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佳宵に遊ぶ

#カクリヨファンタズム #戦後


●秋澄む
 陽が沈めば、世界に闇が訪れる。
 聞こえる音色は心地良い鈴虫の澄んだ鳴き声。大きな月の下、葉の囀りのようなささやき声の中、ぼんやりと光が灯り出した。
 灯る光は不思議なことに辺りを覆う竹の中から。温かくも仄かな光は世界の闇を邪魔することなく、けれど足元に不安を与えさせない程の心地良い灯りで世界を照らす。
 光の粒が地に落ちれば儚く消えゆく様は、ほんの少し早い雪の訪れのよう。

 光が灯ったよ。
 さあさあ、祭りを始めよう。

●秋の頃に
「皆様もご存じの幽世蝶。その存在が群生する場では、世界の崩壊が近付いているとか」
 猟兵に向け、杠葉・花凛(華蝶・f14592)はすうっと桔梗色の細め真剣に紡ぐ。
 猟兵の予知よりも早く察することが出来る、不思議な存在。それはきっと、数多の猟兵が何度も幽世の滅亡を救ったからなのだろう。
 そして今回は、その幽世蝶の群生地へと赴くお話になる。
「訪れる場は、竹から光の漏れる幻想的な場ですわ。大きな月と竹光の中、妖怪の方々により一夜のお祭りが開かれているようですわね」
 大きな月は綺麗な満月。辺りに生える生命力溢れる青竹の中から零れる光は温かな色を宿し、キラキラと光の粒を落としながら世界を照らすなんとも幻想的な空間。
 それは一夜限りの光景。
 秋のこの日に、美しい月と灯る光竹を祝う一日の出来事。
 竹に囲まれた道沿いに並ぶのは数多の屋台。妖怪達によって開かれた店は、この幽世の世界らしい古くも新しい様々な世界と文化が入り混じる不思議なもの。
 特に妖怪達が力を入れているのは、月の綺麗な秋の日らしいお団子屋さん。定番のみたらしや草団子の他、つるつるで綺麗な団子を積み上げたそれは月見団子と呼ばれるこの日だけのもの。他、桜餡や苺餡といったものや、淡い水色のラムネ味やレモンを添えた蜂蜜レモン味の餡があったりと。見るだけでも色鮮やかで愛らしい品々が並んでいる。
 光はあくまで夜道を照らす程度。その為、気になる者は提灯などの照明を手に歩くのが良いだろう。勿論、綺麗な提灯屋の屋台もあるようなのでその場で選ぶことも可能だ。
 金魚釣りの金魚は綺麗な尾をひらひらと泳がせて。光に溢れる店があるかと思えばそれは花穂が灯るススキ。他にも色々な店があるので、気に入る何かが見つかるだろう。

「お祭りを楽しんだ後、皆様に対峙して頂くのは『百々目鬼』に憑かれた少女ですわ」
 お祭りの会場内を舞う幽世蝶に導かれた先、竹の中で存分に祭りを楽しんだ妖怪と出逢うことが出来るだろう。
 長い袖をふりふりと振りながら、ぴょんぴょん跳ねる少女は元はキョンシー。彼女は骸魂に憑かれたことで、キョンシーの貪欲さと百々目鬼の手癖の悪さが合わさってしまったようだ。その為、他人のものに興味津々で奪い取ってしまうらしい。
「その手癖の悪さは戦い中も健全ですので、油断なさらないよう。うっかりすると、皆様の大切な物を彼女に取られてしまいますわ」
 無論、戦いが終われば自然と袖から吐き出され戻ってくるだろう。
 けれども、人によっては他人に一瞬でも奪われることは嫌だと感じる者もいるだろう。他人に触れられること嫌がる者もいるだろう。
 そんな者にも彼女は容赦なく。自分の気に入った者を不思議な力で奪い取ってしまう。
 逆に、奪われたことでほっとする者もいるかもしれないが――それはそれで、自身の中で何か新たな『気付き』があるだろう。
「彼女は特に、可愛いものや美味しいものがお好きなようですが……」
 彼女の語る可愛いや美味しいが何かは、不明。その為、どのようなものでも奪われてしまう可能性はあると考えても良いだろう。あからさまに袖に入らないようなものまで、興味を持つ可能性も十分にある。
「少々癖のあるお相手ですが、彼女を無事に倒せれば無事に全て解決ですわ」
 それは、骸魂によりオブリビオン化してしまったキョンシーの少女も。そして、此の世界の綻びも。
 だからしっかりと退治をお願い致しますと、花凛は笑みと共に紡ぎ猟兵を送り出した。

 秋を感じる冷たい風の中、からころと足音を響かせて何をみようか。
 ひらひらと舞う幻想的な蝶が、月明かりの中舞っている。


公塚杏
 こんにちは、公塚杏(きみづか・あんず)です。
 『カクリヨファンタズム』でのお話をお届け致します。

●シナリオの流れ
 ・1章 日常(ライトアップステージ!)
 ・2章 ボス戦(ドドメキョンシー)

●1章について
 大きな月の下、光り輝く竹の中のお祭りのひと時。
 綿飴やヨーヨー釣りなど、一般的な出店なら大体ある他変わり種もあります。

 丁度お月見シーズンなので、お団子が豊富です。
 普通のみたらしや草だんご、秋らしい紫芋などの他。
 苺などの果実を飾った、カラフルでお洒落なお団子もあります。

●2章について
 百目鬼の骸魂に憑かれたキョンシーの女の子。
 楽しいことと美味しいものや可愛いものが大好き。どんな世界のどんな物でも興味を持ってしまいます。

 ・SPDの時は皆様の持ち物から何かひとつ、奪います。大きさは袖の中に入る程度。(敵イラスト参照。少し無理すれば、くらいならぼかして採用します)
 ・WIZの時は大きさに関係なく、何か一つを彼女に渡したくなります。
 どちらもお好みの物を指定頂いて大丈夫です。アイテム欄は活性化のみ参照します。

●装い
 特に指定が無ければ言及は致しません。
 浴衣コンテストの装いの場合は、記載頂ければ拝見致します。(例:2021浴衣)
 (文章の流れによっては反映出来ない可能性がありますので、ご了承のうえお願いします。ステータスでそのイラストを活性化しておいて頂けますと、探しやすくて助かります)

●その他
 ・全体的にお遊びシナリオです。
 ・同伴者がいる場合、プレイング内に【お相手の名前とID】を。グループの場合は【グループ名】をそれぞれお書きください。記載無い場合ご一緒出来ない可能性があります。
 ・2章は短期間・少人数でのご案内の予定です。
 ・受付や締め切り等の連絡は、マスターページにて随時行います。受付前に頂きましたプレイングは、基本的にはお返しさせて頂きますのでご注意下さい。

 以上。
 皆様のご参加、心よりお待ちしております。
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第1章 日常 『ライトアップステージ!』

POW   :    屋台巡りで楽しむ

SPD   :    幻想的なステージで踊ったり歌う

WIZ   :    より良いステージの為に演出する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●佳宵の祭
 浮かぶ月は、まるで世界を照らす大きな灯りのよう。
 うっすらと雲の掛かった満月は、美しくもどこか神秘的に煌々と輝いている。それは此の秋の日を強く感じる、季節の色を魅せているかのよう。
 さわりと風が吹けば冷ややかな夜風が肌を撫で、枝葉を揺らし音色を奏でる。ぼんやりと灯る竹中の光から零れ落ちる光粒は、その風に乗りちらちらと舞い散った。
 此処は、闇と光に包まれた幽世世界。
 芳しい香りに楽しげな、人では無い者達と共に、穏やかなひと時を過ごそうか。
 
 ひらり、ひらり。
 数多の輝く色を宿した幽世蝶が、君を何処かへと導いた。
花澤・まゆ
わあ、カクリヨのお月見だね
こんな綺麗なお月さま、見ないのは勿体ないや

お団子屋さんがいっぱい わくわくしちゃう
まずは月見団子をくださいな
あとは……お月さまみたいな黄色の蜂蜜レモン餡のお団子
お団子を買ったらお月さまの見える場所へ

まんまるお月さま
月で影ができるほどに明るくて
青竹からは光の粒
まるで、此処だけ光の魔法にかかったみたい
綺麗だなあ

花より団子
お団子もしっかり頬張りながら
(蜂蜜レモン餡、甘酸っぱくて美味しいー!)
十五夜のお月見を
しばらくばたばたしていたからこういう時間は嬉しいな
月が傾いて時間が来るまでのんびりお月見を楽しむよ

アドリブ歓迎です




「わあ」
 青い瞳に映る大きな月。ふんわりと灯る竹中の光に、花澤・まゆ(千紫万紅・f27638)はキラキラと大きな瞳を輝かせる。
「こんな綺麗なお月さま、見ないのは勿体ないや」
 空に浮かぶその月は、他の世界では見ることが出来ない程に大きなもので。穏やかに優しく世界を照らしてくるその美しさに、彼女は想わず溜息を零してしまう。
 その月明かりを祝福するかのように、並ぶ屋台を営む妖怪達は皆楽しそうで。ついつい口許を緩ませながら、まゆは軽い足取りで路を歩んでいく。結った髪を躍らせて、ひらりと舞う軽い足取りが止まった先はお団子屋さん。
 お団子屋さんも数多あるようだけれど、まゆの目に留まったのはお月様のようなお団子が積み上がったひとつの店。
「まずは月見団子をくださいな」
 細い指で示しながら、彼女は真っ白な姿が神々しい月見団子と。そして、淡い黄色が愛らしい蜂蜜レモンのお団子を手に取った。
 輝く蝶が辺りを舞う中、その後まゆが訪れたのは祭りの喧騒からは離れた場所。竹の光と幽世蝶の光が包む、ぽっかりと開けた休憩場所だった。
 木造りのベンチへと腰掛けて、ほうっと溜息を零しながらまゆは辺りへと瞳を向ける。
 天には優しいまんまるお月さま。
 月で影が出来る程に明るくて、青竹からは光の粒が雪のように零れ落ちる。
 この景色は、まるで此処だけ光の魔法に掛かったみたいで――。
「綺麗だなあ」
 ぽつり、吐息と共に零れる言葉。
 けれど小さく鳴ったお腹の音に、ついつい自身のお腹へと手を当ててしまう。辺りには誰もいないから聞かれてはいないだろう。少しだけ恥ずかしそうに頬を染めながら、まゆは購入したお団子を口にした。
(「蜂蜜レモン餡、甘酸っぱくて美味しいー!」)
 小さなレモンの欠片がトッピングされたお団子は、見目が可愛いだけでなく味も素晴らしい。上品な甘さとレモンの酸味のバランスが丁度良く、思わずきゅうっと瞳を閉じながらまゆは幸せそうに微笑んだ。
「しばらくばたばたしていたからこういう時間は嬉しいな」
 お団子片手に、世界を照らす月を見上げながらまゆはそう想う。
 十五夜の季節を、こうして楽しめる機会が嬉しいから――月が傾くまでもう少しだけ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朧・ユェー
【月光】2021浴衣

彼女の浴衣の帯を締めて、髪にリボンを結んで
さて行きましょうかと手を繋ぐ

月がとても綺麗ですね
そうですね、沢山の夢でしょうか?なぁんてねと笑って

似合いますか?
ふふっ、ありがとうねぇ
肩の黒雛もドヤァとしている
ルーシーちゃんもよく似合いますよ。まるで羽衣様な天女さんですね。ぬいぐるみさんも可愛らしい

えぇ、大丈夫。迷っても一緒ですよ
向日葵の?それは綺麗ですね
じゃ僕も同じ提灯にしましょう

小さな手を再び握って
嬉しそうに歩く彼女に歩を合わせ
こけそうになれば片手でひょいとして

月見のお団子ですね
お月様、貴女が好きだと言ってくれて嬉しい気持ちですね
えぇ、一緒に
お月様も喜んでますよ


ルーシー・ブルーベル
【月光】2021浴衣

締めてもらった帯とリボンを自慢げに翻し
手をぎゅっと!

大きなお月様!
竹が光っているのフシギね
何が入っているんだろう?

ゆぇパパの浴衣姿とってもかっこいい!
黒い浴衣もお似合いになるわ
黒ヒナさんともお揃いね
えへへー、ありがとう

手を繋いでいれば
夜道も迷う事はないと思うけれど
ねえパパ、チョウチン?買ってもいい?
あのね、あれ。ヒマワリ柄の!

片手はパパ、
もう片手にヒマワリ提灯
ふふー!
スキップ出来ないけれど
したくなっちゃう位ウキウキ

お団子、食べたいな
カラフルなお団子もひかれるけれど
月見団子がいい
お月様をお祝いする食べ物なんでしょ?
大好きなお月様といっしょに食べたいもの!
お月様、喜んでるかな?




 ひらり、ひらり――腰に揺れるレースの飾りが月に照らされる。
「さて行きましょうか」
 笑みと共に朧・ユェー(零月ノ鬼・f06712)が紡げば、ルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)は大きく頷きを返した。
 帯とお揃いの紺色リボンを躍らせて、きゅうっと大きな手と小さな手が繋がれる。大きな月明かりに輝く銀と金の髪を揺らす中、ルーシーは輝く青竹に視線を奪われていた。
「竹が光っているのフシギね。何が入っているんだろう?」
「そうですね、沢山の夢でしょうか?」
 小首を傾げじいっと竹を見つける少女を見て。ぽろりと零しながらユェーは「なぁんてね」と笑って見せる。溢れる幸せで輝いているのなら、素敵だとルーシーは胸を弾ませながら――竹の光に照らされるユェーの姿を左目に映し、ぱちりと瞳を瞬く。
「ゆぇパパの浴衣姿とってもかっこいい! 黒い浴衣もお似合いになるわ」
 漆黒は透けるように白いユェーを更に映えさせる程に凛々しく。風が吹けば流れる上着を止める銀細工が輝く様がどこか大人っぽい。黒ヒナさんともお揃いねと彼の肩に乗るまん丸へと笑い掛ければ、彼は嬉しそうに小さく身体を揺すりながら自慢げにしている。そんな彼の様子にくすくすと笑いながら。
「似合いますか? ふふっ、ありがとうねぇ」
 ユェーはお礼と共に、白地に爽やかな花模様が咲く愛らしい少女の姿をじっと見る。歩みに合わせてひらひら踊る帯は、彼が締めてあげたもの。
「ルーシーちゃんもよく似合いますよ。まるで羽衣様な天女さんですね。ぬいぐるみさんも可愛らしい」
 その言葉に、いつかユェーが纏っていた黒猫パーカーにも似ている気がする猫のぬいぐるみを抱き締めて、ルーシーは少し恥ずかしそうに頬を染めていた。
 そのまま二人は睦まじく、妖怪が歩む通りを巡りひとつひとつ店へを眺めている。行き交う人の姿も、店に並ぶ商品も。全てがどこか異界のようで珍しく面白いのだが――。
「ねえパパ、チョウチン? 買ってもいい?」
 きゅっと手を握り締めながら、彼を見上げてルーシーが問う。
 いつだってこうして手を繋いでくれるから、夜道も迷うことは無いと思うけれど。向日葵咲く提灯を見つけてしまったから、ルーシーの青い瞳は釘付けになっていたのだ。
 愛らしい彼女のおねだりに、笑みと共に当然のようにユェーは頷きを返す。折角ならばと二人でお揃いの提灯を咲かせれば、灯る温かな黄色の灯りがふたつ咲く。
 神々しく輝く月の光と竹中の光。
 手元で灯る温かな提灯の光。
 数多の温もりに照らされながら、歩むルーシーの足取りは軽やかなもの。今にもスキップしたくなるほど嬉しいのは、両の手に幸せを感じるから。
 けれど、今日はその足取りを封印するかのようにからころと足音を響かせる。その音色がどこか楽しげだから、ユェーにも少女の心はしっかりと伝わっていた。
 そう、こうして繋いでいるから――彼女が躓いた時には助けることも出来るのだ。保護者として温かく、そっと手を貸してくれる彼の温もりに嬉しそうに笑いながら、次にルーシーが興味を持ったのは彩鮮やかなお団子たち。
 お店に並ぶお団子はどれも美味しそうで。餡子も綺麗な盛り付けがされている物が数多並んでいるけれど――意外にも、ルーシーが選んだのは一番シンプルな月見団子。
「お月様をお祝いする食べ物なんでしょ? 大好きなお月様といっしょに食べたいもの!」
 キラキラと左目を輝かせて、ユェーへと語る少女。月に見立てたと云うお団子は艶々と輝いていて、あの夜空に浮かぶ月のように美しい。
「お月様、喜んでるかな?」
「えぇ、一緒に。お月様も喜んでます」
 お団子持ち上げて、お月様と並べて見つめるルーシー。
 こんなにも愛らしい子が、大好きだと言ってくれたのだから。――その言葉に応えるかのように、さわりと秋の風が二人を包み込んでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レナ・ストリーム
月見団子ってなあに?そういうおまじない?
水色に黄色に…なにこれ?食べ物?すごい綺麗ね!かわいいし!

周りをきょろきょろ何を買おうか迷い
一番気になるのは提灯屋

初めて見たわ。紙でできているの?光を透かして綺麗ね。

お腹もすいたから何か食べたいけど、食べたらなくなっちゃう。
提灯は飾っておけばずっと見ることができるもの。

真剣に悩んで、一番綺麗だと思うものを購入
うきうき手にやっと周りの景色を楽しみ始める

なんか木が光ってる!そういえばさっき光った葉っぱなかった?
あれも買っちゃおうかな。

景色よりも手に入るものが欲しい13才




 はたはたと揺れる、のれんの文字を見て。レナ・ストリーム(西洋妖怪の魔女・f34922)はぱちぱちと銀色の瞳を瞬いた。
「月見団子ってなあに? そういうおまじない?」
 聞いたことも無い言葉に小首を傾げて、興味津々な様子で店に並ぶ品物へと視線を向ける。そこには、黒に緑に黄に水色に――色とりどりの色が並んでいて。
「水色に黄色に……なにこれ? 食べ物? すごい綺麗ね! かわいいし!」
 綺麗な色に眩しそうに瞳を細めながら、仄かに頬を染めて彼女は興奮気味にそう語る。少女のそんな様子に、店主の天狗はどこか満足そうに笑みを浮かべ。
『お嬢ちゃん、一本どうだい?』
 声を掛けられればレナは少し驚いたように顔を上げた。――お団子も可愛くて綺麗。けれど、少女が一際興味を持ったのは優しい光が灯る提灯屋。
 お団子屋から離れ、灯りを頼りに店へと近付けばそこは優しい光で満ちていた。
「初めて見たわ。紙でできているの? 光を透かして綺麗ね」
 灯る光はどこか温かく感じて。よく見れば形も、そして透ける模様も数多あるらしくついつい視線を奪われてしまう。
 きょろきょろと品物を見ていると――くうっと小さく少女のお腹が鳴った。
 そういえば、お腹も空いたから何か食べたい。けれど、美味しいものは食べたら無くなってしまう。提灯ならば、ずっと見ることが出来るから――。
 うんうん唸りながら、レナは提灯を手に取った。幼い彼女によく合う丸い形をした提灯の紙には、火を灯すとうっすらと秋らしい秋桜の花が浮かび上がっている。
 ゆらゆら揺れるその愛らしい光を、見惚れるように見つめた後。彼女は改めて一歩一歩夜店の並ぶ通りを歩きだした。数多の妖怪が練り歩き、並ぶお店はどれも見たことが無い物ばかり。あれもこれも、気になってしまうけれど――。
「なんか木が光ってる! そういえばさっき光った葉っぱなかった?」
 彼女の視線は手元の光だけでなく、ついつい光り輝くものへと惹かれるよう。
 天には光り輝く大きな月。周囲には輝く青竹があるけれど――手元で灯るススキへとつい手が伸びてしまうのは、自身の手の中に納まる物が欲しいのだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

比野・佑月
【月花】
「キミのことが好きだよ」
「きっと恋愛の意味でも…それ以外でも。この感情の行きつく先はなんだっていい。」
躊躇うことなく返す。

『ずっと傍に居る。キミと一緒にいたい』
例えそれが刹那の夢だとしても…最期まで。
それだけが俺の答えで、本当は”好き”なんて言葉じゃ収まらない。
傷付いて欲しくない。ただ傍で笑うキミを見ていたくて…愛おしい。
恋といえば恋だろうし、それですら物足りない気もする。
だから俺的にはなんだっていい。きっと全部の意味でキミが好きだから。
「香鈴ちゃんはどう?…なんて、今すぐに何か言って欲しいわけじゃないんだ」
「…あ!これも美味しいよ!」
まずはお祭りを楽しもうと返事は待たず団子を差し出す


花色衣・香鈴
【月花】
転移の後、お祭りには踏み出さず口を開く
「少しだけいいですか」
彼の家で介抱された時、深くは考えず頷いた言葉がある
「『ずっと一緒にいたい』って、…どういう意味でしたか」
責める気はない
奇病の身を気味悪がることもなく大切にしてくれたから
こんなお荷物(わたし)でも今まで通り交流を続けるよという、許しにも似たものだと思っていて
「え、」
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縁のなかった言葉に思考が止まる
続く言葉と疑問詞で更に動揺して
「ぁ、の、」
だけど眼前の表情は今までで一番優しくて
「佑月、くん」
自分の気持ちの名前も出て来ないのにすっかり馴染んだ彼の名前だけが零れた

また彼に導かれる
祭りの音が耳に戻って来る
お団子の味はよくわからなかった




 闇の中へと足を踏み入れれば、秋風が柔らかな肌を撫でた。
 さくりと足音を響かせて、光の中へと歩もうとする彼へ――。
「少しだけいいですか」
 不意に、その背へ向けて花色衣・香鈴(Calling・f28512)は声を掛けた。その声に反応して彼、比野・佑月(犬神のおまわりさん・f28218)はくるりと向きを変えると不思議そうに瞳を瞬き、彼女を真っ直ぐに見る。
 すうっと、ひとつ深呼吸をして。香鈴は心に浮かんでいた疑問を言葉にした。
「『ずっと一緒にいたい』って、……どういう意味でしたか」
 かつて彼の唇から紡がれたその言葉が、ずっと気になっていた。
 病を患っている香鈴にとって、気味悪がることも無く大切にしてくれた彼の存在は大きなもの。そして彼から紡がれた言葉は、こんなお荷物な自分でも今まで通り交流を続けるよと。許しにも似た言葉だと思っていた。
 けれど――。
「キミのことが好きだよ。きっと恋愛の意味でも……それ以外でも。この感情の行きつく先はなんだっていい」
「え、」
 佑月から紡がれる想いは、それよりも熱い想いだった。戸惑うこと無く、真っ直ぐに香鈴の温かな金木犀色の瞳を見つめながら、語る彼。その眼差しは強く、紡がれる言葉は香鈴の心へと落ちては頭の中に響いていく。
 そんな彼女をじっと見て、佑月は静かに心に想う。
 『ずっと傍に居る。キミと一緒にいたい』と、紡いだ想いに偽りは無い。そう、例えそれが刹那の夢だとしても、最期までと想うのだ。
 それだけが彼の答えで、本当は『好き』なんて言葉では収まらない程の想いがある。
 傷付いて欲しくない。ただ傍で笑うキミを見ていたくて……愛おしい。その想いを纏めれば恋というものなのかもしれない。けれど、それですら物足りない程の感情だと思う。
 だから――佑月的にはなんだっていい。
 きっと、全部の意味でキミが。香鈴が好きだから。
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 真っ直ぐな彼の想いは、本物だとよく分かる。
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「佑月、くん」
 気持ちを言葉にするより前に、香鈴の唇からは彼の名前が零れていた。
 自身の気持ちの名前も出てこない。けれど、彼の名前だけはすっかり馴染んでいて、自然と零すことが出来る。
 きゅうっと胸元で手を握り締めて、俯きがちにぐるぐると頭を巡らせる少女。そんな彼女の姿に、彼女の唇から零れた自身の名前に。佑月は笑みを落とすと、そっと唇を開く。
「香鈴ちゃんはどう? ……なんて、今すぐに何か言って欲しいわけじゃないんだ」
 小首を傾げ問いをするけれど、すぐに首を振り彼はいつもの笑みを浮かべる。
 ぴくりと耳を動かして、その身を夜店の並ぶ路へと溶け込ませる彼の後を、ほとんど無意識のように香鈴は着いて行った。辺りには祭りを楽しむ妖怪の姿。店を営む妖怪も楽しげで、周囲に輝く竹の光も、世界を照らす月の光もこんなにも美しいのに――どうしてだろう。その音も、光も、香鈴の身体には落ちてこない。ただ真っ直ぐに、すぐ目の前を歩く彼の姿を追うことしか出来ない。
「……あ! これも美味しいよ!」
 くるりと振り返って、不意に佑月が香鈴へと串団子を差し出してきた。とろりと黄金色に輝くみたらしが零れないようにと注意をしながら、その団子を口にした時――不意に、香鈴の耳には辺りの喧騒が戻ってくる。
 けれど、どうしてだろう。
 この口の中のお団子の味が、分からないのは。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルーファス・グレンヴィル
マコ(f13813)と
2021浴衣着て
足許だけ揃いの草履

ちょうど月見か
竹取物語の結末は知ってるから
お前は、月には帰さねえよ
なんて戯れながら
いろんな店に目移りを

そろそろ何か喰うか?
──お、あそこに団子見っけ
腹の音なんて気にも留めず
先々歩いて店の前へ
どれも美味そうじゃん
月見団子も良いけどなあ
折角だから桜餡にしてみるかな

口許に差し出されたそれを
躊躇いもなく頬張って
へえ、苺乗ったのも美味いな
あ、マコもオレの桜餡食べるか?
照れる事もなく愉しそうにお返しを

いちいち指摘しないけど
赤くなるのも、青くなるのも、
すっげえ可愛くて
オレの前だからだと思えば
その全てが愛おしいから
感じる幸せに、笑みは、途切れなかった


明日知・理
ルーファス(f06629)と
揃いの草履履きつつ2021浴衣にて
アドリブ、マスタリング歓迎

_

竹取物語を想起しながらルーファスと談笑を
美味しそうな団子の香りに小さく腹が鳴って
…彼に聴こえていたのだろう
すげえ恥ずかしくて頬に熱が集まるのを自覚しながら、大人しく彼についていく
色々な種類があるんだなと知らず瞳の奥が煌き
購入したのは赤い苺の乗った団子

一口食べて旨いと頬綻ばせ
隣にいるルーファスへあーんを
それは殆ど無意識で
気づいたときには既に口元へ差し出してしまった後
赤くなったり青くなったりしつつも
代わりにと団子を差し出されたまま頬張り

最愛の貴方が楽しそうに笑うから
自分の焦りもどこへやら
釣られて俺も笑ったのだ




 さくりと響く草履の音色。
 お揃いの色を足元に宿した二人を照らすのは、天に浮かぶ月と輝く竹の光。
「ちょうど月見か」
 他ではあまり見ることが出来ない大きな月を見上げて、ルーファス・グレンヴィル(常夜・f06629)は思い出したようにそう紡ぐ。日本古来の行事故か、密接に関係する此の世界でも大切にされているのだろう。秋のこの日を楽しむ妖怪達を見て、そして輝く竹を見れば――思い出す物語はひとつだけ。
「お前は、月には帰さねえよ」
 丁度、明日知・理(月影・f13813)も月のお姫様の物語を考えていた時。傍らから掛かる言葉に、鋭い眼差しを少しだけ開く。
 そう、きっと彼の姫が生まれた竹は、こんな風に輝いていたのだろう。数多の竹の光が世界を優しく照らす中、並ぶ店の路を歩めば――鼻をくすぐる芳ばしい香りに、小さく理の腹が音を立てた。
「そろそろ何か喰うか? ──お、あそこに団子見っけ」
 ほんの小さな音だった為、気付かれていないと思い自身の腹に手を当てた時。笑みと共にルーファスから紡がれる言葉に理は恥ずかしそうに頬を熱くする。けれど、事実なので素直に彼の後についていけば、そこには色とりどりのお団子が並んでいた。
 鼻をくすぐったのは、お団子が焼ける香りだったのだろう。焼き目が付いたお団子に輝くみたらしが美しく、よく知った味だがとても美味しいだろうと予想が出来る。他にも餡子が乗っていたりよもぎだったりと見知った物から、鮮やかなものまで並んでいて。
「色々な種類があるんだな」
 少し驚いたように息を零しながら、理は鋭い瞳の奥を輝かせた。
 そんな彼の微妙な変化に気付き、喉の奥で小さく笑いを零しながらルーファスは考える。折角の月見なのだから、月見団子も良いだろう。けれど――。
「折角だから桜餡にしてみるかな」
 彼が手を伸ばしたのは、甘い桜色に桜の塩漬けがちょこんと乗った華やかなお団子。理が餡子に真っ赤な苺が乗ったお団子を手に取れば、互いにまずは一口。
 もっちりとしたお団子に、滑らかな餡子は上品な甘さ。
 この景色の中食べるからこそ、尚美味に感じるのだろうか。口に広がる餡子と苺の果汁のバランスを堪能しながら――自然と、理はそのお団子をルーファスの口許へと運んだ。
 それは当たり前のような流れで。当然ルーファスも目の前に運ばれたお団子を、大きな口を開けてひとつ口に。その様子を眺めた時、理は自分の行いにやっと気付いた。
 きゅっと結んだ唇を隠すように手を当てて。顔を赤くしたかと思えば青くして、と表情には出ないまま文字通り色を変えていく彼。そんな彼を口を動かしながらルーファスは眺め、こくりと小さく音を立てお団子を飲み込めば。
「へえ、苺乗ったのも美味いな。あ、マコもオレの桜餡食べるか?」
 ぺろりと口許を小さく舐めて。そのまま自身のお団子を差し出すルーファス。その顔に浮かぶ表情は照れ等一切なく、ただただ愉しそうな様子で彼はいる。その仕草が更に理の顔色を変えるのだけれど――そんなところも、ルーファスにとっては胸が熱くなるのだ。
 さわり、秋の風が吹けば。理の羽織る上着が舞い、ルーファスの縞模様の袖を揺らす。
 恐る恐るという表現が正しいのか、理は口を開け差し出されたお団子を口にする。
 そんな彼を眺めるルーファスは尚も笑顔のままで。その笑顔を見ていれば、不思議なことに理の焦る心も落ち着いていくよう。
 美味しいと云う言葉と共に、零れる笑みはきっと自然なことだろう。
 天に浮かぶ月の光が、理の纏う月の模様を輝かせていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

菫宮・奏莉
カティアさん(f05628)と

とっても綺麗なお祭りがあるみたいなのです。
カティアお姉ちゃん、いっしょに行きませんですか?

と、ぐぐっとお誘いしちゃうのです。

現地では金魚柄で兵児帯の浴衣を着ますですね。

幻想的な風景に、
ふわぁ……なんだかぼーっとしちゃうくらい綺麗なのです。
とか思うのですが、身体は正直。

お団子の香りにお腹を鳴らして、真っ赤になっちゃいますのです。

わたわたあぅあぅしていたら、カティアお姉ちゃんがお団子をわたしの口の中に……。
ラムネ味……しゅわしゅわするお団子は初めてなのです。美味しいのです♪

って、いいいいいいまわたし、あーんされ……!
さらに真っ赤になってぷしゅーってしちゃいますですね。


涼月・カティア
【奏莉(f32133)さんと】

可愛いもの注意…
わかりました、奏莉さんは私が全力で守ります…っ!(後ろからはぐぎゅー
え?まだ早い?す、すみません…

お祭りがあるんですか?
はい、一緒に行きましょう
えっと…今日は奏莉さんがぐいぐい来るような?
私としては嬉しいのですがちょっとどきどきしますね

奏莉さんに合わせて私も浴衣(白地に萩色の夕顔柄)に

さ、奏莉さんどこから行きますか?
竹から零れる温かな光を奏莉さんと一緒に見ながら
お団子屋さん?
奏莉さんお腹……(思わずくすくすと笑ってしまい)
はい、どうぞ
美味しいですよ?

顔を真っ赤にする奏莉さんを愛らしく思いながら
私もお団子いただきます
はむっ美味しいですね♪




 ――とっても綺麗なお祭りがあるみたいなのです。
 ――カティアお姉ちゃん、いっしょに行きませんですか?
 そう誘いを掛けてくれたのは、まだ幼い少女だった。何時もよりもぐいぐいと前向きに誘う彼女の姿を思い出して、涼月・カティア(仮初のハーフムーン・f05628)は口許に手を当てる。今思い出しても、嬉しさと共に仄かに胸が高鳴るのを感じてしまう。
 その誘いを紡いだ少女――菫宮・奏莉(血まみれもふりすと ときどき勇者・f32133)は、キラキラと舞い散る光を目で追っては驚いたように左目を瞬き、口を開く。
 大きな月は世界を照らす程に明るく、辺りに生える青竹から零れる光が奏莉の白い肌を染めて。呼吸をするように光が明滅すれば、彼女の纏う浴衣の赤い金魚も色が変わる。
「ふわぁ……」
 零れる言葉は無意識に。
 ついつい、ぼーっとしてしまうくらい綺麗な景色だけれど――。
「さ、奏莉さんどこから行きますか?」
 そんな彼女の様子を優しく見下ろしていたカティアからの言葉に、はっと意識を取り戻すと奏莉は顔を上げ、彼の青い瞳を見返した後辺りをきょろきょろと。
 数多の光が灯る幻想的な世界。
 この世界をカティアと眺めるだけでも嬉しいけれど――小さな鼻をくすぐる香りに、ついつい奏莉の視線はそちらへと移ってしまう。彼女の大きな瞳が一か所に釘付けになっているのに気付き、カティアもそちらへと視線を移せば。
「お団子屋さん?」
 香ばしい香りの正体は、溢れる程のお団子屋さんだった。美しき月があるのならば、美味しいお団子があるのも当然か。楽しそうに妖怪が行き交い、お団子を買い求める姿をじっと見つめていれば、不意に聴こえる小さな小さなお腹の音。
「奏莉さんお腹……」
 微笑ましそうにカティアがくすくすと笑みを零せば、奏莉は恥ずかしそうに顔を真っ赤にして俯いてしまう。
 そんな彼女の姿に、全力で守ろうとカティアは想いながら。屋台へと近付くとお団子を2本購入し――1本は奏莉の口許へと。
「はい、どうぞ。美味しいですよ?」
 笑みと共に差し出されたお団子は真っ白の玉に飾られる爽やかな水色が印象的だった。尚も真っ赤になりながら、勧められるがままに奏莉は口を開き、お団子を一口。
 最初は、胸がドキドキするので味が分からなかったけれど、噛めばふわりと広がる甘くも爽やかなラムネの味。舌で餡がとろければ、不思議なことにしゅわりと弾けた。
「ラムネ味……しゅわしゅわするお団子は初めてなのです。美味しいのです♪」
 頬に手を当て、嬉しそうに微笑む少女。
 愛らしい見目の物も、弾けるそのお味も初めてのことで――ついつい忘れていたけれど、先程のことを思い出し彼女はぱちりと瞳を瞬く。
 それは、お団子を食べた時のこと。
「って、いいいいいいまわたし、あーんされ……!」
 その時の様子を思い出せば、とても恥ずかしいことをしていたことに気付いて。みるみるうちに顔を真っ赤に染め、わたわたとする奏莉。今にも湯気が出そうな程顔を赤く染める小さな彼女のその様子を見れば、カティアはつい愛らしいと感じ口元が緩んでしまう。
「私もお団子いただきます」
 先程彼女の口許に運んだのとは別のお団子を、今度は自身の口許へと運ぶカティア。
 そんな、お団子を食べる彼はとても嬉しそうで。
 彼の楽しげな心を表すかのように、袖で揺れる白地に生える萩色の夕顔が光に灯った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

唐桃・リコ
菊(f29554)と一緒
2021浴衣着てくわ、お揃いだからな

月が眩しい
ここの月は人狼が騒つかなくて良いな

2人分の荷物を持って
団子食って歩く
いろんな団子食いてえ
余ったやつは持って帰って食うんだ

…菊の表情がくるくる変わるから面白え
ぱちぱちするのに驚く菊の隣から団子にかぶりついて
…確かにぱちぱちだな、うまい

光溢れるススキを肩に背負って、菊の後についていって
振り回してる菊は本当に魔法使いみたいだ
オレはずっと菊しか見てねえよ
…消えんなよ
光が見えなくなったら消えちまいそうだ

……?月も綺麗だな
菊も綺麗で可愛いよ
前も言ったけど、オレとお揃い、似合ってる
うん、可愛い可愛い
オレも菊の隣に立てるなら、それで良かった


菊・菊
リコ(f29570)と一緒
2021浴衣、にひ、お揃いよ

ここの妖怪も月より団子らしい
ひひ、面白

見たことねえ団子いっぱんあんね
あれこれ買って、食べよ
ぜんぶ半分こな

あ?これ何味?……ぱちぱちする
うまい?

おいしいも、たのしいも、一緒がいーもんな
リコとなら、リコとだから

食うのに飽きたら
光るススキ振り回してあそぼーな

屋台から離れて、ススキの杖を頼りに夜を行く

……べつにふたりっきりになりたかったわけじゃねーし

静かになったリコが俺だけを見てて
それが、俺はうれしい

白銀の髪がきらきら光って、眩しくて
月に取られちまいそうで、嫌で、手を握った

なあ、リコ
月が、きれいだな

………ばあか
お前も、すげえイイ男だよ




 世界を照らす煌々と輝く大きな月――その輝きに唐桃・リコ(Code:Apricot・f29570)は淡いピンク色の瞳を細めた。
 月が眩しい、と思う。
 けれど、此の世界の月は人狼である彼でも騒つかない不思議なもの。
 さくりと草履を擦る音を響かせて。闇の世界に咲く黒と白。その地に咲き誇る菊と梅の花の袖をゆらゆら揺らしながら、二人はお団子の店が並ぶ通りを歩んでいた。
「ひひ、面白」
 辺りを見れば行き交う人も、店を営む人も皆不思議な姿をした妖怪達。彼等も月より団子――同じだと思えば菊・菊(Code:pot mum・f29554)は、つい笑みを零していた。
 それぞれの店で趣向を凝らしたお団子を手にして。さっそく食べてみようと菊が手にしたのは――爽やかな青に泡のような輝きを纏った美しいお団子。
「あ? これ何味? ……ぱちぱちする」
 その色からは味の想像がつかなかったらしい。けれど彼は恐れることなく、大きな口を開けて一口――滑らかな餡子が口に広がった瞬間、ぱちりと弾ける感覚に少し驚いたように金色の瞳を見開いた。
 そんな彼の表情の移り変わりを、リコは楽しそうに見ていたけれど。「ぱちぱち」の言葉に興味を持ったのか、彼の手にするお団子へとかぶりつく。
「うまい?」
「……確かにぱちぱちだな、うまい」
 元より半分こする予定だった為、菊は驚いた様子も無く彼へと問い掛ける。口を動かしながら弾ける味を堪能したリコは、素直にこくりと頷きを返した。
「おいしいも、たのしいも、一緒がいーもんな」
 手元の磯部焼きを揺らしながら、菊はそう紡ぐ。――リコとなら、リコとだから。

 お腹が満たされれば、ただお団子を食べるのでは飽きたらしい菊が歩き出していた。店で見つけた光るススキを片手に、元気よく振りながら歩む姿を行き交う妖怪達はどこか微笑ましそうに眺めている。
 そんな彼の姿を後ろから眺めながら――リコは、光るススキがまるで魔法の杖のように感じて。その光を振り回す彼は、本当に魔法使いのようだと感じる。
 揺れる光と咲き誇る菊花に導かれて。気付けば辿り着いたのは人も妖怪もいない竹の中。不思議とぽっかりと空いた空間は、辺りの光も、世界を照らす月もよく見える。
「……べつにふたりっきりになりたかったわけじゃねーし」
 突然訪れた静寂に、きょろきょろと辺りを見るリコに向けて。菊は少しだけ唇を尖らせながらそう言った。
 交わる金とピンクの瞳。互いの姿が、瞳に映る。
 今此の場では、互いが互いしか見ていない――それが嬉しくて、自然と零れる菊の笑みに応えるかのように。
「オレはずっと菊しか見てねえよ」
 ただ真っ直ぐに見つめながら、リコはそう紡いだ。
 ……消えんなよ。
 心に強く想う言葉。――光が見えなくなったら、消えてしまいそうだと想うから。見失わないようにと、真っ直ぐに見るリコの手を、菊は安心させるかのように取った。
 否。リコが、月に取られてしまいそうだと想ったから。
 月明かりにキラキラと輝く白銀の髪が眩しくて。まるで月のようだと想ったから。
「なあ、リコ。月が、きれいだな」
 そこに居ると分かる熱を手に。菊の唇から零れる言葉に――こくりと、リコは頷く。
「……? 月も綺麗だな」
 少しだけ不思議そうに耳を揺らして。紡ぎ返した言葉は真意が分かっていないのだろう。けれど、この温もりがどこか嬉しくて。笑みと共にじっと改めて菊を見る。
「前も言ったけど、オレとお揃い、似合ってる」
 揃いの浴衣に揃いのススキ。
 纏う色こそ違うけれど、改めて言葉にすれば更に嬉しさが満ちるから不思議なもの。
「………ばあか。お前も、すげえイイ男だよ」
 隣に立てるのなら、と想う感情は溢れそうな程強くなる。
 並ぶ二人に刻まれた、揃いの跡は夜に隠れていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アン・アイデンティファイ
【PCK】
美しい月と灯る光竹を祝うか、なぜそんな祭事が生まれたのか、気になるね
とはいえ、これだけの甘味に囲まれていると、小難しいことなど頭から吹き飛んでしまうね。精一杯楽しませてもらうとしよう
目を引く団子は無秩序に購入。うん、甘いものなら、かなり入る自信がある。どんどん食べようか
あればお茶と一緒に甘味を堪能
果実を飾った団子? キラキラとコーティングされていて食べるのが少し勿体ないな。……無論食べるけれども

食べ歩きの後は舞台へ
リオが登場するようなら客席からゆったり鑑賞をする。幸い肴はたくさんあるしね
壇上から視線を感じたら、少しだけ手を振るとしよう
笑顔を浮かべるのは苦手な、僕のせめてもの感情表現だ


リオ・ウィンディア
【PCK】
今年の浴衣参照
地毛はストレートだけれど今回は少し巻いています

妖怪の方達が竹をライトアップしてくれたんだね、すごく綺麗だな
そうね、なぜこんな不思議習慣をって今日はやっぱりお団子か
お月見にお団子は外せないマストアイテムよね
(食べることが大好きな彼に何か作れるようになりたいなと思った)

え、そんなに…入るの?
色気より食い気なアンがとってもらしくて思わず失笑しちゃうわ
私はお月見団子とみたらしを購入
少し一緒に食べ歩きしたら今度は舞台の方へ行くわね

【楽器演奏・歌唱・パフォーマス】
彼からもらったギターを手にしっとり弾き語り

♪また季節巡り思い出が増えていく
秋空に漂う雲のように散れぢれになっても、空の下
私は心動かされていく 蒼穹の元 歩いていくよ
いつまでもあなたを好きでいられる
秋には秋の女心 男心
この涙は喜びか悲しみか
答えは秋風に乗って 懐かしのメロディの中へ

団子食べる夫に向けて満面の笑顔を送る
小さな返事を確かに受け取りさりげなく会釈を

さぁ、時間はたっぷりよもう一曲行こうかしら?




 ふわふわと揺れる、二つに結った柔らかな白の髪。
 辺りを灯す輝かしい光に染まり、キラキラと輝くその髪に負けぬ程、リオ・ウィンディア(黄泉の国民的スタア・f24250)の金色の瞳も光を映し輝いていた。
「美しい月と灯る光竹を祝うか、なぜそんな祭事が生まれたのか、気になるね」
 その彼女の眩さに瞳を向け、辺りの光に、行き交う妖怪の姿を見て。どこか不思議そうにアン・アイデンティファイ(デザイン・ベイビー・f33394)が紡げば、リオもこくりと頷きを返す。
「そうね、なぜこんな不思議習慣をって今日はやっぱりお団子か」
 秋の夜長の風習は不思議なものだけれど、並ぶ芳ばしい香りに視線はそちらへ。確かに、お月見と言えばお団子。食べることが大好きな彼に何か作れるようになりたいと、心にひっそりと思いながらリオは彼の手を取り、ひらひらと軽い足取りで店へと近付いた。
 淡い黄緑を黒の瞳に映し。アンが辺りを見回せば美味しそうなお団子が並んでいる。
「これだけの甘味に囲まれていると、小難しいことなど頭から吹き飛んでしまうね」
 最初こそ月と竹の輝きに思考は奪われたけれど、いざお団子を目の前にすればそちらへと夢中になってしまうのはまだ彼が幼いからか。どれもこれも美味しそうだからと、気になった物を次々に手にしいくアン。
「え、そんなに……入るの?」
「うん、甘いものなら、かなり入る自信がある」
 こくりと自信満々にアンが頷けば、ついリオはまじまじと彼の身体を眺めてしまう。
 その小さな身体のどこに入るのだろう――そう想ってしまうけれど。
「果実を飾った団子? キラキラとコーティングされていて食べるのが少し勿体ないな」
 鮮やかな刻んだ苺にレモンと云った、宝石のように輝くお団子を見て楽しそうに紡ぐ彼の姿を見れば、そんな考えも吹き飛んでしまうから不思議なもの。
 真っ白な月見団子とみたらしの二本だけを手にしたリオは、そのまま彼の手を取りひらりひらりと蝶のように歩んでいく。
 輝きが、一際強い場へと――。

 お団子を手に、彼等が辿り着いたのは竹の中に作られた舞台。妖怪達の手作りなのか、竹で出来た台に辺りに輝く竹を集めた簡易的なものではあるけれど、眩い程の存在感は確かに特別な場所だった。
 ここで待っていてと、リオは紡げば持参していたギターを手にステージへと歩み寄る。そんな彼女の行動を察し、アンは素直に最前列の席へと腰を下ろした。
 輝く光に照らされる彼女が、ステージに立つ。
 歩みを進める度に跳ねる髪。
 花咲く浴衣から伸びる細い指で、愛おしそうにギターを撫でたのはそのギターがアンから貰った大切な物だからだろう。
 そんな彼女の姿を、仕草を。お団子片手にじっと見つめていたアンへと、リオは満面の笑みを送る。そのまますうっとひとつ深呼吸をして――リオは眩いステージの上で音色と共に歌を紡いだ。

 また季節巡り思い出が増えていく
 秋空に漂う雲のように散れぢれになっても、空の下
 私は心動かされていく 蒼穹の元 歩いていくよ
 いつまでもあなたを好きでいられる
 秋には秋の女心 男心
 この涙は喜びか悲しみか
 答えは秋風に乗って 懐かしのメロディの中へ

 それは勿論、愛しい彼へと送る歌。
 響く音色は輝く世界へと広がって。この特別な日を過ごす妖怪達の心へと落ちていく。
 それは愛おしさと。秋の寂しさを感じるその歌詞とメロディー。
 静かに響く秋虫の音色と合わされば、沁みるような心地が湧き上がるのは何故だろう。
 ――音色が終われば、リオは一礼を。すると、一瞬の間の後彼女の奏でる音色に聞き入っていた妖怪達から一斉に拍手が沸き上がる。先程の静寂とは打って変わり跳ねるような音色が響く中――拍手を止め、小さく手を振るアンの姿に気付きリオは会釈をした。
 それは離れた距離でも通じる、二人の想いを表すかのようなもの。
 ――そう、それが笑顔を浮かべることが苦手なアンの。せめてもの感情表現だと分かっているから。だから、自然と笑みをリオも零してしまうのだ。
 湧き上がる程の嬉しさに、微かに指が震えたけれど。
 この想いを表す方法は――。
「さぁ、時間はたっぷりよもう一曲行こうかしら?」
 まだまだ鳴り止まぬ拍手の中。
 高鳴る鼓動を零すかのように、リオは再びギターへと触れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

竜胆・樹月
【浴衣2021】を着用
女性ものだけど気に入っている
間違えられても問題ない

このくらいの暗さが好き
幽世蝶、綺麗だ~

竹の光に見とれつつ
ここが本当の故郷なのかな…?と思いを巡らせながら
屋台の方へ
同じ屋台でも、世界によって違うなぁと、つくづく…

おお~団子がいっぱいだ
団子大好き
いろんな種類を試したい
定番の味はやっぱり美味しい、いくらでもいける
ん…?水色?変わっているなぁ
これは…!カクリヨの味だ!

妖怪さんたちと話をしながら、光る竹の近くに座ってのんびり食べる

金魚すくいに挑戦
大きなカラフルな金魚を狙ってみよう
魚釣りは得意なのに、これは少し難しい…
何度も失敗しても、コツを聞いたりして少しずつ慣れて
…捕れるかな?




 ひらり、ひらりと。秋夜の中を舞うのは幻想的な蝶の光。
「幽世蝶、綺麗だ~」
 そうっと朝顔咲く袖を押さえながら、その光を求めるかのように手を伸ばして。竜胆・樹月(竜神の剣豪・f33290)は吐息と共に言葉を零す。浮かぶ月も、辺りに輝く青竹も。全てが美しくついつい見惚れてしまう程。
(「ここが本当の故郷なのかな……?」)
 竜神であるけれど、彼は人として育てられた。だからこの景色は見たことが無い筈なのに、何故か心に響くのは故郷だからなのだろうか――ふつふつと湧き上がる不思議な想いを感じながら、樹月はそのまま店の並ぶ通りへと足を踏み入れた。
 並ぶ店は、正に和洋折衷。時代も様々なあべこべ感は、正に幽世の世界を表している。世界によって違うその姿にどこか感心したように吐息を零した樹月は、鮮やかなお団子が並ぶ店の前で足を止めた。
 芳ばしい香りに色合いに。興味津々に手に取る樹月に向け、店主である一つ目が一本のお団子を差し出してくれた。
『色々気になるならこれもどうだい? 今年の新作だよ』
「ん……? 水色? 変わっているなぁ」
 浴衣とお揃いの色だとお勧めされては断れない。キラキラ輝く装飾が可愛らしいお団子を、恐れることなくぱくりとひとつ食べれば――。
「これは……! カクリヨの味だ!」
 弾ける心地。どこか懐かしい爽やかな味わい。
 それは食べたことが無い味。湧き上がる心地も、此の世界で感じるものと同じだった。
 一つ目と会話を楽しみながらお腹を満たした後、彼が次に目を奪われたのは金魚すくい。赤に黒に、定番ならしい金魚の他。淡いピンクや水色といった、不思議な色合いの金魚もいるらしい。どの子もひらひらと長い尾を揺らめかせ、優雅に泳ぐ姿が美しい。
 じいっと琥珀色の瞳で見つめた樹月は、今日の日と縁に深い水色の大きな金魚へと狙いを定めポイを向けるが――金魚は避けるように泳いでしまった。
「魚釣りは得意なのに、これは少し難しい……」
 魚釣りとは趣が異なるが、魚の思考を読むという点では同じ。
 狙いを定め。気付かれないように。慎重に――静かに静かにポイを動かせば、一瞬の間に彼の手にする器には一匹の鮮やかな金魚が揺れていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

呉羽・伊織
【影】(本年浴衣――ささやかな灯りに、傍ら舞う化生の鴉達も伴い)

――夜とはいえ、明るい場所は不得手だった?
お前もだケド、ソッチのお供チャンもさ
(落ち着かない様子の狐を覗き込み
軽くよしよ~しとあやしてみて)

そっか、なら良かった
折角だ、そう構えず気楽に羽伸ばすんだぞ
…ウチのはちょっと伸ばしすぎだが!
(お団子早く~とばかりに小突いてくる鴉に肩竦めつつ
蝶と鴉と祭の空気に誘われる儘
目当の団子屋台へふらり)

流石食欲の秋というべきか、魅力の品揃えだな
そしたらオレは変わり種で行くから、後でちょっと味見交換な!

(一頻り買って鴉達も静まれば
少し賑わいから離れて天仰ぎ)
正に清風名月だな
――こんな一夜も良いモンだろ?


百鬼・景近
【影】(本年浴衣――道照らす仄灯りと、対照的な薄闇の狐連れ)

不馴れではあれ、不得手ではないよ――お陰様でね(毎度気楽な、この連れの地道な計らいもあって)
ああ…これも怯えではなく、浮かれているんだよ
(恐る恐る乍ら、鼻先耳先に好奇に浮かぶ狐と伊織を見て)

普段は光の下…表には顕れぬ子だからね
此を機に、少しは引込思案が直るかな
(此処なら妖の類でも浮かぬからか、狐共々幾分穏やかに――気儘な鴉達に小さく笑って漫ろ歩き)

祭の様相から団子まで、本当に彩り豊かだね
俺達は…月見団子で、基本から入ろうか

(狐や伊織達と分けつつ
後は静かに佳景に浸り

――影に生きる身には
少し眩む様な温もりなれど)
…ああ、悪いものじゃないね




「――夜とはいえ、明るい場所は不得手だった?」
 お前もだケド、ソッチのお供チャンもさ。
 百鬼・景近(化野・f10122)の肩に乗る、黒狐へと視線を移しながら呉羽・伊織(翳・f03578)はそう紡いだ。
 浮かぶ月が輝き、どこまでも続く青竹の光が世界を照らす。並ぶ店が灯す光は鮮やかながらも温かで、闇など忘れてしまいそうな程。
 伊織の問い掛けに、辺りの光を一瞥した後景近はひとつ笑みを落とし。
「不馴れではあれ、不得手ではないよ――お陰様でね」
 頭に乗せた鬼のお面へと触れながらそう答える。肩に乗る狐は、忙しなく辺りを見るように首を動かしているけれど。これは怯えでは無く浮かれているのだと紡げば、あやすように狐を撫でていた伊織は安堵したように笑う。
「折角だ、そう構えず気楽に羽伸ばすんだぞ」
 安堵を伝えるように狐へと語れば、辺りを見ていた彼は伊織を見てこくりと頷きを返す。――その時、伊織の肩に乗る鴉が、彼をそのクチバシで小突いた。並ぶ屋台へ首を回し、こつんこつんと伊織を突く仕草はお団子を強請っているようで。景近の狐とは違い随分と羽を伸ばしている鴉の姿に肩を竦めながら、伊織は店へと歩き出す。
 そう、狐の彼はその黒き身体が溶け込む世界にばかりいる。普段は光の下……表には顕れない子なのだ。だが、折角だからこれを機に少しは引っ込み思案が治るかと、景近は期待を胸に宿していた。――此の世界ならば、妖の類でも浮かないから。狐共々幾分か穏やかでいられると、景近は笑みを浮かべつつ慌てる伊織の後ろをついていく。
 芳ばしい香りに興味津々と云わんばかりに、ぐいっと首を伸ばす一匹の鴉。そんな彼をちらりと見た後、伊織と景近は店に並ぶ色とりどりのお団子を瞳に映す。
 見慣れたみたらしや草団子と云った物もあるけれど、見たことも無い色合いの黄色や水色と云った餡もあるようで。果実や砂糖菓子を飾ったらしい宝石のような見目も見慣れぬ不思議なもの。
「祭の様相から団子まで、本当に彩り豊かだね」
「流石食欲の秋というべきか、魅力の品揃えだな」
 珍しいものに心を奪われ。見慣れたものにお腹を刺激されながら彼等は紡ぐ。どれも美味しそうなのは、男二人だけでなく鴉と狐の彼等も思っているようで。今にも食べたいと言わんばかりにお団子を見て、主人の顔を見る二匹に彼等は笑みを零した。
 色々とあるから迷うけれど――景近が空に浮かぶ月のような美しさを抱く月見団子を手に取れば、伊織はそれならと鮮やかな色の御団子を手に取る。
「後でちょっと味見交換な!」
 へらりと気楽に笑いながらそう紡いだ彼へと、鴉は早く食べようと急かすようにまたクチバシを向けていた。

 ベンチへと腰を落ち着け。互いの味を分け合い、慣れた味も新しい味も二人と二匹で楽しめば、このお祭りの空気にはしゃいでいた鴉と狐もいつの間にか静かになっていた。
 店から離れれば幾分妖怪達の喧騒も穏やかになる。
 秋の冷たさを抱く風が頬を撫でれば、月光に染まる伊織と景近の艶やかな漆黒の髪がふわりと揺れ、浴衣を纏う身体の熱を奪っていく。
「正に清風名月だな」
 ――こんな一夜も良いモンだろ?
 ひとつ、息を零しながら伊織が不意にそう零した。
 幽世の世界でこそ味わえる、秋の夜長。
 人の言葉を邪魔せぬ程に響く虫の鳴き声も合わされば、秋の月を美しく彩っていて。
「……ああ、悪いものじゃないね」
 そっと赤い瞳を伏せながら、景近は笑みと共に頷きを返す。
 ――影に生きる身には、少し眩む様な温もりなれど。
 足元に咲くのは、彼岸花と鬼灯。
 闇に映える赤を纏った二人を染めるように、ちかりと青竹の光が明滅した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

佳月・清宵
【戯】
(昨年見初めた浴衣――秋の夜長の宵遊びに誂え向きな装いで、ふらり
蝶の導と虫の声に招かれて、気儘な祭の一時へ)

――おう、こりゃ敵わねぇな
名前負けも良い所だ
(音色も景色も空気迄も――何処迄も清く澄み渡る様な舞台の中、女の言葉に軽く肩竦め)

さて、此度はそんな一夜を如何に謳歌するよ
(聞く迄もなかった返答に、愉快げに喉鳴らし)
てめぇも相変わらず、清々しい迄に欲張りなこったなァ
まぁ良いさ、好きにしな

(見る間に溢れた月見の友を手に、片隅でささやかな宴へ――
宵闇を程好く照らす光に灯
風が誘う虫と葉の共演
オマケに佳景に負けず劣らず目を引く団子
――余す事無く味わい愉しみ)
全く、こりゃ酒が無くとも酔いしれそうで


花川・小町
【戯】
(一昨年に惚れ込んだ浴衣――秋の七草と蝶が華やかに戯れる、とびきりの一着で洒落込んで
彼方此方から届く趣深い気配に惹かれ誘われ、悠々と逍遙へ)

ねぇ、清宵ちゃん――貴方の名前宛らに、何処を取っても良い夜ね
こんな夜に焦がれて取ったのかしら?
(例え偽名であっても――本当に、素敵な響きよねと悪戯げに笑って)

あら、それは勿論決まってるでしょ?
月見酒――は、全て済んでからのお楽しみとして、今は魅惑のお団子達を心行くまで、ね
ふふ、言われるまでもなく好きにしちゃうわ

(お団子を一頻り気前良く大人買いし、佳宵に浸る宴を

愛でて良し
食べて良し
――味わい深い趣と甘味を堪能し)
ええ、陶酔してしまいそうな程に、良い心地




 ひらり、ひらり――。
 舞い散る美しき幽世蝶へと招かれるかのように、花川・小町(花遊・f03026)は一歩踏み出した。彼の蝶に負けぬ程に美しき、秋の七草と戯れる蝶描かれた浴衣を身に纏い。彼女が歩みを進めれば、辺りを染める竹の光が美しくも彼女を輝かせる。
「ねぇ、清宵ちゃん――貴方の名前宛らに、何処を取っても良い夜ね」
 大きな月に。輝く青竹の光に。そして、行き交う妖怪と営む店に。
 此の世界へと金色の瞳を向けた後、くるりと振り返り彼女は優雅に微笑んだ。目の前の彼、佳月・清宵(霞・f14015)の名のように美しき一夜だと想ったから。
 その名前は、こんな夜に焦がれて取ったのだろうか。例えそれが偽名であっても、本当に素敵な響きだと小町は心から想い、悪戯げに笑いながら言葉に乗せる。
「――おう、こりゃ敵わねぇな」
 彼女の言葉に、その笑みに。
 清宵は苦笑と共にそう返していた。
 偽名である為か、彼にとっては名前負けだと感じてしまう。虫の音色が聴こえれば、彼は黒の耳をぴくりと反応させていた。
 音色も、景色も、空気までも――何処までも清く澄み渡るような舞台の中。
「さて、此度はそんな一夜を如何に謳歌するよ」
「あら、それは勿論決まってるでしょ?」
 ひとつの清宵からの問い掛けに、優雅に笑み、彼を見上げる小町の花唇から紡がれる続きは――美しき月を祝う月見酒。は、全てが済んでからのお楽しみに取っておくとして。今はこの祭りの目玉であると云うお団子を心ゆくまで楽しもうと紡がれた。
 その笑みと返答は、清宵にとっては予想通りで思わず愉快げに喉を鳴らす。
 その清々しいまでに欲張りな姿にはどこか安堵を感じる不思議な心地。好きにしなと彼が紡いだから、言われるまでも無くと小町は楽しげに紡いだ。
 揺れる蝶と仄かな彼岸花が夜の世界へと躍り出る。
 歩みに合わせて揺れる漆黒の髪には、舞い踊る幽世蝶の光が映っていた。

 鮮やかなお団子選びを楽しんだ後、自然と二人は静かな場へと導かれた。
 お店が並ぶ終着点から少し離れた場所に設置されたベンチ。此処は不思議とぽっかりと空いた空間で、夜空に輝く月の光が煌々と世界を照らす場所。辺りにはまばらに妖怪が居て、皆思い思いに月の夜を楽しんでいる様子だった。
 そんな彼等を一瞥した後、美しき月を二人は静かに見上げる。
 世界を包み込む神秘的な月の光。
 辺りを染め上げる美しきも儚い竹の光に、舞い踊る幽世蝶。さわりと秋の風が人混みで火照った肌を冷やしていき、涼やかな虫と葉の音色が心地良い。
 そして、その秋の景色に彩りを添えるのは負けず劣らず目を引く団子。
 正に愛でて良し、食べて良し。そんな世界に二人は、無意識にふうっと深く深く息を吐き出していた。
 それはこの景色に見惚れる様なのだろうか。――そこに浮かぶ互いの浴衣姿もまた、この秋の日に彩りを添える役目を持っている。
 この景色に身を委ねれば、何故だろう。身体がふわふわとした心地に包まれていく。
「全く、こりゃ酒が無くとも酔いしれそうで」
「ええ、陶酔してしまいそうな程に、良い心地」
 白の狐のお面から覗く、月を映した左目を細めながら清宵が紡げば、頷く小町は優雅に微笑んでいた。
 心もお腹も満たされる、秋の夜長。
 傍らに置いた盃へと手が伸びないまま――彼等は今日の日に酔いしれる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎

服装は2020浴衣
お祭りかぁ…忙しい日々が続いているし、こんな時間も大事だね
せっかくだし屋台を楽しみたい所だな

提灯屋で提灯を一つ受け取り、色々見て回ろう
おぉ、団子が多い!なるほど話に合った通り妖怪さん達が一番力を入れているみたいだ
これは全部制覇するしかないでしょ!
【大食い】としての食欲が刺激され屋台完全制覇を目指す

せっかくだし、妖怪さん達とも交流がしたいかな?
ゆく先々で言葉を交わしながら楽しく過ごそう
カクリヨでの戦いが終わって、少し経つけれど…こうしてお祭りを開けるくらいには元の日々に戻れた…という事なのかな?
常にカタストロフと隣り合わせの世界だから、平穏、とはいかないのかもだけど




 キラキラと輝く幻想的な光が、鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)の纏うシックな夜空色の浴衣を美しく染め上げる。
「お祭りかぁ……」
 美しい月。楽しそうに行き交う妖怪達に、並ぶ屋台は鮮やかで。忙しい日々が続いているが、こんな時間も大事だと改めて彼は想う。
 だから――彼はすぐ近くの提灯屋で夜色から星のような光が零れる提灯を受け取ると、並ぶ店列へと足を踏み入れた。
「おぉ、団子が多い! なるほど話に合った通り妖怪さん達が一番力を入れているみたいだ」
 囲まれるように並ぶお団子屋さん。芳ばしい香りが四方八方から漂ってきて、営む店主の妖怪達はうちにおいでとひりょを手招いている。
 その手招きに応えるように、ひりょはひとつひとつ店を覗いてはお団子をひとつ。全制覇する勢いで食べられるのも、彼の胃袋が大きいからだろう。――そして、数多の店を楽しむのはそれだけが理由では無い。沢山の妖怪と交流をして、会話をして、この世界の今を知りたいと思ったから。
 お団子の味は勿論のこと、元々猟兵に好意的であった妖怪達はひりょにも優しい。お団子の自慢話や最近あった面白いことなど、なんてことの無い日常話に花が咲く。
「カクリヨでの戦いが終わって、少し経つけれど……こうしてお祭りを開けるくらいには元の日々に戻れた……という事なのかな?」
 一度は世界の危機が訪れた世界。
 ギリギリのところではあったけれど、確かに守れたのはひりょ達猟兵のお陰なのは確かだ。あの日のことを思い出し、改めて日常を楽しむ妖怪達の姿を彼は見回す。
 此処はUDCアースのお隣。常に崩壊とは隣り合わせの世界。
 それは戦争関係なく、此の幽世世界の根本でもあるから変えることは出来ない。本当の平穏なんて、だから訪れることは無いのだけれど――祭りを楽しむ妖怪達の姿を見れば、少しは救えたのだと想い、ひりょは安堵の笑みを零した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱赫七・カムイ
⛩神櫻
2021浴衣

サヨ
そんなに焦っては転んでしまう
花火咲く浴衣姿も祭りに浮かれる姿も愛らしくて愛しくて
ついつい笑みが零れてしまう
愛しい巫女に手を引かれ、歩く夜道は目映いくらいだ
きみの笑顔と、花あかりで

…照れてくれてる?
誤魔化す姿も愛おしいな

数多なお団子があるんだね
私はラムネやレモンも食べてみたいな
初めて食べるものには興味をそそられる
サヨが食べたい月見団子も買い二人で食べよう

あーんと食べさせてもらえるのは嬉しいけれど少し恥ずかしくて
…サヨにもラムネ餡の団子をあげる

じっと私を見つめる桜瞳が少し切なそうにみえて
優しく抱きしめる


月が綺麗だね
けれどサヨの方がずうっと美しい


あいしているよ
ずっと一緒だとも


誘名・櫻宵
🌸神櫻
2021浴衣

カムイ、カムイ!こっち
神様の手を握って淡い光の中を歩む
お祭りって大好きなの
淡い光の中でも私の神様は美しくて
紅月みたいな三つ目に囚われると…べ、別に照れてなんてないわ!

薄闇でよかった
真っ赤な顔を隠してくれる
月明かりとあなたの体温を頼りに祭りを進む

カムイ、先ずは何から食べる?
お月見と言ったらお団子よう
桜餡のお団子にラムネやレモンもあるのですって!
私はやっぱり月見団子がいいわ

少し喧騒から離れたところで月見をしながら食べましょう
はい、あーん!
おいしい?

嘗ての師匠と同じ姿をした…しかし別人のあなた
不思議な心地

…ねぇ
神様の腕の中はあったかい

月が綺麗ね
カムイ

だいすきよ
だから、ずっと一緒に




「カムイ、カムイ! こっち」
 楽しそうに笑みを浮かべ、誘名・櫻宵(爛漫咲櫻・f02768)は朱赫七・カムイ(厄する約倖・f30062)の手を取り淡い光の中を歩んでいく。
 いつもの長い髪では無く、短く切り揃えられた髪に映える青の花火生地。シンプルながらも華やかなその浴衣は櫻宵の素の美しさを引き立てるようで――カムイは思わず、一瞬だけ息を呑んでいた。
 けれど、はしゃぐように歩む彼の姿はいつもお通りで。
「そんなに焦っては転んでしまう」
 その美しき姿に、祭りに浮かれる愛らしさに。愛おしさが溢れる笑みを零すと、静かにカムイはそう紡いだ。
 繋ぐ手の先に咲く微笑み。
 何時もとは違う、黒の装いのカムイはどこか凛々しくも美しく、忍ばせた桜模様が麗しい。しかしその紅月のような三つ目に囚われてしまい――。
「……照れてくれてる?」
「……べ、別に照れてなんてないわ!」
 頬を仄かに染め上げていく櫻宵に気付き、その顔を覗き込むようにカムイが問い掛ければ彼は慌てたように顔を背けた。
 そんな姿もまた愛おしいと想い、溢れる程の笑みが重なっていく。
 月の光と竹の光と――世界を染め上げる光は、闇の中では眩い程。
 否、眩いのは光よりも傍らの櫻宵の笑顔と花あかりなのだとカムイは想う。
 そんな彼の胸の熱さは分からぬまま。けれど繋いだ手の温もりを確かに感じながら二人が足を向けるのは、やはり此のお祭りの中心であるお団子屋さん。並ぶ屋台も営む妖怪の姿もどこか現実離れしているようだけれど、だからこそこの一時が輝いて感じる。
「カムイ、先ずは何から食べる?」
 慣れ親しんだみたらしや草団子の他、見たことも無い水色や橙色に目移りしながら櫻宵は楽しげに語った。――お月見と云えばお団子、と櫻宵が改めて言葉にすれば。初めて今日の日のイベントを経験するカムイはどこか不思議そうにお団子を見つめる。
「数多なお団子があるんだね。私はラムネやレモンも食べてみたいな」
 櫻宵はお月見らしい月見団子にすると彩られた爪で指差したけれど、カムイが興味を惹かれたのは見目も麗しい鮮やかなお団子たち。水色の餡にレモンの果肉が添えられた黄色。桜が飾られたお団子を見れば、無意識にカムイの眼差しは柔らかくなり――互いの好みを詰め込んで貰えば、二人は楽しそうに笑みを浮かべあった。

 そのまま店の終着点へと辿り着けば、辺りは妖怪もまばらで静かな場所。
 世界を照らす大きな月が美しき地に腰を下ろし、広げたお団子を手に取れば。
「はい、あーん!」
 戸惑うこと無く、櫻宵が真っ白な月見団子をひとつ差し出してくれた。
 その笑顔に、その仕草に。カムイは仄かに頬を染め恥ずかしそうにするけれど、素直に口を開け初めての月見団子を一口。上品な甘さともちもち感を楽しめば、当然のようにお返しに愛らしい青のラムネ餡を差し出した。
 けれど、櫻宵はじいっとカムイを見つめていて。その口は開かれることは無い。
 嘗ての師匠と同じ姿をした……しかし別人のあなた――。
 目の前のカムイの姿に、櫻宵は不思議な心地に包まれていたからだ。その桜霞の瞳が揺れ動き、少し切なそうに見えたから――気付いた時には、カムイは腕を伸ばし櫻宵を抱き締めていた。
 力強くも優しい腕。秋の冷たい風が吹くからこそ、感じる熱い体温。
 その感覚に、櫻宵は静かに瞳を閉じて身を委ねる。
「月が綺麗ね、カムイ」
 虫の声に掻き消されてしまう程、小さく紡がれた櫻宵の言葉。けれどすぐ傍に居る彼には、しっかりとその声は聞こえていた。
「だいすきよ。だから、ずっと一緒に」
 月よりも美しき櫻宵の口から紡がれる言葉の続きを耳にすれば――無意識にカムイは、彼を抱き締める腕に力を込めていた。
 噫。
 あいしているよ。
 ずっと一緒だとも。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

飛砂・煉月
ノヴァ(f32296)と
2020浴衣

秋は月見っていうけどオレは不思議な心地
狼は月を避けるからさ
でも鈴虫の音が隠した耳を擽る感じさえ、今は楽しい
うん、ハクもだよなー?
今日はノヴァも一緒で此処はカクリヨだもん
楽しみ放題とへらりいつもより緩く綻ぶ

提灯屋?
…わ、色んな灯がある!
ねぇねぇ、ノヴァ
オレに合う灯りとか選んでくんない?
へへ、どれかな~

緋色に映る丸い赤に花火咲く提灯
…ね、なんか夏の花火を思い出すね?
これくださーいとお気に入りの顔でぱたぱた駆けて行く

月見団子はねー
季節っぽい紫芋と果実のカラフルなやつ欲張って買ってくぞ〜
いつもは見ないもの中心に欲張って
どっかに座ってお月見しよ、ノヴァ!
差し伸べた手は屈託無い笑顔で

空を仰ぐ
あれはオレの畏れの形
でも此の世界では昂らない
其れに落ち着く月のキミも隣に居るから
月の輪郭は曖昧
代わりキミの笑みは鮮明だ
喜色隠さずに
オレ月見ってあんま出来ないからさー
一緒に食べよ?ってやっぱ共有したいじゃんね
キミが選んでない味、食べよ~

同じ味を頬張りながら
同じ目線で穏やかに月仰ぐ


ノヴァ・フォルモント
レン(f00719)と
今年仕立てて貰った浴衣を纏い

…この時期は空気が澄んで
月も綺麗に見えるらしいね
なんて、真面目に返しつつ
楽しげに綻ぶ君たちの姿を見れば
自分もつられて笑みを零す

…提灯屋か
自分は何時ものランタンを提げている
照明としては必要無いけれど
淡い灯火には不思議と惹かれるものがある

ん、レンに似合う灯りを?
ふふ、もちろん構わないよ

様々な色と形
その中でひとつの灯が目に留まる
丸くて赤い形に、花火の様な灯火が煌めく提灯
そうだな、あの夏の花火を思い出す
レンにきっと似合うよ

月見団子も色々な味があるんだな
初めて食べるそれらを興味深く眺めて
自分は色鮮やかな果実の味を幾つか買ってみる

そうだね、せっかくだし月が良く見える所で食べようか
君に差し伸べられた手を素直に繋いで

空に浮かぶ丸い月も
この世界のものなら平気だって
以前に聞いた気がしたから
―よかった、
安堵の笑みと共に零した言葉は
君の耳に届くか分からないくらいの囁きで

一緒に、という言葉に小さく微笑み
三日月の竪琴は傍らに休ませて
今日は君と同じ目線で月を見上げたい




 瞬く星空の中、浮かぶ大きな月は煌々と神秘的な輝きを放っている。
 その輝きを赤い瞳に真っ直ぐ映しながら――飛砂・煉月(渇望・f00719)はどこか不思議そうにぱちぱちと瞳を瞬いた。
 彼は、月の狼。このように月の満ちる夜に、ゆっくりと月の姿など見たことは無い。だって、狼は月を避けるから――。
「……この時期は空気が澄んで、月も綺麗に見えるらしいね」
 じっと月を見つめて、鳴り響く鈴虫の音が隠した耳をくすぐるのを楽しんでいた時。ふと傍らから上がる声に煉月は視線を向ける。
 輝くランプを腰に下げ、キラキラと星の煌めきをその身に抱くノヴァ・フォルモント(月蝕・f32296)は、じっと月を見つめていた煉月の姿を見てそう紡いだ。冷たい秋風が吹けば彼等の髪を揺らし、ノヴァは慌ててフードをその手で押さえる。
 美しき月の下。その月に負けぬ輝きを抱く彼を見ていれば、白銀竜のハクが早く祭りに行こうと言うかのように煉月の顔へと擦り寄った。
 そう、今日は月を見に来ただけでは無い。
「今日はノヴァも一緒で此処はカクリヨだもん。楽しみ放題」
 月を祝うお祭りを――楽しむことは彼にとっては貴重なひと時。だからいつもよりも緩く綻べば、愉しげな足取りで祭りの中へとその身を泳がせる。ひらり、ひらりと。黒に数多の赤が咲く浴衣が光に染まれば、その姿にノヴァは口許に笑みを浮かべると静かに彼の後を着いて行った。
 行き交う人々は不思議な姿をした妖怪達。
 その姿に少しだけ驚くハクの頭を撫でながら、入り口すぐの所で数多の灯りに煉月は目を奪われ足を止める。
「提灯屋? ……わ、色んな灯がある!」
 首を傾げじっと瞳を向ければ、形が違えばその光の色も灯る強さも、そして映し出す景色も様々な提灯が並んでいた。
 彼のすぐ後ろを歩いていたノヴァは、その灯りについ目を奪われてしまう。彼はいつもランタンを手にしていて、今も腰に灯りを吊り下げているので照明としては必要ない。けれど、西洋の光とは違う淡い灯には不思議と惹かれてしまう。
 手近な赤い提灯へとノヴァが視線を向ければ――その提灯が『いらっしゃい!』と声を掛けてくれたことで、提灯お化けの店なのだと彼は察し挨拶を返した。
 そんな彼のやり取りを眺めていた煉月は、ふと思いついたことを言葉にする。
「ねぇねぇ、ノヴァ。オレに合う灯りとか選んでくんない?」
「ん、レンに似合う灯りを? ふふ、もちろん構わないよ」
 無邪気な笑みを向ける煉月。彼の言葉にノヴァは振り返ると、一瞬驚いたように瞳を瞬いたけれど、すぐにその顔には穏やかな笑顔が浮かんだ。
 そうと決まれば、先程まで何とはなしに眺めていた店内を真剣に見つめる。
 改めて見れば、そこには数多の色や形が溢れている。どれもこれも繊細で美しく、ノヴァの触れる世界とは違う技術が詰め込まれているけれど――。
「これはどうかな」
 ふと、目に留まった提灯を手に取ると。優しく煉月へと差し出した。
 それは丸くて赤い形に、花火のような灯火が煌めく提灯。そう、それはまるで――。
「……ね、なんか夏の花火を思い出すね?」
「そうだな、あの夏の花火を思い出す。レンにきっと似合うよ」
 夏夜の中で、弾ける鮮やかな色。
 そっと瞳を閉じて、あの日の情景を思い描いた後――開いた瞳でじっと陽の犬を見ると、ノヴァは優しく微笑んだ。
 彼のその言葉が、笑みが嬉しくて。煉月は綻ぶような笑みを返すと、彼が差し出してくれた提灯を大切そうに抱えて、ぱたぱたと店主の元へと駆けて行った。

 手にした光と腰元の光が揺れる中。
 次に二人が訪れたのは、数多の色を宿したお団子屋さん。
 数ある中から、彼等の目を惹くのは見たことも無い鮮やかな彩りを宿したもの。パステルな青や黄色にピンク、果実と一緒ならばその彩は鮮やかながらも愛らしく。どんな味かと思い自然と手が伸びていた。
 折角の月の下での時間なのだから、いつもよりも欲張って――。
「どっかに座ってお月見しよ、ノヴァ!」
 キラキラと輝く笑顔で煉月が手を差し伸べれば、ノヴァは頷きと共に手を重ねた。
 光と、味わいと。
 この日の思い出を手に彼等が訪れたのは、店通りの終着点に用意されていた休憩所。ぽっかりと開いた空間故に月の光がよく見えて、まばらに佇む妖怪達も皆静かに月を眺めている。そんな彼等を横目に、用意されたベンチへと腰掛ければ――改めて、此の世界の月の美しさに目を奪われて、煉月はひとつ溜息を零した。
(「あれはオレの畏れの形」)
 でも此の世界では昂らない。其れに落ち着く月のキミも隣に居るから――。 
 耽る彼の横顔を見て、――何を想っているかは分からないけれど。この景色を見て、煉月は喜んでくれているのだろう。そう感じればノヴァの心には嬉しさが宿る。
 空に浮かぶ丸い月でも、此の世界のものなら平気だと以前に聞いた気がした。だから今日、共に訪れたのだが――よかった、と。安堵の吐息と共にノヴァの唇から零れた言葉は、誰にも聞こえない程の囁き声。しかし、くるりと煉月が視線をノヴァへと向ける。
 聞こえたのかとノヴァは一瞬驚くが、煉月はキラキラと輝く眼差しを向けて。
「オレ月見ってあんま出来ないからさー」
 一緒に食べようと、紫芋のお団子をノヴァへと差し出した。
 その様子はいつもと変わらない君の姿。きっと聞こえなかったのだとノヴァは想うと、彼の零した「一緒に」の言葉に小さく笑みを零す。
 その笑みは、あの空に浮かぶ月のぼやけた輪郭とは違い鮮明で。その眩さに煉月はまた嬉しそうに笑みを零すのだ。
 抱えていた三日月の竪琴は傍らに置いて、今手に取るのは月のような甘味。
 同じ味を頬張りながら。
 今日だけは同じ目線で、同じ月を見上げる一夜。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アラギ・グリフォス
【月魅】

天上に輝く満月を漆黒の瞳に映し
今宵は珍しくオレは男姿で祭りに訪れた
可愛らしい魔女の隣を歩いて

己の姿は
長い髪を1つに結わえ、穿いていたスカートは黒のパンツに変え
それ以外はいつもの魔法使いの格好だった

「へぇ、結構賑わってんな
やっぱ妖達の力の入り方は現世とは一味違うな
そう思わないか?フィーちゃん
ははっ。俺の一味違う姿も楽しみの一環として捉えてもらえるんなら光栄だ
そう!今日はいつもと違う
今宵、フィーお嬢様の隣歩く紳士でいさせおくれ」

二ッと笑みを浮かべ彼女へ手を差し出す
――お兄さんがはぐれないよう、繋いでてくれるか?
なんて一言紡いで

さって!どっからまわる?
折角の良い月夜だし月見団子は欠かせないか?
…ほら、色んな団子がある

団子屋を指さすと
彼女が所望するのは彩り豊かな果実の団子
無垢な願いに笑み1つ零せば

もちろん♪フィーちゃんの好きな物を見つけようぜ
欲張りでも可愛らしい友
彼女の好きが色を分け合う事で深まるなら喜んで。
君の好きが心いっぱい満ちるように
俺は君の好きをいただこうか


フィリーネ・リア
【月魅】
天の大きな秋月を茜色が映して
毛先が淡い紅葉に染まる髪を靡かせ機嫌良く
魔女友と呼ぶ彼は――

うふふ、大変賑わっておりますわね
人のそれとは確かに違う気が致します
…何より、アラギちゃん
いえ、アラギさんも今日は一味違う感じではなくて?
お祭りもあなたも何時もと違っていて
ついつい、はしゃいでしまいそうですもの
あら、そんな紳士さんがご一緒でしたら
ぼくも淑女なお嬢様で居ませんと
今日はお傍に居て下さいましね、ぼくの紳士さん?

うふふ、お任せ下さいとそっと手を重ね
ぼくがアラギさんをおひとりになんて致しませんから
安心して下さいませ?なんて戯れは踊るように受けて咲う
そんな言葉遊びだって楽しんで下さるでしょう?

指されたお団子屋さん
ぼく、沢山の色彩が並んだ果実のお団子が見たいのですけど
宜しくて?と咲うそれは
一見して無垢な彩
よく見れば色に酔う魔女の眸

ぼく、色が好きなんですの
だからどの色もあなたと半分こ出来たら
きっと、もっと好きになりますわ
欲張り魔女は謂う
素敵な紳士さんと思い出色を食べたいのだと
何処までもワガママに




 浮かぶ月は煌々と神秘的に輝いて。辺りを染め上げる柔らかな竹の光が満ちる中、キラキラと煌めきを帯びるはフィリーネ・リア(パンドラの色彩・f31906)の茜色の瞳。
 まるで宝石のように輝く大きな瞳。まだ時期には少し早い紅葉色に染まる髪先が風に揺れれば、ふわりと甘い香りがどこからか漂ってきて――。
「へぇ、結構賑わってんな。やっぱ妖達の力の入り方は現世とは一味違うな」
 ――そう思わないか? フィーちゃん。
 髪を押さえる小さな少女の横で、聴こえる声にフィリーネは顔を上げた。
「うふふ、大変賑わっておりますわね。人のそれとは確かに違う気が致します」
 人形の顔を綻ばせ、楽しそうに語る少女。――けれどその茜色は、今は美しき世界よりも目の前の彼、アラギ・グリフォス(変化を求める貪欲者・f05247)へと注がれた。
「……何より、アラギちゃん。いえ、アラギさんも今日は一味違う感じではなくて?」
 彼女の言う通り、彼はいつもとは随分違った出で立ち。艶やかな長い髪はひとつに結わいて、何時もはひらひらと優雅に舞う黒のスカートはすらりとしたパンツスタイル。何時もと同じローブを羽織っているからこそ、何時もとは違うことがよく分かる。
 彼の笑顔に、同意を求める言葉に。フィリーネはひとつ瞳を瞬いて、すぐに笑みを浮かべそう紡ぐ。
 見慣れた景色とは違う世界で、何時もと違うアナタと一緒ならば――ついついはしゃいでしまいそうだと、小さく笑む彼女はとても楽しそうにアラギの瞳には映って。
「ははっ。俺の一味違う姿も楽しみの一環として捉えてもらえるんなら光栄だ」
 楽しそうに笑うと、そのまま彼は一歩踏み出して。振り返るとすっと手をフィリーネに向け差し出した。
「今宵、フィーお嬢様の隣歩く紳士でいさせおくれ」
 優雅な所作はどこか慣れたようにも見えて。彼の姿に一瞬魅入ってしまったフィリーネは、すぐに口許に笑みを浮かべその手を取る。
 彼が紳士ならば、今日のフィリーネは淑女なお嬢様で居なければ。
「今日はお傍に居て下さいましね、ぼくの紳士さん?」
 穏やかな言葉でその手を取れば、嬉しそうにアラギは笑み小さな彼女を見下ろした。
 ――お兄さんがはぐれないよう、繋いでてくれるか?
 どこか楽しげな笑みを浮かべてそう問い掛ければ、フィリーネはこくりと頼もしい頷きを返してくれる。
 続く一人にしない、安心してと云うその言葉も含め言葉遊びだとしても。
 今日この日は、共に楽しむひと時なのだ――。

 ゆらゆらと繋いだ手を揺らしながら。
 何処を回ろうかと、行き交う妖怪達の姿を見遣り彼等は紡ぐ。
 人々が行き交う姿を見ているだけでも楽しいが、店に並ぶ品も様々なようで。その色も、輝きも見たことも無い独特の光景。
 どうしようかとフィリーネがきょろきょろと辺りを見れば。
「折角の良い月夜だし月見団子は欠かせないか? ……ほら、色んな団子がある」
 月を見上げた後、アラギが指差したのは一軒のお団子屋さん。長い黒い髪を持つ人形の少女が営んでいるようで、真っ赤な着物がフィリーネの瞳に眩しく映り興味を抱く。
「ぼく、沢山の色彩が並んだ果実のお団子が見たいのですけど」
 宜しくて? ――と、笑みを咲かせる彼女のそれは、一見すれば無垢な彩り。
 けれどよく見れば、その茜色の瞳には深い深い好奇心が輝いていた。――それはまさに、色に酔う魔女の眸。そしてその輝きを前にすれば、アラギは当然頷きを返す。
 彼女の好きな物を見つけよう。
 手を取り合ったまま、人形少女の店へと近付けば人形は優雅な礼をしてくれる。彼女が全て用意したのであろう、並ぶお団子の色合いは淡い青に淡い緑、鮮やかなオレンジ色と様々な餡が花のように飾られていて。そこに彩りを添えるように輝く、カットされたレモンや苺と云った果実が宝石のように輝いている。
 それはまるで、パレットに出した絵具か。それとも、キャンバスに描かれた絵画か。
 そう感じる程に美しい光景で、その鮮やかさにすっかりフィリーネは視線を奪われる。ひとつひとつ、丁寧に味の説明をしてくれる人形の言葉を聞きながら、フィリーネはほうっと溜息を零した。
 欲張りな彼女の、愛らしいそんな様子をアラギが静かに見守っていると。くるりと顔を上げ、彼の瞳を真っ直ぐに見つめながら少女が零す。
「ぼく、色が好きなんですの」
 だからどの色もあなたと半分こ出来たら――きっと、もっと好きになりますわ。
 甘い声色で紡ぐ言葉は、欲張り魔女の誘いの言葉。
 その言葉の真意は、素敵な紳士さんと思い出色を食べたいという何処までもワガママなお願いの言の葉。
 その言葉に、ひとつ息を吐いた後アラギは笑みを零した。
 ――彼女の好きが色を分け合う事で深まるなら喜んで。
 キラキラと輝く茜色に、自身の顔が映るのを確認しながら。アラギは改めてそう想う。
「君の好きが心いっぱい満ちるように、俺は君の好きをいただこうか」
 そっと繋いだ手を少しあげるアラギ。それはまるで、彼女への同意を行動で表しているかのようで――彼の言葉に優雅にフィリーネは笑みを返すと、輝く色をひとつひとつ丁寧に取っていく。
 フィリーネの手元に彩が集えば、それはまた新たな芸術品のようだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ドドメキョンシー』

POW   :    いただきます!
自身の【身体や服の袖の口】が捕食した対象のユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、[身体や服の袖の口]から何度でも発動できる。
SPD   :    盗んじゃうもんね!
【振り回した袖】が命中した物品ひとつを、自身の装備する【服の袖】の中に転移させる(入らないものは転移できない)。
WIZ   :    ゆらゆらぴょんぴょん
【ゆらゆら揺れつつ楽しげに跳ね回る様子】を披露した指定の全対象に【「この子に自分の持ち物を渡したい」という】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
👑11
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●アナタのそれが
 ひらり、ひらり――。
 眩く光る幽世蝶に導かれた先は、竹藪の中のぽっかりと開いた空間だった。
 ぼんやりと竹の光に照らされるその空間に、ひらりと舞い踊る数多の蝶。そして、その中心には鮮やかな彩り纏う少女が佇んでいた。
『……あれ』
 くるりと少女が振り返れば、結い上げた髪が跳ねるように揺れた。
『お兄さんお姉さん、ステキな物持ってるのね!』
 こちらを見れば少女は、キラキラと瞳を輝かせてそう紡ぐ。猟兵の頭から足先までを順繰りに見た後、何かを狙うかのように口許をぺろりと舌で舐めて。――ぴょんっと楽しげに跳ねながら前へと進み出れば、長い袖がゆらゆら揺れる。
『いいないいな、あたしもそれが欲しいなー』
 幼い子供が駄々をこねるように袖をぱたぱたと揺らしながら彼女が続ける。

 そう、それがこの戦いの合図だった。
飛砂・煉月
ノヴァ(f32296)と

そうだね、月をみながら散歩もイイかも
なんて、オレが云うと少し変な感じだけど

幽世蝶がひらりふわりと呼び込んだのは
色鮮やかな女の子のトコ
不自然な光景に厭な匂い
咄嗟にハクを槍にする動作に数秒も要らない
もうお互い解ってたから

――ノヴァ?
噫、あいつの力
…駄目だよ、ノヴァ
其れはキミの大切な相棒でしょ?
言の葉優しく、されど止める腕には力込め
渡して手に入るのは後悔だけだよ

キミが前を向けたら仕掛けよう
何、ハクを倣うの?
イイ度胸じゃん
手加減なんかしてやんないよ

掛けて跳ね、槍を投げる瞬間には
腰の緋月が花火を伴い咲いてるはず
キミから聞こえる歌聲に想いが乗ってる気がして
宿る力でもう一度、竜牙葬送


ノヴァ・フォルモント
レン(f00719)と

月見団子も堪能したし
腹ごなしに少し歩こうか

幽世蝶に導かれた先
喧騒から離れた竹藪に佇む妖怪
何だか様子がおかしい
この子の動きから目が離せなくなっている自分に気付く

それが欲しい、と強請られれば
竪琴を抱える腕が不思議と緩む
コレを渡せば…?いや、
大事な竪琴を手放す訳にはいかないのに

レンの声と止めてくれる腕に顔を上げ、我に返る
…うん、大切な相棒だ

師から譲り受けた、とても大切な
竪琴を腕に抱え直す
今度は手放さないように

…ありがとう、レン
俺はもう平気だ
頷き振り返る視線は妖怪へ

君が跳ねれば、緋の月に咲く花火が夜空に浮かぶ
共に見上げた花火を思い出しながら紡ぐ
君に力を宿す、月の歌声を響かせて




 ひらり、ひらり――。
 優雅に舞う輝く蝶に導かれるように、お腹を満たした男二人は竹の中を歩んでいく。
 月見団子を堪能し、月を楽しみながらの散歩の先には――鮮やかな彩りを纏う少女が立っていた。その異様さに瞬時に反応した飛砂・煉月は手をかざすと、彼の肩に乗っていたハクが槍へと姿を変える。
 ぴょんっと跳ねた少女は、そのままこちらをくるりと向き大きな瞳を輝かせると。
『お兄さん、素敵な物持ってるのね』
 その眼差しは、ノヴァ・フォルモントの抱く三日月の竪琴へと向けられる。神秘的な輝きを抱く竪琴は竹の光を反射し、目が離せない程美しいのは分かるけれど――。
『それ、あたし欲しいなー!』
 少女の眼差しの意味は、そのような可愛らしい意味では無く強い『欲』だった。
 子供が駄々をこねるかのように軽やかにその場で飛び跳ねて。短いスカートと髪を揺らして。二色の瞳をじいっとノヴァへと向け続ければ――ぴくりと、ノヴァの手が反応し竪琴を抱える腕が緩んでしまう。
「コレを渡せば……?」
 強く強く心に訴えられる少女の言葉。
 渡さなければいけない、そう想ってしまうのは何故だろうか。大事な竪琴を手放すわけにはいかないはずなのに――嗚呼、でもどうしても渡したい。
「……駄目だよ、ノヴァ。其れはキミの大切な相棒でしょ?」
 腕から零れ落ちそうな竪琴を、少女に渡そうと一歩踏み出した時。彼の細い腕を掴みその歩みを止めたのは、傍らに立つ友である煉月だった。――彼の心を知っているから、その竪琴の大切さも知っている。そして、渡して手に入るのは後悔だけだと云うことも。
 紡ぐ言葉は心に沁みるように優しさに溢れ、けれど止めなければと云う強い意志を表すかのように腕に込める力は強いもの。
 その声に。
 その輝くような真っ直ぐな赤い眼差しに。
 ノヴァは足を止めると顔を上げ、真っ直ぐに瞳を見つめ返す。
 そう、この竪琴は――。
「……うん、大切な相棒だ」
 こくりと頷き、笑みを浮かべるノヴァ。先程までの意思が見えない色では無く、その黄昏空の瞳にはしっかりと自分の意思が宿っている。
 そう、この竪琴は師から譲り受けた、とても大切な物。その想いを改めて感じると、ノヴァは今度は手放さないようにと竪琴をしっかりと抱え直す。
「……ありがとう、レン」
 確かに竪琴が腕の中にある事を確認して、ノヴァは礼を紡ぐ。この感触が、無くなっていたかもしれないと思うと恐ろしささえ覚える。それを守ってくれたのは誰でも無い煉月だから、溢れる程の深い感謝の心を言葉で表して。そのすぐ後に少女へと視線を向ける。
『ええー、お兄さんくれないの?』
 興味を持った竪琴を、いつまでもくれないノヴァに向け少女は唇を尖らせた。
 欲しい欲しいと懲りずおねだりをして、ぴょんぴょん飛び跳ねて煉月とノヴァの周りを回るけれど――ノヴァの指先が竪琴で音色を奏でれば、その足がぴたりと止まる。
『あーあ、欲しかったのに。くれないなら仕方が無いか』
 溜息の後、揺らした少女の袖から現れたのは――白銀の槍。竹の光を浴びて輝くその光は、随分と似た輝きがすぐ傍にある。
「何、ハクを倣うの? イイ度胸じゃん」
 その輝きが、自身の持つ槍――相棒である白銀竜のハクの別姿と同じであることにすぐに気づいた煉月は、口許に笑みを浮かべながらそう紡いだ。
 くるりと槍を回して。駆けたと想えば彼は跳ねあがる。槍を構え、投げる瞬間――その心を、身体を、湧き上がらせるようにノヴァの奏でる音色が戦場へと響き渡った。
 光る竹の中、美しき音色と共に放たれるはハクの咆哮と葬送歌。
 その瞬間、腰に緋月が花火のように夜空に浮かび上がっていた。
 黒に咲く、緋色に目が奪われるノヴァ。あの日、共に見た花火を思い出しながら――彼は歌声に、更なる力を込めて紡ぎ続けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

花澤・まゆ
ステキな物――
言われて、持ってる物はみんなお気に入りで
だから、一瞬気づかなくって

大切な人にもらった腕時計
ちょっとこの格好には無骨で
本当はアナログの時計が好きで
なんかすごい機能ついてるけど扱いきれなくて
ほんのちょっぴり困ったなあなんて思ってて

それが、腕にない

失くなってわかるの
それをどれだけ心の拠り所にしていたかって
大切な人と一緒にいるみたいで
怖い敵にも立ち向かっていけた
私にとって、本当に大切なものだったんだって

オシャレじゃないけど
でも、彼らしいセンスの、腕時計

返して
それをあげるわけにはいかないんだ

痛くないようにUCで一閃
斬られた痛みもわからないように素早く
貴女を助けてあげるから

アドリブ歓迎です




 ステキな物――。
 そう紡がれた少女の言葉に、花澤・まゆは考えるように青い瞳を揺らした。
 青とピンクが愛らしいリボンも。白い花の髪飾りも。愛用の霊刀も使い魔のミケも。どれもこれもお気に入りで大切なもの。
 だから、一瞬気付かなかったけれど。
「ない」
 考える流れで自然と腕へと指を滑らせたとき、そこにある筈の感触が無いことでまゆは何が無くなってしまったのかを把握した。
 まゆの細い腕には、不釣り合いだった無骨な腕時計。時を刻む音色を奏でるアナログ時計が好きなまゆにとって、ただ数字を刻むデジタルな画面は少し物足りない。時計の他にも機能が色々とついているようだけれど、全く扱いきれずに宝の持ち腐れで。大切な人に貰ったから身につけていたけれど、ほんのちょっぴり困ったと思っていた。
 けれど――その時計が無くなってみれば、初めて分かる。まゆが、どれほど心の拠り所にしていたのかということが。
 大切な人と一緒にいるように感じて、怖い敵にも立ち向かっていけたのはあの時計があったから。今初めて、まゆにとって本当に大切なものだったと彼女は気付く。
『キラキラしてるー! こういうのオシャレ? っていうの?』 
 手の中で時計を転がし、きゃっきゃとはしゃぐ少女。楽しそうな少女には悪いけれど、震えるまゆの心は隠せない。
 あれは、決してオシャレではない。けれど、彼らしいセンスの腕時計なのだ。
「返して。それをあげるわけにはいかないんだ」
 きゅっと手を握り締めて、目の前の少女へとまゆは強く言葉を紡ぐ。
 無邪気な少女。けれどその姿は憑かれたもので、彼女自身のものでは無い。
 刀を抜き、竹の光に刃を煌めかせる。
 大きな瞳に宿るは真剣な色。ひとつ呼吸を整えて、駆けると少女の背の翼から羽根が舞い散った。ふわりと幽世の世界に舞うのは、不釣り合いながらもどこか懐かしい幻朧桜の香。煌めきを抱いた刃を、素早い動きで迷うこと無く、まゆは振るう。
 ――貴女を助けてあげるから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルーファス・グレンヴィル
マコ(f13813)と

あ? 欲しい?
コイツはやらねえよ
隣に居るマコの首に腕回し
独占欲滲み出る言葉も隠さず
じとりと少女を見詰め牽制
黒竜が溜め息を吐いてるけど
それはもう気にしない事にした
オレには、こっちが一大事だからな

彼女の駄々捏ねる姿見て
渋々ゆっくり離れれば
ガサゴソと袋の中を漁った
マコ、──理はオレの大切だから
お前にも、誰にも譲れねえけど

代わりにコレをやるよ
さっき美味かった団子な
家で食べるつもりだったけど
お前が何かを欲しがるなら
悪いけどコレで勘弁

だから、オレから理を奪うなよ
コイツは、オレの唯一で
──失いたくない奴なんだ

点々と燃え始めるのは黒き焔火
やさしくも、あたたかな炎
君がゆっくりと眠れるように


明日知・理
ルーファス(f06629)と
アドリブ、マスタリング歓迎


元来の性質と、かつて孤児院の長兄役だったこともあり
子どもの姿をした者に甘くなってしまう
彼女の可愛らしい駄々に困ったように笑み浮かべるも
──…ごめんな、渡せないんだ。

隣の彼の独占欲滲む言葉
『大切なもの』と聞いて、真っ先に俺を思い浮かんでくれたことが嬉しくて
然し俺も同じ気持ちだ
俺もルーファスやナイト、それに相棒であるUDCのシスや家族である化け猫ガウェイン…大切なものが沢山ある
「ガウェイン」
彼女の袖に消えた仔猫の声が聞こえて一安心しつつ
俺の家族を返してくれと穏やかに

彼女が痛がらぬよう咲初にて
もしまた逢えるのなら、次は敵同士ではありませんようにと




 目の前には、欲しい、と欲望を紡ぐ小さな少女。
 毒々しいながらも愛らしい彼女の様子に、明日知・理はどこか悲しそうに瞳を落とす。
 不愛想ながらも献身的な心を持つ彼の性質だけでなく、孤児院の長兄として育った為幼い姿をした者にはつい甘くなってしまうのだ。
 だから、駄々をこねる目の前の少女は甘やかしたくなってしまうのだけれど――ふるりと首を振ると、困ったような笑みを浮かべ理は唇を開く。
「──……ごめんな、渡せないんだ」
『えええ、なにそれー!』
 ふてくされるように頬を膨らませて紡ぐ少女。幼い姿故なのか紡がれるその図々しさに、ルーファス・グレンヴィルは眉を寄せ鋭い赤い瞳を細めた。
「あ? 欲しい? コイツはやらねえよ」
 隣に立つ自身よりも随分と大きな理の首に腕を回し。紡ぐ言葉には彼の独占欲が滲み出るが、隠す意図さえルーファスには無い。彼のそんな姿を見て、傍らの黒炎の竜は呆れたように溜息を零しているけれど、奪われるとなっては黙ってなどいられなかったのだ。ルーファスにとっては、こっちのほうが大事だから。
 その言葉に、行動に。理の心に浮かぶのは、嬉しさだった。『大切なもの』を欲しがる敵。その大切なものに、真っ先にルーファスが浮かんだのは理だと云う事実が嬉しくて、その想いが重なっていると知り口許には自然と笑顔が浮かんでいた。
『なにそれ、あたしにだって頂戴頂戴!』
 可愛らしく駄々をこね、辺りをぴょんぴょんと跳ねる少女。その姿を見ればルーファスは溜息を零す。理はルーファスの大切なものだから、彼女だけでなく誰にも譲ることは出来ない。けれど、欲しがる彼女をただ放置することは出来ないから。
「代わりにコレをやるよ」
 手元の袋の中を漁ったかと思えば、彼の手には愛らしい桜色を乗せたお団子が。
「お前が何かを欲しがるなら、悪いけどコレで勘弁」 
 家で食べるつもりだったそれを差し出せば、彼女はじっと様子を伺うようにこちらを見る。――ルーファスの言葉の真意は、理を奪わないでくれという強い想い。理は、ルーファスにとっての唯一で、失いたくない存在だから。
 どこか真剣な眼差しの彼へと、少女はぴょんっと近付き長い袖で器用に受け取れば。また嬉しそうにぴょんぴょんと飛び跳ねるのだ。
 その幼い子の様子に、彼の優しさに。理は笑みを浮かべると同時に、自身の大切なものについて考えていた。
 ルーファスと同じく、彼が大切なことは勿論。彼の相棒も、そして自身の相棒や化け猫と――大切なものは数多あると、改めて考える。
『お兄さんはねー、その子が欲しいかな』
 ぺろりとお団子を平らげて、唇を舐める少女の視線は次なる欲望へと向けられる。理の肩に乗っていた黒猫へと視線を向けると同時、思いもよらぬ速さで飛び跳ねたかと思えば、ふわりと理のすぐ横で袖を揺らした。
 甘い香りが漂ったかと思えば、肩の重みが消える。
「ガウェイン」
 その一瞬の出来事に理は驚いたように息を呑むが、袖の中から聴こえた鳴き声に安堵の息を零した。そのまま少女に向ける眼差しは、強いものでは無く懇願の意。
 辺りに燃え盛るは黒き焔。
 輝く竹光の中、黒々と燃える焔はどこか幻想的で、けれど確かな意志を持ち少女の身体を包み込む。袖がちりちりと燃え、髪の毛先へと燃え移った時、刀の一閃が輝いた。
 この焔で、優しい剣閃で。
 彼女を、救おう。
 ――もしまた逢えるのなら、次は敵同士ではありませんようにと、願いを込めて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

竜胆・樹月
アイテム【首飾り】
形状はバストアップ参照
父親の形見らしく、小さい頃からずっと離さず付けていた大事なものなんだ…!

この子が例の骸魂かな?
キョンシー…初めて見た

他人のものって羨ましく見えて欲しくなる
その気持ちはわかる~

あれ?その首飾り、ボクのものとそっくりだ
…ない?
取られた?
油断したつもりはないのに…

いや、落ち着こう
どうやって取り返そう?
彼女は骸魂に憑りつかれているだけで、悪くない
だから骸魂を征伐すればいいんだ

「それ、気に入った?綺麗だよね
ボクの宝物なんだ
返してもらうよ」

少し距離を取って、深呼吸して
太刀を抜刀
この場所から一気に攻める
速さを活かした斬撃を、一撃でも多く当てたい




 竹光に染められた、毒々しい見目をした小さな少女。
「キョンシー……初めて見た」
 例の骸魂に憑かれた少女であろうと推測すると同時、軽やかに跳ねる姿にどこか感心したように竜胆・樹月は紡ぐ。彼女は袖を揺らしながら何かを探るように、樹月の姿を頭から視線を下ろしていくと。
『お兄さんの……それ欲しい!』
 視線が止まったと同時、紡がれる言葉。近付く少女。
 幼い少女の様子に、他人のものが羨ましく見えて欲しくなる気持ちは分かると呑気に思っていた樹月だったけれど――袖が触れる一瞬の感触の後、離れた彼女の手にしていた煌めきを琥珀色の瞳に映せば不思議そうに瞳を瞬く。
『ふふー。キラキラしてきれいだわ』
「あれ? その首飾り、ボクのものとそっくりだ」
 満足そうに輝きを竹光に映す少女。彼女の手の中には、小さな青い石を連ねた首飾りがあり――その見慣れた色に、焦るように樹月が自身の胸元へと手を当ててみれば、そこには何も無かった。
「……ない? 取られた?」
 油断したつもりなど無かった。
 けれど、相手は確かにオビリビオン化してしまった少女。不思議な力を操る彼女には、造作もないことだったのだろう。無邪気に喜びを表現するかのように跳ねる彼女を見ながら、心を落ち着けるように息を整える。
 そう、彼女は骸魂に憑かれているだけで、悪くはない。
 だから、骸魂を討伐すればいいのだ――。
「それ、気に入った? 綺麗だよね。ボクの宝物なんだ、返してもらうよ」
 真っ直ぐに彼女を見て、穏やかに笑む樹月。彼の問い掛けに少女は頷くけれど、そのままあげることなんて勿論出来ない。
 深呼吸をして、意識を集中して。
 青い柄を掴み、樹月は太刀を抜刀する。
 刃に電流を纏わせて、こちらに見向きもせずはしゃぐ少女へと視線を向ければ彼は間合いを詰めるべく足へと力を込め、一気に跳ね上がった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雁野・リジ
たぬき姿で参加
言葉は片言
一緒にぴょんぴょん跳ねながら、
とられそうなものはスティール・カードで取り返す
もしくは逆に相手の物を盗る


盗む?おそろい、おれ怪盗
なに盗む?はっぱ?はっぱ大切
それともおれ?おれかわいいから
青くてふかふかでかわいいだろ
どっちもあげない
さっき拾ったどんぐりいるか?
どんぐりあげる

君のあたまのお団子ネット
かわいい
おれにそれおくれ
耳につけたい
どんぐりあげるからおくれ




「盗む? おそろい、おれ怪盗」
 藍色の瞳をぱちぱちと瞬いて。雁野・リジ(たぬき・f34917)が目の前の少女へ語り掛ければ。お揃い、の言葉に少女は少しだけ嬉しそうに笑みを零した。
「なに盗む? はっぱ? はっぱ大切」
 楽しそうに戦場をぴょんぴょん跳ねる少女に合わせるように、小さな身体を跳ねさせれば。狸のふわふわの尻尾も揺れ動き、じいっとキョンシーの二色の瞳が向けられる。
『そのしっぽ! ほしい!!』
 真っ直ぐに語られる言葉と、くぎ付けになった瞳。その言葉に、反応に。リジは困った様子も無く、アピールするように青色毛並みを揺らしている。
「青くてふかふかでかわいいだろ。どっちもあげない」
 おれかわいいから、と自分のことを分かっているリジ。けれどすぐに首を振ると、否定の言葉を述べる。狸姿で喋る弊害なのか、片言でしか語れない姿がまたどこか愛らしさを作り出していて、彼女のその様子に少女はむうっと唇を尖らせる。
「さっき拾ったどんぐりいるか? どんぐりあげる」
 そんな彼女の足元に跳ねながら近寄ると、むしろリジのほうから少女へと差し出した。虫食いの無い綺麗などんぐりはまるで宝石のように輝いていて、受け取った少女は驚いたようにきょとんと瞳を瞬いている。
 そんな少女の様子に少しだけ満足そうに息を零した後――リジの藍色の瞳が向けられるのは、少女の頭に飾られた二つのお団子ネット。
「おれにそれおくれ。耳につけたい」 
『ダメー! これはあたしの、あたしのものはだれにもあげないの!』
 欲を告げれば、返るは幼い子供らしい言葉。
 ――これは、どこまでも欲望に素直な二人のヒトの戯れ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルーシー・ブルーベル
【月光】

キョンシーさんが見つめるその先は……
こ、これはダメ、ダメよ!
さっき買ったばかりのヒマワリ提灯
パパとお揃いなの!

盗まれてしまわないように必死によけるけれど
それでも彼女の袖にふれてしまったなら
返して!『天蓋花の紡ぎ』

青糸と縫い針で
袖と地面を縫い止めてしまいましょう
パパ!ありがとう……!
提灯は無事かしら
取り戻したものを確かめてホッと一息
パパのは盗まれてない?だいじょうぶ?
そっか、よかった
ふふ、頼もしいな

確かにこの提灯は
とっても
とーーーーっっっても!ステキだけれど!
ええ、パパ
これはパパとルーシーにとっての大切
ヒトの大切を取っちゃだめなのよ

手を伸ばすのなら
あなただけの大切なものにして、ね?


朧・ユェー
【月光】

おやおや、これが欲しいのですか?
確かにこれはとても綺麗で美しいですから
えぇ、そうですねルーシーちゃん
これは娘とお揃いのモノ、貴女にはあげれない

あぁ、いけない人ですね
彼女の捕るとは本当にいけない
彼女と一緒に奪われたモノを万年筆のチェーンで取り返す
良かった
僕のは大丈夫ですよ
指一本触れさせませんから

美食
さぁ、お仕置きしなくては
君の行動はお見通しですよ

これは僕達の想い出の品
本当は貴女は貴女の想い出のモノ欲しかったのでは?

えぇ、そうですね
これは僕達の貴女のモノではありませんよ。




 じいっと見つめる二色の眼差しの先――。
「こ、これはダメ、ダメよ!」
 それが先程買った向日葵咲く提灯だと気付き、ルーシー・ブルーベルは慌てて声を上げた。これは、大好きな人とお揃いの提灯。二人の思い出の向日葵の温かな光。誰であろうとあげられない、大切な二人の絆の証。
「えぇ、そうですねルーシーちゃん」
 彼女の言葉に、反応に。朧・ユェーは笑みと共に頷きを返す。――その強い想いは、ユェーも同じ。確かにとても綺麗で美しいから、欲しいと思ってしまう目の前の少女の気持ちも分かる。けれど、娘とお揃いの大切なものだから。譲れないと云う想いも確か。
『だって欲しいもん!』
 けれど、いくら拒絶しても欲に素直な目の前の少女には伝わらない。ぴょんっと跳ねる少女から逃げるように、ルーシーは袖で隠そうとするけれど――残念ながら同じ背丈程の少女の長い袖に触れてしまえば、手の中に咲く光は消えてしまう。
 光が映り、ルーシーの掌に何も無くなってしまう。
 息を呑み、開いた左目を更に大きく開いて――。
「返して!」
 珍しく強い口調で声を上げると、ルーシーは小さな掌を掲げ青糸と銀糸を放った。竹の光を映し、細い糸が戦場中を輝く様を一瞥して、ユェーはひとつ笑みを落とす。
「あぁ、いけない人ですね」
 すうっと瞳を細めた、いつもの穏やかな笑みとは少し違う微笑み。そのまま彼は糸で袖と地面を縫い付けられた少女の隙をつき、チェーンを用いて光を取り返す。
『あ!』
 残念そうに声を上げる少女に金色の瞳を向け、口許へと指先を添えるユェー。そのまま彼の腕の中に咲いた向日葵を、元の持ち主であるルーシーへと手渡した。
「パパ! ありがとう……!」
 彼の元へとすぐに駆け寄り、ルーシーはユェーから提灯を受け取る。壊れていないかとしっかりと確認して、大丈夫だと分かればほっと安堵の息を零した。
「パパのは盗まれてない? だいじょうぶ?」
「僕のは大丈夫ですよ。指一本触れさせませんから」
 そのまま今度はユェーの心配をしてくれる少女へ、ユェーが向ける笑みはいつもの穏やかなもの。その笑みと言葉に、頼もしさを感じルーシーの心は温かさが満ちていく。
 そのままルーシーは、縫い付けられた少女へとくるりと向き直ると。
「確かにこの提灯は。とっても、とーーーーっっっても! ステキだけれど!」
 これは、ルーシーとユェーの大切なもの。ヒトの大切を取ってはダメだと、少しだけ頬を膨らませて、同じ年頃の少女へ怒った様子を伝えるように彼女は語る。
「本当は貴女は貴女の想い出のモノ欲しかったのでは?」
 小さな少女の微笑ましい姿にひとつ笑みを零した後、ユェーは取り憑かれた少女へ視線を向けそう零す。ヒトのものを望む彼女の欲望は一体何だろうと、寄り添うように。
『わかんない。みんなみんな、あたしは欲しいー!』
 大人にたしなめられたかのように、不貞腐れて唇を尖らせるキョンシーの少女。拘束され跳ねることは出来ないけれど、尚もその欲は止まらない様子で。首を振り駄々をこねる彼女へ小走りで駆け寄ると、ルーシーはその瞳を見て唇を開く。
「手を伸ばすのなら。あなただけの大切なものにして、ね?」
 きゅうっと提灯を抱き締めて、小首を傾げるルーシー。決して頷きはしない彼女のその欲は、オブリビオンとなってしまった故なのだろうか。
「えぇ、そうですね。これは僕達の貴女のモノではありませんよ」
 手元で風に揺れる提灯を見つめて、笑みと共にユェーはそう紡ぐ。
 ――その後呼ぶ美食の攻撃は、まるで小さな少女へお仕置きをするかのようだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フィリーネ・リア
【月魅】

想い出色に染まって満足げな人形は
竹藪の向こうを見てすっと眸を細めた

あら、ひとの物をそう欲しがる物では無くってよ?
でも不思議
跳ねている姿を見ているとなにか…
そうですわ、ではこの南瓜色の杖を差し上げましょう!
あなた、毒入りのスイーツはお好き?
遠慮なさらないで、ぼくが食べさせて差し上げます
はい、あーん
致命傷…?アラギさんたら何を仰っているのかしら
欲張り淑女はすっかり残酷な魔女
笑顔は微塵も崩さずに

ふと彼の口調の変化に気づいて振り返る
紫の魔石――ねぇ、それは…
あらあら、アラギちゃんそれはだーめ
可愛らしい物言いで
何時もの女性口調になっている彼の手を
大きな筆でぺしん――むしろべしんと強めに叩き
魔石を落としてしまいましょう
あなた自身を差し上げるのは、流石にぼくも嫌でしてよ
…うふふ、アラギさんに戻りまして?
良い目覚ましでしたでしょう?

それでは、改めて
ぼくのとっておき差し上げますわね?
描く虹色の架け橋、いっとう綺麗な彩を遠慮なく
水の色も合わせたコラボレーション燦き
とっても素敵でしょ?と魔女は咲うのよ


アラギ・グリフォス
【月魅】

ははっ
欲しがりなのは可愛らしいんだけどな
だけど、あんまり欲しがったら両手がいっぱいになっちまうぜ?
全部大事にはできないだろ?お嬢ちゃん
…って、フィーちゃ~ん?そりゃぁ致命傷になるのでは…?
可愛らしい淑女がいつの間にか童話に語れそうな魔女の顔

ん?俺の物も何か欲しいって?
ふーむ――そうねぇ
そんなに可愛らしく頼まれちゃうと、何かあげないと可哀想かしら?
頬に手を当てて、いつの間にか一皮被ったオネエ口調

何故だか、自分が持ってる大切な物
”Lacrima”…ネックレスにしている紫の魔石を渡しそうになり
――あいた?!
手を筆で叩かれると、豆鉄砲喰らった鳩のようにパチッと我に返る
ふぃ、フィーちゃんってば、か・げ・きー!
いま、ベシンッてなったぜ?!
……あっはっはっ
ああ!戻りましたとも
おかげで俺の命が救われた

お礼に彩の魔女様を輝かす手伝いをしようか
『踊ろうか。愉快に――魔女と共に』
水の精霊を召喚
オーラ防御を用い彼女に向かう攻撃を水のオーラで防ぐ
弾け弾けて
水流で絡め取り、何人も彼女の美しき彩は濁らせない




 頂戴と――誘惑の言葉を少女が紡げば、不思議なことにその言霊はキラキラと輝きを帯びフィリーネ・リアの心へと落ちていく。
 先程までの満足した心とは違う、不思議な心地。
「ははっ。欲しがりなのは可愛らしいんだけどな」
 傍らのアラギ・グリフォスが紡ぐ通り、そうひとの物を欲しがるなんてはしたない。今日は淑女たるお嬢様でいようと想うから、尚更そう想うのだろうか。
 隣の彼は、少女へと笑いかけ。あんまり欲しがったら両手がいっぱいになっちまうと諭している。その通り、その通りなのだが――何故だろう、アラギの言葉にぷくぷく頬を膨らませて楽しげに跳ねる少女を見ていると。
「そうですわ、ではこの南瓜色の杖を差し上げましょう!」
 ぱあっとフィリーネの顔に浮かぶのは、晴れやかな彩り色。キラキラ茜色の瞳を輝かせて、跳ねる少女へと駆け寄るとそっと鮮やかな南瓜色を差し出した。
「あなた、毒入りのスイーツはお好き?」
『毒? ……よく分かんないけど、お菓子はだーいすき!』
 笑みと共に差し出されれば、甘い香りが少女の鼻をくすぐり。食べさせて差し上げるとフィリーネが紡げば素直に少女は口を開ける。 
「……って、フィーちゃ~ん? そりゃぁ致命傷になるのでは……?」
 純粋な笑みで紡がれる、悪戯な言葉にアラギは少しだけ焦るように言葉を零した。
「致命傷……? アラギさんたら何を仰っているのかしら」
 ひとつ瞳を瞬くフィリーネ。――人形の顔に浮かぶ表情は変わらぬ笑みだけれど。それは先程までの淑女の色では無く、童話に出てくるような残酷魔女の色をしている。
 そんな二人のやりとりは気にせずに、差し出されたお菓子を嬉しそうに、ぱくりとキョンシーの少女が食べれば――。
『~~~~~っ!!』
 大きな瞳は涙が浮かび、ぴょんぴょん跳ねる動きも先程までの楽しげなものでは無く何かから逃れるかのように必死な様子。少女の様子にフィリーネは変わらず笑みを浮かべているが、アラギはやっぱりと言いたげに溜息を零した。
『もう、なにこれ! 美味しいと思ったのに……!!』
 けれど、お菓子ひとつでは挫けない。彼女の欲は止まることなく、今度はアラギへと跳ねるように近付きながら『頂戴』と可愛く強請るのだ。
「ふーむ――そうねぇ。そんなに可愛らしく頼まれちゃうと、何かあげないと可哀想かしら?」
 さらりと風に流れる、ひとつに結った漆黒の髪。頬に細い手を当てて、彼の唇から零れた言葉はいつの間にか一皮被ったものへと戻っていた。
 少女のおねだりには抗えない。何を上げようかと考えていれば、自然と手は頬から首元へ。キラリと輝く雫の紫石が美しい魔石へと触れていた。
 これを渡そう――指先で触れていた手で、今度は魔石をきゅっと握り締めると。
「――あいた?!」
 瞬時にその手へと訪れたのは、ひとつの強い衝撃。
 響く音も、その衝撃も、美しい竹光の中では不釣り合いなものだった。まるでハトが豆鉄砲を食ったように細い眼差しをぱちぱちと瞬いて、意識を戻せばアラギは自分の手に触れている、よく知る絵筆をその瞳に映した。
「あらあら、アラギちゃんそれはだーめ」
 絵筆の持ち主は――勿論フィリーネ。優雅に微笑み、可愛らしい物言いだけれど。その仕草に迷いなど無く、加減も無い一撃を彼へと送ったのだ。
「あなた自身を差し上げるのは、流石にぼくも嫌でしてよ」
「ふぃ、フィーちゃんってば、か・げ・きー! いま、ベシンッてなったぜ?!」
 衝撃に赤くなった白い手をさすりながら、真っ直ぐにこちらを見上げるフィリーネへと、まるでおどけるように大き目な反応をアラギは返す。痛みはある、けれどもこの痛みは辛くはなく、帯びた熱と共にどこか温かいものを感じる。
「……うふふ、アラギさんに戻りまして? 良い目覚ましでしたでしょう?」
 その反応と口調に、どこか満足げに笑みを零すとフィリーネはそう紡ぐ。彼女の言う通り、この衝撃のお陰で彼は元に戻ることが出来た。
 柔らかい地面故に音は響かなかったけれど、地に落ちてしまった魔石をすぐに拾い。大切そうに握り締めると、彼は不敵に笑みを零すと。
「ああ! 戻りましたとも」
 ――おかげで俺の命が救われた。
 そう、だって大切なそれは――ヤドリガミたる彼の本体。彼自身。
 だからそう簡単に、他人へと渡して良いものでは無いのだ。もう離さないように握り締めた後、アラギはしっかりと自身の首元へと煌めきを纏い直す。
『なあに、くれないの?』
 いつまで経っても動かない彼等に、またぷくーっと頬を膨らませるとキョンシーの少女はこちらを見る。早く早くとせがむように、跳ねる姿は愛らしいけれど――もう彼等は、正気に戻ってしまったのだ。
 だから今の彼等の胸に宿るのは、目の前のオブリビオンへと変わってしまった少女を救い出すという使命だけ。
「それでは、改めて。ぼくのとっておき差し上げますわね?」
 にっこりと優雅な笑みを浮かべた後、ひとつ淑女の礼をして。フィリーネはそのまま絵筆を操ると、夜の世界へと絵具を散らし――虹色の架け橋を作り出した。
 夜に掛かる虹は幻想的で、月と竹の光に輝いているかのようにも感じとても美しい。その彩に更なる輝きを追加するように、ひとつ笑みを零すとアラギは。
「踊ろうか。愉快に――魔女と共に」
 呪文と共に彼が呼び出したのは、水の精霊。涼やかな水流音が響く中、虹へと舞い上げれば水中に虹が浮かぶかのような更に幻想的な光景が広がった。
『きれいきれい! その絵具も欲しい!』
 変わらず欲を口にする少女。ぴょんっと跳ねてフィリーネの手元に長い袖を伸ばすけれど、すぐにアラギの精霊が創り出した水のオーラがその手を弾いた。
 弾くと共に辺りには水飛沫が舞う。
 光に、虹に、輝く雫はそのまま――キョンシーの袖へと纏わりつくと、小さな身体を拘束するように絡めとっていく。
「何人も彼女の美しき彩は濁らせない」
 瞳を細め、アラギの唇から零れる言葉はどこか真剣で。彼の言葉にくすりと花咲くような微笑みを浮かべ、絵筆を握りながらフィリーネは紡ぐ。
「水の色も合わせたコラボレーション燦き。とっても素敵でしょ?」
 ぱちんと弾ける水の音色。
 掛かる虹が消えた時、目の前の少女はふたつの欲に囚われた姿では無く。元のただ愛らしいおねだりをする少女へと戻るのだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年10月03日


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#カクリヨファンタズム
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#戦後


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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠雨谷・境です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト