制限時間は3分。その間に落とします!
●無限の合わせ鏡より、来たれ援軍
ミュー・ティフィア(絆の歌姫・f07712)が封神武侠界に降り立った時、護国鉄神零號は、その全身を無数の鎖に絡めとられていた。だが、それでも尚ゆっくりとではあるが前進し、首塚の一族の一団へと向かっていた。
グリモア猟兵の説明通り、斎藤・福のユーベルコードを以てしても、零號を地に縫い留めるには至っていない……だが効果が無効化されているわけではない、純粋に力負けをしているという話だ。
そして、福のユーベルコードの出力は随伴する首塚の一族の数が多ければ上昇する。
「首塚の一族の随伴者の数が増えればいいんですね? それならなんとかなるかも」
「真でございますか、猟兵の方」
ミューの提案に福は目を丸くする。そんな福を前にミューは「任せて!」とウィンクすると、カードの束を取り出す。それは彼女が交わした、様々な精霊との契約の証である
絆証・トゥッティ。
「これだけじゃ足りない。クロリス、力を貸して!」
ミューの言葉に応え、束から一枚のカードが飛び出す。一瞬強く輝きを放つと、其処には濃い緑のドレスを纏った小さな女の姿。カードを媒介に現出した地の精霊クロリスだ。
「精霊転身・光と地の歌姫!」
同時にミューの姿も変わる。純白はそのままに、ミニスカートの洋服はスカート丈の長いドレスへ、胸元と頭上のリボンにはクロリスとお揃いの花を一輪。地の精霊力を宿した緑の左目がクロリスと見つめ合う。
『それで?何を創るのかしら?』
ミューは一呼吸おいて口を開く。既に望みは決まっていた。
「鏡! 映した相手の能力全てを再現した分身を無限に生み出す鏡を。あ、分身は3分で消えるように」
ミューの願いを聞いたクロリスは指を己の頬に当ててうーんと少し考え、あぁと思いいたる。
「つまり
光と風の歌姫の他人にも使える版ってことね……じゃあ願いを込めて想像しなさい。この結晶が貴女の望む切札を創造するわ」
ミューの願いにクロリスは首肯し、彼女の周囲に美しい結晶体が出現する。
(「爆発はしないですけどね!」)
余計な事を言って福たちを驚かせないよう、心の中でクロリスに突っ込みつつ願いを込めるミュー。地の精霊によって生み出された創造の結晶が、歌姫の想像の力を得て、望むままの形へと変わっていく それは大きな鏡、所謂三面鏡と呼ばれる折り畳み式の全身が写るサイズの鏡だ。ゆっくりと開かれ、その内側に随行員たちの姿が写る。そして左右の鏡にも、三枚の鏡はお互いを写し合い、鏡の中の鏡にさらに人影がうつり、さらにその先に……無限の鏡の世界の中に無限の随行員の姿が映し出されていく。
そして、『彼ら』は『此方』を向く。そのまま鏡面を抜けて、現実の世界に現れる。
「こ、これは……」
福は驚く、その瞬間に己が放つユーベルコードの出力が倍に、三倍に……何十倍にも跳ね上がったのだ。鏡の中から憐れた随行員たちの鏡像。それもまた、首塚の一族とみなされている。
「おお……我を完全に止めるとは……」
零號の口から驚愕の声が漏れる。先ほどまで僅かに動いていた鉄の巨人は、完全に動きを封じられていた。
「制限時間は3分。その間に落とします!」
一見あらゆる願いを叶えられそうな創造の力。けれどそれはあくまでミューが信じ切る事の出来る想像の範囲に留まる。故に彼女は鏡の力を3分間に限定させた。限定させることで疑念を感じる可能性を消し去った。
故に、ここから3分間は出し惜しみなどできない。
「ポリフォニー!」
ミューが取り出した一冊の古めかしい本が、自律しひとりでに中を舞う。開かれた頁に書かれているのは、禁忌とされてしかるべき恐るべき破壊の魔術。秘術のインクを用い、神秘のペンによって記された呪文が光のラインを描き、膨大な魔力を収束させ術を起動させていく。
「リチェルカーレ!」
ミューの手には翼の装飾が施された金色の美しい杖。自動で魔術を編み上げる
書へ
杖を向ける。簡易的な魔術すら大魔術並みの威力に引き上げるその力を以て、今組み立てられている大規模魔術をさらに、想像を絶するほどの威力へと押し上げていく。
(「まだ……まだ足りない……っ!」)
相手は
八億の魂だ。これでも尚足りないと直感的にミューは察する。彼女の想いに応えてカード束から新たな一枚が飛び出し、生み出されようとしている全力魔法に炎を灯す。
「ありがとうルミエル……お願い、パルティータ!」
限界を優に突破した全力の魔法が放たれ、その巨大な火球の周囲を、12の美しい銃剣が飛び舞う。一つ一つが星の莫大な力を宿したそれらは自律して強烈な自動射撃を放つ。12の射撃が一転に集中し、零號の装甲の一部が破砕する中、巨大な火球と化した魔法が直撃した。
爆音と衝撃、熱波、それらは二枚目のカードが生み出すもう一つの炎が防ぎ福たちを守る。だがミューは衝撃の向こうへ臆することなく飛び出す。
ミューの背には巨大な光の翼。その細腕にはやや無骨にも見えるくい打ち機。彼女は一直線に高温の空気の中へと突っ込む。銃剣の射撃と極大魔法によって大きく拉げ歪み溶解しかけている部分へ、全力で
杭打機を叩きつけ。
「いっけえぇぇっ!!」
金属と金属がぶつかり合う轟音、凄まじい破壊力を持つ杭が深々と零號の装甲を貫き、込められた魔力を瞬時に解放し、大爆発を起こす。
「お、おおぉ……」
体の一部から濛々と黒煙をあげて呻く零號。ミューの一撃は決して小さくないダメージを与えている。
「まだまだ!」
爆風を利用して自ら距離をとったミューはすぐさま次の攻撃準備に入る。3分のチャンスタイムを全て使い切る為に。
大成功
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朱酉・夕烏
(男性人格・夕生にて参戦)
オイオイなんだよ、だぁれも得しねえ状況じゃねーか!
サクミラの帝とやらはクッソ性格悪ィみてぇだなァ!
まあいいや、俺のやることはひとつだ
吸薬の煙管ちょいとキメりゃア、たちまち体に力が漲る
悪路習熟お手の物、俺は天駆る軽業師!
鈍い動きの波動砲なぞ、駆けて避けるは朝飯前よ!
風立の緋扇ちょいと仰ぎゃア、追い風逆風自由自在!
奴さんの放熱、邪魔してやらァ!
こもった熱で動きが止まりゃア、待ちに待ってた俺の手番!
賛獨の火槍よ燃え上がれ! 奴サンの片足、焼き切ってやらァ!
●炎よ、望まぬ破滅を縫い読めよ
「我は現在行動の制限を受けている。故に、
破壊のために、次に我は『護国英霊波動砲』の発射に踏み切るだろう。頼む、止めてくれ」
世界を壊すことを、生命を害する事を憂い嘆き、それでも尚自らの破壊行動を止められぬ護国鉄神零號。せめてもの抵抗として、次なる攻撃を猟兵達に宣言することしか出来ない。
「オイオイなんだよ、だぁれも得しねえ状況じゃねーか!」
破壊を望まぬ当人が破壊を成そうとする姿。喜劇の冗談かと思うような悲劇を前に朱酉・夕烏(夕暮れに・f21853)。否、その身に宿りしもう一人の
人格、『
夕生』は吐き捨てるように言葉を紡ぐ。
「サクミラの帝とやらはクッソ性格悪ィみてぇだなァ!」
己を封印せしめたエンシェント・レヰス達を、復活の為に世界の破壊者として利用する。もしかするとこの事態は幻朧帝イティハーサの意趣返しのようなものなのかもしれない。
「まあいいや、俺のやることはひとつだ」
結局の所真相はわからないし、夕生にとって意味のない問答だ。彼は鞄から煙管を取り出すと、ささっと火をつけて呑む。
「……ッハァ……キマるねぇ」
吐いた煙がくゆるのを朱い瞳で見つめて、夕生は機嫌よく笑う。自前で調合した薬毒の効能が、脳髄の奥まで染みわたっていくように感じられた。
「護国熱血破壊砲、順調に充填中。放熱を開始する」
揺らめく煙管の煙の向こうで、零號もまた白い蒸気を背部から吐き出している。その様を観察する夕生は、へぇ、と一言発すると地面を蹴って走り出す。
「充填を完了。護国英霊波動砲、発射する。避けけてくれ、猟兵」
夕生へ向かって放たれる強力な砲撃。どこにも逃げ場などない、そう思われた。
「はぁっ!」
だが夕生は臆せず跳躍。身軽な動きで近くに生えている木の枝を掴むと、くるりと勢いをつけて回りさらに飛ぶ。そんな彼の足元を破滅的な破壊力をもった砲撃が抜けていく。華やかな衣装が翻る様は、まるで美しい鳥が羽ばたいているかのよう。
「悪路習熟お手の物、俺は天駆る軽業師!」
その後も夕生は二射目、三射目と続く砲撃を、周囲の樹々や岩々の僅かな突起を手掛かり足掛かりにし、まるで空を翔けまわるかのように駆け回り裂けていく。
「鈍い動きの波動砲なぞ、駆けて避けるは朝飯前よ!」
受ければ致命の一撃も、当たらなければその命を冒すに至らず。常人であれば避けるどころか目視で認識した瞬間には消し炭にされるような一撃でも、夕生にとっては、カメの歩みのように鈍いのだ。
「熱量限界値。放熱を開始する」
やがて零號の連続砲撃が沈黙する。零號の鉄の体は恐ろしい程の熱を帯びているようで、周囲の空気が熱気に揺らめいている。先ほど見たように背部からせわしなく蒸気が噴き出していた。
(「やっぱりそういうことかァ!」)
駆け抜ける夕生は一気に零號の背後に回り込む。そして緋色の扇を構えた。緋扇は見る見るうちに伸びて大きくなっていく。
「風立の緋扇ちょいと仰ぎゃア、追い風逆風自由自在!」
夕生が緋扇を振れば、尋常ならざる風が生まれ舞う。風は周囲の熱せられた空気を取り込み、必死に吐き出している零號の放熱口へと押し戻す。
「放熱削減量、極度に減少。護国英霊波動砲、再発射困難」
夕生の行動によって零號は放熱もままならず、砲撃も不可能になていた。目論見通りに行った、とニヤリと笑う夕生。
「こもった熱で動きが止まりゃア、待ちに待ってた俺の手番!」
掲げた夕生の手に『火』が生まれる。それは瞬く間に大きく『炎』へと育ち、長く長く、真っすぐに伸びて『槍』へと形を成していく。
「賛獨の火槍よ燃え上がれ!」
夕生の意思を受けて、炎槍は赤々と燃え上がる。朱に照らされる夕生の姿は、夕暮れに揺らめくようで。
「お前サンの片足、焼き切ってやらァ!」
放たれる炎槍は空を裂いて真っすぐに、一直線に鋼の右足を穿つ。業火が装甲を舐め溶かし、内側を燃やし斬っていく。
「損傷大。
破壊実行への問題になる可能性大。感謝する、朱き猟兵よ」
大成功
🔵🔵🔵
ツォーナ・ロチェアーダ
福さん、もうしばらく…1分ほど堪えてください!
ボクがこの
翠玉瞳の虹光龍で、各地を飛び回り、随伴者となってくる首塚の一族の皆さんを集めてきます。
大丈夫、この子は光速飛行ができるので一瞬で戻って来られます!
光速で飛び回る事で受ける衝撃だとかそういうのは…ガジェッティアの技術で良い感じになんやかやしてるので大丈夫です!
集め終わったら、そのまま
翠玉瞳の光虹龍で零號さんに突撃しましょう!
随伴者が増えさらに動きが鈍ったその状態で、光速で飛び回るこの子を捉えきれますか!?
勝負です、零號さん!
●光を超えて、次元を超えて
猟兵達の猛攻を受け続ける護国鉄神零號。勇壮なる鉄巨人は既に各所から黒煙を上げ、部位が破砕された姿を晒す。
それでも尚、止まる様子は見せない。時折強力な攻撃を放ち抵抗を続けている。
(「もっと人を集めないと!」)
斎藤・福のユーベルコードが不完全ながら、それでも確かに効果を見せている中でツォーナ・ロチェアーダ(世界を渡る大海の剣・f01913)は決意する。美しい金色の髪をなびかせ福たちに駆け寄る。
「福さん、もうしばらく……1分ほど堪えてください!」
言うが早いかツォーナは腕を高く掲げる。その手首には自作したガジェットが光り、機械音を発している。
「虹を纏う光輝なる竜よ、今ここに顕現し未来を切り開く刃と成せ!出でよ、
翠玉瞳の虹光龍!」
腕のガジェットがひと際大きな音をたてると、何もない空中に『穴』が突如として現れる。極彩色の向こうから巨大な鋼鉄の龍が飛び出してきた。
「こ、これは
……!?」
「ボクがこの
翠玉瞳の虹光龍で、各地を飛び回り、随伴者となってくる首塚の一族の皆さんを集めてきます」
降り立った機械龍に飛び乗ったツォーナが、福たちに力強く宣言する。
「……わかりました。貴女様が戻られるまで、我ら命を賭してあの巨人を抑え込みましょう」
決死の覚悟を見せる福と随行員たちに、けれどツォーナは朗らかに笑い返す。
「大丈夫、この子は光速飛行ができるので一瞬で戻って来られます!」
「え……?」
キョトン、とした福の前で飛び立つ機械龍。その姿は一呼吸置く余裕すらなく空気の壁を越え、音を超え、光を超えていく、地上から見上げる福たちの目には理解不能な、直線が何度も折れ曲がった光の筋だけが観測出来た。
「だ、大丈夫、なのでしょうか……?」
冷や汗を浮かべる首塚の一族。けれど彼らの不安の呟きは、光を超えたツォーナに届くには遅すぎた。
光のその先で、自身が虹色に輝く機械龍。その翼は、速さを超え、光を超え、時間を超えて次元すら斬り裂き超える。表れた時と同じ極彩色の中に飛び込んだ龍は、次の瞬間にサムライエンパイア、江戸城の直上に現れていた。
「猟兵殿が戻ってこられたぞ!」
光の軌跡が消えるかどうかという僅かな合間に、機械龍は再び封神武侠界の空に戻っていた。速度を落として福たちの前に着陸した虹色の竜の中から、サムライエンパイアに残っていた首塚の一族たちが続々と降りてくる。みな意気軒高な様子を見せる。
「ふふふ。光速で飛び回る事で受ける衝撃だとかそういうのは……ガジェッティアの技術で良い感じになんやかやしているので大丈夫なのです!」
得意げなツォーネは新たな随行員を全員降ろすと、再び虹色の龍を飛ばす。
「随伴者が増えさらに動きが鈍ったその状態で、光速で飛び回るこの子を捉えきれますか!?」
「可動範囲がさらに低下、我はお前を捉える事が出来ていない。今だ、猟兵よ」
強烈な砲撃を放って抵抗する零號。だが、ただでさえ制限されるその動きが、今や倍に近い拘束力に増している状態では、まともに照準も併せられないようだ。砲撃の周囲をジグザグ軌道で飛び回り、虹色の龍が零號に迫る。
「勝負です、零號さん!」
「こい、猟兵!」
虹色の翼が再び次元を斬り裂く。どれほど頑強な装甲であろうと、どれほどの硬度を誇る金属だろうと、それはこの空間に存在する物質である。次元を超えて、その空間事斬り裂かれれば何の意味も無い。
虹色のジグザクが走り抜ける度に、零號の体は無視できぬ傷跡を増やしていく。
「装甲各所破断。補足困難」
光速で飛び回るツォーナ達を零號は全く捉えることができず、次元事斬り裂く脅威の能力により全身を切り刻まれるのだった。
大成功
🔵🔵🔵

朱鷺透・小枝子
八億の魂の、歪まされた無念、怒り、その怨念は如何ほどか!!
夜剣大蛇【操縦】
護国英霊波導砲をサイキックシールドで【オーラ防御】し『禍戦』発動。
英霊波導砲、『護国鉄神零號』に納められた八億の魂が発する波動、それに込められた破壊を為さんとする怨念を憑依させ、己が【闘争心】に、【呪詛】にして夜剣に注ぎ込み頭部長身ドリルを大回転させる!!
その無念を、憎悪を喰らい!『破壊を為せ』夜剣!!
神殺の呪詛毒を纏い、回転するドリルで動きの鈍る鉄神へ【急所突き】
ドリルで装甲を穿ち、毒液を内部に流し込み、彼を呪う。
八億の呪いを以て、鎮まれ!鉄の器よ!
彼を介して首塚の一族の呪詛とも呪いを結びつかせ、機能停止へと陥らせる!
●呪い返し
「敵性機体を検知。キャバリアと推定」
多くの被害を受けながらも未だ立つ鋼の巨人、護国鉄神零號は、自身にも匹敵しうる巨体が近づいていることに気づく。人型ではない、長い長い胴体をくねらせ地面を擦るように進む姿は、まるで巨大な蛇のようだ。
「……あれが、護国鉄神零號」
大蛇型のキャバリアの中で、朱鷺透・小枝子(
亡国の戦塵・f29924)はモニターが捉えた巨体を視る。同時にグリモア猟兵より教えられた相手の
情報を思い返す。曰く、既に滅んだ世界の八億人の魂が収納された、『敵』を倒すための兵器。
しかし、今やその敵によって自身が
世界の敵と化し、
封神武侠界を
破壊するために現れた。
「……」
零號は、まだよい。自我を持っていてもそれは兵器だ。意にそぐわぬとしても与えられた命令を遂行するのは兵器として全うだ。
兵士であれば、それもまだよい。本人が納得しなくとも敵兵を倒すのがその役割であるからだ。
しかし、八億、八億だ。滅びた世界のその時生きていたであろう、死んだであろう人々の総数だ。それが全て兵士であったわけではない。当たり前だ。
子供もいただろう。未来を想う若人もいただろう。終りが見え己の人生を振り返る老人もいた筈だ。男も、女も。家族も親も、子も恋人も、友も、あるいは仲たがいしたものも善人悪人……多くの『一般人』がいたはずなのだ。日常が、在ったはずなのだ。
そんな、八億の只人であった魂たちが、無情にも『
現在』を断ち切られた者達が、彼らの怨嗟が、向かうべき方向を捻じ曲げられ、他の『
現在』を奪わんとしているのだ。
許せるか? 否。
「八億の魂の、歪まされた無念、怒り、その怨念は如何ほどか!!
まつろわぬ大魔『
夜剣大蛇』
出撃であります!」
小枝子に応えるように夜剣大蛇が吠えた。彼女の操縦によって、大地を這う漆黒の大蛇は矢のように飛び出す。
「充填完了……注意せよ、猟兵」
零號の警告とほぼ同時に護国英霊波動砲が放たれる。
「進路そのまま、サイキック増幅機関出力
全開であります!」
モニターに映る熱源接近警告。けれど小枝子はあえて真正面から砲撃に飛び込む。代わりに機体の周囲にサイキックのシールドを展開する。
淡い燐光を発する念動力の力場盾と、八億の魂による波動エネルギーが激突し、周囲を閃光が染め上げる。
「く、ぅあ……あぁっ!」
眩い閃光の中で、小枝子の灰色の瞳は確かに視た。激しい振動と、絶え間なく聞こえる警告の騒音の中で、確かに聴いた。
八億の魂が放つ波動に込められた破壊を為さんとする怨念を。無念の声を。
「あ、ああぁっ!」
小枝子が渾身の力を籠めて操縦桿を倒す。夜剣大蛇の頭部に装備された巨大なドリルが回転を始める。
ドリルの回転に合わせて、波動のエネルギーが螺旋状に纏められていく。その中に在る怨念が夜剣大蛇に、そして小枝子に宿っていく。
本来ならば自らの世界を滅ぼした『敵』へ、
現在を奪う者へ向けられていた筈の
怨念。歪められ誤ってしまったそれを小枝子はその身を使って修正する。正しき指向性に、今この場にる『
世界の敵』へ。
ドリルが唸りをあげて高速回転する。その螺旋にまとめ上げられた怨念は小枝子の中で闘争心となって燃え上がり、大蛇の中で呪詛へと練り上げられていく。
破壊を為す者を『破壊』するために。
「その無念を、憎悪を喰らい! 『破壊を為せ』夜剣!!」
大蛇が吼えた。超高速回転のドリルが零號の装甲を破砕せしめ、深々とその内側へ突き刺さる。そして同時にドリルを逆回転。螺旋にまとめあげられた怨念から寝られた呪詛の毒を、零號の内部で解き放った。
「うおおお……これは……機能、異常、出力、低下……」
零號は苦し気に呻く。八億の魂が持つ怨念が、零號に返されて彼を呪っているのだ。
「八億の呪いを以て、鎮まれ! 鉄の器よ!」
そして零號を蝕む呪いはもう一つある。斎藤・福と首塚の一族が放つユーベルコード。零號の内部で二つは不可逆に混じり合い深刻な被害を与えるのだった。
大成功
🔵🔵🔵

戒道・蔵乃祐
斎藤・福様ですか!
オブリビオン・フォーミュラたる魔王・織田信長の超魔力をも大地に縫い付けた強力な呪詛なれど
身を守る術を持たず、数多の世界を救うための戦う宿命に選ばれた訳でもない
猟兵では無い御身と、首塚の一族の方々まで招集に応じて下さるとは…
日ノ本の益荒男の一人として、その助力に恥じぬ戦働きにて報いる他無し!
◆蹂躙のバベルインパクト
限界突破+武器受けで金剛身の守りを固め、零式噴進飛翔拳の一撃目を怪力とジャストガードとで受け流す
フェイント+切り込みで懐にダッシュして飛び込み間隙の虚を突く
鉄神零號の近接自動反撃かロケットパンチのニ撃目に併せたゼロ距離から、早業の重量攻撃を解き放ちます
相討ち上等です!
●人は、人のままどこまでの高みに至れるのか
猟兵と護国鉄神零號の激しい戦いによって荒れた大地に、遥か上空から何かが降下してきた。
「うわあぁっ!?」
「落ち着きなさい、何が起きようと私達の使命が変わることはありません」
凄まじい衝撃と地揺れに思わず悲鳴をあげる随行員を叱咤しつつ、スバ煙の向こうを注視する斎藤・福。彼女の瞳が捉えたのは岩の山……否、岩のごとき
戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)の姿だった。だが、福が一瞬大岩と見間違えてしまうのも責められない。日々の鍛錬により鍛え上げられ練り上げられた蔵乃祐の肉体は、果たして同じ人の肉なのかと疑ってしまうほどに筋肉が盛り上がり、彼が積み上げてきた全てを証明しているからだ。
「……斎藤・福様ですか!」
己が肉体に向けられる視線に気づいた蔵乃祐。太い首をぐるりと回し、福と随行員たちを見つけると野性味あふれる笑顔を浮かべる。
「猟兵の方ですね!」
「左様、戒道・蔵乃祐と申す悪僧にございます」
挨拶を交わしながら蔵乃祐は改めて福を見つめる。己とは真逆に、女性らしいふくよかさと柔らかさ、美しさを持つ一人の女を。平素なれば温和に笑みを浮かべているであろう整った顔が決意の色を浮かべ、優し気な瞳に決死の覚悟が宿っている事を見た。
福は、決して無力な女ではない。オブリビオン・フォーミュラたる魔王、織田信長の超魔力をも大地に縫い付けた強力な呪詛を使える。
なれど。只人だ。
身を守る術を持たず、数多の世界を救うための戦う宿命に選ばれた訳でもない、只の女なのだ。
それでも尚、この地に降り立った。首塚の一族たちまでも招集に応じた。
「……日ノ本の益荒男の一人として、その助力に恥じぬ戦働きにて報いる他無し!」
呪詛の力がどうこうという次元では最早無い。斎藤・福と首塚の一族の随行員たちの信念と覚悟が、オブリビオンの悪逆非道を知って戒律すら捨てて山を飛び出した蔵乃祐の魂に火をつけた。
「猟兵よ、心せよ、我の零式噴進飛翔拳は大質量攻撃となる。自動反撃機能に注意して回避するのだ」
零號は右の拳を蔵乃祐へ向けて警告する。対する蔵乃祐は。
「心配無用! 遠慮なくぶっ放すがよい!」
両足を開き腰を落とし、両腕を広げて真向から構えた。
そして火を吐きながら右の拳が撃ち出される。巨大な鉄塊の拳はそれだけでも恐るべき破壊力だが、そこには八億の魂が乗せられている。魂の『重さ』分だけました質量が、そのまま蔵乃祐の体に激突する。
「んぬおおおぉぉぉ!!!」
両足が踏ん張る大地はすぐさまに砕け、足首まで埋まっていく。それでも蔵乃祐は耐えた。鋼鉄の装甲を纏っているわけではない。魔術による結界があるわけでもない。只の半裸、只の肉体が、潰される事無く真向から受け止めている。
「あり得ない、強度計算ではお前の体は
金剛にも匹敵している……猟兵よ、お前は人間ではないのか?」
「人間だともさ。人の肉体とは、鍛錬の果てにここまで至れるというだけよ……ぬおおおおっ!!」
唖然とした様子の零號に答え、蔵乃祐は吼える。筋骨隆々たるその肉体が誇る金剛の如き頑強さで受け。怪力で以て流す。そして即座に駆けだす。
踏み出す一歩が大地を抉るほどの脚力で、褐色の弾丸のようになって蔵乃祐は零號に迫る。必殺の零式噴進飛翔拳を受け流して生まれた間隙の虚を突いた行動。蔵乃祐は零號に肉薄した。
「自動反撃があるぞ!」
再度の警告。左拳がノーモーションで撃ち出される。
「相打ち、上等ぉぉぉぉっ
!!!!」
蔵乃祐は一切臆さず、左拳に合わせて己が拳を叩きつける。ゼロ距離からタイミングを合わせて叩きこまれる早業の拳は最早杭打ちと見まごう破壊力で、零號の左拳を粉砕し尚止まらない。そのまま零號の脇腹に突っ込み、吹き飛ばす。
「損害甚大、損害甚大……おおぉ、世界そのものと言えるほどの我を、ここまで……あと少し、あと少しだ、六番目の猟兵」
大成功
🔵🔵🔵
支倉・新兵
【捷利】アドリブ◎
ああ、任されたクロウ……『オックスジャマー』
狙撃屋としての仕事はきっちり果たすさ……一発で撃ち抜いてやる
ま、実際問題として2倍ダメージだの2回攻撃だのが自動反撃で飛んでくるんだ、撃てて一発、バレれば終わり
……だったらこいつだ、【最後から二番目の手段(ラストスナイプ)】
折角『ジャマー』や福さんが頑張ってくれているんだ、限界ギリギリまで引き付けて……狙い撃つ
『ジャマー』が矢面に立ってくれる中距離を取り更に身を隠し狙撃態勢へ、迷彩装備で身を隠し、索敵・分析……観測手役を戦術ドローン群に任せ、地形や戦況、標的の動きを見極めながら『ジャマー』達に削られ動きの鈍った死角からUCで撃ち抜く
杜鬼・クロウ
【捷利】アドリブ◎
お前に宿ってる魂の安寧を
望まぬ力を揮うのはさぞ辛いだろうよ
…共に眠れるよう引導を渡す
オックススナイパー、俺が囮になる
ジャマーらしくな(ウインク
お前が決めろ
ヤれんだろ?
(福の奇跡の力で零號の動きは鈍ってるが何時まで持つか
長期戦は不利だが)
出来うる限り削るぜ!
福、お前ももう少し耐えろや
敵が新兵狙いでも自分に意識向けさせ
派手に暴れ陽動
UC使用
攻撃回数増やし玄夜叉でロケットパンチを2回攻撃・部位破壊
敵の攻撃は武器受け・かばう
剣に紅焔を出力させ、烈火の如く薙ぐ
的がでかい分、何処か当たれば良い
無防備な新兵狙われる前に畳み掛け
お前の為の途は開けておいたぜ、スナイパー
銃代はまた半分請け負うわ
●その一発で事足りる/葬送炎舞
護国鉄神零號の全身から甲高いきしむ音がする。度重なるダメージはいよいよその鋼鉄の体を危険領域まで押し上げていた。
耳障りな破砕音と金属音は、杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)の耳にも届いている。
「お前に宿ってる魂の安寧を、望まぬ力を揮うのはさぞ辛いだろうよ」
クロウにはその音が、まるで八億の魂があげる嘆きの合唱に思えていた。護国鉄神零號は兵器であり、同時に失われた世界の墓標であり、八億の魂の安寧を見守る番人でもある筈なのだ。
「……共に眠れるよう引導を渡す」
「……迷惑をかける。あと少しだ、我を……」
既に零號は満身創痍だ。足を貫かれ、脇腹は抉られ、全身が切り刻まれている。放熱部位もまともに稼働しない。左腕に至っては完全に破壊されつくした。斎藤・福たちの懸命の頑張りにより継続されているユーベルコードの鎖と、相乗効果をあげている猟兵の放った呪詛が体を蝕み、まともに動くのも困難だ。
それでも、それでもだ。それでも尚八億の魂は止まらない、止まれない。世界を滅ぼした『敵』への憎しみが歪められ『
関係ない世界を崩壊する』まで止まれないでいる。
故に八億の魂はその意思を、徹底的に書き換えられてしまった敵意を、未だ無事な兵装たる右腕に集める。
その力、妨害さえされなければこの右腕だけでも恐らく
破壊を為せるのだろう。クロウは直感した。自由にさせては、ならない。
「……オックススナイパー、俺が囮になる。ジャマーらしくな」
さり気なく左手を口元に添える、唇の動きだけの、周囲に漏れ聞こえぬように努めた小声のメッセージ。『そちら』は振り向かない。視線は零號から逸らさない、けれど『彼』は『視ている』。それがクロウにはわかる。
故に、ウィンクを一つ。『お前が決めろ、ヤれんだろ?』というメッセージを乗せる。
「ああ、任されたクロウ……『オックスジャマー』」
クロウ達から離れた小高い丘の上、周囲の岩々に溶け込むような迷彩柄を纏い地に伏せる男が一人。支倉・新兵(狙撃猟兵・f14461)だ。サングラス型のターゲッティングデバイスの望遠機能で、彼方の零號の巨躯と、相対するクロウの背中が見える。勿論位置関係的にその顔は直視できないが、既に戦場の周囲には観測手段としてドローンが放たれていた。そのドローンが捉えた
ウィンクに新兵は僅かに息を吐く。相変わらず彼の
無茶ぶりは難易度が高い。けれど。
(「狙撃屋としての仕事はきっちり果たすさ……一発で撃ち抜いてやる」)
音に出さぬ宣言。サングラス越しの黒い瞳に、必殺の意思を籠めて。新兵は『その刹那』を待つ。
零式噴進飛翔拳。必殺の空飛ぶ鉄拳が今まさに飛び立たんとする時。クロウはチラリと横目で福達を確認する。
直接戦いに参加してはいないが、ずっと休みなくユーベルコードを展開し続ける彼女らは、全身から滝のように汗を垂れ流し、膝は笑い、肩で大きく息をしていた。
(「福の奇跡の力で零號の動きは鈍ってるが何時まで持つか……長期戦は不利だが」)
出来得る限り削る。新兵の一撃が確実に零號の命に至るためにも。それが今、
クロウにしか出来ない事なのだ、と見の為ほどもある漆黒の大剣を抜いて構える。
「福、お前ももう少し耐えろや」
「っ! はいっ!」
掠れ、震えるも、気丈なる声音。福の言葉を背にクロウは零號の拳の前に躍り出る。その動きは過剰なほどに派手。陽動なのだ。万が一にも新兵の存在に気づかせないための。
「ふるふるとふりそそぎしは射干玉の 『はな』ぞ馨りて『いし』を護らん――護らせ給え、我が身侍ること能わぬそのときも」
言霊に『力』を宿し、世界に放つ。クロウの体を仄かに馨る射干玉の霊気が覆う。霊気は根を這うように福達に伸びて……彼女達がこの戦いの間蓄積した疲労を包み込む。陰と陽のように、高き水が低い所に流れ込むように。クロウにとって仲間と思える者達が受けたダメージの分だけ、その霊気がクロウに力を与えていく。
「心せよ猟兵、この拳は一撃で終わらない。二撃目がある」
「来いよ、二発程度で俺を止められると思っているならな」
放たれる鉄の拳。轟音と炎を吐いて向かい来る鉄塊を前に、クロウは己が魔剣を構える。その漆黒の刀身に『木』の文字が浮かび、即座に燃える。そしてその『火』は刀身全体に紅の焔が踊る。
──
木生火。
高速で飛んでくる拳を、烈火の如く薙いで受け流す。だが、空飛ぶ鉄拳は旋回し二度目を放ちにくる。
されどクロウも、纏いし霊気が四肢に力を与え、即座に振り向き二度目の斬撃。
「これは……!」
──
火剋金。
魔剣の宿す炎が、零號の右拳を深々と斬り裂いている。よく見ればその切断面は熱で溶けていた。
「はああっ!」
クロウはまだ止まらない。本体に戻ろうとする拳に三撃目を叩きこみ真っ二つに断ち割ると、そのまま零號本体へと飛び掛かる。
(「的がでかい分、何処かに当たれば良い!」)
新兵が必殺の一撃を整えるその瞬間まで、無防備な彼に気づかせない狙わせない。その前に畳み掛ける。
止まらぬ決意の炎斬は、鉄の巨躯のあちこちを斬り裂いていく。
丘の上は静かだった。よく凝視しても違いが判らないほどに周囲に溶け込む盛り上がりこそが新兵。クロウが激闘を始めてから今に至るまで、新兵は微動だにせずライフルを構えている。
全ては一発、たった一発の狙撃で終わらせるために。
(「ま、実際問題として2倍ダメージだの2回攻撃だのが自動反撃で飛んでくるんだ、撃てて一発、バレれば終わり」)
新兵も猟兵であり傭兵の身だ。幾多の戦場を渡り歩き、人並み以上に荒事の経験もあれば体を動かす事だって出来る。しかし、必殺の狙撃のために全てを費やした今のこの状況では出来ることは極僅か。
狙撃手の存在に気づかれて攻撃を受けたら、待ち受けるのは死のみだ。
(「……だったらこいつだ、『
最後から二番目の手段』」)
新兵は一発の弾丸を取り出して装填する。それは火薬の調整に調整を重ねた特別な一品。撃ち出す銃の内部機構に甚大なダメージを与えて、修理するまで使い物にならなくなる代わりに、とてつもない威力を誇る銃弾。
(「外せば、勿論……」)
新兵は静かに腰の
自決用の拳銃に触れる。弱気になったからではない。失敗を恐れているわけでもない。自信がないなんてとんでもない。
絶対に使われる事の無い拳銃、覚悟を見つめ直しただけだ。
(「折角『ジャマー』や福さんが頑張ってくれているんだ、限界ギリギリまで引き付けて……狙い撃つ」)
仲間たちが命を懸けている場に於いて、新兵もまた命を懸ける。放ったドローンの分析や観測のデータ、その全てをデバイスを通して脳に叩きこむ。地形、距離、天候、気温、風速、そしてリアルタイムで変化していく戦況……膨大なデータを読み、脳の中で展開していく。彼の中に、目に見えるものから目に見えぬものまで、ありとあらゆる全てが描き出されたもう一つの世界が現出していく。
「……っ!」
描く出される世界の中で、クロウが裂ぱくの気合と共に零號の膝を断つ。関節の駆動部と、重量を支えていた部位を喪失し、巨体が膝を付く。
──お前の為の途は開けておいたぜ、スナイパー。
それは声ではない声。クロウの攻撃とその結果そのものがメッセージ。
「さて……こいつが最後から二番目の手段にして……最後の「狙撃」だ」
最高の、絶妙の、唯一のタイミング。新兵は刹那も遅れることなく、早まることなく、引き金を引いた。
銃声、衝撃、空気を斬り裂いて弾丸が飛ぶ。重力、風向き、空気抵抗……あらゆる影響を計算したうえで放たれた弾丸は、零號の額を真っすぐに撃ち抜き、その奥の中枢を破壊し尽くした。
「お、おおぉ……我が、倒される、とは……」
「帰る場所無き者達よ、今度こそ何者にも邪魔されず眠れ」
致命の一撃を受けた零號へ、介錯と浄化として紅焔の一閃が放たれる。終焉へと導く炎が、無数の光と共に天に昇るのを、クロウ達は見た。
「感謝する、猟兵よ……」
それが、エンシェント・レヰス『護国鉄神零號』が最期に発した言葉だった。
「お疲れさん、銃代はまた半分請け負うわ」
「よろしく頼むよ」
全てが終わり、丘から降りてきた新兵。彼が担ぐボロボロのライフルを見てクロウが口を開けば、新兵も笑って返す。そして互いの拳を軽く拳を打ち合い健闘を称えあうのだった。
大成功
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