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いちばんの星、みつけた

#アスリートアース #キャンプ #ちょっと寄り道 #キャンプめしを食べよう! #キャンプの夜を楽しもう #夕狩こあら



 オーストラリア、クイーンズランドの州都ブリスベンの天候は「晴」。
 最高気温は29℃、湿度は80%の予報が出ており、風はあるが今日も暑くなりそうだ。
 そしてそれはモートン湾北部に位置する「ブライビー島」も同じこと。
 州本土と橋で繋がれたこの島は、その殆どのエリアが国立公園に指定されており、島のあちこちで野生動物の逞しい姿を見ることができる。
 気になる本日のキャンプ地は、ミッション・ポイント・キャンピング・アレア。
 五ツ星ビーチが目の前にある最高のスポットでの「海キャン」となる。
 ボートを使ってしか辿り着けない場所で、事前に用意したキャンプ用品を持ち込んで一夜を明かす事になるので、道具も服装も、お買い物はちゃんと済ませておこう。
 そうして店々を回る途中、カンガルーやワラビーといったオーストラリアならではの動物を見られるかもしれない。

 では星は? ――大丈夫。
 明日の朝には曇ってしまうらしいが、真夜中はスッキリと晴れた夜空が、その美しい輝きを見せてくれるだろう。


「ブライビー島は南緯27度。11月頃に逆さまになった南十字星が天辺に上がって來ているから、今なら地平線の近くを探せば見つかるかもしれないわね」
 南半球ならではの星が見られると、楽しげに告げたのはニコリネ・ユーリカ(花屋・f02123)。
 自然豊かなキャンプ地にて、きっと綺麗な夜空が広がっているだろうと期待を膨らませた彼女は、長い長い夜、星灯りの下で思い思いの時を過ごして欲しいと息を継いだ。
「この一年、私達は沢山の戦いを経て成長したし、オブリビオン情勢に変化があれば、みんな一人一人にも進展があったと思うの」
 沢山の出会いがあった。新しい世界を知った。
 大事に思う人や、護りたい世界も増えたのではないかと皆々を見渡したニコリネは、是非、その胸に浮かんだ一番の人と、戦いの無い日をゆっくり過ごして来て欲しいと言う。
 勿論、ソロキャンも良い思い出になると言い添えた彼女は、ぱちんとウインクするやグリモアを召喚し、
「南半球は季節も逆さまになっているから、気を付けてね!」
 と、笑顔で猟兵を送り出すのだった。


夕狩こあら
 オープニングをご覧下さりありがとうございます。
 はじめまして、または、こんにちは。
 夕狩(ユーカリ)こあらと申します。

 こちらは、2023年を振り返って語り合おう、何なら『第六猟兵』が5周年を迎えたので、まるっと思い出を振り返ってみよう的なシナリオ(難易度:普通)です。

●シナリオの舞台
 アスリートアース、オーストラリアはモートン湾北部に位置する「ブライビー島」。
 このうちボートに乗ってしか行けない「ミッション・ポイント・キャンピング・アレア」がテントの設営場所になります。
 南半球に位置する為、季節は「夏」です。

●シナリオ情報(三章構成です)
 第一章『ちょっと寄り道』(日常)
 クイーンズランド州都ブリスベンから現地に向かうまで、大型キャンプ用品店や食料品店に立ち寄って準備を整えつつ、ブライビー島の自然を満喫しましょう。キャンプ地に渡って以降の動物描写は出来ません。

 第二章『キャンプめしを食べよう!』(日常)
 キャンプの醍醐味、テントの設営やキャンプ料理を楽しみましょう。
 昼食から日没までを描写します。

 第三章『キャンプの夜を楽しもう』(日常)
 大切な人と語らいながら、夜空を仰いで星を探すなど、思い思いに夜を過ごして下さい。
 こちらは日付が変わるまでを描写します。

●リプレイ描写について
 フレンドと一緒に行動する場合、お相手のお名前(ID)や【グループ名】をお書き下さい。呼び名や関係が分かると大変助かります。
 思い出や過去を振り返るにあたり、ニコリネを聞き手に指名する事もできます。

 以上が猟兵が任務を遂行する為に提供できる情報です。
 皆様の武運長久をお祈り申し上げます。
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第1章 日常 『ちょっと寄り道』

POW   :    体力の続く限り遊ぶ

SPD   :    計画的にあちこち回る

WIZ   :    美しい景色や美味しい名産品を楽しむ

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雁帰・二三夫
「パスポートもETAも保険もなしで海外キャンプ…わたくし、猟兵になって本当に良かったです!」
男泣き

「甲斐性なしでも行ってみたかったんですよ、海外キャンプ!本当にもう、もうっ」
言葉にならず

緩んだ満面の笑みでキャンピングカー運転
レンタルモバイルでグー◯ルさん大活躍
「彼等はワーキングホリデー対象者ですかね…」
微笑ましく若人眺め

「島には車で1時間半ですか。それじゃ流石にエミューやディンゴは見かけないですよね…」

「えーと、集合場所は車じゃ行けないんですよね。直前で全部UCに仕舞ってしまいましょう。行き方の地図、地図…」

「これはビール醸造所見学してフィッシュ&チップス食べてからでも間に合うのでは…?」



 北半球の島國から南半球の島國へ向かうに、保安検査やら税関審査やら検疫やら、旅行者は多くの手続きを踏まねばならないが、グリモアベース経由なら、それこそ一っ飛び。
 睡蓮を象る光が花葩を一枚一枚と広げゆく――眩むばかり玲瓏に輪郭を切り出した男は、サングラスの下、黑橡の瞳をちょっぴり潤ませていた。
「パスポートもETAも保険もなしで海外キャンプ……わたくし、猟兵になって本当に良かったです!」
 男泣きを袖に祕めるは、雁帰・二三夫(引きこもりたい住所不定季節労働者・f37982)。
 パスポートの取得から躓きがちな彼だが、キャンプとあらば勇んで足を運ぶ部類のキャンプ好きにて、此度の「海を越えた海キャン」にも並ならぬ情熱を滾らせている。
 而して滾る血潮を巡らせるべく吸い込む空気も、肺腑に異國の匂いを滿たして呉れよう。
「甲斐性なしでも行ってみたかったんですよ、海外キャンプ!」
 嬉しくて! 嬉しくて!
「本当にもう、もうっ……」
 言葉にならない――(ふみお)。
「……よしっ」
 そうして彼が立ち止まったのは到着時のみ。
 ユーベルコード製の空間からキャンピングカーを持ち出した二三夫は、レンタルした海外用通信端末に道案内を頼みつつ、意気揚々とスタートした。
「おや、生気溢れる若人が……ワーホリですかね……」
 道中の景色を愉しみつつ、時に人々の笑顔に和みつつ。
 地元ラジオをBGMにドライブを始めた二三夫は、折に目に入る道路案内の中に野生動物の看板を拾うと、故郷では見かけぬその姿に眼眦を緩めた。
「目的の島には車で1時間半ですか。それじゃ流石にエミューやディンゴは見かけないですよね……」
 手付かずの自然に向かえば、オージーアニマルがもっと見られるかもしれないと思うとワクワクする。
 彈む心を抑えながら近くの駐車場に車を停めた彼は、今回の目的地を再確認すると、頤に指を遣って呟いた。
「慥か集合場所は車じゃ行けないんですよね。直前で“温泉ランド”に仕舞ってしまいましょう」
 手首に結わえたミサンガひとつで出し入れ可能な無限倉庫は、設備の整った巨大健康温泉ランド。
 ここから車の代わりキャンプ装備を引き出そうと、當初の計画を捺擦った彼は、ダッシュボードに据えていたスマホを手に取るや、液晶画面をスイスイと動かし始めた。
「……行き方の地図、地図……」
 云いつつ、視線は早くも地図上を冒険したか。
 常は落ち着いたバリトンが、囁く裡に喜色を帯びていく。
「これはビール醸造所を見学して、フィッシュ&チップス食べてからでも間に合うのでは……?」
 結論。
 ――行ける!
 そうと決まればと口角を持ち上げた二三夫は、持ち前のフットワークの軽さで「寄り道」を愉しむのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・響
【真宮家】で参加

夫と子供達二人の家族3人でクリスマスにキャンプを。

オーストラリアは真夏にクリスマスなんだね。まあ、律が健在な時も野営生活だったが、ダークセイヴァーの生きるか死ぬかの状況だったからね。豊かな自然で、キャンプもいいんじゃないかい?

野営生活が長いから服装と道具は揃ってるが、食料は現地調達が基本だね。でも気を使って子供達が食料を買うのを引き受けてくれるので、ブライビーの自然を満喫しよう。

ああ、この雄大な自然で逞しく、しなやかに生きるカンガルーやワラビーは律には眩しく見えるかい?まるで私達家族のようじゃないかね。

あ、子供達が帰ってきた。さあ、荷物は持ったし、現地に向かおうか。


真宮・奏
【真宮家】で参加

そういえば、私と兄さんと3人でキャンプはしたことあるかもでしたが、お父さんも加えて家族4人でゆっくりキャンプはしたことなかったですね。そうですね、私が小さい頃、野営だったんですが、今の状況から見て安全さが段違いですよね。お父さん、行きましょう!!

折角なのでお父さんにはお母さんと自然を満喫して貰うとして、食料品調達は私と兄さんが請け負いましょう!!お肉やシーフードはもちろん、オーストラリア米も!!あ、マシュマロも買いますか?4人分だから大荷物ですけど、私と兄さんなら持てますよね!!

お父さん、お母さんお待たせしました!!大荷物になりましたね。さあ、行きましょう!!


神城・瞬
【真宮家】で参加

そうですね、4人揃ってのキャンプはした事なかったですか。僕がいた頃のダークセイヴァーの野営もお父さんいなかったし、状況の安全さも段違いです。真冬のクリスマス、4人でキャンプ、楽しみましょう。

オーストラリアの自然をお父さんにも満喫して欲しいので食料品調達は僕と奏で。肉やシーフード、米はもちろん、デザートの材料も。ええ、スキレットもあるようですし、ケーキも焼けると思います。4人分だから大荷物になりましたね。

お父さん、お母さん、お待たせしました。さあキャンプ場行きますか。


真宮・律
【真宮家】で参加

そうだな、奏が小さい頃も野営だったが、安全さが段違いだったしな。そういえば瞬とキャンプはした事なかったか?服装とキャンプ用品はちゃんと人数分用意してあるんだな。流石。そうだな、家族4人でキャンプ行くか。

食料品の調達は奏と瞬に任せて、と。そのかわり別の道具はちゃんと預からないとな。二人を待ってる間、豊かな自然で元気に動いている動物達に目を細める。ああ、思うように、精一杯動いている。眩しいな。

お、二人が戻ってきたぞ。うわ、物凄く食材仕入れたな。腕がなる。ああ、家族4人でキャンプ場行こうか。



 常闇の世界に生まれた命は、その多くが“Wandervogelワンダーフォーゲル”――より安全な場所へ住処を移す「渡り鳥」。
 この生きるか死ぬかの過酷な状況にあった者達にとって、露營活動キャンピングが娯樂や保養として親しまれているとは、随分と新鮮に感じたろう。
「――まあ、豊かな自然の中で、のんびりキャンプするのも良いんじゃないかい?」
 野營を強いられるのでなく、自ら大自然に赴く――。
 故郷とは幾分にも感覺が異なるが、それならそれで愉しもうとは真宮・響(赫灼の炎・f00434)の佳聲。
 此度はダークリーガーの気配も無し。猟兵業は暫しお休みだと、ゆったりした表情で皆々を見渡せば、ちょうど地図を広げていた子供達が笑顏を返した。
「そういえば、三人でキャンプした事はありましたけど、ここにお父さんが加わった事は無かったと思います」
「そうですね。家族四人揃ってとなると、今回が初めてになるかもしれません」
 まるで小さな家族旅行みたい、なんて。
 キラキラと輝く星眸まなざしを結ぶは真宮・奏(絢爛の星・f03210)と神城・瞬(清光の月・f06558)。
 片や紙面の地図を手に、片や携帯端末スマートフォンの地図を手に、周辺にずらりと竝んだ案内標識や看板を確認していた二人は、これまでと樣相の異なるキャンプに早くも胸を膨らませている。
「私が小さい頃も幕營生活でしたけど……それとは雰囲気が違うというか」
「僕が居た頃の野營もお父さんは居なかったし、状況の安全さも段違いですね」
 キャンプそのものを愉しむ時が來るなんて!
 この科白には、二人を過酷な環境で育てた母が吃々と笑って返そう。
「噫、ダークセイヴァーじゃ律が健在な時も野營生活だったから。安心安全にテントが張れるなんて有難いね」
 色んな奇跡が重なったお陰だと水を向ける先には、13年の時を経て再会した真宮・律(黄昏の雷鳴・f38364)。
 此度アスリートアースに初めて訪れる事となった夫は、季節を逆さにした南半球の眩しい陽射しに双眸を細めつつ、共に異國の地を渡ったキャンプ用品を確認している。
「そういえば瞬とキャンプはした事なかったか? それじゃ愈々樂しみだな」
 而してこの律こそ、物心つく前から血場に生きた野營の手練れ。
 何なら身一つでサバイバルできる知恵と経験を持っているが、此度は家族四人で過ごすなごみ・・・の海キャンプなれば、樂しい思い出を作りたいと、使い込まれた道具類に手を遣る。
「服装とキャンプ用品はちゃんと人数分用意してあるんだな」
「そりゃ野營生活が長かったものだから」
「ん、流石」
 サラリと云ってのける妻の逞しさが、今は何より有難い。
 律が魔獸の爪牙に斃れた後、彼に庇われた響は女手ひとつで奏を育て、更には瞬という命も育んでくれた。
 この年季を感じる洋燈ランプの、隅々に残る煤にすら妻の苦勞が偲ばれると、律が柔らかな視線を結ぶ中、嘗ては楚々たる御令嬢であった響はテキパキと、地図上の店々に目を走らせていく。
「服装や道具の心配は要らないけれど、食料は現地調達が基本だね。店を探そうか」
 云えば、二人の子らも實に要領よく仕事を分担して動こう。
「食料品の調達は私と兄さんが請け負いましょう!!」
「ええ、ここは僕と奏に任せて下さい。きっと良いものを揃えて來ます」
 この母にして、この子らあり! と言うべきか。
 地図と案内板を照合した時分から、買い物リストを作っていたと言う二人の頼もしさにホッコリ笑顔を零した律は、もうひとつ、地図とは別にガイドブックを手渡す二人に瞳を瞬く。
「折角ですし、お父さんにはお母さんと自然を滿喫して貰いたいので!」
「奏……」
「二人でオーストラリアならではの景觀を愉しんで來て下さいね」
「瞬まで」
 親子水入らずの前に、夫婦水入らずの一時を呉れると言うのか。やさしい(やさしい)。
 気の利きすぎる息子と娘を前に、月白に輝く髪をクシャリと搔きあげた律は、嬉々と微笑ひとつ。
「その代わり、道具はちゃんと預っておこう」
 二人でゆっくり買物を愉しんできて欲しいと、和やかに送り出すのだった。



