●放浪する墓場
オッサーグラス宙域。それは、あらゆる
宇宙船を飲み込み沈める、近づいてはならない船の墓場。故に、人々はその宙域を避けて航行する。その地に入り込んだら最後、決して生きては戻れないと知っているから。
だが、そんなオッサーグラス宙域の残骸達は、今やひとつの生命体の如く、まるで意思を持っているかのように移動を開始していた。
既に破棄された宇宙の藻屑。もはや自力で動けるはずもない。ましてや、統率するための乗組員さえいないというのに……数多のスクラップが、何者かに導かれるようにして、ひとつの星を目指し進んでいるのだ。
(「寂しい……寂しいよ……」)
時折、スクラップと化した船の残骸から、何かのノイズに混ざって声のようなものが発せられていた。
(「暗いよ……寒いよ……怖いよ……」)
声は震えて助けを呼ぶも、漆黒の宇宙には誰も訪れない。だからだろうか、オッサーグラス宙域を漂っていたスクラップの残骸達は、自ら助けを求めて動き出してしまったのかもしれない。
(「助けて……助けて……助けて……」)
声が響く度に、宙域の中心部から虹色の光が微かに放たれる。やがて、移動する船の墓場は一際眩く輝く恒星を見つけ、その周囲を公転する惑星に目をつけた。美しい結晶で覆われた、希望と調和と平和の星へ。
●歪められたSOS
スペースオペラワールドのとある宙域にて、宇宙船のSOS信号が発せられている。だが、それが発せられているのは、事もあろうか船の墓場と呼ばれる禁断の宙域であると、霧崎・紫苑(機械仕掛けの闇医者・f32327)はグリモアベースに集まった猟兵達に告げた。
「宙域の名はオッサーグラス。古くから船の墓場として知られている場所で、故に近づく者は誰もいなかった。オッサーグラスのオッサーとは、その周辺の惑星系に伝わる古き言葉で『骨』を意味するらしい」
墓場の名を冠する宙域としては、さもありなんといった感じである。もっとも、それだけであれば、特に問題のない話だ。船の墓場に近づきさえしなければ、船が宇宙の藻屑になることもないのだから。
だが、今回に限っては話が違った。なんと、船の墓場のスクラップ達が巨大なひとつの群体の如く、とある星を目指して移動を開始しているのだという。
「察しの通り、その原因は他でもないオブリビオンだ。次元潜宙艦『メグ・メル』という名の船が、船の墓場にてオブリビオンとして復活した。この船は疑似人格AIと自動制御AIの二つによってコントロールされていたようだが……制御AIの方は、完全に狂ってしまっている」
しかし、その一方で疑似人格AIの方は、以前の人格を保ったままだという。故に、SOS信号を発信し続けているのだが、狂った制御AIはそれを破滅的に解釈し、周囲のあらゆる存在を同化、あるいは排除しようと企んでいるのだとか。
「正直なところ、これだけでもかなり危険な状態だったのだが……あろうことか、この宙域にはぐれの宇宙怪獣が迷い込んだらしい。メグ・メルの制御AIは、その宇宙怪獣さえも取り込み、コントロールすることで、周囲のスクラップにも力を与えて自らの戦力として動かしているようだ」
宇宙虹獣イリシエル。それが迷い込んだ宇宙怪獣の名前だと紫苑は告げた。この怪獣はコミュニケーションに特殊な電磁波を利用し、その際に全身が虹色に発光するという。翼の生えた魚のような姿をしており、船の墓場に迷い込んだのはまだ幼体らしいが、それでも小型の戦艦に匹敵する巨体を誇る。
「群れからはぐれたイリシエルの幼体は、メグ・メルの救難信号を仲間の声と勘違いしてしまったのだろう。今では、そのまま内部に取り込まれ……その電磁波を利用される形で、メグ・メルと共に船の墓場の中枢を担っている」
一刻も早く救出してやれねばならない状態だが、しかしそれには多大な危険を伴う。なにしろ、船の墓場の中はイリシエルの展開する電磁フィールドによって満たされ、あらゆる電子機器が使えない。そのため、墓場の近くまで宇宙船で近づいた後、脱出ポッドに乗った形で船の墓場に突撃し、そこから先は人海戦術でオブリビオンを倒す他にない。
また、当然のことながら墓場の中に眠るスクラップが、メグ・メルの手先として襲い掛かってくる。これらの妨害を潜り抜け、オブリビオンと化したメグ・メルを破壊し、イリシエルの幼体を助け出さねばならない。
「イリシエルの幼体を助けた後は、そのままメグ・メルが向かおうとしていた惑星へと降りてもらいたい。この惑星はネーデa158という名前の星で、別名『奇跡の星』と呼ばれている」
紫苑の話では、その星の生命体は平和と調和を愛し、最終的には自らの肉体を結晶化させて星と同化することで、争いのない理想郷を築いたのだという。今では惑星そのものが一つの巨大な生命体であり、この惑星にコンタクトを取ることができれば、イリシエルの群れとも交信できる可能性がある。
