夏色百景~花燈(作者 東間
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#カクリヨファンタズム  #お祭り2021  #夏休み 


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●夏休みのお知らせ
 数多の猟兵が集った水着コンテスト――夏の風物詩はカクリヨファンタズムでも大盛況のうちに終わり、未だ熱狂が冷めぬ中。妖怪親分たちからとある贈り物が届けられたのだと、汪・皓湛(花游・f28072)は楽しそうに微笑み、唐傘を僅かに回す。
「それが『妖怪花火』です」
 しかもただの花火ではない。
 コンテスト会場に用意された花火は、花火に乗って共に打ち上げられることも、花火が生み出す模様の上での空中散歩だって楽しめる優れもの。ちょっとばかり摩訶不思議な効果は、花火を用意するというスケールの大きさ含め、「流石親分たち!」と言えるだろう。
「それだけではありません。何とその妖怪花火……水中でも問題なく咲くのです」
 某親分が、

『花火だからとて、別にお空に打ち上げなくとも構わんだろう?(キメ顔イケボ)』

 と言ったかどうかは定かではないけれど。
 十中八九、某親分がアレをソレする感覚で、妖怪花火にちょっとしたオマケを付けた可能性は大。そしてそれが何の問題もなく、寧ろ喜ばしいものであるのなら。
「ひと夏の思い出にと、存分に楽しまれのが良いかと」
 くすりと微笑んだ花神曰く、海中に用意された妖怪花火はまだ種の状態。海藻や岩にくっついた姿は、ほのかに輝く火花を抱いた泡だ。大きさは最も小さいものでビー玉サイズ、大きいものはバスケットボールほど。
 咲く花火の大きさは泡の大きさに比例しており、更に更に、自らの手で海中に花火を打ち上げられるという。
「泡を軽くつつけば良いのです。それだけで容易く割れ、中にあった火花が海面を目指して上り、海中で花火となって咲く仕掛けになっております。ただ、中には海底を動き回る花火もあるとの事。割る前に、泡の中の火花をご確認下さいませ」
 泡の中で打ち上がる花火を思わす形と動きをしている為、心構えが出来るということだ。打ち上げたい、咲かせたいと思う花火探しも楽しめるだろう。
「同時刻、海上にも妖怪花火が打ち上げられるそうです。それぞれを共に楽しむという贅沢も出来ましょう。……では」
 そっと微笑んだ花神の傍でグリモアが咲いて――猟兵たちの前に、今夏だけの輝きを抱いた海が広がった。


東間
 親分たちからの贈り物を、美しき夏の海と共に楽しむのは如何でしょう。東間(あずま)です。

●受付期間
 タグ、個人ページトップ、ツイッター(https://twitter.com/azu_ma_tw)でお知らせしますので、送信前に一度確認をお願い致します。

●出来ること
 海中散歩をしながら妖怪花火を楽しめます。お好きな繭から花火を咲かせたり、海中とその向こうで咲く大輪の花火を楽しんだり。海中でも、花火に乗ったり等出来ます。

 花火の種類や色、大きさはどうぞご自由に!
 文字やイラスト風もあるでしょう。

 海中ですが、親分たちの凄い力により【水中で呼吸が出来る】【水中だけどスマホやカメラの精密機械が使える】といった環境にもなっていますのでご安心を。
 プレイングでお声がけ頂いた場合、汪・皓湛もお邪魔致します。

 多数ご参加頂いた場合、一度だけ再送をお願いするかもしれません。
 その際は受付期間告知と同じ場所にてお知らせ致します。

 ※飲食はNG。
 ※咲かせた花火の音は爆音にはなりません。ぽんっ、と軽め。
 ※海中で咲かせた花火は海上には行きません。

●グループ参加:三人まで
 プレイング冒頭に【グループ名】、そして【送信日の統一】をお願いします。
 送信タイミングは別々で大丈夫です(【】は不要)
 日付を跨ぎそうな場合は翌8:31以降だと失効日が延びますので、出来ればそのタイミングでお願い致します。

 以上です。皆様のご参加、お待ちしております。
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第1章 日常 『猟兵達の夏休み2021』

POW妖怪花火で空へGO!
SPD妖怪花火の上で空中散歩
WIZ静かに花火を楽しもう
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●夏色百景~花燈
 深く青い世界は澄み渡り、揺らめく水面から降り注いだ月光がその彩と光でカーテンを揺らし、白砂に覆われた海底に波紋を映していく。
 海中は夜だというのに不思議と明るく、鮮やかな緑に染まった海藻が森や道を作るように茂って揺れて、時折魚たちが顔を覗かせていた。
 そんな海の世界、岩と海藻から成る緑の森の中。妖怪花火の種を抱いた数多の泡が真珠のように煌めいていた。泡は一粒ずつ離れているものがあれば、どうしてか綺麗に、またはゆるゆるカーブを描いて並ぶものもある。

 ぱぁ、と花のような形で泡いっぱいを満たすように広がっては窄まる火花。
 ぱぱぱ、ぱぱ、と何度も光の欠片をあちこちに散らす火花。
 ぱちぱちぱちりと、下向きに小さな光を弾けさせる火花は線香花火だろう。
 しゅるしゅるしゅしゅしゅと丸を描くのはきっと、海底を動き回るタイプだ。

 まあるい泡の中、様々な姿を見せる今は真っ白な火花たち。
 その全てが、誰かが外に出してくれる時を、咲ける時を、今か今かと待っている。
 
彩・碧霞
「成程、これは実に神秘的ですね」
中から見上げた水面に誰かの上げた花火が煌めいて星空の様
神の端くれと言えど見た事がない光景
「本日は、ご案内頂き有難うございます」
この半端な姿ではどうしても持て余す竜尾を当ててしまわぬ様気を付けながら振り向いてグリモア猟兵の方にそっと会釈
「改めまして、彩・碧霞と申します。貴方様とお話してみとうございました」
と急に言われても困ってしまいますよね
「知己が依頼の折、私に雰囲気の似た方に案内頂いたと申しておりまして」(花のおもての事)
自分では似ているかは分かりませんが
「竜の体が重く、歩くのが苦手でご迷惑をおかけするかと思いますが…今宵少し、水中散歩にお付き合い頂けませんか」


 夜の中に在りながら覚めるような青を湛えたそこに、ぽん、ぽん、とまろやかな音が生まれる。その度に海中に灯った光と色は様々で、それを見た彩・碧霞(彩なす指と碧霞(あおかすみ)・f30815)はそうっと目を細めた。
「成程、これは実に神秘的ですね」
 海中から見る水面は深い色の中に時折銀の面を生み、誰かの上げた花火が煌めいては、美しい水天井や海中に星空のような風景を紡いでいる。
 それは、神の端くれたる碧霞といえど見たことがない光景だった。
 全身を包み揺らす海に銀糸の髪を任せて浅い海底を歩いていた碧霞は、ふと感じた気配へと目を向ける。動きに合わせ碧の毛並みが水草の如くそよいだその先、丁度岩陰の向こうから此方へと漂ってきていたのは皓湛だった。
「おや、貴方は……」
「本日は、ご案内頂き有難うございます」
 半端な姿と捉えている自身の多数を占める竜の部分、その一つである尾はどうしても持て余してしまう故、動作は慎重に。その甲斐あって、此方こそと嬉しそうに笑み拱手した皓湛に竜尾を当てずに済んだ。会釈した碧霞は安堵を胸に「改めまして、」と背筋を伸ばす。
「彩・碧霞と申します。貴方様とお話してみとうございました」
「私と、ですか?」
 言われた側からすれば急だろう、困らせてしまっただろうか――そんな心配を、似た色合いの瞳がやや丸くなって瞬いた後、やわらかに笑って消していく。碧霞は二度目の安堵と共に実は、と理由に触れた。
「知己が依頼の折、私に雰囲気の似た方に案内頂いたと申しておりまして」
「それが、もしや?」
「ええ。依頼というのは、花が降り咲いた夜の」
「嗚呼、あの時の……」
 添えた言葉で皓湛が再び拱手の仕草を見せる。
 その節はお力を貸して頂きまことに、いいえ私こそ知己が――なんて、互いに礼をしたタイミングはほぼ同じ。これも“似ている”の一つかどうかは、雰囲気含め碧霞には分からないけれど。
「竜の体が重く、歩くのが苦手でご迷惑をおかけするかと思いますが……今宵少し、水中散歩にお付き合い頂けませんか」
「ふふ、私で宜しければ。……あ、碧霞殿。丁度、どなたかが花火を打ち上げられた様です」
「おや。……あれは……大きい、ですね?」
 二人眺める中、周囲を淡く照らしながらぴるると上った白い火種がふいにその姿をくらませて――ぽん。和紙の風船が割れるような音と共に現れた花火一輪の煌めきを目に、竜神と花神は揃って穏やかに笑み、歩き出した。
大成功 🔵🔵🔵

フリル・インレアン
ふわぁ、海の中で花火が見られるなんてすごいですね。
このサンゴさんにいっぱい付けてある花火はそれぞれに糸が付いていて一つにまとまっていますね。
この糸を引っ張ることで花火が一斉に咲くみたいです。
アヒルさん、私が糸を引いてみますね。
ふわあ、花火が一斉に咲いてサンゴさんを彩ってすごく綺麗です。
ふえ?アヒルさんどうかしましたか?
あ、こっちのサンゴさんにも花火が付いてますね。
それじゃあ、私が糸を引っ張ってみますね。
あれ?この糸に(笑)ってタグが付いてます?
ふええ、この花火は全部ねずみ花火じゃないですか。
それになんで私を追いかけてくるんですかー。


 見える世界は確かに海の中であり、髪をふわふわ泳がせ全身を包むものは、紛れもなく海だ。けれど、夜の海特有の表情である暗さ冷たさ、静けさ恐ろしさはどこにもない。
 穏やかな海流にひらひらふわりと揺れた青と白は、フリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)が着ているアイヌ民族衣装風の水着だった。蕗の葉フロートを手にしているその頭上では、お揃い意匠を着たアヒルさんもいる。
 そんな一人と一羽の目は今、誰かが海中で打ち上げた妖怪花火の光と色彩を映してきらきらと輝いていた。
「ふわぁ、海の中で花火が見られるなんてすごいですね」
 どんなに大きな花火が上がっても、響く音は“ぽん”と可愛らしいから怖くない。
 そして海底や岩を軽く蹴って泳げば、あちこちに花火の種を抱いた泡がある。
「あ、見て下さいアヒルさん」
 やわらかな黄色珊瑚に沢山付いていた泡は、それぞれに糸が付き、一つに纏まっていた。――ということは。フリルは糸の端を摘む。
「アヒルさん、私が糸を引いてみますね」
『グワッ』
 どきどきしながら、えい、と引っ張った瞬間、泡の中から一斉に種火が飛び出した。小さな種火たちはフリルの頭上で一際明るく輝き――ぽんっ。可愛らしい破裂音と一緒に視界いっぱいに咲いた花火たちが、その色と光で周囲の珊瑚を淡く彩っていく。
「ふわあ、すごく綺麗です。……ふえ? アヒルさんどうかしましたか?」
 いつの間にか降りていたアヒルさんが翼で指すのは、別の珊瑚に付いている種火たち。次はこっちというアヒルさんにフリルは頷き、それじゃあ私がと糸を摘んで――あれ?
「この糸に『(笑)』ってタグが付いてます?」
 既に糸は引いた後。フリルの疑問に泡から飛び出した種火たちが答える。すぐそこで賑やかに駆け始めたキラキラの群れ、同じ勢いで弾ける音。なぜだかフリル目掛けやって来る、ドキドキハラハラをくれるあれの名は――ねずみ花火!
『クァ~、ガァガァッ♪』
「ア、アヒルさん見てないで助けて下さい~!」
 ふええええん、と涙浮かべて逃げ回るフリルとフリルを追うねずみ花火たち。
 海中で始まった追いかけっこは、アヒルさんがぷかぷか浮きながら眺める中、ねずみ花火が消えるまで続いたそうな。
大成功 🔵🔵🔵

ユルグ・オルド
綾/f01786

余映を追う振りで手前行く男の影を踏む
遠くに打つ鼓動で光に染まる
夜に咲かせた万華が散れば
意味は知れないクリアストーリーのよう

へえ、と好奇に上げた視線の先
譜を描いたつま先のその向こう
魔法めいた合図と共に

天幕照らした金の輪
星をも霞ませる光の矢
見上げて呆けるのは刹那か、それとも
声に目瞬くまでがどれ程だったかも、忘れるくらい

思わず向けたてのひらは
どうかなァなんてふざけて笑って
降らず融けた光だけ握りこんで閉じた

一瞬息さえ止めたとは内緒ネ
吐く息と零れた笑いは
存外こどもっぽい遊びの提案へ挿げて
したら次は綾が花火になっちまうわ

透けたか秘したか
いらえる前に
駆け出したなら飛び込むだけと


都槻・綾
f09129/ユルグさん
21水着

花火が描く軌跡を渡って
天の舞台へ

アラベスクか曼荼羅か
火花の煌きに合わせ
様相を変える美しい光の路を逍遥

あなた色を咲かせてみせましょ

とん、と
鳴らす踵に合わせ
次々と弾ける朱花の焔

やがて金に瞬く様は
陽に耀く飛沫
蝶の鱗粉
或いは
地上から見たなら
ひかりの雨が降るようだろか

綺麗ですねぇ

斯様な雨なら
きっと濡れそぼるのも悪くない

帰りは花火の滑り台を下って
海へと飛び込むのも楽しそうね
ウォータースライダーと言うのだったか
爽快に飛び込む海の中で
水底を走り回る元気な火の子を見つけたら
乗って遊んでみたいな、なんて
眼差しは童子の如く

さぁさ、と手を引き
応えを聞かずに駆け出すのも
もはやいつものこと


 ひゅううう、と高く細い音がどこまでも昇っていく。昇った傍から夜空の色にとけゆく炎の尾。けれど開花の時を迎えればそれを誇るように大輪の花となった。
 赤い花火、緑の花火、二色の花火――次々に咲いた花火は今宵だけの特別な光。色と光だけでなく形も豊かな花火が描く軌跡の上、そこを軽やかに渡っていた都槻・綾(絲遊・f01786)の後ろで、結わえている髪と共にふたつの青が靡いた。
 星空を漉いて翼を与えたような薄絹と、金の意匠が目を惹く深い青。幽世だけでなく封神武侠界でも違和がないだろう装いの後ろでは、ユルグ・オルド(シャシュカ・f09129)も咲いた花火の余映へと足を向け、金糸の髪と纏う衣を夜風に遊ばせながら渡っていた。
 足を乗せた花火の名残り、色と光がうすらと消える刹那に次の花火の余映を追う。けれどユルグの足が重なったのは、そこに最も濃くあったもの。自分の手前を行く綾の影で。

 どん

 遠くで響いた鼓動。光に染まる世界と、光で浮かぶものの輪郭。赤い双眸は夜に咲かせた万華が散る様を映し続けた。まるで意味の知れぬクリアストーリーだ。
 対する綾は、天へと続くような花火に違うものを見る。アラベスク、曼荼羅――火花の煌めきに合わせて様相変える美しい光は、瞬きを挟むことすら惜しい美しさ。光の路を愛でながら逍遥して、
「あなた色を咲かせてみせましょ」
「へえ」
 振り返った綾の言葉にユルグの口も笑み、好奇に視線が上げられる。
 とん、と綾の踵が音を鳴らしていけば、まだ何もなかった空中に音と光が生まれ、次々に弾けて視界に朱花の焔を焼き付ける。
 譜を描くつま先。
 その向こうで紡がれる魔法めいた合図。
 とん、とん、とん――。夜空に描かれていった譜はやがて弾ける音と共に金に瞬いた。
 鍵盤を通し響いたそこで綴られた譜面の姿かたちが現れるように、咲いた金色が陽の如く輝く欠片を紡いでいく。飛沫、蝶の鱗粉――或いは、と綾はすっかり遠くなった地上に目をやった。あそこから見たなら、目にするものはひかりの雨だろうか。
 間近である此処からは――ユルグが見たような、天幕照らした金の輪か、星をも霞ませる光の矢。
 赤い瞳が丸くなる。呆けていたのは刹那か、それとも。
「綺麗ですねぇ」
 ぱち。
 かけられた声に瞳を瞬かせるまでがどれほどだったか、本人も忘れるくらいで。
 ふふ、と笑った綾は次の花火へと飛んでいて、ユルグもそこが己の領域が如く落ち着いた様で後を追う。
「ねぇ、ユルグさん。斯様な雨なら、きっと濡れそぼるのも悪くない――そう、思いません?」
「どうかなァ」
 ふざけて笑いながら、掌は思わず光へと向けていたのだけれど。
 降らず融けた光だけを握り込んで閉じる。不思議と熱くはなかった。ただ、閉じて真っ暗だろう掌に、ちり、と何かが肌に触れた気がした。それは見えぬ金色の名残りか、花火の声か。
 一瞬息さえ止めたとは内緒ネ。
 吐く息と共にこぼれた笑いは夜風に乗り――かけた時。ところで、と耳に届いた涼やかな声へ、なに、と返す。
「帰りはどうしましょうか」
 帰り。
 地上を見る花緑青を追って、鮮やかな赤も地上へと向く。
 ――なかなかの高さだ。
「花火の滑り台を下って海へと飛び込むのも楽しそうね」
 そんな風に楽しめる巨大遊具があった気がする。確か。
「ウォータースライダー?」
「ええ、それです。ほら」
 丁度良く、と言っていいのか。月光と、時折打ち上げられる花火。それらを浴びて煌めく海面の先、海の中。水底を走り回る、それはそれは元気な火の子がいるわけで。
 走る様を見ていると、生き生きと輝くような火の子がいるあの水底の凹凸まで見えるよう。青い海を通した輝きは、中心に白色を抱いた鮮やかな緑だった。
 熱の強さを伝えるようなまばゆさを放っていた火の子は、暫くして遊び疲れた様子。見えていた輝きはゆるゆると海に融けたけれど。
「乗って遊んでみたいな、なんて」
 天へと向かう花火は海でも問題なく咲き、そして、同じように乗ることが出来る。
 あの火の子のような花火なら、乗った時に覚える爽快さは如何程だろう。
 見目は同じくらいの、しかし童子の如き眼差しで言われてしまうと、夜風に乗る筈だったものは存外子供っぽい遊びの提案へ。は、とユルグの口からこぼれた笑みに綾はどうです? と躍る心を向け続ける。
 ――したら次は綾が花火になっちまうわ。
「さぁさ、ユルグさん」
 笑いと繋がっていたそれは透けたか、それとも心の内に秘めたか。
 それが明瞭となるよりも、ユルグの応えを聞く前に、綾が花火の軌跡の向こうへと駆け出すのはもはやいつものことだった。
 とん、と夜空に舞い出た男の後、刹那か、それ以上か。髪を尻尾のように翻して海へと向かう姿を瞳にしたなら、飛び込むだけ。
 さなかに咲いた開花したての光を蹴った二人の足元から、火花が溢れるように散った後。月と花火映した海に水柱がふたつ、仲良く並んだ。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

宵雛花・十雉
【双月】
21水着

海の中で花火が見られるなんて、夢みたいだ
きっと綺麗なんだろうなぁ

わ、すごい!
ユェー、今のどうやったの?
オレもやってみたい
魔法使いみたいだね、なんて
すっかり心を許しきった相手に無邪気な顔を見せて
つんと控えめに泡をつついた

え、花火に乗れるの?
大丈夫?危なくない?
…ううん、でもユェーがついてるもんね
ならきっと大丈夫
せーので行こう

凄い、本当に乗れた…!
楽しかったね、ユェー

び、びっくりした…!
いきなりだったから変な顔で写ってないかな
変じゃない?よかった
でもやっぱりオレ1人の写真は味気ないよ
もう一回、今度は一緒に撮ろう
ユェーとの思い出も残したいしさ

また一緒に遊びに行こうね


朧・ユェー
【双月】
21水着

十雉くん水着とても良く似合ってますね

ほら、見てください十雉くん
海の中での花火とても綺麗ですねぇ

泡の中の花火もとても綺麗
この泡を破ると花火になるみたいですね
ツンと指で破って綺麗に咲いた
十雉くんもどうですか?

あぁ、十雉くんこっちにおいで
大きな泡の花火に彼を連れて行く
花火に乗れるようですよ
僕にしっかり掴まってくださいね

花火と共に一緒に咲いた
ふふっ、怖くはなかったですか?

そういえば
スマホを取り出して彼をカシャリと撮る
十雉くんの水着姿と花火、とても綺麗に撮れました
えっ?僕も?
はい、では一緒にもう一枚
素敵な想い出になります、ありがとうねぇ


 そよ風のように穏やかな流れに乗って、黒猫パーカーと支子色の羽織がふんわり揺れる。パーカーから伸びる尻尾と羽織の風車も、揃ってゆらり、ふわり。
「ほら、見てください十雉くん」
「わ……!」
 ちょいと一手間加えられたらしい妖怪花火は、海の中であろうと輝き、咲き誇る。夢のようなそれはきっと綺麗なのだろう。宵雛花・十雉(奇々傀々・f23050)が思い描いていた光景は今、朧・ユェー(零月ノ鬼・f06712)の言葉と共に現実のものとして広がっていた。
「海の中での花火とても綺麗ですねぇ」
「うん、すごく綺麗だ……!」
 ぽ。ぽん。――ぽん。
 鮮やかな紅、眩い水色、白く輝く金。誰かが泡を割って打ち上げた妖怪花火が、海の青へその色と光をとかすようにして花開いている。
 あの花火の下でも、誰かが自分たちのように笑って楽しんでいるのかもしれない。
 ユェーはそっと微笑みながら周囲に目を向け、テーブルのような碧色珊瑚にくっついている泡に目を留めた。
 泡の大きさは串に刺さった団子ほど。ほのかに、かすかに白く見える空気の器と、そこに収まる妖怪花火の火種という組み合わせは幻想的でもあり、花火となる前からユェーの心を惹く彩をたたえていた。
「この泡を破ると花火になるみたいですね」
 ツン。指先が触れれば中の火種がしゅわあと飛び出し、頭上で咲く。
 けれどそれは、十雉の視界では“ユェーが泡を指差した瞬間綺麗な花火が咲いた!?”というほど、“気付いたら目の前で起きていた”なサプライズ。
「わ、すごい! ユェー、今のどうやったの? オレもやってみたい」
 魔法使いみたいだね。目を丸くして、そしてすぐに浮かべた無邪気な笑み。すっかり心を許しきった相手だけに自然と見せられるようになった表情。十雉が浮かべた感情にユェーはやわらかに笑って、簡単ですよと珊瑚の方へと手招いた。
「十雉くんもどうですか?」
「うん、やってみる」
 つつけば簡単に割れる――事前に聞いたことを思い出し、つん、と控えめにつつけば

 っぽ ん

 中にいた火種は十雉の指先を待ち望んでいたのか。弾けるように飛び出して、ほんの一瞬目の前で止まった直後。ひゅーんっと昇って山吹から白のグラデーションを見せる花火となる。
 上手く出来たこと、綺麗な花火を見せてもらったこと。互いに喜び笑い合う中、ユェーが再び十雉を手招いた。
「あぁ、十雉くんこっちにおいで」
「どうしたの、ユェー?」
「ほら。ここに大きな泡が」
「わ、本当だ」
 それと。くすりと笑む音、指差した先。何だろうと辿ってみれば、ぱぱぱと遠くで咲いた花火たち――と、それに乗っている誰かが見えた。花火に乗れるようですよ、という声にそういえばそんな話を聞いたようなと思いつつ――え? と見たものを二度見する。
「花火に乗れるの?」
 大丈夫? 危なくない? と、十雉の胸中に不安が過りはしたけれど、優しく笑う眼差しを見れば、それは穏やかな流れと共に薄れて消える。
(「……ううん、でもユェーがついてるもんね」)
 ならきっと大丈夫。迷わずそう感じたから、うん、と笑って頷いた。
「ユェー。せーので行こう」
「ええ。では、僕にしっかり掴まってくださいね」
 笑む視線だけではなく二人の声も重ね、同じタイミングで泡をつつけば目の前でぱあっと飛び出した光の種。時間を数える間もなくふわっと体を持ち上げられ、海色の天井近くまでぐんぐん運ばれて――二人の真下でつついた時以上の光がふいに溢れて咲き誇る。
「凄い、本当に乗れた……!」
 十雉は自分たちの真下で咲き続ける花火に目を輝かせ、ユェーは勢いで外れたフードをそのままに頷き笑う。足元から溢れる光の粒が二人に触れてはピンッと跳ね回る中、二人の視線がぴたりと合った。
「ふふっ、怖くはなかったですか?」
「大丈夫だったよ。楽しかったね、ユェー」
 弾む心を映した笑顔に、そういえばとユェーはスマホを取り出して――カシャリ。
 え、と丸くなった顔が途端に慌て始める。びっくりした。びっくりしたし――!
(「いきなりだったから変な顔で写ってないかな」)
 水着は似合ってると言われたし、なりたい理想を繕う必要はもうないけれど、どう写っているかは気になるもので。
「十雉くんの水着姿と花火、とても綺麗に撮れました」
「あ、変じゃない? よかった……でもやっぱりオレ一人の写真は味気ないよ。もう一回、今度は一緒に撮ろう」
「えっ? 僕も?」
「うん。ユェーとの思い出も残したいしさ」
 一緒に飛んで、一緒に咲いた、この思い出を。
 十雉の提案に、きょとりとしていた金色が銀糸の下でふわりと笑った。
「はい、では一緒にもう一枚」
 消えるにはまだまだかかる花火の彩も入るように、カシャリ。
「素敵な想い出になります、ありがとうねぇ」
「俺の方こそ。また一緒に遊びに行こうね」
 四季全てに想い出の種が待っている。
 だから“また”は、きっと、来夏だけに留まらない。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ティア・メル
【波音】
21水着

クロウくんっ
んふふ、綺麗でしょ?
クロウくんには一度見せたかったの
海の中はこんなにも素敵なんだって
海はぼくの故郷みたいなもんだからさ
手を繋いで海中散歩
大好きな人と大好きな場所を散策出来る喜びに
自然と頬が緩んでいく

あ、皓湛っ
手を離して彼の方へ
皓湛も来てたんだね
案内お疲れ様なんだよ
良ければ一緒に花火を見ない?

わわっと
クロウくん?どうしたの?
…もしかして、やきもち?
えへへへへ
そっか、やきもち
嬉しいな
クロウくんの特別を貰えたみたい
心配しなくても、ぼくが好きなのはクロウくんだよ
再び手を繋いで
今度は指先を絡めて恋人繋ぎ
泡をつついたなら弾ける花火に目を奪われて
うんと綺麗だね、クロウくん


杜鬼・クロウ
【波音】
薄青色の朝顔の羽織
黒の水着

今年の夏、お前と海行くって約束してたからな
海の中凄ェ綺麗
お前の水着も眼福だなァ、可愛いぜ(ニィ

ティアと海中散策
魚と楽しく戯れる

皓湛とティアは知り合いか?
案内あンがとな!楽しませてもらってる

ティア、他のヤツが皓湛呼んでるっぽいから邪魔しちゃ悪いぜ
また時間ある時遊んでくれや

ティアの手引く

別に
そんなンじゃねェよ(フイ
今、一緒にいるのは俺だろ
…ッだから今度、最初っから皆で遊びに行こうぜ(慌てて付け足す

(俺はティアの彼氏でもねェし
あそこで止める必要も無かった
なのに

面白くない
ほんの僅か
そう思った)

自分の感情が解らない
握り返すべきか惑う

(花火よりも
何故だかお前を見てたい)


 夜の海で薄青の朝顔が揺れていた。朝顔が根付き宿るのは男が纏う羽織。海が作るまろやかな流れを見せるように、夏の花を咲かせた羽織が音もなくゆらりゆらりとはためいて――。
「クロウくんっ」
 とんっ。“衝撃”というには可愛いそれと声に、杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)の色違いの瞳が瞬く。けれどすぐに普段の堂々とした笑みに変わった。
 自分を見下ろす夕赤と青浅葱にティア・メル(きゃんでぃぞるぶ・f26360)は「んふふ」とご機嫌に笑い、周りを示しながら器用に回転する。濃桃の髪と一緒に、白いタイと淡い色のプリーツスカートもふんわりくるり。
「綺麗でしょ? クロウくんには一度見せたかったの」
「あァ。今年の夏、お前と海行くって約束してたからな」
 約束、守ってくれたな。ニィと笑えば、すいっと隣に戻ったティアがもちろんだよ、だってクロウくんとの約束だもんと笑う。それに。
「海の中はこんなにも素敵なんだって。海はぼくの故郷みたいなもんだからさ」
 深海のソーダ水から生まれた精霊・セイレーンであるティアにとって、海という世界は馴染み深い。魚のようにすいすいと自在に動き回るティアの様子に、クロウはそうかと頷き、改めて目の前の世界を見る。
 夜だからこその深い青色に満ちた世界。射し込んだ月光が儚く揺らいで描く幕と波紋に、時折誰かが打ち上げた花火が重なった。
「海の中凄ェ綺麗。お前の水着も眼福だなァ、可愛いぜ」
 ニィと笑って差し出した手にすぐ重ねられた小さな手。
 手をつなぎ、二人並んでゆらりふわりと軽やかに行く海中散歩。ティアは大好きな人と大好きな場所を散策出来る喜びを胸の中へと大事に抱え、その分の嬉しい楽しいは頬へ移して――つつん、つんっ。
「わわっ?」
 自然緩んでいった頬が誰かにつつかれた。何々? 丸くなった瞳を覗き込むのは、初めましてな魚たち。カラフルな彼らは鰭をぱたぱた動かした後に再び、いや、今度はクロウのこともつんつんし始めた。クロウが手の甲を軽く動かせば魚はすいーっと離れ、けれどすぐに戻ってくる。
「くすぐってェな。何だ、歓迎の挨拶でもしてくれてンのか?」
「クロウくんモテモテだね」
 ティアは鍵盤を引くように指を動かし魚と戯れて――、
「あ、皓湛っ」
 そよぐ長髪と淡い翠の羽織。姿を見付けたティアはクロウから手を離し、何だと首を傾げたクロウはティアが泳いだ先を見て成る程なァと笑って後を追う。顔を見たのは転移前だったか。
「皓湛も来てたんだね。案内お疲れ様なんだよ」
「案内あンがとな! 楽しませてもらってる」
「ありがとうございます。そう言って頂けますと、案内人冥利に尽きます」
「あ、そうだ。良ければ一緒に花火を見ない?」
 微笑み拱手していた皓湛がぱちりと目を瞬かす。ティアは丁度見えた花火を指して、ニコニコと楽しげだ。クロウは――。
「ティア、他のヤツが皓湛呼んでるっぽいから邪魔しちゃ悪いぜ」
「わわっと」
「じゃあな皓湛。また時間ある時遊んでくれや」
「ええ。またの機会にでも」
 再び向けられた拱手にティアは目を丸くしながらまたねともう片方の手を振り、両目をぱちぱち。自分の手を引いて黙ったままの背中をきょとりと見上げ、首を傾げる。
「クロウくん? どうしたの? ……もしかして、やきもち?」
「別に。そんなンじゃねェよ」
 ちらりと向けられた視線は、手が離されるのと同時にフイと外された。
 色違いの目は前を見たまま戻らない。岩や砂の海底にぽつぽつとある泡も見ない。
「今、一緒にいるのは俺だろ」
 短く届いた言葉にティアの瞳は丸くなり――ふにゃり。頬を緩ませると、海底の砂を蹴ってぴょんと隣に行く。
「えへへへへ。そっか、やきもち。嬉しいな」
「……ッだから今度、最初っから皆で遊びに行こうぜ」
 慌てて付け足し、違ェからと言ってもティアの表情は変わらない。
 引かれた時の手の感覚。こちらを見たクロウの表情。頬を染めて笑う心には、もしかしてという思いと嬉しさがどんどん満ちていく。
 その様子を見たクロウは口を閉じると再び視線を外した。
(「俺はティアの彼氏でもねェし、あそこで止める必要も無かった」)
 なのに“面白くない”と、ほんの僅かそう思った自分がいた。
 それが判るのに、なぜか自分の感情が解らない。
「心配しなくても、ぼくが好きなのはクロウくんだよ」
 甘い声が耳に届いた。小さな手に手を取られ、握り返すべきか惑う間に大きな泡を見付けたティアに引かれていく。
 えいっとつつかれ飛び出した火種は、光の尾をとろりと紡いだ後に二人の頭上で大輪の花となった。花火の輝きと彩は二人の瞳に映りながら、瞬く欠片と緩やかな変化を見せていく。
「うんと綺麗だね、クロウくん」
「……あァ」
 自分の感情は未だ解らず――けれど今は何故か、花火よりも隣を見ていたい。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

セリオス・アリス
【双星】アドリブ◎
21水着

水中で呼吸ができるなんて最高じゃねえか
存分に花火を楽しめるな!
アレスとふたり水中散歩
すげえな、花火であっちこっち
空を歩いてるみたいだ
ほら見ろアレス!
あっちにデカいのがあるぞと手を差し出そう
水中で速度合わせて歩くのは難しいから
…まあ、手を繋ぐのもおかしくねえよな

これだけデカいのどんな花火が上がるかわくわくしねえ?
行くぞと声をかけたら
ふたり一緒に泡をつつこう
沢山あがる、千輪菊
…どうせ撮るなら、この花火の前でとろうぜ

一昨年だったか、そん時は
まだ…ずっと一緒の覚悟も無くて
アレスの写真があればいいなんて思いもしたけど
今はふたりくっついて
…ははっ花火が映ってねえじゃん、もう一回!


アレクシス・ミラ
【双星】
アドリブ◎
21水着

いつもならば夜の海とは僕達にとって危険が多いものだが
この海は明るいね…!それに息も出来る
ああ、今日は思い切り楽しもう
彼の手を取り
なるべく同じ速度で行こうか

大きな泡だね…
一緒につつけば
僕らの上で花火が一斉に…凄いね、星空のようだ!

…ねえ、セリオス
スマホを取り出して
この海では写真も撮れるそうなんだ
ふたりで一緒に撮らないかい?

ふふ、それじゃ
もう一度、一緒に星空を作ろうか
千輪菊の泡を探して突いて
セリオス!と彼の手を引き寄せて
自撮りで一緒に撮ろう

…以前君と一緒に撮った時、君は近くにいるのに何処か遠く感じたけれど
今は、本当に近くにいるんだと感じられて…嬉しいんだ
あはは、本当だね


 その海は、二人が知る夜の海とは全く違っていた。
 深い青を湛えながら、深淵そのものめいた暗さはどこにもない。音もなく忍び寄る危険の“き”の字も感じられず、夜空に浮かぶ大きな月が、夜風でふわふわ揺れるカーテンのように優しい光を降らせている。
 ぽん、と聞こえた音。光り輝く妖怪花火。あちこちで覗いて、咲いて、輝いてと、今宵だけのお楽しみも見えれば、海の明るさはより際立つよう。
 アレクシス・ミラ(赤暁の盾・f14882)の表情は驚きから笑顔へと変わり、輝く瞳を見てセリオス・アリス(青宵の剣・f09573)もニッと笑い、アレクシスの背中を叩くと一足先に砂の海底を蹴って海中に浮く。
 呼び振り返ったセリオスの周りで髪がゆったりと漂い、夜空の月が生む波紋が髪を飾る。今、セリオスが纏うのは異国の衣装めいた水着だ。けれどアレクシスに向けられる笑顔はいつもと変わらず、星のように輝いて。
「水中で呼吸ができるなんて最高じゃねえか。存分に花火を楽しめるな!」
「ああ、今日は思い切り楽しもう」
 後を追うようにアレクシスも海底を蹴り、羽織る蒼海色のロングジャケットを翻す。
 念の為と佩いたままの剣が荷物になってしまうかなという危惧は、全てを包む海がその重さを全く感じさせなかった。まさか某親分さんが? 過ぎった考えは、楽しそうにキョロキョロしているセリオスの姿でしゅわっと泡になって消えた。
 ぽん、と聞こえた音に目を向ける度に見える花火たちは、ピンク、黄色、白にスイカのような赤と緑のセットまでと実に多彩だ。
「すげえな、花火であっちこっち。空を歩いてるみたいだ」
 ここが夜の海だと忘れてしまいそうなほどの、けれど決してうるさくない賑やかな風景にアレクシスもいつの間にかキョロキョロと周りを見ていた。
「本当だね。僕達も花火の上を歩いてみるかい?」
「それもいいよなぁ……あっ! ほら見ろアレス!」
「どうしたんだいセリオス?」
「あっちにデカいのがあるぞ、行こうぜ」
 手を差し出したこと、そこへすぐ重ねられた手のこと。どちらにもセリオスは平然を装い、並び立って冒険へ向かう少年のように海底を歩く。
(「……まあ、手を繋ぐのもおかしくねえよな」)
 だって水中で速度を合わせて歩くのは難しいし?
 これは自然なこと。コレハ自然ナコト。
 心の中で唱えられる呪文を知らないアレクシスが、なるべく同じ速度でと考えていたのは偶然で――速度を合わせての泡探し、見付けたのは“これは……!”という大きな泡だった。
「大きな泡だね……」
「……なあ、アレス」
 隣からかけられた声でアレクシスに笑みが浮かぶのは、セリオスの声に隠しきれないものが滲んでいたからだろう。
「これだけデカいのどんな花火が上がるかわくわくしねえ?」
 しかも中の種火は泡を満たすほどにある。
 否定の言葉なんて当然存在せず、行くぞの声を合図に二人一緒に泡をつついた。泡は一瞬で弾け、消えたと思う間もなく上へと翔けた。静寂は刹那。無数の光華が広がって、視界をそれのみで彩るような千輪菊を前に二人はただただ口をぽかんと開け――千輪菊の彩映す瞳を輝かす。
「……凄いね、星空のようだ!」
 思わず子供のようにはしゃいだアレクシスに、セリオスは目を瞠ったまま「おお」と返すしか出来ないくらい見惚れていたけれど。
「……ねえ、セリオス」
 そっとかけられた声に滲んでいたものがわからないほど心を奪われてはおらず。視線を向ければ、見付けた楽しみをほのかに宿した空色と目が合った。
「この海では写真も撮れるそうなんだ。ふたりで一緒に撮らないかい?」
「……どうせ撮るなら、この花火の前でとろうぜ」
「ふふ、それじゃ。もう一度、一緒に星空を作ろうか」
「ああ。さっきよりも凄ぇ星空にしねえ?」
 名案だねと笑う声に笑い返して思い出すのは、“ずっと一緒”の覚悟も無かった頃の自分。あれは多分、一昨年だったか。あの頃の自分が密かに願ったのは“アレクシスの写真があればいい”だったけれど――。
 見付けた千輪菊の泡を二人でつつき、中から一斉に翔け出した光の尾を見上げる青空と夜空の青。ぴゅううと聞こえた音が光の尾と一緒にふつりと消えた瞬間、アレクシスは「セリオス!」と名を呼び、手を引き寄せた。
(「……以前君と一緒に撮った時、君は近くにいるのに何処か遠く感じたけれど」)
 ぽん、と一斉に響いて重なった開花の音でも、本当に近くにいるんだという実感は消せやしない。アレクシスはそれが嬉しくて、綻ぶ表情をそのままに二人くっついての自撮り成果をいそいそと確認する。
「どうだ?」
 画面に成果が表示されたのと同時にセリオスが覗き込み――あ、と口を小さく開けたのはどちらか一方ではなく、ふたりとも。
「……ははっ花火が映ってねえじゃん」
「あはは、本当だね」
「じゃ、もう一回!」
「ああ、もう一回!」
 千輪菊の欠片が降り注ぐ下、交わす笑顔も星のように輝いて――。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

飛砂・煉月
有珠(f06286)と!
:21水着

あっは、水の中で咲く花火だってさ
色々探そって自然と差し伸べる手
キミのぬくもりはいつも恋しいんだ
音にはしない代わりぎゅっと握る

ひとつ小さな泡を突いてみれば
ぽんっという音と一緒に花火から星が弾けた
有珠、此処でも星巡り出来そうってへらりと咲う
水中での星巡り、絶対楽しいね
隣にキミが居るからってのは内緒の噺

色んな星屑を探し回る度に二色の眸を合わせて
ふたりで緩み次の星

辿り着いた終着点には沢山の泡が集まる花火
ひとつに触れたら凡てが連なる様に彩色千輪菊の彩が咲いて
星屑が零れて降り注ぐ
綺麗と紡ぎ自然と盗み見たキミの顔はきっと
星より綺麗だった――なんて
此れは星に秘する、オレだけの


尭海・有珠
レン(f00719)と
(2019水着

水中に咲く花火というのも面白いな
水の中で弾け、見上げられる花火の輝きを追いたくて
レンの手をとる

私も星の煌めきが見えたような、小さな泡をつついていく
花火に混じり、菊花火から星が一緒に零れたら
きっと綺麗だろうと思うから
ふふ、水中で弾ける星を辿るのは楽しいだろう
これはきっと隣に君がいるから
繋がれた手にこの温もりがあるからなんだろう――この想いは胸の裡に秘めはするが

辿り着いた先に大きな花火の泡が集まる場所
連鎖して弾ける花火は彩色千輪菊のように色鮮やかに
けれど星が尾を引き煌めきを撒く
水の中の揺らぐ心地好い光の中、降り注ぐ星空を眺める様で
自然と見上げ、見入ってしまうんだ


 同時に咲いた金色花火の音が一つに重なり、瞬き光るものが枝垂れ柳のようになりながら夜空に消えていく。
 波が穏やかなおかげもあって、瞬きながら降る金色は海中からも見えていた。つるりとした窓ガラス越しではないから多少歪んではいたけれど、それでも、ぱあっと現れた金色が広がる様は綺麗だった。
 そして夜空でやったことと同じことを――そんな“当たり前”を海の中でもというのだから、飛砂・煉月(渇望の黒狼・f00719)は海面に向けていた体をくるりと回転させ、隣へと笑う。
「あっは、水の中で咲く花火だってさ。花火なのにね」
「だが、水中に咲く花火というのも面白いな」
 隣でふんわりとはためいたパーカーと低めのポニーテール。海の中だからかとびきり滑らかに見えた後者に一瞬目を留めた尭海・有珠(殲蒼・f06286)は、くすりと笑って共に泳ぐその先へと目を向けた。
 遠くで弾けて咲いた輝き。あれを見上げたらどんな景色が見られるだろう。
 深い青に光と色を灯し静かに去っていった輝きを、追いたい。
 幸いにも泡はまだまだ沢山あるようだった。もしかしたら、某親分が「みんな喜ぶやろなあ」とこっそり設置して回っているかもしれないけれど。
「有珠、色々探そ」
 桜色と白、貝殻とヒトデのカチューシャで飾られた前髪の下。誰かの花火を見つめていた青い瞳が煉月を映して笑う。
「ああ。行こう、レン」
 差し伸べられた手に白い手が重なって、海水で冷やされた掌にぬくもりが灯る。それが煉月の心に何度目かの恋しさを生むものだから、自然と差し伸べていた手は灯ったものを音にしない代わり、重ねられた手をぎゅっと握った。
 周りを満たす青を扇ぐように蹴り、泳ぎ出す。紫を添えたダークカラーの水着と、昼の海の白と青から作ったような水着。二人それぞれの装いは、夜海の住人の興味を引いたらしい。
 淡いイエローカラーの珊瑚に見付けた沢山の泡。一つ一つの中にある火種を面白そうに見ていた煉月のパーカーの下では、小魚たちが隠れんぼを始めていた。ギャザーを重ねたような有珠の水着には、友人なのか家族なのか、二匹の魚がつんつんっとつついては離れてを繰り返している。
「……空腹なんだろうか?」
「綺麗だから引っ越ししたいのかもよ? あ、見て有珠。これ面白そう」
 ぽんっ。
 中に星がある小さな泡をつついた瞬間、可愛らしい音と一緒に星が弾けて輝いた。
 有珠の指先も、彼方の星めいた煌めきを垣間見せた小さな泡をつついていき――ぽん、ぽん、ぽぽんっ。花火に混じって菊花火から一緒にこぼれた星の輝き全てが、海と有珠の青にその彩を浮かべて咲く。
「そっちも星? 有珠、此処でも星巡り出来そう」
 そう言ってへらりと咲う煉月にも、煉月が咲かせた花火と星の彩がやんわりと灯っていて。今宵だけの海と花火と星を携えた様に有珠は「ふふ、」と笑んで頷いた。
「水中で弾ける星を辿るのは楽しいだろう」
「うん。水中での星巡り、絶対楽しいね」
 互いに楽しいと言い切れた理由は、きっと――。
(「キミが」)
(「君が」)
 隣の存在へと浮かんだものは、じゃれてくる魚たちにだって内緒の噺で。
 隣の存在と、繋がれた手に宿る温もりから生まれたものは、胸の裡に秘めて。
 星を辿り、巡ろう。それを言葉にする代わりにどちらともなく視線を巡らせ、星や星屑を抱いた泡を見付けては、緋色と青の瞳が合う。
 遠く儚いミルキーウェイを使ったような泡から星を放ち、咲いて輝くその度に表情はやわらかに緩み、次の星を探して、辿って、巡って――海の中に幾度も咲かせた星の花火が、海図や星座のように夜海の青に刻まれとけていく。
 その旅路の果てに辿り着いたのは、数も大きさも見事な泡の園。まるで海流に乗ってここまでやって来て、自然と集まったかのようにまあるい泡がひそりと身を寄せ合っていた。
 抱く火種の彩を海の青へと僅かに灯す光景は幻想的で、顔を見合わせた二人は自然と口を閉じ、静かに目の前にある泡へと手を伸ばす。
 泡の表面に指先が触れる。ぷつ、と、薄い膜に爪が食い込む。
 その一瞬で割れた泡から周りにある凡てに伝わったのか。ぱしゅんっ、と割れた音は――多分、一度だけ。その一度の直後に光が連なり、数多がひとつとなって咲くべく海の中を翔ける。
 彼らの流れが二人の髪と水着をふわりと扇ぎ、躍らせて。肌を撫でて。聞こえた弾ける音は、今まさに咲くのだと告げる足音のように二人の耳に流れ込んだ刹那、海の青に一斉に灯った色数多。
 それは彩色千輪菊の如き鮮やかな彩。
 惜しげもなく広げられた、海の中に開花した万華鏡。
 けれど咲いた花火は消えるその際も鮮やかなもの。星が尾を引き、星屑の煌めきを青いっぱいに零しながら降ってくる。
 水に抱かれ揺らぐ心地好い光の中、それは降り注ぐ星空を眺めるよう。気付けば見入っていた有珠の顔は、綺麗と紡がせた彩色千輪菊や星よりも綺麗な光となって煉月の心に刻まれる。
 それは海も星も少女も知らない、煉月だけの秘密。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

雛瑠璃・優歌
【永歌】
(20水着)
「わあぁ…」
海中を歩くなんて初めて
「逢海さん、どれから打ち上げましょうか!」
海辺なら昼も夜もこの人と来たことがある
偶然一緒に死線を潜り抜けたのが始まり
それから
近くて、遠くて
本当に何となくだけどあたしはこの縁が手放せない

上げる花火は1つずつ
「わ、2色だ。逢海さんの目の色とおんなじ」
ちゃんと貴方と楽しみたいから
「はい、あたしはすごく好きです」
逢海さんが上げたのも綺麗
すぐに消えずに尾を引くみたいにきらきらして…まるで星(スタァ)
同じ事考えてる訳じゃないだろうけど彼が悪くないって顔をしてるのが嬉しい
「そうだ。夾さんって呼んでもいいですか」
優歌って呼ばれるの、好きだから
同じ様にしたい


逢海・夾
【永歌】
(19水着)

中から見るのは初めてだからな、見慣れねぇもんばかりで面白い
「そうだな、優歌が気になる奴からでいいんじゃねぇか」
優しい人間が選ぶなら、きっと綺麗なもんだろ

同じものを映せば、何か見えるような気がした
…何を見付けたいのかすら分からねぇけどな
ただ、なんとなく、この時間が続けばいいと思う

「なんだよ、気に入ってるのか?」
珍しい色でもねぇと思うが。ま、誉め言葉は受け取っておくぜ
…お、青か。最近よく見るんだが、これも縁なんだろうな
遠いもんだった海に来たように、繋がるはずもねぇもんに出会った、これも
「あぁ。いいぜ、好きに呼んでくれ」
呼び名なんて分かりゃいいんだ
間に合いさえすりゃ、それでいい


 海に入る。それ自体は何の変哲もないことで――けれど頭の先まで海に浸かった後、足元を覆う砂の感触はやわらかに包んでくるようなものに代わり、足取りもふわふわふんわりとしたものに。
 そして口内から空気全てが溢れてもなお平気なまま海中を歩くなど、雛瑠璃・優歌(スタァの原石・f24149)には生まれて初めての体験だったから。
「わあぁ……」
 思わず感嘆の声をこぼしたその瞳は、今宵の海とよく似た青を湛え輝いている。その彩と様子に、逢海・夾(反照・f10226)の唇が弧を描いた。
 海の中を行き、海の中から花火を見るなんて体験は夾も初めてだ。真っ暗であろう筈の夜海は明るく、深く豊かな青の中に広がる風景は、海面向こうに灯った大輪の花火と同様に見慣れないものばかりで面白い。
「逢海さん、どれから打ち上げましょうか!」
「そうだな、優歌が気になる奴からでいいんじゃねぇか」
 ぱっと向けられた笑顔と一緒に、編み込みで結わえられたツインテールと青いリボンがくるりと舞った。
 気さくに返した夾が「任せたぜ」と添えれば、「はいっ!」と元気な声ひとつ。
 どうしてかと問うのではなく、溌剌とした笑顔で応えた少女の気風、その心地良さに笑みながら夾は隣をついて回る。任せた理由は、別に妖怪花火に興味がなかったからといった理由ではない。
(「優しい人間が選ぶなら、きっと綺麗なもんだろ。……それに」)
 青空と白雲をとかしたようなパレオを波に遊ばせ、穏やかで平らな海底、岩や海藻にくっついている泡へ向けられる目線を追って、優歌が映すものと同じものを赤と金の瞳に映していく。そうすれば、何か見えるような気がしたのだ。
(「……何を見付けたいのかすら分からねぇけどな」)
 それでも。ただ、なんとなくだけれど。“この時間が続けばいい”という思いが自分の中にあることは確かで――紅を滲ませた紫紺に似た色のパーカーをふわふわとさせながら、共に青い世界を漂い、映し続けていた時だ。
 ぱか。
「ん?」
「あれ?」
 何か動いたような。
 何だろうと二人の視線が向いた先、夾が腰に掛けている狐面から小魚が顔を出していた。波に揺られて隙間が出来た時に入り込んだのだろう。鮮やかな黄色をした小魚は慌てる様子もなく、落ち着いた紅色のサーフパンツを鰭でくすぐるようにしながら、呑気にすぃーっと出ていった。
 それが何だか可愛らしくて優歌はくすりと笑い――夾を見て、にこっと笑う。
 海辺なら、昼も夜も夾と来たことがある。
 この縁の始まりは、偶然共に死線を潜り抜けたあの時。そして、それからずっと続いている。互いの距離は近くて、遠くて――上手く計れるかどうかわからない、不思議な縁だ。
(「でも……本当に何となくだけどあたしはこの縁が手放せない」)
 髪や水着を揺らす流れと同じくらい、ふわふわとした形のわからないものを傍に、妖怪花火の火種を抱えた泡を物色すること暫し。これにしましょう! と決めた泡はそれぞれ一つずつ。
 先に泡をつついた優歌の前で、ひゅん、と昇った火種が花火となる。ぽぽん、と音を響かせ輝いた海中の花は煌めく赤と金になって咲き誇った。
「わ、二色だ。逢海さんの目の色とおんなじ」
「なんだよ、気に入ってるのか?」
「はい、あたしはすごく好きです」
 赤と金は珍しい色ではないだろう。けれど、屈託のない笑顔と心で向けられた言葉は嫌なものではなかった。
「ま、褒め言葉は受け取っておくぜ」
 にぃと笑った夾の指が泡をつつく。ぱちんと割れてすぐに海中を翔け昇った火種は、二人の頭上で優歌が打ち上げた花火と似た音を立てて、弾けるように咲いた。
 煌めいた光の色は澄んだ青。その色に「お、」と瞬きをした夾は、最近よく見る色だと笑って――ああ、と思い至る。これも、縁なのだろう。
(「遠いもんだった海に来たように、繋がるはずもねぇもんに出会った、これも」)
 そんな思わぬ形で現れた縁の色は、優歌の口から二度目の「わあぁ……」をこぼさせていた。ゆったりと輝きを煌めかす花火を見上げたまま、目を丸くし、口を少し開けて見惚れている様は、海中世界を初めて歩いた時のものとよく似ている。
(「……綺麗。すぐに消えずに尾を引くみたいにきらきらして……」)
 まるで、星(スタア)のよう。
 現れた瞬間にその存在感を心に強く残し、消えない輝きを刻みつける魂の輝き。
 そっと隣の夾を見る。花火にスタアを見た自分と同じことを考えている訳ではないだろうけれど、悪くない、という顔をして見上げていることが嬉しかった。
「そうだ。夾さんって呼んでもいいですか」
 優歌と呼ばれるのは好きだから同じようにしたい。
 少女の願いに妖狐が笑む。
「あぁ。いいぜ、好きに呼んでくれ」
 呼び名なんて、分かればいいのだ。
 間に合いさえすれば、それで――。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

陽向・理玖
月風

21水着

花火見ながら海中散歩とか最高だな
それに今年は…
いや
去年はその
こんな風に恋人になって花火見れるとか
思わなかったから
手繋ぎ
だから嬉しい
色っぽくて可愛いぜそれ

小っちゃい奴なら大丈夫そう?
最小の泡突き
あっこれ線香花火っぽい
瑠碧これならいける?
泡の中確認
試す?
おおやったな
頭撫で

俺一寸やってみたいのあるんだ
楽しげに岩場で泡探し
これ行けそう?
瑠碧少し離れてて
上向きの火花が動く少し大きめの泡を上から突き
噴出花火と共に海中飛び
やべっ楽し…
って悪ぃ
大丈夫?
顔覗き込み

なぁ瑠碧
俺と花火と一緒に写真撮らねぇ?
でかいのないかなぁ…
一緒に探そ

自撮りにし
肩引き寄せ頬付け
ち、近付かないと入んねぇの!
誤魔化しぱちり


泉宮・瑠碧
月風

21水着

火は、花火も怖くて
…でも、海中で
この花火なら、熱も大丈夫そう

理玖の視線に首傾げ
去年の花火見物、私は不参加で…
姉貴分と弟分、でしたね
手を繋ぎ

大丈夫…だと良いな?
泡の状態は大丈夫でも
突く様子にはつい身を引き
…せんこー?
理玖の後ろから見て
…静かな花火…いえ、急に激しいです…
試す…?
最初は静かなので…小さな泡を突き
直ぐ少し離れて眺め
私にも花火が出来たと、えへん

海中の緑に和みつつ
理玖のやりたい事と続く言葉に少し離れて…
噴出花火に小さく悲鳴
…花火は、やはり怖い物かも…
吃驚は、しました

写真と花火…双方不得意ですが、頑張ります

肩を引かれて頬が付けば、吃驚
…顔の近さに気を取られて
意識が飛んでました…


 陸では心臓にまで響く開花の音も、海中に打ち上げられた時は鼓を打つような“ぽん”止まり。それは、花火であっても火を怖ろしく感じる泉宮・瑠碧(月白・f04280)にとって、とてもとても幸いなことだった。
 純白のフィッシュテールスカートをそよがせながら見つめる、彼方の花火。金色の光たちが何度もぱぱぱっと咲いては消えてを繰り返していた。
(「この花火なら、熱も大丈夫そう」)
 花火を見つめる横顔をそっと見ていた陽向・理玖(夏疾風・f22773)は、向こうにも行ってみようぜと指をさす。
「花火見ながら海中散歩とか最高だな。それに今年は……」
「? どうしました、理玖?」
 途切れた言葉。向けられる視線。瑠碧が首を傾げると、理玖は少しだけ視線を泳がせた。頬が、赤くなる。
「いや、去年はその、こんな風に恋人になって花火見れるとか思わなかったから」
「あ……」
 去年自分は不参加で、そしてあの頃の自分たちは――。
「姉貴分と弟分、でしたね」
 どちらともなく手を伸ばして、繋ぐ。
 互いの掌、指先から伝わってとけあう体温に、自然と笑みがこぼれた。
「だから嬉しい。色っぽくて可愛いぜ、それ」
 青い涙石で飾ったサマードレスのような純白。真珠飾りは青いリボンと共に瑠碧を彩り、両足に纏う白いリボンはアシンメトリー。今日の瑠碧はいつもと違う装いだからこそ新鮮で、いつもを知るからこそ眩しかった。
 瑠碧と繋いでいる手とは逆、龍珠を巻きつけた右手が一点を指す。テーブル状の珊瑚が重なって広がるそこを突っ切るように、点々と小さな泡が並んでいた。
「瑠碧、小っちゃい奴なら大丈夫そう? 怖くないか?」
「大丈夫……だと良いな?」
 自分たちの手で花火を咲かすのはこれが初。理玖の指が泡をつついた時、瑠碧はつい身を引くも、ぽんという音も強い光も感じられず――きょとり。
「あっこれ線香花火っぽい。瑠碧これならいける?」
「……せんこー?」
 後ろから花火を見た瑠碧は目をぱちくりさせた。ナズナの先端を逆さまにしたような、そんな光が咲いていた。――ぱちっ、ぱちぱち。咲く音は、耳をすまして漸く聞こえるほど。
「……静かな花火ですね……」
 しゅわわぱぱちぱちぱちっ。
「……いえ、急に激しいです……」
「ああ、線香花火って途中でこうなるんだ。……試す?」
 理玖の指が別の泡を指す。同じように咲く火種を抱いた、今咲いたものよりも小さな泡があった。――これなら、咲き方が強くなっても大丈夫そう。瑠碧は慎重に泡を突き、火種がしゅわんと昇ってすぐに少し離れた。
 しゅぽ。海中に小さくまあるい火が灯り、ぱちり、ぱちぱちと光が弾けだす。小さな線香花火はそのままかすかな開花の音を紡ぎ続けた。
「私にも花火が出来ました」
「おおやったな」
 小さな線香花火だけれど、これはとても大きな一歩。えへんと誇らしげな頭を理玖の手が撫でて――、
「あ、そうだ。俺一寸やってみたいのあるんだ」
 笑った瞳が周りに向いて、あそこなんて良さそうだなと楽しげに泳いだ先は揺れる緑の近くにどどん、とあった岩場だ。海の青に抱かれた緑に和んでいた瑠碧は、少し離れてて、と言われ言葉の通り、そろそろと離れる。
(「このくらいでしょうか」)
 じっと見つめ視線で確認する瑠碧に理玖がこくりと頷いて、この泡突くから、と伝えるようにゆっくり指を近付けていく。しゅうしゅうと上向きに動き続ける火種は、包む泡と同じく少々大きい。
 丸く閉じられたその中を満たし続ける光が咲いたら――。
 瑠碧の表情が少し緊張したものになり、理玖と同じように一回頷く。それを見てから、理玖は泡を突いた。
 つん。
 上から突いた瞬間、泡は外側へ剥がれるように割れた。泡の内側を巡り続けていた火種は外とを隔てる膜が消えた途端、噴き出し花火となって一気に溢れ出す。その真上にスタンバイしていた理玖はというと。
「やべっ楽し……!」
 噴き上がる光と共に一気に上昇する感覚は正に爽快。金龍と稲妻浮かぶ藍色の水着が腿をばたばたと叩く感覚も楽しい。けれど小さく聞こえた悲鳴にハッとして、花火の上から飛び出し瑠碧の傍へと素早く向かった。
「悪ぃ瑠碧……! 大丈夫?」
 花火はやはり怖い物かもと目を丸くしたままだった瑠碧は、そろ、と理玖を見て――こくり。吃驚は、しました。呟きと共に強張っていた体から力が抜けてから、理玖は切り出した。
「なぁ瑠碧。俺と花火と一緒に写真撮らねぇ?」
 写真。花火。――どちらも不得意なものだ。しかし瑠碧は小さく握り拳を作り「頑張ります」宣言。なぜなら、理玖との思い出を形に残せるから!
 写真に収めるなら大きいものを。目当ての泡を後ろに理玖はスマホを自撮りモードにして――瑠碧の肩を引き寄せ、頬を付けた。両手が塞がってるからと泡を割るのはつま先で。
「り、りく」
「ち、近付かないと入んねぇの!」
 開花の音。照らされる海の青。重なるシャッター音。
 けれど顔の近さに気を取られた瑠碧の意識は、花火も驚きの真っ白さ。ただただ目を丸くして、誤魔化した理玖の――いつもより赤い顔を、瞳に映していた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

クレア・オルティス
ネロ(f02187)と
21水着

水中に咲く花火がすごく見たくて…だけど、実は全然泳げなくて…
うぅ…お願い、します…

ん、なぁにネロ?何か、へん?(ちゃんと履いてます)

ひゃぁ~
離れないよう繋いだ手をぎゅっと
あ、そういえば呼吸ができたね
ネロはすいすいと水底へ進んで…すごいなぁ

まるで海の中のイルミネーションだね
せんこうはなび?うん、やってみる
わ…ぱちぱちって、可愛い音がするよ
ふふ、そうだね。静かにじっとみつめていられる…こんな小さい花火も素敵ね

うん!最後なら大きな花火でいこう
でもね、これは…二人で打ち上げたいな。いいでしょう?
ふふふ、いくよ?せーの…!

花火…とっても綺麗…
ねぇネロ…
ありがとう(微笑む)


ネロ・バロック
クレア(f20600)と
21水着

水中に行くのにクレアは泳げねェのか
たくっ、しょうがねェ
引っ張ってってやるから確り掴んでろ

それにしてもクレアの水着、履いているのかいないのか…
ついじっと腰の辺りを見てしまうぜ

クレアの手を引いて負担を掛けないようゆっくり水の中へ
これが花火の泡か
弾ける前の様子も幻想的だ
まずは線香花火してみるか?
派手なのも良いけど
ささやかな火花も夏を感じられて好きだな
水底の暗さを優しく照らしてくれる様子は綺麗なもんだ
淡く映るクレアの顔も楽しそうで良かった

最後は派手に打ち上げだ
大きな泡を選んでドカンとな
クレアが打ち上げてみるか?分かった一緒にな
光の歓待を受けてクレアとの夏の一幕を胸に刻む


 幽世の空に花火が輝く。
 開花の音を響かせ、ちかちかと瞬く光の粒を降らせていく。
 それと同じことが海の中でも起きている。月と花火を映した海面の向こう、時折夜海の黒以外の色がほわりと輝き浮かぶ様に、クレア・オルティス(宵闇・f20600)は夜空めいた瞳を煌めかせた。
(「み、見たい……! 見たい、けど……」)
 うう。クレアは小さく呻き、波打ち際でちょっと進んでは戻るを繰り返す。一緒に来たネロ・バロック(餓狼・f02187)はもう、ふくらはぎまで海に浸かっていた。
 深い青に添えられた濃いオレンジに金の飾りと、ネロの水着姿は海を制覇してしまいそうな軽快さ。見倣って私も行かなくちゃと心は焦り――くるり。振り返ったネロの角を飾る金細工が涼やかな音を立てた。
「水中に行くのに泳げねェのか」
「う、うん……実は、全然……。ご、ごめんね……!」
 でも見たいという気持ちは本当に本当で、こうして何とか海の中に入ろうと悪戦苦闘している。戦果は見ての通り、芳しくないのだけれど。
「たくっ、しょうがねェな。引っ張ってってやるから確り掴んでろ」
「うぅ……お願い、します……」
 伸ばされた手をぎゅっと握る。それだけで頑張らなきゃという気持ちが、頑張れそう、に変わっていく。よし、今度こそ。クレアはまだ少しぷるぷるしながらも瞳にやる気を浮かべ――きょとり。
「ん、なぁにネロ?」
 じっと注がれる視線。どうやら自分の水着が気になっているらしい。行き先は髪を飾る黒花でも、金の花浮かぶアジアンテイストの黒い水着でもなく――腰の両サイドから後ろでふわり揺れる、淡く澄んだ水色スカート周辺。
「何か、へん?」
「いや。じゃあ、行くぜ。ゆっくり入るから」
「う、うん、お願い……!」
 ちゃぷん。ちゃぷん。
 深くなるにつれ体が重くなる。ゆっくり迫ってきた海面が鎖骨から顎へと到達した所で、ネロは少し間を置いて。行くぞ、と心の準備を挟んでから、クレアの手を引いてそうっと海の中へ。
(「ひゃぁ~」)
 クレアは目も口もぎゅうっと閉じ、離れないように繋いだ手にも力を籠める。あれ、でも全然苦しくならないね? 気付いた所でぱちりと目を開ける。
「そういえば呼吸ができたんだった」
「息継ぎいらねェの楽でいいよな。もう少し深いとこ行こうぜ」
(「わぁ、すいすいと水底へ進んでる……すごいなぁ」)
 地上だけでなく海中も自分の領域とするよう。ネロの足捌きをクレアが真似、二人揃ってすいすい、すい。辿り着いた底ではじんわりぼやけた波紋がゆらゆらと。揺れる白い網模様は、不思議と背の高い珊瑚に付いていた泡にも被さっていた。
「これが花火の泡か」
「まるで海の中のイルミネーションだね」
「だな。弾ける前の様子も幻想的だ。まずは線香花火してみるか?」
「せんこうはなび?」
 こういうの、とネロが指した泡の中には、ぷくりとしたそこから花のように光を弾けせる火種の姿がある。
 やってみると頷いたのを見て、ネロは手本を見せるように早速つつく。クレアもすぐに泡をつつき、すると二人につつかれた泡は一瞬で消え、海に触れた火種が輝きを増し始めた。目の前で咲いた線香花火の様が、二人の瞳にも静かな煌めきを宿していて。
「わ……ぱちぱちって、可愛い音がするよ」
「派手なのも良いけど、ささやかな火花も夏を感じられて好きだな」
「ふふ、そうだね……こんな小さい花火も素敵ね」
 静かにじっとみつめていられる。そう口にした言葉も、線香花火を見つめる眼差しも、咲く様につられて静かになってしまうほど。
 ぱちぱちと咲いた線香花火は二人の瞳だけでなく、水底をも優しく照らしてくれていた。ああ、こういうとこも綺麗なもんだ。ネロがクレアを見ると、花火の彩が淡く映るその顔は海に入る前と違い楽しそうで――良かったと、笑みが浮かぶ。
「なあ、最後は派手に打ち上げようぜ」
「うん! 最後なら大きな花火でいこう」
 最後にピッタリの泡探しはトレジャーハントの如く。あちこちしっかり目を凝らし、海藻の裏も確認して――そして見つけたとびきりの泡を前に、ネロの目がぱちり瞬いてクレアに向く。
「クレアが打ち上げてみるか?」
「でもね、これは……二人で打ち上げたいな。いいでしょう?」
「分かった一緒にな。ビビらねェように深呼吸しとけよ」
「大丈夫だよ」
 ゆっくり連れてきてもらった海の中は、もう怖くない。
 漂うクラゲのように、ふわんふわわんっと泡の中でめいっぱい動いている火種を打ち上げたら、きっと――。湧き出す予感を胸に二人は大きな泡を挟んだまま笑い合って。
「ふふふ、いくよ?」
「おう」
 せーの、とつついて弾けた泡から流れが生まれ、飛び出した光が一瞬の熱と共に二人の水着と髪を派手に吹き上げる。海面に向かった輝きはふいに薄れ――見える世界全てを照らしながら咲き誇る。
「……とっても綺麗……。ねぇネロ……」
「ん?」
「ありがとう」
 音もなく降り注ぐ光の歓待。そっと咲いた微笑。
 夏の一幕が、花火の彩と共に刻まれる。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

朱赫七・カムイ
⛩神櫻

サヨ!!気を確かに!!
海中を歩く所ではないサヨを抱える
ほら息はちゃんと出来る

尚もしがみついてくる巫女の可愛らしいことだ
サヨ、見てご覧
水面の空が美しいよ

落ち着かせるように暫し海底の散歩をしよう
どんな花火を咲かせようか?
大輪なものもいいし、小さな花火が連なるのも可憐だよ
他に変わったものもあるのかい?
噫、桜を描く花火はきみらしい

サヨを岩の上に座らせ、隣へ
近くの珊瑚についた泡を幾つか摘んで、ひとつ約して
せーので海面へ打ち上げる

小さな花火連なり描く満開の桜と
きみにだけ伝う文字
サヨ、やっと笑ってくれたね

きみが笑う世界がいとしい
きみが笑う世界でないといけない
もう1つ?いいよ
サヨの好きなだけ打ち上げよう


誘名・櫻宵
🌸神櫻

はぉぉおあ、海底の藻屑になるわぁ!!無理無理無理!しんだ!私、水にとけた!
私は水が苦手なのよう!
でも神は容赦ない
カムイにぎゅうとしがみついて海底を往く

言葉に誘われ、水面ではなく嬉しげなカムイの顔を見た
そうね!綺麗な顔してるわね!
うう!

ゆらゆら揺れる海底散歩
私は桜みたいなのがいい
気を紛らわすように話せば、楽しみが増してくる
カムイ、桜型の花火をあげたい

岩の上、カムイの手は離さず渡された泡を合わせて放つ

わぁ……!

満開の桜とひとつ
照れはじるようにすぐに消えてしまったけれど──「あいしている」
なんて、
真っ赤になって、それから満開に咲う
ありがとう、カムイ

もう一つ打ち上げましょう
託す言葉は勿論、同じ


 あった、と海中で弾んだ声は開花を待つ火を見付けた誰かのもの。
 こぼれた感嘆の吐息は、空や海に咲いた花火を見た誰かのもの。
 そして浜辺で響いた次の音色は――。
「はぉぉおあ、海底の藻屑になるわぁ!!」
 誘名・櫻宵(爛漫咲櫻・f02768)の絶叫だった。普段はしゃなりしゃなりと歩み、戦場では舞うように駆けて刀を揮う櫻宵だけれど、水だけは何がどうしたって苦手だった。
「無理無理無理! しんだ! 私、水にとけた!」
「サヨ、サヨ……!」
「いやーっ! 無理よカムイ!! 蝋燭の火は水を被ると消えちゃうのよ!!」
 櫻宵は自分の手を取る朱赫七・カムイ(厄する約倖・f30062)へ必死に訴える。
 浜辺から海に入る? 海中を歩く? 無理よしんじゃう!!
「サヨ!! 気を確かに!!」
 きみは蝋燭の火ではなく私の巫女なのだから消えはしないし、きみを消させはしないと言いながら、ひょいっ。櫻宵が「はっ」と目を丸くしている間に、カムイは櫻宵を抱えてとぷんと海中に舞い降りた。神は容赦ない。なぜなら神だから。
「ほら息はちゃんと出来る」
「うう……でも苦手なものは苦手なのよう……!」
 纏う水着も何もかもが水に濡れて包まれて――互いの髪も、ゆらりふわふわと揺蕩うばかり。頭からつま先まで全部海の中だ。ぎゅうとカムイにしがみつけば、伝わる感覚で“とけてない”と実感出来るけれど。
 自分にしがみつき、瞳もぎゅうと閉じている櫻宵にカムイは微笑が止まらない。だって可愛らしくて仕方ない。サヨ、サヨ。繰り返し優しく呼べば、ぴくり。ぴったりくっついていた顔がほんの少しだけ離れた。
「サヨ、見てご覧。水面の空が美しいよ」
 カムイの言葉に誘われて櫻宵の顔が向く。
 涙が落ち着いた双眸いっぱいに映るのは――嬉しげな神の顔。
「そうね! 綺麗な顔してるわね! うう!」
「サヨ、それは水面ではなく私の顔だよ?」
 櫻宵は再びカムイに顔をくっつけ、ぎゅううとしがみついてくる。
 きみが落ち着けるように。カムイはそう願い、想いながら海底をゆく。穏やかな足取りで一歩進むごとに二人の体は浮遊感に包まれ、ゆらゆらとした心地が満ちていく。まるで、流れのひとつとなったかのよう。
 青く静かな――時々、ぽん、と可愛らしい太鼓のような音が混じる海底散歩。カムイはそこで見かけた珊瑚や岩、砂の海底などに留まる泡を見て、ねえサヨ、と囁いた。なぁに、と未だ固い声が返る。
「どんな花火を咲かせようか?」
「花火……」
「そう、花火だ。大輪なものもいいし、小さな花火が連なるのも可憐だよ」
 泡の中でその時を待つ火種たち。泡の並び方や目にした火種の姿を一つ一つ伝え、変わったものもあるようだと、何と言えば良いのかわからない火種のことも伝えながら歩いていく。
 ゆらゆら。ふわり、ふわ。
 優しい心地へ、ふと射し込んだ明るさ。水面から降り注ぐ月光が二人を照らして――、
「私は桜みたいなのがいい」
 気を紛らわすように話したことを切欠に、水への恐れでいっぱいだった心に楽しみが増してくる。海の中で打ち上げたらどのように咲くかしら。興味も芽吹けば、必死にしがみついていた体から顔を離す余裕が生まれた。
「カムイ、桜型の花火をあげたい」
「噫、いいね」
 それに桜を描く花火はきみらしいとカムイは微笑み、櫻宵を岩の上に座らせるとその隣に腰を下ろした。花火を探さないの? 首を傾げた櫻宵だけれど、目の前に差し出された掌を見て目を瞠る。
 両手という箱の中には、小さな煌めきをふよふよと漂わす種火を抱えた泡がいくつか収まっていた。種火の色は――白い。
「もう見付けるなんて、凄いわカムイ!」
「それだけではないよ」
「あら、何かしら?」
 しかし神は悪戯っぽく微笑み、唇の前で人差し指を立てるのみ。
 咲かせるまでのお楽しみねと櫻宵も微笑み、カムイと手を繋ぐ。もう一方の手は、二人とも集めた泡へ添えて――「せーの」の声を重ね、海面目掛け放った。
 霞のように儚い膜が破れ、泡の中から海中へ、海中から海面へと火種が流星群のように輝き翔る。高く高く昇った輝きが一瞬消えて――ぱあ、と海の青を絢爛の光で照らした。
「わぁ……!」
 咲いた瞬間白から桜色へと変わった小さな花火たち。連なり描かれた満開の桜に櫻宵の瞳は笑顔と共に輝いて、
(「あ、」)
 満開桜の中に現れた、櫻宵にだけ伝う文字。カムイがひとつ約していたそれは、照れはじるようにすぐに消えてしまったけれど――瞳に映ったものは一瞬で櫻宵の心に刻まれ、頬を赤く染めていく。
 桜花火の欠片が桜の花びらめいて降れども、赤く染まった顔はどうしたって隠せない。向けられる視線へと櫻宵の顔がおずおずと向いて、そして、満開に咲った。
「ありがとう、カムイ」
「サヨ、やっと笑ってくれたね」
 きみが笑う世界がいとしい。きみが笑う世界でないといけない。
 神の願いがひとつ叶えば笑顔はふたつ。頬の赤みは少しずつ落ち着いて――、
「ねえカムイ、もう一つ打ち上げましょう」
「もう一つ? いいよ。サヨの好きなだけ打ち上げよう」
「それじゃあ、さっきみたいに『せーの』で行きましょ!」
 そして咲かす光に託す言葉は――勿論、同じもの。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

栗花落・澪
【犬兎】
21水着。モチーフは月の女神

海の中も綺麗だなぁ…
なんか宝探しみたいだね!
一番最初におっきいの見つけた方が勝ちー、なんて
そうだね、いっぱい打ち上げよー!

泡を探しながら緑を泳ぎ
見つけたら動きも楽しみつつちょんとつっつく
色鮮やかに弾ける花火を見上げて更に目をキラキラさせ

ほんとだね、凄く幻想的…
まさに光の海、みたいな…
ね、ちゃんと写真撮ってくれた?
後で僕にも記念に頂戴ね

花火に夢中になりながら泡をつっついてたら
うっかり動く花火を割って夏輝君の腕にしがみつき

わぁびっくりしたぁ!
ごめんー気抜いてた……あーっ!
見て見て夏輝君、見つけたよ!大きいの!

えへへ、僕の勝ちだね
ね、これは一緒に割ろうよ
せーのっ


小林・夏輝
【犬兎】
21水着。モチーフは星の王子

お気に入りのカメラを持ち込んで

お、いいねー勝負
とりあえず片っ端から触りながら行ってみっか

勝負ではあるけど隣に寄り添いながら泳ぎ

海上の花火も見えるし
確かにこれは絶景だわ

花火が弾ける瞬間をしっかりカメラに収めつつ
こっそり澪の事もパシャリと
いやぁ可愛い子のシャッターチャンス逃したら損でしょー
バレたらしばかれるからさり気なく

勿論撮影完了だぜ
俺も欲しいし、現像したら渡すよ(花火のだけ)

うおぉどした!?
もーちゃんと見ないからだぞ?
えっ、あっ、先越された!
澪に気取られなきゃ俺も見えてたってそれー!

じゃれ合いつつ巨大花火に近づいて
そうだな、今日の記念にもなるし
澪が合図してよ


 夜海の世界が湛える深く澄んだ青に、月光と海面の揺らぎから創られた光の幕や波紋がゆらり、ゆらり。それは栗花落・澪(泡沫の花・f03165)の淡く色づいた両翼や肌、大理石のようにかすか煌めく白い水着も彩るように揺らぎ続ける。
(「本当に月の女神様になったみたい」)
 綺麗だなぁ。微笑みと一緒に呟きをこぼし、綺麗といえばと隣を見る。
「ね、なんか宝探しみたいだね! 一番最初におっきいの見つけた方が勝ちー、なんてどう?」
 楽しげにキラッとした瞳に、お気に入りのカメラ片手にキョロキョロしていた小林・夏輝(お調子者の珍獣男子・f12219)も、目の前に広がる青とよく似た瞳をキラッと輝かせた。
「お、いいねー勝負。とりあえず片っ端から触りながら行ってみっか」
「そうだね、いっぱい打ち上げよー!」
 なんたって、宝を秘めたものは見える範囲だけでも沢山ある。無くなる心配のない宝探し勝負は、二人の指先が泡をつつく度に宝の地図が広がるよう。
 泡の中で細かい欠片を散らす種火、ふわんふわんと柳のような光を揺らす種火、魚の絵を見せる種火――中の動きも楽しみながらつついて回る澪と、その隣にさり気なく寄り添い泳ぐ夏輝の姿は、緑に染まった海藻の森の中。
 時々シャッター音を交えていた敏腕カメラマン・夏輝の足がふいに止まる。どうしたのと訊ねた澪は夏輝が見ているものを見て、そして、同じように足を止めた。
 自分たちの周りには、やわらかに揺れる緑の森。遙か頭上、海面の下で打ち上げたばかりの花火が輝き、その向こうには今咲いたばかりの花火の彩。
 月光と共に海中へとほのかに注がれる輝きは、海の中と外それぞれに生まれたものがこの瞬間に集まっているようで――。
「確かにこれは絶景だわ」
「ほんとだね、凄く幻想的……まさに光の海、みたいな……」
 宝石の天井めいた海面の先で光の玉が見えた。夏輝はすかさずカメラを構え、花火となった瞬間をしっかり収めてみせる。
「ね、ちゃんと写真撮ってくれた?」
「勿論撮影完了だぜ」
 可愛い子(澪)のシャッターチャンスだってバッチリだ。なぜなら可愛いは世界の財産、逃したら損しかない! ――でもバレた時はしばかれる為、撮影の際は常に最上級のさり気ない撮影術を駆使している夏輝だった。
「後で僕にも記念に頂戴ね」
「俺も欲しいし、現像したら渡すよ」
 何も知らない澪に夏輝はきらきら星の王子様のような笑みを浮かべ、『花火のだけな』と心の中で付け加えた。泡を一つ見付けてはつついて花火を打ち上げれば、澪も海藻やじっとして動かない亀の甲羅など、様々な所で泡を見付けては「こんなところにもあったよ」と報告しながらツンッとつついて打ち上げて――、
(「あれっ」)
 待って今僕が割ったのって。
 澪の世界が一瞬スローモーションになる。なぜなら。
「わぁびっくりしたぁ!」
「うおぉどした!?」
 突然の大きな声、ドンッという衝撃と腕に何かがしがみつく感覚で夏輝の心臓が跳ね上がる。すぐそこには目を真ん丸にした澪がいて――そして、海底ではそれはもう凄まじい生きの良さでシュババババッと駆け回る花火がひとつ。
 夏輝は一瞬で何があったか把握した。
 じい、と澪を見ると、澪が申し訳無さそうにしゅんとする。
「もー、ちゃんと見ないからだぞ?」
「ごめんー気抜いてた……あーっ!」
「うわっ今度は何だよ!?」
 しがみつかれたその次は、ぐいっと引っ張られて目は真ん丸。声が明るしまずいことじゃないんだろうけどと分析し、引っ張られながら何だどうしたと澪が向かう先を見て――ぱっ。
「見て見て夏輝君、見つけたよ!」
 向けられた明るい笑顔と一点を示す指に、夏輝の目が丸くなる。
 対する澪は、そんな夏輝を見て“楽しい”と“嬉しい”でいっぱいの笑顔をより輝かせた。
「ほらあそこ! 大きいの!」
 何種類かの珊瑚が集まり、まるで珊瑚のタワーを作っているそこの頂点に、ぴたっと嵌っているのは輝きも大きさも見事な泡だった。見事過ぎて、“妖怪花火の種火を抱いた泡じゃなくってどっかの竜神が海に落とした宝珠じゃ?”と思えてしまうほど。
 けれどそんな考えも、
「えへへ、僕の勝ちだね」
 得意げな笑顔と勝利宣言で彼方へ打ち上げられ、代わりに悔しさがぽぽんとやって来る。
「えっ、あっ、先越された! 澪に気取られなきゃ俺も見えてたってそれー!」
「えー、それはどうかなぁ?」
「絶対そうだって!」
 じゃれ合いながら珊瑚タワーの天辺に座す泡まで泳げば、二人の接近に気付いたかのように、そして早くと急かすように中の種火がふるふると揺れた。そんな種火とまずは記念に一枚、一緒にカシャリ。
「ね、これは一緒に割ろうよ」
「そうだな、今日の記念にもなるし。澪が合図してよ」
「いいよ! それじゃ、『せーの』で行くね」

 せーのっ

 弾む声。溢れて飛び出す光。
 翔けた種火は大きな大きな花となり――歓声とシャッター音が重なった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

夏目・晴夜
帷さん(f00445)と
21水着

夢見昼顔?
へえ、そんな至高の色合いで咲く花があるなんて!
では夢見昼顔を描く花火の種を探してみましょうか

あ、見つかりましたか?
全然違う。しかし海中で観る鼠花火も素晴らしいですね
帷さんがお求めの花は、私の直感によると…これです!
全然違う。何だコレ
くそ、有能な魚に見せ場を奪われてしまいましたか…!

…これは
とても綺麗です、本当に
しかし「謙遜」…私はあまり好きな言葉ではないんですよねえ…
私が愛する女性は全ての世界において最も美しい御方なので
謙遜なんて言葉とは無縁に、これからも傍で堂々と咲き誇り続けて下さればと思います
それがこのハレルヤが生きる意味にも繋がっていきますからね


枢囹院・帷
晴夜(f00145)と
19水着

容易く世界が綻ぶ幽世には驚かされてばかりだが
親分達も随分と奇天烈…粋な計らいをする
ここは粋狂に身を委ねよう

見せたい花があるんだ
誕生月を同じくする私達の色「夢見昼顔」
私の紅瞳と君の紫瞳を混ぜたような赤紫色の昼顔だよ

これかな
ちがう鼠花火だ(ひゅばば
折に目が合う魚達に教わりつつ狙いの花火を見つけよう
ああこれだ

他の支え無しには蔓を伸ばせぬ昼顔の花言葉は「絆」
彼なくして生きられぬ私のようだと皮肉は嚥下しつつ
彼の支えとなれるよう、炎の色に黙して誓う

綺麗だろう
因みに昼顔の別なる花言葉は「謙遜」
自信家の君に似合うかどうか
幾許の諧謔を弄して君の反応を愉しむつもりが
噫、やられっ放しだ


 大祓百鬼夜行という危機を乗り越えても、相変わらず幽世という世界は綻ぶ危機に溢れた日々過ごしている。
 そんな幽世に驚かされてばかりの枢囹院・帷(麗し白薔薇・f00445)が耳にした『親分たちからの夏の贈り物』は随分と奇天烈――もとい、粋な計らいだった。
 夜空に打ち上げられた花火の上、誰かが歓声を上げてぴょんぴょん飛び歩くのを見た。隙間から落下しないのだなと、花火の上の誰かと妖怪花火双方に感心したのは地上にいた時の話。今は酔狂に身を委ね海の中。捉えた流れに乗って泳ぐ度に黒い涙雫の飾りが躍り、白薔薇を添えた紫黒のビーチウェアも尾鰭のように揺れる。
「君に見せたい花があるんだ」
「それは気になりますね」
 シンプルなシャツに立派なくるりん尻尾の持ち主柄水着。今年の水着コンテストも抜かり無く楽しんだ夏目・晴夜(不夜狼・f00145)が紫彩の瞳を細め笑うと、帷も血色の瞳を静かに細めた。帷の視線は晴夜から今向かっている場所へ――星々のように煌き瞬くものを抱いた海の底へ。
「誕生月を同じくする私達の色、『夢見昼顔』」
「夢見昼顔?」
「私の紅瞳と君の紫瞳を混ぜたような赤紫色の昼顔だよ」
「へえ、そんな至高の色合いで咲く花があるなんて!」
 どのような色合いだろう。帷の瞳を見ながらまだ知らない花の形と色を思い浮かべ、夢見昼顔の花火を打ち上げた時を想像してみた。――最高では?
「では夢見昼顔を描く花火の種を探してみましょうか」
 そして、この海の中に至高の色を。
 フフンと笑った晴夜の狼尻尾が揺れ、尻尾にまだ残っていた空気がしゅわりと離れ、昇っていく。サイダーの泡めいた空気が海面に届く頃、二人はリボンのような海藻に覆われた海底近くを泳ぎながらの泡探し。
 そよぐ海藻に付いている大きな泡、小さな泡。どちらにも花めいた火種を抱いたものが多く、中を確かめ、海藻をかき分け根本や海底も確認して――と。
「これかな」
「あ、見つかりましたか?」
「ちがう鼠花火だ」
 なぜか帷のもとから自分の方へひゅばばと向かってきた鼠花火を、晴夜は俊敏に躱した。鼠花火にもこの晴夜の素晴らしさがわかるとは、親分たちの心意気も籠もった花火は一味違うようだ。
 ――全然夢見昼顔ではなかったけれど。
 それはそれ。これはこれ。
「しかし海中で観る鼠花火も素晴らしいですね」
 豊かな青色に花火の色と光が広がり、陸で見る時とは違った輝きを放っている。
 これが夢見昼顔であったなら。晴夜はフムと周囲を見、意識を研ぎ澄ます。おや、と帷がそれに目を留めて、
「帷さんがお求めの花は、私の直感によると……これです! ……全然違う。何だコレ」
 壊さないようサッと手を添え確認したのに、中の火種はこちらを見つめる魚らしき謎の生き物の絵花火。
 本当に何ですコレと首を傾げている間、帷は目の合った魚たちに囲まれ、彼らがパクパク動かす口と動きに導かれていた。
 海藻の森の先、何層か重なっている珊瑚はテーブルか台座のように見えた。その一角、まだ成長途中らしき珊瑚の上にあった掌大の泡ひとつ。その中でゆらりきらりと浮かぶ種火の姿が、帷の瞳へとその色を映す。
「ああこれだ」
「え!」
 振り返った晴夜はすいっと泳いで帷の傍へ。同時に帷の元からしゅぱっと散って遠ざかっていく魚たちへと、悔しげな視線をじいいいと送った。
(「くそ、有能な魚に見せ場を奪われてしまいましたか……!」)
 しかし心の声がよく伝わるその表情は、泡の内にある種火を見た瞬間、静かに丸くなっていく。
 開いて消えてを繰り返す花形の種火の色は、聞いた通りの色だった。
 二人の瞳色を一つとした花の、昼顔の花言葉。『絆』を胸の内で花言葉をなぞった帷の唇がかすかに弧を描く。他の支えなしに蔓を伸ばせない花が持つ花言葉はまるで、晴夜という存在なくして生きられぬ自分のようだ。
 けれど奥底から沸き上がった皮肉をこぼすことはしない。嚥下しつつ伸ばした指先で解き放ち、海の青に大きく花開いた夢見昼顔の炎色へと、晴夜の支えとなれるよう黙して誓うのみ。
「……これは」
「綺麗だろう」
「とても綺麗です、本当に」
「因みに昼顔の別なる花言葉は『謙遜』だ。自信家の君に似合うかどうか」
 ついと視線だけを向ければ、謙遜、と言葉をなぞった晴夜が指先で顎を擦りながら夢見昼顔を見上げていて。
「私はあまり好きな言葉ではないんですよねえ……」
(「やはりな」)
「私が愛する女性は全ての世界において最も美しい御方なので、謙遜なんて言葉とは無縁に、これからも傍で堂々と咲き誇り続けて下さればと思います。それがこのハレルヤが生きる意味にも繋がっていきますからね」
 咲いた花火を見続け笑う横顔に、紫の瞳に、夢見昼顔の色がきらきらと瞬きとけていく。紫色の眼差しはそのまま夢見昼顔を映し――帷も、頭上で輝き咲く花へと視線を移した。
(「幾許の諧謔を弄して君の反応を愉しむつもりが……」)
 皮肉は嚥下したというのに。
 噫、やられっ放しだ。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

朱酉・逢真
深山サンと/f22925 見た目のみ子供・群青の水着と白パーカー
心情)ああ夜だ、あの灼熱が落ちて眠るこの時間をどれほど待ちわびたか! ああ、このナリかね? 小さい方が日を浴びずに済むだろう。そういうことだよ。ひ、ひ…深山の兄さんも夜のほうが似合うじゃないかね。花火はお好きかえ? せっかく素敵に咲いてくれるンだ、夜より暗い水底で楽しもうぜ。
行動)《獣》からクジラを出して、ふたり乗せてもらって深海へ。流れと水圧は俺が操る。何も見えない暗闇の中に光る花火の蕾を咲かせていこう。ヒヒ、現地民(*深海魚)らァも興味津々だとよ。どうだい兄さん、海だって空に負けやせんだろ。


深山・鴇
逢真君と/f16930
サーフパンツとラッシュガード

いや、なんでチビの姿で?省エネ?なるほど。うん、チビでも別に構わんよ
(昼間死にそうな顔をしていたのを知っているので、元気になってなによりだなと思っている)

そうだなぁ、太陽の下より月の下のが性に合うな
花火は好きだよ、へぇ、そりゃ珍しい体験ができそうだ
(誘われるままに鯨に乗って、深海へ)
驚くほど暗いが恐怖はない、目の前に夜の化身がいるので。
これが妖怪花火の泡かい、どれ
(つん、と突けば大きな花火が上がって深海を照らす)
はは、これは面白いな、なぁ逢真君
(目に見える花火の泡を次々と指先で突いて、笑って)
ああ、真っ暗闇な分、花火が際立って見えるってものさ


 浜辺に佇む長身なシルエットの脇を、それよりもずっと小柄なシルエットが大股で過ぎていった。細い手足、白い肌。夜空と同じ漆黒の髪を持つ子供の足取りは、今という時間を喜ぶ空気に溢れさせながら、白いパーカーをひらひらはためかせ波打ち際でぱしゃんと音を立てた。
 そのまま波打ち際の先を目指し群青の水着も海に浸した子供の後ろから、長身の主も海へと入っていく。サーフパンツにラッシュガードと、夜風の冷えから程よく守ってくれる出で立ちの男の視線は、うきうきと海中目指す子供に注がれていて――と、子供の口がにぃぃ、と笑った。
「どうかしたかい、深山サン」
 笑っているが、男を見て笑う子供の濃い朱目には底知れぬものがある。
 夜の海で会ったなら、勘が良ければ人ならざるものを感じるだろうその子供に深山・鴇(黒花鳥・f22925)は「いや、」と落ち着いた笑みをたたえ、逢真君、と『子供』の名を口にした。
「なんでチビの姿で?」
「ああ、このナリかね? 小さい方が日を浴びずに済むだろう」
 朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)はほっそりとした両手を軽く広げ、薄らと笑う。
「ほら、お前さんよかずっと小さい」
 夏という季節は大抵灼熱が満ちているものだ。それを大人の姿と比べ浴びる量がぐっと減るこの姿は――そう、省エネというアレ。なるほどと頷いた鴇に逢真は「ひっひ」と笑い、両手で海面を撫でてぱしゃりと音を立てた。
 日が昇るまでの時間、大なり小なり落ち着く夜という時間、それも海辺の夜ともなれば灼熱の『しゃ』の字もない。待ちわびた時間の訪れをくつくつと喜びながら、ああそれとも、と遙か高い位置にある鴇の目を見る。
「このナリが気になるかい。波にさらわれるヘマはしないがね」
「いや。うん、チビでも別に構わんよ」
 昼間死にそうな顔をしていたのだ。それに目の前の存在は子供のなりをしていても『朱酉・逢真』なのである。本人が言った通り、波にさらわれはしないだろうし――鴇は、逢真が元気になってなによりだと思うのみだった。
「ひ、ひ……深山の兄さんも夜のほうが似合うじゃないかね」
「そうだなぁ、太陽の下より月の下のが性に合うな」
 そうこうしている間に、足元にあった地面はなくなっていた。海面から顔を覗かせ、波に抱かれてゆらゆらり。
「ところで兄さん、花火はお好きかえ?」
「花火は好きだよ」
「そりゃァ良かった。せっかく素敵に咲いてくれるンだ、夜より暗い水底で楽しもうぜ」
 夜より暗い水底。
 それは月光が届くそこではなく、もっともっと深くて暗い――深淵の。
「へぇ、そりゃ珍しい体験ができそうだ」
 逢真がそうしようと言ったから、鴇はどうやって行くのかと問いはしなかった。
 深い朱色ふたつが緩やかに弧を描けば、海の中、自分たちよりもずっと底の方から何かがやって来た。目の前で海面が膨らみ、さぱん、と真っ黒で緩やかに弧を描く大地が現れる。
「こいつで行くとしよう」
「鯨か。悪くない」
 誘うまま、誘われるまま。鯨に乗れば雄大な哺乳類の形をした獣は自然と海へ潜り始めた。全身を勢いよく撫でるだろう流れや深度が進むにつれ上がる水圧は、逢真がゆるゆると視線を動かし操って快適なものへと変えていく。
 やがて、月光揺れる青い世界に黒が染み始める。
 そうして、光が遠ざかり闇が近くなる。
 側を過ぎる魚も数を減らし、周囲は完全な暗闇となった。光が無い以上、驚くほど暗い。音も無い。まるで五感全てが無くなったかのようだ。しかし目の前に夜の化身がいれば、恐怖など覚える筈もなく――。
「……ん? ああ、あれが例のやつか」
「妖怪花火になる前のチビだな」
 かすかに見えた小さな光は線のような形をしていた。鯨を向かわせれば、絶壁にくっついて頼りなく揺れる泡が複数。泡の中では、ほろほろふるると火種が蠢いていた。
「これが妖怪花火の泡かい、どれ」
 鴇は漆黒ばかりの世界にあった唯一の黒以外へと指を伸ばす。泡へ触れる手前まで来てようやく自分の指先を照らしたそれは、なかなか大きい泡の内。逢真もさァてと笑って泡を突き――、
「へェ」
「お、」
 飛び出した火種は空を行く流れ星もかくやという勢いで目の前を翔けた。真っ暗な世界に細い音を刻み、ぽん、と弾ける音を一回。そうして咲いた花火は鯨を照らしその輪郭を浮かび上がらせ、光届かない深海をひととき照らしてみせた。
「はは、これは面白いな、なぁ逢真君」
 ぴゅーんと降ってくる花火の名残りが指先を滑り落ちるも、不思議と熱くない。鴇は届く範囲の泡を次々と指先で突き、ぽんぽん、ぽぽ、ぽと花火を打ち上げては笑う。
 逢真も暗闇に花火の蕾をゆるゆると咲かせ――暗闇から覗いたもの等に気付き、ヒヒ、と肩を揺らし笑った。
「現地民らァも興味津々だとよ。どうだい兄さん、海だって空に負けやせんだろ」
「ああ、全くだ」
 真っ暗闇な分、花火の色や光、咲く様が際立って見える。
 それは実に面白く愉快で――まるで、生命のよう。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ルーファス・グレンヴィル
【兄弟盃】21水着

あ? あ~
これでも楽しんでるよ
お前みてえに若くねえの

コツン、と軽く額を小突けば
お返しとばかりにじゃれつかれ
おいこら、アキ、勝手にどっか行くなよ
手綱代わりの三つ編みを引っ張った

でっけーの?
それなら見つけやすそうだ
弟分の頼みなら叶えてやろうか

海底を歩いて探した大きな泡
そっと触れ、すぐ溶ける
聞こえた感想にアキを見て

へえ、ヒトの話するなんて珍しいな
忘れっぽいヤツが相手なのか
相談くらいなら乗るぜ?
なんて、にやにや笑い

何、オレの話?
お前、甘えっつって吐くだろうが
オレはアキと遊ぶ時間も大切にしたいんだよ
ぐにぐに、と頬を摘まめば
言葉にならぬ声に思わず笑う

夏の夜に、花ひらくのは、


菊・菊
【兄弟盃】21水着

ぎゃはッ
ほんとに水の中で喋れんだ、おもろ~
んあー?もっとはしゃげよ、俺だけハズいじゃん

そう言ってルーファスにじゃれついて跳ねる
逸れそうになれば三つ編みを引かれて、それにすら笑って

でっけーの探そ、ちびじゃつまんねー
花火だろ?デカくて派手なのが粋じゃん

ふたりで探した一番デカいやつに、そっと触れる

それは一瞬で弾けて
解けて
思い浮かんだのは、誰かの顔で

一瞬だよな、ほんと
しあわせなのって

どうせあいつ俺のことなんてすぐ忘れちまうし
…んだよ、俺の話はいーんだよほっとけ

それよりお前の方こそどーなの、
ひひ、てめえの放って俺と遊んでていーわけ?

生意気だって頬を摘ままれたって
きみとだから花が咲く


 打ち上げられた妖怪花火を眺めながら海にドボンッ。程よく冷えた海水が夏のイベントを終えた体に心地良く、更には開いた口からガボボボと空気が出ていった後も、全く苦しくないというサービス付き。
「マジかよ」
 昇りゆく泡を見送りながら発した自分の第一声を、菊・菊(Code:pot mum・f29554)は誰よりも面白がった。
「ぎゃはッ。ほんとに水の中で喋れんだ、おもろ~」
 聞こえ具合は、陸で喋る時と比べてほんの僅かなフィルターを一枚通しているような、いないような。つまり、全く気にならないレベルだ。
 げらげら笑って手足を動かすのにつられ、菊花と鶴をちりばめたシャツや金色を挿した長い三編みが翻ってうねってと、夜海の中に賑やかな様と彩を浮かべる横。頭に被さったフードを後ろに戻したルーファス・グレンヴィル(常夜・f06629)はというと、いつも通りだ。
 黒にボルドーを合わせた水着姿。夏ならではの装いであることが不思議なくらい、ルーファスからは泳ぐ気もおかしな海の中を楽しむ気配も見えず、菊は半目になって首を傾げた。
「んあー? もっとはしゃげよ、俺だけハズいじゃん」
「あ? あ~、これでも楽しんでるよ。お前みてえに若くねえの」
「ぎゃはは、26なのに若くねえとか」
 コツンと軽く額を小突かれた菊の三編みがぐるんと動いて、ひゅん、ひゅん。じゃれつき跳ねる菊と一緒に三編みが左右へ泳ぎ回るように動き――ぐいっ。
「痛ッ」
「おいこら、アキ、勝手にどっか行くなよ」
 逸れそうになった姿を、三編みを手綱の代わりに引っ張って止めれば「ひひ」と笑う声。菊は髪に挿す金と似た色合いの水着から伸びる細い両足で、海底の砂をぱさぱさと払うように蹴りながら周りを見た。
「でっけーの探そ、ちびじゃつまんねー」
「でっけーの?」
「花火だろ? デカくて派手なのが粋じゃん」
「“デカくて派手なの”ねぇ……」
 それなら小さいものと比べ見つけやすそうだ。探す手間が省けるということは即ち、“若くねえの”と言ったお年頃にも易しいもの、ということになる。――それに、弟分の頼みだ。叶えてやろうか。
「じゃあ、デカくて派手なやつを探しに行くか」
 掴んだままの三編みを軽く引いて、パッと放す。
 ニィと笑った紅蓮と金。並ぶ灰色と黄色挿す黒は海底を気儘に歩き出す。
 お目当ての泡なら、その姿が余裕ではみ出る珊瑚の陰を探す必要はない。海藻は――密集していたらちょっと近寄って根本を気にして、必要ならば掻き分けて。道中まあまあいい感じの泡はあったのだけれど、もっとデカいのがあるかもと探したら――あった。
 さっきのよりこっちだと断言出来るサイズの大きな泡。その中では、火種がパチパチ弾けては消えてを繰り返していた。まだ白い火種が何度も刻む光ひとつひとつが、花のような形を視界に焼き付ける。
 絶えず弾けるその音はまるで鳴き声のよう。そこへと二人伸ばした手は、揺らぐ月光の幕や静かな海流と同じくらいのやわさで、そっと泡に触れた。
 泡は一瞬で弾けた。手の熱で溶けて、解けるように。
 火種も一呼吸に満たない一瞬の間に、二人の目の前を流れ星のような速さで過ぎ――っぱ、ぱぱ、ぱん、と夜海の青いっぱいにオレンジ色に変わった光の花が弾けて咲く。
 けれど花火は泡と同じように解けていって――ぱちぱち、ぱらぱら。
 散らした欠片ごと、潔いくらいの速さで解けて消えた。
 そこに思い浮かんだ誰かの顔。その理由は、全く解ける気配もないままなのに。
「一瞬だよな、ほんと。しあわせなのって」
 菊がこぼした言葉にルーファスの紅蓮色が静かに向いた。けれど菊の金色は花火が“あった”そこへ向いたまま。眩しかったそこが元の青さに戻っても、自分を見るルーファスへと向く気配はなく――、
「どうせあいつ俺のことなんてすぐ忘れちまうし」
「へえ、ヒトの話するなんて珍しいな。忘れっぽいヤツが相手なのか」
 じ、とこちらを見た金の双眸にルーファスは口の端をニィ、と吊り上げて――にやにや。海流に持ち上げられ、ゆらあ、と自分の方に漂ってきた三編みを緩く掌に収めた。
「相談くらいなら乗るぜ?」
「……んだよ、俺の話はいーんだよほっとけ。それよりお前の方こそどーなの」
「何、オレの話?」
 捕まえられた三編みからルーカスへ。ぱっと移っていった菊の目がにんまりと弧を描く。ひひ、とこぼれた笑い声と一緒に肩が上下した。
「てめえの放って俺と遊んでていーわけ?」
 夏の幽世。妖怪花火とおかしな海。楽しい思い出作りにゃピッタリじゃねーかと笑う菊の声は、ルーファスの両手で左右の頬をぺちりと確保されて途切れた。
「お前、甘えっつって吐くだろうが。オレはアキと遊ぶ時間も大切にしたいんだよ」
 ぐにぐにぐにぐに。むがむが、ふがが。生意気だと頬を摘まれては口から飛び出す音は言葉にはなれず――けれど夏の夜、遠慮なく摘まれたそこからは、きみとだからこその花が咲く。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

葬・祝
【彼岸花】
21水着大人姿
人気のない場所を選ぶ

お互い、神と悪霊ですからねぇ
元より水中での呼吸には困りませんが、わざわざ海底を歩いてみよう、なんてしたことありませんでしたね

へぇ、夜の海なんて暗いだけかと思ったら、此処はちゃんとそれなりに明るいですよ
でも、あんまり世界がきらきらしているものだから、見慣れない気分で周囲を見回した
ふふ、君の髪が青い世界に良く映えますねぇ
きらきらしていて、きれい
そっと愛い子の髪を撫で、眩しそうに目を細めて笑う

くふふ、はいはい、花火で遊びましょうね
手近な泡をつつけば、ぱちりと弾けて光の欠片が其処ら中に飛び散った
打ち上げられる花火を見上げ、楽しそうなカフカを見て、今日は満足


神狩・カフカ
【彼岸花】21水着

天狗は空を翔けるもンだからな
長いこと生きてるが海底なんか初めてじゃねェか?
おまけに花火まで見れるたァ面白ェや

ほーう、こういうのを幻想的って言うんだろうなァ
へェ…なんて見渡していれば、はふりと目が合って
…お前さん…おれじゃなくて花火を見たらどうだ?
気恥ずかしくて目をそらすも
拒むことはせず
ったく、なに笑ってんだか

誤魔化すように手近の泡をつつけば
鼠花火みたいに駆け回り始めて
うぉ!?なんだこりゃ!?驚いた…
はふりの花火も綺麗だなァ
光の欠片を目で追えば蒼に融けていく
どうせならもっと派手なのが見てェな
大輪の花を咲かせそうな泡をつついてやれば
勢いよく打ち上がっていく
ははっ!たまや~!ってな


 ぱん、ぱぱん――次々と夜空に咲く花火を眺めていた葬・祝(   ・f27942)と神狩・カフカ(朱鴉・f22830)は、海の中にも咲いた花火がその姿と光を朧に見せる様を見て静かに笑い合った。
「元より水中での呼吸には困りませんが、わざわざ海底を歩いてみよう、なんてしたことありませんでしたね」
「天狗は空を翔けるもンだからな。長いこと生きてるが海底なんか初めてじゃねェか?」
 おまけに花火まで見れるたァ面白ェや。
 神と悪霊。片や天狗で、片や――。そんな二人の会話の後、くっと笑ったカフカの足が軽快に波を蹴った。紅の色と華で飾られた足元から水飛沫がきらきらと舞い、それを見ていた祝も真似て波を緩く蹴る。飛んだ水飛沫がぱちゃんぽちゃんっと海に戻り――、
「それじゃあ、行きましょうか」
 微笑んだ祝の背で黒紅に舞う金蝶がふわりと躍り、おう、と応えたカフカが続く。
 ぱしゃり、ぱちゃりと音を立て、つま先から頭のてっぺんまで海の中――の筈なのだけれど、直前に閉じた瞼を上げてみれば、遠くまで見渡せそうな青色が豊かに広がっていた。
「へぇ、夜の海なんて暗いだけかと思ったら、此処はちゃんとそれなりに明るいですよ」
 祝が見上げた先、揺らぐ海面の向こうにゆらゆらと見えた不定形の白色は、幽世の月だろう。そこから降り注ぐ光が薄い幕のように揺れながら夜海の青に淡い白色を添え、岩や珊瑚、足元覆う白い砂の海底には波紋を映していた。
「ほーう、こういうのを幻想的って言うんだろうなァ」
 感心したように呟いたカフカの瞳にも同じ風景は映っていて――ヘェ、と見渡していくその瞳に祝が映る。内に紅を宿した祝の髪も、なくさぬよう袖を通していた羽織も揃って波に揺らし――かすかに細められた双眸がカフカを映し続けていた。
「……お前さん……おれじゃなくて花火を見たらどうだ?」
 そうは言われましても、と祝が笑む。静かに海底を蹴り、白い砂をふわりと躍らせてカフカの隣に舞い降りる。何だと視線で問うと、鏡面のような瞳に映り込む二つの彩が見えた。
「ふふ、君の髪が青い世界に良く映えますねぇ」
 祝が見た、思ったよりもきらきらと明るい世界の中。見慣れぬ心地のそこに在るこの色も、きらきらとしていて――、
(「きれい」)
 髪を撫でに来た手と同じくらいそっと細められた目と、弧を描く唇。祝から向けられるものが海水と共にカフカの心をくすぐるよう。つまり、気恥ずかしい。
「ったく、なに笑ってんだか」
 そう言って目を逸らしたのに、撫でてくる手を拒むことだって出来るのに、カフカはそれをしない。そんな様子に祝の瞳はにっこりと弧を描き、逸らされた視線の先にあった泡へと近付く手を見守るのみだ。
「くふふ、はいはい、花火で遊びましょうね」
 ところで、泡に抱かれている火種の動きは見えているのかしら――なんて。
 カフカの手が泡をぷちんと割った瞬間、火種は猛ダッシュを見せた。
「うぉ!? なんだこりゃ」
 しゅぱんッ! 海底に到着した次の瞬間、花火はしゅしゅしゅんと火の粉を散らし、ぐるんぐるん回転しながらカフカの周りを駆け回る。
 鼠花火もびっくりな活きの良い花火は、さっと躱したカフカの下をくぐり抜けるように通過し――ぱしゅんっ。ちかちかとした光を弾けさせ、魔法のように消えていった。
「驚いた……」
 躱した時に思い切り舞った淡い朝焼け色の羽織が、落ち着いていく鼓動と調子を共にするようにふわりと下りれば、他の花火は如何に? と金の瞳は周りへと。それがぱちりと瞬いたのは、こちらを見ていた双眸と目が合ったからだ。
「くふふ」
 先程の花火は随分と活きの良い花火でしたねぇ、なんて、少しからかうような口ぶりにカフカは何か言いたげな顔をする。けれど祝の指先が近くにあった泡をぷつんと割り、抱かれていた火種を海中へと招いて咲かせた瞬間、その表情は一変した。
 青い世界に触れた火種が花火に変わる。生まれたての花火は二人の頭上へと緩やかな流れ星めいて昇っていき、ぱちりと弾けた。
「おや……」
「へェ……」
 夜海の世界を燦々と照らして咲いた花の光。咲いたそこから溢れた煌めく光の欠片が、二人の周りといわずそこら中へと豪奢に散る。その軌跡は空に上る花火と変わらず、そして融けていく様も同じだった。
「はふりの花火も綺麗だなァ」
 目の前で咲いた光と熱と、火の花。そこから生まれた欠片を目で追ったカフカはぽつりと呟いて――どうせならと周りの泡を物色し始めた。
「おや。どうしたんです」
「もっと派手なのが見てェなと思ってよ」
 大輪と呼ぶに相応しい火種を抱えた、なかなかの大きさ持つ泡など正に適任。これだこれとつついたなら、ぱんッと割れる様も期待が膨らむもの。飛び出した火種は勢いよく打ち上がり――ぱあ、と一帯を眩く照らす花火となった。
「ははっ! 『たまや~!』ってな」
 打ち上げられた花火は見事なもので。
 けれどそれ以上に祝を微笑ませたのは、隣で楽しげに笑う紅と金色の――。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

コノハ・ライゼ
ヤダ親分カッコいい!素敵!!
こんなの絶対スマホで撮ってミンナに自慢しなくっちゃ

そこかしこに揺らぐ泡や周辺で打ち上がる花火を
眺めるだけでも気分はアガるってもの
小さな花は独り占め感があってイイし
特別大きな花も迫力あって浪漫だし
どんな花だって咲かせてみたくて漂いながら吟味の後
目を惹いたのは、大きさは然程では無いものの緩い曲線描き等間隔に並ぶ泡

コレは……とくーちゃんずを呼び出せば
言い聞かせ合図で一斉に泡へ触れる
少しずつ高さの違う細長い火花は緻密に計算された仕掛け花火のようで
海面に向け伸びては時間差で消えてく花に見惚れ

いけない、写真撮るの忘れてた!
ようし、また素敵なの探して
今度こそ綺麗なの撮りましょ!


 夜空に輝く大輪の花を海の中にも用意しました、なんてことをひょいとやってのけるのが親分たち――特に一人称がワイちゃんの――なのだという光景を前にしたコノハ・ライゼ(空々・f03130)の瞳はキラララァ~ンッと輝いていた。
「ヤダ親分カッコいい! 素敵!!」
 親分パワーのお陰で、海の中だろうとこんな風に喜びの声も上げられる。
 ここにはいない親分たちにやんややんやと喝采を贈れば、一人称がワイちゃんな某親分がモジモジしながら前に出てきて「ンもっと言って!」とおねだり。そんな幻影を後ろに、コノハはぱらぱらと光を散らしとけていく花火を見て、満足気に頬を膨らませた。
「こんなの絶対スマホで撮ってミンナに自慢しなくっちゃ」
 となれば、これぞというものを見つけたい。
 海中ならではのふんわりとした足取りで歩き始めて最初に目についたのは、海流に撫でられ左へぽよん、右へぽよん。やわらかに揺れる泡の中で控えめにぱちぱちしていた赤い線香花火。
 次に見かけた、誰かが打ち上げた花火には撮影が追いつかなかったけれど、透き通った水色の光が海中を淡く染めて咲く様を眺めるだけでも気分はアガる。
「ああいう花火もイイわねェ」
 気儘に漂いながら次に見つけた小さな花火の種は、まだ誰の目にも見つかっていない小さな宝物を独り占めした気分になった。西瓜くらいありそうな特別大きなものは、満タンの迫力だけでなく浪漫もぎゅっと詰まっているだろう。
 見つけたもの、これから見つけるだろうもの。どんな花だって咲かせてみたくて、海中を漂いながらの散歩は常に楽しい吟味とワンセット。そんなさなか、コノハの瞳をいっとう輝かせたものがあった。
「コレは……!」
 緩い曲線を描きお行儀よく並ぶ泡ちゃんず。大きさは然程ではないものの、等間隔に並んでふあふあ揺れる様を見ていると心をツンツン刺激される。
「くーちゃんず、出番よ!」
 喚ばれた先が海の中で『コヤャ!?』とびっくりしかけた小さな黒狐たちは、しかし楽しげに煌めく薄氷を見てすぐに落ち着きを取り戻した。くすり笑ったコノハの指先と視線が示すままに泡の前へ整列し、尻尾をぱたぱたさせてコノハを見る。
「いい、くーちゃんず。合図をしたらこの泡を……」
『キャヤ!』
『コヤッ』
 コノハはニッコリ。くーちゃんずはこっくりアンドきりりっ。
 そして合図と共に一斉に泡に触れた白い指先と黒く愛らしい鼻先。ぷつんと割れたそこから飛び出した火花が、青い世界に光と色の軌跡を紡いでいく。
 描いていた緩い曲線のままに。昇る高さは少しずつ違う。海面に向けぱぁんと時間差で咲く光の花々は、終わりの様までも緻密に計算された仕掛け花火めいていた。ぱらぱらと火の粉を散らして消えた後に広がる青色にコノハは「いけない!」と肩を跳ねさせる。
『コャ!?』
「写真撮るの忘れてた! ようし、また素敵なの探して、今度こそ綺麗なの撮りましょ!」

 行くわよ、くーちゃんず!
 まだまだ楽しみを追う声と笑顔に、小狐たちの鳴き声も共に咲く。
大成功 🔵🔵🔵

宵雛花・千隼
梟示(f24788)と
20水着

夏の音に、夏の匂いね
海に浮かぶ月も空に咲く花を待つよう
ええ、とても綺麗
波に足を遊ばせているだけでも楽しいもの

興味があるのなら、一緒に行きましょう?
海の中の花火をアナタと一緒に見たいのだわ

勿論と頷いて彼の手を握る
大丈夫、泳ぎは得意よ
…ふふ、お顔が怖いわ、梟示
いつも安心をくれる分、この手を離しはしないから

海の中の景色に瞳輝かせ、見てと囁き
彼と目が合えば嬉しげに笑んで、片手の指を絡め
ゆっくりと手を引けば、花火の泡へ
アナタが咲かせて、と傍に寄り添って

小さな音で登り咲く花…海の中の打上花火
特別な花をありがとう
促す声に瞬き頷いて、触れ咲かす
どの季節もあなたと見る花が一番好きよ


高塔・梟示
千隼(f23049)と
21水着

ああ、夏の海も風情があっていいね
これだけで充分綺麗な景色だ
海中にも興味はあるが
如何せん金鎚には遠い場所で

彼女の言葉に一瞬固まって
それは…君と一緒に見られれば嬉しいが

なら――千隼、手を貸してくれるかい?
溺れたら浮くのか沈むのかなんて
眉間に皺寄せ考えながら
…迷子の子どもの気分だよ
楽しげな顔に苦笑して、確り指を絡め

聞えた声に、固く瞑った瞼開けば
鮮やかな海中の景色に驚いて
綺麗だねと、自然笑みと言葉が零れる
導く彼女に頷くと、そっと泡に手を伸ばして

ぱちんと弾けて、生まれた大輪の輝きを見上げ
君も咲かせて、と嬉しそうに微笑み
特別な花を見られたのは千隼のお陰さ
連れて来てくれて有難う


 どぉん、と太鼓のように低く。ぱぁん、と弾けるように高く。開花の音が響き花火が咲く度に、すっかり夜色に馴染んで見えない誰かの歓声が聞こえた。それらがいっとき止めば、浜辺に打ち寄せる波の音が重なって――。
「夏の音に、夏の匂いね」
 高塔・梟示(カラカの街へ・f24788)と寄り添い歩く宵雛花・千隼(エニグマ・f23049)の声も、夏にとけてひとつになるよう。
 髪を留める紫陽花の青、菫や桔梗、藤のような紫彩。金と橙も挿す夏の装いを撫でたかすかな夜風が向かった先。海面に浮かぶ月は眩いほどに白く、今、その周りに“花”はない。
(「咲く花を、待っているのかしら」)
 見つめる様を静かに見下ろしていた梟示も海面の月へと世界を移す。波の音だけがさらさらと響いて暫し。ぴいい、と細い音と共に昇った光がぱぱぁんっと弾けて黄色い花火になった。
 夜空に輝いた花火が穏やかな海にも映ってすぐ、海の中にも大小の花火が浮かび上がる。そこへ再び吹いた夜風は、梟示が羽織るシャツや紫陽花ひとつを添えた帯をほんの少し揺らすだけ。帽子をさらうこともしない穏やかさに、隈浮かぶ目元がやわらいだ。
「ああ、夏の海も風情があっていいね。これだけで充分綺麗な景色だ」
「ええ、とても綺麗。波に足を遊ばせているだけでも楽しいもの」
 ぱしゃり、ぱちゃり。寄せる波は足元を控えめにくすぐるばかり。
 では海中は? 梟示の興味はそちらにも向くものの、月と花火の彩を湛えた海中世界は如何せん金槌には遠い場所。そんな胸中を察した千隼はくすりと笑み、一歩だけ海に進む。
「一緒に行きましょう? 海の中の花火をアナタと一緒に見たいのだわ」
「それは……君と一緒に見られれば嬉しいが」
 一瞬固まって、微笑むかんばせから海へと視線をちらり。
 海の中に、白く小さな花火がぱぱぱと咲いたのが見えた。あまり海面に近くなかったのか朧に見えたあの白花を海中で見たら、一体どのような輝きが見られるのだろう。それを知るには。
「なら――千隼、手を貸してくれるかい?」
「勿論。大丈夫、泳ぎは得意よ」
 手を握って、もう一歩。
 より近付いた海中世界。あの世界で溺れたら浮くのか沈むのか。答えを知らない思考は眉間に寄せた皺をより深くして――、
「……ふふ、お顔が怖いわ、梟示」
「……迷子の子どもの気分だよ」
 楽しげに笑む千隼へと梟示は困ったように笑い、指をしっかり絡めた。細く白い指がそうっと握り返す。
 いつも安心をくれる分、この手を離しはしないから。かすかな言葉は波音混じりに。けれど男の耳へと確かに届いて、灯台の光よりも確かな導のように海へといざなった。
 とぽん。海水で耳に蓋をされたと感じた梟示の世界は、暗闇の中。広がる色の深さと透明度、月光を滲ませ降らす豊かな青がどれほどか――それを一足先に目にした千隼は橙の瞳に光を踊らせながら固く閉じられた瞼に気付き、愛おしげに目を細める。
「見て、梟示」
 “大丈夫”――きゅ、と握って伝えれば閉じられていた瞼がゆっくりと開かれた。
 どれだけ溢れても尽きないだろう青。射し込む月光の幕。白砂の海底、岩や珊瑚を飾って揺れる光の網。双眸に映った夜海の景色、その鮮やかさに瞠られた瞳からやわらかに力が抜けていく。
「……綺麗だね」
 自然とこぼれた笑みは千隼へと。海流でふわふわ揺れる白髪の傍、嬉しげに笑った目元にほんのりと紅をさした娘は、閉じる花のようなやわらかさで片手の指を絡め、ゆっくりと手を引く。
 どこへ連れて行ってくれるのかな。問う眼差しにそうっと微笑みが返る。海に抱かれて羽のように軽くなった足取りで数歩行った先、枝めいた珊瑚にぴたりと収まっていた泡たちを見て梟示は納得した。
「アナタが咲かせて」
 傍に寄り添い告げられた導きに頷いて、繋いでいるのとは逆の手をそっと伸ばす。
 まあるいラインへ手を添えるようにして――と、ん。
 指先で表面をノックするように一回。その一回でぱちんと弾けた泡が、花びらのように散って漂いながら消える刹那、小さな音を昇る光と共に刻んだ種火が、見上げる二人の視界いっぱいに大輪の菊花火を輝かせた。
 海の青に灯ったその輝きは穏やかな橙色。咲いた花の軌跡そのものがきらきら瞬く欠片になれば、煌めく花雨を浴びるようだった。手を伸ばせば指先の上で欠片が跳ね、しゅわりと海にとけて消えて――けれど、今見た輝きは瞳を通って心に根付いたから。
「特別な花をありがとう」
「……千隼。君も咲かせて」
 嬉しそうな微笑みと共に促す声に瞬いたのは一度だけ。こくんと頷き、伸ばした指先はもう一つの泡へ。触れて咲かせた花は秋を思わす赤牡丹となって、ぽんと音を刻んで咲き誇った。
 咲かせたばかりの花火が瞬きながら海にとけ、消えていくのは少し惜しいけれど。
「どの季節もあなたと見る花が一番好きよ」
 満ちゆく想いを籠めた微笑と言葉に、男の口から幸せそうに笑む音がこぼれる。絡めたままの指先が、静かに握り込まれた。
「特別な花を見られたのは千隼のお陰さ。連れて来てくれて有難う」
 今宵だけの海と花火。金槌の男と、泳ぎが得意な娘。
 此処だからこそ、自分たち二人だからこその今に暫し身を預ける二人を、花火の彩が淡く照らしていた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

月詠・黎
🌕望月
21水着・傘無

水の中で花火とは驚いた
気にせずとも呼吸が出来る
心地好い冷たさは帰りたくなってしまいそうじゃ
爺気取りで隣に咲えば
ふふ、相も変わらず楽しそうじゃなユエや

水の中を共に之きながら
見つけた泡は少し大きめな物
確りとしながら其処に有る……うむ、月の様じゃ
割ってみれば海面付近へゆうるり昇り
咲いた姿は我らの良く知る盈月

ユエ、水の中にも月が昇ったぞ
折角じゃ、月下美人咲も探しに之こう
――噫、蝶も佳いかもしれぬの
只の爺は月の力で、屹度月神と成った
ならば見つけられるじゃろう
思い望んだ花の下へ

友がつつけば蝶が舞う
我がつつけば月下美人が咲く
余興じゃと月彩で舞わせたはなびら
此の景色は我らの眼に刻み之こう


月守・ユエ
🌕望月
21水着

水中の花火
どんな風景が見れるかな?
呼吸気にせずにいられるなら
この不思議な事も堪能できるね!
えへへ、バレちゃった?
楽しいよ!黎さんと一緒に海中散歩っ

あ…!花火…この泡から咲くのかな?
わくわくしながら
彼の指先で割れて輝く満月を見た
わぁ…と感動の吐息を1つ

海の中が夜空になったみたいね!
波が細かに輝くから星のようで

ふふ、好きな形を探していこうっ
見つけられるよ
黎さんとなら
隣の神様を頼りに探して泳ぐ
望む花を咲かせる為に

僕がつつけば蝶が舞う
咲いた月下美人追って
月彩が更に彩れば
瞳映るは月の夢幻か

大切なものが1つの世界となり
海に咲き誇るよう

風景を抱く様に両手を広げ
瞳に焼き付ける
隣の友の姿と共に


 ぽん、と鼓を叩くような音を響かせ現れた、水色に輝く柳花火。
 続いて浮かび上がった花火は、音も光も蜂のように目まぐるしく動く賑やかな緑色。
 海へ入る直前に見た夜空の花を思い出した月守・ユエ(皓月・f05601)は、ふんわり持ち上げられた夜空色のパレオを押さえ、ふふふと笑う。
(「どんな風景が見れるかな?」)
 水中の花火なんて初めてだ。わくわくそわそわ、月下美人の飾りも心と共に躍るその隣では、月詠・黎(月華宵奇譚・f30331)が唇からこぼれたものが遠ざかっても訪れぬものを見付け、ふむ、と納得顔。
「確かに、気にせずとも呼吸が出来る」
 艷やかな黒の長髪にまだ残っていた酸素も月光を弾いて瞬く欠片となり、くるくる昇っていく。そして宝石のように煌めき遠ざかる小さな小さな欠片たちを見送る間も、全身を余すことなく包むもの――果ての無い青にそうっと微笑んだ。
「心地好い冷たさは帰りたくなってしまいそうじゃ」
 爺気取りでユエに咲って――ふわり。海底に着いたのだと、舞い上がった白砂と足裏からの感触に教えられる。
 舞う白砂は、ユエの水着だけでなく、月光を糸にして刺繍したような黎の水着と月下美人咲く羽織にも重なって雲のよう。そしてふわりふわりと漂い落ちていく白色も、周りの風景や髪と肌を撫でる海と共に楽しむ笑顔があった。
「ふふ、相も変わらず楽しそうじゃなユエや」
「えへへ、バレちゃった? 楽しいよ! 黎さんと一緒にこうして海中散歩っ」
 広げた両手、その指先が旋律を紡ぐように海水と戯れる。
 何方へ之く? 向こうはどうかな? 気になった方へ、海に抱かれ軽やかに。海底に足跡を並んで残す道中は、夜でも元気な魚たちの歓待付きだ。彼らも連れて、友との会話も楽しんで――「ほう」「あ、」――重なった声に二人はくすりと笑む。
 岩の窪みに丁度はまるようにあった泡は少し大きめで、火種を抱いたそれは紗幕から創られたかのように幻想的だった。けれど。
「確りとしながら其処に有る……うむ、月の様じゃ」
「花火……この泡から咲くのかな?」
 泡と自分を交互に見るユエの瞳に宿るわくわくに黎は優しく咲い、指先を伸ばす。
 爪が触れたと知覚した瞬間、ぱしゅんと割れた泡からゆうるりと昇った光。海面にとろりと揺れる色が映った刹那海の中に咲いた花火は、黎とユエがよく知る輝き――盈月。青い世界に生まれたその輝きが、ユエの満月瞳にもきらりきらりと映り込む。
「わぁ……」
 見上げるユエの口からは感動の吐息がひとつ。
 黎の口からは、ふ、と静かな笑みが咲くように。
「ユエ、水の中にも月が昇ったぞ」
「うん! 海の中が夜空になったみたいね!」
 ゆらりゆらゆら、波が細かに輝けば、咲いた盈月花火の周りに星が生まれるかのよう。
 盈月花火が消えても星々の煌めきは止まず、無邪気に躍るような様を見上げていた黎は「折角じゃ、」とゆるり微笑み、静かな足取りで歩き出す。
 何々? と楽しそうに隣に並ぶユエへ告げたのは、次の花火のこと。
「月下美人も探しに之こう。――噫、蝶も佳いかもしれぬの」
 只の爺は月の力で、屹度月神と成った。ならばと烏羽色の髪を海流に乗せ、再びの海中散歩をと歩む隣で、告げられたふたつにユエは満月瞳をぱっと輝かせた。
「ふふ、好きな形を探していこうっ。見つけられるよ。黎さんとなら」
 あの盈月を見付けて咲かせられたのだから、この海がどれだけ広かろうと、月下美人も蝶も見付けられる。もしかしたら存在しないかもしれない――なんて可能性を砂粒ほども抱かず笑う友に、神である男は優しく微笑んだ。
「黎さん、どっちに行く?」
「そうじゃな……」
 すい。黎が示した先、神の直感は北天に輝く星よりも頼れる道標。ユエは軽く海底を蹴り、ふわりと浮き上がる。
「行こう、黎さん」
「噫、之こう」
 やわらかに降る月光の幕や波紋を通り過ぎ、重なる珊瑚の隙間から顔を覗かせた魚に微笑むだけの挨拶をして――思い望んだ花の下へ、望む花を咲かせたいと願う二人の目に清らかな光がちかりと映った。
(「あった!」)
 はっとした表情で目を輝かせたユエへ黎はこくり頷いて咲う。泡に抱かれた光は咲く時が訪れたと知ったかのように、ふわわ、と端をそよがせていた。そこへ寄せる二人の手は、迎えに来たよと告げるように。
 ユエがつつけば蝶が舞い、黎がつつけば月下美人が咲く。
 光り輝くふたつは青い世界に儚い彩を映して――、
「噫、そうじゃ」
「黎さん?」
「何、余興じゃ」
 ひら、はら。優美な所作で伸ばされた指先から咲いた月彩の花びらが、月下美人を追うように舞い、更に彩っていく。
 蝶と月下美人の光。月彩の花びら。ユエの大切なものがひとつの世界になったそれは、月の夢幻か。けれど、咲き誇るような風景は確かに此処に在る。目の前の風景全てを抱くようにユエは両手を広げ、友の姿と共に瞳に焼き付けて。黎もまた、咲いた月下美人と同様、一夜だけの景色を眼に刻み付けた。
 これからどれほどの月日を過ごすだろう。けれど今宵の輝きは、きっと何度でも胸を照らしてくれる。それこそ――幾度も巡り現れる、あの月のように。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

霧島・ニュイ
華座敷
21水着・海パン一丁

泳いで
ちゃんと息ができる!
飼い妖怪の茶まろわんこのチョビも楽しそうだ
犬掻きするチョビに笑いかけ

クロトさん暗器だらけで沈まない?帰れる?
兄さんは炎使いだけど、水中に咲く花火は初めてかな
すごいよね

つんっと掌ほどの泡をつつけば、ふわふわとボリュームを増し、大輪の花を咲かせた
!!
すっごい!!
赤から紫、青に変わって幾重にも花弁を作る様子に見惚れた
きれー……取って帰りたいくらい
でもこの思い出があれば充分かな

この泡は何かな?
うねうねと蛇を思わせる泡の連なりに首傾げ、つんつん
ぽぽぽん!
火花が弾けて海中を駆けずり回って追いかけてきた!
ちょっ、ぎゃぁぁ

線香花火かわいいよね!
負けないよー!


クロト・ラトキエ
華座敷
21水着(上着・傘なし

在り来たりに見せて重量系。
普通に沈む水着も、海中を歩くには便利…
何とまぁ怪我の功名。
…水着なんて、無防備この上無いと無関心でしたけど、
着てみれば何とかなるものですね(暗器仕込とか
浮き方?それは秘密です♪

呼吸出来る海に、水中で咲く花火。
カクリヨの摩訶不思議ぶりに改めて、面白いですね、なんて笑って。
花火に見惚れるニュイを、
海そのものを愛でる様な千之助を、
何だか、これまた微笑ましく眺めていたりして…
って、揃って大混乱じゃないですかー(今日一面白い

え。見てるだけ?
いえいえ。先程、泡に触れてみたら…
ほら、線香花火。
何なら、誰が一番最後まで落とさずいられるか…勝負、してみます?


佐那・千之助
華座敷
20水着、浮輪なし

故郷の…夜の昏い海は怖いものだったから
浮き具を手離せなかったけれど
もしかしたら、光を灯せばこんな光景なのかもしれない

彩りひとつひとつ、物珍しげに目をとめて。
海藻、魚…海を通して感じる生命力の愛おしさにそっと笑む
それは彼らにも向かう思い
海を楽しむ姿が嬉しい


海の中の花火なんて初めてじゃよ
…これが、花火になる泡…?
直ぐには触れず、好奇心いっぱいにしげしげ観察…

わ…!
目の前だったから、ひらいた花火は視界いっぱいで
鮮やかな色が移ろい、海にとけるまで、瞬きも忘れ
…綺麗
打ち上げ花火と違ってじっくり見れるのが良い…
と思ったら次々と―!?

面白い、と勝負を受けつつ
優しく弾ける光に見惚れて…


 夜の海とは、昏く、怖いものだ。冷たい黒に満たされた世界に放られてしまうと、陸にいた時のような自由がきかないこともあり浮き具が手放せない。けれど今宵の佐那・千之助(火輪・f00454)は両手に何も持っていなかった。
(「もしかしたら、故郷の海も光を灯せば……」)
 目の前に広がる夜海の風景をちょっと拝借し、故郷の海に被せてみる。
 ――うむ、こんな光景なのかもしれない。
 思い描いた風景となるのなら、太陽のような金に夏の花描く赤、翻る白といったこの装いは闇にのまれず、今と同じように夜の海と共に在れるのだろう。
 静かで深いが、決して闇ではない夜海の青。やわらかに挿し込み揺らぐ月光の白。珊瑚や海藻、魚たち――千之助はひとつひとつが宿す彩りを物珍しげに目を留めていく。“怖いもの”であった海で、目にした生命力への愛おしさを覚えるとは。
 それは他の生命にも向かうもので。
(「おお、幽世の海にはあのようにコロコロとした愛らしい犬も……」)
 尻尾をぷりぷりさせながら犬かきに励む可愛らしい茶マロわんこ。健やかに育つのじゃよと和んでいた千之助だが、ハッとした。否、あれは知人ならぬ知犬!
「泳いで、ちゃんと息ができる! やったね、チョビ♪」
『キャンッ!』
 間を空けて並ぶ岩二つ。白砂の海底。蹴って飛んで浮き上がって、ふわぁ、と沈んで。幽世の、そして妖怪花火の会場である海を無邪気に楽しむ霧島・ニュイ(霧雲・f12029)は、飼い妖怪のチョビへと笑いかけながら思い切り岩を蹴った。
 海水に抱かれながらのジャンプだ。ぴょーん、とは飛べず、途中で跳躍力は消され――そのまま、ふわふわゆらり。影と木漏れ日落とす碧の天井そのままのようなサーフパンツも一緒に揺れる。
(「そういえば置いてきたパーカー、目の前の海の色と少し似てたなぁ」)
 なんて、思った時だった。
「……クロトさん暗器だらけだよね? 帰れる?」
「はい? 僕ですか?」
 そう答えたクロト・ラトキエ(TTX・f00472)は今日も眼鏡をかけており、黒のパーカーにサイドに白いラインが入った浅葱色のサーフパンツと在り来たり――に見せて重量系だった。
「怪我の功名、と言うんでしょうか。……水着なんて、無防備この上無いと無関心でしたけど、着てみれば何とかなるものですね」
「うわー、流石クロトさん」
「うわーって何ですうわーって」
「しかし、本当にどうやって浮いておるのじゃ」
「それは秘密です♪」
 暗器をどこにどう仕込んでいるかも含め、そこは当然、企業秘密。
 そんな海の中だからこその会話は、のんびりふわふわ行きながら。
「兄さんは炎使いだけど、水中に咲く花火は初めてかな。すごいよね」
「うむ、海の中の花火なんて初めてじゃよ。……ああ、もしやあれが例の?」
 夜海の風景でふいにちかりと見えた光。もしやもしやと期待を胸に近寄れば、それは千之助が思った通りのものだった。海に撫でられゆ~らゆら。おそろしくやわらかに揺れる泡の中で、ちかちかと光りながら漂う火の花がある。
「……これが、花火になる泡……?」
「見てみなよチョビ、泡の中に花火の種があるよ」
『?』
 千之助は好奇心を双眸にきらきらと浮かべ、しげしげ観察隣でニュイとチョビも興味深そうにじいぃっと見つめ――なんて光景が見られるのは、ここが呼吸が出来る海で、そこに水中で咲く花火が仕掛けられているからこそ。
(「面白いですね」)
 幽世の摩訶不思議ぶりを改めて見せられたクロトはくすりと笑み、ニュイの指が掌ほどある泡をつつきに行く様を千之助と一緒になって見守った。
 泡に触れた指先が僅かに沈んだ瞬間、中の火種が膨らむのに合わせて泡もボリュームを増し――ぱっ。
「!!」
 ニュイと千之助の髪がふわあっと舞い上がり、二人の髪も顔も照らした光が真っ直ぐ昇る。そのまま上昇し続けた光は、揺らめく海面で形がとろとろになった月と重なった瞬間、大輪の花火となって海中を眩く照らした。
「わ……!」
「すっごい!!」
 ぽおん、と咲いた花火は赤から紫、青と鮮やかに変わりながら幾重にも花弁を作る。それは、色と花弁を豪奢に重ねた牡丹が咲くいっとう美しい瞬間を見せられているよう。
 鮮やかな色が光を宿しながら移ろい、海にとけていく――そこに千之助は多くの感情を覚えたけれど、それを言葉にするということを、瞬きとセットで忘れてしまっていた。
「……綺麗」
「うん、きれー……取って帰りたいくらい。あ、でもこの思い出があれば充分かな」
 海の一部を切り取って持ち帰れるなんてできないし、と、ニュイは花火が輝いていたそこを切り取るように両手で四角フレームを作って笑う。そのフレームを隣に移せば、そうじゃな、と笑う千之助が収まった。
「打ち上げ花火と違ってじっくり見れるのが良い……」
 消えゆくスピードが陸よりも緩やかに感じられるのはきっと、海の中だからだろう。
 まだ視界に残る大輪花火を味わうように二人は笑顔で上を見て――咲いた時から今までの二人をずっと眺めていたクロトもまた、花火の名残りを視界に感じながら二人を微笑ましく眺めていた。
 花火に見惚れていたニュイ。千之助は、海そのものを愛でるようだった。
 この二人が次に選ぶ花火は、どんな花火になるのだろう。咲いたら、どんな反応をするのだろう。クロトは穏やかな心地で二人を眺め続け――、
(「おや」)
 ニュイが何が見付けた。
「ねえねえ、この泡は何かな?」
 何かな、とチョビもこてんと首を傾げ、すんすんと鼻を寄せる。
 細かな白い砂で出来た、歩くと気持ちの良い海底。そこでうねうねと横たわる蛇――ではなく、そう思わせる形で連なる泡。中の花火もちょっと似てるかな? なんて考えつつニュイは首を傾げつんつんした。

 ぽぽぽん!

「ちょっ、ぎゃぁぁ!!」
「えっ、な、次々とー!?」
 何かな? なんて穏やかな気持を豪快に吹き飛ばす勢いで弾けた火花が、海中を駆けずり回って追いかけてくる。突然のことに二人は大声を上げ、ニュイはチョビを抱えて逃げ回り千之助も吃驚仰天で本気の逃げ。
「あーあー、揃って大混乱じゃないですかー」
「とか言いながらクロトさん見てるだけじゃん……!」
「そうじゃそうじゃ!」
 何とか逃げ切った二人の抗議に、クロトはそんな事ありませんよとキョトリ顔。二人が即座に浮かべた疑いの眼差しに、いえいえ本当ですよと笑む。
「先程、泡に触れてみたら……」
「「そ、それは……!」」
「ほら、線香花火」
 泡の中で儚く輝く、今は火種状態の花。ハッとした二人に、黒との浮かべていた笑みが楽しげなものへと変わった。
「何なら、誰が一番最後まで落とさずいられるか……勝負、してみます?」
「ふむ、面白い。その勝負、受けて立とう」
「線香花火かわいいよね! よーし、負けないよー! チョビは応援よろしくね?」
『キャワン、キャンッ』
 月光と波紋が降り注ぐ海の底。
 男三人と犬一匹、顔を突き合わせていざ勝負!
 泡を割ってふよよんと昇った線香花火はそれぞれの前に留まって――優しく弾ける光に自然と言葉は遠ざかり、夜の海に灯った花燈に見惚れるばかり。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

オズ・ケストナー
【花束】21水着

いこういこうっ

とぷん
咲き始めている花火に目を輝かせ

わたしもうちあげたいっ
花火のたね、どこかな?

見上げるとゆらめく花火とアニー
水面に顔出し、こないの?という顔
目配せに気付いたらアニーの手を引く

うんうん、だいじょうぶだよ

あっ、あれかな?
泡をわくわくつついてみれば

わあっ

両手で包めてしまうサイズの花火
赤から黄色へ
ふふ、クレナイとアニーの色だ
わたし?それじゃあ、これは3人の色っ
うれしくて笑って

ほんとだ、おっきいあわ
あわわわ
マンタに乗って笑い声
いただきだねっ

あれ?今そこに
しゅしゅっと動く花火を指さし

…つかまえてみる?
はさみうちさくせんだ
アニーのところまでつれてくよっ

え?アニーなんて?
わーっ


朧・紅
【花束】紅人格で21の水着だけ参照

ふぁ
お空も海も花火でキラキラ
いっくでーす

どぷんすればすれ違う花火に大興奮
僕も打ち上げたいっ

…泳げないのです?(直球
ですかー?ならばってオズさんに目配せ
それっと手を引き海へご招待
海でも息出来るですから泳げなくても大丈夫っ
僕らでえすこーとするですよぅ
三人で遊びたーい

わぁオズさんの花火きれ~
赤毛を揺らし
ですねっ♪

僕らの下にもおっきい花火泡発見✨
オズさんアニー様っいきますよぅ
ていとつつけば
紫から青へ変わる大きなマンタ花火が弧を描き三人を海面まで押し上げる

ふぁ本当に花火に乗れました
僕らの瞳の彩もいただきですっ

捕まえちゃいましょー♪
アニー様そっち行ったですよー!
ぅや!?


アニー・ピュニシオン
【花束】21水着

なんでも海中で花火が出来るらしく
「正気か?」と表情を訝し気に来てみれば
…本当に出来るのね、花火

私は泳ぐのが上手ではなくてね
二人が飛び込んでいる様子を見ながら
持参の浮き輪で休憩…

は? 泳げるわよ
そう返答したら、手をひかれ
海中にご招待されたのだけれど

何が大丈夫なのかしら!

その泡、触っても大丈夫かしらオズ君
あら、素敵な花火が出てきたわね
黄は貴方の色な気も…

…この音、下からデカいのが来てるのだけれど
何やらかしたの、紅ちゃん

苦い表情でマンタ花火から浮き輪へ、なんとか

動き回る物に興味が向いたのを尻目に
私は浮き輪に乗って、ぷかぷかお休みを

って、こちらに花火を追い立てるのやめ(花火が激突する音


 しょっちゅう滅びの危機を迎える幽世では、やろうと思えば海中でも花火が出来る。
 正気か?
 訝し気な表情を隠さずやって来たアニー・ピュニシオン(小さな継ぎ接ぎの国・f20021)は、浜辺から沖を見て幽世と親分たちの――特に、某親分の正気を目にした。
「……本当に出来ちゃうの、花火」
 どぉん、ぱぱあん、と夜空に打ち上げられた花火と大きな月が映る海の中に、確かに花火が見えた。咲いた瞬間の音は聞こえないけれど、ぱあ、と浮かび上がった形と輝きは紛れもなく花火だ。
「ふぁ、」
 そんな空も海も花火でキラキラな光景を前に、海へと向かう小柄な姿。ぱしゃんっ、と飛び込んでいった足元で花が揺れ、紫陽花めいたグラデーションと水玉模様の羽織風ガウンに、フリルで飾った紅色――海中に咲いた花を目指すは朧・紅(朧と紅・f01176)と、
「いっくでーす!」
「いこういこうっ」
 オズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)。
 わぁいっ、とジャンプした勢いで水兵風の大きな上着がふわんっと翻った。鮮やかなブルーの水着を彩る真っ白なキラキラ星も海の中へ。
 二人は弾む心のまま駆けて、深くなったらせーので潜って――どぷん、とぷん!
 顔もひんやり気持ちよく包まれてから目を開け、口を開ければ、ぶくぶくと泡のカーテンが出来上がった。けれど全然苦しくならないことが嬉しくて、楽しくて――そして咲き始めている花火にも出迎えられて、紅とオズの目はビー玉のようにきらきら輝いた。
「僕も打ち上げたいっ」
「わたしもうちあげたいっ。花火のたね、どこかな?」
「んん……あっ、あそこにあるの、花火の種じゃないですっ?」
「わあ、すごいね、もう見つけたの?」
 目を丸くしたオズから向けられる尊敬の眼差しに、紅はフフーンと誇らしげにして――と、一緒に来た綺麗な炎色が見えないことに気が付いた。
「アニー様は?」
「あれ?」
 その炎色――触れれば熱が伝わりそうなたっぷりの金色のツインテールに、赤いリボン。金の装飾が威厳とエレガントさを添える水着。所々から炎をちらちらとさせたアニーは、持参した浮き輪に落ち着きながら海中の二人を見ているのであった。
 それは、泳ぐのが上手ではないと自覚しているが故の過ごし方。しかも、静かな海面に浮かんでいるだけで空と海の花火、そして友達の様子もしっかりバッチリ見られる優れた――ぽちゃり。オズが水面に顔を出し、きょとりとする。
 こないの? そんな表情に薔薇とリボンで彩られた浮き輪の上、アニーはクールな眼差しを向け、
「……泳げないのです?」
 続いてぽちゃりと顔を出した紅のド直球に炎がちりっと揺れた。
「は? 泳げるわよ」
「ですかー?」
 ならばとオズへ目配せすれば、それを受け取ったオズがすぐにアニーの手を引いた。
「ちょっ」
「うんうん、だいじょうぶだよ」
「それーっ」
 どぷん。とぷん。
 無邪気な笑顔の二人手ずから、花火咲く海へご招待。
(「どうして……?」)
 遠ざかる浮き輪を虚しく見上げれば、どんどんどんどん遠ざかっていく。そして自分は海底に、と真顔になっていくアニーの手を紅はきゅっと握った。
「海でも息出来るですから泳げなくても大丈夫っ。僕らでえすこーとするですよぅ」
「何が大丈夫なのかしら!」
「でもでも、三人で遊びたーい」
 空いている手をグーにしてのお願いを受けたら、NOだなんて言えないアニーだった。
 それに、問題なく呼吸も出来ていることなのだし。
 ふふっと笑ったオズにも手をきゅっと握られて――そして三人揃って辿り着いた海の底は白い砂で出来ていて、触れた拍子に砂が舞えば雲海を歩いているよう。
「それで、何するの?」
「花火、花火うちあげたいですっ」
「うんうんっ。探しにいこう?」
 あっちか、こっちか、そっちか――うーん、と考えて、じゃああっち! と決めて海底を歩く。やわらかな足元に少しくすぐったさを覚えながら、泡を見逃さないよう目を光らせること暫し。
「あっ、あれかな?」
 ほらほら、あそこだよ。オズが指す方へとせーので海底を蹴って、ふわんと浮いて泳いで行く。ぽつんと生えていた海藻の中心、そこに抱かれていた泡を覗き込んだオズの顔は、胸いっぱいのわくわくと同じものを浮かべていた。早速泡をつつこうと指を伸ばし、
「その泡は触っても大丈夫かしらオズ君」
「えっ?」
 つん。指が泡をつついて、きょとりとした笑顔がアニーに向いて、泡が割れて。三つのことがぴたり重なった瞬間、両手で包めるサイズの泡がぽぽん、と打ち上がった。
「わあっ」
「あら、素敵な花火が出てきたわね」
「わぁオズさんの花火きれ~」
 咲いた瞬間赤い輝きで三人を照らした花火は、そのまま黄色へと美しい変化を見せた。
 歓声を上げたオズは、大丈夫な上に素敵な花火が持つもう一つの“素敵”に気付く。これは、これはとっても素敵な花火を打ち上げた気がする――!
 赤毛を揺らしていた紅はすぐ隣でふわふわ膨らむ気配に気付き、アニーもまた嬉しげに染まる頬に気付いて首を傾げた。あのね、とオズの顔に笑顔が咲く。
「ふふ、今の花火、クレナイとアニーの色だ」
「そうえいば……あ、でも黄は貴方の色な気も……」
「わたし? それじゃあ、これは3人の色っ」
「ですねっ♪」
 嬉しい笑顔の続きは新しい花火の――それも、とびきり花火の大発見。
 時々魚とすれ違っての泡探し、紅の目がぴかーっと輝く。
「わぁ、見てくださーい! ほらほら、僕らの下にもおっきい花火泡発見ですっ」
「ほんとだ、おっきいあわ」
「オズさんアニー様っいきますよぅ」
 うきうきワクワクを籠めた紅の指先は泡へと真っ直ぐ、かつ、“てい”と迷いなく。するとどうしたことだろう。穏やかな海中に音が響き始めた。
「……この音、下からデカいのが来てるのだけれど」
「ですね?」
「何やらかしたの、紅ちゃん」
「うーん? 何もしてないですよ?」
 泡をていってつついただけで。
 つついた結果、大きな大きなマンタ花火が現れただけで。
 マンタ花火は紫から青へと変わりながら弧を描く。ダイナミックな泳ぎに三人がぽかんとしている間に、マンタ花火は三人を広々とした背に乗せ海面目指し急上昇!
「あわわわ」 
 突然のことに驚いた――けれど、それ以上にカラフルな輝きを浴びながら海面にぽんっと飛び出したことが面白くって楽しくて。
「ふぁ本当に花火に乗れました……! 僕らの瞳の彩もいただきですっ」
「いただきだねっ」
 笑い声を溢れさせた二人がハイタッチの音を響かせた時、アニーはというと。
「……ふう」
 急上昇するマンタ花火から浮き輪への移動はなかなかのミッションだったけれど、苦い表情は落ち着ける場所を得たことで静かなものになっていた。
 二人はどうしてるかしらと確認すれば、もう海の中。しゅしゅっと動き回る花火に夢中な今の内にと、アニーはぷかぷか休憩を取ることに――とは、問屋ならぬオズと紅が卸さない。
 海の中で決まったはさみうちさくせん。
 しゅぴ。オズが指を差す。
 ちらり。紅がそちらを見る。
「アニーのところまでつれてくよっ」
「ラジャーですっ」
 そして。
「アニー様そっち行ったですよー!」
「!? こちらに花火を追い立てるのやめ――!」
「え? アニーなんて?」
 海面の平和は儚いものだった。
 しゅしゅと翔けた花火は周りの海水も押し上げアニーに激突して――、
「わーっ」
「ぅや!?」
 二人の声と一緒に、ざぱあんッ! と大きな飛沫を弾けさせたのだった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ティル・レーヴェ
【花結】21水着

海中の花火なんて素敵ねと
泡を覗き探すのは花の形
あなたと増やした
心に刻む大切な花

あなたのリラに妾の鈴蘭
勿忘草に沈丁花
赤薔薇も…と
どれかなんて決められず
折角だもの時許す限り
探し咲かせて欲張る儘に

そうしてスマホにだって残しましょ?
ほら、此処をこうするの
ふたりの景を残しつつ
密か映すのは
スマホに懸命なあなた
慣れゆく前の今だけの
微笑しい姿も閉じ込めたいの

ね、もうひとつだけ
探してみたい形があるの
そう彼に柔くねだって
見つけたらツン、と泡を突く

輝き咲く形は七色の虹
ね、出逢いのあの日と同じよに
願っても構わない?
あなたとふたり
虹の下宿る幸せな宝物を
これからもずっと探してみつけて
重ね刻み続けたい、って


ライラック・エアルオウルズ
【花結】21水着

空色湛えた海に
綻び咲かせる火の花
それがふたりの花なら
更にと素敵だろうな

君が摘む花に笑み
ならばと僕も覘き込む
その花束ねるよう
想い出を結ぶよう
くるり悪戯に彩り飾る
リボンを探さなくてはね

是非、だが、難しい、な
スマホは未だ不慣れ
見様見真似、指先滑らせ
君の悪戯に気付かないまま
漸くと映したふたりの景
花と君とは、待受に刻み

なあに、甘く応えれば
探した先で架かる虹に
眸細めて想いを馳せる

雨降る日は憂鬱だったが
その日に縁を結んでから
後の虹を楽しみと思えた
その下眠る宝を探そうと
同じよに、君が願ったから

ああ、――勿論だとも
降る雨が海となれども
こうして、虹を探して
幾度も重ね、幾重も刻み
数多の花も咲かせよう


 どこまでも優しくやわらかな水のかたちは、種火を抱いた泡を割ることなく、ふるりふるふるりと揺らすだけ。今宵の海と同じくらい深い青に染まった衣と、愛しい花の彩がうすらと宿る白色も、海は夢に微睡むようなやわらかさで抱いて漂わす。
「海中の花火なんて素敵ね」
 ティル・レーヴェ(福音の蕾・f07995)は鈴蘭咲いた髪をそうっと押さえ、桜色の枝珊瑚の上へとふわり。枝と枝の間や根本に留まる泡を覗いて探すのは、海に攫われてしまわないようにと手を繋いでくれたライラック・エアルオウルズ(机上の友人・f01246)と増やした、心に刻む大切な花。
 夜海の青は空の青のようで、手を繋いだ先でやわらかに浮かぶティルの姿にライラックは目を細めた。誰かが咲かせた花火が丁度夜空に現れ、その輝きが海面を過ぎてティルの姿を縁取っている。
(「あれが僕らふたりの花なら……」)
 更にと素敵だろう。それは予感と呼ぶにはあまりにも確かな想いだった。ティルの視線を辿って泡の内にて輝く花を見れば、灯る笑顔はぬくもりを増すばかり。
 小さな花が集まったリラと可憐なベルに似た鈴蘭。永遠の誓いにも刻まれている勿忘草。簪に揺れて灯るものと同じ沈丁花。それから、ティルの両の足首で靡くレースにもある赤薔薇も――と、ティルは傍らに浮かんだあたたかなものに気付き、はにかんだ。
「どれか、なんて、決められないの」
 尽きない想いを双眸にも宿しての言葉にライラックは笑み、共に覗き込む。
 どの花も、想う度に心へ幸いを運ぶ大切な花だ。陸と同じように海の中でも息が出来る不思議な時間、その刻限を告げる偉大な妖精は不在だけれど、今宵だけの不思議はまだまだ時間を許してくれている。
 彼が何を探しているのかと不思議そうに目を瞬かせたティルへ、ライラックはリボンだよと秘密を明かすように囁いた。ティルが二人の花を摘むのなら、自分はその花を束ねるよう、想い出を結ぶよう――ああ、あの泡の中でくるりくるりと輪を描くあのリボンなんてどうだろう。
 泡の中で泳ぐ様はどこか悪戯っぽくて。けれど二人の花を、そこに詰まった全てを花びらひとつ分も落とさず彩り飾るには、きっと適任だ。
 共に見付けた沢山の花と、花を花束とするリボン。それらを前に、ティルは「ねぇ、」とライラックを呼び、手にした物を口元へと寄せて笑う。スマホにだって残しましょ? と語る仕草には当然、是非、と笑った。だが。
(「難しい、な」)
 指先でカメラアイコンに触れ、画面いっぱいに表示された目の前の景色。撮影する時は確かここを、と押すと、目に見えているものほど明瞭に撮れてはおらず――ええと、どうするのだったかな、と文字にアイコンにと小さく表示されているそれらをちょん、と押しては、おや? と困り顔。
 スマホには未だ不慣れなライラックに、くすりと笑んだティルから助け舟が飛ぶ。
「ほら、此処をこうするの」
「あ、此処を?」
 見様見真似でライラックは指先を滑らせ試しに一枚。成る程と学んだライラックは、ティルが花束となる前の花やリボンだけでなく、懸命にスマホを使う様も密かに映していたことに気付かない。
 今目の前にある海の風景もだけれど、不慣れながらに懸命な表情もまた今だけのもの。スマホに慣れゆく前、今しか見られないライラックの微笑ましい姿を大切に閉じ込めて――そして摘んだ花々が海の青を照らす彩になる。
 ひとつひとつに想い出宿した花が咲き、続いてぽん、と輝いたリボンが花々をひとつに束ね結べば、世界にひとつだけの花束が夜海の青に輝いた。
 咲いた瞬間、輝き瞬く様、少しずつ薄れ海の青にとけていく姿。何とか映したライラックは、そうっとスマホを傾けティルに向け、カシャリ。いつかの未来を思わせる姿を花と共に映して待受に刻めば、使う楽しみが増えた気がした。――これは、スマホに慣れる時が存外早く来てしまうかも?
「ね、もうひとつだけ、探してみたい形があるの」
「なあに」
 柔くねだる声に応えた声は眼差しと同じくらい甘く。ティルはふんわり微笑むと撮影の為に離していた手をもう一度重ね、周りを見た。目当てのものが見付かったのだということは、まあるくなった瞳で一目瞭然。
 指先がツン、と突いた泡が蕾開くように割れ開いて、そこから翔けた輝きが海の中に七色の橋を架けていく。透き通った煌めきにライラックは自然と瞳を細めた。
 雨が降る日は憂鬱で、けれどその日に縁を結んでからというもの、雨の後に訪れる七色が楽しみと思えた。それは――、
「ね、出逢いのあの日と同じよに願っても構わない? あなたとふたり、虹の下宿る幸せな宝物をこれからもずっと探してみつけて、重ね刻み続けたい、って」
 あの日と同じよに、君が願ったから。
「ああ、――勿論だとも」
 降る雨が海となれども、今宵と同じく虹を探そう。
 幾度も重ね、幾重も刻んで、数多の花も咲かせよう。
 スマホの中。想い出の中。
 虹の下から宝物が溢れても、二人ならきっとずっと、抱えられる。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

君影・菫
【耀累】
21水着

夜の海に灯る明かりは誰かが見つけた光名残やろか
今日のおとーさんは綺麗なお魚さんやね
きっとみいんな仲間やよ

ほんま色んな泡がきらきらしてて
綺麗やね、ちぃ

つついた様子を倣いつつけば
キミとは色違いの小花が咲いた
ん、うちらのとっておき探そ

綺麗な魚のちぃの横からそっと覗き込んで
くるくるしとうね
わ、狐が走り回ったんよ!
手え繋い追うのは追いかけっこみたいで
ふふ、たのしい

うちはあそこの泡が気になるん
一つの花と枝みたいに集まった枝を突けば
ぱっと咲いたすみれ色の桜
ぱぱっとはなびらみたいな薄紫を散らす様は
…とっておき、やったよね?

うち色、キミ花
絆の華

去年教えてくれた海
今年は海中の思い出を刻んで、憶えて


宵鍔・千鶴
【耀累】
21水着

夜海に淡い明かり
優雅に游ぐ魚を追いかけ
自分も今日は魚の仲間に見えるかな

ねえ、菫、みてみて
泡がたくさんきらきらしてる

小さい玉の泡をつついて
ぱちんと昇って海中で小花が咲く
自分で花火打ち上げられるんだ、面白いね
そうだ、この沢山の泡の中から
俺と菫で見つけてみない?とっておき

俺は…この泡の中でくるくる動いてるやつ気になる
なんかこの動き見覚えがあるような
つんと、突けば
海底を狐のイラストの花火が走り回ってゆく
きみと手を繋いで消えてしまうまで追いかけよう

菫は何か見つけた?
きみが咲かせた菫桜を見上げて
…ああ、とっておきの、俺達の華だ

未だ見ぬ世界や景色を求め
この夏だって、またひとつ海底で心に刻もう


 夜海に淡い明かりが灯る。音もなく灯ったものは遠く、ぽん、ぱん、と高低様々な音をさせたものは近く。――あれって、誰かが見つけた光の名残りやろか。ほのかに笑って眺めていた君影・菫(ゆびさき・f14101)は、すぐ近くを過ぎた鰭に目を奪われる。
 先を行くのは左右に尾鰭を振って泳ぐ、名前も知らない黄色い魚。
 その後を追いかけるのは、桃、藤、青といくつもの色と鰭を重ね揺らして泳ぐ、東洋からやって来たかのような綺麗なお魚さん――こと、今日のおとーさん。宵鍔・千鶴(nyx・f00683)だった。
「自分も今日は魚の仲間に見えるかな」
「きっとみいんな仲間やよ」
 追いついた菫が楽しげに笑む様を不思議そうに、そして嬉しそうに見た千鶴はそうだねと頷いた。菫の泳ぎに合わせひらひら揺れるパレオが持つ、和の意匠と鮮やかな華柄というふたつの顔。その上を戯れるようにしてついてくる魚が数匹いるけれど――もしかしたら、彼らには菫のパレオがとびきり魅力的な波なのかもしれない。
 小さな仲間を連れて泳ぐうち、千鶴は海の中で光るものを見付け菫の手をそっと取った。
「ねえ、菫、みてみて。泡がたくさんきらきらしてる」
「あ、ほんま。綺麗やね、ちぃ」
 テーブルのような珊瑚の上にくっついてる泡は、夜空に描かれた星座のように。枝分かれを繰り返し広がる珊瑚の泡は、アクセサリースタンドにかけられた真珠の首飾りめいて輝いている。
 一番大きい泡はピンポン玉ほど。その中で一番小さい泡を千鶴がつつくと、ぱちんと割れたそこから火が昇り――ぱ、と海の中に小花が咲いた。
 おとーさんに倣ってと菫もつつけば、千鶴が咲かせたものとは色違いの小花が咲いて、ふたつの花は二人の前でひらひらきらきら、咲かせた名残りを魅せていく。
「本当に自分で花火打ち上げられるんだ、面白いね。……そうだ、この沢山の泡の中から
俺と菫で見つけてみない? とっておき」
「ん、うちらのとっておき探そ」
 珊瑚礁が描く形と色を楽しみながら、そこにくっついて時折ふるりと波にそよぐ泡。その中にある花火の種の色、形、動きそれぞれをじっと見つめてのとっておき探しは恙なく進み――菫は千鶴の動きが止まっていることに気付く。
「どうしたん、ちぃ?」
「……この泡の中でくるくる動いてるやつ気になる」
「……? ずうっとくるくるしとうね」
 形は――何だろう。細っこい、というか、すばしっこい、というか。
 二人並んで見つめること暫し。千鶴の指がそうっと伸びた。
「なんかこの動き見覚えがあるような」
「ふうん?」
 つん。
 すると自由になった中身が二人の間を翔けた。
 二人の髪が、飾りがその勢いで生まれた流れに乗せられ、揺れて。すぐさま振り返った二人が見たものは、海底をひゅんひゅんぴょんぴょん走り回る狐の花火。
「わ、狐が走り回ったんよ!」
「菫、追いかけよう」
 海の中に花火の狐。あれは消えるまでの――今日だけの、“面白い”とっておきだ。
 千鶴が差し出した手に菫の手が重なり、二人の笑顔が交わって。そして白い砂粒に覆われた海底を蹴って、泳ぎ出す。
 イラストなのが不思議なくらい自由な狐花火が走る間ずっと、ちかちか煌めく火花が狐花火の周りに散って、足跡のように海中をほろほろと漂う。二人を待つようにくるくる回れば、火花も一緒にちかちか、くるり。
 段々と薄れゆくのは少し寂しいけれど――でも、手を繋いで追うのは、追いかけっこをしているみたいだった。
 本当なら、火を飲み込んで消してしまう海の中。息だって出来ないお喋りも出来ない筈の世界で、魚のように海を翔けて狐花火と追いかけっこだなんて。
(「ふふ、たのしい」)
 追いかけっこの最後は、岩を駆け上った狐花火に追いついた瞬間。
 ぱたたと揺れた火の尻尾がしゅわりと解け、二人を抱きしめるように広がり散った時。
 伸ばした手を撫でるように過ぎた狐花火の名残りを、千鶴はそっと海流に乗せて見送って――そういえばと繋いだままの手をちょっとだけ引いた。
「菫は何か見つけた?」
「うちはあそこの泡が気になるん」
 こっちと引いた先には、海の青に染まった珊瑚礁。そこで一つの花と枝のように集まっている様は、確かに気になるもので――何より、泡の中ではらひらと揺れる火種の色に、千鶴は噫と目を細めた。
「ちぃ、心の準備、出来とる?」
「いつでもいいよ」
 悪戯な笑みにさあどうぞと返る笑み。
 菫はあどけなく笑うと、枝のように見えたそこをちょんとつついた。
 ぷちんと割れた泡からぱっと外へ翔け、そして咲いたのは――すみれ色の桜。深い青色を優美な色で照らして染めて、二人の瞳にも花びらのような薄紫を散らしていく。それは。
「……とっておき、やったよね?」
 うち色、キミ花――絆の華。
「……ああ、とっておきの、俺達の華だ」
 未だ見ぬ世界、未だ見ぬ景色でもきっと、二人の華は咲く。
 去年の海から続く今年の海。その思い出を海底で刻んで――憶えた風景が、次の絆の種になる。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

泡沫・うらら
ルーシーさん(f11656)と
21水着

親分さんのお陰で水中でも呼吸が出来るそうですよ
不安気な幼子の手を取りゆっくり海中へ

すっぽり頭を覆った青の中
夏の海の鮮やかさにも負けぬ青と視線が混じり合ったなら
ご気分は如何?

この森は仰山引っ付き虫がおるみたい
ふふりと零した微笑みひとつ
おひとつ手に取ってみはったら?

小さな掌を駆けまわる泡を眺め
元気で明るい貴女のよう、とは胸に秘め
白指伸ばすは海草と共に在るひとつぶ
ゆらゆら揺蕩う柔らかな種を掬い

幼子に次いでつん、と一突き
ぷわり弾けた極彩の実
歓びを表す花に沿ってゆうらり空へと昇り征く

貴女とこうして海の中でお話し出来る事が、こんなにも嬉しい
言葉で飾らぬこころを、貴女に


ルーシー・ブルーベル
うららさん(f11361)と!
21水着

水中で息する不安は最初だけ
目を開けたらうららさんが居て
深くてキレイな、一対の海と視線が合って
うん!だいじょうぶ

海に森がある!
海藻さん達がゆらゆら
気持ちよさそう
その間にキラキラした……あれが花火の種?

そうしてみる
森の奥にビー玉サイズの泡
薄い泡の中でクルクル動いて
見て、うららさん
ルーシーは元気いっぱいなこのコにする!
うららさんはどの種にする?まあ、ふふ
優雅な感じが似ているって思ったのはヒミツ

ツンとつつく
咲いた花火は周りをくるくる回ってポポポと弾ける
きっと外が嬉しいのね
うららさんのもとてもキレイ

わたし
うららさんと海に来れて
お話出来て、嬉しい
海の中ってステキな所ね


 ぱぁん、と音が弾けて夜空に花が咲く。咲いた妖怪花火は鮮やかなイエロー。同じ色をした花火の欠片がぱらぱらと煌めき、海へと降りるような軌跡で消えていった。
 それを浜辺から見上げていたルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)は、両足を穏やかに撫でる海水に目を向け、そして少し先――沖の方を見る。
 海の中、バラバラなタイミングで妖怪花火が咲いていた。大きな花火。小さな花火。サイズだけでなく見た目も違う輝きは、まるで光るクラゲが海面に近付いた瞬間のよう。そして海面に色彩を灯した数秒後には、花が閉じるような静けさで消えていき――。
「……、」
「ルーシーさん」
 時折波にくすぐられる、向日葵の足元。イルカのぬいぐるみを抱えてじっと海を見つめる心の内。抱えているちょっぴりの不安を掬い上げるように、豊かな青色が輝くように揺れた。真珠と貝殻で彩った真っ白な足が波に包まれて、光を散らした淡い海色パレオが一拍遅れて海に触れ、濡れていく。
「親分さんのお陰で水中でも呼吸が出来るそうですよ」
 寄り添うような優しい声音と共に、レースから覗く小さな指先へと白い指先がそっと伸ばされる。
 自分を見上げる少女へ、泡沫・うらら(混泡エトランゼ・f11361)はにこりと微笑みかけた。水中はうららの領分でもある。波にも嵐にも連れて行かせはしないから。だから大丈夫と告げる微笑と指先に、ルーシーの頷きと指先が重なった。
 きゅっと握ってきた幼子の不安を受け止めるように、うららも優しく握り返して――ちゃぽん。二人の体は、ゆっくりゆっくり、海の中。
 耳がやわく塞がれて、頭のてっぺんまで包まれて、ああ海の中にいるんだとルーシーはイルカもうららの手も離さないようぎゅっと力を入れた。けれど伝わる温もりが、真っ暗闇の中で安心をくれる。
「……!」
 勇気を出して目を開けた瞬間見たものは、きらきらと揺れる青を広げて微笑むとびきりの色。深く綺麗な一対の海と視線が合えば、抱えていた不安は泡となって消えていく。
 そんな瞳の彩は太陽に照らされて輝く夏の海だ。あの鮮やかさにも負けない、無垢な生命の青。
 ふたつの青が混じり合えば、ふわりと笑顔が咲いて、瞳に煌めきが踊りだす。
「ご気分は如何?」
「うん! だいじょうぶ。わぁ、見てうららさん! 海に森がある!」
 繋いだ指先に思わず力が入ってしまう大発見は、海の青さをより豊かに伝えてくるのっぽな海藻たちだった。ゆらふわ、ゆらり。海流に身を任せ、流れるように滑るように揺れる様は気持ち良さそうで――豊かな緑の間に見えたキラキラに、ルーシーはぱちぱちと瞬きを繰り返す。
「……あれが花火の種?」
 もう少し近くで見てみようか。うららの導きで辿り着いた海の森、海藻の間を魚と一緒にすいすい泳ぐ道中、二人を歓迎するように泡の中で火種が開いて閉じてを繰り返していた。その数は――いくつ、なんて数え切れないくらい。
「この森は仰山引っ付き虫がおるみたい」
 辿り着いた森の奥、ふふりと微笑をこぼしたうららは、口を小さく開けたまま周りの泡を見つめるルーシーにまたひとつ微笑をこぼした。
「ルーシーさん、おひとつ手に取ってみはったら?」
「そうしてみる。えっと……」
 この泡? それともこっち? 一粒ずつ見ていく中で不思議と目についたのは、ビー玉サイズの泡ひとつ。
「見て、うららさん。ルーシーは元気いっぱいなこのコにする! うららさんはどの種にする?」
 泡が割れてしまうんじゃないかと思うくらい、薄い膜の中でクルクルと動く花火の種。小さな掌に収まる泡の中、駆け回る煌めきは元気で明るい貴女のよう――と、うららは覚えたものを胸に秘め、わくわくと注がれる眼差しを感じながら自分たちを包む森に目を向けた。
「せやねぇ、うちは……」
 光を抱えた泡をゆるりと眺め、そして白指を伸ばした先は海藻と共に在るひとつぶ。緑の絨毯の上でゆらゆら揺蕩うやわらかな極彩の種は、白い指先でやわらかに掬われて。けれど割れることはなく、穏やかにそよいだのみ。
「まあ、ふふ」
 優雅な感じが似ている、と思ったことはヒミツね。
 ルーシーは掌の泡に内緒の笑顔を向け、ツン。
 次いでうららも、つん。
 指先触れたそこから泡は割れ、ルーシーの掌から咲いた花火は二人の周りをくるくる、ポポポ。わ、と目を丸くしたルーシーのツインテールをくぐり、うららの揺蕩う髪の間を弾ける様はまるで――、
「きっと外が嬉しいのね」
「ええ、きっと」
 咲けた、咲けたと喜び表すその周りを、うららの指先からぷわり弾けた光の実が沿いながら、ゆうらり。海の中をその極彩で照らしながら翔け、海の向こう、空へと昇るように征く。
 海の青を照らして咲いた花火がゆっくりとけゆく中、あのね、と少女が呟いた。
「わたし。うららさんと海に来れて、お話出来て、嬉しい」
 海の中ってステキな所ね。
 ルーシーが告げた言葉に、うららの瞳がふっくらと笑みを描く。
「……うちも。貴女とこうして海の中でお話し出来る事が、こんなにも嬉しい」
 贈ったそれは、言葉で飾らぬこころひとつ。
 知っていた世界。知らなかった世界。別々だった世界が繋がってひとつになった海の中、ふたつの青は幸いと共に笑い合う。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

最終結果:成功

完成日2021年09月02日
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