舞えや舞え、煌めく音と共に~湧き上がるまま
●奏でる音に誘われて――モミジ
魔法のウサギ穴をくぐればそこは別の世界。ここは複数の小さな『世界』が繋がり合う不思議な迷宮、アリスラビリンス。
「はぁ……どうやったら帰れるのでしょう」
ひとりの『アリス』が切り株に座りため息をついていた。
彼女は袴と小振袖を合わせた服装をしており、後ろ髪が肩のあたりで斜めに揃えられている。
その切断された様な後ろ髪が、一種の特徴となっていた。
「はぁ……髪が元の長さに戻るのも、だいぶ先ですね……」
彼女は髪に触れると再びため息をひとつ。その姿は、諦めの空気を全身に纏っていた。
三度のため息とともに見上げると、そこには爽やかな冬晴れの空。
その青さに彼女が目を細めていると――。
「……音?」
リズムを刻んだ笛や弦の音がピーヒョロぽろろんと聞こえてくる。
音に誘われるまま、ふらりと彼女がやって来たのはちいさな野外ステージ。
周辺では、手足が生えた楽器たち――チェロ、三味線、リコーダーにほら貝と一貫性が見られない楽器たちがなにやら準備中だ。
「まあ、何をしているのですか?」
「音楽祭の準備だよ。ここは楽器の国だからね」
チェロが答えた。
しかし、チェロは相手が『アリス』だと知るや声を潜めて忠告を伝える。
「この国は、領主がオウガなんだ。キミは『アリス』なのだろう? 直ぐここを離れた方が良い」
ああ、しかしそれでも。人には抗いがたい思いというものがある。
「そのオウガさんは、この祭りには参加されるのですか?」
「気まぐれに顔を出すことはあるけれど、滅多にあることではないよ」
「でしたら! ちょっとだけ私も混ぜてくれませんか。だってこの世界に迷い込んでからというものの、まともに音や踊りを楽しめていなかったんだもの!」
その時の目の輝きは、好きなものをお預けされ続けた者に共通する、禁断症状に似た強い熱を帯びていた。
「私、モミジといいます。舞台の隅っこでも構いません! この音楽祭で、どうか踊らせてください!」
●まずは音楽祭に紛れ込もう
「来てくださり、ありがとうございます! アリスと呼ばれる方がオウガに襲撃されてしまう未来が視えました」
グリモア猟兵のユーノ・エスメラルダ(f10751)はグリモアベースに集まってくれた猟兵たちにぺこりとお辞儀をすると説明を開始した。
「場所は『アリスラビリンス』です。ここでは『アリス』と呼ばれる方がおり、元の記憶を失いながらも元の世界に帰る『扉』を探して旅をしているのですが……ここには、アリスを食べる『オウガ』というオブリビオンが存在します」
アリスラビリンスについて軽い説明を行うと、ユーノは続けてスケッチブックを取り出し説明のために絵を書き加え始める。
描かれたのは、二本足で立つ黒ウサギのオブリビオン。
「今回みなさんに向かってもらう『アリスラビリンス』の『音楽の国』は、いま、この『ノワール』というオブリビオンの支配下にあります。このオブリビオンは自己中心で尊大な性格で、加えて今回の個体は芸術を好む性質を持っているようです」
その特性を突くことができれば、戦いをより有利に運ぶことができそうだ。
続けて、ユーノは状況の説明へ移っていった。
「そして、現在の『アリス』の方の状況なのですが……」
描かれたのは、ステージと楽器……とても賑やかで、祭りの様な絵だった。
「この音楽の国では至る所で音楽が奏でられているのですが、『アリス』の方はその中のひとつのステージに居る様なのです。そこで彼女が踊ることで会場は盛り上がり、その熱気に誘われて『オウガ』がやって来るという形です」
猟兵の目的はオブリビオンの討伐――ならば。
「このステージに紛れ込んでオウガを待ち伏せて倒しましょう。そうしたら、オブリビオンも倒せて、『アリス』の方のこの国での安全も保障されて良い事尽くしになります!」
●オウガを倒してこの地に平穏を
「事前に解った内容はこれでぜんぶです。アリスの方を守るため。そしてこのオブリビオンを倒すために、皆さんの力を貸してください」
ユーノは説明に用いたスケッチブックを仕舞うと祈りと共に魔法陣を展開させていく。
この上に乗れば、目的の世界へ転移することができるだろう。
「ユーノは転移の発動と維持のため、みなさんへの同行はできません。どうかみなさまに幸運がありますように……」
ウノ アキラ
はじめましての方は初めまして。そしてこんにちわ。
クリスマスに先立って一足先に賑やかな雰囲気はいかがでしょう。ウノ アキラです。
このオープニングに興味を持っていただき、ありがとうございます。
●お得情報
執筆は主に土日になるので、プレイングの受け付けは主に【毎週木曜の8時30分から土曜の午後まで】になりますことをご了承ください。
他にもマスター紹介のページは一読頂けると文字数を少し節約できるかもしれません。
●依頼について
アリスラビリンスの依頼となります。
一章は冒険。二章がボス戦。
二章構成です。
一章は冒険です。
音楽祭が始まっており、その中でアリスが思い思いに踊って楽しんでいます。
猟兵たちは、この祭りに紛れ込んでオウガを待ち構えます。
何か準備をしておくのもアリかもしれません。
二章はボス戦です。
音楽に誘われてひょっこり現れます。
状況によって、猟兵に気付いていたり気づいていなかったりします。
感動する様な事が無ければ、『アリス』か猟兵のどちらかを目にするなり攻撃を開始するでしょう。
アリスは次のユーベルコードを会得しています。
【ダンスショウ・マスト・ゴー・オン】
【踊り】を披露した指定の全対象に【この踊りを見続けていたいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
第1章 冒険
『アリス・イン・ミュージックラビリンス』
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POW : パワフルな音楽で魅せつける
SPD : テクニカルな音楽で魅せつける
WIZ : パフォーマンスにこだわった音楽で魅せつける
👑7
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●ひとりの楽器の言葉
さあ、祭りだ祭り。
楽器たちのお祭りだ。
ステージへあがって、それぞれが得意な音を披露するお祭りだ。
おや旅人さんかな。
ステージは順番待ちさ、演奏するなら受付はあちらだよ。
もちろんステージに上がらず聞くだけでも良いし、彼女のように手前で踊ってみるのも、曲を彩ってとても素敵なことさ。
気まぐれな領主といういちまつの不安はあるけれど、仕方がない。
好きという気持ちは、止められないのだからね。
セシル・バーナード
&&&
同行:ミニー・ミムス
楽器の国か。もしかしたら、この子たちもここ出身かもしれないね。
Come on! My Orchestra! 奏鳴楽団を舞台に展開。
流麗なワルツを頼むよ。
さ、おいで、ミニー。プラチナちゃんも。
可愛いお嫁さんたちと一杯踊りたい。
「ダンス」技能で上手く二人をリードして、時折観客向けに「パフォーマンス」。
どうせ踊るならベッドの上がいいけど、それはいつでも出来るからね。
ステージの上では、二人にキスする程度にとどめるよ。
二人とも、楽しんでる? もっとノっていこう!
徐々にテンポを上げ、ぼくが二人の間を渡り歩くように踊る。よければ二人も仲良く踊ってみて。
最後はぼくが二人を抱きしめる!
ミニー・ミムス
「&&&」
同行:セシル・バーナード
団長さんと一緒に、ダンスでお祭りに参加するのです♪
あんまり踊ったことがないのですが、精いっぱい、ついていくように頑張ってみるのです!
上手さはないので、その分、こっそりとパフォーマンスにこだわったワルツになるように、細部を微調整して踊ってみるのです!
なるべく団長さんの足を踏まないように、慎重に、慎重に…。
わん、つー、わん、つー。
少しづつ、慣れてきたかもしれません!
なんだかプラチナちゃんという方もご一緒みたいなのですが、そちらとも仲良く踊っていきたいと思うのです♪
ぎこちないながらも、楽しんで、最後まで踊っていきたいと思います、です☆
雨倉・桜木
&
・現段階ではユーベルコードは未使用のため契約悪魔はいません。
「賑やかなお祭りは実に好ましいね、楽しいことは良いことだ。それならぼくはちょっと変わった曲を披露するとしようかな」
「そうだね、得意の三味線を披露するとしよう。セッションも大歓迎さ!」
周りの演奏者を誘い、賑やかしに徹します。アリスが音楽に合わせて踊るならば、時折、彼女とアイコンタクトを交わして踊りをひき立てる旋律を奏でます。
演出で桜を舞い散らせるなども行い、任務であることをうっかり忘れてしまいそうになるほど、祭に没頭してしまうかもしれません。
チシャ・フェルメス
&&&
セシルとミニーちゃんと合流出来るといいなぁ。
わぁ、楽しそうな音楽!
聴こえてくるワルツに合わせて自由におどります。
音楽の力ってフシギだね。
楽しい曲ならみんな笑顔になるし、勇ましい曲で勇気をもらえたり、
カミサマのセカイと、このセカイをつなげたりも出来るんだもん。
わ、わ、わ、曲が早くなってきた…?!
でもだいじょうぶ、『舞犧ノ巫女』はおどりも上手じゃなきゃいけないの!
曲が早くなったせいか、私の良くうたう『唄』に似てきたよ…?
ワルツの曲に合わせておどりながら、古語っぽく唄をつむいで盛り上げます。
『勧請唄』の古語の意味は全然分かってないから、それっぽく似せたデタラメのアドリブなんだけどね、えへっ。
暁・エリカ
&&&
祭りだ祭りだ
音楽の祭り…そういうのもあるのか、楽器が演奏とは愉快だ
ここはお祭り好きを呼ぼう、でませいでませい、こゃーんこゃーんと鳴けば何処からともなく現れる狐の大群
この呼び出した狐たちを会場のあちこちに放つよ、特に演奏したりはできないが飛んだり跳ねたり騒いだりして盛り上げてくれることだろう
祭り中の狐たちの様子は…ご飯をもらったり…日向ぼっこしてたり…遊んでたり…やんちゃしてたり…アリスの子と踊ったりする子もいるね…よし、概ね騒いでるな
オウガが来たり何かあったらもっと騒いで教えてくれるだろう
私はちょっと離れたいい感じの切り株とかで観てるよ
のんびりと鑑賞するのもいいものさ
マリオン・ライカート
&&&
・心情
人の忠告は聞いておくべきだとは思うけれど…
でも譲れない想いや信条も理解できるから難しいね
息抜きもまた生きる希望を生み出してくれるものだから仕方ないかな?
こうして猟兵が来たからにはどちらの想いも消させないよ
・行動
ボクも社交ダンスなら男性パートも女性パートも踊れない事は無いんだけれど…
こう言った場ではちょっと不適切かな?
それにボク自身、完全にリードできるほどの腕前じゃないからね
とりあえずボクはオウガへの布石を打っておこうかな
アリスか猟兵を目にすると襲ってくるみたいだから…
ボクは敢えて目に付きやすい最後尾に待機しておくよ
モミジ嬢の周りを固めるのが確実だけど、他の猟兵が近くにいてくれる筈さ
●楽器たちのお祭り会場
飛び入りのダンスを許容するくらいには緩い祭り。
ステージで演奏が始まっていても、会場には歓談をする者や飲み食いする者が多くいて、時にはステージ前に設置された小さな観客席から合い手的な演奏が入る事すらある。
演奏の邪魔をしなければOK的な雰囲気で、演奏すること自体に主眼が置かれている様でもあった。
それは、楽器たちの住むこの国らしい側面だ。
手足の生えた楽器たちは代わる代わるステージに上がっては、お辞儀をしたのち数分の曲を披露していった。
その傍にあるのは『アリス』のモミジの姿。
彼女は目を閉じて奏でられる曲を聞くと、リズムに合わせて体をゆらし、やがて曲調に沿った動きを始めていく。
水のように、風のように。羽根のように、ボールの様に。
動きは控えめで決して演奏者たちの前に立つことはないけれど、その動きは音を可視化して、見た者が旋律を目で楽しめる効果を生み出している。
音を聞くだけではなく、見る。
その彩りはプラスの相乗効果を生み出して、会場の全員を楽しませていた。
「音楽の祭り……そういうのもあるのか、楽器が演奏とは愉快だ」
会場を訪れた暁・エリカ(狐の賢者・f06763)は耳をぴこぴこ、顔はきょろきょろ。
音を聞いたりお茶や菓子を飲み食いする楽器たちと、ステージに上がり演奏を披露していく楽器たちの姿を珍しそうに見てまわる。
そんな会場をマリオン・ライカート(Noblesse Oblige・f20806)も見回っていた。
全体の見取りを軽く確認したマリオンはそのままステージ前の小さな観客席のさらに後方へと移動する。
そこは祭りの会場を見渡せる位置。
マリオンがステージ側を見ると、ステージの傍には生き生きと笑顔で身体を動かすモミジの姿がある。
「人の忠告は聞いておくべきだとは思うけれど……でも譲れない想いや信条も理解できるから難しいね。息抜きもまた生きる希望を生み出してくれるものだから仕方ないかな?」
そう呟くマリオンは、困ったような微笑みで彼女を見ていた。
(彼女はボクの事を覚えているだろうか)
マリオンは、かつての地下迷宮の世界でデスゲーム主催者との対時の際に見かけた姿を思い返していた。
確か、あの時の彼女は霊符にグルグル巻きにされ荷物の様に運ばれており、他の『アリス』たちに比べると諦めの気配が強いように思えた。
その時の姿を思うと今の笑顔はまるで別人の様だ。
「兎に角、彼女も元気そうでよかった」
デスゲームで生き残った『アリス』たちを気に掛けるマリオンにとって、無事な姿を見られることは幸いなこと。
その姿を見て、マリオンは彼女をオウガから守ることを改めて決意していく。
「こうして猟兵が来たからには譲れない想いや信条も、希望も。そのどちらの想いも消させないよ」
オウガが何処から現れるか……その一点を、マリオンは気にしていた。
●オーケストラとワルツ
オルガンとバイオリンとフルートのトリオによる演奏が終わって拍手が送られていく。
その次に、入れ替わる様にステージへと上がったのがセシル・バーナード(サイレーン・f01207)とミニー・ミムス(ひみつのミニー・f35077)の二名だった。
(団長さんと一緒に、ダンスでお祭りに参加なのです♪ あんまり踊ったことがないのですが、精いっぱい、ついていくように頑張ってみるのです!)
と、ちょっぴり力が入っているミニーに対してセシルは慣れているのか余裕を見せている。
「次はぼくたちの番だね。さあ、楽しもう! Come On, My Orchestra!」
セシルが腕を掲げて指をパチンと鳴すと擬人化された楽器たちの交響楽団が現れる――ユーベルコード『奏鳴楽団』で召喚された彼らは、ステージ上のセシルの背後に配置されると互いの音を重ねて編み上げ始めた。
まずはピアノによる軽快な音。
タララッタララッ、と響く駆ける様な音が聞く者の注意を引き込むと、やがて弦の音と管の音が加わりはじめ、混ざりながら緩やかでゆったりした旋律へ変化していく。
その最中、セシルは隅に立つミニーへと歩み寄った。
「さ、おいで、ミニー」
「はいっ✨」
セシルは、ミニーの手をとると二人でステージの中央へ。
さらに――。
「プラチナちゃんも、おいで」
セシルのユーベルコード『プラス・プラチナ』により白銀の髪の少女が現れた――それは、かの戦いで繋がりを断ち連れ帰った複製体。
セシルは二人が横に並ぶ様に自然に誘導すると片手に胸を当てて二人に軽く会釈を開始する。
それは踊りの始まりの挨拶。セシルは二人とワルツを踊り始めた。
まずはミニー。セシルはミニーの片手を握り、もう片方の手を抱き寄せるように腰に添えるとゆったりとした三拍子の間隔で踏み出し、引き寄せてリードをする。
ナチュラルターンを中心とした比較的シンプルな動きだ。
(なるべく団長さんの足を踏まないように、慎重に、慎重に……)
二度ほど、くるりとまわるとセシルはミニーに言葉を囁く。
「うん、筋がいいね。それじゃ次は見てごらん。足がどう動いていたかを知ると、もっと良くなるはずだよ」
そうミニーへ伝えると、セシルはミニーから離れて今度はプラチナの手を取るのだった。
●パートナーたち
ダンスパートナーを交代したセシルは先ほどと同じように三拍子の間隔でゆっくりと踊っていく。
腰を抱き寄せ、動きをリードして足を運び、ミニーにさきほどのワルツの経験を目で確認できるように見せていった。
二度ほどくるりとターンをした後にプラチナから離れたセシルは、再びミニーの手を取り踊りへと誘う。
その時、ミニーはユーベルコード『お手伝いミニー召喚』で自身の複製体をポンっと増やし始めた。
「これでプラチナちゃんとも踊れます☆」
それは、踊りでペアがあぶれないようにするためだ。
こうして、ステージ上でミニーとミニー、ミニーとプラチナ、ミニーとセシルでそれぞれペアが作成されてゆったりしたワルツが進んでいく。
これで人数が増えたことで、よりオーケストラが奏でるリズムがより視覚的に見えやすくなりステージ上も華やかになった。
加えて、ミニーが踊りに慣れるにつれて複製たちの動きやミニー自身の踊りもスムーズになっていき、次第にセシルが教えていないリバースターンなども実践しはじめたことで徐々にステージ上の動きの彩りが増していく。
ミニーはパフォーマンスを上げるため事前にこっそり予習もしていたらしい。
それは、あらゆることに真面目で興味津々な彼女らしくもある。
楽団が奏でる穏やかな旋律。そのリズムに乗る様に、くるり、くるり。
(これは! 少しづつ慣れてきたかもしれません! プラチナちゃんという方とも仲良く踊れて、楽しいですね😃)
ミニーが慣れ始めてくると、セシルは再びプラチナの方に戻って声をかけていく。
「待たせてしまったかな」
セシルは二人を飽きさせずにリードしていくことを意識していた。
(どうせ踊るならベッドの上がいいけど、それはいつでも出来るからね。たまにはこういう交流も良い刺激になるはず)
そんな彼が観客に対し何かパフォーマンスを……と考えてステージ下へ目をやると、そこには鼻歌交じりに踊る見知った少女の姿がひとつ。
チシャ・フェルメス(捧げ唄・f28991)がステージの傍でくるりくるりとひとり自由に踊っていた。
「ふんふふーん♪」
合流出来るといいなぁ、と二人の後をついてきたシチャは、セシルが呼び出した楽団の曲に「わぁ、楽しそうな音楽!」と気持ちを昂らせるとそのまま思わず踊りだしていたのだ。
(音楽の力ってフシギだね。楽しい曲ならみんな笑顔になるし、勇ましい曲で勇気をもらえたり、カミサマのセカイと、このセカイをつなげたりも出来るんだもん)
シチャにとって、様々な楽器たちが住む音楽の国はきっと居心地が良い場所のひとつになるだろう。
●ツナガリ
はじめはゆったりした曲に合わせ、巫女舞のようにゆらり、ゆらりと旋回していたシチャだが、三拍子のリズムが次第に早くなるにつれてそれが焦りやプレッシャーという精神的な枷となり足元をふらつかせ始める。
(わ、わ、わ、曲が早くなってきた……?! でもだいじょうぶ、『舞犧ノ巫女』はおどりも上手じゃなきゃいけないの!)
そう自身を奮い立たせるが、焦りばかりが積もって思う様には動けない。
シチャの身体が大きく傾いた、その時――。
「やあ、シチャも来ていたんだね」
セシルがステージから降りてシチャの身体を支えていた。
そしてセシルはシチャをそのままステージ上へと招いて引っ張り上げる。
こうして愛多きご令息はステージ上に三人の妻を招き入れて、それぞれと代わる代わるワルツを踊っていくのだった。
彼にとっては当然の事をしただけなのかもしれない。
けれどこの一連の誘い――ワルツを中止して助けてくれたこと、そして同じステージに上げてくれたこと。
それらが、自身の価値を低く見るシチャにはとても嬉しい。
このツナガリが、シチャの心を軽やかにしていく。
(――音楽の力ってフシギ)
気がつけば、シチャはワルツの曲に合わせておどりながら古語のような唄をつむいでいた。
(『勧請唄』の古語の意味は全然分かってないから、それっぽく似せたデタラメのアドリブなんだけどね、えへっ)
楽団が奏でる旋律に、声の音色が加わってハーモニーの深みが一層と増している。
演奏自体に主眼が置かれたこの祭り。
ステージ前の客席自体は小さいものだが音を聞き、踊りを見ることが出来るのはステージ前だけではない。
周辺の屋台で紅茶とクッキーを食べて歓談する楽器たちもオーケストラと唄のコラボレーションに聞き入っていた。
ミニーやプラチナもワルツに慣れてきており、クライマックスに向けてテンポを早める曲調が踊りと言う形で、しだいに視覚的に強調されていく。
前へ、横へ、くるりとターン。そして横へ、今度は後ろへ。
早さと共に昂っていくワルツは、最後にセシルが三人をまとめて抱き寄せてそれぞれへキスを行う形で締めくくられた。
●和のエッセンス
エリカは屋台でもらったクッキーをもぐもぐと食べながら、ステージで代わる代わる行われる演奏を観賞していた。
周囲の楽器たちの話によると、今回は当日参加のダンスもあり、奏でる楽しさだけでなく観ごたえがあるとのこと。
猟兵たちの介入は好意的に受け入れられている。
そんな楽器たちの熱気にあてられて、普段はクールなエリカもわくわくする気持ちが強まっていた。
(祭りだ祭りだ。ここはお祭り好きを呼ぼう)
エリカがこゃーんこゃーんと鳴いてみれば近辺の草藪から狐たちがマイナスイオンと共に躍り出る。
そして、一休みしていた『アリス』のモミジの元へも狐たちはすり寄っていた。
「何処から迷い込んだのでしょうか? 近くにお稲荷様のお社があったりして……なんて。ふふっ。……でも御免なさい、あなた達が食べられそうなものは持っていないんです」
そう謝りながら、モミジは狐たちののど元を優しくなでるのだった。
他の狐たちもそれぞれ思い思いに日向ぼっこをしたり、隅っこで鬼ごっこをしていたりと楽しんでいる様子だ。
それらを見ながら、煎餅と緑茶を手にエリカはややいい感じの切り株へと移動してちょこんと座る。
「……よし、概ね騒いでるな。オウガが来たり何かあったらもっと騒いで教えてくれるだろう」
ぱりんと煎餅をかじってお茶を一口。
「のんびりと鑑賞するのもいいものさ」
そんな賑やかさを増す会場で、ふわりとゆれる桜花弁。
それはよくよく見れば、頭部の髪色も同様か。
桜と見紛う明るき髪は、雨倉・桜木(花残華(はなざんか)・f35324)であった。
「賑やかなお祭りは実に好ましいね、楽しいことは良いことだ。それならぼくはちょっと変わった曲を披露するとしようかな」
その声に、近くの楽器が興味深げに彼へと問いかける。
「おお、旅の方。あなたも参加してくださるのですね」
「そうだね、得意の三味線を披露するとしよう。セッションも大歓迎さ!」
共に演じる演奏者を探して、集まったのは篠笛とドラム。
受付を終えてステージへ上がると、桜木は歌い語りに用いる三味線をベベンと奏で始めた。
此度の楽曲の主役は篠笛。桜木の三味線の弦の音色が土台となり、ドラムと共に賑やかす。
さてさて此度の見聞は、旅で行う歌い語りで語れる物語となりえるだろうか。
●湧き上がるままに
ベベンと弦が音を張り、ヒュロロと伸びる篠笛の音が鳴り響く。
テテン、テンとドラムが小鼓のように音を刻めば、三味線と共に奏でる音を笛が伸ばして整えて、小気味の良い音が爽やかな疾走感と共に会場を包んでいった。
……その音に、モミジはふと懐かしさを覚える。
「どこか懐かしい気持ちです……。今時のポップスや昔のクラシックも好きですけれど、こちらのほうが神楽の曲に近くて馴染む――あら? ……私は何を……」
何かを思い出しかけて首をかしげるモミジ。
しかし、彼女はその疑問よりリズムを感じ取ることを優先して目を閉じた。
リズムに合わせて体をゆらし、やがて曲調に沿った動きを始めていく。
ステージの下、その端で。手をかざして風のように。大地を踏み、跳び、勇ましく。疾走感を心がけて桜木たちの奏でる曲を飾り立てる。
音を可視化した動きは旋律の体現。目でも楽しめる音楽だ。
そんな彼女へ、桜木は時折視線を投げてアイコンタクトを試みていた。
彼が望むのは彼女の踊りを引き立てる旋律。
旋律を踊りばかりが引き立てるのではなく、互いに引き立て合う状態へ――。
(ああ、気づいてくれたね)
桜木の視線にモミジが気づくと、桜木はこれから何かをするよ、という目配せとほほ笑みを返した。
合わせて、共にステージに上がってくれた篠笛とドラムへも視線を送る。
三味線の曲調が先行して変わるとそれに篠笛とドラムも合わせていった。
アドリブを含んだセッションが新たな調和を生んでいく――。
台本通りの舞いや楽曲ではなく、思うがままの煌きを。
これは過去を語り伝える音楽や踊りではない。今この瞬間の思いの表現としての音楽や踊りなのだ。
桜木は何時の間にか、演奏そのものに没頭していた。
桜の精の特徴である頭部の桜の枝の花弁をひらりひらりと舞い散らせて一心に沸き上がるものを形にする。
触発された狐たちが思い思いに飛び跳ねて、ステージ外で飲み食いしていた楽器たちからも、音を鳴らしてセッションに加わる者が現れた。
大勢が思い思いに楽しむ祭りとしては今が最高潮だろう。
そんな祭りの様子を、マリオンは全体を見渡せる場所から見ていた。
(ボクも社交ダンスなら男性パートも女性パートも踊れない事は無いんだけれど……こう言った場ではちょっと不適切かな? それにボク自身、完全にリードできるほどの腕前じゃないからね)
「それに護衛であればモミジ嬢の周りを固めるのが確実だけど、それは今のように他の猟兵が近くにいてくれる筈さ」
小さく肩を竦めながら、マリオンはモミジの眩いばかりの笑顔を見守っていく。
オウガらしいものがくる気配は、今のところまだない。
大成功
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真宮・響
【真宮家】で参加
物騒な領主絡みってのが気になるが、音楽一家のアタシ達にとっては音楽のイベントは心躍る。まあ、厄介事は後で考えることにして、楽しもうか。
ボルドーのパンツスーツを着て、胸には赤い薔薇を差す。舞台に上がったら高らかに赫灼のグロリアを歌いあげる。(ハスキーなアルトで良く通る声)奏もダンサーだし、瞬も演奏家だ。アタシ達家族の舞台で盛り上がるといいね。さて、黒幕は誘われてくれるかね?すぐアリス達を助けにいけるように立ち位置には気を配っておくよ。
真宮・奏
【真宮家】で参加
そのモミジさんと言う方、気が合いそうです!!ええ、楽しそうな音楽が聴こえたら踊りたくなりますよね!!舞台に飛び入り参加してモミジさんと一緒に踊ってみたいです!!
