●死霊の唄
ダークセイヴァーの荒野を楽器を持った死霊の群れが行進していく。
底に穴の開いて弦が所々切れたバイオリンはギイギイと、誰かが使っていただろう鍋を棒で叩いた打楽器はガンガンと、吹き口が割れたクラリネットはヒューヒューと、間抜けな音を鳴らしていく。
誰も彼もが狂ったように楽器をかき鳴らす。それはリズムも音程も何もかもが滅茶苦茶で、不協和音としか言いようがない代物だった。
彼女たちは疾病楽団。騒音と共に現れ村々を襲う死病の運び手。
「私達は疾病楽団。怪物どもに殺された、愛された誰かのなれの果て。だれも望んでいないのに、こんな姿にさせられて。死病を運ぶ嫌われ者。」
死霊の1人が調子外れな唄を口ずさむ。
「私達は疾病楽団。壊れた楽器をかき鳴らし、誰かの平和を壊すもの。」
●湖畔の村を救え
「ダークセイヴァーの世界で楽器を持った死霊の群れが平和な村を襲撃し、不治の病をばら撒き、村人を鏖殺するのを予知した。」
集められた猟兵たちの前でグリモア猟兵の神宮寺・絵里香(雨冠乃巫女・f03667)は淡々とした口調で説明を始める。
「こいつらは最近見られるようになった疾病楽団と呼ばれるオブリビオンの群れだ。平和に慎ましく暮らす人々を探し出し、不治の病を感染させて殺す、質の悪い病原菌だ。」
予知の中で下手糞な歌で名乗っていたから間違いないだろうと絵里香は続ける。
「んで、こいつらが襲うのが、この湖畔の村だ。」
背後のスクリーンに件の湖畔の村を投影する。ダークセイヴァーの世界の村であるため活発に栄えているという訳ではないが、それでも畑があり、近くには水源である湖があり、慎ましく暮らすには十分な質素な村が映る。
「ダークセイヴァーの世界の中ではかなり恵まれた村だと思う。ここでは人々が慎ましく暮らし、生を繋いでいる。だが、疾病楽団の連中が到着すれば、一瞬で死病の村と化し誰も住むことのない死と絶望の廃墟となるだろう。」
オレが見た予知の通りにな…と絵里香は続ける。
「そこで今回お前たちには、疾病楽団を撃退し、この村を救って来てもらおうと思う。ただな…」
左手を左の頬に当てつつため息をつきながら説明を続ける。
「この村の連中、今まで幸運にも見逃されて来た所為もあってどこか危機感にかけるというか、能天気な所がある。」
人間誰しもが自分に都合よく考えるきらいがある。今までが大丈夫だったのだから、今回も大丈夫に違いないと。
「だからまずは、住民とコミュニケーションをとって信頼を勝ち取って欲しい。方法は任せる。力自慢なら畑の手伝いをするもいいし、芸事が得意ならばそういう事を披露してもいい。」
やり方については一任すると絵里香は言う。
「村人の避難が終われば集団戦だ。予知で見た黒服で鬼火を従えた少女の幽霊の群れとの集団戦になるだろう。お前たちの実力ならば問題なく相手どれるはずだ。」
ただし…と鋭い目つきをさらに細めて絵里香は告げる。
「楽団については色々ときな臭い感じがする。何となくだが、何か隠し玉があるとオレの巫女としての勘が告げている。くれぐれも油断だけはするなよ。」
猟兵たちに釘を刺しつつ絵里香は続ける。
「本当はオレが直接乗り込んでぶちのめせると良いんだが…まあ、お前たちを信じて待つことにする。」
少し残念そうな声色なのは気のせいではないだろう。
「それじゃ、健闘を祈る。吉報を待っているぞ。」
左の腰に左手を当てて右手を軽く上げながら絵里香は猟兵たちを転送した。
しろべびさん
はい、初めましてしろべびさんと申します。以後お見知りおき。
今回が初シナリオですね。ちょっと緊張しております。
【第1章】村人との交流ですね。各々のやり方で好きに交流して下さい。
信用を得られれば、言うことを聞いて避難をしてくれます。
【第2章】集団戦です。女の子の死霊との集団戦です。
【第3章】これも集団戦ですね。何と戦うかは、3章になるまで内緒です。
まだ色々と不慣れで拙い所もあるかと思いますが格好良く書けたらなぁと思います。
それではみなさんのプレイングをお待ちしております。
第1章 日常
『日常を続けるために』
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POW : 巻き割りや耕作など、日々の仕事を請け負って村人の負担を減らす。
SPD : 近くの森や川で狩猟採集を行い、当面の食糧事情を改善する。
WIZ : 料理や芸事で村人を元気づけ、活力を養ってもらう。
👑5
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アリア・ヴェルフォード
私たちからすれば彼らは能天気ですが、
本当ならこういう平和に生きる人達が多くいることが望ましいところですね。
さて、討伐の前に避難誘導…の更に前に信頼を得なくては
【POW】
旅人を装って村に潜入、そのまま『コミュ力』で溶け込みましょう。
そこから働かざる者食うべからずの精神で畑仕事に協力します。
『怪力』や『早業』を使って頑張って行きましょう。
その後に一緒にご飯を食べて語り合えばもう友達ですね!
フロッシュ・フェローチェス
まあ、知らない事に対して何とかしろ……だなんて土台無理な話だろうしね。
それが今まで平和だったなら尚のこと。
――ここは一つ、アタシに出来る事で円滑に進められる様、やるかな。
刻天炉・穿銃形態で狩猟を開始、でもこれは牽制用。
威力調整利かないから……怯ませた隙に残像も映さないダッシュで近づき、頭を踏みつけてトドメを刺そう。
なるべく大きな獲物を狙うよ。
野草関連は情報収集で事前に調べ、ホロデバイスゴーグルに簡易記録。
毒のある物を取らないようにね。
後は川かな。
地形の利用――と言うよりも魚の集まりやすい場所に断ち、魚の軌道を見切り、早業でバシッと救い上げてみせるよ。
……尽くスピード重視で行こうか。
※アドリブ可
仇死原・アンナ
村の未来を救う為にも、まずは身近な人助けからだね…
村人の為に日々の仕事を請け負う
「猟兵の仕事も楽じゃないけど、これはこれで大変だ…はぁ…」
[怪力]を発揮して体力の続く限り農作業、開墾等の重労働のお手伝いをする
「火ならいくらでもありますよ…少し離れてください…」
調理等の火を焚く必要がある作業には【ブレイズフレイム】を調節して使用する
村人と交流して[情報収集]したりしようかな
アドリブ・絡みOK
モルツクルス・ゼーレヴェックス
「はじめましてこんにちは!自分はモルツクルス・ゼーレヴェックス!見ての通り実に普通でありふれたナイスガイっす!お見知りおきを!!」
大声でご挨拶
【学習力】【情報収集】で村の方々の顔色を全力でうかがって媚びへつらい
【礼儀作法】【コミュ力】でご機嫌をとる
『お調子者だ』
『悪いヤツじゃない』
くらいに思ってもらえれば十分
真剣に叫んだ時に深刻さが伝わるよう
「実は実は実話っすけども、自分、一流魔術師でもあるんすよ!」
ちちんぷいぷい杖を振り、地面を波打たせる【物質変換】
「どーっすかこのスッゲエ魔術!……のわ!?」
変換し過ぎた地面に足をとられてスッ転ぶ【パフォーマンス】
滑稽芸はお手のもの
「はーっはっはっはっす!」
望月・鼎
ふっふっふ、私のコミュ力を侮ってもらっては困りますね!
仲良くなるのはお手の物ですよ!
皆さんこんにちはー♪
色々と工夫しつつ今有る材料で、保存が利いて持ち運びやすい料理を作ります!
味見してもらって美味しさを伝えた所で囁き戦術です!
「万が一村を襲いに来た時の為に避難してみませんか?」
ただ避難と言えば渋るかもしれませんが、美味しいご飯を持ってのピクニック感覚なら皆さん抵抗は少ないと思います!
将来本当に来た時の練習、今回はお試しピクニック、となれば危機感が薄くても乗ってくる筈です!
不安を煽るよりもイベントとした方が動き易いですからね!
あ、イラナイツの皆さんには村を回ってもらって雑用をお願いしますかねぇ♪
アマータ・プリムス
信頼を勝ち取ればいいのですね
それなら当機の得意分野です
村の広場へいきアルジェントムからイーリスを取り出し【武器改造】でアンプに変形させ接続
「今日の会場はここですね。どうぞ皆様聞き入ってくださいませ」
イーリスを【楽器演奏】、今回の曲目は村人が聞き慣れていないロックでいきましょう
興味を惹かれて聞いて下さる筈です
そのままUCを発動して【歌唱】曲を聞きに集まった村人の活力を回復
村人たちを盛り上げてどんどんノっていただきましょう
そうすれば他の方もいろいろとやりやすいはず
「Hey! Rock 'n' Roll!」
少々盛り上げ過ぎてしまうかもしれませんがそれも音楽の力です
諦めて盛り上がるとしましょう
リミティア・スカイクラッド
【WIZ】
危機感に欠け能天気ということは、それだけこの村が平穏である証でしょう
病とオブリビオンなどに踏みにじらせる訳にはいきませんね
さて、彼らの信頼を得る手段ですか
リムに出来ることで、彼らを喜ばせられそうなことと言えば〈料理〉ですね
旅人に扮し、宿をお借りするお礼という名目で振舞ってみましょう
「リムの故郷の料理です。どうぞご賞味ください」
作るのは装備品にもある「桜餅」と、「黄金の林檎」を使用したアップルパイの二品
食糧事情が比較的安定した村でも、甘味や菓子は希少品でしょう
あとは影の追跡者を召喚し、村内と周辺地形の〈情報収集〉
住民の避難経路を策定し、敵がどこから来ても即応できるよう備えましょう
草壁・那由他
どうやらダークセイヴァーとしてはなかなか環境のよさそうな所ですね。
そのぶん、しっかりやれば大きな問題にも発展しない、はず。
と言っても私は荒事はともかく、芸とかあんまりできないんですよね。
話を聞いたりするのは得意だと思うのですけど。
いいえ。料理とかします!地道にいろいろやります!
狩猟や力仕事も出来ると思うけど、私は小柄なので鼻で笑われそう。
差し支えがなければいろいろ話を聞いてみたいです。
聞き上手になりたい。
ここにはどのような神様がいるのですか?
神様はどこにいるのですか?
天上の世界ですか?私たちの心の中ですか?
神様は何をお恵みになるのですか?
リーヴァルディ・カーライル
…ん。危機感に欠ける、能天気な所がある…か。
そんな幸せな村が、この世界にもまだあったのね…。
彼らの幸いを護る為にも疫病楽団は必ず倒さないと…。
…今回は湖から十分な食料が獲れるから
大量の保存食を使った誘惑は効果が薄い…かな?
だから私は村人を治療して地道に信頼を築こう
旅人に変装して礼儀作法に則り挨拶をした後、一晩の宿を求める
返礼に傷病者がいたら治療すると告げ、患者の元へ案内してもらう
救助活動の知識と第六感を頼りに症状を見切り、
両目に魔力を溜め強化した暗視で患部を探った後、
患者に説明し了承を得てから【限定解放・血の聖杯】を使用する
…私は聖者でも天使でも無い。
それより、他に怪我人や病人はいない…?
瓜生・コウ
隊伍を組んで粛々と移動しないと取りこぼすし最悪パニックにもなる、どこに逃がすかは事前に猟兵たちで話し合っておくべきかもな。
場所が決まったら下見が要るだろう、危険な動物はいないか、子供の足でも歩ける道のりか。
村での身分は旅の薬師だ、魔女術に使う薬草や軟膏は持っているので真似事くらいはできる。風邪薬や痛み止めくらいは処方して、子供たちには甘みのある草と食べ方を教えてやったり、災厄の噂と、それがやってきた時の避難についても話したりしておきながら時を待とう。
「疾病楽団」がやってきたら下見の通りに、村人を避難させる。しかし猟兵は「楽団」と戦うのが使命だ、避難誘導を引き継げるヤツがいればいいんだが。
●畑を耕す剣士たち
湖畔の町をひょこひょことアホ毛を揺らし、旅人に扮した一人の少女が歩いていく。石造りの街並みを興味深そうに眺めながら、何気ない日常を過ごす村人とすれ違っていく。これから疾病楽団に襲われるかもしれないなんて全く思っていない、どこか能天気な村人たち。
私たちからすれば彼らは能天気ですが、本当ならこういう平和に生きる人達が多くいることが望ましいところですね。なんてことを思いつつ、アリア・ヴェルフォード(謎の剣士X・f10811)は村はずれの畑に向かって歩いていく。
ダークセイヴァーはオブリビオンに負けた世界だ。当たり前の平和なんてものはどこにもなく、誰もがオブリビオンを…ヴァンパイアを恐れてびくびくしながら毎日を過ごしている。こういった質素ながらも平和な村は本当に貴重なのだ。だからこそ、しっかりと守らないといけないなとアリアは思う。
避難誘導をするにはまずは信頼関係づくりから。そう思ったアリアは早速行動に移る。
「こんにちはー!お父さんたち何をしているんですかー?」
アリアは人懐っこい笑みを浮かべて畑作業をする中年くらいの夫婦に手を振りながら声をかける。
「こんにちは。元気なお嬢さん、見ない顔だね。」
鍬をもって畑を耕していた中年の男が畑を耕す手を止めてアリアに応える。
「初めまして、旅人のアリアです。」
にこっと笑みを浮かべながら簡単な自己紹介をする。
「旅人さんかい?珍しいね。あたしは初めてみたよ。ねえ、あんた。」
「確かに俺も初めて見たなぁ。」
農家夫婦は顔を見合わせながら珍しい物を見たなぁという顔をする。
そんな夫婦の様子を気にも留めず、まっさらな畑をみてアリアが尋ねる。
「これから何か育てるんですか?」
「ああ、春小麦の種まきだ。今から種をまいて、夏を超えて、秋になったら収穫だ。」
これから先の収穫に思いを馳せながら、農家の男が答える。
「へえ‥小麦の種蒔きですか。大変そうですねー。ちょっとお手伝させてもらってもいいですか?」
「いや、外から来たお客さんに畑仕事やってもらうってなぁ…。」
「お手伝いって、可愛いお嬢ちゃん。力仕事だよ、大丈夫かい?」
見た目が華奢な少女であるアリアを心配する中年夫婦の心配をよそに、高いコミュ力を持つアリアはどんどん話を進めていく。
「大丈夫です。こう見えても力持ちですから。任せてください。」
右手をまげて力こぶをつくるようなポーズをしつつ、アリアは笑顔で話しかける。
「旅人さんには親切にしろと言われているんだけどねぇ…」
「まあでも折角やってくれるって言うのに断るのも悪いしなぁ。」
すっかりとアリアのペースに巻き込まれた農民夫婦は、アリアに鍬を渡し、一緒に畑作業をすることに決めた。
するとそこにもう一人の猟兵が現れる。
「私も手伝う…。」
畑作業を始める3人に向け、仇死原・アンナ(炎獄の執行人・f09978)が少しぼんやりとした口調で話しかける。
村の未来を救う為にも、まずは身近な人助けからだね…。そう思ったアンナは、住民たちと一緒に泥にまみれ、働くことを選んだ。
「おやまぁ、大層な美人さんだぁ。あんたも畑手伝ってくれるだか?」
長身のアンナを見上げるようにして、中年の女は疑問を投げかける。
「力仕事なら任せて…」
ぼんやりとした口調のままだが任せて欲しいと言うアンナ。
「おおー、それは頼もしいですね。是非是非お願いします。」
思わぬ猟兵の助っ人をアリアは笑顔で迎え入れる。猟兵1人で100人力。2人力を合わせればどれだけ作業が進むだろうか。
かくして中年夫婦に猟兵2人を加えた4人は春小麦の種蒔きに向けて動き出した。
春小麦の種蒔きは重労働だ。幅60から70cmの間隔で、高さ約10cmの土を直線状に盛って畝を作り、そこに10cm間隔で深さ数cmの穴をあけ、2、3粒ずつ種子を入れ、パラパラと土を被せる。筋蒔きという農法でこの村では小麦を育てる。畝づくりは力を使う重労働で、筋蒔きは、非常に根気のいる作業だ。長時間屈みながら作業をすることになり、腰への負担が非常に大きい。
そんな重労働を猟兵2人は役割分担をすることで素早く仕事を進めていた。アンナが持ち前の怪力を活かし、畝を作って行くとアリアが目にもとまらぬ早業で等間隔に穴を開け、そこに種を蒔いていく。後は中年夫婦が開いた穴にそっとやさしく土を被せれば作業終了だ。
猟兵たちの活躍もあり、まっ平だった畑には次々と畝が刻まれ、種が蒔かれていく。そんな凄まじい状況を見た他の農民たちがもの珍しい物を見るようにどんどん集まってくる。
「俺達の畑も手伝ってくれ!」
「オラの所も!」
どんどんと手伝ってくれと挙がる手に思わずアリアとアンナは顔を見合わせる。
「猟兵の仕事も楽じゃないけど、これはこれで大変だ…はぁ…」
「あははは、ですねー。」
ため息をつくアンナと乾いた笑いをするアリア。2人は覚悟を決めると、次の畑を手伝うために歩き出した。
●神速の狩人
朝の大通りには多くの人が何気ない日常を過ごしていた。これから仕事があるからと速足に歩くもの、旦那の愚痴を肴に通りで談笑する女たちに、何か面白い事はないかと駆けずり回る子どもたち。誰もがみんな当たり前に明日が来ると思っていて、今夜疾病楽団が騒音と共に死病を届けに来るなんてことは露程にも思っていない。
まあ、知らない事に対して何とかしろ……だなんて土台無理な話だろうしね。それが今まで平和だったなら尚のこと、平和に日常を過ごす住民たちを横目に見ながらフロッシュ・フェローチェス(疾咬の神速者・f04767)は、大通りを過ぎ去っていく。住民たちはこれから起こる悲劇を何も知らない。知っているのは予知をしたグリモア猟兵と彼女から依頼を受けた猟兵のみ。だからこそ、彼女は考え行動する。彼女ができることの中で、事態を円滑に進められるようなことを。
フロッシュが選んだ手段は狩猟だった。村の裏手にある山は碌な手入れがされておらず歩きにくいことこの上なかったが、サバイバル好きなフロッシュにとっては然したる問題もなく、手慣れた手つきで藪を払い、道を切り開いていく。
事前に情報収集していた食べられる春の野草を摘み、ホロデバイスゴーグルに記録をしていく。毒のある植物を摘むなんてヘマはしない。
野生の勘に任せしばらく歩いていると、背の低い植物が踏みつぶされて潰れているのが見つかった。動物の通った痕跡だろう。
それを見つけた後のフロッシュの行動は早かった。動物の歩いた道を見切り、足跡を追跡。動物にその存在を気取られることのないように慎重かつ素早く、距離を詰めていく。時間にして1分か2分もしないうちに彼女は獲物を発見した。それは立派な角をした鹿だった。
フロッシュは可能性魔導核を搭載した三連散弾銃型のガジェット、「刻天炉」素早くを取り出すと、アタッチメントをつけ、穿銃形態に変形させる。そして態と外れるように狙いをつけて引き金を引いた。
炸裂音がして一条の線が宙を走り、傍にあった木がメキリと音を立てて倒れていく。突然のことにビクッとなった鹿は急いで逃げようと大きな蹄で大地を蹴ろうとする。しかし、その頃には既に手遅れだった。
残像すら置き去りにした緑の影が、木々の間から飛び出し小さな頭を踏みつける。突然の衝撃に何が起こったのかも分からないまま、牡鹿は意識を失いそして絶命した。
「よし、狩猟完了。後は解体だ。」
フロッシュは沢へ移動すると素早く狩猟した鹿の解体へと移る。心臓付近の頸動脈にナイフを刺して放血。十分に血を抜いた後に沢の冷水で鹿全体を洗い清め、内臓を抜いていく。内臓に異常がないのを確認すると沢の冷水で内臓を取った鹿を冷やし、体温を下げていく。ここまではスピード勝負だ。内臓を残したまま高い体温の状態で置いておくと肉質はどんどん劣化していく。
「ふう…ここまでくればひと段落だ。」
鹿の解体もひと段落つき、フロッシュはほっと一息をつく。背筋を伸ばし、凝り固まった筋肉をほぐすようにストレッチをしながら周囲を見渡す。
沢の水は透き通り薄暗い空を映し出し、時折川魚が群れを成して泳いでいる。もしも気持ちよく晴れていたら絶景な景色だろう。尤も常に薄暗いダークセイヴァーの世界では、どんなに望んでも見られない光景ではあるのだが…。
「折角だし、川魚もお土産に持っていくか‥‥」
川魚の群れを見てふと思いついたフロッシュは、サバイバルの経験から魚の集まりやすい場所に立ち、魚の軌道を見切り、目にもとまらぬ早業でバシッと掬いあげる。そして手慣れた手つきえで10匹くらい軽く掬い上げると、下処理をして沢の水で冷やす。
「さて、解体の続きをするか…」
気晴らしの魚とりを終え解体を続けるフロッシュ。手慣れた皮を剥ぎ、部位ごとに体を分解して肉のブロックに切り分けていく。丁寧に下処理された鹿肉には綺麗な赤身で淡白ながらも濃いうま味があり、鹿の毛皮は防寒着から交易品になる優れモノだ。さらにお土産として川魚に食べられる野草。十分すぎるほどの成果を手に、フロッシュは湖畔の村へと足を向けた。
●お菓子の魔女
湖畔の村に甘い匂いを漂わせているのは、リミティア・スカイクラッド(人間の精霊術士・f08099)だ。
旅人に扮したリミティアは、一宿一飯の恩義として持ち込んできた黄金の林檎と食材を使って甘くて美味しいアップルパイを焼いていた。
バターをふんだんに使ったパイ生地がやける香ばしい匂いに、林檎の爽やかな甘酸っぱい匂いの合わさったとってもお腹の空く幸せな匂いが煙突を通して周囲に広がっていく。
その匂いに釣られた村人が何事かと、リミティアが宿にした民家に集まっていく。
「リムの故郷の料理を焼いています。焼きあがるまでの間、こちらをどうぞ。」
そういってリミティアはアップルパイを焼いている間に作っていた桜餅を振る舞う。仄かに香る桜の香りがついたもちもちとした生地の中には上品な甘さの餡子が詰まっており、頬張ると口いっぱいに桜の香りと餡子の甘さが広がっていく。それを塩味の効いた桜の葉がバシッと締める。甘味と塩味の絶妙なバランスの桜餅は、甘いものを滅多に食べることができない住民たちの胃袋と心を鷲掴みにした。
「わぁ…甘くて美味しい。」
「こんな美味しい物初めて食べたよ。」
「おねえちゃん、これとっても美味しいね。」
初めての甘味に目を輝かせ、美味しそうに舌鼓を打つ村人たちを見ているとリミティアの頬も自然とと緩む。
「喜んでいただけて何よりです。」
竈から香るバターと林檎の香りが強くなり、そろそろ絶妙な焼き加減であることを告げる。Magi-Phoneを見て時間を確認したリミティアは、竈からアップルパイを取り出す。
濃厚なバターと甘酸っぱいリンゴの香りが周囲に広がり、その匂いを嗅いだもののお腹を鳴らす。バターをたっぷり使った格子状のパイ生地は美味しそうなきつね色に焼き上げられており、その合間から見える大きめに切られた黄金の林檎はとろとろとした金色の果実を覗かせる。
「うん、上手に焼けたみたいですね。」
ザクザクとパイを切り分けながら、リミティアは会心の出来を確信する。切り分けることでパイの香りはさらに周囲を満たしていく。
「リムの故郷の料理、黄金の林檎のアップルパイです。熱いので火傷しないように食べてくださいね。」
切り分けられたアップルパイにふーふーと息を吹きかけて冷ましながら齧りつく。サクッとした焼けたパイ生地からは濃厚なバターの香りがして、熱々とろとろの黄金の林檎は酸味と甘みのバランスが絶妙で爽やかな果実の香りが口一杯に広がる。
絶品のアップルパイに舌鼓を打ち、幸せそうにしている住民を見ながらリミティアは改めて思う。ダークセイヴァーの世界にあるのにこの村は本当に村が平穏なのだと。
「ありがとう、美味しかったよ。お菓子のおねえちゃん!」
5歳くらいの幼い少女はあどけない笑顔をリミティアにお礼を言う。
「どういたしまして。喜んでくれてリムも嬉しいです。」
柔らかな笑みを向けながらリミティアは少女の頭をなでる。
「えへへー」
リミティアに頭を撫でられた少女は少し照れたように笑いながら嬉しそうに目を細める。
そうこうしているうちに、村人たちはみるみる内にアップルパイを平らげていく。
村人たちは美味しい桜餅とアップルパイのお礼を言うと、一人、また一人と日常に戻っていく。
「素朴だけどいい人達でしたね、だからこそ、病とオブリビオンなどに踏みにじらせる訳にはいきませんね。」
決意を新たにリミティアはUC≪影の追跡者の召喚≫を発動。自身と五感を共有する影の追跡者に村の周辺地形の〈情報収集〉を命じ、自身も町へ繰り出していくのであった。
●医師の居ない村
村人に先導されて2人の猟兵が村の外れにある集落を目指して歩いていく。一人は漆黒のローブを身に纏ったダンピールの少女、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)、もう一人はジャケットを羽織った人間の少女、瓜生・コウ(善き力の助力者/グッドフェロウ・f07693)。
2人は共に旅人に扮して村に入り、一宿一飯の恩として村人の治療を買って出た猟兵たちだ。リーヴァルディは、救助活動の知識を使っての傷病者の治療。コウは旅の薬師として魔女術で使う軟膏や薬草を使っての治療や風邪薬、痛み止めの処方を行う。
案内をするのは村長の息子の青年だ。彼は焼いたパンと幾ばくかの食料を麻の袋に入れて抱えながら歩いていく。
「いやぁ…まさか旅の薬師の方々が来てくれるとは…本当に助かります。」
2人の方に向き直りながら青年が話しかける。
「…ん、構わない。こちらも一晩泊めてもらったから。しかし…この村は本当に平和だね。」
「おかげさまで、何とかやっています。近くに湖がありますからいざという時は魚を捕りに行くこともできますし。」
リーヴァルディの言葉に青年は笑顔で答える。
「確かに。ここまで平和な村はこの世界では珍しいな。」
「おや、そうなのですか。この村は、滅多に外から人が来てくれませんからね。外のことを教えていただけるとすごく助かります。」
コウの言葉に対して青年は興味深げに声あげる。
「…外では吸血鬼が復活して領主となって人々を苦しめている所もある…。」
「そうなのですか…。それを考えると私たちは恵まれていますね。」
リーヴァルディの語る外での現実に対して青年は少し顔曇らせながら改めて自分たちの立場を実感する。
「しかし、どうしてこの村には外から人が来ないんだ?」
「辺鄙な所にありますからね。父が言うには存在を忘れ去られているのではないかとか、もうとっくの昔に滅びたんじゃないかって思われているのではないかって…。」
コウの疑問に対して青年は父から聞いた話を思い出しながら答える。
「昔は近場の村と交易をしていたらしいのですが、怨霊騒ぎが起きた時に馬車が全滅してしまい…それっきりに。」
今では数年に1人誰かが訪れればいいくらいのレベルだと青年は言う。
「…でも、悪いことばかりじゃない。誰も知らないからこそ、吸血鬼には気づかれなかったのだと思う…。」
「ああ、確かにそういうこともあるのか。」
リーヴァルディの言葉にコウは納得したような声をあげる。そう、これこそがこの村が生き残った真実である。誰も知らないが故に誰の口からもその存在が割れることなく、吸血鬼の耳にはここの村の情報が入ることはない。例え近場の村を吸血鬼が占拠したとしても、記録上滅んでいて、人の交流がない村を態々探して占領下に置くなんてことはしない。
「成程、人が来なくて困っていたのですが、それが却って良かったなんてこともあるんですね…。」
人が来ず、外の情報が流れてこない、そんなことに頭を悩ませていた青年は感心したような声を上げる。
「…で、人が来ないことによって起こる困りごとって何だ?」
人が来なくて困っていたという言葉に耳聡く反応をしたコウは青年に尋ねる。
「…医者が居ないんです。」
●血の聖杯・魔女の薬
しばらく歩いていくと村の外れにぽつんと5軒の民家が立っていた。周囲にはその3軒以外何もなく、どこか排除されているような雰囲気を感じる。
「ここが傷病者やその世話をする家族が暮らす家になっています。」
5軒の家を指さしながら青年は説明をする。曰く、これは医者の居ない湖畔の村が生き残る為の苦肉の策であると。医者の居ないこの村では風邪と死病の判断がつかない。もし万が一に感染症でも流行ろうものなら全滅は必至だ。だからこそ、隔離をする。症状が重かろうが軽かろうが、大人だろうが子どもだろうが病気になった人はこの集落に集めて、そこで暮らしてもらう。そうすることで病気が蔓延するリスクを少しでも減らす。
「…合理的だね。でもそれだけじゃない…」
「村の都合でこんな外れで暮らしてもらいますからね、食べ物くらいはこちらで用意します。」
青年の抱える麻袋に目を向けながらリーヴァルディは言う。
「でも…それくらいしかできません。」
「まあ、誰も彼も救えるなんてことはない。こんな世界じゃ尚更だ。でも、オレ達に出来ることならやってやるさ。」
そう言うとコウは1軒目の扉を開いた。
1軒目の家には2組の家族が生活をしていた。大型の獣に足を噛まれたらしい男性とその妻、ゲホゲホと咳をする子どもを見ている母親。
リーヴァルディとコウは手分けして治療にあたることにした。重傷者の方はリーヴァルディが、子どもの方はコウが対応をすることになった。
リーヴァルディは、男性の足の包帯を外し救助活動の知識と第六感を頼りに症状を見切り、両目に魔力を溜め強化した暗視で患部を探る。男性の足には大型の獣の歯形がくっきりと残っており、そこから血が滲みだし、一部が膿んでいた。
大型の獣…でもこのタイプの獣だと毒や狂犬病の類はなさそうね。嫌な予感もしないし、無事に治せそう…。そう見立てたリーヴァルディはUCを使った治療を男性に提案する。最初は困惑した男性も直ぐに足が治るならば…と納得する。
「……限定解放。傷ついた者に救いを…血の聖杯。」
瞬間的に吸血鬼化したリーヴァルディは、生命力を凝縮した血液を1滴、男性の足の傷口に垂らす。傷口から入ったリーヴァルディの血液は、その生命力を持って男性の治癒力を賦活し、みるみるうちに傷口を塞いでいく。
紅の奇跡を目の当たりにした男性とその妻はリーヴァルディを聖者や天使のようにたたえるが、彼女は首を振って否定する。
「…私は聖者でも天使でも無い。それでは、御大事に…」
治療を終えたリーヴァルディは感謝をする男性とその妻に背を向けて次の患者が居る2件目の家へ移動を始めた。
一方、コウは子どもの診察を始めた。医術の知識を持って子どもとその母親から聞いた症状や診察して調べた情報から原因を分析していく。
「咳に鼻水に軽く熱があるな。関節が痛いとかそういう事もないみたいだし、風邪だな。この薬を飲んで暖かくしていれば良くなるだろう。」
オレの知識でも何とか対応できる範囲でよかったと、思いつつ。魔女の薬箱から風邪薬を処方する。さらに子ども向けに栄養のある甘い草とその食べ方を教えてあげた。
そして何度もお礼の言葉を伝える母親に対して、災厄についての噂を伝えると1軒目の家を後にして次の家に向かった。
●みこみこと箒の魔法使い
湖畔の村の大通りを2人の少女が歩いていく。
一人は望月・鼎(宵闇の寵児・f02401)。愛用の脇巫女服に身を包んだ本人曰く正統派の巫女。左目の上の一房だけ、緑色に変色している髪が特徴的。
もう一人は、草壁・那由他(夜空翔る魔法使い・f09425)。ゴスロリ服に身を包んだ可愛らしいツインテールの魔法使いの少女。
「いやー、ダークセイヴァーの世界って大変って聞いたんですけど、ここら辺は割と平和ですねー。ってか、リミティアさんの桜餅絶品ですねー♪」
「ええ、確かに。ダークセイヴァーとしてはなかなか環境のよさそうな所ですね。そのぶん、しっかりやれば大きな問題にも発展しない、はずって、何食べているんですか!?いつの間に…?」
いつの間にか手にしていた桜餅をもっちもちしている鼎に対して那由他は思わずツッコミを入れる。
「いやぁ…さっきイラナイツに頼んでこっしょりと…」
食べます?ともう1つの桜餅を那由多に差し出しつつニコニコとした表情で笑う。
「あ、ありがとうございます。」
差し出された桜餅をぱくりと一口。口いっぱいに桜の香りと餡子の上品な甘さが広がる。
「あ、美味しいです。」
「美味しいですよねー♪これはハードルが上がっちゃいましたねぇ♪」
そんな談笑をしながら2人の少女はとある目的に向けて行動を開始する。そう、料理作りだ。住民たちが避難をするときに食べる色々と工夫しつつ今有る材料で、保存が利いて持ち運びやすい料理。それが今回の彼女達が作るメニューだ。
「まずは、調理道具と調理場の確保からですねぇ♪」
「その後は食材の確保ですね。今日の夜には疾病楽団が来るらしいですし、時間との勝負です。」
「うひゃー、大変だー♪これは急がねば。」
「でも、そう言う割にはイラナイツさんを私用に使っていませんでした?」
鋭いツッコミに対して鼎はヒューヒューと口笛を吹いて誤魔化そうとするが、吹けていない。
「ひゅー、ひゅー。」
「口で言った!?って言うか誤魔化し方下手ですね!?」
「まあ、いいじゃないですか。那由他さんも食べたから共犯です♪それよりもどんどん行きましょう♪レッツ、コミュ力!」
「ああもう、待ってください!」
「皆さんこんにちはー♪」
人生を200m自由形で爆走するミス・マイペースな鼎とそれに振り回される那由他。2人の料理作りの為の準備はドタバタした感じでスタートした。
●会場…温めますか?
昼前の中央広場に一人の学生服を着たオラトリオの青年が現れる。青年の名はモルツクルス・ゼーレヴェックス(自由を飛ぶ天使・f10673)。
「はじめましてこんにちは!自分はモルツクルス・ゼーレヴェックス!見ての通り実に普通でありふれたナイスガイっす!お見知りおきを!!」
いきなり現れて大声で自己紹介を始めるオラトリオの青年に驚いた人達は何事かと続々と集まってくる。
「やあ、やあ続々と集まってくれてありがとうっす!」
人が集まってきたことを確認したモルツクルスは次の行動に移る。内容はズバリ、マシンガンゴマ摺り。
「おじさん、そのシャツ似合っているっすよ。こう男前度がガンガン上がってるっす。」
「お、おう。ありがとな。」
「おねえさんも、そのブローチ素敵っすね。ひょっとして旦那さんからの贈り物っすか?」
「やだ、おねえさんなんて。そうよ、これは昔旦那がプロポーズの時に買ってくれてね‥」
「わー、素敵なエピソードっすね。今度時間があるときにじっくり紅茶でも飲みながら聞きたいっす。」
長くなりそうな話は適度に切り上げつつ、褒める、褒める。語彙力の続く限り、兎に角褒める。心の底から褒められて嫌になる人間は居ない。そんな感じでしゃべり続けること30分、だんだんと認められていき、お調子者だけど悪い奴じゃなさそうだなという雰囲気が醸し出されてきた。
それを感じ取ったモルツクルスは次の行動に移る。
「実は実は実話っすけども、自分、一流魔術師でもあるんすよ!」
魔法の杖を取り出し、おどけた調子で観客たちに魔術師と告げるモルツクルス。
「へぇ~、一流魔術師ねぇ。そんじゃあ、一つ魔法を使ってみなよ。」
「おっ、言ったっすねぇ。それじゃあとっておきの魔法を見せてあげるっすよ。」
観客の反応に内心にやりとしつつ、ちちんぷいぷい杖を振る。
「何の変哲もない地面が、ぐわんぐわんと波打つ感じに・・・」
モルツクルスの放ったUC≪物質変換(アート・オブ・ザ・トランス)≫により杖から放たれた物質変換術式によって石畳はぐわんぐわんとゆれる石畳へと変換される。
「どうっすか。この魔法。」
ぐわんぐわんと揺れる石畳の上に立ちどや顔でアピールをするモルツクルス。初めて見る魔法に度肝を抜かれて観客から声が上がる。
「ふっふっふ、一流魔術師たるこの自分にはこれぐらいよゆ・・・」
急に顔を青くしていくモルツクルスを怪訝な顔で見つめる観客達。
「うぷっ、揺れを強くし過ぎてちょっと酔ったっす!」
白目を剥いた表情になりつつなさけないことを大声で言うモルツクルス。
「何をやってるんだー、早く止めろー。」
観客からワイワイ言われたモルツクルスは、急いで魔法を止めようとするが、揺れる足場に足を取られてひっくり返る。
「あーれーっす!」
大げさにひっくり返ると観客がどっと沸く。その隙に高速詠唱をしたUCで地面を元に戻し何事もなかったように立ち上がる。
そして大きな声で自分の所属する旅団長の名を叫ぶ。
「会場は温めておいたっすよ!!後は任せるっすよ!!アマータ殿!!」
「はい、盛大な前振りありがとうございました。モルツクルス様。」
●止まないアンコール
モルツクルスの滑稽芸で温まった会場に一人の歌姫が現れる。
銀の大型トランク型ガジェットを持ったメイド人形アマータ・プリムス(人形遣いの人形・f03768)が観客の前に現れる。
アマータはアルジェントムからイーリスを取り出すと素早く鋼糸を取り付け調弦。チューニングに狂いがないことを確認すると、それをアンプに変形させたアルジェントムに接続をする。
「皆さんこんにちは。当機はアマータ・プリムスと申します。本日は皆さんと楽しいひと時を過ごすことができたら…と思います。」
これから何が始まるのだろうかざわざわとする観客の前を見渡し、演奏する楽曲を決める。今回の曲目は村人が聞き慣れていないロックでいきましょう。興味を惹かれて聞いて下さる筈です。そう思ったアマータはアルジェントムを弄り、ディストーションのエフェクトを多めにかける。
「どうぞ皆様聞き入ってくださいませ」
鋼鉄のピックが鋼糸の六弦をかき鳴らし、ライブが始まる。歪みのエフェクトが掛かった小気味良いリフのイントロが終わり、アマータの透き通った歌声が響く。
「うおおおお!アマータ殿ぉ!」
「「「おおおー
・・・?」」」
馬鹿みたいに盛り上がる身内一名を除き、当惑するような観客達。まあそれはそうですね、と冷静に思いながらアマータは歌を紡ぐ。観客達はロックの盛り上がり方、ノリ方を知らないのだ。何か格好いい音楽が流れているが、どうすればいいのか分からない。そんな様子だ。ま、それをノセるのが当機の腕なのですがね…とさらに気合を入れてギターをかき鳴らす。
観客達の困惑を置き去りにして曲はAメロ、Bメロと流れサビへと差し掛かる。最初は、どう盛り上がれば分からなかった観客の中に、やたらと楽しそうにしている男の真似をする人が現れだす。音に合わせて首を振り、右手を挙げる。たったそれだけの行動。だけどやってみるとそれが楽しくてたまらない。隣の人間が楽しそうにしていると自分もやってみたくなる。そんな楽しい気持ちの連鎖がアマータの歌を通じて繋がっていく。これがロックの魅力だ。
曲が終わると
「「「「「うおおおおおお」」」」と大歓声と共に拍手が上がる。会場にいる全ての人間が言葉通り一つになり、一つの音を楽しむ。これがライブの楽しみ。
観客の盛り上がりに満足を覚えつつ、アマータは観客に呼びかける。
「Hey! Rock 'n' Roll!」
「「「「「Yeah! Rock 'n' Roll
!」」」」」
「皆さんに盛り上がって頂き、当機も満足です。それでは2曲目、Ars longa, vīta brevis」
「「「「「「うおおおおおおおおお
!!!」」」」」
「キャー、アマータ殿ぉ!」
「アマータさん頑張って下さい。」
「アマータさん素敵です♪」
「わあー!頑張って下さい!あと、鼎様はこっちです。」
「あっ、はい。」
会場にいる知り合いの猟兵の姿も確認しながらアマータは2曲目の歌唱に入る。この曲はUC ≪Ars longa, vīta brevis≫。音楽を聴いて共感したものを癒す癒しの歌だ。
UCの効果で活力をもらった住民たちはさらにノリノリになり、体全体で音楽を感じ表現をしていく。
会場との一体感、嬉しそうな観客の歓声と拍手。それはバンドマンにとっては掛け替えのない宝物だ。お腹の底から嬉しい、楽しいといった気持ちがあふれて、止まらなくなる。この気持ちをまた味わえるなら、難しい曲の練習も苦ではない。そんな嬉しいと楽しいが入り混じった気持ち。表情には出さないものの、そんな満足感をアマータは感じていた。
「本日演奏する楽曲はこれにて終了です。皆様楽しんでいただけましたでしょうか。」
「「「「「イェーイ
!!!!」」」」
「名残惜しいですがこれにて当機のライブは…」
ライブの終了を宣言しようとするアマータに割り込むように観客から声が上がる。
「「「アンコール!アンコール!」」」
まあ、これもライブの約束だ。
「仕方ありませんね、あと1曲だけですよ。」
盛り上げすぎたかな…と少し思ったがこれも音楽の力ですね。諦めましょうと思い直し、イーリスの6弦をかき鳴らし、ノリのいいロックを奏でていく。アンコールはまだしばらく止まらない。
●さあ、ご飯を作ろう。
鼎と那由他の食事の準備は案外すんなりといった。鼎がコミュ力の化け物だったということもあるが、それ以上に街中で雑用をしていたイラナイツの働きが大きい。ちょっとした手伝いをするだけでも信頼感は生れていく。イラナイツの知り合いということで、ちょっと道具を貸して欲しいとか、食べ物を分けて欲しいということを言っても快く引き受けてくれた。
また、那由他も積極的に人の話を聞きながら、人々の協力を得ていた。真摯に話を聞いてくれる。案外それだけでも人間、嬉しくなるものだ。よっぽど、変なお願いじゃなければ、すんなりと聞いてくれた。信心深い所がある那由他は途中、神様のことを聞いてみた。しかし、神様については…ダークセイヴァーの住人はあまりピンと来ていないようだった。ダークセイヴァーの世界の神様というと‥異端の神々が一般的であり、宗教の概念にあるような神様についてはあまりピンと来ない様子だった。
そんなこんなで、調理器具や調理場については確保することが出来た2人。食料については、主食であるパンはなんとか手に入れることが出来たといった感じだ。まだまだ全然足りない。
食材についてどうしようかと悩んでいる2人に、狩猟から帰ってきたフロッシュが声をかける。
「Hello、2人とも。こんなところで何をしているんだ…」
「えっとですねぇ‥実はかくかくしかじかでして。」
「成程ね。じゃあ、これ使いなよ。」
そう言うとフロッシュは先ほどの狩猟で手に入れた鹿肉や川魚、食べられる野草を2人の前に広げる。
「おおー大量ですねぇ♪凄い凄い♪」
「これだけあれば、色々と作れそうですね。」
思わぬ食材に調理担当2人のテンションが上がる。そこへさらに2人。
「畑仕事のお礼にって、大量のお野菜もらっちゃいましたけど、どうします?」
「生野菜で食べるにはちょっと‥‥」
両手一杯に野菜を抱えたアリアとアンナも近くを通りかかる。
「アリアさーん!良い物持っていますねぇ♪」
「おや、鼎さん。こんな所で何を?」
「実はかくかくじかじかでして。」
先程と同じ説明をアリアとアンナにする鼎。
「成程、それは良いですね。」
「料理とかで火を使うなら手伝う…」
かくして、パンに肉に野菜に調理道具一式に、調理施設まで整った。後は調理をするだけだ。
「保存が利いて持ち運びやすい料理ですか。」
「そうですね、冷めても美味しく食べられるものが良いと思います。」
「パンに何か挟むとか…。」
「ああ、それなら持ち運びやすいね。」
食材を眺め、4人の話を聞いていた鼎シェフにみこんとアイディアが浮かぶ。
「鹿肉のローストサンドイッチなんてどうですかねぇ♪焼いたパンに肉の味の濃いロースト鹿肉に、さっぱりとした林檎のサルサが合わさってとっても美味しいですよ♪」
飯テロ巫女のアイディアに皆はうなずくと早速役割分担をして調理にとりかかった。
途中、アマータのライブを見にった鼎を捕獲しに行くという珍事が起こったが、無事に那由他によって捉えられ、何とか昼前までに全ての作業を終了することが出来た。
●作戦会議
各々の方法で住民たちの信頼を勝ち取った猟兵たち。楽しい時間はこれにて終了。ここからはオブリビオンとの血を血で洗う決戦となる。その為にはまず住民を避難させなければならない。10人の猟兵たちは一度集まり、フロッシュがとった川魚を昼食に食べ、情報共有と住民避難についての作戦会議を行うことにした。
「とりあえずは当初の目的通り、住民からの信頼は得られたかと思います。そこで行動を次の段階、避難の方に移したいと思いますが、何か情報はありますか?」
進行役を買って出たアマータが最初の議題を挙げる。
「…農家の人から聞いたんだけど…村の裏手に昔の人が掘った壕があるんだって。」
「それについては、リムも把握しています。≪影の追跡者の召喚≫で周囲を探索した際にそれらしき穴を発見しました。」
「鹿を取りに行った時に確かそんなの見た気がするな…」
アンナが農家たちから聞いた情報を挙げるとリミティアとフロッシュが補足をする。
「絵里香さんが予知したのは鬼火を引き連れた亡霊でしたよね。空を飛んでいる敵相手なら地下の方が安全かもしれません。」
アリアがグリモアの予知した敵の情報を思い出し、意見の補強をする。
「避難先は地下壕で異論はありませんね。」
アマータの決定に全員がうなずく。
「避難先としては異論はない。が、色々と心配なことはある。下見が要るだろう、危険な動物はいないか、子供の足でも歩ける道のりか。」
「まあ確かに、避難した先に別の怪物がいるなんてなったら洒落にならないっすからね。下見は必要だと思うっす。」
コウの疑問に対してモルツクルスが同調する。
「そうですね。何人かは下見の班として、避難先の安全確保に務めてもらいましょう。」
「皆さんのお夕飯についてはばっちりお任せ下さいな♪」
「はい、沢山作りました!」
下見に行くことが決定し、鼎と那由他、アリア、アンナ、フロッシュの活躍で食糧問題については解決。
「他に気になることはありますか?」
「…村の外れに傷病者とその家族が隔離されて住んでいる…。怪我人は治したけど病人はまだ残っている…。」
「ああ、あそこに住んでいる人たちも忘れずに避難させんといかんな。幸い大きい病気をしているやつはおらん。壕の中で一緒に居ても問題ないさ。そのことは村長の息子の青年が良く知っている。一緒に避難させても問題は起きないだろうさ。」
「成程、それは忘れないように避難させければなりませんね。」
リーヴァルディが外れの傷病者について触れ、コウが補足をする。
「他に何かありますでしょうか‥‥」
アマータの最終確認に全員が首を振る。やれることだけはやった。後は行動に移すのみ。
「それでは、下見班は避難先の安全確保を、それ以外の型は午前中に出会った方々への避難誘導をお願い致します。」
アリアとアンナは農家たちに、リミティアはお菓子を振る舞った人々に、鼎と那由他は調理器具を借りに行った人、モルツクルスとアマータは広場で会った人たちに。そしてリーヴァルディとコウは村長の息子の青年に離れの人達のことを任せて、先に裏手の山に入って土地勘のあるフロッシュと一緒に下見兼安全確保に向かった。
住民たちは最初は疑問に思ったがこの人達が言う事ならば信じられると猟兵を信頼し子快く避難誘導に応じてくれた。また、避難先の壕についてもこれといった問題はなく、避難を始めて3時間程度で全員を収容することが出来た。
後は、騒音と共にやってくる疾病楽団を倒すだけ。猟兵たちはロースト鹿サンドで英気を養いつつ、疾病楽団の来る夜を待つことにした。
大成功
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第2章 集団戦
『残影』
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POW : 怨恨の炎
レベル×1個の【復讐に燃える炎の魂】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
SPD : 同化への意思
【憐憫】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【異形の肉塊】から、高命中力の【絡みつく傷だらけの手】を飛ばす。
WIZ : 潰えた希望の果て
【悲観に満ちた絶叫】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
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●疾病楽団来る。
日が沈み、夜の帳が降りて空に丸い月が輝きだした頃、湖の方からガチャガチャと何かをかき鳴らす、あるいは叩くような音が聞こえる。
ギィギィ、ガチャガチャ、カンカン、ヒューヒュー、ギィギィ!ガチャガチャ!カンカン!ヒューヒュー!段々と大きくなる騒音と共に夜空に無数の怨恨の炎が揺らめく。
耳障りな不協和音の大合奏を引き連れて、死病の担い手がやってくる。壊れた楽器をかき鳴らし、思い思いの恨みを口にしながら平穏を壊す者たちがやってくる。
死霊の中の誰かが調子はずれな唄を口ずさむ。
「私達は疾病楽団。怪物どもに殺された、愛された誰かのなれの果て。だれも望んでいないのに、こんな姿にさせられて。死病を運ぶ嫌われ者。」
耳障りな騒音はさらに大きくなっていく。
「私達は疾病楽団。壊れた楽器をかき鳴らし、誰かの平和を壊すもの。」
死霊たちは猟兵の守る壕に向けて足並みバラバラに殺到していく。死霊一体一体が村人たちを鏖殺する死病を抱えている。1体も通すわけにはいかない。
一緒に楽しい時を過ごした湖畔の村の人々を守るため、猟兵たちは防衛戦を開始するのであった。
望月・鼎
いやー無事避難も終わりましたね♪
早速迎え撃ちますよー!(もぐもぐ)
さて、怨霊が相手なら私の出番ですね!
なにせ巫女ですから!巫女ですから!!
破魔にお祓い悪鬼調伏はお手の物ですよーぅ♪
この手合いは問答無用、泣き叫ぼうが縋り付こうが気にせずべしべしヤっちゃいましょう♪
「控えい控えーい!」(両刃剣ぶんぶん)
振り回しながら自分でブォンブォン言うのはご愛嬌です!
数は多そうなので先陣切って戦うのは皆さんにお任せしましょう!
私は中~近距離で【朧薙】を飛ばして牽制と遊撃、数が多くて面倒そうな人の所に援護に入ります!
こう見えて鼓舞も得意ですからね、頑張りましょー♪
【アドリブ・共闘・その他諸々OK】
ボーリャ・コータス
ちょっと出遅れたけど、なんとか間に合ったかしら。
せっかく村人さんたちも避難できたみたいだし、
村にもできるだけ被害出さない方向でいきたいわね。
できるだけ大人数を巻き込める位置取りを意識して
紫電疾駆で攻撃します。
全力魔法22、属性攻撃20、高速詠唱15を火力につぎ込み
第六感14、世界知識13、学習力7、情報収集3で弱点を探りつつ
2回攻撃3でダメ押しします。
適宜殺気3、時間稼ぎ6、呪詛4などでターゲットコントロール、
あと祈り3で大成功を祈っておきます。
火力と削りならまかせてちょうだい。
そのかわり、後始末はお願いするわね
アマータ・プリムス
音楽とは誰かに幸いをもたらすものです
だから貴方たちが楽団などと当機は絶対に認めませんよ
アルジェントムを【武器改造】でアンプへ変形
イーリスを接続し【楽器演奏】と共に【歌唱】開始
《Facta, non verba》を発動し皆様へバフを施し戦闘準備
「望んでいないというのなら当機たちが解放してさしあげましょう」
先程までのロックとは違い今回の曲は死霊を送る鎮魂歌
不協和音の大合奏すら飲みこんで歌い紡ぐ
敵のUCはこちらもUCを発動して逆位相の音を当てて打ち消します
「貴方たちの悲しみも当機が消してみせます」
戦闘が終わっても歌い続け哀しき死霊を空へと送り届けましょう
「……次はきっと望まれたお姿に」
●鎮魂歌の響く戦場
「いやー無事避難も終わりましたね♪早速迎え撃ちますよー!」
迎え撃つと言いながら、昼間に皆で作り上げたロースト鹿サンドをもぐもぐとしているのは望月・鼎(宵闇の寵児・f02401)だ。腹が減っては戦ができぬと言う言葉もあるように、何かをする前にはエネルギー補給が必要だ。一見マイペースに見える行動も彼女なりの戦闘準備なのだろう。
「うまー♪」
いや、やっぱりマイペースなのかもしれない。
そこに新たに転移してきた猟兵が現れる。
「ちょっと出遅れたけど、なんとか間に合ったかしら。」
紫色のウェーブヘアを揺らし、周囲を見渡してまだ戦闘が始まっていないことを確認した、ボーリャ・コータス(極光の17番・f02027)は、少し安心したように息を吐く。すると近くに見知った巫女がもぐもぐと何かを食べている様子を発見する。鼎さんらしいわねぇ…なんてことを思いつつ、彼女に近づき声をかける。
「鼎さん、こんばんはね。状況はどう?」
「ボーリャさんこんばんはーですよぅ♪ばっちりです♪村人たちも皆さん無事に避難完了です!」
「そう、それは良かったわ。せっかく村人さんたちも避難できたみたいだし、村にもできるだけ被害出さない方向でいきたいわね。」
「ですねー♪」
ボーリャの言葉に笑顔で同意をする鼎。一日中駆けずり回って、鍋を借りたり、料理を作ったり、住民たちを避難させたりと大忙しだった湖畔の村。愛着がないと言ったらうそになるだろう。
「さて、怨霊が相手なら私の出番ですね!なにせ巫女ですから!巫女ですから!!」
大事なことなので2回言いましたと、猛烈な巫女アピールをする鼎。
「破魔にお祓い悪鬼調伏はお手の物ですよーぅ♪」
「ふふっ、それは頼もしいわね。火力と削りならまかせてちょうだい。そのかわり、後始末はお願いするわね」
「任されました♪」
気合満々な鼎を見ながら、役割分担を提案するボーリャ。死霊を迎え撃つ準備は万端だ。
「音楽とは誰かに幸いをもたらすものです。だから貴方たちが楽団などと当機は絶対に認めませんよ。」
昼のライブ会場で見た住民達の笑顔を思い出しながら、アマータ・プリムス(人形遣いの人形・f03768)は、着々と戦闘の準備を進める。
音を楽しむで音楽。それは間違ってもその音で恐怖を喚起させ、追い詰めるのもではない。
手慣れた手つきで銀色のトランク型ガジェット『アルジェントム・エクス・アールカ』をでアンプへ変形させ、『イーリス・カントゥス』を接続する。
「望んでいないというのなら当機たちが解放してさしあげましょう」
奏でるは死者を送る鎮魂歌。死霊たちの不協和音の大合奏すら飲みこんで歌い紡ぐその歌声はユーべルコード≪Facta, non verba≫の効果で歌声に共感するものの戦闘力を高めていく。
戦場に美しく響く鎮魂歌を「いい歌ねぇ」と思いながら、頭の上遙か天高くうごめく残影の群れを観察するボーリャ。その膨大な数に「ちまちま削っても埒が明かないわねぇ」と思う。狙うは一撃必殺で一気に削ること。
事前に調べておいた知識と持ち前の学習力で行動予測。できるだけ大人数を巻き込める位置取りを意識しながら魔法を紡ぐ。
「少し環境変数を変えて……プログラムコード改変」
雷の燃素を結晶化したクリスタルによって、強化された紫の魔方陣に膨大な魔力が注ぎこまれる。
バチバチと紫電を走らせる魔方陣の後ろで片目を瞑り死霊の群れに人差し指を向けるボーリャ。後はタイミングを見計らって撃ち込むのみ。
「アクセス!」
ここだという直感に従い発動したユーべルコード≪紫電疾駆≫により撃ち込まれた合計90本の疾走する紫電。アマータの歌によって強化されたボーリャの全力魔法の一撃は、死霊の群れに直撃すると、その膨大な電力を吐き出し、その怨念ごと存在を焼き尽くし、塵に変えていく。
「もう一発どうぞ。」
高速詠唱からさらにもう90本の疾走する紫電が死霊の群れに直撃する。二度に亘って襲撃する紫電によって、死霊の群れに一時的に穴が開き綺麗な夜空が映りだす。
しかし敵の数は膨大。開いていた穴もすぐさまに埋まり。強力な攻撃をしたボーリャに報いを与えるべく殺到していく。
「じゃ、鼎さんよろしくね。」
「任せて下さい!」
近づいてきた死霊を破魔の力を宿した愛用の両刃剣「朧」で切り捨てる。
この手合いは問答無用、泣き叫ぼうが縋り付こうが気にせずべしべしヤっちゃいましょう♪というのが鼎のスタンスだ。
「控えい控えーい!」
と破魔の力を宿した「朧」を振り回わし、死霊を次々と切り捨てる鼎。振り回しながら自分でブォンブォン言うのはご愛嬌(本人談)。
集団で攻めてくる敵に対しては、破魔の力を宿した両刃剣「朧」を横薙ぎに振り抜き、
「閃!」
ユーべルコード≪朧薙ぎ≫によって生み出されるは破魔の力を宿した90本の斬撃属性の光波。望月のように金色に輝く光波は、宿した聖なる破魔の光で、怨念に満ちた死霊を浄化し、塵に変えていく。
猟兵達の活躍により徐々に数を減らしていく死霊ではあるが、やられっぱなしではない。数を活かして接近し、鼎やボーリャを囲み味方ごと【悲観に満ちた絶叫】に込められた呪詛で攻撃をしようとする。
しかし、それを許すアマータではない
「貴方たちの悲しみも当機が消してみせます。」
死霊たちの放つ甲高い声悲鳴を逆位相の音を打ち消す。アマータのユーべルコード≪Mens agitat molem≫は、その歌声によりユーべルコードを相殺し、打ち消す。
「今です!」
「了解です!閃!」
「ありがとね。アクセス!」
叫んだはずの絶叫が掻き消されて何があったかと呆然とする死霊の元に90本の疾走する紫電と破魔の力を宿した90本の光波が襲いかかる。
「――っ!!!」
声にならない悲鳴を上げて、死霊達は塵となり骸の海に帰っていく。
「……次はきっと望まれたお姿に」
哀しき死霊を空へと送り届けましょうとアマータは鎮魂歌を歌い紡ぎ続ける。
戦場では鼎がちょこちょこと駆けまわしながら、味方を鼓舞し、両刃剣を振るい、破魔の力を宿した光派を生み出し、ボーリャもヘイトコントロールをしながら、90本の疾走する紫電を撃ち込んでいく。
鎮魂歌の響く戦場で月は未だに天高く輝く。戦いはまだ終わらない。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
仇死原・アンナ
悪いが貴様らを通すわけにはいかないんだ…
消え去ってもらおうか…!
鉄塊剣を構えて攻撃態勢に入る
他の同行者と協力
[戦闘知識]を発揮しながら戦闘
鉄塊剣を振り回し[怪力、なぎ払い、2回攻撃]で攻撃
敵からの攻撃は[火炎耐性、呪詛耐性、オーラ防御、武器受け]で防御
「来い!貴様らの怨恨を地獄の炎で浄化してやる!」
[挑発、おびき寄せ]して敵を誘い【ブレイズフレイム】を使用
地獄の炎で怨恨の炎もろとも敵を焼き尽くす
月があんなに輝いている…まだ夜明けは遠い…
戦闘終了後、夜空に輝く月を眺めながらぼんやりとそう思いつつ
アドリブ絡みOK
●月夜に舞うは炎獄の処刑人
「悪いが貴様らを通すわけにはいかないんだ…消え去ってもらおうか…!」
昼間までのぼやっとした口調から打って変わって、死刑執行人と化した仇死原・アンナ(炎獄の執行人・f09978)は、錆色の乙女を構えて攻撃態勢に入る。
仲間たちに壕の入り口を任せ、最前線を担う彼女の周りには鬼火を怪しく揺らめかせた残影達が、無数に展開している。
漆黒のブーツが大地を蹴り、炎獄の鎧の青い炎が夜の闇に青いラインを刻む。残像を生み出すほどの踏み込みで狙うは怨恨の炎を増やし、今にも攻撃をしそうとしている個体。今まで培った戦闘知識から、攻撃の準備をしている個体を即座に見抜いたアンナはそいつから処刑するべく、錆色の乙女を横薙ぎに振り抜く。
恐ろしいほどの怪力によって振るわれた錆色の乙女による炎獄の執行人の一撃は、炎を構えていた個体とその周囲に居た残像を巻き込み、その体を二つに引き裂く。術者を失った鬼火は力を失い何事もなかったように夜の闇に消えていく。
さらに返す刃で先ほど薙ぎ払われた残影達の逆側の一団を怪力によって振るわれた刃で骸の海に返していく。
残影達は距離をとって怨恨の炎で作りだした復讐に燃える炎の魂をアンナに向かって繰り出す。
アンナは錆色の乙女を振るい、青白い怨恨の炎を斬り落としながら距離を詰めていく。
残影達は、小さな炎では埒が明かないと考え、怨恨の炎を重ねて巨大な炎の塊を作りだし、錆色の乙女を振り回しながら迫りくる処刑人に向けて撃ちだす。
迫りくる炎の塊に対してアンナは纏ったオーラを全開にしながら錆色の乙女を突きだす。
青白い炎の塊が剣先に当たり、灼熱の青白い爆炎が上がる。
恐ろしい炎獄の処刑人はこれで退治された。早く村人たちの元に行かなければ、そんな事を考えた残影達の目が驚愕に見開かれる。
「ワタシを殺すには火力が足りない!」
爆炎を突き破り、炎獄の処刑人が錆色の乙女を携えてやって来る。残影達は何とか迎撃しようと炎の塊を生み出そうとするが時すでに遅し。怪力によって振るわれた剣に薙ぎ払われて、骸の海に送還されていく。
残影達の一団を倒したアンナは、錆色の乙女を地面に立てもたれかかるようにして息を整える。
あの恐ろしい敵も疲労は溜まっている。今襲えば倒せるかもしれない。そう思った残影達は怨恨の炎を引き連れアンナに向けて殺到する。
それこそが罠。
「来い!貴様らの怨恨を地獄の炎で浄化してやる!」
ユーべルコード≪ブレイズフレイム≫。アンナの体を切り裂き噴き出す紅蓮の地獄の炎は、怨恨の炎ごと残影達を燃やしていく。それは炎獄の処刑人たるアンナの意思で延々と燃え続ける。
すべての残影が灰になったのを見届けたアンナは、夜空を見上げる。
「月があんなに輝いている…まだ夜明けは遠い…。」
夜空に輝く月を眺めながらぼんやりとそう思いつつ、仲間たちの待つ戦場へ再び戻るのだった。
月が中天から西に少し傾いた戦場に死霊の悲鳴は未だ響く。戦いはまだ終わらない。
成功
🔵🔵🔴
モルツクルス・ゼーレヴェックス
……随分と辛気くさい御嬢様方っす
「汝に告げる。我に触れるな。この言葉は契約である。その是非と善悪を問わず、履行は約束されたもの。……重ねて告げる、我に触れるな」
ある程度近寄って、【魂魄掌握】の詠唱を聴かせる
当然彼女達の絶叫も聴こえる距離
【コミュ力】と【情報収集】でタイミングを読んで最大出力【オーラ防御】で防ぐ
「契約において命ずる」
自分に対する攻撃は、契約違反……代償を払ってもらう
「生前の、楽しい記憶を強く思い出して、一時、恨み辛みを忘れるっす」
残酷な事かもしれない
間違いなくエゴだろう
「さあ、どうするっすか、成仏するなら今のうちっす」
化け物が、化け物のままにこの世を去らなくたって……いいっすよね
アリア・ヴェルフォード
疾病楽団!?
壊れた楽器を演奏するだなんてはた迷惑な連中なんでしょうか!
ここを通すわけにはいきません!
【WIZ】
しかし幽霊となると物理攻撃が効くものなのでしょうか・・・
それに絶叫となると私には防御の術がないですし、これは離れて戦うしかありませんね!
選択したUCを光属性で放つことで浄化してやりましょう!
「集え聖光!カオス・レイ!まとめて強制成仏させてあげますよ!」
基本的には相手の攻撃範囲を【見切って】【ダッシュ】で距離をとりつつUCで応戦。
もし距離を詰められてしまったら光【属性攻撃】による聖剣で攻撃
【オーラ防御】と【見切り】で相手の攻撃に対処します。
●聖光の槍と魂の掌握者
「疾病楽団!?壊れた楽器を演奏するなんて、なんてはた迷惑な連中なんでしょうか!」
不協和音の大合奏に不快感を表しているのは、アリア・ヴェルフォード(謎の剣士X・f10811)。
「ここを通すわけにはいきません!」
聖剣の鞘となっている白片手袋から聖剣Xカリバーを引き抜き、残影の群れに対峙する。残影は、住民達を鏖殺する死病を抱えている。1体でも通せば、壕の中で死病をばらまき、湖畔の村は全滅してしまうだろう。
「しかし幽霊となると物理攻撃が効くものなのでしょうか…それに絶叫となると私には防御の術がないですし、これは離れて戦うしかありませんね!」
怨念の集合である残影の群れには、物理攻撃の効き目が薄いと判断をしたアリアは、ユーべルコードを主軸とした遠距離戦を選択する。
「集え聖光!」
アリアの呼びかけにより空中に聖なる光を放つ120の魔方陣が現れる。
「カオス・レイ!まとめて強制成仏させてあげますよ!」
ユーべルコード≪混沌閃光(カオス・レイ)≫により120本の聖なる光の槍の弾幕が残影の群れを串刺しにしていく。光の槍に貫かれた残影は糸の切れた操り人形のようにぐったりとして、内部から聖なる光に焼かれ、塵となって消滅していく。
仲間をやられた残影の群れは、悲観に満ちた絶叫を上げながら、アリアの元に殺到する。
「っと、来ましたね。一旦退避!」
押し寄せる敵に対して転進!ダッシュで距離を取りながら、敵の攻撃範囲を見切っていく。そして攻撃が出来ると判断をするとユーべルコードで生み出した光属性の魔法の槍を引き撃ちしていく。
しかし、敵の数は膨大だ。いつまでも逃げ切れるものではない。正面に回り込んだ残影が大きな口を開けて悲観に満ちた絶叫を浴びせようとする。
これに対してアリアは、コスモリアクターの防御機能を全開にして聖剣に光を宿し、一息に距離を詰める。光刃一閃!絶叫による呪詛がアリアを蝕む前に光を纏う聖剣が横薙ぎに振るわれると、残影を真っ二つにして骸の海に還していく。
「……随分と辛気くさい御嬢様方っす」
モルツクルス・ゼーレヴェックス(自由を飛ぶ天使・f10673)は、残影達の青白い顔を見ながら思う。
残影はオブリビオンに殺害された者たちが、集合して構成された死霊の集団だ。誰もが望まぬまま殺され、こう成り果ててしまった存在。その表情は、悲嘆、嫉妬、絶望、怒り、そして何もかも擦り切れた無表情。それを辛気くさいと思うのは当然であろう。
そんな残影達を見たモルツクルスは居ても立っても居られなくなり、背中の翼で夜空に舞い、残影達に近づきながらユーべルコードの詠唱に入る。
「汝に告げる。我に触れるな。この言葉は契約である。その是非と善悪を問わず、履行は約束されたもの。……重ねて告げる、我に触れるな」
詠唱されたユーべルコードは、≪魂掌握≫。対象のユーベルコードを防御すると、それを【介してその魂と存在を掌握し、抵抗を封じ】、1度だけ借用できるというものだ。発動をするには一度相手のユーべルコードを受ける必要がある。
持ち前のコミュ力から相手の表情を読み切り、絶叫を放とうとしているタイミングを読み、オーラ防御(改)を発動し、呪詛をガードする。かくして契約はなった。
「契約において命ずる」
モルツクルスに対する攻撃は、契約違反。違反者には代償を。契約の名のもとに魂と存在を掌握したモルツクルスは宣言する。
「生前の、楽しい記憶を強く思い出して、一時、恨み辛みを忘れるっす」
残酷な事かもしれない…間違いなくエゴだろうとモルツクルスは思う。
「「「‥‥…」」」
≪魂掌握≫の効果を受けた残影達は、操者が居なくなった操り人形のように脱力し、ぷかぷかと宙に浮いている。
「さあ、どうするっすか、成仏するなら今のうちっす。」
「「「「‥‥…」」」
残影は何も答えない。疾病楽団という枠組みに組み込まれた彼女達にはそんな自由なんて与えられていない。
ただ…掌握した魂からは幸せな夢の中で終わらせて欲しい…そんな声が聞こえた気がした。
モルツクルスは、下で戦っているアリアに声をかける。
「残影達の動きは止めたっす。アリア殿!トドメを!」
「了解です!集え聖光!カオス・レイ!」
アリアの放つ120本の光属性の魔法の槍が動きを止めた死霊達に終わりを与える。 聖光に焼かれた残影達は塵となって骸の海に還っていく。
「化け物が、化け物のままにこの世を去らなくたって……いいっすよね。」
モルツクルスの独り言は、残影達のかき鳴らす騒音にかき消され、誰の耳にも聞こえることはなかった。
月は傾き、西にさらに進む。戦いはまだ終わらない。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
●残影弔うは勿忘草色の炎
「良い所ですね、ここは」
リミティア・スカイクラッド(人間の精霊術士・f08099)は、今まで出会った人々の笑顔を思い出しながら、改めてそう思う。
初めて食べた桜餅に目を輝かせて、美味しそうに食べてくれた人々や、リミティアをお菓子のおねえちゃんと呼んだあどけない笑顔が可愛らしい小さな女の子。誰も彼もが質素で素朴だがいい人たちだった。
穏やかな暮らしと未来の希望の灯を、絶やすわけにはいきませんと、決意を新たにリミティアは「宝石剣エリクシル」を引き抜く。
「魔女の誇りと使命に賭けて、リムはこの村を守ります」
空を埋め尽くし騒音の大合奏をかき鳴らす残影の群れに赤い宝石で出来た刀身を向けながらリミティアは己に誓う。
「骸には火を、墓には花を」
リミティアが呪文を紡ぐと25個の勿忘草色の炎が顕現する。ユーべルコード≪魔女の火葬≫によって生み出される勿忘草色の炎は、オブリビオンのみ焼却する弔いの炎だ。
リミティアによって放たれた25の勿忘草色の炎は、分散して飛んでいき、死霊を追い立てていく。
残影達は本能的に恐怖を感じて勿忘草色の炎から逃げ惑う。あの炎だけにはあたってはいけないと。リミティアは、勿忘草色の炎を巧みに操り、敵を1つに纏めていく。彼女たちが悲観の絶叫を放てば、同胞を巻き込んでしまうように。
リミティアの思惑通り、ひとまとまりになった反撃の為にユーべルコード≪潰えた希望の果て≫を放つ。味方に当たることも厭わない【悲観に満ちた絶叫】が響く。その声に込められた呪詛は、他の残影を苦しめ、苦しんだ残影はさらに【悲観に満ちた絶叫】を叫ぶ。
「「「「「ああああああああああああああああああああああ
!!!!」」」」」
生への嫉妬、自身への末路への嘆き、こう生きたかったという夢、それが叶わない絶望、もう誰か止めて欲しい。様々な感情がごちゃ混ぜになって複雑に渦巻く悲痛な絶叫は周囲を呪いで満たしていく。
強力な呪詛が猟兵達を襲う。しかし、それは呪詛に耐性を持つ魔女のリミティアを止めるには至らない。
リミティアは、魔女の秘薬を仲間に投げつけて回復させつつ、最後の一撃を与えるべく勿忘草色の炎を1つにしていく。
「何の理由があっての事かは知りませんが、楽団は今夜で解散です」
巨大な勿忘草色の炎が自分たちの放った呪詛で動けなくなった残影達を一纏めに燃やしていく。嫉妬や後悔、絶望も呪いも纏めて弔いの炎は燃やして灰に変えていく。
残影達が灰になり骸の海に帰ったことを見届けると、リミティアは、残った残影の群れを倒すべく、移動を始める。
月が西に沈んでいく戦場に死霊の悲鳴は未だ響く。しかし、朝の足音は少しずつ近づいていく。
リミティア・スカイクラッド
「良い所ですね、ここは」
出会った人々の笑顔を思い出しながら宝石剣を抜いて
穏やかな暮らしと未来の希望の灯を、絶やすわけにはいきません
「魔女の誇りと使命に賭けて、リムはこの村を守ります」
【魔女の火葬】の炎を分散して放ち
残影を追い立て、一箇所に纏まるよう追い込んでいきましょう
彼女たちが悲観の絶叫を放てば、同胞を巻き込んでしまうように
リム自身は「呪詛耐性」でダメージを軽減し【魔女の秘薬】を仲間に投げつけて回復させましょう
敵の追い込みが完了すれば炎を一つに合体させ
巨大な勿忘草色の火球による「属性攻撃」で一掃を狙います
「何の理由があっての事かは知りませんが、楽団は今夜で解散です」
●残影弔うは勿忘草色の炎
「良い所ですね、ここは」
リミティア・スカイクラッド(人間の精霊術士・f08099)は、今まで出会った人々の笑顔を思い出しながら、改めてそう思う。
初めて食べた桜餅に目を輝かせて、美味しそうに食べてくれた人々や、リミティアをお菓子のおねえちゃんと呼んだあどけない笑顔が可愛らしい小さな女の子。誰も彼もが質素で素朴だがいい人たちだった。
穏やかな暮らしと未来の希望の灯を、絶やすわけにはいきませんと、決意を新たにリミティアは「宝石剣エリクシル」を引き抜く。
「魔女の誇りと使命に賭けて、リムはこの村を守ります」
空を埋め尽くし騒音の大合奏をかき鳴らす残影の群れに赤い宝石で出来た刀身を向けながらリミティアは己に誓う。
「骸には火を、墓には花を」
リミティアが呪文を紡ぐと25個の勿忘草色の炎が顕現する。ユーべルコード≪魔女の火葬≫によって生み出される勿忘草色の炎は、オブリビオンのみ焼却する弔いの炎だ。
リミティアによって放たれた25の勿忘草色の炎は、分散して飛んでいき、死霊を追い立てていく。
残影達は本能的に恐怖を感じて勿忘草色の炎から逃げ惑う。あの炎だけにあたってはいかないと。リミティアは、勿忘草色の炎を巧みに操り、敵を1つに纏めていく。彼女たちが悲観の絶叫を放てば、同胞を巻き込んでしまうように。
リミティアの思惑通り、ひとまとまりになった反撃の為にユーべルコード≪潰えた希望の果て≫を放つ。味方に当たることも厭わない【悲観に満ちた絶叫】が響く。その声に込められた呪詛は、他の残影を苦しめ、苦しんだ残影はさらに【悲観に満ちた絶叫】を叫ぶ。
「「「「「ああああああああああああああああああああああ
!!!!」」」」」
生への嫉妬、自身への末路への嘆き、こう生きたかったという夢、それが叶わない絶望、もう誰か止めて欲しい。様々な感情がごちゃ混ぜになって複雑に渦巻く悲痛な絶叫は周囲を呪いで満たしていく。
強力な呪詛が猟兵達を襲う。しかし、それは呪詛に耐性を持つ魔女のリミティアを止めるには至らない。
リミティアは、【魔女の秘薬】を仲間に投げつけて回復させつつ、最後の一撃を与えるべく勿忘草色の炎を1つにしていく。
「何の理由があっての事かは知りませんが、楽団は今夜で解散です」
巨大な勿忘草色の炎が自分たちの放った呪詛で動けなくなった残影達を一纏めに燃やしていく。嫉妬や後悔、絶望も呪いも纏めて弔いの炎は燃やして灰に変えていく。
残影達が灰になり骸の海に帰ったことを見届けると、リミティアは、次の残影の群れを倒すべく、移動を始める。
月が西に沈んでいく戦場に死霊の悲鳴は未だ響く。しかし、朝の足音は少しずつ近づいていく。
成功
🔵🔵🔴
リーヴァルディ・カーライル
…ん。貴女達の境遇に思う所がない訳じゃないけど…。
その無念が人々の今を脅かすならば、是非は無い。
…せめて痛みを感じる間も無く葬送してあげる。
事前に装備類に“忍び足の呪詛”を付与
周囲の第六感に訴え存在感を消すように防具を改造し
気配を遮断し【限定解放・血の魔剣】を二重発動(2回攻撃)
吸血鬼化した生命力を吸収して魔力を溜め黒炎の双剣を召喚
暗視を頼りに敵の行動を見切り、怪力を瞬発力に変え突撃
敵陣を【吸血鬼狩りの業・乱舞の型】の無数の黒炎の魔刃でなぎ払う
殺気を感じたら武器で受け双剣のカウンターを試み、
避けきれない攻撃は呪詛耐性と気合で耐える
…私に呪いの類は効かない。
だけど、その嘆きは確かに聞き届けた…。
●闇夜に溶ける黒騎士
「…ん。貴女達の境遇に思う所がない訳じゃないけど…。その無念が人々の今を脅かすならば、是非は無い。」
不協和音の大合奏と共に死病を運ぶ残霊達。彼女達を排除するべく、黒衣を翻し音も姿もなく疾走するのは、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)だ。
事前の戦闘準備により忍び足の呪詛を付与された装備類からは音が殺され、周囲の第六感に訴え、存在感を消すように改造された漆黒の外套は完全に夜の闇に溶け込んでいた。音も姿もそして気配さえも感知することができない完全なステルスを実現した黒騎士は、己が使命を全うするべく行動をする。灰は灰に、塵は塵に。過去が彼女の前に立ちはだかるのは決して許されない。
「…せめて痛みを感じる間も無く葬送してあげる。」
住民達が避難をしている壕を目指して、無数の残霊たちが楽器をかき鳴らし無数の鬼火を従えて進んでいく。
疾病楽団の役割に従い、村人たちに死病と狂った音色を届けようとする残影達。そんな彼女達の行進は、唐突に終わりを告げる。
「……限定解放。顕現せよ、血の魔剣…!」
何もない場所に二つの赤が輝き、騒音にかき消された誰かの声が響いた気がした。
次の瞬間、壊れたバイオリンをかき鳴らす個体の胸に、黒炎の剣が突き刺さる。驚愕に眼を剥く残影が、魔剣を抜こうとするも、そこから過去を世界の外側に排出する黒い炎が吹き出し、みるみる内に全身に広がり焼き尽くし跡形もなく消滅していく。
「―――ッ!!!」
隣にいた奴が何者かの襲撃を受けて焼却された。その事実を叫ぼうとする残影。しかし喉元を焼く黒炎の剣と全身を焼く黒い炎がそれを許さない。
ユーべルコード≪限定解放・血の魔剣≫の2回攻撃によって瞬く間に2体の残影を焼滅させたリーヴァルディは、さらに追撃を加える。
闇夜に輝く真紅の瞳が武器を振るう。残影が1体、また1体と生命力を根こそぎ奪われて塵となり、骸の海に消えていく。
音も姿も気配も襲撃者によって数を減らしていく残影達。だんだん姿を消していく仲間たちに焦りを覚え闇雲に怨恨の炎を繰り出し攻撃をしていく。
しかしその攻撃も暗視をもつリーヴァルディには見切られ、その炎は彼女を焼き尽くすには至らなかった。
土煙が上がり、真紅に輝く瞳による紅いラインが夜闇を彩り、残影が塵となり消えていく。消えゆく仲間を偶然見つけた残影の1体が、リーヴァルディの真紅の瞳を捉え、合体させた巨大な怨恨の炎を撃ち放つ。
それに対してリーヴァルディは、奪い取った生命力を魔力に変えて黒炎の双剣を召喚。怪力を瞬発力に変えて怨恨の炎に突っ込むと、両手の黒炎の刃を怨恨の炎に叩きつけ、4つの炎の塊に切り裂く。青白い怨恨の炎はリーヴァルディの黒炎に見る見るうちに浸食され黒く染まり、残影のコントロールを外れ、別の個体にぶつかり焼き尽くす。
次々とやられていく仲間に残影の内の一体が悲観に満ちた絶叫を上げる。無差別に降り注ぐ呪詛は、周囲にいた残影を苦しめその残影も悲観に満ちた絶叫を上げる。絶叫に次ぐ絶叫の連鎖。無差別広範囲に降り注ぐ呪詛。それは超広範囲無差別攻撃となり、リーヴァルディにも襲い掛かかる。
「「「「「あアあ亜ああ阿あああ唖あああああああああああ
!!!!!!!」」」」
身の毛がよだつような絶叫と常人ならばそのまま飲み込まれて、残影の仲間入りしてしまいそうな程の呪詛を受けてもリーヴァルディの表情は変わらない。
「…私に呪いの類は効かない。だけど、その嘆きは確かに聞き届けた…。」
全てを終わらせるべく、黒衣を翻した黒騎士は呪詛の中心に飛び込んでいく。
「……その命脈を断つ。」
リーヴァルディの手にした黒炎の魔剣が無数の魔刃を放つ黒炎の双剣に変わる。そしてその無数の双剣が薙ぎ払われると、残影達が鮮血の花に変わっていく。
「‥‥…さようなら。」
鮮血の花吹雪が吹き荒れ、残った残影達を飲み込んでいく。斬撃の嵐に飲まれた残影達は1体また1体と姿を消していく。後に残るは闇に溶け込む黒衣を纏った黒騎士のみ。
その場にいた全ての残影が倒されたことを確認すると、リーヴァルディは再び夜の闇に溶け込み、次に屠るべき残影が居る方に向けて、地を駆ける。
月夜に響く騒音はだんだんと小さくなっていく。夜明けは近い。
成功
🔵🔵🔴
瓜生・コウ
敵は幽霊の類か。熱戦銃のカートリッジ刻印を刻み呪詛を乗せ装填、霊体にも有効打を与える一撃を見舞おう。
戦闘にあっては冷静に、考えるより早く体が動くように訓練を重ねてきた、それにコイツはオブリビオンだ、憐憫の感情なんか持ちようがない。
そして「相棒」の魔導書は呪詛への耐性を与える。悲観の声など効きはしない。
数が多いと乱射したくなるが、人の姿を失うほど性を失っていない霊体であれば、しっかり急所をぶちぬいて止めを刺していく方が良い結果になる。
火炎を放とうとしているヤツを優先、粗雑(クルード)になりがちな状況でこそ繊細(テクニカル)に、だ。
●ピンチな時ほど冷静に
「敵は幽霊の類か。」
壊れた楽器をかき鳴らし、鬼火を連れて死病を運ぶ疾病楽団たる残影達。そんな彼女達を仰ぎ見るようにしながら愛用の熱線銃「コズム M2979 “ドラグーン” 波動ガン」のカードリッジに刻印を刻むのは瓜生・コウ(善き力の助力者/グッドフェロウ・f07693)。
刻む刻印は霊体に効果的な一撃を与える魔女の呪詛。手慣れた手つきで呪詛を刻んだカードリッジを熱線銃に装填すると、宙を舞う残影に狙いをつける。
≪クイックドロウ≫パーカッションリボルバー型の熱線銃から20分の1秒で放たれた熱線の一撃は、正確に残影の眉間を打ち抜き、呪詛を炸裂させる。
「―――ッ!!」
声なき悲鳴を上げて、残影は塵となり消えていく。望んでこんな姿になったのではないのに…そんな無念の表情をしながら憐憫を誘うように消えていく。
しかし、そんなものに揺らぐコウではない。
「戦闘にあっては冷静に、考えるより早く体が動くように訓練を重ねてきた。それにコイツはオブリビオンだ、憐憫の感情なんか持ちようがない。」
厳しい訓練によって文字通りに体に刻まれた戦闘技法。思考という時間ロスを省いたクイックドロウで次々と残影を撃ち落としていく。
「いやあああああああああああああ!!!」
次々と仲間を倒された残影が悲観に満ちた絶叫を上げる。その絶叫(こえ)には人を苦しめ死に至らしめる呪詛が込められている。
「生憎だが、オレには相棒がついていてな。」
無銘祭祀書が怪しく輝き、コウに呪詛に対する守りを与える。残影の放つ呪詛は彼女を殺し得ない。
呪詛の効き目が悪いと判断をした残影達は、無数の怨恨の炎を次々と呼び出し、コウを焼き尽くそうとする。
数に任せて怨恨の炎を放たれたら、次第に逃げ場がなくなり、やがて怨恨の炎に焼かれて致命傷を負ってしまうだろう。まさに絶体絶命のピンチ。
しかしこの状況にあってもコウは冷静だった。
「粗雑(クルード)になりがちな状況でこそ繊細(テクニカル)に、だ。」
火炎を放とうとしているヤツを優先して照準を合わせて引き金を引く。熱線に頭を撃ち抜かれて残影が消え、コントロールを失った怨恨の炎が、別の個体にぶつかり体を焼く。その隙に別の火炎を放とうとする個体に狙いをつけて引き金を引く。
冷静に的確に常に先手を取り続ける。並々ならぬ訓練に裏打ちされた正確な射撃により1体1体と姿を消していく残影達。
何度目か分からない熱線が、パーカッションリボルバー型の熱線銃から放たれ、残影の急所を撃ち抜いていく。
塵となり骸の海に帰っていく残影を見送るコウはふと東の空が明るくなり始めていることに気が付く。
「もうじき朝か。あと少しだ。」
愛用のパーカッションリボルバー型の熱線銃「コズム M2979 “ドラグーン” 波動ガン」を手に、コウは残影の掃討をするべく、次の残影に照準を合わせた。
東の空が明るくなり朝の足音が着実に近づく。戦いはあと少しで終わ・・・・
成功
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第3章 集団戦
『オラトリオの亡霊』
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POW : おぞましき呪い
【凄まじき苦痛を伴う呪いを流し込まれ狂戦士】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD : 苦悶もたらす魔焔
【全身の傷から噴く魔焔 】が命中した対象を燃やす。放たれた【主すら焼き苦痛をもたらす、血の如く赤黒い】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
WIZ : 汚染されし光条
【指先】を向けた対象に、【汚染され変質した邪悪なる光】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
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●朝焼けの空に舞うは死病の天使
東の空がだんだんと明るくなり、長かった夜も終わりを告げようとしていた。
狂った不協和音の合奏を鳴らす、残影達も猟兵たちの活躍により数を減らし残るは数えられるくらいになった。
このまま残影達を倒し続ければ村人たちを守り切り、疾病楽団を解散させられる。誰もがそう思ったその時、どこからともなくゴーン!という鐘の音が聞こえる。
鐘の音を聞いた残影達はビクンと体を震わせると‥‥その体が闇に包まれていく。
「私たちは疾病楽団。皆の願いを翼に受けて、勇ましく戦った誰かの成れの果て。」
女の声が響き、朝焼けの空に真っ白な天使の羽根が舞い落ちる。
「誰も望んでいないのに、こんな姿にさせられて。死病をばら撒く尖兵と成り果てた。」
闇が晴れるとそこには残影達の姿はなく、紅い眼を禍々しく輝かせたオラトリオの亡霊が朝焼けに照らされながら現れる。
先程に比べると遙かに数は少ないが非常に強力な戦闘力をもつ、オラトリオの亡霊達。彼女達を倒さなければ湖畔の村に朝は訪れない。
疲れた体に鞭を打ち、猟兵たちは夜明け前の最後の戦いに身を投じる。
御手洗・花子
「遅れて参戦してみれば…やれやれ、そういう仕事なんじゃな」
UDCエージェントにとって敵の尖兵になってしまう…と言う可能性は往々にしてあるものである、故にUDC組織はその可能性を減らす為にもある非常な処置をとる。
「これより、わしはお前らを『終了』させる、恨むかどうかは好きにするが良いのじゃ」
ここはUDCアースではないし、相手は組織の者でもないが…この手の終了作業は花子にとって割と良くある仕事である――が。
(幾度経験しても、この虫唾だけは消せぬようじゃの…)
『長谷川さん』の封印の一部を解除してUC発動、激痛耐性でダメージに耐えながらも積極的に『終了』させていく。
「こう言うのは、わしの仕事じゃ…」
●とある敗残兵たちのお話①
昔々ある所にオラトリオの女戦士達で構成されたレジスタンスがありました。彼女達は、人々の願いをその大きな白い翼に背負い、勇猛果敢に戦いました。肉体を鍛え、武術を身に着け、戦術を学び連携を身に着けました。そうして強くなった彼女達は次々と、ヴァンパイアの眷属たちを倒して、村々を解放して回りました。
●疾病楽団最終楽章① トイレの花子さん
2体のオラトリオの亡霊が薄明かりの暁の空に白い羽根を舞い散らせながら降臨する。
「私たちは疾病楽団、皆の願いを翼に受けて、勇ましく戦った誰かの成れの果て。」
「誰も望んでいないのに、こんな姿にさせられて。死病をばら撒く尖兵と成り果てた。」
「「私達は暁「「私、「「わた「「わた・・「「わ「「わ
「「‥‥…」」
2人のオラトリオの亡霊は何かを言おうとするも、ヴァンパイアの呪いによって魂を縛られた彼女達には言論の自由すらない。
「「私達は疾病楽団、白い翼に死病を載せて、誰かの平和を壊すもの」」
新たな猟兵達が転移してくる。黒髪に和服を着た見た目小学生のUDCエージェント御手洗・花子(人間のUDCエージェント・f10495)。
「遅れて参戦してみれば…やれやれ、そういう仕事なんじゃな」
彼女は、溜息をつきながら疾病楽団なる現象に取り込まれてしまったオラトリオの亡霊達の姿をその漆黒の瞳に映す。
UDCエージェントにとって敵の尖兵になってしまう…と言う可能性は往々にしてあるものである。新種のUDCによる寄生、洗脳、同化、姿を乗っ取られるなんてことも珍しくない。
故にUDC組織はその可能性を減らす為にもある非常な処置をとる。
「これより、わしはお前らを『終了』させる、恨むかどうかは好きにするが良いのじゃ」
UDCエージェント、御手洗・花子は努めて冷静かつ冷酷に『終了』を宣言する。
終了: それは財団による、対象を無力化する行為の総称。今回行われるのは対象の殺害或いは撃滅による対象の連続性の断絶。即ち、殺処分。
何かに抵抗するように震える右腕のその指先を向けてオラトリオの亡霊達はユーべルコードを発動させようとする。
≪汚染されし光条≫裁きの光が吸血鬼によって変質したソレは強烈な呪詛を以て、対象を呪い殺す歪な光。それは天より降り注ぎ、和服の妖女の身を焼こうとしていた。
「封印術式壱号、弐号解除…制御術式を一時的に放棄…さぁ、『長谷川さん』遊びましょう…」
ユーべルコード≪『長谷川さん』遊びましょう(ハナコサンアソビマショウ)≫それはかつて小学5年生の花子が融合してしまった『トイレの花子さん』と呼ばれたUDCの封印を一部解除するユーべルコード。
花子の姿が、目が開けられない程の眩しい闇の塊へと変わる。それは竜のように巨大なイモ虫様の円柱形の巨大な影かあるいは目のない顔と手足のない胴体を持つ巨人か。形容しがたい不定形の影。
ダークセイヴァーの世界にコードネーム『トイレの花子』さんと呼ばれたUDCが顕現する。
闇の塊は、2条の汚染された光条をその身に受けると、お返しとばかりに飲み込まれれば死ぬ不定形の闇を2体のオラトリオの亡霊達に差し向ける。長谷川さんはそういう遊びだと思ったらしい。
闇の塊に眼を焼かれた1体の亡霊は動くこともできないまま不定形の闇に飲まれて消滅する。
もう1体の方は闇の方を見ないようにして指先を向けてユーべルコードを放つ。しかし、変質して呪詛の属性が強くなってしまった光は眼も開けられないほどに輝く闇には相性が悪く、不定形の闇に追い詰められてそのまま飲み込まれて消えていった。
2体のオラトリオの亡霊達を消滅させたことを確認した花子は、長谷川さんを再封印して、元の和服の妖女の姿に戻る。
ここはUDCアースではないし、相手は組織の者でもないが…この手の終了作業は花子にとって割と良くある仕事である――が。(幾度経験しても、この虫唾だけは消せぬようじゃの…)
「こう言うのは、わしの仕事じゃ…」
誰に言うでもなく一人呟くと、猟兵達が守る壕の方へと一人歩いていった。
大成功
🔵🔵🔵
リーヴァルディ・カーライル
…ん。誰も望んでいないのに…ね。
貴女達自身も今の在り様を望んでいないというならば…。
…その望み通り、闇に還してあげる。
事前に付与した“忍び足の呪詛”を応用発動
自身の生命力を吸収して存在感と殺気を周囲に散らし、
敵を誘惑する無数の残像を囮として展開する
自身は気配を遮断する形態に防具を改造(変装)
空中戦を行う“血の翼”で飛行して【血の教義】を二重発動(2回攻撃)
吸血鬼化して強化した第六感で暴走する限界を見切り、
先ほどの戦闘で周囲に充ちる残影の呪力を溜めた“闇”属性の“雷雲”を上空に展開した後、
対象の呪詛を追跡し傷口を抉る“闇の雷雨”で敵陣をなぎ払う
広域攻撃呪法展開…死者の怨嗟を喰らい、降り注げ…!
●とある敗残兵たちのお話②
そしてついに領主であるヴァンパイアと相まみえることとなりました。
敵は強大かつ残忍な存在。戦えばきっとただでは済まないでしょう。一緒に戦ってきた大切な仲間たちも何人も死ぬかもしれません。でも、彼女達は戦いました。
この薄暗い世界に、暖かい朝日を。綺麗な暁の空を見たい。それが‥それだけが彼女達の願いでした。
彼女達は暁のレジスタンス。幸せな朝を願う反逆者。
●疾病楽団最終楽章② 黒騎士
「私たちは疾病楽団。皆の願いを翼に受けて、勇ましく戦った誰かの成れの果て。」
「誰も望んでいないのに、こんな姿にさせられて。死病をばら撒く尖兵と成り果てた。」
「私たちは疾病楽団。暖かな日差しの暁の空を望んだ、花咲く天使の成れの果て。」
絶望の歌を口にして3体のオラトリオの亡霊が白い羽根を舞い散らせながら現れる。
悲嘆と絶望の嘆きと悲鳴。それらを、疾病を彩る楽器と定義され、疾病楽団という枠組みに囚われてしまった彼女達。
そんな彼女達に終わりを与えるのは黒衣の黒騎士。
「…ん。誰も望んでいないのに…ね。」
忍び足の呪詛を刻んだ闇に溶ける外套に身を包みこんだリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は、かつての勇士達の末路をその紫の瞳に映す。
「貴女達自身も今の在り様を望んでいないというならば…。」
防具に更なる改造を施す。
オラトリオの亡霊は吸血鬼によって呪われて望まぬ戦いを強いられた存在。それを終わらせるのも吸血鬼を狩る黒騎士の役目だろう。
「…その望み通り、闇に還してあげる。」
忍び足の呪詛が反転し、リーヴァルディの生命力を吸い上げ、殺気と存在感を撒き散らす残像を周囲に生み出す。
突然現れた吸血鬼の力を持つ無数の残像に、オラトリオの亡霊達はパニックになりつつも指先を残像に向けて次々とユーべルコード≪汚染された光条≫を撃ち放つ。
「ヴァンパイアアア
!!!!」
「殺す!殺す!殺す!殺す!」
「ああああ!!!!よくも私達をこんな・・こんな・・姿にいいいいいい!!!」
地面に向けて次々と汚染された光条が降り注ぎ、爆発。周囲に土埃が舞い上がる。
オラトリオの亡霊達が次々と何もない地面に向かって汚染された光条を撃ち放っている隙に、存在感を希薄にした黒騎士が血の翼を背に生やし、音もなく宙を舞う。
「……限定解放。テンカウント。吸血鬼のオドと精霊のマナ。それを今、一つに……!」
リーヴァルディの瞳が真紅に輝き吸血鬼として覚醒する。
吸血鬼と化した黒騎士は周囲に漂う残影達の残した呪詛を取り込み自信の闇の魔力に変換。その魔力を以て自然の精霊に語り掛け、自身が望む自然現象を生み出す。
膨大に膨れ上がる荒れ狂う気象の荒い雷雨の精と呪詛を帯びた闇。二つの属性を吸血鬼化により鋭敏化した第六感を頼りに暴走ギリギリまでまとめ上げていく。
闇色の雲が突然として薄明かりの暁の空を覆いつくし、ゴロゴロと紅い血色の雷鳴を轟かせる。
「広域攻撃呪法展開…死者の怨嗟を喰らい、降り注げ…!」
ユーべルコード≪限定解放・血の教義(リミテッド・ブラッドドグマ)≫属性と自然現象を掛け合わせる制御の難しいユーべルコードは完全な形で発動された。
生み出される現象は闇の雷雨。対象の呪詛を追跡し傷口を抉る“闇の雷雨”がオラトリオの亡霊達を襲う。
土埃が晴れて光条によって焦げた地面だけが後には残っている。急に現れた吸血鬼の気配を持つ何かは無事に倒されたとそう思った矢先。自身の背後、遥か上空に見慣れぬ雲が広がっていることを確認する。
雷鳴が轟き黒い雷雲が血の赤に輝く、闇の魔力を纏った闇色の雨が血色の雷と一緒に降り注ぐ。血色の雷は、オラトリオの亡霊にかけられた吸血鬼の呪詛、望まぬ戦いを強いる呪詛を正確に追尾し、その電力を解放する。
「あああああああああああああああああ
!!!!」
悲鳴と共に亡霊の1体が雷によって焼け焦げ、その身を灰に変えて骸の海に帰っていく。
突然の雷雨に驚き逃げ惑おうとするも、二度目の雷鳴が轟き、2体目の亡霊が焼け焦げそして灰になっていく。
闇の雷雨から逃げ惑う最後の亡霊は、闇に輝く赤い瞳を見つける。その赤い瞳めがけて指先を向けユーべルコードを発動する。
汚染された光条は、赤い瞳が作った残像を正確に射貫き、地面に焦げ跡を作る。
攻撃がすり抜けたことに眼を剥くオラトリオの亡霊の元に大鎌を構えた黒騎士が現れる。
グリムリーパーがくるりと円の動きで振るわれると、大鎌の軌跡に合わせて体が二つに分かれ、そして灰となって消えていった。
「…もう二度と目覚めないことを願う。」
黒騎士は闇に溶け、猟兵達の守る壕の方へ歩みを進める。
大成功
🔵🔵🔵
瓜生・コウ
もうひと頑張り…誰かのために戦った勇者の末期を汚す悍ましいその姿、旅の医者としてここに来たのだから、さっぱり患部を切除、消毒してやろう。
上空からの光条と魔焔、遮蔽物はなし、動き回れば狂化した敵の目標とは…やれやれ、ちょっぴり疲れるといったところか。
幸い数は多くない、一人1~2殺で十分か? 狂化した敵には文字通り搦手に限る、上空からの攻撃を躱すためにも動き回って引きつけ、鉤縄で地面に引き下ろし、神の力を持つ天使ならば「神殺し」の概念の実体化たるチェーンソーでとどめだ。
●とある敗残兵たちのお話③
彼女達は懸命に戦いました。戦術を駆使し、身に着けた武術に魔術を十二分に発揮し、時には味方の犠牲も許容しつつ、持てる全てを以て戦いを挑みました。
誰かの幸せの礎になれるのならばと、血の槍に胸を貫かれながらも懸命に指先を向けて裁きの光を、聖なる焔を放ちました。
裁きの光が、聖なる焔が、吸血鬼の纏う闇を消し飛ばし、焔が身を清めが焦がしました。
しかし、彼女達はあと一歩の所で圧倒的な力を持つヴァンパイアに敗北してしまいました。
●疾病楽団最終楽章③
「私たちは疾病楽団。皆の願いを翼に受けて、勇ましく戦った誰かの成れの果て。」
「誰も望んでいないのに、こんな姿にさせられて。死病をばら撒く尖兵と成り果てた。」
白い羽根を舞い散らし、2体の死病の天使が絶望の歌と共に現れる。
「もうひと頑張り…誰かのために戦った勇者の末期を汚す悍ましいその姿、旅の医者としてここに来たのだから、さっぱり患部を切除、消毒してやろう。」
古いパーカッション式リボルバー型ブラスターコズム M2979 “ドラグーン” 波動ガンを構え、正確に狙いをつけて撃ち放つのは(善き力の助力者/グッドフェロウ・f07693)だ。
眉間に向かって放たれたブラスターを、オラトリオの内の1体は両腕をクロスさせるようにして防ぐ。
熱線が前に出した右腕を焦がす。碌な防具を持たず、遮蔽のない空中を移動するオラトリオの亡霊にとってブラスター使いは最悪な相手だった。
熱線が正確な狙いの元に放たれ、白い翼を貫き、翼に黒い穴を開ける。翼を射貫かれたオラトリオの亡霊は、地面に落下。どさっ!という大きな音と共に土埃を上げる。
このままでは埒が明かないと判断した、オラトリオの亡霊は、ユーべルコードを発動して狂戦士と化す。
「aaaaaaaaaaa
!!!!!」
激痛を伴う呪いがオラトリオの亡霊を苦しめ、体を掻きむしるようにしながら絶叫を上げる。
隙だらけな狂戦士に向けブラスターを向けるコウ。しかしここで邪魔が入る。
「ああああああああああああ!!」
ユーべルコードの射程範囲内に入ったもう1体のオラトリオの亡霊が全身から血暗色の炎を噴き出させる。術者自身をも焼き尽くしながらコウに向かって放たれる。
「チッ」
舌打ちをしながら回避行動に入る。体の横僅か10cm先に血色の炎が着弾し、消えない炎が地面を焼き続ける。
「上空からの光条に、魔焔は依然として厄介、動き回れば狂化した敵の目標とは…やれやれ、ちょっぴり疲れるといったところか。」
迫りくる狂戦士にブラスターの牽制射を打ちながら。もう1体の方に視線を向けて迫りくる血色の炎を躱していく。
全く効き目がないわけではないが、超耐久力を持つ狂戦士相手ではブラスターのダメージでは心もとなく、炎を躱し続けるにはかなり体力も必要だ。
このままではジリ貧になっていつか致命傷を負ってしまうだろう。
故に彼女は勝負に出ることにした。
「狂化した敵には文字通り搦手に限る。」
狂化した敵を背に追い、コウはブラスターを構えつつ、空中に居るオラトリオの亡霊の元へ疾走する。
「……」
無言のままコウに向けて右腕の指先を向けてユーべルコード発動するオラトリオの亡霊に対して、コウは冷静沈着なままに正確な狙いをもって右手を打ち抜き、指差しを阻止。
右手の甲を撃ち抜かれた痛みにより、右手を抑える敵の足に鉤縄を引っかけて、そのまま狂戦士が追ってくる背後に向けて投げ飛ばす。
「aaaaaaaaaaa!!」
「いやあああああああああああああ!!!」
狂化によって理性を失った狂戦士は、早く動くものを無差別に襲う。それは味方だろうと例外はない。
「Brum-Brum-Brum-Brum-Brrrrrrrrrr...(駆動音)」
チェーンソーの刃が駆動し、唸りを上げる。
味方のオラトリオの亡霊を殴り殺し、無防備になった狂戦士にチェーンソーの刃が袈裟に振るわれる。
ユーべルコード≪邪神殺し(カミゴロシ)≫。その効果は単純明快。チェーンソーが命中した相手を切断すること。
ユーべルコードの効果が正しく発現し、狂戦士と化したオラトリオの亡霊は文字通り2つに切り裂かれ、骸の海に帰っていく。
「これにて治療完了だ。」
オラトリオの亡霊に対する荒療治を終わらせたコウは、猟兵達の守る壕の方へ歩いていく。
大成功
🔵🔵🔵
フロッシュ・フェローチェス
そうか。なら今ここでお前らを討滅するよ。
……情けだとか、そんな事は言わない。蹴散らし、飛ばし――潰すだけだ。
先制攻撃。残像も映さないダッシュで詰め寄り【殴砲】。決まり切らなくても減速空間による僅かなディレイはある筈。
そしたら残像を貫かせて斜め後方に抜け、一度距離を放しスライディングで足払いだ。
足払いの結果に関わらず、飛翔を誘発させてからが本番。
飛んだなら野性の勘で飛翔する方向を見切り、先読みして早業で銃を連射。羽を、体を穿つ。着実にダメージを重ねるよ。
反撃のUCに対しては、敢えて消える様には動かず、適度な速さで誘い突っ込んで来たらカウンターで俊足突撃。
【翠碧迅殴】で木っ端に潰えろ!
※アドリブ可
●疾病楽団最終楽章 ④ 神速
「私たちは疾病楽団。皆の願いを翼に受けて、勇ましく戦った誰かの成れの果て。」
「誰も望んでいないのに、こんな姿にさせられて。死病をばら撒く尖兵と成り果てた。」
陰鬱な声が薄明かりの空に響き、2体のオラトリオの亡霊が白い天使の羽根を舞い散らせながら翼を広げて舞い踊る。
彼女達は疾病楽団。かつては人々に幸せな暁の空を‥と願い、戦い抜いた勇者たちの成れの果て。
その嘆きの声は未だに止まない。
「そうか。なら今ここでお前らを討滅するよ。……情けだとか、そんな事は言わない。何時もの様に蹴散らし、飛ばし――潰すだけだ。」
疾病楽団となったオラトリオの亡霊達の嘆きの歌を一言でバッサリと切り捨てるのはフロッシュ・フェローチェス(疾咬の神速者・f04767)。
彼女はガジェッティアとしての技術とアイディアを詰め込んだ、機械式ブーツ『衝角炉』を弄り、加速式を発動させると、こちらに向かって飛翔する1体を目掛け全力の踏み込みを行う。
加速式が発動し、0→100の超加速を行う。刹那でトップスピードにまで到達させるそのピーキーな加速を制御しつつ、音を、残像を置き去りにしながら加速するフロッシュ。
「aaaa…」
「捉えた――其処で、くたばってろ!」
オラトリオの亡霊がユーべルコードを発動するとほぼ同時に翡翠の龍眼が作りだした減速空間が敵を捉える。
オラトリオの亡霊を蝕む呪いの進行速度が減速し、強化の間に合わない部位が生まれる。そこに刹那‥現在の単位にすれば 0.013秒の速度で重撃鉄拳、『殴砲』が撃ち込まれる。
「アア亜ああああああ!!」
狂化が間に合わず、無防備な所を狙い打たれた、オラトリオの亡霊は体をくの字に曲げて吹き飛び、鬱蒼とした森の木々を巻き込みながら吹っ飛び、骸の海に帰っていく。
見事な先制攻撃で1体を倒したフロッシュの下に、ユーべルコード≪おぞましき呪い≫によって狂戦士と化した残りの1体が襲い掛かる。
狂化し強化された超攻撃力をもって蹴りを繰り出すオラトリオの亡霊。その凄まじい踏み込みは地面に彼女の足の形の穴を開け、風を斬って放たれる蹴りはその蹴圧を以て周囲の木々を震わせる。
「…遅い!」
狂戦士の斜め後ろに向かって姿勢を低くして走り抜けるフロッシュ。敵の放った蹴りは残像を貫く。
そして反撃のスライディングからの足払いを狙うフロッシュ。足をより抉るように変形したブーツの一撃が、彼女を踏みつけようと右足を上げていたオラトリオの亡霊の左足に突き刺さり転倒させる。
転倒した狂戦士は即座に起き上がり、その身に刻まれた呪いの通りに素早く動くもの、地上にいるフロッシュに向けて攻撃を開始する。
ユーべルコード≪おぞましき呪い≫、その効果は超攻撃力と超耐久の代わりに理性を失わせ、素早く動くものを無差別攻撃させるというもの。足払いを飛んで避けるということも、足にダメージを負ったから、空を飛んで追撃するという理性的な判断はできない。あくまで、呪いの効果通りに、ある意味機械的に素早く動くものを無差別に攻撃する。
想定外の動きに一瞬面を喰らう、フロッシュ。
しかし、敵は鈍足だ。ユーべルコードによって強化されるのは耐久と攻撃力のみ。おまけに相手は徒手であり、速度差をリーチで埋めることもできない。
速度負けをしている相手に、走って追いかけて殴る蹴る以外の攻撃手段がない。
よって、距離を取ってショットガンを撃ち込み続ける。それだけで倒すこと自体は可能だ。しかし、今回の戦いは防衛戦。1体でも壕に通したら負けという状況で数に劣る猟兵達が1体の敵に長時間縛られるというのは、試合に勝って勝負に負けると同じ事。
故に速攻で決める必要がある。
フロッシュは、機械式ブーツで大地を蹴って態と残像が出るような速度で接近して攻撃を誘う。
狂戦士は呪いによって定められた行動をとる。近づいてきたフロッシュに向けて拳を振りかぶり…猛烈な勢いで繰り出そうとする。
「潰れ、壊れ、微塵に……砕けろっ!!!」
減速空間に囚われた敵の動きがスローモーションになる。欠伸が出そうなほどの速度差。攻撃を見切り、当たらない位置に体を置くのは彼女にとっては造作のない事。
後はカウンターのラッシュを決めるだけ。秒間33発、マシンガンのように連打された殴砲が、狂戦士を襲う。
敵が超耐久を誇るなら、その分連打して無理矢理突破すればいい。そんな速度に任せたゴリ押しが、敵の肩を、腹を、顔を強打し、ダメージを蓄積させる。
そして減速が終了した瞬間、敵の拳はかつてフロッシュが居ただろう位置を虚しく空振り、空気だけを震わせ、無数の殴砲によって受けた衝撃が一気に襲い掛かった肉体は、近くにあった大きな木にめり込み磔にされる。
そしてそのまま塵となって、骸の海に帰っていく。
敵の消滅を確認したフロッシュは、俊足を飛ばして猟兵達の守る壕の方へ駆け出していく。
大成功
🔵🔵🔵
モルツクルス・ゼーレヴェックス
徹頭徹尾、敬意と【礼儀】をもって戦う……本気の本気
「……終わらせたげる」
真の姿を解放して若返り、的を小さくする
【高速詠唱】で【光翼】を展開
【空中戦】を挑む
「見せてあげる。僕の空中パフォーマンス」
空を舞いながらも敵を良く見て【情報収集】
【コミュ力】や【戦闘知識】も交えて狙いを躱す
そして真意はどうあれ僕に注目してるってことは
「……縛れ、光翼」
自由を妨げられる敵に【範囲・属性攻撃】
このパターンを【学習力】で洗練させて削り倒す
「……お疲れ様。眠ったらいいよ」
この暗い世界に蘇って、恥じる気持ちが、あれば十分に天使だよ
「貴女が生きた時代に会いたかったな」
さようなら、さようなら
また会う日まで、天使さん
●疾病楽団最終楽章⑤ 花咲く天使達
「私たちは疾病楽団。皆の願いを翼に受けて、勇ましく戦った誰かの成れの果て。」
「誰も望んでいないのに、こんな姿にさせられて。死病をばら撒く尖兵と成り果てた。」
どうしてこうなってしまったのだろうかと嘆くような声で天使達が絶望の歌を奏でる。絶望の果てに安らかなる終わりを待っている。
そんな彼女達に終わりを与えるのは、同じ花咲く天使の青年。
「……終わらせたげる」
とモルツクルス・ゼーレヴェックス(自由を飛ぶ天使・f10673)は小さく一人呟くと真の姿を解放する。
熊のぬいぐるみを持った小さな子ども、それこそ幼児と言っても過言ではない姿。 5歳の頃の自分の姿へと回帰したモルツクルスは、例え敵わないとしても誰かの為にと戦い続けたオラトリオの亡霊達への敬意を胸に、その小さな背中に光の補助翼を顕現させる。
「見せてあげる。僕の空中パフォーマンス」
薄明かりの暁の空に光の尾を曳きながら、小さな花咲く天使は優雅にそして力強く舞う。
「な・・・・ぜ
・・・・」
「こ・・・ど・・・も?」
急に現れた幼子の姿をしたモルツクルスに動揺をしつつも、魂を縛る吸血鬼の呪いが容赦なく望まぬ戦いを強制する。
「「に・・・げ・・「死ね」「苦しめ」」
震える指先がモルツクルスの方へ向けられユーべルコードが発動される。≪汚染されし光条≫。それは指先を向けた相手に対して頭上から邪光を降り注がせる。裁きの光が汚染され変質した力。
それを幼い天使はギリギリのタイミングで次々と躱していく。持ち前の戦闘知識で呼び動作とそれが発射されるまでの時間を読み切り、コミュ力で彼女達の行動予測を行い、それを学習力で洗練させていく。
それを何回か繰り返しながら、モルツクルスはあることに気づく。それは彼女達も戦っていると言う事。
震える指先は、言う事を聞かない体を何とか抑え込もうということの証。攻撃前に放つ幼子の姿をした天使に対して吐く呪いのような言葉は攻撃のタイミングを教えるため。
吸血鬼の呪いに魂を縛られ、疾病楽団という枠組みに取り込まれてもなお、戦う彼女達。そんな彼女達を長く苦しめることはない。速やかに終わりを与えるこそが礼儀である。
「……縛れ、光翼」
こんなに強い子どもが居るのかという【敬意】と何故戦場に子どもに居るのかと言う【困惑】。2つの感情によって発動条件を満たしたモルツクルスのユーべルコード光翼(アート・オブ・ザ・ウィング)。それによって無数の拘束術式がオラトリオの亡霊達を襲う。
「……お疲れ様。眠ったらいいよ」
自由を奪われたオラトリオの亡霊にモルツクルスの光魔法が降り注ぐ。
「この暗い世界に蘇って、恥じる気持ちが、あれば十分に天使だよ。」
暖かな光に包まれて、オラトリオの亡霊達は骸の海に帰っていく。
「貴女が生きた時代に会いたかったな」
美しく、強く、そして誰かの為にと戦える勇気があった暁のレジスタンスと呼ばれていた彼女達に思いを馳せつつ、オラトリオの亡霊達が居なくなった空を幼子の姿をした天使が見つめる。
「さようなら、さようなら、また会う日まで、天使さん」
いつか転生して、別の誰かになったら会えるといいなと思いながら花咲く天使の青年は、猟兵達の守る壕の方へと翼を羽ばたかせて飛んで行く。
大成功
🔵🔵🔵
アリア・ヴェルフォード
誰かのために戦った成れの果て・・・ですか
ええ、同情はしませんとも
私にできることは貴方たちの悪夢を終わらせることだけですから
【POW】
光と闇【属性攻撃】を纏わせた聖剣と邪聖剣で正面から相手をしましょう
相手の攻撃は避けずに【見切っ】て【武器で受け】止めます
狂戦士というからには一撃一撃が重いかもしれませんが気合で頑張ります
とどめは選択したUCで、いつもより光ましましで浄化してあげましょうかね
「貴方たちの願いは!意志は!私たちが受け継ぎます!だから安心して逝け!エックス
.......カリバァァァーーー!!!」
終わったら墓標くらいは立ててあげましょう
アドリブ・マスタリング・連携・他もろもろ可
アマータ・プリムス
望まぬ彼らを解放するのはきっと当機たちの仕事ですね
【Alea jacta est】を発動、呼びだすのは歌姫のための服
着替えることで真の姿(バトピン参照)を解放
『暁の歌姫が歌うには最高のステージでしょう?』
イーリスを【楽器演奏】して【歌唱】を開始
戦場に唄を響き渡らせます
味方の疲労は【Ars longa, vīta brevis】で回復
それと共に【Facta, non verba】を発動してバフも付与
発動される相手のUCはUCの【範囲攻撃】で打ち消す
『もう誰にも悲しみの涙は流させません。貴方達は当機が見送ります』
悲しみを憂うための歌ではなく明日の希望への応援歌を歌いあげましょう
アドリブ連携歓迎
リミティア・スカイクラッド
病も死も望まないのは、あなたたちも同じでしたか
同情はしますが、容赦はしません。リムは目標を殲滅します
放たれる邪悪なる光は「呪詛耐性」で耐えるか、フェンリルに「騎乗」して回避を試みながら
戦場をフェンリルで駆け回り、敵集団を一箇所に誘導して
「今度こそ楽団を終わらせましょう。他ならぬあなたたちの為にも」
【魔女の禁呪】で強化した【魔女の薔薇】を放ちます
花弁の嵐で切り裂き、無数の茨で拘束しましょう
敵の動きを封じ、味方が攻撃するチャンスを作るのが狙いです
あなたたちを死病の遣いとしてこの地に送り込んだ誰かがいるなら、いずれ報いを与えましょう
魔女の誇りと使命に賭けて、リムは約束します
仇死原・アンナ
天使…いや、ただの亡霊か…
ならば地獄の使いとして貴様らを屠るだけだ…!
他の同行者と協力
[戦闘知識]を発揮しつつ戦闘
鉄塊剣による[怪力、なぎ払い]で攻撃して
妖刀で[2回攻撃、串刺し]攻撃する
[カウンター]も狙ってみる
敵の攻撃を[オーラ防御、火炎耐性、呪詛耐性、武器受け]で防御回避
いざとなれば仲間を[かばい]防御する
「地獄の炎よ、さまよえる亡霊共の身と魂を燃し刻め!」
[力溜め]して【火車八つ裂きの刑】を振り放ち、魔焔も呪いも敵も地獄の炎で燃し切り刻む
戦闘が無事に終われば夜明け空を眺めながら村人たちを向かえに行こうか
●とある敗残兵たちのお話(終)
ヴァンパイアはパチパチパチと拍手をしながら彼女達に感嘆の声を上げました。
「君たちの努力は素晴らしい。戦術、武術、魔術。どれをとっても一級品だった。ここまで来るのには血の滲むような努力が必要だったのだろう。私はそれを評価する。故に君たちがこのまま朽ち果てるのは口惜しい。」
心底残念そうな声色でヴァンパイアは言いました。
「そこで私は君たちに祝福(呪い)を与えようと思う。死んでもなお、その素晴らしい武が揮えるようなそんな祝福を(呪い)を。」
喜びたまえとヴァンパイアの口許が喜悦に歪みました。
「さあ、君たちのその武を、全身全霊を以て人間を好きなだけ殺すがいい。そして、希望が絶望となって襲い掛かった恐怖に歪む人々の顔で、私を愉悦させてくれ。」
ヴァンパイアの残酷な笑い声とオラトリオの絶望する声が闇に響く。
これはダークセイヴァーの世界にあるよくある悲劇の一つ。
とある敗残兵たちのお話。
●疾病楽団最終楽章(終) 暁の防衛戦
「「「「「私たちは疾病楽団。皆の願いを翼に受けて、勇ましく戦った誰かの成れの果て
。」」」」」
薄明かりの暁の空に白い羽根が舞い踊る。はらはらと希望の象徴だったものが舞い踊る。
「「「「「誰も望んでいないのに、こんな姿にさせられて。死病をばら撒く尖兵と成り果てた
。」」」」」
絶望の歌と共にかつての希望が死病を伴い現れる。
彼女達は疾病楽団。その無念と絶望の嘆きの歌声(ヒメイ)を以て、死病を彩る楽器と定義され、疾病楽団という枠組みに組み込まれた『誰かの為に』と戦った勇者の成れの果て。
幸せな暁の空を望んだ、花咲く乙女の成れの果て。
誰かの幸せを破壊することしかできない哀れな敗残兵。
湖畔の村の住民達が隠れる壕の入り口に向けてオラトリオの亡霊達が進軍する。
対応するは4人の猟兵。
「望まぬ彼らを解放するのはきっと当機たちの仕事ですね。」
壕の入り口で残影達を空に送る鎮魂歌を奏でていたアマータ・プリムス(人形遣いの人形・f03768)は、演奏の手を止めてかつての勇士達の成れの果てをその桃色の瞳に映す。
見知らぬ『誰かの為に』と戦った彼女達。その彼女達を苦しめ縛る、吸血鬼の呪いと疾病楽団という枠組み。
その二つから彼女達を解放するべく、『誰かの為』の人形は真の姿を解放する。
「―――お色直しの時間です。舞台はこれよりクライマックス。瞬きも注意してください」
ユーべルコード≪Alea jacta est(アーレア・ヤクタ・エスト)≫。いま戦っている対象に有効な【衣装】を呼び出すユーべルコードは、紫のステージ衣装を召喚する。
「暁の歌姫が歌うには最高のステージでしょう?」
赤いウサギと黒い猫のサイドギターを引き連れて《Aurora Diva》、暁の歌姫がステージに上がる。
観客は苦悩する天使の亡霊達に、頼もしい仲間たち、そして平和な朝を無事に迎えられることを壕の中で祈る湖畔の村の住民達。
暁の歌姫が赤いボディの蒸気機関式ギター型マイクをかき鳴らすと、人形たちもそれに合わせてギターをかき鳴らす。曲目は、悲しみを憂うための歌ではなく、明日の希望への応援歌。
「もう誰にも悲しみの涙は流させません。貴方達は当機が見送ります」
その歌声に込めるは2種類のユーべルコード≪Ars longa, vīta brevis≫と≪Facta, non verba≫。歌声を聞いて共感したもの戦闘力を高める加護と疲れ癒す加護が戦場を包み込む。
疾病楽団最終楽章は、暁の歌姫の応援歌によって火蓋が落とされた。
「「「「あああああああああああああ
!!!」」」」
上空にいる合計7体のオラトリオの亡霊は奇声を上げながら一斉に直下の猟兵達に指を向けるとユーべルコードを発動させる。
ユーべルコード≪汚染されし光条≫によって放たれた7条の邪光。ヴァンパイアの呪いによって変質したソレは、強大な呪詛を孕み猟兵達の頭上から襲い掛かる。
それを防ぐは暁の歌姫。
「聴きなさい、この歌を。味わいなさい、歌の力を。―――Mens agitat molem」
ユーべルコード≪Mens agitat molem(メンス・アギタト・モーレム)≫。範囲拡大された世界の理を改変し無力化する歌声は、7条の邪光を相殺して打ち消していく。
上空からのユーべルコード爆撃は効果がない。そう判断をしたオラトリオの亡霊達は接近戦をしかけるべく、その翼を翻し、地面に向けて一気に加速をしていく。
「「いぎゃああaaaああ亞ああ唖ああ亞あああ」」
ユーべルコード≪おぞましき呪い≫により凄まじき苦痛を伴う呪いを流し込まれ狂戦士2体を先頭に、死を齎す天使たちが眼下の猟兵…否、猟兵達の守る壕に向かい進軍していく。
「誰かのために戦った成れの果て・・・ですか。ええ、同情はしませんとも。私にできることは貴女たちの悪夢を終わらせることだけですから。」
進軍するオラトリオの亡霊達に相対するは白い刃の聖剣Xカリバーと黒い刃の邪聖剣Xカリバー、2色の聖剣を構えるアリア・ヴェルフォード(謎の剣士X・f10811)。
聖剣使いの人間の剣豪は、両手の聖剣に光と闇の2つの属性を宿すと、バーサーカーと化した個体へ向け刃を躍らせる。
暁の歌姫の歌声により強化された二振りの聖剣が白と黒の軌跡を描く。白と黒の二つの刃が狂化することで強化された狂戦士の肌を裂き、鮮血の花を咲かせる。
しかし狂戦士は止まらない。腕を、腹を、足を斬られても、構わず、拳を振り抜き、蹴りを繰り出す。
身を蝕む強力な苦痛を伴う呪いによって痛覚が麻痺している彼女達には、ダメージによる怯みが存在しない。全身が痛すぎて何が新しい痛みなのか理解することができないからだ。
斬られたという実感すら薄いだろう。ダメージを正確に把握する理性も働いていない。だがそれ故に斬られながら平然と殴りかかるというトンでも行動を可能にする。
「aaaaaaaaaaaa!!」
「ここは敢えて受けます!」
無理矢理すぎるカウンターに回避のタイミングをずらされたと感じたアリアは、回避を放棄して聖剣と聖邪剣を交差させて拳を受け止める。
素手で殴っている筈なのに甲高い金属音がして剣を通して両腕に重い衝撃が走る。
刃を殴った拳には小さな切り傷ができて出血をしているが気にした様子はない。
「なんていう馬鹿力ですか。まともに喰らったらたまったものじゃありませんね。」
真の姿を解放したアマータのバフを以てしても、武器で受けた両腕に重い衝撃が走る敵の拳の威力に若干の危機感を覚えるアリア。
「ですが…やってやれないことはありません!気合で乗り切りましょう!」
攻撃力と耐久力差は、技術と気合と手数で乗り切る。聖剣二刀流の元気娘はアホ毛を揺らしながら、狂戦士へと斬りかかる。
「天使…いや、ただの亡霊か…ならば地獄の使いとして貴様らを屠るだけだ…!」
錆色の乙女を構え、炎獄の鎧に青色の地獄の炎を宿した仇死原・アンナ(炎獄の執行人・f09978)もまた狂戦士を迎え撃つ。
怪力によって横薙ぎに振るわれた錆色の乙女。その一撃は錆色の軌跡を描き、正確無比に狂戦士の無防備な腹に叩きこまれる。
ドゴォと鈍い音が響き、狂戦士の体がくの字に折れ曲がる。鉄の鎧も砕く強力な鉄塊剣の一撃。それを受けてもなお、狂戦士は平然と立ち上がり、口許から流れ出る血も気にせず、拳や蹴撃を繰り出す。
「効いてはいるが‥‥反応が鈍い…!」
口許から流れる血‥‥内臓にダメージが入っていることは間違いない。だけど相手は理性のない狂戦士。痛みや負傷を無視して行動をする。
「だったらこっちはどうだ…!」
錆色の乙女を地面に突き立てて、伝説の処刑人の名を関した妖刀、アサエモン・サーベルを抜刀した炎獄の処刑人は、狂戦士に対して素早く2回斬りかかる。
呪いによって強化された肌に浅く紅の線が刻まれて鮮血が流れる。如何に耐久力が超強化されていようと血を失えば動きが鈍り、やがて死ぬ。
そうとなれば、後は的確にダメージを刻むのみ。敵の拳を見切り、伸ばした腕に刀傷を刻み、蹴りを躱し軸足に刀を突き立てる。
「…このまま行けば、問題なく倒せる。だけど…!」
そうはならないだろうと確かな戦闘知識を持つ、炎獄の処刑人は一抹の不安を抱えながら狂戦士の攻撃を受け流していた。
「病も死も望まないのは、あなたたちも同じでしたか同情はしますが、容赦はしません。リムは目標を殲滅します。」
炎の体を持つ魔狼。鹵獲召喚獣『フェンリル』に騎乗したリミティア・スカイクラッド(人間の精霊術士・f08099)が力強く宣言する。
リミティアは一時的に拘束制御術式『ドローミ』の効力を弱めるとフェンリルに攻撃の指示を下す。
「グルルルル!!!」
炎狼の瞳に魔力が集中し、灼熱の熱線が発射される。
魔炎光線…銀河帝国攻略戦の折に、ドクターオロチと呼ばれたオブリビオンによって使役されたフェンリルの代名詞とも言える強力な熱線。
多くの猟兵を苦しめたそれは空気を焦がし、まっすぐと壕に向けて飛翔するオブリビオンへと吸い込まれ、真っ黒な炭へと変えていく。
仲間を文字通りの消し炭に変えられたオラトリオの亡霊達は即座に反撃行動に移る。炎狼に騎乗する魔女に向けて指先を向ける敵が2体、全身の傷口から魔焔を噴き出す敵が2体。
リミティアは、魔焔についてのみ意識を向けるとフェンリルを走らせる。光条についてはきっと歌姫が掻き消すだろうと信じて。
亡霊達の傷口を焼きながら迫る血の如く赤黒い炎を、右へ左へと飛びながら炎の魔狼が駆け抜け、躱していく。
頭上では歌によって邪光が弾かれるように掻き消され、薄明かりの空に火花を咲かせる。
魔女が暁の歌姫に向け感謝の瞳を向けると、彼女は演奏の手を止め「これが当機の役目ですので。」と言うように両手の人差し指で笑顔を作る。
距離を詰めた魔狼は大地に焦げ跡を残しながら力強く前足で踏み切り、跳躍。巨体を空中に躍らせながら、リミティアに向けて指先を向ける相手にその爪を突き立てる。
炎の爪が振るわれて、オラトリオの亡霊は地面に向かって斜めに叩き落とされる。
「フェンリル、お願いします!」
地面に叩き落とされたオラトリオの亡霊に向けて追撃の咆哮が襲い掛かる。咆哮によって放射された炎狼の魔力は、オラトリオの亡霊の周囲を容赦なく爆破。
爆発の衝撃によってボロボロになったオラトリオの亡霊は、その姿を保てなくなり、骸の海に帰っていく。
戦線は猟兵優位で進んでいく。一番使い勝手の良いユーべルコードは封じられ、狂戦士たちは、超耐久を誇るものの全身傷だらけで血を流しすぎている。もう長くは保たないだろう。
人数もだんだんと減っていき、残りは5体。数的有利もなくなってきている。故に、オラトリオの亡霊達は最後の攻勢をかけることにした。
炎狼に騎乗する魔女は仲間の尊い犠牲によって距離が離れている。
剣士2人は狂戦士2人にかかり切り。
チャンスは今しかない。
オラトリオの亡霊達は生前の戦闘経験から、攻勢のタイミングを見切り、一気に進行する。その心の内にどうか成功しませんようにという思いを秘めながら。
3体のオラトリオの亡霊達、最後の疾病楽団は炎狼に騎乗する魔女を背に追いながら暁の歌姫のがいる壕の入り口に向けて疾走する。
「…やはりな!」
狂戦士の攻撃を見切り、躱しながらアンナは確信した声を上げる。今回の戦いは防衛戦。敵の勝利条件は猟兵の全滅ではなく、住民達の全滅。つまりは壕に飛び込んで死病をばら撒くことである。
「おっと、やばくないですか?」
狂戦士の繰り出す蹴りを屈んで躱しながら、いつの間にか近くに居たアンナに声をかけるアリア。
2人の猟兵達の距離はいつの間にか互いを背にするくらいに近くなっていた。
これは勿論、偶然ではない。妙に戦術染みた動きを警戒したアンナがこっそりと敵を誘導しながらアリアの方へと敵を引き連れながら誘導した結果である。
「…問題ない。ワタシがこいつらを受け持つ…!」
「了解です!アンナさん任せましたよ!」
聖剣と聖邪剣を鞘である、白と黒の片手袋に格納し、3体のオラトリオの亡霊達の下へとダッシュするアリア。
引き抜いた錆色の乙女で、アリアを追いかけようとする狂戦士を薙ぎ払う。そして無事に狂戦士の追跡範囲外に脱したことを確認すると、2体の狂戦士に向けて錆色の乙女を向ける。
超攻撃力と超耐久を誇る狂戦士との2対1。普通に考えれば絶望的な状況だが、炎獄の処刑人は極めて冷静だった。
理由は単純。戦闘知識を以て正しく対応すれば狂戦士は1:1で相手をするよりも、2体同時に相手をする方が楽だからだ。
殴りかかってきた1体目の狂戦士の攻撃をギリギリの所で見切り、カウンターの薙ぎ払いを無防備なお腹に叩きこみ、2体目の方に吹き飛ばす。
2体目は目の前に素早く動いてきた1体目に向けて拳を振りぬく。
――同士討ち。
それこそが≪おぞましき呪い≫というユーべルコードの最大のデメリットだ。理性のない彼女達は、敵を殴っているのか味方を殴っているのかの判別がつかない。
それ故にどちらかが動かなくなるまでひたすらに殴り合いを続けるしかない。
醜く同士討ちをするオラトリオの亡霊を前に、炎獄の処刑人は精神を研ぎ澄ます。醜く争い合う彼女達を一撃で終わらせる一撃を放つために。
「地獄の炎よ、さまよえる亡霊共の身と魂を燃し刻め!」
錆色の乙女を炎獄の鎧と同じ青白い地獄の炎が包み込む。そして炎を纏う錆色の乙女を炎獄の処刑人が燃え盛る車輪のように振り回す。
ユーべルコード≪火車八つ裂きの刑(カシャヤツザキノケイ)≫。渾身の力で放たれた半径50mを焼き尽くし、刻みつくす地獄の炎を纏った斬撃の嵐は、その身を蝕む呪詛ごと狂戦士たちを焼き尽くし、焼滅させる。
狂戦士達が倒れ残り3体。平和な朝まであと少し。
前方より迫りくる血色の炎を回避しながら、炎狼とその背に騎乗する魔女は3体のオラトリオ亡霊達を追う。
200m、100mと徐々に距離を詰めていく、炎狼と魔女。しかしそれに比例するように攻撃は益々激しさを増していく。
それを悉く回避しながらリミティアは距離を詰めていく。
「これは禁じ手。しかし、切り札でもあります。」
距離を詰め切った瞬間に大技をいつでも撃てるように≪魔女の禁呪(ジョーカー・スペル)≫を発動、代償の呪いに体を蝕まれながらもさらに距離を詰める。
「今度こそ楽団を終わらせましょう。他ならぬあなたたちの為にも」
60m、50m…射程範囲!3方向から来る炎を、前足を踏み込み高く跳躍することで回避。敵の中心に飛び込む。
「エリクシルよ、咲き誇れ、汝の敵はここにいる」
魔女の禁呪によって強化されたユーべルコード≪魔女の薔薇(マギア・ローズ)≫が発動する。
宝石剣エリクシルが無数の花弁となり切り裂き、対象を拘束する茨が3体のオラトリオの亡霊を雁字搦めにする。
炎狼は速度を殺さぬまま走り続け、聖剣と聖邪剣を携えた猟兵の隣を走り去る。
仕掛けは上々。あとは仕留めるだけだ。
「ここまで、お膳立てされてミスったら女が廃りますね!いつもより光ましましで浄化してあげましょう!」
アリアの宣言に応えるように左手の聖剣Xカリバーに輝く星の聖光が、右手の聖邪剣Xカリバーに極光が宿り光り輝く。
それは暁の歌姫の歌声によってさらに高められさらに強い光を放つ。
「貴方たちの願いは!意志は!私たちが受け継ぎます!だから安心して逝け!エックス
.......カリバァァァーーー!!!」
ユーべルコード≪聖光闇勝利剣(エックスカリバー)≫。聖光と極光の入り交じる超特大の衝撃波が茨に縛られたオラトリオの亡霊達を襲う!
「「「あああああああああああああああああ
!!!!」」」
断末魔を上げながら、最後の疾病楽団が浄化されて聖光と極光の奔流の中に消えていく。
後に残るのは大地に刻まれた巨大なXの字だけ。
全ての疾病楽団が倒され、平和な朝がやってくる。耳障りな騒音はもうどこにもなく、戦場に響くは暁の歌姫の応援歌のみ。
続々と集まってくる疾病楽団を倒し切った仲間たちの姿に猟兵達は確信する。
疾病楽団は…騒音のメロディーに乗せて死と絶望を歌うかの楽団は壊滅したのだと。
アンナは夜明けの空を見ながら元のメイドの姿に戻ったアマータや他の猟兵達を伴って湖畔の村の住民達を迎えに行く。
アリアとリミティアは疾病楽団となったオラトリオ達の簡単な墓を壕の近くに簡単な墓を作った。盛った土に木を十字に組み合わせて十字架を刺したものに、何故か消えずに残った腕輪などの装飾品を乗せただけの簡易な墓だ。
「せめて墓標くらいは立ててあげませんと。」
「ええ、彼女達も喜んでいると思いますよ。」
手作りの墓に満足そうなアリアと、それに同意するリミティア。
簡易な弔いを終えた彼女達もまた、住民達と仲間の猟兵達が待つ壕の下へ戻っていく。
ふと、リミティアの足が止まり、中に誰も居ない墓をその青い目に映す。
「あなたたちを死病の遣いとしてこの地に送り込んだ誰かがいるなら、いずれ報いを与えましょう。魔女の誇りと使命に賭けて、リムは約束します。」
疾病楽団となってしまったオラトリオ達の墓前に誓いを立て、誇り高き魔女は、日常に戻っていく。
かくして湖畔の村の村を巡る亡霊騒ぎはこれにて終焉を迎えた。
疾病楽団の奏でる最終楽章、ハッピーエンドにて無事終幕。皆様お疲れ様でした。
大成功
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