帝竜戦役⑦~昨日の友は今日の敵
●アックス&ウィザーズ・蒸気魔法迷宮
「テキガクルヨ! テキガクルヨ!」
「黙れ……黙れ『大魔王の仮面』よ! 群竜大陸に挑む勇者が現れた以上、貴様の呪いに屈する訳にはいかぬ!」
「ムリダヨ! ムリダヨ! ナゼナラバ……汝の願いと希望を、この仮面は糧とするからだ。竜神山脈の長『賢竜オアニーヴ』といえど、逃れる事はできぬ」
「おのれウームー・ダブルートゥ……封印時に仮面の呪いを受けた私は、このような事態を避ける為に自ら命を断ったというのに……グアアア、理性が保てぬ……!」
「センノウカンリョウ! ……さあ挑戦者共よ、汝らの全てを喰らい、我が糧としよう」
●アルダワ世界では賢竜として讃えられていたようです
「……くそっ」
イミ・ラーティカイネン(夢知らせのユーモレスク・f20847)はそう吐き捨てて、グリモアから映し出される映像を見ていた。
アックス&ウィザーズの空に浮かぶ群竜大陸にて行われている帝竜戦役。猟兵たちの進撃は目覚ましく、次々に大陸内の土地を踏破していた。
今回もその一つ、魔導蒸気機械が埋め尽くすエリアに踏み込むことが叶うようになった。どこか懐かしいものを見るような目で、イミがグリモアから映す映像を見やる。
「二体目の帝竜の居所への道が開けた。ついては、先輩たちには討伐を頼みたい」
そう言いながらイミが映すのは、まるでアルダワ魔法学園の地下迷宮のような、機械と金属パイプで覆われた迷宮の中だった。迷宮の中を進んでいった最奥部で、白い羽根で全身を覆う一体のドラゴンがこちらを見つめている。
その白く荘厳な姿とは不釣り合いな、禍々しい仮面に頭部を覆われたドラゴンを大きく映し、そこで映像を止めながら、イミが話す。
「今映し出している、純白の羽毛に三対六枚の翼を持つ竜が、賢竜オアニーヴ。元はアルダワで伝説にも語られる、人間に味方をして大魔王に立ち向かった、竜神山脈の長だ」
イミの発言に、猟兵たちが目を見開いた。かつてはアルダワで人間の味方だったという竜の長、それがどうしてアックス&ウィザーズにいて、帝竜の一体として猟兵たちに立ち向かってくるのか。
生じる疑問に、イミが苦々しい表情で吐き捨てて答える。
「……そうだ、元々は俺たちに敵対し、世界を滅ぼすような存在じゃない。それがこうして別の世界で、世界を滅ぼす一助を担っている。それもこれもオアニーヴの頭を覆っている仮面のせいだ。
呪いを受け、人間に敵対することを避けるために自ら命を絶ったオアニーヴを、オブリビオンとして蘇らせた上に、洗脳までするとはな……ウームー・ダブルートゥめ」
およそ三ヶ月前に、彼の故郷の世界で行われた大戦にて遂に滅ぼされた、大魔王ウームー・ダブルートゥ。その憎々しい置き土産と言ったところか。
腹立たしいし、やりきれない。しかしオブリビオンとして蘇った以上は、容赦の一片も不要だ。
「オアニーヴはアルダワ様式の迷宮の中で、お前たちを待ち構えている。戦闘に入ればすぐさま動いてくるだろう。攻撃を加えるのは、オアニーヴの攻撃を凌いでからになる」
攻撃方法は三つだ。仮面が光り、攻撃力と耐久力を増加させてからの突進攻撃。聖なる光、翼から起こす浄化の風、光り輝く爪による引き裂きの同時攻撃。そして戦場全体に魔導蒸気機械と金属パイプによる迷路を作り出す攻撃。
これらのいずれかを、猟兵の攻撃に対応するように、先んじて行ってくるのだ。対処し、行動することで、戦闘を有利に進めることが叶うだろう。
そこまで話して、イミがガジェットの映像を止めた。改めてまっすぐ、猟兵たちを見つめてくる。
「仮面の呪いを解く方法も、洗脳から解放する術も、俺は提示できない。加えて助けようだなんて考えていたら、返り討ちに遭うほどの強敵だ。油断するなよ、先輩たち」
屋守保英
こんにちは、屋守保英です。
アックス&ウィザーズの戦争は日々続いています。
オアニーヴ様かわいい。もふもふ。でも今はもふもふさせてもらえない。悲しみ。
●目標
・帝竜オアニーヴ×1体の撃破。
●特記事項
このシナリオは「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結する、特殊なシナリオとなります。
帝竜オアニーヴは「必ず」、猟兵の使用するユーベルコードの属性に対応したユーベルコードで、先制攻撃を行います。
この先制攻撃への対処法を編み出すことで、戦闘を有利に進められます。
●戦場・場面
(第1章)
群竜大陸の南西部、魔法蒸気機械によって埋め尽くされたエリアです。
アルダワ魔法学園の地下迷宮のようになっている大きな部屋の中で、帝竜オアニーヴが猟兵を待ち構えています。
それでは、皆さんの力の籠もったプレイングをお待ちしています。
第1章 ボス戦
『帝竜オアニーヴ』
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POW : 竜操の仮面
【頭部を覆う仮面が邪悪な光を放つ状態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD : 賢竜オアニーヴのはばたき
【戦意を弱らせる聖なる光】【光輝く爪による引き裂き攻撃】【六翼の羽ばたきが巻き起こす浄化の風】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ : ダンジョンメーカー
戦場全体に、【魔導蒸気機械と金属のパイプ群】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
👑11
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別府・トモエ
迷宮に閉じ込められたらテニス出来ない……だからな私は考えた
「……とう!」
全力の【ジャンプ】からの【空中戦】 で上空まで飛ぶ……テニスだからな飛べる
【視力】で【見切る】のは迷宮構築の様……出口のヒントを頑張って覚える
「「「「「イクぜ分身テニス!出口を探せ
!」」」」」
増えるテニス
【ダッシュ】で駆け巡る数十倍の私で直ぐに出口に辿り着いてみせる
「「「「「見つけた!テニスしやがれ
!」」」」」
有無を言わさず【サーブ先制攻撃】返ってくるテニスボールを【カウンター】の【ショット誘導弾】もちろん、こっちは数十倍の別府・トモエちゃんよ
ウームー・ダブルートゥ仮面選手よテニスはいいぞ
オアニーヴ選手、これがテニスだ!!
ソラスティベル・グラスラン
見覚えのある光景、そして迷宮
不思議でしたが…まさか貴方にお会いできるとは
呪いを受けて尚、命を絶ちアルダワの民を守った貴方に報いたい
故に『勇者』として、貴方を止めます
【盾受け・オーラ防御】で全力で守りを固めます!
理性を失い攻撃は単調となるはず…ですがまともに受けるは危険!
【怪力】で受け【見切り】受け流すことに努めます!
オアニーヴさまの仮面、そこにいるのですね!大魔王!
受け流しつつも前進、【勇気】を出してその豊かな毛に飛びつきます!
ゆっくりと、しかし着実に登り頭部へ
『勇者』を目指し磨いた力、そして勇気
偉大な竜を救い、大魔王を倒せるならば…是非もありません!
【我が名は神鳴るが如く】――――ッ!!!!
備傘・剱
アルダワ迷宮っぽいのが、こんな所に、か?
これはこれで興味があるが…それどころじゃない、か
対仮面
動く物に猪突猛進なら、オーラ防御を少し前に一点集中で展開、念動力で少しでもずらしたら、カウンターで誘導弾と、衝撃波を叩き込む
対はばたき
光や風は、地形を利用して障害物で防いだり、そこら辺の物を念動力で動かして盾にする
爪は誘導弾で弾き返してバックダッシュで攻撃範囲から離脱する
対メーカー
青龍撃発動、高速移動で迷宮内を第六感便りで駆け巡って出口を見つける
接近して水弾、爪、誘導弾、呪殺弾、衝撃波を鎧無視攻撃と零距離射撃を重ねてくらわしてやるよ
所で、こいつ、美味いかな?
鶏肉っぽいよな
アドリブ、絡み、好きにしてくれ
アウレリア・ウィスタリア
アルダワに似た場所であるのなら
蒸気に隠れて聖なる光を
第六感とオーラ防御を全開にして爪の攻撃を
そして浄化の風は空へ舞い上がり
血糸や鞭剣も使い高速で移動して避けましょう
大魔王の呪い、こんなところにまで影響を及ぼすなんて……
いえ、それよりも誇り高き賢竜の、その誇りを汚す行為を赦すわけにはいきません
魔銃のリミッター解除
持ち得る全力の魔力を注ぎ込み
【世界を貫く閃光】を撃ち放つ
目標はもちろん大魔王の仮面
これで彼が正気を取り戻すなんて
都合のよい結果が得られるとは思わない
けれど、ボクの魔銃は破魔の魔銃
魔王の呪いを少しでも軽減できれば
彼が誇りを取り戻すきっかけになれば……!
アドリブ歓迎
山梨・玄信
まさか、こんな所でテニス魔王の名を聞くとはのう。
ならば…やらねばなるまい(テニスボールを握り締める)
【POWを使用】
敵が攻撃する瞬間、ボールをラケットで…打つ技術はないから、衝撃波で高速で飛ばしてそちらを囮にして、最小限の動きでわしも避けるぞい。
初撃を躱したら、更にテニスボールを囮にしつつ、敵の背後を取るぞ。
静かに服を脱ぎ、脱ぎ力を上げてからUCを発動して静かに宙に浮くぞい。
拳に気を纏わせ、浸透撃(鎧無視攻撃)で脳天に一撃を喰らわせてやるのじゃ。
返す拳(2回攻撃)で仮面も狙ってぶっ叩いてやるぞい。
「魔王の仮面か…一撃では無理じゃろうが、数を重ねれば…」
アドリブ歓迎じゃ。
高柳・零
WIZ
魔王ウームー…こんな呪いを使う事も出来たんですねえ。
さて、今度こそツッコミを成功させないと!
「ふっふっふ。TRPG好きに迷宮とか舐めてますね」
ゲームで培った…そして魔王戦でも威力を発揮したマッピングで対応します。
機械仕掛けなので、構造変化に気を付けながら、最短攻略を目指します。
出口が見えたら、不意打ちに備えて、オーラと盾で防御を固めてからUCを発動して飛び出します。
そのまま飛んで顔に近付き、天霧の盾から蒸気を出して目眩しをしてから、光の拳でアッパーカットをかけ、2回攻撃の追撃で仮面を叩きます!
「その仮面、似合ってませんよ!(ツッコミ)」
アドリブ歓迎です。
リネットヒロコ・マギアウィゼルーク
オブリビオン化している以上、倒す以外の救済は……
ごめんなさいね、「オアニーヴさん」……。
ここで潰えてもらいますよ~! 「大魔王」っ!
UC発動まではアイテム「スケープシープちゃん」で凌ぎます~
アイテム「ぐるぐるくん」(眼鏡)の透過スキャナ+熱源探知で敵の位置と
迷宮の構造を解析したら【マジカルケミカルボトル】を発動、
「ぐるぐるくん」で追跡しつつ、次々と迷宮の奥、大魔王の元へ炎を送り込みます~!
大魔王の位置へ炎が近づいたら、
そちらの方向目掛けて一気に炎を合体、膨張させて勝負を決めますっ!
シャルロット・クリスティア
オブリビオンとは今を侵食する過去の残滓。
生前のありようがどうであれ……蘇ってしまった以上は討つしかありませんか。
……倒してやるのが、かの竜も本望と思うしかありませんね。
これでもアルダワの学生です。蒸気の迷宮など、庭も同然。
パイプの配置、構造を頭に叩き込み、地図を組み上げて冷静に駆け抜けましょう。
焦ると逆にタイムロスになる。冷静に、ミスはミスとして選択肢を潰していけばいい。全速力でいきます。
人のために己の命をも断つなど、並大抵の覚悟ではなかったはずです。
……無念だったでしょう。
その無念も、このガンブレードの刃に乗せる。
そして……紅蓮の刃で、その忌々しき仮面、叩き割ってくれましょう。
シホ・エーデルワイス
アドリブ&味方と連携歓迎
ルノ
ウームーダブルートゥ!
私の思い出を改変し手駒にした魔王…
滅んでなお皆を苦しめるなんて!
アルダワの戦争には間に合わなかったけど
シホお願い
雪辱を果たさせて!
シホ
分かりました
時間を稼ぐね
光は氷<属性攻撃の鏡で反射し
浴びてもオーラ防御で直撃を避け
ルノに鼓舞してもらい
彼女の力になる覚悟>で戦意を維持
爪は『聖笄』の光学<迷彩で目立たなく>なって狙いを付け難くし
風は<空中戦の戦闘知識も参考に第六感と聞き耳で流れを読んで回避し
継戦能力で時間稼ぎ>
準備できたら私が囮になって敵の注意を<おびき寄せ>
できた隙を【奏手】が<フェイントを交えた
鎧無視攻撃の誘導弾で仮面をスナイパーし部位破壊>
ニコラ・クローディア
もう『貴方はそこに居ない』のねオアニーヴ
大魔王、竜の誇りを穢し竜の肉体を竜以下へと貶めた報いは受けて貰うわよ
同種として敬えるはずだった帝竜の1体が、もはや竜とは呼べない存在へと堕した怒りを抑え冷静に動きを観察
龍翼外套を盾に掲げ、オーラ防御の密度を上げて耐えながら動きのクセについて情報を集めるわ
「切り裂くために後肢で立ち、翼を撓ませる…今ね!」
光、爪、羽ばたきの3つが組み合わさったユーベルコードの発動を見切り、後手で発動するのは光盾突撃
転移座標はニコラ自身
転移中、ニコラは一瞬とはいえこの世界から消える
攻撃を外した直後の隙に光盾を押し付けて、双子竜槍の連続攻撃を叩き込んでやるわ!
アドリブ歓迎
エルザ・メレディウス
*アドリブや他の方との連携大歓迎です
かつて、人々のために多くの知恵をもたらされた賢竜を斬る...少し心苦しくもありますが、尊厳のある死を...
■POWを使用いたします
①相手の超攻撃に対して
・【残像】を作り相手の攻撃の的をそちらに【誘惑】
・【地形の利用】を活用して、建物や大地の起伏に隠れながら、ゆっくりと相手へ移動
・UC:影の追跡者で相手の行動を監視
などに気を付けて、状況を仲間に知らせながら敵へ接近いたします
②接近後:
超耐久力に関しては、こちらは手数と連携の質で対処いたします。敵に接近した後は、【集団戦術】を心がけて仲間の方と間断の無い攻撃を。白王煉獄は敵に隙ができたら捨て身の【覚悟】で放ちます
枯井戸・マックス
力押しは悪手だな、だが幸いここは入り組んだ迷宮
緩急をつけた歩法で敵を引き寄せ誘導し、突進を紙一重で回避して狭い通路に突っ込ませる
最悪、俺本体の仮面は突進に巻き込まれてもやむなしだが、その時は依り代は切り離すぜ【第六感、フェイント、激痛耐性、捨て身の一撃】
依り代に残した緊急コードを発動、自我を復活させ参戦させる
「お前の我の強さを見せてやれ…」
「近くで見ると不細工な仮面だな!マックスの方がまだ幾分イケてるぜ!」
動きが制限された隙に懐に潜り込み、強化された身体能力で強引なラッシュ
トドメに零距離からのマグナム全弾発射を仮面にぶっ放す
「俺様はまだここにいるぞ!手前も洗脳なんか振り払え!」
アドリブ連携歓迎
木常野・都月
酷いな。
良い竜なのに、洗脳するなんて。
強敵らしいけど、そんなの関係ない。
きっとこの竜の人も、本当は仲間や人を傷つけるのは嫌なんじゃないかな。
そもそもその仮面で洗脳したんだから、仮面を何とかしたらしたら、何とかならないのかな。
ダメで元々、試すだけ試してみたい。
元に戻らなければ、そのまま倒すしかないけど、俺1人くらい試してみてもいいだろ。
敵の風は、[高速詠唱]で風の精霊様に頼んだ[属性攻撃]の[カウンター]と[オーラ防御]で相殺したい。
UC【妖狐の通し道】を妖気全乗せで、仮面を破壊をしたい。
壊すのを失敗するか、壊せても元に戻らなければ、倒すしかない。
その時は[属性攻撃(2回攻撃)]で追撃したい。
ニィエン・バハムート
先制対策で敵UCに【カウンター】するように万物を切り裂く爪で地面(床)を【怪力】まかせに掬い飛ばす【範囲攻撃】。帝竜の接近を防ぎます。同時に籠手や翼から【衝撃波】、皮膚からオーラで強化された電気【属性攻撃】を放つことで強烈な電光を発し、それぞれで風と光を軽減…できると信じます。
対処したらUCで全メガリスの力を9倍に。そして【空中浮遊】から【空中戦】に移行。帝竜に向かって自らを衝撃波で吹き飛ばす荒技で【限界突破】したスピードを出し、仮面に向かって突貫。力を増した万物を切り裂く爪でその仮面を【部位破壊】。
多少力が減ろうとアクティブした私は最強!
待望の帝竜との勝負を邪魔した罪は重いですわよ!大魔王!
●其れは世界を渡るもの
真鍮色のパイプ。金属板の壁と床。
通路を走るたびに、硬質な足音が響く。自然の洞窟を駆けるのとは違う、世界からしたら随分と場違いな空間が、そこにはあった。
「アルダワ迷宮っぽいのが、こんな所に、か? これはこれで興味があるが……それどころじゃない、か」
「大魔王の呪い、こんなところにまで影響を及ぼすなんて……」
迷宮の中を見回しながら備傘・剱(絶路・f01759)が言葉を零すと、アウレリア・ウィスタリア(憂愛ラピス・ラズリ・f00068)も苦々しく表情をゆがめた。
ここはアルダワではない、アックス&ウィザーズだ。大魔王ウームー・ダブルートゥが撃破されて、もう二月は経過している。だのに、こんな形でその名前を聞くことになるだなんて、誰が予想をしただろう。
迷宮の通路を抜けて、最奥の大部屋に飛び込めば、そこには純白の羽に全身を覆われた、仮面をかぶった一頭の竜が翼をはためかせている。
その姿を見て、ソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)がうめき声混じりの声を上げた。
「見覚えのある光景、そして迷宮。不思議でしたが……まさか貴方にお会いできるとは。賢竜オアニーヴ」
賢竜オアニーヴ。アルダワ世界で伝説と共に語られた、人類に味方した竜の長。大魔王封印の際に呪いを受け、自ら命を絶ったもの。ダンジョンメーカー。
しかし賢竜と讃えられた勇敢なる彼は、ただ感情の籠もらない冷たい声色で言葉を発するのみで。
「我は帝竜が一、オアニーヴ……挑戦者共よ、汝らの全てを今こそ喰らい、我が糧としよう」
その、猟兵の誰もがかつて一度は耳にした事のある口調そのままで語る竜に、その場の全員が息を呑んだ。
「……酷いな」
「もう……『貴方はそこに居ない』のね、オアニーヴ」
木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)が歯噛みすれば、ニコラ・クローディア(龍師範・f00091)も悲し気に目を伏せる。
ここにいるのは人類に味方した偉大なる竜ではない。大魔王によって自我を奪われ、世界を滅ぼさんとする帝竜の一体だ。
そもそもからして、既に死んだもの。それがここにいるということは、骸の海から染み出してきたことに他ならない。
「オブリビオンとは今を侵食する過去の残滓。生前のありようがどうであれ……蘇ってしまった以上は討つしかありませんか」
アルダワ魔法学園の生徒の一人でもあるシャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)が、やりきれない思いを胸に剣を握ると、リネットヒロコ・マギアウィゼルーク(【魔導科学者】マギア=ウィゼルーク・リネット・博子・f01528)もガントレットを嵌めた手を強く握りしめた。
「オブリビオン化している以上、倒す以外の救済は……ごめんなさいね、『オアニーヴさん』……」
オブリビオンと化したものを救うことは、倒す以外にはない。倒さずに救済するにしても、消滅させることは避けられない。これは相手がどうあれ、変わらない事なのだ。
だから、せめて骸の海に還すことで彼の魂を救えれば。大魔王の仮面の呪いから解放できれば。その想いは、全員に共通するものだ。
「かつて、人々のために多くの知恵をもたらされた賢竜を斬る……少し心苦しくもありますが、尊厳のある死を……」
エルザ・メレディウス(復讐者・f19492)が己の槍を構えるのと共に、その場の全員が各々の武器を構える。
それに呼応するように、オアニーヴがばさり、と翼をはばたかせた。蒸気を孕んだ浄化の風が、ぶわりと猟兵たちに押し寄せる。
「ウームー・ダブルートゥ! 私の思い出を改変し手駒にした魔王………滅んでなお皆を苦しめるなんて! アルダワの戦争には間に合わなかったけど、シホお願い。雪辱を果たさせて!」
「分かりました」
シホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)に同行する自動人形・ルノリストが憎々しさを露わにした声を上げれば、シホがそれに同意を返して。
「……倒してやるのが、かの竜も本望と思うしかありませんね」
「その通りです。大魔王、竜の誇りを穢し、竜の肉体を竜以下へと貶めた報いは、受けて貰うわよ」
シャルロットの言葉にニコラもこくりと頷いて。
そして、戦いの火ぶたが、切って落とされた。
●其れは世界を害するもの
「迷い惑え、そして疾く果てるがいい」
オアニーヴの前脚が宙にかざされるや否や、猟兵たちの周囲に轟音を立てて瓦礫が殺到する。
魔導蒸気機械と金属パイプで組み上げられた堅牢な迷宮が猟兵たちを閉じ込め、その視界からオアニーヴの姿を隠した。
しかし、何人かの猟兵たちは、迷宮の中に置かれても尚冷静だった。
「ふっふっふ。TRPG好きに迷宮とか舐めてますね」
高柳・零(テレビウムのパラディン・f03921)がテーブルゲームで培ったマッピング能力をいかんなく発揮し、自分の居場所からの最短ルートを探る。
「しかし、大魔王ウームー・ダブルートゥ……こんな呪いを使う事も出来たんですねえ」
迷宮を進みつつ、道中で見つけた仲間がいれば一緒に手を取って、彼は迷宮のゴールを目指して着実に足を進めていく。
マッピングして迷宮を攻略しようとするのは、シャルロットも同様だ。
「これでもアルダワの学生です。蒸気の迷宮など、庭も同然」
元よりアルダワの地下迷宮にはしょっちゅう潜っている。こんな即席の迷宮などなんのその。パイプの配置を確実にマップに残しながら進んでいった。
リネットヒロコは自身の身につける眼鏡の力で、迷宮の解析を行っていた。
「ぐるぐるくん、調査よろしくお願いします! ……うん、そっちですね!」
透過スキャナと熱源探知を併用し、仲間の位置とオアニーヴの位置を割り出せば、あとはオアニーヴに向かうルートを辿っていくだけだ。
「か~が~く~! はんの~う!!」
魔法薬ボトルを64個放り投げ、七色の炎を発生させては迷宮の出口に向けて送り込んでいった。
上記の三人は確実に迷宮を攻略し、仲間の手を取り、先んじて迷宮の出口に――オアニーヴの元へとたどり着く。零が盾を構えて突撃すると同時に、膨張するリネットヒロコの起こした七色の炎。シャルロットもガンブレードを振るって足止めにかかる。
そんな中、別府・トモエ(ミステニス・f16217)の迷宮攻略法は、他の三人とは明らかに異なっていた。異色だったと言える。
「迷宮に閉じ込められたらテニス出来ない……だからな私は考えた。とうっ!!」
その場から全力で大ジャンプ。迷宮全体を一望できるところまで、つまるところは部屋の天井ギリギリまで跳び上がった。
もう一度言う、跳び上がった。跳び上がれば迷宮のルートも、ゴールであるオアニーヴの位置も分かるという理屈である。
テニスだからな飛べるってトモエは言うが、どこの世界線のテニスですかそれは。
とはいえ飛行ではなく跳躍。どんどん高度は下がっていくが、その間に出口のヒントや目印を覚えて再び迷宮の中へ。と思いきや。
「「イクぜ分身テニス!出口を探せ!」」
分身した。トモエの有するユーベルコード、分身テニスである。正確には召喚のスキルだが。
召喚された総勢74人のトモエが先程上空から確認した迷宮の全体図を頼りに、あっちこっちにダッシュしては迷宮を突き進む。そして本体であるトモエ自身も。
全ては大魔王ウームー・ダブルートゥともう一度テニスをしたい、という執着あってこそ。そうして数十人のトモエが出口から飛び出すや、仮面の向こうの目を引ん剥くオアニーヴにラケットを突き付けた。
「「見つけた!テニスしやがれ!」」
「ぬぅっ、その姿、その願い。あの忌々しいテニス娘め!」
どうやらウームー・ダブルートゥの記憶も引き継いでいるらしいオアニーヴが、問答無用でサーブを放つトモエを睨みつける。
他の方向に走っていったトモエも、迷宮の中にいた仲間たちを連れて後から合流し、次々放たれた75のファーストサーブ。白竜が矢継ぎ早に飛来するテニスボールを六枚の翼で弾き返せば、トモエがカウンターを叩きこむべくラケットを構えた。
「オアニーヴ選手、これがテニスだ!!」
「ここです、全弾、反応励起!」
75人のトモエが放つトップスピンショット。跳ね上がったボールがオアニーヴに殺到し、その目を不愉快そうに細めさせた。
「笑止。我が爪と翼で、一切合切消し飛ばしてくれよう」
オアニーヴが吼えると同時に、彼の頭上に眩い輝きが灯った。同時に、周囲の迷宮が瓦礫の山と化す。
光に猟兵たちの目がくらむのと間を置かず、身体に猛然と吹き付ける浄化の風。風などと言う表現は最早生ぬるい。これはまさに、賢竜の巻き起こす暴風だ。
劔が崩れた迷宮の瓦礫に身を隠しながら、その陰から前方を覗き込む。
「く! ここがアルダワ様式の部屋の中で助かったぜ、障害物に出来るものがいろいろある」
「その通りですね、蒸気も豊富、足場に出来るものも多くあります」
瓦礫を足場にして高く跳び上がり、暴風をやり過ごしたアウレリアが、身軽に着地しながら劔に同意した。
他方では、同じように瓦礫に隠れたルノリストを庇うように、シホがしっかと床を踏みしめている。
「シホ、準備はいい?」
「はい、時間を稼ぐね」
そこから迫りくる風を、光を次々に反射していくシホだ。光は氷の鏡で弾き、爪はヘッドドレスの光学迷彩で狙いをつけづらくし、風はその流れを読み取って隙間に身をねじ込んでいった。
「風の精霊様、全力全開! 相殺をお願いします!」
都月も襲い来る暴風を、風の精霊が巻き起こす風で逸らしながら耐えている。押し負けまいと必死に耐える都月に迫ろうと振り下ろされた爪は、ニィエン・バハムート(竜王のドラゴニアン(自称)・f26511)が床を掬い飛ばして防いだ。
「爪の来る場所は……そこですわね! えぇぇいっ!」
オアニーヴの右の爪と床の金属板が激突し、激しい音が響く。その爆音で戦場に立つ誰もが一瞬だけ動きを止めたのを、ニコラは見逃さない。
「なるほど、爪で切り裂くために後肢で立ち、翼を撓ませる……今ね!」
ニコラが賢竜の前に飛び出し、その手に握るアンフィスバエナを構える。その彼女を迎え撃つように、賢竜の左前脚が迫っていた。
「ニコラさん!」
叫んだのは誰であったか。しかし、オアニーヴの爪がまさにニコラを捉えようとした瞬間。彼女は『一瞬だけ』世界から消えた。
「ぬぅっ!?」
異変に気付いた時には、まるで爪の一撃をすり抜けたようにニコラがそこにいるばかり。刹那、攻撃直後で隙が生じたオアニーヴに、アンフィスバエナによる猛攻が襲った。
ばさばさと削られていく、白く柔らかな羽毛。洗脳などされていなければ、この羽毛はどれだけ人々の心の支えとなったであろうか。
「ぐぅっ! おのれ……おのれ!!」
自身の身体を傷つけられたことに、オアニーヴは憤慨した。
その仮面に隠された両の瞳が怒りに燃え、赤く怪しく光るのを、山梨・玄信(3-Eの迷宮主・f06912)は確かに見た。
「仮面の目が光った!」
「来るぞ!!」
枯井戸・マックス(マスターピーベリー・f03382)が叫んだ瞬間、先程の浄化の風とは比較にならないほどの暴風が巻き起こった。
それと同時に発生する鈍い音。音のした方を見れば、ソラスティベルが盾を構えてその手を細かく震えさせていた。
彼女の足元には白い羽毛。オアニーヴがソラスティベルに突撃したことは、火を見るより明らかだ。
「ぐぅぅっ……なんて速度、なんて破壊力! まともに受けたら確実に耐えられません!」
そう零しながらソラスティベルが、自分に突撃してきた賢竜の行く先を見る。オアニーヴは次の目標をエルザに定めていた。緩急をつけて動き回り、残像を発生させる彼女の動きが気にかかったらしい。
「ガァァッ!!」
「こちらですよ、着いてこられますか!?」
巨大な槍で相手の攻撃を逸らそうとしつつ動くエルザだが、槍で受け止めるには相手の質量が大きすぎる。盾を扱う技量に優れたソラスティベルでさえも、正面から受け止めることは叶わなかった突撃だ。
「エルザさん、無茶です!」
「そら、こいつでどうじゃ!」
ソラスティベルが悲痛な声を上げると同時に、玄信がその手から『何か』を飛ばす。
彼の手からそれが高速で撃ち出されるや、オアニーヴの注意が一気にエルザからそちらに向いた。飛んでいって跳ね返るのは、一つのテニスボールだ。
今や完全にテニスボールに注意が向き、猟兵から注意が逸れている隙を突いて、玄信が拳を撃ち込みながら息を吐く。
「……ふう、やはり囮として機能したか。持って来て正解だったわい」
「早く動くものを反射的に追いかけ攻撃する、その性質を逆手に取ったわけですね! だんだんと行動範囲が狭まっているようです!」
エルザも、転がってきたテニスボールを放り投げ、それを追いかけるオアニーヴに槍を突き出しながら笑った。理性を失い、早く動くものを無差別攻撃するようになった相手に、囮になる早く動くものを用意するのは常套手段だ。
マックスもにやりと笑いながら、足元に転がってきたテニスボールを放り投げる。
「テニスボールか、随分と手軽なもので対応できるもんだ……そらっ!!」
ボールを投げたのは自身の背後方向、大部屋から出るための通路の中だ。ボールを目掛けて跳びかかるオアニーヴが、マックスごとなぎ倒す勢いで通路に突っ込んでいく。
だが、翼が邪魔をして通路の中には入れない。肩から上を細い通路に突っ込むようになったオアニーヴが、何とか抜け出そうともがく。
「グオォォ!!」
「マックス!」
「心配すんな、無事だ! やっこさんはこれで暫く動けまい!」
都月がマックスに呼び掛けると、じたばたともがく賢竜の下から這い出すように、マックスが姿を見せる。
これぞ好機、オアニーヴの胴体目掛けて猟兵たちが猛攻を加える中、彼の後ろ脚を斬り付けた劔が、何やら考え込む表情をした。
「うーん……」
「店長?」
「どうしたんじゃ、そんなにじっと見て」
彼とは知古である零と玄信が、突然唸り始めた友人に声をかけると、劔はオアニーヴの太腿に短刀を突き刺しながら、おもむろに言った。
「いや、こいつ、美味いかな? 鶏肉っぽいなって……」
「えぇ……相変わらずチャレンジャーですねぇ……」
「確かに羽毛に覆われて鳥っぽくはあるがのう……」
オブリ飯を極めんとする劔の飽くなき探求心に、感心を通り越して呆れ顔の二人だ。
通常の戦闘で、もっと自由が利く戦場ならば、あるいは肉を削ぎ落すことも出来ただろう。
だが、今回の相手はただのドラゴンとはわけが違う。そうでなくても同行する仲間の目がある。
「竜を食べるだなんて、そんな不遜なこと、許しませんよ!」
「アルダワの学生としても、神話にも語られる竜を材料扱いされるのは、ちょっと……」
「駄目か……」
ニコラとシャルロットの明らかな苦言に、がっくりと項垂れる劔。さすがに今回は、状況がまずかった。
●其れは世界を救うべく立ち上がるもの
「グォォォ……汝、らぁ
……!!」
通路から頭を引き抜いて、オアニーヴは憎らし気に猟兵たちをねめつけた。通路に飛び込んだ時に折れたのか、仮面の角が左右ともなくなっている。
ぐるりと身を翻し、正面から相対しようとする帝竜を前にして、アウレリアはぽつりと言葉を零した。
「……皆さん」
その発言に、猟兵全員の視線がアウレリアに集まる。彼女は、その手の中の魔銃を賢竜へと向けたまま、静かに告げた。
「誇り高き賢竜の、その誇りを汚す大魔王の行為を赦すわけにはいきません。そうは思いませんか」
彼女の発した言葉に、頷いたのは一人二人ではない。
きっと、こんな事はかの竜の本意ではないはずだ。命を汚し、誇りを汚す、許されざる行いのはずだ。
真っ先に頷いたのは都月だった。杖をしっかと握りしめて言う。
「俺も、そう思う。きっとこの竜の人も、本当は仲間や人を傷つけるのは嫌なんじゃないかな」
ダメで元々、試すだけ試したい。そう話す都月に、否定の言葉を投げる者はいない。
「勿論です。彼は大魔王の呪いを受け、その呪いが自身の身に及ぶ前にと自死を選んだ方。人のために己の命をも断つなど、並大抵の覚悟ではなかったはずです」
シャルロットもガンブレードを構えながら頷いた。アルダワの神話に長く語り継がれる賢竜オアニーヴの最期。それが嘘だと言えるほど、この帝竜の現状はあまりにも残酷に過ぎる。
胴着を脱いで脱ぎ力を高めながら、玄信が肩を竦めた。
「なんじゃ、魔王の仮面を剥がすか壊すかすればあるいは、と考えておったのは、わしだけじゃなかったということか」
「勿論よ。大魔王の思い通りになるような仮面なんて、残しておいていいはずないもの」
彼に言葉を返すのはルノリストだ。隣でシホも頷いている。
このままにはしておけない。助けられるか、試すだけ試したい。それは改めて、この場にいる猟兵の総意でもあった。
アウレリアがまっすぐに自分たちを見て、唸り声を上げる仮面の帝竜を見つめる。目を外さないままに、言う。
「はい。仮面を壊すことで彼が正気を取り戻すなんて、都合のよい結果が得られるとは思いません。だけど、このまま狂気に陥り誇りを失ったまま、彼を骸の海に還すのは……避けたいです」
彼女の、決意を秘めた言葉に、反対意見を述べる者は誰一人としていなかった。
「アウレリアの言うとおりだわ。このまま、かの帝竜の誇りを汚したままでいいわけはない」
「全くですわ! せっかく待望の帝竜との勝負が出来ると思ったのに、これじゃ帝竜を真の意味で倒したことになりませんもの!」
ニコラが双頭の槍を構えつつ言葉を発すれば、ニィエンもその拳を打ち鳴らす。
目の前にいる賢竜は動かない。機を窺っているのか――いや、そうではない。
この場にいる誰もが分かっているのだ。この竜は、大魔王は、我々の「オアニーヴを救いたい」という願いさえも、望みさえも、喰らって蹂躙しようとしているのだと。
その為に、願いが発露する瞬間を待っているのだと。
覚悟は決まった。劔が短刀を握りながら声を発する。
「じゃあ、やるか? 狙いたいやつは仮面を狙ってくれ。それ以外で足止めする」
「了解です。やり遂げましょう」
「よし……頼むぜ相棒。いや、ヴィクター・カレイド」
「今度こそ、サービスエース決めてやるもんね!」
エルザが言葉を返し、マックスがサングラスを外して依り代に肉体を明け渡し。トモエがテニスボールとラケットを握り。
そうして、全員が改めて前を向いた時。ぐっと噛み締められていたオアニーヴの牙が、砕けた。
「汝ら、よくも、よくも
……!!」
怨念。
憎悪。
憤怒。
それらが光となって、竜の口からあふれ出して。
「死ね――!!」
爆風と共に、光を伴い振り下ろされる両の腕。風を孕み、巻き込み、奔流となって猟兵たちを砕かんと迫る中。
リネットヒロコが、七色の炎で風を退ける。
トモエが弾丸サーブで竜の手を打ち据え、床にめり込ませる。
シホが二丁の拳銃から弾丸を放ち、同様にもう一方の手を撃ち抜く。
そしてニコラの槍と、劔の短刀が、オアニーヴの両手を刺し貫いた。床に縫い留められる彼の両手。
「今よ!!」
「決めろ!!」
「ルノ!」
そこからの攻撃は、まさしく一瞬だった。
「精霊と共に鍛えた上げた精霊銃の力! 見せてあげる!」
ルノリストが数多の誘導弾を精霊銃から放って仮面を穿ち。
「……無念だったでしょう。その無念も、このガンブレードの刃に乗せる」
シャルロットのガンブレードが血のように紅いオーラを纏ったガンブレードで仮面を一閃し。
「その仮面、似合ってませんよ!」
「一撃では無理じゃろうが、数を重ねれば……!」
零と玄信がほぼ同時に宙を舞っては、仮面に剣と拳で連撃を加え。
「俺様はまだここにいるぞ! 手前も洗脳なんか振り払え!」
マックスが、否、彼の依り代たるヴィクター・カレイドが距離を詰めては仮面に全弾をたたき込み。
「俺の意志を通させてもらう……!」
都月が自らの全妖気と引き換えに放った気弾を放ち、仮面に炸裂させ。
「待望の帝竜との勝負を邪魔した罪は重いですわよ! 大魔王!!」
自身のメガリスの効果を9倍にまで増幅したニィエンの爪が仮面を切り裂き。
「その刃は罪を断ち切り、その炎は魂を浄化する――お覚悟!!」
エルザの炎を纏った刀の一閃が、仮面を真一文字に切り裂き。
「ボクの魔銃は破魔の魔銃。魔性の世界を撃ち貫け、ヴィスカム――!!」
アウレリアの握る魔銃ヴィスカムから迸った閃光が、賢竜の目を焼き。
そして。
「これぞ我が勇気の証明、至る戦火の最前線! 今こそ応えて、蒼雷の竜よ!!」
オアニーヴの羽毛を掴み、その身によじ登っていたソラスティベルが、彼の頭上で斧を大きく振りかぶって。
「我が名は神鳴るが如く(サンダラー)――――ッ
!!!!」
ソラスティベルの裂帛の気合と共に、振り落とされる大斧の刃。
その刃がしっかと、オアニーヴの眉間に、仮面に、めり込んでは亀裂を走らせて。
遂にはその頭を覆う邪悪な仮面を、千々に、微塵に、砕け散らせた。
「オ、オ、オ……」
もはやオアニーヴは立つことも叶わない。顔面を総攻撃され、穿たれ、斬られ、砕かれて。眉間は割れてどくどくと血が溢れ出している。
「砕けた……!」
「どうなった
……!?」
倒れる竜に、油断はならぬと武器を構えてにじり寄る猟兵たち。と、オアニーヴの口が微かに動く。
「……ゆ、ゆうしゃ、よ」
漏れ出た言葉に、全員が息を呑んだ。
勇者と告げた。であるならば。
「オアニーヴ!!」
「もしかして――」
全員が武器を降ろした。全員が倒れ伏す彼の頭を取り囲んだ。
そこに居並ぶ十四人と二人、その全員に視線を向けて、彼の竜は僅かに、確かに目を細めた。
「――っ……」
口を動かすが、しかし声の代わりに吐き出されるのは赤い血ばかり。小さく咳き込むように息を吐くと、オアニーヴの瞳がゆっくり閉じられて。
そのまま、彼の身体は光の粒となって、世界に消えた。
「オアニーヴ……」
「オアニーヴさま……」
エルザが、ソラスティベルが、やりきれない表情で唇を噛む。
結局、こうするより他はなかったのだ。オブリビオンである以上、この結末は変えられなかったのだ。
だが、だが、それでも。
「彼は……救われたのかな」
都月がぽつりと、彼のいたところを見ながら零すと。それに答えたのはシャルロットだった。
その蒼の瞳をにっこりと細めて、清々しい笑顔で言う。
「どうでしょう……でも、私は救われたんだと信じます。だって……」
そうして、彼女は帝竜の一――いや、賢竜オアニーヴが最期に零した、その言葉を口にするのだ。
「『よくやった』……そう、言ってましたから」
成功
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