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夢幻の霧のシナスタジア

#ダークセイヴァー


 あなたは、誰を殺しますか?
 それとも――誰に、殺されますか?

(「私の愛する人は、もういないから」)
 馬車に揺られながらも、虚ろな碧色の瞳で外の景色を眺めているのは――純白のドレスを纏う花嫁。
 そして花嫁の耳に聞こえるのは、領主の館へと続く、重厚な門が開く音。
 この門の先は、『あの森』を通らずに領主の館へと続く、たったひとつの道。
 『あの森』――『霧幻の森』と、そう村の皆は呼んでいる。
 昼夜季節関係なく、深く濃い霧に覆われた森。
 そしてその森に静かに蔓延る霧には……こんな呪いの魔力があると、噂されている。

 ――自分の心の中を強く支配している者が、自分を殺しに現れる、と。

 ただ、それも噂話に過ぎない。
 ある者は、見知らぬ幼女の幻惑を視たと言うし。
 またある者は、己の姿を視た、とも。
 だがやはり圧倒的に多いのは――自分が大切に想っている者、もしくは――強い憎しみを抱く者。
 『霧幻の森』は、深い霧の中から現れた、心を強く支配している相手に殺されてしまうという呪いがかかっていると、そう言われている。
 ――もしかしたら、あの森の中で、愛するあの人にまた会えるかもしれない。
 愛するあの人の手にかかるのであれば、それは幸せなのではないか――。
 そう、花嫁は考えたこともあったが。
 彼女が選んだのは……仇討ち。
 純白のウェディングドレスから覗く閃きは、愛する人が生前所持していた、鋭利な短剣のものであった。
(「愛するあの人を殺したあいつを、私が殺す」)
 だが――花嫁には、同時に分かっていた。
 その時……自分も決して、無事ではないことを。
 きっと激昂したあいつにこの身を引き裂かれ、首を呆気なく飛ばされるであろう。
 それでも、純白のドレスが飛び散った赤に塗れることを。
 『霧幻の森』をただひたすら見つめる今の彼女は、望んでいるのだった。


「己の心の中を強く支配している者、か」
 赤に微かな青が綯い混じるその瞳をふと一瞬伏せ、そう呟くも。
 筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)は、予知を聞きに来てくれて有難う、と丁寧に頭を下げた後、視た内容を語り始める。
「ダークセイヴァーで、圧政を行うヴァンパイアへと捧げられた花嫁が、無残に殺される予知が視えた」
 その花嫁の名は、リザ。年は十八という、年頃の娘だ。
 美しい絹のような流れる金色の髪に、本来は優しき色を宿す碧色の瞳を持つ娘。
 リザは愛する人との結婚を間近に控えていたというが――不幸にも、この地で圧政を行う領主のヴァンパイアに気に入られてしまい、愛する者を無残にも殺された挙句。リザを花嫁に差し出さねば村人を全員嬲り殺すと、そんな理不尽な要求を突き付けられたのだという。
「そしてリザは、花嫁として屋敷へ出向くことを了承するその心の内で、領主であるヴァンパイアへの仇討ちを目論んでいる。しかし相手はオブリビオン、逆に歯向かったことに激昂したヴァパイアに引き裂かれ、殺されてしまう」
 しかし今から赴けば、まだリザがヴァンパイアに刃を向ける前に到着できるという。
 見初めた美しい少女を館に迎えるこの日、野暮なことはするなと、領主は配下を皆、屋敷の敷地外へと追い払っているようだ。
 つまり今夜、普段は警備が厳しく攻め滅ぼすのは困難なヴァンパイアの館への護りが手薄になる、ということだ。
「その手薄になった隙をつき館へと乗り込めば、人びとを苦しめるヴァンパイアを討つことも可能となるわけだ。この機に、オブリビオンの討伐を、頼まれてくれるか」

 だが、屋敷に辿り着くためには、越えなければならない場所がある。
 それは――呪いがかかっていると噂されている『霧幻の森』。
「森を通らず館へと続く道は、領主によってつくられた重厚な門によって閉ざされている。それに門を力尽くで破れば、領主にも猟兵の存在を気取られてしまうだろう。なので、この『霧幻の森』を抜け、館へと攻め入って欲しい」
 噂では、この『霧幻の森』に足を踏み入れた者は、現れた『自分の心の中を強く支配している者』に殺されてしまうのだという。
 それは、大切な人であったり、強い憎しみを覚える人であったり。
 はたまた、見知らぬ幼子であったり、自分自身や家族であったりなど……噂話ゆえに、色々な話が囁かれているが。
「霧の魔力に惑わされぬよう……くれぐれも、用心して臨んでくれ。そしてヴァンパイアを倒し、リザや村の者たちを救って欲しい。領主は強敵ではあるが、皆の力をもってすれば必ずや討ち取ることができると。俺は信じている」
 清史郎はそう、猟兵たちにもう一度、頭を下げて。
 それから、こうも続けた。
「ヴァンパイアの討伐を成した後のリザの心も、心配ではある。帰還前に、彼女の心のケアなども少しできればと、俺は思っている」
 愛する人を殺されて、半ば躍起になったように仇討ちを試み、死にに出向いた花嫁。
 彼女の心も、ヴァンパイアを倒した猟兵たちであれば、少しは救えるかもしれない。
 そして清史郎は猟兵の皆を見回した後、武運を祈る、と――その掌に、桜のグリモアを満開に咲かせるのだった。


志稲愛海
 志稲愛海です。
 よろしくお願いします!

 今回の依頼の各章は、以下です。

 第1章:亡霊との集団戦(特殊設定あり、後述要確認)
 第2章:領主ヴァンパイアとのボス戦。
 第3章:キャンドルナイトを行なう日常。

 第1章は、少々特殊な内容です。以下を必ずご確認ください。

 第1章は、森に蠢く亡霊を倒し『霧幻の森』を抜ける内容ですが。
 『霧幻の森』には『自分の心の中を強く支配している者が、自分を殺しに現れる』呪いがかけられています。
 振り払うことはできず、必ず『誰かの幻影』が皆様を殺しに現れます。

 その幻影をどう殺すか、それは誰の幻影か。
 または、その幻影にどう殺されるか。

 プレイングにてご指定下さい。
 PCが自覚していない人でも、誰とはっきり指定せず抽象的な指定でも、ご本人自身等々でもOKです。
 誰もいなかったりご指定ない時は、見知らぬ幼女が現れます。
 そして殺される場合ですが、勿論実際には死にません。
 現れた幻影に攻撃できぬ葛藤や、幻影に抗えずどう攻撃されるのか。
 攻撃するもされるも、描写度合いはふんわりからガッツリ血塗れ迄、お好みでどうぞ。
 ですが、公序良俗に反する内容は不採用とさせていただきます。
 幻影に攻撃する、もしくは攻撃を受けると、幻惑状態が解けます。
 実際の敵は強くなく負傷状態でも容易に倒せます。
 今回は、心情と、幻影を殺す殺される過程をメインに考えていただければと。
 また、誰かとご一緒の場合も基本『幻影と対峙する時ははぐれて一人』になります。
 合流は、幻影が解けた時点で可能です。
 プレイング次第ではありますが、基本は上記の状況になります。

 第1章は【4/9(火)8:30~】よりプレイング受付開始します。
 第2章第3章は、個別MSページ等にお知らせを掲載いたします。

 第3章のみ、お声かけいただいた場合、グリモア猟兵の筧・清史郎もご一緒可能です。

●お願い
 ご一緒に行動する方がいる場合は【相手の名前と、fからはじまるID】もしくは【グループ名】のご記入をお願いします。
 ご記入ない場合、お相手と離れてしまうかもしれませんのでお忘れなく。

 グループ参加の場合は、失効日の関係上、プレイング送信のタイミングが一日前後程度の誤差だと助かります。

 問題のある内容や上記の理由で採用できない場合をのぞき、基本参加者様全員採用したく思っております。

 それでは、ご参加お待ちしております!
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第1章 集団戦 『その地に縛り付けられた亡霊』

POW   :    頭に鳴り響く止まない悲鳴
対象の攻撃を軽減する【霞のような身体が、呪いそのもの】に変身しつつ、【壁や床から突如現れ、取り憑くこと】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD   :    呪われた言葉と過去
【呪詛のような呟き声を聞き入ってしまった】【対象に、亡霊自らが体験した凄惨な過去を】【幻覚にて体験させる精神攻撃】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    繰り返される怨嗟
自身が戦闘で瀕死になると【姿が消え、再び同じ亡霊】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
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●夢幻の霧の森
 ――自分の心の中を強く支配している者が、自分を殺しに現れる。
 それはあくまで、村の者が囁いている噂話に過ぎない。
 だが……深い森に一歩足を踏み入れた瞬間、心の中が掻き乱されるような。
 得体の知れぬそのような感情に、じわじわと脳内が浸蝕されていく感覚を覚える。

 深く濃い霧は、正直な侵入者の心を映す。
 いつも大切に想っている存在は勿論、激しい憎しみを抱いている存在。
 また……今、興味関心の感情を抱いている人。
 かけがえのない家族や仲間や、親しき友。
 はっきりとは覚えてはいなくとも……心の内に潜む、深層意識の存在まで。
 色濃くその者の心に在る――その姿で、幻影は現れるのだという。
 侵入者を、殺すために。

 ある意味、深い霧は優しいのかもしれない。
 望めば、その者が手をかけて欲しい姿で、殺してくれるのだから。
桜橋・ゆすら
時代錯誤な女袴
肩口で切り揃えられた黒髪
何をも映さぬ、曇り硝子の眸

目の前の幻惑は、ゆすらが萬年筆であった頃の持ち主でした
…ようやく思い出せました

御国の為にと命を賭した男と死に別れ、女は気狂い作家となった
そして女は、男からの唯一の贈り物たる萬年筆を執り
人々を殺めながら血塗れの物語を綴り続けた

物書きの最大の屈辱ってご存知?
それは筆を折ること

恐怖と虚勢のまま
ゆすらは嗤って、叫ぶ

「さあ、筆(ゆすら)を折って、殺して!」

それは物書きたる貴女の死でもある!

幻惑が解ければ萬年筆でUCを紡ぐ

…嗚呼、信じたくない
自分が人殺しの道具だったなど
人殺しが涙を流すなど

嗚呼この弱さにこそ
赤文字の『検閲済』を頂戴

アドリブ歓迎



 まるで、足を踏み入れた深い霧を孕む、この森のように。
 桜橋・ゆすら(きみがため・f13614)の記憶は、朧げであった。
 そう――あの女が、目の前に現れるまでは。
 時代錯誤な女袴に、肩口で切り揃えられた黒髪。
 そして……何をも映さぬ、曇り硝子の眸。
 そんな焦点の定まらぬ両の瞳が――ふっと、自分へと向けられた瞬間。
「……ようやく思い出せました」
 深い深い霧の只中で鮮やかに蘇るは、その女の記憶。
 ――女は、ゆすらが萬年筆であった頃の持ち主であった。
 ゆすらの渇きを癒す、迸る赤のいろ。
 そしてペン先が割れて裂けるかと思うほど鮮烈に綴られ続けた、血塗れの物語。
 御国の為にと命を賭した男が女に送った、唯一にして最後の贈り物の万年筆……それは誰でもない、ゆすら自身で。
 ゆすらを以って綴られてたのは――気狂い作家の、血生臭い殺人劇。
 ――ひとごろしなんて、嫌。厭。だいきらい。
 そう、声を上げて、叫んで、狂ってしまいそうになるけれど。
 でも……喉が乾いて、仕方がないの。
 もっと、もっと、その赤きインクを頂戴……!!
 粉々にして、そして滴る赤で――この乾きを、はやく、癒して欲しい……。
「……物書きの最大の屈辱ってご存知?」
 闇夜の世界に、はらり、桜花弁を散らしながら。
 眼前の女に問うゆすら。
 答えは勿論返ってはこないし、期待もしていない。
 物書きの最大の屈辱――それは、筆を折ること。
 恐怖と虚勢のまま……桜の如く咲く瞳に、女の姿だけを映して。
 ゆすらは嗤い、そして叫ぶ。
「さあ、筆を折って、殺して!」
 ――それは物書きたる貴女の死でもある!
 刹那、漆黒の闇に飛び散る、赤のいろ。
 それは、幾度も幾度も見続け、そして注がれてきた――気を失いそうになるような、憎らしくも愛しい彩り。
 女の姿が薄れゆく中――ゆすらは、その瞳を大きく見開く。
 そして、それを振り払うかのように。綴られた毒々しい血文字が、女を模していた亡霊を塗りつぶした。
 ――嗚呼、信じたくない。自分が人殺しの道具だったなど。
 ――人殺しが涙を流すなど……。
 薄れゆく女が最後に零したひとしずく。
 それは傷から滴る己の血よりもずっとずっと、ゆすらの心を不安定に揺さぶって。
 ぐるりと、気を抜けば世界が回ってしまいそうだけれど。
 ゆすらは異様な程に静かになった森を、ゆらり進みながら、心の内で叫び続ける。
 亡霊を塗りつぶした『検閲済』の文字ー―嗚呼この弱さにこそ、赤文字のそれを頂戴……! と。

成功 🔵​🔵​🔴​

シキ・ジルモント
※アドリブ歓迎

現れたのは長い銀髪と青い瞳を持つ人狼の少女…子供の頃に死に別れた、実の妹
人狼症のせいであいつは死んだ
こんな所にいるはずがない
これは霧幻の森の幻影だ

…頭では理解している
早く倒して先に進まなくてはならないとわかっている
それなのに引き金を引く事がどうしても出来ない
体が震えて銃を構えている事すら出来なくなる

妹の幻影が目の前で狼の姿に変身しても、その爪に引き倒され喉笛に喰らい付かれても、一切抵抗できない
…どうしてよりにもよってお前なんだ
たとえ幻でもお前を殺せるわけがない
俺はもう、お前が死ぬ所は見たくない

幻惑が解け敵の姿が見えたら傷の痛みや怒りより安堵が勝る
やっと躊躇なく引き金を引けるからな



 深く妖しい霧がまたひとつ。
 侵入者の精神を抉るように、赤裸々にその心を浮き彫りにする。
 月の光さえも届かぬ、漆黒の闇から現れた少女。
 ――人狼症のせいであいつは死んだ、こんな所にいるはずがない。
 これは霧幻の森の幻影だ――そんなこと、シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)にだって分かっている。
 ……頭では理解している、のだけれど。
 長い銀髪をふわりと靡かせ、自分を見つめる、人狼の少女の青の瞳。
 早く倒して先に進まなくてはならないなんてこと、わかっている。
 その額に一発、鉛弾をぶち込めば。たったそれだけで終わるということも、わかっているのだけれど。
 でも――実用性重視の造りのはずの愛用のハンドガンは、異様に重くて。
 照準などとても合わせられないほどに体は震え……銃を構えていることすら、できなくなる。
 普段は容易に引ける引き金も、驚くほどに硬くて。
 漆黒の暗闇の中――妹の姿が人狼へとかわっていく様を見ても。
 どうしても、その引き金を引くことが、できない。
 そして妹と同じその青の瞳に、地を蹴った人狼の姿が、より大きく映った刹那。
「……は……っ!」
 世界が半転し、密かに煌めく銀製のペンダントが大きく宙に踊ったと同時に。
 己から噴き出した鮮やかな赤の色が、青の瞳を支配せんとばかりに染め上げる。
 鋭利な爪で引き裂かれ、流れ落ち出来上がった己の血の海に沈むシキ。
 そんな彼へと身を沈ませた人狼は、容赦なくその喉笛に喰らいつき、喰い千切る。
 それでも。
 それでも……血に塗れたシキの指は、引き金を引くことができない。
「……どうしてよりにもよってお前なんだ」
 絞り出すように零れる、言の葉。
 いくら引き裂かれようとも、喰い千切られようとも――できるわけがない。
 たとえ幻でも……お前を、殺せるわけがない。
 鋭利な爪や牙が、好き放題に体に突き立てられ、喰いつき、千切り抉ってきたとしても。
 ――俺はもう、お前が死ぬ所は見たくない。
 シキは己の赤に塗れたその腕をそっと、人狼へと伸ばした。
 そして……薄れゆく愛しき者の姿を映した瞳に宿るその色は、痛みや怒りではなく、安堵。
 これで、ようやく……やっと、躊躇なく。
 驚くほど軽くなったハンドガンを、シキは構える。
 そして瞬間――深い霧の森に、一発の銃声が轟いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

アルノルト・ブルーメ
出て来るのは君だよね

一緒に、そう言わんばかりに
手を差し伸べて来るのは以前と同じ
けれど、その手に隠し持ったナイフは君には似合わないし
君とは一緒に行けないよ

あの子がいない
だから、一緒にはいけない……
でも、ずっと願っていた事でもあるから、終わらせよう

血統覚醒使用
LienhardとVictoriaで『彼女』の喉を掻き切り、心臓を穿つ
咎人殺しとしての技術を君に使う事になるとは思わなかったな

最愛の女が血に塗れる姿に自然と笑みが零れてしまう

だって、知らなかっただろう?
僕が自分のこの手で、君に人生の終焉をもたらしたかったなんて事……
君の瞼が閉じるその瞬間を僕が独り占めしたいと思ってたなんて
知らなかっただろう?



 深い霧が妖しく立ち込める森へと足を踏み入れる前から、アルノルト・ブルーメ(暁闇の華・f05229)には分かっていた。
 そしてその予感は、すぐに確信に変わる。
「出て来るのは君だよね」
 現れた『彼女』に、柔くも優しい緑色の瞳を細めるアルノルト。
 でもその奥に滲む密かな感情は――また、別の色を秘めている。
 そして、一緒に……そう言わんばかりに。
 白く華奢なその手を差し伸べて来るのは、依然と同じ。
 けれど、君には似合わない。
 その手に隠し持った、ナイフの閃きなんて。
「君とは一緒に行けないよ」
 そう、優しさを失わぬ響きで、でもはっきりと紡いだ後。
 アルノルトは深い漆黒の中、得物を構える。
 ――あの子がいない。
 だから、一緒にはいけない……。
 でも、これは……ずっと、願っていた事でもあるから。
 終わらせよう――その瞬間、アルノルトの穏やかな緑の瞳が、真紅に染まる。
 ……咎人殺しとしての技術を君に使う事になるとは思わなかったな。
 そう、血のような色を帯びた瞳を、ふっと細めて。
 アルノルトは、『Lienhard』と『Victoria』を躊躇なく放つ――愛しい女の姿をした、それへと。
「……あ……か、は……っ」
 刹那、『彼女』の口から洩れるのは、艶やかな吐息と鮮血。
 月や星の光さえも届かぬ黒一色の世界に飛び散る、鮮やかな赤の彩り。
 『彼女』の喉を掻き切り、そして――その心臓を、穿つ。
 びくりと一瞬、跳ねるように身体を震わせて。
 赤に塗れる、最愛のひと。
 そんな姿に――自然とアルノルトが零すのは、笑み。
 最愛の女が血に塗れる姿に、自然と笑みが零れてしまう。
 ……そして。
「だって、知らなかっただろう?」
 怖いほどに優しい声色で。
 アルノルトは、最高に美しい色に塗れた愛しい女に手を伸ばして。
 耳元で、そっと囁く――僕が自分のこの手で、君に人生の終焉をもたらしたかったなんて事……と。
 君の瞼が閉じるその瞬間を、僕が独り占めしたいと思ってたなんて――知らなかっただろう? って。

成功 🔵​🔵​🔴​

ニコ・ベルクシュタイン
人間の身体を持つというのは、同時に心――精神も得るということ。
其れは人を人たらしめる必須要素とはいえ、こういう時に困るな。
恐らく今の俺の前には……あいつが出てくるのだろうな。

【幻影:うさみっち(f01902)】
ああ、やはりという感想と共に対峙する
常より冗談でどつき合ったりはしているが、今回は其れでは済むまい
『ニコ、ちねー!』という声と共に得物のワイヤーを
放ってくるうさみの姿は本気だ、戦わねば「殺される」。

普段いじめてばかりだから、本当は恨みに思っているのだろうか
此れからは少しは優しくしてやらねばな、等と思案しつつ
【時計の針は無慈悲に刻む】にて反撃を
幻影のお前でも「ぴゃああああ」と鳴くのだろうか



 ――霧が、より深くなったような気がする。
 共に赴いているはずの沢山の猟兵たちも、いつの間にか、誰一人の姿もみえない。
 ニコ・ベルクシュタイン(虹の未来視・f00324)は慎重に漆黒の森を進みながらも、ふと考察する。
(「人間の身体を持つというのは、同時に心――精神も得るということ。其れは人を人たらしめる必須要素とはいえ、こういう時に困るな」)
 人の身を受け知った、痛みや感情。
 それは人にとって必要なものであり、時に、尊くもあるけれど。
 正直……困ることも、ある。
 この森のような――タチの悪い呪いがかけられている時なんかは。
 予知で聞いた、この森の呪い。
 そしてそれを聞けば、すぐに思い浮かんだのは、ある人物の姿。
(「恐らく今の俺の前には……あいつが出てくるのだろうな」)
 ――深い森に蔓延る霧は、侵入者の心を、正直に映し出す。
「……!」
 ふとその時、ニコの足取りが、止まった。
 ――ああ、やはり。
 次に漏らしたのは、そんな言の葉。
 深い森の漆黒から現れたのは――ピンク色の塊こと、種族を超えた想いを抱く、予想通りの存在。
 普段から、冗談でどつき合ったり、しばいたりはしているけれども。
 今回は其れでは済むまい……ニコはそう、長針と短針を思わせる、大小二振りのルーンソードを構えて。
「!」
 刹那、ひゅっと、風が鳴る音がする。
 同時に響くのは、とてもよく聞き慣れた声。
「ニコ、ちねー!」
 だが戦場と化した深い森に張り巡らされたワイヤーは、本気でニコを仕留めんと静かに閃いている。
 ……目の前のうさみの姿は本気だ、戦わねば「殺される」――。
「普段いじめてばかりだから、本当は恨みに思っているのだろうか」
 ……此れからは少しは優しくしてやらねばな、なんて思いながらも。
 容赦なく急所目掛け放たれた、うさみっちの『かっこいいワイヤー』を弾き飛ばして。
 ――幻影のお前でも「ぴゃああああ」と鳴くのだろうか。
 そんなことを思いながらも、ニコがふっと、炎と氷宿す刃の切っ先を愛しきピンク色の塊へと向ければ。
 刹那小さな身体に叩き込まれるのは、避ける事さえ許さぬ鋭い連撃。
 ――『霧幻の森』の霧は、侵入者の心を、正直に映し出す。
「ぴゃああああ」
 ニコの予想通りに、そう鳴いて。
 愛しきピンク色の塊は溶けるように――漆黒の森の中に、消えて逝く。

大成功 🔵​🔵​🔵​

終夜・嵐吾
はー、よかった。なれの姿で……心置きなくやれるわ!
あの小さな友達であったらなにもせずに殺されるだけじゃ
せーちゃんなら、わが友なら構わん
……なれはわしと対等でいてくれるからの
じゃからこういう時、手ェ出してええかと思える
それに、ここにおらんのわかっとるし。こういう幻には揺れんのー

手を伸ばして、笑う
見た目はいっしょよな
そのまま、燃えてしまえと狐火をたぎらせて
消えるまで燃やし続けよう
…む、やはり友を勝手に拝借されるのは許せんようじゃ
同じ姿と面白がってはおったが腹は立つ

しかし
もし、せーちゃんを壊さんとならん時があれば
壊して、その後、直してあげよ
100年後にまた会い見えよう――それまでわしが愛でておるから



 ――それは、願いに近いかもしれない。
 その奥深くに足を踏み入れるほど、濃い霧がじわりと静かに森を浸蝕して。
 侵入者のその心をも蝕まんと、密かに迫る。
 そんな、深い深い漆黒の闇から。
 刹那現れたその者の姿を、琥珀の双眸に映した終夜・嵐吾(灰青・f05366)は、正直、ホッと安堵する。
 ……もしも現れたのが、あの小さな友達であったら……何もできず、殺されるだけであっただろう。
 けれど、嵐吾の眼前に現れたその幻影の姿は。
「……せーちゃん」
 思わずそう、名を呼ぶけれど。
 勿論、目の前の清史郎が本人だとは微塵も思っていない。
 けれど嵐吾は、現れた幻影――清史郎へと紡ぐ。
「はー、よかった。なれの姿で……心置きなくやれるわ!」
 現れたのは、かけがえのない友。
 大切に想っている存在であるのは、間違いないのだけれど。
 ――せーちゃんなら、わが友なら構わん。
「……なれはわしと対等でいてくれるからの」
 だからこういう時、手を出してもいいかと思えるし。
 きっと、逆の立場あったとしても――清史郎も、同じであるだろう。
 それに、ここにおらんのわかっとるし、と。
 今、猟兵たちの転送に尽力を注いでいる友のことを分かっているからこそ、余計に。
 こういう幻には――全く、揺れない。
「見た目はいっしょよな」
 ふっと漆黒が支配する闇の世界で。
 友へと手を伸ばして、笑う。
 いつも気付けばすぐ傍で笑っている、綺麗なその顔。
 雅な立ち振る舞いも、桜吹雪かせる蒼き刀も――見た目は、いつも傍で見ているものと、同じだけれど。
「……!」
 友の顔が、ふいに照らされ浮かび上がる。
 ひとつ、ふたつ、みっつ――友の蒼き色を、じわりと、己の色にゆっくり染め上げんとするかように。
 ――そのまま、燃えてしまえ。
 消えるまで、狐火をたぎらせて……嵐吾は眼前の友を、燃やし続ける。
「あ……あぁぁ……は、あ……っ」
 どんなに足掻いても、決して消えることのない炎。
 その彩に支配され、焦がされることに、綺麗な友の顔が大きく歪む。
「く……あ、あぁっ……らん、らん……!」
 その姿を眺めていた嵐吾は、ふとひとつ、息をついて。
 刹那――ひとつであった炎が幾重にも合わさり、より激しく、清史郎の身を焦がした。
「あっ……ああぁぁ、あっ!」
「……む、やはり友を勝手に拝借されるのは許せんようじゃ」
 同じ姿と面白がってはおったが腹は立つ、と。
 漆黒の世界に恐ろしいほど美しく輝く、燃え上がる狐火を、嵐吾は一瞥して。
 燃え尽き崩れ落ちた友の姿に、琥珀を帯びた瞳を、そっと細める。
 ――もし、せーちゃんを壊さんとならん時があれば。壊して、その後、直してあげよ。
 すでに事切れ、ただの燃え滓と化した友の姿であったものに嵐吾は笑み、続ける。
 そして、100年後にまた会い見えよう――それまでわしが愛でておるから、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィオリーナ・フォルトナータ
…自分の心の中を強く支配している者
だとすれば、わたくしの前に現れるのは、

…主様
幻影だと、まやかしだとわかっていてもなお囚われてしまう
やはりわたくしを、…いえ、わたしを恨んでいらっしゃいますか
貴方を、貴方の世界をお守りすることも叶わず
こうして今もなお生き恥を晒しているわたしを

貴方がわたしを斬るというのなら
それは、わたしが受けるべき罰なのでしょう

幻影の支配が解ければ
目の前に広がるのは戦火覆う街ではなく鬱蒼と茂る森
斬られた傷も痛みも構うことなく
襲い来る亡霊達を余る力の全てを叩きつけるように斬り伏せて

……ああ、
誰にも見られていなくて本当に良かった
きっと、今のわたくし、とても、…とても酷い顔をしている



 深い森に息づくのは、侵入者の心を露わにする呪い。
 守るべき世界のために、真っ直ぐにただ前を。
 未来を、見つめているはずの――そんな空色の瞳が今映すのは。どうしても、囚われてしまう過去。
 フィオリーナ・フォルトナータ(ローズマリー・f11550)には、分かっていた。
(「……自分の心の中を強く支配している者。だとすれば、わたくしの前に現れるのは」)
 ――主様。
 霧が支配する漆黒の世界は、いつの間にか、戦火覆う街のものと取って変わり。
 現れたのはやはり、フィオリーナの予想していた人物。
 だけど……それが幻影だと。
 まやかしの存在だと、わかっていても――。
 なお、囚われてしまう。
「やはりわたくしを、……いえ、わたしを恨んでいらっしゃいますか」
 ――貴方を、貴方の世界をお守りすることも叶わず、こうして今もなお生き恥を晒しているわたしを、と。
 眼前の存在が、主様などでは決してなく。
 いくら問いを投げかけても。
 それは虚空を掴むかのように返事など返ってはこないことを、フィオリーナはわかっているのだけれども。
 気付けば零れ落ちる、想いの言の葉。
 いや、幻影だからこそ……そう、紡げるのかもしれない。
 そしてフィオリーナは、自分に向けられた閃きと殺意から、決して瞳を逸らさずに。
「貴方がわたしを斬るというのなら。それは、わたしが受けるべき罰なのでしょう」
 刹那――オールドローズの髪が、大きく天に揺れる。
 そして振るわれた刃を敢えて受け入れたフィオリーナから、戦火の炎とはまた違った、美しくも鮮やかな赤が飛沫く。
 守りたかった場所も、守りたかったひとも……もう、今はない。
 容赦なく食い込む刃の痛み。でもそれ以上に抉られるのは、囚われた心。
 でも……でももう、何も守れないのは――耐えられないから。
 気付けば戻ってきた漆黒の世界に、己の赤が滴り落ちるのも構わずに。
 己の罪ごと断つかの如く――フィオリーナは暗闇の世界に、聖なる光を生み出して。
 余る力の全てを叩きつけるかのように、迫り来る亡霊たちを全て斬り伏せたのだった。
 金色を編み上げた柄を握るその手に……様々な感情が入り混じるその心を、宿らせながら。
 そして静寂が戻ってきた森の中、受けた傷の痛みも構わずに。
 フィオリーナは、ただ前だけを見つめ、進み続ける。
 それからふと肩で大きく息をしながらも、心から思うのだった。
(「……ああ、誰にも見られていなくて本当に良かった」)
 ――きっと、今のわたくし、とても、……とても酷い顔をしている――と。

成功 🔵​🔵​🔴​

篝・倫太郎
リカ(f03365)と

誰だろなぁ……こいつ、って相手いねぇけど……
っと、はぐれたか……

綺麗な綺麗なオラトリオ
俺を拾って電脳魔術士として育てた
浮世離れした魔法使い

……そんな気はしてたんだよな
俺が執着してんのなんて、あんたしかいねぇもんよ
で、師匠、俺をどうやって殺す?

俺はさ、あんたに勝ちてぇと思ったことはあんまねぇし
勝つなら電脳魔術士の腕で勝つって決めてんだ
あんたもそうだろーがよ?

だから、こういう無粋な遣り取りで
勝ち負けつけんのはヤなこった

だからよ、殺されといてくれよ
唯一の弟子の俺に……
悪ぃけどさ
勝敗は現実で付けようぜ、師匠

華焔刀で先制して巫覡載霊の舞使用

はっ!誰が言うか……
さって、行こうぜ?リカ


百合根・理嘉
りんたろ(f07291)と

実際死ぬ訳じゃねぇし、大丈夫だろ
つーか、俺はお前が誰に会うのか興味あるぜ、りんたろ

だから、ま……
殺したいならいいよ、 母さん――

うっすらとしか覚えてないけども、綺麗な人だった
父さんが、家に帰ってこなくなるまでは……

艶の無くなった長い髪が頬を擽る感覚も同時のまま
あぁ、あの時の続きだ
細く痩せこけた女の手で首を絞められる
もう子供じゃないのに逃げられない

殺したいほど、憎くて憎くて……
でもそれは裏返せば愛されたいってだけの話で
殺したいほど憎い……なんて、結局はポーズだから……

幻影が解けたら
バトルキャラクターズで召喚したにーさんで敵を倒してりんたろと合流

で、誰と会えたよ、りんたろ



 深い森の中を共に進むのは、篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)と百合根・理嘉(風伯の仔・f03365)。
 ――けれど。
 霧の立ち込める呪いの森は、そんな二人をいつの間にか、引き離す。
「実際死ぬ訳じゃねぇし、大丈夫だろ。つーか、俺はお前が誰に会うのか興味あるぜ、りんたろ」
 それが、最後に耳にした相手の言葉であった。
「誰だろなぁ……こいつ、って相手いねぇけど……」
 倫太郎は、そっと同行していたはずの理嘉の姿を探すけれど。
「っと、はぐれたか……」
 ふっとそう、一息ついてから。
 改めて――前へと向きなおし、琥珀色の瞳をおもむろに細める。
 理嘉の変わりに、自分の元へと現れた存在。
 それは――綺麗な綺麗なオラトリオ。
「……そんな気はしてたんだよな。俺が執着してんのなんて、あんたしかいねぇもんよ」
 ――で、師匠、俺をどうやって殺す?
 だが、そう問うても。
 倫太郎を拾い、電脳魔術士として育てた、浮世離れした魔法使いは答えない。
 だがそれにも構わず、倫太郎は続ける。
「俺はさ、あんたに勝ちてぇと思ったことはあんまねぇし、勝つなら電脳魔術士の腕で勝つって決めてんだ」
 ……あんたもそうだろーがよ?
 そう、真っ直ぐに師匠へと視線を向けて。
 倫太郎は大きく首を振ると。
「だから、こういう無粋な遣り取りで勝ち負けつけんのはヤなこった」
 敢えて抜くのは――朱で描かれた焔が舞い踊る、黒塗りの柄の薙刀。
 ……勝つのならば、電脳魔術士の腕で、本人に勝つ。
「だからよ、殺されといてくれよ。唯一の弟子の俺に……」
 そして漆黒の森の中、大きく地を蹴った倫太郎は。
 神霊体へとその身を変化させて。
「悪ぃけどさ、勝敗は現実で付けようぜ、師匠」
 美しい刃紋が映える薙刀から生み出された衝撃波を、躊躇なく。
 師匠の姿を模した存在に、叩きつけたのだった。

 同じ頃――倫太郎と逸れた理嘉は。
 実際死ぬ訳じゃねぇし、大丈夫だろ……そう自分の放った言葉に続けて。
「だから、ま……殺したいならいいよ、 母さん――」
 眼前に現れた存在へと、漆黒の瞳を向けた。
 記憶の中にいる母親は、うっすらとしか覚えてはいないけれど――綺麗な人だった。
(「父さんが、家に帰ってこなくなるまでは……」)
 振り乱された、艶の無くなった長い髪。
 そしてその髪が頬を擽る――この感覚。
 ……フラッシュバックする記憶。
 理嘉は伸ばされた、細く痩せこけた手で。ギリギリと首を絞められながらも思い出す。
 ――あぁ、あの時の続きだ、と。
 非力な女の手など、振り払おうと思えば、今の自分には容易に振り払えるだろうけれど。
 もう子供じゃないのに……逃げられない。
 殺したいほど、憎くて憎くて――でもそんな感情は、結局はポーズでしかなくて。
 本当は……愛されたいってだけの話。
 今の理嘉はよく分かるから――首を締められ続けるその手の感触に。
 ずるりと、一瞬、意識を手放した。
 そして次に瞳を開いた理嘉は……戦場に、バトルキャラクターズでにーさんたちを召喚して。
 にーさんたちが振るう透明度の高い細身剣が、迫り来る亡霊たちを全て滅したのだった。

 それから、ふっと理嘉はおもむろに振り返り、笑んで。
「で、誰と会えたよ、りんたろ」
 無事に再び合流を果たした倫太郎にそう訊くも。
「はっ! 誰が言うか……」
 さって、行こうぜ? リカ、と。
 そう返す倫太郎と、深い森のその先へと二人、急ぐのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

仁科・恭介
※アドリブ歓迎
「そっか。やはり殺しに来るとしたら君か」
…仕方ないね。本当に仕方ない。
好きな子がいると知りつつも七年思い続けて七度あきらめようとした。
その人が目の前に立っている。
「お前、依頼の受けすぎだろ…少し痩せたか?」
今もどこかで依頼を受けているだろう…その人が立っている。

他愛ない会話をしつつ、攻撃は【残像】で躱す。
途中から「こいつになら殺されてもいいかな」と思いつつも、「次に会ったら伝えたいことがある。ダメでもあいつが幸せになるところを見てみたい」と奮起。
幻影の隙をつき背中から抱きしめ心臓に刀を差す。
「依頼は依頼って君は言ったよね。だからいつも安心した。現実でもこう抱きしめられれば…」



 深い森を吹き抜ける風に揺れるのは、闇を宿す外套と赤のマフラー。
 次第に霧が濃くなってきていることを肌で感じながら、仁科・恭介(観察する人・f14065)はふと、立ち止まる。
 周囲にいたはずの猟兵たちの姿が、誰一人も見えなくなっている。
 そして――かわりに現れたのは。
「そっか。やはり殺しに来るとしたら君か」 
 ……仕方ないね。本当に仕方ない。
 恭介はそう、瞳に映るその子に、柔く瞳を細めた。
 その子の話を振られれば、少し考えて、にっこり笑うような。
 恭介にとって、そんな相手。
 好きな人がいると知りつつも。
 七年思い続けて、七度あきらめようとした。
 恭介の眼前に立っている幻影は――その子の姿を象っていて。
 その姿を目にすれば……心の中に、愛しい気持ちが色褪せず鮮やかに咲く。
「お前、依頼の受けすぎだろ……少し痩せたか?」
 相手も自分と同じ猟兵で。今も、どこかで依頼を受けているだろう。
 目の前にいるのが、その子本人ではないことは、分かっているのだけれど。
 投げかけるのは、他愛のない会話。
 向けられる殺意に満ちたその瞳も……今は、自分だけのもの。
 漆黒の世界に閃く衝撃を残像を駆使し躱しながら。
 すぐ間近まで迫ったその顔を見ると、つい思ってしまう。
 ――こいつになら殺されてもいいかな、なんて。
 でも。
(「次に会ったら伝えたいことがある。ダメでもあいつが幸せになるところを見てみたい」)
 それをこの目で確りと見届けるまでは――殺されるわけには、いかない。
 そう奮起して、恭介は漆黒の世界に溶け込むように外套を翻し、攻撃を往なして。
 ぐっと、鋭く研がれた日本刀を握りなおす。
 そして――幻影の相手が見せた、一瞬の隙を見逃さずに。
「……!」
 素早く背後へと回り、背中から、強く優しくその身体を抱きしめて。
 耳元を擽るようにそっと、囁くように紡ぐ。
「依頼は依頼って君は言ったよね。だからいつも安心した」
 現実でもこう抱きしめられれば――そう続けた、瞬間。
「! は、あぁ……っ」
 その子の口から漏れる、吐息。
 抱きしめたまま突き立てた刀が、その心臓を的確に捉えて。
 ずるりと崩れ落ちるその身体をもう一度だけ、優しく抱きしめた後。
 漆黒の闇に溶けるように消え失せたその姿を見送った恭介は、再び深い霧の森を歩き始める。
 次に好きな人に会える――未来のために。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リル・ルリ
■アドリブ等歓迎

櫻宵、櫻宵。僕の櫻
君に殺されるというのは
どんな感じなのだろう
君が最も厭うことだとしっているけれど

君は戦の度に
恋焦がれるような殺意向けて
熱く高揚した瞳で敵をみる
首を、命を欲して笑う
その相手と君だけにしかわからない、僕には入り込めない睦言のようで
いつも後ろで歌う僕は密やかに――嫉妬している

僕だけを見て欲しい
その熱い眼差しを独り占めしたい
狂おしいほどに求められたい

なんて
本当の君には死んでも言えない
君は僕を傷つけたりしない

幻影に微笑む
そう
その視線
その熱
今、君は僕のもの
その刀で首をはねて
綺麗な赤を咲かせておくれ

僕の首を櫻宵にあげる!



死ぬほど愛しているだなんて陳腐な言葉

嗚呼
でも

存外悪くない



 いつもいつも、とても大切にしてくれる君。
 僕が傷つかないように。僕を、傷つけないように。
 そう思ってくれることは、とてもとても、嬉しいのだけれど。
「櫻宵、櫻宵。僕の櫻。君に殺されるというのはどんな感じなのだろう」
 君が最も厭うことだって、しっているけれど……僕は時々、そう思わずにはいられないんだよ、櫻宵。

 リル・ルリ(瑠璃迷宮・f10762)は、深い霧の向こうから現れた愛しい人の姿を、その薄花桜色の瞳に映して。
 向けられる殺意に――ぞくりと、鳥肌が立つ。
 いや、恐怖だとか嫌悪だとか……そんな感情とは、全く逆のもの。
 共に赴いた戦でいつも敵に向けられる、恋焦がれるような櫻宵の殺意。
 敵の姿を映すその瞳は、熱く高揚していて。
 その首を、命を欲して笑う。
 それは――敵として櫻宵の前に立つ者と櫻宵にしか分からないもので。
 そしてそれは、自分には入り込めない睦言のようで。
 いつもいつも、大切な人のために後ろで歌いながらも――密かに疼いているのは、嫉妬という感情。
 だからリルは、自分に向けられた眼前の櫻宵の殺意を、喜んで受け止める。

 ――僕だけを見て欲しい。
 ――その熱い眼差しを独り占めしたい。
 ――狂おしいほどに、求められたい。

 ……なんて。
 本当の櫻宵には死んでも言えない、でも、いつも心の奥底で密かに溢れる想い。
 君は僕を傷つけたりしない、それはよくわかっているけれど。
「そう――その視線、その熱……今、君は僕のもの」
 リルは、ふっと櫻宵の幻影に微笑んで。
「その刀で首をはねて、綺麗な赤を咲かせておくれ」
 ゆらり漂う月下美人は、愛しき屠桜の目の前に躍り出て。
 そして……ぞくぞくするような、自分に向けられる熱い殺意に、その身を委ねる。

 ――僕の首を櫻宵にあげる!

 瞬間……あたたかくて鮮やかな赤が飛沫いて。
 ひらり翻る月光ヴェールも、瑠璃を先に湛える秘色の髪も、淡い珊瑚の角も。
 全て、全部、その白のいろが。
 愛しい屠桜が望む……赤のいろに、染まる。
「……死ぬほど愛しているだなんて、陳腐な言葉」
 そう紡いだリルは、薄花桜色を咲かせた瞳をそっと細め、でもこうも思う。
 嗚呼、でも――存外悪くない、と。

成功 🔵​🔵​🔴​

誘名・櫻宵
🌸アドリブ歓迎

嫌よ
愛するリルを殺すなんて
嫌よ大好きなあの子を殺すなんて
嫌嫌嫌

やめて
愛する人を殺すなんて
そんな


甘美な誘惑


抗えない

可愛くて美しくてどこかに游いで行ってしまいそうなリルを

やめて
殺させないで

逃がすくらいなら
離すくらいなら
殺してあたしだけのものに
永遠に
しあわせにしてあげる

ダメ
そんなこと
暴かないで
奥底の望みを

痛くないわ
一瞬よ
あなたを手にかけて
綺麗な白に血桜咲かせて
愛しいあなたの首を抱きしめて
うつくしいあなたに接吻を

ああ
零れる涙は歓喜?それとも甘い絶望?
好きなのに守りたいのに幸せにしたいのに

けど
幸せよね
これでずっと一緒
大丈夫
守ってあげる


殺したいほど愛してる
なんて
都合のいい言葉


紛れもない
事実



 深く濃い霧の呪いが囁くのは――甘美な誘惑。
 心の内にしまってある、でも決して出してはいけないそんな感情を、容赦なく暴こうとする。
「嫌よ。愛するリルを殺すなんて。嫌よ大好きなあの子を殺すなんて」

 ――嫌嫌嫌……!

 誘名・櫻宵(屠櫻・f02768)は大きく首を振り、花霞宿す桜色の瞳をぎゅっと瞑る。
 ……やめて。愛する人を殺すなんて……そんな。
 でも、深い霧は知っている。
 櫻宵が、甘美な誘惑に抗えないということを。
「……櫻宵」
 歌うような、自分を呼ぶ美しい声。
 可愛くて美しくて、どこかに游いで行ってしまいそうなリルを。
 ――やめて、殺させないで。
 そう願う反面……心の中で密かに疼くのは、どうしようもできない衝動。
 
 ――逃がすくらいなら。
 ――離すくらいなら。
 ――殺して、あたしだけのものに。

 その美しい歌声も、可愛らしい顔も、何よりその心も……全て、全部。
 独り占めしたくて、堪らない。
「ダメ、そんなこと……」
 暴かないで。
 奥底に抱いている、そんな望みを。
 でも、その白を……どうしてもこの手で、鮮やかないろに染めてみたくて。
「……痛くないわ、一瞬よ」
 ――ねぇ首を頂戴?
 紅い紅い太刀の閃きが、穢れを知らぬ白に……気を失うかと思うほど綺麗な、鮮やかな血桜を咲かせる。
 鮮やかに咲いて飛沫くいろ、漏れる艶やかな吐息、その恍惚とした表情、手に残る感触――どれもが、心が高揚するほどに狂おしい。
 そして櫻宵は、愛しい人の首をぎゅっと、宝物のように抱きしめて。
 そっと――うつくしく、そして血の香りがするその唇に、己のものを重ねたのだった。
 そんな抱きしめたうつくしい顔に落ちるのは――桜色からはらり舞い散る雫。
 ああ……零れる涙は歓喜? それとも甘い絶望?
 好きなのに守りたいのに幸せにしたいのに――。
 そうさらに強く、櫻宵は愛しい人を抱きしめるけれど。
「……けど、幸せよね。これでずっと一緒」
 大丈夫――守ってあげる。
 そう、大好きな人の赤に、全身を喜んで染めながら。
 櫻宵は昂る感情に心の高揚を感じつつも、小さく首を横に振った。
 殺したいほど愛してる、なんて……都合のいい言葉で。
 そしてそれは同時に――紛れもない、事実。

成功 🔵​🔵​🔴​

輝夜・星灯
七結/f00421 と


真新な無垢が骸になるまでに。
救うべきだ、と。生まれたばかりのか細い心が叫んだ。

濃霧はまるで、眠り堕ちた夢のようだと思いながらも、聞いた話を頭に巡らせ、正気を保つ。
微かな想い出しかない私は、一体何を視るのだろう。

愚かにも微睡んでしまった隙に、目の前に現れた幼い娘が自分を手にかけようとした。
身に覚えのないこの子は、きっと偽者なのだろう。

少し詰まっただけの呼吸と共に、掠れた声で謝った
「ごめんね」

所詮は幻影、しかして女子供。心苦しく思いながら、己が拐かした刃で、小さな掌ごと一思いに断ち切る。

頬に伝った紅は、未練の雫の代わりだろうか──


蘭・七結
セーラさん/f07903と

純白があかに染まりゆく前に。彼女を救えたのなら
ナユの気持ちは、あなたとおんなじ
最悪の結末を、認めはしない

セーラさんを庇護できる様に、周囲を警戒しつつ
対峙する幻影の揺らぎをじいと見つめて
ナユの前に現れるのは、あなたでしょう
ねえ。ナユの『かみさま』

見据える猩々緋の色は、
ナユが知っている、金糸雀の彩ではなくて
ねえ――〝 〟さま
あなたの名を、唇で紡いで
〝あかい糸先〟
あなたは、誰なのかしら

恋の猛毒は、幻影であるあなたをも蝕むでしょう
あかい毒糸で繋ぎとめたのなら
『彼岸』と『此岸』の双刀にて薙ぎ払って

どうか美しく、散り果ててちょうだい
さようなら、ニセモノの『かみさま』



 深い深い森は暗く、奥へと進むにつれ、霧が濃くなっている。
 すぐ隣にいる者の姿すら、見失ってしまいそうなほどに。
 だが、そんな暗闇の世界に、希望の光を灯しに赴いたのは輝夜・星灯(迷子の星宙・f07903)。
 真新な無垢が骸になるまでに――救うべきだ、と。そう、生まれたばかりのか細い心が叫んだ。
 何故だか、放っておけなくて……桜のグリモアに導かれるまま、この世界にやって来たのだ。
 そしてその気持ちは、蘭・七結(恋一華・f00421)も同じ。
(「純白があかに染まりゆく前に。彼女を救えたのなら」)
 最悪の結末を、認めはしない――七結は星灯を庇護できる様に周囲を警戒しつつ。
 深い霧の只中へと、二人、歩みを進めていく。
 純白の花嫁を救うには、まずは、この『霧幻の森』を超えなければならないから。

 ――濃霧はまるで、眠り堕ちた夢のようだ。
 星灯はふと、そう思いながらも、聞いた話を頭に巡らせる。
 この森に噂されている、呪いの話。
 誰かの幻影が――心に強く思う人が、自分を殺しに来る。
 そんな幻影が現れても何らおかしくはないと思うほど、立ち込める霧は不気味で。
 何とか正気を保ちつつも……ふと、すぐ隣を歩いていたはずの七結の姿が見えないことに、星灯は気が付く。
 そして、ふとひとつ、人影が現れて。逸れた七結の姿かと、思ったけれど。
(「微かな想い出しかない私は、一体何を視るのだろう」)
 ふっと、そう愚かにも微睡んでしまった視線の先にいるのは――七結ではなく。
 身に覚えのない、幼い娘であった。
 この子は、きっと偽者なのだろう――深い霧の呪いを思い返し、そう理解するけれど。
 微睡んでしまった隙に、娘は星灯を殺さんとすぐ傍まで迫ってきていて。
「ごめんね」
 一言――少し詰まっただけの呼吸と共に、娘へとそう紡ぐ星灯。
 所詮は幻影とはいえど、女子供。
 心苦しく思いながらも……でも。
「……!」
 目醒めた時傍らにあった、己が拐かした刃を握りしめて。
 空を映す銀髪を靡かせ、紅葉のような小さなその掌ごと、娘のその身を一思いに断ち切る。
 そして漆黒の闇の中、鮮やか飛沫いたいろが、星灯の頬を伝って。
 この紅は、未練の雫の代わりだろうか──。
 そう、星灯は、幼子が遊戯ぶビー玉を転がしたような。澄んだその瞳を細めたのだった。

 確りと警戒はしていたのだけれど、星灯と逸れてしまった七結は。
 深く濃い霧の揺らぎを――その紫色の瞳で、じいと見つめる。
 わかっている、分かっているのだ。
 七結の前に現れるのは――。
「あなたでしょう。ねえ。ナユの『かみさま』」
 小さく首を傾けると共に、髪に咲く一輪の牡丹も、そっと揺れて。
 見据えるそのいろは――猩々緋。
 それは、七結が知っている、金糸雀の彩ではなくて。
「ねえ――〝 〟さま」
 七結が唇で紡ぐのは……現れた、あなたの名。
 ――あなたは、誰なのかしら。
「恋の猛毒は、幻影であるあなたをも蝕むでしょう」
 その言の葉通り、あなたはナユのものよ、と。
 そう言わんばかりに、運命を繋ぐ毒糸が、眼前のその存在の自由を奪って。
 彼岸と此岸――双つの残花で。
 白に映える〝あか〟の彩りを、七結は鮮やかに咲かせる。
「どうか美しく、散り果ててちょうだい」
 さようなら、ニセモノの『かみさま』――って。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

レイン・フォレスト
僕の記憶に強く残ってるのはじーちゃんくらいだと思ってたけど
こいつは誰だ?

僕によく似た顔
だけど僕よりもかなり年上のこの女は

※幻影
顔立ちがよく似たアラサーくらいの外見で髪の長い艶っぽい女性
表情は笑っているが、その笑顔が恐怖を感じさせる

僕はこいつを知ってるはず
頭の中で警告音が鳴り響く
ずっと昔、そうだ僕はこいつに殺されかけ……

身体が動かない
あの時もそうだった……
「お母さん、やめて」
思わず出た言葉

そして次の瞬間思い出した
こいつを倒さなければ
僕を庇ったお父さんがっ!

震える手を必死に抑え銃を構える
僕はお前に殺されるわけにはいかないんだ
父の為にもお前はこの手で打ち倒すっ

引き鉄を引く
おかげで思い出したよ
母さん…



 深い霧がみせる幻影は――心の中を強く支配している者の姿、なのだという。
 そしてその存在が、自分を殺しにやってくるのだと。
 レイン・フォレスト(新月のような・f04730)にとって、記憶に強く残っている存在といえば、じーちゃんくらいだと思っていたけれど。
 ――こいつは誰だ?
 濃い暗闇から現れたのは、見知らぬ三十前後の年の女であった。
 でも……その顔は、レインによく似ていて。
 長い髪を漆黒の世界に躍らせ、艶っぽい口元には微かに笑みが宿っている。
 ――笑顔。
 だが……その顔を見て湧き出る感情は――恐怖。
「……僕はこいつを知ってるはず」
 思わず漏れた、そんな言葉。
 頭の中で鳴り響く警告音。
 知っている、自分は……この女のことを、知っている。
 そして開く、過去の記憶。
 ……そうだ。
「ずっと昔、そうだ僕はこいつに殺されかけ……」
 ――身体が、動かない。
 いや……あの時も、そうだった。
 そして意思と関係なく零れ落ちる声。
「お母さん、やめて」
 それと同時に、ハッと、赤を帯びる瞳をレインは見開く。
 閉ざされ、失っていた記憶。
 でも……思い出したのだ。
 ――こいつを倒さなければ……僕を庇ったお父さんがっ!
 感じる恐怖に、まだその手は震えているけれど。
 育ての親である爺さんの形見の銃を、レインは必死に構えて。
 その震える銃口を――眼前の、母へと向ける。
「僕はお前に殺されるわけにはいかないんだ」
 ――父の為にもお前はこの手で打ち倒すっ。
 刹那、静寂に包まれていた森に響く、一発の銃声。
 そして森に沈んだ、流れるような艶やかな髪の女のその姿が。
 呪いを生み出していた亡霊のものへと変わったのを、見つめながら。
「おかげで思い出したよ、母さん……」
 ざわりと、静かに妖しく木々が風にそよぐ中で。
 レインはそう、母の面影がある顔に――複雑な色を宿すのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

終夜・還
同行者:曙・ひめ(f02658)

凄ぇヤな感じだな…噂話も真に受けといた方がよさそうだぜ、ひめ?

一緒に来てる今の主に語り掛けて返事がない場合、俺を殺しに来るのは前の主で、恋人でもあったセレアだろうな…。人狼に噛まれ人でなくなった俺を癒してくれてたのに、飢えた俺が喰い殺したお前は、俺をどう殺してくれる?幻影だとしても、俺はそれを受け入れるよ

他の依頼の時俺に生きろって言ってくれたお前も、今俺を殺そうとしてるお前も俺の幻想だ。きっと俺は、心の何処かでお前の言葉が欲しいんだろうなァ…。今を生きてるつもりで居るのに俺はとんだ道化だよ
出来る事なら、酷く無惨に殺してくれ

咆哮には諸々、負の感情が乗るかもな


曙・ひめ
同行者:終夜・還(f02594)

そのようですね。還様。
気をつけて参りましょうか。

殺しに来る人物、ですか。
もしかしたら、成長した自分自身でしょうか。

わたくしが年頃の女性になったとして。何処かの見知らぬ男性と婚姻を結び、不自由な暮らしをして過ごすのでしょう。
それがエンパイアでは当たり前ですから。
草原を駆け回ることも、自由に外を出歩くこともきっと許されなくなります。
それなら、幸せな今のまま……。

でも。
例えそうだとしても。
婚姻を結ばれそうなったとして、コッソリ抜け出すことぐらい朝飯前です!
自分の未来くらい、自分で掴んでみせます!