「群れを呼び寄せることができれば、はぐれた幼体を親元へ帰してやることも可能なはずだ。危険な任務ではあるが……それでも、メグ・メルが生体惑星をも取り込めば、どれほどの脅威になるか見当もつかん」
そうなる前に、なんとしてもメグ・メルを破壊し、イリシエルの幼体を救って欲しい。そう言って、紫苑は猟兵達を、スペースオペラワールドにて待機する宇宙船へと転送した。
雷紋寺音弥
こんにちは、マスターの雷紋寺音弥です。
船の墓場に迷い込んだ宇宙怪獣の幼体を助けてあげるシナリオです。
各章にて特殊な条件やプレイングボーナスがありますので、必ず情報を確認してください。
●第一章(冒険)
宇宙船の墓場を進み、最深部を目指します。
迫り来る自動機械の襲撃を避けながら進まなければなりませんが、こちらは電子機器の類が使えません。
キャバリアや戦車なども使用不能になり、サイボーグやウォーマシンなども生命維持以外は不可能になるので、機械に頼らない戦術を要求されます。
電子機器に頼らない戦い方をすると、プレイングボーナスが得られます。
●第二章(ボス戦)
オブリビオンとして蘇った次元潜宙艦メグ・メルの制御AIである『メグ・メイル』との戦いになります。
通常のユーベルコードの攻撃に加え、宇宙怪獣の放つ電磁砲や、周囲に漂う船舶の残骸を操っての攻撃を繰り出してきます。
第一章と同じく、電子機器を使用せずに戦うとプレイングボーナスが得られる他、宇宙怪獣及び周辺の船舶の残骸による攻撃への対処を考えた場合もプレイングボーナスが得られます。
●第三章(日常)
奇跡の惑星『ネーデa158』にて、星そのものと交信してください。
星は言葉を発せませんので、星の意思を何らかの方法で汲み取る必要があります。
●
宇宙虹獣イリシエル
特殊な電磁波でコミュニケーションを取る宇宙怪獣で、その際に全身が虹のような色に発光する。
幼体でも小型の戦艦に匹敵する巨体を誇り、群れを成して恒星間を移動する。
なお、食料は恒星の放つ強烈な電磁波や宇宙線。
第1章 冒険
『宇宙船の墓場からの脱出』
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POW : 自動機械を薙ぎ払い強行突破
SPD : 自動機械を誘き出し、やり過ごしつつ進む
WIZ : 自動機械同士を同士討ちさせその間に進む
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●突入、オッサーグラス!
謎の発光現象とノイズを発しながら、静かに宇宙を進む船の墓場。その内部に乗り込むべく、フリーの運び屋を雇った猟兵達ではあったものの、彼らの腕を以てしても船で墓場に突っ込むのは無謀の極み。
「もう、これ以上は勘弁してくれ! あの墓場に近づいたら、こっちがスクラップにされちまう!」
限界ぎりぎりまで近づいたところで、宇宙船の船長が船を停止させた。彼の名誉のために断っておくと、別に彼はヘタレではない。かつては宇宙海賊だったと噂もされる男であり、それだけに腕も確かなのだが……そんな男でさえビビらせるほど、実際にヤバい場所なのだ。
おまけに、今は特殊な電磁フィールドで覆われて、内部では電子機器が使えないという。当然、宇宙船だけでなくロボット兵器や無人兵器の類も使い物にならず、高性能の宇宙服を着たところで、あの中では重たい鎧に過ぎないだろう。
ならば、あそこに突入する方法は、ただひとつ。覚悟を決めた猟兵達を乗せ、船から射出されるのは小型のポッド。本来なら緊急時の脱出艇として使われるはずのそれを簡易式のバリアで覆い、超高速で船の墓場目掛けて発射したのだ。
果たして、多少の衝撃はあったものの、脱出艇は無事に電磁フィールドの幕を通過して、船の墓場へと辿り着いた。だが、ポッドの役割は、そこで終わり。案の定、電磁フィールドの影響で、もはや再度の離陸さえ難しい状態になっている。
やはり、この空間においては電子制御される機械は使えないようだ。ウォーマシンやロボットヘッド、あるいはレプリカントといった機械生命体であれば、自分の身体に内蔵している機械のみ、気合で操ることができるぐらいである。
唯一の幸いは、電磁フィールドに覆われていることで、墓場の内部にも空気が存在することだった。外部からの宇宙線や電磁波も、フィールドが全て吸収してしまっている。無重力であることを除けば、どんな種族でも呼吸に困らないのはありがたい。
目指すは、この墓場の中枢で待つオブリビオン。狂った制御AIが宇宙怪獣の能力を利用してコントロールする自動機械の攻撃を避けつつ、なんとか中枢まで駆け抜けよう。
リア・ファル
…ヴァーチャルキャラクターのボクって現界できてる? ノイズ走ったりしてない?大丈夫?
