『言葉』を守護せよ
●群竜大陸にて
「……ここは一体……」
頭を押さえて、金髪を短く刈った筋骨隆々の男が立ち上がる。堅牢な鎧に身を包んだクレリックの男、グウィントは、酒で酔ったような嫌な感覚に顔をしかめた。
見渡せば、広い草原だった。草が風に靡き、陽の光の波が草木を照らす。
何があったのか、と思考を巡らせて。
―――ええ、もちろん「群竜大陸で死んで欲しい」と申し上げています。
はっ、と脳裏に瞬いた言葉を思い出して、再び周囲を見渡した。
棺桶に入った、目を覆った謎の女の姿はない。ただ、一方的に捲し立てられた言葉は覚えている。
死ね、と。
ばさり、と後ろから音がした。振り返って、グウィントはその双眸を見開いた。
蜥蜴に似た爬虫類、それが翼を翻して、こちらへ咆哮を上げている。
「ドラ……ゴン……?」
その数は尋常ではなく。いくら「言葉の神シャルムーン」を崇拝するクレリックとはいえ、これほどの大群、しかもドラゴンの大群を打ち破る術など存在しない。
竜が咆えて、その口腔に炎を蓄える。
炎熱の奔流が、クレリックの男、グウィントを覆い―――。
●眠りの森の魔女
「群竜大陸、『約束の地』にて眠りの森の魔女ターニアが攫ったクレリックが窮地に陥っている」
集った猟兵たちにそう告げたのは、アイン・セラフィナイト(全智の蒐集者・f15171)だ。
猟書家の各世界への侵略。今回問題となっているのはアックス&ウィザーズの群竜大陸、「言葉の神シャルムーン」を崇拝するクレリックが猟書家によって攫われたことである。
「シャルムーンを崇拝するクレリックは、死の間際に『破邪の言葉』を放つらしい。その言葉によって、群竜大陸に存在する謎の封印を打ち破るらしいんだが……」
そのために殺害されるだけの対象となったクレリックにとっては、迷惑極まりないだろう。
「今回群竜大陸に攫われたのは、グウィントと呼ばれるクレリックの男性だ。なんとしてもグウィントを守りきって、猟書家の目論見を打ち破って欲しい」
ただし、とアインは続けて言葉を紡ぐ。
「さっき言った通りグウィントが放置されているのは『約束の地』だ。恐怖を力の苗床とする草花によって汚染された竜の群れが襲いかかってくる。通常のオブリビオンよりも凶悪になってるから気をつけてくれ!」
ばっ、とアインが杖を掲げた。転送のリングが猟兵たちにまとわりつく。
「竜たちを倒し続けていれば、しびれを切らした猟書家が姿を現すだろう。それまで耐えるんだ、頼んだぞ、皆!」
転移先は、群竜大陸『約束の地』。見通しの良い草原ではあるが、恐怖を苗床にする草花生い茂る凶悪な地だ。グウィントへ対しても、ある程度のフォローが必要になってくる。
夕陽
猟書家の侵略が開始されました。クレリックを守りきり、最終的にターニアを撃破しましょう。
OPをご覧頂きありがとうございます。初めましての方は初めまして、すでにお会いしている方はこんにちはこんばんは、夕陽です。
このシナリオには、以下のプレイングボーナスが存在します。
プレイングボーナス(全章共通)……襲われるクレリックを守る。
それでは、皆様のプレイングお待ちしております!
第1章 集団戦
『竜の群れ』
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POW : 竜の爪
敵を【竜の爪】で攻撃する。その強さは、自分や仲間が取得した🔴の総数に比例する。
SPD : 竜の尾
【竜の尾】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
WIZ : 竜の吐息
【竜の吐息】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
👑11
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メンカル・プルモーサ
……さて、猟書家とやらを倒さないとだけど……その前にグウィンとを守らないと行けないね…しかし眠らせて放置とは雑な…
…まあ。助けに来たよ…言葉の神とか破邪の言葉についてとても興味があるので説法の1つも聞きたいのだけど…
この状況ではそうも言っていられないね…まずはあの竜どもを倒さないと…
…まずは【竜屠る英雄の詩】を発動……竜殺しの魔力を纏った術式組紐【アリアドネ】を布状にグウィンと自分の周囲に展開…盾とすることで…竜の吐息から身を守るよ…見ての通りこの中なら安全だから安心してね…
あの程度の吐息を防げないほど柔じゃない…
…あとは術式銃【アヌエヌエ】による射撃で竜を片端から撃ち殺していこう…
眼前に襲い来る炎の奔流。全てを焼き尽くす豪熱の火炎弾に放心するグウィントとその竜の間。
「厄討つ譚歌よ、応じよ、宿れ。汝は鏖殺、汝は屠龍。魔女が望むは災厄断ち切る英傑の業」
声が聴こえた。閃いた銀線が炎と接触した。刹那、強風に吹かれたように竜の火炎が霧散する。
飛行箒に乗って現れた人影に、グウィントは再び目を見開いた。
「……魔女?」
「……さて、猟書家とやらを倒さないとだけど……その前にグウィンとを守らないと行けないね…しかし眠らせて放置とは雑な…」
やれやれ、とばかりに小さくため息を吐いて。メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)はグウィントの前に降り立つ。
「…まあ。助けに来たよ…言葉の神とか破邪の言葉についてとても興味があるので説法の1つも聞きたいのだけど…」
くるり、と竜の群れを見渡す。その数は飽和し、更に約束の地による草花によって強化された竜の嘶きは、恐ろしいほどの殺気を秘めている。
「この状況ではそうも言っていられないね…まずはあの竜どもを倒さないと…」
竜が咆える。再び飛来した火炎弾はしかし、アリアドネに施された竜滅の加護によって霧散した。
【竜屠る英雄の詩(ドラゴンスレイヤーズ・バラッド)】。竜の因子を持つあらゆるものを“殺す”竜滅術式だ。
「…見ての通りこの中なら安全だから安心してね…」
「こ、これは……なんと素晴らしい魔法……」
竜たちが再び咆えて、ならばとその爪牙を突きつけた。襲いかかる竜の群れに、グウィントが恐怖で防御態勢に移る、が。メンカルは些事とばかりにその双眸を揺らがせない。
回転式拳銃―――術式装填銃【アヌエヌエ】。竜を屠る術式が施された銃弾は、竜たちにとっての凶悪な牙となる。
銃撃が連打し、天に直線の閃きが奔る。
体を撃ち抜かれた竜たちが激痛の咆哮を上げて、ぼろ炭のように塵となって霧散していった。
「…それで、言葉の神とか破邪の言葉についてなんだけど…」
何もなかったかのように、メンカルがグウィントへ振り向いた。ぽかんとした表情で目の前の魔女を見つめるクレリックは、言葉を発することができないようだった。
大成功
🔵🔵🔵
セルマ・エンフィールド
よりによってここですか。
そこの方、シャルムーンのクレリックですね?
この地の花は恐怖に負けた者、恐怖を認めない者に寄生します。
恐怖に負けず、けれど否定するでもなく……強く心を持っていてください。
ご安心を。ドラゴンは……私たちが落とします。
【大いなる冬】を使用、凍てつかせる冷気で敵の炎のブレスを無力化します。
ブレスが効果がないと分かれば爪や牙、尾での攻撃に切り替えるでしょうが、寄らせはしません。
【大いなる冬】の冷気で敵を凍てつかせ、「フィンブルヴェト」からの氷の弾丸と『スナイパー』の技術で翼を撃ち抜き撃ち落とします。
90秒しか使えませんが、問題ないでしょう。すぐに他の猟兵も来ますから。
「よりによってここですか」
呆れるような、澄んだ声が聴こえた。再び現れた人影に、グウィントは唖然とした表情で振り向く。
「そこの方、シャルムーンのクレリックですね?この地の花は恐怖に負けた者、恐怖を認めない者に寄生します。恐怖に負けず、けれど否定するでもなく……強く心を持っていてください」
毅然とした表情で、銃剣を構えた少女が歩み寄ってくる。
「む……こ、これはかたじけない。そのような邪悪な場所があるとは信じがたいが……この竜の群れ。信じざるを得まい」
足元の草花を踏みしめて、ふむ、と唸る。巻き付こうとする草花の蔓に気がついたようだが、その精悍な表情を歪めることはないようだ。
「しかし、この竜の群れ、些か手に余る……いや、全て討伐できるかどうか」
「ご安心を。ドラゴンは……私たちが落とします」
セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)の銀の髪が、草原を駆ける微風に揺れた。
竜が再び咆えて、現れた邪魔者を排除しようと襲いかかる。口腔奥に叩く火花が刹那の内に肥大化し、人の骨さえも容易く融かす火炎の渦へと形を変える。
しかし、竜は気づくだろう。周囲に発現する異常に。今まで春先のような暖かい日差しに包まれていた草原が、わなわなと震えているかのような……そんな凍風を。
「手短に済ませましょう」
ぶわり、とセルマの周囲から冷気が迸った。顔を覆って驚愕の表情を浮かべるグウィントは、その異常を明確に捉えた。
「氷の魔法、か……!」
周囲を覆い尽くす氷結領域。神の滅亡を告げる厳冬の名を持つユーベルコード―――【大いなる冬(フィンブルヴェト)】の超常が竜を覆い尽くした。
竜たちがその痛みに唸り声をあげた。見れば、四肢と翼が凍りつき始めている。機動力を失った竜たちが飛翔するが、凍てついた四肢によってその動きは鈍い。
はっ、とその殺気を竜たちが感じ取る。
少女はすでに、その“銃”を構えている。
「これで30秒程度でしょうか。まあ問題ないでしょう。すぐに他の猟兵も来ますから」
氷の弾丸が竜を貫く。翼に突き刺さった銃弾が、竜の存在を否定する。
塵となっていく竜たちの姿と、圧倒的な氷魔法―――厳密にはユーベルコードだが―――を行使した少女に、グウィントは生唾を呑み込んだのだった。
大成功
🔵🔵🔵
死之宮・謡
アドリブ歓迎
此度の戦線、中々面倒なことになっているなぁ…一々考えるのも億劫でな?嫌いなんだ、私は…
まぁ何時も通り、私は全線で暴れるだけか…
神官と言うものは理解出来んが…まぁそれが戦に必要ならば守るくらいはしてやろう
【殺戮感染】発動
隠蔽・妨害の結界(呪詛・占星術)を件の神官の周囲に張って
触れたモノを焼く雷を這わせる(全力魔法・属性攻撃)
その後はイレリアを手に突っ込んで只管削る(なぎ払い・怪力)
UC効果で自身を強化しながら只管攻撃
「此度の戦線、中々面倒なことになっているなぁ…」
グウィントの後ろから現れた猟兵はもう一人。長く美しい黒髪を草原の風で揺らして、紅の瞳が凶悪の咆哮をあげる竜たちを見つめている。
「一々考えるのも億劫でな?嫌いなんだ、私は…」
ふぅ、と小さく息を吐いたのは、死之宮・謡(狂魔王・f13193)。後方をみれば、次々と現れる冒険者たちに困惑しているシャルムーンの神の信徒、クレリックの男の姿。
「まぁ何時も通り、私は全線で暴れるだけか…。神官と言うものは理解出来んが…それが戦に必要ならば守るくらいはしてやろう」
謡の双眸が細まる。溢れ出る呪詛、そして占星術による魔術的な煌きが空間に閃いた。はっ、とグウィントが周囲を見渡すと、黒い炎のように揺らめく結界が、自らを包み込んでいる。
攻撃に指向性が存在するのか、はたまた猟書家によって命令されているのか、謡を越えて、竜たちがグウィントへその爪牙を振り下ろす。
刹那、ばちりと閃光が爆ぜた。
―――グギャアアァアアァァァアァ!!
焼けた喉から、竜たちの激痛の声が響き渡る。謡の結界に触れた竜たちが、四肢を焦げ付かせて距離をとった。
「私に目もくれず神官に特攻とはいい度胸じゃないか」
ギァ、と竜の刹那のうめき声。そのうちの一体の首が跳んだ。墜落する竜たちの肉体から黒い霞が立ち昇り、謡の体へと吸収されていく。
【殺戮感染(キラーズ・パンデミック)】。殺せば殺すほど、謡は力を増加させる。ぎらり、と真紅の眼が竜たちに向けられる。
翻るのは、『哀想紺槍イレリア』。竜の女王の骸から生み出された魔槍が、皮肉にも竜たちの体を削り取っていく―――!
黒いオーラが魔槍の切っ先から迸り、中空に暗黒の軌跡を生む。竜が次々と斃れていく。
穿ち、削り、侵食し。
「ハハハ……ハハハハハハハハ!!素晴ラシイ!!殺シ削リ、私ハ強クナッテイク!!」
すでに謡の周囲は制圧されている。遠目に見ていた竜の一部が、唸り声をあげていた。
暴れることが、守ることに繋がるなら。謡はその力を、存分に振るい続けた。
大成功
🔵🔵🔵
茜崎・トヲル
クレリックのひとをまもればいいんだ? よーし、がんばるぞー!
芸はないけど! やることいっしょ!
そう、しなやすだね。
肉体改造で貫通だけはふせぐよ。じゃねーとクレリックのひとまでばらばらになっちまうもの。
んで受けた傷を返す! そのすきに再生! またボディで受ける!
いかくりかえしー。あ、クレリックのひと動けるなら、ほかのひとのとこいってたほーがいいぜ!
グロいものはね、見ないほうがいいよ。ぐちゃみそな人体なんてきもちわるいからね。ねー。
「なんという……なんということだ……」
駆逐されていく竜たちの姿を見渡して、グウィントは感嘆の声を漏らす。竜の軍勢の勢いは低下し、約束の地の攻防戦はいずれ終わりを迎えることだろう。
そこで、変化があった。竜の一体が、猟兵たちを掻い潜ってグウィントに接近する。猟書家の命令を優先した個体が、自滅をも計算にいれた特攻を始めたのだ。
グウィントがガントレットを構えて防御姿勢に入るが、竜の爪は恐ろしい切れ味だ。生半可な防具では太刀打ちできない。
振り下ろされる爪はしかし、合間に入った人影がその攻撃を遮断する。
いや、正確には、その身で受けた。
「クレリックのひとをまもればいいんだ?よーし、がんばるぞー!芸はないけど!やることいっしょ!」
「き、君!大丈夫かっ!?」
身体に刻まれた傷口から血が溢れ出す。介入したのは茜崎・トヲル(白雉・f18631)だった。
グウィントの言葉に、トヲルがにこーっと笑う。
「うん、だいじょーぶ。しなやすしなやす!」
「だ、大丈夫そうには……」
見えない、と言おうとしたその刹那には、トヲルの傷がふさがっている。まるで何事もなかったかのように塞がった傷にめをぱちくりさせたグウィントは、続いて後ろから聞こえてきた竜の咆哮にびくりと肩を震わせた。
見れば、竜の胴体に深い傷が刻まれている。それも、まるで竜の爪によって切り裂かれたのような深い傷だ。
「あ、クレリックのひと動けるなら、ほかのひとのとこいってたほーがいいぜ!」
竜が飛来する。特攻を仕掛けてくる。その度にトヲルがグウィントの前に立ちはだかり、代わりに攻撃を受けるが、その次に起こるのは竜の悲鳴だった。鮮血を撒き散らして竜が地面に横たわる。なにが起こったのか理解できないグウィントに、トヲルはもう一度笑った。
「グロいものはね、見ないほうがいいよ。ぐちゃみそな人体なんてきもちわるいからね。ねー」
肉片が飛んだのは見えた。だが、トヲルの身体には傷一つ存在しない。……いや、正確には服は裁断されているが、その奥にある肉体には傷が刻まれていない。
【不浄なる犠牲(フジョウナルギセイ)】のユーベルコードの力は、受けた傷をそのまま返すカウンターのユーベルコードだ。傷を負う本人の、その激痛に耐えうる身体と精神は、とんでもなく、強い。
「さすがにねー。はじめてあった人にきもちわるいばけもの、だなんておもわれたくないしねー。うんうん!」
襲いかかる一撃を、トヲルは受け続ける。竜がその行動を無駄だと断じるまで。
大成功
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パルピ・ペルポル
確かに「群竜大陸で死んで欲しい」となると最適な土地ではあるけど。
一応群竜大陸の領主の一人としてはそれを認めるわけにはいかないのよね。
まずは念動力で雨紡ぎの風糸を自らの周囲に張り巡らせておいて、敵の行動を阻害兼盾として使用するわ。
グウィントの周囲には念入りにね。
以前徳用(巨大)折り紙を通常サイズに切って作った千羽鶴ならぬ万羽鶴で敵に攻撃をしかけるわ。
その隙に糸を周囲一帯に蜘蛛の巣状に広げてドラゴン達を捕らえて火事場のなんとやらを使って切り裂いていくわ。
糸の間に穢れを知らぬ薔薇の蕾を仕込んでおいて、茨で絡めて逃げづらくした上で翼や尻尾を切り落としてあげましょ。
猟兵に促され、竜の群れから距離を取るグウィントの肩から声がかかった。
「確かに「群竜大陸で死んで欲しい」となると最適な土地ではあるけど。一応群竜大陸の領主の一人としてはそれを認めるわけにはいかないのよね」
「……!?」
驚きの表情でグウィントが自分の肩を見れば、そこには金髪の長い髪を束ねたフェアリーが乗っかっている。
ひらり、と舞い上がるとパルピ・ペルポル(見た目詐欺が否定できない・f06499)はグウィントの目の前で静止した。
「初めまして、クレリックの人。わたしはこの群竜大陸の土地の一つ、『迷いの森』の領主なの。ここは別の領主が守っている土地だけど、あなたのことは守り切るから安心してね」
「こ、これは、また―――危ない!」
大声を出したグウィント、パルピの後方から迫りくる飛翔体。竜の一体が尻尾を翻して、グウィントたちを薙ぎ払おうとするが……。
パルピはすでに、竜の攻撃を阻害する罠を張り巡らせている。『雨紡ぎの風糸』と呼ばれる透明な糸は、蜘蛛の糸よりも細いが柔軟性と強度を兼ね備えた特別な糸だ。
ぎちり、と竜の四肢が縫い絡め取られる。ギィ、と小さく鳴いた竜がその身を捻ろうとするが、複雑に絡み合った糸はどのように張り巡らせてあるか分からない。
舞ったのは、無数の鶴。それは、生物ではなく紙でできた鶴の群れだ。
「1体だけで助かったわ。罠はこれからが本番なの」
恐ろしい強度、折られた万羽鶴が竜へと突撃する。連続した攻撃に竜の鱗が破砕していった。
集まってきた竜は五体。それにパルピが飛んでいく。指先には糸の束。すでに、竜たちはパルピの掌中だ。糸に潜ませた薔薇の蕾、そこから迸った茨が竜たちを包み込む。
「さてと……フェアリーは魔法だけ、だなんて思ってたら大間違いよ」
ひゅい、と糸が鳴いた。
「見た目で判断するのは…ね」
糸が引かれ、誘引された竜の四肢が弾け飛ぶ。【火事場のなんとやら】、などと言うには、あまりにも強靭すぎるフェアリーの力技。鮮血を撒き散らして塵へと還っていく竜の群れ。その様子に、グウィントがあんぐりと口を開けて放心している。
「フェアリーを舐めたらいけないわよ?ね?」
振り返ったパルピに、グウィントが全力で頭を縦に振っていた。
大成功
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木常野・都月
竜なんて、空飛んで火を吐くトカゲだろう?
俺だって精霊様が助けてくれる元狐の妖狐だ。あんまり大差ないはずだ。
猟兵になってから、自分より大きい怖い相手と戦ってきた。
怖いなんて今更だ。俺は大丈夫。
グウェントさんに[オーラ防御]をかけたい。
無いよりはマシ程度だけど、狐のお守りみたいなものだ。
チィ、グウェントさんのそばにいてくれ。
そばに誰か居た方が怖くないだろう?
地の精霊様の[属性攻撃]で、竜の足元に電磁場を発生させて、重力で竜を地面に押しつぶしたい。
UC【精霊の矢】を氷の精霊様の助力で使用したい。
敵の攻撃は[高速詠唱]を乗せた氷の[属性攻撃、カウンター]で対処したい。
吐く息ごと凍らせてしまいたい。
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。
第二『静かなる者』霊力使いの武士
一人称:私/我ら 冷静沈着
対応武器:白雪林
猟書家を倒すにしても、まずはここを切り抜けることが大切ですね。
…『我ら』は、助けられる命を助ける悪霊ですから。
オーラ防御と結界術を、クレリックに使用。傷つけはしませんから。
早業を用いて【四天境地・『雪』】を。その炎、溜めが必要と見ました。
さて、そこで時間凍結されたら…どうなるでしょうね?
そして、間断なく竜殺属性をのせた制圧攻撃を行いましょう。
まあこのUC、書架の王見てて思いついたものですからね。意趣返しみたいなものです。
フォルク・リア
「いきなりこんなところに飛ばされるとは
災難だったね。レクリック。」
「だけど。間に合ったのは幸運だ。俺たちにとっても。
だから守らせてもらうよ。あの悪意から。」
グウィントを守る様に近くに立ち
真羅天掌を発動。
切断属性の竜巻を発生させる。
敵の配置と自分たちの距離を良く把握して
自分たちの周辺に防壁を張る様に竜巻を展開しつつ
上空の竜を攻撃、頭部や翼を切り裂いて撃墜。
攻撃された場合でも竜の吐息の範囲を【見切り】
此方に到達する前に【早業】でそれ自体を切り裂いて
攻撃能力を失わせる。
「その翼も牙も。荒れ狂う空の息吹の前では無力。
それに、此方が本当に用があるのは事の黒幕なんでね。
あまり手をかけてはいられないのさ。」
「いきなりこんなところに飛ばされるとは。災難だったね、クレリック」
落ち着いた声が草原に流れた。グウィントがそちらを見れば、フードを深く被った魔術師風の男が口元を綻ばせている。
「竜の群れですか。猟書家を倒すにしても、まずはここを切り抜けることが大切ですね」
「竜なんて、空飛んで火を吐くトカゲだろう?俺だって精霊様が助けてくれる元狐の妖狐だ。あんまり大差ないはずだ」
妖狐の猟兵にして精霊術士、木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)が『エレメンタルロッド』の柄をぐっ、と握り、竜の群れを見つめている。それに呼応して、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)が目を閉じたまま、にこりと微笑んだ。
「ええ。あちらは多数ですが、こちらは『7人』です。…『我ら』は、助けられる命を助ける悪霊ですから。火を吐く爬虫類に負けるわけにはいきません」
ふふ、と微笑んだフォルク・リア(黄泉への導・f05375)が白衣を翻した。ルーンの刻まれた白衣から、微かに魔力の残滓が迸る。
「群竜大陸に拉致され、竜の群れに襲われるとは実に不運。―――だけど」
『デモニックロッド』を掲げる。杖に宿る暗黒の魔力が、ちかちかと明滅し、その力が練り上がっていく。
「間に合ったのは幸運だ。俺たちにとっても。だから守らせてもらうよ。あの悪意から」
ばちり、と爆ぜて。
「大海の渦。天空の槌。琥珀の轟き。平原の騒響。宵闇の灯。人の世に在りし万象尽く、十指に集いて道行きを拓く一杖となれ」
大気に溶ける漆黒の魔力は、森羅万象を揺らがせる超常へと変化する。ヒュオ、と高い音が重なり合う。まるで、刀同士を打ち据えるかのように、甲高く響いていく。
そして現れたのは、天を貫くような巨大な竜巻だ。無数の竜巻が精緻に操作され、風の防壁となって竜と猟兵、グウィントの間に立ち塞がる―――!
【真羅天掌(シンラテンショウ)】。魔術の粋を集めた、フォルクの自然現象操作。
「その翼も牙も。荒れ狂う空の息吹の前では無力。それに、此方が本当に用があるのは事の黒幕なんでね。あまり手をかけてはいられないのさ」
竜たちが咆える。立ち塞がる風の刃によって、四肢が切り裂かれ、翼膜が切り裂かれている。激痛に悶える竜の悲鳴が、草原に轟いた。
そんな中、グウィントが呆然とユーベルコードの奇蹟を見つめている。
刹那、グウィントの周囲に張り巡らされるのは魔法のオーラと結界術のオーラだ。重なり合う強固な防壁。それを成したのは、精霊術士の少年と、悪霊の男である。
「こ、これは……?」
「無いよりはマシ程度だけど、狐のお守りみたいなものだ。チィ、グウェントさんのそばにいてくれ」
チィ、と鳴いた月の精霊が、グウィントの肩に寄り添う。頬に感じる柔らかな毛並みに、グウィントが微かに微笑んだ。
「同じく失礼しますよ。大丈夫、傷つけはしませんから」
「……すごい、魔法だな。君達は冒険者か?」
都月と義透、そしてフォルクがそれを聞いて口元をにこり、と微笑ませる。
「……うん、まあそんなものです」
くるり、と踵を返すように、エレメンタルロッドを掲げる。都月の杖の先に輝く橙色の輝きは、大地の精霊の力を借りた魔術の一つ。
どれだけ竜がいたとしても。猟兵になってから幾度となく繰り広げてきた戦闘、その中には、自分より大きな相手など幾らでも存在した。今更、怖いなどあり得ない。
(怖いなんて今更だ。俺は大丈夫)
言い聞かせるように。しかし、絶対の自信に満ちて。都月は、精霊たちに告げる。
(地の精霊様、ご助力を……)
「―――堕ちろ!」
竜巻の刃に曝されていた竜の群れが、その瞬間、ぐん、と地面に落下する。竜の足元に発生した電磁場によって、超重力で縫い留められているのだ。
次いで、ロッド先の魔力が転じる。光り輝く魔力の波濤は、清浄な気に満ちた青玉の如き輝きに満ちている。
「水の精霊様、ご助力下さい」
都月の周囲に現れる、冷気に満ちた閃きの矢。地に伏した竜の群れが、凍結の矢によって侵食されていく。フォルクの竜巻が追撃し、凍結した竜を微塵に切り刻んでいく。
だが、残る竜の群れの闘志は潰えていない。口から炎の燻りが垣間見えた。火花のような小さな火炎が、時間が経つにつれて大きくなっていく。
―――猟兵は、それを見逃さない。
「その炎、溜めが必要と見ました。…さて、そこで時間凍結されたら…どうなるでしょうね?」
すでに、義透は弓を構えている。『白雪林』と呼ばれる純白―――光の反射か、時折青く見えるその弓から、白銀の如き輝きを持つ弓矢が創出された。
引き絞る。目を閉じた無念の一射。祝詞を込めて、それは解き放たれる。
「凍れ、そのままに」
空間に飛んだ一筋の銀線。刹那、空間を縫うように、無数の霊矢となって拡散する!
竜の炎が、“止まった”。
【四天境地・『雪』】。書家の王、ブックドミネーターが成す、時間さえも凍てつかせる秘技、時間凍結。それを可能にするユーベルコードの力だ。
「へぇ、かの王の時間凍結かい?」
「書架の王見てて思いついたものですからね。意趣返しみたいなものです。さて……」
弓に宿る霊力の矢が飽和する。
「終わりです」
フォルクの竜巻が、都月の精霊の矢が、義透の霊力の矢が、竜の群れを蹂躙する。
やがて鎮静化した事態に、猟兵たちが顔を見合わせて、頷いた。
「―――騒がしいと思えば。わたしが享受する『眠り』を妨げるというのですね。六番目の猟兵たち」
大成功
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第2章 ボス戦
『眠りの森の魔女ターリア』
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POW : ようこそ眠りの森へ
戦場全体に、【「眠りの森」 】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
SPD : 醒めざる夢の茨
【棺の中から伸びる「眠りの茨」 】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : 忘却の眠り
【記憶を一時的に奪う呪詛 】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【過去の記憶】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
👑11
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『約束の地』の大草原に、澄んだ声が響き渡った。見上げれば、黒の棺桶が中空に浮かんでいる。中には無数の茨が犇めいており、更に、プラチナブロンドの髪を持つ女性が書物を抱えてそこに鎮座していた。
「そろそろ死んでいるかと思えば、邪魔が入ったようですね」
「お前は……あの時の……!」
「シャルムーンのクレリックよ。すぐに済むと言った私の発言は取り消させていただきましょう」
薔薇の文様が描かれた魔導書―――侵略蔵書から淡い光が漏れ出す。その途端に、棺に収められた茨が、草原へと奔り、満ちていく。
「六番目の猟兵たちよ。群竜大陸に潜む封印を解くためにも、破邪の言葉は必要不可欠です。邪魔をするというのならば……」
身体の内に内包する魔力が放たれ、周囲に眠りの呪いが蔓延していく。
「享受しましょう。わたしの『眠り』を。わたしの呪いを。わたしの魔術を。そうして全てが眠りについた後、残っているのはわたしだけです。クレリックの始末は、わたし自らが行いましょう」
圧倒的な魔力の波濤が草原に満ちる。眠りの呪いは、猟兵でさえも蝕むだろう。自らも眠ったままですら魔法の行使を可能とする強力な魔法使いにして猟書家、眠りの森の魔女ターリア。
周囲に拡散し続ける茨を横目に見ながら、猟兵たちは覚悟を決めて、武器を構えたのだった。
茜崎・トヲル
じぶんに未来予知。使われるこうげきを知っておいて予防するよお。
記憶うばっちまうのかあ。いちじてきっつっても参るなー。
でもだいじょーぶ。肉体改造はおれ得意だから。
脳をもいっこからだの中につくっといて、そっちにおれの記憶とか予備をいれとんだ。
過去のきおくはもとからあんまおぼえてないんだけど。いまの性格にしたときに、前の脳みそごと再生しなくなるまでぶっこわしたからねー。何年かかったかだっておぼえてないぜ!
おれもね、さいしょっからこんなばかじゃなかったんだよ。
攻撃はいっしょ。いつもといっしょ。
体ぶっこわしながら怪力でハンマーぶんまわして。いばら切断して。たべて取り込んで肉体改造して。ばけものです!
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。
引き続き『静かなる者』
武器持ち替え:四天霊障
クレリックには、まだ結界術を使用。守ることはやめませんよ。
攻撃は見切りと第六感でよけますが、食らうこともあるでしょう。
呪詛耐性で、ある程度は凌げると思いますが。
あなたには、知らないことがある。『私』を見ただけではわからぬことがある。
『我ら』は――。
※
人格交代『疾き者』 唯一忍者
一人称:私/私たち のほほん
――呪詛と寄り添う悪霊である。
他人であった者らが集まりし悪霊である。
その記憶、奪えたとしても一人分なんですよー。
ダッシュで近づき、四天霊障で【連鎖する呪い】の押し潰しを。
この武器にしたの、人格交代をわからなくするためですよー。
フォルク・リア
「寝たままでこんな事をしてのけるとは。
随分と寝相の悪い事だ。」
と言いつつ敵の強大な魔力に警戒
敵の呪詛を観察。
記憶を奪う呪詛の性質を【見切り】
呪装銃「カオスエンペラー」から放つ【呪詛】での相殺と
月光のローブの【オーラ防御】【呪詛耐性】で威力を弱め。
記憶を失っても、周辺の状況を観察し
守るべき者と戦うべき相手を判断。
(流石にこのまま戦い続けると拙い。
決着を急ぐとしよう。)
冥雷顕迅唱を発動。
一撃目は攻撃で相手を牽制すると共に周囲を大気で満たし
【2回攻撃】で【高速詠唱】、【全力魔法】を使用し威力を上げ。
周囲の雷を巻き込み攻撃。
「目覚めの雷と言う処かな。
しかし、目覚めの前に消え去ってくれるとありがたい。」
「眠りなさい。意識の眠りではなく、記憶さえも眠りに落ちる、わたしの呪詛で」
茨の侵食は止まらない。さらに、周辺に拡散する濃紫色の呪詛が、猟兵たちに迫りくる。
「記憶うばっちまうのかあ。いちじてきっつっても参るなー」
自身の背丈程ある巨大なウォーハンマーを、その重量を感じさせずに肩に置いた茜崎・トヲル(白雉・f18631)は、白い瞳を興味深そうに呪詛へと向ける。
茨に取り囲まれたクレリック、グウィントが微かに狼狽している。
「凄まじい魔力……いくらなんでもこれは……!」
「そう怖気づくことはありませんよ。私たちがいるのですから」
「寝たままでこんな事をしてのけるとは。随分と寝相の悪い事だ」
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)が微笑む。それに対して、フォルク・リア(黄泉への導・f05375)は腕組みをして、ふむ、と顎に手を置いた。
「生死に関する呪詛ではないといえど、深き森に住む魔女の呪詛は相当のもののようだ」
「へーあんた呪詛のこといっぱいわかるんだー」
「専門外の呪詛だがね。しかし眠りに特化した呪詛とは、それはそれで興味深い」
「フォルク殿には申し訳ありませんが、観察の時間はありませんよ」
クレリックの周囲に纏わり付く結界術の防御壁。黒渦の如き結界が張られたのを確認して、トヲルが口を開く。
「さーてと、そろそろきそうだよ。あとさーん、にー、いーち……」
ぜろ、と言った瞬間に、3人の猟兵がその場から飛び退いた。空間を蹂躙する呪詛の奔流が、猟兵たち集っていた場所へ襲い来る。
トヲルの【未来予知】は、文字通り迫っている不幸や死因を予知するユーベルコードである。グリモア猟兵の予知と比べて限定的ではあるが、敵の攻撃を回避する“先”を読める。
「ぐ、お……!」
「あークレリックのひとごめんねー。ちょっと苦しいかも?すぐ終わるから待っててー」
トヲルがすかさずグウィントの胴に手を回して飛び退いたためか、凄まじい衝撃が加わったようだ。
「我慢したまえ。呪詛に侵されるよりかはマシだろう」
「わたしの呪詛から逃げますか。しかし、ここはすでにわたしの領域。逃れる術はありません」
呪詛が全方向から襲い来る。周囲を埋め尽くす呪いを垣間見て、しかしフォルクは狼狽えずに『呪装銃「カオスエンペラー」』を構えてその銃弾を撃ち放った。
呪詛と呪詛がぶつかり合う。カオスエンペラーの銃弾は死霊だ。いわば、呪詛そのものと言っても過言ではない。
ある程度呪詛が緩和するが、それでもその勢いは止められない。呪いが猟兵たちを包み込む。
「……なんですか、この記憶は。自らが何者か分からない?そこの男は悪霊ですか。わたしの呪詛に対してある程度の耐性を持ち得ているようですが……あなたの記憶も覚えました。そして、魔術の研究者、あなたの記憶もです」
3人の猟兵が俯いている。グウィントの記憶は義透の結界によって緩和され、直近の記憶を少しばかり失った程度だが、回避を優先していた猟兵たちはそうはいかない。
「終わりです。記憶のない木偶人形にもはや反撃の術はありません」
茨が襲い来る。絡みつき、更なる眠りの呪いを付与しようとする怒涛の茨。
しかし、次の瞬間恐ろしい程の激音が響き渡った。白髪のキマイラ―――トヲルがウォーハンマーを振るい、茨を全て打ち払ったのだ。
「!!なぜ……!あなたの記憶は全てわたしが……!」
「そんなの決まってるよー。おれのからだの中にもういっこ脳をつくっただけだ」
「脳を……作る……?そんな、あり得ない……っ!」
棺桶の中に居座るターリアの表情が微かに曇った。脳を作るなど聞いたことがない。いや、そもそも。
「わたしの忘却の呪詛を、そんな方法でかいくぐるなんて!」
「―――あなたには、知らないことがある」
ぼそり、と俯く猟兵のもう一人、義透が呟いた。
「『私』を見ただけではわからぬことがある。『我ら』は――」
『四天霊障』。茨が弾け飛び、ポルターガイストのような現象が巻き起こる。
「――呪詛と寄り添う悪霊である」
駆けた。ターリアに超速で接近すると、四天霊障が迸る。ターリアの頬に微かに傷が刻まれ―――その呪いが彼女を侵す。
「な、んで……!」
「その記憶、奪えたとしても一人分なんですよー。私は4人のうちの1人なんでねー」
「っ!!悪霊して多重人格者に似た集合体……ですか……っ!」
【連鎖する呪い】に侵されたターリアが後退する、その様子を見ていたのは、もう一人。
フードの奥にある紫色の瞳を動かして、状況を観察していたのはフォルクだった。
戦っている人物を認識する。真っ白な服を着た男が、ハンマーを振るっている。
着物姿の男が、素早い身のこなしで、目を覆い隠した女へと攻撃を加えている。
ちらり、と後ろを見れば、必死の形相で佇む聖職者らしき男の姿。
そして女からは……オブリビオンの気配がする。
そうして、フォルクは記憶を奪われても、自らが成すべきことを見出した。
(流石にこのまま戦い続けると拙い。決着を急ぐとしよう)
周囲に拡散する茨を押しのけるのように、フォルクの超常が発現する。魔法陣が重なり合うように展開し、術者の魔力を吸収する。
「上天に在りし幽世の門。秘めたる力を雷と成し。その荒ぶる閃光、我が意のままに獣の如く牙を剥け」
鳴る。大気を裂く雷霆の束が、天空を埋め尽くす。異変に気付いたターリアが憎々しげに唇を噛んだ。
「目覚めの雷と言う処かな。しかし、目覚めの前に消え去ってくれるとありがたい」
「雷撃魔法……っ!」
天を仰げば、獅子の顎の如き雷の束がそこに燻っている。閃光を幾度となく繰り返し、そしてそれは解放された。
【冥雷顕迅唱(オーバーライトニング)】。茨毎全てを焼き尽くすような雷撃がターリアを襲った。
「あ、あああああああああああっ!」
棺桶が飛翔し、雷撃の降りしきる場所から退避する。茨が燃え落ちて、黒煙を撒き散らす。
「これが……六番目の猟兵たちの、力―――」
「えーと、どーも?褒められたんだよね?こーえいだよね?」
はっ、とターリアが前を向いた。黒煙を掻き分けて、トヲルがハンマーを振りかぶっている。
「きおくを奪う、ってすっげーいやなことされたのだけは分かったんだけどさー。過去のきおくはもとからあんまおぼえてないんだよー。いまの性格にしたときに、前の脳みそごと再生しなくなるまでぶっこわしたからねー。何年かかったかだっておぼえてないぜ!」
「記憶が歪だったのは、そのせいですか……っ!」
にこ、とトヲルが微笑む。
「おれもね、さいしょっからこんなばかじゃなかったんだよ。でもさ、やっぱり楽しくてしあわせなまいにちをじゃまする人がいるなら……」
たおさなきゃいけないよね?と。ターリアが棺桶内の茨を解放する。飛来する茨をハンマーで叩き潰し、纏わり付いた茨はその怪力で引きちぎる。
ターリアが引きつった表情を浮かべて、そして呟いた。聴こえた言葉に、トヲルが再びにこりと笑う。
「うん、ばけものです!」
棺桶を打ち砕くハンマーの一撃。ターリアの悲鳴が響き渡った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
パルピ・ペルポル
いや確実に死なせたいなら最初から自分でやるべきだと思うんだけど。
破邪の言葉が己に影響しないとは限らないものねぇ。
他の人が攻撃しやすいよう露払いと妨害をメインに動くわ。
折り鶴に眠りの呪いに負けそうな人がいたら軽くつついて起こすように指示しておきましょ。
再び念動力で雨紡ぎの風糸を自らの周囲に張り巡らせておいて、敵の行動を阻害兼盾として使用するわ。
グウィントの周囲にも引き続き念入りに。
有為なる写しで古竜の骨のマン・ゴーシュを増やして、眠りの茨や呪詛に対する盾として使用。
伸びた茨は風糸で切り刻んでその隙に万羽鶴を突っ込ませて棺桶の中にこっそり持たせた穢れを知らぬ薔薇の蕾を落とし込んで敵を拘束させるわ。
メンカル・プルモーサ
…漸くでてきた…なかなかに強い呪詛だこと…
…これに対抗するには…ふむ、グウィンと、少しの間、ごめんねー
【神話終わる幕引きの舞台】を発動…呪詛(と加護)を減衰…
…引き続き術式組紐【アリアドネ】でグウィントを守りながら術式銃【アヌエヌエ】で焼却術式の込められた銃弾を撃って眠りの茨とターリアを焼き払おう…
…万一、記憶を奪われたときのために…アルゴスの片隅に「近くに居る神官を守れ」「茨出して来るオブリビオンを倒せ」「銃弾の場所と弾の込め方」と常に表示…
…さらに【アヌエヌエ】の自動照準機能を起動して引き金を引けば弾が当たる状態にしておこう…
…誰が使っても一定の成果を出せると言うのは科学技術の良いところ…
「わたしの呪詛と茨を退けるとは……これが六番目の猟兵、その力ですか」
ひび割れた棺桶、ターリアはまだ眠りの中にいた。クレリックは猟兵たちの尽力によって傷一つ負っておらず、茨の侵食は上手く躱されていた。その様子に歯噛みするターリアであった、が。
「…漸くでてきた…なかなかに強い呪詛だこと…」
「……!!」
ターリアがそちらへと振り返る。草原に佇んでいるのは、眼鏡をかけた研究者風の少女だった。
「確実に死なせたいなら最初から自分でやるべきだと思うんだけど。どう思う?」
「…自分に破邪の言葉が影響あると思ってうかつに手を出せなかったのかも」
ふふ、とメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)の言葉を聞いてパルピ・ペルポル(見た目詐欺が否定できない・f06499)が小さく吹き出した。
「なるほどね、破邪の言葉が己に影響しないとは限らないものねぇ」
「……戯れの言葉は終わりですか、六番目の猟兵。もはや手段は問いません。力づくにでも、その後ろにいるクレリックを殺してみせましょう」
棺桶の中の茨が伸びる。更に、呪詛が周辺に拡散し始める。毒の霧のような濃紫の呪詛の奔流に、メンカルが目を細ませる。
「…これに対抗するには…ふむ、グウィント、少しの間、ごめんねー」
「あら、魔法の詠唱?それなら、わたしが露払いするわ」
パルピが取り出したのは、折り紙セットで作った折り鶴だ。ふわり、と浮かんだ鶴たちが、グウィントとメンカルの周囲に飛び交う。
「眠りの呪いに負けそうな人がいたらつついてね」
微かに頷く動作。神秘の力に、グウィントが目を大きく見開いている。
「わたしの眠りは絶対のもの。いくら他人からの介入があったとしても、起こすなど不可能です」
「人知及ばぬ演目よ、締まれ、閉じよ。汝は静謐、汝は静寂。魔女が望むは神魔の去りし只人の地」
展開する魔法陣が空へと昇っていく。刹那、天から閃く輝きの束。ターリアが危険を察知したのか、茨を上空へ展開する。
降りしきったのは、数多の鍵剣。驟雨の如き剣の束が、戦場を蹂躙する―――!
「広域攻撃魔法ですか。ですが、わたしの茨の前では無力です」
茨が拡散する。飛来する。呪詛が蔓延する。それでも、二人の猟兵は怯まない。
メンカルの『術式組紐【アリアドネ】』、パルピの『雨紡ぎの風糸』が周辺を取り巻く。魔術鋼糸とも呼ぶべきか、二つの糸が迫りくる茨を微塵に切り裂いた。次いで、メンカルの『術式銃【アヌエヌエ】』から焼却術式が発射される。燻る火花は大火となり、茨が圧倒的な熱量によって焼ききれていった。
「……いくら茨を退けようと、わたしの呪詛は抑えることはできません」
降りかかる。呪詛の奔流が猟兵たちを包み込む。忘却の呪いにかかった猟兵たちが、ぐらりと揺らいで片膝をついた……かに思われた。
その場で踏ん張ったのは、パルピだ。見れば、『古竜の骨のマン・ゴーシュ』が無数二分裂し、盾となってそこに顕れている。
【有為なる写し】によって、古竜の骨で出来たマン・ゴーシュは、ターリアの呪詛の防壁として十分に機能したようだ。
「……私の呪詛を耐えますか、猟兵。しかし、そちらの猟兵は……」
「…メモを書く必要はなかったかな」
なに、とターリアが狼狽えた。ゆっくりと立ち上がったメンカルから、亡失の表情は見られない。
「わたしの呪詛が効かない……!?そんな……!」
「…効かないんじゃなくて、そこまでの効力がなかっただけ」
とん、とメンカルが杖を叩く。鍵剣が共鳴し、光の線が剣の間を奔る。地表に描かれるのは巨大な魔法陣だ。
【神話終わる幕引きの舞台(ゼロ・キャスト)】。戦場全体に奇蹟、呪術の全てを否定する結界を敷くことで、その効力を極度に減衰する法則改変ユーベルコードである。
「わたしの呪詛が……!茨が……!」
枯れ果てるように消えていく茨を尻目に、パルピはにこり、と微笑んだ。
「隙有りよ」
指を鳴らす。途端に、ターリアの棺桶内の茨の中から、『穢れを知らぬ薔薇の蕾』が咲き誇った。
真紅の薔薇の蔓と茨に逆に拘束されたターリアが小さな悲鳴をあげた。
「加護と呪詛を減衰するユーベルコードね。それならわたしには関係ないわ。これは加護でも呪詛でもないもの」
ね、とメンカルに目配せする。こくり、と頷いたメンカルが、術式銃の銃口をターリアへ向けた。
「…誰が使っても一定の成果を出せると言うのは科学技術の良いところ…」
「りょう…へい……っ!!」
銃撃音。響き渡った銃砲によって、ターリアの肩口から鮮血が迸ったのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
榊・ポポ
記憶読み取れるのか?
そっかぁ
痛いのはヤだからゲーミングドリンク飲んで
根性で耐える!(気合い・元気)
ポポちゃん、転寝しても記憶を一時的に忘れても
ミニポポちゃんにどついてもらう!
ショック療法で復帰!(瞬間思考力)
ミニポポちゃん達はクレリックのニイチャンの護衛もするね(団体行動)
触ったら焼くぞ!(レーザー射撃)
さあ来い!
ポポちゃんの頭の中を読め!
理解出来ようが出来まいが関係ないね!
少しでも疑問を感じたらおしまい♪
気付いた時にはもう遅いッ♪
正気で帰さんッ♪
ポポちゃんの頭の中はトンチキである
彼女がまともだった時?そんなものはない
理解しようとすればするほど正気が失われかねないのだ
(UCで相手の眠りを侵食)
「わたしの呪詛を押し返し、眠りの呪いを受け流すとは……!」
本を抱えた両腕に力が籠もる。そうして見渡した草原の中に、ひときわ目立つ存在が立っていた。ぱたぱたとターリアへと接近する鳥類がいる。
「記憶読み取れるのか?そっかぁ」
フクロウオウム―――カカポと呼ばれる鳥、なのだが、人語を解する賢い動物でもある。飛べないはずなのだが、飛んでいる。不思議。本人曰く高性能アニマロイドなのだから問題なしだろう。
榊・ポポ(デキる事務員(鳥)・f29942)が、こてっ、と首をかしげるように、ターリアにターリアへと視線を注いで。
「痛いのはヤだから……じゃーん!魔剤!」
袋の中に入ってるフクロウ―――ダジャレではない―――の横を掻き分けて取り出したのは『ゲーミングドリンク』という名の魔剤、エナジードリンクである。ごきゅごきゅ。カカボが飲んで大丈夫なのか、とか色々とツッコミどころ満載ではあるが。
「よーし、呪詛こーい!」
「くっ……!なんだかよく分かりませんが、食らいなさい!」
七色には光ってない。舞い上がった呪詛がポポを包み込む。そのまま意識を失うように地面へと落ちていく。
「ファイト!一発!」
バッグの中に入っているミニポポちゃんが体をフリフリして超速連打のどつき。ショック療法こそユーベルコードを打ち破る秘策であった。
ばさばさ、とグウィントの周辺に降り立ったミニポポちゃん達がめっちゃ体をフリフリしている。七色には光らない。あしからず。
「くっ……そんなものでわたしの眠りの呪いを……仕方ありません、あなたの記憶を読ませていただきます……!」
「さあ来い!ポポちゃんの頭の中を読め!」
ぐお、とターリアの意識がそこに沈んでいく。
記憶の中。
なんか、踊っている。真っ白な空間の中でポポが踊っている。
増えた。二つに分裂した。めちゃくちゃ踊っている。
さらに四つに分裂した。めちゃくちゃ体をふりふりしている。
え、とばかりにターリアが後方に振り向く。
ポポちゃんの群れ到来。
「―――!!なん……っ!」
「理解出来ようが出来まいが関係ないね!少しでも疑問を感じたらおしまい♪気付いた時にはもう遅いッ♪正気で帰さんッ♪」
ポポちゃんゾーンが展開!!【ポポちゃんの頭の中(ポポチャンカオス
)】!!!実にカオス!!
クソデカ大声でポポちゃんが踊りまくる。七色に輝く謎の生き物や、なんか心をえぐられるような不協和音ノイズが響き渡る。
ターリアがあまりの不快感に悲鳴をあげた。
大成功
🔵🔵🔵
木常野・都月
破邪の言葉…言葉が欲しいなんて、変わってるな…
まずは[オーラ防御]をグゥェントさんにかけたい。
眠気の呪詛を少しでも緩和出来ればいいかな。
万が一に備えて、グゥェントさんの近くで[かばう]事ができる位置で応戦したい。
[野生の勘、第六感]で敵の動きに注意したい。
早く猟書家を倒さないと、寝てしまうか。
眠気対策は[呪詛耐性]で我慢。
ダメそうならチィに頼んで、俺が寝ないように助けて欲しい。
狂気や浄化を司る月の精霊様だから、運が良ければ眠気も緩和出来る…かも?
いざとなったら俺をガブーってやってくれ。
UC【精霊の瞬き】を光の精霊様に頼んで攻撃したい。
敵の茨は[高速詠唱、属性攻撃、カウンター]で迎撃したい。
死之宮・謡
アドリブ歓迎
おー…何か出て来たね…お前もそのよく解らん本持ってるのか…
別に、何だったら私もその封印やら何やらに興味はあるし…破りたいのは否定できんが、今の私の立ち位置は此方側なのでな?
起きてんのか寝てんのかよく解らんが…そのまま眠り続けると良いさ…何も果たせず果て征け…
記憶がなくても、私は眼前の敵を殺し尽くすだけだ…眠りに落ちるというのなら生命反応を壊し尽くすまで無意識下でも荒れ狂うだけだ(呪詛)
故、クレリック君は離れてけ…でなくば私がお前を殺す…
【御霊の呪印】を発動
崩壊の「呪詛」をレ・フィドラに籠めて「なぎ払い」切り刻み叩き潰す(怪力・鎧砕き・2回攻撃・生命力吸収)
セルマ・エンフィールド
他の猟兵もいますし、私は敢えてグウィントさんから離れていましょう……加減ができないので巻き込みかねません。
天上界の封印ですか。
あなたたちとヴァルギリオスの目的は世界の破壊で共通しているものと思っていましたが、なぜヴァルギリオスが封印をわざわざ解くような真似を?
答には期待していませんが、一応聞いておきましょう。
その間にも棺から茨が伸びてきて囲まれることもあるでしょうが、その方が都合がいい。
【絶対氷域】を使用、捕えようと伸びる眠りの茨を凍てつかせます。効果範囲にいれば彼女も凍りますし、範囲外にいても茨が凍り付けば繋がっている棺や彼女も動けないでしょう。そこを狙い「フィンブルヴェト」で撃ち抜きます。
「おー…何か出て来たね…お前もそのよく解らん本持ってるのか…」
「破邪の言葉…言葉が欲しいなんて、変わってるな…」
棺桶の中で眠り続けている―――眠りの呪いを蔓延させる魔女。身を揺らがせて、自分の魔術によって眠り続けていたターリアの表情が明らかに歪んでいた。無数の猟兵たちに相対し、眠りの呪いを看破されてなお、ターリアは退かない。
はぁ、と気だるげな表情を隠さずに、死之宮・謡(狂魔王・f13193)は巨槍『レ・フィドラ』を翻して、その切っ先を浮遊する棺桶の中にいる魔女に突きつける。
「別に、何だったら私もその封印やら何やらに興味はあるし…破りたいのは否定できんが、今の私の立ち位置は此方側なのでな?」
「あなたから……死が感じられます。そのあり方で、よく六番目の猟兵として振る舞えるものですね」
ふ、と謡が微かに口元を綻ばせる。
「眠りの呪詛だのなんだの知らんが、私の暴虐と殺戮を止められるものなら止めてみせろ」
「……そうだな。早く猟書家を倒さないと、寝てしまうか」
それに呼応して、『エレメンタルロッド』を構え直したのは木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)だった。杖の先に渦巻く魔力が形をなし、グウィントの周りに強固なオーラ防御が敷かれていく。
「グウィントさん、下がってて。できる限り守るけど、俺たちの攻撃の巻き添えを食うかもしれない」
「その通りだ。故、クレリック君は離れてけ…でなくば私がお前を殺す…」
ぎょっ、とグウィントが目を見開く。その殺気はまさしく“絶対に殺す”と言っているようなものだった。
「……確かに、役立たずの案山子にはなりたくはない。できる限り離れることにしよう」
そう言って、グウィントが謡から距離を取る。他の猟兵の法則改変ユーベルコードによって敷き詰められていた茨が枯れ果てているために、ある程度の空間は出来上がっている。グウィントの位置を確認して、都月がぐっ、と杖を握り込んだ。
「……全く以て。あなた達は愚かですね。天上界に至る標はここに在る。それ故に、破邪の言葉は必要不可欠なもの。それをあなた達は―――」
「天上界の封印ですか」
凛とした声が響き渡った。そちらを見れば、枯れ果てた茨の道を踏みしめて、銀髪の少女が歩み寄ってくる。
セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)は、その碧眼をターリアへと向ける。
「あなたたちとヴァルギリオスの目的は世界の破壊で共通しているものと思っていましたが、なぜヴァルギリオスの封印をわざわざ解くような真似を?」
「決まっています。書架の王が望むのならば。ただの物質、物言わぬ知識の蔵と化してなお、天上界をかの王が望むからです」
「……答には期待していませんでしたが、成程。あの大天使と同じ目的ですか」
さあ、とターリアが呟いた。棺桶の中に敷き詰められた茨が再活性化する。
「呑まれなさい。わたしの眠りに。あなた達を倒せなくとも、一瞬の隙ができれば、そこにいるクレリックの首を獲ったも同然です。抗えぬ呪詛に果てなさい」
「起きてんのか寝てんのかよく解らんが…そのまま眠り続けると良いさ…何も果たせず果て征くのはお前の方だ…」
茨が爆ぜるように、周囲を蹂躙していく。襲いかかる呪詛が謡を覆い、茨の壁が都月とセルマに襲い来る―――!!
「愚かですね。眠りは光陰のごとく。眠りに落ちるのもまた一瞬。茨の呪いは、あなたたちを遠き追憶の水底に落とす……」
ターリアによる、全力魔法の攻撃だった。眠りの呪いが蔓延る茨の束。記憶を奪い取る呪詛の奔流。全てが飲み込まれたと、眠りの魔女は微かに微笑む。
「氷の精霊様、その力をお貸し下さい!」
「この領域では全てが凍り、停止する……逃がしません」
「―――!!」
茨の動きが鈍っていく。ぎちぎち、と機械の歯車が故障で止まったかのような、ひどく硬い音だった。
凍る。氷結していく。茨に宿る呪いさえも緩慢に淀み、霧散する。埋め尽くした【絶対氷域】、そして氷の精霊による氷結の力によって数多の茨が凍結し、数多の氷雪となって草原に流れていった。
「わたしの……わたしの眠りが……!わたしの茨が……!」
「言ったろう、ただ暴れるだけだと」
はっ、とターリアがそちらへと振り向く。真紅の瞳を煌々と輝かせて、謡がすでに魔女の背後へと回っている。
魔法陣が重なり、集う。闇から顕れる強大な魔力な『呪殺神槍レ・フィドラ』に集い―――圧倒的な怪力でそれは薙ぎ払われた。
恐ろしい程の衝撃波だった。刹那の内に振るわれた槍は、ターリアの棺桶とその体、茨の全てを斬り裂いた。瞬間、発現するのは【御霊の呪印(カースソウル)】。ターリアの肩口に刻まれた呪印は、魔女を肉体と精神、魂を呪いによって侵し続ける。
「あ、が……あ……っ!」
棺桶がばらばらに吹っ飛び、ターリアが中空に投げ出された。侵略蔵書がその両腕から離れて宙を舞う。
すでに『エレメンタルロッド』とマスケット銃『フィンブルヴェト』の銃口が魔女に向けられている。
「精霊様、最速で!チィも頼む!」
「終わりです、猟書家の魔女」
都月の肩に乗ったチィが鳴いた。セルマのマスケット銃がその撃鉄を響かせる。
【精霊の瞬き】によって、都月の周囲に瞬いた輝きの残滓が爆ぜて飛ぶ。チィの加護によって、精霊たちもまたその瞬きを肥大化させる。たったの一秒。それだけで無数の閃光の矢がターリアの体を穿ち貫いた。次いで飛んだ銃弾が、ターリアの侵略蔵書を撃ち抜く。
「……今回は、わたしの……負けのよう……ですね……」
小さくそう呟いたターリアの存在がブレて、次の瞬間塵へと還っていった。骸の海へと帰還する魔女の姿を確認した後、黒炭のように塵となって消えていく周囲の茨の先に、無言のまま立ち尽くすグウィントの姿がある。
キミ達はすごいな、と歓喜を込めた笑顔で近寄ってくる男の姿に都月とセルマが微笑む。その様子を、巨大な槍を地面に突き刺して、謡がじっと見つめていたのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
最終結果:成功
完成日:2020年11月09日
宿敵
『眠りの森の魔女ターリア』
を撃破!
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