幻影を薙刀で薙ぎ払ったら、振り返らずに進みましょう。



 漆黒に覆われた、深い森。
 ただでさえ、月や星が降らせるその輝きを一切遮るような、こんもりとした暗い森は不気味だというのに。
 奥へと進むにつれて、じわじわと濃くなっていく霧。
 その霧は、すぐ隣にいる者の姿さえも、隠さんとしているようで。
「凄ぇヤな感じだな……噂話も真に受けといた方がよさそうだぜ、ひめ?」
 終夜・還(一匹狼・f02594)は、幼き今の主に、そう声を掛ければ。
「そのようですね。還様。気をつけて参りましょうか」
 返ってきた曙・ひめ(花衣・f02658)の声に、赤き瞳を細める。
 でも――今の主からの返事があったのは、この会話までであった。

 還はふと、ひめの姿が見えなくなったことに気付いて。
 深い霧の中、目を凝らすけれど。
 ……次に自分の前に現れるのが、ひめではないことを、どこか悟っていて。
 そして――自分を殺しに来るのはきっと……前の主で恋人でもあった、セレアだろうと。
 そう、分かっていた。
 元恋人と過ごした、幾つもの優しい時間。
 人狼に噛まれ、人ではなくなったボロボロの自分の傍にいてくれた人。
 そして――飢えた自分に喰い殺された、セレア。
「飢えた俺が喰い殺したお前は、俺をどう殺してくれる?」
 深い霧の中、現れた元恋人に……そう問う還。
 その姿は懐かしく愛しくもあり。
 ……こうやって現れるということは、まだ自分の心に深く刻まれたままでもあるのだと。
 そう、改めて思いながらも。
「幻影だとしても、俺はそれを受け入れるよ」
 元恋人には不似合いな、握られた鋭い閃きにも、抵抗を見せずに。
 還はそっと、苦笑する。
 他の依頼では「生きろ」って……そう、言ってくれたけれど。
 その時のセレアも、そして今自分を殺さんとやって来たセレアも。
 どちらも……自分の、幻想だ。
「きっと俺は、心の何処かでお前の言葉が欲しいんだろうなァ……」
 還は自分へと飛び込んできた『彼女』を、その胸で受け止めて。
「……は、……っ」
 深く深く、抉るように突き刺さった刃に、声を漏らすけれど。
 ナイフの刃がより深くなることも厭わずに。
 セレアの背にそっと手を回しながら、荒く漏れる息とともに紡ぐ。
「……今を生きてるつもりで居るのに……俺は、とんだ道化だよ」
 そして、セレアの幻影の全てを受け入れる。
 彼女を喰い殺したのは、自分の方なのだけれど。
 まるで、あの時の自分のように。人狼かのように剥いた鋭い牙で、その喉笛を引き裂かれて。
 熱い赤を飛沫かせながら、無残にも容赦なく、喰い散らかされる。
 そして――それが『彼女』ではなくなった、その時。
 深い深い漆黒に覆われた森に……その闇のような感情を乗せた人狼の咆哮が、響き渡るのだった。

 同じ頃、ひめも、還と逸れたことに気が付いて。
 きょろきょろと、琥珀の煌めきを宿す瞳で慎重に周囲を見回しながらも。
 呪いの霧の話を思い出しながら、小さく首を傾ける。
(「殺しに来る人物、ですか」)
 まだ幼い彼女にとって、そういう対象はなかなか思い当たらないけれども。
 思いつく存在としたら――。
「!」
 そう……成長した、自分の姿。
 あと数年後、年頃の女性になれば。
 何処かの見知らぬ男性と婚姻を結んでいるだろう。それが、故郷であるサムライエンパイアでは、当たり前のことで。
 きっと――不自由な暮らしをしているだろう。
 見る物全てが真新しい、今の刺激的な生活も、終わりを告げてしまう。
 草原を駆け回ることも、自由に外を出歩くことすらも、きっと許されなくなるに違いない。
「それなら、幸せな今のまま……」
 ぽつりと呟かれた声は、深い森に飲まれるように沈んで。
 自由という翼を捥がれ、どこか鬱憤が溜まったような……眼前の、自分の幻影。
 その虚ろな瞳は、今のひめを、羨むかのようにもみえる。
 でも――例え、そうだとしても。
「婚姻を結ばれそうなったとして、コッソリ抜け出すことぐらい朝飯前です!」
 そうぐっと、ひめは、青い雷を纏った薙刀を構えて。
 ――自分の未来くらい、自分で掴んでみせます!
 春に轟く雷の如く漆黒の世界に一筋の閃きを放ち、幻影を大きく薙ぎ払って。
 後ろを振り返ることなく……深い森の奥へと、歩みを進めるのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

榎木・葵桜
幻影は5歳くらいの男の子
見えるのは口元の笑みだけ
目元は影に隠れて見えない

「誰?」

そう、私は知らないの
でも、その子は手を伸ばして私に言うのだ

ーー指切りげんまん、忘れたの?

私は、確かに知らない、はず、なのに
心に滲んだのは…苦み

そんな私に、男の子の口元が笑みが深くなる
笑みは嗤いに染まって

ーーそう、だから迎えにきたんだ

男の子が振りかざすものはわからない
避けなければ殺される、けれど動けない
死を覚悟して目を閉じた、時

いつの間にか発動させていた【サモニング・ガイスト】
私を守るように庇った田中さんは、【槍】で男の子を急所を一突きにした

*「サモニング・ガイスト」が発動しない場合は「殺される」描写で問題ありません



 暗闇に覆われた森に深く深く蔓延る、濃い霧。
 そんな漆黒世界の森の奥から現れたのは……この環境が全くもって不似合いな、幼い少年。
 榎木・葵桜(桜舞・f06218)の目の前に現れたのは、5歳くらいの年の男の子であった。
 見えるのは、両端が吊り上がった口元だけ。
 目元は……影に隠れて、見ることができない。
「誰?」
 葵桜も知らない男の子。
 でも……相手は、そうではなさそうで。
 すうっと手を伸ばして。葵桜へと、こう紡ぐのだった。
 ――指切りげんまん、忘れたの?
 知らない……確かに知らない、はず、なのに――。
「……っ」
 まるで、深くて濃い、この霧のように。
 心にじわりと滲み、浸蝕せんとするそれは――苦み。
 思わずぎゅっと胸を押さえる葵桜とは逆に。
 葵桜を見つめているだろう男の子の口元の笑みが、ニッと、より一層深くなって。
 ――あなたと……何を、約束、したの……?
 ――指切りげんまん、嘘ついたら……どうなる?
 そんな思いが、ふと過る間に。
 男の子の浮かべていた口元の笑いが、嗤いへと、変われば。
 不意に響くのは……こんな言葉。
 ――そう、だから迎えにきたんだ。
 そして葵桜の藍色の瞳に映るのは……閃き。
 翳されたそれが何によるものか、それはわからないけれど。
 でも……これだけは、はっきりと分かる。
 避けなければ、殺される――と。
 それでも何故か、葵桜は全く動けない。
 そして……覚悟するのは、死。
 きっと、このまま殺される……そう、瞳を閉じた葵桜だったけれど。
「……かっ、は……!」
 刹那、耳に響いたのは、男の子の口から漏れる荒い息遣い。
 そして開いた葵桜の瞳に飛び込んできた光景は――笑み宿していた男の子の口元から溢れる、赤の色。
 ……いつの間にか発動していたのは、サモニング・ガイスト。
 葵桜を守るかのようにその身を挺し、盾となった田中さんが。
 男の子の急所を一突き――握る槍で貫いていたのだった。
 何を約束したのか……それを結局、知ることができぬままに。

成功 🔵​🔵​🔴​

加賀宮・識
殺したい奴なら唯一人、奴なら楽勝だ

【POW】

霧の森の奥から現れたのは細身で黒髪青い瞳の青年

し、しょう…なんでっ

会いたくてでももう会えない、懐かしくて切なくて、大切な人

視界が滲んだそこへ、にやりと『師匠』は笑い斬りかかってきた
間一髪避け周りなど気にせず逃げたが追い詰められる

攻撃などできるはずがない
目を閉じた瞬間

『シキ』

声が、した

目の前からではなく、確かに自分を呼ぶ声

間一髪攻撃を避け、自分の腕を肩から指先まで切り裂く

私の師匠を、ノイズ義兄を、侮辱するなっ

最大級の焔で攻撃
反撃には注意する

会いたいよ、ノイズ義兄さん

(アレンジ大歓迎です)



 霧深い森にかけられているという、呪い。
 ――自分の心の中を強く支配している者が、自分を殺しに現れる。
 それは自分の大切な人であったり……強い憎しみを抱く者だったり、するのだという。
(「殺したい奴なら唯一人、奴なら楽勝だ」)
 加賀宮・識(焔術師・f10999)のとって、恐らく自分を殺しに来るだろうと思う心当たりのある者は、唯一人。
 それが分かっている今……森の幻影など、何というものでもない。
 識は躊躇することなく、森の奥深くまで歩みを進めていくも。
 周囲の霧がより深くなったような……そんな気がして。
 ふと足を止めた、その時だった。 
 霧の森の奥から現れた、人影。
 それは――細身で、黒髪と青い瞳を持つ、青年であった。
 そしてその青年の姿を見て、普段から円らなその紫色の瞳を、より一層大きく見開く識。
「し、しょう……なんでっ」
 自分を殺しにくるのは――奴ではないのか……?
 でも眼前にいるのは、会いたくてでももう会えない――懐かしくて切なくて、大切な人。
 そんな大切な人の姿を映した視界が、思わず滲んで、ぼやけるけれど。
「……!」
 にやりと彼が笑んだのが見えた瞬間、閃く斬撃が識目掛け、振り下ろされて。
 間一髪、何とか身を翻して躱したけれど……追い詰められてしまう。
 ――攻撃などできるはずがない。
 そうぎゅっと、識が瞳を閉じた……その時だった。
『シキ』
 響くその声は、目の前からではない。
 確かに……あの人が、自分を呼ぶ声。
 刹那、眼前の彼からまた一撃、容赦のない斬撃が放たれるけれど。
 自分を呼ぶ声に導かれるかのように、紙一重のところで攻撃を避けた識は――己の腕を、肩から指先まで躊躇なく切り裂く。
 迸る鮮やかな赤。だがその赤は、最大限に燃え盛る紅蓮の炎となって。
 漆黒が支配するこの世界を、熱き彩りが染め上げる。
 ……そして。
「私の師匠を、ノイズ義兄を、侮辱するなっ」
「……っ!」
 刹那、眼前の幻影へと叩きつけられ、燃やし焦がすのは、激しい紅蓮の炎。
 大切な人の姿を模した亡霊はその炎に焼かれ、地に崩れ落ちる。
 そんな亡霊の姿へと目を向けることもなく。
 識は、星一つ瞬かぬ漆黒の天を仰ぎ、そっと、もう叶わぬその想いを馳せるのだった。
 ――会いたいよ、ノイズ義兄さん、と。

成功 🔵​🔵​🔴​

フォルク・リア
幻影をみて
「やはりそうか。
たかが幻影、しかし退く訳には行かない。」
現れるのはダークセイヴァーのヴァンパイア。
ただし、それは特定の個体を指すものではない。

(この世界を支配する正に神。
それが強くても、怖くても。俺は抗わなければいけない。
今迄の戦いで倒れる事はあっても立ち上がる事が出来た。
しかし、幻とはいえここで戦わなければ心が折れる。
そうすればまた立つ事はできなくなってしまう。)
「敵に負ける事はあっても
自分の弱さに負けるのは我慢ならない。
覚悟してもらうぞ。」

幻惑から解けたら間髪入れずにウィザード・ミサイルを
近くにいる亡霊に放ち
「どうも今日は寝起きが悪い。
眠気覚ましに、派手に行かせてもらう。」



 深い森を少しずつ、じわりじわりと支配していくかのように。
 漆黒の世界に広がるのは、視界を奪うほどの濃い霧。
 そしてその霧には、呪いがかかけられているのだという――自分の心の中を強く支配している者が、自分を殺しにくる、と。
 フォルク・リア(黄泉への導・f05375)にとって。
 自分自身の心に強く在る存在が何か、想像には難くなく。
「やはりそうか。たかが幻影、しかし退く訳には行かない」
 霧の中から現れたその存在を、フードの奥の紫を湛える瞳に映した。
 夜と闇に覆われ、異端の神々が跋扈する、このダークセイヴァーの世界。
 フォルクの眼前に現れたのは、この世界を支配するヴァンパイアであった。
 ただそれは、特定の個体を示すのもではなく。
(「この世界を支配する正に神。それが強くても、怖くても。俺は抗わなければいけない」)
 彼の心に強く在るのは――ヴァンパイアという存在、そのものである。
 ヴァンパイアの完全なる支配下にあるこの世界で。
 神であり強者であるその存在は脅威で。でも……フォルクはこれまで、その存在に抗ってきて。
 それは、これからも同じ。
 そしてこれまでの戦いで倒れる事はあっても、立ち上がる事が出来たけれど。
(「しかし、幻とはいえここで戦わなければ心が折れる。そうすればまた立つ事はできなくなってしまう」)
 だからフォルクは、現れたヴァンパイアへと抗うべく、魂喰らう大鎌を封じた呪われし黒杖を翳した。
 強大な力を以って捻じ伏せられることはあったとしても。
「敵に負ける事はあっても、自分の弱さに負けるのは我慢ならない。覚悟してもらうぞ」
 自分の心が映し出された幻影に、屈するわけにはいかないから。
 フォルクは全力を込めて、魔力を編み出す。
 それは燃え盛る炎の矢となり、深い漆黒に支配された世界を、仄かな赤に照らす。
 そして――恐れの気持ちを振り払うように、ヴァンパイアへと向けてそれが放たれれば。
 撃ち出された燃え盛る炎の矢の衝撃が、この世界の支配者の姿を象った幻影の正体を暴く。
 フォルクの周囲に蠢いているのは……この森に巣食う、この地に縛り付けられた亡霊たちであった。
 フォルクは、そんな亡霊たちをぐるりと一瞥して。
「どうも今日は寝起きが悪い。眠気覚ましに、派手に行かせてもらう」
 目の覚めるような鮮やかな炎の矢を再び生み出すと。
 宣言通り派手に、完膚なきまでに亡霊を、燃やし尽くすのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

シーラ・フリュー
リザさんが犠牲になるのを見過ごせませんが…なるほど、呪いに幻影。中々厄介な場所ですね…。
ですけど、こんな所でなるべく足止めは食らいたくないです…。

私の幻影…特別大切な人は居ませんし、だとしたら…あぁ、母さん。貴女でしたか。…思っていた以上に、貴女の事を憎んでいたんでしょうか…。
…まぁ、非日常に叩き落されて私が私で無くなった原因ですし、憎むなと言う方が無理なのかも…と。幻影にぼやいても仕方無いですね。

でも1つだけ…そのおかげで強くなれた事には感謝しています。だからもう…私は貴女を恐れない。
リボルバーを構え、返り血も気にせず【猟犬の咆哮】で躊躇いなく撃ち抜きますね。生憎、未練はもうありませんので。



 残酷な赤に染まるのは、純白の花嫁。
 だが、その花嫁が心に復讐心を宿したまま赴いたヴァンパイアの屋敷は、この深い森を超えた先。
 花嫁を助けたければ……深い呪いの霧が支配する、『霧幻の森』を抜けなければならない。
(「リザさんが犠牲になるのを見過ごせませんが……なるほど、呪いに幻影。中々厄介な場所ですね……」)
 そう深い森を進みながら、シーラ・フリュー(天然ポーカーフェイス・f00863)は、ふるりと小さく首を振る。
 ――ですけど、こんな所でなるべく足止めは食らいたくないです……と。
 立ち込める霧は、奥へと進むほどに、深く暗く濃さを増して。
 森だけでなく、侵入者の心もあわよくば覆わんと。
 じわり、少しずつ浸蝕せんと目論む。
 この森に現れるという幻影は――その者の心に強く存在する人、なのだという。
 それは……愛情であったり、親しみであったり、はたまた憎しみであったり。抱く感情の種類は問わないようだ。
 ただひたすらに、侵入者の心を抉るような――そんな姿を象り、殺しに来るのだという。
「私の幻影……特別大切な人は居ませんし、だとしたら……」
 そうふと紡いだ、刹那。
 深い森の奥から現れたその存在に、シーラは緑を湛えるその瞳をそっと細める。
「あぁ、母さん。貴女でしたか」
 紡ぐその声は、淡々としているような響きをしているけれど。
 ……思っていた以上に、貴女の事を憎んでいたんでしょうか……。
 ふと、己の心をはかろうとするシーラ。
 でも、思い返せば。それもまぁ、納得はできるかもしれない。
「……まぁ、非日常に叩き落されて私が私で無くなった原因ですし、憎むなと言う方が無理なのかも……と」
 幻影にぼやいても仕方無いですね、と。シーラはひとつ小さく息をつく。
 憎んでしまうのも、仕方がないような。そんな仕打ちは確かにされたけれど。
 でも……ひとつだけ。
 感謝していることが、ある。
 シーラがそう母の幻影へと向けるのは――太陽のマークが入った、大型リボルバー。
 ひとつだけ。母に感謝していること……それは。
「おかげで強くなれた事には感謝しています」
 ――だからもう……私は貴女を恐れない。
 刹那、目にも止まらぬ速さでリロードした銃の引き金を、躊躇いなく引くシーラ。
 そして、遠距離武器を至近距離で撃った、その威力の大きさを物語るかのように。
 赤が激しく飛沫いて飛び散り、赤を撒き散らす母の体が、びくんっとその威力の大きさに波打って。
 返る鮮血を浴びても表情を変えず――猟犬の咆哮の如き銃撃で、その身体を撃ち抜いたシーラは。
 ――生憎、未練はもうありませんので。
 そう、赤に塗れ沈んだ、母であったものを振り返ることなく。
 深い霧が立ち込める森の、その先へと急ぐのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

マリス・ステラ
【WIZ】見知らぬ幼女と対峙する

「私は巡礼の旅をしているマリスと申します」

"彼女"が現れたことに私は安堵している
"彼"ではなく見知らぬひとだから
私にとって"彼"は過去であり、生きていた時でさえ『心の中を強く支配している』かと問われると、それは違ったと思う
それを薄情と糾弾されれば、否定することはできません

"彼"は私の名付け親で、大切な家族で、忘れたくない人で、初めての人でした

「愛していました。今でも愛していると思います」

だからこそ、私は囚われない
"彼"は過去だから
私は現在を生きて、未来を生きていくから
死んで私自身が過去になるその時まで

幼女を抱きしめて『祈り』を捧げる
幻はいつの間にか消えていた



 漆黒の森の暗闇を照らすのは、星の如き煌めき。
 マリス・ステラ(星を宿す者・f03202)は、深い霧の中、現れた人物の姿に……心の内で密かに、ホッとする。
 眼前に佇むのは、見知らぬ幼き少女。
 その顔は知らぬ人のもので――"彼"ではなかったから。
 いや、彼はもう、マリスにとっては過去。
 だから……生きていた時でさえ、『心の中を強く支配している』かと問われると。
 それは違ったと、マリスは改めて思う。
 その証拠が、眼前の幼女。
 "彼"が完全に自分にとって過去ではないのならば。
 今、この場に現れ、自分を殺しに来たのは――きっと、"彼"であっただろう。
 そして、そうではなかったことに……マリスは密かに安堵して。
 完全に"彼"を過去にした自分が、薄情と糾弾されても、否定することはできないと、そう思う。
 "彼"はマリスの名付け親で――大切な家族で、忘れたくない人で、初めての人であった。
 そして人を惹きつけて止まないその星の転がるような音で、マリスは紡ぐ。
「愛していました。今でも愛していると思います」
 ――だからこそ、私は囚われない。
 "彼"はもう、過去でしかなくて。
(「私は現在を生きて、未来を生きていくから」)
 死んで私自身が過去になる――その時まで。
 マリスはそう、星を宿す青き瞳をふと細めた後。
 森の奥から現れた幼女へと、ぺこりと丁寧にお辞儀をして。 
「私は巡礼の旅をしているマリスと申します」
 そう名乗った、刹那――現れた少女の身体をぎゅっと優しく、抱きしめる。
 そして……少女のために、祈りを捧げたのだった。
 瞬間、マリスの全身から放つ光が、殺意を漲らせていた幼女を、ふわりと包み込んで。
 まるで、無数の星が瞬くかのように――その姿は、闇のいろが支配する天へと溶けこむように。
 躯の海へと、還っていったのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

東雲・円月
双子の姉の咲夜(f00865)と共に
※自分を殺しに来る幻影はこの双子の姉です

霧が深い。咲夜、迷子にならないように……咲夜?
咲夜、何処に行った、おい!?

ん、先に行ってたのか。びっくりさせるなよ
ほら、迷子にならないように手を繋ごう
本当に双子なのに性格が全然ッ……!?

え……?
な、なんだ、なんで俺の腹が裂けて……?
さ……咲夜、何でお前の手がそんなに汚れてるんだ……?
お前が……お前が俺を……?

ッ!?
今のが幻影?
……でもなんだ、物凄く現実味があった、な
しかしまァ、良くもやってくれましたね……
「好い夢」を見せてくれたお礼、きっちりとさせて貰いましょうかッ!

咲夜……今度は本物の咲夜か?
……そうか、「好かった」


東雲・咲夜
双子の弟・えっくん(f00841)と

うぅ…どこいかはったん
と…霧の中、見慣れた姿に胸を撫で下ろし
ああ、えっくん
よかった、迷子にならはったんかと
早う先へ進み……えっ?

気付けば彼の腕の中
大きくて逞しい
子供の頃とはえらい違うて
途端に身体全部が熱い心臓になったみたい
あかん、弟やのに…

そして耳元で囁かれる言葉は、…――

この現実が夢であったなら
そないに願った事が幾度ありましょうや
せやからその「告白」に
瞳に溢れる喜びを抑えきれず

……えっ…?

夢のような幸せも一瞬
何かが背中に突き刺さったと
理解するんが遅うなってしもた

…えっくんや、ない…
水の槍の『属性攻撃』を

合流後
ああ、えっくん…無事やった
血が……早う手当てせな



 森の奥へと進むたび、深く濃くなっていく霧。
 それはまるで――ともに並んで征く双子の姉弟を、お互いに攫ってしまわんとしているかのように。
 すぐそばにいる人が一体誰なのかさえも認識できないほどの濃さを、孕んでいる。
 東雲・円月(桜花銀月・f00841)はそんな光景に藍色の瞳を細めてから。
「霧が深い。咲夜、迷子にならないように……咲夜?」
 ともに赴いた姉、東雲・咲夜(桜歌の巫女・f00865)を振り返るけれど。
「咲夜、何処に行った、おい!?」
 その姿を見失って。深い霧に覆われた漆黒の森の中で、必死にその目を凝らす。
 その時――目の前に、ひとつの人影が。
 それは誰でもない、探していた咲夜のもので。
「ん、先に行ってたのか。びっくりさせるなよ。ほら、迷子にならないように手を繋ごう」
 深い霧に飲み込まれて……お互いがもう逸れないように、と。
 円月はそう、咲夜へと手を差し伸べるけれど。
「本当に双子なのに性格が全然ッ……!?」
 突然感じた妙なあたたかさに――姉と同じいろをした双眸を、思わず大きく見開く。
 感じた生あたたかさは、繋がれた手から伝わる体温ではなくて。
「え……? な、なんだ、なんで俺の腹が裂けて……?」
 引き裂かれた腹部からどくどくと流れ落ちる、赤の温もりであった。
 そして一体、何が起こったのか――円月は、眼前のそれを見て、嫌でも理解してしまうのだった。
「さ……咲夜、何でお前の手がそんなに汚れてるんだ……?」
 自分の血に濡れた……姉の、その真っ赤な手を見れば。
 ――お前が……お前が俺を……?
 円月がそう咲夜へと、戸惑いと驚きの色を隠せない視線を向ければ。
 ぼんやりと……姉の輪郭がふいにぼやけ、薄れて。
「ッ!?」
 咲夜の姿を象っていた亡霊が円月に再び襲い掛からんと、ゆらり、闇の中を揺らめく。
 ――今のが幻影?
 円月はふと、聞いた森の霧の呪いを思い出す。
 ――自分の心の中を強く支配している者が、自分を殺しに現れる。
 自分の腹を引き裂いた咲夜は、森の魔力がみせた幻影。
「……でもなんだ、物凄く現実味があった、な」
 ぽたりと地に滴り落ちる赤のいろに、円月はそうぽつりと呟いた後。
 しかしまァ、良くもやってくれましたね……と、名もなき無骨な両刃の巨大斧を構えて。
 ――「好い夢」を見せてくれたお礼、きっちりとさせて貰いましょうかッ!
 そう、自分が飛沫かせた赤に塗れている亡霊へと、容赦なく、重い斧の一撃を振り下ろして。
 その両刃で、敵を真っ二つに叩き斬ったのだった。

 そして、同じ頃。
「うぅ……どこいかはったん」
 深い霧の中、逸れてしまった弟の姿を探す咲夜。
 深く濃い霧の中に飲みこまれてしまったようで……ざわめく不安を一刻も早く、振り払いたくて。
 円月を探し、深い森の中を、暫し彷徨う。
 でも、思いのほかすぐに目の前に現れた、見慣れたその姿。
 そんな円月の姿を見つけ、そっと胸を撫で下ろした後。
 咲夜は弟の隣に再び並ぶべく、傍に駆け寄るけれども。
「ああ、えっくん。よかった、迷子にならはったんかと。早う先へ進み……えっ?」
 刹那――驚いたように、弟と同じ藍色の瞳を見開くのだった。
 気が付けば……全身で感じる、円月の体温の温もり。
 その力は、とても強くて。
 抱き寄せられた腕は――大きくて、逞しい。
 子供のころとは違う、そんな円月の逞しさに。
 途端に身体全部が熱い心臓になったみたいに、ドキドキと速い脈を打って。
 あかん、弟やのに……そう思いながらも。
 包まれたその温もりを引き離すことも、できない。
 そして……そっと。吐息擽る耳元で、円月はこう、咲夜に囁く。
 ――……、と。
 深い森の霧は――侵入者の心を、正直に映し出す。
 この現実が夢であったなら、そないに願った事が幾度ありましょうや……と。
 耳元で紡がれた――その『告白』に。
 咲夜は、藍を纏うその瞳いっぱいに溢れる喜びを抑えきれない。
 混ざり合うお互いの体温は、とてもあたたかくて。
 幸せ――そう紡ごうとした、その時だった。
「……えっ……?」
 夢のような幸せの終わりを告げたのは、背中に突き刺さった刃の感触。
 そして背中を流れ落ちる生あたたかさが、己の血のものだと理解するのに。
 一瞬、時間がかかってしまったけれど。
「……えっくんや、ない……」
 その呟きと同時に――水の槍の鋭撃が。
 彼の姿を象った亡霊へと、容赦なく突き刺さったのだった。

「咲夜……今度は本物の咲夜か?」
 深い霧の中で再び見つけた姿は、本物なのか、それとも偽物なのか……。
 そうそっと訊いてみた円月に、咲夜は頷き返して。
「ああ、えっくん……無事やった」
 血が……早う手当てせな、と。
 引き裂かれ真っ赤に染まった彼の傷に、心配気な表情を宿す。
 そんないつもの咲夜と変わらない眼前の姉を見つめ、今度こそ本物と合流できたことに安堵しながらも。
 円月はこう、紡ぐのだった――そうか、「好かった」……と。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

月守・ユエ
心を支配している人
月影は僕の人格であり大切な子…
ちょっと違う

だとしたら…
考え込むのは故郷の事
僕を閉じ込めていた人がいた
ボクの唄声を閉じ込めた
今は行方の分からぬ人…
昔、僕はその人が好きでその人の為に歌ってた

兄が目の前にいた

自分と似た顔した人は
また己をどこかへ閉じ込めようと
否、刀を構えてる
愛おし気に狂気的な笑みで彼は静かに歩み寄る

息が止まりそうになった

「おいで
逃げてもお前は俺の物
逃げるなんて赦さない」

無意識にオルタナティブダブル
月影が飛び出て
刀…終焉ノ月律を抜く

胸糞悪い幻影
ボクらが憎むべき敵を映すなんて!

躊躇なく先制攻撃
呪詛を織り
串刺しにしようとする早業
幻影だとしてもこいつが現れるのは赦さない!!



 深い森に立ち込める霧がみせるという、幻影。
 それは――自分の心の中を強く支配している者が自分を殺しに現れる、のだと。
 月守・ユエ(月ノ歌葬曲・f05601)は聞いた予知を思い返しながら、漆黒の髪を小さく揺らす。
「月影は僕の人格であり大切な子……ちょっと違う」
 ――だとしたら……。
 ユエの脳裏に浮かぶのは、故郷の事。
「僕を閉じ込めていた人がいた。ボクの唄声を閉じ込めた。今は行方の分からぬ人……」
 そして、その昔。
 ユエはその人が好きで――その人の為に、歌を歌っていた。
 そんなことを思い出しながら。
 ふと……顔を上げたユエの月の様な瞳に飛び込んできたのは。
 自分と似た顔した人――兄が、目の前にいた。
 そしてまたどこかへ閉じ込めようと……否、刀を構えているのが見える。
 愛おし気で、そして狂気的な。
 思わず、息が止まりそうになる……そんな笑みを宿して、兄は静かに歩み寄ってきて。
 両端を釣り上げたその口が、言の葉を紡ぐ。
「おいで。逃げてもお前は俺の物。逃げるなんて赦さない」
 優しい響きの中に孕んだ、恐怖の音色。
 瞬間――無意識に発動したのは、オルタナティブ・ダブル。
 漆黒の世界へと飛び出した月影が、忌みの力宿りし月光の刃を抜いて。
「胸糞悪い幻影……ボクらが憎むべき敵を映すなんて!」
 ユエはそう呪詛を織り、先制攻撃の早業を繰り出す。
 そして、月影とともに。
「幻影だとしてもこいつが現れるのは赦さない!!」
「……!」
 躊躇なく繰り出した二振りの刃で同時に――眼前の兄を象ったものを、串刺しにしたのだった

成功 🔵​🔵​🔴​

フィリオ・グラースラム
心の中を強く支配している人ですの?
思い当たりませんけれど(うぅん)

…にゃ?
真っ白なドレスがキラキラで、とっても綺麗な女の人ですの
始めてお会いする方だと思うのですけれど…
雪ちゃん、どうしたにょですか?
なんだか、落ち着きがないような…

にゃ。何だか、あたまがぼんやりな、かんじに…

…えぇ、私の事は心配しなくても大丈夫ですよ
ユーキオーングランオルム
ちゃんと分かっています

私たちは女王様の剣であり盾
女王様が命を捧げよとおっしゃるならば
どうぞそのお心のままに
この身に剣を振り下ろしてくださいませ

にゃ!もしやフィオ…いま眠って!?
い、いえそんなはずは
騎士たるもの、戦場で居眠りなんていたしませんにょー!



 深くて濃い霧が充満している、そんな漆黒の世界でも恐れることなく。
 人を守るという矜持を抱き森を征く騎士さんは、フィリオ・グラースラム(煌氷の刃・f10324)。
 フィリオは視界の悪い森をきょろきょろと見回しながらも。
「心の中を強く支配している人ですの? 思い当たりませんけれど」
 うぅん、と、そう首を大きく傾げる。
 けれど……そんなフィリオの目の前に、突如現れたのは、一人の女性であった。
「……にゃ? 真っ白なドレスがキラキラで、とっても綺麗な女の人ですの」
 でも、始めてお会いする方だと思うのですけれど……と。
 その綺麗な人が誰なのか、心当たりがないフィリオ。
 けれど――そんなフィリオとは逆に。
「雪ちゃん、どうしたにょですか? なんだか、落ち着きがないような……」
 女性が現れた瞬間から、様子がおかしい雪ちゃんをフィリオは見遣って。
 ――そして。
「にゃ。何だか、あたまがぼんやりな、かんじに……」
 ……響くのは、声。
 ――えぇ、私の事は心配しなくても大丈夫ですよ、ユーキオーングランオルム。
 ――ちゃんと分かっています、私たちは女王様の剣であり盾。
 ――女王様が命を捧げよとおっしゃるならば、どうぞそのお心のままに……この身に剣を振り下ろしてくださいませ。
 そしてスラリと抜かれ閃く……鋭利な輝き。
 瞬間、ハッとフィリオは我に返って。
「にゃ! もしやフィオ……いま眠って!?」
 い、いえそんなはずは、と慌てて首を振る。
 それから、漆黒の森の中で、こう叫ぶのだった。
 騎士たるもの、戦場で居眠りなんていたしませんにょー! と。
 そしてフィリオは深い森を、さらに奥へと、進んで征く。
 くるりと深い霧漂う天を一回転した、雪ちゃん――ユーキオーングランオルムと共に。

成功 🔵​🔵​🔴​

アストリーゼ・レギンレイヴ
【セレナリーゼ(f16525)と】


深さを増してゆく霧の中
逸れた筈の妹、セレナの姿が其処にある
誰より大切な、今やたった一人の家族

背に従えた竜神の姿を見て、それが幻であると悟る
其の加護は部族が亡んだ日に失われ
あの子がその権能を揮う事は、もう二度とない筈だから

嗚呼、だけれど
それが幻であると知ったとて
わたしが、あの子を傷つけられるわけなどない

……けれど
喩え幻であるとはいえ
あの子が厭った痛み、家族を殺める罪を
今一度背負わせるなんて、

――

刃を振るい、幻を切り払う
罪も、痛みもすべてあたしが背負う
もうあの子の肩にはひとつたりと背負わせない

亡霊を斬り散らして、あの子を捜すわ
……屹度、怖い思いをしたのでしょうから


セレナリーゼ・レギンレイヴ
【アストリーゼ(f00658)と】
徐々に深くなっていく霧の中、
アストお姉ちゃんと分かれてしまって

不意にやってくる人影
嗚呼
ただの噂と、思ってましたのに
心を占める人、唯一の家族、大切な姉
幻だと理解していても、その姿を倒すことなどできず
近づかれればダンピールの膂力で捕まれるのでしょう
首に感じる牙の痛みは、予測より痛くはなく
唯々、脈打つ命が吸われているのだけが感じられます
このまま、……もし、このまま死んでしまったら、
そうしたら許してくださるでしょうか

ふと気が付けば霧の向こう
さきほどの幻影を振り払うように首を振って
天からの光で亡霊の群れを祓いましょう
あれはきっと、悪い夢です
だから、早く忘れるべきなんです



 ――先程まで、一緒にいたのに。
 深く濃く森を覆う霧が、姉妹の二人を引き離す。
 アストリーゼ・レギンレイヴ(闇よりなお黒き夜・f00658)は深さを増していく霧の中、先程逸れてしまった妹・セレナリーゼ・レギンレイヴ(Ⅵ度目の星月夜・f16525)の姿を見つけて。
 声を掛けるべき近づかんとするも……それが幻手あることを、悟る。
 誰より大切な、今やたった一人の家族であるセレナリーゼ。
 深い霧の奥から現れた妹がその背に従えた、竜神の姿。
 その加護が、眼前の妹が幻惑である、何よりの証拠。
 それは、部族が亡んだあの日に、失われたもので。
(「あの子がその権能を揮う事は、もう二度とない筈だから」)
 ……けれど。
 ……嗚呼、だけれど。
 それが幻であると知ったとて――わたしが、あの子を傷つけられるわけなどない。
 アストリーゼはふるりと、一度はその首を横に振ったけれども。
(「……けれど、喩え幻であるとはいえ。あの子が厭った痛み、家族を殺める罪を、今一度背負わせるなんて――」)
 そんなことは、断じて、もう二度と――させるわけには、いかない。
 血と月のいろ、このふたつを宿す瞳で、アストリーゼは眼前のセレナリーゼへと確りと捉えて。
 身の丈ほどもある禍々しい大剣を振るい……闇に閃く月の如き斬撃で、幻を斬り払う。
 そして現れた亡霊たちを斬り散らしながら。
 誓いを立てるかのように――アストリーゼは、はっきりとこう、口にする。
「罪も、痛みもすべてあたしが背負う。もうあの子の肩にはひとつたりと背負わせない」
 それから、全ての亡霊を躯の海へと還した後。
 深い霧の森で、大切な妹の姿を探しはじめるアストリーゼ。
 ……屹度、怖い思いをしたのでしょうから、と。

 そして――セレナリーゼの前にも、不意に人影が現れて。
 その姿を月と天穹の双眸で映し、嗚呼、と言の葉を零す。
「ただの噂と、思ってましたのに」
 そう……セレナリーゼの前に姿をみせたのは、心を占める人――唯一の家族で、大切な姉・アストリーゼ。
 あの姉は、幻だと。
 この深く濃い霧がみせる幻影だと……そう、頭では理解しているのだけれど。
 でも――その姿を象る者を倒すことなど、セレナリーゼにはできなくて。
「……!」
 すぐ傍までやって来た姉の姿をした幻影に、ダンピールの膂力で捕まれる。
 そして……首に突き立てられた、鋭い牙。
 でもそれは、予測よりも痛くはなくて。
 ……どくん、と。
 セレナリーゼが感じるのは――唯々、脈打つ命が吸われているという、そんな感覚だけ。
 そして月と天穹のいろをそっと閉じ、姉の牙を受け入れながらも思う。
(「このまま、……もし、このまま死んでしまったら」)
 ――そうしたら許してくださるでしょうか、と。
 そう、思うけれど。
 でも……次に瞳を開いた、その時。
 セレナリーゼは深い霧の呪いを振り払うかの如く、白金の髪を揺らし、大きく首を振って。
 漆黒の森に降らせた天からの光で、周囲に蠢く亡霊どもを、討ち祓う。
 そして、今度こそ本物の大切な姉を探しながらも。
 首にはしった痛みを忘れるように――そっと、その首を振る。
(「あれはきっと、悪い夢です」)
 だから――早く忘れるべきなんです、と。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

鶴澤・白雪
【燦星の宿】

あたしと同じ境遇ね
安寧の為にあたし達を差し出した奴らも妹を殺した婚約者を死ぬほど恨んでいたから気持ちは分かるわ
あのヴァンパイアさえいなければ…あたしも殺してやりたいわ


現れたのは自由を求めた姉のために自ら身代わりに嫁いで殺された妹

驚いた後に自嘲気味に笑う
妹に殺されるなら本望だわ、気が済むならあたしはそれでも構わない

…だけど、あの子は死んだの
目の前に現れるはずがないのよ

アハ…いい趣味してるじゃない
あの子の姿であたしの前に現れたことを地獄の底で後悔しろ!

憎悪と怒りのままに【全力魔法】を使って『深紅のアマリリス』を使用

思わず舌打ちをして一度気持ちを切り替えてから同伴者の安否の確認に行くわ


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
【燦星の宿】
幻影か…否、今は余計な事を考えずに集中しよう

森の中、目前に赤毛の最後の所有者が現れたなら思わず動きが止まる
距離を意図的に獲りつつも、確かに想いを寄せていた相手の姿に攻撃の手は当然伸びぬ…が
共に居る仲間の事を思い出せば大きく息を吸い唇から漏らした【罪告げの黒霧】を相手の顔へと吹きかけよう
…あの時ならば共に連れて行って欲しいと願ったのだろうが…今は大事に思う仲間が居る故に
振り払った後は宵と鶴澤の元へ
…宵は以前助けて貰った故に、今度は俺が助ける番だ
幻影の途中ならば肩に手を置き戻って来いと声を
鶴澤は確りしている様で以外と脆そう故…心配…は要らんかったな…
…本当に厄介な幻影を見せてくれる物だ


逢坂・宵
【燦星の宿】
幻影には強いと自負していますが、今回のこれは厄介ですね

僕を必要とし造らせ望むままに僕を本来の僕として使ってくれた最初の主人
彼の姿が見える、疾うに死んだはずだというのに
あれから過ごした地獄の日々を思えばこそ、貴方とのあの時間は光り輝くようでした

願わくば……と思ったその瞬間に勇ましく聞こえる声に、肩を掴む手に、はっと我に返る
……そうですね、今の僕は独りではない
掛け替えのない仲間がいるのです
悪行を撒き散らす亡者どもよ
美しい流星を冥途の土産に、塵屑残らず葬り去って差し上げましょう
【高速詠唱】【全力魔法】【属性攻撃】【範囲攻撃】【2回攻撃】を乗せた
『天撃アストロフィジックス』で攻撃します



 同行していたはずの、ザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)と逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)と逸れてしまって。
 ひとり、深い霧の森を彷徨うのは、鶴澤・白雪(春秋パラドックス・f09233)。
 二人とは逸れてしまったけれど……向かう場所は、一緒。
 血に塗れ殺されてしまうという花嫁がいる、森を抜けた先のヴァンパイアの館。
「あたしと同じ境遇ね」
 深い霧の中、白雪はふとそう、暗闇に紡いで。
(「安寧の為にあたし達を差し出した奴らも妹を殺した婚約者を死ぬほど恨んでいたから気持ちは分かるわ」)
 心の奥底から湧き、渦巻く感情は――殺意。
「あのヴァンパイアさえいなければ……あたしも殺してやりたいわ」
 でも――白雪が今、殺すべき相手は。
 恨みの気持ちを抱く、あのヴァンパイアではなくて。
 深い深い霧の奥から現れた、妹。
 自由を求めた姉のために、自ら身代わりに嫁いで。
 そして、殺された――妹。
 その姿に、白雪は一瞬、驚いたようにレッドスピネルの煌めき宿す瞳を見開くけれど。
「妹に殺されるなら本望だわ、気が済むならあたしはそれでも構わない」
 そう、自嘲気味に笑う。
 ……けれど。
 ……だけど――あの子は、死んだ。
 誰でもない自分の、身代わりとなって。
「だがら、目の前に現れるはずがないのよ」
 アハ……いい趣味してるじゃない、と。
 ゆらり白雪が纏うその感情は――憎悪と怒り。
 その感情は、星の如く美しく輝くアマリリスの花弁へと乗せられて。
「あの子の姿であたしの前に現れたことを地獄の底で後悔しろ!」
 感情のまま、全力で放出した魔力で、咲き誇るその花弁を鋭き刃へと変えると。
 妹の姿をした敵を、容赦なく斬り裂く。
 そして地に崩れ落ちた、妹から亡霊の姿へと変化したソレに、思わず舌打ちをしてから。
 気持ちを切り替えて、ザッフィーロと宵の安否を確認するべく。
 漆黒の闇にオニキスを思わせる彩りを靡かせながら。
 深い霧の中を、再び歩き出すのだった。

 そして、同じ頃――やはり、白雪や宵と逸れたザッフィーロは。
 次第に深くなっていく霧が秘めるという呪いのことが、頭に過るけれど。
(「幻影か……否、今は余計な事を考えずに集中しよう」)
 小さく首を振り、同行者たちを探しながらも、深い森を抜けるべく前へと進む。
 ……けれど。
 そんなザッフィーロの足が、ふいにピタリと止まる。
 銀の瞳に飛び込んできたそのいろは――覆われた漆黒の闇の世界に映える、赤。
 それは彼の、最後の所有者の姿であった。
 ザッフィーロは瞳にただ映るその姿から、意図的に距離を取りつつも。
 やはり、確かに想いを寄せていたから――その存在に攻撃の手を伸ばすことは、当然、できないでいた。
 ――でも。
「!」
「……あの時ならば共に連れて行って欲しいと願ったのだろうが……」
 今は大事に思う仲間が居る故に、と。
 共に居る仲間の事を思い出したザッフィーロは、大きく息を吸い込んで。
 その唇から漏らした黒い毒霧の吐息をその顔へと容赦なく見舞い、眼前のオブリビオンを、躯の海へと還したのだった。
 そして幻影を振り払った後は。
 宵と白雪の姿を探し、ザッフィーロは深くなる森の霧の中へと、敢えて歩みを進める。
 以前助けて貰った故に――今度は俺が助ける番だ、と。

「幻影には強いと自負していますが、今回のこれは厄介ですね」
 ふっとそう、星が瞬く深宵の瞳を細めながら。
 深宵の天に映すその姿は――最初の主人。
 宵を必要とし造らせ、そして望むままに、宵を本来のものとして使ってくれた人。
 でも――そんな彼は、疾うに死んだはずだ。
 なのに……疾うに死んだはずだというのに。
 眼前には、彼の姿が見える。
「あれから過ごした地獄の日々を思えばこそ、貴方とのあの時間は光り輝くようでした」
 そして、願わくば……。
 そう紡がんとした、の時だった。
 ――戻って来い。
 ふいに宵の耳に響いたのは、勇ましく聞こえる声。
 そして、肩に乗せられた、大きな掌の感触。
 そんな肩に感じる仲間の手に、はっと我に返る宵。
 眼前の彼と過ごしたあの頃は、確かに、星の如く光り輝くような時間であった。
 けれども……それはもう、過去のこと。
 もう疾うに彼は死んだ。
 そして今、宵と共に在るのは――掛け替えのない仲間。
「……そうですね、今の僕は独りではない」
 宵はふと振り返り、その深宵の瞳にザッフィーロの姿を映してから。
「――悪行を撒き散らす亡者どもよ。美しい流星を冥途の土産に、塵屑残らず葬り去って差し上げましょう」
 宵が深く濃い漆黒へと降らせるのは――星の力を宿す、流星の矢。
 天を流れ降り注ぐその衝撃が、呪いを撒き散らす亡霊どもを的確に射抜いて。
 在るべき場所へと、還すのだった。

 そして合流を果たした二人は、白雪の姿を探して。
「鶴澤は確りしている様で以外と脆そう故……心配……は要らんかったな……」
 ザッフィーロはそう呟いている途中に、彼女の姿を見つけて。
 その無事な様子に、安堵したような表情を宿しつつも。
 ……本当に厄介な幻影を見せてくれる物だ、と。
 注意深く慎重に、深い霧が立ち込める中、もう逸れぬように。
 今度は3人揃って、先へと急ぐのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

シャオロン・リー
アドリブ歓迎
冷静に『何でお前だけ生きてんねん』優しく『迎えに来たで』
楽しそうに『ともに地獄で悪の限りを尽くそうではないか、同志』
相棒、師匠、頭領…やっぱお前らかぁ
みんな死んでもうて、俺だけ独りでめっちゃ淋しかってん
迎えに来てくれへんかて思っとったわ
せやから殺されたってもええよ
獣の爪で、毒の紫煙で、銃で

やられた分だけ、俺も暴れたるけどな!
元からそうやったやろ
俺らの面白おかしい悪の組織の理念は
《やられたらボス相手でもやり返せ》《積極的に仲間割れ》や
殺されたんやから、殺してええやろ!

槍で暴れ散らかすわ
幻とか解けへん方がええなぁ、テンション下がるし

俺がおらんと退屈やろけど、地獄でもーちょい待っててや?



 漆黒の深い深い霧の中――シャオロン・リー(PINEAPPLE ARMY・f16759)が琥珀色の瞳に映すのは。
 今、此処にいるわけがない人たち。
「何でお前だけ生きてんねん」
 冷静に響くそんなツッコミに。
「迎えに来たで」
 耳触りの良い、優しい響き。
「ともに地獄で悪の限りを尽くそうではないか、同志」
 そう紡がれるのは、楽しそうな声色。
「相棒、師匠、頭領……やっぱお前らかぁ」
 ふと呟いたシャオロンの脳裏に蘇るのは――小さな悪の組織に属していた時のこと。
 シャオロンはそんな懐かしい面々に、ふっと笑みを向けて。
「みんな死んでもうて、俺だけ独りでめっちゃ淋しかってん。迎えに来てくれへんかて思っとったわ」
 そして、こう続ける――せやから殺されたってもええよ、と。
 その言葉通り、シャオロンはその身に受け続ける。
 鋭く引き裂いて鮮やかな赤を飛沫かせる、獣の爪を。
 吸えば内側から全身を蝕み、相手を死へと誘う、毒の紫煙を。
 容赦なく引き金が引かれ、手に、足に、胸に、額に……そして心臓に狙って撃ち込まれる、銃撃を。
 だが、ただ黙って殺されるだけではない。
「……やられた分だけ、俺も暴れたるけどな!」
 元からそうやったやろ、と。
 シャオロンは赤に塗れたその顔に、人懐っこい笑みを浮かべる。
 ――やられたらボス相手でもやり返せ。
 ――積極的に仲間割れ。
 それが面白おかしい、その小さな悪の組織の理念だったから。
 だから……シャオロンも、その理念に従って。
「殺されたんやから、殺してええやろ!」
 血が噴き出し、滴り落ちることなんて、全く構わずに。
 握りしめた槍で、突き刺し、穿ち、抉って――三つ編みを躍らせ、存分に暴れ散らかす。
 懐かしく面白おかしい、この滾る感覚。
「幻とか解けへん方がええなぁ、テンション下がるし」
 だが、眼前の彼らは昔の仲間とは比べ物にならないくらい脆い、ただの亡霊の幻影。
 過去の仲間の姿が漆黒の森に溶けるように消えていく様を、シャオロンは見送りながら。
 ――俺がおらんと退屈やろけど、地獄でもーちょい待っててや?
 再び静寂が訪れた森の奥へと、歩みを進めるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
※アドリブ歓迎

…ん。心を強く支配している者…ね。
私の場合は姉替わりだった二人のどちらかか、あるいは…母親、かな?
いずれにせよ、誰が出て来ても惑わされる事は……え?

……現れたのは、残酷で傲慢な吸血鬼の人格が表になった、艶然と微笑する自分自身…。

…無意識のうちに最近、知り合った者達の血を吸いたいと私が感じていた事や、
本当は私を救ってくれた彼女達から受け継いだ世界を救う誓いより、
自身を呪縛している神への復讐こそ望んでいる事など、
次々と胸の奥にある弱い心を指摘され、違う、そんな事は無いと必死に否定する…。

…気付けば無抵抗に首筋に牙をたてられ多量の血を吸われ……。

幻惑が解けた段階で大鎌をなぎ払い攻撃する



 深い森に立ち込めるのは、妖しく濃い霧。
 その霧は、森の奥に進めば進むほど、濃さを増しているような気がする。
 そんな霧深い森を進みながらも。
「……ん。心を強く支配している者……ね」
 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)はふと呟き、考えてみる。
 この森に立ち込める霧にかけられた呪い。
 それは――自分の心の中を強く支配している者が自分を殺しに現れる、というもの。
(「私の場合は姉替わりだった二人のどちらかか、あるいは……母親、かな?」)
 リーヴァルディにとって、思い当たる人物は何人かいるけれど。
「いずれにせよ、誰が出て来ても惑わされる事は……え?」
 ……誰が現れても、惑わされることはない。
 そう……思っていたはずなのに。
 思わず足を止めたリーヴァルディの、大きく見開いた瞳に宿るのは――驚きの色。
 眼前にいるのは、艶然と微笑する残酷で傲慢な吸血鬼であった。
 そして、それは誰でもない――吸血鬼人格の、リーヴァルディ本人。
 予想外なその姿に驚きを隠せないリーヴァルディに。
 吸血鬼は、くすりと艶やかに笑みながら、こう口を開く。
 私は知っている――と。
 リーヴァルディが最近――無意識のうちに、知り合った者達の血を吸いたいと思っていることも。
 本当は救ってくれた彼女達から受け継いだ世界を救う誓いよりも――自身を呪縛している神への復讐こそ、望んでいるということも。
「違う、そんな事は無い」
 リーヴァルディは大きく首を振り、その言葉を必死に否定するけれど。
 次々と吸血鬼の自分に、胸の奥にある弱い心を指摘されて。
「……っ」
 首に突き立てられたその鋭い牙に、抗う事が……できない。
 首筋に鮮やかな赤が伝い、無抵抗に吸われるがまま、己に血を吸われ続ける。
 まるで――普段血を吸わぬ抑圧された吸血衝動を、ここぞとばかりに、自身の血で満たさんとするように。
 意識が遠くなり、世界がぐるりと回る感覚。
 だが、ふらつく足取りの中――リーヴァルディが握るのは、過去を刻み未来を閉ざすという大鎌。
 そして、深い霧の立ち込める漆黒の世界で。
 リーヴァルディはその刃で大きく薙ぎ払い、斬り裂いていく。
 その過去を刻む刃で――未来を見せた、亡霊どもを。

成功 🔵​🔵​🔴​

宵鍔・千鶴
アドリブ歓迎

心の中を支配するもの?
全て捨てた俺には関係無いと
そう信じていた筈なのに
霧の森に入れば酷く胸が軋んで吐き気がする
ぐらぐらする視界の先、霞がかった向こう

懐かしい声、名を呼ぶ其れは余りに鮮明な姿

……母さん、

駆け寄り手を取って抱き締められれば
震えながら受け入れようと
けれど瞬間自分の脇腹から赫が滲む
自身を貫いたその刀は父のもの
仰ぎ見た歪んで笑うその顔は母ではない

…か、は…、っはぁ、
二度と、見たく無かったよ、アンタの顔だけは

父の幻影を地面へと叩きつけて
未だ貫かれた刃を引き抜いて父へと振り下ろす
ぼたぼたと落ちた雫は血なのか、涙だったのか
もう解らない、唯悔しい
大丈夫、痛くない。こんなものは慣れてる



 自分の心の中を強く支配している者が自分を殺しに現れる――そんな、深い霧にかけられているという呪い。
(「心の中を支配するもの? 全て捨てた俺には関係無い」)
 そう、信じていた筈なのに。
 森に立ち込める霧の中を進むたび――酷く胸が軋んで、吐き気がする。
「……っ」
 宵鍔・千鶴(nyx・f00683)は大きく息を吐き、ぐっと無意識的に胸を押さえながらも。
 ぐらぐらと不安定に揺れる視界の先――霞がかかった向こう側に、誰かがいることに気付く。
 刹那、耳に聞こえる懐かしい響きが、自分の名を呼んで。
 見開かれた昏い紫の瞳に鮮明に飛び込んできたその姿は――。
「……母さん、」
 駆け寄り手を取って――そして、抱きしめられれば。
 震えながらも受け入れようと、千鶴はその優しい温もりに身を委ねんとする。
 だが――刹那感じる熱さは、弾け飛ぶような赫の飛沫。
 脇腹に突き立てられた刀が、みるみるとそのいろを広げ滲ませて。
 驚愕の色を宿す瞳で仰ぎ見れば――歪んで笑うその顔は、母のものではなかった。
「……か、は……、っはぁ、二度と、見たく無かったよ、アンタの顔だけは」
 そう、千鶴はぎりっと奥歯を噛みしめて。
 伸ばした手で父親の横面を乱暴に掴み、地面へと容赦なく叩きつける。
 そして、血が噴き出すことも構わずに、己の脇腹に刺さったままの刀を引き抜いた刹那。
 父親目掛け、一気に振り下ろす。
 そんな飛沫くを浴びながら、千鶴はぐっときつく、血の味がする唇を噛みしめる。
 ――もう解らない、唯悔しい。
 ぼたぼたと漆黒の森へと落ちる雫は、脇腹から滴る血なのか――それとも、瞳から零れた涙だったのか。
 千鶴はずるりと己の身を引き摺るように、深い霧の中を再び歩き始める。
 ――大丈夫、痛くない。こんなものは慣れてる。
 そう、鮮やかな赫に、その身をじわりと染めながら。

成功 🔵​🔵​🔴​

アッシュ・ランベルト
(…心の中を強く支配しているモノが出る森。
あいつが出てきたら。まだ、囚われてるってコト。なら、)
何度でも。殺さないと。

…やっぱり、お前が。出てくるんだ?
…俺は、もう。お前の人形じゃないから。
…俺は、もう。自由だから。
…また、殺してあげる。

鳥籠の記憶
高価なドレスを与えられ、たくさん愛を囁かれた
でも。あの夜。狂ったように俺を罵倒して
思い通りにならない人形は要らないと殺されそうになって。だから俺は
…あの時と同じ。もう一度。何度でも。俺がこの手で送り返す

『シーブズ・ギャンビット』で【串刺し】【目潰し】をしたあと、何度も【傷口をえぐる】で苦しめる
人形遊びはもうおしまい。……バイバイ。

アドリブ歓迎



 深い森の中を進むにつれ、濃くなっていく霧。
 そんな、じわりと森を浸蝕するような不気味な霧には、呪いがかけられているのだという。
(「……心の中を強く支配しているモノが出る森。あいつが出てきたら。まだ、囚われてるってコト。なら、」)
 ――何度でも。殺さないと。
 その時……ふと足を止め、顔を上げたアッシュ・ランベルト(虚・f00578)は。
 青を湛えたその瞳に映った存在に、ふっと息をついて。そして、口を開く。
「……やっぱり、お前が。出てくるんだ? ……俺は、もう。お前の人形じゃないから。……俺は、もう。自由だから」)
 ――また、殺してあげる。
 そう、漆黒の森に閃くダガーを手にする。
 同時に、脳内に蘇るのは……鳥籠の記憶。
 与えられたのは、華やかで高価なドレス。たくさんの囁かれた愛のことば。
 でも――あの夜。
 耳に響いたのは、愛を囁く言葉ではなく……狂ったように罵倒する声。
 そして、思い通りにならない人形は要らないと。
 殺されそうに、なったから。
「……だから俺は」
 ぽつりと、アッシュはそう零して。
 ――あの時と同じ。もう一度。何度でも。俺がこの手で送り返す。
 瞬間、幻影の両の瞳に突き刺さる刃。
 その瞳を赤の飛沫で塗り潰してから。躊躇なく、相手の身を串刺しにする。
 そして……何度も、何度も、何度も。
 突き立てた刃でぐりぐりと傷を抉り、飛び散る相手の赤に塗れながら。
「人形遊びはもうおしまい。……バイバイ」
 できるだけ苦しんで死ぬように。
 アッシュは、漆黒に閃くダガーを振り下ろすだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ステラ・アルゲン
カガリ(f04556)と

殺された愛する人の復讐ですか
過去に目の前で見たことがある
彼女の復讐を傍で

考えている間にカガリを見失う
姿を探している内に彼の姿を見る

あの城門が複製されて私を閉じ込めてくる
前に守るために閉じられた
今回は殺すために閉じられていると感じる
何度も見た。受けたくないとも思った敵を殺すための抑圧の門

…私の意志に関係せず閉じたら
鍵の剣として開けてくれと言ったのはお前だったな

以前の私では取り乱していたかもしれない
閉じ込められるのは嫌だから
でも今は鍵がこの手にある

扉をこじ開けて顔を見る
偽物だろ、遠慮なく斬るさ

本物でも殺されてたまるものか
殺すなら――くれ
そしたら…

カガリか?
今そっちに行くから


出水宮・カガリ
ステラ(f04503)と

幻影でも、こいびとの手で殺される方が、まだ…
…ああ、いや、うん

カガリは、ステラの剣で砕かれるなら、後悔は無い
だが、どうせなら破り甲斐のある…ステラ?
(彼女を見失い探すも、見つけたのは彼女の幻影
幻影は静かに剣を抜き襲い掛かってくる)

どうした、突然…その刃を向けてくれるのは、嬉しいが
(【鉄門扉の盾】でいなしつつ)
それほど、見くびられたか
ここでカガリが、他のものに殺されると
…いつか、剣のお前が役割を失って、居場所を失った時
最後にお前を仕舞うと約束した城門が、それほど脆くては務まらんよなぁ!
(盾の【シールドバッシュ】で弾き飛ばす)

ステラ、ステラ!
他のものも、一気に叩いてしまおう



 殺された愛する人の復讐のため、ヴァンパイアの元へと赴いたという少女。
 だがそんな彼女の末路は――仇討ちすら果たせず、無残にも殺されてしまうのだという。
 出水宮・カガリ(荒城の城門・f04556)は、心の中を強く支配している者が現れるという霧深い森を進みながら。
 共に征くステラ・アルゲン(流星の騎士・f04503)の姿を紫を帯びた瞳に映し、ふと口にする。
「幻影でも、こいびとの手で殺される方が、まだ……」
 でもすぐにそっと視線を逸らして、……ああ、いや、うん、と。
 そう、言葉を濁すけれど。
「カガリは、ステラの剣で砕かれるなら、後悔は無い。だが、どうせなら破り甲斐のある……ステラ?」
 ふと、次に顔を上げたその時――まるで、霧が彼女を攫ってしまったかのように。
 すぐ隣にいたはずのステラの姿が見えなくなっていた。
 そんな、いつの間にか周囲を覆っている深く濃い霧の中で。
 カガリは逸れてしまったステラを探し、そして、彼女の姿を見つけるけれど。
「……!」
 刹那、流星の如くスラリと抜かれた剣。
 カガリが見つけたのは――ステラの、幻影だった。
 流れるように閃く、青き剣撃。
 それを、鉄門扉の盾で確りといなしながら。
「どうした、突然……その刃を向けてくれるのは、嬉しいが」
 それほど、見くびられたか。ここでカガリが、他のものに殺されると――。
 カガリはそう真っ直ぐに、ステラを象る幻影へとその瞳を向けて。
 大気を割くかのような剣筋を見切り、再びそのカガリ自身である城門で成した盾でいなしながら。
「……いつか、剣のお前が役割を失って、居場所を失った時」
 迫りくる魔剣の鋭撃を弾き飛ばした後。
 ステラの幻影が微かに体勢を崩したその隙を、決して見逃さずに。
「最後にお前を仕舞うと約束した城門が、それほど脆くては務まらんよなぁ!」
 己の内側に、お前を仕舞いたい――そんな色を孕む瞳に映した眼前のステラへと、盾の衝撃を叩きつけて。
 幻影を吹き飛ばし……呪いを仕掛けた亡霊の姿へと、戻す。
 そんな地に崩れ落ちた幻影を振り返りもせずに。
 カガリは深い霧の中、再びステラの姿を探し始めるのだった。

「……殺された愛する人の復讐ですか」
 そう呟いたステラは、過去に目の前にみた光景をふと思い出す。
 その時、自分はそれを見ていた。彼女の復讐を――すぐ傍で。
「……カガリ?」
 ふと我に返り、顔を上げたステラであったが。
 隣についさっきまでいたカガリの姿が、見えなくなっている。
 見失ったカガリの名を呼びながら、ステラは深い霧の中を彷徨うも。
 靄のかかった向こう側に、彼らしき姿を見つけて。
 駆け寄ろうとした――その時だった。
「!」
 青きその瞳に映るのは――複製された城門。
 刹那……その内側に、閉じ込められる。
 以前は、守るために閉じ込められた城門の内側。
 だが今回は――殺すために閉じられていると。
 あの時と同じなはずなのに、でも全く違う感覚を、ステラは肌で感じる。
 そう、これは何度も目にして――そして受けたくないとも思った、敵を殺すための抑圧の門。
 ――閉じ込められるのは嫌だから。
 以前のステラであれば、取り乱していたかもしれない。
 でも、今は。
「……私の意志に関係せず閉じたら、鍵の剣として開けてくれと言ったのはお前だったな」
 今――この手には、鍵がある。
 ステラは、スッと青星の如き煌めきを纏う剣を抜いて。
 流れるような一閃で、その重い扉の鍵を開ける。
「……!」
 そして自分を見つめる眼前のカガリに目を遣り、首を小さく傾けると。
「偽物だろ、遠慮なく斬るさ」
 流星一閃――カガリを象る幻影を、天駆ける一筋の流星の如き閃きで、躊躇なく叩き斬ったのだった。
 そんなカガリの幻影が亡霊へと姿を変え、森に溶けるように消え失せたことを見届けながら。
「本物でも殺されてたまるものか」
 ステラは漆黒の森の闇の中、紡ぐ。

 殺すなら――くれ。
 そしたら……。

「……ステラ、ステラ!」
 ――その時、自分を呼ぶ声がして。
「カガリか?」
「会えてよかった。他のものも、一気に叩いてしまおう」
 無事再び出会うことができたカガリを映した瞳を、ステラはそっと細めてから。
「今そっちに行くから」
 今度は共に敵を倒すために。スラリと、再び流星の如き青の剣を抜いたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ヨハン・グレイン
霧幻の森か

現れた姿はやはり、というべきか
兄さん
あなたは必ず俺の前を往く

ああ、以前も幻で見たというのに
あの時はいつも通りの姿、顔、声
幻と分かりすぎて掻き消せたのに

向けられた明確な敵意に息が出来なくなる
そんなものは知らない、そんな顔は知らない
終ぞ聞いたことのない鋭い声に

動けなくなる

本当はこんな落伍者である弟を内心疎んでいるのではないかと
心の奥底で疑っては否定して

向けられる笑顔に安心していたのに

そんな顔をしないでください。お願いだ。

向けられる剣をただ避けるしか出来ない
その内に足は止まり
この人の手に掛かるなら……

直前に脳裏に過る少女の姿
翳した手は闇を放ち幻を討つ

……そうだな
悲しませる訳にはいかないから



 ――霧幻の森か、と。
 より一層深くなった気がする霧の中で。
 ヨハン・グレイン(闇揺・f05367)の足が、ふと止まる。
 深く濃い霧の向こう側から現れたその姿は……やはり、というべきか。
「……兄さん」
 あなたは必ず俺の前を往く、と。
 藍染まる瞳で、現れるだろうと……そう思い描いていたその姿を見つめる。
 以前も同じように、幻を見た。
 でも、その時は。
 いつも通りの姿、顔、声……だから、幻だと分かりすぎたから、掻き消せたけれど。
 ――そんなものは知らない、そんな顔は知らない。
 今すぐに目を逸らしたくて、到底見てなどいられないのに……でも、向けられたその視線から、逃げることができない。
 そして向けられる明確な敵意に、終ぞ聞いたことのない鋭い声に、息が出来なくなって。
 ――動けない。
 本当はこんな落伍者である弟を内心疎んでいるのではないかと心の奥底で疑っては否定して。 
 でも、いつも向けられる笑顔。それを見るたびに……安心していたのに。
「……そんな顔をしないでください。お願いだ」
 本当は……そんな顔をして、落伍者である弟を内心疎んでいるのですか?
 刹那、漆黒の闇に閃く鋭利な斬撃。
 ヨハンはただ、それを躱すことしかできず。
 そして自分を蔑むような冷たい瞳を向ける兄を見るたびに……心が、絶望のいろで蝕まれる。
 ――この人の手に掛かるなら……。
 まるでこの森に蔓延る霧のように。
 重く淀んだ心に、ふと一瞬、そんな思いが過るヨハン。
 ……けれど。
 振り下ろされた刃が、ヨハンの身を斬り裂く直前。
 その霧を晴らしたのは――脳裏に過った、少女の姿であった。
「……そうだな。悲しませる訳にはいかないから」
 刹那、翳したヨハンの手から放たれたのは――闇。
 その闇は、兄を象っていた幻影を容赦なく飲み込んで。
 侵入者の心を挫かんと生み出された霧の幻を討ち――呪いを纏っていた亡霊を、躯の海へと還したのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

蔵館・傾籠
一族の仮宿、蔵に置かれただけの身で薄い記憶にあるのは片割れの欠けた俺を薙刀と共に置いて行った娘。
懐に入れた生き物には甘く、敵となれば迷い無く屠った白く長い髪が靡く様を、ふわりと覚えている。
…どうせなら、こんなに退屈ならば俺も割って行ってくれよと思ったのは、一度や二度じゃない
お前に壊されたらどんな心地だろうなあ、白黒の双剣で舞う剣技を受け流すに留め、何処か期待に心は弾む。
運良く(反面悪く)残って、挙句に宿っちまった。
なぁ娘、壊せよ、試すに打って付けの機会だろう?

刃を受け堪えて立ち、指で拭う己の血を見て口許だけで笑んで
「…何だ、これも案外に、詰まらねえもんだな」
諦念めいた声色で振るうは太刀の一閃。



 一族の仮宿、蔵に置かれただけの身であった。
 そんな頃の――薄い記憶。
 深い霧の奥から、蔵館・傾籠(傾籠の花・f11800)の前に現れたその娘は。
 片割れの欠けた傾籠を、薙刀と共に置いて行った娘であった。
 懐に入れた生き物には甘くて。
 そして、敵となれば迷い無く屠った――戦場に靡く、白くて長い髪。
 その髪が風に踊るように、ふわりと覚えている。
 ……どうせなら、こんなに退屈ならば俺も割って行ってくれよと。
 そう思ったのは、一度や二度ではない。
「お前に壊されたらどんな心地だろうなあ」
 あの頃と、同じように。
 白く長い髪を靡かせながら振るわれる、舞うような白黒の双剣の閃き。
 それを、敢えて受け流すに留めながら。
 そっと細められた傾籠の紫の瞳に宿る色は――何処か心弾むような、期待。
「運良く、いや反面悪く……残って、挙句に宿っちまった」
 そして傾籠は、娘の前でその足を止める。
 ――なぁ娘、壊せよ、試すに打って付けの機会だろう?
 刹那、振り下ろされた刀が閃いて。
 白い娘の髪に、飛び散った赤き小さな花が咲き乱れた。
 だが、刃を受けたその身は、望む通りに壊れることはなく――受け堪え立っている。
 そんな、娘が浴びた己の赤の彩を指で拭い、口許だけで笑んで。 
「……何だ、これも案外に、詰まらねえもんだな」
 その手に握るは、鍔に傾籠の花透けた静かな印象の太刀。
 ふっとひとつ息を吐き、諦念めいた声色でそう傾籠が紡いだ刹那。
 漆黒の霧が支配した森にはしる、一閃。
 その斬撃が、白き娘を象っていたものを両断したのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

花狩・アシエト
憎いのはつらいよな
相手を思い出し続けなきゃいけないし
よし、必ず助けてやろう

幻影──グアスコ……
相棒さぁ、なんでよりによってお前が出てくるんだよ
そんなに俺を殺したいのか?
そんなに俺のこと嫌いだったのか?
お前の槍で貫かれるなら本望だ
俺には、お前を殺せない
孤児院のこと頼むぜ

お前が俺のことどう思ってるかなんてわかんねぇけどさ
俺はグアスコのこと、嫌いじゃない

(胸をひとつきされ)
いてぇけど、痛くねぇ
ニセモノか……本物なら、絶対外さない

ニセモノなら、死ね!
界刀閃牙でなで斬り

グアスコのニセモノやるなんて、百年早いんだよ!
あーくっそ、しんみりして損したぜ!
あ、た、大切になんか思ってねぇ!あーくそ

アドリブ歓迎



 瞬きの様な微かな光さえ届かせぬ、深く濃い霧に包まれた森を征きながら。
 花狩・アシエト(アジ・ダハーカ・f16490)がふと思い返すのは、復讐のためヴァンパイアの元へと赴いたという娘の話。
(「憎いのはつらいよな」)
 その娘・リザを突き動かした感情は、憎しみ。
 それはまるで呪いのように……相手を思い出し続けなければいけないものだから。
 そしてアシエトは、そんな感情を抱く花嫁に、思う。
 よし、必ず助けてやろう――と。
 だがその為には……深い霧がかかる、この呪いの森を超えなければならない。
 そしてその呪いは、アシエトの前にも、現れる。
「……相棒さぁ、なんでよりによってお前が出てくるんだよ」
 眼前に在るその姿は――グアスコ。
 アシエトは得物を握り迫る相棒に、問う。
 ――そんなに俺を殺したいのか?
 ――そんなに俺のこと嫌いだったのか?
 だが、いつもは口煩い相棒からの答えは、返ってはこない。
 かわりに感じるのは……自分に向けられた、その金色の瞳に宿る殺意だけ。
 アシエトはふっとひとつ息をついた後。相棒へと、真っ直ぐな視線を向けて。
「お前の槍で貫かれるなら本望だ」
 ……俺には、お前を殺せない。
「孤児院のこと頼むぜ」
 お前が俺のことどう思ってるかなんてわかんねぇけどさ、と。
 無防備なその身を、相棒の前に晒して。
 俺はグアスコのこと、嫌いじゃない――そう、紡いだ刹那。
「……ッ!」
 飛沫くのは、鮮やかな赤の色。
 突き放たれた槍の鋭撃が、アシエトの胸を確実に捉えた……けれども。
「いてぇけど、痛くねぇ」
 相棒の槍の腕は抜群のはず。
 怪力を誇るその槍の一撃を受ければ、痛いけれど痛くない、なんてことは有り得ない。
 だから――答えは、ひとつ。
「ニセモノか……本物なら、絶対外さない」
 ――ニセモノなら、死ね!
 繰り出した界刀閃牙の斬撃で、相棒を騙る幻影をなで斬りにして。
「グアスコのニセモノやるなんて、百年早いんだよ!」
 赤に塗れ地に沈んだグアスコ……いや、その姿を偽っていた亡霊へとそう言い放つアシエトは。
「あーくっそ、しんみりして損したぜ! あ、た、大切になんか思ってねぇ!」
 漆黒の森にひとり、そう弁明し首を振りながらも。
 ……あーくそ、と。
 灰色の髪をくしゃりと掴みつつ、深い森のその先へと、再び歩み征くのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ネージュ・ヴァレリエ
僕を殺してくれる理想の正義、綺麗で素敵な英雄様が出てきてくれるんだって?
いいね、いいね!素晴らしい!
ならばぼくを愉しませておくれよ!悪竜の暴力に抗ってみせておくれよ!!
【愉悦の高揚】だ!だってたのしくてたまらないからね!!


まずは【Θάνατος】で<串刺し>にしてあげよう、そして【Νέμεσις】を飢えた鼠にして<傷口を抉>ってあげよう
こんな程度の<恐怖を与え>られた程度で屈するような正義じゃないだろう!だって僕はそんな正義は望んでないんだから!


たしかに美しい正義に殺されたいと願っているさ、でもそれはまず前提としてぼくを超える強さを持っている相手じゃないと嫌なのさ
だから全力で嬲るよ、当然だよね



 此処は――夜と闇に覆われた、異端の神と絶望の世界。
 そして足を踏み入れたこの森は鬱蒼としていて、得体の知れぬ漆黒で覆われている。
 そんな、どんな光をも届かぬはずの濃い霧の中……ギラギラと煌めくその色は、金。
(「僕を殺してくれる理想の正義、綺麗で素敵な英雄様が出てきてくれるんだって?」)
 悪竜がそのこころに抱くのは――美しい正義に滅ぼされる願望。
 ネージュ・ヴァレリエ(悪竜・f15857)は、いいね、いいね! 素晴らしい! と。
 興奮したように、金色の瞳を愉快気に細めて。
 はしゃぐ心を隠すこともせず――たのしくてたまらない高揚感を、戦闘力と飛翔能力の糧としながら。
「ならばぼくを愉しませておくれよ! 悪竜の暴力に抗ってみせておくれよ!!」
 霧の中から現れた美しき『正義』へと、その心を表すかの如く、戦場を弾み躍るように地を蹴った。
 そして容赦なく突き出されるのは、血塗られた黒剣。
 その刃が容赦なく眼前のそれを串刺しにし、血を吸った刃がより一層、研ぎ澄まされて。
「……あ、ぁ……っ!」
 ぞくりとするような吐息を漏らす『正義』の血で覚醒した『Νέμεσις』が姿を変えたのは、飢えた鼠。
 放たれた鼠は、赤滴る傷口を容赦なく喰らい散らかし、グチャグチャに捩りはじめる。
「こんな程度の恐怖を与えられた程度で屈するような正義じゃないだろう!」
 ――だって僕はそんな正義は望んでないんだから!
 噴き出す赤に染まりゆくそれに、ネージュはそう無邪気に嗤って。
「たしかに美しい正義に殺されたいと願っているさ」
 もう一度、行儀悪くなおも喰いつき抉る鼠と、目の覚めるような飛び散る赤の色を映しながら。
 金を帯びる瞳を細め、こう続けるのだった。
「でもそれはまず前提としてぼくを超える強さを持っている相手じゃないと嫌なのさ」
 ――だから全力で嬲るよ、当然だよね? と。

成功 🔵​🔵​🔴​

ギド・スプートニク
目の前に現われるのが誰かなど、分かりきっている事だ

美しい髪
透き通るような翅
細い手足
愛くるしいその笑顔

そこに浮かぶのは我が最愛のきみ
シゥレカエレカ(f04551)の姿

わたしは、初めて会った時からきみの虜だった
無論、出逢った時は未だ――自覚などしては居なかっただろう
けれど間違いなく焦がれていたよ
こうして比べてみれば、よく分かる

偽物の首を刎ね
滴る鮮血で手を濡らし

はは、――と笑う

きみ以外の血では、まるで昂ぶらない
姿形や匂いまで、如何程に精巧に真似ようとも
渇き焦がれるこの情動は、きみだけのもの

幻覚が解ければ血も消え失せて

下らぬ茶番だ
このツケは、領主とやらに払わせてやろう



 深く昏い漆黒の霧の森に、その翅の煌めきは酷く不似合いだけれども。
 でも、ギド・スプートニク(意志無き者の王・f00088)にとっては、分かりきっている事でもあった。
 己の前に現れるのは――最愛のきみしかいないことを。
 踊るように艶やかな青を帯びた髪、青空から宵藍の夜へといろを変える透んだ翅。
 雪の如き純白の細い手足に……そして、自分に向けられる、愛くるしいその笑顔。
「……シゥレカエレカ」
 ギドの口から零れ出たのは、愛しきみの名。
「わたしは、初めて会った時からきみの虜だった」
 眼前の彼女が握る得物は、雲雀啼く青と小夜啼鳥ほほ笑む紫。
 それは、自分を殺すために振るわれんとする色。
 そのいろを青の瞳に映しながらも。ギドは、妻へと想いを紡ぐ。
「無論、出逢った時は未だ――自覚などしては居なかっただろう。けれど間違いなく焦がれていたよ」
 だからこそ――こうして比べてみれば、よく分かる、と。
「……!」
 ――それは、声を発することも。
 恐怖にその顔を染めることすら許さぬほどの、一瞬であった。
 最愛のきみを騙る偽物の首が、赤の飛沫とともに、漆黒の天へと舞い上がる。
 そして、滴るそのいろで。愛しき者を象った首を刎ねたその手を濡らしながら。
 はは、――と、ギドは笑う。
「きみ以外の血では、まるで昂ぶらない」
 ――姿形や匂いまで、如何程に精巧に真似ようとも……渇き焦がれるこの情動は、きみだけのもの。
 無造作に転がった首は、既に美しい妻のものではなく。
 やがて躯の海へと還り消滅する下賤のもの。
 そんな亡霊の最期など、目もくれずに。
「下らぬ茶番だ」
 このツケは、領主とやらに払わせてやろう、と。
 ギドは、指の円環に密かな煌めきを纏わせながら。
 宵闇の外套を翻し、深い霧に覆われた森の奥へと、歩みを進めるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

アオイ・フジミヤ
私を殺しに来るのは
”先生”だけだ

黒羽色の髪に美しい翡翠色の瞳の
30前後の眉目秀麗な青年
すらりと抜き放った太刀が彼の獲物

”アオイ”
あなたが私を呼ぶ声は、私にとっての光だ
幼い哀れな人形だった私に”すべて”を教えてくれた

『さあ、死合おうか』
『言ったろう、覚悟は強さだ。アオイの覚悟を俺に見せておくれ』

『そうしたら……俺が殺してあげるから』

刀の一撃をNaluで受けたはずなのに
腕が落とされ、青が赫く染まる

ああ、痛い、痛い
嬉しい
イトシイ

あなたが私の命を
私を
”奪ってくれる”のなら笑って死ねる

でも……あなたは先生じゃない
先生は私を殺して”くれない”ことを
私は知っている

Naluと鈴蘭の嵐で反撃

☆アドリブ歓迎



 次第に濃くなっていく霧の呪いは、深い森だけでなく。
 侵入者のその心の中まで、じわり静かに浸蝕していく。
 濡れたように艶やかな黒羽色の髪に、瞳に宿る美しい翡翠の彩り。
 ――私を殺しに来るのは、”先生”だけだ。
 その眉目秀麗な青年が自分の元へと現れることが、アオイ・フジミヤ(青碧海の欠片・f04633)は分かっていた。

 ――”アオイ”。

 それは、光。
 名を呼んでくれる”先生”の声は、アオイにとっての光である。
 ”先生”は幼い哀れな人形だったアオイに……”すべて”を、教えてくれた人。
 そして名を呼んでくれた同じ声が、こう紡ぐ。
『さあ、死合おうか』
 刹那、スラリと抜き放たれるのは、彼の得物である太刀。
『言ったろう、覚悟は強さだ。アオイの覚悟を俺に見せておくれ』
 その声は、いつものように優しく響いて。
『そうしたら……俺が殺してあげるから』
 冷たいくらいの強い殺気を、宿している。
 瞬間、漆黒の世界に、鋭き閃きが放たれて。
 彼が振り下ろした刀の一撃を、様々なあおを宿す七節棍で受け止めた……かと、思ったのに。
「……っ、!」
 ――青が、赫く染まる。
 海のような彩りに飛び散るのは、鮮烈な血のいろ。
 ぼとりと地に斬り落とされた腕が、己から滴る赤で染め上げられて。
 血の海の只中に思わず膝を折りながらも。アオイがその口元に宿すのは、微かな笑み。

 ――ああ、痛い、痛い
 ――嬉しい
 ――イトシイ

「あなたが私の命を……私を”奪ってくれる”のなら、笑って死ねる」
 ……けれど。
 けれども、アオイは知っている。
「でも……あなたは先生じゃない」
『!』
 刹那、漆黒の森を舞うのは、鈴蘭の花弁。
 その美しさとは裏腹に、舞い遊ぶそれらは鋭い刃となり、”先生”の身を貫いて。
 アオイは血に濡れたNaluを、残ったもう一方の手でぐっと握りしめ、彼へと振るったのだった。
 アオイは、知っているから。
 先生は決して――自分を、殺して”くれない”ということを。

成功 🔵​🔵​🔴​

八上・玖寂
自分の心の中を強く支配している者が、自分を殺しに現れる。ねえ。
……さあ。僕には想像もつきません。
ですので、そうですね、そうでしょうとも。
現れるのは『僕自身』でしかあり得ない。

これは10年くらい前の自分だろうなあと思いながら、
【先制攻撃】で叩きこむのは『灰徒、無音にして影を踏む』。
後頭部に銃口突き付けてやりますよ。
今の僕の方が歳取ってる分進歩してるでしょう。恐らく。
……相変わらず死んだ目をしてますね。
貴方はそろそろ本当に死んでくれていいんですよ、『忍』。
引き金を引く。


※アドリブ歓迎です



 森の奥深くへと向かうにつれ、徐々に深く濃くなっていく霧。
 昏く淀んだこの森に呪いがかかっていると、そう言われても納得してしまうような、闇の世界。
 だが、そんな中でも飄々とした様子で。
「自分の心の中を強く支配している者が、自分を殺しに現れる。ねえ」
 ……さあ。僕には想像もつきません、と。
 八上・玖寂(遮光・f00033)はそう、小さく首を傾けるけれど。
 唯一、思い当たる人物といえば――。
「……そうですね、そうでしょうとも」
 ふと顔を上げたその時、細められた黒の瞳に映った姿。
 霧深い森の奥から現れた者に、玖寂は納得する。
 自分を殺しに現れる、心の中に在る存在――それは、『自分自身』でしかあり得ない。
 玖寂はキュッと染みひとつない白手袋を上げながらも、眼前の自分自身を見遣り思う。
 これは10年くらい前の自分だろうなあ、と。
 そして、若かりし頃の自分よりも一瞬、早く動いて。
 灰徒、無音にして影を踏む――自分自身を殺すべく、戦闘技能の精度を上げれば。
 若き己の隙をついてその背後を取り、その後頭部へと、相手が持っているものよりも良く手に馴染んだ得物を突き付ける。
 今の玖寂の方が、歳取ってる分――進歩しているから。
 伊達に歳は取っていませんよと、柔和な微笑みを崩さぬまま言った後。
「……相変わらず死んだ目をしてますね」
 ふっと、心なしかその声色が変化した瞬間。
 伊達眼鏡の奥の瞳をスッと細め、玖寂は続けたのだった。
 ――貴方はそろそろ本当に死んでくれていいんですよ、『忍』。
 刹那、その華を散らさんと……深く昏い森に、銃声が響いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

蘭・八重
ここが霧幻の森ね。
本当に霧で何も見えないのね。

ふふっ、私の奥底に眠る人はどなたかしら?
そこに現れたのはかつて私に愛を囁いて下さった人
あらあら、まだ貴方は私の中に居たのねぇ。もういらっしゃらないかと

貴方は昔の様に愛を囁き、そして朝の紅茶を淹れる
そう…あの時の紅茶、毒入りの
ふふっ、またあの日の様に私を殺して下さるの?
嬉しいわ、でもね…

あの人が淹れた甘い毒の紅茶を口に運び、彼の口へと移す【紅薔薇のキス】と共に

同じ殺し方では面白くないわ
次は新しいのをお願いするわね。
お休みなさい、今回の貴方

何も無かったのように森を歩き出す



 深さを増した霧に踊るのは、この世界にはない夕日の彩を思わせる、紅く煌く長い髪。
「本当に霧で何も見えないのね」
 視界を奪わんと立ち込めるそんな漆黒の支配にも動じる気配はなく。
 ほんわりとした白薔薇の如き雰囲気すら感じるのは、蘭・八重(黒キ薔薇の乙女・f02896)。
 そして、少し楽しそうに――ふふっと笑む。
 ……私の奥底に眠る人はどなたかしら? と。
 それからふと、霧がその深さを増したような……そんな気がして。
 顔を上げた八重は、不意に眼前に現れた人物の姿に、微かに首を傾けた。
「あらあら、まだ貴方は私の中に居たのねぇ。もういらっしゃらないかと」
 それは……かつて八重に、愛を囁いていた人の姿。
『――綺麗だね。愛しているよ、八重』
 それは、昔の様な……耳を擽る、優しくて甘美な愛の囁き。
 ……まさかその裏側に毒があるなど、微塵も見せないように。
 そして愛の言葉を紡ぐ彼は、朝の紅茶を淹れはじめる。
 そう……彼が淹れるのは、あの時の――毒入りの紅茶。
「ふふっ、またあの日の様に私を殺して下さるの? 嬉しいわ、でもね……」
 刹那、八重は甘い毒の紅茶を口に含んで。
 微笑みを向けた彼の唇へと重ねたのは――薔薇色の毒のキス。
 八重は唇越しに、甘い毒を、彼にも注ぎ込んであげて。
「同じ殺し方では面白くないわ。次は新しいのをお願いするわね」
 がっ、と、鈍い声と共に飛び散る赤き華を咲かせ、漆黒の森へと沈んだ彼を見下ろして。
 何も無かったのように霧深い森を再び歩き出しながら、黒キ薔薇を湛える笑顔で八重は紡ぐのだった。
 ――お休みなさい、今回の貴方、と。

成功 🔵​🔵​🔴​

クロト・ラトキエ
想い、憎しみ。心に留める者、近しい者…
いずれでも無く、朧気ですら無く、他でも無い。
『自分』が現れるという事は、つまりがそういう事なのでしょうね。
(誰も無い。消去法で自分が残った。それだけなら何思う事も無かったろう。けど、
それが暗器使いの傭兵では無い、長短二刀の剣士とは…)
…何とも皮肉の効いてることで。

殺されますか?とんでもない!
自殺趣味は無いんでね。
トリニティ・エンハンス起動、風の魔力を攻撃力に。
幻だとは思っても、自分の姿とかやり難いですねぇ!
嘯きながらも鋼糸で狙うは、先ずはあの双剣を持つ手。
それから足の腱、動脈等の急所など。
ifだろうと過去だろうと、捩じ伏せましょう。
今を、僕が択んだのだから



 足を踏み入れた森は深く昏く、不気味なほどに静かで。
 次第に濃くなっていくように感じる霧が、侵入者を飲み込まんと密やかに広がる。
 そんな静寂をそっと破ったのは、クロト・ラトキエ(TTX・f00472)の声。 
「『自分』が現れるという事は、つまりがそういう事なのでしょうね」
 眼鏡の奥の青が映すその姿も……クロトのもの。
 ――自分の心の中を強く支配している者が、自分を殺しに現れる。
 そんな呪いがかけられているという霧が視せる幻影が、誰でもない自分だという事は。
(「想い、憎しみ。心に留める者、近しい者……いずれでも無く、朧気ですら無く、他でも無い」)
 ――誰も無い。消去法で自分が残った。
 そういうことだと……ただ、それだけだったら。何も思うことは、なかったのだけれど。
 ……でも。
「……何とも皮肉の効いてることで」
 思わず零してしまうのは、そんな言の葉。
 目の前にいるのは、確かに自分なのだけれど。
 暗器使いの傭兵では無い――長短二刀の剣士であったのだ。
 そして眼前の『自分』が、手にした二刀を構える。
 その刃で、自分を殺さんとするべく。
 ……けれども。
「殺されますか? とんでもない! 自殺趣味は無いんでね」
 刹那、漆黒の森の木々を大きくざわめかせるのは――生み出されし魔力の風。
 編み出した魔力に風の加護を乗せて、クロトは大きく地を蹴る。
「幻だとは思っても、自分の姿とかやり難いですねぇ!」
 そう嘯きながらも昏い森に張り巡らせるのは、鋭利な閃き。
 幻影の自分も、手にした長短二刀でそれを断ち切らんと構えるが。
 ――先ず狙うは、あの双剣を持つ手。
「!」
 刹那、鮮やかな赤が飛沫いて。
 瞬断された両の手がその刃ごと、深い森へと落ちる。
 そして次は足の腱、さらに動脈等の急所をと……その刃を捥いでも尚、容赦ない閃きが敵を断ち刻んで。
「ifだろうと過去だろうと、捩じ伏せましょう」
「……! は……ッ」
 クロトは、地に広がった赤き血の海に、己の姿を騙った幻影を沈めたのだった。
 そして己のものから亡霊の姿と成り、深い霧に飲まれるかのように消滅するその様を見つめながら、紡ぐ。
 ――今を、僕が択んだのだから、と。

成功 🔵​🔵​🔴​

浮世・綾華
此処へ訪れた理由は先日の幻影
望む姿を映すかみさま
現れると思っていた籠の鳥の姿はなく
代わりに見た砕けた鍵を持った空色髪の子が誰か確かめる為

現れたのはやはり少年
…何で、お前なんだ

『アヤ』
太陽の瞳が無邪気に笑むだけで麻痺する思考

『予備のくせに、本物みたいなふりが得意だね』
違う、お前は…
そんなこと言うやつじゃ、ない…?
なんで知っているんだ、俺は―
…よび?目を見開き口元を抑える
出来た隙、降る鈍器に砕かれる
潰されて壊されていく感覚
小さく呻くことしか出来ず涙がぼろりと零れる

…―ダメだ
帰って確かめなきゃ
対の、錠に
俺だって馬鹿じゃない
線は繋がり始めてる

指先だけ動かし凶器を向けた
殺さなくちゃ
俺は知る為に此処に来た



 静寂の森を静かに浸蝕する霧の呪いは、深く、深く。
 その心を強く支配している者を姿を象り、侵入者を、殺しにやってくる。
 呪いの霧は赤裸々に思いを暴き、心に在るその姿を明確に映し出すという。
 愛する人憎い人親しい人、そして……その心の奥底に潜む、深層意識の存在まで。
 ――分かっていた。
 今回は分かっていたし、確かめる為に、此処にやって来たはずなのだけれど。
「……何で、お前なんだ」
 浮世・綾華(❂美しき晴天❂・f01194)は眼前に現れたその姿に、そう言の葉を零す。
 望む姿を映すかみさま。
 その黒が象ったのは――予想していた、籠の鳥の姿ではなかった。
 快活な雰囲気を持つ、見知らぬはずの……空色の髪の少年。
 そして、その少年が持っていたのは――。
『アヤ』
 ……くらりと、世界が廻る感覚。
 ガンガンと殴られたように鳴り響く酷い頭痛。
 首を絞められたかのように、うまく呼吸ができなくて。
 その太陽の瞳が無邪気に笑むだけで……思考が、麻痺してしまう。
 ――誰なんだ、一体……何で、お前なんだ――。
 空色の少年が掌に転がすのは、この間と同じ――砕けた鍵。
『予備のくせに、本物みたいなふりが得意だね』
「……違う、お前は……そんなこと言うやつじゃ、ない……?」
 無意識のうちに紡いでいた己の言葉に、赤の双眸を見開く綾華。
 ――なんで知っているんだ、俺は……。
 ……よび?
 そう赤き華を咲かせたまま、思わず口元を抑えれば。
「……! か、は……ぁっ!」
 刹那、地面に思い切り叩きつけられる。
 口から漏れるのは、吐息と鮮血。
 全身がみしみしと悲鳴をあげるように軋んで。
 生じた隙に容赦なく降った鈍器は、それから、何度も、何度も、何度も。
 綾華の全身を砕き壊さんと、降り注ぎ続ける。
「……ッ、あ……はッ……く、ふ……!」
 綾華が口にすることを許されたのは、小さな呻き声だけ。
 ただただ、壊され砕かれながら。揺れる空色と向けられる太陽のいろを虚ろに映す赤。
 その赤から、涙がぼろりと零れる。
 このまま壊されて、砕かれてしまうのだろうか……?
 あの掌にある、鍵のように――。
「……――ダメだ、帰って確かめなきゃ」
 対の、錠に。帰って、確かめなければ。
 振るわれる鈍器の成すがまま、ただ虚空を見つめていた瞳に。
 ひらりと咲いて小さく灯るのは、炎の如き華のいろ。
 ――俺だって馬鹿じゃない……線は、繋がり始めてる。
 それを、まるで手繰り寄せ辿るかのように。
 深く澱んだ漆黒の天へと、綾華はその指を伸ばす。
 ――殺さなくちゃ。
 刹那、あれほど降り注いでいた鈍器が、その動きを止めて。
「俺は知る為に此処に来た」
 揺れていた眼前の空色が瞬間、鮮やかな赤に染まった。

成功 🔵​🔵​🔴​

シオン・ミウル
ふふ。少し楽しみだったんだよね
だってさあ
もう一度会えるかもしれないんだろ
俺が殺してやったアイツに

アイツ
俺を牢獄に閉じ込めて
毎日毎日執拗に俺の心を殺そうとしてきた黒衣の男
名前は知らない
――ああ、そういえばもう、顔も覚えてないな

アンタ、そんな顔だったっけ?

なあ、アンタを殺した俺が憎い?
俺はさあ もうどうでもいいと思ってたんだけど
やっぱりアンタはぐちゃぐちゃに殺してやりたいくらい
憎くて憎くて憎くて憎くてたまらないから

もう一度会えてうれしいよ

なあ、もう一回俺に殺されてくれよ
笑いながら殺してやろう
もう一度、今度はゆっくり
苦痛に歪む顔が見られるように

風を繰り、じわりと首を締め、その姿を楽しもう



 霧が立ち込める森は怖いほどに静かで。
 次第に濃くなっていく霧は、進む者たちの心を不安定にさせんとするけれど。
 ……ふふ。少し楽しみだったんだよね、と。
 シオン・ミウル(絡繰の花・f09324)は漆黒の森の中、その紅の瞳を煌々と輝かせる。
 この森の霧にかけられているという呪い。
 それは――。
「だってさあ、もう一度会えるかもしれないんだろ」
 ――俺が殺してやったアイツに、と。
 シオンはそう、その顔に、自然と微かな笑みを宿す。
 この霧の森に孕むという呪い。
 それは――自分の心の中を強く支配している者が、自分を殺しに現れる。
 殺してやった、アイツ。
 牢獄に閉じ込めたシオンの心を、毎日毎日、それは執拗に殺そうとしてきた……名前は知らない、黒衣の男。
 ――ああ、そういえばもう、顔も覚えてないな。
 そう首を傾け、薄桃の花咲く紺藍の髪を小さく揺らすけれど。
「アンタ、そんな顔だったっけ?」
 ふと、眼前に現れた存在に、そう投げるシオン。
 ……もう、どうでもいいと思っていたのだけれど。
 口元に笑みを宿し、シオンは黒衣の男に告げた。
「やっぱりアンタはぐちゃぐちゃに殺してやりたいくらい、憎くて憎くて憎くて憎くてたまらないから」
 ――もう一度会えてうれしいよ、と。
 煌々と輝る紅の瞳を彩った愉快な感情は、包み隠さぬ殺意。
「なあ、もう一回俺に殺されてくれよ」
 シオンは漆黒の闇へと、その腕を伸ばして。
「……ぐ……っ」
 森の木々を騒めかせる風を操り、じわりと、その首を絞める。
 漏れる苦し気な息遣いと、次第に醜く歪んでいく表情。
 シオンはそれを恍惚とした双眸で眺め楽しみながら、霧深い森に自然と零すのは、嗤い声。
 もう一度――今度は、ゆっくりと。
 苦痛に歪む顔が見られるように……笑いながら、殺してやろう、って。

成功 🔵​🔵​🔴​

セリオス・アリス
アドリブ歓迎

幻影:幼馴染

光にとけるような金髪の美しい男が
朝空の瞳を歪ませて立っていた
些か乱暴に押し倒され
首に手が触れる
『セリオス…死んでくれ』
泣きそうな顔で
その声で頼まれたら
何だって叶えてやりたくなる

こっちとら復讐とお前が生きてる事だけを頼りに10年鳥籠で生きてきたんだ
お前になら全部くれてやっていい
お前の幸せの為なら
この命だって惜しくはない

…けどな
その手で殺されてやるわけにはいかねえんだよ
優しいアイツは気に病むだろうから

首が締まって死ぬ前に自身に剣を突き立てる
それと同時に【君との約束】がで敵を貫く

…俺は、幸せになったアイツが
たまに思い出して笑う程度でいい
死んだ後なら、その程度心に住めれば十分だ



 足を踏み入れた者たちの視界を奪う、深く濃い霧の中でも。
 その光にとけるような金色の髪は、とても美しかった。
 そして自分の姿だけを映す、朝空の瞳。
 でも……そのいろは知っているものとは少し違って、どこか歪んでいて。
「……、ッ!」
 刹那、漆黒の髪と耳元の人魚姫の涙が、大きく揺れた。
 深い森の仄昏い地面へと、些か乱暴に押し倒されたセリオス・アリス(黒歌鳥・f09573)。
 地に押し付け押さえつけられ、ギシギシと、大きく身体が軋んで。
『セリオス……死んでくれ』
 首筋を這っていたその掌が、グッと、凄い力でセリオスの首を絞めはじめる。
 さらにより一層、絞める手に力が込められれば、鋭い爪がじわりと深く皮膚に食い込んで。
「……ッ、ぁっ……」
 立てられた親指が、喉仏を、気道を、ギリギリと絞めつけ潰していく。
 セリオスの青い瞳が映すのは――泣きそうな、幼馴染の顔。
 だがセリオスは霞む視界の中、眼前の幼馴染へと、微かに笑んでみせる。
 そんな顔で、そんな声で、頼まれたら……何だって、叶えてやりたくなる。
(「こっちとら復讐とお前が生きてる事だけを頼りに、10年鳥籠で生きてきたんだ」)
 ――お前になら全部くれてやっていい。お前の幸せの為なら、この命だって惜しくはない。
 ――だけど。
「……けどな。その手で殺されてやるわけにはいかねえんだよ」
 だって、きっと――優しいアイツは、気に病むだろうから。
 殺されてやるわけには、いかない。
『!』
 刹那、意識を完全に手放す直前。自身に、セリオスが剣を突き立てれば。
 虹を思わせ輝くのは――発動した『君との約束』。
 そして、青星の強き想いと願いに呼応するように周囲に現れた、燦然と輝く数多の光の剣が。
『……!!』
 眼前の幼馴染を――いや、幼馴染の姿を騙った亡霊を、容赦なく突き貫いたのだった。
 そんな、もはや幼馴染の姿ではなくなった躯が、深い霧に飲まれるように消滅していくのを見届けた後。
 セリオスは、内に星の輝きを秘めた夜色の外套を翻して。
「……俺は、幸せになったアイツが、たまに思い出して笑う程度でいい」
 深い森のその先へと再び歩み出しながら、続ける。
 死んだ後なら、その程度心に住めれば十分だ――と。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヴェイゼル・ベルマン
忘れた日は無ぇ
ティア・リシナ
過去にオブリビオンの襲撃で亡くした恋人だ

やっぱり現れるのはお前か…ティア
柔らかな金髪も
海を思わせる碧眼も
柔和な表情も
俺のよく知るものだ
その手に持つメイスを除いて

所詮は幻影
戦う覚悟はしてきた
だが、いざ目の前にするとままならねぇな
防御に徹してしまう
ティアを傷付け流れる鮮血…
それが目に焼き付いちまいそうで怖ぇんだ
此処で殺される選択肢もある
だが本物のティアは俺の死を望むか?
……
襲撃から逃げる最中、死にゆく彼女は俺の無事を願った
後を追おうと考えた事もあるが…死ぬ訳にはいかねぇ
彼女を傷付けるのはまだ怖ぇけど

俺は
お前を殺す

血濡れの彼女に胸が締め付けられるが幻惑解除後の戦いに備える



 深く昏い霧の向こうから現れたのは、此処にいるはずのない者の姿。
 ――忘れた日は無ぇ。
 ヴェイゼル・ベルマン(焔斬り・f13471)は濃い霧立ち込める森でふと足を止めて。
「やっぱり現れるのはお前か……ティア」
 目の前に現れた、ティア・リシナ……オブリビオンの襲撃で亡くした恋人を黒の三白眼に映した。
 漆黒が支配するこの世界に踊る、柔らかな金色の髪。
 自分を見つめ笑うその瞳は、海を思わせる綺麗な碧眼で。
 愛くるしい柔和な表情も、ヴェイゼルのよく知るものだ。
 ただ……その手に握られた、メイスを除いて。
 凪いだ海の様だった碧も、荒れ狂う嵐の海のような殺意で満ちている。
 そして、それを向けられているのは、自分。
 だが、所詮は幻影。
 彼女が現れることは分かっていたし、戦う覚悟もしてきた。
「だが、いざ目の前にするとままならねぇな」
 金の髪がふわりと漆黒の闇に踊り、容赦なく振るわれる握られたメイス。
 ヴェイゼルはその攻撃を身を翻し躱し、得物を握る手に力を込めようとするも。
 生じた隙に攻め込むことができず、どうしても、防御に徹してしまう。
 ヴェイゼルは……怖いのだ。
(「ティアを傷付け流れる鮮血……それが目に焼き付いちまいそうで怖ぇんだ」)
 己の手で赤に染めた彼女の姿を、見るのが。
 いっそ、あの振るわれるメイスで、殴り殺されるという選択肢もある。
 ……けれど。
 ――本物のティアは俺の死を望むか?
 その答えは、明確であった。
 過去、オブリビオンの襲撃から逃げる最中、死にゆく彼女は願ったのだ。
 誰でもない、ヴェイゼルの無事を。
 後を追おうかと、そう考えたこともあったけれど。
「……死ぬ訳にはいかねぇ」
 彼女を傷付けるのはまだ怖ぇけど、と。
 そう、ヴェイゼルは黒の三白眼をそっと細めるけれど。
 相棒のハルバードを手に、その瞳に決意を色を宿す。
 ――俺はお前を殺す、と。
 刹那……得物越しに伝わるのは、重い手応え。
 そして深く昏い漆黒の霧の森に、胸を締め付けるような、赤の飛沫があがった。

成功 🔵​🔵​🔴​

真守・有栖
……見事な覚悟ね。気に入ったわ!
この刃狼たる私が花嫁の牙となり、刃となりて仇討ちを遂げてみせるわ。お任せあれ!

ところで。すっっっごい霧ね……!
こんだけ濃ゆいと目もお耳も鼻も役立たず。……ま、迷子にはなってないわよ?たぶん!

心を支配する者。んー……やっぱり強く気高い狼たる私自身かしら……ね……?

霧の中。
現れた人影に。
低く唸り、牙を覗かせ。

……嗚呼。

抜刀。
幻と。本来は人に在らざるものと理解っていても。

月喰(ツキバミ)。

その本能には抗えない。
その本性が暴かれる。

瞬閃。

全てを喰らわんと。
荒れ狂う嵐が如く。
吼え哮り。
渾身を込めた狼牙が煌めく。

……そう。全ては幻。

霧の果て。
月天を見上げ。
狂おしく吠え叫び。



 この深い霧を抜けた先にあるという、ヴァンパイアの館。
 そんなヴァンパイアの元へと、捧げられた花嫁がいるという。
 そして花嫁の目的は――愛する人の、仇討ち。
「……見事な覚悟ね。気に入ったわ!」
 そう昏い森を征きながら、耳をぴこりと揺らすのは、真守・有栖(月喰の巫女・f15177)。
 心折られ後を追うわけでも、理不尽に泣き寝入りすることもなく、刃を手にする決意をしたリザ。
「この刃狼たる私が花嫁の牙となり、刃となりて仇討ちを遂げてみせるわ」
 ――お任せあれ!
 有栖はそう、花嫁の牙となり刃となるべく、ヴァンパイアの館を目指し森を進む。
「ところで。すっっっごい霧ね……!」
 森の奥深くへといくにつれ――じわじわと濃さを増していく霧。
 これだけ濃いと、有栖の誇る狼の目も耳も鼻も、残念ながら役には立たない。
「……ま、迷子にはなってないわよ? たぶん!」
 きっと、それは大丈夫……な、はず!?
 そんな迷子の懸念をちょっぴり宿しながらも、有栖は深い霧の中を進んでいく。
 そして、森に蔓延るこの濃い霧には、呪いがかけられているのだという。
(「心を支配する者。んー……やっぱり強く気高い狼たる私自身かしら……ね……?」)
 侵入者を殺しにやってくるのは、その人の心の中を強く支配している者、なのだと。
 その時……ふと、有栖は耳をピクリと動かして。
 深く濃い霧の中を、じっと見据える。
 そこには――ひとつの、影。
 そして刹那、低く唸り牙を覗かせながら……嗚呼と。漏らした吐息と同時に、抜刀する。
 目の前に現れたそれが、幻であるとー―本来は人に在らざるものと、理解っていても。
 ――月喰。
 その本能には抗えず、そしてその本性が暴かれる。
 それは、全てを喰らわんと荒れ狂う獣。
 瞬く暇さえ与えぬほどの閃きが、漆黒の森の中、生じて。
 荒れ狂う嵐が如く吼え哮り、渾身を込めた狼牙が喰いつかんとする相手を狙い煌めく。
「……そう。全ては幻」
 刹那、満ちて広がるのは、赤く飛沫いた血の味。
 そんな赤に、人狼たりうる本能が刺激されたかのようにまたひとつ、遠吠えをして。
 深く濃い霧の果て――その月さえも喰い散らかしたかと思うほど、漆黒に覆われた天を仰げば。
 狼の吠え叫びし声が霧の森に、狂おしく響き渡る。

成功 🔵​🔵​🔴​

アルバ・ファルチェ
現れる幻影の人物:双子の兄(セラ)
殺すか殺されるか:無抵抗に殺される(※依存気味のややヤンデレ)


本物のセラが僕を殺すなんて事は無いとわかってる。
でも、本物か偽物かじゃなくて僕はセラに刃をむけることは出来ないよ。
攻撃は不得手とかそういうのだけじゃなくて、セラは僕にとって一番大事な人だから。

セラが僕を必要としないなら、僕を消したいって言うのなら喜んでそれを受け入れる。
セラが必要としない僕なんていらない…。

きっと僕と同じ顔で、僕とは違う青色の瞳で、冷たく無表情に僕に銃口を向けるんだろうな。
そうしたら両手を広げて、心臓はここだよ?撃つなら一息でトドメを刺してねって微笑むよ。



 深い霧が侵入者を殺す、その手段。
 それは、心の中を強く支配している者の姿を象り、殺しに来るのだという。
 アルバ・ファルチェ(紫蒼の盾・f03401)にとって、自分を殺しに来るのが誰なのかは、想像に易く。
 けれども。
(「本物のセラが僕を殺すなんて事は無いとわかってる」)
 実際に霧の中から訪れた――自分と同じ顔をした兄の姿に、紫の瞳を細める。
 本物の兄が、自分を殺すことない。
 それは分かっているのだけれども。
 いや、むしろ……本物だとか、偽物だとか、そういうことではなくて。
「僕はセラに刃をむけることは出来ないよ」
 攻撃は不得手とか、そういうことなんかでもなく。
 セラータはアルバにとって、一番大事な人だから。
 眼前の兄に宿るのは、自分へと向けられた殺意。
 その視線を真っ直ぐに見つめ返して。アルバは躊躇なく紡ぐ。
「セラが僕を必要としないなら、僕を消したいって言うのなら喜んでそれを受け入れる」 
 セラが、必要としない僕なんて――。
 そんな僕なんて、いらないから。
 殺意漲る、双子でも少し違った青の瞳を。今独り占めしているのは、誰でもない自分だ。
 自分と同じ顔で、でも冷たく無表情な兄の表情。
 そして向けられたのは――翼と狼の細工が施された、黒銀の銃口。
 そんな銃口を前に、全てを受け入れんと。
 アルバは愛し気に、大きく両手を広げて。
「……、っ!」
 ――刹那、躊躇なく引かれた引き金と、深い霧の中響く銃声。
 そして、己から噴き出す赤にも構わずに。
 アルバは再び、大きくその両手を広げると。
 セラータだけを映した紫を帯びた瞳を向けて、もう一回。
「心臓はここだよ?」
 大切なひとに、微笑むのだった。
 ――撃つなら今度は一息でトドメを刺してね――と。

成功 🔵​🔵​🔴​

チコル・フワッフル
【ユーリ・ヴォルフ(f07045)】

(私が森で出会うのは、多分、隣にいる人。
この感情が何かは分からない。でも、自信あるよ)
了解だよ、ユーリ。気をつけて進もう!

(けれど深い霧の中で逸れ、ユーリの幻影と出会う)

彼は穏やかに微笑みながら言う。
「チコルを俺だけのものにしたい。逆らわないでくれ。一つになろう?」
私が、ユーリのものに?ユーリと一つに……?
どうしてかは分からない。分からないけど、「嬉しい」って思う自分がいる。
その腕は私を抱き締め、燃やすために伸ばされているのに。
それでも、私は。
ユーリのものに、なりたいと願った。

……炎の中で、思った。
ユーリに会いたい。
私は、ダガーを構えて……深く、突き刺した。


ユーリ・ヴォルフ
【チコル・フワッフル(f09826)】

自分の心の中を強く支配している者、か…
私の場合は、領主様かココルだろうか?
チコル、逸れるなよ…?

(そして森を進むうちに逸れてしまう
現れた幻影は、チコルだった)

「ユーリ、私だけを見て?どこにも行かないで。
使命なんて忘れて、私とずーっと一緒にいよう…?」
使命を取るか…チコルを取るか?と一瞬迷い
そして泣きそうな表情に戸惑い、走り寄るチコルを思わず抱き留めると
…腹部を短剣で貫かれていた

これが幻影か…油断したな、と血を吐きながらも
…分かった。一緒に居ようと思いに応え
抱きしめたまま『属性攻撃』(炎)で包み込む
私の胸の内は、もはやチコルに支配されたも同然だったのだな…



 森に入った当初とは、比べ物にならないほど濃くなっている霧の中。
 すぐ傍にいるはずのなのに、お互い相手が、深いこの霧に飲み込まれてしまいそうな。
 そんな錯覚に、つい陥ってしまいそうで。
「チコル、逸れるなよ……?」
 声を掛けたユーリ・ヴォルフ(叛逆の炎・f07045)に、チコル・フワッフル(もふもふウサキツネ・f09826)はこたえる。
「了解だよ、ユーリ。気をつけて進もう!」
 チコルはユーリと共に、深さをじわじわと増していく霧の中を進みながら。
 この霧の森にかけられたという、呪いのことが頭を過る。
 ――自分の心の中を強く支配している者が、自分を殺しに現れる。
(「私が森で出会うのは、多分、隣にいる人」)
 彼に対して抱いているこの感情が何か、今はまだ分からないけれど。
 でも、自信あるよ、とぽつりと零すチコル。
 そんなことを考え、次に顔を上げたその時……隣にいたはずの彼の姿が、見えないことに気付く。
 そして暫くひとり、ユーリを探し森を彷徨った後。
 深い霧の向こうからやって来た人物の存在に、気付く。
 それは――探していた、ユーリの姿。
 ホッとしたように駆け寄るチコルに、眼前のユーリはこう、言葉を紡ぐ。
「チコルを俺だけのものにしたい。逆らわないでくれ。一つになろう?」
 そんな声に、緑色の瞳をぱちくりさせるチコル。
 ――私が、ユーリのものに? ユーリと一つに……?
 どうしてかは分からない。分からないけど……そんな彼の声に、こう思う自分がいる――「嬉しい」って。
 ふいに伸ばされた腕。そしてその大きな胸の中に、飛び込みたいって、そう思う感情。
 チコルには、分かっている。眼前の彼は霧がみせる幻影で。
 その腕は――抱きしめた自分を、燃やすために伸ばされているということを。
(「でも……それでも、私は」)
 ――ユーリのものに、なりたい。
 そう願って、チコルは彼に抱きしめられるまま――燃え盛る炎に、包まれる。
 ……でも。
 炎の中でチコルに生まれる感情は、違和感。
 ……違う。違う、これはユーリではない。
 チコルが抱く、彼への感情。
 それは、無自覚な――。
「――ユーリに会いたい」
 そう零れた言葉と同時に。
 チコルが構えたダガーの閃きが、眼前のユーリの胸を深く深く、突き刺したのだった。

 同じように、深い霧の中、ユーリも考えていた。
 自分の元に現れる幻影のことを。
(「自分の心の中を強く支配している者、か……私の場合は、領主様かココルだろうか?」)
 そんなことを考えていれば。隣にいたはずのチコルの姿が、すっかり漆黒の霧に攫われてしまっていて。
 次にチコルの姿を見つけたのは、深い深い霧の奥。
 現れたチコルは、こうユーリへとお願いする。
「ユーリ、私だけを見て? どこにも行かないで。使命なんて忘れて、私とずーっと一緒にいよう……?」
 使命を取るか。それとも……チコルを取るか?
 ユーリはそう、一瞬迷ってしまったけれど。
 赤き瞳に映った彼女の表情に戸惑ってしまう。
 眼前にあるのは……泣きそうな、チコルの顔。
 そして、走り寄ってくる彼女を思わず抱き留めると。
「! ……っ」
 ――彼女の握るダガーで、腹部を深く、貫かれていた。
 流れ落ちる己の赤に染まる、胸の中の彼女。
「これが幻影か……油断したな」
 かはっ、と、血を吐きながらも。
 ユーリはチコルへと、こう答えを綴る――……分かった。一緒に居よう、って。
 そして、自分の腹にダガーを捻じ込む彼女を、抱きしめて。
「……っ!」
 刹那、チコルの緑色の瞳が恐怖のいろに染まり、炎の赤が彼女をあっという間に包みこむ。
 そんな、漆黒に支配された霧の森で、美しく燃え上がる炎を見つめながら。
「私の胸の内は、もはやチコルに支配されたも同然だったのだな……」
 ユーリはそう秘めた思いを、そっと口にしたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ティア・レインフィール
自分の心の中を強く支配している者、ですか
きっと、私ならお母様かあの人か
そうでなければあなただろうと、思っていました

黒髪に赤い瞳を持ったヴァンパイア
幼い頃には、お父様と呼んだ人を前にして
お母様の形見の耳飾りの青石を指先で握り締めながら
小さく歌うのは、お母様から教わった歌

その歌に何の反応も示さない男に
やはり幻なんですねと、無感動に呟いてから
銀の短剣をその胸に突き刺します

――ごめんなさい、お母様
共に幸せに
家族を守る為に命を落とした、そんなお母様の願いは叶えられない

どんな理由があろうと何の罪も無いあの子達を殺した
この男を、私は絶対に許さない

いつか、その時が来るまで
この醜い復讐心を、笑顔で覆い隠す



 深く濃い霧の呪いは、侵入者の心に強く在る者の姿を映し出すという。
 それは、最愛の人であったり、親しい友人や家族であったり……復讐したいほど、憎んでいる人であったり。
 ティア・レインフィール(誓銀の乙女・f01661)は、漆黒の世界に銀の髪を揺らしながら。
 柔く笑んだその表情は変えず、思うのだった。
(「自分の心の中を強く支配している者、ですか。きっと、私ならお母様かあの人か」)
「……そうでなければあなただろうと、思っていました」
 投げられたその言葉の行き先は――霧の奥から現れた人影。
 それは、黒髪に赤い瞳を持ったヴァンパイア――幼い頃には、お父様と呼んだ人。
 そしてティアは、母の形見である耳元の青を、指先で握りしめながら。
 漆黒の世界に小さく響かせるのは――歌。
 その響きは、母から教わったもの。
 だが……父と呼んでいたその男の顔をしたソレは、何の反応も示さない。
 ただその赤き瞳に宿す感情は、ティアへと向けられる、激しい殺意だけ。
 そんな男を、藍色の瞳で一瞥して。
「やはり幻なんですね」
 無感動に紡がれた言の葉と、同時に。
「……!」
 振り翳され男の胸に突き刺されたのは――洗礼が施された、銀の短剣。
 慈悲なき鮮血が飛び散り、呻き声を上げて、深く昏い森へと沈む男。
 ――ごめんなさい、お母様。
 ティアはほんの一瞬だけ、その瞳に、悲哀の色を映すけれど。
「共に幸せに……家族を守る為に命を落とした、そんなお母様の願いは叶えられない」
 そして赤に塗れ、すでに事切れた男を見下ろして。
 ――どんな理由があろうと何の罪も無いあの子達を殺したこの男を、私は絶対に許さない。
 ティアはふっと、いつも通りの優しい微笑を浮かべるのだった。
 ……いつか、その時が来るまで。
 渦巻くこの復讐心を、覆い隠すために。

成功 🔵​🔵​🔴​

呉羽・伊織
心を、なァ
何かに囚われる気は更々ない、と言いたいトコだケド、まァ…出てくるとしたら

――嗚呼、厭な呪詛に当てられたモンだ
(霧中でも見紛う筈もない、懐かしき――姿に、皮肉めいた笑み溢し――無抵抗で討たれようかという寸前、酷く冷めた目と共に刀向け)

…残念だったな
生憎と紛物にくれてやるモンは何もない
紛物に惑う程、柔じゃない

だけどな――紛物だろうとも、その姿でふざけた真似すんじゃねーよ

ソイツは、俺の、
(常は闇討好む癖に、柄にも無く真向から挑んだのは無意識か――然れど一太刀も受けてはやらぬとばかり、器用に受流し隙狙い)

その姿でそんな顔を、最期を、嗚呼よくも――
(斬り伏せた瞬間の表情は、霧と烏面の下に隠れ)



 深い深い森を浸蝕し続ける呪いの霧は、知っている。
 いくらその心の奥底に、いつものように、上手に本心を隠しても。
 その心にしまっておきたいその姿を――無作法にも暴き、炙り出す。
「……心を、なァ」
 呉羽・伊織(翳・f03578)は次第に濃くなっていく霧の中、ふとそう零して。
(「何かに囚われる気は更々ない、と言いたいトコだケド、まァ……出てくるとしたら」)
 その足を、ふいに止めた。
 普段はふらりへらりと、緩く気さく気楽な印象を受ける、その赤の瞳が。
「――嗚呼、厭な呪詛に当てられたモンだ」
 刹那、鋭き彩を帯びる。
 いくら霧が濃く深くとも……見紛う筈もない。
 霧の中から現れたのは、皮肉めいた笑みを溢してしまうような……そんな懐かしき――姿。
 そして霧の呪いに、伊織は無抵抗のまま。
 迫り振るわれるその刃で討たれんとした……寸前だった。
「……残念だったな」
 眼前の存在へと向けられたのは、酷く冷めた赤のいろと闇色の刃。
 振り下ろされた閃きを、抜いた刀で確りと受け止めながら、伊織は紡ぐ。
「生憎と紛物にくれてやるモンは何もない。紛物に惑う程、柔じゃない」
 そして受け止めた刃を振り払い、静かに滲む感情を刃へと乗せる。
「だけどな――紛物だろうとも、その姿でふざけた真似すんじゃねーよ」
 ――ソイツは、俺の、
 刹那、真っ向から紛物へとその刀を振るう伊織。
 普段の闇討好む姿は無意識か、完全に鳴りを潜め。
 漆黒の闇を躍らせながら、敵前へと軽い身のこなしで素早く地を蹴ると。
 一太刀も受けてはやらぬと、そう言わんばかりに、器用に紛物の放つ剣筋を見切り、全て受け流す。
 そして――相手に生じた一瞬の隙を見逃さず、正面から斬りかかる。
 刹那、その刃を振り下ろす直前……赤き瞳に映った、眼前のそれに。
「その姿でそんな顔を、最期を、嗚呼よくも――」
 そう、伊織は一瞬、くっと唇を噛みしめ結ぶも。
 躊躇なく斬り伏せた瞬間のその表情は――心の内にある思いと共に、深い霧と漆黒の烏面の下へと、隠される。

成功 🔵​🔵​🔴​

佳月・清宵
(現れると同時に襲いかかってきた姿は、はてさて――いっそ愉快だと笑いながら斬り返し)
…こいつァまた、随分なもてなしだ

てめぇになんざ心をくれてやったつもりは毛頭無かったんだが、人生ままならねぇもんだな、全く
(まじまじと相手の顔見据え、更に可笑しげにくつりと笑い)

しかし折角の姿で出迎えてもらったってぇのに、悪ぃな
俺は生憎と面白味の無い男でね

誰であろうが、誰の姿だろうが、仕事であれば躊躇無く首を掻き斬る――それは、本来のてめぇが一番良く知ってたんだがな

…さて、まやかしの逢瀬はもう十分だ

最期は、そうさな――面白ぇもん見せてくれた礼に、華々しく相討ちと洒落込もうか

(それが本来、ソイツと俺のあるべき――)



 深い霧の中、蠢く影がふたつ。
 ひとつは、閃く刀を握り、漆黒の尻尾を揺らす佳月・清宵(霞・f14015)のもの。
 そして、もうひとつは――。
 現れると同時に襲い掛かってきたその姿に。
 はてさて――いっそ愉快だと、清宵は笑って。
 お返しといわんばかりに、鋭き一閃で以って斬り返す。
 そして……こいつァまた、随分なもてなしだ、と呟きを零してから。 
「てめぇになんざ心をくれてやったつもりは毛頭無かったんだが、人生ままならねぇもんだな、全く」
 その瞳に映る相手の顔を、改めてまじまじと見据えた後。
 更に可笑しげに、くつりと笑む。
 だが、そんな愉快そうな表情を清宵が宿すのも、ここまで。
「しかし折角の姿で出迎えてもらったってぇのに、悪ぃな。俺は生憎と面白味の無い男でね」
 スッと握る刃を隙なく構え、印象の変わった声色で、続ける。
「誰であろうが、誰の姿だろうが、仕事であれば躊躇無く首を掻き斬る」
 ――それは、本来のてめぇが一番良く知ってたんだがな、と……。
 そう、眼前の相手を、見据えながら。
 それは何の因果か、霧の呪いの悪戯か。
 喜ぶべきか悲しむべきか、予想だにせぬ逢瀬と相成ったが。
「……さて、まやかしの逢瀬はもう十分だ」
 もう、これで如何様な躯の相手も終い。
 だが――折角の、最期だから。
「そうさな――面白ぇもん見せてくれた礼に、華々しく相討ちと洒落込もうか」
 相手の放つ閃きを避ける仕草をみせずに、握る刀を振るう清宵。
(「それが本来、ソイツと俺のあるべき――」)
 ――刹那、深い霧が立ち込める森に、鮮やかな赤の飛沫があがった。

成功 🔵​🔵​🔴​

橙樹・千織
アドリブ歓迎

あぁ…やはり貴方ですか
そうでしょうね、だって貴方は“あの頃の私”を殺したのだから

目の前に現るは道化の様な表情と服装、銀の長髪をポニーテールにした男
その背には蝙蝠の翼、手には長剣を携えて
遠い昔、この男の手に心臓を貫かれあの生に終止符を打った

悲しみ、恨み、憎しみ、怒り…負の感情が溢れかえる
お前がいなければ、あの子の背を護れるはずだった!
まだあの子との柔らかな日々を送れたはずだった!!

幻影の心臓を藍焔華で貫いた後、ユーベルコード発動
幻影だということはわかっているが…
跡形も無く斬り刻め
その姿、二度と私の前に現すことが出来ぬよう



 森の奥へと進むにつれ、深く濃くなっていく霧。
 そんな深い霧の中、鮮やかなオレンジ色の瞳がふと、その奥深くからやって来た存在の姿を捉えて。
「あぁ……やはり貴方ですか」
 橙樹・千織(藍櫻を舞唄う面影草・f02428)は特に驚いた様子もなく、逆に納得したように。
 眼前に現れた、道化の如き表情や服装の男を見遣った。
 そんな、何とも面妖な人物は。
「そうでしょうね、だって貴方は“あの頃の私”を殺したのだから」
 千織の心に強く在る、銀の長髪をポニーテールにした蝙蝠の翼を持つ男の姿。
 隠すことさえしない迸る殺気と、手に携えた長剣。
 そう――あれは、遠い昔。
 この男の手に心臓を貫かれ、あの生に終止符を打った。
 そしてまた今――自分を、殺しにやってきたのだ。
 刹那、いつもはふわふわと笑っている千織の表情が――悲しみ、恨み、憎しみ、怒り……負の感情に染まる。
 そんな溢れかえる感情のままに、千織は道化へと言葉をぶつける。
「お前がいなければ、あの子の背を護れるはずだった! まだあの子との柔らかな日々を送れたはずだった!!」
 そして――黒に金煌めく鞘から、黒鉄の刀身に藍の装飾が施された日本刀をスラリと抜いて。
 男の心臓を、容赦なく突き貫けば。
 漆黒の世界に飛び散り裂く、鮮烈な赤き小華たち。
 ――幻であることは、分かっている。
 けれども……千織は男へと目掛け、刃と化した八重桜と山吹の花弁を、尚も容赦なく解き放つ。
 ――跡形も無く斬り刻め。
 鮮やかな赤へと誘う櫻雨を降らせながら、ぽつりと零れる言の葉。
 跡形も無く斬り刻んで、散らせてしまえ……その姿、二度と私の前に現すことが出来ぬよう――と。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヴォルフガング・ディーツェ
【POW】
泣き叫んで、蹲って、絶望して、悲嘆に暮れたっておかしくない
それ程の絶望と痛みを若い娘独りに背負わせてなるものか

老いもしない俺にだって心を強く捉える者達がいたさ。双子の妹、愛おしい養い子達…魔の霧から逃がられないのなら、きっと彼等が俺を殺しに来るだろう
過去に浸れれば良いけれど、儚い願望か
百年を生きるという事は多くを取り零す事…君達の顔の仔細を、声を、俺は思い出せない

そんな俺の前に現れるモノは完璧ではない歪に違いない
けれど、だからこそ躊躇いなく殺す事が出来る
全てを焼き尽くす火の【属性攻撃】を載せた爪で幻影を引き裂き、本性は【緋の業苦】で引き裂こう

さよなら、いつか正しき輪廻の果てで遭うまで



 目的の地は、深き森を抜けたその先。
(「泣き叫んで、蹲って、絶望して、悲嘆に暮れたっておかしくない。それ程の絶望と痛みを若い娘独りに背負わせてなるものか」)
 この、夜と闇の世界に常に満ち溢れる、沢山の理不尽な絶望や痛み。
 それを背負わせ――そして、無残にもその命を散らせるわけにはいかない。
 だが、娘の元へと向かうには……この霧深い呪いの森を、越えなければならない。
 ヴォルフガング・ディーツェ(咎狼・f09192)は、ふとこれまでの過ぎ去りし時間を思い返してみる。
「老いもしない俺にだって心を強く捉える者達がいたさ」
 それは、双子の妹に、愛おしい養い子達……。
 そして、もしもこの森に息づく霧の呪いから逃れられぬのならば。
 きっと自分を殺しにくるのは、彼等であるだろうと。
「過去に浸れれば良いけれど、儚い願望か」
 百年という年月、それは既に何とも朧気で。
 年月を重ねることは、多くを取り零すこと。
 現にヴォルフガングは、彼等の顔の仔細を、声を……思い出せない。
 だから――。
「!」
 ヴォルフガングの眼前に現れたそれらも、とても歪で、朧げな存在であった。
 けれど、だからこそ。
「躊躇いなく殺す事が出来る」
 刹那、漆黒の森を鮮烈に照らすのは、鋭利な爪に宿る、全てを焼き尽くす赤のいろ。
 ヴォルフガングは、心を強く捉える者たちであったものを、燃え盛る炎の爪で躊躇なく引き裂いていって。
 炎の赤に照る鈍赤の花が、漆黒の森に咲き誇る。
 そして、霧の魔力が解け、歪で朧気であった彼等の姿が蠢く亡霊のものに変わった瞬間。
 触れた者全てを腐らせる呪詛を帯びた魔爪――『緋の業苦』で、敵を容赦なく引き裂いて。
 ヴォルフガングは、濃い霧に溶けるかのように躯の海へと還っていく亡霊たちへと背を向け、先へと急ぐ。
 その姿や声や共に過ごした時間は、確かに歪で朧げな、まさに霧に包まれたかの如き曖昧な記憶でしかないけれど。
 ヴォルフガングは深い霧の中を征きながら、改めて思うのだった。
 ――さよなら、いつか正しき輪廻の果てで遭うまで。
 彼等が自分にとって、いまもなお、心を強く捉える者であるということを。

成功 🔵​🔵​🔴​

氷條・雪那
オブリビオンによって運命を狂わされた娘
……仇討ちを選んだという点でも、私と同じですね
もっとも、私の場合は未だに相手の居場所は分かりませんが
だからこそ、その願いを果たさせたいと思います
悪辣なヴァンパイアに、死を

己の心の中を強く支配する者
恐らく、私は仇討ちの相手だろうと考えていました
例え幻でも、いつか来るべき時の予行演習になればいい

その考えは、予想に反して現れた黒髪の男
十代後半ぐらいの、もうその年齢を追い越してしまった人に打ち砕かれて

兄上と、震える声でそう呟いて
悲しくて、嬉しくて
けれどそれ以上に胸の内を支配するのは、激しい怒りの感情

幻とはいえ、兄の姿を穢したものを一刀両断します



 まるでその森に潜む深い闇は、人間の心のようで。
 そんな森を覆い徐々に広がっていく濃い霧は、侵入者を殺す呪いを孕むのだという。
 その呪いは、深い森だけでなく。
 人の心の中にも浸蝕せんと、その心を霧の世界に映し出す。
「……仇討ちを選んだという点でも、私と同じですね」 
 深い森を征きながら、氷條・雪那(凍刃・f04292)が思い返すのは、ヴァンパイアへと仇討ちせんとする花嫁。
 オブリビオンによって運命を狂わされた娘――それは、雪那も同じであった。
「もっとも、私の場合は未だに相手の居場所は分かりませんが」
 いや……だからこそ。
 その願いを果たさせたいと――悪辣なヴァンパイアに、死を。
 雪那は思うのである。
 だがその前に、この霧深い森を抜けなければならない。
 ――己の心の中を強く支配する者。
「恐らく、私は仇討ちの相手でしょうね」
 例え幻でも、いつか来るべき時の予行演習になればいい……そう、深い霧の只中を進んでいく雪那。
 だが、深い霧の奥から現れたのは。
 憎い仇討ちの相手では、なかったのだ。
 予想に反して現れたのは――黒髪の男。
 その見目は当時の記憶のまま。
 今の雪那はもう、その年齢を追い越してしまっている。
 そんな、雪那の心を打ち砕く人物は。
「兄上……」
 悲しくて、でも嬉しくて――震える声でようやく絞り出し、兄を呼ぶ。
 けれど――それ以上に。
 雪那の胸の内を駆け巡る感情は、激しい怒りであった。
 幻とはいえ、兄の姿を穢したものを――許せない。
 雪那はその青き瞳で、兄を騙る存在を捉えて。
 握る雪夜で一閃、敵を容赦なく真っ二つに。
 一刀両断したのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

鏡彌・サクラコ
【オクちゃんf10977と一緒】
幻影の姿は自身と同じ
瞳の色だけが違う
相手のそれは銀色
「音羽斎宮サクラコ」
それが鏡を見つけた少女の呼び名
今の自身がその少女と同一なのか
一部なのか
それとも鏡に映る姿なのか
自身にも判別つきかねる

恩義があり
譲り受けたものがあり
壊すも活かすも好きにしたらよいと
無抵抗に受け入れる

でも
本物であるならば
私たちは鏡映し
決して相手を傷つけるはずはない

そら、あなたの姿は鏡に映りはしない


オクちゃんおまたせでいす!
ちゃっちゃとやっつけましょう!
「ハクナキ」を操作して亡霊を攻撃します
呪詛?効きませんねい
現実世界は楽勝でいす!


日隠・オク
サクラコさん(f09974)と参加です

幻影
それは黒い何かで
大きい人の形をとった何かで
それが誰かなんかわからなくて
ただただ恐怖を感じるもので
それが私をというなら
抗うことはしないから

できるなら痛くないように
眠るように

サクラコさん!
合流をして
霧に惑わされないように……!
ナイフを握り直し

UCはシーブズ・ギャンビットで
サクラコさんとタイミングを合わせ
敵の攻撃には注意をしながら
敵だけを見て
倒すことだけ考える
敵の動きだけに集中する



 深く昏い霧が立ち込める森に存在するのは、まさに鏡のような瓜二つの少女。
 だが――その瞳の色が、違う。
 ひとつは、鏡彌・サクラコ(鏡界に咲く花・f09974)の両の目が帯びる、金のいろ。
 そしてもうひとつは、音羽斎宮サクラコ……深き森の奥から現れた彼女の、銀のいろ。
 音羽斎宮サクラコは、鏡であった自分を見つけた少女。
 今の自身がその少女と同一なのか、一部なのか、それとも鏡に映る姿なのか――それは、サクラコにもはっきりとはわからない。
 そして嘗ての主には、恩義があり、そして譲り受けたものがある。
 だから――壊すも活かすも好きにしたらよいと。
 無抵抗にされるがままを受け入れんと、彼女の前へと立つサクラコ。
 でも……眼前の銀の瞳の彼女は、何故だか鏡には映らない。
 そしてサクラコの金の瞳は、はっきりとそれを捉える。
 銀の瞳にギラギラと漲る、殺気のいろを。
 本物であるならば、自分たちは鏡映し――決して相手を傷つけるはずはないのだ。
「そら、あなたの姿は鏡に映りはしない」
 眼前の存在が、恩義ある音羽斎宮サクラコ本人でないのであれば、話はまた別。
「……ッ!」
 刹那、召喚された32枚の銅鏡が。
 銀色の瞳のサクラコを騙る亡霊を、打ち抜いたのだった。

 ――同じ時。
 いつの間にか、共に並んでいたはずのサクラコと逸れてしまった日隠・オク(カラカラと音が鳴る・f10977)は。
 ふと立ち止まり、深い霧の向こう側へと、その緑色の瞳をじっと凝らした。
 オクの瞳に映るそれは……黒くて、大きい人の形をとった何かで。
 それが誰かなのかもわからない。
 誰なのかは、わからないのだけれども。
 オクが何故だか、ただただ感じるのは――恐怖。
 やがてそれは、じわりとオクへと近寄って生きて。
 ――それが私をというなら、抗うことはしないから。
 迫る漆黒の存在に恐怖を抱きながらも、オクはぎゅっとその瞳を閉じる。
 できるなら痛くないように、眠るように……そう、お願いしながら。
 そして黒い存在の手が――オクへと、伸びて。
 瞑った瞼の奥に広がったいろは……鮮烈な赤であった。

「オクちゃんおまたせでいす!」
「サクラコさん!」
 逸れたはずの相手を見つけ、お互いが同時に呼びかけ合う。
 霧の呪いも晴れ、眼前には、亡霊の群れ。
 オクちゃん、大丈夫ですか? と。
 サクラコは滲むその色に気付き、そう声を掛けるけれども。
 ――だからこそ。
「ちゃっちゃとやっつけましょう!」
「はい、霧に惑わされないように……!」
 サクラコが漆黒の世界に躍らせる『ハクナキ』の放つ衝撃が、亡霊を屠っていって。
 敵だけを見て倒すことだけ考える――そうナイフを握り直し、オクもサクラコとタイミングを合わせて地を蹴る。
 呪いを纏わぬ亡霊たちなど、敵ではない。
「呪詛? 効きませんねい。現実世界は楽勝でいす!」
 サクラコとオクが亡霊たちを殲滅させるのも、もう時間の問題だ。
 そして――ふと濃い霧が一瞬晴れた、その時。
 森を見下ろすような崖の上に建つ、霧に隠されていたヴァンパイアの館を見てとることができたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『バジリスク・ヴァーミリオン』

POW   :    無双壊滅撃
【両手の戦槌の振り回し】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    ヴァーミリオンブラッド
【ヴァーミリオンの血統の力】に覚醒して【朱の戦鬼】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    石化の魔眼
【魔眼の邪視】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

【第2章の追加情報を『4月16日(火)』に追記いたします。掲載までもう暫くお待ちください。オープニング追加後から、第2章のプレイングの受付を開始いたします】


●鮮血の儀
 鬱蒼とした『霧幻の森』を眼下に臨む、崖の上。
 この地で圧政を行うヴァンパイア『バジリスク・ヴァーミリオン』の館はそこに在った。
 人々が細々と日々の生活を送っている中、いかに理不尽な圧政が敷かれているのか。
 それは、この広くて豪華なヴァンパイアの屋敷をみれば、一目瞭然であろう。
 そして――この豪華な屋敷の中で、一番広い『誓血の間』と名の付けられた部屋。
 その部屋の重厚な扉を開け放った純白の花嫁の瞳に飛び込んできたのは――血の如き赤。
 誓血の間の入り口から奥に一直線に伸びた絨毯は、まるでヴァージンロードを思わせて。
 『誓血の間』の最奥……その赤き絨毯の終焉に、愛する人の仇『バジリスク・ヴァーミリオン』は立っていた。
「さぁ、くるがいい。我が花嫁よ。今こそ契りを交わし合い、完全に私のものとなれ」
 どこか芝居がかった口調のヴァンパイアは、かなり上機嫌なようだ。
 野暮なことはするなと、屋敷やその周辺に配置している多数の亡霊どもの姿も今日はみられないが。
 ヴァンパイアの傍には、3体の悍ましい亡霊の姿がみえる。
 赤き絨毯の先――ヴァンパイア『バジリスク・ヴァーミリオン』の傍らには、仄かな燈火に囲まれた祭壇がある。
 きっと……あの祭壇に寝かされて、ヴァンパイアの言う『誓血の契り』を交わされ――血を、吸われるのだろう。
(「私にはもう、失うものなんてない。たとえ死んでも、あの人の元に逝けるのならば……」)
 ――それで、悔いはない。
 純白の花嫁・リザは、その碧色の瞳に殺意を秘めながら。
 ヴァンパイアの言うがまま、血のヴァージンロードを進む覚悟を決めるのだった。
 ――懐に隠し持った短剣を、握りしめながら。

 ヴァンパイア『バジリスク・ヴァーミリオン』は、ヴァーミリオン家に連なるヴァンパイア。
 筋骨隆々の強靭な肉体を誇り、その戦槌の一撃は岩をも砕くという。更に石化の魔眼を持つ、強力なオブリビオンだ。
 性格は粗暴でプライドも高く、歯向かう者を正面から叩き潰し、自らの力を誇示することを好むという。
 そして、そんなバジリスク・ヴァーミリオンに、命を懸けて仇討ちを目論む花嫁・リザ。
 仇討ちを成す為ならば死も辞さぬという思考が、今の彼女の原動力となっている。
 ただ保護するだけでは、反発されたり、暴れられたり、最悪衝動的に戦火に飛び込んできてしまうかもしれない。
 この世界の者たちは、猟兵の存在を知らない。
 力で押さえつけるのは簡単であろうが、乱暴な行為は彼女からの信頼を失い、逆効果になりかねない。
 場合によっては強引に行動する必要も出てくるだろうが、彼女の気持ちや状態を鑑み、上手に対応して欲しい。
 猟兵たちが『誓血の間』へとたどり着くタイミングは、リザが絨毯の上を半分ほど進んだ頃。
 部屋の入口とバジリスク・ヴァーミリオンの、丁度中間地点にあたる場所。
 そしてバジリスク・ヴァーミリオンの傍らには、森の亡霊が3体。
 森の霧の魔力はないため、森で視たような幻影を明確にみせる力こそないが。
 攻撃手段は森の亡霊たちと同等、その能力は森に入る亡霊よりも高いようだ。
 猟兵たちが『誓血の間』へと乗り込めば、3体のうち2体はヴァンパイアの援護を。残りの1体はリザの元へと向かう。
 ヴァンパイアも強敵だが、配下の亡霊もきっちりと倒して欲しい。
 そして――花嫁に、『仇討ちをさせるか否か』。
 それは、猟兵たち各々に考えがあるだろうが。今の彼女が一番望むことでもある。
 ただしそれを果たさせる事は危険でもあり、彼女のためになるのかはわからない。
 リザの無事を確保する事が最優先事項であるが。
 彼女の思いを、どう決着させるか。
 思いの丈があるのならば、それを示すのもいいのではないか。

 『霧幻の森』を抜けた猟兵たちは、無事に森を抜けた皆と顔を合わせて。
 いざ、ヴァンパイアと花嫁の元へと、駆け出した。


※マスターより※

 第1章からのご参加の方は、指定がなければ戦える程度に傷は癒えているという設定で判定いたします。
 プレイングでご指定あれば、怪我を負ったままの参戦も可能ですが、倒される危険性も増します。

 第2章では、大きく分けて、
 ・『バジリスク・ヴァーミリオン』との戦闘
 ・リザへの対応

 主に、上記どちらかの行動をお願い致します。
 どちらともプレイングかけていただいてかまいませんが、中途半端になるとどちらもうまくいかない可能性もあります。
 リザは仇討ちしか頭にないため、信頼を得るような真摯な対応が必要となるかと。
 現在の彼女の心境では、予想外な無茶なこともしかねません。
 また、戦闘になると、亡霊の1体が彼女へと向かってきます。こちらの対応もお願いいたします。

 そして、彼女に『仇討ちをさせるか否か』。
 これは、いただいたプレイングの数が多い方で決定させていただきます。
 リザへの対応にあたらない方でも、どうさせたいと思うか書いていただければカウントいたします。
 場合によっては、彼女の信用を失ったり、リザが怪我を負ったり死亡する可能性もあります。
 ヴァンパイアの配下の亡霊の攻撃手段は、第1章のものと同じです。
 森の霧の魔力がないため、森でみたような明確な幻影は生み出せませんが。
 森での幻影を匂わせる、程度の演出でしたら場合によっては可能です。
 リプレイは『誓血の間』へと辿り着いたところからとなるため、館への潜入プレイングは不要です。

 プレイング送信は、現段階から受付開始いたします。
 プレイング締切日などのお知らせは、個別のMSページとSNSなどで行います。
花狩・アシエト
リザのことは他の奴に任せて、俺は戦わせてもらおうか

配下から狙う
さっき見た嫌な感じだな
武器は「右の」

「界刀閃牙」で一体ずつ確実に倒す
「二回攻撃」と「力溜め」、あと「串刺し」で後ろのやつにも攻撃
攻撃は「第六感」と「武器受け」でガード、避ける
過去はもう効かねぇよ!

ボス戦
配下の時から攻撃方法など「戦闘知識」を溜め込んどいて、攻撃方法は配下の時と同じに「力溜め」の「界刀閃牙」で攻撃
倒しそうになったら手を止める
他の皆の意見次第だな

俺はリザに仇討ちさせてやりたい
心が晴れても晴れなくても、仇討ちしたって事実は支えになるんじゃないかな。どんな歪んだ形だとしても
ただリザには生きていてほしいから

アドリブ、共闘歓迎


終夜・還
お前さ、復讐して死んで、それで恋人が喜ぶと思ってんの?
なんで生きる事を選ばねぇ?遺された側は生きて幸せにならなきゃ死んだ奴に報えねえだろうが
悲しみに暮れるのはイイが、腐ってんじゃねぇよバカが

俺は昔理不尽に人としての人生をヴァンパイアに奪われた
その影響で人狼になったし、恋人を飢えと渇きから喰ったクソ野郎だ
その俺に、喰われた恋人はな、生きろって笑ったんだよ…!

本当に愛してるならな、生きて幸せになってやれよ
同じところに来て欲しいなんざお前の恋人はきっと思わねえ

だから生きろ。死んだ恋人さんが向こうで笑顔で居れるように

リザに危害が及ぶ、又は
トドメを刺す場合は俺が身を挺して守ってやる

お前は死んじゃいけねえ


八上・玖寂
強引にどうにかするならともかく、
誠実に説得をする、というのがどうにも苦手でして。
『バジリスク・ヴァーミリオン』との戦闘の方へに行きましょうか。
花嫁さんは放置します。したいようにさせてあげればいいのでは?

【目立たない】【忍び足】で隠密し、
花嫁さんの方へ行った亡霊を『咎力封じ』で捕まえておきましょうか。
もし他の方に処理されているなら吸血鬼の傍にいる方へ同様の行動を。
【2回攻撃】で両方捕まえられたら最高ですが、さて。

残念ながら正面から真っ向勝負、というのは苦手なもので。
そんなことしたら僕なんかすぐ死んでしまいますよ。
ですので、卑怯なことばかりさせていただきます。

※アドリブ歓迎です


浮世・綾華
オズ(f01136)と

聞き慣れた声
虚ろな視界
…ぉ、ず?
心配かけた、と浮かぶ罪悪感を殺し
…たす、かる…わるい
本当は手伝わすことじゃない
過去と向き合おうとしたのは己自身だから

でも、触れる手に
今は過去などどうでもいいと思うほど
オズの優しさだけが滲み

肩借りて歩くのがやっとじゃ
と真の姿へ

礼の言葉を絞り出しそっと離れ
…おつかれって
まだ、おわって…ねぇ、よと笑み
艶やかな長髪を揺らし戦う
狂いそうになる感覚も
彼の声が届けば

使うは咎力封じ
漆黒の強膜の真ん中
緋が映す先へ
異形の黒を突き立て抉る

――手ぇ、出すなよ
(リザにも仲間にも、オズにも)
こっち、見とけ?

復讐は支援
此処まで訪れた勇気は報われるべきだ
身を盾にしても守る


オズ・ケストナー
アヤカ(f01194)のところへ駆けつける

アヤカ
だいじょうぶ?なんて言えないくらいのケガ
名を呼んで頬に触れて
(…なみだのあと?)

肩を貸しながら微笑む
おつかれさまアヤカ
わたしにも、手伝わせてね
ふふ、そうだね
もう少しだけ、がんばろう

誓血の間ではリザはみんなに任せて
わたしは戦う

これ以上傷を負わないようにと
攻撃は【武器受け】

亡霊がアヤカに呪詛を放つならアヤカの名前を呼ぶ
わからないけど
そうしたいと思ったから
姿が変わっても、聞こえてるって思うから

(これ以上アヤカを泣かせないで)
亡霊に【ガジェットショータイム】
現れた錫杖を棍のように振り回し
音色の意味は分からなくても
澄んだ音に背筋を伸ばす

リザが進むなら守るよ



 森で視た霧の夢幻は、貴方に何を齎しましたか?
 希望か、絶望か。それとも――。

 霧深い森を眼下に見下ろす、豪華な洋館。
 此処が、圧政を敷くヴァンパイア、バジリスク・ヴァーミリオンの居城。
 そして同時に、バジリスクに見初められし花嫁・リザも、今此処にいるのだという。
 愛する人を奪われた仇討ちをその手で成す為に――純白の花嫁は、死をも厭わない。
 しかし、その気持ちは理解できても。みすみす、花嫁を死なせるわけにはいかない。
 この霧の呪いに蝕まれた森で視た幻影も、心に何を思ったのかも、どんな傷を負ったのかも、違うけれど。
 夢幻の森に蔓延る、深く濃い霧を突破した猟兵たちが目指すことは、同じだ。
 重厚なこの扉の先――『誓血の間』にいるヴァンパイア・バジリスクを倒し、リザを救うこと。

 ヴァンパイアと花嫁が居るという『誓血の間』は、もう目前。
 そんな時、綾華がふと絞り出したのは――礼の言葉。
 そして、肩を借りていたオズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)からそっと離れれば。
 夜の世界に踊る艶美な長髪と、闇を纏ったかの如き漆黒に咲いた赤華の瞳――解放されるは、真の姿。
 そんな、真の姿に覚醒し、森で受けた傷を癒やす綾華を見守りながらも。
 オズは、霧の森で彼を見つけた時のことを、思い出す。
 ――だいじょうぶ? なんて、言えないくらいの怪我。
 でも、負った怪我も勿論、心配なのだけれど。
(「……なみだのあと?」)
 オズはそっと、その零れ落ちたものの軌跡を優しく指で辿るように。
「アヤカ」
 伸ばした色白の掌で頬に触れ、大好きな友の名を呼ぶ。
「……ぉ、ず?」
 虚ろな視界の中、確かに聞こえた声と、頬に伝わる温もり。
 それにホッとする反面……心配かけた、と浮かぶ罪悪感。
 その感情を押し殺しながらも、オズの肩を借りる綾華。
「……たす、かる……わるい」
 ――本当は手伝わすことじゃない。
(「過去と向き合おうとしたのは俺自身だから」)
 でも……あれほど知りたいと思った過去も。
 赤の瞳から離れない、ぞくりとするようなあの空と太陽のいろも。
 今は、どうでもいいと思うほどに……すぐ傍で微笑むオズの優しさがじわりと、全身そして心にまで滲んで。
 今度は友と、一歩ずつ一緒に、霧の森を進んで征く。
 ……そんな綾華とやって来た『誓血の間』を目前にして。
 オズは、綾華の姿を映した、子猫の如き澄んだ青き瞳を細めると。
「おつかれさまアヤカ」
 わたしにも、手伝わせてね――今度は、一緒に。そう微笑みと共に紡げば。
 ふっと、つられたように笑み返す綾華。
「……おつかれって。まだ、おわって……ねぇ、よ」
「ふふ、そうだね。もう少しだけ、がんばろう」
 二人はそう顔を見合わせ、わらって。
 周囲の猟兵達ともタイミングを目配せしながら――『誓血の間』の扉を、勢い良く開け放った。

「!!」
「……えっ!?」
 突然開かれた扉の音に、部屋の最奥にいるヴァンパイアと振り返った花嫁の視線が、同時に向けられて。
 驚いて足を止めたリザとは逆に、本能的に素早く得物を構えたバジリスク。
「何だ? 折角の契りの儀式の最中だというのに……大量の鼠が入り込んだようだな」
 ――狂いそうになる感覚。
 でも、艶やかなその髪を戦場に舞わせ、綾華の意識を導いてくれるのは……声。
「……アヤカ!」
 どうしてかわからないけれど。でも……そうしたいと、思ったから。
 亡霊が再び彼を惑わさんとしてもそうはさせない。これ以上、傷を負わないようにと。
 オズは、綾華の名を呼ぶ。
 姿が変わっても、聞こえてるって思うから。
 その声を背に受け、綾華は、漆黒に灯る緋が映す先へ。
「――手ぇ、出すなよ」
 リザにも仲間にも、そして、オズにも。
 手なんて、絶対に出させないから。
 ――こっち、見とけ?
 咎むべき存在へと異形の黒を突き立て、執拗につけたその傷を抉らんとする。
 それに、思うから。
 此処まで訪れた花嫁の勇気は報われるべきだ、と。だから、身を盾にしても守ると。
 同時に亡霊を打つは、作り出し握られた錫杖。
 その音色の意味は分からなくても……自然と背筋がしゃんと伸びる、澄んだ音色。
 オズはそんな清らかなる音色を鳴らしながら、棍のように振り回した得物を亡霊へと向ける。
 リザが進むというのならば支援するし、それに。
 ――これ以上アヤカを泣かせないで。
 大切な友が迷子にならないように。何度でも何度でも、その名を呼んであげる。
 だからもう、泣かないで欲しいって。そう、心から思うから。

 何が起こったのかまだ把握できず、血のような色をした絨毯の只中で立ち止まっている花嫁。
(「強引にどうにかするならともかく、誠実に説得をする、というのがどうにも苦手でして」)
 八上・玖寂(遮光・f00033)は、足を止めているリザを、一瞬だけちらりとその黒の瞳に映すけれども。
 ……したいようにさせてあげればいいのでは?
 そう、柔和だけれど、特に情をかける様子もみられない微笑みは絶やさずに。
 目立たぬよう極力足音を消し、隠密に戦場を駆けて。
 リザへと向かってきた亡霊へと死角から放つは、自由という咎人の翼を容赦なく捥ぎ捕獲するかのような、服の下に忍ばせた暗器のひと揃え。
 静寂の夜を決して騒がせることなく静かに、だが残酷に。解き放たれた拷問具が、敵を捕らえんと牙を剥く。
『……!』
 その予期せぬ衝撃に反応が遅れ、猿轡と拘束ロープに捕まる亡霊。
「残念ながら正面から真っ向勝負、というのは苦手なもので」
 そんなことしたら僕なんかすぐ死んでしまいますよ、と。
 玖寂は夜のような瞳を、ふっと細めてから。
「ですので、卑怯なことばかりさせていただきます」
 攻撃の手は決して緩めず続けざまに。
 ヴァンパイアに仕える亡霊をも、その『夜守』で拘束してしまわんと、玖寂は暗器を繰り出す。
 そして、拘束具が亡霊へと見舞われた隙を見計らって。
 花狩・アシエト(アジ・ダハーカ・f16490)は、反りの控えめな刀を右の手で改めて握り直すと。
(「リザのことは他の奴に任せて、俺は戦わせてもらおうか」)
 赤き絨毯の上を一気に駆け抜け、界刀閃牙――玖寂の暗器で攻撃に移る動きを抑制された亡霊へと刃を振り下ろして。
 さらに間髪入れずに、その忌まわしき漆黒を切断せんと、溜めた力を込めた会心の二閃を繰り出す。
「さっき見た嫌な感じだな」
 まずはバジリスクに仕える配下どもを狙い、眼光鋭き黒の瞳で亡霊を見据えるアシエト。
 霧の深い森で眼前の亡霊が騙っていたのは、相棒の姿であった。
 本物の相棒の槍でこの胸を貫かれるなら本望だと、そう思うけれども。
 それは勿論……本人であったら、の話。
 刹那、亡霊の身体が森の深い霧のような靄となり、呪いの怨念そのものへと姿を変えて。
 再びその心を弄ばんと、ゆらり不気味に迫るけれども。
「過去はもう効かねぇよ!」
 ――その手は何度も通用しない。
 握る刀『右の』で確りと亡霊の攻撃を受け止め、弾き返し躱して。
 ふっと振り返り、今度は、リザへと向かった亡霊を串刺しにせんと、躊躇なく鋭撃を放った。
 そして亡霊だけでなく、バジリスクの動きや攻撃方法も、戦闘知識として把握せんと。
 アシエトは敵に斬り込みながら、敵の集団を満遍なく観察しつつも、思う。
 リザのことは他の皆に今は任せているけれど――必ず助けてやろうって、そう思ったし。
 そしてこれから彼女にはどんな形でも、生きて欲しいから……個人的には、その手で仇討ちさせたい、と。
 そんな、攻撃を仕掛け戦場を駆ける仲間達にヴァンパイアを討つことは託して。
 還は、リザを守るように立ちながらも、いまだ状況が飲み込めずいる彼女へと言葉を投げる。
「お前さ、復讐して死んで、それで恋人が喜ぶと思ってんの?」
「えっ、どうして、それを……」
「なんで生きる事を選ばねぇ? 遺された側は生きて幸せにならなきゃ死んだ奴に報えねえだろうが。悲しみに暮れるのはイイが、腐ってんじゃねぇよバカが」
 自分が仇討ちをしようとしたことを何故知っているのかと。
 そう一瞬、驚いた表情を宿したリザであったが。続いた還の声に、反論の色を示す言の葉を紡ぐ。
「愛している人が殺されて、どこにもいないこの世界を、生きる? それにあいつを殺さないと、どのみち私たちは幸せになんてなれやしないわ」
 貴方に何がわかるの、と。
 そう吐き捨てるように言ったリザから、還は視線を逸らさずに。
 己の過去を、彼女へと語る。
「俺は昔理不尽に人としての人生をヴァンパイアに奪われた。その影響で人狼になったし、恋人を飢えと渇きから喰ったクソ野郎だ」
「……え?」
「その俺に、喰われた恋人はな、生きろって笑ったんだよ……!」
 本当に愛してるならな、生きて幸せになってやれよ――と。
 境遇は違えど、同じようにヴァンパイアが原因で大切な人を亡くした者として、リザの心に寄り添う還。
 すぐに前向きな思考になれ、なんて、到底無理なことなんて知っている。
 いや、たとえ年月が経ったとしても――霧の幻影に無抵抗に殺されることを選ぶほど、記憶の中にこびりついて今も離れない。
 ……けれど。いや、だからこそ。
「同じところに来て欲しいなんざお前の恋人はきっと思わねえ。だから生きろ。死んだ恋人さんが向こうで笑顔で居れるように」
 ――リザには生きて欲しい。
 還はそう、強く思うから。
「トドメを刺すのなら、俺が身を挺して守ってやる。お前は死んじゃいけねえ」
「……」
 月のように美しい金色の髪を靡かせ、じっと自分を見つめるリザにそう言って。
 まるで満月を見たかのように――狼の姿と化し、眼前に迫る亡霊へと鋭い爪をふるいながら。
 彼女の盾となるべく、還は立ち塞がる。リザに、これからの未来を、幸せに生きて貰うために。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…ふふふ。本当に愚かな娘ね。
あんな幻に血を奪われるなんて…。
でも良いわ、赦してあげる。
おかげで私が表に出てこれたんだから…ね?

【血の封印】を解き吸血鬼化して回復するわ。
第六感で捉えた敵の気合や殺気の存在感を、
【吸血鬼狩りの業】の補助を行って攻撃を見切り、
残像を残し舞うように回避して本命の元に接近しましょう。

…ふふ、当たらないわ、領主様。
貴方の動きが手に取るように分かるもの。

接近したら吸血鬼の礼儀作法に則り【血の抱擁】を。
怪力任せに拘束し、強化した吸血能力で生命力を吸収しましょうか。

…“誓血の契り”ね。顔は好みじゃ無いけれど…。
貴方の血はどんな味がするのかしら?

復讐?干物で良ければ好きにすれば?


クロト・ラトキエ
リザには添う方が在るでしょう。
ならば己は、彼らがリザの心を動かすまで…或いはその先まで、
彼女に向かい来る亡霊を迎え討ちます。

突入と同時、持てる最速で亡霊へと肉薄。
己は壁。
トリニティ・エンハンスにて防御力を水の魔力で補い、
可能なら見切り、又はフック付きワイヤーのフック部を盾代わりに受け流し。
鋼糸で狙うは腕や足。
緩めて張っては絡め取り、動きを封じ、或いは斬って。
あくまで相手は配下のみ。
リザの心は煽らず、けれど身の危険は排するスタンス。

仇討ちねぇ…。
一切の傷負う事無く、その命絶つのみならば、とは思いますけどね。
何一つと奪われるのは癪ですし?
(積極的な否定も肯定もない。故に説得には向かないと自己評価)


逢坂・宵
【燦星の宿】

ヴァンパイア対応にあたりましょう
これまでの悪逆非道、そしてなによりリザさん達への横暴、見るに堪えません
その行いの報いを受けていただきましょう

白雪さんもザッフィーロ君も、そしてここにいる仲間の皆さんが同じ気持ちであるならば
僕たち猟兵が負ける理由はありませんね

急ぎリザさんとヴァンパイアの間に駆け寄り斜線を阻み
リザさんへのヴァンパイアの攻撃は【オーラ防御】で妨害を阻みましょう
白雪さんとザッフィーロ君へ向かう敵や攻撃は【おびき寄せ】で注意を集めつつ
【高速詠唱】【全力魔法】を重ね【破魔】【属性攻撃】を乗せた
『天航アストロゲーション』でこの部屋に流星を生み出しましょう
星降る夜を、あなたに


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
【燦星の宿】
リザの復讐は手伝ってやりたいが…鶴澤は大丈夫だろうか?
説得は他の参加者に任せ、ヴァンパイアへの攻撃とリザに攻撃が行かぬ様盾として動こうと思う

鶴澤が引き付けている間にリザの元へ
その後は【穢れの影】にて敵の拘束をしつつメイスにて『2回攻撃』を試み
リザには常に注意を向け余り離れぬ様行動
攻撃が行きそうな場合は『盾受け』にて『かば』いメイスにて『カウンター』攻撃を
…後ヴァンパイアへの鶴澤の怒りをみている故、危ない時は同じく『かば』いに行けるよう注意を
宵も居る故大丈夫かとは思うがな
…後宵が攻撃を受けそうな場合は敵の位置を宵へ伝える様声を投げよう
信頼しているが…まあ、心配くらいしても良かろう


ニコ・ベルクシュタイン
恐らくは最も人手が少なさそうな「森の亡霊」、
特にヴァンパイアの援護をする2体への対処に当たろう
裏方仕事は好きだ、性に合う

2体同時に相手取れる立ち位置を確保したら「全力魔法」を乗せた
【花冠の幻】を発動させ、亡霊達を攻撃する
一撃では流石に倒せまい、他の猟兵達とも協力出来れば有難いが
俺自身も「2回攻撃」での追撃を狙うなど尽力しよう
若し、欲張って攻撃範囲がヴァンパイア本体まで届くようなら
多少の危険は顧みず踏み込んでの発動を狙って行きたい

リザの仇討ち:
俺個人の意見を言えば、成し遂げさせてあげてはどうか
無念を抱えたまま悶々と生きるよりは、
命を賭してでも果たしたいという願いのままにするが良かろうよ


鶴澤・白雪
【燦星の宿】
ヴァンパイアの対応にあたるわ
まずはリザをクソ野郎から引き剥がさないとね

到着したら鹽らしい態度で敵に駆け寄る
バジリスク様!花嫁にするなら私をお選び下さい、契りならばどうか私と…なんて、言うわけないしょ!

『全力魔法、だまし討ち』を使ってUCを使うわ
リザの事は他人に任せて一度『オーラ防御』で反撃に備える、ダメージによっては2人に回復を頼んで態勢を立て直すわ

リザが仇を打つなら止めないけどあたしの邪魔だけはしないで

『傷口を抉る、生命力吸収』を組み合わせた『2回攻撃』で敵の体力を削っていくわ
散々苦しんでから地獄に堕ちろ
ちょっと、何でザッフィーロがあたしを庇いに来てるのよ?チッ 礼は言わないわよ



 霧深い森を抜けた先の、ヴァンパイアの館。
 そして広い屋敷の中にある『誓血の間』へと先行した猟兵たちに続きながら。
 リーヴァルディは、ふっとその顔に、艶やかな笑みを宿し呟く。 
「……ふふふ。本当に愚かな娘ね。あんな幻に血を奪われるなんて……」
 紫の色を湛えていたはずのその瞳のいろは、赤みを帯びていて。
 そして纏う雰囲気も、無表情で無口な本来の彼女のものとは、どこか異なっている気がする。
 だが……それも、納得。
 ――でも良いわ、赦してあげる。おかげで私が表に出てこれたんだから……ね? と。
 そう続けた言の葉は、リーヴァとリーヴェ、表裏の関係がひっくり返っていることを示していた。
 普段は血を吸わぬリーヴァルディ。そんな抑制されし満たされぬ吸血衝動からうみだされた人格。
 無抵抗のまま、首筋に立てられた牙の感覚。
 大量の血を吸われ、気を抜けば今でも、世界が廻ってしまうけれども。
「……ふふ。本当の私を魅せてあげる。ただし、貴方の生命と引き換えだけど……ね?」
 霧の森の幻影に瀕死になりかけるほど血を吸われたことを、むしろ逆手に取って。
 リーヴァルディが解放するは『血の封印』――吸血鬼と化した、真の姿に。
 傷も癒えたその身体でヴァンパイアを狩るべく。
 辿り着いた『誓血の間』の只中に、躊躇なく足を運ぶ。
 同じく、扉が開け放たれている『誓血の間』へと飛び込んで。
「裏方仕事は好きだ、性に合う」
 ニコが赤き双眸で捉える敵は、ヴァンパイアではなく、その傍に仕えた配下の森の亡霊。
 赤き絨毯を大きく蹴り、二体同時に射程圏内へとおさめた瞬間。
 ――夢は虹色、現は鈍色、奇跡の花を此処に紡がん。
 全力魔法の彩りを加えた虹色の薔薇の花弁が戦場に舞い踊り、刃と化した七彩が、赤く飛沫く花を幾輪も咲かせた。
 所詮配下ではあるものの、決して侮れぬ存在。
 ニコは攻撃の手を緩めることなく、星型の花一輪咲く杖をふるい、幾度にも渡り、奇跡の花弁を巻き起こして。
 時を刻む二振りで、まるで時計の針の如く止まることなく追撃をはかり、ニコは周囲の皆と呼吸を合わせる。
 同じく、森の亡霊目掛けて。『誓血の間』へと足を踏み入れた瞬間、肉薄するクロト。
 リザにはきっと添う方が在るだろうと、クロトは仲間に彼女のことは託しながら。
(「ならば己は、彼らがリザの心を動かすまで……或いはその先まで、彼女に向かい来る亡霊を迎え討ちましょう」)
 亡霊から仲間を護るべく、水の魔力の加護をその身に纏い、敵前に立ちはだかる壁となる。
『う……ああアァぁ!』
 刹那、霞のような身体を呪いそのものと化し、悍ましい叫び声をあげながら襲い来る亡霊の衝撃も。
「残念ですが、当たりません」
 クロトはすかさずワイヤーのフック部分を盾の如く使い、敵の攻撃を受け流せば。
 刹那、お返しとばかりに放たれる、極めて細く丈夫な鋼の糸。
 幾本ものそれらを巧みに操り、緩めて張っては絡め取り、その動きを封じたり。
 腕や足へと狙いを定め、切断せんと、鋭利な閃きを纏う。
 そんな、あくまでも亡霊を相手取りながらも。
「仇討ちねぇ……」
 クロトはふとそう、一言だけ呟く。
 リザの心は煽らず、けれど身の危険は排する。そんな積極的な否定も肯定もないスタンスを取るクロトだが。
 花嫁が一切の傷負う事無く、その命絶つのみならば。
 ――何一つと奪われるのは癪ですし?
 煽りも止めもしないけれど。安全が確保されてさえいればと、秘める思いは肯定寄りのクロト。
 同じくニコも、成し遂げさせてあげてはどうかと、個人的には思う。
(「無念を抱えたまま悶々と生きるよりは、命を賭してでも果たしたいという願いのままにするが良かろうよ」)
 クロトの糸が亡霊を斬っている隙に、ニコはそう思いながらもさらに前へと踏み込んで。
「く……っ!」
 今度は亡霊だけではなく、バジリスクをも射程に含め、奇跡を咲かせた虹の彩りをお見舞いする。
 だがバジリスクは風情の欠片もなく、戦槌をぶん回しそれを強引に蹴散らして。
 無差別に猟兵たち目掛け、強烈な戦槌の一撃をふるってくる。
 その威力は、モロに当たると只では済まない豪胆さを誇るも。
 ――……吸血鬼狩りの業を見せてあげる。
 リーヴァルディが展開するは、代々伝わる吸血鬼狩りの秘奥義。
「! 何っ」
「……ふふ、当たらないわ、領主様。貴方の動きが手に取るように分かるもの」
 銀髪の髪をふわり戦場に靡かせ、残像を残し舞うように。
 吸血鬼に特化した秘奥で、強烈なバジリスクの一撃を回避し。
 そして、一気に距離をつめて。
「!」
 その細い腕からは想像つかぬ怪力を発揮し、強引に拘束を試みるリーヴァルディは。
「……“誓血の契り”ね。顔は好みじゃ無いけれど……。貴方の血はどんな味がするのかしら?」
 吸血鬼の礼儀作法に則り――血の抱擁を。
 そして強化した吸血能力で鋭利な牙を剥き、突き立て生命力を吸収せんとするも。
「ぐっ、小癪な……!」
 味わい尽くすことは許さぬと、力任せに引き剥がされる。
 だが、突き立てた牙から広がるのは、甘美で酔ってしまいそうな血の味。
 そしてリーヴァルディはふと一瞬、後方にいるリザへと視線を向けるけれど。
 ――復讐? 干物で良ければ好きにすれば?
 そう、あくまで自分は眼前の吸血鬼を狩るだけ、だから。
 
「バジリスク様! 花嫁にするなら私をお選び下さい、契りならばどうか私と……」
 突如『誓血の間』に響くのは、しおらしげな、花嫁候補となることを自ら望む声。
 そんな魅力的な色を宿すレッドスピネルの双眸に、バジリスクは笑んで。
「よかろう、近う寄るがいい」
 そうすっと、駆け寄る白雪に手を差し出そうとするも。
「……なんて、言うわけないしょ!」
「!? く……!」
 ――業火の棘に灼かれて骨の髄から燃え尽きろ。
 全力の魔力を編み出し、相手の虚をついた炎の衝撃が、バジリスク目掛け唸りをあげた。
 だが、その炎を両手の戦槌で掻き消し、逆に白雪へと魔眼の邪視を向けるヴァンパイア。
 白雪は反撃に備えオーラ防御を纏っていたが、その魔眼に動きを封じられる。
 しかし白雪の狙いは、リザをクソ野郎――バジリスクから引き剥がすこと。
 ……鶴澤は大丈夫だろうか?
 そう、バジリスクの気を引く役割を担う白雪の様子を心配しながらも。
 リザの復讐は手伝ってやりたいところだが、説得は他の猟兵の皆に任せて。
 ザッフィーロは白雪が敵を引き付けてくれている間に、ヴァンパイアへの攻め手とリザへの護り手となれるよう、位置取れば。
 ――赦しを求めぬ者には何も出来ぬ。……生きる限り纏わり積もる人の子の穢れを今返そう。
 影の如き漆黒が、バジリスクの動きを捉えんと繰り出されて。
 リザから余り離れぬ様に心掛けながらも、握るメイスをバジリスクへと一度、二度と叩きつける。
 これまでのバジリスクの悪逆非道、そしてなによりリザ達への横暴。
 見るに堪えません――宵は横に小さく、ふるりと首を振るけれど。
「その行いの報いを受けていただきましょう」
 リザとバジリスクの間に斜線を阻むように駆け寄りながらも。
「白雪さんもザッフィーロ君も、そしてここにいる仲間の皆さんが同じ気持ちであるならば、僕たち猟兵が負ける理由はありませんね」
 夜の色を纏う流れるような髪を躍らせ、リザへとヴァンパイアの攻撃が及ばぬうよう妨害するように動きつつ。
 星瞬く深宵に映る頼もしい友や仲間の姿に、瞳を細めた。
「散々苦しんでから地獄に堕ちろ」
 怒りを孕む白雪の攻撃は、敵の傷を抉り、生命力を奪う。
 だが、眼前のヴァンパイアは、強敵であるオブリビオン。
「地獄に堕ちるのは、貴様だ!」
「……!」
 バジリスクの戦槌が白雪を叩き潰さんと、勢いよく振り下ろされる。
 だが――それを受け止めたのは、鎖の音を鳴らした一つ星を思わせるメイス。
「……鶴澤、大丈夫か?」
 間に入ってきたのは、ヴァンパイアへの白雪の怒りをみている故、何かあれば庇いに入れるよう注意を払っていたザッフィーロであった。
「ちょっと、何でザッフィーロがあたしを庇いに来てるのよ?」
 チッ、と白雪は舌打ちしてから。礼は言わないわよ、と再びヴァンパイアへと炎の如き揺らめきを宿す視線を向けて。
「! 宵、魔眼が放たれるようだ」
 信頼はしているが、心配してしまう。
 ザッフィーロはバジリスクの予備動作を見逃さず、宵へとそう声を掛けるも。
「把握済です、ザッフィーロ君」
 おびき寄せるよう敢えて立ち回っていた宵は、そう返してから。
 ――星降る夜を、あなたに。
 宵色と星を宿す杖の先端を、悪しき者へと向けた刹那。
「……!!」
 魔を破る全力魔法を乗せた流星が、夜と闇の世界に煌めきを与えるかの如く、降り注ぐ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

アルバ・ファルチェ
ユエちゃん(f05601)と行動。

本当はその手を汚させたくない。

でもこのままじゃ心が死んでしまう。

だから僕は守るよ、彼女の心身共にね。

彼は復讐を望まないなんて言わない。

復讐は生きてる人のモノだから。

それで君の気持ちが晴れるなら構わないと思う。

でも命を無駄にするのは許さない。

彼の気持ちは彼にしかわからなくても、少なくとも僕は僕の大事な人には生きてて欲しい…僕がどうなったとしても。

それは万人に共通する気持ちじゃないかな。

だから…望まなくても僕は守る。

攻撃からかばう。

ダメージは各種耐性とオーラ防御で耐えるよ。

そしてカウンターからの破魔、属性攻撃:光。

どうか彼女にとって最適の結末があるよう、祈るよ。


月守・ユエ
アルくん(f03401)と行動、連携
リザへの対応
護りながら亡霊の対処

仇討ちを止めようとは思わない
大切な人を奪われて
仇討ちをやめろという方が無理な話だから
僕も奪われたら同じ気持ちになると思う

けど、死のうとは思わないで
君が死んでしまったら、誰が君の大切な人を悼んであげれるの?
死は
簡単に人から人を忘れさせてしまうのに

君の思いを果たせるように力を貸すよ
一緒に戦おう
その刃、アイツに突き立てよう

月影、頼むよ(オルタナティブダブル)
属性攻撃
月の光を刀に宿らせ敵を刻み、串刺し
リザを襲う亡霊を攻撃
※早めに撃破叶ったら
バジリスクに死刻曲を放つ

リザさんの想いアイツにぶつけるよ
彼女の”呪詛(想い)”を乗せ
音響刃を放つ


東雲・円月
双子の姉の咲夜(f00865)と共に

咲夜がその子を守りたいって言うなら俺はそれに協力するよ

リザさん。勝手な言い分だけど、俺は貴方に死んでほしくありません
咲夜が……その双子の姉が貴方を守ると言っているからです
ただそれだけです。それが俺が貴方を守る理由です
貴方がどういう行動を取ろうと、絶対に離れませんよ
……あとは貴方の好きにしてください

さて、と言うことでしてね
この身を盾にするのは慣れています。激痛への覚悟もね

咲夜、襲ってくる敵を撃つのは任せるよ
俺は武器が大物だからね。これで受けて防御に専念するよ
常にリザさんから離れず、常に敵との間に立ち続けるのが目的です
亡霊の呪いなんて噛み砕いてやりましょう!


東雲・咲夜
双子のえっくん(f00841)と

ある程度傷は塞ぎましたけど
無理せんといてね、えっくん
うちらはリザちゃんを護りましょう

うちらから離れたらあきまへん
しっかり背に隠れといておくれやす
此処を中心とし
円を描くよう疾風刃の防御壁を張ります
桜の花弁が混じっとりますから
目眩ましにもなりましょう

えっくんの動きは大きいさかい
隙に付け込まれへんよう
よう狙って光矢を射ます
勿論、破魔の力もたんと籠めてな
あんさんも、もう楽になってええんよ
苦しかったね……

愛するひとに一生逢えへんのは
どんなにか苦痛やろ
うちかて喪ってしもたら…
彼を前に想像したら涙が込み上げ
せやからうちは止めへんの
ただ…リザちゃんが後悔しない選択をしてほしい


レイン・フォレスト
思い出した今、敵討ちがしたいと言う気持ちは痛いほど分かる
僕は父を殺した母の事、許せないから
けれど……

【SPD】
シーブズ・ギャンビットを使ってリザの所まで駆ける
敵とリザの間に入り込んで敵へ攻撃
リザの前に立ちはだかって彼女を庇いながら敵の相手を

リザ、だね
このままじゃ親玉に辿り着く前に君は殺される
だから君を僕に守らせて
敵は必ず倒すから
君は僕の後ろにいてくれると有難い

敵討ちはどうしてもしたいなら止めない
気持ちは分かるから
でも、いつか君があの世に行く時に彼と同じ場所へ行きたいなら、
その手を血で染めるのはやめた方がいいと思う
花嫁は真っ白じゃないといけないんじゃないかな……

良ければ、奴は僕らに任せて欲しい



 霧深い森がみせた、自分の心を支配している者の姿。
 記憶の蓋がこじ開けられ――そして、思い出した過去。
(「思い出した今、敵討ちがしたいと言う気持ちは痛いほど分かる。僕は父を殺した母の事、許せないから」)
 自分とリザとの境遇を重ね合わせたレインには、彼女の気持ちがよくわかる。
 ――けれど……。
 レインは『誓血の間』に足を踏み入れるやいなや、シーブズ・ギャンビットを展開して。
 少しでも早くリザの元へと辿り着かんと、思い切り地を蹴る。
 そしてすかさずリザと亡霊の間に割り込み、ハンドガンの引き金を引いた。
 そんな、リザを庇うような位置取りをしながら。
「リザ、だね」
 一瞬だけ振り返り、レインはそう、彼女に声を掛けて。
 そして頷いたリザへと、こう続けるのだった。
「このままじゃ親玉に辿り着く前に君は殺される。だから君を僕に守らせて。敵は必ず倒すから」
 そんな言葉に、大きく首を振るリザ。
「殺されたって、構わないわ。こんな世界でひとりで生きるのは無理よ。あいつを殺して……いえ、たとえ殺せなくても、ならいっそ彼の元に逝きたいの」
「敵討ちはどうしてもしたいなら止めない。気持ちは分かるから」
 ……脳裏に浮かぶ、過去の記憶。
 仇討ちの相手を殺したいほど憎い、その気持ちはよく分かるのだけれども。
「でも、いつか君があの世に行く時に彼と同じ場所へ行きたいなら、その手を血で染めるのはやめた方がいいと思う」
 レインの赤を湛える瞳に映るのは、穢れを知らぬ純白の花嫁の姿。
 敵討ちはどうしてもしたいなら止めない。けれど、レインはリザを護りながら、やはりこう思うのだった。
 花嫁は真っ白じゃないといけないんじゃないかな……と。

 レインが花嫁の白を穢したくないと思うのと同じように。
 アルバも、本当はその手を汚させたくない……そう、思うのだけれど。
(「でもこのままじゃ心が死んでしまう。だから僕は守るよ、彼女の心身共にね」)
 『盾の騎士』である彼は、やはり守りたいのだ。
 リザの身体も、そして、その心も。
「彼は復讐を望まないなんて言わない。復讐は生きてる人のモノだから。それで君の気持ちが晴れるなら構わないと思う」
「仇討ちを止めようとは思わない。大切な人を奪われて、仇討ちをやめろという方が無理な話だから。僕も奪われたら同じ気持ちになると思う」
 アルバと共にリザ守るべく、彼女の盾となりながらも。
 ユエも彼と同じように、彼女の意思を尊重したいと。その思いを、リザへと伝える。
 そしてふたりは、真っ直ぐに彼女へと視線を向けて。
 同時に、こう紡ぐのだった。
「でも命を無駄にするのは許さない」
「けど、死のうとは思わないで」
 復讐や仇討ちは、無理には止めないけれど。
 でも、リザには絶対に死んで欲しくはない――これが、アルバにとってもユエにとっても、何より一番の願い。
 リザは恋人の形見の短剣を握りしめたまま、首を横に振った。
「彼のいない世界を生きたところで、何もならないわ」
 そんなリザに、今度はユエが、首をふるふると振る。
「君が死んでしまったら、誰が君の大切な人を悼んであげれるの?」
 ――死は、簡単に人から人を忘れさせてしまうのに。
 月の様な金色の瞳の奥に一瞬宿るのは、どこか少し寂しい色。
「彼の気持ちは彼にしかわからなくても、少なくとも僕は僕の大事な人には生きてて欲しい……僕がどうなったとしても」
 それは万人に共通する気持ちじゃないかな、と。
 アルバは優しくリザに微笑みを返しながら、自分の思いをはっきりと伝えて。
「だから…望まなくても僕は守る」
 言葉だけでなく……行動でも、示す。
 迫る亡霊からリザを護るように、身を挺し盾となって。
 破魔を宿す眩い光で反撃の一撃を見舞い、亡霊の呪いを弾き飛ばす。
 そしてユエは、形見の短剣を握るリザの手をそっと両手で取って。
「君の思いを果たせるように力を貸すよ。一緒に戦おう」
 ――その刃、アイツに突き立てよう。
 そう微笑んでから、ユエは月影を喚んで。頼むよ、と戦場に解き放つ。
 夜と闇の世界に輝く月のように刃を閃かせ敵を刻み、串刺しにせんと踊る月影。
 そして敵の攻撃からリザを護りながらも、アルバは祈る。
 どうか彼女にとって最適の結末があるよう――と。

 深く濃い霧がみせた呪い。
 その呪いに貫かれ負った怪我は、ある程度は塞いだけれど。
「無理せんといてね、えっくん」
 咲夜はそう円月を見上げてから。
 リザに澄んだ藍眸を向け、盾になるよう立ちながら告げる。
「うちらから離れたらあきまへん。しっかり背に隠れといておくれやす」
 刹那、戦場を舞うのは、桜花弁。
 その薄紅が花嫁を隠すかの如く、円を描くように舞い上がり。
 刃となった疾風が、その身を護らんと壁を作る。
 円月は迫り来る亡霊を見据えながらも、思う。
(「咲夜がその子を守りたいって言うなら俺はそれに協力するよ」)
 純粋さ故に涙脆くて、気持ちがすぐにその表情に出る咲夜。
 そんな姉を、悲しい顔にさせたくはないから。
「リザさん。勝手な言い分だけど、俺は貴方に死んでほしくありません。咲夜が……その双子の姉が貴方を守ると言っているからです。ただそれだけです。それが俺が貴方を守る理由です」
 円月は正直に、偽りない心を紡ぐ。
 綺麗事ばかり並べても、その心に届かないと思うし。
「貴方がどういう行動を取ろうと、絶対に離れませんよ。……あとは貴方の好きにしてください」
 リザの行動を否定する気もないし、彼女を護りたいという思いは、本当だから。
 ……この身を盾にすることも、激痛への覚悟も、慣れている。
「咲夜、襲ってくる敵を撃つのは任せるよ」
 そして、名もなき無骨な両刃の巨大斧をいつも通り握りしめながら。
「俺は武器が大物だからね。これで受けて防御に専念するよ」
 常にリザから離れぬよう心掛け、敵との間に立ち続けるべく、名もなき大斧を振るう円月。
 咲夜はそんな彼に、こくりと確り頷きつつも。
 動きの大きな戦い方をする弟が、隙をつかれないようにと。
 悪しきものを打ち破る力を宿した光の矢を番え、狙いを定める咲夜。
 ――亡霊の呪いなんて噛み砕いてやりましょう!
 そう、力任せに大斧を振り回し、亡霊の攻撃を確りと円月が受け止めれば。
 敵に生まれた隙を、決して見逃さずに。
 ――神をも射抜く破魔の鳴箭――どうか、届いて。
 咲夜が解き放った鈴鳴を伴う光の矢が、悪しき存在を的確に射抜く。
 それから咲夜は、自分の背にいるリザに向き直って。
 こう、言の葉を紡ぐ。
「あんさんも、もう楽になってええんよ。苦しかったね……。愛するひとに一生逢えへんのは、どんなにか苦痛やろ」
 ――うちかて喪ってしもたら……。
 咲夜の瞳に映るのは、大きな得物を振るう彼の姿。
 想像しただけで、じわりとその姿が滲んで。心が、ぎゅっと締め付けられる。
 だから……咲夜は、リザを止めない。
 ――けれども。
「ただ……リザちゃんが後悔しない選択をしてほしい」
 そんな咲夜の言葉に、リザはぐっと、形見の短剣をよりいっそう握りしめて。
「後悔をしない、選択……」
 ヴァンパイア・バジリスクと激しい戦いを繰り広げ、そして自分を身を挺して護る猟兵たちの姿を、複雑な表情でじっと見つめるのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

マリス・ステラ
【WIZ】仇討ちに助力

「主よ、憐れみたまえ」

『祈り』を捧げると星辰の片目に光が灯る
光は『オーラ防御』の星の輝きと星が煌めく『カウンター』

亡霊は自身の『存在感』で『おびき寄せ』る

「リザ、あなたの道を開きます」

亡霊は星の『属性攻撃』で浄化
リザは身を呈して守る

「復讐には"刃"が必要ですから」
あなたの刃になりましょう
リザを最優先に【不思議な星】
緊急時は複数同時に使用

最終局面で真の姿を解放
刹那、世界が花霞に染まる
頭に白桜の花冠
服は聖者の衣
背から聚楽第がぎこちなく翼を広げる

「あなたは、できると思うが故に、できるのです」

リザに星の加護を与えて『破魔』の力を宿す

「あなたを私は赦しましょう」

愛でリザを支えます


シーラ・フリュー
やっぱり幸せではない結婚なんてダメだと思うんですよね…こんな不幸な出来事、さっさと終止符を打ってしまいたいです…。

仇討ちに関しては、個人的には是非。ただ、なるべく危険な状況にはさせたくないです…。
ですので、出来る限りの援護は致します。

【SPD】
敵の対応をします。
【目立たない】ように【スナイパー】と【早業】による【援護射撃】を。こちらに敵が来たら【狼牙】で対応、その後【ダッシュ】で離れます。
敵の優先順位はリザさんの方に向かった亡霊、他の亡霊、バジリスクでしょうか。リザさんを守る事を第一に立ち回りたいです…。
仇討ちをする場合はバジリスクの手、足、目を狙って、少しでもしやすい状況を作りたいですね…。


蘭・八重
あらあら?ヴァンパイアといっても素敵な方ばかりじゃないのねぇ

彼女の前に立ち
噤む黒キ薔薇で敵を切り刻む
ふふっ、お邪魔だめよ?

更に来る敵に紅薔薇荊棘で

戦闘しつつも彼女に微笑み
復讐がしたい?良いと思うわ、だって美しいモノ。
彼と貴女の血で染まる、純血の花嫁。
でも…
リサ様の耳元で囁く
そんな姿彼が恐がらないかしら?

ふふっ、紅く染まり復讐という名に酔いしれた花嫁様
それは彼が愛した花嫁様かしら?

復讐は蜜の味、一度では満足しないものよ?
貴女は綺麗なままで彼に逢わなくてはいけない
それが貴女が今出来る事よ

さぁ、見なさい。彼が死んでいく様を。満足?それとも不満?
でもこれからは新しい貴女の人生。十字架の花嫁という名のね


アオイ・フジミヤ
真の姿:黒髪に翡翠の眼、六枚の翼

なにが正しいかなんてわからない
でも、これだけは譲らない
彼女はこれからも生きる

殺させなんかするものか

リザさんの対応
「手をつなぐ」で、心が伝わるように

仇討ちを手伝う
それを果たして何が変わるわけではない
けれど、人の心は”正論”では収まらないのも知っている

私は貴女を護る 護るために何でもする
必ず時は来る
どんな形でもいい、”傷”を付けなさい

でも、それを果たしたなら
どうか、”悲しみ”から解放されて生きて、お願い

周りの人達と協力し、攻撃から「かばう」でリザを身体を張って護る
UCが厄介だから敵が攻撃できないほどに弱るまでリザを近寄らせない
リザが怪我をすれば即Lanikaiを使用


フィオリーナ・フォルトナータ
復讐を果たしたとして
そこに綺麗なものは恐らく何一つとして残らないでしょう
そして、貴女の力では決して成し遂げられないことも
おそらくわかっている筈
リザ様、それでも貴女がかの領主を自らの手で討ちたいと仰るのなら
わたくしは貴女を守り、かの領主の元へ繋がる道を拓く
一つの標となりましょう

リザ様の元へ向かう亡霊の対処に当たります
トリニティ・エンハンスで防御力を重視して強化
リザ様へ向かう亡霊の攻撃は全て剣や盾で
時には体を張って引き受け可能ならば倒します

リザ様
ここにいる皆は今、貴女のために戦っています
信じて頂けなくとも、我々がなすべきことは変わりません
どうか、少しだけ
わたくし達を信じて、待っていて下さいませんか



「チイッ、鼠が大量にちょろちょろと……目障りだ!」
 『誓血の間』に響き渡るは、苛立ちと怒気を孕む声。
 バジリスク・ヴァーミリオンは力で捻じ伏せんと、猟兵たちを叩き潰すべく両の手に握る戦槌をぶん回してくるも。
 連携し協力し合い、何よりも数において圧倒的に有利な猟兵たちを、思うように打ち倒すことができていない。
 バジリスクはそんな戦況に、かなり苛々としているようだ。
 そして、沢山の猟兵たちに囲まれている花嫁の様子に、気にくわないとばかり舌打ちしてから。
「花嫁は渡さん! お前も行け」
 己に付き従う2体いる亡霊のうちの1体を、リザの元へ向かうよう促す。
 そんなバジリスクの様子に、ちょっぴり大袈裟に首を傾けて。
「あらあら? ヴァンパイアといっても素敵な方ばかりじゃないのねぇ」
 八重は眼前の見るからに粗暴な男に、ふっとピンク色の瞳を細めてから。
「ふふっ、お邪魔だめよ?」
 踊るようにしなるのは――噤む黒キ薔薇。
 鞭の如き鋭い黒薔薇の茨を放ち、眼前の亡霊を容赦なく打ち捉えて。
 新たに迫り来るもう1体の亡霊を容赦なく突き刺すは、白き薔薇咲かせる複数の棘の荊。
 そして相手の身を貫くその鋭撃だけでは飽き足らず、白の薔薇は血を啜り、その彩を鮮烈な赤に染めかえた。
 八重は亡霊たちへと茨の得物を振るいながらも、リザに振り返って微笑む。
「復讐がしたい? 良いと思うわ、だって美しいモノ」
 ――彼と貴女の血で染まる、純血の花嫁。
 でも……。
 八重の囁くような吐息が、こう、そっとリザの耳を擽った。
 ――そんな姿彼が恐がらないかしら?
「ふふっ、紅く染まり復讐という名に酔いしれた花嫁様。それは彼が愛した花嫁様かしら? 復讐は蜜の味、一度では満足しないものよ?」
 そして八重は紡ぐ。
 ……貴女は綺麗なままで彼に逢わなくてはいけない。それが貴女が今出来る事よ、と。
「さぁ、見なさい。彼が死んでいく様を。満足? それとも不満?」
「…………」
 誘われたその視線の先には、猟兵たちの襲撃を受け、イラついた様子のヴァンパイア。
 そしてリザは、何かを考えるように、ぎゅっと形見の短剣を握りしめる。
 そんな美しき純白の花嫁を護りながら。八重はもう一度、薄紅の瞳を細め、彼女へと言の葉を咲かせた。
「でもこれからは新しい貴女の人生。十字架の花嫁という名のね」

 力と力が激しくぶつかり合う戦場。
 そんな中、リザに迫る亡霊を捉え打ち放たれたのは、敵の不意をつくような弾丸の一撃。
(「やっぱり幸せではない結婚なんてダメだと思うんですよね……」)
 目立たぬよう、でも早業で。シーラは狙い定めた敵を狙撃し、援護射撃しながらも思う。
(「こんな不幸な出来事、さっさと終止符を打ってしまいたいです……」)
 シーラ個人の思いとしては、リザが恋人の敵であるヴァンパイアへの仇討ちを成すことに関しては理解し示していて。
 むしろ、是非と思っているくらいであるが。
「ただ、なるべく危険な状況にはさせたくないです……」
 そう、彼女の仇討ちの相手を緑の瞳で捉えながら呟く。
 相手は、猟兵が複数人がかりでようやくはじめて対応できるほどの、力を持ったオブリビオン。
 しかも残忍で粗暴で、自ら選んだ花嫁でさえ、予知によれば逆上して殺しているくらいだ。
 だから、彼女が仇討ちを見事に果せるために。
「出来る限りの援護は致します……」
 その表情こそ変えないけれど。リザを守る事を第一に立ち回りたいと、シーラは迫る亡霊の一体を見据えて。
 素早くリザの前へと立ちはだかれば。
「銃だけが取り柄だと思ったら、大間違いですよっ……!」
 まるで牙を剥いた狼のような。素早い動作からの強烈な蹴りを敵へと見舞い、そしてすかさず後方へと下がるシーラ。
 そして星の印が入ったスナイパーライフルを構えて。
 スコープ越しに、敵を確りとロックオンする。

 青碧海のいろを湛えていたその髪も瞳も。
 戦場を流れるその彩は漆黒、両の瞳は翡翠へと変わり、背にばさりと広がる六枚の翼。
 真の姿へと己を覚醒させ、負った傷が癒えるのを感じながらも、アオイは強く心に思う。
 なにが正しいかなんてわからない。
(「でも、これだけは譲らない。彼女はこれからも生きる」)
 ――殺させなんかするものか。
 そしてアオイは、リザへと手を差し伸べて。
 そっと繋いだその手から伝えたいのは……温もりと心。
 ――仇討ちを手伝う。
 アオイはリザに、そう告げる。
 仇討ちを果たして、何が変わるわけではない。
 恋人は戻ってはこないし、その手を血に染めることになる。
 それがリザの今後にとって、良いか悪いかも、正直分からない。
 けれど……アオイは知っている。人の心は”正論”では収まらないということを。
「私は貴女を護る。護るために何でもする」
 その翡翠の色に、ただリザの姿だけを映して。
 アオイは、恋人の形見の短剣を握るそのか弱き手を、優しくぎゅっと包み込むと。
 はっきりと、こう彼女に伝える。
「必ず時は来る。どんな形でもいい、”傷”を付けなさい」
 アオイの言葉に、リザは一瞬、碧色の瞳を大きく見開くも。
 すぐに覚悟のいろを宿した瞳でアオイを見つめ返して。
 大きく、こくりと頷いた。
 だが今は、まだそれを成す時ではない。
 ヴァンパイアの攻撃手段は、強敵なだけあってどれも厄介なもの。
 確りと、必ず訪れるだろう機を待つようにと、リザへと言って聞かせながら。
 アオイは心から、こう願うのだった。
 ――でも、仇討ちを果たしたなら。どうか、”悲しみ”から解放されて生きて……と。

 リザ自身も、きっと分かっているのだ。
 復讐を果たしたとしても、そこに綺麗なものは恐らく何一つとして残らないことを。
 そして――自分の力では、決してそれを成し遂げられないということも。
 それでもひとり、ヴァンパイアの元へとやって来た、花嫁の覚悟。
 フィオリーナはそんな彼女の心を汲みたいと、そう思うから。
「リザ様、それでも貴女がかの領主を自らの手で討ちたいと仰るのなら。わたくしは貴女を守り、かの領主の元へ繋がる道を拓く、一つの標となりましょう」
 身を挺し、リザの剣となり、盾となることを。
 フィオリーナは、強くそして優しい輝き宿す空色の瞳を真っ直ぐに向け、彼女にそう誓って。
 自然を司り満ち溢れる魔力をその身に纏い、花嫁を護るべく、敵前へと立つ。
 そして未来を切り開くような、真っ直ぐに伸びる一閃を戦場に生みながら。
 これまでの猟兵たちの対応で、無茶な行動はとらないまでも。まだどこか半信半疑な様子のリザへと、フィオリーナは思いを紡ぐ。
「リザ様。ここにいる皆は今、貴女のために戦っています。信じて頂けなくとも、我々がなすべきことは変わりません」
 でも――どうか、少しだけ。わたくし達を信じて、待っていて下さいませんか、と。
 そんなフィオリーナや周囲の猟兵たちを、リザは一度、ぐるりと見回してから。
「……どうして……」
 ぐっと恋人の形見の短剣を握りしめ、ぽつりと、言の葉を零す。
「どうして、私のために……?」
 心身ともに傷つき、過去を抉られ叫びたくなる衝動を抑えながらも、それでも前へと進んで。
 強敵であるヴァンパイアへと立ち向かう猟兵たち。
 フィオリーナはそんな彼女の呟きに、そっと優しく瞳を細めて。
 言の葉では敢えて答えはしなかったが……この心が、伝わるように。そして彼女の覚悟を支援するように。
 身を挺し護りながら、眼前の敵へと剣を振るうのだった。

 傷つき絶望に叩き落され、そして死への道を自ら選ぼうとしている純白の花嫁。
 そんな、闇に覆われた少女の心に、一筋の光明をと。
「主よ、憐れみたまえ」
 マリスが祈りを捧げれば――星辰の片目に灯る、眩き光。
 満ち溢れるその光は自身を護る星の輝きとなり、同時に、悪しき者への反撃となる星の煌めきとなる。
 そして亡霊をも惹きつけるその存在感。
 誘き寄せた亡霊を、星の加護宿る衝撃で浄化せんとしながら。
「リザ、あなたの道を開きます」
 彼女を身を挺し護りながら、そう告げるマリス。
 愛していた人を殺した、憎きヴァンパイアへの仇討ち。
 でも、それを彼女が成すためには。
「復讐には"刃"が必要ですから」
 ――あなたの刃になりましょう。
 マリスはそう誓いながら、リザを最優先にいつでも流れる星の輝きを煌めかせられるようにと。
 星辰の瞳に宿した光をより一層輝かせて。
 刹那――世界が、花霞に染まる。
 白桜の花冠に、纏うは聖者の衣。
 そして、その背から聚楽第がぎこちなく翼を広げれば。
 星の転がる音色が、告げる。
「あなたは、できると思うが故に、できるのです」
 瞬間、少女へと与えられる星の加護。
 それは、悪しき存在を退ける力。
 いや、マリスが与えんとするものは、力や加護だけではない。
「あなたを私は赦しましょう」
 その手を血で穢す覚悟を決めた少女を、支えんと。
 マリスがリザへと注ぐのは――愛の煌めき。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

仁科・恭介
※アドリブ、連携歓迎
「依頼は領主の討伐…そのためにUCを簒奪して授与する」

領主と戦闘
狙いは領主のUCをUCで簒奪し相手の選択肢を減らす、動揺させること
部屋に入り次第【目立たない】ように【学習力】で部屋の間取り、猟兵、敵の位置を確認
把握した部屋の間取りから床、壁を【ダッシュ】で駆け抜け斬る
これはUCを使用させるための罠
UCの攻撃は【残像】も駆使して防御する
魔眼を使用された場合が怖いため、他の猟兵に囮となることを伝え、石化された場合は解除するような攻撃をお願いする

簒奪したUCはリザへ授与
使うかどうかは彼女次第だが、これで猟兵の存在が信じられるだろう
誰が倒しても依頼は完了だができれば任せてほしい


アルノルト・ブルーメ
リザの事は気になるけれど
そちらは任せて敵の殲滅を

血統覚醒使用
リザと亡霊の間に割り込むようにして行動
亡霊の攻撃が彼女に影響を与えないよう
負傷時の出血はVictoriaの起動に使用
VictoriaとLienhardで主に攻撃

先制攻撃からの2回攻撃でなぎ払い
彼女に近付けさせないよう立ち回り
無双にはViperのフックを室内装飾に投げ掛けて跳躍して回避
出来るだけ距離を詰めて死角から攻撃

リザの位置や動きには常時注意し
必要なら攻撃の射線を塞ぐよう割り込む

一族の血統を誇るか、オブリビオン
その誇りに奢って、骸の海に還るが良い

復讐は成し遂げられるようならば
叶えさせてやりたいと思う
それが何も産まないと知っていても…


篝・倫太郎
リカ(f03365)と
説得は任せるぜ

あー……まぁ、ちっと楽しくはなってきちまってるわな
フキンシンだけどもよ
滅多にねぇ体験させて貰った礼はしねぇとなァ?
援護は任せるぜ、リカ!

巫覡載霊の舞使用
華焔刀で先制攻撃からのなぎ払いを使って2回攻撃
フェイント使って亡霊抜けたらバジリスク狙い
出来るだけ死角に回り込むように立ち回って攻撃
武器落としで獲物落とせたら多少は違うんじゃね?

ま、そうだわな
それしかねぇと思うから決めたんだろーし
でもま、しねぇって選択もあるんじゃねぇの?

補足
理嘉の言う処のバトルモード状態である為
背に浮かぶ羅刹紋が酷く熱く感じる
戦況が佳境になればなるほど
背の紋は表皮を這うように肩や腕まで広がる


百合根・理嘉
りんたろ(f07291)と
説得とかガラじゃねぇし……
そーゆーんは得意な奴に任せるー

つか、りんたろがなんかちょい、バトルモードだしな
へいへい、おーけーおーけー
撹乱陽動はまっかせな?

バトルキャラクターズ使用
Silver Starで陽動
召喚したにーさんらで先制攻撃からの2回攻撃
フェイントも織り交ぜて攻撃してくー

森で亡霊が見せたモノの影響は特ねぇし?
別に、終わったコト引き摺って
身動き取れなくなるほど歳喰ってねぇモンよ

仲間がヴァンパイアに向かい易くなるよう
リザの説得がしやすくなるよう
亡霊の陽動と仲間への攻撃の阻害主軸で動くぜー

んー?
復讐はなぁんも産まないつーけど
なぁんもねぇ奴にはそれしかねぇんじゃね?



 リザの事は気になるけれど、沢山の仲間の姿が彼女の周囲に見えるから。
 そちらは任せて、敵の殲滅に動くアルノルト。
 刹那、その双眸が、柔く優しい普段の緑から――血の如き真紅へと、彩を変えながら。
 アルノルトは闇色に染まった外套を戦場に靡かせ、リザと亡霊の間に割り込むように位置取って。
 迫る亡霊目掛けて先制のVictoriaとLienhardを解き放ち、敵を薙ぎ払う。
 リザには、決して近づかせないようにと。
 亡霊だけではない。眼前には、ヴァンパイア・バジリスクの姿も。
 そんなバジリスクが、まるで無双せんと。両手の戦槌の一撃を繰り出さんとする予備動作を見逃さず。
 毒蛇の異名を持つViperのフックを室内装飾へとすかさず投げ、引っかければ。
 ぶん回される強烈な攻撃から逃れるべく、天へと大きく跳躍して。
「……!」
 相手は強力なオブリビオン。その余波で深くはない鮮血が頬にはしるも……それも、Victoriaの軌道の糧となる。
 そして、できる限りヴァンパイアとの距離を詰めつつも。
 その身を打ち倒さんと、鋭き真紅の瞳を向け、死角から狙いすました攻撃を放つアルノルト。
「くっ」
 その攻撃に、バジリスクは思わず眉を顰めるも。
 アルノルトの攻撃を繰り出す手は緩まない。
「一族の血統を誇るか、オブリビオン」
 ――その誇りに奢って、骸の海に還るが良い。
 そして、血を与えたVictoriaが唸りをあげ、戦場を敵目掛け翔ける中。
 アルノルトはリザへと一瞬だけ瞳を向け、そして思うのだった。
(「復讐は成し遂げられるようならば、叶えさせてやりたいと思う」)
 ――それが何も産まないと、知っていても。
 この依頼の目的は、圧政を敷くこの館の主・バジリスク・ヴァーミリオンというヴァンパイアを倒すこと。
 それは勿論、大前提であるのだが。
 恭介は足を踏み入れた『誓血の間』を一度、ぐるりと大きく見回して。
 目立たぬよう、戦場となる部屋の広さや間取りを把握し、先行し既に戦闘状態にある他の猟兵たちや、敵の位置を確認すれば。
「チッ、次から次へと!」
 把握した部屋の床や壁を蹴り、滑るように駆け抜け、親方から貰った刀でバジリスクへと斬りかかる恭介。
 バジリスクはその斬撃を両手の戦槌で受け止め、弾き返すけれど。
 この攻撃は――恭介の張った、巧みな罠。
「石になるがいい!」
「……!」
 刹那、恭介へと見舞われるのは……受けたものを石にしてしまうユーベルコード。
 でも、囮になることは周囲の猟兵たちには伝え済み。
 あとは、残像を駆使し確りと防御して。
「受けてみて……完全に理解した」
「!?」
 ――その技はいただく!
 そう、あとは……その技を、拝借するだけ。
 恭介が発動させた『超伝導』は、対象のユーベルコードを防御するとそれを簒奪し、指定した対象に授与することで、1度だけ借用できるというもので。
 以前、ヒーローショーで共闘した猟兵に頼み込んで開発した、珠玉の技である。
 そして、恭介が授与する相手にと選んだのは――リザであった。
「え……!?」
 急に声をあげたリザに、周囲の皆は何事かと視線を向けるも。
(「使うかどうかは彼女次第だが、これで猟兵の存在が信じられるだろう」)
 そう、恭介はリザへと、ここ最近少し明るく変わってきたような気がするその瞳を向けてから。
 同時に、戦況を見守り、戦場へ斬り込みながら思うのだった。
 誰がヴァンパイアを倒しても依頼は完了だが――できれば任せてほしい、と。
 そして、同じ時。
 理嘉と倫太郎も揃って『誓血の間』へと足を踏み入れて。
 其々の瞳で捉え向かう対象は――ヴァンパイア、バジリスク・ヴァーミリオン。
 リザへの説得はガラでもなく性に合わないだろうし、既に沢山の仲間が向かってくれているから。
 理嘉と倫太郎は赤きバージンロードの上を、花嫁を追い抜き、駆け抜けつつも。
「あー……まぁ、ちっと楽しくはなってきちまってるわな」
 フキンシンだけどもよ、と。
 そうどこか楽し気に言った倫太郎に、理嘉はふと目を向け思う。
(「つか、りんたろがなんかちょい、バトルモードだしな」)
 でもそんなバトルモードな相方に付き合うのも、また一興。
「滅多にねぇ体験させて貰った礼はしねぇとなァ? 援護は任せるぜ、リカ!」
「へいへい、おーけーおーけー。撹乱陽動はまっかせな?」
 刹那、戦場に喚んだにーさんたちが、透明度の高い細身剣を敵よりも素早くふるって。
 フェイントも織り交ぜ、攻撃を重ねていけば。
 戦場を縦横無尽に掛けるのは、銀の流星。
 黒に流星の如き銀のアクセントが入った『Silver Star』にすかさず跨った理嘉が、敵の陽動を担えば。
 漆黒に赤き焔舞い踊る薙刀を閃かせ、フェイントを使って抜けた、亡霊のその先。
「……!」
 倫太郎の琥珀色の瞳が眼前に捕らえるは、バジリスク。
 できるだけ死角に回り込むように立ち回り、バジリスクの握る戦槌を叩き落とさんと試みて。
 華焔刀の鋭撃を、ヴァンパイアへと放てば。
「ちいっ!」
 得物こそ叩き落せなかったが、バジリスクへと衝撃を見舞って。
 バジリスクの反撃の魔眼が倫太郎を襲うも、薙刀のひと薙ぎで何とか振り払う。
 そんなヴァンパイアと対峙する倫太郎や、リザを説得する皆が集中できるようにと。
 亡霊の陽動と仲間への攻撃の阻害主軸で動く理嘉は、眼前の亡霊を見据える。
「森で亡霊に見せられたモノの影響は特ねぇし? 別に、終わったコト引き摺って、身動き取れなくなるほど歳喰ってねぇモンよ」
 それから、リザへとちらりと目を向けて。
「んー? 復讐はなぁんも産まないつーけど、なぁんもねぇ奴にはそれしかねぇんじゃね?」
「ま、そうだわな。それしかねぇと思うから決めたんだろーし」
 そう言った理嘉の傍まで一旦下がった倫太郎は頷きながらも。
「でもま、しねぇって選択もあるんじゃねぇの?」
 そう続けた後、再びバジリスクと斬り合うべく、大きく地を蹴った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

アストリーゼ・レギンレイヴ
【セレナリーゼ(f16525)と】

ええ、間に合ったわね
まだ救える
まだ守れる
だから――諦めはしないわ

セレナ、貴方はその方の傍へ
あの亡霊と、あの男は――
あたしが相手をするわ

《黒の守誓》を胸に、二人を守るように前へ
亡霊相手には壁や床に気を払い、何処からの攻撃をも庇えるよう備える
出現した瞬間を狙い、攻撃を受けると同時
カウンターで黒剣での斬撃を加えて着実にダメージを重ねていくわ

首魁の動きにも気を払い
武具を振り回す動きあれば
セレナとリザへと向かう射線を遮るように前へ
向かってくるならば正面から切り結ぶ

この背に守った命には、ひとつたりと攻撃を通さない
たとえ自身がどれほどに傷ついても
この誓いだけは、破らない


セレナリーゼ・レギンレイヴ
アストリーゼ(f00658)と
間に合いました、間に合いましたよ
アストお姉ちゃん、前はお願いいたします

大切なものを奪われた憎しみは
そして二度と戻らない悲しみは
とても深く、つらいものでしょう
けれど吸血鬼にとっては何も残らぬ一撃のため命が散るのを見過ごすことはどうしてもできないのです
これは私の我儘
何も知らない癖に、と思われるかもしれません
言葉で過去を連ねたところで、それは私の痛みでしかありません
けれど、貴女を失いたくない意志だけは揺るがないと
戦いの中で示しましょう

ミトロンの書に【やさしさ】をこめて【祈る】のは守護の力
迫る亡霊を祓い、リザ様をお守りするために
詠唱の時間は、お願いしますアストお姉ちゃん



 駆けつけた『誓血の間』で、左右違う彩りをした姉妹の瞳に映ったのは。
 まだ残忍な赤に染まってはいない、花嫁の纏う純白のいろ。
「間に合いました、間に合いましたよ」
「ええ、間に合ったわね」
 まだ救える。まだ守れる。
 だから――諦めはしないわ、と。
「セレナ、貴方はその方の傍へ」
 あの亡霊と、あの男は――あたしが相手をする。
 月と血の色をそれぞれ湛える瞳を、眼前の敵の群れへと向け、アストリーゼがそう紡げば。
「アストお姉ちゃん、前はお願いいたします」
 こくりと大きく頷いたセレナリーゼは、花嫁の元へ。
 ……どうして、と。
 身を挺して自分を護る猟兵たちに、疑問の言の葉を零すリザ。
 そんな彼女に、ブルーアマリリス咲かせたプラチナブロンドの髪をそっと揺らしながら。
 セレナリーゼはひとつひとつ、丁寧にその思いを紡いでいく。
「大切なものを奪われた憎しみは、そして二度と戻らない悲しみは、とても深く、つらいものでしょう。けれど、吸血鬼にとっては何も残らぬ一撃のため命が散るのを見過ごすことは、どうしてもできないのです」
 これは私の我儘、と。少し困ったような印象の微笑みを宿してから。
 セレナリーゼは花嫁の盾となるべく、彼女の前に立って。
 黒い装丁に銀細工、宝珠が嵌め込まれた豪奢な魔導書――背に“Ⅵ”の数字刻まれし『ミトロンの書』に、やさしさを込めた祈りを捧げる。
 書が認めた巫女の祈りに呼応し、その祈りが強ければ強いほど、受ける加護の力も大きなものとなるから。
 姉がヴァンパイアたちの相手を担ってくれているその間、詠唱し強く祈るセレナリーゼ。
 ……何も知らない癖に、と思われるかもしれない。
(「けれど、貴女を失いたくない意志だけは揺るがないと。戦いの中で示しましょう」)
 迫る亡霊を祓い、リザを守るために。そして、彼女にこの心が伝わるように。
 魔導書から与えられし、込めた願いを実現するための力を、セレナリーゼはその身に纏う。
 そして敵前へと躍り出たアストリーゼは、靄の様に姿を消した亡霊の気配を探るように、壁や床へと意識を集中させて。
「そこね……!」
 取り憑かんと壁から再び姿を表した亡霊の攻撃を、身の丈ほどもある禍々しい大剣で確りと受け止めた刹那。
『が、あぁぁあッ!』
 禍々しき叫び声を上げる亡霊へと、黒き閃きを逆にお見舞いし、着実に衝撃を重ねていかんとするアストリーゼ。
 だがその亡き月の遺せし黄金――視界の端に映るのは、両手の戦槌を天へと大きく振り回すヴァンパイアの姿。
 咄嗟にアストリーゼは身を翻し、セレナリーゼやリザへと向かう射線を遮るように位置取って。
「鼠はさっさと全員死ねッ!」
「……っ!」
 叩きつけられた強烈な衝撃に、一瞬、上体が揺らぐも。
 ――この背に守った命には、ひとつたりと攻撃を通さない。たとえ自身がどれほどに傷ついても……この誓いだけは、破らない。
「悪いけれど――通さないわよ」
 二人を守ると誓った、『黒の守誓』を胸に。
 纏う夜の闇をさらに深い色に染めるアストリーゼは、握る黒き剣を眼前の敵へと返して。
 決して通さないと、責任感の光が強く宿る色の異なる双眸で敵を見据え、正面から切り結ぶ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

蘭・七結
セーラさん/f07903と

セーラさんが降ろした黒曜刀の時雨
領主への対応は、彼女にお任せをしましょう
引き剥がされたふたつの亡霊へと、間合いを詰め
姿形は違えど、ナユに視えるのは――…
〝猩々緋〟を宿す双眸の、あなた
――ああ。今こそひとつに、結びましょう
〝満つる暗澹〟
毒使いとして
極上の甘さを、あなたにあげるわ
ふたつの亡霊を、ひとつに解かして
新たなる〝ひとつ〟へと結び直しましょう
あなたは、ナユのものよ

花嫁への対応
美しき純白の衣。哀しき愛の花嫁
あなたの手が染まってしまうのは、惜しいけれど
あなたの求める結末を、あなたが綴ればいい
どちらを選択したとしても、後悔が残らないよう
(一票は、票数優勢の方へと)


輝夜・星灯
七結/f00421 と

取巻までいるのか……これはまた随分と厳重な。
仇討ちさせてあげるにしても、安全を確保しないことには難しそうだ

〝月詠の冥府川渡〟で、黒曜刀を複製し雨霰のように降らせる
床に刺さった物は顕現を解除して新しく複製、念力操作の集中力が続く限り弾幕を張るよ
亡霊とそれぞれを引き剥がして、隙を作ることに専念する

戦闘で彼らが怪我をし、万が一その時可能であれば
彼らの体の一部や血液を代償に〝朔夜の純血〟を発動
手にしている刀の刃を黒曜石から柘榴石に変えて、出来そうなら彼の魔眼を弾きながら追撃を

彼女への対応は他に任せる、赤ん坊が何を言っても説得力がないからね
──どうか、これを冥土の土産に

*アドリブ可



 戦場に降り注ぐ刃の雨霰は、黒曜の耀い。
(「取巻までいるのか……これはまた随分と厳重な」)
 仇討ちさせてあげるにしても、安全を確保しないことには難しそうだ、と。
 月詠の冥府川渡――複製した黒曜の直刃大太刀を流星の如く降らせながら、星灯が狙うは、ヴァンパイア・バジリスク・ヴァーミリオン。
「く、小癪な!」
 バジリスクは大きく振り回した両手の戦槌で、黒き乱刃の雨を弾き飛ばすけれど。
 弾かれ地に落ちたものをまた顕現しなおし、また複製して。
 己の集中力が続く限り、漆黒の大太刀の弾幕を張り続けんとする星灯。
 勿論、眼前の領主へとダメージを与えらえるに越したことはないが。
 ビー玉を転がした瞳が一瞬映すのは、共に戦場を駆ける七結の紫色の双眸。
 ふたり目を合わせ、頷き合えば。七結が向かうは、亡霊の前。
 降り注ぐ漆黒の雨霰の閃きは、領主と亡霊をそれぞれ引き離し、隙を生むためのもの。
 バジリスクへの対応は、星灯に任せて。
 牡丹一輪咲かせる灰色の髪を戦場に躍らせ、亡霊の元へと趣きながら。
 七結が一瞬その紫の瞳に映したのは、純白に咲く花嫁。
(「美しき純白の衣。哀しき愛の花嫁……あなたの手が染まってしまうのは、惜しいけれど」)
 ――あなたの求める結末を、あなたが綴ればいい。
 ただ願うのは、どのような選択をしたとしても後悔が残らないよう――。
 直接声を掛けることは、他の皆に任せるけれど。
 リザが、後悔のない結末をしたためられるように。
 七結は眼前の亡霊へと、改めて視線を向けた。
 呪詛のような呟き声を上げる、呪いの存在――だが、七結の瞳に象るその彩は、〝猩々緋〟。
 森に蔓延る霧の幻影は、もう疾うに効力を失っているはずなのに。
 眼前に視えるのは――猩々緋を宿す双眸の、あなた。
「――ああ。今こそひとつに、結びましょう」
 満つる暗澹……それは、身もココロも蕩かせて。つめたい夜の果てへと導く、甘くて激しい混沌。
 ――毒使いとして……極上の甘さを、あなたにあげるわ。
「あなたは、ナユのものよ」
 刹那、霞のような亡霊の身体が甘い毒に満たされて。
 その瞳の猩々緋も、呪いを帯びた漆黒も、全て――戦場に蕩けるかのように、消滅したのだった。
 その間もヴァンパイアへと降り注ぐ、黒曜の刃。
 強敵であるバジリスクは、ことごとくそれを叩き落していたけれど。
 閃く一太刀が、その腕に浅い鮮血をはしらせる。
 同時に星灯が発動させるのは――『朔夜の純血』。
 刹那、ヴァンパイアの血を代償に、漆黒の黒曜石が深き真紅の柘榴石へと、その刃のいろを変えて。
 ――どうか、これを冥土の土産に。
 朱の戦鬼と化したバジリスクの天上から、鋭さを増し閃く真紅の雨霰を降らせる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

出水宮・カガリ
ステラ(f04503)と
アドリブ絡み可

到着次第娘(リザ)の元へダッシュ
カガリの真の姿は警戒させてしまうかもなので、このまま
娘の傍へ隠形のまま【籠絡の鉄柵】を飛ばし、彼女の身長ほどの大きさへ変えていつでも囲えるよう備える
亡霊の攻撃が及ぶ時には、カガリがその場で【駕砲城壁】を
万が一の時も間に合えばいいが

…仇を討ったとして、何が残るのか
愛するものも何も無い、空虚と苦痛しか残らならいっそ、刺し違えるくらいが本望、かも知れない
しかし、だ
あんなもので殴られるのは、単純に、痛いのだ
自分と同じ殺され方をするのは、流石に殺されたものも望まないと思う
どうせなら、少しでも痛くない、横槍が入らない方がいい
違うか?


ステラ・アルゲン
カガリ(f04556)と

真の姿を開放し白銀の鎧を身に纏う
すぐにリザ殿の元へダッシュで駆ける
攻撃は身を挺してかばう

私は復讐の願いの為にアレを倒しに来た
かつて討った敵との約束を思い出し

貴女も復讐がしたいのですね?
リザの為もあるが他者の願いの為であると言って警戒を解く

貴女の愛する人は死を望まないと思う
どうか生きて欲しい
死んだらそれで終わり
新しい出来事もない

生きて
新しい事を知って
幸せを見つけて
死んだらその事を話して
貴女の愛する人は待っていてくれるはずだから

我が主ならそう言ったかもしれない
自分の仇を討って自害した彼女に対しても

だから無謀に行くな
確実に殺せる時を待て
願いを叶える剣としてその為の道は切り開く



 扉が開け放たれた『誓血の間』へと足を踏み入れるやいなや。
 花嫁の元へと即座に駆けつけるのは、白銀の鎧を身に纏う凛々しい騎士。
 真の姿を開放したステラは、纏う鎧と似た色をした白の髪を靡かせながら。
「……!」
 亡霊とリザの間に割って入り、抜いた流星から生まれし魔剣で確りと衝撃を受け止めて。
 ――私は復讐の願いの為にアレを倒しに来た。
 かつて討った敵との約束を、その脳裏に思い出しながら。
「貴女も復讐がしたいのですね?」
 背に庇う少女に、そう尋ねる。
 リザはそんなステラの問いに、少し驚いた様に碧色の瞳を見開くも。
 形見の短剣を握る力を一層込めて、こくりとはっきり頷く。
 そして逆に、すぐ目の前に立つ騎士の背中にも、先程から思う言の葉を紡いだ。
「どうして、私のために……?」
「貴女のためでもありますが、私の場合は、他者の願いの為でありますから」
 そう警戒を解くべく、彼女を振り返りそう返答するステラ。
 その凛々しく爽やかな姿に、リザは納得したようにステラを見つめ返して。
「……仇を討ったとして、何が残るのか。愛するものも何も無い、空虚と苦痛しか残らならいっそ、刺し違えるくらいが本望、かも知れない」
 ステラとともに、純白纏う娘の傍に位置取りつつも。いつでも彼女を囲えるよう備え、隠形のままの『籠絡の鉄柵』を飛ばしながら。
 彼女を警戒させないよう敢えて真の姿には覚醒せず、真っ直ぐにリザへと視線を向けるカガリ。
 そしてちらりと、武骨な戦槌を振り回しているヴァンパイアへと視線を向け、こう続ける。
「刺し違えるくらいが本望、かも知れないが……しかし、だ。あんなもので殴られるのは、単純に、痛いのだ」
 そんなカガリの言葉に、ずっと張りつめ強張っていた少女の表情が、ほんの少しだけ柔いで。
「……そうね。きっと、すごく痛そう」
 それでも、彼女の覚悟はきっと変わらないだろうが。
 カガリはこくりと金の髪を小さく揺らしながら、頷いて。
「自分と同じ殺され方をするのは、流石に殺されたものも望まないと思う」
 そして刹那、ステラが相手取っている亡霊ではないもう1体が迫る姿を見据えて。
 ――反撃せよ。砲を撃て。我が外の脅威を駆逐せよ。
 これなるは我が砲門。我が外に敵がある限り、砲弾が尽きる事はなし――。
 内側に入れた者には、決して何人たりとも、手など出させない。
『! があぁぁ、ッ!』
 カガリの全身が、敵の攻撃を光弾とし反射する壁となる。
 そんな強固な壁の内側で守られながら、自分たちを見つめるリザに。
 ステラも改めて、言の葉を紡ぐ。
「貴女の愛する人は死を望まないと思う。どうか生きて欲しい。死んだらそれで終わり、新しい出来事もない」
「でも、あの人のいない世界で新しいことなんて……」
 望んでなどいない、と。
 そう紡いだリザにも、ステラは優しく返す。
「生きて、新しい事を知って、幸せを見つけて。死んだら、その事を話して。貴女の愛する人は待っていてくれるはずだから」
 そしてリザへと言の葉を向けながらも、ステラは思う。
 ――我が主ならそう言ったかもしれない。自分の仇を討って自害した彼女に対しても……。
 かつての主に憧れ、立ち振る舞いを似せているステラは改めてそう、思いを重ねながらも。
「だから無謀に行くな。確実に殺せる時を待て」
 共に在るカガリが、リザを護る強固な盾となるならば――自分は、願いを叶える剣としてその為の道を切り開こう、と。
 仇討ちの機を待つよう諭しながらも。ステラはそう、構える流星の剣にかけて、そう誓いを立てるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

呉羽・伊織
清宵(f14015)とリザ護衛・亡霊対処へ

(見知り顔に言葉投げるよりも早く、リザ庇うように駆け)
こりゃ奇遇もイイトコで
ま、目的は一致してそーだし、何よりアンタと戯れてる暇も無い

さて――俺は今ちと虫の居所が悪くてね
今ならコイツら(幽鬼の類)もよく応えてくれそーだ
(そりゃどーもと返しつつ面で再び顔隠し)

介入時から降魔化身法
その代償も敵の攻撃も呪詛・毒耐性で無理にでも抑え、亡霊牽制しリザの盾に

攻撃は清宵と入替わり立替わり、早業で翻弄するように
騙討ちやフェイント挟みつつ、目潰しやカウンター、2回攻撃を狙う

仇討ちは出来れば引き留めてやりたい
が、掛ける言葉も、今の俺には紡げない
――ただ、行動で示すのみに


佳月・清宵
伊織(f03578)とリザ護衛・亡霊対処へ

(躊躇無く妖剣解放し高速移動でリザと亡霊の間に割込み)
さて、何とは言わねぇが――悪ぃな、邪魔するぜ

(同時に見えた鴉に一瞬だけ視線返し)
…で、お前は珍しく気が合うじゃねぇか
無駄話は後でたんとするとして、さて――お手並拝見と行こうか

今日はつくづく面白ぇモンが拝めるこった
安心しな、飲まれ落ちた時にゃ俺がその首斬ってやる
(笑いながらも牽制や護衛の手は緩めず)

攻撃は早業や高速移動で伊織と代わる代わる、フェイント・騙し討ち・目潰し等交え翻弄
但し最優先はリザ庇護で
被弾時は呪詛耐性で凌ぐ

俺は仇云々に口出せる身じゃねぇが――
どう動くにせよ、最後まで盾として付き合ってやる



 まるで、森に蔓延るあの濃い霧のように。
 不気味に花嫁に纏わりつかんと浮遊する亡霊。
 その狙いは、純白のドレスを纏う花嫁。
 だがそうはさせまいと、間に割り込んだ影がふたつ。
 己の命を代償にすることなど、全く厭わぬ様子で。
「さて、何とは言わねぇが――悪ぃな、邪魔するぜ」
 妖しの怨念を纏い、高速の動きで地を蹴って。花嫁の前へと立ちはだかった影のひとつは、清宵。
 そして自分へと言葉を投げるよりも早く、同じ様にリザと亡霊の間に入ってきたもうひとつの影――伊織へと、一瞬だけ視線を向ける。
「……で、お前は珍しく気が合うじゃねぇか」
「こりゃ奇遇もイイトコで」
 眼前の敵を見据えたまま、そう短く言葉を返し、続ける伊織。
「ま、目的は一致してそーだし、何よりアンタと戯れてる暇も無い」
 見知っている筈の鴉の瞳に今宿るのは、いつもの気さくさでも緩さでもない。
 普段は巧妙に隠されているその眼光の鋭さを目の当たりにし、清宵は楽し気に笑んでから。
「無駄話は後でたんとするとして、さて――お手並拝見と行こうか」
 迫る敵へと、改めて得物を構えれば。
「さて――俺は今ちと虫の居所が悪くてね」
 ――今ならコイツらもよく応えてくれそーだ、と。
 刹那、伊織がその身に降ろすのは、幽き物の怪の翳。
 禍々しい呪縛の代償をその身に受けながらも、代わりに得た力で敵を斬り伏せんと、冷ややかなる黒刀を振るう伊織。
 そんな彼に、清宵は笑って。
「今日はつくづく面白ぇモンが拝めるこった。安心しな、飲まれ落ちた時にゃ俺がその首斬ってやる」
 敵への牽制の手は緩めず、幽鬼宿す鴉へとそう告げれば。
 そりゃどーもと返す言の葉と同時に、面で再び伊織は覆う。
 何時ものように、決して見せたくはないものを、まるで鴉の習性かの如く……巧妙に隠す様に。
 そんな、一見交わらぬようにみえる二人であるが。
 刃を振るう呼吸は、絶妙。
 音も光もその存在をも殺し、静かに敵を屠らんと淡々と闇に刃を閃かせる鴉と。
 どこか面妖に、決して何ものにも囚われぬ朧の如く、敵を翻弄し斬り込む狐。
 二人交互に休みなく振るわれる刃が、亡霊を花嫁へと近づかせはしない。
 だが、背に護る花嫁への決意については、やはり考えは其々。
 ――仇討ちは出来れば引き留めてやりたい。
 そうは思うけれども。掛ける言葉も、今の自分には紡げないから、と――ただ、行動で示すのみに留める伊織。
 清宵も同じ様に、リザの仇云々に口を出せる身ではないと思うけれども。
 ――どう動くにせよ、最後まで盾として付き合ってやる。
 一度乗りかかった舟。むしろそれが、何処に向かうのか。
 清宵はそれを見届けんと、伊織と共に。舟の進む道を阻む無粋な存在から護る盾となり、その刃を振るうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

蔵館・傾籠
突入後、彼女へ向かってくる亡霊から阻む様に背に庇い、彼女の安全を優先。他の猟兵殿方が居れば此処は共闘としたい。
【神和裁霊の舞闘】で距離を保ち薙ぎ払いつつ。死した者を生きる者へは近寄らせはしねぇぜ。
俺は仇討ちのその覚悟も心も、反対しねぇよ、理不尽に奪われてそう思う事は誰だってあるさな、否定はしねぇ。…ただ相手が危険過ぎるんだ。
俺らはあれを倒そうとする目的は同じくと。悪を屠る事に長けた面々だ、きっと上手くやってやるさ。
此処へ駆け付けた全員が味方でもある、此方に任せてくれないか?
許嫁を思う心、過ごした時間、君まで消えてしまえば誰も覚えていなくなる。
どうか生を投げてはくれるな、言葉が伝わる事を願うぜ。


フィリオ・グラースラム
よく、ここまで頑張られましたの
けれど、もうお1人で頑張らずとも、大丈夫ですのよ
ここに居るものは全員リザ様の味方ですもの

フィオは、敵討ちを悪いことだとは思いませんのよ
死した方の名誉を守る為に剣を振るう
それも騎士の道ですの

騎士ではないリザ様がすべき事ではないと
そうおっしゃる方が多いなら
フィオは今この一時、リザ様の槍として戦いますの

(UC発動)
無差別攻撃は、無数の氷人形で惑わせて

戦鬼と化して向かい来るならば
無数の氷の槍を敵の正面と
そして床から呼び出して【串刺し】て差し上げます

リザ様の、髪の毛一筋すら傷つけられぬと知りなさい

望まれるならば、この身さえも氷の槍と変えて
リザ様の思うままに振るわれましょう


ヴィオレッタ・エーデルシュタイン
敵討ちを無意味という人もいるけれど、それをすることで心に区切りをつけることができるのもまた事実。
だから本人が討ちたいというのなら私はそれを尊重する。
「大切なのは本人の意思。どうこう指図できるほど私は偉くない。だから私は手助けするだけ」

まずは後方に控えて邪魔な亡霊を狙い撃ち。
スナイパー17、誘導弾15、破魔1付き攻撃で一撃必殺。リザには近づけないわ。
もし負傷したならユーベルコード【フェアトレード】で回復。
ヴァンパイアとの戦いではそのままではリザに勝ち目はなさそうだから、援護射撃2で相手の腕や足を狙って行動を阻害するわね。


加賀宮・識
大切な人を殺され絶望の中復讐だけを誓いここまできてるんだ

私には止められない

その気持ちが痛い程分かり、想いを遂げさせたいと思うから

リザの姿を確認し横に並ぶ

警戒しないでいい
奴を倒すんだろ、手伝おう
私も奴らに大切な人達を奪われたからよく分かる
だがこのままだと一太刀も奴には届かなく、復讐も果たせない
本末転倒だ

ギリギリまで任せてくれるか
必ず本懐を遂げさせよう

向かってきた敵にはリザを咄嗟に背後に庇い、暗月鎖でなぎ払う

だからその時まで私が貴女の盾になり矛になるから

『死ぬな』

どうか彼女にこの想いが届きますように

(アドリブ、共闘大歓迎です)


ヴォルフガング・ディーツェ
【SPD】【リザへの対応】
気持ちは変わらないよ、重荷は独りで背負わせない
真摯に、ひたむきに寄り添う

先ずは全速力で彼女の元へ
身を挺しバジリスクや亡霊の攻撃から彼女を庇いつつ【調律・墓標守の黒犬】を召喚し射線遮断
囲まれてわけが分からないよね。オレは人狼族。キミの過去を、決意の一端を、予知が出来る仲間が導いてくれたんだ

…よく頑張ったね、重たいものを背負ってきたね
本当は、蝙蝠に傷を付けられるなら手助けしたかったんだが…奴には特殊な守りがあって無理なんだ…

だから違う復讐を提案するよ
色欲に負けて愚かに討ち滅ぼされるあいつを黒犬の背から見させてあげる
守りながらオレも付き添おう

綺麗なままのキミで、嘲笑ってやれ


鳳来・澪
身も心も引き裂こうなんて、嗚呼――

リザさんの守護を最優先に
彼女へ向かう亡霊の対処へ

吸血鬼の無差別攻撃や、リザさんの突発的な行動にも注意
万一の時は…御免、身を挺して阻む

最初から妖剣解放
高速移動でリザさんの前に飛び出し庇い立ちつつ、隙見て亡霊を攻撃
早業での2回攻撃や破魔の衝撃波飛ばし、リザさんに向かう攻撃は各種耐性活かしつつ全て代わりに受けきる覚悟

同時にリザさんへの声掛けも随時
…堪えて、背負って、それでも生きろって方が酷かもしれん
でも、どうしてもね
その白を、紅には染めとうない
彼岸の彼に、そんな姿で会いにいってほしゅうないの

あれは必ず討ち果たすから…どうか、お願い
この血塗りの道を、これ以上進まんで



 仇を討てと積極的に支援する者、気持ちは分かるが危険だから頷けないという者。
 はたまた、その手を血で染めないほうがいいと言う者。
 猟兵たちがリザへと紡ぐ思いは、全く一致してはいない。
 けれど、リザは、仇討ちを勧める言葉も止める言葉も全て。
 今のところ、猟兵達の真摯な対応の成果か、暴れることなく耳を傾けている。
 彼女自身も、わかってはいるのだ。
 危険を冒し、純白を赤に染めてまで、仇討ちが意味があるものなのか。
 ……けれど。
 リザ自身も、猟兵たちの言葉をひとつひとつ聞きながら、いまだ模索しているのだ。
 最後は自分がどうしたいか、そして……どうありたいのかを。

 ――重荷は独りで背負わせない。
 その気持ちはやはり変わらないから。
 ヴォルフガングは、真摯に、ひたむきにリザに寄り添うべく、彼女を庇うよう位置取りをせんと。
 邪鉄の武装纏う黒犬の機霊・テオを戦場へと喚んで、射線遮断を試みながら。
 リザへと、声を掛ける。
「囲まれてわけが分からないよね。オレは人狼族。キミの過去を、決意の一端を、予知が出来る仲間が導いてくれたんだ」
 ……よく頑張ったね、重たいものを背負ってきたね。
 ずっと一人で背負ってきた思い。
 そんなヴォルフガングの言葉に、思わず花嫁の碧の瞳が微かに滲むも。
 同時に宿るのは――復讐に燃えるいろ。
 そんな殺意を孕む花嫁に、ヴォルフガングはこう、提案をしてみる。
「本当は、蝙蝠に傷を付けられるなら手助けしたかったんだが……奴には特殊な守りがあって無理なんだ……だから違う復讐を提案するよ」
 ――色欲に負けて愚かに討ち滅ぼされるあいつを黒犬の背から見させてあげる。
 それは、仇討ちという形ではない、復讐。
「守りながら、オレも付き添おう」
 その手を赤に染めずとも、リザの気が済む方法があるのではないかと。
 ヴォルフガングは考えてみたけれど……彼自身もまた、望んでいるのだ。
 純白の花嫁を、赤に染めたくはない、と。
「……違う、復讐」
 リザは向けられたの言葉を復唱するように、そう呟いて。
 ヴォルフガングは赤き瞳に映る花嫁へと頷き、続ける。
 ――綺麗なままのキミで、嘲笑ってやれ、と。

(「身も心も引き裂こうなんて、嗚呼――」)
 ふるりと首を振り、夏椿咲かせた黒の髪を揺らして。
 この『誓血の間』に入るやいなや、澪が解放し纏うは、妖刀の怨念。
 ヴァンパイアの無差別攻撃や、リザの衝動的な行動にも注意しつつ彼女の前へと飛び出せば。
(「万一の時は……御免、身を挺して阻む」)
 迫る亡霊2体へと、魔を打ち破る力を宿す衝撃波の連撃を見舞いながらも。
 リザへの攻撃は全てこの身に受けきると。
 リザの行動次第では、身を挺してそれを阻むと……そう、覚悟を決める澪。
 そして背中の彼女を振り返り、真っ直ぐに視線を向けて。
「……堪えて、背負って、それでも生きろって方が酷かもしれん」
 でも、どうしてもね――その白を、紅には染めとうない。
 美しく穢れのない純白を赤の瞳に映しながら、澪は偽りなき己の気持ちを紡ぎ、続ける。
「彼岸の彼に、そんな姿で会いにいってほしゅうないの」
 きっとリザの恋人も、仇討ちなど……その白が赤に塗れることなど、望んではないはず。
 それがリザ自身の血ではなく、仇討ち相手の血であっても。
 澪は炎纏いし刃を亡霊へと振り下ろしながら、切に願う。
「あれは必ず討ち果たすから……どうか、お願い」
 願わくば――この血塗りの道を、これ以上進まんで……と。

 そして、澪が刃を向け体勢を崩した亡霊を、さらに遠ざけんと。
「死した者を生きる者へは近寄らせはしねぇぜ」
 神霊体へとその姿を変え、『無銘・薙刀』を振るい舞い、裁きの衝撃波を放ちながらも。
 傾籠はリザへと、諭すように、こう言の葉を投げる。
「俺は仇討ちのその覚悟も心も、反対しねぇよ、理不尽に奪われてそう思う事は誰だってあるさな、否定はしねぇ。……ただ相手が危険過ぎるんだ」
 複数の猟兵を相手取って尚、倒れるどころか剛腕を誇っているヴァンパイア。
 一般人である彼女は殺めるどころか、呆気なく殺されてしまうであろう。
 いくらどれだけ弱ったとしても、危険すぎる相手には違いないから。
 傾籠は、リザへと紫を湛える瞳を向けた後。
 ヴァンパイアへと立ち向かう仲間の姿と彼女を交互に見つめながら、彼女へと、お願いしてみる。
「俺らはあれを倒そうとする目的は同じくと。悪を屠る事に長けた面々だ、きっと上手くやってやるさ。此処へ駆け付けた全員が味方でもある、此方に任せてくれないか?」
 リザの周囲で彼女を護る皆も。
 ヴァンパイアを打ち倒さんと刃を振るう者も。
 全て、全員が味方であるから……だから、任せて欲しいと。
 傾籠はリザへと告げて。
「許嫁を思う心、過ごした時間、君まで消えてしまえば誰も覚えていなくなる。どうか生を投げてはくれるな」
 言葉が伝わる事を願うぜ――そう柔く、純白纏う花嫁を映した瞳を細める。

「よく、ここまで頑張られましたの。けれど、もうお1人で頑張らずとも、大丈夫ですのよ」
 ――ここに居るものは全員リザ様の味方ですもの。
 ぐるりと周囲を見回して、改めてフィリオもリザへと視線を向けて。
 花嫁がぐっと握って放さない形見の短剣を見ながら、思いの丈を語る。
「フィオは、敵討ちを悪いことだとは思いませんのよ。死した方の名誉を守る為に剣を振るう、それも騎士の道ですの」
 確かに、今のリザの心を支配する大部分の感情は、大切な人を奪ったヴァンパイアへの、憎しみ。
 だが、無念のうちに倒れた彼の名誉を守るために刃をふるう……その気持ちも、きっと持っているだろう。
 それを一概に悪いことだ、穢れてしまう、とは言えないし思わないし。
 雪ちゃんと共に花嫁を護るべくやってきた騎士として、騎士道から外れてはいない、むしろそれも騎士の道だと個人的には思うから。
 だから、フィリオはリザの気持ちを汲みたいと、そう思う反面。
 自分は騎士だけれども、リザは騎士ではないこともまた、事実。
 騎士ではないリザがするべきことではないという声が多ければ、それにも反対はしない。
 そうなれば……いや、そうでなくても。
 ――今この一時、リザ様の槍として戦いますの。
 フィリオは騎士然として、リザの前に立ちはだかり、彼女を護る盾となり槍となる。
 そして床から不気味に現れた亡霊に気付き、無数の氷の槍を生み出して。
「リザ様の、髪の毛一筋すら傷つけられぬと知りなさい」
 容赦なく、串刺しにしてあげる。

 愛する者を奪っヴァンパイアへと仇討ちをするべく、単身この館に赴いた花嫁。
 それが彼女にとって、良いことなのか悪いことなのか。
 正解なのか、不正解なのか……それは、分からないし。
(「敵討ちを無意味という人もいるけれど、それをすることで心に区切りをつけることができるのもまた事実」)
 敵を取ることが無意味かもしれないし、それを成したからこそ救われるものもあるかもしれない。
 それは、いくら考えたって、答えがはっきりと出るものではないから。
 だから、ヴィオレッタの抱く気持ちはただひとつ。
「本人が討ちたいというのなら私はそれを尊重する」
 そう言い放ち、そして後方から狙いを定め、得物の引き金を躊躇なく引いた。
 刹那、リザに近づかんと揺らめいていた亡霊1体の頭を的確に吹き飛ばし、消滅させて。
 さらにもう1体、倒すべき敵へと金の髪を靡かせ、左右色味の異なる宝玉で狙いを定めつつ。
「大切なのは本人の意思。どうこう指図できるほど私は偉くない。だから私は手助けするだけ」
 もう一度、その胸の内をはっきりと紡いで、そして待つ。
 花嫁が、どんな決断を下すのかを。

 どの世界にも、オブリビオンは存在する。
 だが、このダークセイヴァーの世界において、その存在は絶対。
 恐怖に支配され理不尽を強いられたとしても、反旗を翻し行動を起こそうなどとは到底思えないはず。
 なのに、すぐ隣にいるこの純白の花嫁は、仇討ちをするという決断をしたのだ。
(「大切な人を殺され絶望の中復讐だけを誓いここまできてるんだ、私には止められない」)
 ――その気持ちが痛い程分かり、想いを遂げさせたいと思うから。
 識にとっても、ヴァンパイアという存在に対しての嫌悪感は計り知れないもの。
 だから、リザの心へと寄り添うように。
 相変わらず強張った表情のまま、短剣を握る彼女へと、こう声を掛ける。
「警戒しないでいい。奴を倒すんだろ、手伝おう」
「えっ?」
 そんな識の言葉に、リザの顔に微かに驚きの表情が宿る。
 きっと、誰に話したところで、無駄なことだと。
 みすみす死にに行くようなものだと、そう言われるだろうと、リザ自身も分かっているのだ。
 そんな彼女に、識はこくりと頷きながらも続ける。
「私も奴らに大切な人達を奪われたからよく分かる」
 リザは識の瞳を真っ直ぐに見つめ返して。そうなのね、とぽつりと零す。
 気持ちは痛いほど分かるし、それを成し遂げさせてあげたい。
 けれども。
「だがこのままだと一太刀も奴には届かなく、復讐も果たせない。本末転倒だ。ギリギリまで任せてくれるか。だからその時まで私が貴女の盾になり矛になるから」
 識は諭すようにリザに言って、そして一番強く願うことを。
 どうか彼女にこの想いが届きますようにと……口にする。
 ――死ぬな、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

榎木・葵桜
真の姿を開放(姿は変わらず)

【桜花捕縛】で敵の動きを封じた後
【なぎ払い】【衝撃波】で【2回攻撃】するよ

無双壊滅撃の直後あたりが隙が生じやすいかな
【戦闘知識】【第六感】駆使して敵の動きを観察・【情報収集】し
タイミングを見極めて攻撃仕掛けるね

敵からの攻撃は可能な限り【見切り】で回避
攻撃受けても【激痛耐性】で耐えてみせるよ

>リザさん
できるだけ前に出て護るよ
他の仲間とも連携する
可能ならリザさんがトドメを刺せるように支援するね

>仇討ち
望みは叶えてあげたい
諦めさせたところで悔いが残るだけだもの
リザさんには、大切な人の分までちゃんと未来を生きてほしい
想いは叶うよ
だって私達が居るから
これだけ居たら無敵でしょ?


ヴェイゼル・ベルマン
リザの大切な人を殺してまで、彼女を手中に収めようとするなんて……気に入らねぇ
これまでも力を誇示して好き勝手やってきたんだろうよ
何もかもが、てめぇの思い通りになると思うな

戦闘に加わる
味方と協力、声掛けも
ヴァンパイアを優先気味に狙い、【咎力封じ】を使用
単調に器具を放つのではなく『フェイント』を交えて見切られねぇように
良い姿だな、縛られるのは好きか?
敵の攻撃は『見切り』や『武器受け』で対処
攻撃パターンや予備動作があれば、それを『学習』し回避・防御に役立てる
隙がありゃ『なぎ払い』で『カウンター』を狙う

仇討ちしてぇ気持ちも理解できる、させてぇ思いもある
だが命の危険がな
リザには生きて欲しい
仇討ちはさせねぇ


真守・有栖
牙となり、刃となりて仇を討つわ。


朱の戦鬼と対峙。
銀の刃狼が咆哮。

豪撃には瞬撃。
一撃には連撃。

鎚と刃を交え。
じっと堪える。

夜毎求めても
心(ワタシ)を狂わし
支配する月(モノ)は遥か高く
どれほど願っても叫んでも届かない

想う相手に刃が届く
堪えて忍んだ絶好の機
あの月には届かずとも
この鬼には届く

ならば。

この牙で。この刃で。
確実に喰らい尽くす……!

訪れた一瞬の隙。

逃しはしない……!

渾身を以て薙刀を振るう
止まれない。止まらない。
討つか。散るか。

柄がおれる。血華が舞う。
刃が欠ける。鉄火が散る。

後はない。先もいらぬ。
この刹那で全てを決す、と。
幻と霞んだ月天に吼えて。

折れた刃を咥え。
鐵の牙と為して、敵を断つ……!


氷條・雪那
復讐を望むのなら、私にそれを止める意思はありません
愛する者の元へ逝きたいという望みも
復讐を果たせるのなら、私もこの命は惜しくなどありませんから

……ですが、だからといって
みすみすあのような男に殺させるつもりもありません

感傷めいた考えを消すように
亡き兄の口調と振る舞いを真似て、意識を戦闘に切り替え

「我が名は氷條・雪那。貴様の力、削がさせて貰う」

【破魔】の力と氷の【属性付与】をした【2回攻撃】での
手数を活かした攻撃をして敵の態勢や防御を崩しつつ
体温低下によって動きを鈍らせる

好機と見たら更に【気合】を入れ
【破魔】の力と氷の【属性付与】の力を上乗せした【剣刃一閃】
傷口が凍れば、再生も回復も出来まい


鏡彌・サクラコ
【オクちゃんf10977と一緒】
神鏡は人の心をうつすもの
望みがあるなら叶えましょう
それが仇討ちだというのであれば
相手はオブリビオン
止める道理はありません

『バジリスク・ヴァーミリオン』との戦闘に集中するでいす
UC展開
ライオンの背に乗ります【騎乗】

オクちゃんに手を差し伸べ、自身の後ろに乗せますねい
速度は最高速度で【空中戦】
戦槌の攻撃はすかさず引いて交わし【見切り】【逃げ足】
ぶんぶん扇風機みたいですねい!危ないでいす
振った相手の隙に接近します【ダッシュ】
「オクちゃん!やっつけるでいす!」


日隠・オク
サクラコさん(f09974)と

サクラコさんと一緒に戦います!

UCはシーブズ・ギャンビット
ライオンライドで乗せてもらい斬り込む
パーカーは脱いで速度を上昇させ一手でも攻撃が届けばと
これ以上悲しむ人は作らない、作っちゃいけない
敵が強くても、ここで打ち取るため
届いて

リザさん
かたき討ち、させたくない

あなたの手を汚したくない
あなたは綺麗です
あなたが好きだった人は、きっとかたき討ちなんて望まない
あなたを守りたい
時間はもどせないけど、私にはかけられる言葉が少ないけど
あなたを守らせてください



 リザの心に寄り添い、それぞれの思いを紡ぎ伝える猟兵たち。
 花嫁が何を思い、どう行動するのか。それは最終的には、本人の気持ち次第ではあるものの。
 仇討ちに頭がいっぱいになっている今のリザは、何をするか正直わからない精神状態。
 だが、そんな少女への対応は仲間たちに任せて。
 この依頼の一番の目的――ヴァンパイア、バジリスク・ヴァーミリオンを討つこと。
 それに尽力し、戦場を駆ける猟兵たちの姿も、此処には在る。

「オクちゃん、乗るでいす!」
 まっすぐに差し伸べられる手。
 その手を、いつものように確りと取って。
「はい、サクラコさん!」
 ふわりと重力に逆らい、オクの身体も、サクラコが喚んだライオンの上へ。
 ヴァンパイアを攪乱するように戦場を駆ける、金色の百獣の王。
 その上から、仕掛けるタイミングを見計らいつつも。
 サクラコとオク、それぞれがリザへと向ける思いを描く。
(「神鏡は人の心をうつすもの。望みがあるなら叶えましょう」)
 サクラコの本体は、人の願いを沢山聞き入れ、そして叶えてきた銅鏡。
 花嫁が願うのが仇討ちだというのであれば、相手はオブリビオン――止める道理はありません、と。
 望むのならば叶えると、そう思うサクラコだが。
(「リザさん……かたき討ち、させたくない」)
 ライオンの上から、オクは純白のドレスを纏う花嫁を見つめ、思う。
 ――あなたの手を汚したくない。
(「あなたは綺麗です。あなたが好きだった人は、きっとかたき討ちなんて望まない」)
 そんな、仇討ちに関しては、真逆の思いを抱くサクラコとオクだけど。
 でも、この思いだけは一緒。
 いや、二人だけではなく……この戦場にいる猟兵は皆、彼女に対してこう思っているだろう。
 ――あなたを守りたい。
「いけますか、オクちゃん!」
「はい!」
 だから、朱の戦鬼と化すヴァンパイアにも怯むことなく。
「!」
 最高速度からの空中戦に持ち込みながら、パーカーを脱いでさらに速度を増したオクの刃が、バジリスクの腕に鮮血をはしらせて。
 振り回された戦槌からもひらり身を躱す、ふたりを乗せた黄金のライオン。
 オクは眼前の敵への集中は怠らないながらも、もう一度リザを振り返って。
 その心に、こう誓うのだった。
(「時間はもどせないけど、私にはかけられる言葉が少ないけど……あなたを守らせてください」)
 そして腕に傷を負ったヴァンパイアへと襲い掛かるのは、流れるような銀色を天へと靡かせる狼。
 牙となり、刃となりて……銀の刃狼・有栖は咆哮して。
 敵を討たんと、大きく地を蹴れば。
「叩き潰してくれるわ!」
 バジリスクから放たれるは、重い一撃。
 だが、その一撃に対抗するように。
 ――鉄火散り、血華舞う。刹那を刻むは狼牙の連閃。
 有栖から繰り出されるは、『鐵牙』の連撃。
 振るう槌の一撃と刃の連撃が激しくぶつかり合い、手から伝わる衝撃の重さに、今は必死に耐える。
 相手は剛腕を誇る強敵。けれど……必ずや、その牙で敵を穿つ時が訪れるだろうから。
(「復讐を望むのなら、私にそれを止める意思はありません。愛する者の元へ逝きたいという望みも」)
 リザの気持ちが、雪那にはよく理解できる。自分も、彼女と同じで。
 ――復讐を果たせるのなら、私もこの命は惜しくなどありませんから。
 けれども。
「……ですが、だからといって、みすみすあのような男に殺させるつもりもありません」
 感傷めいた考えを消すかのように、零れ紡がれた言の葉。
 そして雪那は、携えていた雪夜をスッと構えて。
「我が名は氷條・雪那。貴様の力、削がさせて貰う」
 亡き兄の口調と立ち振る舞いを真似て――意識を、戦闘へと切り替えれば。
 ヴァンパイア目掛け繰り出されるは、魔を打ち破る力を宿す氷の連撃。
「……ぐ、っ!」
 敵が剛腕を誇るというのならば。
 此方は手数を活かし、体温低下によって動きを鈍らせつつ、その態勢や護りを崩していく。
 だが、相手は強敵。すぐに反撃の態勢に入り、両手の戦槌を天へと掲げて。
「……!」
 大きく振り回し、凄まじい威力を誇る無双壊滅撃を繰り出してくる。
「ぶんぶん扇風機みたいですねい! 危ないでいす」
 無差別に放たれる衝撃に、ライオンに騎乗したサクラコは咄嗟にすかさず身を引き、躱して。
 ――舞う桜はあなたを捕らえて離さない、ってね! 見せてあげるよ、桜吹雪!
 戦場に刹那、舞い降るのは……桜花弁。
 これまでの戦況を見据え、無双壊滅撃の直後あたりが隙が生じやすいかな、と。
 敵の動きを把握しつつ、仕掛けるタイミングを見極めんと窺っていた葵桜であったが。
 読み通り、高威力だが無差別な戦槌の攻撃に、大きな隙を見つけて。
 その動きを封じんと、戦場に桜を咲かせ、花弁を舞わせた。
「くっ!」
 しかし風情無きヴァンパイアは、それをも強引に力で吹きとばすも。
「! 何っ」
 単調にならぬようフェイントを入れつつ放たれたのは――拷問具。
「良い姿だな、縛られるのは好きか?」
 葵桜の吹かせた桜吹雪を目くらましに。
 ヴェイゼルが展開した咎力封じが、今度こそ、確りとヴァンパイアを捉える。
(「リザの大切な人を殺してまで、彼女を手中に収めようとするなんて……気に入らねぇ。これまでも力を誇示して好き勝手やってきたんだろうよ」)
 ヴェイゼルには容易く想像できる。このヴァンパイアが一体、どんな領主であるのか。
「何もかもが、てめぇの思い通りになると思うな」
 刹那、地獄の炎の右手で握られたハルバード――相方の『焔々』が、敵を叩き斬らんと唸りを上げて。
 リン、と鳴る鈴の音。
 葵桜の繰り出した朱色地に金装飾の薙刀のひと薙ぎが衝撃の波を生み出し、敵へと見舞われる。
 そしてできるだけ前へと立ち、仲間と声を掛け合いながらも。
 花嫁の純白に、葵桜はこう思う。
 ――望みは叶えてあげたい。
(「諦めさせたところで悔いが残るだけだもの」)
 逆に、ヴェイゼルはそっと小さく首を横に振る。
(「仇討ちしてぇ気持ちも理解できる、させてぇ思いもある。だが命の危険がな」)
 ――仇討ちはさせねぇ。
 だが……ふたりは一見、真逆の気持ちのように見えるけれど。
(「リザさんには、大切な人の分までちゃんと未来を生きてほしい」)
(「リザには生きて欲しい」)
 根底にある思いは、この場にいる全ての猟兵が同じ気持ちである。
 ――リザには、何としても生きて欲しい。命を、そう易々と散らさないで欲しい。
 そのために、猟兵たちは今、得物を敵へと振るうのだ。
(「想いは叶うよ。だって私達が居るから」)
 ――これだけ居たら無敵でしょ?
 葵桜は心強い沢山の仲間たちをぐるりと見回して。遠くに見える純白の花嫁に、藍色の瞳を細める。
 そして訪れた、絶好の機。
「傷口が凍れば、再生も回復も出来まい」
 それを決して逃しはしない、と。
 雪那はすかさず、握る雪夜に気合いを込めて。
 破魔と氷の加護を上乗せした、強烈な刃の一閃を、バジリスクへと容赦なく振り下ろせば。
「オクちゃん! やっつけるでいす!」
(「これ以上悲しむ人は作らない、作っちゃいけない。敵が強くても、ここで打ち取るため――」)
「……届いて」
 ライオンからすかさず地へと降り、パーカーを脱いでさらにそのスピードを上げながら。
 祈るようにそう零し、シンプルな諸刃の短剣から鋭く素早い一撃を放ったオクは、ヴァンパイアへと全力で握る刃を突き立てて。
「うぐ……ッ!」
 大きく状態を揺らしながらも尚、ヴァーミリオンの血統に連なるプライドか。
 バジリスクは、己を再び朱の戦鬼と化さんとするも。
「させないよ!」
「言っただろ、てめぇの思い通りになると思うな、ってな!」
 葵桜の胡蝶楽刀とヴェイゼルの焔々が、同時にヴァンパイア目掛け振り下ろされて。
「が、はっ……く!」
 己の赤の飛沫にその身を染めながらも、何とか持ちこたえんと足掻くバジリスク。
 だが――堪えて忍んだ、絶好の機。
 あの月には届かずとも、この鬼には届く……そう、有栖は一気に地を蹴って。
 牙を剥くは、銀の刃狼。
「この牙で。この刃で。確実に喰らい尽くす……!」
 ――逃しはしない……!
 渾身を込め、全力で薙刀を振るう。
「が、あぁ……っ!」
 瞬間、血の華を咲かせた得物の柄が折れ、刃が欠ける。
 けれども……止まれない。止まらない。
 この刹那で全てを決す、と……朧ろの月天に吼え、折れた刃を咥えると。
 ――鐵の牙と為して、敵を断つ……!
「はッ! がはあぁぁ……っ!!」
 有栖の剥いた刃の牙が、あれだけ強気であったヴァンパイアを最早、虫の息にしたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティア・レインフィール
リザ様のお気持ち、とても理解出来ます
私も復讐を望む者ですから
でも、その想いは今は微笑で隠して

命を落とすかもしれない場所で立ち続ける勇気
そして、その手を仇の血で濡らす覚悟
それがあるのか問い掛けます

肯定されれば
最後の一撃は、リザ様にお任せします
ですからどうか、今は私達にお任せください
そう告げて、私は彼女を背にして守ります

その後は神に【祈り】を捧げ
【シンフォニック・キュア】による聖歌を【歌唱】し
皆様を援護致します

もしリザ様に攻撃が向けられそうな時は
この身を挺してでも彼女を庇います
彼女をこの場に残すと判断したのならば
その責任はとります

どうか、リザ様が後悔の無い選択が出来ますように


桜橋・ゆすら
だめ、早くリザさんを止めないと…!
!?
やだ…ゆすらの身体を、奪わないで…!

●真の姿解放

第一章に登場した『持ち主』の姿へ変貌
リザの対応にまわる


筆にも休息は必要だろう

…復讐の花嫁か
美しい
私もその衣装を身に纏ってみたかったものだ

UCで亡霊を抑えながら
桜吹雪のなか語ろう

御機嫌よう、麗しき花嫁
その短剣は男の形見か?
…そうか
(愛する人の形見(万年筆)を愛おしく撫でる)

この屋敷にまで赴いたのだ
覚悟はあるのだろう?
君はこれまでに彼等が投げかけた説得に“納得”できたか?

私は綺麗事が大嫌いだ
納得は全てにおいて優先しろ
己の悲しみは、己のものだ
誰であっても代弁できない

血で彩る結末をその手で綴りたいのなら
私も手伝おう


橙樹・千織
アドリブ・絡み歓迎

あらまぁ、相手をもの扱いですか
嫌ですねぇ…だから伴侶がいないのでは?

コミュ力・言いくるめ・礼儀作法を活かしリザさんの説得を試みます
最期の決着は戦闘を見届けた後の彼女の意思に任せます
さて…そこの貴女
その美しい姿、アレのためにする必要はありませんよ
事情を少しお聞きしたのですが、私はどうやら似たような体験をしておりまして(…まぁ、殺された側なのですが)
少々、お手伝いいたしましょう
ただし、一つだけ約束してくださいな
私達の仲間がアレを弱らせるまでは決して前に出ないこと
それまでは私達が貴女を護ります

亡霊の対処
破魔の力を乗せた歌唱やなぎ払い、2回攻撃等を活用
回避は戦闘知識や武器受けを活用


セリオス・アリス
アドリブ歓迎

仇討ちをしたいなら止めねぇ
俺も自分の手で殺したからよくわかる
その代わり絶対に死ぬなよ
自分の命を欠片でも仇にくれてやるのもったいねぇだろ
当たり前のようにいい
片眉をあげて
で、一応聞いとく
死なねぇ自信は?

あるならそこまでの道は援護してやる
ねぇなら…その剣、借りれるか
お前の気持ち預かるぜ

『ダッシュ』で距離を詰め炎の『属性攻撃』で『2回攻撃』
なるべく大きく炎を燃やし注意をそちらに引き付けて『フェイント』
もう一歩踏み込み隠した左手で
『全力』の魔力を短剣に乗せて突き立てる



 ゆすらの桜の如き薄紅の瞳には、短剣を握りしめた花嫁の姿。
「だめ、早くリザさんを止めないと……!」
 森を抜け館へと駆けつけてきたゆすらは、刃握る彼女を止めるべく駆け寄らんとするも。
「!? やだ……ゆすらの身体を、奪わないで……!」
 何者かに、その身体を明け渡し……ゆすらの意思に関係なく、真の姿を解放した。
 それは――『持ち主』の意思。
 筆にも休息は必要だろう、そう呟き、肩口で切り揃えられた黒髪を揺らして。
 女は、何をも映さぬ曇り硝子の眸をリザへと向ける。
「……復讐の花嫁か、美しい」
 私もその衣装を身に纏ってみたかったものだ、と、朧ないろを宿す瞳を微かに細めた後。
 桜吹雪舞う中、女の視線は、リザが大事そうに握りしめる短剣へ。
「御機嫌よう、麗しき花嫁。その短剣は男の形見か?」
 こくりと、すぐさま頷いたリザに。
 女はゆすらを……愛する人の形見である万年筆をそっと、愛おし気に撫でる。
 そしてリザへと、問うのだった。
「この屋敷にまで赴いたのだ。覚悟はあるのだろう? 君はこれまでに彼等が投げかけた説得に“納得”できたか?」
 これまで、沢山かけて貰った声。
 それに、彼女自身が納得しているのかと。そう女ははっきりと訊く。
「私は綺麗事が大嫌いだ。納得は全てにおいて優先しろ」
 ――己の悲しみは、己のものだ。誰であっても代弁できない。
 花嫁が決断を下さなければならない時は、恐らくもうすぐそこまで迫ってきている。
 だが、たとえ彼女が仇討ちを選び、彼女自身が納得できているのであるならば。
「血で彩る結末をその手で綴りたいのなら、私も手伝おう」
 女はそう、ぞくりとするような妖艶な声色と笑みを、花嫁へと向けたのだった。

 そんなどこか妖し気な雰囲気から一変。
「あらまぁ、相手をもの扱いですか。嫌ですねぇ……だから伴侶がいないのでは?」
 ふわほわとした口調で、千織はいかにも粗暴で女性に優しくなさそうなヴァンパイアを見遣ってから。
「さて……そこの貴女。その美しい姿、アレのためにする必要はありませんよ」
 千織は、リザへと告げる。
「事情を少しお聞きしたのですが、私はどうやら似たような体験をしておりまして。少々、お手伝いいたしましょう」
 ……まぁ、殺された側なのですが、と。
 ほわりとした雰囲気から出る言葉ではないことを、さらっと千織は言ってのけた後。
 最期の決着は、戦闘を見届けた後の彼女の意思に任せます――そう、リザの意思に委ねることを誓うも。
「ただし、一つだけ約束してくださいな」
 ――私達の仲間がアレを弱らせるまでは決して前に出ないこと。
 それを確りと、リザへと改めて約束させる。
 リザもヴァンパイアに真っ向からナイフを振り上げても、無駄に終わるだろうことは分かっているし。
 もう、何度も何度も猟兵たちに、釘をさされた言葉だから。
 声を荒げたり、逸る気持ちで衝動的な行動に出る様子もなく。
 約束するわ、と――リザは口に出して了承の意を示す。
 そして迫る亡霊へと、破魔の力を乗せた歌唱を披露し、リザを護っていた千織であったが。
「あらまぁ、どうやら……終わったようですね」
 相変わらずほわっとした声で、そう紡いだのだった。
 その声に、リザの表情が大きく変わる。
 そう――愛する人の仇であるヴァンパイアが、ついに猟兵たちの手によって倒されたのである。
 正確には、虫の息といった状態か。

 復讐の相手――バジリスク・ヴァーミリオンが倒れた今。
 花嫁に、決断が迫られる。
「仇討ちをしたいなら止めねぇ。俺も自分の手で殺したからよくわかる」
 その美人な印象の目を惹く容姿と玲瓏たる声に似合わぬ、さらりとされた過去の告白に。
 リザは碧色の双眸を瞬かせながら、彼――セリオスの青き炎の輝き宿る星の瞳を見つめ返して。
 セリオスは当たり前のように、続けてこう言ってのける。
 仇討ちしたいならば止めない。けれども。
「その代わり絶対に死ぬなよ。自分の命を欠片でも仇にくれてやるのもったいねぇだろ」
 リザには、彼の過去に何があったのか、勿論知る由もない。
 けれども――美しく囀ずる黒き鳥は、決して自由には歌えなかったのではないかと。
 そう何故か、思わずにいられなくて。リザはただ、頷くことしかできなかったけれど。
 セリオスはそんなリザに、くいっとその片眉をあげて。
「で、一応聞いとく」
 ――死なねぇ自信は?
 紡ぐ問いかけを、真っ直ぐに。
 リザはそんな彼に返す――正直、分からないわ、と。
 消極的になったわけでも、怖気づいたわけでもない。でもそれが、彼女の本心。
 これだけ心強い猟兵たちが周囲にいても、もしかしたら死ぬかもしれないという思いは拭えないし。
 けれど、それも覚悟の上で、リザはここを訪れたのだ。
 セリオスは自分を見つめる碧色の瞳に、ふっと己の青き一番星を細めてから。
「なら……その剣、借りれるか」
 お前の気持ち預かるぜ、と。形見を短剣を受け取って。
「!」
 夜と闇の世界の戦場に靡く、濡羽色の髪を鮮やかに照らすは、炎。
 眼前に迫る敵へと距離を詰め、激しく燃やした炎で亡霊を照らし出し誘えば。
 一歩、さらに踏み込んだ刹那――隠した左手で、全力で編み出した魔力を短剣へと乗せて。
 亡霊の急所に、容赦なく突き立てる。
 そしてリザのために、切り拓くのだった。
 彼女の愛する人の仇――バジリスク・ヴァーミリオンへの復讐へと導く道を。

 純白の花嫁は、どのような選択をするか。
 本来の目的を果たすべく、短剣をヴァンパイアへと突き立てるのか。
 それとも、純白を赤に染めることを厭うのか。
(「リザ様のお気持ち、とても理解出来ます。私も復讐を望む者ですから」)
 けれども、その想いは――今は、微笑みで隠して。
 ティアは手元に戻ってきた短剣をぐっと握りしめるリザに、こう問いかける。
「命を落とすかもしれない場所で立ち続ける勇気。そして、その手を仇の血で濡らす覚悟……それが貴女には、ありますか?」
 その問いに、リザはふとティアの顔を見てから。
 周囲で自分を見守る猟兵、倒れ伏し拘束されているヴァンパイアを順に見回した後。
 決意を、口にするのだった。
「ええ。私がここに来た目的は、仇討ち。それは果たせるのならば……どんな覚悟もできているわ」
 微かに震える手。けれども、そうはっきりと宣言したリザに。
「最後の一撃は、リザ様にお任せします」
 ティアは、彼女をこの場に残すと判断したその責任はとります、と。
 万が一の時のために、他の猟兵たちとともに、リザの護衛をつとめながら。
 いまにも息絶えんとしているバジリスク・ヴァーミリオンの元へと、歩みをすすめる。
 協力すると肯定してくれた言葉も、やめておけと止めてくれた言葉も。
 その全てを、彼女は受け取って。そして、決めたのだ。
 ――どうか、リザ様が後悔の無い選択が出来ますように。
 ティアはそうそっと、神に祈りを捧げるかのように彼女を見守って。
 周囲の警戒が高まる中、震える両手で握った短剣を、リザは天へと翳す。
 ――そして。
「はぁっ! がはぁ……ッ!!」
 愛する人の形見の刃を、仇であるヴァンパイアへと全力をもって突き立てながらも。
 あれほど弱みをみせまいと毅然としていた彼女の碧色の瞳から、零れ落ちる涙。
 それが何を意味するものなのか、きっと本人にもわかっていないだろう。
 そして……まるで、夢幻の森に蔓延る霧のように。
 バジリスク・ヴァーミリオンの身体は消滅し、躯の海へと還ったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『キャンドルナイトで慰労会』

POW   :    会場の設営などの力仕事、周辺の不安要素の排除、大規模なパフォーマンスなど。

SPD   :    食事の用意、会場の飾りつけ、人々が集まれるよう呼びかけるなど、場を和ませる工夫を。

WIZ   :    悩み相談を受けたり、安心できる言葉をかけたり、唄や踊りの披露をしたり。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

【第3章の追加情報を『4月23日(火)』に追記いたします。掲載までもう暫くお待ちください。オープニング追加後から、第3章のプレイングの受付を開始いたします】


●灯り、灯す思い
 ――バジリスク・ヴァーミリオンが倒された。
 そして、ヴァンパイアの館へと赴いたリザも無事に帰ってきた。
 この報せに、村に希望の光が灯る。
 そんな奇跡のような結果をもたらしてくれた猟兵たちに、せめてもの礼にと。
 今夜、村で『キャンドルナイトの宴』が開かれるのだという。

 村を照らすのは、ひとり一本燈した、キャンドルの灯りだけ。
 そんな仄かな灯火の中、皆で楽しく食事の時間を過ごし会話を交わしたり。
 一仕事して減った腹をただ存分に満たすのも良いし。
 また、宴の間は、普段は立ち入ることのできない教会が解放されるようで。
 教会の祭壇に灯火を飾ることができ、静かに祈りを捧げたりもできるのだという。
 リザはさすがに暫くは休んでいるようだが、この宴には参加するようだ。
 猟兵達は、彼女の恩人。
 見かけた彼女に声を掛ければ、きっと何らか応じてくれるだろう。

 リザのことはそっとしておいてあげて、一仕事後の空腹を満たすべく、食事を純粋に楽しむのも良いだろう。
 とはいえ、贅沢な暮らしなどは到底できないダークセイヴァーの世界。
 並ぶ食事は、村人達が拵えたのだという広場の中心にある大きな窯で焼かれたパンや、あたたかいスープ。
 ソーセージやチーズやヨーグルトといったものだ。
 だが、村の傍に広がる霧幻の森は、その呪いで人々の脅威にもなる反面。
 豊富な果物や木の実、動物の肉などの恩恵も、同時に与えてくれている。
 そしてこの村の一番の特産品は、蜂蜜なのだという。
 甘い蜂蜜を生地に練り込んだ蜂蜜パンをはじめ、パンケーキのように平らに伸ばしたプレーンパンに好みの量の蜂蜜を垂らしても良いし。
 ヨーグルトに果物を入れ、蜂蜜で甘く仕上げれば、ちょっとしたスイーツにも。
 また、成人している者には蜂蜜酒も用意されており、未成年でもミルクに蜂蜜を垂らして飲んでみるのもおすすめのようだ。
 甘いものが苦手でも、甘くないプレーンパンや果物、温野菜も多々並んでいる。
 折角村人たちが準備し催してくれた食事。
 遠慮なくいただくのも、その厚意への良き返礼となるのではないか。

 そしてこの宴の間は、普段は解放されていない村の教会への出入りが自由になるという。
 眼前に『霧幻の森』が見える教会。
 この教会の奥にある祭壇に、灯したキャンドルを飾って、静かに祈りを馳せる。
 そのような過ごし方も可能だ。

 リザは、食事が並べられた広場の会場にも教会にも、ふらり気紛れに顔をみせる。
 その心に何を思うのか、仇討ちを成したことで彼女の心に生じたものはなにか。
 それは、彼女にしかわからない。
 そんなリザに声を掛けるもよし、あえてそっとしておいても良し。
 思うことも、猟兵それぞれ異なるであろうし。
 グリモア猟兵が再び桜のグリモアを咲かせ、元の世界へ皆を送り届けるまでの間。
 思い思いに、村で過ごしてもらえばと。

 夜と闇に支配されたこの世界を照らす、仄かな光。
 その灯火に――貴方は、何を思いますか。
仁科・恭介
※アドリブ等歓迎
依頼が終わったため【大食い】という事もありさっさと帰ろうと思ったが、蜂蜜が特産という事を聞いた。
ただで受け取るのは気が引けるため会場運営を手伝う。
【携帯食料】を口に放り込みながら重い物を効率よく的確に。
「これ、ここでよいですか。あ、それは…私が運ぶよ。君は気になる子の相手でもしておいで」

「蜂蜜を少し分けてもらえる?この位の瓶一つだけでいいんだ」
蜂蜜が欲しい理由は想い人に贈るため
一つはお前が出てきたぞって思い出に
もう一つの意味は…秘しておこう

「ここからだと三日くらいかねぇ」
会えなくても手紙と一緒に置いておこう
帰ってきた時に連絡くるかな
アイツと居たらそれはそれで
「では、私はお先に」



 振舞われるのは、キャンドル灯されし宴の食事。
 だがそれは、大食いでもあるし、遠慮して。
 依頼を終えるとすぐに帰還しようと……そう思っていた恭介であったが。
「うちの村でとれる蜂蜜はね、絶品なんですよ」
 そう村の人に引き留められ、聞いた特産品につられて。
 もう少しだけ、帰るのを踏みとどまる。
 でも、ただで受け取るのは気が引けるからと。手伝うのは、宴の会場運営。
 そしてひょいと携帯食料を口に放り込み、重い物を効率よく的確に運んでいけば。
「これ、ここでよいですか。あ、それは……私が運ぶよ。君は気になる子の相手でもしておいで」
 ありがとうございます――そうぺこり頭を下げた村の女の子が礼にとくれたのは、琥珀色の飴玉。
 それを口に運べば……ふわりと広がる、濃厚で優しい、蜂蜜の甘さ。
 その美味しさに、納得したようにひとつ頷いてから。
「蜂蜜を少し分けてもらえる? この位の瓶一つだけでいいんだ」
 蜂蜜飴をくれた女の子に、そう頼んでみれば。
 うん、とびきりおいしい蜂蜜をあげますね! と。
 女の子は瓶を大事そうに抱いて、たったっと駆け出していく。
 その後姿を見つめ柔く笑む恭介が、蜂蜜を欲しい理由。
 それは……想い人であるあの子に、贈るため。
 ひとつは、お前が出てきたぞって……そんな、思い出に。
 そして、もうひとつの意味は――。
「ここからだと三日くらいかねぇ」
 戻ってきた女の子から、甘い色でいっぱいに満ちた瓶を受け取り、礼を言った後。
 会えなくても手紙と一緒に置いておこう、そう思いながらも。
(「帰ってきた時に連絡くるかな」)
 アイツと居たらそれはそれで……そうそっと、瞳を細めつつ。
「では、私はお先に」
 今から宴が始まらんとする賑やかな広場や、あの子の幻影と会った霧深い森から、くるり背を向けると。
 恭介は先に帰還するべく、見つけたグリモア猟兵の元へと歩き出したのだった。 
 その手に、甘くて幸せな黄金の輝きを、確りと握りしめて。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レイン・フォレスト
ソーセージにチーズにヨーグルト、そして蜂蜜……
ずいぶんご馳走を用意してくれたんだね
それじゃあ、と少し料理の手伝いを

小鍋を貸して貰ってチーズを溶かして
野菜やソーセージやパンに串を刺して
鍋のチーズを絡めて食べると美味しいんだよ

みんなが食べ始めたら気付かれないようにそっと教会へ
一人で考えたかったからなんだけどリザと会った

リザ、自殺とか考えてないよね?
君のために泣いてくれる人達がいるうちは自ら死んではダメだよ
大丈夫、彼はきっと待っててくれるよ

リザに言った言葉は本当は自分に言い聞かせてるのかもしれない
僕もたぶん、仇を取れるなら…とどこかで思ってるから
大事な友人を悲しませない為にも僕は死んではいけないんだ



 どれだけ、どのくらい、ヴァンパイアに苦しめられながら生活してきたのだろうか。
「ソーセージにチーズにヨーグルト、そして蜂蜜……ずいぶんご馳走を用意してくれたんだね」
 この夜と闇に覆われた世界ではきっと、最大級の持て成しだろう御馳走が並ぶテーブルをレインは見回した後。
 それじゃあ、と少し、料理の手伝いを。
 小鍋にかけた火でとろりと溶かすのは、濃厚なチーズ。
 それを、串に刺した野菜やチーズ、パンにくるり、たっぷり絡めれば。
 とても美味しい御馳走がまたもう一品、出来上がり!
「わぁ、美味しそう!」
「ん……美味しいっ」
 物珍しさに寄ってきた村の子供たちも、チーズをくるくる、ぱくりと食べては笑顔を綻ばせて。
 どれどれと集まった大人も皆、その味に舌鼓を。
 そんな美味しそうに頬張る皆の様子を見届けた後。
 そっと気付かれぬよう、レインは賑やかな広場から離れて。
 足を向けたのは――教会。
 誰にも知られぬよう赴いたのは、一人で考えたかったから……なのだけれど。
「あ……」
 そこには、先客が。
 そしてレインは、その先客――リザへと、こう尋ねる。
「リザ、自殺とか考えてないよね?」
 レインのそんな問いにすぐには答えず、ふと俯くリザ。
 そんな彼女に、レインは続けて言葉を紡ぐ。
「君のために泣いてくれる人達がいるうちは自ら死んではダメだよ」
 ――大丈夫、彼はきっと待っててくれるよ、と。
 そんなレインの言葉に、リザはふと顔を上げて。
「貴方達のおかげで、生き延びちゃったんだもの。私は、生きるわ……彼の分も」
 色々と心に思うこと、忘れられない傷はあるだろうけど。
 そう微かに笑んでみせるリザ。
 そんな彼女の様子にひとまずホッとしながらも、レインは思うのだった。
 リザに言った言葉は本当は自分に言い聞かせてるのかもしれない――と。
 思い出した記憶。それによって生じた様々で複雑な感情。
(「僕もたぶん、仇を取れるなら……とどこかで思ってるから」)
 ――でも。
 眼前の少女に、自分の姿をどこか重ねながらも。
 大事な友人を悲しませない為にも僕は死んではいけないんだ――そうも、レインは思うから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィオレッタ・エーデルシュタイン
教会にキャンドルを持って向かうわ。
リザを待って、他の人から離れてから声をかけるわね。

「すべてが終わってどうかしら?
 今貴女が感じているのは、満足?後悔?
 私たちに感じているのは、感謝?嫌悪?」

反応を待たずに祭壇にキャンドルを置くわね。

「どんな思いでも構わない。ただ一つ、その思いを否定しないで。
 その思いが貴女のここからの始まりになるのだから」

「一つおとぎ話をしましょう。ある神話で、開けてはいけない箱を一人の少女があけてしまったそうよ。そこからはありとあらゆるこの世の悪があふれ出た。でも、最後に残ったものがあるの」

そう、その名を「希望」というそうよ。
告げて瞳を向けるわね。



 夜と闇の世界。
 天を覆い支配する漆黒は深く、絶望の色かのように昏いけれども。
 でも――そんな闇色に灯るのは、仄かに揺らめくひとつの炎。
 灯したキャンドルを手に、ヴィオレッタがやって来たのは、特別に解放されている教会。
 そして、炎に照らされ神秘的ないろを増した色の異なる双眸の宝珠に、ある人物の姿を映して。
 他の人から彼女が離れたタイミングを見計らい、声を掛ける。
「すべてが終わってどうかしら? 今貴女が感じているのは、満足? 後悔? 私たちに感じているのは、感謝? 嫌悪?」
 そうその人物――リザに、そう問うたヴィオレッタだけれど。
 彼女の反応や答えは待たず。
 既に幾つもの炎が飾られた祭壇に、己の手にあるキャンドルを置きながらも、紡ぐ。
「どんな思いでも構わない。ただ一つ、その思いを否定しないで。その思いが貴女のここからの始まりになるのだから」 
 ――幸福か、それとも不幸か。
 でも、終わりを告げるはずだった少女の人生はまた、ここから始まる。
 これから始めるためにも……胸の内にあるその思いが、一歩を踏み出す力になると思うから。
「私の、今の思い……」
 美しく闇夜に揺らめくキャンドルを見つめ、そうぽつりと零したリザに。
 ヴィオレッタは、おとぎ話をひとつ、語る。
「ある神話で、開けてはいけない箱を一人の少女があけてしまったそうよ。そこからはありとあらゆるこの世の悪があふれ出た。でも、最後に残ったものがあるの」
 そう、その名を「希望」というそうよ――と。
 ヴィオレッタはリザへと告げながらも。
 湛える藍と紫の煌めきを、彼女に向けたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

終夜・還
貧しさは相変わらずだな、この世界は…
里帰り、か
まあ悪かねぇかな
突然神隠しでアースに飛ばされてから猟兵になって偶に足を伸ばせる故郷ってのも悪かない

ま、相変わらず湿気た面してる奴が多いけど(苦笑)
…ったく、俺は皮肉しか言えねぇのホントどうにかならんかねぇ

軽く食事に手を付けてから教会に足を伸ばしてみるか
いやー…しかし、セレアには似合うのに俺にはトンと似合わん事

リザが居たら聖職者と死霊術士のカップルとか世も末だよなー。そうは思わねえ?って肩を竦めて話し掛けてみよう

で、生きる気あんの?って聞いてみる

俺が言った言葉や他の奴の言葉がちゃんと伝わってたらイイんだけど…

幸せ、見つけられるとイイな。恋人の為にもさ



「貧しさは相変わらずだな、この世界は……」
 里帰り、か。まあ悪かねぇかな、と。
 赤を帯びる瞳をふっと細め、この世界を支配する漆黒を映す還。
 突然遭った神隠しでUDCアースに飛ばされ、猟兵になったことで、偶に足を伸ばせるようになった故郷。
 それも悪かない――還はそう思いながらも。
「ま、相変わらず湿気た面してる奴が多いけど」
 この世界を覆う色と似た己の黒の髪にくしゃりと触れつつも、苦笑する。
 いや……むしろ、お互い様なのかもしれない。
(「…ったく、俺は皮肉しか言えねぇのホントどうにかならんかねぇ」)
 そうふっとひとつ息を吐いた後。
 還は、村人に勧められたパンとソーセージに軽く手をつけてから。
 教会へと、足を伸ばした。
 決して裕福ではない村に佇む教会。
 絢爛豪華では全くないが、村で一番大きな建造物はよく手入れが施されていて。
 中に足を踏み入れれば――様々な願いを灯した、数多のキャンドルの炎。
「いやー……しかし、セレアには似合うのに俺にはトンと似合わん事」
 静寂に包まれた神聖なる空気感漂う教会を一度、ぐるりと見回してから。
「聖職者と死霊術士のカップルとか世も末だよなー。そうは思わねえ?」
 肩を竦める還が声を掛けたのは、碧色の瞳の少女。
 リザは微かに笑み、そして少しどこか寂しそうな響きで答える。
「愛し合っていれば……それも素敵じゃないかしら」
 そしてその双眸が、自分の姿を映しているのを見ながら。
 還はもうひとつ、問いを重ねる。
「――で、生きる気あんの?」
 リザはその声に、湛える碧色をぱちくりと瞬かせるも。
「こうなったらもう、生きなきゃいけないでしょ? ……貴方達のおかげで、ね」
 元々、勝ち目のないヴァンパイアにひとり、仇討ちを挑むような少女だ。
 まだ色々と思うことはあるだろうが、その心に決めたようだ――生きる覚悟を。
 そんな彼女の決意を、灯るキャンドルの光の中、見届けてから。
「幸せ、見つけられるとイイな。恋人の為にもさ」
 炎の如き赤の瞳を細め、仄かに揺れる灯火に思いを重ねる様に言った還に。
 リザは金色の髪をこくりと揺らしながらも、返す――ありがとう、そして貴方もね、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

終夜・嵐吾
せーちゃんに声をかけて

せーちゃーん、せーちゃんじゃな?
うむ、本物の……わしの知っとるせーちゃんじゃな
よし、一緒に祈りにいこ
ほれ、キャンドルももろてきたんよ

教会を訪れ、キャンドルを灯す
祈ることは……この世界にいつか、平穏を
大きく出てしもうたかの。まぁ、それくらいがちょうどええじゃろ

さて長いしては祈る者たちの邪魔になるか
せーちゃん、外いこ

眼前に広がる霧幻の森――あの森での
せーちゃんと、出会ったんじゃよ、幻の
しっかり成敗しといたがの!
幻であれば何のことはない。せーちゃん本人じゃったら躊躇……
むぅ、いやどうじゃろな
汝になら、何してもええし、何されてもええよと思うとるよ、わしは
わしの特別な友人じゃからな



 少し遠くからでも、一目見れば直ぐに分かるような。
「せーちゃーん、せーちゃんじゃな?」
「……らんらん?」
 見つけたのは、そんないつも気付けばすぐ近くにある、友の姿。
 そして、蒼が微かに溶けた赤の瞳で、きょとんと自分を見つめる友――清史郎に。
「うむ、本物の……わしの知っとるせーちゃんじゃな」
 よし、一緒に祈りにいこ、と。
 ぴこりと自慢の灰青を帯びたふわふわ尻尾と耳を揺らし、嵐吾は清史郎にも手渡す。
「ほれ、キャンドルももろてきたんよ」
 闇の世界を仄かに照らす、小さなキャンドルの灯火を。
 清史郎は、有難う、と。それをひとつ、受け取って。
 仲良くふたり並んで、教会の祭壇に炎を捧げる――祈りとともに。
 嵐吾がキャンドルに馳せる願いは……この世界にいつか、平穏を。
(「大きく出てしもうたかの。まぁ、それくらいがちょうどええじゃろ」)
 そしてちらりと隣を見れば、友が何を祈ったのか、ちょっぴり気にはなるけれど。
 親しき中にも礼儀あり、野暮なことはせんよ、と。思うだけに留めるけれども。
「さて長いしては祈る者たちの邪魔になるか。せーちゃん、外いこ」
「ああ。ところでらんらんは、何を祈ったんだ?」
 さらっと遠慮なく尋ねた清史郎に、せーちゃん、それは秘密じゃよ、と。
 そう返しながらも、思わず笑ってしまう。
 それからふと、顔を上げれば――眼前に広がるのは、『霧幻の森』。
「あの森での。せーちゃんと、出会ったんじゃよ、幻の」
「俺の、幻と……?」
 予知した清史郎は、勿論分かっている。
 あの森で現れる幻影が、その者にとってどういう存在か。
 そしてその幻影が……何をするために、現れるのかを。
 だが、ふと表情が変化した友にも、嵐吾はいつもと変わらぬ笑みを向けて続ける。 ――しっかり成敗しといたがの! と。
 そんな声に、少しホッとした様子を見せた後。
 俺も先日らんらんの幻を成敗したな、と笑み返す清史郎に。
「幻であれば何のことはない。せーちゃん本人じゃったら躊躇……むぅ、いやどうじゃろな」
 嵐吾はふとそう、首を大きく傾けるけれど。
「汝になら、何してもええし、何されてもええよと思うとるよ、わしは」
 ――わしの特別な友人じゃからな、と。
 尻尾をふわり揺らして、そう告げれば。
「そうだな……俺も相手がらんらんであれば、構わないな」
 しかしすぐに、だが幻のようにはそう簡単には成敗されないがな、と。
 そう、くすりと笑む清史郎に。
 本物のわしも負けんし! と嵐吾も一通り、張り合った後。
 顔を見合わせてふたり、楽し気に笑み合うだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

八上・玖寂
せっかくなので蜂蜜酒をグラス一杯だけ頂き、
賑やかな中は落ち着かないので、人気の少ないところでゆっくりと。
普段あまり飲まないんですよ、お酒。味が分からないので。

ちびちび飲みつつキャンドルの灯の向こうの森の方を見やるなど。
――自分の心の中を強く支配している者が、自分を殺しに現れる森。
僕が僕を殺せる訳がない。
手に馴染む長年の相棒――拳銃を手の中で弄ぶ。
大分長い付き合いになってきましたね、貴方とも。

愛する者を喪う悲しみも、復讐に燃える心も、
僕には理解も想像も及ばないもの故、
あの森は僕に僕以外映せないのでしょうね。


※絡み・アドリブ歓迎です



 持て成しの料理が並んだテーブルを照らす、沢山の灯火。
 それを、少し離れた場所から眺めながら。
「普段あまり飲まないんですよ、お酒。味が分からないので」
 そう、誰ともなしに呟くのは、玖寂。
 酒の味はイマイチ分からないけれど、折角であるし。
 グラス一杯だけ、振舞われた蜂蜜酒を貰って。
 賑やかな場所は落ち着かないから……人気の少ないところでゆっくりと。
 キャンドル灯る光景や遠くに聞こえる賑やかな声をつまみに、ちびちびとまったり過ごす玖寂。
 しかしふと、光を揺らす一陣の風が吹き抜けて。
 ざわりとその風に煽られ、一斉に木々が音を鳴らした『霧幻の森』に目をやれば。
 深い霧の中、自分の前に現れたその存在の姿を再度、ふと思い返す。
 それは――誰でもない、自分であった。
 眼前に広がるのは……自分の心の中を強く支配している者が、自分を殺しに現れる森。
(「僕が僕を殺せる訳がない」)
 あくまで、穏やかに湛えたその微笑みは崩さずに。
 ――大分長い付き合いになってきましたね、貴方とも。
 そう手で弄ぶは……手に良く馴染む、長年の相棒。
 誰でもない自分の手だけにしっくりくる、使い込んだ跡が見て取れる拳銃。
 あと一体どれくらいの付き合いになるのか……それは、分からないけれども。
 玖寂は相棒を弄る逆手の蜂蜜酒を、また少しだけ、口に運んでから。
 やはりよく分からない酒の味に小首をひとつ傾げながらも。
 ふと伊達眼鏡越しにもう一度、霧深い森を見遣るのだった。
(「愛する者を喪う悲しみも、復讐に燃える心も、僕には理解も想像も及ばないもの故」)
 あの森は僕に僕以外映せないのでしょうね――と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シーラ・フリュー
無事に解決してほっとしています…。これでリザさんの気は少しでも晴れたでしょうか。…今はそっとしておこうと思うので、分からず仕舞いですが。

所で私、キャンドルナイトというものは初めてでして…。とても綺麗で、素敵だと思います…。
折角なので、スマホでキャンドルナイトの様子を写真に収めておきましょう。もちろん、フラッシュは焚かずに。
…こういう記録って大事だと最近思うようになりました。色々理由はありますが、話のタネにも使えますし…この綺麗な風景を残しておいて、後で見直して思い出に浸ってみたりもできますし…。

写真を撮り終わったら、暖かいスープを頂きに行きましょう。後は帰るまで、のんびりと過ごしたいですね…。



 星の様に闇を照らす、無数の仄かな輝き。
 そのキャンドルの炎のいろを、見つめるその緑の瞳にも灯しながら。
 シーラは無事に依頼を解決できたことに、ホッと一息ついて。
 傍から見ても分からないくらいほんの微かに、安堵の表情を浮かべてから。
(「これでリザさんの気は少しでも晴れたでしょうか」)
 その手で仇討ちをすることを選択し、それを成した少女のことを、ふと思うも。
 今は彼女をそっとしておこうと……そう思うから。
 その心は分からず仕舞いではあるけれど――リザの命が助かったのは、紛れもない事実。
 それに、村人たちが礼にと催してくれた、キャンドルナイトの宴。
(「所で私、キャンドルナイトというものは初めてでして……。とても綺麗で、素敵だと思います……」)
 シーラは構えたスマートフォンで、かしゃり、記念撮影を。
 そして、上手に撮れているか確認して。
 こくりとひとつ、その出来に納得気に頷きながら。
「……こういう記録って大事だと最近思うようになりました」
 そうぽろりと、シーラは零す。
 その理由は、色々あるのだけれど。
(「話のタネにも使えますし……この綺麗な風景を残しておいて、後で見直して思い出に浸ってみたりもできますし……」)
 まだ言葉を詰まらせてしまうことはあるけれど、話すことが好きになったし。
 楽しい、嬉しいが少しづつ分かってきた……ような、気がするから。
 そして沢山、キャンドル灯る光景や楽しそうな人たちの様子を写真に収めてから。
 ふわりシーラの鼻をくすぐるのは、あたたかなスープの香り。
 ひとくちそっと、掬って飲んでみれば。
 一仕事終えた身体の疲れが癒されるような、優しい味と温もりが広がって。
 シーラは帰還までのひとときを、キャンドルの炎揺らめく中……のんびりと過ごしたいと、そう思うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニコ・ベルクシュタイン
斯くして物語はめでたしめでたし、と相成ったか
失われたものこそ戻らぬが、生きてさえいれば希望は失われない
…人間とは、そういうものなのだろう?

リザを始め、此の過酷な世界に生きる全ての人々に
いつか心休まる平穏が訪れるよう、教会に赴いて
キャンドルを飾りながら祈らせて貰おう
俺もいい加減、此の世界での陰鬱なる事件を視るのは辛いでな

リザと言葉を交わす機会があらば
「大丈夫か」と一言だけ尋ねてみよう
気を確り持っているようならば良し、
若しも何か迷いがあるのならば、俺で良ければ話を聞こう

俺は良い年をしているように見えるかも知れぬが
まだまだ何も知らぬ、頼りない大人なのだ
リザの話を聞いて、むしろ勉強する側になるやもな



 夜と闇に覆われた絶望の世界にも、ひとときの平和は訪れる。
 キャンドルの仄かな灯火の中、和やかな雰囲気で食事をとる村人や猟兵たちを見遣りながら。
 ――斯くして物語はめでたしめでたし、と相成ったか。
 ニコはそう、眼鏡の奥の赤の瞳を細めて。 
(「失われたものこそ戻らぬが、生きてさえいれば希望は失われない」)
 ……人間とは、そういうものなのだろう?
 そう、誰ともなしに胸中で問いを投げ掛けつつも。
 炎を灯したキャンドルを、ふと手にする。
 人の身体を得てから刻んだ時間はまだ懐中時計で在った頃のものよりも浅く。
 人間というものはどういうものなのか……日々体感しながらも、理解の途中であるニコ。
 そして実際、その赤き瞳や虹色の星型のグリモアを通して視るこの世界にはやはり、陰鬱なる事件が多いから。
(「俺もいい加減、此の世界での陰鬱なる事件を視るのは辛いでな」)
 リザを始め、此の過酷な世界に生きる全ての人々に――いつか、心休まる平穏が訪れるよう、と。
 教会に赴いたニコはそっと、人びとの願いの灯火の中に、己のものも加えて。
 仄かな炎で祭壇をより彩り飾りながら、祈りを捧げるのだった。
 そして祈りを捧げた後、教会を出たところで出会ったのは、リザ。
「大丈夫か」
 そう一言だけ、訊ねたニコに。
 リザは、ええ、と。そう小さく微笑んでみせて。
 その様子は一見すると、気を確り持っているように見えるけれど。
 若しも何か迷いがあるのならば、俺で良ければ話を聞こう――そうニコは続ける。
「俺は良い年をしているように見えるかも知れぬが、まだまだ何も知らぬ、頼りない大人なのだ」
「私も、何も知らないわ。何も知らないけれど……知らないほうが、幸せなこともあると思うの」
 そう思わない? と。
 それから、ぽつり、ぽつりと少しずつ。その胸の内の一部を、言の葉にして紡ぐリザ。
 そんなリザの話に耳を傾けながらも。
 憂いの色を纏う彼女の碧色の瞳を見て、ニコは思うのだった。
 人として生きていくということは、どういうものなのか。
 むしろ俺の方が勉強する側になるやもな――と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

花狩・アシエト
おーよかった。何より。
リザが気になるかな

キャンドル灯しながらぶらぶらして、リザが現れたらちょっと様子見
話しかける人が途絶えたら行こう

よ、今の調子はどうだ?
……少し気が晴れたか?
どんな返答がきても、うんうんって頷く
お説教しても俺の考えも望んでいないだろうし
話は聞くぜ
それくらいしか、できないからな
……一言言わせてもらうなら、俺はリザが仇討ちできてよかったと思うよ
ほんと、ほんとだって
だってそうだろ、どんな形であれ仇討ちできれば変化はあるからな

喋りすぎたな
んじゃ、楽しんで!

アドリブ歓迎



 この世界を覆っているのは、夜と闇の漆黒。
 でもその黒に、幾つもの仄かな光が輝く。
 それは、束の間の平和を喜ぶ人々が、その手で灯した炎。
(「おーよかった。何より」)
 アシエトは光溢れる景色の中、改めて、圧政から解放された村の様子を見回し、そう思いながらも。
 灯したキャンドル片手に、村をぶらぶら歩いてみれば。
 ふと視界に入ったのは……月の様にしなやかな金色の髪の少女。
 ――リザのことが、気になる。
 そう思っていたアシエトは、彼女がひとりの今を見計らい、こう声を掛けてみる。
「よ、今の調子はどうだ? ……少し気が晴れたか?」
 リザはふと振り返り、アシエトを碧色の瞳で見上げて。
 小さく首を振りつつ、答える。
「正直……よく、分からないわ」
「まーそうだろうな」
 彼女の話の聞き手にならんと、うんうんっと頷くアシエト。
 そんな彼からふと視線を地に落としつつ、リザは続ける。
「仇が討てて、ああ遂に成せたんだって、嬉しく思う時もあれば……あいつを刺した時の手の感触、今でも思い出したら手が震えたりもするわ」
 リザの話を頷いて聞いてあげることに徹しようと思っていたアシエトだが。
 彼女の言葉に、これだけ、自分の思いを伝える。
「俺はリザが仇討ちできてよかったと思うよ」
「そう、なのかな」
 苦笑するように笑むリザに、ほんと、ほんとだって、と。
 アシエトは大きく頷いた後。彼女の姿を映す黒の瞳を細め、紡ぐ。
「だってそうだろ、どんな形であれ仇討ちできれば変化はあるからな」
「変化……うん、そうね」
 ぽつりとそれだけ零したリザに。
 アシエトは、喋りすぎたなと、仄かに炎の彩を帯びた灰色の髪を掻き上げてから。
 んじゃ、楽しんで! ――そう、明るく笑んで。
 貴方もね、と返る言葉を背に、ひらり、手を振るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

浮世・綾華
オズ(f01136)と

暴れてしまった分負担をかけてしまったように思い
怪我は?だいじょぶ?
オズが無茶した時用に今俺
回復技の練習してんだよネ
だからまあ
少しは無茶してもいいケドなと笑み

灯りを手に教会へ
通ってきた森を眺め一息

駆け付け助けてくれた彼に
何も明かさないのは狡いだろうかと考えるも

手渡されるがまま
ねこ?それ?んー、ぎり?
羽ばたく鳥を見守り目を細め
今はその無邪気さに優しさに甘えるばかりだ

頼もしい背を思い出すと何故か少しだけ苦しかった
ただ笑っていてほしいと思うのに
あんな顔をさせたのは自分という矛盾に自嘲

オズ、ありがとうな
今は感謝だけ

祈りはもっとつよくなり
大切な友人の光を穢さない自分であれるようにと


オズ・ケストナー
アヤカ(f01194)と

だいじょうぶっ
両手をぱたぱたしてアピール

わたしが無茶したとき用?
そんな風に考えてくれることがうれしくて
すごいね、アヤカ
ありがとうっ

でも、なるべくケガしないようにしようと思う
だって回復はつかれちゃうから

灯りがゆらゆら
きれい
森を眺める姿を見て

ね、アヤカ見て
まっさらな教会の壁に灯りを寄せ
にゃー
片手で猫の影絵を

持ってて
託した灯りに照らされて
空いた手で猫にしっぽを添え

ねこに見える?
ねこだよ、ねこねこ
ふふ、とりもできるよ
はばたかせた影のとりを背伸びして空に放つ
祈りはよくわからないけど
お願いごとはずっと変わらない
(これからもたくさん、アヤカの笑顔が見られたらいいな)

どういたしましてっ



 闇を仄かに照らす沢山のキャンドルの炎のように。
 ゆらり、綾華の胸に揺らめく思い。
 ――暴れてしまった分、負担をかけてしまったんじゃないか。
 そう、隣に目をやれば。
「怪我は? だいじょぶ?」
「だいじょうぶっ」
 両手をぱたぱた、怪我がないアピールをするオズの姿。
 そんな彼に、そっと、赤が咲く瞳を細める綾華。
「オズが無茶した時用に今俺、回復技の練習してんだよネ」
「わたしが無茶したとき用?」
「だからまあ、少しは無茶してもいいケドな」
 そう笑む綾華がそんな風に考えてくれていることが、オズは嬉しくて。
「すごいね、アヤカ。ありがとうっ」
 ぱあっと子猫のような瞳を煌めかせ、笑み返しながらも。
 こう、続ける。
「でも、なるべくケガしないようにしようと思う」
 だって回復はつかれちゃうから――と。
 綾華がオズを心配するように、オズもまた、綾華に負担をかけたくはないから。
 そして、ひとつずつ炎灯したキャンドルを手にして。
 ふたり並んで、教会へ。
 きれい、と……漆黒の夜に揺れる炎を見つめるオズの隣で。
 ふと、綾華が目を遣るのは――眼前の『霧幻の森』。
 霧深き森で自分が何を視て聴いたのか。その時何を思い、どうしたのか。
 ――何も明かさないのは狡いだろうか。
 駆け付け助けてくれた彼に、そう後ろめたさのような気持ちを抱きながら。
 ふっと一息吐き森を眺める綾華に、オズは青の瞳を向けて。
「ね、アヤカ見て」
 ――にゃー。
 炎照らした壁に映すのは……片手で作った、猫ちゃん。
 さらに、持ってて、とキャンドルを綾華に託せば。
「ねこに見える? ねこだよ、ねこねこ」
 ふりふり尻尾を添えて、ねこねこアピール。
 そんなオズと猫ちゃんを交互に見て、首を傾けつつも。
「ねこ? それ? んー、ぎり?」
 くすりと、綾華が笑んで返せば。
「ふふ、とりもできるよ」
 ぱたぱたと翼を羽ばたかせた鳥を、うんと背伸びして。オズは白の空へと解き放つ。
 そんな自由に飛ぶ鳥を見守り、目を細めて。
 綾華は、今はその無邪気さに優しさに甘えるばかりだと、そう思いつつ。
 思い出すのは、頼もしいその背。
 それは何故か、きゅっと少しだけ……苦しかった。
(「ただ笑っていてほしいと思うのに」)
 ――あんな顔をさせたのは自分。
 そんな矛盾に、綾華は自嘲するけれど……今は、感謝だけ。
「オズ、ありがとうな」
 炎に照る友の横顔に、そう告げれば。
「どういたしましてっ」
 すぐに返ってくるのは――ぱっと咲いた、笑顔。
 そして綾華は、祭壇に揺らめく幾つもの願いの灯火に。
 自分の分をひとつ、加えた。
 ――もっとつよくなり、大切な友人の光を穢さない自分であれるように。
 そう、祈りを馳せる。
 そしてオズも、祈りはよくわからないけど。
(「これからもたくさん、アヤカの笑顔が見られたらいいな」)
 お願いごとは――きっとこれからも、ずっと、変わらない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

東雲・円月
双子の姉の咲夜(f00865)と共に

リザさん、守れてよかったな
さて、俺はお腹が減ったから何か持ってくるよ

咲夜も疲れただろ。休んでるといい
何かほしいものはあるかい?
木陰に座って二人で食べよう

ソーセージとチーズを持ってきたよ
それからこれ、ホットミルク。蜂蜜をたっぷり入れて貰った

んんー、美味しいじゃないか。やっぱり運動の後は食事だな
咲夜は何のために戦うのか、ちゃんと考えてるのかい?
今回みたいに、誰かを守るとか……

俺は咲夜のため以外に戦う気にならないんだよね
咲夜がやりたいことを応援するのが俺の戦いだ

(……だから、あの幻が本当だったとしても、俺は……)

……ん、疲れたのか。いいよ、ゆっくりおやすみ、咲夜


東雲・咲夜
双子のえっくん(f00841)と

…彼女の心中を想うと心配ではあるけれど

うちは大丈夫
好きなもの、たんと取っておいでね

森であないな幻影を見たせいか
疲れてしもたみたい
ぼんやりキャンドルの灯りを見つめ物思い
…えっくんがうちを選んでくれはるなら
あのまま儚くなっても、うちは――…

あ…おかえりやす
うちが蜂蜜大好きなの知っとったから
たんと入れてもろたんやね
おおきになぁ

何の為に…?
うちはただ、巫女として生まれたからには
この力を必要としてはる誰かの為に使いたい、かな
自分では如何にも出来ひん事に苦しむ人達を救いたいの

ホットミルクのおかげで
なんや眠くなってしもた
えっくんが何や話してくれはるのに
堪忍よ…(こてり凭れる)



 この世界を支配している、夜と闇の漆黒に抗うかのように。
 人びとの手で灯された、幾つものキャンドルの炎。
 その仄かな輝きを眺めながら。
 ……彼女の心中を想うと、心配ではあるけれど。
「リザさん、守れてよかったな」
 円月の声に、咲夜はこくりと頷いてから。
「さて、俺はお腹が減ったから何か持ってくるよ。咲夜も疲れただろ。休んでるといい」
 ――何かほしいものはあるかい?
 そう尋ねる彼に、桜銀糸の柔らかな髪をふるり揺らしながら、笑んで返す。
「うちは大丈夫。好きなもの、たんと取っておいでね」
 そして円月の後姿を見つめつつ。ふっとひとつ、咲夜は息をつく。
(「森であないな幻影を見たせいか、疲れてしもたみたい」)
 ゆらり揺らめくキャンドルの灯火をその藍眸に映し、物思いに耽れば――思い出すのは、大きくて逞しい腕の感触と。
 耳元で囁かれた言葉――。
(「……えっくんがうちを選んでくれはるなら。あのまま儚くなっても、うちは――……」)
 ……刹那、吹いた一陣の風に、眼前の森がざわりと不気味に葉音を鳴らす。
 でも――はっと、すぐにその顔を上げ、我に返って。
「あ……おかえりやす」
「ソーセージとチーズを持ってきたよ」
 すぐ目の前で自分を映している藍の瞳に、咲夜は気付く。
 円月は隣に座りながら、そんな咲夜に、もうひとつ。
「それからこれ、ホットミルク。蜂蜜をたっぷり入れて貰った」
「うちが蜂蜜大好きなの知っとったから、たんと入れてもろたんやね」
 受け取れば、ふわり湯気が立ち上る温かさと。優しい白に溶けた、甘いいろ。
 おおきになぁ、と笑んで、ひとくち飲んでみれば……口いっぱいに、温もりと甘さが広がる。
 そんな咲夜に瞳を細めた後、円月もソーセージを頬張って。
「んんー、美味しいじゃないか。やっぱり運動の後は食事だな」
 一一仕事の後の食べ物はまた、格別。
 それからふと、円月は咲夜にこう問う。
「咲夜は何のために戦うのか、ちゃんと考えてるのかい? 今回みたいに、誰かを守るとか……」
「何の為に……?」
 投げられた言の葉に、咲夜は小さく首を傾けるも。
「うちはただ、巫女として生まれたからには、この力を必要としてはる誰かの為に使いたい、かな」
 ――自分では如何にも出来ひん事に苦しむ人達を救いたいの。
 そう、隣の円月を見つめ、返して。
 咲夜の言葉を聞いた円月は、自分は何のために戦うのか。
 それを迷うことなく、彼女に告げる。
「俺は咲夜のため以外に戦う気にならないんだよね」
 咲夜がやりたいことを応援するのが俺の戦いだ――と。
 ……だから。
(「……あの幻が本当だったとしても、俺は……」)
 ふと見上げるのは――漆黒の闇に紛れるかのように静かな、霧深い森。
 でもすぐに、ふと感じた重みに視線を向けて。
「……ホットミルクのおかげで、なんや眠くなってしもた……」
 えっくんが何や話してくれはるのに堪忍よ……と。
 こてり、円月の大きな胸に凭れる咲夜。
「……ん、疲れたのか」
 いいよ、ゆっくりおやすみ、咲夜――と。
 円月は凭れてかかってきたその身体を、そっと受け止めて。
 混ざる体温を感じながら、少し乱れた桜銀糸の髪を、整えるように撫でてあげたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

篝・倫太郎
リカ(f03365)と
湿っぽいのは苦手だしよ……

何より焼きたてのパンとか言われたらそっち待つだろ
蜂蜜パン!めっちゃ気になるだろーハズせねぇだろー

やかましいわ!

ガキ扱いするリカの口に問答無用で蜂蜜パンを捻じ込み

ふふーん、ガキじゃねぇから蜂蜜酒呑んじまうもんねー
んっま!ツマミの肉もチーズも美味い!

へいへい、お前が成人したら最初の一杯は奢ってやっから
あと数年はこいつで我慢しとけー(蜂蜜ミルクを押し付け)

そそ、程々大事ってな

何がわか……
あー……そこか。そこ気になってたのかよ
そゆお前はあれだろ?お袋さんだろ?
何にせよ、良いじゃねぇか
無事に越えたんだしよ?

補足
大喰らいだが、適量にセーブして
場の空気を楽しむ


百合根・理嘉
りんたろ(f07291)と
あーあ……パン好き全開だなぁ……

蜂蜜パンにわくわくしてるりんたろの様子にまったくーと笑う
普段は兄貴分つー感じだけども
こーゆー時は俺よりもガキ……

んぶっ!(もぐもぐ)
口に捻じ込むなよ……

つーか、後数年じゃねぇか、オボエテロヨ……

大人しく蜂蜜入りのミルクを飲みつつ
チーズと蜂蜜を盛ったパンをもぐもぐ

肉にチーズも美味いけども、ホドホドに!
恩恵あるつっても、ご馳走になり過ぎんのは落ち着かねぇもんよ
りんたろも大食いなくせにそゆトコはちゃんとしてんだよなぁ

あ……なんか分った
あれだ。殺しに来たの、あれだ……ししょーだ!
な?な?そーだろ?

りんたろとわいのわいの言いつつ過ごす



 漆黒の闇に灯るのは、柔くあたたかなキャンドルの光。
 湿っぽいのは苦手だし。何より焼きたてのパンと聞けば、自然と心躍るのは当然。
「蜂蜜パン! めっちゃ気になるだろーハズせねぇだろー」
「あーあ……パン好き全開だなぁ……」
 蜂蜜パンにわくわくしている隣の倫太郎を見て、まったくーと笑う理嘉。
「普段は兄貴分つー感じだけども、こーゆー時は俺よりもガキ……」
「やかましいわ!」
「……んぶっ!」
 刹那、倫太郎が理嘉の口に問答無用で捻じ込んだのは、蜂蜜パン!
 それをもぐもぐと何とか食べてから。
 口に捻じ込むなよ……と理嘉の抗議の視線。
 でもそんな理嘉に、ふふーん、と。
「ガキじゃねぇから蜂蜜酒呑んじまうもんねー。んっま! ツマミの肉もチーズも美味い!」
 倫太郎がどや顔で飲むのは、蜂蜜酒!
 お酒は勿論、大人になってから。
「つーか、後数年じゃねぇか、オボエテロヨ……」
「へいへい、お前が成人したら最初の一杯は奢ってやっから、あと数年はこいつで我慢しとけー」
 そう、蜂蜜ミルクを押し付ける倫太郎から素直に受け取って。
 大人しくコク深い甘さが混ざったミルクを飲みつつ、チーズと蜂蜜を盛ったパンをもぐもぐと口に運ぶ理嘉。
「肉にチーズも美味いけども、ホドホドに!」
 恩恵あるといってもやはり、ご馳走になり過ぎるのは落ち着かないから。
 でもそれは、倫太郎も同じ。
「そそ、程々大事ってな」
 大喰らいだけど、適量にきちんとセーブして、場の空気を楽しんでいる彼に。
「りんたろも大食いなくせにそゆトコはちゃんとしてんだよなぁ」
 理嘉はそう感心したようにぽつり呟くけれど。
 ふと、あ……なんか分った、と。
 閃いた様に、改めて倫太郎へと視線を向けて言った。
「あれだ。殺しに来たの、あれだ……ししょーだ! な? な? そーだろ?」
「あー……そこか。そこ気になってたのかよ」
 そゆお前はあれだろ? お袋さんだろ? と。
 ずいっと前のめりに聞いてきた理嘉に、倫太郎もそう返して。
「何にせよ、良いじゃねぇか。無事に越えたんだしよ?」
 そう、琥珀色の瞳を細める。
 そしてそれからも……ふたりでわいのわいのと言いつつ。
 美味しくて楽しい時間を過ごすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マリス・ステラ
祭壇にキャンドルを灯すと、

「主よ、憐れみたまえ」

『祈り』を捧げる
刹那、世界が花霞に染まる
真の姿を解放して祈り続けます

リザの想いは成就して、村には束の間の平和が訪れた

――そう、束の間です

世界の闇はまだ深く、覆われた雲は未だ厚い
バジリスクは討ちましたが、彼は"ヴァーミリオン一族"に連なる者だという
氏族を討たれてそのままとは恐らく難しいでしょう

「これからどうするつもりですか?」

私はあなたを赦すと言いました
射し込む月明かりを受けて、聚楽第の翼が"音もなく"広がる

「祈りと願いが届くことを、あなたはもう知っているはずです」

もしもの時は呼んで下さい
私だけではありません
"私たち"はお節介なのです
私は微笑んだ



 人々の願いの数だけ、夜と闇の漆黒に揺らめき輝く炎。
 そして教会の祭壇に灯る炎が、またひとつ。
「主よ、憐れみたまえ」
 祈りとともに、捧げられれば。
 刹那――世界を染めるのは、一面の花霞。
 星の煌めきが満ち、漆黒に映える薄紅の華が咲き乱れる。
 真の姿を解放し、祈り続けるマリス。
 愛する人の仇討ちを、心から願っていた花嫁。
 そしてその想いは、猟兵達の助力によって成し遂げられたけれど。
(「リザの想いは成就して、村には束の間の平和が訪れた――そう、束の間です」)
 ――世界の闇はまだ深く、覆われた雲は未だ厚い。
 この地に圧政を敷いていたバジリスク・ヴァーミリオンを討つことはできたけれど。
(「彼は"ヴァーミリオン一族"に連なる者だという。氏族を討たれてそのままとは恐らく難しいでしょう」)
 そう、この世界はいつだって、ヴァンパイアの支配の恐怖が付き纏う。
 たとえ1体倒しても……また、別のヴァンパイアのターゲットになる可能性も高い。
 ――けれども。
「これからどうするつもりですか?」
 祈りを捧げていたマリスは、星宿すその瞳に、ひとりの少女の姿を映す。
 そして、碧色の瞳で自分を見つめ返す少女・リザに、星が転がるような響きを湛える声で紡ぐ。
 ――私はあなたを赦すと言いました。
 瞬間、差し込む月光に照らされながら。"音もなく"広がる、聚楽第の翼。
「これから……生きていく覚悟を、決めたわ」
 その手を血で染める覚悟を決めた花嫁は、今度は、この世界で生きていくと。
 そう、誓う様に言葉を紡いで。
 マリスはそんな彼女に、慈しみ溢れた視線を向け、告げる。
「祈りと願いが届くことを、あなたはもう知っているはずです」
 もしもの時は呼んで下さい――と。
 そして、小さく笑み返すリザに、こう言の葉を続ける。
「私だけではありません。"私たち"はお節介なのです」
 星の様に眩く、華のように美しく、月のように柔い――その微笑みと共に。

大成功 🔵​🔵​🔵​

榎木・葵桜
教会で
祭壇に飾られたキャンドルを眺めながら静かに過ごすよ
普段は解放されてない場所って聞いたら一度は見ておきたいなって思ったんで
広場の食事は教会へ行く前にいただくね

森の脅威と森の恩恵は表裏一体…かぁ

ということは、私の見たあの幻も
私にとって何かの恵みになるのかな
(思い出すのは『霧幻の森』で見た幻の男の子
改めて自分の記憶を辿ってみても誰だったのかはやっぱりわからなくて)

…ごめんね
忘れ去られちゃったら、誰だって怒るよね
(ぽつ、と零れたのは、男の子への謝罪の言葉
自分の言葉に苦笑するも)

でも、思い出せるように頑張るから
今は覚えていないし思い出せていないけど
いつか思い出して、ちゃんとごめんねって言えるように



 賑やかな広場での食事も、皆幸せそうで楽しかったけれども。
(「普段は解放されてない場所って聞いたら一度は見ておきたいなって」)
 食事を終わらせた葵桜が足を運んだのは、教会。
 人々の祈りが込められた、仄かに揺れるキャンドルの灯火を眺めながら。
 静かに、このひとときを過ごす。
「森の脅威と森の恩恵は表裏一体……かぁ」
 窓の外をふと見れば、夜の闇に紛れる様に昏い漆黒を纏う『霧幻の森』。
 霧深い森は人々に脅威を齎すとともに、恩恵も与えてくれている。
 先程振舞われ口にした美味しい食べ物や飲み物は、森が与えてくれたものも多いのである。
 葵桜は藍色の瞳を、キャンドルの炎の彩に仄かに染めながらも。
(「ということは、私の見たあの幻も、私にとって何かの恵みになるのかな」)
 脳裏に蘇るその姿は――『霧幻の森』で見た、幻影の男の子。
 見覚えのない子だと……そう、思ったのだけれども。
 自分のことを明らかに知っている、男の子のあの言動。
 改めて、葵桜は自分の記憶を辿ってみるけれど。
 やっぱり――誰だったのかは、分からなくて。
「……ごめんね」
 ぽつりと零れ落ちたのは、彼への謝罪の言葉。
 忘れ去られちゃったら、誰だって怒るよね……と。
 そして、自分の言葉に、思わず苦笑してしまうけれど。
 漆黒を照らす数多のキャンドルの炎に、葵桜は誓うように約束するのだった。
(「でも、思い出せるように頑張るから」)
 今は覚えていないし、思い出せていないけれど。
 でも……きっと、必ず。
 ごめんねって――いつか思い出して、ちゃんと言えるように、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴォルフガング・ディーツェ
リザを見つけたら【医術】知識を活用して煎じた精神安定や導眠効果のある薬草を渡そう

…辛いとき、頼ると良い

その後は清史郎を探そうか
何となく教会にいるかなと当たりを付けつつ…や、久しぶり
今回もお疲れ様、少しは休めた?辛かったら背負うよ…ふふ、なんてね
こんな静謐な場所だもの、弁えてるよ

…オレさ、戦いは好きだし殺す事も躊躇わない
けれど、戦わなくて良い運命だったら…普通に暮らして朽ちていったとも思うんだ

だから、無垢な手で生きる道があったリザには、平穏を選んで貰いたかった
でも、同じ手を汚す復讐を選んだ身としては…気持ちも分かる

…難しいね、本当に
せめてこの灯りの様に、輝かしい未来があれば良いけれどな…



 炎に照らされた少女の横顔は、凛とした美しさもあり……どこか、憂いを帯びてもいて。
 その手で望む仇討ちを果たしたとはいえ、その心はそう簡単に晴れるわけではないだろう。
 むしろ、これから色々なものを背負いながら、彼女は生きていくのかもしれない。
「……辛いとき、頼ると良い」
 そうリザに渡されたのは、ヴォルフガングが煎じた薬草。
 医術知識を活用し、彼女のために作ったそれは、精神安定や導眠効果があるという。
 そして、ありがとう、と小さく笑み、礼を言ったリザと分かれて。
 何となく教会にいるかなと、そう当たりを付けつつ……ヴォルフガングが探す相手は。
「……や、久しぶり。今回もお疲れ様、少しは休めた? 辛かったら背負うよ……ふふ、なんてね」
「むしろ俺よりも、戦場に赴いた皆の方が辛かっただろう。改めて、依頼を成してくれて有難う」
 ヴォルフガングの思った通り、教会にいた清史郎であった。
 シンと静寂と神聖なる空気が満ちる、静謐な場所。
 場は確りと弁えながらも、ヴォルフガングはキャンドルの炎灯る中、言の葉を紡ぐ。
「……オレさ、戦いは好きだし殺す事も躊躇わない。けれど、戦わなくて良い運命だったら……普通に暮らして朽ちていったとも思うんだ」
 清史郎は微かに蒼揺蕩うその赤の瞳を、ふとヴォルフガングに向けるも。
 静かに、紡がれる言の葉に耳を傾けている。
 そんな彼の様子を見てから。こう、ヴォルフガングは続けたのだった。
「だから、無垢な手で生きる道があったリザには、平穏を選んで貰いたかった。でも、同じ手を汚す復讐を選んだ身としては……気持ちも分かる」
 ……難しいね、本当に、と。
 清史郎は柔く瞳を細め、そして口を開く。
「俺たち猟兵は各世界を渡り、様々な世界を知ることができるが……リザにとっては、この世界が全てだ。彼女は誰に言われたわけでもなく、自ら選択し覚悟を決めた。思う事はあるが……それを俺は、尊重したいと思っている」
 夜と闇に覆われた、ダークセイヴァー。
 此処はオブリビオンに既に支配されている、絶望の世界。
 この地に圧政を敷いていたヴァンパイア、バジリスク・ヴァーミリオンは打ち倒したけれど。
 この平和は、瞬きほどのほんの一瞬に過ぎないかもしれない。
 でも……リザは、この地でこれからも生きていかなければならないのだから。
 ヴォルフガングは清史郎に頷きながらも、ふと祭壇へと炎の灯火の如き赤の瞳を向けて。
「せめてこの灯りの様に、輝かしい未来があれば良いけれどな……」
 漆黒の闇に抗うように光を放つ炎に、そう未来を馳せるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィリオ・グラースラム
にゃ?騎士として当然のことをしただけで
お礼を頂くわけには参りませんの

なので、フィオもお料理をだしたり
飲み物を注いだり、色々お手伝いいたしますのよ
重たいものでも、フィオには雪ちゃんがおりますもの
お任せくださいませ!

リザ様が元気がないのが気になりますけれど
フィオはこういう時に、何を申し上げていいか分かりませんの…

とりあえず、はちみつミルクを持って行ってみますのよ
元気がない時は美味しいものを食べたり飲んだりすると
フィオは元気が出ますの
あ、でも…大人の人はお酒の方が、お好きですかしら

リザ様が、何かを口にして美味しい、と
そう言っていただけたら、フィオはとっても嬉しいんですのよ



 ――これまで圧政を敷いていたヴァンパイアが倒れ、リザが無事に帰ってきた。
 その報せで湧く村人たちにとって、当然、それを成した猟兵たちは英雄で。
 精一杯のお持て成しをと、宴の準備を始めていたけれど。
「にゃ? 騎士として当然のことをしただけで、お礼を頂くわけには参りませんの」
 騎士であるフィリオにとって、それは当然のこと。
 だからお礼を貰うわけにはいかないと……お手伝いをすることに。
 料理をだしたり、飲み物を注いだり。
 重たいものを運ぶのだって、大丈夫!
「お任せくださいませ!」
 だって、フィリオには雪ちゃんがいるから。
 ふわふわな真白の毛並みを戦がせながら、あっちにこっちに、雪ちゃんと共に準備して回るフィリオ。
 そんな中で――双方彩りの異なる円らな瞳に映ったのは、フィリオが気になっていた人物。
 広場へとやって来たその人物・リザは、心なしか元気がない。
 いや、それも当然であろう。彼女にとって、目まぐるしすぎる数日であっただろうし。
 これまでずっと気を張っていたのだ、疲労感も一気に押し寄せたのではなかろうか。
 そんな、リザに元気がないということは、分かっても。
「フィオはこういう時に、何を申し上げていいか分かりませんの……」
 大きく首を傾け、暫し考えるフィリオ。
 そしてきょろきょろ周囲を見回し、目に入ったもの――蜂蜜蕩けるミルクを、リザへと持って行ってみる。
 周囲を見て、大人の人だったら蜂蜜酒の方がお好きですかしら、なんて思いつつも。
「元気がない時は美味しいものを食べたり飲んだりすると、フィオは元気が出ますの」
「……そうね、ありがとう」
 リザは、フィリオが差し出したハニーミルクを受け取って。
 食欲はやはりまだあまりないようだが、これなら……と。
 そっとひとくち、飲んでみれば――美味しい、と声を漏らす。
 その言葉に、ぱっと表情を輝かせるフィリオ。
 だって、リザにそう言って貰えて――とっても嬉しかったから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルノルト・ブルーメ
教会の祭壇に灯火を捧げたら
食事を頂こう

と言っても、僕の場合は蜂蜜酒一辺倒なんだけれど……
チーズとソーセージを酒の肴にのんびりと
村の人々の様子や食事を楽しむ猟兵の皆の様子を眺めて飲もう

リザが訪れるようなら、声は掛けずに見守っておく
大切なものをうしなう痛みと悲しみ
それを知っていたとしても
それは僕のものであって彼女のものではないし
彼女のそれはやはり僕のそれとは異なるだろうから

ただ、生きて戻ったこれからの時間を
無為に生きるのではなく
少しずつでも、前を向けるようになってくれるといいとは思う

これもまた、僕の勝手な願いなのだけれど
大切なものをうしなった現実と歩めるようになるには
どうしても時間が必要だから……



 教会の中に溢れるその光は、捧げられた想い宿す炎。
 アルノルトも仄かな彩で飾られた祭壇に、灯火を捧げてから。
 賑やかな村の広場で、振舞われている食事をいただく。
(「と言っても、僕の場合は蜂蜜酒一辺倒なんだけれど……」)
 仄かに香る甘さとは裏腹に、きりっとした少し大人な味わい。
 チーズとソーセージがまた、酒の肴に良く合っていて。
 のんびりと晩酌を楽しむアルノルト。
 そして、チーズやソーセージなどの美味しいものも勿論なのだけれど。
 村の人々の様子や猟兵の皆の食事を楽しむその姿を眺めるのも、とても良い肴だ。
 それからふとアルノルトは、柔い緑の瞳に映った少女に視線を止めるけれど。
 その少女……リザには声は掛けず、見守るに留めておく。
 ――大切なものをうしなう痛みと悲しみ。
 たとえ、それを知っていたとしても。
(「それは僕のものであって、彼女のものではないし。彼女のそれはやはり、僕のそれとは異なるだろうから」)
 だから、気持ちが分かるなどという声を簡単には掛けられないと、アルノルトはそう思うけれども。
 でも、敢えて声は掛けなくても。
(「ただ、生きて戻ったこれからの時間を無為に生きるのではなく。少しずつでも、前を向けるようになってくれるといいとは思う」)
 これもまた、僕の勝手な願いなのだけれど、と。
 リザが前を向いて未来を歩んで欲しいと、そっと眼前で揺れるキャンドルの炎に、そう祈る。
 そしてくいっと、蜂蜜酒を口に運びながら。
 微かに笑めるようになっている彼女の表情を見て、少し安堵しながらも。
 そっとリザを映すその瞳を、優しく細めるのだった。
 大切なものをうしなった現実と歩めるようになるには、どうしても時間が必要だから……と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

加賀宮・識
村の皆に少しでも笑顔が戻って良かった。


宴中の村の中を歩いていれば
教会に辿り着いた
中に入る前に渡されたキャンドルに火を灯し、祭壇に飾り
静かに腰かけ深く息を吐く

幻でも会ってしまえば
蓋をしていた想いが甦る
切なくて
苦しくて
自分が独りだと
思い知らされる

祭壇に並んだ灯火を見つめ
思う

師匠、私はまだ駄目だ
…きつい…

強く、なりたいよ
ノイズ義兄さん…

(アドリブ、絡み大歓迎です)



 大きな紫の瞳に映るのは、大好きな月の光と混ざり合う仄かな炎の輝きと。
 その灯火に照らされ楽しそうに食事を楽しむ、村人や猟兵たちの姿。
(「村の皆に少しでも笑顔が戻って良かった」)
 どのくらいヴァンパイアに虐げられてきたのかは分からないけれど。
 ヴァンパイア討伐と花嫁の帰還という報せは、昏い影を落とすこの世界の村に笑顔を取り戻していて。
 それを成してくれた猟兵たちに、リザをはじめ、村人たちは心から感謝をしている。
 そんなひとときの平和で満ちる、宴中の村を歩いていた識は。
 ふと……教会に辿り着いて。
 渡されたキャンドルに火を灯し、既に沢山炎揺らめいている祭壇にまたひとつ、灯火を飾った。
 それから識は、教会の長椅子に腰掛けると……深く、息を吐く。
 ――幻でも、会ってしまえば。蓋をしていた想いが甦る……。
 そして、いやでも思い知らされてしまう。
 ……切なくて
 ……苦しくて。
 ……自分が、独りだということを。
 祭壇に灯されたキャンドルの炎。この輝きに込められた、皆の願い。
 そんな数多の灯火を見つめながら、識は思う。
(「師匠、私はまだ駄目だ」)
 ……きつい……。
 その黒髪と青の瞳を思い出すと、胸が切なさできゅっと痛んで。
 会いたくて、でももう会えないのは分かっているのに――会いたい。
 どうしても、そう願ってしまう自分に。
 識はゆらり揺らめく炎の色を、その紫の瞳にも灯しながら。
「強く、なりたいよ。ノイズ義兄さん……」
 そう、ぽつりと。炎に照らされた空に溶けるような呟きを、零したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィオリーナ・フォルトナータ
キャンドルに火を灯し、教会の祭壇に捧げます
その後は椅子に…お邪魔にならないよう端の方に腰を下ろし
静かに祈りましょう
リザ様がお見えになられましたら、お声をかけさせて頂ければと

リザ様、お加減はいかがですか?
長椅子に座るよう勧めて、少しだけお話を

…わたくしも、敬愛する主様を理不尽な運命に奪われました
彼の方を守るべき立場でありながら、お守りすることが出来ませんでした
ですが、主様は最期に生きろと、生きて世界を知りなさいと
わたくしに命じられました

これはわたくしの我儘、ですけれど
どうしても貴女の力になりたかったのです
貴女に、生きて欲しかったのです

…もし良ければ
貴女の愛する方のお話を、聞かせては下さいませんか



 空色の瞳に映り揺らめくのは、人々の願いを灯した沢山の炎。
 もうひとつそれに、自らが灯した光も加えて。
 フィオリーナも祭壇に祈りを捧げる。
 そして夜と闇の漆黒へと、炎の彩に仄かに染まったオールドローズを躍らせて。
 教会の端の椅子に座り、そして静かに待つ……ひとりの少女のことを。
 ほどなくして、金色の髪をそっと揺らしながら。
 祭壇へと祈りを捧げ終えた彼女――リザに、フィオリーナは声を掛けた。
「リザ様、お加減はいかがですか?」
「さすがに疲れていたけれど……少し休んだから、随分良くなったわ」
 そう答えたリザに、よろしければ少しだけお話しませんか、と。
 フィオリーナは自分が座っている長椅子の隣を彼女に勧めて。
 素直に隣に座ったリザに……過去のことを、語り始める。
「……わたくしも、敬愛する主様を理不尽な運命に奪われました。彼の方を守るべき立場でありながら、お守りすることが出来ませんでした」
 瞼の裏に今でも残るその色は、あの時の戦火覆う街の光景。
 そして耳に響く声が告げた言葉。
「ですが、主様は最期に生きろと、生きて世界を知りなさいと。わたくしに命じられました」
「……生きろ……」
 そうぽつりと呟いたリザに、フィオリーナは柔らかく笑んで頷いて。
 そっと、彼女の手を取ると。真っ直ぐな眼差しを向け、続けた。
「これはわたくしの我儘、ですけれど。どうしても貴女の力になりたかったのです」
 貴女に、生きて欲しかったのです――と。
 そんなフィオリーナの手を遠慮気味に、握り返して。
 リザは微かに笑んで返しながらも、口を開く。
「貴女たちのおかげで、私はちゃんと、今も生きているわ」
 その碧色の瞳は、どこか寂しそうな色を湛えてはいるけれど。
 同時に宿っているのは、生きる覚悟を決めた、意思の光。
 そんなリザの様子に、フィオリーナはそっと安堵しながらも。
「……もし良ければ、貴女の愛する方のお話を、聞かせては下さいませんか」
「ええ。彼は私と幼馴染で……いつも一緒にいたわ。それで、彼はね……」
 懐かしむように、ひとつずつ噛みしめながら。
 キャンドルの灯火揺れる中……愛する彼のことを話し始めるリザに。
 フィオリーナは見守るように空色の瞳を細めながら。
 暫しそんな彼女の声に、耳を傾けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

輝夜・星灯
七結(f00421)と

蜂蜜酒か…昔を思うとご相伴に与りたいのだけど、登録年齢的にまだ禁止されているんだよね…
では、ハニーミルクをふたつ頂いてこようか
灯りひとつに照らされた、紫水晶の横顔に想いを馳せて

七結の手を引いて、二人で宴を楽しもう
食事を摘んで、愛くしい灯を慈しもう
どこでもお供するつもりだけど、教会に行くなら少し外で待とうかな。…宗教違いは良くないからね
さぁ、宵居のままに。

――リザは、どうしているかな。もし見かけたら。
お疲れ様、と労いの言葉だけなら、かけても負担にならないかな?
……柘榴石は、君の瞳のような碧色の石と、月の石と合わせるとね。
「遠く離れた二人の絆を確かめる」力があるそうだよ――


蘭・七結
セーラさん/f07903と

お酒はハタチから、だったかしら
この姿では、いただけないものね
ナユも。蜂蜜を蕩かしたミルクをいただきましょう
あなたのエスコートだなんて、うれしいわ
彼女の手に、しろい指先を重ねて

幻想的で、とても美しい場所。だけれど
ナユも。外から眺めていようかしら
美しい光景を眺め、祈りをひとつ
ナユだけの時間だなんて、勿体ない
あなたと共に過ごす時間だもの
ふたりで、時を刻みたいわ

無垢なる白……リザと出会ったのなら
ナユも、彼女に『お疲れさま』と伝えたいわ

柘榴の石には、そのような力があるのね
思い耽るのは、ナユと〝あなた〟とを結ぶ絆
断ち切れぬように、繋いだ赤い鎖
褪せた柘榴石の指輪を、ぎゅうと握りしめ



 キャンドル灯る広場で振舞われるのは、美味しい食事や飲み物。
 特に、特産品であるという蜂蜜は、コクがあり美味しいと村の人のお墨付きで。
 甘い香りは残るがきりっとした味わいの蜂蜜酒は、とても魅力的なのだけれど。
「蜂蜜酒か……昔を思うとご相伴に与りたいのだけど、今のこの姿の年齢だとまだ禁止されているんだよね……」
「お酒はハタチから、だったかしら。この姿では、いただけないものね」
 星灯と七結は、現在の外見年齢にちゃんと従って。
 白いミルクにとろりと甘い琥珀のいろが蕩けたハニーミルクをふたつ、貰ってくる。
 そして、濃厚なその甘さと美味しさを確りと堪能してから。
 星灯は、ゆらり揺れるキャンドルの炎に照らされた紫水晶の美しい横顔を、ビー玉を転がしたその瞳に映し、想いを馳せて。
 七結へと、その手を伸ばせば。
「あなたのエスコートだなんて、うれしいわ」
 差し出された手に重ねられる、しろい指先。
 手を引き、手を引かれ、食事を摘んで、愛くしい灯を慈しむ。
 そんな宴のひとときを、二人一緒に楽しんで。
 そして気付けば……眼前には、願いのこもった仄かな輝きが満ちる教会。
 ……だけれども。
「どこでもお供するつもりだけど、教会に行くなら少し外で待とうかな」
「ナユも。外から眺めていようかしら。ナユだけの時間だなんて、勿体ない。あなたと共に過ごす時間だもの」
 ――ふたりで、時を刻みたいわ。
 敢えて中には入らずに。
 そう、漆黒の闇に耀い照らし出されるその美しい光景を、一緒に眺める。
 そしてふたりは、教会から出てきた少女を見つけて。
 お疲れさま――そう、労いの言葉を。
 その声に、無垢なる白……リザは、碧色の瞳を細めて。ありがとう、と礼を紡ぐ。
 そんな彼女の負担にならぬよう配慮しながらも。
 星灯は、こうも続ける。
「……柘榴石は、君の瞳のような碧色の石と、月の石と合わせるとね。遠く離れた二人の絆を確かめる力があるそうだよ――」
「遠く離れた二人の、絆……」
 リザは月の如き髪をそっと掻き上げ、碧石のような瞳で二人を見つめて。
「柘榴の石には、そのような力があるのね」
 そう零し七結が思い耽るのは――自分と〝あなた〟とを結ぶ絆。
 断ち切れぬように、繋いだ赤い鎖。
 そして七結は、ぎゅうと握りしめる。
 褪せた柘榴石が嵌められた――密やかに閃く円環を。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リル・ルリ
■櫻宵(f02768
アドリブ等歓迎

宴の隅
儚い灯火に照らされて小さく座る落ち込んだ櫻をみた
さよ、
そっと隣に座って君を見る
―潤んだ、瞳
櫻宵、大丈夫?
櫻宵、全部幻だよ
悪い夢だだから

思い出す
君を独り占めにした瞬間の
この首を君にあげた
あの

震える櫻の瞳に声に
淡く笑って、事実を隠す

幻は見たけど
君じゃなかったよ
だって櫻宵は僕を傷つけたりしないもの

はじめての嘘は僕だけの宝物

嗚呼すべては幻なんだ
安心させるように櫻宵を抱きしめて
いつもそうしてくれるように撫でる
熱い体温に火傷しそうだ

そうだよ
こうして一緒に生きるのが一番
僕の首は誰にもあげないから安心してよ
僕はずっとそばにいる
君に復讐なんてさせないように

ほら笑って
僕の櫻


誘名・櫻宵
🌸リル(f10762
アドリブ等歓迎


隅っこの方に座り
灯火をぼんやりみやる

殺してしまった

幻でも、
抗えなくて、
愛するあなたを

白を染める赤も
血の味のキスも
覚えてる
心が震えて、奮えた
――あたしはどうしようもない、クズね

あの子を殺すくらいなら自死するほうがよっぽど―
なのに
じわり、涙が滲む

リィも幻をみたの?
…違うわよね
あなたを殺したりなんてしてないわよね?
震える声で愛しい人魚をみる
いやよ
2度もだなんて

リィの優しい声に笑顔に抱擁に
そのまま身を預ける
冷たい体温が心地よい

ねぇ
あたしにあなたを殺させないで
あたしの前からいなくならないで
復讐じゃ足りなくなる

リィの首はいらないわ

こうして一緒にいられるのが
1番なんだから



 柔い桜の瞳に映るのは、夜と闇の世界に灯るキャンドルの炎と。
 霧深い森で視た、愛しい人の姿。
 ――殺してしまった。
 隅っこの方に座って、櫻宵はぼんやりと揺れる灯火を見遣る。
 ……幻でも、抗えなくて。
 真白を一瞬にして染め上げた、鮮烈な赤のいろ。
 その唇にスッと指で引いた、鮮やかな血のルージュ。
 そして――重ねた、血の味のキス。
(「……覚えてる。心が震えて、奮えた」)
 ――あたしはどうしようもない、クズね。
 あの子を殺すくらいなら自死するほうがよっぽど――。
 だけど……なのに。
 灯る炎も、その光に照らされた夜の光景も……隣にいる愛しい人魚の姿でさえ。
 刹那、じわりと滲んで、不安定に揺らめく。
 そして耳に響いたのは、美しく繊細な聞き慣れた声。
「櫻宵、大丈夫?」
 櫻宵、全部幻だよ。悪い夢だから――。
 そう紡いだリルに、櫻宵は震える声でこう問う。
「リィも幻をみたの?」
 ……違うわよね。あなたを殺したりなんてしてないわよね?
 いやよ、2度もだなんて……。
 見つめる花霞の瞳に宿るのは、願うような、おそれるような彩り。
 そんな瞳に見つめられながらも、リルは思い出す。
 向けられた、恋焦がれるような殺意。
 狂おしいほどに自分だけを見つめる、独り占めした熱い眼差し。
 羨ましいと心の奥でいつも嫉妬していた、全身で感じた熱。
 そして、この首を君にあげた、あの――。
「幻は見たけど、君じゃなかったよ」
 ……震える櫻の瞳に、声に。
 リルはそう答える。
「だって櫻宵は僕を傷つけたりしないもの」
 淡く笑って……事実を隠した。
 ――はじめての嘘は、僕だけの宝物。
 嗚呼すべては幻なんだ、と。
 リルは安心させるように、ふわり櫻宵を抱きしめて。
 いつもそうしてくれるように、そっと撫でてあげれば。
 櫻宵は響く優しい声に、笑顔に……抱擁に。
 そのまま、愛しい人魚へと身を預ければ。
 ――冷たい体温が心地よい。
 ――熱い体温に火傷しそうだ。
 じわりと染みて絡み混ざり合う、二人の熱。
 ねぇ、と櫻宵はぽつり、呟きを零して。
「あたしにあなたを殺させないで。あたしの前からいなくならないで。復讐じゃ足りなくなる」
 ――リィの首はいらないわ。
 だって……今みたいに。こうして一緒にいられることが、一番だから。
「そうだよ、こうして一緒に生きるのが一番」
 ――僕の首は誰にもあげないから安心してよ。
 櫻宵にそう優しく、リルは頷いて。 
「僕はずっとそばにいる。君に復讐なんてさせないように」
 ……だから。
 ぎゅっと、その身体を強く抱きしめて。
 重なり合う熱がほら、一緒にいる何よりの証拠。
 そして薄いその微笑みを隠し、リルが玲瓏たる銀細工を再び響かせれば。
 かかる吐息が、優しく櫻宵の耳を擽る――ほら笑って、僕の櫻……って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

真守・有栖
月明かりの届かぬ暗い納屋
藁の上にころんと寝転がって
蝋燭の灯りをぼんやりと眺めるわ

……私は駄目な狼だわ。駄狼よ

しょんぼりと尻尾を丸め、溜息
傍らに置かれた折れた薙刀を見やり

リザが仇討ちを為すための牙となる
その覚悟で挑んだはず、だったのに
……途中から完全に呑まれてたわ

己の為に刃を振るうか
彼女の為に牙を振るうか

せめて。どっちか片っぽにきっぱりと割り切るべきだった
中途半端とごっちゃになるのがいちばん良くないわ

狼にあるまじき振る舞いよ
目的は遂げた。けれども
……この狼たらくではリザに合わせる顔がないわ(わぅう

ぐぅう……と鳴るお腹を堪え
蝋燭の灯をそっと吹き消し

とっても月見の悪い夜
せめて、夢見は良いことを願って



 賑やかな食事の宴が開かれている広場でも、聖なる静寂で満ちている教会でもなく。
「……私は駄目な狼だわ。駄狼よ」
 有栖は、月明かりの届かぬ暗い納屋の藁の上に、ころんと寝転がっていた。
 その傍らには、仄かに灯ったキャンドルがひとつ。
 そんな蝋燭の炎をぼんやりと眺め、そして有栖が視線を映したのは――先の戦いで、折れた薙刀。
 ――リザが仇討ちを為すための牙となる。その覚悟で挑んだはず、だったのに。
(「……途中から完全に呑まれてたわ」)
 己の為に刃を振るうか、彼女の為に牙を振るうか。
 せめて、どちらかにきっぱりと割り切るべきだった、と。
 ごろんごろんと藁の上をもどかし気に転がりながら、ひとり反省会状態の有栖。
「中途半端とごっちゃになるのがいちばん良くないわ。狼にあるまじき振る舞いよ」
 とはいえ、ヴァンパイアを討つこともできたし。
 リザに、その手で仇討ちをさせてあげることもできた。
 そう、目的は確りと遂げたのだ。
 遂げたのだ、けれども。
「……この狼たらくではリザに合わせる顔がないわ」
 わぅううっと、有栖はその頭を抱える。
 同時に、ぐぅう……と鳴るお腹。
 おなかは空いたけれど、普段の根拠のない自信満々な様子もすっかり鳴りを潜めて。
 リザに合わせる顔もないし、呑まれた自分に自己嫌悪。
 そして有栖は、ふっと蝋燭の灯をそっと吹き消して。
 あっという間に暗闇が支配した納屋の藁の上で、ひとつ、大きなため息をつく。
 でも……そんな、とっても月見の悪い夜だけれど。
 吹き消したキャンドルに微かに残る炎の滓を見つつ、思うのだった。
 ――せめて、夢見は良いことを願って……と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鏡彌・サクラコ
【オクちゃんf10977と一緒】

好い結末になってなによりですねい!
戦闘時には仇討ちを成就させたいなどと言いつつ
まあ、先に倒しちゃったら仕方ないでしょうと
全力でやっつけてよかったようでいす

などということはリザさんには告げず
そっと見守りましょう
それより、温かいおもてなしの数々
遠慮せずにいただくのが礼儀でいす

はちみつたっぶりのパン!
さらにはちみつをかけてもいいでいすか?
いいですねい?

オクちゃんにも分けてあげましょう
はい、あーん


日隠・オク
サクラコさん(f09974
と!

なんとか戦うことが出来ました、キャンドルの灯りはとても心が、おだやかな気持ちになります…。

村の人のもてなし、ありがたくいただきますね。


はい、あー…ん、で、す(少し照れ



 このダークセイヴァーの世界は、夜と闇と絶望が支配する世界だというが。
 そんな漆黒に抗うかのように。
 仄かに照るのは、キャンドルに灯した沢山の炎。
 その揺れる灯りに込められるのは、人々の思いや願い。
 そんな幾つも揺れては燃ゆる炎を、緑色を湛える円らな瞳にも灯しながら。
「キャンドルの灯りはとても心が、おだやかな気持ちになります……」
 そう、美しい光景に暫し見惚れた後。
「なんとか戦うことが出来ました」
「好い結末になってなによりですねい!」
 先の戦いを振り返り、ほっとしたようにオクが呟けば。
 サクラコも大きく頷き、無事に依頼を完遂したことに笑む。
 そんなサクラコは、まるで目の前にある蜂蜜の様な金色の瞳で、ふと少し遠目に座っているひとりの少女の姿を映す。
 そして、そっと思うのだった。
(「戦闘時には仇討ちを成就させたいなどと言いましたが……まあ、先に倒しちゃったら仕方ないでしょうと、全力でやっつけてよかったようでいす」)
 だが勿論そんなことは、瞳に映る少女……リザには告げるつもりはなく。
 彼女に関しては、そっと見守るに留めておく。
 いや、それよりも。
 キャンドルの炎に照らされ、ずらりと並ぶ、温かいおもてなしの数々。
「村の人のもてなし、ありがたくいただきますね。遠慮せずにいただくのが礼儀でいす」
「とても美味しそうです」
 サクラコの言葉に、オクもこくりと頷きつつ。
 どれから食べようかと、そっと、きょろきょろ。
 そんな中、サクラコが目を付けたのは。
「はちみつたっぶりのパン! さらにはちみつをかけてもいいでいすか?」
 ……いいですねい? と。
 生地にもふんだんに蜂蜜が練り込んである甘いパンの上に、さらに濃厚でコクのある蜂蜜を追加で、とろーり。
 そんな、甘さを増した、はちみつたっぶりのパンの蜂蜜がけを。
「オクちゃんにも分けてあげましょう。はい、あーん」
 隣でまだ何を食べるか迷っていたオクに、あーんと差し出せば。
 少し照れながらも、ぱかっと口を開けて。
「はい、あー……ん、で、す」
 オクはお裾分けしてもらった蜂蜜パンをもぐもぐ。
 その一気に口に広がった濃厚な甘さに、思わず瞳を細めるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

氷條・雪那
リザ殿の事は少々気に掛かりますが
今は一人で気持ちの整理もつけたいでしょうし
私は敢えて、声は掛けないでおきましょう
慰めの言葉を掛けるには苦手ですし

私は村の方々の厚意を素直に受け取り
食事を楽しみましょう
故郷の味が一番馴染み深いのは確かですが
他の世界の食事も、それなりに口に合いますから

ソーセージやチーズをなどをおかずとして
パンをいくつか食べた後
一番楽しみにしていた蜂蜜……いえ、特産品を頂きましょう

会場に居た筧殿(f00502)には
蜂蜜酒を飲むのに一杯付き合って頂けませんかと声を掛けます
……いえ、甘い物に少々夢中になっていた姿を見られたのを
誤魔化そうとしているとか、そういうわけではなく
ただの味見です



 漆黒の闇に覆われた天に上るのは、キャンドルの炎と美味しい食事から立ちのぼる湯気。
 雪那は村人たちの厚意を素直に受け取り、食事を楽しむべく、広場へと足を運んでいた。
 確かに、リザのことも少々気にかかるけれども。
(「今は一人で気持ちの整理もつけたいでしょうし……慰めの言葉を掛けるのは苦手ですし」)
 敢えて雪那は、彼女には声は掛けないでおく。
 やはり、普段食べ慣れている故郷のものが馴染み深いのは、当然ではあるが。
「他の世界の食事も、それなりに口に合いますから」
 雪那が皿に取るのは、おかずになるソーセージやチーズ。
 それに、ほかほかの焼き立てパンを加えて。
 おなかも舌も、それなりに満たした後。
 ふと――何か物足りなそうに、そっと、きょろきょろ。
 その時だった。
「雪那、何かを探しているのか?」
 そう声を掛けてきたのは、偶然同じ様に食事を楽しんでいた清史郎。
「一番楽しみにしていた蜂蜜……いえ、特産品を頂こうかと」
「蜂蜜か。蜂蜜なら、あそこにあったな。蜂蜜酒も同じところにあるのではないだろうか」
 蜂蜜は甘くてとても美味だった、と、そう微笑む清史郎に。
 雪那はこう、声を掛けるのだった。
「蜂蜜酒を飲むのに一杯付き合って頂けませんか」 
 そして直ぐに、勿論、と返る承諾の声。
 ……いえ、甘い物に少々夢中になっていた姿を見られたのを誤魔化そうとしているとか。
 決して、決してそういうわけではなく。
「ただの味見です」
「……? 雪那?」
 清史郎はきょとんとしつつも、雪那の分も貰ってきた蜂蜜酒を手渡しながら。
 では乾杯、と、グラスを雅に天に掲げて。
 雪那も同じようにグラスを掲げた後、平然を装いつつも。
 青を帯びるその瞳に、甘い香りのする琥珀色をキラキラと映しながら――そっと、口に運んだのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月守・ユエ
アドリブ歓迎

果物をお皿に乗せてリザさんを探す

本人を見つけると
そーっと近づく

「やぁ、リザさん。…お顔、見れて安心した。
あの…よかったら一緒に食べない?」

そう声をかけながら彼女の隣へと歩み寄る

「…僕ね!歌を歌う仕事をしているの♪
今夜はね、よかったら
リザさんの為に一曲歌わせて頂けないかな?」

歌では彼女の涙や痛みは拭ってあげれないかもしれない
だけど、少しでもこの歌が慰みになればいいなって

己が歌うのは死者を送り
そして、今を生きるリザさんの心を少しでも癒せるように紡ぐ鎮魂歌

君と君の大切な人の魂が
どうか少しずつでも安らげますように
祈りを込めて

僕は歌と戦う事しかできないけれど
少しでも僕の歌が役に立てますように



 キャンドル灯るテーブルに並べられているのは、村の人たちが用意してくれた美味しい食事。
 その中でも、新鮮な果物をいくつか皿に乗せてから。
 ユエはふたつの月色の中に、探していた少女の姿を映して。
 そーっとその少女・リザへと歩み寄りながら、声を掛けた。
「やぁ、リザさん。……お顔、見れて安心した。あの……よかったら一緒に食べない?」
「ええ、喜んで。隣の席、丁度空いているから、どうぞ」
 ユエの誘いに、そっと小さく笑んですぐに応じるリザ。
 蜂蜜入りのホットミルクを口にしてばかりの彼女は、さすがにまだ食欲こそあまりないようだが。
 爽やかで食べやすい果実をひとつ勧めれば、有難うと受け取って一口齧る。
 そんな姿を見守り、ユエは微笑んでから。
「……僕ね! 歌を歌う仕事をしているの♪ 今夜はね、よかったらリザさんの為に一曲歌わせて頂けないかな?」
 そう、お願いを。
 リザは、私のために? と驚いたような表情を一瞬みせたが。
 それは是非聴かせて欲しいわ、とコクリ頷いて。
(「歌では彼女の涙や痛みは拭ってあげれないかもしれない。だけど、少しでもこの歌が慰みになればいいなって」)
 歌うのは……死者を送り、そして、今を生きるリザの心を少しでも癒せるように紡ぐ、鎮魂歌。
 ――君と君の大切な人の魂が、どうか少しずつでも安らげますように。
 夜と闇が支配する漆黒の天に、朧に霞む月。
 そんな降り注ぐ柔らかい月光と灯るキャンドルの炎、そして祈りを込めて鎮魂歌を歌うユエの声が、美しく重なり合って。
 隣で聞き惚れている少女の心を優しく揺さぶる。
 そして……ぽろりと、美しい歌声に己の心を照らし合わせたリザの瞳から一粒だけ雫が零れ落ちたのを、そっと見逃さずに。
 ――僕は歌と戦う事しかできないけれど、少しでも僕の歌が役に立てますように。
 そう、思いを乗せて。ユエはリザのために、月の下、旋律を紡いでいく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロト・ラトキエ
圧政からの解放。
身を差し出して村を救った娘の解放。
リザの心…は、今は知る由もありませんが。
いずれにせよこの村にとって、喜ぶべきことであるのには変わりない。
リザを守ろうとした様に、リザの心に添う方もいらっしゃるでしょう。
だから僕は、その姿を遠目に見るに留めて。
村の方々が日々、この為にと準備してきた宴席。
ご相伴に預かれるのなら、無碍にしちゃあバチが当たるってものです♪
…蜂蜜酒に興味を惹かれてるだけとか、そんなんじゃ無いですよ?
本当ですよ?

ま、とはいえ酒は嗜む程度。
リザの心は知る由も、知る所縁も無いですけれど。
これは彼女が守った景色で、皆さんが守った景色。
堪能しない方が、勿体無いというものですよね?



 夜と闇に覆われ、異端の神々が支配する絶望の世界。
 そんなこの世界の中でも……今、キャンドルの灯火に照らされた人々に宿るのは、笑顔。
 それは今だけの、刹那的なものなのかもしれないけれど。
(「圧政からの解放。身を差し出して村を救った娘の解放。リザの心……は、今は知る由もありませんが」)
 ――いずれにせよこの村にとって、喜ぶべきことであるのには変わりない。
 クロトは楽し気に催されている食事の宴を眺め、そう改めて感じながらも。
 柔和な青の瞳に映したのは、リザの姿。
 ……けれども。
(「リザを守ろうとした様に、リザの心に添う方もいらっしゃるでしょう」)
 だから、敢えて遠目から見守るに留めておく。
 それに何より。
「村の方々が日々、この為にと準備してきた宴席。ご相伴に預かれるのなら、無碍にしちゃあバチが当たるってものです♪」
 ……蜂蜜酒に興味を惹かれてるだけとか、そんなんじゃ無いですよ?
 ……本当ですよ?
 ま、とはいえ酒は嗜む程度だと――そう誰ともなしに呟きつつも、蜂蜜酒をばっちりいただくクロト。
 仄かに香る甘い香りを楽しんだ後、口に運べば、きりっとした大人の味わい。
 そんなお目当ての蜂蜜酒を存分に味わいながらも。
 もう一度、リザへと視線を向けてみるクロト。
 ……仇討ちを果たした少女の心は、知る由も知る所縁も無いけれど。
 キャンドルの炎に照らされ、浮かぶ笑顔をそっとクロトは見回して。
(「これは彼女が守った景色で、皆さんが守った景色」)
 もう一杯、蜂蜜酒をご馳走になりながらも。
 クロトは青き瞳を柔く細め、周囲の光景を眺めつつも思うのだった。
 ――堪能しない方が、勿体無いというものですよね? と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

橙樹・千織
アドリブ・絡み歓迎
WIZ

私は…そうですねぇ
祈りを込めて舞い唄いましょうかねぇ
みなさんのこれからがより良いものになりますように、と
これでも守護を担う巫女ですから、ね?

リザさんはお疲れでしょうから目が合ったり、すれ違ったりした時には会釈程度で後は見守ることにしましょう。

せっかくですし、村の皆さんが用意してくださった食事もいただきましょう。
ふふ、蜂蜜のスイーツとても美味しいですねぇ
あらあら、蜂蜜酒があるのですか?是非いただきたいです


闇夜を照らす暖かな光が…
みなさんのこの先の幸せを照らし、導いてくれますように



 漆黒の闇と絶望に覆われた、ダークセイヴァーの世界。
 けれども今、千織の目の前には、人々の笑顔が沢山咲いている。
 これは今だけの、一瞬の平和なのかもしれないけれど。
「私は……そうですねぇ。祈りを込めて舞い唄いましょうかねぇ」
 みなさんのこれからがより良いものになりますように――と。
「これでも守護を担う巫女ですから、ね?」 
 ひらり、宴を楽しむ皆に。
 和装の袖と黒から金色へと彩を変える髪を靡かせながら、見事な舞をひとさし、披露する千織。
 そして感謝の歓声や拍手の中、ふとオレンジの瞳に映ったのは……リザの姿。
 彼女の碧を帯びた瞳と、ぱちりと目があったけれども。
 彼女はきっと、すごく疲れているだろうから――軽く会釈するに止め、後は見守ることに。
 それに、折角村の人びとが用意してくれた食事。
 折角だから、いただきましょう――そうぱくりと口へと運んだのは蜂蜜を使ったスイーツ。
 濃厚でいてとても優しい甘さが、刹那、口の中にほわりと広がって。
「あらあら、蜂蜜酒があるのですか? 是非いただきたいです」
 甘い香りがまだ残る、きりっとしまった味わいの蜂蜜酒を受取ると。
(「闇夜を照らす暖かな光が……みなさんのこの先の幸せを照らし、導いてくれますように」)
 闇に揺らめく炎にそっと、そう祈りを馳せるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

瑞枝・咲耶
ゆすら(f13614)様と

ゆすら様が清史郎様とお知り合いだなんて
ええ、本当に素敵な偶然

随分これは、はいから、な…
初めての世界、初めての洋食
そして、大切なご友人がおふたり
緊張します
…?お箸はないのですか?
ふたりを真似ながら恐る恐る

乾杯、素敵ですね
ええ、是非に

杯を片手に笑むゆすら様
けれど私には彼女が気落ちしているように見えました
私に世界を教えてくれた大切なゆすら様
いつか、彼女の抱えている何かを少しでも受け止められたら…
烏滸がましい夢でしょうか?

蝋燭の灯りがとても綺麗
え?きゃんどる、と言うのですか?
またひとつ、世界が広がりました
だからお出かけは是非に
おふたりのお陰で広がる咲耶の世界
これからも、ずっと


桜橋・ゆすら
咲耶さん(f02335)と共に
清史郎さんもお誘いできればと
お二人のご様子を見て、目をぱちくり
「もしかして、お二人とも既にお友達同士?」
素敵な偶然!思わず頬が緩みます

ふわりと香る“すぅぷ”の匂いが食欲を唆ります
まずは宴を楽しみませんか?
ゆすら、この世界に来るのは初めてで…
まずは…すぅぷ、“ぱん”
蜂蜜を垂らした“みるく”を一杯

(周囲の村人の乾杯を見て目を輝かせ)
あの、お二人とも
よければ乾杯しませんか?
三人で乾杯ができたなら
戦いの疲れが安らいでいく…そんな感覚を憶えます

その後は食事に舌鼓を打ちながらお喋りしましょう
清史郎さんも甘味がお好きなのですか
でしたらまた今度、三人でお出かけするのも良いですね



 夜と闇の世界を仄かに照らす灯火に、導かれるかのように。
 ゆすらが何気に探していた彼は、思いのほかすぐに見つかって。
 一緒にこのひとときを楽しみたいと、誘いをかけようとすれば。
「清史郎様、転送のお役目お疲れ様でした」
「有難う、咲耶」
 瑞枝・咲耶(名残の桜・f02335)と清史郎の、そんな初めましてではない会話に。
「もしかして、お二人とも既にお友達同士?」
 ゆすらは、桜桃を思わせるやわらかな薄紅を湛える瞳を、ぱちくり。
「ゆすらもお疲れ様だったな。依頼の完遂、感謝する」
 そんなゆすらへと、微かに蒼滲む赤の瞳を細めた清史郎に。
 今度は咲耶が、言の葉を零す番。
「ゆすら様も清史郎様とお知り合いだなんて」
 何ともそれは素敵な偶然。
 ゆすらと咲耶は、知らぬ間に繋がっていたそんな縁に、思わず頬を緩ませながらも。
 今度は3人で、楽しく会話を交わしながら。
「まずは宴を楽しみませんか?」
 ゆすらの提案に頷いて、賑やかな宴の会場へと足を運ぶ。
 目の前のテーブルに並べられるのは、窯から取り出されたばかりの焼き立てパンにソーセージ。
 ゆすらの食欲を唆るのは、ふわりと香るあたたかいスープ。
「ゆすら、この世界に来るのは初めてで……」
「随分これは、はいから、な……」
 まずは……すぅぷ、ぱん、と。
 そう、きょろきょろと並ぶ食事を見回しつつ呟くゆすらと。
 初めての世界での初めての洋食。そして……大切な友人がふたり。
 緊張します、と思わず漏らした咲耶に。
「そう肩を張らずとも大丈夫だ、ふたりとも。箸はないが、我々の世界と何らそう変わりはない」
 清史郎は優しく瞳を細め、ふたりの分も貰ってきた蜂蜜ミルクをそれぞれに手渡して。
「……? お箸はないのですか?」
 清史郎の言葉に、咲耶は桜の双眸を瞬かせる。
 そしてふいに、周囲の様子を窺っていたゆすらの瞳が、ぱっと輝いたのは。
 楽しそうにカップを合わせる、村人たちの姿。
「あの、お二人とも。よければ乾杯しませんか?」
 ゆすらの提案に、ふたりも勿論、大賛成。
 ドキドキと灯火に照る天に、蜂蜜ミルクを掲げて。
 ――乾杯!
 その声と共に、そっとカップを重ね合わせれば……思わず顔を見合わせて、笑み零してしまう。
 そして甘い琥珀が蕩けたミルクを、ひとくち飲んでみれば。
(「戦いの疲れが安らいでいく……そんな感覚を憶えます」)
 ゆすらは、口に広がるその優しい甘さに、ほうっと思わず息を吐く。
 そんなゆすらの顔に宿るのは、確かに笑みなのだけれど。
 咲耶はどこか、友人の横顔に、憂いのいろを感じて。
(「私に世界を教えてくれた大切なゆすら様。いつか、彼女の抱えている何かを少しでも受け止められたら……」)
 ――烏滸がましい夢でしょうか?
 今はそう、友人をそっと想うことしか、できないけれど。
「蝋燭……いや、この世界を照らすキャンドルの灯火も、また風情があって美しいな」
「え? この蝋燭は、きゃんどる、と言うのですか?」
 友人たちと過ごすたびに、またひとつ、広がっていく咲耶の世界。
 当初の緊張も随分解け、3人は美味しい食事に舌鼓を打ちながら、楽しく会話を交わし合う。
「ふむ、この蜂蜜はコクがあり、非常に美味だな。甘いものはとても好きだ」
「清史郎さんも甘味がお好きなのですか。でしたらまた今度、三人でお出かけするのも良いですね」
「お出かけは是非に」
 そして……心に灯るのは。
 これからも、ずっと――共に広がっていくだろう世界への、期待。
 それは友人たちと楽しく過ごしているうちに。
 知らないことを識る喜びや驚きを、知ったから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アオイ・フジミヤ
黒髪をまとめて後ろで縛り、翼もしまって
本当の姿の時くらいは「昔の私」に戻ろう

蜂蜜好きな友人のためにお土産に少し分けてもらいたいな
きっと喜ぶ

教会でリザさんに会えば声をかける
本当に真っ暗な夜の世界なんだね、ここは

でも暗いからこそ、こうやってキャンドルの灯が映える
世界はきれいだね
……ねえ、よかったら、友達にならない?

ふと、最近縁を持った友達を想う
今度聞いてみよう
彼の故郷だといっていた、この世界のどんなところが素敵かを

セイさんに声を掛けようか迷うも
この見目じゃ、私だってわかんないかも……?(悪戯心で黙っている)
わかってくれたら、お礼を言おう
連れてきてくれてありがとう、友達になりたい子を見つけられたよ



 普段の昼の海の如き青の彩も、今は夜の海のような漆黒。
 いや、これが本当の姿で――だから、この姿の時くらいは「昔の私」に戻ろう、と。
 翼を仕舞い、その流れるような黒髪をきゅっと纏めて縛って。
 アオイは仄かなキャンドルの光満ちる村を歩き出す。
 目的は、この村の特産品だという美味しい蜂蜜。
 蜂蜜好きな友人の土産に少し分けて貰えれば、きっと喜ぶだろう。
「わ、こんなにいっぱい貰ってもいいの?」
「蜂蜜なら沢山あるし、貴方たちは恩人だから!」
 そう渡されたのは、甘い琥珀色がいっぱいに満ちる瓶2本。
 少し分けて貰えればと思っていたが、思った以上に沢山渡されて。
 友人の分と、そして自分用にも、甘いお土産を。
 そしてアオイが足を向けたのは――教会。
 そこで出会ったのは、金髪をふわり闇に靡かせるひとりの少女。
「本当に真っ暗な夜の世界なんだね、ここは」
 アオイはその少女・リザにそう声を掛けて。
 眼前の祭壇に数多燈る願いの光を見つめ、続ける。
「でも暗いからこそ、こうやってキャンドルの灯が映える。世界はきれいだね」
「この世界には絶望しかないと思っていたけれど……綺麗なものも沢山あるんだなって、思い出したわ」
 そう少し憂いを帯びたリザの横顔に視線を向けて。
 アオイは、この世界が故郷だと言っていた、最近縁の繋がった友人のことをふと思いながらも。
 リザに、こんな提案を。
「……ねえ、よかったら、友達にならない?」
 リザは一瞬意外そうに碧の双眸を見開いたけれど。すぐに嬉しそうに瞳を細め、頷く。
 ……ええ、私でよかったら。嬉しい――と。
 それからふと教会を後にすれば、視線の先には、よく見知った顔が。
 思わず、セイさんって、そう声を掛けそうになったけれども。
(「この見目じゃ、私だってわかんないかも……?」)
 悪戯心もあって、黙っておいてみる。
 そして、ふと彼――清史郎と目が合えば。
「君も猟兵か。初めまして…………いや、もしや……アオイか?」
 一瞬、気付かなかったようだが。
 蒼混ざる赤の瞳をぱちくりさせつつもそう言った清史郎に、セイさん正解! と笑んだ後。
「連れてきてくれてありがとう、友達になりたい子を見つけられたよ」
 改めて彼に礼を言い、そうかよかったなと、柔く雅な笑み宿す清史郎に。
 アオイは大きく頷いて、心からの笑みを咲かせ、返すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

蘭・八重
賑やかな場所を好まずふらりと寄った教会
そこにいらしたリザ様の姿

あら?とても素敵な教会ね
そう思いませんかリザ様
彼女の傍へ行き何気なく語りかけ微笑む
ご一緒にキャンドルを飾りませんか?

キャンドルを飾り祈りを捧げる

リザ様は何を祈るのでしょうか?
貴女様はとても綺麗ですわね。
だって、喜びも悲しみも複雑な想いも全部貴女の心。
綺麗で無ければ悩むことなんてないですもの
心無い者や愛されてた人を殺しても何も思わない私と違いますわ
ふふっ、微笑む

リザ様のこれからの人生素敵なものになりますように祈りを捧げます
幸せはどんな形であれ貴女にやって来るはずですから



 賑やかな喧噪は、あまり好まないから。
 夜と闇が支配する静寂に自然と導かれ、八重が辿り着いた場所は――。
「あら? とても素敵な教会ね。そう思いませんかリザ様」
 そう、今夜だけ特別に解放されている、村の教会。
 その傍には霧深い静かなあの森が、鬱蒼と漆黒の彩に身を潜めている。
 そして教会の前で出会った少女・リザに。
 八重は夕日如く紅く煌くその髪を、より炎の灯火で紅色に染めながら。
「ご一緒にキャンドルを飾りませんか?」
 そう、彼女を誘ってみて。ええ、と快諾したリザと、教会の祭壇へ。
「リザ様は何を祈るのでしょうか?」
 沢山の灯火に照る祭壇に、自分たちの炎を捧げながら。
 そうふと尋ねた八重に、リザは微かに苦笑する。
「正直、あまり今はまだ考えられなくて……悩むわね」
 八重はそうぽつりと返したリザの声に、艶やかな口元に笑み宿して。
 薄紅の瞳を細め、彼女を見つめ言った。
「貴女様はとても綺麗ですわね」
「……私が?」
「だって、喜びも悲しみも複雑な想いも全部貴女の心。綺麗で無ければ悩むことなんてないですもの」
 ――心無い者や愛されてた人を殺しても何も思わない私と違いますわ。
 そう続けた言の葉に、リザは少し驚いた様な色を宿した碧瞳を八重へと向けるも。
 八重は妖艶にただ、ふふっと微笑んでから。
 彼女のこれからの人生が素敵なものになりますように、と――そう改めて、祈りを捧げる。
「幸せはどんな形であれ貴女にやって来るはずですから」
 ほんわり穏やかな笑みとともに、艶めいたその瞳で、ただ眼前の少女だけを映して。

大成功 🔵​🔵​🔵​

出水宮・カガリ
ステラ(f04503)と

まずは、せいしろうに
やっぱりこれは言っておかねばだ
今回もグリモア猟兵の務め、お疲れ様だった、と
色々と、考えさせられる仕事だった

その後は、ステラと教会で合流
あの娘(リザ)、何といったかな…彼女の様子も少し聞いておきたい

ステラは、あの森で誰に会った
カガリは、お前に剣を向けられた
お前に貫かれることは、望んだ最期であるはずなのに
お前を仕舞えなくなると思うと、死んでやる気になれなくてなぁ
それに。本物のお前は、それだけは叶えてくれないものな
お前は、カガリの盾を破ったのか…羨ましいな、その自分が

隣りに在る綺羅星を、抱き寄せて
ただ静かに、灯火を見守れる平穏が
結局は、カガリも好きなのだ


ステラ・アルゲン
カガリ(f04556)と

リザはどうしているだろうか
やはり私の記憶にいる彼女の最後を思うと気になる
少し話を聞いておく。死ぬ気がないならそれでいい
どうか、最後の時まで幸せに過ごしてから恋人に会いに行って欲しい

終わったら教会へ
清史郎殿に話しかけに行ったカガリが待っているはずだ

森で何を見たか?
私はカガリを見たな
お前そっくりの城門に閉じられたが、約束通り鍵の剣としてこじ開けてやったよ
カガリになら仕舞われてもいいけど、それはいつかの時だな
…私がお前を殺しに行くなんてありえないな
絶対羨ましがらないほうがいいよ

抱き寄せられたら体を預ける
そうだな。私も好きだ
剣が必要のない平穏が続けばいい
復讐も生まれなくなるから



 キャンドルの炎灯る賑やかな宴の雑踏の中、一旦カガリとわかれて。
(「リザはどうしているだろうか」)
 ステラが気になっているのは、リザのこと。
 どうしてもリザと……記憶の中にいる彼女を、重ね合わせてしまう。
 彼女の仇討ちを目の前で見た記憶。
 特に、彼女の最後を思うと……どうしても、ステラは気になってしまうのだ。
 記憶の彼女は、自分の仇を討った後――自害したから。
 少し話を聞いておきたいと、リザを探すステラ。けれど、重いのほかすぐに、見つかって。
「これから、どうされるのですか?」
 そう今後のことを問えば。
「まだ分からないけれど……もう少し休んでから、これからどう生きるか、考えようと思う」
 返ってきた答えに、ステラはそっと安堵する。
 どう生きるか、考える――。
(「死ぬ気がないならそれでいい」)
 そして暫く会話を交わしながら、改めてステラは思うのだった。
 ――どうか、最後の時まで幸せに過ごしてから恋人に会いに行って欲しい、と。
 同じ頃……カガリも、探していた彼を見つけて。
「せいしろう。今回もグリモア猟兵の務め、お疲れ様だった」
 やはり言っておかねばと思った言の葉を、自分の声に足を止めた清史郎へと告げれば。
「礼を言うのは此方だ、カガリ。有難う」
 返ってくるのは、穏やかな微笑みと感謝の声。
 そんな、友であり同士である彼に、カガリは今回の事を振り返り紡ぐ。
「色々と、考えさせられる仕事だった」
「……そうだな。だが、カガリが……皆が無事でよかった。依頼を完遂してくれて、感謝する」
 視えるのに自身は赴けぬ歯痒さと、友を危険だと分かっている戦場へ送る複雑さ。
 でも、信じているからこそ、託せる――清史郎はただそれだけ、カガリへと返して。
 帰還まで暫しゆっくり楽しんでくれ、と雅に笑んだ。
 そして清史郎とわかれたカガリは、教会でステラと合流して。
「あの娘、何といったかな……彼女の様子は、どうだったか」
「リザか? 死ぬ気はなさそうだったな。とりあえずはよかった」
 そうホッと安堵するような眼前のステラの顔を見つめて。
 そうか、とカガリは、青の綺羅星だけを映すその紫の瞳を細めた。
 それから――ふと、気になっていたことを尋ねる。
「ステラは、あの森で誰に会った」
「森で何を見たか? 私はカガリを見たな」
「カガリは、お前に剣を向けられた」
 霧深い森で対峙した幻影は――お互いの姿をしていた。
 ……けれども。
「お前に貫かれることは、望んだ最期であるはずなのに。お前を仕舞えなくなると思うと、死んでやる気になれなくてなぁ」
 ――それに。本物のお前は、それだけは叶えてくれないものな、と。
 そう続けたカガリに、首を振るステラ。
「……私がお前を殺しに行くなんてありえないな」
 そしてステラも、森で遭遇した幻影のことを思い返しつつ。
「お前そっくりの城門に閉じられたが、約束通り鍵の剣としてこじ開けてやったよ。カガリになら仕舞われてもいいけど、それはいつかの時だな」
「お前は、カガリの盾を破ったのか……羨ましいな、その自分が」
「絶対羨ましがらないほうがいいよ」
 自分の幻影を羨ましがるカガリに、ステラはふっと星の様な煌めき宿す青の瞳を細めて。
 刹那――ふいに引き寄せられた胸の中に、その身を預けた。
 ……己の内側に仕舞ってしまいたい、隣にいた綺羅星。
 その愛しき青き星は今――自分の胸の中に在る。
 カガリはステラの体温を感じながら、ふと、漆黒に仄かに耀く数多の炎を静かに見つめて。
「ただ静かに、灯火を見守れる平穏が……結局は、カガリも好きなのだ」
「そうだな。私も好きだ。剣が必要のない平穏が続けばいい」
 そしたらきっと、復讐も生まれなくなるから――。
 カガリの胸の中で、彼と共に。ステラは、人々の願いが込められた灯火の揺らめきを眺めつつも。
 そっと、全身を包む温もりに一層、己の身体を預けたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

呉羽・伊織
【花守】

リザと会えば一言
お疲れさん――今は温かいモンでも摂って、ゆっくり休むといい
と、唯それだけ――此処にゃもっと良い言葉かけられる奴が大勢いるだろーから
結局気の利いた言葉一つ出なくて悪い

…で、振り返れば
まーたアンタかよ
俺は今食事で手一杯
序でに無駄話も腹一杯
その盛大に懐裂かれた痕に塩塗り込まれたくなけりゃ――
(言い切る前の答に肩竦め)
アンタもホント大概な趣味してんな

あー、やめやめ
らしくないのはもうやめで
今は素直に宴を楽しんでこ
そっちのがオレ等らしい

清史郎もお疲れ
(若干の好奇心から何か言いかけ――るも飲込み)
や、無事にまた会えて何より

(帰還前にひっそり、再び面纏いながらも教会へ――心内は、さて)


佳月・清宵
【花守】

…おい澪
柄にもねぇ面してんじゃねぇよ
明確な解があんならハナから誰も苦労しねぇだろ
何かあんならお前も悔い残さねぇようにしてこい

俺は特別にそこの鴉と待っててやる

(今日はよく“あう”なとまた可笑しげに)
俺が珍しく相手してやろうってのにツレねぇな

塩?(裂けた着物の懐撫で)
あぁこりゃ面白半分に刺し違えただけの話
痛くも痒くもねぇよ

ま、折角の宴が不味くなる話や面は此処迄で

(己の酒と澪の甘味確保しつつ伊織に続き)
こりゃどうも、世話になったな
アンタも一杯やってくかい

空虚に渇れ果てるぐらいなら、腹だけでも――満たせるモンは満たしとくに限る


何処かでリザ見りゃ唯一言
その覚悟は確かに見届けた――お疲れさん、と


鳳来・澪
【花守】
リザさんは気になる
けど、うちはきっと力不足で

…宵ちゃんこそ
今日はよう喋るねえ

でも、おおきに
ちょい行ってくるで、鴉掴まえてて
あと甘味も確保しててっ

(温かい蜂蜜ミルク二つ手に、リザさんの所へ――気休めでも、体まで冷えんよう)
…沢山背負うて、よう踏ん張りはったね
うちが言うんもなんやけど、生きて帰ってくれて、有難う

大した事は出来んけど
何かあれば…何でも受け止めるから、遠慮なく言うてね

(せめて落ち着くまで傍に――離れた方が良ければ仲間の所へ)
皆お疲れ様
清史郎さんや村の人には感謝もしつつ――後はうちも宴で潤してく、ね


(最後に教会へ)
綺麗事でも
それでも
村に、彼女に、笑顔戻る日を願わずにはおれんの――



 キャンドル灯る賑やかな喧噪から、少しだけ離れて。
 まるで闇に紛れるかのように、ふらり、村を歩いていた伊織は。
 ふとその赤の瞳に映った少女の姿に気付いて。
「お疲れさん――今は温かいモンでも摂って、ゆっくり休むといい」
 此処にゃもっと良い言葉かけられる奴が大勢いるだろーから、と。
 唯それだけ……偶然会ったその少女・リザへと告げた。
 そして、気遣いありがとう、と微かに笑んで去っていくその後姿を、一度だけ振り返って。
 結局気の利いた言葉一つ出なくて悪い……そう呟くも。
 眼前の霧深い森の木々を揺らす一陣の風や鳴る葉音に、掻き消される。
 ……その同じ頃。
(「リザさんは気になる。けど、うちはきっと力不足で……」)
 リザの元へとなかなか行く踏ん切りがつかず、ふと俯いてしまう澪。
 彼女に声を掛けて、少しでも力になりたい。
 けれども、それが自分にできるのか――。
 いつもの笑顔も鳴りを潜め、悩まし気な表情を宿す澪に。
「……おい澪。柄にもねぇ面してんじゃねぇよ」
 そう言い放つのは、清宵。
 清宵は俯く澪の姿に、大きく息をひとつ吐いてから。
「明確な解があんならハナから誰も苦労しねぇだろ。何かあんならお前も悔い残さねぇようにしてこい」
 そんな言の葉を投げ掛ける。
「……宵ちゃんこそ、今日はよう喋るねえ」
 その声に顔を上げた澪は、そう清宵に返しつつも。
「でも、おおきに。ちょい行ってくるで、鴉掴まえてて」
 いつものように笑顔を宿して。
 見つけた伊織の姿に笑み、そう言った後。
「あと甘味も確保しててっ」
 それだけ付け加えると、背中を押されたその勢いで、一歩を踏み出す。
 そんな澪を。
「俺は特別にそこの鴉と待っててやる」
 清宵はそう、送り出した後。
「今日はよく“あう”な」
 澪と入れ替わりにやって来た伊織に、また可笑し気に声を掛ければ。
「まーたアンタかよ。俺は今食事で手一杯、序でに無駄話も腹一杯」
 伊織は逆に、大きく一つ嘆息して。
 清宵の懐あたりへと視線を落とし、紡ぐけれど。
「その盛大に懐裂かれた痕に塩塗り込まれたくなけりゃ――」
「塩? あぁこりゃ面白半分に刺し違えただけの話。痛くも痒くもねぇよ」
「アンタもホント大概な趣味してんな」
 裂けた着物の懐を撫で、言い切る前にそう返す清宵に、伊織は肩を竦める。
 そして――リザの元へと向かった澪は。
 気休めでも、体まで冷えんよう、と……その手には、温かい蜂蜜ミルクが二つ。
 教会のそばにいる彼女を見つけ、蜂蜜ミルクを手渡しながら、声を掛ける。
「……沢山背負うて、よう踏ん張りはったね。うちが言うんもなんやけど、生きて帰ってくれて、有難う」
 そんな言葉に、リザは首を横に振って。澪に小さく笑み返す。
「お礼を言うのは私の方よ。ありがとう」
「大した事は出来んけど、何かあれば……何でも受け止めるから、遠慮なく言うてね」
「……本当に、有難う」
 澪の優しく真摯な言葉に、リザの涙腺が一瞬緩む。
 澪はそんなリザに、泣いてもええんよ、と声を掛けて。
 彼女が落ち着くまで……その胸を、貸してあげたのだった。
 そして、落ち着いたリザとわかれて。
 二人の元へと、戻ってきた澪。
 そんな澪の姿を見て、あー、やめやめ、と。
 伊織はひらひらと手を振って。
 いつもの軽い調子で、清宵から視線を外す。
「らしくないのはもうやめで。今は素直に宴を楽しんでこ」
 そっちのがオレ等らしい、と。
 それに、清宵も同意して。
「ま、折角の宴が不味くなる話や面は此処迄で」
 自分の酒と澪の甘味を確保しつつ。
 伊織がふと声を掛けた人物へと、続けて視線を向けた。
「清史郎もお疲れ」
「伊織。それに皆も、お疲れ様だ。赴いてくれて有難う」
 そう微笑む清史郎に、伊織はふと湧いた若干の好奇心から……何かを、言いかけるも。
「や、無事にまた会えて何より」
 そっとそれを飲み込み、そうへらりと笑んで。
「こりゃどうも、世話になったな。アンタも一杯やってくかい」
 清宵もそう清史郎にも酒や食事を勧めれば。
「清史郎さんも皆も、お疲れ様」
「澪もお疲れ様だ。そうだな、では一杯いただこうか」
 空虚に渇れ果てるぐらいなら、腹だけでも――満たせるモンは満たしとくに限る、と。
 清史郎も加わって……暫しの宴を楽しむのだった。
 そして宴もたけなわ――ふと、再び皆それぞれわかれて。
(「綺麗事でも、それでも。村に、彼女に、笑顔戻る日を願わずにはおれんの――」)
 澪がそう、訪れた教会の祭壇に祈りを捧げた同じ頃。
「その覚悟は確かに見届けた――お疲れさん」
 見かけたリザに、そう唯一言、声を掛ける清宵。
 そして、帰還前にひっそりと。
 見られたくないものをひた隠すかのように、再び面を纏いながら。
 その心内は、さて――伊織も、仄かな灯火揺れる教会へと、そっと足を向けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティア・レインフィール
軽く食事をした後、教会へ
祭壇に灯を飾り、日課である神への感謝の祈りを捧げます

お母様が亡くなってからずっと教会で育てられたからか
此処の空気は落ち着きますね

そして思うのは、リザ様の事
……かつてはお父様と呼んでいたヴァンパイアに
教会で共に育った家族達を殺されて
失っていた記憶を取り戻し、真実を知った時
最初に考えたのは、私が居たから悲劇が起きたのだという事

彼女もいつか、その考えに至らないとは限りません
ですから罪があるのはあのヴァンパイア一人なのだと、そう伝えます

そしてリザ様のような思いをする方が増えないよう
悪しきヴァンパイアは必ず滅ぼすと、彼女に誓います
……どうか、これからの生に幸福がありますように



 村人たちが用意し持て成してくれた食事を軽くいただき、済ませた後。
 ティアは仄かなキャンドルの炎を携え、教会へと足を運んで。
 人々の願いが込められた灯火揺れる祭壇に、自らの手にある炎を飾って。
 日課である、神への感謝の祈りを捧げる。
「……此処の空気は落ち着きますね」
 そう、自然と零れた言の葉。
 きっとそう思うのは、お母様が亡くなってからずっと教会で育てられたからかもしれないと。
 ティアはそっと、藍色を湛える瞳を細めた後。
 教会に入ってきたひとりの少女の姿に、普段通りの優しい微笑みを向けた。
 丁度……彼女のことを、思っていたから。
 かつてはお父様と呼んでいたヴァンパイア。
 そして彼に、教会で共に育った家族達を殺されて……失っていた記憶を取り戻し、真実を知った時。
(「最初に考えたのは、私が居たから悲劇が起きたのだという事」)
 状況は勿論違うにしても。
 ヴァンパイアに自分が見初められたことが原因で、愛する人が殺されてしまったのだと。
(「彼女もいつか、その考えに至らないとは限りません」)
 今は、そうは思っている様子はなくとも……いつか、リザもそう思ってしまうかもしれない。
 けれども、ティアはそのことをよく知っているから。
「罪があるのはあのヴァンパイア一人です、リザ様」
 リザへと、そう声を掛け伝えて。
 そして――灯火飾られた祭壇を前に、はっきりと彼女に誓うのだった。
「リザ様のような思いをする方が増えないよう、悪しきヴァンパイアは必ず滅ぼします」  
 ……どうか、これからの生に幸福がありますように、と。
 そう同時に――これからの彼女の幸せを、ティアは願いながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴェイゼル・ベルマン
教会に行くか
たまには静かに物思いに耽るのも悪くねぇ

霧幻の森で起こった事を思い出し
恋人の幻影を屠った感触も、眼前で散る赤い飛沫も頭から消えねぇな
だが、久々に彼女の顔を見れて良かったという思いもある
例えそれが、殺意に満ちた幻であっても
……それにしても、幻想的だな
キャンドルの光と、静かに照らされる祭壇を眺め
こういう景色を見ると、あいつ(恋人)にも見せてやりたかったと思うぜ

リザが居れば声を掛ける
村の皆も、お前の無事を喜んでるな
……
俺も前に恋人を亡くしてよ
後を追う事も考えたもんだ
だが、恋人の最期の願いは俺が生きる事だった
ありきたりな言葉しか言えねぇが
お前の大切な人も、お前の生を望んでいるんじゃねぇかな



 和やかな会話や美味しい食事が楽しめる、広場の賑やかさも良いのだけれど。
 ――たまには静かに物思いに耽るのも悪くねぇ。
 ヴェイゼルが訪れたのは、夜に紛れるような漆黒を纏う森が眼前に広がる、村の教会であった。
 脳裏に蘇るその彩は……柔らかな金色と、海を思わせるような碧。
 そして――眼前で散り飛沫いた、赤のいろ。
 そっと握り締める両手には、恋人の幻影を屠った感触が、まだ消えない。
 ……でも。
 久々に彼女の顔を見れて良かったと。そうも、ヴェイゼルは思う。
 ――例えそれが、殺意に満ちた幻であっても。
「……それにしても、幻想的だな」
 夜と闇の漆黒に支配されたこの世界だからこそ。
 人々の願いこもったキャンドルの光は、より一層、とても美しく揺らめいていて。
 ふっと小さく一息ついて、ヴェイゼルは心に思う。
(「こういう景色を見ると、あいつにも見せてやりたかったと思うぜ」)
 きっと、柔和な表情に輝きを宿して。
 海色の碧をキラキラと煌めかせただろうな――なんて。
 そんなことを思っていた、ヴェイゼルだが。
 ふと顔を上げれば、漆黒の瞳に映ったのは……リザの姿。
「村の皆も、お前の無事を喜んでるな」
「まさか生きて戻ってくるなんて、誰も思っていなかったでしょうから」
 掛けた声に、そう返してきたリザに。
 ヴェイゼルは改めて視線を向けて。
「……俺も前に恋人を亡くしてよ。後を追う事も考えたもんだ」
 少しずつ紡いでくのは――己の過去。
 その言葉に、リザはハッと大きな碧色の瞳を見開くも。黙って、言葉の続きを待つ。
 あの時、後を追って死なないことを決断をしたのは。
「恋人の最期の願いは俺が生きる事だった」
「恋人の、最期の……願い」
 そう――恋人の最期の願い故だ。
 そしてヴェイゼルは、こう続けるのだった。
「……ありきたりな言葉しか言えねぇが。お前の大切な人も、お前の生を望んでいるんじゃねぇかな」
「そうね……私が逆の立場でも、きっと同じことを願ったわ」
 ヴェイゼルの言葉に、素直にこくりと頷くリザ。
 キャンドルの炎に照らされたその横顔は、まだ憂いの色を帯びてはいるけれど。
 それと同時に、感じるのだった。
 教会の灯火を見つめるリザの碧色の瞳に宿る光を――猟兵たちのおかげで、この世界で生きていこうと決めた、彼女の覚悟を。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年04月30日


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🔒
#ダークセイヴァー


30




種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠天御鏡・百々です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
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👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト