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何故、自ら苦しみを選ぶ

#ダークセイヴァー #人類砦 #闇の救済者


 "人類砦"。
 それは、猟兵達の活躍によって生まれた、ダークセイヴァーの反撃拠点。
 すなわちヴァンパイアの圧制に抗おうとする、勇気ある人々の住まいである。
 "闇の救済者達"の活動が、少しずつ実を結んできた成果と言えるだろう。
 しかし、それはダークセイヴァーを包む闇の規模からすれば、あまりにも小さく脆い。
 そしてヴァンパイアどもは、そんな希望の芽を見逃すはずがない……。

 赤子の泣き声が、サイレンのように響いている。
 あばら家は黒く焼け焦げて炭化し、その下にはいくつもの屍が転がっていた。
 ぶすぶすと黒い煙をあげる瓦礫の下から、片目が潰れた少年が這い出す。
「レンダ……ラミー、ブランド……ナイベール……みんな、みんな死んじゃったのか」
 返ってくる声はない。ただ、赤子の泣き声だけが廃墟に響いている。
 少年が神経すらも炭化した腕でがむしゃらに地面を叩き、そして嗚咽した。

 ……がしゃり、がしゃりと不穏な靴音。
 現れたのは、闇を凝らせたかのような邪悪な黒鎧に身を包む騎士の群れ。
 その頭目と思しき存在は、いくつもの腕が生えた異形であった。
『哀れなり』
『まだ生きているとは』
『殺さねば』
『殺してやらねば』
 怪物じみた軍馬に跨る騎士達は、唱和するようにぶつぶつと囁いた。
 頭目と思しき異形の騎士が云う。
『少年ヨ。理解ッタカ? コレコソガ"現実"。コノ世界ノ真理ダト』
「…………」
『見ヨ』
 異形の腕のひとつが、まるでバスケットでも差し出すかのように"それ"を突き出した。
 ただただ、力なく泣き叫ぶ赤子を。
「……ウソだろ」
『コノ世界ニ希望ナド必要ナイ』
「やめろ」
『人間ハ、タダ奪ワレルダケノモノデヨイ』
「やめてくれ」
『ソノ命ハ、我ラノ主タル支配者(ヴァンパイア)ダケガ選ベルノダ』
「やめ――」
『コレハ騎士ノ慈悲ナリ』
 泣き声が、止んだ。

『ダノニ何故、自ラ苦シミヲ選ブ?』
 少年に、その問いかけに答えるだけの力はもはや存在しなかった。

●グリモアベース
 ……己が見た予知の内容を話し終え、ムルヘルベルは重くため息をついた。
「この間終結したばかりのアルダワ魔王戦争でも、"希望"という言葉が出てきたな。
 かの大魔王は、知的生命体の希望を喰らうという恐るべき存在であった。
 しかし、この世界の現状に比べれば、それはまだ有情なものであったのかもしれん」
 言ってから、少年めいた賢者は眉間を揉んで『戯言だ、忘れてくれ』と言った。
「……とにかく。このダークセイヴァーには少しずつ希望の芽が根付きつつある。
 されど、ヴァンパイアどもにとってはそれは、いたく気に入らない輝きのようだ。
 築かれたばかりの"人類砦"は、そのどれもが収奪の危険に晒されていると言っていい」
 いずれこの世界に訪れるだろう大きな戦いにおいて、
 人類砦の存在は必ず大規模な反撃の礎となる、重要な拠点だ。
 そういった戦略的判断をさておいても、この世界にようやく生まれた希望の灯火。
 ……それを、むざむざと摘み取らせるわけにはいかない。

「オヌシらに向かってもらいたいのは、若者ばかりが住む小さな人類砦である。
 戦災孤児が集まったのか、はたまた大人達はみな殺されてしまったのか……。
 理由はわからぬが、この村はただでさえ小さい上に、ほぼ全てが子供ばかりなのだ」
 当然、猟兵に匹敵する戦闘力を持った者など誰も居ない。
 それでも吸血鬼の圧制を逃れ、ほそぼそと暮らしている一つの共同体だ。
「もっとも、オブリビオンのほうに慈悲や容赦など一切ないようであるがな。
 彼奴らは大規模な騎士の軍勢を差し向け、完膚なきなまでに滅ぼすつもりのようだ」
 グリモアに映し出されたのは、怪物めいた軍馬に跨る漆黒の騎士の群れ。
 そしてそれらを指揮する、いくつもの腕を持つ異形の騎士であった。
「あちらからすれば、苦しみ嘆くだけの民に死をもたらすのは"慈悲"なのであろうよ。
 遺された騎士の誇りとやらも変質し、かつての様とはもはや似ても似つかぬものだ。
 ……いずれにせよ、一体一体が精鋭な上に物量がすさまじい。易い敵ではあるまい」
 そう言って、ムルヘルベルは持っていた本を閉じた。
「とある詩人に曰く、"希望は堅い杖であり、忍耐は分厚い着物"だと云う。
 この世界を真の意味で闇から救い出すには、まだまだ長い時間が必要だろう。
 ……一つ一つの戦いは、確実にその時に繋がるはずだ。オヌシらの健闘を祈る」
 それが、転移の合図となった。


唐揚げ
 クリスタルです。ダークセイヴァーにも進展があったようですね。
 ようやく芽生えた反抗の兆しを守るため、戦いましょう。

●1章補足
 OPの文章はグリモアの予知で垣間見えた"起こるはずの未来"であり、
 皆さんは襲撃の瞬間に転移し人類砦を防衛することが出来ます。
 人類砦の防備は脆弱で、破城槌じみた騎士の突撃を防ぐことは出来ません。
 放っておくと、人類砦のNPC達に多大な犠牲が出てしまうでしょう。

●プレイング受付期間
『2020年 03/05(木) 13:59前後』までとします。
 戴いたプレイングは問題がない限り出来るだけご案内出来るよう頑張りますが、
 戴いた数によっては再送のお願いをすることになるかもしれません。
 その場合は断章リプレイなりお手紙なりで改めてご連絡いたします。
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第1章 集団戦 『闇に誓いし騎士』

POW   :    生ける破城鎚
単純で重い【怪物じみた馬の脚力を載せたランスチャージ】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    屠殺旋風
自身の【兜の奥の邪悪なる瞳】が輝く間、【鈍器として振るわれる巨大な突撃槍】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    闇の恩寵
全身を【漆黒の霞】で覆い、自身が敵から受けた【負傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
👑11
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 夕暮れさえも訪れぬ薄闇の空の下、そいつらは列をなして現れた。
「っ……て、敵襲! 敵襲だよっ!」
 ボロボロの見張り台に詰めていた、勝ち気そうな少女が叫ぶ。
 錆びた鐘の音を聞いて、赤子を抱いていた幼い少女が不安げに少年を見やった。
「れ、レンダが、敵って……! アル、ど、どうしよう」
「落ち着けラミー。大丈夫だ、ブランド達が用意した罠があるだろ。
 その間に逃げればいい。ここを離れなきゃいけないのは辛いけどさ……」
「大変だ!!」
 そこへ駆け込んできたのは、やや背の高い細身の少年であった。
「わ、罠が機能してない! 落とし穴も仕掛け線も全部踏み抜かれちまってる!」
「ウソだろ……なんだよそれ。う、馬ならそれでなんとか出来るって」
「言ったよ! 言ったけど、あいつらは違う……何か、違うんだよ!」
 細身の少年はやけっぱちのように叫んで、息を整えた。
「とにかくふたりとも、今すぐ逃げよう。村の裏手に隠し通路が……」
「……いや、ナイベールはラミーを連れて先に行っててくれ」
「! アル! 何言ってるんだ!?」
 細身の少年……"ナイベール"の言葉を無視し、"アル"は古びた斧を手にとった。
 どこかの戦場からくすねてきたと思しき、少年に似つかわしくない両手斧だ。
「俺が少しでも足止めする。だからそのうちに……!」
 そんな力が彼にないことは、誰もがわかっていた。

 そして絶望が来たる。
『殺さねば』
『殺してやらねば』
 黒き死が来たる。
『収奪せねば』
『いのちを刈り取らねば』
 死神が群れをなして来る。
『我らのあるじのために』
『我らは槌となりて壁を砕こう』
『我らは槍となりて獲物を貫こう』
『我らは剣となりて首を刎ねよう』
 黒き騎士の群れが、来たる。
鳴宮・匡
勇気と無謀を履き違えるなよ
戦うために必要なのは生き続けることだ

振り返らずに走れ
……絶対に追わせないから

初撃の狙いは敵の前肢
突撃の威力を殺すなら、それを支える脚を壊せばいい
【死神の咢】で、的確に一射のもと破壊していく
バランスを崩したやつから順に、頭を砕いて仕留めるよ

奪うだけの手で、未来を守ろうだなんて
そんな過ぎたことを願うつもりはない
それにきっと、これはそんな綺麗な感情じゃない

ただ、重ねただけなんだ
幼かった自分の見た光景に
それを、二度と見たくなかっただけだ

それでも、そうだとしても
“守ろう”と思ったその思いだけは、偽りないと信じたい
……そうと感じるこころが、まだ、自分にあると

まだ、ひとでいいのだと


矢来・夕立
手を貸します。
相手が相手ですから。
殺しが救いだと、本気でそう思ってるなら、それこそ救いようのないバカです。
邪魔だから殺すってだけのクセに綺麗事を言う。嫌いです。

【紙技・文捕】。壊れた罠を修復・再利用して強化します。
落とし穴ならより広く深く、底に『黒揺』で棘を作る。
仕掛け線は『朽縄』で補強、足止めに加えて鳴り子もつけときましょう。

あくまで『彼らが作った罠で仕留めた』形になるのが肝要です。
それはそれとして殺すまでは至らないでしょうから、罠にかかってるところを《だまし討ち》しますが。

自分の意志で反逆を選ぶ人、嫌いではありません。
そういうやつが出世するって相場が決まってるんで。



 砦の外に出た"アル"は、かちかちと歯を鳴らしていた。
 膝から下もガタガタと震えている。すぐにでも背中を向けたい。
 ……近づいてきている。形を得た死が、闇よりも濃く昏き黒の群れが。
「駄目だ、駄目だ……!!」
 目を瞑り頭を振る。ここで自分が退いたら誰がここを守るのだ?
 ブランド達武闘派の少年達はいない。彼らは狩りのため村を離れている。
 きっとこの恐ろしい騎士の群れを見て、急いで戻ってきている最中だろう。
 だから、自分しかいないのだ。仲間達を、村を守れるのは。
 ……守る? 何を馬鹿な。
 たったひとりで何が出来るというのだ。
 あれだけの数の敵を相手に。
 あれほどの恐ろしい敵を相手に。
 たかが子供ひとり、立ちはだかったところで何になる。
 時間稼ぎ? バカバカしい。
 あの軍馬に踏み潰され、地面のシミに変わるのがオチだろう。
(それでも……それでも、駄目だ。逃げ切れない……っ!!)
 もしかしたらあいつらが、嗜虐心を刺激されて立ち止まるかもしれない。
 自分を痛めつけるのに夢中になって、仲間達を見逃してくれるかもしれない。
 考えるだけで吐き気がした。見せしめの拷問なんて何度も見せられてきた。
 その痛み、苦しみを想像するだけで失禁しそうになる。
 鼻の奥がつんと痺れて、涙と鼻水が出そうになった。
「……大丈夫だ」
 こらえる。指が白くなるほど斧を握りしめて、深く深く呼吸した。
 騎士どもの兜の下、レーザーポインターめいた赤い眼光が"アル"を射竦める。
 胃が裏返りそうな恐怖のなか、それでも彼は一歩踏み出そうとした――。

 ……そんな彼の肩に、細い指がかけられた。
 かと思えばぐいと思いきり後ろに引っ張られ、思わずつんのめった。
「勇気と無謀を履き違えるなよ」
 聞き慣れない声。涙でぼやける視界で声のしたほうを見上げる。
 ……見慣れない黒髪の男がいた。その眼を見た時、少年はびくりと竦んだ。
 足元の感覚が消えて失せ、深い深い海の中に落ちたように思った。
 錯誤はすぐに過ぎ去っていき、それがただの人間であるとようやく理解する。
「戦うために必要なのは、行き続けることだ」
「……あ、あんた、は」
「猟兵。"闇の救済者"のほうが通りがいいか?」
 鳴宮・匡はそんな仰々しい二つ名を自称するような男ではない。
 しかし彼は、猟兵を希望と称える人々が自分達をそう呼ぶことを知っている。
 ゆえにあえてそうした。少年も覚えがあるようで、大きく目を見開く。
「だから、わかるな。振り返らずに走れ」
「…………」
「走れ」
 声の調子は同じ、しかし有無を言わせぬ迫力を籠めた再宣告。
「…………絶対に、追わせないから」
 まるで小さな子供を宥めるようにわずかに声を丸くし、匡は言った。
 それ以上はもう構わない。"アル"の肩を掴んだままの手で強引に振り返らせ、
 そのまま背中を叩いた。足音はためらいがちに、やがて駆けて遠ざかる。
 ……無駄な時間だ。戦術的に見れば、是が非でも引っ張るべきだった。
 見ろ。騎士どもはとっくに距離を詰めている。接敵までおそらく数秒か。
 狙撃銃で接近前に仕留めるプランは放棄。ハンドガンに持ち帰る。
 最悪、仕留め損なった敵が到達し匡にダメージを与えるだろう。
 それでも彼は退くことを選ばない。淡々と照準を合わせ、トリガを引く。

 狩人でも聞き取れないほどに押し殺された銃声が響いたのと同時。
 先頭を征く騎士が、まるで闇に呑まれたようにすっぽりと"消えた"。
「手を貸しますよ。相手が相手ですから」
 はたして、いつの間にそこに居たのだろうか。
 少しだけ驚いた様子の匡の顔を覗き込み、矢来・夕立が言った。
 ぼこ、ぼこと音を立て、後続の騎士どもも軍馬もろとも闇=地面に呑まれる。
 落とし穴だ。匡が一瞬気づかないほどに精巧に隠されたものとは。
 少年達の用意したものか? 無論、否。なにせ忍がここにいる。
「棘を仕込んであります。……少し下がりましょう、仕込みはこれだけなので」
「……ああ」
 匡はそれを問うことなく夕立に従う。ふたりは牽制の手裏剣と弾丸を放ち、
 砦の柵ぎりぎりまで後退し、最低限のカバーリングを確保して並んだ。
 落とし穴を飛び越えた騎士が、ふたりの相対距離5メートル以内まで近づいた。
 匡は軍馬の足を破壊――していない。今度は"視えていた"からだ。
 勢いを乗せてランスで柵ごとふたりを串刺しにすると見えた闇の騎士は、
 存在していなかったはずの仕掛け線に後ろ脚を絡め取られ、体勢を崩した。
 BLAMN。立て直すより先に、匡の弾丸が頭部を砕いた。
「まあ、ウソですが」
 匡は肩をすくめる。言葉を返そうにももうそこに夕立はいない。
 ここまでが陽動である。匡は拍子を崩した剣士めいて、逆に飛び出した。
 トラップに気を取られていた騎士どもは、突然接近する傭兵に対応できない。
 BLAM。BLAMN。分厚い兜ごと脳漿が爆ぜて砕ける。死神の鎌は厳粛だ。
 数は最初目視したときより半減していた。おそらく夕立の仕業だろう。
 ――攻勢に出てからわずか2秒。あたりは静まり返っていた。
「じきに第二波が来るでしょうが、まあそれまでには体勢は整えられますよ」
「……"相手が相手"って言葉の意味、聞いてもいいか?」
 何故、だとか、どうやって、とは聞かなかった。
 夕立は表情を変えないままちらりと匡を見る。無粋ですね、とも言いたげだ。
「邪魔だから殺すってだけのクセに、殺しが救いみたいなことを言う。
 それこそ救いようのないバカです。嫌いなんですよね、そういうの」
「てっきり臨時報酬を要求されると思ったんだけどな」
「オレのことなんだと思ってるんです?」
「仕事仲間」
「冗談下手ですね。練習したほうがいいですよ」
 多分それは、彼らなりの軽口だった。
「オレは気が長いタイプなんで、今回は先行投資することにしたんです」
「俺に?」
「それもあります」
 ちらりと夕立は村の方を見た。鐘楼は鳴り続けている。
「……自分の意志で反逆を選ぶ人、嫌いではありません。出世頭ですし」
「私情で動くタイプだとは思わなかったよ」
「それは傭兵さんも同じでは?」
 匡は銃器整備の手を一瞬止め……最後のマガジンをセットし、レバーを引いた。
「……ただ、重ねただけなんだ」
 幼い頃の自分が見た光景。"こう"ならざるを得なかった過去のタペストリ。
 震えながらも"ああせざるを得なかった"少年の姿は、どうしようもなく重なった。
「そうですか」
 夕立が深く問うことはない。新手がすでに迫りつつあった。
 だから匡もそれ以上言わず、狙撃銃を構える。
(――"守ろう"だなんて、俺みたいな人殺しに相応しくないんだろうな)
 ただ心のなかでそうひとりごちる。
 けれどもその思いは、偽りではない本物であるはずだ。
 そう感じる……感じることの出来るこころが、まだ自分にあるはずだ。
「嫌い"でした"よ、あなたのこと」
 夕立はそう言って消えた。
 そして影と影が、殺戮を開始した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

朱酉・逢真
こいつぁ厄介だ
敵は強くて数が多い、こっちは守らんやつらが居る
ひひっ、いやあ猟兵の力の見せ所じゃねえか、ええ?
転送されんのはいいが、俺ぁちびすけたちにゃ見つからんよう動くぜ
ヘタこくと俺が殺しちまうからよぅ

んじゃ、強ぇ風吹かして、そこにキセルの煙を混ぜて
さあさ広がり包みな、災禍の病毒
あいつら全員、超弩級の運動障害を引き起こす神経症にしてやんよ
敵から受けた傷で強化されんなら、俺は一切手を出さねえ
原因はてめえの細胞だ
あぁ、変性させたのは俺か……いいぜ、目に見えないちぃっせえ傷の分だけ強化されな。何も感じねえと思うがね
過去の分際で命の天秤気取るんじゃねえっての
何様だよ、ったく……
(UC:病属性の大風)



 強い風がびゅうびゅうと吹いていた。
 一体を見渡せる尖塔めいた岩山の頂上、足を組んでくつろぐ男がひとり。
 これから虐殺が始まるかもしれないというのに、口元に陰気な笑みを浮かべ、
 キセルなどをば吹かしている。ふざけた雰囲気の男だった。
「ひひっ、いやあ厄介厄介。ちびすけ相手に大人気ねえこった」
 ふう、と紫煙を吐き出しながら、朱酉・逢真は他人事のように笑った。
 きっとあの村には、多くの義憤溢れる猟兵達が集まっていることだろう。
 怯え竦んだ子供達に勇気を与え、闇を光で照らすべき奴らが。
 "だから、自分はここでいい"。
 ……強い風が、びゅうびゅうと吹いている。
 不自然なほどに強い風。ぬるく、じっとりとした風である。
「やりづらいったらねえぜ――姿隠すのも楽じゃあないんだぜぇ?」
 逢真はこん、とキセルの灰を落とす。風が洗い流していく。
 ……洗い流す? いや、違う。風は灰を運んでいく。
 煙を運んでいく。風下へ。すなわち騎士どものほうへと。
 びゅうびゅうと強い、けれどもちっとも爽やかでない不快な風だった。
 まるで肌に張り付くような、濡れた蛇の鱗めいた不穏な肌触り。
「さあさ広がり包みな――ひとつ本物の"災禍"を御覧じろ、ってねぇ」
 びゅうびゅうと強い風が吹く。風が、騎士どものところへ到達する。
 ……するとどうしたことか。岩をも砕く軍馬の脚がもつれた。
 騎士どもは喉をかきむしり、痙攣しながら転げ落ちてのたうち回る。
 キセル持たない片手でひさしを作り、逢真はくつくつと陰気に笑った。
 まるで死神のような――いや、疫病神のような。
 実際のところ、この男はそれよりもなお恐ろしいものである。
「辛ぇだろう? オブリビオンたって、呼吸ぐらいはするもんだもんなぁ?
 喉ぁ引き攣れて息を吸えず、手足はもつれて動きゃしねぇ。
 ご自慢の鎧も兜もぜぇんぶ、重くて苦しい枷に早変わりだ。ひひひっ」
 すぱぁ、と紫煙を吐き出す。風がそれを運んでいく。
 この男、人に非ず。その身その精神、本質はすなわち凶星――病と毒。
 死を運び、腐敗をもたらし、蛆虫を届け人を土を穢す最悪の手合いの神なり。
 そこにあること自体が凶兆。
 見てはならず、
 聞いてはならず、
 触れてもならず、
 関わり合いになるべきでない手合いのモノ。
「そおれ、ぴゅうぴゅうってな。ひひっ」
 そこに慈悲はなく、
「……過去の分際で命の天秤気取るたぁねえ」
 されど死にゆくものへの慈愛に満ちて。
「困るんだよ。仕事が増えちまったら働き疲れて死んじまわぁ。
 ……だからてめぇらがくたばっとけ。うんと苦しんで嘆きながらよぅ」
 少なくとも無辜の子供を進んで殺さぬ程度の分別はあった。
 あるいは、そうすることで生まれる俗世のしがらみを嫌ったかもしれないが。
 結果的にその行為は、人に寄り添う神らしいものである。
「何様だってんだよ、ったく……」
 強い風が、びゅうびゅうと吹いている。
 あとに遺るのは屍の群れ。物言わぬ残骸どもの成れの果て。
 ぶんぶんと、耳障りな虫の羽音が聞こえてきた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ロク・ザイオン
(間に合った)
(まだ、助けられるものがここにいる)

――"にげろ"!!!
(だから、どうか、お願いだから
この声に怯えてでも、
何もかも捨ててでも、逃げてくれ)

(「惨喝」の【大声】でこどもを促し、黒い鎧の病葉どもを足止め
こどもたちの後ろを守り【かばい】ながら【ダッシュ】、隠し通路まで何をしてでも逃し切る
追い付かれたら槍の一撃が飛ぶ前に【早業】で馬の足を狙い【鎧砕き】
重い鎧を載せた馬だ、そうすぐには立ち上がれまい)

(苦しみの前に、灼いて森に還すのは
慈悲だと、己も信じていたけれど)
("ちがう"んだ)

※咆哮、簡単な単語以上の発声が出来ません


ジャガーノート・ジャック
(子供達を襲う暴威。強きものが弱きものを虐げる残酷な摂理。
なす術も無く、強者に屈するのがこの世界の理であるのだろう。)

(――ザザッ)

だが敢えて言おう。
"そうはならなかった"のだと。

(予測能力を強化する。
敵がどうやって向かって来るか。真っ先に狙うのは何処か。
子供達を守る為の最善手は何か。
此れ迄の経験を活かし予測を立て、予知じみた行動把握と熱線銃、機械剣「剣狼」を駆使し敵と対峙する(学習力×戦闘知識×威厳・破邪×スナイパー)。)

弱者を狩る圧制者風情が騎士の名を騙るな。
騎士とは断じてお前達のような者ではない。
騎士を目指す者として。この子らに手出しなどさせはしない。
(ザザッ)



 ロク・ザイオンの操るユーベルコード"惨喝"は、ようは強烈な雄叫びだ。
 そのひび割れ擦り切れた声音はただでさえ耳障りなものだが、
 超常の術式として放たれるそれは、比喩でなく実際に精神に作用する。
 心弱き者を退かせ、その身を竦ませ、そしてそれを狩るべき己を強める。
 さながら蛮族戦士が決闘の前にあげるウォークライのような力。
 あるものはそれを忌まわしく思った。
 あるものはそれを罵った。
 あるものはそれを化け物と揶揄し、
 あるものはそれを恐れながらも感謝した。
 言葉を失ったロクが出せるのは、この緊急時ではそれぐらいのものだ。
 恐れてもいい。
 怯えられてもいい。
 怪物と言われても構わぬ。
 だからどうか。
 どうか、何もかもを捨ててでも――逃げてくれ。
 そのためにロクは声を張り上げた。
 だが彼らは、逃げなかった。

 ロクが間に合ったのは、村から少し離れた場所である。
 どうやら村にいた子供達とは別……おそらく狩りに出ていたのだろう、
 そこそこに体格のいい男子で構成された、そういう班と思しき子らだった。
 きっと自分達の住処が危機に瀕していることを遠くで察して、
 なんとかしようと悪路を駆け抜けてきたのであろう。
 欠けた山刀やボロボロの弓を背負った彼らの装いは泥まみれで、
 ぜいぜいと息を切らせ、なによりもその顔色は死人めいて青ざめていた。
 当然騎士どもは、察知した以上それらも逃しはせぬ。
 ゆえに迫っていた。ロクはそれに気づき、降り立ち、まず二体を斬り殺した。
 軍馬の脚を断たれてなお、喉笛を狙う狼じみて槍を構える騎士に刃をくれ、
 首を二度、心臓を三度、そして脇腹に二度刃を突き刺し、焼いて、殺した。
 そして血まみれの有様で振り返り、叫んだのだ。
「――"にげろ"!!!」
 今のロクが出せる最大の、そして唯一と言っていい単語である。
 子供達は怯えた。竦み、恐れ、涙ぐみさえしながら彼女を見た。
 血まみれのけだもの。ふうふうと肩で息をする恐ろしい化け物を。
 ……だが。
「い、いやだ」
 先頭の体格のいい少年――おそらく狩り仲間のリーダーだろう――が、言った。
 ロクは我が耳を疑った。
 何を、言っている?
 意味がわからない。違う、言葉の意味は"わかる"。
 拒絶。否定。いいえ。NO。ネガティブ。反抗。反発。拒否。
 困惑を斬り裂いたのは新たな蹄音。眼を血走らせ振り返り、即座に殺す。
 前脚を叩き折り逆手に持った山刀で軍馬のはらわたをかき混ぜて、
 下っ腹から背に刃を無理やり串刺しにして騎士を真っ二つにした。
 後続。臓物を目くらましとして飛びかかり、鎖骨から上をそぎ取る。
「にげろ。にげろ。にげろ!!」
 息を切らしながら叫んだ。
「いやだ。嫌だ!!」
 子供達は言った。
「あそこは俺達の家だ。俺達の村だ。仲間がいるんだ!! 嫌だ!!」
 惨喝の音は敵を竦ませ、心弱き者を逃げ出させるおそろしの声だ。
 少年達はそれに抗った。その意味がこれほど腹立たしく思えたことはない。
(どうしてだ。にげろ。死んでしまう。だめだ。生きろ。ちがう。それは)
 "それは、ちがう"。
 死を厭わず己を厭わず仲間を守ろうとするのは真の献身ではない。
 恐れを振り払いがむしゃらに前に進むことは真の勇敢ではない。
 違う。違う違う違う。やめろ。やめてくれ。逃げろ。逃げてくれ!
 少年達は構わず駆け出した。同時に騎士の群れが闇から飛び出した。
 ロクは雄叫びをあげた。悲鳴のようでもあった。懇願のようでもある。
 届け。あのこどもたちが死ぬより先に。己はどうなってもいい。
 届け届かせろ頼む届いてくれ駄目だ殺すな死なせるな嫌だそれだけは――!!

 雷霆が、闇を払った。
《――子供達を襲う暴威》
 バチバチと稲妻の残滓が地面を舐めている。
《――強きものが弱きものを虐げ、残酷に為す術もなく殺し、強者は君臨する》
 騎士だったものが、そのシルエットが地面に焦げ付いていた。
《――弱者は苦しみ、永劫の闇が世界を包む。それがこの世の理なのだろう》
 気高き獣がそこに立っていた。
 振り返る。赤いバイザーが少年達と相棒を見据え、頷いた。
《――だがあえて言おう》
 そして睨む。新たに来たる騎士どもを。
 鋼の騎士は言った。敵に向けて。
 冷徹に。
 厳粛に。
 怒りを籠めて。
 殺意を籠めて。
 侮蔑を籠めて。
 ……何よりも胸を張って、誇らしく。
《――"そうはならなかった"のだと》
「ジャック!!」
《――ロク。子供達の護衛を頼む。本機が殿を務めよう》
 言葉を失い学んでいる途中の己だけれど、相棒の名は呼べる。呼べた。
 それがこれほど嬉しいことは、きっとこれからも何度もあるのだろう。
 ロクは血と泥を拭い、笑った。
「おーば!!」
《――グッドラック。これより本機は戦闘行動に移る》
 そしてジャガーノート・ジャックは風となった。色のある稲妻となった。
 迫りくる騎士を狂える狼の牙で殺し、殺し、殺し、殺し続ける。
 熱線が闇を貫く。雷霆が轟く。殺す。ひたすらに殺す。殺し続ける。
《――本機はお前達を認めない》
 ひたすらに殺す。
《――弱者を狩る圧制者風情が騎士の名を騙ることを、騎士であることを認めない》
 殺し続ける。
《――騎士とは、断じてお前達のようなものではない》
 活路を拓く。騎士のごとく華やかでなかれど、ひたすらに。
 道とは、先を征く勇ましき誰かのあとに出来るものだ。
 あるいはそれこそが、彼なりの"騎士道"であったのかもしれない。
「うう……」
 ロクは唸りながら子供達の前に出て、こくこくと頷いた。
 どうすればいいのだろう。
 どう言えばいいのだろう。
 かつての己ならわかったか。
 誰も教えてはくれない。もどかしい。苦しい。けれども。
「……は」
 これは、己が言わねばならぬ言葉だ。
「は、や、く」
 かろうじて言葉らしきものが出た。
 少年達はもはや首を横に振ることはなく、首肯してロクに続いた。
 ロクは闇を切り裂く。闇を凝らせたような騎士を切り裂く。
 もう言葉は要らない。ただ吠えるだけのけだものとなって前に進む。
 恐れ嘆くものを殺すことなど、慈悲ではない。
 己はそれを知っている。それを信じていたのだから。
 だから、違う。
 そんなものは認めてはならない。
 ――違う。
 認めない。認めない。認めない。認めない。
 相棒が言ったその言葉を心のなかで狂ったように繰り返し、
 迸る殺意と怒りを咆哮に変えて、燃えるたてがみの獣は闇を駆けた。
 まっすぐに。星のように。若きいのちを照らして。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ニコラス・エスクード
なんと喜ばしいことか。
恋焦がれ待ち望んだ花が咲き誇ろうと、
確かにその芽を出したのだと。
小さくとも確かに、確かにだ。

なんと嘆かわしいことか。
愛しい蕾を踏み躙らんする騎士共が、
轡を並べて仰々しくも来るのだと。
慈悲などと嘯いて。

我が身は正しく盾である。
その有り様が変わることなど、
唯の一度もありはしない。
我が本分、確りと果たさせて貰おう。

騎兵を迎え撃つ位置にて陣取り、
錬成カミヤドリにて築き上げるは盾の防壁。
同胞たる鎧達と共に、写し身の我らと共に、
この地へは踏み込ませぬという断固たる覚悟を以って、
その悉くを受け凌いでみせよう。

誓いを果たせぬ騎士に首は要らぬ。
唯の一つも残さず、
素っ首、叩き落としてやろう。



 ――騎士とは、何をもって騎士たらしめるのか。
 名誉か。
 資格か。
 栄冠か。
 勇名か。
 武芸か。
 はたまた家柄か。あるいは華やかたることか。貞淑たることか。
 どれかなのだろう。あるいはそのすべてなのだろう。
 問われたとしても、ニコラス・エスクードに答えを出すことは出来ない。
 なぜなら彼は所詮、残骸でしかない。
 主を失い罪を背負い。それすらも贖いきれぬ半端な成れの果て。
 誓約は呪詛へと行き着いてその身を鎧い、縛り付ける。
 だがそれでいい。
 そうでなくてはならない。
 己は数多のいのちを零してしまったモノ。
 運命によって再誕し、祝福(のろい)と焔(やいば)を伴とする咎潰し。
 この世界に萌え出た勇気という名の芽を、
 狂おしいほどに恋い焦がれ待ち望んだ希望という名の花を、
 血濡れたこの手では、愛でることすら出来ず言祝ぐのみだとしても。
 愛しい蕾を踏み躙らんとする外道の残骸どもを、
 仰々しくも慈悲と士道を謳い来たる下衆どもを、
 血濡れたこの手ならば、押し留め粉砕し叩き斬ることが出来る。
 ならばそれでよい。
 黒き鎧を纏う化身は、騎士ではない。
 邪悪を留め押し退けいのちを護り、
 邪悪を斬り突き進みのぞみを護る、
 どこまでも愚直でそれしか出来ない――それだけが出来る、盾なのだから。

 ……そして盾たる男は、列をなし轡を並べ盾として在り続けた。
 迫りくる波濤の如き闇の眷属どもをその身と鎧いと刃と覚悟でもって留め、
 繰り出される槍を、
 弾丸じみた突撃を、
 死神めいた赤光を、
 その尽くを受け止め凌ぎ、応報の刃で咎もろとも首を削ぎ落とした。
『我が身は正しく盾である』
 うっそりとした声で、男が言った。
 慈悲とやらに駆られた騎士の群れをして拍車をかけることを忘れ、
 そも下僕たる怪物じみた軍馬どもをして、蹴立てることを躊躇うほどに。
 恐ろしく、雄々しく、そして無敵であった。
『誓いも果たせぬ身でありながら、貴様らはおのれを騎士と嘯くか』
 血の如くおぞましく、燃える焔の如き赤い眼光が騎士どもを射竦めた。
『ならばその首は要らぬ』
 死刑執行人めいた声音である。
『恐れるならば退け。死にたいならば来い。どちらであれ通しはせぬ』
 がしゃり――写し身達が同じように刃を担ぐ。
 護りを考慮せぬ受け太刀でありながら首を落とす攻めの太刀。
 すなわち諸刃の刃。不退転の決意を抱いた、凄絶なる構えであった。
『貴様らに、この世界に芽吹いた希望を潰させはしない』
 騎士どもは拍車をかけた。思い出したように軍馬の群れが嘶いた。
 来る。闇どもが来る。泥を、地面を踏み砕いて。
 獲物を串刺しにする、百舌鳥の嘴めいた突撃槍を構え。
 速度を載せ、
 質量を載せ、
 悪意と殺意を載せて貫こうと。

 轟音が轟いた。
 鋼と鋼がかち合い軋み、せめぎあい、そして弾かれる音である。
 雷鳴のようだった。
 競り勝ったのは黒き鎧と盾であった。
 揺るぎすらしない――もはや壁の如くにただ屹立する。
『我が身の在りようが変わることなど、唯の一度もありはしない』
 ぞん、と鋼色の旋風が吹いた。
 "薙ぎ払う"という言葉そのままに、剛剣が咎もろとも首を叩き潰す。
 首なしの騎士どもは軍馬もろとも紫の焔に呑まれ、消えていく。
『我が身は、正しく盾である』
 それはおそらく、天地が揺らごうとも退くとは思えない。
 ニコラス・エスクードとは、そういう男だった。

成功 🔵​🔵​🔴​

イリーツァ・ウーツェ
護衛任務を承知
雛は守らなければならない
迅速に行動を開始する

敵は騎馬の群れ
四脚は、接地面積が多い
ならば此れが効くだろう
敵を迎え撃つ位置へ
騎士ならば勇み向かい来るだろう
脚を真直に上げ、渾身の力を籠め
大地へ振下ろす

広範囲震脚で体制を崩し
落馬した騎士を後続が踏み
続き、体勢を崩すだろう
其処から崩す

怪力込めた杖で槍を砕き
蛇腹剣とリボルバーで馬を潰す
手の届かぬ場所は、魂食の蟲影
両手を塞ごうと関係ない
私には足も尾も翼も在る

貴様等が吸血鬼の武威を示すならば
私は雛の盾と為り、其れを防ごう
垣と為り、防ごう
砦と為り、防ごう
幸いなるかな
此の場に居る兵は、私だけでは無い

此の身を砕いてでも、雛を護る
其れが約定 私の価値だ



 はたして、弱者を飲み込もうとしているのはどっちだっただろうか?
 もしもこの戦いを最初から見守っている"誰か"がいたならば、
 目の前で繰り広げられているおかしな光景を見て、そう疑問に思ったろう。
 ひとり。
 たったひとりの猟兵が、迫りくる騎馬の群れを"蹂躙"していた。
 迎撃ではない、"蹂躙"だ。誰がどう見ても、趨勢は男ひとりに傾いている。
 ではその男は、勝ち誇って笑っていたか? ――否。
 ならば義憤を燃やし、怒りの形相であったか? ――否。
 はたまた悪党どもに侮蔑の眼差しを向けていたか? ――否。
 無である。
 男の……イリーツァ・ウーツェの表情は、いつもとなんら変わらない。
 なぜなら龍にとって、ヒトは"守るもの"だがそれ以上でもそれ以下でもない。
 雛(こども)であろうが、若者であろうが老人であろうが、
 人間ならば守る。そう定められている。そう約束した。そう縛られている。
 ゆえに、守る。義憤も皮肉も侮蔑も達成感も、何も存在しない。
 だからこそ龍は、波濤じみた形ある闇の群れをたったひとりで蹂躙していた。
 勇んで来るものがあれば震脚によって足並みを崩し、
 槍を振り回すものには神の雷めいた魔杖を振り下ろし立場を解らせる。
 かと思えば返す刀で蛇腹剣を振り回し、もう片方の手で回転式拳銃のトリガを引き、
 なおも足りなければ尾を、それでも足りなければ翼を打ち振るう。
 まるで、秋の実りを収穫するような、淡々とした処理の有様だった。
 盾……いやもはやそれは砦だ。一個にして万軍に匹敵する城砦。
 すり抜けた槍がその身を貫こうと、
 怪物じみた軍馬の蹄が骨を砕こうと、
 血を流し深紅にまみれようと、止まらぬ。
『殺さねば』
『哀れなるモノどもを』
『殺してやらねば』
「不可能だ」
 淡々と言い、立ちはだかる騎士の群れを一薙ぎで吹き飛ばした。
「貴様らが吸血鬼の武威を示すならば、私は雛の盾となりそれを防ぐ」
 確信的――否、機械の行動宣言めいた淡々たる宣告。
「貴様らはすべて殺す」
 その姿は勇猛で、果敢で、何よりも頼もしかった。
 けれどもその背を見つめる子供達は、ただ言葉を失っていた。

 男は人の姿をしているはずだった。
 だのにその在りようは、まるで人に思えなかったからだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

ネグル・ギュネス
そう生き急ぐなよ少年たち
此処は頼れるお兄さんに任せときなさい
ヤバくなったらすたこら逃げんだよ?

さて、有り難迷惑な雑兵を叩くとしようか

成る程確かに強力なチャージだ
だが、馬に頼る分、直線しか来れない分読み易い
バリケードが破壊されないように、近くの岩場に向かって突っ込ませるよう誘導
残像分身や迷彩隠れで欺きながら、撹乱しつつ、馬に攻撃を集中してやる

注意深く戦えば隙が見える
避けたられた際の、ランスの持ち手とは逆の側面


其処に向かい、身体のリミッターカットから、間合いを瞬時に詰め
【破魔の断・雷光一閃】で叩き斬る

貴様らみたいなのは大嫌いでね
選ばれた人種?笑わせるな

自分の道を、希望を選んでいいのは本人だけだ



 幸い――あるいは不幸なことに、襲撃の瞬間を逃れた少年達もいた。
 とある鋼豹と森番によって安全に集落へ戻れた彼らは、
 即座に逃げることよりも自分達の住まいをどうにか守ることを選んだ。
 力はない。だがここで退くことは出来ないと、血気盛んに主張したのだ。
「お、俺達だってやれるんだ! そうだろみんな!」
「で、でもブランド。アル達がいないよ……」
「いいんだよ! あいつらが逃げる暇を稼ぐためにも」
「――それ、"二度目"だぜ? 少年」
 体格のいい少年……狩人班のリーダーである"ブランド"は、
 聞き慣れない男の声に振り返った。そこには銀髪の紳士がいた。
「気持ちは嬉しいし上出来だ。けどな、そう生き急ぐなよ、少年達」
「……あんた、もしかして……"闇の救済者"か?」
 男――ネグル・ギュネスは、微笑した。少年達は息を呑む。
「何かしたい気持ちはわかる。私も何度だって無力感に苛まれてきた。
 けど、だからこそ言わせてもらう。此処は、頼れるお兄さんに任せときなさい」
 いますぐすべてをかなぐり捨てて逃げろとは、ネグルは言わなかった。
 呆然とする"ブランド"やその他の少年らの肩を叩き、ネグルは振り返る。
「ありがた迷惑な雑兵どもは、全員蹴散らしてやるからさ」
 声音は優しく。されど敵に向ける双眸は修羅の如く。
 紫眼は、尽きることなき怒りの炎で燃えているかのようだった。

 はたして、これまで何度こんな光景を見てきただろうか?
 弱者が蹂躙され、オブリビオンどもは強者を嘯き嗤笑する。
 罪もない命が奪われ、ついには憎悪を向け合い争いあいさえする。
 彼らを悪とは断じれない。この世界は"そういう風"にできている。
 よく――よく知っている。世界がいかに残酷かは。
 どれだけ血も涙もなく、力なき者を無慈悲に打ち据えるかは。
 己の未来を選択する/出来ることが、どれだけ幸福なのかは。
「気に食わないんだよ、貴様らは」
 ネグルは言って刀を払う。背後で真っ二つにされた騎士が斃れた。
 バリケードを突破せんとしていた騎士どもは、その男に注意を向ける。

 ……いない。
 実像と見えたのは虚影。高速移動が空間に刻んだ残像である。
 すでに背後に回っていたネグルは、雷撃の速度で放たれた居合を残心した。
「選ばれた人種。力あるもの。支配者――くだらない。大嫌いだ」
 どう、といくつもの残骸が倒れる。
 新手が来る。ネグルは言った。
 聞くがいい、オブリビオンども。
 いいや聞け、世界よ。残酷にして無慈悲なる世界そのものよ。
 私は何があろうとも折れはしない。
 オレは何があっても立ち止まらない。
 経てきた過去を背負い、
 繋いだ縁を心に留め、
 いかなる醜悪にすらもこう叫ぼう。高らかに。
「自分の道を――"希望"を選んでいいのは、いまを生きる本人だけだ」
 人類(われら)は、お前達の言いようにはならないと。
 尽きぬ闇を切り裂くように、破魔の雷光が新たな産声をあげた。

成功 🔵​🔵​🔴​

スキアファール・イリャルギ
『ならば我は影となりて闇を喰らおう』
――なんてね

呪瘡包帯を解いて怪奇の目口を潰し裂く
子供には怪奇を見せぬように極力努めますが
まぁ、敵が屈強そうだし隠しきれるかどうか怪しいな
――死にたくないなら、さっさと逃げといて

万が一の為に防御壁(オーラ防御)を張りつつ
馬の脚と突撃槍を持つ腕を重点的に縛って
動かせぬように圧し折ってやりましょうか
折れずとも突撃を喰い止められれば良い
どうせ最後は憑き殺す

前に出て戦うタイプじゃないんですよね
こう、屈強な敵の前に出て戦うとなると"怪奇"を晒すしかない
だったら出んなって?
そう出来たら良かったんですけど

誰かを救おうと考えると
どうしても自分が苦しくなる方法しか浮かばない



 猟兵と騎士とがぶつかり合う戦場は、闇色のミキサーのようだ。
 只人が飛び込めば、たちまちひき肉同然になってくたばるだろう。
 そんな中で、むしろ進んで波濤に身を飛び込ませる男がいた。

 スキアファール・イリャルギ。
 男は敵を恐れていない。だが別の何かを恐れていた。
 忌避していた、というべきか。こだわっているというほうが近いかもしれない。
 いかに勇敢であれど、力なき子供達に我が身を見せるのは気が進まぬと。
 怪奇たる己の本性を詳らかにすることは、もっと慎重であるべきだ。
 自らの異形をひけらかすようなことを、"人間"はすまい。
 だから彼は、包帯を解きながら、その目口を潰し裂きながら、
 迫りくる闇と剛槍と飛び散る血とに己の異形を隠してしまうように前に出る。
 当然、無謀だ。防御壁があろうと強烈なチャージは防ぎきれない。
 稲妻じみた速度で繰り出された槍の穂先が脇腹を貫いた。
「"殺してやらねば"、だったっけか?」
 闇よりも濃ゆい影が、触手めいて槍を捕らえていた。
 騎士は槍を引こうとする。出来ぬ。すでに怪奇の顎は獲物を捕らえた。
「ならば我は影となりて闇を喰らおう――なんてね」
 冗談めかしつつもくすりとも笑わずに言って、さらに強く力を籠めた。
 べきり、
 ごきり、
 ばきん。
 嫌な音を立てて、鎧もろとも騎士と軍馬はあべこべにひしゃげて潰れる。
「……性分じゃあないんだよな」
 削がれた傷口を影によってかりそめに覆い、スキアファールはさらに一歩前へ。
 闇の中でなお不気味な影法師が長く伸びる。
 長く長く。まるでフォークロアに伝わる不気味な背高男のように。
 所詮は真似事だ。この身はまさしく"人間"なのだから。
 怪奇であろうと――否、だからこそ。それを忘れてはならぬ。
 だから傷が増える。それでもスキアファールはさらに前に出る。
 慣れない非合理的な戦い方で、一体一体と騎士を圧し潰していく。
(こうするしか思い浮かばないんだ)
 誰に言うでもなく、スキアファールは心の中でつぶやいた。
 彼らの心を護り、
 彼らのいのちを護り、
 彼らの住処を護ろうとするなら。
 代わりに自分が傷ついて、苦しんで、憑き殺すくらいしか浮かばない。
 不器用だった。けれどもひたむきで、泣きそうなくらいに前のめりな……。
「――最初から、誰も苦しんだりしなければいいんですけどね」
 絵空事にも届かぬ呟きは、滴る血とともに影に融けて消える。 

成功 🔵​🔵​🔴​

マーロン・サンダーバード
おお若者よ闇の中で嘆くなかれ、きっと太陽がそなたを照らす
ってな!太陽の使者のお出ましだぜ!

騎兵突撃を挫くためにゃ群れの横から横槍ならぬ横銃を入れたいとこだが
転移場所によっては正面からやりあうことになるか?
まーなんにせよ状況はいきなり逼迫してるみたいだしいきなり全開でいくぞ!

まずは敵の群れに「SW-5ピットボーイ」を投げ込んで【目潰し】だ
スモークグレネードなんて見たことあるかい騎士さんよ?

そして「対決の黄金銃」を取り出し騎士に向けて【乱れ撃ち】だ!
闇から生まれた連中に太陽の力を見せ付けてやろうじゃないの
できれば頭を狙って【部位破壊】といきたいね
こっちも無慈悲に撃ち抜いていくのさ



 猟兵達の参戦で、少年達は無事に逃げおおせることが出来ただろうか?
 ……残念ながら、そう簡単に行くほどこの世界は有情ではない。
「か、隠し通路が潰されて……!」
 "アル"と呼ばれた少年は、崩落した通路の入り口を見て愕然とした。
 先回りされた? あるいは自然に? どちらにせよ退路は断たれた。
 どうする。考えろ。どうすれば生き延びられる。
「ア、アル……!」
 "ラミー"が不安げにしがみつく。
 その手に抱かれた赤子は、子供達の不安を察してぐずり始めた。
「駄目だ。泣くな、静かにしててくれ。頼む」
 アルは赤子をなだめようとした。だが赤ん坊はそうもいかぬものだ。
 ……けたたましく嗚咽をあげて、それが結果的に獣どもを引きつける。
 潜んでいた騎士どもが、闇から染み出し赤い眼光を輝かす――!

 KBAM!!
『『『!?』』』
 その時。
 突然投げ込まれたスモークグレネードが炸裂し、煙ですべてを覆い隠した。
 少年達も敵も、何が起きたのかと慌てて周囲を見渡す。
「おお若者よ、闇の中で嘆くなかれ! きっと太陽がそなたを照らす!」
「あ、あそこ……!」
 "ラミー"が指差したほう、小高い岩山の煙が晴れた。
 ――闇を切り裂くような眩い黄金の輝き。少年達は思わず手で目元を遮る。
「なーんてな! 太陽の使者のお出まし、だぜ!」
 奇妙なマスクを着けた男――マーロン・サンダーバードはおどけてみせた。
 そして、BLAMBLAMBLAMBLAMBLAM!! 神速のクイックドロウ!
「おっと、悪いな。隙だらけなもんだからつい弾が先に出ちまった。
 煙幕弾も知らねえ騎士さんに教えてやるよ。こいつこそは――」
 BLAMN!! 煙の中を突撃してきた騎士を黄金銃で撃ち抜く!
「GOLDEN GUN!! 俺かあんたらか、どちらが強いのか瞬間的にわかるッ!
 そう、あんたらと俺達――絶望と希望、闇と太陽のどちらが上か、ってな!」
 BLAMBLAMBLAMBLAMBLAM!! パーティじみた盛大なマズルフラッシュ!
 少年達は見た。闇を切り裂く、目が灼けるほどの黄金の輝きを。
 希望をもたらす太陽の輝き。それを操る、無慈悲だが熱い男の背中を!
「……あ、あんたは」
「人呼んで"サンダーバード"」
 西部劇のガンマンめいてガンスピンし、マーロンは肩越しに振り返った。
「無敵でクールな、スーパーヒーローさ。サインは要るかい?」
 緊迫した状況にそぐわぬジョーク。けれどなんと心強いことか。
 絶望に瀕した子供達の心を救うその姿は、まさに英雄そのものだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。確かに、貴方の行いは無謀かもしれない。
だけど私はこう言おう…前に出たその勇気に敬意を。

…この場は私達が引き受ける。
貴方は貴方の大切な人の傍にいてあげて…。

吸血鬼化した自身の生命力を吸収してUCを発動
自身を“闇の雷”のオーラで防御して空中戦を行う

…闇の精霊、雷の精。私の声に応えて。
我が身に宿りて絶望を撃ち抜く稲妻となれ…!

出し惜しみは無し。初手から全力で打ち払う…!

第六感が見切った敵の殺気に感応して雷速の早業で接近し、
黒雷の魔力を溜めた大鎌をなぎ払う先制攻撃で敵を討ち、
限界突破した場合は、暴走する意識を気合いと狂気耐性で保ち離脱する

…決戦呪法解放。なぎ払え、闇の雷…!

…っ、ここまで、ね。



 この村で見張り役を務めるのは、"レンダ"と呼ばれる少女だった。
 村に住む若者達のなかでも、一番に夜目が利くからだ。
 必死で鐘楼を叩いていたレンダは、そこでようやく我に返る。
「アル達、逃げれたかな……逃げれたよね」
 逃げ遅れた――いや、わざとだ。彼女はあえて見張り台に残ったのだ。
 正面からでは勝ち目はない。だが得意の弓術ならば目はあるはず。
 彼女は愛用している弓矢を射掛け、迫りくる騎士達を貫こうとした。
「え」
 その時。騎士どもは、見張り台めがけてランスチャージを仕掛けたのだ。
 KRAAAAAAASH……馬鹿な。たしかに古びてはいるが、まさか!
「み、見張り台ごと、あたしを……!?」
 突撃を受けた見張り台は根本からへし折れ、傾ぎ始めた!
 レンダは慌てて縁にしがみつく。だがそれでどうなるというのだ。
 落ちれば死ぬ。生き延びたところで、眼下にはサメじみて待ち受ける騎士ども。
 少女は悲鳴をあげて己の最期を覚悟した――その時である!

「……え?」
「大丈夫?」
 レンダは、自分が空を飛んでいることに気づいた。
 違う、抱えられているのだ。見上げればそこには銀髪の少女の顔。
 飛んでいた。少女の背中から伸びるのは、翼ではなく闇色の雷。
「……ん。怪我はなさそう。ならよかった」
 ふわりと少女はその場に降り立ち、きょとんとするレンダを立たせた。
「仲間を逃がそうとしたあなたの勇気に、敬意を。あとは私達が引き受ける」
「……! まさか、"闇の救済者"……!?」
 少女――リーヴァルディ・カーライルはくすぐったそうに目を細めた。
「あなたはあなたの大切な仲間の傍に居てあげて……さあ」
 レンダは感謝を言うことも忘れ、こくこくと頷いて駆け出す。
 待ち構えていた騎士どもは、それを追おうとし――馬が嘶いた。
 ばちり!! と、闇の雷が、行く手を遮るように地面を焼いたからだ。
「ここは通さない」
 決然たる面持ちで、リーヴァルディは言った。
 闇の精霊よ。雷の精よ。この声に応えよ。我が意に応えよ。
「出し惜しみはなし……全力で、打ち払う……ッ!!」
 世界を包む絶望を撃ち抜く稲妻となりて、我が身を護り敵を貫け!
 口訣とともにその身は雷光に包まれ、リーヴァルディは光となった。
 一瞬にして騎士数体の背後へ。遅れて空間がバチバチと残影に轟く。
 ――KRAAAAACK!! 一拍外した稲妻が、騎士どもをまるごと吹き飛ばす!
「……次!」
 少女は止まらずさらに空を翔ぶ。一体でも多く敵を倒すために。
 猶予は残り6秒。どれだけの敵を倒せる。
 どれだけの命を救える。どれだけの子供達を守れる。
 どれだけ? 否、否否否!
 ――すべてだ。誰ひとり死なせはしない。すべての敵を倒す!!
「お前達は……ここから先に、通さない……!」
 己の内側で渦巻く狂気と暴威をねじ伏せ、少女は言った。
 闇空を稲妻が切り裂く。黒く、されど気高く輝く雷光が。
 刹那の全力――それはまさに、一瞬の煌めきに生きる人の命のようだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

麻海・リィフ
アドリブ、即興連携歓迎
【風雷剣】

許せるか!騎士なる者が斯様な暴虐を為すを!許せるものか!!
涙を流しながら怒り
姉君!

クイックドロウUC発動
地形を利用し拠点防御知識に従い団体行動で迅速に要所に盾を展開

敵の攻撃は三種の盾と剣を駆使して受け
カウンター念動衝撃波シールドバッシュで範囲ごと薙ぎ払い吹き飛ばす
追撃で剣を回転させ念動衝撃波を乗せて串刺しチャージ

砦、子供たち、仲間を積極的にかばう
必要なだけ繰り返しUCを使う

目を上げよ!小さき希望よ!
これは奴らの焦りの表れ!
奴らは君達が目障りなのだ!
未来の光である君達が怖いのだ!
闇に、死に屈するな!
生き延びた者は!骸より強いのだ!
存在感と勇気を以て子供達を鼓舞する


紬雁・紅葉
【風雷剣】
ええ、リィフさん
鎮めるに能わず
斬り祓ってしまいましょう…!

羅刹紋を顕わに戦笑み
天羽々斬を鞘祓い十握刃を顕現

正面からゆるゆると接敵
射程に入り次第破魔風雷属性衝撃波UCを以て回数に任せ範囲を薙ぎ払い吹き飛ばす

敵の攻撃は躱せるかを見切り
躱せるなら残像などで躱し
そうでなければ破魔衝撃波オーラ防御武器受け等で受ける
何れもカウンター破魔雷風属性衝撃波UCを以て範囲を薙ぎ払う

窮地の仲間は積極的にかばい援護射撃

死を慈悲と?
生を苦しみと?
成程、うぬ等らしい言い様だ
生き耐える事に耐えられなかった
惰弱者らしい言い訳だ

役者に足りぬ痴れ者め!
去り罷りませい!

※アドリブ、緊急連携、とっさの絡み、大歓迎です※


アウレリア・フルブライト
弱者の命を己が愉悦の為に摘み取る行為を慈悲とは、とんだ欺瞞にございますわね。
この私が、打ち砕いてくれましょう!

砦の前にて、突撃してくる敵を待ち構えます。
呼吸を整え【力溜め】つつ、ぎりぎりまで敵を引き付け。
彼等の槍が届くその直前を狙い『激震脚』を叩き込みます。
落馬には至らぬでしょうが、姿勢を崩させることで他の猟兵の皆様の助けとなりましょうか。
無論、私もそれで終わりではございません。踏み込みから馬に拳を一撃、足を止めさせてからの騎士本体への【鎧砕き】の拳を叩き込んで参ります。
強者に阿るばかりの貴方達が騎士などと。その行い、蛮族にすら劣ると知りなさい!


天御鏡・百々
この世界に生まれし希望の光を消させてはならぬ!
我が力にて守り抜こうぞ!

闇を纏いし漆黒の騎士どもを『清浄の矢』にて射抜いてやろう
生命力吸収能力があるとのことなので
吸収されぬように遠距離戦だな
(破魔71、誘導弾17、スナイパー5)

もし攻撃を受けるようならば
神通力(武器)による障壁(オーラ防御85)で対処だ
もちろん人類砦の者が攻撃を受けそうな場面でも
同じく障壁で守るとしよう

我らの戦う姿が人類砦の少年少女に
更なる希望を与えることになるとよいのだが(鼓舞20)

●神鏡のヤドリガミ
●本体の神鏡へのダメージ描写NG
●アドリブ、連携歓迎


フェルト・フィルファーデン
さてと……まずは少年少女達を元気付けましょうか!
【礼儀作法】に則り笑顔と言葉で皆様を【鼓舞】して安心させるわ!

