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砲火の煙は大洋の 龍かとばかり靡くなり

#クロムキャバリア #人民平等会議 #皇洲連邦 #ウォッグ #ギムレウス #Fortress

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#クロムキャバリア
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●本日天気晴朗ナレド波高シ
 朝日が爽やかな光を注ぎ、波が装甲に当たってキラキラと輝き散ってゆく。
 深い蒼に澄んだ海面を白く泡立たせ、水面下を泳ぐ魚たちを蹴散らし進むは異形のキャバリアの軍勢。
 群雄割拠、戦乱機運の高まる大地に御旗を立てよ。
 将軍殿下の名のもとに刃を振るい、遍く大地に皇帝陛下の威光を示せ。即ち我等皇洲連邦、もののふの國の臣なれば。
「全機に打電、我に続け。一気呵成に敵国を攻め落とし我が国が世界に通用しうる軍事列強国家であることを世界に知らしめよ。然らば皇帝陛下と将軍殿下も我等が侵攻を追認くださるじゃろう」
「承知。我等下ノ瀬藩郎党、皇帝陛下に世界を献上するまで御館様と共に屍山血河を築いて征きましょうぞ」
 東の島国より出し武者どもは、ひたすらに西へ西へと突き進む。目指すは隣国、ナロードニク・ソユーズが有する不凍港ドルジグラード。
 オブリビオンマシンの狂気に呑まれた将の下、異形の大型キャバリア多数からなる連邦艦隊が平和な港湾都市に迫る。

●海より来るいくさびと
「皆よか? 仕事の話ばするよ」
 訛り混じりに集った猟兵達に切り出す佳奈恵。三度目ともなればいくらかブリーフィングにもこなれてきたか、今までよりは気持ち少しだけ溌溂とした声音で話を続ける。
「場所は例によってクロムキャバリア、ナロードニク・ソユーズ。前の仕事で行ったことある人も居るかもしれんね」
 その東海岸に位置する港湾都市ドルジグラードに向け、海を挟んだ隣国――皇洲連邦のキャバリアの大部隊が侵攻しつつあるのだという。
 そして猟兵が駆り出されるということはつまり、その軍勢にオブリビオンの影があるということ。
「どうも指揮官機がオブリビオンマシンみたいやね。この機体が侵食する形で部隊を掌握しとるごた」
 元々は尽忠報国の士と名高い、その半生を国防に捧げ後進や主君からの信頼も篤かった高潔な武人である老将を取り込んだオブリビオンマシンは、彼の手勢の軍で領海を侵犯するどころか宣戦布告なき奇襲攻撃のうえ強襲上陸まで仕掛け、出動したナロードニク・ソユーズ軍との間に戦闘状態を発生させることで両国の全面戦争を引き起こすつもりらしい。
「このままやったらドルジグラード市街にも戦闘の被害が出るどころか、両国が開戦すればもっと多くの人命が失われる大戦争のきっかけにも成りかねんけん、絶対にこれは止めんといかん」
 猟兵たちは直ちに現地に赴き、ドルジグラード駐留軍と連携し皇洲連邦艦隊主力を構成する重キャバリア部隊をなんとしても水際で阻止せねばならない。
 守るべき多くの人々を背に、猟兵たちは戦火の海に飛び込んでゆく。


紅星ざーりゃ
 おはようございます。
 すっかり寒くなっても身体が闘争を求め続ける紅星です。
 今回は防衛ミッションです。侵攻してくるキャバリアから港湾都市を守り抜いてください。

 一章、二章共に海から攻め寄せるキャバリア部隊の迎撃が主となります。
 いずれもオブリビオンマシンの狂気に囚われた兵がパイロットとなっています。
 また、皇洲連邦軍のキャバリア乗りは血縁や婚姻関係による強固な繋がりを持つため、各章で撃破され戦死したものが居ればオブリビオンマシンはその怒りや嘆きを吸収し更に強力な性能を発揮します。
 が、撃墜した機体から解放され正気を取り戻したパイロットに呼びかけるよう促せば、パイロット同士の絆がオブリビオンの狂気に抗う力となり、戦闘が有利になるでしょう。

 三章では今回の事態を引き起こした大型キャバリアとの決戦となります。
 これを撃破することで侵攻艦隊の戦意は失われ、瓦解するでしょう。

 いずれも冒頭、マスターシーンの掲載直後からの受付開始となります。
 それでは皆様、よろしくお願いいたします。
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第1章 集団戦 『ウォッグ』

POW   :    クローアタック
【クローアーム】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    水陸両用射撃兵装
【背部水陸両用ミサイルと腕部ニードルガン】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    水陸両用機
敵より【水中深くにいる】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 ――猟兵たちが降り立ったドルジグラード基地は阿鼻叫喚の渦中にあった。
 キャバリア格納庫は攻撃を受け炎上し、パイロットたちは負傷して担架の上。
 基地司令は砲撃を受け半壊した司令部施設に取り残され安否は不明、指揮系統は混乱し、次席指揮官たる指導将校を探して伝令兵が駆け回っている有様だ。
「同志指導将校中佐! 同志指導将校中佐を見なかったか!!」
「知らん! それより何処からの攻撃だ!? キャバリア隊をさっさと出して迎撃させろ!」
「パイロット連中は軒並み吹っ飛ばされて病院送りかあの世行きになっちまったよ! 機体も半分以上がオシャカだ! クソッタレ、あの指導将校の野郎居なくていいときにはすぐ出やがるくせに……」
 どうやら駐留軍のキャバリア隊の支援を受けることは難しいらしい。それどころか指揮官クラスの将校がごっそりと行方不明とは。
「……あんたたち、この辺の人じゃないな。もしかして猟兵って奴か」
 そんな折だ。低くよく響く声で猟兵達を呼び止める者が現れた。
 オルロフ・ステッセル軍曹と名乗る男は、猟兵たちが誰何に応えれば力強く頷く。
「さっき指導将校とその取り巻きがトラックで出ていくのを見た。俺は基地の連中を纏めて防衛戦の準備をさせる。あんたらは自前のキャバリアでも、あそこで転がってるうちのキャバリアでも使って先に出てくれ」
 敵は事前の砲撃でドルジグラード基地を無力化せしめ、水陸両用タイプの量産型キャバリアを投入して強襲上陸を敢行しつつある。
 奇襲攻撃の混乱から立ち直り指揮系統を整え防衛体制を敷く頃には敵の第一陣は市内にまで踏み込むだろう。
 それを阻止するために今最も必要なのはキャバリアの機動力だ。そしてそれを即時投入できるのは猟兵を置いて他にない。
「あんた達みたいな連中はあちこちで戦争の火消しをやっていると聞いた。なら、すまんがどうか頼む」
 その言葉に頷いて、猟兵たちは機体に飛び乗り今まさに敵軍が上陸しようとしている沿岸部へ向かう。


『港湾施設はなるべく壊すな。抵抗するもののみ排除せよとの御館様のお達しである』
『承知。――"抵抗しそうな者"は如何する』
『……反抗の芽は早い内に摘むがよかろう』
 堤防に鉤爪を掛けてその丸っこい頭を覗かせ、黄色の単眼を上下左右に揺らしてソユーズ人民軍の抵抗が無いことを確認した異形のキャバリア――首なしのずんぐりとしたボディは、各国海軍でウォッグという名で採用されている量産型だ――が地上に姿を現した。
『海坊主はあくまで水中戦機だ。敵の機兵が現れたならば後退し水中戦に引きずり込め』
 それまでは好きに暴れろ、という部隊指揮官の命に従って、ウォッグ――皇洲連邦軍では海坊主と呼ばれる――の部隊は停泊している軍艦を攻撃する。
 砲を腕部の水中銃から放たれた鋭い杭で穴だらけにし、鉄爪の腕で艦橋を叩き潰して大暴れする。
 またたく間に幾つもの艦艇が戦闘能力を喪い、奇襲攻撃に慌てふためく乗員たちが船縁から海へと飛び込んでゆく。
 艦隊が戦闘不能になれば次は地上戦だ。後続部隊が到来するまで海から離れすぎないよう慎重に前進し始めた無数の海坊主の群れ。
『待て、敵影多数。砲撃で基地の機兵はあらかた潰したと思っていたがそうも行かぬか』
 その眼前に駆けつけた猟兵の駆るキャバリアが立ちふさがる。


「本当にやるつもりなのか軍曹! 正気の沙汰じゃあない!」
 どうにか統制を取り戻したほんの十数人の兵士を載せたトラックで港へ向かうオルロフ軍曹は、そんな問いかけに首肯で応える。
「正気でなくともドルジグラードを守るのが俺たちの任務だ。喜べ、左遷されたと腐っていたお前たちにもわかりやすい成果を見せる好機が来たぞ」
「だからって対キャバリア野戦砲だァ!? 直接照準、近距離戦闘でキャバリアを迎え撃つなんてお手軽な自殺だぞ!」
 食って掛かる兵士の言葉は正論だ。高速で機動するキャバリアを相手に、アウトレンジどころか双方目視できる距離から砲撃を叩き込もうなど言うは易し行うは難しの例としてこれ以上にわかりやすいものもそうそうないだろう。
 だが軍曹はどこか狂気を宿しているようですらある、強い意志を秘めた眼差しでじっと前を見据えて譲らない。
「俺が調整した砲だ。ちゃんと撃てば当たる。今度こそ、確実にな……!」
 ドルジグラード駐屯基地。出世街道から外れたもの、命令違反を犯したもの、軍や政府にとって不都合な何かを知ってしまった、あるいは実行してしまったものたちの流れ着く人民地上軍の掃き溜め。
 オルロフ軍曹もその例に漏れず――だが、彼と彼に付き合う兵士たちのその心根までは腐っていない。
 そうして港の倉庫に格納されていた野砲にたどり着いた兵士たちは、猟兵達に無線を繋いで声高に名乗りを上げる。
「――こちらは人民地上軍砲兵隊。これより貴隊を支援する!」
 飛来した砲弾が、一番槍に名乗りを挙げ猟兵に肉薄するウォッグの振り上げられた腕を吹き飛ばす。
ノア・クレムリィ
 勇敢な砲兵がついているとは心強いです。彼らの勇気に応えましょう。

 【UC:アドバンテージ・アンサー】(WIZ)を発動。砲兵隊から注意をそらし上陸を遅滞させるために、水上から上陸部隊の側面を狙う〈遊撃〉を敢行します。まずは挨拶代わりに短機関銃の〈制圧射撃〉、上陸しようとする敵軍の出鼻を挫きましょう。

 彼らが潜水したら、こちらも対潜戦闘に切り替えます。〈瞬間思考力〉で敵の経路を予測、そこに対潜爆雷《モーニングスター》を〈投擲〉です。〈地形の利用〉で海流も読み、潜水機能の損傷を狙って浮上を強いましょう。

 さぁ、上がってきなさい。貴殿らの相手は、この私が務めます。

(アドリブ連携負傷等々全て歓迎です)


イザベラ・ラブレス
砲兵隊!つまり砲撃戦ね!(テンション高め)
グッドチョイス!私が来たからには成功させるわよ!

持ち込み機:UT-コンバットバリオニクス『マイティー・バリー』
コールサイン:クロコダイル
【アドリブ連携歓迎】

【行動:人民砲兵隊のサポート】
UCで幽霊海兵隊ヘリ部隊を呼び出し、敵上陸部隊への陽動及び【情報収集】を行わせる。
得られた情報は砲兵隊にも共有して攻撃精度を上げるわ。
もちろん私も「三連装ガトリングキャノン」で【砲撃+範囲攻撃】でサポートよ。

砲撃を掻い潜って砲兵隊に近づく敵機は私が【かばう+気絶攻撃】で殴り倒すわ。

説得するにも対話できる状態に持っていくまでは手加減できないわよ。


スレア・ラドリフ
やったーーー!キャバリア―!!
もちろん借りるわよ!近接と中距離がいける子いる?
早い、も素敵だけど小回り利く方が嬉しいかも。

コクピット位置は狙っちゃだめとして、
他に気を付けないといけないのは腕と後ろのよね。
でも凌ぐだけなら兎も角、
本気で狙っても元気なうちは私の実力じゃ捌かれそう。
だから一機以上相手にしないよう頭に留めて、
こっちが崩れないことを優先しつつ、
主兵装狙いに見せかけた牽制を仕掛けていくわ。
ええ!牽制じゃなく本当に出来たらどんなに格好いいかっ!
でも私の狙いは注意を惹いて、
海に退き難くして撃ち易くすることよ。
ええ、だから。遠慮なく撃って無力化して!!
通しちゃいけないんでしょ、頼りにしてるわ!




『砲兵! この距離で出てくるとは度し難い!』
 装甲に守られたキャバリアや戦車ならともかく、装甲らしい装甲は歩兵からの銃撃を防ぐ程度の防弾板が一枚固定されているだけの対キャバリア野戦砲。
 その直撃は海坊主の片腕を吹き飛ばすに十分な破壊力を発揮したが、その存在が露見した今となっては命中させることなど至難の技。
 熟練の砲兵と観測手、十分な通信の確保と敵を砲兵のキルゾーンに押し込み砲兵に寄せ付けないキャバリア部隊。これらが揃ってやっとキャバリアを相手に有効に機能するのが砲兵という兵科であり、こと市街戦においては無差別掃討に近い反撃による周囲への被害を考慮しないのであれば、ロケットランチャーを担いだ歩兵のほうがよほど効率的にキャバリアに危害できるだろう。
 それでもオルロフ軍曹が野戦砲を持ち出したのは、彼の砲兵としての矜持がひとつ。もうひとつはわかりやすい抵抗戦力として、ドルジグラード市街への侵攻を目論む皇洲連邦軍の部隊を惹きつけるため。
 その狙い通り、海坊主は失った片腕の礼とばかりに腕部クローを振り上げる。
 だから言ったんだ、無謀だって。オルロフ軍曹は喚きながら掴みかかる兵士を投げ飛ばし、最期の瞬間まで砲に次弾を叩き込む。
『軍人たるもの矢面に立つ気概やよし。だが……』
 鋼鉄の爪が振り下ろされ――
「とりゃぁぁぁぁぁぁッ!! 間に、合っ、た……!?」
 それを分厚いシールドで受け止めるキャバリア。肩にはナロードニク・ソユーズの国章とドルジグラード基地駐留部隊の部隊章を描いた中量級のクロムキャバリアは、暗緑色の機体を重く軋ませながらクローアームを押し返す。
「間に合った! 援護するわ、此処を通しちゃいけないんでしょ、だったら遠慮なく撃ちまくって敵を無力化して頂戴!」
 その機体のコックピットで、パイロットであるスレアはオルロフ軍曹らに呼びかける。
 正直なところ、スレアはパイロットとしてまだ未熟であった。先の防御も間に合うかどうかは賭けであったし、先制の一撃で片腕が落ちていなければ防いだ直後にもう一方の爪がスレア機のコックピットを貫いていただろう。
 それでも、そうはならなかったのだから賭けはスレアの勝ちだ。
 状況は悪い。技量では敵のほうが上。数も敵が上。こちらは不殺を心掛け手心を加えねばならない一方で、敵は容赦なくスレアが座するコックピットを粉砕せんと殺意の鉄爪を振るう。唯一勝るのは機体性能だろうが、これも――
「腕一本のウォッグ相手にこんなに……!」
 一撃を受け止め弾き返すごとに関節が軋み、アクチュエータが悲鳴を上げる。出力は強弱を不定期に波打たせ、操縦桿を握る腕から力を抜けばがくりと膝を屈してしまいそうだ。
「応急整備じゃこんなものか……わかってるならこっちで機体に合わせてあげるしかないわね……!」
 元々やる気のない辺境基地の機体、整備状態は良いとは言えなかった。そこに洋上の敵部隊からの砲撃だ。直撃こそ免れ原型を留めていたとはいえ機体の状態は限りなく最悪に近い。それをどうにか戦闘機動と呼べるレベルの挙動を為し得るまで復旧させたのはひとえにスレアの整備士としての技術ゆえ。
『威勢よく飛び出した割にその程度か、ならば早々に屠って任務を果たさせてもらおう』
 だがそこまで。頑張って整備した機体なので手加減してくださいなど戦争では、ましてオブリビオンマシンに呑まれた相手には通用しない。
 盾でクローを受け止め、マチェットナイフで腕を狙い抵抗するスレア機を軽々あしらい海坊主は僚機に指示して死角からスレアを襲う。
 一機はオルロフ軍曹の砲が顔面を吹き飛ばし、盲目にして海へと叩き落とした。
 だが左右から回り込んだ残る二機は、スレアのキャバリアを仕留めるべくその鉤爪を引き絞り――
「勇敢な砲兵と貴女の勇気に応えましょう」
 洋上からの弾幕が、そして
「クロコダイルより人民地上軍、私が来たからにはこの戦線はあなた達の勝ちよ!」
 地上からの弾雨が、挟撃を仕掛けた海坊主を牽制した。
 かたや遠き連邦が誇る竜の如き精悍なる水上騎兵、ガンド。
 かたや砲火硝煙の化身たる鰐頭の重装機兵、マイティー・バリー。
 二機の来援は戦線の状況を五分にまで引き戻す。
『ち……内陸部の基地からの増援にはまだ掛かる予想ではなかったのか』
『致し方ありませぬ。かくなる上は海中に退き仕切り直しを』
 三機の海坊主が水中に撤退しようと試みるのを、しかし猟兵たちは許しはしない。
「砲兵、観測はこちらが引き受けるわ! そっちのお嬢ちゃんも無茶しない!」
「ここで無茶じゃないって言い返せたらどんなに格好いいかっ!」
 マイティー・バリー、コールサイン"クロコダイル"ことイザベラからの通信にスレアは下唇を噛んで機体をバックジャンプさせれば、マチェットの代わりにセミオート式のライフルを取り出し敵機の退路を制限するように銃撃を加えれば、砲兵の盾になっていた彼女の代わりに鰐頭の重装機が滑り込む。
「砲撃戦はいいわね、キャバリア相手に砲を選んだ貴方、グッドチョイスだわ!」
 スレアの射撃で思うように退けない敵機を容赦なく襲うイザベラのガトリングキャノン。砲弾の嵐を海坊主は重厚な耐圧殻の強度と曲面を活かして弾き返すが、その全てを無力化など出来ず全身に穴を開けられてゆく。あれでは撤退はできまい。
「殺しちゃダメだったわね。とはいえ説得するにも対話できる状態に持っていかなきゃいけないし……」
 ピンポイント攻撃で戦闘能力を奪うには、ガトリングキャノンの威力は過剰に過ぎる。
 ならばそれを為しうる者に任せればよいのだ。イザベラは正しく戦力を運用できるだけの知識と分別を持ち合わせる傭兵なのだから。
「海兵隊、観測情報送れ!」
 いつしか頭上に轟く回転翼が空気を叩く音。小柄な旧式ヘリに乗った兵士たちが、複数機からのレーザー測距で敵機の位置を、狙うべき手足を正確に捉え――
「人民地上軍砲兵隊よりクロコダイル、協力に感謝する――撃て!!」
 脚が弾け飛んだ。大地に沈む巨体の腕が金属の断裂する轟音とともに吹き飛ばされ、背面のミサイルランチャーが続く一撃で貫通し誘爆する。
 一機が沈黙し、続くもう一機も海に飛び込む寸前でスレアからの銃撃とヘリコプターからのロケット弾がこれを押し戻し大破させた。
 だが三機を全て阻止することはかなわず、一機海中に逃げ延び――
「水中戦であれば私の領分です。海軍列強皇洲連邦……我ら聖共和連邦海軍とどちらが上か、いざ」
 巨大な波紋を描いて水中に消えた海坊主――ウォッグは、しかし水中を縦横無尽に動き回れるほど水中機動性に長ける機体ではない。
 あくまで強襲上陸可能な潜水艦として考えれば、敵機の航路は予測するに易い。あれは水中では頭を船首に、そちらにしか進めない不自由な機体だ。手足を動かせば多少は融通も効くだろうが、この浅さこの状況では敵はいち早く深度をとれる沖に出たがるはず。
「となれば貴殿が選ぶ路は限りなく一つ」
 そこです、と海上で待ち受けるノアが放り投げた爆雷は、空中でそれぞれを繋ぐワイヤーケーブルをバラけさせながら網を張るように海中へ没し、連鎖するように爆発して水柱を上げる。
「あの損傷ではこの爆発に耐えられないでしょう。さぁ、上がってきなさい。貴殿の相手はこの私が努めます」
 その言葉に応じるが如く足元から突き出されたクローを、フィギュアスケートの如く流麗な水上機動で回避。戦果確認のため水上にちらりと現れた頭頂部を対艦槍で貫けば――
「起爆……してはいけないのでしたね。貴殿には捕虜になっていただきます」
 いつでも吹き飛ばせるのだぞ、という示威として槍を突き刺したまま、銃を突きつけ陸上へと海坊主を曳航するガンド。
 駆けつけた三機によってまず第一陣を押し返したソユーズ地上軍であるが、しかし港の全域で皇洲連邦軍のキャバリアは上陸を果たしつつある。
 猟兵たちは此処だけでなく、ドルジグラード全戦線でこれらすべてを水際迎撃せねばならない。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

朱皇・ラヴィニア
これはまた随分とクラシックな兵器を……
フフ、まるでボクと一緒だ
それじゃあ行こうかゼル
敵は多い、だがこっちも負けてはいないよ

野戦砲を有効活用する為
最大展張した147を盾の様に掲げて突進
ニードルガン程度は怖くない。問題はミサイルだ
接近し323の射程に入ったら奥の手、セパレートブラディエル!
ブラディエルを前衛、ゼルを中衛に配し
323の制圧射撃でミサイルを無力化
こうすれば後は野戦砲だけで敵を落とせる筈

こちらラヴィニア、鋼の嵐を魅せて欲しい
ただ致命傷は避けるんだ、動きを止めてくれればいい
停止した敵機にゼルで組みつきパイロットを引きずり出す

甘く見ない方が良い
古強者にはそれなりの理由ってものがあるんだからさ


エイス・シノノメ
此度の強襲、どうやら功に目が眩んだ独断専行
確かに獲った分だけ強くなれるのは世の理です
しかし易々と手に出来ないからこそ争いが絶えない
奇襲はその瞬間は有利になりますが、その後は地力がモノを言うのです!