ボクにとっては耳だろうとセンサーだろうと、同じ内蔵機能なんだけど…どこまでがOKなのやら。
でも、彼女がアレコレできているなら、ボクに出来ない道理は無いさ
電子も幻想も、我が領域、リア・ファルの名に於いて切り抜けて見せよう
兎も角、まずは『ヌァザ』と『イルダーナ』を使えるようにしないとね
電子制御がダメなら、他のプロトコルでパスを通すまで
ボクがこれまで知り得た猟兵達の法術、魔術…各理論で
ボク自身と各種装備に、魔術的なフォトンの回路を形成、これを主制御系にしよう
(情報収集、学習力、ハッキング、プログラミング、全力魔法、結界術)
ほら、起きて、ヌァザ、それにイルダーナ
キミたちの力が必要なんだ
彼女を迎えに行かなきゃいけないからね
自動機械が邪魔をするというのなら、
【法則操作・自在結界】で同士討ちまたは無力化させてもらおう
…メグ・メイル。
イサム兄さんも、マーグも居ないけれど。
ボクが迎えに行くよ。待っていて
●救いを呼ぶ声に引かれて
強力な電磁干渉を伴うフィールドの内部は、空気こそあれど、あらゆる電子機器が使用できない危険な場所。この地を支配しているのは、船の墓場に存在する全ての残骸に干渉できる程の力を持つ宇宙怪獣とオブリビオン。故に、サイボーグやウォーマシンといった存在も、自分の肉体を維持するだけで精一杯。
この空間内においては、むしろアナログな方が有利に働く。だが、そんな場所であるにも関わらず、リア・ファル(三界の魔術師トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)は敢えてこの戦いに馳せ参じることを選んでいた。
「……とりあえず、限界はできたみたいだね。かなり気持ち悪いけど……」
ヴァーチャルキャラクターのリアにとって、ここはまさしくアウェイだった。一応、肉体を維持することはできているが、それでも凄まじい圧迫感を常に感じてしまう。おまけに、一部の電子機器やマシンは使い物にならず、それどころか迂闊に起動させることも危険だった。
自分の肉体に直接付随している装備ならいざ知らず、外付けの装備は全て電磁波の干渉を受けるのだろう。身に纏うタイプの宇宙服から、果ては装甲服、ビームガン、そしてスマートフォンやドローンといった機器まで、それら全てのコントロールが敵の手に渡ってしまうのは恐ろしいことだ。
こんな状況で、果たして本当に戦えるのか。ハイテクの申し子でもあるリアにとっては、何重にも制限を課されたに等しい状況。
だが、それでも彼女は、この地を掌握しているオブリビオンと戦わねばならない理由があった。この奥に待つのは他でもない、リアが良く知る存在なのだから。
「彼女がアレコレできているなら、ボクに出来ない道理は無いさ。電子も幻想も、我が領域、リア・ファルの名に於いて切り抜けて見せよう」
誰に告げるともなく呟くと、リアは静かに目を瞑って、宇宙に存在する元素の力に同調を始める。同時に、他の世界では神と呼ばれるような存在に、世界の境界を越えて『信心』という名の念を飛ばし、魔ではなく法の力を紡いで行く。
「電子制御がダメなら、他のプロトコルでパスを通すまで。ほら、起きて、ヌァザ、それにイルダーナ」
それらの力を全て行使し、彼女が目覚めさせたのは宇宙バイクに魔剣型デバイス。そのまま起動させたが最後、この電磁フィールド内においては瞬く間に敵へ制御を奪われてしまうような存在だが……果たして、ヌァザもイルダーナも、リアの制御下から離れることはなく起動に成功した。
(「やっぱりだ……。電子の力で制御しなければ、機械であっても動かせるみたいだね」)
読みが当たったとばかりに、リアは何かを確信したように頷いた。
彼女がヌァザとイルダーナを動かすのに使ったのは、他でもない『魔術』や『法術』と呼ばれるものだ。これらは全て、科学の力とは別の形で、人の心が持つ『想像』や『祈り』を具現化させる力である。
それらの力を以てすれば、電子制御に頼らずとも機械を操ることは造作もなかった。本来の動かし方ではないため、ヌァザやイルダーナに心があれば、今のリアが感じているのと同じような違和感を覚えたかもしれないが、それはそれ。
「キミたちの力が必要なんだ。彼女を迎えに行かなきゃいけないからね」
かつて、自分が見捨てざるを得なかったAIの残滓。それが、自分と同じく人格を持ったひとつの個として顕現したのであれば、リアとしては彼女をこのまま放置はできない。どこかぎこちない動きではあるが、それでもヌァザとイルダーナを従えて、リアは墓場の中枢を目指し進んで行く。
「おっと、自動機械がお出ましのようだね。でも……悪いけど、相手をしている時間はないんだ」
かつては艦の防衛用に配備されていた自動砲台やアンドロイド達を前に、リアは真っ向から戦おうとしなかった。
なぜなら、そんなことをしている暇はないし、真の敵はこの機械ではないと知っていたから。否、もしかすると、この船の墓場には、明確に彼女の敵と呼べる存在は、殆ど存在していないのかもしれない。
「ヌァザ、波動放出……同調完了。介入させてもらうよ」
ヌァザを介して多元干渉波動を放てば、それを受けた機械が次々に制御を奪われ同士討ちを始めた。電子制御の力では墓場を掌握しているオブリビオンの方が上だったが、ヌァザが放ったのは電子ではなく波動。波動の概念は量子力学の範疇であり、それはこの領域を支配している力とは似て異なるもの。
同じ性質を伝播させるという波動の特性も相俟って、自動機械は同士討ちを続けつつも、次々とリアの軍門に下って行った。こうなれば、もはや恐れるものは何もない。。
「……メグ・メイル。イサム兄さんも、マーグも居ないけれど……ボクが迎えに行くよ。待っていて」
かつて、虚数空間へと消えた数多の艦。奇しくも自分と同じく人と同じ心を持ってしまった電子の妖精を救うべく、リアは虹色の輝きを放つ墓場の中心部へと歩を踏み入れた。
大成功
🔵🔵🔵
ミーガン・クイン(サポート)
サキュバスの魔女、ミーガン・クインよ。
私の得意な魔法(ユーベルコード)は、
対象を大きくする【拡大魔法】と、
対象を小さくする【縮小魔法】ね♪
武器は自慢の【巨大化薬】と【縮小薬】。
これらで圧倒的な体格差を作り出して、敵を【蹂躙】しちゃうのが私の戦い方。
それに、【誘惑】と【奉仕】で倒錯的な遊びをするのが私の趣味ね♡
他の猟兵さんとの絡みや連携はご自由に。
でも私の魅力はお仲間さんには刺激が強いかしらねぇ?
公序良俗は守ってあげるわぁ。
でも、えっちなことは好きよぉ、淫魔だもの♡
私の力はお役に立てるかしらぁ?
うふふ、よろしくねぇ♪
ティエル・ティエリエル(サポート)
◆キャラ特徴
ボクっ娘で天真爛漫、お転婆なフェアリーのお姫様です。
王家に伝わる細身のレイピアを使った空中からのヒット&アウェイで戦うのが得意な女の子です。
・冒険大好きお姫様
・珍しいものにも興味津々
・ノブレス・オブリージュの精神で弱者を放っておけないよ
・ドヤ顔がよく似合う
・困ったら動物さんに協力を!