「バーベキュー用にお肉は勿論、シーフードも取り揃えておきたいですね」
「あと、オーストラリア米も!!」
 地元のマーケットへ足を運んだ瞬と奏は、異國情緒溢れる品揃えを興味深く眺めながら、先ずはリストに連ねたものを手際よくカートに積み込んでいく。
 四人家族なら量も多めにと考えていたが、オージーサイズの良質な肉や魚介類に食欲を唆られた二人は、折角のキャンプをめいっぱい愉しもうと、その他の食材も次々と手に取り、直ぐにカートを山にした。
 傍から見れば、地元に住む若夫婦のようだとは気付いていようか。
 瞬と奏は擦れ違いざまに注がれる温かな眼差しにふんわり微笑を返しつつ、人々の朗らかな気質や土地の雰囲気ごと味わうように買い物を樂しんだ。
「デザートも用意しておきましょう。瑞々しいフルーツなら、お父さんとお母さんも喜んでくれる筈です」
「あ、スモア用にマシュマロも買いますか?」
「じゃあグラハムクラッカーとチョコレートも要りますね」
「そうそう、さっき美味しそうなのを見つけたんです! 持って來ますね」
 沢山買い込んでしまうのは、父譲りの好奇心とブラックホール並みの胃袋を持つ奏が居るからだろう。
 而して瞬も、律と奏の何でも美味しそうに食べる姿を好いており、今回も二人の幸せそうな笑顔が見たいと思えば、双の玉瞳は店内を巡って更なる美味を求め――つと、アウトドア用の鋳物フライパンへ手を伸ばす。
「ほら、スキレットもあるようですし、ケーキも焼けると思います」
「わぁ、ケーキ!」
 聽くやパッと花やぐ奏の愛らしさといったら。
 彼女が菖蒲色の彩瞳を細めるのにつられ、切れ長の涼しげな瞳を淡く緩めた瞬は、店棚の高い所に掛けられた9インチの深型スキレットを取りざま、そと語尾を持ち上げた。
「……となれば、牛乳と卵も買い足さないと。一旦、戻っても?」
「はいっ。ケーキの材料も揃えましょう!」
 これに嬉々と頷いた奏は、玲瓏と鈴音を転がして實に快いこと。
 カートをくるりと反転させ、後に続く瞬に「はやく、はやく」と手招きしながら店内を進んでいく。
「お父さんもお母さんも、喜んでくれるといいですね」
「……その前に喫驚ビックリさせてしまうかもしれませんよ」
 當初の予定より大幅に買い込む事となったが、大丈夫、ワゴンタイプのキャリーカートで運べば転がすだけだ。
 荷物の分だけ樂しみがあると思えば、二人の足取りも踊るほど輕やかに、夏の日差しに陰を濃くして店を出るのだった。



 ――扨て、實に13年振りに夫婦の絆を取り戻した律と響は、愛する子供達が願った通りにオーストラリアの風土を滿喫すべく、陽光の燦々と降り注ぐブライビー島を散策する。
 この時期は赤・白・緑のクリスマスカラーを帯びるのが特徴か、
「そう云えば、オーストラリアは眞夏に降誕節を迎えるんだったね」
「サンタクロースがサーフィンして來るなんて、ユーモアがあって良いな」
 気候が晴れやかだからか、北半球では嚴かな雰囲気が漾うクリスマスシーズンも何処か陽気。
 そして人と動物、文化と自然が穩やかに融和しているのが快かろう。島の北部に向かうほど自然はそのままに、人の気配を感じながら生きる野生動物を見かけられるのは、州都から程良く離れたブライビー島ならでは。
 人生経験豊かな律と響も、砂浜に佇むカンガルーを発見した時は、思わず感嘆の聲を零そう。
「ほら、響。波打ち際にカンガルーが居る」
「おや――……向こうも気付いたみたいだ」
「……賢いな。靜かに佇みつつ、野生の勘を鋭く人間との距離を保っている」
 精一杯に生きる緊張感が伝わるようだと、小聲で囁く律。
 かの獸が定めた距離を尊重し、鋭く音を拾う耳の動きや呼吸する胸を觀察した彼は、同じくその場で獸の生きざまを見る響の科白を聽いた。
「この雄大な自然で逞しく、しなやかに生きる命は眩しく見えるかい?」
「……そうだな。眩しい」
 全く彼女の云う通りだと思う。
 眼路いっぱいに飛び込む大自然は豪壮で、かのカンガルーも、葉陰で涼むワラビーも小さな命の一つに過ぎないが、夏の陽射に切り出される彼等の姿影は、然う、際立って美しい。
 その眞ッ黑な瞳で周囲を爛々と瞶める樣は、絶望の世界を生き抜く命に近しいものがあろう。
「まるで私達家族のようじゃないかね」
「――ああ、眞實ほんとうに」
 二人がオージーアニマル越しに見るは、靱やかに生きる命の輝き。
 今年5月に戰端の開かれた「闇の救済者戦争」で、ダークセイヴァーに生きる者達にもささやかな平和が齎されたが、人々が過酷な日々を生きている事には變わりないと故郷を振り返った律と響は、小さな命のひとつひとつを見守っていきたいと思う。
「折角、律が戻ってくれたんだ。まだやる事はいっぱいさ」
「……そうだな。何の因果か、戻って來たからには頑張らないといけない」
 父なくしても懸命に生きてきた子供達の爲にも――と。
 品良い鼻梁を眞直ぐ獸に結んだ儘、凛と澄み渡る佳聲だけを交して会話した二人は、ここで嬉々と彈める子らの聲に気付くと、莞爾と咲みつつ振り返った。
「お父さん、お母さん、お待たせしました」
「ああ、お帰り。買い物は愉しんで來たかい?」
「はいっ! 何件かお店を回って、美味しそうなものを揃えて來ましたよ」
「お、いい表情で戻ってきた。――うわ、物凄く仕入れたな! これは腕がなる」
 バーベキュー用の肉と魚介類、スモア用のマシュマロの他にも沢山!
 パエリアやケーキも作れるスキレットと、店員のオススメという直搾りのフルーツジュースも彩を添えよう。
 料理するのが樂しみだと律が言えば、待ち遠しいとばかり奏が父の腕をグイグイ引っ張っていく。
「ね、お父さん、集合場所に向かいましょう!!」
「ああ、これで全員揃ったし。そろそろボートの乗り場に行かないとな」
 蓋し樂しみなのは響も瞬も同じ。
 先行する父娘の背に塊麗の微笑を置いた二人は、小気味よい一瞥を交して進み出す。
「さあ、荷物は持ったし、現地に乗り込もうか」
「はい。行きましょう」
 いざ、内海の小島「ミッション・ポイント・ キャンピング・エリア」へ――!
 キャンプ経験豊富な【真宮家】の四人は、家族揃って海を渡るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ゾーヤ・ヴィルコラカ
 青い空、広い海、輝く太陽……ここがオーストラリアなのね! せっかくの旅行にキャンプだもの、目いっぱい楽しんじゃうんだから!

 まずはキャンプの準備から、必要なものを買いそろえてリュックに詰めたら、食材を探すわね。普段見かけないものも多くて何を買おうか迷っちゃうから、いろんなお店を回って実際に食べてみて、びびっと来たものを買うことにしようかしら。電車とバスの時間にだけ気を付けて、〈流行知識〉をフル活用してお店を探すわ。

 この辺りはおいしそうなお店がいっぱいで迷っちゃうわね。時間はまだあるし、お魚からチャレンジしてみようかしら。ああ、わたし、今とってもドキドキしてるわ!

(アドリブ等々大歓迎)



 万年雪に覆われた寒村に生まれたゾーヤ・ヴィルコラカ(氷華纏いし人狼聖者・f29247)にとって、燦々と降り注ぐ太陽に切り出された夏景は、生命の輝きに溢れて眩しかろう。
 爽風に運ばれる緑の匂いを胸いっぱい吸い込んだ佳人は、吸気を吐きざま金絲雀の聲を澄み渡らせた。
「靑い空、広い海、輝く太陽……ここがオーストラリアなのね!」
 颯と吹き抜ける風に梳られる前髪の奧、翠緑の玉瞳をキラキラと輝かせる。
 今日はダークリーガーの気配も無し、年越しキャンプを存分に樂しめると花顏に喜色えみを湛えた彼女は、先ずは道具を調達すべく、輕やかな足取りで用品店へ向かった。
「折角だもの、準備はしっかり整えたいけれど……ちょっと荷物が多くなりそうね」
 キャンプ中の大半を過ごす事になる折畳式チェアは、焚火に近いロータイプに。
 夜の供となるランタンは、愛らしい洋梨型が良かろうか。シュラフは、スキレットは。
 手頃なものを揃えていくだに、餘裕のあったリュックをむちむちに膨らませる事となったゾーヤは、「よいしょっ」と背をひと搖すり。それでも元気にテクテク、今度は地元のマーケットへと足を運んだ。
「うぅん。普段見かけないものも多くて、何を買おうか迷っちゃうわね……」
 色鮮やかな漬物瓶に目を遣りつつ、ボルシチ風のスープも作れそうだと香葉類も見て回ったゾーヤは、とある肉屋の前でピタリ。店員が勧めるソッセージ・シズルを口にするなり、ぱちぱちと瞳を瞬いた。
「ん、ビビッとくる美味しさ!」
「ハーブとスパイスの香ばしさを感じる、これがビーフソーセージさ」
「皮のプリッとした味わいと、玉ねぎの甘味……サンドイッチみたいな手軽さが素敵ね」
 土地の味を感じられるのが良いと、ふっくり咲んだゾーヤは、おしゃべり上手な店員にトレンドを聽きつつ、また街巡りに出掛ける。バスの時刻に気を付ければ、ボート乗り場までたっぷり散策できよう。
「この辺りはおいしそうなお店がずらっと並んでて、誘惑がいっぱい……!」
 靜謐の銀世界から足を運んだゾーヤにとって、音も色彩も賑々しいブライビーアイランドは小さな冒険島。
 擦れ違う人の中に釣り人を見つけた彼女は、この周辺ではイカや鯛、ラスという魚も釣れると聞くと、次なる興味を海産物へ――魚にもチャレンジしてみたいと行動力が爆発する。
「ああ、わたし、今とってもドキドキしてるわ!」
 リュックが重力に結んでくれなければ、嬉しさに膨らむまま飛んでいきそうな程。
 今はこの重さが有難いと、背の荷物を一撫でした佳人は、まるで踊るようなステップで寄り道を愉しむのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

浅間・墨
ロベルタさん(f22361)
キャンプというのは初めてなのでよくわかりません。
お店の店員さんに伺えば揃えることは可能でしょう。
注意点をよく聞いて参考にして準備をしてみますよ。
えと。テントは二人用が丁度いい広さでしょうかね。
それから食料は少々多めに購入しておきましょうか。

この国では私のような衣服は目立つようで注目されます。
店内や…特に外ではとても周囲の方の視線が痛いですね。
外は暑いので私の恰好は気になるようで。仕方ないです。
ロベルタさんが居るので対話に全く問題ないのですが…。
…あぅ…。来店する度に爪先から頭まで見られますね…。
刀袋で刀を所持しているから余計に注目されている気が。

私もロベルタさんも運転できないので代行者の運転で。
目的の場所への道すがら国に住まう動物達に出会います。
この国の動物達は全て何とも不思議な姿をしていますね。
暑い国だからなのでしょうか全ての動物の毛が短いですよ。
二足歩行で跳ねて移動している動物もいて目を見張ります。
わらびー?かんがるー?…むぅ。初めて聞きました…。


ロベルタ・ヴェルディアナ
墨ねー(f19200)
僕もキャンプは初めてだからよくわかんないや♪
だから店員の人に聞きながら準備していくじぇ。
店のにーちゃんやねーちゃんに聞くのは任せて。

店内は広くてかっこいい器具や道具が多いねぃ!
おー!かっこいい電灯があるじぇ♪…装着ッ!!
なんだか武器みたいな斧だねぃ♪…薪割りか~!
これはどーやって使うんだろ?…火起こし…!?
う!いけないじぇ。墨ねーほったらかしだった。

「う? 視線が気になる? …そうだねぃ…」
そーいえばすれ違う人達は墨ねー見てるかもねぃ?
僕は気にしてなかったけど恰好が特殊かもしれない。
ミコって言ってる人もいるし…外国では目立つかも。
でも僕の恰好も特殊かもしれないねぃ♪黒だし。
「大丈夫じぇ。僕の恰好が目立つかもしれないねぃ?」
僕も目立つってことで墨ねーには落ち着いて貰うよ。

代行のねーちゃんの運転で目的地まで行くじぇ♪
ねーちゃんは動物達の説明を丁寧にしてくれて面白い。
うーん?動物の…名前に聞き覚えがあるような…?
この国には初めてなんだけどなぁー。なんでだろ??
ま。いいや♪



 2023年は、シルバーレイン世界で勃発した「第二次聖杯戦争」を皮切りに、ダークセイヴァーやエンドブレイカー世界で戰爭を経験し、またキング・ブレインやレディ・オーシャン、直近では韓信大将軍を下すなど、猟兵として大活躍した浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)とロベルタ・ヴェルディアナ(ちまっ娘アリス・f22361)。
 激動の刻を生きる二人が年越しの小旅行に選んだ先は、此度が初訪問となるアスリートアースだった。
「こういうの、海キャンって言うんだって!」
「……うみ、きゃん……キャンプ自体が、初めて……ので……よく……りませんね……」
「僕もサッパリだじぇ♪ どんなだろうねい♪」
 ダークリーガーの気配は無いという事だが、今回の相手は美しくも嚴しい大自然。
 無事に一夜を過ごせるかと緊張気味な墨に對し、ロベルタはワクワク! 未知なる世界、初めてのアウトドア活動に胸を膨らませている。
 靑々と茂った大樹が陽光のをそよがせる下、自分達と同じキャンプ目的と思しき觀光客をじぃぃっと見た二人は、先ずは道具一式キャンプギアを揃えるべく街の用品店に向かった。
「……お店の……店員、さんに……伺えば……必要なものは……揃えられる、筈……です……」
「う! 店のにーちゃんやねーちゃんに聞くのは僕に任せて♪」
 初心者である事を伝え、基本的な道具と、使い方の注意をよく聽く。
 手入れの簡單な寝袋シュラフと、初心者ならマットを敷けば地面の凸凹が気にならないと、店員に丁寧な説明を受けて必需品を揃えた二人は、店の奧、実際に広げられたテントも見て回る事にした。
「墨ねー、テントだじょ! 入ってみよ♪」
「……えと。……二人用……これが丁度いい、広さ……でしょうか……」
 中に入るなりごろりんと寝転んで体感を得るロベルタの隣、天蓋をぐるり見渡して構造を確認する墨。
 クロスポールで立ち上げるシンプルなものなら設營し易いかと、付属の説明書で手順を確かめる間、「これにしよ?」とおねだりする佳聲にこっくり首肯が返れば、テントはコレで決まり。
 後は小物類を、角燈ランタン作業台テーブルも用意せねばと墨が腰を上げれば、ロベルタはもうテントから出てゴー。
 初めて見る器具や道具類に瞳をキラキラと輝かせながら、ひとつひとつ手に取って使用感を確かめ始めた。
「おー! かっこいい電灯があるじぇ♪」
「……それ、は……兩手が、自由に使えて……便利そうですね……」
「うん。しかも強そうだし……装着ッ!!」
 スッと頭に被れば、ロベルタの額で高輝度LED光がカッ!! 眩しい!! 格好良い!!
 手持ちの懷中電灯より便利だとフィーリングで実感した少女は、購入候補に入れるやその姿で次のコーナーへ。
 焚火をするにも燃料が必要だと、店棚にずらりと並ぶ商品を見て回った。
「なんだか武器みたいな斧だねぃ♪ ……薪割りか~!」
 好奇心旺盛なロベルタは、「まず持ってみる」のがお約束。しかも手に取るのは一番大きな斧だ。
 これも強そうで良いと眼眦を緩めた元気の塊は、テテテッと息繼ぐ間もなく隣の棚へ。天井近くまで積み上げられた商品の前で爪先立ちに、ピカピカと輝く玉瞳を巡らせた。
「これはどーやって使うんだろ? ……火起こし……!? そっかぁ♪」
 興味おもしろい、面白おもしろい、壯快おもしろい!
 猟兵なら樣々な能力で炎を燈せるが、知恵を絞り手間を掛けて点火させる所が良いと花唇に弧を描いたロベルタは、火起し器も着火剤も色々なものがあると墨に言おうと振り返るが、果してそこに彼女の姿は無く――。
「墨ねー? ――いけないじぇ。ほったらかしだった」
 慌てて通路を引き返し、背の高い陳列棚の間へぴょこぴょこと身を挟みながら墨を探す。
 然れば彼女は、擦れ違う人々にまじまじと見られながら、縮こまるようショッピングカートを押していた。

「……すみません……ロベルタさん……視線が、気になって……追いつかな……って……」
「う? 視線? ……そうだねぃ……そーいえば周囲の人に見られてるかもねぃ?」
「……この國では……私のような……恰好、は……目立つ……ようです……」
 ロベルタは気にしていなかったが、この瞬間にも擦れ違う觀光客が「ミコ?」「ミコ!」と云っているのが判然る。
 猟兵は全ての世界で言葉が通じ、獸人だろうとウォーマシンだろうと住民に違和感を與える事は無いが、墨が纏う和の巫女装束は、南半球に住む人々にとって何處かミステリアスに見えるのは仕方ない。
 店内は勿論、店を出て街に出た時こそ注目を浴びようか、
「……あぅ……。爪先、から……頭まで……見られ、て……すね……」
「暑くないかなって気になってるみたいだじょ」
 實の処、和装はそれほど暑い訳では無く、脇下を締めているから汗も搔かないのだが、だからこそ涼しげにしている墨が気になるのだろう。陽射に照り輝く傾斜道を歩く彼女は、まるで繊細で美麗な人形ドールのよう。
 降り注ぐ太陽でなく、周囲の視線が痛いと蛾眉を顰める墨には、ロベルタが莞爾たる微咲えみに不安を吹き飛ばした。
「大丈夫じぇ。僕の恰好が目立つかもしれないねぃ?」
「……ロベルタさん、が……?」
「この気候で黑のワンピースドレスって、お葬式と思われるかもしれないし。でも全然気にしないじぇ♪」
 云って、くるりん。
 その場で輕やかに一回轉し、『ブラック・プリンセス』の裾を飾るフリルを躍らせてみせる。
 黑を好む己も、刀袋を携えた墨も。其々が素敵なのだと、眩く零れる笑顏が何より説得力があろうか。
 白銀のポニーテールをふうわり搖らして後、墨の手を取ったロベルタは、もう片方の人差し指でツンツン。配車サービスの看板を示して云う。
「荷物、いーっぱいになっちゃったから。ボートの乗り場までは車で行くじぇ~♪」
「……はいっ」
 島内ではバスにも乗れるが、人目が気になる墨には車の方が良かろう。
 代行運転を頼んだ二人は目的地に向かうがてら、豊かな自然に棲む野生動物を車窓から眺めて愉しむ事にした。

「墨ねー、見て! 向こうの浜辺に動物がいるじぇ!」
「……あんな……水際みぎわに……波が……怖く、ない……よう……すね……」
 島の大部分が國立公園に指定されたブライビー島は、ありのままの自然に生きる野生動物を身近に見られる。
 美しい野鳥も見られるという話を聽きながら車に搖られたロベルタと墨は、途中、カンガルーやワラビーといった大型動物を見つけると、二足で器用に跳ねて移動するその姿に目を瞠った。
「……この、國の……動物達は……全て……何とも……不思議な……姿を……して……ますね……」
「お腹にポケットがあるなんて、ふふ、便利だねい♪」
「……暑い……気候……だから……なの、でしょうか……動物の……毛が……短い、ですよ……」
「樹陰で涼んでいるし、工夫して生きているっぽい!」
 車の後部座席に並んで座り、心地よい風を感じながらオージーアニマルを探す。
 此度は名だたるオブリビオンと華麗に戰う猟兵の姿はお休みで、動物を見つけた時の二人は年相應の女の子。喫驚も喜色も豊かに、可愛らしい表情で道中の景色を樂しんだ。
「……え……あれが、わらびー? ……かんがるー? ……むぅ。初めて……聞きました……」
「うーん? どっちの動物も……名前に聞き覺えがあるような……?」
 見るのも初めてなら、聽くのも初めてな動物達の名を何度も反芻する墨。
 隣するロベルタは、何故だろう、オーストラリアを訪れるのは初めてだと言うのに、妙に耳に馴染みのある名前に、ことり、小首を傾げる。元の世界の記憶は無い筈なのだが……。
「――ま。いいや♪」
 而してスルッと流してしまうのがロベルタ。
 車窓から食料品のマーケットを見つけた少女は、墨の袖をきゅうと引っ張り、水分補給がてらフルーツドリンクと、キャンプ用の食材を購入していこうと促す。
「墨ねー、あのお店にも寄っていこ?」
「そう……ですね……。食材は、少々……多めに……購入して……行きましょうか……」
「うぇ~い♪ たくさん買っていこうねい♪」
 だって年末年始の特別なホリデーシーズンは、めいっぱい愉しむもの!
 次に羽搏く爲に羽を休めるのだと、花顏いっぱい笑みを広げるロベルタには、墨もほっこり。柔らかな木漏れ日のような微咲を零すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 日常 『キャンプめしを食べよう!』

POW   :    出来立てを沢山美味しく食べる

SPD   :    現地で何らかの食材を調達してくる

WIZ   :    キャンプならではの調理法に挑戦する

👑5
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 内海に浮かぶ⼩島のキャンプ場「Mission Point camping area」には、ボートで上陸する。
 觀光地としては人が少ないブライビー島の中でも殊に靜かな此處は、浜辺に降り立った瞬間から、時間の流れが異なるような――ゆったり、のんびりとした空気を味わえよう。
 鬱蒼たる樹々の向こうに野生動物の気配を感じる程、そのままの自然を間近に觸れながら、人々は其々に持ち込んだキャンプ資材を元にワイルドライフを愉しむ事となる。
 先ずはテントを張って拠点を確保し、キャンプ飯で腹ごなし。
 調理過程や食事の時間を滿喫したなら、小島の散策に出掛けても良いだろう。
 波打ち際を漫歩きながら会話を樂しんだり、ただただ靜かに海釣りに挑戰しても良い。
 いつもとは違う活動の中で、何をして何を感じるかは自由――猟兵の個性が輝くのは、ここからだ。
キノ・コバルトリュフ
エリンギ!今日は楽しくハイキング!!
シメジ、なんだか周りが騒がしいね。
でも、キノたちは気にしなーい。
キノ?スピちゃんどこに行ったのかな?
シイタケ、おいしいお菓子とか用意したのに。
帰ってきた、どこに行ってたの?
軽く運動でもしてきたのかな?
マイタケ、それじゃあ、いただきます。



 気の向くまま、足の赴くまま。
 骸の海から次々と滲出するオブリビオンや、名だたる猟書家達と相見え、また世界の命運をかけた戰爭でも活躍したキノ・コバルトリュフ(キノコつむり🍄🍄🍄🍄🍄の星霊術士・f39074)が年の瀬に訪れたのは、アスリートアースはオーストラリアのブライビー島。
 今日も樂しくハイキングをしていたら、歩いて、乗って、内海の小島に辿り着いた訳だ。
「エリンギ! 今日は靜かな処に來ちゃったね」
 ザザ……と心地よい波音が繰り返す他は、潮風に枝を搖らす樹々の葉音が聽こえるくらいか。
 ボートを降りて白砂の浜辺を歩き始めたキノは、美し靑藍の髪を風に流しつつ、その頭に被るキノ笠を搖らしつつ、12区域に分けられたキャンプ地へ向かう。
「キノ? グラりん、スピちゃん、あまり遠くには行かないでね?」
 忽ち先を行く星靈グランスティードのグラりんと、その影を追ってキノ笠から飛び降りる星靈スピカのスピちゃんを瞳に追いながら、自身は海辺に近い場所で荷物を下ろす。
「シメジ! ご飯の時間には戻ってね」
 器材の他、おいしいお菓子と食材を用意してきたキノは、相棒たちが大自然に遊ぶ中でテントを設營すると、火起こし器を前に玉臂を靭やかに一振り。舞い踊るようにして炎を紡いだ。
「シイタケ、マイタケ、キノコ尽くしのクッキング!」
 ぽいぽいと投げ込むは、超絶猛毒……じゃない美味のキノコたち。
 野外料理に大活躍なスキレットにキノコを敷き詰め、彩も豊かに鮮烈なトマトを加えたアクアパッツァは栄養滿点のキャンプ飯だ。
 キノコ特有の香ばしい匂いが広がれば、星靈たちも戻って來ようか。
「スピちゃん、グラりん、お帰りなさい。どこに行ってたの? たくさん遊んできたのかな?」
 此たびオブリビオンの気配は無し。
 二匹でめいっぱい遊べば、お腹も空いてきたろうか。キノが腰かける椅子の周りにちょこんと座ったなら、たのしいキャンプ飯のはじまり、はじまり。
「キノキノ、それじゃあ、いただきます」
 ふんわり立ち上る湯気の前に柔らかな微咲えみを置いたキノは、あーん、と大きな口を開けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

恵空・仁子
【安らぎ亭】WIZ
アドリブ問題ありません

「おまたせ、ゾーヤさん。」
周囲に野生の象のような妖精と引き連れながら、
遅ればせながらキャンプに参加するわ

「それで、料理は何をするの?
…捌くの?生魚これを?」
生まれて初めての体験…
どうしたものかとゾーヤをみているとやり方を教えて貰った
彼女が捌いたものと比べると手際が違うわね…
「私の分は出来たわ。
火の番は私に任せてちょうだい。
せっかくだから、卵のホットサンドイッチも作りたいの。」
好物の卵サンド
こういった機会でもないとホットサンドなんて作れないものね
楽しみだわ

ゾーヤはスープを作っているのね
彼女の料理は美味しいから、また楽しみ

…多い
二人で食べきれるかしら?


ゾーヤ・ヴィルコラカ
【安らぎ亭】

 仁子ちゃんこっちこっち! 妖精さんも一緒なのね。テントも薪もバッチリよ。御夕飯、一緒に作りましょう? 

 焚火を起こして〈料理〉開始よ。まずは市場で買った魚介から、仁子ちゃんと一緒に丁寧に捌いてBBQできるようにするわね。包丁をこの辺に差し込んで、そしたら串に通して……うん、いい感じね! これでメインの用意はバッチリ、次は何を作ろうかしら? ホットサンドと合いそうなスープとかいいかも、仁子ちゃんと並んで香草や野菜なんかを煮込むわね。

 うーん、2人分っていうにはちょっと多いかも? でも、こうやって作るのも楽しいわね! わたし、ここに来れてよかったわ!

(WIZ、アドリブ等々大歓迎)



 キャンプ場の一画に、可愛らしいティピーテントが立つ。
 シンプルな構造ながら、二人用の大きさに少しだけ苦勞したゾーヤ・ヴィルコラカ(氷華纏いし人狼聖者・f29247)が、ちょうど地面にペグを打ち終えた時、一艘のボートが白浪を砕きながら近付いた。
「おまたせ、ゾーヤさん」
「! 仁子ちゃんこっちこっち!」
 鈴振るような佳聲に振り向けば、澄明な陽光に切り出される影ひとつ。
 颯と吹き抜ける潮風に蘭麝の髪を梳った恵空・仁子(動かざる執筆家・f29733)が、汀に楚々と降り立った。
「遅ればせながら、キャンプに參加するわ」
「妖精さんも一緒なのね。ごきげんよう!」
 佳人の傍には、野生の象のような精靈が、のっし、のっし。
 輝くばかり大自然に精靈も活き活きしていると微笑を零したゾーヤは、仁子の手を取って拠点へ。テントの近くに備えた火起こし器の隣、作業台に用意した食材を示して云った。
「テントと薪の用意はバッチリよ。これから御夕飯を一緒に作りましょう?」
「料理を……それで、メニューは……」
「市場で魚介を買ってきたから、海鮮バーベキューをしようと思って!」
「……捌くの? 生魚これを?」
「そう!」
 ゾーヤが和々ニコニコと咲いながら魚を取り出し、俎に置くやスッと包丁を入れる。
 骨肉を斷つ刃の音や丁寧に取り出されるはらわたなどは、仁子には生々しいか。テキパキと魚を捌く親友ともの隣でまじまじと手附を見た少女は、恐る恐る氷の中から魚を取り出し、見様見真似で包丁を動かす。
「刃先をこの辺に差し込んで、背骨沿いにある血合いも綺麗に取り除きましょ」
「……結構、ぬめりが……」
 生まれて初めての体験に、緊張の色を差す仁子。
 ぎこちなく荒塩を振りかける彼女の隣、ゾーヤは長い串を用意すると、鰓から背骨の下側にかけて切先を打ち込み、串焼きの準備を始めた。
「竹串は背骨に巻きつけるような感じで、螺旋に通すと身が落ちないの」
「えぇと。……こう……?」
「うん、いい感じね! 上手!」
 觀察力に優れた仁子は、初めてながら中々の手並み。
 味付けの塩を振る時にはたどたどしさも収まって、立派な串打ち魚が出來上がっていた。

「ゾーヤが捌いたものと較べると、見劣りするけれど……私の分は出來たわ」
「お疲れ様! これでメインの用意はバッチリ、次は何を作ろうかしら?」
 ふう、と肩で息をした二人が、焚火を前に串を差す。
 焼き魚は「強火の遠火」がお約束にて、炎から少し離れた距離からじっくり時間をかけて焼き上がりを待つ事になるのだが、ここは仁子が預かろう。
「火の番は私に任せて頂戴。しっかりした熾き火と炭火を保っておかないと」
「ありがとう! 串は倒れやすいから、見てくれると助かるわ」
 人数が居ると樂ができると口角に弧を描いたゾーヤは、むちむちのリュックからクッカーやカトラリーを取り出し、欣々いそいそと食事の準備を整えていく。
 効率的に別々の作業に當たる二人だが、ザザ……と寄せては返す波音を挟んでも繋がっているような感覺を味わわせてくれるのが、キャンプ活動の良いところ。
 二人が靜默を愉しんで幾許、パチパチと熾える焚火の傍、ジュウと爆ぜる油の音に交じって、仁子が佳聲を滑らせた。
「折角だから、卵のホットサンドイッチも作りたいの」
 好物の卵サンドを此處で味わいたい――。
 こういった機会が無いと、中々料理はしないものだと仁子が切り出したなら、ゾーヤがパッと花顔を綻ばせる。
「ホットサンドと合いそうな……私はスープを作ろうかしら」
「ゾーヤの料理は美味しいから、樂しみね」
 これだけの火力があれば、大きめの野菜も柔かく味わえよう。
 アウトドアの雰囲気たっぷりな鋳鐵の鍋へ、彩豊かに野菜を詰め込んだゾーヤは、香草を添えてクツクツとスープを煮込んでいく。ここにコンソメを加えれば、黄金の色味も匂いも格別だ。
 而して香味が湯気と共に広がる中、佳人の傍では仁子が溶き卵をフライパンに流し入れ、ふんわり卵の匂いを膨らませながらサンドイッチに焼き色をつけていく。こちらも美味しそうな仕上がりで、仲良く隣合った二人に自然と喜色が灯る。
「作っている最中も樂しいし、出來上がりも樂しみね」
「本当、樂しみすぎて……お腹空いてきちゃったわ」
 雪嶺の鼻梁を手元に結んだ儘、佳聲だけを結び合う会話は穩やかで、和やかで。
 つと一瞥を交した時に零れる微笑が、ありのままの自然の中で燦然と煌くようだった。

「……多い」
「うーん、二人分っていうにはちょっと多かったかも?」
 香ばしく油を滴らせた焼き魚と、瑞々しい魚介類のバーベキュー。
 ふんわり半熟卵をぎゅうっと詰めたホットサンドと、ごろっと野菜の栄養滿点なスープ。
 作る過程が愉しくて、少々……いやかなり作ってしまったと、テーブルを埋め尽くす豪勢なメニューを眺めた仁子とゾーヤは、玉瞳を眼眦に流して互いを見合った。
「二人で食べきれるかしら?」
「そうねえ、コンソメスープは翌朝にトマトを足してミネストローネにすれば良いかも!」
 魚介も残ればパエリアに、これから冷え込む夜の小腹滿たしにもなるだろうとゾーヤが言えば、仁子は知恵に溢れる彼女に感嘆の息ひとつ。ゾーヤが居れば餓えることは無いと実感する。
「……ゾーヤと一緒で良かった」
「わたしも。仁子ちゃんと此處に來られて良かったわ!」
 作るのも樂しかったし、食べる樂しみは倍以上。
 時間はたっぷりあるのだから、ゆっくり味わっていこうと塊麗の微笑を揃えた二人は、幸せいっぱいに「いただきます」を重ねるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

真宮・響
【真宮家】で参加

さてキャンプ場に着いた。おや、誰かさんのお腹の音が。そうだね、昼ごはんの準備を。

昼はバーベキューだね。おお律が早速シーフードの仕込み初めているよ。私も手伝おうかね。バーベキューの準備は奏と瞬に任せていいかい?

さあ、できた。アヒージョとパエリアだ。バーベキューもいい感じに焼けている。あ、奏と瞬がハンバーグ焼いてたよ。ハンバーガーにしようか。

ふう、昼ご飯でも豪勢だねえ。え?律が楽しそうにスキレットでパンケーキ焼いてるよ。もう使いこなしてるとか。さすが。

ふう、食べたねえ。そうだね、4人で散歩に行こうか。夜ご飯に向けてお腹すかせないとねえ。


真宮・奏
【真宮家】で参加

ああ、とてもいいキャンプ場ですね!!空気が美味しい!!(お腹の音が鳴る)えへへ、一杯動いてお買い物したのでお腹空きました!!

兄さんと一緒にバーベキューの準備をします。(耳打ちされて)はい、バンズ買ってきたのでハンバーグ焼きましょう!!お父さんとお母さんが一緒に料理してる。とても楽しそう。

ああ、美味しそうなパエリアとアヒージョ!!バーベキューとハンバーガーも加えれば凄く豪勢になりましたね。まあ、私とお父さんの胃袋なら入りますよね。

あ、お父さんが密かにパンケーキ焼いてた!!お父さん手作りのパンケーキ!!(目がキラキラ)甘いものは別腹!!

うん、4人で散歩はとっても楽しいだろうなあ。


神城・瞬
【真宮家】で参加

ええ、とてもいいキャンプ場ですね。空気も美味しい。(お腹の音に微笑み)まあお腹空きましたよね。昼ご飯の準備しましょう。

奏と一緒にバーベキューの準備を。奏、バンズ買ってきましたし、ハンバーグ焼きましょう。ハンバーガーにするんです。

お父さんとお母さんの手作りのアヒージョとパエリアのとても美味しそうな出来上がりが眩しいです・・・バーベキューとハンバーガー加えれば豪勢になりますね。まあ、お父さんと奏なら全部食べてしまいますね。

え、お父さんがパンケーキ焼いてた!?流石です。頂きますね。

ええ、これだけ食べれば夜ご飯が入らなそう。家族で散歩してお腹空かせませんとね。


真宮・律
【真宮家】で参加

海も見えるし、空気も美味しい。キャンプには最高のロケーションだな。誰かさんのお腹の音も聞こえたし、昼ご飯の準備するか。

新鮮なシーフードの食材にうずうずするな。早速料理だ。おお、響、手伝ってくれるか。ああ、昔一緒に料理した頃を思い出すよな。

さて、できた。アヒージョとパエリアだ。おお、ハンバーガーもあるのか。バーベキューもあるのか。まあ、俺と奏の胃袋なら収まるな。

(スマホで使い方をポチポチ)成る程。どれ、スキレットでパンケーキを焼こう。家族サービスだ。遠慮なく食べてくれ。

まあ、一杯食べたので夜ご飯に向けてお腹空かせないとな。折角の風景だ。家族で散歩しようか。



 ブライビー島の魅力は、豊かな植生や野生動物を見られるのは勿論、閑散として靜かな処にある。
 同じくブリスベン近郊にあるゴールドコーストやモートン島に較べ、手付かずの自然をより近くに感じられる神秘の島は、内海の小島に向かえば殊更に、海岸を打つ波音だけが繰り返される――心地佳い靜寂しずけさがそこにあった。
「扨て、キャンプ場に着いたが……長閑で良い処じゃないか」
 知る人ぞ知る穴場とは聞いていたが、人の少なさにホッとする――。
 ボートを降りた瞬間に広がる開放感に、真宮・響(赫灼の炎・f00434)がふわりと微咲えみを零せば、彼女に続いて白砂の濱を踏んだ真宮・律(黄昏の雷鳴・f38364)が、眼路いっぱいに絶景を映して云った。
「これは凄い。家族四人で過ごすに最高のロケーションだな」
 ボートのエンジンを切れば、その靜けさが際立とう。
 渚を踊る白泡の音以外は、やや強めの潮風が樹木を搖する音くらいか。ゆっくり停止したボートから道具一式キャンプギアを下ろし始めた神城・瞬(清光の月・f06558)は、肺腑に滿つ空気に自然と微笑を含んだ。
「空気もとても美味しくて……潮の匂いと、靑々とした緑の匂いも感じるのは、島の自然が豊かな証拠ですね」
 この小島は、12区画に分けられたキャンプ場以外は殆どが緑に覆われている。
 野鳥も野生動物も、すぐ傍らに居そうだと瞬が昂揚を得る中、彼の手を支えに白濱に降り立った真宮・奏(絢爛の星・f03210)は、スウ……と深呼吸して瑞々しい空気を味わった。
「本當、とても素敵なキャンプ場で……」
 ――きゅう、きゅるん。
 風音や波音の他に音が無ければ、その可愛らしい音は直ぐ伝わって仕舞おう。
 先行する響と律、そして隣する瞬が一斉に奏へと視線を集めれば、注目を浴びた佳人は紫彩の瞳をぱちぱち。次いで含羞はじらいがちに咲みを返した。
「おや、誰かさんのお腹の音が聞こえたね」
「えへへ……一杯動いてお買い物したので、お腹空きました!!」
 そと兩の白手を宛て、腹の虫が鳴いていると素直に打ち明ける奏。
 その屈託の無い笑顏が實に愛らしいと眼眦を緩めた律は、瞬が担ぐキャンプ器材の一部を代わり、波に濡れた白濱をずんずん歩いて拠点に運んでいく。
「慥かに、空気はどれだけ美味しくても腹が滿たされる訳じゃないし……ご飯の準備を急ごうか」
「それなら、テントの設營や火起こしも手早く取り掛かりましょう」
 而して可愛い義妹……いや婚約者の爲なら、瞬も力は惜しむまい。
 キャンプ道具の他、山ほど買い込んだ食材を一気に陸揚げした彼は、義父と共に拠点に至るや手際よく設營に取り掛かるのだった。



 海岸に近く、背の高い木立が自然と日陰を作る適処にテントを二つ張る。
 更にその上にコットン幕のタープを広げれば、通気性を保ちながら潮風を防ぐ、開放的なリビングが出來よう。
 野營生活が板についた【真宮家】なれば、忽ちハイブリッドな空間を作り上げ、火起こしもスムーズに済ませる。
 そうして粗削りの自然の中に炎が生まれると、往年のアウトドア魂も燃え上がってくるというもの。
「瞬と奏が新鮮なシーフードを取り揃えて呉れたからな。早速料理だ」
 律は早速腕まくりして、氷に入れた魚介類を取り出し、せっせと仕込みを始める。
「私も手伝おうかね」
「それは有難い。エビの背ワタを取るのをお願いしようか」
 海鮮料理は素材の味が如實に出るからこそ、臭みを取っておきたいもの。
 エビの身を崩さぬよう爪楊枝で背ワタを取り出す手つきは慣れたもので、次いで素早く塩を揉み込む響の指先に目を細めた律は、己は牡蠣の下拵えをと、ザルに上げた牡蠣に塩を掛けてフリフリ。十分にアクが出た処で流水に晒す。
「エビも牡蠣も身が大きくて、凄く贅沢じゃないか」
「ああ、昔はこんな立派なものは食べられなかったけど、一緒に料理した頃を思い出すよな」
「…………懷しいね」
 日々を生きるに必死だった“渡り鳥”Wandervogelは、啄む果実を選べはしなかった。
 而して子供達が準備してくれた食材はこんなに立派だと、片眉を持ち上げて笑い合う――何とも微笑ましい光景は、瞬と奏が嬉しそうに見守ろう。
「お父さんとお母さんが一緒に料理してる」
「樂しそうですね。魚介料理は任せて、私達はバーベキューの準備をしましょうか」
 そうして二人が和々にこにこと微笑を結んだのと、響から佳聲こえが投げられたのはほぼ同時。
「バーベキューの準備は奏と瞬に任せていいかい?」
「はぁい」
 奏が輕やかに返事する間、新しく作業台テーブルを広げた瞬は、食材を取り出しざま義妹に囁聲ひとつ。
「奏、バンズ買ってきましたし、ハンバーグを焼きましょう。ハンバーガーにするんです」
「! 絶対おいしいですよねっ」
 一口で食べきれないくらい沢山重ねよう! と、樂しげに突き合わされる表情といったら!
 吃々と笑聲を交しながら網に熱を入れ始める瞬と奏も、律や響に負けず和気藹々として――仲良し義兄妹の姿を見た兩親は、どこか安心したような微笑を浮かべて調理を続けるのだった。



 それから暫くして食事台に集められたランチメニューは、露營の炎で料理したとは思えぬほど本格的なもの。
 立ち上る湯気と共に広がる薫香は、キャンプ料理に奮鬪した四人の食欲を一気にそそった。
「さあ、出來た! 皆、椅子を持ってきておくれ」
「わぁ……なんて美味しそうな……!」
 律と響が作ったのは、食材の旨味に上質な油が絡んだアヒージョと、爽やかなレモンの風味が馨るパエリア。
 どちらも水加減の難しい料理だが、程良くニンニクの利いた極上のキャンプ飯だ。
「おお、これで昼ご飯とは豪勢だな」
「見て下さい。こちらも良い感じに焼けましたよ」
 而して瞬と奏が作り上げたハンバーガーも實に見事な出来栄え。
 網に引っ掛かりがちなハンバーグも、メッシュシートを敷いて滿遍なく焼き上げた二人は、こちらも火を通して香ばしくなったバンズを乗せて串にグサリ。とろとろチーズにピクルス入りのソースを潜らせ、大人なピリ辛マスタードもたっぷり、何もかもがボリューミーな逸品を作り上げた樣子。
 これだけの料理が揃えば、テーブルは都会の通勤電車並みに混み合うが、四人が「困る」という事は特に無く――。
「ふふ、私とお父さんの胃袋なら入りますよね」
「まあ、俺と奏なら何ら問題ないな」
「ええ、お父さんと奏なら餘裕でしょう」
「うん、これだけあれば足りないって事はないね」
 全員、解釈一致で大變宜しい。無問題。
 ぽつりと零れる科白もタイミングも同じだった仲良し一家は、次いで「いただきます」の発聲も揃えると、彩豊かなキャンプ飯を賑やかに朗らかに味わい始める。
 いつもよりゆっくりした食事なれば、追加のおたのしみ・・・・・もあろう。
「え? 律は……スキレットで何を焼いてるんだい?」
「美味しそうなパンケーキのレシピを見かけたものだから。どれ、作ってみようと思って」
 直搾りジュースを取りに行ったと思っていた律は、気付けば焚火の前でパンケーキを調理中。
 作業の合間にスマホをポチポチ、インターネットに公開されるレシピに一通り目を通した彼は、火加減が難しいスキレットを巧みに使って、ふんわり甘い香りを膨らませていた。
「もう使いこなしてるとか。流石だね」
「家族サービスだ。遠慮なく食べてくれ」
 素朴な木目プレートに幾層と重ねられるパンケーキの頂には、ツンと角を立てたホイップクリームとフルーツ!
 アレンジ次第でグリル野菜とベーコンを乗せた半熟卵のパンケーキにもなると、笑顏を添えてテーブルに差し出す律の前には、玉瞳を星のように輝かせた奏が、嬉しそうにフォークを準備している。
「お父さん手作りのパンケーキ……!! なんて良い香り……!!」
「え、お父さんがこれを!? 遠慮なく頂きますが、奏も流石に滿腹じゃ……」
「全然! 甘いものは別腹!!」
 パンケーキを見たらた小腹が空いてきたとは、筋金入りのブラックホール胃袋。カオス。
 而してクリームたっぷりのパンケーキもペロリと美味しく平らげた奏は、喜色溢れて周囲にふわふわと花を漂わせ、その幸せに滿ちた表情で家族を喜ばせるのだった。



「ごちそうさま。――ふう、食べたねえ」
「……とっても幸せな一時でした。美味しかった!」
 ゆったりとした時間の流れる中で、ゆっくり美味を堪能する幸福しあわせは何物にも代え難かろう。
 家族全員で作ったキャンプ飯を心行くまで味わった響と奏が、夕暮れ前に片付けて仕舞おうと腰を上げれば、これに律と瞬も続いて皿を纏め出す。
 誰もが滿腹なれば、自ずと会話はふくふくの笑顔に結ばれて、食後もまた和やかな雰囲気に包まれている。
「これだけ食べたんだから、夜に向けてお腹を空かせないとな」
「それじゃ、折角の綺麗な風景ですし。家族で散歩に出掛けましょうか」
 瞬の提案に首肯を揃えた一同は、手早く食器を纏めて散歩の準備へ。
 海岸沿いを歩くだけでも十分なウォーキングになりそうだが、少し森に入って、亜熱帯気候ならではの植物群を見て回るのも樂しそうだ。
「皆で散歩するの、ワクワクするなあ……」
「これだけ自然が逞しいと、オーストラリア名物のブッシュウォーキングになりそうですね」
 欣々いそいそと支度を整える奏と瞬には、何事にも気の回る響と律が聲を掛けて、日没までのアクティビティをより充実させんと準備を整えてくれる。
「念の爲にエアロガードを羽織っていこうか。人数分を出すよ」
「簡單な携行食料と、あとはペットボトルも持っていこう。ちょっとした冒険気分を味わえそうだ」
 どこまでも頼もしい兩親に、子供達は嬉しそうに微笑ひとつ。
 大自然を堪能するに万全の準備を整えた一家は、仲良く影を並べて島の散歩に繰り出すのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

雁帰・二三夫
「流石海外、日本のキャンプ場とは違いますね」
子供の頃読んで憧れた、自然公園内のキャンプはこんな感じでしょうか
キャンプ場として許された範囲を歩き回りテント設置場所を確認
「この近くの危険生物情報はありますかね…」
グー◯ルさんの翻訳頼りでネット検索
「犬猫忌避剤はディンゴに効きますかね…」
地面や植物に掛からないよう一時的に車出してカバー
予備ポール数本に噴霧しテントから少し離れた風下に設置
すぐ取り出せる場所に唐辛子スプレー何箇所か準備
「緊張して今日はカレーとラーメンの気分です…」
コッヘルで手早く卵のせインスタントラーメンとレトルトカレー準備
メスティン炊きご飯にぶっかけ一気食いしたらすぐ食器片付ける



 子供の頃、ページを捲る度に昂揚した本がある。
 一面に刷られた、見る者の瞳に迫る大自然――圧倒的スケールの自然公園内でキャンプする大人達に、少年の時分は強く憧れを抱いたものだが、今、それに近い景色が眼前にある。
「……流石は海外、日本のキャンプ場とは違いますね」
 靜かに感嘆を零すは、あれからグンと成長した雁帰・二三夫(引きこもりたい住所不定季節労働者・f37982)。
 陸揚げした荷物と共に上陸した彼は、キャンプ場として許された区域だけを歩き、早速テントの設營に掛かった。
「降雨の予報は無し、タープの張り方はこんなもんでしょう」
 而してフィールドを海外に移しても、彼の丁寧な仕事は變わらない。
 忽ち拠点を作った二三夫は、葉陰より涼しい空間でスマートフォンを取り出すと、慣れた手付きでスイスイ。この世界でも多く使われている検索エンジンの翻訳機能を使い、調べものを始めた。
「この近くの危険生物情報はありますかね……改めて確認しておかないと」
 何せブライビー島は、モートン島より観光地化していない穴場。
 手付かずの自然が残るという事は、それだけ自然の脅威が大きいのだと気を引き締めた彼は、バトロワシューター時代から結わえているミサンガを輕く搖すると、ユーベルコード製の無限倉庫に収めていたキャンピングカーを召喚し、同時に風向きを確かめた。
「犬猫忌避剤はディンゴに効きますかね……」
 地面や植物に掛からぬよう車でカバーしつつ、予備ポール数本に噴霧。テントから少し離れた風下に設置する。
 すぐ取り出せる位置に唐辛子スプレーを準備するのは、自衛は勿論、自然に対する敬意の顕れか――自らを野生動物と劃した二三夫は、つと周囲を見渡して呟いた。
「うーん、まだ緊張していますね……今日はカレーとラーメンの気分です……」
 極上極大の自然に身を置く昂揚をつくづく実感した二三夫は、使い込んだコッヘルを取り出すや、逆の手でインスタントラーメンとレトルトカレーのパウチを引っ張り出し、手早くキャンプ飯作りに取り掛かる。
「ササッと作っちゃいましょう」
 火加減を見つつ、片手でコツコツと卵を割って落とす。
 これをメスティンで炊き上げたご飯にぶっかけ、豪快に一気喰いした二三夫は、滿腹の余韻を味わう間もなく食器を片付ける――實に慣れた動きだ。
 唯だその表情は晴やかで眩しく、
「……諸事、整ってきました」
 嘗て本を開き見た少年のように輝いているとは、本人も鏡を見ずしては判別らぬ事だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

浅間・墨
ロベルタさん(f22361)
「…水着で…で…か? …えと。私…水…は…?」
テントを設置して食事後にロベルタさんの提案に疑問が。
水着は購入してあるようで安心…え?私の水着の用意も?
サイズは問題ないようですが…なんで知ってるのでしょう。

故郷とは違いますが同じように海はとても綺麗で。
私は波打ち際を裸足でゆっくりと歩いてみましょうか♪
観光客は少ないようですが水着の上にパーカーを着ます。
水着だけですとなんだか…とっても恥ずかしいので。
…でも…何故かすれ違う男の方が振り返っているような?
隣にロベルタさんは居ません。近くにはいると思いますが…。
「…わっ?!」
何も考えず波音を聞きつつ歩いていて背後から抱き着かれて。
弾むような声で正体がロベルタさんだと判って安心しました♪
「…っ? ロベ…タさ…。びっ…りし…した…♪」
じゃれついてくるロベルタさんは私の妹のようで可愛いです♪
それからロベルタさんと二人で浜辺を歩きます。
彼女は途中で見つけた蟹と一緒に蟹歩きしたり楽しそうです。
…後で水浴びをしませんと…ね。


ロベルタ・ヴェルディアナ
墨ねー(f19200)
「はーい! この島の、浜辺に行ってみよー?」
拠点作って食事して一息ついてから提案するじぇ!
え?水着?大丈夫だじょ♪ちゃんと買ってある!!
ふふん♪用品店で買ったんだじょ♪抜かりなしッ♪
墨ねー恥ずかしいと思ってパーカーも用意したじぇ♪
僕がライトグリーンで墨ねーはホワイトだねぃ。

「うぇーい♪ 潮風が気持ちいいじぇ~♪」
両腕を一杯広げて一杯空気を吸い込みながらダッシュ。
陽射しも気持ちがいいし海水も暖かくて心地がいいねぃ。
海の中に飛び込みたいけど…後が大変なことになっちゃう。
持ち込んだ水は少ないから身体を洗う水は節約しなくちゃ♪
だから脚だけ漬けてぱちゃぱしゃするだけに留めるじょ。
「そーいえば、墨ねーは…あ! 発見♪ 突撃だじぇ♪」
のんびりと歩いてる墨ねーに後ろから抱きつくじぇ♪
「~♪ 墨ねーちゃん、捕まえたじょ♪ 何してるの?」
波打ち際を歩くって墨ねーらしー楽しみ方だねぃ♪
「じゃあ、僕も一緒に歩くじぇ♪ …うぇー♪」
僕も墨ねーの周りを廻りながら波打ち際を歩くじぇ。



 海岸に近いキャンプ区域に、本日の寝床となるテントを設營する。
 アウトドア活動は初めてながら、用品店の從業員の説明をよく聽いた二人なれば、インナーテントの立ち上げからペグ打ちまで卒なくこなしてみせよう。
 まんまるフォルムが愛らしいドームテントを手早く完成させた後は、レクタタープを張ったリビング空間を拠点に、ゆったりと流れる時間の中でキャンプ料理を愉しみ、自らの手で作り上げた美味を堪能する。
 そうして滿腹の幸福しあわせいっぱい、ふくふくの笑顏で食器や器具を片付けたロベルタ・ヴェルディアナ(ちまっ娘アリス・f22361)と浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)は、一息ついて椅子に収まった。
「……ロベルタ、さん……のお陰……で……万事……順調、に……進められ……た……」
「う! 二人だとテントもお料理もうまくいったねい♪」
 特段に急いた覺えは無いが、まだ時間ときの餘裕があると空を見上げれば明るく。
 潮風が樹々を擦り抜ける音や、寄せては返す波の音の他は何もない――心地よい靜寂しずけさに身を置いた墨は、ローチェアで脚をパタパタと動かすロベルタに問いかけた。
「日没まで……何……して……過……ましょうか……」
「はーい! この島の浜辺を歩いてみよー?」
 元気に挙手するなり立ち上がり、一旦、テントへと入っていくロベルタ。
 どうしたのかと腰を浮かせた墨が麗瞳にその背を追えば、少女は欣々いそいそと荷物から何かを引っ張り出し、晴やかに広げて見せた。
「じゃじゃーん♪ これでお散歩に行くじぇ~」
 兩の玉臂にお披露目されるは、フリルをあしらった淸純な水着。
 その夏らしい彩に長い睫をぱちぱちと瞬いた墨は、少し困ったように胸元で手を泳がせた。
「……水着で……で……か? ……えと。私……水……は……?」
「え? 大丈夫だじょ♪ ちゃんと買ってある!!」
「……買っ……えっ……」
 實に堂々たる返事に戸惑った墨が陽光の下でも見せなかった汗(冷や汗)を流せば、くるりと背を向けたロベルタは再び荷物を弄り、ちょっぴりお姉さんな水着を差し出して見せた。
「これ、さっきの用品店で買ったんだじょ♪」
「……い……つの間、に……」
「ふふん♪ 抜かりなしッ♪」
 ドヤッと花顏を綻ばせるロベルタの前、恐る恐る水着を手に取る墨。
 慥かに用品店での彼女の機動力は目を瞠るものがあったが、それにしても用意周到だと佳人が圧倒される中、少女はテントの通風孔と出入口のファスナーを締めつつ、ぴっちり目隱しした内部に招いて着替えを促す。
 その手際の良さに、前髪の奧に祕める双瞳を皿のようにした墨は、導かれるまま衣装替えするのだった。



「……申し分ない……サイズ……です、が……なんで……知っ……のでしょう……」
「ふふふーっ、よく似合ってる♪」
 而して白濱に麗姿を現した墨とロベルタは、靑海に咲いた花のよう。
 透き通るほど輝かしい白肌を際立たせる水着は勿論、すらりと伸びる四肢もたわやかで美しく――同じく島を訪れたキャンプ客を忽ち釘付けにした。
「……っ……あぅ……すれ違う……男の方、が……振り返っ……ような……」
「墨ねー? ……もしかしなくても、僕達、見られてるかもねい」
 ロベルタは気にしない方だが、ブライビー島で注目を集めた墨は、内海の小島でも熱烈な視線を注がれ、またも身を縮こめる。特に男性の情熱的な眼差しは、眞夏の太陽より柔肌を射るよう。
「……水着だけですと、なんだか……とっても……恥ず……しい、ような……」
「大丈夫! 墨ねーが恥ずかしがると思ったから、パーカーも用意したじぇ♪」
 墨が折角の艶姿を葉陰に寄せて仕舞いそうになる処、サッと羽織り物を渡すロベルタ。やさしい(やさしい)。
 自身は明るく瑞々しいライトグリーンを、墨には一縷の穢れなき純白パーカーを準備していた少女は、どこかホッとしたような表情を見せる墨にニッコリ。色違いだが、デザインはお揃いなのだと言を添える。
「やっぱり、水着と合ってる♪」
「……お気遣い、を……あ……がとう……ござ……す……」
「う! まだまだ見られてる気がするけど、このまま海の方へ行っちゃお♪」
 花唇に淡く咲みを浮かべる墨の手を取り、タタタッと浜辺に向かって走るロベルタ。
 引き波が置いていく白泡の眩しさにキラキラと瞳を輝かせた少女は、その場で元気に大ジャンプ!
 降り注ぐ陽光をめいっぱい浴びるよう兩手を広げつつ、次いで寄せる波をピョンと跨いだ。
「うぇーい♪ 潮風が気持ちいいじぇ~♪」
「……本當……心地佳い……ですね……っ」
 釣られてジャンプした墨も、鈴振るような佳聲ごと跳ねて嬉しそう。
 着地すると同時、踝に潜る水の冷たさに喫驚おどろいた二人は、目を合わせるや吃々と竊笑を零すのだった。



 透徹たる蒼穹に向かってグンと腕を伸ばし、肺腑いっぱいに澄んだ空気を吸い込む。――美味しい!
 昼過ぎの陽射が愈々大地を温めるが、湿度の低さが快適を齎しているのかと周囲を見渡したロベルタは、浜辺に打ち上がった流木の大きさに目を丸くしつつ、波打ち際を散策する。
「こんなに気持ち良いと、海に飛び込みたくなるけど……後が大變なことになっちゃうねい」
「……そ……です、ね……眞水は……大切……すから……節約……ていかないと……」
「うー。脚だけにしとこっ」
 限りなく自然に近いキャンプ場なれば、新鮮な水は二人が持ち込んだ分だけ。
 リゾート地とは違って不便な所もあるが、柔かな脛を濡らす波飛沫や、引き際に擽ったい感触を残していく砂などを独り占め出來るのは穴場ならでは。而して今は樂しさが勝るというもの。
 好奇心逞しいロベルタは、汀に寄せる波を追いかけるようにダッシュ!
 自ら紡ぐ風にパーカーの裾を膨らませながら、白濱に佇む流木をピョンピョン飛び越えて駆けていく。
「……ふふ、ロベルタさん……翼が生えたように……イキイキして……」
 まるで天使が遊びに來たようだとは、その背をみつめる墨の言。
 それもその筈、世界を渡ると云えば、オブリビオンの気配のある血場ばかりであったから、邪気の無い開放的な場所では、ありのままの――より無垢な姿を見られよう。
「偶には……こんな風、に……休……のも……良い、ですね……」
 ――勿論、それは己も。
 艶やかな黑髪が潮風に梳られる儘、パーカーの襟の合わせを寄せつつ波打ち際を歩いた墨は、不圖ふと、先行していた筈のロベルタの姿が見えない事に気付き、きょろきょろと周辺あたりを見渡す。
「……ロベルタ、さん……? ……近くには……いる、と……思いますが……」
 ぱちゃぱしゃと波遊びをして、大きな流木の上を伝い歩いていたのは見ていたが……。
 折に擦れ違う男性キャンプ客の熱視線を何とか遣り過ごしつつ、我が戰友で相棒を探さんと爪先を進めれば、突如として肉薄する佳聲に背筋が聳った。
「うぇーいっ! 突撃だじぇ♪」
「……わっ?!」
「墨ねーちゃん、捕まえたじょ♪」
 なんと背後から現れたロベルタが、ぎゅぎゅ~っとハグ!
 少しジャンプして繊肩に腕を回した少女が、悪戯な笑顏で飛びついた。
「……っ? ロベ……タさ……。びっ……りし……した……♪」
「~♪ 何してるの?」
「……何も……考えず……波打ち際を……歩いていました……」
「うんうん。墨ねーらしー樂しみ方だねぃ♪」
 親しげにバックハグした儘、肌膚の觸れ合う距離で佳聲を交わす。
 無邪気にじゃれてくるロベルタが、我が妹のようで可愛いと佳唇に弧を描いた墨は、肩越しに穩やかに言を返した。
「……てっきり……前を、歩い……るかと……」
「蟹を見かけたから、一緒に歩いてたんだじぇ~」
 云うやパッと腕を解いたロベルタは、白泡に抱かれる蟹と一緒にシャカシャカ橫歩き。
 その愛くるしい仕草にクスリと微笑を零した墨は、玻璃ガラスの震えるような綺麗な聲で言った。
「……もう少し……風音や……波音を……聽いていこ……と……思うのですが……」
「じゃあ、僕も一緒に歩くじぇ♪」
「……後で、水浴びを……しませんと……ね」
「だねい♪」
 陽が沈むまでのんびりと、ふたり、心行くまで自然を滿喫しよう。
 そう首肯を揃えた墨は、己の周囲を躍るように回りながら漫歩くロベルタに塊麗の微笑ひとつ。仲良く潮風を浴び、波打ち際をゆったり歩いて行くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『キャンプの夜を楽しもう』

POW   :    ゲームやお喋りに興じる

SPD   :    歌やダンスで盛り上がる

WIZ   :    満天の星空を眺める

👑5
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 黄昏時、水平線を明々と染め上げた茜色が漸う紫がかり、軈て紫紺の帳に覆われる。
 人工光が限りなく少ない小島は、夜ともなれば星々がハッキリと光を瞬かせ、天蓋いっぱい星座を広げよう。
 普段は北半球で暮らす者なら、見慣れた夜穹とはまた違った南半球の珍しい星座を見られるだろうし、根気佳く眺めていれば、キラリと筋を引く流れ星も見られるだろう。
 パチパチと音を立てる焚火を傍に、ただ靜かに星空を眺める――。
 ここではそんな非日常体験を堪能する事も出來るが、勿論、コーヒーをお供に友達とおしゃべりを愉しんだり、テントの中で読書したり、ゲームでワイワイ遊んだり……色々な方法で友情を深める事が出來る。

 ――夜が更けるまで、眠くなるまで。何をしよう?
 そうして惱む時間も含め、内海の小島に身を置いた猟兵には、たっぷりと時間が用意されていた。
雁帰・二三夫
「ここでコレ、有効でしょうかねぇ」
自分に虫除けスプレー
テント内で屋外用蚊取線香焚く
入口より少し離れた風上に焚火台設置しスウェーデントーチ
「こちらで売っている薪はユーカリだったかもしれませんね。手持ちがあるから買いませんでしたけど、帰りに覗いていかないと。アロマオイルのランタンももっと準備しておくのでした」
反省しつつ南半球用の星座早見盤手にワクワク外へ

「南十字星とうみへび座が見頃のはずですよね。どこでしょう」
手元をちょっとだけLEDハンドライトで照らしては空眺め
「エリダヌス座と魔女の横顔星雲?これ天体望遠鏡がないと見えないやつじゃないですかね?!」
知らない星座の由来から関連記事に流れ夜が更ける



 事前に確認したクチコミではエアロガードを薦める人も見掛けたが、これだけの大自然となれば虫は多い。
 ただキャンプ慣れした者なら用意も周到で、手持ちの荷物から虫除けスプレーを取り出した雁帰・二三夫(引きこもりたい住所不定季節労働者・f37982)は、自らにサッと吹きかけて言った。
「ここでコレ、有効でしょうかねぇ」
 手は止まらず、テントの中に入っては屋外用の蚊取り線香を焚いて防除を固める。
 海外の見知らぬ虫に刺されては大變と、しっかり対策してテントを出た二三夫は、少し歩いて風上に向かうと、手早く組み立てた焚火台にスウェーデントーチを設置した。
「――良し。これで長く炎を愉しめそうです」
 丸太の切り込み部分から燃え上がる炎の色と、匂い――。
 この瞬間もキャンプの愉しみの一つだと佳唇に緩やかな弧を描いた二三夫は、不圖ふと、頤に手をやって呟いた。
「……そう云えば、こちらで売っている薪はユーカリだったかもしれませんね」
 手持ちがあるからと店には寄らなかったが、ユーカリは密度が高く火持ちが良いと言う。
 帰りに覗いていこうと決めた彼は、明々と搖れる炎の色を眺めるうち、またひとつ呟いた。
「アロマオイルのランタンも、もっと準備しておくのでした……次の課題ですね」
 やりたい事を熟す裡、またやりたい事が見つかるのは、キャンプを愛する者ならでは。
 再びテントに戻り、荷物から南半球用の星座早見盤を取り出した二三夫は、次いで視線を上に――紫紺の穹を仰いで星探しを始めた。
「慥か南十字星とうみへび座が見頃の筈ですよね。……何處でしょう」
 ぐるり夜空を眺めた眸を一旦下に、LEDハンドライトで照らした早見盤を確認する。また夜空を見る。――あった!
 見つけ方なども參考にしながら、夜穹と宙地図を何度か往復した二三夫は、他の星座も探してみようと凝らしていた瞳を瞠り、訴えるよう天蓋に聲を投げた。
「……エリダヌス座と魔女の橫顏星雲? これ天体望遠鏡がないと見えないやつじゃないですかね?!」
 バトロワシューターとして優れた視力を有しているとは言っても、何事にも限度は、ある。
 ここら辺にあるのかなと、キラキラと星を鏤める夜空に手を伸ばした二三夫は、北半球では馴染みのない名の星座や名付けの由來などを調べる裡、星々との距離をグンと近くしていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・響
【真宮家】で参加

夜ご飯のカレーと山賊鍋とマシュマロのスモアを食べて後片付けを置いて一息。律手作りのバスクチーズケーキとホットコーヒーを焚き火を囲んでいただくよ。

焚き火を囲んで、家族と語り合うよ。そうだね、律が戻ってくるまで色々戦争体験した。律を一度殺したヴァンパイアと魔獣もうち、瞬の故郷を滅ぼした仇も討った。律が戻ってきたらいきなり戦争で驚いたねえ。でも家族4人での戦いも激しい。でも不謹慎ながら気持ちが充実してるのを感じてるよ。

ああ、空気が綺麗だから星空も綺麗だねえ。まるで並んで輝くアタシたち家族のようじゃないか。これからもずっと一緒にいよう。約束だよ。


真宮・奏
【真宮家】で参加

カレーと山賊鍋とマシュマロのスモアを食べて片付けを終えて、心地よい疲れと共にお父さん手作りのバスクチーズケーキとホットコーヒーで焚き火を囲んで語り合います。

そうですね、お父さんが戻ってくるまで沢山の世界の戦争体験しましたし、お父さんを殺したヴァンパイアとオオカミも、瞬兄さんの故郷の集落を滅ぼした仇も討ちました。でもお父さんが戻ってきた後が本当の戦いが始まった気分です。いなかったお父さんと肩を並べて、騎士として格段に腕が上がった気がします。

ああ、綺麗な星空。お友達が沢山空にいます!!(目がキラキラ)ええ、これからもこの星のように家族一緒にいましょう!!


神城・瞬
【真宮家】で参加

家族でカレーと山賊鍋、マシュマロのスモアを食べ、総出で片付けて、と。お父さん手作りのバスクチーズケーキとホットコーヒを持って焚き火を囲みます。

そうですね、お母さんと奏と僕で沢山の世界の戦争を経験し、お父さんを殺した仇と僕の故郷を滅ぼした敵の仇を討ちました。でも正直な気持ちとしてはお父さんが戻ってきた後から、僕たち家族の真の戦いが始まったような気がします。家族と共に世界を救う戦いは僕にとって前に進む糧になっています。

ああ、空気が澄んでるだけあって綺麗な星空ですね。ええ、並んで輝くのは僕たち家族のようですね。これからもずっと一緒にいましょう。


真宮・律
【真宮家】で参加

家族でカレーと山賊鍋、マシュマロのスモアを食べ、総出で片付けた後、ホットコーヒーのお供にバスクチーズケーキを作る。焚き火を抱えてコーヒータイムだ。

俺が戻ってくるまでの家族の奮闘は聞いた。俺の仇を取ってくれてありがとうな。家族の勇敢な戦いぶりをこの目で見れなかったのは残念だが、相変わらずの腕の響と、成長した奏と、頼もしい瞬と肩を並べて戦えて以前生きてきていたより、キレのある充実した戦いができている。

ああ、俺たち家族のように星が並んで輝いている。ああ、今度こそ俺は生き抜いてみせる。ずっと家族一緒にいよう。



 真宮家の拠点に燈された焚火は、夜に向けて炎の色を鮮明に、より一層存在感を増していく。
 日中の料理でも活躍したその火力は、夕食のカレーをくつくつと煮込んで旨味を引き出し、また少し離れた焚火台では、がっしりと組み上げた三脚に鍋を吊るして囲炉裏風に、ぶつ切り鶏肉と野菜が豪快に入った山賊鍋が味噌の匂いを膨らませている。夜も一際の美味を堪能出來そうだ。
「ふふっ、ワイルドライフの筈が御馳走ばかり! どんどんお腹に入っていきます」
「水が少ないか心配だったが、具が隱れる位で正解だった。これなら何杯もおかわり出來る」
 流石と云うべきか、強靭な胃袋を誇る真宮・奏(絢爛の星・f03210)と真宮・律(黄昏の雷鳴・f38364)は無敵!
 頬をふっくり膨らませて幸せそうに、美味しそうに食べて、食べて、まだ食べる!! すごいっ。
「そんな風に食べて貰えると、作り甲斐があるってもんだよ」
「二人を見ていると、つられて食べたくなってきました。……おかわり頂こうかな」
 厚切りビーフが自慢のスパイスカレーもペロリと平らげる二人には、その健啖が気持ち良いと眺めていた真宮・響(赫灼の炎・f00434)が和々ニコニコと瞳を細め、隣する神城・瞬(清光の月・f06558)は自身も食欲を煽られたか、いつにない量を食べて皆を驚かせる。明々と燃える火は勿論、仲良し家族は笑聲も尽きない。
「ふぅ、ごちそうさまでしたっ!」
「其々が食材の調達や料理に動いてくれたお陰で、最高の食事になったな。皆ありがとう」
「――扨て、片付けも手早くやって仕舞おうか。洗い物は任せておくれ」
「僕もやります。少ない水で洗うコツは、お母さんから學びましたから」
 そうしてメインディッシュを済ませたら、一旦、食器や道具を片付ける。
 片や洗い物をして、片や油の始末をして、また火の番をして。効率的に手分けして働いた四人が再び集まったのは、食後のデザートにマシュマロを取り出した頃合いだったか。
 待ってました! とばかり大きめサイズのマシュマロ袋を抱き締めた奏は、瞬と二人、嬉々と兩親にお披露目した。
「お父さん、お母さん! 最後はスモアをしませんか?」
「先のお店で買っていたんです。クラッカーに挟んで食べましょう」
 一同で炎を圍み、串に刺したマシュマロを焼く――スモアはキャンプ名物で、団欒の證左あかし
 おしゃべりをメインに夜の時間を愉しもうと子供達が言ったなら、響も律も莞爾と首肯を返し、眞っ赤に燃える炎を前に笑顔を照らし出す。
 而してフラットな円柱型の焚火台に集まった四人は、“some more”(もう少し欲しい)――もう一時の美味を堪能し始めた。



「……それにしても、こうしてお父さんも一緒にキャンプが出來るなんて。以前は考えられませんでした」
 欣々いそいそと金属串にマシュマロを刺しつつ、花顏を綻ばせながら呟くは奏。
 父の記憶が斷たれたのは、彼女が五歳の時。律はヴァンパイアの操る魔獸から響と奏を庇って死亡した。
 物心つく前から戰場を生きてきた律にとって、命を落とす覺悟は十分にあったろうが、唯ひとつ――愛する妻と娘を置いて去るのはどれだけ辛かったろう。常闇に覆われた絶望の世界を生き抜くに、母娘二人では餘りに過酷すぎる。
 残される者も、残していく者も。お互い苦しんだに違いないとは、次いで響が口を開いて、
「そうだね、もう会えないと思っていたけれど……こんな風にキャンプする日が來るなんてね」
「何の因果か、再びこの世界に舞い戻ってきたな。俺もこんな運命が待っているとは、思いも寄らなかった」
 彼女の言を繼ぐは、命を落とした当時の姿を見せる律。
 13年の時を経て、魂人として家族の前に現れた父は、響らに少なからず衝撃を與えたものだが……今は喜びが勝るとは、嘗ての過酷を穩やかに話す瞬が教えてくれよう。
「お父さんが居ない間、お母さんと奏と僕で沢山の世界を渡り、また樣々な戰爭を経験しました」
 エンパイアウォーに始まり、最近はエンドブレイカーの戰いにも參じた。
 また名だたる猟書家と相見え、その悪逆暴挙に終止符を打つことも出來たと振り返れば、彼の話に相槌を打っていた響と奏が、同じく記憶を辿って語り出す。
「あれから私達は、お父さんを殺したヴァンパイアとオオカミも、瞬兄さんの故郷を滅ぼした仇も討ちました」
「瞬が六つの時だったか。里が襲われて、兩親も亡くなられて……。集落の人々も浮かばれると良いんだけど」
 響がそう言を添えたのは、ダークセイヴァーにも大きな転機が訪れたから。
 律が魂人であるように、かの世界で命を落とした者達は死ぬことも叶わぬ絶望の車輪を回り続ける事になるのだが、それでも少しずつ謎が明らかになると共に、人々が平和へと歩み始めていると感じている。
 猟兵を含め、絶望に抗う力が高まってきたとは律自身が實感しよう。
「俺の仇を取ってくれてありがとうな。家族の勇敢な戰いぶりをこの目で見られなかったのは残念だが、人々が希望の光を追い始める姿に、皆のこれまでの奮鬪が理解るというものだ」
 己がこの世を離れた空白の13年で、100年の吸血鬼支配が搖らいだ。
 この間を生き抜いた響や奏、瞬が誇らしいと微咲えみを注げば、丁度マシュマロを炙っていた響が流眄を結ぶ。
「……律が戻ってきたら、いきなり戰爭になったんだっけ?」
「はい、あの時は驚きました」
 家族四人で向き合う事になったのだとは奏の言。
 白磁の繊手を伸ばしつつ、串に刺したマシュマロに輕く焦げ目をつけながら彼女が言えば、傍に座る瞬も強く頷いて言った。
「故郷を滅ぼした敵の仇を討てたのは良かったのですが……正直な気持ちとしては、お父さんが戻ってきた後から……僕たち家族にとって眞の戰いが始まったような気がします」
「瞬の言う通りかもしれないね。家族四人での戰いも激しいが、不謹慎ながら気持ちが充實してるのを感じてるよ」
「それは私もです。お父さんと肩を並べて戰って、騎士として格段に腕が上がった気がします」
 戰いに向き合う姿勢が變わった。鋭気が漲った。
 律の合流後、慥かな「成長」を感じていると響に次いで奏も同意を示せば、瞬は焔光に照り上がる家族の顏を眺めて告げる。
「家族と共に世界を救う戰いは、僕にとって前に進む糧になっています」
「…………頼もしいな」
 ここに正直な思いを零すは律。
 自身が戻ってくる迄の三人の奮鬪は聞いていたし、己が同行してからは、相變わらずの腕の響と大きく成長した奏、そして冷靜沈着な瞬も實に頼り甲斐がある、と嫣然をひとつ。而して自身も家族に刺激を受けている事を明かした。
「俺も前に生きていたより、キレのある戰いが出來ているよ」
 嚴しくはあるが、輝かしい日々を過ごせている――それはきっと全員が感じていること。
 焼きマシュマロの甘い香りをクラッカーに挟み、とうろり溶けるチョコレートと合わせて口に運ぶ律には、炎越しに妻と子供達の温かな眼差しが集まろう。
 おいしい、と笑顏を合わせた四人は、キャンプの王道デザートを愉しみつつ歡談に耽るのだった。



 炎を圍んでスモアを堪能した後は、夜空を眺めてのコーヒータイム。
 珈琲大國のオーストラリアらしく濃いめの“Short Black”(エスプレッソ)を淹れた響は、上質な豆の馨りを漂わせるカップを夫婦用に用意すると共に、瞬には香味豊かな“Long Black”(ブラックコーヒー)を渡す。
「瞬はブラックで、奏のには温めたミルクを入れておいたよ」
「オーストラリアでは“Flat White”って言うんでしたっけ。頂きます」
 そんな会話を交わしていたら、今度は律が別なる美味を運び來て、
「クーラーボックスで寝かせていたんだ。コーヒーのお供になるだろう?」
「わ、お父さん手作りのケーキ! とっても美味しそうです!」
 しっとり表面を焼き上げたバスクチーズケーキには、奏が紫彩の瞳をきゅうと細める。
 食材を取り出す毎に空き容量を増やすクーラーボックスの活用法を考えていた律は、此度のキャンプで会得したスキレットとダッチオーブンでケーキ作りに挑戦していたのだ。気になるお味は――律の会心の笑みを見れば瞭然!
 フォークに分けた甘味を一口運べば、奏の麗顏は柔かく緩み、その愛らしい表情にまたも家族はほこほこ。
「ふふ……美味しいっ!」
「奏はたっぷり甘やかされて、律に愛されてるねぇ」
「子供みたいに喜んでくれるから、昔を思い出すんだよな」
「その穉気あどけ無さが長所なんですよ。奏も、お父さんも」
 而して和やかな笑顔を揃えた四人を照り輝かせる炎の先、火粉の踊れる夜穹を見上げれば、紫紺の帳に鏤めた星々が燦然と瞬いていた。
「――ああ、綺麗な星空。お友達が沢山空にいます!!」
「周囲に光も少ないし、空気が澄んでるだけあって透き通るような星空ですね」
 奏が瞳をキラキラと、美し虹彩に数多の綺羅星を映せば、同じく細頤を持ち上げた瞬も靜かに感嘆を零す。
 子供達が伸ばした繊指に星々を結ぶ中、響もまた長い睫を星燈りに結んで囁き、
「仲良く並んで、連なって輝いて……まるでアタシたち家族のようじゃないか」
 云えば、子供達からは「本當に」と嫣然が返り、傍らに腰掛ける夫からは強い決意の聲が届こう。
「ああ、今度こそ俺は生き抜いてみせる」
 広大な宇宙を仲良く並んで巡る星辰ほしのように――離れない。
 雪嶺の鼻梁を空の花に結んだ儘、固く誓うように告げれば、同じく決意に滿ちた科白が夜穹に向かって昇っていく。
「ずっと家族一緒にいよう。約束だよ」
「はい、今日より後も四人で戰っていきましょう」
「――ええ、これからも。この星達のように!」
 音階を違えた佳聲こえが想いをひとつに、美しい音色になる心地佳さ――。
 家族の絆をより鞏固なものとした真宮家の四人は、滿天の星の下、日が替わるまで夜カフェを愉しむのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

浅間・墨
ロベルタさん(f22361)
…。(ゆったり揺れる蚊取り線香の煙を眺めてる)
なるほど。虫除け剤を勧められたのはこの為ですか。
『蚊取り線香』を幾つか購入しておいてよかったです。
食事で使用した簡易竈の火を利用しお茶を淹れますね。
勿論ロベルタさんの分の茶も用意してのんびりと。

テントの外に椅子を出して座りながら夜空を眺めています。
暫くは虫の鳴き声や揺れ擦れる草木の音で占めてましたが。
ロベルタさんが私のことに興味がでたようで。珍しいです。
「わ、私の…家…、で…か? …えと…そう…すね…」
まず出身はサムライエンパイアの最南であることを教えます。
魔を祓う家であること。4歳から鍛錬の日々だったことを話して。
吸血鬼調伏に失敗したこととその後のことまで話しますね。
これが原因で勘当されてしまったのですが大して気にしてません。
家には妹がいるので安心でしょうし一族に若い者もいますからね。
それに…。
「…ロベ…タさ…や友…と言え…方々…逢え…した…から…♪」
修練の話にはとても興味があるようで。いつまでもお話しますよ。


ロベルタ・ヴェルディアナ
墨ねー(f19200)
…。(犬座りで蚊取り線香の前に陣取っている)
こんなか細い煙が虫に効果あるんだねぃ。面白いじぇ♪
墨ねーの『お茶を淹れた』の声でチェアーに戻るじょ。
「こーゆー場所で飲むお茶も美味しいねぃ❤」
墨ねーの隣でゆっくりとお茶を飲みながらのんびりだ。

…。
気が付いたら殺意溢れる世界で僕には昔の記憶がないじぇ。
奇妙な世界で生きられたのは銃とか剣の腕があったから。
それからプログラムの腕前があったのも助かったよねぃ~。
墨ねーはどんな過去があるんだろ?家族のことも気になる。
って考えたら聞きたくなったじぇ。墨ねーのこと。

色々と教えてもらってから一番気になったことを気くじぇ♪
それは剣のこと。僕も剣を使うけど全く違うからねぃ。
墨ねーの剣術が凄い理由が初めて解ったような気がするじょ。
え?実家では基礎しか教えられてなくて剣技は黒猫さんが?
へー。あの猫さんって司書だけじゃあないんだねぃ。意外だ。
僕も墨ねーみたいな剣を教えてって言ったら教えてくれる?
…そっか。難しいかぁ~。確かに武器から違うもんねぇ~。



「…………」
「…………」
 紫紺に染まった天空そらに向け、ゆったりと立ち昇る白煙一条を眺める花が一輪。
 その傍らには、煙を発する渦巻きの前に犬座りで陣取る花が一輪。
 潮風と波音以外は殆どない靜寂に佇む花は、暫し沈默を共にした後、ポツリと言を零した。
「そう云えば、用品店のにーちゃん、虫除け対策は確りした方が良いって言ってたねい?」
「……なる……。……蚊取り線香、を……幾つか……購入して……て……かったです……」
 キャンプ用品店で勧められたアウトドア用除虫剤に火を點けて幾許――。
 日本ではお馴染みの蚊取り線香を幾つか拠点の周りに設置すれば、芙蓉の花の蜜は戀しくとも、煙が近付けさせてはくれるまい。事實、効果は覿面だった。
「こんな繊細かぼそい煙が虫に効果あるんだねぃ。面白いじぇ♪」
「……はい……馨りも、良くて……煙たくも……ありませんね……」
 これで海外の見知らぬ虫に刺される危険は抑えられようと、周囲に広がるアロマの馨りに安堵した浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)は、ちょこんと座って線香の螺環コイルを見つめ続けるロベルタ・ヴェルディアナ(ちまっ娘アリス・f22361)に微咲えみを置くと、自身は焚火台に向かって歩き出した。
「……簡易竈の……火を……って……お茶を……淹れ……すね……」
 季節は夏とは言え、陽が落ちれば夜は冷える。
 粗削りの自然に圍まれた島なら猶更とポットを火に掛けた墨は、シェラカップと同型の茶漉しにゆっくり湯を注ぎ、普段とは違うアウトドア茶器とキャンプティーの魅力を感じながら茗緑めいりょくを淹れる。
「……ロベルタ、さん……お茶、……いかがですか……?」
「う! いま行くじぇ~♪」
 つつましい鶯の聲に耳を欹てたロベルタが、振り返るなり素早くローチェアに戻る。はやいっ。
 そうしてテーブルの前で花顏を綻ばせる少女には、淸涼感のある爽やかな馨りが差し出された。
「ど……ぞ……」
「わ、きれーな翡翠色! 匂いもいいねい♪」
「……使い慣れない……茶器でしたが……うまくいきま……た……」
 ナチュラルな木目のカップに注がれた茶は、鼻梁を寄せると仄かに柑橘の馨が捉えられる。
 ほっこりと温もるカップに繊指を温めつつ、一口、二口と飲んでみれば、自然と肩の力が抜けるような――スッキリとした味わいに自ずと口角が持ち上がろう。
「おいし♪ こーゆー場所で飲むお茶も乙だねぃ❤」
「……勝手が……理解った、ので……おかわりも……遠慮なく……」
 ほう、と零れる吐息が重なり、お互いに微笑を湛える。おいしい。
 それから仲良く並べた椅子にゆったりと腰掛けた二人は、上質な茶葉の香味を傍らにのんびり。
 悠久の時間に身を預けつつ、頭上の天蓋が夜に向けて星彩を際立たせていく樣子を眺めるのだった。



「…………」
「…………」
 周囲の音を聽き拾い、時にぽつぽつと言を交して、また靜謐しじまに返る――。
 沈默を共有できるのは仲が良いならでは、其々に滿天の星を仰ぎ、パチパチと焔光を躍らせる焚火を眺めるなどして過ごしていた二人は、つと、ロベルタから零れた呟きによって長い会話が生まれた。
「僕は気が付いたら殺意溢れる世界に居て……昔の記憶がないんだじぇ」
「……慥か……オウガが、美しい地獄を……作り上げているという……」
「うん。あの奇妙な世界で生きられたのは、銃とか剱の腕があったからだねい」
 ロベルタは、不思議の國アリスラビリンスに召喚された異世界の人間アリスだ。
 彼女も例外なく人肉喰らいのオウガに追われ、残酷なデスゲームを強いられていた訳だが、絵本や童話の如き理不尽の中でも、少女は笑顏で生き抜いた。寧ろ意気揚々とオウガと戰っていた。
「プログラムの腕前があったのも助かったよねぃ~」
「……ロベルタさん、が……食べられなくて……本当に、良かったです……」
 猟兵として優れた素質があったのだろうとは、墨の言。
 少女が有する埒外の異能ユーベルコードに何度も助けられたと、これまでの戰いを振り返った佳人は、虫の鳴聲や搖れて擦れる草木の音で占める周囲の音の中に、そと疑問符を添える囀聲を聽いて花顏を持ち上げた。
「墨ねーは?」
「えっ……?」
「墨ねーはどんな過去があるんだろ? 家族やお家の事も気になるじぇ」
「わ……私の……家……、で……か? ……えと……そう……すね……」
 元々探求心のあるロベルタだが、墨自身に興味を持つとは稀有しい。
 眞直ぐに射られる空色の瞳に少々驚きつつ、ロベルタと邂逅する前の前――過去の記憶を辿った墨は、先ずは出自を語り始めた。
「……私は……サムライエンパイアの、最南……魔を祓う家に……生まれ……ました」
 呪術法力を以て魑魅魍魎と戰う、サムライの國『エンパイア』。
 その中でも由緒正しき戰鬪民の血脈を引く墨は、四歳から鍛錬の日々を過ごし、いずれ魔を祓う職を預る身だった。
「唯だ、吸血鬼の調伏に失敗して……返り討ちに、遭い……後天性の半魔に……なったのを機に……勘当されて……」
「カンドー?」
「……家を……追い出された……す……」
 結果、浅間家は吸血鬼の血を混ぜる事となった墨に穢れの烙印を押した。
 これにはロベルタも驚いたか、まんまる瞳をぱちくり見開いた儘の少女には、墨が穩やかな聲色で言を添える。
「でも……家には……妹がいるので……安心でしょうし……一族には……若い者も……います、からね……」
 實の処、本人は勘当された事を然程気にしていない。
 寧ろ浅間家の重苦しい仕來しきたりから解放されて良かったと花唇を結んだ佳人は、「それに」と三日月を描いて云った。
「……ロベ……タさ……や友……と言え……方々……逢え……した……から……♪」
 戰友、相棒、親友――。
 強い絆を感じられる友達は、家を出なければ出逢えなかったと鈴音が彩を帯びれば、ロベルタも佳顔いっぱいに喜色を滲ませ、ふくふく微笑む。かけがえの無い朋友ともを得たのは同じだからだ。
 次いで少女は嬉しそうに、グンと前のめりに質問を重ねて、
「じゃあ、じゃあ、一番気になったことを訊くじぇ♪」
「……一番……気になっ……?」
「う! 墨ねーの剱について! 僕が使うのと全く違うからねぃ」
 云って、今回のキャンプにも持ってきた刀袋を指差す。墨の愛刀だ。
 彼女が如何にして三つの大刀を自在に使い熟すようになったのかと興味深げに訊ねてみれば、墨はこれまでの修練について快く説明を始め、ロベルタはその内容に喫驚を露わにした。
「え? あれだけの剱技を黑猫さんが?」
「……はい……実家では、基礎しか……教えられてなくて……」
「へー。あの猫さんって司書だけじゃあないんだねぃ。意外だったじょ」
 てっきり生家にルーツがあると思っていた、と零れる嘆聲は茶の湯気と交わって。
 旨味に溢れる茗緑に渇きを癒したロベルタは、佳唇を濡らして饒舌に、気になっていた事をここぞと訊いてみる。
 而して墨も親友にかくす事も無しと、赫々と火粉を躍らせる焚火を眺めながら佳く應えた。
「僕も墨ねーみたいな剱を教えて! って言ったら……教えてくれる?」
「……、れは……難しい……かと……」
「そっかぁ~。でも確かに、武器の形状から持ち方、身体の使い方も違うもんねぇ~」
「……ロベ……タさ……の、剱技も……とても頼りに、して……すよ……♪」
 滿天の星の下、燃え上がる焔光に明々と麗顏を照らした二人が、柔かな星眸まなざしを結んで咲み合う。
 戰場では言葉を交わさずとも以心伝心で連携を成功させるものの、此度は言葉を多めに語り合った墨とロベルタは、より一層絆を深く――夜が更けるまで、いつまでもおしゃべりを愉しむのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ゾーヤ・ヴィルコラカ
【安らぎ亭】

 すごい星空ね! こうやってのんびり過ごすのも久しぶり。安らぎ亭に来てから、いろんなことがあったわね。

 涼し気な風を感じながら、星空を見ながら語り合うわね。仁子ちゃんの妖精さん、わたしには綺麗なだけ……でも、どこかに連れていかれちゃうかもって考えると、確かに怖いわね。

 でも、きっと大丈夫よ。今の仁子ちゃんは一人じゃない。私も安らぎ亭のみんなもいる。そんなことになる前に、きっと何とかするわ。ゾーヤさんがいる限り、仁子ちゃんを連れて行かせたりしない。だから、また一緒にこうして、星を見たり、おしゃべりしましょう? もっとお話し聞かせて、まだ夜は長いんだから!

(WIZ、アドリブ等々大歓迎)


恵空・仁子
【安らぎ亭】WIZ
アドリブ問題ありません

「綺麗ね。こんな澄んだ星空は初めてかもしれない。」
満点の星々を眺めながら感嘆の声をあげる
そんな空気にもあてられたのか、
普段は話さないような自身の妖精について話し出す

「私の妖精は私のことが大好きで、だから力を貸してくれるの。
けどね。その思いは私たちとは違っていて、
自分のものだけにしたいと考えているらしいの。」
彼女が話す度に無数の妖精は現れては消える
「普段話す分にはある程度抑えられるけど、
オブリビオンと戦う際には強い言葉で強い妖精を呼ぶ必要がある。
そうなると、私はいつか彼らの世界に連れて行かれるの。
私はそれが怖い。」
そうゾーヤへと話し、彼女の返答を静かに聞く



 今や紫紺の帳に包まれた空は、天蓋いっぱいに無数の煌きを鏤める――まるで夢のような星景色。
 都会に較べて空気が澄んでいる事もあろう、夜穹に瞭然と輝く星々を仰いだゾーヤ・ヴィルコラカ(氷華纏いし人狼聖者・f29247)は、群がり降れるかの如き燦爛かがやきを浴びるよう兩腕を広げて言った。
「すごい星空! 手が届きそうなほど近く感じるわ……!」
本當ほんとう、綺麗ね。こんなに澄んだ星空は初めてかもしれない」
 吸い込まれるようだと感嘆を添えたのは、恵空・仁子(動かざる執筆家・f29733)。
 星燈りに花車を際立てた佳人は、黑瞳を縁取る長い睫を凛と夜空に結び、南半球ならではの星々を靜かに眺める。
 彼女の艶髪がそよと搖れるのを見たゾーヤは、潮風もだんだん熱を手放してきたかと、雪膚に心地よい涼を感じつつローチェアに腰掛けた。
「こうやってのんびり過ごすのも久しぶり……」
 夜こそ明々と燃え上がる焚火を前に、パチパチと薪の爆ぜる音に耳を寄せ、炎の色を見つめる――。
 猟兵として樣々な世界を渡ったゾーヤだが、2023年にはダークセイヴァーが戰場となり、自身も東奔西走した。激鬪の末、『鮮血の洪水』による絶滅が防げたのは何よりだったと大息といきする。
 勿論、故郷の戰爭だけでなかったとは、炎の色を映した翠緑の瞳がキラキラと輝いて、
「……安らぎ亭に來てからも、いろんな事があったわ」
「ゾーヤは折に立ち寄ってくれたわよね」
「ふふ、明日へ羽搏く爲にも羽休めは必要だもの!」
 と、靜かな相槌をくれる仁子に頬笑んでみせる。
 温泉も完備したくつろぎ空間『安らぎ亭』の片隅では、多くの仲間と出逢い、語り合って、互いの絆を深めることが出來たと感謝を示したゾーヤは、暫し夜空を仰いでいた仁子が、ゆっくり近付いて椅子に腰掛けるのを見守る。
 彼女が動くに合わせ、かの象のような精靈も椅子の傍に來るのは平生いつもの事。
 仁子は己に寄り添う精靈を眼眦に留め置くと、眼前に据えた焚火が赫々と火粉の舞い上げるのを眺めつつ、ぽつりと口を開いた。
「……私の妖精は私のことが大好きで、だから力を貸してくれるの」
 異世界の異景が漂わせる空気に中てられたか、普段は話さないような事を話し出す仁子。
 いつにない音色に狼の耳を立てたゾーヤは、仁子が話したいタイミングで言って欲しいと、森然シンと默したまま次の言を待った。
「けどね。その思いは私たちとは違っていて、自分のものだけにしたい・・・・・・・・・・・と考えているらしいの」
 仁子を手に入れたい。支配したい――。
 それが己を愛する精靈の本懷なのだと、普段は多くを語らぬ花唇が告げたなら、流石のゾーヤも瞳を皿のようにして訊ねる。
「それって、妖精さんに囚われちゃうかもしれないって事?」
「……いつか、いずれと思っているわ」
「、そんな」
 麗顏に幾許か緊張の色を差すゾーヤに対し、仁子は沈毅たる語調のまま言を繼いで、
「普段話す分にはある程度抑えられるけど、オブリビオンと戰う際には、強い言葉で強い妖精を呼ぶ必要がある。……そうなると、私はいつか彼らの世界に連れて行かれるの」
 斯く言う間にも、仁子の周囲では無数の妖精が隱顕を繰り返している。
 再び顕現した象の精靈を流眄に見た仁子は、そのつぶらで潤いのある瞳にそと囁いた。
「私はそれが怖い」
 ――怖い。
 普段から発語を控える彼女が、このように感情を吐露するのは稀有しかろう。
 而して長らく抱えていたに違いない思いを聽いたゾーヤは、彼女が背負うものを知ると同時、打ち明けてくれたのが嬉しいと拳を握ると、力強い聲で切り出した。
「仁子ちゃんの妖精さん、わたしには綺麗なだけに見えていたけど、恐ろしい面もあるのね。――でも大丈夫!」
「ゾーヤ」
「今の仁子ちゃんは一人じゃない。私も、安らぎ亭のみんなもいる。そんな事になる前に、きっと何とかするわ!」
 精靈も仁子を愛していようが、仁子を愛する者は沢山居る。己だってそうだ。
 彼女と引き離されるなら、それこそオブリビオンと戰うくらいの気概で抗うだろうと語気を強めたゾーヤは、花顏を凛然と、實に頼もしい表情で告げた。
「ゾーヤさんがいる限り、仁子ちゃんを連れて行かせたりしないわ。――だから、また一緒にこうして星空を見たり、沢山おしゃべりしましょう? もっとお話し聞かせて、まだ夜は長いんだから!」
 色々な事を話そう! 沢山の思い出を作ろう!
 そう語り掛けるゾーヤの、一切の見返りを求めぬ純真な星眸まなざした仁子は、焔光に照り上がる白皙に微咲を差すと、火粉が赫々と昇り上がる先――滿天の星を仰ぎ、その燦然を瞳に焼き付けんとする。
 少し表情を變えた彼女の横顏は冱々と、弓張月の如く。
 その美しさにふくふくと咲んだゾーヤは、己もまた雪嶺の鼻梁を夜穹に結び、宝石箱を引っ繰り返したような星光をひとつひとつ愛でていく。
 潮風と、波音と、葉音と。
 そして折に爆ぜる炎の音との間に、芙蓉二花の佳聲が愉しげに交わって。
 夏のオーストラリアで迎えた夜は、愈々更けてゆくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年01月09日


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#ちょっと寄り道
#キャンプめしを食べよう!
#キャンプの夜を楽しもう
#夕狩こあら


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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト