バトルオブフラワーズ⑫〜黒竜を喚ぶは、狡知か暴虐か
●グリモアベースにて
「あわわわわわわわ……」
とうとう壊れたか。キマイラフューチャーの景色を背にしてなんだか慌てているのは、インバネスコートを身に纏っい、フルフェイスのカボチャマスクを被ったグリモア猟兵だ。顔面蒼白なのかどうかは、元がオレンジ色だからちょっとわからない。
「だ、誰か、ドラゴンテイマーと戦ってくれる……?」
ドラゴンテイマーは戦略的には無視しても問題なく、攻略の必要があるわけではない。けれどもなんだか見過ごせないのは確かだ。
ドラゴンテイマーは同時に一体しか存在しないが、何度でも骸の海から蘇る。ここまでは他の幹部などと同じだ。短期間に許容値を超える回数倒されれば、復活は不可能になる「筈」――「筈」だと、カボチャの形のグリモアを浮かせながら、神無月・孔雀(へたれ正義のカボチャマスク・f13104)は告げた。
「ドラゴンテイマーは『黒竜ダイウルゴス』を召喚する能力で戦うよ。こういえば今までの幹部たちよりも戦い方はシンプルかもしれないけど、そのぶん、これまでの誰よりも強いんだよ……」
奴がいるのはシステム・フラワーズの中枢から少し離れた場所だ。花の足場はあるが、彼を覆う紫色のガスの禍々しさが目立つ。
「ドラゴンテイマーの真意は不明だけど、この戦争の裏で糸を引いている感じだから、放っておけないって人はいるかもしれない」
孔雀はいつもののんびりとした口調さえ忘れたように、告げる。
「でもね、強敵だし、戦略的には無理に倒す必要はないよ……だから、お願いはしない。けど、行ってくれるというのなら、ボクはせいいっぱい応援するし、いつものようにみんなを信じてるよ」
●
花の咲き乱れる足場の上、紫のガスを纏いし謎のオブリビオンはいる。
六枚の翼を広げ、赤き剣の腕を持って、佇んでいる。
彼が待つのは――?
篁みゆ
こんにちは、篁みゆ(たかむら・ー)と申します。
はじめましての方も、すでにお世話になった方も、どうぞよろしくお願いいたします。
このシナリオの最大の目的は、「ドラゴンテイマーの討伐」です。
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敵は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
この先制攻撃に対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。
====================
●難易度について
これまでの幹部よりも明らかな強敵ですので、高難易度として厳し目に判定いたします。苦戦や失敗でお返しすることが多くなるかもしれません。
●採用について
通常はできる限り採用を心がけておりますが、戦争シナリオであることも鑑みて、状況次第ではプレイングをお返しさせていただく可能性もございます。
●プレイング再送について
プレイングを失効でお返ししてしまう場合は、殆どがこちらのスケジュールの都合です。ご再送は大歓迎でございます(マスターページにも記載がございますので、宜しければご覧くださいませ)
●お願い
単独ではなく一緒に描写をして欲しい相手がいる場合は、お互いにIDやグループ名など識別できるようなものをプレイングの最初にご記入ください(今回に限っては、お相手とプレイング送信時間が大幅にずれた場合、プレイング締切になってしまう場合もあるかもしれません)
また、ご希望されていない方も、他の方と一緒に描写される場合もございます。
皆様のプレイングを楽しみにお待ちしております。
第1章 ボス戦
『ドラゴンテイマー』
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POW : クリムゾンキャリバー
【赤き剣の右腕】が命中した対象に対し、高威力高命中の【黒竜ダイウルゴスの群れ】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : ギガンティックダイウルゴス
レベル×1体の、【逆鱗】に1と刻印された戦闘用【大型ダイウルゴス】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ : 文明侵略(フロンティア・ライン)
自身からレベルm半径内の無機物を【黒竜ダイウルゴスの群れ】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
👑11
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システム・フラワーズの中枢から外れたその場所に、その男は立っていた。
カラフルで優しい色の花の足場と到底相いれぬ威圧感は、彼のどこから生まれいでるものだろうか。
禍々しい紫色のガスが彼を抱擁し、まるで花の足場をも侵食しようという勢いだ――。
日和見・カナタ
ドラゴンテイマー…怪人たちを支援している人、でしたよね。
理由は分かりませんが、戦争を望むのなら見過ごすわけにはいきません。
私の出せる全力で、あなたを倒させてもらいます!
まずは【機械蜂】を散布し、得たデータを【サイバーゴーグル】に送って戦場を把握しましょう!
ドラゴンテイマーとダイウルゴスの場所、彼らの現在の行動、予想される攻撃の範囲、合体の予兆。
それらの情報から攻撃の届かない、あるいは攻撃されてもダメージを軽減できるルートを算出してドラゴンテイマーのもとまで駆け抜けますよ!
彼自身の攻撃は【機械蜂】の情報と【武器受け】で左腕を犠牲に凌いで、お返しに【超熱発勁】を叩き込んでみせます!
【アドリブ歓迎】
ビスマス・テルマール
●POW
可能なら仲間と連携しつつ
先制攻撃で
オーラ防御・属性攻撃(餅)・誘導弾・激痛耐性を早業を駆使し弾に込め生成した盾受けの餅弾を
一斉発射で範囲攻撃で常にばら蒔き続け
地形の利用もしつつ、右手の赤き剣の初撃を受けない様に特に注意
餅弾が絡まるなり動きに隙が出来たら、早業でトリニティ・ナメローズマバアを発動
オーラ防御と属性攻撃(餅)をコーティングした残像を残しながら、攻撃を見切りつつ撹乱しつつ
鎧無視攻撃・属性攻撃(貫通)・鎧砕き・誘導弾を早業で弾に込め、2回攻撃とクイックドロウを駆使し、スナイパーで一斉発射を赤き剣を中心に狙い、赤き剣と右手の破壊を中心にダメージを狙います
※アドリブ絡み掛け合い大歓迎
「あれが、ドラゴンテイマーですか」
「ドラゴンテイマー……怪人たちを支援している人、でしたよね」
ほぼ同時にその場に降り立ったビスマス・テルマール(通りすがりのなめろう猟兵・f02021)と日和見・カナタ(冒険少女・f01083)は、視線の先の男の放つ威圧感に足を止めそうになる。殺気をほとんど感じないのは、彼がそれだけ実力者ということなのだろう。ふたりとも、彼我の実力差を測れぬほど、力不足ではない。
だからこそ、カナタは『機械蜂』を散布して様々なデータを得た上で、彼の元へと迫るつもりだった。
だからこそ、ビスマスは先制して盾受けの餅弾を素早く生成し、周囲にバラまき続けるつもりでいた。
だが、それこそが、間違いのひとつ。
「!」
「っ!!」
ふたりよりも、ドラゴンテイマーの方が早く動いたのだ。
「私もなめられたものだ。ダイウルゴスよ」
彼が喚び出したのは、大型の黒竜ダイウルゴス。逆鱗に1と刻印されたそれの正確な数はわからない。その巨躯も相まって、視界がダイウルゴスで埋め尽くされる。ドラゴンテイマーの姿が、黒の群れに遮られて見えなくなる――。
「それでもっ……!」
カナタは『機械蜂』を散布する。こうなったらなおさら情報がほしい。その殆どがダイウルゴスたちの猛々しい吐息で使い物にならなくなろうとも、たったひとつでも、有益な情報が拾えればいい。
「がっ……」
「うっ……」
もちろん回避は試みた。だが無数にも思えるその黒い巨躯が放つ吐息や咆哮、鋭い爪や牙――ふたりに襲いかかるすべてを回避することなど、できなくて。
「わたしがっ」
確かに無数とも思える大量の黒竜に追い立てられて、損傷は軽いとは言い難い。けれどもこの程度で諦めるようであれば、そもそもこの地を踏みになど訪れぬ。
これだけ大きな黒竜が大量にいれば、それこそ的には事欠かない。ビスマスは予定通り盾受けの餅弾を放った。防御の力を込めたその弾は、黒竜に着弾して餅の絡まりでその動きを阻害する。
だが、このままでは近くの黒竜しか狙えない。黒竜の巨躯が奥の黒竜への射線を遮っているのだ。
「こっちです!」
カナタの声にとっさに反応したビスマス。彼女の示す黒竜の体に空中戦の要領で飛び上がった。そこからなら、黒竜たちが一望できる。
「近くのダイウルゴスの動きを鈍られてくれたおかげで、機械蜂からの情報を拾い上げることが出来ました」
「こちらこそ。助かりました」
鈍っているとはいえ、餅の粘りから抜け出そうとする黒竜の上でしっかり餅弾を撃ち続けていられるのは、ビスマスが空中戦に適したバランス感覚や体幹を持っているからだろう。ひしめく黒竜たちに餅弾をばらまき続け、その動きを鈍らせる。
だが、しかし。
「――!?」
もちろん十分に警戒はしていた。それでも、彼の速さは桁違いだった。
宙を滑るかのように迫り来た黒衣の彼が、その赤き剣を自身に振るったことにビスマスが気がついたのは、花の足場にひしめくそれとは違う黒竜の群れが自身の目と鼻の先に迫った時だった。
「あぁぁぁぁっ!?」
宙を泳ぐ黒竜の群れに蹂躙され、ビスマスは足場にしていた黒竜から落ちゆく。
カナタは間近でその威力を目撃した。けれども、まだ退くわけにはいかない。
(「ドラゴンテイマー……理由は分かりませんが、戦争を望むのなら見過ごすわけにはいきません」)
地で動きを鈍らされた黒竜と黒竜の間を駆け抜けて駆け抜けて、見えたその姿。
「私の出せる全力で、あなたを倒させてもらいます!」
接近して繰り出すのは、灼熱した拳。
「甘いな」
だが懐に入り込むことは叶わず、カナタの拳は赤き剣で止められてしまった。しかし。
「まだ終わりではありません!」
飛来したのはビスマスの持てる力をすべて込めた大量の弾丸。落下から体勢を立て直したビスマスは、素早く『トリニティ・ナメローズマバア』を発動させていた。そして得た飛翔能力で黒竜たちの頭上へと舞い上がり、ドラゴンテイマー目掛けてその武装破壊を狙った弾丸を発射したのだった。
苦戦
🔵🔵🔴🔴🔴🔴
ライラック・エアルオウルズ
戦う必要が無いと知っても、
湧く興味は誤魔化せないからね
貴方の真意、薄らとは見られるかな?
一撃一撃に《全力魔法》を注ぐ《覚悟》を決め、
《高速詠唱》で迅速に『奇妙な友人』の召喚を
刃と炎の《範囲攻撃》で先制の竜を極力減らし、
討ち漏らした竜は《見切り》で《カウンター》
『鏡合わせの答合わせ』で鏡を放ち相殺
し切れずとも《激痛耐性》で凌ぐ
友人は隙突く様に敵へと向かわせ、
畳み掛ける様にそのまま攻撃を
及ばずとも《時間稼ぎ》としては成功さ
駆けて追い付けば友人の刃を手にし、
僕自身が斬りに行く――或いは《投擲》を
《騙し討ち》?信頼関係の為せる業だよ
貴方と彼女には、"信頼"は無さそうだね
…何の為に、協力をしているやら
アネット・レインフォール
▼心情
気の所為か、あの姿には見覚えがあるような…?
それは兎も角。
奴の名前、目的を探りたい所だな。
▼POW
周囲に換装用の刀剣を展開し接敵。
これは群れが来る方角を探るセンサーとして利用。
次に葬剣を鋼糸状に展開する事で足場とし空中回避を試す。
難しい時は群れの一頭に着地し同士討ちと攪乱を誘い、
これを繰返す事で少しずつ接近。
この間に【雷帝ノ太刀】を牽制を兼ねて布石用に何度か放っておく。
布石用斬撃はこっそり移動。
間合いを詰めたらドラゴンテイマーに
フェイントを交えつつ居合を放つが本命は別にある。
『配置&包囲した不可視の全斬撃』を一斉に叩き込む。
撃破が難しい時は可能な範囲で情報収集を。
▼他
連携、アドリブ可
(「戦う必要が無いと知っても、湧く興味は誤魔化せないからね」)
ライラック・エアルオウルズ(机上の友人・f01246)は黒衣の男のその姿を見据えながら。
「貴方の真意、薄らとは見られるかな?」
挑発するように、否、好奇心が大部分を占めるその呟きを投げかけて。
(「気の所為か、あの姿には見覚えがあるような
……?」)
なんとなく、あの男の姿は心をかき乱される気がする。それでもアネット・レインフォール(剣の教導者・f01254)は、換装用の刀剣を展開し、彼への接敵の機会を探る。
ライラックが『奇妙な友人』を喚び寄せるよりも早く、ドラゴンテイマーが動いた。
ぼこぼこと、黒竜の群れが顔を出す。おそらくシステム・フラワーズ内の足場を黒竜の群れへと変えたのだろう。黒竜の群れが現れるのは想定内だ。ライラックは今度こそ、素早く『奇妙な友人』を傍らに喚び寄せて、刃とカンテラの炎で黒竜たちへと挑む――だが。
「なっ
……!?」
足場だけでなく、ライラックの身につけていたロングコートやマフラー、ハンチング帽までもが黒竜の群れへと姿を変えたのだ。足場だけではない。猟兵たちが身に着けている衣類や装備品も殆どが無機物のカテゴリに入ることだろう。
「わぁぁぁぁぁっ!?」
至近距離から襲い来る黒竜の群れに蹂躙されるライラックと『友人』。だが幸いにも、彼らはふたりきりではなかった。
「こっちだ!」
声が耳に入るとほぼ同時に、力任せに身体を引っ張り上げられた。追いすがる黒竜たちを刃でこそぎ落とすようにしながらライラックたちを引き上げたのは、アネットだ。
ライラックたちが引き上げられたのは、アネットが鋼糸状にした『葬剣【逢魔ガ刻】』で作り上げた足場。一面花が咲くこの空間には近くに壁や障害物は見当たらない。そのため、鋼糸は黒竜たちの頭部を支柱にして編み上げた。鋼糸を巻きつけられた黒竜が動くたびに大きく揺れる不安定な足場だが、黒竜の群れに囲まれるよりは断然マシなはずである。
「ありがとう。これで……」
傷は浅くない。だがなんとか息をついたライラックは魔法の鏡を取り出し、放つのは『鏡合わせの答合わせ』。
「ほう……」
相殺され、黒竜たちが消えてゆく。もちろん鋼糸の足場の支柱となった黒竜たちも例外ではない。
「奴の一撃を耐えたのちでいい。少し、時間を稼いでもらえるだろうか?」
「ああ、もちろんだよ」
足場が落下する前にライラックを支えながら花畑に着地するアネット。視線を向ければ黒衣の男はもう間近に迫っていた。
「っ……」
赤き剣の重い一撃。だがこの攻撃の本命はそこではない。アネットを襲う黒竜の群れ。その爪や牙、激しい吐息を身に受けながらも黒竜の身体や頭に飛び乗りながら、稲妻を纏った一撃――『雷帝ノ太刀』を繰り返し放ってゆく。それは当てることよりも牽制を、牽制よりもこののちのための布石が本命。
「頼むよ」
ライラックは『友人』に声をかけ、黒衣の男へと向かわせる。黒竜たちがアネットを襲っている今、『友人』が男へと向かうのを遮るものはない。アネットの放つ『雷帝ノ太刀』と接近してきた『友人』へと男の意識は向かうだろう。そのはずだ。
接近した『友人』は、カンテラの炎や宵色のナイフで男に襲いかかる。だがどれも軽く躱されてしまっていた。
(「それでも、時間稼ぎとしては成功さ」)
いつの間にか駆け出していたライラックは、『友人』の持つナイフを自身の手に収め、男へと斬りかかる――が。
「あっ!?」
そのナイフが、黒竜の群れへと変化して、ライラックを襲う。
なぜ――ライラックのその言葉は、襲い来る黒竜たちにかき消される。ライラックは2つのコードを使用した。ならば男がそれをしない道理はない。
ライラックを追うように接敵したアネットが、素早く抜いた刀で男を狙うがひらりと躱されてしまう。しかし本命は別にあった。先に放って配置しておいた斬撃を、すべて男へ向けて発動――!
だが、男はその気配を感じ取ったのか、はたまたアネットの行動や表情の微細な変化から導き出したのか、翼はためかせて飛び上がることでその斬撃たちを避けた。男がいた場所の花々が斬られ、舞い上がる。
「がっ
……!?」
花弁が舞い上がる光景がアネットの視界を占める。その間に男の赤き剣が、数度、アネットを斬りつけて。
アネットもまた、複数回『雷帝ノ太刀』を放っていた。ならば男がそれをしない道理はない。
襲い来る黒竜の群れに流されるように、ふたりはドラゴンテイマーから離れた位置で膝をついた。
苦戦
🔵🔵🔴🔴🔴🔴
祇条・結月
本筋から外れた寄り道なのかもしれないけれど
だからこそ、できることをしておきたいし、ここで戦ったことが後に繋がることだってあるかもしれない
できることを、するよ
とはいえ竜に通じそうな武器は持ち合わせがないな……
召喚は想定内。
竜の群れをこちらにひきつける【覚悟】で速さと小回りで攪乱
【第六感】で敵の動きを予測しつつ苦無を時々【投擲】して目なんかを【スナイパー】で【鎧無視攻撃】するよ
……なんて、この動き自体が囮
隙を見て、自分に≪鍵の悪魔≫を降ろしてダイウルゴスの身体を透過して突破、
ドラゴンテイマーに一撃、お見舞いしに行くよ
僕は強いほうじゃない
それでも油断、しすぎじゃない?
舐めるな
冴木・蜜
黒竜どもの挙動を観察しつつ
相手の攻撃を回避しやすい地点へ竜を誘導
操る者がいるならその挙動も特徴がある筈
それを踏まえ
聞き耳フル活用で攻撃を見切り躱しましょう
回避が間に合わない攻撃は
体内UDCの蔓や蔦で受け止めそのままカウンター
それでも無傷とはいかないでしょう
激痛耐性で凌ぎつつ致命傷を避け一気に接敵
蔓による白兵戦に持ち込む
…と見せかけて彼に右腕の一撃を引き出せれば御の字
ここで初めて体を液状化
一撃を敢えて受け
飛び散った己の血肉さえ利用して
攻撃力重視の捨て身の『毒血』
有りっ丈の毒を濃縮してその刃を蝕めたら
貴方程の敵を相手に
無傷で帰ろうとも
私一人で殺せるとも思っていない
私はただ 次に繋げられれば良い
(「本筋から外れた寄り道なのかもしれないけれど。だからこそ、できることをしておきたいし、ここで戦ったことが後に繋がることだってあるかもしれない」)
できることをする――強い決意を宿した祇条・結月(キーメイカー・f02067)は、ドラゴンテイマーの召喚した大型ダイウルゴスたちを見据える。逆鱗に1と刻印された彼らはその巨躯で互い同士のみならず、黒衣の男の姿をも隠したが、それは結月の想定内だ。
(「とはいえ竜に通じそうな武器は持ち合わせがないな……」)
だが『大型』と銘打つだけあって、結月を目指す黒竜たちは互いが互いの枷となって動きが比較的鈍い。荒れ狂う吐息や鋭い爪や牙のすべては躱せなくとも、自身の勘を信じて動く。その素早さと小回りを活かして黒竜たちをひきつけながら、撹乱してゆく。
その結月の動きを、否、黒竜たちの挙動をしっかりと観察している者がいた。
(「操る者がいるならその挙動も特徴がある筈です」)
冴木・蜜(天賦の薬・f15222)は眼鏡の奥の瞳とその耳の拾う音で、動きのパターンを記憶してゆく。
ときおり結月が『クナイ・ダート』を手にし、その正確無比な投擲で竜の目を潰して。ほとんどの黒竜は結月を狙っているが、フリーな蜜を見つけたいくらかの黒竜は、蜜を狙ってくる。観察の成果を活かして躱せるものは躱し、回避が間に合わないと察すれば、体内のUDCである蔓や蔦で受け止めてはそのままそれを叩きつける。だが、さすがに全くの無傷では済まない。覚悟はしていたので、致命傷だけは避けつつ黒竜の隙をついてその脇を抜け、黒衣の男に迫る蜜。
勢いつけた蔓を叩きつけるか巻きつけるか、いずれにせよそのまま白兵戦へと持ち込もうとしている蜜へと振り出されたのは、赤き剣。
(「かかりましたね」)
赤き剣が自身の身体に到達する前に、蜜は自身の身体を液状化させる。赤き剣は液状化した蜜の身体を斬りつけ――その黒い血肉を飛び散らせた。
「――!」
それだけではない。この瞬間を待っていたとばかりに蜜が発動させた捨て身の『毒血』は、ありったけの毒を濃縮して赤き剣の刃を蝕む。
あえて攻撃を受けることで飛び散った己の血肉さえも利用する攻撃。ブラックタールならではの選択だろう。
けれども剣を受けた以上、黒竜の群れは蜜の液状化した肉体、飛び散った肉体を狙う。
「貴方程の敵を相手に、無傷で帰ろうとも、私一人で殺せるとも思っていない」
蜜の声が『黒』が広がる空間に響き渡る。
「私はただ 次に繋げられれば良い」
「――なっ」
黒衣の男が声を上げた。突然、結月がドラゴンテイマーの前へと現れたからだ。
黒竜の群れを引きつけ、撹乱し、苦無を投擲する――これらの動きはすべて囮だったのだ。黒衣の男が蜜へと意識を移したその隙に、結月は『鍵ノ悪魔』を発動させて。透過の力を得た結月は、多くのダイウルゴスの『身体を透過』して、死角から彼我の距離を詰めていた。ゆえに、黒衣の男にも結月が突然その場に現れたように見えたのだろう。
「僕は強いほうじゃない。それでも油断、しすぎじゃない?」
「――」
ドラゴンテイマーが何かを紡ぎながら動こうとするよりも、わずかに早く。
「舐めるな」
結月の刃が黒衣の男の上腕を斬りつけた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
五百雀・斗真
ドラゴンテイマーはこちらとは進んで戦うことはないようだけど…
このままにしておくことは破滅に繋がるんだよね
なら、せめて…
この世界を元に戻すために、あなたに挑みます
そう伝えてから黒雫で大田さんに魔力を送り身構える
先制攻撃はUDCの大田さんの触手で盾受けとなぎ払いで防ぐ
そして自分も敵のUCを見定める事を頑張りながら
かりそめスプレーでマヒ込みの範囲攻撃で竜を撃破したい
彼のUCはあんな竜の群れを呼び出すのか
だとしたら僕も【コードキャンセル】で竜を呼び出して
――その力を打ち消そう
打ち消す事ができたとしても
それで彼の動きを止める事にはならないよね…
最後まで警戒を怠らず
大田さんに攻撃を防いでもらいながら戦おう
城島・冬青
赤き剣の右腕が飛んでくる方向を【第六感】で予測
【衝撃波】を放ち飛んで
右腕の速度を落とす
あとは軌道を変えられないようギリギリまでひきつけてから【残像】と【ダッシュ】を駆使して回避
無理なら【武器受け】で凌ぐ
先制攻撃を凌いだ後は【血統覚醒】
【赤き剣の右腕】の発動は常に警戒
至近距離でクリムゾンキャリバーの初撃を食らうのは避けたいので【ダッシュ】で駆け回りつつ距離を取って戦います
足の速さには結構自信があります
ゼファーさんに鍛えられたんで
テイマーさんの負傷状態を確認し
攻撃は既に負傷してる箇所へと【傷をえぐる】で【捨て身の一撃】
悪いけど此方も譲れないものがあるんです
だからタダでは倒れません!
アドリブ・連携可
秋山・軍犬
個人的にキマFの怪人達は
何となく嫌いになれない
ライバルみたいな感覚あるんすよ
なんで、あんたの事
個人的に気に入らんので一発殴りに来たっす
転移前に食事を済ませフルコースゴールデン発動
転移後、速攻
黄金のオーラをオーラ防御の要領でまとい
攻撃は最大の防御理論で
先制攻撃の赤き剣の右腕そのものに
音速で圧力拳(捨て身の一撃+気合+空中戦+スナイパー+激痛耐性)
可能ならそのまま敵に
組み打ち(グラップル+オーラ防御+怪力+気合+激痛耐性)
この接触距離で黒竜の群れは
自分だけを器用に攻撃できるっすかね
黒龍の群れに一緒に巻き込まれろ!
なんでここまで? 言ったっすよね
あんたの事が個人的に気に入らんって
さあ、我慢比べっす!
火狸・さつま
『早業』で『オーラ防御』を幾重にも纏い防御強化しつつも
右腕に命中されない事を第一に
『第六感・野生の勘』で補いつつ行動・攻撃を『見切り』躱すか
『オーラ防御』纏わせた<彩霞>で弾き受け流す事を目指す
御しきれぬのは『激痛耐性』で凌ぐ
即座に『カウンター』敵周辺を逃げる隙間なくすように
もしくは目眩ましになるよう出来るだけ広範囲へ『範囲攻撃』<雷火>の雷撃
『早業・2回攻撃』は
黒竜の群れが放たれていれば其れを撃ち落とすべく『範囲攻撃』<雷火>の雷撃による【粉砕】
防げていればドラゴンテイマーへ<彩霞>に炎纏わせた『属性攻撃』で『傷口をえぐる』ように【粉砕】
群れを相手にする時もドラゴンテイマーへの注意は忘れない
「フルコースモード限界突破ッ! ……フルコー……」
ドラゴンテイマーの立つ地へと降り立つと同時に、秋山・軍犬(悪徳フードファイター・f06631)は『フードスペシャリテ・フルコースゴールデン』の発動を試みた。ここへ転移して貰う前に済ませた食事で得た活力を黄金のオーラへと変換し、防御として纏う。その状態から、攻撃は最大の防御理論で対策を考えていた。
だが。
黄金のオーラを纏う前に、黒衣の男はもう眼前にいた。速さが、反応速度が桁違いだ。恐らくそれ以外も、また。
繰り出された赤き剣をその身に受けた軍犬に、黒竜の群れが襲いかかる――だが今度こそ黄金のオーラを纏いきることが出来たがゆえに、黒竜たちの攻撃は常よりも軽減される。それでも一体一体の攻撃は重く鋭く、そんな黒竜たちを操る男の実力を痛感させられた。
(「ドラゴンテイマーはこちらとは進んで戦うことはないようだけど……このままにしておくことは破滅に繋がるんだよね」)
数えるのを放棄するほどの黒竜たちを何度も召喚し、そして操るその姿を見れば、五百雀・斗真(人間のUDCエージェント・f15207)のような結論に達するのも尤もだ。
ならば、せめてと、上腕に傷を負わされても視界の中で堂々と立つ黒衣の男を見やり。
「この世界を元に戻すために、あなたに挑みます」
告げるは強い思いの決意表明。同時に軍犬から意識をそらさせる意図もある。斗真が『黒雫』を介して体内に宿すUDCの『大田さん』へと魔力を送り始めるのと、花の下から染み出すように黒竜の群れが湧き出すのはほぼ同時。
「大田さん!」
襲い来る黒竜の猛々しい吐息と鋭い爪や牙。呼ばれた大田さんが斗真の服の裾から這い出、その触手でそれらを受け止め、薙ぎ払う。だが、すべてを防ぎいなすことは到底無理だ。けれども幾ばくかだけだとしても被弾を防いでもらえるならば、そのいとまを斗真は観察に使う。斗真自身も『かりそめスプレー』に麻痺の力を込めて広範囲に散布しながら、視線と脳で黒竜たちの動きを捉え、分析していく。
その様子を近くで見ていた猟兵が二人いた。彼らは、ただその光景を見ているわけではない。わざと軍犬や斗真に助力しないわけではない。
悠々と立ち続ける黒衣の男がいつ、誰に向かって動くのか――それを警戒し、同時に読みかねているのだ。
(「彼のユーベルコードはあんな竜の群れを呼び出すのか……だとしたら僕も」)
斗真がこれまでの観察結果を元に行動を起こそうとしたその時、身につけていた『記憶消去銃』が黒竜へと姿を変えた。咄嗟に飛び退り、同時に大田さんが触手を向けるが傷を追うのは免れない。だが、斗真は今の攻撃も情報として加え、『コードキャンセル』を発動させた。
「……ほう」
斗真が操る黒竜の群れは黒衣の男の操るそれを相殺し、元の無機物へと戻してゆく。だがこれが彼の動きを止めることにはならないことは、斗真もわかっていた。大田さんと共に警戒態勢は解かない。
「ならば」
男の姿がその場から消えた――ように見えた。
宙を滑るかのように移動した黒衣の男はまず、火狸・さつま(タヌキツネ・f03797)へと赤き剣を振るう。防御のオーラを幾重にも纏いつつ男の動きを警戒していたさつまは、寸でのところで『彩霞』でそれを受けた。骨に響くような重い一撃、だがさつまは下半身に力を込めることで吹き飛ばされること無くその場でそれを受け止める。『彩霞』へと放たれた黒竜の群れ。今このひと時だけ、と『彩霞』を手放し『雷火』を発動させる。さつまの尾全体に広がる文様。すべての黒竜を打てとばかりに広範囲に雷を落としゆく。
さつまへ一撃を入れたのち、その結果へは視線を向けずに黒衣の男が向かったのは、城島・冬青(六百六十九番目の宿木・f00669)の元。男が先にさつまへと一撃を入れてくれたおかげで、向かってくる方向は絞りやすかった。目視からの予測だけでなく己の勘の伝えるその方向へ、冬青は衝撃波を放つ。男を吹き飛ばそうとまでは考えていない。ただ、その速度を僅かでも削げれば十分である。
「っ
……!!」
ギリギリのタイミングを見極めて、冬青は地を蹴った。そしてそのまま走る――だが、衝撃波で削がれてもなお、男は速かった。ならば――『花髑髏』にてその刃を受ける。
「くっ……」
歯を食いしばり、腰を落としてなんとかその一撃を受け止めた。数十センチは後方に押されたが、やむをえまい。『花髑髏』へ向かって襲い来る黒竜の群れを前に、冬青はその琥珀色を真紅へと変え、眠りし血を目覚めさせた。
「個人的にキマイラフューチャーの怪人達は、何となく嫌いになれない、ライバルみたいな感覚あるんすよ」
「――!」
冬青へ刃を振り下ろしたのち、黒衣の男はちらりと黒竜の群れに襲われているふたりを見、そして軍犬と斗真への警戒を見せる――だが、すでに、斗真の助力で黒竜から逃れた軍犬がその距離を詰めていて。
「なんで、あんたの事、個人的に気に入らんので一発殴りに来たっす」
膨大な力を圧縮した拳を、男の右腕――その赤き剣へと振り下ろした。
強い衝撃と共に花が舞い上がる。勢いそのままに、軍犬は男を押し倒すように共に床へと倒れ込んでいた。だが、今相手にしているのは、そう簡単にこちらの思い通りにやられてくれる相手ではない。赤き剣が軍犬の脇腹を深く斬りつけていた。滴る血、走る痛みを堪えて男を押さえつける軍犬。
「この接触距離で黒竜の群れは、自分だけを器用に攻撃できるっすかね」
黒竜の攻撃が男をも巻き込んでくれるなら、痛みに耐えてみせる。強い思いをもっていた軍犬だが、その希望は砕かれる。
仮にもドラゴンテイマーを名乗る男だ。黒竜たちは彼を巻き込まなかった。
「甘いな」
「くぅっ……」
男は軍犬を振り払おうと力を込める。背中から横から黒竜に襲われながらも軍犬は、男を押さえつけることに集中しようとする。けれどもこのままでは、長いことはもたない――その時。
「これを利用してそのまま押さえつけていてください!」
ずん、と軍犬の身体へと重みが加わった。掛けられた声が斗真のものだとはわかったが、身体へ加わった重みはなんだろうか。
(「ああ、そういうことっすか」)
少し考えればその答えにたどり着くことが出来た。背中には、それまで感じていた痛みの代わりに重みがのしかかっている。恐らく斗真が麻痺させた黒竜を、大田さんと共に軍犬の上へと倒したのだろう。そう、黒衣の男の動きを止めるために。
乱暴な方法であることは彼もわかっているはずだ。けれどもこれくらいしなければ、足りぬ。
(「耐えるのは、変わらないっす」)
ならば。軍犬は自らの身体ごと、男を押さえつける。黒竜という重石を乗せられた形になっているが、それは男も同じこと。
「さあ、我慢比べっす!」
「なにっ……!」
だが、その我慢比べはそれほど長くは続かなかった。黒竜の群れへの対処を終えたさつまが素早く接敵し、組み敷かれた男へ楔を打ち込むように、炎を纏わせた『彩霞』を振り下ろし。
「悪いけど此方も譲れないものがあるんです。だからタダでは倒れません!」
傷を負いながらも振り切った黒竜を背景として背負い、冬青が距離を詰めて。さつまのつけた傷を抉るようにと刃を振るった。
成功
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黒玻璃・ミコ
※美少女形態
◆行動
【黒竜の遊戯】で串刺しにしましょう
ブラックタールである私にとって人の姿とは仮初めのもの
重要な内臓などの器官は体内でその位置をずらし
積み重ねた戦闘経験と乙女の勘で
致命的な一撃だけは避けて見せましょう
とは言え強敵相手です、身体の半分でも残れば上等
思考を加速し、痛覚を麻痺させ、肉体の限界を超える
文字通り劇毒にも等しい薬を体内で精製し
この一投に全身全霊を振り絞ってお見舞いです
仮にこの身が倒れ伏そうとも尽きぬ執念でその加速させ続け
怨敵の生命を啜ってでも魔槍で穿ちましょう
咲き誇る花、仲間の猟兵の影、地の利、人の利
時の利さえ駆使してでもです
◆補足
他の猟兵さんとの連携、アドリブ歓迎
トリテレイア・ゼロナイン
ドクターオロチと同じく外部顧問といったポジションでしょうが、実力は間違いなく上でしょうね
後顧の憂いを絶ちたいところですが、刃が届くかどうか……いえ、騎士として届かせて見せます
スラスターを吹かして●スライディングしつつ後退し、格納銃器での弾幕で接近ルートを制限、動きを●見切りやすくします
切り掛かってくるタイミングで●防具改造で仕込んだ●破壊工作を起動
爆裂ボルトで自分の装甲を吹き飛ばし、剣を防ぐと共に装甲パージ
貴方の剣が命中したのはパージした装甲。召喚黒竜の攻撃は其方に向かうしかありません。それが弱点です!
UCでUCを封じ、ワイヤを使った●ロープワークで拘束
●怪力シールドバッシュを叩き込みます
桜雨・カイ
共闘・アドリブ歓迎
攻略には影響ないはずですが、それでも孔雀さんの言うとおり気になります
だから行ってきます
無機質を竜に変換…ならば水や炎なら変換は効かないでしょうか
【属性攻撃】【なぎ払い】【範囲攻撃】で黒竜へ攻撃
逆に敵に攻撃は【見切り】【オーラ防御】、多少の傷は【(各)耐性】で我慢します
竜と戦う間に【念動力】と【念糸】(【地形の利用】で草花の下を地上すれすれに移動)でドラゴンテイマーを拘束+【エレメンタル-】発動(【全力魔法】【属性攻撃】)
これでもドラゴンテイマーは倒せないでしょう
でもダメージを受け、UCを解除させれば元の無機質に戻るはず
黒竜が消えれば敵は彼一人、他の人のサポートが私の役目です
(「ドクターオロチと同じく外部顧問といったポジションでしょうが、実力は間違いなく上でしょうね」)
地に押し付けられ、楔を打ち込まれ、その傷を抉られてもなお黒竜と共に猟兵たちを吹き飛ばして立ち上がったその男、ドラゴンテイマーを見て、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は自身の予想が確信に変わるのを感じる。
(「後顧の憂いを絶ちたいところですが、刃が届くかどうか……いえ、騎士として届かせて見せます」)
迷いや不安よりも騎士としての矜持が勝る。
「……、……」
花の上に血を零しながらもまだ余裕が見える黒衣の男。それを見つめる黒玻璃・ミコ(屠竜の魔女・f00148)は、美少女の姿を取っている。だがブラックタールである彼女にとって、人の姿は仮初めのものに過ぎない。重要な内臓などは体内で位置をずらしてある。
(「積み重ねた戦闘経験と乙女の勘で、致命的な一撃だけは避けて見せましょう」)
それでも相手は強敵だ。手傷を負っている今も、それは変わりないだろう。身体の半分でも残れば上等――覚悟は決めてある。
(「攻略には影響ないはずですが、それでも孔雀さんの言うとおり気になります。だから」)
「――行ってきます」
普段の穏やかな声色に緊張と決意を足した声で呟き、桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)は黒衣の男との距離を詰める。
ぶわ、と花々をその身体で押し上げるようにして、黒竜たちが湧きいでる。システム・フラワーズの足場から転じた黒竜たちの爪や牙、猛々しい吐息にオーラ防御を展開するカイ。痛みや炎などへの耐性はあるが、それでも感じるその威力に黒衣の男の実力を垣間見た。
次々と襲い来る黒竜たちに、ならばとカイが繰り出すのは己の本体であるからくり人形と薙刀。まるでそっくりなふたりが、花の中で舞い踊っているようにも見えるその光景。その実、黒竜たちに傷つけられながらの熾烈な戦いであれど、その所作はどこか美しく見える不思議。
黒竜に攻撃しながらカイは、その意識の半分を別に割いていた。黒竜と戦っているように見えるべく武器は振るえども、本格的に黒竜を討伐するつもりはまだない。こっそりと念動力を使って草花の下、地面すれすれを這わせるのは『念糸』。カイの意思を受けてその糸は、とある一点を目指す。
「――っ!?」
黒竜たちの群れの向こう、黒衣の男がなにかに反応を見せた。同時にカイも手応えを感じる。辿り着いた念糸を、男の下半身を拘束するように一気に絡みつけて、男が逃れようと動いている間に『巡り扇』を手にした。そして扇を媒介に放つのは、全力の精霊の魔力。炎が豪雨のように男に降り注ぐ。
カイの傍の黒竜たちが徐々にもとのモノへと戻ってゆく。それを確認しつつ、カイはトリテレイアとミコへ頷いてみせた。
この攻撃で男を倒せるとは思わない。けれどもそれでいいのだ。
(「他の人のサポートが私の役目です」)
黒衣の男の拘束を維持しつつ、カイは警戒したまま戦況を見守る。
男は足止めされている。けれどもいつ、奴がそれを破るかわからない。ならば、一秒でも早く――。
トリテレイアは脚部のスラスターを吹かし、腕部装甲に格納された銃火器から発砲する。しかしそれは、黒衣の男に直接ダメージを与えるのが目的ではない。スライディングしつつ後退して弾幕を張るのは、接近ルートを制限して男の動きを見切りやすくするため。
しかし自身を拘束する糸を引きちぎった男は、六枚の翼ではばたいて、上空からトリテレイアへと接近してきた。
(「これも想定内です」)
だが上空、それも残しておいたルートのひとつ。カイが男の足を止めておいてくれたおかげで先んじて準備をすることが出来た。
赤き剣が、上空からトリテレイア目掛けて滑るように降りてくる。この時を待っていたトリテレイアは、爆裂ボルトで自身の装甲を吹き飛ばした。
タイミングが重要だった。赤き剣が触れたのは、絶妙なタイミングでパージされた装甲だ。
「貴方の剣が命中したのはパージした装甲。召喚黒竜の攻撃は其方に向かうしかありません。それが弱点です!」
「……っ」
弱点の実証と指摘を伴った結果、トリテレイアの腰装甲から出現した隠し腕はワイヤを放ち男を拘束する。そして流れる特殊電流に、男は身体を震わせた。
「今です!」
トリテレイアが声を上げた時、すでにミコは走り出していた。『暗黒の魔槍』を手に、黒衣の男との距離を一気に詰める。
執念からか拘束を唯一免れた男の右手の赤き剣が、ミコの胴を横に斬り裂いた――だが、トリテレイアにユーベルコードを封じられている今、黒竜の群れは出現しない。
そして、胴を斬り裂かれてもなお、ミコの勢いは衰えなかった。これが普通の人体構造をした者であれば、致命傷であったかもしれない。けれどもそれは、彼女には当てはまらず。
全身全霊を振り絞り、仮にこの身が倒れ伏そうとも尽きぬ執念がその動きを加速させ続け――魔槍の先が捉えたのは、男の胸部。
ずぶりと黒衣を超えて突き刺さるその先から注ぎ込まれるのは、劇毒にも等しい薬。思考を加速し、痛覚を麻痺させ、肉体の限界を超えるその成分を注ぎ込むと同時に、ミコは男の生命を啜る。たとえそれが怨敵のものであろうとも、利用できるすべてのものを駆使してでも屠る――その覚悟がミコにはある。
「ガフッ……」
黒衣の男がどす黒い血を吐き、槍の先が男の背から覗く。ミコがその背に感じるのは、カイとトリテレイアの気配。ふたりが後ろから槍を握り、深く深く穿つべく力を貸してくれたのが知れた。
叫び声も、呻き声すら漏らさなかったのは、男の矜持か強さ故か。
彼はいつの間にかがくりと頭(こうべ)を垂れており、その表情は窺えない。だが、槍にかかる重さが増したのが答えだ。
ぐらり、傾いだ男の身体に突き刺さったままの槍と共に、地に落ちそうになったミコの上半身を、カイが優しく抱きとめる。
花畑に倒れ伏したドラゴンテイマーを名乗る男がもう動かないのを、三人は見下ろしたまま、しっかりと確認した。
成功
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