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ワインのある食事は太陽の出ない1日

#ダークセイヴァー #辺境伯の紋章 #宿敵撃破 #ワインシリーズ

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 その街には古くから続くワイン蔵があった。
 そこから出荷されるワインはあまりに美味しかったため、それを口にしたヴァンパイア達は次々とそこへの進軍や重税を取り止めた。……彼らにとっては非常に珍しく、自らの懐よりもワインの味や作り手を優先したのである。
 そして家族や街を守るため、生き延びることを許された醸造家達は時に悪魔の力を借りながら悪化した環境の中で味を維持するだけでなく発展させた。
 そうして産まれたワインはヴァンパイア達を唸らせ続け、約100年以上その地の安寧を保ち続けた。
「たかがワイン如きのためになぜ滅ぼさぬ?」
 しかしある女は長年の努力と恩赦を鼻で笑った。足元では赤い目をした大量のネズミ達が指示を待ちわびて屯している。
「ふん、くだらんな……。あんな赤かったり白かったりするだけの液体に何の価値があるのか」
 人によっては、ワインにまつわる様々な要素を持ち出して烈火の如く反論したことだろう。しかし女にはそれを聞く気が初めから無い。
「酔うのであれば、どうせなら人が絶望の中で嬲り殺される様を見た方がよっぽど有意義だ」
 人肉を食べ慣れたネズミ達はその呟きに賛同する様に鳴き声を発する。それをBGMに女は首に結んだネクタイの位置を直した。
 その右の胸元には自らの脚を女の体に深々と突き刺した虫のような物体が虹色に鈍く光っていた。

「『辺境伯の紋章』と呼ばれるオブリビオンをご存知でしょうか」
 ルウ・アイゼルネ(マイペースな仲介役・f11945)はそう話を切り出した。
 辺境伯の紋章とは仮の名称で、正式な名前ははっきりしていない。分かっているのはブローチ大の宝石の体と不気味な触手を持ち、寄生した宿主の能力を引き上げること。
 また、宿主が死ぬと活動を停止するが、普通のオブリビオンと違い骸の海へ消えることがない、というのも特徴であろう。
「そのオブリビオンを身に宿しているオブリビオンが……いわゆる『辺境伯』と呼ばれる存在です」
 誰がばら撒いているのかは調査がついているものの、寄生されたことで辺境伯になるのか、辺境伯になる資格を得たことで寄生されるのか……その点はまだ判明されていない。
「辺境伯を倒し、紋章を数多く収集すれば、全容が明らかになるかもしれません。で、そんな辺境伯のうちの1人が動き出したことが確認されました」
 辺境伯の名はブリギット。
 涼し気な外見で凛々しく立ち回る一方で、自分の使役した獣で敵を嬲り殺す事に至上の快楽を感じるヴァンパイアである。
「彼女は病原菌や感染病を撒き散らす不衛生極まりないネズミを大量に使役し、とある街を滅ぼそうとしているようです。皆様にはその地の防衛をお願いしたいのです」
 標的となった街はワインが有名で、多くのヴァンパイア達が愛飲しているという。
 そのワインが害されてしまえば、八つ当たりや弔い合戦による余波で近隣の町村までも滅ぼされかねない……とルウは語る。
「地理についてですが、涼しい高地にあり、ブドウ畑が辺り一面に広がっている平和な農業都市です。居住地の前に関所はありますが……防衛拠点はそれだけです」
 ヴァンパイア達の間に結ばれた示し合わせによって戦乱に巻き込まれなかった故に、防備を施す必要が無かったのであろう。
 しかし良い風に捉えれば、ブドウ畑と居住地以外はほぼ手付かずでいくらでも防衛設備を作ることが出来るとも言える。
「今回の目標は3つ。1つ目はブドウやワインを傷つけるネズミ達の街内への侵入を一切許さないこと。2つ目は近くに陣取っているであろうブリギットの討伐、3つ目にブリギットが持っているであろう辺境伯の紋章の確保となります。……それでは、皆様のご健闘をお祈りします!」


平岡祐樹
 舞台となる街を書いたのが「2019年6月」という記載を見てゾッとしました。お疲れ様です、平岡祐樹です。

 今案件は拙作「悪魔の棲む蔵」(https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=7409)に登場した街を再び舞台とした防衛戦でございます。
 ちなみに前作に参加してなくても、読んでなくても進行に一切の問題はございません。
 オープニングで出した目標は沢山ありますが、やることは非常にシンプルです。自らの背後を固め、目の前の敵に対して全力で挑みかかってください!
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第1章 冒険 『辺境伯迎撃準備』

POW   :    襲撃を行うポイントに移動し、攻撃の為の準備を整える

SPD   :    進軍する辺境伯の偵察を行い、事前に可能な限り情報を得る

WIZ   :    進路上の村の村びとなど、戦場に巻き込まれそうな一般人の避難を行う

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

尾崎・ナオ
ネズミとくりゃ、ネコの出番でしょ!
と言いたいところなんですが~、人肉の味を覚えたネズミ複数なんて、さすがに正面から相手したくない。

かといって、有益なUCも所有してない。
しゃーない、真面目にネズミ対策をしますか!
王道。侵入経路の封鎖!
ふふ~ん、ゲート転送前に検索して調べたもんね☆

家の基礎と土台の隙間、壁のひび割れ、配管の付け根。
隙間は急いで塞いでしまおう。
水回りも塞ぎたい。
とにかく中に入れない。
外で走り回ってるなら狙撃も楽だしね。

そういや聞いたよ、前にこの街で猟兵が活躍したんだって?
あの時のワイン蔵は、まぁ…、大変な事になったようだけども。
事情説明はしやすそうだね。協力要請と避難を推奨しとこう。



「ネズミとくりゃ、ネコの出番でしょ! と言いたいところなんですが~、人肉の味を覚えたネズミ複数なんて、さすがに正面から相手したくない」
 尾崎・ナオ(ウザイは褒め言葉・f14041)は木の机に頭を軽く打ち付け、ごろごろと上半身だけ転がす。ネズミの天敵と言えば猫だと相場が決まっているが、全ての猫が好んでネズミを狩ると思ったら大間違いなのである。
「かといって、有益なユーベルコードも所有してない。しゃーない、真面目にネズミ対策をしますか! 王道。侵入経路の封鎖!」
 尾崎はグリモアベース経由で持ち込んできた大工道具や板を片手に人気のないジメジメとした路地裏へ歩き出した。
 特に注意すべきは家の基礎や土台の隙間、壁のひび割れに配管の付け根。隙間は急いで、すぐに劣化しやすい水回りも塞ぎたい。
 格好は悪くてもどれだけ強度が弱くても、まずはとにかく近々で中に入れないようにすることを心掛ける。外で走り回るなら狙撃も楽だ。
「ふふ~ん、ゲート転送前に検索して調べたもんね☆」
 ネズミが好んで通りそうなところには多めに板をたてかけて、釘を何本も念入りに打ち付けておく。ここで、調べなくとも野生の勘で何となく察しがつくんじゃないか、などとは言ってはならない。決していけない。
「ん? あんた何してるんだ?」
「あ、どうも、おじさん! ここの補修を頼まれちゃってねー!」
 そんな動きを不審に思って話しかけてきた農家のおじさんに尾崎は元気よくハキハキと返す。その堂々とした態度に絆され、おじさんはあっさりと警戒を解いた。
「そうか、頑張りなー」
「そういや聞いたよ、前にこの街で猟兵が活躍したんだって? あの時のワイン蔵は、まぁ……、大変な事になったようだけども」
 労いの言葉をかけて帰ろうとしたおじさんをマシンガントークで引き留める。
「そうだな、猟兵さん達のおかげで蔵に入れるようにはなったが、あれからガンガン泥棒が入るようになっちまって警備にかかる人件費が嵩むってぼやいてたぞ」
「あ、そうそう警備といえば、今動物を従えたつよーいヴァンパイア様がこっちに来てるんだってよ? これは早いところ避難した方がよいんじゃない?」
「んー。でもペットに飲ませる御仁もおるからなぁ。直接買いに来るのもいるし、どうせその類だろうて」
 尾崎の遠回しの避難勧告をまともに受け取らず、おじさんは笑って去って行ってしまった。
「むぅ……。全く信用されてない、っていうよりそんなの日常生活ですが何か、レベルのあしらわれ方だったね」
 ヴァンパイアはこの村民たちにとって商売を交わしているお得意様である、という事実はどうあがいてもひっくり返せない。だが、残念ながら今回の相手はワイン一つで引いてくれるような輩ではない。
「それを信じてくれるには、実害がないと厳しいかねぇ」
 防護は固められても人の動きを如何にして封じ込めるか。新たに降りかかった難題に尾崎はおじさんが聞こえない辺りまで遠のいたところで舌打ちをした。

成功 🔵​🔵​🔴​

名張・辿
連れが鼠の身としちゃあ、思う所のある相手だねぇ
ま、やれることやってみようかい

「アンカーラット」や現地で説得して味方とした動物に街・関所や、敵の侵攻路付近に走ってもらう
その後に【鼠回廊】を使って各所をめぐり、進軍経路や街への侵入路とその所要時間を探り、味方に連携しつつ対応してみよう
「アンカーラット」に探らせたり現地の鼠に話を聞いて、鼠ならではの小さな侵入路も把握して、塞ぐなり罠を張るなりして対策するかね
その際、現地の鼠の駆除に使えそうな情報は街の人には流さない、ということは約束しておく

旦那方も人間が居た方が都合がいいからここにいるんだろう、この時だけでいい、こっち側に味方してくれるかい?



「連れが鼠の身としちゃあ、思う所のある相手だねぇ。ま、やれることやってみようかい。『根を喰い腐らせた小路の管理者よ、ここにその図を開示せよ』」
 奇しくもネズミを使役する共通項のある名張・辿(鼠遣われ・f04894)は息を吐くとその場にしゃがみ込み、袖の下に隠れていた鼠たちを一斉に放った。
 普段なら猛烈な悪臭と不快な鳴き声を伴う鼠であるが、今回は大人しく人目のつかないように動いていく。今回はオブリビオンを倒すだけでなく人を守る依頼でもある、変なところで反感は買いたくないのだ。
「さて、どのくらいで見つけてくれるかね……っと」
 変わった視界に驚きの声をあげると、その足元には放った鼠とは別の種がいた。
 突然現れた辿の姿に驚いたネズミは一目散に逃げだそうとしたが、素早く回り込んだ発見者の鼠によって阻まれてしまった。
「おっと驚かせてすまねぇな。でも取って食うわけじゃねぇからそう身構えんなって」
 その場で胡坐を組んだ辿は笛で地面を何度か叩く。その声と音に、慌てていたネズミは落ち着きを取り戻した。
「今、ここに旦那とそのお仲間さんとは別のネズミの群れが来ている。そいつらはここの人間たちを全員食い殺すつもりだ。……ひょっとしたらあんたらも他人事ではすまねぇかもしれねぇ」
 こんな薄暗い世界ではネズミにとってブドウの実や新芽は滅多にいただけないごちそうだろう。もし人間がここからいなくなれば、人の世話がなければ生きていけるわけがないブドウは枯れていくのみ。枯れなかったとしても戦火に倒れるか資材として刈られていく運命だろう。
 そうなればここにいる贅沢な食生活に慣れたネズミやその子孫はどうなるか。ここで生まれ育ち、外を知らないであろうこの小さな脳はそれを理解することは出来るだろうか。
「旦那方も人間が居た方が都合がいいからここにいるんだろう、この時だけでいい、こっち側に味方してくれるかい?」
 話している間にも予想される敵方の進軍経路や街への侵入可能な場所とその所要時間、別のネズミの所在地まで集まってくる。そのほとんどが、さったと自分の元に来てほしいという催促だ。
 その気になれば面倒くさいから、という理由だけで現地のネズミをこのままの物量で強引に駆除して、邪魔がなくなったところで一気に塞ぐことが今の辿には出来る。
 だが、それをしないのは後ろで無言で睨みつけてくる大鼠が怖いからか、愛着が湧いてしまったからか。
「もちろん、駆除に使えそうな情報は街の人には流さない、ということは約束しておくし、つけた壁や罠も事が終わったら全部取り払う。どうだい?」
 突然の大量の情報に混乱しているのか頷くどころか固まったネズミに向け、辿はさらに条件を提示していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・響
【真宮家+雪白】で参加

12年会わない内に出世したようで。相変わらず趣味が悪いね。ブリギット。夫を殺した時は狼を使役していたが、今度は鼠かい。趣味の悪さがますます深まっているようで。・・・二度とアンタによる犠牲者は出させない。

夫が殺された時は障害物の陰に隠れて奇襲してきた。なので、商店街や蔵など隠れるのに都合のよい場所などの詳しい立地を掴む為に真紅の騎士団も動員して偵察しとく。鼠は小回りが効くから上からの奇襲も警戒しとくか。勿論、偵察の時には見つからないように【忍び足】【目立たない】で保険を掛けとく。もうアタシ達が経験したような悲劇はいらない。絶対アンタを止めるよ。ブリギット。


真宮・奏
【真宮家+雪白】で参加。

ブリギット・・・お父さんが狼に殺された時、後ろで歓喜の笑みを浮かべていた人ですか?
あの笑みは忘れたことはないですが、今度は全ての物を貪り尽す鼠を使役して歓喜を得ようとしているんですね・・・これ以上、貴方の暴虐を許す訳にはいきません!1

お父さんが殺された時は怪我をしたお母さんと幼い私を庇って無残に蹂躙されました。弱い住民がいると盾にされかねません。絢爛のスピリトーソで私自身を目印にして住民の方を建物の中に避難させます。鼠がいなくなるまで建物から出ないで下さいね。外に出ると、建物の影から襲われますから。

もう、私達家族が体験した悲劇は二度と起こさせませんから!!


神城・瞬
【真宮家+雪白】で参加

真宮のお父さんを殺した狼を使役していたのが今辺境伯を名乗るブリギットですか・・・爵位を名乗るとはいえ、獣を使って無差別に敵を殺す殺人者に過ぎない。これ以上の暴虐を防ぎましょう。

まず唯一の防衛拠点にある関所に月読の同胞を常駐させます。そして人が集まりそうな街内の出入り口に【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】【吹き飛ばし】を仕込んだ【結界術】を仕込む。橋とか蔵の所にも同じ【結界術】を展開しときます。

真宮のお父さんは僕の憧れの人。母さんと奏が体験した悲劇は、二度と起こさせませんとも。


藤崎・美雪
【真宮家+雪白】
アドリブ大歓迎

私の店の常連客(【真宮家】の皆様)が
店でピリピリしていたので来てみたのだが
…なるほどな

人もオブリビオンも、持ちうる価値観は人それぞれ
だが、価値観の押しつけは誠によろしくない
微力だが手を貸させていただくよ
理由がどうであれ、この地が蹂躙されるのは見逃せぬしな

到着したらひとまず家屋の造りをチェック
ワインの醸造施設があるなら、おそらく石造りの頑丈な家もあるのでは?
住民たちには皆、そこに避難してもらおう
避難は念のためだ

避難が終わったら防衛設備の建設を手伝うよ
同時に指定UCで影のもふもふさんたちを展開し街の外を警戒
おそらく先兵は鼠だろうからな
接近したらすぐに皆に知らせるぞ



「ブリギット……が狼に殺された時、後ろで歓喜の笑みを浮かべていた人ですか? あの笑みは忘れたことはないですが、今度は全ての物を貪り尽す鼠を使役して歓喜を得ようとしているんですね……これ以上、あいつの暴虐を許す訳にはいきません!」
 真宮・奏(絢爛の星・f03210)の拳がテーブルに思い切り叩きつけられ、空になった食器が振動によって音を鳴らす。それにカップを拭っていた藤崎・美雪(癒しの歌を奏でる歌姫・f06504)は何事かと視線を向けたが、いつもならその行動を諫めるはずの親子は厳しい表情を浮かべてはいたものの無言のままでいた。
 しばらく時が経ち、ようやく口を開いたところで耳をそばだててみると、2人の興味は奏ではない別の何かに向けられていた。
「……爵位を名乗るとはいえ、……使って無差別に敵を殺す……者に過ぎない。これ以上の暴虐を防ぎましょう」
「もちろんだよ。……が殺された時あいつは障害物の陰に隠れて奇襲してきた。なので、商店街や……隠れるのに都合のよい場所などの詳しい立地を掴む為に……も動員して偵察しとく。……は小回りが……からの奇襲も警戒しとくか。勿論、偵察の時には見つからないように……させて保険を掛けとくよ」
「もう、私達家族が体験した悲劇は二度と起こさせませんから!! 私も頑張ります!」
 何を話しているのか肝心な部分は聞こえないし、お客の個人的事情に踏み込むべきではないとわかっている。だが、この時だけは嫌な胸騒ぎがした。
「何やら店でピリピリしていたので何事かと思って来たんだが……なるほどな」
 その想いに素直に従い、時間通りに店を閉めてすぐ、真宮一家が来店する直前に話していたというルウを捕まえて事情を聴き出した美雪は深いため息をついた後に舌打ちをした。
「人もオブリビオンも、持ちうる価値観は人それぞれ。だが、価値観の押しつけは誠によろしくない。微力だが手を貸させていただくよ。理由がどうであれ、その地が蹂躙されるのは見逃せぬしな」
 頷いた美雪は先行する真宮家の後を追うように、グリモアベースを発った。

 その頃、問題の村ではその「ピリピリしていた」真宮一家がブリギットの襲来に備え、各自やれることをしていた。
「おいおい、なんだこの騎士さんは」
「すいません、お邪魔しております。……ちょっと事情がありまして、彼らをこちらに置かせていただきたいのです」
 神城・瞬(清光の月・f06558)が申し訳なさそうにそう説明すると門番たちは互いの顔を見合わせた。
「事情って……なんか聞いたか?」
「うんにゃ、なんとも」
「おうどうしたどうした」
 門番たちが胡散臭そうな瞬達に目を向けていると仕事に出る様子の農民が声をかけてきた。
「ああ、どうも。いや、こっちの騎士さん方がしばらくここに逗留させて欲しいって」
「んあ? それならさっき今動物を従えたつよーいヴァンパイア様がこっちに来てる、って大工の女の子が言っ取ったぞ。その護衛の方じゃないか?」
「え、そうなのですか?」
 意外そうな顔で問いかけてきた門番に瞬は笑顔で頷いた。
「ええ、やんごとなき身分の方なのですが機嫌を簡単にすねやすい方でして……今までそれでもめ事を起こされて、商談が破断になったことがありまして。そこで彼の扱いに手慣れた我々が臨時で雇われたのですよ」
 吸血鬼を隠れ蓑に使うのは腸が煮えかえるような思いだが、変なもめ事を起こさぬにはこの不意に降ろされた蜘蛛の糸に乗っからないわけにはいかない。
 荒げそうになる言葉を飲み込んで吐かれた嘘に、門番たちの態度は穏やかなものへと変わった。
「それならそうだと言ってくださいよ、そういう理由でしたら大歓迎ですよ」
「いや、噂になって見物される方が増えたらまた面倒事につながると思いまして……申し訳ない」
「いえいえ、そういう事情でしたら仕方ないっすよ。ではよろしくお願いしますね」
「はい、こちらこそ」
 そう言い残して関所を1人離れた瞬は周囲に誰の姿もない所にあった農具入れの建物の壁を唸り声を上げながら思いっきりぶん殴り、荒い息を吐く。
 そして落ち着きを取り戻したところで黙々と人が集まりそうな街内の出入り口や橋、蔵に触れた者へ様々な罠を放つ結界術を仕込んでいった。その火力がいつもより強めだったのは、決して気のせいではなかっただろう。

「なんだべ、あの子は」
「さあ、初めて見る者さね。変な恰好しとるなぁ」
 一方で奏は動きやすい服装になって、教会の入り口でスマートフォンをいじっていた。
 見慣れない風俗と小さな板に何者かと、近くを通りかかった村人たちが興味の目を向ける中、スマートフォンから音楽が流れだす。スマートフォンを石段の上に置いた奏は両手を頭の上まで掲げると手拍子を取り始め、歌声が始まると同時に踊り始めた。
 元気で生き生きとしたダンスと聞き馴染みのないアッパーなテンポに村人たちの視線が釘付けになる。それにつられて小さな子供たちも思い思いに体を動かし、奏ほどの上手さではないが見ていて微笑ましくなるような踊りをし始めた。
 それにつられて、盆踊りにもドジョウ掬いにも似た変なステップを陽気なおじさんが踊りだし、羞恥心のある大人は手拍子を重ねだし、辺りは特設のダンスステージとなった。
 父は怪我をした母と幼い自分を庇って無残に蹂躙され、死んだ。
 その忌々しい思い出から相手は弱い住民を捕まえたら一切の躊躇なく盾にしてくることは予想できた。そこで思いついたのは自分自身を旗印にして住民を建物の中に半強制的に避難させることだった。
 ダークセイヴァーでは絶対に聞くことがないであろう音楽に合わせたダンスを見せれば、こうなることも容易に想像できる。
 あとは、自分の体力か住民たちの興味が尽きるまで踊り続ければいい。自分がいなくとも万全の状態の母や義兄がブリギットに後れを取るわけがない。
 そう信じている奏がスマートフォンをステップの合間に取って教会の中に駆け込んでいくと、それも彼女の踊りの演出の1つなのだと思った村人たちは後を追いかけるように吸い込まれていった。
 そうして周囲に人の姿がなくなったところで真紅の鎧の騎士が教会の扉を閉め、自らの武器で封じた。しかしその音も大音量のBGMと村人自身の歓声によってかき消されてしまった。
 そうして町民達と入れ替わるように大量の真紅の騎士達が教会の前になだれ込んでくる。商店街や蔵など隠れるのに都合のよい場所などの詳しい立地を巡回し、動かせるものは動かして死角という死角を徹底的に確認する彼らを指揮する真宮・響(赫灼の炎・f00434)の表情は険しいままだった。
「12年会わない内に出世したようで。相変わらず趣味が悪いね。ブリギット。夫を殺した時は狼を使役していたが、今度は鼠かい。趣味の悪さがますます深まっているようで」
 その言葉を告げる相手がこの街にはまだ入っていないことは分かっている。それでも、響は自分自身に言い聞かせるように話し続ける。
 娘も覚えているようだが、あの時の絶望と悔恨と自他に向けられた怒りは未だに響の胸の内から消えたことは一度もない。どれだけ忙しかろうと楽しかろうと辛かろうと、ものの一度も。
 青い瞳に闘志を宿し、響はぎゅっと得物の槍の柄を握りしめた。
「……二度とアンタによる犠牲者は出させない」
 到着した美雪はその姿を見て反射的に声をかけそうになったが、全身から放たれている殺気に思わず尻込みした。
「……店の時も、一応抑えていたんだな」
 どうやら今回のことはルウが考えているよりもかなりの大事らしい。美雪は町民の避難先に響達が選んだ教会は立派な石造りでネズミ如きが突っかかった程度ではビクともしなさそうである。
「流石、いくら気がたっていてもこういう点は抜かりないな。ならば小さな傷と、不意打ちを許さないことが重要か。……『もふもふさん達、探しものをお願いしたい。頼んだよ。』」
 おそらく先兵は鼠であろう。すぐには見つからないことを想定し、もふもふした小動物の影達を街の外へ放った美雪は別の猟兵達が手掛けているであろう防衛設備の建設を手伝いにその場を離れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『悪食ネズミ』

POW   :    白骨を作る黒い波
【餌に対して集団集中攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
SPD   :    鼠算式
【仲間を呼ぶ鳴き声】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
WIZ   :    感染させる牙
【仲間を犠牲にしてでも噛み付く牙】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 主の命を受け、ネズミ達は一心不乱に進んでいく。目指すは酸っぱい臭いのする丘の上。
 ネズミ達に知性はあっても知識はない。そこが主以外のヴァンパイアにとってどのような意味を持った場所なのか知らないし、知る気もない。主の言葉に従い、ほめられて、美味しい物を食べさせてもらう未来だけしか考えてなかった。
 故に自分達の姿を必死に探して、見つけて、報告している物がいるなんて、ネズミ達は一切想像してないし、気づいてもいなかった。
 全てを埋め尽くし、飲み干そうと、灰色の波が微かな音をたてて山を登る。その先に何が待ち受けているのかも知らぬまま。
名張・辿
こうして見ると攻め手としちゃあ厄介な相手だねぇ
殲滅戦は得意じゃないんだ、同じ土俵で戦わせてもらうぜ

事前の情報収集を元に敵の進路を予想
できるだけ暗くて広さが限られる場所で待ち伏せをしかけるよ
待ち伏せ地点には事前に嗅覚を誤魔化す毒か薬剤を撒いておこうかね

頃合いを見て【遺物崩し】で無数の鼠と化して奇襲をしかけるよ
動物と話す技能を使って、裏切りが出たとか罠だとか叫んだりして混乱と恐怖を与えられることも狙ってみるかね
上手く仲間割れまで引き起こせれば万々歳だけど、無理はせず適当なところで退却するよ

ビーストマスターとしちゃあこういう戦い方は良くないんだろうが、今回は特例だねぇ
遠慮はしないぜ、ご同輩



 比較的に高めな木に登った辿は事前の情報収集を元に予想された敵の進路の渦中かつ、できるだけ暗くて広さが限られる場所で薬品を撒いていた。
 風に乗って辺りに広がるその効能は嗅覚を誤魔化す物。これからやる手には必要不可欠な存在だった。
「ビーストマスターとしちゃあこういう戦い方は良くないんだろうが、今回は特例だねぇ。遠慮はしないぜ、ご同輩」
 すでに件のネズミ達は山道以外の斜面を通り、麓から頂上の村へと向かっていることが知らされている。人1人載っても折れない枝から飛び降りた辿はフード越しに呟いた。
「こうして見ると攻め手としちゃあ厄介な相手だねぇ。殲滅戦は得意じゃないんだ、同じ土俵で戦わせてもらうぜ」
 その瞬間、辿の服の中で何かがもがき始め、つられて辿の体が縮み始めた。しかしその表情に恐怖や苦痛の色は無い。
 手が足が頭が服の中に埋もれ、開いた部分から次々と鼠達が這い出てくる。それは服の中の膨らみが無くなるまで続き、最後に出て来た鼠は匂いをかぎ、毒の効能が自分には効いていないことを確かめた。
 他より毒に耐性はあるはずだが、これがネズミに効かない程度に薄まってしまっていたら作戦に支障が出る。だが初見の相手では出たとこ一発勝負の場面、贅沢は言えない。
 そうこうしている間にもネズミ達は坂を駆け上がっている。その足音は間近に迫っていた。
 鼠達は前を向くと走り出し、正面からネズミ達の群れにぶつかり混ざりつつ思い思いに叫び出した。
「皆大変だ! あの町にいっぱい罠や敵が控えている!」
「え!」
「裏切り者が出たんだ! 誰かがチクったせいで傭兵が集まったんだ!」
「俺たち以外はみんなやられた! このまま行ったら危ないぞ!」
「そんなぁ!」
 姿形が似ていて、鼻が利かない状況で敵味方の判別は出来ないだろう。このまま尻尾を巻いて逃げ出すことを期待したが、一部のネズミ達の反応は思ったような物では無かった。
「そっか、ボク達の食事が増えたんだね!」
「やったやった、傭兵って美味しいのかな? 痩せ細った老人は美味しくないんだよね!」
「何言ってるの、僕達の仲間がもうやられてるんだよ! 行っても同じ目にあっちゃうよ!」
「一回隠れるか、仲間ともっと合流してから行こうよ!」
「そんなことしたら食い扶持が少なくなっちゃうよ! 早く行こうよ!」
 積極派と慎重派が言い合いを始める中、鼠達は気付かれないように静かにその場から下がり出す。
 行こうが行かまいがどの群れも村まで辿り着いてない以上、ここで立ち止まってしまった時点で足並みはズレている。
 このまま押し続けてさらに亀裂を広げるのもいいが、そこからこちらのことを疑われ出したら面倒くさいことになる。
 同士討ちに至れそうでも無理はせず、鼠達は茂みの中に消えた。

成功 🔵​🔵​🔴​

真宮・響
【真宮家+雪白】で参加

さて、防備は充分整えた。後は鼠達を追っ払うだけだね。アンタらも不幸だねえ。ブリギットのような奴に使われなきゃ駆除されずに済んだのに。まあ、この街の人達の為に容赦する気は無いが。

鼠の攻撃は当たらなければいい。奏に前面の抑えを任せて【目立たない】【忍び足】で敵の群れの背後を取る。背後を取れたら【怪力】【気合い】【範囲攻撃】を併せた竜牙で攻撃。敵の反撃は【戦闘知識】【見切り】【残像】で凌いだ後【カウンター】で【衝撃波】を叩き込む。

近くにいるんだろう、ブリギット。出て来な!!仕留め損ねた獲物が、ここにいるよ!!


真宮・奏
【真宮家+雪白】で参加。

(教会の安全を確かめて)さあ、行くのは出入り口の関所ですかね。兄さん1人で抑えるのは大変です。鼠達は主に従っているだけのようですが、その主がとんでもない輩ですので、進行を止めさせて頂きます。

鼠はとにかく多いことが予想されますので、風の妖精騎士で手数を増やします。その上で【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【拠点防御】で防御をを固め、入り口に立って鼠達の侵入を阻止。もし防衛線が突破されそうになったら【衝撃波】【範囲攻撃】で吹き飛ばします。

ブリギット、この状況見てるんでしょう?出て来なさい!!あの時私達を殺さなかった事、後悔させてあげます!!


神城・瞬
【真宮家+雪白】で参加

(鼠の群れを確認)来ましたか。隙の無い進軍は流石真宮のお父さんを殺した元凶が使役するだけの事はありますか。でもここまでにして貰いましょう。

月読の同胞は隙間から侵入されないように警戒に当たらせ、僕は【オーラ防御】を展開した上で【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】を仕込んだ【結界術】を【範囲攻撃化】して展開、結界を突破してきた鼠がいれば、【衝撃波】【吹き飛ばし】で攻撃。

12年前に真宮のお父さんを殺してから、ブリギットは動物を使役して数多くの殺戮をしたんでしょうね。その暴挙、今日で終わらせます!!


藤崎・美雪
【真宮家+雪白】
【WIZ】
アドリブ大歓迎

鼠の接近を先に把握できたのは僥倖だな
気付かれる前にさっさと駆除して本命を引きずり出すか

と偉そうに言っているが
私、攻撃手段ひとつもないのだよなあ
だから手伝うとしても、私ができるのは
歌うかもふもふさんを呼び出すだけなのさ
はっはっは、ぜんっぜん前線に出れぬ店主ですまんな

というわけで「歌唱、優しさ」+指定UCでも87体のもふもふ兎召喚
可愛らしい兎を皆の肩に乗せて強化・回復を担ってもらう
私は念のため周囲を監視
万が一鼠の群れの侵入を許した場合は大声で知らせよう

皆、くれぐれも熱くなりすぎるんじゃないぞ
家族の仇はこの後に控えておるのだろう?
逸るあまり、判断を誤るなよ?



 喉を潤す水が入れ物の中から無くなったのをアピールしてから奏は入口のそばにいた恰幅の良い女性に話しかけた。
「すいません、ここに水が飲めるところはございますか?」
「いんや、井戸から汲んでくるしかないべさ。出て右に行ったところかね」
「ありがとうございます、ちょっと汲んできますね」
 外にしかないのは聞かなくとも分かっている。しかしあえて聞いたのは黙って出ていこうとすれば村人に怪しまれてしまうからだ。
 事前に決めていた合図通りに叩いてから外に出る。奏が扉を閉めると影に隠れていた真紅の騎士が小さく無言で会釈した後に、自らの武器で扉を閉じた。
 窓は踏み台ありでも届かない位置にあり、唯一の出入口である扉は内からは押してでしか開かない以上、村人はもう教会から外へは出られない。そしてネズミしか通れなさそうな小さな隙間は別の猟兵によって閉じられたか、騎士が待ち構えている。教会以外の屋敷やあばら家も同様だ。
 騎士の姿に気づいた村人はいつの間にか自分が置かれていた状況に混乱しているだろうが、安全は確保された。
「さあ、行くのは出入口の関所ですかね。兄さん1人で抑えるのは大変です。鼠達は主に従っているだけのようですが」
「急げ、どうやら相手はもう山を登ってるようだぞ」
 上から声がかけられ、奏はすぐに上を向く。そこには屋根の上に座って足を揺らす美雪の姿があった。
「鼠の接近を先に把握できたのは僥倖だな。だがあまりに多すぎる。この村を包囲出来るほど集めてきてるとはさすがに思わなんだ。……気付かれる前にさっさと駆除して本命を引きずり出せるか」
「美雪さん!?」
「……と偉そうに言ったが、私、攻撃手段ひとつもないのだよなあ。はっはっは、ぜんっぜん前線に出れぬ店主ですまんな」
 けらけらと笑う美雪に奏は困惑する。ルウとの会議の時、美雪の姿はなかったからだ。
「だから手伝うとしても、私ができるのは歌うかもふもふさんを呼び出すだけなのさ」
 美雪が指を鳴らすと奏の肩にもふもふな兎が飛び乗り、そのまま首に巻き付く。いつもなら無心でその肌触りを堪能したいところだが、今の状況ではそれは叶わない。しかし大好きな存在によって逸る気持ちも削がれたのを見て取った美雪は微笑んだ。
「皆、くれぐれも熱くなりすぎるんじゃないぞ。家族の仇はこの後に控えておるのだろう? ……逸るあまり、判断を誤るなよ?」
「……はい!」
 美雪の後押しを受けて奏が全速力で向かう頃、どこからともなく現れたかと思ったら胡坐をかいていた足の間に潜り込んできたもふもふ兎を撫でながら木の上に陣取っていた響は丘を駆け上がってきていたネズミの群れの最後尾を見届けていた。
「アンタらも不幸だねえ。ブリギットのような奴に使われなきゃ駆除されずに済んだのに。まあ、この街の人達の為に容赦する気は無いが」
 そしてネズミの流れが途切れたところで兎の頭を叩き、この場に留まっているように言付けてから飛び降りると得物の槍をすかさず振り回していく。持ち前の怪力と気合いが宿った槍の刃は近くにあった大木の幹やネズミ達をまるで骨を事前に抜かれた料理用の生肉のように軽快に切り飛ばしていった。
『この一撃は竜の牙の如く!!喰らいな!!』
 ブリギットの指示で、前にある街にしか意識が向かっていないネズミ達は後ろで吹き荒れる旋風に一切気づかずにひたすら前に進む。しかしそれはこの旋風から逃れる最適解の一つであった。
 なぜならネズミは葡萄の木の下を悠々と駆け回ることが出来るからだ。
 170近い響の頭が枝にぶつかることはないものの、それよりも低い葡萄の木と長い槍の相性は悪く、ちょっと横に振り回しただけでもこの街の商売道具に傷をつけることになってしまう。害獣を排除するものが害を与えてしまっては本末転倒だ。
 故に響はネズミ達がその下をくぐられる前に蹴りをつけなければならなかったし、そのことを理解していた。だがネズミに四方八方から襲われ、骨だけにされないようにするには最後尾から追いかけるしかない。自分の手で全てを片付けるには非常に悪い状況であった。
 しかし関所の周りはこの程度の群れにやられてしまうほどヤワではない愛すべき子供達と子飼いの騎士達が何十人も控えている。例えここで数百体打ち漏らしたとしても、きっと止めてくれることだろう。その信頼が響に無茶をさせず、この手を取らせる一つの決め手となった。
「近くにいるんだろう、ブリギット。出て来な!! 仕留め損ねた獲物が、ここにいるよ!!」
 ネズミの血で頬や赤いマントをさらに上塗りしながら、響は勇ましい雄たけびを上げる。ここでようやく遅ればせながら気づいたネズミ達が驚き、駆ける足を速める時にはもうすでに彼らの体は安全圏に入っていた。
 関所の前に陣取っていた瞬は、遠くの方から聞こえてくる義母の声と先頭を走っていただけで響の襲撃から逃れられた葡萄畑の木々の間を駆け抜けるネズミ達に厳しい目を向けていた。
「来ましたか。隙の無い進軍は流石真宮のお父さんを殺した元凶が使役するだけの事はありますか。……でもここまでにして貰いましょう。12年前に真宮のお父さんを殺してから、ブリギットは動物を使役して数多くの殺戮をしたんでしょうね。その暴挙、今日で終わらせます!!」
 橋を渡ろうとしたネズミがそこに仕掛けられていた結界に引っかかり、体をバラバラにしながら後方へ吹っ飛んでいく。その肉片に貪りついたネズミ達は川に飛び込み、仲間を犠牲にしながら渡ろうとしてきた。
「この流れを渡ってくるか……だがその程度の動きで渡れると思うな!」
 水の流れに逆らう故にその動きはさらに遅くなっている。そこへ瞬が放った衝撃波や月読の騎士が放った矢が突き刺さった。
 しかし増えていく死体は川のあちこちにある岩に引っかかり、流れを堰き止め、後に続くネズミ達の助けとなっていく。だからといって決壊させたとしてもネズミ達の体がこれ以上流れることは無い。きっと関所の壁に対しても同じ手を使ってよじ登ってくる気だろう。
「くそっ……数が多すぎる……!」
『風の妖精さん、力を貸して下さい!!』
 次第に押され出す中、風を纏う妖精騎士が現れてびしょ濡れになったネズミ達をすでに積み上がり始めていた死体ごと向こう岸に吹っ飛ばした。
「兄さん! 間に合った!?」
「村の人は?」
「全員閉じ込めた!」
「よし!」
 関所の壁というには低い塀から勢いよく飛び降りてきた奏に呼びかけながら瞬は川岸へ、橋にかけた物と同じ結界をかける。
「兄さん、その結界は他の場所には」
「いや、仕掛けてない。泳いでくることを失念していた……」
 苦々しい表情を浮かべる瞬に奏は頷き、その背中を押した。
「分かった、ここは押さえてるから結界を張ってきて。美雪さんが全方位から来てるって」
「美雪さんが? ……分かった、ここは頼む」
 ここにいるとは思っていなかった意外な人物の名前と奏の頭の上から飛び移ってきた癒しのもふもふに驚きながらも、瞬は言われた通りに結界の範囲を広げていく。その間にも奏は妖精の力を借りながら関所を固め、結界にネズミが触れる前にその体を吹き飛ばしていった。
 流石に兄妹二重の結界でも耐用限界はある、発動させないに越したことはない。何より、これに引っ掛けたい相手はこの先で待っているはずだ。
「ブリギット、この状況見てるんでしょう? 出て来なさい!! あの時私達を殺さなかった事、後悔させてあげます!!」
 奏の大きな叫び声に反応し、ネズミ達は顔を見合わせて鳴く。しかし再び正面を向くと再び橋や川に突撃していった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

テケリリケテルリリ・テケリリテケリャア(サポート)
『テケリャア!!!』
バイオモンスターのフードファイター × 四天王
年齢 101歳 女
外見 243cm 黒い瞳 赤茶の髪 白い肌
特徴 特徴的な声 声が大きい 実は美形 虐殺を生き延びた 奴隷だった
口調 テケリャア(私、呼び捨て、言い捨て)
お腹が減ると ケテルャア(私、呼び捨て、言い捨て)
常に飢餓感に苦しんでいます
てけりゃあ叫んで捕食したり怪力任せに潰すのが得意です
不定形の化け物として描写してください
連携歓迎です



 歌う声が人気のない街に響き渡る。それに合わせるように家の中から壁や扉を叩く音、怒声や焦り声が聞こえてきたが、外にいる猟兵や騎士たちは気にすることなく無言で押さえつける。
 その一方で踏み台にされた物が潰れる音を響かせながら、街の外周を取り囲む壁を乗り越えてきたネズミ達が街に解き放たれる。ネズミ達は手あたり次第に露店で売れ残った柔らかそうな布や野菜に噛みつき、咀嚼する。
 だがこんなものでは物足りない。こんな山を登ってきた後は血が滴る肉でなければ食い気が足りない。こうなるのであったら、道中で見かけた白いもふもふでも襲っておけばよかったと思うが後の祭り。
 街の中にいる赤い鎧の騎士の周りは堅そうだし、屋根の上で歌っている女には届かなそうだし、弱そうな人間が詰まっている建物に入る道はどこにもない。
 途方にくれている中で、赤茶髪の女性は紫色のドレスを舗装もろくにされていない土の道の上を歩いていた。
(ああ。これが、悪食のネズミか)
 女性――テケリリケテルリリ・テケリリテケリャア(ロード・ケテル・f16871)は仮初の目を細め、こちらに迫ってくる大量のネズミ達を一瞥する。
 見た目だけに気を取られ、その本性を見出せぬまま本能のままに襲い掛かってくる彼らの姿は、なんて哀れで滑稽な物か。
 だが、だからといって愛でるつもりはない。ここには、そんな物相手にも命を落とすか弱きものが多く住んでいるのだから。
「テケリャア!!」
 嚙り付こうとした部位が桃色にも紫色にも玉虫色にも……いろんな色が混ざったような液体状となってネズミの口を塞ぐ。
 そしておもむろに持ち上げると勢いよく地面に叩きつけ、周囲にいたネズミ達ごと地面に沈む血だまりへと姿を変えさせた。
(人も獣も関係なく食べてきたにしては、味が雑多だ……。見た目だけは丸々と太っておるのにな)
 握りしめていたが故に、形が残った鼻の部分を取り込んだテケリリは体を伸ばさないことにした。
 彼女はいつも空腹だ。でもだからといって腹にたまれば何でも良いというわけでは決して無いのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『獣使い『ブリギット』』

POW   :    まずは動きを止めるんだよ!!
【使役している獣達の突撃攻撃】【使役している獣達の牙の一撃】【使役している獣達の伸し掛かり攻撃】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
SPD   :    お前達!!徹底的に痛めつけてやりな!!
【使役している獣達】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    確実に仕留めるんだよ!!
【的確な指示】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は真宮・響です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「……愉快そうだな」
 人の悲鳴の一つも聞こえてこないくせに楽しげな歌声と肉が潰れる音は聞こえてくる街を見つめ、ブリギットは鼻で笑う。
「所詮ネズミはネズミ。弱き者を一撃で葬れぬ者は、強き者の前では無力か。一対多なら勝てるとはやはり絵空事だな」
 ブリギットはネズミ達が束となってよじ登った外壁を鞭で軽く叩く。その瞬間、外壁は土埃を立てることなく木っ端微塵となった。
「哀れなお前たちのために、この私のしもべが道を切り開いてやろう。ゆけ」
 ブリギットが顎で指図すると、森の中から狼が飛び出してネズミの死骸を潰しながら街中へ駆け出していく。しかしブリギットはその後に続かず、背中を向けた。
「さて、私は入口に向かってやろうか。さっきから死にぞこないの五月蠅い女どもの金切り声がうるさいからな……。せっかく拾った命を無駄にするその行いがどれだけ愚かなことか、その魂に刻み込んでやろう」
 彼女のつぶやきは、見張り役に届いたか否か。
火土金水・明
「あなたにこの街を蹂躙させる訳にはいかないので、邪魔をさせてもらいます。」(攻撃は味方を巻き込まないよう敵だけを攻撃します。)
【SPD】で攻撃です。
攻撃方法は、【継続ダメージ】と【鎧無視攻撃】と【貫通攻撃】を付け【フェイント】を絡めた【シルバータイフーン】で、『獣使い『ブリギット』』と使役されている獣達を纏めて攻撃します。相手の攻撃に関しては【残像】【オーラ防御】【見切り】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「少しでもダメージを与えて次の方に。」
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。



「逃がしはしませんよ」
 不意にかけられた声にブリギットは立ち止まり、怪訝そうに振り返る。するとそこには巨大な剣を振りかぶった火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)が立っていた。
「あなたにこの街を蹂躙させる訳にはいかないので、邪魔をさせてもらいます。……『駆け巡るは銀色の風の如く』!」
 凄まじい風切り音と共に振るわれたそれは、にじり寄ってきていたネズミや狼を容易く両断する。それによって生じた真空刃がブリギットにも襲い掛かったが、手元で勢いよく回すことで、巨大な盾っぽく構えた鞭でそれを簡単に受け止めてしまった。
 回し終わって手元に戻した鞭の表面にも、自分の服に何の傷もつかなかったためか、明の視界が獣の臓物で遮られ、刃を返し切る前にブリギットは大した興味も持たなかった様子で外に引き返していく。
「待ちなさい!」
 その様をすぐに追いかけにかける明の声を聞いてか、ブリギットは鞭をおもむろに別の外壁へ今後は瓦礫が生まれるようにぶつけ、自分との間に障害を作る。
 そして手首を返して地面を叩くと森に向かって大声で叫んだ。
『お前達!! 徹底的に痛めつけてやりな!!』
 茂みの中からネズミに狼に兎、馬と様々な動物達が出てきてブリギットの横を次々に通り過ぎていく。そしてそれらは瓦礫をものともせず広げられた外壁の穴を超えて街の中に潜入してくる。
 このまま動物達を放っておいて追いかけるのは流石に不味いと、明はその場で足を止めて大剣を振り回して簡単な防衛線を形成した。
 その間にも騒ぎを聞きつけ、あちこちから他の猟兵や騎士たちが集まり、あちこちでぶつかり合う音や鬨の声が発されていく。
 閉じ込められたことに気づいた最初こそ抵抗していた住民達も、突然屋外で始まった戦闘に顔をこわばらせて窓際から部屋の中央へと寄っていく。しかし外から一切外れない彼らの目線を窓越しに感じつつ、口を拭った明は眉間に皺を寄せた。
「まさか、本当に壁を破壊するだけ破壊して逃げた……?」
 動物の対処に追われているうちに、明の視界内にブリギットの姿は無くなっていた。
 これだけの乱戦、どこかに紛れて不意打ちをかけることは容易に出来たはず。動物が大事で、相打ちにしたくないと感じているならこんな時間稼ぎの捨て駒のような扱いをするわけがない。
 ルウの情報から逆算して、ネズミの死骸から感染病の菌をまき散らすだけでいいと考えているのかもしれない。しかしこれだけ猟兵がいたら広まる前に消毒されたり特効薬を持ち込まれて治されることを相手が推測できないわけがない。
 だが、辺境伯レベルならこれ以上の侵略は無意味だと判断して適当に暴れるだけ暴れたのか、いやそれにしては注ぎ込んできた動物の数が多すぎる。
「いや、そんなはずはありません。きっと何か相手に考えが……」
 多くのオブリビオンと対峙した経験から、様々な可能性が脳裏を掠めては蓄積していく。そんな注意力散漫になっている明の元に、壁を影も形も残さないほどの威力を持つ鞭の一撃は最後まで放たれることはなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

キア・レイス(サポート)
大得意 隠密・潜入・暗殺・遠距離攻撃・籠絡
得意 偵察・探索・支援・制圧・集団戦・時間稼ぎ
不得意 目立つ・コミュニケーション・ボディタッチ・格闘戦
特技(アイテム装備時)ピアノ演奏・歌唱・二輪車操縦

幼い頃から吸血鬼に飼われていた奴隷
吸血鬼の魔力を少量ながら持ち一部UCはそれを元に発動している
現代火器による戦闘と斥候・諜報・盗賊行為が得意な他、色香を使った誘惑が得意技
反面普通の人と関わったことが少なく踏み込んだ会話が苦手、他に不用意に身体を触られると不快感を覚え一瞬身体が動かなくなる

アドリブ歓迎
UCや装備品の説明文は読んで頂くと書きやすいと思います
また一部UC使用時の口調は覚醒時を使用してください



 ネズミで埋もれた堀の上を、ブリギットは何の感想も抱かずに歩いていく。その姿を外壁よりも高い屋敷の屋根に寝転びながらキア・レイス(所有者から逃げだしたお人形・f02604)はライフルの照準の中央に捉えていた。
『邪魔さえなければ外さない、それが難しいのだがな…』
 そうポツリと呟きながらサプレッサーから放たれた弾丸はしっかりとブリギットの側頭部へ向かう。
 だがその間に突如として割り込んできた白いハトの群れが遮り、赤い血と白い羽が辺りにばらまかれた。しかしキアは目を見張りながら歯を食いしばるとその場から後退し、視界から外れるや否や膝立ちになった。
 ハトがぶつかるよりも先に、ブリギットはこちらをしっかり見ていた。あれならば、おそらく脳髄がぶちまけられる前にあの鞭で叩き落されていたかもしれない。いや、気づいたからこそハトを向かわせたのか。
「……弾丸じゃない、いつ気づかれた……!?」
 ただ一つ想定外だったのは今いる場所がブリギットの対角線上にある建物だということ。外壁にも別の建物にも遮られたあそこから何の道具も無しにこちらを把握することは無理である。
 それにブリギットが弾丸に気づけたとしても、鳥を転移させることは出来ない。つまりキアが撃ってくるよりも前に鳥達に指示を出して、狙ってくるであろう場所とタイミングに合わせてきたということだろう。
「自ら攻められるために身を晒したとでもいうのか……? ふざけるな」
 その仮説を裏付けるかのように、猛禽類の群れが森から飛び立って四方八方キアに向かって襲い掛かってくる。キアは銃床にグレネードランチャーを素早く装着させると一方に向けて放った。
 その榴弾が炸裂すると凄まじい閃光が辺りを包み、一時的に周囲が無音となる。瞳孔をいっぱいに見開かせられた鳥達はキアのいる方向を見失いながらも、最後の記憶を頼りに突っ込み続ける。
 しかし何の考えも持たない突進は同士討ちや見当違いの物体との衝突を招く。その光景は痛ましい物ではあったが、それがブリギットの配下である以上気持ちが揺らぐことは無い。
「お前達は指示通りに飛んできただけかもしれないが……私達と敵対することを選んだあの飼い主を恨むんだな」
 キアはライトマシンガンを構えると、その場で一回転しながら弾丸を辺りにばら撒いて残りの鳥達を撃ち落としていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

真宮・響
【真宮家+雪白】で参加

そりゃあ、夫を殺した仇がいれば叫びたくもなるさ。まあ、12年越しにようやく夫の無念を晴らせる。今度こそ逃さないよ。絶対に。

アタシは後方から入口に向かう形になるか。この状況を利用しない手はない。真紅の騎士団と子供たちに敵の引き付けを任せ、【戦闘知識】で戦場の様子を把握しながら【忍び足】【目立たない】で敵の背後をとる。

油断したね。ブリギット。アンタ自身を狙われるとは思ってなかったろう。まあ、獣はくるだろうから【残像】【見切り】【オーラ防御】で凌ぐ。攻撃に合わせて【カウンター】【衝撃波】を打ち込むか。止めは【気合】を込めて【グラップル】【怪力】で足払い→正拳突きといくか。


真宮・奏
【真宮家+雪白】で参加

ネズミの侵入を許しましたか・・・早く使役主を叩きましょう。ブリギットの性質を知り尽くしてる者なら入口になんか罠を仕込んでいることは予想できたでしょうに。余程私たちの声が嫌だったんでしょうか。

本命の攻撃はブリギット自身への母さんの攻撃です。敵の引き付けは私と瞬兄さんでやりましょう。【オーラ防御】【武器受け】【盾受け】【拠点防御】で防御を固めて獣達の攻撃を受け止めながら彗星の剣と【衝撃波】で敵を押しやっていきます。積極的に攻撃してブリギットと獣の攻撃の注意を母さんから逸らすことが目的です。

もう12年前の私ではありませんので!!獲物も成長するものです。覚悟!!


神城・瞬
【真宮家+雪白】で参加

まさか堂々と入口から来るとは思ってませんでしたね。まあ、獣とブリギットの連携は結界を突破される可能性はありますし。12年前の悲劇は繰り返させませんとも。

念の為【オーラ防御】しといて、更に念を入れて【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】【鎧無視攻撃】を併せた【結界術】を【範囲攻撃】化して敵に向けて展開。

更に【二回攻撃】を併せた【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】【鎧無視攻撃】を仕込んだ氷晶の矢で追撃。更に【衝撃波】【吹き飛ばし】でダメ押し。あわよくば【武器落とし】【誘導弾】でブリギット本体を狙います。

油断しましたね。ブリギット。貴女の凶行はこれで終わりです!!


藤崎・美雪
【真宮家+雪白】
【WIZ】
アドリブ大歓迎

響さん
ご主人が討たれて、12年なのか
…それは長かったな
せめて、私が見届けよう

ブリギット
堂々と入って来た挙句、響さん達を死に損ないと嘲るとは
ずいぶん余裕があるとお見受けする
だが、我々人間の復讐心と、12年という年月は甘く見ないほうがいい
…人の想いの強さを己の身で思い知るが良いよ

シンフォニックデバイスを通し、鼓舞と回復の歌を歌おう
「歌唱、優しさ、祈り」+【鼓舞と癒しのアリア】だ
真宮家の復讐の完遂を願って全員を鼓舞し
さらに私の歌で全て癒すとの想いを籠めて歌う
最初から回復対象を増やすので疲労は覚悟の上
鼠が来たら気合で避けるしかないがな

…これで復讐は、終わりか



 凄まじい光に目を眩ませられながら、美雪は高見の見物を止めて滑り降り、一階の窓を守る屋根に着地した。
「急げ急げ急げ……!」
 これだけの騒ぎ、真宮一家が最悪の事態を想像して中に戻ってきてしまう可能性は十分に考えられる。その場合、自ら開けた場所から入らずに正面へ回り込んできているブリギットに背中を突かれることになってしまう。
「こっちに来ないように、止めなければ……!」
 そこから飛び降りた美雪は衝撃で痺れた足が戻るのも待たず、獣の死体が転がる道を関所の方へ走り出していった。
 一方で内側からの騒ぎを背中から感じた奏と瞬は厳しい表情を、固く閉じておいた関所の扉に向けていた。
「ネズミの侵入を許しましたか……!」
「ですが真紅の騎士の方々と他の方々が耐えてくれるはずです」
 だが共に戦ってきた者達の実力は分かっている。故に、ネズミ達に何らかの援護がついたとしても街の人々が蹂躙される心配はしてなかった。ただある意味心配だったのは。
「ブリギット、うっかり倒されたりしないでしょうか」
 ここで待っている間に、彼女が倒されてしまうことであった。
「もし危なくなったら中に残っているという美雪さんが伝えてくれるでしょう?」
「だけど、私たちのためだけに皆さんを待たせるわけにはいかないし……それで私達みたいな人が万が一出ちゃったら」
「その心配は必要ない」
 後ろからかけられた声に2人は咄嗟に振り返る。そして奏は息を飲むと万感の想いを込めた声を漏らした。
 12年経ってその声を忘れようと、あの姿はしっかりと覚えている。
「ブリギット……!」
「おやおや、覚えていただけたとはありがたい。しっかしあの時あんな小さかった子供がここまで大きくなるとは、時の流れとは非情なものだねぇ」
 両腕を広げたブリギットはまるで遠方に住む親戚のような、懐かしむ声を上げる。しかしそれに応じれるほどの心の余裕は無い。
「……まさか堂々と入口から来るとは思ってませんでしたね」
「あなたを知り尽くしてる者なら入口になんか罠を仕込んでいることは予想できたでしょうに」
「ああ、予想出来た」
 奏と瞬の感想に、ブリギットは嘲笑を浮かべる。
「だが、それを潰されてこそ絶望はさらに深い物となる。復讐は正面から叩き潰してこそ、面白いだろう?」
「ブリギット……もう12年前の私ではありませんので!!」
 怒りで震える声を上げた奏の周りにブレイズセイバーが何十本と浮かび上がり、その切っ先をブリギットへ向ける。
「12年前の悲劇は繰り返させませんとも」
 瞬は怒りのあまり深入りしてしまった時のことを考えてオーラの防壁を展開し、更に念を入れて麻痺に盲目、部位に装束の破壊も併せた結界も展開する。
「獲物も成長するものです。覚悟!!」
 一斉に飛び掛かったブレイズセイバーをブリギットは鞭を回して叩き落しながら蹴り飛ばす。まるで曲芸のような派手な動きを繰り返しながら、ブリギットは問いかける。
「それにしても、貴様の親はどうした。先程まであんなに騒いでいたのだからいるのだろう? 尻尾を巻いて逃げ……るわけがないか、私の可愛い可愛い獣達とじゃれてでもいるのか?」
「真正直に教えるとでも!」
 そんな中、内側から美雪が扉を押し開ける。瞬と奏の姿を認めてホッとしたのも束の間振り返った瞬が腕を振るう。
 そこから放たれた結界は美雪の後ろから音もなく迫ってきていた狼の頭を粉々に砕いた。
「大丈夫ですか美雪さん!」
「おっと……すまないな。勝手に追ってきて助けられるとは情けない情けない」
 口で言うほど反省してない様子で、美雪は頭から狼の血を被りつつも笑う。響が来たとでも思ったのか、視線を奏から外したブリギットは見るからに残念そうな表情を浮かべた。
「おっと、ブリギットさんと言ったかはじめまして……だな。堂々と入って来た挙句、響さん達を死に損ないと嘲るとは。ずいぶん余裕があるとお見受けする」
「はっ、ズタボロの姿で男に守ってもらってばかりの女は死に損ない以外の何だという。その時の絶望した顔、脚さえ動けばこんなことにはならなかったという後悔の色……ああ、今でも思い出しただけで滾ってしまう」
「ふざけないで!」
 奏の勢いを増した攻勢をあしらいつつ、ブリギットは続ける。
「だから、漬け込むことにしたのさ。万全の体勢で、自信を持って、私の前に立ったのに、今まで必死に積み重ねてきた物が何の意味もなかったことをその身に刻まれて死に至る……ああ、想像するだけでも笑みが零れてしまうよ」
 隠しきれない笑みを顔からも声からも発するブリギットを吹き飛ばすべく、剣から衝撃波が放たれる。しかし吹っ飛ばされたのは援護するために集まってきていた動物達のみであった。
「これはこれは、想像以上の外道だね。だからこそ辺境伯なんて大層な身分にありつけたのかな」
「さあ、私は知らないな。でも、一向にあの女は姿を見せてくれないねぇ……。そうだ、君たちの体を教会の先端に突き刺して晒しでもすれば流石に現れてくれるかな?」
「その必要はない」
 いつの間にか後ろを取っていた響の槍が突き出される。それをブリギットは体をくねらせることで避けつつ、振り返った。
「ああ、やっと見つけた。君の大声、反対側からもしっかり聞こえてきたよ」
 そして鞭を槍に巻き付け、一気に引き寄せる。成すがままにブリギットに寄せられた響は歯を見せた。
「そりゃあ、夫を殺した仇がいれば叫びたくもなるさ。まあ、12年越しにようやく夫の無念を晴らせる。……今度こそ逃さないよ。絶対に」
 そして握りしめた拳をその憎たらしい顔面に叩き込もうと振るう。しかしブリギットは胸を反らしてそれを避けた。
「ご主人が討たれて、12年なのか……それは長かったな」
 響の積年の恨みの声を聞き逃さなかった美雪は沈痛な面持ちで頷くと、冷たい視線をブリギットへ向ける。
「ブリギット。我々人間の復讐心と、12年という年月は甘く見ないほうがいい。……人の想いの強さを己の身で思い知るが良いよ」
 美雪はシンフォニックデバイスを取り出すと、息を吸って吐き、口角をあげる。
「鼠が来たら気合で避けるしかないがな」
 そして紡がれるのは真宮家の復讐の完遂を願って全員を鼓舞し、全て癒すとの想いを籠めた歌。その欲張りセットな効力による疲労や自分が無防備になってしまうには覚悟の上だ。
 そんなBGMの中で戦うブリギットと響の周りを絶えず剣が舞い踊り、飼い主を援護しようとしても足止めを食らわされる獣達が衝撃波で吹き飛ばされていく。
 ブリギットの怪力によって振るわれる鞭で飛ばされた槍が剣の柄に跳ね返り、結界に乗せられて響の手元へと戻る。
「ははは、良い助っ人を呼べてよかったねぇ! 君の愛しい愛しい旦那様も草葉の陰でよろこんでいるんじゃないか!」
「私の自慢の息子だ、旦那に負けず劣らずの真っ直ぐな子に育ってくれたさ!」
 ちゃっかり義息子自慢が入ったところで、その当の息子は氷晶の弓矢を引き絞る。その動きをブリギットは把握していた。
『さて、これを見切れますか⁉』
「ああ、見切れるさ」
 ブリギットは近くにいた鳥やネズミ達に飛んできた何百本もの矢を受け止めさせる。その肉の壁をすり抜けてこれた矢も軽快なステップで全て避けられて地面に突き刺さる。
 だが刺さるだけで留まるかに見えた矢は土を凍らせ、粉砕し、ブリギットのいるところまで崩落させる。
「なっ……!?」
「油断しましたね。ブリギット、貴女の凶行はこれで終わりです!!」
 足場がなければどれだけ身体能力が強化されているとはいえ、翼がなければ鞭を振るうために足を踏ん張らせることも、空気を蹴って空を駆けることもできない。
 落ちようとするブリギットの胸倉が握られ、引き寄せられる。間近に迫る響の顔には獰猛な笑みが浮かんでいた。
「油断したね。ブリギット。アンタ自身を狙われるとは思ってなかったろう? 今度は、避けさせない!」
 最初とは逆の立場となった響は歯を食いしばるとブリギットの胸元で鈍く光る辺境伯の紋章を全力で殴りつけた。
 心臓部に突き刺さっていた紋章が強い力で押し付けられたことで傷が広がり、隙間から血が噴き出していく。体から発せられる警報にブリギットは声にならない空気を吐き出しながらせめてもの抵抗とばかりに鞭を振るおうとする。
 しかしその先端は空から降ってきたブレイズセイバーに切断されて地面を滑っていった。
「終わりだ、ブリギット」
 そう告げて響は紋章を握り締めて強引に引き抜くと続いてブリギットの心臓が引きずり出され血の勢いが増す。そしてパンパンに膨らんだ心臓がまるで風船に割れると同時にブリギットの体は灰となり、絶えず飛んでいた衝撃波によって霧散してしまった。
 12年も追ってきたにも関わらず、遺言も命乞いもない、呆気ない最期であった。
「……これで復讐は、終わりか」
 全力で戦い、身を捧げていたはずの獣達が飼い主がいなくなった途端四方八方へ散り散りに逃げ出す。なんと現金なものか、と呆れながら美雪はその後ろ姿を見送り、追いかけてきた一家に視線を移す。
「復讐は何も生まないというが……」
 その場にへたり込んだ奏は力尽きたかのように空を見上げ、放心している。
 今の今まで大剣を何十本も振り回していた者とは思えぬその姿の周りを、瞬は触れてよいか声をかけていいものか迷ってうろうろするのみ。
 響は手の中で動きを止めた紋章を一瞥して、唇を震わせる。心の内にあるのは、仇を取れたことに対する喜びか、復讐と子供達に捧げた12年の邂逅か、はたまたあの時自分が万全でさえあれば今も隣にいたかもしれない存在への悔恨か。
 何だかんだ言って所詮部外者である美雪にかける言葉はない。どれだけ喉を枯らそうと、今の心に響く歌は紡げない。
 でも強いて言えば。
「さて、私は仕込みに行くとするかね」
 落ち着いてから行きつけの喫茶店に訪れた時に、いつもと同じ味と空間を提供できるくらいか。
 こんな血なまぐさい場所で大切な思い出は語られるべきではない。一家の12年分の想いをしっかり受け止めるために、美雪は背を向けて一足先に自前のグリモアを使ってその場から去った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年03月21日
宿敵 『獣使い『ブリギット』』 を撃破!


挿絵イラスト