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誰ソ彼回想ロマネスク

#UDCアース #呪詛型UDC

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#UDCアース
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#呪詛型UDC


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●悔想メランコリア
 斜陽が街を紅く染めている。
 遥か続く石畳。ともる瓦斯灯。華やかモダンな街並みに忍び寄る確かな夜の気配。

 喩えば、こんな噺をご存じで?
 ――夕闇より出でる悪しきものは人を彼方の世界へと連れ去ってしまうのです。
 喩えば、こんな噂をご存じで?
 ――悪しきものは、人の心に悪しき夢をみせてぱくりと喰らってしまうのです。

 滑稽噺だと笑いましょうか。戯れごとだと笑い飛ばしましょうか。
 ならば、斜陽にあなたの影を映しましょう。あなたの、その心の闇を。

 昼と夜の狭間。現世と隠世の境界、誰ソ彼時、逢魔ヶ刻。
 活動写真の如く斜陽に映し出しますは――人のこころの、その影です。

●暗澹ロマネスク
「はいはーい、依頼だよー。今回はUDCアースに行って貰うからねー」
 彼岸・陽葵(仄日ジラソーレ・f01888)は集まった猟兵達にパンフレットを見せる。
 ――ハイカラ浪漫街。
 関東某所の文明開化で拓けた地に数多く遺された近代建築。明治大正建築を移築保存している地区なのだと云う。
 この頃は『SNS映え』すると若い女性の間で話題で週末には多くの人で賑わう人気のスポット。貸し衣装は勿論、人力車やグルメも楽しめる。
「結構規模大きいみたいだから飽きることはないかもね。食べたり写真撮ったり散策してればさ。ガーデンも有名らしいし」
 ガーデニングにも力を入れており、四季折々様々な花を楽しめる。
 そしてその庭園がある洋館で各種体験教室も行える。
「バーバリウム、石鹸、レジンアクセにとんぼ玉……まぁ、作れるものは多いみたい」
 詳しくはパンフレットを見てとある程度配ってから、陽葵は改めてこほんと咳払いをひとつして、猟兵達に向き直る。
「でも、ただ遊んでこいって依頼じゃないからねー。此処からが本題。本命は夕方、日が沈む“黄昏時”に現れる敵さん。これを倒してきてほしいんだ」
 現れる敵の名前は『嘆き続けるモノ』。事件に巻き込まれた被害者の絶望や憎悪といった感情が寄り固まった存在。
 これ自体は可哀想なことではあるし自ら攻撃を仕掛けることは少ないのだけれど――陽葵は前置き憂鬱そうに溜息を吐く。
「生きてる人に精神攻撃しかけんだよね。霊障ってやつが変に影響してんのかな? 一番見たくないもの見せて、精神を抉りとって、追い詰めて自死に追いやるんだよね。厄介なことにさ」
 強い感情の塊がもたらす精神攻撃に耐えられず結局精神をやられて自死すればめでたく彼らの仲間入り。
「でも、これがもう心霊スポットやらとかなんやらで噂がネットに広がり始めてるんだよ。興味半分なんかで行かれたら最悪。犠牲者がどんどん増えて手の付けようがなくなる」
 だから、その前に倒して欲しいと陽葵は語る。
「多分、猟兵も例外じゃないと思う。影響を受けるんじゃないかな」
 場所は公開に向けて修復中の洋館。本来は立ち入り禁止になっている筈の洋館に足を向ければ、多数の扉が待っている。
 その、扉を開けると“みたくないもの”に出遭う。

 其れは、心の傷になった過去の出来事や人なのかもしれない。
 其れは、いまの幸せが壊れる光景なのかもしれない。
 或いは、醜くて目を背けている自分自身なのかもしれない。
 或いは、心の奥底の自分すら知らない醜い自分自身なのかもしれない。

「何に出遭うかは個人の心によりけり。だから、どんなものをみせられるかわかんない」
 けど、心を強く持てば乗り越えられない敵ではない。そう語れば陽葵は、改めて猟兵達に向き直る。
「で、夕暮れ時にならないとその敵さんとは邂逅出来ないんだ。まぁ、時間あるんだし折角なら日暮れまで遊んできなよ」
 時は金なり恋せよ乙女――って、違うか。にっと悪戯っぽく笑むと陽葵は猟兵達を見送った。


花方ゆらぎ
 御機嫌よう、花方ゆらぎです。
 此度は大正浪漫譚と、斜陽の物語をお送り致します。

 どの章からでもお気軽にご参加どうぞ。

●流れ
 第一章と第二章で日常を謳歌し大正浪漫の街並みを散策。
 三章で心情中心の戦闘。

 衣装は一章から着て頂けます。
 ハイカラさんに書生さん、詰め襟姿の学生に青年将校、ドレスや燕尾服等お好みのものをご自由に。

 第1章:『花のある生活』
 時間帯は昼前。季節の花咲く庭園の散策と手作り体験が楽しめます。
 体験教室はとんぼ玉、レジンアクセ、石鹸、バーバリウムと様々なものの体験が可能です。
 シナリオでのアイテム発行は出来ませんが、このシナリオで作成したという形での強化申請・アイテム作成はご自由にどうぞ!

 第2章:『大正猟兵浪漫譚』
 時間は昼下がり。大正時代の街並みを忠実に再現した街を散策出来ます。
 可愛いレトロ雑貨や和雑貨等お土産品を探してみても、
 カレーパンやアイスクリン、鯛焼きなどの食べ歩きをしても茶屋で団子やあんみつ、お洒落な喫茶店で紅茶や珈琲に洋菓子に舌鼓をうってもいいでしょう。
 牛鍋やカレー、オムライス等昼食をとってもいいかもしれませんね。
 ご自由にお過ごしくださいませ。

 第3章:『嘆き続けるモノ』
 黄昏時。修復作業中として非公開になっている洋館で敵と対峙します。
 見たくないものを見せて精神を抉り取り、追い詰め、自死に追いやり仲間にくわえて勢力を増すそれは、猟兵にも悪しき夢をみせるでしょう。
 洋館の無数にある扉をあければ“みたくないもの”があなたを待ち受けています。

 それは未だ心に傷を負わす過去なのかもしれません。今の幸せが壊れてしまう幻影なのかもしれません。
 或いは醜い自分自身。自分でさえ気付かなかった醜い闇の自分自身なのかもしれません。
 強さはそこまで強くありません。幻影に打ち勝てば簡単に倒せますので、心情メインで描写します。

●その他
 締切はマスターページ及びTwitter(@yuragims)でお知らせしています。
 プレイングは問題がなければ全て採用します。

 迷子防止の為同伴者がいる場合は【お相手のお名前+ID】や【グループ名】の記載のご協力をお願い致します。
 またグループ参加の場合は、出来るだけプレイングの送信タイミングを合わせて頂きますようご協力お願いします。

 此処までお読みいただき、ありがとうございました。
 それでは皆様、よき浪漫を。
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第1章 日常 『花のある生活』

POW   :    とにかく買い物!

SPD   :    オリジナルな一品を制作!

WIZ   :    花風呂最高!

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 馨しい花の香りが浪漫の街に広がる。
 色とりどりの薔薇やカーネーション。可憐に咲く鈴蘭。釣鐘草にポピー、ツツジ等季節の花々が溢れんばかりに咲き乱れてみる。
 初夏の爽やかな青空の下庭園を散策してみても、バーバリウムやとんぼ玉等の作成体験をしてみてもいいだろう。
 どう過ごすかあなたの思うがままに。
サギリ・スズノネ
合プレ【本坪鈴と蒼炎】
叢雲・源次さん(f14403)と一緒に行動

わーい!源次お兄さんが、UDCアースの案内をしてくれるのですよ!
サギリ、とっても楽しみなのですよ!嬉しいのですよ!
お仕事もー遊ぶこともー、どっちも大事なのです。
楽しんだ後のお仕事は、きっととっても力が出るのですよ!

あっお兄さん、あそこでとんぼ玉作りをやっているですよ!
サギリ、やってみたいのです!お兄さん、一緒にやりましょうですよ!

●とんぼ玉作り
サギリ、とんぼ玉作り初めてなのです!
お兄さんはどんな模様に決めたです?
サギリはですねー、ふっふっふ……鈴にするのですよー!
出来上がったらお兄さんに見せるのです!

(※アドリブ歓迎です!)


叢雲・源次
合プレ【本坪鈴と蒼炎】
アドリブ大歓迎です

サムライエンパイアを案内して貰った礼に…話題になっているハイカラ浪漫街を案内しようと思ったのだが…オブリビオン案件になっているらしい…すまないサギリ、仕事半分になってしまったが、少しは楽しんで貰えると幸いだ

とんぼ玉…ああ、所謂ガラス細工だな…何か、作ってみるのか?
了解した、俺はそばで見ていよう。

・作製することになりました
しかし俺にはこういった芸術センスはさほど持ち合わせてはいないが……了解した、俺も付き合おう。
(どういった模様にするか悩んだ末に、身近にいる者をモチーフにしようとする)
…不恰好ではあるが、一応『鈴』を模した文様になったのではないだろうか



「わーい! サギリ、とっても楽しみなのですよ! 嬉しいのですよ!」
「……すまないサギリ。仕事半分になってしまった」
 わくわくとした笑顔をみせるサギリ・スズノネ(f14676)に叢雲・源次(f14403)は謝罪した。
 以前サギリが芝桜を見せにサムライエンパイアを案内して貰った。此度はその礼として源次がUDCアースで話題になっているハイカラ浪漫街を案内しようと思えば幸か不幸か何かの運命かオブリビオンの住処。
 結局案内で来たのか、仕事で来たのか解らない。遊びのつもりできたというのに。がっかりさせてしまうかと思えばサギリは嬉しそうに首を振る。
「お仕事のこともー遊ぶこともー、どっちも大事なのです! 楽しんだ後のお仕事は、きっととっても力が出るのですよ!」
「そう言って貰えるなら幸いだ。今日は楽しもう」
「はいなのです!」
 ふたりは庭園を散策する。
 サギリが嬉しそうに歩けば、彼女の鈴の音も嬉しげに澄んだ音色で鳴る。楽しげにしている様子に安堵と微笑ましい気持ちをこめて源次が眺めていればサギリはふと立ち止まる。
 視線の先にはとんぼ玉作成体験の看板。
「あっ! お兄さん、あそこでとんぼ玉をやっているのですよ!」
「とんぼ玉……ああ、所謂硝子細工だな。何か作ってみるのか?」
「はい! サギリ、とんぼ玉作りは初めてなのです。やってみたいのですよ!」
 言いながらもずんずんと歩を進めるサギリ。
「了解した。俺はそばで見ていよう」
「……え? お兄さんも一緒にやらないのですか? 一緒にやりましょうですよ!」
「しかし、俺はこういった芸術センスはさほど持ち合わせていないが……了解した、俺も付き合おう」
 椅子に座るサギリの真っ直ぐな視線。少女の無垢な金色の瞳に気圧されて、源次は頷きサギリの隣に腰掛ける。
 結局、一緒に作成することになり、バーナーで手にした硝子棒を炙りながらゆっくりと丁寧に溶かしていく。
 火を使うからと源次がそれとなくサギリに気を向けてみれば、サギリはしっかりとした手付きで器用にこなしていた。
「お兄さんはどのような模様に決めたです?」
「いや、悩んでる。もとよりこういったものには疎いしな。サギリはどうするんだ?」
「サギリはですねー、ふっふっふ……鈴にするのですよ!」
 元気よく答えたサギリは意気揚々と模様を付けていく。脳内にしっかりとしたイメージがあるようで、手付きに迷いが一切無い。
 それに比べて源次は未だどのような模様にするか決めかねて、ふとサギリの髪飾りの鈴が目に入る。
(サギリをモチーフにした模様でもつけるか)
 不格好ではあるけれど、一応鈴を模した文様にはなった。
「お兄さんの鈴もとってもきれいなのです」
「ありがとう。サギリのもよく出来てるな」
「ありがとうなのです!」
 ふたりの間に和やかな空気が流れる。
 手のひらの、出来上がったばかりのとんぼ玉はきらきらとまばゆい光を放っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

逢坂・理彦
ザッフィーロちゃん(f06826)と。
ザッフィーロちゃんとお出かけは久しぶりだね。本当におじさんとでいいの?大事な人とが…ふふ、冗談だよ。今日はよろしくね。

大正ってのはUDCの時代の一つか…それの衣装だね。俺はどれがいいかな?「青年将校」?もう青年って年じゃないんだけどね〜。どう?似合ってる?ならよかった。
ザッフィーロちゃんも普段と雰囲気が変わってカッコいいね。

他のは分からないけどとんぼ玉なら分かるよ。
じゃあ、とんぼ玉作ってみる?
お土産に?そうだね…彼に似合う物を作れるといいんだけど。ザッフィーロちゃんも大切な人へのお土産。忘れないようにね。

(彼が普段見せない翠の瞳のイメージをベースに)


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
理彦f01492と

ん?当たり前だろう?理彦は大事な友人故共に出かける事が出来嬉しく思うが
それに土産も作れるとの事だからな…理彦も贈る相手は決まっているのだろう?

確か大正はUDCアースのニホンでの文化だったか
理彦はどれも似合うとは思うが…青年将校か
何時も頼りになるが凛々しさが増した気がするな
俺は貸衣装の中でも入る物を…と…学生服しか入らんだと…?
仕方あるまい詰襟の学生服に学生帽、マントを着用しよう
…流石に下駄は履かんぞ?
本当にこの身で学生の格好をするとはな…

後は理彦と蜻蛉玉の作成を
青紫に星の様な金を添えて作って行く
何とか上手く出来たか?…理彦はどうだ?
ああ、お互いなんだ、喜んで貰えると良いな?



「ザッフィーロちゃんとお出かけは久しぶりだね。本当におじさんとでいいの? 大事な人とが……」
「ん? 当たり前だろう? 理彦は大事な友人故共に出かける古都が出来嬉しく思うが」
「ふふ、冗談だよ」
 からかうように飄々とした笑顔を浮かべる逢坂・理彦(f01492)にザッフィーロ・アドラツィオーネ(f06826)は生真面目な顔でそう返すものだから、理彦はまた違った笑いを零してしまう。
「今日はよろしくね、ザッフィーロちゃん」
「こちらこそよろしく頼む。お土産も作れるという話だからな……理彦も贈る相手は決まっているのだろう?」
「そうだね……ふふ、お土産作りも楽しみだ。その前に、折角ならば着替えてみようか」
 理彦の言葉にそうだなとザッフィーロは頷いて、パンフレットを眺めながら衣装館を目指す。
「大正ってのはUDCアースの時代のひとつかー」
「エンパイアのような時代から開けて外国の文化が流入したニホンで独特の文化が生まれた時代、だったか」
 パンフレットに目を通しながら、理彦が呟けばザッフィーロが以前少しだけ聞きかじった知識を漏らせば
「俺はどれがいいかな?」
「そうだな。理彦はどれも似合うと思うが、これはどうだろうか?」
 ザッフィーロが指したのは軍服のような衣装。札をみてみれば青年将校の文字が目に入り、理彦は思わず呟きを漏らす。
「え、青年将校? 青年って歳じゃないけれどなぁ」
「理彦はどれも似合うとは思ったが、いつも頼りになるから凜々しさが増すと思った」
「なんだか照れるな有難う。ザッフィーロちゃんは何にするの?」
 理彦に問われて自分のものをと衣装を探すザッフィーロ。しかし、高身長の彼にあわせた服は少ない――否、ほぼ全滅。
 店員と一緒になって探せば結局入ったのはバンカラ衣装。無いものは仕方がないからと学生服と身に纏う。下駄も薦められたが丁重に断って、足はなんとか探し当てたブーツを履く。
「本当にこの身で学生の格好をするとは思わなかった」
「俺もだよ、ザッフィーロちゃん。まさか、この歳で青年の衣装を着ることになるとは思わなかった」
 けれど、それも新鮮だと互いの姿を見合えば思い合う。
 着替えた後は体験コーナーへ。様々なものを見たけれど、理彦の『他のものは解らないけど、とんぼ玉なら解る』という発言を決め手にとんぼ玉作りに決めて作成に取りかかった。
「お土産にしたいんだ」
「そうだね……俺も彼に作れるものを作れるといいのだけれど、どんなものにしようかな」
 そうして、ふたりは贈る相手のことと模様を考える。暫く考えて、先に答えが出たのはザッフィーロ。
 ザッフィーロは、ステンレス棒の青紫色のとんぼ玉に星の輝きにも似た金の模様をつけていく。慎重に星を描いていけば出来上がり。
「何とか上手く出来たか? 理彦はどうだ?」
 隣に居る理彦の手元を見てみれば、澄んだ翠の硝子に波のような淡い白のラインのとんぼ玉。
「ああ、お互いなんだ。悦んで貰えると良いな?」
「そうだね」
 ザッフィーロの言葉に理彦は飄々とした笑みを浮かべながら応えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

南雲・海莉
(白地に菊の着物に、臙脂色の袴を合わせたハイカラさん姿に着付け)
ふふ、気分も華やいじゃうわよね

(足を止めたのはハーバリウムのコーナー)
お花を閉じ込める、かぁ

……好きな花、ですか?
(店員さんに聞かれ、ドキっとしつつ)
あの、鬼灯はできますか?
小ぶりのもので良いので

義兄(あに)の誕生花なんです
戸籍上は7月9日なんですけど
実際は前日の夜に生まれたから
(だから本当は、自分とは一日違い)

……葉脈標本?
鬼灯ってこんな風になっちゃうの?
(目を丸くし、あかがね色の葉脈標本を受け取り)

(キューブ型の器に、薄い翠のリボンと一緒に入れて封をして)
ありがとうございます、
思っていた以上に可愛いのができたみたいです(笑み)



 白地に菊の着物に、臙脂色の袴を身に纏えば南雲・海莉(f00345)の気分はすっかりハイカラさん。
「ふふ、気分も華やいじゃうわよね」
 初夏の庭園を歩く。ふわりと馨しい花の香りに酔いしれていれば目に入ったのはハーバリウムの看板。
「元々は植物標本なんですけれど、今はお洒落に硝子瓶等にお花を閉じ込めた新感覚のインテリアとして大人気なんですよ」
 何だろうと海莉が足を止めてみれば気付いた店員の若い女性がカーネーションの細長いバーバリウムを手に話しかけてきた。不思議そうに海莉はじっとハーバリウムを眺める。
「お花を閉じ込める、かぁ」
「自分好きな花はございますか?」
 店員に問われて、海莉は思わずどきりとしてしまう。
 脳裏に浮かんだ植物と顔はひとつだけ。
「あの、鬼灯はできますか? 小ぶりのもので良いので」
「鬼灯ですか……そうですね、葉脈標本でよろしければございますよ。何か特別な思い入れが?」
「義兄の誕生花なんです」
 戸籍上は7月9日だけれど、実際は前日の夜に生まれ。本当は自分とは一日違い。
 ふふ、素敵ですね。微笑みながら店員の女性が鬼灯の葉脈を海莉に手渡した。
「……葉脈標本? 鬼灯ってこんな風になっちゃうの?」
 確かに形は鬼灯の其れと同じだけれど、球体を閉じ込めるように存在する銅色の編み籠は、大凡自分が知る鬼灯の形とは違う。初めて見る鬼灯の姿に、海莉は目を丸くして受け取った。
 沢山並べられた材料の中から選んだのはキューブ型の器と薄翠色のリボン。オイルと一緒に閉じ込めて封をすれば完成。
「ありがとうございます、思っていた以上に可愛いのが出来たみたい」

大成功 🔵​🔵​🔵​

アンチ・アンディファインド
ふん……クソUDCの事情なんぞ知ったことか
見つけたら殺す
それだけだ

時間潰し、か
……ちっ、めんどくせぇ

ぶつぶつ不平を漏らしながら、下見も兼ねて洋館の周辺を見て回った後は
庭園を散策
周りから浮いた外見と雰囲気であることも気に掛けることなく時間を潰す

……花、か
そういえば母と姉もよく育てていた、と過去を思い出して少し感傷的になりながらも

……オレにはやっぱ合わねぇよ、こういうのはよ



「ふん……」
 UDCの事情なんて知ったことか。アンチ・アンディファインド(f12071)は心の中で吐き捨てる。
(――見つけたら殺す。それだけだ)
 空を見上げれば、太陽は未だ高く敵が現れるという時間までかなりあるようだ。
「時間潰し、か……ちっ、めんどくせぇ」
 不平を漏らしながら一先ず街を散策する。
 その姿は観光地であるこの場所からはかなり浮いていて、周囲の視線を集めている。けれども、アンチは気にせず歩いてふと足を止めた。
「……花、か」
 アンチが視線をおろしてみれば、白雪の雫のように初夏の風に可憐に揺れる花。
 通りがかったカップルが『鈴蘭の花言葉は再び幸せが訪れるなのよ』なんて話している。何を脳天気な。
(そういえば、母と姉もよく育てていたっけな)
 それも、もうこの世にはない。全て彼奴らに奪われた。
 自分の名を呼び花が綺麗に咲いたと語っていた母と姉の楽しげな笑顔が脳裏に浮かんでは消えて、胸を締め付ける。
 どうしても感傷的になる心。心を漏らすようにぼそりと呟く。
「――オレにはやっぱ合わねぇよ、こういうのはよ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ディスターブ・オフィディアン
アドリブ諸々歓迎です
第三人格、村雨丸で行動

ふむ、このところ働きづめでしたからね
少し骨休めをさせていただきましょうか

着物姿を書生服に着替えて、体験教室のトンボ玉作りに挑戦

庭園の牡丹を観察し、牡丹をイメージしたトンボ玉と、
文字の入った物を作りましょう
「仁義礼智忠信考悌、っと」

その後はぶらぶらと庭園に寝転がってゆっくりしましょう
菖蒲や薔薇、鈴蘭の花を眺めながら、鶯等小鳥のさえずりを聞き、瓶ラムネでも頂きましょうか
「いやぁ平和ですね」

うとうとしてきたらそのまま帽子を顔に被って寝てしまいましょう



 初夏の御空は高くて、降り注ぐ活力に満ちた陽の光。
 鼻腔を擽る馨しい花の香り。疲れた心と目を潤わす美しい牡丹と、爽やかに吹き渡る皐月の風。
「ふむ、このところ働きづめでしたからね。少し、骨休めをさせていただきましょうか」
 書生服姿に着替えたディスターブ・オフィディアン(f00053)――否、彼の人格のひとつである村雨丸は書生服姿に着替えた後に、体験教室のとんぼ玉作りへ。
 まず作るのは先程庭園で観察した牡丹の花のとんぼ玉。
「――仁義礼智忠信考悌、っと」
 里見八犬伝の徳目の文字を描けば、二つ目のとんぼ玉も出来上がり。
 後は、作りあげたとんぼ玉を割れないよう緩衝材に包んでもらえば庭園へと再び出でて、瓶ラムネを道連れに散策に興じる。
 小鳥の囀りが何処からか聞こえる。鳴いているのは鶯だろうか。
「いやぁ、平和ですね」
 まるで世の時を遅めたように、ゆっくり、のんびりと時間は過ぎる。
 村雨丸は芝生へと寝転んで青空を見上げた。降り注ぐ初夏の気持ちは心地良く、眠気を誘う。
 嗚呼、此程平和で穏やかな陽気なのだから少し睡魔に甘えてしまうのも良いのかも知れない。
(――少し、寝てしまいましょうか)
 村雨丸は帽子を顔にかけて、眠りに就いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ナイツ・ディン
【SPD】
俺みたいな小さなヤツでも似合う服が……あるのか、世界ってすげーな。(UDC組織から支給)
で、何故にバンガラなんだ。(立襟の洋シャツに袴と着物、学生帽に下駄)(変装技能で無駄に着こなす)すごく庭園に合わない気がするんだが
紅竜のディロが何故か帽子の上に居座っている。自慢げ。

そして制作するとんぼ玉。シーフだから器用ではある(鍵開け)、が基本は第六感である。黙々と集中する。隣でディロがあくびをしているが気にせず黙々と。蒼竜のローアは心配そうにウロウロと。炭火で熱いだろうが火炎耐性である。

よし、出来た。二匹の竜の為のネックレス。紐で貫いた、彼らと同じ色のガラス玉。いたずら坊主のように笑う。



 オレみたいな小さいヤツが似合う服があるわけが――。
「え、あるのか。世界ってすげーな」
 まさかナイツ・ディン(f00509)の体長27.6cmのこの身体にあう服があるとは思わなかった。用意したのがUDC組織だとはいえ驚いた。けれども。
「……何故にバンカラなんだ」
 用意されたのは立襟洋シャツに袴姿に学生帽に下駄。しかも、彼の着こなし技術か無駄に着こなしている。
 周囲を見渡せば、雅やかな格好をした観光客達が歩いている。その人の中にも、庭園にも合わない気がした。
「すごく、場違いだと思うんだがな……あと、ついでに、なんでディロは其処に誇らしげに居座っているんだ」
 ナイツの頭上で何故か自慢げに居座る赤竜ディロに思わず言えば、ディロが前足でとんぼ玉の看板をさした。
「とんぼ玉?」
 単に散策しているのが暇で飽きたのかもしれない。折角ならば作ってみようとナイツは決めて制作に取りかかる。
 手先は器用で細かい作業も得意。硝子棒を溶かして、ステンレス棒に巻き付けた後冷えたコテで形を整える作業を黙々と繰り返す。
 ふとナイツが竜達に視線を向けてみれば、自分で促したというのに、ディロは退屈そうに欠伸をしている。火を使うからと心配そうにうろうろとしている蒼竜のローアとは大違いだ。
 ローアもローアで心配性が過ぎるのか火には強いからと言い聞かせても、聞きはしない。黙々と作業を続けて、勘頼りで模様をつければ赤色と青色のとんぼ玉がひとつずつ。
「よし、出来た」
 二色のとんぼ玉はいつも付き慕う竜達と同じ色。竜達も其れをじっと見つめている。
 よく出来ただろう。浮かべたのはいたずら少年のような笑顔だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オルハ・オランシュ
ヨハン(f05367)と

ハイカラな服はちょっと窮屈だけどすごく素敵
ポニーテールを大きなリボンで飾って
おかしくない、かな?

わぁ!想像通り、ううん。それ以上!
ヨハン、とってもかっこいいよ
……本当に素敵

普段とは雰囲気が違う姿に見惚れずにはいられない
かけられた言葉には顔が赤らんで
ありがとう、と小さく呟くのがやっと

どんなハーバリウムを作ろうか?

シャープでお洒落な香水瓶型ボトルに
藍色のお花を主役に見立てて
差し色に、彼の好きな夕色の果実を
配置バランスに悩みつつどうにか完成

私にくれるの?
嬉しい……!可愛い色合いで一目で気に入っちゃった
大切に飾るね!
こっちはヨハンをイメージしたものなんだ
受け取ってくれるかな?


ヨハン・グレイン
オルハさん/f00497 と

大正浪漫か
なかなか面白い文化ですね

……まぁ、着替えた姿が見たいと言った手前、
自分だけ着ないというのもどうかと思いますし……

将校の衣装を着用します
そこまで違和感はないですね

ハイカラな姿は、
ああ、やはり。似合ってますよ。
……可愛いと思います。

自然と頬が緩むようになったのは、
彼女のお陰だろう

何もしないのも勿体ないですし、
ハーバリウム作りをしましょうか。

彼女の好きな黄色をメインに、
橙、赤の花や果実を取り入れて
柔らかな印象の丸い瓶へ

洒落た出来には程遠いですけど、
よければどうぞ。もらってやってください。
……と、俺にもですか?
良い色ですね。好きですよ。
ありがたく受け取りましょう。



 ハイカラな服は窮屈だけれど凄く素敵。ストロベリーブロンドの髪を赤紅色の大きなリボンで結い上げたオルハ・オランシュ(f00497)は鏡の前で笑んでみる。
 選んだのはマーマレイドのような萱草色の地に大ぶりの椿が咲くレトロな着物に、ストロベリージャムのような臙脂色の袴。
「おかしくない、かな?」
「ええ、やはり。似合ってますよ……可愛いと思います」
「……あ、ありがとう」
 少しだけ緊張しながら傍らのヨハン・グレイン(f05367)に訊ねれば、彼は頬を緩ませながら応えてくれる。
 オルハの顔がストロベリーのように赤く染まったのは、彼の言葉だろうか、彼の表情だろうか、彼が身に纏う将校の服装だろうか――それとも、その全て?
 礼を告げた声は絞り出す程に小さくて、今にも心の微熱で身体が溶けてしまいそう。けれども、オルハは気合いを入れ直すようにひとつかぶりを振って、改めて彼の姿を見る。
「ヨハンもとっても格好いいよ! 想像通り……ううん、それ以上! ……本当に素敵」
「ならば、よかった。大正浪漫、中々面白い文化ですね。悪くありません」
 新鮮なオルハの表情を見られたのだから。自然と頬を緩ませられるようになったのは彼女のお陰だろう。
「さて、何もしないのも勿体ないですし、バーバリウムを作りに行きましょうか」
 ヨハンの誘いにオルハも頷いて石畳をふたりで歩く。見慣れた横顔ではあるけれど、否あるからこそ普段とは違う姿に鼓動が高鳴ってしまう。
 少しだけ意識をしながら歩けば作成体験教室まではあっという間。2人ですと告げれば、にこにこと何やら微笑ましいものを見るような顔をした店員に案内された。

「どんなハーバリウムを作ろうか?」
「そうですね」
 ふたりは花々を眺める。
 目の前に広がるのは色とりどりの花達。生花も勿論、ブリザーブドフラワーもあり季節関係なく様々な花が並んでいる。

(ネモフィラ……)
 オルハの目に入ったのはネモフィラの可憐な花。
 呼び起こされる記憶は視界を埋め尽くした蒼い世界。振り返った彼の双眸が同じ彩を浮かべていたことを思い出す。
(いいかもな。ネモフィラの花)
 自分用ではなく、贈る相手は決まっている。
 オルハはネモフィラをはじめ、藍色の花を主役に差し色として夕色の果実をシャープでお洒落な香水型ボトルに配置していく。
 配色のバランスに悩みながらオルハは丁寧に作りあげていく。
「どうにか、できた!」
「俺もです」
 必死に考えていたから、隣のヨハンのハーバリウムが完成していることに気が付かなかった。
 彼の目の前には柔らかな印象の丸い瓶のハーバリウム黄色秋桜を主役に橙や赤色の花や果実が彩りを添えている。
 可愛く明るい印象のハーバリウム。其れをヨハンは持ち上げて、オルハへと差し出す。
「洒落た出来には程遠いですけれど、よければどうぞ。もらってやってください」
「嬉しい……! 可愛い色合いで一目で気に入っちゃった。大切に飾るね!」
 ハーバリウムを大事そうに受け取ったオルハがぱぁっと笑顔を咲かせるものだから、何だかむず痒い。
 オルハは丁寧にヨハンの作ったハーバリウムを机に置くと、自分の作ったハーバリウムをヨハンへと差し出す。
「こっちはヨハンをイメージしたものなんだ。受け取ってくれるかな?」
「俺にもですか? 良い色ですね。好きですよ……ありがとうございます」
 ハーバリウムの中に広がるのは蒼と橙の世界。双眸を柔らかく緩ませた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

零落・一六八
涼さん(f01922)と
せっかくなので学ランにマント着ますよ
でしょー!似合うでしょう!(どやっ)
涼さんも袴いいですね!薙刀とか似合いそう!強そう!

一緒に庭園散策しますよ
とことこと隣を歩きながら薔薇を眺める
あまり自分では行く感じの場所じゃないのでちょっと新鮮
「涼さんって薔薇好きなんです?」
「ほーん、故郷に」
一緒に見られて嬉しいと言われると
なんとなくこっちも嬉しくなってきて
「そりゃーよかった」
にししっと笑う

撫でられたら
まーた、子供扱いしてー!
っと言いつつも嫌ではないのでけらけら笑う
ちらっと売店で薔薇のトンボ玉(未加工)を買う
(まぁもしいらなければ捨てやすいサイズですし)
今はまだ自分のポケットに


彩花・涼
一六八(f00429)と参加
ハイカラ…ろまん?
UDCアースの昔の装いをする場所か
庭園で花が見られるのは嬉しいな…

貸し衣裳の店員に勧められるがままに着たが、ハイカラさん…というのか?
私には派手過ぎないだろうか…
ん?一六八は学ラン、という格好か
とても似合っていると思うぞ
薙刀…確かにこの格好ならリーチの長い武器の方が良さそうだな

2人で庭園を散策する、薔薇が綺麗に咲いていて美しいな…
ああ、薔薇は故郷にもある花だからな…好きなんだ
だからこうして一六八と見れて嬉しいと思う
ふふっ、付き合ってくれてありがとうな(一六八の頭を撫でる



(ハイカラ……ろまん?)
 聞き慣れぬ単語に彩花・涼(f01922)が小首を傾げれば、丁度良く目前に置いてあったパンフレットに説明が書いてあった。
"今から100年程前の和洋文化が混じり合った大正時代の風を肌で感じてみませんか?"
(成る程。UDCアースの昔の装いをする場所か。庭園で花を見られるのは嬉しいな……)
 とても花が美しいときいたから、のんびりと散策を楽しもう。涼が花に想いを寄せていれば傍らの零落・一六八(f00429)が天真爛漫な表情で。
「せっかくなので学ランとマントを着ますよ!」
「学ラン?」
「詰め襟の学生服ですよ! ところで、涼さんは何着るか決まっていますか?」
「いや、まだ決めていなくてどうしようか悩んでいたところだ」
「なら、店員さんに訊いてみるといいんじゃないでしょうか!」
 一六八の言葉に成る程と頷いて涼は貸し衣装屋の店員に相談すると、気前よく案内をしてくれた。
 そして勧められるままハイカラさんという格好を着たけれど。着たのは、いいけれど――。
(私には派手過ぎないだろうか……)
 なんとも落ち着かない。涼が姿見を眺めていれば着替え終えた一六八に呼ばれて振り返る。
 一六八は黒色の詰め襟のカッチリとした服にマント姿。彼の白い肌と灰色の髪が際立って雰囲気よく似合っていた。
「一六八の学ラン、という格好。とても似合っていると思うぞ」
「でしょー! 似合うでしょう!」
 一六八はどやっと子どもっぽく胸を張れば笑顔で。
「涼さんも袴いいですね! 薙刀とか似合いそう! 強そう」
「薙刀……確かにこの格好ならリーチの長い武器の方が良さそうだな」
 涼がこくりと頷けば、ふたりは庭園へと向かう。
 庭園には話に聞いていた通りに色とりどり、様々な種類の花々が競うように咲き乱れていた。
 そのうちの薔薇園の方角に向けて歩いた涼は赤い薔薇に顔を近づけて、香りを堪能する。
「薔薇が綺麗に咲いていて美しいな……」
「涼さんって、薔薇好きなんです?」
「ああ、薔薇は故郷にもある花だからな……好きなんだ」
「ほーん、故郷に」
「だからこうして、一六八と見れて嬉しいと思う」
「そりゃーよかった!」
 一六八はにししと子供のような笑みを浮かべるから、微笑ましくてつられて笑う。
 そして、彼の灰色の髪へと手を伸ばし頭を撫でた。
「ふふっ、付き合ってくれてありがとうな」
「まーた、子供扱いしてー!」
 口では言うものの嫌がってはいないことをケラケラと笑う一六八の顔が示している。
 暫く歩けば喉も渇く。景観を重視しているのか自販機は遠く買ってくるから待っててと涼が飲み物を買いに行き、一六八は待つことになった。
 ふと辺りを見渡せば少し先の洋館内に土産物屋を見つけ、中へ入り、目に入った薔薇のとんぼ玉を購入しポケットの中へと隠す。
(まぁ、もしいらなければ捨てやすいサイズですし)
 今はまだ、涼には内緒。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レイラ・エインズワース
リュシカ(f00717)サンと

フフ、青い空に色とりどりの花
散歩するにはいいヨネ
いろんな花があるケド、リュシカサン好きな花ってアル?
アヤメ、希望って花言葉素敵ダネ
リュシカサンにもとってもよく合ってると思うヨ
私はこの中だと鈴蘭が好き
可愛い花だよネ

あ、石鹸作れるみたいダヨ
手作り石鹸ッテ、特別な感じがしていいヨネ
どんなモノを入れようカ
せっかくだから、好きな花の香りがするトカ面白そうだよネ
私が入れるナラ、藤の花
優しい紫が綺麗で、とっても好きな花なんダヨ
リュシカサンはどんなのにするノ?
ワァ綺麗な薔薇の石鹸
ちょっと豪華な気分になるヨネ
お友達が好きな花だったんダ、いいヨネ、そういうノ
また会えタラ、見せにイコ!


リュシカ・シュテーイン
レイラさんとご一緒に(f00284)

はいからぁ、なんだかとってもぉ素敵な言葉ですよねぇ
依頼とはいえこんな素敵な所にぃ、レイラさんとご一緒出来るなんてぇ、嬉しいですねぇ
私はぁ……そうですねぇ、アヤメぇ、希望の花言葉を持つあの花がぁ、綺麗で好きですかねぇ

わっぁ、おりじなるのぉ、石鹸ですかぁ!
ふふぅ、これでしたらぁ、タダで石鹸を節約ぅ……いえいえぇ、何でもありませんよぉ
そうですねぇ……ここはベターぁですがぁ、バラの花で石鹸を作りましょうかぁ
ふふぅ、元の世界の知り合いが好きだったんですよぉ
情熱の意味をもったぁ、赤い花ぁ
レイラさんのぉ、フジぃ、という花もとっても鮮やかに香りがいいですねぇ



「はいからぁ、なんだかとってもぉ素敵な言葉ですよねぇ」
 初夏の爽やかな風にリュシカ・シュテーイン(f00717)の春色の髪が靡く。
 リュシカがのんびりとした呟けば、傍らからレイラ・エインズワース(f00284)のフフと小さな笑い声が聞こえる。
「フフ、青い空に色とりどりの花、散歩するにはいいヨネ」
「依頼とはいえこんな素敵な所にぃ、レイラさんとご一緒出来るなんてぇ、嬉しいですねぇ」
 ふたりはのんびりと庭園を歩く。春を過ぎても咲く花は多い――否、更に勢いが増しているように感じて心が浮き立つ。
 薔薇に、鈴蘭に、カーネーションに、ポピー。
「いろんな花があるケド、リュシカサン好きな花ってアル?」
「私はぁ……そうですねぇ、アヤメぇ、希望の花言葉を持つあの花がぁ、綺麗で好きですかねぇ」
「アヤメ、希望って花言葉素敵ダネ。リュシカサンにもとってもよく合ってると思うヨ」
 レイラの問いにリュシカは少し考えて答えれば、飛び出したのは希望を意味する花言葉。
 何だか彼女らしいと想いレイラは再び笑みを零し、足下へと視線を落とす。其処にあったのは小さな白い鈴蘭の花。
「私はこの中だと鈴蘭が好き。可愛い花だよネ」
「そうですねぇ。鈴蘭は確かぁ、しあわせが再び訪れるってぇ、花言葉だったと思いますよぉ」
 他愛のない会話に花を咲かせれば、いつの間にか洋館の前に。
「あ、石鹸作れるみたいダヨ」
 並んでいるいくつもの案内の中から見つけたのは手作り石鹸体験の案内。
 レイラが指せば、リュシカがのんびりとわぁと歓声をあげて。
「おりじなるのぉ、石鹸ですかぁ!」
「手作り石鹸ッテ、特別な感じがしていいヨネ」
 普段は中々手作りをする機会のないものからこそ特別な経験だし、普段日常生活で使うものだからこそ使う度に特別な気持ちになる。
「ふふぅ、これでしたらぁ、タダで石鹸を節約ぅ……いえいえぇ、何でもありませんよぉ」
 ポロリと本音が零れた。法石で生計を立てるリュシカにとって、切実な問題なのだ。
「さて、どんなモノを入れようカ。せっかくだから、好きな花の香りがするトカ面白そうだよネ。リュシカサンはどんなのにするノ?」
「そうですねぇ……ここはベターぁですがぁ、バラの花で石鹸を作りましょうかぁ。レイラさんは?」
「私が入れるナラ、藤の花。優しい紫が綺麗で、とっても好きな花なんダヨ」
 レイラに問われリュシカは薔薇のエッセンシャルオイルを手に取る。並んでいるシリコンモールドにも薔薇の形をしたものがあったし丁度いいだろう。
 そうしてふたりで制作に取りかかれば、おおよそ手作りだとは思えないくらいの綺麗な石鹸が出来上がった。
「ワァ綺麗な薔薇の石鹸。ちょっと豪華な気分になるヨネ」
「レイラさんのぉ、フジぃ、という花もとっても鮮やかに香りがいいですねぇ」
 見せ合った後、丁寧にラッピングをした。

 薔薇は元の世界の友人が好きだった花だから。花の石鹸に籠めた想いを語れば。
 なら、また会えたら、見せに行こう――なんて話して、ふたりは同時に笑いを咲かせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユキ・パンザマスト
【SPD】
花、良いですね! 鮮やか派手な花は好きですよ!
ものづくりも偶には興味を惹かれます。
ハーバリウムって瓶詰の花でしょ? 
世話要らずの綺麗な花なら、枯らす心配もなさそうだ。

【情報収集】で綺麗に見える作り方を調べよう。
背低いボトルに、椿をメインに据えたハーバリウム。
初心者なんでシンプルめ。
大輪の椿がどーんってあると、充分に観る目も【誘惑】されますもんね。

(作りつつ、思案)
……ユキの逢う魔はどんなんでしょう。
思い出そうにもうろ覚えで、やんなっちゃいますよ。
(只人であった己を、八百廻の獣にしたそれを、もう碌に覚えていない)
ま、こっちを喰おうとするなら、喰らってやるだけですが、ね。



「花、良いですね! 鮮やか派手な花は好きですよ!」
 ユキ・パンザマスト(f02035)は双眸を大きく燦めかせて早速話に食いついた。ものづくりというのも偶には興味を惹かれる。
 作成体験教室のハーバリウムコーナーで足を止めて、見本のバーバリウムを興味深く眺める。
「バーバリウムって瓶詰めの花でしょ? 世話要らずの綺麗な花なら、枯らす心配もなさそうだ」
「そうですね。置くだけで簡単に生活に緑を添えられるヒーリングアイテムとして今人気なんですよ」
「よし、作っちゃいますよ! でも、やったことないんですよねー。見本とか本とかってありませんか?」
 店員に訊ねれば指されたのはいくつかのサンプル品と、教室内にある本棚。
 ただ、その本棚は客に見本として見せるというよりもインテリアとして置かれていた色合いが強い。見た目重視の本は無駄に数が多く、無駄な情報も多い。
 けれど、猟兵活動の上で情報収集は自然と身についた技術。必要な情報を抜き出せば頭の中で構想を立てた。
(これを参考にして、シンプルめに行きましょう。初心者ですし)
 背の低いジャム瓶のようなボトルに淡い緑色の葉を少々並べたなら、大輪の赤い椿を目立つように配置する。
 たったこれだけのシンプルなハーバリウム。けれども、それがかえって見る目を惹くのだ。
(……ユキの逢う魔はどんなんでしょう)
 思い出そうにもうろ覚えで、やになる。
 けれども、此れから出遭うのはきっと――そういう敵だ。
(――ま、こっちを喰おうとするなら、喰らってやるだけですが、ね)

大成功 🔵​🔵​🔵​

カチュア・バグースノウ
大正浪漫、袴を着るわ!
ふふふ、いいわね、こういうの!

体験教室はレジンアクセがいいかしら
身につけるものが好きだから
クリスタル型のモールドに紫と青で朝焼けをイメージしたレジンと星と花のパーツを流し込んで…
半分ずつやって固めるといいのよね
(待つ間が暇)
その間に首のチェーンを準備しておこっと
ゴールドがいいかしら、動くことを考えると紐よね…こげ茶色の紐を通して…
あ、終わった
仕上げにヤスリで光沢を出して整えて…
紐を通して完成!

初めてにしてはいいじゃない!
色も想像より綺麗…
ハマる気持ちわかる、これ

またやってみようかしら!

アドリブ歓迎



「大正浪漫、袴を着るわ!」
 高らかに宣言をしたカチュア・バグースノウ(f00628)は一目惚れをした紫の矢絣に大ぶりの梅の花が咲く着物に深い緑色の袴をあわせて身に纏った。
 着物だというのに動きやすい袴姿。なんて最高なのだろう。
「ふふふ、いいわね、こういうの!」
 高らかに靴音を石畳に響かせて目指すはレジンの体験教室。
 以前にもピアスを作ったように身につけられるものが好きだから、グリモアベースで話を聞いた時からレジンと決めていたのだ。
「何を作ってみようかしら」
 沢山の種類が存在するシリコンモールドの中から選んだのはクリスタル型のモールド。其れに、星と花のパーツ。
(朝焼けをイメージしたデザインにしてみようかしら)
 カチュアは店員のアドバイスを聞きながら色の濃度にも気をつけながら紫と青のカラーリングパウダーを混ぜてから、モールドに流し込む。
 まずは薄く色を付けたレジン液を流して立体感が出るようにパーツを配置したらUVライトで硬化させる。僅か3分程の時間ではあるが、待つ間が暇。
 その間に首にかけるチェーンの用意をしておこうとアクセサリーパーツ。その中にある上品なゴールドのチェーンに惹かれるのだけれども。
(動くことを考えると紐がいいわよね……)
 哀しき哉。実用性重視で焦げ茶の紐を選んだ。
 半分硬化し終えたら、再びパーツを配置し液を流しいれて硬化させる。モールドから取り出しヤスリをかけたら出来上がり。
「初めてにしてはいいじゃない!」
 澄んだそれは、自分の想像よりも遥かに美しく綺麗な色が出ていて。
(ハマる気持ちわかる、これ……)

 ――またやってみようかしら!

大成功 🔵​🔵​🔵​

デイヴィー・ファイアダンプ
【ノネ(f15208)に同伴】
楽しむためにはまず見た目から。着る服はスタンドカラーのシャツに青灰縞の着物と袴を。柄はお任せしつつ、いわゆる書生さんな感じに。下駄も履いてみたいけれど、転ぶと危ないから革靴かな。
転ぶような危険? それはもちろん、なにせこれから振り回されそうだからね。

準備が出来たら、カメラを。
今日ここに来た目的は、あちこちを回りつつノネがSNSに上げる用の写真を撮るお手伝いだ。
SNS映え出来る写真が取れるほどの技量があるかは心配だけど、被写体が良いからね。なんとかなるだろう。

しかし、この被写体。静かにしていればまさにモデルさんという雰囲気なのにどうも落ち着きが……あっ、またブレた。


ノネ・ェメ
【デイヴィーさん(f04833)と】
 待ち合わせの相手とはここで初めて出会う。ネットで辿り着いたあるサイト。そこで他愛ない話を書きこみ合うだけのまだ見ぬ誰か同士だったのが、なんやかんやあり。今回、オフ会も兼ねて同じ任務に。

 楽しむためには見た目からという事で、まずはしっかりコスプレ。青紫や紺の、いかにもハイカラ~な服で。後髪にはブローチつけてみたり。似合う~とか、こっちもよさげ~とか、わちゃわちゃして、それから……ぁ。

 勢いで誘っておいて、肝心のノネもノープラン。ま、でも。辺りを見渡せば一面のわくわく。すぐに、もしないうちにまた、仲間をひっぱり回し始めちゃう気がする。

 ぁ。。つい鼻歌にUCが(



●on-line
【Side:@Songer_sing】
 空を眺めながらぼんやりとノネ・ェメ(f15208)は時間が流れるのを待つ。
(どんな人なんでしょう)
 ノネは知り合いと待ち合わせをしている。しかし、その相手のことを知らない。否、正確には文字上でのやり取りはしたことはある。
 ただ、それだけ。
 偶然辿り着いたあるサイトで他愛のない話を書きこみ合うだけのまだ見ぬ誰か。
 声も、勿論、顔も知らない。ふとスマホに目を落とせば、新着の書き込み。
『@Davy_lanp>@Songer_sing:書生服姿で、カメラを持って向かうね』
 待ち合わせの時間までにはもう少し時間があった。

【Side:@Davy_lanp】
 待ち合わせの時間まで少し余裕はあるけれど、未だ見ぬ相手との初めてのオフ会というのは少しだけ緊張する。
 少しだけ早めに出て、貸し衣装屋で書生服一色を借りる。
 スタンドカラーのシャツに青灰縞の着物と袴。下駄も履いてみたかったけれど流石に転びそうだから革靴を借りた。
(@Songer_singってどんな人なんだろうな。けれど、これから振り回されそうな気はする)
 ネット上で文字を交わしあう相手。一先ず『カメラを持って書生服姿で向かう』旨の書き込みをして

●off-line
「もしかして、キミが」
「初めましてー……は、なんか違いますよね」
 デイヴィーが待ち合わせの庭園入り口前へと向かえば、青い髪の女性が既に待っていた。
 彼女は青紫の矢絣着物に紺色袴のハイカラ姿。白と水色のつまみ細工のバレッタで後ろ髪をハーフアップに纏めている。
 本職のモデルかと見紛う程の美貌にデイヴィーは息を呑んだ。けれども、次の一言で見事現実に引き戻される。
「勢いで誘ってしまったんですが、ノネもノープランなんですよね。SNS映えする写真、お願いできますか?」
「うーん、じゃあスナップショットで撮ればいいのかな?」
「よく解らないですけど、それでお願いします」
 デイヴィーは革靴にして正解だったと確信した。
「解った。SNS映えする写真が撮れるほどの技量があるかは心配だけど、頑張るよ」
 まぁ、被写体が良いから何とかなるだろう。
 そうしてふたりは気ままにSNSにアップする為の写真を撮り始める。
 とはいえ、良く言えば行動力の塊。オブラートに包まず言えば好奇心とノリの権化の女性はカメラのことなどお構いなく気になるものを見つければ子供のように駆けだしてしまう。
 それにしてもこの被写体、どうにも落ち着きがない。
「……あっ、またブレた」
 ブレないようシャッタースピードをあげても、そもそも画面外へとモデルが逃げ出していってしまう。
(必要だったのは写真の技量よりも反射神経だったかも知れないな)
 デイヴィーは困ったような笑いを浮かべた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マクベス・メインクーン
【Violet】
へへ~っ、兄貴たちと初めてのお出かけだなっ♪
内心めっちゃ嬉しいけど
あんまり表に出すとぜってぇ誂われるからな
なんでもない感じでいくけどなっ!
(と言いつつ誤魔化せてない)

3人でお揃いのデザインの青年将校スタイル
オレは色は紺にするな~
っていうかやっぱ兄貴たちはスタイルいいから似合うな
超かっこいい…!
楪が黒い服じゃないのも新鮮だし
望はやっぱ長身だから映えるよな~♪
って、野生言うなっ!猫じゃらしで遊ばねぇかんなっ!!

記念写真撮るって言ってたし庭園散策だな
男3人で花の庭園散策とか
結構シュールだけどなぁ…
ん、望どっかいい場所見つけたのか?
写真撮れたらスマホの待受けコレにしよ~っ♪


氷月・望
【Violet】

ゆーくん、マクベスとお出掛け!
三人でお出掛けとかマジでテンアゲ!

三人でお揃いのデザインの青年将校、色違い!
俺は黒色で、こう真面目なイメージになったり?
ゆーくんのカーキ色も、マクベスの紺色もめっちゃ合ってんじゃーん!

オールバックだとワイルド感が上がって男前に見えるよな
ゆーくんは元々イケメ……あ、メンゴメンゴ!
腹立つって、ひっでー!ゆーくんもめっちゃ似合ってるのに!

猫じゃらし?服と同じ色の買ってきたケド、いる?
記念写真は任せてよ、SNS用写真で自撮り棒良く使うから
季節の花も咲いてるし、ソコとかSNS映えするかも?
……冗談、季節の思い出にはいいんじゃない?男三人は確かにシュールだケド


月待・楪
同行【violet】の氷月、猫助と

氷月とは依頼に行ってっけど何気に猫助とは初めてだな
青年将校って感じの軍服を三人で色違いにしたが…俺はカーキ色か
猫助の紺色結構似合ってっけど
ちょっとこっち来い…よし、オールバックのが大人っぽく見えていいぜ
氷月お前ピン曲がってんぞ…ったくこの前の憲兵服といい無駄に真面目な服が似合うのが腹立つ

つか猫助テンション上がってんなァ
やっぱ野生の猫は外が好きらしいが猫助も一応野生だったんだな…わかった遊んでやるよ
氷月、猫じゃらし
猫助が遊んで欲しいらしーぞ

記念写真撮るんだったな
さっさとしよーぜ…氷月ィどっかいいとこねェの?
男ばっかとかシュール過ぎて笑えねェ…けど楽しいからいいか



(へへ~っ、兄貴たちと初めてのお出かけだなっ♪)
 我先にと言わんばかりにと言わんばかりにふたりよりも半歩前を歩くのはマクベス・メインクーン(f15930)。
 内心は物凄く嬉しいのだけれど表に出すと絶対茶化されるから表に出すものか。マクベスはきりりと顔を引き締める。
(あれはバレバレだな。どうせ、お出かけが嬉しいけど表に出すと揶揄されるからって隠してるんだろうけれど)
 前方を歩くマクベスの様子を冷静に観察していた月待・楪(f16731)は、ふと。
「氷月とは依頼に行ってっけど何気に猫助とは初めてだな」
「三人でお陰とかマジでテンアゲ!」
 楪の隣を歩いていた氷月・望(f16824)が軽薄そうに笑う。
 そうして、三人で貸し衣装屋でお揃いだけれど色の違うの青年将校の服装を身に纏う。
「けど、三人色違いってのが今日のハイライトってとこ? 黒色で、こう真面目なイメージになったり?」
「氷月、お前ピン曲がってんぞ……ったくこの前の憲兵服といい無駄に真面目な服が似合うのが腹立つ」
「ゆーくんは元々イケメ……あ、メンゴメンゴ! ん? 今腹立つって言った? ひっでー!」
 軽薄に謝る望にぶつくさ言いながらも楪。けれども、その呟いた言葉に軽く毒が混じっていて、望はじゃれつくように怒る。
「やっぱ兄貴たちはスタイルいいから似合うな」
 じゃれ合うようなふたりの様子を眺めながらマクベスが眺めていれば、楪にオールバックにしてみた方が大人っぽいぞと髪型を弄られた。
 黒、カーキ、紺色の三人が庭園を歩く。途中冗談で猫じゃらしの話題を出せば本当に望がねこじゃらしを取り出して、マクベスが怒鳴ったりした。
「男3人で花の庭園散策とか、結構シュールだけどなぁ……」
 マクベスが周囲を見渡せば女性客やカップルの姿が多く男性のみのグループは中々見当たらない。
 目的は記念撮影。折角SNS映えするという場所なのだからと。こういうことは得意だからと望が胸を張って。
「記念写真は任せてよ、SNS用写真で自撮り棒良く使うから」
「……それ自撮り棒だったのか」
 楪が言う。
 先程から何かボールペンのようなものを持っているかと思えば、それを展開して自撮り棒へと変形させる。
 そして、望は慣れた手付きで自撮り棒にスマホを取り付けて、庭園の薔薇園の方をさして。
「季節の花も咲いてるし、あそことかSNS映えするかも?」
「男ばっかとかシュール過ぎて笑えねェ……けど楽しいからいいか」
 望と楪で会話をしながら周囲を見渡せば、丁度よく建物と花が良い雰囲気で入る場所を見つけた。
 早速その場に並びポーズをとる。
「はい、チーズっと」
 望がシャッターを切った。
 早速確認してみれば、濃い色の服と三人の距離感が程良く『エモくSNS映えする』仕上がりになっていた。
「冗談でSNS映えとか言ったケド、季節の思い出にはいいんじゃない? 男三人は確かにシュールだケドサ」
「スマホの待受けコレにしよ~っ♪」
 望のスマホの画面を覗き見たマクベスが嬉しそうに笑った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミーユイ・ロッソカステル
ハイカラ衣装に身を包み、日傘は雰囲気に合わせて新調し。
庭園を優雅に散策するわ。


……悪くないわね、こういう風にのんびりと歩くのも。日暮れまでの時間つぶし、と理解してはいるけれど……。今度、個人的に訪れるのもいいかしら。

……思えば、生家にも庭園があって、庭師も雇っていたっけ。お母様は、赤い薔薇が好きだったものね。
さすがに、何年も放置された今ではすっかり朽ち果てているでしょうけれど……。家に帰ったら、手慰みに薔薇でも育てるもの悪くないかも、ね。

色とりどりの花を、視覚と香りで楽しんだことだし……せっかくなら、ハーバリウムとやらを作ってみるのも悪くないかしら。故郷では、見なかった文化だものね。



 纏う白地の着物には薄紫と薄桃色の薔薇が上品に咲き乱れている。濃い菫色の袴をあわせて、かつんと足音を石畳に響かせてミーユイ・ロッソカステル(f00401)は庭園を優雅に歩く。
「……悪くないわね、こういう風にのんびり歩くのも」
 陽光と眠気を避ける為の白色の日傘にはさり気ないフリルが踊っている。雰囲気にあわせて新調したばかりの日傘は陽の光に眩く燦めくようだった。
 日暮れまでの時間潰しとは理解してはいるけれど、心を埋めるのは少しの寂しさ。
(今度、個人的に訪れるのもいいかしら)
 ミーユイは金色の双眸を細めて、依頼のついでに訪れるにはあまりに勿体ない場所だから。
(……思えば、生家にも庭園があって、庭師も雇っていたっけ。お母様は、赤い薔薇が好きだったものね)
 薔薇は手が掛かると庭師が語っていたことを思い出す。
 曰わく、咲かせるだけならばそれほど難しくはない。けれど剪定し、虫や病から守るのは中々に骨が折れる。だから、流石に何年も放置された庭園は今ではきっと当時の面影もないほどに朽ち果ててしまっているのだろう。
「家に帰ったら、手慰みに薔薇でも育てるもの悪くないかも、ね」
 小さく呟きを漏らして、庭園を優雅にひとまわり。
 ひとしきり花を視覚と香りで楽しんだのならば、ハーバリウムを作ってみようとミーユイは洋館へと歩を進めた。
(同じように花が咲く光景でも、故郷では見なかった文化だもの)
 世界を巡る証として、今日の日の思い出を花とともに小瓶に閉じ込めてみるのもいいのかもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

蘭・七結
あねさま/f02896と

あかい着物に紫の袴のハイカラさん
大きなリボンでゆるりと髪を結う

あねさま、あねさま
とても風情ある場所ね
まるで和国へと降り立ったみたい
胸が高なってしまうわ

あかいドレスに身を包むあねさま
あねさま、とってもお似合いだわ

普段はお忙しいあねさま
あねさまと共に過ごすことができて
ナユは、とってもうれしいの

大切なあねさまの手を引いて
ナユはハーバリウムが気になるわ
ナユのおねだり、聞いてくださるかしら

薄色の桜の花びらと、硝子玉の手毬
一等美しく咲く赤薔薇を一輪、閉じ込めて
あねさまの瞳と、おんなじ色のリボンを結ぶ

ナユも、あねさまをイメージして作ったわ
あねさま、受け取ってくださるかしら


蘭・八重
なゆちゃん(f00421)と一緒に

着物をドレスに加工した黒い和装ドレス
髪をアップにさせ簪をさす

えぇ、そうね。
なゆちゃんとても楽しそう。

あら?ありがとう、でも
ふふっ、なゆちゃんの方が可愛いその姿に
この風景は良く似合うわ。

普段会える事が少ない可愛い妹
喜び笑顔な彼女に愛おしげに微笑む

なゆちゃんの可愛らしい手に引かれ
あぁ、なんて世界一可愛いのかしら

あら?ハーバリウム?
ふふっ、貴女のおねだりに断る理由なんてないわ
えぇ、作りましょう。

ピンクの花に小さな白い蕾の沢山の花
淡い花達の中に真っ赤なホオズキを

なゆちゃんをイメージをしたの
どうかしら?
ふふっ、私の?とっても素敵、大切にするわね



「あねさま、あねさま。とても風情がある場所ね。まるで和国へと降り立ったみたい。胸が高なってしまうわ」
「えぇ、そうね」
 赤い矢絣に大ぶり紅牡丹が花が咲き乱れるレトロモダンの着物に紫袴をあわせて、ふんわりと大きな赤のリボンで髪をゆるりと結えば蘭・七結(f00421)はすっかりとハイカラさん。
 年相応のあどけない表情をみせる妹の姿にふふりと笑んで応える蘭・八重(f02896)。着物をドレスに加工した和装ドレス。黒地に赤薔薇の模様や赤のレースや刺繍などが上品に彩りを添えている。黒色の薔薇の簪で髪を纏め上げればドレスの華やかさを大人の淑やかな魅力へと変えた。
「あねさま、薔薇のドレスがとってもお似合いだわ」
「あら? ありがとう。でも……ふふっ、なゆちゃんの可愛いその姿の方がなゆちゃんにもこの風景にもとても似合っているわ」
 七結の姿は東洋文化と西洋文化が混じり合った不思議な街に、服装も愛らしい七結の姿もよく似合っている。
 普段忙しく中々出逢えることが少ない相手。だから、共に過ごすことが嬉しくて七結が笑めば、八重も妹に愛おしげに微笑む。そうして、浪漫花の世界を歩めば見えたのはハーバリウム作成体験の看板。話を聞いた時から気になっていたのだ。
「あねさま、ナユのおねだり、聞いてくださるかしら? ナユ、ハーバリウをが気になるわ」
「ふふ、貴女のおねだりを断る理由なんてないわ。作りましょう」
 可愛らしい手で八重の手をひいてせがむ七結の姿は世界で一番可愛らしい。穏やかに笑んでふたりは椅子に腰掛ける。
「どんな花を閉じ込めようかしら」
「どの花も美しいもの。悩んでしまうわ」
 ふたりして硝子瓶と花ににらめっこ。そして、時折互いの顔を見てその往復を何度か繰り返せばデザインは自ずと決まる。
 作る物ものは、互いへのプレゼント。花の配置に悩みながら互いをイメージして丁寧に花を瓶に詰めていく。そうして、完成したのはほぼ同タイミング。
「なゆちゃんをイメージしたの。どうかしら?」
 八重が差し出したの鬼灯を主役に据えたハーバリウム。
 ピンクの花に小さくて白い清らかな蕾の沢山の花。淡い花達が真っ赤な主役たる真っ赤な鬼灯を一層に引き立てている。
 何処か不思議で、暖かくて、隠世のような現世離れした程に美しいハーバリウム。
「とても綺麗。嬉しいわ。ナユも、あねさまをイメージをして作ったわ。受け取ってくださるかしら?」
 七結が八重へと差し出したのは赤薔薇のハーバリウム。
 一等に美しい赤薔薇を一輪瓶の中へと咲かせたのなら、しんと降り積もる雪のように舞う薄桃の桜のはなびらと硝子玉の手鞠で彩る。仕上げに瓶を飾るのは八重の瞳と同じリボン。
「ふふっ、私の? とっても素敵、大切にするわね」
 八重は愛おしげな仕草で赤薔薇のハーバリウムを手のひらにのせたのなら、嬉しそうに笑んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エリス・シルフィード
フローリエ(f00047)同行
服装:白地でニャンコちゃんの絵柄が描かれた浴衣
こういう機会あまりないからどんな格好が良いか分からないのよね
ねぇ、フローリエさんこれで大丈夫かしら私(自分の服装を見て周囲キョロキョロ)?
か、可愛い…(テレテレ)
そっ、そう言えばフローリエさんのお勧めは何処かしら?
…私?
そうね…それなら鈴蘭の花風呂に行ってみない?
香りとか楽しみに
因みに鈴蘭の花言葉は知っているかしら?
あっ、そうね。この鈴蘭をあしらったケープを編むのも良いわね
…協力、お願いしても良いかしら(上目遣い)?
ふふ…こういう機会は中々無いからとても楽しかったわ
…フローリエさん
これからも、私とお友達でいてくれる?


フローリエ・オミネ
エリス(f10648)と一緒に

紺の袴に色とりどりの花の着物
レースの羽織りを纏って、傘をさせば完璧ね

大正浪漫はよく分からないのだけれど
取り敢えずエリスが可愛いから良いの。

おすすめ……(パンフレット、見慣れない図入りだから混乱するわ)

ええ、ええ。花風呂、是非行ってみたいわ!
わたくしの名前がフローリエでしょ、風呂と似てるから親近感感じるのよね(?)

鈴蘭の花言葉は、純粋や幸せがなんとか、だったかしら。
良いものばかりなのよね。

でも気をつけて、鈴蘭は猛毒らしいの

ケープを作るのなら、この鈴蘭を使ってみたらどう?
わたくしの編み物の知識が役立つ時ね

……ふふ、わたくしはずっと、あなたは良いお友達だと思っていてよ。



 庭園の花々のように色とりどり様々な花が咲いた着物に、星空のような色彩の袴。
 生成り色のレースの羽織を纏い、夜空のような色の日傘を差して歩くフローリエ・オミネ(f00047)の姿は貴婦人然。
(――重力……)
 しかし、その足取りは二歳児のように覚束ない。宇宙の無重力の世界が故郷であるフローリエにとって、重力に囚われた地上の世界は慣れない。普段は魔力を滾らせて宙を浮いているけれど、流石ににUDCアースで浮くわけにはいかないし、何より溶け込みたいのだ。
「フローリエさん、大丈夫かしら? 休む?」
「大丈夫、よ。自分の足で歩きたいの。それに、取り敢えずエリスが可愛いから良いの」
 白地に猫が描かれた浴衣を身に纏うエリス・シルフィード(f10648)に心配そうに訊ねられて、フローリエは気丈に笑み返す。
 しかし、額に流れる冷や汗と生まれたての子鹿のように震える脚が所詮強がりの戯れ言なのだと物語っている。
「かわいい……だなんて! そ、そういえばフローリエさんのお勧めは何処かしら?」
「おすすめ。大正浪漫はよくわからないの。エリスは何処か気になる場所はあるかしら?」
 パンフレットを眺めても見慣れない図入りだから余計に混乱するからと、フローリエは逆にエリスへと訊ね返す。
「……私? そうね、それなら花風呂とか行ってみたいわ。鈴蘭の花風呂とかきっと素敵だと思うの」
「ええ、ええ。花風呂、是非行ってみたいわ! わたくしの名前がフローリエでしょ、風呂と似てるから親近感を感じるのよね」
 エリスはちらりとフローリエの今にも倒れてしまいそうなふるふると揺らぐ脚を見る。疲労が限界に近いのかも知れない。
 フローリエは気付いて無い様子で、独特の感性の持論を展開する。エリスは愛想笑いを浮かべながら、ふと。
「ちなみに、鈴蘭の花言葉は知っているかしら」
「鈴蘭の花言葉は、純粋や幸せがなんとか、だったかしら」
 フローリエが答えればエリスも頷いて。
「幸せが再び訪れる、よ」
「良いものばかりなのよね。でも気をつけて、鈴蘭は猛毒らしいの。触れているだけで影響があるようよ」
「え、本当? それなら、鈴蘭の花風呂は無理そうね」
「今の時期ならそうね、きっと薔薇かしら」
 フローリエの言葉に残念そうに肩を落とすエリス。
「なら、ケープを作るのも難しいかしら」
「ケープを作るなら、この鈴蘭を使ってみたらどう?」
 フローリエが取り出したのは鈴蘭の形をしたとんぼ玉。
 本物と見間違う程の精巧さで、けれど硝子製品特有の繊細さがとても美しい。
「え、いつの間にこんな可愛らしいビーズを用意したの?」
「さっき売店で売っていたの。貴女に似合うと思って買ったのだけれど、正解だったみたいね」
「ありがとう……協力、お願いしてもいいかしら?」
 上目遣いでエリスが問えばフローリエは勿論と頷く。
「フローリエさん。これからも、私とお友達でいてくれる?」
「ふふ、わたくしはずっと、あなたは良いお友達だと思っていてよ」
 フローリエは優しくふわりと笑んだ。
 ふたりの間に柔らかな初夏の風が吹き抜けていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

蜂月・玻璃也
耀子(f12822)と

パシャリ。うん。似合ってるぞ耀子。
しかし……

いいのかなあ、こんなことしてて……。
正直、任務まで時間があるならその辺の茶屋にでも入って持ち込み仕事を少しでも進めたい。
顔に出ていたのか、やんわり窘められてしまった。

う、む……ん。わかったよ。
……悪いな、気を遣わせて。

だから俺はこうしてカメラを構える。
いつか姉さん……俺の前任者が帰ってきたときのために。
部下たちが元気だったって安心できるように、記録を残そう。

え……俺はいいよ。
いつものカッコだし……あっ。

カメラを奪われて、レンズが光って。
とっさだったもんだから、笑顔もピースも、ぎこちなくなってしまった。


花剣・耀子
蜂月室長(f14366)と

長い黒髪にはリボン。桜の着物に葡萄茶の袴。
真面目な顔でハイカラさんをするわ。
お仕事だもの。

遊ぶのも仕事のうちよ。
室長は常在戦場に耐えられる胃腸の主ではないのだから、
息抜きできる時はした方がよいのではないかしら。
別に気を遣った訳ではないけれど。
思い詰めた顔をされると気が散るのよ。

そう言って、急に気を抜けるようなヒトでもないわよね。
その性分が悪いとは言わないけれども。難儀なこと。
せめて目だけでも休まるよう散策しましょう。
今時分は、緑も花もうつくしいわ。

ほら、カメラを貸して頂戴。
あたしだけ映っても仕方が無いわ。
記録から自分を除外しては駄目なのよ。

……あとで皆に見せましょう。



 ぬばたまのような黒檀の長髪が初夏の風にそよぐ。
 花剣・耀子(f12822)は蒼空を仰ぎながら、風に弄ばれるままの髪を手でおさえれば鳴ったのは乾いたカメラのシャッター音。
「うん。似合っているぞ耀子」
「お仕事だもの」
 蜂月・玻璃也(f14366)からかけられた言葉に耀子は短く応える。彼女が身に纏っているのはハイカラ袴姿。
 上品な桜色の着物に、葡萄茶の袴。白と濃い桃の桜が着物を華やかに彩りを添えていた。髪にも赤色のリボンを結んだ彼女は、それだけで一枚の絵のよう。
 穏やかな初夏の一日。のんびりと流れる時間。
(しかし、いいのかなあ。こんなことしてて……)
 だからこそ、玻璃也は落ち着かない。
 正直、任務まで時間があるのならその辺の茶屋にでも入って持ち込みの仕事を少しでも進めたいところなのだけれど。
「遊ぶのも仕事のうちよ。室長は常在戦場に耐えられる胃腸の主ではないのだから、息抜きできる時はした方がよいのではないかしら」
「う、む……ん。わかったよ。悪いな、気を遣わせて」
「別に気を遣った訳ではないけれど、思い詰めた顔をされると気が散るのよ」
 玻璃也の考えが顔に出てしまっていたのだろう。耀子にやんわりと窘められて、更に気まで遣われてしまう。
 けれど。
「いつ前任者が帰ってきてもいいようにやるべきことはやらなければと思うんだ」
 こうして部下の写真をカメラに収めるのもその一環。前任者がいない間も彼らは元気だったという記録で安心して貰えるように。玻璃也の眉間に刻まれた皺が深くなっていく。
「――難儀なことね」
 耀子はぽつりと呟きを漏らす。
 そうは言っても急に気が抜けるような人ではないことを知っている。
 白衣に染みついたようなその性分が変わらないことだって解っている。
 だからこそ。
「今時分は、緑も花もうつくしいわ」
 玻璃也に緑へと意識を向けるように耀子は散策に連れ出す。
 気を抜けず心が安まらないのであれば、せめて目だけでも休まるように――そう思ってはいても、やはり彼は耀子にレンズを向けてシャッターを切り続けている。耀子はひとつ息を吐いて、彼の貌を見る。
「あたしだけ映っても仕方が無いわ。記録から自分を除外しては駄目なのよ。ほら、カメラを貸して頂戴」
「ちょ、いや、俺はいいよ。いつものカッコだし……」
 耀子の申し出に断りをいれようとする玻璃也。けれど、問答無用と言わんばかりに耀子にカメラを引ったくられた。
 思わず取り返そうとする。けれど、有無を言わせないように軽やかに距離を取られて流れるようにカメラを構える耀子。
「撮るわよ」
「あっ」
 そして、鳴るシャッター音。
 突然のことに驚いた玻璃也。なんとか咄嗟に笑顔とピースを作れたもののその表情はとてもぎこちない。
「……あとで、皆に見せましょう」
「写真うつり、きっと物凄く悪かったと思うんだけれどな」
 耀子の言葉に玻璃也は困ったような表情をみせた。

 五月の空。忙しい日々の幕間のひととき。
 例えば、たまにはこのようなのんびりとした時間も良いのかもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

一色・錦
f13141・綴子ちゃんと

紺袴に編み上げブーツ、ハイカラ女学生さんの格好で
花には詳しくないから、綴子ちゃんかお店の人に選んで貰おうかしら
赤や黄色や白い花、金魚鉢を再現できるかな?

言われてみれば、このハーバリウムって
あたしたちの本体と似たところがあるかもしれないわね
金魚は命あるものだけれど、花はもう命を落した存在
そう考えると、少しだけ感傷的になっちゃうけれど

うん、大事にされていたわ
色んな人の手を何度も渡りながら、金魚をいだき続けてきたの
綴子ちゃんはだいぶ不完全燃焼なところがあったのね
安心して!
それならこれから一緒に色々な奇譚を綴りに行きましょう
おねーさん、付き合ってあげるから♪


稿・綴子
錦(f10148)と手作り体験
髪をまとめインバネスコートの男子学生
ハーバリウムを作る
透明で全てが透けて見えてしまう瓶の中、終焉後も美しくある花を綴じ込める
錦と吾輩の本質めいたものが混ざっておるようで興味深い

金魚めいた花か
カーネーションはどうだい?金魚はキミの母、なんてな

錦は金魚鉢としてずっと大切にされていたのかい?
実は吾輩は「使われ大切にされた」のが羨ましいのだよ
手前の頁までは綴られたのに吾輩は残った挙げ句に回顧展なんぞで飾られる日々、まこと退屈であった!
(藤と鈴蘭周囲に彼岸花散らした瓶を掲げ)
大切にはして貰えたさ、故に吾輩ここにおる
おお!嬉しや
奇譚綴りの旅の道連れ愉し
今日もそう明日も愉快痛快



「透明で全てが透けて見えてしまう瓶の中、終焉後も美しくある花を綴じ込める。錦と吾輩の本質めいたものが混ざっておるようで興味深いじゃないか」
「言われてみればこのハーバリウムって、あたし達と似たところがあるかもしれないわね」
 インバネスコートに学生服。黒色の男子学生然とした稿・綴子(f13141)の言葉に一色・錦(f10148)が頷く。
 錦の本体は金魚鉢。幾歳月その身で金魚を抱き続けてきた。
 抱いた金魚には命があるけれど、花はもう命を落とした存在。綴子の云うように花を硝子瓶に綴じ込めるという表現が適当で錦はやや感傷的な気分になってしまう。
「錦のその姿は金魚鉢を意識したのかい?」
「なんとなく選んだのだけれど……確かに言われたらそうね、金魚鉢だわ!」
 水色地に赤椿と葉の少しレトロな色合いの着物を紺袴に合わせた錦のハイカラ女学生姿。
 直感で選んだ着物。言われてみれば確かに赤椿と葉が水に游ぐ金魚と水草のよう。
「実はハーバリウムも金魚鉢をイメージして作ってみようと思ってたんだけど、花は詳しくないから綴子ちゃんに選んで貰おうと思って」
「金魚めいた花か……それならばカーネーションはどうだい? 金魚はキミの母、なんてな」
 言葉とともに綴子が指し示したのは色とりどりのカーネーションの花々。
 ひらひらとした花片は金魚の尾の如く、それでいて色彩も豊かで金魚に似付かわしい。
 素敵と錦が笑めば綴子が得意げに片目を閉じる。
 そうして、ふたりはハーバリウムを作りながら話に興じる。
「錦は金魚鉢としてずっと大切にされていたのかい?」
「うん、大事にされていたわ。色んな人の手を何度も渡りながら、金魚をいだき続けてきたの」
 想いを繋ぎ、繋がれて。そうして百年重ねて人の形を得た。一度でも想いが途絶えてしまえば今此処には存在しなかった錦というひとつの命。脳裏を駆け巡るのは今まで錦を愛してくれた人達と、錦が愛した金魚達。
「そうか。実は吾輩は錦のように『使われ大切にされたもの』が羨ましいのだよ」
 綴子の記憶は硝子越し。手前の頁まで綴られたにも関わらず綴子は残った挙げ句に回顧展のショウケェスの中なんぞで飾られた過去。
 原稿用紙としての本分も全う出来ず、使われることもなく、ただ白紙の頁を晒し続ける日々。
「――まことに退屈であった!」
 綴子は出来上がった硝子瓶を掲げ、想いを口にした。
 彼岸花を藤霞や鈴蘭が彩っている逸品。繊細さと美しさと仄かな毒々しさが混ざり合ったハーバリウムを机の上に置いて撫でる。
「確かに大切にしては貰えたさ、故に吾輩ここにおる。しかし、この身が奇譚を求め物語に乾き仕方がないのだよ」
 最期の一頁を飾る綴り手は既になく、故に自ら奇譚を求めて彷徨う日々。
 話を聴きながら錦は綴子の満たされぬ過去と心に想いを寄せる。ならば。
「安心して! それならこれから一緒に色々な奇譚を綴りに行きましょう!」
「おお! 嬉しや」
 錦の言葉に綴子は笑みを深くして昂揚する。

 奇譚綴りの旅の道連れ愉し。
 今日もそう明日も愉快痛快――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木目・一葉
では仕事に取り掛かろう
とはいえ、最初は散策か
ただ散策するだけではつまらない
モダンな雰囲気には、それに見合う袴姿で赴くとしよう

【SPD】
街並みを散策し、ふと目にとまったのは竹とんぼの作成教室
「いまどき、竹とんぼか」
それで遊ぶような子供はもう少ない
幼少期ですら竹とんぼで遊ぶ人は少なかった
僕も、かつてお兄ちゃんと呼び慕っていた人と出会うまでは知らなかった
初めて見せてもらったお兄ちゃんの竹とんぼは、よく飛んでいた
ふと柔らかい笑みがこぼれ、自然と僕の足はその竹とんぼの作成教室へと向う
――昔のように飛ばせるかな?
手先の不器用な自分だが、今このときを逃したらそれを言い訳にしてやるがなさそうだからな



 ――ただ散策するだけではつまらない。モダンな雰囲気にはそれに見合う服装で赴こうか。
 木目・一葉(f04853)が身に纏うのは紅色の矢絣柄の着物に葡萄色の袴を合わせたハイカラモダンスタイル。袴にさり気なく咲く花が可愛らしい。
 新調したばかりの衣装は不思議と一葉に馴染んでいる。
(では、仕事に取りかかろう――とはいえ、最初は散策か)
 五月の美空に浮かぶ太陽は未だ高く日暮れまで相当時間があると感じさせる。
 ただ日暮れまで呆けていても仕方がない。浪漫の風景を歩けば、ふと目に止まるのは竹とんぼの作成教室の看板。
「いまどき、竹とんぼか」
 作成教室と銘打っている。しかしどちらかといえば、駄菓子屋の片手間に行っているに過ぎないようで、足を止める観光客はいない。
(今時、竹とんぼで遊ぶような子供はいないだろうからな……当たり前か)
 否、成人する年齢に近付いてきた一葉自身でさえも幼少期に遊ぶ子供が居たかと問われたら怪しい。
 実際一葉だって知らなかった。お兄ちゃんと呼び慕う彼に出逢うまでは――。
(初めて見せてもらったお兄ちゃんの竹とんぼは、高く遠くよく飛んでいたっけ)
 彼の高く飛んだ竹とんぼに憧れて、あれから自分も何度か挑戦した。けれど、彼と同じようには飛ばせずひどく悔しい想いをしたことを思い出す。
 ふと一葉の口元に浮かぶのは柔らかい笑み。おのずと一葉の足は竹とんぼの作成教室へと向かう。

――昔のように飛ばせるかな?

 一瞬覗かせる子供のようなあどけない表情。
 手先が不器用な自分だけれど、今この時を逃したらそれを言い訳にしてやることがなさそうだから。
 創り上げた竹とんぼはどう青空に飛ぶのだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リル・ルリ
■櫻宵/f02768
アドリブ等歓迎

たいしょろま?初めて

男物のしょせいふくを着た櫻宵はとてもかっこよくて
ドキマギする
どう?って
心臓がうるさいからとまってほしい
惚れ直すも何も毎日君の事がどんどん好きになるから…

僕は櫻が選んでくれたハイカラ袴
尾鰭が通る様特別なのにして貰った
尾鰭と一緒に揺れる袴
嬉しくて微笑み游ぐ
櫻の腕に掴まり游ぐ花園

お花で作れるの?

君の色のがほしい
作ろう、はーばりむ

丸い球体の中に封じる
赤いゼラニウム
ピンクの胡蝶蘭
君の角に咲く桜

上手くできない所は君が手伝ってくれる
やっぱり櫻宵は器用
2人で作った花雫を並べ笑う
僕のお気に入り



君の色を封じた僕だけの水槽
――本当は
碇草も入れたかったんだけれど


誘名・櫻宵
🌸リル/f10762
アドリブ等歓迎

きゃー!リィ可愛い!
舌足らずに話す様も可憐だわ
髪を結い上げ
ハイカラ袴に着替えさせたリィは最高に可愛いわ
あたしは書生服!眼鏡をかけて―どう?惚れ直した?

やぁよ心臓は動かしてて頂戴
……ばか、
照れるじゃない
そんなのあたしだって

腕を組んで歩くなんて
恋人って感じで気分いい
どんな綺麗な花よりあたしの人魚の方が綺麗ね

折角だからハーバリウムを作りましょ!
あたしはリル色のにするわ
雫型の瓶
ジャスミンと白いアイリス
ブルースターを散らして
ゆうらり揺蕩う白の夢

あたしの桜を入れてくれるなんて
嬉しい
慣れない所は手伝うわ

寄り添うように飾れば笑顔が咲く
ハーバリウムになってもあたし達
仲良しね!



「たいしょうろま? 初めて」
「きゃー! リィ可愛い!」
 はいからさん姿のリル・ルリ(f10762)がきょとりと小首を傾げれば、誘名・櫻宵(f02768)が歓声をあげる。
 リルが身に纏うハイカラ服は櫻宵がリルの為に用意した尾鰭も通る特別仕様。涼しげな勿忘草色の矢絣着物に紺色の袴をあわせた。真珠のように美しい髪も深海色のリボンで結い上げる。
 服装だけでも反則なのに更に舌足らずに云う姿に昂ぶる気持ちはもう抑えられない。
(可愛さのあまりが呼吸か心臓が止まりそうだったわ……落ち着いて、あたし)
 深呼吸、瞑想。目を開いて、ほらもう大丈夫。
「ほら、リィ。あたしは書生服! 眼鏡をかけてどう? 惚れ直した?」
「どう? って……心臓がうるさいからとまってほしい」
「やぁよ、心臓は動かして頂戴」
「惚れ直すも何も、毎日君のことがどんどんと好きになるから……」
「……ばか、照れるじゃない。そんなのあたしだって、」
 思わず互いの顔を見れば頬が心なしか少し赤い。なんだか照れくさくて俯いた。

 地を歩く櫻宵の腕にリルが掴まり空游げば、その姿は恋人そのもの。
 なんて幸せな時間なのだろうと互いの貌が幸せに緩む。
「折角だからハーバリウム作りましょ?」
「はーばりうむ?」
 浪漫の花園をゆるりと散策していれば、ふと櫻宵がそのようなことを言い出すものだからリルはきょとりと首を傾げた。
「お花の水槽よ。硝子瓶の中にお花を綴じこめるの。色も形も思うまま」
「僕、君色のが欲しい」
「なら、あたしはリル色にするわ」
 どんな綺麗な花よりもあたしの人魚の方が綺麗だけれど――続く櫻宵の言葉に、リルは照れくさそうにしていた。
 ふたりはハーバリウム作りに取りかかる。リルにとっては初めての経験で苦戦していれば櫻宵が的確に手伝ってくれる。
 器用な櫻宵は格好いいなんて思いながら、大切な人を想って創りあげる花水槽。
 あれこれ悩みながら、時間をかけて丁寧に創りあげるふたりの世界。
「ハーバリウムになってもあたし達仲良しね!」

 出来上がったハーバリウムをふたつ並べる。
 赤いゼラニウムに、ピンクの胡蝶蘭、そしてきみの桜をまあるい硝子瓶に閉じ込めたのなら、暖かな春の色彩の花水槽。
 ジャスミンにホワイトアイリスにブルースター。それらを硝子の雫に閉じ込めたのなら、ゆうらり揺蕩う白の夢。

「嬉しいな、僕もお気に入り」
 リルは愛おしげに白い指で丸い硝子瓶を撫でながら笑んで応えた。
 櫻宵の色を封じて閉じ込めた僕だけの《水槽(アクアリウム)》。
(――本当は、碇草も入れたかったのだけれど)
 ずっと君を捕らえておきたいなんて、僕の我が侭だろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

雷・春鳴
ナギ(f12473)へ向かって言葉をかける。

綺麗な所、散歩できるって聞いたからついて来たけど……ねえ。着物はちょっと、きゅうくつ、だよ。

自前の古い着物。何処から引っ張り出して来たのか知らないけど、モダンな着物。古いくせに 厭にぴったり。

鏡を見た時、面影が目に映る。会ったこともない。古い古い写真で見ただけの男にそっくりで。いやだった。父親なんて呼べる程知らない。
嫌な顔なんて、別にしてない。

手作りなんて、したことないよ。
ほら。うまく、いかない。
とんぼ玉の簪なら、もっと綺麗なのが売ってるのに。
……欲しいなら。あげるけど。
藤の花のパーツもつける。
彼女の黒い着物に多分映えるから。


ナギ・クーカルカ
ダメよアズマ(f11091)、ちゃんと着て。
せっかく素敵な場所なのだもの。お洒落していきましょう?

丁度ね。あなたのお父様のお着物があったの。
よく似合うわ。とっても。
ふふ、そういやそうな顔をしないで頂戴。
心配しなくてもあなたはあなたよ。
ほんとう、そういうところは いつまでたっても素直じゃないんだから。

手作り体験ですって。ね、ね?とんぼ玉作ってみない?
私、簪が欲しいわ。
あら、案外不器用なのね。……ふふっ 不格好。
でもいいの。あなたの作った物が欲しいわ。

藤棚もお庭にあったわね。あとで一緒に、お散歩しましょ。
とっても素敵な簪を つけてね。



「綺麗なところ。散歩出来るって聞いたからついてきたけど……ねえ。着物はちょっと、きゅうくつ、だよ」
 雷・春鳴(f11091)は落ち着かない様子で着物の合わせを引っ張ったり帯を緩めようとしたり。
「ダメよアズマ、ちゃんと着て」
「でも、窮屈だし」
「せっかく素敵な場所だもの。お洒落していきましょう?」
 不満をナギ・クーカルカ(f12473)にぶつけても、にこやかに躱されるのみ。
 男性用の着流しとしては少し派手なレトロモダン柄。生成りにセピアの縦縞ストライプ。色褪せた状態から古着だと解る。
「こんな古い着物。何処から引っ張り出して用意したの」
「丁度ね。あなたのお父様の着物があったの。よく似合うわ……ええ、とっても」
「やっぱり……」
 ナギの言葉に春鳴は嫌そうに呟く。
 鏡を見た時。春鳴の脳裏に過ぎった面影は父の姿だった。古くさい癖に厭にぴったりで、それが余計に気に障る。
 会ったこともない、古い写真の中でしか見たことない男。父とも呼べないあの男にそっくりなのがどうにも嫌だ。
「ふふ、嫌そうな貌をしないで頂戴。心配しなくてもあなたはあなたよ」
 本当にそういうところはいつまで経っても素直じゃないのだからとナギは優しく笑む。
 庭園を目的もなく散策していれば目に入ったのはとんぼ玉制作体験の看板。
「手作り体験ですって。ね、ね? とんぼ玉作ってみない? 私簪が欲しいわ」
「手作りなんて、したことないよ。できるはずがない」
「そんなのやってみないと解らないじゃない。こういったものは、思い出とかそういうものが大切なのよ」
 だからやりましょうよ。ナギに強くせがまれて仕方なく春鳴は席に着いた。
 硝子棒を炙り、ステンレス棒に巻きつけたらコテで形を整えていく。
 が、どうにも力加減が難しくまぁるく滑らかな形になるはずだったとんぼ玉はぼこぼことしている。
 模様も付けてみたけれど、穏やかな流水柄にするはずだった其れは、よく解らない線の羅列だ。
「ふふっ不格好」
 思わずナギが笑えば、春鳴は不機嫌そうな表情をする。
「ほら。うまく、いかない。とんぼ玉の簪なら、あっちにもっと綺麗なものが売っているのに」
「アズマは案外不器用だったのね。でもいいの。あなたの作った物が欲しいわ」
「……欲しいならあげるけど」
 真っ直ぐ見てくるナギの視線から逃げるように春鳴はぷいとそっぽを向いて応えた。
 とても不格好。だけれど店員に加工を頼む際に藤のパーツも付けるよう云えばそこそこの見映えをするようになるだろう。
「たしか藤棚もお庭にあったわね。あとで一緒に、お散歩しましょ。とっても素敵な簪をつけて、ね?」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

穂結・神楽耶
【アドリブ・連携歓迎】

わー……わー……!
これが所謂大正浪漫の服装ですか。
いつもと違うものを着ると気分からして違いますね。
お仕事なのは分かっているのですがこう、高揚してしまって。

おっとっと。
借り物の衣装です。汚してしまいますから、あまりはしゃいではいけませんね。
体験教室は控えて庭園の方に足を向けましょう。

…今の季節だからこそ、ですね。
ここまで色とりどりの花が咲いているのはまるで楽園のよう。
青空のコントラストと映えて本当に綺麗。

…………重ねてはいけないのでしょうね。
ここは楽しむための場所で、焼け落ちた故郷ではないのですから。



「わぁ……」
 姿見を覗いた穂結・神楽耶(f15297)の口から思わず歓声が零れる。
 生成り地に赤縞模様の着物には、大輪の赤椿と白椿が咲き乱れている。
 そして、一見派手な柄の着物を深緑色の袴が締めることで調和を生み出している。
(これが、所謂大正浪漫の服装ですか。いつもと違うものを着ると気分からして違いますね)
 着物は着物だけれど、普段自分が着ているものや周囲で見かけるものと全く違う。
 和と洋が絶妙に入り交じった独特の文化。改めて大正浪漫という言葉を意識する。
 きらきらとした瞳で姿見を眺めていれば、傍らからふふりと店員の笑い声が聞こえてきた。
「わっ す、すみません、思わず気分が高揚してしまいまして」
「いいんですよ。今日は楽しんでらしてくださいね」
 穏やかに笑う店員に見送られて庭園へと向けて歩き出す。
 歩を進める度に石畳に鳴り響く革のブーツの高らかな靴音。再び心が浮かれそうになるけれど神楽耶は
「おっとっと。借り物の衣装です。汚してしまいますからあまりはしゃいではいけませんね」
 体験教室も興味を惹かれるけれども、今日は控えて庭園へと足を運ぶ。
「きれい。今の季節だからこそ、ですね」
 庭園には様々な花が競うように咲き乱れている。
 初夏の空は何処までも澄み渡るよう。鮮やかな花々との対比が楽園の如き美しさを作り出していた。
 脳裏に浮かぶ、ひとつの光景。それは、
「…………重ねてはいけないのでしょう、ね」
 神楽耶は自嘲のような笑みを浮かべる。
 だって、此処は焼け落ちた故郷ではないのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

白寂・魅蓮
UDCアースにこんな場所ができたなんてね。
花も沢山、お洒落な街並みで綺麗だな
たまにはこういう街並みをじっくり歩き回ってみるのもいい気分転換になりそう

せっかく来たのだから衣装もこの場にあったものに着替えてみよう
今回は書生服に着替えてみた。なかなか悪くないね、この感じ
和傘を差しながら気ままに庭園を散歩しながら景色を楽しもう

しばらく歩き回ったら体験教室を覗いてみる。
ハーバリウム…初めて見たけど、水槽の中に花が浮かんでいるようで綺麗ですね。
せっかくだから僕も一つ作ってみましょう。
紫色の花を中心にしたハーバリウムを作っていきます
いいのが出来たら部屋に飾ってみるのも良さそうだ

※アドリブ、他猟兵との絡み歓迎



 UDCアースにこのような場所が出来ていたことを知らなかった。
 お洒落な街は浪漫情緒に溢れていて、咲き誇る花々も色鮮やかで美しい。
(――たまには、こういう街並みをじっくり歩き回ってみるのもいい気分転換になりそうだ)
 折角だから服装も街に合わせて書生姿。紺色着物に薄茶袴が普段は大人びて見える白寂・魅蓮(f00605)の雰囲気を少しだけ年相応に近づけてくれる。
「うん。なかなか悪くないね、この感じ」
 街角建物の窓硝子に映った自分の姿を見て、少しだけ頬を緩める。
 和傘をさしながら、花庭園をのんびり散策して、暫く歩き回れば洋館の中へ。
 目指すはハーバリウムのコーナー。カウンターに置かれた様々な色や花のハーバリウムたち。
「ハーバリウム……初めてみたけれど、水槽の中に花が浮かんでいるようで綺麗ですね」
 魅蓮がそう呟けば、受付にいた女性もええと嬉しげな笑みを浮かべながら頷く。
 折角の思い出だから魅蓮もひとつ作ってみようと決めて、教室の中へと入る。
(いっぱい花があるや。どれにしようか、悩むな)
 そうして見渡して、ふと目に止まったのは紫陽花の装飾花のドライフラワー。
 色毎に透明ケースに別けていれられている装飾花。白、水色、青、紫、桃。グラデーションのように並ぶ姿。
(これだ。紫陽花のグラデーション)
 細長い硝子瓶を手にとったのなら、濃い色から順に紫陽花の装飾花を詰めていく。
 濃い青紫色から青、水と経て白から透明へと至る紫陽花のグラデーションのハーバリウム。
「うん、見た目涼しげだし良い感じ」
 思ったよりもずっと良い出来に満足げな笑みを浮かべる。
 夏へと至るこの季節。部屋に飾ればほんの少しの涼を得られるかもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴァーリャ・スネシュコヴァ
【軒玉】

レトロな花柄の着物に紺の袴、ブーツ
頭にはゴーグルではなく大きなリボン
こ、こういうのはわからんのだが、似合ってるか…?
オズも綾華も、いつもと違ってカッコいいぞ!

俺も選んでいいのか?
じゃあ…俺は白のスイートピー!
花言葉は優しい思い出
綾華にとってこの思い出が、優しい思い出になりますように

円錐型の細長い瓶に
青いアネモネ、かすみ草、それからキンポウゲや赤いサンブリテニアなど
静かにオイルを注いで、なんとか沈ませて蓋をする

オズも俺と綾華の色を選んでくれたんだな!
とってもオズらしくて可愛い、綺麗!
綾華も素敵だな!
俺たちの思いと綾華の思いが一緒にこもってる、ってことだな?なんだか恥ずかしいけど、嬉しい


浮世・綾華
【軒玉】

帽子、マント付きの将校衣装
オズ男前~
あ。下駄も履いたのか
転ぶなよ?と笑い
わ、ヴァーリャちゃんかわいい
衣装もリボンも似合ってる

な、花ひとつずつ選んでくんねえ?それいれたい
オズが蒲公英選ぶのはやっぱりなんだか嬉しくて
スイートピー?ヴァーリャちゃん好きなん?と目を細め
二人の花が映えるように控えめなかすみ草を選ぶ
細かい作業は好きだから
細い円柱瓶に几帳面に調整しつつしんぷるに綺麗に

おお、ヴァーリャちゃんのきれいじゃん
ふ、オズのはあったかい雰囲気
嗚呼、二人とも其々イメージの色入れてくれてんのか
うん、嬉しいな
帰ったら家に飾ろ
(二人の選んでくれた花がきらきらと光る度
きっと幸せな気持ちになるはずだ)


オズ・ケストナー
【軒玉】
詰襟に帽子、マント
からからたのしいと下駄でステップ踏んで
ころばないよっ
ふたりを見たらわあっと目を輝かせ
褒められたらうれしい
アヤカ、かっこういい
うんうん、ヴァーリャかわいいっ

ハーバリウム
ふたりを見てにこにこ
選ぶ色は決まってる

花、えらんでいいの?
それじゃあね、たんぽぽ
すきな花だもの

しずく型の瓶
雪みたいな白い花びらを探し
中心が青紫のオステオスペルマムを
赤いデージー
金のかすみ草は鍵の色
白も一緒
ふたりの色つめこみ

オイルをそそいで花が浮いたら
慌ててピンセットで沈め

ほんとだ、ヴァーリャのきれい
…オズも?
その赤と黄色はアヤカとわたし?
わあ、うれしいっ
アヤカのもきれい
選んだ花が入っているのを見て微笑んで



「オズ、男前~」
「アヤカも、かっこういい!」
 将校衣装にマントを羽織った浮世・綾華(f01194)と、襟詰のバンカラ姿のオズ・ケストナー(f01136)。
 互いの姿を見合って、ひとしきり和やかな笑顔を浮かべる。綾華がオズの足下へ目を向ければ。
「お、下駄も履いたのか」
「うん、これからからなってたのしいの!」
 襟詰は似合うだおろうと思っていたけれど下駄は少し意外だった。
 オズは楽しげに下駄をからから鳴らしてステップを踏む。
「転ぶなよ?」
「ころばないよ!」
 綾華の言葉にオズはぷーっと怒りながらも微笑む。
「おまたせ」
 着付け室からヴァーリャ・スネシュコヴァ(f01757)が少し緊張した様子で出てきた。
 照れか不安か緊張か。恐る恐るといった様相のヴァーリャ。
「こ、こういうのはわからんのだが、似合っているか?」
 訊ねるヴァーリャの服装は、浅葱地に生成り縦縞模様の袖に赤椿と白椿。紺の袴に焦げ茶のブーツのレトロモダンなハイカラさんスタイル。
 いつもゴーグルをのせてる頭には、ちょっと気取って大きな紺色リボン。あまり着ないような服だから少し落ち着かない。
「わ、ヴァーリャちゃんかわいい。衣装もリボンも似合っている」
「うんうん、ヴァーリャかわいいっ」
 服装は違っても彼らはいつも通りの笑顔で迎え入れてくれて、褒めてくれた。
 少し照れくさいけれど、とても嬉しくて。
「ありがと! オズも綾華も、いつもと違ってカッコいいぞ!」
 だから、ヴァーリャもいつも通りのにっかり笑顔を咲かせたならば三人は揃って浪漫の街を洋館をめざし歩く。
 目的地はハーバリウムの体験教室。周囲の光景を眺めながら他愛もない話に花を咲かせながら庭園を通り抜けて洋館に到着。
「わ、外も凄かったけど中も凄いな!」
 ヴァーリャは思わず感歎の声を漏らす。
 受付を済ませて教室の中へ入れば、よく知っている花から見たことのない花までドライフラワーが一面に咲き誇っている。
「これだけお花があるとまよっちゃうねえ」
「そうだな……」
 オズのほわほわとした声に綾華も同意する。
 これだけ花が咲いていれば選ぶのも一苦労。暫く悩んで、ふと綾華は思い付いてふたりに声をかける。
「な、花ひとつずつ選んでくんねえ? それいれたい」
「綾華の花、えらんでいいの? それじゃあね、たんぽぽ。すきな花だもの」
 綾華の質問に直ぐに答えたのはオズ。蒲公英を選んでくれるのはやっぱり嬉しかった。
 一方のヴァーリャは花を何度も見渡しながら暫く悩んでいる。
「人の選ぶのも中々難しいな……そうだな、じゃあ、俺は白いスイートピー!」
「スイートピー? ヴァーリャちゃん好きなん?」
 ヴァーリャの答えに目を細めながら問う。彼女は花言葉が『優しい思い出』なのだと告げてから、笑みを浮かべて。
「綾華にとって、この思い出が優しい思い出になりますようにって願いを込めてみたんだ」
 そうして3人は早速制作に取りかかる。
 直ぐに壊れてしまいそうな繊細な花を傷つけないように気をつけながら、配置にとても悩む。ようやくデザインが決まってオイルを注げば花が浮いてきてしまって、あわててピンセットで沈めた。
「できた」
 その声はほぼ同時。作業に夢中で他の人のを見る余裕がなくて、ふと顔をあげて互いのハーバリウムを眺める。
 黄、赤、白。
「なんとなく似てないか? もしかして、これ」
 ふと綾華が言えばふたりも確かにと頷く。形や花は違う。
 なのに、何故か雰囲気が似ていて不思議そうに見つめれば彩りが似ていて、雰囲気が似ている。
「オズも俺と綾華の色を選んでくれたんだな!」
「オズも……? もしかして、ヴァーリャの赤と黄色はアヤカとわたし?」
 こくりとヴァーリャが頷く。
 つまり、3人は同じことを考えてハーバリウムに互いの色を閉じ込めたのだ。
「俺たちの思いと、綾華の思いが一緒にこもってる……ってことだな」
 ふとヴァーリャが云う。
 なんだか少し照れくさいけれど嬉しいと3人で微笑みあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鳴宮・匡
◆ヌル(f05378)、ニヒト(f13061)と
◆アドリブ歓迎

俺普段着でいいよな……あ、ダメ?
え、いや別に詰まらないとか、来たくなかったとかじゃなくて
……わかった、わかったからそんな目で見るなよ

(学生服に学生帽。外套を纏って。多分平時より幼く見えるだろう)

着替えたら二人の散策に付き合う
基本は二人の好きなようにしてもらって
写真を撮りたい、という時は撮影を請け負うかな

……一緒に写れって?
いや俺はいいよ、二人で撮りな
写真、あんまり得意じゃないんだよ
記録に残したくないっていうかさ

……忘れたい、とかじゃないんだけど
…………だからそんな目で見るなって
わかったよ
……他のやつには見せんなよ、恥ずかしいから


ニヒト・デニーロ
鳴宮(f01612)、ヌル(f05378)と

大正浪漫。
大正浪漫よ。

ハイカラさん、ハイカラさん。……はっ。
いや別に。テンションが上っているわけではない、私は機械なので感情とかない。……本当。
といいつつ、クラゲ柄のハイカラ衣装でご満悦。

この世界の文化、つみ重ねを感じるから、私も好き。……ヌルはどう?

……鳴宮、両手に花を添えているのだから、もっと楽しそうにして。
それと、もっとふさわしい格好があるでしょう。……着替えて。

でもせっかくだから、写真を取りましょう。形に残しておきたいもの。

……何で嫌がるの? ……不穏。
私は機械だから、思い出を忘れることはないわ。
なら、形に残っても同じでしょう?……駄目?


ヌル・リリファ
◆ニヒトさん(f13061)と匡さん(f01612)と
◆アドリブ歓迎です

わあ。こういうふくもたのしいね。(女学生衣装に、大きめのリボンをつけて)
普段UDCアースでみる服と全然ちがう。
……きないの?(悲しそうに見上げる)

(着替えて貰えば嬉しそうに笑って)

それにしてもすごいね。わたしが、そとにでたの最近だからかもしれないけど。すごく、綺麗な建物がいっぱい。

うん。写真。わたし写真すき。とりたい。

……そっかあ……。(匡さんが写真を好まないことは知っているので何も言わないがすごくしょんぼりする)

(でもニヒトさんはとめずに期待を込めてじっと見上げる)

本当?いいの?
えへへ……。うん。絶対だれにもみせないよ!



「大正浪漫。大正浪漫よ」
 姿見に映る自分の姿を眺めてニヒト・デニーロ(f13061)は言い放つ。
 ハイカラさん、ハイカラさん。紛うことなきハイカラさん。
「はっ……いや、別に。テンションが、上がっているわけではない、私は機械なので感情とかない……本当」
「でも、ニヒトさん、えらぶとき、いちばんたのしそうにしてたよ?」
 同じくハイカラ衣装に身を包むヌル・リリファ(f05378)が不思議そうに首を傾げる。
 ヌルが身に纏うのは白地に藍のぼかしが入った着物と紺の袴。
 着物は薔薇や蝶が描かれた洋風モチーフがヌルの雰囲気によく似合っている。髪を結う大きな紺リボンにさり気なくあしらわれたフリルレースも可愛らしい。
「こういうふくもたのしいよね。ニヒトさんも、たのしそうで嬉しい」
「重ねていうけれど、テンションが上っているわけではない。私は機械なので感情とかない……本当に本当」
 ニヒトは誤魔化すように言葉を重ねる。けれど、身に纏うクラゲ柄のハイカラ衣装に満足そうにご満悦のその表情はまるで隠す気がない。
 一頻り姿見で己の姿を楽しんだ後に、着付け室から出れば鳴宮・匡(f01612)が手持ち無沙汰に待っていた。
「あー、じゃあそろそろ行くかー」
 うながす匡。だけれど、彼の服装は普段着のまま。これはいけない。ニヒトはずんずんと近付く。
「鳴宮、もっとふさわしい格好があるでしょう……着替えて」
「俺は普段着が……あ、ダメ?」
「だめ」
 きっぱり。匡はどう言ってかわそうか思案していれば、ついついと服の裾を引っ張られる。
「……きないの?」
 引っ張られた方角を見れば、ヌルが哀しそうな上目遣いで此方を見ている。
 じぃっと、真っ直ぐ、無垢な眼差し。匡の良心が痛む。
「……わかった、わかったからそんな目で見るなよ」
 ついに根負けした匡は衣装コーナー適当に服を見繕って着た。
 出来れば、一番目立たなさそうなものをと思い選んだのは学生服。それは彼の容姿に似合っていてヌルは嬉しげに微笑んだ。
 黒色コートに学生服、それに学生帽を被った匡の姿は普段よりも若干幼く見えるのは、きっと気の所為ではない。

「それにしてもすごいね。わたしが、そとにでたの最近だからかもしれないけど。すごく、綺麗な建物もお花もいっぱい」
「そうね、この世界の文化、つみ重ねを感じるから私も好き」
 着替えた後は庭園で散策。馨しい花の色彩と香りを心ゆくまで楽しむ。
 ヌルとニヒトが気ままに散策して、その少し後を匡がついていく。ゆるりと過ごしていればふとニヒトが立ち止まって振り返る。
「……鳴宮、両手に花を添えているのだから、もっと楽しそうにして」
「え、いや別につまらないとか、来たくなかったとかじゃないんだけど。ふたりの好きにしていて欲しいというか。そうだ、折角ならふたりの写真でも撮ろうか」
 話題を逸らす為に、ポケットからスマートフォンを取り出す匡。けれども、これが藪蛇だった。
「そうね、せっかくだから、写真を撮りましょう。形に残しておきたいもの」
「わあ! うん。写真。わたし写真すき。とりたい」
 促すようにニヒトが言うけれど、匡はしまったと思いながら軽く首を横にふり。
「いや俺はいいよ、二人で撮りな」
「……何で嫌がるの。不穏」
 じり、じりと距離を詰めながらじーっと匡の瞳を真っ直ぐとみるニヒト。
「写真、あんまり得意じゃないんだよ。記録に残したくないというかさ」
 匡とニヒトの会話をヌルは黙って聞いている。
 彼が写真を好まないことは知っているから、何も言わないし。言えない。ただ、残念そうにしょんぼり肩を落とす。
 けれど迫るニヒトを止めずに見ているのは期待の表れ。
「私は機械だから、思い出を忘れることはないわ。なら、形に残っても同じでしょう?」
 駄目?とじっと真っ直ぐ期待をこめてニヒトは見つめる。
 一歩も退かないニヒト。これ以上どんな言葉を重ねても断れないだろう。匡は諦めたようにはぁと溜息をひとつついて。
「わかったよ……けど、他のやつには見せんなよ、恥ずかしいから」
「本当? いいの? うん、絶対だれにもみせないよ!」
 ヌルは思い切り笑む。
 ささやかな日常のささやかな記録。初夏の爽やかな風がヌルの髪をふわりと揺らした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミィ・アンデュ
普段の行動の主体は僕(しもべ)である『私』
主の僕(ボク)は静かに腕の中… だけど
今日は楽しんじゃってもいいでしょ?

貸し衣装室であれこれ手に取って
愛する僕に一番似合うものを選んであげたい
あ~んっ、お前ってば何を着ても似合う男前だよねっ
当たり前か、僕が作った最高傑作なんだから!
書生さんもクールで最高、和装なんて全部愛しちゃう
一周回っていつもの燕尾服もイイっ!
ああ、大好き。僕だけの僕…♪

だけどそこで『私もです』とは言わないのがお前
つれない態度が、お前が確かに僕と生きてる証
『主、庭園を巡るお時間が』なんて無表情でさ
いいよ、じゃあお前も僕に似合う召し物を選んで?
手繰った糸の先、彼の考える仕草にはにかんで



 普段の公道の主体は《僕(しもべ)》である『私』。
 主の《僕(ぼく)》ことミィ・アンデュ(f06394)は静かに腕の中、だけれど――。
「今日は楽しんじゃっていいでしょ?」
 宣言するようにミィが高らかに言えば愛しいしもべの手を引いて貸し衣装屋へ連れ込む。
 狙うのは自分の服ではなく、愛しいしもべに似合う服。男性用のコーナーにくれば気になるものを片っ端から手に取る。
 次々にそれをしもべの身体にあてていく。
「あ~んっ! お前ってば何を着ても似合う男前だよねっ! 当たり前か、僕が作った最高傑作なんだから!」
 まるで着せ替え人形か何かのように、手に取ってはしもべの身体にあてて似合う服を探してゆく。
 けれど、どれを着せても似合ってしまうのだから悩みもの。
 書生さんはクールで最高、和装なんて全部愛しちゃう。
「一周回っていつもの燕尾服もイイっ! 決められないっ こんなの!」
 決められない。決められるわけがない!
「ああ、大好き。僕だけの僕……」
『主、庭園を巡るお時間が』
 ミィの囁く愛の言葉。返ってきたのは無機質で無感情なしもべの言葉。
 そこで『私もです』とは云わないのがお前なのだと解っている。
 つれない態度が、しもべが確かに自分と生きている証なのだから。
「いいよ、じゃあお前も僕に似合う召し物を選んで?」
 手繰った糸の先の彼。ミィの言葉にしもべは考える仕草をみせていて、それもまた愛おしい。
 ミィははにかみ、笑んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

桜橋・ゆすら
貸衣装は貴婦人風のドレスを選択
ボンネットに、レースの手袋
フリルをあしらった日傘に、高めのヒール…
初めて身につけるものばかりで新鮮です

庭園の美しい花々を心ゆくまで眺めてから洋館へ
はーばりうむ?お花を、硝子の中に容れるのですか?
枯れることのない永遠の美…とても、素敵

では、細長い小瓶を、2つ
一方には桜、もう一方にはユスラウメ
そしてそれぞれに、お揃いの花を…
庭園に咲く季節の花の中で一等美しかった花を添えましょう

こちら、ペンにできますか?
そう、明治と大正の雰囲気に合う意匠の“はーばりうむぺん”をお願いしたいのです

ゆすらは、新たな未来を貴女と紡ぎたい
そんな想いを密やかに込めて

衣装・花含め、アドリブ大歓迎



 初夏の花々が競うように咲き乱れていた。
「とても、綺麗ですね。初夏の花はとて力強く色付いているよう」
 日傘をさして庭園をゆるりと歩く桜橋・ゆすら(f13614)。
 身に纏うのは薔薇の造花が飾りに使われた白色ドレス。ベージュのフリルレースがあしらわれて華やか。けれど、少しレトロな雰囲気に一目惚れした。
 いつもは三つ編みにしている髪も解いてふんわりロングヘアにしたのなら西洋人形のように可憐な姿になった。そして、高めのヒール靴のお陰か視界だっていつもと違ったりして。
(初めて身につけるものばかりで新鮮です)
 そうして、庭園の花々を心ゆくまま楽しんだのならば、洋館に向かう。
 様々な作成体験が立ち並ぶ中で、目に止まったのはハーバリウムの作成体験のコーナー。
「お花を硝子の中に入れるのですね。枯れることのない永遠の美……とても、素敵」
 其れは何だか百年重ねて人の形を得た自分達にも似ている。
 少しだけ運命を感じ体験してみようと決めて、教室の中へ。

 用意したのは細長い小瓶を2つ。
 一方にはゆすらうめを、もう一方には桜を。
 そして、両方にそれぞれミモザの花をいれたなら綴じ込める。

「ふふ、庭園に咲いていたミモザも一等に美しかったけれど、こうして見るともっと綺麗ね」
 桜や桜桃の薄桃とミモザの明るい黄彩。互いに引き立てあって、小さな硝子の中で春の色彩を奏でている。
「こちら、ペンにできますか? はーばりうむぺんをお願いしたいのです」
 店員は勿論と頷いて見本を何本か差し出す。その中でレトロモダンな意匠のボールペンを選び作成したハーバリウムを店員に渡した。

(――ゆすらは、新たな未来を貴女と紡ぎたいの)

 この透き通った花水槽のように、新たに紡ぐ物語は透明硝子の暖かな未来。
 花水槽のペンに込めたのはそんな密やかな願い。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリマ・バートル
新弥くん(f04640)と一緒に参加
色んな衣装があって迷うけど、ハイカラさんの服着てみようかな
どう? 似合う?
って、新弥くんは着ないの? 似合うと思うんだけどなぁ

二人で手作り石鹸の体験教室へ
最近、ちょっと女性としてなんか負けている気がするから、ここで一つ見返してやろうかな
まぁ私の女子力ってやつを見ててよね

そんなことは言ってみても、基本的に不器用なので悪戦苦闘
危なっかしい手つきで、なんとか作業を進めていく
出来上がるのは、歪な形をしたオーソドックスな石鹸

出来上がった石鹸は新弥くんに
パティシエするなら石鹸も使うよね?
ちょ、ちょっと変な形だけど、ちゃんと使えると思うから、そこは安心してね


雨宮・新弥
>アリマ(f00656)と同行
>アレンジ等歓迎
>普段着

雰囲気あっていいな、こういうの。結構好きだわ
……え、着んの?
いや、まあ……似合うけどさ。

>石鹸作り体験へ
いや俺男だし…負けてるってこたないと思うけど…
…まぁ、やる気に水差すことも無いか
あ。でも結構可愛いの作れんだな
宝石みたいなのいいな、精油とか入れて…

>手順をよく確認して、手際良く
>作るのは甘く香りづけた宝石石鹸
>アリマに度々はらはらしつつ

…女子力。
いや、アリマらしくていーんじゃん?
なんか安心するわ。ほんとほんと。
サンキュ。大事に使わせてもらう
くれるなら…せっかくだし、交換するか
……食うなよ?



「色んな衣装があって迷うけど、やっぱり此処は王道のハイカラさんかな。ねぇ、こっちの紫と、この青のとどっちがいいと思う?」
 アリマ・バートル(f00656)はきらきらとした表情で衣装を手に取って雨宮・新弥(f04640)に訊ねれば、新弥は少し驚いた顔をする。
「……え、着んの? あと、そのふたつなら青の方が好き」
「勿論。というか着たいから貸し衣装屋さんにきたんだよ。ってことで着替えてくるね!」
 何を当たり前なと言わんばかりの顔をしてから風のように着付け室の中へと向かう。
 暫くして戻ってこれば、アリマの姿はすっかりハイカラさん。
「どう? 似合う? って、新弥くんは着ないの? 似合うと思うんだけどなぁ」
「俺はいいよ。別にこのままで。まぁ、服は似合うと思う」
「ありがと! なら、行ってみたいところがあるんだ」
 アリマの言葉になんだろう
「最近、ちょっと女性としてなんか負けてる気がするからね」
 此処で何かひとつ見返してやりたいと、アリマが連れてきたのは石鹸作りの体験教室。
「いや、俺男だし……アリマが負けてるってこたないと思うけど」
「それでも、女の意地が許さないんだよ。まぁ、私の女子力ってやつを見ててよね」
 そう意気揚々と石鹸作りを始めるものの、元来不器用であるアリマの手付きはとても危なっかしい。
 悪戦苦闘しながら、なんとか練り込んで楕円形に成形していく。
 ちなみに型が用意されていたことにアリマが気付いたのは出来上がってからだった。

(危ない手付きだな……まぁ、やる気に水差すこともないか)
 アリマの手付きは危なっかしい。見ている新弥の心臓に悪い。
 けれど口を出して水を差すのも無粋なこと。新弥は自分の石鹸作りに戻る。
 新弥の手付きは、アリマと違ってとても手際が良い。
 石鹸作りもよくよく考えれば料理と勝手が似ている。そう気付いたら以前やる気が出てきた。
 折角ならば精油を混ぜて、宝石のようにお洒落に作ってみるのもいいかもしれない。

 冷やし固めれば出来上がり。
 アリマは出来上がった石鹸を新弥へと差し出す。
「パティシエするなら石鹸も使うよね?」
「うん、まぁ使うけど。なんか、アリマらしくていーじゃん? 安心するわ。ほんとほんと」
 新弥はまじまじとアリマの石鹸を見つめる。オーソドックスな形を目指した痕跡が見受けられはしたものの、面影はない。
 女子力とは一体難だろう。そんな新弥の視線を感じたのか、アリマは言い訳をするように慌てはじめる。
「ちょ、ちょっと変な形だけどちゃんと使えると思うから、そこは安心してね? 使っちゃえば形なんて関係ないよ。言葉に棘があったような気がするけど聞かなかったことにするね」
「いやいや、アリマらしくていいと思う。本当。サンキュ、大事に使わせてもらう」
 くれるというのなら有難く受け取って、ならば自分のものを彼女に渡そうと新弥は石鹸を差し出した。
 宝石に似せて作った新弥の石鹸は琥珀糖にも似ている。自分でも言うのはなんだけどおいしそうに出来た逸品。
「……食うなよ?」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

千桜・エリシャ
クロウさん(f04599)と

この街はエンパイアの未来の姿でもあるのかしら
不思議な感覚ですわ
洋装ドレスにボンネットを被った淑女姿で参りましょう
もう、素直じゃない方
クロウさんも今日は少しだけお利口さんに見えるかしら、なんて
紳士なエスコートを期待しておりますわ

万華鏡作り体験へ
お互いをイメージしたものを作ることに
私は
外の意匠は静謐の蒼
中を覗けば鮮紅が花咲かす
そんな万華鏡を作りましょう
あなたの裡に秘めた熱さを表現できていたらいいのですけれど

あら
私、普段は旅館の女将をしておりますのよ
料理はそれなりに、かしら
接客のほうが得意ですもの

これ、お互いをどう見ているのか自然とわかってしまって
少し恥ずかしいですわね…


杜鬼・クロウ
羅刹女◆f02565と
※普段は名呼ばず
アドリブ◎


バンカラ
学ランに高下駄
黒の外套
帽子

名に違わず浪漫溢れる街だな(周囲見て
…ふぅん
馬子にも衣装だなァ、女(ドレス見て弄る
冗談だ
様になってると思うぜ(ニィ
黄昏時まで俺に付き合えや
退屈はさせねェよ

任務は頭の片隅に置く
初の万華鏡作り体験に胸踊らす
本体が神器の鏡故、自然と惹かれた
彼女イメージの万華鏡に作り雑談

赤、黒、金のセロハンや真珠のビーズ
筒は枝垂桜に青い蝶
番傘に鈴がころり

羅刹女見てると生活力皆無(振る舞いが本物のお嬢様っぽいから)に見えるが料理とか出来ンのか?
その手は首を狩るだけでなく人の笑顔をも守ってるンだな
少し見直した
お前の中の俺ってそんなんなのか



「この街はエンパイアの未来の姿でもあるのかしら。不思議な感覚ですわ」
 ほうっと千桜・エリシャ(f02565)は感歎の溜息を零す。不思議な感覚だけれども厭な気はしない。
 エリシャが身に纏うのは葡萄酒色のドレスとボンネット。ほろ苦いチョコレイト色の日傘をさして歩く姿はまさに淑女。
「……ふぅん。馬子に衣装だなァ、女」
「もう素直じゃない方」
 並び歩く杜鬼・クロウ(f04599)の悪態にエリシャがふふりと笑めば、バンカラ姿のクロウがニィと笑む。
「冗談だ。様になってると思うぜ。黄昏時まで俺に付き合えや、退屈はさせねェよ」
「紳士なエスコートを期待しておりますわ」
 ゆるりと浪漫の街を歩き、花園を抜けて、辿り着いたのは様々な体験が出来る洋館。
 体験一覧を眺めていれば、クロウの目は万華鏡作りに止まる。本体が神器の鏡故に自然と惹かれたのだ。
「お、これ良いんじゃねェか」
「あら、万華鏡。素敵ですわね。参りましょう」
 ふたりは万華鏡作りのコーナーへと向かうと向かい合わせに座る。
 折角ならば互いをイメージしたものを作ってみようと決めて早速制作に取りかかる。
 イメージを固めている際は互いに無言だったけれど、一度手を動かせば雑談に花が咲く。
 セロファンを切る手付きは淑やかに本物の令嬢のよう。万華鏡にセロファンを流し入れて試し見る仕草さえ気品に溢れている。
「生活力が皆無に見えるが料理とか出来ンのか?」
「あら。私、普段は旅館の女将をしておりますのよ。料理はそれなりに、かしら。接客のほうが得意ですもの」
 エリシャの仕草は上品だけれど物腰も柔らかく。接客が得意という
「その手は首を狩るだけでなく人の笑顔も守ってるンだな。少し見直した」
「ありがとうございます。と、完成しましたわ、クロウさんを上手く表現出来ていると良いのだけれど」
 穏やかに笑みながら手渡した万華鏡の外の意匠は静謐の蒼。中を覗きくるくると世界をまわせば鮮紅が花を咲かす。
 裡に秘めた熱を表現したつもり。万華鏡を覗き終えたクロウがひとこと。
「お前の中の俺ってそんなんなのか」
「ええ。どうかしら?」
「なんというか……女も見てみろ、解るから」
 クロウは自ら制作したエリシャをイメージした万華鏡を差し出す。
 筒には枝垂れ桜に青い蝶、番傘に鈴がころりといった和のモチーフ。中を覗けば紅、黒、金や真珠が踊り出す。
(とても美しい万華鏡。ですが――)
 そうして、クロウが言わんとしていることをエリシャも理解した。
「これ、お互いをどう見ているのか自然とわかってしまって少し恥ずかしいですわね……」
 確かに嬉しい。嬉しいのだけれども、なんだかとても気恥ずかしい。
 万華鏡越しの世界はぱらぱらと移ろい不確か。けれど、互いの心根だけは正確に投影していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

三条・姿見
【エイリアンツアーズ】の一員として行動する。
誘われた身だ、存分に楽しまなければな。

衣装は和装にインバネスコート。
制作体験のイメージになる材料がほしい。
庭園の散策へ足を運んでみるとしよう。

草花とは自然に育つものだと思っていたが…
手を加えることで、こうも見事になるものか。
この風景も季節と共に移り変わるのだろう。
今だけの時間を…景色や声、風の音まで
存分に記憶に留めておきたい。

さて…標本であれば長く持つだろうか。
俺はハーバリウムを制作する。
容器を庭園の一部に見立て、葉や花をおさめたい。
照明に透かして仕上がりを眺めてみてもいいかもしれんな。
皆の作品も興味深い。ぜひ拝見しよう

二人称:名前+氏
※アドリブ歓迎


ニオク・イグズヴィ
【エイリアンツアーズ】の皆と一緒に参加
(呼び方はファーストネームを呼び捨て)

衣装は詰襟に制帽とマント、下駄履きのバンカラスタイル
こうやって皆でお出かけってわくわくするな!
レトロな雰囲気も悪くない

体験教室もいろいろあって目移りするな
それじゃあ俺はこのレジンアクセサリーってのを作ってみようか
この時代っぽいモチーフ……花や蝶のパターンの下地を金縁のフレームに収めてレジン液で封入っと
鎖で繋げられるようにすればチャームの出来上がりっと
結構楽しいな、コレ
ハマっちまうかも?
皆はどんなの作ったんだ? 良ければ見せ合いっこしようぜ!
(アドリブ、絡み歓迎)


パウル・ブラフマン
【エイリアンツアーズ】の皆と社員旅行☆
やってきました、大正浪漫~♪
オレもココ来るって決めてから
本でめっちゃ勉強してきたんだ!(見た目に寄らず真面目)
詰襟学生服に袖を通してタイムスリップ気分。
ニオクくんとオレ同級生っぽくない?皆もちょ~似合ってるよ!

庭園散策はヴィっちゃん(ヨシュカくんの猫/ヴィルヘルム)に構いつつ
隻眼ながらしっかりと植生を観察。
手作り体験希望組のクルーさん達と洋館に到着後は
魅惑のラインナップからとんぼ玉作りをセレクト♪
ブルーの球体硝子を作ったら
花弁をイメージしながら線入れをして…
じゃじゃーん、バラの出来上がり☆
皆のもすげー綺麗でタコ感激!
後でキララちゃんにも写真撮って貰おうね♪


ヨシュカ・グナイゼナウ
(アドリブ絡み歓迎)
前半の名前+さま

【エイリアンツアーズ】の皆さまと

軍服と揃いの帽子を身に纏いくるりと一回り。これは格好良いのでは?
季節の花咲く御庭をヴィルヘルムを連れて歩きます。沢山の花に圧倒されそう!
ヴィルヘルムはあまり興味なさそうだね?
お庭の散策が終わりましたらきらちゃんさまとは一旦お別れ。帰ったらお写真を見せて貰いたいな

庭で見た青い矢車草をモチーフにトンボ玉を作りたいな
あの青がとてもきれいだったので。透明の硝子のなかに閉じ籠めるように
初めての事だから上手く行くかはわかりませんが、それでもきっときらきらとして
小さいけれどわたしだけの矢車草

皆さまはどんなものをお作りになったのでしょうか?


ユキ・スノーバー
【エイリアンツアーズ】の皆と

普段着はコートだから、書生さんスタイルに挑戦どきどきっ!
学生帽も被って、丸眼鏡は画面表示で
皆のも似合ってて良いねって飛び跳ねそうだけど、こけそうだから画面キラキラ

お花見るのと、歩くのに慣れたいからお庭探索ーっ!
ぼく達だけじゃなくてちょうちょも釣られてお花巡りしてるんだねっ。
こんなに沢山のお花が並んでたら、地面に虹がかかってるみたい
キララさんの写真、後で見たいなみたいなっ!

体験教室はレジンアクセサリー
ニオクさんの見て、成程!ってなりつつぼくも作成開始っ!
土台は正方形のフレームだけど、暖色のレジン液に花・葉っぱ・ちょうちょモチーフを散らして
きらきらのラメで出来上がり!


キララ・キララ
【エイリアンツアーズ】のみんなで!
タイショージダイ!アーカイブでみたことある!
きららね、ハカマっていうの着てみたい。ハイカラさんするー!

まずお庭の散策ね、アートにはイメージが大事だものね。うんうん。
みんながステキなものをつくれますように!
きららはお花をたくさん見ておきたいから、おさんぽを続けます!
みんなとはいったんここでさよなら。
つくったもの、あとでみせてね!

UDCアースにしかないお花がたくさんあるのよね。
その色や形や、においも覚えてー、また新しい絵を描くの!ふひひ!
あっ!最近ねえ、おきゅうりょうでカメラを買ったのです!
たくさん《撮影》しておくね!

二人称:カタカナ呼び捨て
アドリブ歓迎



「やってきました、大正浪漫~」
「タイショージダイ! アーカイブで見たことがある!」
 パウル・ブラフマン(f04694)が拳をあげれば、ハイカラ服を身に纏うキララ・キララ(f14752)がキャッキャと黄色い歓声をあげた。
 今日はエイリアンツアーズの社員であつまって社員旅行。
「さっすがキララちゃん。オレもココ来るって決めてから、本でめっちゃ勉強してきたんだ!」
 得意げにふふんと胸を張るパウルが纏うのは詰襟学生服。袖を通すだけであっという間に時間旅行。
「ってか、ニオクくんとオレ、同級生っぽくない? 皆もちょ~似合ってるよ」
「ありがとう。レトロな雰囲気も悪くないな」
 答えたニオク・イグズヴィ(f00312)の姿は詰襟制帽マントに下駄履きのバンカラスタイル。
「私も……これはこれで格好いいのかも知れませんね」
 白色軍服将校姿のヨシュカ・グナイゼナウ(f10678)はくるりと一回転。思わず気分が高鳴った。

 一同でゆるりと庭園巡り。
「美しいな。一瞬一瞬が特別に感じる」
「うんうんっ! こんなに沢山のお花が並んでるとちょうちょもぼく達みたいにつられてお花巡りしちゃうよね。沢山咲いてるお花もまるで地面に虹がかかっているみたい!」
 和装にインバネスコート姿の三条・姿見(f07852)の呟きに画面にまんまる眼鏡を映して書生姿のユキ・スノーバー(f06201)は興奮気味に言葉を返す。
 庭園散策を楽しむヨシュカも飼い猫のヴィルヘルムへと向けてみればふわぁと大きな欠伸をして毛繕いをはじめたからおもわず笑う。
「ヴィルヘルムはあまり興味がなさそうみたいだね」
「はっ」
 キララは慌てて毛繕いをするヴィルヘルムへとシャッターを切った。
「にくきゅうゲットです!」
「あれ、キララさん、そんなカメラ持ってたっけ?」
 ユキに訊かれれば、キララはよくぞ訊いてくれましたと言わんばかりにえっへんと自慢げに胸を張る。
「実は最近、おきゅうりょうでカメラを買ったのです! ふんぱつしました! 」
 キララとユキの戯れを微笑ましく眺めながら、パウルが時間を確認すれば、もう良い時間。
「じゃ、そろそろ手作り体験に移動しよっか」
 パウルがそう促せば、キララはふるふると首を横に振る。
「あ、きららはね。きれいなお花を沢山見ておきたいから、おさんぽを続けます! だからみんなとはいったんここでさよならですね」
「わかったよっ! キララさんのお写真、後で見てみたいなっ! 見せてくれるかなっ」
「もちろん! 芸術家きららにおまかせです!」
 ユキに頼まれれば得意げに笑いながらキララは答えた。
「それではきらちゃんさま、私も一旦失礼します。いきましょうか、ヴィルヘルム」
 ヨシュカの後をついていく灰色の猫が気怠げに一鳴きした。

 みんなを見送った後、再びキララはカメラを手に取る。
「さて、キララはいっぱい写真をとっちゃおう!」
 きっとみんなはきらきらすてきなアートを作って帰ってくるだろうから。
「世界の"いいね!"を沢山切り取るよ!」
 シャッターチャンスを一瞬たりとも逃さぬように、キララはカメラで世界を切り取り続けた。

●とんぼ玉
 魅惑のラインナップの中からとんぼ玉作りをチョイスしたのはパウルとヨシュカ。
「庭で見た矢車草をモチーフのとんぼ玉を作りたいのです」
「あー、あの青い花だっけ。いいね、青。作ろっか」
 ふたりはそれぞれとんぼ玉を真剣に作っていく。
「じゃじゃーん、バラの出来上がり!」
 先にぱぁっと明るい声をあげたのはパウル。ブルーの球体硝子に花びらをイメージしながら線をいれた白薔薇のとんぼ玉。
「わあ、本当に薔薇が咲いているみたいですね」
「ヨシュカくんのもすげー綺麗でタコ感激!」
「初めてのことだから上手くいったかはわかりませんが、そういってもらえると嬉しいです」
 ヨシュカが作ったとんぼ玉は水色の地に藍色のとんぼ玉を矢車草と葉を描き更に透明な硝子で綴じ込めた涼しげで透明感溢れるデザインのもの。
「皆様はどのようなものをお作りになられたのでしょうか?」
「SNSで聞いてみてもいいけどここはあえて合流してからの方が面白いかも! みんなで見せ合いっこした後は、キララちゃんに写真撮ってもらおうね♪」
「はい」
 小さいけれど、私だけの矢車草。出来上がったばかりのとんぼ玉を愛おしげに手で抱きながらヨシュカは笑い答えた。

●レジン作り
 様々な体験があって目移りはしたけれど、レジンに惹かれたニオクとユキはアクセサリー作りへ。
「この時代っぽいモチーフを折角なら作りたいな」
「そうだね! 旅の思い出、旅の思い出!」
 並ぶパーツの前でふたりはうーんと考える。シルバー、ゴールド、ピンクカッパー、アンティークゴールド。フレームやパーツは色だけで様々なものがあって目移りしてしまう。
 その中からニオクは金色の懐中時計型のレジンフレームを選ぶ。下地に敷くのは花や蝶のアンティーク風のシート。レースフラワーやパーツを埋め込んだのならレジン液で封入して硬化。
 金具を取り付けて鎖で繋げられるようにすれば、チャームの出来上がり。
「わー、ニオクさん綺麗っ! なるほど、そうすればいいんだねっ」
 隣でニオクの作業を見ていたユキも彼の真似をしてつくり始める。
 選んだのは正方形の金古美のフレーム。レジン液をカラーパウダーで薄く色を付けたら暖かなピンクとオレンジのグラデーション。お花や蝶々、葉っぱのパーツを散らしたなら、きらきら輝くラメ入りレジンで綴じ込めて出来上がり。
「結構楽しいよな、コレ。ハマっちまうかも」
「えへへっ! 雪みたいにきらきらのアクセサリーが出来て満足っ! 楽しいから、またやりたいねっ!」
 ニオクの言葉にユキはきらきらした映像を顔のモニターに映し出す。
「皆はどんなの作ったんだろうな?」
「後で見せ合いっこするのが楽しみだねっ」

●ハーバリウム
 草花は自然に育つものだと思っていたけれど、それは間違いだった。
 手を加えることで斯くも色鮮やかに咲くとは――姿見はその光景に心を奪われた。
「――今だけの時間を、景色や声、風の音まで存分に記憶に留めておきたい。そして、いつでも思い出せるように植物標本を作ろうか」
 球体の硝子小瓶を手に取ったのなら、庭園をイメージして花を詰めていく。勿論、詰める花は先程庭園で見た花が中心。
 オイルを注ぎ蓋をして綴じ込めたのならば、出来上がったハーバリウムを持ち上げて、照明に透かして眺めれば尚も一層深く鮮やかに花水槽の世界が燦めいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユエイン・リュンコイス
(連携アドリブ歓迎)
大正浪漫、か。古きと新しさが混じり合った時代。僅か14年、にも関わらずその濃さは他に引けを取らない…。
実際の時代にいたわけではないのに、何処と無く懐かしさを感じるのはなぜだろうね?

服は、そうだね。外見相応に女学生らしい姿もいいけれど、やはりこの時代といえば書生姿かな。
シャツに詰襟、白線帽子に軍用マント。腰には紐吊りの愛読書。勿論、「リュンコイスの詩」さ。

気ままに本を読んだり、トンボ玉を作りにも挑戦してみようかな。
黄色を基調とした、満月の様な玉。もしくは青に黄色を混ぜて、星空の様な物も中々素敵だろうね。
もし良いのが出来たら、「白輝蒼月のアミュレット」に組み込んで見ようか。


明智・珠稀
これが大正浪漫…!
素敵な街並み、そして衣装ですね、ふふ!
ぜひ素晴らしい衣装で街に溶け込む、花を楽し慈しむ時間を持ちたいものです、ふふ!

あぁ、もし可能であれば…私に合いそうな服を見繕っていただけませんでしょうか?
どんなものでも構いません♡ふふ…!

■行動
花々と、いらしている方々を愛でつつ散歩いたしましょう。
花は特に薔薇が好きです。
以前、薔薇園で薔薇を育てる手伝いをしていたもので…。
この華やかさ、そして芳香…あぁ、素晴らしい…!(うっとり)

(スケッチセットを手に)
ぜひこの花々の美しさ、楽しそうな人々をスケッチさせていただきたいです…!
なんと幸せな時間でしょう…!(恍惚)

※アドリブ&絡み、ネタ大歓迎♡




 僅か14年という短い期間だと云うのに、このように景観を保存されている大正という時代。
 古きと新しさ、和と洋、様々なものが混ざり合ったこの時代は、100年近く経とうとも未だに真新しく人の心を引きつけて止まない。
(――実際の時代に居たわけではないのに、何処となく懐かしさを感じるのは何故だろうね。それが此処が人気の理由かもしれないけれど)
 大正浪漫。ユエイン・リュンコイス(f04098)はそのようなことを思いながら浪漫の街を気ままに歩く。
 外見相応に女学生の姿も良いとは思ったけれどこの時代であれば折角ならばと書生姿を身に纏う。
 シャツに詰め襟、白線帽子に軍用マント。腰には紐吊りの愛読書を引っ提げて石畳に高らかに靴音を響かせる。因みに本は勿論リュンコイスの詩。
 さて、色々やりたいことはあるけれどまずはとんぼ玉でも作ってみようかと向かったのは体験教室。
 藍色の硝子棒を溶かして固めたその上に、星をイメージした金色と、満月をイメージした生成りの球体と、白の雲の絵をつけたのなら月夜のとんぼ玉の出来上がり。
 思ったよりも良い出来に、ユエインは軽く笑む。此程の出来ならばアミュレットに組み込んでみるのもいいかも知れない。
 体験教室を後にして、向かったのは庭園の薔薇が咲く場所。
(これだけの薔薇が咲いていると、香りもすごいね)
 美しい薔薇と華やかな芳香の中、読書に耽るのも悪くないかも知れない。
 薔薇園のベンチに腰掛けたユエインは愛読書の頁を開いた。


「これが大正浪漫……! 素敵な街並み、そして、衣装ですね、ふふ!」
 絶世のイケメンから漏れるのは、なんとも残念な笑み。
 浪漫は素敵。浪漫は最高。ならば笑みを零さずしてどうするのですと云わんばかりに明智・珠稀(f00992)の口元に妖しげな笑みが浮かんでいる。
 そうして向かうのは貸し衣装屋。折角の浪漫街、浪漫を身に纏わぬなどとんでもない。
「嗚呼、もし可能であれば私に合いそうな服を見繕っていただけませんでしょうか?」
「お客様は何を着られてもお似合いになると思いますが、何かご希望のものは御座いますか?」
「どんなものでも構いませんよ! ふふ……!」
 店員は暫く悩んで持ってきたのは書生服一色。
 白のシャツに鉄紺の着物。茶混じりの鈍色の袴。そして薄手の黒色のケープと光沢のある黒の革靴。
「お客様は黒色がお似合いになると思いましたので。バンカラスタイルよりはハイカラに靴も下駄ではなく革靴にしてみましたがいかがでしょうか?」
「ふふふ! 最高です……!」
 早速着替えれば、花々と人々を愛でつつ散策する。
 散策してる中、自然に訪れていたのは薔薇園。
 溢れんばかりに咲いている薔薇は優美な芳香を周囲に漂わせて、人々をただ酔わせている。
(花は特に薔薇が好きなのです。惹かれるのは、以前薔薇園で薔薇を育てる手伝いをしたからでしょうか)
 そうして薔薇を愛でていれば、その薔薇越しのベンチで読書に耽る学生服姿の少女の姿を見つけた。
(ふふ……! 彼女はまるで薔薇の精のようですね)
 珠稀はベンチに腰掛けるとスケッチブックを開き、鉛筆を執る。
 やはりこの光景は人がありてこそ完成するのだ。今日は彼女を描いてみようか。
(なんと幸せな時間でしょう……!)
 スケッチブックに鉛筆を走らせて、珠稀は恍惚の笑みを浮かべた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート
【虹結・廿(f14757)と】

へぇ、明治大正建築か
なんつーか…古めかしいけど、洒落た雰囲気はあるな
ん?あぁ、服もここの様式に合わせられるのか…
じゃぁ…将校服?って奴にしようかね 廿はどうする?

飯時まで時間あるし、散策するか?
ちゃんとついてこいよ?はぐれたら探しにくいし
何なら服の裾とか掴んでおくといいさ

へぇ、何か作れるんだってよ?レジンアクセってやつでも作るか?
──廿、お前結構上手いな。よくできてるよ
やっぱこういうのって、女の方がデザインセンスあるような感じするな
俺のはあんまり綺麗に出来てるかはわかんねえけど…
──ん、これやるよ
どっかに着けて、洒落っ気でも出したらいいんじゃね?
似合うと思うぜ


虹結・廿
【ヴィクティム・ウィンターミュート(f01172)と】
オシャレなど、廿はあまり分からないですが似合っているのでしょうか?
(ハイカラさん風衣装を着て、くるりと。分からなくとも褒められれば嬉しい)

廿はそこまで幼く見えますか?迷子にはなりません。
(ヴィクティムの服の裾を少し摘んで、雛鳥の如く後ろを歩む)

レジンアクセ、時間も余裕があるそうですし。やってみるのも良いと思いますよ。……え、廿も、ですか?
(アクセに興味も無い。しかし、なんやかんややる事に。精一杯、頑張ろう)

綺麗かは……廿も分かりません。
(それでも、悪いものとは思いません)

どうですか、似合いますか?
(分からなくとも、褒められるのは、嬉しい物)



 明治大正建築が立ち並ぶ古めかしくも洒落た雰囲気の浪漫街。
「へぇ、中々良い雰囲気のところだな」
 モダンの街へと降り立ったヴィクティム・ウィンターミュート(f01172)は周囲を見渡して、感歎を漏らす。
 敵の出現までには未だ時間がある。飯時までも時間がある。
 一先ず時間を潰そうかなんて考えてパンフレットを見てみれば貸し衣装屋の案内が目に入った。
 そして、一先ず服装を此処の様式にあわせようと貸し衣装屋に訪れた。
「……将校服? って奴にしようかね。廿はどうする?」
「廿は、お任せします」
 指示をください。
 なんとなく虹結・廿(f14757)の返答は予想はしていた。しかし、ヴィクティムも指示を出せる程女性の服装に関して明るいわけではない。
 どうしようか少し考えて、廿の服装については店員に任せることにした。
「じゃあ、また後で」
「はい」
 そうして別々の着付け室に入る。
 手早く着替え終えたヴィクティムが、ロビーで少し待てば廿も着付け室から出てきた。
「オシャレなど、廿はあまり分からないですが似合っているのでしょうか?」
 控えめにくるりとすれば、赤色矢絣の袖が空に踊る。店員に勧められるがまま着たのは赤色矢絣紫袴のハイカラ女学生服。
「ああ、似合ってるんじゃないか? 悪くはないと思う」
「そうですか」
 ヴィクティムにそう言われれば、解らないなりにも嬉しいもので少しむず痒い気持ちになりながら廿は言葉を返す。
「さて、散策しに行くか。ちゃんとついてこいよ?はぐれたら探しにくいし、何なら服の裾とか掴んでおくといいさ」
「廿はそこまで幼く見えますか? 迷子にはなりません」
 なんて口で言うものの、ヴィクティムの裾をきちんと掴み彼の後ろを歩く廿はまるで雛鳥のようだった。

 浪漫の街を通り、花庭園を抜けて入る洋館。案内板を見て気になったのはレジン教室。
「へぇ、何か作れるんだってよ? レジンアクセってやつでも作るか?」
「時間も余裕があるそうですし。やってみるのも良いと思いますよ……え、廿も、ですか?」
 アクセにも体験にも興味はない。
 よく解らないけれど、やることになったのなら精一杯やってみようと決める。
 一先ず思うがまま丸形フレームにドライフラワーを並べて硬化してみた。
「廿、お前結構上手いな。よくできてるよ」
「そうなのですか。自分ではよくわからないのですが」
 透明レジンで花を綴じ込めただけ。けれど、それが美しい。
「やっぱこういうのって女の方がデザインセンスあるような感じがするよな」
「綺麗かは……廿もわかりません」
 判断は出来ないけれど廿は悪いものではないということだけは解る。
 自分が作った透明花レジンを見ていれば、すっと視界の脇から何かを差し出された。
「ん、これやるよ。どっかに着けて、洒落っ気でも出したらいいんじゃね?」
 差し出されたのはヴィクティムが作ったネックレス。シリコンモールドで正方形に成形された海のような色のレジンに金具をつけてネックレスにしたもの。
 目立つ気泡がいくつも入ってしまっているが、却ってそれが水中のようで綺麗だった。
「どうですか、似合いますか?」
「似合うと思うぜ」
 言われた通りにかければ似合うと褒められて。
 自分ではやはりよく解らないものの褒められれば嬉しいものだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

出水宮・カガリ
ステラ(f04503)と

将校の衣装を
……ああ、ここにある衣装は
この衣装で、生きるひとびとは

…何でもない
よく似合っているよ、ステラ
カガリは…少し、胸の内がちりりとする、くらいだ
…1人にしないでくれ

ステラの部屋に飾るはーばりうむを、一緒に作る
あの部屋は確かに、整っているがものが少ない
もっと、賑やかでいいだろう
これは、押し花とは違って色褪せないらしいしな

花は…今は、薔薇が季節だから
赤と青のものを、それぞれの顔が、よく見えるように
カガリも、入れてみていいか
うまく入るかな…

…それぞれの瓶でなくて、ひとつの瓶なら、ひとりではないから
寄せてくれる体に、自分からも寄り添って
…大丈夫。ステラがいる、から。


ステラ・アルゲン
カガリ(f04556)と

衣装は将校
我ながらドレスよりこういう衣装のが似合う
カガリもよく似合ってるじゃないか
私より彼の方が様になっている気がする
カガリ?もちろん一人になんてしないよ

ハーバリウムを作りに行く
部屋が殺風景だから彩りが欲しかったんだ
これなら枯れることもないだろうし

なぁカガリ、何の花を入れればいいと思う?
赤と青の薔薇? いいかもしれないな
もちろんカガリも花を入れてみてくれ

薔薇をメインにしつつ他の花と一緒に雫型の瓶へ
今日の思い出と共に詰めよう

…先程からカガリの様子が気になる
ここの景色に思う所があるのだろうか
いつもより身を寄せておく
寂しい思いをさせないように
大丈夫、私はどこにも行かないよ



 並び歩く金と銀。
 ふたりは揃いの白い青年将校の服を着て浪漫の街を歩いている。
「我ながらドレスよりもこういった衣装の方が似合う」
 白銀の将校――ステラ・アルゲン(f04503)は街角硝子に反射する自分の姿を眺めてぽつりと呟いて。
「けれど、流石にカガリ程ではないな。カガリの方がよく似合うし様になっている……カガリ?」
「……えっ、ああ、すまない。ステラ、何か言ったか?」
 隣歩く金の将校――出水宮・カガリ(f04556)へと視線を向けてみれば、彼は何やら青白い顔。
「カガリはやはりこういった服が似合うなと言ったんだけれど……カガリ、どうした?」
「いや、なんでもない。ステラもよく似合っている」
 カガリがそういうから、ステラはそれ以上は踏み込まない。
 だけれど。
 その直後にカガリがステラの裾を掴んで『一人にしないでくれ』などというから、ステラは『勿論一人になんてしないよ』と優しく笑んだ。

 浪漫の街と花園を抜けて洋館へと入り、ハーバリウムのコーナーへ。
 目的はステラのいまひとつ彩りに欠ける部屋に彩りを足すハーバリウムを作る為。
「部屋が殺風景だから、彩りが欲しかったんだ」
「あの部屋は確かに、整っているがものはすくない。もっと、賑やかでいいだろうとは思っていた」
 やはり、ふたり考えることは同じで。
「それに、これなら枯れることもないだろうし」
「押し花と違って色褪せないし、手入れの必要もない」
 カガリとステラは頷き合う。手入れも枯れも色褪せも気にせず飾っておけるなどインテリアにぴったりではないか。
 インテリアとするならと考えて少し大きめの雫型の硝子瓶を選ぶ。
「なぁ、カガリ。何の花を入れればいいと思う?」
「そうだな、花は……今は、薔薇が季節だから」
 ステラに問われたカガリは沢山並ぶ花を見渡しながら考えて、花々の中から赤色と青色の薔薇を手に取る。
「例えば、赤と青の薔薇をそれぞれの顔が見えるようにいれてみるのはどうだ?」
「 赤と青の薔薇? いいかもしれないな。ならば、ミモザとカスミソウもいれてみるのはどうだろうか」
 赤と青の薔薇を主役に立てながら金色のミモザと白銀色のカスミソウを悩みながらいれていく。
「カガリも、入れてみていいか」
「もちろんカガリも花を入れてみてくれ。今日の想い出と共に詰めてほしい」
 うまく入るかなと慎重に瓶に花を詰めるカガリの表情は憂いに濡れつつも楽しげで。
「カガリも作ればいいのに」
 そう問えば、カガリは首を振って。
「――ひとつの瓶なら、ひとりではないから」
 寂しげなカガリの表情を気にしたステラが身を寄せれば、彼も自分から寄り添ってきた。
 大正の街並み。此処の景色に思うところがあるのだろうか。ならば、私の役目はカガリに寂しい思いをさせないこと。
 声音に優しげな彩を含ませて、大切なきみへと告げる。
「――大丈夫、私はどこにも行かないよ」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セリオス・アリス
【双星】
アドリブ◎
アレス、お前に一番似合うの見立ててやるよ
そのマント選んだの誰だと思ってるんだよ…あ、俺が買ってきた訳じゃねえが※っと言い張っている
やっぱ明るいピシッとしたヤツがいいよなぁ
選んだのは白軍服
すっげーにあってる

アレスが選んだのは、っと…これ…?
疑問に思うもハイカラ衣装を着用

で、実際に着てるとこ見た感想は?
しょんぼりしてるアレスに問いかけ
ならいいじゃねえか
動けない訳じゃねえしな
それよかトンボ玉っての作りにいこうぜ
気になってんだ
アレスの手を引き連れていく

どっちの方が綺麗か勝負しようぜ
もちかけ一番綺麗を思い浮かべながら作り…
んーこの色どっかで
ああ、アレスの目か
じゃあ俺の勝ちは決まりだな


アレクシス・ミラ
【双星】
アドリブ◎

貸衣装屋の前でセリオスからの提案に目を丸くする
君が?…確かに君はセンスがあるよな
うん、お願いするよ
彼が選んだ白い海軍軍服に着替え
どうかな…?
褒められ、照れ臭そうに笑う

僕にも選ばせてくれないか?
君の黒髪に似合いそうな物は…これはどうだろう
…選んだ和服が女性物の袴だと気付くのは、彼が着替えてる間だった

すまないセリオス!それ、女性物だったんだな…っ
か、感想…?
…素敵だよ。よく似合ってる
そのままでいようとする彼に
詫びとしてやりたい事に付き合おうと決心した

とんぼ玉で勝負だなんて君らしいね
受けて立とう
僕が思う一番綺麗な色で作る
この色何処かで…あ
セリオスの瞳の色だ
…これは勝てる自信があるな



「アレス、お前に一番似合うのを見立ててやるよ」
 突然幼馴染みのセリオス・アリス(f09573)がそのようなことを言い出したものだからアレクシス・ミラ(f14882)は目を丸くする。
 貸し衣装屋の前。此れからどの服を着ようかと話し合っていたところだった。
「君が?」
「そのマント選んだの誰だと思ってるんだよ」
「……確かに。君はセンスがあるからな。うん、お願いするよ」
 その言葉に任せとけとセリオスが胸を張って意気揚々の服を選び出す。
 彼の金髪が映えるのはやはり明るい色でぴしりとしたものをと選んだのは白色の将校服だった。
「どうかな……?」
「うん、すげーにあってる。見立て通りだ」
 早速着替えたアレクシスがセリオスに見せると満足げに頷くから、アレクシスは少しはにかみ笑いを浮かべる。
 流石のセンス。良いものを選んでもらったからお返しをしたい。
「僕にも選ばせてくれないか?」
「もちろん」
 アレクシスがセリオスへと選んだのは紅色矢絣のハイカラ衣装。
「セリオスの黒髪に似合うと思ったんだ」
 穢れのない満面笑みで告げるアレクシス。傍に居た店員に着付けを頼むと少し不思議そうな顔をしていた。
 セリオスも不思議そうな顔をして着付け室の中に入っていく――ふたりの、不思議そうな顔の意味に気付いたのは彼の着付けが終わった時だった。
「すまないセリオス! それ、女性物だったんだな……っ」
「で、実際着てるとこ見た感想は?」
「か、感想……? 素敵だよ、よく似合ってる」
 知らなかったとはいえ幼馴染みを女装させてしまった罪悪感が心をぶすぶすと突き刺して、しょんぼりと肩を落とすアレクシス。
「似合ってんならいいじゃねえか」
「だって……」
「いいって。動けないわけじゃねえしな」
 肩にぽんと手をおいてにかっと笑うセリオスは続けて。
「それよかトンボ玉っての作りにいこうぜ、気になってんだ」
「わ、わかった」
 アレクシスはふたつ返事で彼の提案を受け入れて、彼に手を引かれる。
 そのままの姿でも良いと云うセリオスへのせめてもの償いだった。

「よし、どっちの方が綺麗か勝負しようぜ」
「とんぼ玉で勝負だなんて君らしいね。受けて立とう」
 体験コーナーについてまずひとこと発したセリオスに笑みを浮かべながらアレクシスは応える。
 そうして、ふたりは互いの思う一番綺麗な色彩を思い浮かべてとんぼ玉を作っていく。
 手の中の青色のとんぼ玉。その色は、ふしぎと何処かで見覚えがある。
「んー、この色どっかで」
「あれ? この色何処かで」
 夜明け空の如く澄んだ蒼。あっ。そうだ、これは――。
 星々が燦めく夜の深い藍。あっ。そうだ、これは――。
(ああ、アレスの目か。じゃあ、俺は決まりだな)
(セリオスの瞳の色だ……これは、勝てる自信があるな)
 互いに勝利を確信して、口元に笑みを浮かべる。

 此の勝負の行方は――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鏡彌・サクラコ
【アヤネさまf00432とご一緒に】

【WIZ】
【アドリブ歓迎】

服装はハイカラさんで決まりでいす!
矢絣の着物に袴にブーツ。傘なんかも持っちゃいましょう(振り回しつつ
髪飾りは簪をさしましょう

アヤネさま、いかがでしょう?
ブーツが高過ぎる?うーん、そうですかねい
では普通の高さのブーツにいたしましょうか
矢絣の着物は大正時代の流行りですねい
その辺りの服装事情をさらりとご説明するでいす

アヤネさまは書生さん!
よくお似合いでいす
メガネもかけちゃいましょう?

ではいっしょに花を鑑賞にまいりましょう
いろいろな花が咲いていますねい
よい香りもいたします

芍薬はきれいでしょう?
立てば芍薬座れば牡丹、でいすよ


アヤネ・ラグランジェ
【サクラコ(f09974)と参加】
日本の大正時代の服装ネ?
ふむふむ、では僕は書生風、ということでやってみようかしら
詰襟のシャツに和装袴。足元が下駄はバンカラすぎでしょう。革靴でいいだろうか?
髪の毛は邪魔だから後ろに結わえて
サイドもピンでスッキリさせよう
メガネ?視力は高いから、度が入ってないなら…あるんだネ。ハイ

サクラコは普段とあまり変わらない気がするけど
違うのだネ
あまり詳しくないのでサクラコの講釈を聞くことにしよう

サクラコのブーツは、厚底はやめた方がいいような…
ふつうに僕より身長高いし、並んで歩くなら不釣り合いだよ

季節の花か
僕も花は好き
この時期は薔薇の開花だネ
これはシャクヤク?派手で綺麗だネ



「服装はハイカラさんで決まりでいす!」
「わ、ちょっと傘を振り回すのは危ないよ」
 ハイカラ服を身に纏えば気分も上がる。気分が上がれば手持ちの傘も振り回してしまう。
 楽しげに傘を振り回す鏡彌・サクラコ(f09974)をアヤネ・ラグランジェ(f00432)が慌てて止めた。
「アヤネさま、いかがでしょう?」
 紅色矢絣の着物に葡萄色の袴に厚底ブーツ。髪には桜の簪。
 元来背が高くモデルのような体型のサクラコは矢絣袴を着ても様になっている。だけれど。
「似合ってるとは思うけどブーツは厚底はやめた方がいいような……ふつうに僕より身長が高いし、並んで歩くには不釣り合いだよ」
「うーん、そうですかねい。では、普通の高さのブーツにいたしましょうか」
 ――僕の服は男物なのだろう。その僕よりもずっと背が高く見えてどうするんだい。アヤネは言外にそう込める。
「アヤネさまの書生服もとっても格好良くて素敵でいす! メガネもかけちゃいましょう?」
 サクラコは満面の笑みでアヤネの書生服を褒めながら、ついでにメガネを勧める。
 アヤネの姿は書生風。襟詰シャツに和装袴。靴が下駄なのは流石に抵抗があったから革靴にしてみた。
 髪の毛は後ろに結い上げて、サイドもピンですっきりととめたのなら、気分は何となく浮かれたつ。
「メガネ? 視力は高いから、度が入ってないなら……」
「伊達眼鏡でいす!」
「……あるんだネ。ハイ」
 きらきら笑顔で差し出される。随分と用意がいい。
「そういえば、サクラコの服はいつもと同じように見えるけれど、何か違うのかい?」
「矢絣の着物は大正時代の流行りですねい。女子の高等教育が始まって従来の着物じゃはだけてみっともないと男袴を履かせるように」
 古い銅鏡として時代の移り変わりをその身に映してきたサクラコの言葉は解りやすく、説得力がある。
 新たなスタイルは新たな時代と女性の生き方の象徴でもあったと云う。
「大正時代をまさに象徴する服装なのだネ。さて、お昼までまだ時間あるけれど、どうしようか」
「では、いっしょに花を観賞にまいりましょう」
 そうしてふたりは庭園へとゆるりと花庭園へ向けて歩き出す。
「綺麗でいすねい」
「うん、季節の花々がとても綺麗。僕も花は好き。特にこの時期は薔薇が美しいネ」
 庭園には様々な季節の花が競うように咲き乱れていて、馨しい花の香りが花を擽る。
「そうだな。サクラコのおすすめの花はある?」
「芍薬でいすね。芍薬はきれいでしょう?」
 サクラコが指を差したのは大輪の薄桃色の芍薬花。
 薔薇よりもなお華美に咲く花は周囲の他の花々よりも一層に目立っている。
「これはシャクヤク? 派手で綺麗だネ」
「立てば芍薬座れば牡丹、でいすよ」
「聞いたことあるよ。確か座る姿は……なんだったっけ」
 サクラコの言葉には確か続きがあったはず。
 けれど続きの花がどうしても思い出せなくてアヤネはうーんと考える。
 じゃあ宿題でいすねとサクラコが悪戯っぽく笑んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

糸縒・ふうた
■かよさん(f11024)と

えすえぬえすばえのたいしょーろまん
むむ、残念。オレまだすまーほとん買いに行けてないんだよね
…すまほ?

借りる衣装はしょせーさん、ってやつ!
かよさんがこれを着たオレはカッコいいよって言ってくれたんだ!

えへへ、どうかな?どうかな?

はいからさんなかよさんもとってもかわいい!
なんだかいつもより学生さん、っぽい?
んとんと、かわいい!
はいからさんなかよさんもとってもすてき!

突飛な申し出にぱちぱち
いいよ、えすこーと、してあげる!

いつもより背の高い彼女の歩幅に合わせて
戦ぐお花の名前や花言葉で会話を重ねよう

たまになれないゲタでつんのめるのはご愛敬

オレもお腹すいちゃった!
何か食べに行こ!


境・花世
ふうた(f09635)と
貸衣装に着替えて庭園で待合せ

乙女椿の影から現れたのは
凛々しい少年書生さん
良く似合ってる!
一枚ぱしゃり、スマホ買えたら送ってあげるね

一方のわたしはハイカラさん
振袖袴に編上げブーツでくるりと回ったら
気分はすっかり可憐な乙女
褒められてにっこりと

ね、エスコートしてくれる?

なんて淑やかに小首を傾げよう
目を丸くするきみが可愛くて、
れる悪戯な笑みは花に隠して歩き出す

髪結うリボンがさやさや揺れるのも、
すこやかで懸命な少年の隣も、
くすぐったくてあたたかい
あり得る筈もない架空のふたり
だけど今だけ、夕暮れまではこのままで、
浪漫の世界に浸ろうか

(ぐう)

……ふうた、次のシーンはカフェ希望!



 物語を一頁捲りましょう。
 喩えば此の物語。淡くて優しいふたりの浪漫譚。

 五月の蒼空のもと、気分も大正の世界へ浸るのはどうだろう?
 約束の時間は10分後。乙女椿が咲く庭園で待ち合わせ。
「おまたせっ!」
 境・花世(f11024)の待ち人は乙女椿の影からあらわれた。
 狼耳をぴょこぴょことうごかす糸縒・ふうた(f09635)の姿は凛々しい少年書生さん。
「えへへ、どうかな? どうかな?」
「良く似合っている! さすが大正浪漫だね。SNS映えする」
 満面の笑みで感想を求めてくるふうたに向けて花世はスマホのシャッターを一枚ぱしゃり。
「? たいしょーろまん? えすえぬえすばえ?」
 花世の言葉にふうたはきょとりと首を傾げる。きっと、頭上には解らないことばがいっぱいだと云わんばかりのはてなマーク。
 もしかして。
「そういえばふうた、スマホじゃなくてスマートフォンは……」
「すまほ? あ、すまーとほん! オレ、まだすまーとほん買いにいけてないんだよね」
 残念。しゅんと狼耳を垂らして残念がる書生さん。
「じゃあ、スマホを買えたら送ってあげるね」
「うん! あのね、あのね、はいからさんなかよさんもとってもかわいい!」
 ふうたは嬉しげに頷けば興奮気味に話す。
 花世の姿はハイカラさん。赤椿の花咲く淡黄色の振り袖に紅袴。
 足には編み上げブーツをはいて、くるりとまわって袖を踊らせれば気分はすっかり可憐な大正乙女。
「なんだかいつもより学生さん、っぽい? んとんとね、とにかくかわいい。とってもかわいい!」
「ふふ、ありがとう。ふうた」
 溢れんばかりの感情を精一杯の言葉にのせて伝えようとしてくれている姿がとても愛らしくて微笑ましい。
 微笑ましさと嬉しさに、花世はにっこりと笑んでから、ふうたに向けて手を差し出す。
「ね、エスコートしてくれる?」
「いいよ、えすこーと、してあげる!」
 淑やかにきょとりと首を傾げて手を差し伸べて誘う花世。突飛な申し出に思わずふうたは目をぱちくりと瞬かせる。
 けれど、嬉しそうに手を取ればふたりは浪漫の花園へ。
 いつもより背が高い花世にあわせて、いつもより大きな歩幅で歩き出すふうた。慣れない下駄で時折つんのめりそうになるのはご愛敬。
 競うように咲き乱れる花々と互いの姿に酔いしれながら過ごす夢のようなとき。
「鈴蘭がきれい」
「確か、花言葉は『しあわせはもう一度訪れる』だったかな」
 風にそよぐ花とともに花世の髪を結う白色リボンも揺れる。
 まるでこの瞬間、自分達も光景の一部として溶け込んだように感じる錯覚。花言葉について語り合う
「花世さん、このお花はなんだろう」
 ふうたが指を差したのは白い雪のような花。
「それはイベリスだね」
「花言葉は?」
「――内緒」
 花世は悪戯っぽく笑んだ。

 あり得る筈もない架空のふたりの物語。
 ひとときだけの現のまぼろし。だけど、今だけ夕暮れまではこのままで。もう少しだけ浪漫の世界に浸らせて。

 ぐう。

 その時鳴り響いたのはどちらのおなか?
 気付けば時計はてっぺんをさしていて、気付けばお腹もぺったんこ。
「……ふうた、次のシーンはカフェ希望!」
「オレもお腹すいちゃった! 何か食べにいこ!」
 ふたりは互いの顔を見合い、笑んで石畳を歩き出す。

 そして一頁、物語をすすめましょう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『大正猟兵浪漫譚』

POW   :    大正時代なんて知るか! いつもどおりの自分の姿で調査をする。

SPD   :    大正時代の雰囲気に合わせた格好で、観光客として街のなかを調査する。

WIZ   :    大正時代の雰囲気に合わせた格好で、商店や旅館などの奉公人に紛れて調査する。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


--・-- ・-・ -・ ・・-- ・-- ・・-・-

【プレイング受付期間】
 5/20(月) 8:30より
 期間より前に頂いたプレイングは申し訳御座いませんが、一度お返しします。
 終了は最初の方の失効日にあわせて設定しますので、雑記でご連絡します。

●採用ついて
 基本的に頂いたものは問題がない限りすべて採用予定です。
 二章からのご参加もお気軽に。浪漫の街を心ゆくまでお楽しみください。
 また参加者さんの人数によっては再送をお願いする可能性がございます。
 お手数をおかけいたしますが、よろしくお願い致します。

・・- ・--・ --・-・ -・・- ・---・ ・・-
(※断章は少しだけお待ちくださいませ)
 真昼の街に浪漫咲く。昼時を迎えた活気に溢れるハイカラ浪漫街は活気に満ちている。
 立ち並ぶ明治建築の洋館やレトロモダンな建物だけではない。荘厳なステンドグラスが美しい教会も人気のひとつ。
 和雑貨や硝子細工等の雑貨屋を巡って土産を探してみても、駄菓子屋で身近な懐かしさに思いを寄せるのも良いだろう。
 勿論、食事を取るのも甘味を楽しむのも心のままに。
 夕焼けに染まるまでの時間。如何過ごすかは貴方次第。
--・-- ・-・ -・ ・・-- ・-- ・・-・-

※追記:5月23日

【再送のお願い】
 ご参加ありがとうございます。
 大変申し訳ございません。期間内に全てのプレイングの描写が困難と判断した為お手数をお掛けいたしますが再送のお願いをさせていただきます。
 お手数をおかけいたしますが、お気持ちに変わりがなければ下記日程でのプレイング再送にご協力いただけますと幸いです。

・再送期間
 5月25日(土)8:30~5月28日(火)23:59

・・- ・--・ --・-・ -・・- ・---・ ・・-
ミーユイ・ロッソカステル
ゆすら(f13614)と邂逅

時刻はすっかりお昼時
……せっかくの遠出だもの、お腹を満たすなら……あぁ、あれがいいわね。
と、散策中に見かけた牛鍋の店に、ふらり

どうせなら仕事を終えてからゆっくりと食事を楽しみたかったわ、なんて一人ごちながら
せっかくの貸衣装、上品な薔薇もお洒落な菫色も、汚す訳にはいかないもの
食べる量は1人前をゆうに超えているものの、汁や食べかすは魔法のように衣装の上の布エプロンへと吸い込まれ、上品に食を進めて

……女一人で来るのはやはり珍しがられるかしら、なんて周囲の反応を少し訝しめば、遠目には女性一人のテーブルも見栄て
……えぇ、やはり、女単身で食事に臨んでも、おかしくはない、わよね?


桜橋・ゆすら
ミーユイさん(f00401)と邂逅

そっと、店の戸を開いて
来店したのは牛鍋の店
こういった場所に訪れるのは初めてですけれど…
その、街を歩いていたら香りに誘われてしまって

折角お借りしたお衣装を汚してはいけないから
しっかり布エプロン等をつけて
両手を合わせて「いただきます」

…すると周囲から、或る女性の食べっぷりに驚く声々が
よそ見をすると袴姿の綺麗な女の子が
一人分とは思えない量の肉を食べていたの!
これには唖然としたけれど…ゆすらも、ごくりと唾を飲んで
負けてられない!
「その…もう一人前分、追加して下さいな」



 歩を進める度に革ブーツがかつりと石畳を叩いて鳴らす。
 日傘をくるりとまわして浪漫街をそぞろに歩けば、時刻はすっかりと昼時をまわっていた。
(せっかくの遠出だもの。お腹を満たすなら……あぁ、あれがいいわね)
 ほんわりと鼻を擽った馨しい香りにふわりと誘われて、牛鍋店の戸を開けた。
 昼時の店内は程々に賑わっている。ミーユイは窓際でありながら陰になっている二人掛け用の小さな席に腰掛けて程良い量を注文を入れる。
 何やら少し店員が驚いた顔をしていたけれど、きっと単身で来店する女性客が珍しいだけに違いないと結論付けてから窓の外を見る。
 行き交う人々は皆楽しげで、それ故にこの街が仕事場であってほしくはないとは思うのだけれど仕方がない。
 そうして暫くぼんやりとしていれば、運ばれてくる牛鍋。
「どうせなら仕事を終えてからゆっくりと食事を楽しみたかったわ」
 独り言ちながら箸を伸ばす。何やら周囲の視線を集めているような気がしながらも牛肉を頬張る。
 折角借りた美しい袴を汚すわけにはいかない。衣装の上の布エプロンに吸い込まれるように落ちてゆく汁や食べかすはまるで魔法のよう。
(やはり、女ひとりで来るのは珍しがられるのかしら)
 明らかに感じる周囲の視線と反応に少し訝しめば、離れた席に同じようにひとりで牛鍋を食す白ドレス姿の少女の姿。
「ええ、やはり女単身で食事に望んでも、おかしくはない、わよね?」
 自分に言い聞かせるように呟いて、ネギを箸で摘まんだ。


「ごめんください」
 そっと店の戸を開いて牛鍋店に訪れたゆすら。
 こういった場所に訪れるのは初めてで少し緊張する。けれども、馨しい香りに抗えるわけがなかった。
 窓際の席へと腰掛けて注文をして布エプロンをかけて、暫く待てば外で誘われたよりもずっと馨しい香りがゆすらの食欲をそそる。
「いただきます」
 しっかりと両手を合わせてから、ゆすらは箸を牛鍋へと箸を伸ばす。
 想像を遥かに超えた美味しさ。牛肉は柔らかく旨味が強い。よく煮えて汁を吸ったネギはとても甘い。
 水菜も豆腐も白滝も、肉や割り下の味を吸っていて食が進む。
 そうして、半分ほど食べ進めた頃だろうか。周囲から何かに驚きざわめく声が聞こえた。
「何かしら?」
 ゆすらも其方へと目を向けてみれば、少し離れた席には袴姿の綺麗な女の子がひとりで牛鍋を食べている。
 思わず見取れてしまう程に綺麗な食べっぷり。しかし、問題は、その量。
「すごいわ。空いた皿の数が、凄いわ」
 唖然とする。
 追加用の皿は其程大きいわけではない。だが、積み上がった量を考えれば明らかに二人前には達している――というのになおも美しく、涼しい顔で牛鍋を食べている少女。
 ゆすらはごくりと唾を飲み込む。
(ま、負けていられない!)
 ゆすらは自分のお腹をぽんと撫でる。
 どうにか、どうにか行ける。行けるはず。まだ行ける。
「その……もう一人前分、追加してくださいな」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヨハン・グレイン
オルハさん/f00497 と

普段見掛けるUDCアースとは違った雰囲気ですよね
あなたが気に入ったのなら、まぁ、俺は良かったです
教会、行ってみましょうか

光を映すように煌くステンドグラスは、
たしかに綺麗なもので
けれど一人で来ていたら、
きっとここまで心に留める事もなかったろう

隣にいる人によって、
こうも見え方が違うものか……
ぼんやりと見つめ、思って
ふと視線に気付き隣を見遣る

そうですね、……綺麗だ

その理由は口にはしないけれど

祈り、か
願うことなんて思い浮かばないんですけどね
まぁ付き合います

……願わくば、
彼女が辛く苦しい時
傍にいられるようにと
そっと祈って

ええ、行きましょうか


オルハ・オランシュ
ヨハン(f05367)と

この雰囲気のことをハイカラっていうんだね
建物もお洒落だし、街並みがすっかり気に入っちゃった
教会って場所が人気なんだって
寄ってみない?

わぁ……!すごい!
ステンドグラスの彩に目を奪われる
陽射しを受けたそれは綺麗に煌めいていて
神々しい光が、少し眩しい
ちらりと横を見遣れば
君の夜空色の瞳もその光が照らしていて

……綺麗だね
そう言うのがやっとだった

さっき入口で耳に挟んだんだけど、
ここってお祈りをする場所なんだね
まず神様に感謝して、許しを願って、
それからお願いをするんだって
せっかくだし、お祈りしていこうよ

今に感謝して、……、
祈ることは胸の内に秘め

陽が傾きかけてる、ね
そろそろ行こうか?



「この雰囲気のことをハイカラっていうんだね。建物もオシャレだし、街並みがすっかり気に入っちゃった」
「あなたが気に入ったのなら、まぁ、俺は良かったです」
 上機嫌で歩くオルハの姿が何だか眩しくヨハンの蒼眸に映る。
 普段とは全く違う大正浪漫の街並み。なお一層にオルハの姿が映えて見えるのはこの街の所為か、心の所為か。
「さて、何処に行こっか」
「そうですね。どうしましょうか」
 オルハの問いかけにヨハンがパンフレットに視線を落としたその時。通りすがりのカップルが教会のことを話している。
「教会って場所が人気なんだって、寄ってみない?」
「ええ、教会行ってみましょうか」
 ふたりは石畳を歩き教会へ。丁度昼時だからか観光客は捌けているようで、人の気配がない教会の扉をオルハはドキドキとしながら開けてみる。

 そして――。

「わぁ……! すごい!」
 其処に広がっていたのは荘厳な教会の内装に、降り注ぐステンドグラスの彩。
 薄暗い教会の中にただひとつ差し込むステンドグラスを通した陽射しは荘厳で、けれども暖かくて。
「ええ、確かに綺麗なものです」
 ヨシュアがオルハに言葉を返せば、オルハは彼の方を見る。視線があう。
 そして、言葉を失った。
 彼女のストロベリーブロンド色の髪が、彼の夜空色の瞳が、綺麗な光に照らされて――。
「……綺麗だね」
「そうですね……綺麗だ」
 ようやく紡ぎ出した言葉。小さく絞り出すのが精一杯の想い。
 閑かで、よく声が響くこの教会でいつまでも残響のようにこだまするよう。
「さっき入口で耳に挟んだんだけど、ここってお祈りをする場所なんだね」
 なんだか静寂が照れくさくて、話題を変えるようにオルハは口を開いた。
 お祈りの方法はまず神様に感謝して、許しを乞い、それからお願いごとをするのだと云う。まぁ、通りすがりで聞いた人からの受け売りなんだけどとオルハは曖昧に笑んでから。
「せっかくだし、お祈りしていこうよ」
「祈りですか。願うことなんて思い浮かばないのですが、まぁ付き合います」
 そうしてふたりは並び、祈りを捧げる。

 願わくは、今に感謝して。
 願わくは、彼女が辛く苦しい時傍にいられるように。

 祈り終えて、教会を出でれば空は焦がしたかのようなオレンジ色。
 差し込む西日に照らされた隣り合うふたりの影は、長く長く伸びている。
「日が傾きかけてる、ね。そろそろ行こうか?」
「ええ、行きましょうか」
 昼と夜の狭間。逢魔ヶ刻にはぐれてしまわないようにと手を繋いで。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ニヒト・デニーロ
匡(f01612)、ヌル(f05378)と
あんみつを食べましょう。
……取捨選択の結果として。ええ、そわそわなんてしてないけれど。

特にこのお店のクリームあんみつは有名なので、絶対食べるべき。きっと気にいるはずだから。

……どうしたの? ふたりとも。……美味しくない?

……食べ物の味は、一緒に誰と食べるかで決まるって……お父さんが言ってた。
だから、私は、二人と食べるあんみつが、とても美味しい。
……きっと、どこかでまたあんみつを食べる度に、今日の事を思い出すわ。それがきっと、楽しいって言うこと。

……今日は沢山、思い出を作ったわ。ねえ……忘れないで、いてくれる?


鳴宮・匡
◆ヌル(f05378)、ニヒト(f13061)と
◆アドリブ歓迎

もう着替えていいよなこれ……、あ、ダメ
俺は特に食にこだわりがないからなんでもいいよ

……うん、甘いな
俺自身は、味の良し悪しは判っても
それを「美味しい」とは感じられないから
(言葉に出すような野暮はしないけど、)
ニヒトの言葉には、少し困った顔をしてしまうかも知れない

誰と食べるかで決まる、と
言われた言葉に思わず手が止まって

……ああ、
だから、あの時……

――うん? いや、なんでもない
ヌルはどう?
言われてみたら、美味しいかもって思わない?
……なんて、それはさすがに高望みかな
手を止める様子に首を傾げつつ、重ねては問わない

……ああ、
大丈夫、忘れないよ


ヌル・リリファ
◆ニヒトさん(f13061)、匡さん(f01612)と
◆アドリブ歓迎

折角だからそのままでいてほしいな……。

あんみつ?
うん。わかった。
わたしも、なんでもいいから。いく。

……あまいね。(味覚はある。味のバランスから人気がありそうなのもわかる。でも、美味しいかはわからない)

おいしいはわからないけど。
だれかとたべるのは、ひとりじゃないのはすきだから。

……ニヒトさんと、匡さんと。一緒にたべるのはすごくたのしい。

(匡さんの言葉にもう一度考える)

(一瞬、何かを恐れるかのように硬直、食べる手が止まる。二人が気づいても何でもないと言える位の時間。)
おいしいかは、わからないかな。ごめんね。

……うん。わすれないよ。



 五月の空は晴れやかに澄み切っている。三人は花庭園を後にして、浪漫街を歩く。けれど、目的地もなくそぞろ歩き。
 具体的な案など無かったのだけれど、ふと歩きながらパンフレットを眺めていたニヒトの目がとある写真で止まる。
「あんみつを食べましょう……取捨選択の結果として。ええ、そわそわなんてしていないけれど」
「俺は特に食にこだわりがないからなんでもいいよ」
「うん。わかった。わたしも、なんでもいいから、いく」
 ニヒトに応えた匡とヌルの言葉は今一つなんだか煮え切らない。
 なんでもいいいと言われてしまうと逆に納得させてみたいと思うのが人の――否、人形の性。
「特にこのお店のクリームあんみつは有名なので、絶対食べるべき。きっと、気に入るはずだから」
 ずんと匡にパンフレットを突きつける。確かに定番のフルーツの他にもバナナやメロン、栗に最中にいちごと彩りよく豪華に添えられていた。
「わかった。お勧めってんなら美味しいんだろうな。その前に着替えてもいいよなこれ」
「そう。美味しいはず。着替えはダメよ……不許可の意志表示」
 匡がふと呟けば着せた時と同じようにニヒトが横ピースのまま迫ってくる。
 先程の様子からして絶対に折れないだろう。理解はしているのだが、匡は思わずたじろぐ。
「折角だからそのままでいてほしいな……」
 ヌルが先程と同じように無垢な眼差しで見つめてきて、匡は観念したように溜息を吐く。
 ささやかな攻防はふたたび匡の敗北に終わった。

 茶屋に到着して野外の緋毛氈掛け縁台にニヒトを中心に並んで腰掛ける。
「ほんとに、みんな餡蜜たべてるね」
「ああ」
 ニヒトの言葉通り周囲の客は大体クリームあんみつを頼んでいるよう。ならば、ニヒトの勧め通りクリームあんみつでいいと話し合ってオーダーをいれた。
 そして、じゃれ合うように話に花を咲かせていれば運ばれてきたクリームあんみつ。
「……あまいね」
「うん、甘いな」
 ヌルと匡は呟きあう。その表情は冷静そのもの。
 確かに味の善し悪しやバランスから良いものだとは判断出来る――しかし、それを美味しいと感じることは出来ない。
「どうしたの? ふたりとも。美味しくない?」
 ほふほふと昂揚した雰囲気を見せてあんみつを頬張る自分とはまるで真逆のふたりに、ニヒトは問いかける。
 その問いかけにハッとなる匡。そして、少しだけ困ったように眉を曲げて。
「うん? いや、なんでもない。甘いよ、うん、良いとは思う」
「とてもそのような表情には見えない……客観的判断。ヌルはどう?」
「おいしいはわからないけど、だれかとたべるのは……ひとりじゃないのはすきだから」
「……ああ、だから、あの時」
 かつてに想いを寄せる匡。
 そして、ヌルと匡は何となく無言になるものだから、ニヒトが口を開く。
「食べ物の味は、一緒に誰と食べるかで決まるってお父さんが言ってた。だから、わたしはふたりと食べるあんみつがとてもおいしい。ふたりはどう?」
「誰と食べるかによる、か」
 ニヒトの言葉に匡のスプーンが止まる。
 そうは言われても、やはり感性は呆れるくらいに壊れてしまっていて――美味しい、かなんて。味は良いとは解るのに、けれど、その先の感情を感じることは出来ない。舌の上で転がる寒天は、ただ胃の中へと転がり落ちていく。
 はぁと、一息吐いてからニヒト越しのヌルに訊ねる。
「ヌルはどう? 言われてみたら美味しいかもって思わない?」
 なんて思うのは流石に高望みだろうか。匡が。ヌルは首を横に振る。
「ニヒトさんと、匡さんと。一緒にたべるのはすごくたのしい」
 けれど。何かを恐れるようにヌルのスプーンを持つ手が止まった。
「……おいしいかは、わからないかな。ごめんね」
 止まるヌルの手はほんの刹那。気付いた匡は首を傾げるが重ねては問わない。
「きっと、どこかでまたあんみつを食べる度に、今日のことを思い出すわ。そして、またおいしく食べられるの。それが、きっと、楽しいっていうこと」
 何となく無言になり降りた気まずい雰囲気。割ったのはニヒトの声。
 彼女なりの気遣いなのだろう。その言葉にはなんとなくあたたかさが混じっている。
「今日は沢山、想い出を作ったわ。ねえ……忘れないで、いてくれる?」
 ニヒトが問えば、ヌルと匡は一瞬言い淀む。だけれど。
 今抱いている想いには、嘘はつけない。
「ああ、大丈夫。忘れないよ」
「……うん。わすれない」
 手を重ね合わせるかわりのように、指切りのかわりのように、そうして誓いを刻むように。
 暫く互いの顔を見つめた後、ヌルがふと気付く。
「あ、匡さんのアイスとけてる、ね」
「本当ね……完全に溶けきる前に食べた方がいいわ」
「うわ」
 ふたりに言われて自分の器を眺めた匡は思わず絶句。ソフトクリームはかろうじて原形を留めているのみでほぼ液状化。
 零さないよう気をつけながら匡はスプーンで白玉を掬った。
 五月の晴れやかな空は穏やかに三人を見守っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アレクシス・ミラ
【双星】
アドリブ◎

セリオスの言葉に照れ隠しで軍帽を深く被る
君なあ…
勝った気になっているのを見て、自分のとんぼ玉を彼の瞳と並べるように掲げる
うん、やっぱり綺麗だ
悪いが勝ちは譲らないぞ?
お互い様だろと軽く頭を撫でておいた

アイスか…いいね
好きな物を選んでいいよ
僕はこっちかな、とミルクのアイスキャンディを選ぶ
うん、冷たくて美味いな
…ん?
欲しがるような視線に思わず笑い
一口いるかい?と差し出す
指まで舐めて来た彼にまた軍帽を深く被る
君って奴は…
あ、ああ…ありがとう
彼に高さに合わせて少し屈んで食べ…手首を掴むと溶けたアイスごと彼の指を舐める
いちごも美味いね
…さっきのお返し、としたり顔

…はいはい
もう一口どうぞ?


セリオス・アリス
【双星】
アドリブ◎

トンボ玉をかざしてご機嫌に
うん、お前の目にそっくり
やっぱ俺の勝ち
圧倒的勝利の確信にドヤる
予想外の反撃で頬を赤くし
アレスを睨む
…頑固なヤツ

なあアレスあれ!
服の裾をひいて
アレなら食べながら歩けるぜ
アイスキャンディが食べたいとおねだり
俺はイチゴのヤツにする!
甘酸っぱくてうまい
けどやっぱミルクも気になって
…アレス
一言だけ発しじっとアレスとアレスの口許を見つめる

さっすがアレス!
顔を輝かせ少しだけ顎をあげて口を開け
ん、うまい
ついでにアイスの垂れたアレスの指を舐め
ほらアレスも食えよ
自分のをアレスに食べさせる
…んっ
おま、くすぐったいだろ!
するのはいいけどされるのはこう…

…なあアレスもう一口



「うん、お前の目にそっくり。やっぱ俺の勝ち! 圧倒的勝利だな」
「君なあ……」
 自信満々にとんぼ玉をアレクシスの瞳に並べるように持って、勝利を確信してどや顔セリオス。
 照れを隠すように軍帽を深く被った後に同じようにとんぼ玉を彼の瞳に並べるように持つ。
「うん、やっぱり綺麗だ。悪いが勝ちは譲らないぞ」
「いや、俺の勝ちだ」
「お互い様だろ」
 アレクシスは不意打ちの如くセリオスの黒髪をくしゃりと撫でれば、セリオスの顔は赤く染まる。
 悔しげに照れながらセリオスはアレクシスを睨む。
「……頑固なやつ」
 互いが互いを譲らずに、客観的に見たらきっと引き分け勝負。
 体験教室を後にしてふたりは浪漫街へと繰り出した。目新しい街並みの中でセリオスが見つけたのはアイスキャンディののぼり。
「なあ、アレスあれ!」
「な、なんだ」
 アレクシスの袖を引っ張ったセリオスの差した指の先にあったのはアイスキャンディ売りの自転車。
 セリオスはニっと笑んで。
「アレなら食べながら歩けるぜ」
「アイスか……いいね」
 初夏の少しだけ暑い日にはアイスが欲しくなるよなとおねだり。
 顔を合わせて同じくにっと笑み返して自転車のもとへ。
 話しかけて、クーラーボックスを開けて貰えば色とりどりのアイスキャンディが食欲を誘う。
「好きなものを選んでいいよ」
「じゃあ、俺はイチゴのヤツにする。アレスは?」
「僕は……こっちかな」
 少し悩んだけれどアレクシスはシンプルなミルクを選択。
「甘酸っぱくてうまい!」
 早速封を破り、口へと含むセリオスの口にイチゴの甘酸っぱさが広がった。
 選択に後悔はないけれど、やはりミルク味も気になるセリオスの視線は自然とアレクシスの手のアイスキャンディへ。
「一口いるかい?」
「さっすがアレス!」
 欲しがる視線に思わず笑みを浮かべながらアレクシスが問えばセリオスは瞳を輝かせて遠慮なくミルクアイスキャンディへとかぶりつく。
 ついでに、暑さでアレクシスの指に垂れたアイスも舐めとってから悪戯っぽく笑み。
「ん、うまい」
「君ってやつは……」
 悪戯っぽい表情を浮かべる彼にまたも軍帽を深く被りながら思わず少し照れて困惑顔。
 謝罪のつもりかなんなのか、セリオスが自分のイチゴアイスキャンディを差し出して。
「ほら、アレスも食えよ」
「あ、ああ……ありがとう」
 アレクシスは彼と同じようにイチゴアイスを舐めて、そしてそのまま手首を掴むと同じように溶けたアイスごと彼の指を舐めた。
「おま、くすぐったいだろ! するのはいいけどされるのはこう……」
「いちごも美味いね……さっきのお返し」
 今度はセリオスが照れる番。遣りかえされて悔しいのか嬉しいのかよく解らない。
 だから。
「……なあ、アレスもう一口」
「はいはい、もう一口どうぞ」
 アレクシスは穏やかに笑みながら、再びミルクアイスキャンディを彼へと差し出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カチュア・バグースノウ
SPD
いいわねいいわね!
タイムスリップしたみたい!

洋と和風が合わさった景色を眺めるわ
思い出と胸にしか残しておけないのは残念ね…
でもまあ、ふふふ当時のハイカラ学生さんになったみたいで素敵ね!
一応まだ学生の年齢だわ!え、ギリギリ?キツイ?んふふ
あ、チンチン電車も懐かし〜

……我慢できなくなったから言うんだけど、オムライス食べたい!(食堂へ突撃)
オムライスとクリームソーダくださいな!
もぐもぐ。おいしい
んふふ、やっぱりあたしは食い気ね
すいません追加でパフェ1つ!
今も食べてるものだから、郷愁ってほどじゃないわねえ
当時はハイカラだったろうけど
ごちそうさま〜!

アドリブ歓迎


アンチ・アンディファインド
【POW】

……っち、本当に時間まで何も起きねーのな
ぶらぶらと歩きまわった成果に悪態を吐きながら、適当に食事のできる店へ入る

はっ、暢気なもんだぜ……
UDCと戦うためのエネルギー補給として適当に量のある注文をいくつか済ませる
衣装で着飾りながら街を歩く一般人やら猟兵たちを視界の隅に置きながら
小さく呟く

料理が来たら黙ってひたすら貪る

楽しんでる姿は苦手だ
能天気に笑ってる奴は苦手だ
…………そんなことをしている内に。大事な物が。なくなってしまうかもしれないのだから

【アドリブ、他の方との絡みは歓迎】



「……ちっ、本当に時間まで何も起きねーのな」
 いっそ笑ってしまう程に何の成果も得られなかったアンチは舌打ちした。
 時間になるまで何も起こらないのであれば、腹拵えでもしておこうとアンチは手近にあった洋食店へと入る。
(ちっ、クソ混んでるな)
 時間は丁度昼時。オシャレな店構えと本格的なオムライスが名物の浪漫街の中でも人気店。当然席は既に満席。
「大変申し訳御座いません。ただいま満席でして、ご相席でもよろしければ直ぐにご案内が出来ますが……」
「別にいい、それで」
 店員に尋ねられて、アンチは手短に了承した。
 見ず知らずの他人のことなど別に気にすることでもない。
「こちらの席でございます」
 案内された席には鈴蘭のように白い髪のハイカラ姿のカチュアが美味しそうに大きなオムライスを頬張っていた。
(エルフ……こいつも猟兵か)
 アンチが思わずひょっこりと伸びる耳を見ていればカチュアが顔をあげる。
「あら、いらっしゃい! どうぞどうぞ座って、ほらほら、メニューあるわよ……ん? あたしの耳が気になるってことはお仲間さんかしら?」
「……まぁ」
 曖昧に応えてアンチが席に着くとカチュアがメニューを差し出してきた。
 なんだか、とても馴れ馴れしい女。しかし、何故か厭な気持ちにはならない。それどころか懐かしささえ感じる。アンチがメニューを開けばカチュアは待っていましたと言わんばかりに口を開く。
「あたしのおすすめはやっぱりオムライスね。オムライスが食べたくて食堂に突撃したの。ケチャップのものも良いけれど、ビーフシチューがかかったものも捨てがたいわね」
 一気に喋ったからか喉が渇いたカチュアはクリームソーダを勢いよく飲む。くぱーと、なんだかとても気持ち良さそうだ。
「まぁ、エネルギーが補給出来れば何でもいいから量があるやつを適当に。そこまで言うなら任せる」
「わかったわ。店員さん。彼の分でスペシャルオムライス1つと、あたしの追加でチョコプリンパフェひとつお願い!」
 店員に注文をいれたカチュアは窓の外を見ながら和と洋が合わさったこの街は素敵ね――なんて、うっとりと話す。
「さっき散策していたのだけれど。貴方はあれ乗った? チンチン電車。丁度タイミング逃して乗れなかったのよ。残念! 午后、また狙ってみようと思うのだけれど貴方もどう?」
 そうして雑談に花を咲かせているというよりは、カチュアの話を聞いているうちに料理が運ばれてきた。
「さぁ、たんと召し上がりなさい! おいしいわ。サラダも、ほら!」
 別にカチュアが作ったわけではないけれど食べるように勧めてきた彼女に従ってスプーンで食べ始める。
「……いただきます」
 味は、多分美味しいのだとは思う。
 けれど、店や街の雰囲気に馴染めない。窓の外を見る。楽しんでいる姿も、脳天気に笑っている奴も。
「苦手だ」
「え? なあに? サラダが苦手とか? 成長期なんだから好き嫌いは駄目よ! ほら、もっと食べなきゃ!」
 カチュアはサラダの皿をアンチへとずずいと差し出す。
 好き嫌いせずに食べなさいと言った母の姿が脳裏を過ぎった。
「やっぱり、苦手だ……」
 思い出して苦しくなる。
 こうして日常に溺れるうちに大事なものがなくなってしまうかもしれないのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リル・ルリ
■櫻宵/f02768
アドリブ歓迎

腕組み游ぐ初めての光景
声が弾む心が踊る
揺蕩う花水槽は薆の色

ハイカラ浪漫街で櫻宵と色んな写真を撮る
何このポーズ!この君は格好良い
また両目を閉じてしまった
僕はウインクが下手
あはは!楽しい!
次はあっち
腕を引いて游ぎまわる

教会のステンドグラス
僕の湖のとは違い暖かい
あめ、は硬いなと思いつつ噛み砕けば
え?食べ方違うの?しゅん
ふと脣に触れた柔らかな感触と甘い甘い飴
尾鰭まで朱に染まる
恥ずかしいのは僕の方
砕かず永遠に舐めていたい

こんなに好きになれる人に出会えた事は奇跡
どうぞお姫様
密かに買った硝子の靴を差し出して
赤い顔で紡ぐ言葉
君がどこに攫われても迎えに行く
嗚呼
水底まで見つけに来て


誘名・櫻宵
🌸リル/f10762
アドリブ歓迎

腕を組んで歩けば一層楽しく
揺れる花水槽は戀の色

レトロな建物の前
細工の店にガス燈、洋館に変なオブジェ
モデルみたいにポーズをきめて気取って
2人で写真を撮っては笑みが咲く
水泡のようにしか笑わなかった彼が
声を出して笑う
それだけでこんなに嬉しい

駄菓子屋で買った黄金糖を放り込み
ステンドグラスの美しい教会へ
バリバリ音に人魚を見れば
飴を噛み砕いたの?
食べ方が違うわ
しゅんとした尾鰭に微笑み
あたしのをあげる
脣重ね飴移して照れて
顔を背け

あたしに硝子の靴を?
真っ赤な顔
あたしの可愛い王子様
例えあたしが花霞の向こう側に紛れても
見つけて頂戴
あなたが深い水底の向こう側に攫われても
迎えに行くわ



 腕を組んで歩けば一層楽しく、現世を游いで見るは初めての光景。
 花水槽に揺らめく戀の彩。揺蕩う花水槽は愛の彩。
「櫻宵、次は此処で撮ってみたい」
「良いわね」
 手近な通行人に頼んで変わった石像の前でポーズを撮ってみる。
 背中合わせでカメラ目線。ついでにキザに気取ったポーズまで付けてみたりなんかして、通行人からカメラを受け取って確認した後わぁっとはしゃぐ。
「何このポーズ! この君は格好いい。櫻は本当に器用で綺麗だ」
「あら、リィもぱっちり笑顔がとても可愛らしいわ」
「ほんと? あはは! たのしい」
 櫻宵の真似をしてウインクをしようと思ったのだけれど、リルは両方の目をぱちんと閉じてしまっていた。
 不器用リルの失敗ウインクは、なんだか笑顔のようで可愛らしいと櫻宵が褒めればリルは思いっきり笑っていて其れが櫻宵の心を弾ませる。
 水泡のようにしか笑わなかったリルが、声を出してこのように暖かな笑いを浮かべるのだから。
「次はあっち!」
 今か今かと待ちきれないように櫻宵の腕を引き游ぐリル。浪漫の街は見たことがないもので溢れていて、そして其れを君と見られることが何よりも美しく色づいている。きらきらと世界はとても綺麗だ。
 硝子の水槽越しに見ていた世界とは全く違う。僕だけの世界がとても楽しい。
 リルは櫻宵の腕をひいてあちらへ、こちらへ。途中、駄菓子屋に寄って御菓子を色々買い漁ってみた。その中で一等気に入ったのは琥珀飴。
 ふたりせーので口の中に放り込んでみた。

 ステンドグラスから降り注ぐ暖かな虹色の光は荘厳に揺らめいている。
 櫻宵が心を奪われたように眺めていれば、それを引き戻すかのように隣から聞こえたバリバリと何かを砕くような音。
 まさか。
「飴をかみ砕いたの? 食べ方が違うわ」
「え? 食べ方違うの? 硬いなとは思ったけれど」
 櫻宵が問えば、リルがしゅんと尾鰭をたらす。
 愛らしい仕草に笑みながら、櫻宵はリルの唇に唇を重ねる。
「あたしのあげる」
 飴の口移し。
 甘いのは、飴か、それとも口吻か。
 真っ赤な顔に上がる体温。舌の上で蕩ける飴のように心もこの身も今にも蕩けてしまいそう。
(だめだ、あつい……)
 尾鰭まで朱に染まる。見上げるように櫻宵の顔を窺い見れば櫻宵も恥ずかしそうに顔を逸らしている。
(恥ずかしいのは僕の方だ)
 この飴も幸せも、砕かずにずっとずーっと永遠に舐めていたい。味わっていたい。
 奇跡だ。素晴らしい奇跡。こんなにも好きになる人に出会えるなんて。水槽の中で怯えていた稚魚には解らないだろう。
「どうぞ、お姫様」
 だから、差し出すのは誓いの硝子の靴。
 差し出された櫻宵は顔を朱に染めて、まぁと驚いた顔。
「あたしに硝子の靴を?」
「君だから、受け取ってほしいんだ」
 紅くなりながらも紡ぐ言葉は真っ直ぐに。櫻宵は気恥ずかしくも嬉しそうに受け取って笑みながら。
「ありがとう、あたしの可愛い王子様。例えあたしが花霞の向こう側に紛れても見つけて頂戴」
「勿論、君が何処に攫われても迎えに行く。嗚呼、だから――」
「ええ、あなたが深い水底の向こう側に攫われても迎えにいくわ」
 そうして取り合う手と手。日が沈むまでの刹那、ふたりはその手を離すことはなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユエイン・リュンコイス
連携、アドリブ大歓迎。

引き続き、街を散策という感じかな?
まぁ、誰そ彼刻はもう間も無く。何だか不穏な空気がしないでもないからね。気は抜き過ぎないようにしようか。

大正期の文学作品などを扱った一画とかはないかな。読んでいるものが若干洋の西に偏っているからね。芥川、太宰に江戸川乱歩。
著名な作家について、もし何か見れるようなら散策したいかな。月に関する作品とかあれば、読んでみたいけれども。

あとはそうだね。駄菓子屋巡りも良いだろう。きびだんごと自分で練る水飴、あれって結構好きなんだ。
派手な甘さとかはないけれど、ボクにはこれくらいが丁度いいかな。

そうして時間を潰せば、日も暮れなずむ。さぁ、猟兵の時間だ。



 日は高々と燦々と照りつけている。初夏の日差しを受けて少しだけ熱気を放つ石畳を高らかに足音響かせながら歩く。
 真昼時。だけれど、後数時間もすれば斜陽の頃。
「まぁ、誰そ彼刻はもう間も無く。気は抜き過ぎないようにしようか」
 何だか不穏な空気もするような気がするから、余計に気を引き締めていかねばならない。とはいえ、まだ斜陽までには時間があるからとユエインは思考を巡らせる。
 斜陽、太宰治――そうだ、明治から昭和にかけた純文学でも巡ってみようかなんて考えて歩いていれば、考えを呼んだかのように目の前に現れた書店。
 少し埃被ったような黴臭い古書店独特の香り。愛読しているのは西の文学に偏っているからと狙うは時代を代表する文豪達の作品。
 名前は聞いたことはあるけれど、読んだことがない本。その中から店主に薦めの中から頁をパラパラと捲って気に入ったものを数冊買った。
 そうして、駄菓子屋へと向かうユエイン。カフェや和菓子屋など興味を惹かれるものは色々あったけれど、水飴やきびだんごなどの素朴な味が結構好みなのだ。
 小銭を握って真剣そうに悩む少年や、郷愁にかられて子どものような表情で駄菓子を選ぶ人達で賑わう駄菓子屋。人混みをなんとか書き分けるようにして購入したのは青色が美しいラムネ味と銘打たれた水飴。
 駄菓子屋から出て、木陰のベンチに腰掛けて早速白くなるまで十分に練る。ラムネ味かは今一つよく解らない素朴な甘さが口いっぱいに広がった。
「……うん、ボクにはこれくらいが丁度良い」
 そうして、ふと仰げば空は日暮れへと向かって淡いグラデーションを作り上げていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニオク・イグズヴィ
引き続き【エイリアンツアーズ】の皆と

石畳にガス灯、石造りの建物
スペースワールドみたいな無機質な建造物とは違って、この時代の建物の雰囲気は味があっていいな
年甲斐もなくワクワクする
喰いもんも美味いしな!
町中を散策しつつ、街の人の噂話なんかに耳を傾けよう

喫茶店に合流したら情報交換がてら腹ごしらえ
俺はライスカレーと食後にアイスクリン
一つの皿に盛られるカレーライスも美味いけど、
こう銀の器に盛られると特別感があって、余計美味く感じる気がする
皆の頼んだのも美味そうだな
機会があれば、そっちのメニューも試してみたいぜ

……『あなたのやみ』がどうとか、聞こえた気がするのは気のせいかな


ヨシュカ・グナイゼナウ
【エイリアンツアーズ】(アドリブ絡み歓迎)
名前の前半+さま

喫茶店に行くまでに調査も兼ねて街を散策。そっと、【集音器】をオンにして。故郷の建物と似ているようで違う建築様式になんだか不思議な気分。途中で金平糖を買ってみたり。小さなお星さまみたいです

待ち合わせの喫茶店についたら皆さまとテーブルに。注文を待つ間に先程のお庭でのお話や作った物を見せて貰いたいな。きっと素敵なお話が聞けるはず
頼んだものは、たっぷりのハムや卵サラダが入ったサンドウィッチ。旗がささってますね、どこの国の旗でしょう?
食後にはメロンクリームソーダ!乗っているさくらんぼをいつ食べるか迷ってしまいますね

少しの非日常と沢山の思い出を


キララ・キララ
【エイリアンツアーズ】のみんなと喫茶店で待ち合わせ!
たくさん写真とれたのよ。ふひひ!見せるのがたのしみ~。
行きがけになにか、洋館にまつわる噂とか。きけるかしら?

おまたせしました、ってちょっとお嬢さまみたいなおじぎ。にあう?
みんながつくったものを見せてもらったりして、
これもいつもみたいにしゃほー(社報)の記事にしましょ!
ごはんにはねー、オムライスを食べます!
それにデザート!あいすくりん?っていうのをおねがいするわね。
むかしのアイスクリームなのよね?どんな味かしら?

…あのね、つらいことがあっても、いやなこと思い出しても、
こんなふうに、ステキで楽しい思い出がたくさんあれば、きっと負けないとおもうの!


パウル・ブラフマン
【SPD】
【エイリアンツアーズ】の皆とすぺしゃる☆昼餉タイム!
待合せ場所の喫茶店に行くまでの間
持ち前の【コミュ力】を駆使して【情報収集】もしとこっかな。

キララちゃ~ん!こっちこっち~♪
皆揃ったらオーダーを。
オレもおむらいすと…牛乳卵砂糖寄温菓?
あっ、カスタプリンて読むのか!すっげー!!

料理を待つ間には報告会☆
オレはヨシュカくんととんぼ玉行ってきたんだけど
工程もちょー面白くってさぁ…♪
ニオくんとユキくんのアクセもマジ本格派じゃん?
姿見さんの綺麗…これ葉脈まで見えるんすね!

眼帯の下の幻痛には笑顔で蓋を。
オレの闇?…そんなの
付け合わせのウエハースみたいに軽く噛み砕いてあげる。

※絡み&アドリブ大歓迎!


三条・姿見
【エイリアンツアーズ】の面々と共に。
別行動のキララ氏とは、喫茶店での待ち合わせだったか。
道中の街並みも趣がある…建築物の意匠を楽しみながら移動しよう
大正時代とやらに明るくはないが
いかにも“らしい”雰囲気なのだろうな。興味深いものだ
依頼の件もある。人気の無い不自然な場所があれば記憶に留めておく

合流後は注文したハヤシライスや食後の珈琲を待ちながら
話に頷き、良い時間を送れたことを喜びたい。
俺は話が得意な方ではないから、聞き役に徹する方が良いだろう。
制作物等には惜しみない称賛を送るつもりだ

余韻は珈琲で楽しもう
日頃はサムライエンパイアで過ごすことが多く、和食が中心だ。
米に合う洋食というのも、良いものだな


ユキ・スノーバー
【エイリアンツアーズ】
集合場所の喫茶店に着くまでの町並み、煉瓦の建物とか洋館とかをじっくり堪能。
…文明開化の音がする?(パンフレット広げ)
ステンドグラスを遠巻きに確認して、お日様でよりきらきらして綺麗に見えるなぁって感動。
ご飯は皆一緒っ!席は広めのテーブル席確保で、皆は何を頼むかなっ?
(メニュー表を広げ)あっ、ぼくナポリタンにするっ!
(腕まくりして)折角の書生さんスタイル、ちゃんと汚さないように気を付けるから大丈夫っ。
デザートはもなかのアイスー!まあるいの、手で持って食べやすくて嬉しいな♪
食べつつ、皆の作品お披露目会楽しみだったんだーっ

(どこかの言葉は)闇?…皆とちゃんと頑張るから、大丈夫っ!



 石畳に瓦斯灯。石造りや煉瓦造りの建物に和が混じる。
 情緒溢れる大正建築の世界をエイリアンツアーズの面々は歩いていく。
「スペースワールドみたいな無機質な建物と違って、この時代の建物の雰囲気は味があっていいな」
「そうだな。大正時代とやらに明るくはないがいかにも"らしい"雰囲気なのだろうな。趣がある建物の意匠は興味深いものだ」
 ニオクと姿見が並び歩きながら話す。いつの間にかニオクは鯛焼きを持って買い食いをしている。
「年甲斐もなくワクワクするな。喰うもんもおいしいしな!」
「同じく、この雰囲気は大変良い。しかし、依頼のことも忘れないようにしておかないとな」
 一同は集合場所である喫茶店へ向かっている。
 写真を撮るために別行動をしていたキララと其処で昼食も兼ねて落ち合う予定なのだ。
「わぁ、キラキラだっ! とっても綺麗っ!」
 浪漫街を歩きながら興味深く周囲を見渡していたユキ。
 遠くに日を受けてキラキラと綺麗に見えたステンドグラスに感動。その建物がどんな建物なのか調べてみようとパンフレットを開く。
「教会っ お祈りを捧げる場所なんだねっ ん? ……文明開化の音がする?」
 顔にはてなマークを浮かべながら隣のヨシュカに意味を尋ねてみようと振り返れば隣にヨシュカの姿はない。
 きょろきょろと探してみればヨシュカは脇の和雑貨屋さんの店先に居た。
「ヨシュカさん?」
「ただいま戻りました。ユキさま、ご覧ください」
 すぐに戻ってきたヨシュカの手のひらには小瓶。丸い形の硝子瓶に向日葵や紅葉色の金平糖。
 教会のステンドグラスに劣らないくらいにキラキラと燦めいていた。
「小さなお星様みたいです」
「ほんとだっ! 綺麗だねっ きらきらがヨシュカさんの手の中にもっ!」
 はしゃぎ合うふたりを微笑ましく眺めながら姿見が周囲を見渡せば、パウルが見知らぬ女性達と話している。
 近くで自撮りをしようとしていたハイカラ姿の女性ふたり組に声をかけて写真を撮ってあげたついでに会話をしているらしい。
「へー、もしかしてSNSにあげたりするの?」
「そうそう。映えるって人気なんだよねー、ここ」
「てかお兄さんもめっちゃ映えだよねー?」
 流石のコミュ力お化け、否おタコ。見ず知らずの相手にも臆さず既に友人のように会話している。
「あはは☆ ありがとう! SNSといえばさ、心霊スポット的な噂聞いたんだけどさー。おねーちゃん達知ってる?」
「あー、聞いた聞いた。アレでしょ? なんか自殺スポット的なさ」
「でも具体的な場所とかは書かれてなかったんだよねー。夏だったらともかく今は肝試しとかかんべーん。ウチらはノータッチだけど、興味本位で探そうとする人いるかもね。まさか、お兄さんもそのクチ?」
「まっさかー☆ 社員旅行で来ただけだよー☆ じゃあ、同僚待たせてるからじゃあね~☆」
 パウロは女性達に手を振って姿見達の元へと戻ってきた。
「ごめーん、お待たせ~☆」
「随分盛り上がっていたな。お陰で有用な情報が聞けた」
 一般人の間に噂が広まっているようだが、飽くまでも噂なのかそれともUDC組織が情報統制を必死にはったのか詳細情報はかろうじて伏せられているらしい。
 しかし、それも時間の問題だろう。話に聞いたとおり、直に噂は具体的な形で広まって好奇心や絶望からUDCの餌食になる者が出てくるに違いない。
 姿見に続いてニオクも。
「西の方に何だか不気味な洋館があるらしい、さっき掃除のおばちゃん達が噂してるの聞いた! 自殺の名所とか怪談話の洋館とか噂されるのも無理ないくらいって」
 そう言いながら歩いていれば、目的地の喫茶店に到着していた。
 早速喫茶店へと入り見渡してみるがキララの姿はない。まだ到着していないようだ。6名掛けの大きな席に掛けてメニューを眺めること5分あまり。
 カランとドアチャイムが鳴って、パウルが其方へと視線をやってみればキララの姿。
「キララちゃ~ん! こっちこっち~♪」
「おまたせしました」
 エイリアンツアーズのメンバーの席へと着いたキララはぺこりと少し大正乙女になりきった一礼をしてみる。
「キラちゃんさま、なんだかお嬢様のようですね」
「ふひひ、似合う? 似合いますかっ」
「ええ。それでは、お手をどうぞ」
 ヨシュカに褒められご満悦。ヨシュカに手を差し出されて更にご満悦。
 ほんの少しの距離。椅子に座るまでの間のエスコート。なんだか少し照れくさいけれど楽しいからふひひとキララは嬉しそうに笑った。
 全員揃ったところでオーダーを決め注文をいれた。
「みんなは、どんなの作ったの?」
 キララに問われて待ってましたと言わんばかりに一同が作ったものを机に並べる。
「オレはヨシュカくんととんぼ玉作りに行ったんだ。工程もちょー面白くってさぁ」
「はい。矢車草をモチーフにとんぼ玉作りました。初めてでしたが、意外と上手に出来ました」
 ヨシュカの手のひらでころころと転がる青色のとんぼ玉は美しい。
「レジンアクセ作ったんだけどねっ ニオクさんがとっても上手だったんだよっ」
「ユキも綺麗に作ってたじゃないか」
「へー、ニオくんとユキちゃんのアクセもマジ本格派じゃん?」
 パウルにレジンアクセを褒められてユキもご満悦。
「俺は、皆程綺麗に作れたわけではないがこれを」
 最後に姿見が取り出したのはハーバリウム。庭園の光景をそのまま綴じ込めたかのような姿が美しい。
「姿見さんの綺麗……これ葉脈まで見えるんすね」
「ああ、特に要所要所にある紫陽花は時間が経つにつれて透けていくそうだ」
「へー! みんなのゲージュツいいね! これもいつもみたいにしゃほーの記事にしましょ! あとで撮るね!」
「おー、ちょーどキララちゃんにお願いしようと思ってたんだ。ありがたい」
「まかせてっ」
 パウルに乞われればキララはえっへんと誇らしげに胸をはった。
 そんなキララの手元のカメラを見たニオクが。
「キララはどんな写真を撮ったんだ?」
「うん、えーっとねえ。色々撮ったよ。お花に、人に、後、ねこ! ヴィルヘルムにそっくりだったよ! 生き別れの兄弟?」
 そう言って見せられた写真には灰色の太めの猫が写っている。ただ模様がカイゼル髭ではなくコールマン髭。
「あら、ほんと……ひげの模様が少し違いますが生き写し……まさかこのようにそっくりな猫さんを見られるとは思いませんでした」
 後で写真くださいねとヨシュカが言えば勿論とキララが笑う。

 そうしていれば料理が運ばれてきて、みなで食べる。
 一見は今もあるような食べ物ばかりだったけれど味付けが微妙に違うのがかえって新鮮だった。

「そういえば、ここに来る途中『あなたのやみ』がどうとか、聞こえた気がするのだが気のせいかな」
「ううん、きららちゃんもなんか聞こえた気がするっ いいとこだけど、なんだかちょっと胡散臭いよね」
 ニオクの呟きにキララもまた頷く。
 幻聴なのか、予兆なのか。
 探索中に聞いた言葉がグリモア猟兵が話していた内容とも一致して何だか気味が悪い。
「闇なんて、付け合わせのウエハースみたいに軽くかみ砕いてあげる」
「うんうん、そうだねっ! みんなとちゃんと頑張るから、大丈夫っ」
 眼帯の下の幻痛には笑顔で蓋をしながらプリンの付け合わせのウエハースを囓ればユキが答える。その明るい答えが気に入って、付け合わせのウエハースをユキにわければとても嬉しそうに顔のモニターを輝かせたから微笑ましくて皆が笑う。
「つらいことがあっても、いやなこと思い出してもきょうみたいに、ステキで楽しい思い出がたくさんあれば、きっと負けないとおもうの!」
 もし忘れそうになっても形にしたゲージュツが思い出させてくれるに違いないからと、カメラを撫でながらキララが話す。
「想い出、ね」
「ええ、少しの非日常と沢山の思い出、です」
 志気を高める一同をその瞳に映しながら姿見はふと呟けば、ヨシュカが静かに笑む。
 珈琲の薫りが午后の喫茶店に纏わり付くように漂っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

浮世・綾華
【軒玉】

甘味処、俺は藤の花を模した
紫芋のクリームが乗った和パフェを注文
ふたりは――って、ふは
ヴァーリャちゃんのやっべー!
オズのは三色…赤いのは梅?
すっぱーいってなるだろ、それ

綺麗。食べんの勿体ないケドぱくり
ほら、ふたりもドーゾ?

一先ずふーせんガムを買い
ぷぅと膨らませたり萎めたり
カゴいっぱいにいれるふたりをのんびり見守っていると面白いものを発見――

駄菓子に夢中な二人にばれないように
こっそり購入したのはぺーぱーよーよー
(当たらないくらい間隔を開け)
二人に向かってえい
あはは、めっちゃ驚くじゃん
やってみる?とくすり
ヴァーリャちゃんにはいと手渡し
びよんと気の抜けるような声を出すオズが面白くて笑みはたえず


オズ・ケストナー
【軒玉】
きれいなおやつがいっぱい
水まんじゅうってなんだろ
まんじゅうなのに水?
わたし、これにするっ

三色の水まんじゅうが出てきたら目を輝かせ
ぷるぷるだ
梅あんだって
すっぱくないよ、もうしってるもの
(前にアヤカに騙されたのに得意げ)
おいしい
アヤカの、きれい
ヴァーリャのすごいっ
わたしのもあげる、あげるっ

だがしやさんっ
棚いっぱいのおかしにわくわく
フガシ?ほんとだおおきい
でもすごくかるい、ふしぎ
フエラムネしってる、ならすのむずかしいの
あれもこれもと

急に視界に飛び込んだ色にびっくり
わあっ
なにそれなにそれっ
ペーパーヨーヨーに興味津々
わたしも買うっ

びよーんっ
言いながら伸ばしてみれば笑いがとまらない
ふふ、たのしいっ


ヴァーリャ・スネシュコヴァ
【軒玉】

甘味処!
ワガシはあんまり食べたことないから、すごく楽しみ!

俺は宇治金時氷白玉バニラアイス乗せ
山のような抹茶氷と、アンコと白玉とバニラアイスも盛り盛り
目を輝かせてぱくぱく食べる
オズのはゼリーか?マンジュウ…ぷるぷるしてて可愛いな!
綾華、いいのか?じゃあ俺も一口あげる!オズもほらほら!

駄菓子屋でも食欲爆発
この茶色い棒、でっかくて面白いな?フガシ?っていうのか!
笛も吹けるラムネ!?俺も買おっと
あれもこれもとカゴに入れてる途中、背後からした音にぴゃっ!?と驚き
綾華、心臓飛び出るかと思ったぞ!
俺もやるやる!と綾華から受け取り
びよーんと抜けた音に思わず腹を抱え
何度もびよんびよん
あー、可笑しい!



 店先に並ぶ和菓子はどれも美しくて、心が高鳴って仕方が無い。
「きれいなおやつがいっぱいだねえ」
「本当にお菓子なのか? どれもすげぇきれいだ」
 瞳を輝かせてショウウインドウを眺めるオズとヴァーリャに綾華は微笑ましそうに笑みを零した。
 甘味処を兼ね備えた和菓子屋。店の一角にある茶用のスペースの机に腰掛ける三人。早速オズがメニューを開いてきょとりと首を傾げる。
「水まんじゅうってなんだろ?」
「透明の水みたいな饅頭というか……」
 首を傾げたオズに答える綾華。しかし、咄嗟に水饅頭を説明しようとしてもうまく説明出来ない。
「まんじゅうなのに水? わたし、これにする! ふたりは決まった? じゃあたのもう!」
「ワガシはあんまり食べたことないから、すごく楽しみだ!」
 オズの問いに少し興奮気味に応えるヴァーリャ。綾華も頷いたのを確認したオズが店員を呼び早速注文した。
 そうして暫く待って注文の品が出てきたのはほぼ同時。
「わあ!」
 目の前に置かれた三色の水まんじゅうを見て、オズはぱぁっと瞳を輝かせた。
「オズのはゼリーか?」
「ミズマンジュウだよ、とってもぷるぷる!」
 ヴァーリャの問いにオズは得意げに答える。そもそも今水まんじゅうというものを知ったばかりだけれど、水まんじゅうと言って出てきたのがこの綺麗なゼリーみたいなものなのだから、水まんじゅうに違いない。
 小豆に鶯餡に梅餡だろうか。三色と涼しげな見た目が美しい。
「三色? 赤いのは梅? すっぱーいってなるだろ、それ」
「すっぱくないよ、もう知ってるもの」
 悪戯げな綾華にオズはやっぱり得意げな顔。以前一度騙されたけれど気にしない。
「そっか、知ってたか残念。俺は藤の花を模した紫芋の和パフェにしたけどヴァーリャちゃんは…・…って、ふは、ヴァーリャちゃんのやべー!」
 オズの水まんじゅうに気を取られていて気付かなかった。
 比喩表現無しで山のような白玉バニラアイス添えの抹茶氷がヴァーリャの前にどでんと置かれている。否、鎮座していた。綾華の紫芋和パフェも大きめだけれどそれよりもずっと大きい。
「わあ、緑色の雪山みたいだねえ」
 ぽかぽかぽやんと呟いたオズの声がいつも通りだったからなんとなく安心した。
 驚く綾華を傍目に気にせず瞳をきらきらとさせながらヴァーリャの食べっぷりはいっそ気持ちがいい。
 分け合ったりしながら、綾華達はは甘味を満喫した。

「駄菓子屋さんに行こう!」
 甘味処を出た後に甘味処に誘ったのはヴァーリャ。雪山のような抹茶氷を平らげた後だと云うのに尽きぬ食欲。満たされぬ食欲。食欲大爆発。
 レトロな色合いの駄菓子屋の店内の棚に並ぶ沢山のお菓子や玩具にオズとヴァーリャの視線は釘付け。
 安価で小さなお菓子が立ち並ぶ中で、一際ヴァーリャの目を惹いたのは丸太のような焦げ茶色の大きな棒状のお菓子。
「この茶色い棒、でっかくて面白いな? フーガシ? フガシっていうのか!」
「フガシ? ほんとだおおきい。でもかるい、ふしぎ」
 しかも大きさのわりにはお値段もとてもお手頃。ヴァーリャはこれはお得だと思いカゴにぽいっといれた。
「オズは何か良いの見つけた?」
「わたしはねえ、フエラムネをみつけたよ。くわえてね、息をふーってするとぴゅーってきれいなおとがなるんだよ」
「笛も吹けるラムネ?! 俺も買おっと!」
 楽しげなお菓子に夢中になって、あれもこれもとカゴにお菓子を放り込む手が止まらない。
 楽しくて、忘れていた。一緒に来ていたもう一人の存在を――。
「ぴゃっ!?」
「わわっ」
 しゅんっ。
 何か今、視界を一瞬黄色い何かが横切って思わずオズとヴァーリャは驚きの声をあげた。きょろきょろと辺りを見渡してみれば、黄色い棒状の何かを持って悪戯げに笑う綾華の姿。間違いない、犯人は彼だ。
「綾華! 心臓が飛び出るかと思ったぞ!」
「あはは、めっちゃ驚くじゃん」
 そう言いながら手首を振ればみょーんみょんと手元の棒が伸びては縮んでオズの興味を惹いたのでペーパーヨーヨーと教えれば早速オズはカゴに放り込んでいた。
 ヴァーリャも同じように興味を示したので渡してみるとあーおかしいと面白そうに何度もびよんびよんと伸び縮みさせている。
「びよーん」
 なんて気の抜けるような声を出しながら遊ぶオズにまた三人は、再び笑いあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マクベス・メインクーン
【Violet】
もちろんこのままの格好で町の中調査だよな?
せっかく着たのに脱ぐのは勿体ないし!
綺麗な建物とか多いしそこでも撮ろーぜっ
兄貴たちの写メもっと欲しいしっ!!
動画?へぇ、面白いじゃん!やろーやろーっ!

歩き回ったら腹減ったなぁ…
なんか雰囲気のいい洋食店あるしなんか食べよーぜっ
え、まじで?奢ってくれんの?
オレはじゃあ…オムライスにしよーかな
兄貴たちは何にする?

料理が届いたら3人分揃うまで待つぜ
揃ったら食べ始める
わぁ、卵とろっとろで美味い~♪
なぁなぁ2人も食べてみてよ、はいっ!
(スプーンで掬ってあーんと)
へへっ、ビーフシチューもナポリタンも美味いな~♪


氷月・望
【Violet】

引き続きゆーくん、マクベスと!
えー、この将校ぶらり旅は三人でお送りしちゃうよー?
……え、折角だから動画サイトにでもアップしてみようかと?ダメ?

色々な建物で、三人の写真を撮って
オフショットみたいに、二人の楽しんでいるトコも撮ろうっと
まあ、腹が減っては何とやらって言うしね?
ゆーくんも食べ……マジで!?え、ゆーくんゴチになります?
俺、ナポリタン!ベーコン厚切りっぽいし、美味しそうだなーって

マクベス、サンキュー!(もぐもぐ、美味いとサムズアップ!)
こっちのナポリタンも食う?ゆーくんもホラ、ハイ!(あーんしようと)

こっそりトイレ行くフリして、会計済ませておくね?


月待・楪
【Violet】
ったく、仕方ねェな…このままの衣装で散策するか
氷月、お前写真撮っとけよ
は、動画?………今回だけだからな

どの建物もそれらしい雰囲気あんのばっかりだな
さっきのとこも綺麗だったし、観光向きっつーのも納得出来る
……あの教会ステンドグラスすげーな…こっそり自分のスマホでステンドグラスの写真だけ撮っとくか

はー…猫助お前ほんと風情っつか……仕方ねーな、奢ってやるよ
あー…俺はビーフシチュー、氷月お前どうすんの?
ビーフシチューも本格的な感じで美味い
あー…ん、オムライスもナポリタンも美味いな
口開けろ猫助、氷月、俺のも分けてやる
結構この店当たりだったな?

氷月お前……ったく、後で覚えとけよ



「もちろんこのままの格好で街の中調査だよな?」
「なんでそうなる」
「だって、せっかく着たのに脱ぐのは勿体ないし!」
 論破。楪に返したマクベスの言葉。
 確かにマクベスの言い分に理があった。
「ったく、仕方ねェな……氷月、お前写真撮っとけよ」
「え、折角だから動画サイトにもアップしてみようかと、だめ?」
 楪に言われた望は手のひらサイズのビデオカメラを掲げてどや顔ウインク。
 一瞬呆気にとられた後に楪ははぁとひとつ溜息。
「いつの間に……ったく、今回だけだからな」
「さっすがゆーくんそこに痺れる憧れちゃう! ちゃぁんとイケメンに撮るから任せといて」
 楪の肩に望は腕を回して絡む。逃れようと撥ねのける楪の姿ととても仲良く見えてマクベスは笑った。

 浪漫の街へと繰り出して、三人揃ってそぞろ歩き。
 望はどうやっているのか解らないが、何故か器用に右手でスマホを操作して写真を撮りながら左手のビデオカメラで動画を撮っている。
「望兄ちゃん、器用だなっ」
「鍛えてますから。ドヤァ」
 マクベスと望の会話を横目に、楪は周囲の光景をゆるりと眺める。
 どの建物も雰囲気があるのばかり。先程の洋館と花庭園もとても美しく人気の観光地というのも納得が出来る。
「……あの教会のステンドグラスすげーな」
 こっそり自分のスマホ。ニヤァとビデオカメラを片手に変な笑みを浮かべている望がいたから慌ててスマホをポケットへとしまった。
「ところでさー、歩き回ったら腹が減ったなぁ。なんか雰囲気のいい洋食店あるし、なんか食べようぜ!」
「さんせー。腹が減ってはなんとやらって言うしね?」
 風情もへったくれもない腹が減ったマクベス発言に望も援護射撃。
「はー……猫助お前ほんと風情っつか……仕方ねーな、奢ってやるよ」
「え、まじで? 奢ってくれんの?」
「ゆーくんマジで太っ腹? え、ゆーくんゴチになります!」
 楪が溜息を吐きながらそう話せば、ふたりはぱぁっと明るい表情を見せた。
 調子が良い奴らめと思いながら洋食店の中に足を踏み入れて、窓際の四人掛けの席へと腰掛けた。
 メニューを開けば種類も多く、どれも中々に本格派。中にはフランス料理よろしく呪文のようなメニュー名さえあった。
「オレは、じゃあ……オムライスにしよーかな、兄貴達は何にする?」
「俺、ナポリタン! ベーコン厚切りっぽいし、美味しそうだなーって」
「俺はビーフシチューにしようかと。使用している赤ワインの名まで明記してあってこだわりを感じた」
「ほほー、どれも美味しそうだなっ じゃ、早速注文しようぜ!」
 そうして注文いれて、暫く待つ。3人の料理が揃うまで待って、揃ってから食べ始める。
「わぁ、卵とろっとろで美味い! なぁなぁ、2人も食べてみてよ、はい!」
「マクベスさんきゅー!」
 マクベスがスプーンで差し出したオムライスをぱくりと食べて望はサムズアップ。
 確かに彼が言うようにバターが効いたとろとろのたまごに柔らかな味わいのチキンライスと上品なトマトソースが絡み合うようにハーモニーを奏でている。この卵のようにとろけるような美味しさだ。
「こっちのナポリタンも食う? ゆーくんもホラ、ハイ!」
「氷月お前……ったく、後で覚えとけよ」
 あーんと恋人のような馴れ馴れしさでナポリタンを差し出してきた望に楪は一言。けれども、ケチャップの美味しそうな香りに抗えず食べてみれば、口の中に懐かしい旨味が広がる。厚切りベーコンやピーマンが良いアクセントになっていて、確かにこれなら飽きずにどれだけでも食べられそうだ。
 その後、同じようにビーフシチューも分け合えばあっというまに皿は空。
「あー……ん、オムライスもナポリタンも美味いな。結構この店当たりだったな?」
「うんっ へへっ ビーフシチューもナポリタンも美味かった!」
 満足しながら完食。後は食後のデザートを残すのみ。
 マクベスがプリン、望がアイスクリン、楪がコーヒーゼリーを注文した。食後に頃合いを見て持ってきてくれるという話だから直に持ってきてくれるだろう。
「デザートの前に、ちょっと用足してくるー」
 そう言いながら席を立った望はするりと伝票の紙だけ抜き取ってトイレに行くふりをして会計へ。
 奢るつもりだった楪が気付いたらどのような表情を浮かべるだろうか。これもささやかな悪戯だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

出水宮・カガリ
ステラ(f04503)と

前から、ステラにあいすを奢る約束をしていたから
喫茶店で、奢ろうかと
…ここで食べるなら、まだあいすくりーむが贅沢であった頃の、あの簡素なものがいい
懐かしい空気と、窓から見える街並み、食べ物
本来その景色にいるはずのない、幸せそうなステラに、少しだけ昔語りを

……カガリの都は、こことは異なるが
とても、とても、よく似ていて
ひとびとが、行き交う様を、門として見下ろすばかりだった
…人の目線で、立ったのは
人は皆死んで、建物は壊れて焼けた後だった
こうして、生きた日常に、埋もれていられるのは。
悲しいほどに、眩しくて。残酷な、夢のようで。

ステラ、ステラ。うまいか、と
知らず。一筋涙を流して


ステラ・アルゲン
カガリ(f04556)と

アイスを奢る約束をカガリがしてくれた
アイスは贅沢なものだったのか?
私の国ではそうでないから
世界も国も違えばそうなるのか
簡素なものというのも良さそうだな
カガリのおすすめだしな

アイスを食べながら眺める街並みは見知らぬ世界の歴史の風景
祖国の文化に近い物と異文化が混ざる不思議な世界だ

カガリの街に似ている、か……
静かに話を聞いて
アイスがおいしいかと聞かれればおいしいと答える
手を伸ばして流れた涙を拭って

もしも猟兵になるのがもっと早かったら、カガリの都を救いに行けただろうか?
でも。過去が変わったとしたら今のお前はここにいないのかもな
叶えたくて、叶えたくない。矛盾の願いだな……



「アイスを奢ってくれるのだろう? カガリ」
「ああ、前から奢ると約束したからな」
 カガリとステラが訪れたのは洋館を改装した大正モダンと珈琲の薫りが漂う喫茶室。
 午后の少し気怠げ空気に蓄音機の擦れたメロディがぼんやりと流れている。窓際の席に向かい合わせで座るとステラはメニューを開く。
 約束のアイス。様々な味とアイスクリームにアイスクリン、パフェなんてものもあって目移りしてしまう。
「これだけあると悩むな……。イチゴも良いが、抹茶も捨てがたい。いや、此処は王道のバニラか?」
「……ここで食べるなら、まだあいすくりーむが贅沢であった頃の、あの簡素なものがいい」
 そう言いながらすっとカガリが指を差したのはアイスクリン。牛乳の代用として脱脂粉乳が使われたアイスクリーム風の安価な氷菓子だと説明書きがされている。
「アイスは贅沢なものだったのか?」
 ステラの口調に浮かぶ疑問の感情。
 自分の国ではアイスクリームは身近にあったものだから、世界も国も違えば食事情も全く変わることに少しだけ驚く。
「たまにはこういった簡素なものというのも良さそうだな。何より、カガリのおすすめだしな」
 店員を呼び止めて注文をいれる。
 そして暫く待って出されたそれは見た目は其程バニラアイスクリームに似たアイス。あっさりとしたミルク風味のシャーベットのようなアイスクリンを頬張りながら、頬が緩むステラ。
 窓の外を見ながら食せば気分は大正の時代に実際食べているよう。
「……カガリの都は、こことは異なるがとても、とても、よく似ていた」
 唐突に呟きを零したカガリにステラは顔をカガリの方へと戻す。
「ひとびとが、行き交う様を、門として見下ろすばかりだった……初めて、人の目線で立ったのは」
 すべてが壊れた後だった。活き活きと生きていた人々は皆骸になり、美しい黄金の都市は焼けただれ破壊されたあとのこと。
 だから、こうして幸せで欠伸さえ零してしまいそうな程の日常に埋もれていられるのは嬉しい。けれど、同時に哀しいほどに残酷な夢のよう。
「勿論、ここがカガリの都とは違うとわかっている。ステラがいるから。なぁ、ステラ、ステラ。うまいか」
「ああ、おいしいよカガリ」
 問うカガリの頬には一筋の涙が流れていたから、ステラは優しく笑みながら手を伸ばしてその涙を拭った。
 ――もしも、猟兵になるのがもっと早かったら、カガリの都を救いにいけただろうか。
 この涙が流れることも、カガリがこんなに苦しむこともなかっただろうか。
 ――けれど、猟兵になるのがもっと早かったら過去は変わっていたのだろう。
 そうしたら、今のカガリは此処には居なくて自分と出会うこともなかった。
 どちらが正しいのか。どうしたいのか。よく、解らなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

サギリ・スズノネ
合プレ【本坪鈴と蒼炎】
叢雲・源次さん(f14403)と一緒に行動

○衣装…桜色の女袴+羽織

衣装を貸して頂いてーサギリもハイカラ浪漫街っぽく着替えてみたのですよー。
……あ!源次お兄さんも、とってもお似合いなのですよ!素敵なのです!

黄昏時までまだ時間がありますねー。
ちょうどお昼時……お腹も空いてきましたしー、お兄さん何か食べようですよー!
あっ!あそこのコロッケ美味しそうですー!食べながら見てまわろうですよ!

コロッケをはふはふしながら歩くです!
洋館とかー教会とかー和と洋が合わさってすごく不思議で綺麗なのですよー。
これがハイカラ……!

(※アドリブ歓迎です!)


叢雲・源次
合プレ【本坪鈴と蒼炎】アドリブ超歓迎

○衣装…灰色の着流しに藍色のトンビコート

なんというか…金田一某のようだな…
帽子?…いや帽子はいい

似合うか…何やら自ずと事件を呼ぶような容姿になってしまった気がするのだが…
しかしサギリ、普段の着物姿も可憐だが今日はより華やかだな
その出で立ち…サムライエンパイアでもいずれ流行るだろうよ

コロッケか…いいだろう、市場調査というわけだな
望むところだ
…確かに、美味い。これは良いものだ

この時代の日本は、江戸時代…その後の明治の更に後…洋の文化がより深く交わってきた
サムライエンパイアも未来には多様の文化が取り入れられる可能性もある…その為に、オブリビオンは退けなければな。



「なんというか……金田一某のようだな……」
「金田一?」
 源次の言葉にきょとりとサギリは小首を傾げる。
 貸し衣装屋の中のふたり。源次が身に纏うのは灰色着流しに藍色のトンビコート。それにこの街並みときたら最早某名探偵だろう。
「折角なので帽子は如何でしょうか?」
「……いや、帽子はいい」
 店員に勧められたが源次は丁重に断る。
 帽子なんぞを被ってしまったら、それこそ自ら事件を呼んでしまう死神体質になってしまうような気がする。
「えー。サギリ、源次お兄さんの帽子被ってみた姿も見てみたかったのです! けれど、そのままでもとってもお似合いなのでいいのです! 格好いいのです! 素敵なのですよ!」
「似合うか……何やら事件を呼ぶような姿になってしまった気がするのだがな。しかし、サギリ、普段の着物姿も可憐だが今日はより華やかだな」
 燦めく視線を向けるサギリの格好は桜色の袴に羽織姿のハイカラ女学生さん。桜は散れど其処に花が咲いたかのように華やかで可愛らしい姿。
 くるりと回れば袖が花びらのように舞った。
「えへへー、衣装を貸して頂いてサギリもハイカラ浪漫街っぽく着替えてみたのですよー。エンパイアの服とは全然違うのですけど、これもこれでとっても可愛くて華やかで素敵なのです」
「確かに。その出で立ち、サムライエンパイアでもいずれ流行るだろうよ」
 源次の言葉にサギリは嬉しそうに笑う。その時、ぽーんと壁掛け時計が正午を告げた。
「黄昏時までまだ時間がありますねー。どうしましょうか」
「そうだな、12時か……」
「丁度昼時なのです! お腹も空いてきましたしー、お兄さん何か食べにいこうですよー!」
「勿論」
 ふたりは浪漫街へと繰り出す。昼時を迎えた浪漫街は食事処の良い匂いと活気に満ちている。
「あっ! あそこのコロッケ美味しそうですー! 食べながら見てまわろうですよ!」
「コロッケか……いいだろう、市場調査というわけだな。望むところだ」
 食べ歩きだけでも目移りしてしまう店達の中でサギリの目にとまったのはコロッケ屋。
 早速近付いてメニューを見れば意外にもシンプルに三種類だけ。ただ、当時の小説に掲載されていたレシピを再現し作り上げたという中々のこだわりの品らしい。ふたりはそれぞれ男爵芋のコロッケと牛挽肉を混ぜたミートコロッケ選び食べ歩き。
「んー、おいしいのです。おいもさんがとってもほくほくで、衣がサクサクなのですよ」
「……確かに、美味い。これは良いものだ」
 揚げたてのコロッケはあついけれど、美味しい。はふはふと頬張りながら浪漫街を見て回る。
「洋館とかー教会とかー和と洋が合わさってすごく不思議で綺麗ですねー」
「この時代の日本は、江戸時代……あ、エンパイアのような時代だ。その江戸時代を経て、開国した明治から更に時を重ねてより深く和と洋の文化が交わってきた」
「ここはエンパイアの未来のひとつの可能性、なのかもですね! もしかして、もしかしたら、外国や外世界の文化が入ってきてこんなハイカラさんになる可能性もあるのですね」
「ああ」
 サギリの言葉に源次は頷いて、ふと瞳に真剣な彩を浮かべる。
「――その為に、オブリビオンは退けなければな」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

南雲・海莉
喫茶店でひと息吐くわ
古伊万里のティーセットで楽しむのは紅茶とスコーン

メープルシロップとクリームをたっぷり乗せた生地も
カップから漂うアールグレイと矢車菊の薫りも
……幸せ(ほぅ

先程のハーバリウム――鬼灯を机の上に置いて

「『誰かの心に寄り添える。それがお茶の魅力』、か」
昔、義兄がノンカフェインのお茶を淹れながら楽し気に語ってくれた
義兄は『お茶』に強い思い入れがあり
自分にも手解きしてくれた

確かに今もお茶は喫茶店の人達の幸せに寄り添ってる


「……見たくないもの、ね」
予知の内容を思い出し、眉根を寄せ

自分が何を見るのか予想できる
いえ、できてしまうから見るのか

そっと手の中に鬼灯を抱いて
「それでも、私は……」



 蓄音機がノイズ混じりの擦れた音色を奏でている。何処かで聞いたこともある気がする古い洋楽。だけれど、曲名だけは思い出せない。ノイズで擦れた歌声はただ空間を通り抜けていくのみで特に印象にも残らない。
「……幸せ」
 海莉はほっと一息吐く。洋館の喫茶室でのティータイム。小腹を満たすバターンスコーンにたっぷりのクリームとメープルシロップ。
 古伊万里のティーカップには上品な紅色のアールグレイ。ベルガモットと矢車菊の薫りが爽やかに鼻腔を擽った。
「誰かの心に寄り添える、それがお茶の魅力……か」
 先程出来上がったばかりの鬼灯のハーバリウムを眺めて、懐かしい言葉を思い出す。
 お茶に強い思い入れを持っていた義兄の言葉だった。確か、ノンカフェインのお茶を淹れながら楽し気に語っていたのだ。
 本当に楽しそうだった義兄の顔を見ている自分も楽しい気持ちになって、つられて同じ表情を浮かべればお茶の淹れ方の手解きをしてくれた。
(――確かに、今もまわりの人達の幸せな気持ちに寄り添っている)
 自分がお茶を通じて幸せな気持ちになっているように、周囲で茶を楽しむ他の見ず知らずの客も皆一様に同じ表情を浮かべている。顔見知りでもなければ、言葉も交わしたこともない誰か。しかし確かに現在空間を共有し幸せもまた共有出来ていることが、とても心地が良い。
 けれど。
「……見たくないもの、ね」
 場に酔うように過ごしていたけれど、無理矢理現実に引き戻されるように予知の内容を思い出して眉根を寄せる。
 見たくないものを見せる怪異。自分が何を見るのか大体予想出来てしまう。
(いえ、できてしまうから見るのかしら)
 だとしたら、その時自分はどのような心で幻影と向き合うのだろうか。
 テーブルの上に置かれていた鬼灯を抱えあげるように手に持つ。硝子瓶はほんのりと冷たい。
「それでも、私は……」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ナイツ・ディン
作ったとんぼ玉を首からぶら下げて、高下駄を鳴らして歩いている。普段は飛んで移動するが、たまには。
「昼飯なぁ……」
困ったように呟く。なにせ妖精、お団子一つとっても大きいのだ。なればよく考えて美味いものを選ばねば。
上に乗っかっている紅竜ディロはカレーが食べたいと主張する。いい匂いだし今日はカレーだな、と苦笑い。
大正時代のカレーといえば、豚肉玉ねぎ、そして出汁を混ぜた和風カレー。醤油は独特で未だ慣れないものの、美味しくいただけるな。ディロも人間サイズの二人前食べてるし、よく入るよな。……え、まだ足りない?じゃあ次は甘味でも探しに行くか。甘味ならローアも喰うだろ、ともう一匹の蒼い竜も呼び出して。



 赤と青、ふたつのトンボ玉が陽光を受けてきらりと燦めく。
 からんからんと高下駄を鳴らし、浪漫の街をゆらりと気ままに散策。いつもは翅をはためかせ空を飛んで移動するけれど折角の高下駄だからたまには地を歩いて音も楽しんでみるのも悪くはない。
「昼飯なぁ……」
 立ち並ぶ商店をきょろきょろ見渡してナイツは困ったように呟いて、真剣に考える。
 なんせ、人よりもずっと小さいフェアリーなのだ。串団子のうちのひとつをとっても大きくて立派なお食事。だからよく考えてなければ――そう考えていたら、ふんわりとカレーの香りが漂ってきた。
「良い匂いだし今日はカレーだな」
 頭の上に変わらず陣取るディーロが尻尾をぴょこんと立ててねだるものだから、曖昧に笑いながらカレー屋の暖簾を潜る。
 メニューには大正風カレーと海軍カレーの文字。折角だから出汁を混ぜて醤油を利かせた大正カレーを選択したナイツは竜達と一緒に頬張る。
 人間用サイズは中々食べ応えあるとは思ったけれど、ディロもナイツもよく食べた。それどころか皿をかんかん叩いておねだりなぞしている。
「……まだ足りないのか。じゃあ、次は甘味でも探しにいくか。甘味ならローアも喰うだろ?」
 そうして蒼竜を呼べばローアは嬉しそうに頷いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

白寂・魅蓮
さて、あらかた楽しめたし次は調査と行こうか。
先程は書生服だったけど…今回は学生服とマントでちょっとバンカラ風に。
…学校に通っていたらこんな服も着ることになっていたのかな、なんて。

それにしても街の中もかなり賑わっているようだ。
少しお腹も空いてきたし、茶屋に寄りつつ色んな人に話を聞いてみよう。
茶屋に着いたら団子とお茶をお願いしつつ、まったりと過ごしてみる。
…時折周囲の視線を感じる気がするけど、そこはまぁ慣れたものだからね。
こちらを見てきた人には少しだけウインクしながら小さく笑みを返してあげよう。
写真をお願いされたらそこも応えてあげるつもりだよ。

※アドリブ、他猟兵との絡み歓迎


明智・珠稀
ふ、ふふ。
素敵な衣装を選んでいただけましたし、素晴らしいスケッチも出来ました…!(スケッチブックを抱きしめうっとりしながら)
これが依頼でなければ最高に幸福な休日なのですが、ふふ!

…あぁ、なんと素敵な茶屋が…!
しかも…あんみつ…!!(瞳を輝かせ)
お邪魔いたしますあんみつをいただきたいのですが…!(即決)

(あんみつを前に)
いただきます(手を合わせ)
あぁ、このプリップリの寒天の食感に
とろぉりとした黒蜜、そしてあんこの柔らかな甘み……!
白玉のもっちもちに赤えんどう豆の塩気、そのハーモニーが口内で
口福を奏で……

あぁあ、幸せです、幸せの絶頂です私…!
(身悶えうっとり食すド変態)

※アドリブ、絡み大歓迎♡



 花は一頻り楽しめたから、次は猟兵の仕事に努めようと魅蓮は決めて再び貸し衣装屋へと入る。
「さて、どうかな」
 着替えたのは学生服にマントのバンカラ風。靴だけは歩きやすさを重視して革靴を履いた。
(学校に通っていたら、こんな服も着ることになっていたのかな……なんて)
 姿見に映る自分の姿は新鮮。少し照れくて微笑めばその姿は極普通の少年。
(さて、少しお腹も空いてきたし茶屋でのんびりとしながら話を聞いてみようかな)
 パンフレットを開き、茶屋を探す。マップ上で見つけた茶屋は少し先。少しだけ周囲の視線を感じながら茶屋を目指し歩き始めた。

「ふ、ふふ……なんて素晴らしいのでしょう!」
 素敵な衣装を選んで貰えたし、素晴らしいスケッチも出来て珠稀の口元に恍惚の笑みが浮かぶ。
「これが依頼でなければ最高に幸福な休日なのですが、ふふ!」
 何だかんだと嘆いても依頼であることには変わりがないからやることはただひとつなのだけれど。
 口元に不思議な笑みを浮かべながら浪漫街をそぞろ歩きをしていれば、目の前に古風な茶屋があるではないか。
「あぁ……なんと素敵な茶屋が! しかもあんみつ!」
 珠稀の瞳が輝く。
 見つけた茶屋の軒先にはあんみつの看板。店前の緋毛氈の縁台に銀髪の少年が団子を食しながら、ぼんやりと時を過ごしている。
「相席よろしいでしょうか!」
「あ、うん。いいよ。どうぞ」
 珠稀に問われて了承する魅蓮。珠稀が手早く注文をいれれば、これまた手早くあんみつが運ばれてくる。
 いただきますと手を合わせてから早速クチにぱくり。
「あぁ、このプリップリの寒天の食感にとろぉりとした黒蜜、そしてあんこの柔らかな甘み、白玉のもっちもちに赤えんどう豆の塩気、そのハーモニーが口内で口福を奏で……」
 あんみつを口に含めば、超絶早口で感想を言う珠稀。
 細かく、語彙力も優れている。無駄に上手い食レポ。
「食レポって言うんだっけ? うまいね」
「ありがとうございます。あぁあ、幸せです、幸せの絶頂です私……!」
「え、うん……それならよかった?」
 身悶えうっとりする《イケメン(変態)》に若干困ったように愛想笑いを浮かべながら応える魅蓮。
 彼に自分のような狼耳などはないけれど、纏っている雰囲気から彼も猟兵だということを察して。
「そういえば同類さんのようだけれど、この後はどうするの? 僕は事件についてちょっと調べてみようかなと思っていたんだけど」
「ならば、私もご一緒しましょう……! 特にすることもなくそぞろ歩いていただけですので!」
 即答。
 茶屋を出た後、二人で情報厚めの為に再び浪漫街へ。
 イケメンと美少年の組み合わせは相当目立つ。
 周囲の視線を受けることに慣れた魅蓮も流石に少し驚いたけれど、此方を眺めてきた人にウインクを返すことは忘れない。そして、返す度に黄色い声が上がるのも直ぐに慣れた。
 写真をお願いされたり、何やらSNSに呟かれたりもしたけれど、その分情報の集まりはよかった。
 そうしてようやく一息吐いた頃、空は黄昏色に暮れなずんでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート
【虹結・廿(f14757)と】

おーおー、すげー活気だ
さすがに昼時にもなると人も集まるわなぁ…
ちゃんとはぐれないようにしろよー?

一応飯時だけど、何食いたい?
甘味?オーライ、それなら目先にも結構並んでらぁ

へぇ、アイスクリンって昔のアイスクリームの呼び方か…大分素朴な感じだ
美味いか?うっかり落とすなよー

しっかし、不思議な感覚だよな
レトロなのにどこか「今」を感じるっつーかさ
不思議と違和感ない雰囲気だよなー

…日が沈むころになったら仕事だ
それまでは、まぁ…特別休暇を楽しもうぜ
俺も長時間のオフは久々だしな
どうせなら息抜きしてえ

ほら、次はあんみつとか食べてみようぜ
あっちの店とか雰囲気も良さげだぜ?


虹結・廿
【ヴィクティム・ウィンターミュート(f01172)と】
すごい人混みです。
……ですから、そこまで子供ではありません。(少し、不服)

お昼……。
なら、甘い物を。

……あれが良いです(アイスクリンを指差し)
落としません。(むすっとした表情に)

これも、情緒がある。という物なのでしょうか?
浪漫……、覚えておきます。

ヴィクティムさんは働きすぎです。
貴方は廿と違ってほぼ生身。休息、休暇は適切に取る事をオススメします。
(言っても聞かないだろうな、と)

あんみつ……初めてです。少し、気になります。
(食べながら逡巡)
もし。

もし、良ければ、また今度、何処へ一緒に出掛けませんか?
(そうすれば、貴方は休暇を取るでしょう?)



「すごい人混みです」
「おーおー、すげー活気だ。さすがに昼時ともなると人も集まるわなぁ」
 洋館を出でて浪漫街へと出れば昼時ということもあってか、特に人通りが多いように感じた。
 特に飲食店や食べ歩きが出来る屋台付近は混雑していて、油断したらはぐれてしまいそうだ。
「ちゃんとはぐれないようにしろよー?」
「……ですから、そこまで子どもではありません」
 冗談めかしていうヴィクティムに廿は不服そうにじっとりとした不満げな視線を向ける。
「一応昼時だけど、何食いたい?」
「なら、甘いものを」
 ヴィクティムは軽く笑い飛ばして問いかければ応えた廿はきょろきょろと周囲を見渡す。
 見渡しながらも廿は先程作ったレジン製のネックレスに触れている。恐らく無意識なのであろうが気に入ってくれたのだろうか、なんだか微笑ましい。
 そうして見渡した後、広場の一角――アイスクリンの自転車販売を指さす。
「……あれがいいです」
「オーライ、結構並んでらぁ」
 廿が指さした先の移動販売自転車の前には少しの行列が出来ていた。けれども、廿はせがむようにヴィクティムの裾を引っ張る。
 彼女の方に視線を遣れば、廿は食べたいですと言わんばかりに視線で訴えかけてくる。甘味への誘惑は相当強いようで意志も固いようだ。
 ヴィクティムは少し微笑ましく思いながら、列に並んで少し待ってふたつ買う。
「アイスクリンって昔のアイスクリームの呼び方か」
 少ししゃりとした食感とさっぱりとした味が爽やかで美味しい。
 廿はとヴィクティムが見下ろしてみればアイスクリンを夢中。子リスのようにちろちろと舐めている。
「美味いか? うっかり落とすなよー」
「美味しいです。落としません」
 廿はむすっとした表情を見せるものの、アイスを舐めることをやめなかった。
「しっかし、不思議な感覚だよな。レトロなのにどこか『今』を感じるっつーかさ。不思議と違和感ない雰囲気ってのかな。これが大正浪漫かー」
「これも情緒がある……というものなのでしょうか」
 ちろちろ。ぺろん。アイスクリンをなめながら廿はふと。
「そういえば、浪漫とはいったい……」
 廿の問いにヴィクティムは少し思案する。何気なく皆使っている言葉だが改めて人に説明するとなると意外と難しい。
「そうだな、一見無駄なようにも思えるが格好いいこと……だろうか」
「……なるほど、それが浪漫。覚えておきます」
 いつ活用するかは解らないけれども廿は記憶してヴィクティムを見上げれば、周囲を眺める彼の表情は少しだけ仕事をする時のようなもので。
「ヴィクティムさんは働き過ぎです。貴方は廿と違ってほぼ生身。休息、休暇は適切に取ることをお勧めします」
「そうだな、俺も長時間のオフは久々だしな」
 例え日が沈む頃には仕事だとしても。
 食べ終わった容器をゴミ箱へと捨てて、ヴィクティムは背伸びをする。
「じゃあ引き続きオフを楽しみますか。ほら、次はあんみつとか食べてみようぜ。あっちの店とか雰囲気もよさげだぜ?」
「わかりました。あんみつ、初めてなので、少し、気になります」
 廿も食べ終わった容器をゴミ箱に捨ててから、少し逡巡しながらも口を開く。
「もし、もしよければ、また今度、何処かへ一緒に出かけませんか?」
 そうすれば、休暇を取るでしょう。廿からの提案に一瞬驚いたような表情を見せつつもヴィクティムは頷いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

逢坂・理彦
ザッフィーロちゃん(f06826)と。
街並みがサムライエンパイアとも普段のUDCとも違うからなんだか新鮮だね。
UDCの人には懐古的な気分になるのかな?
彼、あんまり出歩くのが好きじゃないみたいだけどこんな風に新しい景色とかを見たら見せてあげたいなって思うことがあるよ。

ザッフィーロちゃんそれは?写真?
へー景色とかをすぐに切り取れるみたいな感じかな?へーすごいね。すまほってそんなことも出来るんだね。
建物とか風景とか…後はせっかく仮装したし俺たちの写真も撮っておく?

わ、本当だ景色が切り取られて時間が止まったみたいだ…それを印刷?すれば写真ができるんだね。楽しみにしてるよ。


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
理彦f01492と

エンパイアでもアースでもない、か
確かに独特の町並みで見て回るだけでも楽しいな
この様な衣類を着、この街並みを歩いていた者が居ると思うと不思議な気持ちになるが…と

折角故、撮影でもしておくか?
さいきんすまぁとふぉん、を使いこなせる様になったからな
中々みられぬ景色故、残しておこうと思う…と
ああ、勿論道行く誰かに頼んで二人の記念写真も撮っておこう
珍しい衣類を着用しているからな
蜻蛉玉と共に珍しい景色の土産も喜ばれそうだ

俺も初め見た時は驚いたが…中々面白かろう?
記憶だけでなく見たものが残るとは…本当にアースの技術は凄い物だ
ぷりんとしたら持って行く故に、楽しみにしていてくれ



「街並みがサムライエンパイアとも普段のUDCアースとも違うからなんだか新鮮だね」
「ああ、確かに独特の街並みで見て回るだけでも楽しいな」
 青年将校と学生服に身を包んだ理彦とザッフィーロ。浪漫街を興味深そうにあちらこちらへと視線をやって眺めながら感想を漏らす。
 ふたりがよく知るサムライエンパイアとも、今の地球とも違うUDCアースの過去の姿。かつてあった時代の名残のようなこの街はふたりにとっては目新しい。
「UDCアースの昔の姿。この世界の人には懐古的な気分になるのかな?」
「だとしたら此処が盛況なのも頷ける。このような衣装を纏い、この街並みを歩いていた者がいると思うと不思議な気持ちになるが……」
 呟きながらザッフィーロは周囲の人を見渡す。自分達のように貸し衣装を身に纏う者もいれば、私服で歩く者もいる。私服で歩く者も示し合わせてきたようにそれとなく雰囲気を大正に寄せている者が多数で、それだけ見れば本当に嘗ての世界の光景を切り取ったかのよう。
 ただ、スマートフォンを手にやれ映えるだのやれいいねだのと言い合っている辺りが如何にも現代だと云うくらいで。
 同じように周囲を眺めていた理彦はぼんやりと教会のステンドグラスを眺めて、呟く。
「彼、あんまり出歩くのが好きじゃないみたいだけどこんな風に新しい景色とかを見たら見せてあげたいなって思うことがあるよ」
「折角故、撮影でもしておくか?」
 呟きに応じるようにスマートフォンを何だか少し誇らしげに取り出すザッフィーロ。
 それは?と頭にはてなを浮かべるようにザッフィーロの手元を見た理彦が目をぱちくりとさせる。
「さいきん『すまぁとふぉん』を使いこなせる様になったからな。中々見られぬ光景故、残しておこうと思う。これで『しゃめ』という写真を撮れば、この小さくて薄い板で景色を切り取れる」
 と言いながら理彦に向けてかしゃりとシャッターを切ってみる。いきなり『すまぁとふぉん』を向けられた理彦は驚き顔。
 目を見開いて動揺したその一瞬に下りるシャッター。驚き顔を表示するモニター。ザッフィーロに見せられて関心する理彦。
「わ、本当だ。景色が切り取られて時間が止まったみたいだ……へー、すごい。すまほってそんなことも出来るんだね」
「俺も初めて見た時は驚いたが、中々面白かろう? これで写真を撮りぷりんとして蜻蛉玉とともに渡せばいい土産になると思う」
 記憶だけでなく見たそのままのものが形で残る地球の技術は凄い物。感心しながら話すザッフィーロ。
 けれども聞き慣れぬ横文字に首を傾げる理彦。
「ぷりんと?」
「浮世絵のように実際に紙にこの写真を残しておけるんだ。この冊子のように」
 ザッフィーロは仕舞っていたパンフレットを取り出して見せる。理彦が見れば確かに紙にそのまま光景が切り取られて載せられている。
 何だか凄いと思うものの、いまひとつ実感はわかない。
「『じどり』という技術は高度故、未だ出来ないのだ。道行く誰かに頼んで写真を撮って貰おう」
 ザッフィーロはそう言うと、近くで教会の写真をスマートフォンで撮っていたカップルに声を掛けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木目・一葉
【SPD】
古い街並みをこうして散策するのは実に味わい深い
それに、幼少の頃入り浸っていた古い建物の店を思い出す
そこには様々な職業の人が集まり、オカルトな事件について意見を交えていた
お兄ちゃんと慕った人もその中の一人だ
僕は幼すぎる故にその中に加われなかったが、居心地がよくて何度も遊びにいったのだ
だがある事件を切っ掛けに、皆姿を消した
僕一人を残して
いや、生き残りが一人だけいた
「こんな感じの建物だった」
似た建物を見つけ、懐かしむ
10年ぶりに出会った彼は僕を知らないと言った
僕は部外者だった
こうして覚えていても、ただ一方通行な想いでしかない
「らしくない」
これでは敵にとって格好の餌食だ
思考を切り替えないとな


ディスターブ・オフィディアン
第三人格で行動
先ほど同様、書生姿で
和雑貨屋へ向かいましょうか

お目当ては、夏向けの小物――扇子や風鈴あたりを中心に見ていきましょう
扇子の絵柄は、花火や波、スイカといった夏の風情を感じられるものを一つ
風鈴は定番の金魚があればそれを買っていきましょうか
「やはり日本にいるならば、季節を楽しみませんとね」

その後は、洋館を散策。異国情緒を楽しみながら歩いて回り、本命のバルコニーへ
問題ないようなら、先ほどの風鈴をバルコリーにつるしてしまって
風鈴の音を聞きながら、他の皆さんが楽しむ姿をここから眺めさせてもらいましょう



 ぱちりと目を醒ました村雨丸はそのままの書生の格好で浪漫の街へと繰り出した。
 目指すは和雑貨屋。じりじりと照りつけるような初夏の太陽。目当ては夏向けの小物だ。
 硝子扉を開けば、からんとドアベルが鳴り店主がいらっしゃいと声をかけた。
(おや、色々揃っていますね。眺めているだけで気持ちが涼やかになりそうだ)
 直に訪れる夏のためにコーナーが設けられていたコーナーに並ぶのは扇子や風鈴、涼しげな色合いの手拭いや簪。
 悩みながらも、夜空に花火の柄の扇子と金魚と水草柄の風鈴を選ぶ。
「ふふ、お客さん目が高いね。この風鈴昨日入荷したばかりなんだよ」
「やはり、日本にいるならば季節を楽しみませんとね」
 店主に笑みながら言葉を返して、店を後にする。
 異国情緒漂う街を眺めて楽しみ見つけたのは古い洋館と立派なバルコニー。
「先程買ったばかりの風鈴を吊してもよろしいでしょうか?
「ええ、ちゃんと回収してくださるのならばいいですよ」
 近くに居たスタッフに訊ねれば良いと許可を得られたので村雨丸は風鈴を吊して音を楽しむとともに周囲の人々の様子も眺める。

 ちりん、風が吹けば涼しげな音が浪漫の街を駆け巡る。

 手前の建物を眺めていた少女が風鈴の音で振り返る。
「おや……」
 何やら難しそうな顔をしていた少女。けれども、風鈴の音で安らいだのか次第に柔らかい表情を見せたのを見て、村雨丸の頬も緩んだ。


 古い浪漫の街並みを散策する一葉。何処までも続くように見えたその光景に、脳裏を過ぎるのは幼い頃の記憶。
 この景色とよく似た場所を知っていた。それは、子どもの頃によく入り浸っていた古い建物のお店。
「よう、がきんちょ」
 いつも自分にそんな声をかけて迎え入れて頭を乱暴に撫でる大柄の男は常に煙草の匂いがしたっけ。
 店には様々な職業の人達が集まっていた。その中に『おにいちゃん』と呼び慕った人もいて、オカルト事件について意見を交わしていた彼らの輪の中によく首を突っ込んだものだ。
 ちょっとだけ大人になれた気がして心地が良かったし、大好きだった。
 話を聞いてはわかったふりをしてみたりなんかして、解っていないだろと頭を撫でられ可愛がられて。
 実際にはあまりに幼すぎたから輪になど入れなかったのだけれど、それでも彼らと一緒に居られた時間は今尚色褪せることがない。

「ちょうど、こんな感じの建物だった」

 似た建物を見つけた一葉は目を細め懐かしむ。
 彼らはある事件を切っ掛けに皆姿を消したのだ。自分ひとりを取り残して。
(いや、生き残りが一人だけ居たんだ。けれど)
 10年振りにあった彼は一葉のことを全く覚えてはいなかった。
(いくら傍にいても、僕はただの部外者に過ぎなかった。こうして覚えていても一方通行の想いでしかない)
 その時。
 ちりんと涼しげな音が鳴った。
 一葉が音のした方向へと視線を遣れば背後の洋館のバルコニーに吊された風鈴と書生服姿の青年が目に映る。
「もう、夏か」
 少し気が早い風鈴の涼しげな音が火照った頭を冷やすよう。
「らしくない」
 これでは敵にとっては格好の餌食。涼やかな風鈴の音に諭されるように、一葉は深呼吸。
(思考を切り替えないとな)

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リュシカ・シュテーイン
レイラさんとぉ(f00284)ご一緒ですよぉ

物作りってぇ、いつもと違うことが出来ますのでぇ、本当に楽しいですよねぇ……
はいぃ、お供致しますぅ!
私も綺麗な物は大好きですよぉ
その地の特色のお勉強にもなりますしぃ、何よりぃ、心が洗われますからねぇ

わっぁ、ガラス細工ですかぁ
私のお店ではガラスは魔力をすり抜けるためぇ、使わないのですがぁ、こう見るととっても綺麗ですねぇ……
色んな形や色ぉ、実用性や芸術性などぉ、とても幅広いですねぇ
……あっぁ、このぉ、風鈴ぅ……というガラス細工がぁ、とっても可愛らしいですねぇ
何だか心地の良い音色でぇ、耳が気持ち良いですよぉ
……えっぇ、良いのですかぁ!?

アドリブ歓迎ですぅ!


レイラ・エインズワース
リュシカ(f00717)サンと

綺麗な花に石鹸づくり、どっちも楽しかったネ
次は町、見て回ろッカ
ご飯も美味しそうダシ、和雑貨もお洒落ダネ
結構こういうの見て回るの好きだケド、リュシカサンはどう?
よかっタ
そしたラ、一緒に見て回ろうッカ!

目に留まったのはガラス細工のお店
キラキラしてて、透き通ってて綺麗だよネ
せっかくだからと入っていって店内を眺めるヨ
時計にグラス、色もいろんなものがあるんダネ
何かコレ、って気に入ったのはあったカナ
ワ、風鈴いいヨネ
こっちに来てカラ知ったんだケド、綺麗な音で、涼しげデ
コレから暑い時期にちょうどいいカモ
せっかくだカラ、買ってこうカナ
今日の記念に、ッテ!

アドリブも歓迎ダヨ



「物作りってぇ、いつもと違うことが出来ますのでぇ、本当に楽しいですよねぇ……」
「リュシカサンは物を作るのが仕事だものネ。普段と違うものを作るッテ新鮮だっただろうネ」
 おっとりうっとりと丁寧にラッピングされた石鹸を眺めるリュシカにレイラは微笑みながら語りかけた。
 体験教室を終えて洋館から出れば太陽は燦々ときらめいていて、時間を見れば丁度昼時だ。
「次は町、見て回ろッカ」
「はいぃ、お供致します」
 そうして2人は浪漫の街へと繰り出した。歩を進める度に石畳にカツカツと靴音が鳴り響いて心が昂ぶる。
 目に入るものもどれも目新しくも、なんだか懐かしくて、それでいてオシャレ心を擽るものばかり。
「結構こういうの見て回るの好きだケド、リュシカサンはどう?」
「私も綺麗な物は大好きですよぉ。その地の特色のお勉強にもなりますしぃ、何よりぃ、心が洗われますからねぇ」
 歩きながらレイラが問えばリュシカがニコニコと笑んで応えた。
 物作りを生業にする職業柄こういったものはいくら見て回っても飽きない。純粋に好きだというのもあるけれど。
「よかっタ。そしたラ、このグッズのお店が沢山あるエリアに行っテ見て回ろうッカ!」
 レイラはパンフレットのマップ上を指さした。
 パンフレットを眺めれば伝統工芸品やオリジナルの雑貨などを取り扱うお店が多く建ち並ぶエリアがあるらしい。
 勿論リュシカも頷いて、そのエリアへ向かって歩けば目に入ったのはこぢんまりとした煉瓦造りの硝子細工を取り扱うお店。
「わっぁ、ガラス細工ですかぁ」
「キラキラしてて、透き通ってて綺麗だよネ」
 店先からでも解る綺麗な硝子細工達。
 ご自由にお入りくださいとの立て看板の言葉に甘えるように店内へと入る。
 時計にグラスにオルゴール。吹き硝子に蜻蛉玉にステンドグラス。形も色も様々でリュシカが先程言った通りに見ているだけで心が洗われるようだ。リュシカの店では魔力をすり抜ける為使わない硝子。普段見ないだけにリュシカの瞳に硝子細工が色鮮やかに映る。
 そうして、興味深く店内を眺めていたリュシカ。目に止まったのは鈴蘭の花のような形のドーム型の硝子細工に紐と紙の札が吊された変わった形の硝子細工。
 札を見てみれば『風鈴』の文字。
「……あっぁ、このぉ、風鈴ぅ……というガラス細工がぁ、とっても可愛らしいですねぇ」
 そう言ってリュシカが花火柄の風鈴を手に取ればチリンと鈴のような涼しげな音が鳴る。
 聞き慣れない音だけれど、澄んだ風鈴の音はとても耳に心地が良い。
「ワ、風鈴いいヨネ」
「ご存じなのですかぁ?」
 リュシカの問いかけにレイラは少し得意げな表情で頷いて。
「こっちに来てカラ知ったんだケド、綺麗な音で、涼しげデこの国の人ハこの音デ涼しさを感じるらしいンダ。コレから暑い時期にちょうどいいカモ

 レイラは説明してから壁にかかる幾つかの風鈴の中からぴんときたものを手に取る。
「せっかくだカラ、買ってこうカナ。今日の記念に、ッテ!」
「……えっぇ、良いのですかぁ!?」
 では自分もと改めてリュシカは、壁の風鈴達に目を向けて真剣に悩む。
 花火に金魚、朝顔に向日葵。夏を彩る風鈴に想いを寄せながら迷うのは、きっと贅沢な時間なのだろうと口元に笑みを浮かべた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鏡彌・サクラコ
【アヤネさまf00432とご一緒に】
【SPD】
もう少し遊びませんか?
雑貨屋や駄菓子屋をチラ見しながら
UDCエージェントというのは生真面目なのですねい
サクラコは気に入ったので、衣装はこのままでいす
いざ聞き込み調査と参りましょう
まずはあちらの雑貨屋さんから

噂を集めれば
敵の姿もおぼろげにわかるでしょうか?
話を聞けば聞くほど憂鬱な気分になりますねい

ちょっとお茶でも飲みましょう
休憩しないと疲れてしまいます

落ち着いた頃合いで
不安はありませんか?
とアヤネさまに問いかけます

サクラコは
不安も痛みも感じられます

鏡である故
この感情は或いはアヤネさまの?
いえ、言わずにおきましょう

もう少しの間
黄昏時まで思いを巡らせつつ


アヤネ・ラグランジェ
【サクラコ(f09974)と参加】
眼鏡は外すネ
この後危険な事があるかもしれないし
エージェントは本職だからネ
服装は変更せずに行こうか
こんな格好もたまには悪くない

硝子細工が綺麗だネ
などと店を巡りつつ
修復中の洋館について
何か話が聞ければいいのだけど

サクラコの質問に答える
無いよ。慣れているから

凡そどんな光景が見られるかも想定済みだ
UDCの精神攻撃のパターンは読める
痛みも恐れも感じない
僕は強いから大丈夫

サクラコもそうなのかなと思ってた
と冗談めかして笑いかける
ゴメン、言ってみただけだから

背中に感じるライフルケースの重みを確認する
敵に弾を一発食らわせるイメージを思い出す
それだけで済む。簡単な仕事だ



「アヤネさま、なんか勿体ないでいすね」
 サクラコは少し不服そうに呟く。隣を歩く書生服姿のアヤネはメガネを外していた。
 とても似合っていたというのに勿体ない。
「この後危険なことがあるかもしれないしエージェントは本職だからネ」
「UDCエージェントというのは生真面目なのですねい」
 本当に勿体ないでいす。確かにアヤネの言うことは最もなのだけれど、勿体ないでいす。
 くるくると髪を弄りながらサクラコが少しふて腐れればアヤネが唇に人差し指を当ててウィンクを。
「けど、服はこのままで行こうと思うよ。こんな格好もたまには悪くないしネ」
「本当でいすか! では浪漫に浸りつつ怪異探偵奇譚と参りましょう! まずはあちらの雑貨屋さんから!」
 サクラコはアヤネの手をひいて、煉瓦造りの店へと入る。様々な雑貨を眺めるうちにアヤネの目を惹いたのはウサギを象った硝子細工のオルゴール。
「わぁ、この硝子細工のオルゴール綺麗だネ」
「本当でいす! うさぎさまも可愛くて綺麗でいす。でも割れ物ですから取り扱いに気をつけなければですねい」
 サクラコと一緒でいすねなんてサクラコは笑む。
 そうして色んなお店を巡りながら情報を集めていくうちに不思議なことが解った。

 地元や此処で働く人々から広まった噂ではないらしい。
 勿論地元の人々もその噂を知っていて『自殺の名所や怪談話の噂が立つのも頷ける』と話していた。
 しかし、よく聞いてみれば皆ネットで見たりネットに詳しい若者に聞いたりして広まった話らしい。

「何か作為的なものを感じますねい。誰かがわざと噂をネットに広めてるみたいでいす」
「そうだネ。SNSで話題のスポットだから、確かにネットの方が噂を広める効率は良いだろうネ」
 歩き回って少し疲れて、喫茶店に入ったふたりははぁと息を吐く。
 調べれば調べる程に気持ちが沈む。
「この事件には裏がありそうでいす」
「ただ、今回それを突き止めるのは無理そうだネ」
 これは勘でしかないけれど、もし広めた人物がいるのだとしたら恐らくその人物は其処には居ない。
 放置しているだけで餌がのこのこやってきて、喰われ、UDCが成長していく。その場を監視する意味がないのだ。
 今自分達が出来ることがあるとしたら洋館に巣くうUDCを撃滅することのみだろう。
「アヤネさまは冷静でいすね。不安はありませんか?」
「無いよ。慣れているから」
 サクラコの問いかけにアヤネはきっぱりと応えた。
 力強いというよりは色がないような返答。研ぎ澄まされたような意志。
「大凡どんな光景が見られるかも想定済みだし、UDCの精神攻撃のパターンも読める。痛みも恐れも感じない。僕は強いから大丈夫」
「サクラコは不安も痛みも感じられます。表に出さないことはよくありますが」
 力強く告げたアヤネに対して、サクラコは少し不安そうな表情。
 感じる心の揺らぎ、痛み、不安。だけれど、サクラコは鏡。目の前の相手を映す鏡。
 ならばこの感情は――否、云わずにおこうとサクラコは首を振る。
「サクラコもそうなのかと思ってたから……あっ ゴメン、言ってみたかっただけだから」
 そのようなことを言ってアヤネはライフルケースを、少しだけ持ち上げてその重さを確認する。
 浮かべるイメージは敵に弾を正確にぶつける光景。どんな相手だろうと行うことには変わりない――それだけで済む、簡単な仕事。
 揺らぐ珈琲の薫り。不確かな空の色。黄昏時まで擦れた蓄音機から流れるジャズの音色を聞きながら思いを巡らせていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

雨宮・新弥
>アリマ(f00656)と同行
>アレンジ等歓迎

>貸衣装で、普段着からバンカラ風に
街歩くなら、一人だけ仮装させとくのもな…
俺もなんか適当に着とく。
「…どーも」
…ま、これなら一緒に歩いててもおかしくないだろ

>二人で食べ歩きへ
>スマホで写真を撮りつつも、こちらも惹かれるのはたべもの
>惹かれるのは食いでのあるもの、甘いもの。気づけば両手いっぱいに
>ちゃんと全部食べる

…ひとくち?って……、…。
「……。別に、やる。全部。」
そっちのはいい。
いい。

「アイス?ああ…そんな難しくない。
…なんなら、一緒に作ってみるか?」


アリマ・バートル
新弥くん(f04640)と一緒に参加

衣装を着替えた新弥くんを見て
「あ、新弥くんも着替えたんだ。背が高いし、スリムだから何を着ても似合うね」

二人で食べ歩きをしながら街を散策
アイスクリンを手にぶらぶらと
街並みも綺麗だけど、やっぱり美味しそうなものに目を引かれたり

「新弥くんの食べているやつも美味しそうだね。ねぇ、一口ちょうだい? 私のも一口あげるからさ」
「え、いいの? やった」

美味しそうに頬張りながら

「やっぱり甘いものはいいね。そうだ。新弥くんってアイスは作れる? 作れるなら、今度作ってよ。あ、もちろんお金は払うよ」
「簡単なんだ? それなら、私も試してみようかな」



「あ、新弥くんも着替えたんだ。背が高いし、スリムだから何を着ても似合うね」
「……どーも」
 バンカラ衣装を身に纏い着付け室から出てきた新弥を眺めて、アリマが嬉しそうに云えば褒められたというのに新弥は視線を逸らして応えた。
 着替えたのは街を歩くというのに彼女一人にあのような仮装をさせて置くのが忍びなかったからだ。
 選んだバンカラも一番コスプレ感が薄いものをという理由で選んだ間に合わせ。家出中ではあるが思春期真っ盛りである彼の年齢や容姿を考慮すれば、学ランに似たこの格好が一番違和感がないと感じた。
 マントや学生帽に下駄等流石に学ランと言い張るには少し無理はあるが、書生や軍服や燕尾服と比較すればまぁマシだとは思う。
「さ、散策に行こう。すっごく楽しみだったんだ」
「ああ、解ったよ」
 アリマに誘われ新弥が応える。ふたりは浪漫街に出で石畳に足音響かせながらそぞろに歩く。
 綺麗な街は見ていて心が洗われるよう。だけれども、花より団子。やっぱり美味しそうなものに目を惹かれる――なんて、アリマが思っていれば。
「え、新弥くんいつの間にそんな!」
「いや、さっきかあちらこちらで買ってたんだけど気付かなかったのか?」
 改めて新弥の方を見てみれば、彼はいつの間にかビニール袋を腕から下げてチョコレートのアイスキャンディを手に持っている。
 なんとこれは許すまじ。
「新弥くんばっかりズルい! 私もなんか買う! あ、アイスクリンはっけーん」
「いや、別にズルくはないだろ……買いたいなら勝手に買えばいいだろ」
 思い立つがままにアイスクリン売りの自転車の元まで行って、あっと言う間に買って戻ってきた。
 木で出来たアイススプーンで掬って幸せそうな表情でアリマが頬張れば、ふと。
「新弥くんの食べているやつも美味しそうだね。ねぇ、一口ちょうだい? 私のも一口あげるからさ」
「……ひとくち? って……」
 新弥はじとりと眺める。
 アリマはじっとりとした視線を気にすることもなく、ね?なんて両手を合わせてウインクをしておねだりしている。
 根負けしたようにはぁと溜息をひとつ吐いてから。
「……いいよ、別に、やる。全部」
「え、いいの? やった! じゃあ私のあげるね? ほら、ほらほら」
 アイスキャンディを受け取った後に自分のアイスクリンを差し出してくるアリマ。
 それはそれは良い表情。だけれど。
「そっちのはいい」
「ほら、ほらほら」
「いい」
「そっか、残念」
 頑なに断り続ける新弥にわざとらしく肩をすくめるアリマ。
 両手に花ならぬ両手にアイスの状態で幸せそうにふたつとも溶けきる前に完食。
「やっぱり甘いものはいいね。そうだ。新弥くんってアイスは作れる? 作れるなら、今度作ってよ。あ、もちろんお金は払うよ」
「アイス? ああ、そんな難しくない」
 てっきりアイスは何か特殊な器材や技術が必要なものだと思っていたから、新弥の返答は意外なものでアリマは目をぱちくりと瞬かせる。
「簡単なんだ? それなら私も試してみようかな」
「……なんなら一緒に作ってみるか?」
「え? ほんと?! 嬉しい!」
 アリマは本当に嬉しそうに笑むものだから、新弥は照れくさくなって少しだけ顔を背けた。
 五月の昼下がり。爽やかな初夏の風がふたりの間を通り抜けていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

花剣・耀子
蜂月室長(f14366)と

引き続きハイカラさん。
そぞろ歩きは嫌いではないわ。
物珍しい街並みなら、尚更。

お土産でも買って帰りたいところだけれど、
懐具合はさみしいのよ。
……ねえ室長、経費で落ちない? だめ?
だめかしら。そう。そう……。

でも昼食は経費のうちだと思うのよ。
おなかが空いては戦は出来ないもの。

ここは矢張り洋食ね。
オムライスとクリームソーダ。あとプリンを。
ビーフシチューは飲み物だし、パンケーキは別腹だわ。

お米は万能だけれど、成人男子としては小食ではないかしら。
……何を言っているの。室長も働くのよ。
経理さんには頑張って勝って頂戴。

ビーフシチューとパンケーキを室長の方へ押しやって。
いただきます。


蜂月・玻璃也
耀子(f12822)と

お前、なんでも経費って言えばタダになると思うなよ。
ダメ。
しおらしくしてもダメ。
(指でバッテンを作って毅然とした拒否)

そうだな、昼食は経費だ。
お前の昼食はな。

すみません、おにぎりセットください。
……今月はな。想定外の出費がさ。
……今月も、だけどな。
経理さんが「涙を飲んで下さい。少しは飢えをしのげるでしょう」って……
そういう意味じゃなくない?

いや、気にするな。お前の燃費は知ってる。
この後は頼り切りになるだろうし。
梅おにぎりだって美味いぞ。俺は大好きだ。
たくあんもついてるしな。ハハハ……

ん……そりゃ頑張るけど、俺の実力じゃ……
よ、よーこぉ……!(ゴハンを分けてもらい感涙)



「雰囲気は悪くはないわね。こういう物珍しい街並みは好きよ」
「耀子が楽しめているようでよかったよ」
 カメラのシャッターを切って写真を撮りながら耀子と玻璃也はそぞろ歩き。
 擦れ違う人々の晴れやかで楽しげな表情と活気溢れる商店。ふらりと立ち寄った和雑貨屋で耀子は桜と蝶をモチーフにした銀色の簪を見つけて手に取る。
「この簪綺麗だと思わない? ねぇ、室長。経費で落ちない? 懐具合は寂しいのよ」
「お前、なんでも経費って言えばタダになると思うなよ」
 経費は魔法の呪文じゃないんだぞ、全く。玻璃也は眉間に皺を寄せながら応えた。
 軽々しく経費を許可して後で経理担当に怒られるのは誰か解っているのか。けれども、耀子もこれしきのことでは諦めない。
「だめ?」
「ダメ」
「だめかしら。そう。そう……」
 しゅんと肩をおろして態とらしく俯いてから、上目遣いで見てくる耀子。
「しおらしくしてもダメ」
 手でバッテンを作って断固拒否する玻璃也。
(今日は無理ね、仕方ないわ)
 耀子は少し残念そうに簪を棚に戻した。
 そうして、気付けば昼時。
「お土産は諦めるわ。でも、昼食は経費のうちだと思うのよ。お腹が空いては戦は出来ぬもの」
「そうだな、昼食は経費だ……お前の昼食はな」
 浮かない表情の玻璃也は自分の財布を手に持った。
 じゃらりと小銭ばかりが重い財布にはぁと溜息を吐く。何度手に取ろうが結果は同じ。
「すみません、おにぎりセットください」
「私はオムライスとクリームソーダとビーフシチュー。それにプリンとパンケーキもお願いします」
 注文をいれて店員が立ち去った後。
 耀子はひもじくワンコインを遥かに下回るおにぎりセットを頼んだ玻璃也の方を向いて。
「お米は万能だけれど、成人男子としては小食ではないかしら」
「……今月はな。想定外の出費があったんだ。いや、今月も、か」
 玻璃也の目は遠い。
「多少は経費で落として貰えないの?」
「いや、それをこの前経理さんに言ったら『涙を飲んでください、少しは飢えをしのげるでしょう』って……そういう意味じゃなくない?」
 思い出したら泣けてきそうだ。しかし、その流れた涙を飲んだとて飢えは膨れるわけがない。
 昼食代を経費で落として貰えるような働きも情けないことに出来ていない。残念ながら当然の結果なのだと自覚はしているから。
「気にするな。この後はお前に頼り切りになるだろうし、お前の燃費の悪さも知ってるからな。梅おにぎりだって美味いぞ、俺は大好きだ。たくあんもついてるしな。ハハハ……」
「何を言ってるの。室長も働くのよ」
「んー……そりゃ頑張るけど、俺の実力じゃ……」
 力なく笑う玻璃也に、耀子は少し呆れたように息を吐いてからビーフシチューとパンケーキを玻璃也の方へと押しやる。
 玻璃也はぱちくりと目を瞬いてから、耀子の顔をじっと見て――ほろり。
「よ、よーこぉ……」
「いい大人がそんなみっともない表情をしないの。ちゃんと経理さんに頑張って勝って頂戴」
 ありがとう。そうして頬張ったビーフシチューとパンケーキの味はとても優しい味がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ノネ・ェメ
【引き続きデイヴィーさん(f04833)と】

 昼食という名の休息もそこそこに午後も愉しんじゃおう。

 写真の次は活動写真という事で、サイレント映画を観れるような所はあるかな? 台詞がないから、リアルタイムにレビューしながら観たりとか、話しも花咲けそう。コメディ系なら皆どっかんどっかん笑ってる中だし、話せる話せる。話せないかな(

 同じ時をいっぱい笑い合いあって過ごせたなら、お友達としての距離もまた、より近しいものとなることでしょー、などと。くしゃーってなるまではいかずとも、ちらっとでもふふんってなってくれれば、ばっちり。

 空がオレンヂに染まりきる迄には、も一度だけ写真に戻り。今度は2人。記念写真。


デイヴィー・ファイアダンプ
【引き続きノネf15208と】
活動写真……当時の映画というやつだね。
足もくたくたになっているだろう、足休めも兼ねて彼女の意見に賛同を。
異文化が広がり、そして動乱を迎えた時代だ。
その時代に息づいていた人々が何を想い、そして何を残そうとしたのか。 どんな内容であれ興味が惹かれるな。

鑑賞後は彼女の誘いに乗って記念撮影を。
今日という体験で僕がどんな表情をしていたのだろうか、それも現像してからのお楽しみだ。



「昼時ですから何かご飯を食べたいところですが、活動写真というものも気になります」
「活動写真……当時の映画というやつだね」
 ノネの言葉にデイヴィーはパンフレットを眺めながら応えた。
 写真撮影で彼方此方動きまわって足もくたびれてきている。丁度良い足休めにもなるだろう。
 昼時ということもあり飲食店は何処も混雑していてゆっくりと休めそうな雰囲気ではない。逆に、昼時であれば活動写真館も空いているだろう。
「良い足安めにもなるだろうから活動写真、見に行こうか」
 そうして、ふたりが活動写真館に向かえば空いているどころか他の客の姿が一切無かった。
「いくら昼時とはいえ……」
 デイヴィーが訝しんで上演項目を見てみれば、納得する。
 その時間帯放映されているのはコメディのサイレントシネマだった。名前は聞いたことあるけれどなんとも不条理なコメディだと噂を聞いたことがある。
 他の時間帯には往年の名作トーキー映画などそうそうたるタイトルが並んでいて、それらと比べては確かに弱い。一定の層には需要はあるけれど、カップルや若い女性達には受けないだろうなといった印象のニッチな内容だ。
「よかったですね。貸し切りですよー」
「まぁ、確かにね。君は、結構良い思考回路をしているよね」
「お褒め頂き光栄」
 会話をしながら席へと座れば間もなく上映開始。
 聞いていた話と寸分違わず確かに不条理なコメディ要素が乱発する。他に客もいないから、ふたりは遠慮無く笑いながら会話しあう。
 映像技術や表現、勿論役者の服装や舞台などは現代とまるっきり違って当時の息遣いが聞こえてくるよう。
 だけれど、現代の自分達が此程に笑えるということは感性は百年近く経っても変わらないのだろう。
「いやー、面白かったですね。何が面白かったのか解らないけれど」
「うん、良い経験になったよ」
 感想を言い合いながらすっかり人もひいた洋食店で遅めの昼ご飯を取って出れば既に空はオレンジ色。
「せっかくですから、写真を撮りましょう。同じ時をいっぱい笑い合って過ごせたのなら、友達としての距離もまた、より近しいものとなることでしょー」
「……君は」
 恥ずかしげもなくそう言えてしまう彼女。眩しく感じるのはそんな彼女かすっかり西に傾いた日がもたらす夕焼けの所為か。
 どちらでもいいか。そんなこと気にしても仕方がない。ノネに促されるように彼女の隣に立てばふにゃりとさりげなくも自然な笑顔が零れ出る。
「良い顔です。さ、撮りましょー。はい、蘇」
「え? ん? 蘇? 蘇って?」
 カシャカシャカシャカシャ。困惑するデイヴィーに鳴り響く連射音。
「蘇は蘇です。チーズですよチーズ」
「え、んー? え、チーズってそのチーズではないような……」
 困惑。そして、またかしゃりと写真を撮られて驚くけれど、まぁいいかと思った。
 今日一日を過ごして、自分はどのような表情をしていたのだろう。それは、現像してからのお楽しみだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

杜鬼・クロウ
【桜鏡】
※普段は名呼ばず
アドリブ◎
服は一章と同様

万華鏡回し軽く浪漫街を覗く
隣立つ羅刹女へ目を移す

ンじゃお次は外見て回るか(外へ
お手をどうぞ、お嬢(前へ歩み振り返って手差し出し
…なァンてな
お前には要らねェ世話だったぜ(手引っ込め
何がそんな不服なンかねェ?(知ってて笑いつつ言う

鯛焼き屋へ
彼女の分も購入
味お任せ
甘すぎず程よい塩梅に顔綻ばす

ンじゃ言葉に甘えてもらうわ(直接頭からもぐっ
俺のもイイぜ…ってお返しなンじゃなかったのかよ、エリシャサン?(ニヤリ
口の端、ついてンぞ(親指で拭って舌で掬う
弄り甲斐がある女(自分の鯛焼き食べ

余裕な表情で振り回す
時間があれば黄昏前の教会へ
ステンドグラスを見る
神秘的だな


千桜・エリシャ
【桜鏡】
慣れないドレスは少し歩き辛く
紳士的な申し出に手を取ろうとすれば空を切って
もう!意地悪ですわね!

あら、気前がいいこと
たい焼きをご馳走に
折角ですから珍しい味に挑戦してみたいかしら
新鮮な味で美味しいですわ
一口いかが?と彼にちぎって渡そうとすれば既に頭がなくなっていて瞬き
…そんなにがっつかなくても、鯛焼きは泳いで逃げませんのに
お返し!とばかりに彼のたい焼きを思い切ってかぷっと
ふふ、クロウさんのも美味しいですわね
…あっ
もしかして私、かなり恥ずかしいことをしたのではなくて?
なんて顔をそらしていれば追い打ちが
よくもそう恥ずかしいことを次々と…
照れてなんていませんからね!

振り回されつつも彼に着いていく



 万華鏡をくるりとまわして浪漫街を覗き見る。世界が浮かんで消えて、散っては燦めいて。
 悪くはない――口元に薄い笑みを浮かべてから万華鏡を外す。クロウが隣を歩くエリシャに目を向けてみれば、彼女は慣れぬドレスで歩きづらそうにしていた。
「お手をどうぞ、お嬢」
 クロウは紳士的に手を差し伸べる。エリシャがその手を取ろうとした瞬間に素早く手を引っ込めた。
「……なァンてな、お前には要らねェ世話だったぜ」
「もう! 意地悪ですわね!」
 不満げなエリシャが愉快。クロウはクツクツと意地の悪い笑みを浮かべる。
「何がそんな不服なンかねェ」
 知りつつもわざと意地悪く笑っているクロウにエリシャは不服そうな瞳を見せる。
 しかし、このままでは唯の意地の悪い男。ならばと立ち寄った鯛焼き屋でエリシャの分も御馳走してやろう。
「奢ってやる。何がいい」
「あら、気前がいいこと」
 エリシャはカウンターの品書きに目を落として悩む。
 鯛焼きと言えば餡子やカスタードの印象が強いが、此処は変わり種や季節限定にも力を入れているらしい。
「折角ですから珍しい味に挑戦してみたいかしら……」
「なら、このカレーやお好み焼きってのは?」
「……鯛焼きとは少し違いますわよね、それは。鯛焼きではありますが」
 それならば普通にお好み焼きを食べたい。そうして品書きを見渡せば新商品の欄に目がとまる。
「決めました。私は、黒豆きなこにしましょう。クロウさんはいかがなさいますか?」
「ンじゃ、俺は抹茶餡」
 注文をいれると手早く食べ歩き出来るような包み紙と冷茶を出してくれた。
「新鮮な味で美味しいですわね」
「ああ、抹茶も甘すぎず丁度良い」
 程良く甘いけれど甘すぎない丁度良い塩梅に顔が綻ぶ。
「一口いかが?」
「ンじゃ言葉に甘えてもらうわ」
 鯛焼きを千切って渡そうと指をやる。しかし、あるべきはずのものがなくてエリシャは目をぱちくり。
 クロウの方を見てみれば悪戯っぽい笑みを口元に浮かべながら咀嚼中。
「……そんなにがっつかなくても、鯛焼きは泳いで逃げませんのに」
「悪ィ悪ィ、俺のもイイぜ」
 ならばお返しとばかりにエリシャは彼の鯛焼きへと齧りついた。
 どうしてだろう、クロウが悪戯げな笑みを浮かべているのは。少し経ってエリシャは気付いた。
 あっ。
「もしかして私、かなり恥ずかしいことをしたのではなくて?」
「お返しなンじゃなかったのかよ、エリシャサン?」
 エリシャが照れて顔を背ければクロウが面白そうな口ぶりで、耳元で囁いてくる。
 追い打ち、余計に照れてしまって俯けばクロウが口元についていたあんこを拭った指を舐めた。
「口の端、ついてンぞ」
「よくもそう恥ずかしいことを次々と……照れてなんていませんからね!」
 そのようなことを言いつつも、エリシャの表情や態度は誤魔化せていない。全く、弄り甲斐のある女だとクロウは笑った。
 エリシャが気を取り直すように飲み干した冷茶が顔の火照りを取り払ってくれるようだった。

 そぞろに歩いて辿り着いた教会。
 少し傾いた日がステンドグラスに深く差し込んで、荘厳な教会の床や椅子に鮮やかな光模様を描いていた。
「綺麗ですわね」
 その光を受け止めるように、差し込んだ光の中に立つエリシャが静かに笑みながら語りかける。
 ステンドグラスの光を受けて燦めく彼女の黒檀櫻の髪。クロウはただ一言、呟いた。
「ああ、神秘的だ」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

零落・一六八
涼さん(f01922)と
調査ですかー!じゃあせっかくなんで見て回りましょう!
大丈夫!ちゃんと調査しますって!

洋館に立ち止まる涼さんに
「どしたんです?立ち止まって?」
「見たいなら見てってもいいんですよ?」
でも今日はなんだか涼さんの故郷を思わせるものが
沢山あるようだったから
気になるなら寄ればいいのに

あ!駄菓子屋ありますよ!行きましょう!
スイーツとは違いますけど、これがいいんですよ!
ボクのお勧めはこの酢イカとかですかねー
ああ、こっちのこれもあたりが出るともう一個もらえるんですよ!
あ、これもいいですよ!はい!涼さん!
(半分に割って分けれるアイス差し出す)
ねー、駄菓子もなかなかいいもんでしょ?


彩花・涼
一六八(f00429)と
この後はどうする?
依頼で来ているのだから調査は必要だと思うが……
そういうつもりはなさそうだな
なら、街並みを歩いてみるか

洋館は故郷でも見慣れた建物で、少し昔を思い出すな…
ふと、立ち止まってステンドグラスの教会に
遠い昔の穏やかだった時が浮かぶが
もうそれは過去に消えたものだ…
ああ、すまないな…気になる店はあったか?

駄菓子…屋、菓子を売っているのか…?
それにしては普段みるスイーツとは違ってシンプルというか
携帯食のような感じだな
一六八のオススメはあるのか?
ほう…色々あるんだな
あたり…?くじのようなものか

(半分に割ったアイスを受け取り)
ふふっ、確かになかなか興味深い発見だった



「この後どうする? 依頼で来ているのだから調査は必要だと思うが……」
「調査ですかー! じゃあせっかくなんで見て回りましょう!」
 真面目な表情で涼が語りかければ、返す一六八の口調は楽しげ。
 きょろきょろと楽しそうに周囲に見渡して、あちらこちらで道草を食いたそうにしている一六八。微笑ましくて涼の口元が緩む。
「そういうつもりはなさそうだな」
「大丈夫! ちゃんと調査しますって!」
 などと言いつつも一六八の視線はアイスキャンディののぼりに釘付け。
 涼は笑む。偶には、少し寄り道をしてみるのもいいかもしれない。
「なら、街並みを歩いてみるか」
「やったー!」
 涼が誘えば一六八が心底楽しそうに返すものだから、涼もつられて笑った。
 そうして浪漫の街をそぞろに歩く。
 薔薇。洋館。目の前に存在する故郷でも見慣れたもの達が脳裏の記憶を擽り呼び起こして、胸を懐旧の感情に染める。
(あの頃は……)
 ふと、足が止まる。見上げる先には教会のステンドグラス。故郷のものとも似た薔薇窓が昔の穏やかな時代の時のことが呼び起こされる。
 しかし、もう今はあの薔薇窓は割れて穏やかな時間も過去に消えた。
「どうしたんです? 立ち止まって」
「ああ、すまない。何でもない」
 物思いに沈んでいた涼の思考は一六八の声で揺り起こされた。
 涼は軽くかぶりを振って、いつも通りの表情を浮かべる。
「見たいなら見てってもいいんですよ?」
「いや、大丈夫……それよりも、気になる店はあったのか?」
 気にするな。そんな言葉を込めた涼の答え。
 涼の故郷を思わせるものが沢山存在するこの街。
 気になるなら立ち寄ればいいのにと一六八は思うけれど、涼自身がそのように言うならば今は口出しをするようなものでもないだろう。
 一六八は意識して明るい表情で涼の手を取る。
「あ! 駄菓子屋ありますよ! 行きましょう!」
「駄菓子……屋、菓子を売っているのか……?」
 連れられた先は木造の古風でこぢんまりとした商店のような店。
 少し棚を見渡せばクッキーやキャンディ等見慣れた菓子はあるものの、普段見かけるものよりもちゃちなもの。
「菓子というには普段みるスイーツとは違ってシンプルというか、携帯食のような感じだな」
「スイーツとは違いますけど、これがいいんですよ!」
 楽しそうな様子で棚を眺める一六八。駄菓子屋に慣れているのだろうかと考えて涼は問うてみる。
「一六八のオススメはあるのか?」
「ボクのお勧めはこの酢イカとかですかねー」
 瓶入りの串刺しのイカを指さした後、一六八は小さなガムやチョコ棒なども手にとる。
「あと、こっちのこれもあたりが出るともう一個貰えるんですよ!」
「ほう、色々あるんだな。あたり? くじのようなものか」
「そうです。くじです。当たりが出るとちょっとだけ幸せな気持ちになるんですよね。あ、これもいいですよ! はい、涼さん! はんぶんこです」
 一六八はチューブ型アイスをぽっきんと半分に折って片方を涼へと差し出す。
 オレンジ色のアイスを舐めてみればひんやり甘くて初夏の陽気には嬉しい味。
「ふふっ、確かになかなか興味深い発見だった」
「ねー、駄菓子もなかなかいいもんでしょ?」
 半分に分け合ったアイスはいつもよりも甘い味がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

蘭・七結
あねさま/f02896と

カフェでお茶だなんて、ステキね
是非、あねさまとご一緒したいわ

ご多忙で、お会いする機会が少ないあねさま
それでもあねさまは、ナユのおねだりを聞いてくださる
ねえ、あねさま
ナユは、とってもしあわせだわ

ナユは、紅茶とケーキをひとつ
まあ。ナユにくださるの
うれしいわ、あねさま。とっても美味しいわ
ナユのケーキはラズベリーソースがかかったレアチーズケーキ
あねさま、ひとくちいかがかしら
こちらのケーキも、美味しいのよ

なんて甘美で、ステキなひとときなのでしょう
この時がずうと続けばよいと、感じるくらい

ええ、あねさま
空の色が、あかいわね
ナユも、とてもたのしみだわ


蘭・八重
可愛い妹なゆちゃん(f00421)と一緒に

なゆちゃんとお出かけもなかなか出来ないから嬉しいわ

なゆちゃん一緒にカフェでお茶どうかしら?
なゆちゃん何が良いかしら?

私は紅茶とケーキをひとつ
ガトーショコラをホークで一口に
手を添えてそっとなゆちゃんの口元に
『あーん』と
ごめんなさいね、なゆちゃんとしてみたかったの
可愛らしく食べる姿に愛おしく微笑み

あら?私にも?ありがとう
ふふっ、とっても美味しいわ

えぇ、貴方と過ごすとっても幸せな時間
時間が止まりずっと続けばいいわね

あら、空が紅く染まってくるわね
ふふっどんな事が起こるのかしら?
ねぇなゆちゃん
とっても楽しみねと微笑んで



「なゆちゃん、一緒にカフェでお茶どうかしら?」
「カフェでお茶だなんて、ステキね。是非、あねさまとご一緒したいわ」
 姉と妹。ふたりは手を重ねて浪漫の街を石畳に足音鳴らして歩く。
 いつもは忙しくて中々逢えない大好きで大切で愛おしい相手。だからこそ、一緒にいられるだけでしあわせ。
 偶にしか逢えなくとも、姉はいつだって妹のおねだりを聞いてくれて妹は姉に愛らしい笑顔を見せてくれる。
 そうして少しだけ歩けば目的の煉瓦造りの洒落た喫茶店へと辿り着く。
 硝子戸を開けばカラン、と涼しげなドアベルが鳴る。
 喫茶店の中へと入れば、窓際のいっとうに眺めの良い席に向かい合わせで腰掛けてメニューを開く。
「なゆちゃんは何が良いかしら」
「ナユは、紅茶とレアチーズケーキをひとつ。薔薇の紅茶なんてステキね」
「なら私もおんなじ薔薇の紅茶にするわ。きっととても馨しい香りがするわ」
 注文をいれて、他愛のない話に花を咲かせていればケーキが運ばれてくる。
 華やかで馨しい香りの薔薇の紅茶。ラズベリーソースがかかったレアチーズケーキとオレンジソースが添えられたガトーショコラ。
「なゆちゃん、ひとくちどうぞ」
 やってくるなりに八重はフォークでガトーショコラを切り取って、七結の口元へと差し出した。
「まあ、ナユにくださるの?」
「ふふ、ごめんなさいね。なゆちゃんとしてみたかったの」
 差し出されたフォークのガトーショコラ。七結が頬張れば少しビターな味わいが口いっぱいに広がる。
「うれしいわ、あねさま。とっても美味しいわ」
 顔を綻ばせながら語る七結。なんて愛らしいのだろうと八重の顔も綻ぶ。
「あねさま、ひとくちいかがかしら。こちらのケーキも、美味しいのよ」
「あら? 私にも? ありがとう」
 七結は自分のレアチーズケーキをフォークで切り取って同じように八重の口元へと運ぶ。
 口の中へと入れると爽やかで甘酸っぱいチーズとベリィの味が満たす。
「ふふっ、とってもおいしいわ。なゆちゃんと過ごす時間はとてもしあわせ。ケーキも幸せの味がするわ」
「このときが、ずうっと続けばよいのに」
 ふと、そのようなことを七結が呟くから八重も頷く。
 想いは同じ。違わない。
「ええ、本当に。時間が止まりずっと続けばいいわね」
 だけれど、想いとは逆回りに時計はチクタクチクタクと右回り。
 一緒にいられるこの時間をかみ締めるように過ごして喫茶店を出る頃には空はすっかりと黄昏色。
「あら、空が紅く染まってくるわね」
「ええ、あねさま。空の色が、あかいわね」
 毒のように甘美なあかいろの空。
 日が暮れて、昼と夜が混じり合って、世界の境界がぼやけるあかいいろ。
「ねぇなゆちゃん、とっても楽しみね」
「ナユも、とてもたのしみだわ」
 夕焼けはふたりの影を濃く長く石畳に映し出していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 集団戦 『嘆き続けるモノ』

POW   :    何故俺は救われなかった?
質問と共に【多数の視線】を放ち、命中した対象が真実を言えば解除、それ以外はダメージ。簡単な質問ほど威力上昇。
SPD   :    誰も私を助けてくれない
自身と自身の装備、【自身と同じ感情を抱く】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。
WIZ   :    僕を傷つけないで!
【悲しみに満ちた声】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


--・-- ・-・ -・ ・・-- ・-- ・・-・-

 ――貴方ノ闇ヲ映シマセウ

 辿り着いた洋館は陰鬱な空気に満ちていた。
 修復中だと云うから人の立ち入りもある。周囲の手入れもされているというのに満ちるこの空気。
 間違いない。猟兵達はUDCの存在を確信した。

 此の洋館に巣喰う呪い。然れど救われぬ哀れな霊達。

 大禍時に目醒める彼ら。
 生者を怨み、憎しみ、呪い、羨む者ら。
 逢魔ヶ時は此方と手を招いて、生者を黄泉へと誘う。

 貴方の心を映しましょう。それは、どんな色彩ですか?
 貴女の闇を映しましょう。それは、きっと醜い色。


 誰ソ彼悔想奇譚
 ――扉を開けたらほら其処に、あなたの絶望が待っている。

--・-- ・-・ -・ ・・-- ・-- ・・-・-

【概要】
 扉を開けると其処には見たくないものが猟兵達を待ち受けています。
 三章からのご参加もどうぞ。

 精神攻撃を仕掛けてくる為、基本的に個別で描写致します。

 過去の自分、心の奥底に閉じ込めた汚い自分、所謂闇堕ち的な自分。
 亡くなった大切な人、仲違いした相手。
 壊れてしまった故郷、失った過去。それとも、幸せな現在が壊れてしまう光景かもしれません。
 あなたの心を責め立てる『みたくないもの』は人それぞれです。

 また敵が形取っているものをご指定ください。
 それは物でも人でも構いません。
 それを『壊す』もしくは『殺す』ことで成功です。
 壊せないこともあるでしょう。その場合はプレイングにその意の記載をお願いします。

【プレイングについて】
 大体の方針を示す以下の記号をご用意しました。
 プレイング冒頭記載のご協力お願いします。(例:☆3、○1等)

・描写レベル
☆…アドリブOK・捏造含めた大幅アレンジ可
○…アドリブOK・捏造不可
×…アドリブ不可

・抉りレベル
3…ごりっと抉って欲しい
2…動揺はするけど乗り越える
1…精神攻撃通じないメンタル強者/むしろ喜ぶなど

【プレイング受付期間】
 5月30日(金) 8:30より

--・-- ・-・ -・ ・・-- ・-- ・・-・-
ヴァーリャ・スネシュコヴァ
◯3

“それ”と対峙した途端
感じたことのない恐怖

『本当に役立たずね』
『お前みたいな娘が私の◼︎◼︎だなんて』
見下ろす冷たい視線、止まぬ暴力
『所詮◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎ね』

頭の中の声が、泣いて赦しを乞う
ごめんなさい
ごめんなさい、ごめんなさい

…怖くて痛くて動けない
でも
どうして知らない誰かに、ここまでされなきゃいけないんだ?

痛む身体に鞭打ち叫び
凛然で目の前の誰かを袈裟斬り
消える瞬間見えたのは
俺の真の姿によく似た、けど緋い瞳の—


俺たちを守るオズの声が聞こえて
ああ、やっと目覚めたんだ
オズ、守ってくれてありがとう

敵を見据え
『血統覚醒』の力を乗せ、凛然で斬りかかる
これ以上綾華を苦しめるなと
敵の身体に刃を突き立て


オズ・ケストナー
【軒玉】○2
おとうさんのへや
倒れているおとうさんと
起きるのをまっているわたし

おねぼうさんだね
―おとうさんはねてるんじゃないよ

いつ起きるのかな
―もっとよく見て
いつもそんな顔してなかった
そんな色をしていなかったでしょう

わたしがわかっていたらたすけられたのに
そう言って俯く『わたし』
うん、そうだね…
でも
ここにいたらまただいじなひとをたすけられない
その方がくるしいよ
だから、ごめんね
もういくね

目覚めたらまず
ヴァーリャっ
駆け寄り
ふたりの温度に触れ
たすけられる、と

だいじょうぶ
わたしが守るよ

二人への攻撃を武器受け

不安はない
名を呼ぶ
帰ってこられるように
またわらってくれるように
何度も

おはようって笑って
涙を拭うために


浮世・綾華
【軒玉】○3壊せない

信頼する彼に内緒話
オズ、先に出られたら
ヴァーリャちゃんを頼む

『お前らは所有物
唯の“モノ”だと何度言えば分かるんだ』
砕かれる“本物の鍵”

いつも俺を導いた手
爽やかな空色髪と明るい太陽の眸
快活に笑うその子はいとも容易く

消失を理解できず泣きじゃくり
手に負えなくなった俺は幽閉される
声をあげても何も返らぬ窮屈な暗闇

…ねえ、おれ
なんでやどりがみになんて、なったの
衰弱し軈て――

(これが、俺の記憶)

現れるサヤ
は、俺に、壊せって――?

虚ろにも映る大切なふたり
傷付いていることに気づき
声を殺すように、泣く

ごめ、ん

何かを犠牲しなきゃ守れないものがあるとしても
強くなりきれない自分の意味を
未だ見出だせず



 扉を開ける直前に、隣を歩いていた綾華がオズにそっと耳打ち。
「オズ、先に出られたらヴァーリャちゃんを頼む」
「だいじょうぶ、わたしがまもるよ」
 へにゃりと、いつものようにふんわりとした笑いを浮かべるオズ。
 今はこの笑顔が心強いと綾華は口元に薄い笑みを浮かべた。

 そうして、扉を開けた。

「おはよう。おはよう。おとうさん」
 今日のおとうさんはちょっとやんちゃさんみたいだ。
 いつもはちゃんとふかふかのベッドで寝ているのに、今日はゆかで寝てる。
 忙しかったのかな。疲れてるのかな。たいへんだったのかな。
 わたしになにかお手伝いできることがあったらお手伝いするのに。
「おねぼうさんだね」
 わたしはおとうさんのとなりに座って、起きるのをまっている。
 はやくおきないかな。
 そうして、いつもみたいにやさしいこえで語りかけてくれないかな。

「はやくおきないかな」
「――ちがう。おとうさんはねてるんじゃないよ」
「いつ起きるのかな」
「――もっとよく見て。いつもそんな顔してなかった。そんな色をしてなかったでしょう」

 その光景を見ていたオズが『わたし』に声をかける。
 大好きだったおとうさん。たすけられなかったおとうさん。
「わたしがわかっていたのなら、たすけられたのに」
「うん、そうだね……」
 うつむく『わたし』にオズは同じようにしんみりとつぶやく。
 けれど、でも。
「でもね、ここにいたらまただいじなひとをたすけられない」
 だから。
「ごめんね、もういくね」
 オズは立ち上がる。
 行っちゃうの? 『わたし』が引き留めるような声をあげるけれど、オズは蒸気の斧で『わたし』を断ち切る。

 今は、大事な人達の為にただ出来ることを。


--・-- ・-・ -・ ・・-- ・-- ・・-・-

『――本当に役立たずね』
 其れと対峙した途端、心を埋め尽くしたのは感じたことがないほどの恐怖。
 厭な汗が流れる、ヒッと息を飲む。ガタガタと震える身体を庇うように屈んで自らの身体を抱きしめた。
『お前みたいな娘が私の■■だなんて』
 ごめんなさい。
 貫くように鋭くて冷たい視線。
 其れが拳を振るう。ガンと頬に鈍い痛みが走る。
 其れが蹴り飛ばす。
 其れがロープのような何かで鞭を打ってきた。ばちんと肌に。
 痛い。痛い。痛い。やだ。やだ。
 ごめんなさい、ごめんなさい。
『所詮■■■■■ね』
 ごめんなさい、ごめんなさい。ごめんなさい。
 もっといいこになるから。じょうずにやるから。だから、だから。
 おねがい。おねがいします。ゆるしてください。ゆるしてください。
「……ぐ、なん、だ、これ」
 怖くて痛くて恐ろしくて、縛り付けられたかのように動けない。
 だけれど、同時に疑問が浮かぶ。
 怖い、怖いけれど。ふつふつと燃えたぎる恐怖とは別の感情がヴァーリャの震える脚を奮い立たせる。
「どうして知らない誰かに、ここまでされなきゃいけないんだ!」
 痛む身体に鞭を打って、断ち切るように剣を振るう。
 袈裟斬り。命中。まさかの反撃に其れは驚いたように緋い瞳を見開いた。
 其れが消える直前――垣間見た姿は自分の真の姿に似た姿。
「ヴァーリャっ!」
 そろりと視線を向けてみれば、必死に自分のことを呼び掛ける蒲公英のような色彩の髪をした少年の姿。
 その身体は傷付いていて、ずっと守ってくれていたことが瞬時に理解出来た。
「ああ、やっと目覚めたんだ。オズ、守ってくれてありがとう」
「ううん、だいじょうぶっ だって、だいじなひとのためだもの」
 陽だまりのような笑顔で笑むオズ。
 何度も名前を呼び続けた。それは絶対帰ってきてくれると信じていたから不安なんてなかった。
 だから、ヴァーリャの言葉に頷く。
「綾華を助けよう」
「うん!」


--・-- ・-・ -・ ・・-- ・-- ・・-・-

『お前らは所有物。唯の"モノ"だと何度言えば分かるんだ!』
 目の前で砕かれた本物の鍵。

「アヤ」
 いつも俺を導いた手。
「アヤ」
 いつも俺を優しく見つめ照らしてくれた太陽のような双眸。
「アヤ」
 そして、空の色彩を教えてくれた爽やかな髪。

 いつも容易く壊された。いつも快活に笑っていた子はいとも容易くこの世から消え去った。
 消失。死。消えてなくなること。
 未熟な心は理解出来ずにただひたすらに、泣いた。
 泣いて、泣いて、泣きじゃくって手が付けられないと窮屈に
「くらい」
 応える声はない。照らしてくれる太陽も、導いてくれた空ももうない。
 ただひたすら、何処までも続くような真っ暗闇。
「……ねえ、おれ。なんでやどりがみになんて、なったの」
 こんなにつらいなら、うまれてこなければよかった。

 ずきんと血が流れ出るように痛むのはきっと心。
 此れが、自分の記憶。
 気付けば暗闇に、ぽつりと空色の影が佇んでいた。
「アヤ、君の手で壊すんだ。鍵は開くためにある」
「は、俺に、壊せって――?」
 手が震える。脳が痺れる。吐き気が込み上げて、グチャグチャに絡む感情。
 出来ない。出来るわけがない。ぼんやりとサヤの姿を見つめていれば、虚ろに映るふたつの姿。
 知っている? 知っているはずだ。そのふたつの影。決して忘れてはならぬのに――。

「これ以上、綾華を苦しめるな!」

 サヤの身が氷の刃で貫かれる。
 血統の力を呼び起こしたヴァーリャが振るった剣。
 暗い世界がぱりぃんと音を立てて崩れ落ちた。

「大丈夫? アヤカ。たすけにきたよ」
「ごめ、ん」
 座り込んだまま俯く綾華。オズが背中を優しく撫でてくれたけれど、それが余計に辛い。
 傷付いているふたりの姿に気付いてショックを受けた。何も出来なかった。助けてもらって、傷付いてて。
 強くならなければいけない。守る為に何かを犠牲にしなくてはいけない、なのに――。
 未だ見いだせず、半端な存在。泣きじゃくっていたあの頃と、何が違うのだろうか。
 綾華は暫く声を押し殺しながら泣いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アンチ・アンディファインド
☆3

形取るものはかつて失った日常、殺される家族や友人
そして、何もできずに運良く生き残ってしまった自分自身


ようやくお出ましか、クソUDC!!
殺す、殺す、殺す!!
殺して、殺す!!!!

目の前にある姿はもうここにはないものだ
だからこれはUDCの作った偽物だ、殺す

弱い自分は嫌いだ、だから殺す

何故救われなかったかだと?
そんなのは決まってる
テメーが弱くて……おまけに運がなかった
ただ、それだけだ!!
御大層な理由なんてねーんだよ、死ね!!

P・Bによって変貌した怪獣形態はUDCの力をコピーする
目の前のコイツからコピーできるのは精神攻撃
オレを呪って憎むんなら……そっくりそのまま返してやる
殺し合おうぜ、UDC!!



 ギィっと軋む音立ててアンチは扉を開けた。
 幸せなパーティー。豪勢な食卓。飾り付けられた部屋。

「たんと食べなさい」
「残さず食べなさい」
「おめでとう、■■」

 一瞬、彼らが其処に居たのかと思った。
 大好きな人。大切な人。大好きだった人。大切だった、人。

「たんと食べなさい」
「残さず食べなさい」
「おめでとう、彼らを贄として邪神が蘇るのです」

 違う。その言葉は"彼奴ら"がUDCを仕向けたものだ。
 ぬるりと腥い何かが足を奪う。
 血。血。血。赤い、紅い、朱い、鮮血。
 豪勢な食卓は飛散して、死体のパーティーを飾り付ける鮮血装飾。

「助けて。助けて、■■」

 足元にいた母がアンチの臑に手を伸ばす。
 ぬちゃァと厭な生ぬるさが肌を伝う。しかし、アンチはその腕を振り払うと"母"を蹴り飛ばした。

「ようやくお出ましか、クソUDC!」
 グシャぁとアンチは表情を歪ませて、好戦的な表情を浮かべる。
 独りだけ斃れ伏していない少年へと視線を向けた。それはかつての自分と同じ姿。

 ただ独りだけ生き遺ってしまったかつての自分。弱い自分。
 嫌いだ。嫌い。大嫌い。
 ――だから、殺す。殺す、殺す。殺して、殺す。

「つらいんだ。救われないんだ。何故救われなかった」
「そんなのは決まってる。テメーが弱くて……おまけに運がなかった。ただ、それだけだ!!」
 怒鳴りつけると、アンチは自らを怪獣の姿へと変化させる。
 否定する者――その姿を取って、呪詛をそのまま彼奴に返す。
 ご大層な理由なんてない、死ね。理由もなく、無意味に、オレに否定されて死ね。死ね。死ね。
 オレを呪って憎むなら、そっくりそのまま返してやる。
「――殺しあおうぜ、UDC! 全部残さず喰らってやるよ!!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

叢雲・源次
合プレ【本坪鈴と蒼炎】
☆2

事前にオブリビオンの特性は聞いている
そしてそれが逃れられぬ侵食である事も…ならばそれは俺が一身に引き受ける

血と炎の過去
目が覚めるとそこは手術室のような部屋だった
朦朧とした意識の中、腕に何かが刺さる感覚を覚え…それからまた意識が遠ざかって行く

再び目が覚める
体に違和感を覚える
体温と外気が感じられず、寒気ばかりする…寒い寒い寒いやめろ俺をどうする気だ俺に何をしようというんだ

心臓に何かが宿る
殺せ燃やせ殺せ燃やせ殺せ
応報せよ反逆せよ鏖殺せよ

ふと、目の前に鈴の形をしたとんぼ玉が見えた
そしていつか聞いた本坪鈴の音が聞こえる

瞳に光が宿る
太刀を抜く
二つの炎が宿る

一刀、その過去を断ち切る


サギリ・スズノネ
合プレ【本坪鈴と蒼炎】
叢雲・源次さん(f14403)と一緒に行動

☆1
人の心は複雑でー、時に頑なでー、でもとっても綺麗なのです。
それを利用するなんて、ふてぇ輩なのですよ!サギリもぶっ飛ばしてやるのです!

源次お兄さんがオブリビオンの精神攻撃を引き受けてくれるって言っていたのです。
でも、やっぱり心配なのですよー。
……って、お兄さん、どうしたですか!?
お兄さんの様子が変なのです。サギリもー、お手伝いするのです!

一緒に作った鈴の模様のトンボ玉と『神楽鈴』を一緒に握って【火ノ神楽】を舞うのです!
お兄さんの『寒い』って声が聞こえたのです。
だから火の鈴でお兄さんの魂に――太刀に火を灯すのです!



「人の心は複雑でー、時に頑なでー、でもとっても綺麗なのです」
 だからこそ。サギリは金色の双眸できりりと扉を見据える。
「それを利用するなんて、ふてぇ輩なのですよ! サギリもぶっ飛ばしてやるのです!」
「ああ」
 源次は小さく頷くと、意を決して扉を開けた。

--・-- ・-・ -・ ・・-- ・-- ・・-・-

 なんだこの匂いは。
 何処だこの此処は。
 白い。眩しい。頭がぼんやりとする。
(――手術室?)
 朦朧とする意識の中、源次が唯一理解したのはただそれだけ。
 ちく、と。腕に何か刺さったような気がする。それが何なのか理解する前に意識は再び奈落へと沈んだ。

 寒い。
 寒い。寒い。寒い。寒い。
 寒くて、とても寒くて、どうしようもない程に寒くて。
 感じる違和感。何も感じない。
 まるで自分の身体が自分のものではなくなったみたいに。
 身体が氷になってしまったみたいに。
 体温も外気も何も感じられない。ただ寒気だけが支配している。
 そして、何かが入り込もうとしてくる。
 俺に何をした。何をしようとしている。
 入るな、出ていけ。出ていけ、来るな!

 ――燃やせ。

 脳の奥で何者かが囁いた。心臓に何かが宿る。
 殺せ燃やせ壊せ燃やし尽くせ殺せ殺せ殺せ殺し尽くし壊し尽くせ!
 応報せよ反逆せよ鏖殺せよ。
 全てを、灰燼に!

 だけれど。
 その時、光がさした。
 あれは――。

--・-- ・-・ -・ ・・-- ・-- ・・-・-

「お兄さん……?」
 オブリビオンの精神攻撃は全て源次が引き受けてくれるとは言った。
 だけれど、やはり心配でサギリが源次の表情を見上げてみれば、明らかに彼の様子がおかしい。
 寒い寒い寒いと繰り返している。
「どうしたですか!?」
 明らかに様子がおかしい。サギリは驚きながらも鈴を握る。
 愛用の神楽鈴と、先程作ったばかりの蜻蛉玉の鈴。
「――サギリもお手伝いするのです!」
 そうして舞うは火ノ神楽。心火を灯し、凍てついたものをとかす聖なる炎。
 届くように、届きますように。破魔の祈りを込めて舞う。
 清らかな鈴の音と、美しい光を放つ蜻蛉玉。
(サギリ?)
 夢中に沈んでいた源次は『これが幻影』であることを思い出した。
 ならば――握るのは蒼き煉獄の炎を纏った劔。
「えへへ、お兄さんよかったのです」
 源次の表情からは先程までの不穏な様子などは見受けられない。
 そうして、サギリは彼の太刀に自らの炎を灯し添える。
「――斬る!」
 自らが得た炎を。サギリから受けた炎を。
 絆の炎をふたつ太刀に彩って、瞳に鋭い光を宿らせて――一刀、過去を断ち切った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

デイヴィー・ファイアダンプ
☆ 1~3

『みたくないもの』を見せる相手か。
だとすれば出てくるのは自分自身だろうね。

さて、その僕はいったいどんな表情をしているだろうか。
明るく笑っているとしたら?
ふざけた話だ。
誰かを傷つけて、それで平気な顔をして笑うだなんて反吐が出る。
今日だって、彼女は僕にもっと笑ってほしかったのだろう。
けれど、それは叶わなかった。
もっと楽しい思い出になったであろう今日でさえ、その期待をどこかで裏切ってしまっているんだ。
だから眼の前に笑っている自分が居るとすれば、それはとてもふざけた話だ。

それにしてもこんな時にさえ自分が出てくるなんて、どこまで“お前”は自分のことしか考えていないんだか。

本当にふざけた話だよ。



 其れを前にしたデイヴィーは冷静だった。
(『みたくないもの』を見せる相手か。だとすれば、出てくるのは自分自身だろうから)
 予想していたことだから、動揺することもない。
 動揺するとしたらそう、それよりも、目の前の"僕"が明るく笑っていたことだ。
『やっぱり君は笑わないんだね、はは』
「ふざけた話だ」
 誰かを傷つけておいて、それで平気な顔をして笑うだなんて反吐が出る。
『傷つけているのは君のその表情じゃない? 笑わない。笑うことの出来ない僕。可哀想な僕。可哀想な彼女。どう思っただろうね? せっかく彼女は君を誘ってくれたのに楽しそうにしていたのに笑うことの出来ない僕といて、楽しかったのかなあ? 時間の浪費だったんじゃないのかなあ? 期待を裏切っちゃったんじゃないのかなぁ?』
 目の前の"僕"は熟々と、よくもまぁそれだけ言葉を続けられるものだ。
 デイヴィーは静かに怒りを燃やす。それは、相手ではなく自分に対してのものだ。
 目の前の"僕"の言葉は全て己が思っていたこと。分かっていて、自覚していて、それでいて笑う"僕"。それを分かっていながら何も出来なかった僕。
 僕への怒りがそのまま青白い愚者の炎へと変わる。そして、そのまま"僕"へと放ち、灼き払う。
 最期まで笑みを崩さない何処までも救いようがない"僕"。
(――それにしてもこんな時にさえ自分が出てくるなんて、どこまで"お前"は自分のことしか考えていないんだか)
 本当に巫山戯た話。反吐が出る。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ノネ・ェメ
☆2

ノネ──わたし、感情のままサムネをその表情の自分に変えてたり、知らないはずの個人情報を無意識にハックしちゃってたり……VRキャラな所以? 電脳魔術漏れ? 何も判らず。
流れ着いたCradle。そこでも症状は、寧ろ顕著に……。
でもBANするどころか、皆優しい人ばかりで。

わたしは皆を、引き裂くように繋いでしまった。
恐い。画面の向こうでは舌打ちとか。
怖い。ノ──わたしさえいなければとか。
被害者の皆の怒声がとんでくる。またハックしちゃってる?

ごめんなさい!

もう歌というより腹式を用いた叫びで、そう発声しようとして。

仲良くなりたい!

それにはこのこわさを壊さないと。
絶やさず。紡いで。その先にしかないもの。



 ノネ。
『――また荒らしが出てきやがった。ノネだ!』
 動画投稿者が絶望の表情で動画サイトを見ていた。
 金髪の少年がピースをしている動画のサムネイルは青色の女性へと変わっていた。
『――キャァッ! どうしてあたしの住所や電話番号がネットにばらまかれているの!』
 女性はインターネット掲示板に晒されていた自分の個人情報を見つけて悲鳴をあげた。
 削除申請よりも早く情報は拡散されてゆく。

「だって、すごく良い表情をしていたから真似したくなって」
「だって、友達や恋人出来ないって悩んでたから、友達作る切っ掛けになればって思って」
 感情のままに、悪戯に、電子の海を掻き乱していたバーチャルキャラクター――其れが、ノネ。
 其れはバーチャルキャラクター故なのか、電脳魔術故なのか。
 解らない。解らない。解らないけれど、其れが悪いことなのだと気付いたのは、すっかり電子の海でみんなに忌み嫌われてからだった。
 そうして、流れ着いたとあるサイト。其処でもみんなに迷惑をかけた。むしろ、悪化していたような気がする。
 だけれど、BANされなかった。みんな、とても優しい人達ばかり。
 だからこそ、怖い。
 自分がしてしまったことで画面の向こうで舌打ちされていないかとか。
 怖い。ノネ――わたしさえいなければ、とか。
 そうして、また誰かの声が流れ混んでくる。怒声だ。被害者達の怒声。
 ――また、わたしはハックしちゃってる?

 怖い。怖い。怖い。怖い。
 怖い。怖い。怖い。怖い。

「ごめんなさい!」

 全力の、悲鳴にも似た叫び。
 自分の罪は解っている。解っているけれど――仲良くなりたいんだ!

 だから、ノネは歌を紡いだ。
 恐怖を乗り越える為に――また、絆を繋ぐ為に。

大成功 🔵​🔵​🔵​

南雲・海莉
○2

光景
黒髪の少年が血溜まりに沈む光景
義兄の真の姿の特徴「黄金の眼」が光を失い自分に向けられている


血溜まりそのものが動く


(息を呑んだ所を不意打ち)
予想、してたつもり、だったけど……!
(UCで氷纏わせた武器で勢い削ぎ)

……何年も探し続けて、手がかりすら見つからなくて
……自身の生を否定し続ける義兄で

えぇ、猟兵の死に様がまともじゃないだろう事も……!


(ポーチの上から、鬼灯に手を当て)
私が一言「生きて」って言っただけで
生きることを望んでくれるような、
そんな底の浅い絶望じゃないって分かってる

だから

(凍らせ、霧散させていく)

迎えに行くの
何が待ってたって!

ここで怯むような
そんな弱い想いじゃ義兄に届かない!



 赤い花が咲いている。
 地面を埋め尽くすように、一面の朱くて紅い花。
(――違う、花なんかじゃない)
 チューリップでも、薔薇でも、ましてや彼岸花でもない。
 床に咲いていたのは血溜まり。鮮血の海。
 そして、その血溜まりに沈むように黒髪の少年が沈んでいる。
 そろりと、命を散らしたはずの兄の瞳がこちらを向く。
 ぼんやりと生を喪ったはずの黄金の眼が海莉を怨むように睨み付けた後――兄の姿が血溜まりに沈んだ。

「……っ」

 思わず息を飲む。
 すると海莉をも飲み込もうと血溜まりが襲いかかってくる。
 握っていた刃で何とか削ぎ落とす。しかし、不意の一撃で海莉も無傷とは云えない。

「予想、してた、つもりだった、けど……」

 何年も探し続けた。だけれど、手掛かりすらも見つからなかった。
 何年も追い続けた。だけれど、未だに届かない。
 ――自分の生を否定し続ける、そんな義兄だから。
 知っている。わかっている。理解している。ええ、痛いほど。
 猟兵の死に様がまともじゃないだろうことも!
「全部、わかってるわよ、そんなこと!」
 ポーチに手を当てた。その中身は鬼灯のハーバリウム。今更そのようなことを突きつけられなくても分かってる。
 自分が一言『生きて』と言っただけで、生きることを望んでくれるような――そんな其処の浅い絶望じゃないってわかっている。
「だから」
 握った刃に氷の魔力を滾らせて、血溜まりに突きつける。
 滾らせた氷の魔力は血溜まりを凍らせて逝き、やがてパリィンと甲高い音を立てて割れた。
 破壊。霧散。決意。叫ぶ。
「迎えに行くの。何が待っていたって!」
 この程度で怯むような、立ち止まるような――そんな弱い想いじゃ義兄には届かない!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ディスターブ・オフィディアン
☆2⇒☆1
第3人格で抉られる⇒第1人格へ移行

第3人格のまま認めたくない事実と対峙
『村雨丸』の幻影に日中の行動が偽りであったことを指摘されます
「なぜ、あんなことをしていたんです。本当は草花や風情を愛する心などもたないくせに」
「違う、私は……」
「人のなりをした――化け物め」

第一人格へ移行して反撃
トンボ玉を指弾で『村雨丸』の目に打ち込み、風鈴をブラックジャック代わりに殴りつけます
「ああ、そうだとも。オレに木石を愛する趣味はない。オレが真に愛し祝福するものは、未来を切り開こうとする人の夢だ」

居合切りで幻影を破壊

戦闘後、村雨小太刀へと
「今しばらくこの道化に付き合ってもらうぞ。
お前の夢を果たすためにもな」



 扉を開けると男が立っていた。
 縛り上げられた黒檀の髪。藍色の着物に黒袴。
 そして――鮮やかな紫色の柄を持つ小太刀。
「なぜ、あんなことをしていたんです。本当は草花や風情を愛する心などもたないくせに」
 男が口を開く。男の姿は自分を模したかのように同じもの。
 否、違う。模倣しているのは自分だ――麻痺をしたようにクラクラと脳が痺れる。悲鳴をあげる。
 認めたくない事実が形を取って目の前に立ちふさがっていた。
「違う、私は……」
「人のなりをした――化け物め」
 言葉はガンっと殴られたかのような衝撃を持つ。そのまま崩れ落ちそうになるが――村雨丸、否ディスターブの姿が変化する。
「ああ、そうだとも」
 ――人格変化。ディスターブは手にしていた蜻蛉玉を男の目に指弾で撃ち込み、風鈴を投げつける。
 ガシャンと、硝子は呆気なく砕け散る。男の顔から血が流れ、硝子の破片が周辺に散らばった。
「オレに木石を愛する趣味はない。オレが真に愛し祝福するものは、未来を切り開こうとする人の夢だ」
 そうして、ディスターブは村雨小太刀の柄に手を掛ける。闇に紛れるように一瞬で加速し男の元へと距離を詰めるとそのまま、引き抜き居合い斬り。
 一閃。確かな手応え。
 幻影は呆気なく破壊され、周囲の光景は本来の洋館の姿――古びた何も無い部屋へと変わる。
 黄昏時はやや過ぎて、まもなく藍を迎えようとしている空と薄闇。
 ディスターブは引き抜いた村雨小太刀を鞘へと戻して、呟く。
「今しばらくこの道化に付き合ってもらうぞ。お前の夢を果たすためにもな」

大成功 🔵​🔵​🔵​

カチュア・バグースノウ
☆3
「過去に親友に暴言を吐いた自分」

大学なんかあたしの頭じゃ行けないって思ってた
けど落ちたのが信じられなかった
受け入れられなかった
だからあたしよりずっと優秀な親友を責めた
「なんであんただけなの!?」
「勉強以外なにもできないくせに!」
そのまんま返すわ、戦うこと以外の何もできないあたし
親友は何も言い返さなかった
「ごめん」っていうだけだった
もう1人の親友に止められてやっと気付いた
振り返れないところまで踏み込んだ、って
謝れなかった

今も付き合いは続いてるけど、ぎこちない
あたしのせい。あたしの責任
3人の親友の関係を崩したのはあたしのせい

ごめんなさい

今でも大学にしがみついてるのは親友たちに、謝るため

殺す



「あ、あった……!」
 隣の親友が嬉しそうな声をあげた。
 入試合否発表。その結果が張り出されている。
 喜びの声。落胆の涙。様々なものが入り交じり合う中で、カチュアは必死に自分の番号を探す。
 一往復、二往復、三往復――何度見渡せど、その番号はなかった。
「なんであんただけなの!?」
「か、カチュア……?」
 嬉しそうな声をあげていた親友にカチュアは掴みかかる。
 親友は苦しげな声をあげて、驚いたようにカチュアを眺めている。
 どうして。視線が訴えかけているものの、何も言わない。何か言えばいいのに。ほら、何か言い返しなさいよ。むしろ、殴り返してみなさいよ。
 それすらもしないの? できないの? やっぱりあなたは――。
「勉強以外なにもできないくせに!」
「ちょっと、カチュア。やめなさいよ! カチュア、それ完全な八つ当たりよ」
 周囲がどよめいている。それに気付いた別の友人が慌てて止めに入った。
 止めに入った友人の存在で冷静になり、親友を降ろす。
 親友は苦しそうに屈んで、それを友人が支えてる。
「行こう。あなたは何も悪くない。全部カチュアが悪い。ただの八つ当たりだからね」
「う、うん……」
 友人に支えられ、頷いた友人は歩き出し――一瞬だけ振り返る。
「カチュア、ごめん……」
 ただ、ひとこと口にする友人。
 友人の視線はとても悲しげで、失望に満ちていた。
(――あたしは、壊してしまった?)
 友人に止められて、咎められて、ようやく気付いた。
 あたしは、振り返れないところまで踏み込んだ。謝れなかった。

「ごめんなさい、ごめんなさい」
 今更謝ったってもう遅い。
 付き合いは続いていると言えど、いつ切れるかも解らない程の薄い付き合い。
 3人の友達関係を壊したのは紛れもない自分――。
 目の前の、戦うことしか出来ないのに親友に八つ当たりをした自分勝手な自分自身。
「だから、あたしはあんたを――殺す」
 今も、この生活を続けているのは彼女達に謝るためなのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

宙夢・拓未
☆2

敵の形は『死にかけの自分』

寿命を削るUCを使いすぎたせいか
あるいは、他人を庇ったからか

とにかく、目の前で、『俺』が死に瀕している

『こうなるのが望みだったんだろ?』
目の前の『俺』は、そう言う

他者を救うための自己犠牲
それに傾倒している自覚はある

けど、その理由は……

『良かったな、悲劇のヒーロー。これで皆、悲しんでくれるぜ?』

「違う! 俺はただ……」
否定の叫びを上げ、右手を『俺』に向ける
【ヴァリアブル・ウェポン】、掌の銃口から銃弾を発射
「……全てを、護りたいだけだ」

改めて、誓う
こんな結末を迎えないように
皆を悲しませたりなんかしないように
自分自身を、もっと大切にすると



 気付いたら、宙夢・拓未(f03032)は暗闇の中にいた。
 何処だろう。何だろう。考えながら、歩いていたら焦げ臭い匂いが漂ってくる。
 バチバチと、何かが弾ける音。其方へと目を向けてみれば、機械の身体の青年が倒れている。
「やだ」「しなないで」「お願いします。救急車、救急車を呼ばないと!」
 子どもを庇ったのか、その青年を取り囲むように幼い子どもとその母親が泣き崩れている。
 青年――"俺"は、巧未の方に首を向けて、云う。
『こうなるのが望みだったんだろ?』
 目の前の俺が問う。
「何が……」
 精一杯強がって応えた巧未の声は震えていた。
 ――今、なんで『羨ましい』と思ってしまったのだろう。
 恐らく子どもを庇ったから死に瀕している自分の姿。それは、
 他者を救う為の自己犠牲。誰かに謳われる英雄――そういったものに傾倒していないと云えば嘘になる。
 だからこそ――。

『――良かったな、悲劇のヒーロー。これで皆、悲しんでくれるぜ?』
 ニタァと"俺"は厭な笑みを浮かべる。
 皆が讃え、泣き、そして永久に謳われる。

「違う! 俺は、ただ……」
 一拍の間。そうして、否定の叫びとともに掌の銃口から銃弾を撃ち込む。
「……全てを、護りたいだけだ!」

 羨ましい。確かにそうだ、否定はしない。
 しかし、悲劇に終わってはならぬ。死を以て誰かに評価を求める等以ての外。
 何よりも、皆を哀しませたりなんかしないように――自分自身をもっと大切にする。
 改めて、そう誓った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

氷月・望
☆2
【Violet】
あー、分断された感じ?
流石に探し回るのは得策じゃねぇ、か

不意に闇の中に浮かぶ三人での出来事
庭園を散策して、レストランで食べさせ合いして、他にも
其処から俺が、最初から居なかったかの様に消えていく
楪とマクベスも、俺は居なかった様に笑い合っている
俺の手も、身体も、俺という存在が不要だと……暗闇が侵食していくのに

マジで怖いのに、不思議と笑えるんだよな
俺はあの焦土でとっくに死んでて
今までの幸せは全部夢だった、そんな考えも過ぎるケドな

強欲になったみてぇだわ
俺は、俺の唯一と大事な弟分を迎えに行かなきゃならねぇんだよ
お前らにくれてやるモノはねぇ
呑む暗闇も巻き込み、自分の米神にUCをブッ放す


月待・楪
【Violet】☆2
ん…?おい、氷月、猫助?
チッ…はぐれたか

探そうと振り返って業火に飲まれて壊滅した街を見る

なんで…
くそ、ここは俺がぶっ潰した街じゃねェかッ
マクベス、氷月!
どこだ返事しろ!
…居た!
おい氷月テメーどこほっつき歩いてんだ
マクベスはどこに…は?
氷月…マクベス…?
おい、二人して死んだフリとかしてんじゃねーよ、起きろ、バァカ
なァ、起きろって…!

くそ…ふざけんな
ここは俺が強化改造されて、暴走して壊滅させた街だ
ならこの光景を作ったのは俺だ…けどな、未完成のヴィランなんかにコイツらが、氷月が俺らの弟分も逃がさずに負ける訳ねーんだよ!

UCの炎で氷月とマクベスのフリしてるモノごと…燃やし尽くす


マクベス・メインクーン
☆2
【Violet】
なんか如何にも出そうな洋館だな~
何があるか分かんねぇけど行こうぜっ

あれ?
兄貴たち…どこだ…?
ゆー兄ちゃん、望兄ちゃんどこだーっ!
(どこからか2人の声が聞こえ)
あ、なんだ結構近くに居んじゃねぇk…

は…?
なんで猫に猫助って呼んでんのゆー兄ちゃん…
つか望兄ちゃんも何楽しそうに抱っこしてんだよ
マクベス…ってオレの名前呼んでる…?
やっぱオレ、猫になるほうが良いのか…?
呪いが解けないほうが…

……いや、ゆー兄ちゃんと模擬戦した時
オレが呪いについて話したらこう言ってくれたよな
『それはつまんねーから、嬉しくねーな』って
なら、コイツは現実じゃねぇ!
さっさと消えなッ!
UCで纏めてぶっ壊す!!



「あー、分断された感じ? 流石に探し回るのは得策じゃねぇ、か」
 望はゆるく呟くけれども、周囲はただ闇が広がっている。
 何処まで続くのかも分からない闇の中、ただ歩き続けるのも意味がない。思考を巡らせて考える。
「どうしようかな」
 そんな呟き声を漏らした時――不意に周囲の光景が変わった。
(此処は、さっきまで居た庭園?)
 如何していきなりこのような場所に辿り着いたのか考えているうちに目の前にふたりの男が現れた。
「写真撮ろうぜ、写真」
「何故取らないといけない。別にいいだろう」
「せっかくお揃いの軍服きたんだしさ、記念ってことで撮ろうぜっ! ふたりでさっ」
 よく知る彼奴と弟分。
「ちょ、ふたりでってどういうことだよ。仲間はずれなんて酷くない?」
 手を伸ばす。すり抜ける。ふたりには最初から聞こえてないように、何も反応しない。
「ほら、並んで撮ろうぜっ!」
「仕方ないな……」
 ふたりは全く気にすることなく写真を撮り始めた。

 おい。
 おいってば。

 聞こえない。見えない。認識されない。
 嗚呼、それがこんなに――辛い、なんて。
 暗闇が侵食していく。ふたりが手の届かない、声の届かない場所に行ってしまう。
 ――俺という存在が不要だと、云うように。
「はは……」
 本気で恐怖に包まれているはずなのに、不思議に笑いが漏れる。
 それがまたおかしくて笑う。笑う。笑う。笑いが止まらない。
 俺はもう彼の焦土でとっくに死んでて、今までの幸せは全部夢だった――なんて、考えが頭を過ぎってしまうけれど。
「どうやら、俺は強欲になったみてぇだわ」
 護りたいものが出来てしまったらしい。唯一の彼と、大事な弟分。
 ――あいつらを迎えにいかなきゃならねぇんだよ。望は終雷を滾らせる。
「お前らにくれてやるモノなんざひとつもねぇ!」
 感情のままに雷を迸らせた。

--・-- ・-・ -・ ・・-- ・-- ・・-・-

「ん……? おい、氷月、猫助? チッ……はぐれたか」
 楪は舌打ちを鳴らす。
 気が付けば周囲にふたりの姿はなく、仕方が無いから探そうと振り返った時――。

「なんで……」
 街が、燃えていた。
 炎が爆ぜて、ビルが倒壊する。
 灼熱の炎は破壊し尽くしても尚勢いを留まることはなく、街を包み込んでいる。
 悲鳴。絶望。混乱。
(――くそ、ここは俺がぶっ潰した街じゃねェかッ)
 火の手は強く、自分が壊した街だからこそ早く
「マクベス、氷月! どこだ! 返事をしろ!」
 叫びながらふたりの姿を探す。炎が肌を灼き、業火が髪を焦がす。
 早く、早く、早く、もっと早く。ふたりを探さなければ――。
 必死になって探して、そうして、炎の中にふたりの姿を見つけた。
 ふたりは、瓦礫の中で横たわっていた。全く不用心なもの。状況を分かっているのだろうか。
 こいつらは、やはり俺が居ないと駄目なんだ。
 そう思いながら、駆け寄って身体を揺さぶる。
「おい、二人して死んだフリとかしてんじゃねーよ、起きろ、バァカ」
 だけれど、返事がない。動かない。
「なァ、起きろって……!」
 次第に懇願するようなものへと変わる声。
 一際強く揺さぶれば、彼の腕がだらんと力なく垂れた。

 クソ。
 ふざけんな。ふざけんな。ふざけんな。

 ここは俺が強化改造をされて、暴走して壊滅させた街。
 ならば、この光景を作ったのは己の心だ。
 だから、此奴らが負けるはずなどあり得ない。ましてや、氷月が自分達の弟分も逃がさずに負けることなどあるものか!
「偽物だ。これは全部幻影――ならば、全て燃やし尽くす!」
 楪は火を放つ。バラバラに、されど正確に打ち抜かれた炎の弾丸は彼奴らの形をしたオブリビオンごと、この悪夢の光景を灼き払った。

--・-- ・-・ -・ ・・-- ・-- ・・-・-

「なんか如何にも出そうな洋館だな~。何があるか分かんねぇけど行こうぜっ」
 その洋館に辿り着いた時、マクベスはたいしたことはないだろうと楽観視していた。
 口ではどうこう言いつつも信頼している兄貴分達と一緒なのだ。何とかなるだろう、そう軽く考えていた。
 けれど――。

「あれ? 兄貴達、どこだ……?」
 気が付けばふたりの姿は近くにない。
「ゆー兄ちゃん、望兄ちゃんどこだーっ!」
 叫ぶ。叫んだ。すると、何処からか兄達の声が聞こえる。
「あ、なーんだ。結構近くに居るんじゃねぇか……」
 声のした方向へ向かえば其処には――。

「猫助。新発売の猫缶を買ってきた」
 楪はキャラメルのような毛色をしたメインクーンに猫缶を差し出せば、メインクーンを抱いた望がチッチッチと指を振りながらどや顔で。
「マクベスは猫まっしぐらのアレが好きなんだ。更にいえばおやつ」
「おやつはダメだ。嗜好性が高くカロリーも高い。あげすぎはよくない」
「ゆーくんかたーい。ほら、マクベスが抗議のにゃーしてるよ」
 猫を抱えるふたりは本当に楽しそうで。
(その猫は、オレなのか……?)
 認めたくはない。認めたくはないけれど。
(――やはり、オレは猫になった方がいいのか? 呪いがとけない方が……)
 へなへなとへたり込む。
 猫になって可愛がって貰えるのだとしたら、それも悪くないのかも知れないなんて一瞬思った時。

『――それはつまんねーから、嬉しくねーな』

 その声は楪のものだった。呪いについて話した時に、そう言った。
「なら、コイツは現実じゃねぇ! さっさと消えなッ」
 二丁拳銃に精霊の力を宿らせて、その光景を――あり得ない虚構を吹き飛ばした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

逢坂・理彦
☆ 2
ザッフィーロちゃん(f06826)と。
ザッフィーロちゃんとはぐれちゃったみたいだね。ザッフィーロちゃんなら大丈夫だと思うけど…俺も脱出しないと。

目の前には俺が守りきれず滅ぶことなった故郷の小さな里で俺を慕ってくれた少年。
少年の姿が彼と仲の良かった女の子。そして次々と里の人の姿になっては告げる。
「一度した誓いを違えるのか?自分達にはもう訪れない幸せを。お前は守りたいものができたと言ってあっさり受け入れるのか」
敵の策なのはわかっているけれど実際に言われると堪えるな。大切な人に瞳に似せたとんぼ玉を思い出し。ごめんと言いながら倒す。

脱出合流後こっそり
「やっぱり俺は幸せになっちゃいけないのかな?」


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
〇2
理彦f01492と

瞳に映るのは黒髪の男が一人
中世の魔女狩りの風習が残る中
妬みから魔女とされ領地を去る兄の背をその妹の指の上で俺も見送った
己一人が悪なのだと全てを背負い去る姿は潔かった
だが…そのせいで彼女は孫に恥とし虐待され殺された
…何故あの時抗わなかった?否と戦えば彼女は魔女の妹と誹られずにすんだと言うに
怒りの侭男を殴ると同時に幻影から覚めるかもしれん

本当に嫌な物を見た…と理彦も同じ様な物を見たのか
理彦も煙団長も俺の家族の様な者ゆえ幸せになって貰わんと困るのだと、真っ直ぐ瞳を見て伝えよう
…俺は物ゆえ血縁者は居らぬが彼と妹の様に血の繋がりは無くとも尊い繋がりはあるのだとそう信じている故に、な



 人にとっては気が遠くなるような昔のこと。
 けれども、モノであるザッフィーロにとってはそうでもない――そんな過去の話。

 昔、ある男が領地に居た。
 今ならば鼻で笑えるような、魔女の存在も本気で信じられていたような時代。
 男は嫉みから魔女の烙印を押された。
 信仰とは、狂気そのものである。
 男は何も否定をしなかった。悪は自分なのだと全て自分で背負った。
「さようなら」
 妹は指に嵌めた指輪にそっと触れて、彼の背中を見送った。
 ――それだけならば潔い男と、悲劇の妹。それだけの話で済んだのだろう。しかし。

「何で魔女って否定しなかったの!」
 娘は実の祖母――男の妹を殴りつける。
 殴りつけるなんて、生やさしいものではない。箒で祖母を叩き付けている。
 年を取りすっかり痩せ細り、この頃は満足に食事さえ与えられていない身には酷な一撃。
「あんたが、否定をすればあたしだって!」
 劈くように叫ぶ娘の姿とて傷だらけで薄汚れている。
 魔女の妹の孫――それだけで周囲から迫害されるには十分な理由。その怒りは妹に向き、虐待へと繋がった。
 妹はただあの日と同じように指輪に触れて小さく震えていた。

「何故魔女を否定しなかったのだ!」
 ザッフィーロは目の前の男に怒鳴りつける。
「何故戦わなかった。抗わなかった!」
 男は何も堪えない。それが余計にザッフィーロの神経を逆撫でた。
 怒りの儘、男を殴りつける――それにさえ、男は何も返さず同時に世界が砕けた。

--・-- ・-・ -・ ・・-- ・-- ・・-・-

 共に扉を潜ったはずのザッフィーロの姿はなく、理彦は溜息を吐く。
(ザッフィーロちゃんなら大丈夫だとは思うけど……俺も脱出しないとな)
 そのようなことを考えていた――その時。

「あんちゃん!」
 聞き覚えのある幼い声が呼んだ。
 故郷の小さな里で自分を慕ってくれた少年の姿。
「あんちゃん」
 はしゃいで駆けまわるものだから、転んでいつも擦り傷だらけの両足。
 カラカラと音を立てて回る風車。確かいつか自分が作ってやったものだったっけ。
 その少年の隣にはお揃いの風車を持つ、彼と仲の良かった少女の姿。

「あんちゃん、一度した約束を破るの?」
「おにいちゃん、一度した指切り破っちゃうの?」
「わしらにはもう訪れない幸せを、おぬしは護りたいものが出来たといってあっさり受け入れるのか」
「もうあたし達には来ないのに」
「守ってくれなかった」
「恨めしい」「憎い」「羨ましい」「辛い」

 次々と現れる村人の幻影。
 皆知っている顔だ。忘れるはずなんてない。
 かつて愛した故郷の小さな里の人々。慎ましく暮らしていた素朴な人々。
 ――もう、この世には居ない人々。

「あんちゃん、おれらのことなんてどうでもよかったんだ。だから、今もそうして平気でいられるのか?」
 少年の問いかけが心を突き刺す。
 敵の策なのは理解している。しかし、実際言われるのは想像以上に堪えた。
 だけれど、懐にいれていたとんぼ玉に触れる。大切な人の瞳に似せたとんぼ玉。
「……ごめん」
 そうだ――大丈夫。理彦は刃を握り、少年の身体を突き刺した。

・・- ・--・ --・-・ -・・- ・---・ ・・-

「正気に戻ったか」
「なんとか帰ってこれた」
 問うザッフィーロに対して答えた理彦の顔は青白い。
「本当に嫌なものを見せられた。理彦も同じようなものを見たのだな」
「うん、結構堪えたよ。やっぱり俺は幸せになっちゃいけないのかな?」
 そう力弱く笑う理彦の表情を、ザッフィーロは真っ直ぐに見て。
「お前も団長も、俺の家族のような者ゆえ幸せになって貰わんと困る」
 物の身故に血縁者という者については居ないし、よく解らない。
 けれども、かつての兄妹のように血の繋がりがなくとも尊い繋がりがあると信じているから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

三条・姿見
POW/○1:静かな激情で

忘れえぬことなど、一握り。
敵の形…すでに予想はついている。

【敵の形】
過去の光景そのもの。場所は故郷の屋敷、家宝の刀を供える一室。
遠くで炎が建物を焼く音、熱気と臭気、わずかに漂う煙。
血溜まりに横たわる人物…一族の当主たる人物を背に、
戦装束姿の“自分と同じ顔の男”が家宝を手に取り、持ち去るまでの場面。



血の臭い、炎の音に目を細める。…随分と精巧な光景だ。
何度も夢でうなされた景色。奴が奪ったあの刀は、いずれ必ず取り戻す。

問われるまでもない。
救われなかったのではない。救えなかったのだ
全て目の当たりにしていながら。俺が無力であったがゆえに

抜刀し【剣刃一閃】。…俺の過去に触れるな



 忘れえぬことなど、一握り。厭なものとなれば尚のこと。
 これから現れるであろう敵の姿も、既に予想がついている。
 姿見は意を決して扉を開けた。

 炎の焼け付く匂いと煤が遠く離れたこの場所まで伝わってくる如く。
 嘗ての故郷の屋敷。家宝の刀を供える一室。
 とある人物が血溜まりの中で沈んでいた――其れは一族の当主だった人間。
 既に絶命しているのが一目で解る。
 一方、戦装束姿の“自らと同じ顔をした男”が家宝を手に取って部屋を後にした。
 倒れ臥している当主――自分の父親に目をくれることもなく。

(――随分と精巧な光景だ)
 灼けつくように鼻をつく匂い。噎せ返るような血の匂い。
 炎が爆ぜる音に、遠くの空が朱に染まる。
 何度も夢で見た光景。その度に魘され身を苛む悪夢。
 奴が奪い取ったあの刀はいつか必ず、取り戻す。
 最期の日を写し取った姿見は“最期に映した男”の姿を取りこの世に姿を現した。

「問われるまでもない」

 姿見は静かに息を吐く。
 救われなかったのではない。救えなかったのだ。

「全てを目の当たりにしていながら、俺が無力であったがゆえに」

 だから。姿見は刀の柄に手をかける。
 写しの刀。今のお前を斬るにはこれ以上に相応しいものはないだろうと目の前の男を睨み付ける。
 縮地。一瞬で相手の至近へと間を詰めると即座に斬り捨てた。

 ――俺の過去に触れるな。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユエイン・リュンコイス
☆2

心を責め立てるもの。
ボクの場合に、それは『伽藍堂な自分』だろうね。
ボクがボクであるのは、これまで重ねてきた経験があっかたら。
もし、それらが無かったら。
もし、それらに出会わなかったら。
いつまでも人形のままだったろう。

ああ、恐ろしい。想像するだに恐ろしく…同時に見飽きてもいる。
その手の手合いは経験が無いわけじゃない。
無はどこまでいっても無。恐ろしくはあり、拒絶したいものではある。
だけど、無いということはどこまでいっても有には至れない。

無は無に還してやろう。絶対昇華というゼロにね。
行こうか、機人。欠片も残さず消してやろう。

後悔、未練、残滓。どれだ昏くとも、それを無かった事には出来ないのだから。



 鋼のように無機質な銀髪。無感情な表情。
 そして、何も映さぬ空っぽの双眸。
「やっぱりね」
 ユエインは開いていた本を閉じて前を向き相手を見つめた。
「“キミ”はボクだ。思考もしなければ感覚もない、感情も何もかもない“伽藍堂のボク”」
 だけれど、“ボク”は人形のように何も反応を寄越さない。
 それはそうだとユエインは目を閉じる。
(――ボクがボクであるのは、これまで重ねてきた経験があったからだ)
 もしも、それらが無かったら。
 もしも、それらに出逢わなかったら――きっと、いつまでも此の《人形(ボク)》のままだっただろう。
「『我思う、故に我在り』――思考してこそ、人は人である。存在を認識する。ならば、何も思考しない人形は人形……むしろ《亡霊(ガイスト)》かな」
 言葉を紡ぎつつも、ユエインは恐怖に襲われる。
 この手の手合いは経験がないわけではない。けれど、幾度か経験を重ねても思考までは簡単に変化しないのだ。
「思考しない亡霊は無。どこまでいっても無。どれだけ時間を重ねても無だ――ああ、恐ろしいよ。キミは何処までいっても有には至れないのだから」
 怖くもあり、恐ろしくもあり、同時に哀れだ。
 ならば、成すことはひとつ。
 無は無へ還すのみ。絶対昇華というゼロへと。
「行こうか、機人。欠片も残さずに消してやろう」
 背後で控えていた黒鉄機人に呼び掛ければ、まるで出番を待っていたかのように機人が動き出す。
 そうして放たれるのは、全てをゼロへと戻す絶対昇華の炎。
 後悔、未練、残滓。その類の物事、全てをゼロへと戻した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヨハン・グレイン
○2

精神攻撃なのだと知れていたら、
無視すれば良いだけでしょう。

みたくないものなど、そのまま壊してしまえばいい。

――とはいえ、
ああ、やりづらいな
「オルハさん」
まさか彼女の姿をとるとは

拒絶も、嘲りも、無関心も、
彼女はそうはしないと分かっている
そうはしない、……筈だ
それでもその顔で、その声で、見せられれば

なるほど。確かにこれはみたくないものだ。

彼女の姿を象るものを、ころすのも
……不愉快だ
舌打ちと共に闇に沈める
蠢闇黒から呪詛を纏わせ、一瞬で

知れたのは、それほど彼女が心を占めているという事実
姿を探して、見付けられたら
引き寄せて、抱きしめる


オルハ・オランシュ
○2

はぐれちゃった……
ヨハン、どこ?

……お、お父さん、お母さん……!?
足が竦んで動けない
また暴力をふるってくるんだ
近付かれただけで、呼吸の仕方をまた忘れてしまう
罰だってわかっていても、痛いのも苦しいのも本当は嫌なの……!

……また首を絞められるぐらいなら、いっそ……
ダガーの切先を自分の喉元に宛がって
刺そうとした瞬間に脳裏に浮かんだ姿は

――だめ
駄目……!
そんな未来は難しいってわかってるのに
私、ヨハンを諦められないんだ
ここで死んだら、答えも聞けない

持ち替えたダガーで絶望を穿つ

呼吸を整えている最中に、引き寄せられて
……!
顔をうずめて、その背に手を回す
ああ、知らなかった
安心した時にも、涙って出てくるんだ



 精神攻撃なのだと知れていたら、無視すれば良いだけだろう。
 見たくないものなど、そのまま壊してしまえばいいだけの話。何を動揺する必要がある、身構える必要がある。
 ヨハンは冷静に闇を見つめる。だけれど、闇が形取ったのは意外な姿だった。
「オルハさん」
 先程まで一緒にいた少女。
 その姿を取ったのを確認してヨハンは眉を顰めた。
(ああ、やりづらいな……)
 偽物だとは理解している。なのに。
「ヨハンのことなんてどうでもよかったんだよ。ただ近くに居たから一緒に居ただけ。何か誤解でもしてた?」
 見たこともないような冷たい顔。柔らかな若葉の瞳に侮蔑の色を込めて此方を見てくる。
「そもそも、ヨハンはどうでもいいんじゃないの。私のことも、自分自身のことも」
 彼女がそのようなことを言うわけがないと解っている。理解している。その筈だ。
 だけれど、その顔で、その声でそのようなことを言われてしまえば、心が苦痛を訴える。
「なるほど、確かにこれはみたくないものだ」
 まさかこのような形で顕現するとは思わなかった。
 不愉快だ。ああ、不愉快。
 彼女の姿を模すものを、殺すのは。
「……本当に不愉快だ」
 ヨハンは舌を打って、闇で闇を沈めた。
 後に残るのは、日が暮れた後の静かな部屋と、その部屋の中で荒い呼吸を繰り返すオルハの姿。
 その姿を見つけるなりに、彼女を引き寄せた。
(俺はこのような悪夢を見てしまう程に――)
 彼女が心を占めているということなのだろうか。

==========================

「はぐれちゃった……ヨハン、どこ?」
 先程まで一緒に居たはずの少年の姿はなく、黄昏時だというのに真夜中のように真っ暗。
 不気味で、心細くて、彼を探して歩き回った先――。
「……ぁ、」
 目の前に彼らがいた。
「お、お父さん、お母さん……」
 そう、それは両親。けれど、険しい顔をしていてオルハの足が竦む。
 両親が近付く、オルハは息を飲む。呼吸の仕方を忘れてしまう。
(いやっ)
 逃げなきゃ。逃げなきゃ。逃げなきゃ。
 また殴られる。蹴られる。熱いお湯をかけられたり、鞭で打たれたりする。
 逃げなきゃ。逃げなきゃ。逃げなきゃ。
 でも、足が動かない。竦んで動かない。へたり込む。
 罰だと解っていても、痛いのも苦しいのも本当は嫌なの。なのに。
(……また、首を絞められるぐらいならいっそ)
 ダガーを引き抜き、切っ先を自分ののど元に当てる。ゴクリと唾を飲む。
 あぁ、これで解放される。
 そう、これでいい――そうして、喉元にダガーを突き刺そうとしたその時。
「――だめ、駄目。オルハ。やっぱり、私」
 浮かんだのはネモフィラの眸を持つ少年の姿。
 そんな未来は難しいと解っている。だけれど、此処で死んだら答えも聞けない。
「私、ヨハンを諦められないんだ」
 一呼吸。ダガーを握り直して絶望を穿つ。同時に幻影がとけて気付けば周囲は古びた唯の洋館の光景に戻っていた。
 けれど未だ早まる鼓動と荒ぶる呼吸。必死に落ち着こうとしていると、不意に何かに引き寄せられた。
「……っ!」
 じんわりとあたたかな体温。穏やかな鼓動。顔を埋めてその背に手を回す。
(あぁ、知らなかった)
 オルハが啜り泣けば、ヨハンが更に強く優しく抱き返してくれた。
 ぽろぽろと零れる涙。けれどそれは暖かくて、オルハはそのまま泣き続けた。
 ――安心した時にも、涙って出てくるんだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

出水宮・カガリ
☆3

この空気…気を抜くなステラ、来るぞ
盾を構えて館内へ

踏み入れた場所は、黄金都市のひとびとが行き交う大通り
外の景色に似ているが、これはカガリの都
だが所詮、去りし日の幻影――

『汝(なれ)は其れを人と見るか』

誰だ、カガリの内に響くその声は

『その眼(まなこ)を開け。とくと見よ。汝の守りしものとは、何であったか』

何を、と思う間もなく再演される
門の外から連れて来られたひとは、二度と外へ出られない
ここは豊かな都市だからと信じて
外に出ようとしたものは捕まって、支配者の■■――

違う!カガリはそのような都を守ったのではない!
この光景を拒絶する、理解を拒絶する、
…その悲鳴を、拒絶する!!(【追想城壁】)


ステラ・アルゲン
☆3

この気配はなんだ…懐かしささえ感じてしまうのは…
あぁ分かっている、カガリ
流星剣を手に扉へ

待っていたのは深海の底
暗くて遠くが見渡せない
だから狭苦しさを感じてしまう程
その暗闇にぽつりとある灰色の岩と傍に佇む灰色の少女が居る

なぜ1人でこんな所に

――ひとりじゃないでしょ、みんないる。わすれたの?

落ちて沈んでくる死体
屍だらけの底
佇む岩はまるで墓石

お前がやったのか?
お前は誰だ

――わたしはあなた

死者の手に足を引っ張られる
死者の声が煩く響く
恨みの嘆きが、見捨てたと責める声が

――みんないっしょ、ねがいはかなえなきゃ

違う…違う…!
お前は私じゃない!
その願いは叶えてはならない
斬り捨て、なくては……!



「この空気……気を抜くなステラ、来るぞ」
「あぁ分かっている、カガリ」
 剣と盾。それぞれを手にして扉を開けた。

================================================================

 深い、深い、海の底。
 光さえ届かない暗い、昏い、海の底。
 何も見えない。あまりの暗さに窮屈ささえ感じてしまう程の闇。
 だけれど、其の暗闇にぽつりと灰色の岩と傍に佇む灰色の少女の姿があった。
「なぜひとりでこんな所に」
「ひとりじゃないでしょ、みんないる。わすれたの?」
 ステラの問いにあどけない声で応える少女。
 どういうことだ。訊ね返そうとしたその時、水面から何かが降ってきた。否、落ちてきた。
「死体……?」
 そうして理解する。理解してしまう。
 暗くて見えなかった水底。昏くて見ようともしなかった水底。
「………………ッ!」
 屍。骸。死体。遺骸。亡骸。遺体。
 水底を埋め尽くす人間の死体。佇む岩はまるで墓石。
「お、お前がやったのか? お前は誰だ」
 震える声で問う。灰色の少女はニタァと歪んだ笑みを浮かべる。
「わたしはあなた」
「な――」
 ステラが声をあげるよりも先に、ステラは水底へと引き込まれる。
 恐る恐る見てみれば水底の死者達が手を伸ばしてステラの足を引っ張り込んでいる。
 思わず息を飲む。死者達は怨嗟の言葉で怨みを好き勝手に喚く。

『何故見捨てた』
『何故逃げた』
『我らは何故救われなかった』
『恨む』
『赦さない』

「みんないっしょ、ねがいはかなえなきゃ」
 少女が恍惚の笑みで語る。騙る。
「違う……違う……お前は私じゃない!」
 その願いは決して叶えてはならぬのだ。
「斬り捨て、なくては……!」
 ステラは気を抜けば落としてしまいそうになる剣を握り、切り払った。

================================================================

 雑踏。賑わう声。喧噪。行き交う人々。
 踏み入れた場所は、黄金都市の大通り。
(外の景色に似ているが、これはカガリの都だ)
 そう、カガリの都。だけれど、所詮は去りし日の幻影――。

『――汝は其れを人と見るか』

 唐突に脳裏に響いた声にカガリは驚いたように顔をあげた。

『その眼を開け。とくと見よ。汝の守りしものとは、何であったか』

 何を。そう告げるよりも先に、目の前の光景がぐるりとかき混ぜられて風景が変わる。
「黄金都市。きっと此処ならば幸せになれるぞ。子ども達にも満足にご飯を食べさせてやれる」
「父ちゃん、母ちゃん。おれ、学校ってとこに通ってみたいんだ。えらくなったらみんなを食べさせてやれるだろ?」
「其れは、今は厳しいかな。けど、きっと直ぐに学校に通わせてやれるからお前も協力して働いてな」
 ああ、憶えてる。
 彼らは貧しい都市から希望を抱いて《門(カガリ)》を潜った者達。
 連れてこられた人間達。けれども、その双眸は希望に瞬いていた。
 喩え連れてこられたとはいえ、元いた都市よりは豊かな暮らしが出来るだろうと信じていたのだ。

 けれど――。
 何故、あの家族は逃げようとしたんだ?
 何故、そんな見窄らしい姿で逃げようとしたんだ?
 カガリの都は美しい黄金郷。何故。何故。何故。

《門(カガリ)》を潜ろうとした所で衛兵に掴まった。
 外に出た者は掴まって、支配者の■■――

「違う! カガリはそのような都を守ったのではない!」
 悲鳴にも似た叫び声をあげる。
 その光景を拒絶する。理解を拒絶する。
「その悲鳴を、拒絶する!!」
 幻想を打ち払うかのように、追想城壁を顕現させる。
 現れた幻影はその光景を打ち砕いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鳴宮・匡



目の前にあるのは当たり前の日常
共に過ごす誰もが笑っていて
……その中には、自分の姿もあって

それを「幸せ」そうだと思った

過去に喪った、大切な人
自分を育ててくれた人との日々と
同じくらい「幸せ」だって

……駄目だよ
それを無くしたのは、自分のせいで

なら、今が「幸せ」だなんて
未来を、誰かと共に生きたい、なんて
そんなことが、許されるはずがない

提げた自動小銃を構える
あるべきでない夢は終わりにしよう

目に映る全てが動かなくなるまで
この手はきっと止まらない

ああ、
やっぱり俺は

「ひと」になんて、なれないんだろうな


【3】
目にした光景を壊すことに躊躇いはなく
それを己が手で「壊せてしまう」こと
それも含めて、彼の絶望です



 笑ってる。他愛もないことで笑ってた。
 手にした珈琲。燻る苦い香り。たっぷりとお砂糖を入れた顔も見えない“誰か”に苦言を呈す。
「砂糖入れすぎじゃないか?」
「栄養ドリンクだって成分の大半がカフェインと糖分。これは健康に良いんだ」
「屁理屈だ」
 そう言って皆笑う。笑う。自分も笑った。
 銃声も、硝煙も、悲鳴も、絶望も何もかも存在しないただ、ありふれた“毎日”。

 なんて、幸せ《そう》なのだろう。
 なんて、暖か《そう》なのだろう。

 過去に喪った大切な人、自分を育ててくれた人との日々。
 同じくらいに幸せな日々。
「……駄目だよ」
 そんなものは。それを無くしたのは自分の所為なのに。
 目に焼き付いて離れない光景。
 自分を救い、育ててくれた師匠は死んだ。自分を庇った為に死んだ。
 だから、許されるはずがない。許されていいはずがない。
「――今が幸せなんて、未来を誰かと共に生きたいなんてあってはならないんだ」
 自動小銃を構える。
 そして、撃つ。壊す。撃つ。壊す。撃つ。壊す。繰り返す。
 目の前の“幸せ”が全て動かなくなるまで――引き金を引く。引く。引く。引く。

 ああ、
 やっぱり俺は――

 『ひと』になんて、なれないんだろうな。

 燻る硝煙。落ちる命。砕けるあるべきではない夢。
 何に絶望してるか?
 解ってるよ。そんなのは、きっと――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニヒト・デニーロ

1

私は
沢山用意された生体ユニットの一つ
使い捨ての消耗品
生きるという概念が理解できず
他人という概念が理解できない

『何故当機を所持しているのですか? ……説明要求』
『当機は必要とする用途を果たせません。 ……廃棄推奨』

……あぁ、よくお父さんを困らせていたっけ
私を助けてくれた、お父さん
色んな事を教えてくれたお父さん

過去の闇
過去の自分
……拒絶するほどのものでもない、過去があっての私なのだし
客観的に見るのが……ちょっと恥ずかしいだけ

楽しい日だったから、楽しいままに終わらせましょう……攻撃開始
ビームで手早く焼き払う。……ヌルと鳴宮は大丈夫かしら?
探しにいきましょう……一応、念の為



 ひとつ。ふたつ。みっつ。
 否、数え切れないくらい程に“私”は並んでいた。
 工場で大量生産される量産品。使い捨ての消耗品。
 生きるという概念が理解できず、他人という概念も理解できない。
 ただの生体ユニットのひとつ。そのはずだったのに。

「何故当機を所持しているのですか? ……説明要求」
「説明しろって言われてもな。だって、家族を迎え入れただけだから難しいなあ」
 彼は困ったようにポリポリと頭を掻く。
 お父さん。私を助けてくれた人。
 だけれど、あの頃の私はそのようなことを繰り返してよく困らせていた。
「当機は必要とする用途を果たせません。 ……廃棄推奨」
「いやいや、それじゃあ困るんだよ! なんて説明すればいいのかな」
 お父さんはまた困ったような顔をする。その時の私にはお父さんが困っているということすら理解出来なかった。
(今なら何故お父さんが困っているのか理解出来るのだけれど……成長進歩)
 理解出来るようになったのも、全てお父さんが教えてくれたことだった。

 闇。過去の自分。
 拒絶する程のことでもない。過去の思い出があってこその今の自分だし、この記憶は幸せな思い出だ。
(ただ、客観的に見るのが……ちょっと恥ずかしいだけ)
 それを壊すのが、少しだけ気が退けるだけで何も辛いことなんてない。
「けれど、楽しい日々だったから、楽しいまま終わらせましょう……攻撃開始」
 ニヒトは手早くビームで灼き払って、同時に共に訪れたふたりのことを思う。
 ヌルと鳴宮は大丈夫かしら?
「探しにいきましょう……一応、念のため」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヌル・リリファ
☆3

(目の前にいたのは、血を流して横たわるマスターと、加害者らしきだれか。
怪我は、もう手の施しようがないと冷静な部分が告げる)

「君がヌル?間に合わなくて残念だったね。
最後まで彼は君なら来るって期待してたのに」

(期待されてないだけならいい。
失敗作だから当然だから。
それでもわたしは役に立てるよう努力をするが、価値がないという現実は見えている)

……ッ

(だけど。期待を裏切るのは。
しかもそれが二度と取り戻せないとしたら。

……生まれた意味も。道具としての価値も。これまでの努力も。

全て無意味になる。いや、もう。

……失った)

……!!!!

(だから、それを殺してこの場で自分も死ぬ。
そう思って、UCを起動していた)



 紅。
 空が赤く染まっている。夕焼け。認識。
 否、認識訂正。赤いのは空ではない。部屋だ。
 人間の血液が流出している――では、誰の? 血液を流出している主はマスターだった。

「君がヌル? 間に合わなくて残念だったね」

 加害者らしき男が発言する。さも愉快げに、加虐的な笑顔で。
 男の言葉の真偽を確かめるべくマスターを見る。
 マスターはたすからない。冷静な“わたし”が云う。
 所詮失敗作だから期待なんてされていなかった。されていないだけなら、よかった。

「――最期まで彼は君なら来るって期待していたのに」

 男の言葉にヌルは衝撃を受ける。
 期待されていないだけなら、まだよかった。
 失敗作だから、当然で――ならば、役に立てるように努力すればいいだけの話。
 価値がないと言われようと当然のことだけれど、だけれど努力することは出来たのだ。

(だけど、期待を“裏切る”のは……しかも、それが二度と取り戻せないのだとしたら)

 全部、無意味になる。
 生まれてきた意味も、道具としての価値も、これまでの努力も――全部。
 失ったものは取り戻せない。喪ったものは生き返らない。

 流出するマスターの命。喪失するマスターの命。
 マスターはたすからない。マスターはいない。マスターはもうしんだ。
 失った。喪った。生きる意味、目的。もう全部、全部、全部。

「………………………………!!!!!!」

 絶望のまま、己の全てを解き放つ。
 敵諸共《失敗作(ヌル・リリファ)》を廃棄してしまえ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

パウル・ブラフマン
☆1

扉を開けば
見慣れたエイリアンツアーズの事務所。
床や壁に広がる夥しい量の血痕は
かつてオレが複製共と殺り合った檻の中を思い出させる。

『右目だけじゃ足りなかったんでね』
聴き慣れた声が低く笑う。
長髪をラフに結わえた長躯のそいつは
肘から指先まで鮮血に濡れていて。
オレと同じ色の触手が喉笛に絡みつく。

されるがままに見せかけて
ヤツの腹の真ん中にKrakeで【零距離射撃】。
…誰だかしんねぇけど
オレの大切なモンに手ェ出してラクに死ねると想うなよ?
銃口で【傷口をえぐる】ようにして惑わずに【2回攻撃】。

“あの日壊した複製が生きて居たら”
叶わぬ願いは心奥で噛砕く。
まだ温かい死体の頭を肩口に抱いて、後ろ髪を撫でたい。



 扉を開ければ、いつものように仲間達が他愛のない話をしていて好き勝手に戯れているに違いない。
 そう、いつも通りの日常が待っているはずだった。

 なのに。
 何故、誰も居ない?
 何故、床や壁に夥しい量の血痕が飛び散っている?

(――これじゃ、まるでかつてオレが複製どもと殺り合った檻の中みたいじゃないか)
 何度隻眼で眺めても、周囲一面に飛び散る其れは血に他ならない。
 そして、その部屋の中心で男が厭な嗤いを浮かべている。
「右目だけじゃ足りなかったんでね」
 聞き慣れた声が低く嗤った。
 長髪をラフに結わえた長躯の“男”。男の手は肘から指先まで鮮血でべっとりと濡れている。
「お前が……」
「悪者だとでも言うつもりか? 散々オレ達を壊したお前が言うと説得力あるなァ」
 男は嘲笑して、己と同じ色の触手をパウルの喉元に絡みつかせた。
 反撃しないパウルに、男はニタァと厭な笑みを浮かべる。
 ショックを受けていて呆然としているパウルならば、楽に殺れると思ったのだろうか。
 その表情には余裕の笑みが浮かんでいる。しかし、それが狙いだった。
「……誰だかしんねぇけど、オレの大切なモンに手ェ出してラクに死ねると想うなよ?」
 男の腹に愛銃を突きつけて撃つ。弾丸が貫通し開いた穴に銃口をねじ込む。血が溢れ出す。抉りつけてすかさずに再び引き金を引く。
 あぁ、そうさ。壊すのは得意さ。散々複製どもを壊し続けたんだから――壊れろ。壊れろ。壊れろ。
 引き金を引く、何度も引く。撃つ、撃って撃って撃って壊してやる。
 そうして、弾が切れた時、男は絶命していた。

 こいつは、きっと――。
 ふと脳裏に叶わぬ願いが浮かぶ。しかし、すぐに心の奥で噛み噛み砕いた。
 まだ温かな死体。屈んで肩口に抱きしめて、後ろ髪をひと撫でした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヨシュカ・グナイゼナウ
☆2

『やあ、こんにちは』
眼前に椅子に腰かけた見知らぬ男がいた。洋館に来ていたはずだが


『迎えに来たよ。我らが末弟、セフィラの外殻』
目を細め微笑む男は自分と同じ髪色と肌で
「…わたしは、あなたを知りません」
全身が警告をあげる
『なら向こうで思い出せば良い。君の好きなお菓子も、そうだ大きな猫の縫いぐるみだってある』
『だから、さ?』
いこう、と男が手を差し出す


トン、と音を立て何かが転がる。それは男の手首から先で
斬り落としたのは自分で
「…不審者には着いて行かない様言われていますので」
『残念、振られてしまった』
事もなさげに手首を拾い上げ、また来るよ、と消えた

カチカチと握りしめた開闢が鳴る。震えていた。



「やあ、こんにちは」
 眼前に椅子に腰掛けた男が居た。
 シルクハットに燕尾服。気取った表情を浮かべる顔は自分と同じ色。シルクハットから垂れる白髪だって同じ色。
 斜陽差し込む古びた一室。此処が何処なのかは解らないけれど厭に光景に馴染んでいた。
「迎えに来たよ。我が末弟、セフィラの外殻」
「……わたしは、あなたを知りません」
 目を細め微笑む男。親しげに自分に話しかける男。
 知らない。知らない。こんな男なんて知らないはずだ。
 なのに、何故全身が警告をあげている。何故、こいつは危険なのだと予感がするのだろう。
「なら、向こうで思い出せばいい。君が好きなお菓子も……そうだ、大きな猫のぬいぐるみだってある」
 つらつらと謳うように、愉快そうに、言葉を並べる。
 男は立ち上がる。革靴がタン、と良い音を鳴らす。
 そうして、男は自分の方へと手を差し伸べた。
「だから、さ?」
 差し出された手。だけれど、それをヨシュカが取ることはなかった。
 トン、と音を立てて床に転がる。男の手首が転がる。
 ヨシュカの手には短刀が握られていた。ヨシュカは男の手を切り落としたのだ。
「……不審者には着いて行かない様に言われていますので」
「残念、振られてしまった」
 自分の身体が切り落とされたというのに男は事もなさげに軽い調子で肩をすくめる。
 そうして、落ちた手首を拾って男は微笑む。
「また来るよ」
 革靴を鳴らして何処かに立ち去る男。
 男が立ち去ると同時に周囲の光景も元いた洋館へと戻る。
 ――戻ってきた、もう安心だ。
 それなのに、握りしめた開闢がカチカチと音を立てて鳴る。
 ヨシュカの震えは、止まらなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニオク・イグズヴィ
☆2

ここからは単独行動か
まぁ、お互い見せたくないモノもあるだろうからな

俺の闇ね……
俺が昔抱いていた一番強い感情は虚無、かな
まぁ、生まれが生まれだし、ゴミ溜で生まれて泥水を啜って
汚いこともやって生きながらえて、俺は何のために生まれたんだーってな

誰も俺を助けちゃくれねぇから、俺自身が強くなるしかなかったんだ!
悪いがストレス解消に付き合ってもらうぜ?
テメェを倒せば、俺の中のドロドロしたモンが少しはすっきりするかもしれないからな!

シーブス・ギャンビット(SPD)で敵の急所を一突きだ
こういう集合体は必ず核になるモノがあるはずだから、そこを狙う
【暗殺】で一撃だ
いつまでも見ていて愉快なもんでもないからな



 ゴポリと汚泥が揺らぐ。
 灰色の雨がゴミ山に降り注ぎ、悪臭を放つ。
 ――何故、俺は生まれた。
 誰も見向きもしないゴミ溜。闇の中。
 ――何故、俺は生きている。
 自分の絶望があるとしたら、それは虚無。
 汚いこともやりながら生き存えて、何のために生まれたかも知らないまま。
 泥水を啜って、汚いことに手を染めて、生きて生きて只管虚無に生きた。

 そうして。
 自分の目の前に現れた其れは黒い闇そのものだった。
 形を取ることすら放棄した闇。嘆き続けるモノそのものの姿だろう。闇は云う。

「何故、俺は救われなかった? 誰も私を助けてくれないの」
「誰も俺をたすけちゃくれねぇから、俺自身が強くなるしかなかったんだ!」
 嘆き続けたとて何も状況が変わらないのはニオク自身が身を以て知ってる。
 だから、強くなった。強く、強く、強く。
 ああ、嘆くのは簡単だろうよ、それで救われるのだとしたら幸せだろうよ。
「けどなぁ! それじゃあ変わらなかったんだよ。お前には悪いがストレス解消に付き合ってもらうぜ?」
 お前を倒せばこの心のドロドロとした何かが晴れるかもしれねぇから。

 ニオクはダガーを握り、闇を真っ直ぐに見据える。
 このような集合体には必ず核となるものが存在するはずと睨んで――見つける。
 凝り固まった闇にナイフを突き刺して、素早く振るう。確かな手応え。核の破壊を合図にするように嘆き続けるモノは霧散した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キララ・キララ
……。きららにはね、ひとつ、すごくこわい思い出があるの。
UDCアースの水族館。くらくて冷たいフラスコの底。
「どうして自分たちが生きられなかったのに、あなたは生きてるの?」……って、そんなふうことをいわれたの。
うまれてきちゃ、いけなかったみたいだった。しあわせでいるのが、まちがってるみたいに思った。

たぶんこれから、つらいことや、こわいことがたくさんある。…今だってこわいよ。

でもね、このまままけちゃったほうがいいなんてこと――生まれてきちゃダメだったなんてことだけは、絶対にないって!おしえてもらった!
つらくても、こわくても、きらきらで上書きしていくのよ。
いつだって虹は、掌《ここ》にあるんだもの!



 無数の気泡が浮いては消える。
 楽しそうに見えた水族館、アーカイブの中でしか見たことなかった魚の姿に心を躍らせて、スケッチブックに筆を踊らせた。
 ――その先に待つものを、知らずに。
『ズルイ』
『ズルイ』
『ドウシテ』
 暗くて、昏くて、冷たいフラスコの底。
 気泡の向こう側で“其れ”は此方を見ていた。
『ナゼ、オマエダケ、オマエタチダケ』
 怨嗟。悲嘆。絶望。憎悪。嫉妬。
『ズルイ』『ズルイ』『ナゼ、ドウシテ』

 流れ込んでくる無数の感情に溺れそうになる。
 うまれてきちゃいけなかったの。しあわせでいるのは、まちがいだったの?
 苦しい。苦しいよ。だけど、キララは首を振る。
「ちがう、ちがうよ。きららは、そうは思わない。そう思ったこともあったけど、今はそうじゃないってわかる」
 あのこわい思い出は、世界に溢れるつらいことの欠片でしかない。
 多分これからもっとずっとつらいこと、こわいことがたくさんある。
(……今だって、こわいよ)
 怨みの声は鳴り止まない。響いて、響いて、キララの生を否定してくる。
 でも、その声に負けてしまった方がいいなんてことがあるものか。
「生まれてきちゃダメだったなんてことだけは、絶対ないって! おしえてもらった! だから、きららは負けないよ!」
 だから、どんなに。
 つらくても、こわくても、くるしくても。
 世界が絶望で塗りたくられたとしたなら、その上から青空を描けばいい。七色の虹を描いて、沢山のきらきらで塗り潰して上書きしちゃえばいい。
「いつだって、虹は《掌(ここ)》にあるんだもの!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユキ・スノーバー
☆2

何度見せられても寂しくなる
何度聞いても悲しくなる

山の自然が炎に包まれた時
穏やかな動物達の鳴き声が、悲鳴に変わった時に似てる。
ぼくは小さいから、小さい子を煙から守ったり頭に乗せたり
動ける子を誘導したりが精一杯だったから、何で助けてくれないのって言われても仕方がないよね…

少しでも助けれる命まで、見捨てる理由にはならなかったから
救えなかった命の分まで頑張らなくちゃいけないんだよ。
だから、此処で折れてる場合じゃないんだよねっ!
今は昔と違って、協力してくれるエイリアンツアーズの仲間が居るし!

…落ち着いて聞いたら、昔と違うのは判る。
でも苦しいのは伝わってくるから
どうか眠れますようにと、華吹雪でお見送り



《助けて》
 山が自然が炎につつまれて、燃えていた。
《助けて!》
 穏やかな動物たちの鳴き声が悲鳴に変わる。
 住んでいた故郷が一瞬にして自分達の命を奪う炎へと変わったのだ。
 この山のことはよく知る動物達。だけれど、山の外の何処に逃げればいいかなんてわからない。
「こっちだよっ! みんなっ!」
 逃げ惑う動物達に呼び掛けた。頭には小さな子を頭に乗せて、煙から守りながらみんなが助かるように必死に動いた。
 でも救えたのは小さな子と、誘導に従えた動ける子達だけ。
 動ける子達だって全員を助けられたわけじゃなかった。きっと、救えなかった命の方が多い。

 助けて。助けて。助けて。助けて。
 助けて。助けて。助けて。助けて。

「そうだね、ぼくはみんなを救えなかった。そう云われても仕方がないよね」
 脳内に響き、責め立てる、悲痛な叫び。
 忘れたことなんてないよ。けど、折れない。
「だって、ぼく達は救えなかった命の分まで頑張らなくちゃいけないからっ!」
 少しでも助けられる命を見捨てることは決してしなかった。それでも、救えなかった命の重みも知っている。
 だから――。
「ぼくはきみ達をすくいたいんだ!」
 落ち着いて耳を澄ませば、昔の仲間と違うことは解っている。
 だけれど、苦しんでいることは痛いほどに伝わってくる。
 彼らを助けることはもう出来ない。ならば、せめて救いたい。
「――どうか、眠れますように」
 ユキは葬送の六花吹雪を祈りを込めて放った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ナイツ・ディン
☆2

旅に出た、そう言えば聞こえが良いものの、俺がしているのは逃げでしかないーー

竜に支配された秘境の村で、流れの小さな竜たち(ディオとローア)と育ち、武術を鍛え、村と竜を護る自警団所属、それが俺に与えられた役割。だがそれももう、果たすことは出来ない。旅に出ている間に支配者が暴れ、妖精は散り散りに、集落は崩壊したのだから。

あの支配者の竜の影、武装した妖精たち。
コイツらに殺され、消えられるならそれでーー
弱気になるとディロが噛み付いて、ローアが尻尾で無言の叱咤。
そうだな、お前らが居るもんな。

槍で思いっきり自傷し(激痛耐性で耐える)『竜の血』を使い、竜人になって突っ込む!
なぎ払い、串刺しして殲滅。



 ――旅に出た。
 そう言葉にすれば聞こえがいいだろう。
「しかし、俺がしているのは逃げでしかない」
 ああ、そうさ。解っている。そんなことは解ってた。
 だから、目の前に現れた光景に息を呑む。

 その秘境の村は竜に支配されていた。
 村で育ったナイツに与えられた役割は村と竜を護る自警団員。
 その為に武術を鍛え、強くなった。
 正直辛いこともあったけれど、共に育った流れの小さな竜たちや村を守る為ならどんなことだって乗り越えられた。
 守る為に強くなった。
 だけれど、もうその役目を果たすことはない。否、出来ない。

 旅に出ている間に支配者の竜が暴れた。
 妖精達はみな散り散りに散って、集落は崩壊したのだから。

「逃げたよ。ああ、俺は逃げたけど」
 けれど、まさか此処で出てくる敵が彼らだとは思わなかった。
 否、一番みたくなかった相手と言えば、彼らなのだから不思議なことではなかった。
「何故逃げた」
「僕達を見捨てた。故郷を捨てた」
「ナイツは自分さえよければそれでいいのね! だから私達を見捨てたんだわ!」
「許さない」「ゆるさない」「撃て」「殺せ」「ころしちゃえ」
 武装した妖精達が口々に告げる。背後で支配者の竜が嗤った。
(――コイツらに殺され、消えるならそれで……)
 ナイツは双眸を閉じた。だけれど、ガブッと何かに噛まれた。目を開ければディロがとても不満げな眸でこちらを見ている。
 ローアもしっかりしてと言わんばかりに尻尾でべちべちと叩いてくる。

「……そうだな、お前らが居るもんな!」

 ならば、此処で折れるわけにはいかない。
 ナイツは己の身を槍で突き刺して姿を小さな紅い竜人へと変えて敵を薙ぎ闇を穿った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リル・ルリ
■櫻宵/f02768
☆2

櫻?どこ?
櫻宵とはぐれてしまった
探しに行かなきゃ

―エスメラルダ
僕を呼ぶ声
この名で呼ぶのは一人きり
嗚呼

座長

震えを隠し揺桜を握りしめる
僕は大丈夫

「戀などという
不相応な熱病に侵されたお前を心配しているというのに」と笑う

笑いたければ笑えばいい
僕は櫻宵が好きなんだ

「その男はお前に大切なことを隠している。お前は騙されている」

構わない
例えどんな過去を抱いていても
言えなくてもいい
僕の愛は変わらない
彼は僕の唯一
誓ったんだ

「私のお前
泡となって我が元へ来る時を楽しみにしている」

行くか馬鹿
春の歌で座長を送る

泡になるなら櫻の為
僕は櫻宵を迎えに行く
きっと苦しんでる
不器用で強がりだから

待ってて
僕の櫻


誘名・櫻宵
🌸リル/f10762
☆3

鮮血の桜咲く過去のあたし

―幸せそうね
その幸せは誰を犠牲にして得た
家族愛に恵まれなかったから一華には同じ思いはさせないと言ったのは誰

一華
サクヤが産んだ子
あたしの弟
家督の為だけに望まれた可哀想な子
あたしだって弟の幸せは願ってる

―弟、ね
本当はわかってるくせに
知らんぷりして捨てるなんて
酷い男

違う
一人で育てようと思った
奪っていったのは父上達

―言い訳ばかり
結局
誰も愛せない
守れない
私の愛は愛ではなく執着だから
また過ちを繰り返し殺す
今度はあの人魚を

黙れ
過去を殺して今を往く
リルが好き
あの子が欲しい
この愛の為なら
この幸せを守る為なら
邪魔な物全部捨てられる

リルは
こんなあたしを愛してくれる?



 水面に櫻が漂う。
 だけれど、居ない。居ない。櫻を纏う愛しい人が――だから、リルは月光のような尾鰭を揺らめかせて游ぎ櫻を探しにいく。

「――エスメラルダ」

 櫻を探しに往こうとしたリルを引き留めるかのように男がリルを呼び止めた。
 もう呼ばれることはないと思っていた名。捨てた名。
 嗚呼、この名で呼ぶのはただひとりきり。
「座長」
 振り返るリル。
 震える手で揺桜を握りしめて怯えを隠す。大丈夫、今は、僕は、大丈夫。
「戀などという、不相応な熱病に侵されたお前を心配しているというのに」
 シルクハットの男は加虐的に嗤った。
 そのような意地の悪い笑みで心配しているなどとよく嘯ける。
 リルは笑いたければ笑えばいい、僕は櫻宵が好きなのだと強い眼差しで座長を見据える。
「その男はお前に大切なことを隠している。お前は騙されている」
 座長はつらつらと謳うように言葉を並べる。だけれど。
「構わない。例えどんな過去を抱いていても、言えなくてもいい」
 隠し事のひとつやふたつ程度で何が変わるものか。
 僕は櫻宵の全てを好きになったのだから。
「僕の愛は変わらない。彼は僕の唯一、誓ったんだ」
「私のお前、泡となって我が元へ来る時を楽しみにしている」
 力強く告げたリルの言葉など聞いてはいないように座長は笑む。
「行くか馬鹿」
 冷たく言い放ち、リルが紡ぐは春の歌。柔らかく抱くような蕩ける歌声で紡ぐ歌と流れ出でる泡と桜の花吹雪は座長とともに闇を拭い去った。
 泡になるなら櫻の為――だから、僕は櫻を迎えに往く。
 僕の櫻。唯一の櫻。愛しい櫻。
 きっと苦しんでいる。不器用で強がりなあの櫻は。だから。
「待ってて――僕の櫻」

==========================

 朧月夜に徒桜。
 見覚えのある、否、忘れることの出来ない彼の場所で其れは櫻宵を待っていた。
「幸せそうね」
 目の前に出でた“あたし”が皮肉そうな笑みで云う。
 咲きしは鮮血の桜。今よりも若い過去のあたし。
「――家族愛に恵まれなかったから一華には同じ思いをさせないと云ったのは誰だったかしら」
「……あたしだって、弟の幸せは願ってるわ」
 櫻宵の声は震える。握った手に力が籠もる。
 一華。サクヤが産んだ子ども。家督の為だけに望まれた可哀想な“弟”。
「弟、ね。本当はわかってるくせに知らんぷりして捨てるなんて酷いおと――」
「違う!」
 過去の“あたし”の声を遮るように櫻宵は叫ぶ。
 違う。違う。違う。あたしは、捨ててなんかない。
「一人で育てようと思った。奪っていったのは父上達よ」
「言い訳ばかりね。結局誰も愛せない守れない。私の愛は愛ではなく執着だから――また繰り返す。過ちを繰り返す。今度はあの人魚を」
「黙れ!」
 櫻宵は剣を振るい、幻影を薙ぐ。
 過去は殺す。葬る。現在を往く、未来へ進む。
 あたしはリルが好き、あの子が欲しい。
 この愛の為なら、この幸せを守る為なら――。

「邪魔なもの、全部捨てられるわ」

 熱情で火照った頬を夜風が冷ましてゆく。
 そうして幾許か時が過ぎて「櫻宵」と自分を呼ぶ聞き慣れた愛しいあの子の声に櫻宵は振り返り、問う。
「リルはこんなあたしを愛してくれる?」
「勿論だ。僕が愛すのも歌うのも泡になるのも、全部櫻宵の為」
 ありがとう。櫻宵は少し儚げに微笑んでふたり歩く夜道。
 空にはまるい月が浮かんでいた。
「――ねぇ、櫻宵。月が綺麗だよ」
「そうね……死んでもいいわ」
 リルがその言葉を知っているかどうかは解らない。
 そんなことは今は如何でもいい。だって、月は真に綺麗だったから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

零落・一六八
○2
涼(f01922)さんと
暗転
何もない電脳空間
『実験を終了いたします』

え、いつから

ログを参照
この空間を抜け出そうと考た時から
すでに開始されていた
脱出後の日々はただの実験用の箱庭

また終わった
現実だと思い込んでたものが
急な脱力感
自由になったつもりでいた馬鹿を自嘲する
観察者はもう誰も居ないのにただ残された命令を繰り返す箱
すでに肉体が死んだボクには終わりはない

腕のブレスと渡そうと思ってたトンボ玉に気付く
シュミレーションなら在るはずのない物

違う
これが幻影だ

どっちにしてもボクが信じるものが現実です
こんなもの否定してやります
目の前の壁を叩き壊す

涼さんも無事でしたか
ああ、そういえばこれあげます
トンボ玉渡す


彩花・涼
☆2
一六八(f00429)と
洋館……か
何か嫌な気配のする所だが
行くしかないだろうな

此処は……
見覚えがある
かつての私の住んでいた屋敷だ
そして足元に倒れているのは…
……顔を剥がれ殺された弟と
屋敷に居た者たちの死体…

こんな光景はもう何度も夢にみた
今更惑わされは……
(光景が変わり、
 弟だった者が一六八に
 周りに倒れていた人が親しい人たちに変化する)

なぜ……
違う、こんな光景はありえない…!

……そうだ、ありえない
(髪に刺していた黒蝶の髪飾りに触れ)
一六八が、皆が死ぬなどありえない
信じているからな……簡単にくたばる奴らではないと!
(UCで幻影すべて撃ち抜く)

やはり幻影…ん?一六八無事だったか
……とんぼ玉?



 ――DISCONNECT――

《 実験を終了致します 》

 プツッ

 暗転。何もない、空っぽの電脳空間。
「え、いつから?」
 ログを参照。スクロール。検索。HIT。
 該当実験データーはこの電脳空間を抜けだそうと考えた時から既に開始されていた。
 つまり、脱出後の日々は――彼らと共に過ごしたあの日々さえもすべてはただの実験用の箱庭で繰り返されていた“虚構”だった。

「また終わった」

 現実だと思い込んでいた。急激な脱力感が襲う。
 繰り返す。繰り返して、繰り返す。
 観察者はもう誰も居ない。だけれど、ただ残された命令を繰り返す箱の中。
 すでに肉体が死んだ存在に終わりはない。
 それなのに、自由になったつもりでいた《馬鹿(ボク)》を自嘲する。

「終わりなんて、やっぱりないんだ」

 思考を投げ出して、電脳空間を漂うとしていた――その時。
 腕のブレスレットと、渡そうとしていた薔薇の蜻蛉玉が何もない真っ暗の電脳空間で輝く。
 此れは存在しない事象。シュミレーションの中での存在するはずのないもの。だから、気付く。投げ出した思考に光が戻る。
「違う。これが幻影だ」
 あの日々は虚構じゃない。
 ならば、この箱は不要。一六八は己の武器に力を宿らせて、目の前の壁破壊する。

「どっちにしてもボクが信じるものが現実です。こんなもの否定してやります」

==========================

 赤い薔薇。綺麗に咲いた、赤い薔薇。
 鮮血のように美しい。毒々しい程に美しい赤い薔薇。
「此処は……」
 涼は周囲を見渡す。先程まで一六八と共に古びた洋館に居たはず。
 なのに。
(――此処は、見覚えがある。かつての私が住んでいた屋敷だ)
 忘れるはずなどない。できない。
 顔を剥がされ殺された弟。屋敷に居た者達の折り重なるように並ぶ死体。
 その骸の山と血の海を――。
(この程度で惑わせるつもりか。甘い)
 此の光景はもう何度も夢に見た。その度に何度も魘されてきた。
 今更惑わされたりなどするものか。涼は冷静に周囲の捜索に入ろうとしたその時。

 ぐにゃり――光景が歪む。

「一六八?」
 不意に目の前に現れた見慣れた青年の姿。
 呼び掛ける。けれども、返事がない。あの日の弟と同じように倒れている。
 折り重なっていた死体が変わる。親しい人達に。

「なぜ……違う、こんな光景はありえない……そうだ、ありえない」
 自分に言い聞かせるように涼は黒蝶の髪飾りに手を触れながら呟く。
 呼吸を繰り返す。そうだ、一六八が皆が死ぬなどはありえない。

「信じているからな……簡単にくたばる奴ではないと!」

 涼は黒蝶の形を模した弾丸で幻影を打ち抜く。
 まるで硝子が割れるかのように甲高い音を立てて幻影は崩れ去った。

==========================

「やはり幻影だったか……ん? 一六八」
「涼さんも無事でしたか」
 涼は嬉しそうに駆け寄ってくる一六八に気付いて振り返る。
 一六八は少しだけ何か間を置いた後、ポケットから蜻蛉玉を取り出した。
「ああ、そういえばこれあげます」
「……とんぼ玉」
 ずっと一六八のポケットに仕舞われていたからか、その薔薇蜻蛉玉はほのかに暖かかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リュシカ・シュテーイン
☆2
レイラさん(f00284)とですよぉ
……はいぃ、ここからは本気で行きますよぉ
レイラさんぅ、お気をつけてくださいねぇ

「貴様の魔術は出来損ないだ」
「ルーン一つ、石に書き写さねば使えぬのか?」
「ノロマな魔女なんて初めてみたわ」

……耳障りですねぇ
そんなことは私が"一番"わかっているんですよ
だけど私はその世界に帰るんです
幼馴染二人がいる世界に
あの私を侮辱した人達がいるあの世界に

私は【スナイパー】、巨大スリングを使い正確に爆破を叩き込みますぅ!
多少の時間稼ぎにはなるでしょうぅ!
……レイラさんぅ!
どんなものを視ているかわかりませんぅ!
だけどぉ、今ここにぃ、レイラさんの隣に居られるのはぁ、幸せですからぁ!


レイラ・エインズワース
☆3
リュシカ(f00717)サンと

ひとしきり楽しんだカラ、最後のお仕事
一緒に頑張ろうネ

相手は自分と同じ角灯
炎が瞬き現れるのは自分が使役するのと同じ過去の幻影
つまり救えなかったモノ
「どうして」
「こんなはずじゃなかった」
「こんなの願ってない」
響く声は何度も思い返したもの
完全な死者の蘇生、なんて偉業は失敗作には無理で
最後に現れるのは自分とそっくりの姿の影
「私の姿と名前を返して」

結局これらは幸せを許さない自分の心
デモ、足を止めるには大事なモノが増えすぎて
不安げにリュシカサンの方を見れば
自分もつらいだろうに、掛けられた言葉
……ありがト、ここでノ繋がりは本当に大事なモノだカラ
【全力魔法】で角灯の幻を砕くヨ



「ひとしきり楽しんだカラ、最後のお仕事」
「……はいぃ、ここからは本気で行きますよぉ」
 レイラの言葉に頷いたリュシカの言葉はいつもよりも、少し緊張しているようだった。
「レイラさんぅ、お気をつけてくださいねぇ」
「リュシカサンも、一緒に頑張ろうネ」
 ふたりは洋館の扉を開けた。

==========================

「貴様の魔術は出来損ないだ」
 怒声。ルーンを自分へと投げつけてきた男。
「ルーン一つ、石に書き写さねば使えぬのか?」
 失望。横を向いた老人は呆れて物も言えないと言わんばかりに溜息を吐く。
「ノロマな魔女なんて初めてみたわ」
 嘲笑。女は心底愉快そうな表情をしていた。

 怒声。失望。嘲笑。憐憫。
 リュシカを取り巻く声。
 嘲笑い、侮辱する、厭な感情の渦。

「……耳障りですねぇ」
 リュシカはそろりと顔をあげる。
「そんなことは私が"一番"わかっているんですよ」
 けれど、私はその世界に帰る。必ず、絶対に。
 幼馴染み達が待つあの世界に、リュシカを侮辱した人達がいるあの世界に。

 だから、迷ってなどいられない。
 偽りの世界へと爆破のルーンを投げて、破壊した。

「……レイラさんぅ!」
 傍らで未だに闇と戦っている友人へとリュシカは腹一杯に叫び激励を送る。
「どんなものを視ているかわかりませんぅ! だけどぉ、今ここにぃ、レイラさんの隣に居られるのはぁ、幸せですからぁ!」

==========================

 目の前に居たのは己と同じ角灯。
 炎が揺らめくたびに影絵のように現れる幻影。それは己が使役過去の幻影。
 ――救えなかったもの達が、言葉を繰り返す。

「どうして」
「こんなはずじゃなかった」
「こんなの願ってない」
 口々に影が云う。
 響く声は何度も思い返したもの。その度に身を苛んだ声達
(――完全な死者蘇生……なんて偉業は《失敗作(レイラ)》には無理だったンダ)
 影が口にする度に、闇が心を抉る度に、絶望が蔓延していく。
 そうして、最後に現れたのは“レイラ”と似た姿の影。

「私の姿と名前を返して」

 荒い呼吸を繰り返す。
 解っている。自覚している。この感情の根源は“幸せを許さぬ己の心”。
 けれど。
 足を止めるには大切なモノが増えすぎた。

 リュシカの懸命の叫びが耳に届く。
 闇の向こうで薄らと見えるリュシカの顔は何処か青白い。
(――リュシカサンも辛いだろうに、私に声をかけているンダ)
 そうだ。此れらが此の絆達が足を止めることを許さないのだ。

「……ありがト、ここでノ繋がりは本当に大事なモノだカラ、私は帰るヨ」

 顔をあげたレイラの表情に迷いはない。
 鬼火を纏う槍を放ち、幻影を穿ち破壊した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

白寂・魅蓮
☆3
洋館に入るや否や、耳障りな怒号が聞こえてくる。
目の前に映るのは僕を追い出した両親の影。
人狼病の呪いを解くために、一族存続のために…毎日神楽の鍛錬は欠かさなかったはずだ。
でも僕はその資格がなかった…肝心のところで失敗した出来損ない。
「お前の存在は一族の恥だ」
「貴方のような弱い子を産むんじゃなかった」
家を追い出されて、捨てられた僕を拾ったくれた先も地獄。
娼夫のように弄ばれて、下卑た大人の笑いと怒号の声。
「もっと身体を使って客を喜ばせろよ」、と

脳裏に刻まれた絶望の時間に震えが止まらない
それでも…!
僕はもう自由だ、一人でだって生きてやるって決めた
僕を使い捨てたお前らは…死んでしまえばいいんだ!!



 其程多くのことは望んでいなかったはず。
 なのに、何故僕は失敗したのだろう。
 思考も働かない頭をぼんやりとあげた――あの人達が、居た。

「お前のような存在は一族の恥だ!」
 父上、如何して。
 人狼病の呪いを解くために、一族存続のために僕は毎日神楽の鍛錬を頑張ってきたはずです。

「貴方のような弱い子を産むんじゃなかった!」
 母上、如何して。
 僕は生きててはいけないと云うのですか。僕には存在価値がないと仰るのですか。

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
 僕は期待に応えられませんでした。
 僕は肝心なところで失敗した出来損ないです。

 要らない子だから、僕は棄てられました。
 要らない子だから、堕ちたのは地獄です。

「もっと身体を使って客を悦ばせろよ!」
 地獄に堕ちた僕を待っていたのは、下卑た大人の笑いと怒号の声でした。
 人の穢らわしい欲望に弄られて、僕は厭らしい眼で見られて――。

「僕を、観るな……」

 いやだ。やめろ。
 やめてくれ。おねがいだから、やめてくれ。
 いやだ。いやだ。いやだ。

「それでも……!」
 身体の震えが止まらない。脳裏に刻まれた絶望が毒のように全身を駆け巡る。
 だけれど、故に滾る昏いけれど強い心火。
「僕はもう自由だ。一人で生きてやるって決めた――僕を使い捨てたお前らは……死んでしまえばいいんだ!!」

 魅蓮は絶叫のように己の影を放つ。
 舞以外の全てを削ぎ落とした少年の影。
 僕をこのようにしたお前らを、闇へと引きずり込んでやる。

大成功 🔵​🔵​🔵​

明智・珠稀
☆2

少し楽しみなのです
自分の“みたくないもの”が何なのか…
私の失われた記憶の欠片が見られますでしょうか…ふふ!

■敵
10歳程の明智の姿
右目は見えず、ダークセイヴァーの上品なお坊ちゃん風
『わかるでしょう?僕は貴方です』
「えぇ、わかりますとも」
冷静な明智だが、幼少明智の手に持つモノに目を見張る
『あぁ、コレですか。見覚えはありますか?ふふ』
無邪気に笑う幼少明智の手には、ナイフと…自分に似た女性の首
『見覚えないですよね、わかってます。貴方は全ての記憶に蓋をした』
『己の罪から目を逸らし、今をのうのうと生きている』

■対処
「…もう、結構です」
UC使用し
「楽しみだなんて思った私が馬鹿でした」
苦しげな表情で攻撃を



 緊張した面差しの他の猟兵達を横目に、珠稀は口元に笑みを浮かべていた。
 珠稀はこの扉の先に待つものを待ち望んでいた。
 己の“みたくないもの”が何なのか識られる――然すれば、己の失われた記憶の欠片も見つかるはず。
 淡い期待を込めながら、口元に笑みを浮かべてドアノブに手をかけた。

 夜の世界。
 何処かの豪邸の一室。敷かれた赤絨毯は柔らかく、並べられた調度品はどれも豪華なものばかり。
 その部屋の中央で、少年がひとり佇んでいる。少年は珠稀に気付くと振り返った。
『わかるでしょう? 僕は貴方です』
「えぇ、わかりますとも」
 特に驚きもせず、至って冷静な表情で少年を見る。
 目の前に居た上品な衣装に身を包む少年は己と同じ顔をしていた。年の頃は10歳程度だろうか。
 声変わりを迎える前のあどけない声と姿。そして、手に持つモノに珠稀は目を見張った。
『あぁ、コレですか。見覚えはありますか? ふふ』
 無邪気にあどけなく笑う少年――その手には、血塗れのナイフと女性の生首。
 女性は、己の顔によく似ていた。
 脳を殴られたように強い衝撃を受ける。身体の奥から厭なものが込み上げて、口元を抑えて蹲る。
 知らない。見たこともない。そんなものは。私は何もやっていない。知らない。知らないからそんなものを――私に、見せるな。
『見覚えないですよね、わかってます。貴方は全ての記憶に蓋をした』
『己の罪から目を逸らし、今をのうのうと生きている』
 もう、やめてくれ。

「……もう、結構です」
 珠稀は苦しげな表情で紅い光線を放つ。
「楽しみなんて思った私が馬鹿でした」

大成功 🔵​🔵​🔵​

木目・一葉
描写:○
抉り:2

お兄ちゃんか過去の自分かと思っていた
だが現われたのは、お兄ちゃんの恋人
あのお店で誰からも好まれた少女
どうして?
いや、当然だ
幼かった自分と違い、あそこの仲間になれたお姉ちゃんが羨ましかった
それに、僕はもう貴方と同い年なのに、貴方のようになれない
不器用で、料理下手で、笑顔も振り撒けず
まるで女の子らしくない
そう思い知らせる貴方が、お兄ちゃんに愛された貴方が、妬ましかった!
「――違う」
妬ましい?
そもそも僕は女として人を愛したことがない
「悪辣な!」
僕はお姉ちゃんのようになれないが、戦うことはできる
そう納得したから猟兵となった
今この死者の姿を『妖剣解放』で断ち切る
もう過去は終わったんだから



「どうして?」
 てっきり現れるのは過去の自分か“おにいちゃん”だと思っていた。
 なのに、何故か現れたのはお兄ちゃんの恋人だった。
 あのお店で誰からも好まれた少女。綺麗で、優しくて、みんなに愛された“お姉ちゃん”。
「……いや、当然だ」
 暫く思考した一葉は答えに行き着く。
 自分は彼女が羨ましかったんだ。だから、きっと幻影が此の少女の姿をとったのだ。
 しかし、少女は首を振る。まるで計算問題を間違えた子どもにするように、優しく諭すように、言葉を紡ぐ。
『そうね、あなたは私を嫉ましく思っていた』
「違う、僕は君が羨ましかっただけだ」
『違わない。あなたは彼の隣に居られなかったことを年齢の所為にしたけれど――本当の理由は自分でも解るでしょう?』
 少女に問われ、一葉は動揺する。
(今の僕は、もう当時のお姉ちゃんと同じ年齢だ。けれど――)
 不器用で、料理下手で、笑顔も振りまけずまるで女の子らしくもない。
 ――其れを思い知らせる貴方が、お兄ちゃんに愛された貴女が妬ましくて、嫉ましくて。
 本当にそうだったのだろうか? 違う。
「僕はそもそも女として人を愛したことがない――悪辣な!」
 そうして僕は斧を手に取ったんだ。だから、猟兵になった。
「貴女のようになれなくとも、僕は戦うことは出来る」
 斧を振り翳し、過去を断ち切る。
 戻らぬ過去。どんなに想いを巡らせたとて、終わった過去が再び動き出すことはないのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミィ・アンデュ
☆3
そこに居るのは…ああ見たくないな
きっと僕よりも強く美しくて、賢くて性格もいい
僕よりも完成された――失敗作ではない、僕
廃棄場に山と積まれた欠陥ミレナリィドールには到底届かない存在

不愉快だ

お姫様だっこで僕の手足として動くしもべに縋り付き
あいつを壊せ、と命じれば従順な彼は頷いてくれる
オリジナルになりたい訳じゃない
生きることに疑問を持ちたくないだけ

しもべが蹴り付け、腕の中で僕がすぐknocking snowで【スナイプ】する【二回攻撃】
お前に僕がどれだけ惨めに見えるかなんて知らない
何一つ紛い物なんかじゃない
この愛だって
UCで複製したしもべで一斉攻撃
きっと愛されるより、愛することを知る方が幸せなハズ



 きっと――。
 髪は若草のようと謳われて。
 美しさは常磐木の如く永久に続くと讃えられる。

「あぁ、見たくないな」

 がらくたスクラップ。
 廃棄される失敗作。山のように積み重なった《欠陥ミレナリィドール(ぼく)》には到底届かない《完璧な成功作(ぼく)》。
 僕よりも強く美しくて、賢くて性格もよく皆に愛されて望まれる完璧なお人形さん。

「なんて、可哀想な僕」
 其れが口を開いた。
「君は誰からも愛されない。望まれない。求められない。可哀想。可哀想な僕。自ら操る絡繰りに偽りの愛を注ぐことでしか自己を確立出来ない哀れな僕」
「口を開くな、不愉快だ――しもべ、あいつを壊せ」
 ミィはしもべにしがみつきながら命じる。従順なしもべは命令を忠実にこなしてくれるだろう。
 別にオリジナルになりたいわけでも、嫉ましいわけでもない。
 ――ただ、生きることに疑問を持ちたくないだけ。
 しもべが《完璧な成功作》に蹴りを入れる。ミィは白く細長いマスケット銃で撃ちながら、能力でしもべを複製する。
(お前に、僕がどれだけ惨めに見えるかなんて知らない)
 そもそもお前の答えなんて期待していない。しもべは僕に愛されていればいい。僕の愛を受けるに相応しい僕の最高傑作。
 だから、知る必要はない。何一つ紛い物などではないのだから。
「この愛だって――きっと、愛されるよりも愛することを知る方が幸せなハズだから」
 しもべにしがみつき、絡繰り糸を手繰る手を引く。複製されたしもべ達が一斉に攻撃を放った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

虹結・廿
○・3
【ヴィクティム・ウィンターミュート(f01172)と】
廿は既に、人ではありません。
脳まで機械とUDCで置き換えた全身サイボーグ。
それ故に廿は自分の定義を見失い、自らが偽物で有る事に恐怖し、
耳を目を塞ぎ見ない様にしてきました。

……扉を開けるとそこに居たのは弱気で無力な、過去の私(虹結・廿)
瞬間、私の中でなにかブクブクと泡立ち始める。

これは、__憎悪。

私以外の廿、過去のまだ人であった廿、本物の廿。
嗚呼、そんなの許せる訳が無い。
だから

「許さない」
武器を構える、UCを発動する。
一刻も早くアレを消さないと廿では無くなる気がしたから。

私は廿、私が廿なのに……。

本当に?

私はまだ廿なのですか?


ヴィクティム・ウィンターミュート
☆3
【虹結・廿(f14757)と】

逆らった殺される
辛くても上手く回ってた
安定を手放したくない

あぁ、聞き慣れた文句だよ
俺の"革命"は失敗に終わった

民衆は目が覚めても、もう一度眠ることを選んだ
欺瞞と不正に満ちた、砂上の楼閣の上で眠っていたことに、目を逸らして

失敗した

俺は英雄ではなかった

舞台に幕を下ろす資格を持っていなかった
誰も望んでない革命を、俺が勝手にやったせいで
"あの場所"は二度とエンディングを迎えることなく
終わった

分かってる
最後に俺は必ず失敗する
とっくに理解したからさ

消えちまえ

最後に失敗しないように
俺は舞台を降りるからさ

──廿
俺ぁ、ここにいるぞ
ちゃんと手ェ握れ
俺を
お前を見失わないように



「逆らった、殺される」
「辛くても辛いなりに回っていたんだ」
「安定を手放したくない」
 殺されたら、どうしてくれるんだ。

「――あぁ、聞き慣れた文句だよ。俺の“革命”は失敗に終わったんだから」
 そんなことわかっちゃいるさ。
 不相応な端役が、出しゃばっただけなんだろ?

 ただ、誰かを苦しむのを見たくなくて。
 ただ、誰もが笑って暮らせる世界を目指した。

 だけれど、飼い慣らされた盲目の羊達は飼い慣らされているという事実に目を背けて、瞳を閉じた。
 一度目を醒ましても、もう一度眠ること選んだ羊達。

 それでもひとりで革命を成し遂げようとはした。
 欺瞞を暴き、不正を明るみにして、真実を見せた。
 ――もう二度と、誰も目を醒ましてはくれなかった。

『失敗した。俺は英雄ではなかった』
「ああ、解ってる。俺は所詮不相応の端役だ」
『資格を持たずして、誰も望まぬことをした所為で』
「ああ、俺に舞台に幕を下ろす資格はなかったし、誰も望まぬ革命を俺が勝手にやった所為で“あの場所”は二度とエンディングを迎えることなく終わった」
 隣に居る“俺”と、映画のように流れるその光景を見ている。
 一度は結末を迎え、夢という形で何度も再生したその物語の結末は――永遠の未完。
『必ずお前は失敗する。例え何度繰り返したとしても失敗する』
「わかってる。最後に俺は必ず失敗する。とっくに理解したからさ」
 ヴィクティムは全てのリソースを用いて己の身体能力を高める。
 今はこの悪夢の幕を下ろす力を――振るう。
「消えちまえ」

 最後に失敗しないように、俺は舞台を降りるからさ。

==========================

 廿は既に、人ではありません。
 身体の六割を機械に、三割をUDCに置き換えたサイボーグです。

 ところで、読むように命令された本があります。それは、数冊の児童小説でした。
 ある一冊に書いてありました。人間の感情――つまるところ心なるものは、脳に存在し司っているそうです。
 また、別の一冊に書いてありました。人はそれぞれ違う心を持っているから人なのだと、個人なのだと。

 ならば、脳まで機械に置き換えた廿は廿なのですか?
 廿は怖かったのです。自分の定義を見失って、自分が偽物であることが。
 ずっと、ずうっと、耳と目を塞ぎ見ないようにしてきたのです。

「……っ」

 扉を開けると、廿がいました。過去の未だ人であった頃の廿。
 瞬間、私の中でとある感情がふつふつと沸き上がりました。感情の名を己の経験から検索します。
 これは――憎悪。

「ゆるさない」

 弱気で、無力で、何も出来ない廿。私以外の廿。まだ人だった過去の廿――本物の廿。
 そんなものを許せるわけがない。だから、廿は銃火器を構えます。廿を複製します。
 早くあれを消さなければ、消さないと、廿は廿ではなくなる気がしたのです。
 だから、殺しました。廿を殺しました。

「私は廿、私が廿なのに……」
 あれは偽物です。もう無くなった偽物の廿です。廿は私で、私が廿。
 ですが、疑念は晴れません。
 そんな廿の手を握る人がいます。その人は廿に言いました。
「俺ぁ、ここにいるぞ。ちゃんと手ェ握れ。俺を、お前を見失わないように」
「本当に? 私はまだ廿なのですか?」
「廿は廿だよ」
 彼は廿の頭をぽふっとしてきました。
 ですから、廿はそこまで子どもではありません。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アヤネ・ラグランジェ
【サクラコ(f09974)と参加】
☆3

予想されるのは5年前の事故

地下UDC研究施設
人為的ミスによる凍結UDCの暴走
拡散する精神汚染
発狂した者が母を殺害
救助に向かった父も帰らぬ人となり
全ては絶望の淵に沈む

何度もリフレインした過去
もう痛みも恐れも感じない

簡単な仕事だ
想定通りだったなら

見えたのは
蹲って泣いている11歳の僕

いや、僕は泣いていない
泣けなかった
知らせを聞いても理解できなかった
理解した頃には心が乾いていた
僕は泣いていない
これは嘘だ
幻だ

僕はこんなに弱くない
弱かったら生きていけない
認められない

ライフルを持ち出すまでもない
拳銃一発で終わる相手だ

銃口を相手に向ける
引き金を引けば終わる
終わるはずなのに


鏡彌・サクラコ
【アヤネさまf00432とご一緒に】
☆2
東京大空襲の夜
鳴り響く空襲警報
襖を突き破り横薙ぎに飛んでくる焼夷弾の筒

ひらり避けつつ
はあ、と一つため息をつく
手を離さないでとお願いしましたのに
アヤネさまとははぐれましたねい
できれば早く合流しなくては

過去の通りなら、このまま神社は焼け落ちるはず
全くもって見たくない光景

敵の姿が判然としない
煙に呼吸が乱される
時間がないのに
気持ちは焦るのに、手が打てない

やがて炎が一斉に周囲を包み込む
嗚呼、其れでいす

すっと姿勢を正し
銅鏡を三十四枚召喚
炎を攻撃してまとめて消し去ります

現実でやったら家屋倒壊しますけどねい

では
間に合うようならアヤネさまの助太刀に参ります



 火の雨が降り注ぐ。悲鳴を掻き消すように鳴り響く空襲警報。
 襖を突き破り横殴りに飛んでくる焼夷弾。
「はあ……」
 サクラコはひらりと避けながら、ひとつ溜息を吐く。
 手を離さないでと願ったのに、見事にアヤネとはぐれてしまった。
(できれば、早く合流しなくてはでいす)
 見覚えがある光景。
 此処はかつて自分が存在していた神社。
 そして、記憶の通りであれば拝殿にもう間もなく拝殿から火の手が上がり炎上して焼け落ちる。
 全くもって見たくない光景。
 轟々と火の手が上がる。
 肌が焼ける。神社が倒壊する。煙が充満し呼吸も出来ない。
(敵は何処でいす。時間が無いのに――)
 見つからない。見えない。進めない。
 焦りばかりが募ってゆく。早く探さなければ、早く炎を消さなければ。
「これでは、変わりません」
 ただの銅鏡でしかなく黙したまま焼失したあの頃と、何も変わらない。
 咳き込む。蹲る。人の身を得たと云うのに、このまま、かつてと同じ焼失の道を辿るのか――そう、思った時、敵の姿を見つけた。
 サクラコは立ち上がる。炎の熱さなど感じぬように涼しい顔ですっと姿勢を正す。
「嗚呼、其れでいす」
 敵の姿をその眸に映し出したサクラコは己の本体の銅鏡を複製する。
 ――敵の姿。それは、かつての居場所と自分を焼失させた炎そのもの。
 複数された鏡、数にして三十四枚。全てを操作して炎を掻き消す。
 炎と煙が晴れた後、其処には元いた洋館の光景が広がっていた。
(では、次はアヤネ様を探しに参りましょう)

==========================

 銃口を相手に向けて、引き金を引く。
 ――ただ、それだけの話じゃないか。

 少女が蹲り泣いていた。
 どうやら、おとうさんとおかあさんは死んだらしい。
 封印されていた悪い化け物が、人に悪さをしておかあさんを殺したらしい。
 おとうさんも、おかあさんを助けようとして死んじゃったらしい。
 どうやら、もう、おとうさんとおかあさんはいないらしい。

 ウソをついたの?
 次の日曜日は水族館に行こうって約束をしていた。
 お仕事がずっと忙しかったおわびに大きなイルカのぬいぐるみも買ってくれるって約束もしていた。
 なのに、なんで。

 少女は蹲り泣いていた。
 ――否、僕は泣いてなどいなかった。泣けなかった。
 5年前、両親がUDCの暴走事故で亡くなったと知らせを聞いても理解出来なかったんだ。
 そして、理解出来た頃には心が乾ききっていた。
(だから、僕は泣いていない。これは、嘘だ。幻だ)
 目の前で泣く少女は5年前の自分自身だった。

 銃口を相手に向けて、引き金を引く。
 ――ただ、それだけの話じゃないか。それで終わる話じゃないか。

 なのに、何故。
 僕は引き金を引けない? 銃口が震えてる?
 僕は弱くない。弱くなんかない。弱かったら生きてはいけない。
 だから僕は強くなったはずだ。強く、強く、強く、戦って戦って戦って戦ってきたじゃないか。
 ライフルを持ち出すまでもない、拳銃一発で終わる相手。
 なのに、何故。

「――大丈夫でいす」
 その時、拳銃のグリップを握る手を包み込むように誰かが手をあててきた。
(ああ、そうか――)
 アヤネは引き金を引いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

千桜・エリシャ
☆3

そこは桜の森の満開の下
一匹の化物――人間を喰らう鬼の姿
咲き誇る桜も血に染まり
辺りには朽ち果てた首――髑髏が散乱して…

これはかつての私の姿
自覚すれば鬼はみるみる内に私と瓜二つの姿へ


――嗚呼、羨ましい


…今、なんと思った?
私は、羨ましいだなんて
これは、こんな姿は、オブリビオンと大差ない
徒に弱者を傷つける妖怪変化
あんな奴らと一緒になりたくない
だから私は、人の世で、人として生きると決めたの…
けれど心の裡の修羅は血を疼かせる
これがお前の正体なのだと思い知らされるようで

だって、だって、足りないの
御首が、戦の昂ぶりが、臓腑を満たす血肉が…
それでも、私は――


刀を手に取り鬼の首を落としましょう
かつての己の首を



 其の森に咲く櫻が何故美しい紅色なのか。
 問われれば皆が恐怖に顔を歪めて口々に語る。

『――あの森には人喰らいの鬼がおる!』

 桜の森の満開の下。紅色櫻が咲き誇る美しい森をエリシャは進む。
 そうして進んだ森の奥。待ち受けていたのは人間を喰らう鬼の姿。
 先程まで美しかった筈の紅色櫻が血に染まり、散乱する朽ち果てた首と髑髏の山。
 ああ、これは、かつての私の姿。
 自覚。認識。鬼は、私と同じ姿を取る。

 ――嗚呼、羨ましい。

「今、なんと思った?」
 エリシャは慌てて思考を断ち切る。
 何故羨ましいなどと思った。
 此れではオブリビオンとも大差がないではないか。ただの弱者を傷つける悪しき化け物。
 ――あんな奴らと、一緒になりたくない。
「だから私は、人の世で、人として決めると決めたの。なのに――」
『だけれど、その身は血を求めて疼くのでしょう?』
 鬼が口を開く。エリシャは動揺する――心の裡の修羅は今も疼いている。
 疼き、暴れて、求める。血を、鮮血を、殺戮を、御首を、戦の昂ぶりを、臓腑を満たす血肉を。
 だって、だって、だって、足りない、足りない、足りない、足りない。欲しい。欲しい。
 それでも、私は――。
『丁度良い獲物がいたわ』
 其処に哀れな人間が通りがかった。鬼は嬉々とした様子で刀を振り上げる。
 エリシャは鬼よりも速く駆けて、人間を背に庇い鬼の刀を刀で防いだ。
『私の獲物を横取りするなということかしら』
「違う、今の私は違うの」
 エリシャは鬼の刀を弾くと、過去の己の首を斬り落とす。
 桜の森の修羅は血飛沫の桜を咲かせて、春の夜に沈んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリマ・バートル
○3

現れるのは見た目は今の私より3,4歳くらい若い私自身
でもその手と口は誰かの血で真っ赤に染まっていて

あれが何なのかは、私自身が一番よく知っている
あれは私の罪の証
生き残るために、家族や家族同然に過ごしてきた人を手にかけた自分

そんな相手に対してサモニング・ガイストを使い対抗
呼び出すのは私達の部族に伝わる戦士や狩人の霊

過去を乗り越えるわけじゃなく、
「あれは仕方なかった」とただ逃げるように、
目の前の自分に向かって、
その姿をかき消すように一斉に攻撃

…………罰なのかな
さっきまでとても楽しかったのに……



 生きるために、仕方のないことだった。
 鮮血を、愛しい人達の命の雫を、指先と口元に滴らせた若い私。
 生きるために、仕方のないことだった――と、自分に言い聞かせた。

「あれが何なのかは、私が一番よく知っている」
 あれは、私の罪の形だった。そして、受ける罰もないままに過ごしている私自身。
 生き残る為に、私は家族や家族同然に過ごしてきた人を手に掛けた。
 その血を啜った。生き残る為、そう、全ては生き残る為に仕方のないことだったのだ。
 アリマは古代の戦士を呼び出した。
 ――それは、私達の部族に伝わる戦士や狩人の霊。
 呼びだした霊は自分の願いを忠実に映し出し、過去の私に攻撃を放つ。

「消えろ」
 槍で穿つ。
「消えろ」
 矢を放つ。
「消えて」
 炎ですべてを燃やし尽くす。
 過去の幻影、己の罪の形を跡形もなく灰燼に帰す。

「く、ぅ……」
 霊達は願いを忠実に映し出して、過去の幻影を消し去った。
 アリマは胸の辺りを押さえ込み、蹲る。この痛みは肉体的なものなのか、心のものなのか――。
 そして、理解する。
(――私は、また逃げた)
 仕方ないと自分にずっと言い聞かせてきたように、逃げでしかない。
「……罰、なのかな」
 日が沈むまでの間、本当に楽しかった。
 なのに、何故、その楽しささえ掻き消してしまうように辛いのだろう。
 今更になって、きっと、罰を受けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雨宮・新弥
【2 ○】
>敵が形取るのは、自分。
>土壇場で竦む、覚悟の足りない、臆病な。
>なってしまうかもしれない自分。
>何も守れない手。
>今一番恐れているもの。

…見たくねーもんに会う、っつーから
まァ…予想してなかったワケじゃねーけど。
……それにしたって情けねェツラしてやがる。

てめえの顔見てはっきりわかった。
そうなったらおしまいだ、俺は。
そうならない為に、どうすればいいのかは…まだ、わかんねーけど…
わかんねーけど、今やるべきことははっきりしてる。

ぶっ潰す。

>使用:鋼鉄拳
>両手に大きなガントレット



 その扉を開ければ“みたくないもの”が待ち受けているのだと云う。
 古びた洋館の扉のドアノブに手を掛けて、捻り、押し開ける。ギィと軋むような音を立てて、扉を開けた先に待っていたものは――。
「まァ……予想してなかったワケじゃねーけど」
 待ち受けていたのは“自分”だった。
 土壇場で竦み、覚悟の足りない臆病で情けない自分。そのようになってしまう可能性。
 その手は小さく醜く空っぽで、何も守れない手。
「……それにしたって情けねェツラしてやがる」
 恐怖を表情に出しているわけではない。情けなくみっともなく眉を曲げているわけでもない。
 けれども、その顔は酷く惨めだ。具体的には解らないけれど――解らないからこそ。
「てめえの顔見てはっきりわかった」
 新弥は真っ直ぐ“自分”を見据える。
「そうなったらおしまいだ、俺は」
 そうならない為に、どうすればいいのかは解らない。
 その道さえ見えないけれども。わかんねーけど。だけれど――。
「今、やるべきことははっきりしてる」
 両手に装着したガントレットを唸らせる。
 大きく右手を振り上げて、放つは鋼鉄の拳。
「――ぶっ潰す!」
 振り上げた拳。
 “自分”を殴りつけた一撃は周辺の地形を破壊してしまう程に大きな力とともに、幻影を破壊した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

稿・綴子
○2
眼前が硝子で綴ざされる

そう
吾輩はずっと見世物だったのだ
『某大先生が使用された原稿用紙!』
記念館に飾られた百枚綴りの最後の1枚

仲間達には墨が入った
中には破り捨てられた奴もいたさ
だがなぁんも書かれぬ吾輩の方が惨めだ
吾輩は譚の一端を担えやしなかった無地の紙切れに過ぎぬ

手を翳せば硝子に触れる
大先生を愛した人達が吾輩を飾った
それはもう大切に大切に
見物客の好奇の視線含め百年様々な愛を注がれた

“だから吾輩はこの身を得た”

硝子は割れずに虚空に消える

吾輩は綴られなかった
ならば譚を自ら蒐集すりゃいいだけ

既に蒐集済みの殺人鬼を召還し敵囓らせげてげて笑う
吾輩は奇譚蒐集『稿綴子』
なぁ貴様に蒐集される価値はあるかい?



 硝子のショウケェスは檻の如く吾輩を綴ざす。

『某大先生が使用された原稿用紙!』

 ――そう、吾輩はずっと見世物だったのだ。
 陳腐な御託と共に大先生を愛した者達が吾輩を飾った。
 記念館に飾られた百枚綴りの最後の一枚。
 仲間達には皆墨が入った。中には破られた奴さえいた。
(だがなぁんも書かれぬ吾輩の方が惨めだ)
 白紙の原稿用紙など譚の一端も担えやしなかった無地の紙切れに過ぎぬのだから。

 来る日も、来る日も、来る日も硝子の檻で見物客の好奇の視線に晒された。
 来る日も、来る日も、来る日も硝子の檻越しに訪れた見物客に愛を注がれた。

「――だから、吾輩はこの身を得た」

 語られぬ原稿用紙は騙りの肉体を得た。
 騙りの綴手であろうと、奇譚を語り蒐集する為に綴子はこの身を得たのだ。

 硝子の檻は割れずに虚空に消える。
 虚構の硝子の向こう側。虚構を見せていた敵の姿は顕わになる。
 闇を懲りかためた如く深い黒に、響く怨嗟。嘆き。生への嫉妬。

「さて、貴様はどんな奇譚を魅せてくれるのかい?」
 斯くして綴子は奇譚を語る。
 蒐集済みの奇譚から語るのは人殺しの推理奇譚。顕現した殺人鬼は闇に齧り付く。
 敵は元を辿れば殺人事件被害者なのだから、まさに此れは再現ではないか!
 嗚呼、愉快痛快。腹が拗れて可笑しい!

「――吾輩は奇譚蒐集『稿綴子』」
 なぁ、貴様に蒐集される価値はあるかい?

大成功 🔵​🔵​🔵​

蜂月・玻璃也
☆2

俺の前に佇むのは、俺の前任者であり、今も病院で意識の戻らない――

「お姉ちゃん」

……なあ、化物
芸がないなぁ、お前
こんなトラウマ、俺は毎日夢に見てるんだ

俺じゃ無理だって
なんであなたがって
逃げていいんだって
姉さんは俺を甘やかして、優しく否定するんだ

だけど今日は違う
俺はあんたに銃を向けるぞ

もっとしっかりしてくれって、言われてるんだ
強くなれ、ちゃんと働けって責められるんだ
夢の中のあんたみたいに、優しくはしてくれない

でも思い出したんだ
姉さんの優しさは、そんな残酷なもんじゃなかったって

聴いてくれ
姉さんの部下たちはみんな元気にやってるよ

だから俺も戦う
姉さんから引き継いだこの力で
この、責任で!!


花剣・耀子
☆1

嗚呼、はぐれてしまったのね。
室長だって早々に斃れはしないでしょうけれど、
合流できるよう努力はしましょう。


知っているヒトの死に顔。
取り返しの付かない最期。
届かなかった手の先。
折り重なる無数の屍。
体が足りず、力が足りず、取り零してきた、たいせつなもの。

それは過去にも、これから先にも。
あたしが生きている限りは、付いて回る。

そうね。見たくないわ。
あたしだって、最悪の想定に竦むことはあるのよ。

だからこそ。
見たくないことを分かっているなら。
それを自覚できているのなら、心は定まる。

ひとつ、遺志を継ぐこと。
ふたつ、未練を果たすこと。
みっつ、あたしの為すべきことを成すように。

――ここですべて、斬り果たすわ。



 耀子は洋館の扉を開ける。
 扉を開ければ、未だ日が沈みきる前だと云うのにいやに暗い。
「暗いから気をつけて、室長」
 そう云って傍らにいるであろう彼に語りかければ、彼が存在したはずの場所に彼の姿はなかった。
 ――嗚呼、はぐれてしまったのね。
「室長だって早々に斃れはしないでしょうけれど、合流できるよう努力はしましょう」
 そうして、耀子は暗闇の中を進めばその先にぽつりと何かが横たわっていた。

 其れは、死体だった。その顔は知っているヒトの死に顔。取り返しの付かない最期。
 届かなかった手の先。折り重なる無数の屍。
 体が足りず、力が足りず、取り零してきた――たいせつなもの。

 耀子は機械剣を強く握る。りんと澄んだ鈴音が鳴り、少しだけ火照った思考を冷やす。
 過去にも、これから先の未来にも――あたしが生きている限りは、付いてまわるもの。
「そうね、見たくないわ」
 銀縁眼鏡の奥で耀子は藍色の眸を細める。
(あたしだって、最悪の想定に竦むことはあるのよ)
 だからこそ、心が定まる。見たくないことを分かっているのなら。
「――それを自覚できているなら、いいの」

 ひとつ、遺志を継ぐこと。
 ふたつ、未練を果たすこと。
 みっつ、あたしの為すべきことを成すように。

「――ここですべて、斬り果たすわ」
 耀子は花剣で薙ぐ。
 花を散らし、草を薙ぎ、すべてを平らげて幻影を討ち払った。

==========================

 目の前に居たのは今も病院で意識の戻らないはずの――。
「お姉ちゃん」

 ……なぁ、化け物。
 芸がないなぁ、お前。
(こんなトラウマ、俺は毎日夢に見てるんだ)

 そう、いつもの悪夢のように姉は優しい表情を浮かべる。
『なんであなたがそこにいるの?』
「お姉ちゃんの替わりをする人がいなかったから」
『玻璃也じゃ無理よ』
「そんなのわかってる。けど――」
『逃げてもいいんだよ。玻璃也は頑張らなくてもいい』
 そう優しく口にして、姉は玻璃也の頭を撫でようと手を伸ばす。
(――嗚呼、そうだ。いつも姉さんは俺を甘やかして、優しく否定するんだ)
 いつまで経っても庇護対象。転んで擦り剥いただけで泣いていた幼児のまま姉の中では時が止まっているのか、いつも、いつも、いつまでも姉の中で大人になれない自分。
「けど、今日は違う――俺は、あんたに銃を向ける」
 玻璃也は銃を姉へと向ける。
 其の手は震えている。銃口はぶれる。だけれど――。
「もっとしっかりしてくれって、言われてるんだ」
 浮かぶ仲間達の顔。
「強くなれ、ちゃんと働けって責められるんだ」
 ああ、いつも怒られてばかりだけれど。
「夢の中のあんたみたいに、優しくはしてくれない。それで思い出したんだ――姉さんの優しさは、そんな残酷なもんじゃなかったって」
 聞いて欲しい。姉さんの部下たちはみんな元気にやってる。
 今も、姉さんのことを待ってる。
「だから、俺も戦う。姉さんから引き継いだこの力で――この、責任で!!」
 先程までは震えていた手。だけれど、今はしっかりと照準を合わせられる決意の銃口。
 ――引き金を引いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

蘭・七結
☆1
いとしのあねさま /f02896

扉の先に広がる〝あか〟
あまいあまい、蜜の香り
纏ってわらう、堕ちた鬼

あかく歪んだ、黒い翼の天使
あねさま。ナユの、あねさま
眠っていらっしゃるのかしら

嗚呼。なんてかなしい
なんて、なげかわしい
なんて、うらやましい

つながれた手を、そうっと握り返して
とてもステキな夢よ、ナユのあねさま
ナユもよ。なんて、羨ましいのかしら

美しく気高い、くれない色の薔薇
その薔薇を食むのは、ナユだけよ
古の呪いなぞに、あげたりしない
ねえ。こちらへおいで、〝七結〟
あねさまを屠った罪は、重いのよ
〝紅恋の糸繋〟

さあ。ナユたちの常夜へと帰りましょう、あねさま
とびきりのお茶とお菓子とともに、お話のつづきを


蘭・八重
愛おしい妹なゆちゃん(f00421)と一緒に

ふとっ、見るとそこには沢山の人達が横たわり紅く染まる
一つ紅く染まる水溜りの上で眠るのはこの世で一番愛する愛おしい妹
そして、傍らに立ち笑うは赤く染まった自分

あぁ、なんて羨ましい。愛おしい者をこの手で殺める事が出来るなんて
でもね?私の可愛いなゆちゃんが貴女の様な人に負けるわけないわ

何の疑いもなく本物の妹の手を握り
ねぇ、なゆちゃん。貴女は何を見てるのかしら。
そのお相手が羨ましいわ
彼女が戻る事に疑う事なく
自分の幻影に【紅薔薇のキス】を与える

次はもっと面白い事をお願いね

なゆちゃんどうだった?
またお茶しながらお話しましょう

☆1



 扉の先に広がるのは甘美なる〝あか〟の世界。
 あまいあまい、花蜜の香り。そして、其れを纏いわらう――堕ちた鬼。
 甘美なる〝あか〟の中で黒翼の天使が横たわっていた。
 其の〝あか〟は薔薇の赤でも、牡丹の紅でもない――何よりもうつくしい〝あか〟の彩。
「あねさま。ナユの、あねさま。眠っているのかしら?」
 横たわる天使に語りかける。けれども、もう、微かな鼓動の音も聞こえない。

 嗚呼。嗚呼。
 なんて、かなしい。
 なんて、なげかわしい。
 ――なんて、うらやましい。

==========================

 つみ重なる、〝あか〟の世界。
 血溜まりの中で眠るのは世界で一番愛おしい妹。
 そして、傍らに立ち笑うのは妹の〝あか〟で染まる《黒翼の天使(わたし)》の姿。

 嗚呼。嗚呼。
 なんて、うらやましい。
 愛おしい者をこの手で殺めることが出来るなんて――。
 ああ、なんて羨ましいのかしら。

==========================

(――でもね? 私の可愛いなゆちゃんが貴女のような人に負けるわけがないわ)
(――美しく気高い、くれない色の薔薇。その薔薇を食むのは、ナユだけよ。古の呪いなぞに、あげたりしない)

 八重が本物の七結の手を握れば、七結もそうっと握り返す。
 いとしい体温は此処にある。嗚呼、確かに此処にある。

「ねぇ、なゆちゃん。貴女は何を見ているのかしら?」
「とてもステキな夢よ、ナユのあねさま」
「そのお相手が羨ましいわ」
「ナユもよ。なんて、羨ましいのかしら」

 隣にいても、見てる夢は違う。
 だからこそ。

「ねえ、こちらにおいで〝七結〟」
 あねさまを屠った罪は重いのよ――そう言い結ぶは〝紅恋の糸繋〟
 八重も己の幻影に紅薔薇の接吻を与える。
「――次はもっと面白い事をお願いね」

 そうして、世界は割れて元の洋館。
 夢はひとときで醒めてしまう、儚いもの。
「さあ。ナユたちの常夜へと帰りましょう、あねさま」
「またお茶しながらお話しましょう」
「ええ、あねさま。ナユのあねさま。とびきりのお茶とお菓子とともに、お話の続きを」
 甘い甘い薔薇ジャムを焼き立てスコーンに塗りたくって、馨しい紅茶にくちづける。
 そうして語る甘くて甘いゆめの話。ふたりの世界に近付いた宵の道を、仲睦まじく家路を辿る。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

桜橋・ゆすら
☆2or3
敵が形どるもの:殺人鬼と化した元の持ち主

真っ先に感じたのは悪臭
嗚呼憶えてる
これはゆすらがまだ筆であったあの頃の…

噎せ返る程の血の臭い
死体が一つ、また一つ
喫茶店には到底似つかわしくない
されどこの女は…ゆすらの元の持ち主は萬年筆を振るい続けるの

それが女が求める、綴りたいと云うナンセンスだから

もうやめて…お願いやめて!
ゆすらは貴女とは違う
新しい世界で、新しい“ゆすら”として生を紡ぎたいの
喩えこの身が血で穢れていようとも…

萬年筆を桜吹雪に変え、女を襲う
決意は未だ曖昧
背負う罪は変わらない

ゆすらの罪は、桜色
人の血を吸い上げて彩られた、美の対局にある醜い色

…大好きな彼女の纏う桜とは、また違う色なの



 噎せ返る程の血の臭い。
 死体をひとつ、ふたつ、みっつと積み重ね綴る。
(――嗚呼、憶えてる。此れはまだ筆であった頃の……)
 喫茶店には到底似合わぬ凄惨な光景。だけれど、曇り硝子の眸の女――ゆすらの元の持ち主は万年筆を振るうことをやめない。
 振るう、鮮血が舞う。綴る、首が飛ぶ。
「もうやめて……お願いやめて!」
『道具が持ち主に反逆するなど面白い。お前のその身は“非常識(ナンセンス)”に濡れた。今更“在り来たりな幸福(コモンセンス)”を望むとは堕ちたものだな』
「それでも、ゆすらは貴女とは違うの!」
 悲鳴にも似た叫びをあげるゆすら。
 嗚呼、そう――かつては、《狂った作家気取りの女(あなた)》の思うまま“非常識(ナンセンス)”を綴らされてきた《万年筆(わたし)》。
 でも。けれど。もう違う。ゆすらは震える手で己の万年筆を握る。

「ゆすらは、紡ぎたい」

 喩え、震える手でも。
 喩え、赤い文字でも。
 喩え、この身が血で穢れていようとも――。

「ゆすらは、新しい世界で、新しい“ゆすら”として生を紡ぎたいの!」

 桜が舞う。花が散る。万年筆が姿を変えたその桜花片は女の鮮血を奪い紅く染まる。
 嗚呼、血を吸い上げて紅く染まる桜。
 幾ら言葉を並べたとて、背負う罪は変わらないし定めた決意とて曖昧に揺らぐ。

(――ゆすらの罪は、桜色。人の血を吸い上げて彩られた、美の対極にある醜い色)
 大好きな彼女が纏う桜とは、また違う色なの。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミーユイ・ロッソカステル
☆1

扉を開ければ、そこには。
真紅の髪とドレスが象徴的な、いかにも貴族然とした女吸血鬼の姿。

……あぁ。
思わず、くすりと笑ってしまった。――確かに、「見たくないもの」だった。
数年もの間、目を背け続けたモノだった。
……つい、この間までは。

……いったい、いつの「私」を読み取ったと、いうのでしょう。
そう、呟いて

この吸血鬼こそは、私の母親。
かつて衝動のままに父を飲み干し、その牙を私へも突き立てようとした悪逆のヴァンパイア――だと、思っていた。
今は、世界に定められた衝動に抗い、それでも私を確かに愛してくれたお母様だと、知っている。

……私に敵意を向けるなら、おまえは違うと断じられる。
さようなら、偽りのお母様。



「あぁ……」
 扉を開けたミーユイは、思わずくすりと笑ってしまう。
 其処に居たのは赤薔薇のドレスを身に纏った真紅の髪の貴族然とした女吸血鬼の姿。
「確かに、これは“みたくないもの”ね……いえ、だったわ」
 それこそ数年もの間、目を背け続けたモノだったのだから――けれど、其れもこの間までの話。

「……いったい、いつの『私』を読み取ったと、いうのでしょう」

 零すようにミーユイは呟く。
 ずっと目を背けていたモノ。衝動のままに父を飲み干して、その牙を突き立てようとした悪逆のヴァンパイアだと思っていた。
 みたくないもの。目の前の女吸血鬼はあの日の光景を模すようにミーユイに向けて牙を突き立てようとしてくる。

「けれど、今は知ってるの。世界に定められた衝動に抗い、それでも私を確かに愛してくれたお母様だと、知ってるの」

 金色の双眸に知性が宿り、ミーユイを見たあの時。
 ほんの少しの間の間交わした言葉は忘れない。
 変わらずに愛してくれたことを、憶えている。――ならば、私に敵意を向けるこの“おまえ”は違うと断じられる。

「――さようなら、偽りのお母様」
 歌を紡ぐ。星が瞬く夜から降り注ぐ光と熱の奔流が女の幻影を吹き飛ばす。

 そして、周囲の光景は古びた洋館へと戻る。
 日はすっかりと落ちて、夜の静寂が其処にあった。

==========================

 昼と夜の狭間。現世と隠世の境界、誰ソ彼時、逢魔ヶ刻。
 活動写真の如く斜陽に映し出しますは――人のこころの、その影でした。

 古びた洋館はかつての静けさを取り戻した。
 其処には陰鬱な既に失く、巣喰う者達は猟兵達の手により救われた。

 斯くして夜を迎えた華やかモダンな街並みを猟兵達は往く。
 瓦斯灯が、家路を導くように照らす夜道。
 其の石畳の道の先、夜の向こうには明日が待っている。

 誰ソ彼を越えて、今は回想に耽る君達へ。
 どうか、希う。
 ――君達の《奇譚(ロマネスク)》に、光在れ。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年06月07日


挿絵イラスト