さぁ先ずはこの劣勢しかと凌ぎ切りましょう
一度戦場に立てば皆がツワモノ、己が出来る事を最大限に
一人ではありません、この場の全員で護るのです
前線とはキャバリアだけが支えるものに非らず!
砲兵の支援とあれば此方も応えるのみ!

自身のクロムキャバリアで出撃
砲兵へ近付けずを心掛け実体剣を抜刀、白兵戦闘
傷一つない綺麗な機体なぞ、戦さ場では何の自慢にもなりません
機獅道の教えにもあります、傷の数は護ったモノの数であると!




「此度の強襲、国家規模の軍事行動としては些かおとなしいですね……」
 横目に放った愛機のライフルが堤防に爪を掛け頭を出した海坊主を押し戻す。
 正面では繰り返し放たれるクローの連打をブレードで跳ね返し、エイスは冷静に皇洲連邦の侵攻を分析する。
 聞き及ぶかの国の国力からして、本気で人民平等会議に宣戦布告するのであれば、初手からドルジグラード港への一点強襲ではなく東海岸全域に広く上陸し人民軍の国境防衛戦力を分散させた後に主力を投入し橋頭堡を築くやり方か、あるいは全軍を動員する規模の強攻で大陸側に侵攻の足がかりを確保するかの二択が常道であろう。だが明らかに国軍としては規模の小さな揚陸部隊、海上に後詰めが展開しているにしてもこれは国家レベルの侵略ではなかろう。
「というわけで功に目が眩んだ独断専行とお見受けしますが如何か!」
『功など無用、我等は皇帝陛下に八紘一宇の世を献上するのみ!!』
 国土拡大を狙うのはこの戦乱のクロムキャバリアにおいてはほとんどの国家が願う大願であろう。それをエイスも否定はしない。奪えば奪うだけ強くなれる理の中で、争うな功を望むなと言う方が邪道である。
 だから闘争を否定しない。まして八紘一宇……古い言い回しであるが、彼らの望むものは世界統一による平和である。それが成るならばそのための争いを許容するのがエイスの信ずる機獅道である。
 ――だが!
「その理想やよし! ですがオブリビオンマシンに乗っ取られているようでは!」
『御国の礎たらんという我等が挺身を愚弄す――ぬおおッ!!』
 鋭い斬り上げ一閃。ブレードがコックピットを目指し鋭く突き出された海坊主の爪撃を跳ね上げ、肩口からのタックルがその巨体を押し出した。
 重装甲の水陸機にまともにぶつかれば、エイスのキャバリアとてダメージを受けるだろう。肩装甲が潰れ、関節が僅かに歪んでアラートを鳴らす。
 だが無視できる。この程度の損傷に怯えていて何を護れようか。そう――
「機獅道の教えにもあります、傷の数とは護ったモノの数であると!」
 たたらを踏んで後退した敵機を前に堂々宣言するエイスの機体、その頭上を越えて山なり弾道を描いて降り注ぐ砲弾が海坊主を中破させる。
「前線とはキャバリアだけが支えるものに非ず! 戦争の仕方を違えましたね!」
 振り向けば野戦砲の砲列。砲兵隊と名乗る彼らは名前に比して遥かに小さな規模だが、それでもよくやっている。
 彼らの奮戦が奇襲を奇襲たらしめる速攻を抑える一助となっていることに変わりはなく、彼らも自身も己にできる最大限の努力を成せば国家としての地力、国力に勝る人民平等会議軍の増援が到来しこの侵攻は撃退できよう。
「アタシも自身に出来る事を、砲兵を護るという任務を成し遂げましょう! 此処は一機とて通しません!!」

 ――砲兵を守護することに全力を尽くすものがあれば、砲兵を使うことに意義を見出す者も居る。
 かつてキャバリアなる巨人が台頭するより昔、砲兵とは戦場の女神であったという。今や世界の覇王たる鋼鉄の巨人たちに追いやられてしまったというのに、まだやれるのだと、まだ存在できるのだと主張し世界にしがみつくように皇洲連邦のキャバリアに抵抗する彼らはまるで、故郷も何もかもを過去に呑まれた己の写し身のようだ。
 ラヴィニアはそんな砲兵達の絶え間ない砲声に耳を澄ませ、知的でありながら原始的で野蛮な旧式兵器の姿を愛おしく見下ろし愛機の操縦桿を握りしめる。
 だったら同じ、過去に全てを奪われてなお今日を生きる存在として彼らを助け、彼らの活躍を見届けよう。
「それじゃあ行こうかゼル。敵は多い、だがこっちも負けてはいないよ」
 砲兵に近づく敵機はあちらの白のクロムキャバリアが勇猛果敢、傷をも厭わぬ戦いぶりで抑えてくれる。
 ならば遠距離から砲兵を狙うものを排除しよう。幅広の巨大な剣を盾のように構え、ずしりずしりと地面に足跡を刻んで突進するシュラウゼル。それを迎え撃つは二機の海坊主だ。
『単機で突出する意気やよし! だが蛮勇は身を滅ぼすと知らぬようだな!』
『火力を集中して彼奴を阻止する! 海坊主二機分の集中攻撃ならば!』
 連射される鉄杭を剣は受け止め弾き返し、僅かに威力を殺しきれなかったものも刃に突き刺さるだけで機体にまで貫通はしない。
 ここまではラヴィニアの狙い通り、ウォッグタイプのニードルガンは柔らかな敵艦の船底に穴を空けるための水中用兵装に過ぎないことは知っている。
 だが問題は――
「やっぱり撃ってくるよね。ボクだってそうするもの」
 地上の重装甲目標にも通用しうる背部ランチャーからのミサイル。こればかりは剣で受け止めきれはしないだろうし、迎え撃てば敵機そのものへの防御を解かねばならぬ。そうなれば放たれた杭がシュラウゼル諸共ラヴィニアの全身を貫くだろう。
「でも、この距離ならもう十分さ。奥の手を見せてあげよう。セパレートブラディエル!」
 シュラウゼルが纏う紅蓮の鎧が弾け飛んだ。それは一部のキャバリアが機動性の確保や排熱のために行う装甲の強制排除によく似ていて、しかしそうではなかった。
 排除された紅い鎧は、それそのものがもう一機のキャバリアであるかのように人型を保ったまま海坊主に突撃する。
 ラヴィニアが従える二機のキャバリアのうちの一機、オブリビオンマシンたるブラディエルを前衛、海坊主への直接攻撃に送り出せば、パイロットをその身に宿すジャイアントキャバリアのもう一機、シュラウゼルは短機関銃から弾丸をばら撒き制圧射撃でミサイルを撃ち落とす。
 空中で花開いた灼熱の炎に照らされて、ブラディエルが敵機に飛びかかるように組み付いた。
 二機のうちの一機がこうして捕縛されたことに気を取られ、もう一機の海坊主がラヴィニアとシュラウゼルから意識を逸したその時こそ彼女の狙った瞬間であった。
「こちらラヴィニア、鋼の嵐を魅せて欲しい」
「砲兵隊よりラヴィニア、了解した。そちらの紅い機体にも配慮はする」
 いいや、無用さ。そうやって笑うラヴィニアの、シュラウゼルの背後で砲列が吼え、砲弾が海坊主を地に鎮める。
 まずは隙を見せた一機が四肢の全てをバラバラにされ、そしてブラディエルに拘束された一機はオルロフ軍曹が操るただ一門の砲の速射で抵抗する両の腕部を吹き飛ばされて沈黙する。
『……不覚、野砲如きに!』
 コックピットをこじ開けパイロットを引きずり出そうとしたラヴィニアはそんなつぶやきを聞いて、その手を止めた。
「あなた達に一つ教えてあげよう。古いもの、時代に取り残されたものを甘く見ないほうがいい」
 ――特に現代にまで生き残っているような古強者には、滅びずに残っているそれ相応の理由というものがあるのだから。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ユエイン・リュンコイス
アドリブ連携お任せ
敵は水陸両用型か。装甲厚や耐久性は高いだろうけど…なに、だからこそという手も有る。

自前の機体に搭乗。まずは【月墜】による『砲撃、範囲攻撃』を叩き込み、海中を掻き回す。ただこれはあくまでも牽制。海流を乱しての連携寸断や泡での視界不良が狙いだ。

そうして相手が浮き足立ったところで海中へ突入。まぁ、ボクの機体は海中適性に乏しい。劣勢は避けられないだろうね。だけど、こちらを侮って殺到して来れば狙い通りだ。
充分に引き付けたところでUCを起動。さて、水中でいきなり高熱が発生したらどうなるか、知っているかい?
ーー答えは水蒸気爆発さ。
こちらも損傷は免れないだろうが自前の『継戦能力』を信じよう。


穂照・朱海
戦争を起こそうという意思を感じ取って、戦国の世に人を斬るために生まれた我が妖刀が疼いている……

今や妖刀の怨念はキャバリアの五体に満ちて、僕(やつがれ)の肉体を通じて操っている
そうまでして、闘争を求めているのだ……

闘おう
これを見過ごせば、もっと大勢の人が死んでしまう

駆るのは両肩を朱塗りにした黒い単眼の汎用量産型
妖刀の担い手――機斬鬼士
UCを発動し上空より撹乱した後に手足を斬り落とし戦闘続行不能にする目論見で行く
コクピット以外を狙い、パイロットを死なせないよう戦う
プレッシャーをかけ【恐怖を与える】ことで闘争から逃げるよう仕向けたい
「逃げるならば追わない!
 生きたいのならそうしろ!」




「我が妖刀が疼いている……」
 刀めいた片刃のブレードを携えた量産型キャバリアがゆらりと現れれば、上陸を果たした海坊主どもの内で黒装束の連邦兵たちがたじろいだ。
 広域回線に乗って囁くような声は艷やかにして朗々と。芝居がかった抑揚で紡がれる台詞回しは、皇洲連邦の民に一つの想像を抱かせる。
『人斬り…………』
 皇帝と将軍の下国家が統一され、武家制度が整備される以前はそのような悪徳を好む武家の者もあったという。
 即ち刀にて生きた人間を斬り捨てることに快楽を覚える人種。殺人狂、理解の及ばぬ人にして人ならざる外道に堕ちたる怪人。
「いいや人は斬らないさ。しかし君たちの戦争を起こそうという意志を感じ取って、戦国の世にて人を斬るために生まれた我が妖刀の怨念は今やキャバリアの五体に満ち僕の肉体を通じて機体を操っている」
 ああ。朱塗りの肩に漆が如く黒の鎧。ぎらりと此方を睨む単眼だ。あれが、あれが此方をじいっと見ている。
 通信に紛れる金属がちゃりちゃりと擦れるような音は、斬るべき肉を求めて鯉口を鳴らす刀のそれではなかろうか。
 単眼の悪鬼に睨まれて、兵の脳裏には嫌な想像ばかりが積み重なる。海坊主の装甲をざぱりと切り開き、操縦席の己をその巨刃の先で弄ぶように突付いて裂いて腑を引きずり出されるような、そんな想像が嫌に鮮明に浮かんでは消える。
『う、う、うああああああッ!!!!』
 部隊ではいっとう若い兵がその雰囲気に呑まれ、恐怖の元を断つという本能のままに海坊主の腕から針を飛ばす。軍艦を貫く針は、防御に徹する重キャバリアならともかくあくまで素体が量産型である単眼悪鬼の機体――機斬鬼士の甲冑程度は貫くだろう。
 ――届けば、であるが。
「妖刀は君たちを斬りたいと望んでいる。君たちを斬れば、その肉親であるという向こうの本隊はいっそう斬り甲斐のある相手になるだろうから。けれど」
 ちぃんと甲高い金属音。放たれた鉄針は機斬鬼士の刃に切り払われ、地面に落ちて転がった。
「僕は君たちを死なせる事を望まない。君たちを見過ごせば大勢の人が死んでしまうだろう。だが君たちを殺せば、その怨念を薪に焚べて戦の火はなお多くの人を焼き尽くしてしまう」
 だから。
 ニードルガンが通用せぬと見てミサイルを乱射する海坊主。その爆発を踏み越え跳んだ機斬鬼士の背中から、極彩色の蛾の羽根が空に広がった。
「これぞ妖蛾幻想錦燕。世にも美しき色彩の乱舞、御照覧あれ……」
『け、化生め……誰ぞ其奴を掴んで退け!』
 それを美しいと思うかおぞましいと思うか。少なくとも皇洲連邦の兵たちは鮮やかなる羽に描かれた眼の紋様に後者の念を懐き、怯え竦んだ若い兵を引きずるようにして撤退を図る。
 一機が若者の機体を掴んで退けば、その撤退を援護するように空へと弾幕を張る二機。
「逃げるのならば追わない! 生きたいのならそうしろ!」
 恐怖に耐えかね錯乱した若い兵はともかく、幻惑の錦燕に気圧されながらも踏みとどまった勇敢なる兵は、このまま術が解ければ精強なる皇軍兵士として我を取り戻すだろう。
 それでは、駄目だ。ならば斬らねばならぬ。妖刀の化身たる機斬鬼士――いいや、その担い手たる朱海は蛾の翼をはためかせて急降下、踏みとどまる海坊主の四肢を一息に斬り刻む。
「生命までは取らないとも。僕は猟兵であって人斬りでは無いのだから」

 一方、機斬鬼士に圧倒され敗走する部隊は早々に空を舞い同胞を膾に刻む妖蛾から逃れるべく海中へと飛び込んだ。
 水中ならば海坊主の領域、あの恐ろしい鬼神も此処までは追ってこれまい。
 ようやく一心地ついた年長の兵士が若い兵士を叱咤し立ち直らせると、自分たちを逃がすため死地に残った仲間を援護し前方へ、市街地へ"撤退"するため再び機首を陸地へ向ける。
 その機影を、海面に立つ白波を見下ろして、ユエインは水陸両用機の厄介さに暫し物を思う。
「水陸両用機、見たところ潜水深度もそれなりか。なら装甲厚や耐久性はそれなり以上に高いのだろうね。けれど、なに。だからこそという手もある」
 黒鉄の鉄巨人――これまでは十指からの糸で繰っていた人形、これからは十指そのもので繰るキャバリアとなった塔守の巨兵を沿岸防衛の要と置くべく前進させた彼女は、長大なる艦砲クラスの――そのもの駆逐艦クラスの速射砲を転用したかの如き重砲撃兵装を水面に向け、トリガーを引く。
 瞬間辺りの空気をまるごと爆発させたような轟音とともに砲弾が海面に叩き込まれた。一秒と少しを置いて次弾発射。砲撃、砲撃、砲撃。海水がキャバリアの背丈より高い水柱を立て、衝撃波が港に並ぶ倉庫の窓を叩き割る。
 これに文字通り泡を食った――砲弾によってかき混ぜられ空気を送り込まれた海中は気泡によって真っ白な空間へと変貌した――海坊主の二機は、頭上からの砲撃を躱すべく水中深くに潜ってゆく。
「そうさ、それでいい。ボクの機体は海中の適正に乏しいから、水上から仕留められない君たちを追えば当然劣勢は避けられないだろうね」
 だが、ユエインは迷いなく機体を海中に投じた。どぼん、と鈍い水音を立てて海中に両足を付けた機人は、そのまま身の丈より深い水の底を進軍する。
『愚かな……沿岸防衛に徹していれば勝てはせずとも負けは無かったであろうに!』
 その判断ミスを見逃すほど、老練の皇洲連邦海兵は易しくはなかった。
 たちまちユエインは海中で本来持ち得た機動性を発揮する海坊主に翻弄され、二機からなる鉄爪の連撃で装甲を傷つけられる。
「ぐっ、思った以上に衝撃は伝わるものか。だけれど、君たちはボクの想像通りに動いてくれた。そうだろう? わざわざ自分たちの領域に飛び込んできた愚か者を仕留めるのに、限られた弾薬を消費する馬鹿はそうそう居ない。君たちほど技量に自信があるならなおさらね」
 だからボクの勝ちだ。ユエインは苦境において勝利を確信する。助けを求めるように頭上、水面に輝く陽光に伸ばされた右手。その掌からぼこぼこと気泡が昇り、そして次の瞬間――海中一帯が激しく爆ぜた。
「いや、耐えられるかどうかは賭けだったがやってみるものだ」
 ――ドルジグラードに塩の雨を降らせた爆発の爆心地から上陸した鉄巨人は、かろうじて原型を留める海坊主のコックピットブロックをごろりと置いて膝をつく。
 戦闘続行は可能だが、それもギリギリだ。ウォッグタイプの装甲と塔守の装甲、どちらも小規模の水蒸気爆発で諸共に自爆しパイロットを殺傷せず機体のみを無力化するという彼女の望みに応えてくれたが、そのダメージは軽くはないだろう。
「それでも彼らは先発隊、か。これは君たち捕虜には正気に返ったら頑張ってもらわなきゃ、だね」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

才堂・紅葉
「血縁武力集団か……死人が出ると長引く奴ね」
小さく嘆息し
「迦楼羅王」
指を鳴らし相棒を喚ぶ

方針
敢えて機体出力の【封印を解く】事で、排熱マフラーを紅蓮に染めて戦場で目立つ【パフォーマンス】を取る
出力増加で機動性と攻撃力を高める事、勇気ある近接砲撃を行う砲兵隊からヘイトを逸らすのが狙いだ
彼等と上手く連携を取りたい

戦闘は重力を乗せた六尺棒による白兵戦【早業、属性攻撃、重量攻撃、怪力】
【メカニック、戦闘知識】で敵機構造を見極め、要所を【部位破壊】して非殺傷撃破を狙う

「引き付けて水中戦狙いか……想定内ね」

後は海に誘われた風情を装い、斥力跳躍機構で裏を取ろう
空を跳ねる【グラップル】の技の冴えを見せ付けたい


イコル・アダマンティウム
「使っていい?
なら、借りる」

TALONEから降りて
基地のキャバリアで出撃
人型で腕と脚さえあればいい
<操縦>

大事なのは機動力
水中は適正高い機体のが動きやすい

射撃兵装は基本足で避ける
機体にバルカンがあったらそれで撃ち落とす
「ん、見える」
<見切り><足場習熟><悪路走破>

水中で壊すと酸欠が怖い
だから近づいて、敵機を水上に投げる
浮力で関節の負荷も低い
「飛伝、ぐれーとあばらんちゃー……」
<暴力><限界突破><グラップル><地形の利用>

【リモート】
投げ飛ばしたら
水上で走って待機、ついでに敵機を攪乱中のTALONEで蹴る
壊しつつ基地の方にシュート
<ダッシュ><水上歩行><フェイント>
「軍曹。救助、お願い。」




『あ、兄者ァ! 援護を、援護を頼むッ!』
 迦楼羅王の突き出した長尺の棒に単眼を突き潰され、視覚を失い狼狽する海坊主から聞こえた声。
 それに呼応するように割り込んだもう一機のニードルガンの連射を機敏な回避運動で避けた紅葉は、概ねの作戦成功と敵の厄介さにほうと息を吐く。
 戦闘能力を削ぎつつも戦闘不能にはさせない。応急処置を施せばまだ戦えるやも、という希望を残しつつ無理攻めも撤退も難しい塩梅で損傷した敵機は、進むも退くも僚機の助けを必要とするだろう。だが、それすら紅葉は封じ込める。近寄ってきたものから棒術で組み伏せ損傷機の仲間入り。こうすれば今も勇敢な近距離砲戦を展開する人民地上軍砲兵隊に向く敵意を此方にいくらか集めることもできよう。
 だが、その敵意の質が些か面倒な質であった。
「血縁武力集団か……死人が出ると長引くやつね」
 漏れ聞こえる無線通信からは、この侵攻軍がある種の強い結びつき――血の繋がりで団結していることがわかる。だからこそ、損傷した僚機を救うべく我が身を省みぬほど苛烈な猛攻を仕掛け、どれほどの残骸を積み上げようとその勢いは止まらぬのだ。
「厄介極まる相手だわ。でも、私達なら不殺で制圧出来る。そうよね、迦楼羅王」
 此方を睨めつける海坊主共の視線をなお集めるように、機体出力を上限にまで高める。唸るように鳴動する動力炉。オーバーヒート寸前の機体から放出される熱は、襟元で炎の帯となって揺らめいた。
 手練の動きで棒を振るい、不殺でありながらも此方を圧倒する鬼神の如きキャバリアの変貌に、連邦兵たちは息を呑む。
『怯むな、我等の積んだ鍛錬と隣に立つ友の、家族の絆を思い出せ……一斉攻撃で押しつぶすぞ』
『お、応ッ!!』
 鉄爪の腕を突きつけて、迦楼羅王を包囲する海坊主ども。ニードルガンの包囲射撃から逃れるのは至難、しかも射撃開始と同時に放たれる垂直発射ミサイルが上方への脱出も封じるのだ。幾度となく演習にて磨いた必殺の陣。敵の大将首が駆る強大なキャバリアを封ずるための技量の集大成を、損傷機を交えた不完全な状態でありながら彼らは過不足なく見せつける。
 迅速な動きで互いをフォローし合い、紅葉の牽制を防いでぐるりと取り囲む海坊主には、流石の紅葉も驚嘆を隠し得ない。
「そんな状態の機体でよくやるものだわ。――でも、この戦場には私以外にも敵がいることを忘れては駄目よ」
 海坊主がニードルガンを放つ直前、狙い澄ました砲兵隊の砲弾が海坊主どもの腕を砕いて落とす。
 だがまだだ。ミサイルはまだ無事。白煙を曳いて天へと昇る誘導弾がその頭を地に、迦楼羅王に向ける。
 射撃兵装を持たない迦楼羅王が迎撃するには、弾頭もなにもかも情報不足のミサイルはあまりにも危険だ。技量的には迎撃も不可能ではないが、叩き落としたところで機体を巻き込む規模の大爆発をされればそれは命中と大差ない。
 しかし紅葉は動じない。
「あれは、お願いしてもいいかしら?」
「ん、大丈夫。見える」
 眼前の海坊主の背中を蹴り倒して乱入した人民地上軍機は、前腕部に内蔵されたチェーンガンを空に向けてぶちまける。
 放たれた弾丸がミサイルを掠め、爆破し、その破片と熱が他のミサイルを破壊する。
 炎のカーテンの下、迦楼羅王の窮地に駆けつけた人民地上軍のキャバリアを駆るイコルは、踏みつけられもがく海坊主の背中に弾倉内に残る最後の数発を叩き込んで機体を無力化すると、それを担いで狼狽える敵機に投げつける。
『う、受け止め――ぐああッ!!』
 家族か友か、見捨てられない誰かが乗った機体を受け止めようとした敵機は残骸にもろに直撃され、姿勢を崩して港湾のガントリーに倒れ込み鉄骨の間にその機体を挟み込んで動かなくなる。
『あちらの新手も手練だぞ! 海中に退いて仕切り直せ!』
 乱入者の技量を正しく見極めた敵勢は、損傷機を守るように陣を組み直して海へと飛び込んでゆく。
「逃げる……と見せかけて引きつけて水中戦狙いね。想定内だけど――」
 貴女はどうする、と問う紅葉。イコルの借り受けたソユーズ標準型キャバリアは陸戦用。申し訳程度の飛行能力はあるが、水中戦においては想定外の仕様だろう。迦楼羅王ならば地上ほどではないが多少は戦える自信があるが、これでイコルを庇いながらとまではいかない。
「問題ない。むしろ水中のほうが楽」
 出撃前に鉢合わせた流れの整備士にシーリングはしてもらった。彼女は早々に出撃していってしまったが、おかげで気密性は上々だ。水圧の強い深みにまで進まず、浅瀬での戦いに徹すれば却って浮力のおかげで関節に掛かる自重の負荷も和らぐかもしれない。
 シーリング処理が機体内部の空気をしっかり閉じ込めてくれることを期待して、イコルは自機を水中に進めた。
 その恐れ知らずな行動に肩を竦め、紅葉も迦楼羅王を海に飛び込ませれば、案の定というか反転して此方を襲撃せんと襲いかかる海坊主。
「だから想定内って言ってるでしょう!」
 放たれた魚雷が命中する直前、迦楼羅王は水中機すら上回る速度で上方へと跳んだ。海面から飛び出し、そのまま空中で一回転。頭を下に、棒を構えて空を蹴飛ばし急降下、海坊主の頭上から落下し、銛のように海水を切り裂き突き込まれる棒がかの機体を弾き飛ばしてコンクリートの堤防に叩きつける。
「凄い。僕も頑張らないと」
『よくも叔父上をォ!!』
 先行した一機が瞬く間に撃破されたことに激昂したもう一機が突っ込んでくれば、イコルはそれを素手で――キャバリアの腕だけを使って――受け止め、持ち上げる。
「馬力はこっちが上。機動性で勝負されたら危なかった」
 でも、と。強い繋がりが故に、機体の強みを正しく利用できなかったのだとイコルは告げて。
「秘伝、ぐれーとあばらんちゃー……」
 自機と同等かそれより重い海坊主の巨体をイコル機が持ち上げ、海面より上に押し上げる。
 そうして水中から押し出された海坊主を――投げた。
「ん。TALONE、軍曹、あとはお願い」
 放り投げられた敵機は地上に向けて放物線を描き、その軌道を修正するように本来のイコルの機体であるTALONEが駆けつけ蹴り飛ばす。
 間一髪、オルロフ軍曹らの頭上に落ちる最悪の事態を回避したところで、軍曹ら人民地上軍の兵士たちが損傷した機体にトドメを刺してパイロットを引きずり出した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

貴司・忍
アドリブ絡み歓迎
なんか、ここの人ら見てると開天組の部下連中を思い出すな…
今何してっかなぁ、あいつら…今日も元気にチェーンソー振り回してっかなぁ…
っと、仕事仕事
さて、防衛線だろ?
なら特攻部隊の出番だな!

しかしまぁけったいな見た目しやがって
【集団戦術】の応用で、部隊の中心っぽそうな奴を見つけてコード発動
基地から一気に飛び出し体当たりそぶちかまし海へ突き落す
おまけに機関砲をぶち込み頭数を一先ず減らして…と

敵陣ど真ん中だ
あたしに気付いた奴のアームをチェーンソーを駆使した《武器受け》で破壊
そのまま巨腕で敵の一つ目をぶん殴って【鎧砕き】で粉砕しそのまま【グラップル】…これなら当たるだろ、おっさん達よ!!


ヴィリー・フランツ
(M・アドリブ連携OK)
目的:港湾基地防衛
心情:ヒデェ戦況だが残存部隊・猟兵と連携すれば巻き返しは可能だ、やってやる!

手段:【熟練操縦士】発動!敵は此方を水上に引き込む腹積もりだが、見え透いた策に乗るかよ!遠距離攻撃はスラスター吹かして左右に回避、焦らして逆に上陸させてやる。被弾しても増加装甲を着けた拠点防衛機、ヘビィタイフーンの装甲をナメんなよ!
敵がクローアタックを仕掛けてきたら、支援砲撃・ミサイル・無反動砲・電磁速射砲による射撃攻撃で接近される前に叩く、ウォッグは深海の高水圧にも耐えられる機体だ、コアに直撃させん限り恐らく死なねぇだろう。
近接時はスパイクシールドで攻撃を防ぎ、零距離射撃だ。


トリテレイア・ゼロナイン
兵士が生身で…勇猛さは認めますが何という無茶を…!

ロシナンテⅣから降り地上軍砲兵隊と合流
機体はUCで●操縦しミサイルのライフルでの武器落とし迎撃や、盾受け防御からの剣での近接攻撃続行

何故このようなリスクを…(質問)

私は騎士です
危険が避け得ぬとしても、それを減らす努力は惜しみません
オルロフ軍曹、不服もあるやもしれませんがお付き合いいたします

キャバリア囮に水際に退こうとする敵機体を建物の影から●地形の利用だまし討ち
危険な尖峰務め脚部スラスターの●推力移動で一気に接近、ニードルガンを●怪力大盾殴打でかち上げ殴り倒しセンサー破壊

今です、関節部へ!

倒れた機体を●ハッキングしハッチ解放
操縦者抱え素早く離脱




 猟兵の参戦によって上陸を果たした皇洲連邦軍部隊の攻勢は削がれ、ひとまずこのまま一息にドルジグラードを占拠される最悪の事態だけは避けられた。
 だがドルジグラード港駐留艦隊は壊滅、ドルジグラード基地も被害甚大で投入可能な戦力はオルロフ軍曹以下の有志砲兵隊と猟兵が借り受けたキャバリア数機で打ち止めだ。
「ヒデェ戦況だな……」
 ヘビィタイフーンの戦域マップに視線を這わせ、咥えた煙草を灰皿に押し込んでため息交じりに紫煙を吐いたヴィリーの目からは、しかしその言葉と裏腹に希望は失われていない。
 内陸部に点在する人民地上軍基地からの来援が到着するまで、あるいは冬を間近に控える今、北方マシリースク軍港から不凍港たるドルジグラードを目指し南下する人民海軍の東方主力艦隊が至れば、戦況は逆転するだろう。
 それまで耐え、敵を海上に追い返す。それだけなら現有の戦力でも使い方しだいでどうにでもなるだろうというのがヴィリーの見立てであり、また予想外の勇戦を見せる砲兵隊の活躍次第ではこの戦力で海上の敵主力を撃退することも不可能ではないとすら思える。
「俺は指揮官なんてガラじゃねぇが、経験則から言えば巻き返しは可能だ。ならやってやる、それだけだろ!」
 ヘヴィタイフーンのスラスターが火を噴き、敵部隊の最後の一団が揚陸した一角へと突進する。
 その機体に並ぶように、白い重装甲キャバリアが合流する。どちらも重量級の量産機、違うのは装備構成くらいか。
 かたやヘヴィタイフーンは砲戦重視の全身火薬庫。ではもう一機は。
「防衛線の火消しなら特攻部隊の出番だな! アタシにも一枚噛ませな、おっさん!」
「おっさ……それどころじゃねえから今はいいか。お前は?」
  ヴィリーの問いかけに揚々と応える声音は、少年じみた粗野な言葉遣いだが女のそれだ。
「アタシは特攻部隊開天組の元隊長、貴司忍ってモンさ! そういうあんたは?」
「ヴィリー・フランツ、傭兵だ。特攻たぁ穏やかな響きじゃねえが、その装備からして前衛は任せていいんだよな?」
 任せろ、と振り上げられた拳はアンバランスに大きい。片腕は巨大な打撃腕、もう一方には負けず劣らず大型のチェーンソーを担いだ接近戦に特化した機体、六号開天を加速させる。
 目指すは戦場、このナロードニク・ソユーズの大地から侵略者を叩き出すのだ。

「兵士が生身で……勇猛さは認めますが何という無茶を……!」
 飛来するミサイルを四ツ腕のうちの二本で保持したライフルが放つ弾丸が撃ち落とす。
 そのまま強攻を仕掛けてきた海坊主を剣閃一筋に斬り伏せ、たじろぎ接近戦は不利と悟った後続が放つニードルガンの乱射を大型のシールドで受け止める。
 砲兵隊を背に庇い奮戦するロシナンテⅣのコックピットが開けば、機体によく似た鋼鉄の甲冑騎士が飛び降り砲兵達に駆け寄った。
「指揮官はどちらに!」
「俺が指揮官のオルロフ軍曹だ。危ない所を世話になった、が……」
 機体を乗り捨てて大丈夫なのか、と言いたげな視線に、騎士――トリテレイアは心配無用と胸を叩く。
 直接操縦に比べれば些か精彩を欠くが、中距離で牽制と防御に徹する程度ならば遠隔操縦でも十分。その言葉通り、無人のロシナンテは海坊主部隊を相手に彼らを抑え込んでいる。
「ひとつだけお聞かせ願いたい。生身でキャバリアに挑もうなど、何故このようなリスクを……」
 それは非合理な行為だ。トリテレイアとてドロイドとは違う。人には時として合理性を擲ってでもなにかに挑まなければならないときがあることを理解できぬわけではない。だが、ドルジグラード基地には先制長距離砲撃を受け損傷しているとはいえキャバリアがあり、そして損害軽微だが戦車兵たちが出撃どころではなくなり打ち捨てられた戦車もあった。
 そういう装甲兵器であれば、こんなむき出しの野戦砲よりまだ安全な抵抗が出来たのではないか。
「…………俺は砲兵だ。砲兵は砲兵の仕事しか出来ないし、砲兵としてしか汚名を雪ぐ方法を知らん」
 それだけだ、と言い残して砲の角度調整に専念し始めた軍曹。その言葉に、トリテレイアも思うところはある。
 彼の過去に何があったかは今は問うまい。彼が己に出来る最善を尽くし、それが結果としてこの形であったならば、そこに生じる危険を可能な限り受け止め防ぐのが自身の使命。
「オルロフ軍曹、直接貴方の手助けをすることに不服もあるやも知れませんが……私も騎士としてお付き合い致します」
 ロシナンテを護衛に付け、敵部隊の死角に回り込むトリテレイア。その背後で激しい衝突音が鳴り響く。
「しかしまぁ、けったいな見た目しやがって!!」
 ロシナンテとの一進一退の攻防の様子から指揮官機を見出した六号開天が、横合いからロケットブーストを掛けて殴りかかったのだ。
 巨腕に横っ面を強か打たれて海坊主の巨体が吹き飛び、錐揉みしながら海へと叩き落される。
『な、何奴――』
「こいつが開天組の名物さァ! 見物料は機体でいいぞ、置いてきな!」
 指揮官機が一撃で無力化された奇襲攻撃に混乱しながらも対応し、クローを突きこむもう一機をチェーンソーで受け止め――回転する刃が火花を散らしてクローに食い込み、その爪諸共敵機の腕部を引き裂いた。
「敵陣はぶち抜いたぞ、これなら当てられるだろおっさんよ!」
「口が悪ィな貴司!」
 六号開天が切り開いた敵陣の穴にヘヴィタイフーンが滑り込み、全身に満載した火砲を解き放ちながらぐるりと旋回する。
 まさにタイフーン、嵐の名に相応しい砲火の雨が水陸両用のキャバリアを穿って砕いた。
「そいつは深海の水圧にも耐える代物だ、コックピット直撃でもなきゃ死にはしねぇだろう……なッ!?」
 全弾を撃ち尽くしたヘヴィタイフーン。そこへ辛うじて大破を免れた海坊主が最後の力を振り絞ってクローを突き出す。ヴィリーも咄嗟の反応でスパイクシールドを構えるが、間に合わない――
「やらせません!!」
 刹那飛び出す白い影。キャバリアの半分ほどの大きさの機影はクローアームをシールドバッシュでかち上げる。
 ヘヴィタイフーンのコックピットを貫くはずだった一撃は軌道を逸らされ、弾薬を吐き出しきったミサイルポッドを叩き潰すに留まる。
「キャバリアに頼り切らぬ戦闘こそウォーマシンの誉れ! 無理の度合いでオルロフ軍曹に負けては居られません!」
 影――トリテレイアは自前の剣で海坊主のコックピットを切り開き、額から血を流し驚愕するパイロットを掴んで抱え離脱する。
「軍曹、今です!」
「――了解した。全門撃ち方!」
 野戦砲とロシナンテのライフルが吼え、無人となった海坊主を破壊しヘヴィタイフーンと六号開天の攻撃で中破するも撃破には至らなかった機体の四肢関節を粉砕する。
 ――ドルジグラードへ強襲上陸を敢行した皇洲連邦の海兵キャバリア隊は、ここに全機が無力化され人員の実に八割以上が捕虜として拘束された。
 残る2割も破壊された機体に立て篭もってはいるが、じきに捕縛されるだろう。
 だが、まだ洋上には驚異が残っている。
 ドルジグラード基地を先制攻撃で破壊した超長距離砲撃機。連邦艦隊主力を構成する砲戦キャバリア部隊が迫っていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『ギムレウス』

POW   :    砲撃モード
自身の【背部大型キャノン砲】を【砲撃モード】に変形する。攻撃力・攻撃回数・射程・装甲・移動力のうち、ひとつを5倍、ひとつを半分にする。
SPD   :    メタルファング
自身の身体部位ひとつを【機械で出来たワニ】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ   :    接近阻害地雷敷設
自身からレベルm半径内の無機物を【対キャバリア地雷】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



『御館様。どうやら一番槍の海兵部隊は全機が撃破されたようでありますな』
 洋上をドルジグラード港に向け進軍する皇洲連邦軍の第二陣。
 その速度は海坊主――ウォッグタイプと比較すると鈍足であるが、その姿を見れば鈍足にも一目で納得できよう。
 海上を征くは岩山の如き巨体。背には艦砲に等しい大型キャノン砲を背負い、水面を滑るように航行するは、ギムレウス級重キャバリアの改造機だ。
 皇洲連邦海軍の主力艦となるべく改修を施され、さらなる大型化に伴い大出力ホバーによる水上作戦能力と航続距離の格段の延長を施されたそれは、彼らが不知火と呼ぶ機体である。
 その不知火の一団が旗艦たる超大型キャバリアに先行して陣を組む。
『親兄弟の不始末を糺し、仇を討ってやるのが縁者の情け』
 増速する不知火の艦列を、指揮官たる老将はただ静かな頷きとともに送り出した。
『然らばお先に。御国に殉じて死した者共に報いて参りまする』

 一方ドルジグラード港では、船を焼け出された海軍の水兵たちと協力して海坊主乗りのパイロットたちをあらかた縛り上げたところであった。
 機体を引きずり出され、戦時国際条約を鑑みると若干グレーゾーンの説得――概ね拳による語り合いだ――等も挟んで頭を冷やさせてみれば、何故彼らの主君たる老将が急に隣国に侵攻を決定したのか首を傾げる者がちらほらと。
 直前までの熱狂というか敵意というか、胸中を満たす闘争への意欲もさっぱり霧散した兵らはがっくりと肩を落として諾々と人民軍の指示に従い降伏を宣言してゆく。
 ここに来て猟兵以外の人民軍兵士たちも、これがオブリビオンマシンが呼び起こす狂騒であると理解したのだろう。
「なら大本を叩けば戦いは終わるな」
 水兵たちのリーダー、駆逐艦の艦長だという大尉が顎に手をやって呟けば、オルロフ軍曹がそれに頷きながらもしかしと言葉を繋げる。
「此方の艦隊は見たところボロボロだ。対キャバリア砲も重砲ではないから沖までは届かんぞ。だが――」
 捕虜曰く、初撃で基地を無力化せしめた超長距離砲撃は彼らの旗艦――十中八九オブリビオンマシン化しているであろうキャバリアからのものだという。
「奴さんはその気になれば沖合からこの港を灰に出来る。打つ手なし、だ」
 猟兵のキャバリア部隊だけを送り出すことも考えたが、陸戦と違い水上戦でそれ専用でないキャバリアの性能は大きく劣る。あるいは飛行すれば不利は打ち消せるやも知れないが、殲禍炎剣の天蓋が頭上にあることを考慮すればあまりにもリスクが大きすぎる。
「いや、そうとも言えん。被害を受けたのは駆逐艦や巡洋艦が主だ。幸いにも動かすことくらいならできそうな船はまだある」
 大尉の発案によって、猟兵たちは敵の後続が港を射程距離に収める、あるいは旗艦キャバリアが再度砲撃を開始するまでの見えないタイムリミットを意識しながら機体を駆り、出撃準備を整えてゆく。

『――待て、港より出てくる船影だ。全機停止、機雷散布用意。艦種は……輸送艦と揚陸艦だと?』
 戦闘艦と呼ぶにはあまりに貧弱な船。怪訝に眉を顰めた連邦兵達の耳朶を打つのは、件の船団から発信される死んだはずの先行部隊の者たちの声。
 曰く戦いを止めろ、御館様を諌めることこそ真の忠義、皇帝陛下の御心を忘れたか。
『ええい、やつらめ寝返ったか!』
『しかし隊長、彼らの言葉にも思い至る節はありまする!』
 死んだと思っていた家族からの呼びかけに、連邦艦隊はニつに割れた。かたや戦闘続行を主張する強硬派と、かたや攻撃を中止しもう一度侵攻の是非を考えるべきと訴える停戦派。
『ならぬ。我等は大陸に祖国の御旗を掲げるためにこそここまで来たのだぞ。御館様のご意思に逆らうならば貴様らも逆賊として裏切り者諸共――』
 輸送艦を狙う強硬派の不知火の砲。だがそれより早く、輸送艦からの反撃がその頭を吹き飛ばす。
「敵の半数が此方を守るように隊列を離脱している。そいつらに当てないように注意しろ。"味方撃ち"だけはするな」
 次弾を装填して砲兵達に徹底させるオルロフ軍曹。輸送艦の甲板にずらりと並ぶ対キャバリア砲が、強硬派の機体を捉える。
「猟兵、ハッチを開ける! 臨時旗艦はオルロフ達が使うが、それ以外の甲板は好きに踏んでいけ!」
 揚陸艦から発進する猟兵のキャバリアは、輸送艦の甲板を足場に水上用キャバリアに挑みかかる。
「繰り返すようだが半分は味方――とも言えんが敵じゃないようだ。撃つ相手を間違えるなよ!」
貴司・忍
おいなんだこいつらごついな…気に喰わねぇ。
ホバーは積んでねぇが噴進装置ならこっちもいいの積んでるんでな
久しぶりの度胸試しと行こうか

まずは【集団戦術】の応用だ
常に通信装置をオンにし、通信を拾ってみる
停戦派だったりこっちに大砲向けてなかったりな連中を見つけ出し
そうしてないやつらの方に突っ込むぜ
捕虜になった軍人からそうなりやすい連中を教えて貰えれば、渡りつけて貰えばなお良しだ

殲禍炎剣が厄介なら、飛ばないで海面すれすれを飛べばいいな
敵の砲撃をバレルロールで回避
途中甲板を足場にさせてもらいさらに加速
肉薄し四門の胸部機関砲とミサイルガトリングを零距離射撃で叩き込む

この距離は特攻機の間合いだぜ、おい!!