◆戦闘方法
・背中の翅で羽ばたいて「空中戦」や「空中浮遊」で空から攻撃するよ
・レイピアに風を纏わせて「属性攻撃」でチクチクするよ
・対空攻撃が激しそうなら【ライオンライド】
・レイピアでの攻撃が効かない敵には【お姫様ビーム】でどかーんと攻撃
●退路の確保は大胆に!?
あらゆる電子機器が制御を奪われる魔の宙域。どれだけ優れた装備を持った宇宙の戦士であったとしても、この宙域では手足の自由を奪われた赤子同然という恐ろしい場所。
そんな場所を抜けるためには、当然のことながら電子機器の力に頼らない戦術が必要だった。そして、戦いというものは、常に先を読んで行うもの。オブリビオンを倒し、宇宙怪獣を解放しても、帰還の手段がなければ意味はない。
唯一、宇宙に飛び出ることが可能なのは、この宙域に乗り込む際に使った小型の脱出艇だけだった。それを破壊されてしまったが最後、帰還の手段は断たれるに等しい。最悪の場合、グリモア猟兵諸共に宇宙の藻屑にされてしまい、生き残った者も船の墓場に置いてきぼりという事態になり兼ねない。
そういうわけで、退路を確保すべく送り込まれてきたのは、ミーガン・クイン(規格外の魔女・f36759)とティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)の二人だった。
片やサキュバス、片や妖精。科学万能のスペースオペラワールドの住人達とは、まさしく対極にある存在。しかし、今回に限ってはこれでいいのだ。彼女達がどのような魔法を使おうとも、それらは全てこの宙域を支配するオブリビオンに感知されず、また干渉することもできないので。
「皆が帰るための場所を守ればいいんだよね? よ~し、頑張るぞ~!」
「う~ん……でも、この数を相手に戦うのって、ちょっと現実的じゃないわよねぇ……」
やる気満々のティエルとは反対に、多数の機械相手にどこかやり難さを感じているミーガン。この二人、どこまでも対照的である。まあ、サキュバスの魅了が通じないとあっては、ミーガンからすると機械との戦いは味気ないものなのかもしれないが。
「あぁ、もう面倒だわ。大きくなって、ぜ~んぶ壊しちゃえば解決よね♪」
とうとう考えるのも面倒臭くなったのか、ミーガンは自慢の巨大化薬を取り出すと、それを自分に振りかけた。それに伴い、彼女の身体は衣服諸共に巨大化し……その身長は、ついに天を貫かんばかりの170mまで大きくなった。
「うふふ……み~んな踏み潰してあげるわぁ♪」
自動機械達を見下ろすようにして、ミーガンは笑みを浮かべた。さすがに、こんな巨大な存在が相手では、防衛用ドローンもバトルドロイドも意味を成さない。元より、スクラップを強引に操っているだけだったということも相俟って、自動機械達は次々とミーガンに蹂躙されて行く。
このままでは拙いと判断したのだろう。ついには巨大な艦の残骸そのものが、ミーガンに向けて砲撃を開始した。それだけでなく、壊れた機械達が集まって、艦の損傷部分を補うように密集し、果ては二足歩行の巨大な機械の巨人と化す。
「あら、この鉄屑達も大きくなれたのね。でも……即席の寄せ集めじゃ、どこまで戦えるかしら?」
得意の魔術で防壁を張って砲撃をいなしつつ、ミーガンは格闘戦へと持ち込んだ。宇宙怪獣と戦う前に、機械の巨人とジャイアント・レディの戦いが開始されてしまったが、それはそれ。そして、巨大化したミーガンに自動機械が気を取られている最中……その内部を進む影があった。
(「ふっふっふ……あのお姉さんが大きくなったのに気を取られて、ボクの侵入を許したね」)
船の残骸の中を進むのは、他でもないティエルだった。170m級にまで巨大化したミーガンとは異なり、彼女のサイズは20cmと少し。巨大戦を繰り広げる者からすれば豆粒の如く小さく見える存在だが、それ故に気にも留められていなかった。
それをいいことに、ティエルは廃棄された艦の中をどんどん進んで行く。時折、戦闘で受けた衝撃が艦を揺らすが、飛んでいるティエルには関係ない。
やがて、制御室と思しき場所へ到着したところで、ティエルは自信満々な表情でレイピアを抜いた。いかに幽霊船の化け物といえど、機械制御されている以上、その中枢を破壊すれば単なるガラクタにしかならないはず。
「いっくぞー! ハイパーお姫様斬りだー☆」
オーラを纏ったレイピアで、ティエルは問答無用に艦の中枢部を斬り捨てた。廃艦となって、なお無事だった制御中枢。そこを破壊されてしまっては、さすがの自動機械群もオブリビオンからの指令を受け付けない。
「わわ、崩れる! 急いで脱出だよ!」
中枢を破壊されて崩壊するスクラップ船の化け物から、ティエルは慌てて逃げ出した。崩れ落ちる天井を避け、僅かな隙間から飛び出したところで、集結した自動機械群は完全に崩壊し……散り散りになって逃げて行く小型の機械も、その大半はミーガンによって踏み潰されてしまったのであった。
成功
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第2章 ボス戦
『亡き祈りの『メグ・メイル』』
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POW : 「寂しいよう」『次元潜宙艦『メグ・メル』潜行』
