アルダワ魔王戦争1-E〜強欲の蒸気技師
●何故何故何故
「あア、やはり素晴らしイ!この力、私のために在るに相応しイ!!」
炎熱と火雷、そして氷結。両腕から迸るエネルギーの残滓を引いて、白衣姿のその男は、自らが持ち得た『力』に酔いしれる。
だが、その力の拡散と同時に、視界を覆い尽くすのは微細な粒子。キラキラと輝くそれは空間に拡散するように、ゆらりゆらりと紫煙のように揺蕩っている。
「―――いヤ、駄目だ」
男の声音が変化した。
「駄目だ。駄目だ駄目だ駄目ダ!!こんなものでは物足りなイ!!もっと、もっと極大の力を得なくては!!ああ、駄目だ!もっと、もっとだ!!」
ばちり、と雷が弾けて周囲を覆う。刹那、迸った炎熱の渦が空間に爆ぜる。氷棘が、周囲に咲き乱れた。
「嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼!!!!駄目だ!何故だ!!もっと!!もっとだ!!」
壊れたように、『もっと』を繰り返すオブリビオン。毒々しいキノコの束が空間を埋め尽くしていた。
●『渇望』『強欲』
「もう知っている人はいるよな。アルダワで大魔王の侵攻が確認された」
アイン・セラフィナイト(精霊の愛し子・f15171)が、周囲に集った猟兵を見渡す。大魔王は、始まりの迷宮、『ファーストダンジョン』の奥にて猟兵たちを待ち構えているが、その前に『ダークゾーン』という暗黒の空間を作り上げている。この空間を突破しない限り、大魔王の喉元へは近づけないのだ。
「そのダークゾーン突破のために、皆には、特殊な胞子をふりまく迷宮キノコが群生している戦場にいるオブリビオンを打倒してもらいたい」
魔法によって投影されたのは、炎と雷を操る機械技師のオブリビオンだ。しかし、どうにも様子がおかしい。
「迷宮キノコの胞子は、猟兵のみならずオブリビオンの感情を増幅させる副作用を持つ。今回増幅されている感情は『強欲』だな」
強欲。すなわち、これが欲しい、こうありたいという独善的な感情だ。
「みんなも同様に影響を受ける。抗うことは可能だが、精神力を多く消費するから、実質それを振り払うのは不可能だろうな」
だから、とアインは言葉を続けた。
「その感情を爆発させて、戦闘に利用するんだ。抑え込むんじゃない、むしろその感情全てを利用して、オブリビオンを撃破して欲しい」
とん、と床を杖で叩くと、集う猟兵たちの周囲に転送のリングが纏わりつく。
「オブリビオンも同様の影響を受けている。通常の状態とは違うが、それでも十分脅威であることに変わりはないからな!頼んだぞ皆!」
転移先は、迷宮キノコの胞子が蔓延するダンジョン迷宮広間。『強欲』の感情を爆発させ、敵オブリビオンを撃破しなくてはいけない。
夕陽
アルダワ戦争開幕!
初めましての方は初めまして、すでにお会いしている方はこんにちはこんばんは、夕陽です。
このシナリオは戦争シナリオです。
迷宮キノコの胞子によって、猟兵のみならず敵のオブリビオンも特定の感情が増大されてしまいます。
今回影響を受ける感情は『強欲』です。
このシナリオには、以下のプレイングボーナスが存在します。
プレイングボーナス……オープニングで指定した感情を爆発させる。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております!
第1章 ボス戦
『狂喜の技師『ニュート』』
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POW : 私ノ炎でキ様らをクロ焦げにしてヤろウ!!!
自身に【己すら焼き尽くさんとする炎】をまとい、高速移動と【炎による焼却攻撃】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD : コの雷を躱スなど不カ能ダ!!!
【自身の寿命を削るレベルでの凄まじい充電】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【身体から放つ雷の一撃】で攻撃する。
WIZ : 何モかも凍リ付いテしまエぇ!!!
【自身の身体】から【自身すら凍りつかせ寿命を削る威力の冷凍波】を放ち、【凍結】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
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霧島・タツマ
俺は『兄貴』にも『兄さん』にも成れなかった。
なりそこなった。成れなかったから、
こうして『歪んで』目覚めて、
少ない寿命と、足りない時間を生きている。
眼の前の存在がどうしても――
自分の欲しい物を抱えているように見える。
【アルジャーノンエフェクト】を起動。
時間が、足りない。一秒も惜しい。
過酷な世界は【環境耐性】で堪えられる、けれど。
眼前にある明確な、俺よりも『命』を持っている存在を、
【捕食】しようという強欲は止まりはしない。
俺の嵐は、冷気と混ざって、喉笛までに噛み付くだろう。
おまえが、おれの命を凍らせると言うなら。
おまえの命を、おれに、寄越せよ。
※アドリブ連携可
●時間への渇望
複数の力を操作するニュートに、霧島・タツマ(機巧魔術の葬嵐機人・f25330)の目を冷ややかだった。
「ああ、ああアァアア!!私の力ノ礎の為ニ!!良イ頃合いですヨォ!!」
「……」
眼前に立つオブリビオンは強欲の感情に飲まれ、四肢から迸る高エネルギーが中空をのたうち回る。
しかし、その光景ですらタツマは揺らがない。
―――『兄貴』にも『兄さん』にも成れなかった。
顔に手を当てる。それは、心の内に巣食う嫉妬。羨望。願望。迷宮キノコの胞子によって爆発的に発現した感情の渦が、胸中で暴れまわる。
――いいや、なりそこなった。
成れなかったのだ、と。無数にある兄弟たち、その実験体の一人。そして『目覚める』のが遅かった故に、自身の寿命という秒針の歯車は酷く錆び付いていた。
「私の力の糧となって、沈んデ下サいネェ、猟兵ィイイィイィイ!!!」
「……うるせぇんだよ」
静かな敵意は、超常の力となってタツマを覆い尽くす。ニタリ、と笑ったニュートが冷凍波を放射、周囲の地面が瞬く間に凍りついて行く。
タツマの瞳が微かに輝いた。【アルジャーノンエフェクト】による脳の演算速度の増強だ。偽神兵器によって生み出される嵐の束が一直線に連なり、氷塵の全てを撃ち砕く。
周囲の環境がたちまち変化した。それは、迷宮内に発生した狂飆、氷蕀の大嵐だ。その風さえも、タツマにとっては些末な異常に過ぎなかった。
「そんなに死にてぇなら……おまえの命を、おれに、寄越せよ」
命を軽々しく使用する愚者に、鉄槌を下す。時を得たいという『強欲』によって、眼前のオブリビオンを氷結の嵐によって微塵に斬り裂いた。
ニュートは驚愕に目を見開く。襲い来る嵐の形が、大狼に似た顎のようにこちらへと“牙を剥いていた”からだ。
狼の牙が、ニュートの肩を深々と突き刺さる。
大成功
🔵🔵🔵
尾守・夜野
「…強欲とか…うん。俺じゃ戦闘にならんから【俺】任せた。後、あった時気まずい!!」
「任されたわ」
まぁ彼よりは私の方が事、戦闘における強欲という点なら適任でしょうね
志向的に
ちょっと私って殿方の方が好きで悲鳴とかあげさせたくなったりするのは好きだもの
彼だと燃え尽きるまで戦いたいとかになりそうで危ないものね
後、炎の相手とか部が悪すぎるわ
私にとっては炎は味方だもの
鉄扇に変えた剣で切りかかろうとしつつ分かりにくいように毒を撒いていきましょう
激しく動けば、気温が上がればその分毒の回りも早い筈よ
気づいた時には倒れてこちらを見上げてくれるかしら
そしたら思う存分悲鳴を聞かせてほしいわ
●狂乱への渇望
「ぐ、オオ、オオオオオッ!私ノ力を……私の異能ヲ
……!!」
肩を押さえて、新たに現れた猟兵に敵意を顕にするニュート。長い髪を結った人狼に似た猟兵、尾守・夜野(墓守・f05352)が眉をひそめる。
「…強欲とか…うん。俺じゃ戦闘にならんから【俺】任せた。後、あった時気まずい!!」
「任されたわ」
それは、一つの口から零れ出た言葉だ。多重人格者として、心の内に無数に秘めた自らの可能性、その“一人”に場を譲る。
たちまちその姿は変容し、黒いドレス姿の美女へと変貌する。どこか送葬の服装に似たドレスを翻した女――― 一人格の一人が、扇を手に当てて考える素振りを見せる。
(……まぁ、彼よりは私の方が事、戦闘における強欲という点なら適任でしょうね)
多重人格者でさえも、迷宮キノコの胞子はその各々の人格の感情を増大させる。ぎらり、と真紅の瞳が輝いた。
「は、はハ……ハハハハハハハッ!!私ノ炎でキ様を焼き尽クシてヤロう!!!」
「それに、炎の相手とか分が悪すぎるわよね!!」
扇の軌跡が中空を翻る。襲いかかる炎の怒濤が、扇によって拡散した。
「私ノ……私の力アアアアアアア!!」
豪熱が空間を駆け巡り、眼前の猟兵を焼き尽くさんと迫り来る。
……が。
「あら、こんなもの?」
周囲に拡散する炎を眺め、さも当然とでも言うように口元に手を当てる夜野の姿。
「き、貴様ァアァァ!!私ノ……私ノ力を……ゴホッ
……!!」
自らの異変に気が付いたのは、自身の足元がぐらりと揺らいだように膝をついたときだった。
四肢が痺れ、思うように動かない。
「こ、コレは……!毒……ダと……ッ!」
「今更気付いても遅いわよ」
冷や汗を流しながらこちらを見るニュートに、夜野は嗜虐的な笑みでにやり、と笑った。
「いい顔ね、さあ……悲鳴を聞かせてちょうだい」
ニュートがぎり、と奥歯を噛み締めた。静かに四肢を震わせる機械技師、その様子を狂喜に満ちた眼で夜野はじっと見つめていたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
高柳・零
POW
思えば、猟兵としての初仕事もこの迷宮でしたねえ。
最深部には、何があるんでしょうか?
おや?何か気分が良くなって来ましたねえ…。
「ふっふっふ。悪・即・斬!邪悪なオブリビオンはぶった斬ります!」
悪を倒す事=カッコいいという思考が暴走し攻撃的になります。
但し、痛いのは嫌なので防御もしっかりやります。
「その程度の攻撃、聖騎士に通用するとでも思ってるんですか?(痩せ我慢しつつ)」
盾で炎を止めつつ、オーラと火炎耐性、激痛耐性で敵の熱に耐えます。
「ヒャッハー!オブリビオンは消毒だ!(ハイになっておかしなノリに)」
敵が疲れて来たら、見切りで動きを読み、天斬りで確実に止めを刺します。
アドリブ歓迎です。
英・明夜
明夜の夢はね、いっぱいの人と出会って、いっぱいの笑顔を見ること。
まだ未熟者だけど、いつか立派な妖狐になって、蕩かすように「いい子いい子」ってしてあげるの。
だからね、会える筈の人と会えなくなるの、困るの。嫌なの!
貴方は、いい子いい子したい感じじゃないから、ごめんね!
とにかく先手必勝!で、霊符を取り出して、ピシっと投げるね(早業)。
負傷させられなくても、ちょっとでも隙を作れたら、それで良し。
薙刀で大きく薙ぎ払うのと同時に、フォックスファイアで色んな方向から攻撃するよ。
敵の氷の力に炎が負けちゃうなら、合体させて強化。
どかんと燃やしちゃう!
(他に猟兵さんがおいでなら、撫でたいのを懸命に堪えます)
●自分のために……?
「思えば、猟兵としての初仕事もこの迷宮でしたねえ。最深部には、何があるんでしょうか」
てくてく、と迷宮を歩く一人のテレビウムの姿。高柳・零(テレビウムのパラディン・f03921)が、遥か深淵へ続くかに思われるアルダワ地下迷宮内を探索していた。……が。
「おや?何か気分が良くなって来ましたねえ……」
ジジ……とテレビウムの画面にノイズが走っていく。
一方その頃。
ニュートと対峙しているのは、妖狐の猟兵である英・明夜(啓明・f03393)だった。身の丈を超える薙刀を構え、狂喜に落ちた技師の男をきつく睨みつけている。
「ハハハハハハ!!私ヲォ……!!舐めナイで頂キたいでスねェ!!こンナ毒、私の炎でエエエエエエエッッッ!!」
体を焦がし、体内の毒を焼き切るその様は、まさに狂喜と強欲に堕ちた者と呼ぶに相応しい様相だった。全身を焦がしながらも、にやり、とニュートは微笑む。
「あなたには、あなたの欲があるのかもしれないけど、明夜の夢はね、いっぱいの人と出会って、いっぱいの笑顔を見ること。まだ未熟者だけど、いつか立派な妖狐になって、蕩かすように「いい子いい子」ってしてあげるの」
ぐっ、と薙刀の柄を握る。
「だからね、会える筈の人と会えなくなるの、困るの。嫌なの!」
それは、心の内に秘められたとてつもない強欲の感情。その感情は、目の前に立ちはだかるオブリビオンを“否定”する。
「貴方は、いい子いい子したい感じじゃないから、ごめんね!」
投擲された霊符が中空に祝詞の輝きを引いて拡散、ニュートを光の呪縛によって拘束する。
「無駄デスよォ!!無駄無駄無駄ァアアァ!!!」
炎は転じて氷と成る。全てを凍てつかせる冷凍波が周辺に拡散した。それに対抗して明夜が【フォックス・ファイア】を展開する。氷結と炎熱が拮抗し、周辺に水蒸気が満ちていく。
「ハハハハハハハハッ!私の氷は無敵ナンでスよォ!!!死にナさイ!!」
「ぐ……っ!それでも、負けないよ!!」
ニュートの力に押されそうになった明夜、その後方から、一つの影を躍り出る。
「天に変わって悪を斬る!」
「な、ニ……ッッ!!」
独特の刃が軌跡を引いて、ニュートの頬を斬り裂いた。突然現れた二人目の猟兵に、ニュートが一歩後ずさる。
「ふっふっふ。悪・即・斬!邪悪なオブリビオンはぶった斬ります!」
ぴーがー、と画面を明滅させて、零が片手に持った剣をぶんぶんと振っている。明らかに迷宮キノコの影響を受けているようだ。
「わ、ありがとう!助かったよ!」
「悪を倒すのは聖騎士の役目です、一緒に悪を討ちましょう!」
小さな猟兵たちのちょっと微笑ましい光景がニュートの前で繰り広げられる。
「クッ……!猟兵共……!私の炎を受けロオオオオオ!!」
強欲の感情はそんな状況でも揺らがない。迫りくる炎の怒濤が零を包み込んだ……のだが。
ぷすぷす、と体から煙を上げてなお立っているテレビウ……聖騎士の姿。えっへん、と腰に手を当てて胸を反らす。
「その程度の攻撃、聖騎士に通用するとでも思ってるんですか?」
めちゃくちゃ痛そうだが、多分問題ない。聖騎士だから。
「な、な……私ノ……私ノ力に耐えるナど……ッ!!!アり得ナい、アリエナイあリ得ないあリエナイ―――」
ブツブツ、と何度も同じ言葉を呟き出したオブリビオン。こくり、と二人の猟兵が頷き合う。
「ヒャッハー!オブリビオンは消毒だ!」
「これで終わりなの!」
狐火と剣閃がニュートへと襲いかかる。全身に火傷と切り傷を負ったニュートは、絶望したかのようにブツブツと何かを呟くと迷宮の奥に消えていった。
「聖騎士は強いんですよ!とっても強いんですよ!どんどん斬っちゃいますよー!」
(……なでなでしたいの……)
こっちはこっちで大変な事態であった。正義感MAXで画面をピコピコさせているテレビウムと周囲に存在する人間絶対ナデナデしたい妖狐へと変貌した猟兵二名が、理性との勝負を繰り広げることになってしまっている。
その様子を、明夜の肩に乗っていた狐に似た相棒『たんぽぽ』が、心配そうに見つめていた。
「……きゅい……」
……ニュート、逃亡中。
大成功
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九重・桜花
色んな属性を使ってより力を、か…
少しだけボクと似ているのかもしれないね。
ま、ボクの場合強さよりも「もっと色んなことを試したい!」って探求心の方が強いんだけど(苦笑)
あ、これって一種の『強欲』として爆発させられるかも!
『エレメンタル・ファンタジア』の属性と現象の色んな組み合わせ、まだ試したことないものもいっぱいあるんだ。炎の津波、氷のカマイタチ、毒の雨…色々と相手にぶつけて行こう!
「さあ、あなたの『渇望』とボクの『探求心』、どっちが強いか勝負だよ!」
丑三・勘太郎
『強欲』の感情を戦闘に利用するなんて、いつもやってることじゃねぇか
お前の『強欲』と俺の『強欲』、どっちが強いか勝負と行こうぜ!
戦闘が始まったら「降魔化身法」を使用して、自分を強化。
流血、毒の代償は受けるが、呪縛で動けなくなるのは困るから、
「逢魔の紋」の【呪詛耐性】で対策する。
強化された身体能力で敵に接近。
平手打ちが当たる射程に入ったら、刻印を起動。
血液を代償にさらに自分を強化する。
今日は出血大サービスだ! ぶっ倒れる直前まで血液を使う!
強化されたら限界まで力を求めた結果となる、【捨て身の一撃】を放つ!
「丑三流奥義『鬼平手』!! 吹き飛びなぁ!」
●強欲は爆ぜる
「この私ノ力……完全完璧デなくてハ……私ハ……」
迷宮をうろつくように、ブツブツと同じ言葉を呟くニュート。あらゆる異能の上に立ちたいという願望、強欲の感情が暴走し、精神的に不安定な状態が続いていた。
迷宮の先を曲がろうとしたその瞬間、眼前を埋め尽くしたのは炎熱の嵐だ。襲いかかる熱量の束に、ニュートがうめき声を上げた。
「な、ナン……だ
……!!」
「色んな属性を使ってより力を、か…。少しだけボクと似ているのかもしれないね」
通路先で、両腕を魔力の残滓で煌めかせているのは九重・桜花(花吹雪・f10723)だった。
【エレメンタル・ファンタジア】が、迷宮内の大気をかき乱し、超常の力を発現させる。今度は大気中の熱が奪われ、氷結のカマイタチがニュートを蹂躙する。
「ま、ボクの場合強さよりも「もっと色んなことを試したい!」って探求心の方が強いんだけど」
それは魔術師としての本能。誰しもが持つ強欲だろう。自分の力量を、そして発生する全ての事象を知り得たいと願う探求家としての強欲。
「さあ、あなたの『渇望』とボクの『探究心』、どちらが強いか勝負だよ!」
「こ、ノ……!小賢シい猟兵が……ッッッ!!」
ニュートに纏わりつくエネルギーが、氷の怒涛となって桜花へと襲いかかる。冷凍波は氷のカマイタチと拮抗し、通路をたちまち凍結させていく。
「私ノ、私ノ力は最強ナのダ……!最強、最強さいきょうサイキョウさいきょオオオおおおッッ!!!」
「おっと、俺を混ぜてくれよ!こういう勝負はきっちりとやらねえとな!」
冷凍波を裂くように、もうひとりの猟兵が現れる。短く切った銀髪が冷風に靡き、周囲を蹂躙する氷の残滓が頬を掠めた。
丑三・勘太郎(妖憑依を継ぐもの・f10108)が、にっ、と笑う。
「『強欲』の感情を戦闘に利用するなんて、いつもやってることだしなぁ!お前の『強欲』と俺の『強欲』、どっちが強いか勝負と行こうぜ!」
その真紅の瞳が、自らの力を極めるという信念、『強欲』の下に紅く瞬く。全身に纏わり付いた黒色の霧は、【降魔化身法】による自己強化だ。びしり、と顔に走る赤黒い文様、力の発現と同時に呪詛による呪縛を受ける、が。
「へっ!こんなもん慣れてんだよ!!」
妖怪の力を身につけて戦う勘太郎の体はあらゆる呪詛への抵抗力を秘めている。加えて身体に刻まれた『逢魔の紋』がじわりと現れると、その呪詛を緩和し軽減した。通常ならば呪縛によって動かない体を、重りを退けるようにゆっくりと動かし始める。後ろへと立っている桜花へ、得意気に振り返った。
「おう、お前!一緒に『探求』といこうぜ!」
「ふふ、いいよ!ボクもいろいろな属性と現象の組み合わせを試したいしね!」
「!!!!バカ、なッッッ!!」
刹那、雷属性の雹がニュートに降り注ぐ。桜花が魔力によって煌めく両腕を重ねると、ただ真横に大きく振り切った。魔力の煌めきは空気に溶け、周囲に更なる変化を齎す。本来ならその硬度によって敵を殴殺する雹の嵐が、雷撃の塊へと姿を変えたのだ。
それを見切るように、合間をくぐるようにニュートへ接近する勘太郎の身のこなしは常人の身体能力を軽々と超えていた。
次いで、襲いかかるのは炎属性の砂嵐。炎熱の砂礫が敵を襲い、ニュートの全身を焼いていく。
砂嵐が勘太郎の闘気によって拡散する。片腕に秘められた必殺の一撃は、刻印の血の代償によって、赤黒い光を湛えている。
「―――今日は出血大サービスだ!丑三流奥義『鬼平手』!! 吹き飛びなぁ!」
振りかぶる。
迷宮内に轟く裂波。剛震。
迷宮の壁を三度突き破り、迷宮キノコを破砕して、ニュートの体が宙を舞う。
「わ、タシの……私の力ヲ……」
『強欲』によって目を燦々と輝かせる猟兵たちに、ニュートはただ沈黙したのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
(強欲全開=知識欲全開。普段と変わらないように見えて目が据わってる)
……ほう、なるほど……面白い術式だから……もっと見せて……
…【彩り失い五色の魔】により防壁の耐性を高めて【闇夜見通す梟の目】も用いて分析…
…ニュートの技術を分析した物を元に【崩壊せし邪悪なる符号】で相手のUCを打ち消すよ…
…打ち消して通用しないと判断したらニュートは他の手は出してくるのかな…楽しみだな…
…出して来ないなら来ないで分析して応用出来る部分を応用して強化(限界突破)した【尽きる事なき暴食の大火】で反撃をしよう…
…強化は出来るけど身を削るのが難点か…そこの辺りは改良が必要だな…
●魔女の慧眼
瓦礫に背を預けていたニュートがゆっくりと立ち上がる。吐血と同時に、擦り切れた身体を視認するが、それでも彼は止まらなかった。
「アあ……私はもっト……もっとモットモつトもッとモッと
……!!」
炎が発現し、雷撃が中空に鳴り響く。冷凍波が周囲を侵しながら、ゆっくりと拡散していく。
「……ほう、なるほど……」
はっ、とニュートがその声が聞こえた先へと目を凝らす。白衣を来た女学生か、三日月型のスタッフを構えながら、こちらをじっと見つめていた。
だが、その碧眼は妖しい輝きに堕ちている。
「……面白い術式だから……もっと見せて……」
「じゃ、マだ
……!!!猟兵どモオオオオオォォォオォオ!!」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)の眼前に魔術の防壁が展開されると同時、冷却の波濤が周囲を侵し始めた。たちまち凍りつく迷宮内だが、その異変はメンカルまで届かない。
【彩り失う五色の魔】によって、魔術防壁は氷に対して完全な耐性を有している。氷のみならず、ニュート全ての攻撃はもはやメンカルには届かないだろう。
「……ん、成程。その力、自身が生み出したものじゃないみたいだね……」
「!!!!ち、ガ……ウ!!これは、コれハ私ノ力ダ!!!」
「そうかな……むしろそれは……」
メンカルが小さく呟く。その力は、迷宮に存在するあらゆるトラップから発現しているものだ、と。
自身の身に起こった『真実』を言い当てられたニュートの表情が屈辱に歪む。自分の力だと思っていた三元素の力は、すべて自らがかかった罠に由来するものだったのだから。
「……ん、看破なんて容易だったね」
―――邪なる力よ、解れ、壊れよ。汝は雲散、汝は霧消。魔女が望むは乱れ散じて潰えし理
ユーベルコードの力を奪う超常崩壊のユーベルコード、【崩壊せし邪悪なる符号】によって、ニュートの力が霧散する。
絶叫の声をあげたニュートに、あらゆる存在を燃料とする【尽きる事なき暴食の大火】が襲いかかった。煌々と燃え盛る暴虐の炎を見ながら、メンカルが再びぼそり、と呟く。
「……罠ではあるけど魔術を組成することはできそう……強化も出来るけど身を削るのが難点か……そこの辺りは改良が必要だな……」
もはや、ニュートになど興味はなく。
自身の在り方を見抜かれたニュートが、ふらり、と身体を揺らしながら、迷宮の奥へと消えていった。
大成功
🔵🔵🔵
斬崎・霞架
もっと力を。もっと強く。
わかりますよ。僕もそうだ。貴方と同じだ。
僕はまだ弱い。まだ力が足りない。
…同じになっていたでしょう。少し前の僕なら。
【SPD】
今も力を求めているのは変わりない。
ただ、何故求めるのか。どんな強さを求めているのかが変わった、と言った所でしょうか。
…貴方は、如何ですか?
(相手の雷に合わせてユベコの雷を放射し相殺を狙う)
…僕は、誰かを救える力が欲しい。
目の前の誰かも。見知らぬ誰かも。―大切な人たちも。
ふふ、傲慢でしょうか。
…だが、僕はそれを望む。
それがどれだけ遠くとも、諦める気は微塵もないッ
(刻死を蹄で展開。ユベコの雷も纏い、高速で跳び回る。
【電撃耐性】で突っ切り、一撃を狙う)
●『強欲』に死す
「アァ……私ノ力は完全デかんペキなノだ……私ノ……私ハ……」
ボロボロの姿で、ニュートは迷宮内の行き止まりの道の先で項垂れていた。自分の力は、迷宮内の罠によって発現したもの。魔女によって言い当てられた本質。だがそれでも、『強欲』の感情が肥大化したニュートに選択肢は存在しない。
「いヤ……私が奪えバ良イ……全てヲ奪エばイイんダ……!」
狂喜に笑う機械技師。その後ろから語りかけたのは。
「もっと力を。もっと強く。わかりますよ。僕もそうだ。貴方と同じだ」
ぎちり、と機械仕掛けの人形のように、ニュートがゆっくりと振り向く。眼鏡を押さえてこちらへ語りかけるのは、一人の猟兵。斬崎・霞架(ブランクウィード・f08226)だ。
「僕はまだ弱い。まだ力が足りない。……同じになっていたでしょう。少し前の僕なら」
「私はサイキョウだ……最強なンだ……貴様に……貴様ラに
……!!!」
―――負けはしない。
それは、一点集中の雷撃の飽和だ。全身から雷の樹を立ち昇らせ、現れた猟兵を迎え撃つ。
しかし、霞架はその様子を冷静に見つめている。眼鏡の隙間から覗く黄金の瞳、『強欲』に身を委ねた者が持ち得る、妖しい光がそこに在る。
「今も力を求めているのは変わりない。ただ、何故求めるのか。どんな強さを求めているのかが変わった、と言った所でしょうか。……貴方は、如何ですか?」
「私ハ……わタしハアアアアアアアアアアアアアッッッ!!」
周囲に拡散する雷の暴力。その攻撃にあわせるように霞架が片腕を持ち上げる。刹那、その雷と拮抗するように発生したのは真紅の雷だ。目の前の雷の嵐にも負けない、赤熱の雷光が迷宮を駆け巡る。
―――ただ、誰かを救える力が欲しい。
ニュートの目を見開かれる。霞架がにこり、と微笑んだ。
「目の前の誰かも。見知らぬ誰かも。―――大切な人たちも。ふふ、傲慢でしょうか。……だが、僕はそれを望む」
ばちり、と霞架の足元に赤雷が収束する。常人の身体能力、その全てを凌駕する、一歩。
「それがどれだけ遠くとも、諦める気は微塵もないッ!」
雷を纏う手刀が、ニュートへと突き刺さった。赤雷の残滓が周囲に爆ぜ、遅れて機械技師が吐血する。
「私も……私は……誰かのために……誰かの笑顔を……」
ざあ、と霞となって消え失せていくオブリビオン。その口から溢れた言葉に、霞架はまた小さく微笑んだ。
「……全く、オブリビオンというのは儘なりませんね」
世界の破滅へと繋がる行動を取るオブリビオン。元々持ち得ていた感情を否定する存在。霞架はふぅ、と息を吐きだすと、迷宮の外へと歩を進めたのだった。
大成功
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