トリテレイア・ゼロナイン
※ロシナンテⅣ搭乗

輸送艦…臨時旗艦に同乗し戦友を諫めようとする勇気ある方々の為にも、騎士として勝たねばなりませんね

センサーの●情報収集と●瞬間思考力で敵味方を挙動から判断
機体●ハッキング直結●操縦による超低空●推力移動や甲板●踏みつけで不知火に肉薄

(背部コンテナから射出される杭状装置を空中でキャッチし)

機体●怪力で●投擲、放電で電装系無力化

さて、ここからですね

敵の複数機に刺したUCで障壁を床状に構築、海上に足場形成

『蹴る』という要素が加わったスラスターのみでは不可能な三次元挙動
艦砲で捉えられると思わぬことです

運動性活かし剣と盾で接近戦
時に敵を踏みつけ、力場の足場を増やしながら敵陣奥へ




『逆賊め……! 陛下に八紘一宇の世をば献上するという我等が誓い、忘れたとは言わさぬぞ!』
「家族を撃って何の平和かッ! やはり貴殿らも御館様も正気ではないのだ、目を覚ませ!!」
 海上で繰り広げられる激しい砲戦。人民軍の砲兵らも沖の波に煽られ揺れる船上から野砲でこれを支援しているが、そもそも重砲の直撃にも耐えうる不知火の装甲相手にダメージを通しているのは長年の経験と柔軟な応用で精度を維持してのけたオルロフ軍曹の操る一門のみ。
 離反した連邦艦隊の不知火は、強硬派と違い同士討ちをよしとしないためにその攻勢は一撃で敵機を沈黙させうるものとは言い難い。
 戦場は混迷のままに泥沼の様相を呈している。ならばこれを打開できる者こそ猟兵を置いて他にあるまい。

「……気に食わねえ」
 輸送艦の一隻を足場に、舳先で仁王立ちする六号開天のコックピットで忍は苛立ちを吐き出した。
 此方がやや不利なまま推移する戦況にも、頑なに侵攻を支持するあまり同士討ちでさえ躊躇をしない連邦軍強硬派部隊にも、そして何より――
「アタシの開天よりゴツくてパワーがありそうなのが一番気に食わねぇ!」
 祖国の象徴たる強襲突撃機に誇りを抱く彼女からすれば、それ以上であると主張するような重装甲キャバリアの存在は即ち挑戦だ。
「ぶっ飛ばして開天の方が上だって見せつけてやらねぇと……」
 巨腕の掌に拳を打ち付ける開天は、チェーンソーをパージし輸送艦のコンテナから次なる武装を引っこ抜く。
 その様を苦笑するような気配を纏って眺めていたトリテレイアは、しかしと気を引き締める。
「危険な戦場に同道し、戦友を諌めようとする勇気ある方々の為にも。そしてその声に応じて己の過ちを正そうとしている方々の為にも、騎士として勝たねばなりませんね」
 たとえ間違っているという確信があっても、命令に、指揮官に逆らう事にどれほどの覚悟が、勇気が必要であろうか。
 自身も銀河帝国という巨大な組織から離反した機体であるトリテレイアは、その行いがどれだけ勇敢で尊いものかを知っている。だからこそここでその灯火を潰えさせてはならないのだ。
「貴司様、そろそろ参りましょう。敵味方の識別は?」
「ん? なんとなく!!」
 なんとなくでもわかっているようなら上々です、とトリテレイア。
 あとは実際に戦場でその機体の動きから見極めてゆくしか無いだろう。友軍機としてデータリンクを申し出れば、すぐさま開天の名が味方機として表示される。これで電子戦能力も有するロシナンテが識別した強硬派と停戦派のリストを共有できるだろう。
 準備は万端、出撃の時は来た。駿馬ならぬ機械の騎士を駆り立てて、トリテレイアと忍は戦場に躍り出る。
 ――とはいえ、だ。
「貴司様、貴女の機体は陸戦特化とお見受けしました。ならば先行し戦場を整える栄誉、是非とも私にお譲りください」
「……あぁ? ダメだダメだ、アタシは特攻隊長だぜ!? 一番乗りは譲らねえ!」
 提案をにべもなく却下した忍にしかし戦術的には、と訴えようとしてトリテレイアはやめた。これは戦術的合理性より先に立つ名誉と矜持の問題だからだ。
 で、あるならば彼女がそのために不利を被ったとしても、それを打開する実力と策を持っていると信じ委ねることこそ礼儀。
「差し出がましい事を言いました。ご武運を」
 トリテレイアは己が役目を果たすため、背部コンテナユニットから射出された水上戦のための特別な兵装を装備する。

「飛んだら殲禍炎剣が落ちてくるなんざ百も承知だぜ!」
 叫びながら突進する開天は、やはり陸戦型らしく水上での動きは十全とは言い難い。故に飛行に近い機動を選択する他ないが、それは危険と隣り合わせだ。
 高度を上げすぎれば頭上から降り注ぐ殲禍炎剣に灼かれ、逆に下げ過ぎれば波に足を取られて水上で転倒してしまうこともあり得る。如何に足元が水面でも高速機動中のキャバリアが叩きつけられれば機体はバラバラに分解しコックピットは即席のミキサーとしてミンチを作り上げるために全力を尽くすことだろう。
「だからってビビってられっか! 開天組の特攻隊長なめんなよ!! 撃ってきたそこのてめぇら、覚えたかんな! 敵だろ!!」
 飛来する砲弾を度胸試しでもするかのように高難度機動で躱してみせた忍はしかし、気づく。
 特攻隊長として誰よりも前に出た彼女より前にキャバリアと比べて遥かに鈍足の味方の輸送艦が居るはずもなく。
 足場が、無いのである。
「し、しまったぁぁぁぁ!?」

 一方忍が元気いっぱいに砲撃を回避し彼我の距離を縮めている頃、トリテレイアはロシナンテ背部のサブアームで掴んだ杭状の武装を空中から不知火に撃ち込んでいた。
 だが――
「装甲が硬い……! これほどまでとは!」
 腐っても戦艦の代替たる重砲戦キャバリア、生半な装甲など容易く貫徹する杭をその分厚い甲殻は弾き返す。
「接近して装甲の隙間から直接撃ち込むか、それとも一旦船に戻って狙撃を――しかし重力下、しかも外洋の波による揺れを補正すると時間がかかりすぎてしまいます……」
 下準備たる杭の敷設がうまく行かなければ、肉薄攻撃という本命への足掛かりを築けない。僅かに焦るトリテレイアの前に現れたのは、友軍――停戦派の不知火であった。
「――その杭を刺せばよいのだな?」
 トリテレイアの戦いを見ていたのだろう、その狙う所を予想したパイロットは、ならばとロシナンテの副腕に備えられた射出機から杭を一本引き抜いた。
「我等の機体も同じ不知火。これの装甲の弱い所は誰よりも知っている。そしてこの戦場でその杭を突き立てることの難しさも」
 握りしめた杭を手の中でくるりと逆手に握り、パイロットはトリテレイアに背を向ける。
「何をなさるおつもりですか!」
「――友と大恩ある主君の目を曇らす悪鬼羅刹を討つ助力とならば本望! 南無三!!」
 トリテレイアの制止を無視して杭を自機に突き立てる停戦派の不知火。
 杭に備えられた放電機構が電流を流せばパイロットの苦悶が聞こえる。遠隔操作で慌ててそれを切るが、しかし停戦派のパイロットたちは次々にロシナンテから杭を借り受け自らを貫いて突き進む。
「征け、異国のもののふよ! 我等が機体を使うが良い!」
 ――一度は消えかけた道は、今此処に覚悟によって舗装され完成した。
「必ずや皆様の想いに報います!!」
 杭を刺した機体からバリアフィールドが展開する。板状のそれは広く広く、海面と水平に。
「――今です、貴司様!!」

 その声に呼応し、一度は海面に墜落しかけた開天が左腕のロケットブースターに点火し強引な姿勢制御で機体を立て直してバリアの上に滑り込む。
「ちくしょう情けねえ! ありがとよ騎士さん!」
「礼は彼らに! その挺身に報いるためにもいざ参りましょう!」
 砲火が降り注ぐ。そのいずれをも、足場を得た二機は見事に回避してのける。
 バリアの表面で幾つもの爆発が花開き、その度にそれを支える不知火が微かに沈んで衝撃を耐えている。
 これ以上彼らに負担を掛けるわけにはいかない。二人の想いはその一点で重なった。
「こんだけ格好つけられちゃあ応えなきゃ嘘だよな! ――間合いに入った!」
 バリアを蹴飛ばし一息に距離を詰めた開天が、ミサイルガトリングと胸部の機関砲をぴたりと強硬派の機体に突きつけ引き金を引く。
 連鎖する鋼鉄と爆発の嵐を至近距離で受ければ、装甲は耐えようとも関節やセンサーの露出する僅かな隙間から食い破られて機体は大破するものだ。
 全身をボコボコに凹ませ煙を吐く不知火――だが、まだ動く!
『近づけば勝てるなどと思うなよ……皇帝陛下の御為にィ!!』
 ギムレウスタイプは砲戦機である。だがそれは白兵能力が皆無であることを意味しない。
 頭部ががぱりと開き、作業用のグラップルフォーク――鰐頭と渾名されるそれが開天の右腕に食らいつく。
「んなっ……! くそっ、往生際が悪いぜ!」
 それを左腕のパンチで強引に引き剥がして空を見上げれば、
「すげぇ……」
 殲禍炎剣に捉えられぬギリギリの低空でバリアを足場に踊る白騎士。
 砲弾は彼に当たることはなく、爆発がその剣舞を彩るばかり。
「全方位から砲弾が飛来する空間機動戦に比べれて、この程度を捌ききれないようでは騎士と名乗れませんからね――それを艦砲で捉えきれると思わぬことです!」
 敵機の至近に着地すれば、盾で殴りつけ強引に広げた装甲の隙間にするりと剣を差し込んで無力化するロシナンテ。
 二機の先鋒は敵艦隊の前衛を見事にこじ開けつつあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エイス・シノノメ
旗艦以外の影響力は然程大きい訳ではないようですね?
一度降ろしてしまえば友好的な話し合いで概ね正気を取り戻していただけるとは
聞くに次に繰るギムレウス級は彼らの氏族の者も多く、正気になった彼らの呼掛けで一度現状を見直すべきと半数が気付けました
それでもとなお猛る残りの手合いをシッカリ説得して正気に戻せば自ずと皆が何が今最良なのかお分かりいただけるはず

聞き分けの悪い者達のみに照準を絞り甲板からミサイルを射出
片手には実体剣を持ちもしもの時の弾除けとします
水陸両用型はコックピットが浮く様に出来ていると聞いた事があります
弾頭に炸薬の無いタイプなら例えホバー機構を撃ち抜いてたとしても気密は保てるはずです!


スレア・ラドリフ
出航までに幾つかパーツお願い!
戦闘までにEP修理装置のメカニックで補修できれば、
気になる部分もどうにか、こうにか!よろしくね!
あと、後続機体のコクピットの位置とか、
避けるために連邦の人達にきいてみたいんだけど、いい?

さあ、キャバリア頑張りましょ!
……この子の正式名称何だったっけ。可愛いからいっか。
私は他の人達の邪魔しない範囲でライフルで牽制していくわ。
撃ち落とせたらどんなに略。
甘い弾なら盾で受けてもいいけど、
弾は跳ぶなり飛ぶなりで避けたいわね。
仕掛けられる位置に敵が来たら、
砲塔斬り落としに突っ込みましょう。
変形には盾向けて、出来た隙間から口目掛けて
マチェット経由クイックドロウを試してやるわよ。




「装甲の緊急補修剤取って! 五番!」
 揚陸艦の格納庫にスレアの声が木霊する。
 整備の知識を持ち、それ用の部材への理解もあるとはいえ、スレア一人では処理できる作業量にも限りがある。
 それを手伝ったのが艦を失った人民海軍の砲撃手たちや、そして捕虜となった連邦軍海兵隊のパイロットたちであった。
 屈強な水兵たちは少女の手が及ばぬ力仕事に駆け回り、そして簡易的なキャバリア整備の技能を修めた連邦海兵がスレアの指示に頷きながら機体の損傷したパーツを修理交換してゆく。
「やっぱり手があると助かるわ! ありがとう、ついでにと言ったら何だけど……」
 ドルジグラード基地での出撃前には手が及ばず、後回しにしていた部分まで修理された機体を前に満足げに頷くスレアは、ひとまずここまでと補修された装甲を再度取り付け終えた連邦兵達に声を掛ける。
「これから戦う敵部隊のコックピットの位置とか、狙える弱点と狙っちゃダメなところの事を教えてくれない?」

「――聞いててよかったわ、本当に!!」
 輸送艦クヴァンスキーの甲板上でシールドを構えてライフルを発砲するスレアのキャバリアは、正確に敵艦――もとい敵の重キャバリア、不知火の弾薬庫を叩く。
 貫徹こそ出来なかったが、急所を狙われたことに警戒心を強めた不知火はそれ以上の接近を止めて砲撃戦に徹するようだ。
 さしものスレアも、足場たるクヴァンスキーを接近戦で沈められては戦う術がない。砲戦であれば海軍のクルーたちは必死の操艦でこれを回避してくれるが、接近されれば艦艇クラスとはいえキャバリアである敵機の白兵攻撃を躱せるほどの機動性を輸送艦は持ち得ないのだ。
「この距離での撃ち合いなら私の腕でも大丈夫行ける戦えるでも飛んでくる砲弾を撃ち落とせたらどんなに格好良かったか!!」
 軍という組織化された戦闘集団によるキャバリア戦において、高度に自動化されたFCSが照準を担ってくれる射撃戦のほうが経験未熟な新兵であっても戦果を出せることは周知の事実である。機動白兵戦など、よほど実戦経験豊富なベテランの曲芸かそれしか手段がない場合の最後の奥の手として在るに過ぎない。
 で、あるから。学校の教練でキャバリア操縦を学んだスレアもまた、そのセオリーに準じて射撃戦に集中する。幸いにも敵機の兵装は実弾、レーザーのように発射即着弾の回避不能な兵器ではない。
 とはいえ、その超音速の砲弾を射撃で撃ち落とすことは流石に機械の補助を受けても至難である。
 そしてクヴァンスキーが回避できない砲撃を処理するのは、今や艦載キャバリアの立場に甘んじる彼女の役目だ。
「――重装甲なら耐えられる! あれは戦車砲の親戚みたいなもの、この子なら平気よ……たぶん!」
 機体への信頼を自分に言い聞かせ、着弾地点に機体を滑らせ斜めに盾を構えるスレア。直後に激しい衝撃、盾が凹み砲弾は跳ね上げられクヴァンスキーを飛び越えて海面に水柱を立てる。
「なんとかなった? なんとかなってる!!」
「これは見事な盾捌き! アタシも負けては居られませんね!」
 大きく凹んだ盾をカメラアイで確認し安堵の息を吐くスレアの傍らに、揚陸艦から発艦したクロムキャバリアが舞い降りる。
「スレアさんが牽制してくださったおかげで説得する余地が生まれました。ならばアタシはいま何が最良なのか気づいて頂くのみ!」
 旗艦たるオブリビオンマシンのパイロット、連邦兵たちが御館様と呼ぶ人物を除けば、オブリビオンマシンの精神汚染は然程に深刻なものではないようであるというのがクロムキャバリアのパイロット――エイスの見立てであった。
 この戦闘も全て精神汚染が元凶というより、汚染された上官への信頼というか、忠義心のようなものが根底にあるように感じられる。
 だからこそウォッグ級のパイロットたちは説得で正気を取り戻し、目の前のギムレウス級のパイロットたちは約半数が機体を破壊せずとも縁者の呼びかけで己が行いを疑問視して侵攻を停止するという選択を選べた。
 それでもと猛る兵たちは、きっとどれほど言葉を重ねてもそれだけでは説き伏せられないだろう。たとえその相手がオブリビオンの狂気に突き動かされていようとも、主君とともに戦場で果てる事を選ぶような生粋の武人たちだろうから。
「武士道と言うのでしたか……機獅道を尊ぶものとして、その忠義には感服します! ですが!」
 背部のランチャーがハッチを開き、一斉にミサイルを発射した。それらは海面を滑るように低空を飛翔して敵艦隊に迫る。
『巡航誘導弾か! 確かに不知火の砲は俯角を取れぬが、その程度!』
 海面で連鎖爆発が起こる。事前に散布された機雷が起爆され、噴出した分厚い海水のカーテンがミサイルを真下から突き上げ照準を狂わせる。
 だが、それでもなお目標を見失わなかった者たちが空中で一斉に爆ぜた。
「一撃で仕留められはしませんでしたが、これで戦闘機動は出来ますまい!」
 撒き散らされたのはタングステン製の無数の子弾。艦艇クラスの装甲を貫いたそれは、大型化した不知火の足回りを引き裂き航行能力を奪い取る。
『ぐ、おおおッ! まだまだ、沈むその時まではッ……』
 だが、機動性を奪われても水上型として改装された機体は沈没しない。万が一の不調に備え、性能こそ下がるが水上に浮かんでスクリューやウォータージェットで推進出来るようになっているのだ。
『そしてその時には貴様たちを冥府への伴に連れてゆくッ!!』
 波を蹴飛ばし肉薄する不知火。エイスとスレアの銃撃が装甲を叩き、貫くが決死の覚悟を決めたパイロットはそれで止まることはない。
「ちょっとちょっと!? 当たってるのに退かないなんて!!」
『俺を殺す覚悟もない腑抜けた弾など恐るるに足らず!』
 そして銃撃の精度からスレアの方を防衛の穴だと見抜いたパイロットは、スレア機の側に機体を寄せてその顎門を開く。
『死なば諸共ッ! 御館様、一足お先に!』
「何が死なば諸共よ! 死なせるもんかっ!!」
 ライフルを投げ捨て早撃ちのごとく最適化された――人民軍機標準の動作パターンより二割弱ほど速い――動作でマチェットを引き抜いたスレア機が、敵機の大顎にその刃を捩じ込んだ。
 コックピットをギリギリ掠めて敵機の内側に食い込んだ刃が、今度こそその機体の決死の特攻を押し留める。
「決して死なせぬというその覚悟、見事な機獅道です! ならばアタシも!」
 スレアの決死の覚悟に呼応して、エイスの機体が敵機の背中に飛び移る。各国普及型のギムレウス級と比較しても、ましてキャバリアと言うには些か大型の不知火の背に実体剣を突き刺して、スレアのガイドに沿ってコックピットを抉り出す。
「水陸両用型のコックピットは水に浮くと聞いたことがあります。後で拾いに来ますので暫く頭を冷やしてもらいましょう」
 コックピットを海面に離してエイスは次なる敵機、離反した停戦派の機体を追い詰める強硬派の不知火を見遣る。
 猟兵が参戦してもなお、同胞相討つ戦いはまだ続いている――

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ヴィリー・フランツ
連携絡み歓迎・M)
目的:強硬派ギムレウス型キャバリアの無力化
心情:良いぞ、離反機のお陰で戦況はイーブン、後は俺達次第だ!!

手段:《管制官、離反機のIFFを友軍機に書き換えてくれ、此方を守る様に布陣した機体のみ絞れば可能なはずだ!》
猟兵は直感で判るがレーダー上じゃ全て一緒だからな、念のためだ。
Mランチャーは同型と交換、機体は手近な輸送艦の甲板へ移動、【熟練操縦士】を発動し肩のクロコダイル電磁速射砲を構えて、ギムレウスのジェットホバーを攻撃だ。片足さえ壊せば揺れる海上での安定性は低下、そんな状態じゃ満足に砲撃出来んだろ、無力化したも同然だな。
万が一砲弾が飛んで来たらシールドと増加装甲でガードだ


イザベラ・ラブレス
【アドリブ&連携歓迎】
心情:超長距離砲撃機ですって!?良いモン持ってんじゃない私にも寄越…ゴホン。
砲撃での殴り合いならこっちにも覚えがあるわ。
傭兵の喧嘩とくとご覧あれ!

POW:戦闘
コールサイン:クロコダイル
マイティー・バリーのガトリングキャノンで応戦よ。
相手もタフみたいだし派手な殴り合いになるわ。
ついでにオープン回線でこっちにヘイトが向くように挑発よ。これで味方への気をそらせれば御の字。こっちも重装甲機体、時間稼ぎくらいはできるわ。

弾幕が濃くなってきたら敢えてコックピット外に出て「XM2082対物対空ライフル」を銃夫で命中力を上げて砲弾を空中迎撃するわ。
どんな連中を相手取ったか思い知りなさい!




「離反機のおかげで戦況はイーブン、いい流れだぜこいつァ」
 だからこそ、とモニターを縦横無尽に暴れ回るロックオンカーソルにヴィリーは舌打ちする。
 大火力による多対一の制圧戦を得意とするヴィリーのヘヴィタイフーンとその僚機として即席タッグを組んだイザベラのマイティ・バリーは"敵機"全てをロックオンしようと試み、その度にパイロットがそれを押さえつける。
 停戦派の機体にまでレーダー照射を行い、あまつさえ照準用レーザーなど浴びせようものなら幸運にも引き寄せられた"イーブンな流れ"ですら容易く崩れゆくだろう。
「遠慮容赦なくバカスカ撃てるあっちが羨ましいわね!」
「全くだぜ。管制、IFFの書き換えまだか!」
 揺れる艦上からロックオン無しで戦闘機動を行うキャバリアを撃ち抜く芸当は出来ないとは言わないが、流れ弾で思わぬ損害を出すことを考慮するとあまりやりたい手段ではない。それゆえ二人は飛来する砲弾を弾幕で迎え撃つことに徹するしかない。この状況を此方の優勢に傾ける為に取りうる手段は多くはなく、その中で最も手早いのは友好的な敵機を友軍機と認めることだ。
「やっているが目が足りない! 目視で識別しているんだ!」
「こっちを守ってる連中だけ友軍にすりゃあいい! こっちから味方機の座標を送る、さっさとやってくれ!」
 猟兵の勘で敵味方のアタリを付けて旗艦に共有すれば、待ちに待った瞬間はようやく訪れた。レーダーマップに映る連邦艦隊の光点が赤から青に変わってゆく。味方として認められた停戦派を誤射する恐れがようやく消えたことで、二機のキャバリアはその真価を発揮する。
「やっと気兼ねなくぶっ放せるってもんね! 砲撃での殴り合いならこっちにも――」
 大型のガトリングキャノンを構えたマイティ・バリーが、強硬派の機体をロックオンするなりその砲身を空転させはじめる。
「覚えがあるってか? 良いぞ、後は俺達次第だ!」
 セリフを取るなと唇を尖らせるイザベラに苦笑して、ヘヴィタイフーンが電磁速射砲を射撃姿勢に移行した。
 目には目を、弾幕には弾幕を。放たれた砲弾の嵐が防戦で溜まった鬱憤を晴らすかの如く吹き荒れる。
『連中、裏切り者どもを撃っておらぬ! ええい……結託しおったか!!』
 重装甲で耐える不知火だが、それとて圧倒的な弾幕の前にはいつまでも続くものではない。
 一隻の輸送艦とその上に陣取る二機のキャバリアが、その数倍もの数の連邦軍艦隊を相手に互角以上に渡り合う。
「これがキャバリアの戦い……」
 辺境基地で燻っていた輸送艦クルーの呟きにイザベラが笑う。
「キャバリアの戦いねぇ、確かにそうさ。だけど私のはそうじゃない。これは傭兵の喧嘩さ!」
 砲弾の直撃を受けてもなお果敢に反撃してくる敵機は、すっかり停戦派より二人の機体に気を惹かれている。
 その側面から停戦派が砲弾を撃ち込めば、二機の攻撃を辛うじて弾き返していた分厚い装甲板が弾け飛ぶ。
「人民軍機! 同胞を止めるためにも手を借りたい!」
「一発であの重装甲を吹っ飛ばすなんて良いモン持ってんじゃない私にも寄越……んんッ! 了解よ、合わせなさい!」
「盛り上がってんなラブレス。連邦の造反部隊、こっちのIFFをリンクする! 間違ってもこっちに砲弾飛ばすなよ!」
 ヘヴィタイフーンから送られた敵味方識別情報を元に、全てマニュアル照準で戦っていた停戦派の艦隊も強硬派の機体をロックオンすれば、全機の砲が一斉に吼えた。
『ええい! ええい、大義を解さぬ者共が!! 天下泰平、八紘一宇の世を阻むか!』
「オブリビオンマシンに呑まれた奴が傭兵に大義を説こうってのか? そいつぁ」
「いい面の皮って奴じゃないかしら?」
 砲弾の釣瓶撃ちに晒され航行能力を失い武装が次々に脱落してゆく不知火が、最後の執念でその巨砲を擡げ金属の軋む音で呻く。
『ならば我が身命を賭して御館様の道をお作りする! 皇帝陛下、万歳……!』
「――人民軍艦隊、退避しろ!! あの機体は広域榴散弾を使用するつもりだ!」
 真上に向けられた砲身が海戦の終焉を放つ。直後に停戦派の砲弾が砲の機関部を貫き無力化するが、時既に遅し。雲の高さで花開くように崩壊した弾頭から無数の子弾が海域に降り注ぐ。
「全機対空迎撃ィ!! 全弾撃ち尽くしても構わぬ!! 人民軍艦隊と同胞を守れぇィ!」
「ちッ……なんだか分からんがこりゃ不味いヤツだな……!」
 停戦派艦隊とヘヴィタイフーン、マイティ・バリーの弾幕が自由落下する子弾を掠めれば、そのサイズからは想像もつかないほどの大爆発が空を覆い隠した。
 あんなものが戦域に降り注げば敵も味方も無事では済むまい。強硬派に無防備を晒してまで迎撃に徹する味方機の手で次々に撃ち落とされるが、しかしそれでも数が多すぎる。
「くっ、弾切れ……! 弾倉交換の時間はないわね……なら!」
 ガトリングキャノンが全弾を吐き尽くし、からからと空転する。最も殲滅力に長けた機体の武装が使用不能となれば、もはや万事休す――
「いいえ、思い知らせてやるわ。あなた達がどんな連中を相手取ったのか!!」
 コックピットハッチを蹴破らんばかりに押し開けて、シートのそばに忍ばせてあった長大なライフルを組み上げる。
 その銃身を掲げて、イザベラは演武を見せるが如く機体の上を跳ね回りながら空へと銃弾を送り出す。
「羅振須式銃夫、最後の取っておきを目に焼き付けなさい!」
 ――放たれた弾丸がキャバリア隊の撃ち漏らした子弾を貫き、輸送艦の頭上スレスレで爆破してのけた。
 衝撃波がイザベラの髪を靡かせ、波を荒立て輸送艦を揺らす。
「被害報告!」
「全艦損傷なし、航行に支障なし!!」
「連邦友軍艦隊にも脱落なし! 全弾迎撃成功です!!」
 だがそれ以上の歓声が、二人の乗る輸送艦を大きく震わせた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ユエイン・リュンコイス
L:アドリブ連携歓迎
さて、ある意味ここからが本番かな。ただ半分は非攻撃対象の上、説得人員の護衛も必須。対してボクの機体はガタが来ている、と。
なら、此処は援護に回るべきかな。

UCを発動しつつ、輸送艦の甲板上で引き続き月墜による支援砲撃に努める。海上は揺れるしね、コンテナが何かで砲身を支えつつ突入する仲間を援護。
並行して機体の通信機能を中継地として、捕虜による説得を前線まで送り届けよう。ついでに情報収集だ。

もしそれを妨害せんとボクないし味方に砲火が及びそうになったら、UC第二段階を起動し攻撃そのものを消し去ろう。幸い、今の視界は即ち機体のセンサー範囲だ。マルチロックからの一斉消去とて苦ではないさ。


朱皇・ラヴィニア
踏んでいいって……穏やかじゃないね
まあ、丁度クレジットで発注していた装備も届いたし
慣らしがてらやらせて貰おうか!

ゼルの瞬発力を肉体改造し
666の感度を上げ、バランス感を強く維持
起動したハイロゥの光輪を広げ宙を飛ぶ
殲禍炎剣にやられない程度の高度と速度
目標は敵の砲撃を喰らう事だ――147でね

ナノマシンで捕りこんだら反撃開始
味方撃ちには気をつけて……同士討ちしてたらどうするか
間に入って147を盾代わりに拡げ呼び掛けよう

敵味方の識別が出来たら323で牽制しつつ
グリード・イーターで捕食した147の刀身を重砲に変えて
ギムレウスの砲を吹き飛ばす角度で砲撃開始
射程は5倍、攻撃回数は減るけど確実に落として行こう




 輸送艦を揺らす大波に機体が傾くのを感じながら、ユエインは皇洲連邦主力艦隊との決戦が佳境に入ったことを予感していた。
「此処で押し切ればボクらの勝ち。半分が味方になってくれたとはいえ、説得人員の護衛も必須。対してボクの機体はガタが来ている、と」
 ならば無理に全面に出るよりオルロフ軍曹らと協調して旗艦の防衛に回るべきだとユエインは己の役目を定めた。
 とはいえ頭上で展開された大規模な砲爆撃を見れば、強硬派がもはやなりふり構わず停戦派諸共に連邦艦隊を殲滅しようとすることは想像に難くない。であれば――
「運び込んで貰った新装備、慣らしがてらやらせて貰おうか!」
 頭上に天使か神の如く光輪を掲げて海面を飛翔する鎧の巨人。ラヴィニアの機体がこれ以上の暴挙を阻止するべく肉薄強襲を掛けるなら、それを援護するのもまたユエインの仕事だ。
「突撃を支援するよ。軍曹、君たちの手も借りたいな。こうも波が荒れてちゃちょっと照準も骨だからね」
「了解した。ちょうど此方も何門か塩水を被ってダメに成ったところだ。甲板を開ける、こっちに移れるか」
 軍曹からの応答に頷き旗艦に飛び移れば、水浸しになった砲を撤去したスペースに機体を降着させ膝をついた射撃姿勢を取った。
 積み重ねられたコンテナの上に砲を横たえれば、双眼鏡を手にした軍曹が事細かに機体の損傷状況と砲の規格を尋ねるのに答えて認識の齟齬を潰してゆく。
「さて、こうしている間にも敵の情報を集めるとしよう」
 機体の持つ通信機能を利用して強硬派の通信に介入するのは、万に一つも先のような広域殲滅弾頭を撃たせぬため。如何にオブリビオンマシンと忠義に狂う兵と言えど、停戦派ではない味方を撃たぬよう発射の際は何かしらの通信を行うに違いない。
 その視線の先で、対空迎撃で弾薬を撃ち尽くした停戦派の機体を追跡する強硬派の不知火を目掛けラヴィニアの機体が突進してゆく。

「神経接続の強度を引き上げて、バランスを取ることに集中しないと……!」
 波を荒立てるほどの強風は先の大爆発が引き起こしたものだろう。揚力によらない反重力飛行といえど、大洋に比べればちっぽけな人型機を揺らすには充分以上のそれに呑まれないようラヴィニアは機体制御に全神経を傾ける。もし囚われれば待っているのは海中への転落で、港内のような浅瀬とは違い外洋では下手をすれば姿勢を立て直せないまま深海まで沈んでしまう可能性すらある。
 だからといって安直に高度を上げれば待っているのは殲禍炎剣による頭上からの砲撃だ。上方に逃れてこの乱気流を脱することが出来るという保証がない以上、リスクを増やすことは避けるべき。
 そうして繊細な機動で二機の連邦軍機の間に割り込めば、追撃していた側がその巨砲をラヴィニアのシュラウゼルに向ける。
「なるほど、君たちがボクらの敵だね。まったく味方撃ちなんて見苦しいよ」
『味方であるものか! 血族の誇りを忘れ御館様への恩義を打ち捨てた叛徒どもなどに!』
 こりゃダメだとラヴィニアは肩を竦める。完全に頭に血が昇っているとしか思えない。そのために家族や同胞、戦友を討つことにためらいを持てなくなっているのならば、さっさと機体を粉砕して頭を冷やしてもらうしかあるまい。
 牽制に使っていたサブマシンガンを弾倉一個分撃ち込んでなお健在の重装甲機相手にさてどうしたものか――と思案する彼女の視界の端で、停戦派の機体が強硬派の砲撃の直撃を受けて中破し着水するのが見えた。
「なるほど、あれは通用するんだ」
 戦艦や戦車は自身の砲に耐えうる装甲を持つのが最低条件と聞いた覚えもあるが、キャバリアであるという制約がそこまでの超重装甲を許さなかったらしい。
 ならば。距離を維持し、サブマシンガンの弾幕は水中の機雷の除去に向ける。必然敵艦の兵装はあの同型機すら撃破しうる大型砲に絞られ――
『ちょこまかと小煩い幽霊めが! 此処で消し去ってくれよう!』
「――来た! ゼル、耐えるよ!」
 がこん、と音を立ててシュラウゼルを照準に収めた敵艦主砲が砲弾を放つ。
 それをラヴィニアは回避せず、真正面から肉厚の剣の腹で受け止めた。
『耐えただと……だが貴様の射撃武装は通用せん! 近寄ろうとするならば次こそ粉砕するまで!!』
 次弾を装填する不知火へ、砲撃戦の距離で剣を突きつけるシュラウゼル。気でも狂ったかと嗤うパイロットにラヴィニアは優しく微笑んだ。
「君の砲はこういう構造かな。まあ良いや、威力さえ同じならそれで」
 剣がうねり、捻じれて変形してゆく。皇洲連邦が誇る改ギムレウス級不知火型の主砲と違わぬ長大な砲がその威力を発揮したのは、敵艦の次弾装填が完了すると同時。
 そしてその砲弾は、不知火の砲塔を違わず貫き破壊する。
『――――まだまだァ!!』
 砲だけでなく弾薬庫にまで誘爆し、機体の後ろ半分を喪失した敵艦が爆煙を引き連れラヴィニアに向け特攻を試みた時、さしものラヴィニアも息を飲んだ。
 こちらの次弾装填が完了するまで剣の変形は保てない。正面装甲はほぼ無傷の敵にサブマシンガンでは効果が薄い。そして不安定な空で無理やり大型砲を射撃したツケとして崩れた姿勢はそう簡単に立て直せない。

「…………目標、敵艦。照準はこちらで指示する」
「いいとも、ボクも機体も好きに使ってくれ」
 シュラウゼルに迫る損傷した敵艦を視界に捉え、ユエインはオルロフ軍曹の囁くままに機体を動かし砲口を敵艦に向ける。
「まずは照準を合わせる。三連射だ」
 合図に合わせて月墜の引き金を引けば、三発の砲弾が敵艦を飛び越え向こう側水柱を立てる。
「いい調子だ。少し俯角を取る。次で命中弾を出すぞ、五連射」
「ああ、任せたまえ。ボクが君の腕前が本物だという証人になろう」
 続けて発射された五発の砲弾の内、最初の一発が手前に。最後の一発が向こうに落ち――間の三発が失われた砲塔のあった損傷箇所から敵艦に突入してその機体に致命的な損傷を与えたのが見えた。
「弾着確認、命中弾! 良い腕だ、キャバリア乗り」
「君こそ、ね。さて――」
 炎上する不知火は戦闘能力をほぼ喪失したように見える。だが――
「君たちも死なせるわけにはいかないんだ。いくら同士討ちすら辞さない分からず屋でも死ねば家族が悲しむ」
 機体各部が炎上し誘爆が始まった機体の脱出装置が働いた様子はない。このままであればパイロット諸共海の藻屑と成るだろうが、如何に敵機といえどそれは忍びない。彼らは生きて祖国に返し、然るべき裁きを受けるべきであって此処で死ぬことを良しとしない。
 だから――ボクの見えるところで良かった。
 ユエインが呟き、機体を通してその魔眼の異能を発揮する。
 放たれた砲弾の反動がついに限界を迎えた機体の片腕を付け根から吹き飛ばすが、それでも彼女の願いの詰まった砲弾は不知火に吸い込まれるように着弾し――それ以上の誘爆という事象を消し去り、まるで掻き消えるかの如く炎が消失する。
「ふぅ……これで死にはしないだろう。彼女がコックピットを取り出してくれるとなお良いんだけれど」
 その呟きが聞こえていたわけではないだろうが、ラヴィニアが大破した機体に大剣を突き立てコックピットブロックを強制排除するのを見て、ユエインはひとまずの任務達成に安堵するのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ノア・クレムリィ
 オルロフ軍曹と大尉には感服です。輸送艦の前線運用、有効な作戦でしょう。しかし、今度の相手は大艦隊。であれば、私も手数を増やしましょう。

 【UC:海龍軍団】(WIZ)を発動、かつての同胞を一時的にこの戦場に呼び戻し、〈瞬間思考力〉〈戦闘知識〉〈航海術〉の合わせ技で無線指揮します。彼らの武装は対艦魚雷と個人携行の無誘導ロケット弾、見劣りはしますが十二分です。

 彼らは機雷を爆破処理、強硬派に対しロケットを連べ撃ちです。彼らの動きが止まったら私が〈ランスチャージ〉、槍と〈零距離射撃〉で無力化していきましょう。

 我ら海龍、大鯨を喰らう者也。海賊ってものを連中に教えてやれ。

(アドリブ連携等全て歓迎です)


穂照・朱海
猟兵の武器はキャバリアだけじゃない
殊に我が愛機は騎士ならざる鬼士
不知火の名を冠するなら知っていよう……海は妖の住処である事を

別働隊として水上を赤ゑいに進ませる
体表に輪入道と寛永通宝を貼り付けて
敵の目がこちらに向いている間に別働隊は別方向から敵に近づき攻撃開始

輪入道「我こそは輪入道!
駆るは赤ゑいの魚、そして率いるは古銭の古つわもの達!
かかれぇぇぇぇぇィッ!!!」

輪入道が強硬派を見極め、寛永通宝を飛ばす
その一撃を起点としUCを発動
そして現われよ――海の百鬼夜行
戦乱渦巻くこの世界には相応しい混沌だ

戦意を失って逃げれば良し
まだ戦おうとする強硬派は機斬鬼士で接近し砲塔等を斬り落とすことで戦意を殺ぐ


才堂・紅葉
「敵勢力が分断されましたか。狙い目ですね」
光学及び電磁【迷彩メカニック】で隠密【偵察】
経験に基づく【戦闘知識】で敵情勢の変化を見極め、攻勢に移ります

方針は、強硬派と停戦派の衝突に紛れて【忍び足】で接敵
近づいたら【斥力制御による投げ飛ばし】で上空に放り投げ、その機体を盾にしつつ自身も上昇
強硬派の密集地に目掛け、【超重力柔術技による追撃】で蹴り飛ばします【属性攻撃、グラップル、怪力、重量攻撃、ふきとばし】
重装甲の機体は重装甲の機体をぶつけるのが手っ取り早いですね

後は上空や真横へ「斥力投げ⇒重力吹き飛ばし打撃」のコンボでスコアを稼ごう

「頭を冷やしなさい。目の前の仲間の声位には耳を傾けるべきよ」




『よもや此程とは……裏切り者どもが手を貸している事を差し引いても、人民平等会議極東軍は烏合と見たは誤りであったか……』
 猟兵と砲兵を載せた輸送艦、そして離反した停戦派艦隊の協働で過半を撃沈ないし航行、戦闘不能に追い込まれた連邦海軍強硬派艦隊は密集隊形を取り、飛来する砲弾に各機の装甲の最も厚い面を向けることでこれを弾いて耐える。
 戦力の大半を喪失したとはいえ、それを為した人民軍と停戦派の連合艦隊はその戦果に相応の消耗を強いられている。砲弾の残数は十分とはいえず、その上で強硬派には首魁たる老将の駆る旗艦キャバリアが無傷でまだ残っているのだ。
 強硬派の勝利条件は此処に来て連合艦隊の突破、ドルジグラードへの強襲上陸からこの場で持久し連合艦隊にさらなる消耗を強い、たとえ自身らが壊滅しようとも戦闘継続能力を奪い旗艦がこれを鎧袖一触に殲滅しうる状況を整えることへと移り変わったのである。
『我等が侮り敗れるのは致し方なし。なれば身命を以て御館様の大義を支えるのみよ』
 守りを固め持久戦に引きずり込まんとする連邦艦隊の残存戦力。その誘いに乗れば不知火が誇る堅固な装甲を破るまでに如何程の砲弾を要するであろうか。
 だが、だからといって無視すれば彼らは無防備に向けたこちらの背中に喰らいつくだろう。
 オブリビオンマシン本体をまだ見ぬまま、ドルジグラードを防衛する連合艦隊は泥沼に引きずり込まれつつあった。

「オルロフ軍曹とあの大尉の戦術眼には感服です。輸送艦の前線運用、砲兵の海上展開。有効な作戦でしょう。しかし――」
 砲兵の一斉射で放たれた砲弾は荒波の上を飛び越え、見事に敵艦に命中する。だが防御姿勢を固めた相手に対キャバリアを掲げているとはいえ小口径の野砲では貫通には至らず、傾斜した装甲の表面で弾けて海面に水柱を立てるのみ。
 だが近づこうとすれば敷設された機雷がこれを阻み、既に猟兵達の道を切り開こうとした二隻の輸送艦が直下での爆発を受け航行不能となり放棄されるに至っている。
「敵もよく対応しています。この戦局を打開するのであれば、手数を増やす他にないでしょう」
 ノアの分析はまさに正鵠を射ている。連邦の海兵部隊が初手で人民海軍の戦闘艦艇を壊滅させていなければ、此処までの苦戦はなかったはずだ。何を置いても戦力が足りていない。砲の数も、種類も、砲弾の総量も。それ故に決定打を打つことが出来ないのだ。
 そして決着出来ねば勝つのは最大最強の戦力を温存する敵部隊であろう。艦隊が壊滅すれば陸戦機で強行出撃した猟兵たちは戦闘の足場を失う。彼らの援護なくして水陸両用機を駆る猟兵だけでオブリビオンマシンを討てるかと言われれば、此方も相応の被害を覚悟してどうにか、というのが彼女の見立てであった。
「損害を覚悟して突入し血路を切り拓ける部隊が必要、ということですね」
 そう結論するノアだが、そんな物は存在しないこともまた事実。人民海軍は予想以上に健闘しているが、命を捨てて特攻するほど狂的な愛国心、国防への情熱があるかと言えば否だ。二隻の輸送艦を機雷によって喪失して以降は錨を下ろしたかのように敵艦隊との距離を維持して艀の役割に徹している。
「それならば僕に策がある」
「おや、奇遇ですね。私もです」
 朱海とノアの声が重なれば、西はドルジグラードの方向から波間を切り裂き迫る影が多数。
「――さあ行け、出番だぞ野郎ども」
「如何にもこれよりは魑魅魍魎、悪鬼羅刹の百鬼夜行、黄泉路渡を開幕いたします」
 連合艦隊を追い越し駆け抜けるは、土気色の肌をした虚ろな武装民兵を満載した高速魚雷艇。
 ノアが使役する海賊の亡霊たちは進路上の機雷を据え付けられた重機関銃で破壊しながら突撃する。撃ち漏らした機雷によって仲間が吹き飛ぼうがお構いなしに肉薄雷撃を敢行する彼らは一見無秩序な特攻を繰り返すばかりのように見えるが、ノアの機体からの無線通信で指揮された連携は見事に敵艦隊の防御陣形を突き崩す。
「そうだ。我等海龍、大鯨を喰らう者也。海賊ってものを連中に教えてやれ!!」
 海竜の群れが巨体のキャバリアに絡みつくように海面を駆け巡り、海賊の亡霊が担いだ無誘導ロケット発射筒からの一撃が敵を海面に叩き落とせば続く魚雷がその足回りを吹き飛ばす。
 だがそこまでだ。強硬派とていいようにやられるばかりではない。標準型ギムレウスから遥かに強化された脚部ホバー機構が生み出す猛烈な暴風を浴びせかければ、小さな魚雷艇はたちまち転覆して壊滅する。
 ――が、陣形を崩しその注意を眼下の魚雷艇に奪われた艦隊は、それの出現をついぞ至近に寄られるまで認められなかった。
 なにせレーダーに映らぬのだ。故に、それを視界の外、艦砲の距離で沈めること能わず。至近に現れたるは異形の軍勢。朱海の遣わした海の妖異どもであった。
「不知火の名を冠するならば知っていよう……海は妖の住処である事を」
「――我こそは輪入道! 駆るは赤ゑいの魚、そして率いるは古銭の古つわもの達! いざ、いざかかれぇぇぇぇぇぇいッ!!」
 朱海がぽつりと告げ、車輪に人面を貼り付けたが如き妖が号令を掛ければ、巨大なエイが不知火の機体にのしかかり海中へ引き摺り込み、無数の寛永通宝の付喪神が散弾の如く機体にぶつかりセンサーや推進器を損壊させてゆく。
 鋼鉄と科学によって解明された世を生きる皇洲連邦の者にとって、妖怪変化など古い時代の作り話であるはずだった。それが目の前に現れたと思えば視界が奪われ、海戦兵器である不知火がみるみる海中に引きずり込まれてゆく。
『あっ、ああっ、うぁぁあああああ!!』
 そうなれば、如何に決死を覚悟した兵であろうとも正気を保つのは至難であった。
 生きたまま訳の分からないものによって、彼らの巣食う暗い暗い深海に引きずり込まれる事に、常人の正気は耐えきれない。
 抵抗する艦隊の半数がここで戦意を失い、パイロットたちはコックピットの中で頭を抱えてうずくまる。動けなくなったものはあらゆる海の妖怪変化どもが武装を剥ぎ取り戦闘継続を困難としてから海上に放つが、しかし近距離でその鰐顎での白兵や砲の接射を駆使して海賊の霊も妖怪変化も寄せ付けぬ、胆力優れる古参兵もいる。
 しかし彼らは戦意喪失した友軍にまで気を向ける余裕もなく、各々が海に引き込まれぬよう戦うことに気を取られていた。だからその機体が至近距離でその姿を現した時、連携によって迎え撃つことができない。
「中々優秀な兵のようですが、彼らのおかげで陣が乱れました。狙い目ですね」
 迦楼羅王が光学迷彩による不可視と電磁迷彩による不可知を脱ぎ捨て、現世のものとして艦隊の只中に出現する。
『おのれ、これも連中のキャバリアかっ!?』
 妖異や亡霊との戦いの最中に現れた所属不明機をすぐさま敵と判断して迎え撃とうとする機体がある。だが、その見事な即応は意味を成さない。砲戦機である不知火がその機体にこの距離まで近づかれた時点で勝ちの目はないのだ。
「迦楼羅王の武装でこの機体を潰すのは手間が掛かりそうですが……そうだ、手っ取り早く片付けてしまいましょう! 未だ引斥自在ではありませんが、あなたを沈めるには十二分のはずです!」
 突きつけられた砲身をがっしと掴んで、細身の迦楼羅王が巨大な不知火を持ち上げた。そうしてさも書き損じ丸めた紙くずでも放り投げるように機体を投げ飛ばせば、落下点で妖怪と格闘していた機体の頭上に墜ちてゆく。重装甲の機体同士が激突すれば、凄まじい破壊音とともに二機は一塊の鉄くずと無数の破片となって海中に没していった。
「あら……ちょっとやりすぎでしたかね」
 もしや浮かび上がってこないのでは、死んでしまうのは後味がわるいと苦笑する紅葉。だが、船幽霊の如く海面から伸びた青白い手が分離したコックピットブロックを海上に引き上げれば、横付けした魚雷艇の海賊亡霊どもが荒っぽい手付きでパイロットを引きずり出して輸送艦のほうへ撤収してゆく。
 大勢は決した。もはや強硬派連邦艦隊に戦況を好転させる術はなく、残存する戦力も突撃を仕掛けたノアと朱海の手で討ち取られてゆく。
 あるものは鰐顎の顔面を槍でこじ開け口内に弾丸の雨を叩き込まれ、あるものは砲に手足にあらゆる武装をたちまちの内に輪切りにされて沈黙し、動かなくなった機体に次々取り付く亡霊たちによってそれを操る将兵は拘束されて捕虜となる。
 ――ここにナロードニク・ソユーズ領海を侵犯しドルジグラードを占領せんと出撃した連邦艦隊は壊滅した。
 しかし未だ最も巨大にして最も強力、そしてこの紛争を引き起こした元凶たる存在、艦隊旗艦を称する超大型オブリビオンマシンはその姿を見せていない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『Fortress』

POW   :    要塞からの火力支援
【背部に背負った多連装ミサイル】が命中した対象に対し、高威力高命中の【同じく背部に背負った主砲】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    要塞への接近阻止
【足の間】から【重機関銃の乱射】を放ち、【弾幕】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    要塞による掃討
【両腕のグレネードランチャー】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠フォルティナ・シエロです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「旗艦アドミラル・レオノフに敵弾直撃! これは……沈みます!」
「巡洋艦ワシリースク、船体中央より破断!」
「ニコライⅢ飛行甲板使用不能! キャバリア隊出撃できません!!」
 ドルジグラードを進発した猟兵らがそれを捉えた時、既に戦場の大勢は決しつつあった。
 不凍港ドルジグラードを目指し南下していたナロードニク・ソユーズ人民海軍マシリースク艦隊は洋上て所属不明の超大型キャバリアを発見、これに対し人民平等会議領海からの退去を勧告するもその返答は言葉でも攻撃でもなく、無数の砲弾であった。
 その機体が放った無数のミサイルがキャバリア母艦を一瞬で浮かぶ棺桶に変え、旗艦を庇うように前に出た巡洋艦の脇腹を濡れた薄紙を破るように容易く貫通した砲弾は勢いを多少削がれつつも艦隊の旗印たる戦艦に巨大な風穴をこじ開けその巨体を傾斜させてゆく。
 海面は燃え上がる艦隊だったものの成れ果てによって赤々と照らされ、立ち上る黒煙が空を黒く染め上げる。
 青い世界は戦禍の色に塗りつぶされ、沈みゆく大型艦から乗員たちを満載して海へと放られた脱出艇を守るべく奮戦するいくつかの巡洋艦と駆逐艦の抵抗も有効打を与え得ぬままその脅威に蹂躙されつつある。
 猟兵たちが駆けつけたのはそんな戦場であった。
 味方艦隊は既に死に体。彼らにとっての頼みの救援は輸送艦に軽野砲を据え付けた戦闘艦と呼ぶにはあまりにもお粗末な船だ。
 突如領海内に出現した圧倒的な脅威を駆逐することなど出来はしないとマシリースク艦隊の将兵は誰もが信じて疑わず、ドルジグラード艦隊もまた頼みのマシリースク艦隊が既に壊滅していることに絶望した。

 だがしかしこの戦場にあって戦いを諦めていない者たちがいる。
 猟兵と、そしてオルロフ軍曹だ。
「もはや君たちに賭ける他に我々の希望はない。全キャバリアの出撃後、我々はマシリースク艦隊の救助を開始する。戦闘の助力にはなれないだろう……」
 元より敵にここまで近づくだけでも輸送艦には命がけの行為だ。それ以上を望むなど酷である事を理解して、猟兵たちは艦隊から出撃してゆく。
 その間にも次々に沈められてゆくマシリースク艦隊の戦闘艦。敵は艦隊を相手に単機でこれを圧倒する大火力を有する規格外の大型機である。
 Fortress級超重砲戦キャバリア改。皇洲連邦海軍の旗艦級として改装された機体は、その辛うじてキャバリアであると分かる上半身だけで並みの機体の全高より一回りも巨大であった。その上体が小さく見えるほど膨れ上がった武装プラットフォームである下半身は、まさに水上要塞と呼ぶに相応しい威容。
 連邦軍が大綿津見と呼ぶその機体を繰り、人民海軍が誇る極東艦隊を制圧せしめた老将は新たに現れた機体がただならぬ者たちであると察知し、機体をそちらへ転回させる。
『我等が忠臣たちを打ち破ったか。相当の腕利きとお見受けする』
 駆逐艦クラスの主砲にも比肩する大型機関砲がずらりと猟兵たちを睨み、両腕の榴弾砲や背負った超大型砲をも猟兵へと突きつける。
 艦隊の残存戦力が浴びせ撃つ砲弾のことごとくを弾き返し猟兵との決戦に臨む海の覇王に、猟兵といえど尋常の手段では歯が立つか。
『我が臣の忠義に報いる為、皇帝陛下への最後の奉公の為、儂は貴殿等を倒さねばならぬ……いざ尋常に』

 猟兵たちと巨大キャバリアが戦端を開くその頃、オルロフ軍曹は自身を止めようとする兵士たちを逆に引きずるようにして輸送艦を飛び出し、脱出艇で沈みゆくマシリースク艦隊旗艦アドミラル・レオノフへと海上を疾駆していた。
 ギムレウス級ですらあれほどの粘り強さを見せた連邦海軍の練度と機体への大規模改造。あの規模の機体に致命傷を与えるには流石の猟兵といえど威力が足りぬかもしれない。速やかに仕留めることが出来なければ、救助活動中の味方に被害が及ぶ可能性もある。
 ではこの戦場でそれを、あの怪物を仕留めうる火力を補えるものは何だ?
 ――戦艦だ。敵の初撃で傾斜し、徐々に海中に没しつつも煙突から吐き出される煙は彼女がまだ死んでいない事を示している。戦艦同士の殴り合いを想定したレオノフの艦砲ならば、あの化け物にも一矢報いることができるだろう。
 ではそれを操る者は誰だ?
 ――俺だ。アドミラル・レオノフのクルーたちは負傷し命からがら艦を脱出したばかりでとても戦える状態ではない。だがここには五体満足の砲兵がいる。オルロフ軍曹は生粋の砲兵だ。砲を撃つことしか知らないが、砲の撃ち方ならば誰よりも知っている。陸の野砲だろうが、海の艦砲だろうが、それが砲であるならすべて同じだ。
「猟兵、聞こえるか! いまからあの戦艦の主砲を奴に叩き込む。多少時間は貰うがかならず一発デカイのをお見舞いしてやる!!」
 超重装甲を打ち破るには戦艦の主砲が必要だ。その一撃が敵艦の鉄壁の守りを打ち砕いたならば、そのときこそ猟兵の鋭い一撃がその穴からオブリビオンマシンの急所を一突きにする好機である。
『艦対騎戦闘、用ォ――意! 撃ちィ方……!』
 ――最後の戦いが始まる。
才堂・紅葉
「当てにしてますよ、皆さん!」
砲兵さん達の心意気と方針は分ったのでお手伝い

機甲靴の底の斥力機構を活かし水上を疾走します【水上歩行、メカニック】
戦艦から注意を逸らす軌道で迂回し、真の姿の【封印を解く】事で加速し【存在感】を発揮する
弾幕は厄介ですが、距離に注意すれば【見切り、オーラ防御】で凌ぐ事は可能でしょう
付かず離れずで重圧を与えたい

砲兵さん達の主砲に合せ、【気合、野生の勘】で即突貫
「ハイペリア重殺術……」
紋章の力をオーラとして両掌の間で蓄え、30m距離で解放
「奈落門!!」
右腕の杭打ち機構の撃鉄を引き、「ハイペリアの紋章」を敵機に刻印
そこを基点に奈落の扉を展開し超重力の解放を狙います

「……爆縮」


穂照・朱海
日本一の鳴呼(をこ)の者かな!
(訳:バカ野郎!気に入ったぜ!)

オルロフ軍曹を見て思わず言った
ここは日本じゃないのに

されど、嬉しいものよ
かくのごとき男子(おのこ)が戦友である事が……いざ死出の共をせん!

「遠からん者は音にも聞け!
我こそは猟兵、穂照・朱海!」

こちらは【空中戦】を仕掛ける
UCを発動し、敵の周りを飛び回ることで撹乱し、色彩による【精神攻撃】で【恐怖を与える】ことでオルロフ軍曹が砲を撃ちやすくする
被弾はある程度は許容する
機体が飛べる限りは飛ぶさ
出し惜しみはソユーズの民にも、敵にも失礼だ

ここが君達の壇之浦となる
だが……オブリビオンに操られてる人間は生かす
落人となってでも生き延びるがいい




「なんと! まさに日本一の鳴呼の者かな!」
 なるほど洋上で抵抗――交戦ではなくそれは抵抗としか呼べぬ一方的な蹂躙へのささやかな抗いであった――する小型艦の火力ではかの怪物を屠るには全く足りはすまい。まして陸の砲兵の出る幕など、まさしく重砲でも用意してようやくだ。普通の人間ならばそこで諦める。だがオルロフ軍曹はそうしなかった。それが朱海にはたまらなく痛快であったのだ。
 思わず口をついて出た喝采に青年は目を丸くする。此処は日ノ本にあらず、しかしてやはり沈みゆく戦艦を用いて一撃殴り返すという軍曹の目論見は日本一の大馬鹿者と呼びたくなるほど気持ちの良い愚直さであったのだ。
「されど、嬉しいものよ。斯くの如き男子が戦友であることが」
「まったく、殿方って皆そういうところがありますよね」
 馬鹿じゃないんですか、と言いたげに炎上するアドミラル・レオノフに向かう脱出艇を見遣って紅葉は苦笑する。
 一撃撃ち込めたとして、その先はどうするのだ。あれほど傾斜した戦艦、射撃の反動で転覆しても不思議ではない。射撃する前に何かに誘爆して沈むかもしれない。そも、陸の砲兵である軍曹が艦砲を撃てるのか。撃てたとして、あの艦の主砲は機能するのか。
 そんな不安を一切置き去りにして、必ず撃つと断言して行った軍曹はやはり底抜けの大馬鹿野郎に違いない。そして彼に呼応して士気を上げた猟兵達もまた、大馬鹿野郎呼ばわりを避けられまい。
「まあ、皆さんの心意気はわかりましたのでお手伝いといきましょう。アテにしてますよ、皆さん!」
「応とも……男子の本懐を貫き通させるのが僕等の役目。いざ死出の供をせん!」
 水面を炎の帯を引く迦楼羅王が駆け、空を極彩色の羽根を羽撃かせ機斬鬼士が征く。
「遠からん者は音にも聞け! 我こそは猟兵、穂照朱海!」
 大綿津見の眼前でその羽根を大きく広げれば、緋色と翠が乱れ狂う色の渦が機体を覆い隠し敵機を惑乱する。
「近くば寄って目にも見よ……でしたか? 才堂紅葉、参ります!」
 その一瞬、大綿津見の火器管制と老将の視界が機斬鬼士に吸い寄せられた瞬間に迦楼羅王が軽やかなステップで側面に回り込み接近しようとする――
『ならば返そうぞ。音よりも早く射抜いてみせ、寄らば撃つが我が答え!』
 そうして距離を詰めようと試みた二機を襲うのは、凄まじい弾幕の暴威であった。
 巨体の各部に装備された無数の機関砲が盲撃ちを始めたのだ。なるほど機斬鬼士を見れば認識を狂わされると言うならば、見ずに音紋や熱源を頼り四方八方に弾雨を撒き散らすことで対策とするは正道である。
 瞬時にその判断を下したのは流石歴戦の老将というところか。
『儂は皇洲連邦下ノ瀬藩国領主、藤堂永戸守宗親! いざ参る、異邦の武者どもよ!』
 水上をその巨体からは想像もつかないほど滑らかに航行する大綿津見は、見ずに撃つという防空能力を著しく損なう砲術を艦体そのものを動かすことで補っている。
「厄介な……!」
 紅葉が呻く。距離を維持すればある程度は回避できるし、回避不能の砲弾も守りを固めれば受け流すことができる。だが一度近づけば密度を増した弾幕を凌ぐことは不可能に近い。
「されど僕らがここで敵を食い止めれば軍曹が砲を撃ちやすくなる」
 朱海の言う通り、どのみち距離を詰めたとて敗れる装甲とは思えぬならば、大綿津見の注意を惹きつけることこそ勝利への第一歩。然る後に戦艦の砲撃で敵を粉砕するのだ。
「多少の被弾は致し方なし。機斬鬼士が飛べる限りは飛んでみせよう!」
 機体と命を惜しみ腑抜けた飛び方をするならば、それは敵にも味方にも失礼な振る舞いだ。
「此処が君たちの壇ノ浦となる。けれど僕は源氏のように皆殺しにはすまい。オブリビオンに操られた武者よ、落人となってでも生き延びるがいい」
『何の喩えか知らぬが、防戦一方で儂を落ち延びさせられると思うてか』
「出来るとも。僕一人では及ばぬとしても――」
 幻惑の毒蛾の羽根を砲弾が貫き射抜く。破砕された羽根から鱗粉がまるでチャフの如く煌めき舞い散れば、それは老将藤堂の視野を全方位に渡って封ずるのだ。
『むぅッ……これが狙いであったか!』
「如何にもその通り、そして言っただろう。僕一人では及ばぬとしても」
 覚悟を決めた迦楼羅王が疾走する。海上を漂う鱗粉がその姿を覆い隠し、機関砲の自動照準を妨げるのだ。
 盲撃ちといえど多少の狙いを付けていたはずの弾幕を直感と朱海の援護で容易く制した紅葉が掌を合わせれば、機体を介してオーラが増幅され次元の穴をこじ開ける。
「ハイペリア重殺術……奈落門!!」
『なんとッ』
 藤堂将軍が気づくも既に迦楼羅王は大綿津見の懐に。右腕杭打機を叩きつければ、それは装甲を穿つことこそ無いがハイペリアの紋章を刻みつける。
 扉は現れ、鍵は今刻みつけた。
「――爆縮」
 惑星の上に超重力の渦が開かれた。海水を巻き上げ誕生した巨大な渦潮が大綿津見を傾け吸い寄せる。
『これが猟兵、これが異能のキャバリアか……! だが儂等の機体とて!』
 重力の渦に呑まれてなお、大綿津見は健在であった。渦潮の中心にある奈落門に消えたはずの大綿津見は通常空間に再び現れたのだ。装甲のあちこちが潰れ、砲のいくつかが煙を吐いている。ダメージは通っているが撃破には未だ遠く、そして紅葉の大技は連発が効くものではない。
「まさか奈落門を耐え凌ぐとは……なんという機体でしょう」
「今ので僕の錦燕もほとんど消えてしまった。この辺りが潮時だね、後は仲間たちに委ねよう」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ノア・クレムリィ
 軍曹、とびっきりの一発をぶち込んで下さい。高速機動で私が囮になります。

 【UC:竜騎換装】(POW)を発動。装甲を半分、移動力を5倍で高速状態に移行します。

 兵装を全開放した〈弾幕〉と〈投擲〉で敵を誘引し、時間を稼ぎましょう。〈限界突破〉の〈推力移動〉と〈航海術〉で波を利用しながら飛来するミサイルと砲弾を紙一重で回避です。

 軍曹の砲撃用意が整ったら、距離をとって〈ランスチャージ〉を敢行。敵が姿勢を固定し側面を曝すその瞬間、砲撃と同時に〈スライディング〉で沈むように機体の損傷に構わず突破します。

 余所見なんてさせません。少々意地悪く駆けるとしましょう。

(アドリブ連携等全て歓迎/損傷:Lまで)


貴司・忍
X
アドリブ絡み歓迎

何つう化け物引っ張り出してきてんだ、おい
訓練で要塞攻めはやったことあるが…下は水だしこれはちと、きついぜ
…あん?でかいの撃ち込む?