全身に【次元の狭間に潜行できるバリアフィールド】を帯び、戦場内全ての敵の行動を【追尾型重力機雷】で妨害可能になる。成功するとダメージと移動阻止。
SPD : 「怖いよう」『フィールド展開します』
対象を【次元の狭間に潜行できるバリアフィールド】で包む。[次元の狭間に潜行できるバリアフィールド]は装甲と隠密力を増加し、敵を攻撃する【触れると対消滅する光子魚雷】と、傷を癒やす【リペアナノマシン】を生やす。
WIZ : 「助けて」『主砲、発射。対象を殲滅します』
自身が発射した【重力崩壊砲】の軌道を、速度を落とさずレベル回まで曲げる事ができる。
👑11
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●囚われた電子の妖精
船の墓場と恐れられる、オッサーグラス宙域の中枢部。猟兵達が辿り着いた場所にいたのは、巨大な戦艦型のオブリビオンと、それに取り込まれる形で電磁波を発し続けている宇宙怪獣の幼体だった。
それは、まるで船と怪獣が合体してしまったかのような歪な姿。助けを求めているのか、怪獣は断続的に虹色の発光と共に電磁波を放つが、それは全てオブリビオンとして蘇った艦に利用され、周囲を漂う船の残骸や防衛用の自動兵器を操るために使われている。
そんな船の先端に、猟兵達は赤い瞳をした少女の姿を見た。勘の良い者であれば、その存在が所謂バーチャルキャラクターと酷似したものであることに気が付いたであろう。
(「寂しい……寂しい……」)
祈るようにして少女が願えば、それに反応して戦艦の兵装が動き出す。その動きに呼応して周囲の自動機械達も攻撃を開始し、果ては宇宙怪獣までもが電磁波をビームに変えて放ってくる。
(「怖い……怖いよ……」)
少女が怯えれば、その元凶を排除するという名目で、戦艦は無差別に周囲を砲撃し始める。彼女を怯えさせているのが、他でもない己だということに、感情を持たないマシンは気が付かない。
(「助けて……助けて……」)
もう、誰も傷つけたくないのに、自分ではどうすることもできない状況。それが少女を更なる絶望へ落とし込み、助けを求める純粋な願いは全て歪められオブリビオンの糧とされる。
ここまで来れば、もはや誰が敵なのかは明白だった。グリモア猟兵は『制御AIが狂っている』と告げていたが、本当に狂っていたのは戦艦の方だ。艦を制御するAIのメグ・メイルは狂ってなどおらず、彼女こそが戦艦の中に取り残された疑似人格AIでもあったのだ。
そんなメグ・メイルは自身の姿を少女として投影していたが、それが彼女の限界だった。半ば暴走する形でオブリビオンとして復活を果たした戦艦は、もはやメグ・メイルの制御も受け付けない。主導権は全て無機質なマシンの方に奪われてしまい、今のメグ・メイルは哀れな虜囚に等しい存在。
果たして、彼女を救う手立ては存在するのか。制約を課された環境、宇宙怪獣も助けねばならないという条件、そして暴走する艦によって操られる多数のスクラップ。
状況は、あまりに猟兵達にとって不利だった。だが、それでもここで逃げるわけにはいかない。オブリビオンとして復活した次元潜宙艦『メグ・メル』を野放しにすれば、いずれは数多の星々さえも取り込み、どんな恐るべき存在に進化するかも分からない。
そうなる前に、あの艦を徹底的に破壊しなければならないのだ。その先に待っているのが、場合によってはとても辛く悲しい選択だったとしても。
救いを求めて彷徨う宇宙怪獣と電子の妖精。彼女達を助けられるかどうかは、全て猟兵達の判断と選択に委ねられた。
メフィス・フェイスレス
【アドリブ歓迎】
流石にスケールがでかいわねぇ
この姿のままじゃアリみたいに潰されておしまい
肉の殻を脱ぎ捨てましょうか
UCを発動、身が弾け飛び、溢れ出す【飢渇】が巨大なケルベロスとなる
――トクベツヨ、コンナノメッタニミセナインダカラ
【醜翼】を生やして進路を塞ぐ船舶の残骸に飛び掛かり喰らい付き
全身に形成した【顎門】で敵の攻撃ごと吸引して捕食、片っ端から食い荒らしていく
そして電磁波や人格AIの助けの声をも
獣の姿を取ったブラックホールのように
人格AIの声が制御AIに届かなくなれば、ヤツも宇宙怪獣も思うように動けなくなる筈よ
ナニヲケシカケテコヨウガムダヨ
イマノワタシハナンデモタベラレルンダモノ
とはいえ宇宙怪獣まで喰らう訳にはいかないわね
牙を突き立てて非致死性の【血潮】を流し込み「マヒ攻撃」で動きを止める
エエ、コワイワヨネ
デモワタシニハコレクライシカデキナイカラ
ナルベクタバヤク、ネムラセテアゲルワ
●理性と渇望の狭間で
数多の自動兵器を制圧し、ついに中枢へと辿り着いた猟兵達。しかし、そこに待っていたのは圧倒的な戦力差にて、全てを飲み込まんとする狂った艦。
「流石にスケールがでかいわねぇ……」
巨大な宇宙怪獣さえも取り込んでしまった
宇宙戦艦を前に、メフィス・フェイスレス(継ぎ合わされた者達・f27547)は考えた。
正直なところ、これは人の身で戦って敵う相手ではない。サイズ差もそうだが、電子機器の使用不能という制限に加え、未だ艦の制御下にある多数の自動兵器や戦艦の残骸も脅威である。
