アースクライシス2019⑬~空の彼方にて~
●重力点にて
「お前達、戦いの時間だよ」
サハル・マフディー(神の信徒は紫煙と共に・f16386)は愛用の煙管から煙をふかしつつ、キッパリとそう告げた。
アースクライシスも後半戦、カタストロフの刻限は刻一刻と迫ってきている。
世界が滅ぼされる前に、猟兵たちの力を結集してオブリビオンフォーミュラを見つけ出さねばならない。
その為には、道が開かれた知られざる文明の場所へと赴き、オブリビオンを撃破しなくてはならないのだ。
「お前達に今回行ってもらうのは、ざっくり言って、宇宙だ。ラグランジュポイントに浮かぶ『島』の一つだよ」
島には宇宙人が多数暮らしていて、オブリビオン軍団に支配されて強制労働を強いられながら暮らしている。重い荷物を運ばされたり、機械部品を作らされ続けたり。この強制労働によって、クローン装置や一人用UFOなどを大量生産しているらしい。
サハルの案内する島にいる宇宙人は、みな二足歩行のトカゲのような姿をしているそうだ。
「で、この島にはその宇宙人どもが大事にして、誇りにしている武器ってのがある。そいつを使ってオブリビオンを撃退する姿を見せれば、宇宙人どもに勇気を与えることが出来るだろう……その武器、ってのが」
そこで、サハルは言葉を区切った。一瞬だけ視線を下の方にやって、口を開く。
「釘バット、なんだ」
発せられた言葉に、猟兵たちはキョトンとする他なかった。
釘バット。あの、木製バットに釘を打ち付けた、鈍器の。
それが住民の誇りとは、宇宙人の誇りとは、一体。
何とも言い難い表情になった猟兵を見やって、サハルも目を伏せつつ手をひらりと動かした。
「あァ、言いたいことは分かるよ、私も大概同じことを思ったもんさ。そもそも釘バットがあるんならそれでオブリビオンどもにカチコミかければいいだろって話なんだが……ま、武器だけ持っていても立ち向かう勇気がなけりゃそんなもんさね」
ともあれ。島の住民は一人一人の力は弱いが、数だけは膨大だ。その人数が一斉に蜂起してオブリビオンに立ち向かえば、如何に力が弱いと言えども数で押し切れる。
その為には、猟兵たちがオブリビオンに立ち向かい、撃破し、宇宙人たちに勇気を芽生えさせる必要があるのだ。彼等の大事にしている釘バットを使えれば、なおいい。
そしてこの島を恐怖で支配しているオブリビオンは、というと。
「月光ちゃん、って聞いたことあるかい?アカハライモリっぽいコスチュームに身を包んだヒーロー見習いの、ヤモリの力を身に宿した。あれがそう、二十人くらいいるようだ。
半分くらい減らせれば、あとは宇宙人どもでも何とかなるだろう」
攻撃手段はスーパーヤモリモードに変身してからのパンチやキックと、身体の部位一つをヤモリの頭部に変形させての噛みつきだ。スーパーヤモリモードは相手の攻撃を軽減する効果もあるらしい。
また、戦闘力のないヤモリの群れを召喚して、声援を送ってもらう――ように錯覚することでパワーアップすることもできる。
総じて何とも、気の抜ける敵ではあるが。油断してかかると痛い目に合うことだろう。
そこまで話した後、ラグランジュポイントへのポータルを開きながら、サハルは鋭い視線を猟兵に向けた。
「さぁ、行ってくるんだ。お前達の働きに期待しているよ」
屋守保英
こんにちは、屋守保英です。
戦争も後半戦に入ってきましたね。
どんどん頑張っていきましょう。
●目標
・月光ちゃんズ×10体以上の撃破。
●特記事項
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「アースクライシス」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
戦場となる宇宙船には、「宇宙人の謎兵器」が眠っています。
この謎兵器を正しく使い、その兵器の力でオブリビオンを撃破する姿を島の住民に見せれば、住民を激しく鼓舞することが出来るでしょう。
●戦場・場面
(第1章)
ラグランジュポイントの「島」を構成する宇宙船の内部です。
トカゲっぽい見た目をした宇宙人がたくさん中で暮らしており、オブリビオンに支配されて強制労働を強いられています。
宇宙人は猟兵の戦いに巻き込まれないよう逃げ出して隠れますが、猟兵の活躍に勇気づけられると、猟兵と共に戦ってくれます。
一度住民が放棄するとオブリビオン軍団では押さえつけられず、そのまま数の暴力で一掃できます。
●謎兵器
釘バットです。
一見して何の変哲もない釘バットですが、島の住民にはなんだか有り難がられているようです。
それでは、皆さんの力の籠もったプレイングをお待ちしています。
第1章 集団戦
『月光ちゃんズ』
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POW : 森の仲間たち、力を貸して欲しいっス!
戦闘力のない【普通のヤモリの群れ 】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【森の仲間たちからの声援(幻聴)】によって武器や防具がパワーアップする。
SPD : スーパーイモリモード、覚醒っス!
対象の攻撃を軽減する【スーパーヤモリモード 】に変身しつつ、【壁への張り付きを利用したパンチやキック】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : うおおお、イモリパワー全開っス!
自身の身体部位ひとつを【ヤモリ 】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
👑11
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真宮・響
人の住むラグランジュポイントに勝手に侵入したばかりか強制労働させるとはとんでもない奴らもいたものだ。住民の為だ、頑張ろうか。この釘バット、妙に手に馴染むんだが・・・(轟音立てて素振り)
パワーアップして強化される前に叩き潰そうかね。炎の戦乙女を召喚、共に【ダッシュ】しながら全力で釘バットをスイングして【二回攻撃】【範囲攻撃】でヤモリごと攻撃していく。敵からの攻撃は【残像】【見切り】【オーラ防御】で対応しようかね。さあ、どいたどいた!!骸の海まで吹っ飛びな!!
真宮・奏
ここは元々住んでいた住民さん達のものです!!それを勝手に作り変えようとするどころか、住民の皆さんを強制労働させる悪人は許しません!!この釘バットでやっつけます!!(ノリノリ)
釘バットに盾を携えて参戦。トリニティエンハンスで防御力を固め、【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【拠点防御】で敵の攻撃を捌きながら前進、【属性攻撃】【二回攻撃】【範囲攻撃】を併せた釘バットで纏めて敵をホームランしていきます。さあ、さっさとこの土地から退去願います!!
キング・ノーライフ
何というか…王が使う武器では無い気がするがまあいい。
要はこれで戦っても大丈夫と思わせればいいのなら手はある。
まず【狸塚の呼び鈴】と【鼬川の指輪】で二人を呼び、
釘バットを持たせる。鼬川はともかく狸塚にはそんなに似合わんな。
最終的にこれを女子供も持って戦うと考えると中々な光景だが。
そして現れた月光に同じくらいのペースで距離を詰め、
どっちを襲うか迷う間に【大狸囃子】で動きを止めてからバットで殴っていこう。【威厳】に【誘惑】や【パフォーマンス】で周りに魅せるような戦い方をすれば戦意高揚になるし。民衆もこれで戦い方のヒントが見つかれば戦いやすくなるだろう。
神城・瞬
いや、威力のある武器なのは分かりますが何故釘バット?まあ、横暴を働く輩をぶちのめすのは最適かも。住民の皆さんの為です。苦手な近接武器も使いこなしてみせます。
まず最初に【オーラ防御】を展開。【高速詠唱】【全力魔法】【二回攻撃】【範囲攻撃】を併せた裂帛の束縛で壁からパンチやキックが飛ぶ前に束縛、【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】を乗せた釘バットの【属性攻撃】を【範囲攻撃】で全力でフルスイング。ガタイには自信がありますからね!!骸の海まで飛んで行って下さい!!
御形・菘
ヤモリでもイキるのは別に構わんよ
だが、他人を足蹴にするのはさすがに調子に乗りすぎではないかのう?
(ほぼ同種という認識)妾が上下関係をきっちり示し、シメてやるとしよう!
普段の妾は格闘メイン、武器など使わんのだがな
それに釘バットとか持つと、ビジュアル的にヤバい方向に振れ過ぎるので、調整しておってな…
まあ此度は仕方あるまい
はっはっは、威圧をキメて…さあお主らよ、ボコられる覚悟はできておるな?
ヤモリの群れなどいくらでも呼ぶがよい! そして限界までアゲてみせよ!
全力も出させずに叩き潰すなど、そんなつまらん展開を望む妾ではない!
そして左手一本で持ち、全力で振り抜く! 宇宙の果てまでブッ飛ばしてくれよう!
櫟・陽里
ああー俺これ似合っちゃうなーどうみてもコレ似合っちゃってるよなー!(ノリノリ)
相棒バイクに騎乗し、使い込まれた作業つなぎとフルフェイスヘルメットで釘バを肩にトントン
無駄にエンジン音で威嚇したり走りながら釘バを地面に擦って火花出したりして住民のノリを確認
皆の期待に副うようなら、こういう、この……何?
不良マンガ路線?でいってみますかね!(割と手探り)
圧倒的なエンジンの爆音は敵に不安感を与えるし
味方と分かれば心強くテンションも上がるってもんだろ?
鼓舞するように場を走り回りバイクのカッコよさを見せつけて住民をやる気にさせる!
心躍る咆哮を発動
動きの鈍った敵を住民達と一緒に叩く
さぁお前ら!反撃の時間だぜ!
●カチコミのお時間ですよ
「ふはははー!働くっスよー!朝も昼も夜も休まず働くっスよー!」
「皆さんの働きが、我々の力となり、皆さんの生活の糧となるっスよー!」
ラグランジュポイントに浮かぶ宇宙船の一つ。
その内部に広く取られた工場にて、ベルトコンベアーの駆動音が静かに響く。そこで忙しなく動きながら、疲弊しきって無気力な表情をするトカゲのような姿をした宇宙人たちが大量に。
それを監督し、文字通りこき使っているのは黒髪の少女だ。それがフロアに二十人。宇宙人たちの人数に比べれば一割にも満たないが、オブリビオンであるがゆえに有する強大な力を以て、彼女たちは無辜の宇宙人を支配していた。
その様子を、工場の内部を見渡せる廊下で見ながら。真宮・響(赫灼の炎・f00434)と真宮・奏(絢爛の星・f03210)の母子はぐっと瞳に力を籠めていた。
「人の住むラグランジュポイントに勝手に侵入したばかりか強制労働させるとはとんでもない奴らもいたものだ」
「ここは元々住んでいた住民さん達のものです!!それを勝手に作り変えようとするどころか、住民の皆さんを強制労働させる悪人は許しません!!」
悪は許さない。その心をより一層高めながら、二人は眼下で傍若無人に振る舞う少女たちを見ていた。
彼の少女たちがオブリビオンであることもそうだが、無辜の民をああして乱暴に扱うのは、見ていてとても気分が悪い。
そしてそれについては、御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)も同様のようだ。
「ヤモリでもイキるのは別に構わんよ。だが、他人を足蹴にするのはさすがに調子に乗りすぎではないかのう?」
そうして彼女は、手に持った『それ』を握りしめた。宇宙船に転移して来てから宇宙人に頼んで借り受けたその武器を持って、肩にとんとんと宛がう。
この場にいる猟兵たちの手にも、召喚された者たちの手にも、それと同じものが一様に握られている。
即ち、釘バットだ。
「いや、威力のある武器なのは分かりますが何故釘バット?まあ、横暴を働く輩をぶちのめすのは最適かもしれませんが」
「ああー俺これ似合っちゃうなーどうみてもコレ似合っちゃってるよなー!」
神城・瞬(清光の月・f06558)が眉間に皺を寄せて疑問を呈する中、ブォンと騎乗する一輪バイクのエンジン音を響かせた櫟・陽里(スターライダー ヒカリ・f05640)がフルフェイスヘルメットの下で笑った。
確かに、バイクにまたがってフルフェイスヘルメットをかぶり、釘バットを構えるその姿は正しく不良少年。カチコミ待ったなしである。
その陽里の隣で、キング・ノーライフ(不死なる物の神・f18503)と従者たる獣人二人は手にした釘バットを不思議そうな目で見ていた。
「何というか……王が使う武器では無い気がするがまあいい」
「俺はまだこーゆーの持ってても違和感ねーけど、ご主人様も狸塚もこれ持つキャラじゃねーよな」
「まぁね……でも仕事の為だ、有効に使わなくちゃ」
ぼやくキングに、苦笑する泰人。その傍らで瞬太は嬉々として釘バットを素振りしていた。実際、性格的にも一番釘バットが似合うのは間違いなく瞬太だろう。
これを、宇宙人である彼らは有り難がっていて、後々これを手にしてオブリビオンに立ち向かうわけで。
そう考えると何とも複雑な心境になるキングである。
「最終的にこれを女子供も持って戦うと考えると中々な光景だがな」
「女子供でも有効に戦えることを証明しますよ!!この釘バットでやっつけます!!」
小さくため息をつきながら零すキングに視線を向けながら、親子揃って気合を入れる真宮家の三人だ。素振りされる釘バットがだいぶえぐい音を立てている。
「住民の皆さんの為です。苦手な近接武器も使いこなしてみせます」
「うん、住民の為だ、頑張ろうか。それにしてもこの釘バット、妙に手に馴染むんだが……」
瞬もその切れ長の瞳を細めながら素振りをして、響も釘バットの妙な握りの良さに笑みを浮かべつつそれを振って。そんな姿を見ながら菘が苦笑を零した。
「普段は武器など使わんのだがな。それに釘バットとか持つと、ビジュアル的にヤバい方向に振れ過ぎるので、調整しておってな……まあ、此度は仕方あるまいよ」
爬虫類系の動物の特徴を様々有する菘。そのパンクロックなファッションで釘バットを構えると、実に100%アウトロー。キメッキメである。
そう独り言ちながらほくそ笑んで、彼女は思いっきり釘バットを振りかぶった。目標、目の前のガラス。
「さぁて、害獣退治といこうかのう?」
そうして一気に、思いっきりバットを振り抜いた。
●ホームランのお時間ですよ
ガシャーン、と派手にガラスが割れる音がして。
それをかき消すくらいに大音量なエンジン音が響いて。
重量物がドシーン、と高所から落下する音が轟いて。
「オラオラオラァ!!善良な市民をコキ使ってる悪辣な雇用者はどこだぁ!?」
「う、うわぁっ!?」
「なんだ、この音はっ!?」
困惑と混乱の最中で作業の手を止める宇宙人たちに囲まれて、陽里は一等、一輪バイク「ライ」のエンジン音を響かせた。
次々飛び降りてくる仲間たち。その手に手に釘バットを構えてヤモリの少女を見据えて睨み。しかるにギャイッと鎌首もたげたライが、ラインを薙ぎ倒して一直線に走り出す。
「あわわ、反逆者っスよー!撃退するっスー!」
「おうともよ、俺達はテメェらに反逆するために来た!!根性見せやがれェェ!!」
「ぐはーっ!?」
爆速で接近した陽里が一息に釘バットを振り抜くや、胴体に釘の打ち付けられた部分がクリーンヒット。月光ちゃんが腹の布地を引き裂かれながら吹っ飛ばされて消えていく。
その男が手にするものを見た宇宙人たちは、瞳孔の細い目を見張った。
見覚えのあるもの、大事にしてきたもの、崇めてきたもの。それが今ここで、見知らぬ民によって振るわれて、逆らえなかった力のある少女を一息に吹き飛ばして。
「あ、あの男が手にしているものは!?」
「まさか、村に保管されていた……見ろ、他の人々も!?」
ふと見遣れば、闖入した誰も彼もがそれを持っていて。男も女も、人間も異形も。
その釘バットを掲げながら、菘と奏が力強く告げた。
「はっはっは……さあお主らよ、ボコられる覚悟はできておるな?」
「さあ、さっさとこの土地から退去願います!!」
「くっ、なんっスかいきなり、こいつらやたらと勢いがあるっス!?」
突然の乱入者に狼狽えながらも態勢を整える月光ちゃん。その場にいる残り十九人が一斉に構えを取る中で、響と瞬が同時に飛び出した。響が先程召喚した戦乙女も槍を構えて突進する。
「燃え盛る炎の如く!!さあ、どいたどいた!!骸の海まで吹っ飛びな!!」
「ガタイには自信がありますからね!!骸の海まで飛んで行って下さい!!」
「ぶぎゃーっ!?」
「ぶっっ!?」
三人の手にした得物がほぼ同時に振るわれて、三人の月光ちゃんが同時に吹き飛ばされた。ほぼ同時に工場のベルトコンベアーに激突し、流されていきながらボロボロと崩れて消えていく。
その様子を見ていたトカゲの宇宙人たちは、感動に打ち震えていた。
「す、すごい……」
「僕らを虐げていたヤモリたちが、あんなに簡単に……」
「しかも、あの伝説の釘バットで……」
希望の光がちらり、と灯る中。キング、泰人、瞬太の三人が同時に飛び出していく。構えを取る月光ちゃんと距離を詰める中で、泰人が不意に足を止めた。
「狸塚今だ、音を鳴らせっ!敵が黙るほど盛大になっ!」
「了解です、行きますよっ!」
「オラオラー!次にホームランされたいやつはどいつだーっ!」
泰人が繰る妖術で出現する大太鼓と横笛。それらが奏者の無い中で音を奏でるのに後押しされるように、キングと瞬太が釘バットを振り抜いた。
釘の先端で傷を負いながら飛ばされていく月光ちゃんが二体、床に転がりながら消えていく。
次々数を減らされることに不味いと思ったか、一体の月光ちゃんが猟兵たちに向かって指を突きつけた。
「くっ、怯むなっス!ここで住民たちに調子に乗らせたらマズいっス!」
「「っス!!」」
そこからずらり、横に並ぶたくさんのヤモリの群れ。数が増えたことに宇宙人たちは慄くも、猟兵たちは逆に昂りを見せていた。特に陽里と菘が血気盛んに声を張る。召喚された
「おっとぉ?いいねぇいいねぇ、数が増えたら吹っ飛ばしがいもあるってもんだよなぁ!?」
「いいぞ、ヤモリの群れなどいくらでも呼ぶがよい!そして限界までアゲてみせよ!全力も出させずに叩き潰すなど、そんなつまらん展開を望む妾ではない!」
そうして同時に走り出した二人が、釘バット片手に縦横無尽。ヤモリの群れを次から次へと吹っ飛ばしていった。元より戦闘力の無いヤモリ、脅威などになりはしないわけで。
数を増やしたことで狙いをつけやすくなったか、瞬も即座に大量の蔓を呼び出した。
「数が増えたから束縛もしやすいですね、覚悟!!」
「「ぶばーっ!?」」
縛られて身動きが取れなくなったヤモリたちと、一緒に縛られた月光ちゃんを、釘バットを振るって一撃。首を吹き飛ばす勢いで振るえばその身は骸の海へと飛んでいって。
そんな中でも陽里のライは絶好調、エンジン音を高らかに響かせながら工場の中を駆け回って月光ちゃんを吹き飛ばしていく。
エンジン音が一つのミュージックを奏でる中で、泰人もくいと口角を持ち上げた。音楽ならこちらも得意分野だ。
「エンジン音がいい具合ですね、テンポを変えます!」
「任せる!そのまま住民を鼓舞せよ!」
そうして太鼓と笛の音を高らかに。エンジンミュージックに合わせてどんどんテンポと音程を上げていって、味方もどんどん盛り上がっていって。
その盛り上がりは確実に、宇宙人たちにも伝播していた。瞳に確かに力が宿っている。
「あの伝説の武器に、あんな使い方があったなんて……」
「あれなら、僕達にも出来る……出来るぞ!」
互いに顔を見合わせて、ぐっと頷いて。
宇宙人たちは手に手に釘バットを握った。誇り高い、伝説の武器を。
「その調子です、皆さん!私達に続いて、敵を宇宙の彼方まで吹き飛ばしましょう!」
「そうじゃ!宇宙の彼方までブッ飛ばして、安寧を手に入れるのじゃ、お主等の手で!」
奏が、菘が、大きく声を張る。もうあとは勢いに任せて蹂躙できるはずだ。
そこにダメ押しとばかりに響く陽里の声。一輪バイクの上から釘バットで指し示すのは、勢いに飲まれつつある月光ちゃんだ。
「数を減らせた今がチャンスだ。さぁお前ら!反撃の時間だぜ!」
「「うぉぉぉぉぉっ!!」」
「「ひっ……ヒェェェェッ!?」」
決意を瞳に漲らせたトカゲの姿をした宇宙人たちが、手に手に釘バットを握りしめて走り出した。
猟兵と一緒にとはいえ、その数はあまりにも膨大で。十体もいない月光ちゃんズで抑えきれる閾値はとっくに突破している。
かくして月光ちゃんズの身体は、トカゲ宇宙人たちのフルスイングによって次々に宇宙船の内壁に叩きつけられて塵と消え。
強制労働からやっとのこと解放された宇宙人たちの表情に、久しぶりの笑顔が戻ったのだった。
大成功
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