青いプリンセスラインの膝丈ドレスを着てモミジさんに近寄って【手をつなぐ】でご挨拶。モミジさんのダンスを誉め、一緒に踊りませんか、と誘います!!ええ、絢爛のスピリトーソでどこまでもお付き合いしますとも!!存分に踊りたいのは凄く良く分かりますし!!
位置的にモミジさんのすぐ近くにいると思うので、騒ぎが起きたらすぐモミジさんを守ることを頭の片隅に入れて置きますね。
神城・瞬
【真宮家】で参加
まあ、オウガ絡みはいささか気になりますが、音楽好きなら奏でてみたいですしね。良く分かります。音楽一家の僕達には得意な案件です。尽力しましょう。
黒い燕尾服に胸に白い薔薇を差して、さりげなくモミジさんと奏と同じ舞台に上がります。母さんの歌に併せるように銀のフルートで清光のベネディクトゥスを演奏して盛り立てます。
舞台ではよく見渡せる位置をさり気なく確保。騒ぎが起きたらすぐ対応できるようにします。
●真っ直ぐな情熱
大いに盛り上がっている楽器たちによる音楽祭。
これだけ大きく騒いだならば、いよいよ領主のオウガも気づくだろう。
そんな中、音楽のイベントと聞きやって来たのがこの一家。
真宮の母娘と義理の息子の、三人の順番が巡ってきた。
母である真宮・響(赫灼の炎・f00434)はボルドー色のパンツスーツの出で立ちで胸に赤い薔薇を差した赤で統一した恰好をしており、息子の神城・瞬(清光の月・f06558)は黒い燕尾服に白い薔薇。
そして娘の真宮・奏(絢爛の星・f03210)はウエストからのスカートのふくらみが大きいプリンセスラインの、青い膝丈ドレスの姿をしている。
当日受付の飛び入りで三人はステージへ……と向かうその前に。奏がモミジへ駆け寄ってその手を握った。
「こんにちは! 私、真宮・奏と言います。ここでの踊りを見てました!! 心の底から楽しんでいる姿、曲を選ばず合わせる感性としなやかな体幹……どれも素敵です!!」
挨拶と共に興奮気味に語る奏。そして――。
「一緒に踊りませんか
!!!!」
――直球で舞台へと誘った。
この熱意ある行動は、奏自身がモミジの在り方に強く関心を持った部分が大きい。
(モミジさんとは気が合いそうです!! ええ、楽しそうな音楽が聴こえたら踊りたくなりますよね!! 舞台に飛び入り参加してモミジさんと一緒に踊ってみたいです!!)
と言う様子で、心の内で非常にハイテンションになっているのだ。
そんな奏からの突然の熱烈な誘い。それをモミジは快諾する。
「……びっくりしてしまいました。ええ、お誘いありがとうございます。私で良ければ、よろこんで」
斯くして、真宮家と『アリス』の四人がステージ上へと上がっていった。
●舞台に栄光と祝福を
戦士であり音楽家――それが奏の母親である響の姿。
響は全身を赤い系統の装いでまとめた姿でステージへ上がると、良く通るハスキーボイスで発声を始めた。
高らかに、力強く。感謝の祭儀に歌われるミサ曲の様に厳かに――アルトの音域で紡がれるその音色は『赫灼のグロリア』。
ユーベルコードを交えた声が会場内に響き渡った。
(奏もダンサーだし、瞬も演奏家だ。アタシ達家族の舞台で盛り上がるといいね。さて、黒幕は誘われてくれるかね?)
その響の声楽を盛り立てるべく、瞬も銀製の『精霊のフルート』で伴奏する。
伴奏の音色はユーベルコード『清光のベネディクトゥス』――その名は祝福を願う意味を含んでいる。
目立つ色合いで存在感を放つ響に対し、瞬は縁の下に徹するような、主張をしないさり気ない動きが心がけられていた。
二人による厳かな独唱と演奏の音色が高らかに響くステージで、空から舞い降りる御使いの如く、軽やかに健やかに舞うのが奏とモミジの二人。
これまでのステージで見られたような曲調を可視化する一体化した踊りとは異なって、この演目では踊りと独唱が互いに生き生きと力強さを見せつけ負けじと競い合っている。
その様は赫灼で絢爛。赤々と燃えるように、まぶしいほどに美しく、光り輝くようにそこに在る。
奏は生き生きと舞いながら共にステージ上にあるモミジを見た。
モミジの方も奏の熱量に引っ張られて、奏と共にステージの主役の一角へと引き上げられつつある。
曲を彩る補助に留まらない、独立した視覚表現がそこに発生していた。
(モミジさん、楽しいですね!!)
(楽しいです、奏さん。――こんな踊りは初めて!)
生き生きとした気力が生命の力強さと美しさで目を奪い、くらませる。
――奏のユーベルコード『絢爛のスピリトーソ』が、無意識に発動したモミジの『ダンスショウ・マスト・ゴー・オン』と重なって、目にした者たちの視線を釘付けにしていった。
●星を見守って
独唱で厳かな音を力強く紡ぎ続ける響は、声の演奏を維持しながらオウガの襲撃に備えた立ち位置に気を配っていた。
その警戒の最中に頬が緩むことがあるのは、心から楽しそうな娘の姿が目に入るからだろうか。
(物騒な領主絡みってのが気になるが、音楽一家のアタシ達にとっては音楽のイベントは心躍る。まあ、厄介事は後で考えることにして、楽しもうか)
そんな様子の義母と奏を見守るように瞬はフルートを奏でていく。
(まあ、オウガ絡みはいささか気になりますが、音楽好きなら奏でてみたいですしね。良く分かります。音楽一家の僕達には得意な案件です。尽力しましょう)
彼が立つのは会場とステージをよく見渡せる位置。
騒ぎが起きればすぐに気付ける位置だ。
そんな二人に見守られて、奏は美しき煌きとなって踊り続ける。
回り、跳ねて、元気よく。足さばきはしなやかに。腕の動きは流れるように。
時に緩急をつけて素早く力強く、躍動的に。
似た激情を内に秘める、もうひとりの踊り手と共に。
(騒ぎが起きたらすぐモミジさんを守ることも頭の片隅に入れて置きます……ですが! もっとたくさん踊りましょう!! どこまでもお付き合いしますとも!! 存分に踊りたいのは凄く良く分かりますし!!)
最も、響と瞬は会場の外れにオウガらしい者がいるのに既に気付いていた。
その黒ウサギは、黒い甲冑を着たウサギの兵士を伴っている。
しかし遠目にそのオウガは、こちらの演目に目が釘付けで感動のあまり呆けている様子であった。
周囲の兵士が困惑し、何もせずオロオロしているのがその証拠だろう。
事前の情報によると、確か今回のオウガは芸術を好む性質だっただろうか。
ならばそれは都合が良い。厄介事は後で考えることにして今は楽しもう。
この一曲が終わるまで、あともうしばらくの間だけ。
爽やかな冬晴れの空の下で、情熱の星々がまばゆく舞い踊る。
大成功
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第2章 ボス戦
『ノワール』
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POW : 我を馬鹿にするな!
【特殊な人参を食べることによる身体強化】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
SPD : やれ黒ウサギ兵士達よ!
【部下である黒い甲冑を着たウサギの兵士】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ : 我を怒らせたな…!?
【身長や手足が伸び成長した戦闘形態】に変身する。変身の度に自身の【目】の数と身長が2倍になり、負傷が回復する。
👑11
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●大盛況な祭りの裏で
猟兵たちは、すでにこの会場の外れにオウガがいることに気がついていた。
この音楽の国を支配するオブリビオン、その名は『ノワール』。
楽器たちの演奏に飽き始めていた彼は、このステージで行われた演奏や踊りを遠目に見るや、その衝撃に呆然としてしまっていた。
そのオブリビオンは、黒い甲冑を着たウサギの兵士を伴っていたが、その兵士たちが困惑し、何もせずオロオロしているのがその証拠だろう。
感動のあまり猟兵と『アリス』の存在まで思考がまわっていない様でもあった。
さてこちらは猟兵たちの出番が一通り終わった会場。
そこで『アリス』のモミジは大満足の笑顔となっていた。
「皆さん、とても素晴らしい演奏でした……! 私もう、いつ死んでも良いってくらい満たされた気持ちです! また、こうしてご一緒したいですね」
最高の笑顔でとんでもないことを口走った気がするが、そんな秘める熱と間逆なネガティブさも彼女の性格なのだろう。
猟兵たちの演目で祭りは大いに盛り上がり、熱気にあてられた楽器たちも何か奏でたいと当日受付へ並んでいく。
……この盛り上がりを戦闘で壊すのは忍びない。
幸いなことにオウガはいま、感動のあまり心ここにあらずといった状態だ。
そして盛り上がる会場では現在、様々な音が飛び交っており会場の外での戦闘音はおそらく目立たない。
ならばこのまま『アリス』とオウガを接触させないまま戦うことが出来そうだ。
ショウの第二幕は、ここから移動してオウガのいる会場の外れで行おう。
猟兵たちはそれぞれ理由をつけて、あのオウガを倒すべく会場を後にしていく。
.
●補足
お祭りが大成功したことで、戦闘が始まる前に今回のオブリビオンの特性を突くことができました。
現在は猟兵にとって非常に有利な状況になっています。
・完全に先手を取ることが可能です。
・『アリス』を危険から遠ざけたまま戦闘が可能です。
・戦闘後に再び会場に戻り『アリス』と交流する余裕があります。
雨倉・桜木
&&
「うん、彼女は素晴らしい踊り手だったね。さぁってと、ぼくはお仕事お仕事ーっと」
さて、少し休憩してくるよ、と戦場へ。
サポートに徹し、木陰などに身を隠してユーベルコード「枝垂の花雫」を使用、兵隊たちを眠らせて無力化を狙います。成功したら目を眩むような花嵐の中、三味線を鳴らして現れます。
「さぁて、此度語りますはある踊り好きの少女に纏わる物語、彼女を狙う恐ろしい兎退治のお話です。どうぞ最期までご静聴って、生きていれたらの話だけどね」
戦闘後はモミジと、いつか再会したらまた演奏したりしよう、と約束をして別れます。
アリスとして彷徨う過酷な旅の中、少しでも幸多き日々が訪れるよう切に願います。
セシル・バーナード
&&&【愛染】
よし、皆でオウガを討滅しよう。
「全力魔法」の雷球乱舞で、ノワールを集中攻撃だ。チシャ、ミニー、戦闘大丈夫かな? プラチナちゃんも鉄塊剣で力押しよろしく。
音楽フェスで我を忘れるなんて、本当に音楽が好きなオウガだったんだね。
そこを衝くのは心苦しいけど、立ち直る前に討滅しなきゃ。
お嫁さんたちに攻撃が向いたら、かばいに入るよ。
彼女たちに傷一つ付けさせるつもりはない。
戦闘も無事に終わったし、もう少し音楽フェスを見ていこうか。
奏鳴楽団は演奏再開。オペラティックな「歌唱」を披露しよう。
お嫁さんたちが望んだら、いつでも歌ってあげるからね。
アリスの子はそっちか。すっかり元気になったみたいだね。
ミニー・ミムス
&&&【愛染】
今のうちに、会場の外でオウガのウサギさんを撃退するのです!
やってしまうのです!!
お友達のセシルくん、チシャちゃん、プラチナちゃんと一緒に戦うのです♪
ミニーは、ユーベルコード『お手伝いミニー召喚』を使って、戦う皆を応援するのです!
召喚した沢山のミニー全員で、チアダンスを踊って、キュートでセクシーな『誘惑』を重きに置いた小悪魔ダンスで参加者全員をサポートするのです☆
離れた位置から応援していることで、遠目から気づいた敵の弱点や、戦闘での助言も欠かさずに行っていくです!
みんなで悪い黒ウサギさんを退治して、ミッションコンプリートなのです☆
味方との連携重視。
周りに迷惑をかける行為はしない。
チシャ・フェルメス
&&&【愛染】
あれ…オウガのウサギさん、ぼーっとしてるね?感動しちゃってるの?…ふぅん。
デタラメじゃなくて、本物を聴かせてあげたら、どんな反応を見せてくれるのかな。
首元の共鳴器を八重合唱モードにしてから、楽器の音の衝撃波で攻撃!
二人の必殺技が炸裂したら、いよいよ本番っ。
共鳴器のスイッチを入れて、星空のトコリを奏でながら【カコラ・ルクステムイ】を唄います。
〽ワトフタツィ マビリブノ スンサクム
意味は全然分からないけど、皆を助けてって祈りはいつだって通じるの。
〽クヮミンノ フォギヲ アニツァマエ
流れ星の嵐の中、八重唱の重圧で圧倒するように唄って…
セシル、ミニーちゃん…!もう一回、お願い…!
マリオン・ライカート
&&&
・心情
死んでも良いと想う程の情熱は、時に言葉通り命を燃やし尽くしてしまうけれど…
今回はそんな命の輝きがオウガの瞳をも灼いたみたいだね
そう言う意味ではモミジ嬢の勝利と言えるのかな?
・行動
先手を取れるならば、このままモミジ嬢とは離したまま決着を付けたいね
ボクは他の猟兵の先制攻撃を邪魔しない様に注意しつつ『ガラスのラビリンス』を使おうかな
既に安全は確保されているけれど、絶対に会場へは向かわせないよ
それに例え大きくなったとしても…いや
大きくなる程、迷宮が君の動きを鈍らせるのさ
戦闘後はモミジ嬢の熱意を賞賛しながらも、もう少し時と場合を考慮する様に釘を刺しておこうかな
情熱は生きてこそ燃やせるのだから
真宮・響
【真宮家】で参加
音楽や踊りが大好きで感動する点は共感できるが、そのままノワールがいるとこのアリスのモミジが危ないからねえ。何より奏といい思い出を作ったパートナーだし。音楽一家の主として討伐させて貰おうか。
モミジと接触する前に倒させて貰おうか。【忍び足】【目立たない】で敵の背後に回り込み、【気合い】【怪力】【功夫】を併せた炎の拳で攻撃して【頭突き】→【スライディング】→【踏みつけ】の3連コンボでダメ押ししたやるか。
敵の攻撃は【残像】で回避して【カウンター】で逆に拳を入れてやる。
アリスを害するオウガでなければ案外仲良くなれたかも。不幸な出会い方をしたものだ。
真宮・奏
【真宮家】で参加
ああ、モミジさんとのダンス、楽しかった!!あ、件のオウガが出ましたか?モミジさん、貴女がまた楽しめるようにあの脅威を退治してきますので、ちょっとここで待っててくださいね。
ダンスからのパワーでパワーは満タンです!!敵の攻撃は【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【受け流し】【ジャストガード】でばっちり受け止めて見せますよ!1動作が成ってません!!ダメ出しで信念の一撃を撃ち込みます。後押しで【グラップル】【怪力】で蹴っ飛ばします!1
音楽とダンスを愛する同志を脅かす脅威は許しません!!モミジさんはまだまだ楽しくダンスを踊って欲しいです!!
神城・瞬
【真宮家】で参加
ええ、舞台は大成功ですね。オウガをそのままにしとくと、奏と相性ばっちりのモミジさんが危ないですからね。モミジさんが引き続き楽しめるように尽力しましょう。
召喚するウサギが邪魔だすね。【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【部位破壊】【武器落とし】【呪詛】を併せた【結界術】を【範囲攻撃】で兵士に展開。【追撃】で【誘導弾】で攻撃。敵の攻撃は【オーラ防御】【第六感】で凌ぎます。
モミジさんはまた踊りを楽しんで欲しいですからね。また奏と共演できたらいいですね。
暁・エリカ
ん、やりますか
力の強い彼らがいいだろうとゴリラの軍勢を召喚するよ
彼らをアリスラビリンスらしく飾ってみるか…羽とか…角とか…と勢いで色々盛ったらファンタジーなゴリラが宙を舞いつつ敵軍に襲いかかる光景が生まれてしまった…すごいことになっちゃったな…
空中からの強襲と見事な連携で兵士を討ち倒すさまはさすが森の賢者
なんと、ボスの巨大化をものともせずリフトアップ投げ飛ばし…ゴリラパワーキンジラレタチカラ
闘いが終わったら…音楽はまだ続いているね、ゴリラ達を引き連れてアリス達の元へ
良い演舞だった、彼らもそう言っている
せっかくだからセッションしたいらしいよ(ゴリラ達渾身のサムズアップ、からの一斉ドラミング)
●運命の前と先
当日参加の演奏や踊りで大いに盛り上がった楽器たちの音楽祭。演奏が踊りを踊りが演奏を高め合って、その熱気にあてられた楽器たちも何かを奏でたい気持ちを刺激されて興奮気味に当日のステージ受付へと並んでいく。
『アリス』のモミジも踊りを十分に堪能した笑顔になっていた。彼女はしばし休んだら再び踊るつもりなのか、現在はステージ前の観客席で飲み物を飲んでいる。
そんな様子を会場全体を見渡せる場所から見てマリオン・ライカート(Noblesse Oblige・f20806)は苦い表情を見せていた。
(死んでも良いと想う程の情熱は、時に言葉通り命を燃やし尽くしてしまうけれど……)
命を粗末にしかねない判断と、自身の命を軽く見る様な言葉がマリオンの中で引っ掛かっていた。
アリスラビリンスへ召喚される『アリス』たちは何かしらの絶望を、失った記憶の底に秘めている……そのためモミジの軽々しく死を口にした性格が今後もたらす未来に、危うさを垣間見たのだ。
……しかし今回はそれが今のような運命を引き寄せたこともまた事実。
(最も、今回はそんな命の輝きがオウガの瞳をも灼いたみたいだね。そう言う意味ではモミジ嬢の勝利と言えるのかな?)
苦笑へ変わるマリオンの視線は、会場の外れで立ち尽くすオウガへ移った。
「どうやら先手を取れそうだ、このままモミジ嬢とは離したまま決着を付けたいね」
ぼーっと立ち尽くす小柄な黒ウサギは、この音楽の国を支配するオウガ、その名は『ノワール』。
この個体は芸術を好む性質を持っていたこともあり、猟兵たちによるステージの演奏や踊りの数々に目を奪われ、その美しさと煌きに感動のあまりに固まっていた。
●祭りの裏での鬼退治
さてさてこちらは大盛況な祭りの会場。そこで和の音で盛り立てた雨倉・桜木(花残華(はなざんか)・f35324)は「さて、少し休憩してくるよ」と言い残してこの場を離れた。
彼の口元はほがらかに微笑み余韻にいくらか浸っている。
「うん、彼女は素晴らしい踊り手だったね。さぁってと、ぼくはお仕事お仕事ーっと」
しかしひと呼吸の後には顔を引き締め瞳は真剣なまなざしへ。ここから先は祭りの裏でのひと仕事、三味線弾きの雨倉・桜木はいま暫くは猟兵の雨倉・桜木となる。
オウガを倒すべく彼は会場の外れへと向かうと、目立たぬよう近くの木陰へ身を隠した。他の猟兵たちも各々が『ノワール』を討つべくこの場へ集う機を見計らい、桜木は手の三味線を鳴らした。
「さぁて、此度語りますはある踊り好きの少女に纏わる物語、彼女を狙う恐ろしい兎退治のお話です」
八重紅のしだれ桜の花びらが、ぶわっと吹雪のごとく通り過ぎれば黒い甲冑のウサギ兵士たちが次々と眠りこけて夢の中へ――ユーベルコード『枝垂の花雫』によるものだ。
徐々に早くなる旋律は、躍動のある場面の始まりを聞く者に予感させる。
さあさあ、兎退治の始まりだ。ただの兎と侮るなかれ、なんとそれは人食い兎。小柄といえど鬼の兎だ。策が運びユーベルコヲド使いに有利であれど、油断は禁物、情けも要らぬ。この三味線と共にどうぞご清聴、お願い申し上げます。
オウガへの攻勢が始まったそのとき、最初に行動に出たのが暁・エリカ(狐の賢者・f06763)だった。
「ん、やりますか」
この一言でユーベルコードを発動させて力強い軍勢を召喚する。
それは、ゴリラ。それもただのゴリラではない。羽、角、その他いろいろな幻想的なものが生えまくった白いファンタジーなゴリラが飛翔能力を発揮させながらススーッと現れて、三味線をBGMに飛んでいった。
●ゴリラたちの騎行
エリカのユーベルコード『ファンタズマゴリラ』。その能力は召喚した多数のゴリラたちになんかこう幻想的なものを生やすことで飛翔能力と戦闘能力を与えるというもの。
この力の使用は恐らくコー〇にメン〇スを入れようとする人に「せっかくだし二リットルでやってみようか?」と出来心で勧めるのに近かったのではないか。そんな出来心のゴリラが戦いの火蓋を切る。
白き一角を額に称え天使の翼で空を埋める白く逞しき肉体の群れはさながらワルキューレの騎行か。ゴリラたちは上空より、一斉に『ノワール』への突撃を行った。
「な、なんだ……? うおおおっ!?」
頭上にかかる影に気が付いた『ノワール』が我に返りふと見上げると、そこには上空から降り注ぐ一角ゴリラの群れ。戦乙女の槍の如く拳を突き出したゴリラが豪雨の如く大地へと突き刺さると、大地に足をつけたゴリラたちは拳を引き抜いて『ノワール』を取り囲む。
「突然なんだ貴様らは! くっ……黒ウサギ兵士達は寝ておるのか。これは一体どういう状態だ!?」
人間の二分の一程の、ケットシーの倍の身長に対して振るわれるゴリラの剛腕。理不尽な状況に怒っま『ノワール』は戦闘形態である四ツ目の背が高い姿へ変化して抵抗をする。その光景は当人たちの必死さとは裏腹にどこか滑稽であった。
その様子を眺めて、エリカはぼそりと呟く。
「すごいことになっちゃったな……」
そんなゴリラパワーキンジラレタチカラの先陣で猟兵たちの攻撃は始まった。
「ふざけるなぁっ!!」
ゴリラを必死に跳ねのけた『ノワール』は、飛来する追加の一角ゴリラをなんとか避けて群れから離脱した。その視線の先はこの状況に全く気付かずステージの演奏を聞いてのほほんとドリンクを飲む『アリス』のモミジ。
「アリスか……ちょうど良い、我の餌となってもらおうか!」
やっと『アリス』に気付いた『ノワール』は補給のために彼女を喰らおうと跳躍をする。背後から追いすがる一角ゴリラたちを蹴散らすためにも、エネルギーとして餌を喰らっておきたい所だろう。幸い『アリス』はこちらに気付かず無防備であった。
だがオウガは祭りの会場に近づくことはできなかった。
「絶対に会場へは向かわせないよ」
マリオンのユーベルコード『ガラスのラビリンス』が壁となりオウガの足を止めた為だ。戦場は、中央に広い空間がありその周囲に入り組んだ通路がある迷宮へと化していた。
●追撃
ガラスの迷宮に阻まれた『ノワール』は、壁の前で足を止めた間に一角ゴリラの群れに追いつかれると広場の中央へと投げ飛ばされてしまう。
「ウッホー!」
「おおおおっ!?」
投げ飛ばされた先に待ち構えていたのは、セシル・バーナード(サイレーン・f01207)、ミニー・ミムス(ひみつのミニー・f35077)、チシャ・フェルメス(捧げ唄・f28991)の三人組。ここにステージでの演奏時に召喚されていた白銀の髪の少女の姿のプラチナも加わる。
「よし、皆でオウガを討滅しよう」
「はい、なのです!」
「うん……!」
「がんばります!!」
プラチナは鉄塊剣『プラチナファング』を構えて跳躍すると、投げ飛ばされてきた『ノワール』を地面へ叩き落した。叩き落した先で、セシルが指先ほどの金属球を千個ほど周囲へ放つ。
「雷の爪牙、我が敵を穿て!」
それは電撃を帯び、複雑な幾何学模様を描いて飛翔すると『ノワール』を打ち据えながら電撃で焼いていった――ユーベルコード『雷球乱舞』だ。
(共鳴器を八重合唱モードにして……!)
そこにチシャの『共鳴器』を通した『星空のトコリ』の演奏音の衝撃波を浴びせされていく。
その傍らで応援をするミニー。ユーベルコード『お手伝いミニー召喚』で増やした自身の複製たちと共に、チアダンスでフレー、フレー、と応援をしていく。
一方でオウガは自身の不利な状況に怒り、戦闘形態への変身をさらにひとつ繰り返した。
「許さんぞ貴様らあっ!」
負傷が回復して傷や火傷が治っていき、目はさらに倍となり八ツ目。背も三メートルに近づこうとしている。
「傷が回復したのです!? それにあれじゃ……」
「だったら回復以上に攻撃しちゃえばいいってことでしょう!」
「あっプラチナちゃん待って!」
そこへプラチナが飛び掛かり鉄塊剣を振り下ろした。しかし変身でさらに伸びた腕による横殴りで迎撃をされてしまう。
その攻撃はプラチナを守るべく飛び込んだセシルに当たり、セシルとプラチナは二人もつれて地面へと叩きつけられた。
「セシルくん! プラチナちゃん!」
「セシル
……!?」
オウガ『ノワール』は残る二名の猟兵――ミニーとチシャへと視線を向ける。
「彼女たちに傷一つ付けさせるつもりはない……!」
セシルはプラチナに支えられながら立ち上がろうとするが……。
その時、ミニーは敵のある様子に気が付いた。
●捧げ唄に祈りしは
戦闘形態への変身を重ねて三メートル近い長身の八ツ目の姿となった『ノワール』は、プラチナとそれを庇うセシルを吹き飛ばすと残る二名、ミニーとチシャへと視線を向ける。
その時、ミニーは敵のある様子に気が付いた。
(疲労やダメージのためかもと一瞬思ったのですが……もしかして?)
気づいたことを確認するためにミニーは懸命にチアダンスを続けてみる。すると……『ノワール』はこちらを狙い、睨みつけているのだがその歩みが見惚れているかの様にのろのろと遅い。
(やっぱり、魅了が効いているのです!)
健康的な四肢の躍動はそれだけで美を感じさせる。加えて下品さのない色気の表現はことさら人体の美を強調するだろう。ミニーは可愛さも意識して小悪魔な感じに、そして何より笑顔を忘れずにダンスを続けていった
(あっあっでもちょっとずつこっち来てるのです!💦)
この時チシャも相手の様子に気が付いていた。
「あれ……オウガのウサギさん、どこかぼーっとしてるね?」
(見惚れちゃってるの? ……ふぅん)
であれば今の状況でもチシャに出来る事が……いや、チシャでなければ出来ない事がある。
(舞台で私が歌ったようなデタラメじゃなくて、本物を聴かせてあげたら、どんな反応を見せてくれるのかな)
チシャは『星空のトコリ』を奏でて唄を歌った。
「〽ワトフタツィ マビリブノ スンサクム」
(意味は全然分からないけど、皆を助けてって祈りはいつだって通じるの)
「〽クヮミンノ フォギヲ アニツァマエ」
(流れ星の嵐の中、八重唱の重圧で圧倒するように唄って……)
チシャの唄に聞き惚れるかの様に『ノワール』の足がピタと止まった。その間にもチシャの唄は紡がれていく。
周囲に清浄な気が集まり始め空は一時的に夜へ。捧げ唄は夜の神へと届きその神威は巫女の祈りに応えた――『巫女手繰りしは夜の祝福<<カコラ・ルクステムイ>>』。
突如訪れた夜の空に満天の流星雨が発生すると光の洪水となって降り注ぎ……そして、空は元の秋空へと戻る。その一瞬の奇跡は傷ついたセシルを癒し、チシャのまわりの仲間たちの気力を蘇らせた。
「セシル、ミニーちゃん……! もう一回、お願い……!」
「今のうちに、オウガのウサギさんを撃退するのです! やってしまうのです!!」
ミニーの懸命の応援とチシャの奇跡を受けてセシルは再び電撃を帯びる金属球を全力で放つ。
(音楽フェスで我を忘れて、チシャの唄で足を止めるなんて、本当に音楽が好きなオウガだったんだね。そこを衝くのは心苦しいけど、立ち直る前に討滅しなきゃ)
「雷の爪牙――――我が敵を穿て!!!」
複雑な飛翔の雷撃が質量を伴い『ノワール』の全身を貫いた。
●終章の戦い-Ⅰ
電撃を帯びた小さな金属球を全身で浴び、『ノワール』はいちど地へと伏す。戦闘形態となっていた身体は元の小さな黒ウサギへと戻り縮んでいった……だがしかし。
「貴様ら……我をこのような目に合わせたこと、ただでは済まさんぞ……!」
執念ともいえる怒りによって再び戦闘形態をとっていった。しかし、先ほどの三メートル近い八ツ目の姿ではなく四ツ目の1.5メートルほどに留まっている。だが傷は再び回復し心も未だ折れてはいない。
周囲の黒い甲冑のウサギ兵士たちは桜木のユーベルコードで眠りこけたまま。味方はおらず孤立無援の状態でオウガはただの怒りで立ち上がる。
その背後へ、音無く回り込んだ真宮・響(赫灼の炎・f00434)の拳が突き刺さった。
「モミジと接触する前に倒させて貰おうか。とっておきの一撃だ!!」
「がああっ!!?」
その拳は気力を込めた赤熱する拳――ユーベルコード『炎の拳』。至近距離から放たれた放たれたそれは『ノワール』の脇腹を抉る様に焼いていく。
「――かはっ」
一瞬止まった呼吸を肺を絞って取り戻すと『ノワール』は振り返って襲撃の主の顔を見た。
「貴様――」
同時に腕を伸ばし響を捕えようとしたが、対する響はさらに踏み込み息を吐く。短い呼気と同時に繰り出されたのは額での殴打――頭突き。オウガの脳天へ打撃を入れると、響は続けて足を払って転ばせてから靴底で一気に踏み抜いた。
「そら、ダメ押しだ!」
「がふっっ!?」
一連の打撃を加えた響は、いちど距離を離して間合いを取り直す。
その間に真宮・奏(絢爛の星・f03210)と神城・瞬(清光の月・f06558)も追いついて、武器を構えて戦いの用意を終えていく。
この二人が加われば、さきほどまでステージで情熱的なまばゆい踊りを厳かな独唱と演奏と共に披露していた真宮家の三人だ。
「音楽とダンスを愛する同志を脅かす脅威は許しません!! モミジさんはまだまだ楽しくダンスを踊って欲しいです!!」
「ええ、舞台は大成功ですね。オウガをそのままにしとくと、奏と相性ばっちりのモミジさんが危ないですからね。モミジさんが引き続き楽しめるように尽力しましょう」
『ノワール』はそのモミジという名が『アリス』の事だと知る由もない。
そもそもその『アリス』は今、会場の観客席で楽器たちの演奏を聞きながらの休憩中で、ニコニコとクッキーを食べていてこちらに気付いてもいない。
「貴様ら我の事をついでの様に……我を馬鹿にするなぁ!」
オウガの『ノワール』は怒りの声と共に立ち上がった。
●終章の戦い-Ⅱ
「我を馬鹿にするなぁ!」
怒りの声と共に立ち上がった『ノワール』はベルトの小物入れから特殊な人参を出してボリボリと噛み砕く。それは身体を強化する人参。
「うおおおおっ!!!」
力を漲らせた『ノワール』は響へと殴りかかっていった。しかし、その超高速連続攻撃は外れて響が残す残像へと向かってしまう。
(音楽や踊りが大好きで感動する点は共感できるが、そのままノワールがいるとこのアリスのモミジが危ないからねえ。何より奏といい思い出を作ったパートナーだし。音楽一家の主として討伐させて貰おうか)
「さあ、もう一撃だ!! 存分に味わいな!!」
「ぐあっ……」
攻撃を外した『ノワール』へ響は再び拳を打ち込んだ。ここまでの連戦と負傷で『ノワール』には疲弊が現れ始めている……負傷そのものは戦闘形態をとる度に回復させてはいたが、その回復も完全ではないのだろう。
「ええい、兵士たち! 貴様らいつまで寝ているのだ! 起きろ!!!」
その怒号に黒い甲冑のウサギ兵士がようやく目を覚ましはじめた。しかし兵士たちの動きは瞬によって即座に封じられてしまう。
「――動きを縛らせて貰います!」
アイヴィーの蔓、ヤドリギの枝、藤の蔓の三種の植物が大地から伸びていき、意志を持つ様に黒い甲冑のウサギ兵士たちを襲った……ユーベルコード『裂帛の束縛』が兵士たちを縛り付けてその動きを完全に封じていく。兵士たちはもぞもぞと動いてなんとか抜け出そうとするが、瞬の張った結界がそうはさせじと兵士たちの動きを鈍らせた。
そして――。
「部下のウサギたちが邪魔ですね」
瞬が続けて放った追撃の誘導弾がウサギ兵士たちを倒していった。
何もかもうまくいかない。そんな状況に『ノワール』はさらなる苛立ちを募らせていく。
「面白くない――ああ、面白くない!!」
再び人参をかみ砕くと、『ノワール』は狙いを奏へと変え飛び掛かった。
●護りたいもの
奏へと連続攻撃を加えながら『ノワール』は声を荒げ部下を呼ぶ。
「兵士達、どうした! 早く立て!! そして我に尽くせ!!!」
しかし兵士たちは瞬に動きを封じられて次々とやられていき『ノワール』に加勢をすることが出来ずにいる。そして対する奏は『ノワール』の放つ超高速の連続攻撃を次々と受け流し、いなしていた。
奏は精霊の力を借りた『エレメンタル・シールド』で直撃を防ぎつつ、しなやかな動きで対応をしている。その最中に奏が思い返すのは、戦いの場へ赴く前の約束。
――モミジさん、貴女がまた楽しめるようにあの脅威を退治してきますので、ちょっとここで待っててくださいね。
その時のモミジは状況がよくわかっておらず首をかしげていたけれど。このオウガを倒せば旅を再開するまでの間はここは安全になるのだから。
それにしても、先ほどのステージでの時間の何と充実したことか。奏はその時のことを思い出すたびに活力が湧いてくるのを感じていた。
(ああ、モミジさんとのダンス、楽しかった!! ダンスからのパワーでパワーは満タンです!! ばっちり受け止めて見せますよ!!)
ダイナミックでいながら時に素早く。流れを作り乗っていくミュージカルの様な体捌きは見る者に音色の幻を聞かせることだろう。やがて敵の動きに慣れてきた奏が反撃を開始する。
「動作が成ってません!!」
ダメ出しと共に振るうのは、愛用の剣の『ブレイズセイバー』。剣に込めた人を護るという信念、そしてダンスを愛する同志を護るという信念が奏の一撃となる。
「ぐっ!」
振るわれた一撃――奏のユーベルコード『信念の一撃』が『ノワール』の耳とマントを切断した。そしてバランスを崩したところへ……。
「喰らえー!!」
力を込めた蹴りを叩き込み、『ノワール』をガラスのラビリンスの壁へと叩きつけた。
●フィナーレ
ガラスのラビリンスの壁へと叩きつけられた『ノワール』は元の小さな黒ウサギへと戻りながらも猟兵たちを睨みつける。もはや戦闘形態となる力も残っておらず、ただ怒りと執念で意識を保っていた。
しかしそれももう終わり。マリオンが止めを刺さんと『天光剣:Lumiere』を手に『ノワール』の前へ歩み寄る。
「我がこんな……認めん、認めんぞ……」
「いや、これで終わりだよ」
光と歩む希望の標を表す剣が、オウガの胸へ突き立てられた。この掃討が『アリス』たちの希望へ繋がる事を願って。
絶命したオウガの遺体が消えるとその周りに桜の花がはらりと舞う。続けて鳴るのは桜木の三味線。
斯くして恐ろしい兎は退治されたのでした。人食いの兎は退治され踊り好きの少女は危機を無事に脱したのです。これにて彼女の先の旅路はしばし一路平安となりましょう。
ただひとつ、この踊り好きの少女はついぞ自身の危急存亡に気がつきませんでした。此度の兎がやや気の毒でもありますが、鬼に情けは無用でございますゆえご容赦を。
ではこれにて此度の語りは終いとなります。最後に、みなさまのご清聴に感謝を申し上げて終わりとさせていただきます。ありがとうございました。
●音楽祭はまだ続く
「……音楽はまだ続いているね」
エリカは白き一角ゴリラたちを引き連れて会場へと戻った。そして休憩中のモミジへ話しかける。
「良い演舞だった、彼らもそう言っている。せっかくだからセッションしたいらしいよ」
白い歯を見せ渾身のサムズアップをするゴリラ。いろいろと理解が追い付かないまま、まあいいかと頷くモミジ。かくして祭りは続いていく。
ステージの演奏に合わせてぴょんぴょん跳ねる狐たちに、ゴリラのドラミングが加わった。
セシルも二度目の舞台で奏鳴楽団を再び呼び出して今度は独唱のオペラ・アリアを披露する。その歌をミニーとチシャは観客席で楽しんだ。
(みんなで悪い黒ウサギさんを退治して、ミッションコンプリートなのです☆)
とミニーも今回の出来事を振り返りニコニコだ。セシルも今回のもうひとつの目的である『アリス』の安否を確認して安堵を深めるのだった。
(お嫁さんたちが望んだら、いつでも歌ってあげるからね。さて、アリスの子はそっちか。すっかり元気になったみたいだね)
ステージの下では演奏を楽しみながらゴリラと狐を加えて踊るモミジの姿。そしてその隣には思い思いのアレンジで共に踊りを楽しむ奏の姿もあった。
その共演を響と瞬は見守る。
(モミジさんはまた踊りを楽しんで欲しいですからね。別れた後もまた奏と共演できたらいいですね)
奏を想う瞬に対して、響の方は音楽や踊りに感動していた今回のオウガに思いを巡らせる。
(アリスを害するオウガでなければ案外仲良くなれたかも。不幸な出会い方をしたものだ)
思えばあのオウガは攻撃を受け流されている間、奏の踊る様な動きに見惚れていた様な気さえする。
オウガでなければ……あるいは。
爽やかな冬晴れの空に鳴り響く様々な音色たち。しかしやがて日は傾き夕暮れへ。厳しい冬の前の最後の楽しみもこれで終わりとなってしまった。
片付けが始まる中で、別れの言葉を持つ二人がモミジの元を最後に訪れる。
マリオンは今後の旅を思う忠告を。
「きみの熱意と踊りはとても素晴らしいと思う。けれどもう少し時と場合を考慮したほうがいいかもしれない。オウガにいつ襲われるかわからないのだからね。……小言になってしまったね、すまない。ただ気にら留めておいてほしい。情熱は生きてこそ燃やせるのだから」
桜木は再会の約束と前途の祈りを。
「いつか再会したらまた演奏したりしよう。アリスとして彷徨う過酷な旅の中、少しでも幸多き日々が訪れるよう切に願います」
――こうして猟兵たちの活躍によりこの『音楽の国』はオウガの支配から解放され安全な場所となった。
モミジは直ぐには旅立たず、もう数日ほどこの国に滞在をするらしい。彼女の安全もしばらくは確保されることだろう。
このアリスラビリンスに今日があり、明日が訪れる限り、彼女とはアリスラビリンスのどこかで再び会える筈だ。
大成功
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