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大祓百鬼夜行⑯~花恋焔道中

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行

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#カクリヨファンタズム
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#大祓百鬼夜行


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●真夜中妖怪TV
 不法投棄された機器が転がる郊外のはずれ。
 その中に横たわったブラウン管テレビの電源が突然、何の前触れもなく点灯した。
 ザ、ザザ、という音と共に砂嵐が表示されていき、テレビ画面が明滅する。
 青から白へ、薄紅から赤へ。さらには緑から黄色と様々に揺らぐ炎の色を映した後、画面に奇妙な映像が流れはじめた。そこに現れたのは旧時代を感じさせるフォントと色彩で彩られたテロップだ。

 古今東西、デートの行き先や方法は数多く存在する。
 意中のあの子を誘って出掛ける日は最高の幸せが得られるでしょう。
 しかし、独りよがりのデートでは関係の進展も望めません。
 そこで! 我々が立ち上がったのです! デートプランを組み立てた様々な若者を紹介し、より良いデートを支援するのが我々の使命。
 デートによるデートのためのデート番組バラエティ! その名も――。

『~焚きつけ! バーニングハート!~』

「てってれー。司会のヴォルヴァドスです。
 どうしてこうなったかは分からないけれど……頑張る……」

 テレビに竜神の少女が映ったかと思うと、周辺にセット舞台が現れた。
 これはつまり妖怪番組。画面の中だけだった世界は次第に現実に侵食していき、破茶滅茶な番組は留まることを知らずに巡っていく。

●花と逢引
「忙しいところ悪いが、デートをしてきてくれ」
 開口一番、いきなり妙なことを頼んできたのはUDCエージェントのひとり、ディイ・ディー(Six Sides・f21861)だ。ふと、流石に端折り過ぎたと気付いた彼は頬を掻く。そうしてディイは今回の状況について語っていった。
 UDCアースに打ち捨てられたテレビ。
 そのひとつに骸魂妖怪が宿り、『存在しない筈のテレビ番組』が始まった。
 妖怪がテレビの中から放送している番組を放置すると現実世界にまで影響が及び、周辺がその番組世界に切り替わってしまうのだ。
 番組中の妖怪は無敵も同然。
 しかし、妖怪番組には攻略方法がある。それは、テレビ企画に全力で乗っかって成功させること。そうすれば番組が無事に終了し、世界への影響も消える。
「今回視えたのは、焚きつけバーニングハートってバラエティ番組だ。名前が妙だが気にするな。どうやら恋愛をテーマにした番組らしいな」
 それゆえに最初にデートをしてきて欲しいと願ったのだと語り、ディイは詳しいこと、もとい番組内容を説明しはじめた。

 その名の通り、番組はデート模様を映すものだ。
 まずは挑戦者が行動プランを用意する。そして実際にデートを行い、相手をいかに喜ばせたかや、司会者の判定による評価点を競う企画だ。
「基本的には恋人同士で出演するものらしいが、今回のは妖怪企画番組だからな。別に本当の恋人じゃなくてもいいし、年の差も性別も、何なら種族も関係ない。ペット相手だっていい。デートだと言い張れば誰でも参加できるぜ」
 そして、今回はデートプランにひとつのテーマが設けられている。
 それは――『花』。
「花見デート、花を飾った食事、花畑や植物園に行く、相手に花を贈る……などなど、デート内容に花の要素が入っていることが出演資格だ」
 辺りには不思議な妖怪パワーが満ちているという。
 プランさえ先に掲げておけばテレビのセットが用意されたり、ロケにいったという設定になり、周辺に望んだ場所が現れるらしい。
「花見会場、ショッピング、映画館、おうちデート、なんでもござれだってさ」
 少しばかり都合が良すぎるが、この事態を放っておけば世界が番組に侵食されてしまう。そうなってしまうよりは割り切ってしまい、番組力を利用する方がずっと良い。
「そういうわけだ。頼んだぜ」
 各々、良いデートを!
 そういってディイは仲間達を見送り、ひらひらと手を振った。


犬塚ひなこ
 こちらは『大祓百鬼夜行』のシナリオです。
 UDCアースのゴミ置き場に捨てられたテレビのひとつに「存在しない筈のテレビ番組」が映し出されました。そこから始まった番組企画に乗っかって、妖怪を撃退しましょう!

 今回は比較的ゆっくりめの運営です。
 🌸【5月11日の朝8時31分~】🌸からプレイング受付を開始します。採用数は特に決めず、元気が続く限り頑張らせて頂きます。

●プレイングボーナス
『番組の企画に全力で乗っかる』(戦わずともダメージを与えられます)

●できること
 戦いは行われません。デートをしてください。
 デートには必ず『花』の要素を入れること。これを守れば自由にお過ごし頂いて構いませんので、お好きなことをしてください。

 デート場所はUDCアースに存在しそうな場所ならどこでもOK。
 テレビのセットやロケにいったという流れで、不思議な妖怪パワーによって望んだ場所が現れます。お店や映画館は勿論、ご自宅を再現することも出来ます。
 桜を見に行く、向日葵畑に行く、コスモスを見る、雪を花と称して冬景色で過ごすなど季節も問いません。
 つまりはシチュエーション自由のデートシナリオです。

●その他
 デートとは銘打っていますが、恋人さん同士でなくとも大丈夫です。
 どんなご関係でも構いませんのでお気軽にご参加ください。テレビ映りを意識するか、普通に日常の延長として過ごすかは皆様のご自由にどうぞ!

 ヴォルヴァドスにバトルを挑んでいたり、これが番組か~!というような感想の部分などはテレビの撮れ高的にカットされます。撮れ高が良さそうな場面中心にプレイングをかけてくださると描写しやすくなります。どうぞよろしくお願いします。

●デートリザルト
 番組企画なので、リプレイの最後にリザルトがつきます。
 楽しさ星五つ、サプライズ度星五つ、可愛さ:MAX等、ヴォルヴァドスちゃんが出してくれる感想のようなものです。結果は成功度には関係なく、ある程度の評価を行うと骸魂が満足していきヴォルヴァドスも解放されます。
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第1章 ボス戦 『『焚きつけるもの』ヴォルヴァドス』

POW   :    私を……止めて……お願い……
自身の【骸魂に抑え込まれている良心の抵抗】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD   :    銀禍戦塵『タイラント・アームズ』
【身体を包む『銀色の靄』が様々な武器や防具】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
WIZ   :    煌竜狂乱『ディザスター・ブレイズ』
【魂まで焼き尽くす炎のドラゴンオーラの頭部】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠リミティア・スカイクラッドです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

鴇巣・或羽
というわけでバンビちゃん(f31388)、時間ある?
勿論デートのお誘いさ。頂戴したいお宝があってね。

目的地は春の花々のテーマパークだ。
散策の合間にカフェで休憩。
暖かな橙の髪と、澄んだ翠の瞳…困ったな。
どの花が良かったかって話さ。でも、どんな花より、君の方が素敵でね。

夕方になったら、ミモザの咲き乱れる一画へ案内するよ。
一面のミモザが赤い夕陽に照らされて、橙に染まる姿をね。
――初めてこれを見たときに、なぜか君を思い出したんだ。

君は素敵なひとだよ。
いつでも可愛くて、誰よりも懸命で…どんな宝石の輝きよりも、魅力的だ。

そろそろ、俺の狙うお宝の話をしようか。
君だよ、森乃宮・小鹿――俺は、君を頂戴しにきた。


森乃宮・小鹿

デート……ほうほう、お宝絡みならいつもの下調べっすね
いいっすよ、或羽先輩(f31397)についてくっす

花のテーマパークなんて、素敵っすねぇ
途中のカフェではお花を見ながら紅茶とケーキをいただいて
たくさんのお花を前にちょっとわくわくします
……相変わらず口が達者っすねぇ
悪い気はしないっすけど

夕方、連れられたミモザの花畑には目を輝かせ
ええ、本当に、本当に綺麗
言葉を忘れそうになりながらも話を聞きます
……ボクを、っすか?

え、え、え
待って先輩、それはあの、えっと、ずるくないっすか?
あっと、えっと……
心を落ち着かせるため、一呼吸置いてからお返事しましょう

……ならば、怪盗さん
どうぞボクをあなたの腕の中へ



●夕刻、貴女を戴きに
 ――焚きつけ! バーニングハート!
 流れるテロップと音楽は番組の始まりの合図。
 何を焚きつけるのか。燃える心とは何なのか。そういった細かなことはさておいて、妖怪テレビ番組は記念すべき最初のデート模様を放送していく。
「というわけでバンビちゃん、時間ある?」
「時間っすか? それって――」
 或羽は微笑み、小鹿に手を差し伸べる。
 妖怪の領域に入っている今の状況で、予想できることはただひとつしかない。
「勿論デートのお誘いさ。頂戴したいお宝があってね」
「ほうほう、お宝絡みならいつもの下調べと同じようなものっすね。いいっすよ、或羽先輩についてくっす」
 小鹿は快く笑みを返し、或羽の手を取った。
 それから二人は目的の場所に向かっていく。或羽のエスコートで連れられたのは春の彩りに満ちた花々のテーマパーク。
 美しく整えられた花のアーチを潜れば、その先には散策路が続いていた。
「うん、綺麗だ」
「花のテーマパークなんて、素敵っすねぇ」
 たくさんの花を前にして、わくわくしている気持ちが止まらない。
 チューリップが咲き誇る道を行く二人は、花が織り成す景色を眺めてながらのんびりと歩いていった。その先にあるのはお洒落な温室めいた様相のフラワーカフェだ。
 あそこで休もうと或羽が誘うと小鹿も賛成した。
 白で統一された空間の天井にはフクシア、ペチュニア、ゼラニウムなどで作られたフラワーシャンデリアが揺れている。
 猫脚の丸テーブルに向かい合わせで座り、二人は紅茶とケーキを頼む。
 今日のおすすめは花柄模様で彩られたフルーツロール。そして、星口金で絞られたラズベリーやブルベリークリームが花のように飾られたミニカップケーキのセットらしい。
「これ、おいしいっすね」
「紅茶も香り高くて味わいも深いな」
 ケーキに舌鼓を打つ小鹿を見つめ、或羽は紅茶のカップをテーブルに置く。
 目の前に見えるのは暖かな橙の髪と澄んだ翠の瞳。或羽が静かに笑み、自分を見ていることに気付いた小鹿は首を傾げた。先程まで、フラワーパークの中でどんな花が一番良いかと話をしていた最中だったのだが――。
「困ったな」
「どうしたんすか?」
「どの花が良かったかって話さ。でも、どんな花より、君の方が素敵でね」
「……相変わらず口が達者っすねぇ」
 小鹿はそういってケーキに視線を落とす。フォークでカップケーキのクリームを掬う彼女が、悪い気はしないっすけど、と小さく口にした言葉を或羽は聞き逃さなかった。
 それ以上は言及せず、或羽もロールケーキの残りを口に運ぶ。
 そうして、穏やかな昼間の時間は流れていき――。
 夕陽が空を紅く染めていく時刻。
 或羽は案内したいところがあるのだといって小鹿を花畑に連れて行った。
「ここは……?」
「ミモザの花園だ。とても綺麗だと思って」
 其処はミモザの咲き乱れる一画。
 一面に咲く花が赤い夕陽に照らされて、辺りは美しい色彩に染まっている。
「ええ、本当に、本当に綺麗」
「――初めてこれを見たときに、なぜか君を思い出したんだ」
 息を飲み、景色に見惚れる小鹿。それ以上の言葉を忘れそうになりながらも、小鹿は或羽が語っていく話に耳を傾ける。
 或羽にとって、こうして花が橙に染まる姿は小鹿を思い起こさせるもの。
 視線を小鹿に向けた彼はゆっくりと語っていく。
「君は素敵なひとだよ」
「え、え、え」
「いつでも可愛くて、誰よりも懸命で、どんな宝石の輝きよりも――魅力的だ」
 或羽の言葉は真っ直ぐだ。
 戸惑いを隠せない小鹿に向け、彼はちいさく笑ってみせる。
「そろそろ、俺の狙うお宝の話をしようか」
「そういえば、お宝は……」
「君だよ」
「……ボク、っすか?」
 揺るぎなく告げられた言の葉があまりにも意外で、小鹿の思考が一瞬だけ止まる。そんな彼女の様子も可愛らしく感じた或羽は、最初と同じように手を差し伸べた。
「森乃宮・小鹿――俺は、君を頂戴しにきた」
 小鹿の頬が赤く染まる。
 それが夕陽に照らされているからか、感情に応じたものなのか。理由がどちらであるかは或羽にはよく分かっている。
「待って先輩、それはあの、えっと、ずるくないっすか?」
「欲しいお宝があるってことは最初から教えていただろう?」
「そうっすけど……あっと、えっと……」
 小鹿は高鳴る胸を押さえ、心を落ち着かせるために花に目を向けた。彼が先程、ミモザが自分のようだと云ってくれた言葉は嬉しくて、心にまで花が咲いていくようだ。
 小鹿は或羽を見上げ、真っ直ぐに答えた。
 差し伸べられている彼の手に自分の掌をそっと重ね、小鹿は一歩踏み込む。
「……ならば、怪盗さん」
 ――どうぞボクをあなたの腕の中へ。

 夕暮れの光が満ちていくミモザの園で、二人の影が重なった。


●Result
 花浪漫:★★★★
 怪盗度:★★★★★
 胸キュンメーター:MAX値💮
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ペペル・トーン
メルちゃん(f26225)と

私達の夢見る王子様に
素敵なデートを見せてあげましょ
そうしたら夢から抜け出して
会いたくなってくれるかも、なんて
互いの夢とロマンスを詰め込めば
さぁ連れて行って
今日だけの私の王子様?

手を取るままに引かれた先は
温かで穏やかな波の中
揺れる髪から足元へと視線を移せば
貴方の語る王子様を思い返し
足先合わせて尾鰭に変えれば
貴方は驚いてくれるかしら

陸の花は素敵だったけど
海の花もあるの?と
傾げて行く先を見れば
小さく浮かぶ白の群れ
小花のような水母達を覗いて
花模様に朗らかに華やいで

ああ、確かにそうね
でも…貴方が語る海は眩しいものだから
貴方の海を知りたいわ

ねぇ、教えて
私の知らない、賑やかな海を


江穏・メル
ペペル(f26758)と

ふたりが夢見る王子さま
今日はわたしが演じるわ
《みほん》になるように
きれいな男の子の装いで
躍る胸を張ってみせて

ああ、きみも知らないよな
海のことを教えてあげる!
無邪気に紡ぎ、手を引き
どぽんと沈む温かな海
すてきな尾ひれに瞬けば
わたしの役よ、と囁き笑い

桃色桜花に薔薇硝子
陸でふたり、花を見たけど
海にだって花はあるさ
ぷかり浮いてる水水母
みて、きれいな花模様!

だけれど――
かみかざりにできないかも
陸のほうが、りそう?
そわりと、きみを見て

! うん、教えるとも
海底に撫子の咲く海月もいること
そうして、もしも
きみの語る王子さまのよに
波寄せる気持も教えられたら

ぼくの海のこと
好きになって、お姫さま



●海の花
 ぺぺルとメル。
 ふたりには夢見る王子さまがいる。
 砂糖菓子のように甘い微笑みを交わし、ぺぺルはメルに語りかける。
「私達の王子様に、素敵なデートを見せてあげましょ」
「そうね、今日はわたしが演じるわ」
 メルもふわりと笑み、王子を思い浮かべた。今はまだ夢の中にしかいない王子さまだけれど。素敵な日々を見せたら、きっと――夢から抜け出して会いたくなってくれるかもしれない。なんてね、と笑うぺぺルはメルを見つめた。
 素敵なステキな《みほん》になれるように。
 今日のメルはきれいな男の子の装いに身を包んでいた。躍る胸を凛々しく張ってみせ、ペペルに差し出すのはエスコートの為のてのひら。
 凛と笑む王子様。
 今のメルには、互いの夢とロマンスがめいっぱいに詰め込まれている。
「行こうか」
「さぁ連れて行って、今日だけの私の王子様?」
「ああ!」
 ペペルがメルの手を取り、ふたりは踏み出していく。
 そうして、手を取るままに王子さまに引かれた先。とぷん、と音を立ててふたりが沈みゆくのは――深い、深い、泡沫が満ちる海の底。

 其処はあたたかで穏やかな波の中。
「ああ、きみも知らないよな海のことを教えてあげる!」
 メルは無邪気に紡ぎ、波間の奥にペペルを誘う。
 導かれる最中、ふとペペルは揺れる髪から足元へと視線を移す。メルがかつて語った王子さまを思い返した彼女は、ふわりと足先を合わせて尾鰭に変えた。
 貴方は驚いてくれるかしら。
 声には出さず、ペペルはメルをそうっと見つめた。
 その眼差しに気が付いたメルは視線を巡らせる。そうすれば、その先にすてきな尾ひれが見えた。幾度か瞬いたメルは、わたしの役よ、と囁いて笑う。
 そして、ふたりは海の景色の中をゆく。
「陸の花は素敵だったけど、海の花もあるの?」
 ペペルが問いかけると、メルはふふっと口許を緩めた。
 桃色の桜花に薔薇硝子。これまでも陸でふたり、花を見てきたけれど今日は少し特別な日。おいで、との手を更に引いたメルは先を目指す。
「海にだって花はあるさ」
「あれは?」
 メルが示してみせたのは波間にぷかりと浮いている白の群れ。ちいさく浮かぶそれらを見たペペルが首を傾げると、メルは白の群に近付いていった。遠目には見えなかったそれの正体は、愛らしくふわふわと躍る水水母。
「ほらみて、きれいな花模様!」
「ああ、確かにそうね」
 小花のような水母達を覗いてみれば、花模様がふんわりと見えた。朗らかに華やいだペペルは手を伸ばそうとした。しかし、それをメルが止めた。
 水母たちは少しばかり臆病で気難しい。ちくりと刺されたらやっぱり痛い。
「この子達は綺麗だけれど――かみかざりにはできないかも」
「そう、少し残念」
 花模様が尚も綺麗に揺れる最中、ペペルが少しだけ俯く。心配になったメルはほんの僅かに瞳を伏せて、そわりとしながら彼女に問いかけてみた。
「陸のほうが、りそう?」
「……どうかしら。でも……貴方が語る海は眩しいものだから」
 ――貴方の海を知りたいわ。
「!」
 ペペルが微笑むと、周囲にやわらかなソーダのような泡沫が浮かびあがった。
 その光景に言葉にできない美しさを感じたメルは思わず驚く。けれども、その瞳にはすぐに喜色が宿っていった。
 陸と海。どちらも良いところがあるから、まだまだ選べやしない。
 だから、今は。
「ねぇ、教えて。私の知らない、賑やかな海を」
「うん、教えるとも」
 嬉しそうに双眸を細めたメルは彼女の手をそうっと握り直した。
 海底に撫子の咲く海月もいること。
 そうしてもしも、きみの語る王子さまのように、波が寄せていくような此の気持ちも教えられたら。
「ぼくの海のこと、好きになって」

 ぷかり、ふわりと青が揺らめく。
 しゅわりと弾けるきみに、教えたいことがたくさん、たくさんあるから。
 きみはまだ、海の泡にならないで。――ねぇ、お姫さま。


●Result
 王子様度:完璧✨
 泡沫度:とても儚い
 海に行きたい度:★★★★★
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

旭・まどか
クラウン(f03642)と◎

何だ。意味を知らずに誘ったの?
そうだよ。僕を楽しませる事が出来たら正解
格好良くエスコートしてね

はしゃいだ君に手を引かれるまま
弾む靴音と跳ねる両翼の背を追う

連れて行かれた花畑は盛りを越えたろうに
色んな彩の絨毯が咲き乱れる
――嗚呼、一等は未だ見つかっていないけれど
君の頭に咲く人を喜ばせるための黄色は、悪く無いと思っているよ

待って、と求められるまま君の手元眺め
瞬く間に編み上げられた花冠に感嘆の声ひとつ

凄いね
有り難く頂戴しよう
ふふ、当然でしょう
僕が、君の編んだ花冠を被っているのだから

なに、エスコートする側が楽しんではいけないルールは無いでしょう
僕も楽しかったよ
合格点をあげる


クラウン・メリー
まどか(f18469)と◎

デートの意味は良く知らないけれど
相手を楽しませたら良いんだよね!

よーし、頑張る!
きゃっきゃとはしゃいで君の手を取り
お花畑へレッツゴー!

見て見て、お花がいっぱい!綺麗だね!
ね、まどかは好きなお花ある?

ほんと?えへへ、嬉しいな!
俺も自分のお花好き

そうだ!ちょっと待ってて!
菜の花とマーガレットを摘んでまきまきと編む

じゃーん!春花冠の完成!
まどか!俺の想い受け取って!
頭の上に乗せようと
わあ、可愛い!とっても似合ってる!

俺の方が楽しんでる気がするけど仕方ないよね?
だってまどかといっしょにいるのとっても楽しいんだもん!

わ、そっか!
じゃあ、めいっぱい楽しんじゃお!

やったぁ!合格だっ



●春の冠を君に
 デート。
 そう聞いてもいまいちぴんとは来なかったけれど、要は二人で出掛けることだ。
 クラウンとまどかは番組領域に踏み出し、目的の場所を目指していく。
「デートの意味はよく知らないけれど、遊びに行けばいいなら簡単だね」
「何だ。意味を知らずに誘ったの?」
「相手を楽しませたら良いんだよね!」
「そうだよ。僕を楽しませる事が出来たら正解」
 格好良くエスコートしてね、と告げたまどか。彼に太陽のような目映い笑みを返し、クラウンは意気込む。
「よーし、頑張る! それじゃさっそく行こう!」
 クラウンはまどかの手を取ると、はしゃぎながら先へと駆けていく。
 まどかは手を握られるままに、彼の弾む靴音と跳ねる両翼の背を追っていった。
「お花畑へレッツゴー!」
 明るく笑っているクラウンが一声を紡ぐと、周囲の景色が変化していく。これが妖怪テレビの力かと感じながら、まどかは前方を見遣った。
「へぇ、花か」
 連れて来られたのは花畑。
 現実なら既に盛りを越えているはずの花々が咲いている。色々な彩の絨毯が広がっている景色を前にして、クラウンは元気よく走っていった。
「見て見て、お花がいっぱい! 綺麗だね!」
「そうだね、よく咲いている」
 手は自然に離されることになり、まどかは空いた片手を軽く見下ろす。
 こっちこっち、という呼ぶ声が聞こえたことでまどかは顔をあげた。彼とは正反対にゆっくりと花畑に向かったまどかは、屈んでいるクラウンの傍に立つ。
 きれいだね、と無邪気に笑うクラウンは花を愛おしげに見つめていた。
「ね、まどかは好きなお花ある?」
 クラウンはまどかを見上げ、期待の瞳を向ける。
 きみの好きなものを知りたい。純粋な思いが感じられる眼差しを受け、まどかは少しだけ考え込む。そうして、口をひらいた。
「――嗚呼、一等は未だ見つかっていないけれど」
「?」
 まどかが指を差したのはクラウンの髪。
「君の頭に咲く人を喜ばせるための黄色は、悪く無いと思っているよ」
「ほんと? えへへ、嬉しいな!」
 まどかの返答を聞き、本当に嬉しげに笑ったクラウンは、自分もこのフリチラリアの花が好きだと話した。そのとき、やさしい風が吹き抜ける。まるで祝福を鳴らすベルのようにクラウンの花が揺れた。
「そうだ! ちょっと待ってて!」
 ふと思い立ったクラウンは花に手を伸ばす。
 いいけれど、と答えたまどかはそのまま花畑の最中に佇み続けていた。その間にクラウンは菜の花とマーガレットを摘み、花を編みはじめる。
 待っていてと告げられているまどかは、彼の手元を眺めていた。
 瞬く間に編み上げられていくのは花冠。まどかから感嘆の声が溢れたとき、クラウンが完成した花の冠を大きく掲げた。
「じゃーん! 春花冠の完成!」
「手際が良いね」
「まどか! 俺の想い受け取って!」
「有り難く頂戴しよう」
 立ち上がったクラウンはまどかの頭に花冠をそっと乗せた。明るい色の花で彩られた彼の髪もまた、春風を受けて揺れている。
「わあ、可愛い! とっても似合ってる!」
「ふふ、当然でしょう。僕が、君の編んだ花冠を被っているのだから」
 まどかもまんざらではないというように頷き、片手でそっと花冠に触れた。その仕草や、花畑に立つまどかの姿を見ているだけで楽しくなってくる。クラウンは双眸を細め、楽しいね、と言葉にした。
 しかし、すぐに彼がはっとする。
「わ、大変だ。俺の方が楽しんでる気がする!」
「そうだね、はしゃぎっぱなしだ」
「けど仕方ないよね? だってまどかといっしょにいるのとっても楽しいんだもん!」
 大変だとは言ったが、クラウンは楽しさを抑えるつもりはない。
 まどかも首肯し、問題はないと伝えた。
「なに、エスコートする側が楽しんではいけないルールは無いでしょう」
「そっか! じゃあ、めいっぱい楽しんじゃお!」
 次はお花の腕輪を作ろうかな、と花を見繕いはじめるクラウン。その背を見つめるまどかは、薄く口元を緩めた。
「僕も楽しかったよ」
 それは小さな声で紡がれたものだったが、クラウンは聞き逃さなかった。きらきらと瞳を輝かせるクラウンの様子が妙に愛らしく感じ、まどかは更に言葉を続ける。
「合格点をあげる」
「やったぁ! 合格だっ。待っててね、すぐに腕輪も作るから!」
 花を丁寧に編むクラウンは、そこに嬉しさをめいっぱいに込めていく。
 たまにはこんな日も悪くない。
 花が紡がれていく様子を見守り、まどかはそんなことを考えていた。そうして、春の風がゆるりと二人の頬を撫でていく。
 風を受けたフリチラリアの花と、春の花冠が再び揺れていき――。
 二人の時間はもう暫し続いていく。


●Result
 友情度:★★★
 春らしさ:★★★★★
 合格点という気の許し方:素晴らしい✌
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

御剣・刀也
ステラ・エヴァンズ(f01935)と一緒に参加
竜胆の咲く場所でピクニック

デートすることが攻撃になるのか?なんというか、カクリヨは不思議なところだな
まぁ、それなら楽しませてもらおうか。ステラがどれだけ弁当のスキルが上がったか、楽しみだ

ステラと一緒に竜胆の咲く花畑でランチ
ステラのお弁当を見て盛り付けなどを厳しくチェック。他の料理の場所にはみ出てないか、タレなどがかかってないか、一つが自己主張しすぎてないかなどをチェック
最初より進歩したのを確認し、努力を誉めつつ次は味のチェック。唐揚げをとって放り込み歯触りと肉汁にうん。よし。とステラの努力を認め、上達したし、美味い。と感想をのべる。


ステラ・エヴァンズ
刀也さん(f00225)と一緒に参加
竜胆の咲く場所でピクニック

不思議な戦場と言いますか…えぇ…
まぁ、楽しんでいいのならクリスマス以来の夫婦でのデートを満喫させていただきましょうか

辺り一面の竜胆に感嘆の声をもらしつつ、お弁当を広げる場所を探します
事前に作ると言ったら一気に料理の審査へと変わっているデートに別の意味でドキドキです
旦那様が料理のお師匠様ですし
さて、大食漢の刀也さんが満足してくれるように肉料理を多く詰めましたよ!
勿論、それだけでは見栄えもバランスも悪いので野菜料理も入れておりますし気持ちも込めました

美味しい…ですか?
ほっと一息ついて一安心してから、嬉しさにへにゃっと笑ってしまうのです



●ピクニック日和のお弁当
 此処は竜胆の花が咲き誇る場所。
 花畑にピクニックデートをしに訪れていたのは、刀也とステラの二人だ。
「デートすることが攻撃になるのか?」
「不思議な戦場と言いますか……えぇ……」
 刀也達はテレビ番組には映らないであろう隅っこで、ひっそりと今回の状況について語り合っていた。竜胆は美しいが、これもすべて幻のようなもの。何でもありのテレビ番組とはいえど、やはり不思議に思う気持ちはある。
「なんというか、カクリヨや妖怪の力はすごいんだな」
「UDCアースにまで影響するほどですから……。まぁ、楽しんでいいのならクリスマス以来の夫婦でのデートを満喫させていただきましょうか」
「それなら楽しませてもらおうか」
 ステラがどれだけ弁当のスキルが上がったか楽しみだと話し、刀也は竜胆畑に踏み出した。そうして場面は、番組で放送されるシーンに移り変わっていく。
 
 刀也とステラは竜胆の咲く花畑でのランチタイムを始める。
 花がよく見える場所を選び、まずは敷物を綺麗に広げていく。風に揺れている竜胆が美しいので座っているだけで心が和む。
 しかし、今回のデートの本題はステラが用意してきたお弁当にある。
「チェックするぞ」
「はい……!」
 それまで辺り一面の竜胆に感嘆していたステラだったが、刀也の一言を聞いたことで気を引き締めた。
 事前に作ると言ったら、一気に料理の審査へと変わっているデート。
 一緒に出掛けることも胸が高鳴るが、今のステラは別の意味でドキドキしている。
 刀也はじっとお弁当を見つめた。
 早々に手を付けたりはせず、開かれたお弁当箱の並びから見ていく心算だ。
 おかずの盛り付け具合。
 具材のバランスや、箱の中で偏っていないか。厳しくチェックしていく刀也の視線は鋭く、とても真面目だ。
「これは?」
「大食漢の刀也さんが満足してくれるように肉料理を多く詰めましたよ!」
「作る相手のことを思っての献立か。心が籠もっているな」
 更に刀也は細かな部分にも注目していった。他の料理の場所に具がはみ出てはいないか、あってはいけない場所にタレなどがかかってないか。おかずの一つが突出して自己主張しすぎてないかなど。
 傍から見れば厳しすぎるのかもしれないが、ステラは納得済み。
 何故なら、旦那様が料理のお師匠様でもあるからだ。
「勿論、それだけでは見栄えもバランスも悪いので野菜料理も入れておりますし、刀也さんの仰るとおりに気持ちも込めました」
 ドキドキはまだ止まらないが、ステラはお弁当の紹介をしていく。
 人参や茄子で彩りを入れた野菜の肉巻き。葱を混ぜて緑を足した卵焼きに、下味をしっかりつけた唐揚げ。箸休めのお漬物や、そっと添えたほうれん草の白和えやサツマイモの甘露煮と、他にもまだまだ美味しいものを詰めてきた心算だ。
 ああ、と頷いた刀也はステラの腕が最初より進歩したことを確認した。
「よく頑張ったな」
 彼女の努力を誉めつつ、次はいちばん肝心な味のチェックだ。刀也は箸を手に取り、いただきます、と言葉にする。
 そうして、唐揚げをとって口に放り込んだ。
 その歯触りと肉汁を確かめながら、広がる味わいを楽しんでいく。
「…………」
「…………」
 食べている間は喋ることが出来ないので、自然に沈黙が満ちる。ステラも味見をしてきたので失敗はしていないと分かっているのだが、どうしても緊張してしまう。
 刀也がひとつめの唐揚げを飲み込んだことを確かめ、ステラは問いかけてみた。
「美味しい……ですか?」
「うん。よし」
「合格でしょうか?」
 言葉少なに頷いただけの刀也の反応が読みきれず、ステラはそっと伺ってみる。すると刀也は静かに微笑み、ステラの努力を認めた。
「上達したし、美味い」
 述べられた感想はステラにとって、とても嬉しい言葉だった。
 ほっと一息をついてたステラは胸を撫で下ろして一安心。あまりの嬉しさにへにゃっと笑ってしまうほどに良い心地がしている。
 そんな彼女を見つめ、刀也も次のおかずに箸を伸ばした。
 竜胆畑で夫婦水入らず。
 風に揺らめく花々は穏やかで、まるで二人のピクニック姿を見守っているかのように見えた。幸せでのんびりした時間は此処から、ゆったりと始まっていく。


●Result
 夫婦度:★★★★★
 料理度:★★★★
 末永く:お幸せに💗
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鏡島・嵐
詩乃(f17458)と

ふーん、戦うわけじゃねえのか。……まあ怖い思いをするよりはマシだし、それで世界が救えるんなら安いモンだ。
にしても……随分張り切ってるな、詩乃は。服もいつもと違うしさ。(おれはいつも通りだけど)
まあ、おれで良けりゃ付き合うよ。

そんなわけで、二人でローズガーデンを見て回る。
薔薇って品種あんのな。大きさも色も形もけっこうバラバラ……いや、駄洒落のつもりじゃなくて。

ん、手ェ繋ぎたい? いいぞ、ほら。(まったく意識していない)
――詩乃に引っ張られながら、男女関係なくテンション高いはしゃいでる奴見てるのって意外に面白いかもなーとか思ったり。
んーん、迷惑じゃねえよ。むしろ面白かった。


大町・詩乃
嵐さん(f03812)と

「世界を護る為、頑張ります!
それにデートなるものをしてみたかったので、お付き合いお願いしますね、嵐さん♪」

ローズガーデンを散策。
(白いワンピース姿で)色とりどりで、可愛い薔薇から立派な薔薇まで沢山咲いてますね~。
元気に咲いてるのを見ると(植物の女神として)嬉しくなります♪

「ね、デートですから手を繋いで歩きませんか。」とテンション高いままにお願い。
薔薇のアーチや壁等を見て回り、庭園の美しさを満喫した後でようやく落ち着く。

そうなると嵐さんと手を繋いでいる事を意識し、「あ、あの私、はしゃいじゃいましたけど、ご迷惑では無かったですか!?」と照れつつも手は繋いだままに動くのでした



●薔薇の園へ
 番組のコーナーが始まる前。
 嵐は妖怪と骸魂の力によって変異した周囲を見渡していた。
「ふーん、戦うわけじゃねえのか。……まあ怖い思いをするよりはマシだし、それで世界が救えるんなら安いモンだ」
 詩乃も嵐の言葉に同意を示し、これから始まる番組出演への気概を見せる。
「世界を護る為、頑張ります!」
 何とも不思議な状況だが、普通に戦うよりも随分と楽だ。
 きっと身を削る必要もなく、痛みに耐えることもない。ゆっくりと状況を楽しむだけで妖怪も救えるとあらば乗らない手はない。
 そうして、嵐と詩乃は出番を待つ。
 その際に嵐は彼女の服装に気付き、感心する様子を見せた。
「にしても……随分張り切ってるな、詩乃は」
「そうですか?」
「ほら、服もいつもと違うしさ」
 おれはいつも通りだけど、と付け加えた嵐は改めて詩乃の様相を見遣る。普段の和装とは違って、真っ白なワンピース姿の詩乃は愛らしかった。
「デートなるものをしてみたかったので、張り切ってみました。それではお付き合いお願いしますね、嵐さん♪」
「まあ、おれで良けりゃ付き合うよ。それじゃ行くか」
 詩乃が微笑むと、嵐も頷いて答える。
 そうして二人は自分達が出演するデートの場に向かうため、先に進んでいった。

 そんなわけで、二人が訪れたのはローズガーデン。
 赤に白、ピンク色の薔薇が色とりどりに咲き誇る様は見事としかいえない。見た目にも美しい庭には様々な散策路が用意されていた。
 整えられた煉瓦道や花が絡められたアーチを眺め、二人はのんびりと進む。
「薔薇ってかなりの品種があんのな」
「色とりどりで、可愛い薔薇から立派な薔薇まで沢山咲いてますね~」
 品種名を知らずとも、ローズガーデンのあちこちには咲いている花の名前や特徴が書かれたプレートが設置されている。
 たとえばチェリーアヴァランチェは茎に花が一輪ずつ咲くスタンダードな薔薇。バンビーナスポットは反対に、たくさんの花が一本に咲くスプレータイプの薔薇だ。
 それに同じピンクでも色の濃さが違う。
 アートリークローズは紫に近く、プライムチャームは赤とピンクの間。みさきなでしこは薄紅色と彩りの違いも楽しめる。
 また、赤の薔薇は色こそ似通っているが、纏う雰囲気が大きく違った。
 ガーネットジェムは名前の通りに宝石のような輝きがある。ブリランテは豪華絢爛、ルージュリアンは口紅のような印象的な赤を宿していた。
 どの花も咲き誇っているとあらわすに相応しい。詩乃も植物の女神として、薔薇が咲く光景を楽しげに見つめている。
「元気に咲いてるのを見ると嬉しくなります♪」
「大きさも色も形もけっこうバラバラ……いや、駄洒落のつもりじゃなくて」
「駄洒落ですか?」
 散策の最中、嵐はうっかり洒落のような言葉を口にしたことに気付いた。しかし詩乃は何も思っていなかったらしく、首を傾げた。
「いや、気付かなかったならいい」
 嵐は安堵と恥ずかしさが混じった感情を抱きながら、軽く頬を掻く。彼の手の動きを何となく見ていた詩乃はふとしたことを思いついた。
「ね、デートですから手を繋いで歩きませんか」
 バラを眺めて高くなっているテンションのまま、詩乃は嵐にお願いする。差し出された手から期待が感じられるほどであり、嵐は頬に触れていた手を下ろす。
「ん、手ェ繋ぎたい? いいぞ、ほら」
 嵐も詩乃もまったくそういったことを意識しないまま、互いの手が繋がれた。
 詩乃は嬉しそうに嵐の手を引く。
 こっちです、と次の薔薇園に進んでいく詩乃を見ていると何だか楽しくなってきた。嵐は綺麗な花々を眺めながらふと思う。
(男女関係なくテンション高いはしゃいでる奴見てるのって意外に面白いかもなー)
 そうして、詩乃と嵐はローズガーデンを余すことなく楽しんでいった。
 詩乃は薔薇のアーチや壁を見渡し、ふう、と息をつく。庭園の美しさを満喫したらしい彼女はようやく落ち着いたようだ。
 しかし、そうなると嵐と手を繋ぎ続けていることを意識してしまって――。
「あ、あの私、はしゃいじゃいましたけど、ご迷惑では無かったですか!?」
 照れてしまった詩乃は慌てて問いかける。
 すると嵐は明るく笑い、繋いでいる手を軽く上に動かしてみせた。ずっと繋いでたんだから今更、嫌でも何でもない。
「んーん、迷惑じゃねえよ。むしろ面白かった」
「それなら良かったです……」
 ほっとした詩乃は安堵を抱き、繋いだままの手を軽く握り返した。
「お、あっちにカフェもあるって。行ってみる?」
「はい、行きましょう♪」
 そして、二人はデートの続きに興じていく。薔薇が咲く庭で紡がれていく思い出はきっと、きらきらと輝く楽しいものになっていくに違いない。


●Result
 雰囲気:ふんわり甘い
 はしゃぎっぷり:★★★
 これからも:仲良くね💮
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

征・瞬
西嘉(f32676)と
デート…西嘉と、初デートか…
(表情には出さないが内心は期待に胸を高鳴らせ)
しかしデート場所、というのを私は知らないが…

なるほど…確かに、私たちと言えば桃の花だな
ふふ…、あの時の君はそれはそれで可愛らしかったがな
やはり今の姿の君とキチンと花見をしたい…
西嘉と一緒に桃の花を見ながら歩こう
……やはり、その…こういうのは照れるものだな
(扇で顔を少し隠しつつ)
飲み物などは…今は君でいっぱいで喉を通らなそうだ…

(桃の枝を手渡されるとそれを受け取り)
…あの時は渡されても素直に言えなかっただろうが今なら言える
君からの桃の花、とても嬉しい…ありがとう西嘉
(不器用ながら優しく笑顔を浮かべて)


張・西嘉
瞬殿(f32673)と
てれびはよく分からんがデートは逢瀬のようなものか…ふむ、ということらしいから瞬殿、俺とデートをしてくれるか?

(桜ではなく封神世界で定番の桃でお花見)
前に瞬殿と桃源郷の桜を見た時は俺はケットシーの姿だったからなこうしてきちんと自分の姿で共に並べるのは嬉しいな。
瞬殿も桃も見上げるほどだったがやはりこの視線が落ち着くな。
いろいろ甘味や飲み物も準備できる様だが何か欲しいものはあるか?
いや、これは従者だとか関係なく俺がしたい事だからな。

さて、前は出来なかったが…
(そっと桃の枝を手折って)
瞬殿。この桃の枝を貴殿に。
…受け取ってくれるだろうか?
(受け取って貰えば満面の笑みを浮かべ)



●花桃日和
(――デート。……西嘉と、初デートか……)
 瞬の胸は今、大いに高鳴っていた。
 表情には出さないままではあるが内心は期待でいっぱいだ。瞬が隣に立つ西嘉を見上げれば、視線を感じた彼が此方を見下ろした。
「どうした?」
「いや……何でもない」
 ときめきのような感情が巡っていたので、瞬は思わず首を横に振る。そうか、と答えた西嘉は特に気にすることなく周囲を見渡した。
 此処は既に妖怪の影響が出た領域。兎に角、妖怪番組の趣旨に乗らねばならない。
「てれびはよく分からんがデートは逢瀬のようなものか……。ふむ、ということらしいから瞬殿、俺とデートをしてくれるか?」
「ああ、勿論だ。しかしデート場所、というのを私は知らないが……」
「それならあそこにしよう。花見の定番の場所だ」
 瞬は頷いたが、連れていけるような場所がないと語った。すると西嘉は簡単なことだと答え、花が見られる場所が良いと告げた。
 そうして、二人は進む。数歩先に向かえば、景色が瞬く間に変わっていって――。

「なるほど……確かに、私たちと言えば桃の花だな」
 二人が訪れたのは花見の場。とはいっても桜ではなく、馴染み深い封神世界で定番の桃の花見だ。こっちだ、と瞬を誘った西嘉は手頃な桃の下に移動する。
 吹き抜けていく柔らかな風が、可憐に咲く桃の花をさやさやと揺らしていた。
「前に瞬殿と桃源郷の桜を見た時の俺はケットシーの姿だったからな」
 以前を思い返した西嘉は花を眺めてから瞬を見つめる。今となれば少し懐かしくもある事を思い、瞬は静かに頷いた。
「ふふ……、あの時の君はそれはそれで可愛らしかったがな」
「それは嬉しいが、こうしてきちんと自分の姿で共に並べるのは嬉しいな」
「そうだな。やはり今の姿の君とキチンと花見をしたい……」
 瞬の瞳には桃の花を背負うように立つ西嘉の姿が映っている。互いに視線を交わしあった二人は連れ立って歩き出した。
 散策はとても穏やかに巡っていく。
 一緒に桃の花を見ながら歩くだけでも、ゆっくりと心が澄んでいくかのよう。
「あのときは瞬殿も桃も、こちらから見上げるほどだったが……やはりこの視線が落ち着くな。うん、どの花も綺麗だ」
 西嘉は花の枝に手を伸ばした。少し腕を上げるだけで触れられる花は愛らしい。
 花に触れている西嘉を見ていた瞬は少しだけ視線を逸らす。あのときと同じなようでいて、違う情景が妙にくすぐったい気がしたからだ。
「……やはり、その……こういうのは照れるものだな」
 瞬は今がデートの時間であることを意識しすぎてしまっていた。風に紛れた言葉は聞けなかったが、その様子に気付いた西嘉は、扇で顔を隠している瞬の前に回り込む。
 少しばかり歩きすぎたかと考えた西嘉は瞬を気遣っていく。
「いろいろ甘味や飲み物も準備できる様だが何か欲しいものはあるか?」
「飲み物などは……いい……」
 瞬は首を横に振り、更に扇の奥に顔を隠してしまう。彼が遠慮しているのだろうかと考えた西嘉は思いを伝えていく。
「いや、これは従者だとか関係なく俺がしたい事だからな」
「違うんだ。今は君でいっぱいで喉を通らなそうだ……」
「……そうか」
 瞬から返事が戻ってきたことで、西嘉は漸く理解した。瞬は自分と逢瀬、つまりデートをしていることに照れているのだ。そうと分かると、ふ、と笑みが溢れる。短く答えるだけに留めた西嘉は嬉しそうな顔をしていた。
 そして、西嘉と瞬は暫しの時間を過ごしていく。
 あるとき、機を見計らった西嘉は桃の花の前に瞬を手招いた。何かあるのかと思って近付いていった瞬は不思議そうな瞳を向けている。
「さて、前は出来なかったが……」
 西嘉は一番綺麗に咲いていると感じた花に手を伸ばし、そっと桃の枝を手折った。
「一体、何を……西嘉?」
「瞬殿。この桃の枝を貴殿に。……受け取ってくれるだろうか?」
 彼は瞬に枝を差し出す。一瞬だけはっとした瞬だったが、すぐに手を伸ばし返した。瞬が手渡された枝を受け取り、大きな嬉しさを抱く。
(……あの時は渡されても素直に言えなかっただろうが、今なら言える)
 あの日から、二人は時を重ねた。
 変わらないこともあるが、変わったこともある。そのどちらも大切なことだと感じながら、瞬は素直な思いを言葉にしていく。
「君からの桃の花、とても嬉しい……ありがとう西嘉」
 不器用ながらも優しい笑顔を浮かべた瞬。その微笑みこそが返礼だと感じた西嘉は満面の笑みを浮かべ、桃と瞬をしっかりと瞳に映した。
 共に時間を過ごせること。花に想いを重ねられること。
 そして――二人でいられることもあり、此処はまさに桃源郷のようだった。


●Result
 風流さ:★★★★★
 初々しさ:★★★★★
 桃の花に込めた想い:素敵✨
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティア・メル
【鏡飴】

んふふ、クロウくんと行きたかったんだよ
エスコートも任せたよん

今日の洋服も選んでくれてありがとう
薄ピンクの7分丈キャミソール
茶色のキャミソールワンピ
黒のタイツ
背伸びの大人っぽいコーデ
クロウくんが大人っぽいから
少しでも並び立てるよう

手を引いて薄桃花のドームをくぐれば
星と沙羅の花が綺麗なプラネタリウム
わあ…っ!
綺麗なんだよ

そういえばクロウくん
彩は結べた?
情けなくなんかないよ
だいじょうぶ
ぼくが傍に居るよ
その寂しさはぼくが埋められたら

大きな体をそっと抱き締める
優しいんじゃあないよ
クロウくんが好きだから
傍に居たいの

強いクロウくんの弱さになれたらいいな
降り注ぐ光と花びらに
君が呑まれてしまわないように


杜鬼・クロウ
【鏡飴】◎
焦げ茶の薄手ジャケット
白デニムパンツ
丸眼鏡

その服似合ってンよ、ティア
でも相手が俺で良かったのか?
力不足と言われねェようリードはするぜ、お嬢サン(手差し出しウインク

桜や紅薔薇、ネモフィラなどの花と星のドームに感嘆の声
幻想的な空間を二人で散策

彩、か…(顔が陰り
あの後、彼女への愛慾は…沈めたぜ
一応、結び直したつもりだ(終わりは始まり
ただ、新たないろにはまだ…
どうすべきか分かンねェ
不透明な儘だ
お前に背を押してもらったのに情けねェだろ(弱く笑う

…寂しくねェと言ったら、嘘になるわ
でも
俺はアイツを嫌いにはなれねェから

─ティアは本当に、優しいな

少し驚く
小さな掌に己の手重ねて

…ありがと

顔は見えず
甘えて



●あなたの傍に咲く花
 デートにはお洒落なコーディネイトも必要なもの。
 特別な場所に出掛けるならば、服装も普段とは違うものがきっといい。いつものままの相手も良いものだけれど、特別感を味わうこともデートの醍醐味だ。
 焦げ茶の薄手ジャケットに白のデニムパンツ。
 無造作に見えて整えた髪に加え、お洒落な丸眼鏡。本日のクロウが纏う様相はしっかりと決めたデート仕様だ。
 その隣に立つティアもまた、薄ピンクの七分丈キャミソールに茶色のキャミソールワンピースと黒のタイツを合わせた様相で纏めている。
「その服似合ってンよ、ティア。でも相手が俺で良かったのか?」
「んふふ、クロウくんと行きたかったんだよ。今日の洋服も選んでくれてありがとう」
 背伸びの大人っぽいコーディネイトは彼が見繕ってくれたものだ。
 クロウを見上げたティアは無邪気に笑い、相手がどうかなんてことは気にしなくていいと語った。そうか、と答えたクロウは薄く笑む。
「どういたしまして。気に入ってくれたならそれでイイ」
「エスコートも任せたよん」
 そういってティアは、隣の彼に少しでも並び立てるよう背筋をぴんと伸ばした。
「力不足と言われねェようリードはするぜ、お嬢サン」
 クロウは彼女に手を差し出し、ウインクをしてみせる。ティアもその手を取り、よろしくね、と明るく笑った。
 そうしてクロウにエスコートされたティアは先に向かう。
 二人が訪れたのは星と沙羅の花が綺麗なプラネタリウム。
 桜や紅薔薇、ネモフィラなどの花と星が集うドームだ。引かれるだけではなく、ティアも彼の手を引いて薄桃花のドームをくぐる。
「わあ…っ! 綺麗なんだよ」
「すげェ、なかなかのモンだな」
 ティアに続いてクロウも感嘆の声をあげ、幻想的な空間を二人で散策していった。
 美しい光景が広がる内部は癒やしの空間。
 ネモフィラの青は優しくも爽やかで、桜はふわふわと宙に舞っている。紅い薔薇は凛と美しく咲き誇り、星は花々を見守るように煌めいていた。
 暫し花や星を眺めていると、ふとティアが問いかけてきた。
「そういえばクロウくん、彩は結べた?」
「彩、か……」
 途端にクロウの顔が陰っていく。どうしたの、とティアが首を傾げた。クロウは少しだけ言い淀んだ後に理由を語っていく。
「あの後、彼女への愛慾は……沈めたぜ。一応、結び直したつもりだ」
 ――終わりは始まり。
 クロウは物思いに耽りそうになったが、この子の前でこれ以上の暗い顔は出来ないと感じた。対するティアは黙ってクロウの言葉の続きを待っている。
 今はちゃんと話すべきだと察したクロウは、自分なりの言葉を紡いでいく。
「ただ、新たないろにはまだ……どうすべきか分かンねェ」
 先は不透明な儘。
 自分でもわからないというのが現状であり、クロウは肩を竦めた。弱く笑っているが、それが強がりだということも分かる。
「お前に背を押してもらったのに情けねェだろ」
「情けなくなんかないよ」
 そのとき、すぐにティアがクロウの言葉を否定した。自分を卑下する彼に対して、そんなことはないとはっきり言い切ったティア。彼女の声にはたとしたクロウは俯きかけていた顔を上げた。
 そして、自分の中に燻っている思いを吐露する。
「……寂しくねェと言ったら、嘘になるわ。でも俺はアイツを嫌いにはなれねェから」
 クロウは淋しげな目をしたまま、ティアを瞳に映した。
 その眼差しを受け止めたティアはゆるりと頷く。彼がこうして弱さを話してくれたから、次は自分が思いを言葉にする番だと感じられた。
「だいじょうぶ、ぼくが傍に居るよ」
 その寂しさはぼくが埋められたらいい。
 偽りない思いを伝えたティアは彼に腕を伸ばし、大きな体をそっと抱き締めた。
 クロウは少し驚いたが、小さな掌に己の手を重ねる。
「――ティアは本当に、優しいな」
「優しいんじゃあないよ。クロウくんが好きだから、傍に居たいの」
 強いクロウくんの弱さになれたらいい。
 彼だけに聞こえる声で囁いたティアは、やわらかな微笑みを宿した。
「……ありがと」
 クロウは再び俯いてしまう。
 その顔は見えずとも、彼がひとときだけ甘えてくれていることが分かる。花と星が巡る世界の中で、ティアはそうっと願った。
 
 どうか――。
 降り注ぐ光と花びらに、君が呑まれてしまわないように。


●Result
 愛慾度:☆
 親愛度:♥♥♥
 コーディネイト:★★★★★
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルーファス・グレンヴィル
◎マコ(f13813)と

いつも会うのは家だからな
折角なら今日は外で楽しむか
ほら、マコ、行くぞ

残念、先約があるから、と
指を絡めて繋いだ手を持ち上げ
けらけらと愉しげに笑って
マコに対する逆ナンも回避した

映画館やショッピング等
デートの定番先を楽しんだ後
藤が見える公園で一休み

そうだ、マコ、これやるよ

ベンチの裏から取り出したのは薔薇の花束
いつか、お前が花束くれただろ?
オレから花束を贈るなんて
あの時は考えもしなかったけど
理相手には贈りてえんだよ
藤も、薔薇も、花言葉は──

ふ、と和らぐ表情
愛しげな視線と共に
優しい手付きで頬を撫でる

愛おしそうな笑みを見れば堪らず
そのまま後頭部へ手を回して
徐々に互いの距離を詰め──


明日知・理

ルーファス(f06629)と

_

そうだな。偶には外で過ごそうか。
…なんて平常心ぶって微笑うものの
照れと緊張でじわり頬が熱く

ルーファスに対する逆ナンをやんわり退けながら
映画やショッピング等楽しみ

時間が経つのは早く
藤の花言葉は何だったかなとぼんやり考えていたそのとき

「──え、」

大輪の薔薇に目を奪われ
「…花祭りの日だったか」
昨日のことのように思い出せる。あの時はまだ、自分たちはこんな関係ではなくて、
「…ふふ」
くしゃりと笑う。頬撫でられればくすぐったく、けれど彼が愛おしくて笑み深め
「──ありがとな、ルーファス」
大事にする。
そう呟いて、近くなる距離に身を委ね
そっと瞳を閉じた。



●花に宿す言の葉
 連れ立って出かけたのは賑わう街中。
 春から初夏に向けて移り変わる心地良い陽気の中、ルーファスは空を見上げる。
「いつも会うのは家だからな。折角なら今日は外で楽しむか」
「そうだな。偶には外で過ごそうか」
 ルーファスは理を誘い、晴れた空の下に踏み出していく。
「ほら、マコ、行くぞ」
「ああ」
 理は平常のまま微笑ってみせたが、その実は照れと緊張でいっぱいだった。じわりと頬が熱くなっているのが自分でも分かり、理は何とか押し隠そうとしている。
 しかし、ルーファスには理の様子などお見通し。
 外に誘ったのも、こういった反応が見てみたかったという理由も混ざっている。理が少し後ろを歩いていると、不意にルーファスが大学生達に捕まった。
「お兄さん達、暇?」
「良かったら今から一緒に遊ばない?」
 期待の眼差しを向けてくる学生達に対し、ルーファスは首を振る。
 彼が立ち止まったため、理が思わず背にぶつかりそうになった。ルーファスは理の手を掴み、ほら、と指を絡めて腕を持ち上げる。
「残念、先約があるから」
「……そういうわけだ」
 理も繋いだ手を主張してみせ、やんわりと誘いを断った。
「なーんだ、それならいいよー」
「バイバーイ」
 大学生達はあっさりと諦め、手を振って去っていく。
 その後姿を見送ったルーファスはけらけらと愉しげに笑った。これで理に対する逆ナンパも回避出来ただろう。余裕そうな彼に対し、理はほっとしていた。
 もし、もしもだ。
 そんなことは絶対にないと思っているが、大学生達の誘いにルーファスが乗ってしまったら。有り得ないことを考えてしまうくらいに、彼が――。
「……マコ?」
「大丈夫だ、何でもない」
 此方を覗き込んできたルーファスに向けて頭を振り、理は先を示す。
 これから向かうのは映画館。
 ルーファスがチェックしていた『監獄竜の檻』か、理が密かに気になっている『バケネコにゃんた大作戦』を観る予定だ。むしろどちらもという選択も良い。
 それからぶらぶらとショッピングをして、デートの定番を楽しむ流れになる。
 そうして、二人は手を繋いだまま映画館に入っていく。

 暫し後。
「やっぱり面白かったな、監獄竜の檻」
「だな。バケネコが満員だったのは残念だったが……」
「また行こうぜ。上映期間は長そうだっただろ」
「そうだな、また今度」
 話に花を咲かせる二人は藤が見える公園で一休みしていた。座っているベンチの横には或るブランドのショッパーが置かれている。
 映画も買い物も楽しんだ二人は、ゆったりと藤を見ていた。
(藤の花言葉は何だったかな……)
 花を眺めていた理がぼんやりと考えていたそのとき、ルーファスがベンチの裏に手を伸ばした。どうかしたのかと思って理が首を傾げると、彼は或るものを差し出す。
「そうだ、マコ、これやるよ」
 ルーファスが取り出したのは薔薇の花束。
 予想外のものが出てきたので、理は思わず固まってしまった。
「――え、」
「いつか、お前が花束くれただろ?」
 以前を思い返す理はそのまま頷く。ルーファスは彼が大輪の薔薇に目を奪われている様を見遣り、何だか可愛らしいと思った。
「……花祭りの日だったか」
「そう。オレから花束を贈るなんて、あの時は考えもしなかったけど」
 あの日は昨日のことのように思い出せる。ルーファスが語るように、あのときはまだ自分達はこんな関係ではなかった。だが、今は違う。
「今は今だ。だから、理相手には贈りてえんだよ」
「……ふふ」
 理は薔薇を受け取り、くしゃりと笑った。
 ふ、と和らぐ表情。ただ彼が笑うだけでルーファスも嬉しくなる。此処に幸せがある事実は隠すことなど出来なかった。
 ルーファスは愛しげな視線と共に手を伸ばす。
 そして、優しい手付きで理の頬を撫でた。撫でられた頬から伝わってくるのはくすぐったさと、愛おしい気持ち。理は笑みを深め、薔薇を握る手にそっと力を込めた。
「――ありがとな、ルーファス」
 大事にする、と呟いた理はそっと瞼を閉じる。
 その様子を見たルーファスは堪らず、そのまま後頭部へ手を回した。そうして二人は徐々に互いの距離を詰め、身を委ねてゆく。

 多くを語らずとも通じ合うことがある。
 藤も、薔薇も、花言葉は――。


●Result
 幸福度:★★★★★
 見守りたい度:★★★★
 続きは:ご想像にお任せ🌹
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
【華禱】
番組の企画、まさかテレビで見ていた映像を自分達がするようになるとは

倫太郎とネモフィラの花畑に行きます
映像の画面に一面の花畑を映しましょう

以前、写真を見に行ったことがありましたが実物は見れなかったもので
この機会に見れるなんて嬉しいです
沢山満喫しましょうね、倫太郎

倫太郎と手を繋ぎ、一面の青に囲まれながら花畑を歩く
遊園地といった人が多くて賑やかな所も良いですが
花に囲まれて静かに過ごすのも好きです

お弁当ですか?是非食べましょう
この飲み物は……あの色が変わる飲み物ですね……!
では半分飲んだ所でレモンを入れて変えます

ふふ……口にサンドイッチの具が付いていますよ
取りますから、顔を向けてください


篝・倫太郎
【華禱】
一面のネモフィラ畑でいちゃいちゃ過ごす!
多分ロケ的なやつ

え?いつもアホみたいにいちゃいちゃしてるんだろうって?
ま、いいじゃん

(気を取り直して)
花の時期になったら一緒に見ようって言ってたけど
中々時間取れなかったもんな

だから、今日は少し遠出
しっかり満喫しようぜ?
あんた、賑やかなのも好きだけど、静かなのも好きだろ?

そんな、他愛のない話を手を繋いで
一面の青を眺めながら話して巡る

あ、そうそう
お弁当もちゃんと作ってきたからな?
サンドイッチに……この場所に合わせたバタフライピーティー
レモンも持ってきてあるよ

四阿で遠くまで続く青を二人で眺めて過ごす
んん、はしゃぎ過ぎただけですぅ(口元拭われてあうあう)



●青の世界でふたりきり
「一面のネモフィラ畑でいちゃいちゃ過ごす!」
 デート番組領域の最中、倫太郎はこれから行うことを宣言した。
 多分ロケ的なやつ、と彼が付け加えると不思議な妖怪パワーによって辺りがネモフィラの咲くロケ地へと変わっていった。
「番組の企画、まさかテレビで見ていた映像を自分達がするようになるとは……」
 夜彦は浮つくような気持ちを抱きながら、変化した周辺を見渡した。
 倫太郎も一瞬で変わった景色を確かめ、おお、と感心する。
「え? いつもアホみたいにいちゃいちゃしてるんだろうって?」
 そして、おそらくカメラがある方に向かって語った。これまた妖怪パワーによって撮影クルーなどは見えないが、これも番組内容のひとつとして放送されるのだろう。
「ま、いいじゃん」
 ニッと笑った倫太郎は軽く手を振り、夜彦と共にネモフィラの花畑に踏み出した。
 夜彦もややテレビを意識しながら彼の後に続く。
「倫太郎とネモフィラの花畑に……ふふ、映像に一面の花畑が映るのでしょうか」
 以前、同じ花の写真を見に行ったことがあった。
 夜彦はそんなふうに語り出す。少しばかり緊張した様子でカメラがあるらしきところに向けて話す夜彦は、更に言葉を続けていく。
「しかし実物は見れなかったもので、この機会に見られるなんて嬉しいです」
「そうそう、花の時期になったら一緒に見ようって言ってたけどなかなか時間が取れなかったもんな」
「はい。今日は沢山満喫しましょうね、倫太郎」
「だから、今日は少し遠出。しっかり満喫しようぜ?」
 同じくテレビ映りを気にしていた倫太郎だが、一番綺麗にネモフィラが咲いているところをみて気を取り直していく。
 デートならばやはり手を繋ぐのがいい。
 そう考えた倫太郎は夜彦の手を引いた。夜彦も手を握り返し、そっと頷く。
「あんた、賑やかなのも好きだけど、静かなのも好きだろ?」
「ええ。遊園地といった人が多くて賑やかな所も良いですが、花に囲まれて静かに過ごすのも好きです」
 そんな他愛のない話を手しながら、二人は一面の青を眺めて話していった。
 そして時間は巡る。
 青に囲まれながら花畑を歩いた後、彼らは一休みすることにした。ちょうどよい四阿を見つけたところで、倫太郎が取り出したのはずっと手にしていた荷物だ。
「あ、そうそう。お弁当もちゃんと作ってきたからな?」
「お弁当ですか? 是非食べましょう」
 倫太郎が示した弁当箱を見て、夜彦は顔を綻ばせる。色々持ってきたんだぜ、と話した倫太郎は四阿にお弁当を広げていった。
「サンドイッチに……この場所に合わせたバタフライピーティー」
「この飲み物は……あの色が変わる飲み物ですね……!」
 倫太郎が用意したお茶に夜彦は興味津々。
 じゃん、と楽しげな口調で箱を取り出した倫太郎はその中身を披露する。そこにはお茶用のカップと切った檸檬が入っていた。
「レモンも持ってきてあるよ」
「では半分飲んだ所でレモンを入れて変えます」
 夜彦は楽しみが二倍になったのようだといって喜び、倫太郎に渡されたサンドイッチとバタフライピーティーを受け取った。
 そうして、二人は和やかなランチタイムを満喫していく。
 ふとしたとき、夜彦は倫太郎を呼ぶ。
「ふふ……倫太郎」
「ん?」
 ちょうどサンドイッチを頬張っていた倫太郎は何事かと感じて首をかしげる。
「口にサンドイッチの具が付いていますよ」
「ほんとか? どっちだ」
「取りますから、顔を向けてください」
「んん、はしゃぎ過ぎただけですぅ」
 口元を拭われてあうあうする倫太郎は可愛らしく、夜彦も笑顔になった。そんなこんなで楽しい昼時は過ぎていき、四阿にも穏やかな時間が訪れる。
 ランチタイムが終わった後はバタフライピーティーでゆっくりと。
 色が変わることに目を輝かせる夜彦。
 それを見守り、楽しそうに双眸を細める倫太郎。
 四阿から、遠くまで続く青を二人で眺めて過ごすひととき。そんな時間もまた、かけがえのない時のひとつに変わっていく。


●Result
 イチャイチャ度:MAX
 はしゃぎ度:★★★★★
 サンドイッチとお茶:おいしそう🥪☕
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

檪・朱希

デート……だって。
雪と燿が一緒でも、これはデート……だよね?
『多分なるんじゃねーか? な? 雪』
『……僕に聞くな』

ということで、私達はお花見に出かけるよ。
頑張ってお弁当も作ってみたんだ。普段は私を守る為に頑張ってくれてるから……お礼も兼ねて。
料理は、そんなに上手じゃないけど、おにぎりと、卵焼きとウインナーとかお弁当定番のもの。
ちょっと焦げたり、味や形がイマイチなものもあるけど……
『朱希、すげー成長してる!』
『僕らは、為すべきことを行っているだけだが……ありがとう、朱希』
『雪が感謝の言葉言うの、珍し……うぉっ!?』

燿が雪の鎖に縛られるのを見て、少し笑ってしまう。

こういうのも、たまにはいいよね。



●花とお弁当
「デート……だって」
 番組のコーナーが始まる前、朱希は不思議な感覚を抱いていた。
 ちら、と横を見遣る朱希の視線の先には雪と燿がいる。明るく笑う燿は乗り気なようだが、雪の方は何とも言えない雰囲気だ。
「二人が一緒でも、これはデート……だよね?」
『多分なるんじゃねーか? な? 雪』
『……僕に聞くな』
 朱希がぽつりと問うと、二人は各々の反応を返す。二人の仲的な理由で少し前途多難そうな始まりではあったが、これもいつも通り。
 そんなこんなで此処から朱希達のデートが始まっていく。

「――ということで、私達はお花見に出かけるよ」
 朱希達が出発したのはお出かけとしては定番の行き先。花を愛でて、穏やかな時間を過ごすことは何にも代え難い和みだ。
 美しい花が咲き乱れる会場に到着した一行は、眺めの良い場所に向かう。
 そうして朱希は、両手に抱えた包みをそっと二人に差し出す。
「頑張ってお弁当も作ってみたんだ」
『……めずらしいな』
『やった! 開けてみていいか?』
 雪が感心したような声を紡ぐ中、燿はさっそくお弁当の包みを広げようとしている。朱希の返答を聞く前に開けているので問いは無意味だったが、それもまた彼らしい。
「普段は私を守る為に頑張ってくれてるから……お礼も兼ねて」
 朱希は料理がそれほど得意ではない。
 それでも感謝を示すにはこれしかないと思って頑張ったのだ。
 箱の中身は、少しずつ大きさが違うおにぎりが幾つか。焦げ目がついている卵焼きに、タコさんになれなかった宇宙人的なウインナーなど、形は変わっていてもお弁当の定番と呼べるもの。
「ちょっと焦げたり、味や形がイマイチなものもあるけど……」
 ちゃんと味見はしてきたので食べられないものではない。朱希がそういってお弁当を勧めると二人はそれぞれに嬉しそうな反応を見せた。
『朱希、すげー成長してる!』
『僕らは、為すべきことを行っているだけだが……ありがとう、朱希』
『雪が感謝の言葉言うの、珍し……うぉっ!?』
『黙ってろ』
 横から茶々を入れようとした燿が、瞬く間に雪の鎖に縛られた。身動きが取れない燿を余所に、雪はお弁当に手を伸ばした。
 おあずけをくらった燿がじたばたと暴れている様は何だか可笑しい。朱希はくすりと笑い、間もなく解放されるはずの燿のためにおかずを取り分けていった。
 花々が風に揺れ、心地よさが巡る。
 そうして朱希は楽しげに双眸を細め、心からの言葉を紡いだ。
「こういうのも、たまにはいいよね」


●Result
 一生懸命度:★★★★★
 犬猿の仲度:★★★★★
 お弁当:よくがんばりました💯
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
【狼兎】

すごーい!
この薔薇紅茶の香り…
あっちは緑だ…!

花は好きで詳しいけど
実物を見た事あるかは別でついうろちょろ

カフェへと手を引かれた時は少しびっくり
紫崎君は甘いもの苦手だから誘われるのは初めてで
パフェと紅茶を頼みつつ
嬉しくて敢えて一掬い差し出して

はい、あーん
文句言わないでよー、僕からの気持ちだよ
ふふっと微笑み

えっ、お金…いいの…?
デートという言葉には反射的に赤くなりつつ
…あ、ありがとう…

キスと指輪は完全に彼のサプライズ
ほえっ、ちょ、あのっ、こっこここれ放送中で…!
あれ…指輪、いつの間に…なんで…?
咄嗟には信じられなかったけど
返答に嬉しくて笑い泣き
なにその独占欲、子供みたい
でも…大切にする、ね


紫崎・宗田
【狼兎】

俺は正直あんま花とか詳しくねぇし
無難な路線にはなっちまうだろうが
薔薇園行くぞ
園内にカフェが併設されてるとこな
こいつ病弱だから、いつでも休めるように

着いた後の行動は貴本的に澪のペースに合わせ好きにさせる
俺は話しかけられた時に合わせてやる事と
疲れが見えたらカフェに連れて行ってやる事
俺はコーヒーだけで充分なんだが…あーんされたら大人しく食う
……甘ェ

食後は全額奢り
バーカ、こんくらい当然だろ
デートなんだから

帰り際

おい澪

手を引き呼び止め、不意打ちでキスを
その隙に左手薬指に薔薇の花モチーフのダイヤの指輪を嵌めて
言わなくてもわかんだろ
俺のもんって証
その時が来るまで、お前に変な虫が寄りつかねぇようにな



●薔薇に想いを込めて
「すごーい!」
 はしゃいで駆けていく澪の向かう先。
 其処には美しく咲き誇る薔薇が広がっていた。その後をゆっくりとついていく宗田は、澪が嬉しそうな様子を見て目を細める。
 無難なデート場所がいいと考えた宗田の案で、二人はローズガーデンに訪れていた。
「俺は正直あんま花とか詳しくねぇけど、澪が嬉しそうだし良いか」
「この薔薇、紅茶の香り……あっちは緑だ……!」
 宗田が見守る中、澪は花のひとつひとつに目を輝かせている。宗田とは反対に澪は花が好きで詳しい。けれども実物を見た事があるかは別でついうろちょろとしてしまう。
「迷子になるなよー」
「はーい!」
 宗田からの呼び掛けに明るい声を返し、澪は興味が向かうままに薔薇園を進む。
 迷子とは言われていても、宗田がしっかりついてきてくれていることは知っていた。だからこそ澪も自由気ままに花を眺めることが出来る。
「あっちがカフェか」
(――あいつ、病弱だからいつでも休めるようにしないとな)
 宗田はその間に園内マップを眺めており、ひそかに澪を案じていた。澪はときおり宗田の方に振り返り、ぱたぱたと手を振る。
 やがて、少し疲れただろうという頃合い。宗田は澪の手を引き、カフェに誘った。
「行くぞ」
「え? でもカフェだよ?」
「良いんだよ、休憩も必要だろ」
 手を引かれた時は少しびっくりした。何故なら宗田は甘いものが苦手なのだ。それゆえに彼からカフェに誘われるのは初めてだ。
 しかし彼が休憩したいというのなら良いと感じ、澪は言葉に甘えることにした。
 そうして、澪が頼んだのはパフェと紅茶。宗田はコーヒーのみ。
「えへへ」
「嬉しそうだな」
「だって紫崎君と一緒だから。はい、あーん」
 澪は嬉しい気持ちを隠さず、敢えてパフェをスプーンに一掬いして差し出す。
「俺はコーヒーだけで充分なんだが……」
「文句言わないでよー、僕からの気持ちだよ。あーん、は?」
 澪からの気持ちだと言われれば断る理由もなく、宗田は口をあけた。スプーンの上に乗ったアイスと生クリームが口の中に広がり、宗田は思わず呟く。
「……甘ェ」
 その反応が何だか可愛らしくて、澪はふふっと笑った。
 それから、時はゆったりと過ぎゆく。彼にカフェ代を奢ってもらった澪は自分も払うつもりだったのだと語ったが、宗田は別にいいと答えた。
「お金……本当によかったの……?」
「バーカ、こんくらい当然だろ。デートなんだから」
「……あ、ありがとう……」
 デートという部分が強調されたことで反射的に赤くなりつつ、澪はめいっぱいのお礼を告げる。恥ずかしくて嬉しい。そんな気持ちが胸に満ちていた。

 更に時間は流れ、帰り際。
 夕陽が薔薇を照らしている最中、宗田が澪の手を引き呼び止めた。
「おい澪」
「何――」
 澪が振り返り、言葉を紡ごうとする前に、宗田は不意打ちでキスをした。その隙に、左手の薬指に薔薇の花をモチーフにしたダイヤの指輪を嵌めてやる。
 一瞬のことに混乱してしまった澪は唇を押さえたり、左手と宗田を交互に見比べたりと大忙し状態。
「ほえっ、ちょ、あのっ、こっこここれ放送中で……!」
「そんなこと関係ない」
「で、でも……指輪、いつの間に……なんで……?」
 澪にとって、キスと指輪は完全に彼からのサプライズだった。驚きばかりだけれどいとおしくて、彼のことで頭がいっぱいで――澪の瞳に涙が浮かんだ。
 少しだけ落ち着いてきた澪は薔薇の指輪をそっと撫でる。
 咄嗟には信じられなかったが、嬉しくてたまらなかった。泣き笑いをする澪に対し、宗田は包み隠さず告げる。
「言わなくてもわかんだろ、俺のもんって証」
「なにその独占欲、子供みたい」
「その時が来るまで、お前に変な虫が寄りつかねぇようにな」
「でも……大切にする、ね」
 さっきは突然だったから、もう一回。
 澪が宗田におねだりをすると、彼はそっと笑みを浮かべ、そして――。


●Result
 独占欲度:★★★★★
 ときめき度:測定不可能
 尊さ:🙏🙏🙏
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アリス・クイン
は!?デートとか聞いてないんだけど!っていうか女同士でデートって……ああもうそんな顔やめなさい行かないって言ってないでしょ?!
クロエ(f19295)と最高のデートをしにきたわ!◎

どっちもレディなんだから、エスコートは交代でいいわよね?
先手はクロエよ
どこでも付いて行ってあげるから、さっそく出発進行ね

ふふん、アタシの番?よーするに花を見に行けばいいのよね?
それじゃあこっちよ、インドア派の花は屋内にあるの
美術館よ。花の絵の展覧会がやってたから、チェックしてたわけ

あ、ほらほら、お絵描きの体験コーナーですって
クロエの絵の腕前も見せてもらうから、観念して座りなさい
上手く描けたらアタシのはお土産にあげるから


クロエ・アスティン
◎アリス様(f24161)と一緒

デ、デ、デートでありますか!?そ、そんなの行く相手いないであります!
友達のアリス様に相談して一緒に着いてきてもらいました。

まずは自分からエスコートでありますね。では、植物園の中にあるカフェにご招待であります。
UDCのいんたーねっとで紹介されていたお店であります!
ただ、有名なカップル御用達のお店だったので出てくるのはカップル用ばかり。
二股ストローの刺さったジュースを顔が近い近いってなりながら飲みますね。

アリス様は美術館でありますか。
あの、小さな頃に習ったことがあるきりなので自信はないでありますが……
(自信はなさそうにしながらそれなりのものが描けました!)



●少女デートは花模様
 番組の舞台裏。
 アリスとクロエは、突然放り込まれたにも等しい状況に対してうろたえていた。
「は!? デートとか聞いてないんだけど!」
「デ、デ、デートでありますか!? そ、そんなの行く相手いないであります!」
 ほぼ同時に声をあげた二人は、はたとして顔を見合わせる。
 相手はいるにはいる。
 性別や種族なども関係ないので、アリスとクロエがデートをしても良いわけだ。
「っていうか許されてるとしても女同士でデートって……」
「アリス様……」
 クロエはアリスに相談してついてきてもらう心算でいたらしい。アリスが番組の趣旨について不服そうな目をしていると気付き、クロエはしょんぼりとした顔をする。
「ああもうそんな顔やめなさい行かないって言ってないでしょ?!」
「よかったのであります!」
 ぱっと花が咲くように笑ったクロエの笑顔は、アリスにとって眩しいものに思えた。けれども、そんなに喜んでくれるなら二人でのデートも良いかもしれない。そんなことを考えながら、アリスはデートの場に向かっていく。

「そんなわけで、クロエと最高のデートをしにきたわ!」
 びしりと言い切ったアリスは今、全力でテレビ番組の趣旨に乗っかる気概だ。クロエも上機嫌に微笑んでおり、二人の準備は万端。
「楽しいデートであります!」
「どっちもレディなんだから、エスコートは交代でいいわよね?」
「はい! まずは自分からエスコートでありますね」
 アリスから、先手はクロエよ、と呼び掛けられたことで意気込みが巡る。連れ立って歩く二人の周囲は次第に、不思議な妖怪パワーによって変化していっていた。
「どこでも付いて行ってあげるから、さっそく出発進行ね」
「では、植物園の中にあるカフェにご招待であります」
 行き先が何処なのかとアリスが考えていると、クロエが前を示す。そうすれば彼女の言葉通りに、様々な花や草木が見える植物園が現れた。
「へぇ、ここは?」
「いんたーねっとで紹介されていたお店であります!」
 クロエなりに調べてきたらしく、その植物園はデート用のスポットが多かった。ハートの形に整えられた生け垣や花のアーチ、一緒に並んで撮ると映える写真が出来上がるフォトスポットなど二人用の場所ばかりだ。
 そんな中のカフェもまた、有名なカップル御用達のお店で――。
「近くない?」
「そ、そうでありますね……」
 テーブルに座るアリスとクロエの前に出てきたのは、二股のストローが刺さったジュース。歩いたことで喉が渇いているのだが、飲もうとすると顔が近くなりすぎる。
 近い、近いわ、という声が響くカフェでのひととき。
 それから暫し、妙に甘酸っぱい時間が流れていく。

 次はエスコートの攻守交代。
「ふふん、アタシの番? よーするに花を見に行けばいいのよね?」
「お花があれば何でもいいらしいと聞きました」
「それじゃあこっちよ、インドア派の花は屋内にあるの」
 今度はアリスが先を示し、クロエを導いていく。そうすれば場面は一気に変わり、或る建物が見えてきた。
「アリス様のプランは美術館でありますか」
「そう、美術館よ。花の絵の展覧会がやってたから、チェックしてたわけ」
 クロエは笑みを浮かべ、アリスも美術館に入ってゆく。
 様々な花をモチーフにした絵画が並ぶ中、彼女達はゆっくりと展示を眺めた。ふとしたとき、アリスは何かの催しが行われていることに気付く。
「あ、ほらほら、お絵描きの体験コーナーですって」
 やってみましょう、といってアリスはそちらに歩いていく。対するクロエは少しばかりどぎまぎしていた。絵を描くことは実を言うとあまり慣れてない。経験がないわけではないのだが、今は全然だ。
「あの、小さな頃に習ったことがあるきりなので自信はないでありますが……」
「いいのよ。クロエの絵の腕前も見せてもらうから、観念して座りなさい」
「わかりました。頑張るであります!」
 自信はないものの、最高のデートにするのだと思えば気合いも入る。それから二人は自由に花の絵を描いていき、そして――。
「上手く描けたわ。はい、アタシのはお土産でクロエにあげる」
「ありがとうございます。それなら、自分のはアリス様に」
「交換ね、良いじゃない!」
 アリスが描いたのは白と赤の薔薇の花。クロエは先程の植物園で見た花をたくさん描き、完成とした。二人は互いの絵を贈り物として、それぞれに礼を告げる。
 こうして少女達の愛らしいデート模様は放送されていった。
 その光景を目にした者は口々にこういうだろう。素晴らしく可愛い、と――。


●Result
 可愛い度:最高
 コンビのバランス:★★★★★
 お絵描き:よくできました💮
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

末代之光・九十
【藍九十】◎
ピクニックデート!

いや全然平気だよ藍と僕はもうそのあのええとそう言う関係なのでデート位楽勝ですよ動揺してませんよ僕を動揺させたら大したもんですよだだ大丈(以下略)

お弁当作って来たけど、自信は…
え、食べさせ合うの!?
いやいやいや嫌じゃないよ喜んで!
(照れと緊張でガッタガタに震える手でアーン)
…美味しい?ほんと!?
そっか。そっかあ…えへへ

藍のも物凄く美味しいよ…


花かんむりも作ろう。被せて上げる。王冠。
…君は。あのね。僕のその。王子様だから…
ひひひ姫!?(熱暴走)
いや僕はそんなええとそんな……ええと……ああもう!
(誤魔化す様に花畑にゴローン)

!?
あっええと。顔!近…え!?
そ。そか……うん


紫・藍
【藍九十】◎
お花畑デート!
ことのおねーさんとお手製お弁当の食べさせあいっこなのでっす!

ギザ歯に感じるおねーさんのお箸の震えさえも愛しくて。
いただきます、なのでっす!
あやー! とっても、とっても美味しいのでっすよー!

藍ちゃんくんからも、あーん、なのでっす!
おねーさんのことを想いながら作った藍のこもった海鮮弁当なのでっすがー。
その。お口に合うでしょうかー?
……!
やったーなのでっす!


王冠のお礼にそっと花冠ーーティアラをおねーさんの頭に。
はいなのでっす。藍ちゃんくんのお姫様。

藍ちゃんくんもゴローンなのでっす!
とっても気持ちよさそうでっすし!
それに、この方が。お姫様のお顔を近くで見ることができますから!



●一番近くで
「お花畑デート!」
「ピクニックデート!」
 藍と九十の声が重なり、番組領域が穏やかな外の光景に変わっていく。
 辺りに広がっているのはのんびりと過ごすのに最適な草原。気温とお天気も丁度良く、二人が望んだデートにぴったりな場所だ。
 流れでピクニックデートに向かったはいいものの、ぽかぽかとしたお天気とは裏腹に九十の心は大荒れだった。
 デートが嫌なわけではない。むしろ嬉しい。
「いや全然平気だよ藍と僕はもうそのあのええとそう言う関係なのでデート位楽勝ですよ動揺してませんよ僕を動揺させたら大したもんですよだだ大丈――」
 以下略。
 動揺しまくりの九十の様子を見つめていた藍は楽しげに笑った。
「おねーさん、いきましょう!」
 今日の目的はお手製お弁当を二人で味わうこと。景色を楽しみ、美味しいものを食べるという時間は何よりの幸福だ。
「予定通りお弁当作って来たけど、自信は……」
「では食べさせあいっこなのでっす!」
 九十がお弁当の箱を取り出していると、藍から予想外の言葉が飛び出した。
「え、食べさせ合うの!?」
「ダメですか?」
 驚いた九十に気付き、藍が不思議そうな顔をする。はっとした九十は慌ててぶんぶんと首を横に振ってから更にはたとして、首を振る方向を縦に直した。
「いやいやいや嫌じゃないよ喜んで!」
「それじゃあ、あーんタイムなのでっす!」
 二人は手早く敷物とお弁当を設置していく。まずはおねーさんが藍ちゃんくんに、といって藍が口をあける。促された九十は卵焼きを箸で取り、彼に差し出した。
「は、はははい。アーン」
「いただきます、なのでっす!」
 しかし、九十の手は照れと緊張でガッタガタだ。藍のギザ歯にカタカタと箸が当たっているが、彼はそんなことなど気にしない。
 緊張するということはそれほどに意識してくれるということ。箸の震えさえも愛しく思うのが当然だ。あむ、と卵焼きを頬張った藍は明るく笑う。
 ゆっくりと味わってから飲み込んだ藍は、ぱっと表情を輝かせた。
「あやー! とっても、とっても美味しいのでっすよー!」
「……美味しい? ほんと!?」
「本当でっす!」
「そっか。そっかあ……えへへ」
 動きまで強張っていた九十だが、藍の言葉を聞いたことで緊張が解れていった。藍も満面の笑みを浮かべ、自分が作ってきたお弁当から唐揚げをひょいと持ち上げる。
「藍ちゃんくんからも、あーん、なのでっす!」
「あ、あーん」
 交代で食べさせあうのは何だかくすぐったいけれど、とても嬉しい。
 もぐもぐと唐揚げを食べていく九十は暫し喋ることが出来ない。先程の藍と同じように味わっているからだ。そんな彼女の隣で、藍はずっとにこにこしていた。
「おねーさんのことを想いながら作った藍のこもった海鮮弁当なのでっすがー。その。お口に合うでしょうかー?」
 問いかければ、こくん、と飲み込む小さな音が聞こえた。
 九十はそっと笑み、心からの想いを藍に伝える。
「藍のも物凄く美味しいよ……」
「……! やったーなのでっす!」
 はしゃぐ声が草原に響き、其処から楽しいランチタイムが巡っていく。

 互いのお弁当を味わった後、藍と九十は花を集めていた。
 色とりどりの花を編んで作っていくのは、季節の彩をめいっぱいに詰め込んだ冠。
「はい、王冠」
「わあ、ありがとなのでっす!」
 九十は藍にそうっと花の冠を被せた。王冠だと称した理由は――。
「……君は。あのね。僕のその。王子様だから……」
「嬉しいのでっす。それでは藍ちゃんくんもとっておきを!」
 藍は一度くるりと回って王冠の被り心地を確かめた後、九十に手を伸ばした。お礼にそっと花冠――特別なティアラを彼女の頭に乗せる。
「はいなのでっす。藍ちゃんくんのお姫様」
「ひひひ姫!?」
 藍が王子様だとは言ったが、まさか自分がお姫様扱いされるとは予想していなかった九十の頬が赤く染まった。熱暴走状態だ。
「いや僕はそんなええとそんな……ええと……ああもう!」
 どう答えていいか分からず、九十は誤魔化すように花畑にころりと転がった。可笑しそうに笑った藍は彼女の横に並び、えいっと倒れ込む。
「藍ちゃんくんもゴローンなのでっす! とっても気持ちよさそうでっすし!」
「!? あっええと。顔! 近……え!?」
 すぐ傍には藍の顔がある。
 更に予想外のことが起こり、九十は動けなくなってしまう。藍は彼女の隣に寄り添ったまま、真っ直ぐな笑顔を向けた。
「この方がお姫様のお顔を近くで見ることができますから!」
「そ。そか……うん」
 彼には誤魔化は効かない。
 或る意味で観念した九十は全てを受け入れた。そうすれば気持ちも心も何だか楽になってくる。そうして暫し、二人は花畑でゆっくりと過ごした。
 不意に手が繋がれ、九十がまた熱暴走してしまうのは――まだもう少し先のこと。


●Result
 仲良し度:★★★★★
 微笑ましくて:尊すぎる
 精神的イケメン度:すごい💘
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リオン・エストレア
【蒼紫】
2人きりの散歩
これがデートと言うのだろうか
彼女と共にいる時間はとても幸せで
夢の中にいるような気持ちになる
手を繋ぎたいという要望に
勿論と手を差し出す
絡めた指先から伝わる温もりに
どうしようもなく高揚してしまう

見上げれば、風に振れる大きな桜
足元には一面の菜の花

綺麗な景色だ
2つの花が織り成す風景に見惚れて
ふと彼女の方を向けば目線が会う
ちゃんと見ているよ
本当は見ているのは君だなんて
あまりにも柄じゃなくて言えるはずがない
つい目を逸らして頬に赤みが

この時が過ぎなければいいのに
風に乗る花弁が目の前を通り過ぎる
どうした、ルーチェ
耳に入った言葉に酷く紅潮する
そんなもの
俺も同じに決まっているじゃないか


ルーチェ・ムート
【蒼紫】

ふふ
でーとだね、リオン
きみと遊ぶのはいつだって楽しい
楽しくて、落ち着いて
それからちょっとどきどきするんだ
あの、ね
手を繋いでもいいかな?
ありがとう
ぎゅうと指先を絡めて握る
恋人繋ぎっていうのは内緒にして

手を揺らしながら歩くのは菜の花畑
一面の黄色い波に桜の花びらがひいらり風に流れる

綺麗だね
うっとりと見惚れながら
リオンも楽しんでくれてるかな?
ちらりと見上げれば重なる視線
頬が熱い
り、リオン
お花、見ないの?
そ、そっか

ひらひら降る花びらが視界を横切る
胸が掴まれたようにいっぱいになって
ううん、何でもない
きみが好きだなって思っただけ
呟くようにもう一度
すきだよ、リオン
溢れる心が桜と菜の花に攫われてゆく



●花に重ねて
 菜の花畑で二人きりの散歩。
 これがデートと呼ぶものなのだろうかと感じながら、リオンはゆっくりと歩く。
 隣にいるルーチェと歩幅を合わせ、目指すのは遠くに見える桜の樹の下。ただ一緒に歩いているだけだというのに彼女と共にいる時間はとても幸せだ。
「ふふ、でーとだね、リオン」
「ああ、何だか夢の中にいるような気持ちになる」
 ルーチェは綻ぶ花のように咲う。
 リオンが幸せだと感じているように、ルーチェも彼といることがいつだって楽しいと思っていた。それに不思議と心が落ち着いて、それからちょっとどきどきする。
「あの、ね。手を繋いでもいいかな?」
「勿論」
 ルーチェからの手を繋ぎたいという要望に答え、リオンは手を差し出した。
「ありがとう」
 先程よりもっと深い笑みを湛えたルーチェは、ぎゅうと指先を絡めて握る。これが恋人繋ぎと呼ぶことは内緒にして、ルーチェは彼の手の大きさを確かめた。
 絡めた指先から伝わる温もり。
 リオンは自分がどうしようもなく高揚してしまうことをそっと隠し、微笑みを返す。
 そうして二人は、手を揺らしながら菜の花畑を歩いていった。
 一面の黄色い波。
 其処に混じって、薄紅色の桜の花びらがひらり、ひいらりと風に流れていく。
「綺麗だね」
「そうだな、綺麗な景色だ」
 見上げれば風に振れる大きな桜があり、足元には一面の花々。
 黄と薄紅が織り成す世界の彩は、時を忘れてしまいそうなほど美しくて長閑だ。ふたつの花が織り成す風景に見惚れるリオンの傍で、ルーチェも景色を眺めていた。
 リオンは隣を見遣る。
 桜の花弁がルーチェの髪にふわりと乗った。その様子が愛らしく思えて、リオンは暫し彼女を見つめていた。そのとき、ルーチェもふと彼を見上げてみた。
(リオンも楽しんでくれてるかな?)
 重なる視線。はたとしたルーチェは自分の頬が熱くなっていくことを感じる。
「り、リオン。お花、見ないの?」
「ちゃんと見ているよ」
「そ、そっか」
 リオンはすぐに桜の樹に視線を移し、ルーチェもこくりと頷いた。
 本当は見ているのは君だ。
 なんて、あまりにも柄じゃなくて言えるはずがなかった。リオンの頬も赤くなっており、二人の間にじんわりとした熱が満ちていった。
 照れてしまって、少し恥ずかしくて、何だかくすぐったい。けれどもこの心地は決して悪いものではなかった。
 二人は桜の樹に背を預け、手を繋いだまま腰を下ろす。
 風に揺れる菜の花は明るく可憐だ。
 花々はまるで、何の心配もないのだと伝えてくれるかのような彩を宿していた。蝶々が花の合間を飛んでいく様を眺めるルーチェは、穏やかな心地を覚えている。
 この時がずっと続いて、過ぎ去らなければいいのに。
 リオンが想いを巡らせていると、風に乗った花弁が目の前を通り過ぎた。
 ルーチェの瞳にも降る花が映り、その視線が空に向けられる。ひらひら、ふわりと天高く舞い上がっていく花を見ていると、心が掴まれたようにいっぱいになった。
 彼女の様子が少し変わったことに気が付き、リオンが問いかける。
「どうした、ルーチェ」
「ううん、何でもない」
「それなら――」
 良かった、とリオンが言葉を続けかけたとき、ルーチェが微笑んだ。
「きみが好きだなって思っただけ」
「……っ」
 予想していなかった言葉が耳に届いたことで、リオンの頬が酷く紅潮した。ルーチェは双眸を緩やかに細め、呟くようにもう一度伝える。
「すきだよ、リオン」
 言の葉にはしないが、彼女の瞳は「きみは?」と問いかけていた。
 リオンはゆっくりと息をつき、激しくなりそうな動悸を抑える。そうして彼は、ルーチェに向けて真っ直ぐに伝え返した。
「そんなもの、俺も同じに決まっているじゃないか」
 視線と一緒に心が重なる。
 溢れる気持ちは桜と菜の花の色彩に満ちて、想いも心も、攫われてゆく。

 もう少し。あと少し。
 このひとときを、きみと一緒に。叶うなら、これからもずっと――。

●Result
 平穏度:★★★★
 照れ度:★★★★
 幸せは:きっとすぐそばに🌸
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

紫丿宮・馨子
【馨桜】
デートと改めて言われると
何だか少し照れますね

綺麗な花が沢山…香りも
カイ様イメージのブーケを作るといたしましたら…

花を探すのに夢中になりいつの間にかはぐれて
見渡しても彼の姿がなく
募る不安に背筋が寒くなり立ち尽くす

(あなたまで、いなくならないで

彼の姿を認めれば
不思議と全身を安堵が巡り
繋いだ手が心地よい

ブーケは白いチューリップ達の中に赤のアルストロメリアを一輪
真っ白で純粋な彼
でも一本芯の通ったイメージ

七夕の時もでしたが
彼には私の色を持っていて欲しいと思ってしまう
こんなの…駄目なのに

彼の作ってくれたブーケには
自然に笑顔を浮かべてお礼を

お願いに目を瞬くも
わたくしも同じ思いでした、と小さく紡いで


桜雨・カイ
【馨桜】
※フラワーガーデン内の花を使いブーケを作るイベント
あのっ番組の企画ですが…一日デート…しませんか

花畑や花のアーチ、色々とりどりの花や香り
ふと目をひく花を見ていたら…あれ?馨子さん?
すみませんっ、大丈夫ですか
不安をとりのぞくようにそっと手を繋ぐ

ブーケは馨子さんのイメージで
白と淡いピンクのトルコキキョウ(フリンジ咲き)
華やかでふんわり可愛くて
なんだか猫で喜ぶ馨子さんを思いだしたんです
綺麗な人だと思っていたらこんな可愛らしい一面もあるんだって
このブーケは私ですか…あの、すごく嬉しいです

もうすぐ終了ですが
できるならガーデンを出るまで手を繋いでいたい、です
(少しでいい…この気持ちは本物だから)



●白花の想い
「あのっ番組の企画ですが……一日デート……しませんか」
「デートと改めて言われると、何だか少し照れますね」
 そんなやり取りからカイと馨子のデートが始まっていき、妖怪テレビ番組の不思議な力によってロケ地の準備は瞬く間に整えられていった。
 そうして、二人が訪れたのはフラワーガーデンの花でブーケを作るイベント。
 たくさんの花々が満ちた会場は色鮮やかだ。
「綺麗な花が沢山……香りも――」
 馨子はふわりと微笑み、花の美しさに見惚れている。カイも花畑や花のアーチ、色々とりどりの花や香りを楽しんでいた。
 しかし、二人はいつしか別々の方向に進んでしまっていた。
 ふと目をひく花を見ていたら、いつの間にか馨子の姿が見えなくなっている。
「……あれ? 馨子さん?」
 カイが名前を呼んでみても、何処からも反応はなかった。
 一方、少し離れた所。
 同様に馨子も花に目を奪われていた。
「カイ様イメージのブーケを作るといたしましたら……ねぇ、カイ様、」
 振り向いて話しかけようとしたが、彼の姿がない。見渡してみてもそれらしい人影はみつからなかった。花を探すのに夢中になり、はぐれてしまったのだろう。そう気付いた馨子の中から楽しい気分が消えていく。
 募る不安。知らない場所にひとりきり。途端に背筋が寒くなって立ち尽くす。
(あなたまで、いなくならないで)
 しかし、そのとき。
「すみませんっ、大丈夫ですか」
 彼女を探し当てたカイが手を伸ばす。不安をとりのぞくように手を繋げば、馨子の瞳に光が戻った。彼の姿を認めれば不思議と全身を安堵が巡る。繋いだ手が心地よいと感じた馨子は、そっと掌を握り返した。

 そして、二人はブーケ作りに入っていく。
 馨子が形作っていくブーケは、白いチューリップを重ねた中に赤のアルストロメリアを一輪飾ったもの。
 それは真っ白で純粋な彼そのもの。けれども一本芯の通ったイメージだ。
 七夕の時もそうだったが、彼には自分の色を持っていて欲しいと思ってしまう。
(こんなの……駄目なのに)
 馨子は隣のカイをちらりと見遣りながら、ブーケの仕上げに入っていった。
 カイが作っているブーケはというと、やはり馨子をイメージするものだ。
 白と淡いピンクのトルコキキョウ。フリンジ咲きのものを選んだカイは、華やかでふんわりと可愛いブーケにしていく。
「なんだか猫で喜ぶ馨子さんを思いだしたんです」
「わたくしを?」
「綺麗な人だと思っていたらこんな可愛らしい一面もあるんだって」
 カイが語る言葉を聞き、馨子は嬉しい気持ちを抱く。そうして、馨子は出来上がったブーケをカイに差し出した。
「良ければ、こちらを」
 カイから感じる純粋なイメージを込めたのだと伝えた馨子はゆるりと笑む。
「このブーケは私ですか……あの、すごく嬉しいです」
 カイは花を受け取り、飾られた色彩を見つめた。語られずともこれが馨子の彩だとうことはわかる。馨子も彼の作ってくれたブーケを見つめ、ありがとうございます、と自然に笑顔を浮かべてお礼を伝えた。
 そうして、ブーケを作る時間も終わりが近付いていくる。
 見て回る際に少しのハプニングもあったが、花に想いを込めて贈り合うひとときは実に楽しかった。しかし、どうしてか少し物足りない気がする。
 カイは勇気を振り絞り、馨子に願いを伝えていった。
「もうすぐ終了ですが、できるならガーデンを出るまで手を繋いでいたい、です」
「まぁ……」
 お願いに目を瞬く馨子。
 はっとしたカイはいけない願いだったかと感じてしまい、少し不安になる。
「駄目、でしょうか」
「いいえ。わたくしも同じ思いでした」
 不安げな彼の様子を悟った馨子は、小さく紡いでそうっと手を伸ばした。先程は彼が安心を与えてくれたから、次は自分の番だと思えた。
 繋がれた手と手。二人の間に仄かな熱が宿る。それはとても心地好いもので――。

 この時間が終わるまで、ささやかなひとときを共に過ごしたい。
 ほんの少しだっていい。この気持ちは、本物だから。

●Result
 ハプニング度:★★
 互いを想う心:★★★★★
 花に込めた気持ち:素敵で素晴らしい👍
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

都槻・綾
f11024/花世

緑満ちるアーチを抜けた先
訪れたのは私設図書館

花を愛した亡き妻を想い
蒐集したという書物達
今や夫の老紳士も世を旅立てど
古今東西の花々は
色褪せぬまま書架で咲き誇る

結わいだ指先
ほどかぬままに
廻る書棚は
まるで秘密の花園

風が広げる一冊を
同時に示し
さやさやと笑い合う

優しい筆致で綴られた本は
印刷ではなく
スケッチブック

庭の花、と題された表紙の裏には
「愛するあなたへ」との贈る言葉
きっと、元図書館長の宝物

露草
勿忘草
牡丹に芍薬
さやかな花から大輪まで

花世の眼差しの先の桔梗に笑んで
礼を告げながら
白皙の頬に落ちる淡い花影へと手を伸ばす

あなたを私と言う土に根付かせられるものならば
いつまでも共に在れますものを


境・花世
綾(f01786)と

手をつないでちいさな図書館へ

森のような緑の絨毯
花の本で埋まる書架
ページをめくる窓の風

隣り合って本を覗き込めば、
肩のぬくもりときみのいい匂いで
安らぐ微睡みの中にいるみたい

夢ではないと確かめたくて瞬く視界
カーテンから零れる午後のひかりが
きらきらとページを照らす

ああ、きみに似合いの花が咲いていたよ

凛と静かな佇まいの桔梗は、
愛しさを憧憬を込めて丁寧に描かれて
架空の庭が瞼の裏に浮かぶよう
きみが花だったら、どんなにかうつくしいだろう
きみが土だったら、どんなにかあたたかだろう

……ずっと、傍で咲けたらいいのにな、

叶うはずもない幸福な夢をささやけば
やさしい手にひとひら、涙のように花が落ちる



●花縁
 手を繋ぎ、緑が満ちるアーチを抜けた先。
 綾と花世が訪れたのは、ちいさな敷地にぽつりと佇む私設図書館。
 此処は花を愛した亡き妻を想って蒐集したという書物達が並ぶ場所だという。今や夫の老紳士も世を旅立っているが、古今東西の花々は色褪せぬまま書架で咲き誇る。
 森のような緑の絨毯と花の本で埋まる書架。
 綺麗、と花世が咲えば、綾も綻ぶ笑みをそうっと返した。
 図書館ではお静かに。
 よくそう云われることを意識した二人の間に言葉はなく、視線と掌のぬくもりで行き先を伝えあう。
 結わいだ指先はほどかぬまま、廻りゆく書棚。此処はまるで秘密の花園のよう。
 そして、二人は窓辺の席に向かった。
 風に誘われるように辿り着いた机には一冊の本が置かれていた。
 窓から吹き抜けた風が本の頁を広げていく。その一冊を同時に示した綾と花世は、さやさやと笑いあった。
 頁をめくる窓の風はとてもやさしい。
 きっと本が呼んでいたのだと語った花世は、綾と隣り合って本を覗き込む。
 やはり其処に言葉はなく、肩のぬくもりときみのいい匂いをふわりと感じられることが心地好かった。
「安らぐ微睡みの中にいるみたい」
 花世がふと言葉にすれば、しぃ、と綾が口許に人差し指を当てた。
 夢ではないと確かめたくて瞬く視界は一瞬だけ影を映す。けれども、ひらいた瞼に差し込んだ光が夢ではないと教えてくれる。
 カーテンから零れる午後のひかりは、きらきらと頁を照らしていた。
 優しい筆致で綴られた本は印刷ではなく、どうやらスケッチのようだ。庭の花、と題された表紙の裏には手書きの文字が記されている。
 ――『愛するあなたへ』
 贈る言葉を指先でなぞった綾は、きっとこれは元図書館長の宝物なのだと感じた。その一冊が此処にあったということは、やはり呼ばれていたのだろうか。
 綾は静かに頁を捲っていく。
 まず目に入ったのは露草。それから、やわらかな勿忘草。
 印象的な牡丹に凛と美しい芍薬。さやかな花から大輪まで、様々な花が描き記されている様は見ていて飽きない。
 そんな中で花世が指先をある頁の花に向けた。
「ああ、きみに似合いの花が咲いていたよ」
「これは……桔梗ですね」
 花世が示した花を眺め、綾は双眸を細める。
 其処にあったのは凛と静かな佇まいをした桔梗の花。それは愛しさと憧憬を込めて丁寧に描かれているように見えて、特に心に残った。
 架空の庭がそのまま瞼の裏に浮かぶようで、花世はあえかに微笑む。
 
 ――きみが花だったら、どんなにかうつくしいだろう。
 ――きみが土だったら、どんなにかあたたかだろう。
 
 スケッチブックに込められた想いの欠片が花世の想いに重なり、胸裏にしんと響いてくるかのよう。綾は花世の眼差しの先で咲く桔梗に笑んで、礼を告げた。
 すると彼女がふと呟く。
「……ずっと、傍で咲けたらいいのにな、」
 ささやいたのは叶うはずもない幸福な夢。この図書館の主も、先に眠った彼の亡き妻もきっと同じことを想っていたはず。
 綾は何も語らず白皙の頬に落ちる淡い花影へと手を伸ばす。そんなやさしい手にひとひら、涙のように花が落ちる。
 綾は瞼を閉じ、柔らかな声を紡ぎゆく。
「あなたを私と言う土に根付かせられるものならば――」
 いつまでも、共に在れますものを。

 風が巡り、花の香が満ちる。
 想いも願いも、花に込めて。ささやかなひとときは、もう暫し続く。


●Result
 花浪漫:★★★★★
 秘密度:★★★
 切なさ:心に秘めて、花として💐
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

陽向・理玖
【月風】

小高い丘を手繋ぎ上がれば
満開のネモフィラ
うわぁめっちゃ綺麗
どこが空でどこが花か分かんなくなりそうだ

試してみる?
抱き上げくるりと回る

これ瑠碧の
口に合えばいいんだけど

開けていい?
うわっすげぇ
俺の好物ばっか入ってる
ていうか
噴き出し
瑠碧の分開けてみ?

リクエストの唐揚げ
葱入りの出汁の卵焼き
プチトマトにブロッコリーのナムル
花型人参グラッセ
俺の好物食べて欲しくてさ
似たような弁当になったな
あ、おにぎりは小さめにしたから俺も一寸崩れたかも
手合わせハンバーグ口にし
旨っ
卵何味?
めっちゃイケてる

ご馳走様
早起きしたし少し眠いな
ぼーっと花見て
…えっと
いいの?
おずおず頭乗せ

何か…落ち着く
じゃ一寸だけ
目閉じ

…俺も
囁き


泉宮・瑠碧
【月風】

丘の上のネモフィラ畑へピクニック

手を繋いで着けば
わ、凄い…
空を歩いてそう…

抱き上げられ吃驚
ぴゃ…
…色々な意味で、どきどきします

観賞したら敷物を広げ
互いに作ってきたのは相手の為の弁当

理玖のお弁当は、ミニハンバーグです
人参のグラッセに
ほうれん草とベーコンの炒め物
玉子焼きと塩おむすびは初挑戦なので…
少し不格好ですが

理玖の言に安堵と不思議
何でしょう?
私の分も開けます

わ…あれ?
理玖の方が上手ですが
所々、見覚えが…
…同じ事、考えましたね?
笑って手を合わせ
唐揚げ、美味しい…

美味しいと笑い合って食べ
食後に花畑を眺め

眠そうな彼の袖を引き
…膝枕、してみます?

理玖の頭を緩やかに撫で
眠って、良いですよ

…大好き



●空の青に抱かれて
 手を繋いで向かうのは小高い丘。
 満開のネモフィラが広がる丘の上に到着した理玖と瑠碧は感嘆の声を落とす。
「うわぁめっちゃ綺麗」
「わ、凄い……」
「どこが空でどこが花か分かんなくなりそうだ」
「空を歩いていけそう……」
 一面に広がる青、青、青。瑠碧が双眸を細めていると、理玖が腕を伸ばす。
「試してみる?」
 そのまま瑠碧を抱き上げた理玖は、その場でくるりと回った。其処から数歩、ゆっくりと歩いていく理玖に瑠碧がぎゅっとしがみついた。
「ぴゃ……」
 抱き上げられて吃驚しつつも、瑠碧は別の意味でもどきどきしていた。
 二人で空を歩くような心地を覚えながら、理玖は一番きれいに花が咲いているところで瑠碧をそっと下ろす。
 出会った時はこのように触れ合うことなんて出来なかった。
 けれども今、理玖も瑠碧も互いに心を許し合っている。足元に咲いている花のように笑みが綻び、二人は頷きあった。
 そうして、其処から始まっていくのは穏やかなピクニック。
 二人が座れる敷物を広げ、並べていくのはお互いに作ってきた相手の為のお弁当。
「これ、瑠碧の口に合えばいいんだけど」
「こちらこそ、気に入ってもらえると、いいのですが……」
「開けていい?」
「はい、どうぞ」
 まずは瑠碧が用意した理玖へのお弁当。
 ミニハンバーグに人参のグラッセ、ほうれん草とベーコンの炒め物。玉子焼きと塩おむすびは瑠碧にとって初挑戦のものだったので、ほんの少し不格好。しかし、理玖はそんなことなど気にしていない。
「うわっすげぇ、俺の好物ばっか入ってる。ていうか……」
「何でしょう?」
 理玖が思わず噴き出したので、瑠碧は安堵と不思議さを抱きながら首を傾げた。すると彼は自分が用意してきたお弁当箱を指差す。
「瑠碧の分、開けてみ?」
「私の分を……?」
 そうっとお弁当箱を開くと、リクエストの唐揚げや葱入りの出汁の卵焼き、プチトマトにブロッコリーのナムル、更には花型人参グラッセが入っていた。
「わ……あれ?」
 理玖の方が上手に見えるが、所々に見覚えがある。
「俺の好物食べて欲しくてさ、似たような弁当になったな」
「……同じ事、考えましたね?」
「そういうこと」
 瑠碧も理玖が笑った意味に気付き、ちいさく微笑んだ。ついでにおにぎりが一寸だけ崩れているところもお揃いだ。
 笑いあった二人は一緒に手を合わせ、いただきます、と言葉にする。
 理玖がまずハンバーグを一口で食べていき、瑠碧は唐揚げをちまっと齧った。
「旨っ」
「唐揚げ、美味しい……」
「この卵、何味? めっちゃイケてる」
「それはです、ね。少し工夫して……」
 理玖と瑠碧はひとつずつのおかずやおにぎりを味わっていき、食事と会話に花を咲かせていく。その間も空色の花が風を受け、心地よさそうに揺れていた。
 そして、暫しの時が過ぎる。
「ご馳走様」
「ごちそうさま、でした」
 互いのお弁当を食べ終わった二人はのんびりしていた。
 ふわふわとした気持ちが巡り、瞼が自然に落ちてくる。理玖はぼーっと花を見ながら目を擦っていた。
「早起きしたし、少し眠いな」
 瑠碧は眠そうな彼の様子を知り、その袖をくいくいと引く。
「……膝枕、してみます?」
「……えっと、いいの?」
 どうぞ、と瑠碧が頷いたことで理玖はおずおずと膝に頭を乗せた。やわらかな感触と、すぐ近くに彼女のぬくもりを感じられる。眠気に誘われている理玖は、頭を撫でてくれる瑠碧に素直に身を委ねていた。
「何か……落ち着く」
「眠って、良いですよ」
「じゃ一寸だけ」
 理玖は目を閉じ、瑠碧はその顔を見つめた。彼が眠ったのだと感じた瑠碧はどきどきしながらも、こっそりと想いを言葉にする。
「――大好き」
 すると薄く瞼をひらいた理玖が片腕を伸ばした。その手を瑠碧の頬に添えた理玖は、心からの想いを伝え返す。
「……俺も」
 そうすれば見る間に瑠碧の頬が淡く染まっていって――。
 それから二人がどんなひとときを過ごしたのかは、本人達だけの秘密のお話。


●Result
 お弁当:唯一無二
 ラブラブ度:★★★★★
 これからも:ずっと仲良くね💕
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

飛鳥井・藤彦
【紅蒼】
ふふー、兄さんからの嬉しいお誘い、断るわけあらしまへん。
僕と同じ名前の花の下でお花見言うんは、こそばゆい感じがしますけど。
ほら、兄さん、こっちのお団子もはい、どーぞ。
今日もええ食いっぷりやねぇ。

(うっとり見惚れ)

おや、仰山食べたら眠うなってきました?
ええですよ、僕の膝ならいくらでも貸したるさかい。
兄さんの髪を撫でながら寝顔を愛でる。
嗚呼、なんて幸せな時間やろ。
……お目覚めですか?
兄さんにそないに褒められると照れますわ。
おーきに。
僕も兄さんの綺麗な瞳好きですよ。

(伸ばされた手に自分の手を重ねて、するりと口元ヘ導いて唇を押し当てて微笑み)

瞳だけやない、髪も手も、中身もぜーんぶ……好き。


有栖川・夏介
【紅蒼】
※距離感がおかしいかもしれませんが「友人」です。

藤彦君を誘ってみる。デート、なのだから本来なら恋人と行くべきなのだろうけど、私にはそんな相手いませんし。
それに、彼となら楽しく過ごせる気がして。

藤の花咲き誇る藤棚でお花見
花をみながらお茶を飲んで、お茶菓子もいただいて……もぐもぐ
ゆったりとした時間に緊張もほぐれる。少し、瞼が…重たい……。

…………。
目を覚ますと、視界には藤の花。そしてのぞき込む藤彦君の顔。
俺、眠ってしまっていたんだろうか……?
ぼんやりとした意識の中、彼の頬にそっと手をのばして告げる。
「藤彦君の瞳の色、藤の花みたいで……綺麗だ」
この美しい藤を大切にしたいと思った。



●花と微睡み
 ゆらり、ふわりと藤の花が風に揺らぐ。
 本日、藤彦と夏介が訪れているのは美しい花が咲き誇る藤棚。
「本来なら恋人と行くべきなのだろうけど、私にはそんな相手いませんし」
「ふふー、兄さんからの嬉しいお誘い、断るわけあらしまへん」
 夏介が語ったように本当の意味でのデートの相手というものはいない。だが、夏介は藤彦となら良い時間が過ごせると思ったのだ。藤彦も上機嫌であり、互いがどんな関係であろうとも楽しめることは間違いない。
 自分と同じ名前の花の下でするお花見は少しくすぐったいと思ったが、藤彦はそれもまた良い感覚だと思っていた。
 そうして、お花見の時間はゆったりとはじまっていく。
 
「何やこそばゆい感じがしますけど、綺麗やねぇ」
 藤棚の傍らに設置されていたベンチに腰を下ろし、藤彦は双眸を細めた。その瞳には淡い紫色を宿す藤の花が可憐に咲いている。
 夏介もじっと花を見上げ、緩やかに流れる時間を楽しむ。
「本当に美しいですね」
 多くの言葉を並べて花の美麗さを表すのは、逆に無粋に思えた。ただ美しいと感じるままにじっくりと花を眺める。それだけで十分なほどの穏やかな気持ちが巡る。
 そんな中、藤彦は用意してきたお団子を取り出した。
 お花見と言えばお団子。それに美味しいお茶も合わせれば至福のひとときになる。
「ほら、兄さん、こっちのお団子もはい、どーぞ」
「ありがとうございます」
 藤彦からお団子を受け取った夏介は礼を告げ、花を見ながら味わう。合間にお茶を飲んで、更にお団子を食べ、もぐもぐタイムが暫し続いていく。
「今日もええ食いっぷりやねぇ」
 彼の様子や花が風と遊ぶ模様にうっとりと見惚れ、藤彦は嬉しげに微笑んだ。
 そうしていると、夏介が少しだけ目を閉じる。
 ゆったりとした時間に緊張もほぐれていき、お腹も満たされていったことで眠気が訪れたのだろう。
「少し、瞼が……重たい……」
 うとうとし始めた彼は藤彦の肩にそっと寄りかかった。
 はたとした藤彦は夏介を支えつつ、微笑ましい気持ちを抱く。
「おや、仰山食べたら眠うなってきました?」
「ん……その、ようです……」
 既に半分、眠りの園に入っている夏介はまるで少年のようにも見えた。くすりと笑む藤彦は夏介の肩を支え、自分の膝に彼の頭を導いた。
「ええですよ、僕の膝ならいくらでも貸したるさかい」
「…………」
 素直に膝に頭を乗せた夏介は完全に瞼を閉じる。
 静かな寝息が藤棚の下に響きはじめ、藤彦はやさしい気持ちを抱いた。
「兄さん……可愛らしいなぁ」
 夏介の髪を撫でながら、藤彦はその寝顔を愛でる。すやすやと眠っている彼のこんな姿を見られるのは、今は自分ひとりだけ。そう思うと藤彦の中に嬉しさが巡った。
「嗚呼、なんて幸せな時間やろ」
 藤彦から零れ落ちた言葉は心のままに紡がれたもの。
 そうして、暫しの時間が流れてゆく。

「……お目覚めですか?」
「俺、眠ってしまっていたんだろうか……?」
「ええ、よく寝てはりました」
 夏介が目を覚ましたとき、すぐ近くに藤彦の顔が見えた。そっと見下ろしている彼の視線と、瞼をひらいた夏介の視線が重なり合う。
 視界には藤の花。それから、微笑む藤彦の顔。目覚めと共に一番に目にするものとしては、とても良い光景だと思えた。
 ぼんやりとした意識の中、夏介は彼の頬にそっと手を伸ばす。
「藤彦君の瞳の色、藤の花みたいで……綺麗だ」
「兄さんにそないに褒められると照れますわ。おーきに」
 告げられた言葉が妙にくすぐったくて、藤彦も彼の手に自分の手を重ねた。
 そして――。
「僕も兄さんの綺麗な瞳、好きですよ」
「……ありがとう」
 まだ微睡みの最中にいる夏介はゆるりと答える。
 藤彦は夏介の手をするりと自分の口元ヘ導き、唇を押し当てて微笑んだ。
「瞳だけやない、髪も手も、中身もぜーんぶ……好き」
 二人の視線と笑みは重なったまま。
 関係がどうだとか、状況がどうであるだとかは今は関係がない。ただ、この美しい藤を大事に、大切にしたいと思った。


●Result
 友人度:???
 美麗度:★★★★★
 距離感:いい意味で壊れている💟
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ハルア・ガーラント
相馬(f23529)と ◎

はいっ、挑戦者として頑張ります

相馬はお酒が好きなので夜の植物園デートを提案
ここ、併設のカフェでエディブルフラワーを使ったスイーツが楽しめるんですが夜はお酒も出してくれるんです
ライトアップされた植物達を背景にグラス傾け語らう恋人達……ステキ

植物園を楽しんだ後はカフェへ
さて、お洒落なカクテ……みつばち秘蔵の花とクリームのパンケーキ!?
わたしこれとハーブティで!

見ても食べても楽しめるなんて幸せ
はい、相馬もあーん

わたしを静かに見つめる相馬に跳ねる鼓動
相馬、ここお店だし撮影が――大きな手が優し……顔が近――!
思わず目を瞑ってちょっとだけ期待

あだだ!
ダメ、これは食べられないから!


鬼桐・相馬
ハルア(f23517)と ◎

デート?
成程、そういうことなら

夜の色と静けさ、そして酒類は何でも好きだ
俺の為にここを探してくれたハルアの気持ちが素直に嬉しいな
折角だ、俺はそのエディブルフラワーとやらが入ったカクテルを頼むよ
静かな夜の景色やカフェの雰囲気、笑顔のハルアを見ていると穏やかな気持ちになれそうだ

彼女の髪で動く羽虫にはパンケーキを貰う時に気付く
ここは植物園、花を好む虫も多いだろう
動き的に月下美人を目指している

このままでは飲食物が危ない
騒がれたくないので黙って髪に埋もれる羽虫を取り去りたいが勘違いされそうだ

そういえばこの頭の花、花弁は取れるんだろうか
まあ、取れなくてもハルアごと貰えば良い話だな



●花に誘われて
 此度に挑戦するのは何とも不思議な番組企画。
「デート? 成程、そういうことなら」
「はいっ、挑戦者として頑張ります」
 相馬とハルアは妖怪番組の領域に踏み出し、それぞれに意気込みと気概を見せる。
 今回のデートプランを考えたのはハルアの方だ。
 相馬はお酒が好きなので夜の植物園デートを提案して承諾された。そういうわけで現在、二人はお洒落なカフェに訪れている。
「夜の静けさが心地良いな」
「ここ、エディブルフラワーを使ったスイーツが楽しめるんですが、夜はお酒も出してくれるんです」
 やわらかな灯に照らされた植物がよく見えるテラス席にて、二人は隣同士で座っていた。花が夜風を受けて心地良さそうに揺れる様は見ていて飽きない。
「俺の為にここを探してくれたハルアの気持ちが素直に嬉しいな」
「ふふ、喜んでくれて嬉しいです」
 相馬からの言葉もまた、ハルアにとって嬉しいもの。
(ライトアップされた植物達を背景にグラス傾け語らう恋人達………ステキ)
 ハルアは今の状況をとても良いものだと感じ、メニューをひらいた。やはり此処は雰囲気に合わせて大人っぽいものを選ぶのが良いだろう。
「折角だ、俺はそのエディブルフラワーとやらが入ったカクテルを頼むよ」
「さて、お洒落なカクテ……みつばち秘蔵の花とクリームのパンケーキ!?」
 相馬が選んだものと同様に、ハルアも合わせてカクテルを頼もうと思っていた。だが、それ以上に心惹かれるものを見つけてしまう。
 ちら、と相馬を見遣ると、彼は何でも構わないという視線を向けてくれていた。
 ほっとしたハルアは店員を呼び、躊躇なくスイーツを選ぶ。
「わたしこれとハーブティで!」
 そうして、夜の花を眺める時間がゆったりと過ぎていき――。
 二人のテーブルにはそれぞれに注文したものが運ばれてきていた。食べられる花があしらわれた見た目にも美しいカクテルに、蜂蜜とクリームがたっぷり乗せられたパンケーキとハーブティ。どちらも味も見た目も抜群にいいものだ。
「見ても食べても楽しめるなんて幸せ」
「雰囲気も良いな」
 ハルアが本当に嬉しそうにしているので、相馬は穏やかな心地を抱いていた。
 静かな夜の景色やカフェの空気、そして笑顔のハルア。それら見ているだけでちいさな幸せが満ちていく。
 パンケーキを切り分けていたハルアは相馬の視線に気付いた。
「はい、相馬もあーん」
 そのまま差し出されるパンケーキ。
 しかし、相馬は別のことにが付いてしまった。パンケーキを貰う時、彼女の髪で動く羽虫を見つけたのだ。
 ここは植物園であるゆえ、花を好む虫も多いのだろう。
 虫の動き的に月下美人を目指しているのが見て取れる。
 相馬は悩む。じっとハルアを見つめたまま、思考をフル回転させて考えた。
 このままでは飲食物が危ない。だが、騒がれたくないので黙って髪に埋れる羽虫を取り去りたい。しかしどうやっても勘違いされそうだ。
 ならばどうする。どのように行動するのが最善策なのか。
 相馬が考えを巡らせている間、その視線はずっとハルアに注がれていた。
 ハルアはハーブティを飲んで何とか平静を保っていたが、自分を静かに見つめる相馬の視線が気になって仕方ない。
 彼の真剣な表情を見て、跳ねる鼓動。
 もしかして何か特別なことが起こるのかもしれない。ときめく胸を押さえたハルアは虫のことなど露知らず。
 そして、ドキドキしているハルアは小声で彼に語りかけた。
「相馬、ここお店だし撮影が――」
「じっとしていてくれ」
 相馬は其処で意を決し、そっとハルアに手を伸ばす。
(大きな手が優し……顔が近――!)
 ハルアは思わず目を瞑ってしまい、ちょっとだけ期待を寄せた。しかし相馬の方もハルアの思いに気付けないまま。ふとした疑問を抱いたのだと装って、虫排除作戦に移ろうとしている。
「そういえばこの頭の花、花弁は取れるんだろうか」
「え?」
 予想外の言葉が聞こえたことでハルアは目を開けた。そういうロマンス的な展開じゃなかったの!? という声が出そうになったがぐっと抑える。
 その間にも相馬の手が髪と花に触れてきて――。
「あだだ! ダメ、これは食べられないから!」
 エディブルフラワーと同じだと思われたのだと勘違いしたハルアはぶんぶんと首を振った。その間に虫は何処かにいってしまい、相馬はほっとする。
 髪を押さえたハルアに安堵混じりの笑みを向け、彼は手を離した。
「まあ、取れなくてもハルアごと貰えば良い話だな」
「はっ……はい、確かに……」
 ハルアは彼が紡いだ言葉にはっとして、熱くなった頬を押さえる。色んな意味で胸が高鳴り、ドキドキしたひととき。
 早鐘を打つ鼓動は、もう暫くはおさまってくれそうになかった。
 

●Result
 大人度:★★★
 ハプニング度:★★★★★
 さりげない:イケメンがいる✨
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

メルメッテ・アインクラング
雪丸様(f31181)と

雪丸様からお誘いを頂き薔薇園へと参りました
普段は自然物がない場所で一人で働いている為、大輪の薔薇が咲く庭園を友達と歩けるなんて夢のようです
「ありがとうございます。あちらの薔薇はご覧になりましたか?
はっきりとしたお色ながら花弁は柔らかな印象で。雪丸様に似ております」

こちらは、クリスマスローズ……!
まあ、私の一番好きなお花を……。雪丸様からは頂いてばかりでございますね

帰り際、感謝と共にお店で購入していた物を贈ります
「薔薇の香りのハンドクリームです。男装の麗人の名を冠した白薔薇が使われているそうでして。よろしければ、雪丸様に」
お返しできたでしょうか?またぜひご一緒させて下さい


雪丸・鳳花
メルメッテくん(f29929)と一緒

この世界を救う手立てがデートと聞いた!
ならば、ボクは友達と出かけよう

メルメッテくんとは最近友達になったんだ
もっと仲良くなるために誘ったのさ
デートプランとエスコートはボクに任せてくれ

今の季節にピッタリの薔薇園の散策さ
薔薇で出来たアーチを潜り、噴水に癒され、色とりどりの薔薇を愛でよう
この薔薇の雰囲気は愛らしくてメルメッテくんに似ているね

キミの好きな花はクリスマスローズだったよね?
事前に調べて、ここならまだ咲いている姿が見られると知ってキミを誘ったのさ
デートにサプライズは必要不可欠だろう?

おっと、キミからもサプライズを受けるとは!
この土産は大切にさせてもらうよ!



●華やかなみちゆき
 並んで歩くのは鳳花とメルメッテ。
 二人が訪れているのは美しい薔薇が咲き誇る花園だ。様々な色や品種の花が一堂に会する景色はとても華々しい。
「雪丸様、今日はお誘いを頂きありがとうございます」
「お礼なんていいんだよ。この世界を救う手立てがデートだと聞いたからね!」
 メルメッテが丁寧に礼を告げると、鳳花はぐっと拳を握って答えた。
 鳳花とメルメッテは最近に友達になったばかり。デートの相手がどんな関係でも大丈夫だと聞いたので、もっと仲良くなるために誘ったのだ。
「デートプランとエスコートはボクに任せてくれ」
「はい、よろしくお願いします」
 鳳花が胸を張って宣言すると、メルメッテは穏やかに微笑んだ。
 彼女は普段、自然物がない場所でたった一人で働いている。そのため、大輪の薔薇が咲く庭園をこうして眺める機会は新鮮だった。
「友達とこうやって、こんなに素敵な場所を歩けるなんて夢のようです」
「夢じゃないよ。現実にある楽しいことだって教えてあげよう!」
 鳳花は手を差し伸べ、メルメッテもその手を取った。
 何もなければ友人同士で手を繋ぐ機会はないが、今回は特別。本当の王子様のようにメルメッテをエスコートする鳳花は優雅に微笑んでいた。
「ほら、今の季節にピッタリの薔薇園さ」
 鳳花はメルメッテを連れ、園内の様々なところを巡っていく。途中、段差や階段があれば彼女に呼び掛け、何も危険なことがないように気遣っていった。
 そのときふと、鳳花はピンク色の薔薇を見つける。
「この薔薇の雰囲気は愛らしくてメルメッテくんに似ているね」
 淡く可憐な所なんかが、と鳳花が告げると彼女は嬉しげに双眸を細めた。
「ありがとうございます。あちらの薔薇はご覧になりましたか? はっきりとしたお色ながら花弁は柔らかな印象で。雪丸様に似ております」
「本当だ、綺麗だね」
 メルメッテが自分に似ていると語った薔薇を見つめ、鳳花も明るく笑む。
 少し気恥ずかしい気持ちはあれど、友人がそのように思っていることが嬉しい。弾む心を感じながら、鳳花は更に彼女を先にいざなっていく。
 薔薇で出来たアーチを潜り、繊細な彫刻が飾られた噴水に癒され、色とりどりの薔薇を愛でていき、ひとつずつの咲き方を眺める。
 そうして、鳳花は或る花の前にメルメッテを連れてきた。
「こちらは、クリスマスローズ……!」
「そうさ。キミの好きな花はクリスマスローズだったよね?」
「まあ、私の一番好きなお花を覚えていてくださったのですね」
 はい、と答えたメルメッテは本当に嬉しそうに花を見つめている。鳳花はその様子に和みを覚え、満足そうに頷いた。
「事前に調べて、ここならまだ咲いている姿が見られると知ってキミを誘ったのさ。デートにサプライズは必要不可欠だろう?」
「ふふ……雪丸様からは頂いてばかりでございますね」
「そんなことはないさ。喜んで貰いたかったからね」
 二人の視線が重なり、笑みの花が咲く。薔薇の光景が広がる中で交わった思いと心はあたたかく、何よりも綺麗に咲き誇っているように思えた。
 そして、時間は過ぎていく。
 薔薇園をすべて見て回った二人はそろそろ帰路につこうと決めた。
 出入り口にある薔薇のアーチを潜った時、メルメッテは鳳花を呼び止める。
「あの、雪丸様」
「どうかした?」
 振り向いた鳳花に向け、メルメッテは先程にお店で購入していた物を贈った。
「薔薇の香りのハンドクリームです。男装の麗人の名を冠した白薔薇が使われているそうでして。よろしければ、雪丸様に」
「おっと、キミからもサプライズを受けるとは!」
 予想していなかった展開に驚いた鳳花だったが、その瞳には嬉しさが宿っている。
 鳳花の反応が自分がクリスマスローズを見せて貰った時と同じだと感じて、メルメッテも満足気に笑ってみせた。
「お返しできたでしょうか? またぜひご一緒させて下さいね」
「勿論さ! この土産は大切にさせてもらうよ!」
 今日という日の思い出と一緒に、ずっと大事にしたい。
 感謝と親愛の眼差しが交わされていく最中、二人は互いに快い気分を抱いていた。


●Result
 王子様度:★★★★★
 サプライズ度:★★★★
 とても仲良しで:ほのぼの🌹
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロキ・バロックヒート
零時くん(f00283)と

デートかぁ…そうだ
いつか零時くんが恋人つくった時のために
年上彼女になろうかな

一面のたんぽぽ畑を二人で歩く
春の風が気持ちいいね
腕を取って抱き着いて
れーくんって呼んであげる
え?他にそう呼んでる子居たの?
ちょっと~別の呼び方にしようかな
嫉妬したフリしてほっぺをつつく
れーじくん?なんか違うなぁ
まぁいっかれーくんで

たんぽぽってれーくんみたいだよね
ひとつ摘んだたんぽぽに軽く口付けて
れーくんは私の太陽だよ、なんて笑う
君の夢が叶いますようにって
花冠を編んでれーくんにあげるよ
青い髪に黄色が映えてきれい
手を繋いでたんぽぽ畑を駆けていこう

(カット部分)
恋人にこんなことするのかって?
さぁ…?


兎乃・零時
ロキ(f25190)と!


デート…つまり遊ぶ、だよな?
恋…人…?(宇宙兎
まぁいいや!
遊ぼう!

タンポポ畑を二人で歩く
こーゆう風良いよなー
(抱き着かれて頭の中?いっぱい)
れーくん…ロキにはその呼び方された事ないから新鮮だな
え、なんかダメだったの!?
若干慌てつつほっぺ付かれてぐわ―って
まぁしっくりするもんが一番だもんな

俺様っぽいか?確か前も花で出たしなぁ
…ロキの太陽…?
目をぱちくり
太陽は輝いてるし良い事なのは判るがどーゆう意味合いなんだろ
へへへー、ありがとロキ!
おぉ花冠、綺麗な奴だ!
嬉し気にしつつ手を繋いでパタパタ駆けるのだ

恋人ってこーゆうことするもんなんだな…しらなか…
え、知らないでやってたの!?



●太陽の花と贈る冠
 ロキと零時、二人が訪れたのは妖怪テレビ番組の領域。
 何でも、デートをすれば戦わずに色々なものが浄化されるという不思議空間らしい。
「デート……つまり遊ぶこと、だよな?」
「そうだ、いつか零時くんが恋人つくった時のために年上彼女になろうかな」
「恋……人……?」
 ロキの言葉を聞き、零時は宇宙空間に疑問を浮かべる兎のような状態になった。ロキはというとチェシャ猫のように悪戯っぽく笑っている。
 はっとした零時は気を取り直し、ロキと遊ぶという部分に意識のスポットを当てた。
「まぁいいや! 遊ぼう!」
「はーい。じゃあさっそく行こうか」
 楽しげに笑みを深めたロキは零時を誘い、領域の先に踏み出していく。
 そうして、二人がデート場所に選んだのは花畑。
 視界いっぱい広がるのは黄色の花。彼らはとても春らしい雰囲気を楽しみ、蒲公英が咲き乱れる道を二人仲良く並んで歩く。
「風が気持ちいいね」
「こーゆう風良いよなー」
 穏やかで長閑な景色の最中、零時はのんびりとした気分を抱いていた。しかし次にロキが取った行動に疑問を浮かべることになる。
「れーくん」
 腕を取って抱き着いてきたロキが今までとは違う呼び方をしてきた。頭の中はハテナでいっぱいだが、零時はロキを振り払うようなことはしない。
「れーくん……ロキにはその呼び方された事ないから新鮮だな」
「え? 他にそう呼んでる子居たの? ちょっと~別の呼び方にしようかな」
 ロキは嫉妬をしたフリして零時の頬をつついた。
「え、なんかダメだったの!?」
「れーじくん? なんか違うなぁ。まぁいっかれーくんで」
 つつかれたことで若干焦り、ぐわーっと慌ててしまう零時。ロキはそんな彼の様子もまた面白いものだと感じていた。本当に小悪魔系の年上彼女そのものだ。
 何とか気をしっかりと保った零時は頷き、そのまま歩いていく。
「まぁしっくりするもんが一番だもんな」
「適当でいいよね、うんうん」
 それから二人は暫し蒲公英畑を散策した。ところどころに少し早めに綿毛を付けはじめている蒲公英もあり、黄色と白が織り成す色彩はふんわりとした雰囲気だ。
 花が密集しているところを見つけ、ロキはぱたぱたと駆けていく。
「たんぽぽってれーくんみたいだよね」
「俺様っぽいか? 確か前も花で出たしなぁ」
 その後を追っていく零時は首を傾げていた。そういえば以前にも蒲公英が心の花だと示されていた。そうなんだろうか、と考えた零時は花をじっと見つめる。
 その間にロキが屈み込み、足元にあった花に手を伸ばした。
 ひとつ摘んだ蒲公英に軽く口付け、ロキは不敵かつ無邪気な笑みを浮かべる。
「れーくんは私の太陽だよ」
「……ロキの太陽……?」
 零時はロキが語る言葉の意味がわからず、目をぱちくりさせた。太陽は輝いていてそれが良いことだとは判るが、どういった意味合いが込められているのか見当もつかない。どうやら魔術一直線の少年には恋のたとえがぴんとこないようだ。
 そんな彼も可愛らしいと感じたロキは、次々と花を摘みはじめた。
「君の夢が叶いますように」
 其処から編んでいくのは蒲公英の花冠。くるくると花と花を絡めて、最後に綿毛の蒲公英を中心に飾れば出来上がり。
「はい、れーくんにあげるよ」
「おぉ花冠、綺麗なやつだ!」
「青い髪に黄色が映えてきれいだね。空と海の間に咲いた花みたい」
「へへへー、ありがとロキ!」
 二人の間に笑みと感謝が巡り、花冠は春風を受けてさやさやと揺れていた。
 それから、ロキと零時は手を繋ぐ。
 蒲公英の目映い彩が広がり続ける花畑を駆けていく二人。その姿は青春や恋愛映画を思わせるような爽やかな光景で――。
 そんな二人をやさしく見送るように、花々は明るく咲き誇っていた。

 ~カット部分~
「楽しかったね、れーく……零時くん」
「恋人ってこーゆうことするもんなんだな……しらなかったぜ」
「うーん、恋人同士ってこんなことするの? さぁ……?」
「え、知らないでやってたの!?」

 The End.


●Result
 小悪魔度:★★★
 純粋少年度:★★★★
 恋とは:難しいものだね🤔
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

尭海・有珠
レン(f00719)と

明るい中での星巡り
ブルースターに桔梗、ブバルディアにスプレーカーネーション
星のような花に囲まれた道を散歩…いや、デートしようか!
問いに勿論、と応えてからきっとその目にどきりとしてしまう

陽の下の、色々な色彩の星
暗がりに瞬く光を見つけるのも好きだが、こういうのも楽しいものだな
風に乗る花の香りも結構好きではあるんだが

花に囲まれているのだから、折角だからレンの好きな花を聞いてみたい
…聞いておいたら、贈りたいときにレンの好きな花をあげられるだろ?
とへらり笑う
こんな可愛い花に似てるだろうかとは思うけれど
…まあ同居人を除けば一番一緒にいることが多いのはレンだからな
似てきてしまうのかもな


飛砂・煉月
有珠(f06286)と

恒例になった星巡り
明るい中で星の花を巡るのもイイよね
…デート!
あっは、その響きだ途端にドキドキしちゃう不思議
――ね、手繋いでもイイ?
どうせ攫うつもりで居る癖に
音にするのはキミから聞きたいから

ブルースターに桔梗
スプレーカーネーションにブバルディア
星の形を持つ花の路をキミと
陽の下に咲くの星を緋と蒼で映し
暗がりに鏤められた星を指し歩くのもイイけど
うん、こういうのも楽しい
強すぎる匂いは苦手だけど風が運ぶ花の馨はオレも好き

オレはこの中ならブルースターかな
だっていっとうキミに似てるから
あっは、何か有珠の咲い方オレに似てきたね
同じくへらりと笑い
デートは終わってないよって手を引いて
次は…



●星の花と続く路
 二人で紡いでゆく、未来への路の最中。
 煉月と有珠、本日の彼らが歩むのは恒例になった星巡りの道。
「明るい中での星巡りもいいな」
「ね、こんな風に星みたいな花を巡って歩くのもイイよね」
 有珠が周囲を見渡し、煉月も辺りの様子を確かめる。二人の瞳に映っているのはブルースターに桔梗、ブバルディアにスプレーカーネーションといった星のような花に囲まれた、穏やかな雰囲気の散策路だ。
「散歩……いや、デートしようか!」
「デート! あっは、その響きだと途端にドキドキしちゃうのが不思議だ」
 妖怪番組の趣旨に乗り、有珠と煉月はそれぞれに意気込みと思いを抱く。花の巡りを目にしながら、煉月は有珠に手を伸ばした。
「――ね、手繋いでもイイ?」
 どうせ攫うつもりでいる癖に、敢えて音にするのはキミから聞きたいから。
「勿論」
 差し出されている手に自分の掌を重ねた有珠は微笑む。しかし、煉月から向けられる眼差しに気付いて不意にどきりとしてしまう。勿論だと答えられる言葉も、手を繋ぐこともちゃんと予想していた彼の瞳には揺るぎない自信と、少しの悪戯っぽさが宿っていたからだ。
 そして、二人は手を繋いだまま歩いていく。
 陽射しは眩く、進む先を照らしてくれていた。目映い太陽の下で咲くのは様々な色彩の星で目にも優しい。
 ブルースターが揺れる道を眺め、有珠は煉月の手を握る掌にそっと力を込めた。そうすれば彼からも返事のようにして手が握り返される。
「暗がりに鏤められた星を指し歩くのもイイけど、昼間も楽しいね」
「ああ。暗がりに瞬く光を見つけるのも好きだが、こういうのも楽しいものだな」
「うん、こういうのも楽しい」
 有珠が語る言葉に煉月は同意を示し、楽しそうに笑った。そうして次は桔梗が咲き乱れる道に辿り着き、二人は辺りに満ちる香りを楽しむ。
「風に乗る花の香りも結構好きではあるんだが、レンは?」
「強すぎる匂いは苦手だけど風が運ぶ花の馨はオレも好き。
 煉月の尾がゆらゆらと揺れていた。
 星の形を持つ花の路をキミと歩いていられる。陽の下に咲く星を緋と蒼で映す今の心地はとても快くて優しいものだ。
 更にはブバルディアの道、スプレーカーネーションが飾られた庭園などを巡っていく二人はとても心地好い空気を感じていた。
 そんな中で、ふと有珠は思い立つ。
 花に囲まれている今、折角だから彼の好きな花を聞いてみたい。
「レン、どれか好きな花はある?」
「オレはこの中ならブルースターかな。だっていっとうキミに似てるから」
「そうか……ふふ」
 こんな可愛い花に似てるだろうかとは思うけれど、彼が告げてくれる言葉は素直に受け入れたかった。有珠がとても嬉しそうなので煉月の心も弾んでいく。それから煉月は彼女に問い返してみる。
「でも、何で急に聞いてきたの?」
「聞いておいたら、贈りたいときにレンの好きな花をあげられるだろ?」
 有珠がへらりと笑うのに合わせ、煉月も同様に笑った。
「あっは、何か有珠の咲い方オレに似てきたね」
 はたとした有珠は自分が無意識にそうしていたことに気付く。何だかくすぐったくもあり、同時に快い変化でもあった。
「……まあ同居人を除けば一番一緒にいることが多いのはレンだからな」
「オレに近付いてきたってこと?」
「そうだな、似てきてしまうのかもしれない」
 二人は微笑みを宿し、こうして当たり前のように一緒に居られることを喜んだ。
 やがて、星の花の道も終わりが近付いてきた。
「そろそろ終わりか……」
「ううん、デートは終わってないよ」
 有珠が名残惜しそうにしていることを知り、煉月は彼女の手を引く。まだまだ終わらないのは、もうすぐ夜が訪れるから。
 そうすれば、本当の星を巡る路に踏み出せる。
 互いの手を取りあい、大切に握りあった煉月と有珠は更に先へと歩いていく。

 さあ、次に二人で観る星は――。


●Result
 共通度:★★★
 ほのぼの度:★★★★★
 星巡り:まだまだ続くよ💫
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

神埜・常盤
琥瑚さん/f23161

勿論さ、琥瑚さん
君の笑顔がもっと煌めくような
そんな楽しい一日を約束するとも

折角のデェトだし
御手をどうぞ――
なんて、エスコォトは如何

向かう先は馴染みのケェキ屋だ
ショウケェスに並ぶのは
花を象った色とりどりのケェキたち
お勧めは大輪咲きの甘い牡丹
僕は天竺牡丹――ダリアにしておこう

店内の喫茶室で舌鼓を
あァ、食べれる花を使ったカクテルもあるそうだ
ははは、確かに僕らに丁度いいねェ
僕が選ぶのは撫子鏤めた赤い美酒
グラス傾け乾杯を

さて、帰りは送って行こう
その前に緑あふれる公園で休息を
ベンチへ垂れる藤が綺麗
あ、植え込みに揺れるのは芍薬じゃないかね
ふふ、真ッ赤で美味しそう
なァんて、――楽しいねェ


愛徳・琥瑚
常盤くん/f04783

琥瑚さん楽しむのは大得意よ
それにキミとなら
キラッキラな日になるに違いないわ

彼の頼もしい言葉に笑みも咲き
じゃあ、お言葉に甘えて
彼に手を預けデートに出発!

桜都には無い菓子に目を煌かせ
ね、キミのお勧めは?
鮮やかな牡丹に心も華やぎ
其れに決めたと手を鳴らす
あっ!常盤くんのも美味しそう!

ケーキと一緒にカクテルも?やだ最高!
二人にお酒は外せないもの
だって私達飲み友達…あっ!
今の台詞撮れ高的にナシ?カットー!
こほん!
改めて…今日は同じ杯を掲げて乾杯!

燥いだ身を長椅子に預け見上げれば
藤が優しく揺れていて
本当、芍薬も綺麗だわ
あら、常盤くんは見るより食べちゃうヒト?
くすくす笑って、あゝ楽しい!



●華やぐ一時
 琥瑚さんは楽しむのが大得意。
 そう豪語して胸を張った琥瑚は不思議な力で変化した辺りを見渡した。綻ぶ桜のように明るく笑った琥瑚は隣に立つ常盤を見上げる。
「キミとなら、キラッキラな日になるに違いないわ」
「勿論さ、琥瑚さん」
 常盤も琥瑚を見つめ返し、穏やかに双眸を緩めた。
 君の笑顔がもっと煌めくような、そんな楽しい一日を約束する。彼が語ってくれた言葉に嬉しさを抱き、琥瑚はふわりと微笑んだ。
「折角のデェトだし、御手をどうぞ」
 なんてエスコォトは如何かと常盤が問えば、琥瑚も手を差し出す。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
 彼の頼もしい姿に更なる笑みも咲き、琥瑚はその手をそっと預けた。それから二人は楽しく煌めくデートに出発していく。

 目映い光がみちゆく街路。
 常盤が誘う先は馴染みのケェキ屋。落ち着いた店内に対して、ショウケェスに並ぶのは色とりどりの彩。
 花を象ったケェキたちは桜都には無い菓子ばかり。
 目を煌かせた琥瑚はひとつずつをゆっくりと眺め、どれも素敵だと微笑む。
「ね、キミのお勧めは?」
「お勧めは大輪咲きの甘い牡丹かな」
「綺麗……!」
 鮮やかな牡丹に心も華やぎ、其れに決めたと手を鳴らす琥瑚。
 常盤が示したケェキを見つめる琥瑚の瞳は輝いていた。常盤くんはどれにするのかと琥瑚が問うと、彼は隣に並んでいる花を示す。
「僕は天竺牡丹――ダリアにしておこう」
「あっ! 常盤くんのも美味しそう!」
 花のように笑む琥瑚は常盤と共にケェキを選び、それぞれに注文した。そうして二人は、奥にある喫茶店に移動していく。愛らしい皿に乗せられて運ばれてきた花菓に合わせるのはエディブルフラワーのカクテル。
「あァ、食べられる花を使ったカクテルもあるそうだ」
「ケーキと一緒にカクテルも? やだ最高!」
 どれにするか悩む時間も楽しく、常盤と琥瑚は暫し考えていく。
 琥瑚に選んだのは月色の雫を落としたような黄色の花をあしらったもの。常盤が選ぶのは撫子を鏤めた赤い美酒。
 テーブルに置かれたグラスを手に取り、二人は乾杯を交わす。
「二人にお酒は外せないもの」
「ははは、確かに僕らに丁度いいねェ」
 傾けられたグラスが快い音を立てて鳴った。
 二人は甘やかな花酒を一口味わい、視線を交わしあう。おいしい、と素直な感想を言葉にした琥瑚は思ったままに語った。
「だって私達飲み友達……あっ!」
「……琥瑚さん」
「今の台詞撮れ高的にナシ? カットー!」
「――ふふ」
 常盤が目配せをしたことではっとした琥瑚はぶんぶんと首を振り、カメラがあるらしきところに向けて手を掲げた。
 閑話休題。
「こほん! 改めて……今日は同じ杯を掲げて乾杯!」
「ああ、乾杯だね」
 時間が巻き戻った感覚がしたが、常盤はもう一度グラスを掲げて笑む。
 そして、常盤達は花のケェキに舌鼓を打ち、華やかなひとときを楽しんでいった。

 花と過ごす甘い時間を終え、そろそろ帰路に着く頃。
「さて、帰りは送って行こう。けれどその前に――」
 帰る道すがらに常盤が示した場所は緑あふれる公園。幸いにもまだ時間があり、休息をしていくのも良いだろう。
 公園にはやさしい風が吹き抜けていて、ベンチへ垂れ下がる藤が綺麗に咲いている。常盤と共にベンチに腰掛けた琥瑚は燥いだ身を預け、揺れる藤を見上げた。
「藤が優しく揺れていて綺麗ね」
「あ、植え込みに揺れるのは芍薬じゃないかね」
「本当、芍薬も綺麗だわ」
 視界に入った花々を楽しむ二人は穏やかに笑い合う。その最中、常盤は緩やかに目を細めて花を瞳に映した。
「ふふ、真ッ赤で美味しそう」
「あら、常盤くんは見るより食べちゃうヒト?」
 口許に手を当てて驚いた様子を見せる琥瑚に対して、常盤は軽く冗談めかしてみせる。
「なァんて、――楽しいねェ」
「あゝ楽しい!」
 くすくすと笑った琥瑚は常盤と視線を交わす。
 巡る時も、共に過ごす何気ないひとときも心地好いもので――。そうやって、二人の時間はゆっくと過ぎ去ってゆく。


●Result
 美麗度:★★★★
 仲良し度:★★★★
 カクテル:きらきら可愛い✨
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アレクシス・ミラ
【双星】
アドリブ◎

セリオスと行くならと行き先は青空の下のネモフィラ畑
全部僕の色だと笑う彼に嬉しさと…少し擽ったさを感じる
でも、ここにはセリオスの色は無いのかな

覗き込んできたのは夜空色
―本当だ
黒髪に触れ
そのまま目元と頬に触れる
ここにあった

そうだ、こうしたらふたりの色になるかな?
思いつきで僕のマントを彼の肩にかけてみる、と…
…あ。
(青空、ネモフィラ、青いマント
これはふたりの、というより…僕の…
っ僕は何を考えて…)
…いや、やっぱりこっちかな
マントは戻し
ネモフィラの花を彼の髪に
うん、思った通り
綺麗だ

どうぞ、と手を繋いでみるも
あはは…僕もそう思ってきた
けど、今日はお弁当を作ってきたんだよ
一緒に食べよう


セリオス・アリス
【双星】アドリブ◎
とにかく二人で花を見に行きゃいいんだろ
やっぱアレスと行くならあそこだよな!
やってきたのはネモフィラ畑
見ろよアレス!アレスの花がたくさん!
キラキラ眩しい表情で、両手を広げてくるくると
今日は夜でもねえから全部アレスの色だな!

俺の色を探すアレスの目の前、ずいっと近寄り
あるぞと顔を覗き込む
擽ったそうに笑いながら
アレスの指にすりよって

何だ、お揃いか?
ネモフィラの花をつけてもらったら
似合うかどうか聞いてみよう

そういやこれデートだったな
デート、でーと…とりあえず手でも繋いでみるか?
これじゃいつもと変わらないな…?
…っておもったら弁当!
そりゃぁ今日は特別だ!
一番景色のいいところで食べようぜ



●ネモフィラは君の色
「やっぱアレスと行くならあそこだよな!」
「セリオスと行くならと行き先は――」
 互いを想い合う二人が向かいたいと考えたのは同じ場所。とにかく二人で花を見に行きゃいいんだろと笑うセリオスも、景色を思い浮かべるアレクシスも、行き先はひとつだと感じていた。
 妖怪テレビ番組の不思議な力によってセリオスとアレクシスの周囲が変化していく。
 其処は青空の下のネモフィラ畑。
 花が咲き乱れる領域に踏み出し、セリオスは楽しげに目を細めた。
「見ろよアレス! アレスの花がたくさん!」
「ああ、僕の色だ」
 全部がアレクシスの色だといって駆けていくセリオス。本当に心からそう思ってくれていることが分かり、アレクシスは嬉しさを抱く。
 しかし同時に少しの擽ったさを感じた。
 花畑の真ん中でキラキラと眩しい表情を浮かべたセリオスは、両手を広げてくるくると回っている。その姿も実に楽しげだ。
「今日は夜でもねえから全部アレスの色だな!」
「でも、ここにはセリオスの色は無いのかな」
 アレクシスはネモフィラだらけの領域を見渡してみる。
 自分の色はあっても、彼の色がないのがほんの少しだけ寂しく思えたのだ。その様子に気付いたセリオスはアレクシスの元に駆け寄っていく。
「あるぞ」
 探しているものは此処に。
 そう語るようにしてセリオスはアレクシスの目の前に、ずいっと近寄った。
 覗き込んできたのは夜空色。
「――本当だ」
 柔らかく微笑んだアレクシスは彼の黒髪に触れた。
 そのまま目元と頬に触れれば、安らぎに似た感覚が巡っていく。
「ここにあった」
「だろ?」
 セリオスはアレクシスの瞳を覗き込んだまま、擽ったそうに笑った。撫でてくれるアレクシスの指にすりよったセリオスは心地良さそうに双眸を緩める。
 そのとき、アレクシスがふと思い立った。
「そうだ、こうしたらふたりの色になるかな?」
 思いつくままにアレクシスは自分のマントをセリオスの肩にかけてみる。
「……あ」
「――?」
 するとアレクシスの動きが止まった。不思議そうな顔をするセリオスを見つめ続ける彼の頬が僅かに赤くなっている。
(青空、ネモフィラ、青いマント。これはふたりの、というより……僕の……)
「アレス?」
(……っ、僕は何を考えて……)
「何でもない。……いや、やっぱりこっちかな」
 アレクシスはマントを戻し、摘んだネモフィラの花をセリオスの髪に挿した。
「何だ、お揃いか?」
「うん、思った通り」
「そっか、似合うかな」
「綺麗だ」
 セリオスが問いかけたことに真っ直ぐに頷き、アレクシスは再び髪を撫でた。
 和やかで幸福なひとときが花畑の中に流れていく。二人は暫し花を眺め、花の指輪を作って交換したりして時間を満喫していった。
「そういやこれデートだったな」
「そうだ、そういえば……」
 ふとしたとき、二人は本来の目的を思い出す。テレビ的には自然体の二人が撮影できたので撮れ高はばっちりだが、彼らとしては物足りない様子。
「デート、でーと……とりあえず手でも繋いでみるか?」
「それじゃあ、どうぞ」
 アレクシスが手を差し出し、セリオスがその手を握る。デートらしく手を繋いでみるもセリオスは少しおかしく感じてしまった。
「これじゃいつもと変わらないな……?」
「あはは、僕もそう思ってきた。けど、今日はお弁当を作ってきたんだよ」
 普段と同じだと思いきや、其処でアレクシスが包みを取り出した。
「……っておもったら弁当! そりゃぁ今日は特別だ!」
「一緒に食べようか」
「そうだな、一番景色のいいところで食べようぜ」
 ぱっと瞳を輝かせたセリオスは彼の手を引き、花畑の先を指差す。それから二人はネモフィラ畑で昼食を楽しむ。
 いつもと同じ。けれども少し特別な時間。
 幸福に包まれた二人のひとときは、此処からも暫し続いてゆく。


●Result
 幸せ度:★★★★★
 花浪漫度:★★★★
 いつまでも:二人らしくいてね💖
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ライラック・エアルオウルズ
【花結】

君と密と過ごすのは
逢瀬の最中でなく、末
愛しきふたりの家にと
帰り着くまえのひととき

季が入り混じるよう
とりどりが並んだ花屋
花束と選ぶのならば
包装も装飾も数多で
華やかな景に頬緩め

恒の如く贈り物としてなら
君の歓ぶかんばせを想うけど
今はふたりの日々を飾るよう
ふたりの幸を想えるのだね
ふたりの家、食卓や寝室に
添うのは何が良いかな

ペチュニア
ゼラニウム
アングレカム
花詞もふたりぶん
君の選ぶ花も嬉しくて
抱える腕もふたつあるなら
欲張り、沢山も良いけれど
強請る詞で片は空けようと柔く

店員へ一言添えて
メッセージカードに合鍵を秘め
君の花束に横から収めれば
悪戯な笑みで寄り添う

さ、帰ろう?
淋しさのない帰路
爪先に幸が滲んだ


ティル・レーヴェ
【花結】

あなたとの逢瀬は
いつだって幸せだけれど
今日は少し特別

終が近づく時間さえ
愛しく思えるのは
帰る先にすら幸が待つから
あなたの家を
ふたりの家と紡げる幸福が

色彩豊かな花々も
鮮やかさを増して見え

ふたりの、と彼が紡ぐ詞が
都度この胸を跳ねさせるのを
満たすのを
あなたは気付いているかしら

そうね
ふたりの其処に添うならば
妾はこの子らを選ぼうかしら
指先手繰るは
ルピナス
白のアザレア
カランコエ
あなたの選ぶ花も見て
その彩に抱く詞に目を細め

想いも彩もたくさん抱えて、ね
あゝでも
繋ぐ手は空けて欲しいと強請る儘

収まるカードに瞬いて
中は帰るまで秘密?
気になるそれも背を押して

うん、帰ろう!
紡ぐ言葉も爪先も
ふわりと浮いてしまうよう



●花に恋
 君と密と過ごすのは逢瀬の最中でなく、末。
 あなたとの逢瀬はいつだって幸せだけれど、今日は少し特別。
 ライラックとティル。愛しきふたりの家に帰り着くまえのひとときを、妖の番組カメラがそっと映している。
 ふたりは微笑みを交わし、共に帰路をゆく。
 終が近づく時間さえ愛しく思えるのは、帰る先にすら幸が待つから。
 あなたの家を、ふたりの家と紡げる幸福が此処にある。
 ティルの手を引き、ライラックは先を示す。其処に見えたのは季節が入り混じるように、色とりどりの華が並んだ花屋。
 ふたりでいるならば、色彩豊かな花々も鮮やかさを増して見えた。
 仲睦まじく花屋に入ったふたり。
 ライラックが花束と選ぶのならば、包装も装飾も数多で華やかな景。
 頬を緩めた彼は恒の如くを思う。贈り物としてなら、彼女の歓ぶかんばせを想う。けれども今日はふたりの日々を飾るようなものがいい。
「ふたりの幸を想えるのだね」
「そうね」
「ふたりの家、食卓や寝室に添うのは何が良いかな」
 彼が紡ぐ、ふたりの、という詞がティルの胸を都度跳ねさせる。
 ――満たすのを、あなたは気付いているかしら。
 言葉にしない想いをティルが向ければ、ライラックは淡い笑みを宿した。
 ペチュニアにゼラニウム、アングレカム。
 ライラックが選ぶ花を見つめ、ティルも花を選び取ってゆく。
「ふたりの其処に添うならば、妾はこの子らを選ぼうかしら」
 彼女が指先で手繰るのは、ルピナスに白のアザレア、カランコエ。
 そうすれば花詞もふたりぶん。
 その彩に抱く詞に目を細めたティル。彼女の選ぶ花も嬉しくて、ライラックも愛おしい気持ちを抱いた。
「佳い花だね」
「想いも彩もたくさん抱えて、ね」
 抱える腕もふたつあるならば、欲張りでたくさんであるのも良い。
「あゝでも、繋ぐ手は空けて欲しいのよぅ」
 強請るティルの言葉を聞き、ライラックは片方の手は空けようと柔く考えた。そうして、ライラックは彼女に秘密で店員へ一言を添えた。
 メッセージカードに合鍵を秘めて――。
 ティルは花束に収まるカードに瞬いて、ライラックに問う。
「中は帰るまで秘密?」
「そう、帰るまでは秘密」
 同じ言葉を繰り返したライラックは悪戯な笑みを浮かべて寄り添った。
 そわりとする気持ちを抑え、ティルは花束を瞳に映す。
「さ、帰ろう?」
「うん、帰ろう!」
 ふたりは手を繋ぎ、花と共に歩き出した。
 紡ぐ言葉も心もふわりと浮いてしまうようで――。
 淋しさのない帰路。其れを想えば、進む爪先にも幸が滲んでゆく。


●Result
 詩的浪漫:★★★★★
 既に夫婦度:★★★★★
 末永く:御幸せに――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フルラ・フィル
【花魔女】

やぁ、リリ
奇遇だね。こんな所で、あうなんて

ちょうどいい
同じ花の魔女同士、ゆるりと話に花でも咲かせようじゃないか
こういうのを、でぇとと言うのだろう?
可憐なお嬢さんをエスコートさせてもらうとしよう
シィもご機嫌だね

彼女を連れ経つは美しい藤が枝垂れる、花のカフェテリアだ
ここはね、エディプルフラワーを使ったお茶や菓子が有名だ
花の宿る琥珀糖を沈めた、朝焼け空のソーダも美味だそうだよ
キミは如何なる甘味がお好きかな?

薔薇の形に整えられたバターを切り崩し
ふかふかのパンケーキにあえる
リリは随分美味しそうに食べるね
今度私のケーキも食べて欲しいくらいだ

フフ
何よりの花はキミの笑顔だ、とでも言っておこうか


リリシュクルリ・リップス
【花魔女】

わ、フルラちゃん
こんにちは。偶然会うなんて驚いちゃった

ふふ、花だけに、洒落てるの
お言葉に甘えてエスコートして貰おうかな
デート、なんてドキドキしちゃう
猫さんもるんるんしてるみたい?

わぁ、綺麗なカフェなの…!
このお花、藤って言うのね
お花のスイーツにソーダも美味しそう
甘いものはなんでも好きだけれど…
…そうね、ほんとうに頬っぺたが蕩けちゃうような……
そんなお菓子が好き、かな

花で彩られたケーキに蜂蜜をとろんとかけて
薔薇の花を浮かべたお紅茶の薫りに包まれる
ん、おいしい〜…
とっても甘くて、心も満たされるようで
キミのお菓子もいつか食べさせてね!

…そんなこと言って
なら、笑顔の花の蜜はいかが?
…なんてね



●魔女達の約束
「やぁ、リリ。奇遇だね。こんな所で、あうなんて」
「わ、フルラちゃん。こんにちは。偶然会うなんて驚いちゃった」
 そんな出会いから始まるのは逢引のひととき。
 フルラとリリシュクルリは微笑みを交わし、これから巡るときを思う。
「ちょうどいい。同じ花の魔女同士、ゆるりと話に花でも咲かせようじゃないか」
「ふふ、花だけに、洒落てるの」
「こういうのを、でぇとと言うのだろう?」
 可憐なお嬢さんをエスコートさせてもらいたいとフルラが語ると、リリシュクルリはそうっと頷きを返した。
「お言葉に甘えてエスコートして貰おうかな。デート、なんてドキドキしちゃうし、猫さんもるんるんしてるみたい?」
「あぁ、シィもご機嫌だね」
 フルラの傍に居る猫も尻尾を立て、これから始まる時間に期待を寄せているようだ。シィの様子を見ていた二人は頷きあい、不思議な逢引の世界に踏み出していく。

「わぁ、綺麗なカフェなの……!」
「そうだろう。以前に気になって目を付けていたんだ」
 フルラがリリシュクルリを連れてきたのは、美しい藤が枝垂れる花のカフェテリア。
 内装は華やかでありながらも何処か落ち着いていて、アンティークな雰囲気が満ちている素敵なお店だ。
 花の彫刻模様が愛らしい椅子に腰を下ろした二人はメニューを手に取り、可愛らしい文字や絵が並ぶ紙面に目を通していく。
「ここはね、エディブルフラワーを使ったお茶や菓子が有名だよ」
 先ずフルラが指差したのは赤い薔薇を模したストロベリークリームが乗ったカップケーキ。スポンジに乗せた透き通ったゼリーに花をめいっぱいに詰め込んだケーキ。
 更には花の宿る琥珀糖を沈めた朝焼け空のソーダ。
 どれも美味だそうだよ、とフルラが告げるとリリシュクルリが瞳を輝かせた。
「このお花、藤って言うのね。お花のスイーツにソーダも美味しそう」
「キミは如何なる甘味がお好きかな?」
 フルラはリリシュクルリの花のような瞳を見つめ、ちいさく微笑みながら問う。
「甘いものはなんでも好きだけれど……そうね、ほんとうに頬っぺたが蕩けちゃうような……そんなお菓子が好き、かな」
 リリシュクルリは少しだけ考え込み、ふわりと答えた。
 そうして、暫しの時が過ぎる。
 二人のテーブルに運ばれてきたのは彩めくケーキ達。
「やはり綺麗だね」
「とっても可愛い!」
 蜜の魔女と徒花の魔女は視線を交わし、淡い笑みを交わした。
 フルラは薔薇の形に整えられたバターを切り崩し、ふかふかのパンケーキにあえる。その間にリリシュクルリは花で彩られたケーキに蜂蜜をとろりとかけて、薔薇の花を浮かべた紅茶の薫りを楽しむ。
 甘やかな心地に包まれたようで、気持ちも心も夢心地。
 それから二人はそれぞれのケーキを楽しんでいく。クリームも蜂蜜も甘くて柔くて、蕩けるような食感がいっぱいに広がっていった。
「ん、おいしい~……」
「リリは随分美味しそうに食べるね」
 心から感じた思いを言葉にしたリリシュクルリを見つめ、フルラはソーダをストローででかき混ぜる。しゅわしゅわと弾ける泡の軌跡を見ているだけでも心地よくて、リリシュクルリは口許を緩めた。
「とっても甘くて、心も満たされちゃってるからかな?」
「今度私のケーキも食べて欲しいくらいだ」
「素敵。キミのお菓子もいつか食べさせてね!」
「それじゃあ約束だ」
 花と甘い心地に包まれたカフェにて、二人の約束が重ねられる。フルラは膝の上のシィを撫でながらリリシュクルリにそっと告げた。
「何よりの花はキミの笑顔だ、とでも言っておこうか」
「……そんなこと言って」
 真正面から伝えられた言の葉を受け、リリシュクルリはあえかに笑む。
「――フフ」
「なら、笑顔の花の蜜はいかが?」
 なんてね、とリリシュクルリが返せば、フルラも笑みを深める。
 其処から魔女達の花宴は続いていく。
 この場で紡がれた甘い約束が果たされる時は、きっと――もうすぐ。


●Result
 花蜜度:★★★★
 甘やかさ:★★★★★
 魔女度:不思議な雰囲気🍯
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

宵鍔・千鶴
【千宵桜】

千織とは色々出掛けてるけど
今日はでーと、らしいよ?
俺で良ければ
きみの特別な時間を貰おうかな

彼女が誘ってくれた季節巡る場所へ
庭園の中に、カフェがある…!
エディブルフラワー、綺麗な花だけれど
食べられるんだね
花は、紫陽花咲く
二藍が美しい色のパフェを頼んでみて
…千織、ほら、くち開けて
きみの反応を見て、でーとだもんねってふわふわ咲う
じゃあ、遠慮なくって自分もぱくり

お土産良いね
想い出に何か贈り合うのはどう?
手に取った淡紫と薄紅が混ざり合う
紫陽花にころりと丸真珠が連なる耳飾りを
ぴこぴこする猫耳にそうと重ねて
此れなら綺麗なまま散らないし

…似合ってるね、千織

帰りはそっと手を差し伸べてエンドロールを


橙樹・千織
【千宵桜】

はわ!で、でーと…
…ぁ、いえ、何でも無いです
ぇと…その、よろしくお願いします?

どの季節もそれぞれ素敵で迷ってしまうのですが
今日は此方に行きませんか?
カフェが併設された庭園なんだとか
ほら、彼処のカフェ
エディブルフラワーのパフェやケーキがあるそうですよ

ふふ
花を食べるのは少し不思議な感覚ですよねぇ
花束のようなケーキをつつく
ぇ!?あの…ここ、外…はわわわ
浮かべる笑みに負け
食べたパフェの味は分からなかった
千鶴さんも一口いかが?

あら、お土産コーナー
何かいい物があるかしら
ええ、そうしましょう
アグレットに紫と白が描かれたループタイを選びとる

ふふ、千鶴さんも似合ってますよ

その手をとってふわり笑む



●甘く蕩けて、花恋焔道中
 不思議で不可思議な妖怪番組。
 テレビ領域が広がり続ける場を収めるため、解決に訪れたのは千鶴と千織の二人。
「千織とは色々出掛けてるけど、今日はでーと、らしいよ?」
「はわ! で、でーと……」
 千鶴がデートという言葉を口にした途端、千織の頬が赤く染まった。首を傾げた彼は千鶴の様子が妙にそわそわしていると気付く。
「どうかした?」
「……ぁ、いえ、何でも無いです」
 はっとした千鶴は照れを押し隠して誤魔化し、しゃんと背筋を伸ばした。
「俺で良ければ、きみの特別な時間を貰おうかな」
「ぇと……その、よろしくお願いします?」
 千鶴が柔らかく微笑んだことで千鶴は更に恥ずかしくなってしまったが、何とか気を取り直して、そっと笑みを返した。
 そして、二人がデート先に選んだのは――。
「どの季節もそれぞれ素敵で迷ってしまうのですが、今日は此方に行きませんか?」
 カフェが併設された庭園なんだとか、と言って千織が千鶴を連れ立ったのは季節が巡る場所。千鶴は訪れた其処を見渡し、わぁ、と感嘆の声を落とす。
「庭園の中に、カフェがある……!」
 色鮮やかな花でいっぱいの庭の奥には、お洒落な喫茶店があった。
 千鶴をいざなった千織は案内されたテーブルについた。其処に置かれていたメニューの冊子を手にとった彼女は、ぱらぱらと頁をめくる。
「ほら、彼処のカフェ。エディブルフラワーのパフェやケーキがあるそうですよ」
「エディブルフラワー、綺麗な花だけれど食べられるんだね」
 感心する千鶴はどれにしようかとひとつずつ指を差していく。その姿を見守る千鶴は微笑ましい気持ちになり、同様にメニューを覗き込んだ。
 そうして――。
 千鶴が選んだのは紫陽花が咲く二藍が美しい色のパフェ。
 千織は店の一番のおすすめに従って花束のようなケーキを選んだ。
 運ばれてきたケーキとパフェにはそれぞれに違う花が飾られており、見た目にも鮮やかで美しい。それにクリームやジュレも甘やかで飽きない味なので目でも舌でも楽しめることが素晴らしいと思えた。
「ふふ、花を食べるのは少し不思議な感覚ですよねぇ」
 千織がほわほわと笑うと、千鶴もこくりと頷く。そうして彼はスプーンで花とジュレとクリームをすくい、千織に差し出した。
「……千織、ほら、くち開けて」
「ぇ!? あの……ここ、外……はわわわ」
 落ち着きを取り戻していたはずの千織が再び慌てはじめる。その反応を見た千鶴は悪戯っぽい視線を向け、ほら、と更にスプーンを千織に近付けた。
「いいんだよ、でーとだもんね」
 咲う千鶴の視線と期待は裏切れず、千織は意を決して口をあける。
 甘い味を感じたはずだった。
 しかし、緊張のあまりに食べたパフェの味は分からない。千織はせっかくの機会を少し残念に感じながらも、自分だけが貰ってはいけないと感じた。そうして、彼女は花が乗ったクリームとケーキをフォークで切り分ける。
「千鶴さんも一口いかが?」
「じゃあ、遠慮なく」
 千織に対して千鶴は遠慮なくフォークをぱくりと咥えた。
 そんな彼の姿もまた照れていく事柄になってしまって――。千織の頬がずっと赤いままだったのは、千鶴だけが知っている。

 それから少し後。
「あら、お土産コーナー。何かいい物があるかしら」
「お土産良いね。想い出に何か贈り合うのはどう?」
「ええ、そうしましょう」
 庭園の土産物店に訪れた二人は互いへのプレゼントを選びはじめる。どれも目移りして悩ましかったが千鶴はアグレットに紫と白が描かれたループタイを選び取った。
 千織はというと、淡紫と薄紅が混ざり合う紫陽花にころりと丸真珠が連なる耳飾りを手に取る。そうして、ぴこぴこしている千織の猫耳にそうと重ねてみた。
 千織もタイを千鶴に渡し、二人は咲いあう。
 此れなら綺麗なまま散らない、と微笑む千鶴は千織を真っ直ぐに見つめる。
「……似合ってるね、千織」
「ふふ、千鶴さんも似合ってますよ」
 そっと手を差し伸べた千鶴。その手をとった千織もふわりと笑む。
 そうして二人は間もなく訪れるエンドロールを思い、帰路についていった。


●Result
 ときめき度:★★★★
 ぴこぴこ度:★★★★★
 エンドロール:てってれー🎵
 
 
    終
  制作・著作
 ―――――――
  第六 猟兵
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月18日


挿絵イラスト