アルカディア争奪戦⑬〜最凶と共に穿て
●眠りへいざなう威光
オーデュボンの軍勢に包囲された、とある巨大な浮遊島。
この島は熱帯雨林の如くこれでもかと木々が鬱蒼と茂っており、その豊かな自然の恩恵を享受しようと、凶暴な魔獣たちが闊歩する無法地帯である。
そう、この地に住むのは過酷な環境にこそロマンを覚える変人──否、凶悪な魔獣を狩ることを生業とする、熟練の魔獣ハンターたちだけ。
「ガハハハハハ、兄者ァ! なんだかひたすらに眠りに眠りたいのだが!」
「大丈夫かい弟者よッ! ここまで追い込んだんだ、あともう少しだけ頑張ろうッ!!」
口調はとっても騒がしいけど、互いに洗練された動きで追い込んでいたのは、2人の数十倍もある、ド派手な虹色の積乱雲。
──否、『虹色積乱雲の獏羊王』と呼ばれる、この島の魔獣の王である。
『フメェ〜〜〜』
その瞬間。
何とも言えぬ威圧感と存在感がある鳴き声が響き、獏羊王の頭上に輝く王冠の頂きから強烈な閃光が放たれる。
まさに、数秒数コンマの油断が命取りとなった。
瞬く間に巨大化した光筋は、ほんの一瞬だけ気が逸れた2人の視界を閃光で遮断、同時に全ての意識と感覚を眠り色に染めていく。
「我ら最凶ハンターブラザーズとしたことが、不覚ッ! ……スヤァ」
「兄者ァァァ寝付きが良すぎるのではァ! ……ウッ、わしも、ここまでか」
強烈な眠気に抗えず、揃って膝から崩れ落ちてしまう、魔獣ハンターたち。
──その数分後。
彼らと交戦したことで僅かながら疲労を帯びた虹色積乱雲の獏羊王もまた、オーデュボンの軍勢によって、易々と捕獲されてしまうのだった。
合掌。
●最凶と共に穿て
「六大屍人帝国全ての支配者との決戦が始まった今も尚、オーデュボンは『魔獣の王』と称される凶悪な魔獣たちを、自軍に取り込もうとしているようじゃのう……」
猟兵達の活躍により戦況は順調とはいっても、未だ全貌は見えていない。
だからこそ、些細な芽は摘んでおかねばと呟いた、ユーゴ・メルフィード(シャーマンズゴースト・コック・f12064)に、集まった猟兵たちも神妙に頷く、が。
「そう、わしが予知した魔獣の王は虹色の綿菓子みたいで美味しそうだったのじゃ。なので、倒したらぜひ感想を──ハッ、間違えましたのじゃ! 敵に捕獲される前に、
魔獣の王を討ち取って欲しいのじゃー!」
……今、下心がルビ付きでバッチリ見えましたが?
猟兵たちの冷ややかな視線にユーゴは短く咳を払い、さも何事もなかったかのようにトボけてみせると、すぐに話を戻す。
「皆様方に討伐をお願いしたい魔獣の王が棲まう浮遊島には、ごく僅かじゃが魔獣ハンターの方々も住んでおりますのじゃ」
中でも、自称「最凶ハンターブラザーズ」の2人組はこの島では歴戦の魔獣ハンターと言っても過言ではなく、兄者と呼ばれる方は罠を張り巡らせることと、隙を突いて解体バールで魔獣の外殻をこじ開けるのを得意としており、もう1人──弟者と呼ばれる方は、兄の動きをサポートするべく、近接型の
斧錨と遠距離型の携行式魔導砲を使い分けて、敵を惹きつけながら戦う立ち回りを好んでいるという。
「2人は兄弟同士で連携しながら戦うのが得意じゃが、集団で戦うことにも慣れているベテランさんなので、皆様方の指示にもきちんと従ってくれますのじゃ」
彼らと連携して罠を張ったり技巧を駆使すれば、安心して戦うことができるだろう。
ユーゴの予知で識る限り、ちょっとだけ騒がしいかもしれないけれど……。
「魔獣の王『虹色積乱雲の獏羊王』は、50メートル級の巨体の持ち主というのもあり、体力は高めなのですじゃ。その分動きは鈍いので、攻撃は当て易いはずですじゃ」
その巨体と質量もさることながら、最も警戒すべきなのは強烈な睡魔が全ての攻撃についてくるということ。
ユルい存在感も含めて無差別に眠りへと誘おうとするため、睡眠への対策と最凶ハンターブラザーズの協力抜きでは、猟兵でも苦戦を強いられるだろう。
「皆様方なら大丈夫だとわしは信じておりますのじゃ。なので、虹色の綿菓子を美味しく堪能──ゴホン、獏羊王をガツンと叩きのめして、オーデュボンの軍勢をしょんぼりさせてくださいなのですじゃー!」
なお、虹色羊毛と王冠に散りばめられた宝石は、素材としての価値は高いらしい。
御剣鋼
ご無沙汰しておりました、御剣鋼(ミツルギ コウ)と申します。
このシナリオは1フラグメントで完結の戦争シナリオですが、
あまり難しく考えず、気楽に楽しんでいただけますと嬉しいです♪
また、以下のプレイングボーナスが発生致します。
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プレイングボーナス……魔獣ハンターと連携して魔獣を狩る。
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●プレイング受付期間:オープニング公開後から受付開始
書ける分だけ採用の方針ですが、プレイングボーナスを重視したいと思います。
先着順ではありませんので、期日内でしたらいつでも送ってくださいませー。
●その他
御剣鋼の場合、2〜3名様を組み合わせて描写することが多いです。
ソロでの描写をご希望の方はプレイングの冒頭に「★」をつけてくださいませ。
ご一緒したい方がいる場合は【相手のお名前】を明記して頂けますと助かります。
旅団の皆様でご参加の場合は【グループ名】で、お願いいたします。
皆様のご参加、楽しみにお待ちしております。
第1章 ボス戦
『虹色積乱雲の獏羊王』
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POW : 獏羊王の威厳
【生物無生物を関係なく眠らせる威厳】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : 獏羊王の畏怖
【畏怖】を披露した指定の全対象に【ただひたすらに眠りたい】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
WIZ : 獏羊王の光環
【王冠から発せられる全てを眠らせる光】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
👑11
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鵜飼・章
50メートルの…わたあめ…すやぁ
危うく僕も眠りかける所だった
最凶ハンターさん達の目を覚ましつつ
僕も寝落ちを避けないといけない…
難しいけれどやってみるよ
UCでオカリナを奏で
敵の動きを鈍らせよう
眠りたい感情には抗い難い
僕もすごく眠たい
けれど演奏に集中して眠気を受け流す
僕の笛が奏でる何ともいえない音色は
ある意味人の心を震わせる
なぜこんなに退屈な演奏ができるのか…
早くやめさせないと正気を失うのでは…
そんな思いが兄弟さん達を覚醒させ
猛攻を加速させてくれるだろう
(催眠術、言いくるめ
僕味方だからアピールのためにも
鴉達に羊毛や宝石を毟らせて気をひき
兄弟さんが攻撃に集中できるようにする
お土産を楽しみにしていてね
山立・亨次
※連携可能
眠気覚まし、か
じゃあ事前に戦場猟理・極で料理を作っておこう
ここに日々材料を冷凍して携帯、回答してすぐに作れるようにしてあるラーメン(アイテム)がある
これをベースに唐辛子や花山椒その他諸々で四川風のアレンジを加えれば
眠気も吹き飛ぶ熱々激辛ラーメンの完成だ
自分含め、眠気を訴えた奴(ハンター含む)にこれを食わせる
俺も眠くなったら食う(辛さ冷ましの牛乳完備※欲しい人には分ける)
その代わり攻撃は武器頼みになるけどな
ハンターと連携して着実に削っていこう
カムも手伝え
……しかし今更だが、羊か
羊毛は是非とも分け前を貰いてえところだ
王冠は興味ない
欲しい奴が持っていけばいい
(隠しもしない動物・モフ好き)
●最凶に捧げる
猟理と虚無の笛
「50メートルの…わたあめ…すやぁ」
ふわっ。もふっ。ふわっ〜り。
自然豊かな原始林に悠然とそびえ立つ魔獣の王──獏羊王は、そのユルッとした外見も含めて、睡魔の申し子といっても過言ではない。
身体の8割を覆う柔らかな虹色羊毛は、まるで柔軟剤で仕上げたかのよう。
己が
畏怖をこれでもかと披露する獏羊王を眼前に、最初に戦場に降り立った、鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)の瞳は、ウトウトと船を漕ぎ始めており、一部の猟兵に至ってはふわもふ羊毛目掛けてダイブしようとしてます、どうします?
「カアカア!!」
そんな状況に危機感を覚えたのだろう。
常に章の周囲を飛び回っている鴉たちも主人を起こすべくチカラ強く羽ばたいた、その時だった。
緑豊かな自然に似合わぬ、激辛調のアジアンテイストな香りが辺りに充満したのは。
「即席でも手は抜かねえ。さあ、出来たぞ」
筆舌に尽くしがたい激辛調な四川風香辛料の香りを漂わせる器を、戦場の後方に所狭しに並べていたのは、山立・亨次(人間の猟理師・f37635)。
──その数、なんと111品。
寝惚け眼でありながらも、器の形状と模様から「ラーメンかな」と然りと推察した章に、亨次のゴーグルの奥の緑色の瞳が、ギラリと鋭く光る。
「日々材料を冷凍して携帯、解凍してすぐに作れるラーメンをベースに、唐辛子や花山椒その他諸々で四川風のアレンジを加えてみた」
──
戦場猟理・極。
亨次が己のユーベルコードと猟理の技巧を駆使して爆速10秒で完成させた111品の激辛ラーメンは、その匂いを嗅ぐだけで眠気が逃げ出してしまう、激辛っぷりであーる。
「危うく僕も眠りかける所だった」
というか下手したら、眠りの淵どころか、エターナル・ゴートゥ・ヘブンです。
111倍に漂う激辛調な香りの危険性……否、強い効力に章は完全に覚醒。
その視線は眠りに囚われたままの最凶兄弟に移動し、次に彼らの口に熱々激辛ラーメンを並々と注ぐ亨次の背に留まるものの、章は生きろと穏やかに微笑むだけである。
「食え。これなら眠気も吹き飛ぶはずだ」
「「「ぎょぃやあああああああ、熱ィいいいいいいッ!! ──んッ?」」」
「「「うおおおおお!! か、から、辛いいいァ!! ……おァっ?」」」
絶叫に似た騒がしい喧騒が轟いたのも一瞬。
同時に脊椎反射の如く身体を起こした最凶兄弟の表情は、妙に晴れ晴れとしていて。
ユーベルコードを帯びた激辛ラーメンは眠気だけでなく、過酷な環境で蓄積されていた
状態異常と疲労も一緒に取り払ってしまったようであーる。
「いやあ、バッチリ目が覚めたし、身体も楽になったよッ! ありがとうッ!!」
「辛さ冷ましの牛乳も完備している。いるか?」
「俺は辛いのは大好物だけど、弟者は……もらった方がいいかもねッ!」
「か、かたじけない! わしは兄者と違って辛いモノが、どうにも苦手で……!」
亨次が人との距離感が余り解らないというのもあり、少し荒療治になってしまったものの、最凶兄弟が一瞬でも完全覚醒してくれたことに、章は口元を少しだけ緩ませる。
「最凶ハンターさん達、暫くの間は大丈夫そうだね」
獏羊王の威厳と畏怖は健在、強烈な睡魔は今も滞ることなく襲ってくる。
そのたびに、最凶兄弟の目を覚まさせながら、自分たちも寝落ちしないように立ち回らないといけないのは、中々ハードな仕事だ。
しかし、最凶兄弟が一時的にも完全覚醒した今なら、やることは絞られてくる。
まずは、味方と兄弟が動き易くなるように獏羊王の動きを鈍らせる。上手く運べば亨次を始め、後続の味方も有利になるのは、間違いないだろう。
「僕の笛が奏でる音色はある意味人の心を震わせる、難しいけれどやってみるよ」
──音楽の神様は僕が嫌いなんだ。
一瞬だけ瞼を伏せ、呟きに似た詠唱を原始林の風に流した章は、色鮮やかで繊細な細工が入った黒地のオカリナに、唇と指先を静かに添える。
それは、静寂にも似たひととき。
ここにいる誰もが眠りたい感情に抗い難いと思っている、章自身もひたすらに眠りたい感情に駆られている。
けれど、五感を演奏に集中させることで眠気を受け流してみせると、細密に練り上げた魔力を紡ぐ音色に乗せる、が。
〜〜びょおおおオロロロ〜〜ん
……ぶよオオオオオオオおおおン
その音色は筆舌に尽くしがたく…というか、大層残念でガッカリなレベルでして。
ふと、亨次が空を見上げると、余りの退屈な演奏に野生の鳥たちがぼとりぼとりと落ちてるわ、獏羊王の目が鳩が豆鉄砲を食らったようになってるわ、中々のカオスである。
「な、なんだッ! この全力で脱力してしまいそうな、間が抜けた演奏はッ!!」
「み、耳がおかしくなるううう!! むしろ正気を失うレベルじゃあああァ!!」
『メエエエエエ〜〜!!』
心を震わせるのは、虚無という名のエターナル・ブリザード♪
──なぜ、こんなに退屈な演奏ができるのか…?
──早くやめさせないと、涅槃どころかゴートゥ・ヘブンなのでは…?
最凶兄弟も獏羊王もほぼ同時に「やめてくれ」と、章に懇願の視線を向ける、が。
〜〜っぷ、ぷよよよ〜〜ん、ぺ
──ぱほぉぉおお〜〜ん、ぽぽ
……演奏、ひどくなってません?
虚無を通り越して催眠術や言いくるめに似た幻覚が「演奏止められないなら、サクッと倒せばいいじゃない」と、囁いでくる。
え。何を倒すんだっけ?
もはや、どっちが敵でどっちが味方なのかも、ごちゃ混ぜになってきており──。
「なあ、君は俺たちの味方だよなッ?」
「だ、だよなァ?」
「もちろん僕は味方だよ。あ、敵の動きが鈍っているね…今が好機かな」
「──!!!」
淡々と。けれど優しげに微笑み返す章に、最凶兄弟たちはハッと目を見開く。
彼らもこの浮遊島では歴戦の魔獣ハンター。己の役目を鮮明に思い出した兄弟は一瞬だけ視線を交わし、素早くそれぞれの持ち場に散開する。
「動き始めたか」
獏羊王の無差別な眠りと章の虚無なる音色に負けないよう、激辛ラーメンを一気にすすっていた亨次は、己のバックパックに視線を向け、淡々と呼びかける。
「カムも手伝え」
一拍置いて、バックパックから出てきたのは、ぼんやりマイペースなミニチュア視肉。
同時に。使い込んだ愛用の調理器具を手にした亨次は素早く地を蹴ると、罠を張り巡らせるために獏羊王の足元に滑り込んだ兄者の隣に並んだ。
「鴉達もよろしくね」
その動きを視界の端にした章も、攻撃を惹きつけようと最前線で魔導砲を轟かせる弟者を支援すべく、自身の周りを徘徊する鴉たちを獏羊王の王冠と胸元に向かわせていて。
「おおおお、かたじけない! これなら攻撃に集中することができるぞォ!!」
「お土産も楽しみにしていてね」
「ガハハハハ、頼もしい限りだァ!!」
獏羊王の胸元と王冠に狙いを定めた鴉たちは弧を描くように宙を旋回。その刹那、刺すように急降下すると、虹色羊毛と宝石を遠慮なくむしりとっていく。
嬉々と飛び回る鴉たちに気を取られた獏羊王の動きはすぐに鈍くなり、眠りの畏怖と威厳も散漫になっていて。
その好機を逃すまいと後続の猟兵たちが一気に距離を詰めたのは、また後の話。
「いい羊毛だ。是非とも分け前を貰いてえところだ」
「もちろん!! まずは足元の毛を刈り取っていこうか!!」
「なるほど。足元から剥ぎ取れば罠に掛かりやすくなる、か」
一方。猟理師である亨次は王冠には見向きもせず、兄者と連携しながら慣れた手付きで獏羊王の外殻──虹色羊毛を勢い良く剥いでいて。
愛用の調理器具を振いながら、時折ふわもこに触れる亨次の口元は少しだけ緩んでおり、ゴーグルの奥の瞳も嬉々と輝いていたという。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
葛城・時人
相棒の陸井(f35296)と
ユーゴが言ってた通り確かに棉飴っぽい
一寸味見…とか考えてたら…相棒が呆れ顔だ
赤い顔で咳払い
「や、倒す、ちゃんと倒すよ?勿論!」
倒してからつついて、帰還時にユーゴに
感想伝えようと思いつつ気を引き締める
最凶ハンターに声掛けを
「連携バッチリだね。俺達も足引っ張んない
よう頑張るから宜しくだよ」
「こっちの対策は任せて!」
ククルカンに作成中俺が眠りかけたら噛みつくよう
指示した上で結界術でも抗いつつ
「お菓子をどうぞ」詠唱
眠り解除のクッキー沢山作成し即食べ
兄弟と陸井が寝たら即時食べさせて起こす
陸井や兄弟の戦闘もククルカンと手伝う
何度寝ても都度起こすよ
「眠りさえしなければ勝てるよ!」
凶月・陸井
相棒の時人(f35294)と参加
確かに可愛らしくて美味しそうな見た目たけど
こんな力を持った魔獣を取り込まれたら厄介だ
一方的に蹂躙されかねない力は渡すわけにはいかない
「って、おい時人。今綿飴の事考えてただろ」
戦闘の前に最凶ハンター達に声をかけておく
「手伝いに来た。宜しく頼むぞ、兄弟」
連携を取る為にも軽口で
武器を打ち合わせて進もう
睡眠の対策は相棒に任せきる
相棒の任せろって言葉なら、信じるに値する
「それなら俺は只管、攻撃するのみだ」
基本は敵の意識を分散させる為に挟撃
【戦文字「死龍葬弾」】は戦いながら書き上げ
仲間の攻撃で怯んだ隙を逃さないように準備
「ありがとうな、時人。おかげでこいつをぶち込める!」
●甘味に揺れる白燐光と護りの戦龍
先陣の猟兵たちの活躍によって最凶兄弟は早くも目覚め、獏羊王の動きも鈍く散漫になっていて。
戦場にほのかに残っている四川料理調の香りやら、到着直前に聞こえた脱力しそうな音色が気になるのも一瞬、その全てが忘却の彼方に消えてしまう存在感が、獏羊王にはあった。
「ユーゴが言ってた通り、確かに棉飴っぽい」
しかも、虹色である。
いやいや、世の中にはカラフルなお菓子なんて沢山あるし、このふわもふな羊毛も……もしかして、もしかすればですよ!
(「ちょっとだけ、いいよね…」)
ほんの僅かな一寸、葛城・時人(光望護花・f35294)の心が、ふわっと揺れてしまう。
けれど、傍らに立つ相棒──凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)は、甘党の時人の心情を見逃さず、呆れ顔を浮かべていて。
「って、おい時人。今綿飴の事考えてただろ」
目の前の獏羊王は可愛らしくて美味しそうな見た目をしているのは、陸井も認めよう。
しかし、曲がりなりにもこの浮遊島を統べる魔獣の王。可愛いからといって放置すれば、オーデュボンの軍勢に取り込まれてしまうだけ。
一方的に蹂躙されかねないチカラなら、なおさら敵に渡すわけにはいかないのだ。
「や、倒す、ちゃんと倒すよ? 勿論!」
ひょっとして、陸井はエスパーなのか?
胸の内をズバッと指摘された時人は、赤くなった顔を隠すように咳を払うと、気を引き締めるように唇を結ぶ。
よくよく後方を見ると、魔獣の皮で作られたテントが設置されており、早くも猟兵たちと最凶兄弟が獲得したと思われる戦利品──虹色羊毛がこれでもかと押し込められている。
……獏羊王を倒すか、後で戦利品をつついてみて、グリモア猟兵に感想を伝えよう。
そんな思いを胸にしまい、時人は陸井と共に最凶兄弟に視線を移す。先程まで先陣の猟兵たちと肩を並べて戦っていた兄弟は一旦態勢を整えるべく、後方に下がるところだった。
「手伝いに来た。宜しく頼むぞ、兄弟」
「やあやあ、君たちも猟兵さんだねッ!! 俺は兄者と呼んでくれ、よろしく頼むよッ!!」
「ガハハハハッ!! 味方が多いのは嬉しいのォ!! わしは弟者と呼んでくれぃ!!」
一見すると騒がしいだけのオッサンブラザーズ。けれど、熟練の猟兵である陸井は2人の歩き方をみるだけで、彼らがベテランの域であることを瞬時に見抜く。
その見解は時人も同じで、原始林は足元が不安定でぬかるみが多いのに、彼らの足取りにまったく翳りと澱みが見られないのだ。
「連携もバッチリだね。俺達も足引っ張んないよう頑張るから宜しくだよ」
「お、時人。綿飴以外の事もちゃんと考えていたな?」
「ちょ、陸井!」
軽口を交わす2人に、兄者が「君たちも息がぴったりだねッ!!」と嬉しそうに破顔し、弟者は「御二人も中々の手練れだのゥ!!」と只々感心するばかり。
そう、互いに熟練者同士。
これなら扱う武器のすり合わせや方針の共有も、手早く上手く運べそうだ。
「睡眠の対策は相棒に任せきる。時人、出来るか?」
「もちろん、こっちの対策は任せて!」
陸井の頼みに快く頷き返した時人が手持ちの笛を風で鳴らすと、純白の羽毛と翼持つ蛇の形をした多数の蟲──ククルカンが宙に顕現する。
時人はククルカンたちに戦闘中に自分が眠りかけたら噛みつくように指示を出すと、自身だけでも抗えるよう、結界術を構築した。
相手はこの浮遊島の魔獣の王。外見はユルくても強力な眠りを侮ってはならない。
「それなら俺は只管、攻撃するのみだ」
時人の「任せて」という言葉に絶大の信頼を置いている陸井は口元を弛めると、兄弟たちに了承の意の視線を送る。
兄弟もそれだけで己がすべきことを理解したのだろう、チカラ強く頷き返して、快諾してくれた。
「いいねッ!! 先程の猟兵さんが動きを鈍らせてくれたし、その効力が続いているうちに攻めようッ!!」
「ガハハハハ、一切合切承知ッ!!!」
「では、全員散開。挟撃の準備にあたってくれ」
原始林に悠然とそびえ立つ獏羊王の意識を分散させるべく、まずは陸井、兄者、弟者が3方向から挟撃するように疾駆する。
迎え撃つ獏羊王も己が畏怖を見せつけるように虹色羊毛を煌めかせると、少し遅れてふわりふわりと揺らしてみせて。
それを垣間見た者の性癖によっては、そのまま羊毛にダイブして眠りたくなる感情に囚われてしまうだろう。
──だが、しかし!
「時人、頼む」
陸井は短くも、大きな信頼を寄せた一言を、後方に託す。
3人よりも少し後ろで陣取っていた時人はすぐに柔和な笑みを浮かべ、予め持参した材料と調理器具を取り出した。
「沢山のお菓子で癒そう、全てを」
──お菓子をどうぞ。
時人が己のユーベルコードと甘味への愛情を込めて爆速10秒で完成させたのは、甘い香りを漂わせた、たくさんのクッキー。
その数、なんと126点!
獏羊王周辺が甘い香りで満たされた瞬間、陸井は「時人らしい」と、思わず口元を弛めてしまう。
けれどそれも一瞬。陸井は躊躇せずクッキーを掴み取ると、口の中に放り込んだ。
(「さすがだな」)
舌の上で広がるサクッとした香ばしさと、そのあとに広がる甘いトッピングの味わいは、眠気だけでなく疲れも取り払っていく。
それもそのはず。このクッキーには状態異常を始め、怪我と呪詛も治療するチカラが秘められており、陸井は相方を労おうと視線だけを動かす、と。
「もう少し甘くしてもいいかな。あ、違うよ! 味見じゃないから!」
苦笑を浮かべる陸井に気づいた時人は、頬を赤くしながら慌てて弁解するものの、その3割は味見に違いないだろう。
そして。甘党信者は、もう1人。
「わしも、眠気がひどく……もう1枚、否、もう3枚ィィィ!!」
「弟者よッ!! 気持ちはわかるけど、ここは2枚にして置こうッ!!」
騒がしく軽口を叩き合いながら、クッキーを頬張っていた最凶兄弟の動きにも、無論衰えは見られない。
弟者の天使核を内蔵した携行型の魔導大砲の支援を受け、一気に肉薄した兄者が解体バールが魔獣の背中側の外殻──虹色羊毛をこじ開けていく。
攻撃を与えるのと同時に守りを削ぐ意図を即座に理解した陸井は、護りの名を冠する短刀銃を振いながら、空中に4つの戦文字を描こうとした時だった。
『メエエエエエエ!!!』
もちろん、獏羊王もこのままサンドバックになるつもりはない。
己が威厳を知らしめるべく堂々と虹色羊毛を輝かせた瞬間、再び兄者の足がふらつき、弟者も大砲を落としそうになってしまう。
しかし、後方から味方の状況を常時確認していた時人が、即座に動いた。
「眠りさえしなければ勝てるよ!」
相方と最凶兄弟だけじゃない。この戦場に立つ味方の全て、何度眠りの淵に陥れようと、都度自分が起こしてみせよう!
自身は兄弟のサポートに専念し、その穴を埋めるように命じられた時人のククルカンたちが、陸井の追従し斬撃に合わせて宙を鋭く舞い、外殻を穿つ。
「ありがとうな、時人。おかげでこいつをぶち込める!」
陸井が狙うのは、兄者とククルカンたちがこじ開けた外殻から剥き出しとなった、背中側の黒い肌。
戦いながら宙に描いた戦文字は3つ。あともう少しで4つめを書き上げることが出来ると思ったその時、眠りから解放された弟者の携行型大砲から撃ち出された魔弾が、大きく爆ぜる。
渾身の一撃に堪え兼ねた獏羊王が半歩後退したのと、陸井が4つ目の戦文字「弾」を描き切ったのは、ほぼ同時!
「さぁ…受けてみな」
──
死龍葬弾。
空中に大きく描いた4つの戦文字が一斉に輝くや否や、武骨な短刀銃に装填されたのは画数分の威力を凝縮した、一撃必殺の弾丸。
陸井は一発の銃弾に重きを置くように銃口を合わせ、トリガーをひく。
破壊光線とも呼べる極太の弾道は、ガラ空きとなった獏羊王の背中側に狙い通りに届き、残った外殻ごと吹き飛ばすのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
羊毛・毛玉
加工済みが、
加工前に負ける道理はないです。
魔獣を狩ることは、市場に眷属を流通させることにも繋がります。
綿菓子は眷属に含まれませんねー。食べられない羊毛羊皮箇所があれば、きっと眷属です。
綿の中身が獏だったときの事は考えませんよー。
獏羊王の気を弟者さんと兄者さんに引いてもらってる間に接近。
間食のパワーフードをつまみつつ。
敵の耳か足か鼻を両手で持って、50m級のびったんびったんです。
足場はちょっと揺れますが。
振り回して良し誰かのなにかにぶつけても良し。私が動いてる間は眠りに落ちない自信アリですよー。
虹色の羊毛が、お空の大陸の隅々まで行き渡って、流通経済を掌握するのです。
海藤・ミモザ
すっごいもっふもふー!
って見てる場合じゃないよね、お仕事お仕事♪
最凶ハンターブラザーズさん、私にひとつ策があります!
なので、まずはあの子の王冠が巨大化しないように、足止めお願いしますっ
特に、巨大化の気配があったら、ちょっかい掛けて気を散らすような感じで…!
そのあいだ私は、予めオーラ防御を纏っておいて…
集中力を高めつつ、高速詠唱でできる限り長く詠唱を紡ぐよ
もう少し…あと少しだけ…!
最凶ハンターブラザーズさん達や私がピンチになる気配があれば
その前に、斜線上には敵しかいない状況を狙ってUC発動!
眠気もろとも、ぶっこわしちゃえー!!
もし眠らせる光を受けたって、眠り耐性と気合いで吹き飛ばすんだから!
ガーネット・グレイローズ
あの魔獣はバク?確か人の悪夢を食らうという伝説の。それにしても大きいな…。
さっそくハンター兄弟と協力して、狩りを始めよう。【グラビティマスター】を使用、空へ浮かんで《空中戦》を。グルグル飛んで囮を引き受けつつ、クロスグレイブによる《レーザー射撃》で攻撃していく。睡眠光を浴びてしまったら、重力を制御できなくなって地面にまっ逆さまだ。そうなる前に、予めにわとりドローンのメカたまこEXを用意。たまこに《大声》で鳴いてもらい、それでダメならくちばしで顔をつついてもらって覚醒するぞ。目を覚ましたら反撃開始、再び空中を駆けて、今度はバクの顔に《功夫》の飛び蹴りをお見舞いだ!大丈夫、あの王冠は傷つけないよ。
●
獏、或いは寝てはいけない、獏羊王SP
「すっごいもっふもふー! って見てる場合じゃないよね、お仕事お仕事♪」
先に交戦を始めた猟兵たちの尽力によって最凶兄弟は寝入ってもすぐに覚醒し、対して背中に大きな傷を負った獏羊王は、鈍く散漫になっていて。
ならば、このタイミングで「策」を仕掛けようと、海藤・ミモザ(millefiori・f34789)は、原始林とぬかるみが覆う戦場を軽々と疾駆しながら、最凶兄弟を探す。
幸い、目的の人物はすぐに見つかる。
ミモザは、戦場の端で激辛ラーメンを嬉しそうにすする兄者と、甘い香りを漂わせるクッキーを豪快に頬張る弟者に視線を留め、2人を同時に呼び止めた。
「最凶ハンターブラザーズさん、私にひとつ策があります!」
「おおッ! 君たち猟兵の作戦ならいつでも大歓迎だよッ!!」
「ガハハハッ!! 本当に頼もしいのォ!! わしらはどうすればいい?」
「まずは、あの子の王冠の光が巨大化しないように、足止めをお願いします!」
味方が三方向から挟撃を仕掛けたことにより獏羊王の意識が散漫になっている今、次に脅威となるのは、王冠から発せられる眠りの光環。
特に、それが巨大化したり、3つに分かれる気配があれば、可能な限り気を散らして欲しいと続けるミモザに、兄弟は嫌な顔1つせず、揃って申し出を快諾した。
「たしかにあれは至極厄介!! どうだろう兄者ァ、罠で気を逸らすことができそうか?」
「嫌がらせをするなら、ぬかるみを使った落とし穴がいいねッ!! 最初に足元付近の虹色羊毛を刈り取ったし、上手く揚げ足取れると思うよッ!!」
嬉々と兄者が指し示した方向を見ると、後方に備え付けられたテントの中には、早くも獲得済みの虹色羊毛が山積みに──おやおや? 傍らには小さくて真っ白な羊毛が。
これも戦利品かなと思ったミモザが、目を凝らしてみる、と……。
「素晴らしい虹色の羊毛ですねー」
真っ白の羊毛は、中腰で虹色羊毛を嬉しそうに眺めていた、羊毛・毛玉(毛糸の手編みセーターのモノノケ・f37925)でして。
……この魔獣の王を狩れば、市場に眷属を流通させることに繋がるのも、夢ではない。
虹色羊毛が
この世界の隅々にまで行き渡り、流通経済を掌握するという、素晴らしき光景を毛玉が脳裏に描いたのは、ほんの一寸。
毛玉はおもむろに立ち上がると、足元についた埃を軽く払って、3人に向き直る。
「私も兄者さん弟者さんにお願いしたかったので、ご一緒してもかまいませんか?」
「もちろんっ! 人手は多い方が絶対いいし、よろしくね♪」
ミモザもまた、毛玉の申し出を断る理由なんてない。
自然と口元が弛み、陽だまりに咲く花のような満面の笑みを返した、その時だった。
「ならば、私も協力しよう」
最後に名乗りを上げたのは、少し離れたところで兄弟と少女たちのやり取りを見守っていた、ガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)である。
血色の双眸は獏羊王の頭上で輝く王冠を鋭く見据え、次に虹色羊毛を刈られて鮮明になった王の背中の肌と足元に留まる。
……いったい、何をどう食べたら、此処まで大きくなるのだろう。
最凶兄弟の兄の方が罠を張ると言っていたけれど、気付かれてしまえば最後、易々と踏み潰されてしまいそうだ。
「それにしても大きいな。グリモア猟兵は綿菓子のようで美味しそうと言っていたが、私にはバクにみえるね。確か人の悪夢を食らうという伝説の」
獏。それは夢喰いとも言われる、動物の名前。
それを告げた瞬間、毛玉は黙したまま静かに瞼を落とし、小さく頭を振る。
「綿菓子は眷属に含まれませんねー。食べられない羊毛羊皮箇所があれば、きっと眷属です」
──獏、無かったことにされてませんっ!?
ベテラン魔獣ハンター兄弟と、熟練の猟兵であるミモザとガーネットは、それだけで全てを理解する。
毛玉の前で「あれ、獏じゃね?」と言ったら即アウト。タイキックどころでは済まされないだろう、たぶん……。
「さて、遅れを取らないよう、私たちも狩りを始めようか」
「そうだね! どんどん行っちゃおー♪」
気付けば後続の猟兵たちが、競うように最前線に向かっていて。
瞳と同じ色の髪をなびかせながらガーネットが高らかに跳躍すると、ミモザはその場で集中力を高め、身に纏っていた守護のチカラを更に高めていく。
一寸だけ瞼を閉じれば、頬を撫でる緑豊かで濃厚な風が、実に心地良い。
再び目を開けたミモザは口元を強く結び、さらに魔力を研ぎ澄ませるための詠唱に入る。その姿を横目で確認したガーネットは、もう1度宙をトンッと蹴った。
「封神武侠界で修行をした成果を見せてやろう!」
──グラビティマスター。
自身の身体に働く重力を制御したガーネットは、まるで仙人の飛翔のごとく、ふわりと宙を旋回してみせて。
その刹那。一気に飛行速度を上げたガーネットは獏羊王の眼前に到達すると、己に敵の意識を惹きつけるべく、巨大な十字架を模した携行型ビーム砲塔の銃口を突き付ける。
「あなたの相手は私だ」
真っ直ぐ撃ち出されたレーザー射撃が、獏羊王の右頬下と虹色羊毛の境目を焦がしていく。
己の外殻が焼け焦げる匂いに不快を覚えたのだろう、獏羊王の鼻と思われる箇所がヒクヒクと動くと同時に、頭上に鎮座する王冠の頂きから強烈な光が放たれる、が。
「今です。弟者さん、お願いしますー」
「ガハハハハッ!! 一切合切承知であるぞォォ!!」
毛玉の合図と同時に、弟者が携えた携行式魔道砲が、ドンッと火を吹く。
ズドオオオオオオンッ!!!
直前で盛大に爆ぜた魔弾が光の巨大化と分裂を阻害するものの、王冠から発せられたほんの僅かな光環が囮を一手に引き受けていた、ガーネットを掠ってしまう。
「もう少し…あと少しだけ…!」
強烈な睡魔によって動きが鈍っていくガーネットの姿は、1人地上で集中力を高め、高速詠唱を紡ぎ続けるミモザの緑色の瞳にも、鮮明に映り込んでいて。
ミモザの「策」の根源となるのは、詠唱時間に応じて無限に威力が上昇するという、強力な魔術式。
けれど、このまま眠りに堕ちてしまえば最後。重力を制御できなくなったガーネットの身体は、地面に叩きつけられてしまうだろう。
思考は一瞬。
長く詠唱を紡ぎ続けることで真価を発揮する魔術構成を、ミモザは味方の危機を救うべく即座に発動しようとした、その時だった。
何処からともなく現れた灰色のにわとりが、ガーネットの肩にぴょんと飛び乗り、けたたましい大爆音を轟かせたのは!
──コケーッ! コケコッコォォォx!!!
灰色のにわとり──否、にわとりドローンのメカたまこEXが奏でる鳴き声は、ガーネットを受け止めるべく獏羊王の上を駆け登っていた毛玉を始め、ミモザの耳にも届く。
次に2人が見たのは、微睡みから目覚めたガーネットを、にわとりが容赦なくクチバシでつつく絵図であーる。
「もう大丈夫だたまこ、とうに目は覚めているよ」
本当に大丈夫なのかと首を傾げるたまこを小脇に抱え、反撃に転じたガーネットは再び宙を疾駆する。
その光景に安堵を浮かべた毛玉は滑るように獏羊王から飛び降りると、筋肉を強化するパワーフードを口に運びながら、獏羊王の足元に滑り込んだ。
「
加工済みが、
加工前に負ける道理はないです」
毛玉は臆することなく自分よりも何倍もある巨大な前足を両手で掴むと、ゆっくりと持ち上げていく。
──びったんびったん。
ユーベルコードの恩恵で超巨体の重みを殆ど打ち消した毛玉は、そのままジャイアントスイングを仕掛けようとし──。
「あら?
蹄が多いですねー」
羊は四肢の先端に2つに割れた蹄を持つ、偶蹄目。
対して毛玉が掴んでいる前足の蹄は4つに分かれており、念のために後ろ足を確認すると3本。奇蹄目である。
この魔獣の王の正式な名前は、虹色積乱雲の獏羊王。そう、
半分が羊であり、半分が獏という、ハイブリット魔獣王だったのだ!
「羊の皮を被った獏は、眷属に含まれませんよー」
そんな衝撃(?)の事実に、到底納得できない猟兵が、此処に1人。
原始林とぬかるみが占める不安定な足場も、少なからずショックを受けた毛玉にとって、どうと言うことはない。
ただそこに在るだけで容赦なく襲い掛かってくる強烈な睡魔も、相手が
羊の皮を被った獏だと判明した段階で全て吹き飛び、両手にも自ずとチカラが入った、その時だった。
「「「羊のお嬢さんッ、そいつをこっちに投げてくれッ
!!」」」
兄者の騒がしい声に釣られて視線を動かすと、彼の足元に広がっていたのは原始林とぬかるみを生かして作った、巨大な落とし穴。
獏羊王の全てを落とすには不十分であるものの、片足だけでも踏み込めば最後。もがけばもがくほど抜け出しにくくなるという、嫌らしい作りだった。
「いきますよー」
腰を深く落とし、獏羊王の巨体を持ち上げた毛玉は、渾身のチカラで放り投げる。
何とも言えない表情のまま、獏羊王がふわっと宙に浮かんだのも一瞬、勢い良くぼすんっと落ちた超巨体は、落とし穴の上に敷かれた木々をベキバギと砕いていく。
『ンメエエエエエ!』
右前足が地面にはまってようやく気づいたのだろう、獏羊王は激しく身体を揺らして足掻くものの、時すでに遅し。
迅速に獏羊王の鼻面に到達したガーネットは眉間に狙いを定めると腰を落とし、鼻面を足場にして高らかに跳躍する。
「大丈夫、あの王冠は傷つけないよ」
冒険商人であるガーネットの目利きでも、獏羊王の王冠に散らばる宝石は、貴重で高価な商品だ。
ならば、ユーベルコードではなく己の功夫を直接見舞うまで。ガーネットの渾身の飛び蹴りを眉間に受けた獏羊王の頭が、大きく仰反る。
罠に嵌って縮こまった獏羊王の身体が、ほんの少し縦に伸びた瞬間、ミモザが動いた。
「眠気もろとも、ぶっこわしちゃえー!!」
射線上に在るのが獏羊王のみと確信したミモザは、高速詠唱を駆使して限界まで練り上げ、紡ぎ切った魔術構成を一気に解放する。
──アルカナ・ブラスター。
詠唱時間に比例して威力を増した白炎が、戦場を眩い光で包み込んだのもほんの一寸。
瞬時に収束した白き炎は巨大な破壊光線と化し、無防備になった獏羊王の喉元に真っ直ぐ伸びていく。
間近でいなくても伝わってくる、熱と衝撃。
激しい奔流が爆ぜて砂埃と共に消え去ったあと、そこに鎮座していた獏羊王の喉元から腹にかけての虹色羊毛はまるっと削られており、チラリとあの動物特有の、白い模様が見えていたという♪
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ティー・セツナ
【屋敷】の3名で参加いたします。
ラン様は主人。自分を抑えきれず暴れてしまった時でも、
丈夫でいらっしゃいますので、笑って許して下さる方です。
思う存分暴れることができます。
アールは同僚となりますが、自分を見ると怖がってしまうので、あまり目を合わさないようにいたします。
戦っている際はラン様に負けず騒がしいことに気づいていないのでしょうか。
ラン様のご要望とあれば、捕らえてみせましょう。
自分は近距離が得意ですので、弟者さまには遠距離攻撃をしていたければ。
「それでは…身ぐるみはがされる準備は、できているんだろうなぁ!?」
富良裳・アール
【屋敷】の方と一緒です
体験しないでください!
寝ちゃったら寝付きの良さななんて分からないですよ!
ヒッ、顔がこわい…!
あ、ごめんなさい。悪気はないんです
(あわわ、でも怖い…)
あの羊さんのほうが怖くない…
魔獣ハンターさんとランちゃんの声がうるさくて
寝ようにも寝れない気がしますね…
あとランちゃんピカピカしてなんか眩しいですし。
えっと、私は兄者さんと一緒に罠を張って、羊さんを誘導しますね。
でも大きいから、怖いかもしれませんっ!うわー!きゃー!!(容赦なくUC発動)
ラング・カエルム
【屋敷】
ふむ、そんなに寝付きがよいのか、是非体験してみよう!
なんだ、だめか?
ではふわふわのベットがあるところに連れて行って体験しようではないか
む?もしかしてあの羊の毛がふわふわしているのではないか?
あの毛に埋もれた後、鳴き声を聞けばいいのでは?
不眠に悩む奴らにも効きそうだな、新たなビジネスの予感がするぞっ!
よし、ティー、アール。あの羊を捕獲するんだ!
なあに、お前らが寝たら私がひっぱたいて起こしてやる!
存分に突っ込め!
うむ、ふたりとも元気でよろしい!
●喧騒と狂騒が呼ぶのは、吉兆か
混沌か
『ンメエエエエエ〜〜』
破竹の勢いと言っても過言ではない猟兵たちの猛攻により、獏羊王の虹色羊毛はどんどん削られていて。
しかし、獏羊王は未だ健在であると言わんばかりに何とも脱力しそうな鳴き声をあげると、ひと回り小さくなった代償に、真新しい虹色羊毛がぽんっと生える。
新品の煌びやかな虹色羊毛が戦場の風にふわりと揺れた瞬間、そのまま虹色羊毛にダイブするような格好で眠りに落ちた、残念な影が2つ。
「我ら兄弟をまたまた眠りに落とすとは、不覚ッ! ……スヤァ」
「兄者ァァァ!! 自分だけ倒れたくないからって、わしを巻き込ま……グゥゥゥ」
連戦の疲れだと思うけれど、2人とも寝付きが良すぎません?
虹色羊毛……ではなく、原始林の自然豊かな大地に揃ってキスすることになった最凶兄弟の2人を、すぐに先陣の猟兵たちが助け起こす。
その僅かな間だけが静寂が支配する。否、静かな戦場というのもおかしな話だよねと、誰もが思った時だった。
「ふむ、そんなに寝付きがよいのか、是非体験してみよう!」
「体験しないでください! 寝ちゃったら寝付きの良さなんて分からないですよ!」
後方から最凶兄弟に負けず劣らず大きな声を響かせたのは【屋敷】の主人である、ラング・カエルム(いつもご機嫌・f29868)であり、その背中を青ざめた顔で追い掛けていた、富良裳・アール(普通の女の子・f36268)もまた、鋭いツッコミを入れていて。
けれど、ラングの傍らに控える、ティー・セツナ(バトラー・f36272)の刺すような鋭い眼差しが視界に入るや否や、アールは短く「ヒッ」と息を呑み、半歩後退してしまう。
「あ、ごめんなさい。悪気はないんです」
そう、ティーは悪くない。ただただ、顔が怖いのです。
むしろ、獏羊王の方が怖くないかもしれないと、アールが視界一杯に広がる魔獣の王の巨体を見上げるのと、友人が奇想天外な行動を開始したのは、ほぼ同時。
「なんだ、だめか? ならば、ふわふわのベッドがあるところに連れて行って、体験しようではないか」
弾む足取りのラングが向かったのは、戦場よりもさらに後方に設置されていた、戦利品を収めているテント。
中には戦闘中に刈られたと思われる宝石やら虹色羊毛が詰め込まれており、ラングは虹色羊毛の1つを遠慮なく手に取る、が。
「お待ちくださいませ、ラン様。全て名札が付いております」
「うむ、これもだめか」
ティーにとって、ラングは主人である。
ティーが自分を抑えきれずに暴走してしまっても、主人は笑って許してくれる気量を持っているけれど、同僚のアールはそうはいかない。
ラングに仕えながらも、アールを怖がらせないように都度視線をずらしていたティーは、見た目は兎に角、性質はいたって穏やかで紳士的に見えるけど……。
「む? もしかしてあの羊の毛がふわふわしているのではないか?」
ここにきて、始めてラングの緑色の瞳に、獏羊王の巨体が飛び込んできた様子。
陽光を受けて更にフワフワになった虹色羊毛を眺めていると、おもむろにダイブして埋もれてしまいたい衝動に駆られてしまいそうで。
極め付けは、強力な脱力感と眠りに誘う間の抜けた鳴き声である。それを遠くから耳にした瞬間、ラングの脳内にピカッと電球が光った!
「あの毛に埋もれた後、鳴き声を聞けばいいのでは?」
闇の帳が降りた頃。柔らかに煌めく羊毛ベッドに深々と身体を沈め、心地良い脱力感を覚えながら、深い眠りに至る。
何という至福の時間ッ! ──いや、これは新しいビジネスのチャンスなのではッ!!
「不眠に悩む奴らにも効きそうだな、よし、ティー、アール。あの羊を捕獲するんだ!」
「はっ。ラン様のご要望とあれば、捕らえてみせましょう」
突拍子もないラングの思いつ……命令に、ティーは深々と頭を下げて快諾する。
しかし、アールは。
「えっと……」
たしか、グリモア猟兵は「敵に捕獲される前に討ち取って」と言っていたような?
そのことをアールが指摘する前に、すでにラングとティーは前線に向かおうとしている、最凶兄弟を呼び止めていて。
「弟者さま失礼いたします。あれを捕獲するべく、遠距離攻撃で支援していただきたく」
「おおッ!! 捕縛ではなく捕獲しようというのだなッ!! わしは構わんぞォ!!」
何処か生き生きとした様子で「自分は近距離が得意ですので」と付け加えるティーに、弟者も楽しそうに破顔する。
対して、人見知りのアールは挙動不審になりながらも、もうどうにでもなれという思いで、おずおずと兄者に声を掛けた。
「え、えっと、兄者さん、私と一緒に罠を張って、羊さんを誘導お願いします」
「ウン、面白そうだねッ!! あれの捕獲は大掛かりな罠になると思うから、必要な素材は現地調達させてもらうよッ!!」
「ヒッ」
ラングだけではなく半ばティーにも翻弄されている中。今度は兄者にも振り回されそうになっているアールの顔が、更に青くに染まっていく。
その様子をティーがちらりと視界の端に留めたのはほんの一寸、彼は主人であるラングに向き直ると、丁重に頭を下げた。
「ラン様、可能でしたら思う存分暴れる許しを頂けたいのですが」
「うむ、存分に突っ込め!」
「ありがとうございます。それでは……」
ティーがラングの命令を承諾した刹那、足元から伸びて具現化した闇が、己が習得した全ての技巧を急激に向上させていく。
──バトラーズ・ブラック。しかし、そのユーベルコードの効力はここまでだ。
唯でさえ鋭い眼光が更に研ぎ澄まされ、常に無表情で務めていた顔つきが凶悪に歪んだのは、全て彼の性質である。
「「「身ぐるみはがされる準備は、できているんだろうなぁ
!?」」」
先程までの穏やかで紳士的な振る舞いとは一変、抑え込んでいたモノを一気に解放させたティーは、けたたましい奇声を上げていて。
彼を良く知らぬ者が見れば、今すぐ病院へ行ってこいッと泣き叫びそうな病変っぷりに、主人であるラングはニコニコと上機嫌で……あ、アールはダメでしたね。
「怖い…全部が、こわい」
「ハハハハッ、向こうは楽しそうだねッ!! さて、我らも行こうかッ!!」
前門のヒャッハーなティーと、隣の騒がしくて賑やかな兄者と、後門の上機嫌で何故かピカピカして眩しいラング。
これなら寝ようにも寝れないといいますか、アールと兄者はまずは罠を設置しないといけないのに、こんなに目立っていいの?!
「なんだか、羊さんも怖くみえて……」
遠目ではユルすぎる外見に気を取られていたけれど、間近で見る虹色の巨体は風景と化しており、濃厚な原始林の香りが、さらに脳内をバグらせてくる。
凶悪な顔付きのティーと違う別のベクトルのヤバ怖さに、アールの頭の中はぐるぐるとごちゃ混ぜになっていき──。
「うわー! きゃー!!」
──地獄の炎。
涙目になったアールが勢い良く掲げた手のひらから、荒ぶる炎の渦が獏羊王を中心に広がっていく。
けれど、捕獲を命じた側のラングはそれを咎めることも止めることもなく、さらに上機嫌でケラケラと笑い声を響かせていて。
「うむ、ふたりとも元気でよろしい!」
2人が寝入ったらひっぱたいてでも叩き起こすつもりだったけど、杞憂に終わりそうだ。
彼らの奮闘っぷり(?)に、自身は高みの見物を決め込んだラングは、ユーベルコードで背中の後光を激しく光らせる。
その光は、眠気覚まし代わりとして戦場を照らすだけでなく、己に向けられる
攻撃を遮断するためのものでもある。
「ハッ、アールもラングに負けず劣らず、騒がしいよなぁ!」
「ガハハハ!! 揃って元気が有り余っておるなぁ、大いに結構ッ!!」
虹色羊毛をゲットどころか、メラメラとバーニングしている獏羊王は、ところどころ煤に塗れていて。
半ば
混沌と言ってもいい光景に、逆に勢い付いたティーと弟者は揃って奇声を上げながら、獏羊王に猛進するのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
雨野・雲珠
菱川さんと/f12195
でっっっ
えっ……えっ。わたあめ?
UDCアースの原宿でこんなの見ましたね…
それにしてもなんと大きく煌びやか
……
……あっ違う!羊だこれ!
とにもかくにも、熟練の狩人さえ抗いがたい
眠気攻撃をなんとかしなくては
お任せください!
【三之宮】で受けて立ちます
俺の桜の範囲内に、眠気は届かな…あれ?
攻撃受けるから俺寝ちゃうのではスヤァ…
はっ…そうだ、わたあめ。食べます!
流石にそろそろあれは食べられないのではとは察していますが!
菱川さんの近くで無効化を続けつつ
弟御に手を振って【枝絡み】で捕縛のお手伝い
千鳥がつついて落とす宝石をうきうき拾います
狩りの獲物は山分けが鉄則
みなさま、お見事でした!
菱川・彌三八
雲の字と/f22865
なんたる強敵
眠さに抗えた事なんざねェよ
ってェ訳で雲の字よ、眠気の方は任せたゼ
お前ェが頼みさ
あの巨体は俺が弟分と気を引く
罠にかけて一気に叩こうぜ
千鳥の群れは二つ
右に左に攪乱しつゝ、ぐるりと周囲を飛び回らせて目を回させっちまうのも良いかも知れねえな
極大の光は本能でやべえと分かる
…が、俺等にゃ桜の加護がある
って雲の字は寝ちまうのかい
寝てるくれえが丁度好さそうだが…仕方ねェ
そら起きねェナ、綿菓子食うんだろ
あれが食えるかはわからねえが
もう一度千鳥を旋回させたら、派手な石ころも啄んで落としちやら
良い値がつくんだろ
罠にかかったら後は千鳥で締め上げる
頭の危ねェのも貰っておこうぜ
●獏羊王の庭に煌めく、桜吹雪と宝石の雨
「でっっっ、えっ……えっ。わたあめ?」
なんだか、UDCアースの原宿でこんなのを見たような……?
いや、それにしても、なんと大きくて煌びやかな、わたあめなのだろう。
雨野・雲珠(慚愧・f22865)の視線が、わたあめの上に鎮座している王冠と、獣のような顔と、その下に生えている手足に忙しなく動くものの、すぐにピタリと止まる。
「……あっ違う! 羊だこれ!」
なんだか裏切られたような、でも探偵事務所に住まう者として瞳を輝かせる雲珠に、傍らに立つ菱川・彌三八(彌栄・f12195)が、八重歯をみせながらケラケラと笑う。
けれど、それも一寸。
すぐに切長の双眸を鋭く細め、まるで射抜くように原始林にひときわ大きくそびえたつ巨体を見据える。
「なんたる強敵、眠さに抗えた事なんざねェよ」
獏羊王の王冠から発せられる全てを眠らせる光は、ただ巨大化するだけではない。
戦場に無差別に放たれた光は、多い時には3回連続して戦場を舐めていく。手練れの最凶兄弟が何度も寝入ってしまうのは、此れが原因なのかもしれない。
「熟練の狩人さえ抗いがたい眠気攻撃……なんとかしなくてはいけませんね!」
もちろん、注視するのは王冠からの光だけではない。
そこに在るだけで、ひたすらに眠りたい感情に駆られる畏怖にも対抗する必要がある。
真剣な眼差しを浮かべ、いつも背負っている箱宮を担ぎ直す雲珠に、彌三八は然りと頷き、口元に笑みを作る。
「そうだなァ……ってェ訳で雲の字よ、眠気の方は任せたゼ」
「はい、俺にお任せください!」
お前ェが頼みさと伝える前に雲珠に承諾されてしまった彌三八は、もう一度破顔する。
ならば、あの巨体を惹きつけるのは自分の役目。彌三八は、態勢を整えるために後方に下がっていた最凶兄弟を見つけると、すぐに呼び止めた。
「おめぇが兄弟の弟分だな、ちと俺に手ェ貸してくれねェか?」
「ガハハハハ!! わしらが断る理由なんてないのォ!! なあ、兄者ァ!!」
「もちろんッ!! 俺は罠に集中したほうがよさそうだねッ?」
「飲み込み早えェな、罠にかけて一気に叩こうぜ」
協力し合うのは当たり前だと快諾した兄弟は「応!」と、それぞれの持ち場へと散っていく。
その洗練された動きを合図に、強く大地を蹴った雲珠が右側に回り込むと、彌三八も宙に素早く鳥の群れのようなものを描く。
「鍔迫りの打ちいづる戦場の千鳥 勝を千取るしるべなるらむ」
──
千鳥。
彌三八が宙に描いた筆数に応じて増え続ける千鳥の群れは、2つ。
左側から回り込みながら砲撃する弟者を追走しつつ、彌三八は2つの群れを右に左に攪乱させるように、ぐるりと飛び回らせる。
『ンメエエエエエエ!!』
彌三八の作戦は、狙い通りに獏羊王に届く。
自身を中心に鳥の群れがぐるぐると回り、惹きつけるように爆ぜる砲撃を獏羊王は目障りだと感じたのだろう、頭上の王冠の輝きが大きく増し、光が収束する。
それが、3連の光筋となって放たれようとした刹那、王の視界内に舞い降りた雲珠が全身のチカラを抜き、集まった光を抱いた。
「加護ぞあらん」
──
三之宮。
雲珠が完全な脱力状態で受け止めた眠りの光筋は全て無効化され、同時に戒めを取り払う桜吹雪が、背中の箱宮から排出されて。
目覚めの桜吹雪は最凶兄弟たちの動きを活性化させ、狙われていた彌三八も「あの光はやべえなァ」と、安堵に似たため息を、ぽつりと零す。
「……が、俺等にゃ桜の加護が──って、雲の字は寝ちまうのかい!」
戒めを解除する桜吹雪の中心にいる雲珠に、眠気は届かないはず……。
しかし、よくよく考えてみると、その前に眠りの光を全て受け切ってしまっているので、その時点で詰んでしまっていると言っても、無理もなく。
「桜色の羊が1匹、2匹、スヤァ…」
彌三八が急いで駆け付けると案の定、深い眠りに陥った雲珠は、とても穏やかな寝顔で虹色羊毛の中に埋もれておりまして。
このまま寝かせておいた方がいいのかも…という思いをぐっと堪え、彌三八は「…仕方ねェ」と首筋の後ろを掻くと、雲珠の肩を強く揺する。
「そら起きねェナ、綿菓子食うんだろ」
「桜色の菱川さんが……はっ…そうだ、わたあめ。食べます!」
正常であれば、流石に食べられないと、認識できるはず……。
しかし、寝惚け眼の雲珠はブチッと虹色羊毛を引っこ抜くと、もふっと口元に運ぶ。
味はしない。むしろ、口の中の水分が持っていかれる不快感にしょんぼり肩を落とす雲珠に、彌三八はケラケラと笑いながら労いの言葉を掛けた。
「おかげで助かったゼ。もう一度千鳥を旋回させて、派手な石ころも啄んで落としちやら」
──良い値がつくんだろ?
ニヤリと笑みを浮かべた彌三八に、少し遠くで様子を伺っていた弟者も、チカラ強くサムズアップを返した、その時だった。
獏羊王の足元で、ぬかるみを生かした落とし穴の設置が完了した兄者が、3人に向けて「おーい、準備できたよッ!!」と、大きく手を振ったのは。
「狩りの獲物は山分けが鉄則ですよね?」
「ああ、だと思うぜェ?」
兄者に手を振り返しながら立ち上がった雲珠の手の内に在るのは、意のままに伸び蠢く桜の枝と根。
その言葉に込められた優しさと、雲珠がこれからしようとしていることを察した彌三八は「千鳥、奮発しねぇといけねェな」と笑う。
「ガハハハハ!! 皆の者、息を合わせていくぞおおおおお!!」
弟者の砲撃を合図に、彌三八がもう一度描いた千鳥の群れが王冠の周りをぐるぐると旋回、宝石を突きながら罠の方へ誘導する。
獏羊王も眠りの畏怖と光環で抵抗しようとするものの、雲珠の箱宮から排出される桜吹雪に、なす術もなく……。
数分後。獏羊王の片足が落とし穴に浸かったのと、雲珠の枝絡みが巨体をぐるぐると捕縛したのは、ほぼ同時。
「みなさま、お見事でした!」
敵は魔獣の王。落とし穴と枝絡みの合わせ技でも、そう長くは抑えきれないだろう。
降り注ぐ桜吹雪と宝石の雨の中。千鳥たちが突いて落とす宝石を、雲珠は嬉しそうに拾い集め、最凶兄弟も慣れた手付きで素早く回収し、戦場の外に運んでいく。
その光景を目尻を細めて見守っていた彌三八は、先程の自分の言の葉を思い出すと、不敵な笑みを浮かべてみせて。
「頭の危ねェのも貰っておこうぜ」
奮発すると言った手前、宝石だけでは物足りない。
王冠への攻撃を回避する猟兵もいたけれど、貴重な宝石は無数の千鳥たちが殆ど落としている今、あとで山分けすれば問題ないはずだ。
──ならば、少しでも後顧の憂いを断つ。
彌三八の意図を察した千鳥たちも旋回の速度を上げ、王冠を強く締め上げるように、収束するのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヴィクトル・サリヴァン
何か賑やかなハンターだなぁ…でも腕が確かなら力を借りたいね。
漁夫の利は御免だし頑張らないと。
まずハンターに接触して話したい所だけど…既に戦闘入ってたら起こす所からかな?
闇属性乗せたオーラを纏い眠りの光を防ぎつつハンター二人をぺしぺし、起きなければUCとか電撃の魔法を。
狩場で寝たら大変だし。
話せるようになったら狩りのお手伝いに来たと伝え、羊の足止めにかかる。
元々仕掛けられている罠の位置確認し、高速詠唱から水の魔法で水弾発射して其方に追い込む。
足元が土なら多重詠唱の土魔法と合わせぬかるませ動き難いようにするかな。
傷にはUCで即治療、生命速度加速させて眠気もマシになるだろうし。
※アドリブ絡み等お任せ
栗花落・澪
もふもふ…じゃなかった
わたあめ退治手伝いに来ました
弟さん、僕と一緒に戦って
接近は危ないから魔導砲で
その間にお兄さんは罠の設置をお願い
僕は翼の【空中戦】で空から狙い
★マイクで拡声させた【歌唱】に【誘惑】を乗せて
少しでも僕の方に気を引き弟さんが攻撃しやすいように
まぁ、どちらかというとわた…獏羊さんの声の相殺が主目的だけど
更に【彩音】を発動
歌詞を全て具現化し
万一誰か1人でも眠くなったらツッコミの如く
文字でポコっと(ある程度加減して)殴って目覚まし
寝るのは全部終わらせてからっ!
もこもこで守られてない顔あたりを狙って
ロケットの如く文字をぶつける物量攻撃
少しでもよろけさせお兄さんの仕掛けた罠にかかるように
●戦場で寝てはいけない、
物理SP
獏羊王との戦いは佳境を迎えており、序盤から連戦していた最凶兄弟の動きにも陰りが見え始めていて。
けれど、戦いのたびに削られる外殻──虹色羊毛を何度も補強していた獏羊王は、ふた回りほど小さくなっており、あとは互いに何処まで粘れるかといったところだろう。
「もふもふ…じゃなかった、わたあめ退治手伝いに来ま──あれ?」
栗花落・澪(泡沫の花・f03165)が原始林を掻い潜りながら戦場に駆けつけたのと、獏羊王が自身を小さくして失われた虹色羊毛を、もふっと再生させたのは、ほぼ同時。
まるで、
獏が羊の皮を被ったような光景に澪の琥珀色の瞳が一寸だけ丸くなるものの、軽やかな足取りはすぐに最凶兄弟の屈強な背中に追い着いた。
「弟さん、僕と一緒に戦って! 接近は危ないから魔導砲で。その間にお兄さんは罠の設置をお願い!」
「ガハハハハッ!! 少々頭がポンコツになってきたところだったゾォ!! その指示、ありがたく従わせてもらうッ!!」
「いいねッいいねッ!! 落とし穴にシビレ罠、マキビシにトリモチも、まだまだあるからねッ!!」
連戦の疲れを見せず、澪の策に応じて柔軟に戦い方を変えようとする最凶兄弟の実力は、実に申し分無い。
一見すると騒がしいオッサンブラザーズでしかないものの、その振舞いを垣間見るだけでベテランの域に達していることに気付いた猟兵が、もう1人。
「何か賑やかなハンターたちだなぁ……」
兄弟と少年のやりとりを少し遠くで観察していた、ヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)は、つぶらなお目目を細め、3人に「やあ」と大きく手を振る。
戦いは終盤戦に差し掛かろうとしている。互いのチカラを合わせれば戦況を優位に運ぶだけでなく、後顧の憂いを断つことにも繋がってくるはずだ。
「俺も狩りのお手伝いに来たよ。可能なら残っている罠の位置を確認できたら、御の字だけど」
「今すぐに使えるのは、ぬかるみ近くに設置した落とし穴だねッ! 希望の罠があれば設置するけど、ちょっとだけ時間が掛かるよッ!!」
すぐに使える罠が落とし穴であることは、ヴィクトルにとって幸運だった。
それなら設置場所や大きさを問わず、自身の水と土の魔法を活かして、すぐにでも獏羊王の足止めを狙えるからだ。
思考は一瞬。ヴィクトルは王冠の光環を軽減すべく闇属性のオーラを纏うと、傍らで真剣に話に耳を傾けていた澪に振り向き、穏やかに告げる。
「俺は罠の方で足止めに回るけど、いいかな?」
「僕は弟さんと一緒に空から狙うつもりだったし、お兄さんと一緒にサポートお願いします!」
背中の翼をチカラ強く宙に羽ばたかせた澪は速度を上げて一気に上昇、上空で一寸だけ静止すると眼下を見回してみる。
ほぼ緑一色で染まる浮遊島の中。嫌でも視界に飛び込んでくる虹色の巨体を見据えたまま、澪は小瓶から花びらを取り出す。
ふわりふわりと宙に躍動する花びらたちは、天使の翼が装飾された拡声マイクへと姿を変えた。
「さあ、わた…獏羊さんの元に行っておいで」
少しでも自分の方に気を取られるよう、澪は獏羊王の真正面に向けて拡声マイクを飛ばすと、深く呼吸を整えて歌唱する。
青天を響かせるのは、誘惑のチカラを秘めた歌声。
無論、迎え撃つ獏羊王も黙って見惚れるつもりはない。己が畏怖を示すべく虹色羊毛をふわふわ揺らしながら、なんとも脱力感のある鳴き声を、周囲に轟かせた。
『メエエエエエエ〜〜』
──澪の誘惑を帯びた歌唱が、獏羊王の眠りの畏怖を打ち消すのが先か。
──あるいは、澪がただひたすらに眠りたいという、感情に駆られてしまうのが先か。
互いに相手の心を強く震わせようとする真っ向勝負。先に心を揺さぶられてしまったのは……!
「ダメだッ!! どっちも美しくて、見惚れてしま……スヤァ」
「狩場で寝たら大変だよ、もう少しだけ頑張って」
寝付きの良さに加えて、身体に蓄積していた疲労が災いしてしまったのか、最初に寝入ってしまったのは、兄者でして。
ここまできて、オーデュボンの軍勢に漁夫の利を得られたくはない。
ヴィクトルは王冠の光を避けながら兄者に駆け寄り、頬をぺしペしと叩く、けれど。
「おおおお、流石は猟兵さんッ……スヤァ、叩き方にも……スピィ、元気が有り余って良し……グゥ」
「えーと、どうしよう」
これはあれだ。
うっかり強めに叩いたり三又銛でぐりぐりしたら、ご褒美だと思ってしまう生き物だ。
──
最終手段を使おう。
物理による解決を速攻で諦めたヴィクトルは短めの溜息を落とすと、重みのある三又銛の先に電撃を纏った魔力を収束させる。
「ちょっと痺れるよ」
「「「ぎょええええええええあああああああ」」」
──
活力の雷。
ヴィクトルの三又銛を通して奔った雷は、寝入っていた兄者の生命速度を一気に加速。
生命力を扱う術式の代償にヴィクトルの疲れが少し濃くなるものの、骨まで見えそうな勢いで激しくビリビリしていた兄者の表情は、実に晴れ晴れとしていて。
「ありがとうッ!! 眠気どころか疲れも綺麗さっぱり消えた気分だよッ!!」
「うん、少しはマシになったかな」
しかし、連携に遅れを取ってしまった可能性がある。
まずは澪と弟者の状況を確認しようとヴィクトルが宙を見上げると、心配は杞憂に終わったようだ。
「弟さん、わた…獏羊さんがクラクラしている今がチャンスだよ!」
「グゥ、あと5分……否、10分。……グォォォォ」
感情を揺さぶる真っ向勝負は澪に軍杯が上がったものの、ほぼ同時に弟者の方が寝入ってしまったようでして……。
「寝るのは全部終わらせてからっ!」
すぐに先程の歌の歌詞をユーベルコードで実体化させた澪は、漫才師の鋭いツッコミの如く
文字を弟者目掛けて、ポコポコと飛ばしまくる。
まさに、圧倒的な物理の応酬。これが兄の方ではなくって、本当に良かった!
「痛タタタタ!! ハッ、わしとしたことが…グゥ。あばばば! と、とうに起きておるぞおおォォ!!」
「よかった!」
もちろん、ある程度の手加減は折り込み済みである。
歌い出しのAメロで弟者を叩き起こした澪は、歌声に囚われてうっとりと巨体を揺らしている獏羊王に視線を戻す。
このタイミングなら、少しでもよろけさせることが出来そうだし、兄者とヴィクトルの罠にも掛かるはず……。
もう1度深く呼吸を整えて、澪が全てのメロディと歌詞を具現化しようとした時だった。獏羊王の巨体がぐらりと傾き、ぼすんっと人工的なぬかるみに、浸かったのは。
「うまくいったようだね」
澪が弟者を叩き起こすタイミングに合わせて高速詠唱で水の魔法を紡いだヴィクトルが、水の一部を大きな水弾に錬成して、獏羊王の片足にぶつけたのだ。
そして、それだけではない。
既に用意されていた落とし穴は、ヴィクトルが同時に多重詠唱していた土の魔法でさらにぬかるんでおり、より動き難いものに改良されていて。
『メ、メエエエエエ!!』
獏羊王がもがけばもがくほど、ぬかるみはさらに不安定になり、その足元を肥沃な大地へと引き摺り込んでいく。
その絶好の機会を逃す猛者は、ここにはいない──!
「ガハハハハッ!! 立派な土手っ腹がガラ空きであるゾォ!!」
弟者が携えた携行式魔道砲が獏羊王の腹に大輪の花を咲かせると、琥珀色の髪を靡かせながら迅速に距離を狭めた澪が、再びメロディと歌詞を宙に具現化させる。
「教えてあげる。世界に溢れる鮮やかな音!」
──
彩音
つい先程、弟者を叩き起こしたのとは違って、その
文字量は青天を埋め尽くしてしまうほどで……。
宝石のように煌めく澪の双眸が、敵の虹色羊毛の加護が薄い顔面に狙いを定めた刹那、無数の
文字がロケットのように勢い良く飛び交い、鋭い軌跡を描きながら、次々と着弾する。
躱す手段を封じられ、護りの術を持たぬ獏羊王ができるのは、ただただ耐え忍ぶだけ。
それでも、煌めく虹色の羊毛は、未だ健在。
しかし、剥き出しの肌に猛攻を受けた獏羊王は疲労を濃くしており、それに勢いを増した猟兵と最凶兄弟の狩猟もまた、終盤戦に差し掛かるのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
呉羽・伊織
【もふ】
…
あの~爺サン?わかってるネ?
アレは敵――どんなに可愛い毛玉でも(ある意味大変)危険な敵だからネ??
(見れば見る程、絶妙にゆるくてやりづらい姿から目を逸らし――半ば自分に言い聞かせる様に)
っと、ご兄弟もヨロシク!
(すっごい馴染んでる爺サン見て
三兄弟だったけ~と遠い目して)
…こうも暑苦しくて騒々しいと寝落ちるに寝落ちれない気がする!
って脱線は此処迄で!
俺は搦め手のが得意なんで、オニーサンと罠やら隙やら狙うとしよーか
(足元へ鎖や鋼糸巡らせた罠張り
もふっと体勢崩して威厳ゼロな御姿にしたり
気が反れた隙に王冠へ闇属性UCぶつけ光消したり
王冠自体を落とすよう狙ったり)
ホントせめて安らかにお休みー!
重松・八雲
【もふ】
おお、この圧倒的
存在感…!
実に腕が鳴るわい!
(拳を握り締め――るどころか
まるで毛玉をふるもっふするかの様な手付き
そして違う方向にやる気が漲りまくった目付きをしている!)
猛者兄弟方も頼りにしておるのう!
(一目でびびっと波長が合った様な顔)
では儂は弟者殿と惹き付けに参るでな!
そい!
(UCでカッ飛び
全力突撃して気を散らしつつ
“何としてでもふるもっふし倒したい”
という覚悟や気合や根性やらで眠気吹き飛ばし!)
極上のお布団の如きこの毛並――!
流石、王の貫禄じゃな!
しかし負けぬぞ!
逆に快眠をご提供致そう!
(安らかに眠れるよう
もふもふ掻き分けツボっぽい所探り指圧攻撃!)
●青天に轟く
気迫、所により闇刃の雨
「おお、この圧倒的
存在感…! 実に腕が鳴るわい!」
猟兵たちの怒涛の猛攻により、獏羊王の羊毛から剥き出しになった部分は傷と埃で塗れ、頭の王冠の形状は歪み、彩っていた宝石の殆どが抜け落ちていて。
しかし、王が纏う虹色羊毛は、未だ健在。
連戦の中で失われていく虹色羊毛を維持しようと、戦いのフェーズが切り替わるたびに己の身体を小さくして羊毛を再生、今は半分以下に縮んでしまった王の姿に、重松・八雲(児爺・f14006)は高らかに感嘆を洩らし、哄笑する。
「己が矜持である
虹色羊毛のため、身を削るその心意気──流石は魔獣の王じゃな!」
拳を握り締め──るどころか、八雲の両手はまるで毛玉をふるもっふするかのように、ワキワキと動いておりまして。
その妙な手付きと違う方向にやる気が漲りまくった目付きに、呉羽・伊織(翳・f03578)は一寸だけ言葉を失い、半ば呆れたようなジト目を老剣豪に向ける。
「あの〜爺サン? わかってるよネ?」
眼の前に鎮座しているのは、この浮遊島の魔獣の王。
ボロボロにされた王冠にちょっぴり涙目になっているのは可愛いし、陽光を受けて煌めく虹色羊毛は干したての極上のお布団の匂いがするけれど、その全てが眠りに誘うためのものである。
「どんなに可愛い毛玉でも、
危険な敵だからネ??」
しかし、見れば見るほど、語れば語るほど、絶妙にユルくてやりづらくなってくるのも、事実。
半分は自分に言い聞かせるためであったものの、いろんな意味で危険を感じた伊織が、獏羊王から目を逸らした時だった。
態勢を立て直すために後方に下がってきた最凶兄弟と八雲の目と目が合い、三者が一目でびびっと波長が合ったような顔をしたのは。
「おおお、君たちも猟兵さんかなッ!! またまた強そうな人たちが来たねッ!!」
「ガハハハハハハ、実に頼もしき限りッ!! 宜しく頼むぞォォ!!」
「わしらこそ、猛者兄弟方を頼りにしてるからのう!」
……えっ、すっごい馴染んでない?
屈強で声が大きくて賑やかな3人にサンドイッチされ、しかも間近でガン見することになってしまった伊織は一寸絶句してしまうものの、すぐにいつもの軽い感じに戻って。
「っと、ご兄弟もヨロシク!」
伊織と八雲が最凶兄弟と出会ったのは、ほんの数秒前である。
なのに、3人はすでに息ぴったりと言いますか、もしかして三兄弟だったけ~と錯覚してしまった伊織が、遠い目を浮かべてしまったのは、無理もない。
どちらにしても、ここまで暑苦しくて騒々しいのなら、寝落ちるに寝落ちれないだろう……たぶん。
「俺はオニーサンと一緒に隙やら罠やら狙うとしよーか」
「もちろん、歓迎するよッ!!」
このままでは脱線してしまうと話を替えて申し出た伊織に、兄者は嬉々と快諾する。
緩く軽い言動は変わらず。けれど、赤き双眸に剣呑な雰囲気を纏わせる伊織を一目みた兄者は一寸思案し、賑やかに笑ってみせて。
「ここまでで手持ちの罠も少なくなってきたし、君がメインで俺がサポートっていうのはどうだいッ?」
「おっ、それなら好き勝手させてもらうヨ?」
手持ちの罠が少ないと言うのは、嘘ではない。
兄者の目が「搦め手が得意な猟兵の技巧をぜひ見てみたい!」と、幼子のように輝いているので、本心はきっとこっちなのだろうと、伊織は思う。
「では儂は弟者殿と惹き付けに参るでな! そい!」
すでに、準備万端と言わんばかりに腰を低く落とした八雲は、強く大地を蹴り上げると、高らかに青天を飛翔する。
先んじて、獏羊王の気を逸らすように弟者が次々と魔弾を見舞う中、八雲は全身のチカラを一気に解放した。
「刮目せよ!」
──
衝天。
全身を並大抵ではない
堅固たる情熱と意思を込めた守護のオーラで覆い、
堅牢なる意思で身体能力を強化した八雲は、さらに加速。
まるで、弾丸のような速度で真正面から全力突撃を仕掛けてきた八雲に対し、迎え撃つ獏羊王は何とも言えぬ気の抜けた鳴き声を、戦場に轟かせた。
『ンメエエエエエエエ〜〜』
半分ほど小さくなっていても獏羊王は己が矜持と威厳を毅然と示し、全身の虹色羊毛をふわっと魅力的に揺らしてみせて。
しかし、自身の全てを
一撃必殺の弾丸に変えた八雲は眼光を鋭くし、全て気合だけで耐え凌ぐ。
そう、八雲は厳つい見目に反して、けだまと甘味をこよなく愛する男。ここで退くものかとさらに速度を上げると、勢いを乗せたまま獏羊王の胸元に、もふっと貼り付いた。
「極上のお布団の如きこの毛並──! 流石、王の貫禄じゃな!」
その沈み込むような柔らかさは身体の重みすら忘れてしまいそうで、少し遅れてお日様の香りが包み込んでいく。
けれど、それも一瞬。
襲ってきた強烈な眠気を「負けぬぞ!」と叫び飛ばした八雲は、両手を虹色羊毛に突っ込むと、もふもふとかき分けて。
「連戦の疲れも溜まってそうじゃのう、どれ、わしが快眠をご提供致そう!」
──眠りの王にも安寧を。
生物無生物関係なく眠りに陥れる獏羊王に対し、八雲は逆に安らかに眠れるようにツボっぽい箇所を探り、手当たり次第にもふもふと揉みほぐす。
それは、獏羊王にとっては身体をこちょこちょされているのに等しく、余りのくすぐったさに4つ足を折り曲げてしまった瞬間、伊織と兄者が同時に動いた。
「どう見ても、爺サンの役得な気がする」
「そうだねッ!! あと、俺たち兄弟も騒がしいけど、此処まで声が聞こえてくるのも凄いねッ!!」
脱線、再び。
全身全力で挑む八雲の気迫が、獏羊王の動きを阻害すべく、王の両前足に手早く鎖と鋼糸を絡ませていた、伊織にも飛び火する。
自分と行動を共にしている兄者が暑苦しくて賑やかなのはわかる。わからないのは八雲の声が、どこかで空間が歪んでると思うレベルで、くっきりはっきり聞こえることだ。
「まっ、そのお陰でタイミングが合わせやすいけどネ!」
へらり口を開いた伊織が右前足を、兄者が左前足を、それぞれ鋼糸で補強しつつ絡ませた鎖を引っ張ったのは、ほぼ同時。
びったんっ!!
前足だけを強く引っ張られた獏羊王は、まるで伏せでもしたように、威厳ゼロな愛らしい体勢に♪
涙目でぷるぷると身体を震わせた獏羊王は、返す刃の如く前足付近に向けて、王冠の光環を解き放とうとする、が。
「ホントせめて安らかにお休みー!」
──
変眩。
素早く死角に回り込んだ伊織が放った闇属性を帯びた無数の暗器は、獏羊王を眩惑に捕らえようと、一斉に襲い掛かる。
──その数、615本。
迷い、惑わせるような複雑な軌跡を描きながら飛び交う闇刃は、先の猟兵との戦いで脆くなっていた王冠にさらに傷を負わせ、頂きの一部を打ち砕く。
王冠から発せられる全てを眠らせる光環は何とも弱々しく、伊織は先程の己の言葉がそう遠くない未来に変わるのを、確信したのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
冴島・類
【白夜】
此度の羊さんは大きいなぁ
綿飴に見えるってのも…わかるか
ご兄弟さん宜しくお願いします
僕らも共に駆けさせてください
眠気も目に見える光線の方が防ぎやすいか
守りはリティを頼らせてもらえるかい?
僕は弟さんと、罠に追い込むのや引き付けるのに向かおう
うん、ありがとう
羊さんの気を引く為、残像やフェイントで撹乱
舞使い、刀から放つ衝撃波で追い込み
罠やお兄さんの一撃に繋げれたら
守ってくれる柔らかくも強い花弁に、つい笑み
ふふ、頼もしいでしょう?
光線放った直後を狙えば、王冠を狙って弾けるかな
もふもふ羊毛を得れたら彼らとも分け合いたいな
…これは糸にするとしても
見てたら綿飴も食べたくなる
良いね、土産に持って行こうか
城野・いばら
【白夜】
うん
トロッコに詰まってたコより大きい
糸に縒ればどの位…ううん
お勤めが先ね
島を守る為に頑張るわ
ピカピカは坑道で見たもの
任せて
類も気を付けて
兄者さんに罠や島の地理の詳細尋ね
地形の利用した立回りを
罠の加勢が出来れば、
薔薇の挿し木で伸縮した茨這わせ捕縛も試み
無数の花で罠へ導く二人の援護を
先導してくれるから
リティ達は安心してね
次の手を紡げるの
白花は木々をすり抜け
駆ける心強い風に添い
冠に張付き光を生命力吸収
光環放たれたら、
花弁重ねたオーラ防御で光遮る傘に
睡魔から皆をかばうの
ふふ、元気な声も眠気飛ばす魔法ね
決め手は託し
どうかお休みを羊さんに
柔かな感触にうっとり
グリモアのアリスへ
お土産も出来たら良いね
●
獏羊王に、
永遠の眠りと
安寧の花束を
「此度の羊さんは大きいなぁ、綿飴に見えるってのも…わかるか」
猟兵たちと魔獣ハンター兄弟の狩猟が、佳境を迎えた頃。
戦場に降り立った、冴島・類(公孫樹・f13398)の右目に映るのは、満身創痍となってもなお、虹色羊毛を保持しつづける魔獣の王の姿。
もう、何度目になるのだろう、虹色羊毛の再生の代償でその巨体は全盛期の時よりも半分以下に縮んでいるものの、眠りのチカラは未だ健在。
決して侮ることはできない
相手である。
「うん、トロッコに詰まってたコより大きい」
この大きさなら、糸に縒ればどのくらいになるのだろう?
城野・いばら(白夜の魔女・f20406)が思案に耽るのもほんの一寸。今はお勤めが先であると、戦場を覆う原始林を見回す。
濃厚な緑をすり抜けて駆ける風が心地良い。いばらの口元がふわりと弛んだのと、類が最凶兄弟を見つけたのは、ほぼ同時。
類がいばらに「行こう」と声を掛けて揃って原始林を駆け抜けると、その先の最凶兄弟を呼び止めた。
「ご兄弟さん宜しくお願いします、僕らも共に駆けさせてください」
「ああ、狩りも正念場だからねッ!! 弟者よ、猟兵さんたちの足手まといにならないよう、気を引き締めていこうッ!!」
「ガハハハハッ!! 戦利品を見繕うまでがわしらの仕事ッ!! 一肌ならず二肌三肌脱がせてもらうぞい!!」
見た目よりも老成し柔らかな口調で願う類に対しても、最凶兄弟は相変わらず賑やかで。
いばらも「島を守るために頑張るわ」とにこやかに笑みを返し、兄者の手持ちの罠とこの浮遊島の地理の詳細を尋ねた、その時だった。
最後の足掻きと言わんばかりに、獏羊王のボロボロの王冠から発せられた光環が、戦場の端を掠めていったのは。
「あのピカピカは坑道で見たものね」
過去に交戦した獏羊王と相違が無いか確かめるべく、いばらが花緑青の瞳を向けると、類もその視線の先を追い掛ける。
全ての攻撃に眠りが付与されているのなら、目に見える眠光のほうが、防ぎやすいかもしれない……。
もう一度、いばらに視線を戻した類は、弟者と一緒に敵を惹きつけることに専念すると告げ、一輪の白花をふわりと手のひらに乗せる。
「守りはリティを頼らせてもらえるかい?」
類の手のひらに浮かぶ白き花は、幼き茨の魔女の分身──リトル・リティ。
未だお喋りは出来ない小さき花。けれど、笑顔を届きたいと願う彼女は、たくさんの守護の花を咲かせて応えてくれて。
「罠は任せて」
ならば、自分がすべきことも自ずと決まってくる、いばらの元の姿は白薔薇であり、通せんぼが得意な棘の生垣なのだから。
自身の魔力に応じて成長する薔薇の挿し木を優しく抱えたいばらの意図を察した類は、チカラ強く頷き、弟者と共に鋭く大地を蹴った。
「類も気を付けて」
「うん、ありがとう」
それは、互いに短くも、大きな信頼を抱いた言葉。
一気に獏羊王の膝元に距離を狭めた類は、銀杏色の組紐飾りの付いた短刀の鯉口を切り、吐く息に合わせて抜刀する。
振えば風を呼び、脚を掬い、祈り唱え降ろせば魔を祓う短刀を手に、類は王の気を惹きつけるべく半歩踏み込んで、残像を残すように加速した。
「風集い、舞え」
──
翅果の舞。
迎え撃つ獏羊王の王冠から発せられた眠りの光環は弱々しくも、類や味方を着実に狙わんとしていて。
光が触れるその刹那、攻撃と眠りを軽減する神霊体に姿を変えた類は、短刀から繰り出す衝撃波で応戦、剣風を叩き込む。
響く剣戟と砲撃の音。
その喧騒にも似た雑音は、獏羊王の足元近くでぬかるみを利用した落とし穴を設置していた兄者と、その周辺で薔薇の挿し木で伸縮した茨を這わせていた、いばらの耳にも届いていて。
「リティ達は安心してね」
柔らかな白き守護の花に優しく触れ、いばらは蒼天を見上げる。
陽光を受けて煌めく花緑青の眼差しは、左右で異なる色を持つ類の視線と絡み合い、次に最後まで抵抗を見せる獏羊王に留まった。
「おやすみのキスを、アナタに」
──白薔薇のくちづけ。
いばらの白く、細い指先が獏羊王に向けられた時、無数の白き花の花びらが木々をすり抜け、深緑を駆ける心強い風に寄り添う。
風が赴く先に在るのは、この浮遊島を統べる魔獣の王。──否、その頂きに鎮座する王冠である。
剣傷と穴だらけとなった権威の象徴に収束する光環は、いばらが過去に会敵したモノよりも、何とも弱々しく……。
けれど、無数の白花は眠光を吸い上げるように次々と王冠に張り付き、そこから溢れた光は──。
「ふふ、頼もしいでしょう?」
常に側に付き添い、身を守る、柔らかくも強い白き花に類の口元は綻び、自然と笑みを浮かべて。
ならば、自分がやるべきことは1つ。
類が目線だけで弟者に合図を送ると、熟練の狩人は「心得た!」と頷き、携行式魔道砲の銃口を獏羊王の横っ面に向ける。
──同時に。さらに一歩、深く踏み込んだ類も、同じ場所に追い風という名の衝撃波を叩き込んだ。
「ガハハハハッ!! 出力全開、フルスロットルじゃあああッ!!」
ズドオオオオオオンッ!!!
激しい衝撃が獏羊王を足場にしていた類にも僅かに浸透し、轟と空気を振動させる。
すでに満身創痍の獏羊王の足元はふらふらと朧げで、衝撃に耐え切れずよろめいた巨体は、すぽんっと落とし穴に嵌ってしまう。
その刹那。いばらの魔力に応じて硬化も伸縮も思うがままの茨が、多種多彩な薔薇を咲かせながら、獏羊王をぐるぐると捕縛した。
「ふふ、元気な声も眠気飛ばす魔法ね」
兄弟が歓声を轟かせながらハイタッチをする姿を視界の端に留め、いばらはぐったりと気力を喪失し掛けていた、獏羊王を真っ直ぐ見据える。
けれど、いばらも、無数の白き花びらも、動かず攻勢に転じることもなく、ただただ優しく微笑むだけ。
──決め手は託している。
どうか安らかな眠りを…と、祈り、願うように、いばらがそっと瞼を閉じた時だった。
「その王冠、貰うよ」
──一閃。狙い澄ました類の一撃が、権威の象徴を両断する。
2つに分かれた王冠は初めて獏羊王の頭から滑り落ち、乾いた音を立てながら転がり、肥沃な大地の上で止まった。
そして。少し遅れて動きを完全に止めた獏羊王の巨体も、ゆっくりと大地に崩れ落ちていくのだった。
「ご兄弟さんの取り分です、受け取ってもらえますか?」
狩猟のあとのお楽しみといえば、戦利品である。
自分たちが手に入れた虹色羊毛を分け合いたいと申し出る類に、しかし最凶兄弟は「それは2人のものだ」と断り、破顔する。
「ありがとうッ!! 猟兵さんたちのおかげで俺たちの取り分は十二分にあるからねッ!!」
「ガハハハハ!! 兄者の言う通りッ!! 過ぎた取り分は魔獣ハンターの矜持に反するからのォ!」
「……うーん、この量は糸にするとしても」
2人分にしては、ちょっと多いかも。
どうしようと困り顔を浮かべた類に、虹色羊毛に顔をもふっと埋めて柔らかな感触に表情を綻ばせていた、いばらが微笑む。
「グリモアのアリスのお土産にどうかしら?」
「良いね、ちょっと多めにして持って行こうか」
この柔らかくて温かな匂いがする虹色羊毛は、猟兵たちの帰還を待ち望んでいるグリモア猟兵も、きっと喜んでくれるだろう。
それに、何だかずっと眺めていたら綿飴が食べたくなってくる……そうだ、グリモア猟兵にお願いして、綿飴を作ってもらおうか。
猟兵と魔獣ハンターが去った獏羊王の庭に、静寂と一面の濃厚な緑の香りが舞い戻る。
それを祝福し、あるいは手向けの花を添えるかのように、ひらりひらりと白花の花びらが舞うのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