赦せなくて、忘れられなくて
●因果
「赦せない……私が、得るはずだったのに」
桜の花びらが舞う中で、行き交う人々を眺める少女はとある女学生を睨んでいた。
「……あの女を」
血に濡れた少女は、ゆらりと立ち上がると彼女の周囲に長い足が音も無く現れる。
シュンッ、と糸が吐かれると商店街はあっという間に粘着質な糸で覆われてしまう。
「さぁ、憎きあの女を……殺しましょう」
血に濡れた爪を振り下ろした。
●グリモアベース
「皆、集まってくれて感謝する。サクラミラージュの世界にて、オブリビオンが女学生を襲う予知をした」
抑揚のない声でヒッツェシュライア・テスタメント(死を恐れぬ魔術師・f16146)は、目の前に集まっている猟兵達に視線を向けると静かに言った。
「場所は商店街、どうやら影朧は憎い相手に似ている女学生を狙っている様だ。影朧が現れるまでは、新しい世界の商店街を見回ると良い。何事も地理を理解する事も大切だという事は言っておく、誘ってくれればオレも興味があるので共に回る事は可能だ。あと、これだけは渡しておこう」
ヒッツェシュライアは商店街の地図を猟兵に配り、猟兵がその地図を見ると襲われる場所に印がしっかりと付けられていた。
「何か恨みを持つ影朧だ。会話をして情報を得て説得すれば倒しても転生するであろう……まぁ、普通に倒しても問題は無い。どうするかは皆に委ねるので、依頼を遂行してくれ」
そう言ってヒッツェシュライアは、サクラミラージュの世界へ猟兵を転送させた。
龍真 神
オープニングに目を通して頂きありがとうございます。
龍真 神(タツマ シン)と申します。
よろしくお願いします。
一章:日常『ハイカラ街巡り』
二章:集団戦『女郎蜘蛛』
三章:ボス戦『血まみれ女学生』
以上の構成となっております。
最低限の文字数でも、ステータスシートを見ながら書かせていただきますので、『まだよく分からないけど、シナリオ参加したい!』という方でも遠慮せずにご自身の文で書いて送って下さい。
それでは、皆さんのプレイングをお待ちしております。
日常シナリオのみ、ヒッツェシュライアの同行可能です。
第1章 日常
『ハイカラ街巡り』
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POW : チョコレートやガム等お菓子を買い、食べながら散歩を楽しむ
SPD : モダンな洋服や装飾品の店を見て回る
WIZ : 書店やレコオド店を巡り、掘り出し物を探す
👑11
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柳川・雪月花
他者同行・アドリブ歓迎。
SPDで存分にショッピングをするよ
現状の服装は一般的な和服です
二つ名通りの「おのぼりさん」で何もかもが新鮮なので、はたから見ても「あー来たばかりだな」と一目で分かるようなはしゃぎようだと思います!
少ないお小遣いと相談しながら安い装飾品を探したり、すごく高そうなお洋服を外から眺めたり、そんな中で試着可能なモダンな洋服を(時間がもったいないので)無駄に【オール・ワークス!】で速やかにかつスタイリッシュに試着するよ
褒められたら思わず買ってしまうかもしれないです!
そして後で財布の中身を見て少しだけ後悔しますが、まぁいいか、と思い直します
●初めての世界で
「はー……」
年中桜が咲き乱れ、鮮やかな服に身を包んだ人々か行き交う商店街を柳川・雪月花(おのぼりさん・f22441)は、思わず見上げながら感嘆の声を漏らす。
「すっごい! 正に大正ロマン!」
ぴょんぴょんと軽く飛び跳ねながら雪月花は、全身で嬉しさを表しながら歩き出そうとする。
「しっかり前を見ろ、ぶつかる」
グイッ、と首根っこを掴まれた雪月花がハッとした表情でよく前を見ると、反対から歩いて来ていた人とぶつかる寸前であった。
「だって! 新しい場所だよ!」
ぶらぶらと揺れながら雪月花は目を輝かせながら言うと、首根っこを掴んでいるヒッツェシュライアが嘆息した。
ゆっくりと地面に下ろされると、商店街の洋服店のショーウィンドウに飾られたマネキンが着せられている服に視線を向ける。
欲しいなぁ、と思いつつも値札を見て思わず財布を握り締めてしまう。
(はぁ、流石に高い……)
雪月花ががっくりと肩を落とすが、まだまだ店はあるので試着は自由であるし買える店に出会えるだろうと思って歩き出す。
目に入った服をユーベルコード『オール・ワークス!』を発動させ、素早く試着したり、その中で気に入った服を買って嬉しくて頬を緩ませた。
「はぁ~この服よりも凄くお洒落だ~」
雪月花の服装は一般的な和服、つまり少し地味であるが故にサクラミラージュの袴等の和服はとても鮮やかなデザインであった。
それに加え、秋というのに桜が咲き乱れており季節感覚が狂っておのぼりさん状態に拍車が掛る。
(これでお団子もあればね~)
ベンチに座って軽くなった財布の中身に視線を向け、『まぁ、いっか』と思っていると目の前に甘味が差し出された。
「奢りだ、遠慮なく食え」
「わ、ありがとうございます!」
と、言って雪月花は言葉通りに遠慮せずに甘味を頬張り、これから起こる影朧との戦いに向けて英気を養うのであった。
成功
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神代・凶津
ここが新しい世界『サクラミラージュ』か。
なかなか洒落た所のようだぜ相棒。
取り敢えずオブリビオン、おっと影朧だったけか?
まあ、どっちでもいいか。
奴さんがでるまで観光といこうぜ。
「・・・羽目を外しすぎないようにね。」
分かってるって。そういう相棒も結構浮き足だってみえるぜ。
どっかで食い物でも買って地理を確認がてらのんびり散歩といこうや。
【アドリブ歓迎】
●桜花爛漫
「ここが新しい世界『サクラミラージュ』か」
赤い般若の様な仮面がぽつりと呟く。
「なかなか洒落た所のようだぜ相棒」
と、神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)が明るい声で仮面を持っている少女、神代・桜に向かって言うとこ少女はくりと頷いた。
「取り敢えずオブリビオン、おっと影朧だったけか? まあ、どっちでもいいか。奴さんがでるまで観光といこうぜ」
「……羽目を外しすぎないようにね」
凶津が視界を覆う位に散る桜の花びらで彩られた商店街を見まわしながら言うと、桜は小さく首を傾げると嘆息して答える。
「分かってるって。そういう相棒も結構浮き足だってみえるぜ」
長年共にしている仲、桜は無症状なのに挙動や微かな声色の変化で感じ取った凶津は低く笑い声を響かせながら言った。
「おーし、近くのカフェから行こうぜ。この世界の食べ物はどんなのか気になるしな」
「うん、大正700年の料理ってどんなんでしょう?」
目に止まったカフェに入り、メニューを見ると見た事ある料理の名前が並ぶが大正700年という時代であるという事で、違うかもしれないと思い頼む。
カフェ以外にも露店で売られている甘味、あいすくりんと呼ばれている物等を食べ歩きながら商店街を見て回る。
「商店街と言ってもデケェな相棒」
「ん、それにこの桜……」
凶津がぐるりと周囲を見渡しながら言うと、桜は自身と同じ名前の花が秋なのに咲き誇っているのに少し違和感を感じていた。
「そういう世界って、グリモアベースのヤツが言ってたよな?」
「うん。それでも、桜は春って決まっていたから」
桜が向いている方向に、凶津も視線を向けると静かにヒラヒラと宙を舞う花びらを見つめる。
この光景が、これから起こる事件で悲惨な光景になるのを感じながら――
成功
🔵🔵🔴
真宮・響
【真宮家】で参加。
サクラミラージュ。新しい世界か。まずは世界を良く知る事だね。(子供達に)どこ行きたい?洋服欲しい?お年頃だねえ。いこうか。
奏、洋服じゃなくて袴が欲しい?ああ、女学生スタイルに憧れてると。紫の矢絣の着物に海老茶の袴。ああ、似合うよ。
瞬は小物が欲しいと。ふむ、いつもの衣装に小物を添えるのもいいね。中折れ帽、蝶ネクタイ、ステッキ。うむ、素敵な紳士の出来上がりだね。
(子供達が押し付けて来たこげ茶色の千鳥格子の膝丈ワンピースと同色のクロッシェ帽に目を丸くする)アタシにかい?ワンピースは気慣れてないが・・
(3人で新しい服を着て鏡をみる)ふむ、いい感じだね。全部買おうか。
真宮・奏
【真宮家】で参加。
新しい世界に来ましたね!!凄くワクワクします!!そうですね、まずはこの世界の地形を知る事から始めましょう。はい、まずここの世界の服が欲しいです!!
私、街を歩いている女学生の皆さんに憧れていたんです!!紫の矢絣の着物と海老茶の袴をおねだりしちゃいます!!
着替え終わったら中折れ帽とステッキを持った瞬兄さんをキラキラした眼で見つめます。あ、一緒に母さんの服を選びませんか?
母さんならこんなモダンなワンピースと帽子も着こなせると思うのです。やっぱり似合います!!
あ、全部買うんですか?そうですね、この世界に来た記念に大盤振る舞いしてもいいかもですね。
神城・瞬
【真宮家】で参加。
サクラミラージュ、新しい世界ですか。そうですね、建物とかこの世界の様子を良く見るのも大切ですよね。はい、僕も洋服店を見るのに賛成です。欲しい物もありますし。
張り切って袴姿になる奏に微笑みつつ、僕は装飾品を選びます。いつもはアスコットタイですが、蝶ネクタイもいいと思いまして。中折れ帽とステッキも選びます。
そうですね、母さんはモダンな色のワンピースとクロッシェ帽も似合うと思います。やっぱり、思ったよりとても素敵です。
3人並んで鏡に写して満足。あ、全部買うのもいいかもですね。
●ようこそ“サクラミラージュ”へ!
転送された先の世界“サクラミラージュ”に着いた3人は、新たな世界の見慣れたようなそうでないそんな光景に目が奪われていた。
「サクラミラージュ。新しい世界か。まずは世界を良く知る事だね。どこ行きたい?」
「新しい世界に来ましたね!! 凄くワクワクします!! そうですね、まずはこの世界の地形を知る事から始めましょう。はい、まずここの世界の服が欲しいです!!」
ブランの髪を靡かせながら明るく元気な声で言うのは真宮・奏(絢爛の星・f03210)だ。
「サクラミラージュ、新しい世界ですか。そうですね、建物とかこの世界の様子を良く見るのも大切ですよね。はい、僕も洋服店を見るのに賛成です。欲しい物もありますし」
金色の髪を揺らしながら金と赤のオッドアイで二人を見つめる神城・瞬(清光の月・f06558)は、奏の言葉に同意する様にこくりと小さく頷いた。
「洋服欲しい? お年頃だねえ。いこうか」
奏と瞬の母親である真宮・響(赫灼の炎・f00434)は、二人の言葉に『あぁ、そういう年だものね』と思いながら優しい笑みを浮かべながら頷きながら言った。
「私、街を歩いている女学生の皆さんに憧れていたんです!! ほら、あの女学生が来ている服みたいなのです!」
奏が前を通った女学生に視線を向けながら言うと、響は納得しか様子で頷きながら瞳を輝かせている彼女に視線を向ける。
「奏、洋服じゃなくて袴が欲しい? ああ、女学生スタイルに憧れてると……ならば、近場の店から探してみようか?」
「はい! 母さん!」
仲良く3人は、近くにあった洋服店に入ると鮮やかな袴や装飾品がずらりと陳列されていた。
「紫の矢絣の着物に海老茶の袴……」
「どうです! 母さん、瞬兄さん。似合いますか?」
試着室から出てきた奏の姿を見て、響はいつもと違う姿でも愛らしい娘の姿を見て思わず満面の笑みを浮かべるとくるりと一回転する彼女を眺めた。
「ああ、似合うよ。そうだな、いつもとは言えないが着ている奏が可愛いから買おうか」
と、響が言うと、奏が言わんとする言葉を察した様子でそういうと、娘は丁寧に包まれた包みを受け取ると嬉しそうにソレを抱きしめた。
「あ、瞬兄さんも素敵!」
普段はアスコットタイの瞬だったが、蝶ネクタイを付けており、中折れ帽を被るとステッキを手にして姿見鏡の前で自身を見ていた。
すると、背後から妹の奏が嬉しそうな声で言うと、じっとアメシストの様な瞳で兄を姿を見つめる。
「中折れ帽、蝶ネクタイ、ステッキ。うむ、素敵な紳士の出来上がりだね」
「ありがとうございます」
瞬は少し照れくさそうに礼を言うと、ふと視界に響に似合いそうな服が入った。
「そうですね、母さんはモダンな色のワンピースとクロッシェ帽も似合うと思います」
そう言うと、瞬が選んだワンピースと帽子を渡された響は目を丸くした。
「アタシにかい?ワンピースは気慣れてないが……」
「試着してみなきゃ分からないのです!! でも、母さんならこんなモダンなワンピースと帽子も着こなせると思うのです」
あまり乗る気ではなさそうな響に奏が、ぐいぐいと背中を押して試着室へと押しこむ。
「ど、どうだろうか……?」
試着室から出てきた響を見て、奏と瞬は顔を見合わせると小さくハイタッチをする。
「やっぱり、思ったよりとても素敵です」
小さく頷きながら瞬が言い、3人は鏡の前で並ぶと満足そうに頷いた。
「あ、全部買うのもいいかもですね?」
「ふむ、いい感じだね。全部買おうか」
「あ、全部買うんですか? そうですね、この世界に来た記念に大盤振る舞いしてもいいかもですね」
瞬の言葉に同意するかの様に奏と響は頷くと、お会計を済ませて店の外へ出た。
予定の時間までまだあるのを確認した瞬は、二人にもっと商店街を歩きまわる提案をしする。
「行きましょう!! それに、何かあった時には必要な事だと思います!!」
「そうだな、戦いは数も質も大切だが……やはり歴史に名を残す程の指導者がいる戦いは地理を理解した者が多い」
そんな話をしながらも響、奏、瞬の3人は賑やかな商店街を歩きだしたのであった。
大成功
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第2章 集団戦
『女郎蜘蛛』
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POW : 操リ人形ノ孤独
見えない【ほどに細い蜘蛛の糸】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD : 毒蜘蛛ノ群レ
レベル×1体の、【腹部】に1と刻印された戦闘用【小蜘蛛の群れ】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ : 女郎蜘蛛ノ巣
戦場全体に、【じわじわと体を蝕む毒を帯びた蜘蛛の糸】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
👑11
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●『拒む』
「行かせぬ、行かせはさせぬ……」
グリモア猟兵の予知通りに商店街は、白い粘着質な糸で覆われ眼前に現れたのは“女郎蜘蛛”であった。
「この人たちは……わたくしどもの餌食にさせて、貰おう」
張り巡らされた糸の上を歩き、一般人を吐きだされた糸で覆い牙を今――立てようとした。
神代・凶津
させるかよッ!
捕まえた一般人に牙を立てようとしている女郎蜘蛛に先制攻撃を仕掛けるぜッ!
破魔の力が込められた薙刀の一撃、たっぷり味わいなッ!
『千刃桜花』で捕まった一般人達の糸を断ち切るぜ。
これで動けるだろ。さっさと逃げなッ!
そのまま千刃桜花の対象を女郎蜘蛛に変えて攻撃を仕掛けるぜ。
「・・・貴女はここで退治します。」
覚悟しな、蜘蛛女ッ!
【使用技能・先制攻撃、破魔】
【アドリブ歓迎】
柳川・雪月花
連携・アドリブ歓迎
猪突猛進の脳筋型です!
おろしたての改造桜學府制服「月」を着て少しばかり浮かれ気味
装備は左手に軽機関銃「花」、右手に退魔刀「雪」といういで立ちで行きます
帝都桜學府所属、柳川雪月花、参ります!
【戦闘知識】で立ち回りを確認
敵が固まっている所に軽機関銃を用いた【制圧射撃】で敵集団の動きを牽制し、そこにありったけの闘気を纏って【スクワッド・パレヱド】で【範囲攻撃】を行い、女郎蜘蛛や子蜘蛛をを纏めて吹っ飛ばします
あとは弱ったところを、軽機関銃や退魔刀で【破魔】の力を込めて攻撃していきます
相手の攻撃は避ける代わりに【スクワッド・パレヱド】の突撃で吹っ飛ばす攻撃は最大の防御スタイルで行きます
●『赦せない気持ち』
「させるかよッ!」
白く糸で染められた商店街に凶津の怒りを露わにした声が響くと同時に、桜が手にして構えた“霊鋼の薙刀”を振るい悪いモノ浄化させたかの様に斬れた糸はスッと消える。
ドサリ、と女郎蜘蛛の上半身は下半身を残してアスファルトに横たわる。
「帝都桜學府所属、柳川雪月花、参ります!」
地面を力強く蹴って弾丸の如く駈け出す雪月花は、雪の結晶の意匠が施された退魔刀“「雪」”を素早く抜刀すると左手に持った“軽機関銃「花」”で牽制しつつ懐に入り込む。
桜の花びらが刀身を包み込んでいるかの様に錯覚させる程の美しい白刃が――女郎蜘蛛を穿つ。
「へッ! あの嬢ちゃんも中々やるな!」
雪月花の剣捌きを見て凶津は、楽しそうに感嘆の声を上げながら言う。
「……いけ、千刃桜花」
桜が手にしている霊鋼の薙刀が、端から剥がれて行くかの様に桜の花びらに変わり宙をふわりと舞う。
元からソレが桜で出来ていたのかもしれない、と思わせる程に風景の桜吹雪と混ざり女郎蜘蛛達を惑わせる。
「これで動けるだろ。さっさと逃げなッ!」
しかし、惑わせたのは好機と思い凶津は、蜘蛛の糸で捕縛された一般人達を解放すると声を上げた。
恐怖に身を振るわせ、声にならない小さな悲鳴を洩らしながら人々は我先にと逃げる為に駈け出す。
「これで、全力で戦えます!」
一般人が逃げたのを確認すると、雪月花は自身の周囲に集まった女郎蜘蛛達に軽機関銃「花」の銃口を向けるとグッと引き金を引いた。
脇で支え、銃が弾丸を発射する反動を押さえて制御しながら、くるりと舞う様に回転して周囲の影朧を牽制すると素早く抜け出す。
「……貴女はここで退治します」
「覚悟しな、蜘蛛女ッ!」
桜が手にしている神楽鈴がリィンと美しい音を出し、神楽舞を舞う様な足取りと動きで桜の花びらを操り女郎蜘蛛達を切り裂く。
「あんた! 援護は俺たちに任せて思いっきり暴れてこい!」
桜が舞う最中に凶津は、一旦女郎蜘蛛達から距離を取った雪月花に向かって大声で言った。
「お任せ下さい!」
こくりと雪月花が頷くと元気よく答え、実は月の刺繍が施された帝都桜學府のオーダーメイド制服“「月」”を下ろしたてのを着て内心は少し浮かれているので思わず声が大きくなってしまう。
銃は腰のホルスターに収納すると退魔刀「雪」を両手で握り締め、彼女の身体から溢れる闘気を纏うと女郎蜘蛛達に向かって突進する。
それに合わせて桜が花びらを操り、惑わせながら攻撃して女郎蜘蛛を雪月花の突進する直線上に集めてゆく。
「はぁぁぁっ!!」
雪月花が横一閃に白刃を煌めかせると、女郎蜘蛛達は悲鳴と呻き声を洩らしながら後退させられた。
「今だぜッ!」
「……一匹たりとも、逃がしません」
視界がさくら色に染まり、シャンと神楽鈴の音が響く。
「はい、逃がしは致しません!」
傷付いた女郎蜘蛛達に軽機関銃「花」の銃口を向け、雪月花が力強く言うのと同時に弾丸が射出された。
倒しても、倒しても、まだ女郎蜘蛛達は無限に居る様な錯覚する程に商店街の屋根の上、真っ直ぐで広い道に姿を現す。
他の猟兵達が来るまで、戦うしか――ない。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
真宮・響
ちょっと待った。事情は知らないが、罪も無い一般人を餌食にするのは止めさせて貰うよ。蜘蛛か。色々厄介そうだね。
その攻撃にまともに当たりたくないね。【目立たない】【忍び足】【残像】を駆使して敵の背後に回り込み、背後から【先制攻撃】【二回攻撃】【串刺し】で竜牙を使う。もし遠距離攻撃で近づかせて貰えなかったら、【槍投げ】で攻撃するよ。近距離遠距離問わず、攻撃がアタシの方にくるなら、【見切り】【オーラ防御】で対処。
真宮・奏
むむ、有無を言わせず一般人を襲うなんて許せないです!!すぐに割り込んで、一般人を庇いますよ!!
私は一般人を護る事に専念します。トリニティ・エンハンスで防御力を高めてから、【オーラ防御】【武器受け】【盾受け】【拠点防御】で【かばう】を使います。攻撃出来る余裕があれば、護りの体勢でその場から動かず、【属性攻撃】【二回攻撃】【衝撃波】で行います。
神城・瞬
何が理由で一般人を襲うのか分かりませんが、勝手な理由で罪無き人を餌食になんてさせません。ここで倒させて頂きます。
月読の騎士を発動、飛び回ることで女郎蜘蛛の注意をこちらに引き付けます。敵からの攻撃は【オーラ防御】でダメージを軽減し、【誘導弾】【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】で攻撃。【二回攻撃】も併せ、一般人の方に接近するなら【吹き飛ばし】で吹き飛ばします。
●『赦されない気持ち』
「ちょっと待った」
「むむ、有無を言わせず一般人を襲うなんて許せないです!!」
逃げ惑う人々と女郎蜘蛛の間に響と奏が割って入ると、二人は手にしている“ブレイズランス”の矛先と“ブレイズセイバー”の剣先を向けた。
「事情は知らないが、罪も無い一般人を餌食にするのは止めさせて貰うよ」
響の気持ちに呼応するかのようにブレイズランスは赤熱すると、残像を残しながら素早く女郎蜘蛛の背後を取る。
「この一撃は竜の牙の如く!! 喰らいな!!」
くるりと手の中でブレイズランスを回して、響が一撃目は横に振るって切断すると二撃目に頭上から振り下ろして女郎蜘蛛達を切断した。
眼前にいたハズの女性がいつの間にか背後の仲間を倒している事に気付いた女郎蜘蛛達は、8本の足を使い商店街の屋根に上がって逃げると一般人の方へと向かう。
しかし――
「そうはさせないです!!」
奏が魔力で防御力を上げ、空いている方の手で“エレメンタル・シールド”を持って待ち構えていた。
女郎蜘蛛達が手を伸ばし見えない糸を放つが、オーラ防御であっさりと防がれてしまう。
「よこせ、よこせぇぇぇ!!」
「お断りしますよ!」
低く響く声で女郎蜘蛛達が叫ぶと、奏はその場から一歩も動かずにブレイズセイバーを振り下ろして衝撃波を放って迫りくる影朧達を切り裂いた。
(わたしが……守らなきゃ、絶対に!)
強く想うと同時に奏は、ぎゅっと唇を噛み締めると同時に新たにやってくる女郎蜘蛛達に視線を向けた。
「何が理由で一般人を襲うのか分かりませんが、勝手な理由で罪無き人を餌食になんてさせません。ここで倒させて頂きます」
月読の紋が入った銀の鎧を着た騎士に変身した瞬は、背に抱えた純白の自身の背に生える翼を広げると商店街の屋根に足を着ける。
同時に女郎蜘蛛達は体を蝕む毒を帯びた蜘蛛の糸を吐きだすと、巣に似せた迷路を作り上げるとその中で飛ぶ瞬はまるで捕らわれそうな蝶の様だ。
「しかし、これは好都合です」
瞬が手にしている氷の結晶のように透き通った杖“六花の杖”の先から誘導弾を放ち、周囲に集まった女郎蜘蛛達は次々と倒れてゆく。
視界を奪われ、身体の一部を破壊され、身体の自由も奪われると自身が作った迷宮の毒で蝕まれて力無く倒れて消える。
「援護の必要はなさそうね」
コンと軽快な音を立てながらブレイズランスを地面に立てると、響は息子の瞬が居る方向を見上げながら呟いた。
桜の花びらの援護もあって、思ったよりも苦戦せずに女郎蜘蛛達を倒せたのは一人では不可能であっただろう。
「ええ、本当に先に戦っている方たちのおかげです」
翼を広げ飛翔していた瞬が響の元にゆっくりと降りると、シャンと響く鈴の音と剣戟を響かせている方向に視線を向けた。
「なんか、頼もしいですね」
一般人が商店街から逃げ、逃げ遅れた人がいないか見回っていた奏が駆け寄ると同意するかの様に頷きながら言う。
そして、静かになった商店街のカフェーから一人の女学生が顔を出した瞬間――
空気が変わる、液体の様にどろりとした感じの空気へと。
思わず息を飲み、歩みが止まりそうになるが、それよりも影朧が現れると予知の場所であったので駈け出す。
そう、狙われる女学生を守る為に――
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『血まみれ女学生』
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POW : 乙女ノ血爪
【異様なまでに鋭く長く伸びた指の爪】が命中した対象を切断する。
SPD : 血濡ラレタ哀哭
【悲しみの感情に満ちた叫び】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : 応報ノ涙
全身を【目から溢れ出す黒い血の涙】で覆い、自身が敵から受けた【肉体的・精神的を問わない痛み】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
👑11
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●『赦せなくて、忘れられなくて』
嗚呼、と呟きながら血まみれ女学生は視界に入った女学生を睨む。
「忘れてない、いえ、忘れられなかった」
女学生の前に血まみれ女学生は、静かになった商店街のカフェーの前でオロオロしている彼女の前に立つ。
だが、それに察知した猟兵が素早く二人の間に入り込む。
「邪魔しないでよ! その女が赦せなくて、憎くて仕方がないの!」
ぽろぽろ、と血混じりの涙を流しながら血まみれ女学生は悲鳴に近い叫び声を上げる。
猟兵に迫られる選択は二つ、そのまま『倒す』か『説得して転生させる』か――?
ジェイクス・ライアー(サポート)
この先へ進みたいのなら
私が力になろう。
●探索等
「お嬢さん。少しお話をお聞かせいただいても?」
その場に相応しい人物を演じることに長ける
●戦闘スタイル
「さあ、仕事を始めよう。」
様々な武器を駆使して戦うスピード暗殺型
紳士的な所作で苛烈な攻撃を行う
さまざまな武器を状況に応じて使い分ける
銃の仕込まれた傘、靴の仕込み刃等
魔法や超能力は使えない
●性格
「紳士たるもの、いかなる時に於いても優雅たるべし」
クールな紳士、女性には慇懃な態度
●NG
フレンドリー、過度の笑顔(微笑み程度ならOK)、キャラの過去や私生活に関わる話、ギャグシナリオ、公序良俗に反する行為
●PLの好み
純戦、スタイリッシュ、怪我、泥臭さ、後味が悪い
百地・モユル(サポート)
『燃ゆる炎は勇気のしるし!』
サイボーグのマジックナイト × パラディン
年齢 7歳 男
外見 109.5cm ピンクの瞳 金髪 色白の肌
特徴 熱血 世間知らず 子供っぽい 読書好き 閉じこもっていた
口調 幼げ(ボク、相手の名前、だ、だぜ、だな、だよな?)
時々 ちびっこ(ボク、~さん、だね、だよ、だよね、なのかな? )
熱血で好奇心旺盛
本が好きな小学生
正義感が強く困っている人は見過ごせない
戦闘時の技能は怪力、属性攻撃、グラップル、武器受け、カウンターを主に使用
みんな大丈夫?助けにきたよ!
そんなの許せない、ボクの炎でなぎ払ってやる!
アドリブ、絡み歓迎です
神代・凶津
漸く今回の事件の黒幕がおでましかッ!
『雷神霊装』でいくぜ。
「決めるぜ相棒ッ!」
「・・・転身ッ!」
サクッと叩き斬ってやるぜッ!
っと、なんだ相棒?まずは説得をしたい?
ああ、そういやこの世界のオブリビオンは転生させられるかも知れないんだったか?
・・・分かってるよ、相棒が可能性があるならやらずにはいられないお人好しなのわな。
んじゃ、サクッと説得して叩き斬ってやるぜ。
「・・・話を聞かせてください。」
まずは影朧に会話を試みて情報収集だ。説得の糸口が見つかればいいがな。
説得は頼んだぜ相棒。
戦いになったら高速移動しながら破魔の雷撃の放射をぶちこんでやるッ!
【使用技能・情報収集、破魔】
【アドリブ歓迎】
●黒い百合の悲しみ
「漸く今回の事件の黒幕がおでましかッ!」
カカカ、と笑い声を洩らしながら凶津は、視界に入った血まみれ女学生を見据えた。
「決めるぜ相棒ッ!」
「……転身ッ!」
凶津が声を上げると、桜と仮面の力を一つにして顕現する霊装を纏うと、霊装から放出される雷は手にしている“無銘の妖刀”に収束されたソレを振り下ろした。
バチバチ、と電気が弾ける様な音と共に放たれた衝撃波は、血まみれ女学生に当たると悲鳴を上げながら哀哭する。
悲しみの感情に満ちた叫びにより、無差別に攻撃をされる最中で桜は女学生が涙を流している事に気が付いた。
「サクッと叩き斬ってやるぜッ!
っと、なんだ相棒? まずは説得をしたい?
ああ、そういやこの世界のオブリビオンは転生させられるかも知れないんだったか?
……分かってるよ、相棒が可能性があるならやらずにはいられないお人好しなのわな。
んじゃ、サクッと説得して叩き斬ってやるぜ」
そう凶津が言うと、桜はこくりと頷くと無差別攻撃が終わったのを見届けると女学生に近付いた。
「……話を聞かせてください」
赤い般若のお面である凶津を後頭部に回し、桜は女学生にハンカチを渡すと目線を合わせて言った。
「紳士たるもの、いかなる時に於いても優雅たるべし」
桜の背後から優雅に歩み寄ってくるのはジェイクス・ライアー(驟雨・f00584)だ。
血混じりの涙を流し、何かに囚われているワケありの女学生を見て彼は優しく微笑むと手を差しのべた。
「お嬢さん。少しお話をお聞かせいただいても?」
「え、あ……」
戸惑いを隠せない女学生は、自身の手や服を見てからジェイクスが差し出した手を見て首を振った。
「触れない……私汚れてる……」
「いいえ、そんな事はざごいません」
ぎゅっと袴を握り締めながら女学生は、か細い声で返事をするもジェイクスは表情を変えずに地面に膝を付けると彼女を見上げた。
「胸の中に仕舞うから、赦せなくなるの」
「そうだぜー言いたい事を言う方が楽だぜ?」
桜の言葉に同意する様にうんうんと言葉で言うと、凶津はなるべく明るい声で楽しそうに言う。
ぎゅっ、と爪が伸びて血で汚れた手が少し緩ませると、女学生は桜とジェイクスの顔を交互に見るとぽつり、ぽつりと静かに話し始めた。
「あの子がね……私のモノを奪うの……友人、恋人そして愛していた弟を」
嗚咽を漏らしながら女学生は話す、ぽたり、ぽたりと地面に涙のシミを作るがそれを世界が受け入れるかの様にスッとしみ込んで消える。
「……でも、それは何時の話でしょうか?」
「……何時? わか、らない……いつ?」
桜の問いに女学生は壊れたオモチャの様に同じ言葉を繰り返した。
「落ち着きなされ、事情は分かりました。ですが、お嬢さんが襲うとしている人物は全くの別人です」
「いいえ! あの顔よ! あの声よ! 間違ってないわ!」
ジェイクスが優しい声色で真実を述べるが、女学生は目を大きく見開くと光が失われた瞳で彼を見上げながら叫んだ。
ただ止めようとしたのに、桜とジェイクを血まみれ女学生は爪を振り下ろす。
「みんな大丈夫? 助けにきたよ!」
その場面に百地・モユル(ももも・f03218)が居あわせてしまい、彼は炎の魔力を宿した手甲“エレメントガントレット”を腕に装着すると弾丸の様に飛び出して女学生を殴り飛ばした。
炎の魔力がエレメントガントレットに宿って攻撃力を上げると、炎を纏ったガントレットと女学生の異様なまでに鋭く長く伸びた指の爪がぶつかり合う。
火花が散る中で、モユルは爪を弾くと炎を纏ったエレメントガントレットでカウンターを入れ、商店街の屋根の上まで吹き飛ばされる。
「忘れたくてもっ! 忘れられないのにぃ!」
涙を目尻から溢れださせながら女学生は、ゆっくりと立ち上がると目の前にいるモユルに向かって叫んだ。
「理由があって、だからと言って殺して良い事にはならないよ!」
「何でよ! 私は被害者なのよ? 大切なモノが全部、ぜーんぶ奪われたのよ!」
モユルは頬を膨らませながら分からないといった表情で睨むが、女学生はただただ力無く地面に膝を着けると子供の様に泣き出した。
はたして、彼女を無事に転生させる事が出来るのだろうか?
成功
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真宮・響
【真宮家】で参加。
何か事情有り気だね。深い悩みを拗らせて強い恨みになったなら、事情と、理由を聞きたい。
殺したいと思う程の恨みは余程のものだ。冥府まで持って行くのは気の毒だね。お嬢さん、アタシ達でいいなら話して見な?
必要であれば恨みの対象のお嬢さんとも話させる。両人の頭を撫でて、さあ仲直りだ、と縁を繋ぐお手伝いをする。
戦う場合は、【二回攻撃】で竜牙を使うが、なるべく最後の手段にしたい。アタシも若い娘の頃家出し、年頃の娘を持つ身だ。そういう歳の娘さんが化けて出る程悩んでるとなるとどうも放って置けなくてね。なるべく本懐を果たさせてやりたい。
真宮・奏
【真宮家】で参加。
私と同じ年頃の娘さん達に何かがあって、一方の娘さんが深い恨みを持って影朧になった・・・本来は討伐するべき相手でしょうが、拗れたまま終わらせるのは深い悔いが残ります。何とかしませんと。
恨みの対象になった娘さんに危険が無いよう、【オーラ防御】【かばう】で護りながら、両者の意見を聞きます。両者の手を握って【手をつなぐ】。どうかご両者とも私のお友達になってください、と申し入れます。
一度倒さなければいけないのが心苦しいですね。きっと来世でもお友達になることを約束して信念の一撃で攻撃します。
神城・瞬
【真宮家】で参加。
どうやら影朧とそこにいるお嬢さんに何かあった様子。恨みの内容も、固執する理由も、こちらが事情を知らないでは何ともしようがありません。お嬢さん方、事情をお聞かせ願えますか?
響母さんと奏が事情を聞いてる間、月読の騎士と【オーラ防御】を発動して緊急事態に備えます。時には、【優しさ】を利用して穏やかに「言いたいことは言って置いた方がいいですよ。どうしても忘れられない、重要な、大切な方なんですよね」とアドバイス。
攻撃する時は【高速詠唱】【全力魔法】【二回攻撃】で氷晶の槍で。せめて悔いなく一度去れるように。最大限の努力をしましょう。
百地・モユル
さっきはとっさに攻撃しちゃったけど…
そうだった、この世界のオブリビオンは説得がきけば転生できるんだよね
無敵城塞と激痛耐性で攻撃に耐えながらコミュ力と時間稼ぎを使ってなだめようとする
ごめんね、ボクにはきみがどれだけの悲しみを抱えてるのかよくわからないけど…
きみは過去からこの時代にやってきた、奪われたことはたぶんずっと昔の話
わからないほど前なら、きっとあの女の子は人違いだよ
せめてつらいこと吐き出せば少しは楽になるかも
その爪で切りつけるだけ切りつけてよ
怒りも悲しみも受けとめてみせるから
奪われたものはもう取り戻せないかもしれないけど、すべて忘れて新しく前に進む道はまだ残されてるんだよ
アドリブ、絡み歓迎
●温もりは時を経て冷たくなってしまうモノ
「殺したいと思う程の恨みは余程のものだ。冥府まで持って行くのは気の毒だね。お嬢さん、アタシ達でいいなら話して見な?」
響が血まみれ女学生に手を差し出す。
「私と同じ年の貴女をほっとけません」
そう言って奏は手をぎゅっと握りしめると、標的である女学生の方を振り向いた。
彼女にも原因というより、何かしら理由があって互いに考えがすれ違って起きた事なのかもしれない。
「だ、だれ? 知らない……」
恐怖に支配され、腰が抜けて立ち上がる事が出来ない女学生は、ただただ首を振りながら涙で頬を濡らす。
「恨みの内容も、固執する理由も、こちらが事情を知らないでは何ともしようがありません。お嬢さん方、事情をお聞かせ願えますか?」
瞬が優しい笑みを向け、一般人の女学生と影朧である女学生を交互に見つめた。
「そうやって! 殺しても、殺しても……貴女はどこでも出てくる! あぁ! 忘れられない!!」
鋭い瞳で女学生を見ると影朧は、イライラした様子で怒声を商店街に響かせる。
「この二人が何かあるのは分かるのだけども……どういう事なんだい?」
影朧の言葉を聞いた響は、話が一切噛み合わない様子を見てただただ感じる疑問を口にする。
殺しても、殺しても、どこでも出てくる?
3人は首を傾げながら考えていると、明るいモユルの声が響いた。
「ごめんね、ボクにはきみがどれだけの悲しみを抱えてるのかよくわからないけど……
きみは過去からこの時代にやってきた、奪われたことはたぶんずっと昔の話。
わからないほど前なら、きっとあの女の子は人違いだよ」
「人、違い?」
「そう、ただ顔が似た別人だよ」
モユルの言葉に血まみれ女学生は、ハッとした表情になると一般人の女学生をじーと頭の上から足の先まで見つめた。
ヒッ! と、小さく悲鳴を上げられるのも気にせずにただ見つめる。
奏が間に割って入ろうとするが、モユルはそれを阻止すると首を横に振った。
「過去は思い出さないと解決しないよ。それに、原因はあの子じゃない事は確かだからね」
「でも、もし爪を立てる様な事をしたら容赦なく割り込みます!」
オーラを展開させながら奏は何時でも守れるように準備をし、瞬は家族の二人を守る為にオーラを展開出来る様にして静かに見守っている。
血まみれ女学生が踵を返し、一般人の女学生から離れると店先に出されていたベンチに座った。
「君の言う通り、彼女は私の探している子ではなかったわ」
「それならば、お嬢さん。あの子を狙った理由を話してくれるんだな?」
響が隣に座りながら言うと、女学生はこくりと頷いた。
あの一般人が関係ないと知った奏は、恐怖で怯える彼女に肩を貸して安全な場所まで連れて行くその後ろ姿を瞬は見届けながら、直ぐに気持ちを切り替えると踵を返して影朧と母の方に視線を向ける。
少女はぽつり、ぽつりと覚えている限りの事を話し始めた。
そう、事の始まりは――
「ただい、ま……」
ガラッ、と家のドアを開けるとそこには彼女が立っていた。
なんとも愛らしく、そして私は彼女に恋をしてしまう。
「田舎からこちらに来て、うちの空き部屋に住む事になったんだよ」
ぺこり、と控えめに頭を下げる彼女はとても愛らして、私の心を支配した。
同じ学校に通い、笑って、泣いて、時には喧嘩もしましたが私たちは仲が良かったのです。
ですが――
「あの子を守って死ぬなんて……」
彼女が馬の前に出た瞬間、馬が驚いて暴れ出した否や弟は身を呈して守ったそうです。
それから数日後、妹、父、母……と家族は次々と彼女を守って死にました。
一人になった私、周りの人たちから疫病神呼ばわりされて居場所がなくなり、彼女は実家に帰り私は家なしになりました。
「大丈夫?」
そして、運命の出会いをして彼と婚約して幸せを得たのもつかの間の事……彼女が私に会いに来たその日に、事故で彼は帰らぬ人となりました。
そう、彼女のせいではないのに赦せなくて、彼女がしたワケでもなく忘れられなくて――
「そして、今の貴女がいるのですね」
瞬が静かに言うと、女学生はこくりと頷いた。
「一度倒さなければいけないのが心苦しいですね……」
奏がぎゅっと胸元を握り締めながら呟く。
「そうしないと転生は出来ないからな」
「はい」
響も何か思う表情で呟くと、モユルは元よりそう思っていたので決意をした表情で頷いた。
「その爪で切りつけるだけ切りつけてよ。
怒りも悲しみも受けとめてみせるから」
そうモユルが言うと、全身を超防御モードに変えて女学生は泣きながら、叫びながら、血に濡れた爪を振るう。
「せめて悔いなく一度去れるように。最大限の努力をしましょう」
瞬が六花の杖を手にし、先を女学生に向けると氷の槍が生成されソレは吸い込まれる様に彼女の身体を貫いた。
吐き出される血は地面を赤く染め上げ、もう一本の氷の槍が更にドスッと彼女を穿つ。
「来世は、お友達になろうね!」
「そう……ね」
流れそうになる涙を拭いながら奏は笑顔を向けると、アクア・セイバーを振り下ろして信念の一撃で切断する。
「次に会うまで、またな」
コン、とブレイズブルーを手の中で回しながら響は、嫌な表情を見せまいと努めながら竜の牙の如く女学生を穿つ。
「奪われたものはもう取り戻せないかもしれないけど、すべて忘れて新しく前に進む道はまだ残されてるんだよ」
「えぇ、そうよね……これで、赦して……忘れられる――」
モユルが最後に言葉を言うと、女学生は優しい笑みを浮かべながら桜の花びらと変わり、桜吹雪を吹かせながら宙へ舞い上がった。
これで彼女は転生出来るであろう、そして再び会える事を祈りながら商店街は徐々に避難した人々が戻ってくると笑顔で溢れる。
過ぎ去った事は戻せないけど、未来への道は示す事は可能なのだから――
大成功
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