●色褪せたポスター
『メアリー・ディアリング号、処女航海迫る!』
我が社の誇る最新技術の粋を集めた次世代の豪華客船、メアリー・ディアリング号。
その初めての航海まで、いよいよ1年を切りました!
2000人以上を収容する巨大な船体はまさしく洋上に浮かぶ城。
レストラン、シアター、カジノなどの娯楽施設。
ブランドジュエリー、香水、各国のお土産をご用意したショッピング施設。
広大な海に沈む夕日を見届けた後には、一流シェフがご用意するディナーをご用意。
海上で過ごす非日常を過ごしたいお客様へ、最高の満足をお約束いたします!
予約の空きも残りわずか。
お問い合わせはお早めに!
●幽霊船
「こちらは、十数年前に消息を絶ったとある客船のポスターです。今回は、この船に転移していただきますね」
グリモアから映し出していた映像を消しながら、猟兵を集めた人狼の青年が語りだす。
「今回の予知では、此方の客船が突如港町に上陸し、そこから現れるオブリビオンによる民間人への攻撃が確認されました」
それが分かっている以上、みすみす襲撃を許す理由もない。
グリモアの転移で未だ洋上に浮かぶ客船に乗り込み、オブリビオンを探し出して討伐することが目的となる。
「先行してくださるUDC組織の調査ドローンでは、甲板など外から見える範囲にはオブリビオンは居なかったそうです。ですので、皆さんには船内に乗り込んで探索をしていただくことになりますね」
元は一般の会社が所有していた客船とはいえ、十数年も経った今、乗客が生きているはずもない。
荒れ果てた船内で蠢く何かが居るのなら、それは決して友好的な存在ではないだろう。
「どんなオブリビオンが現れるかについては、予知できなかったのですが……この船には、経年劣化ではない損傷が複数存在します。つまり、乗組員は突然消えたのではなく、ある程度はUDCに対する抵抗ができていた筈なのです」
つまり、オブリビオン本体を探す事に加えて、消えた乗組員や乗客が遺した手がかりから情報を得ることも可能なはず。
「何を探すかはお任せしますが……一つだけ注意してほしいのは、現在船が浮かんでいるのが、周りに島も何もない、海のど真ん中でして」
めっちゃ揺れる、めっちゃ風が強い。
というか普通に絶賛嵐の中である。
「まあ、ええ。猟兵なら船酔いすることもないでしょう……ないよね?」
猟兵の一部に、一気に顔が青ざめた者がいる気がするけど、無視である。
さて、転移の準備も整った。
かつての海の城へと、その足を踏み入れよう。
北辰
一度だけひっどい船酔いになったことがあります。北辰です。
●状況
十数年前に消息を絶った豪華客船、『メアリー・ディアリング号』が舞台となります。
設備はOPの冒頭で紹介された設備の他に、乗客のための宿泊エリア、乗組員のための生活エリア、船長室、通信室、機関室などの航行のためのエリアなどがあります。
かつては多くの人々が乗り込んでいましたが、もはや1人の影も無く、船内は荒れ果てている場所も多く存在します。
転移した時点ではオブリビオンも身を潜めておりますので、まずはその捜索を行ってください。
オブリビオンそのものを探すのでも、乗客が遺した手がかりを探すのでも、どちらでも構いません。
また、船は現在嵐の中を漂流中。
全章において、揺れや風雨が発生しております。
対策が無いなら無いでそこまで大きな不利になることはありませんが、揺れや風の対策がプレイングボーナスに繋がりやすい状況なので、ご参考くださいませ。
それでは皆様、よろしくお願いいたします。
第1章 冒険
『幽霊船』
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POW : 障害を無理やり壊して探索します
SPD : 船中を探し回って手掛かりを集めます
WIZ : 断片的な情報から、推理を行います
👑11
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●吠える、狂う、絶叫する
船乗りの間で語られる、吠える海。
熱帯から寒冷地帯へ流れる大気の働きにより、常に荒れる海の中。
大きく船体を揺らす船の上に、猟兵達は降り立った。
不安定な足場、とうの昔に灯りが消えた、薄暗い船内。
そこに潜む、恐れるべきなにか。
もはや誰も迎え入れることのない大扉が、きぃと音を立てて、猟兵達へと手招きした。
木目・一葉
幽霊船か
この記録があるということは、他の船と緊急通信をしたか、救命ボートで脱出した生存者がいた筈だ
じゃないと記録は残らない
まずはここから確認だ
【WIZ】
・事前準備
生存者に丁寧な【礼儀作法】と【コミュ力】で接し、またインターネットで通信記録や噂の確認をして【情報収集】を行う
船内の地図だけは絶対に入手したいな
また暗闇探索の為、暗視ゴーグルを持って行く
念の為サイリウムも用意だ
・船内探索
今までの情報から何が起こり、敵が何処から現れ、特に多くの犠牲者がでたか場所を推測しつつ探索する
風の強い難所や揺れが激しい時はフック付ワイヤーを命綱として使おう
船内に骸があれば『操り糸の影』で残された意思から情報を得る
●誰もいない
「……本当に、荒れ果てているな」
かつては鮮やかな花を咲かせていたであろう、横倒しになった植木鉢を横目に見つめながら、木目・一葉(生真面目すぎる平凡な戦士・f04853)が船内を進む。
どれだけの間、海に揺られていたのであろうか。
船内であっても割れた窓から風雨は吹き込み、彼女のロングコートを叩き続けている。
あらためてフードを被りなおしながら、一葉はより深く船内を観察していく。
「とはいえ、原形は留めてるみたいだ」
準備が無駄にならなくて良かった。
そう考えながら、一葉は懐から、折りたたまれた紙を取り出す。
UDC組織の協力を得て入手した、メアリー・ディアリング号の船内図である。
それは一般に公開される物よりも詳細な、船長室や機関室まで記された完全な物。
オブリビオンの巣窟となっているであろうこの船を無暗に歩き回るのは、非常に危険な行為だ。
一葉はあらかじめ外部から敵が侵入しやすいであろう場所、当時の乗客たちが避難していったであろう場所に目星をつけて、真っすぐに探索を進めていた。
目指すのは、映画やダンスショウなどが行われていたはずのメインシアター。
単純な床面積なら、この船で最も広いその施設が、悪天候時の避難場所になっていたはずである。
……多くの人が居たのなら、その骸が遺されているかもしれない。
物言わぬ死者でも、【操り糸の影】を有する一葉であれば、引き出せる情報はある筈だ。
揺れに足を取られないようにゆっくりと、時には命綱代わりのワイヤーで崩壊した通路を超えながら、一葉は慎重に進んでいく。
そして、大きな扉の前に立ち。
警戒を強めながら、開け放った彼女が、その手の灯りで、内部を照らす。
そこに、広がっていた光景は。
「ある意味では予想通り、か」
なるべく外れていて欲しかったのだが。
船上の救命艇が使われていなかったこと、UDC組織と共に探しても、ついぞ生存者に接触することはできなかったこと。
そして、荒れ果てたメインシアターを赤黒く汚す、錆びた匂い。
そのすべてが、この船に乗っていた者の全滅を、一葉に突きつけていた。
「いや、まだだ」
一人くらい、亡骸が残っている者がいるかもしれない。
それすらも見つからないのなら、それ自体がオブリビオンに迫るための情報だ。
そう思考を切り替える一葉が、惨劇の舞台へと足を踏み入れていく。
――メアリー・ディアリング号の乗客は、怪物に骨も残さず食われてしまった。
――化け物が出たと訴える通信が、消息を絶つ前にあったんだって。
インターネットで情報収集をしている時に見かけた、他愛のない怪談じみた都市伝説。
なぜかそれを思い出した一葉の額を、一筋の冷や汗が伝っていった。
苦戦
🔵🔴🔴
仇死原・アンナ
異世界の宙飛ぶ船に乗ったことはあるけど海を往く船は初めてだ…
それにしても揺れるね…
同行者と協力しながら船中を徘徊し手掛かりを収集
「栄華を飾った豪華客船も、今では虚栄を飾る幽霊船か…」
[戦闘知識]を応用し揺れに対処、船内を壁伝いで歩きつつ[目立たない]ように徘徊する
[情報収集]しながら宿泊施設、生活施設を経由して船長室を目指す
もし敵が不意に攻撃してきたら妖刀を抜いて[串刺し、鎧無視攻撃]で反撃する
[見切り、武器受け、オーラ防御]で敵の攻撃を回避する
「さまよえるメアリーよ…何があったのか私たちに教えて…」
船に問いかけるように、天井を見上げながらぽつりと呟く
アドリブ・絡みOK
四宮・かごめ
そ、それがし、山育ち故、船は少し。……うっ!
(たたたたたた……)
(おろろろろろ……)
民間人とて2000人も居ればUEDに対抗し得る強靭な意志の持ち主が居た……という事にござろうか。
ならば、この場で最も意志の強かった……というより、立場上意志を強く持たざるを得なかったのは、
多くの人命を預かっていた船長どのを置いて他に居ないものと思われる。
船を損傷させるUEDを相手に乗組員が統制を保っていた時間は長くなかったでござろうが、少なくとも冷静さを保とうとしていた筈。
まずは船長室へ向かい、そこから情報収集に移るござる。
もし単独でオブリビオンに遭遇したら【忍び足】で退避。味方に報告するでござる。
●何かが居る
「宙飛ぶ船に乗ったことはあるけど、海を往く船は初めてだ……」
それにしても揺れる。
空中と海上で、こうも勝手が違うのか。
とはいえ、猟兵として、数多の戦闘を潜り抜けた彼女、仇死原・アンナ(炎獄の執行人・f09978)の身体能力であれば、耐えきれないほどではない。
壁伝いに、慎重に船内を進んでいく。
詳細は不明とはいえ、この船がオブリビオンの潜む危険地帯であることは確かなのだ。
ボロボロの通路を歩み、警戒しながら曲がり角から先の様子を窺えば……。
「おろろろろろ……」
なんか、緑色の着物に包まれた下半身があった。
「いやぁ、お恥ずかしい。そ、それがし、山育ち故、船は少し。……うっ!」
「だ、大丈夫……?」
窓から身を乗り出して、ちょっとお上品でない行為に及んでいた下半身、もとい、四宮・かごめ(たけのこ忍者・f12455)と名乗ったエルフが再び青い顔で俯く。
今度は耐えた。
誇り高き四宮流の忍びが何度も醜態を晒すわけにはいかない。
もっと言えば14の乙女的にもNGである。
「して、アンナどのの方は何か収穫はあったので? それがしは、これから船長室へ向かおうと思うのでござるが」
「今の所、あまり。オブリビオンの姿も見えないしね、私も船長室に何かあるんじゃないかなって」
再び歩みを進めながら、2人の猟兵が言葉を交わす。
消えた乗客がある程度オブリビオンの襲撃に耐えていられたのなら、そこには集団を纏めるリーダーの存在も必要だった筈。
その役目を果たしていた人物として、もっとも相応しいのはこの船を任された船長であったことは容易に想像がつく。
ならば、その私室には何かしらの手がかりが遺されているかもしれない。
「しかし、本当にどこもかしこもボロボロでござるなぁ……。この絨毯も、破れていなければそれは見事なものでござったろうに」
トントンと、床に敷かれているボロキレ――彼女曰く、元絨毯――を足で叩きながらかごめがぼやく。
ぶっちゃけ、暇なのだ。
道中、船内の部屋をいくつか覗いて見るものの特に収穫は無し。
オブリビオンの奇襲を警戒しながら進む足は遅くなるが、敵が襲撃してくるそぶりも無し。
首の裏にピリピリと感じる敵意だけは、第六感が囁いてくるのだけど。
「栄華を飾った豪華客船も、今では虚栄を飾る幽霊船か……」
同意するようにつぶやくアンナの見つめる先には、もはや何が描かれていたかも分からぬほどに劣化してしまった絵画が飾られる。
絨毯も絵画も、この船で幾度となく見てきた。
半端に形を残したそれらの品が、この船が、様々な人の夢を注がれて作られた城であることを。
それが、無残に朽ち果てていることを伝えてくる。
揺れによる不快感と共に、船そのものが持つ陰鬱な雰囲気で気が滅入ってくる。
いい加減に、何かしら新しい情報は無いものか。
そう考える2人の目の前に、ようやく目的の扉が見えてくる。
「船長室……ここでござるな、アンナどの、警戒を」
「わかってる、何時でも大丈夫だよ」
不意打ちに備えて巨大剣を構えたアンナを確認してから、かごめが一気に扉を開け放つ。
オブリビオンは、いない。
相変わらず姿を見せる気は無いようだ。
「思ったより、綺麗な部屋だね」
「うーむ、荒れてはいれど、襲撃を受けたなんて様子ではないでござるなぁ……」
少なくとも、不自然な破壊の後は見当たらない。
物は散らばっていても、年数と嵐によるものと考える方が自然だ。
また空振りかもしれないという不安を抱えながらも、2人が手がかりを探し始める。
「日誌は……変な点はないでござるな。異変が起きた後に此処に人が戻ることは無かったのでござろうか」
単純に余裕が無かったのか。
戻るべき人物は真っ先に死んでしまったのか。
どちらにせよ、有益な情報はまた無さそうだと落胆しながらページをめくるかごめの手が、ある記述で止まる。
「……影?」
19██/█/2█
航行中に大型鯨類と思わしき影の目撃あり。
既存の生息域から大きく外れた海域の為、群れからはぐれた単独の個体と思われる。
万一の衝突事故を防止する為、レーダーを管理する■■■2等航海士へ類似する影への警戒を指示。
「大型鯨類……ようするに、クジラとかいう奴でござるよな。海にいる、でっかいアレ」
記述に不審な点は無い。
そういうこともあったんだ、で済ませていい情報であるかもしれない。
しかし、オブリビオンが出現する時に、有象無象を率いる『大物』が現れるのはよくあることだ。
それを知るかごめには、どうしても無視できぬものであった。
一方で、アンナの探索はかごめ以上に難航していた。
デスクの周りに散乱していた書類をまとめてみたはいいが、そこから直接オブリビオンに迫れそうな情報は見えてこない。
専門用語だらけの書類をどうにか解読して分かったことは、この船が本来辿っていた筈のルート程度。
そもそも、これだって船に乗り込まずとも調べることができた情報でもある。
段々、成果の出ぬ探索に徒労感も強くなってくる。
「さまよえるメアリーよ……何があったのか私たちに教えて……」
そう言って船が答えるはずもないけれど。
先の見えぬ探索への疲れと、孤独に海を漂うこの船への哀れみからそんなことを呟いて、アンナが力なく天井を仰ぐ。
目が、あった。
「――ッ!?」
考えるより先に剣を構えた時には、既にその姿は消えていた。
辺りを焼き払ってでも探し出したいところではあるが、此処は海の真っただ中。
ただでさえ痛んだ船で無茶をすれば、自分たちの身が危ないことも分かっているアンナが、悔し気な表情で天井を睨みつける。
そこに、確かに居たのだ。
昏い眼差しで此方を見つめる、青緑の瞳が。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
高野・エドワード
十数年前に消息を絶った豪華客船、メアリー・ディアリング号…。ディアリング号、か。
洋上の城。娯楽施設にショッピング施設、豪華なディナ―…。
UDCの仕業か、他に何かの要因があったのかはまだ分からないけど…当時の人々の愛と夢が詰まっていたであろう場所が、こうも荒れ果ててしまった姿を見るのは…心が痛むね。
僕は乗客が遺した手がかりを探すよ。宿泊エリアや、娯楽施設等客が多くいたであろう場所を重点的に捜索。
通路では大きく翼を広げる余裕はないと思うけど、ちょっと浮くくらいはできるかな?船酔い防止に浮きながら行動を。
…過去の栄光の片鱗を見つければ見つける程、精神的なダメージで上手く言葉を紡げなくなりそうだ…。
●悲劇に潜む
洋上の城。娯楽施設にショッピング施設、豪華なディナー。
船を作った者、船を動かす者、船に乗っていた者。
この船に関わった様々な立場の者が、愛を込め、夢を見ていたのだろうことは想像に難くない。
「それが、こうも荒れ果ててしまった姿を見るのは……心が痛むね」
思わず言葉を漏らした高野・エドワード(愛のガチ勢・f00193)が居るのは、船に遺されていたレストランだ。
今なお激しく揺れている船内において、その背中の翼で飛翔することで揺れの対策をしているエドワードにとっては、細い通路で繋がれた部屋よりも、こうした広々とした空間の方が動きやすい。
軽やかに空を舞いながら、荒れ果てたレストランを見渡す彼がしばし考え込む。
刃物で切り裂かれたようなテーブル。
砕けて床に散乱する食器類。
叩き壊されたかのような彫像に、腐敗すら通り越して干からびた野菜。
何かの燃えカスのようなものまで散らばっている。
何かが引っかかるとその光景を見つめていたエドワードが、その違和感の原因に気づく。
破壊のされ方が、やたらと多様なのだ。
オブリビオンにも、当然器用なものはいる。
斬撃を繰り出し、火を操りながら大質量で敵を叩き潰すようなものも、いないわけではないだろう。
けれど、様々な手段を持っていたからといって、それをすべて使用する必要はあるのか。
獲物を狩るのであれば、その相手に合った適切な攻撃を1種、せいぜい2種で十分ではないか。
それでも、様々な破壊をまき散らさねばならない理由が、オブリビオンにはあったのか。
それとも、この惨劇を作り上げたその張本人が、複数いるのか。
後者であってほしくはないなと苦笑いするエドワードが、新たな異物に気づく。
壁に付着した赤い汚れ――血文字だ。
それに気づいたエドワードが、慎重に、けれど速やかに近づいて目を凝らす。
かつてこの船に乗り込んでいた犠牲者の最期の言葉、無視していいはずもない。
「……これ、は」
もっといきたかった。
おとなに、なりたかった。
拙い字。
かつてのこの船には、子供も乗り込んでいたのであろう。
家族旅行だったのだろうか、きっと、素晴らしい思い出になる、そのはずだったろう。
そしてそれは、骸の海から染み出た怪物に踏みにじられた。
痛ましさに、胸が締め付けられる。
恐ろしかったろう、悔しかったろう。
こんなことは繰り返されてはいけない、猟兵として、必ずこの船に潜むオブリビオンは倒さねば。
そうだ、オブリビオンを殺さなければいけない。
見つけて捕らえて殺して待て還して沈めて殺して殺しておかしい殺して憎きオブリビオンをこれは憎い憎い憎い憎い憎憎憎憎憎憎憎憎これは憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎これは!
「――僕じゃないっ!」
エドワードの叫びが船に響き渡る。
荒い息を整えて、ゆっくりと心を落ち着かせる。
今のは、なんだ。
犠牲者を想い、その死を悼んだのは自分の意思だ。
オブリビオンを討ち、これ以上の犠牲を防ぎたいと思ったのも自分だ。
けれど、今の狂気的な憎悪はなんだ。
再び壁に目を向ければ、先ほどの血文字は消えている。
張りつめた表情のエドワードが、レストランを出て、他の猟兵を探し始める。
仲間にも伝えなければならない。
この船に遺されているものは、哀れな犠牲者の叫びだけではないことを。
狂気と、悪意で作られた、罠が潜んでいることを。
苦戦
🔵🔴🔴
●蠢く
すごいね、あのおにいさん。
そうだね、あそこまでいったら、みんなもどらなかったのに。
あのおねえさんも、こっちをみてた。
びっくりしたね。
でもかんけいないよ。
そうだよ。
そうだね。
だって。
あいつらだけいきてるなんて、ずるいじゃないか。
グレース・マクローリン
【POW】
ま、お宝が無くてもアタシはこういう船大好きではあるけど、幽霊船の中には往々にして海賊やシージャック以上にろくでもないヤツらがいるもんだよね。
アタシは巨大豪華客船が揺れるレベルの大嵐はまだ体験した事ないけど、船内の足場の悪さは【地形の利用】と【クライミング】でなんとかなんないかな?
経年劣化で開かないドアなんかもあるだろうし、まず【破壊工作】で発破したり邪魔なもんは吹き飛ばして【情報収集】と行こうかな!
ヘンペル・トリックボックス
……水も滴るイイ男、というには少々濡れ過ぎた感がありますなァ(一張羅の裾を絞りつつ)
はてさて十数年前とはいえ、二千人近い乗客が丸ごと行方不明とは穏やかじゃない。乗組員の遺した痕跡を辿りつつ、探偵の真似事でもしてみるとしましょうか。えぇ、紳士ですので。
船内は真っ暗でしょうから、【暗視】で視界を確保。シルエットと二手に分かれ、船内を探索しながら【情報収集】といきましょう。内部の損傷痕や遺留品等、当時の様子がわかる物から現場の状況と経緯を推測し、乗組員たちの行方を追ってみます。あまりにも手掛かりが薄いようなら、『断末魔の瞳』を強めに使いますが……それは最終手段ということで。
アドリブ連携歓迎ですとも。
●荒海に潜む
「……水も滴るイイ男、というには少々濡れ過ぎた感がありますなァ」
そうぼやきつつ、ずぶ濡れの一張羅の裾を絞る。
身に纏うのは全時空紳士協会のお墨付きを得た紳士服。
英国紳士に相応しいその装いは、しかし彼の中東圏の民を思わせる目鼻立ちを合わせると、どことない胡散臭さを醸し出す。
気にも留めないのか、わざとなのか。
ずぶ濡れになりつつも、ヘンペル・トリックボックス(仰天紳士・f00441)はいつもの調子を崩さず同行者へと言葉を続ける。
「それにしても、本当によく揺れる。専門家として、この辺りで何か気づくことなどは?」
「って、言われてもねぇ。アタシもここまでの大嵐に船だしたことは無いから……」
ヘンペルの問いかけに、げんなりとした顔でグレース・マクローリン(現代湖賊・f12443)が返事を返す。
全身の装備で海賊でございと主張する彼女の姿。
それを見たヘンペルの方から同行を申し出た、即席チームである。
「しいて言えば、おおっと! いくらなんでも揺れすぎとは思うよ」
どぉんと音が響くほどの揺れに体勢を崩しながらも、ヘンペルが答える。
「船にはフィンスタビライザーってのがあってね、それが揺れを軽減してくれるんだ。一昔前のものでも客船なら、多少燃費が悪くなっても揺れを大きく弱める、高性能な物をつけてる筈なんだよねー」
もっと単純に、大きい船であるほど揺れには強いはずだし。
そう不審げに呟くグレースは、このUDCアースで生まれ育った身だ。
少なくとも、この世界で作られた船であるなら、この船に乗り込んだ猟兵の中でもひときわ深い造詣を持つ人物であろう。
「ふぅむ、そういうことなら、そのスタビライザーとやらも確認してみましょうか。海中にあるソレが破壊されていたとしたら、水中にオブリビオンが潜んでいる可能性にも繋がるでしょう」
いや、この嵐の中どうやって。
グレースがそう問いかける前に、ヘンペルの背後に影が現れる。
真っ黒な体でもそうとわかる、ヘンペルと同じ形。
大げさにグレースに一礼をした後に、それはぴょんとコミカルに窓の外へと身を投げる。
「いってらっしゃい。あまり巫山戯すぎないように」
ヘンペルが自らの影、ユーベルコード、【視界の隅にて踊れ我が薄影(デッドスポット・シルエット)】で呼び出されたシルエットへと言葉を投げかける。
呼吸を必要としない彼は、こういった役目にはうってつけだ。
「さあ、我々も調査を始めるとしましょうか」
暗い船内を、グレースが先行する形で進んでいく。
暗視ができるヘンペルが先に進んでも良かったのだが、今なお揺れる船において、より軽快に動けるのは船に対して一日の長がある彼女の方だ。
荒れ果て、揺れで大きく傾く船内を、彼女は器用に全身を使いながら進んでいく。
「む、このドア開かないね?」
「これは……向こう側にバリケードが作られていますな」
部屋を見つけては捜索し、めぼしい成果も無く次を探していた2人が、不審な扉を見つける。
バリケードの存在。
それはつまり、この向こうに、オブリビオンから逃れた乗組員が立てこもっていたことを示していた。
「うーん、結構ちゃんと作ってあるね……爆破しちゃうか」
そう言うや否や、グレースが懐から取り出した爆薬を扉に備え付け始める。
ヘンペルとしても止める気は無い。
やりすぎないかどうかについては、彼女の方が船には詳しいだろうし、ダメならダメで自分のステッキの紳士的機能を使うまでである。
発破、爆音。
はたして彼女の仕掛けた爆弾は、器用に扉だけを破壊し、強引に道を作ってみせる。
「よし……って、うわぁ」
「ほう、本格的にアタリかもしれませんな」
おそらくは、乗組員の部屋だったのだろうか。
二段ベッドが並べられた部屋には、ボロボロの服を纏った複数の骸骨。
骨だけになっているとはいえ、この船で2人が初めて目にしたものだ。
「うえぇ……あんま漁りたくないんだけど」
戦いに慣れた猟兵とはいえ、好き好んでみたいものでもない。
そう、半ば目をそらすように部屋を観察したグレースが、あるものに気づく。
手帳だ。
急いで拾い上げ、ページを捲る。
前半はただの業務上のメモ。
違う、探すべきはもっと後ろの……これだ。
今思えば、アイツが連れてきたんだろう。
アイツ自身はマヌケ面で海を泳いでいるだけだった。
だから俺たちも呑気にはしゃいで、嗚呼。
それに纏わりついているものの恐ろしさに気づけなかった。
化け物の仲間も、化け物に決まってるだろうに。
『アイツ』。
何を指しているのだろうか。
海を泳いでいる何かが、この船の惨劇を引き起こしたのか。
いや、文面を素直に読めば、直接この船を襲ったオブリビオンは別に存在するはずだ。
「イマイチ抽象的で分かりにくいなぁ……」
「とはいえ、やはり彼らは襲撃を受けた後も暫く生き延びていたのですね」
奥の手を使わずとも、それなりの情報が得られそうだと、ヘンペルが小さく安堵のため息をつく。
あとは、シルエットに任せた調査を……。
「あ」
「ん、どうしたの?」
突如固まったヘンペルに対し、グレースが不安げに問いかける。
「いえ、先ほどスタビライザーを調べさせようとしたシルエットが、食われたようですな」
「なんだ、食べられちゃっただけ……食べられた!?」
いやぁ、まだその辺確認していなかったのにと笑うヘンペルに対し、グレースの顔が強張る。
シルエットは、ヘンペルと同じ大きさの影だった。
つまり。
「人1人を一口で食べるような何かがこの海に潜んでいる、ということは分かりましたな」
敵じゃないといいんですがねと、白々しく笑うヘンペル。
それを見るグレースの顔は、暫く苦笑いから戻る事は無かった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ミレニカ・ネセサリ
エスタシュ様(f01818)と
行き先が一緒なんて偶然でしたわね
しかしまあなんと雰囲気のある場所でやがる
はん、準備どころか
【覚悟】はいつだって決まっていますのよ
ではわたくしは客室方面へ手がかりを探しに
移動中は大連珠を握って【力溜め】を
【情報収集】【学習力】で船の揺れに体の動きを対応させてみたり
風を察知して【怪力】で掴まったり
扉や障害物は溜めた力を使い
ガントレットの爆発による【吹き飛ばし】でブッ飛ばしたり
【鎧砕き】で殴り破ったり
ぜりゃァッ!
【第六感】を働かせつつ【情報収集】で手がかりを探します
日記や手帳などがあればいいのですが
何か見つけたら合流して共有致しましょう
エスタシュは保護者みたいな人の友人
エスタシュ・ロックドア
ダチが(一応)面倒見てるらしいミレニカの嬢ちゃん(f02116)と来たぜ
嵐の只中の船か
酒で悪酔いするよかマシだ、多分
掴むもんさえありゃ【怪力】で無理やりバランスも取れるだろーしな
さて、準備は良いかミレニカ?
そいつぁ重畳
手分けして探すか
俺ぁもちろん敵の方な
機関室とか船長室とかそっち方面を探す
特に理由はねぇが、“ボス”がいるならそっちっぽいだろ?
【第六感】も働かせつつ戦闘の痕跡を探して追うぜ
障害は【怪力】【ふき飛ばし】で蹴り飛ばす
この音聞きつけて向こうから来りゃ話は早ぇんだがなぁ
●何処にも行けない、はず
「また障害物か……まあ、吹き飛ばせばいいだけなんだけどよ」
猟兵達の探索は続く。
エスタシュ・ロックドア(ブレイジングオービット・f01818)も左右上下に激しく揺れる船の中、その怪力で強引にバランスを取りながら進んでいく。
とはいえ、船の中は崩壊が進み、今のように行く手を阻まれることも度々あった。
そのたびに、彼の剛脚がうなりを上げる。
今もまた――。
「せぇえ、のっ!」
「うひゃあぁぁぁ!?」
渾身のキックに吹き飛ばされる瓦礫。
でもなんか、別の音も聞こえたような……。
「な、なにしてくれやがりますのー!!」
「お、おう、スマン……って、ミレニカの嬢ちゃんか?」
エスタシュが蹴り飛ばした瓦礫の向こう側。
そこにいたのはミレニカ・ネセサリ(ひび割れドール・f02116)。
友人が面倒を見ているという彼女の顔に、ひび割れを見たエスタシュの肝が冷える。
いや、大丈夫、あれは確か元々彼女の顔にあったはずだ。
「まったくもう……って、エスタシュ様ではありませんか。偶然ですわね?」
見知った仲ではあるが、示し合わせてこの船にやってきたわけではないらしい。
それでも折角出会えたのだ、少しの間、共に歩きながら情報交換でも始めよう。
「俺の方は、船長室に行ったはいいが先を越された後だったな。まあ、オブリビオンが天井に張り付いていたって話は聞けたんだが」
「こちらは、乗客が遺した手がかりについてですわね。なんでも、オブリビオンが遺したらしい偽物の罠が混じっているとか」
船の中を歩き回れば、自然と他の猟兵と出会うことも多くなる。
彼らから得た情報を、お互いに共有することも大事なことだ。
そうした話もひと段落したところで、ミレニカの表情が少しだけ得意げな物に変わる。
彼女が取り出す古ぼけた手帳は、エスタシュと出会う前に立ち寄った客室で見つけたものだ。
これこそ、この朽ち果てた船で見つけた重要な手がかりである。
もっとも、その後に偽の手がかりが混じっていると知らされた時は冷や汗が流れたが、さいわいオブリビオンが現れる気配も無し。
「ほとんどの文字は震えてぐちゃぐちゃになってて、読めないのですけれどね。ほら、このページ……」
「『怪物が居なくなったところで、もうどこにも行けない
』……?」
ミレニカが指で示す文章を、エスタシュが読み上げてみる。
恐怖に震えるその文字は、言葉以上に書き手の感情を訴えてくる。
そして、何処にもいけないというその言葉。
エスタシュが船長室の次に向かおうとしていた場所が、自然と連想された。
「船が身動き取れない状況だった……機関室か?」
「ええ! きっとそこに行けば新しく分かることもあるんじゃないかと思いますの!」
エスタシュが向かおうとしてた理由は、『そういう所がボス部屋っぽい』なんて理由だったのだが、新たに向かう目的が増えただけだ。
何年も昔のこととはいえ、オブリビオンが居座ったために機関室へ近づけなくなったなんて可能性もある。
一人で向かうよりは、このまま同行していく方がいいのだろう。
船の揺れにも慣れてきたのだろうか、思いのほかスイスイと進むミレニカを追うように、エスタシュも船の下部、機関室が存在するエリアへと向かう。
そして、2人がたどり着いた機関室はまさしく船の心臓部。
他の箇所と異なり、はるかに分厚い鉄の扉がその道を閉ざしていた。
「……ぜりゃァッ!」
まあ、こういう時の為に今まで力を溜めていたんですけどね、このお嬢さん。
「うむ、良いパンチだ。しかしコイツは……」
「……わ、わたくしは扉だけ壊したはずでやがりますわよ!?」
流石にそこを疑ったりはしない。
2人が見たのは、原形を留めぬほどに破壊された機械の数々。
おそらく、船を動かすための推進機もこの鉄くずたちに混ざっているのだろう。
確かにこれでは、オブリビオンの脅威が去ったとしても船は何処へも行けはしない。
「まあ、俺らに関してはコトが終わった後に、グリモアで転移させて貰えればいいんだが……ん?」
「今必要なのは、オブリビオンの情報ですわ。残念ながら空振り……どうしましたの?」
言葉の途中で首を傾げたエスタシュに、ミレニカが訝し気な視線を送る。
「いや、グリモアで思い出したんだけどな。確かグリモア猟兵の予知では、この船が町に現れるって話だったよな?」
「ええ、そのはずですけれど……?」
そんなものは、最初のブリーフィングで全員が聞いた話であり、それを食い止めるために自分たちはこの船に乗り込んだのだ。
「つまりだ。エンジンが止まったこの船を動かせるような奴がいるってことにならないか?」
エスタシュの推論を聞いたミレニカが静かに考える。
なんとなくだけど、大きく外れては無い気がする。
自分の勘は結構当たるのだ。
「……なんとまあ、嬉しい情報でやがりますわね」
今必要なオブリビオンの情報が手に入った。
何万トンあるかもわからない、この幽霊船を動かすような存在が相手になるという情報が。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
鎧坂・灯理
【捜査依頼】を受け、参加。
同行する依頼人の安全を第一として行動する。
船か……あまり縁が無いな。とにかく情報を集める。
UDCに船内図を貰い、船長室を目指す。目的は航海日誌だ。
記録を残すのも船長の務め、日誌を付けるのは法的に定められているはず。
であれば、何かしら書き残されているだろう。
嵐に関する諸々の対策には念動力を使用。体表を覆うように念力の膜を張って風雨を防ぎ、少し浮遊する事で揺れや足が滑る事を防ぐ。
船上でバイクは邪魔だな。【私用の鞄】(演出UC)にしまおう。
移動中、血痕のある場所で選択UCを使い、過去を覗く。
不意打ちにも反応できるよう、気は常に張っておく。
同行者にも可能な限り気を配るぞ。
矢来・夕立
【捜査依頼】
餅は餅屋。怪事件には名探偵。
探偵さん(f14037)に依頼を出しました。
共同捜査です。
■風雨/揺れ対策
式紙に頼りながら進みます。
……が、探偵さんの念動力に頼り切りですね。実際は。
■調査:SPD
【紙技・彩宝】。
予め鼠の群れを折って、船内に放っておきます。
何かを見つけたらダクトや隙間を通って伝えに来るでしょう。
船内図があるのでしたら、『聞き耳』。
構造に矛盾や不審な点がないかを『音』で確認します。
靴音の変化。反響の仕方。音でわかることは少なくない。
あ、壁にモールス信号でも打ち込んでみましょうか?
案外返ってくるかもしれませんよ。
SOSが。
情報と疑問は積極的に探偵さんと共有します。
●さ行の2文字目、な行の4文字目
さて。
幽霊船に潜む謎、怪奇、悪意。
それに立ち向かう為に必要な物とは何か。
知力、武力、もちろん大切だ。
この洋上の城に潜むは骸の海から染み出たオブリビオン。
その詳細を解き明かし、打ち倒すためには力が必要だ。
けれど、今話しているのはそういう事ではない。
お約束というものがあるだろう。
巨大化した怪人を巨大ロボで打ち倒すように。
先に料理を出した方が負けるように。
「そう、餅は餅屋。怪事件には名探偵。そういうわけで今回の依頼を出させていただいたわけです」
もちろん半分ウソですよ。しっかり能力を見込んでご依頼させていただきましたとも。
その言葉は淡々と淀みなく。
矢来・夕立(無面目・f14904)はいつもの調子で、今回のチームメイト、鎧坂・灯理(不退転・f14037)へと語り続ける。
「しかしなんとまあ、チグハグな壊れ方をしていますよね、この船」
【紙技・彩宝】。夕立の調査は既に始まっている。
折り紙で作られた鼠の群れは、船内を駆け回り、主の元へ船の情報を届け続ける。
「言いたいことは分かるさ。この目で見た内装の傷、貴様が報告する細部の惨状」
灯理は猟兵であり、探偵である。
夕立は猟兵であり、■■しである。
オブリビオンではない、別の存在を相手取ることも、日常の一部である。
『その破壊』を多く見てきた彼女たちだからこそ、この船を襲った悪意の、より深い部分に気づく。
「この船、大部分は人間の手によって壊されているな」
乗りつけてきたバイクを鞄に吸い込ませながら、なんてことのないように灯理が語る。
人を見てきた彼女たちにとって、意外ではあれど、わざわざ驚くようなことでもなかった。
「しかし探偵さん、もうちょっと運び方どうにかならないでしょうか。鷲掴みにされてるような感覚が、結構気持ち悪いのです」
「こっちは不意打ちに備えて気を張りながら、貴様も運んでやってるんだ。贅沢言うな」
探偵の念動力で浮かぶ2人が、船長室を目指して船内を進む。
大した収穫は無かったという話も聞いたが、2人なら。
正確に言えば、灯理が有するユーベルコードを用いれば、過去の足取りを追うこともできるはずだ。
「貴様こそ、私に任せて楽をしてる分、何か別の事はできんのか」
口では辛辣な事を言いつつ、夕立の身体が離れすぎないように、 何かがあれば、すぐに自分が対応できる距離は必ず確保する。
依頼人が同行する以上、その安全を最優先に。
それが、灯理のプライドでもあった。
「いえ、探偵さんの船内図なんかも見て、不審な箇所が無いか鼠も含めて探してるんですけどね」
見ても聞いても、この船そのものはただの船だ。
秘密裏に邪神復活の儀式が行われていた隠し部屋だとか、そういう後ろ暗いものは出てきそうにない。
大した進展も無いまま、2人が目的の船長室へと到着する。
「おやおや、大分荒れ果てていますね。犯人を当ててみましょう、先客がひっくり返したのだと聞いてます」
推理でも何でもないことをペラペラ語る夕立を――荒れた室内はオブリビオンに関係ないという情報の、分かりにくすぎる共有でもあるが――半ば無視しながら、灯理がユーベルコードを発動する。
【裏探偵七つ道具《目》(ソニシテモラサズ)】と名付けられた力によって呼び出される、スクリーン。
過去と未来を映し出す、探偵が持つには反則的に過ぎるその力で覗くのは、船長室の航海日誌が途切れる直前の記録。
船長がどこへ消えたかが分かれば、おのずと次に探すべき場所も見えてくるだろう。
そうして、ユーベルコードが灯理に伝えるのは。
「……よりによって、なんとまあ間の悪い」
船長室で事務作業を行う中年の男、これが船長だろう。
そこへかかってくる1本の船内無線は、乗客同士のトラブルを伝えてくるものだ。
報告を受けた後に、部屋を出る男。
そして二度と、戻ってくる事は無かった。
オブリビオンが映れば分かりやすかったのに、影も形も無し。
大体、なぜ乗客のトラブルごときで船のトップが出てくるのか。
まあ、そういう気質だったのかもしれないが、これは知りたい情報を得るまでまだまだかかりそうだ。
頭を抱える灯理がふと振り返れば、なにやら夕立がしゃがみ込んでいる。
まさか、念動力を切ったこの短時間で酔ったのか。
いや、これは。
「……なにをしてる?」
「いえ、オレもサボってるわけにもいきませんから。こう、コンコンと」
床に打ち込まれる長と短の信号。
SOSを示すその信号を、夕立は飽きもせず送り続ける。
依頼人とはいえ、もう少し真面目にできないのか。
そう、灯理が苦言を呈しようとしたときに。
きぃー、きぃー、こん、きぃー、こん。
きぃー、きぃー、こん、きぃー。
夕立の手が奏でる信号とは、別の音。
それが示す意を同時に理解した2人が、船長室を飛び出していく。
「おい、どうなっている。オブリビオンは姿を現さないんじゃなかったのか」
「他の人だとそうだったらしいんですけどね。案外、しびれを切らしたのかもしれませんね」
揺れる船の中、少しでも戦いやすい場所を求めて。
探偵と■■しが、猟兵に戻る時はすぐそこに。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
●限界
どいつもこいつも、わがものがおで。
わたしたちがもってないそれを、じまんげに。
ああ、もうがまんできない。
灰藤・エミル
不謹慎だけど幽霊船ってわくわくするよネー
こんなステージでかくれんぼ
どきどきわくわくが止まらないネ
※基本的に敵を遊び相手と思っています
【POW】
ボク煩いと思うので皆の邪魔にならないように
皆が探さなそうなとこ行くネ
第一希望は地下だケド…
(動力とかあって船の心臓部って感じで楽しそう)
他に探索する人居るならそっちに任せて別のとこ行くヨ
で、頭使うの苦手だからがんがん障害物どけて進むヨ
音立てながらの方が隠れてる方もはらはらするデショ?
何か見つけたらラッキーくらいで探索するネ
多少の揺れは気にしないケド
歩行に支障があるなら愛刀ぶっ刺しながら歩こうカナ
刻印があるから戦闘になっても抜く時間稼ぎくらいは出来るデショ
バルディート・ラーガ
うへエ…船旅はともかく、風雨に晒されンのは体温が下がっちまう。
早めに船内に侵入しやしょう。
【四つ影の蛇使い】で腕の炎を蛇の形に分化。戦闘に備えて…つーよりは「ロープワーク」でもって手すりや柱なンかを保持、命綱代わりに進みやす。万が一、他の方が放り出された時なンかにも役立つかと。
ヒトが集まってるトコは一網打尽かもしれやせんが、客室まで全滅さすのはなかなか骨が折れるハズ。最後にゃ力尽きたとしても、しばらくは逃げおおせたヒトらも居るンじゃアねえかと。そんな考えから宿泊エリアの方を見回ってみやす。「鍵開け、暗視、クライミング」を使用。
痕跡が見つかりゃ上々、もし敵サンが居たら…周りに知らせンのを第一に。
●邂逅
先の2人が船長室を飛びだすときから、少しだけ時間を遡る。
「まったく、船内なら、まだマシだと思ってたんだが……」
変温動物は寒さに弱いんだ。
滅多に言わない独り言を零しながら進むのはバルディート・ラーガ(影を這いずる蛇・f06338)。
見ての通り竜派ドラゴニアンである彼は、炎で作られた両腕で身を庇いながら調査を進める。
どんどん激しくなる風雨は、割れた窓から今もなおバルディードの身体に叩きつけられ、彼の体温を奪い続ける。
その上船は揺れ続けるものだから、腕は自分の身体を支えるためにも使わなければならない。
【四つ影の蛇使い(フォーヘデッド・アサシン)】により変じた4匹の蛇のお陰で、片腕で十分移動ができるのはせめてもの救いだろうか。
「しかし、オブリビオンなんてどこにも……おや、これはこれは」
「ありゃ、人が居なさそうな場所を選んだつもりだったんだけどナ」
そんな彼が客室エリアで出くわしたのは、どこか子供っぽい雰囲気の青年、灰藤・エミル(幻惑ぴえろ・f09972)であった。
エミルは、多重人格者である。
コロコロ変わる人格により、行動は一貫しない厄介者。
猟兵として行うオブリビオンとの戦闘を遊びと認識する彼は、しかしそのことで他人に迷惑はかけまいという良識も持ち合わせていた。
だからこそ、他の猟兵が探している箇所を避けて、無数にある客室を地道に探していたのだが……。
「いえいえ、あっしとしてもね、船長室だなんだって雰囲気ある個所は、もっと立派な猟兵サン方が上手くやってくれると信じておりまして……」
嘘か本当かは分からないが、似たようなことを考える者はいたようだ。
他者を認識したとたんにヘラヘラと笑みを浮かべ始めたバルディードから、エミルへと他の猟兵が調べた情報が共有される。
単独行動を取っていたエミルにとっては、素直にありがたいことであった。
「ふぅーん、オブリビオンは全然出てこないのカー。ボクも色々音立てて頑張ってるんだけどネー」
そう言いながら、エミルはドスドスと床に刀を突きたてる。
揺れる船への対処手段でもあるが、わざと音を立てながら単独行動をすることで、オブリビオンを釣れないかという期待も少しだけ込められていた。
「どうにも敵サン、かくれんぼがお上手なようで……っと、よし、開きましたぜ」
軽い雑談を交わしながら施錠されたドアの鍵開けに挑んでいたバルディードの手に伝わる手ごたえ。
開く扉、ワクワクしながら入っていくエミルに続くバルディード。
暫くの後に、若干肩を落としながら出てくる2人。
合流してから、何回か繰り返されている光景だ。
客室エリアはまだまだあるけれど、これといった成果は見つからないでいた。
「うーん、これだけ部屋数があれば、少しくらいは何かありそうなんですけどねぇ」
「ぜーんぜん、新しいものは見つからないネー」
とぼとぼと、通路を進む2人。
ずっとハズレばかり引いていては、疲労も溜まってくるというものだ。
手がかりは見つからず、オブリビオンは現れず。
冷える船内の中で、揺れに耐えながら進むのは、非常に精神をすり減らす作業だ。
「ああもう! せめてこの揺れなんとかならないのかナ!」
「はっはっは、誰かが揺らしてるならともかく、波に言っても仕方ないことでしょう」
本当にそうか?
ふと、バルディードの頭に疑問が過ぎる。
死体すら残っていない客室。
乗客は逃げた、逃げたかったけれど逃げ切れなかった。
けれど、よくよく考えればおかしい。
船には破壊の跡は多く刻まれても、逃走を図った形跡は何処にもない。
失敗したと言えども、救命艇が無くなっているとか、窓から逃げようとしたなんて痕跡くらいは見つかってもいいだろう。
今のように船が大きく揺れているのなら救命艇も使えぬだろうが、それはあくまで、当時の航路から外れた嵐の海域だから、そうだと思っていた。
けれど、当時からそうだったとしたら。
「もしかしたら、本当に船を揺らしてる誰かがいるのかも、なんて……」
我ながら突拍子もない考えだ。
そう思いながらも口にした、それが引き金だった。
きづいたぞ。
あいつきづいた。
だまらせろ。
つたえさせるな。
ころせ。
「んな!?」
突如崩壊した船から染み出てくる何か。
それは、性格にバルディードの喉元へと迫り。
「おっと、ダメだよそれは」
エミルの首の刻印から伸びる触手に阻まれる。
「こいつは……なるほど、あっしの勘も捨てたもんじゃないらしい」
「なんか、船全体が騒がしいね。かくれんぼは終わりかナ?」
迎撃した1匹のみならず。
周囲から無数に湧き出てくるオブリビオンが2人を取り囲む。
暗い眼差しが孕むのは、未来持つ生命すべてへの嫉妬。
可能性を失ったオブリビオンは、自らの城を侵す侵入者へ、その牙を剥くことをようやく決めたのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第2章 集団戦
『棄テラレシ可能性』
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POW : 未来捕食
戦闘中に食べた【敵対者の血肉】の量と質に応じて【醜怪な姿へと成長を遂げ】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD : 現在汚染
【周辺同位体の寿命】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【恐怖と絶望に塗れた腐敗性瘴気】に変化させ、殺傷力を増す。
WIZ : 過去顕現
【悍ましさや痛(悼)ましさ】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【対象の喪った存在の幻影】から、高命中力の【憎悪を感染させる精神波】を飛ばす。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
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●染み出る
猟兵達の目から徹底して逃れ続けた今までとは真逆に。
通路から、部屋から、扉から。
壁から、天井から、床から。
無数のオブリビオンが猟兵達の前に現れる。
突然現れた? いや違う。
ただ、未来無き彼らが、今を生きる者への嫉妬を、羨望を、憎悪を堪えることができなくなっただけ。
きっと、最初から。
彼らはこちらを見つめていたのだろう。
太刀緒・朔
○SPD
大太刀で攻撃。
動ける限り動いて、斬れそうなら斬る。
行動の際は全体を見て他の人の射線を塞いだり、攻撃の邪魔をしない様注意します。
【早業】【なぎ払い】【フェイント】【カウンター】【衝撃波】【怪力】
攻撃は出来得る限り【残像】【第六感】で避けたい所存。
もし喰らっても【激痛耐性】【毒耐性】【呪詛耐性】で一回くらいなら耐えれないかなー。
カウンターにも攻撃にも【破魔】を乗せます。
ああ、もう。いたいな、嫌だな。その思いは、断ち切るべきものでしょう?
一応、【世界知識】と【医術】で船酔い対策
体調を万全にして、事前に酔い止めを飲んでから行く。
まぁ、ヤドリガミが船酔いするのかは知らんけど。
アドリブ・共闘歓迎
高野・エドワード
…!?
成程、さっき湧き上がった凄まじい憎悪はこの子たちの仕業か…。
対処法が解ったって、そう簡単に感情を殺したりできないのが人間の性…いや僕の弱さだね。
広い場所に陣取って『空中戦』を。
辛くても目を逸らしちゃ駄目だね。しっかり見つめて『見切り』
【飛翔】も使ってまずは回避に専念しよう。
あぁ分かってるんだけどなぁ…。同情したって何にもならないって。
これ以上犠牲者を出さない為にも、オブリビオンは例外なく倒さないと。
別にこういうのは初めてじゃないんだ。いい加減、慣れないとね…!!
上手く折り合いをつけられたら、杖で殴るなりUCの勢いを乗せて蹴るなりして反撃を。
無理だったらそのまま回避に専念。
アドリブ等歓迎♪
●憎悪の波を
のちの調査で判明したこととして。
メアリー・ディアリング号を襲ったオブリビオンは、生きていなかった。
状態ではなく経験として、猟兵たちを襲ったこのオブリビオンには、骸の海に沈む前ですら、この世界を生きた経験が無かったのだ。
それは堕胎された子供であったり、命とすら呼べぬ有機物の塊であったり。
故に、彼らは。
「くっ、全然勢いが止まらない……!」
生ある者への理不尽な憎悪に突き動かされ、我が身を顧みず襲い来る。
太刀緒・朔(斬り結ぶモノ・f08368)がオブリビオンに遭遇したのは、船員たちの生活エリアを調べ終わった直後の事。
突如現れたオブリビオンに対し、朔の対応は早かった。
その手の大太刀を抜き放ち、居合抜きの要領で1体を。
返す刀で2体を一気に切り払い、自分の戦いやすい開けた場所を求め戦場を駆ける。
ただし、計算外が2つ。
「……もう! どう考えても悪意ありますよねこの揺れ方!?」
踏み込むその瞬間に、刀を振り抜き、脱力する瞬間を狙いすますように揺れる船体。
明らかに波と風ではない、どぉんどぉんと何かがぶつかるような轟音。
ここに来て、メアリー・ディアリング号を襲う揺れは、猟兵に対する攻撃であることを隠すのを止め、激しさを増していた。
そしてもう一つ。
オブリビオン達が、自ら同胞を糧に呼び出す瘴気。
触れずともわかる、あれは、此方の身体を蝕むであろう悪意に満ちた代物だ。
もっとも、船体を蝕み、朽ちさせていくそれも、朔の怪力をもってすれば、対処できぬ技ではない。
大太刀を振るえば生じる衝撃波は、危険な瘴気ごとオブリビオンを押し返す。
1体1体は、決して朔にその牙を届かせるような相手ではない。
だけど。
「うわ!? もう、本当にやりにくい!」
防御の為には必要以上の力を込めて衝撃波を出さねばならず。
船の揺れが、彼女の体勢を崩し、余計に神経を削る。
嵐の海の中で、無限に湧くようにすら思えるオブリビオン。
周りすべてが、朔の敵である。
けれど、けれどだ。
敵が現れたその瞬間、聞こえてきた命への妬み、怨み、絶望。
オブリビオンであるという以前に、その在り方は朔の瞳には、どうしようもなく哀れな存在に映る。
ならば、それを断ち切るのが自身の役目であり。
「その猟兵の役目から! 逃げる気なんてありませんよ!」
「その通り!!」
逃げ込んだカジノエリアの上方から、飛び降りてくるように現れた白い猟兵。
周りすべてが敵であっても。
この幽霊船で戦うのは朔1人ではない。
「さて、さっき僕に干渉してきたのも、君たちなんだね」
陰鬱な幽霊船には似合わない煌びやかなジャケット。
一見戦闘には向いていなさそうな華美な装飾の杖。
キラキラと輝く、というより、ヴェールが本当に光り輝くその姿。
童話の王子様がそのまま抜け出てきたような出で立ちのエドワードは、悲痛な面持ちでオブリビオン達に相対する。
探索中に触れた、彼らの憎悪。
命持つ者が妬ましい、生まれることの無かった我が身が恨めしい。
様々な悲劇を下敷きにして生まれた、哀れな怪物。
おそらく、その存在への憐憫や同情をトリガーに、他者の心に入り込み、増殖してきたオブリビオン。
自分の見立ては、そう外れてはいないだろう。
それは、わかっているんだけど。
「ぐ……。そうだよ、わかっているし、初めてでもないだろうに……!」
同情したってなにも解決しない、だけど。
おぼろげな輪郭の幻影から染み入る憎悪が、ゆっくりとエドワードの心を塗りつぶしていく。
憎しみ、妬み、悲しみ、怒り。
オブリビオン達が今なお抱え込んだ感情が、容赦なくエドワードへと浴びせられる。
狂おしいほどの激情。
こんなもの、耐えられるはずもない。
それでもこれが、かつてこの船を喰ったなら。
それでもこれが、骸の海から迷い出た哀れな彼らを苛み続けるのなら。
「繰り返させるわけには! いかないだろう!」
空を舞いながら、刀を振るう女剣豪と一瞬だけ視線が重なる。
こくりと頷かれた、気がした。
襲い来るオブリビオンの嵐の中、ゆっくり確認する暇なんてありはしない。
杖を片手に、翼を広げたエドワードが空を駆ける。
攻撃が来るからと、自分の感情を殺せるほど器用な心なんて持っていない。
哀れなこの船の犠牲者への憐憫と、オブリビオンから伝わってくる憎悪で、とっくに頭の中はぐちゃぐちゃだ。
それでも彼は飛び続ける。
杖を振るい、力強く羽ばたき、オブリビオンを薙ぎ払う。
その力は、敵を打ち倒すほどのものではないけれど。
「うん、ありがとうございます、お兄さん」
敵の動きを見切ったエドワードによって一か所に誘導されたオブリビオンへ、刀を構えた朔が駆ける。
愚直な突撃に対するオブリビオンの反撃も、今だけは踏み越えて。
瘴気に焼ける肌が痛いけど。
憎悪が心に染み入る感覚は嫌だけど。
有翼の彼が叫んだように。
「――その思いは、断ち切るべきものでしょう?」
振り抜かれる刃。
破魔の力を乗せられた朔の刀は、哀れなオブリビオン達を、一刀にて切り伏せてみせた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
矢来・夕立
【捜査依頼】探偵さん(f14037)
最初から非日常の中に潜んでいたなら、後から入ってきたオレ達に気付ける筈がない。なるほど。
とは言いましても、生きてる人間の日常においては異物ですから──ここでもう一度死んでもらう。
揺れてるのがネックですね。
かと言ってずっと探偵さんに掴まっているわけにもいきません。
自己強化でカバーを試みます。
【刃来・慈正紅衣】。
……オレは気づいたわけですよ。
船体が揺れるより速く近づけばいいのでは、と。オレにはそれが出来る。そして強めに殴れる。多分。
背後を任せるのに心強いですね。探偵さん。
目の前の敵に集中して良いものと判断します。
用心棒でもご飯を食べていけるんじゃありませんか?
鎧坂・灯理
【捜査依頼】依頼人(f14904)
認めよう、私の考えが足りなかった。
まさかカビのように船全体に広がっていたとはな。精進しなくては。
では、カビ掃除を始めよう。
【SPD】
鞄からバイクを出し、宇宙走行形態で乗る。これなら空中機動も出来るし、雨風も防げるからな。
続けてUCを発動し、暴れる依頼人の補助。死角から襲う者や攻撃力を増した者を最優先で撃ち殺していく。なんなら轢殺もしよう。
依頼人を前線に立たせる以上、余計な怪我を負わせはしない。これは私のプライドの問題だ。
用心棒なんてガラじゃないが、依頼人くらいは守ってみせるさ。
終わったら【墓場鳥の侍女】(演出UC)を呼ぼう。
●蹂躙
「認めよう、私の考えが足りなかった」
「探偵さん、反省できるのは素晴らしいですが、既に囲まれていますけど」
船の中層エリアに、夕立と灯理、そしてそれを取り囲むオブリビオン達の姿があった。
「カビのように船全体に広がっていたとはな。精進しなくては」
「最初から非日常の中に潜んでいたなら、後から入ってきたオレ達に気付ける筈がない。なるほど」
オブリビオンによる船の陰鬱な雰囲気も、不自然に激しく揺れる船体も、最初からそうであるなら、後から気づくのは難しい。
でもそれオブリビオンに囲まれた時に確認しないといけない事ですか?
無表情に器用に目で訴える夕立。
「でもそれオブリビオンに囲まれた時に確認しないといけない事ですか?」
いや口でも言った。
けれどそんな視線も、周囲の敵も気にするものでは無いと言うようにニヤリと笑った探偵は。
「状況確認は大事だぞ? 次にすべきことが明確になる」
――では、カビ掃除を始めよう。
「ああ、なるほど、確かに分かりやすくなりましたね」
目の前の存在を殺すのであれば、得意分野だ。
刀を握り、夕立が目の前のオブリビオンを切り捨てんと前へ踏み込み。
船の揺れに身体を取られたたらを踏む。
どんどん酷くなっていく。
とはいえ、これまでのように念動力で運んでもらうのも、戦いの場では不便で仕方が無いだろう。
ならば、揺れすら気にならない速度で戦うまでだ。
「……【刃来・慈正紅衣】」
オブリビオンへと向けていた刃をひっくり返し、迷うことなく己の喉を切り裂く。
溢れる熱い血、焼けるような痛みが、自分の重ねてきた罪の実感をくれる。
夕立の身を蝕む怨念は、その対価に、彼の身体を超人のそれへと書き換える。
「…………」
気の利いた決め台詞でも言ってやろうかとも思ったが。
血で溢れる喉から発せられるのは、ごぽごぽという声ですらない水音。
喋れぬものは仕方ない、背中は任せた探偵さん。
鮮血の戦化粧を終えた暗殺者が、獲物を屠るべく跳躍する。
「……そうか、そうなるか」
それを微妙な表情で見るのは灯理。
当然だが、背中を任された彼女に聞こえたのは、ゴポゴポポという謎の音。
なにか指示は出されたようだが、一体何なのだろうか。
そして、依頼人の自傷行為は、余計な怪我を負わせないという自分の誇りに反すると考えるべきなのだろうか。
終わってから考えよう。
そう結論付けた彼女が、バイクに跨り援護を開始する。
とはいえ、やることはそう多くはない。
自傷行為によって自らを強化した夕立の力は圧倒的だ。
敵を叩き切り、蹴り潰し、蹂躙する。
精々、死角から迫る数匹のオブリビオンを撃ち抜いてしまえば事足りる。
「早撃ちには自信がある……のだが」
【MSスナイプ(マイクロセコンドスナイプ)】。
瞬時に銃を組み立て射撃まで行う規格外の早撃ちも、夕立が暴れまわる今は必要無いかもしれない。
なんなら、1度組み立てたものを分解して、再度組み立ててから撃っても間に合いそうなほどの余裕。
依頼に真摯にあたる彼女がそんなことをする筈もないけれど、そう思う程に一方的な戦いである。
とはいえ、敵を倒すだけが援護の形ではない。
夕立の我が身を顧みない暴れ方も、信頼できる後衛がいればこそのもの。
どんなに強力なユーベルコードでも、目の前の敵に集中できないのでは意味がない。
ペアで動くというその強みを活かしていくことでこそ、彼の独壇場は完成する。
「…………!」
もっとも、やはり彼がその感謝を口に出すことはできないのだけど。
「【墓場鳥の侍女(ナイチンゲール)】を呼ぶ力を残す方が有意義だな、これは……」
船で会話を交わした、短い時間で分析する彼の性質を顧みるに、効果が終われば自分でつけた傷が回復するなんて、気の利いた力であるとも思えない。
油断はしない、それは彼女のプライドに関わる問題だ。
それでも、この戦場だけは、いっそオブリビオンが哀れなまでに一方的な戦いが繰り広げられていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
グレース・マクローリン
うげっ…ったく下手なグロゴアよりも精神に来るなこれ…なんか近くにいるだけで脳みそを直に掻き回されてるみたいな感じ…【呪詛耐性】を付けて立ち回るとするよ。
まずあっちからの攻撃は当たる方がヤバイだろうし、【野生の勘】と【残像】、【見切り】で極力あっちからの攻撃は避けるように立ち回りながらこっちは【武器改造】で【破魔】用にあつらえた特殊弾を装填したアタシの「ヴォルフファング」の【クイックドロウ】【二回攻撃】【先制攻撃】でなんとかするよ。
足場の悪さは【地形の利用】と【クライミング】で切り抜ける!
ああなっちゃったのは同情するけど、生きてるアタシらを引きずり込もうとするなら話は別だよね!
木目・一葉
以前戦ったことがある
これらは、ただ倒してゆくのみ
何の感情も、抱く気はない
・戦闘
暗い中での戦闘だから【暗視】を活用しよう
基本的には囲まれてしまわないように【ダッシュ】、足場の悪い場所はフック付ワイヤーの【ロープワーク】で常に動き回ろう
迫る近接攻撃には【オーラ防御】をかけた斧で【武器受け】し、そのまま受け流して【カウンター】を狙う
現在汚染で殺傷力を増した攻撃は危険だろうから、【地形の利用】で周囲の障害物を盾にしよう
この戦闘中に敵に気付かれぬよう『影の追跡者達の召喚』を行い、複数の影の追跡者を各々1体ずつ敵にはりつけ、隙を見つけたら全ての影の追跡者から『影人の涙雨』を放つ
これで確実に数を減らそう
バルディート・ラーガ
あ、あっぶねえトコでした。ありがとうございやす。
……しっかし、やっこサンら。明らかにコッチの独り言に反応してきやがった。誰かサンが揺らしてる、となると。……フウーム。
とにかく、まだ命綱は持っといた方が良さそうですねエ。【四つ影の蛇使い】で引き続き体勢保持に努めつつ、いくらかは戦いに振り分けていきやしょう。
敵サンの攻撃はなかなかにキッツイですが……この嵐、まさかの追い風に使えるやもしれやせんねエ。わざと窓を叩き割って吹き込む風雨が瘴気を散らしてくれンのに頼りつつ、「毒耐性」で凌ぎながらの腕や尻尾の「なぎ払い」で弱ったヤツらから退けていきやす。
……寒イのは気合で耐えやしょう、多少ならば。
●崩壊
「こ、こいつぁ……」
バルディートの背筋に走る寒気は、吹き付ける嵐によるものだけでは無いだろう。
オブリビオンが現れたまさにその時の事であった。
襲撃を受けた彼が、フォローを入れてくれた猟兵に礼を言ったその直後。
ばきって聞こえた。
ばきって。
その後に彼の身体を包む、浮遊感。
風と雨の感触が肌寒い。
一瞬遅れて彼の脳に理解が及ぶ。
船ごと床にひびが入った。そこに丁度いた自分の身体が自由落下。
「うおおおおおおお!!?」
発動させっぱなしだった【四つ影の蛇使い】、蛇の頭部を振り回す。
このまま床に叩きつけられるならまだまし、万一亀裂から船外に放り出されれば、グリモアの転移すら届かぬまま溺死なんて未来すらあり得る。
危険な猟兵家業、いつか戦いの中で命を落とすかもしれないという覚悟はある。
でも、こんな事故死みたいなものはゴメンだ。
何かに捕まろうと必死にもがく彼の腕がギリギリで通路の壁に食らいつく。
重力と体重に今にも放してしまいそうなところを必死にこらえ、一気に蛇の身体を収縮させて身体を復帰させる。
「うわ!? ドラゴニアンが降ってきたぁ!」
かくして彼は、既にオブリビオンとの戦闘を開始していたグレースと一葉の戦場へ乱入することとなる。
「まったくなんなのさコレ! 船は壊れかけるしおじさんとも逸れるし!」
傾き始めた船の中、グレースが憤慨しながら銃を撃ち放す。
敵は呪詛を振りまく精神攻撃主体のオブリビオン。
面倒な手合いではあるけれど、猟兵としての研鑽の中で、呪詛への対策は習得している。
こちらの戦力は3人、この程度のオブリビオンに負ける道理もない。
真に手強いのは。
「敵自体は強くないけど、これは流石に厄介だな……」
ワイヤーを飛ばし、通路の穴を飛び越えながら一葉もぼやく。
このタイプのオブリビオンとは戦ったことがある。
精神への干渉を行いながら、戦闘中にも成長し、膨れ上がる憎悪の化身。
とはいえ、餌がなければ成長はしないし、こちらが油断しなければ、精神への汚染も避けられる。
力を纏うハルバードを振るい、突進してくるオブリビオンをはじき返す一葉の心には、一つの揺らぎもありはしない。
けれどこの地形は。
激しく揺れるだけではなく、船体の崩壊も始まったこの環境は戦いにくい事この上ない。
加えて、此方が床に接している時にばかり起こる揺れ。
もはや、この状況がオブリビオンの手によって作られていることを疑う理由などなかった。
「必ずしもマイナスばかりでもありやせんが、辛いもんは辛いですねぇ!」
腕と尻尾で敵を薙ぎ払うバルディートにとっては、船に生じた亀裂から吹き込む冷たい風も厳しいものだ。
敵が繰り出す瘴気を阻んでくれるという意味では、確かにありがたい。
しかし、この状況が長引くのであれば、先に力尽きるのは自分たち猟兵だろう。
振り落とされまいと船内に食らいつく蛇とて、いつまでも体力が続くわけでは無い。
気合で凌ぐのにも、限度というものはあるのだ。
「時間も惜しい、ユーベルコードで一気に片付けるから、サポート頼んだ!」
言うや否や、一葉が一旦オブリビオンから距離を取る。
もはや、何をするか説明する暇も惜しいのだ。
「へいへい、お任せを。あっしのしぶとさと来たらそりゃあもう評判で……」
「蛇くん! 前!!」
ヘラヘラと了承するバルディートの脇を抜けるように、グレースが放つ破魔用特殊弾がオブリビオンへ突き刺さる。
本来ならしっかり狙いたいところではあるが、揺れるわ穴が空いてるわの足場ではそれどころではない。
乱射して、すぐに弾を撃ち尽くすグレースがリロードをする間は、バルディートが時間を稼ぐ番だ。
その巨躯をもって、味方の壁になるようにオブリビオンを薙ぎ払っていく。
敵の瘴気も、少しであれば毒を耐える要領で凌げるだろう。
しかしそれも、長続きするものではない。
間違いなく、敵は弱い。
それでも、地形の悪さと、物量は確実に猟兵達の神経をすり減らしていく。
「フードの姐さん! まだかかりますかねぇ!?」
「そろそろ弾切れしそうなんだけどー!!」
戦いを進める2人の催促と同時に、眼を閉じ集中していた一葉が顔を上げる。
「いや、もう大丈夫――影よ、罪人に涙を注げ」
瞬間。
猟兵達を襲っていたオブリビオン達の身体に、無数の棘が突き刺さる。
密かに辺りに召喚した追跡者からの、【影人の涙雨】。
感知できぬ影の住民からの奇襲を受けたオブリビオン達が、ようやく沈黙する。
「おお、お見事ですなぁ! いやぁ助かった……」
窮地を切り抜けた事に喜ぶバルディートとは対照的に、グレースの表情は暗い。
「でもこの船の損傷……もう、あまり時間は無いかも……」
船が壊れれば、オブリビオン達も四散していくだろう。
骸の海に還らないままこの嵐の中に逃げられれば、いずれ別の船を襲うかもしれない。
それに、今なお船を揺らす張本人は、依然姿を見せないまま。
オブリビオンを討つために猟兵達に残された時間は、確実にすり減り続けている。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
ヘンペル・トリックボックス
(いよいよ濡れた服のせいで寒くなってきた)
ははぁ、過去の亡霊ですか。同情の余地はありますが……生憎と八つ当たりに付き合っている暇はない。何しろ今は──お茶の時間なのでネ!
冷えた身体を温めようとお茶を入れた矢先に戦闘とは。紳士にとってティータイムとは神聖なる儀式そのもの……というわけで、ここは式神に任せます。【高速詠唱】で召喚した式神たちに【破魔】の力を上乗せして【先制攻撃】を仕掛けます。耐久力は紙なので、敵一体に対して必ず複数体の式神で攻勢。数匹で気を引きつつ、他の数匹で死角から攻撃を仕掛けて確実に削っていく戦法を取ります。
「さて、お茶も飲み終わりましたので……本腰入れるとしましょうか。」
仇死原・アンナ
幽霊船の亡霊共め…
盗み見てるだけでは物足りなくなったか…!
他の同行者と協力する
敵による攻撃で精神を蝕まれないように[呪詛耐性]を万全に整える
[戦闘知識]を発揮して戦闘
妖刀を振るい[2回攻撃、串刺し]で攻撃
敵からの攻撃は[オーラ防御、見切り]で防御回避
「来い…嫉妬に満ちた貴様らを滅却してやる!」
[殺気]を放って敵群を[挑発]し[おびき寄せ]る
囲まれたら【ブレイズフレイム】を使用し、敵群だけを火達磨にして殲滅を狙う
「気が滅入りそうになる…こんな所から早く離れたいよ…」
戦闘後、壁にもたれながらため息をつきつつ
アドリブ絡みOk
●優雅な推理
仇死原アンナは、なんというか、ぼんやりしたところがある。
オブリビオンの巣窟ともいえるこの船では気を張り詰めているが、本来は良くも悪くもマイペースなところを持つ女性だ。
そんな彼女でも。
「何しているの……?」
「見ての通り──お茶の時間ですとも」
荒れ果てた船内で優雅なティータイムを始めようとするヘンペルには、疑問を投げかけざるを得なかった。
お互いに、激しい揺れと船体の崩壊で、直前まで同行していた猟兵と逸れた身ではある。
しかしその表情は対照的だ。
にこやかに紅茶を淹れるヘンペルに対して、こんな事してていいのかな? なんて思いを隠さないアンナ。
「まあまあ、慌てずにですよ。冷えた身体をそのままにしては、体力の消耗も激しいでしょう」
「それは、まあ、そうだけど……」
だからって敵地でやることだろうか。
アンナの心は疑問で一杯だった。
そんなことを考えながら、お茶を淹れるヘンペルに目をやり。
その背後に蠢く影を見て。
妖刀を構え、地獄の炎に身を包む彼女の思考が、瞬時に執行人のものへと切り替わる。
「ようやく……! 盗み見てるだけでは物足りなくなったか……!」
相対すると同時に、心に染み入るナニカの感覚を、猟兵としての意思で跳ねのける。
感じる圧力も大きくはない、数は多いが、2人がかりでなら問題なく倒せる相手だろう。
そう、ヘンペルの方へもう一度視線を向ければ。
「ははぁ、過去の亡霊ですか。同情の余地はありますが……生憎と八つ当たりに付き合っている暇はない!」
「え」
思わず気の抜けた声が出てしまった。
今、このおっさんなんて言った?
「オブリビオンが出たのだけど……見えてないの?」
「見えてますが。逆に聞きますが、あなたにはこの紅茶が見えないのですか!? この気温ではすぐに冷めてしまいますよ!」
なんだろうこれは、ワタシが悪いのだろうか。
そりゃまあ、猟兵にも色々な者がいる。
真面目な者、そうでない者、まさしく十人十色だ。
でもオブリビオンの前でなおティータイムを強行する相手は初めてだ。
揺れる船の中、アンナは混乱の極致にいた。
「ご心配なく、私の式神は、私よりもよほど役に立ちますとも」
「……そう」
考えるだけムダかもしれない。
諦めが入ったアンナが、再び執行人の顔に切り替えて、ヘンペルの式神と共にオブリビオンへと対峙する。
炎を纏うアンナが、嫉妬に歪んだ怪物へと斬り込んでいく。
元々、精神攻撃への耐性を備え、炎により相手を近づけさせないアンナのオブリビオンに対する相性は悪くない。
警戒すべきは瘴気による攻撃だけ。
それすらも、肉体ではない、オーラによる防御法を身に着けたアンナなら、容易に捌けるものだ。
一方で、優雅に紅茶を啜るヘンペルの式神たちも活躍する。
ユーベルコード、【式群招来・獣聚鳥散陣】で呼び出された式神たちは、1体1体は弱く儚い存在だ。
だからこそ、彼はその扱いをよく心得ていた。
必ず数匹で敵を引き付けて、別の数匹が死角から攻撃し、丁寧に数を減らしていく。
そして、ヘンペル自身は器用に安全地帯を移りながら紅茶をいただく。
正直、滅茶苦茶大変な事してるけど、彼の紳士たる拘りの為だから仕方ないのだ。
「なるほど……あんなふざけた戦いでも問題ない辺り、本当に弱いんだな」
ふと、アンナが刀を下ろし、ヘンペルを利用した挑発を仕掛ける。
増していく敵意を浴びながらも、彼女は更に言葉を重ねる。
ある意味では、哀れなオブリビオン達の苦しみを早く終わらせんとする、断罪の処刑人たる彼女の優しさなのだろうか。
「来い……嫉妬に満ちた貴様らを滅却してやる!」
アンナの叫びと共に、襲い来るオブリビオン。
それを迎撃するのは、全力の【ブレイズフレイム】。
哀れな怪物たちが、か細い断末魔をあげながらその炎に焼かれ、消えていく。
「……気が滅入りそうになる。こんな所から早く離れたいよ……」
結局、この場のオブリビオンを殲滅するのに時間はかからなかった。
けれども、相変わらず激しく揺れる足場の不快感が、オブリビオンの最期の叫びが、彼女の心を落ち込ませる。
「まったくですな。さて、お茶も飲み終わりましたので……本腰入れるとしましょうか」
「……どこへ行くの?」
少しだけ恨めし気な視線を向けるアンナが、歩き出すヘンペルに問いかける。
その声に振り返った紳士は、少しだけ悪戯気に笑う。
彼が知った情報は、彼女とは異なる。
必然、見えているものも違ってくるのだ。
「甲板ですよ。最後の敵は、船の中にはいませんとも」
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
エスタシュ・ロックドア
は、やーっとお出ましかよ!
行くぜミレニカ(f02116)、拳唸る一仕事だ
できることなら業火で一気にまとめて焼き払いてぇ、が
風雨吹き込む狭ぇ船内じゃキツいよなぁ
フリントも振り回すにゃ長すぎる
っつーわけで、【怪力】【グラップル】【吹き飛ばし】【カウンター】
殴る、蹴る、投げ飛ばすで大暴れだぜ
『ブレイズフレイム』の火を纏わせてな
ミレニカがヤバそうになったら【かばう】ぜ
侮ってんじゃねぇさ、こーいうのは役割分担だ
俺ぁブレキャリだからよ
四肢をもがれよーがそん時は業火で焙る絶好の機会だかんな
ミレニカが作った環境が上手い事いったら【範囲攻撃】
敵だけを焼く様に火を調整して『ブレイズフレイム』で一気に焼くぜ
ミレニカ・ネセサリ
(同行f01818)
そのようですわね……うわキモ
うわ噛んできやがりますのこいつら!?
ギャー!
いくらわたくしが食べたいくらい魅力的だからって!
そんな美意識があるとは思えませんが!!
蒸気似の【オーラ防御】で噛みを防ぎつつ
【怪力・鎧砕き・二回攻撃】で片端からブン殴ります
ガントレットで殴った時の爆発で【吹き飛ばし】てもやりますわ
なんですの、ひび割れだから脆いとでも――!
……ああ成程
でしたらAtk_Jubileeで敵をブチのめしつつ
周囲の壁やらをブチ抜き
風雨があまり吹き込まぬ場を作りましょう
【情報収集・力溜め】であまり周囲が崩れすぎない地点を選び
パワーもある程度絞りますわ
これなら炎も幾らか守られましょう
●力技
「おぉ―――らぁっ!!」
船内の一等客室の一室。
叫びと共に、エスタシュの炎に包まれた拳がオブリビオンを吹き飛ばす。
本来なら、一気に地獄の炎で焼き払ってしまいたい。
けれどこの戦場は既に崩壊が始まった幽霊船。
考えなしに辺りを燃やせば、オブリビオンを討伐しきる前に自分たちが海の藻屑だ。
それを考えれば、むやみやたらに周囲を破壊するわけにはいかない。
だからこそ、彼はそれをぐっと堪え、己の手で、足で滝を蹴散らす。
さいわい、様々な体術を身に着けた彼なら、剣を使えなくとも十分戦える相手だ。
それでも。
「面倒くせぇ! ですわ!!」
同じように己の拳でオブリビオンを薙ぎ払うミレニカが吼える。
状況は分かってる、それでも面倒くさいものは面倒くさいのだ。
「なんかやたらわたくしの方に噛みつこうとしてきやがりますし! 意外と美意識ありますわね鬱陶しい!!」
それとも、ひび割れ入ってて食べやすそうとでも思われているのか。
あるいは、炎を纏うエスタシュを食べられないから、消去法で此方に向かうのか。
攻撃自体は自身のオーラで防げてはいる。
それでも、この状況は腹立たしい事この上ない。
ガントレットの爆発で敵を吹き飛ばしてやっても、ちっとも気は晴れやしない。
何故か自分ばかり狙われる状況に、ミレニカの怒りのボルテージが上がっていく。
「こうなったら、エスタシュ様! その炎で一気に焼き払ってくださいまし!!」
「いや、だからそれには状況が……」
「そんなものはわたくしが整えます!!」
叫ぶと同時に、ミレニカが周囲の環境に目をやる。
窓際、そっから崩壊が広がる、論外。
扉付近、撤退するための通路は塞げない。
ならば、中央にスペースを。
素早く判断を下したミレニカが、ガントレットに変形したガジェットを装着。
即席のブースターを備えた拳が、ミレニカの睨む目標、天井のシャンデリアへと向けられる。
「さあ――ブチ砕きます!」
【Atk_Jubilee(ジュビリー)】の一撃が、一直線に天井へと突き刺さる。
崩壊する天井がオブリビオン達を押しつぶし――ミレニカの狙い通りに、部屋全体をカバーするような瓦礫のバリケードと化す。
「マジか……」
ちょっと逞しすぎる相棒の所業に驚かされるが、環境は整った。
この状況ならば、燃やしすぎることも無いだろう。
「手間かけさせやがって……!」
ミレニカのように叫ぶほどではないが、エスタシュだってこの戦いに対するストレスは溜まっている。
それを一気に発散するような【ブレイズフレイム】の炎が、オブリビオンを焼き払っていく。
環境という枷が外れたエスタシュの前には、もはやオブリビオンが何体いようと、結果が変わる事は無い。
「ふう……まったく、雑兵が時間をかけさせるんじゃねぇですわ!」
怪物の焼ける匂いに顔をしかめながら、ミレニカが吐き捨てる。
強くはない、決して、このオブリビオン達は強くは無いのだ。
ただ、揺れて傾いて崩壊まで始まったこの船が、戦場としては厄介すぎるだけで。
加えて。
「うわぁ!? ま、まだ揺れますの!?」
揺れ自体はなお続く。
いや、もはや揺れではなく、何かが衝突してきている感覚だ。
揺れによろめくミレニカの手を取り支えながら、エスタシュが窓の外、嵐の海を睨みつける。
「……早いとこ、甲板に出るぞ」
「え。外はまだまだ雨も強いですわよ……?」
きょとんとした顔で疑問を呈するミレニカに、しかめ面のまま、エスタシュが言葉を続ける。
「もう間違いねぇ。敵は、海の中にいるんだ」
そう語る彼の視線の先、暗い海のその中に。
巨大な影が、ゆらりと揺れた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
灰藤・エミル
※勝手に安直なあだ名を付けます
迷惑なら大人しくやめます
へびさんのお陰でかくれんぼ終わったケド
なんだかとっても嫌な感じを受けるオトモダチ(敵)だネェ
ボク、自分が楽しむことに全力だから
君たちのそういう感じわかんないヤ
ボクのお遊びに他人様巻き込むのは嫌だし
ここはぐっと堪えてちゃんとしようネ!
今の状況良くないシ!
戦いやすいように動きたいケド
斬り込みと足技とトニーさん(刻印の触手)でもぐもぐするくらいなんだよネー
あ、アカネちゃん(刀)に隠し持ってる毒も使えるカモ?
ある程度慣れてきたら少しくらい遊んでイイ?
ボクも鬼やりたい!トニーさんも腹ペコだし!
折角いっぱいいるから命中率重視で『鬼遊び』したいんだよネ!
●鬼ごっこ
「へびさん、だいじょうぶかナァ……」
直前まで同行していた頼れる猟兵は船に走った亀裂の下へ。
一応その身を心配しながらも、エミルが向かうのは真逆の方向、船の上層だ。
理由は3つ、まず、崩壊が始まったこの船において、下層へ向かうのは流れ込んだ海水に飲まれる危険があるため。
次に、船を揺らすナニカを確認するために、甲板へ出て、海を見ることができる場所に移動した方が都合がよいため。
そして、これが最も重要なのだが……。
「ボクのお遊びに、他人様巻き込むのは嫌だしネ!」
そう呟いたエミルが、笑顔でオブリビオンを追い回す。
いくらか骨のある相手は負けじとこちらに食いついてくるけれど、少しくらい相手が手強い遊びの方が面白いのだ。
捨て身の構えで刀を振り回し、首から伸びる頼れるトニーさんと共に、エミルが船内を走り回る。
未来を捕食し、より強力な姿へと変じるオブリビオンも何のその。
渾身の蹴りを浴びせながら、エミルのテンションがますます上がっていく!
ああ、このまま真面目に戦うべきなのだろう。
皆、必死に戦っているはずだ、自分だって、猟兵としての務めを果たさなければならない。
けど、でも、少しだけ。
「……ちょっと位なら、遊んでもイイヨネ? ほら、トニーさんも腹ペコだし!」
虚空に言い訳をするようにエミルが叫べば、その首の刻印から伸びる触手も、答えるように激しく身を揺らす。
遊びの名前は【鬼遊び】。
ぴえろとオブリビオンの、楽しい楽しい鬼ごっこの始まりだ。
もちろんそれは、互いの生死をかけた闘争ではあるけれど、エミルにとっては立派な遊び。
正確無比な触手が相手の肉を抉る感触。
振るう刀が、オブリビオンの身体を切り裂き、骸の海へと還す刹那の断末魔。
なんて激しく、不気味な遊戯!
「フフ、フ、アハハハハ!!」
思わず笑みも零れてしまう。
ああ、逃げないでくれ、もっと遊んでくれ。
ああ、逃げてくれ、もっと遊び続けよう。
そんな矛盾に満ちた願いも、いつしか終わりを告げる。
追い回していたうちの、最後のオブリビオンを切り裂いたエミルが、興奮で火照った自分の顔を濡らす感触に気づく。
「おや、いつの間にか、甲板に出ちゃったカ」
激しい雨が、ようやくエミルの理性をわずかに引き戻す。
オブリビオンも、海に飛び込み、もはや手の届かない距離まで逃げていくものもいる。
船内に戻って、また遊び相手を探そうかな。
そう、彼が考えたその時に。
ぐらりぐらりと船が揺れ。
海の中の怪物が、ぬらりとエミルに視線を向けた。
成功
🔵🔵🔴
四宮・かごめ
ふむ。
雨後の筍の如くわらわらと。
剪除するに限る。
四宮かごめ、参る。
足場が悪い。戦場は出来れば風を避けられる屋内を選ぶ。囲まれないよう【地形を利用】して狭い通路の行き止まりなどに陣取り、一体ずつ確実に仕留めていくでござる。物音を頼りに味方を見つけられるまでは、なるべく一人で頑張る構え。
数的優位を覆せば【投擲】や【スナイパー】【援護射撃】で味方を支援する機会も出来る筈。
憎むも妬むも自身の心一つ。自分をすぐに変えられずとも他人を貶める真似は慎むべし。それが出来ぬ者は生者であってもかくの如くなり申す。
●海から出でる
船内から無数に湧き出るオブリビオン。
それらと切り結びながら、通路を駆けるかごめの表情には焦りが見える。
「ああ、本当に足場が悪い!」
一応は風を避けられる屋内を選んでなお、足場の不安定さはどうにもならない。
これまで出会った猟兵とも逸れてしまうような、暴力的な激しい揺れは、命のやり取りをする上で、極限にまでその神経を削ってくる。
おまけに、雨後の筍の如くわらわらと現れるオブリビオンが相手では、かごめの本領を発揮することもできない。
苦無を用いた【シーブズ・ギャンビット】でどうにか切り結べてはいるけれど、このままではじり貧だ。
狭い通路を選ぶことで、ギリギリ囲まれることは避けていても、状況は芳しくない。
それでも、負けるわけにはいかないのだ。
彼らから感じる妬み、怨み。
かろうじて躱す瘴気からそれでも伝わる深い絶望。
きっと彼らにも、怪物へと成り果てる、哀れな過去があったのだろう。
「されど、憎むも妬むも自身の心一つ。自分をすぐに変えられずとも、他人を貶める真似は慎むべし」
辛い過去は、理不尽な現実は、それを別の相手に押し付けていい理由になりはしない。
猟兵として、このようなオブリビオンに断じて負けるわけにはいかない。
そう、思考を新たにする彼女の耳に、微かな音が。
人の声が聞こえてくる。
方向は甲板、屋外だ。
それが分かったなら、この窮地を超える為に、迷っている暇などありはしない。
余計な装備を捨て、更に身軽になった忍びが、その速度をいかんなく発揮して船内を駆ける。
牙の噛みつき、悍ましい瘴気、歪んだ精神波。
そのすべてを置き去りに、かごめは嵐の下へと走り去る!
瞬間、目に飛び込んでくるのは、既に表に出てきていた仲間たち。
突然のことに戸惑っている様子だが、それでもいい。
追ってきたオブリビオン達も同じこと、かごめか、他の猟兵か。
増えた獲物のどちらに向かうかの一瞬の迷いがあれば。
「――安心するがいい、むやみに甚振る趣味など無いでござる」
正確に投げつけられた苦無がその頭を射貫くのには、十分だった。
●
「しかし、酷いでござるよ皆の者! それがしが一番最後だったとは!」
まあ、逸れてしまう程の揺れが悪いのだけど。
結局殆ど一人で戦う羽目になったかごめとしては、文句の一つも言いたいところだ。
だけど。
なにやら、様子がおかしい。
誰からも返事は返ってこない。
多くの猟兵が、信じられないものを見る目で、荒れ狂う海を見つめている。
その視線の先に、かごめも目を向ければ。
「……なにあれ?」
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『青光る邪神・鯖』
|
POW : アニサキス・デッドエンド
【傷口から放った血 】が命中した対象に対し、高威力高命中の【寄生虫アニサキス毒爆弾】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : ジェノサイド・サバカン・ストーム
【数多の鯖缶 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : Omega3・エンハンス
【ドコサヘキサエン酸(DHA) 】【ドコサペンタエン酸(DPA)】【エイコサペンタエン酸(EPA)】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
|
●理解不能
その青白い巨体は、猟兵達が乗る船に勝るとも劣らないスケールで。
身体から浮き出る、これまで猟兵達が戦っていた無数のオブリビオンは、その巨躯に不気味に共存する寄生虫のようにすら見える。
周囲に浮かぶ瓦礫の山に、くすんだ宝石、ボロボロの食料品。
それらまで意思を持つかのように、その怪物の周りを飛ぶ。
そして、その主は一切の感情を宿さぬ瞳で此方を見つめ。
「……鯖だなぁ」
誰かが言った。
確かにマヌケ面だ。影で大きさだけ知れば、クジラにも間違えるかもしれない。
もっと別の世界であれば、笑い飛ばしながら戦いに臨めたような、そんな存在。
けれど、これまで何度も繰り返したように、此方の船に体当たりを仕掛けんとするその姿は、紛れもなく災害に匹敵する脅威。
見た目は間の抜けた外見でも、これまで戦っていた小型のオブリビオンにすら及ばぬような、知性を感じぬ振る舞いでも。
ただそこにあり、何気ない行動で死と破壊を振りまくその姿は。
紛れもなく、人間の理解の及ばぬ、邪神のそれである。
――きっと、この事件に関わった誰もが勘違いをしていたことがある。
憎悪に塗れたオブリビオンに船が襲われていたのなら、その背景に潜む者も、また明確な敵意と悪意を持つのであろうと。
こんなもの、想定すらしていなかった。
ある意味では、もっとも残酷だ。
ただ、その船がそこに居たから、邪神がそこに居たから。
十数年前のメアリー・ディアリング号と同じように。
理由のない脅威が、猟兵たちへと襲い来る。
仇死原・アンナ
あれがクジラ…え、サバっていうの…?
サバはあんなにでかい…え、違う?
………よし倒そう
[戦闘知識]を発揮して他の同行者と共闘
拷問器具を解き放ち[マヒ攻撃、鎧砕き、傷口をえぐる、吸血]で敵を痛めつける
傷口から噴き出る血を吸血して毒爆弾を防ぐつもり
敵の攻撃は鉄塊剣による[武器受け]に[見切り、オーラ防御]で回避防御予定
「サバと呼ばれる邪なる神の魚よ、地獄の炎で焼き裂かれるがいい!」
[力溜め]して鉄塊剣を[なぎ払い]、【火車八つ裂きの刑】を放つ
あれに襲われた人々の魂もこれで安らかに眠れるだろうか…
……さまよえるメアリーも、どうか心安らかに眠れますように
海と船を眺めてぼんやり思う
アドリブ・絡みOK
木目・一葉
怪談と同じだな
こういうのは得てして理不尽なもの、か
だがここで倒せば、この敵によって理不尽に殺される者達が今後いなくなる
鯖だからといって容赦も油断もしないぞ
・戦闘
真の姿を解放する
相手の血が付着するのは厄介だ
ここは常に敵と一定距離をとりつつ戦闘をしよう
フック付ワイヤーは【地形の利用】も合わせ一定の距離を保つ為に戦闘の移動にも使うが、飛んでくる鯖缶の迎撃にも使う
どうしてもこれが間に合わないなら斧で【武器受け】だ
――なんで鯖缶なの!?自虐なのか!?
つ、つっこんでる暇はない
武器受けしつつ、この派手な攻撃に紛れさせて『影の追跡者達の召喚』を行う
それが敵に貼り付けば『影人の涙雨』を放って【目潰し】を行おう
●嵐、炎、時々涙雨
嵐の海を駆け、猟兵達が足場とする船体へ体当たりをしかけるオブリビオン。
何の目的があるのかも伺えぬ無感情な眼差しは、世界によってはよく親しまれた生物と瓜二つ。
けれど、彼らは世界を超えてオブリビオンと戦い続ける猟兵の身。
ある世界では常識であっても、また別の世界ではそうでないというのは、よくあることだ。
「あれがクジラ……?」
「いやサバだよ、あんなサイズの化け魚を既存の魚に当てはめていいかは、疑問だけどね!」
だからこそアンナが、探索中に聞いた別の海洋生物の名を挙げてしまうことも、仕方の無い事だろう。
それにフォローを入れる一葉もしつこく言及するつもりはない。
目の前のオブリビオンがどのような存在なのかなど、この期に及んで論じるべきことではないし、何を思うかも、こんな理不尽な存在を前に考え込むのはバカバカしい。
ただ一つ、重要なのは。
「ここでコイツを倒せば、この敵によって理不尽に殺される者達が今後いなくなる」
故に、出し惜しみなどする気もない。
敵の体当たりと、激しい嵐で揺れる船上で、敵をしっかり見据えた一葉の身体が変容していく。
額から、皮膚を突き破るように伸びていく角。
そこから身体の上を走るように文様が刻まれていけば、隣に立つアンナと同じブレイズキャリバーであるかのように、紅い炎が夜闇に揺れる。
ここが、嵐夜の海でなければ、すべてを飲み込むように濃く、黒くなる影も見て取れたことだろう。
真の姿を解放した一葉の隣で、アンナがぼんやりと考える。
クジラではない、らしい。
サバと言っていたが、やっぱり大きさ的に違うらしい。
じゃあ、結局何なのだろうか。
グラつく船上で、器用にバランスを取りながらアンナは考える。
考えて、考えて。
既に何度も繰り返した船体への突進を、再び繰り出そうとするオブリビオンを見て。
「…………よし倒そう」
「ええっ!?」
結局結論が出なかったので、とりあえずオブリビオンを倒そう。
そう結論付けたアンナは、船体を揺らす衝撃から、床を蹴り宙を往くことで逃れ。
器用に身体を、飛来する瓦礫の隙間に差し込み、攻撃をいなし。
体当たり直後のオブリビオンの身体に、ぴょんと飛び乗った。
近接武器で攻撃するなら間合いを詰めねばならぬ。
そして、相手は下手したらこの船よりも大きい超特大オブリビオン。
なら飛び乗って攻撃すればいいじゃない。
歴戦の戦闘知識は今日も冴えわたっていた。
そうして、彼女は鉄塊剣を握りしめ。
――嫌な予感がしたので、剣はそのままに、拷問器具を解き放ち。
渾身の力で、その赤錆びた牙をオブリビオンへと突き立てる。
鱗を砕き、肉を抉る確かな感触。
直後にアンナの嗅覚に届く、魚特有の生臭さを孕んだ鉄の匂い。
手ごたえあり、そう彼女が思考したのもつかの間に、オブリビオンの血を啜る拷問器具に向け、傷口から湧き出たグロテスクな寄生虫が襲い掛かる。
嫌な予感の正体はこれか。
自分に向かってくるところは想像したくないけれど、上手く拷問器具で受けることができた。
そこまで考えて、アンナが追撃の為に剣を構えたところで。
がくん、と足場が下がる感覚。
オブリビオンが海中への潜航を始めたのだろう。
このままでは、アンナまで嵐の海に飲み込まれるしかない。
とはいえ、流石にそこを考えずにオブリビオンに飛び乗ったわけでもなく。
彼女は船上の一葉へと視線を送る、何も一人ですべてを行う必要など無いのだ。
次の瞬間には、彼女が飛ばした灰色のワイヤーを掴み、メアリー・ディアリング号へと舞い戻る。
「……麻痺毒を打ち込んだのに、すごい元気だね。大きいし、効きが悪いのかも」
「それ以前に、あんなことをするなら先に一声くれよ。僕が察せられなかったらどうする気だったんだ」
再び海面に顔を見せたオブリビオンへの考察を深めるアンナに対して、一葉が苦笑いを浮かべる。
とはいえ、その豪胆な特攻でわかったこともある。
血のマーキングで攻撃が飛ぶのなら、あまり距離を詰めるのも得策では無いのだろう。
ならば武器ではなく、ユーベルコード主体で攻めるべきだろうか。
そう考え、影の追跡者たちを展開しようとした一葉の近くの床が、大きな音を立てて破壊される。
何かが撃ち込まれた。
そう瞬時に察知した一葉の視界に映る、オブリビオンの周囲に漂う瓦礫群。
マネキン、鯖缶、宝石、食器、鯖缶、鯖缶。
鯖缶、船体の一部、鯖缶、さっき戦ってた雑魚オブリビオン、鯖缶。
鯖缶、鯖缶、鯖缶、猫缶、鯖缶、鯖缶。
そのすべてが、猛烈な勢いで猟兵達へと降り注ぐ。
狙いは甘いが、凄まじい勢いと速度。
おそらくは、この強力な念動力がこのオブリビオンのメインウェポンなのではないか。
そう考察する一葉が、フックと斧で攻撃を打ち払いながら叫ぶ。
「――なんで鯖缶なの!?」
そこにツッコんでる場合じゃないのだけど叫んでしまった。
ギリギリ理屈は分からないでもない。
メアリー・ディアリング号が消息を絶ったのは十年以上の昔。
その時に幽霊船となったとして、今まで形を留めてきた積み荷というのも、そこまで多くは無いのだ。
だけど、よりによって何故鯖缶なのだろう。
謎の自虐を感じながらも、派手な攻撃に隠れて、一葉が痛打を与える準備を進める。
そして、もう1人。
ちゃっかり船上の物陰に隠れて力を溜めていたアンナが姿を現し、その剣に纏った炎で弾幕の迎撃を試みる。
渾身の力で振るわれる大剣が瓦礫を打ち払い、そのままの勢いで飛翔する炎が、一気に鯖缶を飲み込んでいく。
「サバと呼ばれる邪なる神の魚よ、地獄の炎で焼き裂かれるがいい!」
アンナの叫びと共に、【火車八つ裂きの刑】の炎がオブリビオンの身体に突き刺さる。
その巨躯により、剣戟での痛みには動じなかったオブリビオンも、海の中で触れることの無かった熱には怯み、瓦礫が一時停止する。
もしかしてあの人、これが鯖の標準だと思ってしまっていないか。
そう不安になりつつも、チャンスを逃す一葉ではない。
「鯖だからといって、容赦も油断もしないぞ!」
その言葉を証明するかのように、密かにオブリビオンの身体に取りついた追跡者から、【影人の涙雨】が突き刺さる。
狙い通り、眼には着弾した。
しかし、敵の視界を奪うのに成功したのだろうか、いくらなんでも魚の表情からそれを読み取るのは困難だった。
「やったか……? うわぁ!?」
「う……もたもたしてると、先に船が壊れそう」
暴れ、再び船体に衝突してくるオブリビオンには、まだまだ余力がありそうだ。
2人は体勢を崩されながらも、素早く立て直し、オブリビオンを睨みつける。
この化け魚を討たない限り、犠牲者と、この船の安らかな眠りはありえない。
より強くなる風雨に対抗するように、猟兵たちの戦意も燃え盛っていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
鎧坂・灯理
【捜査依頼】依頼人(f14904)
ああ……なんだ、ただの理不尽か。良くある話だな。
依頼人のギャグセンスは置いておいて。
私は今回、完全なる補助に徹する。
UCでバイクに乗った“私”を三体呼び出し、依頼人の足場とする。
私はバイクに乗って上空へ。戦場を一望できる位置に陣取り、通信で“私”たちに指示する。
本体が攻撃を受けると分身が消えるので、持てる技術をすべて使って逃げ回るぞ。
いいか“私”たち、何があっても依頼人に被害を出すな。
絶対に落とすな。ロープでも念動力でもなんでも使え。いざとなったら盾になって散れ。
その都度、私が追加を呼び出す。
二度も依頼人に自害される探偵など恥だ、死んでも守れ!
矢来・夕立
【捜査依頼】探偵さん(f14037)
鯖ですね。
捌くのは得意ですよ。サバだけに。
ここ笑うところです。
探偵さんが分身して足場を作ってくださる手筈です。
それを利用して白兵攻撃を仕掛ける。
【刃来・緋縁】。
跳躍、移動、接敵、攻撃、着地……着車?
この繰り返しになりますね。
大船の上で、更に八艘跳び。という寸法です。
探偵さんが攻撃を受けると消えるそうです。
なのでご本人が狙われているようでしたら、斬るなり注意を引くなりで阻止したいですね。
でないとオレが痛い目を見ます。
車上なら回避も探偵さんがなんとかしてくれるんじゃないでしょうか。なんとかしてください。
しかし眼がもう一組あるってイイですね。しかも空に。
●不退転
「鯖ですね。捌くのは得意ですよ。サバだけに。ここ笑うところです」
そうは言いつつ、自分はニコリともしないまま言い放つのは夕立である。
激しく揺れる船の上、律義に笑いどころの宣言までしてくる依頼人に対する名探偵の回答は。
「ああ……なんだ、ただの理不尽か。良くある話だな」
完全なる無視であった、段々夕立の扱いが慣れてきた気がする。
名探偵は状況への適応力も一流なのだ。
「無視ですか。いけませんよそういうの。そういう小さなことをきっかけにして、すれ違いが生まれていくのです」
「私は今回、完全なる補助に徹する。足場は作るから、上手く活用してくれ」
「はい」
大変スムーズな作戦立案を経て、2人が行動を開始する。
見た目は大分ふざけたオブリビオンではあるが、何百メートルかという巨体は、紛れもなく驚異的だ。
速やかに攻略していかねばならない。
バイクに跨った灯理が空中へ走る。
オブリビオンの攻撃の影響をもろに受ける船上は危険であるし、サイキッカーたる念動力を用いれば、風雨の中でもある程度は乗り回せることだろう。
今回、灯理が傷を負うのは許されない。
別に我が身が可愛いなんて言うつもりはないけれど、他人を守るために、自分を守らねばならぬ時は、割とあるものなのだ。
「なるほど、これが足場ですか。ゲームの主人公の気分になれそうですね」
船上に残る夕立の前には、オブリビオンへの橋にでもなるような位置に浮遊する、3人の灯理の姿。
ユーベルコード、【疑似餌(ヒューマンデコイ)】は、本来使い捨ての囮にでもするような力だ。
けれど、同時にバイクまで分身させることができるこのユーベルコードならば、即席の空中足場にもできる。
「嵐の海で八艘飛びという寸法ですね。ええ、任せてください」
とにもかくにも時間が無い。
船が崩壊すれば、流石にオブリビオンを置いて逃げるしかなくなるだろう。
そう考えた夕立が、一人目の灯理を踏み台にすべく跳躍した。後に気づく。
さっきも言ったけど、こういうゲーム知ってる。
あれは確か、敵を踏みつけで倒しながら空中を進んでいく、今の夕立によく似たテクニックも存在していた。
そして、確かこのタイプのユーベルコードは、過度な攻撃を受けると消滅してしまう。
――跳ぶ前に気づきたかった。
「よっと。分身とはいえ、仲間を足蹴にするのは心が痛みますね」
「ならせめて少しくらい、そういう表情をしてみたらどうだ」
杞憂でした。
身体を押す強風と、通信機越しの灯理の言葉を上手く受け流しながら、夕立が分身から分身へと飛び移っていく。
それを迎え撃つはオブリビオンの瓦礫弾幕。大体8割ほどが鯖缶である。
荒れ狂う海の中、宙を跳ね回る夕立が、降り注ぐ弾幕を躱し、弾く。
勿論すべてに対応していては身が持たない。
分身のバイクに乗っている間はその操縦に任せ、いざという時は分身そのものすらも盾にする。
敵は強大なオブリビオン、使えるものはすべて使わなければならないだろう。
そうして見出せる僅かな隙に、夕立がその刃を刺し入れ、返り血よりも早く離脱する。
「しかし、果てがありませんねコレ。相手が魚だから、どの程度堪えてるかも分かりませんし」
「他に手っ取り早い方法があるなら任せるがな。無いなら積み重ねるしかあるまい」
実際に戦う夕立よりも、ある意味で過酷な戦いを続けるのが灯理だ。
自分を含め4人分の位置に気を配りながら、上空からの視点で夕立へのフォローも行う。
その上、分身を出している間は、他の戦闘行動を取ることもできない。
戦場すべてを見つめながら、回避のみで敵の攻撃を凌ぐ行為は、想像以上に灯理の神経をすり減らしていくものだった。
それでも、ギリギリの綱渡りを渡ってみせる自信はある。
返り血が届かない上空ならば、警戒すべきは瓦礫だけだ。
元々、不完全な予知でこの船に乗り込むことになった彼女たち猟兵の認識を、油断と呼ぶのは酷だろう。
「――なにっ!?」
鯖が跳んだ。
猟兵達が確認できていなかった3つ目のユーベルコードにより、身体能力を強化したオブリビオンが、まるでアロワナでも真似るかのように、上空を飛んでいた灯理へと迫る。
ぽっかりと開けたその口から逃れるのなら、バイクを乗り捨て、ユーベルコードの力で空中を駆けねばならない。
それをすれば、分身という足場を失った夕立は嵐の海へ真っ逆さまだ。
ならば、そんな選択肢などあり得ない。依頼人はもう傷つけさせないと決めたのだ。
その矜持を曲げればもう、自分は鎧坂灯理ではないのだ。
もう一つ、付け加えるのなら。
「舐めるなァ!!」
バイクを駆る灯理が、オブリビオンの口内へと突っ込む。
ぱくりと閉じた口の中は真っ暗だ。
素早くバイクのランプをつけた灯理は、口内のある個所へと一直線に向かう。
「なんか凄い無茶ぶりが来たけど……一蓮托生ですからね、今のオレ達」
それと同時に、夕立を乗せた分身の一人が空中のオブリビオン目掛けて急上昇していく。
その加速を受けた夕立が更に跳躍し、通信機越しに指示された部位、鰓蓋へ向けてその刃を向ける。
灯理のユーベルコードの力も乗せた【刃来・緋縁】の一撃は、オーダー通りにオブリビオンの身体を切り裂いて。
鰓を念動力で強引にこじ開けた灯理が飛びだし、夕立の身体を回収して、オブリビオンから距離を開けてみせた。
思いっきり、返り血も浴びてしまった。
ここからは、湧き出る寄生虫にも気をつけねばならないだろう。
「くそっ、油断した。分身も全部出しなおしじゃないか」
「しかしまあ、色々と無茶しましたね、探偵さん」
「そりゃ、退いてどうにかなるサイズでもないしな、アレ」
もう一つ、付け加えるのなら。
「前に進む方が、性に合ってるのさ」
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
バルディート・ラーガ
おおっと、グレース嬢!こんなトコで鉢合わせるたあ。丁度いい、お知恵を拝借したく。
…ココまで来たら腹ア括りやしょう。船から調達した錨鎖を「ロープワーク」で身体に結わえ、嵐の海へとダイブ!泳げるかなんざ気にしねエ。あっしは『エサ』ですンで。
狙うはヤツの口。噛み砕かれる前に喉奥に滑り込んで…UC発動。地獄の炎の塊、【真の姿】へ変身!アウェイの海中なればこそ、一瞬の爆発で火力勝負。寄ってくる虫ごと鯖を香ばしく炙っちまいやしょうぜ。
勿論そのまま海の藻屑は御免です。互いに弱ったトコで一本釣り!ヤツ諸共海面近くに引き上げて頂きやす。ヒヒ、なかなかユニークな作戦じゃアねエですか。…あっしも絶体絶命ですけども。
グレース・マクローリン
(バルディート・ラーガさんと連携させていただきます)
ここはお互いに協力するのが妙案だね!というわけで鎖を巻いたラーガさんを餌に【おびき寄せ】て、アイツを【釣り】上げる!
荒れる船上での釣りは【地形の利用】と【クライミング】と【気合い】で何とかする! ラーガさんのUCが発動したらアタシの【怪力】で一本釣り!
水面浅くに上がってきた所で【武器改造】で【マヒ攻撃】用にゾウでも昏倒するレベルの麻酔弾ダーツ弾を撃てるようにした【スナイパー】仕様のMARライフルで狙い撃ち!
最後に「皇后旋律」を発動して疲弊したラーガさんや他の人を治癒させておこうっと。
……にしても鯖釣りってこんな釣り方だったかなぁ…?
●決死行
「あの、ホントにいいの? ここまで準備を進めておいてなんだけどさ」
激しく続く戦闘の中、グレースがバルティートへと問いかける。
先ほどまでの混戦でお互いの顔をしっかり確認する余裕も無かったが、一旦落ち着いてその顔を見れば、確かに見知った顔だ。
その顔の持ち主は、船から調達した巨大な錨鎖を、器用に身体に結わえてる所であった。
「おっしゃる通り、ここまで来てやっぱやめは無しですぜ、グレース嬢。第一、お知恵をお貸し願ったのはあっしの方でさぁ」
そうやっていつも通りの軽薄な笑みを浮かべるバルティートは、しかし決死の作戦を決行しようとしていた。
今対峙しているオブリビオンの、もっとも驚異的な点は何か。
返り血を浴びることすら許さない、悍ましい寄生虫のカウンターか、轟音を立てて襲い来る、鯖缶ばかりの瓦礫の山か。
はたまた、巨躯に似つかぬ、先ほど見せたその身体能力か。
そのどれもが、多大な困難ではあるが、もっとも警戒すべき問題ではない。
少なくとも、グレースが考える最大の脅威とは、この嵐の海そのものである。
この環境は、間違いなく相手の味方だ。
敵が得ている地の利をどうにかせねば、いくら猟兵が奮闘しても勝機は見えない。
だからこそ。
「それじゃあ、あっしの役目を全うしますかねぇ……あとは頼んまさぁ!」
準備を終えたバルティートが、嵐に荒れ狂う海に、臆することなくダイブする!
命綱というには大きく、重すぎる錨鎖を抱えて海に飛び込むその姿は、誰が見ても自殺行為にしか映らないだろう。
事実、波にもまれるバルティートはまともに身動きすら取れない。
このままでは、彼に待っている運命は意味のない溺死のみ。
「…………」
己が怪力をもってバルティートに繋がる鎖を支えるグレースも、そんなことは分かっている。
だけどまだだ、まだ彼を引き上げる時ではない。
自分たちはオブリビオンを屠る猟兵、生き残るだけではない、あの怪物に勝利しなければならないのだ。
その決意を込めた2人の行動は、やがて目論見通りに状況を動かし始める。
「――よしっ、食いついた!」
彼女たちがやろうとしていることは一言で言い表せる。
釣りだ。
あろうことか彼女たちは、海を駆ける巨大なオブリビオンを釣り上げてしまおうという豪胆な作戦を立てていた。
もちろん、そのまま力任せに成功するなんて思っていない。
一段階目が成功したなら、そのまま二段階目だ。
「へ、へへ。もう少し食いついてくれるのが遅かったら窒息してやしたね……」
息も絶え絶えなバルティートは、当然このままでは鯖の体内に飲み込まれるだろう。
本来の鯖と同様に、小さな歯が並ぶ口内で、生還の為に、勝利の為にもう一押し必要なのだ。
「こんなギリギリの臨死体験して、ただ引き寄せるだけじゃ食われ損だ、ちょっとこんがり、焼かせてもらいますよっと……!」
最後の呟きと共に、蛇が己を手放す。
その後に、海を引き裂くのは、意思なき怪物の強大な咆哮だ。
「これは……うん、ラーガさんも上手くやってるみたいだね!」
その海賊の眼差しに映るのは、オブリビオンの口から漏れ出す緑の炎。
【九つ頭の貪欲者(フレイムヒュドラ)】と名付けられたバルティートの巨大な真の姿が、オブリビオンの口をこじ開けるように現れ、その業火で敵を焼き始める。
夜闇を照らす炎に照らされる漆黒の身体、敵をねめつけるその金の瞳に、もはや飄々としたドラゴニアンの意思など残されてはいない。
それでも、役目だけは。
自身に巻き付けられたうっとうしい鎖と、このマヌケ面のオブリビオンは決して離してはいけないものだということだけは、しっかりとその獣性にも刻まれている。
首をくねらせ鎖を巻き取り、そのまま牙をオブリビオンの顔へ突き立て絡みつく。
自分を失ってなお、彼は、己の為すべきことだけは見失ってはいない。
「よしヒット! さあ、一本釣りといこうじゃないか!」
それを見届けたグレースが、周りの猟兵にも呼びかけ、伸びる鎖を引き始める。
当然だが、オブリビオンとて素直に釣られるわけはない。
のたうち、暴れ、そのたびに足場である船も引かれ、これまで以上に激しく揺れる。
それでなくても、相手は規格外の大型オブリビオン、人の力で釣り上げるなど、試すまでもなく誰にでも分かる事。
そんなこと、グレース自身が一番分かっている。
荒唐無稽にすぎる手であることなど、言い出しっぺが一番理解している。
それでも、この身は奇跡を起こし、現世に染み出た過去を討つ猟兵なのだ。
それでも、こんなバカげた作戦に付き合い、身体を張る仲間がいるのだ。
ならば此処で気合を振り絞ることが、せめてもの礼儀だろう!!
「うおおおお…………りゃあああああああ
!!!!」
その時、鯖が再び宙を舞う。
今度は、彼自身の意思でなく。
これまでの戦いで消耗を重ねていたオブリビオンは、この大一番で、猟兵たちの力に抗い切れなかった。
オブリビオンの巨体が乗っかった船体が、へし折れる。
もう時間はまったくない、けれど、同時に敵を完全に引きずりこんだこの瞬間が、最大のチャンスとなる。
完全に沈むまでにはまだかかる、今こそ、ケリをつける時であろう。
「さあ、みんな頼んだよ!」
その叫びの直後に奏でられる【皇后旋律(ファンホウシェンルー)】の音色が、猟兵達の消耗を癒していく。
もう、グレースにできることはすべてやった。
釣りあげると同時に打ち込んだ麻痺弾がどれだけ効果を発揮するのかは甚だ疑問だし、再び暴れだしたバルティートも、荒海に揉まれ、オブリビオンに食らいつかれた身。
長くはもたない、これでダメなら、もはやお手上げだ。
だけど。
「シュウルルル……シャアアアァァァァァァ!!!」
炎を巻き上げオブリビオンに食らいつく黒蛇の勇ましさが、間違いなく猟兵の側に流れが傾き始めたことを象徴していた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
太刀緒・朔
…んん、鯖……?(困惑)
事故じゃん。分かりやすい悪縁じゃん。
まぁ、何の遠慮も感傷も無く、という意味ではとてもやりやすいかなぁ。
○WIZ
大太刀であって解体包丁じゃないけれど。
いつも通りの大太刀での攻撃
切り刻んでいけばいつかは止まるでしょう。たぶん。
返り血と鯖缶に注意して、基本的に動き続け一か所には留まらない
でも他の方の攻撃を邪魔しない様に注意する
鎮め火は一つ、体と太刀に纏う様にして敵(本体と血、鯖缶)だけ燃やす
【早業】【火炎耐性】【第六感】【なぎ払い】【フェイント】【カウンター】【怪力】【激痛耐性】【毒耐性】【残像】【呪詛耐性】【電撃耐性】【衝撃波】【掃除】【鎧砕き】【破魔】
アドリブ・共闘歓迎
四宮・かごめ
あの虎模様、鯖にござるか。
ーー否、あのような巨大な鯖、前代未聞にござる。
他の猟兵のサポートを行う。基本は【投擲】【スナイパー】などを併用した【援護射撃】。銀色のお腹はワタが詰まって効きそうでござる。【地形を利用】して常に自分の立ち位置を確保し、自分や味方が船から落ちない様に気をつけておく。
敵が潜ったりして姿を消したら【視力】や【第六感】を活かして現在位置を報せる。
神が畏れられるのは殺せない限りにおいてでござるよ。ましてや捌ける神なぞ。にんにん。
灰藤・エミル
サバ!めっちゃデカイ
黒幕とか考えたこともなかったケド
これは予想外!
えー…でも鯖って遊び相手っていうか
食材って感じだよネ
流石にこんなにでっかいのは食べないケド
アレと接近戦は厳しそうダネー
どうしよっカナー
本当は焼きたいけど、海の上だし焼くような物も持ってないし
あ、君には影と遊んでもらおっカナ
『影遊び』って地味だけど面白いんダヨ?
少しの光と手だけで色んな影絵作れるしネ!
魚だから鳥さんとかどう?
ま、鯖に当たんなくても浮遊物蹴散らせば味方の攻撃当たるかもだし気楽に行こうネ
てか、体当たりされたらボク落ちちゃうんじゃナイ?
また刀とトニーさんで支えないとダメかもネー
●ラストスパート
ここで状況を整理する。
哀れなメアリー・ディアリング号は、けなげに嵐とオブリビオンの攻撃に耐え続けてはいたが、このタイミングでとうとう致命的な崩壊が始まった。
というか、へし折れた。
ちょうど真ん中に釣り上げられた数百メートルものオブリビオンの巨体は、ちょうど十字を描くように船を押しつぶし始めている。
で、あれば当然、船自体もVの字を描くようにして折れ始めたという塩梅だ。
「――元々、鯖に遠慮する気持ちなんて無かったけど! いよいよ船体すら気に掛ける意味が無くなりましたね!」
半ば叫ぶように、いいや、轟音と嵐の中、完全に叫ぶ形になっている朔が、坂道のように傾いた船上を、その終点で暴れるオブリビオン目掛けて駆け下りていく。
釣り上げ、自由を奪ったとしても、その巨体は脅威でしかない。
ユーベルコードで強化されたヒレの一撃をまともに受けてしまえば、人の形を留めていられれば幸運な方だろう。
それは、人間の場合は、という文句が頭につくが。
ヤドリガミたる朔の身体は仮初のものにすぎない。
致命傷を受けたとしても、本体である器物が無事ならば、朔の命が失われることはない。
もっとも、この荒れ狂う戦いの中で身動きが取れなくなれば、待っている未来は決して明るくは無いだろう。
それでも、他の味方よりは、少しだけ死ににくいのは自分だ。
だからこそ、全員で畳みかけるこの時に、朔は臆せず刀を構え、いの一番に切り込んでいく。
もちろん、オブリビオンとて無防備に待っている訳はない。
身体をくねらせ、どうにか海に戻ろうともがけば、その動きは大質量の破壊を周囲にまき散らし、迫りくる外敵に対しては、瓦礫の雨が降り注ぐ。
けれどそれは、残像すら残すスピードで迫りくる朔を捉えるには至らない。
いや、下手な鉄砲もなんとやら、数個、彼女に直撃する軌道のものはある。
しかし、そういうものに限って。
かきん、かきんと、軽く、けれど確かに響く金属音が瓦礫を撃ち落としていく。
「にんにん、やはり、他の御仁のサポートこそ忍びの本懐でござるな!」
ぐらつき、傾く船体で器用に立つかごめ。
彼女の手から放たれる苦無が、朔へと向かう瓦礫を撃ち落としていく。
その援護を受ける朔が更にスピードを上げ、一気にオブリビオンの腹へと斬りかかる。
「ええ、切り刻んでいけばいつかは止まるでしょう。とはいえ、この巨体にそれだけというのも骨が折れますから」
一太刀目を浴びせた直後に、朔の身体と握る刀が輝きだす。
いや、これは光などではない。
一つの力に束ねた【月影の鎮め火】を身体に纏う朔が、2つ、3つと斬撃を重ねていく。
そのたびに噴き出すオブリビオンの血も、醜悪な虫も、その熱い炎に阻まれ、届く事は無い。
そしてもう一つ、嵐の夜に、炎を纏い周りを照らす彼女の姿はよく目立つ。
とてもよく機能する、目くらましである。
「とはいえ、目の前の鳥さん達にも気づかないなんて、ちょっと悲しいナァ」
エミルの影から作られた鳥たちが、オブリビオンの眼に突き刺さっていく。
もちろんただの鳥ではありはしない。
ユーベルコード、【影遊び】で作られた彼らは、恐るべきある力を有する。
すなわち。
「ウヘェ。ちょっとだけ後悔しちゃうかもなぁ、この臭いハ」
鼻をつまむエミルの前で、鳥に込められた毒で腐り始めるオブリビオンの巨大な瞳。
彼が呼び出す影の使い魔は、敵の身体を腐らせ、崩していく。
そして、猟兵たちとの最初の激突で片目を奪われていたオブリビオンの視界が、ここで完全に闇に閉ざされていく。
故に、彼らを襲っていた瓦礫の弾幕も、見当違いの方向へと飛び始めるのも必然である。
「ふぅむ、これはちょっと欲張っても良さそうでござるなぁ」
それはすなわち、味方の分まで瓦礫を迎撃していたかごめが、浮き駒になることと同義だ。
船は崩れ続け、時間も残りわずか。
ここが勝負どころだと、かごめも床を蹴り、オブリビオンへの接近を開始する。
そしてエミル。
正直に言うと、今まで程彼のテンションは高くはない。
だって鯖だし。これ遊び相手じゃなくて食材だし。
頭の方も、多分コイツ普通の鯖より頭いいわけでもなさそうだし。
しかし周りを見れば、派手に炎をまき散らしながらも器用に鯖だけを斬る朔が。
苦無を構え、眼を見張るスピードで駆けていくかごめの姿が。
これは間違いない。
「ラストスパートだよネ! 流石にこれに乗り遅れるわけにはいかないヨ!!」
鯖は遊び相手ではない。
けれども、こんな皆で遊ぶ機会を逃すのも嫌なのだ。
さあ混ぜろという調子の笑顔で、エミルも駆け出す。
傾いた船上で少し転びそうになっても、自分にはトニーさんがついている!
そしてここに来て、オブリビオンの抵抗も鈍り始める。
いかな巨体を誇るとはいえ、ここまでの攻撃は、確実にオブリビオンの体力を削っていたのだ。
「しかしまあ、分かりやすい悪縁もあったものですね!」
斬り、裂き、燃やす。
もはや朔の勢いは止まらない。
刀で、炎で怒涛の攻めを行う彼女が、肉を、骨を、血を切り裂き、この船に纏わりつく悲劇の因果まで切り伏せていく。
「まあ、意外性ならあったんじゃないノ? ボク、黒幕とか考えたこともなかったケド!」
その炎を少しだけ羨まし気に見つめるエミル。
彼も本当はあんなユーベルコードを使ってみたいのだ。
だって焼くものじゃないか、鯖って。
そんなとぼけた事を考えつつも、その刀は止まることなくオブリビオンの身体に傷を刻む。
そして。
「まあ、これも邪神の類でござろう。とはいえ――」
「神が畏れられるのは殺せない限りにおいて。ましてや捌ける神なぞ」
船上を走り抜けたかごめがその勢いのままに振り抜く苦無。
【シーブズ・ギャンビット】が、邪神の身体を深く深く裂いていく。
幾たびもの傷を受け、無尽蔵のタフネスを誇るかとも思われたオブリビオンが、明らかに弱っていく。
「まあ、皆まで言わない慈悲はあるでござるよ、にんにん」
大成功
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エスタシュ・ロックドア
なぁミレニカの嬢ちゃんよ(f02116)、あれ何に見える?
鯖だよなぁ……美味そう
うん、エンパイア出身として思考があれを食う方に傾くのはしゃーねぇので勘弁してくれ
つーか、敵は海の中かよ
俺ぁ飛び道具持ってねぇ……嬢ちゃん何してんの
それを、投げる、アレに?
天才
もう用を成してねぇ配管やら瓦礫やらを【怪力】で船からひっぺがし、『羅刹旋風』
はっはぁ、的がでけぇから外す気がしねぇなぁ
思いっきり投げ付けるぜ!
ただ“残弾”には気ぃつけねぇと
既にボロボロだしなこの船
嬢ちゃん、サイコー
そんじゃその氷塊も投げっか!
敵の攻撃は【第六感】【視力】で察知
【ダッシュ】で飛びのいて回避だ
ミレニカ・ネセサリ
何ですのエスタシュ様(f01818)
外に何が……鯖ァ!?
ええ……食べきれる量じゃないと思いますけども
旨味じゃなくて恨みが凝縮されてそうですわ……怖……
ここからじゃ中々届きませんわね、よし
何って、さっき崩した船の残骸や瓦礫です
これを(Tec_Makeupと【怪力】使用)こうして(真上に打ち上げて)
こうですわおりゃァ!!(落ちてきたのを思い切りブン殴って【吹き飛ばし】鯖にぶつける)
幾らかぶつけたら蒸気ガトリングでの攻撃にチェンジ
海面から出たところを狙い
【スナイパー・情報収集】で弱点になりそうなところを撃ちます
薬莢が溜まれば氷の【属性攻撃】で叩いて塊にしてしまいましょう
残弾? そんなの作ればよろしい
●凪ぐ
「なあ、嬢ちゃん。俺、気付いちまったことがある」
「何ですのエスタシュ様。いえ、おっしゃりたい事の予想はつくのですが」
船はどんどん傾いていく。
その中で、もとは壁だった船体に立つ2人の猟兵の周りには、明らかに他の場所より多い瓦礫の山。
「アイツが海から出てきたなら、わざわざ瓦礫投げる意味はねぇよな!?」
「言わないでくださいな! わたくしだって予想してませんわよこんなの!?」
大体提案した時にはそちらもべた褒めでやがりましたでしょうと、ミレニカが叫ぶ。
どうせ壊れ始めた船。これを弾丸にしてあの生臭いオブリビオンを撃ち抜いてやる算段だったのだ。
とはいえ、彼らの準備が無駄になるかというと、そういうわけでもない。
「うんまあ、まずは投げるけどさ。もう船体はほぼ直角、間合いを詰めた後に、逃れる場所がねぇ」
立ち位置が少々悪い。
ここからオブリビオンを直接ぶん殴ろうというのなら、もはやあの巨体にダイブするように突っ込んでいくしかない。
できればそれは、最後の最後にしたいものだ。
「ええ、そうでしょうそうでしょう! せっせと作ったこの瓦礫、無駄にしてなるものですか!」
そう叫びながら、瓦礫作りにも使っていた【Tec_Makeup(メイクアップ)】を起動するミレニカ嬢。
力強く真上に放り投げられる第一球、なにかよく分からない塊と化した瓦礫は、2人でせっせと砕き、押し固めた元船体な現砲弾。
高く舞う砲弾は、やがて重力に引かれ止まり、落ち始め。
「おりゃァ!!」
渾身の力を込めたミレニカのサーブで吹き飛びオブリビオンへと襲い掛かる。
推定ウン百メートル、超大型オブリビオンの頭部にヒットする砲弾は、加わった力に耐え切れず砕け、その勢いのまま巨体を撃ち抜く。
仲間を巻き込む心配はしなくていいだろう。
なにせ派手に船体を壊して瓦礫を作っていた船尾側にいるのは我々2人だけ。
他の猟兵は、2つに折れた船の反対側からオブリビオンを攻撃しているはずなのだ。
ちょっとだけ、謎の寂しさがあるが、思う存分お手製砲弾を浴びせてやれる。
「ナイスサーブ! さあ、俺も始めますかね」
ミレニカの攻撃開始を見届けたエスタシュも、近場の瓦礫を掴み、殴り飛ばしていく。
面白いようにぼかすか当たる。流石にこれだけ的が大きければ外すこともない。
「(嬢ちゃんがコレ言い出した時は、『残弾』に気をつけなきゃと思ったんだが……)」
この場に至っては、もはや誤差だろう。
ボロボロどころか、既にへし折れてしまったメアリー・ディアリング号。
今更エスタシュが気を使ったところで、沈没が数秒遅れるかもしれないという程度だ。
「オラオラオラァ! 残弾全てくれてやりますわ! 大体なんですの鯖って!!」
ミレニカに関しては、この少しの間にもう投げ切ってしまったらしい。
自前のガトリング砲に武器を切り替え、次々と攻撃を叩き込んでいく。
そういえば、一回の打撃音で数個まとめて飛んで行っていた気がする。
……エンパイア出身としては、あの鯖少し美味しそうに見えるというのは、言わない方がいいだろう。多分引かれる。
そして、数十秒後。
「――さて、そろそろ決めようじゃねぇか嬢ちゃん」
「ええ、これは我々の仕事でしょう。反対側のほうが数が多い分、抵抗も激しいようですわ」
瓦礫は投げ切った。
ミレニカのガトリング砲も弾切れだ。
正真正銘、今こそ最後の最後の時。
どっちかが、トドメを。
あのでっかくて生臭いあん畜生に、ダイブ特攻をしなければならない!
「まあ、突っ込むのは俺でいいんだけどよ、弱ったとはいえあの巨体、この剣でも身体の奥の急所までは……」
「あら、そんなこと、それならちょっと待ってくださいな」
自慢の鉄塊剣を見つめながらぼやくエスタシュ。
それに対して答えたミレニカが、足元から何かを集め、それをガントレットをつけた拳で叩き始める。
そうして出来上がる代物を見れば。
「……嬢ちゃん、サイコー」
嵐に吹かれながらも、思わず笑みがこぼれてしまった。
オブリビオンは、船を砕きながらその身体を沈めていく。
すでにその3分の1が海面に届き始めた。
完全に海に戻られたなら、もはや猟兵には、逃げるオブリビオンを追いかける術など無いだろう。
そんなことは分かっている。
だからこそ。
「これで終わりだぁぁぁ!!!」
エスタシュが、落ちてくる。
もはや自由落下のような角度でオブリビオンに迫る彼の腕には、普段使っている剣よりもはるかに巨大な氷塊。
ミレニカ作、対超巨大オブリビオン用氷大剣、つなぎに使われたのはガトリングの薬莢だ。
目の前のオブリビオンに引導を渡す為だけに作られた剣が、エスタシュの羅刹としての力、【羅刹旋風】によって振るわれる。
そうしてその剣は、オブリビオンの脳天へと突き刺さり――。
「……結局、なんだったんだろうな、今回の事件」
「鯖を倒したら、船に潜んでいた残りのオブリビオンも、骸の海に還ってしまいましたものね」
嵐の夜が終わる。
海にかろうじて浮かぶ瓦礫に立つ猟兵達の身体を、朝日が眩しく照らしだす。
じきに、今立っているこの瓦礫も水底に沈んでいくだろう。
オブリビオンは消え、猟兵達も、グリモアの光によって、グリモアベースへ引き戻されていく。
唐突に現れ、船を覆った悪意。
何も語ることなく、明確な意思も見せぬまま猟兵達を襲ったあの巨体。
それに飲まれた人々の無念を晴らすため、新しい犠牲を出さぬために戦い抜いた猟兵達の意思。
すべてが、初めから無かったのだと語るように、海は凪ぎ始めていた。
大成功
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