獣人世界大戦⑥〜港湾に紫煙は燻る
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「獣人戦線での戦いが始まったわね。みんな、準備は万全かしら?」
グリモアベースを訪れた猟兵達に、アメリア・バーナード(量産型キャバリア乗り・f14050)はそう告げた。
「今から向かうのは【第一戦線】。ウクライナ最大の港湾都市、オデッサよ」
予知によると、そこに『スモーキング・ラビット』が潜伏しているという。
「オデッサのとある海運業者のトップに収まっている『スモーキング・ラビット』は、今、そこが所有する巨大倉庫地帯を逃げ回ってるわ」
まさかそんな所に居たなんてね、とアメリア。
スモーキング・ラビットが秘密結社『F.O.N(フィールド・オブ・ナイン)の首領として君臨出来たのは、カリスマ性以外にも理由がある。
それは『勝つことよりも生き延びることを優先』する事。
……現に今もスモーキング・ラビットは海路での脱出を試みている。
海沿いにいくつも並ぶ大型倉庫。その中にある大量の段ボールや積荷に、身を隠しながら移動しているとの事だ。
「みんなとの戦いでも、いざとなれば脱兎みたいに逃走するわ。玉の早逃げ……って所かしら」
だがその一方で、本人は艦隊を素手で殲滅できる程度の強さを誇る。
兎獣人の身体能力を活かし、『必ず』先手の格闘攻撃を喰らわせてくる為、対処が必要だ。
「あの世界のアメリカは表向き平和と繁栄を謳歌しているけど、その裏側で『スモーキング・ラビット』は全てを支配していた巨悪なの」
決戦を挑めるようになった今、見過ごす事は出来ないだろう。
「対策さえしっかりすれば、オデッサでの諜報戦を制すための良い足がかりになるわね。それじゃ、気をつけて行ってらっしゃい!」
白妙
●戦争シナリオ
これは戦争シナリオです。
1章だけで完結する、特殊なシナリオとなります。
●状況
輸出入用の倉庫地帯。時間帯は真昼。天気は曇り。
倉庫は全て、極めて大型な一階建て。入り口は南北にひとつずつ。その内部の半分くらいを積荷が埋めている状況です。
スモーキング・ラビットは複数の倉庫を逃げ回っていますが、猟兵が転送された倉庫内に必ず居ます。
●プレイングボーナス
『敵の先制攻撃に対処する/敵を逃がさないよう立ち回る』
これに基づく行動すると有利となります。
●特別ルール【戦線】
この戦場は【第一戦線】に分類され、5月10日(金)16時が締切となります。
なるべく余裕をもって。出来れば7日頃までの完結を目指します。
●プレイング受付開始
承認次第、受付開始致します。
それでは宜しくお願いします!
第1章 ボス戦
『スモーキング・ラビット』
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POW : フェイスレス・ラビット
自身が【葉巻を吸っている】間、他者から認識されない。ただし自身の所在を問われたら大声で返事をしなければならない。
SPD : アメリカン・ドリーム
視界内の任意の全対象を完全治療する。ただし対象は【スモーキング・ラビットの紫煙】に汚染され、レベル分間、理性無き【アメリカン・ドリームの信奉者】と化す。
WIZ : スモーキング・ダンディ
体内から常に【紫煙】が放出され、自身の体調に応じて、周囲の全員に【混乱】もしくは【無関心】の感情を与える。
👑11
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仇死原・アンナ
アドリブ歓迎
煙たい兎め…!
この世界を救う為に…!さぁ行くぞ…私は…処刑人だッ!
…とはいえ姿が見えぬ…だがいるな!
鉄塊剣と緋色の天使を武器受けで盾代わりにして気配感知と心眼で格闘攻撃を防御し回避
姿は見えぬが確かにいる…ならばいいことだ
煙草が好きか?ならば紫煙絶やさぬように火をくべてやろう…地獄の炎を!
地獄の炎纏いて【暗黒不死鳥炎獄破】を発動
倉庫内を闇なる地獄の炎の範囲攻撃で焼却し続け、敵の逃亡を阻止し逃げ惑う敵を地獄の炎で焼き尽そう
葉巻を吸う余裕もなければ姿を現すだろう…そうすれば鉄塊剣を叩き付け怪力で潰してやろう…!
煙草には気を付けよ…火の始末を怠ればこうなる…
まぁ…この炎は容易く消せるがな…
転送と同時に倉庫へ飛び込んだ仇死原・アンナ(処刑人、地獄の炎の花嫁、焔の騎士・f09978)。
彼女を迎えたのは、がらんとした屋内と、山のように積み上がった荷物だけだ。
(「……だがいるな!」)
気配を探るため、瞑目し、感覚を研ぎ澄ますアンナ。
「……!!」
途端に、暗闇の中で、ぱちり、と瞬く微かな光。
続く殺気――咄嗟に『緋色の天使』を盾にすれば、厚い鉄越しに続けざまの衝撃が走り抜ける。
『ほう、大したものだ』
先制の飛び蹴りを防がれたスモーキングラビットは着地。すぐさま放たれる拳撃はしかし、剣を引くアンナの動き一つで外された。
「煙たい兎め……!」
背面を見せるや一気に旋転するアンナ。視界の端で、ばふ、と煙を吐き出すラビットを追いかけ、体重をかけて横薙ぎを繰り出す。
ぼ、と駆け抜ける斬線が、遺された煙幕を真一文字に斬り払えば。
(「逃走した……か?」)
居ない――否。未だ先制を外されたのみ。ラビットが逃げるには早い。
「……煙草が好きか?」
姿を隠した敵に呼び掛けるアンナ。
辺りに漂う葉巻の煙は、こちらにもう一太刀を見舞う為の布石と見て良いだろう。
「ならば紫煙絶やさぬように火をくべてやろう……地獄の炎を!」
先程とは違う暗褐色の炎が、ゆっくりと大剣を構えるアンナの周囲で、不死鳥の姿を形作る。
そして。
「この世界を救う為に……! さぁ行くぞ……私は……処刑人だッ!」
アンナの叫びと共に、どん、と倉庫内が一気に火の海と化した。
即座の脱出は不可能。そして姿が見えずとも。
『くっ……!』
当たりさえすれば何処までも広がる、ユーベルコード『暗黒不死鳥炎獄破』による闇の炎。それに巻かれる形で、ラビットが積荷の影から転がり出る。
そこへすかさず、影が降って来た。
『!!』
跳躍と共に振り下ろされるアンナの鉄塊。直撃する鉄塊が骨を軋ませ、毛皮を焼く。
「煙草には気を付けよ……火の始末を怠ればこうなる……」
まぁ、この火は容易く消せるがな――と。
よろけるラビットを前に、アンナは軽く冗談めかすと、剣を構え直すのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ルナ・キャロット
巨悪兎様…!ダーティな雰囲気が可愛いですね。
認識不可…でも吐き出す煙の匂いや煙揺らぎは認識できるはず!
きけそうなら聞き耳で足音も聞きつつ、嗅覚メインで居場所を推察します
最強ボス兎ならきっとこう狙ってくる!とゲームやりこみ経験でのシュミレートもして
近づいてきたり速度が変わったら双剣パリィでなんとか受け止めます!
大まかな方向さえわかってればきっと!ジャストパリィはすべてを解決してくれるはず!
可愛いお顔が見えたらこちらの番です
氷の斬撃で竜巻を作って出口を封鎖
煙も吸い込んで隠れられない様にしたままどんどん竜巻を増やして追い込んでいきます
当たらなくても寒さで鈍くなってくれるはず、首をくださいラビット様!
倉庫に足を踏み入れたルナ・キャロット(†月光の聖剣士†・f41791)の紫肌を、するりと煙が撫でた。
「これは……!」
おそらくは『フェイスレス・ラビット』により展開されたものだろう。
今のルナにスモーキング・ラビットを認識する事は出来ないが、それでも彼は間違い無くここに居る。
(「ならば」)
五感を研ぎ澄ますルナ。
まずは耳をぴょこぴょこさせ、物音を聞いてみる。
続いて鼻を利かせれば、鼻腔を満たす強い葉巻の匂いの中に、微かな違和感が混じる。
ば、とルナが向き直った先には、何の変哲もない積荷の山。
(「足音は無し……でも、きっと
……!」)
目を凝らすルナ。確信はある。
たとえ姿は見えなくとも、合わせて動く煙の揺らぎや匂いは元のまま。
加えて自身のゲーム経験を活かし、最強ボス兎の動きをシミュレートすれば、ラビットの初撃を受ける事も不可能ではない筈――と。
(「来ましたね
……!」)
ぐっと近付く匂いの源。
紫煙が揺らぎ、その一点に、ぶわりと穴が空く。
「……今っ!」
真正面――咄嗟にクロスした『宝双剣ローゼンクイーン』の中央に、びん、と衝撃が走り抜けた瞬間を狙い。
『!!』
すらり、と双刃が火花を散らした。
やり込みと高機動剣士の能力のみが為せる、ジャストタイミングでのパリィをルナが決めた直後。
『……やるな』
ルナの目の前では、初撃を受け流されたスモーキングラビットが、大きく身を泳がせていた。
「巨悪兎様……! ダーティな雰囲気が可愛いですね」
薄めながらも、ふわっふわの体毛。
切れ込みの入った耳に、どことなく険しい表情。
思わずにんまりとしてしまう程のケモケモしさと、そのあちこちにワルさが覗く風貌に、ルナは思わず目を輝かせる。
だが、見惚れてばかりもいられない。
「今度はこちらの番です!」
反撃とばかりにルナは双剣を振り抜き、『氷結斬LVMAX&絶対会心剣LVMAX』を発動する。
たちまち凍て付く竜巻が出入り口を封鎖すれば、あまりの寒さにラビットがスーツを押さえて縮こまる。
だが、ルナの狙いはそれだけではない。
『これは』
周囲を満たしていた筈の煙が、竜巻へと吸い込まれていく。
「……これでもう隠れられません! 首をくださいラビット様!」
ルナが双剣を振るえば、ごう、と再び剣風。
新たな竜巻の圧力に飛び退くラビット。
徐々に狭まる包囲網。
その口元から、葉巻が風に奪い取られた。
大成功
🔵🔵🔵

スターレイル・エストレジャ
兎は殴る為にある…
『強敵だよ!気を付けて!』
アウラも戦闘態勢に入る
常に【オーラ防御】発動
【先制UC対策】
おーい、兎何処だ〜!
【心眼】で兎を探すも見つからないので所在を聞いて声が聞こえた方へ【クイックドロウ】の要領で【凍結攻撃】の【エネルギー弾】を放ち攻撃
【逃走対策】
ちなみに逃げようとしたら【推力移動】しながら逃げる方向へ回り込みます(二人共その作戦で行きます)
【アウラの追撃】
おーい!スモーキング・ラビット!
と敵を呼んでから【視力】で兎を見て【スナイパー】で狙いを定めて【マヒ攻撃】の【エネルギー弾】を放つ
【反撃開始】
必殺兎殺し…!
UCを発動してUCの効果で敵の性質をプレパラートに変えて殴り飛ばす
「ねえねえ、どう?」
転送と同時、オーラの障壁を張り巡らしたフラワースライム『アウラ』は、その隣で目を閉じたままのスターレイル・エストレジャ(星虹の超越者・f40527)に話しかける。
「……うん、まだ居る」
ただし場所まではわからない、と、スターレイルは軽く首を振った。
相手のユーベルコード『フェイスレス・ラビット』は強力だが、認識は消せても存在までは消せない。高度に研ぎ澄まされたスターレイルの心眼はそれを拾ったのだろう。
何より、大きな弱点がある。それは――『大声で返事をしなければならない』という点だ。
「おーい、兎何処だ〜!」
「どこ〜?」
二人の呼びかけが倉庫内に反響すると……すぐさま、ここだ、と遠くから声が返って来る。
どさり、と空きダンボールの山を崩し、姿を現すや、そのまま兎の身体能力を活かしたタックルを仕掛けるスモーキング・ラビット。
だがその瞬間、スターレイルも素早くガンナイフに手を掛ける。
「そこだっ!」
抜く手も見せないクイックドロウ。
ぱりん、と涼やかに弾けるエネルギーの弾丸。
ラビットが飛び退いた時、貼り付く冷気がスーツ越しに腕を覆っていた。
だが、それだけでは終わらない。
「おーい! スモーキング・ラビット!」
くるりとラビットが振り向いた瞬間、今度はアウラがエネルギー弾を放つ。
『くっ……』
着弾。徐々に広がる痺れに耐えかね、早くもラビットが踵を返す。
(「聞いてた通り早い……だけど」)
スターレイルはアウラと共に推力移動。そのまま回り込み、入り口を塞ぐ。
拳を握るスターレイル。燃える焔のような髪と、星形の虹彩は、『原初の星虹』の力をその身に宿した証拠だ。
「鳴り響け……魂の心音!」
星型の虹を撒き散らし、ぱぁん、と拳撃がヒットする。
ラビットは咄嗟にガード……だが瞬時にプレパラートの性質を付与されたその左腕には、大きなヒビが刻まれていた。
大成功
🔵🔵🔵
白縫・夜雀雅
おやおや、困ったねえ
僕は一介の医療従事狐でしかないのだけれど、とはいえ戦争なんて、患者を増やすだけのイベントだからね
猫の手ならぬ、狐の手くらいにはなれるといいねえ
まず不意打ちということだから、全力の防護魔法を込めた霊符を全身、特に急所中心に仕込んでおこう
避けられるとは考えていないからねえ、死なないを目標に
不意打ちで殺せなければ一旦退却するんじゃないかな
暗殺者だねえ
ところで、ここは倉庫の中だね? つまり密室だ
風属性の渦巻きを起こして、吹き出した紫煙ごとぐるぐると巻き上げてあげよう
倉庫内の物資も一緒に回すからねえ、色々ぶつかってくれるんじゃないかな
ウサギ獣人は軽いからねえ
「おやおや、困ったねぇ」
白縫・夜雀雅(しらぬい診療所・f14316)はそう独り言つ。
だがそれも無理はない。戦争に駆り出されたと思えば、行き先は野戦病院ではなく、最前線だったのだから。
(「僕は一介の医療従事狐でしかないのだけれど。とはいえ戦争なんて、患者を増やすだけのイベントだからね」)
形はどうあれ、この戦争を終結させるには、少しでも戦力が必要だ。聡い夜雀雅は、そう理解している。
「猫の手ならぬ、狐の手くらいにはなれるといいねえ」
そう呟いた刹那、殺気。
夜雀雅が振り向いた瞬間、ずしん、と衝撃。
正中線。それも胸のど真ん中。スモーキング・ラビットの飛び蹴りが突き刺さっていた。
だが。
「おっとっと」
軽くよろける夜雀雅。堪えた様子は微塵も見せない。
陰陽師にして鬼道衆。その全力を込めた防護の霊符が、全身――とりわけ急所に集中して仕込まれていた。
『……』
とん、とラビットは地面を一蹴り。紫煙を撒きつつ逃げる体制に入れば、夜雀雅はそれを見て、暗殺者だねぇ、と溢す。
こちらが備えている以上、最初の不意打ちでは圧倒出来ず、ならば退く。予想通り――とばかりに夜雀雅は、風を操る。
旋風が大きな竜巻となり、紫煙を吸い上げ、積荷を巻き上げ……遂にはどさりとぶつかり転倒したラビットすらも巻き込めば。
「おやおや、やっぱり軽いねぇ」
倉庫の天井近くまで高々と上がり、次々と傷を負うラビットの様子を、夜雀雅は悠々と見上げるのだった――。
大成功
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カタリナ・エスペランサ
優先事項を違えず自らが率先して動くか。成程、強者の振る舞いだ
だからこそ禍根は此処で断つ
悪党相手だ、容赦は要らないね
《存在感》付与した《陽動+残像》を囮にアタシ自身は《ものを隠す+目立たない+迷彩》を纏い先制対策
初手を捌けば《目潰し+属性攻撃+無差別攻撃》闇の霧を倉庫に満たし視界を封じ
此方は装備[驕傲]の《念動力+索敵+情報収集》力場を広げ知覚確保
《空中戦》機動力と《早業+怪力・受け流し・カウンター》等の技術で接近戦
《逃亡阻止》しつつ【轟かせ我等が矜持の咆哮】、倉庫を外から飛竜で包囲
充分な《力溜め+時間稼ぎ》から飛竜の魔法で転移してアタシは離脱、
同時に全方位からのブレスで倉庫ごと敵を消し飛ばそう
(「優先事項を違えず自らが率先して動くか」)
スモーキング・ラビットの思惑を、カタリナ・エスペランサ(閃風の舞手・f21100)は推理する。
平和の裏でオブリビオン・アーミーを揃え、その上で他勢力よりも『カタストロフ後の戦い』に熟達している彼が、わざわざアメリカを出た理由は情報を得る為だ。
現状の均衡を破るほんの僅かな可能性。それを潰す為に自ら動き、いざとなれば逃走。挽回の手段は幾らでもある――と。
(「成程、強者の振る舞いだ。だからこそ禍根は此処で断つ」)
相手は秘密結社の首領。このチャンスを逃せば、仕留める機会は容易く巡っては来ないだろう。
(「悪党相手だ、容赦は要らないね」)
決意を新たに、カタリナは『眷属』へと呼び掛ける。
「暁の御名の下に汝等の名を謳う――集い来たりて今一度、共に理想の刃を翳せ」
ばん! と巨大な戸が開かれ、突入するカタリナを、何処からともなく紫の煙がふわりと飛来し、押し包んだ。
途端にごとりとダンボールを崩して飛び出したのは、白い影、スモーキング・ラビット。
ぴょん、と一跳びでカタリナの死角を取り、間合いを詰めて渾身の飛び蹴りを――。
『――』
空振り。
ふ、と消失する残像と、同時に霧散するカタリナの存在感も
手の込んだデコイ。そうラビットが勘付いた時、今度は闇の霧が辺りを覆った。
一気に狭まる視界。すると入り口の影が、ぱさり、と翼音を立てた。
「遅い」
『!!』
急迫と共にカタリナ、風を纏った蹴り上げで、ご、と相手を蹴り上げる。
浮遊感の中、ラビットはガード。だがその隙間をダガーが抜いていき、胴と顔に幾度も切り傷を刻む。
暗闇を意にも介さぬ三次元の接近戦は、世界を見通す権能[驕傲]の賜物だ。
『くっ……』
着地したラビットが逃走の姿勢を見せるより早く、カタリナが指を鳴らせば、暗闇を切り裂く白雷が続けざまに降り注ぎ、進行方向を妨害。
迂回しながらも遠ざかろうとする敵を見据えつつも、カタリナは次の衝撃に備えていた。
『!!』
「来たね」
建物の周囲を取り巻く、巨大な気配。
巨大な翼をはためかせ、悠々と旋回している。
その正体は、ユーベルコード『轟かせ我等が矜持の咆哮』により呼び出された、天を覆うが如き飛竜の群れだ。
「じゃあね」
尚も瞬く雷光の中、カタリナの表情を翼の影が覆った時、しゅん、とその姿が描き消えた。
外側からの転移魔法だ。
そして次の瞬間、鬨の声を思わせる咆哮が、一斉に響き渡る。
全方位から放たれるブレス攻撃。吹き飛ぶ建物。
光に呑まれる寸前、勢いに弾き飛ばされるようにして、深傷を負ったラビットは這々の体で脱出するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ラブリー・ラビットクロー
決戦前にマザーにお願いしておくの
らぶ達の会話をセカイ中の無線機に届くように電波に乗せてって
だってマザーは人類叡智のナントカなんでしょ?
二人共ウサギ
お互い耳が良くて
どっちも“ユメ”で商売してる
どっちの正義が正しいか勝負だね?
オマエのユメはアメリカンドリームって言うんだな
そーやってヒトビトに希望を持たせて
刈り取るよーに殺しちゃうんだ
それって結局騙してるって事にならないの?
スーパー戦車にプレジデント
ぜーんぶオマエの仲間たち
らぶの居たセカイを壊した悪い奴らなんな
でもみんなぶっ飛ばしてやったんだ
最後にオマエをぶっ飛ばして
そしたら獣人の皆もまたユメを諦めなくてよくなるから!
だから手を貸して!
らぶはヒトのユメを叶える大商人なんな!
先制攻撃がくる瞬間
チェンソーを喧ましく唸らせて威嚇してやる
そーして軌道をずらして目が合った瞬間に火炎放射器に持ち替えて
オマエにもう逃げ場なんてない
この倉庫の周りには
きっと今頃怒った群衆で一杯になってるぞ
灰色の雲が潮風に乗り、鈍色の海へと流れていく。
オデッサ、港湾地帯。
周りを見渡し、たたた、と一気に大倉庫の入り口に駆け寄ったラブリー・ラビットクロー(人々の夢を追う行商人と人工知能【ビッグマザー】・f26591)が、懐から何かを取り出す。
「おねがいマザー」
小声で囁けば、それに応えるように、人工知能《ビッグマザー》が起動した。
「らぶ達の会話を、セカイ中の無線機に届くように電波に乗せてほしーの」
ビッグマザー。ぴた、と静止。
「だってマザーは人類叡智のナントカなんでしょ?」
チカチカ、と回線を探るような動作を見せると、すぐさま了解を示すように、数度瞬いた。
「ん」
頷き、ユーベルコード『キュリオスラビット』を発動すれば、頭のてっぺんから、ぴょこり、とピンクのウサミミが生えてくる。
「!」
――居る。
た、と倉庫に踏み込んだ途端、飼料と段ボールの匂いが鼻を擽る。
人の気配はゼロ。視界に広がるのは、壁に備え付けのダクトとその影が、せわしなく回っているだけの光景だ。
だがラブリーは、一点に目を注いでいた。
「二人共ウサギ。お互い耳が良くて、どっちも“ユメ”で商売してる」
ごそ、と毛皮と紙が擦れる音を、頭の偽神兵器が鮮明に拾う。
「どっちの正義が正しいか勝負だね?」
すると、ぱかり、と積まれた段ボールの一つが開き、そこから影が立ち上がる。
『……驚いたな』
スモーキング・ラビット。傷だらけの耳を揺らし、ラブリーをまっすぐ見据えている。
辺りに漂うのは、紫煙。
「オマエのユメはアメリカンドリームって言うんだな」
『夢か。そうだな』
ラブリーの脳裏に、きらびやかな光景の数々が映る。
大国アメリカの今の姿だ。平和と繁栄を享受するその幻想は、途方もなく豊かで、夢に溢れている。
だが目の前の存在が、唯の守り人では無い事をラブリーは知っている。
「そーやってヒトビトに希望を持たせて、刈り取るよーに殺しちゃうんだ。それって結局――」
騙してるって事にならないの?
ずばり、と真を突くラブリーの言葉。
暫しの沈黙。紫煙の効果が薄いのを確かめたスモーキング・ラビットが、後ろ手に隠した葉巻を、ぽい、と捨てた。
『その通り。所詮は夢。仮初の平和……言ってみれば『商売』道具だ。我々F.O.Nが優位を保つための、な』
ぐしゃり、と発達した兎足が葉巻を踏み潰す。
『だが此処ユーラシアでは情勢が変わり始めているようだ。現にスーパー戦車からの定期連絡が途絶え』
「スーパー戦車にプレジデント」
『!』
甦るのは、数年前の戦いの記憶。
「ぜーんぶオマエの仲間たち。らぶの居たセカイを壊した悪い奴らなんな。でもみんなぶっ飛ばしてやったんだ」
『そうか』
徐々に熱を帯びていくラブリーの言葉が、反響を伴い、淡々とした兎獣人の受け答えを上書きしていく。
「最後にオマエをぶっ飛ばして。そしたら獣人の皆もまたユメを諦めなくてよくなるから!」
今までのラブリーがそうだったように。この世界にも、共に戦う仲間が居る。
「だから手を貸して! らぶはヒトのユメを叶える大商人なんな!」
次瞬、膨れ上がる殺意。
跳躍に備えラビットが足を溜める。
だがその寸前、ラブリーが、ばっ、と得物に手を伸ばせば……たちまちチェーンソーが喧ましい唸り声を上げた。
『……!』
騒音による威嚇。
びり、と両耳を震わせながらも、ラビットが突撃の軌道を僅かにずらせば、合わせてラブリーもサイドステップ。
空振りする拳。ぶつかる視線。
ラビットの着地に合わせ、さ、とラブリーが別の得物を向けた。
――火炎放射器だ。
まっすぐ相手を見据えるラブリーとは逆に、ぴくり、と兎獣人は違和感に首を大きく回した。
「オマエにもう逃げ場なんてない」
外からざわざわと人の気配。それも一つや二つでは無く、ぐるりと取り巻く形。扉の両脇からこちらを窺っているのはおそらく獣人兵士だろう。
「この倉庫の周りには、きっと今頃怒った群衆で一杯になってるぞ」
点火。ぼしゅ、と爆ぜる炎。
飛び退きながらも炎に包まれた兎に向けて、倉庫の外から人々が雪崩れ込む。
ラブリーと、その声を聴いて集まった人々の手で、スモーキング・ラビットが討ち果たされた瞬間だった――。
大成功
🔵🔵🔵