彷徨う絶望に安息を
●
――夜よりも暗い闇の中を、「彼女」の意識はずっと彷徨い続けていた。
かつて彼女が何者であり、何という名前だったのか、もはや本人さえも覚えてはいない。思い出せるものは生前の僅かな記憶と、魂に焼き付いた暗く激しい感情。
痛イ、辛イ、苦シイ、恐イ、憎イ、憎イ、憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ――。
何度も切り刻まれ、何度も弄り回され、そして最後には捨てられた。
墓標もなく、弔いの言葉ひとつさえなく、その骸は用済みとしてただ「廃棄」されて。
誰の記憶に残ることもなく、彼女の存在は過去となった。
許セナイ。
どうして忘れられようか、この痛みを。魂の奥より溢れ出る、この憎悪を。
たとえ世界が忘却しようとも、彼女だけは忘れない。
たとえ己を見失おうとも、憎悪だけは失わない。
――知レ、世界ヨ。棄テラレシ我ラノ絶望ヲ。
妄執を抱え、骸の海より浮上せし「彼女」は、漆黒に染まりし翼を広げる。
その暗い眼差しは、この世界の全てに対する呪詛に染まっていた。
●
「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
グリモアベースに招かれた猟兵たちの前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(人間の精霊術士・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「ダークセイヴァーのとある放棄された実験施設の跡地にて、オブリビオンの出現を予知しました」
その施設ではかつて、人身売買や誘拐といった手段で集められた少女たちを被験体とした、非道な研究や実験の数々が行われていた。何を目的として実験が繰り返され、そして何故施設が放棄されたかは不明だが、碌な理由ではないだろう。
「この施設で盛んに行われていた実験のひとつが、オラトリオの少女を素材に、世界を憎み死んでいったオラトリオを強力なオブリビオンとして甦らせるという計画でした。その計画の途上で何人もの少女が失敗作として廃棄され――彼女たちは死後も世界を呪い続けました」
今回出現したオブリビオンは、そんな少女の怨念が現世に蘇ったものだ。
彼女に生前の自我や人格は殆ど残っておらず、尽きることのない憎悪と絶望を撒き散らすだけの存在と成り果てている。
「その存在を放置すれば、遠からず甚大な被害が出るでしょう。世界そのものを憎む彼女たちに説得の余地はありません――作戦目標は、オブリビオンの殲滅です」
静かに、淡々と。リミティアは噛み締めるように猟兵たちにそう告げた。
「出現するオブリビオンは、この施設で犠牲となった死霊たちの残影が多数。そして最も脅威なのが、先述の実験の被験者となった少女の成れの果てです」
一度は失敗作の烙印を押された少女だが、皮肉なことにその憎悪が彼女を強大なオブリビオンとして現世に復活させた。猟兵にとっても油断ならぬ相手である。
「施設の内部は広く、戦闘を行うスペースは十分にあります。今からなら丁度、オブリビオンが出現した直後に転移が間に合うはずです」
建物を破壊して咎める者がいるわけもない。全力を奮って問題ないだろうし、またそうすべきだろう。下手な同情で手加減をすれば、危機に陥るのは猟兵の方だ。
「――最後になりますが。戦闘が終わった後、もし宜しければささやかなもので構いません。リムは彼女たちの弔いを提案します」
グリモアを手のひらに浮かべ、転送の準備を行いながらリミティアが言う。
「今回の事件には実験の犠牲者たちの怨念が深く関わっています。これを放置すればオブリビオンの再発生を招くかもしれません」
それを防ぐためには埋葬や弔いによって怨念を浄化する必要があるのだと彼女は言うが、それ以上の想いもその提案には秘められていた。
「――死後も怨念に囚われた彼女たちを、どうか眠らせてあげてください。リムは武運を祈っています」
戌
こんにちは、戌です。
今回のシナリオはダークセイヴァーにて、とある実験の犠牲となった少女たちの怨念を鎮めるのが目的となります。
彼女たちが受けた実験や施設の来歴について、このシナリオ内で深く語られることはありません。すべては「過去」の話。オブリビオンと成り果てた少女たちへの対処に全力を注いでいただければ幸いです。
一章で集団戦、二章でボス戦を行い、無事に勝利すれば三章にて少女たちの弔いが行われます。
物寂しい雰囲気のエピローグになるでしょうが、良ければご参加いただければ幸いです。
リミティアは何もなければ登場しませんが、もし要望があればプレイングでお申し付けください。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『残影』
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POW : 怨恨の炎
レベル×1個の【復讐に燃える炎の魂】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
SPD : 同化への意思
【憐憫】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【異形の肉塊】から、高命中力の【絡みつく傷だらけの手】を飛ばす。
WIZ : 潰えた希望の果て
【悲観に満ちた絶叫】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
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芦屋・晴久
アドリブ連携歓迎
やれやれ、これはまた分かりやすく救いの無い話ですねぇ。
経緯はどうあれ彼女達は倒すべきモノとなってしまったという事で。
この地は地脈の流れが弱いのがよろしくない。
ですが今はそれを利用させて頂きます、相手の言霊……呪詛の力を私の五封陣にて吸い取らせて頂きましょう。
陣を介して地脈のを活性化させ皆さんの力を強化する結界とします。
相手が攻撃をする毎にこの地は強くなる、皆さんはその間に攻め落として下さいませ。
せめてその最期、しかと見届けさせて頂きましょう。
死ぬ事が救いとなるなぞ、私は認めたくはありませんがね。
エグゼ・シナバーローズ
俺じゃ足引っ張るかもしれねー、でも聞かなかったことにはできねぇ。…俺も被験者だから。
自分の身の上話はしない。運よく逃げられたなんて憎しみを買うこと言うほど馬鹿じゃねーし。
同情はしちまうけど手加減はしねーよ、自分の身どころか同業者の身も危険に晒したらシャレにならねーもん。
「ヴァルカン」の杖で「エレメンタル・ファンタジア」を炎、水、風、雷の順で竜巻として発動。
一番効果的に見えたやつを「高速詠唱」、「全力魔法」交えてそれ以降ぶっ放す。
欲張らず確実に1体ずつ攻撃して数を減らしたい。
相手には近づかれたくねーから相手の動きに気を付けるけど数が多いしな。
最悪オーラ防御で耐えるしかねーか。
※アドリブ、連携歓迎
御狐・稲見之守
暗闇を化物邪神が跋扈し、生者の魂すら闇に閉ざされてしまう。
ひどい世界であることはワシも同意するところじゃよ。まったく。
[WIZ]UC荒魂顕現、我成す一切神事也。
天裂き地割る神業畏み畏み祈願奉るべし。
奔れ『破魔の烈風』、我禍事罪穢一切を祓い清めむ。
[範囲攻撃][属性攻撃][破魔]、その嘆きをも風に攫ってしまおうぞ。
すまぬな、憎悪の末に怨霊となったお前達の願いは聞き届けられぬ。
お前達「過去」が、先へと行く者を害してはならんのだ。
紬雁・紅葉
良いでしょう…"剣神"の巫女として、断ち切るに値する
その怨念
御鎮めします
【風の魔力】を攻撃力と防御力に付与
巴、九曜、鳳翔を適宜使い分け
射程内の敵に破魔風属性衝撃波を以て回数に任せ範囲を薙ぎ払う
敵の攻撃は躱せるかを見切り
躱せるなら残像などで躱し
そうでなければUCオーラ防御などで防ぐ
いずれもカウンター破魔風属性衝撃波を狙う
剣に憐れみを乞うか?
触れれば斬れる刃に縋るか?
剣神の巫女が与えるは
斬り祓い討ち清める慈悲と知れ!
炎と絶叫は風で巻き込み潰す
窮地の仲間は積極的にかばい援護射撃
※アドリブ、緊急連携、とっさの絡み、大歓迎です※
『憎イ……辛イ……苦シイ……怨メシイ……』
猟兵たちが転送された時、かつての忌まわしい実験の跡地はすでに瘴気と怨念の坩堝と化していた。
朽ち果てた廃墟の中を鬼火と共に漂うのは、少女のカタチをした残影の群れ。
この地で死んだ者たちの無念が混ざり合って生まれたソレらは生前の人格もなく、現世の者たちへ無差別に怨恨の牙を剥く。
「やれやれ、これはまた分かりやすく救いの無い話ですねぇ」
咥えた煙草に火を点けながら、芦屋・晴久(謎に包まれた怪しき医師・f00321)は残影の呻きを聞く。経緯はどうあれ彼女達は倒すべきモノとなってしまった。骸の海より這い出でし過去、オブリビオンに。
「暗闇を化物邪神が跋扈し、生者の魂すら闇に閉ざされてしまう。ひどい世界であることはワシも同意するところじゃよ。まったく」
口元を扇子で隠しながらその隣で呟くのは御狐・稲見之守(モノノ怪神・f00307)。ヒトならざる彼女にも、起きてしまった悲劇を消し去ることはできない。
だが――これ以上の悲劇と嘆きの連鎖を、ここで食い止めることはできる。
「良いでしょう……"剣神"の巫女として、断ち切るに値する。その怨念、御鎮めします」
紬雁・紅葉(剣樹の貴女・f03588)はそう宣言すると、不死不浄を射貫く破魔重弓「鳳翔」に矢を番える。
キリキリと廃墟に響く弓弦の音。それに反応した残影の群れが、一斉に猟兵たちに襲い掛かる。
戦端が開かれるのと同時、やや勇み足に前に出たのはエグゼ・シナバーローズ(4色使いの「転校生」・f10628)。
「俺じゃ足引っ張るかもしれねー、でも聞かなかったことにはできねぇ」
……俺も被験者だから、と口を突きかけた言葉を彼は飲み込んだ。今は自分の身の上話はしない。
(運よく逃げられたなんて憎しみを買うこと言うほど馬鹿じゃねーし)
同情はしてしまっても手加減はしない。ここに来たのは自分一人ではないのだ。自分の身どころか同業者の身も危険に晒したら冗談ではすまない。
エグゼは魔法の杖に変化した精霊「ヴァルカン」を掲げ、エレメンタル・ファンタジアを発動。炎、水、風、雷の精霊が渦を巻き、四つの魔力の竜巻を作り上げる。
「行けっ!」
押し寄せる残影の群れ目掛けて竜巻を解き放つ。炎が焼き払い、水が押し流し、風が吹き飛ばし、雷が撃ち貫く。破壊の嵐の中で、エグゼは最も敵に効果的な属性を見極める。
「一番効いてるのは……風か?」
残影を吹き散らした風の精霊の竜巻は、大気に満ちた怨念の瘴気を同時に払い飛ばし、清浄な空気を呼び込んでいく。
どうやら風が持つ浄化の力が、この残霊たちに特に有効らしい。
『憎イ……憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ!!!』
風の浄化を拒むように、残霊の少女たちはより一層の怨嗟と呪詛を叫ぶ。
同士討ちも厭わない、悲観に満ちた絶叫による無差別攻撃。同時に復讐に燃える怨恨の魂が、無数の鬼火となって襲い掛かる。
「これはちょっとシャレにならねーな」
エグゼは咄嗟に魔力のオーラをその身に纏い防御の構えを取るが、何しろ数が多い。耐え切れるか――一抹の不安がよぎったその時、晴久が符を放ち結界を張る。
「この地は地脈の流れが弱いのがよろしくない。ですが今はそれを利用させて頂きます」
発動したのは一之式・八咫五封陣と三之式・四神創奏の複合技。残霊の放つ言霊――呪詛の力を五封陣にて受け止め、吸い取った力をこの地の地脈へと還元する。
活性化された地脈の力は結界内にいる猟兵たちの力を強化する。サポートを受けたエグゼのオーラが輝きを増し、鬼火と呪詛を弾き飛ばした。
「相手が攻撃をする毎にこの地は強くなる、皆さんはその間に攻め落として下さいませ」
「承知いたしました」
結界の維持に努める晴久に応え、紅葉はトリニティ・エンハンスを発動しながら「鳳翔」の矢を放った。ひょうと飛ぶ矢の軌跡に沿って一陣の風が吹き、残影の群れを貫いていく。
切り開かれた風のレールに沿って、風の魔力を纏った紅葉は駆ける。得物を弓から薙刀「巴」に素早く持ち替えると、一閃。斬撃と共に破魔の霊力を帯びた風の衝撃波が、周囲の残霊を纏めて薙ぎ払う。
『痛イ……苦シイ……』
憎悪に染まった残霊たちの視線が一斉に紅葉に向く。同時に押し寄せる鬼火の嵐を、羅刹の戦巫女は冷静に見切ると残像を生じさせる歩法で躱し、あるいはその身に纏った風のオーラで受け流していく。
そして間髪入れず反撃の「巴」を振るえば、再び巻き起こる破魔の風が、残霊の呪詛を祓っていく。
「ではワシも行こうか」
戦場の推移を見つめながら、地脈の助力を得た稲見之守もユーベルコードを発動させる。
「我成す一切神事也。天裂き地割る神業畏み畏み祈願奉るべし」
荒魂顕現――神威を解き放った稲見之守は、爛々と輝く双眸を嘆き叫ぶ残霊たちへと向けて。
「奔れ『破魔の烈風』、我禍事罪穢一切を祓い清めむ」
手にした扇子をさっと振るえば、香木の香りを乗せた風が戦場に吹き荒れる。それは怨恨の炎を吹き消し、呪詛を祓い清め、彷徨う霊を彼岸へと運ぶ神威の風だ。
『憎イ……ニク、イ……』
尽きることなき少女たちの嘆きすらも、風に攫われ消えていく。呪詛の残滓さえもその場には残らない。
「俺も負けてられねーな」
破魔と清めの風が吹き荒れる中で、エグゼも再び「ヴァルカン」を構えると素早く詠唱を紡ぎ、今の彼に制御できる全力のエレメンタル・ファンタジアを放つ。
風の精霊の竜巻は周囲の残霊を引きずり込み、1体ずつ確実に消滅させていく。
『アア……憎イ……世界ガ……全テガ
……!!』
「すまぬな、憎悪の末に怨霊となったお前達の願いは聞き届けられぬ。お前達『過去』が、先へと行く者を害してはならんのだ」
憎悪の形相で迫る少女に、稲見之守は静かに告げる。ふわりと扇子を扇げば薫風が怨霊を包み込み、その魂を優しく祓い清めていった。
「剣に憐れみを乞うか? 触れれば斬れる刃に縋るか?」
薙刀からルーンソード「九曜」へと得物を換えた紅葉は、憐憫の情なき鋭い眼差しで押し寄せる残霊を射抜き。
「剣神の巫女が与えるは、斬り祓い討ち清める慈悲と知れ!」
ルーンの輝きと共に放たれた風の斬撃は、炎や絶叫もろとも残霊を両断した。
「せめてその最期、しかと見届けさせて頂きましょう」
地脈の結界を保つ晴久は、浄化の風によって祓われていく残霊を静かに看取る。
「死ぬ事が救いとなるなぞ、私は認めたくはありませんがね」
医師としての矜持が彼の胸を疼かせる。だが、尽きえぬ少女たちの嘆きを止める方法が他に無いことも、また事実であった。
成功
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六代目・松座衛門
「世界を憎むオブリビオンを自ら作るなんて、本当におっかないことを考える人がいるもんだ。……ひとまず、君たちは討たせてもらうよ!」
人形を前衛に、戦闘を開始。
人形による【武器受け】で、相手の攻撃から自身を【かばい】つつ、操作糸「領」で実験装置を倒したり、天井を崩して、『残影』の足止め、行動範囲の制限を狙う!
「後でちゃんと弔うから、今はその行き場のない憎しみを無くしてやる!」
動きを止めた『残影』に対し、UC「角砕き」を発動!【破魔】の力を人形の拳に集中させ、これが彼女たちの救いになればと願い、渾身の右ストレートを放つ!
アドリブ、連携歓迎
トリテレイア・ゼロナイン
幾度も幾度も哀れな犠牲者がオブリビオンとなった存在を打ち倒してきました。今回もいつも通りこなしてみせます
幸い、彼ら彼女らが出現した直後に転移できるのは僥倖でした
彼らの手が無辜の人々の血に染まる前に、止めてみせましょう
完全な魂だけの存在ならともかく、残影はオブリビオン
物理的な攻撃もある程度は通るでしょう
炎を●盾受けで防ぎつつ脚部スラスターを点火し地面を滑るように●スライディングし急速接近、そのままUCも併用した●怪力シールドバッシュで●なぎ払います
なぎ払い直後の隙は頭部格納銃器での射撃でカバー
……彼らには御伽噺の騎士は来てくれなかった、ただそれだけの話です
苛立ち紛れにUCで施設の一部を破壊
「世界を憎むオブリビオンを自ら作るなんて、本当におっかないことを考える人がいるもんだ。……ひとまず、君たちは討たせてもらうよ!」
押し寄せる残影の群れを前に六代目・松座衛門(とある人形操術の亡霊・f02931)はそう宣言すると、自らの相棒たる戦闘用人形「暁闇」を起動させる。
対異形戦闘を想定した「鬼猟流人形操術」の粋を詰め込まれた人形は、遣い手たる松座衛門をかばうように前に出る。
「幾度も幾度も哀れな犠牲者がオブリビオンとなった存在を打ち倒してきました。今回もいつも通りこなしてみせます」
人形と並んで前衛に立つのはトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)。その言葉は、まるで自分自身に向けた宣言のようにも聞こえる。
彼ら彼女らが出現した直後に転移できるのは僥倖でした、と彼は思う。今ならばまだ、これ以上の犠牲者が出ることは防げるのだから。
「彼らの手が無辜の人々の血に染まる前に、止めてみせましょう」
決意を胸に重質量大型シールドを構えると、力強く一歩前へと足を踏み出す。
『全テ……燃エテ……尽キテシマエ
……!!』
立ちはだかる猟兵たちに残影が放つは怨恨の炎。燃え盛る復讐と憎悪の念を青白い鬼火に変えて、濁流のごとく解き放つ。
あらゆる生者を焼き尽くさんと襲い掛かる炎に対し、松座衛門の「暁闇」はその身を盾として遣い手を護り、トリテレイアは大盾を掲げて受け止める。
常人であれば骨まで灰燼と化すであろう熱量。だが戦闘を想定し作り上げられた彼らのボディはこの程度の炎で焦がされはしない。
人形の背後で身を守りながら、松座衛門は指先で操作糸「領」を密かに張り巡らせていく。その糸は人形を操るためだけの物ではない。かつての実験装置の残骸や、罅割れた天井。「領」で繋がれたあらゆる物は彼の念力で操作可能になる。
「よっ、と!」
松座衛門が張り巡らせた糸をぐっと手繰り寄せると、残霊の周囲にあった装置が倒れ、天井が崩れ落ちる。少女たちは反射的に身をかわそうとした結果、一箇所に身を寄せ合う形となる。
「今だ!」
「了解です」
残霊たちが密集し行動範囲が制限された、この好機を逃すまいとトリテレイアは脚部スラスターを点火する。それと同時に鬼火を振り払った「暁闇」が地を蹴った。
「完全な魂だけの存在ならともかく、残影はオブリビオン。物理的な攻撃もある程度は通るでしょう」
「後でちゃんと弔うから、今はその行き場のない憎しみを無くしてやる!」
地面を滑るように急速接近するトリテレイアと、糸に操られ高速で駆ける「暁闇」。二機は速度を緩めることなく残影の群れに突っ込み、自らの膂力や体重を上乗せしたシールドバッシュと体当たりを叩き込む。
『ア、アアアアアッ
……?!』
進路上にいた残影たちは、まるでボウリングのピンのように弾き飛ばされ消滅する。幸運にも直撃コースから外れていた残霊が怒りの形相で鬼火を放とうとするが、トリテレイアが即座に頭部に格納した銃器で弾幕を張り、突撃後の隙をカバーする。
そして松座衛門は操り糸を通して「暁闇」の拳に破魔の力を集中させ、蹴散らされた残影目掛け渾身の一撃を放つ。
「叩き込む! 一ノ型 角砕き!」
これが彼女たちの救いになれば――そう願いながら放たれた右ストレートは、密集していた残影たちを纏めて打ち砕き、消滅させたのだった。
『ア……リ、ガ……トウ……』
消滅の瞬間に、残影の一人がそう囁いたような気がした。
死してなお晴れることのなかった怨恨から、彼女たちはこれでようやく救われたのだろうか。
「……彼らには御伽噺の騎士は来てくれなかった、ただそれだけの話です」
トリテレイアは苛立ち紛れに拳を壁に叩き付ける。ボロボロだった施設の壁はそれだけで砕け、大きな穴が開いた。
――廃墟を包む瘴気は今だ濃く。猟兵たちの戦いは続く。
成功
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デナイル・ヒステリカル
オブリビオンは言わば残響のようなものであり…
それがカタチを成しているのですから余程辛い境遇にあっていたのでしょうね
未練だったのかも知れません
増悪もあったのかも知れません
しかしそうした痛みを訴えるべき存在は既に皆死んでいるのです。
死んでいるのです。終わっているのです。
オブリビオンは過古に存在した本人ではない。
今はもう過去になっている存在に、余計な罪まで背負わせることはないでしょう。
ここで彼女達を倒し、二度と現れないようにする事が、今回の僕の猟兵としての仕事だと判断します。
集団から放たれる絶叫に対してUCを使用
間髪入れずに雷撃を放って残影たちを吹き飛ばし、霧散させようと思います
※連携アドリブ歓迎
アルバ・アルフライラ
やれ、惨い行いをするものよ
どうやら人とは、堕天使という題目に惹かれるらしい
…壊された側は堪った物ではないがな
数が多いならば、此方に分がある
仕込み杖で描いた魔方陣より召喚するは黒き翼竜
ジャバウォックを駆り、一度に複数の者達へと魔術を行使
立ち塞がるならば亡霊であれ竜の牙で喰い殺してくれる
翼竜の速度を頼りに回避
ただ避けるだけでは物足りぬとカウンターを試みる
高所にて周囲を見渡せる分、様子を窺い猟兵達を支援
援護、連携も欠かさず行おう
憐憫?…ふん
斯様な物、影たる貴様等に必要あるまい
たとえ情を抱いたとして、それは貴様等に向けた訳ではない
――犠牲となった少女自身にこそ向けられるべき物だ
(従者、敵以外には敬語)
「やれ、惨い行いをするものよ。どうやら人とは、堕天使という題目に惹かれるらしい……壊された側は堪った物ではないがな」
「オブリビオンは言わば残響のようなものであり……それがカタチを成しているのですから余程辛い境遇にあっていたのでしょうね」
同じ頃、廃墟の敷地内を移動していたアルバ・アルフライラ(双星の魔術師・f00123)とデナイル・ヒステリカル(架空存在の電脳魔術士・f03357)も、怨恨を叫ぶ残霊の群れと相対していた。
アルバは仕込み杖「星追い」を手に魔方陣を描き、デナイルは握り締めた拳に雷光を宿す。燃え滾るような無数の憎悪に晒されてなお、彼らの眼差しは冷静であった。
「数が多いならば、此方に分がある」
描き上げた魔方陣の内より召喚されしは名状し難き黒の翼竜――ジャバウォック。その背にひらりと飛び乗ったアルバは、上空より残影に向けて得意の魔術を放つ。
この場所の天井は崩れており、黒竜がその翼を広げるのに何の支障もない。降り注ぐ炎や風の槍に貫かれ、残影たちは次々に消滅していく。
残影にも飛行能力はあるが、それは飛行と言うより浮遊と呼ぶべきもの。空中戦の機動性でジャバウォックに及ぶ筈がなく、高度を上げて立ち塞がろうと竜の牙の餌食となるのみ。
怨嗟も憎悪も高みより圧倒する魔竜。其はまさに『災厄』であった。
『熱イ……痛イ……苦シイ……』
竜の牙と魔術に蹂躙され、残影たちは嗚咽を漏らし悲鳴を上げる。その様は儚く惨めであり、見る者の憐れみを誘う。
――だが、この場にいる猟兵は、その程度のことで動揺を見せることはなかった。
「憐憫? ……ふん。斯様な物、影たる貴様等に必要あるまい」
冷たい眼差しで残影たちを見下ろすアルバ。その言葉の後を継ぐようにデナイルが口を開いた。
「未練だったのかも知れません。増悪もあったのかも知れません。しかしそうした痛みを訴えるべき存在は既に皆死んでいるのです」
死んでいるし、終わっている。オブリビオンは過古に存在した本人ではない。骸の海より流出した「過去」そのものだ。
「今はもう過去になっている存在に、余計な罪まで背負わせることはないでしょう」
ここに居るのは、かつて犠牲になった少女そのものではない。残影の行いは故人の罪ではなく、だからこそ憐れみは不要と彼は判断する。
ここに居るのは、終わらせるべき「過去」だ。
『痛い……憎イ……何デ……私タチガ
……!!!!』
焼き付いた感情のままに荒れ狂う残影たちは、一斉に悲観に満ちた絶叫を放つ。憎悪、怨恨、絶望。ありとあらゆる暗い感情が波動となって猟兵たちに襲い掛かる。
アルバは即座にジャバウォックを駆り、最高速度で急上昇することで絶叫の範囲から逃れる。
そしてデナイルは素早く電脳ゴーグルを起動させ、展開した電脳空間を介して敵のユーベルコードにハッキング。掌握し、そのシステムに自壊指示を下す。
『ガ……アァ……?』
残影たちの絶叫が打ち消される。そこに間髪入れずデナイルは溜め込んだ雷撃を全力で解き放った。
「ここで彼女達を倒し、二度と現れないようにする事が、今回の僕の猟兵としての仕事だと判断します」
青白く瞬く稲妻が戦場を奔り、残影たちを吹き飛ばし、霧散させていく。そこにアルバも呼応し、高空より巨大な魔法の火球を放つ。
「たとえ情を抱いたとして、それは貴様等に向けた訳ではない――犠牲となった少女自身にこそ向けられるべき物だ」
着弾した蒼き火球は容赦なく、絶叫する残影の群れを焼き尽くしていった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
華折・黒羽
※アドリブ、連携歓迎
なぜ、こういう事は無くならないんだ…
まあ答えなど聞くことはないだろし、知りたくもないが
俺が出来ることは一刻も早くその連鎖を断ち切ることだけだ
前に出て盾として立ち回る
【聞き耳】で仲間の位置や行動に気を配りながら
【野生の勘】で敵の動きにも対応
仲間の猟兵が優位に攻撃に出れるよう敵を【おびき寄せ】
屠と隠で敵の攻撃の妨害、行動の制限を狙う【盾受け、武器受け】
【激痛耐性】傷を受けたとて後には退かない
前に…只々、前に進む
悲しく辛いなら、叫べ
その全てを受けて立つ《無敵城塞》
壁と成り得たなら後は仲間に任せよう
祈るようにバトンを
頼みます、…眠らせてやってくれますか
シオン・ミウル
【SPD】
囚われて、実験され、憎しみを抱いたまま死んだ子達
俺も一歩間違えれば同じ境遇に陥っていたのかもしれないな
世界を憎むのも、絶望するのも、共感できるよ
君達は可哀想なのかもしれない
でも俺は憐れんだりしたくない
生きてた時の君たちを、
可哀想な人という言葉で終わらせたくないからな
「Takt」で風を繰り狙うのは急所、首
一瞬で落とす
苦痛は散々味わってきたのだろうから
これ以上はいらないだろ?
憎み続けるのは辛いことなんだ
尽きることのない苦しみだ
だからもういいよ、ここでおやすみ
笑って送り出してやるよ
「なぜ、こういう事は無くならないんだ……」
喘ぎ、嘆き、憎しみを叫び続ける残影たちを前にして、華折・黒羽(掬折・f10471)はそう呟かずにはいられなかった。
答えを聞けると期待してのことではなく、また知りたくもなかったが。かつて犠牲になった者達が新たな犠牲を生み出そうとしている、こんな理不尽があるものかと。
(俺が出来ることは、一刻も早くその連鎖を断ち切ることだけだ)
決意を胸に、彼は前に出る。共に戦う仲間の盾となるために。
『憎イ……憎イ……憎イ……!』
うわ言の様に呟きながら、残影たちは怨恨の炎を燃やす。その瞳に映る全てを焼き尽くさんと。
黒羽はその身に共生する黒剣の「屠」と漆黒の盾「隠」を手に、襲い掛かる鬼火の嵐を切り払い、受け止める。あえて正面から注目を浴びるように接近することで、敵の攻撃を自身に誘き寄せるのが狙いだ。
いかに彼が手練であっても、大群の攻撃を一手に引き受ければ被弾は避けられない。受け切れなかった鬼火が、彼の漆黒の毛並みを焼き焦がす。それでも悲鳴は上げない。傷を受けたとて後には退かない。苦痛に耐え、前に……只々、前に進む。
「悲しく辛いなら、叫べ。その全てを受けて立つ」
『ア……アァァ……ッ
……!!』
目前まで到達した黒羽の言葉に、呼応するかの如く少女たちが喚び出したのは異形の肉塊。無数の人間の血肉を混ぜ合わせたようなグロテスクなそれは、彼女らの受けた痛苦の具現であり、それを他者に思い知らせようという同化への意思だ。
残影たちへの憐憫の情を抱かずにはいられなかった黒羽を取り込まんと、肉塊からは無数の傷だらけの手が伸び、彼の身体に絡みついていく。
――だが、黒羽は動じなかった。
「言っただろう。受けて立つと」
無敵城塞を発動し、残影との同化を防ぐ。このユーベルコードを発動している最中は身動きが取れなくなるが、構わない。彼の役割は既に果たされている。
敵の攻撃を一手に引き受けながら、黒羽は祈るようにバトンを託す。
「頼みます、……眠らせてやってくれますか」
「ああ」
その時、黒羽が聞いたのは短い返答と鋭い風の音。
シオン・ミウル(絡繰の花・f09324)が操る風の刃が、一瞬のうちに残影の首を切り落とす音だった。
「苦痛は散々味わってきたのだろうから、これ以上はいらないだろ?」
そう告げる通り、断末魔の悲鳴さえ上げる間もなく。首を失った残影は風に吹き散らされるように消滅した。
(囚われて、実験され、憎しみを抱いたまま死んだ子達。俺も一歩間違えれば同じ境遇に陥っていたのかもしれないな)
実験体の過去を持つシオンは少女たちの姿に共感を覚えながらも、その手に握った指揮棒「Takt」を振るう。魔晶石で作られたそれは魔力を籠めて振るうことで、思うままに風と音を操ることができる。
黒羽が盾として攻撃を引き受けている間、シオンはずっと風を練り続け、攻撃の機会を待ち続けていたのだ。
「世界を憎むのも、絶望するのも、共感できるよ。君達は可哀想なのかもしれない。でも俺は憐れんだりしたくない。生きてた時の君たちを、可哀想な人という言葉で終わらせたくないからな」
万感の思いを籠めて指揮棒を振るえば、何十という風の刃が生まれ、戦場には音楽が満ちる。それは少女たちに捧げる鎮魂歌にして子守唄。
「憎み続けるのは辛いことなんだ。尽きることのない苦しみだ。だからもういいよ、ここでおやすみ」
そう告げるのと同時に吹き荒れた風は、黒羽を襲っていた残影たちの首を纏めて断ち切る。痛みもなく、一瞬で。
『ア……』
さらさらと風に溶けて消えていく少女たちは、その最後の一瞬だけ、安らいだような表情を見せた気がした。
シオンは再び眠りにつく彼女たちを、最後の瞬間まで笑って送り出すのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
零落・一六八
実験体ねえ
ま、どうでもいいです。他人事ですし
ぞろぞろと盛大なお出迎えどーも!
挨拶変わりに野太刀で【なぎ払い】
UCで強化して【捨て身の一撃】ぶちかましますよ
ここはそういうもんが多くて色々聞こえますけど
そーですね。っと同意しながらも同調はせず、ぶったぎります
代償も【激痛耐性】で食らう痛みも気にしない
多少の損傷はあとで【生命吸収】すればいいですし
壊しても問題ないらしいので
【地形の利用】とかでその辺のもの【怪力】で投げ飛ばしたり壊しまくりやりたい放題
ボクこういう場所、大っ嫌いなんですよね!
壊していいなら戦闘を言い訳に破壊しまくっときますね!
一応周りはちゃんと見て合わせますよ?
アドリブ他との絡み大歓迎
「実験体ねえ。ま、どうでもいいです。他人事ですし」
悠々自適な笑みを浮かべながら零落・一六八(水槽の中の夢・f00429)は廃墟を進む。既に猟兵の手によって多くの残影が倒されている筈だが、新たな残影の出現は収まる気配を見せない。奥に進むにつれて瘴気も濃くなっているように感じる。
其れほどまでに、この地に眠っていた怨念は深いということか。
「ぞろぞろと盛大なお出迎えどーも!」
進路上から押し寄せてくる残霊の群れを、一六八は背の野太刀を鞘から引き抜くと挨拶代わりに薙ぎ払う。霞を払うかのように斬り捨てられ、霧散していく残霊――一六八はその残滓に手を伸ばすと、自らの体内に吸収する。
死者の残留思念や怨霊、そして悪意。それらは全て一六八の力になる。電子の精霊たる彼の実体は、そうして融合した無数の悪意や怨霊等で維持されているのだから。
数多の怨念が渦巻くこの場所は、さながら彼の狩場であった。
『痛イ……痛イヨ……』
『ココカラ……出タイ……』
『暗イノ……恐イヨォ……』
残霊を屠り喰らう一六八の内外から響く無数の声。襲い掛かる残霊たちが、それと共鳴した一六八の体内の残留思念や怨霊が、口々に己の未練を訴えかけてくる。
それは猛毒のように肉体を蝕み苦痛を与えるが、彼は気にしない。
「そーですね」
怨霊たちの声に同意しながらも同調はしない、それが彼のスタンスだった。
一切の容赦なく手近な標的をぶった斬り、吸収することで自らの損傷を補う。毒すらも糧とするその所業に、残霊すらも怯えるように身を震わせる。
十分なパワーソースを得た一六八は、辺り構わぬ勢いで破壊の限りを尽くす。
「ボクこういう場所、大っ嫌いなんですよね!」
残霊ごと施設の壁や床を切り刻み、散らばった瓦礫を異様な怪力で持ち上げて投げつける。もちろん周囲に巻き込む味方がいないことを確認してのことだが、戦闘中なのをいいことにやりたい放題である――それを咎めるような者もいないが。
廃墟を瓦礫の山に変える勢いで、一六八は大立ち回りを演じながら残霊を駆逐していくのだった。
成功
🔵🔵🔴
シール・スカッドウィル
「もういい」
悲鳴は飽きるほど聞いてきた。
本当の意味で、お前たちは救えない。
俺たちに出来るのは、もう一度終わらせることだけだからだ。
だとしても……だからこそ。
「その悲鳴は、もう必要ない」
落ちて、眠れ。
繋を展開、【印】で次弾を<誘導弾>に、次いで<全力魔法>の【輻射】を空へ。
放つ弾丸の属性に【融解】を乗せて、その悲鳴を融かし尽くす。
無論、それでは終わらせるつもりはない。
「弾丸はまだ尽きていない」
間髪入れないための上下二連装――――<2回攻撃>だ。
続けて光属性の【輻射】を放ち、確実に削る。
交互に繰り返し、手を封じながら押し込む。
長引かせたくはない、なるべく手早く、だ。
アドリブ、連携歓迎
『憎イ……憎イ……』
『出シテ……ココカラ出シテ……』
「もういい」
うわ言のように嘆きと呪詛を紡ぎ続ける残霊たちに、シール・スカッドウィル(ディバイダー・f11249)は短く告げた。
悲鳴は飽きるほど聞いてきた。本当の意味で、彼女たちは救えない。自分たちに出来るのは、もう一度終わらせることだけだと、シールは痛いほど知っていた。
だが、だとしても……だからこそ。
「その悲鳴は、もう必要ない」
これ以上嘆き続ける必要はないのだと。落ちて眠れと、シールは対物ライフル「繋」を展開する。
「ロック」
シールは視界に収めた残霊に誘導用の印を刻み、「繋」に魔力圧縮弾頭を装填。
自らをロックオンする銃口を見た残霊たちは、対抗するように感情を爆発させ張り裂けるような悲鳴を放った。
『嫌ダ嫌ダ嫌ダ嫌ダ嫌ダ嫌ダ嫌ダ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ――
!!!!!』
仲間や自分自身さえも傷つけながら、嵐のような衝撃波となって荒れ狂う悲観に満ちた絶叫。しかしシールは一歩も怯むことなく、その中心に向けてトリガーを引いた。
「シルエットシフト」
発射された魔力弾頭は無数の散弾となって拡散し、標的の発する感情に応じて威力を増す。残霊たちの負の感情を糧とした拡散砲は平時を遥かに上回る威力を発揮して絶叫を押し返すが、シールが弾頭に込めた効果はそれだけではない。
「カット」
あらゆる概念に空間から浸食する【融解】の術式。それは残霊の悲鳴――ユーベルコードを相殺し、その悲鳴を融かし尽くした。
『――――?!』
悲観に満ちた絶叫をかき消され、残霊たちは呆然と宙を漂う。だが無論、シールはそれで終わらせるつもりはなかった。
「弾丸はまだ尽きていない」
彼の「繋」銃身は上下二連装式。初弾を放っても間髪入れず次弾を放つことができる。トリガーを引き絞れば今度は光の魔力を付与された拡散弾が、眩い閃光の雨となって降り注いだ。
光の弾丸に打ち抜かれ、悲鳴もなく消滅していく残霊たち。それを見据えながらシールは素早く次弾を装填する。
「長引かせたくはない、なるべく手早く、だ」
その苦しみが少しでも短くなるように、彼は躊躇わずトリガーを引き続けるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
雛菊・璃奈
ごめんね…生前の貴女達を助けてあげられなくて…。
せめて、貴女達を憎しみと苦しみから救いたい…。
もう苦しまなくて良いの…。
貴女達の事はわたしが覚えてるから…だから、もうお休み…。
周囲に【狐九屠雛】を展開…。
残影を黒桜の呪力解放【呪詛、衝撃波、早業、なぎ払い】で敵の攻撃ごと吹き飛ばす形で迎撃し、【狐九屠雛】で凍結させて身動きを封じた後、【ソウル・リベリオン】で呪いを喰らう事で彼女達の魂を救済するよ…。
生前の彼女達を助ける事はできなかったけど…せめて、魂だけでも助けたい…。
わたしは魔剣の巫女…呪いはわたし達の力の源…。貴女の呪いはわたしが引き受けるから…だから、もうお休み…。
※アドリブ等歓迎
キラス・レスケール
──過去の貴様らを救えなかった事に関しては謝罪しよう。
だが俺様が来たからには、貴様らの今を救ってやる。
【祈り】を捧げ、絶望から解き放とう。
なんと言っても俺様は神だからな。貴様らの全てを受け止めてやる。
……これは憐憫という感情になるだろうか? ならば『同化への意思』を受けてしまうだろか。
だがそれに合わせて前線に飛び出し『無敵城塞』を発動だ。攻撃は他の猟兵に任せ、俺様は皆の盾となってやろう!
言っただろう、貴様らの全てを受け止める、とな。
※アドリブ、絡み歓迎。
※常に自信満々の笑顔を崩さない俺様神様。
「ごめんね……生前の貴女達を助けてあげられなくて……」
彷徨う残影たちに哀しみの眼差しを送りながら、雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)は静かに言葉を紡ぐ。その手に握るは呪槍・黒桜。秘めし力を解き放たれたそれは黒い桜の花弁にも似た呪力を発し、瘴気を振り払う。
「せめて、貴女達を憎しみと苦しみから救いたい……」
切なくも確かな決意を胸に、魔剣を祀り封ずる巫女は戦場を駆ける。
彼女と同じ想いで戦場に立つ猟兵は、ここに今一人。キラス・レスケール(†神†・f16415)は自信に満ちた笑顔で残影たちに告げる。
「――過去の貴様らを救えなかった事に関しては謝罪しよう。だが俺様が来たからには、貴様らの今を救ってやる」
彼の行動目的にはいささかの迷いもない。彷徨える魂に祈りを捧げ、絶望から解き放つ。何故そうするのかという問いは愚問である。
「なんと言っても俺様は神だからな。貴様らの全てを受け止めてやる」
堂々たる態度と足取りで、キラスは瘴気渦巻く残霊の群れへと迫っていく。
――だが、猟兵がいかに救済を望もうとも、憎悪と妄執の塊である少女たちに、その想いは容易には届かない。
『憎イ……何モカモ……全テガ……』
『ミンナ壊シテ……殺シテ……滅ベバイイ
……!!』
彼女たちは救いなど求めてはいない。自分たちの受けた痛みを、抱いた憎しみをこの世界に知らしめる、それだけを行動原理として荒れ狂う破壊衝動の化身。
その怨讐を具現化した青白い鬼火が、呪詛の呟きと共に猟兵たちに襲い掛かる。
「お願い……黒桜……」
迫り来る復讐の業火に対して、璃奈は呪槍を振るう。咲き乱れる黒桜の花弁が鬼火と衝突し、相殺――否、それ以上の威力を以って炎を吹き飛ばす。
少女たちの怨念がどれだけ深かろうとも、璃奈が祀る魔剣の数々もそれに劣らぬ呪力を秘めている。呪詛と呪力、同質の力のぶつかり合いは璃奈に分があった。
しかし薙ぎ払われた炎の向こう側からは間髪入れず、召喚された異形の肉塊から伸びる無数の手が襲い掛かる。
哀れむならば、救おうと言うならば、自分たちと一つになってその苦しみを思い知れ――そう告げるかのごとく。
だが、それに合わせてキラスが前線に飛び出し、無敵城塞を発動しながら璃奈をかばった。
「言っただろう、貴様らの全てを受け止める、とな」
同化を望む無数の手に絡みつかれながらも、彼は自信満々な笑みを崩さない。一瞬でも防御モードを解除すれば即座に呑み込まれてしまうであろうこの状況にも、彼にはいささかの焦りも無かった。
自身は皆の盾となり、攻撃は他の猟兵に任せる。仲間と、何よりも自分自身を信じているからこその戦術だった。
そして璃奈もまた、盾を買って出たキラスの信任に応える。
残影の攻撃がキラスに集中している隙に彼女が展開したのは九尾炎・最終地獄【狐九屠雛】。それは魂をも凍てつかせる地獄の霊火。
通常の炎とも、残影たちの操る鬼火とも真逆の性質を持った絶対零度の炎が、異形の肉塊を、そして残影の群れを纏めて凍結させた。
『――
!!!!!』
驚愕の表情のまま、分厚い氷の中に封じ込められる残影。璃奈はゆっくりと彼女達の前に歩み寄ると黒桜を収め、新たな魔剣を召喚する。
「呪詛喰らいの魔剣よ……彼の者を縛る呪いを喰らい、正しき姿、正しき魂へ戻せ……。彼の魂に救済を……!」
顕現せしは呪詛喰らいの魔剣【ソウル・リベリオン】。生前の彼女達を助ける事はできなかったが、せめて魂だけでも助けたい。それが彼女の望みだった。
「わたしは魔剣の巫女……呪いはわたし達の力の源……。貴女の呪いはわたしが引き受けるから……もう苦しまなくて良いの……」
凍て付いた残影たちを撫でるように、璃奈は呪詛喰らいの魔剣を振るう。怨念と憎悪のすべてを刈り取られた魂は、眠るように静かに消滅していく。
「貴女達の事はわたしが覚えてるから……だから、もうお休み……」
「貴様らの絶望、確かに受け止めたぞ。安らかに眠るがいい」
それぞれの形式で祈りを捧げる魔剣の巫女と神に見送られ、少女たちの魂は再び骸の海に還っていくのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
リーヴァルディ・カーライル
【誰が為に花は舞う】で参加
…ん。前の依頼の時みたいに毒とか石化とか恐怖で縛るとか。
何かやるんじゃないかと思っていたけど…杞憂だったみたい。
…ごめんね、ヴィサラ。貴女の事、誤解していた…って、大丈夫?
殺気を感じたら大鎌をなぎ払い武器で受け流して防ぎ、
ヴィサラを庇うよう心掛けUCを二重発動(2回攻撃)
吸血鬼化した後、死者の呪詛を浄化する“光の風”を広域に放つ
…期待には応えるよ、優しい『怪物』さん
光の力の反動で傷口を抉るような痛みに気合いで耐え、
暗視と第六感を頼りに空中戦を行う敵の行動を見切り、
【砂漠の花びら】を風に乗せ敵の元へ運ぼう
…光の精霊、風の精。
哀しみを終わらせる、優しい花を届けてあげて…。
ヴィサラ・ヴァイン
【誰が為に花は舞う】で参加
…やっぱりダークセイヴァーは苦手だなぁ…こんな悲しい事件が起こってるなんて…
心が軋む音がする。胸の奥がキリキリと痛む。…正直吐きそう。こういう負の感情は苦手なんだよ…
だけど今回はリーヴェ(f01841)が一緒に戦ってくれるから大丈夫
…期待してるよ『英雄』さん
[石の書庫]を【砂漠の花びら】に変えて戦場に撒き散らし、リーヴェの光の風で運んでもらうよ
少女達の霊を【石化】させ、そのまま【風化】させ過去へと帰す
そして…怒りも、悲哀も、復讐心も……全ての負の感情を【風化】させます(範囲攻撃)
「この花は、貴女達の為に捧げるよ」
「……やっぱりダークセイヴァーは苦手だなぁ……こんな悲しい事件が起こってるなんて……」
瘴気に満ちる廃墟の中で、ヴィサラ・ヴァイン(魔女噛みのゴルゴン・f00702)は今回の事件についてぽつりと呟く。
相対するは彷徨いし残影の群れ。彼女たちから感じられるのは、吐き気がするほどの憎悪、憤怒、悲哀、絶望、恐怖――ヴィサラが苦手とする負の感情の濁流。
「……大丈夫、ヴィサラ?」
大鎌「過去を刻むもの」を構えるリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)が、顔色の悪い友人に問いかける。その気遣いにヴィサラは小さく笑みを浮かべ。
「今回はリーヴェが一緒に戦ってくれるから大丈夫……期待してるよ『英雄』さん」
「……期待には応えるよ、優しい『怪物』さん」
一人では耐え切れない悪意でも、誰かと一緒なら立ち向かえる。
悲劇の過去を鎮めるため、二人は残影の群れと対峙する。
『暗イ……暗イ……闇ノ中……』
押し寄せる残影の少女たちは、鬱々とした呪詛を呟きながら、生者に冷たい手を伸ばす。その瞳に光は無く、底知れぬ闇をたたえ。
『ミンナ……ミンナ……沈ンデシマエ
……!!』
その闇の中に、引きずり込むように。放たれる悲観に満ちた絶叫は冷たい殺意と共に、猟兵たちに襲い掛かる。
「……!」
殺気を鋭く感知したリーヴァルディは、さっとヴィサラを庇うように前に出ると、絶叫が生んだ衝撃波を「過去を刻むもの」で切り払い、空中から接近しようとする亡者の動きを大鎌の刃で牽制する。
その隙にヴィサラは石造りの書物「石の書庫」を手にユーベルコード【砂漠の花びら】を発動させる。
「この花は、貴女達の為に捧げるよ」
読めない筈の石のページがパラパラと捲れて宙に舞い、無数の砂塵――否、石と砂で出来た花弁に姿を変えて、舞い踊る。それはあらゆるものに石化と風化をもたらす砂漠の薔薇。形あるものに限らず、霊魂や、感情さえも。
押し寄せた悲観に満ちた絶叫は、撒き散らされた花弁に触れた瞬間に「風化」し、力を失っていく。
「……ん。前の依頼の時みたいに毒とか石化とか恐怖で縛るとか。何かやるんじゃないかと思っていたけど……杞憂だったみたい」
悪意を風化させるヴィサラの力を見たリーヴァルディは、感心の言葉を漏らし。
「……ごめんね、ヴィサラ。貴女の事、誤解していた……って、大丈夫?」
「だ、大丈夫、平気平気」
強がるヴィサラだったが、その顔色は決して良くない。悪意に敏感な彼女の心は軋み、胸の奥がキリキリと痛む。それでも気丈に振舞えるのは一緒に戦う友のお陰か。
その意を汲んだリーヴァルディは、ヴィサラを援護すべく血の力を解き放つ。
「……限定解放。テンカウント」
一時的に吸血鬼化したダンピールの少女は、自らに宿る吸血鬼のオドと、世界に満ちる精霊のマナを一つに合わせ、属性と自然現象を操る【血の教義】を発動させる。
「……光の精霊、風の精。哀しみを終わらせる、優しい花を届けてあげて……」
現出させるのは死者の呪詛を浄化する"光の風"。闇の住人が光の力を操るという矛盾、その反動は傷口を抉るような激痛をもたらすが、リーヴァルディはそれに気合で耐える。
淡い輝きと共に戦場に吹いた優しい風は、ヴィサラの砂漠の薔薇を乗せて、残影たちの元へ広がっていく。
『ア、アァァァ……ぁ……』
残影に浴びせられた光の風と砂漠の薔薇は、彼女たちの呪詛を浄化し、霊魂を石化し風化させ、あるべき場所に――正しき自然の摂理のままに、骸の海へと送り帰していく。
それだけではない。瘴気としてこの地に満ちる少女たちの怨念――怒りも、悲哀も、復讐心も――全ての負の感情を、風と薔薇は浄化し風化させていく。
やがて風が止んだ時、戦場に彷徨える亡者の姿はなく。
涙で濡れたような痕の残る小さな砂の塊だけが、そこには遺されていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第2章 ボス戦
『呪詛天使の残滓』
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POW : 呪詛ノ紅剣ハ命ヲ喰ウ
【自身の身体の崩壊】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【呪詛を纏う紅い剣】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD : 我ガ
自身が装備する【剣】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ : 黒キ薔薇ハ世界を蝕ム
自身の装備武器を無数の【呪詛を纏った黒い薔薇】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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彷徨う残影の群れを打ち倒し、時には祓い清めながら進む猟兵たちは、やがてこの施設の最も深い区画へと辿り着く。
そこにあったのは錆び付いた檻や、血の痕の残る拷問具、用途も分からぬ奇怪な機材、そして散乱する無数の白骨。
一体ここでどのような実験が行われ、幾人が犠牲となったのか――それを想像するには余りある光景であった。
思わずその光景に目を奪われていた猟兵たちは、不意に背筋が凍るような殺気を覚え、振り返る。
いつからそこに居たのだろう、実験場の丁度中心に、紅い剣を携えたオラトリオの少女が立っていた。
髪には黒薔薇、背には黒翼。闇に溶けるようなその姿形。整ったその顔立ちから表情は完全に失われ、瞳には凍えるような殺意と憎悪のみが宿っている。
『――知レ、世界ヨ。棄テラレシ我ラノ絶望ヲ』
少女は冷たくそう呟くと、全身から瘴気を放ち紅剣を構える。
間違いなくこの少女――呪詛天使の残滓こそが、この地に満ちる怨念の中核。
彼女を討たない限り、少女たちの呪詛が晴れることはない。
――猟兵たちよ。死してなお現世に留まりし怨念の闇を断て。
芦屋・晴久
アドリブ連携歓迎
これはまた随分と黒いですね、身体的変貌が多いのは瘴気の影響なのか実験の内容に寄るものなのか……今言っても仕方の無い事なのですがね。
どうやら相手は呪詛を使った攻撃をするようで
それならば私の役回りは妨害が良さそうだ。
七星の符で相手の剣を封印したい所ですが……よし、それでは私も【呪詛】で対抗させて頂きましょう。
狙いはあの剣に絞り力を込めた七星の符を飛ばします、全ては難しいですが相手の攻めのタイミングで妨害出来れば隙は作れるかと思います。
こんな所ですかね、呪とは相手の心の隙を狙って入り込んできます。
皆様お気をつけ下さいませ。
華折・黒羽
その少女の姿に、表情に、言葉に
この世を渦巻く闇が映し出されているかのような
拭い切れない歯痒さに
気付けば奥歯を噛み口元は強く一文字に引き結ばれる
何故、どうして、その問いに答え等返ってくるわけも無いから
握った屠を構えその輪廻を終わらせる
今俺に出来る事はそれだけだから
剣を交える為少女の間合いへと駆け
躊躇無く屠を揮う
【武器受け】を攻撃と並行しつつ【生命力吸収】も合わせ
仲間が付けた傷が見受けられれば【傷口をえぐる】様に
【激痛耐性】で攻撃を受けようと退かず
仲間との連携を図ろうと【聞き耳】はしっかり
─仕事だ屠、悲しみの連鎖を食らえ
≪啜り鳴く、饑い≫己の血により覚醒した屠で攻撃
※アドリブ、連携歓迎
「これはまた随分と黒いですね、身体的変貌が多いのは瘴気の影響なのか実験の内容に寄るものなのか……今言っても仕方の無い事なのですがね」
相対する呪詛天使の残滓を、晴久は陰陽師としての観点から分析する。その振る舞いは平時のそれと何も変わらない。職業柄呪詛というものにも詳しい彼は、相手の雰囲気に呑まれペースを乱すことが何より危険であることを知っていた。
「…………」
だが、それを聞いていた黒羽に返事をする余裕は無かった。
目の前に立つ少女の姿は、表情は、言葉は、この世を渦巻く闇が映し出されているかのようで。拭い切れない歯痒さに、気付けば彼は奥歯を噛み、口元は強く一文字に引き結ばれていた。
だが、そのような黒羽の葛藤を、呪詛天使は斟酌などしてくれない。
『――呪詛ノ紅剣ハ命ヲ喰ウ』
ユーベルコードの詠唱を結び、紅剣に呪詛を纏わせながら、少女は黒翼を羽ばたかせ猟兵たちに迫る。それを見た黒羽は葛藤を振り切り、黒剣「屠」を構え自らも剣の間合いへと踏み込んだ。
『私達ノ痛ミヲ味ワウガイイ』
怨念を込めて振り下ろされる紅剣を、黒羽は黒剣で受け流し、間髪入れず反撃の刃を振るう。
その斬撃に躊躇は無い。何故、どうして、と問うたところで答えなど返ってくるわけも無いと分かっている。この手に握った刃でその呪われた輪廻を終わらせる、それだけが今、自分に出来る全て。
無言のまま振るわれた「屠」の刃は少女の肌を浅くかすめ、その怨念を現世に留めているかりそめの生命力を啜り喰らう。
二度、三度、と繰り返し、紅剣と黒剣は切り結び火花を散らす。武器の性能ならば呪詛天使が、白兵戦の技量と経験ならば黒羽が上か。両者ともに手傷を負わせながらも有効打には遠い。
やがて呪詛天使は業を煮やしたかのように、黒羽と鍔迫り合いながら詠唱を紡ぐ。
『――黒キ薔薇ハ世界を蝕ム』
その瞬間、紅剣は無数の黒薔薇の花弁へと姿を変え、呪詛の花吹雪となって少女の周囲を吹き荒れる。
至近距離で剣を交えていた黒羽には避けようがない。花弁が彼の肉体を切り裂き、その傷口から黒い呪詛が流れ込んだ。
それは無数の慟哭、絶望、憎悪等、およそあらゆる負の感情の濁流だった。
(これは――!!)
ただの肉体の苦痛であれば、一歩も退かずに耐え切る自信があった。だが、この呪詛の花弁は少女の怨念そのもの――肉体と精神を同時に蝕む攻撃だった。
少女の絶望と苦痛をその身で味合わされた黒羽は、力なくがくりと膝をつく。
『死ネ』
黒薔薇の花弁を紅剣に戻した呪詛天使は、そのまま目の前の敵の首を刈り取るべく刃を振り下ろした。
――だがその瞬間、後方より機を窺っていた晴久が七星の符を飛ばす。
狙いは一点、少女の持つ紅剣。刀身にぴたりと張り付いた符は込められた力を発動させ、剣が持つ呪詛と魔力を封印する。
『――何?』
紅剣を封印された呪詛天使の動きが止まる。
「どうやら相手は呪詛を使った攻撃をするようで。それならば私の役回りは妨害が良さそうだ」
呪詛には呪詛で対抗――晴久の放った符には彼自身の力と併せて、この地に満ちる瘴気や怨念の力も込められていた。
同質の力であるがゆえにそれは「異物」として拒絶されず、浸透したところで本命の術式が発動する。埋伏の毒、トロイの木馬といった概念に近いか。
その結果、彼の七星七縛符は絶好のタイミングで少女の攻撃を妨害し、隙を生じさせたのだ。
「こんな所ですかね、呪とは相手の心の隙を狙って入り込んできます。お気をつけ下さいませ」
七星の符による束縛を続けながら晴久が告げる。その瞬間、一度は膝をついたはずの黒羽が立ち上がった。
呪詛の花弁に抗い切れなかったのは、彼自身の心に相手に対する迷いがあったから。ならば今度こそ躊躇わない、迷わない。より強い覚悟を持って呪詛を振り切る。
「――仕事だ屠、悲しみの連鎖を食らえ」
花弁に切り裂かれた傷から流れる黒羽の血を黒剣が啜る。封印を解かれ、完全な捕食体へと変化した「屠」は巨大な獣の牙のように、動けない獲物へと襲い掛かる。
『ガ、ァ……ッ?!』
深々と抉られた傷口から、濁った赤黒い血とドス黒い呪詛が零れ落ちた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
零落・一六八
境遇が似ていた所でびっくりするほど何も感じない!
結局のところだからなんだって話なんですよねー
でもアンタの恨みつらみのこもった呪詛は空いた小腹にはちょうどよさそうです
UCで自身を強化し
【投擲】で苦無を投げて気を逸らし
野太刀で【だまし討ち】や【捨て身の一撃】
敵の攻撃は【見切り】と【残像】で回避し
ついでに【咄嗟の一撃】をかましましょう
【地形の利用】して【怪力】で蹴飛ばしたり
無意味に施設ぶっ壊したりも忘れずに
ははは!ただでさえみすぼらしい姿がさらに酷くなってますね!
いやー、ボクだって鬼じゃないんで
だってさっさとちゃんと死んだほうがマシでしょ?
これもボクなりの優しさってやつですよ!
アドリブ絡み可
「境遇が似ていた所でびっくりするほど何も感じない!」
自らと同じく「誰か」の記憶より形作られ、悪意によって維持されたオブリビオンに対し、一六八はきっぱりと言い捨てると無銘の野太刀を構えた。
「結局のところだからなんだって話なんですよねー。でもアンタの恨みつらみのこもった呪詛は空いた小腹にはちょうどよさそうです」
常に自分のやりたいことや欲望を優先し行動するのは彼の強みでもある。
容赦も躊躇も一切なく、怨霊や悪意の力で自らを強化した一六八は好戦的な笑みを浮かべ駆け出した。
『グ、ウゥゥ……ッ!!』
封印の符を強引に引き千切り、束縛から逃れた呪詛天使の残滓が紅剣を掲げる。すると彼女の周囲から紅剣の複製が無数に出現し、一六八目掛け一斉に襲い掛かった。
一六八は瞬時にその軌道を見切り回避するが、浮遊する紅剣はそのまま何処までも彼を追尾し続ける。
「鬱陶しいですね!」
咄嗟に近くにあった瓦礫や機材を力任せに投げつけ、施設内の障害物を盾にして紅剣の攻撃を凌ぎながら、反撃のチャンスを窺う一六八。
浮遊する紅剣は自動的に標的を追尾するのではなく、呪詛天使の意思によってコントロールされている。
そう判断した一六八は素早く懐から取り出した苦無を呪詛天使に投げつけた。
「それっ!」
『ッ!』
苦無そのものは避けられるが、少女が回避のために気を逸らした一瞬、紅剣の動きが鈍る。その隙を逃さず一六八は全力で地を蹴った。
彼我の相対距離は一瞬のうちにゼロに縮まり、剣の間合いに捉えた標的目掛けて一六八は野太刀を振り下ろした。
『ガァァ……ッ!!』
黒い肌を袈裟懸けにざっくりと切り裂かれ、血飛沫と呪詛を撒き散らしながら少女が呻き声を上げる。
「ははは! ただでさえみすぼらしい姿がさらに酷くなってますね!」
赤黒い血に染まった野太刀の切っ先を突きつけて、一六八は呪詛天使を挑発する。
「いやー、ボクだって鬼じゃないんで。だってさっさとちゃんと死んだほうがマシでしょ? これもボクなりの優しさってやつですよ!」
『五月蝿イ……優シサ、ナンテ……今サラ、イラナイ
……!!』
その振る舞いが怒りに触れたのか、活性化した呪詛が少女の傷を塞いでいく。膨大な怨念を溜め込んだその存在感に今だ衰えは見られない。
「だったら全部食べ尽くしてやるまでです」
ぺろりと唇を舐めながら、一六八は刀を振るい続けるのだった。
成功
🔵🔵🔴
シオン・ミウル
知られて、どうするのかな
絶望とかさ
同じような目に遭わせたいってとこかな
別に俺は痛みや苦しみを味わったなら
人に同じものを与えるな、なんて言うつもりもないけどね
与える相手が違うとは思う
君を棄てた人はもういないの?
憎くて憎くてたまらないなら、
そいつを殺せばよかったのに
もういないのなら殺意も憎悪も宙ぶらりん
無差別に憎みだしたらキリがなさそうだ
ここで終わるといいよ
【春風】で周りの人を癒そうか
黒い薔薇は全力魔法で風を繰り避ける
大丈夫、痛みには慣れている
たぶんね、俺と君は少し似てるんだ
*アドリブ、絡み歓迎
六代目・松座衛門
「君が予知に出たオブリビオンか…。悪いけど、今を生きる人々に危害を加えるのなら容赦しない!」
『呪詛天使の残滓』からの瘴気に圧倒されそうになるが、本体器物である操作板「志操」を握りしめ、自分を奮い立たせる。【封印を解く】
。〇(強い! でも退くわけには!)
迫りくる【剣】による攻撃を人形「暁闇」の手足で捌き、相手の周りに舞っているだろ【黒い薔薇】は、口から大型銃「玲瓏」を出して、射撃による衝撃波で【吹き飛ばし】、相手に急接近する!
「その怨念ごと吹き飛ばしてやる! 演目「疾風」!」
【赤い剣】をへし折り、さらに相手へ攻撃を加えるつもりで、UC「疾風」の連続攻撃を放つ!
アドリブ、連携歓迎
エグゼ・シナバーローズ
こいつは…いや雰囲気にのまれるな、同情は忘れておけ、そんな余裕は俺に無い。
こいつは元のオラトリオじゃねぇ、ただの怨念の集合体なんだぞ!
自分を鼓舞。
「アクター」を剣に変形させベルトに差しておく。
行動方針は支援。
「ガジェットストーム」でガジェットを呼び出し「メカニック」の経験から特性を判断、
「スナイパー」で腕を撃ち「武器落とし」を狙う。
落とせなくても集中力を乱せれば味方への支援になるだろ。
敵からの攻撃はまず回避を試みる。
間に合わないと判断したら即座にアクターを抜いてそれで受ける!
「オーラ防御」と「呪詛耐性」で軽減出来りゃいいんだが。
真の姿:翼は大きく、体の色素が全体的に薄くなる
※アドリブ、連携歓迎
キラス・レスケール
なんと痛ましい光景か
犠牲になった者たちは、このような苦痛を、絶望を押し付けられ、世界を呪う為に生を受けたわけではないというのに。
……先程よりも、深い、重い怨念だ。それだけの絶望を背負ったのだろう。
だが神である俺様がきたからには、その憎しみ、悲しみから開放してやろう!
再び『無敵城塞』を発動させ、呪詛も怨念もすべて受け止める
先程の者より強力だが……【呪詛耐性】でしのぎ切る
仮に突破されようとも、この身は不死の神。いくら傷つこうとも、一歩たりとも引きはせんぞ
今は眠れ。いずれ魂が巡り、再び相まみえた時には、とびきりの幸福をくれてやろう。その時を待っているぞ。
※アドリブ絡み歓迎
※引き続き自信満々の俺様神様
『許セナイ……全テ……何モカモ……憎イ
……!!!』
猟兵との戦いを繰り広げながら、怨嗟を紡ぐ呪詛天使の残滓。負傷していく身体とは対称的に、その怨念は戦いの経過につれて強まっているようにさえ感じられる。
松座衛門は相手の放つ息の詰まりそうな瘴気に圧倒されそうになるが、人形の操作板である「志操」――己の本体を握り締め、自分を奮い立たせながら叫ぶ。
「君が予知に出たオブリビオンか……。悪いけど、今を生きる人々に危害を加えるのなら容赦しない!」
『貴様ラ、如キニ……止メラレルモノカ
……!!』
ありとあらゆる生者への憎悪を滾らせながら、呪詛天使は複製した無数の紅剣を再び射出した。
(こいつは……いや雰囲気にのまれるな、同情は忘れておけ、そんな余裕は俺に無い)
押し寄せるのは敵意と殺意を具現化したかのような紅の刃の嵐。
エグゼは思わず後ずさりかける己を鼓舞しながら、剣に変形したガジェット「アクター」を腰に差し、ガジェットショータイムを発動する。
出現したのは長い銃身とスコープを備えた狙撃銃型のガジェット。メカニックとしての経験からその扱いを瞬時に判断したエグゼは、照準を呪詛天使の腕に合わせてトリガーを引いた。
『チィ……ッ!』
それがダメージよりも武器落としを狙ったものだと察知した呪詛天使は、黒翼を羽ばたかせ銃弾を躱す。しかし回避に意識を割いた結果として彼女の集中は乱れ、浮遊する紅剣のコントロールが疎かになる。
「今だ!」
制御の鈍った紅剣を、松座衛門の操る戦闘用人形「暁闇」が捌き、叩き落していく。迫り来る刃の一本たりとも、猟兵たちの下には届かない。
『小癪、ナ……ナラバ、知レ、我ラノ絶望ヲ
……!!』
複製した紅剣だけでは攻め切れないと判断した呪詛天使は、オリジナルの紅剣を再び黒薔薇へと変え、その花弁を戦場に撒き散らす。
呪詛を帯びた無数の花弁は、全て躱し切ることは叶わない。松座衛門は暁闇のボディを、エグゼはアクターと身に纏うオーラを盾にして防御を試みるが、花弁の呪詛は彼らの肉体のみならず精神をも蝕んでいく。
(強い! でも退くわけには!)
(しっかりしろ、こいつは元のオラトリオじゃねぇ、ただの怨念の集合体なんだぞ!)
彼らの脳内に木霊する、少女たちの慟哭と絶叫。目の前が暗くなり、手足から力が抜けそうになる――。
だがその時、神々しい光を纏った一人の猟兵が敢然と飛び出した。
「なんと痛ましい光景か。犠牲になった者たちは、このような苦痛を、絶望を押し付けられ、世界を呪う為に生を受けたわけではないというのに」
呪詛の中心で怨念を叫ぶ少女を哀れむような眼差しで見つめながら、彼――キラスは無敵城塞を発動する。
心を蝕む呪詛すらも耐える超防御モードと化したキラスは、その身を仲間たちの盾として、黒薔薇の嵐を受け止めた。
「……先程よりも、深い、重い怨念だ。それだけの絶望を背負ったのだろう」
残影とは比べ物にならないほどに激しい呪詛。しかしそれを受けて尚、彼の表情から自信に溢れた笑みは失われない。
「だが神である俺様がきたからには、その憎しみ、悲しみから開放してやろう!」
どれほどの呪詛を浴びようとも、キラスは一歩たりとも引き下がらずに、仲間たちを守り続ける。
「知られて、どうするのかな、絶望とかさ。同じような目に遭わせたいってとこかな」
呪詛の黒薔薇をキラスが凌いでいる間に、指揮棒を振りながら呪詛天使に問いかけたのはシオン。
「別に俺は痛みや苦しみを味わったなら、人に同じものを与えるな、なんて言うつもりもないけどね。与える相手が違うとは思う」
『何……ダト……?』
「君を棄てた人はもういないの? 憎くて憎くてたまらないなら、そいつを殺せばよかったのに」
少年の疑問に、少女は一瞬――ほんの一瞬だけ沈黙し、それから再び口を開いた。
『知ラナイ……アイツラガ今、生キテイルノカモ、死ンデイルノカモ……ダケド、関係ナイ。コレカラ全テ殺スカラ』
淡々と言葉を紡ぐ少女の瞳の奥には、ドス黒い憎悪の炎が激しく燃え盛っている。
『我々ヲ虐ゲタ者……棄テタ者……救ッテクレナカッタ者……ミンナ、ミンナ憎イ……ダカラ、全テ殺ス
……!!!!』
オブリビオンと化した少女の怨念は、遍く世界の全てに対して向けられていた。
「殺意も憎悪も宙ぶらりん。無差別に憎みだしたらキリがなさそうだ。ここで終わるといいよ」
静かに突き放すように、しかし声に同情のような響きを含みながら、シオンはユーベルコードを発動する。指揮棒の動きに操られて戦場に吹いた癒しの風が、猟兵たちの肉体の傷を癒し、心からは呪詛を祓う。
「たぶんね、俺と君は少し似てるんだ」
かつて牢獄の世界にいた少年は呟く。共に囚われのオラトリオだった両者の結末を分けたのは何だったのか。それは永遠に確かめようのないことだ。
今は目の前の怨念を終わらせるために、シオンは更に風を操り呪詛を祓っていく。
「身体が軽くなった……今なら!」
シオンの風に癒された松座衛門は、盾となるキラスの陰で暁闇を操作する。カラクリの作動する異音と共に人形の内部から迫り出してきたのは、口径漸減式大型銃「玲瓏」。
本来は対物用に扱われる大口径ライフルの銃口が火を噴く。その狙いは言うまでもなく呪詛天使。
『ッ
……!!』
黒翼を羽ばたかせ銃弾を回避する少女。だが発砲に伴う衝撃波は暁闇から標的までの間の弾道上の花弁を吹き飛ばし、一直線の道を作り出す。
この機を逃すことなく、松座衛門は暁闇を全力疾走させた。
『チィッ……呪詛ノ紅剣ハ――』
急接近してくる敵を迎え撃つために、呪詛天使は黒薔薇の花弁を解除し、新たなユーベルコードの詠唱を紡ぐ。だがそれが完了するよりも早く、一発の銃弾が彼女に襲い掛かった。
「こいつが今の俺の精一杯。受け取ってくれよ」
銃弾の主はエグゼ。呪詛を祓われ真の姿を解き放った彼の翼は大きく広がり、体の色素は薄くなる。
自らとは対照的なその姿に、呪詛天使が思わず目を奪われる――その直後、銃弾は狙い過たず彼女の腕を撃ち抜いた。
「今は眠れ。いずれ魂が巡り、再び相まみえた時には、とびきりの幸福をくれてやろう。その時を待っているぞ」
そこに無敵城塞を解除したキラスも、聖痕より眩い光を放つ。一瞬ながら目を眩まされた呪詛天使が次に瞼を開いた時、その目前には拳を握る暁闇がいた。
「その怨念ごと吹き飛ばしてやる! 演目『疾風』!」
松座衛門の宣言と共に繰り出されるのは、演舞のように継ぎ目のない、目にも留まらぬ連続攻撃。拳を叩き付け、蹴りを浴びせ、鉤爪を備えた副腕で引き裂き――締めに放たれるのは玲瓏による零距離射撃。
『グ、ガ、ガァァァァァァァッ
?!!?』
撃ち抜かれた腕で苦し紛れに掲げた紅剣の刀身に、ピシリとヒビが入る。
そのまま連打を叩き込まれた呪詛天使の身体は発砲の衝撃に耐え切れず、血と呪詛を散らしながら宙を舞った。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
デナイル・ヒステリカル
後の世界に増悪しか残らない
そんな悲惨な現実があったことは記録します
しかしあなたの元となった存在である彼女達を加害者にすることは許さない
ここで倒します
被害が出てしまう前に、必ず
まずは呪詛天使が持っている剣をUC発動の為に手放す瞬間を待ち、味方の援護へと回ります
その時が来たらUC:ノイジーレイニーを起動
無数に降り注ぐ槍で呪詛を纏った花びらを貫き打ち落とし、雷で焼き尽くす
一時的にせよ、相手が素手となった瞬間を狙い
地面に突き立つ槍の一本を手に取り、再度UCを発動
無数の槍を飛ばしていた電力を全てこの一本に込め、残滓へと射出します
この先ずっと、僕はあなた達の絶望を忘れません
だからもう安らかに眠っていろ!
御狐・稲見之守
世に知られぬ方が良いことなど山ほどある。忘れ去られ棄てられた者の憎しみや悲しみ。絶望なんてものは特に、な。
[WIZ]UC狐火、その呪詛に帯びた黒薔薇を焼き払い間合いに近付いたならば、その喉元を掴みそこから[生命力吸収]――否、啜るのはその憎しみと絶望に満ちた呪詛。[呪詛耐性]、オブリビオンと化すほどの憎しみ、絶望を喰らい受け止めてやろうぞ。例えこの身を蝕もうとも……少しは、知る者が居ても悪くなかろう。
すまぬな。その呪詛は世に知られることも、世を蝕むこともない。ここで終わるのだ。
シール・スカッドウィル
特にこの世界には……その呪詛は、不毛に過ぎるな。
だが、
「それが想いなら、願いなら、存分に叫んでいけ」
この身をもって、それに応えよう。
やることは、先の霊と同じく。
繋から放つ【輻射】に【印】と【融解】を乗せて、<誘導弾>で迎撃していく。
今回は<2回攻撃>もこちらに回し、徹底的に防衛に回ろう。
融かした性質を【境界】へ。
たとえ歪んでいたとしても、彼女には歎き以外を漏らす意志がある。
その言葉は、可能な限り覚えておきたい。
「……言いたいことは、すべて言ったか」
【境界】から弾丸に溜め込んだ【転写】を出力、射出。
<全力魔法>を乗せて、最大火力を。
手向けはまた別に……今はただ、薔薇と共に散れ。
アドリブ、連携歓迎
『アァァ……痛イ……痛イ……許セナイ……!』
猛攻を受けて吹き飛んだ呪詛天使の残滓は、傷口からドス黒いものを垂れ流しながら呻く。
だが、その苦痛さえも怒りと憎しみへと変換し、彼女は再び立ち上がってくる。傷ついた腕に皹の入った紅剣を携えて。
「世に知られぬ方が良いことなど山ほどある。忘れ去られ棄てられた者の憎しみや悲しみ。絶望なんてものは特に、な」
絶望の体現とも言えるオブリビオンを前に、稲見之守は無情に、しかし哀れむように告げた。
「特にこの世界には……その呪詛は、不毛に過ぎるな」
彼女の言葉と繋ぐように口を開いたのはシール。対物ライフル「繋」に圧縮魔力弾を装填しながら、だが、と彼は言葉を続ける。
「それが想いなら、願いなら、存分に叫んでいけ」
自分はこの身をもって、それに応えると。言葉以上に雄弁な行動を以って示すべく、銃口を呪詛天使に向ける。
稲見之守もまた、それに同意するように頷き。掌の上に煌々と輝く狐火が浮かべる。
「後の世界に増悪しか残らない、そんな悲惨な現実があったことは記録します。しかしあなたの元となった存在である彼女達を加害者にすることは許さない」
そして、精製した雷光を体外に迸らせながら、二人と並び立ったのはデナイル。その言葉は平静を保ちながらも、静かな決意が宿っていた。
「ここで倒します。被害が出てしまう前に、必ず」
『出来ルモノカ、貴様ラニ
……!!』
どのような言葉も、想いも、呪詛の天使は荒ぶる憎悪を以って応じるのみ。
パリン、と砕けるように散った紅剣の刃は、またも呪詛を帯びた黒薔薇の花弁へと変じ、猟兵たちに襲い掛かる。
「ロック。カット。シルエットシフト」
呪詛の花吹雪に対してシールが放つのは、先の残影との戦いでも使用したコンボ。弾道を誘導する【印】を目標に刻み、概念を浸食する【融解】の術式を付与した魔力弾頭による【輻射】の拡散砲撃。
繋から発射された散弾の一つ一つが異なる軌道を描いて黒薔薇の花弁を次々と撃ち抜き、その呪詛を融かしていく。だが花弁の総量はあまりにも多く、シール一人で迎撃するには弾数が、何よりも誘導が追いつかない。
『コノ花弁ハ、我々ノ憎悪ノ証……全テ撃チ落トス事ナンテ不可能
……!!』
「じゃが、無限と言うことはあるまい?」
そこに稲見之守の狐火が放たれる。彼女の意のままに戦場を奔る炎は、シールが撃ち漏らした黒薔薇を焼き払い、猟兵たちの下に決して呪詛を届かせない。
そしてこの時を待っていたデナイルも、待機させていたユーベルコード【ノイジーレイニー】を起動する。
「対象を穿て……!」
戦場に降り注ぐのは、電子精霊によって構築された無数の槍。それは呪詛の花弁を貫き打ち落としながら地面に突き立つと、騒がしい轟音を響かせながら雷撃を周辺に放つ。
魔弾に撃ち抜かれ、狐火と雷に焼き払われ――やがて無数の黒薔薇の花弁は一枚残らず、戦場から排除された。
『馬鹿ナ
……?!』
三人がかりとはいえ、自身のユーベルコードが真っ向から打ち破られた事実に驚愕する呪詛天使。彼女は同時により深刻な自らの窮地に気付く。
武器である紅剣を変換した黒薔薇を全て破壊された今、彼女はまったくの素手である。この好機を猟兵たちが見逃す筈がない。
デナイルは黒薔薇を排除した直後、地面に突き立つ槍の一本を手に取り、再度ユーベルコードを起動していた。
「増幅プログラム、制御プログラム起動」
消費した電力を瞬時に回復し、無数の槍を飛ばしていた電力を全て手元の一本の槍に込めていく。
それと同じタイミングで、シールは【融解】させた黒薔薇の呪詛の性質を解体し付与した弾丸を手元に出力する。
「汝を以て汝を排す」
呪詛には同じ呪詛の力を。呪弾を装填した繋の銃口が呪詛天使に照準を合わせる。
『不味、イ……!』
呪詛天使は急いで破壊された黒薔薇の残滓や周囲の瘴気を集め、紅剣を再構築しようとする。だが、させじと間合いを詰めた稲見之守が、少女の喉元をむんずと掴む。
『ガ……ッ?!』
もがく少女を片手で押さえながら、稲見之守は少女の生命を――否、憎しみと絶望に満ちた呪詛を啜り取っていく。
それは呪詛天使というオブリビオンの存在の根幹を支える要素。それを直に取り込むのは、いかに猟兵でも、ヒトならざる身であっても尋常の所業ではない。
だが、稲見之守は躊躇わなかった。脳髄に叩き込まれる断片的な記憶と感情の渦に飲み込まれないよう気を強く保ちながら、その憎しみと絶望を喰らい受け止めていく。
「例えこの身を蝕もうとも……少しは、知る者が居ても悪くなかろう」
『ヤ……メ……ロ
……!!』
少女の力が目に見えて弱まっていくのが分かる。自らが耐えられる限界まで呪詛を喰らった稲見之守は、相手の体をぶん、と宙に放り投げながら告げる。
「すまぬな。その呪詛は世に知られることも、世を蝕むこともない。ここで終わるのだ」
『ア……ァ
……!!』
宙を舞う呪詛天使を狙う雷の槍と呪弾の銃口。少女は焦ってその射線から逃れようとするが、呪詛を吸収された直後で翼を上手く動かせない。
「手向けはまた別に……今はただ、薔薇と共に散れ」
自らの全力の魔力を上乗せして撃ち出されたシールの呪弾が、少女の右腕と右翼を吹き飛ばしながら貫いていき。
「この先ずっと、僕はあなた達の絶望を忘れません。だからもう安らかに眠っていろ!」
その直後、訣別の言葉と共に射出されたデナイルの槍が胸に突き刺さり、轟雷が少女の身体を焼き焦がす。
『ガァァァァァァァァァァァァァァッ
?!?!?!?!?!?!』
喉も裂けるような絶叫を上げて、どさりと地面に落下する呪詛天使の残滓。
これで終わりかと、一瞬誰もがそう思った。だが、地に堕ちた黒き天使は、ざり、と地面を掻き毟りながら再び立ち上がった。
『マダ、ダ……マダ、終ワレナイ……マダ、止マラナイ
……!!』
たとえこの身が滅びようとも、この身に宿る呪詛が尽きる最後の瞬間まで、この世界に牙を剥く――それは正しく、妄執であった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヴィサラ・ヴァイン
リーヴェったら無茶して
[異形生まれの血清]で回復させるよ
…因みに、この血清創るのに私の血を使ってるから
これで無茶した事に関して私達は同罪…だから気にせず、あの天使に対処しよう
【黒キ薔薇ハ世界を蝕ム】で舞い散る黒薔薇を《ヴィサラの心眼》と[第六感]で捉え、[範囲攻撃][全力魔法]の【砂漠の花びら】で石化・風化させ対抗
貴女が世界を恨み、憎み続ける限り、私は【頂点捕食者】でその感情を喰らい魔力を再生
何度でも[高速詠唱]で【砂漠の花びら】を放つ
黒薔薇の花言葉が『永遠』だとしても…いつか、必ず終わりはやって来る
いえ、私達が必ず終わらせる
装備武器を黒薔薇に変えてる隙を突いて…!
「…頼んだよ『英雄』さん!」
リーヴァルディ・カーライル
ヴィサラと参加
…ん。気付かれないようにしていたつもりだけど。
ごめんね、ヴィサラ。心配をかけて…それと、ありがと。
…絶望も悲しみも、ここで全て終わらせるよ。
“葬送の耳飾り”から聞こえる死者の声を聴き、
吸血鬼化した自身の生命力を吸収させ彼女達を取り込み、
周囲に漂う呪詛の力を溜め【血の葬刃】を形成
お願い皆、力を貸して。貴女達の苦しみを終わらせる為に…。
“血の翼”を広げ空中戦を行い彼女達と同調
怨念の誘惑は呪詛耐性と気合いで耐え、
ヴィサラが攻撃を防いでくれている間に動きを見切り、
怪力の踏み込みで加速し残像を残して突撃
…『英雄』か。ならばその期待に応えよう。
この一撃を手向けとする。眠りなさい、安らかに…。
祝聖嬢・ティファーナ
WIZで判定を
*アドリブ・共闘・支援協力は可能ならします☆
死と苦痛と絶望した魂を目にして1筋の涙を流し落とします…
「貴女の痛みも苦しみも神様は決して見捨てたりしません、今一度『光の世界の花園』へ目指しましょう♪」と微笑みかけます☆
呪詛や怨霊・悪霊には『神罰の聖矢』で“聖”を『エレメンタル・ピクシィーズ』で“光”“風”の攻撃をしながら紅葉(f03588)と猟兵で戦います♪ ティファーナと紅葉を中心に『生まれながら光』『祝聖嬢なる光輝精』で傷を癒し異常を治し、『シンフォニック・キュア』『シンフォニック・メディカルヒール』で状態異常を治し呪詛・怨念を払い癒します☆
「神様の愛は無限です、お休みなさい」
紬雁・紅葉
ティファ―ナと同行
敵の紅剣を見て、瞬時に羅刹紋が顕現
布都主…宜しいですね?
天羽々斬を鞘祓い十握刃を顕現
ティファ―ナの涙を見て、敵に
殺意憎悪怨念…旅逝きの為、その絶望斬り祓い
御鎮めします
正面からゆるゆると接敵
射程に入り次第破魔雷属性衝撃波UCを以て回数に任せ範囲ごと薙ぎ払う
敵の攻撃は躱せるかを見切り
躱せるなら残像などで躱し
そうでなければオーラ防御武器受け等で受け
いずれもカウンター破魔雷属性衝撃波を狙う
UCの強化効果が出たら範囲攻撃で味方にも付与
窮地の仲間は積極的にかばい援護射撃
敵の動きが止まったら力を溜めて渾身の一撃でとどめ
常世へ、逝かれませ…
※アドリブ、緊急連携、とっさの絡み、大歓迎です※
トリテレイア・ゼロナイン
その呪詛、怨嗟。全て騎士として受け止めて差し上げます
それしか出来ない私を存分にお恨みください
御伽噺の騎士達なら、何を彼女にしてあげられたのでしょう
花びらは格納銃器での●スナイパー技能で迎撃、剣を●盾受け、●武器受けで防ぎつつ、味方を●かばいます
●カウンターの●シールドバッシュで剣を跳ね上げ、間髪いれず●怪力で柄を掴み、もう片手を暴れる彼女と●手をつなぎ、仲間が安全に攻撃できるよう拘束
呪詛の損傷は自身を●ハッキングし無視
呪詛ノ紅剣…仲間を守る為にも、そして崩壊してゆく貴女の為にも振らせるわけにはいきません
叶うならば、骸の海に還るまで手を握ってお傍に
この手を再び「棄てる」など騎士として許さない
雛菊・璃奈
貴女を縛るその怨念と苦しみから救うよ…。
世界が貴女を忘れても、わたしは貴女を忘れないから…。
破魔の鈴の力【破魔】で彼女の呪詛をを弱めて戦闘…。
攻撃を【見切り、第六感】で回避しつつ、魔剣アンサラーの力による反射【呪詛、武器受け、カウンター、早業】を狙いながら戦闘…。
【ダッシュ】で接近し、バルムンクで【呪詛、力溜め、鎧砕き、鎧無視】の剛剣の一撃で彼女の紅剣を粉砕…。
最後は【UnlimitedΩ】の一斉斉射で剣と薔薇を砕き、【ソウル・リベリオン】で呪詛を喰らい彼女の怨念を祓い、救済するよ…。
戦闘後、施設を完全に破壊…。骸は集めて供養し、破魔の鈴を鳴らして安らかに眠れる様祈るよ…
※アドリブ等歓迎
アルバ・アルフライラ
貴様等の絶望が世界を蝕むならば
此方は更なる絶望を上塗する事になるが、構わんな?
…まあ、あまり気分の良い物ではないが
絶望――私も良く知る感情故な
高速の詠唱により魔方陣から【愚者の灯火】を召喚
幾つかは花弁の被害を抑えるべき天使の周囲へ散開
残りは合体させ、攻撃に用いる
たとえ防ぎきれずとも呪詛耐性で雀の涙程は威力を削げよう
魔力に耐えきれず我が身に罅が入ろうと、何を気にする必要がある
全力魔法をもってしても、地獄の業火には到底及ぶまいよ
貴様等の絶望は看過出来ぬ世界の毒だ
幾ら憐れみを抱こうとその事実は変わらぬ
――過去に沈め、亡霊共
全てが終ったならば骨をはじめ、遺された残骸を尽く燃やす
…安らかに眠れ、乙女達よ
――戦いの趨勢は決しつつあった。
猟兵たちの前に立つのは満身創痍の呪詛天使の残滓。右翼と右腕を失い、胸は槍で穿たれ、再構築した紅剣も完全には程遠く、刀身が刃毀れを起こしている。
もはや放置しても遠からず、それは崩壊を迎えるだろう――しかしその「遠からず」が数秒後なのか、数時間後なのか、あるいは数日後なのかは誰にも分からない。
『此ノ、世界ニ……我々ノ憎悪ヲ、刻ミ付ケル……最後ノ、一瞬マデ……!』
限界を超えてなお、呪詛と妄執のみで動き続けるこのオブリビオンに、誰一人として犠牲を出させるわけにはいかない。
「リーヴェったら無茶して……」
相手が立ち上がるまでの僅かな時間を使い、ヴィサラは自らの「異形生まれの血清」を使い、リーヴァルディが先の戦闘――正確には光の精霊の力の行使によって受けたダメージを回復させていた。
「……ん。気付かれないようにしていたつもりだけど。ごめんね、ヴィサラ。心配をかけて……それと、ありがと」
謝意と感謝を告げるリーヴァルディに、ヴィサラは首を横に振って微笑む。
「……因みに、この血清創るのに私の血を使ってるから、これで無茶した事に関して私達は同罪……だから気にせず、あの天使に対処しよう」
「……わかった。……絶望も悲しみも、ここで全て終わらせるよ」
ヴィサラは石の書物を手に、リーヴァルディは葬送の耳飾りに触れ――この怨念を断ち切るため、呪詛天使と対峙する。
同様に呪詛天使と対峙する猟兵の一人――祝聖嬢・ティファーナ(フェアリーの聖者×精霊術士【聖霊術士】・f02580)は、死と苦痛と絶望に塗れた魂を目にして、その眼より一筋の涙を流れ落とした。
「貴女の痛みも苦しみも神様は決して見捨てたりしません、今一度『光の世界の花園』へ目指しましょう♪」
涙を拭い微笑みかけながら呼びかけるも、呪詛天使より返されたのは無言の拒絶。ソレはもはや神の救済など求めてはおらず、ただ怨念の発露のみを望んでいた。
それを悟り、哀しみを覚えながらも微笑を崩そうとしない無二の友の様子を見た紅葉は、視線を呪詛天使の握る紅剣へと移すと瞬時に羅刹紋を顕現させ。
「布都主……宜しいですね?」
そう呼びかけながら儀礼釼「十握・天羽々斬」を鞘祓い、彩の霊光放つ十握刃を顕現させる。
「殺意憎悪怨念……旅逝きの為、その絶望斬り祓い、御鎮めします」
それは、業邪を鎮め斬り祓う、"剣神"の巫女としての宣言であった。
『来イ……我ガ怨讐ノ写シ身達ヨ……』
戦闘態勢を整える猟兵たちを前に、呪詛天使が召喚したのは何十という紅剣の複製たち。加えて彼女はもう一つ、ユーベルコードを同時に発動する。
『――呪詛ノ紅剣ハ命ヲ喰ウ
!!!!』
それは武装の封印を解除し殺傷力を増すユーベルコード。現在の彼女の装備武器――すなわち"複製された紅剣すべて"が、禍々しい呪詛を纏い、強化される。
かなりの無理筋である力の行使の代償は、既に限界を超えている身体の崩壊の加速、という形で即座に現れる。だが彼女にとってそんなことは些事だ。元よりオブリビオンであるこの身に「未来」など無いのだから。
ボロボロと崩れ落ちていく身体に構わず、呪詛天使は更に第三のユーベルコードを発動させた。
『――黒キ薔薇ハ世界を蝕ム
!!!!』
呪詛を纏う複製された紅剣が、全て黒薔薇の花弁に変換される。その物量は単純計算で数十倍、呪詛の総量で言えばもはや規格の外だ。まさしく彼女の最大最強――そして最後になるであろう攻撃。それは質量を持った「絶望」の闇のようであり。
『喰ライ……尽クセッ
!!!!』
少女の怨嗟の咆哮と共に、呪詛の花弁は戦場の全てを呑み込まんと渦巻き始めた。
迫り来る絶望に対し、真っ先に反応し飛び出したのは魔剣の巫女・璃奈だった。
腰に帯びた破魔の鈴がリン、と澄んだ音を鳴らせば、周囲の呪詛が僅かに弱まる。花弁の動きが鈍った隙を突いて、璃奈は魔剣アンサラーで黒薔薇の闇を切り裂いた。
報復の魔剣たるアンサラーに触れた花弁はその呪力を「反射」され、呪詛天使の元に跳ね返っていく。だが、あまりにも膨大な花弁の渦はそのまま呪詛天使を守る防壁となり、反撃を阻んだ。
「それなら……」
物量には同じく物量で対抗する。璃奈はアンサラーを収めると詠唱を紡ぎだす。
「全ての呪われし剣達……わたしに、力を……立ち塞がる全ての敵に終焉を齎せ……! 『unlimited curse blades
』……!!」
剣の巫女の呼びかけに応じて顕現したのは、受けたもの全てに終わりを齎す「終焉」の魔剣・妖刀の現身たち。その本数は百を優に超え、その一振り一振りが恐るべき呪力を秘めている。
そして璃奈は召喚された魔剣達の呪力を極限まで強化したうえで一斉に解き放つ。
射出された刃の嵐は、黒き天使のそれにも劣らぬ呪詛の奔流と化して、渦巻く黒薔薇の一角を跡形もなく打ち砕いた。
「その呪詛、怨嗟。全て騎士として受け止めて差し上げます。それしか出来ない私を存分にお恨みください」
仲間達の盾となるべく、黒薔薇の嵐に真っ向から立ち向かうのはトリテレイア。各部に格納した銃器で花弁を撃ち落としながら、押し寄せる嵐を大盾で受け止める。
花弁の破壊力はトリテレイアの装甲を貫く程ではないが、花弁の呪詛はウォーマシンたる彼の精神さえも侵蝕しエラーを発生させる。だがトリテレイアは自らの機体にハッキングを行い、視界を埋めるエラー表示をすべて無視した。
「これが貴女の呪詛の全てだと言うのなら、退くわけにはいきません」
仲間への被害を少しでも抑えるために、彼は最前線で黒薔薇の嵐を押し留める。
その後方に視点を移せば、そこには魔方陣を描き高速で詠唱を紡ぐアルバがいる。
「貴様等の絶望が世界を蝕むならば、此方は更なる絶望を上塗する事になるが、構わんな?」
そう告げながら魔方陣より放たれるは【愚者の灯火】。何十という数の魔法の炎は彼の意に応じて黒薔薇の嵐の周囲へ散開し、呪詛の花弁を焼き払っていく。
「……まあ、あまり気分の良い物ではないが。絶望――私も良く知る感情故な」
だが、よく知っているからこそ耐えることもできる。防ぎきれなかった呪詛と共に流れ込んでくる、嘆きと絶望の感情にも、彼は心乱されることなく耐え凌いだ。
「これほどの怨念……鎮め甲斐がありますね」
他方ではオーラを身に纏った紅葉が、黒薔薇の嵐を祓うべくユーベルコードを発動する。
「八雲立つ、出雲……!」
その技の名は九曜陣・八雲――叢雲が象りし九本の剣が現出し、破魔と雷の魔力を帯び、目にも留まらぬ連撃で呪詛の花弁を薙ぎ払う。
のみならず八雲の剣は周辺の地形に巨大な九曜紋を描き出し、紅葉と付近にいる仲間の力を高めていく。その恩恵を最も強く受けるのは、彼女に庇われるように傍らに立つティファーナだ。
「無理はしないでくださいね、紅葉」
ティファーナは天空より聖なる光を、掲げた杖先より光と風の矢を黒薔薇の嵐に降り注がせ浄化しながら、仲間の負傷にも気を配っていた。
紅葉もオーラで身を護っているとはいえ、渦巻く膨大な呪詛の花弁を完全に防げる訳ではない。しかし、傷ついても即座にティファーナがそれを癒していく。
花弁に切り裂かれた者には治癒の光を。呪詛に蝕まれた者には癒しの歌を。友の描いた九曜紋によって増幅された聖霊妖精の輝きは、いかなる呪詛も怨念も払い癒す。
「後一息ですね、それなら……」
徐々に削り取られていく黒薔薇の嵐を前に、ヴィサラが発動したのは【砂漠の花びら】。吹き荒れる黒薔薇の花弁を、舞い散る砂漠の薔薇の花弁が石化させ、呪詛を風化させていく。
残影に対して行ったのと要は同じ。違っているのは呪詛の規模。正攻法では黒薔薇を石化し尽くす前にヴィサラの魔力が尽きるだろう。だが――。
「貴女が世界を恨み、憎み続ける限り、私は負けません」
【頂点捕食者】の力を行使し、ヴィサラは目前で渦巻く憎悪と絶望の感情を喰らい魔力を再生させる。引き換えに腐った血肉と臓腑に思い切り噛り付いたような、最悪の味が口いっぱいに広がる。それでも彼女は感情の捕食を止めなかった。
「黒薔薇の花言葉が『永遠』だとしても……いつか、必ず終わりはやって来る。いえ、私達が必ず終わらせる」
囚われし怨念に終焉を与えるため。その突破口を切り開くために、ヴィサラは何度でも砂漠の薔薇を放つ。
打ち砕かれ、撃ち抜かれ、焼き払われ、斬り祓われ、浄化され、風化され。
何千何万という膨大な呪詛の黒薔薇の花弁は、ついに一片残らず戦場から消えた。
『ソン、ナ……コンナ事、有リ得ル筈ガ
……?!』
晴れた花弁の嵐の向こう側では、信じられないといった表情をした呪詛天使の少女が、愕然と立ち尽くしていた。
役割を果たしたヴィサラは、喰い過ぎた悪感情の不味さでふらりとよろめきながらも、機を待ち続けていた友人に叫ぶ。
「……頼んだよ『英雄』さん!」
「……『英雄』か。ならばその期待に応えよう」
身を張って攻撃を防いでくれた友と仲間への感謝を胸に、リーヴァルディは吸血鬼の力を解放する。
「お願い皆、力を貸して。貴女達の苦しみを終わらせる為に……」
呼びかける相手は、この地を彷徨う死者たちの霊魂。残影と化し、打ち倒されてなお骸の海に去ることのなかった、想いの残滓。リーヴァルディは葬送の耳飾りを介して彼女たちの声を聞き、自らの生命力を吸収させその霊魂を取り込む。
言うまでもなくそれは危険な行為だ。ともすれば怨念に意識を取り込まれ、そのまま彼女たちの仲間に成り果てる可能性すらある。
だがリーヴァルディは強靭な意志の力と呪詛への耐性によって怨念の誘惑に耐え、その手に呪詛の力を溜めた【血の葬刃】を形成した。
「取リ込ンダ、ダト……?! 我々ノ、憎悪ヲ
……?!」
更なる驚愕に襲われる呪詛天使に向かって、リーヴァルディは吸血鬼化によって得た「血の翼」を広げて力強く地を蹴り、残像を残して突撃する。
対抗せんと自らも翼を広げる呪詛天使だが、片翼のみで発揮できる飛行性能では、今のリーヴァルディと空中戦を行うには不足が過ぎる。
「……貴女の動きはもう見切っている」
交錯の瞬間、振るわれた血の葬刃は呪詛天使に残された左翼を断ち。完全に飛行能力を失った少女は重力に引かれ墜ちていく。
『グ、ウゥゥ……マダ、ダ……マダ……!』
辛うじて受身を取り立ち上がった呪詛天使は、残された最後の武器であるオリジナルの紅剣の封印を解き放たんとする。
「呪詛ノ紅剣ハ命ヲ――ッ!?」
だが、詠唱を完了させるよりも早く。スラスターを吹かし急接近したトリテレイアの盾が、彼女の剣を跳ね上げる。
間髪入れずにトリテレイアは紅剣の柄を掴み、残る片手で少女を拘束する。
「呪詛ノ紅剣……仲間を守る為にも、そして崩壊してゆく貴女の為にもこれ以上振らせるわけにはいきません」
「放セ……ッ!!」
どれほど暴れもがこうとも、一度ウォーマシンの怪力に掴まれてしまえば脱出は困難。その好機を逃さず、全力の疾走で呪詛天使に接近するのは璃奈だ。
自らが祀る魔剣の中でも、特に凄まじい切れ味を誇る呪われし魔剣――バルムンクを上段に構え、繰り出すは全力を込めた剛剣の一撃。
既に刃毀れていた呪詛天使の紅剣は、その一撃を受けて跡形もなく粉砕された。
『ア、アァァァァァ……ッ!』
完全に武器を失い、絶望の叫びを上げる呪詛天使の姿を照らし出すのは、炎。
星追いの杖を掲げたアルバの元に、愚者の灯火が集っていく。一つ一つは小さな灯火が合体し、煌々と輝く巨大な炎となる。その代償として、練り上げた魔力に耐え切れず我が身に皹が入ろうとも、彼は眉一つ動かさない。
(何を気にする必要がある。全力魔法をもってしても、地獄の業火には到底及ぶまいよ)
内心でそう嘯きながら、彼は蒼玉の眼差しで相手を見据え、毅然と告げる。
「貴様等の絶望は看過出来ぬ世界の毒だ。幾ら憐れみを抱こうとその事実は変わらぬ――過去に沈め、亡霊共」
放たれた愚者の大火球は、もはや防ぐ術を持たぬ呪詛天使を直撃し、その身を蒼い炎で包み込む。
『ア、熱イ……熱イ熱イ痛イ苦シイ辛イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ
……!!!!!!』
蒼炎の中でもがき苦しむ少女は、天使と呼ぶよりも獣に相応しい様相で。それでもなお、憎悪と戦意を失ってはいなかった。
丸腰でなお牙を剥こうとする彼女に、ゆるりと歩み寄ったのは紅葉。その妄執を断ち切るべく十握刃を構え、力を溜めて渾身の一撃を放つ。
「常世へ、逝かれませ……」
それと同時に、背後より。再び地を蹴って加速したリーヴァルディが、低空を飛翔しながら血の葬刃を振るった。
「この一撃を手向けとする。眠りなさい、安らかに……」
二筋の斬閃が交差し、燃え盛っていた蒼炎がぱっと消える。
『ア……アァ、ァ……』
言葉にならない断末魔の呻きを発し。呪詛天使の残滓は糸が切れた人形のようにその場に倒れ伏した。
今度こそもう、起き上がってくる気配はない。
力尽きたボロボロの少女を、トリテレイアは哀しげなセンサー光を放ちながら見つめていた。
(御伽噺の騎士達なら、何を彼女にしてあげられたのでしょう)
もしこれが御伽噺なら、トリテレイアたちの出番はきっと無かったに違いない。忌まわしい実験を行っていた悪人は裁かれ、囚われの少女たちは救い出される。めでたしめでたし、だ。
だが現実はそうはならなかった。ここに倒れているのは悲劇で終わってしまった物語、その歪んだ後日談だ。
――もはや意識のない少女の手を、トリテレイアはそっと握りしめる。
その身が骸の海に還るまでの後僅かな時間でも、傍にいて見守ろうと。
(この手を再び「棄てる」など騎士として許さない)
御伽噺のようには出来なくとも、それが今の彼に為せる精一杯の騎士道だった。
そんなトリテレイアと少女の元に、璃奈とティファーナがそっと歩み寄る。
「貴女を縛るその怨念と苦しみから救うよ……」
璃奈は呪詛喰らいの魔剣【ソウル・リベリオン】を召喚すると、その刃をゆっくりと少女の胸に突き立てる。それは苦痛を与えることなく怨念のみを祓い、救済する慈悲の刃。
「神様の愛は無限です、お休みなさい」
その傍らでティファーナは優しい表情を浮かべながら、祈りと共に癒しの聖歌を歌う。少女の身体が淡い光に包まれ、最後に残った呪詛が祓われていく。
さらさらと砂のように崩れ、塵となって消えていく呪詛天使の残滓。
――その最期の一瞬、猟兵たちには彼女の表情が安らいだように見えた。
呪詛天使の最期を看取った璃奈は、戦場に散らばっていた骸をその場所に集め、簡素ながら供養を行う。
「世界が貴女を忘れても、わたしは貴女を忘れないから……」
りん、と破魔の鈴を鳴らし、彼女たちが安らかに眠れるよう祈る。
供養の締めに骸を焼くのは、アルバの操る魔法の炎だ。
「……安らかに眠れ、乙女達よ」
燃えた骸から立ち上る煙は、どこまでも高く高く、天へと上っていった。
すべてを終えた後、璃奈とアルバは残されていた備品や残骸を尽く破壊する。もう二度と、この施設が悪しき者に利用されぬように。
――少女たちを絶望へと追いやった悲劇の舞台には、こうして完全な終止符が打たれたのだった。
大成功
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第3章 日常
『慈悲なき世界に安らぎを』
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POW : 死者を運び、埋葬する。屍肉を狙う獣を追い払う。
SPD : 棺や墓石の製作。埋葬中の警戒。屍肉を狙う獣を追い払う。
WIZ : 司祭として死者に祈りを捧げる。屍肉を狙う。獣を追い払う
👑5
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猟兵たちの活躍により、忌まわしき実験施設の跡地を彷徨っていたオブリビオンは全て討伐された。
朽ち果てた廃墟は、今は元の静けさを取り戻している。
しかし、この地には今だに犠牲者たちの怨念が漂っているのを猟兵たちは感じる。
これを放置すればいずれ同様のオブリビオンが再び現れるかもしれない。本質が「過去」であるオブリビオンは決して滅びたのではなく、あくまで骸の海に還ったに過ぎないのだから。
怨念を鎮めるために必要なのは、死者への弔いだ。
見つかった骸は既に供養されたが、廃墟を調べればまだどこかに遺骨や遺品が残っているかもしれない。墓を作ってやるのも良い。祈りを捧げるだけでも構わない。
どのような形式であれ、真摯な「想い」がそこにあれば、その弔いには怨念を祓う力がある。
――もう二度と少女たちの怨念が迷い出ることのないよう、猟兵たちは弔いの準備を始めるのだった。
御狐・稲見之守
想い、それはあらゆる呪の根本。
想い願う者なくば呪あらず。己を憎しみや絶望で染め上げるのも呪、そしてそれが世に知られるところ世はそうあれと想い願い、そいつは形を成して顕れる。これもまた呪なり。
そうして過去となった者、過去になりきれず今であり続ける者に、安らかにあれと想い願い呪をかける。ヒト、これを弔いと呼ぶ。
――ああ、呪詛を喰った時に少しばかりではあるが知ったさ、味わったさ。その痛み、憎しみ、絶望を。辛かったろうに、冷たかったろうに。その想い……この身に刻み、預かろう。汝らはもう、知られずの身でも棄てられた者でもない。夜よりも暗い闇にいることもないのだ。
さあ、良い子は眠る時間だ。
雛菊・璃奈
廃墟の各所を【呪詛】による探知で同じく呪詛や怨念の強い場所を回り、破魔の鈴を鳴らし、【破魔】の力で怨念を浄化つつ、【ソウル・リベリオン】で各所に残された呪詛を喰らい尽くす…。
後は研究に関する資料や道具があれば即刻破棄して、骸や遺品に関しては他の猟兵達が見つけてきたものと併せて最後に供養を行うよ…。
わたしは魔剣の巫女…呪いや怨念はわたしやこの子達(魔剣、妖刀)の力の源だしね…。貴女達の呪いや怨念は、わたしが引き受ける…だから、もう苦しまずに眠ると良いよ…。
次の世界で幸せになる為に…。
後は獣が寄り付かない様に、施設に【呪詛、高速詠唱】で結界を張って眠りを妨げない様にするかな…
※アドリブ等歓迎
トリテレイア・ゼロナイン
墓の作成はオブリビオン絡みで何度も行ってきましたので結構慣れているんですよ。戦闘での損傷はありますが、これくらいはまだこなせます
UCの妖精ロボを動員し、遺骨・遺品の捜索と回収にあたらせ、自分は●怪力を活かして土に塗れながら墓穴を掘り、適当な材料から墓碑を作成、この場所であった出来事と冥福を祈る文を彫ります
死者の魂や怨念を感じ取ることは私には出来ませんが、安らかに眠ってくれることを願うしかありませんね
自分の装甲内の装備格納スペースの一番奥深く、そこに用意して仕舞っていた紫苑の花を取り出し墓前に捧げます
他の装備とは違い、呪詛によるダメージを最後まで受けなかったのは幸いでした
捧げて暫しセンサーを瞑目
六代目・松座衛門
「もうこんな悲劇が起こらないように、しっかり弔わないと。」
人形と共に、犠牲となった少女たちの遺品の回収と、弔いの準備を手伝おう。墓標を作るなら、「人形整備用工具」を用いて製作する。
「こんな凶行が起こったのも、オブリビオンが幅を利かせているからだろう。 この世界のオブリビオンフォーミュラを討つチャンスがあったら、必ず倒してみせる!」
今だこの世界を支配しているだろうオブリビオンの親玉を討つことを宣言しつつ、弔いの儀式に合わせて、人形による即興の神楽(?)を捧げよう。
アドリブ、連携歓迎
エグゼ・シナバーローズ
一人も見落としたくないから遺骨や遺品探しをする。
遺骨は残ってない奴も多そうだ
物に意思を残して、自分は存在していたのだと訴えたがっているような気がする
さっきは見える形を取らなかっただけで、不条理だと苦しんだのは皆同じはずだ
探している人がいない場所で探す。
候補が複数あれば施設内だった場所で実験場所よりは部屋だったと想像できるところ、だな。
思念を残すなら自分が「居た」場所じゃねーかなって思う。
目的のものを見つけたらできるだけ綺麗にしてやる。
布持ってりゃよかったんだが、気が利かない奴でごめんなと手で拭うのが精一杯だな。
それから埋葬場所へ持っていく。
最後に、安らかにとそれだけを祈る。
※アドリブ、連携歓迎
りん。りん。りん。りん――。
朽ち果てた廃墟に、清らかな鈴の音が鳴る。
璃奈は残された怨念を祓うために、廃墟の各所を回り歩いていた。
「呪詛喰らいの魔剣よ……彼の魂に救済を……」
呪詛使いとしての技術や感覚を頼りに瘴気の濃い場所を探し当てると、破魔の鈴を鳴らして怨念を浄化しつつ、【ソウル・リベリオン】で残された呪詛を一片残さず喰らい尽くしていく。
「わたしは魔剣の巫女……呪いや怨念はわたしやこの子達の力の源だしね……」
魔剣の刃を通して伝わる少女たちの無念や悲しみの全てを、璃奈は受け止め力に変えていく。
――そうした呪詛の強い場所にはいずれも、かつての実験の痕跡が今も残っている。血痕のこびり付いた拷問具の数々や、奇怪な実験器具などだ。
それらが二度と日の目を浴びる事のないように、璃奈は研究に関する遺物を完全に破棄し、犠牲者の遺骨や遺品のみを持ち帰るのだった。
廃墟のあちらこちらでは、トリテレイアに動員された自律式妖精型ロボが、犠牲者の遺骨や遺品の捜索と回収のために飛び回っている。
機械の妖精と共に遺品回収を行うのは、絡繰人形「暁闇」を連れた松座衛門だ。
「もうこんな悲劇が起こらないように、しっかり弔わないと」
妖精ロボは崩れた瓦礫の隙間といった人の手の届かない場所にも潜り込んで目的の品を見つけ出し、力仕事が必要になった時は松座衛門の暁闇が引き受ける。
スムーズに探索が行われる中で、松座衛門は押しのけた瓦礫の下から一枚のボロボロの布切れを見つけた。犠牲者の誰かが身に着けていた衣服の切れ端だろうか。
それには血文字で言葉が綴られていた。たった一言、
『忘れないで』
と。
同じ頃、エグゼは松座衛門たちとは別の場所で遺骨や遺品を探していた。
年月の経過など様々な要因により、遺骨が残っていない者も多いだろう。だが、そこに「想い」だけでも残っているのなら、一人も見落としたくなかった。
(さっきは見える形を取らなかっただけで、不条理だと苦しんだのは皆同じはずだ)
彼が足を運んだのは、施設内でも居住スペースとして使われていたと思しい部屋だった。少女たちが思念を残すなら、実験場よりも自分が「居た」場所ではないかと思ったのだ。
部屋に入ったエグゼは、床板の一部が取り外せるように細工されており、その下に何かが埋められたような痕跡を見つける。
掘り返してみると、土の中から出てきたのは小さな人形だった。木の枝葉や布切れといった有り合わせの材料で作られた、とても質素な天使の人形。
それを手に取った瞬間、エグゼはふと暖かな何かを感じる。まるで人形が「やっと見つけてもらえた」と喜んでいるようだった。
――この人形の作り手は物に意思を残して、自分は存在していたのだとずっと訴えていたのだろう。施設の人間に見つかって破棄されないよう、暗い土の中に埋められたまま、ずっと、ずっと。
エグゼは土まみれの人形をそっと手で拭い、汚れを払う。
「布持ってりゃよかったんだが、気が利かない奴でごめんな」
壊れないよう優しく丁寧に、できるだけ綺麗にしてやってから、彼はそれを持って埋葬場所へ向かうのだった。
埋葬場所では同じく遺品の回収を終えたトリテレイアと松座衛門が、少女たちの為の墓を作っていた。
「墓の作成はオブリビオン絡みで何度も行ってきましたので結構慣れているんですよ。戦闘での損傷はありますが、これくらいはまだこなせます」
ダメージを気にする素振りも見せず、トリテレイアは怪力を活かして遺骨や遺品を埋めるための墓穴を掘り、墓碑や墓標とするための適当な瓦礫を運んでくる。
運ばれてきた石材は、松座衛門が人形整備用に持ち歩いている工具を使ってコンコンコンと削って形を整える。即席ではあるが、立派な墓標の完成だ。
そしてトリテレイアは、一枚の大きな瓦礫から墓碑を作り上げ、この場所であった出来事と冥福を祈る文を彫る。
悲劇も祈りも、決して忘れられる事がないように。
埋葬の用意がある程度まで整うと、猟兵たちによる弔いの儀が始まる。
立ち並ぶ真新しい墓の前に進み出たのは、巫女装束を身に纏った稲見之守。
「――想い、それはあらゆる呪の根本」
彼女が語るは"呪"の理。想い願う者なくば呪あらず、己を憎しみや絶望で染め上げるのも呪、そしてそれが世に知られるところ世はそうあれと想い願い、それが形を成して顕れるのもまた呪である、と。
「そうして過去となった者、過去になりきれず今であり続ける者に、安らかにあれと想い願い呪をかける。ヒト、これを弔いと呼ぶ」
少女たちの怨念を現世に縛るのも"呪"ならば、それを解き放つのも"呪"なのだ。
ヒトは誰もが呪い呪われながら生きて死ぬ。その業と想いの連環を、モノノ怪神の彼女はずっと見続けてきた。
「――ああ、呪詛を喰った時に少しばかりではあるが知ったさ、味わったさ。その痛み、憎しみ、絶望を」
辛かったろうに、冷たかったろうにと稲見之守は語りかける。今も胸の奥で疼く呪詛の残滓を大事に秘めながら。
「その想い……この身に刻み、預かろう。汝らはもう、知られずの身でも棄てられた者でもない。夜よりも暗い闇にいることもないのだ」
そう告げて彼女は邪気を祓うとされる桃木剣を手に舞い踊り、廃墟を包む瘴気を祓い清め、怨念の呪縛を断ち切っていく。
「さあ、良い子は眠る時間だ」
解き放たれた"呪"を見送る稲見之守の言葉には、母のような慈しみがあった。
稲見之守の舞いに合わせて即興の神楽を捧げるのは暁闇。人形ならではの独特の振り付けを含むその舞いは、奇妙にして玄妙であり、そして美しい。
「こんな凶行が起こったのも、オブリビオンが幅を利かせているからだろう。 この世界のオブリビオンフォーミュラを討つチャンスがあったら、必ず倒してみせる!」
今だこの世界を支配しているだろうオブリビオンの親玉を討つことを宣言しながら、松座衛門は人形を操る。
その強き誓いはこの世界を照らす光となって、死者の魂に安息を与えていく。
「貴女達の呪いや怨念は、わたしが引き受ける……だから、もう苦しまずに眠ると良いよ……。次の世界で幸せになる為に……」
他の猟兵達が見つけてきたものと併せて、遺骨や遺品の供養を行うのは璃奈。
死者の想いの籠もったそれら一つ一つに祈りを捧げながら墓穴に入れ、優しく土をかぶせていく。
そして短く詠唱を紡ぐと、施設の周囲に獣除けの結界を張り巡らせる。もう二度と、何者にも彼女らの眠りが妨げられない様に。
「死者の魂や怨念を感じ取ることは私には出来ませんが、安らかに眠ってくれることを願うしかありませんね」
弔いの儀を見守っていたトリテレイアは、稲見之守と暁闇が舞いを終えるのを待って、自身の装甲内の装備格納スペースを開く。
彼はその一番奥深くから、用意して仕舞っていた紫苑の花を取り出す。呪詛によるダメージによって大小の被害を受けた他の装備とは違い、その花だけは幸運にも散ることなく残っていた。
紫苑の花を墓前に捧げ、トリテレイアは暫しセンサーを瞑目する。
「もう土の中にはいたくねーよな」
エグゼはそう言うと、建てられた墓碑の前に天使の人形をそっと置いた。
そして、ただ安らかにとそれだけを祈りながら、暫し彼女たちの墓の前で佇む。
彼らの願いと祈りは、きっと死者の魂に届いたことだろう。
その証のように、供えられた人形の表情は、どこか安らいでいるように見えた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
紬雁・紅葉
ティファ―ナと同行
UC『月曜』(月属性)を範囲化発動
可能な限り大きな九曜紋を顕す
月読…静かな弔いの夜の神…どうかこの地に御光を…
ティファ―ナの歌に干渉しないように
でも朗々と詠う
我が神よ
布都主よ
剣の神に事申し賜う
朽ちて尚消えぬ苦痛
相手無き無限の憎悪
禍しき思いを斬り祓い
穢れし呪いを討ち清め
数多の乙女の魂が
葦原より今旅立ちます
布都主よ
我が神よ
禍つ斬り祓う剣の神よ
授け賜え
授け賜え
月の光と夜明けの彩
旅逝く乙女に心の剱を
羽ばたく翼に空の剱を
禍つ穢れに敗れぬように
常世の道に迷わぬように
畏み畏み事申し賜う
「獣」の気配がしたら八雲の剣の切っ先を向け追い祓う
(カウンター破魔存在感恫喝)
来るなら斬る(静かに告げる)
祝聖嬢・ティファーナ
紅葉(f03588)に感謝と労いを込めて歌唱します☆
掌か肩に乗って、「孤独では無い」と安心して祈り歌唱し始めます♪
“祈り”“歌唱”“優しさ”を込めて『祝聖嬢なる光輝精』『シンフォニック・メディカルヒール』を歌唱します♪
疲れ、倒れ、今眠る魂魄よ、神様の愛は無限にして慈愛です…
次の運命は祝福と清浄なる魂は笑顔で花園を歩みましょう☆
天の聲を聴き、光の門を抜けた先、次の歩みが待っています♪
精霊も聖霊も神様も「愛と祝福」で迎え送りだしてくれます♪
苦しみと辛さを知った魂魄は優しく逞しく雄大な【慈愛】で新たな導き手となります☆
「神様、新たな魂魄の導きをお願い致します♪」手を合わせて祈り願います☆
「月読……静かな弔いの夜の神……どうかこの地に御光を……」
少女たちの眠る墓の前に立った紅葉は、八雲の剣を再び顕現させると、墓所を中心として廃墟を覆うような巨大な九曜紋を描き出す。
それは九曜の中でも特に月の力に強く満たされた陣。それを敷き終えて中心に立った紅葉は、自らの神への祈りと願いを詠い始めた。
我が神よ 布都主よ 剣の神に事申し賜う
朽ちて尚消えぬ苦痛 相手無き無限の憎悪
禍しき思いを斬り祓い 穢れし呪いを討ち清め
数多の乙女の魂が 葦原より今旅立ちます
紅葉の肩の上に乗って、その祝詞に耳を傾けるのはティファーナ。
無二の友の声とぬくもりを感じ、「孤独では無い」と安心した聖霊妖精は、紅葉への感謝と労いを込めて自らも歌い始める。
「疲れ、倒れ、今眠る魂魄よ、神様の愛は無限にして慈愛です……次の運命は祝福と清浄なる魂は笑顔で花園を歩みましょう☆」
祈りと優しさに満ちた歌声と、彼女の内より放たれる光輝が廃墟を包んでいく。
それを聞いた紅葉は、ティファーナの歌に干渉しないよう気を配りながら、自らもさらに朗々と詠う。
布都主よ 我が神よ 禍つ斬り祓う剣の神よ
授け賜え 授け賜え 月の光と夜明けの彩
旅逝く乙女に心の剱を 羽ばたく翼に空の剱を
禍つ穢れに敗れぬように 常世の道に迷わぬように
畏み畏み事申し賜う
紅葉が詠い終えると、この世界の空を覆う暗雲にさっと断ち切られたような切れ間が生じ、美しい月が姿を見せた。
そして九曜紋に導かれるようにして廃墟に降り注いだ月光は、この地に残る穢れを祓い清めていく。
「天の聲を聴き、光の門を抜けた先、次の歩みが待っています♪」
それを後押しするように、ティファーナは一層の慈愛を込めた歌声を響かせる。
「精霊も聖霊も神様も『愛と祝福』で迎え送りだしてくれます♪ 苦しみと辛さを知った魂魄は、優しく逞しく雄大な慈愛で新たな導き手となります☆」
ティファーナの歌唱によって、降り注ぐ月光は輝きを増しながらも暖かく柔らかな光となり、死者の怨念を天へと導いていった。
その光景を見守っていた紅葉は、ふと気配を感じて八雲の剣の切っ先を向ける。
「来るなら斬る」
弔いの邪魔をするなら容赦はしないと、気魄を込めて静かに告げると、光に誘われてきた獣たちはたちまち怯えて逃げ去っていく。
紅葉が睨みを利かせる傍らで、ティファーナは安心して歌と祈りに専念し続ける。
「神様、新たな魂魄の導きをお願い致します♪」
天に召される魂に祝福あれと、妖精の少女は優しく微笑みながら手を合わせて祈り願うのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
キラス・レスケール
【WIZ】
犠牲になったのは少女達だったか。周囲に花でも生えていれば供えてやりたいところだが。
俺様が神として、迷わず逝けるよう【祈り】を捧げよう。
……お前たちはよく苦しんだ。だがそれももう終わりだ。安らかに眠るといい。
……さて、これ以上こいつらの眠りを妨げられんようにしてやらんとな。
【ゴッド・クリエイション】で知性の高い狼を創造するぞ。
肉を狙うのは獣の類いだろう、周辺を警戒し、近寄るものを追い払うのだ。
※絡み、アドリブ歓迎
華折・黒羽
獣を近づけない為周囲を警戒しながら見回りを
先の戦いでの不甲斐ない自身の行動を思い返しては小さく「クソッ…!」と悪態を漏らしながら
まだ割り切れない感情がある
葛藤する思いがある
一度は区切りをつけ覚悟したはずなのに
根底に根付いた憤りが拭えない
…鍛え、直さないと
ぽつり零して、また歩く
獣が現れたなら不殺を念頭に
屠で威嚇程度に地面を切り裂くくらいでいいだろうか
それでも食い下がる様であれば軽く横っ腹でも殴れば逃げてくれるかも
あ、そうだ、さっきの人…
助けてもらったお礼を言ってなかったな
見回り中に会えたなら一言、お礼を言おう。
…………名前、なんだったっけか。
(※他者には話し方敬語)
(※アレンジ、絡み歓迎)
「……お前たちはよく苦しんだ。だがそれももう終わりだ。安らかに眠るといい」
犠牲になった少女達の墓の前に、キラスはそっと花を供えていく。
廃墟の周囲に生えていた、名も知らぬ花だが。降り注ぐ月光に照らされる白い花弁が、怨念から解き放たれた少女達の魂を表しているようにも見えた。
彼女らの魂がもう二度と迷わず逝けるよう、キラスは神として祈りを捧げる。その笑みには普段と変わらぬ揺るがぬ自信と、そして優しさが浮かんでいた。
「……さて、これ以上こいつらの眠りを妨げられんようにしてやらんとな」
祈りを終えたキラスは周辺の瓦礫や土塊を素材として組み上げ、ゴッド・クリエイションを発動した。神の力によって創造物に生命が吹き込まれ、ヒト以上の知性を備えた石や土の狼が誕生する。
「さあ行け、周辺を警戒し、近寄るものを追い払うのだ」
墓を荒らす獣の類を寄せつけぬようにとキラスが命を下すと、狼たちはウォン、と遠吠えを上げて廃墟の周囲に散っていった。
それと同じ頃、墓所の周囲では黒羽が黒剣「屠」を手に見回りを行っていた。
獣の気配に警戒しながら、彼が思い返すのは不覚を取ってしまった先の戦いでの自身の行動だった。
「クソッ……!」
悪態が漏れる。まだ割り切れない感情が、葛藤する思いがある。一度は区切りをつけ覚悟したはずなのに、根底に根付いた憤りが拭えない。
それは決して弱さではなく、秘められた情感の深さは強さともなり得るものだが。それを彼自身が整理を付けられるかは別の話。
「……鍛え、直さないと」
ぽつりと零して、また歩く黒羽の耳に、ウォォォン……と、狼の遠吠えが届いた。
黒羽が駆けつけると、そこではキラスの創造した狼が獣の群れと戦っていた。
この場所は長らく怨念と瘴気に包まれ、人も獣も寄り付かぬ場所だった。その瘴気が急に晴れ始めたのが、獣たちの興味を引き寄せているのだろう。
廃墟周辺には結界も敷かれているが、弔いの邪魔をするものを放置もできない。
黒羽は不殺を念頭に置きながら、手にした屠を一閃する。ざんっ、と鋭い斬撃の音と共に、獣たちの目前の地面が真一文字に切り裂かれた。
その威嚇で彼の実力を察した獣たちは、たちまち怯えて逃げ散っていく。あとはキラスの狼が適当な所まで追い立てれば、もう近寄っては来ないだろう。
獣の気配が消えたのを確認していた黒羽は、ふとあることを思い出す。
「あ、そうだ、さっきの人……助けてもらったお礼を言ってなかったな」
呪詛天使との戦いで連携することになった符使いの猟兵。会えたら一言お礼を言おうと思ったものの、どうやらこの辺りにはもう居ないようだ。
「…………名前、なんだったっけか」
もし、次に会うことがあれば聞いてみよう。そう思いながら黒羽は見回りを続けるのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シール・スカッドウィル
とりあえず、形だけでも墓を用意してやらないとな。
【印】の時、数は把握している。
少々手間になりそうだが、時間はあるし、他の猟兵にもやろうとする者はいるだろう。
依頼主の、リミティアだったか、彼女にも手伝ってもらうか。
後は、手向けの花。
「こういう場面に相応しいものがあるんだろうが、今回はこれだな」
【境界】の中から、どことなく澄んだ色合い綺麗な薔薇を取り出して供える。
【融解】から【転写】を行う際、時折こういう不純物が出る。
本来は消えるところだが、性質を引き抜く過程で弾かれた分が残るのか……まぁ、丁度いい。
……呪詛に染まらなければ、あの少女の薔薇も……。
この嘆きに、僅かばかりの安らぎを。
アドリブ歓迎
「これで、墓は全部だな」
瓦礫や廃材を利用した簡易な墓標を地面に立て、一仕事を終えたシールはふうと息を吐いた。
彼が作った墓の下には何も埋まってはいない。それは残影の為の墓だった。
戦いの中で【印】によって残影の数を把握していたシールは、遺品や遺骨の見つからなかった者にも、形だけでも墓を用意してやりたかったのだ。
「お疲れ様です、シールさん」
それを手伝っていたグリモア猟兵のリミティアが、ハンカチで額の汗を拭った。
墓作りが終われば、後は手向けの花を。
「こういう場面に相応しいものがあるんだろうが、今回はこれだな」
そう言ってシールが亜空間の【境界】から取り出したのは、どことなく澄んだ色合いをした綺麗な薔薇だった。
「不思議な雰囲気のする花ですね」
「【融解】から【転写】を行う際、時折こういう不純物が出る。本来は消えるところだが、性質を引き抜く過程で弾かれた分が残るのか……まぁ、丁度いい」
リミティアの問いに答えながら、シールは墓の前にその薔薇を供える。
呪詛天使の放った黒薔薇から、呪詛の要素を融解し転写した後に残ったものがこれならば――この花は、あの怨念のオブリビオンに残されていた、最後の人間性の残滓なのかもしれない。
「……呪詛に染まらなければ、あの少女の薔薇も……」
もはや見ることは叶わない花に思いを馳せながら、シールは黙祷する。
この嘆きに、僅かばかりの安らぎを。そう願いながら。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィサラ・ヴァイン
ん、やっと終わった…いや、まだ終わってないのか
彼女達の弔いが残ってる…でも私はどうすれば良いんだろう
彼女達の怨念を『風化』させる?
それとも怨念を喰らって『忘れない』ようにすればいい?
…何が正しいのか分からない
でも、きっとこれからも同じ様な事件がある
だから…今答えが出せなくても…答えを探さないといけないんだ
一緒に戦ってくれたリーヴェと…グリモア猟兵としてここへ送り出してくれたリム、2人はどう考えてるのかな
弔いに誘いつつ聞いてみよう
2人の『答え』を聞いた上で、私に出来る弔いをします
過去との縁を断ち切る力を持つと言われる、砂漠の薔薇
「あなたを忘れない」って花言葉の勿忘草
私が供える花は…
※アドリブ歓迎
リーヴァルディ・カーライル
呪詛が色濃い場を“葬送の耳飾り”を頼りに見切り、
耳飾りをヴィサラに渡した後UCを発動
怨念を集めるだけ集め、ヴィサラとリムに浄化してもらおう
…死者との向き合い方…。
ヴィサラの望む答えかは分からないけれど…これを付けて。
聞こえる?…今、彼らは終わる事の無い苦しみの中にいる。
誰かがもう終わりだと教えないと、永遠に安息は訪れない。
その手段が浄化であれ、何であれ…。
彼らの魂を鎮める事ができるなら、その行いは間違いなんかじゃないよ。
…だから、こう言って見送ってあげて。眠りなさい、安らかに…って。
…ヴィサラがどんな答えを出すにしろ、後のフォローはリムに任せる。
…ん。友達だからね。悩んでいるなら力になるよ…。
弔いの儀が粛々と進む中、ヴィサラとリーヴァルディはまだ何処かに呪詛が残ってはいないか、廃墟内で確認を行っていた。
知己であるグリモア猟兵のリミティアも、それに同行する。
「……見つけた。……ヴィサラ、どうかしたの?」
葬送の耳飾りを通じて聞こえてくる死者の思念を頼りに、呪詛が色濃い場を見切ったリーヴァルディは、何かを思い悩んでいる様子のヴィサラに問いかける。
「ん……私はどうすれば良いんだろう、って」
戦いが終わってからずっと、ヴィサラは少女達をどう弔えば良いのか迷っていた。
彼女達の怨念を『風化』させるのか、それとも怨念を喰らって『忘れない』ようにすればいいのか。
「……何が正しいのか分からない。でも、きっとこれからも同じ様な事件がある。だから……今答えが出せなくても……答えを探さないといけないんだ」
死者の想いと真剣に向き合うからこそ悩む彼女は、同行する二人の考えを聞いてみることにする。
「……死者との向き合い方……。ヴィサラの望む答えかは分からないけれど……これを付けて」
友人からの問いに対し、リーヴァルディは着けていた葬送の耳飾りを渡して、ユーベルコードを発動させる。
左眼に刻まれた聖痕が輝き、死者の怨念と呪詛がリーヴァルディの元に集まってくる。耳飾りを着けたヴィサラには、囁くようなか細い声が――嘆き、悲しみ、この世を呪う、幾つもの声が伝わってきた。
「聞こえる? ……今、彼らは終わる事の無い苦しみの中にいる。誰かがもう終わりだと教えないと、永遠に安息は訪れない」
闇の中を彷徨い続ける霊魂の声を聞かせながら、リーヴァルディは静かに語る。
「その手段が浄化であれ、何であれ……。彼らの魂を鎮める事ができるなら、その行いは間違いなんかじゃないよ」
浄化も、弔いも、祈りも、全てはそのために行われることなのだから。
「……だから、こう言って見送ってあげて。眠りなさい、安らかに……って」
それが、この世界で起こる数多の悲劇を目にし、その嘆きに耳を傾けてきた彼女の答えだった。
「一番大切なことはリーヴァさんが言ってくれましたね。リムから付け加えることはほとんど無い気がしますが……」
少し考えてから、リミティアも自分なりの答えを口にする。
「弔いは死者の為だけに行われるのではなく、残された生者が明日へ向かうための儀式でもあります。彷徨う魂とあなた自身、両方の事を想っての決断であれば、それは過ちではありません」
生者は死者の想いを受け取り、それを糧にして明日を生きる。それが抱え込むには辛すぎる想いなら、忘れてしまうのも間違いではないのだと、リミティアは語った。
二人の答えを聞いたヴィサラは、己の両手を見つめながらもう一度考える。
右手には、過去との縁を断ち切る力を持つと言われる、砂漠の薔薇。
左手には、「あなたを忘れない」という花言葉の勿忘草。
「私が供える花は……」
やがて決断したヴィサラは、霊魂を纏うリーヴァルディの元へそっと近寄ると――【頂点捕食者】の力で、その怨念を喰らう。
「……眠りなさい、安らかに」
耳飾りを通して伝わる嘆きの声が鎮まるまで、ヴィサラは彼女達の悲しみを、苦しみを喰らい続け――静寂を取り戻した廃墟に、最後に一輪の勿忘草を供えた。
「リーヴェもリムも、ありがとう」
「……ん。友達だからね。悩んでいるなら力になるよ……」
口に残る苦い味を噛み締めながらも笑みを浮かべるヴィサラに、リーヴァルディは頷きながら答える。
そしてリミティアは勿忘草色の炎で呪詛の残滓を祓いながら、何も言わずに淡い微笑を浮かべるのだった。
大成功
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シオン・ミウル
湿っぽいのはちょっと苦手なんだけどさ
想いが届くっていうならやってみてもいいのかもね
弔いってやつ
何か遺品が残ってないか探してみようか
もう既に骸もない訳だから、その遺品を見立てて少し話をしよう
こんな世界だから、青空も星空もそうそう望めやしない
それ以前にこんなところにいちゃあ、空自体拝めなかったかもね
いい風が吹いてるもんだよ、空は
本当だったら自由に飛べる筈だったんだよな
何も憎まなくて良くなったのはちょっとだけ羨ましい
命が終わっちゃうのがいいって訳じゃないけど
静かに眠れるようになると思うんだ
だからもう、戻ってこないように
祈っているよ
風を吹かせて、音を鳴らして
鎮魂の音を奏でよう
飛べる筈だった空へ向けて
廃墟を覆っていた呪詛と怨念は祓われ、弔いの儀は終わりへと近付いていた。
「湿っぽいのはちょっと苦手なんだけどさ。想いが届くっていうならやってみてもいいのかもね、弔いってやつ」
そう呟くシオンの前には一基の墓と、錆び付いたペンダントがあった。
廃墟の中で見つけたその遺品を、犠牲となった少女に見立てて、彼は語りかける。
「こんな世界だから、青空も星空もそうそう望めやしない。それ以前にこんなところにいちゃあ、空自体拝めなかったかもね」
暗雲取り巻くこの世界の空をシオンは見上げる。今は猟兵の力によって雲の隙間から月も星も見えているが、弔いが終われば直にそれも隠れてしまうだろう。
「いい風が吹いてるもんだよ、空は。本当だったら自由に飛べる筈だったんだよな」
空を翔ける喜びを知らぬまま逝き、黒く染まってしまった少女の翼を思い出す。
彼女の呪詛には、最期まで飛べなかった未練も含まれていたのかもしれない。
「何も憎まなくて良くなったのはちょっとだけ羨ましい。命が終わっちゃうのがいいって訳じゃないけど、静かに眠れるようになると思うんだ」
そう言ってシオンは立ち上がると、魔晶石の指揮棒に魔力を籠めて振るう。
「だからもう、戻ってこないように祈っているよ」
風を吹かせ、音を鳴らして、奏でるのは鎮魂の音色。
飛べる筈だった空へ向けて、風と音はどこまでも高く高く昇っていく。
――こうして、忌まわしき実験場に遺された少女達の怨念は祓われた。
失われた命は二度とは帰らず、過ぎ去った悲劇を無かった事にはできない。
だが彼女達の魂の尊厳と安息は、猟兵の戦いと祈りによって取り戻されたのだ。
大成功
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