ならあたしも、デカいの行くぜぇ!
まずミサイルガトリングを撃つ
ありったけのミサイルで機関銃へ【制圧射撃】
…そいつを囮にコード発動
ハッチから一気に【ダッシュ】し飛翔【推力移動】
胸部機関砲で弾幕を迎撃し、多段噴進装置でバレルロール回避
短時間ならドッグファイト【空中戦】だってできる造りでなぁ!!

…ただ、あれだけの巨体じゃ開天のどの武装でも厳しい
だから、開天その物を武器に。
体当たりによる【重量攻撃】に速度全部乗せて、賭ける
…ま、敵陣特攻はあたしの十八番ってね


朱皇・ラヴィニア
了解したよ
だったらボクは時間を稼いで、露払いでもしようじゃないか

とは言え敵の火力は膨大だ
ならば――666同調率最大、レポートよりデータロード
誘導弾による飽和攻撃に対する迎撃戦術……これか!

ヘイロゥで海面スレスレを推力移動し敵へ接近
牽制の弾幕を張りつつ敵の意識をこちらに向ける
あえて雑な機動で飛んだりして……よーく狙えよ
大量のミサイルが飛んで来たら引き付けて――モード切替
見切ったミサイルの誘導を連続空間跳躍で逃れ一気に間合いを詰める

そのまま敵の甲板上を制圧射撃で多連装ミサイルを破壊し
重量を乗せた147の切先を身体ごと思いっきりぶち当てる
耐衝撃対策にゼルの肉体は改造したんだ
これで主砲の向きを変える!




「なん……っつう化け物引っ張り出してきやがったんだ連邦は、おい……」
 忍は息を呑み、頬を伝う冷たい汗を袖で拭い取る。尋常のキャバリアならば屑鉄になってもおかしくはないほどの一撃を凌ぎ、多少のダメージを受けながらもその姿を再び海上に現した大綿津見に気圧されたのだ。
 地上に生じた極小のブラックホールとも言うべき奈落の渦を、至極単純明快に構造と装甲の強度だけで耐え抜こうとは、この場の誰もが予測し得ない結果である。皇洲連邦海軍最大最強、海を支配する決戦兵器たる大綿津見がオブリビオンマシンに堕すればかくも恐ろしい存在となるのだろうか。
「要塞攻めは訓練でやったことあるが……下は水だしこれはちときついぜ……」
「ボクらの役目は時間稼ぎだよ。軍曹の本命が届くまで露払いに徹すればいい」
 分厚い装甲と無数の重火器兵装に守られた巨大キャバリアに怯む忍に対して、ラヴィニアはその緊張を和らげるように声を掛ける。
 なにも猟兵だけであれを撃破せしめろというわけではないのだ。戦艦の主砲の直撃であれば、いくら水上の怪物といえどもひとたまりもないはず。
 その時まで時間を稼ぎ、反撃の一手を打つべく軍曹たちが奮闘しているはずのアドミラル・レオノフを守り抜く。それが猟兵たちの為すべきこと。
「とはいえ敵の火力は膨大だ。一人二人では長い時間は稼げないと見たほうがいいね」
「ならば、三人でかかりましょう」
 三機がかりであればあるいは。ノアの提案にラヴィニアと忍は頷き、未だ君臨する大綿津見へと武器を向ける。
「対艦強襲突撃戦、用ォ――意!!」
 海上戦における指揮官経験のあるノアの掛け声に合わせ、シュラウゼルと六号開天もそれぞれの得物――重厚な大剣と巨大なガトリングキャノンを戦闘状態に移行させた。
「――我に続け!!」
 水上を疾駆するガンドに続き海上を飛翔するシュラウゼル。そして艦橋を潰され漂うマシリースク艦隊の駆逐艦に飛び移った開天が二機の突撃を支援するべくガトリングを回転させれば、凄まじい勢いで吐き出された砲弾が大綿津見を目掛けて飛翔する。
「あたしのありったけだ! 持っていきな!!」
 それらは突撃隊を追い越すように後端から炎を噴き出し加速してゆく。ただの砲弾ではなく噴進弾と悟った藤堂将軍は直ちにこれを迎え撃つべく機関砲の弾幕を展開する。
 海上にいくつもの爆炎が生み出され、炎の壁が大綿津見の視野を遮った。
『なんの。所詮は陸戦機の砲撃、射角が限定されるならば迎撃も――何とッ!?』
 大綿津見を僅かに揺らす衝撃に将軍が目を見開けば、遥か天頂から降り注ぐ砲弾の雨。四機目を伏せていたのか。だがその高度は殲禍炎剣の危害領域だ。
 絶えぬ炎壁を維持しながら射手を探すが、そのような存在は影も形もない。何故ならば直上からの砲撃もまた、六号開天の放ったものだから。
「上手い具合に対戦車弾が刺さったみたいだな。皆、今がチャンスだぜ!」
 当の忍ですら把握していないと豪語する、ガトリングキャノンの弾帯の数発に一発ランダムに混ぜ込まれた対戦車ミサイル。砲によって撃ち出された後垂直に上昇し頭上から敵機を襲う砲弾が役目を果たし、大綿津見の注意を十分に惹きつけることに成功した。
 この陽動によって、アウトレンジからの一方的制圧を受けること無く距離を詰めたガンドおよびシュラウゼルが大綿津見に迫る。
「どうにか懐には飛び込めたけれど……やっぱりこれじゃ豆鉄砲だね」
 電磁機関砲を乱射しながら傷ついた大綿津見の装甲を叩いて回るシュラウゼルだが、その弾丸は装甲を貫通まではしなかった。ダメージを通すならばやはり大剣で一撃を加えるしかあるまい。ラヴィニアがちら、と視線を向けた先では爆雷をばら撒き短機関銃で牽制するガンドが同じく有効打を与えられず苦戦しているのが見えた。
「構いません。軍曹の砲撃用意が整うまでこちらに引き付ければ――ッ」
 二機が散開し、直後にミサイルが降り注ぐ。大綿津見の背部に装備された多連装ミサイルランチャーがその暴力を解き放ったのだ。
 絶え間なく放たれ続ける誘導弾は六号開天のそれに匹敵する連射速度とあれを遥かに上回る制圧力をもって二機の頭上を覆い隠す。
「くっ……食いついてくれたということでしょうが」
「中々膨大な火力だね。躱せる? 援護は必要かい?」
 必要ありません、と申し出を辞退したノアにそちらは任せ、ラヴィニアは頭上の光輪を大きく広げた。
「そうさ、ボクらは餌だ。よーく狙えよ……今だ!」
 頭上で輝く円環が足先まで一息に下りれば、シュラウゼルの機影が掻き消える。直後に大綿津見へと距離を詰めた位置に出現したかのジャイアントキャバリアは、ミサイルに捕捉される度に空間跳躍でそれを躱して彼我の距離を狭めてゆく。
 一方のノアは弾幕を張ってミサイルを迎え撃ちながらその機動を以てミサイルを回避していた。
 迎撃による誘導弾の撃墜と機動による回避は派手さも奇抜さもない教本通りの戦術であるが、その教本どおりを実戦レベルで滞りなく遂行しえたのはノアの技量が故であろう。
『短距離転移機に手練のパイロットか……相手にとって不足は無いのう』
 ミサイルを切り抜けた二機。だが、その先に待ち受けていたのは重機関砲の砲口であった。
 至近で射撃を受けたガンドの左肩が大きく拉げ、片腕がマトモに動かなくなる。シュラウゼルもまた、剣の間合いにまで踏み込みながらもその剣を盾として構えねばたちまち藻屑に変えられてしまいそうな弾幕を一身に浴びていた。
『これにて三機抑え込んだぞ。どうやら貴殿等はあの沈みゆく戦艦を守っておるようじゃが――』
 ならばあれを沈めて心を折る。藤堂将軍の冷酷な判断が、大綿津見の主砲をアドミラル・レオノフへと向けさせる。
「まずい! あんなのを撃ち込まれたらいくら戦艦でも――」
「しかし阻止しようにも身動きが……!」
 ラヴィニアとノアの悲鳴。万事休す――否、将軍が陸戦機と侮った六号開天がその本領を発揮する。
「あたしを抑え込んだって? ウチの六号開天は空中戦だってできる造りでなァ!!」
 駆逐艦を蹴飛ばしブーストジャンプ。放たれたミサイルや機関砲の弾幕を全身の推進器からの多段噴射で無理やり軌道修正することで回避して、六号開天は大綿津見へと肉薄する。
「とはいえミサイルガトリングでダメなら開天のどの武装でも厳しいな。二人とも、あとは任せるからよ、頼むぜ!!」
 弾幕に晒され防戦一方の味方を救うべく、大綿津見の艦上に着地した開天は一切の防御を捨て手にしたチェーンソーで、あるいはロケット推進で威力を増した拳を奮って二人を釘付けにする機関砲を破壊してゆく。とはいえどれも機関砲塔とは思えない堅牢さ、先の猟兵による重力攻撃がなければひとつ破壊するのがやっとであっただろう。
 忍の狙いは全てを破壊することではない。たとえ破壊できた砲塔がひとつふたつ程度でも、己が囮となることで仲間を抑える弾幕が多少でも薄くなればそれでいい。機体の全身がアラートを鳴らし、貫通した砲弾が右腕を肘から持っていく。片足が曲がらなくなり、頭部に被弾したかセンサー系も死んだ。
「敵陣特攻はあたしの十八番、ここまでやられちまったのは久しぶりだけどよ、腕は鈍っちゃいないんだぜ」
 強攻はここまでと決断し、脱出レバーを引いて機体からイジェクトした忍は見た。撃破される開天と入れ替わりに敵機の艦上に突撃してゆく二人の戦友を。
「余所見なんてさせません! あの砲に戦艦を撃たせるわけには!!」
「そうだね。向きを変えるだけでいい、あのサイズなら連射はできない!」
 開天の特攻を生き残った機関砲が二機に傷を与えるが、それを些事だと無視して二人は駆ける。巨体を駆け上り、その背に座する巨大砲台にたどり着き――
「ゼルの肉体なら耐えられる。そのために改造したんだ。……合わせて、ノア君!」
 シュラウゼル全力の刺突が凄まじい衝突音を上げ、火花を散らして大綿津見の左舷多連装ミサイルランチャーと激突する。
 一息に貫通とは行かないが、しかし異様な強固さを誇るそれに僅かとはいえ傷口を切り開いた。
「皆が繋いでくれた好機を逃しません! ――いきます!」
 シュラウゼルが刻んだ傷口に、ガンドが対艦突撃槍を捩じ込んだ。火薬庫に突き刺さった槍はその内側に爆薬を内蔵した対艦決戦兵器だ。
「総員耐衝撃!」
 盾として割り込んだシュラウゼルがガンドを庇う姿勢をとったと同時、それが起爆する。
 満載されたミサイルに誘爆し、凄まじい爆発が二機を襲う。
 巨大な爆煙が立ち上り、同時に射撃された大綿津見主砲の一撃もその衝撃によってあらぬ砲口へと飛んで消えた。
『ぬぅ……ッ。捨て身で儂の攻撃を逸らすとは見事な武人たちよ……』
 しかし、猟兵達の猛攻で複数の機関砲と片方のミサイルランチャーを喪失した怪物は未だ健在である。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

イザベラ・ラブレス
【アドリブ連携歓迎】M
心情:ある軍人曰く「老兵は死なず、単に消え去るのみ」
引き際を違えた老兵には死地じゃなく引退の花道を拵えてやらなきゃね?

戦闘:WIZ
UC発動で幽霊ヘリ部隊を展開。
「勇猛果敢なる海兵諸君、友軍の支援を無駄にするな!対怪物戦闘開始!大綿津見、その名に相応しき水底にお帰り頂きなさい!」
部隊には砲塔と射撃管制装置の徹底的な破壊を指示。
可能なら敵機へ降下しての直接工作も。

私もマイティー・バリーのガトリングキャノンで両腕部を砲撃、グレネードの誘爆を狙うわ!

そしてオルロフ軍曹には適度なタイミングでの退艦を促す、アンタはそこでくたばっていいタマじゃないわ。祝勝会で奢らせてほしいしね。


ヴィリー・フランツ
POW・連携歓迎
目的:援護の為に多連装ランチャーの破壊
心情:傭兵だったら間違いなく遁走するレベルだが…今の俺は猟兵だ、逃げる訳にゃいかねぇな。
手段:出撃前に弾薬とEインゴットだけは補充、脚部のスラスターとバーニアを調整すれば水上を滑走出来るか?。
出撃後はフォートレスに肉薄してミサイル・レールガン・無反動砲で攻撃、貫通出来なくても注意を引けるし爆煙で目隠しも出来る!
敵の攻撃は機体を左右に振り回し回避機動、当たりゃ機体の装甲ごと御陀仏だぜ。
【完全被甲弾】はここぞ言う時に無反動砲に装填、狙うは奴のMランチャーのカバーが開いた時、そこにぶち込んで誘爆させぶっ壊してやる!俺のランチャー壊した返礼だぜ!


スレア・ラドリフ
あれが元凶ね?すっごおおおおい!!
ちょっとキャバリアか審議したいから後で見、ダメ?
先ず私の場合は此処で生き残らないとだけど!

オーバーフレーム換装、装甲削って機動力上げるわよ。
あんな級の弾なんて、近く飛ばれたら終わりじゃない。
砲の向きもちゃんと映して、頑張って避ける!
出航前に死角というか、向こうが狙い難い位置取りを
聞けてればその辺りとぶけど、使う人いたらバトンタッチね。

そういえばオルロフさん達、何処狙いか言ってた?
改造ギムレウスから借りてきたキャノンで
邪魔しない感じに私も狙うから、
準備できたら教えてくれるかしら。
メカニックで重量耐久サイズ弄ったから、
たぶん撃ったらもう返せないけどそれはそれ!




 初撃のミサイル爆撃によって飛行甲板を破壊された空母ニコライⅢ。その横腹に、スレアの駆るキャバリアが取り付いた。
 空母としての機能を喪失し、キャバリア戦力を抱え込んだまま死に体となったその艦に工作用のレーザートーチを押し当て、切り開いてゆくスレア。
 味方部隊が決死の戦闘を繰り広げている間にこの空母が持つ弾薬その他を回収する、それが彼女の仕事であった。
「あの元凶のすっごい機体、キャバリアか審議したいから近くでじっくり見たいわね……」
 メカニックの性か、超大型キャバリアという規格外の機体である大綿津見への好奇心を隠しきれずちらと戦場を横目に見れば、余所見のせいでトーチの進路が滑る。
 危うく切ってはいけないところを切り落としそうになったスレア機の腕を掴んで支えたのは、停戦派パイロットが駆る不知火の一機であった。
「我々も御館様を止めに馳せ参じたいのだ。そのための武器を沈められては困るぞ」
 我が国最強の一角であるかの機体を間近に見たいという気持ちは理解できるが、と添えて苦言を呈する彼に頭を下げ、作業に集中するスレア。
 一方でその頭上、ニコライⅢの甲板上にはヘヴィタイフーンとマイティー・バリーが陣取り、強硬派艦隊との戦闘で消耗した停戦派の部隊への補給の準備を整えつつあった。
 あとはスレアが宝箱の鍵を開ければいつでも補給を開始し、戦力として参戦できるだろう。
「……或る軍人曰く『老兵は死なず、単に消え去るのみ』。引き際を違えた老兵には死地じゃなく引退の花道を拵えてやらなきゃね」
 イザベラが独りごちる。だが、それは隣で脚部スラスターの出力を調整していたヴィリーの耳には届いたようであった。
「爺さんの花道を作ってやる、か。傭兵としちゃあんなモン相手にせずに迷わず遁走するレベルなんだがな」
 返ってきた弱気な発言に眉を寄せるイザベラへと、ヴィリーは勘違いするなよと手をひらひらさせながら煙草に火を点ける。
「今の俺は猟兵だ。逃げるわけにゃいかんだろ」
「わかってるならいいんだけれど。さて――」
 振り返ったイザベラの視線の先、飛行甲板へと機体を上げるエレベーターが復旧し低い唸りを上げて上昇してくる。
「お待たせ! さあ、補給を開始するわよ!!」
 機体と山程の物資を甲板に上げたスレアが反撃の始まりを宣言する。
「ええ、此処からが私達の仕事よ」

