大祓百鬼夜行㉕〜Dignity the Eternit
UDCアース、東京スカイツリー上空。
かの空は今、現世と幽世が交錯する異空間と化していた。
立ち並ぶ団地。
一面の芒野原。
幻朧桜咲き誇る丘。
千本鳥居の霊山。
移り変わり景色の中心、立ち尽くす一人の少女。
なれどその身に纏うは、世界を歪める程の膨大なる『虞』。
彼女こそは大祓骸魂、二つの世界に滅びを齎さんとする究極妖怪。
「──愛しき、愛しきUDCアース。私は、今、帰ってきました」
唄うような少女の声音。遠く離れ離れであった想い人との、久しき逢瀬に高揚するかのような。
「今こそ、あなたを永遠としましょう。この刀のあと一刺しで、この願いは叶うのです──」
懐より抜いたその刃に、己を映し。
恍惚と笑む少女の貌は、恋する娘とも、優しき母とも──悍ましい怪物とも見えて。
彼女こそは大祓骸魂、その愛を以て二つの世界に滅びを齎さんとする、大いなる邪神が一柱──。
●
「──皆、遂にここまで来たわ」
グリモア猟兵、川谷・茉莉(n番目の花子さん・f32951)は、決然たる表情で集った猟兵達を眺め渡す。
「UDCアース、東京スカイツリー上空。大祓骸魂は、そこの歪んだ空間の中にいるわ」
大祓骸魂の纏う、有り余る程の虞は空間を歪め、そこを『カクリヨファンタズムの如き空間』へと変異させている。
此処までの戦いにて訪れた領域、その全てが其処には内包され、其処にあったあらゆる事象が発生し得るのだという。
「目的は勿論、大祓骸魂を倒すこと。けれど、それは当然容易なことではないわ」
大祓骸魂の力は凄まじい。
未だ残る数多のオブリビオン化した妖怪達を従え、それらを嗾け。
周囲には数多の死神が如き霊気や、デュエリストブレイドのカードの弾幕が飛び回り。
時には妖怪列車が走り込んできたり、異常気象が発生することさえ有り得る。
大祓骸魂自身も、脅威的な身体能力や急加速など、様々な力を駆使して襲い来ることが考えられる。
「これらは全部、これまで皆が攻略してきた戦場の特性を利用したもの。だから、それを逆に利用すれば、不利を覆すことも可能よ」
カード弾幕を足場にしたり、敵を妖怪列車に誘導したり。
或いは、猟兵同士連携したり、各々の真の姿を晒すことも有効だ。大祓骸魂は膨大な虞を有するが故、窮地に立たされずとも真の姿を晒すことが叶う。
「敵の攻め手は数多。けれど、それ故に各々への対策は甘いところがあるわ。何処か一つ、一気に突破するのが有効だと思うわ」
あれもこれもと対策するより、一つの手段を狙い打つのが良策、茉莉は言う。
「カタストロフまで後4日。それまでに必ず倒しきって、二つの世界、救ってみせましょう。皆、宜しくお願いね」
祈るような、茉莉の言葉と、グリモアの光を背に受けて。
猟兵達は征く。決戦の舞台へと。
五条新一郎
それは世界を滅ぼす愛。
五条です。
大祓百鬼夜行、最後の戦い。
大祓骸魂との決戦シナリオをお送り致します。
●このシナリオについて
このシナリオの難易度は「やや難」です。
普段より厳しい結果が出やすくなっておりますのでご注意ください。
●目的
『大祓骸魂』の撃破。
尚、彼女の救出は不可能となっております。
●戦場
UDCアース、東京スカイツリー上空。
大祓骸魂の纏う虞により、カクリヨファンタズム各地の風景が広がっています。
足場には基本的に問題はありません。
●プレイングについて
OP公開直後からプレイングを受け付けます。〆切はタグの方にて掲示予定。
「これまでの戦場いずれかのプレイングボーナス条件を満たす」ことでプレイングボーナスが得られます。いずれの戦場の事象も発生し得るので、PC様各々の実力を最も発揮できる手段を用いられると良いでしょう。
●リプレイについて
5/30(日)お昼過ぎ辺りからリプレイ執筆開始、5/31(月)深夜頃の完結を予定。遅くとも6/1(火)の16時までには必ず完結できるよう執筆します。
それでは、皆様の明日を切り開くプレイングお待ちしております。
第1章 ボス戦
『大祓骸魂』
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POW : 大祓百鬼夜行
【骸魂によってオブリビオン化した妖怪達】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[骸魂によってオブリビオン化した妖怪達]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
SPD : 生と死を繋ぐもの
自身が装備する【懐刀「生と死を繋ぐもの」】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ : 虞神彼岸花
【神智を越えた虞(おそれ)】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を狂気じみた愛を宿すヒガンバナで満たし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
さて、ここが山場ですねぇ。
頑張ってみますぅ。
『FBS』を四肢に嵌め飛行、『F●S』各種を展開し『カード弾幕』のエリアから参りますねぇ。
そして【崇卓】を発動、『竜巻』『地割』『熔岩域』等、様々な『現象』を発現させ『カード弾幕』を防ぐと共に『百鬼夜行の妖怪』を纏めて攻撃しましょう。
その際、『妖怪』達が大祓さんに近づけ無い様遠ざける様に攻めて『集まる』のを防ぐと共に『轟音』等を利用して『指揮』を阻害しますぅ。
大祓さんの『通常攻撃』等は【崇卓】により強化された『能力』で『FMS』のバリアと『FSS』を展開し防御、攻撃は『現象』への巻込みと『FRS』の[砲撃]主体で行いますねぇ。
東京スカイツリー上空に形成された『虞』の空間。四肢に嵌めたる戦輪の回転を以て、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は変容続ける空を征く。
「さて、ここが山場ですねぇ」
カタストロフまで後数日も無い中、ついに辿り着いた決戦の時。この戦い、負けるわけにはいかぬと。常と変わらぬ緩やかな声音ながら、呟く言葉には確かな決意の色がある。
そうして、飛翔を続けること暫し。
「――あれですねぇ」
小高い丘と見える構造物の上、るこるを真っ直ぐ見上げる少女の姿。なれど理解する。その身に纏われた、悍ましい程の陰の気が渦巻く様を。見つめる瞳の、心掻き乱さんばかりの輝きを。
あれこそが『大祓骸魂』、二つの世界に滅び齎さんとする究極妖怪だ。
「――来ましたね、猟兵」
小さな唇に笑みを湛え、大祓骸魂は呟く。歌うような声音は、さして声を張ってはいないにもかかわらず、るこるの耳にもはっきりと届く。
「私は、愛しています。この世界を、UDCアースのすべてを。だから、永遠とするのです」
懐より小さな刀を抜き、刀身を見つめる。その鈍い輝きを見つめる様は、夢見る少女の如き様相で。
「私の愛に、否を唱えるのならば――」
言葉と共に風景が変容する。幾つもの長机が立ち並ぶその空間は、さながらデュエルスペースの如く。
「私を、止めてみせるが、良いでしょう」
そして渦巻く無数のカード。デュエリストブレイドのカード群が、彼女の意のままに飛び交い、広がり、るこるを目掛け襲い来る。
更に地上からは百鬼夜行の妖怪達。猟兵達の救いを得る機に恵まれなかったが故、尚も大祓骸魂の元に在り続ける者達。飛翔するカード群を跳び渡り、次々とるこるへ迫り行く。
なれど、るこるは動じない。滞空したままにその手を合わせ、己の奉ずる豊饒女神へと祈りを捧げる。
「大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その祭壇の理をここに――」
祈りの結実と同時、巻き起こるは竜巻。戦場に発生した巨大なる大気の渦が、カードの弾幕も妖怪達も纏めて巻き上げて吹き飛ばしてゆく。
地上に残る妖怪達には、床が裂けて地割れが襲い。竜巻に逃げ場を奪われた妖怪達が次々と飲み込まれてゆく。
「まあ、なんて恐ろしい……」
言葉と裏腹、大祓骸魂の表情はあくまで余裕の様。たとえ、己の周囲が一面の熔岩域と化し、後から呼ばれてくる妖怪達が彼女のもとへ集うこと叶わなくなっていようとも。
「ならば、あなたを撃ち落としてみせましょう」
呟くと共に現れるは幾つもの雪洞。仄かに発されていた灯が瞬く間に輝きを強めれば――激しい光線となって、るこるを目掛けて撃ち上げられる!
「くぅっ!? 流石に食い止めきれませんか……!」
るこるは浮遊武器群を展開、銀盤の鏡が形成する結界と、一部の浮遊砲台が有する光の盾で以て光線を受け止めるが。そのうち何本かが結界も光盾も貫通し、るこるの身をも貫き穿つ。ユーベルコードが強化した身体能力故、咄嗟の回避が間に合ったが、でなくば今の一撃で撃ち落とされていただろう。
(流石は究極妖怪、と呼ばれるだけはありますねぇ……)
ユーベルコードならぬ攻撃でさえここまでの威力を有するとなれば、悠長な戦いはしていられまい。上空に黒雲が渦巻き、紫電が迸る。
「あら――これは、よろしくありませんね……っ!」
その後起こる事態を想定し、跳躍にてその場を離れんとする大祓骸魂。だが、それを制するかの如く降り注ぐ爆撃。
「逃がしはしませんよぉ!」
るこるの周囲に展開した浮遊砲台群からの砲撃である。大質量の炸裂弾が撃ち出されては離脱を試みる大祓骸魂の頭上で爆裂、以てその身を島の上へと縫い留めて。
そして――唸りを上げる黒雲から轟く爆音。降り落ちた落雷が、かの究極妖怪の身を撃ち据えたのである。
成功
🔵🔵🔴
空亡・劔
この最強の大妖怪である空亡劔を差し置いての異変とは生意気よ!
真の姿を晒
赤い太陽を背負ったかの如き姿
それは百鬼夜行の…
対POW
神殺しの魔王発現
尋常じゃない力が高まる
あんたはまさに2つの世界を滅ぼす程の…人類の脅威なのね
【戦闘知識】で敵と妖怪達の位置の把握
【天候操作】で猛吹雪を引き起こし視界も乱し妖怪達が集まるのを妨害
更に【結界術】での結界による分断も行使
超高速で飛び回り
敵の攻撃は【見切り】
【残像】を残して可能な限り避けきり回避しきれないのは【念動力】による障壁で防
氷の【弾幕】を展開して妖怪達の骸魂も巻き込
二刀による【2回攻撃】で容赦なく【切断】
怒涛の猛攻を続け
撃破後
【天候操作】で太陽を昇らせ
空間が変容する。無数の瓦礫やガラクタの転がる廃棄場めいた空間。西洋親分の領域であった『忘れられたものたちの終着駅』だ。
群れなる百鬼夜行の妖怪達、その中心に佇む白無垢の少女。歩み寄るは空亡・劔(本当は若い大妖怪・f28419)。紅の瞳が、正面の少女――大祓骸魂を真っ直ぐと見据えて。
「――あんたが大祓骸魂ね」
その問いかけを、微笑によって肯定する少女。劔の口元が、真っ直ぐに引き結ばれて。
「この最強の大妖怪である空亡劔を差し置いて、ここまでの異変を引き起こすとか! 生意気にも程があるわ!」
吼える彼女を、大祓骸魂は不思議そうに眺める。最強、そのような概念に己は拘っていない、と言わんばかりに。
「けれど認めるわ。あんたは人類にとっての、世界にとっての脅威であると。故に」
構わず続ける劔の雰囲気が一変する。大祓骸魂の眉が小さく跳ねる。見目こそ然程変わらずとも、纏う雰囲気は禍々しく、そして何処か神々しく。何より、背後より立ち昇る、赤き太陽の如きオーラ。
かつて人界にて描かれた百鬼夜行絵巻、その最後に描かれたる赤き太陽。逃げ惑う妖怪を追いたてる、彼らにとっての恐怖の具象。大祓骸魂のもとに集う妖怪達が怯む。
「今こそ、我が身、我が存在の意義を果たす時!」
「――!!」
劔の宿す妖怪としての力が、爆発的な高まりを見せる。空亡劔という妖怪の本質、神殺しの魔王としての性質の発露。さしもの大祓骸魂も、その表情に驚愕の色を滲ませる。
「この力――理解したわ。あんたはまさに、二つの世界を滅ぼす程の人類の脅威なのね」
それは、相対する者の人類や世界に対する脅威度に比例した強化を齎すユーベルコード。二つの世界を滅びの危機に晒す究極妖怪が相手となれば、その強化度合いは尋常のものではない。劔自身さえも驚愕せしめる程に。
敵が強大であればある程強くなる妖怪。彼女が『最強の大妖怪』を名乗る所以。
「ならば名乗りましょう。我が名は空亡劔――世界の脅威を、滅ぼす者なり!!」
片手に本体たる殺神魔剣、片手に凍気放つ永久凍剣。二刀を抜き、構える。
「そう――貴女も、そうして私の愛を妨げるのですね」
驚愕していた大祓骸魂、彼女の在り方を理解すれば、何処か哀しげに瞳を細め。背に広がる和傘を手に取って。
「ならば切り開きましょう。愛の果てへと――永遠へと至る道を」
くるくると回せば、迸るは紅蓮の炎。劔を見据えて、夢見るように微笑んで。応ずるように、背後の妖怪群が吼え猛る。
そして――最強の大妖怪と、究極の大妖怪が、激突する。
跳躍、飛翔を開始する劔。同時に巻き起こる激しい吹雪が戦場を満たし、視界を白く閉ざしてゆく。
敵を見失い、右往左往する妖怪達。そこへ降り注ぐは氷の弾幕。氷柱じみた鋭い弾丸が驟雨の如く降り注ぎ、妖怪達を撃ち抜いて。その身に宿る骸魂を撃ち砕く。
「私とも、遊んでくださいな?」
なれど大祓骸魂、黙って配下を倒させはしない。氷の弾幕に対抗するかの如く、傘に纏わせた炎から無数の紅き弾丸を撃ち上げる。吹き荒ぶ雪を切り裂き飛翔する弾丸が、上空の劔へ迫り――すり抜ける。残像だ。
「いいでしょう、遊んであげるわ!」
残る妖怪は結界を展開して分断。地上の大祓骸魂を目掛けて急降下する。
それを迎撃するべく、無数の火炎弾が高射砲じみて次々と撃ち上げられる。念動力にて展開した障壁で弾き逸らすも、数発が守りを突破しその身へ突き刺さる。
なれど劔は止まらぬ。高速飛翔の勢いにて、大祓骸魂へと突撃し――飛び抜ける。
「―――っ!!」
その刹那に振るった、二刀による斬撃。大祓骸魂の身へと、確かな傷を刻み込んだ。
成功
🔵🔵🔴
朱鷺透・小枝子
妖怪バス・走るバスへの突入方法や、狭い車中での戦法を考える
「どうせ骸の海へ還るだけだ。その命が壊れてでも飛べ、02!!」
ディスポーザブル02に搭乗操縦、六腕から生えたメクサラのブースト推力移動とUCの増大したスピードとでバスに追いすがり、継線能力、襲ってくる懐刀を無視して、車体に組み付き、即座に02からバスへ移り車内に突入!
「狭い、が、近い!」
爆発的反応速度で群れる懐刀へ散弾銃から発したオーラ弾による広範囲霊障念動力で吹き飛ばし。瞬間思考力、足場、障害物、敵の挙動を把握し、一息に大祓骸魂へ接近。
「壊れろ!其の執念ごと!!」
神器拳銃から引きだした高圧電流、それを纏った小鉈を振り下ろし、属性攻撃。
風景は変容する。夜の山中、峠道を、一台の古めかしいボンネットバスが疾走する。曲がりくねった道を走っているとは思えぬ速度で。
運転席は無人。このバスそのものが妖怪の『妖怪バス』だ。そしてその最後部の座席に座るは、大祓骸魂。
「――まあ。怖いものが追いかけてくるわ。運転手さん、急いで頂戴な」
後ろを振り向き、見えた『もの』を捉えれば。何処か楽しげな声音で、運転手――このバスそのものへ呼びかけて。応えるバスのエンジンが、唸りを上げて加速する。
窓から見える青い影をちらりと振り返り。少女の繊手が、懐から小さな刀を抜く――
「逃がすものか……! お前は! この場で壊してみせる!」
バスを追う『もの』、痩身六腕の青き異形のキャバリア。オブリビオンマシン『ディスポーザブル02』。そのコクピットにて朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は吼え、機体を更に加速させる。
六腕の肘辺りから後方へ向けて生えた赤き炎が推力を生み、機動力と成す。『BX-Aメクサラ』、本来は剣の形に成形して用いる武器だが、敢えて成形せず炎を噴出し続けることで、この通り推進器にもなるのだ。
ユーベルコードの上乗せも含めた加速は圧倒的、瞬く間にバスの後部を視界に捉え――だが小枝子はそこで、後部座席で振り返った少女の笑みを目にする。いじましい努力を揶揄うような笑みを。
「――! 来る!」
仕掛けてくる。小枝子の判断は一瞬。直後、バスの後部を中心とした空間から、幾つもの短刀が飛び出し、舞い踊りながらディスポーザブル02へ襲い来る。この短刀こそは『生と死を繋ぐもの』、大祓骸魂の得物にして、斬りつけたあらゆるものを殺す力持つ短刀だ。
だが構わぬ。小枝子の判断のもと、ディスポーザブル02は更に加速。短刀の嵐に自ら突入しつつ、バスへと肉薄。飛び交う刃が次々と青き機体に突き刺さり、火花と装甲片が散ると共に血液めいた循環液が溢れ出すが、構わない。
「どうせ骸の海へ還るだけだ! その命が壊れてでも逃がすな、02!」
尚も突き刺さる短刀群。接合部を破壊され、六本あった腕が一本、二本と脱落してゆく。だが小枝子は止まらない。この機体は代わりが効く。この機体自体、オブリビオンマシン故に破壊されても骸の海に還るだけ。ならば、必要とあらば最後まで使い潰す。まさに『使い捨て』の名に相応しい運用である。
残る四腕を使いバスへと組み付く。短刀が機体の首筋へと突き刺さる。センサー系の一部がやられたか、コクピットからの視界が閉ざされる。だが構わない。コクピットハッチを開き、バスを生身の視界に捉える。
次々と突き刺さる刃、やがて機内にレッドアラートが響き渡る。動力部に刺さったか。だが此処までくれば充分だ。小枝子は立ち上がる。狙うは妖怪バスの窓。
シートを蹴り跳躍、眼前の窓へと飛び込む。ガラスの類の張られていない窓ゆえに、その身は抵抗を受けることなく車内に転がり込む。直後、ディスポーザブル02の腰部が爆発し火を噴く。爆発は連鎖し、崩壊してゆく青き痩身。バラバラになりながら、バスの遥か後方へと吹き飛んでいった。
「捉えたぞ……!」
破壊された乗機には目もくれず、立ち上がった小枝子は後部座席の少女――大祓骸魂を視界に捉える。緩やかな所作で立ち上がる大祓骸魂、嫋やかな微笑みを浮かべてみせて。
「あらあら、そんなに慌ててバスに乗り込むなんて。余程急いでおられたのね?」
穏やかとも見える笑みと共に、再び形成される短刀群。四方八方から包囲軌道を描いて襲い来るそれを前に、小枝子は生身となっても尚怯まず。
「当然だ!」
腰から引き抜いた散弾銃を発砲。発される弾丸はオーラによって形成されるもの。故に弾切れなど恐れることなく次々と撃ち放たれ、着弾すれば広範囲に霊障を撒き散らし。機関銃じみた勢いで飛来する短刀を次々撃ち落としてゆく。
「お前は! 一秒でも早く壊してみせる!」
以て開かれた空間へと、恐れることなく跳躍。仕損じた短刀が背に、肩に突き刺さるが、構わず身を捻り機動。天井、壁、座席の全てを蹴り渡る立体機動で以て、一気に大祓骸魂へと肉薄。
「狭い! が、近い!」
「っ! 乱暴な方ですのね……!」
瞬く間に接近を許した大祓骸魂、迎撃せんと己が身を巻く注連縄を繰り出すが。
「……ッ! 壊れろ……! その執念ごと……!」
だが、ユーベルコードによって恐怖心を消し飛ばした小枝子の攻撃が先んじた。腰の神器拳銃の力にて電荷弾ける鉈が振り下ろされ、少女の姿した大妖の肩へと深く、深く食い込んで。その全身を、高圧電流が焼き焦がしてゆく。
成功
🔵🔵🔴
岩永・勘十郎
【⑮真の姿を晒して戦う(🔴は不要)】
「お前さんが生き、こちらがお星さまになるんじゃ面白くないんでな。
お前さんに恨みはないが、斬らせてもらう」
マント脱ぎ捨て本気の姿で戦う。その瞳には猛禽類の類のような、獲物に【恐怖を与える】【殺気】が燃え上がる。
「いざ参る!」
敵の攻撃を瞬時に【見切り】回避する。これも勘十郎の【瞬間思考力】の賜物。今までの戦争で培った【戦闘知識】から導き出されるそれは、ほぼ確実に起こる事象。それを様々なパターンで予測し回避しているのだ。
そして【残像】が残る程の【早業】で攻撃を【受け流し】ながら斬り裂き、親分の間合いまで入り込む。そのままUCを発動し敵の魂その物を斬り裂いた。
風吹き荒ぶ湖畔の草地。片隅には小さな祠。龍神親分『碎輝』の在った領域を模したその地にて、向かい合うは白無垢の少女と、軍装の青年。
「あくまでも、私の愛を拒むのですね」
少女――大祓骸魂が、何処か哀しげな声音を漏らしながら、目を伏せる。
「お前さんが生き、こちらがお星さまになるんじゃ面白くないんでな」
青年――岩永・勘十郎(帝都の浪人剣士・f23816)は応え、刀を抜く。小銃兼正、人を殺す為の刀なれど、ヒトならざるものを斬ることも可能とする。
「お前さんに恨みはないが――」
そして刀持たぬ手がマントを外し、そして脱ぎ捨てる。宙に舞うマントが翻り、刹那、その顔を隠し。
「――斬らせてもらう!」
再び露わとなった顔は、本気の殺意を露わとした顔。真紅の瞳は猛禽めいて鋭く、見据えた得物に恐怖与える狩猟者の瞳。
戦場に満ちる虞が齎した、勘十郎の真の姿。人を、敵を斬る純粋な殺意のカタチ。
「――怖い顔をなさるのですね」
さも怯懦を覚えたかのように、衣の裾で口元を隠す大妖の少女。そんな彼女を守ろうとばかりか、妖怪の群れが何処からか湧き出ては彼女を囲む。
「数を恃むか、それも良かろう」
構わんとばかりに刀を構える勘十郎。細めた瞳が、妖怪の群れの先、首魁たる少女を真っ直ぐに捉える。
「――いざ、参る!」
駆け出した勘十郎、妖怪達が迎え撃つ。鬼の棍棒が振り下ろされ、悪霊達が怨念の弾丸を放ち、側面から猫じみた姿の妖怪が爪を振るい斬りかかる。
(―――)
勘十郎の脳内で、無数の戦闘シミュレーションが瞬時に展開される。現在の状況、これまでの戦争にて培った経験と知識。どう動けば、どのような結果となるか。最良の結果を得るには、どう動けば良いか。無数の選択肢を選び取り、切り捨て、絞り込む。ここまでコンマ一秒にも満たぬ。
後は現況との答え合わせだ。右前へ踏み込み鬼の棍棒を躱しながら一閃。斬られた鬼が崩れ落ちる。その向こうから飛来するは怨念弾。身を屈め潜り抜ける。怨念弾は残された残像を貫くに留まる。
即座に身を捻り、背後からの追撃を試みた猫妖怪の爪を刀にて受け流す。即座に返しの斬り上げ。猫妖怪が吹き飛ぶ。
更に跳躍。次弾を繰り出さんとした悪霊達の間を跳び抜ける。すれ違いざまの斬撃。悪霊達が墜落してゆく。
妖怪達の間を巧みな身捌きにてすり抜け、躱し、斬り返し。その疾走を殆ど止めることなく、大祓骸魂の目前まで駆け迫る。
「随分と、生き急いでおられるようで」
大祓骸魂が笑みを浮かべると共に、周囲に浮かぶ灯篭が強い光を放ちだす。攻撃の構えか。
繰り出される攻撃を予測する。光線か、光弾か、波動か。其々に対する回避手段を策定。後はいずれが来るか見切りを違えぬように。油断無く構えつつ尚賭ける。
果たして、放たれたるは大きな光弾。高速で撃ち出される其を、身を翻して回避。後はこの勢いのまま大祓骸魂へと斬撃を――
否。光弾が、急激に輝きを増して膨れ上がる――!
「しもうた、其の手が――!」
爆裂。呪力の奔流が、勘十郎を飲み込み荒れ狂う。湖畔に一時、一際強い風が吹き荒れる。大祓骸魂はその風にも怯まず、ただ爆心地を茫洋と眺め――
「――!」
瞳を見開く。飛び出したる影は勘十郎。纏いし衣に焦げや裂けは生ずるも、爆発の勢いに比すれば随分と傷は少ない。危機を目前としても尚冴える瞬間思考力。先の状況を斬り抜ける最適解を瞬時に見出し、そして実行してみせたのだ。
最早、彼を止めるものはいない。そのまま大祓骸魂へと肉薄。愛刀を振り上げる。
「その魂――斬り捨てる!」
袈裟懸け一閃。振るわれた刃は、大祓骸魂の身へと一切傷をつけることなく、ただ、骸の魂魄のみを、斬り裂いた。
成功
🔵🔵🔴
フロッシュ・フェローチェス
とうとう見えたね、大ボスが……ならここは、【真の姿を晒して戦う】と、しようか。
全速力だ……貫き、うち砕く。
クイックドロウで、衝撃波の砲弾を放って、先制攻撃だ。続けて不規則に、奴の周囲をダッシュし続ける。
まだまだいくよ。衝撃波の乱れ撃ちから、一気に相手へ接近する……フェイントをかけて、残像に気を取らせ視界の外からだまし討ちを行う。
反撃には咄嗟の一撃でカウンターして弾いたり、弱所を見切って切断する。
遠近をスピーディに切り替え続けるよ。
相手がUCを出しても、すぐには対応しない。瞬間移動の如き、早業移動で刀を、避け続けるんだ。
そしてほんの一瞬、立ち止まって、UCを発動だ。限界突破の速さで……斬り裂く!
風吹き荒ぶ湖畔の草地、先に碎輝と対面したあの領域を思わせる風景を、緑の風が駆けてゆく。領域を満たす『虞』が、その速度を更に高めてゆく。
それは只の風に非ず、人のカタチをした風。フロッシュ・フェローチェス(疾咬スピードホリック・f04767)、超速のキマイラ、その真の姿。
(――見えた。あれが大ボス――大祓骸魂)
左に比べ大きく開かれた右目が更に見開かれる。その視線の先に、数多の祭具纏う少女の姿。あれが大祓骸魂。見目は幼いとすら言える少女なれど、溢れる虞の程、彼女が尋常の存在でないと察するに余りある程。
(ならば、全速力だ……貫き、打ち砕く)
速さこそ己の最大の武器。其を限界まで研ぎ澄ますのみ。更なる加速と共に、一気にかの少女との間合いを詰めて――
「行けっ!!」
急ブレーキと同時に右腕を突き出す。加速の末に纏った風と速度が右腕へと集束、衝撃波となって射出。砲撃じみた勢いで虞の少女を襲う。
「!」
なれど大祓骸魂、携えた和傘を構えて身を守る。先制攻撃には対応された。だが無論、これで終わりではない。
「まだまだいくよ……!」
既にフロッシュは再加速を開始。速いだけではない、緩急と切り返し、接近と離脱を交えた不規則な機動にて、敵の周囲を駆け回りだす。
大祓骸魂は動かない。仕掛けてきたところを反撃するつもりか。だが容易に後の先など取らせはしない。
左右の腕を振るい、衝撃波を立て続けに撃ち出す。風に舞うかの如き動きで躱す大祓骸魂。そこへ一気に踏み込むフロッシュ、得物たる軍刀を振るい斬りかかる。
「そんなに急いで――何処へ行かれるのでしょうか」
大祓骸魂の背後に控えていた鉄の拳が繰り出され、フロッシュを打ち据えんとする――が。拳が触れた途端に掻き消える、緑のキマイラの姿。
「こっちだ!」
「っ!」
左側面よりフロッシュの声。振り向いた少女を、振り抜かれた軍刀が斬り裂く。
「騙すなんて、悪い人……」
よろめく大祓骸魂を庇うかのように、無数の折り鶴が飛翔しフロッシュへ突撃する。軍刀を振るい斬り払いながら距離を取るフロッシュ、そのまま再度駆け出してゆく。有り余る速度によって遠近を素早く切り替え、敵に的を絞らせない。
なれど大祓骸魂も後手に回ってばかりでは居らぬ。その周囲へと懐の短刀の複製が次々と作り出され、周囲を守るように旋回飛翔。一部はフロッシュを目掛け撃ち出されてゆく。
「くっ、これは流石に厳しいかな……!」
切り払えど躱せど、執拗に追従し突き刺さらんとする短刀の群れ。回避機動を読むかのように回り込み、或いは選択肢を潰すように飛び交う刃、その全ては躱し切れず、フロッシュの肉体に傷が刻まれてゆく。
だが彼女はそれまでと異なり、積極的な攻勢には出ない。更に速度を上げ、瞬間移動と紛うかのような機動によって担当を振り切らんとする。
然し尚も追尾を続ける短刀群、それらの執拗な包囲の前に、ついにフロッシュの足が止まる。大祓骸魂、決めようとばかり全ての短刀を彼女目掛け突撃させる。
だが、それこそがフロッシュの狙い。一瞬の停止さえも、切り札への布石。
「………そこだ―――!!」
叫ぶ声を残して、フロッシュの姿が消える。現れた先は、大祓骸魂を挟んだ反対側。既に仕済ませたとばかり、刀を振り払えば。
「………!!」
ざくり、と盛大に斬れる大祓骸魂の肉体。先の一瞬の停止は、敵の攻撃を誘う為の布石にして、加速式の充填動作でもあった。以て解き放たれた超速度は、反撃を認識するより先に攻撃を完了する程。
「――っ。とはいえ、アタシはここまでか……!」
だが、それだけの超速度を実現するが故に肉体への負担は大きい。受けた傷も併せれば、これ以上の戦闘は危険か。
続いて攻撃を仕掛ける猟兵達に後を託し、フロッシュは離脱していくのだった。
成功
🔵🔵🔴
ユリウス・リウィウス
プレイングボーナス:よその戦争を無視して宴会する!
ああ、酒だ酒だ、酒持ってこい! この際だ。ワインとは言わん。清酒でも焼酎でもウイスキーでも持ってこい!
大祓骸魂――言いづれぇな。なあ、おい。おまえなんかハラエで十分だ。
ハラエ、酌しろよ、酌。俺に手酌酒させるつもりか?
酒肴はたんとあるんだろうな? 俺に酒をあてがったんだ。ちょっとばかりのつまみ程度は、すぐに無くなると思え。
ほら、酌だ酌。休めると思うなよ?
んー、雪? いや、これは桜の花弁か。異郷にて更なる異郷の花を愛でることになるとはなぁ。
言っておくが、ハラエに感謝なんかこれっぽっちもしてないからな。
宴もたけなわ。花見の始末は大祓骸魂の「暗殺」だ。
幻朧桜の咲き誇る丘。吹き抜ける風は穏やかで暖かい、常春の風景。
「ああ、酒だ酒だ! 酒持って来い!」
その只中、一際大きな桜の木の下にどっかりと座り込みながら、ユリウス・リウィウス(剣の墓標・f00045)が声を上げる。
「このような場所で酒宴だなんて、豪胆なお方ですのね」
応えるように、ユリウスの傍らへと姿を現す大祓骸魂。その腕に清酒の瓶を抱えて。
「ふん、この際ワインとは言わん。酒なら何でも構わんよ」
鼻を鳴らして彼女を見上げれば、その手の盃をずいと突き出す。小首を傾げてみせる大妖少女。
「大祓骸魂――言い辛ぇな。お前なんざハラエで充分だ。おい、ハラエ。酌しろよ、酌」
横柄にも酌を要求するユリウスに対し、得心いったかのように頷く大祓骸魂。酒瓶の封を開ければ、突きつけられた盃へと酒を注いでゆく。
ユリウスは注がれた酒を即座に呷り、無言のうちに再び突き出す。眉を顰めることもなく、応じて再び酒を注ぐ大祓骸魂。
「肴はたんとあるんだろうな? 俺に酒を宛がったんだ、ちょっとばかりのつまみ程度はすぐ無くなると思え」
「ええ、ええ。そうでしょうとも。其方に、たんまりと用意してありますよ」
据わった目で睨まれるのにも笑みを崩すことなく、大祓骸魂が示した先。いつの間にか広げられた茣蓙の上、並べられた料理の数々。刺身に煮物、漬物、焼き鳥もある。
「ふん、少しは使えるじゃねえか」
示された料理に手をつけ、食べ、酒を飲む。味も悪くはない。
「ほら、酌だ酌。休めると思うなよ」
「ふふ、承知しました」
盃が空けば即座に突き出して酌を要求する。応える大祓骸魂の表情から笑みは消えず。
そうして酒を飲む事数度。幾度目かの酌を受け、飲もうとした酒の水面に、ひらりと白いものが舞い落ちる。
「ん……雪?」
いや、違う。桜の花弁だ。頭上で咲き誇る、幻朧桜の花弁。ふと見上げれば、蒼き空一面に舞い踊る花弁の風景。何とも美しき、その景観。
「――まさか、異郷で更なる異郷の花を愛でることになろうとはなぁ」
目を細め、酒を一口。幻朧桜といえば本来サクラミラージュに在る花と聞くが。何故それが此処に――というのは然したる問題ではない。余計なことは考えず、ただ花を愛で、酒を味わうのみ。
「………」
ふと、遠い目となり、桜花舞い散るその風景に見入る。茫洋と眺めるユリウスの視界に――黒髪の少女の姿が、ちらりと見えた。
「……言っておくがハラエ、お前に感謝なんかこれっぽっちもしてないからな」
「ふふ、そうですか」
遠くを見ていた瞳が険を帯び、言い放つ。分かっているとばかりに、酒瓶を示してみせる大祓骸魂。宴は続く。
そうして半刻ばかりの時が過ぎて。酒も料理も、随分と飲み、食べた。
「――さて」
立ち上がるユリウス。散々酒を飲んだとは思えぬ程の、確りとした足取りで歩む。
「何方に?」
「ああ――」
大祓骸魂の後ろを、右から左へ。問いに答えるユリウスの瞳が、鋭い光を帯びて。
「――花見の始末を、しないとな」
「―――!!」
通り抜けざま、抜いた黒剣。瞬時に身を捻り、少女の脇腹へと、鋭く突き立ててみせた。
成功
🔵🔵🔴
リーゼロッテ・ローデンヴァルト
【WIZ】
※アドリブ連携大歓迎
※『ナインス・ライン』搭乗
※別称を好む
今更悲劇のヒロイン気取ってもダメ
アンタはただのストーカーさ
◆ボーナス
【ターボ移動しつつ戦う】
キャバリア&滞空中だし当然ブーストかけ放題♪
◆行動
『マトリクス・メモリ』起動
首左側のバーコードから融合させて
オペ53番【マトリクスドライブ・エクスファー】開始
電脳に妖力発生源を産み、妖仙状態再現
妖怪親分達との絆も感じつつ突撃っ
山本さんの『生命力増幅』で負荷を無視して機動
バズりんの『思考超加速』で虞を超回避したら
王子サマの『因果律調整』で確実性を高め
シリウス・マインのナパーム弾で彼岸花諸共焼却
碎輝クンの『各戦力強化』を受けた全弾速射で〆♡
風景は再び変容する。
UDCアースの高速道路。街路灯が煌々と照らす深夜の路面上を、凄まじい速度で飛翔する大小二つの影。
「あくまで、私の愛を拒むのですね。私はただただ、愛した世界を永遠としたいだけなのに」
小さな影、生身にて飛翔する大祓骸魂が悲しげに眉を撓めながら呟く。悲恋に嘆く少女じみた所作は、然し。
「今更悲劇のヒロイン気取ってもダメ」
大きな影、ブーストによって高速道路上を滑るように飛ぶキャバリア『ナインス・ライン』から断ずる声が響く。搭乗者たるリーゼロッテ・ローデンヴァルト(リリー先生って呼んでよ・f30386)のものだ。
「アンタはただのストーカー。二度とこっちの世界に近づけないように、徹底的に叩き出してあげるよ」
冷然と言い放つリーゼロッテ、左右の腕に持つライフルとビームマシンガンとを大妖少女目掛けて乱れ撃つ。まずは一撃当てることを目的とした攻勢は、然し。
「いいえ、いいえ。もう一息、もう一刺しなのです」
巧みな加速減速、更には跳躍。高空を風の如く高速飛翔する大祓骸魂、放たれたる弾丸の悉くを回避。
「今こそ、私はこの世界を抱擁しましょう。いつまでも、いつまでも――」
夢見るように、謡うように宣いながら、少女は両腕を広げる。周囲の大気が歪む。集束してゆく高密度の『虞』によって。歪んだ空間は、光退けし闇となって凝縮されゆく。
「ヤバ……っ!」
機体のセンサーが示す異常数値に危機を覚えたリーゼロッテ、咄嗟に機体を横へ滑らせる。直後、コンマ2秒前までナインス・ラインの飛行していた空間を、黒き闇の球体が抉り取るかのように突き抜けて。
路面に着弾した球体は、消えるでもなくアスファルトを抉り取るでもなく、半ば路面に沈み込んだ状態で一瞬停止――したかと思えば、そのまま前方へと超高速の飛翔を開始。彼方まで飛び去ってゆく。その軌跡に沿って、アスファルト上へ植え込まれたかのような無数の彼岸花を残しながら。
(こいつも物凄い『虞』を感じる……それに、この感じ。あいつの力になりそうなヤツだね)
彼岸花から感じられるのは、先程の球体程ではないが濃密な虞、そして狂気じみた愛。大祓骸魂の分け身とでも言えそうな力の集積。このまま戦うのは危険、リーゼロッテは判ずる。
(なら、早速こいつの出番かな)
コクピットの一角から取り出したるは、一つの記録媒体。一見する限り特別な力など何も感じられぬそれを、首元のバーコードへと押し当てれば――そこを入口とするかのように、リーゼロッテの体内へと沈み込んでゆき。
「――マトリクス・メモリ認証完了。現象再現用ホロアーカイブ、リローデッド」
それは『発生源の記憶』を司る記録媒体。『現象の物理的再現』という形で、本来リーゼロッテと縁の無い魔術等の神秘の行使を可能とする代物。そして、此度このメモリから引き出された発生源とは。
「どれ、アタシも妖を体験するかな……親分達、力を貸してね♪」
そう。此処まで彼女が対峙し、打ち倒してきた妖怪親分達。その全員の妖力の一部を再現したのだ。溢れる妖力の程、リーゼロッテを一時疑似的な妖仙と化さしめる程で。
「如何か受け入れてくださいな、あまり苦しませたくはありませんから」
再び路面近くまで高度を下げ、彼岸花の園と化したる上を飛翔する大祓骸魂。その周囲に、無数の光球が浮かび上がりリーゼロッテへ狙いを定める。
「お断りさ! ここで負けたら、親分達に顔向けできないしね!」
宿る力に、親分達との絆を感じる。ならば尚更、彼らから得たものを無碍にはできない。その意志に応えるように、ナインス・ラインのエンジンが更に出力を高めてゆく。
撃ち出される光球群。加速からの急減速、そしてブースタを全開としての超加速。緩急自在の切り返し。飛来する光球を次々と回避してゆく。
本来のリーゼロッテならば耐えられぬだろう急激な加減速と方向転換。まるで未来を識っているかのような回避機動。それらは全て、親分達の妖力が齎した力だ。
山本五郎左衛門からは、暴獣形態に由来する生命力の増幅を。
バズリトレンディからは、バズリ戦闘態に由来する思考速度の加速を。
しあわせな王子さまからは、幸運齎す黄金の輝きに由来する因果律調整能力を。
以て、雨霰と撃ち出される無数の光球、その全てを、大した損傷もなく切り抜けてみせ。
「手前勝手な愛には、悪いけれど燃え尽きてもらうとするよ!」
肩部装甲を展開、ミサイルポッドから撃ち出されるは無数のナパーム弾。地面に着弾すれば炎が広がり、敷き詰められた彼岸花を燃え上げてゆく。
霧散する虞と狂愛、大祓骸魂の挙動が僅かに鈍るのを、リーゼロッテは逃さず捉え。再度、両腕のライフルとビームマシンガンを構え。
「そして――これで締めにさせてもらおうかな!」
碎輝の妖力が齎した、成長の権能に由来する戦闘力強化。放たれる弾丸は、先程よりも連射速度、射撃精度、出力、全てが別次元な程に向上し。
大妖少女の身体を、無慈悲に撃ち抜いていった。
成功
🔵🔵🔴
隠神・華蘭
⑤の『連ね鳥居の中で戦い、敵の逆鱗を攻撃する』を選択です。
さぁ、貴女がわたくしを倒すかわたくしが逆鱗を撃ち抜くか……勝負です。
鳥居が出現するでしょうからこの際利用させて頂きます。
彼女の彼岸花攻撃を化術で煙を上げ木の葉に変わって逃げ足早くひらひら舞って回避したのと同時に周りの鳥居群を化術にてわたくしの姿に変化させます。
わたくしを見失っている間に彼女の死角かつ近い鳥居まで木の葉のまま念動力でそっと浮いて近づき変化を解除、
「逆鱗は守りますよねぇ!?」
と質問して矢を形成しつつ手持ちの葉っぱの小判を全てぶつける範囲攻撃を仕掛けます。
逆鱗以外はこの程度防ぐ必要も無いはず……今防いだ箇所を矢で撃ち抜きます!
ルメリー・マレフィカールム
……上手くは言えないけど。死んでしまえば、生きていた時とは別のものになってしまうと思う。
……世界も、きっと同じ。だから……あなたがこの世界を好きだったとしても、止めさせてもらう。
千本鳥居。私に勝てるチャンスがあるとすれば、そこしかない。
飛んでくる懐刀を【走馬灯視】で観察しながら、より密度の薄い場所を最短距離で駆け抜ける。当たる軌道の刃は側面にナイフを当てて逸らして、決して立ち止まらないように動く。
ナイフの間合いに近づけたら【走馬灯視】で見つけた逆鱗を狙って刺突。ドラゴン化して弱点を持った今なら、ただのナイフでも重傷を与えられるはず。
【アドリブ・協力歓迎】
再び変容する風景。広がるは幽玄なる霊山、無数の鳥居が立ち並び道を形作る。然しそこに満ちるのは霊力ではなく、悍ましい程に濃密な『虞』。
なれどその中を恐れず駆ける猟兵が二人。一人はルメリー・マレフィカールム(黄泉歩き・f23530)、甦らされ過去を失った、生ける死者の少女。
今一人は隠神・華蘭(八百八の末席・f30198)、嘗て伊予国の総帥の元に集いし八百八の化け狸、その末席に在ったという妖怪。
鳥居の間を駆け、斜面を登りゆく先に、白無垢の少女の姿を見出す。大祓骸魂。華蘭とルメリーとを茫洋たる瞳で眺めて、微笑む。
「さぁ、貴女がわたくしを倒すか、わたくしが貴女の逆鱗を撃ち抜くか……」
華蘭、得物たる大振りの鉈を取り出す。そして斜面を登りきると共に跳躍、身を捻りながら大祓骸魂へと空中から肉薄し――
「勝負ですぅ!」
着地と同時に袈裟懸けの斬撃。されど大妖、滑るように横へと動き回避。そのまま地を蹴り、鳥居の道の外へと抜け――ようとして留まる。眼前の空間を、投擲されたナイフが飛び抜けてゆく。
「……上手くは言えないけど」
ルメリーである。今し方投げたナイフとは別の大振りなナイフを抜き、大祓骸魂へと斬りかかる。
「死んでしまえば、生きていた時とは別のものになってしまうと思う」
事実、ひとたび死して、そして甦らされたことで、過去の己を失ったルメリー。故にこそ、その言葉には実感を伴った重みがある。永遠となった世界は、果たして本当に、今のままなのか?
「だから……あなたがこの世界を好きだったとしても。止めさせてもらう」
鳩尾狙いの刺突。大祓骸魂、後ろへ跳び退きそのまま鳥居の道の外へ。
「私は、UDCアースを愛しています。どのような姿に変わり果てようとも」
ルメリーへの返答は、常人の尺度なれば一途な愛と言えるだろう。だが、それがすべての破滅を伴う以上。賛美を返す訳にはいかない。
反論せんと見上げるルメリー、しかしその瞳が驚愕に見開かれる。大祓骸魂の周囲に浮かび上がるは、無数の短刀。彼女の懐刀『生と死を繋ぐもの』の複製。その一つ一つが、神智を超えた膨大なる虞を纏う。
「私の愛は、誰にも止められません。あと一刺し、必ずや届かせます」
華蘭とルメリーを目掛け、一斉に撃ち出される短刀。大祓骸魂の思念によって軌道を複雑に変えながら、二人へ包囲攻撃を仕掛けにかかる。
「何のっ! てぇいっ!」
華蘭は己の指を前髪の葉っぱ製ヘアピンに添える。直後、その場に立ち込める濃密な煙。すぐに吹き散らされていった煙の向こうに、華蘭の姿は無く。
「「「いざ勝負ですぅ!」」」
入れ違うかの如く、周囲の鳥居の何本かが華蘭の姿に変化し、大祓骸魂へと襲い掛かってゆく。
(……時間稼ぎ。なら、頑張ってみよう)
その行動の意図、敵の決定的な隙を掴むための撹乱であろう。ルメリーはそう判断する。
赤の瞳を大きく見開く。『死者の瞳』。死の間際の如き主観時間の延長を齎し、以て世界の全てが本来より緩やかに見える瞳。
飛来する短刀の間隙を見出し、駆ける。間隙が無ければ、ナイフで短刀を弾いて作り出す。その間も、足が止まることはない。
地に突き立った短刀は、その場に紅き彼岸花を咲かせる。狂気的なまでの愛を感じさせるその花は、しかしこの距離ならば敵へと強化を齎すことはあるまい。
執拗に飛来する短刀群を打ち払い躱し続け、少しずつ大祓骸魂のもとへと前進。その進撃に、華蘭の分身を粗方排除した大妖少女の意識がルメリーへと移る――まさにその時。
「そこに逆鱗があるなら守りますよねぇ!?」
突如、大祓骸魂へと投げかけられた問い。振り向いた彼女を目掛けて浴びせられる、無数の小判。
声の主は、その手に青き炎の弓矢構える華蘭。己の分身を囮として身を隠し、敵の視界より隠れながら、ルメリーに気を引かれて死角となったこの鳥居の上へと昇っていたのだ。
浴びせられる小判は本物ではない、華蘭が葉っぱから化術で作り出した偽物だ。その威力、大した脅威とはなり得ぬが。
(……あそこ……守ってる……?)
ルメリーの瞳が細められる。強大なるオブリビオンである大祓骸魂。その存在を前にイミテーションの小判は大した威力を発揮できず、故に彼女は大して防御行動を取らない――ある一点を除いて。
そこは『逆鱗』。この霊山に在るオブリビオンは『ドラゴン化』という現象を引き起こし、戦闘力が全般的に高まるのと引き換えに、逆鱗と呼ばれる致命的な弱点を抱えることになる。それは大祓骸魂といえど例外ではない――そう信じ、炙り出す連携を図った二人。
そして。
(――あそこだ!)
死者の瞳を擁するルメリーは見逃さない。大祓骸魂の腕が、胸元のある一点を徹底的に守っていることを。そこは――
「華蘭、鎖骨……! 鎖骨の間を、狙って……!」
叫ぶと共に自らも駆ける。見出した弱点に、狙い澄ました一撃を撃ち込む。それが、大祓骸魂に対する己の唯一の勝機と見るが故。この機、逃がしはしない。
「承知しましたぁ!」
応えた華蘭、蒼白の炎纏う弓に番えるは、同じく蒼白の炎にて成る炎の矢。引き絞り、狙い澄ますは大妖少女の鎖骨と鎖骨の、その狭間。
「願わくばこの矢、外させ給うな――!」
祈りにも似た決意と共に、矢を放つ。飛来する炎矢に気付いた大祓骸魂、だがルメリーと周囲の小判に気を取られていたが故に守りは間に合わず――
「―――!!」
矢は真っ直ぐに少女の鎖骨の間へと突き立ち、蒼白の炎が生じた傷口へと流れ込む。実際の霊山に在ったオブリビオンと違い、その一撃で斃れこそはしないが、声にならぬ苦悶を浮かべる様は、受けたる痛みの程を如実に示していた。
もがき、よろめく大妖少女。肉薄したルメリーの、突き出すナイフを躱そうともできず。
「――ぅ、あぁ――!!」
逆鱗へと深々突き刺さったナイフの一撃。何の変哲もないただのナイフが、大いなる邪神の一角たる究極妖怪に、確かなダメージを与えてみせた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
水鏡・多摘
④親分と妖怪軍団の両方と戦い、誰も殺さないようにする
これはあの東方親分の…ならば狙うは大祓骸魂のみ。
他は全て止めてくれよう。
龍脈使いの力でこの地からエネルギーを吸い上げ蓄えつつ、龍符に式神を降霊し余剰エネルギーを渡しておく。
停止の呪詛を乗せた符を念動力でばらまき陣を作り結界を展開、範囲内の妖怪達の動きを縛る。
結界の維持は式神に任せ高速思考で状況を把握、空中浮遊や機動で時折高所や空に逃れつつ敵戦力を封印、足止め。
十分削れたら突風のブレスで大祓骸魂までの進路上の妖怪達を吹き飛ばし、
その隙にフェイントをかけつつ飛び込み祟り縄を伸ばし体勢を崩し、UCの尾の一撃を全力で叩き込む。
※アドリブ絡み等お任せ
再び変容を果たした風景に現れたのは、広大な白砂の庭園と武家屋敷。
居並ぶは無数の妖怪達、全て骸魂を取り込みオブリビオンと化した者達。
(これは――あの東方親分の……)
その地へと降り立てしは一柱の龍神。水鏡・多摘(今は何もなく・f28349)は視界に収めたる光景を認め、得心したとばかり頷く。
東方親分の領域『サンモトのマヨヒガ』を模したと思しきその風景、そして数多の妖怪達。かの親分の威風溢れる佇まいを思い出すが。
(――だが)
妖怪群の中心へ向ける視線は厳しい。其処に在るのは、本来在るべき四尾の猫又ではない。白無垢の少女――大祓骸魂。
(狙うは彼奴のみ。他は全て止めてくれよう)
その心中に渦巻くは、嘗てUDCアースの邪神を滅ぼしたる龍神達の一柱としての矜持か。守護していた村を邪教に狂わされ滅ぼされた怨みか。或いはその両方か。
嘗てと違い、この身は悪霊となり果てども。今一度、世と其処にあるものを守るべく。龍神は飛翔する。妖怪の大群を目掛けて。
「嗚呼、恐ろしいものが近づいてきます。どうか、この身をお守りくださいませ」
迫る龍神の姿を認めた大祓骸魂は、従えし妖怪達に願うが如く命を下す。心操られるが如く応える妖怪達が、矢弾、妖力弾、呪詛弾、その他数多の飛び道具を撃ち出し投げつけ、飛来する多摘を狙う。
「―――」
身を捻り迫る弾雨の中を飛翔し、致命ならぬものは敢えて受け。瞬時の思考で最適なる回避機動を見出しつつ。多摘は構えたる符――複数ある全てに念と共に力を籠める。引き出したるは龍脈の力、この東京という地に集う霊力を己の身へ吸い上げ、蓄えてゆく。
そして空中で身を一回転、式を宿した龍符を投げ放つ。妖怪群を包囲するかの如き形で。
「何をするおつもりかしら……?」
訝しむ大祓骸魂、自らもその身から光弾を乱射し多摘を狙う。一撃一撃が致命の威力を有するそれを、上空に逃れることで回避しつつ、多摘は応える。
「無論、汝に誑かされし妖らを止める――喝ッ!!」
そして声を発すれば、応えたる式らが展開された符を起動。符によって敷かれたる陣が結界を成し、その内の妖怪達が一斉にその動きを止める。
「あら、まあ――」
一瞬で従えた妖怪達を無力化され、驚いたのか納得したのか。それでも僅かに残った動ける妖怪達と共に、大祓骸魂は迎撃の攻勢を強める。
妖怪達の放つ呪詛弾に紛れ、己の光弾を続けざまに放ち。更には周囲の雪洞が輝いたかと思えば、多摘を狙った光線が撃ち出されてくる。
「汝には何一つ渡しはせぬ……この世界も、幽世も。其処に生きるもの達も、何一つ!」
刹那の判断にて致命の傷を躱し、肉薄してゆく多摘。その身を掠める弾丸が、光線が、衣や鱗を裂いてゆく。なれど致命には遠いが故に捨て置く。
「退け! 汝らに罪は無し!」
そして吐き出したる息は一陣の突風を成し、居並ぶ妖怪達を吹き飛ばす。後に残るは、ただ討つべき邪神のみ。
「私に何も愛させて下さらないなんて、意地悪なお方」
それでも大妖は平然と笑み、懐の刀を抜く。突き刺したるものを必ずや殺す、夥しい呪詛を感じる刃。
「其は愛に非ず! 破滅そのもの也!」
断ずる多摘の身に纏われた祟り縄が撃ち出され、大祓骸魂へと絡みつく。身を捻り脱出を試みる大祓骸魂、なれどその身が崩れるは避けられず。
「今一度滅びよ! 忌まわしき邪神よ!!」
見上げた少女の眼前、翻身せる龍神の悪霊の姿。身を翻した勢いを乗せたる龍尾は鉄鎚と化して、邪神の肉体を打ち砕かんばかりの勢いで叩き付けられた。
成功
🔵🔵🔴
オリヴィア・ローゼンタール
プレイングボーナス:UDC-Pやエージェント達と協力して戦う
空間を、世界を歪めるほどの虞……これが邪神の力
必ずここで討つ!
光輝の護り(オーラ防御・呪詛耐性)を纏い、駆ける(ダッシュ)
【怪力】を以って聖槍を振るい、百鬼夜行を【なぎ払う】
聖槍から荒れ狂う暴風の魔力を解き放ち、【壊嵐旋迅槍】
虞の彼岸花を【吹き飛ばし】、大祓骸魂を斬り刻む
地に咲き乱れる彼岸花の力で強化されても、大祓骸魂への攻撃を緩めない
UDCのエージェントたち、そして妖怪たちに檄を飛ばし(鼓舞)、彼岸花を焼き払い斬り払い、援護してもらう
皆さん、手を貸してください!
両世界の力を借り、【限界突破】【全力魔法】の【壊嵐旋迅槍】で圧し潰す
変容を果たした風景、其処に現れたるは現代的な建造物。どうやらUDC組織の施設を模した建物らしい。
なれど、其は尋常の建造物では有り得ない。空間を、世界を歪める程の虞が成したる業。オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)はその力の程に驚嘆を隠せぬ。これが邪神の力であるか、と。だが。
(だが、故にこそ……必ずここで討つ!)
その胸に宿した決意に些かの揺るぎも無し。施設の中へと駆け入ってゆく。
「くっ、一体何が起きたっていうんだ……!」
「これが猟兵の言っていた邪神
……!?」
施設の中心、吹き抜けとなったホールの中。スーツ姿の男女が数名、迫る脅威に対し拳銃を撃ち放ち抵抗を試みる。何処からかこの地に連れて来られたらしいUDC組織のエージェント達だ。
「うぅ、来るにゃっ、来るにゃぁぁ……!」
エージェント達に紛れて、なけなしの妖力を弾丸と成して撃ち出す、猫又と思しき少女達の姿もある。UDC-Pとして組織に保護されていた妖怪達らしい。
「恐れることはないのです……力を抜いて、私の手を取って」
飛来する弾丸を意にも介さず、怯える彼らに歩み寄る白無垢の少女。その歩むに従って、周囲の床に彼岸花が咲く。少女の宿す、溢れんばかりの愛の具現。それは――この世界を殺す程の愛。
少女――大祓骸魂の放つ膨大なる『虞』は、常人たるエージェント達や、一般の妖怪達にとっては正気を著しく掻き乱す代物。以て彼らを狂気に堕とし、己に従属させる。それが彼女の在り方。愛し方。
狂い咲く彼岸花に満たされるホール、既に狂気へと堕した百鬼夜行の妖怪達。いよいよエージェント達の正気が限界を迎えんとした、まさにその時。
「退け、邪神!」
後方の大扉を吹き飛ばしながらホールへ飛び込んできた光の奔流。溢れる虞を退ける光輝の守りを身に纏う修道女が、膂力の限りに黄金の聖槍を振るえば。居並ぶ妖怪達が光の暴風に薙ぎ払われ、吹き飛ばされてゆく。
更に前方へと槍を突き出せば、其に纏われた神力が暴風を成し。迫っていた少女型の邪神を撃ち据えると共に、その周囲の彼岸花を吹き飛ばす。
「あ、貴女は……猟兵!?」
エージェントの一人が驚愕と安堵の混じった声を上げる。首だけを振り向けた修道女――オリヴィアは口元に笑みこそ浮かべつつも、その目は厳しく。
「ええ、皆さんを助けに参りました。ですが彼の邪神の力は強大、私一人にては手に余る相手。皆さんにも力をお貸し頂きたく!」
「で、でもアタシ達、お姉さん程に強くないにゃ……!」
協力を求めるオリヴィア、なれど怯懦を隠せない様子の猫又少女達。その様子を見たオリヴィア、其も致し方なしと頷きつつも。
「かの邪神は私が引き受けます。皆さんには周りの妖怪達と――あの彼岸花の排除をお願いします!」
妖怪達も彼岸花も、大祓骸魂に力を与える存在。なればそれらを排除することこそ勝利の鍵。
「この戦いこそ、二つの世界の命運を決する分水嶺! 共に力を尽くし――勝ち抜き、生き残りましょう!」
続いての檄を受ければ、エージェント達も猫又達も意を決したように頷いて。其を見届けたオリヴィア、彼らへ一瞬だけ微笑を見せると、再度表情を引き締め正面を向く。
「今を生きる人々も、彼らがこれから紡ぐ未来も! 貴様に渡しはしない! 覚悟!」
再度疾走、大祓骸魂を目掛け聖槍を振るい斬りつける。飛び退く大妖少女、反撃の光弾を撃ち下ろしオリヴィアを撃ち抜かんとするが。
「効くものか!」
一喝と共に再度纏われる光輝の護りが直撃を拒絶する。四肢を掠めて血が滲むが、この程度障りは無し。尚も前進し槍を振るう。
「嗚呼、なんて恐ろしい。未来などと、そんな不確かなもの――っ」
振るわれる槍を跳躍やしゃがみで回避する大祓骸魂だが、全ては躱せず傷が重なる。その挙動が、徐々に精彩を欠いてゆく。
周囲を見回す。あれだけ咲き乱れていた彼岸花が、猫又達の放つ炎の妖術で焼き払われてゆく。伴っていた妖怪達が、UDCエージェント達に退けられてゆく。彼女に力齎すものが、失われてゆく。
「未来を目指す意思こそ人の力! 妖とて明日があるからこそ今を生きる! 己の我欲のみにて、世界の明日を、否定などさせん!」
吼え、オリヴィアは聖槍を頭上にて旋回させる。伴い巻き起こる暴風が、周囲に残る彼岸花を斬り散らし、大妖少女の身へ重圧を齎す。
「震天動地の神威を以て、打ち砕く――過去に沈め、邪神!!」
そして振り下ろされた聖槍、猛烈なる嵐を伴う一撃が、白き邪神の全身を、激しく斬り刻んでいった。
大成功
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メイスン・ドットハック
【SPD】
本当に今までの戦場を再現するとはのー
じゃけど小さなかぐや姫の対処は慣れたからのー
PB: かぐや姫の大群に対処する
キャバリアKIYOMORIに搭乗して参戦
懐刀を装備したかぐや姫にに対抗する為、UC「宇宙に君臨せし星の獣達よ、来たれ」を発動して、マインドミナBVA培養体を召喚
その巨体とマインドミナ外殻を盾にして小さなかぐや姫の足止めにすると共に、懐刀を刺させて取り上げる
外殻は懐刀を取り込んだら離脱して、スカイツリーから落下させるようにする
自身はマインドミナの巨体を回り込みながら、大祓骸魂をロックオンし、レザー砲ユニットとLPL砲の精密集中射撃で側面を狙う
巨体ばかり目が行ってはいかんのー!
更なる変容の果てに現れたその竹林へと、蒼紫色の戦機が降り立つ。キャバリア『KIYOMORI』である。
「この竹林――本当に今までの戦場を再現するとはのー」
生える竹の殆どが光り輝く、此度の戦の序盤で目にしたその風景を思い返し、KIYOMORIのコクピット内でメイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)は驚嘆混じりに呟く。となれば。
KIYOMORIのセンサーが、無数の動体反応を捉える。小さく、発光するその存在。以前のこの戦場にて猟兵達を苦しめた、生まれたばかりの小さなかぐや姫達だ。しかも以前と異なり、その手には短刀――かぐや姫にとっては普通に刀と言っても良いサイズのそれを携えている。
「あれは……大祓骸魂が持ってる懐刀かのー?」
「――その通り。私の愛の証明、その複製を彼女達にも与えたのです」
その形状からメイスンが推測したのを、正面から届いた声が肯定する。KIYOMORIの前方に、白無垢姿の少女を捉える。大祓骸魂。
「幼子に刃物を持たせるとか、危ないことをするもんじゃのー」
「だからこそ、です。幼き故に迷い無し。私の愛を、迷わず、惑わず届けて下さるでしょうから」
眉根を寄せるメイスンに対し、微笑みと共に応える大祓骸魂。そんな彼女の意志を忠実に聞き届け、かぐや姫達が一斉にメイスンを目掛けて飛翔する。
「成程のー。それは確かに厄介じゃけど……」
迫るかぐや姫達の姿を認め、頷くメイスン。機内にホロコンソールを展開、電脳魔術の行使を開始。
「対処は基本的に同じで問題なさそうじゃのー」
なれどかぐや姫達への対処法は、以前かの戦場に出撃した際に把握している。敵が武装しただけならば、為すべきことは同じ。メモリ領域及びCPU演算領域の一部を制御術式に割り当て。以て、召喚プログラム実行。
直後、竹林を襲う激震。続けざま、地面の一部が爆裂。竹を薙ぎ倒しながら、巨大な物体が地中より姿を現す。
「――これは――」
流石に驚愕した様子の大祓骸魂の前、絶えず形を変える黄金色の外殻で全身を鎧う巨大生物――クエーサービースト『マインドミナBVA』、その培養体。培養体ゆえ、本来のそれと比べれば随分と小さいが、それでも身の丈100mに迫る、地上の尺度で言えば十分すぎる巨体だ。
その巨体と流動外殻ゆえに、制御に要する電脳魔術リソースも相当なものだが、此処こそそのリソースの投じ処と判ずればメイスンは躊躇しない。故の行使である。
巨大なる脅威の出現に反応してか、かぐや姫達が一斉に反応。現れたる星獣を目掛け一斉に飛翔、その手の懐刀を突き刺しにかかる。
「その刀、危ないから没収じゃのー」
メイスンがホロコンソールを叩けば、マインドミナBVAの装甲が半液状化、突き刺された懐刀を受け止め取り込む。そして体内に引き込み、以てかぐや姫から得物を取り上げてゆく。
得物を失ったかぐや姫達はそれでも執拗に体当たりやビーム発射を繰り返しマインドミナBVAを攻撃するが、流動装甲を纏う星獣には大した痛痒を感じさせない。彼女らにかの星獣は倒し得ない、そんな安定感すら感じさせる。
「これ程までに大きな生き物が存在するなどとは――けれど、心配は無用です。私は、貴方も――」
一方の大祓骸魂、最初こそ驚いたようだが、程無く落ち着いたようで。展開した雪洞から放つレーザーと、自らが撃ち出す光弾によってマインドミナBVAへと攻撃を開始。流石にその威力、星獣にとっても脅威たり得ると見え。黄金の巨体が苦悶するかのように震える。
「――ぅあっ!?」
だがそんな彼女の側面から迸る無数のレーザー。反応が遅れ、その身を貫かれ、抉られ。元より深く傷ついていた肉体に、更なる傷が刻まれる。
「巨体ばかり目が行ってはいかんのー!」
その主は無論のこと、メイスン操るKIYOMORI。巨大なるクエーサービーストはかぐや姫達への対処の術であるのと同時、大祓骸魂の目を引く為の囮でもあったのだ。
ここまで猟兵達との交戦を経て蓄積されてきた傷は、大祓骸魂から着実にその生命力を削り取り。以て、メイスンのこの攻撃への対処を不可能としていた。
「そして――これで終いじゃのー!」
展開した浮遊追尾式レーザー砲と、KIYOMORI自身が構えるプラズマレーザー砲。狙い澄ました射撃態勢から放たれた複数の光条が、邪神の少女を目掛け撃ち出され。
「嗚呼――また、私は拒まれてしまうのですね――愛しき、この世界に――」
己の終焉を齎す光が迫る中、大祓骸魂はその事実を認めて尚、微笑みを浮かべ。
「――けれど、どうか忘れないで。愛しきUDCアース、其処に生きる者達よ。それでも、私は、貴方を――」
遺さんとした言葉は、その主と諸共に光へと飲み込まれ。そのまま、消し飛ばされていった。
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大祓骸魂の消滅と共に、東京スカイツリー上空を覆っていた虞は霧散し。其処には元通りの星空が広がっていた。
虞の中に取り込まれていたUDC組織の者達も、オブリビオン化していた妖怪達も、無事に其々の在るべき処へ戻れた様子で。
以て、大祓百鬼夜行は終結。二つの世界は、猟兵達の活躍によって救われたのである。
大成功
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