「大丈夫よ!わたしは正義の騎士の1人。あなた達を助けに来たわ!他にもたくさんの仲間がいるのよ!
それでね?お願いがあるの。これからやって来た悪い騎士を倒すから、この場で身を潜めてじっとしていて?心配ないわ!わたしも含めて、皆様とっても強いから!……どうか、お願いね?」


……相変わらずの世界ね、反吐が出るわ。
わたしの闇夜の騎士人形よ。その力を示しなさい。
騎士を名乗る不届き者を、一瞬で確実に息の根を止め、1人残らず始末して。

外道の輩め、覚悟しなさい。わたしの希望で、全て尽く打ち砕いてあげる。


セシリア・サヴェージ
どんなに小さな希望だとしても、必ず護ってみせましょう。
それがやがてこの世界を救う光になると信じて。

少年たちが襲われているならば救出を最優先します。
【救助活動】【かばう】【武器受け】で敵の攻撃から護りつつ安全な場所まで退避します。
反撃はその後でも遅くはないでしょう。

少年たちの安全が確認できたら攻勢に転じます。
UC【黒風の蹂躙】を発動することで戦闘能力を【限界突破】させ、敵陣に突撃。
剣の【なぎ払い】やそれに伴う【衝撃波】で敵をまとめて【吹き飛ばし】て【蹂躙】します。

心まで闇に誓いし騎士たちよ。同じ闇に生きる騎士として、せめて全力を以って葬ろう。



 こんな世界では、希望を信じ続けるよりも絶望したほうがよほど楽だ。
 何もかもを諦めて膝を突き、すべてを運命と受け入れるほうがずっといい。
 そうして魂までも闇に囚われ、悪性に染まってしまった人々がいる。
 互いに憎み合い疑い合い奪い合い、優しさを失ってしまった人々がいる。
 いいや、この世界にそれしかなかったというべきだろう。
 そうあるべきだと規定され、そうあるように運営されてきたのだから。
 だがここに希望は生まれた。猟兵達の戦いがそれを生み出した。
 人類砦。若き子供達は、おそらく何らかの事情を抱えていよう。
 それを問う暇はない。嘆き、憐れむ暇もない。
 今必要なのは――彼らの心に翳る闇を払う、強き希望の光なのだ。

「ごきげんよう、皆様! 間に合ってなによりだわ!」
 だからフェルト・フィルファーデンは、彼らの前に笑顔で姿を現した。
 務めて明るく朗らかな声を出し、疲れ果てた少年達に呼びかける。
「……あなたも、"闇の救済者"なの?」
 泣き続ける赤子をあやす少女……"ラミー"が問いかけた。
「ええ、そうよ。けれどこの場合はそうね、正義の騎士と呼ぶべきかしら?
 それもあなた達を助けに来たのは、わたしだけではないの!」
 ――たくさんよ、たくさんの仲間がいるのよ。
 まるで秘密のおとぎ話を説いて聞かせる母のように、フェルトは言った。
 すでに少年らの中には、他の猟兵と僅かに関わった者もいよう。
 そんな少年少女達の顔を見渡して、フェルトはくすりとはにかんでみせる。
「もう大丈夫。あの悪い騎士達は、わたしたちがみぃんなやっつけるわ。
 だからあなた達はどうか、安全な場所で身を潜めてじっとしていて?」
「で、でも、ここは俺達の家なんだ……」
 ためらいがちな少年……"ブランド"の言葉に、フェルトは頷いた。
「ええ、そうでしょう。だから、すべてを捨てて離れろとは言わないわ。
 どうか見ていて。わたしの――いいえ、わたし達の戦いを。その強さを!」
 サーカスの幕を上げる興行師めいて言い、フェルトはふわりと飛んだ。
 ――戦場を目指して。少年少女達は、可憐なフェアリーの背中を目で追う。
 そこには、勇ましく雄々しき猟兵達の背中が、いくつもあった。

 たとえばそれは神鏡の化身、儀礼服を纏う天御鏡・百々の姿だ。
 闇を纏いし漆黒の騎士どもの間を踊るようにすり抜けて薙刀を振るい、
 かと思えば眩いほどの輝きを放つ光の矢で、馬ごと五人抜きしてみせる。
 然り。神と崇められ敬われてきたヤドリガミの少女にとって、
 光とは己そのものであり、闇とは払い清めるべき大敵であった。
「穢れしその魂――浄化してくれようぞ!」
 苛烈なる決意と祈りを籠めて放たれた矢は鎧をものともせず騎士を貫き、
 肉でも骨でもなく、その残骸たる闇の魂を、その穢れのみを祓い滅する。
 オブリビオンは苦しみもがきながら粒子に還り、光へと融けていく。
「この世界に生まれし希望の光! ここで消させてなるものか!」
「――然り。たとえそれが、どんな小さな希望であろうと」
 凛とした声が応え、光の中を暗黒とともに歩む。だが邪悪ではない。
 迫りくる騎士どもの闇が、何もかもを塗りつぶす虚無じみた漆黒だとすれば、
 勇ましき黒騎士……すなわちセシリア・サヴェージの纏う暗黒は、
 静かで安らかなる優しい夜の如き、どこか暖かな紫黒であった。
 歩みは疾走に変わり、光の矢で拓かれた活路を一心に突撃する。
 まさに黒き風。刃を振るうたびに衝撃波が大地ごと軍馬の前脚を削ぎ、
 体勢を崩した騎士どもの胸板を、処刑人の刃じみた刺突が貫いた。
「心まで闇に誓いし騎士達よ。その性その様を、私は哀れみも憎みもしません。
 なぜならば私もまた同じ闇に生きる騎士。……されど我らはけして相容れない」
 セシリアは剣を突きつけ、眦を決し言った。騎士の誇りを胸に。
「ゆえにせめて全力を以て葬ろう。その槍を砕き、一切の害意を遮ろう。
 この世界を救う光を守るため。これより私は闇をも呑み込んでみせます!」
 光と闇。相反し、しかしどちらが欠けてはならぬ表裏一体のふたつ。
 矢が魂を濯ぎ、黒風が肉を断つ。鬼神のごとき戦いぶりであった。

 しかし、前に出て戦う猟兵は彼女らだけではない。
「弱者の命を己の愉悦のために摘み取る行為を、慈悲とは呼びませんわ!
 この私が……いいえ、私達が打ち砕いてくれましょう! いざっ!!」
 アウレリア・フルブライトは大音声で宣言し、ガントレットを打ち鳴らした。
 華奢な淑女らしい見た目にそぐわぬ、力強い金属音が響き渡る。
 怯まず、恐れず、迫りくる騎士どもをまっすぐに睨みつけて立ちはだかる。
 まるでその様は、壁だ。けして突き崩せぬ無敵の城砦のようであった。
 敵は騎馬。ましてやその突撃槍のリーチは、徒手空拳のそれをたやすく上回る。
 されどアウレリアはガントレット以外丸腰。なんたる勇敢さだろうか。
 そして見よ――弾丸じみた速度のランスチャージが彼女を貫くと思えたその時。
「この一撃、耐えてごらんなさいッ!!」
 ごうん――!! と、地面に亀裂走らせるほどの震脚が大気を轟かせた。
 決然たる覚悟とともに踏みしめられた脚は、土埃とともに軍馬を浮かせる。
 フルプレートをまとった騎士の重量、騎馬も合わせれば想像を絶するほどだ。
 それを、数体を一度に! まさに義憤を示すかの如き剛脚!
「いかな鎧を纏いて徒党を組もうと――せいッ!!」
 さらに一歩。破城槌じみた踏み込みからの、迅雷じみた拳が繰り出される。
 ばかんっ!! と、激流が岩を砕くような凄まじい衝撃音が響き渡り、
 ガントレットに撃たれた馬は、騎士もろともに破砕したのである!
 比喩ではない。まさに四散炸裂。その残滓を拭わずアウレリアは調息。
「強者におもねるばかりのあなた達が騎士などと……その行い、蛮族にすら劣ると知りなさい!」
 高貴たる者の誇りと矜持を籠めた裂帛の言葉に、騎士どもをしてたじろがせた。
 その時雨のごとくに闇もろとも騎士どもを貫いたのは、無数の光条!
 続けざまに大気ごと邪悪を斬り裂いたのは、神秘的な九つの刃である。
 何が起きた。邪悪に激憤し、天上の神々が怒りの雷霆を落としたのか。
 否。それは神々の鉄槌でもなければ、軍神の起こした陣風でもない。
 ぬばたまの黒髪を血なまぐさい風になびかせ、仁王立ちするふたりの少女。
「……姉君。わたしは許せません。そうです、まさにこの蛮行が!」
「ええ、リィフさん。もはやこれなる邪悪、鎮めるに能わず――」
 涙すら流し憤る少女――麻海・リィフに、巫女装束の女は言った。
 たおやかな眼差しは、瞼を再び開けば羅刹女の如き眼光へと変わる。
「我らも参りましょう。すべて斬り祓いうために」
「はい! かような暴虐を為す騎士なる者に、わたし達の怒りを!」
 紬雁・紅葉は頷いて、再びのアウレリアの震脚に合わせ色ある風と化した。
 その身に続くは叢雲が象りし九つの剣。追ってリィフの銃口が光条を放つ。
 だが妹とて止まらぬ。数多の盾を伴とし、リィフもまた前へ!
 切り裂く。祓う。剣風とともに清浄なる雷鳴が轟き悪を打ち砕く。
 穢れし槍に何が貫けよう。誰を打ち砕けよう。そこに正しさは非ず。
 怒り猛る羅刹の剣を前に、蹄も鎧も紙ほどには役に立たぬ!
「死を慈悲と、生を苦しみと……なるほど惰弱者らしい言い訳だ。
 生き抜き耐えることに耐えられなかった、うぬららしい戯言だ!!」
 対峙する騎士どもは、吠え猛る紅葉の相貌に鬼のそれを垣間見た。
 黒髪がざんとなびけば刃風が後に続き、役不足の痴れ者どもを去り祓う。
「雲か霞か、攻めるも受けるも――貴様ら邪悪には能わずと知れッ!」
「雷鳴電光閃けば! 暴風豪嵐吹き抜けるッ!」
 盾が槍を弾き、穿孔する剣と念動衝撃波がその身を貫く。
 羅刹の九剣が同時に閃き、敵を滅するさまはまさしく風雷剣――!

「……わたしの闇夜の騎士人形よ」
 そしてフェルトが口訣を唱える。
 祈りにしてねがい。望みにして命令。覚悟であり決意。
「その力を示しなさい。騎士を名乗る不届き者を、その息の根を!
 ――外道の輩を一人残らず始末し、滅ぼし、尽く打ち砕きなさい!!」
 その貴き想いに応え、闇の風めいた騎士人形達が戦場を駆けた。
 影に溶けるかの如き虚ろな刃は、一度定めた獲物を決して逃さぬ。
 たとえ世界の果てまで逃げたところで、必ず追いつき貫き滅ぼす。
 一体、また一体。断末魔すらもなく倒れ伏す騎士の群れ!
「これだけの力を見ても、あなた達はなおも挑んでくるのでしょう。
 騎士とはそうしたもの。ゆえにこそ私達はそのすべてを討ち滅ぼします」
「けして通さず! けして傷つけさせず! けして逃しませんわ!!」
 アウレリア、そしてセリシアというふたつの盾にして剣の護りは盤石。
 不埒な騎士が不意打ちを狙ったところで、彼女の目と刃は見逃さない。
 大地を震わせる衝撃がその身を浮かし、黒き風が首を刎ねる。
「闇の者どもよ、穢れた残骸よ、この光は数多に増えそして世界を照らす。
 我らはそのために来たのだ。もはや無辜の血は流れはせぬ!」
 百々の放つ光の矢が闇を切り裂く。少年達の面持ちを照らす。
 ……彼らは見ていた。闇を祓い世界を救うためにやってきた者達の背中を。
 猟兵の背中を。絶望を払う女達の戦いぶりを!
「そうだ、目をあげよ小さき希望よ。これは奴らの焦りの表れなのだから!」
 リィフは言った。
「闇に、死に屈するな! 生き延びた者は、骸よりも強いのだ!!」
「――斃せはしない。うぬらに私達は、天地がひっくり返ろうとも」
 そして再び紅葉が駆ける。闇に誓いし騎士どもを根こそぎ滅ぼすため。
 ……その戦いぶりを、少年達はたしかに見ていた。
 その声を、その意志を。彼らはたしかに感じていた……!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

アルトリウス・セレスタイト
此処は行き止まりだぞ

破界で掃討
対象は戦域のオブリビオン及びその全行動
『天光』で残さず把握して逃さない
お前達が何かをする前に終わらせよう

高速詠唱を『刻真』で無限加速、『再帰』で無限循環
天を覆う数の魔弾を鼓動一つの間に生成
『天冥』で因果を歪め「目標に着弾した状態で」斉射する
更に射出の瞬間を無限循環させ殲滅まで途切れること無く継続

敵勢の規模に応じて必要なだけ『励起』で出力も上昇
塵も残す気はない

万一自身又は砦へ届く攻撃があれば
『刻真』で終わった後へ飛ばし影響を回避
必要な魔力は『超克』で“外”から汲み上げる

※アドリブ歓迎



 光とは本来、生命に滋養をもたらし暖かさを与える優しいものであるはずだ。
 しかし強まりすぎた光は、時として闇よりも恐ろしい破滅と変わる。
 アルトリウス・セレスタイトの落とす創世の魔弾は、まさに破滅の蒼光だ。
 ただの一体たりとも騎士を逃さず、
 一縷たりとも闇の存在を許さず、
 ただただ無慈悲に、無限の加速と循環を以て天を埋め尽くす。
『なんたる光』
『なんたる邪悪』
『祓わねば』
『闇ですべてを覆わねば』
「――不可能だ」
 瞳にもまた破滅の光をたたえて、アルトリウスは言った。
「お前達はどこへも行けない。この先へも、後ろに退くことも出来ない。
 弱き子供を殺すことも、俺達を害することも、主のもとへ戻ることも。
 ――お前達がこれ以上何かをする前に終わらせよう。ここが"行き止まり"だ」
 アルトリウスの言葉は、間断なき破滅と蹂躙という形で達成される。
 騎士は来る。その数は村の規模から考えれば、圧倒的なほど。
 それだけ、奴らは人類砦という存在を疎み、恐れているのだろう。
 だからこそ。ここで、奴らの悪意を通すわけにはいかない。
 アルトリウスは笑いも泣きもしない。怒りを見せることもない。
 されど――彼もまた、この世界に生まれた希望の灯火を守らんとしていた。
「塵も遺さず骸の海へ還るがいい。お前達は存在そのものが邪魔だ」
 世界の外より魔力を汲み上げ、星のごとき破滅の光で天を満たす。
 闇よりも恐ろしき輝きが、人類砦を満たしていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

リリア・オルトラン
結都殿(f01056)と共に

ふん。慈悲という言葉の意味も知らんようだな。辞書を引く脳すら持っていないらしい。
騎士を名乗るも烏滸がましい、蒙昧な連中めが。私は業腹だぞ!とてもぷんすこしている!

なあ、結都殿。圧倒的な力を持つ者に屈服せず、抗う事は難しい。この人類砦にいる者達は強者の集まりのようだぞ!摘ませる訳にはいかんよなあ!

気合は十分だ!魔法剣に風を纏わせ一気呵成に攻めたてる!
曲がりなりにも騎士と謳うのならば、正面からかかってこい!気に食わん思想は正面から砕いてくれるわ!
攻撃は全力魔法で風を操り受け流す。打ち合いは足止めが狙いだ。結都殿の援護に信頼を寄せ、隙が出来たら【風嵐】を喰らわせてやるぞ!


桜・結都
リリアさん/f01253 と

苦しみを生み出す元凶が、どの口で妄言を吐けるのでしょうね
悪戯に奪われていい命も無ければ、悪戯に命を奪う者も無くていい
私もとても怒っています

ええ、この砦の人達は強くまっすぐな心を持っているようです
屈してしまうことも決して悪ではない。けれど、
抗う人達はきっとこの先、大きな希望となっていくでしょう
大きな力を持たないからこそ、勇気づけられる人もいるはず
必ず、護ってみせましょうね

後ろにいる分、戦局を見渡せるよう注意していましょう
前に出る彼女へ攻め手が集中しないよう、破魔と全力魔法で雷を操り
敵の攻撃のタイミングで気を逸らさせます
霊符を展開させ、障壁の形成と目くらましも狙えたら



「はあああっ!」
 裂帛の気合とともに烈風を刃に纏わせ、リリア・オルトランが飛翔する。
 低空飛行で頭上を取り、急速でグライドしながら騎士の首を狙う。
 さりとて敵も一端の騎士か、リリアの斬撃を突撃槍で弾き、逸らした。
 軍馬が怒りの前脚で地面を砕く。張り詰めたゴムが破裂したような瞬時の突撃。
 尻から頭頂部までを貫くような激烈な刺突を、リリアは辛うじて避ける。
 脇腹をわずかに裂かれた――苦痛に呻く声を噛み殺して再撃を放つ。
(リリアさんも頑張っている、僕も……!)
 後方に立つ桜・結都は、そこで、絶妙なタイミングの雷撃を放った。
 敵を貫くには威力が足らない。だが騎士の注意を逸らすには十分な妨害だ。
 破魔の輝きを疎み、軍馬が蹄をあげて嘶く。騎士の攻撃がわずかにずれる。
 そこに間隙がある――翠緑に染まった魔法剣が、今度こそ首を刎ねた。
 攻撃はそこで止まらない。リリアはそのまま空中でくるくると回転した。
 回転は速度を生み、速度が風を生む。ただの風ではない、刃めいた鋭い烈風。
 魔法剣の刀身に収束した魔力が、烈風に溶け込み鋭さを増した。
 いまやリリアは台風の目にあり、竜巻が金色の髪をなびかせている。
「さあ、踊れ――曲がりなりにも騎士と謳うのならば、なッ!」
 ごおうっ!! と風切り音とともに大気を切り裂き、風の刃が解き放たれた。
 高速、かつ不可視。チャージを仕掛けた騎士どもはそれを避けられぬ。
 分厚い鋼鉄の鎧ごと肉体を切り裂き、軍馬をバラバラに分断し、滅殺!

 ……第一波が散らされ、リリアの着地とともにわずかな静寂が訪れた。
 たたっ、と結都が駆け寄り、リリアの傷の具合を慮る。
「大丈夫ですか? いま少し手傷を受けていたようですが……」
「少々痛むが案ずることはないさ! 休んでもいられまい!」
 結都は、リリアの声と表情から幾分かの強がりを感じ取った。
 しかし彼はリリアという少女のことを、欠片なりとて知っている。
 彼女はそうして、己の弱音を押し殺して強く己を保ち敵に挑むのだと。
 だからそのことは指摘せず、そうですか、と薄く微笑んだ。
「……なあ結都殿」
「どうしましたか?」
 リリアは新たな騎士の群れ――彼方から来る闇のシルエットを睨み、言った。
「騎士を名乗る者が、虐げられる者を殺してやることを"慈悲"などと云う。
 その蒙昧さ、私は業腹だ。とても……こう、ぷんすこといった感じだ!」
 結都は静かにリリアの言葉を聞く。
「けれども、けれどもだ。……圧倒的な力に屈さず抗うことは、難しい。
 絶望に膝を突くほうがよほど楽であるということを、私は知っている」
「……ええ」
「だがこの村の人々はすごいな!」
 リリアは笑っていた。
「そんな世界でなお諦めることなく、小さな砦なれど己の住まいを守っていた。
 まさに強者の集まりだ! こんなことで摘ませるわけにいくまいよ!」
「もちろんです。――たとえ、屈してしまうことが悪でなかったとしても」
 "それでも"と世界に叫び、抗うことは……とても気高く、美しいことだ。
 この闇に包まれた世界を滅びから救うために、何よりも必要なことだ。
「きっとこれから先、ああした人々は他の方々を勇気づける存在となるでしょう。
 だからこそ今ここで。私達が護らねば……ともに戦わねばならないと思います」
 結都の優しい言葉に、リリアはうんうん、と感慨深げに頷いた。
 気力が満ち溢れる。傷の痛みに萎えかけた四肢が、再び力強くなる。
「よし。気合は十分だ! まだまだ行くぞ結都殿!」
「お任せください。リリアさんの背中は、私が護りますよ」
 そして恐るべき蹄の音が響く。リリアは目を閉じ、開き、前に進み出た。
「さあ来るがいい! たとえ万軍が来ようと、私は!」
「――私達は、必ず護りぬいてみせましょう」
 戦いは続く。これは今日まで続いてきた戦いの、大河の一点に過ぎない。
 それでも今このときの抗いが、いずれその潮流をも変えると信じて。
 若き子供達もまた、勇気と意志を胸に戦場へと赴いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

セリオス・アリス
【双星】
アドリブ◎
剣を横に一閃
子供だらけで頑張ってんじゃねえか
こっからは選手交代だ
そんじゃアレス
いっちょやってやろうぜ
高さに差があるならまずはソレを揃えてやるか
歌で身体強化して
剣に炎の属性を宿し
馬の脚を狙って低く先制攻撃だ

敵の攻撃を受けて、人から命を吸収して強くなるってぇ?
ハッ…!それで騎士ってんだから笑っちまうな
鼻で笑って睨み付ける
ああ、けどそんな相手にチマチマやってたんじゃキリがない
アレス!
一声高く名を呼んで
歌い上げるは【赤星の盟約】
故郷の、騎士の勇姿を称える歌
小さい頃アレスの父さんのマネしながら歌って遊んだっけか
―なぁアレス、剣は預けたから
ホントの騎士が何なのか
きっちり見せつけてやれよ


アレクシス・ミラ
【双星】
アドリブ◎

ああ、僕達が相手になろう
盾として…皆を守ってみせるよ

騎兵相手だろうと退く気はない
セリオスを援護するよ
僕へと意識を向けさせるように閃光の全力魔法を放つ
槍は盾で防ぎ、彼への攻撃もかばいに行くよ
光属性の剣で馬を斬り払おう

…そうやって、「騎士の慈悲」だと称して命を奪い取ってきたのか
許す訳にはいかないと剣の柄を強く握る
…歌で思い出すのは故郷の騎士達と…騎士であった父
守る為に戦う姿は僕達の誇りで憧れだった
ああ―勿論だ
…貴様達の槍が奪う為にあるというのなら
この剣は…騎士は!守る為にある!!
顕現させるは【天星の剣】
君の歌に応えてみせるよ
奴らの鎧を砕き、纏う霞ごと祓うように
光の剣を全て放とう!



「す、すげえ……あれが"闇の救済者"……」
 どうやらこの村のリーダーと思しきアル少年は、呆然と猟兵の戦いを見守っていた。
 ユーベルコードのあるなしではない。そもそも技量や魔力の点で一線を画す。
 自分の行いがどれほど無謀で愚かだったか、彼は痛感していた。
 錆びた両手斧を強く握りしめる。何も出来ない己の無力さが口惜しかった。

 ――ざんっ!!
 と、爽快ですら一閃に、うつむきかけていたアル少年は顔をあげた。
 勇ましい背中がふたつ。剣を振り抜いた黒髪の男が、肩越しに振り返る。
 ……笑っていた。まるで勇気づけるように、瞳を輝かせ。
「そんな落ち込むなよ。子供だらけで頑張ってたお前らはたいしたもんだ。
 だからよ、こっからは"選手交代"だ。――後ろは任せたぜ? 信じてるからな」
 セリオス・アリスの言葉に、アル少年は思わず頷く。
 そしてセリオスの一瞥を受け、傍らに立つアレクシス・ミラも頷いた。
「ああ。君達が今日まで戦ってきた代わりに、ここは私達が盾となろう」
「そういうこった。さあ、行くぜアレス!」
「了解だ、セリオス。抜かるなよッ!」
 騎士を志す男とその相棒は、おとぎ話の英雄めいて勇ましく駆け出す。
 少年達はその背中に、この世界にないはずの"希望"という光を見た――。

 そして、闇色の騎士どもが来る!
 泡を噴き出す軍馬は泥と岩ごと地面を砕き、激烈なチャージを仕掛ける。
 騎士を覆う闇の霧は、それ自体が敵の攻撃を吸収し増大する危険な闇の帳だ。
 つまり、手をこまねいていればジリ貧となってしまう。
 必要なのは、一撃でその命を刈る必殺の攻撃!
「セリオス! 馬のほうは任せた!」
 アレクシスは叫び、同時に光の魔力を掌から放ち目くらましとした。
 眩い輝きが戦場を包み、迫りくる騎士どもの視界をわずかな間だけ奪う。
 再び闇が訪れた時には、焔と風を纏うセリオスが低く伏せて駆けていた!
「足癖の悪い馬はこうしてやるぜ!!」
 ざんっ! と剛剣が地面すれすれをスウィープし、軍馬の前脚を刈った。
 膝から下をばっさりと切断され、軍馬は血を吐きながらもんどり打つ。
 騎士の体がぐらつく。しかし倒れながら放たれる捨て身の槍刺突!
「悪足掻きをする……! それでも騎士のはしくれか!?」
 がぎぃん! と、間に割って入ったアレクシスの盾が槍矛を受け止めた。
 シールドバッシュで騎士を叩きのめし、地を転がった敵へ光の剣を降らせる。
 ガガガガガ――! 昆虫標本めいて串刺しとなり、騎士は絶命。
 闇の霧による能力強化も、一撃で仕留められてしまっては元も子もない。
『猟兵め』
『なぜ我らの慈悲を邪魔する』
『殺さねばならぬのだ』
『これ以上苦しみを与えぬために』
「ハッ! おべんちゃらは要らねえよ、お前らの戯言は聞き飽きたぜ!」
 騎士どものうわ言を鼻で笑い、セリオスはぎらりと敵を睨みつける。
「いつもそうだ。そうやってお前らは、勝手な理屈で弱者を苦しめて悦に浸る。
 苦しめられる側の気持ちなんて欠片も考えちゃいねえ。俺はそれを認めねえよ!」
「そうとも。騎士とは守るために戦う者。けして苦しみ死を齎すためではない!!」
 アレクシスは剣の柄を強く強く握りしめる。その心は怒りに燃えていた。
 何が騎士か。何が慈悲か! 子供を殺して証明される慈愛など存在しない!
「一体一体相手にしてたらキリがねえや、一網打尽にするぜ――アレス!」
 高らかにその名を呼び、セリオスの声は喪われた故郷にまつわる詩を紡いだ。
 脳裏によぎる、この黄昏の世界での数少ない安らぎの思い出。
 在りし日の人々の姿。今なお彼らの目標たる、偉大なその背中を。
 ふたりの背中を子供達は見守っている。希望の証として。
 そして戦うふたりにもまた、追い求め続ける遠く偉大な背中があるのだ。
「星を護りし夜明けの聖光、我が剣に、我が怒りに、我が誓いに応えよ!」
「さあ、耳かっぽじって聴け! 目ン玉ひん剥いて見てやがれ!」
 空を覆わんばかりに生まれる光の剣。騎士どもは意に介さず突撃する。
 それが愚かだと知らしめるために。
 その絶望を否と切り払うために。
 彼らは歌い、証明するのだ。己らのいのちの輝きを!
「これが、ホントの"騎士"ってやつさ」
 セリオスが言った瞬間、アレクシスの生み出した星光剣が一気に降り落ちた。
 雨のように飛来する三百以上の光の刃が、闇の眷属を貫き霧散させる。
 残滓すらも遺さず。偽りの慈悲を、絶望を、否定し消し去るために!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

冴木・蜜
ようやく芽生え始めた希望
摘み取らせはしません

子ども達の安全を優先
猟兵たちが戦いに集中できるよう
彼らの傍について護りましょう

自身に『偽薬』を投与
体内毒を濃縮しつつ
防御力を強化します

その上で体を液状化し
目立たなさを活かして物陰を渡りながら
地面を這い進んで
最短距離で子ども達の元へ

襲われそうな子どもが居れば
間に割って入り
身を挺して庇います

攻撃を受けると同時に
飛び散った血肉さえも利用し
毒腕で馬の脚や相手の武器に触れ
黒血で全て融かし落として差し上げましょう

私の前でいのちを刈り取らせはしない

皆さま
怪我はありませんか

貴方達は私が必ず護ります
だからどうか安全な所へ逃げるまで
私の傍を離れないで



「みんな! 無事だったか!」
「「「ブランド……!」」」
 狩りのために集落を離れていた少年らの帰還に、アル少年らは笑顔を見せた。
「あの人達に助けられたんだ。みんなも無事でよかった……」
「うん。でも隠し通路ももう崩落してて」
「……見守るしかない、ってことか」
 少女ラミーは、泣いている赤子をあやすので必死な様子。
 ブランドとアルは沈痛な面持ちで言葉を交わし、そして戦場を見た。
 ……その時である。小高い岩場から飛び出したのは、地の利を得た軍馬!
「! う、上から!?」
 アル少年は慌てて斧を構えて仲間達を護ろうとする。だが敵ははるかに疾い。
 そしてその槍が、無慈悲にも少年の心臓を貫く――かに、見えた。

 ぞぶりという手応えが、騎士に伝わった。
 しかし兜の下、レーザーポインターめいた赤い眼光は訝しげに顰められる。
 槍はたしかに肉を貫いた……ただしそれは、狙っていた子供ではない。
 一瞬のうちに地面から"立ち上がった"、不健康そうな面持ちの男の胸部である。
「――騎士を名乗る割には、盗賊じみたことをなさるのですね」
 冴木・蜜はうっそりとした声で言い、血を吐きながら両手で槍を掴む。
 騎士は槍を引こうとした。……出来ぬ。まるで木の根に絡め取られたようだ。
 すると、貫いた傷口から血と肉がずるずると重力に逆らい穂先を伝い、
 騎士が突撃槍を手放すより先にその手に絡みつき、そして侵食した!
『こ、これは……!』
「もう逃しませんよ。そして触れた以上、キミは終わりです」
 どろどろと槍が解ける。鎧が、肉が、軍馬もまた苦しみながら。
「――私の前で、いのちを刈り取らせはしない」
 あらゆるものを融かし腐らす死毒と強酸。それが騎士を侵食していた。
 黒血はぞわりと膨らんで騎馬を包み込み、そして地面のシミへと変えた。

 ……血痕を吸収し、蜜はふらりと子供達を振り返った。
 少年少女らは、その不気味な力を前にして唖然としている。
「皆さま。怪我はありませんか」
「……う、うん。その……あ、ありがとう」
 ためらいがちな感謝の言葉に、蜜は不器用な笑みめいた表情を浮かべた。
「どうか怖がらずに。あなた達は私が護ります。必ず、護ります」
 それは子供達に言って聞かせるようでも、自らに誓うようでもある。
「誰ひとり、いのちを奪わせはしません。その希望も、摘み取らせはしませんよ」
 もはやこれ以上の絶望を世界に増やさぬようにと。
 蜜の言葉は、悲痛なまでの決意と覚悟に満ちていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ルーナ・ユーディコット
故郷が滅んだ日に救いはなかった
今の私は力がある
この戦いに身を投じる理由なんて
それで十分

人類砦、この世界に生まれた希望
本当は生まれの世界にやっと芽生えたと喜ぶべきなのだろうけど
あの日救いが無かった事を思い出して、歯がみしてしまうのは
我ながら子供っぽくて厭になる――癇癪もいい所

ただそれでも、必死で繋がれてきた細い糸の先に結ばれたモノだろうから
ここで断ち切らせはしない、絶対に

手数の勝負を仕掛けてくるなら、舞うように捌いて魅せよう
金桂剣舞をとくと目に焼き付けて散れ
如何に疾く槍を振るおうとパターンが分かれば対応できる
緩急自在、鎧など無いかのように二回攻撃の刃を振るいその命脈を断つ
さあ、次はどれがくる



 彼らに罪はない。
 猟兵にも罪はない。
 誰も悪くはない。
 けれどもどうして――私のときは、誰も救ってくれなかったの?
 どうして私のときは、ただ逃げることしか出来なかったの?
 痛かったのに。
 辛かったのに。
 苦しかったのに。
 悲しくて寂しくて心細くて不安で狂ってしまいそうで、
 けっきょく自分は怒りと憎悪に心を焚べて命を灼くしかなかった。
 もしも、私のときに誰かが手を差し伸べてくれたなら。
 もしも、私のときにもっと世界に光があったのならば。
 あんな苦しみも痛みも悲しみも、
 こんな怒りも苦々しさも呆れも、
 私は抱かずに済んだだろうに――。

 ルーナ・ユーディコットの心は揺れていた。
 癇癪だとわかってる。だから決して表に出すことはない。
 八つ当たりめいた怒りを抱いたまま、戦場を舞い抜けて敵を斬る。
 あのときとは全てが違う。今の私には力があるのだから。
 あのとき――私がすべてを失い逃げ出すしかなかったとき。
 それを二度と繰り返すまいとするならば、今ここで戦うしかない。
 だから戦う。こんな気持ちを、誰かに味わわせるのは嫌だから。
 そんな気高さを抱いていられるうちは、自分は獣とは違うはずだ。
 この希望も人間性も、必死で繋がれてきた細い糸の先に結ばれたモノだ。
 断ち切らせはしない。
 奪わせはしない。
「もう、ただ奪わせ虐げさせはしない。お前達の思うようにはさせない。
 ――私は、お前達が踏みにじった場所から来た。荒野から来たモノだ」
 炯々と両目を輝かせ、怒りの刃で騎士と軍馬をバラバラに切り裂く。
「覚えておけ、オブリビオン。ここには、私が居る」
 一陣の風が吹き、ルーナのマフラーをなびかせた。
 自分の中に行き場のない怒りが生まれるならば、せめて敵に叩きつけよう。
 何もかもを過去の残骸どもにぶつけて、そしてその命脈を断ってやる。
「来るなら来い。すべて、何もかも、私は斬り伏せてやる」
 ただひとり戦場に仁王立ちするさまは、まるで気高き狼のようだった。 

成功 🔵​🔵​🔴​

ナルヴィア・ナインズアイ
たかだか1つの小さな集落を潰すのに、ここまで大がかりな部隊を組むとは……これを差し向けた奴は余程人類が気に食わないと見える。
なら答えを返してやろうじゃないか。

ユーベルコードで呼び出したマンティコアに乗ってそのまま原着、空中から騎士共へ奇襲をかける。
一般の少年少女じゃとても太刀打ちできない相手でも、僕のマンティコアならば十分に対抗できる筈。迂闊にも突撃してくる奴には“黒き蛇の尾”を伸ばして武器を絡めとってしまおうか。首尾よくけば、そのまま転ばせてしまうことも出来る筈。そしたら後はマンティコアに潰させれば良い。

手勢を潰すことで、これを仕組んだ奴への回答とする。
『こっちも貴様が気に食わない』ってな。



 夜闇に風が吹き、ナルヴィア・ナインズアイの外套をはためかせる。
 戦場を見下ろす小高い山の上で、ナルヴィアは高く手を掲げた。
「我が九の瞳がひとつよ。我が玉座たる勇壮なりし獣よ。
 我が呼び声に応え、現の裂け目より現れよ――来たれ、"玉座たる獣"!!」
 指差す先、すなわち天にぴしりとガラスめいたヒビが走る。
 それを"外側"からこじ開けて咆哮するは、黄金のたてがみを誇りし異形の獅子。
 翼持つ獣の王――汝の名はマンティコア。獰猛なる殺戮者なり!
 オオオオオオオン……!!
 高い高い獅子の咆哮に、騎士どもは空を、獣にまたがる少女を見上げた。
 ひらりとマンティコアの背に乗り、ナルヴィアは滑るように飛翔する。
 水面の獲物を見定めた猛禽めいた急滑空――そして獅子の爪が騎士を裂いた!
『忌まわしき獣め。我らの槍に斃れよ』
『汝は王に非ず。地に伏し頭を垂れろ』
「僕と僕のマンティコアをただの獣と誹るか! 身の程知らずもいいところだ!!」
 ナルヴィアは誇らしげに一蹴し、拍車をかけて獣を急き立てた。
 愚民どもの戯言に王たる獣は怒り狂い、翼で槍を払い尾でもって薙ぎ払う。
 そして爪と牙。いかなる鋼をも砕き引き裂く強靭なる王の矛!
 頭上から襲い来る死に、闇の眷属では抗いようもないのだ。
 軍馬から落下した騎士を前肢で押し付け、喉元を噛みちぎる。
 血まみれの牙を見せつけ咆哮する。まさに獣の"狩り"であった。
「どうした。貴様らの槍で僕らを貫くんじゃなかったのか。やってみろ。
 だがどれほど足掻いたところで、貴様らには僕らに傷一つ与えられまい」
 ナルヴィアの赤い瞳は、燃えるように輝いていた。
 怒り。そして憎悪! 悪しき闇の眷属への唾棄すべき侮蔑によって!
「たかだかひとつの小さな集落を潰すのに、これほどの大群軍勢で攻めるなど。
 貴様らも覚えておくがいい――その悪意と殺意に対する、僕らの答えをな!」
 蛇めいてしなる蛇腹剣を掲げ、ナルヴィアは言った。
「――こっちも貴様らが気に食わない。全員まとめて狩り尽くしてやる!」
 それこそは、これより始まる無慈悲な蹂躙の宣誓でもあった。

成功 🔵​🔵​🔴​

黒城・魅夜
ふふ、……ふふふ、希望など必要ないと言いましたか
希望の依代、希望をつなぐものたる私の前で
汚濁に塗れた愚物よ、その無価値な存在ごとあなたの言葉を叩き潰し消し去ってあげましょう
ええ、あの大魔王のようにね、ふふ……

まずは雑魚どもを始末しましょうか
力自慢のようですが、つまらぬ技です
その能力の効果は「瞳が輝く間」
この身を斬り裂き噴き出した鮮血の霧によってその瞳を塗りつぶしてしまえば、輝きなどありはしません
そしてこの霧に触れた時があなたたちの滅びるとき
その身を内側から斬り裂くこの鎖によってね

怒ってなどいませんよ?
無限の憎悪と悪意を向けているだけ

希望を蔑するものよ、真なる悪意がどのようなものか、知るがいい



 この世界に希望などない。光などない。未来などない。
 すべては闇に包まれ、生きる人間はみな絶望に屈し、過去が支配する。
 ……そしてこの世界は滅びるのだ。当然のように、必然的に。
「……ふふふ」
 黒城・魅夜は、ようやく顔をあげた。
 笑っていた。
 笑うしかない――なにせあいつらは度し難いほどに愚かなのだから。
「希望の依代、希望をつなぐものたる私の前で、"希望など必要ない"、ですか。
 汚濁に塗れた愚物よ。その無価値な存在を叩き潰し消し去ってあげましょう」
 黒き女は微笑みながら踏み出し、あろうことか己の身を斬り裂いた。
 まるでそれは、神の苦難を浴びてなお献身と信心を貫く聖者のようである。
 流れ出した鮮血が地を濡らすことはなく、代わりにそれは濃い霧となる。
 魅夜を中心として、球体状に広がる鮮血の濃霧に、騎士が飛び込んだ。
 鈍く輝く赤光の瞳よりもなお、禍々しく不気味な朱に染まった霧。
 それは獲物の五感を鈍らせ、代わりに恐怖と困惑を与える。
 そこは狩場である。魅夜という女が、獲物を縛り引き裂くための処刑場だ。
 たとえ我が身を……そのいのちをも削ろうとも、魅夜は厭わない。
 騎士の体内から鋼の鎖を生み、花開かせる女の双眸に、怒りはない。
 瞬くのは憎悪と悪意。過去の残骸をけして逃さず滅ぼすという確定的決意だ。
「あなた達は知らない。真なる悪意を、闇よりも昏く恐ろしいものを。
 たかが吸血鬼の従僕ごときが、絶望を謳ったところで何の重みがありましょう」
 騎士どもは軍馬に拍車をかけて、佇む女を串刺しにしようとする。
 激烈なランスチャージ。だが到達寸前に、その身は内側から裂けた。
「夜の闇よりも色濃き苦痛を。深淵の暗黒よりも静謐な悲しみを。
 ――そのような者が、どうしてこの世界に芽生えた希望を摘めましょう?
 どうして私を貫くことが出来ましょう。必然的に、それは不可能なのですよ」
 嘆息し、倒れ伏す騎士を見下ろす女は頭を振った。
「滅びを以て知りなさい。私がもたらす真の絶望……闇より昏い終末を。
 そして骸の海の遥か底で、己の愚かさと哀れさに永劫苦しみ続けなさい」
 女は笑い続けていた。
 ゆるく微笑む口元は、死神のされこうべめいて恐ろしい。

成功 🔵​🔵​🔴​

オーガスト・メルト
あー、騎士か…騎士ねぇ…まぁ、こういう騎士もいるんだろうがな
とりあえずムカつくんで【蹂躙】してやろう
『うきゅー!』『うにゃー!』
デイズ、ナイツ、お前らも怒るか。怒るよなぁ…じゃあ三人で力を合わせて戦うか

【SPD】連携・アドリブ歓迎
【焔迅刀】を構え、徒歩で敵と接敵する
UC【トライリンクモード】を併用して敵の攻撃を【見切り】、回避する
炎の【属性攻撃】を乗せた【二回攻撃】をしつつ【吹き飛ばし】て戦場を駆け巡る

お前達オブリビオンに言っても理解できないんだろうがな
騎士ってのは「そういうの」じゃないんだよ
何かを護ってこその騎士だろうが!


ウィルフレッド・ラグナイト
到着してすぐに人類砦の人たちを守るために騎士たちの前に出る
「彼らはこの世界に生まれた希望。それを奪うのは許しません!」

敵の攻撃を【見切り】や【武器受け】でいなし、多少の痛みは【激痛耐性】で耐えつつUC『風翔彗竜突』を【ランスチャージ】やゼファーの援護を交えて使用
「ゼファー!少しでも人類砦から引き離します…!」
彼らとて元は誰かを守る騎士だったのかもしれない
変質されたのだとしても命を奪わせない
彼らのかつての誇りのためにも

もし傍に守るべき人たちがいるなら身を挺してでも庇う
(絶対に……子供たちは死なせない。昔、私がそうしてもらったように守ってみせる!)

※アドリブ、他の人との絡みOK


ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎

あらあら、吸血鬼の狗ごときが裁定者気取り?
…死神の価値も墜ちたものねぇ。

…へぇ、対騎兵の罠かぁ。それじゃ、あたしが引き継ぎましょうか。
エオロー(結界)とオセル(不動産)で障害物を作って軌道に指向性を持たせて、●圧殺で纏めて潰しましょ。
スモークとスタングレネードによる〇目潰し、イサ(停滞)・ソーン(障害)・ニイド(束縛)による足止め。
機動力のない騎兵なんてただのお荷物だもの。引っ掛けて転かせたら最上ねぇ。

実際、騎兵に対して罠なりで機動力を潰す、ってのは常道で真っ当な対処法なのよねぇ。
…まぁ、何が悪かったかって聞かれたら「運と相手が悪かった」って答えるしかないんだけど。



 すでに百以上の騎士が到来し、そして猟兵に鏖殺された。
 だが、闇の眷属はいまだ来たる。まるで蝗の群れのようだ。
 無数の屍が転がる戦場の最前線、ウィルフレッド・ラグナイトは歯噛みした。
「なんて数だ……こんな集落にあんな軍勢を差し向けるなんて」
 吸血鬼の悪意、そして絶望をもたらさんとする醜怪さに反吐が出そうだ。
 しかし青年は奥歯を噛み締め、ドラゴンランスを強く握りしめる。
「それでも、彼らはこの世界に生まれた希望。それを奪うのは許しません!
 たとえこの身を挺してでも、子供たちは護りぬいてみせる……ッ!」
 己は騎士としていまだ未熟。されど、目をかけ育ててくれた人のためにも、
 ここであの誤った騎士達の暴威を、蹂躙を許してはならない。
 悲壮までの決意を胸に、ウィルフレッドは己を礎として仁王立ちしていた。

「……肩に力が入りすぎじゃないかしらねぇ。無駄な怪我するわよぉ?」
 そんなウィルフレッドの様子を見かね、甘い声の女が姿を見せた。
 ティオレンシア・シーディアは愛用のリボルバーを手ににこりと笑い、
 この緊迫した状況にそぐわぬ、リラックスした様子で肩をすくめてみせる。
「お言葉ですが、いまは緊急事態です。それに私は」
「まあ、思うところあるのはわかるわよぉ。深くは聞かないし、ね」
 青年の言葉を遮り、ドライな女は言った。
 ……ティオレンシアは、後ろ暗い裏社会の仕事を取り扱うフィクサーだ。
 強者が弱者を虐げ利益を貪ることなど、何度も目の当たりにしてきた。
 そんな世界に身を置いていたこともある。だから彼女もけして他人事ではない。
「まだ戦いは始まったばっかりなんだし、効率的にやるとしましょうよぉ。
 幸い、そのための仕込みはあの子達が済ませてくれているみたいだしぃ」
 言いつつティオレンシアが顎で示したのは、騎士に蹂躙された罠の残骸。
 仕込み線も落とし穴も、残念ながらもう蹄で踏み荒らされ無用の長物である。
「……あれで、軍勢の突撃を止める、ということですか?」
「そういうことねぇ。もう壊れてたって、リサイクルのしようはあるわぁ」
「そりゃ愉快そうじゃないか。ぜひとも見物させてもらいたいな」
 二体の妙な丸っこい龍を連れ、オーガスト・メルトが首を突っ込む。
「ああいう"騎士"は見てるとムカつくのさ。徹底的に蹂躙してやりたい。
 それによ、あんな子供らがいるなら、見せつけてやったほうがいいだろ?」
 赤熱する小太刀を抜き放ち、オーガストは獰猛に笑った。
「――悪党どもをぶちのめす、"闇の救済者"どもの姿って奴をな!」

 ダカタッ、ダカタッ、と雷鳴のような力強い蹄音とともに、怪馬どもが来る。
 横列をなす騎士どもの動きは、まるでコピーアンドペーストしたかのようだ。
 オブリビオンたる過去の残骸は本質的に同一存在であり、
 それゆえに常人には絶対に不可能な、一切ブレのないシンクロを可能とする。
 数十のその騎馬隊が、すさまじい速度でチャージを仕掛けたらどうなるか。
 材木を組んで構築したあの脆弱なバリケードでは、壁にもなるまい。
 ゆえにその前に叩く必要がある――罠地帯はそれを考慮して設置されていた。
 もはや先遣の騎馬隊に蹂躙されたと思われた罠……しかし!
 KBAM!! と、密かに仕掛けられていたスモークグレネードが炸裂した。
 立ち上る煙幕に軍馬が驚き、嘶きながら前足を上げてたじろぐ。
 すると続けざまにスタングレネードが起爆し、強烈な音と光を撒き散らした。
 散らばった罠の残骸に隠れて、爆弾が仕掛けられていたのだ!
「機動力のない騎兵なんてただのお荷物よねぇ。戦術は間違ってなかったのよぉ。
 だから、せいぜい利用させてもらうわねぇ? あたし、合理主義者だからぁ」
 BLAM、BLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAM!!
 神速のクイックドロウから放たれたルーン弾が、軍馬の頭をぶち抜く。
 ティオレンシアの銃は、あくまで人間が扱える範囲の口径である。
 魔術も超能力も持たない彼女には、大砲じみた超常の砲撃は不可能。
 であれば、騎士の鎧を貫けずとも――軍馬を仕留めてしまえばいいのだ!
「どうした。偉そうなことを言ってた割に、すっかりたじたじじゃないか。
 まあそうだろうな……騎士ってのは、お前らみたいなものじゃないんだよ!」
 そして煙の奥から、焔の小太刀を手にしたオーガストが繰り出す。
 落馬した騎士どもはとっさに攻撃速度を増しオーガストを串刺しにせんとする、
 しかし! 彼とともに続く白と黒の龍の目が、繰り出される攻撃を見切る!
「……そうです。騎士とは、あなた達のような絶望をもたらすものじゃない!
 かつてのあなた達の誇りに報いるためにも、これ以上命を奪わせはしないッ!」
 オーガストに続き、嵐じみた風を纏いウィルフレッドがチャージを仕掛けた。
 まるで龍の吐息の如き烈風は、煙を吹き払い堕ちた騎士どもを貫く。
 未熟なれど、騎士の道を志す者として。
 希望の教えを受けたひとりの男として。
 ここで退けない――退くわけにはいかない!
「"かつての騎士の誇りのため"か。そうだな、こいつらはもうオブリビオンだ。
 ……闇に堕ちたオブリビオンどもは、みんな燃やし尽くしちまうしかない」
 オーガストは一時哀愁に瞼を伏せ、次の瞬間にはきっ、と敵を睨みつけた。
 必要なのは憐憫ではない。真にもたらされるべき慈悲があるとするならば。
 それは捻じ曲げられた騎士達に速やかな終わりを齎すことだろう。
「デイズ、ナイツ! お前達の目と耳を貸してくれ! このまま突き進むぞ!」
「ゼファー! 私達も続きますよ、少しでも敵をここから引き離します……!」
 焔と風。刃と槍を手にしたふたりの男が、闇を払うように突き進む。
 ティオレンシアはそんな男達の背中を見送り、ひとつ頷いた。
「あたしにはもうあんなノリは無理だけど、だからこそ適材適所よねぇ。
 "運と相手が悪かった"って言葉の意味、たぁっぷり教えてあげるわよぉ?」
 新たなグレネードを手に微笑むさまは、悪魔めいていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミラリア・レリクストゥラ
未来を掴む道を選んだ人々を、むざむざ失うわけにはいきません!

【WIZ】

直接戦闘では遥かに及ばないことは明白ですが、この状況!
敵が多勢で進攻するというなら、私の【過去は過去たる地へ沈む】は一番効果を発揮します!

強固な柵として立ちはだかり、触腕として絡め取り、使った分足場を無くし!
そのことごとくを埋葬する、この唄本来の姿!今こそ発揮する時!
過去は大人しく過去として、大地の栄養に還りなさい!!!


ミソラ・フジミネ
うっせ
ほかの世界にもレイダーっているんすね
もう死んでる奴が偉そうに

ココ薄暗いしうるせえし、自分の戦車もエンジン鳴らさなきゃ目立たない
群れの側面に待機
いちばん敵が多そうなタイミングでエンジン全開
戦車《バイク》で機銃撃ちまくりながら急加速、砦に向かってくる奴らの横っ腹に突っ込んで轢きます

槍が当たりそうになったら運転テクで回避
最悪戦車《バイク》壊れなきゃいいっす、自分潰れても戻りますし

抜けたらUターン、2回攻撃
もっかい轢かせろクソ


カイム・クローバー
子供相手に仕事熱心だな。勤めを果たさないとご主人様に怒られるとか、アンタらもしかしてそういうクチか?
酷いトコに勤めてんだな。同情するよ。

二丁銃を用いて【二回攻撃】と【クイックドロウ】で狙うは馬の蹄部分。
UCは馬を活用しての技だろ?走れなくしちまえば良い。
そんな駄馬じゃ、折角の騎士様の技が錆び付いちまう。一つ、教えてくれよ。アンタらの槍術ってやつを。【挑発】しつつ。

騎士だけになったら嫌でも白兵戦だ。銃を戻して、魔剣を顕現。
UCを発動し、刀身に紫雷の【属性攻撃】を纏わせ、【見切り】で躱しつつ、戦場のダンス・パーティと洒落込むか。
来いよ。法外な報酬を受け取る悪徳便利屋はここだぜ、正義の騎士様。



 迫りくる騎士の軍勢は、遠くから見れば黒い雪崩のようだった。
 あらゆる障害物を打ち壊して呑み込み、真っ平らにしてしまう死の群れだ。
 この村の防備では耐えられない。集落も、子供達も、全員滅びるだろう。
『未来を掴む道を選んだ人々を、こうまでして飲み込もうとするなんて……』
 なんとおぞましい悪意。ミラリア・レリクストゥラは拳をぎゅっと握る。
 スピネルのクリスタルボディがきん……と、決意と覚悟に煌めいた。
『けれど――私にしか出来ないことが、今なら出来る……っ』
 ミラリアは乳白色の瞳を閉じ、全身に満ちるサイキックエナジーを感じた。
 クリスタリアンとしても極めて特殊な彼女の宝石体は、
 全身を隅から隅まで一種の共鳴装置とすることで"歌"を放つことができる。
 そして彼女の歌声は、大地を揺るがし命を芽吹かせる生命の唄を紡ぐ――!

「よお騎士様がた! 子供相手に仕事熱心なことだな!」
 一方、戦場の最前線。
 迫りくる騎士の群れに対し、伊達男――カイム・クローバーは皮肉を言った。
「勤めを果たさないとご主人様に怒られるとか、アンタらそういうクチかい?」
『どけ! 我らの道を邪魔するなかれ』
「ところがそうはいかない。同情するが――アンタらは通さねえよ!」
 BLAMN!! 魔狼の咆哮じみた、獰猛な銃声が闇夜に轟いた。
 禍々しき二丁拳銃、その銃口が狙い定める先は騎士――ではない。
 狙いは騎士どもが跨る軍馬の前脚! 蹄を破砕して足止めするつもりだ。
 ガキンッ! ガキッ、と破砕音とともに軍馬が嘶き、脚をもつれさせた。
 カイムはランスチャージを避けながら戦場を東奔西走し、
 次々に迫りくる騎士の群れを翻弄し、そして銃撃で足止めする。
『押し潰せ。猟兵を殺せ』
『あれにも慈悲をくれてやろう』
『無駄なあがきを終わらせてやるために』
「ありがたいねえ! だがあいにくセールスのたぐいはお断りしてるのさ!」
 一瞬でも足を止めれば、ランスはカイムの胴をぶち抜くだろう。
 そんな鉄火場でカイムは涼やかに笑い、稲妻を纏って翔ぶように舞う。
「ところでだ、俺なんかに構ってていいのかい?」
『なんだと』
「――アンタらの相手をしに出てきたのは、俺だけじゃあないんだぜ?」
 カイムが謎めいて言った瞬間……KRAAAAAAASH!!
 巨大な戦車バイクが横合いから呼び込み、騎士集団を吹き飛ばした!
「まったく、ほかの世界にもレイダーっているんすね。クソどもが」
 ドルルルルル、ガガガガガガッ!! とエンジン音と機銃掃射を響かせて、
 顔の下半分をガスマスクで覆った死人……ミソラ・フジミネは吐き捨てる。
 アポカリプスヘルからこのダークセイヴァーにはじめてやってきたミソラが、
 この世界と支配者どもに抱いた感情――それは侮蔑、唾棄、そして怒り。
 レイダーどもはクソだ。だがあいつらにも一縷ほどの理由はある。
 食糧も水も限られたあの世界では、誰かから奪わねばならないこともある。
 だからレイダーのすべてが、望んでそうなったわけではない。
 一方で、こいつらはどうだ。騎士を名乗るこの過去の残骸どもは。
 食うためでもなく、生きるためでもなく、殺すために殺すという。
 あまつさえ、それを慈悲と? なんたる欺瞞。犬のクソにも劣る戯言だ。
 ゆえにミソラはすべてを蹂躙する。車輪が鎧を砕き機銃が命を奪う!
「ハハハハッ! そうら見ろ、支配者だからってふんぞり返ってるからそうなる。
 どうしたよ? 慈悲をもたらす正義の騎士様なら、もっとしぶとく立ち回りな!」
 カイムは銃撃をやめ、棒立ちのまま蹂躙される騎士どもを挑発する。
 当然のように殺到する無数のランス――だがそれは、やはり届かない。
 弾丸ではない。ランスを止めたのは、触腕めいて持ち上がった地面である!
《未来を夢見た あの日の幻――……これ以上は、何もさせない》
 清らかな歌声が響く。スピネルの体を持つミラリアの唄が。
 全身を楽器として旋律を紡ぎ、大地そのものを励起させ操る超常の唄。
 ユーベルコード、"過去は過去たる地へ沈む"。
 それは、『この世界に現存しないはずのもの』を捕縛し滅ぼす。
 オブリビオンとは過去の残骸、あるだけで世界を滅びに導くノイズ。
 打ち捨てられた骸の海よりの使者は、まさに世界にあるはずのないもの。
 ゆえにミラリアの唄に大地は応じ、あるべきでないモノを縛り付けるのだ!
《灰は灰へ 塵は塵へ とこしえに 底へと眠りなさい――……》
「こいつは上々だ。アンタらを送る子守唄までついてくるとは」
 カイムは銃をホルスターに収め、禍々しき魔剣を抜き放ち言ってみせた。
 ばちばちと刀身を走る紫雷の魔力。双眸が剣呑に輝く。
『おのれ。猟兵め。なぜ我らの慈悲を否定する』
「イラつくかい? 悪徳便利屋はここだぜ、正義の騎士様」
 縛られ呻く騎士を挑発し、カイムは神速の斬撃をその首を刎ねた。
 ばさりと外套がはためく。そのすぐそばをミソラの弾丸が突き抜けた。
「慈悲だのなんだの、もう死んでる奴がべらべらうっさいんすよ。
 さっさとブッ散らばってクソらしくくたばってもらえないっすかねぇ!」
 ドルルルルル……ギャギャギャギャッ!!
 死から黄泉帰った男の表情は、まったき怒りに燃えていた。
 許せない。持たざる者を虐げ奪う奴らは、どんな奴らであれ。
 どんな世界であろうと、見過ごすことなどミソラには出来ないのだ!
「全員轢き殺してやるっすよ。せっかくだし競争でもするっすか?」
「ハ! 悪くないね。ゴキゲンな唄も流れてるんだ」
 ミソラの言葉にカイムは肩をすくめ、歌い響くミラリアを見上げた。
《誰ひとりとして逃しもしませんわ。この唄は葬送にして埋葬の唄。
 過去はおとなしく過去として底へ鎮める。そのために歌い続けましょう!》
「そうかい――なら、戦場のダンスパーティといこうじゃねえか!」
 そして埋葬の唄に乗せ、死人と伊達男が戦場を駆け抜ける。
 獰猛なる車輪で獲物を轢殺し、雷の刃で切り裂き処刑するために!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

アストリーゼ・レギンレイヴ
漸くこの世界に灯った希望の灯を
むざむざと消させはするものですか

《漆黒の夜》を纏いて前へ
突撃であろうと槍の刺突であろうと全て受け止めて、押し返してみせるわ
武器で受けては返す刃で両断し
或いは切っ先を逸らせて躱し、懐に入り込んで叩き潰す
痛みなど感じない、流した血の数だけあたしは奮い立つ
只の眷属ごときが、このあたしを止められると思わないで

……お前達はそうしてすべてを奪う
糧を、命を、尊厳を、ささやかに灯った祈りや希望の火さえも
だけれどもう、そんな所業を許しはしない
お前達が何度、踏み躙ろうとしたところで
何度だってそれを阻んでみせる

もうこの世界の命は、絶望に沈むだけのものではないと
教えてあげましょう



 "闇の救済者"なんて仰々しい名は、アストリーゼ・レギンレイヴには不要だった。
 人々が強き心を取り戻し、この悪逆に立ち向かうことは喜ばしい。
 けれど、もしも己が英雄と呼ばれるのであれば、そんな名誉はいらない。
 なぜなら自分がもたらすのは、輝ける希望の光などではない。
 この身を包む夜闇の如き影――つまりは敵にくだされる死と絶望なのだ。
 前へと進む。来たるべき暴威を、槍を受け止め、押し返し、弾く。
 敵が闇を纏いて己を強めるならば、なお漆黒たる夜ですべてを包もう。
 待ち構え、守るのではない。すべて叩き潰し、粉砕するのみ……!
『哀れなり』
『魂に罪が沁み込みし者どもよ』
『その抗いが今際の際に送るのだとわからぬか』
「お前達の言葉は、必要ないわ」
 剣を払い、アストリーゼは言った。
「お前達はなにもかもを、すべてを奪う。糧を、命を、尊厳も。
 ささやかな祈りも希望の灯火も、この世界から暁さえ奪い去った」
『それこそが慈悲である』
『なぜ理解できない』
『なぜ死を否定する』
「――わからないでしょう。理解してもらうつもりもないわ」
 また一体、敵を斬り捨てる。
 激烈なチャージがその身を貫き、流れ出る血は夜闇を染めていた。
「だ、大丈夫なのか!? あ、あんた……!」
 見かねて、後ろで見守っていたアル少年が叫んだ。
 アストリーゼは振り返らない。たしかな歩みで答えとする。
 ……"闇の救済者"なんて仰々しい名は、きっと自分には相応しくない。
 もしもこの世界に真の意味で光をもたらす英雄がいるのだとすれば。
 この黄昏の世界を滅びより救い、真の意味で新生させる者がいるならば。
 それはきっと、力なくとも立ち上がることの出来る彼らのような者なのだ。
 だから、自分は影でいい。
 絶望せよと圧し潰してくる、この闇どもへの叛逆者でいい。
「お前達が何度、踏み躙ろうとしたところで。何度だってそれを阻んでみせる」
 もはやこの世界には天の御使いも亡く、明日は重く横たわっている。
「もうこの世界の命は、絶望に沈むだけのものではないのよ」
 ならば己は、この身と命を以てそれを払い、安寧なる夜の闇を取り戻そう。
 支配され、いつ命を奪われるかもしれない絶望の闇ではなく。
 誰もが安堵し、穏やかな眠りにつける静かな夜を取り戻せるように。
「――行くわ。あなた達に戦う意志があるなら、どうかあたしの背中を見ていて」
 振り返ることなくそう言って、漆黒の英雄は次なる敵へと踏み出す。
 何度でも何度でも。お仕着せのエピローグを否定するために。

成功 🔵​🔵​🔴​

ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
殺してくれと嘆く者を摘むのならばいざ知らず
未だ生きんとする者を狩って慈悲と呼ぶのは、些か傲岸が過ぎるなァ

さて子供らよ。ここは私たちに任せて早く逃げろ
そうすれば、貴様らはまだ生きられる
起動術式、【リザレクト・オブリビオン】
蛇竜を攻撃へ、騎士は子供らの防衛へ
私の防御が手薄になる。他の猟兵の手を借りられるならば救援を願いたい
最悪、蛇竜を盾とすれば何とでもなろう
生憎とこいつらは呪詛製でな
何度壊そうが、幾ら貴様らがその身を強化しようが、死ぬまで喚び起こせば良いだけだ
ふは。良い因果応報じゃあないか
貴様らの同胞がこの世界で奪った命が、貴様らを殺すのだ

精々這い蹲って乞うが良い
貴様らの言う、慈悲とやらを


ヴィクティム・ウィンターミュート
オイオイ、何を無粋な真似してくれちゃってんだよ
この程度の希望の芽すら看過できないって?
どんだけ"恐れてるんだよ"
必死こいてこれだけの兵を差し向けちゃってまぁ…
テメェらの主は随分とビビりらしいな、嗤ってやるよ

さて、そんじゃまぁ…逆転劇を始めよう
こんな脆い砦相手じゃ、ご自慢のパワーは満足できないだろう?
そう思って用意してみたんだ──『Quakers』
出来るだけオブリビオン以外は入れないようにしたいが…万が一入っても、大丈夫だろう
即時起爆してやればいいだけだ…オブリビオン以外は傷付かないよ

そこで暫く遊んでおけよ、間抜けども
無事に出られたら景品をくれてやるぜ
──無様な死という名の、嬉しい景品をな



 若者達は思った。
 彼らは――猟兵達は、こんなにもひたむきに戦ってくれている。
 彼らには、それぞれの信念と理由があるのだろう。
 "自分達のために"などと、恩着せがましいことは言うまい。
 彼らには彼らの怒りがあり、彼らなりの決意があるのだ。
 ならば、自分達はこのままでいいのか?
 ただ護られ、怯えながら見守っているだけでいいのか。
 なにか――少しでも出来ることはないか。
「妙なことは考えるなよ。子供らよ、ここは私達に任せておけ」
 無力感に歯噛みしていた少年たちは、その声に顔をあげた。
 ニルズヘッグ・ニヴルヘイムは、峻厳なる面持ちをあえて貫く。
「そうすれば、貴様らはまだ生きられる。"明日"を迎えることが出来る。
 ……貴様らの想いは私達に伝わっているとも。それだけで、十分だ」
 戦場であるがゆえに、その面持ちはまさに邪竜たる鋭いものだったが、
 それでもニルズへッグはにこりと笑い、少年達を諭した。
 戦いにおいては足手まといになるという、残念だが当然の現実もある。
 けれども。ここでは、自分達猟兵が背中を見せ戦う意味があるのだ。
 これからのこの世界を左右するであろう、彼らの道を導くために。
 オブリビオンどもに、我らの意志と決意の堅さを知らしめてやるために。
「それで? きっとおあつらえ向きの"手札"があるんだろう、ヴィム?」
 伴たる蛇龍と死霊の騎士を呼ばい、ニルズへッグは隣を見た。
 誰もいないはずの場所に電子のノイズが走り、ステルス機構が解ける。
「オイオイ、誰に聞いてんだニル。こちとら超一流の端役だぜ?
 当然準備済みさ。無粋な間抜けどもを覆す、とびきりの逆転劇をな」
「逆転劇か、実にいいな! 派手で爽快ならなおいい!」
 ヴィクティム・ウィンターミュートの言葉に、邪竜は子供めいて屈託なく笑う。
 ひとりであっても当然のように彼は戦うつもりであったが、
 ともに戦う仲間がいるに越したことはない。
 それが信頼するハッカーであれば、どれほど心強いことか!
「"インパクト"も十二分だぜ。おまけに豪華な景品までついてくるときた」
「ほう? 景品かァ。だが、私がもらえるわけじゃないんだろう?」
「そうだな。残念ながら権利はあちら様のモンだ。なにせ――」
 ヴィクティムは歯を剥いて笑った。ことさらに皮肉げに、サメのように。
「景品の中身は"とびきり無様な死"なんだからよ」
 そして殺到する騎士どもは、一瞬にして端役の箱庭に閉じ込められたのだ。

『なんだ、これは』
『迷宮? ユーベルコードか』
『我らを囲いで覆って閉じ込めたつもりか』
 突如天蓋めいて己らを捉えたユーベルコードの迷宮に、騎士どもはどよめいた。
 壁など踏み越えればよい。障害など貫いて砕いてしまえばいい。
 そのための力があり、いかなる傷をもその闇は力に変えてしまう。
 ゆえに騎士どもは軍馬に拍車をかけて、迷宮をまっすぐ貫こうとした。
 ――直後、KRA-TOOOOOOOOOM!!
「おおっと! 説明が遅れたが、無理矢理のショートカットはルール違反だぜ。
 せっかく用意したアスレチックなんだ、おイタにはキツい罰をやらなきゃな?」
 騎士どもはその声に弾かれたように振り返った。ヴィクティムが肩をすくめる。
 しかし、それは電影だ。ドローンのホログラムで投影された虚像。
 そして壁を貫こうとした騎士は、壁ごと爆炎に飲まれて消散していた。
 "Quakers"。この電脳魔術は、それ自体が爆発物で出来た迷宮を作り出す。
 逃れたところで待っているのは死の抱擁。
 無理やり脱出しようとすれば、こんなふうに消し炭になる。
 捉えた時点で終わり。出ることも、突き進むことも出来はしない。
 ――かつ、こつ、かつ、こつ。
 そして出口の方角から一歩一歩歩いてくるのは、冷徹なる邪竜である。
「貴様らが慈悲深き正道の騎士だというならば、さあその槍を以て突き進め。
 騎士の道を阻む悪魔は私達であり、きっと世界は貴様らに微笑むだろう」
 ニルズへッグは大きく手を広げ、恐れなく騎士どもを挑発した。
「だが貴様らの言が偽りならば、待っているのはご覧のとおりの破滅だ。
 貴様らがこれまで当然のように奪い殺してきた報いが、貴様らを殺すのだ」
『戯言を』
『我らは騎士なり』
『敵は打ち砕き突き進むのみ』
 軍馬が仕掛ける。蛇竜が受け止め、絡みつき喉笛を噛みちぎった。
 騎士の捨て身のチャージに対し、ニルズへッグもまた長槍の一撃。
 勝負は一瞬――勝敗は歴然。蛇竜を盾として、邪竜の矛は騎士を貫いた。
「ふは。因果応報というべきか。奪い虐げた貴様らはいまここで這い蹲る。
 死にたくなければ乞うてみろ。貴様らの云う、"慈悲"とやらをな」
「ニルと違って俺は優しいぜ? ご希望ならいますぐ景品をくれてやるよ。
 ――選びな。竜に殺されるか、派手にブッ散らばって花火になっちまうか」
 前門の邪竜、後門の電影。
 逃れられぬ破滅と死の脅威に、騎士どもは言葉を失った。
「テメェらの"恐れ"なんざ、こっちはとっくにお見通しなのさ」
「傲慢の報いを支払うには、まだまだ足りんだろうなァ」
 怒れる男達の殺意が、闇の眷属どもを絡め取る。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リア・ファル
神楽耶さん(f15297)と

WIZ
アドリブ共闘歓迎

ボクの裡で戦えと、声が聞こえるから

「今を…闇に抗い生きる人々の明日の為に!」

相手の挙動を演算解析
『イルダーナ』のタンデムに神楽耶さんを乗せて
上空から強襲しよう。狙うは馬の脚!
(情報収集、操縦、追跡、逃げ足、空中戦)

「突撃は厄介だし、通すつもりもない。ならば脚を崩す!」

『ライブラリデッキ』から精製した電撃弾を雨あられと浴びせ、怯ませる
(属性攻撃、マヒ攻撃)

鎧の間隙を狙って、毒弾を撃ち込み
(毒使い、スナイパー)

「タイミングを合わせて、神楽耶さん! ……ステイシス!」
集団が鈍れば、UC【凪の潮騒】で縫い止める

「決して消えない灯火を、この世界に点そう」


穂結・神楽耶
リア様/f04685と

ええ、参りましょう。
今を懸命に生きる方々の希望を守りに。

リア様のタンデムシートにお邪魔します。
解析結果を共有して頂きつつ、己の目でも確認。
…本当に、潰すつもりの戦力なんですね。
やらせはしませんが。

おいで、【神遊銀朱】。

馬の脚を引っ掛ける位置に複製太刀を放ちます。
いくら高速の突進とて出がかりを潰されれば怯むかと。
そうでなくとも、リア様のマヒと毒の弾幕がございます。
手傷によって強化されるというなら、一撃で仕留めれば済む話。

ええ。勿論、合わせます。
この希望は、光なき世界で生きる誰かの明日を照らすから。
彼らの未来を──この刃で切り拓きます!



 空から見下ろした戦場は、黒と白とでくっきり分かれていた。
 正確な数はわからない――だがあの黒は、おそらくすべて闇の眷属ども。
「……本当に、潰すつもりの戦力なんですね」
 イルダーナの後部座席に座り、穂結・神楽耶は眉根を顰めた。
 けれどもすぐに眦を決し、深呼吸して言う。
「やらせはしませんが。そうでしょう? リア様」
「もちろんさ。聞こえるんだ、ボクの裡の、"戦え"という声が」
 操縦手リア・ファルは決然たる面持ちで答え、一気に高度を落とす。
「今を……闇に抗い生きる人々の明日のために! 行こう。神楽耶さん!」
「ええ、参りましょう。人々の希望を守るために」
 空からの強襲! 騎士どもは、滑るように落ちてくる流星を見上げた。
 そして鋭き闇の長槍を構え、目障りな女どもを串刺しにしようとする。
「おいで、神遊銀朱――あれなる騎馬の脚を刈るのです!」
「演算解析、完了。その突撃、通すつもりもないよ!」
 複製太刀とともに魔銃から無数の雷撃弾が放たれ、雨のように降り注いだ。
 頭上アドバンテージ、加えて騎士ではなく軍馬の脚を狙ったピンポイント攻撃。
 挙動データ解析による的確な狙いもあって、ふたりの刃と弾丸は蹄を捉える。
 無視して突撃しようとしていた軍馬はそのままに前のめりに転げ、
 ふたりを迎撃しようと前脚を上げていた者は、暴れる軍馬から脱落した。
 泥にまみれてなお、騎士どもは赤い眼光を瞬かせ鋭く立ち上がる。
 虫めいて飛び回る小物など、一突きで貫いて引きずり落とせばよい。
 奴らにはそれが出来る。それだけの数と、包囲戦術という武器がある。
 飛行しているイルダーナへ届くほどの強烈なジャンプ、あるいは槍の投擲。
 応報の攻撃をきりきり舞いで躱し、ふたりはさらに追撃を見舞った!
「よし、あいつらの注意はこっちに来てる。この調子で引きつけよう!」
「わたくし達に狙いを絞らせれば、人類砦も狙われないということ……。
 ですがあの様子。手傷を負わせる程度では、むしろ力を与えてしまいかねません」
「なあに、任せて! ボクの店は品揃えがウリなのさ!」
 神楽耶の言葉にリアはチャーミングにウィンクして、新たな弾幕を複製した。
 降り注ぐのは雷ではなく毒。雷撃弾との相乗効果で騎士どもの体を縛る!
 槍撃が止んだ――その一瞬の間隙があれば、仕上げには十分だ!
「行くよ。ボクのユーベルコードであいつらの動きを止める!
 タイミングを合わせて、神楽耶さん! とどめはキミに任せるよ!」
「ええ、承りました。わたくしの刃で必ずや――!」
 そうとも、己はそうあれかしと願われたもの。
 そうあるべきだからこそ、今もこうして生きている。
 この希望を絶やしてはならない。いつか世界を光で照らすため。
 子供達の未来をこの刃で切り拓こう。神なる我が刃を以て!
「対象固有振動数解析完了――さあ、これで仕上げだ。ステイシスッ!!」
 見えない共鳴波が戦場を包み、騎士どもの体を"停滞"させた。
 雷撃による麻痺や毒などという生易しいものではない。
 対象を時空間そのものから切り離すことで存在を止めてしまうのだ。
 どれだけ闇の力でその身を強化しようと、次元攻撃の前には無意味!
「――参ります」
 神楽耶は瞼を開き、数え切れないほどの刀を複製させた。
 そして刀を振り下ろすとともに、分身達は雨のように降り注ぐ。
 愚かなる闇の眷属に裁きをもたらす、神の振り下ろした雷霆めいて。
 曇ることなきその刃は、敵のすべてを貫いて滅したのだ!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

杜鬼・クロウ
最近アポカリプスヘルへ赴いた依頼でも死や滅びは救済と
本気で疑わなかった信者共がいたなァ

希望は全て握り潰されるから抱くだけ無意味だと
だから”慈悲”を込めて一思いに摘み取ると
ナメやがって
人が抱く思いの真の強さをテメェらは知らない

根付いた芽は消させねェ
これ以上の被害は出させねェ

…ガキだけでよく堪えたな
隠れてろ

救えるガキ達がいたら前へ出てかばう
希望は絶望に負けず

敵の攻撃敢えて片腕で受け【蜜約の血桜】使用
羅刹女からの奇跡の力で足止め
(消せない痕
噎せ返る香
あァ、お前は何処までも…)

花弁で目眩まし
玄夜叉に導きの炎宿し片手で馬の足狙う
態勢崩し2回攻撃
後ろから本体へ部位破壊
敵の攻撃は武器受け・見切り
首を刎ねる



 多くの子供達が無事に集落に逃げ込み護られていたが、
 すべての子供が逃げ込めたわけではない。
「はあ、はあっ、た、たすけて……!」
 闇の騎士に追われ、幼い子供が息をせき切らせて走り続ける。
 だが、両手で足りるだろう年頃。馬の健脚に勝てるわけがない。
 持久力はとうに尽き、少年は石に躓いて前のめりに転がってしまった!
「い、痛……」
『慈悲を受け入れよ。これは救いなり!』
 そこへ降り注ぐ無慈悲なる槍。少年の表情が恐怖に染まる!
 救いはないのか?
 希望はないのか?
 ……否! 迅雷の如き速度で走る、濡羽色の風を見よ!

 ――がぎんっ!!
「……あ」
 思わず瞑っていた目を開き、少年はぽかんとした声を漏らした。
 カラス、だろうか? はためく外套は大鴉のそれを思わせた。
 黒魔剣でもって槍を弾いた男――杜鬼・クロウは、肩越しに振り返る。
「ガキだけでよく逃げ続けたな。もう心配ねェよ、行きな」
「……あ、ありがとう! お兄さん、えと」
「行けッ!」
 クロウは鋭い声で言い、もはや振り返ることなく騎士を睨む。
 突撃槍を弾くと同時に稲妻のように踏み込み、地摺りの斬り上げを見舞う。
 だが怪物じみた軍馬は間一髪でそれを避け、両者は間合いを保ち相対した。
『我らの慈悲を否定するか、猟兵よ』
「慈悲だァ? ……ナメやがって」
 クロウは吐き捨て、両手で剣を握り構えた。
「テメェらは知らないんだよ――人が抱く思いの強さをなッ!」
 仕掛けた。しかし槍のリーチに対しそれは悪手!
 ランスはその腕をかすめ――しかし、噴き出したのは血ではない。
 残香を孕みし桜の花弁が咲き誇り、困惑する騎士と軍馬を縛り上げた。
 間隙が生まれる。しかしクロウの面持ちは晴れない。
(――この香り。あァ、お前はどこまでも……)
 脳裏によぎる過去の姿は矢のように過ぎ去り、現在の鉄火場が戻ってきた。
 斬撃はふたつ。焔纏いし一の刃は大地すれすれを薙ぎ、軍馬の脚を刈った。
 そして回転を殺さず二撃目。狙いは騎士の首。
「憶えときな。……テメェらにゃ、もう誰も殺させねェ」
 騎士が最期に見たのは、揺るぎなき男の決意に満ちた双眸であった。

成功 🔵​🔵​🔴​

フランチェスカ・ヴァレンタイン
何とも無粋な… 世界の支配者を気取るのであれば、希望を育てて迎え撃つぐらいの気概でいればいいものを

急降下の運動エネルギーを乗せた斧槍の振り下ろしで指揮官騎らしき個体を騎馬諸共に割り断ってのエントリーです
確かに前方への突破力と平面機動力はあるでしょうが、ええ。悲しいかな、突撃槍の届かぬ上方向には極めて無力ですよねー?
そのまま周囲の騎馬をなぎ払い、飛び立っての空中戦機動で砲撃と雷装での重爆撃などいかがでしょうか

UCを発動、旋条の光刃が大地を抉る、群れの波を引き裂くような匍匐飛行で騎馬隊を縦横無尽に穿ち散らして差し上げましょう…!
乗騎に頼らぬランスチャージがどういうモノか、どうぞ刮目してご覧あれ?



 ――KRAAAAAAAAAAASH!!
『何者ぞ』
『頭上から来るなど無粋な』
『なおも我らを阻まんとするか』
 突如として流星めいて落下した衝撃に、騎士どもは槍を向けた。
 噴煙が晴れ、現れたのは――フランチェスカ・ヴァレンタインの姿。
 その足元には、両断された騎士と馬の残骸が転がっている。
「あら? 寄ってたかって子供を殺そうとしている集団が何をおっしゃいます。
 無粋なのはそちらでしょう。世界の支配者、その下僕がなんて小さいこと」
 真に傲然たる支配者ならば、こんな集落ひとつは捨て置けばいいのだ。
 いかな希望が育とうとすべて踏み躙ろうと構えていればよかろう。
 だのにこんな大軍を差し向けること自体、奴らの恐れを示している。
 フランチェスカは騎士どもの戯言を一笑に付し、羽ばたきとともに疾駆した。
 殺到する騎士どもをスウィープで薙ぎ払い、跳ねるように空中戦へ。
 騎士の風上にも置けぬ残骸どもと、馬上試合をやってやるつもりはない。
 落ちるのは砲撃と雷装の雨嵐。まさに重爆撃と呼ぶべき絨毯飽和攻撃だ!
「徒党を組んで弱者を虐げ苦しめる。それのどこが慈悲だと言うのです?
 知らぬならば教えてあげましょう、本当の戦い方というものを……ッ!」
 刹那、槍先から旋条に光刃がほとばしり、焔が闇を払った。
 黒き雪崩を引き裂くような低空飛行、ジグザグじみた機動が軍勢を割る。
 遅れて衝撃波が吹きすさび、オブリビオンの残骸が闇夜に散った!
「乗騎に頼らぬランスチャージがどういうものか、どうぞ刮目してご覧あれ?」
 ――ザンッ!! と、音をも超える超高速の飛翔が戦場を貫く。
 誰も追いつけはしない。戦乙女の羽ばたきは時すらも置いてけぼりにする。
 いわんや、偽りの騎士道を掲げる闇の眷属をや、抗える術はなし。
 フランチェスカの思うがままに、闇は祓われ邪悪は雷光の中に融ける。
 それはまさに、夜明けのような眩い輝きだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鷲生・嵯泉
……慈悲だと?
巫山戯た事を抜かしてくれる
ならば其の歪み腐り切った騎士の矜持を打ち砕く事、
過去への慈悲と心得るがいい

決して此れより先へは進ません
戦闘知識に拠る軌道の先読みと第六感にて攻撃は叩き落し後ろへは通さない
多少の傷は激痛耐性にて無視
鎧砕きのなぎ払いで牽制して隙をこじ開けてくれる
其方から突っ込んで来るなら好都合と云うもの
――終葬烈実
可能な限り近距離で見切り躱したカウンターを以って
鎧無視に怪力乗せた斬撃で斬り捨てる

年端も行かぬ子等ばかりで生き延びるのは容易ではない
其れでも諦める事無く前へと進む事を選ぶ心の強さこそ
大切な護るべき砦
お前達なぞに唯の1つであろうとくれてはやらん
――疾く潰えるがいい



 もしも、今この場で下せる慈悲というものがあるのだとすれば。
 それはかの腐りきった騎士どもに、その矜持に終わりをもたらすこと。
 ……オブリビオンとは、あくまで骸の海から再醒した残骸である。
 過去そのものではなく、ゆえに生前のオリジナルとは似ても似つかない。
 どれほどの人物であろうと、悪意を以て世界を脅かす。そういうものだ。
 ならばこそ、まったき終わりをくれてやることこそ紛うことなき慈悲。
 ゆえに――鷲生・嵯泉は、おのれの刀のみを伴として、身一つで軍勢に挑んだ。

 なるほど、怪物じみた軍馬の威圧感は相対してはじめてわかる。
 しかし騎馬との戦い、嵯泉にとっては実に慣れたものである。
 馬の癖、突撃槍の角度、狙い、そして仕掛けてくるタイミング。
 それらをこれまで得た知識と経験、己の第六感によって信じ察知し、
 ランスチャージが繰り出されるその"起こり"を斬撃で潰す。
『何』
「ここは通さん。そちらから近づいてくるなら好都合というものだ」
 ぎらりと隻眼が刃めいて輝き、次の瞬間には呻く騎士を両断していた。
 泡を吹く軍馬もろともの一刀両断、紛れもない絶無の技である。
 断末魔すらなく息絶えた騎士を踏み越え、嵯泉はさらに一歩前へ。
 傷など恐れはしない。英雄を嘯くつもりもない。
 だがこの背中の後ろには、年若き子らが今も怯えている。
 ……はたして彼らは、望んで自分達だけで住まいを得たのか?
 否。断じて否。彼らにも帰るべき家があったはずなのだ。
 母親の優しさを、
 父親の暖かさを、
 当たり前のように享受すべきものがあったはずだ。
 それがここにない――その意味するところは確かめずともわかる。
 けれども彼らは今日まで生き延びてきた。
 ただ屈従し、望まぬ支配者に額づいて慈悲を乞うのではなく。
 この世界に光あれと希望を信じ、己らの力で生き延びてきたのだ。
「お前達には過ぎたものだ。ただのひとつであろうとくれてはやらん」
 闇の眷属よ、見るがいい。武芸の際涯に至りし超絶の剣士を。
 これこそは汝らに慈悲をもたらすもの。
 その狂った騎士道とやらを諌め、糺し、報いるもの。
「――疾く潰えるがいい。もはやここから先は、誰も通さぬ」
 いかなる城砦よりもなお堅牢なる、守護者にして裁断者である。

成功 🔵​🔵​🔴​

鹿忍・由紀
ありふれた日常って感じだね
気怠く見渡す見慣れた絶望

子供達は他の猟兵に丸投げして
騎士を倒すことに専念

乱戦に紛れて気配を最小限に抑え
騎士達の隙を窺い不意打ちを狙う
馬は邪魔だから早いとこ片付けたい
鋼糸で翻弄して転倒を狙う
ひっくり返せばついでに他の猟兵が倒してくれるかもしれないし

はいはい、お勤めご苦労様
ごちゃごちゃうるさい騎士の話には
耳を傾けることなく降らせる影の雨

突破してくる騎馬兵には影雨を纏めて足元にお見舞い
こちらに向かってくる者は体勢を崩させ畳み掛ける
馬の軌道が此方じゃなければ直接騎士へと影雨を集中させる

生き延びて欲しいと願うでもなく
目の前の仕事をこなすだけ
まあ、つまんないことで死ぬのは嫌だよね



 ありふれた日常。
 鹿忍・由紀がもしも、この場この状況を一言で言い表すよう求められたなら、
 きっと彼はそう言って、何の感情も見せずに話を終わらせるだろう。
 絶望などこの世界では見慣れたもの。あくびがでるほど退屈だ。
 義憤。矜持。侮蔑。憎悪。あるいは堕落への憐憫、悲嘆、嘲笑。
 多くの猟兵が抱くそのどれも、彼の中には宿っていない。
 あくまで仕事をこなす。彼のスタンスは"ただそれだけ"だ。
『道を開けよ。我らは慈悲を』
「はいはい、お勤めご苦労さま」
 聞くに値せぬ戯言を斬り捨て、影の雨を降らせた。
 来たる騎馬兵を迎え撃つのはおびただしい数のダガーであり、
 それはたしかに馬を鎧を物ともせず、絶望の使徒らを貫き滅殺する。
 容易い仕事だ。これまで何度もやってきたように重ねるだけ。
 それにしても、この世界のオブリビオンとはどいつもこいつも"こう"なのか?
 ありきたりな悪意をばらまき、判を押したような絶望とやらを押し付け、
 人々を苦しめて悦に浸る。趣味が悪い、もっとも嫌悪感すらも沸かないが。
 由紀にとってはすべてどうでもいいことだ。子供達とやらも意識の外。
 敵が来るから殺し、守れと言われたものを守るだけの話。
 容易い仕事だ。なにせ彼はそこに一切の自意識を乗せていない。
「……退屈だな」
 ありったけの影雨をばらまき、死を驕る愚か者に死をくれてやりながら、呟いた。
 こんなくだらない悪意に殺されるのは嫌だろう。その気持ちはわかる。
 ただあいにく、希望とやらに寄り添ってやることも、
 自分がその救済者とやらになってやるようなつもりもなかった。
 気怠い。退屈がこみあげてくる。飽きるような量の敵を飽きたように殺す。
 淡々とした仕事。何事も、ルーチンワークに落としてしまえばそれで終わる。
「何が面白いんだろうね、大仰なことを言って殺して荒ぶって。面倒くさい」
 なおも来る闇の眷属どもを見て、ことさらうんざりした様子で彼は言った。

 由紀は退屈を嫌う。さりとて己が望まぬ変化を楽しむ性分でもない。
 彼にとって希望だのなんだのはどうでもよく、ゆえに絶望も無縁だった。
 何者にも寄り添わず、共鳴せず、理解できず、そもそも意識を向けない。
 ――はたしてそれは、彼が殺す過去の残骸どもと何の違いがあろう?
 矜持すらなき騎士の群れと、ただ殺し続ける物憂げな殺戮者。
 姿形は異なれど、虚ろなるさまはまるで鏡のようだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

クロト・ラトキエ
おたくら、カミサマ?

転移と同時、先ず把握するは住人らの動向。
応戦する者>狙われ易い位置>怪我や歳的に逃走に支障…等、
狙われ易い者ほど留意。
射線に割入り、
敵の意識を引きつつ、力を示すを以て、住人らを逃したく。

速度、脚の挙動に軸足、馬との距離…
見切り得た全てを基に。
敢えて敵の射程外縁に入り、一撃を誘導、
回避からのカウンター。
鎧など無視。
UCの水の魔力を鋼糸の攻撃力へ極振って…
将を射んと欲すれば何とやら。
巻き引き、焼き断つ2回攻撃…
先ずは機動を頂きましょうか。

苦しみを選ぶ?
――してやる?
何様ですか?
莫迦ですか。

苦しみなど過程に過ぎない。
ひとが、生きて、択ぶ未来に、
手前勝手な主張掲げた外野が手ぇ出すな



 転移した瞬間、クロト・ラトキエはまず状況の把握に務めた。
 子供達、無事。猟兵達の健闘が実った形だろう。
 怯えてはいるが混乱している子供がひとりも居ないあたり、
 どうやら一名も被害は出ていないようだ――実に喜ばしい。
 怪我も目立った傷はない。
 逃走に支障のありそうな子供は、あの少女か、赤子を抱えている。
 それでも現状の立ち位置なら問題は……否、前言撤回。
『すべては、我らのあるじのために!!』
 猟兵達の包囲網を抜け、何騎かの槍兵が一気呵成に飛び込んできた。
 無論、狙いは少年少女達。対応できそうなのは自分のみ。
 クロトは滑るように間に割って入り、馬の軸足に鋼糸を絡め、引いた。
「これだけの猟兵が居るにも関わらず、狙いはあくまで子供達ですか、なるほど。
 どうやらよほど、この世界の住人が希望を持つのが気に食わないらしい」
 だからこそたちが悪い。しかし付け入るスキはある。
「敵の意識はこちらで惹きます、もう少し安全なところへ下がっていてください」
 クロトは固唾を呑んで見守る少年らに言い、そして疾走した。
 敵が住人らを狙うなら、その突撃経路をひたすら潰してしまえばいい。
 幸いにも敵は騎馬隊である。ランスチャージは直線的な攻撃だ。
 迂回して死角を取ろうとしていた二体目の騎兵をがんじがらめにして殺す。
 いかに分厚く強靭な鎧であろうと、この糸はチーズのように引き裂いてしまう。
 そこに水の魔力を極限まで収束させたのならば、もはや空気と同等だ。
 手応えもなく騎馬はバラバラになって転がる。残骸を無視し、さらに前へ。
『我らの邪魔をするな、猟兵よ』
『これはすべて慈悲なり』
『苦しみ喘ぐ民を、我らのあるじは救ってやると決めたのだ』
「――救って"やる"?」
 クロトは顔を顰めた。なによりも、その言葉の響きが不快だった。
「おたくは――おたくらの"あるじ"とやらは何様ですか? カミサマか何かか?」
 三体目を惨殺。その残骸を、四・五体目の足元にばらまき障害物にする。
「それとも、付ける薬もないほどの莫迦ですか」
『我らの使命はあるじの命を遂行することなり。生は苦しみでしかない』
「そういうふうに世界を作り変えたのは、あなた達でしょうに」
 話にならないと嘆息し、機動力を奪われた二体を殺す。
「苦しみなど、生きていく上での必然、ありふれた過程に過ぎない。
 ひとが、生きて、択(えら)ぶ未来に、お前らのような残骸が手ぇ出すな」
 レンズの奥の双眸に燃えるのは、紛うことなき怒りだった。
 懸命に生きようとする人々の意志すら軽視した、外道どもへの。
「その手前勝手な主張を掲げたまま、全員ご退場くださいよ。邪魔ですから」
 この世界特有の、ぬるい風が吹き抜ける。
 それが殺戮の血風に変わるまで、さほど時間はかからなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

マリー・ハロット
マリー、難しいこと、よく分かんないけど、アナタ達の事はキライ! 死んじゃったらそこで終わりなんだから! そんなの全然楽しくない!!
頑張ってる人達が楽しく出来る様にマリー、頑張っちゃうよ!

いつもどーり、サイキックをぞーふくするヤツを【ドーピング】して、UCを使ってパワー全開で行くよ!
あなた達、お馬に乗った突撃とか凄いみたいだけど、空までついて来れるかな? UCで得た飛行能力で【空中浮遊】と【空中戦】を使って空から一気に攻めるよ!
空から一気に降下して、落ちる速さと【念動力】を乗せた『ヴォーちゃん』(偽神兵器)の一撃で【蹂躙】しちゃうんだから!!
いーっぱい、『じひ』?をあげるね!



 マリー・ハロットには、"むつかしいこと"はよくわからない。
 希望とか、絶望とか、ジヒだとかクルシミだとか。
 人が抱く懊悩と輝きを、マリーは正しく捉えられない。
 そんな機能は、造られた生命には必要ないからだ。
 ただ、それでも、誰かが泣いたりしているのはとてもイヤだ。
 胸の奥がムズムズする。楽しくない。だから、アイツらは――キライだ。
「マリーの力、見せてあげる!」
 どくん、どくんと心臓が脈動するのに合わせて、薬剤が全身を駆け巡る。
 薄暗い世界が一気に明るくなり、恐怖と消し去る多幸感が押し寄せた。
 マリーは見開いた瞳で、迫りくる大量の騎兵どもを睨みつける。
 とてもいい。何もかもが一変して見える。なんでもできそうな気がする。
 敵の多寡など何の問題があろう。自分のほうがずっと速くて強いんだから!
「アナタ達のこと、キライ! 死んじゃったらみーんなそこで終わりだもん!
 マリー、そんなの全然楽しくない! だからみーんな、やっつけてあげる!」
 年頃で言えば、マリーは集落の子供達とほぼ同じ年代だ。
 そんな幼い少女が、快活に笑いながら空を飛び死を振り撒いている。
 その光景は、護られる少年らからするとひどくショックなものだった。
 どうしてあの子は、あんなに強いんだろう。
 どうしてあの子は、あんなに自由なんだろう。
 どうしてあの子は――あんなに笑いながら戦えるんだろう?
「そんなに『じひ』が欲しいなら、マリーがいーっぱいあげちゃうよ!
 だって、わざわざそうやってあげたがるなら、アナタ達も嬉しいもんね!」
 死神だ。
 空を飛び回り、槍を避け、偽神の刃を思うがままに振り下ろすさまは、
 まさに力なき人間に死という終焉を齎す、大いなる死神のようだった。
 だから子供達は、その姿を恐れた。
 その無邪気さを恐れた。
 そして……なぜだが、無性に悲しくなった。

 騎兵どもは空を高速飛翔するマリーを捉えきれず滅殺されていく。
 闇が晴れていく。しかしそこに世界を照らすべき光はない。
 あるとすれば……未来を薪に燃え続ける、鮮烈だが危うげないのちの焔だけ。
「あっははは! やっぱり、こっちのほうがずーっと楽しいや!」
 戦場で笑っているのは、少女だけだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

エドガー・ブライトマン
へえ~、慈悲ねえ
……やれやれ。騎士の誇りやらはどこにも残っていないらしい
こどもと騎士君の間に割って入る

こどもに振り下ろされる剣は、私の剣で受け止める
ご機嫌よう、キミたち!
この瞬間までよく頑張ったね!えらいぞ!

騎士君の剣や力は強力だろう
それを見越して、割って入るより前に術を使っておいた
“Hの叡智” 防御力を重視していたのさ
これで易々とは負けやしない

こどもが狙われた際はすかさず《かばう》
《激痛耐性》があるし、大丈夫さ
防戦一方にならないよう、隙を見て《捨て身の一撃》
彼らを殺させやしないさ、必ずね

キミたちは必ずこの世界の希望になれる
いつかこの世界にも光が差す
私たちがキミらにそう思わせてみせるさ
信じてね



 ――がぎんっ!!
 逃げ遅れた子供を狙い繰り出された突撃槍は、一振りの剣に弾かれた。
 ぎゅっと目を閉じていた子供が、恐る恐る顔をあげ……青年の背中を見る。
「ごきげんよう、お嬢さん! この瞬間までよく頑張ったね、えらいぞ!」
 エドガー・ブライトマンはチャーミングな微笑みを浮かべた。、
 よく通る声で言った。肩越しに振り返れば、子供はぽかんとしている。
「おっと、突然驚かせてすまない。私はただの通りすがりの王子様さ!」
「……王子、様」
「そのとおり。怖かっただろう? けれどもう心配いらないから安心して」
 お逃げ、と集落のほうを指し示し、エドガーはウィンクしてみせた。
 子供は困惑したまま感謝を述べて、仲間達のほうへと駆け出していく。
「さて、騎士君達。聞けばキミ達は"慈悲"のためにここへ来たそうじゃないか?」
 エドガーは敵の群れ……すでに後続が現れている……に剣を向け言った。
『然り。この世界において生は苦しみでしかない』
『我らのあるじは血を望んでおられる』
『ならば我らの手で速やかに死をもたらせば、あるじの望みは叶い』
『苦しみしかない民は救われるのだ』
「……なるほど。やれやれだな」
 エドガーは演技がかった調子で頭を振った。
「聞いていたとおり、キミ達に騎士の誇りとやらはどこにも残ってないらしい!
 あいにくだけれど、彼らを殺させるつもりはない。誰ひとりであろうともね」
『我らの邪魔をするか、猟兵』
「不思議かい? ――なあに、通りすがっただけだからね!」
 その言葉に対し騎士が下したのは、徹底攻撃による鏖殺。
 稲妻じみた速度のランスチャージを受けていなし、エドガーは舞い踊る。
 その身を少しずつ傷が覆っていく。けれども青年は笑っていた。
「騎士ならざるキミ達に、大切なことを三つ教えてあげよう!」
 深呼吸とともにエドガーは言う。
「ひとつ! か弱い子供達に涙を流させないこと!」
 傷だらけでも笑顔を浮かべて瞬いて、言葉を続ける。
「ふたつ! おのれが傷つくことを恐れないこと!」
 そして、心の中で静かに名を唱えた。
「みっつ目は――」
 双眸がきらめく。嵐のような攻撃の中に生まれた僅かな間隙。
 その一瞬を狙い稲妻じみた速度で刃を煌めかせ、一瞬のうちに群れを両断する。
「どんな時でも微笑んで、決して負けないことさ」
 その姿は、まるで母親が語り聞かせる優しいおとぎ話の王子様のよう。
 子供達は輝くようなエドガーの貌(おもて)を見て、思わず唸った。
「いつかこの世界にも光が差す。だからどうか、私達を信じてくれ」
 通りすがりの王子様はそう言って、次なる敵を求め風のように戦場へ。
 折れかけた彼らの心に、ふたたび希望をもたらすために戦い続ける。

成功 🔵​🔵​🔴​

リリヤ・ベル
【ユーゴさま(f10891)】と

……それでも。
ユーゴさま、それでも、わたくしたちは間に合ったのです。
すべてを救うことはできなくとも、いまこのときは、きっとお力になりましょう。

はい、ユーゴさま。こちらはおまかせください。
鐘を掲げて、鳴り響かせて。
示された辺りにみどりの津波を呼びましょう。
深く根を張り、蔦を伸ばし、高く高く成長するように。
人類砦へと近寄らせないよう、絡めて埋めて留めるのです。

取りこぼしてしまったものはユーゴさまにおまかせして。
わたくしは、まわりの様子にも気をつけましょう。
砦のみなさまが危なければ、蔦を伸ばしてお守りいたしますね。

希望はここに。
けして、絶望で塗り潰させはしませんとも。


ユーゴ・アッシュフィールド
【リリヤ(f10892)】と

こんな小さな希望すら絶望で覆い尽くそうとするのか。
昔から変わらない、この世界の構図ではあるが……
つくづく救いのない世界だな。

これはまた大群だ。
リリヤ、あの辺りの地面をひっくり返せるか?
何かしらの足止めをしてくれればいい。
大雑把でいいぞ、抜けてきたのは俺が撃ち落とそう。

リリヤには、そう言ったものの
風の矢はそこまで威力があるものではないから少々不安だな。
まぁ、兜の隙間と馬の脚辺りを狙えば止まるだろうか。
上手く当たってくれよ。

芽生えた小さな希望を、過去の存在が勝手に手折るな。
元居た場所に還るがいい。



「……こんな小さな希望すら、絶望で覆い尽くそうとするのか」
 ユーゴ・アッシュフィールドは、戦場を一望できる丘の上で呟いた。
 なんという数の敵。
 そして……"人類砦"という名が似つかわしくない、粗末な集落。
 そこに住むのは、リリヤ・ベルと同じか少し上の子供ばかりなのである。
 愕然とした。たとえ、それがこの世界のありふれた風景だとしても。
 吸血鬼どものおぞましい悪意、底知れない闇に触れた気がしてめまいを覚える。
「つくづく救いのない世界、だな……」
「……それでも」
 傍らに立つリリアは、きっ、とユーゴの目を見上げて言った。
「ユーゴ様。それでも、わたくし達は間に合ったのです。
 すべてを救うことは出来なくとも、いまこのときはきっと……」
「……そうだな。ここで見物などしていては、それこそ何もかもが無駄だ」
 ユーゴはリリヤの言葉に頷き、改めて戦場一体を見渡した。
 なぜふたりは、集落の前ではなくこの丘の上にやってきたのか。
 それは、もちろん策があってのことだ。
「あのあたりがよさそうだな。リリア、足止めを頼めるか?」
 ユーゴが指し示したのは、まさに今黒い絶望の軍勢が迫る戦場のど真ん中。
 リリヤは頷き、からん、ころんと"真鍮の鐘"の鳴らした。
「おいで、おいで――みどりの津波よ。深く根を張り、蔦を伸ばして……」
 するとどうだ。
 ユーゴの示した場所に、めきめきと巨大な蔦が蔓延り、急成長を始めた。
 がっちりと大地に根を張り、丸太のように太く強靭な蔦である。
 緑色の障壁というべきか、あるいは打ち上がる生命のマグマと云うべきか。
 鐘の音に呼ばわれし大地の怒りは、たちまち騎士どもを絡め取った。
「よし。では――行こう」
 ユーゴは風の精霊を呼ばい、そして少女を抱え……丘から、跳んだ。

 どれだけランスによる突撃が激烈なものでも、それは直線的な攻撃だ。
 死角は頭上にある。そしてこの時、空から降ってくるものがあった。
「当たるといいんだがな……!」
 ユーゴである。彼は風の精霊の力を借り、騎士の軍勢の頭上を取った。
 そして渦巻く風はひとつの弓と変わり、いくつもの矢を降り注がせる。
 真正面から迎え撃てば、矢は隙間を外れることもあろう。
 しかしみどりの津波に絡め取られた騎士どもでは、身動きが取れない。
 パシュッ、と風の矢が大気を切り裂くたび、闇の眷属は矢に貫かれ滅び去る。
 一体、また一体。まるで手品のような、華麗な手さばきであった。
 ユーゴは風の精霊の力で着地の衝撃を和らげ、同時にリリヤの背を押した。
「まだまだ敵は来るだろう。任せたぞ、リリヤ」
「はい。砦のみなさまのことは、おまかせください」
 ふたりはそれぞれ逆方向に走る。ユーゴは前線へ、リリヤは人類砦へ。
 鐘の音がからんころんと鳴るたび、新たな蔦が生い茂りバリケードを構築した。
 粗雑な防壁を自然の力で締め上げ、城砦の如き堅さをもたらす。
「す、すっげえ……!」
 見守っていた子供達の中で、誰かが叫んだ。
 リリヤは鐘を手に子供達に微笑みかける。
「みなさまのお力になるため、ここまでまいりました。どうか、ご安心を。
 ――希望は、ここにあります。けして、絶望で塗り潰させはしませんとも」
 ユーゴの読みどおり、騎士の軍勢は第二第三の波を送り込んでくる。
 執拗な殲滅。いかなる希望の芽も許さない、徹底した攻撃――吐き気がする。
「過去の存在よ――元いた場所に還るがいい」
 風が渦巻き、矢となって駆け抜ける。
 鎧の隙間を貫き、
 怪物じみた軍馬の脚を狩り、
 闇の刈り手どもを狩り尽くす。
 戦場に吹く風は、勝利の女神の吐息に似ている。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

壥・灰色
闇に響け、おれの名よ
是は無窮の剣、絶望を貫く一条の光
いかなる壁をも打ち壊す、たった一つの万能鍵

――壊鍵、起動

少年達の前に立ち、迫り来る敵集団を相手取る
おれより後ろには一人として通さない

鏖殺式、展開
侵徹撃杭による迎撃弾幕
正面から来る敵戦力を削ぎ落としつつ、接敵してきたものは壊鍵による直接打撃で対応
この闇に覆われた世界の予知を、おれとて何回もしてきている
救いようのない事件ばかり起きるこの世界を、いつか本当に救いたい
――潰える命を一つでも減らして、いつか笑って迎える未来まで連れて行きたい

だから、おまえらは邪魔だ
おまえらが人を殺さねばと言うのなら
おれは、おまえらを殺さねば。

砕けて死ね。
壊鍵、最大稼働!



「よしよし、泣かないで……大丈夫、大丈夫だからね」
 泣き続ける赤子を、幼い少女のラミーは懸命にあやしていた。
 本当は、自分だって泣きたいぐらいだ。だって、とても怖い。
 けれども、それはみんな同じだ。
 いつもはみんなを明るくさせるブランドが、震えていた。
 頭がよくて落ち着いているナイベールも、ずっと怖い顔をしている。
 無事に逃げてこれた見張り役のレンダは、耳を抑えて震えていた。
「大丈夫だ、みんな」
 リーダー役のアルが、怯える子供達を見渡して言う。
「大丈夫だ。だって、こんなにたくさんの助けが来てくれたんだ!」
「でも、敵はまだまだ来るじゃない! これじゃいつか……っ」
「大丈夫だ!」
 震える声のレンダに対し、アルは拳を握りしめて力強く言った。
 ……言っている少年自身、安心しきっているわけじゃない。
 もしかしたら"闇の救済者"がやられてしまうかもしれないという、
 小さな不安が、ずっと心の片隅にあった。
 それでも、多くの猟兵達が頼もしい背中を見せ、呼びかけてくれた。
 自分達には戦う力はない。
 けれど、今この場でできることがあるとすれば……。
「みんなで信じるんだ。きっと大丈夫だって、勝ってくれるはずだって!
 ……でなきゃ、こうやってずっと暮らしてきた意味が、なくなっちまう」
 うつむく少年の耳に、さらなる大軍の蹄音が響いてきた。
 地鳴りを起こすほどの騎士の群れ。闇色の雪崩、絶望の使徒。
 振り返った少年が見たのは……なびく灰色の髪と、青い電光だった。

「……それでいい」
 肩越しに子供達を振り返り、壥・灰色は言った。
 その顔はちっとも笑っていない、むすっとしたようなものだけれど、
 不思議と子供達は、父親のような暖かさを感じ取った。
「戦う力がなくとも、何も出来ないわけじゃない。だから、それでいい。
 ――代わりに、おれ達が命を懸けて戦おう。これまでもそうしてきたように」
 灰色は拳を握り、ファイティングポーズを取った。
 敵は多い。一体一体が精強な、恐るべき騎士の群れである。
 だが、それがどうした。
 同じように恐ろしく強大な存在が、この世界には腐るほどいる。
 そいつらは戯れのように人々を苦しめ、いくつもの悲劇を起こしてきた。
 ああ、知っているとも。何度となく絶望の未来を視てきたのだから。
 彼らは――猟兵達は、そんな暗黒の終焉を、何度だって叩き潰してきた。
 それでも、この世界のすべての悲劇がなくなったわけじゃない。
 救いようのない事件があった。
 未来を予知したところで、取りこぼしてしまう命があった。
 心荒み絶望に屈する人々がいた。
 オブリビオンも例外ではない――狂気に染まり、同族殺しとなった者ども。
 喪われたものは還ってこない。人々に刻みつけられた傷は深く、重い。

 それでも。
「きみ達が怯えることなく、笑って朝を迎えられるようになるまで、おれは戦う」
 魔力が満ちる。衝撃が生まれる。
「――怯えなくていい静かな夜に、いつか必ず連れていこう」
 双眸が金色に染まった。
「だから、おまえらは邪魔だ」
 バチバチと電光が漲る。
「おまえらが、人を殺さねばと言うのなら――おれは、おまえらを殺さねば」
 壊鍵、起動。
 鏖殺式、展開。
 目標、正面敵軍勢――推定敵性体数、およそ50以上。
 撃力装填。
 装填。
 装填、装填、装填――満ちる。満ちる、満ちる!
 これなるは無窮の剣。
 いかなる壁をも打ち壊す、たった一つの万能鍵(マスターキー)。
 少年達よ、闇の眷属どもよ、刮目して見よ。
 これこそ――絶望を貫く一条の光。すなわち、その銘は!
「砕けて、死ね……ッ!!」
 灰色が地を駆けた。威力が爆裂し、大地を粉砕する。
 速く。もっと疾く。光すらも置いていくほどの速度を我に。
 闇よ聞け。その名を耳にして震えるがいい。
 撃力炸裂――侵徹撃杭が放たれ、灰色の風が戦場を貫いた!

 ……一拍遅れ、衝撃が闇を洗い流す。
 雪崩じみた軍勢のど真ん中を魔剣が切り裂き、左右に吹き飛ぶ敵の群れ。
 まるでそれは、神話における預言者の海を割る奇跡のようだ。
 ドオオオオウ……と轟音が地鳴りをもたらし、土埃とともに鋼を払う。
 さらに降り注ぐ侵徹撃杭の雨! まさしく、神をも滅ぼす巨人の壊撃!!
「……壊鍵(ギガース)」
 呆然とそのさまを見つめる少年は、ぽつりと呟いた。
 圧倒的衝撃とともに轟いた、ひとりの男に宿る力の名を。
 その響きは、どんな傷よりも絶望よりも、彼の心に深く刻み込まれた。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『『屍塊驍騎』ブラッドスピットナイツ』

POW   :    ブラッドスピットナイツ……ソノ栄光ハ永遠ナリ!
自身の【五つある脳の一つ 】を代償に、【脳の深層に残る『過去』の呪い】を籠めた一撃を放つ。自分にとって五つある脳の一つ を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD   :    コノ騎獣コソ、ワレラガ最強ノ騎士団デアル証
自身の身長の2倍の【空を翔ける怪馬・スレイプニル 】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ   :    ワレラ騎士団ノ全身全霊、ウケテミヨ!
【全方位へ全武装による一斉攻撃 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

 闇の眷属は去った。
 戦場は、数多の屍が転がる荒野と変わり、折れた槍が茨めいて突き立っている。
 その鋼と血に塗れた荒野を、一体の異形が歩く。
『何故ダ』
 いくつもの声が同時に重なったような、奇怪な声であった。
『何故、我ラノ慈悲ヲ拒ム』
 その声音は、心から不思議そうだった。
『我ラヲ見ヨ。数多ノ屍ヲ一ツトシタ、コノ悍マシキ姿ヲ』
 血濡れた鎧にはいくつもの腕が生え、それぞれに武器を握りしめている。
 前後左右、そして上下。一切の隙の見当たらぬ、重い威圧感を放っていた。
『我ラハ、カツテ多数デアッタ。ソシテ闇ニ抗オウトシ、結局ハ敗北シタ。
 ソノ結果ガ、"コレ"ダ。"コレ"コソガ、足掻イタ者ノ末路デアルト知レ』
 かつて、領主に反逆した勇敢なる騎士団があった。
 しかし吸血鬼の前に屈した戦士達は、その屍すらももてあそばれた。
 血塗られた兜の下に無数の骸を押し込まれ、眷属として使役される。
 オブリビオンとは、いかな生前であれ必ず世界に仇なす存在だとはいえ、
 それでもなお拭いきれぬ苦痛、絶望、そして後悔の色が、存在にこびりつく。
 吸血鬼の悪性によって眷属とされ、あるじの命のもとに働く走狗だとしても。
 否、だからこそか――彼らはあるじに歯向かう愚かさを知るのだから。
 反逆を企てる子らへの殺意は、まさしく彼らなりの"慈悲"だったわけだ。
 ……意味そのものは間違ってはいない。彼らは弱者を救おうとしている。
 ただそのやり方は歪み、行為が孕む矛盾に彼らは気付いていない。
 あるいは、その矛盾をこそ受け入れたがゆえに、こうして狂ったか。

『猟兵ヨ』
 屍の騎士は言った。
『何故、"あるじ"ラノ支配ニ抗オウトスル。
 何故、意味ノナイ救済ヲ何度モ繰リ返ス。
 何故、人々ニ必要ノナイ希望ヲ与エヨウトスル』
 違う。騎士達の発言は歪んでいる。そもそもの前提が間違っている。
 ゆえに眷属と堕した彼らを、説き伏せることは不可能だろう。
 彼らの騎士道は、吸血鬼の支配を前提としてこそ成り立つのだから。
『影ハ光ナクシテ生マレヌ。ソシテ、光ガ強ケレバ、影モマタ濃クナル。
 貴様ラノ行イハ、イズレ訪レル絶望ノ影ヲ、イタズラニ強メテイルダケダ』
 ゆえに、と騎士は云う。
『我ラガ殺シテヤルノダ。コレ以上ノ苦シミヲ味ワイ、絶望スル前ニ。
 只人ガドレホド抗オウト、最早コノ世界ノ滅ビヲ止メラレナイノダカラ』
 殺意がぶわりと膨れ上がり、戦場を圧した。
『猟兵ヨ、今一度問オウ』
 過去の呪いが、いま、牙を剥く。
『――何故、自ラ苦シミヲ選ブノダ?』
 問われたならば、今こそ答えを示すときだろう。
 抗う意味、諦めない意味、そして過去を乗り越える決意を。
 さもなくば、歪んだ慈悲は君達に終焉をもたらす。

●プレイング受付期間
『2020年 03/11(火)23:59前後』までとします。
 
●追記:第二章の特殊ルール
 直接判定に関わるものではありませんが、ちょっとした特殊要素があります。
 それは、鮮血の騎士――ブラッドスピットナイツにどう答えるかです。
 彼らは一度吸血鬼に挑みそして敗北した者達の末路であり、
 文字通り骨身にしみて吸血鬼どもの強大さを理解しています。
 そんな彼らに対し、"なぜこの世界の闇に抗い続けるのか"を、
 ぜひとも皆様のプレイングで示してみてください。
(もちろん、そんな大義や御託は関係ない、という方もいらっしゃるでしょう)
 皆さんの答えは敵だけでなく、それを見守る子供達への答えともなります。
 今後彼らが人類砦の叛逆者として戦い続けられるかは、それ次第かもしれません。
 
●プレイング受付期間の訂正
 正しくは03/11(水)です。曜日が間違っていました。申し訳ありません。
ウィルフレッド・ラグナイト
この世界には理不尽が多すぎます
人々は懸命に生きているのに、戯れに死を齎されることだってある
私は……それが許せない

あの子たちは『希望』です
一人一人は小さな灯火かもしれませんが、集まればそれは大きな灯りとなる
いつかはこの世界すら照らす
絶対に死なせたりはしません
未来を決めるのは、あの子たち自身!
故に私はあの子たちの剣となり、盾となるのです!

ゼファーに呼びかけてUC竜憑依:ZEPHYRを発動
右手に誓剣を、左手に白竜風槍を持って飛翔し
攻撃は見切りや残像で回避しつつ接敵し、こちらの攻撃を与える

この道は、闇夜だけの道ではない
夜明けへの道だと信じ、私もゼファーも前を見て進みます

それが私の誓い、私の道なのだから



「……ゼファー!」
 ウィルフレッド・ラグナイトの高らかな声に応じ、白竜は哭いた。
 その身は渦巻く旋風に変わり、ウィルフレッドを帳のように覆い隠す。
 一瞬あと、風はその身に吸い込まれ――青年の背には、逞しき龍の翼があった。
 白竜憑依による一心同体。
 右手に剣を、左手に龍槍を持ち、それをこともなげに振るう膂力をも持つ。
 ウィルフレッドが持ち得る、希望の守護騎士としてのハレの姿である。
「行きます――!」
 ウィルフレッドは背中の翼を羽ばたかせ、風を後に引きながら駆ける。
 十メートル以上の間合いを一息に詰めての、斬撃と刺突。疾い。
 しかし敵もさるもの、異形の腕が蠢き同時攻撃をいなし、弾く!
「くっ!」
『タカガ一人ト一体ガ融合シタトコロデ、一ツトナッタ我ラニハ勝テヌ』
「いいえ、そんなことはない。……たとえそうだとしても!」
 ウィルフレッドは反撃の首刎ね刃を羽ばたきによって後方回避し回り込む。
 背後を取ろうと言うのだ。異形の騎士は、その策も見抜いていた。
 それでも、ウィルフレッドは攻めるのをやめない。何故だ?
「私も、ゼファーも! ここで負けるわけには、いかないんですっ!!」
『ソウシテ不要ナ苦シミヲ求メ、ヨリ凄惨ナ絶望ヲ味ワウカ。愚カナリ』
「いいえ、いいえ! 私達が、決して諦めようとしないのは……!」
 がん、がぎんっ!!
 刃と刃が拮抗し、盾が槍を弾き、メイスが脇腹ギリギリをすり抜ける。
 まるで精鋭騎士団を同時に相手取っているような緊張があった。
 血塗られた鎧を貫くことは出来ず、傷はウィルフレッドの方にのみ増えていく。
 それでも彼は止まらぬ。彼に憑依したゼファーもまた、同様に。
「たしかにこの世界は理不尽が多すぎる。人々は懸命に生きているのに、
 オブリビオンの戯れで死をもたらされる……私は、それが許せない!」
『抗ウコトナク受ケ容レレバイイノダ』
「違うッ!」
 がいんっ!! ――ウィルフレッドは二つの剣を一つの刃で防いだ。
 その死角から繰り出された短刀の一撃は、槍によって受け止めている。
「あの子達は……こんな昏い世界をいつかは照らしてくれるはずの"希望"です。
 たとえ今は小さな灯火だとしても、集まればそれは大きな灯りとなる!」
『ソノ輝キコソガ、絶望ノ闇ヲ深メルノダ!』
「違う……違います! 未来を決めるのは、あなたでも私でもないッ!」
 騎士はウィルフレッドを両断しようとし、そして驚愕した。
 切り裂かれたのは本体ではない――風が生み出した残像! 本体は背後か!
「あの子達が、自らの意思でその未来を決められるようになるために!
 この道が、闇夜だけでなく夜明けへと繋がってくれていると信じる!」
 誓いの剣が、星のように煌めいた。
 斬撃が血塗られた鎧を切り裂き、異形の肉体に突き刺さる。
「そしてあの子達の剣となり盾となる。それが、私の誓い……私の道なのです!」
『ヌ、ゥウウ……ッ!!』
 巨体がたたらを踏んだ。数でまさる異形の騎士を、誓いの騎士は圧している。
 広がる竜の翼と雄々しき背中は、見守る子供達の瞳に鮮烈に刻まれた。
 どんなおとぎ話の騎士よりも、勇ましくそして立派なものとして。

成功 🔵​🔵​🔴​

イリーツァ・ウーツェ
近頃の敵は、能く話す事だ
問われたならば応えよう
そして殺す

私が雛を守る理由は約束だからだ
約定は、約定が故に果たされる
他には何も必要無い

私は、何も否定しない
否定するだけの"我"を、私は持たない
貴様の言い分は聞いた
ならば、貴様は斯く在れば良い
誰に憚る必要も無い

空を飛ぼうと、怪馬だろうと
関係の無い事だ
飛び道具は打返す
近接攻撃は身で受け止めて
腕を掴み、喉元を喰い破る
楔に当たらなければ、私は死なない

私は雛を助けない
外敵からは守る
羽搏くかは、自身で決める事
乾涸びて死ぬのなら、其れも選択

私は何も否定しない
好きに生きれば良い



『来タレ、"すれいぷにる"ヨ! 我ラノ足トナリ空ヲ懸ケヨ!』
 雷鳴の如き嘶き。現れたるは、只者ならざる多脚を備えた怪馬である。
 異形の騎士は、その鈍重そうな見た目にそぐわぬ軽やかさで鞍にまたがると、
 身構えるイリーツァ・ウーツェめがけ急滑空し、戦いを挑んだ!
『無益ナ抵抗ヲ続ケル貴様ラニ、滅ビヲ乗リ越エタ我ラハ斃セヌッ!
 ソシテ、貴様ラモ知ルノダ。真ニ強大ナル者ニハ、抗エナイノダト!!』
「…………」
 異形の腕が射掛けた矢の数々を、イリーツァは神速の拳撃で弾いた。
 まともに喰らえば、分厚い鋼の壁をも貫通するだろう呪力を籠めた鏃である。
 その程度、竜が拳を握りしめれば鋼をも上回り、速度が加われば意味はない。
『骸ノ海ニ沈ミテ、己ノ愚行ヲ呪エ、猟兵ッ!!』
「――近頃の敵は」
『……!?』
「……能く話すことだ」
 そして速度を乗せた刃の数々が、イリーツァの体を貫いたはず、だった。
 しかし騎士は……正しくは騎士達は……それぞれの意識がすべて驚愕した。
 無数の刃に貫かれ、穿たれ、裂かれてなお、イリーツァは死んでいない。
 痛みすらも感じていないかのように、平然と己の体を鞘とし、止めたのだ。
「貴様は、問うたな。ならば応えよう」
『グ……!!』
 騎士は肉を斬り裂いて刃の数々を開放し、振り回し、骨を叩き斬った。
 さらに怪馬の蹄が、メイスのようにイリーツァの頭部を砕く。
 顔の半分が脳ごと吹き飛んでなお、イリーツァは死んでいない。
 そして離脱――出来ない。怪馬の巨体を、龍の腕が掴んでいた!
「私が"雛"を守る理由。それは、約束だからだ」
『ナニ……』
「約定は、約定がゆえに果たされる――他には、何も、必要ない」
 かあっと頬が裂け拓かれた顎が、怪馬の肉を食い散らかした。
 異形の騎士の体が、がくんと傾ぐ。血まみれの牙が、その喉元を狙う。

 べしゃり、という肉の潰される音と、
 めきり、という鋼の砕ける音が、同時に響いた。
『グッ……オ、オオオオ……ッ!?』
 血を撒き散らし、異形の騎士は地面に引きずり降ろされそして塗れる。
『信念モ覚悟モナク、怪物ノ如キ力ヲ振ルウナドト……!
 貴様ハ畜生ニモ劣ル、否、コノ世界ノ神々ニモ劣ル愚物ナリ!』
「好きに囀れ。私は何も否定しない。そう在ればいい」
 残骸を吐き捨て、人の姿をした何かは言った。
 騎士は恐怖した。この者は言葉を喋るが、我と呼ぶべきものが存在しない。
 嵐は嵐であるがゆえに吹きすさぶし、
 炎は炎であるがゆえに総てを燃やす。
 イリーツァのあり方は、つまりそういうものだった。
『化ケ物メ……!!』
「――私は外敵から雛を守る。そこからどうするかは自身できめることだ」
 生きようが、死のうが、羽ばたこうが、諦めようが、それもまた選択の結果。
 イリーツァは斟酌しない。考慮しない。ただ自動的に護り、敵を殺す。
 だからこそ彼は純然たる暴力でいられる。
 だからこそ彼は――ヒトのことを、どこまでも理解できない。

 嵐は嵐であるがゆえに吹きすさび、炎は炎であるがゆえに焼き尽くす。
 子供達の震えは、抗いようのない天災を見るが如しだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

マーロン・サンダーバード
ナンセンスな質問だぜ!
人が死ぬ時ってのは心が死んだ時ってな
だから心を強く保つためにちょっとした希望でも必要なのさ
何よりこの世界には太陽が必要で、俺は太陽の使者サンダーバードだからな!
それにあるじだって?選挙で決めてないトップのことなんて知ったこっちゃないぜ

武器いっぱい持ってる相手にゃ【武器落とし】を狙うのがセオリーってもんだよな
愛銃「ライジングサン」で露骨に足を狙い隙を見て手を撃ちぬく!
そして闇から来たお前には太陽の力を知ってもらおうか!
鎧の隙間狙ってナイフを投げてフェイントかけつつダッシュで急接近
【零距離射撃】の「太陽の黄金銃」でヘッドショットだ!
兜の硬さは知らねえが太陽の力は無敵だぜ!



 BLAM、BLAM、BLAMNッ!!
 大気を切り裂くマズルフラッシュ、それを受けてなお世界は昏く重たい闇だ。
 マーロン・サンダーバードは、それを払おうとするたびにうんざりする。
 どうしたって吸血鬼どもは、世界をこんな風に変えちまったのだ。
 いくら太陽が嫌いだからって、これじゃあくだらないジョークも言えやしない。
 だからこの世界にあるとき、マーロンは普段以上に陽気にあろうとする。
 心すらも覆わんとする、あまりにも巨大な闇に抗うために。
 弾丸の狙いは足――いや、手。二重のフェイントをかけた連続射撃だ。
 無数の腕を持つ異形の騎士はそれを見切り、躱し、弾き、いなす。
 雷鳴の如き嘶きとともに降り立った怪馬が、その巨体を浚い空に舞った。
「おおっと、乗り物のご登場たぁ派手だねえ! 俺もタンデムさせてくれよ!
 ……聞いちゃいないか? ったく、ジョークのわかんねえ騎士はイヤだね!」
 マーロンは大げさに肩をすくめながら、槌のごとき蹄の打ち下ろしを避けた。
 バック転で大きく距離を取りながら、さらに三度の射撃。剣が弾く。
『戯言ヲ囀ルダケデハ、我ガ刃ヲ退カセルコトハ出来ヌゾ』
「――そうかい。だったら俺はこう言ってやるさ。ナンセンス! ってな」
 両者は大きく間合いを取って身構え、そしてサンダーバードは言った。
「ヒトが死ぬ時は心が死んだ時って言うだろ? ……知らない? まあいいさ。
 だから心を強くため、ちょっとした希望でも必要なのさ。特にこの世界じゃね」
『ソレガ最終的ニハ絶望ヲ深メルト、何故ワカラナイ?』
「分かりたくもないね! おたく、俺の名を知らないのかい?」
 黄金の銃を構え、仮面の男は笑った。
「俺は太陽の使者サンダーバード! この世界に太陽の光を齎すヒーローさ!」
『否。コノ世界ニ太陽ハ要ラヌ。"あるじ"ラガソウ定メタ』
「"あるじ"ねぇ――選挙で決めてないトップなんざ知ったこっちゃないぜ!!」
 BLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAM!!
 目が眩むほどの銃光が闇を劈き、怪馬の逃げるべき余剰空間を奪った。
 本体狙いの弾丸を、異形の腕が盾と刃で弾く――それこそが狙っていた間隙。
 サンダーバードは滑るように地を駆け……黄金銃を敵めがけ投げ捨てた!?
「闇から来たお前に、知ってもらおうじゃあないか! 太陽の力を!」
『見エ透イテイルゾ、ソノ程度ノ小細工ナド!!』
 異形の騎士は知っていた。マーロンの狙いが鎧の隙間であることを。
 ゆえに彼の振るったナイフを小刀で弾き、刃を返して首を刎ねるつもりだった。
 ――しかし、それすらもフェイントだ。
 小刀がナイフを弾いた時、マーロンは異形の巨体を蹴って飛び越えていた。
 異形の騎士に死角は存在しない。だが意識の間隙は存在する。
 そしてこの場合は相手にとって残酷なことに、その姿を目視してしまった。
 己の意志を"乗り越え"て、弓なりに翔ぶヒーローの姿を。
 仮面を着けていてもわかる――皮肉めいた、嘲るような笑み。
 吸い込まれるように落ちてくる、放り投げられたはずの黄金銃。
「GOLDEN GUN――それが、銃(こいつ)の銘さ」
 BLAMN!!
 夜闇に差し込む暁の光のような、鮮烈なるヘッドショット!
 血塗られた兜ごと、その弾丸は異形の頭部を貫き爆散せしめたのである!

成功 🔵​🔵​🔴​

アウレリア・フルブライト
成程。彼らの走狗と変ぜられるに際し、大切なものを捨てさせられたと見えます。
何故かと?簡単なことです、彼らに『自由』と『安寧』を。吸血鬼共に理不尽に奪われたものを取り返す、その手助けをする。それが貴族たる身の務めであり、人間たる身の願いです。
何より、我が物顔した吸血鬼共が気に食わない。そんな処ですわ。

まあ、御託で止まる敵ではございませんし戦闘ですわね。
拳の間合いまで肉薄、【鎧砕き】の拳を撃ち込んで参りましょう。
敵の攻撃はその間合いでも有効なものを優先的に防御。
大技を仕掛けてくるならば、それに合わせて重ね一徹を【カウンター】気味に武器持つ腕へ叩き込み破壊を狙います。



 敵の問いかけは、戦いの意義を問うようなものではない。
 たとえ満足する答えを返したとて――そんなことはありえないだろうが――戦いは止まるまい。
 アウレリア・フルブライトは直感的に理解していた。
 そして、それは正しい。何故ならば敵はオブリビオンなのだから。
 互いに天敵同士であるがゆえに衝突は避けられず、敵は非道を重ねている。
 あちらとしても、人類砦を守護する猟兵を見逃しはすまい。
「そのうえであえて御託を吐くとは、ずいぶん悠長なことでございますわねッ!」
 ガッ、ガッ、ガガガガガッ!!
 閃光のような速度で放たれた拳と、血に塗れた刃が幾度も打ち合う。
 鋼と鋼とが激突するたびに火花が刃を照らし、いくつもの屍を浮かばせた。
『タダ強キ者如キガ、強大ナル我ラノ"あるじ"ニ敵ウトデモ?』
「あら、私達があなたがたのご主人様に勝つのをお望みなのかしら?
 たとえそうであったとして、あなたがたに認められるつもりはございませんのよ!」
 アウレリアの拳が速度を増す。一撃一撃が、達人でも反応しがたい乱打だ。
『否ナリ。ソンナ貴様ラヲ、此処デ終ワラセテヤル。ソレガ慈悲ナノダ』
「……そういうところですわ。相手を劣ったものと見下し、勝手を述べる。
 あなたがただって、そうして奴らに大切なものを捨てさせられたのでしょうに!」
 アウレリアは吐き捨てた。
 そうだ、そうとも、だからこそ彼女は戦うのだ。
 貴族として、ヒトの上に立つ者として、吸血鬼のやり方は許容できない。
 慈悲とは与えるものであり奪うものではなく、
 そもそも他者が目下の者を枠組みにはめる時点で逸脱している。
 なにより――。
「私は! 我が物顔した吸血鬼どもが気に食わないのですわッ!!」
 パパパパパッ! と、瞬くような速度の拳が、振るわれた刃を弾いた。
 異形の腕がこじ開けられ、ガードがガラ空きとなる。狙いは胴の中心だ。
 いかに敵が無数の脳を持ち融合させられた存在であろうと、
 その核を貫けば殺せる。さもなくば、どのみち大ダメージは必至。
 そのためにはさらに一歩、己の命を懸ける覚悟で踏み込まねばならぬ。
 ――アウレリアは思い返す。この世界で行われたいくつもの暴虐を。
 それに抗おうとした子供達の姿を。灯火を奪おうとしたあの軍勢を。
 許せぬ。
 許してはならぬ!
 己の命をチップに、奴らの野望を打ち砕けるというのならば!
「絶対不壊などこの世に有り得ない、そして晴れない闇もありませんわッ!」
 アウレリアは踏み込んだ! 放たれたのは右ストレート!
 その時には騎士が幅広の剣を横薙ぎに振るい、彼女の首を狙っている。
 アウレリアは、防御を捨てた。そして身を深くかがめて体重を拳に乗せる。
 血濡れたブレストプレートと拳がぶつかり合う。反発力を膂力で殺す。
 二撃を一撃の瞬間に籠めるという矛盾。時をも欺く信念の"重ね一徹"!
『――ガハッッ!!』
 悠久に流れる大河が岩をも砕いて海に注がれるように、鋼が砕けた!
 異形の騎士は血濡れたその身よりもなお鮮烈なる動脈血を吐き零し、後退!
「自由と安寧。喜びと希望――これ以上、あなた達には奪わせはしませんわ」
 砕けた拳を握りしめ、乙女はファイティングポーズを取る。
 その背には、揺らめくような怒りのオーラが煮え立っていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

セシリア・サヴェージ
抗うことが、生き続けることが苦しみだと言うのですか?
断じて違います。吸血鬼の支配、それこそが苦しみ。
人は誰しもが希望を持ち明日を夢見て自由に生きる権利がある。
あなたたちも嘗てはそれを護るために立ち向かったのではないのですか?
私は光に寄り添い支える影でありたい。強き光を護る影に。

UC【闇の解放】を発動。護るために、今こそこの命を燃やそう!
呪いの一撃には【武器受け】【呪詛耐性】で防御。この身に宿す暗黒の呪い以上のものなどあるものか。
その大盾も鎧をも砕く【鎧砕き】の一撃を全身全霊の力を以って叩き込んでやろう。



 騎士のはしくれとして、在りし日の彼らの苦痛と絶望を思うと胸が痛む。
 義憤と無力感が湧き上がり、奥歯を砕けるほどに噛み締めた。
 嗚呼、血濡れて異形と成り果ててなお、その誇りを歪められてなお。
 否、だからこそ……かつての彼らの高潔さは、ありありと見て取れた。
 それを踏みにじり、穢し、あまつさえ異形に仕立て上げる吸血鬼どもの愚行!
 代償を支払わせねばならぬ。そのためにはここで屈してはならないのだ。
 煮え立つような怒りはくろぐろと胸の内で燃え上がり、そして現実に顕現した。
「……暗黒よ、この命を捧げよう。私にすべてを護る力を――そして」
 そして、誇り高き騎士達の残骸に、真に慈悲たる刃を下す力を。
 願いは闇を凝らせ、セシリア・サヴェージはまったき漆黒の化身となる。
 燃え上がる焔の如くに暗黒はゆらめき、その命を薪として荒ぶるのだ。
『ソノ姿ガ、貴様ノ諦観ト絶望ノ証ナリ。闇デ闇ヲ払ウナド、不可能デアル』
「いいえ。あなた達が言ったのです――光が影を生むのだと。
 であれば濃き影は光の存在を証明し、そして際立たせるのですよ」
 音も風もなく、闇の化身が滑るように地を走った。
 騎士どもは数多の剣と盾を構えこれを迎え撃つ……激突!
 大気が銅鑼を鳴らしたように揺らぎ、両者は退く。否、反発力を両足で相殺。
 ざりざりと地面を削りながら減速し両者突撃、刃が激突。激突、激突!
「苦しみとは、抗い生き続けることではない。吸血鬼の支配こそがその温床。
 それを打ち破り平穏を手に入れようとする行為は、無駄などではありません」
『ヒトニ海ハ枯ラセヌ。山ヲ失クスコトモ、空ヲ削ルコトモ出来ハシナイ。
 我ラノ"あるじ"ハ天地ニ等シイ強大ナ物ナレバ、叶イモ敵イモシナイゾ』
「一度屈したあなた達に、私達を、彼らの力を測れなどしません……!」
 刃よりも鋭き言葉をぶつけ合い、ふたりの騎士は拮抗し撃ち続けた。
「ヒトは誰しもが希望を持ち、明日を夢見て自由に生きる権利があります」
『"あるじ"ハソレヲ認メヌ』
「だからこそあなた達は、そのありふれた権利を護ろうとしたのでしょう?
 だからこそ立ち向かったのではないのですか? その誇りはどこへやったのです!」
『ヌウ……ッ!!』
 血濡れた闇と、絶望を否定する誇り高き闇。
 戦いの趨勢は徐々に、燃え上がるような暗黒に傾きつつあった。
「私は光に寄り添い支える影でありたい。強き光を護る影に」
『光ノ存在ソノモノガ誤リナノダ……!』
「それを否だと、私はこの命を燃やして証明してみましょう」
 がぎんっ!! 破城槌の如き一撃が、異形の騎士の巨体を怯ませた。
 攻め込む。たとえ敵が断頭の一撃を放ったところでセシリアは止まらぬ。
 壁の如くに大盾が立ちふさがったとして、いかなる傷を負ったとしても。
 絶望に屈しぬという強き覚悟と意志。異形の騎士はその闇に呑まれた!
『莫迦ナ……ッ!!』
「――私達はあなた達の屍を越えて征きましょう。真なる解放を為すために」
 死神の鎌じみた斬撃が、異形の巨体を斜めにばっさりと切り裂く。
 鎧も、盾も、歪められた誇りすらも断ち切って。
 それはまるで、時には神をも殺す、短くも力強きヒトの生を示すかのようだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

アルトリウス・セレスタイト
演説が仕舞いなら退場しろ
誰が殺そうと被害者視点では同じ
吸血鬼の悪趣味も変わらん
第一お前は終わったものだ

魔眼・封絶で拘束
行動と能力発露を封じる魔眼故、捕らえればユーベルコードも霧散する

『刻真』で過程を無限加速し即座に
行使の瞬間を『再帰』で無限循環し、常に新たな拘束を掛け続ける多重拘束で封殺
動けば砦の者を殺しに行くのは目に見えている
身動ぎの一つもさせてやらん
これ以上喚かれるのも五月蠅い

封じたら打撃で始末
『励起』で個体能力を上昇
『解放』での魔力放出と『討滅』の死の原理を乗せ鎧の上から砕く

万一届く自身へ攻撃は『明鏡』『天冥』で捌き返撃
全行程で必要魔力は『超克』により“外”から汲み上げる

※アドリブ歓迎



 青い燐光が瞬いた――と、思った時にはもう遅い。
 異形の騎士は、その全身を鎖で雁字搦めにされたかのように感じた。
 錯覚ではない。なにせ、彼らはぴくりとも身動ぎ出来なくなってしまったのだから。
『コ、レ、ハ……!?』
「演説は終いか? ならば、早々に退場しろ」
 魔眼の力によってその身を封じたアルトリウス・セレスタイトが言う。
『ヌウウ……!!』
「お前が何を喚こうが、殺される側の視点から見れば同じことだ。
 吸血鬼の悪趣味も変わることなく――そしてお前は"終わったもの"だ」
 アルトリウスに、オブリビオンの長口上と付き合うような趣味はない。
 敵は殺す。どんな信念を持っていようがそこに変わりはない。
 ましてやそんな勝手な理屈で、他者を殺めて慈悲とするような輩に、
 いまさらどうして流儀に付き合ってやらねばならないというのだ?
 世界の根源より術式を練り上げる彼の行為は淡々としていて、処刑そのものだった。
 それは確かに強い。圧倒的なまでの圧力だった。
 だが子供達は恐れた――敵だけでなく、アルトリウス自身をも。
「これ以上喚かれるのも五月蝿い、ここで終わらせてやる」
『否、否ナリ……我ラニハ、騎士ノ誇リガ……!!』
「終わったモノが、えらそうにおべんちゃらを抜かすな」
 アルトリウスが駆けた。ガラ空きの胴に針のごときストレートを叩き込む。
 鋼がひしゃげ肉と骨が砕ける感触。敵の巨体が吹き飛んだ。
 アルトリウスは逃さずに追いかける。ほぼ一方的な断罪行為。

 子供達は畏れではなく、恐れながらそれを見つめていた。
 赤子が、不安を感じて泣き続けていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

リリア・オルトラン
結都殿(f01056)と共に

答えてやろう!
貴様らの言う苦しみが、吸血鬼どもに抗うことを指すならば!

そも吸血鬼とは、己が享楽のために他者を甚振り悪辣非道な行為を繰り返す愚か者どもだ!そんな愚者どもに屈服するなど、それこそが苦しみに他ならん!
人の魂は自由であるべき。踏みつけ、踏みにじられ、従う道など誰が選べよう!抗う事は苦しみなどではない。己が己たるため立ち上がる、尊い行為なのだ!

貴様らの末路には同情しよう。だが、味わった苦しみとやらは結果として味わったもの!己が選んだ道の先にあったものだ。
選ぶ道すら摘もうとする貴様らに、負ける訳にはいかーん!!

全力魔法の【怨焔】を喰らえ!気合を入れていくぞ!


桜・結都
リリアさん/f01253 と

私の気持ちも、リリアさんと同じくです
支配を享受することは、己を曲げて生きること
失うもののある人がその道を選んだとしても、
責めることはできませんが……
抗う意志のある人々を、希望を、費やして良い道理はありません

あなた方のような苦しみは、この先も繰り返されることでしょう
けれど永遠ではありません
人々が希望を絶やさず紡いでゆければ、
苦しみの元凶たる吸血鬼はいずれいなくなる
私達が、そうするのです

霊符に破魔の力を籠め、攻撃に備え障壁を作りましょう
錫杖を振るい全力魔法で雷を落とします
隙が出来れば後は彼女に託しましょう

あなた達の苦しみこそ、もう終わってよいのですよ



 縛めを脱した異形の騎士の攻撃は、まさに苛烈の一語に尽きた。
『何故ダ! 何故諦メヌ! 無意味ナ行為ト知ッテ、尚!!』
 怒りだ。怒りだけが彼らを突き動かしている。
 無益な苦しみを、自ら進んで味わおうとする者達への怒り。
 悪辣と退廃に塗れた吸血鬼どもとはまた異なる、しかし邪悪な思考であった。
 なにせヤツらにとっては、すべては無駄な行いなのである。
 吸血鬼に勝てる者など存在しない、という傲慢かつ虚無的な思考が前提の、
 そして人間を一個の対等な生命として認めない支配者然としたもの。
 喩えるならそれは、人間が驕り高ぶって万物の支配者を気取ったかのような、
 ままならない動物に向ける怒りめいた、つまりはそういう類のものだった。

「わからぬか? わからぬならば答えてやろう!」
 稲妻じみた乱撃をいなしながら、リリア・オルトランが言った。
「貴様らの言う苦しみが、吸血鬼どもに抗うことを指すのならば、それこそ否!
 真の苦しみとは抵抗ではなく、屈服によってこそ生まれるものなのだぞ!」
『何ダト……? 支配ヲ受ケ容レ、滅ビヲ甘受スルコトガ苦シイトイウノカ?』
「当然だとも! なあ、そうであろう結都殿!」
 霊符を飛礫のように投げつけ、障壁によってリリアを支援する桜・結都。
 つかの間の振り返りに彼もまた頷き、錫杖で飛来する矢を切り払った。
「私の気持ちも、リリアさんと同じです。あなた達は認められません。
 ……支配を享受することは、己を曲げて生きることと同じなのですから」
『ソノ、詰マラヌ自尊心ノ果テガ、無様ナ死ナノダゾ!!』
「違います。いいえむしろ、悪逆に屈することこそが精神の死と言っていい」
 結都は精一杯に力強く戦士を睨みつけた。恐怖を押し殺す。
「失うもののある人が、それを護るために膝を突くならば仕方ないでしょう。
 けれど抗う意志のある人々を、希望を、費やしていい道理にはなりません」
「然り! ここには希望がある。貴様らの悪逆に抗おうとする意志がな!」
 体格差と攻撃回数で遥かに劣るリリアの攻撃が、騎士らのそれを凌駕する。
 霊符の力を味方につけ、血まみれの鋼を切り裂く魔法剣の一撃!
『ヌウ……ッ!』
「人の魂は自由であるべき。踏みつけ、踏み躙られ、抗う道など誰が選べよう!
 ――彼らはそれを選んだのだ。誰でもなく自らの意志で。それは愚行に非ず!」
『否……否、否、否ッ!! 貴様ラノ理屈ハ、タダノエゴダ!!
 ソノ過程ノ苦シミト、結局ハ勝テナイトイウ現実ヲ無視シタ夢想デアル!』
「昨日まではそうだったでしょうね」
 結都が言った。彼はあらん限りの霊力を練り上げ、符を束ね錫杖に纏わせた。
 そして霊気の刃を発生させ、リリアの隣を過ぎ、さらに駆ける!
「――ですが、明日からは違います。私達が、彼らが現実にするのですから!」
 がぎぃっ!! と、破魔の光が邪悪なるものを打ち据えた。
「私達が終わらせなければいけない苦しみがあるとすれば、それは――」
 さらに一撃。錆びついた刃が砕け散る。
「誰でもない。あなた達の苦しみこそ、もう終わってよいのですよ」
『我ラヲ、滅ボスト? ソレガ救イダト!? 否、否、否……!!』
「……わかっていように。そも貴様らは、抗った結果そうなったのであろう。
 抵抗こそが苦しみを生むのならば、その産物の貴様らも同じ苦しみを抱えている」
 リリアは瞼を伏せた。オブリビオンとはかくも歪んでしまうものなのか。
 たとえ生前のそれらが高潔であれなんであれ、過去の残骸とはそういうものだ。
 存在自体が「現在」と「未来」に対する癌であるという前提が存在し、
 だからこそ斯様に矛盾した論理のもとに突き動かされてしまう。
 悲しみがあった。憐れみがあった。少女はそれを振り捨てる。
 そして、同じ歳かやや下の少年達を振り返り、晴れやかに笑った。
「見ているがよい少年達よ! 貴様らの選んだ答えは、間違っていないのだと!
 そこに苦しみがあったとしても、選んだことに意味があるのだと!!」
 子供達は息を呑んだ。その言葉は鼓舞であり救済であり、そして激励だった。
「征くぞ結都殿! 双撃にて決めてくれよう!」
「はい――あなたに託します」
 結都は刃としていた霊力を雷に変え、高く強く熱く練り上げた。
 そして錫杖の石突で地面を叩けば……KRAAAAAAACK!!
『ガアアッ!!』
 雷撃が闇を劈き、騎士を討つ!
「選ぶ道すら摘もうとする貴様らに、負けるわけにはいかーんッ!!」
 そして少女は翔ぶ。その身と刃に、紅蓮の炎を纏って。
 罪業を贖い、裁きの炎を燃やす紅蓮の刃が――血濡れた異形を、切り裂く!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アレクシス・ミラ
【双星】
アドリブ◎

怒りはまだある
彼らだけではない
騎士道をそう歪ませた吸血鬼達にもだ

奴らに敗ければどうなるかは身を以て知っている
…それでも、
僕は戦う事を、奪われたものを取り戻す事を選んだ
光を道標にして
一つ取り戻した今も…誓いと共にそれは変わらない
誰も奪われることのない未来を皆で生きたいんだ

セリオス
未来は…運命は変えられる事を
僕達がその証明だと、あの子達に見せよう

惹き付けるように光を剣に纏わせ大立ち回りを
強烈な一撃を察知したらセリオスの前へ立ち
【君との約束】を防御重視に
呪詛も耐え抜く覚悟と共に盾で防ぐ
…過去も弱さへの後悔も忘れていない
それも含めて、僕が在る
貴殿らに…何を言われようとも!
セリオス!!


セリオス・アリス
【双星】
アドリブ◎
何故何故うるせぇな
んなもん決まってる
生きてるからだ
俺が、生きて
そう望むからだ
てめぇらがどう思おうと勝手だが
こっちにまで押し付けてくんじゃねぇよ
…つーか、生きなきゃ望みも何もねぇだろ

ああ、アレス
今日この日
この先に続く俺たちの運命を、切り開いてやろうぜ

歌で身体強化して戦場を駆ける
過去が呪詛を投げかけても
知るかと強く睨み付け
昔も、街の為なんて
偉そうな事を思った訳じゃない
殺してでも生きてて欲しかった
俺の意思でソレを選んだ
決めるのは自分だ
それ以外があってたまるかよ

ただ、望みのままに
歌声に応えろ

守るアレスのその後ろ
歌で呼び起こした魔力を剣に力を溜め【彗星剣】
全力のでかい一撃をくれてやる!



 吸血鬼に抗うことは怖くない。
 もしも恐怖するものがあるとすれば、それは抵抗ではなく「敗北」だ。
 吸血鬼に敗けるということ。それが何を意味するのか。
 ……敗者に対し、奴らが「どうする」かを、彼らはよく知っている。
 そう、骨身に沁みるほどに――だからこそ彼らは戦う。
 アレクシス・ミラも、セリオス・アリスも、だからこそ戦うのだ。
 彼らは敗北を恐れる。しかしそれは、ただ単に吸血鬼の力に斃れることではない。
 倒れて立ち上がることすら出来ず、その意志すらも屈することを云うのだ。

 あれなる騎士らが、かつての叛逆者達をひとつどころにまとめたモノならば。
 対するセリオスとアレクシスは、まるで一心同体のように淀みなく動いていた。
 歌によって力を増したセリオスが頭上を取り、
 それを撃ち落とそうとすれば、セリオスが一気呵成の打ち込みを掛ける。
 五つの脳と無数の腕を持つ異形の騎士団をして、たった二人が抗いがたい強敵。
 まさに万軍をも凌駕するであろう、怒涛かつ華麗の攻防だ。
『成程、貴様ラガ練達歴戦ノ使イ手デアルコトハ、我ラガ認メヨウ』
「へっ、戦いの最中に敵を褒めるってか? 変なとこで騎士らしいじゃねえか!」
『ダガ――ソレスラモ、我ラノ"あるじ"ハ叩キ潰スト知レ』
「言われるまでもないさ。僕らはそれをよく知っているッ!」
 剣と剣、あるいは槍と刃が打ち合うたび、悲鳴のような金切り音がした。
 ちらつく火花は夜空を照らす星々めいていて、ともすれば幻想的ですらある。
 しかし。その戦いを見守る子供達は、ロマンティックとは別の意味で息を呑む。
 肉眼では追いきれないほどの攻防、せめぎ合う力と力の恐ろしさに。
 そう、一進一退。敵味方の戦力差は完全に拮抗していたのだ。
『ソレホドノ力量アラバ、解ルデアロウ? 我ラノ"あるじ"ノ強大サガ。
 ダノニ、何故抗ウ? 何故、勝テヌト解ッテイル戦イニ自ラ挑ムノダ!』
「何故何故うっせえな! んなもん、決まってるだろうが!!」
 頭上からのセリオスの剣戟。異形の腕が剣を振り上げて防いだ。
 青年は歯噛みし、しかし反発力でぐるぐると回転しながら再跳躍する。
 生じる隙は、アレクシスの撃ち込みが無理矢理に潰す。効率的だが危険な連携。
「僕らは生きている。生きてここにいる! だから戦うことを望むんだ!」
『生コソガ苦シミヲ生ム。死ネバ苦シムコトモ無イ』
「それを言ったら、死んじまったら望みも何もねぇんだよこのボケ野郎ッ!!」
 がぎ、ギャギィッ!! と、怒号の合間に鳴り響く剣戟。
「てめぇらがどう思おうと勝手だが、こっちにまで押し付けてくんじゃねぇよ!
 そうやっててめぇらの裁量で他者を測って救おうとする、そいつこそが!」
「――かつての貴殿らが怒り、抗おうとした吸血鬼の悪性だというのに!」
 ばきぃん! と音を立て、血塗られた刃が砕け散った。
 セリオスはそこに好機を見た。だが彼が攻めるより先にアレクシスが踏み込む。
 ……フェイント! 異形の騎士は死角から獰猛な刺突を繰り出している!
 アレクシスがあえて踏み込み盾によって弾かなかったならば、
 まんまと飛び込んだセリオスは、百舌の早贄めいて串刺しになっていただろう。
『目敏イナ。惜シイ、実ニ惜シイ。貴様ノ名ヲ聞イテオコウ』
「……アレクシス。アレクシス・ミラ」
『騎士アレクシス! 貴様モソウシテ、無益ナ抵抗デ命ヲ捨テルカッ!』
「ぐ……ッ!!」
 二度、三度。巨体に任せた痛烈な剣戟がアレクシスを退かせる。
 ざりざりと地を削りながら両足で踏みしめ、全身を痺れさせる痛みに抗う。
「……そうとも。私は、いいや僕は、そうして戦い奪われたものを取り戻してきた。
 僕には誓いがある――誰も奪われることのない未来を作り上げるという誓いが」
「決めるのはてめぇらじゃねえ、俺達だ! 邪魔をするんじゃねぇよ!!」
 セリオスが風となり斬りつけた。大盾がそれをいなし、槍を繰り出す。
 臓物を狙った刺突を風による急制動で辛くも回避、長髪が渦巻くようになびく。
「絶望だ苦しみだ慈悲だ救いだ、てめぇらの事情なんざ知るかッ!!
 俺は、俺の意志で、俺達の意志でこの道を選んだ! あいつらだって同じだ!!」
 その戦いを見守る子供たちにもまた、言葉は浴びせられる。
「人間(おれたち)の選んだ道を! 吸血鬼(てめぇら)が邪魔すんなよ!!」
『貴様トテ、半血デアロウニ――愚カナリ』
「俺を定義するんじゃねぇ!! それが間違ってるってんだッ!」
 ギャギィッ! ――そして両者は間合いを生む。
 騎士どもはその力を練り上げ、破滅的な乱撃を準備していると見て取れた。
 ふたりは荒れた息を整え、視線を交わし、頷きあう。
「やってやろうぜ、アレス。見せてやるんだ、俺達の意志を」
「ああ。……殿は僕が務める。存分にやれ、セリオス!」
『オオオオオオオッ!!』
 大地が爆ぜた。血濡れた異形の騎士は弾丸めいた速度で攻め込む!
 上下左右同時に来たる乱撃! 己の身をも厭わぬ致命的な斬撃の嵐だ!
「過去も弱さへの後悔も、すべては僕を構成するものだ。
 貴殿らに何を言われようとも――僕らは、僕らの道を進む!」
 アレクシスは覚悟とともにその乱撃を受け止めた!
 星の加護がその身を鎧い、呪われた刃の侵食に抵抗する――そして!
「てめぇらが夜闇で世界を覆うなら――星の輝きで、斬り裂いてやるぜ」
 彗星の如き剣が、アレクシスを飛び越え真上から降り注いだ。
 異形の巨体を貫くまっすぐな刃、その軌跡はまさに流れ星のように。
 息を呑んで見守っていた子供達は、きらきらと輝くその煌めきに目を奪われた。
 それは、この世界に存在を許されぬ、希望という名の輝きだったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リア・ファル
神楽耶さん(f15297)と

SPD
まるっとお任せ
真の姿

魔剣『ヌァザ』を空に掲げ、答える

――銀河の皇帝がその力で
――未来の怪人が欲望の解放で
――乱世の覇王がその武を以て
――悪逆のヴィランが怨恨の全てで
――迷宮の大魔王が希望を喰らい

終焉と絶望を示しても。

ヒトは、ささやかな幸せを願い
理不尽に抗い明日を掴む力がある!

故にボクの答えは変わらない。

「今を生きる誰かの明日の為に!
……それがボクの使命(オーダー)だから!
機動戦艦ティル・ナ・ノーグ、現実空間へマテリアライズ!」

「神楽耶さん、怪馬はボクが引き受ける!
主砲、次元波動砲へ切り替え! 電影スコープオープン!」
UC【今を生きる誰かの明日のために】発射!


穂結・神楽耶
リア様/f04685と

あなた方だってそうだったでしょう?
理不尽に摘み取られるものを嘆き、
明日への希望を掴み取ろうとした。
ひとにはいつだって、理不尽に抗おうとする力がある。
この砦も、そんな答えのひとつです。

今を生きる誰かが明日を願うなら、
その道を祝ぐことこそ我らが使命。
ひとが胸を張って幸せになる世界の為に、力を尽くすのです。

故に咲き誇れ、【深緋華裂】――
リア様の主砲が怪馬を退けるから、それに気を取られる間に接近。
弄ばれたおぞましき身体を焼却する破魔の炎を差し上げます。
…どうぞ、眠って下さい。
選んだ苦しみが報われるように、
少しずつ、良き明日を築いて行きますから。



 スペースシップワールドでは、滅びたはずの皇帝が最強の力を示した。
 キマイラフューチャーでは、歯止めなき怪人が欲望を解き放とうとした。
 サムライエンパイアでは、魔王と仇名される男が世を乱れさせようとした。
 ヒーローズアースでは、最弱の男が最強となり、過去で世界を覆おうとした。
 アルダワ魔法学園では、迷宮の大魔王が希望を、そして全てを喰らおうとした。
 オブリビオンの始原(フォーミュラ)たる強大なモノどもは、
 揃って終焉を宣言し、そして絶望と暴威をもって世界を呑まんとした。
 五度だ。五度。その悪逆を、猟兵達は抗い、叩き潰し、そして勝利してきた。
 ……もしも薄氷を踏むような勝利が、為し得なかったのなら?
 そのあり得たifの可能性は、このダークセイヴァーを見ていればよくわかる。
 何もかもが闇に包まれ、
 人々は希望を失い、
 過去の残骸どもは嗤笑して君臨する。
 まさしく破滅(カタストロフ)。あってはならぬ世界の絶望。
 この世界も所詮、薄皮一枚のところで踏みとどまっているのに過ぎない。

 だが。
「数多の世界での勝利は、ボクらだけでは為し得なかった」
 金色に染まりし髪を夜風になびかせて、リア・ファルは言った。
 高らかに掲げし魔剣、その銘をヌァザ。煌めく刃はまさに銀腕のよう。
「その世界に住まう人々がボクらを信じ、そしてともに戦ってくれたからこそ、
 ボクらは強大な敵に抗い、そして最後には勝利して、世界を守れたんだ」
 スペースシップワールドでは、いくつもの船が名乗りを上げた。
 キマイラフューチャーでは、陽気な獣人達が声援と激励を投げた。
 サムライエンパイアでは、決死の覚悟を決めた兵達があとに続いた。
 ヒーローズアースでは、勇気あるヒーローとヴィランがともに戦った。
 アルダワ魔法学園では、かつて滅びし蒸気勇者の霊が猟兵を後押しした。
 揃って猟兵を鼓舞し、そして希望と勇気をもって世界を守らんとした。
 五度だ。五度。その絶望を、残骸達は失い、叩き潰され、そして敗北してきた。
 ……だからこそリアは信じられる。いつかこの世界も救えるのだと。
 猟兵達が名付けたその名の通りに、猟兵と人々の希望が世界を救うのだと。
「ヒトには、ささやかな幸せを願い、理不尽に抗い明日を掴む力がある。
 だからボクの答えは変わらない。いつだって、誰が相手だって」
 ――今を生きる、誰かの明日のために。
 それこそが己の使命(オーダー)。永遠に貫き謳われるべき人間讃歌!
「機動戦艦ティル・ナ・ノーグ、現実世界へマテリアライズ!」
 そして魔剣が次元を切り裂き、雲をも払う巨船の砲口があらわとなった。

『解ラヌカ。ソコマデシテ尚』
 対する騎士が浮かべたのは、悲嘆、そして諦観であった。
『積ミ上ゲタ過去ガ多ケレバ多イホド、ソノ喜ビト笑顔ガアレバアルホドニ、
 最終的ニソレヲ失ウ絶望ハ深マル。光ガソノママニ、闇ニ変ワルノダト!』
「――それをわかっているのならば、あなたがただってそうだったのでしょう?」
 ぽつぽつと燃え上がる炎に包まれながら、穂結・神楽耶が言った。
「理不尽に摘み取られるものを嘆き、明日への希望を掴み取ろうとした。
 ……そして敗北し、絶望に塗れ屈してしまい、残骸となったのだとしても」
 燃え上がる炎は破魔の輝き。邪悪と呪詛を洗う神なる焔。
「いいえ、だからこそ……あなたがたは、希望のもたらす光の尊さを知っている。
 でなければ、どうして慈悲などと嘯けましょう。どうして救いと言えましょう。
 ……"何故解らぬ"と嘆くのは、あなたがたではなくわたくしどもの方です」
 神楽耶は双眸に悲しみの色を浮かべた。オブリビオンの救われなさに。
 過去であるということは、その時点で現在と未来への敵対を示す。
 どうしようもなく穢され歪んでしまった騎士達の高貴を、彼女は嘆いた。
『……我ラヲ、憐レムトイウノカ』
「ええ。そして敗北したあなたがたが絶望と悲嘆を慈悲と謳うのならば、
 わたくし達は言いましょう。ひとが持つ、理不尽に抗う力の気高さを」
『ヒトノ弱サニ目ヲ瞑ルコトノ、何ガ希望カ!!』
「――その眩さに目を灼かれてしまったのも、また、あなたがたでございますよ」
 滅浄の焔が咲き誇る。その刃はまさに、編み上げられた焔の剣だ。
 主の御使いたる天使の如き威容と、その背後に現実化した砲口の大きさに、
 騎士どもは畏れを抱いた。おそらくそれは、呪われた者の抵抗だった。
「神楽耶さん、一緒に行くよ! 今を生きる誰かの明日のために!」
「ええ。――どうぞ、眠ってください。もう、あなたがたの手は要りません」
 機動戦艦の砲口が光を生み出した。邪悪を払う不敗の光を。
 騎士どもは雷鳴の嘶きとともに怪馬を呼ばい、その光を呑もうとする。
 されど。呪詛を凝り固めたかの如き怪馬は消えて失せ、光が血と汚れを雪いだ。
『オオオオオオ……!!』
「――わたくしたちは少しずつ、良き明日を築いてまいります」
 慈悲深き刀神の刃が、苦しみ悶える異形の騎士を斬り、焼き払う。
 その眦からひとつ涙がこぼれ――そして、焔に呑まれて、露と消えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フランチェスカ・ヴァレンタイン
あなた方もかつては未来を生きるために抗ったのでしょうに
たとえ世界が闇に覆われようともこうして希望の灯火が尽きること無く生まれる意味、少しは思い出してみては?

空中機動から斧槍を叩き付け、別の腕が繰り出す攻撃を見切って羽ばたきと身の捻りでアクロバティックに躱し
カウンターで蹴りやら零距離砲撃やらを浴びせてヒット&アウェイで鎧砕きと防御無視の攻撃を積み重ねて

問答への答えは、UCの水晶群への乱れ撃ち、その光の乱反射が生み出す無影の原理
――数多の輝きは影を生むどころかそれを打ち消す、と。…ご存知でした?

そのまま全方位からの集束砲撃をお見舞いすると致しましょう…!
夜の帳はいずれ、暁によって明けるものですよ?



『……マダダ』
 その身を裂かれ灼かれてなお、異形たる騎士は敗北を認めなかった。
 否、"たかが二度三度身を灼かれた程度"で、その異形に滅びは許されない。
 なにせ彼らは本来、かつて多数であったはずのモノ達。
 誇り高き騎士団の、朽ちゆく命を粘土細工めいて練り上げたもの。
 だからこそ、命もまた無数……つまりは"殺し足りない"のである。

 そして騎士は顔をあげ、振り下ろされた斧槍の一撃を大盾で防いだ。
 がぎんっ!! という鋼が砕けたかと見紛うほどの轟音、飛び離れる攻防。
 フランチェスカ・ヴァレンタインは敵の反応速度に舌を巻きながらも、
 再びの急降下攻撃のため、空中に幻惑的なバーニア機動を描いた。
「あなたがたも、かつては未来を生きるために抗ったのでしょうに……。
 たとえ世界が闇に覆われようとも、こうして希望の灯火が生まれるのですよ?」
『ソレコソガ、ヒトノ持ツ悪性デアリ愚カサナノダ』
「"愚かさ"ですか――残念ですわね、そんな大切なことをも忘れてしまうなんて」
 それがオブリビオンとして再生するということ――解っていても浮かばれない。
 フランチェスカは落胆の嘆息とともに、再びハルバードで仕掛けた。
 しかし、敵もやられているばかりではない。今度の反撃は防御でなくカウンター!
 衝撃の瞬間に、異形の多腕による斬撃と刺突を同時に繰り出したのだ!
「手癖が悪いですわね……ッ」
 フランチェスカは振り下ろすと見えたハルバードを羽ばたきで引き寄せ、
 アクロバティックに回避しながら背後を取った。勢いを乗せての回し蹴り。
 だが騎士に死角はない。大盾のシールドバッシュが蹴撃と激突!
 両者は大きく飛び離れ、フランチェスカはさらに牽制砲撃で敵の回避余剰空間を削ぐ。
 勢いを殺してはならない。制空権は彼女の方にあるのだ。
 急加速Gに歯を食いしばりながら、フランチェスカは三度仕掛けた!
『影闇ニ呑マレ、己ノ愚行ヲ贖エ……!!』
「甘いですわね。"輝きが影を消す"こともあるのですよ?」
『何ッ!?』
 その時、大地から生えたのは無数のエーテル結晶である。
 フランチェスカは騎士そのものではなく、結晶群めがけ砲撃を放った。
 光は鏡面めいたクリスタルに反射され、あるべき影を消し去ってしまう。
 そして跳弾のように乱反射する砲撃の光――向かう場所は中心にある異形!
『キ、貴様ハ最初カラコレヲ狙ッテ……!!!』
「攻め手に気を取られ、光など大したことはないと高をくくってしまう。
 あなたも所詮、唾棄していたはずの吸血鬼と同じ、ということですわ」
 光に灼かれ悶絶する異形を見下ろし、フランチェスカは言った。
 その曳光は、夜の帳を切り裂く暁のようにまばゆく輝いている――。

成功 🔵​🔵​🔴​

鷲生・嵯泉
抗った末路の其の姿は無残ではある
だが憐みは嘗て支配と戦った騎士への侮辱となろう
なればこそ、迷い無く確実に討ってくれる

何故、だと…?
今も記憶に焼き付く地獄の光景
二度とこんな事が起らぬ様にと願われた
託された願いを果たす為に――そして私自身が其れを望む故に抗い
嘗て何を助ける事も叶わなかったからこそ
何時か闇から脱する為の灯火と――我が意志を其の薪と成す為に戦うのだ
そして志半ばで倒れる事と為ろうとも、私は信じる
――人は生きる事を諦めはせん、と

極限まで集中した第六感と戦闘知識で攻撃軌道を先読みして見切り躱し
多少の傷等覚悟で捻じ伏せ怯みはせん
脚力に怪力加えて一気に接敵し、鎧砕きの斬撃をカウンターで叩き込む



 この左眼には、今もあの地獄めいた光景が焼き付いている。
 焼けた国土。倒れ伏す仲間達。酸鼻たる死臭と耳朶に張り付く阿鼻叫喚。
 忘れるものか。忘れようと願ったところで、忘却の慈悲は己には許されない。
 鷲生・嵯泉はそのことを思い返すたび、はらわたを灼かれ苦しんだ。
 ……怒りだ。復讐への憤怒。虚無となった己を突き動かすのはただそれだけ。
 そして彼は、そのまま死んでもいいと思っていた。
 否――そうあったならば、どれほど幸いだったことだろう。
 だから嵯泉には、堕落した騎士の文言を否定するつもりはなかった。
 理解すら示していたと言ってもいいだろう。だが……。

「人は、生きることを諦めはせん」
 振り下ろされた刃を受け止め、嵯泉は言った。
「どれほどの絶望に塗れ、斯様な闇によって明日を閉ざされたとしても。
 今日ここに生まれたように、闇から脱するための灯火は生まれるのだ」
『……貴様ノ目ニハ、諦観ト虚無ノ暗黒ガ見エルゾ』
「ああ、そうとも。私は彼らのように強くはない……否、"なかった"」
 こんな灰に塗れるようにしてなお、抗おうとしていた子供達を想う。
 未来を信じて突き進むことなど、全てを失った己には不可能だ。
 ……そう思っていた。だがいま、己はそれを護るためにここに立つ。
「騎士よ。私はお前達を哀れみはすまい。それはお前達への侮辱となる」
『…………』
「なればこそ、迷いなき刃にて討つのみ。私に出来るのはそれだけだ。
 ……そうして守り抜いた輝きが、嘗て何も救えなかった私を超えるならば」
 己の体をバネのように縮めて伸ばし、嵯泉は巨大な剣を跳ね除けた。
 隻眼がぎらりと輝く。騎士と剣士の殺意が打ち合い、そして剣士が凌駕した。
「私自身は弱く脆い。しかし私は願いを託された。私もまたそれを望んでいる。
 ゆえに我が意志を薪とし、殺意を燃やそう。そして道を切り開き続けん!」
『愚カナ……! 喪失ノ痛ミヲ知ッテナオ、抗ウカ!!』
「"だからこそ"だ。騎士よ、その歪んだ誇り――絶たせてもらう」
 放たれた斬撃は、傷を厭わず死をも恐れぬ諸刃の刃だった。
 己はかつて全てを失った。国を、友を、仲間を、愛すべき人々を。
 だがいのちがここにある。そしてともに戦う新たな仲間達もまた同じように。
 ならばと男は言う。その背を子らに示し、障害を斬って捨てようと。
 それしか出来ぬからこそ――際涯に至った男は、歯を食いしばり前へ進むのだ。

 託された願いは重荷ではなく、その両足を踏みしめるための錨だ。
 決意と信念を籠めた一撃は、血に塗れた鋼を切り裂き異形を断ち切った。
 まっすぐな……歪みなき、曇りなき凄烈な一撃であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マリー・ハロット
……生きてても、苦しいことや、辛いことばっかりあって、意味もなく死んじゃったりすることばっかりだって、マリーだって知ってるよ。(自分と同じ顔をした同形品。誰かの欲望のために浪費される大量生産品。ショーで殺されたあの子はマリー、欲望のはけ口にされて動かなくなったあの子もマリー……『心臓』をもらって、偶然生き延びたマリーも、同じマリー)
……だけど、死んじゃったらそこで、終わりだよ! 生きてたら、楽しいこと、沢山あるよ! 今はまだ、辛くて、苦しくて、嫌なことばっかりかもしれないけど、生きていれば、ぜったい、たどり着けるよ!
だから、邪魔しないで!
マリーは、みんなで楽しく『生きたい』んだから!!



 生きることは"楽しい"ことばかりではない。
 苦しみ、辛さ、あるいはそんなものもない完全な虚無の如き最期。
 同じ"マリー"達の死に様を、マリー・ハロットは何度も見てきた。
 ショーのメーンどころか、前座のように殺された"マリー"がいた。
 下卑た欲望のはけ口にされ、汚濁に塗れて死んだ"マリー"がいた。
 畜生のように飼いならされ、気まぐれで殺された"マリー"がいた。
 弾除けにされて殺された"マリー"がいた。
 実験台にされて殺された"マリー"がいた。
 "初期動作不良"で死んだ"マリー"がいた。
 自分は同じマリー。ただ心臓をもらえたから生き延びただけのモノ。
 その命だって、明日には尽きてしまうかもしれないのだ。
「……だけど、死んじゃったらそこで、終わりだよ!」
 無邪気な少女は叫んだ。無垢だからこそ、剥ぎ出しの怒りがあった。
 否。おそらくマリーは、それを怒りと定義することすら知るまい。
 それは救いでもあり、哀れでもあった。そうとも、物事は表裏一体なのだ。
 もたらされる死が一面的に救いであったとしても、すべてがそうではない。
 苦しみを断つために命を奪えば、あるべき喜びも喪われるのだから。
「生きてたら楽しいこと、たくさんあるよ! こんな世界だって!!」
『ソレスラモ、最期ニ訪レル絶望ノ呼ビ水ニシカナラヌノダゾ!!』
「"よびみず"とか、むずかしいことマリーわかんない!
 でも、わかるよ――ここで終わったら、それすらもないんだって!」
 だから。
 今はまだ、辛くて、苦しくて、嫌なことばかりだとしても。
 抗うことも出来ず――かつての"マリー"達のように――怯え、震え、
 ただ頭を抱えて救いを待つことしか出来なかったのだとしても。
 子供達は抗おうとした。マリーはそれを当然のことだと思う。
 そんな当たり前を奪おうとする輩は――"楽しくない"。
「だから、邪魔しないで! みんなの、マリーの、生きようとするきもちを!」
『小娘ガ……!!』
「生きたいだけのマリー達を、アナタなんかがジャマするのは、ヤだ!!」
 子供達はそこで知った。
 彼女もまた自分達と同じように、ただ生きようとしているだけなのだと。
 狂気と高揚を以て殺戮を振りまく、地獄の道化師めいた狂人などではない。
 たとえそれが一面であったとしても――彼女もまた、世界に抗おうとする者なのだと。
 眼差しには、恐れではなく同じ怒りと勇気があった。
 マリーはその時、誰かに背中を押されるということを、おそらくはじめて知ったのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

ルーナ・ユーディコット
故郷を滅ぼしたオブリビオンとか
あの日何も救いが顕れなかったこと
一人生き残った己の無力
今ここにある微かな希望、人類砦
過去も今も一騎に頭の中で綯交ぜになって気持ち悪い
本当に、なんでこんな苦しんでいるのか
戦いに来ない選択もあったのに

それは真の姿で応えよう

絶望的な状況の世界で
なぜ私がここで戦う事を選ぶのか
それは私に出来なかった事を為そうという人に
希望は確かにここにあると示す為
そして、この世界は滅びると謳う存在が気に食わないから
私は戦う
それを阻むものがここに居ると

私の明日への想いと共に輝く、赤い焔は
何れ貴方達が迎える夜明けの光
過去からの呪いで止められるか試せばいい
鎧ごと叩き切って魅せる



 こんなに苦しいのなら、はじめからここへ来なければよかったのかもしれない。
 猟兵が戦いに赴くのは強制ではなく、どんな形であれ当人の意志に委ねられる。
 それこそ、たとえその戦いが世界の行く末を委ねた戦争であろうと、
 戦いたくないと願うならば行かねばよい……猟兵にはそれが許される。
 すべての戦いは自由意志のもとに行われるものであり、
 だからこそ彼らはその正着に責任を持ち、力を振るえるのだ。
 ……本当に、ここに来なければよかったのだろう。
 そうすればこんなに苦しい思いを抱かずに済んで、
 きっと胸の中がぐしゃぐしゃになるような気持ちにならなくてよかった。
「――けれどもしもここに来なかったのなら」
 黒くぬばたまに染まった髪で、ルーナ・ユーディコットは言った。
「戦うことを選ばなかったなら、きっと私は一生後悔していたと思う。
 ……あなたの言う"慈悲"が、苦しみとともに喜びすらも奪い去るように」
 この世界は絶望に瀕している。
 すべては闇に落ちかけ、吸血鬼どもは笑いながら悪性を謳い、
 人類はただ奪われ虐げられ、苦しめられ嗚咽と悲嘆に塗れている。
 それでもここに、抗おうとする猟兵達に呼応した者達がいる。
 若く、弱く、だとしても。
「私は気に入らない。この世界は滅びるのだと謳う、お前のような存在が。
 私は戦い示したい。それを阻むものが、ここに居るのだと、証明したい」
『……モソモソノ抵抗ガ、結局ハ潰エタトシタラ、貴様ハドウスル?』
「それは、潰えてから考えるよ」
 ルーナはまっすぐに異形を睨んだ。
 そのシルエットは、光指す朝焼けのように赤い炎で覆われていく。
「どのみちここで斃れるお前に、私達の明日を取りざたされる謂れはないッ!」
『忌マワシキ光! 呑ミコンデクレルッ!!』
 血塗られた魔剣がいくつも鋒を向ける。ルーナはまっすぐに戦いを挑んだ!
 なびく髪は太陽の如き輝きに燃え上がり、つかの間この世界に光をもたらす。
 星のように一瞬の、けれどもたしかに眩く煌めく希望という光を!

 だから子らよ、救われなかった私と違い、救いを得られた子供達よ。
 私はあなた達と同じで、けれども違うもの。
 私はあなた達が羨ましくて、気持ち悪くて、悔しくて、悲しい。
 だからここに示そう。言葉ではなくいのちの輝きをもって。
 過去の呪いをも払い、鋼とともに異形を叩き斬る我が刃を!
「私は――皆と、明日を切り拓くッ!!」
 決意と信念の一撃が、呪われた刃ごと異形の巨体を真っ二つに裂いた。
 傷口から迸るのは血でも呪詛でもなく、すべてを癒す太陽の光。
 剣狼の牙は、たかが絶望ごときに折られることはない……!

大成功 🔵​🔵​🔵​

フェルト・フィルファーデン
何故……?哀れなものね。そこまで耄碌してしまったのかしら。
その手に握る武器は唯殺すため?
その身に纏う鎧は、大きな盾は己が身を守るため?
その鍛え抜かれた身体は、研ぎ澄まされたその技は、一体誰のためのものだというの!

教えてあげるわ、かつて騎士だった者よ。ここに、救うべき民がいるからよ!
あの子達は生きている。希望を捨てずに、今も抗おうと!
そんな無辜の民を助け、救うのが騎士である者の務めよ!そんな当たり前の事も忘れてしまったの……?
アナタがどれほど無念であったか、わたしは知らない。推し量る事しか出来ない。だからもう、交す言葉は無いのよ。


……必ず、敵は取るわ。
わたしの騎士人形よ。この者に安らかなる死を!



「その手に握る武器は、ただ敵を殺すためのものだというの?
 その身に纏う鎧は、大きな盾は己が身を護るため?
 その鍛え抜かれた体は、研ぎ澄まされたその技は、一体誰のためのものだというの!」
 フェルト・フィルファーデンは、怒りと侮蔑をもって叫んだ。
 騎士は血塗られた刃で人形達の剣を払い、
 錆びた鎧と大盾で繰り出される槍を防ぎ、
 積み重ねた技量と巨体で、からくり達を圧倒する。
『嘗テハ人ノ為デアッタ。シカシテソレハ、スベテ過去ナリ!』
「そうして吸血鬼に跪いて走狗と化し、なおも騎士の慈悲を謳う。
 ふざけているわ。アナタ達は、その存在そのものが騎士への侮辱よ!」
 騎士とは、正道を歩む者とは、けしてそんな唾棄すべきものではない。
 フェルトは騎士ならず、されど騎士として仕える者達を知る。
 凋落した異形の騎士の在りようは、それ自体がフェルトの民を侮辱していた。
 ゆえに貴きものは怒る。配下の怒りを己の怒りとして燃え上がらせる!
「何故と問うならば、教えてあげるわ。かつて騎士だった者達よ。
 ここに救うべき民がいる。生きて、希望を捨てずに抗おうとする者達が!
 思い出しなさい! そんな無辜の民を助け、救うのが騎士の務めでしょう!?」
『――ダカラコソ、我ラハ慈悲ヲ以テ殺スノダ』
 オブリビオンと猟兵は天敵同士であり、決して相容れない者同士。
 いかなるクレヴァスよりも深く広い断絶に、フェルトは恐怖すら感じた。
 ――だがついで湧き上がったのは、怒りであり、そして嘆きと悲しみだった。
「そう。アナタ達は、そんな当たり前のことも忘れてしまったのね」
 ならば、どうする。
 ――同じように相対すべし。
 彼奴らが歪んだ論理によって慈悲を謳い刃を向けるならば。
 真に"慈悲深き刃"とはなんたるかを、この命を以て証明しよう。
「アナタがどれほど無念であったか、わたしは知らない。推し量るしかないわ。
 ……だから、もう言葉はいらない。眠りなさい、安らかなる死のもとに……」
『絡繰ノ人形如キデ、我ラノ騎士道ヲ阻メルモノカッ!!』
 騎士どもには自負と誇りがあった。血によって穢れた誇りが。
 されどフィルファーデンの騎士らの放つ輝きは、それをも上回った。
 他ならぬ姫君の貴き血が、白銀たる鎧と刃を輝かせていたのだから!
 偽りの騎士。造られた人形。たかがそれだけの、それだけであるはずのモノども。
 されど血塗られた刃は白銀の剣に折られ、鎧は断たれ盾は穿たれる。
 異形の騎士どもは畏れた。そしてなぜか、そこに安堵と喜びを感じた。
 ――噫、我らは滅びた残骸。されどここに正しき騎士道はあり。
 仕えるに足る貴き者もまた、報い歩もうとしている。
 あるいはそれは、騎士どもに遺された最期の善性だったのやもしれぬ。
 プラチナの剣が、呪われたる異形を切り裂き、また一つの死をもたらした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミソラ・フジミネ
はあ
あんたらがそうなったからこいつらもそうなるって、だから殺してやるっておかしいでしょ
こいつらがあんたらより強くなる可能性も吸血鬼と戦って勝つ未来もあんだろ
自分は未来のお得意様が勝つ方に賭けてるんでガンガン足掻きます
忠告聞けなくてごめんなさいね

バイクに乗ったままクイックドロウ
数、クソ多いし腕狙いで
余裕で片手運転してられる内はガンガン撃ちます

撃てる弾が無くなったら頃合いすね
自分の右腕(ききうで)、あんたらにあげますよ
本格的に片手運転だな
配達員兼ドライバーの利き腕ですよ。無くなったらクソ不便なんすから

じゃ、吹っ飛べ



 死からも蘇った――蘇ってしまった――ミソラ・フジミネにとって、
 いまさら恐れるものなどありはしない。敵も、災害も、絶望ですらも。
 それを上から目線でどうこう言われては、"配達人"の矜持に傷がつこう。
 彼は相手の主張を一顧だにせず、ただバイクのエンジンを蒸かした。
 BLAMBLAMBLAM、BRATATATATATATA!!
 大口径拳銃の銃弾、そしてアサルトライフルのバースト射撃。
 そのどちらも、大量に生えた腕は血塗られた武器で斬り捨ててしまう。
「はあ。口数も腕もクソ多い。面倒っすね、あんたら」
『我ラハ無敵ノ騎士団ナリ。飛ビ道具如キニドウニカ出来ルモノカ!』
「吸血鬼に負けといて無敵もクソもねーだろ、ふざけんな」
 BRATATATATATATA!!
「自分は未来のお得意様が勝つ方に賭けてんですよ、だからガンガン足掻きます。
 あんたらの忠告、聞いてやれなくてごめんなさいね。で、そのまま死んどけ」
 ガガガガガッ!! と、ひび割れた大地を戦車バイクのタイヤが刻む。
 土煙を舞い上げながら大きく蛇行し、あるべき隙を探そうとするミソラ。
 しかし敵は多腕かつ異形、前後左右上下あらゆるところに隙はない。
 そして弾幕を切り裂き、異形の巨体はミサイルじみてミソラに猛追した!
『ソノ程度ノ信念デ、我ラノ慈悲ヲ否定シ穢スナドト、恥ヲ知レ!
 貴様如キニ退クホド、我ラハ甘クナシ。散々ニ引キ裂イテクレルワッ!!』
 "あるじ"への侮辱と抵抗への怒りを燃やし、異形の騎士は剣を突き出した。
 そして死人の体をバラバラに引き裂いた――はず、だった。

 しかし、ミソラは、最初からそれを見越していたのだ。
 彼は戦車バイクを乗り捨て、むしろ自ら騎士に肉薄していた。
 そして右腕でその頭をしっかりと握りしめ、淡々と言う。
「だったら自分の利き腕、あんたらにあげますよ」
『ナ――』
「配達員兼ドライバーの利き腕ですよ。無くなったらクソ不便なんすから」
 死からも蘇ったデッドマンにとって、喪失は恐れではない。
 ただ煩わしさと、それ以上に。
「"これから"がある人間のことを、、テメェらの都合でグダグダ言う。
 自分、そういうクソみたいな連中のこと、クソ嫌いなんすよね」
 外道への怒りがある。
「――じゃ、吹っ飛べ」

 稲妻が地上で爆ぜたかのような、凄まじい轟音と閃光が駆け抜けた。
 その威力は異形を討ち、頭部を爆散せしめ吹き飛ばしたのである。
 片腕を失い半ば黒焦げになったミソラが、ごろごろと地面を転がる。
 そして彼は、左手でこれみよがしに中指を突き立ててみせた。
 配達員は、ナメられたらおしまいなのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

スキアファール・イリャルギ
何故か?
苦しみの無い生なんて、無いから

誰かの言い成りの生は
心を殺した生は
死んでるのと同じだ

無様でも抗って足掻き
己の心が望む儘に進む
『今』を生きる為
"しなかった後悔"をしない為

その行動に意味や価値が無くても良い
愚かでも希望が無くても良い
『死は救済』なんて聞き飽きた言葉には縋らない
そう言ってる死人が苦しんだ儘なんて説得力無いですよ

――力比べと行きましょう
あなたと私、どちらがより重い代償を支払えるか

私は短命の怪奇人間
生きる為、多くのことを諦めて怪奇を受け入れた
未来に希望を持ってるわけじゃない
希望を持つ彼らを羨ましく思う

だからこそ――見守りたいと思うのかもしれない

苦痛、絶望、後悔……
全部、尽きてしまえ



「――力比べといきましょう」
 頭部を再生させた異形の騎士に対し、スキアファール・イリャルギは言った。
『力比ベダト……?』
「あなた達と私、どちらがより重い代償を支払えるか。その勝負です。
 ……騎士の慈悲とやらを振るいたいのでしょう? ここで退けますか?」
 スキアファールのその言葉は、歪み穢されてなお騎士を自称する者らにとって、
 いわば手袋を投げつけられたのと同等の侮辱であり、挑戦であった。
 異形の巨体にすさまじい膂力がみなぎり、怒気が波動のように彼を撃つ。
『……イイダロウ。我ラノコノ業苦ニ、貴様ガ勝ルトイウナラ』
「……死んだはずのあなた達がいまなお苦しんだままじゃ、説得力もないですよ。
 "死は救済"なんて聞き飽きた言葉を否定して、あの子達はいまも戦っている」
 だから、自分もまた、ここで退くつもりなどない。
 相容れぬふたりの殺意がぶつかりあい、大気が張り詰め緊張が訪れた。
 ふたりの周囲の空間は、ゼリーのように凝り、どろりと濁っている。

 ――そもそも、生きるのに苦しみは必然のもの、むしろ必要なものなのだ。
 奴らの言葉を借りるならば、影なくして光は生まれない。
 苦しみがあるからこそ喜びがあり、そこに選択の意味が生まれる。
 何を苦しみかと思い、何を喜び、そして求め歩み続けるか。
 それは、生きる当人が選び決めること。他者が斟酌することではない。
 ましてやそれを勝手な枠組みにはめ込み測るなど愚の骨頂。
 ……思考すらも止めた生は、ある意味で死の虚無にすら劣るのだから。

「私もある意味あなた達と同じです」
 張り詰める緊張の中で、スキアファールが言った。
 身の裡よりのたうつ蛇めいた業火が溢れ、己を灼く。
 否、いつだって己は灼かれ続けている。後悔と苦痛の焔に。
 けれどもこの痛みは、苦しみは――自分を構成する一部なのだ。
 たとえそれが、己の命を狭め、諦めた未来は輝いて見えるのだとしても。
「多くを諦め怪奇(げんじつ)を受け容れ、そして未来の希望を失った。
 ……羨ましいんですよ、あの子達が。だから、見守りたいと思うのかもしれない」
『…………』
「形はどうあれ、救おうとするあなた達と、似ていると思いませんか」
『……ソレヲ思ッテ尚、我ラヲ阻ム――ナラバ我ラハ、貴様ニ慈悲ヲ齎ソウッ!!』
 騎士が仕掛けた。前後左右の死角を潰した全方位からの同時乱撃。
 剣・槍・弓・槌・盾、ありとあらゆる武器が同時に襲いかかる。
 スキアファールは――。
「……あなたの苦しみも」
 拳を握りしめ、
「私の後悔も、絶望も」
 焔を纏い、
「全部、尽きてしまえばいい――!!」
 ただまっすぐに、鋼の巨体をめがけて業火の拳を叩きつけた。

 破砕音が響き渡る。
『ガハァッ!!』
 呪われた剣は届くことなく、巨体は焔に苛まれながら吹き飛んだ。
 全身をおびただしい傷で覆った男は、拳を突き出したままの姿勢である。
「後悔を認めちまった人に、後悔しないために生きる誰かは倒せませんよ。
 ……私だって、"しなかった後悔"をしないために、こうして生きてるんですから」
 その瞳によぎるのは哀切、憐憫、そして――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鹿忍・由紀
何故なぜ何故って、図体のデカいガキみたいだね
納得する答えはまだ見つからない?

退屈そうな態度でナイフを手で遊ぶ
距離を詰めすぎないよう気怠く見えるステップで
攻撃の直撃は避けるよう立ち回る

希望とか救済とか、生前から相当夢見がちだったんだろうか
俺はそーいうの拘らない性質でね
死にたくないし、どうせなら楽しく過ごしたい
それだけだよ

聞いたって満足出来やしないんなら聞かなきゃ良いのに
いつか納得出来る答えが見つかるだなんて思ってるなら
やっぱり随分と夢見がちだな
無表情のまま内心ひとりごち

不意を狙って影繰で串刺しに
慈悲深い騎士様はお優しいね
アンタも“救済”したげるよ
言葉を真似ただけでそこに慈悲なんてないのだけれど



 希望。絶望。慈悲。救済。
 ――どれも等しくくだらない。鹿忍・由紀にとっては無価値である。
 いや、あるいは人々の謳うように、そこには価値があるのだろう。
 いのちを懸けるに値し、たましいを燃やすに足る価値とやらが。
 あいにく、自分はそれを感じ取ることが出来ない。
 言葉で理解したとしても、こころを震わせることが出来ない。
 多分、それは人々からすれば、とても悲しく哀れなことなのだろう。
 ――どうでもいい話だ。
 希望とやらで腹が膨れるか?
 絶望とやらで面倒はなくなるか?
 否。断じて否。何を謳い求めようが、結局日は昇り、落ちて、また昇る。
 それに比べれば、ゴミのような飯でも腹に貯まるぶんまだマシだ。

 他者から見れば閃光のように見える刹那の中、ナイフを振るい由紀は思う。
 死にたくないと願うことは、そんなに悲しいことなのだろうか。
 どうせなら楽しくと思うことは、本当に虚無のようなのか?
 誰だって生きている。そして満たされた生を送りたいものだ。
 希望だ、喜びだ、宝石のようなきれいな言葉でそれを着飾るのと、
 絶望だ、苦しみだ、汚濁の如き言葉で穢そうとするのも、
 結局どちらも、生に寄与しないただの遊び、おふざけのようなものじゃないか。
 どのみち満足できない答えを求めて問いかけるのが、馬鹿らしく思える。
 生を希求する自分が、そんなふざけた敵に終わらせられるなど、御免だ。
 だから嵐めいて吹きすさぶ乱撃を見切り、躱し、ナイフを振るう。
(やっぱりずいぶんと夢見がちだな――ご苦労なことだ)
 無表情のまま内心でひとりごち、フェイントを織り交ぜて魔力を瞳から放った。
『ナント抜ケ殻ノ如キ眼差シ。貴様ハ絶望スラモ知ラヌカ。哀レナ!』
 慈悲深い騎士様とやらの侮蔑は、妙に腹に据えかねた。
「敵をも見下して慈しむなんざ、アンタらは随分とお優しいね。
 ――だったら、アンタも"救済"したげるよ。死は救い、なんだろ?」
『ガハ……ッ!!』
 視線越しに伝わった魔力が影を揺らめかせ、闇の使徒をずたずたに串刺しにした。
 達成感などない。怒りもない。悲しみもない。
 結局何を喚こうが――ほら、負けてしまえばそこでおしまいだ。
「俺は、夢を見るタイプじゃないんだ」
 手持ち無沙汰にもてあそばれていたナイフが、喉元を斬り裂いた。
 噴き出す血が頬にこびりつき、男は鬱陶しげにソレを拭った。

成功 🔵​🔵​🔴​

カイム・クローバー
大層な御託や正義は無い。俺は『便利屋』だ。依頼されればゴミ掃除ぐらいはするさ。――そう、丁度アンタらみたいなゴミだ。

魔剣を担いだまま、対峙。
腕が多いな、鎧を着込む時に随分不便そうだ、と要らぬ心配の一つでも。
【残像】に【見切り】を併用して、呪いを込めた一撃ってやつを躱していくぜ。鈍重そうな野郎だが、手数と防御力はそれなりのようだ。
持ってる大盾は騎士の誇りか何かかい?ああ、返答は別にいらねぇ。
叩き斬るぜ、その大盾。【残像】を残して攻撃を誘い、刀身に紫雷の【属性攻撃】を纏わせて跳躍からのUC。

そーいえば、一応、理由あったわ。
気に入らねぇヤツをぶちのめす(親指を下に)それが俺の戦う理由さ…利己的だろ?



 カイム・クローバーに、御大層な大義名分や主義主張なんてものはない。
 世界を救うとかどうとか、希望がどうたらとか、
 そういう暑苦しい台詞は、彼のスタイルではなかった。
 彼なりに言うならば"肩が凝る"といったところか。
 たとえ相手が魔王だろうがなんだろうが、カイムは己を貫く。
 救いだのなんだのは、あとに残されたただの結果でしかないのである。

 ……魔剣を担ぐカイムと騎士の間に、極限的な緊張感が張り詰めていた。
 動けば、やられる。予測される敵の力量に、カイムは内心舌を巻いた。
 こんな騎士達を傀儡にせしめる吸血鬼どもは、なるほどすこぶる強いのだろう。
 そのことが恐ろしくもあり……だがカイムは、笑っていた。
「どうした。来ないのかい旦那。アンタの言う"慈悲"とやらを俺にくれよ」
 じりじりと間合いを詰めながら、カイムは挑発した。
 ……敵もまた、彼の油断ならぬ腕前を即座に見抜き、警戒している。
 まるで西部劇の早撃ち勝負だ。カイムは内心で冗談を思い、笑った。
 便利屋Black Jackに、大層な御託や正義はない。
 依頼されればゴミ掃除ぐらいはやってやろう――特に、こういうゴミならば。
 カイム・クローバーはお題目や大義名分では動かない。
 だからこそ、彼が動くときは、命すらも簡単に懸けるのだ。
『……貴様如キデハ、我ラノ信念ノ鎧ハ貫ケヌ』
「試してみるかい? その大盾で俺の刃を防げるかどうか」
 ばちりと刀身に紫雷がまといつく。カイムはぐっと腰を落とした。
「――くだらねぇな。子供を殺す騎士の誇りなんざッ!!」
 そして跳んだ。異形の騎士は無数の腕でまったく同時に攻撃を繰り出す!
 だが見よ。カイムは魔力を爆ぜさせ、空中で不可思議な加速を生み出した。
 そして一瞬速く敵の間合いに飛び込み……刃を! 振り下ろす!
 血塗られた剣が貫いたのは残像! そしてカイムの魔剣は……KRAAASH!!
『莫迦ナ!?』
「アンタらみたいな連中はいつもそう言いやがるな!」
 大盾を叩き割り、そして鎧ごと異形の巨体をばっさりと斬り裂いた!
 たたらを踏む外道に対し、カイムはこれみよがしに言ってみせる。
「そーいえば、一応、理由あったわ――俺の戦う理由は、簡単さ」
 親指を下に向け、タフな男は笑った。
「気に入らねぇヤツをぶちのめす、ただそれだけさ。……"利己的"だろ?」
 カイム・クローバーに、掲げて自慢するような正義はない。
 しかしそれでも便利屋は、ありふれた絶望や外道行為を許しはしない。
 だからこそ、彼は輝くように瑞々しく、まっすぐと己を貫き続けているのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。知りたいなら教えてあげる。その絶望に曇った眼を見開いて、とくと見よ。
私が闘う理由。そして貴方達が忘れたものを…。

騎士達の魂を吸収して祈りを捧げUCを発動し、
全身を覆う呪詛を大鎌に収束して武器改造する

…聞け、戦場に倒れし闇に堕ちた者共よ!
その魂にまだ騎士の誓いが刻まれているならば…!
今一度、誰が為に闘う事を望むならば…!
我が声に応えよ!汝らの願い、この私が聞き届けよう…!

限界突破した呪力を溜めた大鎌を怪力任せになぎ払い、
闇のオーラで防御を貫く闇属性攻撃の斬撃を放つ

…私は、死んでいった人達の想いを背負って此処にいる。
次の一撃に全霊を賭して打ち込みなさい。
貴方達の絶望は、この私が打ち砕く…!



 リーヴァルディ・カーライルの全身を、おびただしい数の霊魂が覆う。
 呪いだ。生者に対する呪い。世界に対する呪い。怨嗟の渦。
 ともすれば術者にすらも牙を剥く悪意の本流に、リーヴァルディは抗う。
「……聞け、戦場に倒れし闇に堕ちた者どもよ!」
 呪いが反響し彼女の魂をも穢そうとする。されど少女は抗う。
「その魂に、まだ、騎士の誓いが刻まれているならば……!
 今一度! 誰がために戦うことを望むのならば……!」
 ……ぴたりと、怨嗟の絶叫が止んだ。
「我が声に応えよ。そして願え。汝らの恨みではなく、怨みでもなく、願いを!
 この私がそれを聞き届けよう。そして――必ずや、叶えてみせる……!」
 ……その声は、言葉は、怨みに塗れた闇の魂を救った。
 いまや呪詛は彼女を蝕む毒ではなく、ただ一意のもとに集いし力だ。

 すなわち、破邪を。
 誤った騎士の穢れを打ち払い、我らのような亡者を生まぬために。
 絶望を否定し、喪われべからざる希望を護るために。今こそ力を!
『死スラモ冒涜スルカ、コノ愚カ者メガッ!!』
「それはこちらの台詞だ、絶望に曇った騎士。私は冒涜などしない」
 リーヴァルディはぎらりと輝くほどに双眸を見開き、大鎌を振るった。
 怒りの剣を、槍を、死者の魂纏いし大鎌は否定し、退かせる!
『何ダト!?』
「私は、死んでいった人達の思いを背負ってここにいる。
 踏みにじるのではなく、明日へ進むための糧として力とした。
 ……ただ未来を否定し、何もかもを奪おうとするあなた達とは違う……!」
 ゆえに希望を忘却した者どもよ、見るがいい。
 死者の願い――生者を前に進ませようとするその力の意味を。
 闇に屈さぬ魂の輝きが、大鎌を昏く雄々しく輝かせた!
「あなた達の絶望は、この私が打ち砕く……ッ!」
『ホザケェエエエッ!!』
 騎士どもの呪いを籠めた劇的な一撃が叩き込まれた。
 リーヴァルディはその呪いをも刃にて喰らい、応報の一撃を放つ!
 怒り、嘆き、悲しみ、決意――拒絶と踏破の意志を籠めた、必殺の一撃。
 それは穢れた鎧をも断ち切り、異形の巨体に癒せぬ傷をもたらすのだ……!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎

別にあたし、そんな御大層な目的とか理由とかのために戦ってるわけじゃないのよねぇ。
依頼ってのと…我こそ絶対者でございとばかりに頭の上でふんぞり返ってる輩が気に食わない、ってのはあるけれど。

重装騎兵に頭上を取られる、ってのはちょっとぞっとしないわねぇ。好き放題突撃ブチかまされるの確定じゃないの。
…なら、こっちも飛ぶしかないわねぇ。ミッドナイトレースに○騎乗してテイクオフ。〇空中戦と洒落込みましょ。
グレネードの〇投擲と●射殺で機動戦かけるわぁ。
そこそこ速さには自信あるもの。そう簡単に捉えられると思わないでねぇ?

ああ、もう一つあった。
…アタシ、キライなのよ。子供が泣くの。



 BLAMBLAMBLAMBLAM!! KA-BOOOM!!
 バイク型UFOと怪物じみた馬とが空中で交錯し、マズルフラッシュが響き渡る。
 ティオレンシア・シーディアは、やれやれとばかりに頭を振った。
「残念だけどぉ、あたしはあなたの御大層な問いかけには答えられないわよぉ。
 こっちは依頼でここへ来てるんだし、正義だの目的だのないしねぇ」
 神速のリロード。甘やかな声と裏腹に弾丸は無慈悲で拒絶的だ。
「――けど、我こそ絶対車でございってばかりにふんぞり返るような輩は、
 気に食わないわぁ。それがあたしの戦う理由、それでいいかしらぁ?」
『何ヲ巫山戯タコトヲ! ソノ程度デ我ハ退カセラレハセンワッ!!』
 騎士どもの言葉通り、趨勢は徐々に怪馬と騎士どもに傾きつつあった。
 キリキリ舞いの空中戦を繰り広げながら、ティオレンシアはグレネードを投擲する。
 敵は疾い。だが自分とこのマシンは、それよりも上に行けるはずだ。
 そしてなによりも。慈悲だの救済だの嘯くような輩に、
 簡単にしてやられるほど、ティオレンシアは易い女ではない!
『何? サラニ加速シタダト……!?』
「――たしかに、あたしに騎士道だの小綺麗なものはないけどねぇ」
 騎士どもに死角はない。背後の攻撃すらも奴らは見切る。
 だが。星の如きスピードに至ったマシンは、たしかに敵の意識の虚を突いた。
 そして刹那をも掴み取る銃手にとって、隙は一瞬あればそれでい。
「アタシ、キライなのよ――子供が泣くのは」
 BLAMN!! 拒絶と訣別を籠めたルーンの弾丸が、異形の巨体を貫いた。
 怪馬は嘶きのような断末魔を残して消え去り、巨体もまた地面に叩きつけられる。
 その機を逃すティオレンシアではない。雨あられのごとき銃撃!
「少しは地に塗れる気分を味わいなさぁい、どうせ滅びるならその前にねぇ!」
 正義や主義信条がなかろうと、殺戮に対する嫌悪感は消えやしない。
 ……脳裏に蘇った惨劇の風景を振り払うように、ティオレンシアはさらにトリガを引いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ユーゴ・アッシュフィールド
【リリヤ(f10892)】と

ああ、そうだな。
奴等に俺達の考えを伝えに行くぞ。

リリヤのサポートがあるなら、この剣一本で大丈夫だ。
いつも通りだ、鍛え積み重ねた技で戦えばいい。
諦めない者の力を教えてやる。

お前達が大きな力に敗れ、絶望し、自分達のように苦しむ前に助けようとする想い自体は否定はしないがな。
お前達がやっている事は、死の強制だ。
選択ができないそれは、ヴァンパイアがやる事と変わらん。

お前達は苦しくても抗う事を選んだんだろう。
大切な人や場所を守りたかったんだろう。
だったら、俺達にもそれを選ばせろ。
その先に闇があるのなら、そんなものは何度だって、ぶっとばしてやる。


リリヤ・ベル
【ユーゴさま(f10891)】と

ユーゴさま、……ユーゴさま。
こたえをかえしに、ゆきましょう。

ひかりをまねいて、武装を穿ち押し留めましょう。
ユーゴさまの行く道をあけるよう、死角を補うように。
通してくださいましね。

伸べられた手がうれしかったことを、わたくしはおぼえています。
いつかその手を離すとしても、つないだことを後悔はしません。
いつかおわるということは、いまあきらめる理由には、ならないのです。
あなたたちも、そうだったのではないのですか。

苦しみをえらんでいるわけではありません。
しあわせをさがして、さがして、あるいているだけ。
その先に闇があるのなら、そんなものは何度だって、ぶっとばしてやるのですよ。



 天より降り注ぐのは光の柱。御使いの降臨を思わせる、破魔の輝き。
 邪悪にとっては忌まわしく、虐げられる者にとっては救いのような輝き。
 突き立つ光の柱を、呪われた剣と槍と槌は切り裂き、霧散せしめる。
 そんな輝きは、希望は、この世界に必要ないのだと叫びながら。
「お前達が大きな力に敗れ、絶望し、それでもなおあがくことを否定はすまい。
 お前達はつまるところ、自分達のような苦しみから救おうとしているわけだ」
 繰り出される剣戟を払い除けながら、ユーゴ・アッシュフィールドが言った。
 その背後、リリヤ・ベルがもたらすのは裁きの輝きである。
 邪悪たる騎士どもは、直撃を受ければ光に灼かれ浄化されてしまうだろう。
 ランダムに降り注ぐ光の柱は、攻撃でありながらユーゴを護る盾でもあった。
「しかし、お前達がやっていることは、けっきょくただの死の強制だ。
 選択すらも出来ぬそれは、ヴァンパイアがやることと何も変わらん」
『"あるじ"ラノ怒リハ、我ラノ慈悲トハ比ベモノニナラヌホド恐ロシイノダゾ?
 何故、ソレヲ理解シナイ。何故、自ラ進ンデ絶望ノ闇ニ身ヲ投ジヨウトスル!』
「――それは、かつてのあなたたちにも同じことを言えるのではないですか?」
 傍らに立つリリヤが、静かに言った。
「だからこそ、あなたたちは、吸血鬼にあらがおうとしたのではないのですか。
 あなたたちが憎むべきは、わたくしたちではなくヴァンパイアなのですよ」
「……それを歪め下僕とする吸血鬼の恐ろしさ、か。正直寒気がするがね」
 少女を護るように、ユーゴが立ちはだかる。
 騎士には理解できない。己が孕む矛盾と歪みを直視できない。
 そんな風に貶められてしまった彼らに対し、憐憫がないわけではない。
 けれども。その憐れみだけで間違った死という終わりを受け容れてやれるほど、
 彼もリリヤも――そして少年達も、潔く諦められるわけではないのだ。
「お前達がそうなったのは、お前達自身が抗い護ることを選んだからだ。
 ならば、俺達にもそれを選ばせろ。選択すらなく終わらせようとするな」
『……選択ニ意味ナドナイ。ドチラデアレ、終端ハ絶望ノ闇デシカナイノダ』
「いいえ――意味はあります」
 リリヤが言った。
「伸べられた手がうれしかったことを、わたくしはおぼえています。
 いつかその手を離すとしても、つないだことを後悔はしません。
 ――いつかおわるということは、いまあきらめる理由には、ならないのです」
 かつて、騎士達がそうだったように。
 ……束の間、騎士どもの攻め手が止んだ。
 その意味は、おそらく異形の騎士どもにすらもわかるまい。
 ユーゴはわずかに悲嘆に顔を顰めながらも、機を逃さずに踏み込んだ。
「俺は護りたいものがある。苦しみを受け入れてでもなしたいことがある」
 鍛え上げ、積み上げてきた剣をもって、過去への答えとする。
「――わたくしたちはただ、しあわせをさがして、さがして、あるいているだけ」
 天より降りし輝きを以て、過去への答えとする。
「その先に闇があるのなら」
「そんなものは何度だって」
 剣が迸る。同時にまた、柱の如き光が騎士を灼く。
「「ぶっとばしてやる(のですよ)!」」
『オオ……オオオオオオ……ッ!!』
 騎士は畏れた。――何を? 解らない。
 それ以上に解せないのは、己がたしかに喜びを感じたことだ。
 敵の強さに? 不可解なことだ。そんなことはありえない。
 だがなぜ……破魔の光に灼かれ、剣に断たれる我が体、そして我が魂は。
 これほどまでに、満ち足りているのだろうか――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エドガー・ブライトマン
なぜかキミらに立ち向かうのかって?
フフ、いやだなあ。決まっているじゃないか
私は“王子様”だからだよ

答えになってないかな?それではもうすこしお喋りしてあげよう
キミらがなんといおうと、ここは人の世だ
今は陽の差さない世界でも、必ず闇は晴れる
世界は人の力が希望となって切り拓き、未来へ繋げる

そして私は生まれながら人々の上に立ち、導く者
キミらを退け、人の進む道を示すのが私の責務であり運命!
そこに苦しみなんてあるハズもないさ

満足かな?では散りたまえ
ここは人の通る道だ

相手に腕が何本あろうとも、大きな馬が居ようが関係ないさ
こちらにも頼もしい仲間がたくさんいる

知っているかい?
私の剣は、人々の希望に応える剣なんだよ



 ……歪み呪われた異形の肉体は、一度や二度の死では終わらない。
 終わらせてくれない。吸血鬼どもの悪性は、安易な救済を許しはしない。
 皮肉なことに、慈悲として死を与えようとしていたその異形は、
 それゆえに、救いであるはずの死を、簡単には認められなかったのだ。
『……何故ダ。何故ソウマデシテ、"あるじ"ラニ抗ウ……』
「フフ、いやだなあ。決まっているじゃないか」
 全身からぶすぶすと煙をあげながら立ち上がる騎士達の前に、
 エドガー・ブライトマンが立つ。口元には、優美な微笑みがひとつ。
「――私は、"王子様"だからだよ」
『……ソンナ答エナド、我ラハ認メヌ!』
「いいや。キミ達に認める、認めないの権利などない。終わらせる権利も、
 "終わってしまった"などと勝手に諦めて、誰かを殺す権利も存在しない」
 エドガーは微笑みを捨て、敵を睨みながら剣を振るった。
 異形もまた血塗られた盾と剣でそれに応じ、嵐の如き攻防が始まる。
「キミらがなんと言おうと、ここは人の世だ。人が生き、築いていく世界だ。
 今は日の差さない世界でもいつかきっと必ず、キミ達の齎した闇は晴れる」
『否、否、否……ッ!!』
「――ヒトは、キミ達が思っているほど弱くはないよ。
 世界は人の力が希望となって切り拓き、未来へ繋げるんだ。必ずね!」
 きぃん! と、澄み渡った音とともに血塗られた刃が折れた。
 くるくるとステップを踏み、間合いに飛び込んだエドガーはさらに一撃。
 たたらを踏んだ異形は、雷のように嘶く怪馬を呼びそれにまたがった。
「そして私は生まれながらに人々の上に立ち、導くものである。
 キミらを退け、ヒトの進む道を示すのが私の責務であり運命!」
『大義ノタメニ、苦シミヲ受ケ入レルト!?』
 神の槌めいて振り下ろされた怪馬の蹄を、剣ひとつで受け止める。
 ――口元に、涼やかな笑みが戻った。
「いいや? そこに、苦しみなんてあるハズもないさ」
 エドガーは膂力ひとつで蹄を跳ね除け、そして地を蹴り跳躍。
 驚愕する異形の騎士もろとも、鮮やかな剣技で騎馬一体を斬り裂いた!
『莫迦ナ……何故ダ、何故……!!』
「――私の剣は、人々の希望に応える剣なんだよ。知らなかったのかい?」
 ふわりと穏やかに降り立ち、エドガーは血を払うように残心した。
 威風堂々たるその姿は、まさに"闇の救済者"にふさわしい――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロト・ラトキエ
礼節、年甲斐…
今ばかりは捨てましょう。

バッッッカじゃ無ェの?

視線、構え、滑空に速度…
見切り、体積も計上し回避はやや大きく。
返す手で、傍なら鋼糸、遠くは短矢かナイフを。

前言通り、苦しみなんざ結局過程。
意味なぞ後の世が、必要かは生きてる者が決める。
…そもそもなぁ。
“自分が出来なかったから他人も出来ない”なんて、自己と他者の同一視。
ガキか、傲慢って話。

此方も、嘗てのお前等と同じ多数。
俺が一撃必倒である必要は無い。
一つでも多く傷を刻み、一歩でも確かに未来へ繋ごう。
己の手、端から全てUCの内。即ち
――拾弐式

説く気も、嘲る心算も無い。
その騎士道、只それのみに応じ、

クロト・ラトキエ。汝が最期まで、お相手仕る



 張り巡らされた鋼糸は舞台のように戦場を定め、そして獲物を囲む檻でもあった。
 何故、と問いかけながら突き進もうとする異形の騎士。
 それを踊るように舞いながら切り裂き、あるいは貫く男はひとり。
 たしかに異形の騎士には、無数の腕があり死角を潰す目と意識がある。
 五つの脳髄と無数の意識と経験と技量とは、一個にして万軍に値するだろう。
 されど、それだけに視線が、構えが、読み取るべき情報が生まれる。
 敵が強大であればあるほど、それをかいくぐり打ちのめす隙も生まれるのだ。
 そして敵の隙を読み取り突くことに関して、クロト・ラトキエは超一流。
 数多の剣が嵐のように振るわれようと、
 数多の槍が雷のように突き出されようと、
 ましてや雷鳴のごとくに嘶く怪馬が蹄を振り下ろそうと。
 そのすべてはただ空を薙ぎ、代わりに刃が、糸が、異形を切り裂く。
 霞を手で捉えることは出来ない。
 風を箱で覆って閉じ込めることは出来ない。
 本気になったクロトと戦うということは、つまりそういうことなのだ。

『……グゥッ!!』
 傷だらけとなった騎士が呻き、がしゃりを膝を突いた。
 風のように高速で舞っていたクロトが、その眼前にひたりと佇む。
「……哀れですね」
『我ヲ、憐レムダト……?』
「そんなになってまで、間違った慈悲とやらを振りかざし苦しみを味わう。
 どちらかっていうと、あなたのほうが自ら苦しみを選んでいませんか?」
『……否。真ニ愚カナルハ貴様ラナリ。絶望ヲ、認メズ抗ウナド――』
「……バッッッカじゃねェの?」
 騎士は顔を上げた。クロトの表情は、怒りでもあり侮蔑でもあった。
 憐れみもあり、哀憫でもあり、切なげでもあった。
「苦しみなんざ道程。意味なぞ後の世が、必要かは生きてる者が決めるんだよ。
 ……"自分が出来なかったから他人も出来ない"なんて、ガキか傲慢かって話だ。
 アンタ達に出来なかったことでも、あの子らならやってのけるかもしれねぇだろうが」
『何故ダ!? 何故、ソウマデ言イ切レル! 何故、未来ヲ信ジラレル!?』
 クロトは瞼を閉じ、開いた。そこに嘲りはなかった。
「かつてのお前達がそれを信じて殉じた。きっと、それと同じだろうよ」
 だからこそ。クロトは身命を賭し、穢れた騎士の道にのみ応じる。
「その答えで満足できねぇなら、俺かお前がぶっ倒れるまで戦うまでだろ。
 ――クロト・ラトキエ。汝が最期まで、その騎士道にお相手仕る」
 騎士は立ち上がり、剣を構えた。
 決闘の流儀、己の道を賭けて名乗るための構えである。
『"屍塊驍騎"ブラッドスピットナイツ――我ラ、挑マセテ頂クッ!!』
 そこに、主義主張や正義、信念などない。
 ただ、相容れぬ己の道、そのどちらが前に進むべきかを決めるだけ。
 そして修成の一撃は、嵐じみた刃をかいくぐり、異形の巨体をも駆け抜けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アストリーゼ・レギンレイヴ
たかが「殺された」程度で膝を折り絶望して
慈悲などと嘯いて歪んだ救済を突き付ける
……度し難い弱さね

《漆黒の夜》を纏い真の姿へ
心の臓は既に無く
腐り落ちる筈の躰を支えるのは
潰えた部族の民の尽きせぬ怨嗟と呪詛
――それでも『あたし』は生きている

何故抗うのかと問うたわね?
絶望に沈みながらなお立ち上がる者があるのなら
その灯を守ることこそ、身命を賭してなすべきこと
絶望に抗う生き方そのものが“あたし”だからよ

喩え、もはや朽ちるを待つだけの命だとしても――
その在り方を曲げはしないわ

加減をしなくていいのでしょう?
呪詛を載せた一撃で、一刀の元に叩き斬る
守る者すら忘れたのなら、その大仰な盾も
――矜持も命も、不要でしょう



 この胸にて脈動する心の臓腑は腐り落ち、血は絶えて骸と化した。
 代わりに体内を駆け巡るのは、熱された鋼の如く耐え難き怨嗟と呪詛の苦痛。
 何故と問われることなど、あの時からずっと、毎夜のごとく続いている。
 何故我らは滅んだ。
 何故あいつらは生きている。
 何故、何故、何故――!

 それでも、己は生きている。
 生きて絶望に抗い、絶望という名の夜闇を拒絶している。
 歪んだ救済に膝を屈してやるつもりなど、毛頭ない。
 アストリーゼ・レギンレイヴは、そういう女だった。

 血塗られた異形と、光すら通さぬ暗黒の闘気の対峙。
 それは一見よく似ていながら、対極的なまでに異なるモノだ。
 なぜならば異形は絶望に屈したものであり、
 アストリーゼはその諦観を否定し戦うモノ。
 そして異形の騎士は、"あるじ"――すなわち吸血鬼のエゴに拠って立ち、
 対するアストリーゼは己の意志と、怨嗟と呪詛を以て己を定義する。
 他者に理由を預け膝を突いた者が、気高き夜闇を払えるはずもない。
 呪われた刃の尽くは、漆黒の闘気に弾かれけして女に届くことはなかった。
「度し難い弱さ。そんなものを、そしてそんなものが与えられる終わりなんか、
 あたしは認めない。絶対に膝は突いてやらない。諦めたりするものですか」
『……ソレホドノ強サガアレバ、"あるじ"ラノ強大サモ解ロウニ……!』
「ええ、そうね。けれど強く恐ろしい相手だから、そこで諦めるとでも?
 どんな壁が立ちはだかろうと、あたしは前に進む。足を止めたりはしない」
 刃のごときまっすぐとした強さであった。
 死よりも昏き闇に瀕した女にとって、命を失う程度は恐れることではない。
 もしも本当に恐ろしいことがあるとすれば、それは自分が自分でなくなること。
 だから彼女は否定する。たとえ朽ちるだけのリビングデッドであろうとも。
 暗影に沈むエピローグなど、この世界には在りはしないのだと示すのだ。
「護る者すらも忘れた騎士よ。もはや、お前にそんな大仰な盾は要らない。
 ――矜持も命も、呪われた生も、すべて置いて逝きなさい」
 斬撃。それは天と地を分かつ、開闢の一刀の如しであった。
 呪われた肉体を真っ二つに切り裂き、ぞっとするような量の血が飛沫をあげる。

 アストリーゼはいかなる相手であろうと決して絶望しない。
 それは気高く、雄々しく――けれども、痛々しいまでに孤独な旅路だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

矢来・夕立
理由。
『不戦敗は寒いから』ですよ。
それにオレは生来権力者ってヤツがキライでして。
あなた方のご主人様も、さぞ殴りがいのあるツラをしてるんでしょう。

しかし牙を抜かれた上に首輪つきとは。可哀想に。ウソですけど。
今外してあげます。これはホント。
【神業・否無】。
首とお別れしましょうね。

気づきませんでした?
《忍び足》で少しずつ近づいてたの。
一足跳べば脇差の距離。《だまし討ち》には最適です。
騎乗中でしたら『朽縄』を使って馬上にお邪魔しますね。

この砦の子どもは聡いようですし、皆まで言わずとも伝わるでしょう。
悪あがきだろうが、無抵抗よりずっとマシだと。
生きてたって、死ぬときだって、どうせ等しく痛いんですから。


ヴィクティム・ウィンターミュート
くだらねーことを聞いてんじゃあねえぜ
答えなんざ決まってんだよ
俺はな、義侠心なんて持ち合わせてねえ
この世界の連中がどうなろうが、知ったことじゃあない
所詮は対岸の火事さ──だがな
"負けるのはナンセンスだ"
俺は敗北を容認しない。全てに勝利する
勝つためなら死を惜しむな。痛みを恐れるな。苦しみすら手札にしろ
俺には一度の勝利の為に、100年の命を棄てる覚悟がある
──俺は、勝ちに来た

さぁ、敗北に屈したテメェとの格の違いを教えてやる
Void "Create"スタート──『Azi Dahaka』
さぁ、蹂躙を始めよう

(そして、もう一つ)
(俺は罰を受ける為に生きている)
(苦しみは、いつだって公平に罰をくれるんだ)


壥・灰色
天を衝く余剰魔力
肘から吹き出す蒼白の稲妻
両拳を引き、只敵に対して、その問いに答える

苦しみを選ぶ理由なんて知れたこと
おれは、剣だ。魔剣だ
理不尽を貫く為にある、只一振りの剣だ
いかなる災厄も災禍も苦痛も困難も、その一切を打ち払う為に存在する
戦う力を持たない全ての人々の、嘆きと悲しみを打ち払う為に戦う
おれは、自分の存在理由をそう定めた
それ以上でも、それ以下でもない

誰であろうと、この決意を、信念を止められまい
おれは六本目の魔剣。あらゆる理不尽を踏み潰す、最後の『巨人』。

掛かってこい。
この身の全てを込めて――
貴様の全てを否定してやる。



「俺は、勝ちに来たんだよ」
 ヴィクティム・ウィンターミュートは、まっすぐに敵を見据えて言った。
「勝つためなら命なんざ惜しかねぇ。痛みなんざ怖かねぇ。
 テメェの言う通り苦しみがあるってんなら、それすらも手札にしてやる。
 ――敗北したテメェとは違う。俺は一度の勝利のために、命だって捨てる」
 凄絶なまでの覚悟。それは、問いかけた騎士の残骸を圧すに余りある。
『コノ世界ノ命運モ、アノ弱者ドモノ命モ、ドウデモイイトイウノカ』
「ああそうさ。……悪いが俺は義侠心なんざ持ち合わせてねえ。
 ガキどもが死のうが苦しもうが結局は対岸の火事さ――ただし」
 敗けるのは、ナンセンスだ。
『ソンナコトノタメニ命ヲ捨テルダト? 莫迦メ! 愚カ者ガ!』
「言ったはずだぜ。敗北し屈したテメェと、俺は格が違うってなァ!!」
 虚無が虚空より滲み出てヴィクティムを覆う。しかしそれでは終わらぬ。
 虚無は彼の命すらも奪い、そのまま雲めいてわだかまり吠えた。
 騎士の残骸もまた、雷鳴のいななきを齎す怪物の如き馬を呼ばう。
「ハッ! 神の軍馬と悪性の龍! どっちが上か比べようってかァ?
 くだらねェ! 教えてやるよ、俺とテメェのレベルの違いをなッ!!」
 ヴィクティムは超巨大なる漆黒の邪竜にまたがり、嘲笑した。
 数多の武器持つ騎士はその挑戦に応じ、刃と牙とが食い合い空を飛び回る。
 子供達は畏れた。ヴィクティムの悪性を? あるいは騎士の残虐さを?
 ……答えは、両方だ。どちらも、彼らにとっては怪物でしかなかったのだから。

 漆黒の虚無より構成されし、本来あり得なかったはずの邪竜。
 その力はヴィクティムが嘯くだけに足り、騎士と怪馬とを圧した。
 されど穢れてなお、異形に堕した騎士には奴らなりの騎士道というものがある。
 死物狂いで食い下がり叛逆する様を、ヴィクティムは冷笑的に見下ろした。
「他者に抗うことを無意味と説きながら、テメェらは強者(おれ)に抗うのかい?
 ――諦めちまえよ。どうせそうやって使い走りに堕したんだろうが、え?」
『否、否、否……我ラハ"あるじ"ノ下僕デアル前ニ、誇リアル騎士団ナリ!
 我ラハ救ワネバナラヌ! 民ヲ、人々ヲ! 苦シミトイウ終末カラ!!』
「――そうかよ。だがあいにく、テメェらを滅ぼしたいのは俺だけじゃねえ」
 暴れる怪馬の喉笛に邪竜が食らいつき、その身の自由を奪った。
「テメェらの剣よりもよほど慈悲深くて恐ろしい刃が、此処に来るぜ……!」
 そして騎士は視た。迸る蒼白の稲妻、撃力を充填し天を突かんとする魔剣を。
 壥・灰色。その双眸は金色に燃え上がり、怒りと殺意を漲らせていた。
「おれは、剣だ。理不尽を貫くためにある、ただ一振りの魔剣だ――」
 いかなる災厄も、災禍も、苦痛や困難ですらも。
 弱き者に変わりて打ち払い、そして否定するために在りし者。
 かつてはそうではなかった。錬鉄者によって規定された剣であった。
 死と滅びをもって敵対者に裁きをもたらし、所有者を栄華たらしめるもの。
 ……されどそれは過去。すべては終わったこと。今は違う。
「残骸(おまえたち)が、人々を――おれを、枠組みに嵌めようとするな」
 反逆の魔剣は己の製造目的に逆らい、錬鉄者を滅ぼし、自由を選んだ。
 多くの血が生まれ、それでもなお救えぬ者があり、今も同じだ。
 その手は神を討つことは出来ても、全てを救い護るにはあまりにも小さい。
 剣は盾とは違う。敵を斬ることは出来ても誰かを守れはしない。
 傷に寄り添い癒やすことは出来ない。彼らの眠りを見守ることも出来ない。
 ――されど。その夜闇を狂わせ、脅かせ、妨げる者があるならば。
 たとえ称賛がなくとも、名誉がなくとも、尊ばれることがなくとも。
 灰色は、ただ己の意志にのみ拠って立ち、邪悪と断じたものを切り裂くのだ。
 誰であろうと、その決意その信念は止められない。
 命をとしてまで敗北を否定し、勝利に妄執する男を止められないように。
「おれの命もまた――理不尽(おまえたち)を叩き潰すためにある」
 神話に名高き巨人が、その膂力をもって大地を踏みしめてきたように。
 神殺しの魔剣もまた、天を貫き稲妻と化して異形を――貫いた!

『……ガハッッ!!』
 龍の暴威によって騎馬を失い、
 そして地より天に突き立つ魔剣によって、異形の騎士は牙を失った。
 ごろごろと、炸裂した威力の残滓が稲妻となって天を轟かす……。
「立て。そしてかかってこい。この身のすべてを籠めて――」
「テメェのすべてを、否定してやるぜ。敗北者(ルーザー)」
 漆黒の虚無を纏う悪童と、灰色の魔剣とが並び立ち、身構えた。
 ……死という忘却すら許されぬ騎士は立ち上がり、吠えた。
 怪物の如き咆哮。そして放たれる乱撃は、まさに嵐めいていた。
 灰色はその刃を拳で砕き、あるいはねじ伏せ、応報の衝撃を鋼に齎す。
 ヴィクティムは嘲りとともに刺突を躱し、ナイフをねじ込み龍を呼ばう。
 天をどろどろと泳ぐ邪竜の爪と尾は、なおも抗う騎士を吹き飛ばす。
 それでも、倒れぬ。斃れることが彼奴には許されていない。
 そう――たとえ首を刎ね飛ばされたとしても、騎士は止まらぬのだ。

「あなただって、本当はわかっているんでしょうに」
 そしていま、傷ついた騎士の首は刎ね飛ばされた。
 ひそかに戦場に隠れていたカゲ――すなわち矢来・夕立の手によって。
 不可知の如き神業は、この乱戦にありてただ敵の首を落とすに足る。
「抗うことは、無抵抗に比べればずっとマシ。悪あがきにだって意味はあります。
 生きてたって死ぬ時だって、どうせ等しく痛いものです。そうでしょ?」
 ごろごろとボールめいて転がる頭部を苦無で貫き、胴体を蹴り飛ばす。
 ……五つの脳を持ち、数多の命を持つがゆえに幾度でも"死ねてしまう"異形は、
 それでもなおあらたな頭部を再生させながら、よろめいて立ち上がる。
 慈悲をもたらすと嘯きながら、斯様に強大な力に抗おうとする。
 その姿こそが、逆説的に抵抗することの意味を、重さを知らしめている。
 矛盾だ。否定しているはずのことを、あれは貫いているのだから。
「オレもヴィクティムさんの意見に同意します。"不戦敗は寒い"んですよね。
 ……ま、オレの場合は、生来権力者ってヤツがキライなのもあるんですが」
 ちらりと悪童と魔剣とを見やり、夕立は言った。
「そのへんも気が合うんじゃないですかね? オレ達」
「否定はしねぇよ。依頼人(ジョンソン)の顔はぶん殴りたくなるもんだしな」
「……それが悪逆を以て君臨するなら、そしておれの道を阻むのなら。
 おれは、それを滅ぼす。こいつのあるじとやらも、いずれ必ずな」
「殴りがいのあるツラ、してるんでしょうね。そのご主人様も」
 夕立は無表情のまま冗談めかすように言って、再生を終えつつある騎士を見た。
「一度首を落とされた程度じゃ、その汚い首輪も取れませんか。可哀想に」
 まあ、ウソですけど、と言葉は続く。
「だったら今度こそ外してあげますよ。――これは、ホントですよ?」
「テメェはガキどもを殺そうとしたんだ。その報いは受けなきゃ、だろ?」
 ヴィクティムは皮肉めいて言い、その視線を受けた灰色は頷いた。
 けれども同時にヴィクティムは、心のなかでこうも思っていた。

 己は、与えられる苦しさを否定しない。むしろ求めてすらいる。
 苦しみは、公平だ。慈悲も容赦もなく、罪を贖うために痛みをくれる。
 罪深き己は、無様でも生き延びて永劫罰を受け続けなければならないのだ。
 夕立は、灰色はどうだろうか。……問うまい。おくびにも出さない。
 それは、"ヴィクティム・ウィンターミュート"のキャラクターではない。
「さぁ、蹂躙を始めようじゃねえか――抗ってみろよ、ルーザー!」
 こうしてふんぞり返り、悪童めいて笑い、暴虐を打ち砕く。
 それこそが、端役にふさわしい仮面なのだと嘯いて、彼は戦うのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朱酉・逢真
ソロ希望
あぁ~お客様困ります~、人間には個々人の寿命から総体としての増減周期まで多少の誤差や例外はあるとしても大体決まってるンでそォいうテメェ勝手な都合で乱されんのは大変困ります~、お客様~あぁ~

よぉは『まだ滅びる時期じゃねえ』のさ、この世界も、この世界の人類も。
俺ぁ神だ。強大な種族だ。人間たぁ違う、行動にゃ責任を持たなきゃなんねえ。しかも凶神(まがつひ)だしな。
自分勝手に動くなら、そいつはもう神じゃない。
力があるだけのヒトだ。

……チビたちの参考にゃならんね、こりゃ。
話ぁ終わりだ。ギフトを受け取りな。てめぇの都合で輪廻のダイヤを乱した罰だ。
だが勘違いすんなよ、俺はてめぇを憎んじゃいねえからよ。



 ……騎士どもは本気で困惑していた。
 何故、猟兵達は抗うことをやめようとはしない。
 何故、人間達に不要な苦しみを与えようとする?
 かつての彼らであれば――そもそも吸血鬼の走狗になるまいが――そんな疑問は、
 猟兵達の言葉、あるいはその強さでもって氷解していたことだろう。
 しかし、解らぬ。オブリビオンとして歪んだ残骸には答えを得られぬ。
 なのに問わずにはいられない……遺された騎士としての矜持ゆえに。
 ある意味で、ただ無為に残虐を振りまく敵よりも哀れな姿だった。

「吸血鬼どもも趣味が悪ぃねえ、ひひっ。まったくご愁傷さまだぜ」
 これっぽっちもそう思っていなさそうな表情で、朱酉・逢真が言った。
『何ダト……?』
「"そういう部分"だけは手つかずで遺しておいて、肝心要のとこは道具らしくしてるワケだ。
 何も考えず適当に殺戮しとけばいいモンを、真面目だよなァ騎士様はよ」
 片眉を吊り上げて言うさまは、言葉通り異形の騎士を揶揄しているようでもあり、
 また同時に、認められない答えを求め続ける騎士を、哀れんでもいた。
 嘲笑と慈愛が綯い交ぜになった、ヒトの言葉では尽くせぬ神の表情だった。
「人間ってのは個々人の寿命から、総体としての増減周期まで代替決まってる。
 多少の誤差や例外はあるとしても、テメェらの勝手な都合でイジられるのは困るぜ」
 逢真はくくっ、と喉を鳴らした。
「だから俺はここに来た……けどそもそもを言えば、だ。
 テメェらに抵抗しようとする人間が出たこと自体、必然なんだよ」
『ドウイウ、意味ダ……』
「よぉは、"まだ滅びる時期じゃねえ"のさ」
 逢真は、とんっ、とキセルの灰を落とした。
「この世界も、この世界の人類も――だからこそ抵抗しようとする働きが出る。
 まッ、てめぇらはそれをさらに塗り替えちまうから俺が出てこなきゃならねェんだが」
 キセルを吸い、そして紫煙を吐き出す。病毒を満載した死の灰を。
『キ……貴様ハッ、何者、ダ……!?』
「神だよ」
 凶星は嗤った。
「俺にゃあ御大層な正義だの主義信条なんざこれっぽっちもねェし、
 そもそも持っちゃならない……そういう手前勝手は許されねェのさ」
 人類砦の出現が、世界という巨大な群体の持つ当然の防衛反応だったとすれば、
 生と死を正しく輪廻させるべき己が現れたのも、ある意味では必然。
「てめぇはそのやっちゃならねェことを踏み越えた。輪廻のダイヤを乱したンだ。
 ――けど勘違いすんなよ? 俺は、てめぇを憎んじゃいねえから、よ」
 異形の騎士は、齎された病毒(ギフト)の痛みと苦しみに悶えた。
 苦しみから人々を救おうとした傲慢な残骸への、もっとも適当な罰。
 それを面白くもなさそうに見下ろし、逢真はもうひとつ紫煙を吐いた。
「……チビどもの参考にゃならんね、こりゃ」
 逢真はそう言ったが、しかし彼らはふたつのことを学んだ。
 ――この世には、抗いがたい運命、より強大なモノもいるということ。
 そして、死はまったき終わりではないということを、彼らは知ったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

有栖川・夏介
遅くなりましたが、私も加勢します。

故郷の村で、処刑人として過ごしていた時は、私もあなたたちのように思っていましたよ。
領主に歯向かう行為は「愚か」であり、同族の手で処刑することが「慈悲」なのだと。
…それでも、違うと叫ぶ声が聞こえるんです。

【覚悟】と共に処刑人の剣を構える。
呼吸を整えて敵と対峙
敵の動きを【白騎士の導き】で予測、回避しつつ剣を振るって反撃
重い【鎧無視攻撃】の一撃

なぜ、自ら苦しみを選ぶのか?でしたね。
…生きることは苦しいです。
楽しかったことなんてほとんどないし、覚えていない。
それでも、俺は今生きている。こんな世界でも生きていたい。
だから殺します。お前という存在を殺す(否定する)



 あの異形の騎士の姿は、かつての己の姿を見ているようで嫌になる。
 ……有栖川・夏介は揺れる心を整えるように深呼吸し、思考を落ち着かせた。
 脳裏に蘇る過去の風景をシャットアウト。戦闘に関係のないことだからだ。
 けれども。声だけが消えない。
 違うのだと。
 そんな形で与えられる慈悲などは間違っているという、誰かの声が。
 ……あるいはそれは、自分自身の叫ぶ声だったのかもしれない。

 病毒に苦しむ敵の動きは鈍っていながら凄絶であり、回避は困難だった。
 雷鳴のようないななきとともに現れた、怪馬スレイプニルがその助けとなる。
 空を自在に飛び回り、地を砕きながら疾走する敵の、全方位からの攻撃。
 常人では回避不可能……一撃でも喰らえば即座に戦闘不能だろう。
 だが。夏介はチェス盤の動きを読むかのように、紙一重の隙を見出し、戦う。
 剣を振るう。血塗られた鋼が弾く。刃が骨肉に届くことはない。
 否。届かせねばならぬ。奴の問いかけに応えるためにも。
「……生きることは苦しいです。あなたの言う通り、死ねば終わるでしょう」
 がぎん、がいんっ!! という火花散らす刃音のなか、夏介は言った。
「それでも、俺は生きている。こんな世界でも、生きていたい――!」
『終ワリヲ否定シ足掻イタトコロデ、終末ハ変ワラヌッ!』
「……それは、すでに"終わった"あなたに決められることじゃない」
 血塗られた剣と処刑剣が真っ向からぶつかり合い、鍔迫り合いの状態に陥る。
 膂力で勝る異形の騎士が押し切……いや。押し込んでいるのは夏介だ。
「今を生きる俺達が、そして彼らが決めることだ」
『貴様……ッ!?』
「――あなたの姿は、かつての"私"に似ている」
 だから、と唇が動いた。
「"俺"が、殺します。お前という存在を殺す。いま、ここでッ!」
 ざしゅっ! と、横薙ぎの一閃が敵の肩から上を真っ二つにした。
 鋼もろとも切り伏せられた生首が、ごろごろと大地を転がる。
 それは――過去を振り払い前へ進もうとする、夏介なりの決意の一撃だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ナルヴィア・ナインズアイ
『意味がない』、か……
それを決めるのは貴様じゃないんだよ。
吸血鬼がトップに立ち支配する場は地獄そのものだ。
そして貴様らが歩んだ道程にあるものに齎してきた”慈悲”とやらの光景を思い浮かべてみな。どうだ、貴様らが齎しているのは地獄に過ぎないだろうが。
地獄の拡散はもうたくさんだ、これで終わらせる。だから闘うんだ。

それに……もはや“只人”じゃないからな。

瞳を黄金に輝かせ、悪魔の力を引き出す。
腕が複数あるならばそれらを“黒き蛇の尾”のしなる軌道で斬り落としてやろう。
そして空高く飛び、豪速の一撃を叩き込んでやる。

安心しろ、貴様だけじゃない。貴様の主も……終わらせてやる。
だから、貴様はこれで眠れ。



「意味がない、などと、それを決めるのは貴様らじゃないんだよ!」
 ナルヴィア・ナインズアイは吐き捨て、右の瞳を黄金色に輝かせた。
 ヒトならざる瞳孔が示すのは、悪魔の力の存在――魔には魔を以て報いるべし。
 忌まわしきこの血、そして否応なく身に付けざるを得なかった魔導の智慧。
 この烙印の如き過去を以て憎むべき吸血鬼どもを滅ぼせるならば、それでいい。
 ナルヴィアを突き動かすのは希望がもたらす勇気ではなく、
 絶望を味わったことで得た憎悪――くろぐろと燃える憤怒なのだ。
 彼女は何度だって、他者から己を規定され進むべき道を決めつけられてきた。
 強制され地獄を味わい、泥濘でのたうち回るようにして生き延びた。
 だから、この騎士の妄言を、ひとかけらとて認めるつもりはなかった。
『ハッ! ナラバ、未来ヲ選択スルノハ貴様ラダトデモ言ウノカ? 愚カナ!
 選択ニ意味ナドナイ。辿リ着ク答エガ同ジナラバ、全テハ無駄デアル!』
「――それだよ。貴様らはいつもそうやって、誰かのいのちを否定する。
 この世界は滅ぶ? 苦しみしかないだと? そういう風にしたのはどこの誰だ!」
 瞳孔が黄金の虹彩を増す。ナルヴィアは血の涙を流しながら撃ち込んだ。
「この世界を闇に包み、要らん絶望を振りまくのは他ならぬ吸血鬼どもだ!
 貴様らが歩んだ道程こそが地獄であり、慈悲とやらが齎すのも同じだろうが!
 ――地獄の拡散は、もうたくさんだ。これで終わらせる。だから戦うんだ……!」
 血を吐くような言葉とともに、攻撃はさらに苛烈さを増す。
 異形の騎士をして、ナルヴィアの猛攻は防ぐのが精一杯であった。
「僕はもう"只人"じゃあない。けれど、あの子達はまだ普通の人間だ。
 なら――代わりに、この力で僕は戦う。貴様らを滅ぼすその時までな」
『ヌウウ……ッ!!』
 がぎぃっ!! と、爆弾を破裂させたような強烈な衝撃が、異形を吹き飛ばす。
 体勢を崩した瞬間を逃さず、ナルヴィアは大地を蹴って加速した。
 異形の腕は全方位への護りを固める。右目がまばゆいほどに輝いた。
『……上カッ!?』
 然り。ナルヴィアは異形を飛び越えた! スピードはもはや危険域である。
 防御しようのない空中でカウンターを受ければ間違いなく死ぬ。
 それを畏れず彼女は跳んだ。そして敵の攻撃よりも、彼女の攻撃はなお疾い!
「――安心しろ、貴様だけじゃない。貴様の主も終わらせてやる」
 ずるりと、切断された異形の腕が大地に転がった。
 狙いすました致命的刺突が、真上から落ちてくるドリルめいて身を抉る。
「それが、僕の戦う意味なのだからな――!」
 響いたのは騎士の勝鬨ではなく、鎧ごと身を削られる断末魔だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニコラス・エスクード
――我が主の汚辱を濯ぐ。
この身を成し得た理由など唯の一つ。
故に在り、故に戦い、故に護る。
この身が在り続ける限り、
我が心根が揺らぐことなどあろうはずもない。

そして貴様らもまた、我が主の残した罪の一つだ。
その歪み果てた身も、心も、救わねばならぬ。
その捻じ曲げられた苦痛を、絶望を、後悔を、
我が身にて受け止めねばならぬ。

我が身こそが盾である。
無辜なる民草の盾である。
報復を願う者の盾である。

襲い来るはただ一つの身にての騎士団。
なればこそ、正面より相対するに否はない。
『蒼生の盾』の力を以って、
盾を構え、全身全霊にて迎え撃つ。

貴様らの歪みは喰らい潰す。
故に全てを置いて逝け。
この身にて、必ずの報復を誓おう。



 首を落とされ、身を穿たれ、病毒に冒されて、なお。
 騎士は立ち上がる――否、立ち上がらねばならぬ。立ち上がるしかない。
 なぜならたった一体にまとめられた屍の群れは、それゆえに命を無数に持つ。
 一度、二度……なんなら十度殺されようが、死ぬことを許されない。
 五つの脳を同時に粉砕し、その上で命数を削りきってようやく終わりは訪れる。
 彼らの鎧は、獲物の攻撃を防ぐ強固な護りであると同時に、
 呪われ歪められた屍達を閉じ込める、唾棄すべき縛めでもあるのだ。
「……哀れなり」
 ニコラス・エスクードは、憎悪ではなく哀憫を示した。
 あるいは彼もまた、あの騎士と同じように遺されしモノだからだろうか。
 オブリビオンと猟兵、屍者とヤドリガミ――在りようは正極なれど。
「得られぬ答えを求めて足掻き、されど吸血鬼の下僕たる鎖を壊すこと能わぬ。
 貴様らもまた、我が主の遺した罪の一つ……歪み果てた身も心も、救わねば」
『救ウ、ダト……? 我ラヲ、救ウベキモノト断ズルノカ』
「然り。捻じ曲げられた苦痛、絶望、後悔。すべて我が身で受け止めてみせよう」
『……巫山戯ルナ』
「ふざけてなどおらぬ。……そもそもだ」
 ニコラスは剣を構え一歩踏み出す。
「他者を"救うべきもの"と断じ、一方的に慈悲を与えようとするのは貴様も同じ。
 己の身に降り掛かったそれを憤慨するならば、逆の立場とて理解できよう」
『……!』
「されど貴様らは止まれぬ。それもまた罪であり歪みなり」
 ニコラスは断定的に言い、キン、と刃を鳴らした。
「――我が身こそが盾である。無垢なる民草の盾である。
 報復を願い、この世界で生き続けようとする者らの盾である。
 そしてこの身を成し得た理由ある限り、我が心根が揺らぐことなどない」
 もはや亡き主の汚辱を濯ぐため。
 ただそのために盾たらんとし、戦い、そして護る。
 ただそれだけ。けれども忘れられず、捨てられず、捨ててはならぬ使命。
 ――その在りようは、やはり異形の騎士と正極でありながら似ていた。

『認メヌ!! 我ラノ行イガ、間違ッテイルナドトッ!!』
 異形の騎士団は激高し、雷鳴のいななき齎す怪馬とともに疾駆した。
 ニコラスは――避けぬ。盾を構え、真正面から迎え撃つ心算。
 そうせねばならぬ。
 それ以外には選べぬ。
 なぜならその身は盾ゆえに。
 震える民を護るために在るがゆえに。
 彼らの苦痛も絶望も、存在のすべてを受け止めようとするがゆえに。

 ――激突。
 大地が砕けんばかりの轟音が響き、しかしニコラスは一歩も退かなかった。
『莫迦ナ』
 騎士達は言った。ニコラスは静かに応えた。
「貴様らの歪みは喰らい、潰す。ゆえに――すべてを置いて逝け」
 押し返す。身を投げ捨てるような前のめりの斬撃、鋼と怪馬を断つ。
 断末魔が響いた。ぞっとするような血を浴び、蒼生の盾は云う。
「この身にて、必ずの報復を誓おう」
 それは、彼なりの同胞への手向けの言葉でもあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳴宮・匡
何故と問われたら、答えなんて決まってる
ただ、見たくないだけだ

終わりの見えない闇の中で、死ぬことだけが救いだなんて
そんな結末も、それに屈して死にゆく命も

挙動の一つも見逃さず
駆動部や鎧・肉体の継ぎ目を狙って射撃を重ねていく
空を征こうが、地を駆けようが
知覚している限り、この眼と耳で捉えられないものはない

……これは、過去の自分を重ねただけで
誰かのためなんて綺麗なものじゃない
守ると決めたことだって
伸ばした手で掴めるものがあると信じたいだけだ

そうだな、生きていくのは苦しいさ
何処まで行っても、自分は醜いものだと思い知らされるだけだ
でもそれは諦める理由になんてならない
他でもない俺が、自分でそれを選んだんだから



 この目は多くのものを見通す。
 生と死を、倒れゆく屍を、屍の苦しみ悶えぬいた絶望の表情も。
 忘却とは、けして無慈悲で容赦のない切り捨て行為などではない。
 ヒトが生きるためには、この世界はあまりにも膨大すぎる。
 もたらされる情報は、たとえるなら針の穴に大河を流すようなものだ。
 忘れなければ生きていけぬ。
 捨て去らねば前に進めぬ。
 だからこの世界は時を消費し、過去を捨て去ることで未来へ進む。
 オブリビオンとは、そうして堆積された過去そのものの逆襲と言えよう。
 もしも過去を切り捨てる行為が無慈悲で残酷な行為なのだとすれば、
 鳴宮・匡は間違いなく聖人だろう――なぜなら彼は"視えすぎる"のだから。
 生も死も。
 死にゆく者の断末魔も、何もかもを見て聞いて、そして覚えている。
 凪いだ海のような心は、つまりそういうものが折り重なって生まれたものだ。
 もはや鎮魂など忘れてしまうほどに、心という器は溢れかえっていた。

 かつての匡は、流れ込む死という情報を見て見ぬ振りをすることで対処した。
 そんなことは"どうでもいい"と定義して、ダメージなどないと考える。
 実際に心が軋み血の涙を流していたとしても、それを見なければよい。
 ……反自然的な蛮行が人間性を奪うのは当然のことと言える。
 いつしか生存のための手段は自己を定義する戒めに変わり、
 気がついた時には、彼を取り巻く自己という檻は棘だらけになっていた。
 いまさら触れたところで、肌は裂け肉はえぐれる。
 血が溢れて、あまりにも遅すぎる痛みと悲しみが彼を苦しめた。
 もう、痛みや悲しみを"それ"と受け止めることすら出来ないというのに。
 堆積した過去は、切り捨てた彼自身に牙を剥いたのである。

 その苦しみが、見ていたはずのものから目をそらしたことで生まれるなら。
 彼は、見たくないというわがままを押し通すことにした。
 だからここへ来た。
 だからこうして戦う。
 心にわだかまる姿なき死者達は云う――何を今更と。
 お前は死神、数多の死を見届けそしてその指でもたらして来た呪われしモノ。
 子供を救う? 何を聖人ぶって。お前はどれだけの人間を殺してきた。
 どれだけの生きたいという望みを踏みにじり、その虚無的な生を繋いだ?
 人間性のかけらもないお前が、人間を殺し殺し尽くして生きてきたくせに、
 いまさらひとりふたり救ったところで、贖えると思っているのか。

 湧き上がる想念を振り払うように、またひとつトリガーを引く。
 弾丸は鋼の隙間を貫き、血と肉を溢れさせて呪われた騎士を穿った。
 眼前に迫っていた刃が止まり、心の臓を穿たれた怪馬は痙攣して崩れ落ちる。
 首元までの剣の距離10センチ。匡は恐れもせず騎士を見ている。
「……何もかも"どうでもいい"なんて言って、捨てていくのはもう嫌なんだ」
 匡は言った。
「俺は、たとえこの目に入るものがどれだけ醜い自分の姿だったとしても。
 もう目をそらしたくない。そして、これ以上の死を見たくなんてないのさ」
『……何ヲ、手前勝手ナ……』
「ああ。けど、お前よりはマシだろ。きっとな」
 銃声。寸前まで迫った騎士は銃撃によって吹き飛ばされる。
「――もう俺は逃げないよ。諦めて受け入れもしない、その自分を見つめていく。
 お前達に与えられるものなんて、俺にはこれっぽっちも必要ないんだ」
 慈悲も、
 死も、
 絶望も。
 希望と輝きが、血塗られた己にそぐわずとも。
「"これから"を選ぶのは、俺だから」
 ――希望と輝きを、己の手では与えられずとも。
 もう、お仕着せの悲嘆など、認めない。
 エゴを受け入れた男の瞳は、淀み凪いでいた――けれども、澄んでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マレーク・グランシャール
【壁槍】カガリ(f04556)と

敵の全方位攻撃が来たらカガリの後ろへ
カガリの堅固な盾ならば如何なる攻撃を凌ぎ、術を封じてくれるだろう
だがな、封じ技はカガリだけの専売特許じゃない
【蒼炎氷樹】の蒼き炎で敵を焼き、動きそのものを封じてみせよう

静止させた敵に向かい神・霊・魔に特攻する山祇神槍でランスチャージ
狙いは敵の兜、その中の脳
五つあるというその脳の一つや二つ、兜ごと砕いてやろうじゃないか

『何故、自ラ苦シミヲ選ブノカ』

その言葉なら友の口からさんざん聞いた

人は恐れや悲しみに晒され続けることに耐えられない
恐れを抱き続けるくらいならいっそ死を覚悟で戦い、悲しみを抱き続けるくらいならいっそ全てを忘れるのだ


出水宮・カガリ
【壁槍】まる(f09171)と

なぜ、この世界の闇に抗うのか。うむ。
お前がオブリビオンである以上、わかり合える事はないのだが

痛みを得て生きるのと、痛み無く死ぬのなら
死ぬ方がいいのでは、とはカガリも思うのだ
抗うことは、とても痛いことだからな
ひとには、痛みを感じてほしくない
命を終えるときは、緩やかに、眠るようなものがいい

だから、だ
一瞬でも、ひとが痛かったり、苦しい死は
カガリは壁として、その外に駆逐する
恐怖と共に与えられる死は、痛いのだから
その慈悲を、強く拒絶するのだ
お前も死んだ時は、痛かったろう?

【追想城壁】で、全方位の攻撃を遮断するぞ
敵への攻撃は、まるに任せよう
砦には、かすり傷すらつけさせんとも



『オオオオオッ!!』
 獣じみた絶叫をあげ、再生を終えた異形の騎士が猛攻を叩き込む。
 出水宮・カガリは城門たる盾を掲げこれを防ぐ……だが、重い!
「む……!」
 堅牢を誇るカガリをして顔を顰めさせるほどのすさまじい剣戟の嵐。
 たった一体の敵でありながら、万軍の勢を相手にしているように思えた。
「まる、案ずるな。カガリはどんな敵だろうと破れはしないぞ」
「ああ……奴を縛る一瞬を探る。それまで持ちこたえてくれ」
 マレーク・グランシャールとて、カガリが押し負けるとは考えていない。
 しかし相棒が自らああ言ったのは、それだけの相手だということだろう。
 もしも城門より前に出たのなら、もはやカガリの護りはマレークに届かない。
 つまり――チャンスは一度。仕損じれば、おそらくどちらかが斃れる。
『如何ナル城壁トテ城門トテ、我ラ騎士団ハ打チ破ッテキタ!!
 ソノ我ラデスラ、"あるじ"ラニハ歯向カウコトスラ出来ナカッタノダ!
 貴様ラ猟兵ニ、"あるじ"ラヲ滅ボスコトナド不可能デアルト知ルガイイ!』
「……自分が斃れたからといって、その尺度を俺達にまで押し付けるな」
「そうとも。カガリもまるも、お前よりも強いし、いつかはやってみせるさ」
 だからこそ、ここで手をこまねいて退かされるわけにはいかない。
 必殺の機を待ち、マレークは魔力を昂らせ気を練り上げ続ける。
「――だがオブリビオンよ、お前の云う"慈悲"も、カガリはわからんでもない」
 猛攻を防ぎながら、カガリは言った。
「痛みを得て生きるのと、痛みなく死ぬのなら後者のほうがいいのでは、と思う。
 抗うことは、とても痛いことだ――ひとには、痛みを感じてほしくはない」
『ナラバ、何故ダ!? 何故抗オウトスル!!』
「"だからこそ"だ」
 がぎぃんっ!! と、堅牢なる城壁の幻影が結実し、猛攻を跳ね除けた。
 護ることは、ただされるがままに奪われることではない。
 真に堅き護りは、攻め手そのものを怯ませ戦う気力すら奪い去ってしまうものだ。
 ――この砦に住む子供達に、猟兵達のような戦う力はない。
 けれども彼らは、この住処を護ろうと彼らなりに抗おうとしていた。
 猟兵達の戦いから目をそらさず、今もその背中を見つめている。
 それは、自分というものを護ろうとする、ひとつの戦いなのだとカガリは思う。
 己が盾を掲げ、相棒であるマレークの行く末を護るように。
「命を終えるときは、もっと緩やかで眠るようなものがいい。
 お前のもたらす恐怖と死は、カガリが壁として外に駆逐しよう」
『我ノ慈悲ハ、苦痛ノ上塗リニ過ギヌト……?』
「そうとも。それがお前のオブリビオンである証であり、だからカガリは否定する。
 ――お前も、死んだときは痛かったろう? でなくば"慈悲"とは言うまい」
 はたしてその幻影の威風が、騎士団を怯ませたのか。
 あるいはカガリの言葉が、騎士に遺された自負に触れたか。
 暴威が、止んだ。マレークは閉じていた双眸を見開き、跳躍した!

 片手に槍を、もう片手からは龍の舌のように燃え上がる青い炎を解き放つ。
 投げ縄のようにほとばしった蒼炎は異形の巨体を縛り付け、燃やし、苛む。
『何故ダ、我ラハ何処デ間違エタト――』
「お前達が"そう"なった瞬間から、お前達はどうしようもなく誤っていたのだ」
 マレークは云う。魔力が神槍に満ち、そして彼は城壁を蹴って疾駆した。
 何故自ら苦しみを選ぶのか――そんな言葉は、友から何度も聞かされた。
 いまさら問われたところで、惑い、足を止めるほど彼の意志は脆弱ではない。
 それでも、答えが必要だというのならば。
 騎士としてあらんとしたモノどもへの、手向けになるというならば。
「――ヒトは恐れや悲しみに晒され続けることに絶えられないとも。
 いっそ死を覚悟で戦い、哀しみとともにいっそ全てを忘れ去る、それがヒトだ。
 お前の慈悲などなくとも、彼らは彼らで命を懸けそして前に進む――!!」
 弾丸のようなランスチャージが、戒められた騎士を貫き、威力が迸る。
 儚くも前に進もうとするヒトの歩みのように、まっすぐと、苛烈に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

天御鏡・百々
我は道具、ヒトを助けるものなり
故に、吸血鬼に、闇に怯える者がいるならば
我が光でその闇を祓うのだ!

救済も希望も無駄ではない
いずれ我ら猟兵が支配者を打倒し、世界に光を取り戻す!

我が神よ、我に力を貸し与えたまえ!
(『天神の威光』を使用する)

広範囲に攻撃手段を持つこの敵相手では
召喚するようなユーベルコードは不利だな
故に、自己強化からの真朱神楽(武器:薙刀)での近接戦闘で
短期決戦を挑むとしよう

敵の攻撃を真朱神楽の武器受け5と
神通力(武器)による障壁(オーラ防御85)で捌いて接近するぞ
そして破魔71を込めた刃にて
敵の鎧の隙間を狙い攻撃だ!(鎧無視攻撃8)

●神鏡のヤドリガミ
●本体の神鏡へのダメージ描写NG



「我が神よ、我に力を貸し与えたまえ――!」
 闇空が一点にわかに亀裂めいて光の裂け目を生み出すと、
 その光は天御鏡・百々を包み込む柱のように降り注いだ。
 世界を越え、自らが奉じるべき天神の加護を賜うユーベルコードだ。
 ……吸血鬼どもは光を忌み嫌う。弱点だとかではなく本能的な話である。
 その眷属たる異形の騎士団も、兜の下の目を忌々しげに細めた。
『ソノ光コソガ、苦痛ト絶望ノ影ヲ深メテイルトイウノニ……!』
「何を戯言を。世界を闇に沈め、民草を苦しめているのは他ならぬ支配者達。
 ゆえに救済も希望も無駄ではない、いずれ我ら猟兵が世界に光を取り戻す!」
『不可能ナ世迷イ言ハ、ソノ首諸共断チ切ッテヤロウ!!』
 猛然たる勢いで騎士が踏み込む。百々はその威圧感に汗を一つ垂らした。
 なるほど、騎士道を謳うだけはある。敵の技量は明らかに高い。
 されど、臆してはならず。敵が全方位広範囲の攻撃を得意とするならば、
 こちらもまた真正面から戦えばいい――彼女は薙刀を構え、走った!
「我は道具、ヒトを助けるものなり。ゆえに闇に怯える者がいるならば戦おう。
 我が光をもって闇を祓い、恐怖を打ち倒し、安寧をもたらすことこそ使命ぞ!」
 天神との接続は強力であるぶん、その身に大きな負荷をかける。
 残り時間はおよそ一分程度。その間に勝負をつけなければなるまい。
 百々は敵から戦いのイニシアチブを奪い取ろうと、すさまじい勢いで攻めた。
 くるくると舞うような薙ぎ払いを二度三度と繰り返し、退けばさらに刺突。
 武踏によって高められた光の魔力が、その身をヴェールのように覆い、
 血まみれの武器の数々による致命的攻撃を逸らす。
 異形の騎士団は畏れた。まさに天敵というべき百々の輝きを!
『何タル破魔ノ力……! 忌々シイッ!!』
 ガ、ガ、ガガガガガッ!! 刃と刃が火花を散らす!
 一秒が永劫のように感じられる刹那と刹那の攻防の果て、百々は双眸を見開いた。
 見えた――敵の鎧の隙間。貫くべき護りの間隙が!
「我が言葉が世迷い言かどうか、その身で確かめてみるがいい!
 我らは勝つ。そしてこの世界を"闇から救済"してみせようぞ――!」
『ヌウッ!!』
 鉄壁の護りをかいくぐり、薙刀が鎧の隙間を抉った!
 呪われた血が間欠泉めいて吹き出し、異形の騎士団は苦悶の絶叫をあげる……!

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒城・魅夜
……私自身がかつては悪夢という名の魔性の一部、いえ、中核でさえありました
故に答えましょう、あなたたちの抱いている恐怖も悔恨も、そして慈悲も
その方向は過ち壊れ狂ったものではありますが
やはりそれもまた心なのです
そして心とは希望の同義
真にあなたたちが絶望に屈していたなら、
物思うことさえできないただの置物なのですから

ゆえに
ひとがひとであるために
いえ、ひとならざるものでも己自身であるために
そのために希望は、心はあるのです

さあ、あなたたち自身の心の奥を見せてあげましょう
あなたたちもまた……希望の欠片であるということを
私の鏡の森は映し出します
在りし日の、そして今でも持ち続けるあなたたちの心と希望を



『ナンダ……コレハ!?』
 異形の騎士団は、己を包み込んだ風景に戸惑った。
 鏡張りの迷路とでも言うべき空間が、突如として戦場を覆ったのである。
 しかし何よりも驚くべきことは、鏡に映る風景であろう。
『コレハ……カツテノ我々、カ……?』
 然り。鏡に映るのは血塗れた異形の騎士団などではなく、
 一つの屍となる前……在りし日の誇り高き騎士団の姿であった。
 血錆の一つも見当たらぬ白銀の剣盾を誇らしげに掲げ、
 苦しむ民草のために戦う、まさに規範とすべき騎士達の姿だ。
「……オブリビオンよ。あなた達にも、"心"と呼ぶべきものは残っています」
『!? 何処ダ! 姿ヲ現セ!』
 突如響いた黒城・魅夜の声に、異形の騎士団は武器を構える。
 しかし声だけが響くばかりで、肝心の魅夜の姿はとこにもなかった。
「あなた達の抱いている恐怖、悔恨、そして慈悲……。
 それらはもはや方向も誤ち、壊れ狂ってしまったものではあります。
 けれどもそれもまた心なのです――そして心とは、希望と同義なのですから」
『我ラガ、貴様ラト同ジヨウニ希望ヲ抱イテイルトデモ!?』
「その通りです。そもそもなぜあなた達は自ら慈悲を振りまきに来たのです?
 真にあなた達が絶望に屈していたなら、物思うことさえ出来ないでしょうに」
『…………!』
 異形の騎士団は反論しようとしたが、なぜか言葉が出なかった。
 鏡に映る忘れたはずの過去の風景が、彼らの言葉を引っ込めてしまったか。
 誇り高き騎士団……民草の願いを受けて恐るべき吸血鬼に戦いを挑み、
 けれどもついには斃れたその姿……。
『ヤメロ!! 我ラハ"あるじ"ノ下僕、希望ナド存在シナイッ!!』
「けれどもあなた達は、希望溢れていた頃の過去に拠ってこそ存在している。
 それがオブリビオン――あなた達は誇り高すぎたのです。さあ、見つめなさい」
 異形の騎士団は鏡を叩き壊した。だが迷宮は脱するには広大すぎる。
 映し出される風景……吸血鬼に最期まで抗い、死してなお誇りを守った戦士達。
 いつか訪れる希望の世界を信じ、その礎にならんとした者達の……。
『オ……オオオオオオッ!!』
 光こそが影を濃くさせる。
 その言葉の意味を、異形の騎士団は自らの身で味わうこととなったのだ。
 すなわち。
 闇に堕ちたはずの自分達も、また形を違う希望を持ち続けていたという事実が、
 オブリビオンとしてのアイデンティティをぐらつかせるという形で、
 彼らの心身に強烈な負荷をかけてしまったのである。
 出口なき鏡の迷宮の中、懺悔するように異形の騎士団は苦しみ続ける……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミラリア・レリクストゥラ
…貴方方は、今でも矜持を忘れたわけではないのですね。

【WIZ】

けれど、いいえ。貴方方の言う『それ』は、安らぎでも、苦しみを軽くするものでもありません。
矜持という旗を、絶望という色で染め上げられ、死を経ても苦しめられる。
恭順を強いられ、過去の自分の似姿を自らの手で絶望に染める事になる!
そんな貴方方自身の苦しみを!今を生きている人に、強要できる道理はありません!!!

…怒りはありますけれど、極めて冷静です。
唄を続けましょう。埋葬を続けましょう。そう、【其れは墓守にして、埋葬の代行者】…
戦いは不得手ですが。あの顔を直接張らないと、気が済みません!


あ。これは真の姿じゃありませんし、POWでもないですよ?



 鏡の迷宮を脱した異形の騎士団は、もはや威風すら失っていた。
 己らもまた、過去の希望の欠片を持っていた――だからこそ慈悲を与えようとした。
 世界を害し人々を滅するべきオブリビオンには、あってはならぬ事実。
 それは吸血鬼の下僕たるアイデンティティを大きく揺るがし、
 なぜ戦うのか――彼らの問うた事実を本人に突きつけたのである。
『……ダガ、我ラハ"あるじ"ノ下僕。人間ハ、滅ボサネバナラヌ……。
 タトエ嘗テノ我ラノ残滓ガ、コノ異形ノ肉体ノ中ニ遺ッテイタトシテモ!!』
 獣じみた咆哮を、ミラリア・レリクストゥラは悲しげに見つめた。
「……あなた方は、いまでも騎士としての教示を忘れてわけではないのですね。
 けれどもそれを自覚してなお抗いがたい、それが吸血鬼の支配だとは……」
 ミラリアは痛ましげな表情で頭を振り、眦を決した。
「けれど、やはりあなたがたの"それ"を認めるわけには参りません。
 押し付けられる死など、安らぎでも苦しみを軽くするものでもないのですから!」
『ナラバ……抗ッテミセロ、猟兵ィ……!!』
「ええ、抗います。あなたがたのすべての言葉に"いいえ"と答えることで。
 矜持という旗を絶望という色で染め上げられ、死を経ても苦しめられる。
 ――恭順を強いられ自ら絶望を振りまく、あなたがた自身を終わらせることで!」
 異形の騎士団はその巨体を一回り大きく膨れ上がらせた。
 否、強烈なプレッシャーが見せる錯覚だ。だが威力はそれに匹敵しよう。
 ミラリアは怒りを抱きながらも、じっと冷静にその異形を見つめた。
 そして歌う――埋葬の唄を。残骸を大いなる大地へと還す唄を。
「どれほど手を伸ばしても どれほど歩を進めても 輝きは戻らない――。
 今を生きる人々の 明日を掴もうとする その力強さを信じて 私は戦う。
 過去よ 眠りなさい。戦い疲れた人々よ 剣を下ろし どうか眠りなさい……」
 疾走する異形の騎士団を、めくれあがった大地が飲み込もうとした。
 すさまじい乱打が大地を削る。しかしついに異形の手足を拘束する大地!
 そして! ミラリアは……ガラ空きの騎士団めがけ、走った!
「あなたがたを憐れみましょう。あなたがたという犠牲を私は嘆きましょう。
 そして礎として前に進みます。どんな過去も大地は受け止め刻むように!」
『オオオオオ――ガハァッ!?』
 勢いを乗せた強烈な一撃が、騎士の兜を叩きのめした!
 ミラリアの全身に衝撃が走る。けれども彼女はあえてそうしたのだ。
 惜別を籠めて。怒りを籠めて。そして敬意を籠めて。
 自分達は過去(あなたたち)を超えていくのだと、決意を示すように――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

冴木・蜜
……、簡単です
死は救いではない

生きていなければ苦しむこともありませんが
幸せを享受することも無い
この絶望に満ちた世界でも
生きることは苦しみだけではない

貴方が仰ったように
影があれば必ず光もある

まだこの闇の中に在る世界にも
この人類砦に集まったこの子達のような光が
未来ががある

死は断絶であり終わりです
私は理不尽な終わりが許せない
未来を創るのは彼ら自身なのですから

だから私は毒となる
生きることを諦めない、
彼らの未来を繋ぐために

騎士の武装を『偽毒』へと変え
そのまま持ち主の身体を這わせ
触れる全てを融かす

その間に私も身体を液状化
彼の足下に這い進み
全て包み込み融かし落としましょう

知ってますか
明けない夜はないのですよ



『ッグゥ……!!』
 いくら五つの脳と大量の命数を持つ異形の騎士団とて、
 猟兵達の猛攻の前には敵わず、ついに膝を突き肩で息をする羽目になった。
 もはや配下達はなく、物量差は圧倒的。己の敗北も揺らぐまい。
『……マダダ。我ラハ与エネバナラヌ、慈悲ヲ……! 死トイウ終ワリヲ!』
 されど、騎士団は立つ。歪んだ慈悲を以て人々を殺すために。
 子供達は怯え、しかしその間に立ちふさがる者がいた――冴木・蜜。
「その通り。死とは終わり、断絶です。私は理不尽な終わりが許せない。
 だから私達は戦うのですよ。死は決して、救いなどではないのですから」
『何ヲ言ウ! 生ガドレホドノ苦シミヲ生ムカ知ラヌハズハアルマイ!』
「それでも、生きていなければ幸せを享受することもありません。
 ……この絶望に満ちた世界でも、生きることは苦しみだけではないのです」
 もしもこの世界に残っているのが絶望と苦しみだけならば、
 どうして子供達は自らの住処を自分達で護ろうとした。
 どうして言われるがままに逃げ出さず、今も猟兵を見届けようとしている?
 それは彼らが、彼らなりの日常をこの砦で過ごしていたからに他ならない。
 光があれば影がある――ならば、影は光の実在を証明しもするのだ。
「まだこの闇の中に在る世界にも、あの子達のような光が、未来があるのです。
 だから私は彼らに代わり戦いましょう。敵を蝕む毒となって――」
『……!!』
 その時、異形の騎士団は気付いた。
 手に持つ無数の武器が、呪わしい毒に変じていることに!
『コレハ!!』
 毒液と化して体を這い上がろうとする嘗ての武器を、騎士団は投げ捨てた。
 しかし、敵を前にそのような隙を見せてはならないことを、彼らは知っている。
 はっと我に返り視線を戻す――蜜はもうそこには居ない。
「ここですよ」
 足元! 見下ろした瞬間、液状化を解除した蜜が足元を絡め取る!
『オ、オノレ……!! 我ラヲ病毒デ蝕ムツモリカ……!』
「こんな戦い方は、光に包まれた希望ある人々にはそぐわないでしょう。
 けれどもそれでいい。私は、けして名誉や称賛がほしいわけではないのです」
 悶え逃れようとする騎士団。だが蜜はもう捕らえた、けして逃さない。
「ただ、命を救えればいい。死ぬべきでない命を、護れればいい……」
『何故ダ、コノ闇ノ世界デ何故ソコマデ光ノ存在ヲ信ジラレル……!」
「――知らないのですか?」 
 蜜は笑みのようなものを浮かべた。
「明けない夜は、ないのですよ」
 その言葉は、不安げに見守る子供達の心に、深く深く刻まれた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オーガスト・メルト
別に好きで苦しい事を選んでる訳じゃない。
何もせずに後悔する方が、抗って死ぬよりずっと苦しいってだけだ。

【SPD】連携・アドリブ歓迎
デイズ、ナイツ、戦闘顕現だ!
『うきゅー!』『うにゃー!』
デイズをランスに、ナイツを万能バイクに変形させて戦闘する。
これなら敵の怪馬とも【空中戦】で渡り合えるだろう。
敵の攻撃を【見切り】、【ランスチャージ】と【逃げ足】のヒット&アウェイで戦う。
いざとなればUC【竜二輪変形】で加速して畳みかける。

そもそも…人を護るのに自分の苦しみなんて考慮する必要ないだろうが。


紬雁・紅葉
【風雷剣】

戯れを
羅刹紋を顕わに戦笑み

先制UC「土曜」に雷属性を付与し最大範囲展開
強化効果を味方にも付与
天地に雷奔る

天羽々斬を鞘祓い十握刃を顕現
正面からゆるゆると接敵
射程に入り次第破魔雷属性衝撃波UCを以て回数に任せ範囲を薙ぎ払う

敵の攻撃は躱せるかを見切り
躱せるなら残像などで躱し
そうでなければ破魔衝撃波オーラ防御武器受け等で受ける

窮地の仲間は積極的にかばい援護射撃

騎士に成る時、主と剣に誓いを立てると聞きます
貴方の誓いは苦しみに背を向け逃げ惑う事ですか?

苦難に遭わば苦難を斬る
闇に遭わば闇を斬る
これぞ剣の道なれば

剣心なく騎士を騙る痴れ者!去り罷りませ!

※アドリブ、緊急連携、とっさの絡み、大歓迎です※


麻海・リィフ
アドリブ、即興連携歓迎
【風雷剣】

笑̪止!
立ち向かう事則ち生命!
骸は生き延びた者に勝てぬ!

空中浮遊残像ダッシュで接敵

剣を回転させ念動衝撃波を乗せたUCで串刺しチャージ
二回攻撃念動衝撃波シールドバッシュで鎧砕き武器落とし
地形を利用し「陣」の魔力を付与し力を増す
空中戦歓迎

敵の攻撃は見切り第六感残像で躱し
三種の盾と武器を駆使し念動衝撃波オーラ防御等で受け
カウンター念動衝撃波シールドバッシュで吹き飛ばす

窮地の仲間は積極的にかばう

その過大な盾は自ら傷付く事への怯懦
その過剰な武器は勇気揮う敵への恐怖
折れて捻じれた心を恥じもせぬ
今の貴様のどこが騎士だ!?

貴様が失ったは命ではなく勇気!
困難に立ち向かう心と知れ!



 ――ガガガガガガッ!!
 闇をも砕く雷が戦場を覆い、天地は鳴動した。
 紬雁・紅葉の生み出す雷光は地面に九曜の紋を描き、味方を助ける陣となる、
「騎士に成る時、主と剣に誓いを立てると聞きます。
 貴方の誓いは苦しみに背を向け逃げ惑う事ですか?」
 微笑みを浮かべた羅刹はゆるゆると間合いを詰め、嵐の如くに斬りかかる。
「苦難に遭わば苦難を斬る。闇に遭わば闇を斬る――これぞ剣の道なれば、
 剣心なく騎士を騙るあなたは痴れ者! 去り罷りませ、過去の残骸よ!」
『ヌウッ!!』
 練達に名高きブラッドスピットナイツをして、紅葉の撃ち込みは御しがたい。
 さらに恐るべきは、同時に襲いかかる麻海・リィフの存在だろう。
「生命とはすなわち立ち向かうことと見たり! それを否定して慈悲とは笑止!
 骸は生き延びた者に勝てぬ――ここが貴様の墓場と知れ、偽りの騎士よ!」
『我ラノ騎士道ヲ誹ルカ、小娘ドモ……!!』
「無論! ならばなぜ貴様はその過大な盾で自らをかばおうとする?
 なぜ過剰な武器を振り回す? 折れて捻れた心を恥もせぬ残骸目!
 自ら傷つくことを怯懦し勇気振るう敵を恐怖する、それが貴様の本性だ!」
「死を以て慈悲とするなどと、戯れを申しませぬよう――」
 ふたりのコンビネーションは絶人の域にあり、
 全方位を見通し前後左右上下の攻撃をも受け流す血塗れの騎士団をして、
 防戦一方にならざるを得ないほどの凄まじさであった。
 怒りだ。ふたりを突き動かすのは、外道の騎士に対する憤怒。
 剣持つ者、戦いを選んだ者としての矜持が、ふたりを突き動かしていた!
「デイズ、ナイツ、戦闘顕現だ! 俺達も攻めるぞ!」
 うきゅー、うにゃーと珍妙な龍達が鳴き、突撃槍と万能バイクに変形した。
 オーガスト・メルトは颯爽とそれに乗り込み、ギャリギャリと疾走する。
 狙いは防戦にある敵の護りを貫き、撃滅せしめるランスチャージだ。
『――嘗メルナァッ!!』
「「「!!」」」
 されど、異形の騎士団にもまた戦闘者としての誇りがある。
 裂帛の気合とともに全方位への嵐じみた攻撃を乱舞し、ふたりを退かせ、
 さらに空より雷鳴の如きいななきをあげる怪馬を呼び来る!
 怪馬スレイプニルの蹄はそれ自体が神の振り下ろす裁きの槌めいており、
 加えて異形の騎士団は空中を自在に飛行し、猟兵達を空から倒そうとするのだ!
「猪口才な……!」
 リィフは紅葉と視線をかわして頷きあい、三種の盾を伴に飛翔した。
 そして空を悠々駆け回る怪馬に食らいつき、その動きを減じる!
「貴様が失ったは命ではなく勇気! そのような者が我らを見下ろすな!
 貴様が伏せるべきは地に他ならず、受けろ――ストヲムルゥラァッ!!」
 ごおうっ、と回転剣の生み出した嵐の壁が、空の騎士団を捕らえた。
 そして怪馬を貫く必殺の刺突! スレイプニルは苦しみ悶え霧散!
『我ガ騎馬ヲ一撃デ仕留メルダト……!?』
「九曜陣は裡に捕らえし敵を逃さず。迂闊ですよ」
『!!』
 大地に落下した異形の騎士団に、紅葉が襲いかかった。
 再びの十握刃による驟雨の如き撃ち込み。回避行動が取れない!
 そしてなおも荒ぶる稲妻が、ついには護りすらも砕き……間隙を、拓く!
「見えた――結局は俺達の力に抗いきれない、それがお前の限界だ」
 そして大地を疾走するオーガストは、己を一本の矢とした。
 バイクが加速する。めがける先はガラ空きの胴!
「俺達だって、別に好きで苦しいことを選んでいるわけじゃあない。
 何もせずに後悔するほうが、抗って死ぬよりずっと苦しいってだけだッ!」
 ギャルルルルル――KRAAAAAAAASH!!
 弾丸じみた速度のバイクランスチャージが、血塗れの鎧を貫いた!
『ガハ……ッッ』
 異形の騎士団は滝のような量の血を吐いた。呪われた血を。
「……人を護るのに、自分の苦しみなんて考慮する必要がない。そういうことさ」
『オ、オオオオ……ッ』
 なおもあがこうとする騎士を稲妻が打ち、そしてオーガストはさらに深く槍を突き刺す。
 闇に抗い未来を掴む。その覚悟を、この世界に示すかのように!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジャガーノート・ジャック
★レグルス

(ザザッ)
諦めてしまえば
望む物は手に入らないからだ。
折れて屈してしまえば願いを果たす事など叶わないからだ。

それを知るから本機達も
敗北を喫し血を流し
呪を刻まれようと戦い抗う。
(その先にしか、"約束"は果たせないのだから。)

この砦の子らとて同じだろう。
嘗てのお前達とて同じだったのだろう、騎士だったモノのなれの果て。

(相棒の眼差しが雄弁に"来い"と語る。良いだろう。)
("追牙"。
先んじて血路を拓き征く相棒を、【早業】【ダッシュ】で追う。)

言葉少なの相棒も代弁するなら――
"今一瞬の反逆でも、永劫の支配に傷を刻め。
続く者たちへ遺す道は、そうして作られたのだから"。

オーヴァ
以上だ。(ザザッ)


ロク・ザイオン
★レグルス

(こどもたちは、逃げなかった
己の惨喝よりも「強かった」
抗い、挑む、生きる眼差し
おれは、それが、とても好きだ)

(言葉無きこころで出せる答えは単純だ
刃の切っ先を病葉に向け)
(喧嘩を売ろう)
――"きらい"。
("LIGHTNING"
総攻撃の態勢を整える前に一撃
【早業】で【鎧砕き】)

(苦痛、死、汎ゆる不快を厭い拒むのは
生きているからだ
お前たちも末路を知りながら
それでも立ち上がって、世界に、覆し難い縄張り争いに
抗ったのではなかったか)

(今一瞬の反逆でも、永劫の支配に傷を刻め
続く者たちへ遺す道は、どんな世界でもそうして作られたのだから)
(ほら、今だって続いてくれるんだろ、相棒)



 ……あの時。
 己が上げた惨喝の声を聞いて、子供達は逃げなかった。
 あれは弱きものを射すくめさせる森番の声。
 弱肉強食の摂理に支配された森の、獣達を諌める神なるけものの聲だ。
 それに従わなかったということは、つまり、彼らの住処を護ろうとする心は、
 ……つまり"森"を護りたいという気持ちは、それだけ強かったということ。

 この世界で経てきたいくつもの冒険を、ロク・ザイオンは思い返す。
 こぼれ落ちた悲劇があった。
 狂い荒れた獣がいた。
 そして何よりも、唾棄すべき人間の邪悪があった。
 斯様なものは病と何が違うのかと、嘆き哀しみもした。
 相棒はその痛みに苦しみ、雨の冷たさが熱を奪い去ったこともある。
 けれども――ああ、けれども、この世界にはたしかに、"ひと"がいるのだ。
 病どもに抗い、昇らぬ太陽をそれでも夢見て戦う者達が。
 もはやことばを失った己でも、"それ"はとても好きだとはっきりわかる。
 ことばなどいらないのだ――ただ己のこころに、意志があればそれでよい。

 ことばなき獣は、死した兵団の問いかけにことばで応えることが出来ない。
 圧倒されるような攻撃を前に、ロクはひたすらに刃を振るい抗った。
 これが答えだ。この姿が、この戦いが、この力が、おれの牙が答えだ。
 お前達病葉を、ひとを苦しめるものを、おれは灼き尽くす。
 役目ではない。そうしたいと己が思ったのだから。ゆえに、灼き尽くす。
 ジャガーノート・ジャックはそれを見守っていた。
 彼が手を出すことも出来た――だが、あえてそうしない。
 ことばなき獣が、ことばなき叫びで答えを示そうとしていたから。
《――わかるか、死した騎士達よ。我らが抗い続ける意味が》
『……ッ!!』
《――諦めてしまえば、望むものは手に入らない。
 折れて屈してしまえば、願いを果たすことなど叶わない。
 本機らはそれを知っている。だから敗北を喫し血を流し、呪いを刻まれようと》
 そう、何があろうと。
 たとえ己の命を燃やそうと、決して、戦いを止めはしない。
 止まりはしない。……果たすべき約束は、その先にあるのだから。
《――本機らは、戦い抗おう。何度でも立ち上がり、抗ってみせよう》
『グ、ゥウウウ……ッ!!』
《――かつてのお前達とて同じだったのだろう。騎士だったモノの成れの果てよ》
 騎士どもは……言葉で抗おうとした。だが言葉は出なかった。
 もうとっくに彼らもわかっているのだ。
 猟兵が強いこと。
 猟兵が戦う理由。
 それに己が勝てないこと。
 もはや歪み堕落し捻じ曲げられた己達も、嘗てはそうだったのだと。
 もう、わかっている。
 それでも、戦いをやめることは出来ない。
 ジャガーノートにも――少年にも、それは理解できる。
 彼が止まれないのと、ある意味では同じだったからだ。

 ――がぎんっ!!
 獣の一撃を受け、異形の騎士団がざりざりと大きく退いた。
 ロクは相棒を振り返り、頷いた。ジャガーノートもまた、頷いた。
 そしてロクは騎士が手袋を投げつけるかのように烙印の刃を敵に向け、言った。
「――"きらい"」
 KRAAAAACK!!
 闇を雷光が切り裂き、灼く、
 体勢を整えようとしていた異形の騎士団を、鞭めいて打ち据える。
 そしてロクは走った。相棒が背中を追ってくると信じて。
 ――稲妻を纏う黒き豹が続き、両者は並ぶ。ふたつの牙が鈍く輝く。
 道とは、誰かが踏みしめたあとに出来るものだ。
 彼らの背中は、子供達にとっての"道"だった。
 反逆は痛く苦しい。時には死ぬことだってあるかもしれない。
 けれども。たった一度の反逆が、永劫盤石の支配をも揺るがすかもしれない。
 吸血鬼どもはそれを恐れる。だからこそ子供達を殺そうとした。
 ゆえにこどもたちよ、見よ。あれなる獣達の、騎士を目指す者の背を見よ。
 その輝きを目に焼き付けろ――子供達もまた、ぐっと見つめ続けた。
『道ヲ作リ出スタメ、苦シク困難ナ叛逆ニ挑ム、ソレガ、貴様ラノ……』
《――そうとも。我らの、強さだ》
 言葉は以上(オーヴァ)。この一撃を以てすべての回答とす。
 雷光の道を天地に刻み、いま燃え上がるふたつの牙が鋼を抉る。
 螺旋を描いて輝くは流星の如く。闇を切り裂く一撃――到達!!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ネグル・ギュネス
そうだな、お兄さん全く否定はしないよ?
勝てない戦いに挑んで傀儡にされたり、綺麗事を口にして結局人残して死んだり──嗚呼、全く遺された人を考えないったらありゃしない

だがな、騎士さん
それで諦めっちまうのは、負け犬の理論さ
心に雨を降らしたまま、俯いて生きるってのは…ちょっと御免だ

囚われた人達もさ、アンタもさ
死んじまったけど、救えた人がいた事まで、後悔してんのかい?

──なら、今度は俺が救ってやるさ

【強襲具現:深き海の瞳】発動
相棒の力で、戦士の魂を送ってやる

攻撃、動きを撹乱、回避しながら観察し、苦しみを抱えた頭に、過去に、射抜く弾丸を放つ

間違ってなかったよ、生前も、生き様も
俺は覚えとくから、もう休もう?


ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
愚か者め
自ら苦しみを選ぶ?笑わせるなよ
「ひと」は皆、幸福のために戦う権利を持っている
今は果てなく思える苦しみに果てがあると信じ、今に抗う権利を
――苦しみに身を投じたのではない
足掻く覚悟を決めたのだ

私が抗い続ける理由を見せてやろう
――「それでも、世界は愛と希望に満ちている」

翼で飛翔、全速力で接近する
武装による攻撃の軌道は可能な限り第六感で見切り
たとえ着弾したとて覚悟で耐え抜いてやろう
貴様のその情念、全て呪詛と変え叩き込んでやる
自らの愚行に焼かれるが良い
さァ行くぞ蛇竜
お前ならこの程度の呪詛、載せても壊れやしないだろ
この愚か者に思い知らせてやろうじゃないか

これが――我々の齎す【済生】だ



『……解ッテイタノダ』
 異形の騎士団は、ボロボロの有様で呟いた。
『解ッテイタ。人ガ抗イ足掻コウトスルノハ何故ナノカ。
 何故、強大デアル"あるじ"ニ叛逆シヨウトスルノカ……。
 ……解ライデカ。我ラモマタ、ソウシテ抗イ堕落シタノダカラ』
「愚か者め。そうまでして血に塗れて、いまさら思い出したのか」
 ニルズヘッグ・ニヴルヘイムは、邪竜に相応しく傲慢に空から見下ろした。
 その瞳に籠もったのは侮蔑であり冷笑であり、そして哀憫でもあった。
「"ひと"は皆、幸福のために戦う権利を持っている。
 果てなく思える苦しみに、いつか果てがあると信じ、今に抗う権利を持つことを」
『苦シミニ身ヲ投ジタノデハナク――足掻ク覚悟ヲ、彼ラハ決メタノカ』
 そうとも、と龍は頷き、別のほうへ目をやった。
「なあ、そうだろう? ――ネグル」
 水を向けられた男……ネグル・ギュネスは、顎に手をやりこくりとうなずく。
「ああ。けれどさ、何故っていう疑問を全く否定はしないよ。
 勝てない戦いに挑んで傀儡にされたり、綺麗事を口にして結局人遺して死んだり。
 ――嗚呼、死にゆく人ってのは、まったく遺された人を考えないったらない」
「…………」
 ニルズへッグは、ネグルの言葉を静かに聞いている。騎士達もまた。
「だがな」
 そしてネグルは、"青く変化した瞳"で騎士団を見やった。
「それで諦めっちまうのは、負け犬の理論さ。オレ達はそれには付き合えない。
 心に雨を降らしたまま、うつむいて生きるってのは……ちょっと、御免だ」
『……貴様ラハ、勝テルト? "あるじ"ラニ』
「勝てるとも」
 ニルズへッグが答えた。
「たとえ100%勝てないと言われようとも、足掻き続け1%を掴んでやろう。
 "たかが絶対"など、私が抗い続ける理由を奪うには足りん。いや、私"達"、か」
「……後悔を、したくないからな」
 ネグルの瞳は、騎士達の過去を垣間見ていた。
 己らの誇りのため、苦しみ喘ぐ民達を救うために立ち上がった誇り高き騎士達。
 そして敗北の屈辱に塗れ、ついには下僕に作り変えられた者達の姿を。
「アンタらだって、何もかもを後悔しちまったわけじゃないだろう?
 だとしたら、わざわざ"慈悲"なんて言ってこんなことしやしないさ」
『…………』
 ネグルの問いかけには応えず、異形の騎士団は立ち上がった。
『我ハ、吸血鬼ノ下僕。"屍塊驍騎"ブラッドスピットナイツ、ナリ!!
 サあ、抗オうとスる者達ヨ、貴様らノ名ヲ名乗れ! そシて抗ってみせロ!!』
「……ネグル・ギュネス。アンタらを救う者だ」
「ニルズヘッグ・ニヴルヘイム――今こそ私の抗う理由を見せてやろう」
 ネグルは静かに構えを取り、ニルズへッグは大きく、大きく翼を拡げた。
 世界は闇に包まれ、悪鬼どもは嗤笑し、絶望が死をもたらす。それでも。
「"世界は、愛と希望に満ちている"――それを、教えてやるッ!!」
 そして最期の戦いの幕が落ちた。もはや騎士団に人の言葉はなかった。
 吸血鬼の走狗は獣じみた絶叫をあげ、飛翔するニルズへッグを落とそうとする。
 さらにネグルをも切り裂こうという、満身の力を籠めた斬撃嵐。
 剣が、槍が、弓矢が、槌が、ありとあらゆる武器が全方位を荒れ狂う!
 しかし、見えている。ネグルの持つ瞳、相棒から借り受けた力は見えている。
 その相棒の親友たる邪竜には、目はなくとも覚悟があった。
 たとえ一撃二撃受けようとも、けして落ちまい、退くまいという覚悟。
 鱗持つ竜人へと変じたニルズへッグは、受けた傷を、殺意を、憎悪を、
 そして明日をたくそうとする騎士達の覚悟と慈悲を、呪いへと変えた。
「さァ行くぞ蛇竜――この愚か者に、すでに死した者に思い知らせてやれ。
 ……もはや、貴様が試さずとも、この世界には希望の芽があるのだと!」
 竜槍が膨大な呪詛の力を籠めて渦巻く。騎士はそれを防ごうとした。
 だが――異形の腕達は、ネグルの放った弾丸が、根本から打ち抜き脱落せしめる。
「間違ってなかったよ。アンタの過去も、その生き様も」
 青い瞳に哀しみと慈悲をたたえて、ネグルは言った。
「オレ達は憶えておくよ――だからもう、休もう?」
『――……』
 そして、済生の槍が降る。
 異形の騎士――否、かつて高潔であった騎士達の成れの果ては、
『嗚呼』
 大きく腕を広げるようにした。
『我ラの過去ニは――意味が、あったのだな』
「…………ッ!!」
 ニルズへッグが、鋒を押し込む。
 その一撃が、騎士どもの脳を、命数を、その存在核を貫いた。

 戦い終わり、戦場だった場所に風が吹く。
 死して屍拾うものなし――堕ちた騎士は骸すら遺さず消え去る。
 けれどもその戦いは、その在りようは。
 猟兵と、子供達の心に、たしかに刻み込まれ、遺ったはずだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『生き続けるために』

POW   :    拠点近くにある木々や石材を片っ端から確保する。

SPD   :    食糧や水など、生存に必要不可欠な物資を片っ端から確保する。

WIZ   :    ユーベルコードや知識によって効率的に資材や物資を確保する。

👑5
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 戦いは終わった。
 あとに残ったのは凸凹の地面と、凄惨な戦いを知らせる武具の数々。
 幸いなことに、"人類砦"そのものは、猟兵達の活躍でほぼ無傷で遺されていた。
 だが。
「……ここはもう、離れないとダメだな」
 少年少女達のリーダーである若者、アルが言った。
「ここにいたら、きっとまた次の追っ手が攻め込んでくると思う。
 隠し通路も潰されちまったし……はーあ、次はどこに行こうかなあ」
「そう言うだろうと思って、実はいくつか候補地をリストアップしておいた」
 どうやら集団の頭脳役らしい背の高い少年、ナイベールが言った。
「あるいは、次は俺達だけでもここを守れるように、もっと護りを固めてもいいかもしれない」
「オレはそっちのが賛成だな! なんかここで逃げたら負けたみたいじゃん!」
 狩人班のリーダーであり、腕自慢の大柄な若者、ブランドが笑った。
「それにほら、助けもあるしさ。いけんじゃね?」
「……いや、助けてくれるかどうかはきちんと聞かないとダメでしょうが」
 見張り役でもある目利きの少女、レンダのツッコミに、ブランドはからから笑った。
「あ、あの……そういうわけだから……もう少し力を、貸してくれませんか?」
 見守る猟兵達におずおずと言い出したのは、彼らよりやや幼い少女のラミー。
 そのラミーが抱く赤子は、今はもうすやすやと穏やかに眠っていた。
「助けておいてもらって、まだ力を借りるってのも、都合がいいかもしんねえけど……。
 俺達、もうこれまでみたいに吸血鬼のもとで暮らすのは、ゴメンなんだ」
 ラミーと並んで歩み出たアル少年が、この通り、と頭を下げる。
 もう少し、彼らに手を貸してやるのも……希望を護るための、大事な仕事だろう。

●第三章での備考
『1:この共同体のこと』
 この共同体は、親を亡くしたり口減らしに捨てられたりして身寄りを失くした子供達のコミュニティです。
 ほとんどの子供達は血が繋がっておらず、家族はいないか逃げ出してきました。
 そのため、彼らにここ以外の居場所はありません。
(もっとも彼らはそれなりに自給自足してきたので、帰属意識が強いようです)
 子供達は、この共同体のことを『水晶村』と呼んでいます。

『2:NPCのこと』
 この共同体には何人もの子供達がいますが、OPなどでも登場した名有りのNPCは以下のとおりです。
 ・アル(アルベルト)
  数え年で13歳前後。責任感が強く、リーダー役を買って出ている。
 ・ラミー(レイミア)
  数え年で11~12歳。炊飯や洗濯などを担当している。気弱だが優しい。
 ・ナイベール
  14歳。とある街から自らの意志でここへ来たらしい。知識が豊富。
 ・ブランド
  数え年で13歳前後。アルのよきライバルで、腕自慢なため狩りを担当している。
 ・レンダ(ブレンダ)
  13歳。元は狩人の娘で、目がいい。一同の中では仲裁に回ることが多い。

 と、いったところです。
 全員と絡む必要はないですが、要望があれば出たり出なかったりします。
(要望がなくても顔を出すことがあるかもしれません。必要なければご明記を)
 なおOPなどで描写されている、ラミーが抱えている赤ん坊についてですが、
 どうやらこの子は最近拾われた捨て子のようです。
(なお、ムルヘルベルは呼んでも出れません。その点よろしくお願いします)

 NPCに絡んでもよし、ご参加様同士でやりとりをしていただいてもよし、
 あまり行動にとらわれず自由にプレイングしていただければと思います。

●プレイング受付期間
 これまでとちょっと違うのでご注意ください。
『2020年 03/19(木)08:31』
 から、
『2020年 03/22(日)13:59』
 まで、
 とします。
 これまでの二章と異なりあすからの受付となりますのでご注意ください。
(もちろん開始前に出していただいてもいいですが、確実に再送をお願いすることになります)
穂結・神楽耶
リア様/f04685と

生きていくだけの気力があるなら…
なにはともあれご飯ですね!
食のクオリティアップは日々のやる気に繋がりますし、
ここはひとつ、保存食づくりのお手伝いでも。

リア様、材料はすべてこの辺りで手に入るものでいきましょう。
お肉はこっちの香草と合わせると美味しくなりますよ!
燻して保存も香りも良くして。
骨は硬いので何かの罠か、武器に使えるかもしれませんね。
どうぞ使ってください。

ね、リア様。
…ひとって、本当強いですね。
種としては弱くても。…こうして、明日を掴もうとあがく力がある。
暗く居場所がない世界に光を灯そうとしている。
今を生きる彼らの明日が、もっと希望に溢れたものになりますように。


リア・ファル
神楽耶さん(f15297)と

良い食事に良い睡眠!
生きること是即ち戦いってね

保存食だね、備えあれば憂い無しってワケだ
美味しければ元気も沸いてくるってものさ

オッケー、神楽耶さん
この辺の乾いた木々なら種類もあるし
適切な枝はモチロン罠に
残りは燻製用のスモークチップやウッドを自作できそうだ

……自作したウッドで燻製にすれば日持ちもするし
コレも味わい深いよね

ヒトは強いよ、本当に。

自分が受けた絶望が
誰かには訪れないようにと戦えるヒトもいる

戦えないヒトも、いるけれど
強いもの、輝かしいものだけが生きる世界になったら、
弱いもの、暗いものには生きる場所が無くなっちゃう

ボクは、どちらのヒトの為にも
此処にいる。そう思うよ



「ご飯にしましょう!」
 穂結・神楽耶はにこやかに微笑みながら、ぽんっと手を合わせた。
 子供達はてっきり肉体労働から入ると構えていたようで、きょとんとする。
「ご飯?」
「お家の修理とか増築とか、しなくていいの?」
「もっと大変なことから始めると思ってたのに」
 たしあにそれも大事なことです、と頷く神楽耶。
「焦る気持ちもわかるよ。けれど、生きることはこれすなわち戦い、ってね。
 何事もいい食事といい睡眠がなければ始まらないんだよ、諸君?」
「ええ、リア様の言う通りでございます。食の向上は日々のやる気に繋がりますし」
 リア・ファルの言葉にもう一度頷き、神楽耶は子供達を急かした。
「というわけで、さあ、さっそく外へ参りましょう」
「「「外に?」」」
「なるほど、ここにあるもので調理するわけだ。いいアイデアだね!」
 ……という流れで、彼女らは保存食づくりのために集落の外へ出たのである。

 しかし楽しい保存食づくりの冒険は、早くも暗礁に乗り上げてしまう。
 それはどうしてかというと……。
「まさか、こんなここまでとは思いませんでした……」
「……ひどいね、これは。この世界の基準から見ても相当だよ」
 神楽耶とリアは揃って顔を顰め、枯れ果てた土地を見下ろしていた。
 そう、問題はこの水晶村の周辺環境が、あまりにも劣悪だったということだ。
 ダークセイヴァーではめったに日が差さないため、そもそも土地が弱っている。
 それを差し引いても、この殺伐ぶりはあまりにも目に余った。
 裏を返せば、そんな僻地でしかヒトの自立は赦されていないということでもある。だがふたりが顔を顰めていたのは、なによりも子供達のことだった。
 こんな場所で、今日まで彼らは助け合い生きてきたのだという事実。
 彼らが逃亡ではなく、この村を死ぬ気で守ろうとしたのも納得できた。
「さすがに使えるものがまったくない、ということはないでしょうけども……」
「うん、その開拓もボクらの仕事と見た。頑張ろう、神楽耶さん!」
 リアは明るい表情を取り戻すと、くるりと振り返り子供達に微笑みかける。
「そういうわけだからみんな、普段はどこで素材を採ってるか教えてくれる?」
「……それなら、あの、わたしが……」
 おずおずと一団から前に出たのは、赤ん坊をあやしていた少女……ラミーだ。
「みんなのなかで一番料理してるの、あたしだから。場所もわかり……ます」
「それは頼もしい! よければボクらに教えてくれないかな?」
「一緒に頑張りましょう、ね?」
 ラミーは上目遣いにふたりの顔を見つめながら、こくんと頷いた。
 いまさら子供達が猟兵を警戒するはずはないが、彼女は引っ込み思案らしい。
「あとはボクのほうでデータを集めて……と。よし、改めてしゅっぱーつ!」
 子供達を先導するリアの姿を、神楽耶はにこにこと見つめるのだった。

 子供達の知識とリアのデータ分析、そして神楽耶の知恵が合わさり、
 それからの探検と採集は好調に進んだ。
 子供達も知らなかった有用な素材を、リアが数多く発見してくれたのだ。
「あら、燻製用のチップですか? 保存食には最適ですね」
「うん。あとはこっちの木材も、建築用に使えると思う」
「…………」
 話し合っていたふたりは、ラミーの視線に気づき、揃って振り向いた。
「どうしたんだい? なにやらきょとんとしてるけど」
「わたくし達、何かいけないことをしてしまいましたか……?」
「……ううん。あの、えっと、"闇の救済者"様がこんな方達だって思わなくて。
 わ、悪い意味じゃなくて! なんていうか、もっと大きな体をしてるのかと……」
 リアと神楽耶は顔を見合わせ、吹き出した。
「まあ、たしかにそういう方もいらっしゃいますね。ネグルさんとか」
「それに比べると、たしかにボクらは救済者なんて大仰なものらしくないよね」
 くすくすと笑い合い、少女に視線を合わせる。
「きっと皆様の間では、わたくしどもは物語の騎士のようだったのでしょう。
 けれども、この通り何の変哲もない身です。もう少し楽になさってください」
「うんうん。ボクとしては名前で呼んでくれたほうが嬉しいかな!」
「……じゃあ、カグヤさまとリアさま?」
「もう一声!」
「……かぐや、さん。リア、さん」
 ためらいがちな少女の言葉に、満足げに頷くリア。
 そこでようやくラミーと、子供達はぱあっと笑顔を輝かせた。
 救済者という天上人めいた隔たりが、彼らを萎縮させていたようだ。

 そうして子供達は積極的に彼女らに話しかけ、作業を手伝うようになる。
 そんな時、ふと神楽耶が言った。
「ね、リア様」
「ん?」
「……ひとって、本当に強いですね」
 神楽耶は眩しげに目を細める。
「種としては弱くても。……こうして、明日を掴もうと足掻く力がある。
 暗く居場所がない世界に、必死で希望の光を灯そうとしているのですから」
「そうだね……戦えないヒトも、もちろんいるけれど、さ。
 強いものや輝かしいものだけが生きる世界になったら、それは窮屈だよ」
「ええ。だからこそ――今を生きる人々の力が必要なのですね」
 リアはうん、と首肯した。
 ここに集まった猟兵は、みな希望に溢れた輝かしい人々ばかりではない。
 自分が受けた絶望を与えないためにと、影から戦う者もいた。
「ボクは、どちらのヒトのためにもここにいる。……そう思うよ」
「それはわたくしも同じでございますよ、リア様」
 世界の未来を掴むのは、その世界に生きる人々でなければならない。
 ヒトならざる少女達は、子供達の歓声を愛おしげに見守っていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
匡/f01612と

力を貸すのは勿論だ!私たちはそのためにここに来たんだからな
じゃ、ちょっと皆、集まってくれ
兄ちゃんたちがひとつ、良いことを教えてやろう
な!匡!

子供らに常備する飴玉を配ったあとで
拠点からそう離れていない外へ連れ出そう
――そう
私たちの得意分野!サバイバルだ!

といっても難しいことじゃない
毒草と見分けがつきやすい、食べられる野草を教えて
その旨い調理法を伝授してやるだけ
匡が子供とうまく話せないようなら手助けを
私はよく子供の相手してるしな

野草には意外と栄養もあるし、旨い食事は何より人生を豊かにする
こういう些細な喜びが、いざってときの踏ん張りになるもんだ
お、分かるか?はは、成長って奴だな!


鳴宮・匡
◆ニル(f01811)と


ニルと一緒に、野草の見分け方と、それを使った調理を教える
せっかく外に出るんだ
腕に覚えがあるやつには、狩りのコツとかも教えるよ
子供と接するやりかたがよくわからなくて
あまりうまくは喋れないだろうけど
ニルの話すのを見ながら少し学んでみる
同じようには、できないだろうけど
できるだけ怖がらせないようには努力するよ

食事、なんて
生きるための最低限で充分だと思ってた
だから今だって、美味しい、なんてものだって曖昧だけど

最近は、ニルの言うことも、少しわかる気がする
ひとが生きていくのには、ほんの些細なものでも
心を動かすような何かが、必要なんだって

……成長って言うなよ
なんか子供みたいじゃん、それ



 ……神楽耶とリアが、子供達とともに保存食づくりに励んでいた頃。
 ニルズヘッグ・ニヴルヘイムと鳴宮・匡もまた、
 子供達を連れて村の外……深く木々の茂る山の麓にやってきていた。
 彼らの目的は、野草の見分け方と調理方法、そして狩りの指南である。
「隠れるときは出来るだけ風下にいたほうがいい。匂いでバレないようにな」
「「「…………」」」
「……矢を射る時は、狙いを頭じゃなく胴に定めて……」
「「「…………」」」
「……ごめん、ニル。助けてくれ」
 親友の懇願に、様子を見守っていたニルズへッグはくすくすと笑った。
 匡はどういう顔をすればいいのか解らず、頭をかいて誤魔化す。
「ははは! いや悪いな、どこまでやれるのかと思って見てたんだ」
「絶対楽しんでただろ、顔見ればわかるぜ」
「そんなことないさ。教える時は相手の程度を知らないと、だろ?」
 ニルズへッグは悪びれもせずに肩をすくめ、懐から飴玉を取り出した。
「飴だ!」
「お菓子なんて久々に見た!」
「……おいしそう」
 子供達は驚きつつも目に見えて表情を緩ませ、次の言葉を待っている。
「ようし、みんなきちんと兄ちゃんたちについてきてくれて嬉しいぞ。
 というわけで、まずはこいつをあげよう。慌てなくても全員分あるからな!」
 子供達はわあわあと歓声をあげ、順番に飴を受け取り、感謝を述べた。
 ただ、それですべての子供が懐柔されるかと言えばそうでもなく……。
「へっ! そんな子供だましの飴玉なんざ、いるかっての!」
「……菓子なんて上等なもの、調達できるような生活してなさそうだけどな」
 ぷいっとそっぽを向いた少年……ブランドは、匡の言葉にむっとする。
「なんだよ、"闇の救済者"だからって偉そうに! まあ、助けられたけどさ。
 それとこれとは話が別だぜ。狩りなんて、教えられなくても十分出来るんだよ!」
 なるほど、ブランドは狩人班のリーダーとして誇りがあるらしい。
 彼からすると、自分達の仕事に文句をつけられたと感じているようだ。
「おお、そいつは感心だな! せっかくだし、兄ちゃん達に教えてくれないか?」
 そこでニルズへッグが両者の間に入り、にこにこ笑顔で言った。
 まさか逆に教えを乞われると思っていなかったブランドは鼻白み、
 きょろきょろとせわしなく視線をさまよわせる。彼とて悪気はないのだ。
「わ、わかった……じゃあ、教え合いってことで。それなら、いいよ」
「うんうん、とっても楽しみだ。な、匡!」
「……ん」
 言葉少なに頷く様子は、むしろ匡のほうが子供のように見えた。
 そうしてニルズへッグが緩衝材になることで、両者の緊張はほぐれていった。

 そこらへんに生えている野草でも、調理を工夫すれば立派な料理が出来上がる。
 薬草や狩りのための毒も調合出来るため、山は素材の宝庫と言えた。
 コミュニケーション方法に難のある匡もだんだんとやり方を憶え、
 傭兵として体得してきたサバイバル術を子供達に教えてやる。
 気がつけば、壁を作っていた年長者達もすっかり彼らを慕っている様子だ。
「兄ちゃんすげーな! おれ、そんなこと知らなかったよ!」
「今までずっと無駄してたんだなー、これなら狩りも楽になりそうだ!」
 子供達は目をきらきらさせ、匡とニルズへッグの知識と技術を褒め称える。
 それが人殺しの上で成り立っていることは、さすがの匡も口にしない。
 ただ居心地が悪そうな様子で、ああ、とか、うん、と言葉少なに頷く程度。
「なんだよ匡、照れてるのか? 褒められ慣れてないもんな!」
「……否定はしないけどさ。俺まで子供扱いするなって」
「だってさ。みんなはどう思う?」
「「「兄ちゃんおもしれー!」」」
「……はあ」
 笑いものにされているわけではない、それは子供達の表情からわかる。
 けれども匡は普段、どちらかといえば年長者としてまとめ役に回りがちだ。
 なんとなくむず痒く、そしてくすぐったさのようなものを感じる。
「ほら匡、実食の時間だ。お前も食うだろ?」
「……食事、か。まあ、食べるよ」
 皿を受け取る匡。しかし実のところ、彼に味の良し悪しはわからない。
 味覚を楽しむのは人間性の発露であり、彼はそれに乏しいからだ。
 そんな匡の表情を覗き込み、ニルズへッグは青年の肩をどやす。
「見てみろよ匡、子供達の顔を」
 野草料理に舌鼓を打つ若者達は、みな意外な美味に目を白黒させていた。
 食事をかけてちょっとした勝負をしたり、じゃれあいをしている子らもいる。
 みな、緊張の解けた様子で笑い、騒いでいた。
「な? 味がわかんなくても、ああいうのが"いいもの"ってのはわかるだろ」
「最近ようやくわかってきた、ってぐらいだけどな」
「いいじゃないか! 立派な成長だぞ、偉い偉い」
「……だから、子供みたいじゃん、それ」
 匡の言葉に、ニルズへッグは呵々大笑した。
「なあに、成長するのはいいことだろ! ほら、食べた食べた!」
「誤魔化すなって。ニル、なんか妙な遊び方してないか?」
「さあて、どうだろうなあ。それもまた営みの些細な喜びってことで、な!」
「な、じゃなくてさ。だいたい俺は……」
 などと気のおけないやりとりをするふたりを子供達は眺めていた。
 そしてふたりが視線に気づくと、何がおかしいのか弾けたように笑う。
 ……その機微の理由は、人でなしの青年にはまだわからない。
 ただ、匡は思った。
「見たくないものは、見なくて済んだ。それは、よかったと思うよ」
「……ああ。やっぱり子供は元気で笑ってないとだ!」
 ニルズへッグの笑顔は、今日一番明るく嬉しそうなものだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルーナ・ユーディコット
表情を作れる真の姿のまま行動する
咄嗟に表情を繕える状態の方が複雑な胸中を周りに伏せやすい

周囲の様子見のついで、武装の残骸から使えそうなのを拾い集めて持ち戻ろう
作業に没頭してる間は心乱されることはないと思う

それでもあの子達から話しかけられた時
拾い集めたものを砦に置く時
私は胸中を漏らさずに居られるだろうか
願わくば、希望と意思を捨てない限り
本当にどうしようもない絶望に襲われそうになった時
きっと助けに来るよ
と伝え、勇気づけてあげたい

この世界に来ると様々な要因で心乱れる辺り
私は過去の軛から脱せてない
煩悶とした心を超える為に私はどうすれば
悩みながらになるけど
どうか彼らの希望が未来に繋がる事を心の内で祈るよ



 戦いが終わっても、ルーナ・ユーディコットの胸中は嵐のようだった。
 様々な感情が渦巻いて、気を抜くとよくない言葉をこぼしそうだ。
 だから彼女は子供達の輪を離れ、ひとりきりで戦場をさまよっていた。
 何か使えないものがないか、騎士どもの残骸を拾い集めていたのである。
「この槍はまだ使えそう……かな」
 比較的状態のいい武具を拾い集め、鎧や鐙の破片を回収する。
 壊れたものも、うまく改修すれば再利用が出来るかもしれない。
 それでなくとも、鋳造設備が整えば鉄材として活用できるはずだ。
 もっとも、今の水晶村にそんな大掛かりな設備は存在しないが……。
「あ、あの!」
「……何?」
 ちょうどその時、ひとりの少女がルーナに駆け寄ってきた。
 身軽そうな装い……見張り塔に立っていた少女、だったか。
「あ、あたし、レンダって呼ばれてます。あの……」
 妙に言葉を選ぶ様子の少女に、ルーナは首を傾げた。
 わざわざここへ来たということは、彼女はルーナ目当てで声をかけたのだろう。
 しかし、戦いの中で関わったわけでもないし、当然知己でもない。
 訝しみながらも、ルーナは一方で自分が何かしでかさないか不安に思っていた。
 この胸中に渦巻くよからぬ感情は、おくびにも出したくない。
 こんな醜く自分勝手な感情は、無関係の彼らには不要なのだから――。

 ……ルーナの思考は、レンダがおずおずと帽子を外したときに途切れた。
 そこには、彼女と同じもの……つまり獣めいた耳が揺れていたからだ。
「あ、あたし、"これ"のせいでもともと居た村でも冷遇されてて……」
 レンダはぽつぽつと語る。
「でも、"これ"のおかげで襲撃に気づけて、おかげで生き残れたんです。
 ……だから、その。戦ってるあなたの姿を見て、あたし、びっくりして……」
「…………」
 人狼病。それは多くの場合、呪いめいた烙印とみなされる。
 月の夜ごとに正気を失い、寿命すらも常人に劣る"病人"なのだと。
 獣の相は、オラトリオの翼と違って忌避や嫌悪の対象になりさえするのだ。
「あ、あたし! ……今まで、これのおかげで見張りをやってこれました。
 けど、あなたのすごい戦いを見て、もっと頑張らなきゃ、って思ったんです」
「私の、戦い……そう、見てたんだ。そんな大したものじゃないよ」
「かもしれないですけど、あたしは……勇気を、もらえました」
 ルーナは俯きがちだった顔を上げた。
 同じ人狼の少女は、儚げに笑っていた。
「あたしも、"これ"を負い目に思わなくていいんだって。
 あなた達みたいに強くなるのは、すぐには無理かもだけど……」
「そんなことはないよ」
「えっ?」
 今度は、レンダのほうが目を丸くする番だった。
「私も同じだった。ずっと捨て鉢になって、何もかも嫌になっていたから。
 ……けれど私には、頼れる人がいた。そのおかげで、今も戦えてる」
 だから、謙遜しなくていい。不安に思うことはないと彼女は言う。
「それでも力及ばなかったら、その時は――」
 ルーナは、自然に微笑んでいる自分に気付いた。
「今日みたいに、私達が助けに来るよ。だから、心配しなくていい」
「……!」
 レンダは涙を零した。彼女自身も、涙の理由がわからないようだった。
 そしてルーナもまた、気がつけば胸の中が凪めいて穏やかになっていた。
 まだ、すべてを乗り越えられたわけではない。
 わだかまりがあり、後悔があり、世界そのものへのいらだちがある。
 けれども。
「……悩みを抱いているのは、私だけじゃないものね」
 少しだけ分け合えた気がして、ルーナは安堵めいてため息をついた。
 胸に湧き上がった祈りは、強がりでも縁起でもない心からのもののはずだ。
 少なくとも、ルーナはそう信じようと思った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ウィルフレッド・ラグナイト
砦の防備の強化を手伝う最中、リーダーのアルと話をします

「今回はよく頑張りましたね」
最悪の運命を避け、彼らが今生きてることに心中で安堵する
「あなたたちのように抗っている人たちは他にもいるはずです」
「一人ひとりは小さな灯りでも、多くが集まれば、それは大きな灯りになるはず」
「あなたと、そして彼ら。力を合わせれば、きっと道は開けるはずです」
一振りの剣を取り出し、それをアルに差し出す
ゼファーの力をほんの少しだけ付与した剣
「これを。きっとあなたにも扱えるはず」

「なにかあれば私は駆けつけられるようにします」
「忘れないでください。あなたたちは、一人じゃない」

その後はしばらくは子供たちとの時間を過ごします



「失礼……少し、お時間を頂けますか?」
 防備の強化作業中のこと。
 ウィルフレッド・ラグナイトの申し出に、アル少年は快く頷いた。
「もちろん! けど、どうして俺に?」
「あなたが彼らの中で一番リーダーシップを執っているようですから。
 本当なら、あなた達全員にひとりひとり、言葉をかけて回りたいのですが……」
 生真面目な青年の言葉に、アル少年は思わず苦笑した。
「いいよ、むしろ本来そうすべきは俺達のほうなんだと思うし!」
 とんでもない、と言いつつ、ウィルフレッドは微笑みを浮かべた。
「……今回は、本当によく頑張りましたね」
 それは安堵の笑み。誰ひとり犠牲にならなかったことへの、純粋な喜びだ。
 最悪の運命は叩き潰され、彼らは疲れてはいれど死んでいない。
 子供達も、猟兵も。なによりも喜ばしい、大団円というやつだ。
「それもこれも、みんな助けてもらえたからこそだよ。ほんと、感謝してる」
「いいえ。あなた達が今日まで抗い続けてきたからこそですよ」
 あくまで謙遜しながらも、ウィルフレッドは問うた。
「この世界には、あなた達のように抗っている人達が他にもいるはずです。
 一人ひとりは小さな灯りでも、多くが集まれば、それは大きな灯りになるはず。
 ……あなたと、そして彼ら。力を合わせれば、きっと道は開けるでしょう」
「っはは、"闇の救済者"にそう言ってもらえると、頼もしいや!」
 あれだけのことがあったというのに、アル少年は快活に笑いながら頷いた。
 そしてウィルフレッドもまた、その笑顔に感の入った表情で目を細める。
 ……この輝きを、己は守り抜けたのだ。達成感と勇気がふつふつと湧く。
「っと……いけない、声をかけたのはもう一つ理由がありまして」
 我に返ったウィルフレッドは頭を振り、懐を検めた。
 そして取り出したのは、少年でも扱えるサイズの小振りな短剣である。
「……これは?」
「ゼファー……私の大切な相棒の力を、ほんの少しだけ付与した剣です。
 これを、あなたに。あなたならきっと……いえ、必ず扱えると思います」
 アル少年は剣を受け取り、壊れかけの武器とは違う「重み」に呻いた。
 いのちを奪うために鍛え上げられた、美しいまでの武器の重み。
 超常の力をたたえたそれは、同じ刃物であるはずなのに他とは違う。
 力の使い方とその意味を、彼に問いかけるようだった。
「今回のようなことがあれば、私は必ず駆けつけられるようにします」
「……うん。けどいつか、自分達で生き延びられるように努力するよ」
 ウィルフレッドはその言葉に首肯し、改めて言った。
「忘れないでください。あなた達は、ひとりじゃない」
 アル少年は、すぐには言葉を返さず、もう一度短剣を見つめた。
 これは、誰かのいのちを奪うために造られた武器だ。
 だが、その使い方を正しく知れば、護るための力となる。
 ……彼の背中が、それを万の言葉よりも雄弁に示してくれた。
「ああ。忘れないよ。もう簡単に、諦めてやるもんか!」
「……それでこそです。さあ、それじゃあ作業を再開しましょうか」
「よしきた!」
 ふたりは破顔し、大工道具を手に再び防備の強化作業に戻る。
 少年のあとを追うウィルフレッドの歩みは、晴れやかなものだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニコラス・エスクード
いまだ小さき子らの集まりか
故に絶望を染まらぬとも言え、
故に希望を宿すとも言える

この者らが生き続ける事が、
この希望の芽が育っていく事が、
延いては我が主の望みに適う
故に助力を惜しむつもりはない

しかし我が身で為し得る事か……

物品の見繕いに整備であれば、
この身が何より心得ている
戦う意思がある限りは必要な知識だろう
好く戦った武具らの整備と合わせ、
確りと伝授をする心づもりだ

物は人と共に在り続けるものだ
正しく使えば正しく答える
決して裏切らぬ友として在る
努々、雑に扱ってはくれるなよ



 どうやらこの「水晶村」の平均年齢は、思った以上に低いらしい。
 中には片手で足りる程度の年齢の幼子すらもいる始末だ。
 もちろん有事の際は年長の子らが前線に立つようだが、子供は子供。
 技に乏しく、力は足りず、そして何よりも武具が不足していた。
 戦場跡や虐殺が起きた現場からくすねてきた、壊れかけの剣や斧、槍。
 極めつけは、盾とは名ばかりの、腐食しボロボロになった板切れであった。
 これならば、獣の皮をなめして張ったほうがまだマシだろう。
 ニコラス・エスクードはしばし沈思黙考し、言った。
「物資に乏しく技術も知識も足りぬ現状とは言え、これは見過ごせぬ。
 我が身の心得し知恵を授けよう。残っている限りの武具を集めてくれ」
「わ、わかった!」
「おれ、あの敵が使えるもん持ってないか探してくるよ!」
 子供達はわっと駆け出し、慌ただしく武具を調達しては運んでくる。
 すでに残骸から有用な素材を得ようとしていた猟兵もいたようで、
 ニコラスが思っていたよりも早く、武具の数々がその場に集められた。
「……やはり、ひどいな」
 どれもこれも損傷が激しく、ニコラスは思わず頭を振った。
 けれども、子供達を責めはすまい。それは盾たる身の矜持に反する。
「よいか。武具とは不朽にあらず。無遠慮に振るえばいかな名刀とて砕け散る。
 どれだけ長く、そして強く使いこなせるか。それは整備と振るい方次第だ」
「……けれど、研いだりするのにも道具がいる。贅沢は言ってられない」
 真剣に話を聴く子供達の中で、唯一、ナイベール少年が抗弁した。
 ニコラスはその言葉に深く頷いたうえで、こう続ける。
「ゆえに、まずは出来るだけ資材を使わなくて済む整備方法からだ。
 真に使い込まれた武具とは、不思議と堅く、しなやかさを増すのである」
「それは、金をかけて作られた高級品だけの話で……」
 ニコラスはナイベール少年の言葉を遮り、自ら武具の手入れを始めた。
 今日まで戦い抜いた同胞達を労り、讃え、そして励ますように。
「……物は人とともに在り続けるものだ」
 手を止めぬまま、ニコラスは言う。
「正しく使えば正しく応える。ならば、逆もまた然り。
 使い手が相応の心持ちで扱えば、時として武具は主に叛逆しよう」
 たとえば、折れた刃が喉元を切り裂く……そんなことも有り得る。
 道具の破損が重篤な事故に繋がるのは、機械に限った話ではないのだ。
「されど心根を違えさえしなければ、けして裏切らぬ友として在る。
 これからも戦い、抗い続けるならば。我が身の知識は必ず役に立つぞ」
「…………わかったよ。これからは、もっと意識を割くようにする」
 ナイベール少年の言葉に、年長者の子供達も重々しく首肯した。
 ニコラスはじっと彼らの顔を見渡す。値踏みするように、挑むように。
 ……あるいは、祈りを籠めるように。
「その言葉、どうか忘れるな。ゆめゆめ、雑に扱ってはくれるなよ」
 盾たる身の言葉は、いかなる刃よりも深く、少年らに突き刺さったことだろう。
 ニコラスの手を真似て練習する彼らの表情はみな真剣なもので、
 傍から見ているだけでも、武具に対する信頼と敬意が感じられた。
(いまだ小さき子ら……ゆえに絶望に染まらず、ゆえに希望を宿す、か)
 そのさまを見守るニコラスもまた、確かな手応えを感じていた。
 彼らは、ニコラスの言葉を忘れることも、裏切ることもけしてないだろう……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミラリア・レリクストゥラ
………はっ!?

【WIZ】

あれ、私、寝て……敵は!…ああ、砦の方から話し声がするなら、うまくいったのですね。
…それにしても。唄ってる最中に寝てしまうなんて…あれ?唄い終わったんでしたっけ…?
攻撃した所までは覚えているんですが…

いえ、今は私の事より、砦の皆さんですね。
…聞かされた通り、本当に子供ばかり。この人数となると、それだけでただ事では無さそうな…

力を?ああ、頭を上げて…
…私は唄うしか能が無い身。であれば、唄を捧げるのが常套ですけれど…
貴方達には、そう。『私の唄』ではなく、『貴方達自身の唄』が必要な気がしますわ。

決起の想いを籠めた唄。作りたいと言っていただけるなら、お手伝いいたしましょう。



 ミラリア・レリクストゥラは、寝起きの低血圧めいて頭を振った。
 先の堕落騎士との戦いからこっち、意識がはっきりとせず記憶も朧気だ。
 なにやらかなりパワフルなことをしたような、してないような……。
 とりあえず、渾身の唄を以て一矢報いたことは間違いないだろう。
「あ、あの……大丈夫?」
 そんな彼女の様子に気づき、リーダー役のアル少年がおずおず声をかけた。
 猟兵達に助けを頼んだ手前、やはり負い目というのは当然にある。
 なにせミラリア達は、自分達を護るために戦ってくれたのだから。
 もしもその影響で不調を起こしていたのなら、それは自分達のせいだ。
 ……そう考えていることが、不安げな表情からありあり感じられた。
「いえ、大丈夫ですよ。ああ、そんな顔をしないで……」
「ならよかった。けどやっぱり、申し訳ないっつーか……」
 いいのですわ、とミラリアは気取った調子を取り戻し、微笑んだ。
「いまは私のことよりも、皆さんの……あなた達のことでしょう?
 といっても実は私、これといって胸を張って教えられるものは……あ、そうだ」
 困窮した生活を向上させるための知恵というと、やはり調理や加工が思い浮かぶ。
 しかしミラリアはあくまでその方面に関しては常人レベル。
 けれども、そんな彼女が唯一他者に勝ると自負するものがあった。
 それは……。

「「「唄ぁ?」」」
 アル少年から話を聞かされた子供達は、揃って驚きの声をあげた。
 説明した少年当人も、まだ呑み込みきれていない様子である。
「だから、えーと。ほら、たまに唄を歌ったりしてたじゃないか、俺達」
「ああ……嵐が来た日とか、みんなで集まってやってたっけ」
「ラミーのやつなんか、子守唄でよく年少組を寝かしつけてるもんな」
「そうです。唄は心を昂らせることも、逆に落ち着かせることが出来ますの」
 アルの後ろに立つミラリアは、子供達の言葉にうんうんと頷く。
「だから私は、"あなた達自身の唄"が出来るように、お手伝いしたいのですわ。
 ……所詮私は、歌うしか能がない身。けれども、唄うだけではいけません」
 この世界の闇に、彼ら自身が抗い、そして立ち向かっていくのなら。
「――あなた達自身を鼓舞する唄は、あなた達が唄わねば」
「……なんか、面白そうじゃない?」
「戦うための唄かあ。うーん、やってみたいかも!」
 もともと集落を護るという意識の強い少年達は、その言葉に同調した。
 提案したアル少年は彼らの様子に安堵しつつ、ミラリアに振り返る。
「戦ってるときのあの唄。すごくかっこよかったし、思わず勇気づけられたよ。
 そんなあんたに教えてもらえるなら、俺達もビビらずに戦える気がするんだ!」
「……私の唄が、かっこいい、ですか」
 もしも彼女が人肌の者であれば、ほんのり紅潮していたやもしれぬ。
 その言葉を胸にしかと抱き、ミラリアはうん、と奮起した。
「では発声練習から始めましょう。コツは全身を震わせることで……」
「って、俺達喉からしか声出ないんだけど!?」
「何を言ってるんですの? お腹も使わないとダメですわ!」
 肝心のレクチャーは、騒がしくも賑やかに続いたという。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アウレリア・フルブライト
ええ、勿論苦境とあらば駆けつけますとも。必ず、とは断言できませんが、為し得るよう最善は尽くします。
この世界の灯火を消さぬことが、私達の務めですもの。

差し当たっては現状への対応ですわね。
すべきことは色々ありますけれど…まずは心構えの話から、でございましょうか。

皆様それぞれ、此処で暮らすに至った事情はありましょうが、ヴァンパイアの支配下に在るを良しとしなかった、というのは確かと思います。
その心、人としての誇りを忘れることなく。そしてその命、無為に散らすことなく。生き続けて頂きたいのです。
どれ程の時を要するかは分かりませんが、それこそが、この世界の長い夜を終わらせる唯一の方法なのですから。



 ……子供達が生き抜くには、あまりにも多くのものが不足していた。
 食糧。住居。そのための資材。防備。武具。燃料、その他雑貨品……。
 道具一つをとっても、それを手入れし維持するための技術と知識が必要だ。
 料理を作る、ならばそのための材料は? 調理器具は? 保存はどうする?
 これまで彼らが騙し騙しで生き延びてきたことは、ひと目見れば明白だった。
「今日までこうして反抗の住まいを維持してきたこと、驚嘆に値しますわ。
 ――けれども、逃げ隠れるのではなく、戦うために待ち構えるのであれば。
 こうした暮らしでは早晩限界が訪れ、戦うまでもなく倒れてしまうでしょう」
 アウレリア・フルブライトは少年らを見渡し、重々しく言った。
 然り……今は維持できていても、いずれ餓えと渇きが彼らを襲う。
 二度目三度目の戦いに際し、あるべき力を出せないのでは意味がない。
 抵抗とは、長く苦しく続く、いわば己の忍耐との戦いでもあるのだ。
「ゆえに! 今一度私の言葉に耳を傾け、どうか胸に留めておいてくださいませ。
 生き延びるための技術、知恵、そして道具や資材、どれも重要ではあります。
 ……その中でもっとも重要なのは、生き続けるという確たる意志ですわ」
 逃げることと戦うことは明確に違う。そして忍耐は意志力が明暗を分ける。
 どれほどの苦境であろうと、心折れなければ活路は必ず開けるはずだ。
 少なくとも、アウレリアはそう信じている。だからこそ。
「……ヴァンパイアは、これから何度もあなた達を襲うでしょう。
 ある時は万軍をけしかけて、今日のように圧殺しようとするでしょう。
 ある時は人としての尊厳を奪おうと、心を折ろうとしてくるでしょう」
 子供達は、アウレリアの演説を固唾を呑んで聞いていた。
 実際に拳一つで敵に挑む彼女の姿を、彼らはしかと見ていたからだ。
 立ち向かう力を持つ者の言葉は、どんな訓示よりも重く、そして心強い。
「人としての誇りを忘れることなく、そして命を無為に散らすこともなく。
 互いに助け合い、敢然と立ち向かい、生きることを諦めないでほしいのですわ」
「……それは、どのぐらい続くの?」
 ひとりの少女の問いかけに、アウレリアは頭を振った。
「正直、わかりません。もしかすると一年、五年、十年かかるかも。
 けれど約束しますわ。私達はこれまでも、これからも戦い続けるのだと。
 あなた達が生んでくれたこの世界の灯火を消さぬために、務めを果たすと」
 グリモア猟兵であるアウレリアは、予知の不確定性を知っている。
 望んで結果を得ることなど出来ず、手遅れの未来が見えることも多い。
 だから、必ずとは言えなかった。それでも最善を尽くすことは誓った。
「――この世界の長い夜を終わらせる唯一の方法は、ただそれだけですわ」
 子供達は、途方も無い戦いの規模と重々しさに、打ちのめされた。
 けれどもひとりの少年が拳を握り、叫んだ。
「や、やってやらぁ! もう、べそかきながら逃げ回るのはごめんなんだ!」
「……そうだよ。俺達の家は、俺達が守らなきゃ!」
 立ち上がる子供達の姿を、アウレリアは頼もしげに見守る。
 ……けれども自分は、彼らにひどく酷なことを頼んだのかもしれない。
 抗うことは辛く苦しい。ともすれば諦めたほうがマシなほどに。
(いいえ、それは違いますわ)
 思わず浮かんだ不安と弱音を、心のなかで否定した。
 思い出せ。あの騎士の問いかけを。それに相対した己の答えを。
 奪われたものを取り戻す。それは、簒奪された者の当然の権利だ。
 よく生きることこそが最良の復讐であり、絶望に抗する輝ける剣である。
「いつになるかはわかりません。ですが、勝ちましょう。私達みんなで!」
 アウレリアの言葉に、子供達は力強く拳を振り上げ、応えた。
 たとえ万の軍勢が押し寄せたとして、いのちの煌めきを消すことは出来ないだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

冴木・蜜
そういうことでしたら
喜んでお手伝いを致しましょう

……、といっても
私は力仕事は不得手ですから
そう、ですね
彼らに医学を教えましょうか

レイミアさんやナイベールさんに
この地でも出来る簡単な医学を教えます

怪我や病気はしないに越したことはありませんが
いざという時に
何もできないのも困りますから

たとえ戦う力が無くても
戦線を支える術となるのが医学です
何より帰る場所があるのは
この世界では大きな支えとなる
どうか皆さん
彼らを支えてあげてください

この地で生きていくのは本当に過酷で
これからも貴方達は大変な目に遭うかもしれない

でもどうか
希望を失わないで
生きていれば幸せを享受できます

それに
言ったでしょう
明けない夜は無いのです



「……これから希望を抱いて新たに生活を営もうという時に、
 あまり後ろ向きなことを言って不安を抱かせたくはないのですが……」
 冴木・蜜はため息混じりに首を振り、やや言葉を選ぶような間をおいた。
 彼の表情は浮かず、目線は半ば廃村めいた水晶村のあちこちを彷徨う。
「……よく今日まで、疫病のたぐいにやられずに生きてこれましたね。
 正直、驚嘆に値します。仮に襲撃を乗り越えても、これでは同じだったかと」
 蜜は居者のはしくれである。だからこそ、村の現状は目に余った。
 生きるのに精一杯な子供達では、検疫や十分な消毒など出来るはずはない。
 そこかしこに疫病の種が溢れ、ざっと数えるだけで十以上の発症要因が浮かんだ。
「な、ナイベールのおかげなんです。彼、そういうのに詳しくて」
「……たいしたことじゃない。俺だって、付け焼き刃だ」
 少年のぶっきらぼうな言葉に、ラミーはしゅんと肩を落とした。
 なるほど、アル少年がリーダー役ならば、ブレインは彼というわけか。
 そして彼の指示をラミーが中心となって聞き、ギリギリを維持してきたらしい。
「そう邪険にしないでください。私は何も否定しているわけではないのです。
 どうあれ、皆さんが今日まで生き延びてこれたのは、紛れもなくあなたのおかげです」
「……必死だったさ。ここは、ようやく見つけた比較的マシな場所なんだ」
「ご苦労、察するに余りあります。これからのことを、一緒に考えましょう」
 医学とは、何も薬の煎じ方や外科手術のやり方だけを指すものではない。
 怪我や病気の種類を知り、防止策を知り、症状の診断の仕方を学ぶ必要がある。
 はっきり言えば、そのすべてをこの場で教えることは不可能だ。
 だが、彼らが学び体得するための種を蒔いてやることは出来る。
 蜜は根気強く、注意深く、子供達に難解な知識を噛み砕いて聞かせた。

「……あんた、医者なのか」
 そんな"講義"の最中、ナイベールは出し抜けに問いかけた。
「元、ですよ。いまはその真似事をしている"もどき"のようなものです」
「だが、あんたの知識は確かだ。……正直、教え方も上手いよ」
 ありがとうございます、と蜜は苦笑した。
「教えを乞うことは、お嫌いですか?」
「……昔のことを思い出す。だからあんまりいい気分じゃない」
 けれど、と言葉を継ぎ、ナイベールは心配そうな面持ちのラミーを一瞥した。
「いつまでも拗ねてられないさ。誰かがやらなきゃ、俺達はみんな死ぬ。
 あんたは言わないでいてくれてるが、俺達、誰かが怪我したら終わりだったろ」
「……そうですね」
 子供は治癒力が高い。けれどそれも、正しく処置すればの話だ。
 誰かしらが大きな怪我なりを負っていれば、おそらくそこから崩壊していた。
 子供達の暮らしは、綱渡りの連続だったのだ。
「……医学とは戦線を支える術。そして帰る場所を護る知恵でもあります。
 それはこの世界では大きな支えとなる。どうか、皆さんを支えてあげてください」
「…………わかってるよ。"明けない夜はない"、だろ」
 蜜は不安げなラミーの視線をあえて受け止め、安心させるように頷いた。
「ええ。そうです。生きていれば、幸せを享受できるのですから」
 ナイベールは視線を合わせぬままだが、蜜にはそれが心地よかった。
 目を見ずとも、その思いと言葉はたしかに届いているのだとわかったのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オーガスト・メルト
(連携・アドリブ歓迎)
うーむ、戦闘以外は得意じゃないんだが…まぁ、これも仕事の内か。

とりあえず戦えそうな子供にUC【竜帝の宝物庫】の中からナイフを渡しておくか。
武器あるいは狩猟や木工の道具に使うにせよ、今の貧弱なものよりはマシだろう。
(子供たちには教えないが、竜の鱗で造ったものだから頑丈さは折紙付きだ)
何?戦闘技術を教えろ?ばかたれ、十年早い。
まずは確実に敵から逃げられるだけの体力と走力を鍛えてからだ。毎日走れ。
生兵法で戦っても早死にするだけだからな。
他に戦闘技術を指導する猟兵がいるなら手伝うが…生存が第一だからな?

後は森へ行く者の護衛をするくらいが俺に出来る事だな。


ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎

力を貸すのはいいけれど。あたしたちに頼りっきりにさせたらそれこそ意味ないわよねぇ…
…うん。それじゃ、お勉強しましょうか。
○罠使いとか拠点防衛とか。拠点を移すにしろここに残るにしろ、知識があって困ることはないでしょぉ?
あたし他の人たちみたいにすっごい大砲どっかん、ってできないもの。小技とか小細工の重要性はわかってるつもりよぉ?
(まあ、あたしも自分で使うならともかく、教えるとなると●忙殺の俄勉強の部分はそれなりに大きいんだけど。)

ああ、そうだ。あなたたちにお礼言わないとねぇ。
あなたたちの仕掛けた罠一式のおかげで連中を潰すのが楽になったのよぉ。
ありがとう、助かったわぁ。



「ねえ、ちょっといいかしらぁ?」
「ん?」
 オーガスト・メルトに声をかけたのは、ティオレンシア・シーディアだった。
 その時オーガストはちょうど、狩人班の子供達とやりとりをしていたところだ。
「いまあの子達に渡したナイフ。……あれ、龍鱗製よねぇ?」
「ああ、さすがに言わないでおいたけどな。今のよりはマシだろう」
 それはいいんだけどぉ……と、ティオレンシアは頬に手を当て、嘆息した。
「あたし達があれこれ与えすぎるのも、考えものな気がするのよねぇ」
「……なんだ、そんなことか。大丈夫だよ、そのへんはわかってるさ」
 ティオレンシアの言わんとしたことは、皆まで言わずとも彼にもわかった。
 猟兵とは世界を飛び交う存在であり、いわば概念の破壊者だ。
 生態系にたとえれば、外来種は従来種を駆逐し歪みをもたらすもの。
 もしも猟兵が、無秩序に資産をバラまいたらその世界はどうなるだろうか?
 ……オブリビオンと猟兵は、対極的でありながらよく似ている。
 奴らがその存在と悪行によって、未来の可能性を破壊し世界を滅ぼすなら、
 猟兵は世界を救おうとするがために、同じように未来を閉ざしてしまいかねない。
 外部からの干渉――しかもユーベルコードや超常的なアイテムが加われば、
 もたらされる効果は、誰もが考えるより大きいものなのだ。
「まぁ、そうねぇ。造りを教えてないって言ってたから、心配はしてないわぁ。
 どちらかっていうと、あたしとしては愚痴を言いたいっていうか……」
「そっちは罠づくりを指南してたんだろ? トラブルでもあったのか?」
「そういうわけじゃないのよねぇ」
 ふう、とティオレンシアはまたため息をついた。
「手助けは必要、けれど手を出しすぎれば、あたし達に依存させてしまう。
 ……そういう塩梅考えながらレクチャーするの、割と疲れるのよねぇ」
「わかるよ……俺も正直、戦う以外は不得意だしな」
 オーガストは苦笑を浮かべて同調した。
 もちろん先に挙げた猟兵としての領分を、彼は当然心得ている。
 だからこそ手渡したそれの本価値を、彼はあえて伝えていない。
 いつか子供達が成長し、竜帝の宝物の価値に気づくならば、それもいい。
 それは彼らが自分達の力で生き延び、学び、そして理解した証なのだから。
 オーガストなりの少年らへの手向けであり、激励の品でもあった。
 彼の選んだ立ち位置は、取りうる選択肢の中で上等なものと言えるだろう。
「さっき、戦い方を教えてくれって言われてたの、聞こえたけどぉ?」
「うん……まぁ、あれだな」
 オーガストが顎で示した先、子供達がひたすらに走り込みを続けていた。
 そしてふたりの視線に気付いた少年が、悲鳴混じりに声を上げた。
「もう疲れたよぉ! 戦い方教えてくれよ―兄ちゃん!」
「ばかたれ、十年早いわ! いいから走れ走れ、あとそれを毎日だぞ!」
「そんなぁー!」
 などと言いつつ、子供達はおとなしく言うことを聞いている。
「まずは体力づくり、ねえ。うん、妥当じゃないかしらぁ?」
「だろ? 何はなくとも、まずは逃げるだけのスタミナが無いとな」
 生兵法は怪我の元。戦いは、生き延びなければ何も始まらないのだ。
 ティオレンシアの手ほどきする罠や拠点防衛の技術についても同じことだ。
 彼女らは、あくまで子供達が生き延びられる最低限のルールと知識を、
 出来る限りの方法で、かつ領分をはみ出さないよう注意を払っていた。
 ユーベルコードは奇跡の力。だが、それを扱うのは人間である。
 彼らは、間違いなく先達として戦士として、正しいスタンスを取っていた。


「せんせー! 仕掛け罠出来たよ、見て見て!」
「ぜえ、ぜえ……は、走り込み終わったぞ兄ちゃん……ぜえ」
 あっちこっちからやってきた子供達の言葉に、ふたりは顔を見合わせる。
「先生、ね。おんぶにだっこかはともかく、慕われてるみたいだな」
「ガラじゃないんだけどねぇ……そっちも、きょうだいみたいじゃなぁい?」
「……それこそ、ガラじゃないんだけどな」
 一瞬だけオーガストが浮かべた複雑な表情を、ティオレンシアは深く聞かなかった。
 その横顔は、大切な誰かを失った者の見せる表情だったからだ。
「ま、ほどほどに頑張ろうかしらねぇ。あたしも助けられた側だし」
「助けられた側?」
「あの子達の罠がなかったら、連中を潰すのに手間取ってたでしょうからねぇ。
 ……だからあなた達、ありがとうねぇ? あたし、とっても助かったわぁ」
 よもや"闇の救済者"に感謝されると思って居なかった子供達は、湧き上がった。
 子供らしい無邪気さを取り戻した若者達を見つつ、オーガストは立ち上がる。
「……意外に俺も、戦う以外にやれることがあるのかもしれないな」
 その呟きに応じるように、白と黒の珍妙な竜達が鳴いた。
 昏いままのはずの空は、少しだけ澄み渡っているように思えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マーロン・サンダーバード
POW

自衛しようって発想はグッドだな
だけど救援が間に合うかはわからないし、無闇に戦うのもうまくねえ
つーことで俺が提案するのは時間稼ぎプランだ!
まず「太陽おじさん」と共に資材を確保しまくってくるぜ
「太陽!」「太陽!」これだけで通じ合えるソウルフレンドさ

砦全体を強化しつつ
その上で一見してここから攻め込めるんじゃね?と思わせるポイントを作るんだ
例えば柵には馬出し口を作るだろ
攻める側としてはそこを壊せば逃げ場がなくなるって心理だ
そこを利用して「そこだけ」ガッチリ強化するとかな
真の出入り口はまた別に作る

あとは…あー…1も2も体力だな!走りこむぞ!
俺の後に続いて歌いながら走れ!
オブリビオンはサノバビッチ!



「太陽!」
『太陽!』
「……太陽?」
『太陽太陽!』
「太陽~!!」
『太陽……!!』
「「「なんだあれ……」」」
 マーロン・サンダーバードと仲良く会話……会話? する謎のおじさん。
 ふたりは「太陽」としか言ってないのだが、意思疎通できているらしい。
 了解! みたいなニュアンスで使ったり、いきなり肩を組んだり、
 かと思えば急に喧嘩みたいなのを始めたり、やっぱり仲直りしたり、
 片方が落ち込んでもう片方を慰めたり、見ているだけで奇妙だった。
 子供達は割とドン引きした。戦闘中のかっこいい姿はどこに……。
「おっ少年達! 紹介するぜ、これが太陽おじさんだ!」
「「「太陽おじさん」」」
『太陽!』
「ほら挨拶してるぜ、みんなも応じてあげてくれ!」
「「「た、太陽……」」」
『太陽!!』
「「「た、太陽!」」」
 若干ビビりながら挨拶する子供達、なにやら満足げな太陽おじさん。
 マーロンもうんうんと(おそらく)笑顔で腕組し、頷いていた。
 子供達は、これが闇の救済者なのか、と妙な誤解をしたという。

 とまあそんな妙なノリはさておき、マーロンとおじさんは効率よく働いた。
 なにせ「太陽!」の一語で、ありとあらゆる四肢疎通が出来るのだ。
 おじさんはおじさんのくせにいやにフィジカルが高く、
 資材集めはものすごいスピードで進んでいくのであった。これが太陽パワー。
「おっと、そこの強化は待ってくれ! わざと空けておくんだ」
「えっ、どうして? こんなとこが空いてたら攻め放題じゃん」
「だからだよ、ボーイ」
 きょとんとする子供を前に、マーロンはチッチッと指を振る。
「一見して「ここから攻め込めるんじゃね?」ってポイントを用意しておけば、
 相手はそこを突くだろ? つまり、それを見越して策を用意しておくのさ」
「……あ! つまり、入ってきたら罠にひっかかったり、とか!?」
「イエス! ま、見えないように厳重に強化しておくってのもアリだけどな」
 感心した様子の子供を前に、マーロンは得意げに言った。
「いいか? 自衛しようって発想はグッドだ。それでこそだと思うぜ。
 けどむやみに戦うのはよくねえし、必ず護りきれるとも限らないわけだ。
 だから、少しでも知恵を絞って生き残れるように工夫するのが大事なのさ」
「そっかあ……太陽太陽言ってるから不安だったけど、やっぱりヒーローなんだね!」
「ははは、そんなに褒めるなよ!」
 褒めてないんだけどなあ、という顔の子供をさておき、マーロンは言った。
「よーし野郎ども、作業が一段落したら走り込みをするぜ!」
「「「えーっ!?」」」
「一も二も体力だ! いいか、俺のあとに続いて歌いながら走れよー!」

「オブリビオンはサノバビッチ!」
「「「お、おぶりびおんはさのばびーっち」」」
「疫病・血病・ばら撒く吸血鬼!」
「「「え、えきびょう、けつびょう、ばらまくきゅうけつき……」」」
「イェーガーウォーズがでーるぞー!!」
「「「イェーガーウォーズって何!?」」」
 子供達の方からボイコットが出たとか出ないとか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エドガー・ブライトマン
フフフ、もちろんさ
そんなふうに頼まれなくても手伝ってあげる
だって私はひとを守る王子様だからね

ブランド君と一緒に、人類砦の守りをより強くしよう
そのためには材料を拾い集めないと!
さあいこう!

大人のいない世界で不安も多いだろうに、キミらは強いねえ
いや、強くないと生きていけないか

私はある国の王子様でねえ、立派な王になるべく旅をしているんだけど
世界にはいろんな国があるよ
そしてどの国の民も、挫けることはあっても強く立ちあがっていた

キミらにもきっとそれが出来る
ねえ、いつか平和になったらキミも旅をしてみなよ
いろんな国を見るのは楽しいぜ

かれらを取り巻く世界が厳しくとも
ひとは手を取り合えば力強く生きてゆけるんだね



 ブランドは腕っぷしが強く、それに比して我の強い少年であった。
 何かと乱暴なプランを提案することから、アル少年とも衝突が多い。
 しかしそんなふたりを、他のメンバーが仲裁してとりなすことで、
 最終的にはいい感じの折衝案に落ち着く、というのがいつものパターン。
 言わば、リーダーに対して意見を申し立てる野党のような役回りの子である。

 そんなブランドは、相手が"闇の救済者"であろうと穿って見ていたが、
 同行するエドガー・ブライトマンを前にしてはさすがに舌を巻いた。
 いかにも荒事を知らぬ風に見えるこの美青年は、
 ブランドが提案した急勾配の獣道を苦もなく登ってみせたばかりか、
 大量の資材を軽々と集め、そして期待以上の働きを示したのである。
「す、すげーなあんた、一体何者だよ……」
「愚問だなあ、私は王子様だよ? ひとを守り悪を倒す、それが王子様の仕事さ」
「……王子様はこんな泥くせー仕事、自分からしねーだろ……」
 少年の言葉に、エドガーはふふんと意味ありげに笑った。
「なに、私もあちこち旅をしてきたからね。このぐらいは慣れているよ。
 それに、キミらが頑張っているのに、私が何もしないのも変な話だろう?」
 目をぱちくりさせるブランド。よほど不思議だったらしい。
 それだけ、エドガーが瀟洒な貴族めいた雰囲気を纏っているということでもある。
「大人の居ない世界で不安も多いだろうに。キミらは本当に強いよ。
 ……いや、強くないと生きていけない、か。私はそこに、敬意を払いたい」
「なんか……不思議なひとだな、あんた。お高いようで地に足ついてるっつーか」
「よく言われるよ! 立派な王になるためには、酸いも甘いも噛み分けてこそ、だろ?」
 ぱちんとウィンクされれば、ブランドは煙に巻かれたような気持ちである。
「私は旅人でもあってね。色んな国の、いろいろな民を……ひとびとを見てきた。
 どの国の民も、くじけることはあっても最後は強く立ち上がるんだ。
 キミらにもきっと……いや、必ずそれが出来る。心配はいらないさ」
「そりゃありがたい話だ。けど、そうか……旅か。旅、なあ」
「旅は好きかい?」
 問われれば、少年は資材を抱えたままうーん、と首を傾げた。
「今まで住処を求めてあちこちさまよってきたけど、楽しくはなかったな」
「なら、平和になった世界を旅するといい。それがほんとの旅ってものだし、
 色んな国を視るのは楽しいぜ? たくさんの知らないことを知れるしね」
「……出来るといいな、そんなこと」
「出来るさ。キミらなら」
 エドガーは心の底から信じていた。
 たとえ世界が厳しくとも、ひとは手を取り合えば力強く生きてゆけると。
 少年達ならば、どんな困難にも負けない――そう、信じているのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スキアファール・イリャルギ
…………無茶、しすぎた
気を抜いたら躰にすっごい痛みが
動けないんでちょっとこの儘寝っ転がってていいですか
……ダメか? ダメですねハイ起きます

といってもこんな状態で何をやればいいのやら
この躰で出来ること……
あの子達を怖がらせずに……

(熟考)

あー、うーん……

何故か漠然と歌うことが頭によぎる
ほんと、歌しか能が無いんだな私は
別に誰かに聞かせたくて歌うわけではないんですけどね
ねだられると逆に歌いづらくなってしまうし

――あの子たちは、今迄歌うことあったんでしょうか

そういえば……赤ん坊がいるんでしたっけ
子守唄でも歌ってみましょうか
息を吸うのも今辛いんで出来は粗悪で申し訳ない
でも少しでも穏やかな時間になるのなら



「あの……だいじょうぶ、ですか?」
「……大丈夫、では、ないです……」
 倒れ伏すスキアファール・イリャルギに心配そうに声をかけたのは、
 赤ん坊をあやしている最中のラミー……少女レイミアであった。
「だ、だいじょうぶじゃないですよね、ごめんなさい! あ、あの、えっと」
「……いや、大丈夫。大丈夫だから……」
 びっくりして半べそをかく様子に気の毒になり、スキアファールは上体を起こした。
 猟兵はその外見で違和感を与えない……とはいえ、
 顔色が悪く線も細い、しかし縦に長い男がぬるっと起き上がったのである。
「ひえっ」
 と思わず口に出してしまってから、ラミーも顔を青くしてぺこぺこした。
「ご、ごごごごめんなさい! あ、ああああの怖いわけじゃなくてっ」
「……いや、心配しないでいいですよ。よくあることですから」
 スキアファールは体の痛みを極力顔に出さないようにしながら、言った。
 ラミーはもちろん、子供達がスキアファールを邪険にするはずはない。
 彼とてそれはわかっている……いまのは恐怖というより驚きが大きいのだろう。
 スキアファールが気にするのはむしろ逆で、怖がらせないかということ。
 恐怖されることに苛立つことはなくとも、相手を心配してしまう。
 彼は、そういう心の優しさを持つ人物でもあった。
「あの、ほんとに怖がってるわけじゃなくて……むしろ、びっくりというか」
「まあこの通り、無駄に体が大きいので仕方ないかと」
「い、いえそうじゃなくて! ……ほら、この子」
 スキアファールは、そこで、ラミーが抱えている赤子に気付いた。
 すやすやと、心地よさそうにまどろんでいる。
「……知らない人に会うとすぐ泣き出しちゃうのに、こんなに寝付いてて。
 だから、心配ないなって思ってたんです。助けてもらえたんですし、ね」
 ラミーの言葉に、スキアファールはまぶたを伏せ、しばし黙った。
「え、あ、あの、何か失礼を」
「……いや、ありがとう」
 そう言ってわずかに微笑むように頬を動かした様子は、普通の青年そのもの。
 スキアファールは無意識に赤子に触れようと手を動かして、止め、やめた。
 きっとラミーも、この子も、嫌がりはしないだろう。けども。
「……じゃあもっとゆっくり眠れるように、子守唄でも歌いましょうか」
 気がつけば、息をするだけでも痛む胸は、不思議とすっとしていた。
 そして脳裏に蘇るメロディを、そのままに紡ぐ。
「……きれいな声」
 うっとりとしたラミーの呟きも、はたして今の彼には届いているのかどうか。
 歌声は、春の安らかなそよ風のように、不思議と村全体へ流れていく。
 無慈悲なはずの夜の闇は、ほんの少しだけ穏やかに思えた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マリー・ハロット
(周辺を飛行して、もう敵がいない、ということを改めて確認し、ぼろぼろの見張り台の上にこっそりと着地して)
(……すでに敵はいない、ということはわかっているのだけれど……)
(なんとなく、村の中に入るに気後れして)
(戦うことは得意だけれど……そうでないことはあまり得意ではない)
(それに……)
……怖がれちゃってた、ね……
(……ドーピングによる高揚がおさまってくると、先ほどの戦場で村の方から感じた感覚が思い出されて)
(明確な、恐れの感情)
……強い人は、怖いもんね……
(昔の自分だって、そうだった。強い人は、怖いのだ)
(だから、仕方ない)

……うゆ? だれか、来た?(と、見張り台の下を、おずおずと見下ろして)



 敵はもういない。すべての騎士崩れは滅殺され残骸と消えた。
 ここに戦乱はなく、在り得たはずの終焉は見事に叩き潰されたのである。
 子供達はみな、猟兵達を暖かく、あるいは同胞として迎え入れた。

 ……だが、マリー・ハロットは、そんな一団の輪には加われずじまいだった。
「…………怖がられちゃってた、な……」
 アドレナリンが減退した影響で、普段以上に夜露が寒く感じられる。
 凍えるような体温を逃さぬように、マリーはぐっと膝を抱え、縮こまった。
 脳裏によぎるのは、高揚する己を見る子供達の、あのおそれの表情。
 かつて自分が同じように誰かを恐れていたことを、マリーは憶えている。
「強い人は、怖いもん……ね」
 ひとりごちる。そうとも、勝ち目のない相手は誰だって恐ろしい。
 自分だってそうして、"マリー"を買い取る大人に恐れおののいた。
 彼らは自分と同じ"マリー"を嬉々として殺し、痛ぶり、あるいは苛む。
 怖かった。……そのはずなのに、自分は同じ感情を彼らに……。

「おーい!!」
「っ」
 突然聞こえてきた大きな声に、マリーは見張り台の影でびくりと身を竦ませた。
 子供の声だ。誰かを探しに来たのだろうか?
(出てったら怖がらせちゃうから、じっとしてないと……)
 マリーは出来るだけ外から見えないように体を丸め、息を潜める。
 少年らしき声はしばし「おーい」と、誰かを探すように呼びかけていた。
 誰かはわからないが、早く見つかればいいのに、とマリーは思う。
 ……が。
「っかしいなあ、このへんに飛んでったってナイベールのやつ言ってたのに」
「!」
 当然、空を飛んでいたのは自分ぐらい。そしてここに着地したのもそうだ。
 では、まさか……?
 どうする。どうしよう? 探しているなら姿を見せるべきだ。
 だが。しかし。マリーはぐるぐると考え続け、そして……。
「……ま、マリーのこと、探してる?」
 勇気を振り絞って、顔を覗かせた。
 そして声の主……子供達のリーダーであるアル少年は、あっ、と声を出すと、
「ああ、いたいた! よかった……ってなんでそんなとこに?」
「……マリーのことだよね、探してたの。どうして?」
 質問を質問で返され、アル少年は驚きつつも頭をかき、言った。
「いや、その……助けてもらったのに、あんな顔しちまったからさ。
 みんなと話して、きちんと謝りたいから、探しに来た……ん、だけど」
「…………」
 今度はマリーが驚く番だった。アル少年はしばし言葉を待った。
「怖かったのはたしかだけどさ。助けに来てくれたのにそれはないな、って!
 それに、歳も近いみたいだし……なあ、よけりゃ降りてきてくれないかな?」
 強い人は恐ろしい。自分だってそうだったのだ、だから仕方ない。
 ……ただそれでも、起きてしまったことでも、生きているなら変えられる。
 間違ったと思ったことは償えばいいし、分かりあえることも、きっとあるのだ。
「……わかった」
 マリーはこくんと頷いて、見張り台から降りた。
 待っていた子供達とその謝罪に対し、彼女がどう答えたかは定かではない。

 ただひとつたしかなことがあるとすれば。
 しばらくあと、ひとりの少女が子供達と無邪気に遊び、交流していたということ。
 子供達に混ざった少女の姿は、いつものように無邪気で明るいものだったということだけだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鷲生・嵯泉
出来る事なぞ限られているが……中途で手を引く訳にもゆくまい
しかし私が子等に伝えられる事が有るとすれば、精々此れ位のものだ

覚える気が有る者が居るならば、戦い方を教えよう
剣でも棒術でも、弓でも構わん
但し「勝つ」為のものでは無い、「護る」為のもの
負けぬ事、生き延びる――生かす事を援ける為の方法だ
とは言え付け焼刃での知識だけでは意味は無い
本当に身に着けたいと思うなら、教えた事を日々繰り返して身に刻め
話す時には視線を合わせ
出来るだけ解り易い様に噛み砕いて教えるとしよう

此の“人類砦”の未来が明るいとは決して云えまい
だが生きる事を諦めず、未来へと咲く為の種が生きる場所
私の刃は此れ等の為に在るのだ



「いでっ!!」
 体格のいいブランド少年が地面を転がり、ぶすっとした顔で立ち上がる。
「くっそぉ、もっかいだもっかい!」
「……いいだろう。助言は必要か?」
「いらねえや!」
 鷲生・嵯泉は食い気味の返事にふっ、と鼻を鳴らす。少年はむっとした。
 そして気合十分、木刀代わりの木の枝を手に襲いかかってきた少年を、
 嵯泉は枝を枝で巻き上げ体勢を崩し、空気投げめいて投げ飛ばしたのだ。
 しかし決して痛みは与えず、むしろきれいなフォームで前転するような、
 そういう投げ方である。事実、ブランドは汚れてはいれど怪我をしていない。
「ぐええっ!」
「ひとまずここまでだ。……次の者は?」
 隻眼が少年達を見渡す。名乗り出る子供はもういなかった。
 誰もが、嵯泉の実力と自分との間の隔たりを、その身で理解していたからだ。
「では続きにしよう。いましがたの立ち会いで見せたのも技術のひとつだ。
 攻撃は真正面から受けるのではなく、いなす……重視すべきはそこだろう」
 嵯泉が提案したのは、戦うための技術を教える、というもの。
 しかし単に敵を倒すのではなく、あくまで守り、生き延びるための技術だ。
 攻撃よりは防御あるいは回避、身を潜めたり遁走する術理に限定された、
 ブランドのように血の気の多い少年にはやや不満げなものだった。
 そして鼻っ柱が強い子供達から、立ち会いを要求されたというわけである。
 結果はいましがた見た通り、当然のように嵯泉の圧勝だったが。
 彼はその機会すらも指導に使い、見本として技術を示したのである。
「……ただし、これらは所詮付け焼き刃だ。実際の習得には何日もかかるだろう」
 嵯泉は集まった子供達に視線を合わせ、何度も見渡しながら言った。
「本当に体得したいと思うならば、私が教えたことを日々繰り返すんだ。
 訓練以上のことは、実戦では出来ない。身に刻みこまねば意味はないぞ」
「わかってら! ……ちゃんと訓練もすっからさ、次も立ち合えよな!」
 子供達からそう言われ、嵯泉はやや驚いた様子で片目を見開きつつも、
「……ああ、いいだろう。上達を期待している」
 と、静かに頷いて答えた。

 次も、また。 
 そんな言葉が彼らから出てくるとは、正直嵯泉は思っていなかった。
 この村の未来はけして明るくない。苦難はこれからも続くはずだ。
 しかし――子供達は、それを乗り越えるためにもう未来を見据えているのだ。
「それでこそ、我が刃も振るう意義がある……か」
 日の差さぬ昏い空を見上げ、嵯泉は呟いた。
 明けぬ夜の暁が、その隻眼に浮かぶような、晴れやかな心地だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カイム・クローバー
隠し通路がどうとか言ってたな。
手間取らせて悪いが、アル。そこに案内してくれ。入り口が塞がってるだけとかならどうにでも出来そうだ。

岩や戦闘の影響で入り口が被害を受けてるだけなら、撤去すれば通行可能になる。UCを発動させて撤去運動に勤しむとするか。
おい、俺。手伝え。…文句言うな。アフターケアも俺達の仕事だ。そうだろ?
子供じゃどうにもならなくても俺達なら話は違ってくる。ま、任せとけ。

連中に挑むその姿勢も無謀にも見えるその挑戦も俺は嫌いじゃないぜ?けど、死ぬつもりで挑むのは止めな。死んだら明日はねぇ。
逃げろ。逃げ延びて時間を稼げ。…そーすりゃ、賢者のグリモア猟兵がまたお前達を見付けてくれるさ。必ずな。



『よぉ、このだるくて地味な作業はいつまで続くってんだ?』
 "カイム・クローバー"が、カイム・クローバーに言った。
「文句言うなよ、戦いのアフターケアも俺達の仕事だ。そうだろ?」
『そうだがな……まったく、これだから便利屋ってのは楽じゃねえな』
「そういうこった。猫探しだのなんだに比べりゃやり甲斐もあるってもんさ」
 カイム……ユーベルコードによって召喚された分身ではなくオリジナルのそれ……が、同じように土木作業に従事する子供達を一瞥した。
「だいたいな、子供の隣でぼやくってのは大人としてどうかと思うぜ?」
『へっ、大人のなんたるかを説ける立場かよ、"俺"のくせに』
「同じ俺なんだから、たいした違いはねえさ」
 口の減らない伊達男も、ふたりに増えればこのとおりである。
 分身体……"壁に潜む自身"によって召喚されたドッペルゲンガーのカイムも、
 あれこれと文句を言いつつも手は止めないあたり、そういうことらしかった。
「しかし、すっげーな……ひとりがふたりに増えるなんて」
「仕事の速さと手数は二倍! ……ちょっとうるさいのがたまにキズ、だがな?」
 冗談めかして言いつつ、オリジナルのカイムはアル少年を見やった。
 彼らが勤しんでいるのは、件の隠し通路の出入り口を改修する仕事だ。
「しかしアル、こんなトンネル、よく子供だけでこさえられたな?」
「苦労はしたよ。そのせいで村の中はいまでも散々だし」
 なるほど、最初にまず逃走経路を確保し、住居を後回しにしたのか。
 それだけ彼らは逃亡に慣れていたということでもある。見上げた注意力だ。
 ……ゆえにこそ、そこが潰されていたときの絶望は比になるまい。
「そんな状態でよく、仲間のために前に出たもんだ」
「へへ……」
『けどな。あえて言わせてもらうぜ? "俺"は黙ってるつもりみたいだが』
 と、そこに分身のカイムが口を挟む。
『死ぬつもりで敵に挑むのはやめな。死んだら明日はねぇんだ』
「……う」
「言い方が悪ぃが、俺も同意だ。その挑戦も姿勢も、嫌いじゃあないがな。
 ……いいか? ヤバいときゃ逃げろ。逃げ延びて時間を稼げばいい」
 しょげる少年の肩を叩き、男達は揃って笑った。
『そーすりゃ、便利屋"Black Jack"が駆けつけるぜ。必ずな』
「どこぞの賢者の力を借りて、だぜ。ひとりで格好つけるなよ」
『んな話、こいつらにしたってしょうがねぇだろうが。ったく……』
 少年はカイム達のやりとりに、屈託ない笑みを浮かべた。
「っはは! おもしれーな、兄ちゃん達!」
「だろ? ジョークのセンスも一流、それが便利屋Black Jackさ」
 そう語る男のニヒルな笑顔は、きっと彼らにとって頼もしく見えただろう。
 もう闇に怯え、鬼に額づく必要はない。戦う意味を彼らは見出したのだから。
 まさしくそれは、この世界においての希望の灯火そのものだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
【常夜の鍵】を使用して“大量の保存食”や、
“吸血鬼の財宝”の一部を渡して水晶村の運営の足しにしてもらい、
自身が助けた少女の無事を確認しておく

…無事だったのね。間一髪だったけど間に合って良かった…。
私の名前はリーヴァルディよ。貴女は…?

…斥候を続ける気?なら少しは力になれると思うわ。

存在感を薄くして闇に紛れる歩法の鍛練法か、
暗視を鍛え獲物の動きを見切る鍛練法…どっちが良い?


…両方?別に良いけど……何故、自ら苦しみを選ぶのか…。
…いえ、何でも無い。私が良いと言うまで動かないでね?手元が狂うから…。

呪力を溜めた両手でレンダの顔を挟み、
“洗脳の呪詛”の応用で私の戦闘知識や経験の一部を頭に直接叩き込むわ



「すげえや! こんだけあれば当面は心配ないぞ!」
「これなら、金が必要になったときもなんとかできそうだ……!」
 子供達はリーヴァルディ・カーライルの渡した物資を、ありがたく受け取った。
 大量の保存食に財宝の一部……どれも長期的な生存には欠かせないものだ。
「……いいえ、いいの。けれど、これは忘れないで」
 喜ぶ子供達に対し、リーヴァルディは強く言い含めた。
「……私達が助けたとしても……最後に明暗を分けるのはあなた達自身……。
 それを有効活用できるかどうかも……すべて、あなた達次第なのだから……」
 この助けに依存し、堕落してしまえば、結局は元の木阿弥だ。
 子供達は真剣な表情で頷き、この厚意を無駄にはしない、と堅く誓った。
「……なら、よかった」
 そこでようやくリーヴァルディは緊張を解き、少女のほうを見やった。
 誰であろう、彼女がギリギリのところで救った見張り役、レンダである。
「……無事だったのね。間一髪だったけれど、間に合ってよかった……」
「あ、あの時は本当にありがとう……お礼を言えてよかった」
 嬉しそうに微笑むレンダに、リーヴァルディも目元を綻ばせた。
 そしてふたりは互いに名乗り合い、ようやく落ち着いて挨拶出来たのだ。
「……ところで、レンダ。あなたはこれからどうするの?」
「どうするって、そりゃあもちろん……見張りとか、斥候を」
 そう、とリーヴァルディは頷き、言った。
「……なら、すこしは力になれると思うわ」
 そして、リーヴァルディの特訓が始まることになった、の、だが……。

「う、うーん……あ、頭痛いぃ……」
「……何故、自ら苦しみを選ぶのか……」
 悪夢にうなされるようにうんうん唸るレンダを一瞥し、少女は明後日の方を見た。
 学べることならどんなことでも、と力強く返事したレンダに対し、
 リーヴァルディは呪力によって己の知識や経験の一部を"与えた"のだ。
 当然そんな反自然的な行いをすれば、相応の負荷がかかる。
 レンダはいま、流し込まれたデータを必死に整理している最中なのである。
 それが定着し、かつ活用できるか……これもまた、彼女次第だろう。
「……きっとあなたなら、出来るでしょう……」
 己の選択を後悔していなくもないレンダの額に手をやり、少女は言った。
 これもまた、彼女なりの子供達への激励である……はず、だ。おそらく。多分。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート
…ま、アフターケアまでやってこそプロの仕事か
つっても…あー
『Azi Dahaka』のせいで大分ビビらせたかもしれねえしなぁ
避けられるか…?まぁいいや、仕事をしよう

まずは何よりも外敵からの防衛設備だ
『Sanctuary』で罠やらタレットやらを生産しよう
出力が下がる代わりに、地形変更効果が終わっても残るようにしないとな

…話しかける物好きがいたらまぁ、応じてやるか
ナイベールあたりならベストだ

いいか?困難があったら何よりもまず考えろ
お前はプランナーであり、脚本家だ
采配一つで天国にも地獄にもなる
思考し、相談し、妥協も視野に入れろ
そしたらマシな結末にはなるさ

──俺のように、現実を見ない愚か者にはなるなよ



 ボロボロだった村の外郭には、いまや様々な罠が敷設されていた。
 さらに驚くべきは、この世界の技術水準に見合わぬタレットの存在だ。
 そんなものは、当然猟兵のユーベルコードでもなければ生やせない。
 ヴィクティム・ウィンターミュート手ずからの、電脳罠である。
「ざっとこんなとこか。出力は下がるが、まあいいだろう」
 地形環境を書き換え終えたヴィクティムは、満足げに頷いた。
 仕事は済ませた。あとは他の面々に合わせて早々に引き上げるとしよう。
 子供と仲良く語らうなど、彼のスタイルではない。
 ……なによりも、己が召喚した悪竜の姿は、おそらく……。
「……なあ、あんた」
 しかしそこでちょうど、ヴィクティムに声をかける者がいた。
 振り返ればそこには、村のブレインであるナイベール少年が立っている。
「なんだ? 機械の使い方なら心配ない。あいつらは自動だから……いや、違うか。
 その顔、もっと他に聞きたいことがあるってツラだ。いったいどうした?」
「……あんた、"あんなもの"を使役できるのに、どうしてそんな平気な面をしてるんだ」
 少年の言葉に、ヴィクティムはふっとニヒリストめいた笑みを浮かべた。
 嘲っているわけではない。少年の視線に込められた、恐れと警戒を読み取ったのだ。
「羨ましいかい? 残念だがあれは貸しちゃやれねえよ。暴れ馬なのさ」
「そうじゃない。あれは……吸血鬼どもと同じか、それ以上に恐ろしいものだ。
 他の奴らは"なんだか怖い怪物"ぐらいにしか見てなかったんだろうけどな……」
「……だが、事実としてお前らを守った? それで十分じゃないか?」
 ナイベールは、煙に巻くようなヴィクティムの物言いに嘆息した。
 彼が問うたのは、そんな凶暴な力を制御するヴィクティム自身の安否である。
 常人である彼らは、当然ユーベルコードの術理など理解しようもない。
 しかしあれほどの力が、術者に何の代償も強いらないはずもないのだ。
「いいか? お前は他の連中より頭が冴えるみたいだから、忠告してやるよ」
 ヴィクティムはわざとふてぶてしく高圧的に言った。
「困難を前にした時に考えるべきは"何故"じゃない、"どうするか"だ。
 相手の内面だの、事情だの、そんなもんは二の次、三の次でいいのさ。
 お前はプランナーであり脚本家だ。裏事情は"どうとでもなる"んだぜ」
「……あんたと話してると、嫌になるよ。その考えに納得できちまうことに」
 ナイベールはため息をついて言った。
「アルの奴は"考えすぎる"。みんなを助けようとして、躊躇しちまうんだ。
 ……今まで何度も、誰かを切り捨てる選択肢を、俺は提示してきた。
 俺が間違ってるのかと思うこともあったよ。けど、あんたは逆なんだな」
「そりゃあそうさ。俺らのような立場が思考し、最悪も見据えておけば、
 "主役"どもはあっさりそいつを塗り替える。ま、相談だって大事だがな」
 ヴィクティムは答えた。
「だが、そうやって"妥協"することは忘れるな。そうすりゃマシな結末にはなる」
 だから、とハッカーは言った。
「――俺のように、現実を見ない愚か者にはなるなよ」
 それは心からの忠告であり、少年の問いかけへの答えでもあった。
 己の事情は、悟らせない。悟ったとしても、誰にも譲り渡す気はない。
 失うものがあるとすれば、その喪失すらも己のものであるのだと。
 それが愚かしいことであることはわかっている。"だからこそ渡さない"のだと。
 ……そしてこの姿を見て、お前はそうなるなと、先駆者は言っていたのだ。
「……あんた、ろくな死に方をしないな」
 ナイベールはただそう言った。ヴィクティムはことさらに明るく笑った。
「その資格は、どっくに闇の中に捨ててきちまったよ」
 ……と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーゴ・アッシュフィールド
【リリヤ(f10892)】と

ああ、みんな無事で何よりだ。
砦の修復か、そうだな。
よし、少し手を貸してやるか。

さて、俺は門や通用路の修理と補強をしておこう。
壁面の補強はリリヤに任せて大丈夫だろう、おそらく。
……まぁ、少し大雑把な気もするが手っ取り早くていい。
この鐘の魔法、もう少し細やかにコントロールできればいいのだがな。
難しいようなら、精霊と契約してみてもいいかもしれないな。

幼い集まりながらも、逞しい奴等だな。
こいつらならどこでだって生きて行けるだろう。
こんな世界だ、理不尽ばかりで安定なんてモノは無いのかも知れないが
願わくば、ここがこいつらの故郷になればいいと思うよ。


リリヤ・ベル
【ユーゴさま(f10891)】と

みなさま、ご無事でよかった。
ユーゴさま、ユーゴさま。お手伝いにまいりましょう。

いましばらくここを守られるのであれば、砦を堅固にするようがんばるのです。
鐘を鳴らして、もういちどみどりを呼びましょう。
おおなみ。こなみ。壁面に幾重も寄せては返して、つよくつよくするように。
あまりこまやかにはできませんが、どどーんと広くおおうのは、とくいなのですよ。

転々とすることに慣れていらっしゃるようにも見えます、けれど。
みなさまの居場所は、場所ではなくてひとなのでしょうか。
みなさまの希望が根付いて、芽吹いて。
故郷だと呼べる場所になるとよいです、ね。
……いつか。きっと、そうなるのです。



 からん、ころん。からん、ころん……。
「おおなみ、こなみ。幾重も寄せては返して、つよく、つよく……」
 リリヤ・ベルの鐘がひそやかに響けば、"みどり"が萌え出て壁を覆う。
 まるで幾百年を閲した絢爛な城が、威容はそのまま緑に覆われるように、
 強化増築された防壁は、自然の脅威によってさらにその護りを増した。
「すげえ……」
「まるで崖みたいだ」
「いや、森……?」
 子供達は、その大いなる自然の体現を、ぽかんとして見上げている。
 もう、生半端な軍勢では、超えるどころか貫くことも出来やしないだろう。
 自然そのものと結実した緑の壁は、ゆえにそうそう衰えることもない。
「……まあ、少しおおざっぱな気もするが。いっそそのほうがいいかもしれん」
 ユーゴ・アッシュフィールドはその出来栄えに、うん、とひとつ頷くと、
 こちらはこちらで門や通用路の修理と補強作業を手掛けた。
 一度覆われた壁の一部を切り拓き、資材で門を拡張・強化するのだ。
 村としての機能を残すなら、どうあれ門扉は用意せねばならない。
 攻め手からすれば、それは絶好のセキュリティホールといえる。
 それだけに、門扉はできるだけ頑丈で、かつ開閉は迅速に行えるよう、
 いろいろと工夫せねばならない……こればかりは覆えばいいという話ではない。
「ユーゴさま、ユーゴさま。壁のほうは、おわりました」
「ああ、うん。ありがとう、リリヤ……ただ、こう、あれだな?
 もう少し細やかにコントロールできれば、手間が省けるかもしれないな」
「……こまやか、ですか」
 むう、とでも声を出しそうな顔で、リリヤは己の掌と鐘を交互に見た。
 そう言われても、意識した程度でコントロールは上達すまい。
 むしろ暴走していないぶん、リリヤは最低限の制御は出来ている。
「そうだな、たとえば精霊と契約することで力を借りるだとか……」
「ユーゴさまのように、でしょうか」
 そうとも、とユーゴは頷き、しかしすぐに破顔した。
「まあ、それはおいおい考えていけばいい。俺達も彼らも時間はあるんだ」
「……そうですね」
 彼らも。そう、つまりこの水晶村に住む子供達も……未来を勝ち得たのだ。
 だから、あとのことはこれから考えていけばいい。それが勝利の余韻である。
 頷くリリヤの表情は、ほんのりと嬉しそうに微笑んでいた。

 そうして、ふたりの作業も一段落してきた頃。
「ねえねえ! あなた、そんな小さいのにすごいのね!」
 突然かけられた声に、リリヤはぴゃっ、と思わず耳を立てた。
 屈託なく話かけたのは、見張り台に立っていたレンダという少女だ。
 よく見れば、帽子を外した彼女には、同じような獣の耳が一対……。
「あたしより小さいのに、すごいなあ。あなたも、他の人達も。
 そんな力があれば、今までの旅ももっと楽だったかも。ねえ、ラミー?」
「だ、だめだよレンダ、かんたんにそんなこと言ったら……」
 と、そばにいた少女ラミーが、友人の失礼な物言いをおずおずたしなめた。
 リリヤはきょとんとしていたが、それが彼女らなりの歩み寄りだと察すると、
 ふんわりと微笑んで応える。視線の先で、ユーゴが苦笑し頷いた。
「みなさまだって、とてもたいへんだったでしょうに、すごいことです。
 ……きっと、みなさまは、ここ以外にもいろんなところにすんでいたのでしょう?」
「うん。あたし達はあちこち転々としながら数を増やしてったからさ」
「ここを捨てなきゃ、って思った時は、とっても不安だったから……。
 だから、皆さんに助けに来てもらえて、本当に嬉しくて、それで、えと……」
「……だいじょうぶです。よければ、ゆっくり、おはなしをしましょう?」
 リリヤの言葉に、控えめなラミーはぱあっと笑顔を咲き誇らせた。

「……幼い集まりながらたくましい奴らだ。大人顔負けだな」
 そんな子供達のふれあいを眺めつつ、ユーゴはひとりごちた。
 他方を見れば、指示した通りに腕っぷしの強い少年らが作業を続けている。
 あの様子なら、こちらでは手の回らない増築も順調に進むだろう。
 ここまで生きてきたたくましさと、これからも生きていける強さを感じる。
 それを得るに至るまでの歴史は、きっと明るいものではなかっただろう。
 ……これからの日々も、順風満帆とは言いがたいだろうが……。
「俺達にやれるだけのことは、やった。あとはこいつら次第だな……」
 言いながら、ユーゴは、反射的に胸元の懐に手を伸ばしかけ、やめた。
 こんなところで紫煙をくゆらせようものなら、はたしてなんと言われるか。
「ユーゴさま、ユーゴさま」
 ちょうどそこへ、リリヤがとことことやってくる。
 見れば遠くの方に、仲良く話していた少女たちがこちらを見ていた。
「……おしごとも一段落しましたし、すこし休んできてもよいでしょうか?
 みなさまが、ぜひわたくしと、ちょっとした遊びをしてみたい、と……」
「なんだ、そんなことならいちいち許可を伺いに来なくていいさ。好きにしなさい」
「……はいっ」
 リリヤは嬉しそうに笑って踵を返そうとして、ユーゴに言った。
「……みなさまの希望が根付いて、芽吹いて。
 ここがいつか、故郷だと呼べる場所になればよいと……思います」
「……そうだな。俺もそう思うよ。この村が――この世界が、な」
 ユーゴはそう言って、空を見上げた。
 空はいまだ昏い。けれどもそれは、夜明け前の昏さに思えた。
 いつか終わる夜の、ひとときの闇のように、今は思えたのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フランチェスカ・ヴァレンタイン
せっかくですから、余所へ移るよりはこの『水晶村』をそれなりに要塞化したいですよねえ…
ええ、いわば皆さんの”故郷”なわけですし?

翼のある容姿なせいか小さい子供たちに妙に懐かれつつ、資材や物資などはUCの格納庫に溜め込んだものを供出しましょうか
…あちこち渡ったついでにあれこれ放り込んでますから、割と何でもありますよ?
(供出品目はお任せ。大物は流石に搬出口を作って取り出すものの、手持ち程度の小振りな物は唐突に胸の谷間から引っ張り出したりするので子供たちは目を丸くしているかもしれません?

要塞化に際してはわたし自身重機代わりでしょうかねー…?
トン級の資材でも空中から懸架してそれなりに自由にできますし、と



 この村の子供達は、下は赤ん坊から上は13、4歳までと非常に若々しい。
 年齢層としては上に寄っているものの、片手で数えられる程度の年頃の、
 とても戦ったり自給自足ができそうにない幼児も少なくないのだ。
「うわー、でっかい羽根ー!」
「天使さまみたいだー!」
「お空とべるの、いいなー」
 フランチェスカ・ヴァレンタインの羽根が物珍しいのか、
 まだ物心もつかないような子供達が、羨望と尊敬の眼差しをきらきらと向ける。
 猟兵はその外見で違和感を与えることがない……が、良き影響は作用することもある。
 オラトリオという、希少ではあるがけして皆無ではない種族もいることが、
 この世界の子供達にとってはなおさらに寓話めいて映ったのだろう。
「ふふっ、あまり近くにいると、飛び立つ時に危ないですわよ?」
「「「すごーい! とんでとんでー!」」」
 まるでヒーローにかっこいいポーズでもねだるような子供達の調子に、
 フランチェスカは苦笑しつつも頷き、ばさりと翼を広げた。
 おおー、とどよめく子供達がじゅうぶん後ろに下がったのを確認すると、
 そのまま二度、三度とはばたき、やがて空へと舞い上がる。
 彼女の仕事は、この村の防備を強化するにあたっての、
 人力では運ぶのが不可能な資材の運搬、および加工といったところだ。
 異空間から見たこともないような道具や材料を次々に取り出し、
 それを苦もなく抱えて増築に参加するさまは、まさに神の御使いめいている。
「なーなー兄ちゃん、すげーよ! すげー!」
「ってはしゃいでんじゃねえっつーの、お前らも働けっ」
 ……などと幼子たちが年長者に小突かれてる様子を、微笑ましげに見下ろしつつ、
 フランチェスカは改めて天空から、"人類砦"の全容を俯瞰した。
(もしもあの軍勢がなだれ込んでいれば、一分と保たなかったでしょうね……)
 人手があるとはいえ、若い子供達では当然限界がある。
 かろうじて村と呼べる共同体は、いわば蜘蛛の巣めいたかりそめのもの。
 これを真に拠点と呼べるようにするには、長い時間がかかるだろう。
 いくら物品を横流しして防備を築こうと、維持できねば意味がない……。
 そして維持しさらに強化していけるかどうかは、彼ら次第なのだから。
「さて、あまり和んでばかりいられませんわね。仕事仕事、っと」
 フランチェスカは新たに鉄材を引っ張り出すと、増築のために滑空した。
 空から恵みを与えるさまは、まさしくお伽噺の天使のように見えただろう……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リリア・オルトラン
結都殿(f01056)と共に

ううむ。慣れ親しんだ地を離れるのは難しいものよなぁ。愛着もあろう。
しかし今後も襲撃が予想されるなら私は別の候補地への移動を勧めたい…の、だが!
どう思う?結都殿!

……土地が変わろうとも、水晶村は変わらんだろうさ。
人がいればいいのだ!共同体というのは人あってこそだ。
よぉーし!アルベルト殿に発破をかけにゆくか!
私達とそう歳も変わらんようだしな!

リーダーというものは重責だが、気負ってはいかんのだ。周りの能力を把握し有効に用いるのが一番なのだ!どどんと構えているがいいぞ!
この地に留まるも、別の地へと移動するも、あなた方の自由だ。
仲間を頼り大事にすることだけは忘れぬようにな!


桜・結都
リリアさん/f01253 と

私達がずっとここに留まる事は出来ませんし、
敵からの襲撃は恐らく回を重ねる毎に苛烈さを増すでしょう
私もやはり移動を提案したいですが……

改めて、この共同体は歳若い集まりなのですね
頼れる大人のいない環境は、共感も出来ますから
ええ、お話をしに行きましょう

何か不安に思うような事があるならば、お話を聞いて、
今後についてアドバイス出来ればと思います
言葉に出来るのなら、きっと心に決めている答えはあるでしょうから
励ましは彼女に任せましょう

選択は自由。けれど選ぶ道により水晶村の未来は変わる
易々と決められる事ではないでしょうから、
行く末を見守りましょう



「……ううむ……うーむ、むむむむ、むむん……!!」
「……まだ悩んでいるようですね、リリアさん?」
 桜・結都の声に、腕組し唸っていたリリア・オルトランは、はっと我に返る。
「お、おう結都殿! ……うむ、やはり少し強く推すべきだったか、とな」
 リリアが言及しているのは、"この拠点をどうするか"という議題についてだ。
 当然水晶村の子供達にも、ここを離れるべきだという声は一定数存在した。
 現在は猟兵を交えた話し合いの末、移動ではなく増築という形で決着し、
 あちこちで拠点の防衛強化作業が順調に進んでいる……の、だが。
「我ら猟兵の力があれば、当然この村の防備は数段強化されよう。
 しかしこうして襲撃があったということは、すでにこの場所は割れている……」
「ええ。あちらが諦めない限り、今後も襲撃は続くと思います」
 結都の表情も、けして明るいものではない。
 戦略的に考えれば、ここはもはや"使えない"場所と考えるべきだろう。
 これまでもそうして移動を繰り返してきたのならば、なおのこと、
 新たな安住の地を求めて旅立つべき……結都も、そう考えていた。

 しかし彼女らが、最終的に拠点の維持に同意したのには、理由がある。
「あー……ううん、やっぱ旅立ったほうがよかったのかなあ……」
「っと、他ならぬ裁決を下した者が何を言っているのだ! アルベルト殿!」
 リリア達の様子に、ふつふつと後悔めいたものが湧いてきたらしい少年を、
 リリアは背中をどん、と強く叩くことで発破をかけた。
「まさか、一度決めたものを翻すつもりではあるまい? それは悪手だぞ!
 我らとて、意見を押し切ろうというわけではない。結局はあなた方次第だからな」
「いやまあ、それは解ってんだけど、やっぱこう迷いがあるっつーか」
「気持ちはわかりますよ。あれ以上の攻撃は、想像したくないですからね」
 アル少年のそれは、後悔や迷いと言うよりは懸念というべきものだろう。
 敵は想像を上回る一手を仕掛けてくるかもしれない、という恐怖にも似ている。
 結都は頷きつつも、リリアの言葉に同調するようにこう続けた。
ですが結局のところ、この村が……"人類砦"がこれから先も維持できるかは、
 リリアさんの仰るとおり、そこに住むあなたたち次第なのだと思います。
 そのリーダーとして下した決定は、胸を張って誇っていいのではないかと」
「……ははっ。あんた達って、同い年くらいなのに俺よりしっかりしてるな」
 俺なんてまだまだだ、と頭をかきながらはにかむアル少年。
「そもそもだな、あなたは気負いすぎなのだアルベルト殿!」
「ええっ、俺が?」
「そうとも。無論、リーダーというものは重責。心苦しくこともあるだろう。
 しかし大事なのは、周りの能力を把握し、かつ協調していくことではないか?」
 これみよがしに得意げな笑みを浮かべ、高説を垂れるリリア。
 彼女とて年齢は同じか、ともすればわずかに下かもしれない少女なのだが、
 ここで弱気を見せてしまっては、アル少年の不安は払拭できないだろう。
「ええ。どちらを選んだとしても困難は立ちはだかる、そこは同じですからね。
 どうすべきか、よりも、どうしていくか……それが重要だと、私も思います」
 結都は彼女の言葉に首肯した上で、こうも言った。
「この村の未来を作り上げていくのは、あなたたちなのですから」
「……そうか。そうだよな。俺ひとりで悩んでたって意味ないか。
 もう決めちまったんだし、くよくよするより先を考えないとな、うん!」
「うむ、それでこそだ! 仕事はまだ山積みなのだしな!」
 奮起した様子のアル少年を見て、リリアはうんうんと満足げに頷いた。
「土地が変わろうとも、村の様相が変わろうとも、あなたがたが居ればいい。
 そうすれば、そこが"水晶村"なのだ。少なくとも私はそう考えている!」
「……であれば、ここを我らの城と定めて暴威に抗うことも、重要ですね。
 逃げ続けることは疲労を伴いますし、吸血鬼への意思表示としては弱いですし」
 そう、どちらが最良とも言いがたい、どちらであれ利点と欠点があり、
 そして相応の問題が生じる……重要なのはそこから先、なのだ。
 この世界に住むのは我らであると宣言し、悪逆なる圧制者に抗う。
 その意志を貫き、同じ仲間を信じて過ごせるかが、大事なのであろう。
「そうと決まれば、私達もそろそろ作業に合流しようか。なあ、結都殿!」
「ええ。私達に出来ることであれば、どんな作業でも手伝いますよ」
 頷くふたりに対し、アル少年はありがとう、と頭を下げた。
「力を貸してもらうよ。俺たちが生きていくために……よろしくな!」
 若者達の結束は、また一段と強く、そして堅く深まったのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セリオス・アリス
【双星】
アドリブ◎
何選んでも
まぁ来たら手伝ってやるけどよ

伝わるように
しゃがんで、目を見る

ちゃんと、選べよ
誰かの為とか意地じゃなく
自分の為に
お前の、お前達の一番を

したら手を貸してやるから
まずは戦いかたでも教えるか!
アレスが基礎なら俺は応用
実践的なヤツだな
例えば目潰し…光だけじゃなく砂を投げつけるとかな
逃げるにも攻めるにも使えるから便利だぞ
あとは――
調子のって詰め込んで

…って何で止めるんだよアレス
これくらいしなきゃ簡単に勝てねぇだろ?
んー、まあ、俺も10年かかったしな
そんならあとは…歌?
いつか…応えてくれるかもしれないしな
故郷の歌を教えよう
騎士団の歌と…子守唄はアレスの仕事な

今度俺にも歌ってくれよ


アレクシス・ミラ
【双星】
アドリブ◎

目を合わせると祈るように
…どうか、君達が信じる最善へと
未来へと歩んでくれ
光の導きがあらんことを

さて、君達の力となれるのなら本望だ
勿論手伝うよ

戦い方か…そうだね
家と家族を守れるように
僕は基礎を指南しよう
軽い剣か木の棒で
構えや身の動かし方、防御のし方などを
最後に僕と軽く手合わせをしようか

次は応用だね
…って
調子に乗るセリオスを軽く小突く
詰め込みすぎだ
気持ちはわかるけど
急には強くなれない…知ってるだろ

兎に角…大切なのは生き残る事
それを忘れないでほしい
大丈夫
僕達の剣は君達と共にある

歌か…いいね
力にも安らぎにもなる
…えっ、僕も?
少し照れる、けど…うん
子守唄を教えよう

君に歌うかは君次第、だ



 子供達は、戦う力を求めていた。
 それは猟兵達の背中が、そのくらい偉大で勇敢に見えたということでもある。
 なによりも、圧制と暴虐に抗うには、力がなければ何も出来ない。
 故郷を奪われ、あるいは追い立てられ、はたまた自ら捨て去った……。
 血の繋がりもなければ本当の名前も知らない子供達の集まりは、
 それゆえに力というものを神聖視し、固執する者も少なくないのだ。
 ゆえに、セリオス・アリスとアレクシス・ミラに師事を乞う子も多かった。
 ……が――。

「セリオス!」
「ってぇ!」
 こつん、と後ろから頭を小突かれ、セリオスは頭を抑えながら振り返った。
 幼馴染のアレクシスは、片手に木の棒を、もう片手を腰元に当て、呆れ顔だ。
「何すんだよアレス! いまいいところだったってのによぉ!」
「そういうところだよ。君、子供達がついてこれてるかチェックしてるかい?」
 んなの……と言いつつ振り返るセリオス。
 ……だが彼の予想に反し、子供達はぽかんとした顔をしていた。
 明らかに、セリオスの意図しているスピードに、彼らが追いついていない。
 それでも食らいつこうとしていたあたり、意欲は十二分ではある。が……。
「……ちぇっ」
「ようやくわかったか。まったく……君は調子に乗りすぎだ」
「んだよ、こんぐらいしねぇとあいつらには勝てねぇっつーの!」
 唇を尖らせて反論するセリオスに、腕組して嘆息するアレクシス。
「それはわかるよ。けど、あれこれ詰め込むのはむしろ逆効果でしかない。
 ただ教わるだけで強くなれるほど、世の中甘くない……君も知ってるだろ?」
 生兵法は大怪我の元、という言葉もある。
 生半可な付け焼き刃では、むしろ逆に最悪の事態を巻き込みかねない。
 実戦では、訓練以上のことが出来るわけはないのである。
「……んー、まあ、俺も10年かかったしな……わかったよ」
 それを身に沁みて理解しているセリオスは、不承不承といった様子で頷いた。
 が、すぐにぐわっと背を伸ばし、アレクシスと額を突き合わせて睨む。
「って、それはそれとして! 頭小突く必要はねーだろ、頭はっ!!」
「夢中になってる君を黙らせただけだろう? 本気で叩いたわけでもなし」
「そーゆー問題じゃねえっつーの!! 頭だぞ頭、バカになったらどうする!!」
「……それなら心配はいらないんじゃないかな(目逸らし)」
「ど・お・い・う・意・味・だ・よ・そ・れ・は~~~~~!!!」
 ぐぎぎぎぎ。怒気満面といった様子で食って掛かるセリオス。
 アレクシスはやれやれとでも言いたげな顔で頭を振り、セリオスを引き剥がす。
「そういうところだよ、そういうところ。うん」
「だから!! それは!! どういう意味……」
 ……そこで、セリオスはくすくすと笑う子供達の声に気付いた。
 ふたりのじゃれ合うような喧嘩を見て、子供達が笑っていたのだ。
 セリオスは「見世物じゃねーぞ!!」と、照れ隠し半分に喚き立てる。
 そんな様子を見て、アレクシスは呆れたように苦笑するのだった。
「まったく、本当に騒がしいな君は……ははは」
 わあっと歓声をあげて散っていく子供達もまた、楽しげに笑っていた。
 彼らの間の距離が、着実に縮まっている証拠だった。

 ……そうして、基礎と応用を兼ねた戦闘訓練が一息ついた頃。
「そうだ。歌も教えてやるってのはどうだ?」
 と、セリオスが提案したのである。
「歌? もしかして……故郷の歌かい?」
 アレクシスの言葉に、セリオスはにんまり笑って頷く。
「いつか、応えてくれるかもしれないだろ? アレスは子守唄担当な!」
「えっ、僕も歌うのか? というか、子守唄……うーん」
 照れた様子で頭をかくアレクシスを見て、セリオスは意地悪そうに目を細める。
 どうやら、今度はセリオスがからかう番になったらしい。
「兄ちゃん達の故郷の歌、聞いてみたい!」
「俺も知ってるよ、もっと子供の頃に聞いたことのある歌!」
 楽しい歌と聞いて、特に年少組の子供達が食いついてきた。
 こうなると、騎士を目指す青年としても、引き下がるわけにはいかなくなる。
「……仕方ないな。子供達のために、歌うとしようか」
「えーっ? なんだよ、今度俺にも歌ってくれよ~」
「君に歌うかは君次第だよ」
 すねた顔になるセリオスに言い返し、アレクシスは静かに旋律を口ずさむ。
 どうか、この子達の未来に……そしてこの世界に、光の導きあれ、と祈って。
 ふたりは視線を交わし、子供達と目線を合わせて同じように歌い続けた。
 戦いの詩を。
 安らぎの唄を。
 いつかまた危難が襲いかかった時、必ずその力になるという誓いを込めて。
 ――静かな夜に、優しげな旋律が流れていく……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミソラ・フジミネ
強えな
さすが未来のお得意様、折れてねえ
立て直す手伝いならいくらでもやりますよ
自分もバイクも好きに使ってください

ああそうだ
子供には重すぎるかも知れねえけど
その辺に転がってる武器、ないよりある方がいいと思いますから一応拾っときます
片腕まだ復活してないすけどなんとかなるでしょ
糸はここにあるんでね、縛る手伝いお願いしてもいいすか

重いもん運ぶ用があるならバイクに乗せてどうぞ
大型なんで結構重いのいけますよ

いつかまた会ったらよろしくお願いしますね
ご贔屓に



「……なあ兄ちゃん、片腕ないのに大丈夫なのか?」
「んぁ? ……ああ、心配ないっすよ。そういう体なんで」
 ミソラ・フジミネは、こともなげな様子で言った。
 いくら猟兵は見た目によって違和感を与えることがないとはいえ、
 子供達は彼の片腕が丸ごと吹き飛んで炸裂する瞬間を目の当たりにしている。
 ゆえに、少年らが心配そうな面持ちで問いかけたのも不自然ではない。
 デッドマンであるミソラは強がっているわけではなく、
 本当にどうということはないだけなのだが……それも伝わりづらいだろう。
 どう見ても重傷人が、重たい荷物を片手で拾っては戻ってくるのだ。
 そこまでさせるわけには、と物怖じする子供もいた。
「いいんすよ、自分のことは好きに使ってください。これでも頑丈なんで」
 ミソラの表情はマスクに覆われて伺い知れない。
 しかし彼の声音には、少なからず気さくな調子が感じられた。
「助けてもらってこんなこと言うのはなんだけどさ」
「なんすか?」
「いや……なんでそこまでしてくれるのか、って」
 アル少年の疑問も、もっともだろう。ミソラは答えた。
「配達人なんて仕事やってると、やっぱ何より顧客満足度が重要なんすよ。
 "未来のお得意様"が気合い入れて立ち上がるってんなら、手伝わないとっしょ」
 ミソラの口元はガスマスクに覆われていて伺い知れない。
 ……けれども言葉以上に、その目元は愉快そうにほころんでいた。
 彼は、嬉しかったのだ。
 自分とは違う若者が……それも生者が、あれほどの暴威に恵まれながら、
 なおも折れることなく、負けてやるものかと頭を下げたことに。
 見上げた若者達だ、と彼は思う。どうにか力になってやりたいとも。
 もちろん商売っ気がないわけではない。だが……。
「俺も名前すら他人からもらった人間っすからね。親近感湧くっつーか」
「……そっか。ありがとな、兄ちゃん」
「そのぶんご入用の時は、自分のとこ頼ってくださいよ?
 "DELIVERY MAN"をよろしくお願いするっす。どうぞ、ご贔屓に」
 アル少年は頷き、バイクに荷物を積み込む作業を始めた。
 マシンにまたがりスロットルを回しながら、ミソラはひとりごちる。
「……早いとこ、この夜が静かになればいいんすけどねぇ」
 忌々しく見えた闇の空は、ほんの少しだけ穏やかに思えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロト・ラトキエ
戦場を、闇を知るだけの、奪う事しかないこの手に。
さて…何が出来るだろう?


移住するなら、いつか囮にでも退避場所にでも。
此処に留まるなら、尚のこと。
どちらにせよ、この村に手を入れることは異論無く。

言葉交わせれば良き事ですが…
僕、真っ当に語らい、説ける様な人間でも無いですし。
一丁、力仕事と参りますか!
隠し通路や避難経路作り。
壊れた部分を補修や補強、
容易く見つからぬ様、出入り口の更なる隠蔽など…
王族の住処なども視て識っております。少しは参考に出来ますかね?

後は…
必ずしも危機に間に合うとも限りませんし、
偶に訪れて様子見とか?

報酬、は。
いつかこの世界の闇を払ってくれたなら。
その時それで、出世払いという事で



 希望は尊く、そしてうつくしくたゆまないものだ。
 その輝き、煌めきは、紛れもなく慈しむべきものである。
 ――頭ではわかっている。だからこそ己は戦った。
 けれども。それに触れることは、己には出来ない……。
 クロト・ラトキエは、己の掌をじっと見つめていた。
 彼の目には、もう濯ぎ落としたはずの黒ずんだ血がまだついているように見える。
 数多の命を奪い、踏みにじってきた穢れた手。それが己の掌だ。
 それをいまさら疎みはすまい。歩んできた道もまた己の過去なれば。
 だが結局のところ、この手は希望など生み出せはしない。
 己が生きるべきは闇の中であり、そして生み出せるのも新たな闇だけ。
 護るために奪うことは出来ても、何かを生み出すことは出来ない……。
 そんな自分が、これ以上この場に残るべきなのか?
「……あの、やっぱ力を貸してくれっての……不躾だったかな?」
 そこでクロトは、不安そうな表情のアル少年の声で我に返った。
 どうやら黙っているのを見て、腹を立てているのかと勘違いしたらしい。
 クロトは苦笑し、頭を振る。
「まさか、この村に手を入れることは異論ありません。
 乗りかかった船ですし、僕もお手伝いしますよ。たとえば――そうですね」
 クロトが自ら提案した作業内容は……。

「……すげーや! これならもう滅多なことじゃ崩落しなさそうだ!」
「万が一のことがあっても、早々見つからないだろうな」
 作業を見守っていたアル少年、そしてナイベールは出来栄えに感心した。
 クロトが手掛けたのは、新たな避難経路のひとつである。
「職業柄、こういった抜け道のたぐいはよく識っていますからね。
 要点はメモにまとめておきましたから、参考にしていただければ」
 時間と作業量の関係上、クロトが手掛けたのはあくまで雛形のみ。
 しかし本格的に整備すれば、彼らの言う通り重要な避難経路となるだろう。
 傭兵としてのノウハウをまとめたメモも、大きく役立つはずだ。
「……あんた、相当に腕の立つ輩だろう? 報酬は必要ないのか?」
 浮かれるアル少年をよそに、ナイベールは冷静にクロトを観察していた。
 男はあるかなしかの笑みを浮かべ、少年にこう返す。
「――いつかこの世界の闇を払ってくれたなら、それでいいですよ」
「大金よりも派手な報酬だな……まあ、頑張るさ」
 とんでもない出世払いを提案され、シビアな少年は肩をすくめた。
「出来ますよ。あなた達なら、必ず」
 そう言うクロトの眼差しは、眩しそうでもあり慈しむようでもあった。
 ……己の手は血に汚れた、闇を生み出すことしか出来ない掌だ。
 それでも、誰かの生み出す希望を護ることは出来る。
 いつしかその輝きが、己の代わりに闇を払い光をもたらしてくれるだろう。
 クロトはそう信じ、闇から闇へと駆けていくのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フェルト・フィルファーデン
ふふっ、そうよね!あなた達の大事な居場所だもの、もちろん力を貸すわ!

わたしは、そうね……女の子達にお裁縫を教えましょう!興味があるなら男の子でもいいわよ?
針への糸の通し方、丈夫な縫い方など基本的な事から、素敵で着心地の良い服の作り方といった専門的な事まで、知りたいのならなんでも教えるわ!

ええ、ここまでの技術は、この過酷な地で生きていくためにはそこまで必要無いかもしれない。生きるだけで精一杯で、そんな余裕ないかもしれないわ。でも、覚えてて欲しいの。いつか、平和な世界になったらきっと役に立つから。わたし達が絶対に、そうしてみせる。だから、あなた達も信じて?いつか来る明るい未来を。輝ける希望を!



「で、ここをこういう風に縫うでしょう? そして糸を引くと……ほら!」
「「「わあ、すごい!」」」
「おーい、何やってんだみんなしてー?」
「それでね、こういう模様を作るには、こう折りながら針を通して……」
「「「へええー、これなら簡単そう!」」」
「おーい、なんだよー? 気になるから混ぜ」
「「「あーもう、静かにしてて!!」」」
「は、はい……」
 女子達の剣幕に、アル少年はすごすごと引っ込んだ。
 女の子らの意外な様子に、フェルト・フィルファーデンは目をぱちくりさせる。
「よかったの? 興味があるなら男の子にも教えてあげたのだけれど」
「ダメだよ、アルのヤツってばすーぐ布をダメにしちゃうもん」
「洗濯しようとしたら服流しちゃうし」
「配膳だって下手だし」
「「「ねー」」」
 どうやら、リーダーの少年も少年なりに苦心しているらしい。
 努力はしているであろう男の子の内心と、こうは言いつつも彼をリーダーとして慕う女の子達、それぞれの気持ちを考えて、フェルトはくすくす笑った。
「それに……こんな風に女の子同士で集まること、あんまりないから。
 なんだか楽しくなって、つい……悪いこと、しちゃったかなあ?」
 ラミーの言葉に、フェルトはいたずらっぽく微笑む。
「あら、それならそれでわたしは構わないわ? だってわたしも楽しいもの。
 つまりいわば、これは女の子同士のヒミツの集まり……と、いうところかしら!」
「……なんかヒソヒソしてんなあ。まあいっか」
 かしましく仲睦まじくなる女子会の雰囲気を横目に、力仕事に戻るアル少年であった。

 そうしてフェルトが教えてあげた裁縫の技術は、女子らには有益なものとなった。
 彼らの衣服は着の身着のままで逃げ込んできたものを使いまわしたり、
 放棄されたばかりの拠点から盗み出してきたものばかりであるため、
 どれもこれもいい加減に限界が来ていたのだ。
「どれだけ生活が苦しくたって、おしゃれをしたいのが女の子だもの。
 だから憶えていて。いつか平和な世界になったら、きっと役に立つから」
「はいっ! おしゃれじゃなくても、服はあればあるだけ楽ですもんね!」
 ラミーの言葉に、女子たちはみな頷く。
「でも、平和な世界なんていつ来るのかな……」
「……すぐに来るわ。必ず、わたしたちが絶対に、そうしてみせる。
 どうか不安にならないで、輝ける希望を……未来を、あなたたちも信じて?」
 フェルトは言い含めるように語り、子供達を見渡した。
 もはや彼女らの目に不安はなく、その言葉に元気よく応える。
 ……若き子供達の心の輝きは、こうして見事に守られたのだ……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ネグル・ギュネス
さて、俺に出来る事と言えば荒事──と言いたい所だが
身を守る術、いざとなれば逃げる術を教えねばなるまい

ブランド、レンダと食料調達の狩りをしながら話をしよう
野鳥や獣を、電撃銃で的確に仕留めながら、今回のような事態になったらの生存戦略


獣を狩る時は、音を立てず痕跡を残さずに。其処から敵に気付かれ壊滅、なんてよくある話だ
仮に遭遇したら、煙玉や撹乱方法を教えておく

逃げるのは、恥じゃない
誰も死なせたく無いなら、臆病なぐらいで良い


適度に狩りをしたら、索敵方法や帰る際に足跡や痕跡を残さぬ策まで伝授

二人とも、生きろよ
喪ったら、後悔じゃすまないんだ

お兄さん、大好きだった女の子を守れなかったからさ
だから、…生きて、ね



「いやー、大漁大漁! これならいっそウチに住み込んでほしいぜ、な!」
「何言ってんのよ、そんな迷惑言えるわけ無いでしょうが、ったく」
 調子に乗ったブランドの言葉に、レンダはにべもなくツッコミを入れた。
 もちろんブランドのほうも冗談で言っている。ネグル・ギュネスは解っていた。
 ……彼らは狩り仕事を終え、近くの山から戻る最中だった。
 獲物を仕留めるための方法……というよりも、ネグルが教えたのは、
 強敵と相対した時に身を守り、そして遁走する術であった。
「今回の成果は俺からの餞別、ってとこだな。生活の足しにでもしてくれ」
「おう、任せといてくれよ。これからはちょっとばかし無理もできそうだし!」
「それじゃ教えてもらった意味がないでしょ? 何聞いてたんだっつーの」
 売り言葉に買い言葉、ブランドとレンダのやりとりはツーカーだった。
 あれがふたりなりの、気のおけないやりとりというものなのだろう。
「だがまあ、レンダの言うとおりだ。逃げ方は教えたが、
 それは無茶が出来るようにじゃない……生き延びるため、なんだぞ?」
「わかってる、わかってる。……獣はともかく、あんな連中がまた出てきたら、
 その時はケツまくって逃げるさ。俺だって、死にたいわけじゃないんだ」
 あの恐るべき騎士どもの姿が思い起こされ、子供達は表情を翳らせた。
 ネグルは安心させるように穏やかに微笑み、こう言った。
「いや、それでいい。逃げるのは決して恥じゃない……臆病でもいいんだ。
 誰も死なせたくないなら、自分が死なないことがいちばん大事なんだから、さ」
「…………」
 そう語るネグルの横顔に、レンダは何かを感じ取った。
 あれは、大切な誰かを喪ったひとが見せる顔だ。
 比較的穏やかな生まれである彼女は、それを身を以て知っている……。
「なあ、どうしてそこまで生き残れって言うんだ?」
「!! ちょ、ブランド、あんた……っ」
「なんだよ、聞いちゃ悪いか? 気になっただけだぜ」
 咎めようとするレンダを睨み、ブランドは言った。
「助けてくれた恩人のことを知りたいと思うのは、いけないことかよ」
「…………」
「……いいさ。お兄さんも、いつまでもくよくよしてられないからな」
 ネグルは言った。
「大好きだった女の子をさ、守れなかったんだ。それどころか……」
 ――もう一度、この手で。
 ネグルはそこまで言葉にすることは避けた。
 ただ彼が掌をじっと見つめる様は、見ているだけでも、
 子供達にただならぬ何かがあったことを察させるには十分だった。
「……だから、死んでほしくないんだよ。会ったばかりの誰かだとしても。
 あんな理不尽に奪われるのは、もうゴメンなんだ。だから……生きてくれ」
 それはすがるようで、祈りにも似ていた。
「ふたりとも、いや、みんな……もうひとりだけの命じゃないんだ。
 だから、生きて、ね。お兄さんからの、真摯なお願いだよ。聞いてくれるか?」
「……うん。生きるよ。犬死なんて絶対ゴメンだもん」
「言われなくたって、ってな。いつかあんた達の役に立ちたいし!」
 力強く応えるふたりに、ネグルは儚い微笑みを浮かべ頷いた。
 失われたものは取り戻せない。死んだ者はもう生き返らない。
 それでも――この手はまだ、奪われるはずの何かを護ることが出来る。
 少なからず、男にとってそれは、力を湧き立たせる事実だった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

矢来・夕立
お人好しが滞在してる間に使おう、ってのは賢明な判断です。
そのくらいしたたかでないと死にます。

オレが教えられるのは、よりよい罠の作り方。
限られた資材であっても工夫次第でより効果的なトラップを作れます。
例えば落とし穴の隠し方ですけれど、なるべく周囲の環境に適応した覆いを使ってください。
橋の上なら同程度傷んだ板。森の道なら苔むした土を使う、とかです。

あとは……そうですね。
硬い石を見つけたら、なるべく鋭く割って、体力のない子どもに持たせておくのも良いでしょう。
まきびしといいます。獣や野盗程度になら有効ですよ。

……売れるものは売っておく主義でしてね。
元手ゼロかつ見返りが大きいんです。恩というのは。


壥・灰色
なにか役立つことを、と思うのだけど、おれに出来ることは余りに少ない
水晶村の外れで、一人、石に己の魔力を込めて永続化する
壊鍵、『爆殺式』、起動、固定
普段ならば即座に爆破して終わりの爆殺式を
言わば信管を挿さぬ状態で編み続ける
蒼白い石が、大量に生まれていく

アルベルト、ナイベール
おれはずっと此処にはいてあげられない
他にも、どこかに、危機を迎える誰かがいるから
助けに征かなくては

代わりに君達にこれを渡す

拳を突き出し、重ねた彼らの拳に信管式を書き込む
或いはナイベールなら、おれが今何をしたのか
解読出来る日が来るかも知れない

この石は、巨人の拳
君達が力を込めて投げれば、敵を打ち砕くだろう

きみたちの道行きに、幸あれ


鹿忍・由紀
状況を見て手伝いが必要そうなところへ

子供達に特別優しい言葉をかけたりはしないけれど
生きようとしている者達を無碍にするつもりもない

わざわざ語らないが自分も元々身寄りのない孤児だった
生き残ろうとする気持ちはわかるようで

自分はたまたま抗える力を持っていたから独りでも延びれることが出来たけれど
力のない者に抗えなんて言えるわけもなく
ただ自分が出来る範囲だけのことをする
余計な同情や優しさは必要ない
必要なのはこれからどう生きていくかの準備と知恵だけだ

自覚はないけれど
無意識のうちに少しでも生き延びて欲しいと思っているのかもしれない

俺に出来ることなんて大してないよ
まあ、精々頑張ってね



「……何してんの?」
 鹿忍・由紀の声に、壥・灰色はうっそりと顔を上げた。
 彼の足元には、いくつもの石ころが転がっていた。
 しかし見るものが見れば、それが"ただの石"でないことは一目でわかる。
 青白く変わった色合いだけではない――込められた魔力である。
「それ、爆薬みたいなものでしょ。地雷でも仕掛けるつもり?」
「……そういう風には起動しないようにしてあるよ」
 灰色はそう言って、またひとつ新たな石に魔力を込めた。
 由紀は灰色の持つ"壊鍵"の術式、その理を詳細に知るわけではない。
 しかし込められた尋常ならざる魔力と、その『衝撃』がもたらす威力は、
 彼ほどの猟兵であれば一目瞭然……下手な爆薬をはるかに超えるものだ。
 そんな剣呑なものをこつこつ作っている男がいれば、声をかけるのも当然か。
「まあそもそも、異世界(こっち)で姿を見るとは思わなかったけどね」
 由紀の記憶にある灰色の姿は、おもにグリモアベースで依頼を託す側のもの。
 ……赦されざる外道どもの悪行を、その打破を望む彼の姿は、
 義侠心に乏しい由紀の目から見ても、まったき怒りを感じさせるものだった。
 もっとも、個人の義憤や信念など、いちいち彼が立ち入ることではない。
 それを思えば、今回のような仕事を叩き潰しに来るのは納得できる。
 由紀の言葉はある種の軽口であり、ちょっとした世間話のようなものだ。
「ほんとうは、自分で視たものにも立ち向かえればいいんだけれどね」
 灰色の言葉には、少なからぬその事実への口惜しさがあるようだった。
 グリモア猟兵として、予知を目の当たりにしながら自ら跳べない口惜しさ。
 それは、由紀には想像するのも難しいことではある、が……。
「……すみません。ちょっといくつか石ころ分けてほしいんですけど?」
 そんなところに新たにやってきたのは、矢来・夕立であった。
 彼はともに表情に乏しい少年と青年の顔を交互に見やり、
「……もしかしてお邪魔でした?」
「「いや」」
 ふたりは声を揃え、顔を見合わせ、そしてまた夕立を見た。
「「特にそんなことは」」
 ……またしても顔を見合わせる、表情の乏しいふたり。
 夕立も夕立で鉄面皮なので、大変に奇妙な雰囲気に包まれていた。
「……まあとにかく、石ころいくつか分けてほしいんですよ。よければ」
「ん」
 灰色が投げ渡したそれを、夕立は軽くキャッチ。
「何に使うの? それ」
「まきびしにします。足止めには最適かなと」
「……石で代用できるもの?」
「尖らせ方を工夫すればいけますよ。……罠づくりの最中なんですよね」
 夕立は、由紀のほうをちらりと見た。
「よければ手伝ってもらえますか」
「わかった。いいよ」
「おれも行くよ」
 言った灰色は、ちょうど最後の石に魔力を込め終えたらしい。
 それをズタ袋に入れ、立ち上がる。夕立は少し考えた。
「……地面をふっ飛ばして落とし穴、とかはダメですよ?」
「おれ、そういうことやりそうに見えるの?」
「割と。いえ、これはウソですけど」
 夕立の台詞が単なる口癖なのか、ほんのり危険を感じたからなのか、それは定かではない。

 ともあれそうして、青年たちは夕立の罠講習を手伝うことに。
 落とし穴を掘り、道具が必要ならそれを用立て、彼の手順を再現する。
 子供達がおおよそ内容を呑み込み終えたところで、灰色が例の石を配った。
「なんだ、これ?」
「……魔力が籠もってるな」
 アル少年の言葉に、受け取ったナイベールが呟く。
「おれ達は、ずっとここにはいてあげられない」
 そして灰色が言う。
「他にも、どこかに、危機を迎える誰かがいるから。おれにはそれがわかる。
 ……だからおれ達は、それを助けに征かなくちゃいけないんだ」
 彼の言葉に、後ろにいる夕立も由紀も特段口を挟むことはなかった。
「その代わりだ、これだ。……拳を」
 灰色が握り拳を突き出すと、アルベルト、そしてナイベールも応じた。
 重ねられた拳に、灰色は起爆のための『信管式』を書き込む。
 アル少年はきょとんとしていたが、ナイベールはぴくりと眉を動かした。
「……この石は、巨人の拳。君達が力を込めて投げれば、敵を打ち砕くだろう」
「へえー、すげー! それなら俺達だけでも、戦えるかも!」
「……そうならないことを祈るけどな、俺は」
 ナイベールの言葉に頷き、灰色は言った。
「きみたちの道行きに、幸あれ」
 灰色は無表情だけれど、心なしか微笑んでいるように見えた。
 そして少年らに別れを告げて、ひとり歩き出す。
「……あなたは、何か言い残してあげなくていいんですか?」
 顔見知りの夕立は、わかりきっている台詞を由紀に投げかけた。
 彼がそんな人間でないことは、悪党である彼にはおおよそ察せているのだ。
「ガラじゃないよ、めんどくさいし」
「……その割には、オレの仕事も手伝ってくれましたよね」
「そりゃまあ、なんとかするって依頼でここに来たんだしね」
 由紀はほんの少しだけ面倒くさそうな調子で言い、子供達を振り返った。
 ……そうとも、自分はそんなキャラではない。
 未来がどうとか、希望がどうとか、そんなクサイ台詞は似合わない。
 これっぽっちも信じちゃいないし……ただ。
「俺はわざわざ、生きようとしてる誰かを無碍にするつもりはないよ。
 だったらやることだけやって、余計なことは言わないで消えたほうがいい」
「ま、そこには同意します」
「その割にはそっちこそ、あれこれレクチャーしてたけど」
 逆に言葉を返され、夕立はちらりと由紀を見てから、逆の方を見た。
「……売れるものは売っておく主義でしてね。
 元手ゼロかつ見返りが大きいんです、恩というのは」
「へえ」
 それ以上由紀は何も言わなかった。ただ代わりに、灰色が口を開いた。
「こうしておれたちに力を貸してくれてるだけでも、十分すぎると思うよ」
 と。
 それはおそらく、危機と難題をもたらすグリモア猟兵としての言葉だろう。
 由紀は少しだけ考えるような間を置き……。
「俺に出来ることなんて、大してないよ。……まあ、せいぜい頑張ってくれればいいんじゃないかな」
 それだけ言って、もう振り返ることはなかった。

 掲げるような信念も、綺羅星の如き希望も、輝けるような意志もない。
 それでも由紀は征く。悪逆があれば、それを討つために世界を駆ける。
 打ち砕いたところで喪われたものは戻らない。何もかもを救えはしない。
 それでも灰色は征く。いつかそれがこの世界に光を齎すと信じて。
「――お人好し、多いですよね。この界隈」
 誰にも聞こえないように呟く夕立もまた、それでも征くのだ。
 闇から闇へ。何かと理由をつけて、気に食わないものを討つために。

 それでも、彼らは征く。何度でも、どこまででも。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マレーク・グランシャール
【壁槍】カガリ(f04556)と

新しく拠点を構えるには何ヶ月もかかる
だが今いる村の改修ならば猟兵がいるうちにある程度片付くかもしれない
居住区の周りに壁を作ってみてはどうだろう?
空飛ぶ敵でないなら多少なりとも足止めにはなろう
それにちょうどここには壁のプロもいるしな

壁作りについてはカガリの指示を仰ぐ
俺は力仕事や高いところでの作業を率先して引き受けよう
オブリビオンの襲来をいち早く感知できるように村周辺に鳴子、それから落とし穴なども子供達と一緒に作成した方がいいな
また視点を変え、槍で壁を破壊する場合を想定してどこが狙われやすいかも考えてみるぞ

俺も子を持つ身
この子らの行く末のために出来る限り尽くしたい


出水宮・カガリ
【壁槍】まる(f09171)

んん、砦を守る方法
ひとの子らだけで
強くならずとも、カガリがいつでも守ってやると…言えたらいいのだが…
(ひどく残念そう)
カガリの壁は、無限大では無いからな…

壁の、ぷろ。まあ、うん。
カガリの黄金城壁は、無理でも
ちょっと強いものくらいは
支えがない壁は頭が重くて凝りやすい(重心が偏って脆くなる)とか、この辺を突かれると痛い(壊れやすい)とか、
壁の弱そうなところを『実体験』で教えてやりながら補強するぞ
壁頼みにするより、もっと遠くで追い払えたり、気付いて避難出来たりする仕組みが、あるといいな
隠し通路を潰されたのなら、地下、とか

全ての世界の、全てのひとを
カガリの壁で守れたらなぁ…



 いくら出水宮・カガリの城壁が堅牢な守りの顕現だったとしても、
 世界を越えて、しかも常にすべての弱きものを守れるわけではない。
 カガリは悲しむ。己の手が、そこに誰かが居ると知っているのに届かぬことを。
 ヤドリガミであろうとも、此方と彼方を分かつ門の具現であろうと、
 伸ばせる手はふたつきりしかなく、そして届く範囲にも限度はあるのだ。
「壁の、ぷろ。まあ、うん……たしかにそうなのだが……。
 まるは、カガリのことをちょっと誤解してるような気がするぞ?」
「そんなことはない。現にお前の知識は、子らの役に立っているとも」
 マレーク・グランシャールが言えば、カガリは不承不承といった様子で頷く。
 彼らは村の外壁を強化するため、知識を提供し力仕事に従事していたのだ。
 もちろん敵の存在にすぐ気付けるよう、鳴子のようなトラップも忘れない。
 今から村を移住させるのは無理だとしても、この程度ならば手助け出来る。
 ……逆を言えば、この程度しか手助け出来ないということでもあるのだが。
「カガリ、お前の知恵は役に立つ。おかげで脆弱なポイントも突き止められた。
 もしもまた同じ規模の襲撃があったとして、今度は十分耐えられるはずだ」
「うむ……それはまあ、カガリの壁にかけて当然だが……」
「ならばなぜ、そんなに浮かない面持ちをしている?」
 マレークに問われ、カガリはため息をつきながら頭を振った。
「カガリは悲しくて、寂しいのだ。……カガリの壁は、無限大ではない。
 護るべきだとわかっているひとがいるのに、そこを離れねばならないことが。
 カガリの力がこの地までいつでも届けば、こんな必要はないだろうに……」
 カガリは、急ピッチで築き上げられる新たな防壁を見上げた。
 マレークはどう言葉をかけたものか、しばし思案したのち、口を開いた。
「……それはおそらく、誰もが思っていることだ。そして諦めるしかない。
 たとえ全能の神がいたとして、世界を越えて威光を届かせられはすまい」
「女神であれ、か?」
「そうだな……女神であれ、だ。何事にも限界というものはある」
 伴侶の姿を脳裏に思い出しながら、マレークは頷いた。
「しかし思い出せ。俺達は今日までいくつの世界を、何度救ってきた?
 戦争を勝ち抜いただけではない。この世界で、別の世界で、戦ってきただろう」
「わかっている。わかっているとも。カガリは、ただ――」
 ……ただ、守ってやりたいだけなのだ。
 と、相棒は呟いた。憂いを感じさせる、寂寥的な表情で。
「これから先もずっと、誰かを守ろうとするたびに同じことを思うのだろうか」
「……きっと、な。だが、それが嫌だからと諦めたくはないだろう?」
「それは、もちろんだとも。カガリはそんなことで足は止めないぞ」
「ならばやることは決まっていよう。これまでと同じ通りに、戦うだけだ」
 うむ、とカガリは頷き、両手でぺちぺちと己の頬を張った。
「いかんな。あのオブリビオンの姿のせいか、妙に弱気になってしまった。
 護るべきカガリがこれでは、その内側に守られるひとも笑っていられまい!」
「その意気だ。……安心しろ、カガリ。お前の隣には、いつでも俺がいる」
 そう言ってから、マレークは子供達のほうを指差した。
 子供達は頬を泥で汚しながら、それでも明るい表情で作業をしている。
 壁を築く子もいれば、全く別の作業に従事している者も。
 みな笑って、未来に思いを馳せながら、額に汗して抗おうとしているのだ。
「あれが、俺達の守り抜いたもの――子らの行く末は、明るいさ」
「……ああ、そうだな。カガリが暗い顔をしていてはいけないな」
 カガリは微笑み、今度こそ意気を取り戻して奮起した。
「よしっ。ではもうひと踏ん張り働くとしよう!」
「応。俺達に出来ることは、すべてやってあげよう」
 子を持つ者として、若き子らの行く末を、マレークも案じていた。
 だが懸念はあれど、マレークは不安に思ったり悲観することはなかった。
 彼の言葉通り――子供達はみな、未来の可能性に目を輝かせていたのだから。
 それこそが人間の強さであることを、ふたりは知っているのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黒城・魅夜
人は城、人は石垣、人は堀とやら。
……まあその言葉を遺した人物はオブリビオンになってしまいましたが、それは置いておきましょう。

どこを今後の拠点にするとしても、重要なのはあなた方の絆、そして危地を乗り越えるための力でしょう。
戦闘能力が全てではありませんが、戦わなければならないことが多いのも残念ながらこの世界の現状。
ですから私は戦闘訓練のお手伝いをさせていただきましょう。
早業と範囲攻撃、残像を使って攻撃を仕掛けますから、反撃してみてください。

単独で戦う必要はありませんし、そうしてはなりません。
統率力、頭脳、武力、視力……皆さんそれぞれの特性を生かした連携をしっかりと作り上げていくことが重要ですよ。



 何人もの黒城・魅夜が、まったく別々に、かつ同時に攻撃を仕掛けた。
 無論、本当に分身したわけではない……高速移動が見せる一種の残像だ。
 当然、猟兵に大きく劣る戦闘力の持ち主では、その動きは見切れない。
 十数人の子供達は、武器を構えることすら出来ずに鎖で縛り上げられてしまった。
「……と、このように。すべての敵を目で追おうとすると、隙が生まれます」
 ふわり、と天女のように軽やかに降り立った魅夜が、見学者らを見渡した。
 戦いを見物していた子供達も、魅夜の攻撃の始動さえ見えていない。
 突然数人に増えた――と思った瞬間、暗闇がわっと膨れ上がるように鎖が溢れ、
 それは蜘蛛の巣めいて戦場を交錯し、そして子供達を絡め取っていたのだ。
 まさに早業。あるいは神業とでもいうべきだろうか……。
「す、すげえ……動きがまったく見えなかった!」
「これが、"闇の救済者"……!」
 腕に覚えのあった子供達も、鎖にがんじがらめにされおとなしく敗北を認める。
 魅夜が軽く手を振るうと、じゃらじゃらと音を立て鎖は消えていった。
 ともすれば、盛大なジャグリングショーを開くマジシャンにも見えよう。
 もっとも彼女の鎖は、咎人を引き裂き罪を贖わせるための処刑道具なのだが。
「まず状況を俯瞰すること。ただしひとりではなく、必ず複数人で、です。
 もし孤立している敵を見つけたとしても、絶対に深追いしてはいけません」
「どうしてだよ? やっつければ数が減るじゃん!」
「――もしそれが、あなたを誘い出すための罠だとしたら?」
 ブランド少年は、魅夜の冷たい瞳にうっ、と息を呑んだ。
「あるいは見えていないだけで、その周囲に奇襲役が潜んでいるかもしれません。
 もしくはそもそもが幻影で、本当の敵は背後や死角に回っているかもしれない。
 ……勇み足で反撃に出れば、そうして手の内に取り込まれ命を落とすでしょう」
「じゃ、じゃあどうすれば……」
「ですから、複数人で常に行動することが大事なのです」
 魅夜は静かに言い含める。
「皆さんの中には、統率力に秀でる人もいれば頭脳に秀でる人もいるでしょう。
 あなたのように腕っぷしに覚えのある方も、目がいい方もいることだと思います」
 アル少年、ナイベール、ブランド、レンダは、それぞれ顔を見合わせた。
「つまり、お互いの出来ることを生かして連携しろっていうこと?」
「そうです。……普段の生活と戦いでは、似ているようでやれることが異なります。
 時には、誰かを斬り捨て誰かを生かす二者択一を選ばされることもある……」
 けれど、と魅夜は続ける。
「……ひとりでは不可能でも、複数人ならば状況を打開できるかもしれません。
 だから、単独で戦う必要はありませんし、そうしてはならないのです。
 人は城、人は石垣……異国にはそういうことわざもありますから」
「常に連携すること、か。思えば今回、俺達はそれが出来ていなかったな」
 ナイベールの言葉に、魅夜は頷いた。
「あなた達は生き延びたのです。……教訓を忘れずに、これからお生き延びてください。
 重要なのはあなた達の絆、そして危機を乗り越えるための力なのですから」
 魅夜はそう言って、戦闘講習をしめくくった。
 それは、希望を護るものとしての、彼女なりの祈りだったのかもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジャガーノート・ジャック
★レグルス

(ブランドだったか。ロクの叫びに物怖じしなかった子らと行こう。)

(ザザッ)
"ペナルティ"だ、ロク。

訳するならば相棒は逃げなかった事に対して御冠らしい。

(【学習力】で相棒の翻訳をしつつ共に抜道を作る。
"MOON FORCE"で邪魔な瓦礫を撤去しつつ
枝葉の刈り払いなどは彼らに任せる。)

とは言え君達の事を認めていない訳ではない。
心を折らずにいる事は大事だと
相棒も本機も心から思っている。

ただ、無謀と勇敢が違う事もまた事実だろう。
――本機のお小言はこの位だ。

(嘗ての"僕"のように――)大事だと思える人と離れ離れにはならなかった。
"そうはならなかった"のだ。
――君達を救えて良かった。
(ザザッ)


ロク・ザイオン
●プレイング
★レグルス

(進むために
逃げるために
生きるために、道はつくられるのだから)

(新しい抜け道を作る
見つかり難い場所を【地形利用】
【野生の勘】で安全なルートを定め
障害物は「烙禍」で砕く
己の声に怯えなかったこどもを作業に付き合わせよう
今度こそ、皆で生きる為に逃げてくれるように
これは…なんて言ったっけ)

ぺな…ぺにゃ…
"ぺなるてぃー"。
(罰当番である)
(あんなに逃げろって言ったのに)
(森番、キミたちの強さは認めるものの
実はちょいおこである)

(とはいえ通訳はジャック任せ)
(そうそれって顔で頷いている)

……。
(おれも、そう思うよ。)



「ふへぇー……疲れたぁ!」
 ブランド少年は額の汗を拭い、つるはしを放り出すとへたり込んだ。
 他の子供達も疲労困憊といった様子で、あちこち土で汚れている。
 腕組してそれを監督しているのは、ジャガーノート・ジャックだ。
《――うむ、いいだろう。作業は順調だ、休憩を許可する》
「遅れてたらダメだったのかよ……スパルタすぎねえ?」
《――生き延びるために力を貸してほしい、と言ったのは君たちのほうだが?》
 鋼の豹の言葉には、さすがの勝ち気な少年も言葉が出ない。
 そしてその隣で、ロク・ザイオンは倣うように腕組してうんうん頷いた。
「きみたち……ぺな……ぺにゃ……」
《――ペナルティー、だ。ロク》
「ぺにゃるてい」
 そう、それ。みたいな感じで頷くロク。
 ……ようは彼女は、先の緒戦におけるいきさつにおかんむりだったのだ。
 彼女の"逃げろ"という声を、ブランド少年らはあえて無視した。
 此処は自分たちの住まいだ。だから、自分たちだけは逃げ出せないのだと。
 それは喜ばしいことではある。ロクの声に抗えるのは強さの証明。
 ――しかし、もしも相棒が、そもそも彼女の参着が間に合わなかったなら?
 彼らが意固地になって殿になっていたら、その時何が起きていた?
《――君たちは、残らず死んでいただろう》
 相棒の言いたいことを察し、ジャガーノートが言葉を汲んだ。
《――結果として助かったとして、それはそれ。無謀は無謀、というわけだ》
「……まあ、悪かったって思ってるけどさ。でも、間違ってはなかったぜ」
「うん」
 ロクはこくんと頷いた。
 彼女もけして、彼らの判断を間違いだと糾弾したいわけではないのだ。
 それでも。
「にげろ、と、いった」
《――ロクはこういうことに関しては、少々しつこいぞ》
 むっとした顔でジャガーノートの脇腹を小突くロク。相棒は微動だにしない。
《――本機としても、あの場で間に合ったのは幸運というほかない》
「ん(こくこく)」
《――君たちには、学んでほしいのだ。いのちの重み、価値というものを》
 無謀と勇敢は違う。残念ながら彼らのそれは、前者に近い。
 だからこそジャガーノートも、抜け道を作る作業を監督し手伝っているのだ。
 事実、この人数でも除去できなさそうな瓦礫などは、
 ジャガーノートが反重力プログラムを活用することで補っている。
《――君たちは、大事だと思える人と離れ離れにはならなかった》
 静かに言うジャガーノートの横顔を、ロクはじっと見つめていた。
《――"そうはならなかった"のだ。……君たちを救えて、よかった》
「へへっ、そうだよな、助けられちまったもんな。俺たちも頑張らねえと」
 な、とブランド少年が声をかけると、少年達はみな頷いた。
 彼らもまた真摯にふたりの言葉を受け止め、前を向いているのだ。

 そうして作業が一段落し、ふたりは先んじて集落へ戻った。
「あ、いたいた!」
 ちょうどそこへやってきたのは、リーダー格のアル少年だ。
「……?」
《――本機らを探していたのか?》
「うん! ……じゃなくて、はい!」
 きょとんとするロクとジャガーノートを交互に見上げて、アルは頷いた。
 そして彼はこう言ったのだ。
「あの、ブランド達から聞きました。あいつらのこと、助けてくれたって」
「…………」
《――礼ならばもうすでにもらっている。気を回さなくとも……》
「あ、いや! それもあるんですけど」
 アル少年は言った。
「……おふたりも、他のみんなも、助かってよかったなあ、って思って。
 だからなんつーか、「ありがとう」もあるんですけど、「よかったな」って言いたくて!」
 レグルスのふたりは顔を見合わせた。
《――本機らも、助かってよかった、か》
 どう思う、と鋼の相棒に水を向けられ、ロクはきょとんとした。
 救いに来た自分たちもまた、彼らは身を案じてくれていたのである。
 それは妙にくすぐったく――そして、ふにゃりと口元が緩みそうになった。
《――感謝する。君たちと本機ら、どちらも無事で、本当によかった》
「はい! ……いつかきっと、俺らも自分で戦えるようになって、
 絶対皆さんの役に立つんで! だから……その日まで、どうか無事で!」
「……了解(おーば)」
 ロクは目元をほころばせながら、こくりと頷いた。
 やはり、あの子達は強い……ふたりはそう思った。
 ……腕っぷしの問題ではない、心の問題だ。
 未来に目を向け、諦めることなく、共に助け合い立ち上がろうとする。
 そして、自分たちを救ってくれた人々に、おんぶにだっこにならずその身を案じる。
 まさしく、希望を生み出すに足る、健気で強い子たちだった。
《――守れてよかったな》
「……うん」
 その喜びを示すのに、言葉はいらなかった。

 過ぎ去った戦いは苦しく、胸が張り裂けそうになった瞬間もあった。
 けれどその笑顔を、明るさを、そしてこの輝きを守れるならば。
 どんな苦しみとて乗り越えられる――ふたりは、たしかに、そう思った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年03月27日


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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はナギ・ヌドゥーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
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 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


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