 弾薬の補充を終え、新しいエネルギーインゴットを装填されたヘヴィタイフーンとマイティー・バリーは、当初の予定通り停戦派の機体へと同じく弾薬や予備のエネルギーインゴットを補給させてゆく。
 そんな最中で、スレアは一度機体をフレームごとに分離させて戦地での再アセンブルを試みていた。
 材料はニコライⅢの艦内で放棄されていた人民海軍の機体だ。水上戦を主とする海軍機であれば、陸軍機そのままの機体で挑むより多少はマトモな戦いが出来るだろう。
「マトモな戦いって言っても、私の場合はまず此処で生き残らないとだけど!」
 戦える機体、というよりは生き残る可能性が少しでも高い機体を。陸軍機の重装甲は頼もしいが、その装甲をもってしても直撃を耐えることは困難であろう大綿津見の砲撃を相手取るならば、装甲で凌ぐより機動性で躱す方に希望を託したほうがいい。それでも付近を主砲弾が掠めれば機体の分解は避け得まいが、回避に徹すれば鈍重な陸戦機をそのまま使うより可能性は残るだろう。
「問題は私にその腕があるかどうか、だけど……」
 接続されてゆく海軍機のオーバーフレームは、先程までの質実剛健を絵に書いたような重装甲機に比較してスマートであるが華奢で脆弱な印象を受ける。
「何だ、子供が死ぬかもなんて心配すんな。お前は俺たちの後ろで隠れてりゃいいんだよ」
「そうそう、前で命を張るのは私達傭兵の仕事よ。お嬢さんは援護をよろしくね」
 此処から先はこれまで以上に決死を覚悟せねばならない。敵は正真正銘のオブリビオンマシンで、その上に怪物のような性能をしている。自分のような未熟なパイロットでは力不足も甚だしいのではないかと緊張に身を硬くするスレアを気遣って、ヴィリーとイザベラが冗談めかして笑いかけた。
「補給を受けた以上、貴女達と人民平等会議には恩義がある。恩義は返さねばならぬが武士の道、いざとなれば我等が盾となろう」
 補給を終え、損傷しながらも継戦能力を取り戻した不知火の艦隊が空母ニコライⅢを守るように布陣し、そして。
「こいつぁ凄え爆発だ……が」
「アイツに取り付いた部隊はもう戦えないね。つまり――私達の出番よ!」
 左舷のミサイルランチャーを破壊され、尋常ならざる爆発を引き起こした大綿津見。
 そこへ皇洲連邦海軍と猟兵の連合部隊が追撃を掛ける。
「全艦主砲一斉射! 猟兵の突破口を開けェい!」
 巡洋艦クラスの主砲に匹敵するギムレウス改級不知火の艦列が戦端を再び開けば、その砲弾が敵艦の周囲に無数の水柱を立てる。
「弾ちゃァーく! 夾叉! 座標修正! 猟兵機に共有!」
『儂に手向かうか、ならばそれもよし! 貴様達は貴様達の選んだ道をゆけい! だが儂の前に立ちはだかるならば討つ!』
「御館様への恩義を返すは今ぞ! 我が身を呈して邪道に進まれるを諌めよ!!」
 次々に砲弾を送り込み、その着弾の誤差から敵の正確な座標を猟兵に送る不知火たちは徐々に散開してゆく。ニコライⅢの盾となるように残った数機を除いて、囮として自らの主君の鉾をその身で受け止めるつもりなのだ。
「覚悟を決めた忠臣……ね」
 傭兵一族とはいえ令嬢としてラブレス家の尊き血を継ぐイザベラには、連邦兵たちの行いに思うところもある。
 だからこそ、彼らを主君の刃で死なせるわけには行かぬのだ。
「勇猛なる海兵諸君、友軍の支援を無駄にするな! 対怪物戦闘開始!」
 不知火艦隊が送ってよこしたデータを元にガトリングキャノンをひたすら連射するマイティー・バリーの頭上を飛び越えて、低空飛行の戦闘ヘリ部隊が戦場に飛来する。
『新手か! しかし回転翼機など!』
 大綿津見の周囲を旋回しながら機関砲や対戦車ミサイルで攻撃を開始する攻撃ヘリコプターや、扉を開けたキャビンから身を乗り出した海兵がロケットランチャーを打ち込む多目的ヘリコプター。その編隊に藤堂将軍は大綿津見の基幹ブロックたる大型オーバーフレームの両腕部に装備されたグレネードランチャーを向け、引き金を引く。
 巨大な爆発がヘリコプターの群れをごっそりと削り取る。
 圧倒的な戦力差、ヘリの火器はろくに通用せず、イザベラの砲弾も装甲に弾かれ、破損箇所にあたったとしても彼我の距離が遠すぎ有効打と呼べるほどのダメージを与えられているようには感じられない。
「だったら距離を詰めりゃいいんだろ!」
 水上戦に対応するよう下半身への出力配分を調整されたヘヴィタイフーンがニコライⅢから飛び降り、海上を疾走して距離を詰めながらありとあらゆる搭載火器を撃ちまくる。
 ミサイルの雨が機関砲に迎え撃たれ、無反動砲からのロケット弾は装甲の表面に炎を塗りつけ波にもみ消される。レールガンの接射は装甲を凹ませるが、そこまでだった。
「チッ、貫通はしないか。だけどな、爆煙で目隠しできりゃ上出来だ!」
 全部隊の一斉攻撃で生じた煙が大綿津見の視界を覆い隠せば、次なる一手は予測可能。
 つまりは、コンピューター制御による誘導弾の面制圧。照準不要の攻撃で全てを焼き尽くそうとするはずだ。
 その読み通り、大綿津見は煙の中でミサイルランチャーの蓋を開ける。
『先に地獄で待て。儂も貴様たちを待たせはせぬ……猟兵、貴殿らもだ!』
 放たれたミサイルが大綿津見に挑む全ての機体を襲う。ヘリが真っ先に食いつかれ、爆炎を曳いて次々と海中に墜落していく。
 不知火艦隊は装甲で耐えようと試みるが、半数が戦闘継続不可能なダメージを受け、もう半数はコックピットブロックを緊急射出した直後に鉄屑となって沈んでゆく。
 そんな地獄絵図の中でヘヴィタイフーンは自機のミサイルランチャーをパージし、突進してくる大綿津見のミサイルに向けてそれを投げつけた。
 ミサイル同士の誘爆で開いた巨大な爆炎が生み出す熱源が続くミサイルのシーカーを欺瞞する。生じたほんの僅かな空白時間をヴィリーは見逃さない。敵の右舷ミサイルランチャーが装甲ハッチを閉じる直前、放たれたレールガンの弾丸が内部へ飛び込み誘爆とともにミサイルランチャーを完全に破壊したのだ。
 だが、ニコライⅢにとどまっていた彼の僚機は深刻な状態であった。
 回避を試みたが技量不足からミサイルに追いつかれかけたスレア機を庇うように割り込んだ二機の不知火と、彼女を追うミサイルを優先して迎え撃ったマイティー・バリーが被弾。後者は見事な機体制御で武装を失うに留まったが、前者はもはや海上での戦闘は不可能であった。
「そんな……私を庇って、でも私じゃあの機体をどうにもできないのに……」
「スレアさん、落ち着きなさい。貴女には貴女にした出来ないことがある、でしょう?」
 狼狽えるスレアを宥めたイザベラは、戦闘能力をほぼ失ったマイティー・バリーを使って撃破された不知火の主砲ユニットを取り外す。
「当たりどころ次第でこれは使えるはずよ。ただ、マニピュレーターでどうこうできる武器じゃないから私じゃこれを扱えない。それが出来るのは貴女、でしょ?」
「う、うん。わかった……わかった、やってみる!」
 ミサイルランチャーを潰したヘヴィタイフーンがまだ粘ってくれているが、長引けばそれだけヴィリーに危険が及ぶ。無力化したと思われてる此方にトドメを刺そうと砲弾を投げ込まれないとも限らない。
 脱出した皇洲連邦の兵士たちの手を借り、ニコライⅢに残る資材をも使ってスレアは突貫で機体に砲を組み込んでゆく。
 より大きく、より頑丈に、そしてより貫通力を高める。イメージするのはオルロフ軍曹らが使っていた対キャバリア砲、その系譜。
 ありあわせの資材で再現された砲は、俗に減口径砲と呼ばれる歴史の徒花。より炸薬の影響を受けられる大型の砲弾を、狭くなっていく砲身内で削り貫通力に特化した弾芯を撃ち出す一撃必殺の武器だ。
 だが、二射目は撃てまい。突貫作業ででっち上げられたそれは一射で砲をダメにするだろうことをスレアだけが知っている。
「一発撃ったらそこでおしまい、当たっても外れても貫通できても出来なくてもそこまで……でも、それはそれ! 皆が信じて繋いでくれたんだもの、出来る限りの全力で私はそれに応えるわ!」
 ――――イザベラの管制のもと、スレアのトリガーで砲弾が放たれた。
 その砲声に満身創痍のヘヴィタイフーンを捨て置き振り向いた大綿津見の肩口へと砲弾は吸い込まれるように命中して。
 悲鳴のような破砕音が響いた。大綿津見の片腕が貫き砕かれ、水底へと沈んでゆく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
※ロシナンテⅣ搭乗
損傷L(大)

(背部コンテナからパーツ取り出しUC組み立て装備し)

損傷した戦艦での砲撃…反撃されれば…
オルロフ軍曹!

サブアームのライフルと全身の格納銃器の●乱れ撃ちスナイパー射撃でミサイル●武器落とし

●推力移動で真正面に躍り出、UCで砲門に突撃、戦艦を●かばい

貴方が砲兵としての仕事を果たすなら、私は騎士として役目を果たすまでですよ

UC●ハッキングしバリア出力●限界突破
砲弾盾受け武器受け

やらせはしません!

センサーでの●情報収集と●瞬間思考力で主砲発射●見切り
直前でオーバーフレーム切り離し

コクピットから脱出
爆炎に紛れ自前のスラスタで敵に取りつき怪力で戦闘続行
戦艦に手を振り健在示し


ユエイン・リュンコイス
連携アドリブ歓迎
成程、戦艦の砲撃準備が整うまで時間を稼ぐ、と。ボクのキャバリアは半壊状態だけれど、周囲には艦隊の残骸が在る…なら、手は一つだね。

UCを起動と同時に真の姿を開放。灼鋼の機械神を以て敵機へと挑み掛かる。デカブツにはデカブツを、だ。
この巨躯では単なる的だと思うだろう。だがそれは間違いだ。スーパーキャビテーション、今回は高熱によってそれを成立させて水の抵抗を零近くまで軽減する。それ故、存外動けるよ?

後は速やかに接近して白兵戦へと移行。大質量で打ち据え、高熱で砲を捻じ曲げ、徹底的な破壊を行う。
其方が神の冠するなら、此方は神の模造品。されど此れは神を弑す神だ。分はボクらに在ると知るが良い。


エイス・シノノメ
あれはFortress級…!
陸戦の超重砲戦キャバリアを海上運用可能に仕立てるとは!
先のギムレウス級もそうでしたが皇洲連邦はキャバリアの海洋運用に秀でている様ですね
皇帝陛下への忠義という名の視野狭窄、イタズラに兵を資源を浪費させるような戦さは其れ即ち主君への背信と同義だと言いますのに!
元はそれこそ忠義に溢れる御仁だったのでしょう…オブリビオンマシンを打倒し正気を取り戻させねば!
機銃ですら脅威、船への被害を食い止めるためには武装を丁寧に潰して回るほかありませんね
主砲は言わずもがな…これ以上撃たせる訳には行きません!
周りを飛び回る様に高速戦闘を仕掛け的を絞らせようにし持ち得る火力全てを叩き込みます!




「――オルロフだ。艦の復旧に成功した、まもなく砲撃を開始する」
 その知らせを耳にして、猟兵たちは戦闘が最終局面に至ったことを認識した。攻めあぐねているとはいえ大綿津見もまた損傷している。決して倒せない相手ではないが、それでも強敵には違いない。戦艦からの艦砲射撃を以て戦況を一気に此方に傾けるべく行動を開始した彼らの前に、傷つき兵装を失いつつもなお大洋の王者たる威容を損なわぬ怪物が立ち塞がる。
「Fortress級……陸の超重砲戦キャバリアをこれほどまでの海戦機に仕立てるとは……」
 確かに地盤を考慮せねばならない地上とは違い、海上専用で運用するならば理論上では何処までも巨大化、重火力化は可能だ。だが、それを現実に成し遂げる国家があったとは。エイスは皇洲連邦は世界有数の海軍国であるという評価が至極妥当であったことに戦慄する。並みのキャバリアならばとうに破壊されていてもおかしくないほどの一斉攻撃を浴びても原型を留め、戦闘継続可能だなどとそれはもはやキャバリアではなく怪物だ。
「ですがここさえ凌げばアタシ達の勝利です! 決して倒せない相手じゃありません!」
 激戦の中、もはや動ける戦力はエイスを含めてたった三機のキャバリアのみ。この三機でオルロフ軍曹の一撃が届くまで戦線を支えねばならない。もしアドミラル・レオノフが撃沈されれば、もし後方へ退避している負傷兵を満載したドルジグラード艦隊が追撃されれば、最悪の事態を招いてしまう。多くの人々と猟兵の戦いの末に、今それを阻止できるのはたった三機、三人の猟兵だけ。
「ならばアタシはアタシの機獅道のため、見事成し遂げて見せましょう!」
 エイスの機体が飛び立ち、大綿津見の巨体に猛然と挑みかかる。この機体の火力では敵機を討つことは叶うまい。だが、その注意を此方に引きつけ軍曹らのための残り僅かな時間を稼ぎ出すことは出来る。
 ライフルが吼え、大綿津見の装甲表面に火花を散らしてその機体を叩く。
「やはり装甲区画に通用はしませんか! なら!」
 スラスターを巧みに操り、巨体の正面に回り込む。管制ユニットであろう人型のオーバーフレーム――それすらも並みのキャバリアより巨大であるが――ならば、あくまでキャバリアとしての常識の範疇での防御力のはず。そこを集中して狙えば一矢報いることができる。
『許すと思うておるのか! 儂が!!』
 しかし得てしてわかりやすい弱点というものは対策も入念に講じられているものだ。回り込もうとしたエイスを遮るように生き残った大型機関砲の弾幕が襲いかかる。
『皇帝陛下へ太平の世を、強き皇洲の世を奉じるが儂等の使命である! 邪魔はさせぬぞ!』
「それは忠義の名を借りた視野狭窄に過ぎません! 徒に兵も資源も浪費するような戦は主君への背信も同義といいますのに!」
『知った口を! 儂は皇室に六十年仕えたのだ! その最後の奉公に割り込むなど!』
 銃撃が二機の間を行き来し、エイスの放った弾丸が機関砲を一つ潰す間に十も二十も飛来した砲弾がエイス機の装甲を削り、回避機動で推進剤をみるみる消費させていく。このまま戦えば保って数分、しかしエイスには己の身を捧げてでも守るものがある。
「これほどの脅威を軍曹の下に、撤退する友軍の下に行かせてはなりません! ここで刺し違えてでも貴殿を食い止めるのが機獅道に懸けたアタシの戦いです!」
 エイスの放ったミサイルの群れが機関砲塔に食らいつき、その一つを吹き飛ばす。ライフル弾が砲身を弾き捻じ曲げ、射撃しようとしたそれを暴発させる。弾幕の薄くなった穴を見つければ、決死の突撃で肉薄しソードを突き立てこれを切り裂いて。それでも戦況は五分、いやエイスが僅かに不利か。
「これほどの戦いぶり、元はそれこそ忠義に溢れる御仁だったのでしょう……だからこそ正気に戻ってもらわねば!」
 この機を操る藤堂将軍は皇室に仕える連邦海軍にとってきっと欠いてはならぬ忠臣に違いない。どうか死なせること無く、そして蛮行を阻止して国に送り届けねば。
「――だったら、その役目はボクが引き受けよう。君は満身創痍じゃないか」
 エイスがその身を犠牲にする覚悟で戦い続けようとするのを、ユエインは力強く頼もしい声音でそっと止めた。
「ボクのキャバリアは半壊状態だけれど、君が時間を稼いでくれたおかげでなんとかする目処も立った。幸いにも補修材には困らない戦場だ、後は任せてくれたまえ」
 エイスを呼び止めた彼女の機体もまた、片腕を失い各部の装甲はボロボロ。不知火艦隊との戦いまでを殆ど致命的な損傷を受けず切り抜けたエイスよりもひどい有様だ。
 が、それを言おうとするエイスを制してユエインは前に出る。
「海から来るデカブツを食い止める。ああ、お誂え向きのシチュエーションだね。そういう映画を見たことがある。タイトルは何だったかな――」
『そのような機体で儂を止める、と。大言壮語、なれど貴殿の声音はそれを可能と確信するものじゃな。宜しい、法螺か否かは儂が確かめよう。二機で掛かっても構わぬが』
「不要だよ」
 ユエインは笑う。そしてエイスに撤退するドルジグラード艦隊の護衛を委ねて、彼女をその異能に巻き込まぬよう離脱させ――
「叛逆の祈りよ、昇華の鉄拳よ、塔の頂より眺むる者よ。破神の剣は我が手に在り」
 詠唱。祈り。それは禍津の鬼神を呼ぶものか。救世の機神を喚ぶものか。
 海面を漂い、あるいは沈みゆく艦隊が冥府の門から還るように浮かび上がり、ユエインの機体へと集まってゆく。
「――機神召喚!」
 人民海軍の艦艇も、将軍に逆らい停戦を説いた連邦海軍の機体も皆、平等に。そしてそれらを鎧いて現れたのは、大綿津見にも匹敵する――あるいは上回る巨大キャバリア。
 下半身を海中に置いてなお大綿津見に比肩する巨体は、その予測される膨大な水の抵抗を感じさせぬ軽やかな動きで大綿津見に接近する。
『何じゃと……!』
 予想外の機動性に機関砲で抵抗を試みるが、小型艦を容易く貫通する砲弾でさえその機体には薄皮のような装甲板を数枚剥がしてそこまで。
 その威力で歩みを止められようはずもなく、巨体の機械神は瞬く間に彼我の距離を白兵のそれまで詰めきった。
「これはお約束と言うか儀礼的なものだけれど、だが大質量なら君の装甲もなんとか出来るとボクは思っている。だから――試させてもらうよ」
 巨腕が海上を浚い、艦橋構造物を根こそぎ粉砕され放棄された駆逐艦を引き寄せる。それを両手で持ち上げた機械神は高熱を与える異能で無人の駆逐艦を過熱させ、大綿津見の脳天――巨大な主砲塔へと棍棒のごとく叩きつける!
 大綿津見が一瞬大きく沈み込み、生じた衝撃が高波となって双方の機体を揺らす――余波がアドミラル・レオノフをも巻き込み、オルロフ軍曹に抗議されそうな予感がしたのでひとまずユエインは圧し折れた駆逐艦を海へと放した。
「おや、驚いた。破壊は出来なくとも主砲は潰せると思ったのだけどね」
 そうして一撃を加えては見たものの、駆逐艦では脆すぎたのか、あるいは大綿津見の主砲が常識はずれに堅牢なのか、砲身は些かも曲がらず健在であったことに彼女は驚愕の声を漏らす。
『ええい……儂の、御国の為の戦いの邪魔をするでないわ!』
 驚愕で生まれた僅かな隙を狙って、オーバーフレームから放たれるグレネードの連射。
 数発を直撃させられ、僅かによろめきながらも軽やかに離脱した機械神は下手な道具に頼らず拳に熱を帯びさせ、砲撃を海中とは思えぬステップで躱して再度肉薄する。
「熱で気泡を生み出し、海中に"空中"を生み出す……スーパーキャビテーションというらしいが、存外動けるものだね。これを思いつかなければ危なかったかもしれない」
 打撃が大綿津見に打ち込まれてゆく。砲と異なり貫通ではなく装甲の上からダメージを徹す為の鈍器の一撃は、大綿津見の基幹フレームにまで少しずつではあるがダメージを与えている。
「其方が神を称するならば、此方は神殺しの神の模造品だ。此処まで近づいた時点で分はボクらにあると知るが良い」
 確かにユエインの言う通り、このまま打撃を叩き込み続ければ大綿津見とていつかは沈もう。だがしかし――
『この状況、儂の不利は認めざるを得ぬ。が……攻めに夢中で守らねばならぬものを忘れておるぞ?』
 がこん、と音を立てて大綿津見が震える。主砲に砲弾が送り込まれた音だ。
 あまりに巨大な砲はキリキリと悲鳴を上げながら照準をアドミラル・レオノフに向ける。
 ――そして。
『主砲、撃ちィ方! 目標敵戦艦……粉砕ィ!』
 総てを破滅させる海神の鉾が投げられた。凄まじい衝撃波に機械神ですら吹き飛ばされ、撃ち出された砲弾はアドミラル・レオノフの傾いた船体へと吸い込まれるように飛翔して、
「オルロフ軍曹ッ! 私は騎士として役目を――」

 その進路上に割り込む白い機影。バリアを展開した盾を正面に構え、機体とほぼ同じレベルの大型砲弾に真っ向から体当たりするもの。
 識別シグナルはロシナンテⅣ。トリテレイアが駆る騎士型キャバリアだ。
「役目を果たして見せます……! アドミラル・レオノフをやらせはしません……!!」
 火花を散らし削れてゆくシールド。支える主腕がミシミシと音を立てて押し込まれ、関節部から火花が散る。保って数秒、それ以上は耐えきれまい。
 しかし数秒あれば十分だとトリテレイアは確信している。すべての猟兵が、ナロードニク・ソユーズ人民軍の将兵が、停戦派の皇洲連邦軍人たちが稼ぎ出した時間の果てに、この僅か数秒が加えられれば――
「軍曹、私がなんとしてもこの砲弾を止めてみせます! ですからッ!!」
「――ああ。俺は二度と撃つことを躊躇わねえ。当たるか当たらねえかなんて考えずに、当てて見せんだよ! 一番砲塔、主砲一番二番! ぶっ放せェ!!」
 アドミラル・レオノフの主砲が凄まじい砲火とともに二発の砲弾を吐き出し、トリテレイアを飛び越えて大綿津見に吸い込まれてゆく。如何に堅牢堅固の海上要塞といえど、猟兵の総力を上げた攻撃の上に戦艦からの艦砲射撃を受ければひとたまりもない。三胴船の形を取る機影の左舷と主砲基部に直撃した砲弾は、装甲をついに貫き大綿津見へと致命傷を与えたのだ。
『ぐおお……ッ、この大綿津見が……沈むと云うか……ッ!! 猟兵、これほどの……!』
「お見事です、オルロフ軍曹。私もこれで――」
 直後、盾が砕け砲弾がロシナンテⅣを貫いた。
 ――いや、違う。ロシナンテⅣの信号は消えていない。盾が破壊されると同時、オーバーフレームを脱ぎ捨てた機体。そのコックピットから飛び出したトリテレイアは、機体の上半身が破壊され生じた爆炎を背に受け機械の生身で飛翔する。
 かの荒御魂、平和を掲げ破壊を振りまく海神はいまだ死せず。射撃の反動で回復不能なほど傾斜の進んだアドミラル・レオノフから退艦する軍曹らを逃さぬとばかり、沈みゆく身で隻腕のグレネードランチャーを掲げている。
 オルロフ軍曹たちをやらせるわけにはいかない。そして、オブリビオンマシンの狂気に囚われただけで本来はきっと忠実なる武将であったろう、藤堂将軍も死なせたくはない。
 故にトリテレイアは大綿津見のオーバーフレームに取り付き、損傷したそれへ剣を突き立てる。
 装甲の隙間に捩じ込んだ刃を梃子のように押し込み、べりべりと装甲を引き剥がし――コックピットブロックを無理矢理にでも摘出する。
「貴方には皇洲連邦の法の裁きを受けてもらいます。オブリビオンマシンの仕業とはいえ、これだけの損害を出したのですから無罪放免とはいかないでしょう」
 けれど。生きてさえいれば償うことも出来る。彼に付き従い、しかし手を取り合うことを知った停戦派の臣を守ることが出来るのも彼だけだろう。
 主を失い沈みゆく大綿津見の背から飛び立ち、機械神の掌にコックピットブロックを預けてアドミラル・レオノフを振り返る。
 大綿津見と相討ったかのように沈みゆく戦艦から降ろされる最後の脱出艇。トリテレイアの眼は、その上で猟兵らに敬礼を送るオルロフ軍曹を捉えた。
「終わったのですね、これで……」
 自らの無事を示すように手を振り返しながら、トリテレイアは――そしてこの戦闘に参加した全ての人々は、穏やかさを取り戻した海に一つの戦いの終わりを噛み締めたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年11月30日


挿絵イラスト