妖怪花火に、わた菓子添えて
●打ち上げ花火、見上げるか、上を渡るか
「皆、水着コンテストは楽しめただろうか? 興奮冷めやらぬという者も居るやも知れないと思ってな、妖怪親分達から催し物を預かってきたので良ければ聞いて欲しい」
グリモアベースの一角で、自らも涼しげな格好をしたニコ・ベルクシュタイン(時計卿・f00324)が珍しく表情を和らげて猟兵たちに誘いの言葉を掛けた。
「水着コンテストの会場となったカクリヨファンタズムのビーチがあるだろう、夜の帳が下りた頃に『妖怪花火』なるものを打ち上げてくれるというのだが……」
曰く、この『妖怪花火』なる花火は『猟兵も乗って一緒に打ち上げられる』ことや『花火で空中に生じる様々な模様の上で空中散歩を楽しむ』ことなど、ちょっと普通では想像もつかないような体験を堪能できるのだという。
「こういうのを……アクティビティ、と呼ぶのか。折角仕立てて貰った水着だ、まだまだ着たまま楽しみたいという者を心から歓迎する」
そう、折角の夏のビーチなのだから、取っておきの水着で楽しんでもらいたい。
妖怪親分達も、猟兵たちがこのひと時を存分に遊び尽くすことを願うに違いない。
祭りの夜を彩る奇跡のような花火は、今、猟兵たちだけのもの。
では早速――と言いかけて、ニコはふと何かを思い出したように手を打った。
「ああ、そうだ。河童の妖怪が屋台を出してくれると言っていたのを失念していた」
申し訳無い、とニコが頭をくしゃりと掻いて、ホロビジョンを一枚展開させる。
そこには、棒に刺さったり、袋に詰められたりした、ふわふわの何かがあった。
「屋台の店主、河太郎さんは『綿菓子作りのプロ』だそうでな、どんな色でも形でも余程の無茶振りでない限りは要望に応えてくれるらしい」
ビジョンには、ねじり鉢巻を頭に巻いて法被を着た河童が巧みに雲のような飴菓子を自在に形作っていく様子が動画で映されている。なるほど。
「最近は写真映えする七色の綿菓子が人気だそうだが、ひたすら大きな綿菓子も、キャラクターものの袋に入った綿菓子も、何でも任せておけ――とのことだ」
お代は不要、花火を楽しむにあたってのお供におひとついかが? という所か。
「今度こそ俺からは以上となる、今宵ばかりは固い事は抜きにしよう――時計は外して、存分に楽しんでくると良い」
虹色の星型のグリモアが光る先には、夜の海と打ち上げ花火。
ふわふわ綿菓子が欲しいあなたは、屋台の前にさあ集まって!
かやぬま
水着コンテスト、お疲れさまでした!
妖怪親分たちからの粋な計らいのお話がありました。
カクリヨファンタズムのビーチで、花火を楽しみませんか?
●シチュエーション
時間帯は夜、場所は水着コンテストの会場にもなったビーチです。
海に入るのはちょっと危ないので避けておいた方が良い代わりに、妖怪花火なるもので楽しむことができます。
妖怪花火に乗ってお空に打ち上げられるも良し、打ち上がった妖怪花火の上で空中散歩をするも良し、静かに妖怪花火を見上げて楽しむも良し。めっちゃ自由です。
なお、どんな行動をする場合でも、綿菓子の屋台を出している河童の河太郎さんにお願いすれば好きな色と形の綿菓子を用意してくれますので、お供にしたい方は是非どうぞ。
※キャラクターものの袋に詰めてもらう時は、版権ズバリの指定は避けて下さいネ。
●楽しみ方
PSWにとらわれず『妖怪花火を楽しむ』という行動なら自由にどうぞ!
そして水着! 参照希望のイラストがある場合は「2021水着」などと分かりやすいように記載を入れて頂けると助かります。ステシに活性化があると嬉し泣きします。
水着が……ない! という方は、お任せでよろしければ妄想してお仕立てしますが、完全に一任して下さる方向けです。
綿菓子も賑やかし程度なので、無理に絡ませなくて大丈夫です。
グループでお越しの際は【グループ名/人数】のタグを冒頭に統一で入れて頂けると有難いです(例:【河童組/3】)。
人数制限はございませんので、団体様も歓迎致します。頑張ります。
逆に、お一人様でさみしいから……などの理由でグリモア猟兵のニコにお声掛けを頂くのも歓迎です。喜んでお相手をさせて頂きます。
●プレイング受付期間
なるべく余裕をもって、少しでも多くの方をご案内できればと考えております。
断章を投稿次第、タグとMSページで受付期間を告知しますので、よろしくお願いします。
場合によっては再送が発生するかも知れないことだけ、恐れ入りますがご了承下さいますと幸いです。なるべくないように頑張ります。
短いですので、MSページの記載にも一度お目通し頂ければ幸いです。
それでは、ひと夏の思い出を良きものにできますよう尽力したい所存です。
よろしければ、皆様のご参加をお待ちしております!
第1章 日常
『猟兵達の夏休み2021』
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POW : 妖怪花火で空へGO!
SPD : 妖怪花火の上で空中散歩
WIZ : 静かに花火を楽しもう
👑11
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
リューイン・ランサード
【竜鬼】
「2021水着、但しパラソルとクーラーボックス無し」で参加。
ひかるさんの水着姿に内心ドキドキしつつ、お祭りを見て回り中。
安全に打ち上げられて空中散歩まで出来るのは、さすがカクリョファンタズムですね。
面白そうなのでひかるさんと一緒に打ち上げて貰います。
空に着いたらひかるさんと空中散歩。
綺麗ですが、どうやったらこんな事できるのだろう?
と空中に固定された花火模様の上を興味深く歩く。
考えていたら、上からひかるさんが降ってきて!
…ひかるさんの胸に顔を埋めたまま倒れて窒息。
昨年よりすっと成長していて、柔らかくて、脱出の意志が薄れて、至福の表情を浮かべたまま昇天しそうになるリューインでした<笑>。
荒谷・ひかる
【竜鬼】
最新の水着姿で参加
ギャル風の水着&服装に慣れず、羞恥心でいつも通りにお話が……///
リューさんの視線もなんだかいつもと違う気がして、ドキドキで顔も身体も火照り気味
……ってそうこうしてるうちに気が付けば打ち上がってました!?
花火の上ではリューさん以外に人目も無くて、反動でテンション上がってしまい
「先に行っちゃいますよーっ♪」なんて言いつつトテテッと上の方へ
幻想的な雰囲気に目を輝かせていたら、うっかり足を滑らせて落下!
落ちた先でリューさんが受け止めてくれましたが、ちょっと怖かったのでそのままぎゅっと抱きついて
胸元の彼の様子がおかしいのには、ちょっと気づくの遅れてしまうわたしでした……(照)
●彼女の水着が大胆すぎて
「え、っと、リューさん……」
「……あ、はい! はい……」
カクリヨファンタズムに例の親分の手によってぶっ立てられた水着コンテスト特設ビーチは夜を迎え、日中の賑わいとはまた違った様子を見せていた。
猟兵たちと共にコンテストを楽しんだカクリヨの妖怪たちが、一足先に『妖怪花火』を満喫している姿を視界に入れた荒谷・ひかる(精霊寵姫・f07833)とリューイン・ランサード(乗り越える若龍・f13950)の様子は――控えめに言って、ちょっとおかしかった。
何故なら――?
(「せ、せ、せっかくの新しい水着だけど、全っ然慣れない! 恥ずかしい!」)
そう、ひかるが満を持して身に纏った最新の水着は大胆極まりない黒ビキニ。一応上にはシースルーのシャツとホットパンツを装備してはいるものの、それがまたかえって色気を増しているのはきっと気のせいなんかじゃない。
極めつけは惜しげもなく晒されたおへその近くに、これは恐らくというかそうであって欲しいというか、タトゥーシールと思われる意味深な紋様が。否が応でも視線がそちらに誘導されてしまうものだからまったくもって罪な話である。
ひかる曰く『ギャル風の水着&服装』は、当然愛しのリューインをも惑わせる。
自らは黒地に白のスタイリッシュなパーカータイプラッシュガードにベルトが凜々しいボトムスを着こなして、腰に下がった蒼いオーブを絶妙なアクセントにしているリューインは、しかし無意識に竜の尾を揺らして内心のドキドキを表に出してしまう。
(「ひかるさんはひかるさんなはずなのに、何だろう、この……」)
短くない付き合いのつもりだったけれど、まだ、こんな見たことのない一面があったなんて。決してやましい気持ちはないはずなのに、どうしても『彼女』を見る目がいつもとは違うそれになってしまうのだ。
「……うぅ」
「……あ、着きましたね。ここが、妖怪花火の打ち上げポイントみたいですよ」
目を合わせてはすぐそっぽを向き、手が触れ合ってはすぐ引っ込めるを繰り返しながら砂浜を歩いてきた二人は、気付けば一つ目小僧の妖怪が待ち受ける打ち上げポイントへとたどり着いた。
「安全に打ち上げられて空中散歩まで出来るのは、さすがカクリヨファンタズムですね」
「……ぇ、あ……」
「面白そうなので、こちらのひかるさんと一緒に打ち上げて下さい!」
「はいよー、お二人さんご案内ってなー!」
「……ふぁい!?」
あんまりにもドキドキし過ぎて顔も身体も火照り気味、気もそぞろだったひかるはここまでのやり取りも上の空。
気がつけば身体に何かを取り付けられて、まさに打ち上げ秒読み状態。
「えええええ~~~~~~~~~~~~~っ!!?」
――どぉ、ん!!
ひかるが我に返った時には、リューインと共に夜空へと舞い上がっていたのでした。
ジェットコースターの逆バージョンというべきか、急上昇するアトラクションというか、例えるならそんな感覚を覚えながら、先程までぎこちなく見上げていた花火の上へ。
すると、話に聞いていた通り本当に――。
「す……すごい! 本当に花火の上を歩けてますっ!」
超体験をしてある種吹っ切れたのか、それとも今はリューインと二人きりだからか、ひかるがはしゃぎながら花火の上をちょんちょんと渡り歩いてみせる。
「はい、綺麗ですが……」
――どうやったら、こんな事ができるのだろう?
リューインは妖怪花火の仕組みに興味を抱き、固定された花火模様の上をゆっくり歩いてひかるの後を追いながら、自然と視線は足元へ。
そんな『彼』がなかなか横に並ばないものだから、一段高く新たに打ち上がり固定された花火を見たひかるのテンションはさらにアガっていく。
「リューさん、先に行っちゃいますよーっ♪」
大胆な乙女は今や身も心も舞い上がり、トテテッと軽やかに花火の階段を駆けのぼる。
「わ……っ」
見回せば、あたり一面に打ち上がった花火がぴたりと静止して、まるで写真に収めて切り取ったような幻想的な景色が広がっていたものだから。
ひかるは、わああと目を輝かせてそれに完全に魅入ってしまった。
夢中になるあまり、足元がちょっぴりお留守になってしまったのは仕方がなく。
「きゃ……っ!!」
「わあ……!?」
綺麗だな、不思議だな、などと妖怪花火に思いを馳せていたリューインの上に思いっきり落下したひかるは、愛しの君にとっさに受け止められて事なきを得たが。
「あ、ありがとうございます……すみません、ぼんやりしちゃって」
「……、……」
まだ、心臓がドキドキしている。正直に言って、ちょっと怖かった。
だから受け止めてもらったままにぎゅっと抱きついた結果、ひかるの胸がリューインの顔を包み込むというか……埋もれるというか……要するに『それだけのボリュームがあるお胸』ということを示していて……。
(「アッ、もうずっとこのままでもいいかな」)
なんて、ある意味男子の本懐のような状態でされるがままになり、至福の表情を浮かべるリューインさん。
けれど悲しいかな、そのままだと当然文字通りの意味で昇天してしまうので解放してあげないといけないものの、胸元のリューインさんの様子がおかしいのに気付くのが、いつもよりちょっと遅れてしまうひかるさんでありました。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヴォルフガング・ディーツェ
【景狼/2】
うん、久しぶりだねえ。景雪は身長伸びた?(眩しげに目を細め)
折角だ、空を目指そうと小さな手を握る
よ、と!(ゆらゆら揺れる手足で姿勢保持し)…バランス取るの案外難しいね!でも楽しい
「あっちは…そうだなあ、象っぽくない?」
そう笑って、君のぺかぺか輝く瞳にほんわりする
「綿あめだね、懐かしいな…ふふ、確かに雲みたいだね!」
昔は良く食べたな、ん?タダでくれるのかい?
なら折角だから貰っていこうか、有り難いね
「おや、随分俺を買ってくれてるんだなあ」
面映ゆさに微笑って、誤魔化すようについと指を伸ばす
「君はねー…アレが良いなあ、可愛いお菓子飾りの雪だるま型!」
柔らかく、人を和ませてくれる君そのものだ
叶・景雪
【景狼/2】
アドリブ歓迎
難しい漢字は平仮名使用
名前以外カタカナはNG
水着はお任せ
ひさしぶりのお出かけだから…ここはどーんと!いっしょに
お空へうち上げてもらおー!(おー!と手を上げ
「すごーい!あ、あっち、お花みたいだよ!?あ、あれは何の形かな?」
きれいだねっておにーさんと顔を見合わせるね!
「楽しかったね!」
もう一回行って…あ、あれはなに?
「わたあめ…?」
ふわっふわな雲みたいだよ!?え、雲たべちゃうの!?
「おにーさんのはね、かっこいいわたあめがいいな!おおかみみたいなお耳がついてて、色もね、かっこいい青色がいいな!」
どう、どうかな!(キラキラと見つめ
え、ぼくの…?雪だるまの形がかわいいね!(えへへ
●きみをかたちどるものは
砂浜の中程あたりで、怪しげな機材に囲まれた一つ目小僧が手招きをしている。
どうやら、そこが『妖怪花火』の打ち上げポイントのようだった。
「ひさしぶりのお出かけだから……」
日中に見た海の碧を思い出させるような瞳で叶・景雪(氷刃の・f03754)がヴォルフガング・ディーツェ(花葬ラメント・f09192)を見上げて言えば、不老の人狼は眩しげに目を細めて「そうだね」と返す。
「うん、久しぶりだねえ」
外見の年齢はそう離れていない兄弟のように見えて、内面はまるで孫を愛でる好々爺。
「景雪は身長伸びた?」
ヤドリガミだって肉体年齢次第では背は伸びる、育ち盛りの姿を取る景雪も、きっと。
「えへへ、おにーさんはどう思う?」
そんな景雪は屈託のない笑顔を浮かべ、黒地に青のリボンがワンポイントのサーフパンツ姿で、一つ目小僧の姿を認めてヴォルフガングの手を取る。
「ね、ここはどーんと! いっしょに、お空へうち上げてもらおー!」
空いた方の手を「おー!」と突き上げれば、まるで二人を誘うように妖怪花火がまたひとつどん、と打ち上がる。
ペンギンモチーフのシースルーパーカーが愛らしいと思いきや、精悍な肉体に刻まれたタトゥーや良く見ると際どい水着が大胆なヴォルフガングもまた豊かな尾をゆうらり振って、景雪の小さな手を握り返しエスコートするように一歩前へ踏み出した。
「折角だ、空を目指そう」
「うん! よろしくおねがいします!」
二人並んで一つ目小僧の前に進み出れば、待ってましたとばかりに取り付けられる謎の装置。一見『爆薬かな?』と思ってしまうけれど、花火だからそういうものかも知れない。
「よっし、準備できたぞー! 楽しんでおいでー!」
そう言って一つ目小僧が何やらボタンのようなものをポチッとなすると同時――。
「――っ!!」
「うわわわわわ!?」
ぐんっ、と身体が上に引っ張られる感覚に襲われたと思うや、次の瞬間には腹の底から響くような衝撃にハッと顔を上げた二人を迎えたのは、夜空に咲いたまま静止して足場となった打ち上げ花火たち。
育ち盛りとはいえまだまだ小柄な景雪に対して、恵まれた体躯のヴォルフガングは若干不安定な足場で「よ、と!」と巧みにバランスを取る。
「おにーさん、だいじょうぶ?」
「はは、バランス取るの案外難しいね! でも楽しいから大丈夫だよ」
不思議な花火の上でちょーんと立つ景雪に、長い手足で姿勢を保持しながら笑うヴォルフガング。
二人を打ち上げた花火に続いて、周りを囲むように次々と花火が上がっては綺麗な模様を描いて静止する。
「すごーい! あ、あっち、お花みたいだよ!?」
言われてみれば、地上でもあのように大輪の花を咲かせる植物があったような。
そんなことを考えていると、またひとつ新しい花火が咲き誇る。
「あ、あれは何の形かな?」
「あっちは……そうだなあ、象っぽくない?」
ぞうさん? いわれてみれば……という顔をする景雪の横顔を照らす花火の色もまた、眩い。それを映してぺかぺか輝く硝子玉のような瞳を見ていると、ほんわりする。
ヴォルフガングはそんな思いを裡に秘めて、景雪の手を今度は自分から取った。
「そろそろ降りようか、まだまだお楽しみはこれからだからね」
「うんっ!」
一度目の空の旅はもう十分堪能したとばかりに、花火を足場にとん、とん、とん。
二人は踊るように、夜空から地上へと戻ってきた。
「楽しかったね!」
じゃあ、もう一回行こうと一つ目小僧の元へ駆け出そうとした景雪を、ヴォルフガングが悪戯っぽい顔で手招きした。
「景雪、あれを見て」
「……あ、あれはなに?」
ヴォルフガングが指さし、景雪がつられて見た先には、噂の河童が屋台を出していた。
店先にはふわふわとした何かが次々と飾られ、まるで二人を招いているよう。
「綿あめだね、懐かしいな……」
「わたあ、め?」
心の底から穏やかに懐かしむ賢狼に対して、目をまあるくする短刀のヤドリガミ。
「ふ、ふわっふわな雲みたいだよ!? え、雲たべちゃうの!?」
「ふふ、確かに雲みたいだね」
昔は良く食べたな、なんて言いながらヴォルフガングは驚いたままの景雪を伴って屋台の軒先まで歩み寄る。
「……らっしゃい、猟兵さんだね。お代はいらないよ、好きなデザインで作ってやる」
どうやら『河太郎さん』はちょっぴり職人気質な性格をしているようだ。
「ん? タダでくれるのかい?」
小銭入れを取り出しかけていたヴォルフガングは、有り難いと微笑んだ。
「なら、折角だから貰っていこうか」
河太郎さんとヴォルフガングのやり取りを見聞きしていた景雪が、声を上げる。
「おにーさんのはね、かっこいいわたあめがいいな!」
自分のものではなく、親愛なる兄貴分に手にして欲しい『ふわふわ』を想像する。
「おおかみみたいなお耳がついてて、色もね、かっこいい青色がいいな!」
「……」
ざらざらざらー、円形の機械にザラメ糖が投入され……そこからは、ちょっと良く分からない達人技の領域だった。
ほえー、という顔で見守るしかなかった二人の前に、やがて景雪がリクエストした通りの『かっこいいおおかみさん』の綿あめが供されたのだ。
「……これで、いいかい」
「すごーい! かっこいい! どう、どうかな!」
おおよろこびの景雪に、そして実際結構カッコいい仕上がりの綿あめに面映ゆい心地で、ヴォルフガングはそれを受け取って一礼すると微笑む。
「おや、随分俺を買ってくれてるんだなあ」
少年の好意が、純粋に嬉しい。
だから、お礼にとついと指を伸ばして景雪に相応しい綿あめをと考える。
「君はねー……アレが良いなあ、可愛いお菓子飾りの雪だるま型!」
河太郎さんにかかれば、あっという間。
夏の夜にも負けず溶けぬ、愛らしい雪だるまの完成だ。
「え、ぼくの……?」
ぬっと差し出された、はじめての綿あめに、景雪は顔をほころばせた。
「雪だるまの形が、かわいいね!」
えへへと笑う景雪の何もかもが、そう。
――柔らかく、人を和ませてくれる、君そのものだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
御桜・八重
◎
通くん(f03680)と水着2021デート!
空を駆けまわって花火畑の空中散歩を楽しんで来たよ!
最後は華麗に着地して通くんとニッコリ♪
さて次は…
河太郎さんの綿菓子屋台。
自由自在に雲の様な綿菓子を操る姿に拍手!
「うわっ、何それー!」
通くんの中2イズム溢れる綿菓子剣に目をパチクリ。
何にしようかとキャラクターものの袋を眺めていると。
「…し、シズちゃんっ!?」
サクラミラージュの国民的人気アニメの袋が!
…そう言えば戦争の時幻朧桜あったね。
シズちゃん、こっちにも伝わってたのかも!
…てことは、UDCアースにもシズちゃんが?
おやつ用と観賞用と保存用と3つ抱えてご満悦。
彼にシズちゃんの魅力をアツく語っちゃおう♪
雷陣・通
◎
八重(f23090)と水着2021デート!
空を駆けまわって花火を空中から眺め終わったところからが始まり
意味もなく二丁拳銃(水鉄砲)を十字に構えて着地の後に八重をエスコート
次はどこへ行こうか?
河太郎さんの綿菓子屋台
なるほど、本当の雲のようだ
昔、空の雲が綿あめだったらいいなと思ったことを思い出すよ
「これかい?」
八重が指さすのは俺が買った綿菓子†ダークネス・ホワイト・スレイヤーIV†の包み袋
剣にもなるし中身は綿菓子だぜ
で、八重はどーすんだよーと問いかけたら
目の色が変わってる
……シズちゃん?
ああ、あの日曜の朝にやってるやつだな
成程、八重もまだ……いや、待って八重さん
会話に句読点がない、落ち着くんだ
●空中散歩とオタクトーク
「「たーーーまやーーー!!」」
一つ目小僧の手によって盛大に打ち上げられた雷陣・通(ライトニングボーイ・f03680)と御桜・八重(桜巫女・f23090)の二人は、その手をしっかりとつないだまま、打ち上がったまま静止した花火の上を駆け回り、空中に咲き誇った花火をぐるり眺め堪能してから、とん、とん、と階段を下るようにそれらを足場にしながら地上に戻ってきた。
砂浜に足をつける時も、二人息を合わせて華麗に着地!
一足先に通が水鉄砲の二丁拳銃をクロスさせてカッコいいポーズを決め、すぐさま右手に持った方の水鉄砲を夜空に高々と放り投げ、空いたその手を八重に向けて差し出せば、エスコートされるがままに水着のスカートを翻して両足を揃えて愛らしく舞い降りる。
なお、通が放り投げた水鉄砲は代わりに八重が絶妙なタイミングでキャッチ! 完璧なコンビネーションであった。
完璧なのはそれだけではない、今日のこの日にとしつらえた水着を見よ!
元気いっぱいな二人を象徴するようなビタミンカラーで揃えただけでなく、アグレッシブな印象を与えてくれる大容量水鉄砲でこの夏を満喫する気に満ち溢れている!
それでいて互いを象徴するモチーフはしっかり織り込まれたままというのがまた憎い。
そんな二人が、妖怪花火を満喫するさまは眩しいという他になかった。
「さて、次は……」
「どこへ行こうか?」
なんて言いながら、行く先はもう決まっている。
二人の視線は同じ場所、浜辺に出された屋台へと。
「「河太郎さんの綿菓子屋台!」」
図らずも同じタイミングで同じ台詞を放ち、思わず吹きだしてしまう通と八重。
その声が届いたのか、河太郎さんはふんわり綿あめを作り始める。
「わあ、すごい!」
想像以上に自由自在に雲のような綿菓子を操る姿に八重が感嘆の声を上げれば、通もふぅむと顎に手を当ててそれを眺める。
「なるほど、本当の雲のようだ」
幼かりし頃、空の雲が綿あめだったらいいな、なんて思ったことを思い出してしまう。
「……らっしゃい。好きなのを持ってっていいぞ。なければ作る」
訥々とした口調で、綿菓子をくるくるしながら河太郎さんは二人に綿菓子を勧めた。
「通くん、どうする?」
「……」
珍しく、通が八重の言葉に返事をせず、屋台に並ぶ袋入りの綿菓子をじっと見ていた。
「うわっ、何それー!」
「これかい?」
そしておもむろに通が手に取ったモノを見て、八重が思わず声を上げてしまう。
八重の繊手が指し示す先には、通が得意げにかざす細長い袋入りの綿菓子が。
「その名も『†ダークネス・ホワイト・スレイヤーIV†』……剣にもなるし、中身は綿菓子。フッ……最強すぎる」
「う、うん……」
彼氏の性癖はある程度把握しているつもりだったけれど、こうして改めて目の当たりにすると目をパチクリさせてしまうのが一般人たる八重の感性。大丈夫、それが普通です。
(「わたしの知ってるキャラクターものも、もしかしたらあったりして……」)
なんてね、と軽い気持ちで自分もとキャラクターものの袋を眺める八重が、ふと、その動きを止めた。
「で、八重はどーすんだよー……?」
その時、通は確かに見た。
目の色を変えて、とある綿菓子の袋をガン見する八重の姿を。
「……し、シズちゃんっ!?」
衝撃であった。ここはカクリヨファンタズム、なのに目の前には確かにサクラミラージュの国民的人気アニメのキャラクターがプリントされた袋があるのだ。
ごしごし、と両目をこすってもその事実は変わらない。ガチだ。マジだ。
(「……そう言えば、戦争の時、幻朧桜あったね……」)
なるほどそう考えれば納得も行く。きっと、何らかのつながりがあるのだろう。
「シズちゃん、こっちにも伝わってたのかも!」
「……シズちゃん? ああ、あの日曜の朝にやってるやつだな」
ちなみに通は同じニチアサでも別の特撮モノをたしなんでいるので、シズちゃんは守備範囲外であった。この際だからお互いの好きなモノも観よう!
「……てことは、UDCアースにもシズちゃんが!?」
夢がひろがりんぐ――!
それはそうと、シズちゃんの袋を
・おやつ用
・鑑賞用
・保存用(特殊なガスを充填してもらいました)
の三つ、腕いっぱいに抱えてご満悦の八重さんでありました。
「成程、八重もまだ……」
「通くんニチアサ観てるのにシズちゃんは観てないの!? 信じられない!! じゃあいい機会だからわたしが布教しちゃうね♪」
「いや、待って八重さん」
通は、悟った。これは、限界オタクトークの開幕を告げる鐘の音だと。
通は、止めねばならぬと思った。何故なら、一度マシンガントークが始まると止まらないのが世の常だからだ。誰だってそうするし何なら俺だってそうするし。
「シズちゃんはね伊達にサクラミラージュで国民的人気アニメの座に輝き続けてる訳じゃないの主題歌は老若男女みんな無意識に歌えるレベルで有名だしストーリーもただの幼児向けアニメとは一線を画する重厚かつ普遍的なテーマを内包していてこれはもう全国民必修と言っても過言じゃないのそうこれは人生の教科書と言えちゃうの! 初見ならまずはシズちゃんと失踪した親友編とネタバレになるから黙ってるけどお父さん周りのエピソードは絶っっっ対に観てほし」「会話に句読点がない! 落ち着くんだ!!」
これは決して八重の限界トーークに耐えられなくなったから制止したのではない。
八重の呼吸器周りを心配してのことである。いいね?
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヘスティア・イクテュス
【助けて/3】◎ 2021水着着用
打ち上がる花火が良く見えるビーチ
手にはおすすめされた七色の綿菓子
目の前にはデンと置かれた拷問具、そして焼かれる肉
ふぁいやー(棒)ニコ!助けて!(死んだ目で)
そもそも何故わたしがこれらの保護者役として来る羽目になったのか…
一番こういうのに慣れてそうなのにはじゃあ後は任せたわって逃げられたし…ニコ、助けて…(涙目で)
わぁーすごい量のお肉…大皿の上で山になってるぅ…(白目)
そして二人の手で作られる丸焼きキャベツの山
ニコ!!助けて!!(キレ気味)
そして羅鬼のライブという言葉を聞き
ニコ、助けて(真顔)
あのヤバイやつを共に止めるわよ!
来年は平和に過ごせたらいいわネ!
月影・このは
【助けて/3】◎ 水着おまかせ
皆さん水戦用装備評価コンテストの方お疲れさまです
ボクは投票だけでしたが皆さんの装備動きやすそうで素敵でしたね!
ということでファイヤー!(UC)
らきさんの用意した高級牛肉を二人で協力して火を点け
ヘスティアさんも、ほら一緒に!
あっ、ニコさんもお疲れさまです(敬礼)
水戦用装備とても格好良くて似合ってましたね!あの模様やはり魔術的記号が込められてるのでしょうか?
来年はボクも各世界の技術を込めた装備で参加したいですね~
あぁ羅鬼さん、お肉ばかりでは健康に良くないかと…
ここはお野菜も…ふぁいやー!
なるほど、食事をしながらのライブですか楽しみですね!
怨燃・羅鬼
【助けて/3】◎ 2021水着着用
水着コンテスト皆お憑かれサマー☆
(自称)バズリトレンディ様の弟子のらきちゃん☆が皆を持て成すネ!
目の前にはふぁらりすくん☆
これにふぁいやー(UC)☆火を着けて~お肉を載せて~
謝肉祭(カーニバル)だヨ!謝肉祭だよ!カニバルだよ☆
あっ☆ニコだネ!ハロハロー☆
くふふ☆こう人数が増えることも考えて丑惨もたっぷり用意したよ!
(数十人分のお肉を持ってきて)
ヒャッハー☆(火力増)
このはの言う通り☆お焼菜もアイドルとしては食べないとネ!
そしてこの後は美味しく食べながららきちゃんの生羅逝武だよ☆皆、お愉しみにネ!
●どうしてこの面子で来ちゃったんですか?
妖怪花火は、猟兵たちを乗せて次々と夜空へと打ち上がる。
オーソドックスなものから変わり種まで、さまざまな種類が咲き誇る。
それを敢えて地上で眺めて楽しむのもまた、ひとつの在り方であり――。
「打ち上がる花火が良く見えるビーチ……」
水色のストライプが眩しいビキニの甘い雰囲気を、羽織った白い軍服が程良く引き締める装いをしたヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)が呟く。
その手には、グリモア猟兵や河太郎さんイチオシの七色をした綿菓子が。
目の前には、デンと置かれた拷問具……え!?
「ニコ! 助けて!」
「待て! まずは何がどうしてこんな事になったのかから説明して欲しい!」
同じく七色の綿菓子を持ったまま唖然呆然とする間もなくヘスティアから助けを求められ、ついでに巻き込まれたニコ・ベルクシュタインが困惑しながらも返す。
大きな雄牛型の拷問具には、見覚えがあった。
こんなん普通に持ち出すの、あいつしかいねえ!
「水着コンテスト、皆お憑かれサマー☆」
愛らしいパーカーに際どいビキニはすべて牛さん柄、そこだけ見れば本当に可愛いだけの美少女なのに、その正体が怨燃・羅鬼(怒りの心を火に焚べろ・f29417)だと知れば、理解っている者は皆秘められた本性に恐れおののくに違いない。
「皆さん、水戦用装備評価コンテストの方お疲れさまです」
その隣でニッコニコしている月影・このは(自分をウォーマシンと思いこんでいる一般ヤドリガミ・f19303)の天然ゆえの恐ろしさもまた侮れず、なるほど確かにヘスティア一人では面倒を見きるのはちょっと難しそうではあった。
このはも緑と紺のストライプ柄をしたグレコタイプの水着……水中戦用特別装備で真夏のビーチにログインである。
「ボクは投票だけでしたが、皆さんの装備動きやすそうで素敵でしたね!」
どうやらこのはの水着に対する評価基準はあくまでも機動性にあるようだ。確かに。
一方のらきちゃん☆はウッキウキで拷問具に手を添えて、もう片方の手を振る。
「(自称)バズリトレンディ様の弟子のらきちゃん☆が皆を持て成すネ!」
そう、今ビーチの上に鎮座しているのは、らきちゃん☆愛用の『ふぁらりすくん』。
名前がどんなに可愛かろうが、禍々しい見た目はどうしようもない。
らきちゃん☆とこのはが左右から挟みこむように間合いを取ったと思うや――。
「「ふぁいやー!!」」
らきちゃん☆が両手で作ったハートから!
胸部をパカリと開いたこのはから!
熱線砲がビーーーッと放たれ、ふぁらりすくんに盛大に着火!!
「「ふぁ、ふぁいやー……」」
そんな様子をヘスティアとニコは死んだ目で見つめながら、ぼんやりと呟いた。
「火を着けて~お肉を載せて~、謝肉祭(カーニバル)だヨ! 謝肉祭だよ!」
「らきさんの用意したお肉、高級牛肉ですね!」
「カニバルだからネ☆」
「待って! それだとちょっと意味が変わるからダメ!!」
じゅわわわと早速美味しそうな肉の焼ける音と共に始まった謝肉祭の読みがヤベえと、ヘスティアが瞳に輝きを取り戻して保護者役の務めを果たす。
(「そうだ、その調子だヘスティア……頑張れ……!」)
そんなヘスティアの奮闘振りを、後方彼氏面よろしく見守るニコ。
らきちゃん☆が目ざとくニコの姿を見つけ、元気良く手を振った。
「あっ☆ ニコだネ! ハロハロー☆」
「あっ、ニコさんもお疲れさまです」
次いでこのはもニコの姿を認め、ビシッと敬礼して声をかける。
「水戦用装備、とても格好良くて似合ってましたね!」
「ああ、有難う……見てくれたのか、とても嬉しい」
はい! と元気良く返事をして、このはは両手を握り拳にして熱く語る。
「あの模様、やはり魔術的記号が込められているのでしょうか? 来年はボクも各世界の技術を込めた装備で参加したいですね~」
「そうだな、来年はこのはも取っておきの……そうだな、装備を用意するといい」
水着、とは敢えて言わずに話を合わせて『装備』と呼ぶ。
このはにとっては大切な部分なのだろうと、そうニコは考えたから。
この調子で行けば、見た目こそめっちゃヤバいものの一応は普通のビーチでバーベキューという微笑ましい一幕で話がまとまりそうだと、ヘスティアは大きく息を吐く。
「そもそも、何故わたしがこれらの保護者役として来る羽目になったのか……」
「言われてみれば、常ならば六道銭が同伴しそうな感じがするのだが……」
ニコも不思議そうに首を傾げれば、ヘスティアは再び大きなため息を吐いてしまう。
「でしょ? 一番こういうのに慣れてそうなのに『じゃあ後は任せたわ』って逃げられたし……」
「アッ……」
たまには六道銭も楽がしたかったのか、それともヘスティアに厄介ごとを押し付けただけなのか、はたまたこれもまた経験という親心か。
真意は本人のみぞ知るという状態で、ニコはただ一言発することしかできなかった。
「そういうワケなのよ、ニコ、助けて……」
「いや、俺にも流石に出来る事と出来ない事が」
――じゅわああああああああああ!!!
ヘスティアとニコが救い難いやり取りをしている最中、肉が焼ける音といい匂いがひときわ強まった気がした。
無意識に音と匂いの方――ふぁらりすくんの方を見れば、載せられた肉の量が明らかに増えているではないか。
「くふふ☆ こう、人数が増えることも考えて丑惨(うしさん)もたっぷり用意したよ!」
らきちゃん☆がドバーンと見せるのは、ざっと数十人分はありそうな、フレッシュなお肉……!
ヒャッハー☆ と再びらきちゃん☆がいわゆる【燃え☆燃え☆忌逝】で――我々が知っている一般的なもえもえきゅんとは相当違うそれでふぁらりすくんの火力を増す。
「ヘスティアさんも、ほら一緒に!」
「やめてー!!」
煌々と燃え盛るふぁらりすくんの上で焼ける肉にはまったく罪はないものの、このテンションに巻き込まれるのはマズい。
そう判断したヘスティアは、ぐいぐい引っ張ってくるこのはの誘いを必死に振り払おうとする。
「わぁーすごい量のお肉……大皿の上で山になってるぅ……」
それでも既に焼き上がった高級牛肉の第一陣が待ち受けているさまを見ると心が弾……むこともなく、逆に白目をむくヘスティア。
諸悪の根源ことらきちゃん☆とアシスタント状態のこのはは、そんなヘスティアの様子もお構いなしに謝肉祭をさらに盛り上げていく。
「あぁらきさん、お肉ばかりでは健康に良くないかと……」
そう言ってこのはがドカドカとふぁらりすくんの上に追加するのは――。
「「あのキャベツ……切っていない!?」」
そう、一度たりとも包丁が入っていない、かろうじて洗ってあるだけのキャベツ!!
「このはの言う通り☆ お焼菜もアイドルとしては食べないとネ!」
「いやいやいや待て、待つんだ、流石にキャベツをそのままというのは……」
遂に耐えきれなくなったニコが制止に入るも時既に遅し。
「「ふぁいやー!!!」」
こいつら何でも火力で何とかすればいいと思ってやがる!
二人の手で作られていく丸焼きキャベツの山を見て、ヘスティアが涙目で叫んだ。
「ニコ!! 助けて!!」
「だ、だが待って欲しいヘスティア……あの二人、肉も野菜もきちんと食べている……」
食べ物を粗末にしていない以上、ニコとしては止める理由がないという理屈だった。
もっしゃもっしゃと美味しいお肉と豪快に焼かれたキャベツを食べながら、らきちゃん☆が指をくるくるさせて、こう言った。
「そしてこの後は、美味しく食べながららきちゃん☆の『生羅逝武』だよ☆」
――その時、ヘスティアとニコの身体を、生命の危機を知らせる何かが駆け抜けた。
「なるほどー、食事をしながらのライブですか、楽しみですね!」
このはは一切動じずに、本来ならばあまり効率が良くないであろうエネルギーの摂取方法である食事を、せっかくだからと楽しんでいた。
「らきちゃん☆の……生ライブ……」
呆然とするニコの腕に、ヘスティアがすがりついてこの上ない真顔で言った。
「ニコ、助けて」
「……もう、駄目だ」
「あきらめないで! あのヤバいやつを共に止めるわよ!」
存外諦めが早いヤドリガミを奮い立たせるように宇宙海賊の船長たるヘスティアが叫び、勇ましくらきちゃん☆とこのはの方へと向き直った。
「皆、お愉しみにネ!」
「来年は平和に過ごせたらいいわネ!」
どん、どぉん。妖怪花火は上がり続ける。
この楽しいひと時を守れるのは君しかいない、頑張れヘスティア――!!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ミコト・イザナギ
【狼天狗/2人】
仕立てたばかりの水着で参加
空に打ち上がった妖怪花火を飛び石の様にとーん、と跳ねて渡り
せがむディアナさんを抱きあげて、二人きりの空の散歩を楽しみましょう
その前に河太郎さんに綿菓子を作って貰って
食べ歩きながらと祭りの醍醐味を楽しんで
ちなみに、天狗の綿菓子って出来ますか?
大好きなんです天狗
花火の上から地上の星が綺麗という彼女を見詰め
アナタ程ではありませんが、と気障に
不可思議な日常をディアナさんと一緒に堪能しましょう
血濡れの道と命短し宿命を自ら定める二人だからこそ
このささやかなひととき、こうしていられる幸福噛み締めて
戦いを今は忘れて、踊り楽しまねば
ディアナさんと楽しいひととき過ごす
ディアナ・ロドクルーン
【狼天狗/2】
「2021水着」
河太郎さんにふわっふわの綿菓子を作ってもらう
ふふ、やっぱりミコトさんは天狗なのね
私は何を作ってもらおうかな、向日葵にするわ
物珍しいお祭りを見て、楽しんでいざ花火で空の上に
飛び跳ねるのが上手そうなミコトさんにお姫様抱っこをせがんでみる
同じ目線で同じものを見たいの
あは、すごい。とても眺めが良いわ。地上の光がとても綺麗ね
戦いに身を投じるのも好きだけど、こうして遊ぶのもまた楽しい
誘ってくれてありがとう、とても嬉しいわミコトさん
光輝く夜を奔る 奔る
天狗が風に乗って奔る
受ける風が心地よく、交わす言葉も弾むだろう
似た者同士が綴る真夏のひと時が良き思い出になりますように
●夜空を駆けるふたり
何かすったもんだあったようですが、まだまだ楽しい夜は続きます。気を取り直して行ってみましょう!
という訳で、あちらに見えるは見目麗しき二人組。夜に溶け込むようで、けれど艶やかに浮かび上がる美しさが、そこにはあった。
ミコト・イザナギ(語り音の天狗・f23042)の、鍛え上げられたボディラインを余すことなく見せつけつつも羽織った上着で優雅さを醸し出すその姿。
ディアナ・ロドクルーン(天満月の訃言師・f01023)の、水着自体はシンプルでありながらヴェールや装飾品が調和して引き立てる可憐な水着姿。
そんな二人が連れ立ってビーチを歩くさまは、一言で言えば『絵になる』。きっと、日中のコンテストでも注目を集めたに違いない。
そう、せっかくの仕立てたばかりの水着だもの、もっと着たまま楽しみたい!
どん、と空に打ち上がる妖怪花火の音がお腹にまで響く中、ミコトとディアナは噂の河童の屋台を目指してビーチを歩く。
並んで歩く二人に一見して驚くほどの身長差があるのは、ただでさえ背の高いミコトがいわゆる『天狗下駄』と呼ばれる一本歯の下駄を履きこなしているから。
絶妙なバランス感覚が問われるだろうに、器用な人――なんて、ディアナが思ったかどうかはさておき、二人は河童の河太郎さんの屋台へとたどり着く。
「……らっしゃい、猟兵さん。何か作るかい?」
職人気質、を思わせる河太郎さんの声に、一度顔を見合わせた二人は――ふふ、と笑って河太郎さんへと向き直る。
「お願いします、ちなみに――天狗の綿菓子って出来ますか?」
「天狗、ああ――任せておけ」
ほんの少しだけ思案した後、河太郎さんはひとつ頷いて引き受けた。
「ふふ、やっぱりミコトさんは天狗なのね」
そんなやり取りを見ていたディアナは微笑って、私は何を作ってもらおうかなと「嬢ちゃんはどうする」と言わんばかりに視線を向けてきた河太郎さんを見る。
「大好きなんです、天狗」
ミコトは口元を緩めてそう言うと、ディアナはどうするのかと同じく様子をうかがう。
んん、と唇に人差し指を当てて考えることしばし、乙女はこう告げた。
「――向日葵にするわ」
「向日葵か、わかった。じゃあ少し待ってな」
二人の注文が出揃ったところで、綿菓子職人の河童はざららとザラメ糖を機械に投入して、早速くるくると雲のような綿となった砂糖菓子を巧みに注文通りの形に仕立て上げる。
天狗の綿菓子は、絵本に出てくるような典型的な天狗の絵姿をしていて、鼻だけがえらく長いところまで忠実に再現されていた。
向日葵の方は、造形こそデフォルメされているものの大きさはほぼ実物の花と原寸大。黄色と薄茶で彩られた、花弁の一枚一枚に至るまで丁寧にくっ付けられたものだった。
「これで、いいかい」
「ありがとうございます、河太郎さん。お代は……」
「妖怪親分たちからの頼みだ、今日はいらねえよ」
「それは、すみません……! ありがたく、いただきます」
気ぃつけてな、なんて心遣いの言葉を背に受けて、再びビーチへと繰り出す二人。
作ってもらった綿菓子を早速二人で食べ歩きながら夜の浜辺を行けば、次々と打ち上がる花火に乗って思い思いに楽しむ猟兵たちがとても眩しい。
ふわふわの綿菓子を口に運んでは溶かしてを繰り返しているうちに、ミコトとディアナの足は自然と妖怪花火の打ち上げスポットへ。
そこでは、一つ目小僧の妖怪が次の獲物……じゃなかった、猟兵を待ち受けていた。
「ヘーイ、そこの美男美女! ちょっと打ち上がってみないかい?」
「もぐ。……丁度食べ終わりましたし、そろそろ行きますか」
「はむ。……そうね、とっても楽しみにしていたの」
軽い口調で誘う係員の一つ目小僧に、二人して同時に綿菓子を食べ終えたところでと向き直る。
「綺麗な水着だねぇ、大丈夫! 痛めないように飛ばすから任せておけよー」
何やら火薬のようなものを手際良く二人の身体に巻き付けながら、一つ目小僧は準備を進めていく。
そうしてしゅばっと火が灯され、導火線に着火したら――。
――どぉ、んっ!!
「「……っ!」」
声を出す間もなく、あっという間に二人は宙へと打ち上げられた。
天高く舞い上がり、それぞれの足元に火の華が咲けば、とん、とその上に着地する。
「はは、これは凄い――よっ、と!」
どん、どどん。後から追いかけてくるように打ち上がり足場となる美しい花火の上を、まさに天狗よろしく飛び石の上を跳ね回るがごとく跳ねるミコト。
一方のディアナは慎ましく一歩一歩花火の上を歩いてその後を追うけれど、活き活きと飛び跳ねるミコトを見て、ふと思いつくことがあった。
「ミコトさん」
追いついて、赤と黒が綺麗な上着の裾を少し引いて。
「お姫様抱っこ、してくれるかしら?」
――せっかくの景色だもの、あなたと同じ目線で、同じものを見たいの。
答えの代わりに、ふわりとディアナの身体が浮いた。
「しっかり掴まってて下さいよ、落ちたら大変ですからね」
「……ありがとう」
紳士な天狗の首に腕を回して、人狼の乙女は共に空中散歩を開始した。
「あは、すごい。とても眺めが良いわ、地上の光がとても綺麗ね」
「アナタ程ではありませんが」
「……もう」
二人揃って同じ景色を見る。周りに打ち上がる花火たちも美しいけれど、ここからでなければ見られない地上の営みの証たる光が、ディアナにとっては何より綺麗に見えて。
そんなディアナをこそ見詰めて、気障な台詞を決めてみるミコトの笑みは悪戯っぽく。
(「今は、この不可思議な日常をディアナさんと共に」)
そうして自らも地上に目を向ければ、点々と灯る光は間違いなく美しかった。
(「戦いに身を投じるのも好きだけど、こうして遊ぶのもまた楽しい」)
知れず、首に回す腕に少し力を込めて、耳元でこう囁いた。
「誘ってくれてありがとう、とても嬉しいわミコトさん」
返事の代わりに、今度はひときわ大きな跳躍で、大輪の花火の上へと着地した。
光輝く夜を、奔る、奔る。
天狗が風に乗って、奔る。
それから、ひと跳びするごとに、いろんな言葉を交わした。
服を、髪を、尾を、風になびかせ心地良いままに。
互いに己の生き様を、血濡れの道を征くものと知っていたけれど。
明日をも知れぬ身と言えるほどに命短しと宿命づけられていても。
――だからこそ、このささやかなひととき、こうしていられる幸福噛み締めて。
戦いのことは、今は忘れよう。存分に踊り楽しもう。
似た者同士が綴るこの真夏のひと時が、良き思い出になりますように。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
稿・綴子
【夜香/2】
ニュイくんは喋り友達/恋愛NG
21年の水着
アドリブ歓迎
彼岸花の綿飴
久しいな、元気だったかい?
くく
吾輩は相も変わらずドロドロ話を覗き込んでは奇譚集めに耽っておるよ
貴兄の経験を面白可笑しく語るが良い
…彼女の事はなにかわかったのかい?
吾輩に今宵記してくれ給え
今はその犬が縁(ヨスガ)かい
縁は沢山持つが良い
吾輩にとっては掻き集めし奇譚全てが縁よ
吾輩も物品
遺体も物品
けどよ、ぺらぺらお喋り女
彼女も姦しくなると良いな
斯様に人とは興味深いものよ
経験を積み重ねるも記憶という曖昧さに融けて定かではない
綴っておけば事実を留めておけるのによ
ハハッ!吾輩は日記をつけておらんがな
曖昧な人の形で記憶するもまた一興
霧島・ニュイ
【夜香/2】
アドリブ歓迎
2021水着
飼い妖怪わんこのチョビの形の綿飴を食べながら
そっかー。綴子ちゃん相変わらずだなあ
僕も相変わらずかなあ
(死後遺体を使って動かしてる人形について聞かれ)
リサちゃんのことも分かんないんだ
忘れた記憶は忘れたまま
最近は声まで思い出せないんだ
皮肉だよね
彼女は止まってるのに僕は動いてる
(じゃれてくるチョビの頭を撫でてやり
チョビに依存してる自分に気づいてる
本命の彼女は作ってないから…いいよね?)
………
(遺体リサイクルも上の話全部彼女には初公表だが)
僕の奇譚、気に入ってくれた?
(花火を聴きながら笑って)
人の記憶ほど不確かなものはないよね
僕も信じてないや、あっさり忘れるんだもの
●都合の良い記憶
どん、どぉん。
妖怪花火はいよいよ打ち上げの頻度を上げてビーチを賑わせていく。
打ち上げ係の一つ目小僧もあくせく働いていることに違いないが、その喧騒からは少々離れたところで、霧島・ニュイ(霧雲・f12029)と稿・綴子(奇譚蒐集・f13141)は並んで座っていた。
艶やかな朱の水着のモチーフと同じ彼岸花の綿菓子を作ってもらった綴子と、瞳の色と同じく綺麗な緑のサーフパンツを仕立ててもらったニュイが持つのは……愛らしいもちもち茶まろわんこの綿菓子。
打ち上がる花火の色に照らされるまま、綿菓子をはむりと食べながら波の音を聞く。
「久しいな、元気だったかい?」
綴子が砂糖菓子でできた彼岸花の花弁を一枚食いちぎり、ニィと問うた。
「くく、吾輩は相も変わらずドロドロ話を覗き込んでは奇譚集めに耽っておるよ」
蒐集のみならず、自らも事件の発端を見出して猟兵たちに斡旋している最中というのはさておきとして。
「そっかー、綴子ちゃん相変わらずだなあ」
飼い犬……もとい、飼い妖怪わんこの『チョビ』を模した綿菓子を一片ちぎって口に運びつつ、ニュイは応える。
「僕も相変わらずかなあ」
こういう時、いざ『最近どうよ』と問われると、なかなか言葉に迷うものがある。
そういうものだろうさと理解している綴子ゆえ、ニュイの言葉を促すようにこう言ってみせた。
「貴兄の経験を、面白可笑しく語るが良い」
「えっ」
ここだけ聞くと『ここでボケて!』と指示されたようで困惑するが。
「……『彼女』の事は、なにかわかったのかい?」
「……」
具体的に言われれば、すうっと霧が晴れるかのごとく思考がハッキリする。
「吾輩に、今宵『記して』くれ給え」
――彼女。
――死後、その遺体を使って動かしている、人形。
「リサちゃんのことも、分かんないんだ」
砂糖菓子で甘くなった口内を味わいながら、紡ぐ言葉の口調はほんのり苦い。
「忘れた記憶は、忘れたまま」
都合良くある日ポッと記憶が鮮やかに蘇る、なんて都合の良い『噺』はなく。
「最近は、声まで思い出せないんだ――皮肉だよね」
――彼女は止まってるのに、僕は動いてる。
「……ふゥん」
彼岸花纏いし女は、また綿菓子の花弁をひとかじり。
一方で綿菓子を食べる手を止めてしまったニュイに、くぅんとじゃれつく姿あり。
「……チョビ」
体育座りをしていたニュイの太ももあたりに短いあんよをちょいちょい乗せて、まるで寄り添うようにスンスン鳴く茶まろわんこの名を呼び、その頭を撫ぜてやる。
「今はその犬が縁(ヨスガ)かい」
「……そう、だね」
これは、依存? ああ、依存だ。
けれど――本命の彼女は作ってないから、いいよね? なんて。
わんこに向ける情と、彼女に向ける情と、そして隣のヤドリガミの娘に向ける情は、すべて異なるもの。すべて異なり、そしてすべてが己を支える大切なものだ。
「縁は沢山持つが良い、吾輩にとっては掻き集めし奇譚全てが縁よ」
貪欲に奇譚を蒐集するのは、綴子にとっては一種の捕食行為にも似ているようで。
それがなければ、生きていけない。
自らの血肉として、生きていく。
そういう意味では、確かに『縁』は多く持っておくに越したことはないのだろう。
そっか、と。呟いて綿菓子かじりを再開したニュイに、綴子は続ける。
「吾輩も物品、遺体も物品」
「……、……」
「けどよ、ぺらぺらお喋り女。彼女も姦しくなると良いな」
遺体を『リサイクル』したことも、今しがた語ったことも、すべて綴子には初めて明かしたことだったのに。
物語を咀嚼して、理解する速さは流石としか言いようがなく。
どぉん、どぉん。
ぱぱぱぱぱ。
「僕の『奇譚』、気に入ってくれた?」
花火の音を聴きながら、ニュイは笑って再びチョビの頭を撫でた。
勿論、と言わんばかりに綿菓子の最後のひとかけを食み、すいと割り箸を横に引く綴子。
「斯様に人とは興味深いものよ、経験を積み重ねるも記憶という曖昧さに融けて定かではない」
綴っておけば、事実を留めておけるのによ。
わかっていて、それをしないのは不思議よ。
「人の記憶ほど不確かなものはないよね」
機械の記憶領域のように精密で正確なものであったなら、と思わなくもないけれど。
「僕も信じてないや、あっさり忘れるんだもの」
「ハハッ! 吾輩は日記をつけておらんがな」
そして二人は顔を見合わせて、笑い合う。
――曖昧な、人の形で記憶するのも、また一興ではないか。
――曖昧に、しておいた方が良いことだって、きっと多い。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エンティ・シェア
河童の店主殿に、綿菓子を…三つお願いできるかな
この、黒熊と、白兎と、茶猫を、模してほしいんだ
ストラップを連ねて見せて
この形でなくとも、それっぽければ十分だよ
綿菓子を受け取ったら、静かな場所で花火を見上げよう
同室の隣人で、同居人二人も呼んで
はい、君達の綿菓子
黒熊を「僕」に
白兎を「俺」に
茶猫は、私のだ
私も、彼らと揃いの、真の姿を模した猫耳の和装に、化けておくよ
花火の合間に、二人へ声を
あのね、君達に聞きたい事があったんだ
名前を、教えてほしい
やっとか、なんてため息混じりに言われて
教えてもらえたふたりの名前
リージュと、アリエル
…私は、フィルオール
いずれ、呼んでおくれ
…リージュ、アリエル
花火、綺麗だねぇ
●名前を、教えてくれないか
打ち上がる花火に、何も無理をして乗って飛ぶ必要はない。
そのための、綿菓子職人・河太郎さんだ。
地上でゆうらりと妖怪花火を楽しむための、良きお供とならんことを。
エンティ・シェア(欠片・f00526)は繊細なレェスも美しい水着を纏って夜のビーチに舞い降りた。
河太郎さんの屋台に向かうと、こうお願いをしたという。
「綿菓子を……三つ、お願いできるかな」
「三つ? ……ああ、分かった」
一人で三個を? と一瞬思ったのだろう、けれど事情を問うのも野暮というもの、河太郎さんはすぐに承諾して「どんな形がいい」と問う。
エンティはすいと愛らしいぬいぐるみが連なったストラップをかざして見せた。
「この、黒熊と、白兎と、茶猫を……模してほしいんだ」
「……ほう」
ずいと身を乗り出してストラップの造形を睨む河太郎さんに、エンティはフォローを入れる。
「この形でなくとも、それっぽければ十分だよ」
「いや、やろう。ちょっと待ってな」
ざららとザラメ糖を機械に放りながら、真剣な表情で綿菓子を自在に操り出す河太郎さん。見本になればとストラップを掲げ持ちながら、エンティは匠の技に見惚れてしまう。
「……」
「まず、一つ」
割り箸には刺さず、袋に入れて屋台正面に黒熊の綿菓子が置かれる。
「次は、こうか」
次いで、白兎が入った袋が。
「それで、茶猫だったな」
最後に、茶猫の綿菓子が入った袋が並び、エンティの願いは叶えられたのだった。
河童の店主に丁重に礼を告げ、エンティが向かったのは人気のない静かな浜辺。
人目に付きづらく、ゆっくりと花火を見上げることができる場所だ。
だから、だからこそ、呼べる。
「ふたりとも、頼んだよ」
先程まで河太郎さんに見せていたストラップのうち、黒熊人形と白兎人形とが自然と解き放たれて、ひとのカタチを取っていく――これこそが超常【同室の隣人】である。
「今日は何です? 厄介ごとは御免ですよ」
「何だぁ、こんなクソ暑い中わざわざ呼びだして」
少々癖のある別人格を呼びだしたのは、他でもない。
エンティは先程作ってもらった綿菓子を、黒熊の『僕』と白兎の『俺』とに渡す。
「はい、君達の綿菓子」
「「……」」
唐突に呼び出されたと思えば、綿菓子を渡された。
何だ何だと思っていれば、どぉんと打ち上がる妖怪花火。
「ははぁん、そういう……」
「それなら、悪くねぇなぁ」
何やかやで素直に綿菓子を受け取る二人を見て、自らも笑んで茶猫の綿菓子の袋を抱く。
猫耳の和装は、二人と揃いの真の姿を模したもの。
そうして、改めて聞きたいことを、花火の音の合間に尋ねるのだ。
「あのね、君達に聞きたい事があったんだ」
「……何でしょう」
「名前を、教えてほしい」
はぁ、とため息を吐いたのは『俺』。
「やっとか、いつ聞いてくるかと思えば、こんな時とはな」
――『リージュ』と、名乗った。
綿菓子のお礼もありますし、と不敵に笑った『僕』は。
――『アリエル』と、名乗った。
「……私は『フィルオール』。いずれ、呼んでおくれ」
そう言った『フィルオール』の笑みは、とても清々しいものであった。
「……リージュ、アリエル」
三人並んで、綿菓子を食みながら見る、それは。
「花火、綺麗だねぇ」
返事はなくとも、悪い気はしていないのだろうなと。
伝わってくる、だって同室の隣人同士だもの。
大成功
🔵🔵🔵
木常野・都月
◎
水着:2021のもの
花火を歩けるなんて、不思議な感じだな。
チャンスをみて歩くとして。
まずは噂の綿菓子を食べたい。
な、チィも綿菓子気になるだろう?
この人が綿菓子の名人、河太郎さんか。
ん〜
狐の顔の形の綿菓子…作れますか?
チィは?
えっともう一つ、稲荷寿司の形の綿菓子を。
ダメそうなら、ボールみたいに綺麗なまん丸の綿菓子に変更して下さい。
出来た綿菓子を…いただきます!
あっ!チィ、落ち着け!
…帰ったら風呂だな。
美味いか?美味いなら…まぁいっか!
うん。ふわふわで、甘い。
あの砂糖みたいな粒から、どうしてこんなフワフワが出来るんだろう。
不思議だな。
凄い、他の人達、本当に花火の上歩いてる。
早く俺達もいこう!
●キャッキャウフフの綿菓子体験
「花火を歩けるなんて、不思議な感じだな」
袖なしのウェットスーツは新進気鋭の「Diving FOX」ブランド、白いシャツを上に気だるげに羽織った木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)の姿はいつもより大人びていて、それはひとえに彼の『真の姿』をあらわにしているからであった。
月の精霊の子・チィを連れて夜のビーチを行く都月は、いよいよ盛大に打ち上がる花火を見上げて、けれどあれは機を見て歩こうと優先順位を後回しにする。
ならば、何を最優先にするかと言えば――河童の河太郎さんの綿菓子屋台!
(「まずは、噂の綿菓子を食べたい」)
見た目もさることながら、きっと甘くて美味しいのだろうと思うと、知れず尾も揺れる。
「な、チィも綿菓子気になるだろう?」
「チ!」
都月の問いかけに、顎を思いっきり上げて短く返事をするチィの気持ちが痛いほど伝わってきて、ならば一刻も早く河太郎さんの屋台へ行こうと小走りになる都月であった。
「……らっしゃい」
「……(ごくり)」
いかにも職人気質といったていの河太郎さんに、都月が思わず息を呑む。
(「この人が綿菓子の名人、河太郎さんか」)
「何にする?」
「はっ! ん、ん~、狐の顔の形の綿菓子、作れますか?」
屋台の前でつい『ザ・職人』という感じの河童の姿に見入ってしまっていると、河太郎さんの方から催促をされて、都月はお願いしようと思っていた形を伝える。
「分かった。……そっちの小さいのは、綿菓子食べれるのかい」
「えっ、チィの分もいいんですか?」
お願いできたらな、という気持ちはあったものの、河太郎さんの方から訊ねてくれるとは思わず、思わず嬉々とした声を上げてしまう都月。
「良かったな、チィ、どうする?」
「……(チィチィ)」
問いかける都月の肩に後ろ脚で立ち、大きな狐耳に向けて鳴いて何かを伝えるチィ。
「わかった……えっと、もう一つ、稲荷寿司の形の綿菓子を」
「稲荷寿司? そんな簡単な形でいいのかい。まぁ、任せときな」
河太郎さんはほんの少しだけ、微笑ましいリクエストに対して笑った気がした。
(「ダメそうなら、ボールみたいに綺麗なまん丸の綿菓子にしてもらおうと思ってたけど」)
どちらかと言えば、そちらの方が難易度は高かったかも知れない。
「ほらよ、落とさないようにな」
「ありがとうございます!」
「チィ!」
デフォルメされた狐の顔と、一見普通の四角に見える稲荷寿司の綿菓子。
受け取ってはにかんで、都月とチィは河太郎さんの屋台を後にする。
チィの分も綿菓子を持ってあげているため、都月の両手はふさがっていて、チィには自主的に食べてもらう形となったのだが――。
「いただきます! って、ああっチィ、落ち着け! あー!!」
「(もっもっもっ)」
何と、チィは自分より大きな稲荷寿司の綿菓子のど真ん中に突入してしまったのだ!
当然、愛らしい白い毛皮は、茶色に色づけられた綿菓子の砂糖まみれに……。
「……帰ったら風呂だな」
あーあー、とため息をつきながら、テンションが上がる気持ちも分からなくはないなと都月も狐の耳にあたる部分をはむりと一口。
「うん。ふわふわで、甘い」
ざららーと丸い機械に入れていたザラメ糖。何の変哲もない砂糖の粒が、どうしてこんなフワフワで素敵なものになるんだろう? 世の中にはまだまだ不思議がいっぱいだ。
チィはと言えば、ベッタベタになりながら毛づくろいも兼ねて綿菓子を堪能している。
「美味いか? 美味いなら……まぁいっか!」
あとで丁寧に洗ってあげればいいのだから、特に咎めることでもない。
――どぉん!!
大きな音に一人と一匹が顔を上げると、華やかな妖怪花火がまた一つ。
「凄い……他の人達、本当に花火の上歩いてる」
「チィ!」
打ち上がった花火はそのまま足場となって、猟兵たちを空中散歩へと誘う足場となっていた。うかうかしてはいられない。
「チィ、早く俺達もいこう!」
都月はチィと共に、打ち上げポイントへと駆けていく――。
大成功
🔵🔵🔵
榎・うさみっち
ニコを連れ回すぜ!
いよぅ、ニコ!オシャンティーな水着着てるじゃんか!
俺の水着か?フッフッフ
なんとこの日の為に新調したもので…※詳細お任せします!※
さてと、妖怪花火を見る前にまずは食糧調達だ!
腹が減っては戦は出来ぬ!というわけで綿菓子屋へゴーゴー
河太郎さん、どんな綿菓子でも作れるプロって聞いたんだけどほんとにぃ~??
それなら、ずばりこのうさみっち様等身大綿菓子を作ってくれ!
色はもちろんうさみっちピンクで!
うおーなんじゃこりゃすげぇ!まさに俺だ!
ニコ!写真撮って写真!
綿菓子と並んではいチーズ
綿菓子を優雅に食べながら空中散歩と洒落込むぜ!
ぴゃ~♪めっちゃ綺麗ー!
はしゃぎ疲れたらニコの頭の上に乗る!
●難易度が非常に高かった水着選び
「ニコを連れ回すぜ! 拒否権はにぃ!!」
「畜生かな?」
のんびり後方で楽しむ猟兵たちを見守ろうと思っていたら、我が伴侶こと榎・うさみっち(うさみっちゆたんぽは世界を救う・f01902)にとっ捕まって引きずり出されたニコである。
「いよぅ、ニコ! それはそうとオシャンティーな水着着てるじゃんか!」
「あ、ああ……今年はまさに洒落た水着を仕立てて貰って、感謝している」
そういううさみは、毎年衝撃の水着を着てくるが……などと伴侶の歴代水着を振り返りながら今年の装いについて言及しようとしたニコを、うさみっちが敢えて止める。
「俺の水着か? フッフッフ……」
組み切れてないあんよも可愛いグレコタイプ、その日焼け跡を活かしたせんしちぶな……思えばあれは己の水着をオマージュしたものだったのかも知れない。
そして今年は――。
「なんと! この日の為に新調したもので、名付けて『渚のマーメイド』」
「待て待て待て待て、其れは見れば分かるがどうしてそんなことになった」
さすがに日焼け跡は抜けたうさみっちの上半身はいわゆる貝殻ビキニで飾られ、下半身はミラクルパワーで人魚の足がしっかりと包み込んでいた。
その上でフェアリーの特性である翅は普通に残っているものだから、ある種のキマイラ感が満載である。本当にどうしてそんなことになったのか。
「どうだ~~~、愛らしいだろ~~~、魅惑のマーメイドだぞ~~~」
「……後で撮影会だ、宜しく頼む」
お代はこの後河太郎さんが振る舞ってくれる綿菓子で、という風に話がついたという。
「さてと、妖怪花火を見る前にまずは食糧調達だ!」
ぶーんぶーんと空を泳ぐちっちゃなマーメイド(男子だからマーマンでは? というツッコミはさて置くとします)は、綿菓子屋台へまっしぐら。
「腹が減っては戦は出来ぬ! というわけで綿菓子屋へゴーゴー!」
同伴のニコは少し大股に歩けば十分ついて行ける速度であったため、二人同時に河太郎さんの屋台へとたどり着いた。
「……らっしゃい、随分と小さなお客が来たものだ」
カクリヨファンタズムにも色々な妖怪がいるだろうけれど、体躯そのものが18.8cmほどのちっちゃな妖怪にはなかなかお目にかかれない模様。
「河太郎さん、どんな綿菓子でも作れるプロって聞いたんだけど」
ぶーんぶーんと河太郎さんの顔の周りを煽るように飛び回ると――。
「ホントにぃ~~~???」
「こら、煽るなうさみよ!」
ニコが慌ててうさみっちの翅をつまんで引き戻し、何度も頭を下げる。
人魚の尾をびったんびったんさせて「やめろよー」と抗議するうさみっち。
「は、見た目通りに活きがいいもんだ。勿論だとも、何でも言ってみな」
しかしむしろうさみっちのそんな態度が気に入ったのか、河太郎さんはニィと笑ってうさみっちのリクエストを待つ構えだ。
「それなら、ずばりこのうさみっち様等身大綿菓子を作ってくれ! 色はもちろん、うさみっちピンクで!」
つままれていた翅を解き放たれたうさみっちは、ますますぶんぶん飛び回りながらズビシと河太郎さんを指さして、それから己の胸をトンと叩いてみせた。
「ほう、お前さんをか……小さすぎてむしろ等身大が難しいとは面白い」
河太郎さんはそう言いつつ、しかし真剣な顔でザラメ糖と食紅を丸い機械に投入し、等身大うさみっちを巧みに形取り始めた。
「こ、これは……」
「(どや)」
「うおーなんじゃこりゃすげぇ! まさに俺だ!!」
じゃーん。ドヤ顔で河太郎さんがズイと突き出したのは、間違いなくうさみっち。
しかもトンチキマーメイドスタイルではなく、普段着のベーシックうさみスタイル!
「ニコ! 写真撮って写真!!」
屋台の正面にうさみっち綿菓子を支える割り箸を刺して、そこに本物のうさみっちが並んで、はいチーズ。
(「俺の伴侶フォルダがまた潤ってしまうな……」)
――おまわりさん、こいつです。
普段の食事が人間サイズのうさみっちにとって、等身大綿菓子など敵ではない。
もっきゅもっきゅと自らの形をした綿菓子を食べながら、今、二人は夜空を彩る花火の上を空中散歩していた。
「ぴゃ~♪ めっちゃ綺麗ー!」
(「此処は、お前の方が云々と言うべきなのだろうか……」)
ゲンカイシュタインさんのことは置いておいて、ぴゃっぴゃとはしゃぐうさみっちはだんだんとおねむになってきた模様。
ていっとニコの頭の上に乗って、岸に打ち上げられた人魚よろしくくったりとする。
「……うさみ?」
「……(スヤァ)」
まだまだお子様だからね、仕方ないね!
大成功
🔵🔵🔵
リオン・リエーブル
今年の水着で参加
ニコさん同行希望
打ち上がった花火の上を散策
こんな体験めったにできないからね!
思えば放浪から帰ってきて
初めて参加したのが2年前のニコさんの依頼だったねぇ
なんか懐かしいや
あの時は随分な沖合で浮輪で浮いて
ニコさんにふらぺっちを持ってきてもらったっけ
さすがにふらぺっちは無いけど綿菓子甘くて美味し痛!
(口にした綿菓子のパチパチ攻撃に頬に手を当て)
ニコさんは最近何してるの?
おにーさんは相変わらず研究三昧だよ
今は錬金術の研究よりも楽しいことを探す研究してるんだ
参考までに聞かせてよ
ニコさんは何してる時が一番楽しい?
研究以上に楽しいこと、見つかるかなあ
などと話しながらのんびり贅沢な時間を過ごすよ
●今年のおにーさんは脇から腰にかけてがびっくりするほどえっちですね
「ニコさん、伴侶持ちなのにそういうのはおにーさん良くないと思うな~」
「俺は決して不埒な言動は何一つしていないぞ……」
うそうそ、じょーだんじょーだんと手をひらひらさせて笑うリオン・リエーブル(おとぼけ錬金術師・f21392)は、ニコを伴って夜空に咲く花火の上を軽やかに歩く。
「こんな体験、めったにできないからね!」
楽しまなくっちゃ、と屈託なく笑う姿はまるで幼子のよう。
そんなリオンの姿がとても眩しく、尊いもののようにさえ思えて、ニコは目を細める。
覚えてる? と唐突にリオンが言えば、ニコは一瞬キョトンとなりながらも、すぐに苦笑いを浮かべる。
「思えば、放浪から帰ってきて初めて参加したのが二年前のニコさんの依頼だったねぇ」
なんか懐かしいやと結い上げた緑髪を揺らして視線を遠くに向けるリオンに、光栄なことであるよと返すニコ。
「あの時は随分な沖合で浮輪で浮いて、ニコさんにふらぺっちを持ってきてもらったっけ」
「ああ、忘れもしない……あの時はとんでもない御仁が来てしまったものだと思ったぞ」
ニコが笑みながらこんな風に相手を評するのも珍しいと言えるが、それだけリオンのことを好ましく思っているという証左であろう。
「今年はふらぺっちを用意できず、些か申し訳無かった気もするのだが、遊びに来て下さって嬉しく思う」
「うん、さすがにふらぺっちは無いけど綿菓子甘くて美味し痛ッ!」
口にして緩やかに溶かしていた綿菓子を地上で作ってもらう時に、リオンは(止せばいいのに)パチパチキャンディマシマシでお願いしていたのだ。
言わんこっちゃない、というニコの苦笑いをよそに、リオンは不意打ちのパチパチ攻撃に頬に手を当てて悶絶する。
(「んん~~~、弾ける! えっ、まだ弾けるの!? どれだけ入れたのあの店主さん」)
河太郎さんは、多分職人の誇りにかけて、マシマシならマシマシだと盛ったに違いありませんね……。
明らかに音が聞こえるレベルのパチパチキャンディフィーバーがひと段落した頃、リオンは浮かんだ涙をそっと拭いながらニコにこう尋ねた。
「ニコさんは、最近何してるの?」
それは、他愛もない世間話であり、ニコにとっては少々痛い質問でもあった。
「最近は……こう、中々依頼を引き受ける事も出来ずに居てな、然りとて誰かと交流を持つ時間を作る事も出来ず、書斎に引き籠もって駄文を綴る日々だ」
答えながら、見るからに苦々しい顔になっていくニコは『この現状ではいけない』とひしひしと感じているようだった。
そんなニコの肩をばしばし叩いて、リオンは明るく笑ってみせた。
「いーのいーの、人それぞれだから聞いただけだし! おにーさんは相変わらず研究三昧だよ」
「……今は、何の研究を?」
心遣いをありがたく思いながらニコが問えば、リオンはよくぞ聞いてくれましたとばかりにえっへんと胸を張る。
「今はね、錬金術の研究よりも楽しいことを探す研究してるんだ」
「……は、はは、それは……」
半分予想通り、半分予想外なその答えに。
「……実に、君らしい」
ニコは、もう何度目かも分からない苦笑いを浮かべた。
思えば、この問いも『研究』の一環だったのか。
「参考までに聞かせてよ、ニコさんは何してる時が一番楽しい?」
もちろん、答えは研究へのフィードバックにする気満々で。
リオンは琥珀の瞳をきらめかせて、懐中時計のヤドリガミに問うのだ。
「そうだな……難しい問いだが、強いて言うなら」
この答えは、友への糧となるだろうか、なんて思いながら。
――一人の『人間』として、同じ『人間』とこうして語り合っている時、だろうか。
「ああ――種族は問わぬ、会話が出来れば、人でなくても構わないのだが」
「はは、分かるよ、だいじょーぶだいじょーぶ」
ニコの答えに「なるほどねえ」と言いながら、リオンはまた一歩花火の上へと飛び移る。
「研究以上に楽しいこと、見つかるかなあ」
ぽつりと呟いたその言葉には、どこか願いのようなものが込められているようで。
けれどニコは、敢えてこう返したのだ。
「無理に探そうとせずとも、そういうものは、自ずと見出せるものやも知れぬよ」
だから、あまり思い詰めず――という顔をしたニコの口に、リオンはいたずらっぽい笑みを浮かべながら先程のパチパチキャンディマシマシ綿菓子をひとかけ突っ込んだ。
「~~~~~っ!?」
「あはははは、油断大敵だよ!」
それはとても、のんびりとした、贅沢な時間。
大成功
🔵🔵🔵
飛鳥井・藤彦
【紅蒼/2】
◎
水着:おまかせ
夏空に咲く大輪の花、それを水着姿の兄さんと眺められるなんて……僕は幸せ者やなぁ。
ふふっ、いつもより顔が緩んでまうのもしゃあないなぁって。
夏の花見のお供はその綿菓子ですか。
白い羊……兄さんによく似合うてます。
僕はどないしよか。
うーん……そや、桃色のうさぎとかどないやろ?
(人混みの中で手を差し伸べられれば、一瞬きょとんとして。
しかしすぐにとても嬉しそうな顔で手をとり、離さぬよう指を絡め)
おーきに。
兄さんは優しなぁ。
ぴったりくっついても暑苦しくないんは水着のせいか……いや、兄さんだからか。
ふふ、兄さんの口の周り、綿菓子の砂糖でキラキラや。
(濡らしたハンカチで拭ってやる)
有栖川・夏介
【紅蒼/2】
◎
水着:おまかせ
…花火…綿菓子。
藤彦君と一緒に花火をみれたら楽しいだろうか。楽しいだろうな。
想像して自然と頬が緩む。
……む、あまりはしゃぎすぎるのはよくない(頬をつねり)
綿菓子は好きな形にできるんですね。
私は(ふむ、と悩み)…白い、もこもこ
悩んで、白い羊の形をした綿菓子をお願いする。せっかくなので大きく
藤彦君のは…うさぎ(複雑そうに見つめる)
綿菓子片手に花火を見る
人が多くなってきたか。
藤彦君、はぐれないように捕まっててください(空いている手を差し出し)
花火、綺麗ですね。
綿菓子も美味しい(愛らしい形でも躊躇なくぱくり)
(口を拭われ照れ)…んあ、悪い。あ、いえ、すみません
●二人の距離
同じモチーフやカラーリングの衣装を二人揃って身に纏う行為を、一般的に『ペアルック』と呼ぶという。
そういう意味で、今回の有栖川・夏介(白兎の夢はみない・f06470)と飛鳥井・藤彦(春を描く・f14531)とは、選んだ水着が『色違いペアルック』と称される状態であった。
二人揃って白いパーカータイプのラッシュガードを羽織って、サーフパンツは夏介が黒地に赤の、藤彦が白地に蒼の、豪快な大筆で描かれた紋様が入ったもの。
いわゆる『合わせ水着』という分類に入るだろうか、ひとえに二人の仲の良さを表していると言えよう。
今、二人は沈黙を保ったまま、しかしそれぞれの内心に弾む気持ちを秘めて、ビーチをゆっくりと歩いていた。
(「夏空に咲く大輪の花、それを水着姿の兄さんと眺められるなんて……」)
藤彦は藍色の髪をなびかせながら、僕は幸せ者やなぁ、なんて嘘偽りのない気持ちを隠しきれずに頬を緩ませてしまう。しゃあないなぁ、と思いながら。
(「花火……綿菓子……」)
夏介は夏介で、今まさに現実となろうとしていることに思いを馳せる。
(「藤彦君と一緒に花火をみれたら、楽しいだろうか。楽しいだろうな」)
どうしようもないほどに、その『楽しいこと』は今まさに現実のものとなろうとしている。想像するだけで、夏介の頬もまた自然と緩んでしまうのだ。
「……む、あまりはしゃぎすぎるのは、よくない」
あくまでも自分に厳しい夏介は、ふにゃんとなりかけた己の頬をむにっとつねる。
その様子を見た藤彦は、心があたたかくなる心地を覚えた。
(「――兄さんも、おんなじやんな」)
同じ気持ちを共有していると知れれば、ますますもって心も弾むというもので。
ふにゃんとした顔を隠さない藤彦と、懸命にそれを隠そうとする夏介との対比がまた面白……いや、微笑ましい。
さくり、さくりと砂浜を二人並んで歩けば、その先には噂の河童の綿菓子屋台。
「……らっしゃい、夏の思い出に一つどうだい」
職人気質、と一言で言い表せてしまうほどに無骨な河童の店主が声をかけてくる。
「ええ、お願いします――どんな形も思いのままと聞きました」
藤彦が問えば、応ともと小さな声が返ってくる。
「なるほど、綿菓子は好きな形にできるんですね」
夏介も確認をすると、店主こと河太郎さんは腕組みをして大きく頷いた。
先に頼んでもいいでしょうか、と目線で藤彦に尋ねると、微笑みと首肯が。
「なら、私は……」
ふむ、と顎に手を当てて夏介は少々考え込む。
「白い、もこもこ……」
「おや兄さん、普通の綿菓子でいいのかい」
オーソドックスな綿菓子を敢えて所望したのかと思われ、夏介は慌てて両手を振る。
「ええと、その……白い羊の形をした綿菓子をお願いします。せっかくなので、大きく」
「ははあ、羊……しかも大きいのと来たか。いいだろう、頼まれた」
まずはそっちの兄さんのを作るから、青髪の兄さんも決めておけ。
そう言いながらザラメ糖を機械に投入して綿菓子を巧みに形取り始めた河太郎さんを見て、藤彦は改めて屋台に飾られた綿菓子たちを見遣った。
(「夏の花見のお供は、その綿菓子ですか」)
もこもこでふわふわな白い羊の綿菓子が、あっという間に出来上がっていく。
「白い羊……兄さんによく似合うてます」
さあて、僕はどないしよかと思案する藤彦。
もこもこふわふわ白羊の綿菓子を受け取って思わず頬を緩める夏介を見て、見て――。
「うーん……そや」
藤彦が、河太郎さんにだけ聞こえるように注文を告げる。
あいわかったと作り始めた綿菓子の正体は、すぐ知れてしまうというのに。
「藤彦君のは……」
「桃色のうさぎとか、どないやろ?」
「うさぎ……」
夏介にとって、兎は少なからずを占める要素であるからして、つい複雑な視線を送ってしまう。
好きで、苦手で、どちらにしても自分とは切っても切れないもの。
(「桃色のうさぎ……綿菓子なら、可愛く思えるな」)
かくして、白い羊と桃色のうさぎを手に入れた二人は、地上から妖怪花火を堪能するコースを選んだのだった。
猟兵たちの大多数が打ち上げられることを選ぶかと思いきや、人数比は半々。
地上でバーベキューをしたり、人気のないところでゆるりと語らうものもあり。
夏介と藤彦も、綿菓子片手に地上から妖怪花火を楽しむことにしたクチで。
どうせならより綺麗にダイナミックに花火が見られる場所に行こうか、とすれば、自然同じことを考える他の猟兵や妖怪たちと行き先が被るというもの。
(「人が、多くなってきたか」)
綿菓子片手に花火を眺めながらも、共に歩く藤彦への配慮も忘れない夏介。
空いている方の手をすいと差し出し、手をつなぐように促した。
「藤彦君、はぐれないように捕まっててください」
「……え、あ」
人混みの中で手を差し伸べられるということは、一つしか考えられないはずなのに。
思わず一瞬きょとんとしてしまった藤彦は少し顔を赤らめて、すぐにその手を取った。
「……っ」
今度は、夏介が息を呑む番だった。捕まっていろとは言ったけれど、指と指を絡めることにまでなるとは思わなかったから。
藤彦に負けぬほど顔を赤くして夏介が繋いだ手の先を見れば、とても嬉しそうな顔をする藤彦の姿があったものだから――。
「おーきに。兄さんは優しなぁ」
「っ……、は、花火、綺麗ですね」
愛らしい形にしてもらったけれど躊躇なくぱくり、そして綿菓子美味しい、なんて率直な感想で気を紛らわせようとするけれど、触れ合うのは指先だけに留まらず。
「綿菓子も、美味しい……」
「せやねぇ、甘くて蕩けて、とっても美味しい」
今や夏介と藤彦との密着度は最高潮。
それでも不快な暑苦しさがないのは互いに水着姿だからか、それとも――。
(「相手が、兄さんだからか」)
近づけた顔だからこそ良く分かる、夏介の口の周りが綿菓子の砂糖でキラキラと。
「兄さん」
驚かせないように声をかけながら、濡らしたハンカチで夏介の口元を拭ってあげた。
「……んあ、悪い」
油断したか、常の丁寧な口調が崩れた瞬間であった。
「あ、いえ、すみません」
慌てて言い直すも、時既に遅し。
絡まりあってしっかりつながれた手指はそのままに、密やかなひと時は続いていく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
小林・夏輝
【犬豚兎/3】◎
2021水着
いやなんで俺がお前の分も持つ前提なんだよ
俺も食いたいんだけどー
れいー、ちょっと諒太に甘いんじゃねぇ?
ま、まぁ…しょうがねぇな
すんません、俺も1本…ちょっと大きめで
あと人数分オーバーだし、流石に余分代くらい払うよ
店主さん、ありがとな
砂浜に着いたら澪用に★タオルを敷く
勿論、俺の活力の元だし?
定期的に澪に綿あめをあーんしてやる
…花火の反射で目が輝いてて
ちょっと餌付けみてぇと思ったのは秘密
あ、ほんとだうっま
やっぱ夏といえば花火だよなー
もはや恒例行事っつーか
澪が見たいって言わなきゃ、俺ら興味も持たなかったかもだし
澪に感謝だな
ほれ、口開けろ
だな、折角だしやるか!
たーまやー!!
金子・諒太
【犬豚兎/3】◎
2021水着
夏輝、綿あめ食うぞ!
僕の腹は、花より団子
花火より綿あめ
作れるだけでっかいの!
何個…夏輝、何個持てる?
澪、優しいなぁ~…じゃあ、夏輝はいいや
綿あめ4つで!
色は、澪が決めていいよ
道中綿あめを頬張りながら夏輝について行く
澪を二人で挟むように浜辺に座り
花火を見上げる
たまに空で動いてるのは、打ちあがってる人かな
たのしそうだなー(もぐ
澪、最初花火って名前も知らなかったもんなー
食べるもの? って聞かれた時
皆びっくりして、数秒くらい、シーンとなってたな
僕も、熱いのは汗かくし、嫌いだけど
皆で遊ぶのは楽しいから、夏、嫌いじゃないぞ
掛け声には2人の後について
ふぁーいふぁー(訳:かーぎやー
栗花落・澪
【犬豚兎/3】◎
2021水着
いいよ、僕も2本持ってあげるから
代わりに夏輝くん、分けてね♪
え、じゃあ…ピンクで
あっ、ありがとうございましたー!(ぺこり
夏輝君、タオル使ってくれてるんだ
気に入ってもらえてよかったよ
時々夏輝君に綿あめを食べさせてもらい
諒太君には食べ終わり次第次をパス
美味しいねー
甘くてふわふわですぐ溶けちゃう
僕からすれば、初めてを教えてくれた皆にこそ感謝だよ
こんな綺麗なものがあるって、ずっと知らなかったから
皆と来れて、思い出が作れてよかった
一人で見ても綺麗だろうけど
僕ね、皆と過ごす夏が、大好きだよ
ねぇ、折角だしあれやろうよ!
夏輝君が教えてくれた…たーまやーってやつ
えへへ、たーまやー!
●空に咲いたたからもの
ぶっちゃけて言えば、金子・諒太(戦える肉団子・f12789)はぽっちゃり体型だ。もっとぶっちゃければおデブさんだ。けれど自称ポジティブ肉団子な諒太はそんなの関係ねえとばかりに堂々と星の王子さまをイメージした水着を身に纏うし、それはとっても良く似合っていた。
(「僕の腹は、花より団子」)
そう、どんなに妖怪花火が綺麗だろうと面白かろうと関係ない。
(「花火より――綿あめ!」)
つまりは、そういうことであった。
「夏輝! 綿あめ食うぞ! 何個持てる!?」
「いやなんで俺がお前の分も持つ前提なんだよ」
俺も食いたいんだけどー、とぷうぷう言いつつも後に続いたのは小林・夏輝(お調子者の珍獣男子・f12219)。
人懐っこさと人の好さが隠しきれない苦笑いを浮かべながら、こちらも星をモチーフにした華やかな水着を着こなして、諒太と共に河太郎さんの屋台へとやって来た。
「……らっしゃい、賑やかだな。仲良しかい」
「えへへ、すみません。綿あめ……ええと、何個にしようか?」
河童の店主が屋台越しに声をかければ、礼儀正しく女神が如き少女――んん!? いや、これは――栗花落・澪(泡沫の花・f03165)! 少年だ――!?
おっと失礼、とにかく澪がぺこりと頭を下げつつ、諒太と夏輝に「結局何個頼むの」と問うた。
「澪、優しいなぁ~……じゃあ、夏輝は持ってくんなくていいや。綿あめ四つで!」
「おうさ、形はどうするね」
「作れるだけでっかければ何でもいい!!」
「……は、分かりやすくていいな! 待ってな、たらふく食わせてやる」
結局、両手に持ちきれない二個は澪が持ってやる形となり、夏輝は思わず澪に言う。
「れいー、ちょっと諒太に甘いんじゃねぇ? いくら綿あめだからってさー」
「いいよ、これくらい。いつもお世話になってるし、それに……」
ぷうぷうが続く夏輝をなだめるように言いつつ、逆に澪はいたずらっぽく笑んだ。
「代わりに、夏輝君が分けてくれるとうれしいな、なんて」
「……っ」
ずるい、そういうのはずるい、反則だ。
「ま、まぁ……しょうがねぇな」
夏輝は思わず口元を掌で覆ってこみ上げるクソデカ感情をこらえつつ、河太郎さんへと向き直り大声でこうお願いした。
「すんません、俺も一本! ちょっと大きめで!」
「あいよ、そういえば兄さんたち、色の好みはないのかい」
ざらざらと投入されるザラメ糖に、せめて色くらいは好みに彩らないかと河太郎さんが問えば、とててと近付いて来た澪がせっかくだからとお願いをする。
「え、じゃあ……ピンクで」
「ピンクだな、なら後はお任せでいい感じにしてやる」
そうして、次々と人の頭より大きいのではないかという綿あめがふわふわと形作られていく。ひとつ、ふたつ、水色、黄色……。
「あの、人数分オーバーだし、流石に余分代くらい払うよ」
できあがっていく綿あめのひとつひとつが予想以上に大きくて、しかも人数分以上に注文しているというのもあり、申し訳なく思った夏輝がそう申し出るも。
「気にしないでいい、むしろそれを受け取ると後で経理が面倒になるってもんだ」
(「妖怪も経理とか気にするんだ……」)
そうも言われては仕方がないと、あと妖怪にも色々あるんだと、夏輝が小銭入れを引っ込めた時、遂に綿あめたちが完成した。
「待たせたな、持っていきな。落とさないようにするんだぞ」
「あっ、ありがとうございましたー!」
約束通り、諒太と澪が二個ずつ、そして夏輝が一個綿あめを手にして、河太郎さんへ麗を告げて屋台を後にする。
これは、確かに食べる前に落としてしまわぬようにしないといけない大きさだった。
さく、さく、さく。
砂浜を歩くことしばし、妖怪花火が打ち上がるさまを広く眺められる絶好のロケーションを見つけた三人は、腰を下ろして綿あめを堪能することにした。
「澪、ここ座りな」
そう言って夏輝がばさっと砂浜に広げたのは、『ガンバレ』と縫い取られたスポーツタオルだった。
澪はそれを見て一瞬目を見開くと、心底驚いたとばかりに声を上げる。
「夏輝君、タオル、使ってくれてるんだ」
「勿論、俺の活力の元だし?」
――君は知っているだろうか、このタオルがどれだけ俺を助けてくれているか。
そこまでは言わない、言うことはない。胸に秘めたままで、月の女神に座るよう促す。
「気に入ってもらえてよかったよ、それじゃ……」
よいしょっと!
とん、とん、どぉん。
ちょっとすごい衝撃が走ったのはご愛敬、諒太の綿あめがもう既に半分近く削れているのもまたご愛敬。
そうして三人は、澪を挟むように夏輝と諒太が腰掛ける形となって腰を下ろした。
花火を見上げれば、時折動く影のようなものが見える。
「たまに空で動いてるのは、打ちあがってる人かな」
たのしそうだなー、なんて言いながら、諒太が綿あめをかじる口は止まらない。
与えられた時間のうち、目一杯を綿あめ堪能タイムに費やしたいに違いない。
諒太の手が空けば、すかさず澪がお代わりを渡し、そんな澪をねぎらうように夏輝がその口元にピンクの綿あめをあーんで食べさせてあげる。
(「……なんか」)
花火を映して瞬くように瞳が輝くさまを見て。
(「ちょっと、餌付けみてぇ」)
なんて、思ったことは秘密だ。
「美味しいねー、甘くてふわふわですぐ溶けちゃう」
夏輝くんもちゃんと食べてね、と澪に言われて反射的にもぐりと一口食めば。
「あ、ほんとだうっま」
甘くて儚い、夏の夜の夢のごとし。
今ひと時、この祭りの夜を楽しもうか。
「やっぱ夏といえば花火だよなー、もはや恒例行事っつーか」
夏輝が空を見上げ、クライマックスとばかりに盛大に打ち上がる妖怪花火を楽しむ。
「澪が『見たい』って言わなきゃ、俺ら興味も持たなかったかもだし」
だからここは、澪に感謝だなと言いつつ「ほれ、口開けろ」と餌付けを続ける。
一方、セルフで綿あめを平らげながら諒太も言葉を続ける。
「澪、最初『花火』って名前も知らなかったもんなー」
今でも思い出す。澪が最初に花火という単語を聞いた時の反応。
『食べるもの?』
なんて真顔で聞かれた時は、その場にいた者が皆びっくりして、数秒くらい、シーンとなっていたものだ。
「あ、あはー……そんなこともあったね……」
苦笑いをしながら、澪はそれでもと二人の顔を交互に見て、そして天を仰いだ。
「僕からすれば、『初めて』を教えてくれた皆にこそ感謝だよ」
――こんな綺麗なものがあるって、ずっと、知らなかったから。
「皆と来れて、思い出が作れてよかった」
純粋無垢な笑顔で、心からの気持ちを告げる澪の、何と眩しいことか。
天高く咲き誇る花火たちの美しさも忘れてしまうほどに思えてしまう。
「一人で見ても綺麗だろうけど、僕ね、皆と過ごす夏が、大好きだよ」
「……、……」
夏輝は、またしても絶句する。正確に言えば、感極まっていた。
諒太は綿あめ最後のひと口を平らげて、澪に笑いかけた。
「僕も、暑いのは汗かくし、嫌いだけど」
だけど――。
「皆で遊ぶのは楽しいから、夏、嫌いじゃないぞ」
ふふ、と。それを聞いた澪は鈴を転がすような笑い声を上げて。
「ねぇ、折角だし『あれ』やろうよ! 夏輝君が教えてくれた……」
ああ、と夏輝が打ち上がる花火を見てすぐに察する。
「だな、折角だしやるか!」
――ひゅるるるるる……。
――どぉん!!
「「たーーーまやーーー!!」」
「ふぁーいふぁー(訳:かーぎやー)」
「あっ諒太てめぇ!! 俺と澪の綿あめにまで手ぇ出しやがって!!」
ビーチには、いつまでも楽しげな笑い声が響き渡っていました。
この素敵な友情もまた、いつまでもいつまでも続きますように。
大成功
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