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ネムリノマユ

#シルバーレイン #決戦 #土蜘蛛戦争


●マユノナカ
「皆様、お集まりいただき有難うございます。シルバーレインにて、事件の予知をいたしました」
 仮面吸血軍曹・エフ(謎の吸血軍曹F・f35467)は、自らの呼びかけに応えて集まった猟兵たちに恭しく一礼した後、その顔を厳しいものにしてこう言った。
「「土蜘蛛の女王」国見・眞由璃。彼女の築いた「檻」の出現を予知いたしました――これは、決戦となります」
 土蜘蛛の女王、国見・眞由璃。彼女の存在を予兆として見た者も多いであろう。彼女はシルバーレインにおいて、銀誓館学園の初めての戦争相手、その総大将であった。
「国見・眞由璃は、シルバーレインにおけるとある地方都市にある全寮制・中高一貫の女子校「芳華学園」をまるごとひとつ「土蜘蛛の檻」によって覆っており、外部との交流を完全に遮断しているようです」
 外部の人々は、檻の内部や学園の生徒・教師に至るまでその存在を完全に忘却している。内部に閉じ込められている人間も檻から決して出られないにも関わらず、記憶操作によって「違和感なく日常生活を過ごしている」らしい。
「もともと全寮制であったことも外部との隔絶を深める要素となったのでしょう。学園の生徒たちは夕食を取った後は寮の自室で「蜘蛛糸の繭」の中で眠っています。教職員たちも同じのようですね」
 国見・眞由璃は、「檻」の内部に囚われた人々から精気を奪っており、やがては喰らい、配下である「土蜘蛛オブリビオン」を増殖させようとしている。喰らわれた人々は勿論死亡する。このままならば倒さなければならない存在であるが――。
「僕はまだその時銀誓館学園にはおりませんでしたが、かつての土蜘蛛との戦争では銀誓館学園側に知識が少なすぎました。来訪者というものもよくわかっておりませんでした。もし何かが違えば、彼ら土蜘蛛との間にも、僕らヴァンパイアや人狼たちとのように同盟が締結できていたかもしれません。ですから、僕はそれと同じように考える人の事を決して否定いたしません」
 そういった後、仮面の少年は説明を続ける。
「先ずしてほしいことは、学園内に転校生、あるいは教育実習生などの教師として「外からの来訪者」としてともに日常を送り、徐々に彼らの違和感を増大させて「現在の環境」に疑問を持たせるということです。現在の環境とは、つまり、外に出られないということですね」
 おりしも桜の季節、既に入学式を終え、一学期が始まったばかりのところを檻に閉じ込められたようである。
「場合によっては、繭で眠っているときの彼らを無理矢理引きはがして、強引に現実を見せてしまっても構いません」
 「檻」が損傷したことを認識した国見・眞由璃は異物を排除すべく、配下のオブリビオン軍団を猟兵たちに向けて差し向けてくるだろうと仮面の少年は言った。
「配下のオブリビオンは全て「土蜘蛛化オブリビオン」と化しており、通常のユーベルコードの他に体に蜘蛛の脚や蜘蛛糸を放つ腹部などの「蜘蛛の部位」が追加されており、それらも利用して攻撃してきます。ゆめ、ご注意を」
 土蜘蛛オブリビオンを倒せば、「土蜘蛛の女王」国見・眞由璃との決戦となるが――。
「国見・眞由璃は交渉を望みます。それへの返答如何によっては、彼ら土蜘蛛と同盟を汲むことも可能です。先ほども申し上げました通り、交渉に応じて同盟を組もうとすることを僕は許容いたします」
 それらはすべて、現場の猟兵の判断次第だと、仮面の少年は言った。
「決裂して眞由璃を倒すも、交渉を行って眞由璃を生かすも、皆様次第でございます」
 それでは、準備の整われた方から、僕にお声がけくださいませ――。


遊津
 遊津です。
 シルバーレインの決戦シナリオをお届けします。
 第一章日常・第二章集団・第三章ボス戦の三章構成となっております。

 「一章・日常について」
 一章は日常ですので、必要成功数が5となっております。ご注意ください。
 一章の目的は学園内の人々に違和感を抱かせることになります。
 テストなどはあまり気にせず、学園の外から来た転校生や教育実習生・新任の教職員として振る舞い、内部に閉じ込められ記憶操作を行われている人々の目を覚まさせてください。
 グリモア猟兵が言った通り、蜘蛛糸の繭の中で眠っているところを引きはがして叩き起こしてもそれはそれで構いません。
 POW・SPD・WIZ、どれで判定するかをプレイングに明記くださると助かります。

 「第二章・集団戦について」
 蜘蛛の脚や蜘蛛糸を吐く蜘蛛の腹部を有した土蜘蛛化オブリビオンとの集団戦になります。
 詳細は第二章の追記にて行います。

 「第三章・ボス戦について」
 国見・眞由璃との決戦となります。眞由璃は猟兵との交渉を望んでいます。
 詳細は第三章の追記にて行います。

 当シナリオの受付開始日時は4/7(木)朝8:31~となります。
 シナリオ公開の時間によっては上記タグ・マスターページにプレイング受付中の文字が出ていないことがありますが、その状態でもプレイングを送ってくださってかまいません。
 諸注意はマスターページに書いてありますので、必ずマスターページを一読の上、プレイングを送信してください。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 日常 『抜き打ちテストに備えよ!』

POW   :    勉強し過ぎは身体がなまる!運動等アクティブな休憩に誘って気分転換のお手伝い!

SPD   :    自身の勉強法をさりげなく伝えて、学生達のテスト対策に活かすお手伝いを。

WIZ   :    豊かな教養は数多の読書や挑戦の積み重ねから生まれ、やがてテストにも活きる!自身の特技を体験させよう!

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
木々水・サライ
あー……違和感を抱かせれば良いのか。
現在の環境に違和感を持たせる……。

\しゃっらー/\にょわー/
ん? 何、出たいって?
……まあ確かにお前らは学園にとって違和感ばりばりの存在だし、それでちょっとは気が引ける……のか??

まあいいや、じゃあ教職員としてしばらく振る舞おう。
科学の力でうんぬんかんぬんあれやそれやと語ってる最中にUC【精霊猫ライダー・チビサライ軍団参上!】によって呼ばれたチビ達で廊下ドタバタしてもらう。

「悪い、みんな捕まえるの手伝ってくれ!」って生徒たちに伝えたら、精霊猫とチビで、こう、出られないアピールをしてもらおう。

……これで大丈夫かなー。
うちのチビの可愛さを喧伝できればいいが……。



●猫は可愛い×ちまこいは可愛い=約束された大正義
「えー、であるからしてー……」
 木々水・サライ(《白黒殺戮人形》[モノクローム・キラードール]・f28416)は女学園「芳華学園」の教師に扮して教鞭をとっていた。
(中学一年生か……まだ小学生と変わんねえなあ……)
 ランドセルを置いてきたもののまだ制服に着られているような少女たちが並ぶ中、サライは教科書の内容をまとめたものを黒板に書き記していく。
「そんなわけでー……科学の力は万能なんで、科学はすべてを解決するぜ。次回はこの続きからやるから、しっかり復習しておけよー」
 そういって締めくくると、少女たちのソプラノの声がはーいとユニゾンする。
(さて、土蜘蛛の女王の「檻」を破るには、違和感を抱かせればいいわけだが……どうやって現在の環境に違和感を持たせるか……)
 白衣を纏ったサライが窓から外を眺めていると、猫に乗ったちまこいサライがサライを見つめ返していた。幻覚ではない。サライのユーベルコード【精霊猫ライダー・チビサライ軍団参上!(ガイスト・カッツェ・シュヴァルツヴァイス)】によって呼び出され、学園中を調べまわっていた精霊猫とサライ自身の小さな複製義体である。
「しゃっらー」
「にょわー」
「ん? 何だ、出たいって? ……まあ確かにお前らは学園にとっては違和感バリバリの存在だし、それでちょっとは気が引ける……のか? まあいいや、ヨシ」
「らいらーい!!」
 二時間目と三時間目の間の十分間の休み時間。突然学園の中庭に大量のちまこいなにか(チビサライである)を乗っけた猫が現れた。
「ふぐるにょわー!」
「らい、らいらいらーい!」
「おい、お前ら、そいつら捕まえてくれー!」
 中庭に集まっていた女学生たちに呼びかけるサライ。
「は、はーい!」
「キャー!かわいいー!」
「かわいいー!!」
 女子は可愛いものに弱い。猫と子供なんかその最たるものである。捕まえようと追いかけてくる女学生たちを引き離さぬよう、しかし捕まえられぬよう、絶妙な距離を取ってチビサライを乗せた精霊猫は学園中を走り回る。
 勿論、全寮制というからには学園の敷地は広い、しかし総勢107のチビサライを乗せた精霊猫たちはうまいこと分業してそれぞれの場所で女学生たちを引きつけ、そして走り回った。彼らの役目は、勿論「学園から出られない」という異常事態を女学生たちにアピールすることである。
「木々水先生、捕まえましたー」
「おう、ありがとう、どこにいた?」
「その……校門で……なんか……立ち止まって……?」
 しきりに首をひねりながらそう言って、サライから退室の許可を得て出ていく女学生。
かくしてサライの仮の拠点である化学準備室には107ペアのチビサライと精霊猫が床中をみっしりと埋め尽くすことになったが、彼らは立派な役目を果たした。自分を捕まえた女学生に「なぜか学園から出られない」という違和感を与えるという役目を。
「……あー、これで大丈夫かなー……」
 それでもなおサライが気にしているのは。
「うちのチビどもの可愛さを喧伝出来てればいいんだけどなー……」
 土蜘蛛の檻云々とは全然関係ないことだった。大丈夫!できてるよ!

大成功 🔵​🔵​🔵​

酒井森・興和
POW

新規の用務員として潜入
力仕事、花壇の手入れ、掃除と指示を貰えればテキパキこなす
ああ
本当のところ、女王の繭の気配は懐かしく心地良いぐらい
でも今はここで微睡む人達を起こさないと
何かの躓き一つでまた全面対決なんて二度と御免だからね

花壇の手入れを手伝ってくれる生徒に
「ここに新しい花が欲しいねえ。それに土も足したいし。君も来るかい?外出許可が要るね
先生に
「幾つか必要な買い出しと、あとこの教材も街の書店に届いたようですが、まだ引き取りに行ってない…んですか?

休憩中ベテラン用務員とテレビを見ながら
「そう言えば新聞無いんですね…
あっ、頼まれた物の買い出しに行かないと。すいませんが車を出して下さいますか



●心地よい、けれどずっと浸ってはいられない郷愁
「うん、いい感じかな。土もかなり馴染んだ。これなら、花も根付くよ」
「そうですか、よかったぁ……新学期になってから、ずっと元気ないみたいで、枯れちゃうんじゃないかって心配してたんです」
 安心しきった声で、胸を撫でおろしたようすの女子生徒にやさしく微笑みかけるのは、酒井森・興和(朱纏・f37018)。新規の用務員として赴任してきたように装う興和は、力仕事、花壇の手入れ、掃除に用具の整備と指示をテキパキとこなし生徒からも教職員からも好印象を得るのに成功していた。
 鋏角衆である興和は、700年あまり前に世界結界によって封印の眠りについていた。大規模な「巣」を護衛する兵隊の一人として。そしてかつて起こった――「女王」国見・眞由璃が生きていた頃の土蜘蛛戦争にて目覚め、銀誓館学園と戦い、そして女王の死に際して銀誓館学園へと降った過去を持つ。学園で様々な事件を解決し、学園を卒業した後。恐らくは「国見・眞由璃」がオブリビオン化したのをきっかけに猟兵として目覚めたのである。
 興和にとって、本当のところ「女王の繭の中」にいるという気配は懐かしく、心地よいくらいだ。そっと自分たちを包んでくれる、優しい感覚がする。
(でも……今は。ここで微睡む人たちを、起こさないと)
 何かの躓き一つでまた全面対決なんて、二度と御免だ。互いに互いの知識なく理解なく、何もわからぬまま彼らをゴーストと認識していたままの銀誓館学園と矛を交えた記憶は、あれから何年経っても興和の中から消えることはない。
「うん、土起こしをしたからここにも新しい花が欲しいねえ」
「そうですね、今から種を撒くんですか?」
「さて、それは種と苗を見てから考えるとしようか。土も足したいし……君も来るかい? ああ、外出許可が必要だね」
「外出……許可……」
 ぼんやりと女子生徒の瞳が胡乱なものになる。まるで白昼夢を見ているように。ぱん、と目の前で手を叩いてやると、女子生徒がはっと顔を上げる。
「あれ、私」
「どうかしたのかい? 外出許可まで取って買い物に行くのは嫌だった?」
「い、いえ……そうじゃなくて……そうですよね、外、出なきゃ……種もお花も、買いに行けませんよね……」
 たった今それに気づいたかのように頭を抱えながらそうつぶやく女子生徒。興和はにっこりと笑うと、よく考えておいてといって園芸用土の入ったビニール袋を抱えて立ち上がった。
 ――よく考えておいて。君の意思がなにに蓋をされているのかを。

 そのあとも、興和の活動は続く。
眼鏡のベテランと思しき女教師と語らいながら、ふと思い出したように話を振る。
「そういえば、いくつか必要な買い出しがあるんですよ」
「あら、何か足りないものがあったかしら?」
「ええ、少し。あと、先生が探してらっしゃった教材も街の書店には届いているようですけど」
「教材……ああ、そうね、あれを生徒たちに配らないと……」
「もしかして、まだ引き取りに行ってない……んですか?」
「…………」
「先生?」
「あ、ああごめんなさい、そうよそうよね、書店に行かなくちゃ……来月にはどうしても必要になる教材だもの……書店……」

 休憩中、ベテランの用務員とテレビを見る興和。壮年の用務員はニュース番組を見ながら、お茶を啜り、どこか他人事のようにニュースの出来事に感想を述べる。
「怖いねえ、●●県の山火事はまだ鎮火できてないのかあ」
「そうですね、毎日のように新聞でも……あれ、そういえば新聞、ないんですね?」
「うん? そうだったかな……あれ? 確かいつもここに……うん? うんん?」
 壮年の用務員が取り出すのはどれも三月以前の新聞だ。外界と遮断されているのだから、当然の事だろう。困惑する用務員に興和は続ける。
「ああ、そうでした。頼まれていたものの買い出しに行かないといけないんですが、僕は車を持っていなくて。すいませんが車、出していただけませんかね?」
「車……」
「ええ、街の大型ホームセンターに行かないといけなくて。ほら見てくださいよ、これだけのものが今足りていませんから、買いに行かないと。これを買って帰ってくるには、車、必要ですよね?」
「あ、ああ、そうだな……そうなるよな……」
「えっと、これって、用務員の仕事ですよね?」
「……あ、ああ……そうだ、やっておかないといけないんだった……私はどうして忘れていたんだ……」
 呆然と呟く壮年の用務員を前にして、興和は上手くいったと我知らず口角を吊り上げる。
まだ、まだまだ興和のやるべき事はたくさんある。もっともっと多くの人に、違和感を抱かせないといけないのだから……。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『くねくね』

POW   :    事前くねくね
予め【くねくねしておく】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD   :    くねくねウェーブ
レベルm半径内に【体をくねらせながら狂気の波動】を放ち、命中した敵から【理性】を奪う。範囲内が暗闇なら威力3倍。
WIZ   :    くねくねゾーン
自身からレベルm半径内の無機物を【新たなくねくね】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
👑11
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 ――檻が、損傷している。
女王がそれに勘づいたのは早かった。むべなるかな、自ら紡いだ繭、檻である。
土蜘蛛の女王、国見・眞由璃は、檻を傷つけたものを排除しようと、追手を遣わした。

時刻は夜。生徒たち、教職員たちは未だ蜘蛛糸の繭の中で眠りについている時刻だ。
土蜘蛛化し、蜘蛛の脚、蜘蛛糸を吐きだす腹を得たオブリビオンたちは、檻を傷つけた者――猟兵たちを排除しようと、うごめき始めた――
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第二章 集団戦「くねくね」が現れました

おめでとうございます。猟兵たちの活躍により、学園内部の人々に違和感を抱かせ、土蜘蛛の檻を損傷させることに成功しました。
それにより、土蜘蛛の女王は檻を損傷させた元凶――猟兵たちに対し、土蜘蛛化オブリビオンを差し向けてきました。以下に詳細を記します。

「戦場について」
 夜の学園です。特に指定がなければ、広いグラウンドで戦うことになります。
 グラウンドは一般的なもので、戦闘の邪魔になるものは特にありません。もし何か戦闘に利用しようという時は「使えるものは何でも使う」といった抽象的なものではなく、「何を」「どのように」使うか明記してください。
 開けた外であるため、空中戦を行うことも可能です。
 戦場については学園内であればどこでもプレイングで指定することが出来ますが、グラウンド以外の場所は若干猟兵にとって不利な環境となります。また、生徒や教職員が眠っている寮や宿舎での戦闘は一般人を傷つける可能性があるためおすすめできません。
 敵として現れるのは「土蜘蛛化オブリビオン・くねくね」のみです。
 第二章では国見・眞由璃は登場しません。
 
「土蜘蛛化オブリビオン・くねくねについて」
 もとは普通のくねくねでしたが、土蜘蛛化オブリビオンとなり、蜘蛛の脚や蜘蛛糸を吐く蜘蛛の腹部を得ています。
 猟兵がユーベルコードを使わない場合でも、蜘蛛の部位によって攻撃してきます。棒立ちにはなりません。
 なお、戦場は夜の為暗闇です。SPDの場合威力三倍効果が付随します。
 SPDのユーベルコードによって猟兵が理性を奪われた場合の描写は、指定があればそれに準じます。指定がなければ不自然のない程度の相応の描写となります。

 第二章のプレイング受付日時は4/14(木)朝8:31からとなります。
 時間帯によっては上記タグやマスターページに受付中の文字がないことがありますが、時間を過ぎていればプレイングを送ってくださって構いません。
 マスターページを一読したうえでプレイングを送信してください。
 
 それでは、女王の尖兵と化した土蜘蛛化オブリビオンたちを駆逐するための戦いを始めてください。
木々水・サライ
くねk……いや待て。
くねくね、うん、オカルトなのですごくこわい。
だがまずツッコミさせてくれ。

くねくねが土蜘蛛化ってわけわかんねェんだが!?
逆ならまだわかったよ!? 土蜘蛛がくねくねになってたら怖いよ!!
でも逆はわけわからんのだが!?

くそ、こんな状況でツッコミするとは思わなかった!
UC【十二刺の白黒人形】!
回数なんて知らん、とにかく手数が欲しい!(集団戦だし)
暗闇なんか知らん!!(普段から闇に紛れるし)
理性も勝手に持っていけドロボー!(だいぶ前から殺戮人形になってるし)

とにかく今は! 今だけは!!
オカルト存在であるテメェの恐怖から逃れるために!!
ツッコミを入れながら連続攻撃だ!!



●木々水サライはオカルトが怖い
「く……くねくね……だとっ……」
 木々水サライはオカルトが怖かった。そんなこと言ったらシルバーレインの世界のオブリビオンって基本的に元ゴーストで、ゴーストというからには地縛霊とかリビングデッドとかそりゃもうオカルト案件の敵ばっかりだったりするので、よくこの世界の事件に干渉する気になれたね? メンタル大丈夫? って感じなのだが、そこは仕方がない、土蜘蛛は来訪者だからゴーストじゃない。来訪者だからオカルトじゃないよなってこの世界に来たらオカルト案件なくねくねが待っていたのである。サライの感覚で言うとどっちかというと騙し討ちされた感じなのである。可哀想だね。
 くねくねはオカルトの歴史的には新時代のオカルトである。発祥は大規模掲示板のオカルト板に投稿されたものとされていて、すなわち実在のほどは定かではない筈だった。しかし一概に創作怪談とするには、くねくねにはバリエーションがありすぎた。そんなくねくねの話をサライは彼が「親父」と呼ぶ人物から「ほらほら、新しいオカルト」みたいなノリで聞かされていた。とっても怖かった。だって最後人が発狂するし。わからない方がいいとか言われるし。こんなものを教えるなんてなんてひどいろくでなしの親父さんなんだ!
 そんなわけでサライはくねくねがすっごく怖かった。逃げ出したいレベルだった。しかし彼の血潮を巡る決して両親から受け継いだものではない自発的に発露したツッコミ精神が彼を逃げさせはしなかった。
 それ、すなわち――
「まず、ツッコミさせてくれ……」
 ユーベルコード【十二刺の白黒人形(トゥエルブ・スタブ・モノクローム)】を発動させ、空中に十二振りの刃を放る。高い瞬発力でくねくねの間合いに踏み込んだサライは、黒鉄の刃を空中でつかみ取ってその頭部っぽい部分を斬と切り裂いた。
「……くねくねが土蜘蛛化ってわけわかんねェんだが!?」
 恐るるべきは彼のツッコミ魂である。次に白銀の刃を逆腕でキャッチして、背後に迫ってくねくねしていたくねくねを薙ぐ。
「逆ならまだわかったよ!? 土蜘蛛がくねくねになってたら怖いよ!!でも逆はワケわからんのだが!?」
 交差させた刃で振り下ろされた蜘蛛脚の一撃を防ぎ、降り注ぐ刃がくねくねを貫く。
「……くっそ、こんな状況でツッコミするなんて思わなかった!」
 くねくねたちもそこ突っ込まれるとは思わなかった、とくねくねしながら意思発露していたが、生憎サライには伝わらない。伝わらない方がいい。くねくねからの意思とか受信しちゃったらマジでサライの精神は恐怖でヤバいことになってしまう。
「12かける4は……くっそ、回数なんて知らん!!とにかく手数が欲しい!集団戦だし!」
 うっそだろマジかよオマエ12×4はさすがにわかるだろ。違うなサライは計算を放棄していた。とにかく振ってくる刃を拾っては斬りつけ、そして空中にぶん投げ、落ちてくるのを拾って斬りつける。
「暗闇なんか知らん!普段から闇に紛れてるし!」
 くねくねがくねくねしながら放つ狂気の波動はサライから確実に理性を奪っていたし、場所が暗闇であったがゆえにその威力も三倍だったのだが、生憎サライはツッコミに専念していた。
「理性も勝手に持っていけ、ドロボー!!」
 ――自棄である。正常な精神、今のサライにないのである。ある意味ではこれがサライの理性を奪われた姿と言ってもよかった。
「ちげーよ!だいぶ前から殺戮人形になってるからだよ!!」
 あの、地の文さんにまでツッコミをしないでいただきたいのだが?
「うるっせぇ!!普段からいきなり話しかけてきて今更話しかけんなとかめんどくせえ彼女かお前は!!」
 それもそうだね。ゴメン悪かった。
「とにかく今はっ……今だけはっ……!!オカルト存在であるテメェ(くねくね)の恐怖から逃れるために――ツッコミを入れながらの総攻撃だああああ!!」
 そう叫びながら端からくねくねを斬り刻んでもはやくねくねすることもできない破片にちぎっていくサライ。
 賢明なる読者諸君ならお気づきだろう。このサライ、くねくねというオカルトの恐怖から逃れるために、狂気を齎すくねくねを前にして、最初から理性が吹っ飛んでいたのである――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

酒井森・興和
あれが敵か…
一応蜘蛛の眷属らしいがなんだか異様な奴らだな(落ち着き、暗視し
僕はこの世界の戦い方(UC)に習熟していない
武器で追い詰め確実に倒していこう

蜘蛛足の長さを見測り胴脚の下と射程内に入らぬよう立ち位置には気を付け
側面から三砂でなぎ払い離脱
蜘蛛糸は三砂で絡め飛斬帽で断ち斬る
距離によっては逆に絡め寄せて直に一撃を入れるか
即時反撃出来ない時は何とか身を躱す

あの予備動作を許すと厄介なようだね
遠いくねくね(以下敵)は飛斬帽を飛ばし衝撃波、追撃を織り交ぜくねるのを妨害
近い敵には三砂を重量攻撃、貫通攻撃を活用して叩き弱らせ
UCが届く距離で仕留める
崩れた敵を盾にして次の敵に投げ付けその隙を突きUCを撃つ



●歪な蜘蛛の眷属と、土蜘蛛のなり損ない
「あれが、敵か……」
 興和は落ち着きを保ったまま、自らの持つ暗闇を見通す能力で以て敵の姿をじっくりと視認する。くねくねとは現代のインターネット上の匿名掲示板においてはじめてその姿を現した怪異である。くねくねに纏わる逸話をよく知る者であれば、「くねくねを視認し、理解する」という行動は絶対にしないであろう。なぜならくねくねは「その正体を理解すると発狂する」という存在であるからだ。
 もっとも、このくねくねたちはそれをユーベルコードに昇華させるまでの力を得てはいなかったのだが――興和は封印から現代に蘇った、古い時代を生きていた鋏角衆である。銀誓館学園にて一般常識を学びはしたものの、くねくねなんて新世代のインターネット怪異は知らない。それゆえに興和はくねくねをじっくり見る。
 最も、「理解すれば発狂する」というくねくねに纏わる怪談の「語り手」は誰も狂ってはいない。狂っていれば書き込みができないほどの狂乱ぶりになると書かれてしまったからだ。だからくねくねの理解に至ることは誰もできない。
 故に興和も、この土蜘蛛化したくねくねたちを見てこう思っただけだった。
(一応、蜘蛛の眷属らしいが……なんだか異様な奴らだな)
 ――と。
「さて。僕は猟兵たちの戦い方……ユーベルコードに習熟していない。武器で追い詰め、確実に倒していこうか」
 蜘蛛脚を生やしたくねくねが体をくねくねさせながら興和に近寄る。興和は冷静に蜘蛛脚の長さを見て測り、その攻撃圏内であろうと推測される胴脚の下と射程内に入らぬよう気を付けながら立ち回る。彼が振り回すのは彼が封印される以前より手に馴染ませていた土蜘蛛族の技術で作られたツルハシ状の愛用の武器、「三砂」。側面からそれでもって薙ぎ払い、くねくね相手に距離を取る。
 蜘蛛の腹部を持つくねくねが蜘蛛糸を吹きかけてくる。それを三砂でもって絡め捕り、飛斬帽【丹霞】で糸を断ち切った。後方から迫るくねくねに対してとんぼ返りで距離を取ると、吐き出された糸を三砂に絡め寄せて逆に急激に位置を詰め、【丹霞】でもって斬り裂いた。
(……あいつらが、さっきからしているあの予備動作……あれを許すと、厄介なようだね)
 封印の眠りにつく前から兵士として戦い、銀誓館学園で学んできた、興和がそうやって培った戦闘のノウハウは猟兵となった今でも健在だ。その鋭い観察眼でくねくねたちが攻撃前に「通常とは異なる予備動作として」身をくねらせていることを見抜いた興和は、遠い場所にいるくねくねへと飛斬帽【丹霞】を投げつけてその動作を妨害する。そして飛斬帽が戻ってくるのを待つ前に、近くにいるくねくねへと駆け寄って飛び上がり、三砂にありったけの重量を籠めて叩きつけ、その先端を貫通させて弱らせる。
(十分に近づけた……やるなら、今!)
 呼気を練り上げ、「気」へと収束させる。その指先から放つは、【白虎絶命拳】!
内部を巡る気を乱され、内側からボロボロと崩れていくくねくね。それを次に迫るくねくねの蜘蛛脚からの盾として、逆にくねくねへと仲間の残骸を投げつける。ひるんだ隙をつき、再び興和は練り上げられた気による絶命の拳をくねくねへと放つのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

桜神帝・華凛(サポート)
 人間のヘリオン×符術士、23歳の女です。
 普段の口調は「冷静(私、あなた、~さん、ね、わ、~よ、~の?)」、敵には「冷徹(私、お前、呼び捨て、ね、わ、~よ、~の?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



●夜闇を駆ける隠遁の華
「これが本当に土蜘蛛の眷属……? これが土蜘蛛化オブリビオンということ……?」
 桜神帝・華凛(隠者の小夜曲・f35653)は、蜘蛛糸を吐く蜘蛛の腹部を有したくねくねを見て、怪訝な表情を浮かべた。
華凛は銀誓館学園の第一期卒業生だ。彼女が銀誓館学園に在籍し、また卒業後OGとして関わっていた間に、銀誓館学園は二度土蜘蛛との戦争を経験している。
そのどちらにも、このような敵はいなかった。土蜘蛛の女王が使役してくるのは彼ら彼女らの巫女と、戦士である土蜘蛛たち、そのなりそこないである鋏角衆と、蜘蛛童たち。こんな、別種のゴーストに蜘蛛の部位を与えて眷属化させた例など見たことがない。
「これが、土蜘蛛の女王が「オブリビオン」化したことで得た能力というものなのかしら……」
 まあいいわ、と華凛は剣を手にしてくねくねの前に立ちふさがった。
くねくねは逸話に語られるとおりに華凛の前でくねくねとくねる。本来この怪異が生まれた逸話の通りならば、その正体を理解してしまえば発狂する、とある。このくねくねの怪談を華凛が知っていたものか、時間をかけることを彼女はよしとしなかった。剣でもってくねくねを薙ぎ払い、更に微塵に切り刻む。その体の一部分にすらも、くねる場所を与えないとばかりに。
「私の前で、そのふざけた格好をしていられると思わないことね」
 彼女の背後に立ったくねくねが体をくねらせる。蜘蛛糸を吐きだす糸で自身の体を空中に張り付け、その中で悶えるようにくねくねとくねる――否、くねくねの行動に意味を見出してはいけない。「わからない方がいい」。これがくねくねの逸話につけられた「理解すると発狂する」物語の力であるからだ。
 華凛がそのくねくねを銀髪をなびかせて斬り払おうとしたとき、彼女の背後でざあ、と音が鳴った。咄嗟そちらを振り向いた華凜は眉根を寄せる。
 くねくねが。
――大量の、蜘蛛糸を吐きだす蜘蛛の腹部と、蜘蛛脚を生やしたくねくねたちが、学園のグラウンドの無機物――すなわち、砂の一粒一粒から生まれ出でてはその身をくねらせていた。
「ふざけないで、冗談じゃない」
 華凜はまず初めに空中に自らの身を張り付けていたくねくねを横に両断した。蜘蛛糸で自らの体を縛ったくねくねは華凜の剣から逃れることも出来ずに切って捨てられる。そしてその勢いのまま、華凜は空中に飛び上がり、大地で身をくねらせるくねくねに対して指先を突きつけた。
「消え去りなさい、塵も残らず……!!」
 【ジャッジメント・クルセイド】。華凛の白い指先を突き付けられたくねくねたちが、天から投げつけられた一条のましろき光によって焼き尽くされ、悶えながら消えていく。
それでもまだグラウンドには土蜘蛛化したくねくねたちが残っている。華凜は剣を構え、夜の闇を駆けるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヴィヴィ・ジーヴ(サポート)
キマイラの力持ち×精霊術士、15歳の女。
名前はヴィヴィ、一人称は自分の名前でビビ。表記はどちらでも。

服の下はフクロウ。
腕はハーピー(鳥の羽)、器用な作業は少しだけ苦手。
「あまりお手手は見ないでね、女の子の秘密よ。」

《力持ち》
素早いの、苦手。お目目くらくらする。一撃ドーン、が得意よ。

《精霊術士》
困った時は精霊さんに聞く!

《好き》
美味しいもの、食べる事、大好き!
あとね、ビビ、空中浮遊でふよふよするの好きよ。

◆集団戦
沢山いるなら、ビビ、得意かも。
ひゅ~ってお空飛んで行ってね、急降下で、ドーンっ!
怪力の技能を足に溜めて、着地のついでに足場も割っちゃおう。
鹿の足で蹴り飛ばしたり、ぼんぼん投げたりするよ。



●少女は逸話を知らず、狂気もまた知らない
「おてつだいに、きたよ!」
 ヴィヴィ・ジーヴ(いつも誰かのお手伝い・f22502)はふわりと空から舞い降りて、今も戦う他の猟兵たちに笑顔で言った。
「あいつらを、たおせばいいんだね!わかった!」
 ヴィヴィはこのシルバーレインで過去に起こった、土蜘蛛の女王と銀誓館学園の能力者たちの戦いを知らない。ただ、お手伝いに来ただけだ。
 ヴィヴィは自らが立ち向かう相手の、怪異としての逸話を知らない。くねくねという呼称も知らないだろう。
くねくねは本来、田舎などの田んぼで見られる怪異だ。インターネット上の匿名掲示板に書き込まれた怪談が初出のものであるから、生まれもずっと新しい。くねくねは普段、遠目から発見される。なんだかわからない、何か遠くでくねくねしているもの――そうやって「語り手」の目には見える。そして、それを望遠鏡などで近くで見てしまったものが、発狂に到る。あるものは「沸騰した薬缶の様な音を立てて叫び出し」、あるものは「正体がわかった。でも、わからない方がいい」と「語り手」に言い聞かせて終わる。それがなんであるのか、考察した者はいる。けれど確かめた者はいない。この怪異は、その正体を理解してしまうと発狂に至ってしまう存在であるからだ。
 ヴィヴィにはそんなことはわからない。ただ、くねくねとした何かが、蜘蛛の脚と蜘蛛の糸を吐く腹部をつけてくねっているようにしか理解できない。理解できないのはヴィヴィにとって幸いであった。
くねくねと体をくねらせるくねくねたちは、確実に狂気の波動を発し、その波動を受けるヴィヴィから理性を奪っている。今は夜、場所は暗闇であるからその威力も三倍だ。けれどヴィヴィはもとより純粋な存在である。理性を奪われたとて、凶行に及ぶことはない――ただ、自分が何をすればいいのか、わからなくなっただけだった。
「あれ? あれあれあれ? ビビ、えーっと……どうすればよかったのかな……」
 わからなくなったときは、精霊さんに聞く。ビビの体に根付いた習慣は理性をはるかに凌駕する。精霊はヴィヴィに示した。目の前のオブリビオンたちを、たおしなさいと。
「うん!わかったよ!精霊さん、ありがとう!……こんなにたくさんいるなら、ビビ、得意かも!」
 ふわりと空に舞い上がり、グラウンドに急降下する。ドォンッ!!大きな音が立ち、その足の怪力でグラウンドが割れる。くねくねのいくらかはそのグラウンドの裂け目に落ちて崩れて消えた。そのままヴィヴィは着地点であるくねくねの群れの中で、鹿の脚でくねくねを蹴り飛ばす。
「しあげは、これー!!」
 蹄の先をライオンの頭部に変換する【ガチキマイラ】がくねくねたちに噛みつき、千切り、くねることも出来ないほどに細かく刻んでいく。その顎の力は非常に強い。ヴィヴィの持つ怪力は並の猟兵のユーベルコードで再現しようとしても及ばないほどの強さを有していた。ライオンの噛みつきはヴィヴィを癒す。くねくねたちに齎された理性の減少も元に戻り、ヴィヴィはめいっぱいの「おてつだい」をして――くねくねたちを倒していくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

マグラ・ユメノミヤ(サポート)
「木戸銭は結構――貴方がたの苦痛と骸さえ頂ければ、十分ですから」
◆口調
・一人称は私、二人称は貴方。持って回ったような物言いで、敵にさえ敬語を用いるものの内容は悪辣
◆癖・習性
・コワモテに反してぬいぐるみや人形を好む
・苦痛を受ける度に気分が高まる性癖
◆行動傾向
・妻と部下をオブリビオンに殺された悲しみから生命の埒外に到達した悲しみの猟兵。胸中に渦巻くのは、復讐心と愛する者を護れなかった罪悪感……
・見えざる魔力のからくり糸で、凶器を仕込んだ球体関節人形を自在に操ってあらゆる試練に挑む。ダークセイヴァーを出自とするだけあって、そのスタイルは冷徹で老獪
・死霊術士であることから、魔導にもいちおう通暁している



●狂気に対抗しうるは、果たして苦痛か
「さあて、それでは貴方様方の御命、頂戴と行きますかな――」
 マグラ・ユメノミヤ(堂巡魔眩の人形師・f35119)は、先の猟兵との戦いによって数を減らしたくねくねの前に進み出ると、十指を前に出す。そこに見えざる魔力のからくり糸で繋がるは人形の少女。名前は「ルーチェ」。処刑人形「ルーチェ」である。
 ダークセイヴァーを出自とするマグラはくねくねの逸話を知らない。同じ田舎の畑であっても、ダークセイヴァーの世界、その第三層にあってはくねくねのような怪異は生まれようがないだろう。畑の真ん中に立ち、くねくねしているさまを見せ、そしてそれを「近距離で見て」「なんであるかを理解した者を」「発狂に追い込む」怪異などは。
 マグラを前にしても、くねくねたちはくねくねと体をくねらせるばかり。それに対してマグラは先制攻撃に出た。
「さあ《ルーチェ》、お前のとっておきのダンスで、切り刻んでおやり」
 処刑人形が躍る。体内に多くの処刑器具が仕込まれた処刑人形《ルーチェ》が夜闇の下で踊れば、くねくねたちが切り刻まれる。もう二度と奇怪な動きなど出来ないように微塵に刻んでやれば、いっとう体の大きなくねくねが前に出て蜘蛛脚を振るった。それを華麗なターンで避けて、処刑人形はその体に鋏を入れる。ばっさりと切られたくねくねはそのまま消滅したが、マグラの元にはくねくねたちが身をくねらせながら蜘蛛脚と糸とで迫りくる。
「ふむ、その奇怪な挙動には意味があると見受けました。この私と「糸」で勝負いたしますかな?」
 くねくねの予備動作を見切ったマグラはルーチェを操る傍ら、魔糸ウィアード・ワイヤードを張り巡らせる。魔力を伝達する特殊金属を織り込まれた鋼糸は、ルーチェが踊り狂う度にくねくねの体を削ぎ落としていく。追撃を掛けるように、くねくねはルーチェによって切り刻まれた。
「ああ、ああ、それにしても歯痒い!貴方様方が与えてくださるのは、痛みではなく狂気だとは!ならばこちらも凶器を持ってお返しするのみかと……!」
 マグラが操るルーチェはうやうやしくカーテシーをする。それと同時に巨大な処刑人形がくねくねの背後から現れ、その上体を晒した。その処刑人形の名は《少女地獄》。その内部に閉じ込められたくねくねに、無数の返しつきの針山地獄が突き刺さる――!!
「人はみな「棘」を持つ――多く、するどく、死に至らしめるまでに――自らの内側に備え、そして己を傷つけるように……貴方様のごとき肉体構造であっても、この苦しみから逃れられますかな」
 それは、ひとつの皮肉であった。くねくねがただのくねくねのままであったなら、あるいはこの【処刑器具「少女地獄」(エクスキューション・メイデン・インフェルノ)】の棘などはすり抜けてしまっていたかもしれない。けれど、ここにいるのはただのくねくねでなく、土蜘蛛化オブリビオンとなった土蜘蛛の眷属。土蜘蛛化した部位が、蜘蛛脚が、蜘蛛糸を吐きだす蜘蛛の腹部が、針山から逃れられない!
最後に残ったくねくねが少女地獄の内部から吐き出され、斃れ、大量の砂に変わっていく。
 マグラは背を向けた。
「さて、木戸銭は結構にございます。貴方様方の苦痛と骸、確かに頂戴いたしました――」

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『土蜘蛛の女王『国見・眞由璃』』

POW   :    眞由璃紅蓮撃
【右腕に装備した「赤手」】が命中した部位に【凝縮した精気】を流し込み、部位を爆破、もしくはレベル秒間操作する(抵抗は可能)。
SPD   :    疑似式「無限繁栄」
自身の【精気】を代償に、1〜12体の【土蜘蛛化オブリビオン】を召喚する。戦闘力は高いが、召喚数に応じた量の代償が必要。
WIZ   :    土蜘蛛禁縛陣
【指先から放つ強靭な蜘蛛糸】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
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 女王の眷属――土蜘蛛化オブリビオンを倒した猟兵たちの耳に、ぱち、ぱちと拍手の音が聞こえてくる。
 いつからか、この戦いは土蜘蛛の女王「国見・眞由璃」によって見られていた。
 
「見事でした」

「彼らを倒したあなた達の実力を私は認めましょう。――あなた達と、交渉を行いたく思います」

 女王は言う。この土蜘蛛の檻は、まだまだ大きくすることが可能だと。
勿論、その前に女王を討ってしまえばそれを阻止することが出来る、しかし。
「今のままの規模では、精気を吸い尽くされて死んでしまう者も出ましょう。ですが、規模の大きくなって、内部の住民を増やした土蜘蛛の檻の中では、誰も死にません。たくさんの人間から少しずつ精気を吸収することで、住民を捕食して命を奪う必要はなくなるのです」
 今は檻の中の住民から精気を奪い、殺して食らうことでしか配下の土蜘蛛たちを養うことが出来ない。
 けれど、猟兵たちが女王の行為を見逃すのならば、檻はもっと大きくなる。
 大きくなった檻の中でならば、多くの住民から少しずつ精気を奪うことで住民を殺さずにしておくことができるのだ、と。
「勿論、猟兵の皆さま方にも利益はあります」
 眞由璃が檻を大きくすることを見逃すのならば――それは、猟兵と土蜘蛛たちの一大勢力との同盟関係を築くことが可能だ。
「同盟関係にある限り、皆様の任意の時に我が一族は皆さまに助力いたしましょう」

 いつでも好きな時に、土蜘蛛たちの助力を得ることが出来る。この「檻」が広大化することを、見逃すのならば。
 
 眞由璃と同盟を組むか。今ここで、眞由璃を殲滅するか。
 猟兵たちは、どちらを選ぶのか――
========================================
第三章 ボス「土蜘蛛の女王『国見・眞由璃』」が現れました。

 おめでとうございます。猟兵たちの尽力により土蜘蛛化オブリビオンは退けられ、土蜘蛛の女王国見・眞由璃は姿を現しました。
 以下に詳細を記します。
 
 国見・眞由璃は戦闘を望んではいません。猟兵との交渉を望んでいます。
 眞由璃の要求は「土蜘蛛の檻、その広大化と、内部の住民を檻の中に閉じ込め記憶操作し続ける事を見逃すこと」です。
 猟兵がこの要求を受諾すれば、代わりに眞由璃は「それによって膨大に増えた土蜘蛛の一族の力を、女王の眞由璃自身の力も含めて猟兵に貸し出す」ことを約束します。
 眞由璃、および彼女の下に生み出される土蜘蛛の軍団と【同盟】を組みますか?
 それとも、ここで国見・眞由璃を【殲滅】しますか?
 
 プレイング冒頭に必ず【同盟】か【殲滅】かを明記してください。
 ※第三章がサポートプレイングを必要とする形になった場合、サポートプレイングは【殲滅】派のものとして扱います。
 
 「国見・眞由璃と同盟を締結したい場合――」
 プレイング冒頭に【同盟】と記入したうえで、その理由をプレイングに明記してください。
 
 「国見・眞由璃と戦う場合――」
 プレイング冒頭に【殲滅】と記入したうえで、戦闘プレイングを行ってください。
 眞由璃との戦闘になった場合、猟兵が例えユーベルコードを使用せずに武器のみで攻撃を行っても眞由璃は赤手と蜘蛛糸を用いることが可能です。棒立ち・やられっぱなしにはなりません。
 
 「戦場について」
 引き続き夜の学園グラウンドとなります。
 戦闘の結果、ひび割れなどが出来ていますが、それ以外は通常の夜のグラウンドと変わりありません。屋外の為空中戦も可能です。
 学園内の人間はすべて宿舎・寮内で蜘蛛糸の繭の中で眠っているため、邪魔をするものは一切存在しません。
 グラウンドにあるものを使用したい場合は、「使えるものは何でも使う」といった曖昧な表現ではなく、「何を」「どう使うか」明記してください。
 
 第三章のプレイング受付開始は4/27(水)朝8:31からとなります。
 時間帯によっては上記タグやマスターページに受付中の文字がないことがありますが、時間を過ぎていればプレイングを送ってくださって構いません。
 マスターページを一読したうえでプレイングを送信してください。
 
 それでは、悔いのない選択を。
酒井森・興和
【同盟】
国見の女王様…(畏怖と敬意から頭を下げ)
初めてお目にかかります
僕は奥高野陣ヶ峰に棲んだ一派の生き残り
鋏角衆の酒井森と申します
葛城戦では銀誓館に降り生き延びました

単刀直入に言って
僕は女王や仔達と戦いたく無いし
何度も同胞の討たれる姿を見たくない
でもこの搾取を続ければ害有る者として巣ごと排除されてしまう
銀誓館には敵勢の予知者が居て…
同じく猟兵にも
あの予見から逃れるのは至難だ
だから僕は
失礼を承知で猟兵や人間に優位な条件での同盟を女王にお願いしたい
檻を拡げても扶育する仔の数は抑える
餌とする人間も死なせずその為にも物資調達ほか外界と完全に遮断する事は控え
仔達にも獣等の摂取にも慣れされる
…僕の思いつく妥協案はこのような物ですが

銀誓館入り後は僕も童たちも人を喰わずに過ごせました
慎重に息を潜め猟兵と繋がりを得る事で女王や仔も変わるかも知れません

同胞繁栄を至上とされる女王には酷い提案と承知してますし
他の案があれば折衷でも良い

結界や葛城戦で皆死んでしまった
自決を望まぬ限りあなたには生きて欲しいのです



●謁見
「国見の、女王様……」
 興和の心を駆け巡るのは、女王国見・眞由璃への畏怖。そして敬意。鋏角衆である興和にとっては、土蜘蛛の女王という存在は――そう、一族全ての母と呼んでも同じものかもしれなかった。頭を下げ、緊張に震える体を叱咤して口を開く。
「初めてお目にかかります。僕は奥高野陣ヶ峰に棲んだ一派の生き残り、鋏角衆の酒井森と申します。葛城戦では銀誓館に降り生き延びました」
 眞由璃は興和の言葉を聞いて、玲瓏に微笑んだ。
「そうですか。あなたが生き永らえてくださったこと、私も嬉しく思います」
 かつて、葛城山の戦いで。銀誓館学園は来訪者という存在を知らぬままに土蜘蛛の一族を滅ぼした。ゴーストと区別のつかないままに。土蜘蛛たちがそれを知ったのは、もはや後戻りのできない状況。眞由璃が急いで送った和睦の使者も、戦乱の中で討たれ……そして、銀誓館学園の能力者との一騎打ちを続けて、かつての眞由璃は絶命した。彼女の最後の言葉が、興和たちの命を救ったと言っていい。
 ――願わくば、遺恨を捨て。私の子供たちに、寛大な処置を。
「単刀直入に言えば。僕は女王や蜘蛛童の仔たちと戦いたくない。……何度も、同胞の討たれる姿を見たくないんです。……でも、この搾取を続ければ、害有る者として巣ごと排除されてしまう……!」
 かつていた銀誓館の運命予報士は、消滅しかけていた世界結界がオブリビオン化することによってその能力を失った。けれど、猟兵たちにはグリモア猟兵が存在する。
「あの予見から逃れるのは、至難です……だから、僕は――失礼を承知で申し上げます。猟兵や人間に優位な条件での同盟を、女王にお願いしたいのです」
「猟兵たち、そして人間に優位な同盟、ですか……あなたには何か、案があるのですか?」
「そう、ですね……まず。檻を広げても扶育する仔の数は抑えること。餌とする人間を死なせないこと」
「人間を死なせないために、檻を広げる必要があるのです。それは、わかっていますね?」
「それでも、育てる仔の数を制限する事は可能ではありませんか」
「……不可能ではありません」
 眞由璃の返事を聞いて、興和は言葉を続ける。
「人間を死なせないためにも……物資調達の他、外界と完全に遮断することは控えて、仔達にも人間でなく獣などの摂取にも慣れさせる……僕の思いつく妥協案は、このような物ですが……」
 興和の言葉に、眞由璃は考え込むような仕草を見せた。恐らくは興和の提案が実現可能なものであるかを考えているのであろう。
「銀誓館に入った後は、僕も蜘蛛童たちも人を喰わずに過ごせました……慎重に息を潜め、猟兵と繋がりを得ることで!女王や土蜘蛛の仔たちも、変わるかもしれません……!」
「銀誓館学園に所属したお前たちが人を喰らわずに済んだのは、ひとえに彼らの規模、そして集団としての戦力が十分なまでに大きかったからです。銀誓館学園と同等の規模を得ようとすれば、とても広大な檻を用意しなくてはならないこととなるでしょう」
 ――ですが、と、女王は興和の目を見て言った。
「もしもそれが可能となれば。そう、例えば食糧のみならず、娯楽や情報源までも人間を満たすことが可能なほどの物資を内部で生み出せるほどに広大な規模の檻を紡ぐことが可能となれば……或いは……」
 眞由璃は考えている。興和の提案が実行可能かどうかを、じっくりと吟味している。興和の言葉は、確かに女王に届いているのだ。
 興和は更に言葉を重ねた。
「同胞の繁栄を至上とされる女王には酷い提案と承知しています。他に、良い案があれば……折衷しても構いません」
 興和は予兆を見て知っている。オブリビオンとして蘇った眞由璃のうちのひとりが、言った言葉を。
『私達は人類の捕食者。故に、彼らの行った一斉殲滅は最善手。ならば私は、彼らにただ一言「見事である」と告げるべきでした。己の未熟を恥じるばかりです』
『土蜘蛛の女王として、私は「新たな子供達」を育てます。勿論、それが人類を脅かすと知りながら』
『無闇に増殖する人類の「捕食者」……それが本来の、土蜘蛛の使命。
 私は今度こそ使命を果たし、そして、生き延びてみせます。』
 そう、予兆を見たからこそ、興和は思うのだ。女王に死んでほしくはない、と。
「――結界や葛城山で、みんな、皆死んでしまった……!自決を望まぬ限り、あなたには生きていて欲しいのです……!」
 そう言ってもう一度頭を下げる興和。
彼に向って、眞由璃は女王然として美しく微笑んでみせた。
「ありがとうございます。酒井森。あなたの様な鋏角衆と言葉を交わせたこと、今ひとたびの生を得た私の幸せです」

※トミーウォーカーより……戦闘と区別をつけるため、眞由璃の交渉に応じた場合は、結果を失敗でカウントしています。シナリオ失敗すると、眞由璃の檻はそのまま残ります。

失敗 🔴​🔴​🔴​

木々水・サライ
【黄昏】【殲滅】
同盟、ね。良いようには聞こえるが、事が悪化してからじゃあ遅いんだよ。
もう一度何かが起こってしまっては沽券に関わるんでな。
っつーことで……あ、ごめんちょっと待ってね。ホントごめん。

おいそこのクソ親父とカス従兄弟!
なんで馬と精霊猫で突入してんだよ空気読めよバカ!
今こっちシリアスしてんのが見えねぇのか!!
いや俺の分の煎餅どうしてくれてんの!?

……親父、ヴィオ。
目の前の女王は殲滅の方向でいく。
俺はやっぱ、日常は誰の手も入ってない日常のままであってほしいんだわ。

UC【十二刺の白黒人形】で俺が女王ぶっ叩く。
出来れば親父の攻撃と交互に繰り出せればいいが、召喚された奴が邪魔なら俺が叩く。


金宮・燦斗
【黄昏】【殲滅】
(馬のクラージュに乗って颯爽と登場)
あ、いたいた~。クラージュの勘、ホント頼りになりますねぇ。
置いていかれたから私達はちょっとだけ家でお煎餅食べてましたよ。

シリアス? はて、私はいつもシリアスしてますが……?
そこの女王を叩き伏せるために、黒鉄刀をきっちり用意してきましたし。

殲滅の方向なのは最初から分かってましたよ。ええ。
日常を何よりも慮る貴方のことですからね。

UC【生まれ出るは虚無の仔】用意。
サライ、私、ヴィオさんの速度を3倍に。
女王、召喚されたオブリビオンの速度を10分の1に。
その速度を生かして、私は黒鉄刀二刀流で攻撃を。

子がいるのは女王、貴方だけの特権ではないのですよ。


ヴィオット・シュトルツァー
【黄昏】【殲滅】
(UC【精霊猫に乗っていざゆかん!】使用)
おー、すげ。燦斗さんのお馬さん結構賢いねんなぁ。
グラナートも見習えよー?『ごあぁあ~』
あ、お煎餅はサライの分無いからな。すまんな、お前の分俺が全部食った。

シリアス? 俺もいつもシリアスしてるで。
女王についてはよーわからんけど、どうせ殴れば勝ちなんやろ?

まあ、サライのことやし女子校の子達が可愛いとかそういう理由なんやろ。
だいたい想像つくわ、そんなん。

と、グラナートと一緒に呼び出されたオブリビオン蹴散らそか。
蹴りで吹っ飛んでくれればええけど、流石に女王の配下やしすぐ起きそうやな。
だがデb……巨躯の猫はナメたらアカンで。
下手すっと死ぬぞ!



●怪奇!夜のグラウンドを疾駆するUMA
「……同盟、ね」
 サライは後頭部を掻きながら、女王の言葉をじっと聞いていた。そしてややあってから、その口を開く。
「聞こえはいいが、事が悪化してからじゃあ遅いんだよ。もう一度何かが起こってしまってからじゃあ、沽券に関わるんでな……」
 パカラッパカラッ。
「――では、あなたは同盟を拒否するというのですか?」
「ああ」
 パカラッパカラッパカラッ。
「私はあなたたちとの約束を違えはしません。嘘も、騙すつもりも、約束を反故にする気も一切ない。あなたたちは私の子供たち、土蜘蛛の一族の助力を好きな時に得ることが出来る。それは、女王である私自身も含みます。それでもあなたは、同盟を望まない、と?」
 パカラッパカラッパカラッパカラッパカラッパカラッ。
「ああ……うーんと、ごめん、ちょっと待ってね」
「はい」
「ホントごめん。……おいそこのクソ親父とカス従兄弟ォ!!」
 サライが後ろを向いて怒鳴りつける。その先には愛馬である黒毛のクラージュに乗った金宮・燦斗(《夕焼けの殺人鬼》[MörderAbendrot]・f29268)と、自らのユーベルコード【精霊猫に乗っていざゆかん!(グロース・ガイスト・カッツェ)】によって呼び出した精霊猫・グラナートに騎乗したヴィオット・シュトルツァー(時の先駆者・f35909)がいた。燦斗はサライの「親父」であって、ヴィオットはサライの従兄弟である。
「あ、いたいた~。クラージュの勘はホント頼りになりますねえ!」
「おー、すげ。燦斗さんのお馬さんホンマに賢いねんなぁ。グラナートも見習えよー?」
『ごあぁあ~』
「お前らア!お前らお前らお前らぁ!なんで馬と精霊猫で突入してんだよ空気読めよバカ!パカラッパカラッうるせーんだよ!」
「えー、だって置いていかれたんで……私たちはちょっとだけ家でお煎餅食べてましたよ」
「あ、お煎餅はサライの分無いからな。すまんな、お前の分俺が全部食った」
 話を聞いてたグリモア猟兵はちょっと泣きたくなった。置いていかれたってどういうことだろう。自分、ちゃんとここで転送の門作ってるのに。勿論グリモア猟兵には預かり知らないことだが、サライたちの本拠地はUDCアースである。どうやってこのシルバーレインの、しかもピンポイントにこの学園のグラウンドまで馬で来たんだろうなー? 遅くなったならわかるんだけど、置いて行かれたって状況は発生しない筈なんだけどな? 
「いや俺の分の煎餅どうしてくれてんの!? じゃねェよバーカぁ!!今こっちシリアスしてんのが見えねぇのか!!」
 空気をぶち壊して入ってきたことを怒るサライ。決してお煎餅が食べられたことに怒ってるわけではない。多分きっとメイビー。
そんな「息子」と「従兄弟」に対して、燦斗は普段通りの笑顔で、そしてヴィオットは憮然とした表情で、返した。
「シリアス? はて、私はいつもシリアスしてますが……?」
「シリアス? 俺もいつもシリアスしとるで」
 はいダウト。シリアスしてる奴は馬とか猫でこんなところ来ねーんだわ。
「失礼な。そこの女王を叩き伏せるために、黒鉄刀をしっかりと用意してきましたし」
「女王についてはよーわからんけど、どうせ殴れば勝ちなんやろ?」
「ヴィオお前お前お前、お前お前お前!!」
「ちょちょちょちょちょまままままま、お煎餅口から戻る戻る戻る」
『ごああぁ~』
 従兄弟の体をがっくんがっくん揺さぶるサライ。ほんとにそれは真面目に交渉のテーブルを設けてくれた女王に対して死ぬほど失礼なんじゃあないだろうか。
 
 ひとしきりヴィオットを揺さぶったあと、場を仕切りなおすようにサライは言った。
「……親父、ヴィオ。目の前の女王は殲滅の方向でいく。……俺はやっぱ、日常は誰の手も入ってない日常のままであってほしいんだわ」
「殲滅の方向なのは最初から分かってましたよ。ええ。日常を何よりも慮る貴方のことですからね」
「まあ、サライのことやし女子校の子達が可愛いとかそういう理由なんやろ。だいたい想像つくわ、そんなん」
「ちちちちちっげーよ!?」
 真っ赤になって否定するサライ。入学したての中学一年生の子たちはほぼほぼ小学生でみんな可愛かったです。
そうして燦斗は両の手に剣を携える。ヴィオットは精霊猫に乗ったまま、サライはもう一度土蜘蛛の女王へと向き直った。
「話は終わりましたか」
「ああ、待っててくれてありがとよ。……ほんとにありがとよ!!ま、そんな訳でだ。交渉は決裂だぜ、女王。少なくともここにいる俺たち三人はアンタを、殲滅するつもりだぜ」
「わかりました。ならば土蜘蛛一族を束ねる女王として――誠意を尽くして、相手になりましょう」
 土蜘蛛の女王、国見・眞由璃がそう言うや否や。彼女の存在が膨れ上がる――否、それは彼女の氣。それを吸収して顕現するは、十二体の土蜘蛛化オブリビオン。先ほどのくねくねに蜘蛛の一部が生えたようなものではなく、巨大な蜘蛛の形をしたものだ。これぞ「土蜘蛛の女王」国見・眞由璃の【疑似式「無限繁栄」】である――!
「はっ、12体か!ちょうど同じ数じゃあねーか!だったら、こっちはその四倍と行くか……!」
 十二色、十二振りの刃をサライは宙に投げ上げ、そしてその全てが平等に四度ずつ土蜘蛛化オブリビオンを斬り裂いた。もう一度投げ上げた刃は、次は女王へと向かっていく。
「“さあ、私の"弟"達。楽しい楽しい玩具がそこを通りますよ。私に仇なす者は掴んで、私に協力する者を助けなさい”――」
 燦斗が歌うように言えば、魔法陣から現れるのは無数の「弟たち」の亡霊。亡霊は土蜘蛛化オブリビオンと女王の足とを掴んで、その移動を阻害する。
「ほな、俺は雑魚の群れを蹴散らすとしよか――デb……巨躯の猫はナメたらアカンで。
下手すっと死ぬぞ!」
 ヴィオットを乗せた精霊猫・グラナートが縦横無尽に走り回る、デb巨躯の猫と侮るなかれ、燦斗のユーベルコード【生まれ出るは虚無の仔(コピーチルドレン・アンフィニ)】によって移動速度は三倍にされており、逆に土蜘蛛化オブリビオンたちは十分の一にされている。躱せない。躱せないままに猫は土蜘蛛化オブリビオンたちにじゃれつくように突進を繰り返し、その爪で引き裂いていく。
「オラ、オラオラオラァ!!全部喰らったら、死ぬぜぇっ!!」
 十二振りの刃を二振りずつ手にし、眞由璃を斬りつけていくサライ。そこに燦斗の二振りの黒鉄刀の斬撃が混じる。勿論燦斗のユーベルコードによって、サライと燦斗の速度は三倍早くなっている。紅玉刀の赤い斬撃が眞由璃の胸を斬り裂いた。
「私は負けません。私は国見・眞由璃。今ひとたびの生を得た、土蜘蛛の女王なれば、仔らを繫栄させ、今度こそ、次代の女王を生むまでは……!」
 右腕に装着した巨大な赤手がサライと燦斗の刃を防ぎ、そしてそれが振り回されるたびに彼らの肌に傷をつけていく。
「ちっ、こいつは……」
「ええ、生半可ではいかない相手のようですね……!」
「――ヴィオ!眷属たちはまだ片付かねえのか!」
「もうちょっとや!」
 土蜘蛛化オブリビオンたちを相手に突進を繰り返すグラナート。オブリビオンたちの数は充分に減っている。それでも、まだあと少しが足りない。
ヴィオットはグラナートに乗る手を、サライと燦斗は刃を握る手を、それぞれに強く握りしめるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

神楽坂・神楽
【殲滅】
人の捕食者たる土蜘蛛、かつ、世界の敵たるオブリビオン
その貴方達を見逃して得られるものが、数人の猟兵に滅ぼされる程度の戦力ですか?
もし私達の力を見誤っていたというのなら、情報収集能力も低すぎますね

最初に敵対して繭を作り出したこと
敗戦に傾いてから同盟を申し出たこと
全てがズレています

貴方の心も、貴方達の力も、何ら信頼には値しません
禍根はここで絶たせてもらいます

いえ――
私が楽しめるくらいの力があることは期待してもいいでしょうか?

仙術による縮地の歩法で一息に接近
赤手を掌底で弾き飛ばし、一撃を打ち込みます

今回、貴方は骸の海から蘇った
二度と繰り返すことのないよう、心も体もこの世界の《気》に還します



●そして、決戦は終焉へ
「――貴方は言いました。自分たち土蜘蛛は、『人類の「捕食者」』だと」
 神楽坂・神楽(武術指導員・f21330)は言う。彼女の見た予兆の中で、「土蜘蛛の女王」国見・眞由璃は確かにそう言っていた。無闇に繁殖する人類の捕食者こそが、それが本来の土蜘蛛の使命であると。
「人の捕食者たる土蜘蛛であり、かつ、世界の敵たるオブリビオン――その貴方を見逃して得られるものが、数人の猟兵に滅ぼされる程度の戦力ですか?」
 もし私達の力を見誤っていたというのなら、情報収集能力も低すぎますね。
「あなたの仰りたいことは、よくわかりました」
 眞由璃とてすぐに理解した。神楽が土蜘蛛たちとの同盟など望んでいないことを。しかし、それでも彼女は女王だった。つとめて冷静に、神楽の挑発には乗らぬように、言葉を返す。何せ交渉の席を設けたのは、眞由璃自身であるのだから。
「確かに今は「その程度」の戦力に思えるかもしれません。ですが檻を広大化し、そして土蜘蛛たちを、私の子供たちを繁殖させれば――無限繁栄を行えずとも、時間をかければ子供たちはどこまでも増やすことが出来ます。そして、檻さえ広がればもう内部の人間を殺すこともないということはお約束できます。……子供たちが育ちさえすれば、それこそ猟兵の力をもってしても容易くは破れぬほどの一大勢力を築くことが可能です。そうなれば、土蜘蛛たちは女王である私をも含めたすべての戦力を猟兵の皆さんに提供できます。あなたの仰る情報収集の能力も、格段に上昇するでしょう」
 しかし、眞由璃のその言葉も、神楽の心を揺らすには値しない。
「最初に敵対して繭を作り出したこと。敗戦に傾いてから同盟を申し出たこと。……全てがズレています」
「それは視点の違いでは? 私の呼び出した眷属を倒したあなた方であるからこそ、私は同盟を組むに相応しいと見定めたのですが……」
「――もう結構」
 神楽は女王の言葉を、全て拒絶するかのようにぴしゃりと切って捨てる。それはまさに、聞く耳を持たないと言った様に――否。神楽にとってはオブリビオンとは全て倒すべき敵であり、オブリビオンとなった眞由璃の言葉など最初から、一言も聞くに値しなかったのかもしれないが。
「貴方の心も、貴方達の力も、何ら信頼には値しません。――禍根はここで、断たせてもらいます」
 その言葉に眞由璃は悲しそうな顔をした。それすらも、神楽には見えていなかったかもしれない。
「いえ、ひとつ……私が楽しめるくらいの力があることは、期待してもいいでしょうか?」
「……そうですか。残念ですが、交渉は決裂ですね。ならば私は女王らしく、子供たちの敵を排除する、その責務を全うすると致しましょう」
 眞由璃の右腕の巨大な腕――赤手が振りかざされるその前に、仙術を駆使した縮地でもって神楽は一気にその眼前へと入り込む。掌底でもって赤手を弾き飛ばさんとする――だが、ここで神楽はひとつ手段を間違えた。赤手は鎧にして籠手にして爪である。鎧であるからには眞由璃の体にしっかりと結びつけられている。眞由璃の体から赤手を取り外したかったならば、それこそ彼女の肩から先を斬り落とすくらいはしてもよかったのだ。
 結果、掌底は赤手を揺らすに留まった。その隙をついて眞由璃は赤手から神楽の体へと凝縮した精気を流し込み、内部から爆裂させる。それこそが土蜘蛛が持つ、彼らが銀誓館に下った以降も猛威を振るった気魄攻撃技【紅蓮撃】である!
「く……っ!!」
 されど神楽とて並みの猟兵ではない。彼女の持つ仙術の力たるや、並の猟兵がユーベルコードを用いてようやく五分に持ち込めるだけの域に達している。仙術兵器の域に達した力と技は天地を揺るがし、彼女の絶技【全力技】は、その力を百二倍にまで膨れ上がらせる――そして。彼女が研鑽の末に磨き抜いたある技術は、素の状態でユーベルコードを用いても追いつけはしないほどに強大であった。すなわち、地形破壊の技術――神楽はそれを百二倍の威力で振るう!
「……!これはっ……!」
 グラウンドがひび割れ、裂ける。先の戦いの影響もあり、地面はまるで脆い砂糖菓子を崩すようにボロボロに割れていく。眞由璃の腕に取り付けられた赤手は、武器にして籠手にして鎧、故に重く、けれどそれこそ急の事態にあっては肩から斬り落としでもしない限りは外せない、神楽はそれを逆手に取る!
「今回、貴方は骸の海から蘇った――二度と繰り返すことのないよう、その心も体もこの世界の《気》に還します――!」
 今度こそ、今度こそ神楽は捕えた。足元を粉々に砕いて追い込み、装備する赤手の重さを逆手に取って――眞由璃の心臓へと、仙術にて強化した拳を、叩き込む!
「っ、あ、ああああ―――!!」
 心臓を突き破って注入した神楽の仙気が眞由璃の体内で暴れ狂い、彼女の肉体を破裂させていく。血と肉片とが飛び散り、しかしそれは春の夜の冷たい空気に紛れていく。
「ああ――そうですね……忘れていました……言わな、ければ……」
 ――見事であった、猟兵。
 その言葉を最後に、土蜘蛛の女王は沈黙する。既に五体は仙気によって破裂を繰り返し、口が利ける有様ではない。いずれその肉体は、大気に紛れて消えていく――

 『見事であった』――と。

 それがかつて葛城山の戦いで口に出来なかった、言葉。
 絶対的な勝者を讃える、それが土蜘蛛の女王の、最後の一言だった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年05月04日


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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト