「女を喰う女ほど、おっかねぇものもねぇと思わねえか」
藤間・英(縦横無尽の語り部・f13788)は眉根を寄せた。
「お前さんらも手練れだ。それなりの敵とはやりあってきたんだろ? だが今度のやつはまぁ、実にイカれてやがる」
びらりと見せるのは、歌舞伎の看板じみた色のきつい絵だった。
髪を振り乱した艶のある女が、裸体の女たちを盾にし、あるいは腕(かいな)に抱き、殺し、愛で、蹂躙する、地獄が描かれている。
「見たくねぇもん見ちまったと思ったが、コレの怖いところは、それでも嫌に惹かれるところだ。悪徳ってのは善行より時にまばゆい。特に、欲を貫き切った女ってのは、ゾッとするほど美しい」
「だが、攫われてこうされた娘どもは、そうは思わねえだろう。仮にどれだけの悦楽と、快楽が待っていようとも、だ」
さて、と藤間は手を叩き、集まった猟兵たちを見渡した。
「お前さんらに頼みたいのは、この哀れな娘たちの救出、そしてこのオブリビオン、右衛門炉蘭の討伐だ」
角の生えた女が煙管を咥えニタリと笑う、不遜な絵を藤間は見せる。
「右衛門炉蘭の生前は女衒でな。女のくせ女にひどく愛されて、どんなオコボもすぐに上玉に仕立てた名うてだった。だがその本領は女の心を弄ぶ手管だ。どれだけ酷い旦那に売り飛ばされても、娘どもはそれが姉さんのためになるならと耐えて、恨み言一つこぼさない。そうやって女を誰より知り、何より食い物にしてのし上がった化け物さ」
普段の軽口も出ないらしい。藤間は苦い顔をして締めくくる。
「生半可じゃ済まねえだろう、見たくねぇものもずいぶん見るだろう」
「地獄の討ち取る覚悟のあるやつだけ、志願するといい。——諸君らの無事を、祈る」
千歳アキラ
悪役がとても大好きな人間です。
案の定と申しますか、今回の敵を元気いっぱい書く所存でおります。多分普段より最終戦のリプレイが長いです。
第1章:冒険、
第2章:集団戦、
第3章:ボス戦の流れです。
おそらくR18にひっかからない程度に大人向けな内容になるかなぁと思います。おそらく女の人がたくさん出てきてたくさんたぶらかされます。
今の段階では断言が難しいのですが、きっと幾分かグロテスク寄りのシナリオになりそうです。
大丈夫、最後は必ず正義が勝ちます。勝つはずです。みなさんの手で勝利をもたらしましょう。
奮ってのご参加、お待ちいたしております。
第1章 冒険
『神隠し』
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POW : 現場に何度も訪れ、事件が発生する瞬間を目撃、原因を突き止める。
SPD : 囮に発信機を持たせたり、いなくなる場所に動感知カメラを設置して原因を突き止める。
WIZ : 行方不明になった時間、場所、人物などの情報からパターンや共通点を割り出し、事件の原因を突き止める。
👑11
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イデアール・モラクス
クク…その右衛門炉蘭とか言う女、まるで私みたいじゃないか。
私も数え切れぬ女を喰って、愛して、壊してきた…シンパシーすら感じるよ。
ならばどちらがより凄絶な悪の華であるか…ヤり合ってみねばなぁ?
・行動
『世界知識』を用いてサムライエンパイアでの情報を効率良く聞き込み、現場検証を行っていく。
事件現場では【残留魔力や妖気を辿り、解析する術式】を『範囲攻撃』を使って構築し、下手人や手口も調べる。
極めつけは『誘惑』、色香を振りまいて犯人や一味を誘き出しか逆に虜にして(必要なら色欲の触手も使い)、快楽漬けの骨抜きにして情報を引き出す。
「もっと気持ちよくして欲しいだろ?なら…吐き出せ、全てを」
※アドリブ歓迎
黒岩・りんご
【恋華荘】の舞奈さんと
ふーむ、これはとりあえずさらわれてみないと何ともなりませんかねぇ…?
というわけで舞奈さんを連れて現場に向かい、囮になってみますか
…一応舞奈さんに危害は及ばないように守るつもりで
あといざというときのために『喜久子さん』を入れたキャリーバッグは持っていきましょう
「舞奈さん、気を付けてくださいね?」
さて、どうすれば攫われるのか、とりあえずは行方不明情報から推理してそれらしい場所に2人で向かいますね
「さてさて、情報ではこの辺りで何かありそうなのですが……」
女を誑かす女についてはどう説明したものか…
わたくしに懐いてくれている舞奈さんを愛でても、それとは違いますしねぇ?
瀬戸・舞奈
【恋華荘】のりんごさんと一緒だよ。
神隠しにあった際に助けてくれた恩人の一人のりんごさんと一緒だから、大変な敵みたいだけどなんとかなるよね!
恩人のりんごさんには懐いてて好意も抱いてるよ。
うーん、UDCアースの日本育ちだといまいちピンとこないなぁ、女を誑かす女って、百合ともまた違うんだよね?
ともあれ、りんごさんと一緒に囮なって【影の追跡者の召喚】も使って情報を集めるよ。
りんごさんは美人だし、舞奈もこの世界だと目立つ格好だし、攫って娼婦に仕立て上げようとするなら狙い目だと思うんだよね。
だからまぁ、あえて人通りの少なかったり裏道だったりと攫いやすそうな場所をうろついてみようか?
アドリブ歓迎だよ。
音羽・浄雲
※アドリブ歓迎
行動方針はWIZでUCを使って調査と追尾をします。
「罪の無い女子供を巻き込む輩……捨て置くわけにはいきませんね」
憂いを帯びた表情とは裏腹に言葉に怒気を滲ませる。
しかしその行動は極めて冷静だった。蜘蛛が巣を張るように何度も何度も事件現場を巡っては情報を整理、次に現れるであろう場所に目星をつけて潜伏したのだ。
「その罪、必ずや贖わせて見せましょう」
音を立てぬように素早く印を結ぶと術を起動する。
音羽忍法【外道】。口の裂けた細い狐の様な生き物が現れるや駆け出し、浄雲の手足となるべく駆け出した。
マリア・ルイゼット
こう言っちゃなんだが、親近感が湧く相手だ。ひたすらに己の欲に忠実な女。アタシも一つ間違えたらそうなりかねないからな
…もちろんちゃんと仕事はするさ。所詮相手は過去の遺物。地獄に送り返してやるよ
【WIZ】
怪しまれない程度に【変装】し、現場周囲の村に出向き【情報収集】を行う
…飲み屋辺りが人の出入りもあるし紛れやすいかもな
酒盃を交わしつつ、周りの奴に事件や神隠しの噂はないか尋ねる
「旅をしてるとどうも厄介事に巻き込まれ易くて困るな。なあアンタ、ここら辺は安全かい?」
話に乗ってきたら世間話に見せかけ被害者の情報を聞き出す
店内でも噂が出てないか【聞き耳】を使用
あとは残った酒を飲みながら情報の整理をしとくか
「なかなか、探ってみると有益な情報ってのには行き当たらないもんだね」
マリア・ルイゼット(断頭台下のマリア・f08917)は肩を竦めて、同行のイデアール・モラクス(暴虐の魔女・f04845)を見遣る。
すでにマリアは幾許か酒を飲んだ後だった。人の出入りも多い店を選びしばらく張っていたが、酒を交えながらの話ではなかなか深くを語る相手は少なかった。
人の出入りが多いことが、かえって災いしたのだろうか。他人の耳に入る場所で不穏な噂話をしたくないというのが、人間の胸の内というものだ。
「並の手練手管じゃ足りないんだろうよ」
イデアールは薄く笑みを浮かべる。
「へぇ、アタシの飲みっぷりにケチつける気か?」
「まさか。ただ、少しばかり趣を変えてみないかと思ったまでだ」
この世界の人間の姿に変装したマリアを、イデアールはグイと引き寄せた。
「お前は随分と、血の匂いが深いな」
「……は?」
「人間を弄ぶ悦びは、何も壊すことばかりじゃないんだよ。若いの」
イデアールは手慣れたそぶりでマリアのめがねを外し、襟足を抜く。
酒で火照った頬も相まって、一見男性的だったマリアに年頃の娘じみた雰囲気が漂った。
「……何の、マネだ」
「こっちの方が効率的だろう。お前がおびき寄せた人間を、私がじっくり調理する。同じ聞き込みでも分業は必要さ」
マリアはじっとイデアールを見据えた。
「……分かった」
「話が早くて助かるよ」
マリアは溜息を零したものの、もう一度酒場へと赴く。彼女が一歩踏み込んだ途端、男たちの歓声が上がる。
さて、と、イデアールは背後に立つ背後で気配を消していたもう一人を振り返る。
「そっちはどうだ?」
音羽・浄雲(怨讐の忍狐・f02651)は静かに目を開く。
彼女はユーベルコード:音羽忍法【外道】を行使している最中だった。街に放った狐の五感を共有しながら、遠隔の情報を届け、同時に人の目が届かぬ場所を探索し続けている。
「今のところ、静かです」
「そうか」
「静かすぎるぐらいに」
音羽は端正な顔を僅かに歪めた。
「……このぐらいの時間であれば、夜行性の生き物が動いていてもおかしくありません。なのに近くの森も、川も、静まりかえっています」
「つまり?」
「もうじきです」
音羽は剣呑な口ぶりで告げる。
「──何かが、起きる」
事前に幾度も現場を巡り、緻密な調査を続けてきていた音羽は、既に大まかな出没地点に目星を付けていた。
「例のポイントへ、移動するよう二人を促します」
「面白くなってきたな」
不謹慎な事を口にして笑うイデアールを、音羽は静かに見据えたものの、口出しすることはしなかった。
それよりも現場への指示を優先する。
「あ」
村はずれの地点で待っていた瀬戸・舞奈(チョコスキー・f03384)はぱっと顔を上げた。
「りんごさん、警戒しろって指示が」
黒岩・りんご(禁断の果実・f00537)は瀬戸を見つめて手招きをする。
「なるだけおそばに居てくださいな。いざという時、二人一緒の方がよろしいでしょう」
「うん」
瀬戸は懐いたそぶりで黒岩の隣に立つ。
10センチ差の身長で見つめ合って、瀬戸は少し首をかしげた。
「でもよく分からないなぁ。女をたぶらかす女って、百合……ともまた違うんだよね?」
「そうですねぇ」
黒岩は頬に手を当てる。
「なんと説明すればいいでしょう。例えば……」
細いしなやかな指が、瀬戸の顎を軽くすくい上げた。
「愛や恋とは別の、憧れや尊敬を煮詰めたような、どろどろとした想い……のような」
瀬戸はこてりと首をかしげた。
「それは百合とどう違うの?」
「必ずしも恋情や身体関係を伴わない、女性同士の憧れに根ざすものですよ。……尤も、一概に言い切れるようなものではありませんし、今度のオブリビオンは手練手管を選ばない輩のようですから」
「だから?」
「備えあれば憂いなし、です。何があっても助けられるよう、どうかそばに居てくださいね」
黒岩がそう告げて、手を離した瞬間だった。
鈴の音が聞こえた。
「──ッ!?」
瀬戸の身体が宙に浮く。
「舞奈さん!」
黒岩が咄嗟に名前を呼んだ。
その黒岩の腰に、白い女の腕が絡みつく。
屍だった。
それが意思のあるように動いて、暖かな黒岩の腕を、腰を、胸を、肩を、乱暴に掴んでどこかへ引きずり込もうとする。
「……く」
今ここで抵抗しても怪我をしてしまう。
大人しく攫われるよりほかない。
黒岩は宙に浮いた瀬戸を見遣った。
瀬戸の姿は、既に消えていた。
「二人が、攫われました……!」
一部始終を監視していた音羽は僅かに声をうわずらせた。
そういう作戦だと分かっていても、平穏では居られない。だが判断は冷静なまま、イデアールとマリアのやりとりに目を見張りながらも、【外道】で引き続き攫われた二人の後を追跡する。
一人の男が座らされていた。
酒場でマリアと酒比べになり、そのうちに酔い潰されてしまった男。
「なぁ」
らしくもない女らしいしなを作って、マリアは彼にこう囁いた。
「アンタのこと気に入っちまった。ちょっと来てくれよ。もっと凄いこと、一緒にしてほしい」
男は少しだけ警戒するようにマリアを見た。
だが、艶っぽく抜かれた襟足と、時折垣間見える内股にそそられてのこのこついてきた。
そして、イデアールの餌食となった。
「もう二度とごめんだ」
マリアは襟を正しながら、イデアールと男のやりとりを眺める。
ぐちゅぐちゅと淫靡な音が響いていた。
男の懇願と、イデアールの笑い声が聞こえる。だがマリアも音羽も、そちらを直視しようとはしない。
男の悲鳴が聞こえたきり、当たりは静かになった。
「さて、待たせたな」
やがてイデアールが姿を現した。
「なかなか面白い話が聞けたよ。二人はまだ無事か?」
「えぇ。……ですが、そう長く持つか」
「男の零した噂話はこうだ」
「丑三つになると、死んだ女が手招く、ってな」
「それきりか?」
「それきりだ。深い穴が開いて、そこから若い女を冥府へ呼び込むと。そんな噂が聞けたよ。だが目撃談が多すぎる。それにだ」
つと、イデアールの目線は音羽へ向けられた。
「実際、目でも確かめたんだろう」
「はい」
音羽はこくりと頷いた。
そして【外道】と感覚を連動させて、唇を噛む。
「どうした?」
マリアに聞かれ、音羽は呻くように告げた。
「……死体です。屍」
「屍?」
「……誰かが、屍を操作して、人を攫わせていたんです。無数の、屍の山が。……沢山の、女の死体が、あります」
攫われた先、瀬戸が甲高い悲鳴を上げた。
薄暗い部屋の中に、無数の女が倒れていた。
あるいは全裸で、あるいは布をかろうじて身体に纏って。
冷えた滑らかな肌を惜しげも無く晒し、しかしその命は、とうの昔に事切れていた。
成功
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ランゼ・アルヴィン
物騒だねぇ……ま、美人を一目みたいのも確かなんだが
ソレ以上に若い女が拐われるのは見逃せねえな……
●行動
POW
聞き込みとか細けえことが出来る質じゃねえし、現場付近を歩き回って情報収集と行こうか
目的の相手が現れるならそれに越したことはない。茶でもしばきながらのんびり待つとしよう
辺りに若い女性が現れたら、それとなく注意しておこう
この辺りが物騒だと注意するのも考えたが、俺みてえなのが言っても怖がらせるだけで説得力がねえからなぁ
ま、その分敵が現れたら全力で守るぜ。徒に犠牲者をだすのは頂けねえからな
緋神・美麗
【WIZ】
アドリブ・他の猟兵と絡み歓迎
またやたらと厄介なオブリビオンが出たみたいね。女を食い物にするとか許せないわね。これ以上被害を出させないわよ。
今までの被害の情報から神隠しの場所や時間のパターンを割り出す
行方不明になる対象は女性だろうけど男性も被害に遭ってるならその原因も考察する
場所と時間の絞り込みが出来たら囮作戦を提案、囮役に志願する
「言い出したのは私だしね。敵が釣られてきたら皆よろしくお願いね。」
他の猟兵が囮役をするなら影の追跡者を召喚して囮役につけておく
「これで何かあってもすぐに分かるはずよ。すぐにフォローに行くから安心してね。」
法悦堂・慈衛
■WIZ
女衒の鬼、しかもお嬢さんとはなぁ。
しかしやってることは鬼畜外道の所業そのもの、か。
女の子が泣いてるとあったら、俺は黙ってられんのよな。
いなくなったのがお嬢さん方ならお嬢さん方に聞くのが早いやろ。
「おびき出す」「手をつなぐ」「誘惑」でもってお嬢さん方を募って話を聞くとしよか。
なんでかって?そらキミ…女の子が泣いてるなんて、聞いて黙ってられんやろ?
場所・時間・人、聞けることは全部聞いておこうか。
共通点は性別くらいやろか…他の猟兵さんと協力して推理やな。
余力があれば、卑弥呼ちゃんを喚ぶ。
此度の事件になにかありがたい予言をいただきたいところや。
ええことやとええけどなぁ。
■アドリブ・共闘歓迎
羽重・やち
女衒か。……ふん。
まぁ、いい。話は、それらに、会って、からだ。
さて。
それでは、先ず、【情報収集】、で、ありんしょか。
いっそ、賤が、捕まるなら、早い、ので、ありんすが。
賤は、人間、ではありんせん、ので、如何なものか。
娘を攫う、のは、解っておりんす。
此の地で、年頃の娘、張っていれば、会えそなもので、ありんすな。
人攫いのある地で、娘の居所、を、探る、となると、訝しむ者も、おりんしょが。適当に、【言いくるめ】る、と、致しんしょ。
問題は、誰が、如何、攫うか、か。
数が多い、と、面倒、で、ありんすな。
今まで攫った娘らの居所も、探らねば、いかぬ、の、で、ありんすから、【忍び足】、で、後追いか。
ロカジ・ミナイ
【WIZ】
おっかねぇ、おっかねぇな
おっかなくって目が離せねぇ
兎にも角にも情報収集って指示だ
そうだねぇ……誰しも好みの「色」がある
炉蘭の姐さんの手に落ちた娘さん方をずらりと並べてみれば
傾向が見えて来るかもしれないねぇ
傾向が無かったら無かったで、手を出していないタイプが怪しい
青と赤と黄色ときたら、次は白か黒だろう
……いや、僕ならそうだなって
……深い意味はなく
ところでちょっとした疑問なんだけど
男にモテる女は女に嫌われるっていうじゃない
逆はどうなのかねぇ
炉蘭の姐さんってのは、男から見るとイマイチなのか
気になって気になって、夜も眠れぬ乙女の様な気分だよ
「なぁ」
甘い声が、街を行く若い娘たちの耳をくすぐる。
「呼び止めて堪忍な。ちと、話聞かしてもらいたいんやけど」
娘たちは色めき立って足を止めた。
法悦堂・慈衛(法悦の求道者・f03290)はにこやかに、それでもどこか弱ったように微笑んで、彼女たちとの距離を詰める。
「最近なんや、人攫いの噂が出て物騒やろ。矢先に、一緒に泊まっとった友だちがいなくなってしもてん。何か、噂聞いたことあらひんかな」
娘たちはお互い顔を見合わせた。
話していいのか、悪いのか。
何かを知ったそぶりではあった。だがそれを口にすることは、今だはばかられている。
後一押しするように、法悦堂は眉根を寄せて笑って見せた。
「……急に聞かれても困ってまうよな。堪忍」
そして、暇乞いをして立ち去ろうとする。
咄嗟に、娘の一人がその袖を引いた。
「どないかしたん」
足を止めてみせる法悦堂に、娘はおずおずと、昨今この近辺で起きている怪奇現象について語り始めた。
羽重・やち(明鳥・f09761)も同様に街を歩いて情報を集めていた。
尤も、集めると言うより、寄せられるといった方が正しかったかも知れない。
「そんな別嬪が歩いてちゃ危ないだろ」
と、話しかけてくる殆どは男だった。
彼らは銘々に様々なことを口にした。
若い年頃の娘が攫われていること。どの子も大層な美人であったこと。
年の頃は、下は十五から、上は四十手前まで、とにかく幅広かったこと。
「ふぅ、ん」
羽重は少しずつ頭の中で情報を整理してゆく。
「もぅし。聞きたい、んで、ありんす、が」
ふと閃いて、羽重はとある言葉を口にする。
「攫われた、女たち、どれほど男と、付き合いがあったかは、存じては、ありんせんか」
男たちは、はたと顔を見合わせた。
「なるほどなるほど」
経過を聞いて、ロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)は腕を組む。
「つまり、浚われた女たちは、女との付き合いの方が頻繁で、男たちとはあまり接点がなかった、と」
情報を持ってきた法悦堂と羽重は頷いてみせる。
「なんや、女の方はえらい付き合い頻繁やったらしな。よぉけ慕われてはる子ばっかりやってん」
「だが、男たち、との交わり、は、希薄……、美貌にも関わらず、所帯を持たずに、いる。そんな御仁がほとんどで、ありん、した」
ロカジは腕を組む。
「じゃあ、オブリビオンが欲しがってるのは、男の手垢があまり付いていなくて、女との付き合いになれてる女、ってことなんやろか」
首をかしげる法悦堂に、ロカジは眉根を寄せて考えを口にしてみる。
「女社会でやっていくのが上手な女性がターゲット、って感じなのかもしれないねぇ」
「へぇ?」
「娼婦には、女の子同士の関係が欠かせないしね。生前の名残でそういう子選んでるのかもしれない。……まだ情報が少し、足りないな」
と、ロカジは呻いた。
「まだ攫われていない子が拐かされるかもしれない、と思ったんだけど、これだとオブリビオンはもう標的の選定をある程度済ませているって見た方がいいかもなぁ」
ところでさ、と、ロカジは二人の方を見る。
「男にモテる女は女に嫌われるっていうじゃない。逆は、どうなんだろうね」
女にモテる法悦堂と、男を手玉に取ってきた羽重は神妙な顔をして、じっと考えを巡らせていた。
緋神・美麗(白翼極光砲・f01866)は周囲をぐるりと見渡した。
攫われる年齢には僅かに満たないが、殆ど誤差のようなものだろう。
女性たちの目撃証言が夜中を最後に途絶えていたことから、深夜の村はずれを一人で歩いている。
その少し離れたところから、ランゼ・アルヴィン(乱世に轟く・f06228)が気配を消してついていく。
囮役として張り込んでから、四半時が経過しようとしていた。
「待つと来ないものね……」
緋神はぎゅっと身体を抱きしめる。
この世界の時代に合わせた衣装だったが、まだあまり着慣れていない。
一方のランゼは慣れたもので、遠くから緋神の様子を眺めて茶をしばいていた。
「ま、それには同感だがな」
だが、その言葉を覆すように不意に緋神の後ろに気配が現れる。
ランゼはすぐに気が付き、得物を手にかけ出した。
緋神もはっと背後を振り返り、伸ばされた手から逃れようと駆ける。ひやりとした手が緋神を掴んだ。人間のものとは思えない腕力で捕まれて、悲鳴が上がる。
だがその腕を、すぐにランゼが叩き落とした。手に持っていた武器で、すっぱりと切り落としている。
緋神を攫いに来たものの気配は消えた。
代わりにそこには、屍の腕が一本だけ残されていた。
「……今の、どういう……」
「まだ諦めちゃいねぇだろうけどな」
ランゼは油断せずに周囲を見渡す。
「この腕、……死んでる……?」
緋神はランゼの切り落とした腕を見下ろした。断面からの出血は起きていない。
「……やっぱり、死人が迎えに来るっていう噂は、本当だったのかしら」
「死んだ人間が動いてたまるか」
ランゼは剣呑な顔をする。
「今の死体は、操られてたんだ」
そして切り落とされた手をつかみ上げて眉をしかめた。
腕は、まだ年若い女のものだった。
大成功
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第2章 集団戦
『彼岸の兜風鈴』
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POW : 風鈴の音が響き渡る
予め【風鈴の音を響かせ続ける 】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD : 風鈴の音が共鳴する
【共鳴振動となる甲高い風鈴の音 】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ : 風鈴の音が死者を呼ぶ
【黄泉の国 】の霊を召喚する。これは【悲鳴】や【武器】で攻撃する能力を持つ。
👑11
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リィン、と鈴の音が鳴る。
山と積まれた女たちの亡骸がゆっくりと動き出す。
「ねぇ、さま」
「こっちに、きて」
「さびしい、さびしいの」
「あなたも、ねえさまに、欲しがられたの?」
めいめいに様々な言葉を繰り返しながら、亡骸たちは歩き出す。
再び鈴の音が鳴る。
一定の間隔で、金色の光をまとった黒い兜が浮かんでいた。
彼岸の兜風鈴。
そう呼ばれるオブリビオンだ。
死者の魂を呼び戻し、使役する。
疲れも痛みも知らない死人たちは、望まれるまま酷使されていた。
黄泉の国から呼び戻された死者たちは、死してなお、慕った女のために彷徨い、新たな仲間をさらい続けていた。
リィン、と。
涼やかな音が、幾重にも響き続けていた。
緋神・美麗
これが死体を操ってるオブリビオンね。もうこれ以上死体を冒涜させないわよ。速やかに討滅するわ。
「もう死体を使って死体を増やすなんて許さないわよ」
出力可変式極光砲で彼岸の鬼風鈴を全て撃ち落とす
命中重視>攻撃回数>威力の優先順位で調整
【誘導弾】【範囲攻撃】【衝撃波】【力溜め】で必ず墜とす
あとは残るはこれを使役してた親玉だけね。絶対にぶっ飛ばしてやるんだからね。
イデアール・モラクス
アッハッハ!なんだ、使う術まで似てるんじゃないか。
ますます興味が出てきたよ。
・行動
「愛を交わした人間の魂を永遠に隷属させる…愉しいよなぁ?」
UC【愛欲の軍勢】を『全力魔法』で強化した上で『高速詠唱』にて召喚。
前衛たる騎士達は槍を構え突撃し女どもを『串刺し』にさせ、後衛たる魔術師達には『属性攻撃』で強化した氷の刃や聖なる光線の攻撃魔法を『範囲攻撃』で広範囲に放たせ前衛を援護させつつ兜風鈴を殲滅する。
「クク…哀れな女ども、我が軍団に貫かれて今度こそ果てるがいい」
私は【広範囲に稲妻を放つ超高威力の攻撃魔法】の術式を『範囲攻撃・全力魔法・属性攻撃・高速詠唱』により構築して放ち軍団を援護。
※アドリブ歓迎
ロカジ・ミナイ
お仲間さんが掴んだ尻尾はみすみす手放すまいよ
それがどんなに触れ難い代物でも
いやしかし、哀れなお嬢さん方だ
そんな姿にされた挙句、道具の道具にされちまったのかい
……尽くす女は好きでも、見ているだけってのは苦しいもんで
深い同情と憐憫から、君たちを黄泉に送り帰したいと思う
さあ、過去にお帰り
過去は綺麗だからねぇ
僕はどうも、多数のベッピンさんをいっぺんに屠るってのが苦手で
敬意を込めてひとりずつお相手仕ろう
スルッと死角に入ってサクッと急所を
今となってはこの刃も沢山の血を吸った
最近は開き直ったのか
白い刃に戻れぬのなら美しい赤に溺れたいと言う
だから、相手が君らなら喜んで殺し直せるってもんよ
法悦堂・慈衛
お嬢さんらを攫って、屍を操る。
あかんなあ。これは相当な下衆の仕業…予感やのうてもう確信や。
攫われた猟兵さんら含めて、女の子たちの心の傷にならんよう言葉でケアを心がけよか。
鈴の化け物なぁ。
彼岸に渡すにしては控えめな御身、俺の情愛の炎…偏愛真言符にて調伏させてもらうで。
切るべきところでUC、卑弥呼を喚ぶ。
この先にある泥にも似た闇を晴らすのが俺らの仕事や。
あんたさんらに関わってる暇も惜しいんでなぁ。
卑弥呼ちゃん、俺らのこの戦いの先にあるものの吉凶、占ってくれや。
その予言は、きっと猟兵の力になる。
…なってくれなきゃ困るんや。
黒岩・りんご
【恋華荘】の舞奈さんと
「さて、攫われるのは予定通りですが…舞奈さんとはぐれたのは予想外ですね」
仕方ありません
まずは舞奈さんを見つけ出さないと
【幼き魔王の群体自動人形】でぷちりんごを大量召喚
ぷちりんごを四方八方に移動させて、舞奈さんを探し出し、救出しますね
さて、その間にわたくしは、『喜久子さん』を取り出して、風鈴の音のもとに向かい、喜久子さんと共にそれを切り捨てていきましょう
ぷちりんごの捜索を頼りに、舞奈さんとの合流を目指しますね
合流できたら、大丈夫でしたかと、再会を喜び、抱きしめて頭を撫で…
…邪魔する無粋な風鈴には、ぷちりんごと遊んでてもらいましょうかね?
瀬戸・舞奈
【恋華荘】のりんごさんと引き続き。
う、うぅっ!囮になって攫われるのは予定通りだけど、りんごさんと離ればなれの上に場所が酷い!
屍の山とかやめてよ!こんなに沢山の女の人が、酷いよ……更に酷いのは、その死体動いて襲ってくるのを場所に舞奈攫って放置するってことだよ!
こんな状況じゃ犠牲者の人達のこと思う余裕がないよ!
【トリニティ・エンハンス】で防御力重視で強化して、ルーンソードに炎纏わせて戦うよ。風鈴が操ってるのも気づくけど、多勢に無勢過ぎてどうにもできない……えーん!りんごさん助けてー!?
とか言ってたらなんか小さくて可愛いりんごさんが!
あっ、りんごさん本人も!わーん!助かったよー!これで反撃開始だね!
ランゼ・アルヴィン
○心情
やれやれ……これが右衛門炉蘭って女のやり口かい
自分を慕う女を守りもせず手駒扱いとは、中々性根が曲がってるようだな
……この女達にゃ悪いが、俺にできるのは苦しませずに終わらせることくらいか。火葬で悪いが、我慢してくれや
ついでに小煩い風鈴共も叩き割るとするかね
○戦闘
ユーベルコードを使い、炎と剣で敵を倒していく
呼び出された女たちはできるだけ一撃で倒すぜ
「ま、次があれば惚れる相手は選んでくれ。……そうも行かねえのが人情ってやつかも知れねえけどな」
※アドリブ、連携可
音羽・浄雲
※アドリブ、連携歓迎です。
「なるほど、先ほどの鈴の音はこういうことでしたか」
浄雲は空を漂う風鈴を冷ややかに見据える。その音色など既に耳に入っていないのだろう、冷淡な表情とは裏腹にその心は憎悪に燃えていた。
「生者だけでなく死者までも弄ぶとは……」
穏やかに丁寧にあらんと振舞っていたその仮面を脱ぎ捨てるかの様に、斜めに掛けていた般若面を被り印を結ぶ。すると、怒りに燃える心から表出したかの様に浄雲の身体が炎に包まれていく。
「今宵妾は鬼となろう。娘共よ、この命を薪とくべた劫火をくれてやる。もう誰にも惑わされることの無いようにのぅ……」
青白い劫火を纏った浄雲が風鈴諸共に屍達を焼き払わんと火を放った。
マリア・ルイゼット
死んでも尚、その女の為に尽くすのか。お前らは実質アイツに殺されたようなモンなのに
…分からねえな。慕情もここまで来ると完全に狂気だ
いや、娘達を狂わせたその女の手練手管を称えるべきか?
敵の攻撃は【第六感・見切り】で避け【鎧砕き・鎧無視攻撃】で硬そうな兜を砕く
敵の動きに常に注目、特に風鈴の音を長く響かせ続けた相手には、身動き出来ないよう優先的にUCを使用
「…いい加減耳障りだ、少し黙っとけ」
操られた娘の死体達が戦闘の邪魔をするなら迷わず【なぎ払い】斬り捨てる
「冥土で待ってな、じきに『ねえさま』もアンタらの後を追って来るだろうよ」
【アドリブ歓迎】
死者の群れが悲しげに蠢いていた。
おそらく彼女たちに生者だった頃の意思は無い。
最後に記憶に強烈にすり込まれた感情、記憶だけを幾度も反芻させられているのだろう。
●闇を照らす光
どんよりと濁った空を、不意にまばゆいばかりの閃光が照らした。
「これが私の全力だーーっ!」
緋神・美麗(白翼極光砲・f01866)の出力可変式極光砲(ヴァリアブル・ハイメガキャノン)が切り裂いていく。
その輝きは、ひどく正確に兜風鈴を撃ち抜いていった。
耳をつんざくような風鈴の音が鳴り響き続ける。互いに兜風鈴の戦闘力を増強する効果のある鈴の音は、兜たちを強化していた。
だが、緋神に触れようとする前に、ヴァリアブル・ハイメガキャノンが兜を撃ち落としていく。
加えて動きが鈍くなっているため、回避もかなり遅かった。
緋神はキッと兜たちを睨み付ける。
「これ以上、死体を冒涜させないわよ。速やかに討伐するわ」
語調には確かに怒りが滲んでいる。
「死体を使って死体を増やすなんて、許さない」
それでも彼女の狙いは正確無比だった。
鎧が打ち砕かれた先から、女たちの骸は土に帰り、あとには白い花が一輪咲いていた。
●咎の尾を踏む
「あぁ、これは……まったく、ねぇ」
ロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)は蠢く女たちを見据えて目を眇めた。
その目にオブリビオンは映っている。
だがそれ以前に、思うが儘操られる骸たちが、あまりに哀れだった。
「哀れなお嬢さん方だ。そんな姿にされたあげく、道具の、道具にされちまったのかい」
その言葉は、死して心を喪った彼女たちには届かない。
オブリビオンの操るがまま、虚ろな声を上げながらロカジへ歩み寄ってくる。
「……尽くす女は好きでも、見ているだけってのは苦しいもんで」
ぞろりと刀を抜いて、切っ先を死んだ女へ向ける。
女の一人がゆらりとロカジに歩み寄った。
不鮮明な言葉を口にしながら、手を伸ばして襲いかかってくる。
そのみぞおちを、刺し貫いた。
「深い同情と憐憫から、君たちを黄泉に送り返したいと思う」
声は哀れみを含みながらも穏やかで、寂しげだった。
「さぁ、過去にお帰り。……過去は、綺麗だからねぇ」
死体とは思えぬ鮮やかな紅が散る。
ロカジはわずかに、唇で笑みの形を作って見せた。
「その赤に、溺れさせておくれ」
そして、一人一人、女を刺し殺し直していった。
●暗雲浄め
「危ない!」
死者が生者の首を絞め殺そうとしているのに気が付き、法悦堂・慈衛(法悦の求道者・f03290)はすかさず間に割り入った。
死者を無力化し、泣きじゃくる娘の肩をそっと抱きしめる。
「もう大丈夫……何も怖ないさかい」
娘は法悦堂の胸に顔をうずめて震えていた。その華奢な身体を抱きしめて、無事を確認しながら法悦堂はオブリビオンを鋭く睨み付ける。
「さぁ、調伏させてもらうで」
素早く取り出した偏愛真言符を、真っ直ぐにオブリビオンめがけて投げる。
オブリビオンに触れた途端、霊符はぱっと鮮やかに燃え上がった。
女性への熱い想いを手づから込めた一品であり、燃えるような想いであるだけに、その火力は尋常では無い。
兜風鈴がぼとりと落下した周囲で、女の死体立ちも倒れて動かなくなる。
「何も見たらあかんよ。……ここで、じっとしてれば安全やさけ」
娘に安心させるように囁いて、法悦堂はユーベルコードを展開した。
「卑弥呼ちゃん、この先にあるものは、吉か、凶か」
式神符から呼び出された女帝は、静かに口を開く。
「力あればこそ、切り開ける道となるだろう。──及ばなければ、それまで」
あるものにとっては希望に、あるものにとっては不安にもなる言葉を告げて、卑弥呼はふっと姿を消した。
●その怒りは青く燃える
「なるほど、先ほどの鈴の音はこういうことでしたか」
状況を理解した音羽・浄雲(怨讐の忍狐・f02651)は合点してわずかに首肯する。
空を漂う風鈴を、冷ややかに見据えていた。
涼しげな音は、既に耳に入っていないのだろう。表向き、彼女は静かなままだった。
だからその腹の内に煮えたぎる怒りに、気付くことの出来た猟兵は僅かだろう。
「生者だけでなく、死者まで弄ぶとは……」
先刻まで穏やかで丁寧だった口調は、憤怒を湛えていた。
般若面を深くかぶり、印を結ぶ。
途端、彼女の身体は鮮やかな青い炎と化した。
鬼になる覚悟が、彼女にはあった。
「娘どもよ」
哀れみを滲ませる声は、鈴の音を打ち破り凜と響いていた。
「この命を薪とくべた劫火をくれてやる。もう誰にも、惑わされることは無いようにな」
青白い炎は地を這い、兜風鈴と亡者たちを包み込む。
途中で共鳴しようと風鈴が動いた節があったが、それでどうにかなる火力ではなかった。
次々撃ち落とされていくオブリビオンの姿を見て尚、音羽の心は哀れみに満たされたままだった。
●手向けの言葉
「誰に殺されたかすら、もう分からないのか」
その声色は、哀れみを伴っていた。
マリア・ルイゼット(断頭台下のマリア・f08917)は苦々しく言い捨てる。
「お前らは実質あいつに殺されたようなもんなのにな」
首を振って、目を眇める。
「……分からねえな。慕情もここまで来ると完全に狂気だ。……いや、娘たちを狂わせたその手練手管を、湛えるべきか?」
生前に吐いた言葉を何度も繰り返させられる、ただの傀儡である死者たち。その群れが、マリアを認識して近付いてくる。
それを【第六感・見切り】でかわし、マリアは素早く兜風鈴へ肉薄した。
「……いい加減耳障りなんだよ」
舌打ちと共に、【鎧砕き・鎧無視攻撃】で黒々とした兜を粉々に打ち砕いた。
敵の動きを決して見誤ることはせず、ユーベルコード咎力封じを命中させていく。襲いかかってくる兜風鈴に、手枷の板、猿轡の布、拘束ロープが巻き付いた。
危機感を感じた兜風鈴が、けたたましい鈴の音を鳴らす。
それに呼応して襲いかかってくる娘を、マリアは【なぎ払い】で斬り捨てる。
「冥土で待ってな」
物言わぬ死体を前に、マリアは手向けのように告げた。
「じきに『ねえさま』もアンタらの後を追ってくるだろうよ」
●魔境の再会
そこは実に、地獄じみた世界だった。
女の死体が累々と転がる中、場違いに涼やかな風鈴の音が響いている。
その音に呼応するかのように、女たちの死体がうつろに動き回っている。
「……う、ぅ……っ」
その死体の影の中で、瀬戸・舞奈(チョコスキー・f03384)は声を殺して呻いていた。
囮になって攫われるところまでは、彼女たちの想像通りだった。
だがこんなに酷い魔境で離ればなれになることは、想定していなかった。
「屍の山とかやめてよ!」
誰にもぶつけようのない怒りと混乱を口にしながら、屍から逃れようとする。
こんなに沢山の人間が犠牲になっていることもさながら、更に許せないのはこんな場所に置き去りにされたことだ。
神隠しに遭った経験のある彼女だが、それでもこの状況は度しがたかった。
「こんな状況じゃ犠牲者の人たちを想う余裕がないよ……!」
声を荒げながら、ユーベルコード『トリニティ・エンハンス』を起動させる。
防御力を重視して自身を護りながら、ルーンソードに炎を纏わせて戦う。
こちらへゆらゆらと揺れながら近付いてくる淀んだ死体の目を見て、どうしてここへ自分が放置されたのかを知った。
きっと、宿敵の前にたどり着く前に、絞め殺される手はずだったのだ。
「くっ……」
この状況を作り出しているのが風鈴であることは分かる。
だがどうにも打破できない。
「えーん! りんごさん助けて-!」
咄嗟の叫びが、上がった。
一方の黒岩・りんご(禁断の果実・f00537)は落ち着き払ったものだった。
「さて、攫われるのは予定通りですが……舞奈さんとはぐれたのは予想外ですね」
はぐれた知人との再会を優先し、ユーベルコード『幼き魔王の群体自動人形(プチ・オートマタ・ハーヴェスト)』を展開させて、己の少女時代に似た造形の自動人形を召還し、周囲の探索をさせる。
その間に、戦闘用懸糸傀儡である『喜久子さん』を取り出し、戦闘に備えた。
風鈴の音が聞こえる方で何かが起きているだろうという読みは、当たっていた。
黒い瘴気のような霧をまとった兜が宙に浮いている。
それを一つ一つ破壊しながら、瀬戸との再会を目指す。
やがて、自動人形ぷちりんごの一部が、こちらだと言うように黒岩を手招いた。
「舞奈さん!」
駆け寄った先、瀬戸はやっと安堵したような表情を見せた。
「わーん! りんごさん!! 助かったよ-!」
大人数を前にして手が出せずに居たのだろう。
「もう、大丈夫ですよ。……ご無事ですか?」
「うん!」
「あぁ、本当に良かった」
再会を喜び、黒岩は瀬戸を抱きしめて、頭を撫でる。
その背後で、耳障りな風鈴が鳴り始めた。
「あぁ、本当に煩わしいですね……」
黒岩の声に剣呑さが滲む。
「少し、そちらで遊んでいてくださいましね」
そう言い終わるや否や、自動人形立ちが一斉に兜風鈴に飛びかかった。
●烈女の宴
女の死体が、もう珍しくもなくそこかしこに倒れている。
行く先を塞ぐ肉を踏みしだきながら、イデアール・モラクス(暴虐の魔女・f04845)は哄笑する。
「アッハッハ! なんだ、使う術まで似てるんじゃないか」
同じ悪徳の匂いがすると、イデアールは笑う。
「ますます興味が出てきたよ」
そしてユーベルコードを展開させる。
【愛欲の軍勢】で呼び出された屈指の男たちは、素早く前衛と後衛に別れて己の職務を全うした。
前衛の騎士たちが己の得物で女たちを殲滅してゆく。後衛の魔術師は、範囲魔法を駆使しながら屍を操っている兜風鈴を打ち壊していく。
「ハッハッハ」
その光景を見てやはり、イデアールは笑っていた。
まさに地獄の様相だ。柔らかな女の身体を鋭利な武器が刺し貫き、破壊してゆく。そしてその跡形も消し去るように、魔法使いたちの魔法が炸裂する。
「やはり、なぁ。欲というものはこうでなくては」
ちろりと己の唇を舐めて、暴虐の魔女は満足げに目を細めていた。
慣れた様子の高速詠唱で、彼女は雷の魔法を構築する。
「さぁ、比べ合おうじゃないか」
そして、トドメのように範囲攻撃で魔法を解き放った。
●弔火
「やれやれ……」
ランゼ・アルヴィン(乱世に轟く・f06228)は遣る瀬なさに顔を歪めていた。
「これが、右衛門炉蘭って女のやり口かい」
自分を慕う女たちを助けるでも、護り続けるでもなく、むしろ使い捨ての駒のように扱うやり方に、反吐を覚える。
「なかなか、性根が曲がってるらしい」
得物を構える。
自分に出来るのは、彼女たちを苦しませないうちに、この負の連鎖を終わらせることだった。
「火葬で悪いが、我慢してくれや」
ユーベルコード『天照剣舞・我流(ルミナスフレア・トランセンド)』を展開させ、ランゼは声を張り上げる。
「闇を照らす暁の光、我はそれを受け継ぐ者!」
ランゼの抜き放った刀身に込められた『太陽の炎』が一斉に外に出た。
超高熱の得物で、ランゼは女たちを一人ずつ屠って、あの世にと誘い続ける。
「もし、次があれば惚れる相手を選んでくれよ」
一人一人の命が潰えていくのを、自分の手に伝う肉の裂ける感覚や刃の沈み込む手応えで知る。
女の群れが手薄になったところで、すかさず敵オブリビオンへと攻撃の手を伸ばす。
「煩いんだよ」
鉄が砕ける音を飛び散らせることもなかった。
固い鉄の兜は天帝の炎の前に敗れ、あとには惨劇の名残が僅かに存在するばかりだった。
大成功
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第3章 ボス戦
『右衛門炉蘭』
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POW : 肉の盾だぁ、絶景だよなぁ?
戦闘力のない【攫ってきた女性達を打ち付けた盾】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【八つ当たりに痛めつける事】によって武器や防具がパワーアップする。
SPD : 三十六計逃げるにしかず、命あっての物種だぁねぇ
自身が装備する【煙管より吐き出し足る煙】を変形させ騎乗する事で、自身の移動速度と戦闘力を増強する。
WIZ : 俺を逃がせよぉ。出ないと死ぬぞぉ、村人がよぉ。
見えない【範囲にある村まで及ぶ毒霧を吐く巨蛇】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
👑11
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イデアール・モラクス
ようやくお出ましかぁ、会いたかったぞ!性悪女ぁ!
さぁ見せてみろ力を、悪辣を!
・行動
と、息巻いてはみたがどうも違うなぁ…この女、私とは決定的に違う。
「お前…女々しいぞ、悪徳は刹那に生きてこそだろう?」
UC【鏖殺魔剣陣】を『全力魔法』で威力を増し、『範囲攻撃』で空を埋め尽くすほどの数に増やした上で『高速詠唱』を用いて連射、盾にされた女や巨蛇も構わず貫く。
「お前は二流の悪だ、こういう惨たらしい死に方がお似合いだよ…アーハッハッハ!」
魔剣を命中させ『串刺し』にして縫い止めた上で『属性攻撃』で刀身に雷撃を通して『傷口を抉り』ながら嬲り、剣に血を『吸血』させ『生命力を奪い』ながら殺す。
※アドリブ歓迎
巨大な不可視の大蛇を前に、イデアール・モラクスは哄笑していた。
「ようやくお出ましかぁ! 会いたかったぞ! 性悪女ぁ!」
蛇が毒の霧を吐く。
「俺を逃がせよ」
くつくつと、右衛門炉蘭も笑っていた。
「でないと死ぬぜ、村人がよ」
「ほざけ」
イデアールは鼻で笑った。
「思っていたより女々しい女だな。……なぁ、悪徳というのは、刹那に生きてこそ、だろう?」
「命あっての物種とも言うがね」
「はは、私とはやはり、決定的に違う」
会話はごく僅かな時間で打ち切られた。
両者互いににらみ合い、にやりと不敵に笑って仕掛け合う。
「鏖殺魔剣陣!」
イデアールのユーベルコードが炸裂した。
巨大な蛇に視線を向けたイデアールの意思に沿って、空中の魔方陣から無数の剣が放たれる。
精度の高い命中率を誇る攻撃は、たとえ蛇が不可視であろうとも関係なく有効打を叩き出した。
目を潰された蛇が、威嚇音を響かせる。
そしてその剣は、炉蘭の右腕にも深々と刺さっていた。
「ハハハハ!」
「てめェ……!」
イデアールは眉間にしわを寄せる炉蘭を見て笑った。
「お前は二流の悪だ。炉蘭。こういう惨めったらしい死に方がお似合いだよ……」
幕引きの言葉を口にし、イデアールは悠然と腕を組んでいた。
成功
🔵🔵🔴
緋神・美麗
ようやくボスのお出まし…って、これまた飛び切り下衆いわね…。もうその顔も見たくないわ。さっさと消えなさいな。
【POW】
盾が本当に目障りでむかつくわね。これ以上使わせないわよ。
ライトニングセイバーで近接戦を挑みつつ、肉の盾を使ってきたらサイコキネシスで盾を奪い遠くに運ぶ。盾を召喚される度に奪い取る。
「何度召喚しようと私が全部奪い返す!絶対に根負けしたりしないんだからね」
戦闘が終わったら攫われた女性達を解放して負傷者がいれば応急処置を施す
「あくまで応急処置でしかないから、後でちゃんとしたお医者様に診てもらってね」
「はは、コイツァ別嬪だねぇ」
キセルを口に笑う右衛門炉蘭を、緋神はキッと睨み付けた。
「冗談じゃないわ。あんたみたいなゲスな人間の顔、もう見たくもない」
ユーベルコード発動に備えながら、緋神は炉蘭の動きを見据える。
炉蘭の使う盾は、実におぞましい者だった。
捕らえられた女が生きたまま、盾に縛り付けられている。
「ほら、どうした?」
炉蘭はぴしりと女の頬を叩いていた。
「お前の見目が良くねぇもんだから、お客人が気を損ねちまっただろう?」
盾にされた女は震えて詫びた。
「ごめ、ん、なさい」
「それで?」
「姉様の役に立つよう、もっと、頑張りますから」
「それでいい」
心まで躾切られた様子に、緋神は一層激高した。
「いい加減に、して……!」
ライトニングセイバーを携え、一気に炉蘭との距離を詰める。
「おっと!」
炉蘭は素早く盾を振りかざし、にやりと笑った。
「いいのかい、大事な女が傷付くぜ」
「最低ね……!」
ライトニングセイバーが、炉蘭の髪をかすめる。
炉蘭の目が僅かにそれた。その一瞬の隙を突いて、盾を【サイキックエナジー】を放って吹き飛ばす。とらわれた女性が危険でないよう安全に着地させて、緋神は真っ直ぐ炉蘭を睨み据えた。
「絶対に、あなたに根負けなんかしない……!」
心臓めがけて真っ直ぐ突き出した剣は、炉蘭の脇腹を刺し貫いた。
成功
🔵🔵🔴
音羽・浄雲
※アドリブ、絡み歓迎です。
「ぬしが首魁か。塵一つ残ると思うな」
猛る浄雲が吠える。けれど、迂闊には動かない。
相手はオブリビオン、それも人を惑わすに長けた存在。きっと何らか策がある。そう考え、袖口に潜ませた詭り久秀をするりするりと張り巡らせていく。
「三十六計逃げるにしかず、か。逃がすわけがなかろうよ」
詭り久秀を展開しきると同時、浄雲の身体から立ち上る劫火がオブリビオンを燃やし尽くさんと放たれる。
それは浄雲の敵だけを焼く劫火。味方を巻き込むこともなく、盾にされた女たちを焼くこともない。されどオブリビオンと吐き出した煙や毒蛇は焼き払う。浄雲のうてる最善手だった。
「灰燼と化すがよい!」
女たちの肢体を転がして笑うオブリビオンを前に、音羽・浄雲は目を眇めた。
「ぬしが首魁か」
声は穏やかだ。だが青白い炎のように、静かな怒りを湛えていた。
「塵一つ残ると思うな」
低く唸り声を上げる獣に似る音羽を、オブリビオン──右衛門炉蘭は面白そうに笑って見遣った。
「牙ばかり尖らせるもんじゃないぜ。年頃の別嬪が台無しじゃねぇか」
「黙れ」
ひたと睨み据えたまま、音羽はひそかに詭り久秀を展開してゆく。
「男も女も知らねぇのかい」
礼を欠く言葉を口にして、炉蘭は艶然と笑んでいた。
「教えてやろうか。何が楽しくって生きるのかを、さ」
「望むと思うか?」
「いいや?」
不意に、炉蘭が煙をふぅと吹き出した。
紫煙は馬の形をとり、炉蘭を乗せる。
「あばよ」
だが、見逃す音羽ではなかった。
「逃がすわけがなかろうよ」
音羽の身体が、劫火と化す。
辺り一面が一瞬で青い炎に包まれた。
「灰燼と、化すが良い……ッ!」
「気でも触れちまったか?」
炉蘭が顔色を僅かに変える。
「それとも、女ども殺してでも、俺と添い遂げてぇのかい」
だがそれは過ちだった。
音羽の炎が焦がすのは、悪を成す炉蘭やその配下だけだったのだ。
大蛇が姿を消し、あたりに立ちこめていた紫煙も消え失せる。
「チッ」
炉蘭は舌打ちし、煙の馬を乗り捨てた。目を炎にやられたのか、片目をきつく閉じている。
音羽をにらみ返す隻眼には、もはや余裕もからかいもなかった。
成功
🔵🔵🔴
ランゼ・アルヴィン
ちっ、見かけだけは合格点なんだがなぁ……
腹の底まで腐ってちゃ、抱く気も起きやしねえ
「さて、俺様の目の前で女を泣かした奴はぶちのめすって決めてるんでな。ちょいと歯ァ食いしばれ」
○戦闘
どうにも逃げようとしてるようだからな、愛用のバイク『超・乱世号』を使って追撃するぜ
コイツはエンジンがうるせえから街なかで使いたくねえんだが、非常事態だ
ユーベルコードも使って逃げる敵を追いかけて、騎乗状態で剣での白兵戦を挑むぜ
可能なら敵を叩き落として、味方と連携してトドメまで持っていきてえな
「お前さんもオブリビオンだったな……。ま、次に出てくる時はまともな性格になって来てくれや」
傷付いた右衛門炉蘭の耳に、聞き慣れない駆動音が轟いた。
音のする方に目をこらせば、艶やかな灰髪をなびかせて疾駆する羅刹の姿がある。
「……チッ」
炉蘭は舌打ちしてすかさず煙管から深く長く息を吐いた。黒いたてがみの馬を呼び出して、この場を逃れようとする。
既に身体に傷を負った彼女がそうするのも、当然の道理だ。
「見た目だけは、合格点なんだがな」
轟音の主──ランゼ・アルヴィン(乱世に轟く・f06228)は目を眇めて呻く。
傷付いた柔肌や無残にうち捨てられた屍体は、見るに痛々しかった。
「腹の底まで腐ってちゃ、抱く気も起きやしねぇ」
「野郎なんざこっちから願い下げだぜ」
炉蘭は馬の腹を蹴った。馬が高くいななく。
だがランゼの速度も尋常でない。
「逃げられるだとか思うんじゃねぇよ」
『超・乱世号』のエンジン音が高くヒートしてゆく。
炉蘭の馬のすぐ後ろにつけるまで、そう時間はかからなかった。
「覚悟しな」
炉蘭はランゼを振り向き、すぐに煙管を構えた。
ランゼは一気に黒剣ラススヴィエートを振り下ろす。
「くっ……!」
女の細腕が煙管でそれを受け止めるのにも、限界があった。
一度、二度、三度。金属同士が激しくぶつかり合い、火花が飛び散る。
「チッ、やるじゃねぇか……!」
「ハ、そこらの旦那衆に負けて女衒が務まるかよ!」
炉蘭が目に一瞬だけ憎しみを宿す。
「おい羅刹。御前も綺麗な身だって言えんのかい。その刀で誰かを叩き斬って開いた血道は、本当に間違っていねぇのかって聞いてんだ」
「あ……?」
「正義振りかざして俺を殺しゃいい。何も知りもしねぇご大層な身分てのは随分ご立派だ。だが分かってんのかい? ──殺生させられる人間は、必ずどこかでズレちまうのさ」
耳にねとりと絡みつくような、腹の奥をかき乱す言い回しだった。
ランゼの隙を突いて、逃れようとしたのだろう。並の男であれば、刀を振るう腕が鈍ったかも知れない。
だが、生憎だった。
「こちとら物心ついた頃から規律も規範もねぇ乱世育ちだ」
ランゼがラススヴィエートを握る手は、揺るがなかった。
「生き抜けりゃ白も黒も問わねぇよ」
まっすぐに、刃を振り下ろす。
炉蘭が咄嗟に防御に入るが、ランゼの太刀筋に一切の乱れはなかった。
「ァア゛ああっ……!」
炉蘭の白い肌に、紅が散る。
パッと牡丹が咲くような、美事な赤だった。
片腕を切り落とされ、炉蘭が地面に転がる。
ランゼはすぐにバイクを止めた。
地面にタイヤが黒い線を引く。
「歪みもズレもひっくるめて、全部俺が、生きてきた跡だ。お前さんを成敗した後にしわ寄せを喰ったって、俺は逃げやしねえ」
「煩い……」
「第一な」
ランゼはク、と眉根を寄せて言い放つ。
「俺様はな、目の前で女泣かした奴ァぶちのめすって決めてるんだ」
黒剣を地面に刺し置き、ランゼはキツく拳を握る。
炉蘭が目を丸くして、わずかににじり退く。
だが、逃れられるわけもない。
「歯ァ食いしばれ」
ランゼの鉄拳が、炉蘭のみぞおちに深く刺さる。
「ぐゥ……ッ」
炉蘭は身体をくの字に折り曲げ、軽く吹っ飛んだ。
手応えは、十分だった。
大成功
🔵🔵🔵
ロカジ・ミナイ
ついに目見えたねぇ、とんでもなく女にモテる姐さんよ
「もっと早く逢いたかったなぁ……」
そう呟く瞳に映すは無残なお嬢さん方
既に満身創痍かい?どうだい、追い詰められる気分は
これまでしてきたオタノシミの味が
一層奥深くなってたりしてねぇ
愛には愛を、目には目を、だよ姐さん
何処へ行くんだい?
ところで僕も逃げ足には自信がある
それは追う方にも明るいって事だ
男には、女を追ってやらなきゃならない時があるからね
おや、アンタも蛇を飼ってるとは
どうやら僕らは気が合うらしい
UC素戔嗚
煙管をひと振り、放った火種が化けるは八岐大蛇
ああ、そうさ、蛇には蛇を
毒は極上の茶菓子と言う
最期にひとつ
アンタ、思ったほどタイプじゃなかったよ
ロカジ・ミナイはにっこりと笑って見せた。
「やぁ。ついにお目見えだねぇ。とんでもなくモテるんだろ? まぁ本当は、もっと早く、逢いたかったけどなぁ……」
ロカジはそう呟いて、既に骸と化した娘たちを見下ろした。
「こんなに冷め切ってしまう前に、さ」
右衛門炉蘭は答えず、さっと煙管を取り出した。
既に負った傷は少なくない。この場を離れるつもりだろう。
「そんなに慌ててどこに行く?」
ロカジはその様子を見て僅かに唇を歪める。
「因果応報だ。──まだ逃げるには早すぎる。今からじゃないか」
炉蘭は答えずに煙を吐いた。煙はたちまちに白い鳥に変わり、炉蘭を乗せて飛び立つ。
「一寸……」
「野郎にゃぁ興味ねェんだ。その辺の娘で楽しみな」
不意に、ロカジは不可視のものの気配を感じた。
濃厚な毒の様子に足を止めると、何かの尾がすかさず地面を打ち付ける。それをすばやくかわし、ロカジは目を眇めた。
「……おや、アンタも蛇を飼ってるとはね」
同じように取り出すのは一本の煙管だった。火種を放れば、ユーベルコードが発動し八岐大蛇が顕現する。
七つの首を持つ大蛇は、たちまちに炉蘭の蛇の毒を食べ尽くしていった。
だがその隙に、炉蘭を見失ってしまったらしい。
「……まぁいい」
ロカジは肩を竦めた。
「思ったほど、イイ女でもなかったよ」
苦戦
🔵🔴🔴
田抜・ユウナ
《逃げ足》を主軸に敵の逃走経路を《見切り》先回り
【レプリカクラフト】で壁を作成して足止めし、「そんなに急いでどこへ行くの?」と声をかける。
「見逃してあげてもいいけど……『丁半』で決めましょうか」と不敵な笑み
賽を二つ、ツボに放り込むや《早業》で伏せると、【賢者の影】使用。
問いかけは「丁か半か?」
二つの賽を振って出た目の和が偶数なら「丁」奇数なら「半」。どっちか当てろってこと。
《覚悟》を決めてイカサマは無し。相手が答えたら、「勝負!」とツボを開けて出目を確認。
正解なら逃がしてやる。
不正解なら「残念でした」、解答拒否なら「人の好意は受けとくものよ?」と、《目立たない》様に伸ばしてた影が敵を磔に
傷付いて逃げる右衛門炉蘭を引き留めたのは、まだ幼い少女だった。
「そんなに急いでどこへ行くの? お姉さん」
炉蘭は足を止め、唇を吊り上げて笑う。
「今更カマトトぶることもねぇだろう、お嬢ちゃん。俺が誰か、よく分かってるはずだぜ」
「それもそうね。逃走中のオブリビオンさん」
田抜・ユウナ(狸っていうな・f05049)はにっこりと笑って炉蘭の前に立ちふさがった。
「ずいぶんなやられようじゃない」
「逃げるにゃ困らねえ身体だぜ」
「そう上手く行くかしら」
「どきな。死ぬにゃ若いみそらだろ?」
田抜は腕組みをしたまま炉蘭の前から動こうとしない。
そして不敵に微笑んだまま、交換条件を提示する。
「貴方も鉄火場好きそうじゃない。『丁半』なんかどう?」
「丁半?」
「貴方が当てれば見逃してあげる」
「面白い。お前は何を賭けるんだ?」
「博徒はいつでも命賭けでしょう?」
炉蘭はじっと田抜を見据えた。
その体はもう長く持ちそうにない。
息は上がり、血は止まらず、今こうしている間にも彼女の足元には赤い血だまりができている。
だがそれを意に介さないように、炉蘭は不敵に笑った。
「嫌いじゃねえな、そういうの」
田抜はその返事を待ち、素早くツボへ賽を振り込む。
相手も命を賭けたのならば、イカサマはしなかった。
まっすぐに相手を見据えて、問う。
「勝負」
炉蘭は目を閉じ、迷うことなく答えた。
「丁」
ツボを開く。
出目は、二六だった。
「……見事ね」
田抜は賽を懐へ戻し炉蘭へ視線をやる。
「どうぞ、好きに逃げれば」
だが炉蘭は動かなかった。
「勝ったんなら、俺の好きにできるんだろう」
「そうよ」
「なら、お前と果たし合いてえな」
思わぬ言葉だった。
だが炉蘭は本気らしい。キセルを構えて、自然体で立っている。
「そう。……どうして?」
「どうしてだかな。逃げねぇといけねぇのも、命あっての物種なのも分かってるんだけどよ」
炉蘭は苦笑した。
「お嬢ちゃんみてぇな粋な真似する人間に、俺ぁ弱ぇのさ」
田抜は炉蘭を見据えた。嘘も偽りも、無いように見えた。
紅の唇をきゅぅと引いて、炉蘭は笑った。
「右衛門炉蘭、推して参る」
油断なく身構え、田抜も応戦する。
「田抜ユウナ。――天誅、覚悟」
勝負は、一瞬だった。
まっすぐに駆け、一度だけ切り結ぶ。
田抜の服の裾が裂け、生地が空を舞った。
それが地に触れるより先に、キセルが砕け散る。
「――美事、ってのは、こういうのを、言うのさ。お嬢ちゃん」
右衛門炉蘭の身体は磔にされ、高くつきあげられた。
オブリビオンの息の根は、既に止まっていた。
大成功
🔵🔵🔵
最終結果:成功
完成日:2019年04月02日
宿敵
『右衛門炉蘭』
を撃破!
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