5
《?》愛ノ呪

朱赫七・カムイ 2021年4月28日

✤✤✤✤✤

いとし こいしや さくらのひとや
いとし かなしや たまゆらのしとね

さびし かなし にくし はふり
ねむれ ねむれや さくらのはてに
ななつくび ひとつのみたま
ついぞかさねて かみのおり

いとし こいしや あいごくひとや
かなしや いとし ゆめのおり

あまつかぜ いざなう さだめのひ
ねむれ ねむれや よくのはて
ついぞ かなわぬ たまのをちぎり

ねんねや ころり
やつくび おとし
やくはふる
はては かなわぬ むくろうみ

✤✤✤✤✤




5





朱赫七・カムイ 2021年4月28日
(コマより手渡された巻物を紐解いてみる。几帳面な丁寧な文字で記されていたのは──)

【「清浄明潔」──すべてのものが清らかで生き生きしている、美しい桜の宵に。この世界へ生まれてきてくれた、愛しい貴方。祝福と愛をこめて、《櫻宵》と名付けましょう。

いとしいあの人との間に、漸く授かった大切な、大切な私の子。

可愛らしい小さな手で、私の指を懸命ににぎりかえしてくる。

どうか、この子が健やかに倖に育ちますように。

この子を守る為ならば、私はどんな事でも──】
0
朱赫七・カムイ 2021年4月29日
(これは、やはり……サヨの母君の記したもの。……日記だろうか)

【よく飲み、よく眠り。健やかに育つ我が子の姿を見るだけでこんなにも幸福な気持ちになるなんて知りませんでした。
柔らかな頬をつつくと、可愛らしい唇で無邪気に笑ってくれる。小さな手がはたはたと、差し出されて──噫、なんて愛らしい。
髪と瞳の色が私達とは異なるからと、奇特な目で見る者もいるけれどそんなものちっとも気になりません。
貴方は私の、可愛い息子。貴方は、どんな龍に育つのでしょう。

櫻宵を抱えて神代桜を見にゆきました。誘七の地を守り続けている御神木たる桜の木。この木の加護が、この子にも齎されますように。
貴方はこの木がお気に入りですね。
……木の向こう側に見える山が気になる様子。
好奇心旺盛なのかしら。
いけませんよ、櫻宵。あの山には、恐ろしい禍神が封じられているのです】
0
朱赫七・カムイ 2021年4月29日
(禍神、とは『私』のことか。……封じられていた、のだろうか?『私』はイザナの一族を守り見守りたいが故に、その場を離れる気がなかっただけというか……。それにしても、ちいさな櫻宵が『私』のいた山を気にかけてくれたなんてうれし……いいや、今はそれはいい。

……ごく普通の、子を愛する母の姿である。それが、どうして)

【額に生えた小さなちいさな、木の枝のような角をつつくと、くすぐったそうな歓声をあげる。
なんて幸せなのでしょう。
私はもう、子を望めない身体と成りましたが構わない。この子が居てくれる。
本当に可愛らしい。どうやら、この子は木龍のよう。
この地を守る桜の龍かしら?

そう、あのひとに伝えればあの人の顔から血の気がひきました。
それから、とても苦しそうに辛そうに、どこか諦めたように私に告げたのです。

『この子は神にかえさなければならない子だ』と。

何を告げられているのか、わからない】
0
朱赫七・カムイ 2021年4月29日
【この家には、忌まわしい風習がありました。
繁栄と加護を齎す神代桜を枯らさぬように、木龍と生まれた血筋の子を神贄として捧げる、というもの。
……何とも、愚かしい。
斯様な木に振り回されるなんて。
この桜が咲き続けることが、禍を抑え益を齎す──重要なことであるのだと。

《七つまでは神のうち》──この子を、七つまでに神に返すというのです。
神贄として、殺すのだと。

私の可愛い息子を?何故?なぜ??許さない。そんなことはさせない。
こんなに可愛い、私たちの子を。
私の可愛い坊やを。
噫、なんと憎らしい。

得体の知らぬ神などにくれてやるものか……!!

そんな神など、不要。
奪うことなど許さない。
死なぬならば死ぬまで殺し続けるまで。
存分に苦しんで、生き続けることすら後悔するほどに苦しませて、穢しおとしてやる。

……よしよし、大丈夫ですよ。櫻宵。
この母が、お前を守ります】
0
朱赫七・カムイ 2021年4月29日
(禍を、厄を抑え益を──………噫。噫、もしかしたら)

神代桜は、イザナがその身を変じた桜樹。『私』は毎年、桜が咲くのを数えて待って。
かの地を一族を守護していた。
あらゆる厄災から、禍から……噫……斯様な因習が生まれてしまったのは……ともすれば、『私』が原因であったのやもしれない……
(厄災が。禍津神が、ひとをあいしたから。だから、巡り巡って、きみに──)

【あのひとごと家を捨て、お前を連れて逃げられればよかった。
されど、それは叶わない。

私の故郷に、私の一族に伝わる禁術がある。
其れを用いれば、この子を救うことが出来るはず。
──いいえ、成し遂げる。
邪魔するものは全て私が排除する。

大丈夫ですよ、櫻宵。
心配はいりません。
母の言うことをよく聞いて。お前はいい子ですから出来ますよね。

神からお前を守るための、祝を授けましょう。

お前は桜龍ではなく、大蛇になるのです。
桜獄大蛇に。そうすれば、お前は生きていられる】
0
朱赫七・カムイ 2021年4月29日
(……『私』は何をしていたのだろう。どうして、サヨを助けてあげられなかったのだろう。噫、全てが口惜しい)

……?
これは、なんだ。走り書き……?

【大罪、

八の贄、人柱。主となるものが《愛》の感情を抱いたもの、もしくは主となるものを愛するもの。

孤独と絶望、憎しみが糧──】

……流石に、呪法までは記されてはいないか。
(溜息をひとつ、つく。そう簡単に解けるものではないのだと──それでも知る事はできた。
……この呪の半分を、長くその身に宿していた『私』程ではないにしても)

知れたとて、私はまだ……呪を上手く扱えぬ……この前もサヨを傷つけてしまった……、……?
気になることがあるな……
0
朱赫七・カムイ 2021年4月29日
(読んだ箇所を遡り、気になる文面を指でなどる)

……《神からお前を守るための、祝を授けましょう》
………祝?
呪ではなく?書き間違い……では……

(呪神でもあった『私』にも祓えなかった呪い。
サヨも、本当は祓える呪いなのに祓わない。
其れは、取り込まれ人柱となった御魂すらも救いたいが為、でもあるが……。
……それに、私が呪を累ようとしたときの、あの反応)

……もしも
これの本質が、愛を基にした……加護であったなら。
……神の、与えたもうた祝福であったならば……。

(苦虫を噛み潰したような心地だ。呪いならばまだ手段は如何様にも──されど其れが『守護』に類する魂に刻みこまれた祝福ならば……別。守護を与えているものを、何とかせねばならないのではないか、と)

愛呪、
ろくに力も扱えない私では、到底
(それでも、それでも何とかしないと。しなければ、もう──きみに逢えなくなる。眉根に皺を寄せて、きつく拳を握り締めた)
0
誘名・櫻宵 2021年4月30日
カムイ?
そんな所で何をしているの?……あら、それは……その、文字は……。

母上の……?
0
朱赫七・カムイ 2021年4月30日
……!(愛しいものの声に、ハッとして顏をあげる。
いつもと変わらぬ、きみの姿に安堵した。
いつもとかわらない、きみが恋しくて堪らなくなって手を伸ばす)

……サヨ、おいで。

噫、これはね……コマが持ってきたんだよ。
きみの母君が書いたもののようだ。
0
誘名・櫻宵 2021年5月3日
コマ、が?
(一華のそばに居る、あの暁の──。
伸ばされた手をとって、彼の隣に腰掛ける)

母上の……カムイはしりたいの?(書いてあるとしたならば、この呪についてだろうか。それとも至らない私への不満だろうか。母の日記は見たことがなくて、そして見ることもはばかられて。覗き込む代わりに、神の肩に寄り添う)
0
朱赫七・カムイ 2021年5月4日
(寄り添う桜鼠を優しく撫でる。大丈夫だよと伝えるように)

……しりたいよ。他でもない、きみのことだ。
(そうして、もう一度日記に桜朱をおとした)

【七つまでの時は稼ぎました。
はやく人柱を揃えなければ。

ひとつめは見つかりました。
傲慢にも分家より養子に迎えられた男。あの子を哀れみ愚弄するなど、許せません。
不要なのはお前だと身をもって知るがいい。

ふたつ、みつは血を同じくするものが良い。
神贄としてあの子を育てる……狡猾にも私からあの子を奪おうとする巫女にしよう。
双子の巫女がいた。美しかろうと心が醜ければ見るに堪えない。醜かろうと心が美しければ──噫。同じく見るに堪えない。
美しくないものは、お前には相応しくない。
けれど──贄には丁度いい】
0
誘名・櫻宵 2021年5月8日
(肩に寄りかかったままに双眸を閉じる。噫、なぜ私はこうであるのかと、ぐるりとぐろを巻く想いに沈む。髪を撫でる手はやさしくて、まるでやや子をあやすようであるというのに)

…………

(https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=33283
また、抵抗できなかった。
いいや、していたはずだった。抑え込んで──抵抗して、なのに。
なのに……抵抗すればする程に、絡め取られると感じるのは何故だろう。
カムイが、とめてくれていなければ──「なに」が出てきていたのだろう。
闇が染み込んでいくように、桜焔が焚いていく)

ねぇ、カムイ。
カムイには、カムイだからこそ……しられたくないことだって、あるのよ?
(https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=33426

そう、例えば。この呪の楔が、完成したあの時のことだって。
あなたには、しられたくなかったのよ)
0
朱赫七・カムイ 2021年5月11日
愛しいきみのことからこそ、しりたいと思うよ。全部を丸ごと受け入れると、言ったろう。
……無理に暴こうとは思わないが、其れがきみを苦しめていることならば共に背負いたい。
……少しでも、軽くしてあげたいと……思うのはいけないことだろうか。

まぁ、きみの逆鱗の位置は──未来永劫に私だけがしっていればいいとは思うけれど。

【神贄の為の浄化の部屋にひとりきり。閉じ込められたあの子が不憫でなりません。
あの人を責めても何も変わらない。神との約束は違えられないと──噫、馬鹿馬鹿しい。

私の故郷であるカクリヨから、あの子の世話をしてくれるものを呼びましょう。
私の一族のものを。

遥か昔、神に敗れ彼の地に追いやられた私の一族。そんな不名誉は繰り返さない。
この子は大蛇の血を継ぐ大切な子。

世話役にと迎えた私の伯父を、あの子は「じぃや」と慕って懐いてくれました。

良かった。
四首も決まった。伯父も喜んで、人柱になってくれるでしょう】
0
誘名・櫻宵 2021年5月14日
私と共に背負ってくれるの?
噫、まるで……私の呪の半分を背負ってくれた──
変わらないわね。

この呪を、カムイにはもう背負わせたくはないわ。

……逆鱗のって……!
ちょっといつの間に……!絶対黙っていてよね。

(ちらと目を落とした日記に、記された名に双眸を細める)

従兄弟のかれは誘七の分家の、惑陸の家の長子であったのよ。
前にも話したこと、あったかしら?
私は誘七本家の継ぎであったけれど、贄でもあったからね。
……使い物にならない継ぎの代わりにと養子として迎えられてきたの。
……私はね、嬉しかったわ。
きょうだいが、兄ができたのだと。

(https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=32783)

……でも、違ったのね
黄昏にも似た金色の瞳にはいつだって、憐れみが浮かんでいた。
私は贄になる為に生まれてきたのだね、可哀想に──そんなふうに言われても、あの頃の私は意味がわからなかったけれど
0
誘名・櫻宵 2021年5月14日
……巫女たちは……ずっと、誘七の家に仕えていたもの達よ。
神代桜の巫女。あの二人は双子の姉妹でね。
私は姉のように慕っていたわ。
──清めの部屋……部屋と言っても、本殿から隔離された別棟が私の育った場所だったのだけど……そこで、神贄の世話をするものと定められていた姉妹だったわ。

(https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=34367)

別に、牢獄に閉じ込められていたとかではないのよ、カムイ。
何でもね、清めの部屋の中までは神や妖の目が届かないのですって。
神贄は、力の糧になるからといって外に出られなかっただけ。

騒がしい二人だったけれど、それが楽しくて面白くてね。
……私にも、血を分けたきょうだいがいたらと感じていたの。
だからかしら、私がきょうだいという存在に、憧れを持つのは
0
朱赫七・カムイ 2021年5月14日
いいんだよ。私はサヨの神で、サヨは私の巫女──唯一の愛し子なのだ。
……では、言葉をかえよう。
背負うのではなくわけておくれ。
ひとりでは支えきれぬものだって、ふたりならば……支えられるだろう?
(私がそうしたいのだと告げて、滑らかな頬にふれる)

噫、勿論。誰にも言わない。探らせもしないよ。

……清めの部屋──、噫。結界が張られていたのか。
神の目からきみを隠すように
(だからか、と納得した。ずっと一族を見守ってきたはずの『私』が、きみを見つけられなかった理由は)

【あの人はあの子のことを、居ないものとして扱おうとする。愛してしまえば、喪った時に苦しいから、と。
どうして諦められるのか。私は諦めない。
渡してなるものか。

偶に足を運ぶ巫女に、年の離れた伯父(じぃや)、維持の悪い義兄。それだけではあの子も退屈するでしょう。
0
朱赫七・カムイ 2021年5月14日
退屈と孤独は心を殺す。今、こころが死んでは大蛇が育たない。
……歳の近い、友となれるものを迎えましょう。

明るくて利発で、それでいてあの子のことを大切に思ってくれる。──ちょうど良い少年を見つけてきました。
あの子の側仕えとして、友として、よく尽くすように。

幸いなことにあの子も少年を気に入ったよう。
絵を描いたり本を読んだり、戯れ合い楽しげな姿が可愛らしい。
噫、よかった。
あの少年も、良い贄になってくれる。

……気になることがひとつ。どうやらあの子に、外の様子について吹き込んでいること。
特に、あの山の花々をつんでは運んでくる事。
……あの禁足地である山のもの全てからは、嫌な気配がする。朽ちた社がある、だとか──あの子の興味を引くことを。

いけませんね、確りと躾をしなければ】

──あの山の社のことを、しっていたものが?
0
誘名・櫻宵 2021年5月14日
だめなのよ、駄目なの。
この呪は駄目なのよ、カムイ。
……私だから、耐えられるの。

もう、これにあなたを喰らわせるわけにはいかないの。そんなの私が許せないの。

──でもね、カムイは……もう十分私を支えてくれているよ。
半分どころか、丸ごと抱えていてくれる。

……(問いかけに、こくりと頷く)

……かれは、私と同じ歳の少年だった。
名は、スズリ。
(https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=34324)
元は、貧しい子で……下町で盗みやら何やらをしてやっと生きていた子らしいわ。それを、母上が連れてきた。どんなやり取りがあったかは知らないけれど……私の側仕え……「友達」として。
活発で明るくて、よくものをしっていたわ。

彼は外に出れたから、よく花をつんできてくれていたの。
私に外のことを教えてくれた。
0
誘名・櫻宵 2021年5月14日
憶えているのは、真っ赤な牡丹一華ね。
禁足地の山の上、朽ちた社がある。その近くに、たくさんの花が咲いている場所があるのだと教えてくれたわ。
誰も居ないのに、まるで誰かが育てているかのような──って。

いつかここから抜け出して、行ってみようと話して、脱走計画を練ったりね。
心躍るひとときだったわ。

──母上に見つかってしまったけれど、楽しかったわ。
0
朱赫七・カムイ 2021年5月16日
……サヨは、優しいね。
(呪いだって穢れだって何もかも、私に渡してしまえばいいのに。そうすれば、きみは救われる)

……サヨは皆が大切だったのだね。(昔を懐かしむきみのかんばせに、僅かな笑みを添える。その全てがきみの傷になっているとしっている)

花を育てるのは好きだったかな。枯らせ朽ちらせることしか出来ないくせに力を封じ込め咲かせるのだよ。
(『君』のようになりたかった、なんて言葉は紡がないでおく)

【櫻宵は中でも伯父に最も懐いているようにみえます。伯父は雷龍であると告げているようですが、その実正体は雷獄大蛇。
優しくて気さくで、人当たりが良い。裏も表も無いように見えて抜け目がなく狡猾だ。
──気をつけなければ。
桜獄の主導権を握らせないように。

あのひとが、新たな妻を迎えるときいた。
子の産めぬ私のかわりに、新たな子をもうけるためだろう。誘七の血を継ぐ子を。

どうして、どうして。
この子がいるのに、私がいるのに】
0
誘名・櫻宵 2021年5月16日
……優しくなんて、ないわ。
カムイがやさしすぎるのでしょう!
自己犠牲とか、絶対やめてよね。
あなたが無事でなければ、生きていなければ、私は救われないんだから!

ふふ……師匠らしい。
カムイには気にして欲しくないんだけど……師匠は、自分の力を制御するのが上手かった。
社に遊びに行った時も、たくさんの花が咲いていたっけ。

(大切だった──苦く笑って、頷く)大切だったよ。……外に出られない私にとって、間違いなく彼らは……「世界」だった。

……特に、じぃやと過ごす時間は長かったかしら。
優しくていつも私を褒めてくれた。
我々の誇りだとか──私を認めてくれるひとなんていなかったからね。
嬉しかったの。

https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=34325

雷を使う術を見せてくれたりね。こっそり美味しいお菓子をくれたの。見たことも無い不思議なお菓子。
母上も一目をおいているようだったわ。
0
朱赫七・カムイ 2021年7月11日
うん。わかったよ。
サヨが望むのならば。望んでくれるのならば。
私も無事でいよう。きみを哀しませたくなんて無いからね。

(ほら、優しい。私のこともそう気にかけてくれる。擽ったそうに笑ってから頷いた)
噫、(その方がきみが喜ぶから。小さなきみが、とりどりの花を観て喜ぶ──その姿を見るのが好きだった。そんな言葉は押し込める)
それは……私よりずっと、熟練していたからだよ。
サヨ、私だって修練をしている。ちゃんと、神斬のように……いや、彼以上にこの力も使いこなせるようになる。

(大切な存在。胸が痛む。そんな大切な存在達を世界を……きみ自身の手で、壊させたのか)

……雷の大蛇か……彼はきみの母君と志を同じくしているようだね
(我々の誇り、其の言葉に暫し考え込む。我々というのは──誘七の一族の事ではあるまい。母方の、大蛇の一族のことだろう。思いながら、日記へ視線を落とした)
0
朱赫七・カムイ 2021年7月11日
【水龍の巫女の一族。私と同じ、水を司るもの。
あの娘は美鈴、と言ったか。
あの人の幼馴染というだけでも気に食わないというのに。恭しく私に挨拶をするその姿も
軽い呪詛ならば跳ね返せるその、私と相反する力すらも気に食わない。

櫻宵に取り入るなど……あの子をどうするつもりだ。
私からあの子まで奪うつもりだろうか。
……あの子のもう一人の母上、なんて……許せない。
あの女が笑う度、腸が煮えくり返るようだ。

ことを、急がねばならない】


(文字の羅列だと言うのに、苛烈な感情を感じる。之は呪詛か。之が、呪詛……?いいや、これは──これが、『嫉妬』か?
少し手が震えた)

この……ミスズ……という女人は、サヨのもう一人の……母君かい?
0
誘名・櫻宵 2021年7月11日
ええ、カムイ。約束よ。
あなたは無事でいて頂戴。もう、決して──(けして、私の前で散ったりしないで。口を噤んで言葉を秘める。『あなた』の逝く様をしっている。『あなた』もまた、『私』の逝く様を、しっているだろう)

うふふ!
カムイは頑張り屋さんだもんね。しってる。
剣術だってなんだって頑張っていること。日々、強くなろうと学んでいることだって。
……成長しない、不変な存在が神だとしても……あなたは、違うのでしょう。
カムイなら、超えていけるのでしょう……なんて言ったら師匠に怒られちゃうかしら?
(眩しそうに桜色を細める。噫。噫、私の神様はどんどん進んでいく。前へ前へかけていく。ならば、私は?
立ち止まってばかりの私は……?
きゅうと、無意識のうちに白い手に力を込めた)
……私も、修練を積めば……負けないようになれるのかしら。

じいやは母方の親族であるし気もよくあっていたわ。
母上もじぃやの言うことは聞き入れていたもの
0
誘名・櫻宵 2021年7月11日
https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=34366

美鈴様はね……父上の側室。
噫、二人目の妻よ。元は父上の幼馴染で、巫女としての素質がとても高い──綺麗で優しい方だったわ。
艶やかな黒髪に、菫色の瞳。
いつも優しく快活に笑っていて、実子でもない私のことも我が子のように可愛いがってくれたの。

……私の母上は、私を褒めることもほとんどなかったのだけど……美鈴様はよく褒めて、遊んでくれた。
綺麗な櫛で私の髪をすいてくれて、撫でてくれたわ。

私を閉じ込めておくのはおかしい、って一度だけこっそり私を連れて、あの山の……硃赫山の近くまで連れて行って貰えたこともあったわ。
勿論、山に入る前につかまって二人して父上に怒られたりもしたけどね。(そう口にして、懐かしさに頬をゆるませる。されど桜色に浮かぶのは深い悲哀だ)
0
誘名・櫻宵 2021年7月11日
……やがて、美鈴様にも子ができたの。私は兄上になるのだって、嬉しくてたまらなかったわ。
『美珠』という名にするのだと笑っていたわ。
お腹にふれると、優しい鼓動が伝わってきて嬉しかった。

(けれど全てを壊したのは、私だ。生まれる前にしんだ……否、殺された妹。心がやどる前の無垢な魂──)
0
朱赫七・カムイ 2021年7月13日
噫。約束だよ。
きみも無事でいてくれ。
何時だって、笑っていて欲しいんだ。
きみが笑っている世界が好きなんだ
(……きみが笑う世界を忘れられない。いつだってそうだ)

噫、学ぶことは楽しいよ。私はまだ心についても、十分にしっているとはいえないからね。
当たり前だよ、サヨ。
私は神斬を超える。
……未来は私の手にあるのだから。
(怒らないよと首を振る。きっとそれを嘗ての己も望んでいるのだと確信しているからだ)
(きゅうと握られた白い手に己の手を重ねて、大丈夫だと教えるように撫でる)

櫻宵。
櫻宵はひとりじゃない。
ずっとずっと、ひとりではない。ひとりにはしないよ。

一緒に修練をしよう。
きみがきみとしてあるがままに生きられるように。
二人ならきっとどんなことも乗り越えられる。

私は櫻宵を離しはしない。
【私はあの子を離しはしない】


(柔く笑って心を告げて、書に目を落としたならば──先程私が唱えたこころと、同じココロがそこにあった)
0
朱赫七・カムイ 2021年7月13日
【あの子の母親は私。
誰がなんと言おうと、例えどんな神が邪魔をしようと……あの子は私の可愛い子。何を犠牲にしようと守ってみせる。
お前も母親になるならば、私の気持ちはわかるはずでしょうに。

美鈴、お前は甘い。優しさだけでは守れないことを知らないのでしょう。
辛い目にあわせるな、苦しめるな、もっと優しくしてあげて、などと……。
私だってそうしたい。抱きしめて、優しく撫でて褒めてあげたい。

しかし、其れでは大蛇は育たない。
それではあの子は救えない。
……それどころか、己がいのちすら保てないでしょう。
七つを迎えるその前に、連れていかれてしまいそうな程に身体が弱い。
けれど大丈夫。熱を出した櫻宵の額に手をあてて、子守唄を歌ってあげましょう。

もう少しで、こんな風に苦しむこともなくなるわ

七つの柱が揃ったならば、我らの神を迎える準備をしましょう】
0
朱赫七・カムイ 2021年7月13日
……サヨはミスズのことを母のように思っていたのだね。
(言いながらも、書に記された文字へ指先を這わせる。
伝わるのは、苦悩や哀しみだ。かの母もまた苦しんでいたのだ、と。
子を想う母親の愛。これが─、)

サヨの母君はきみに厳しかったのかい?
(それからふと、朱桜を瞬く。サヨは身体が弱い、という文面。確かに彼の前世であるイザナ……イザナイカグラもまた身体が弱かったと、私の中にある嘗ての記憶が囁いている。よもや、そこまでも同じであったのだと静かに一度だけ桜朱をとじた。もしかしたら、

……炎龍の従兄弟、双子の巫女。スズリという友人、雷龍のじぃや、ミスズ──

(これで六つ。残るは、ひとつ)
0
誘名・櫻宵 2021年7月15日
……うん。ありがとう、カムイ。私も、あなたが笑っていてくれる世界がいいわ。
あなたがいるから、『私』は──……。

私の神様は向上心の塊だわ。日々、どんどん成長て強く美しく……高みへと至る神へとなっていく。
(柔らかく笑ってから彼の手を握り優しく撫でる)
未来を携えるカムイの手を握って、私も……そばに居たいわ。
(一人ではないという言葉が心に染み込んでくる。こんなにも心に染みるのは、彼がずっとずっと、待っていてくれた、会いたかった神だからだろうか。それとも──)

離さないで、いてね

カムイと一緒に修練を?
ふふ、いいわね。私もあなたの横へ、ゆきたいもの
(愛しいあなたをおとすではなく、私が──昇ってゆけばよいのだと)
0
誘名・櫻宵 2021年7月18日
……そうね。
母上を花冷えの夜とするならば、美鈴様は……暖かな春の陽だまりのようであったの。もうひとりの母上、だと思っていたわ。
父上もその頃は……まだ、私を邪険にはしていなかったようにも思うわ。まだ、(あの頃は、美鈴様も生きていたから)

……母上は、……(口を噤んで朱紅の唇をかむ)厳し、かったわ。
誘七の跡継ぎとしてしっかりしなさい、と。ふふ……それは当たり前のことかしら。
贄になる私が、継げるわけがないのに……ずっと術式や作法やら……そんなことを教えてくれていたわ。
……酷く、冷たかったけれど。
その冷たさも孤独も絶望も私には必要な事だから──なんて、言っていたわ。だから尚更、美鈴様の掌が暖かくて離れがたかったの。
(唱えられる人柱達の名に、視線をおとす)

残りひとつは、…………母上自身、よ。

https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=34394
0
誘名・櫻宵 2021年7月18日
…………いくら、私への仕打ちや扱いが悪かったのだとしても。
愛されていなかったとしても、私にとって傍に居るべきひとではなかったのだと、しても……それでも……。

私は、母上にだって生きていて欲しかったわ。

……そう、信じていた。
(母上を殺したのは私だから。望まれるがままに喰らったのは私だから。
震える指先をぎゅうと握りしめ、痛々しい言葉をはきだした)
0
誘名・櫻宵 2021年7月18日
幽世の橋でね、愛の呪に出会ったわ。七つの蛇首を従えた──噫……あれが桜獄大蛇。

カムイ、七つの首の八岐大蛇よ。

炎龍の従兄弟……惑六の長男・焔は一つ首。
雷獄大蛇のじぃやは、二つ首。
愛されしもの、水龍の巫女美鈴は、四の首。
双子巫女、心根が美しく見た目が醜い姉巫女─新は、五の首。
双子巫女の片割れ、美しい外見に醜い心を持つ妹巫女─沙羅は、六の首。
私の初めての友人、スズリは七の首。
そして、大蛇の喚びし呪術者で大蛇の一族の姫巫女。水獄大蛇の化身である私の母上──華蛇は。……八の首

…………その、はずなのよ。
(ぽつぽつと、思い出しながら言葉を咲かせる。ひとり、ひとり。人柱として喰らう儀式のときに、教えられていたことだ。……誰にも言えず言わず、記憶に蓋をして隠していたことだ)

八岐大蛇は八の首。
ひとつ、足らないとおもわない?
0
朱赫七・カムイ 2021年7月18日
サヨ……
(紡がれる言葉は苦しそうで、深い哀しみと絶望と、痛みに染まっていると感じた。常に明るく、艶やかに咲くきみの──真なる花冷え。
ひとりで抱えてきたのだろう。きみは、君は──ずっと昔から、家族という存在を愛してきた。家族という存在を、欲していた。大切にしていた。
だから『私』は、君の家族になってくれるものを探したりもしたし──……。
いいや、今はそれはいい。大切なのは、サヨの自身のことだ。家族を愛して大切にする──そんな気質だってきっと、きみに継がれているのだろう。

噫。サヨ、きみは真面目で優しすぎるのだ。
真の化け物のように残酷であったならば
……斯様に苦しむこともなかったのやもしれない)


(大丈夫だよ、きみは悪くない。
辛かったね、苦しかったね──そんな、軽い言葉など出てこない)

サヨの苦しみもすべて、私に分けて欲しいよ。
弔うも解放するも、罪を、背負うも。
きみの纏う禍は、私も共に抱えたい。
0
朱赫七・カムイ 2021年7月18日
私は、禍津だ。
厄を、禍を、穢れを……受け止めるものだ。そしてサヨの神なのだからね。きみを離さない。見捨てはしない。
決して、花冷えの闇に取り残しはしないよ。何があったって、何処にきみがいたってきみを見つけて、迎えに行くよ。

私には遠慮しなくていいんだ。サヨ。

……気配は、感じていた。
カジャ……きみの母上にはね、私もあったんだ。言葉を交わした──いいや、私の言葉など聞き入れられなかったが。
……そうだろうよ。私は彼女の厭う神なのだから。
(それでも感じたのは、息子への愛だ。歪んでいても呪いと化して狂っていてもあれは、愛だった。絡みついてこんがらがって、どうしようも無く解けなくなった愛だろう。だから、私はそれを──)

……怒られそうだが、サヨの母上ならば──。私にとっても義母上なのだろう?
契交わしたひとの子はそうして家族になるのだとしっているよ。
0
朱赫七・カムイ 2021年7月18日
……(唱えられた名に痛ましい程の悲哀を感じる。悲哀が咲かせた言の葉に、ズキリと胸が傷んだ。
人柱として囚われている魂。すべてが、サヨが愛したもの達だ。
愛しいものを、愛したものを喰らわされた幼いきみの心を思い苦しげに眉を寄せた。

七つの首を従えた呪神と、八の首を持つという八岐大蛇。噫、言われてみれば足らない。ひとつ、首がない。ならばまだ、あの神は不完全なのか?)

……サヨ。三の首は?
三の首、と名がつくものがない気がする。
0
誘名・櫻宵 2021年7月18日
…………っ!
(重ねられる言葉に、神のこころと優しさに泣きそうに顔を歪める。
助けるというのは簡単なのだ。言うのは簡単なのだ。想うことは、音を紡ぐことは、)

私のこれを分けるという、意味をわかっているの。
あなたは、半分をもっていってくれた。
……そのせいで、あなたは──
(繰り返してはいけない。
繰り返させてはいけない。
散らせてはいけない。この美しい桜を。
優しいこの神はきっと、半分でも丸ごとでも──もっていってくれるのだろう)

(それでも、それでも。重ねられる思いに、揺らぐ。
この身ごと委ねてしまいたい。
優しい腕に飛び込んで、そのまま瞳をとじて。喜びを運ぶ香りの中で、たゆたっていたい──眉根を強く寄せる)
あなたはちいとも、禍ではない。
……厄災を齎すのは、災いであるのは、私のほうだ。

……カムイ。私をみつけて。
たとえ、何処に堕ちても、呑まれても。迎えに来て。
0
誘名・櫻宵 2021年7月18日
(おねがいよ。
震える声で願いを重ねる。
ひとりでは抗えぬ闇がある。ひとりきりでは破れぬ壁がある。
……こういう時に、ひとは願うのだろうな。
神頼みをするのだろう。私が、これを頼める神は、祈れる神は、あなただけだと揺れる桜色が朱を見上げる)

ふふ。
私の母上に、私をくださいとでも言うつもりかしら?
(水葬の街でのできごとを思い出して笑みを浮かべる。
あの時は私が、リルの父であるノア・カナン・ルーに……息子を頂戴と告げたのだっけ)
怒り狂うやもしれないわよ?
……母上はね、神が嫌いなの。
昔からそうよ。
……母上の一族がそもそも──はるか昔、とある神に敗北して幽世まで逃げ延びたのだと聞かされているわ。
その神の正体までは知らないけれど、ね。
(蛇はジャだ。ジャは──邪。もしかしたら、あの呪神の元は邪なる神であったのかもしれないなんて、想像をしてみる)
0
誘名・櫻宵 2021年7月18日
……(きゅうと唇をかむ。本当は明かしたくなんてなかったのだ。
桜の樹の下に秘密を埋めておくように隠しておきたかった)

(腕を持ち上げて
おいでと声をかければ──龍の纏う桜が焔に変わる。
白い腕から這い出てきたのは、か細い白蛇だ。
愛の呪の気配が濃くなる。白蛇は桜焔を吐き出してから、ずるり身を滑らせて鎌首をもたげた)

三の首は、此処にある。
……美珠。
美鈴様の腹の中にいた、私の妹だよ。生まれることなく、心を、魂を宿す前に死んだ……いいや、殺され贄とされた……私と血を同じくする娘
……あなたの守るべき血族のひとりだ。
(眉を下げたまま白蛇をつつく)

……私の大蛇の力はこの子のものだよ。
何でかわからないけれど美珠だけは私と共にある。

いいや……もしかしたら
(この子と私の母は、人柱としてあちらにある。子である私達だけが、此方にある──これもまた、縁なのだろうか)

桜獄大蛇の、最後のひとつの首は──私自身なのだろうね
0
朱赫七・カムイ 2021年7月19日
……櫻宵。
(はらり、赫が滲んで黒に染まる。手を伸ばして愛しい子の頬を安心させるようにやさしく撫でる)

私のきみよ。
『私』が望んだことだ。
私だって望んでいる。櫻宵を、その哀しみの楔から解放したい。きみを、きみの大切なもの達の魂を。

櫻宵が災いであるならば、なおそうだ。
私は禍津神でよかった。厄を司る神でよかった。
私がそう生まれた意味を改めてしったよ。

櫻宵、ありがとう。
きみがいるから、私がいるんだ。
きみを愛することができたから、私は──『私』の世界は彩どられた。

櫻宵が厄災を齎すならば、その全てを私が受け止めよう。きみの厄がきみの大切なものを害さないように。
きみを守るよ。
(こつんと額を重ねる。閉じた額の瞳越しきみの熱が常より感じられる気がした)

見つけるよ。(噛み締めるように、誓うように言霊を重ねていく)
例えきみが何処にいても、どんな姿でも、私を忘れていたって──私は櫻宵を見つけて迎えに行く。

約束だ
0
朱赫七・カムイ 2021年7月22日
そうだね。
しかと伝えよう。私がきみをさいわいにすると、奪うのではなく、守る神であるのだと 伝えよう。
(あの時の拒絶を思い出す。彼女は簡単には認めないだろう。されど。それでも──私は)

(櫻宵がほしい。──そう、自覚してしまった)

怒り狂われたら、話は聞いて貰えそうにないな。
……ちゃんと、聞いて貰えるようにするよ。

きみの母上は神を憎んでいるのは、子を奪う約が結ばれていたからだけではなかったのだね。
……如何なる神に負け追いやられたのだろう。邪なる神ならば……竜か、或いは……。

……櫻宵は、誠に……母君が好きなんだね
(恐れていても、どんな酷いことをされていたとしても。彼の言葉から、母を厭うような音はきこえてこなかったから)

きみの大切な存在ならば、それは……私にとっても大切であるよ
そう思うのは甘い、かな?
0
朱赫七・カムイ 2021年7月22日
(愛の呪の気配がより、濃くなる。
持ち上げられた細い腕から、這い出でてきた白蛇と言葉をつなぐきみの姿を静かに三つ目におさめてから──ゆるりと肯定するように頷いた)

例え、そうだとしても私の心は変わらないよ。
きみが桜獄大蛇だったとしても愛している。

(どこかで、そうであると感じていた部分もあった。七つ首の八岐大蛇。最後の、ひとつ。
もしかしたらそれは、きみではないのかと)

(魂を宿すまえの無垢であったがゆえに、呪神から逃れたのか。
あるいは、血を同じくする兄の元へ逃げてきたのか──呪と共にある母に逃がされているのか)

ミタマ(怯えさせないようにそっと、白へ手を伸ばす)

──きみも、ミタマも、ちゃんと守るよ
(守らねば。守れるように強く在らねばと見えないところで拳を握る。未熟は唯の言い訳だ。経験が足らないならば、別の何かで補わねばならない)
0
朱赫七・カムイ 2021年7月22日
だけどあの神の首を、八つ揃わせるわけにはいかない。七つの首が揃えば神が降りる──八つ首が揃えばきっと……あの神は完全になるのだろうね。
そうはさせない。(密やかに、神殺の刀を握りしめる)

(……どうして)

【私の可愛いこの子が幸であること。さいわいに生きていること。それが私の望み。愛するこの子のために、成せることはすべて成す。この子を救う。それが、私が母として成せる唯一のこと】

(噫、愛する気持ちは純粋であるのに)

【儀式を急がなければ。
もう何時、贄として召し上げられるかわからない。その前に完成させなければ。呪が宿り、育つまでには暫しの時を要する。宿りさえすれば、この子が贄になることは無い。

この子を贄にしなければ枯れる桜など枯れてしまえばいい】


(なぜ、愛は……呪となってしまうのだろう)

……私もそうなっていたのかもしれないな

(私は堕ちる寸前で救われた。だから、今度は私が──)
0
誘名・櫻宵 2021年7月22日
…………!
(ああ、狡い。
視界に滲む黒が、歪む。その姿はあなたのもうひとつの姿。──あなたが、《あなた》であった証。
頬をなでる優しい温度に、ひらかれた瞳から、ほろりと桜雫がこぼれおちる)

──ありがとう、カムイ……
(重ねられた言葉に、想いに、それ以上を紡げない。お人好しな程に優しい神の、言葉は真のものだ。
これだけは信じられる。私の神様。唯一のひとはしら)
本当に、損な役回りばかり引き受ける──神様ね。
カムイは、なんの神にだってなれる可能性をもっているのに。

約束よ、カムイ。
(重ねられた額から伝う熱が愛おしくてたまらない──この神様はずっと。どうしようも無い私の手のひらを握っていてくれるのだと。
私をひとりにしないのだって。
言い知れぬ安堵と、込み上げてくる熱で胸が苦しかった)

ふふ、変なの。
ずっと、ずぅっと哀しくて苦しくて、怖かったのに。
あなたが、いてくれると思ったら……ちぃとも、怖くなくなったわ
0
誘名・櫻宵 2021年7月22日
(美珠を撫でようとするその手つきに、安堵をおぼえる。
『愛している』
かわらないと、紡がれたあいに咲う)

(美珠は初めこそビクリと身を震わせたが、ゆっくりと神の指先に鼻先を擦り付け──ぴゃっと逃げるように「兄」の中へ潜り戻ってしまった)
噫、ごめんなさいね。
あまり外に出るのも、ひとに触れさせるのもなれていなくて……。

(思い詰めるような神のかんばせをみやり、そっと背に腕をまわして。その胸に自らの額を押し付ける)
(とくりと脈打つ生命の鼓動があなたの存在を教えてくれる。
龍は、この音が大好きだった)

カムイ。どうか私のことを一人で背負わないで。私も、私も戦うから。もう、怖いからと逃げたりしない。
……諦めないよ。
あなたと、皆と、いきること
0
誘名・櫻宵 2021年7月22日
(ずっと秘めていたことを打ち明けられたからだろうか。
緊張がほぐれて、そのまま。愛しい鼓動と熱を、香りを感じる、自分がいちばん安心でいる居場所の中で双眸をとじる)

愛してるわ──私の神様。
お人好しでやさしすぎて、甘すぎる。でも、そんなカムイだから好き。
私の、母の哀しみを否定しないで受け入れてくれるのね。

(童子の頃にそうしたように、頬擦りをする。梔子の甘い香りに微笑みを浮かべた)

(やっと、前を向ける。やっと、心が定まった──そんな気がした。

私の罪よ。私の咎よ。そして、私の愛よ。
迎えにいくからね。いつか、その時までに私だって──どんな苦痛にも負けないくらい、強くなっているから)
0
朱赫七・カムイ 2021年7月22日
うん。約束するよ。
(約を重ねて、厄を断とう。きみを縛る哀を愛へ戻せるように。零れた桜雨を指先で受け止めてそのまま細い背中に腕をまわし抱きしめる)

(そうと触れた細い肩。……此処に、呪が刻まれているのを知っている。優しく撫でて三つ瞳を閉じた)

櫻宵。生きていて。さいわいに、生きて欲しい。
ずっと。(ずっと。願わくば私の隣で、永遠に)
……きみが咲う世界を忘れられない。
きみが、笑う世界でないと意味が無いんだよ。
その為ならば、私は──(どんな事だって)

(頬擦りする仕草が懐かしくて可愛いらしくて、自然と笑みが零れた。この腕の中の熱を、愛し子を守ってみせる。私は、きみの神なのだ)
0
朱赫七・カムイ 2021年7月22日
(……偶に思いもする。

どうあっても、何を犠牲にしてでも、どうしても手放せない、愛しくて堪らない──そんな、欲しいものがあったとする。

たったひとつだけのそれに、同じくらいの想いを抱いた者が二人。ふたつの手を伸ばして掴み、奪い合う。

何方にもひけない理由がある。

……離せば、愛しい子は奪われる。
……離さなければ、愛しい子が双方に引っ張られる苦しむ。

そうなった時の話だ。
離すべきか──そんなこと、出来やしないのに考える。

……呪神の元へゆけば、きっとあの子は呪神としての力を得られるのだろう。私が望んだ永遠が、そこにある。

……私があの子を留めたならば、あの子はきっと、いつか天へ廻りかえってしまう。居なくなってしまう。避けられない離別がそこにある。……永遠を約すことはできるがきっと、誤ればそれは……彼の禍になってしまうから)

(それは、私が選ぶことではない。
けれど……)
0
朱赫七・カムイ 2021年7月23日
── うち忍び などか心もやらざらむ 憂き世の中に花は咲かずや
0
朱赫七・カムイ 2022年3月19日
❀❀

https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=38909

──呪は祝へ
今日も愛しい桜が、咲いている

❀❀
0