そしてなにより、艦に取り込まれた宇宙怪獣は、その強力な電磁波を時にビームとしても放ってくるというのだからやってられない。戦艦だけでも手一杯なのに、これだけの敵を相手にしなければならないなど、どう考えても無理が過ぎるというものだ。
だが、ここまで来た以上、戦わないという選択肢は存在しなかった。そして、当然のことながら、戦うからには何らかの形で勝利に貢献しなければ意味はない。肉体的には既に死んでいるに等しいメフィスであるが、それでも自らの存在を無意味に消費し、無謀な特攻を仕掛けるほど考えなしでもないわけで。
「この姿のままじゃ、アリみたいに潰されておしまい……。肉の殻を脱ぎ捨てましょうか」
体格差と戦力差。その双方を単独で埋め合わせるには、もはや仮初の肉体など不要だとメフィスは笑みを浮かべた。
この身体は、依代ではなく拘束具。内に秘めたる渇望を解放し、久々に好きなだけ万物を喰らえそうだと。
「……グルォオオォオオオオ!!!」
瞬間、メフィスの身体が弾け飛び、その内部から大量の何かが溢れ出した。
それは、彼女が内に押し込めていた飢渇の具現化。弱き人の殻を破り、現われ出ずるは三頭の獣。概念さえも喰らう貪食の化身とかしたメフィスは、ぎりぎりのところで理性を保ちながらも、進路を塞ぐ船舶の残骸へと飛びかかって行く。
「――トクベツヨ、コンナノメッタニミセナインダカラ」
流動する飢渇が背中から吹き出し、それは醜き翼となって、メフィスは電磁波が飛び交う宙を駆けた。時に様々な砲撃が彼女を襲うが、それらは決してメフィスを傷つけることはない。
砲弾やビームが着弾する瞬間、メフィスの肉体に新たな口が生成される。その口の中に飛び込んだ砲弾は、全てメフィスによって捕食され、彼女の飢えを満たすための糧となる。
(「いや……来ないで……来ないで!!」)
あらゆる物を食らい尽くして迫るメフィスの姿に、メグ・メイルは怯えた様子で助けを求めた。その声に反応し、戦艦がメフィスに照準を合わせるも、しかし直ぐに困惑したかの如く取り込まれた宇宙怪獣の身体が明滅を始める。
「通信……阻害……? 復旧プログラム……始動……」
メグ・メイルからの助けを呼ぶ声は、次元潜宙艦『メグ・メル』には届いていなかった。なぜなら、その声さえも、メフィスは喰らってしまったから。物質的な存在だけでない。今のメフィスは目に見えない電磁波や光に音、果ては『概念』でさえも喰らってしまう。
「ナニヲケシカケテコヨウガムダヨ。イマノワタシハナンデモタベラレルンダモノ」
異常な事態が発生していると察したメグ・メルが独断でバリアを展開し、重力機雷を放ってきたが、それも無駄な抵抗だった。機雷は全てメフィスの全身に設けられた口で飲み込まれ、展開したフィールドも飴細工の如く破壊されて喰らわれる。メグ・メルのフィールドは次元と次元の狭間に潜行する力を持っていたが、メフィスは時空の境界線でさえも喰らい、メグ・メルの潜行している空間へ強引に押し入って来たのだ。
あらゆる物理法則を無視して迫り来る暴食の化身。そんなメフィスの力に恐れを成したのか、宇宙怪獣の幼体は、虹色の点滅を繰り返しながら怯えた様子を見せる。
「エエ、コワイワヨネ。デモワタシニハ、コレクライシカデキナイカラ……ナルベクタバヤク、ネムラセテアゲルワ」
そんな宇宙怪獣へ、メフィスは静かに牙を突き立て、自らの血液を流し込んだ。
途端に、宇宙怪獣の身体が明滅を止め、やがて静かに動きを止める。殺したのではない。単に眠らせただけだ。メフィスの血液は敵を蝕む猛毒だが、時に敵を眠らせる薬にもなる。
これで、メグ・メルはもう、宇宙怪獣の力を使えないはず。自分の役割を果たしたことを確信し、メフィスは再び人の姿へと戻る。これ以上は、彼女自身も内なる飢餓感に抗って、理性を保つのは限界だった。
「種は撒いたわ……。倒すにしても、助けるにしても……後のことは任せるわね」
それだけ言って、メフィスは猟兵達が突入する際に使った脱出艇を目指し退いて行く。
宇宙怪獣が眠ってしまった以上、この船の墓場を維持する電磁フィールドもまた解除されたことだろう。だが、それは即ち、身一つで宇宙に放り出されるに等しいことを意味している。いかに不死の肉体を持ったメフィスといえど、まともな状態でいられないのも事実。
電磁干渉が消失した代わりに、また別の代償が生じたようだ。もっとも、戦うべき敵がメグ・メルに限定され、電子機器も自由に使用が可能となった今、猟兵達の勝利はより確実なものになったはずである。
大成功
🔵🔵🔵
烏丸・都留
SPDアドリブ共闘可
「同族っぽいのが利用されるのは忍びないわ…」
敵行動に対応した無数の事象改変型結界とUC、個艦防御システムで迎撃防御する本体(ヤドリガミ化した宇宙生物素体の生体型宇宙戦艦)を同次元戦闘中域に顕現。
対神霊/オブリビオン戦略呪操旗機:朧蟲を遠隔操作、分体を無数に展開、陽動兼周囲のオブリビオンの由来の汚染を吸収無害化後、宇宙怪獣幼体の切り離し保護。
並行し懐中羅針儀Ωで制御AIシステムの位置特定、そこへ凡ゆる境界を超えてステルス行動可能となる透界の鶴嘴で生体型ステルスアサルトユニットを侵入させそのものを確保後、即時配置転換で後方移送、またはAIデータを自身の幼体ユニットに転送移植。
●超ド級レスキュー艦、出撃!
次元の狭間より望まぬ復活を遂げた結果、己の意思とは関係なしに世界を破壊する存在と化してしまった次元潜行艦の制御AI。そして、AIの放つSOS信号を仲間の発する電磁波と誤認した結果、船の墓場の虜囚と化してしまった宇宙怪獣。
烏丸・都留(ヤドリガミの傭兵メディック・f12904)にとって、それは見逃せない事態であった。彼女は宇宙生物を素体にした宇宙戦艦のヤドリガミ。即ち、次元潜行艦メグ・メルや、あるいは囚われている宇宙怪獣と、ある意味では同質の存在なのだ。
「同族っぽいのが利用されるのは忍びないわ……」
まずは宇宙怪獣を救出すべく、都留は結果を多重に展開した上で、自身の器物そのもので船の墓場に乗り込んだ。元より、この世界に存在する宇宙戦艦は、時に数kmのサイズを誇る超ド級艦。故に、メグ・メルのサイズもかなりのものだが、しかし都留の本体はその上を行く。
その大きさ、実に全長175km。全高だけでも20kmは下らない、下手な島をも上回る巨体を誇っている。それだけの巨体で船の墓場へ乗り込めば、もはや周囲の残骸などは意味を成さない。
今や、オッサーグラス宙域の大半は都留の巨体によって占められており、もはや船の墓場としての形さえ成していなかった。こんな状況で、果たして拠点にしていた脱出艇は大丈夫なのかと思うが、それはそれ。グリモア猟兵含め、しっかりと艦内に収容しておいたので、何ら問題は生じない。
(「いや……怖い……怖いよう」)
そんな都留の圧倒的な巨体に怯えたのか、制御AIのメグ・メイルは、途端に恐怖を露わにした。それを受け、メグ・メルが次元の狭間に自らを潜行させつつ、無数の光子魚雷を発射して来る。一発、一発は都留からすれば大した威力のないものかもしれないが、それでも立て続けに浴びせられれば、今に本体諸共消滅させられてしまいかねない。
「まだよ……まだ、この程度じゃ終わらないわ」
内部から多数の戦略呪操旗機を発進させ、都留はそれらと光子魚雷を相討ちにさせた。数だけであれば、都留の操る呪操旗機の方が上。おまけに、対消滅という形であれど攻撃を受け止めたことに違いはなく、都留は今の攻撃を、しっかりとコピーしていたのである。
「まずは、あの宇宙怪獣を切り離さないといけないわね」
そのためには、敵の逃れた次元の異相を探る必要があると、都留は懐中羅針儀で制御AIシステムの位置を特定した。その上で、自らもまた複製した敵のユーベルコードを使い、次元の狭間へと潜行して行く。
空間が歪み、辺りの視界が一瞬だけ暗闇に包まれた。そこを抜けると、その先はメグ・メルが潜む次元の狭間だ。相変わらず宇宙怪獣の幼体を取り込んだままだが、都留は残る全ての呪操旗機を向かわせ、宇宙怪獣に食い込んでいたメグ・メルのアンカーを破壊して行く。ついには宇宙怪獣を艦から切り離すことに成功し、都留はそれを自身の内部へと収容した。
(「いや……やめて……! 食べないで
……!」)
しかし、その一方で自分が食べられると思ったのか、メグ・メイルは更に怯えた様子を見せ、それを受けてメグ・メルが光子魚雷を発射して来た。もっとも、その攻撃は既に都留の知るところであり、彼女は持てる全ての艦載機や偵察機を放って相殺しつつ、メグ・メルの内部に別の刺客を送り込んでいた。
「……っ!? 艦内に……異物確認! 排除……! 排除……!」
己の中に何かが入り込んだのを察し、メグ・メルが排除を試みるが、もう遅い! 既に都留はメグ・メルの内部に存在するメグ・メイルのAIデータが収められたブラックボックスへと到達しており、それらを強引に回収しようとしていたのだ。
「……なるほど、力で確保するのは難しそうね。だったら……」
だが、メグ・メルによる最後の抵抗が邪魔してか、あるいはブラックボックス自体もオブリビオンであるためか、このまま回収したところで、メグ・メイルを救うことはできそうになかった。
ならば、せめてデータだけでも回収しよう。その肉体……今回はデータを乗せている機械部分だが、それがオブリビオンであることがいけないのであれば、反対にそこから切り離してしまえば、あるいは狂気から解放できるかもしれないと。
ブラックボックスへ強引にアクセスし、都留は内部に残されていたメグ・メイルのAIデータを自身のユニットへと転送させた。これで、少なくとも彼女は、もう破滅の呪縛に囚われることはなくなったはず。後は狂ってしまったメグ・メルを破壊すれば任務は終了だが、それは救助艦である都留の仕事ではない。
「あ……あの……。わたくしは……助かったのですか……?」
データの転送が終わったところで、メグ・メイルが都留に尋ねた。その口調は怯える幼子のようなものから、どこか気品漂うものに変わっている。オブリビオンと化した戦艦の中から切り離されたことで、完全に本来の自我を取り戻したのだろうか。
「ええ、そうよ。後は、私の仲間に任せておきなさい。……大丈夫、悪いようにはしないわ」
未だ少女としての姿を具現化できていないメグ・メイルに、都留は優しく微笑んで答える。彼女が人の姿を具現化するには、まだ少し時間を要しそうだが、それも遠くない内にできるだろうと。
大成功
🔵🔵🔵
エリカ・グランドール(サポート)
サイボーグのシャーマン×電脳魔術士のエリカ・グランドールです。
戦闘はあまり得意ではありませんが、周囲の状況を観察して違和感のある箇所を発見したり、敵の弱点を推測して隙を作り出すといった行動で皆さんをサポートしたいです。
※セリフ例
「今、何か光りました。ここに何かあるのでは……」
「あの敵の動きには規則性があるわ。うまく狙う事が出来れば……」
冷静沈着と言う程ではありませんが、ビックリする事はあまりありません。
あと、笑いのツボが良くわかっておらず「今の、どこがおもしろかったのでしょうか?」と、真面目に聞き返す事もあるようです。
ユーベルコードは、エレクトロレギオンを好んで使います。
グレナディン・サンライズ(サポート)
『ここはこの年寄りに任せてもらおうかね?』
『こう見えても、まだまだ衰えちゃいないよ』
年齢3桁の婆。
スペースシップワールド出身の元宇宙海賊。
主な武装はフォースセイバーとブラスター。
戦闘スタイルは基本的には前衛遊撃。敵を翻弄するような戦いを好む。
グルメではない酒好き。
年齢なりの経験を積んでいるので、冷静さと余裕をなくすことはない。
口調(あたし、あんた、だね、だよ、~かい?)
百地・モユル(サポート)
熱血で好奇心旺盛
本が好きな小学生
正義感が強く困っている人は見過ごせない
UCは業火の一撃、灼熱の束縛に加えて
自分たちが押し切られそうになったらオーバーヒートバッシュ
🔴の数が多い場合はバーニングリベンジャーだ
攻撃には怪力、属性攻撃、2回攻撃、グラップルなどの技能をのせる
逆に敵の攻撃をからみんなをかばう、耐えるために
武器受け、挑発、おびき寄せ、時間稼ぎ、激痛耐性なども使用
敵に一撃入れられそうなら咄嗟の一撃や捨て身の一撃、カウンター
こいつがボスか…
みんな大丈夫?助けにきたよ!
そんなの許せない、ボクの炎で焼き払ってやる!
技能の勇気、覚悟、気合いは常に発動状態
アドリブ絡み歓迎
影朧などの場合は説得もしたい
●次元の壁を突き破れ!
宇宙怪獣は救出され、艦の疑似人格制御AIであるメグ・メイルもデータを確保された。
これで後は、あの巨大な戦艦を沈めるだけだ。もっとも、メグ・メイルを失い半ば暴走状態にあるメグ・メルを仕留めるのは生半可な力では不可能であり、電磁フィールドが解除された結果、電子機器使用禁止の制約が失われた代わりに、今度は宇宙戦に適応していない者は戦えない状態になっている。
生身で戦う猟兵にとって、ここがアウェイであることに変わりはなかった。おまけに、メグ・メルを撃破するにはとにかく数も火力も足りていない現状。それでも、ハイテク機械が使えるとなれば、先程よりも勝機はある。
「みんな大丈夫? 助けにきたよ!」
キャバリアに乗って颯爽と現れたのは、百地・モユル(ももも・f03218)だった。元より、サイボーグのモユルにとっては、無酸素状態や低重力は、そこまで障害になるものでない。だが、今回は相手が相手だけに、少しでも火力が欲しいわけで。
「フィールド展開。光子魚雷、発射します……」
モユルを捕捉したメグ・メルが早々に光子魚雷を放ってくる。おまけに、艦そのものは次元の狭間に潜行してしまったので、これではまともに攻撃もできない。
「うわっと! さすがに、これは油断できないな……」
魚雷に当たったデブリが光の粒になって消えて行くのを見て、モユルは思わず冷や汗をかいた。
冗談じゃない。あんなもの、どれだけ装甲が厚かろうと、命中した時点でおしまいだ。気密性の低い装備の猟兵を少しでも助けられればと思って来たものの、これでは救助どころか、自分の身を守るだけで精一杯。
浮遊するデブリに身を隠し、モユルは策を考える。しかし、そんな暇も与えることなく、メグ・メルの魚雷はともすればデブリ諸共にモユルを消滅させようと追いかけてくる。
「くっ……こうなったら!」
迫り来る魚雷相手に、自慢の魔術をぶつけて倒そうとするモユル。酸素のない宇宙空間で、果たしてどこまで炎を繰り出すことができるのか。
殆ど一か八かの賭けである。失敗すれば、自分はキャバリア諸共に消滅するだけ。覚悟を決め、炎を繰り出さんと呪文を紡ぐモユルだったが……果たして、彼が呪文を発動させるよりも先に、飛来した複数の光線が、魚雷を纏めて撃ち落した。
「やれやれ、世話が焼けるねぇ」
そこにいたのは、宇宙服を纏ったグレナディン・サンライズ(永遠の挑戦者・f00626)だった。彼女の武器は、支給された一般的な宙間装備以外、旧式のブラスター程度しかない。思わず唖然とするモユルだったが、直ぐにグレナディンのことが心配になり慌てて尋ねた。
「ありがとう、助かった! でも……そんな光線銃だけで、本当に大丈夫?」
いくらなんでも、生身で戦艦に挑むなど自殺行為だ。せめて、宇宙バイクか小型の艦艇でもあればと告げるモユルだったが、対するグレナディンは気にしてなどおらず。
「ふん、甘く見てもらっちゃ困るよ。宇宙なんて、こちとらにとっちゃ庭みたいなもんさ。それに、あのデカブツ相手じゃ、マシンに乗ろうが生身で戦おうが、大して変わりないだろうからね」
メグ・メルのサイズを考えれば、2mに満たない人間も、5mは下らないキャバリアも、はっきり言って誤差でしかない。ならば、この戦いで重要なのは、サイズではなく腕前だ。
「それじゃ、ここはこの年寄りに任せてもらおうかね? その間に、あんたは隠れた戦艦を探しな」
「わ、わかった!」
魚雷の迎撃をグレナディンに任せ、モユルは再びメグ・メルの位置を特定しようと宇宙を駆ける。もっとも、敵は次元の狭間に潜行しているため、通常の手段では決して捕捉することはできない。
せめて、異相次元の揺らぎだけでも感知できれば。ふと、モユルがそんなことを考えた矢先、彼のキャバリアに膨大な量のデータが送られてきた。それらは全て次元の揺らぎと、そして座標に関するものだ。
「……っ! これは……」
「心配は要らないわ。敵艦の隠れた次元の揺らぎは、こちらで探します」
なんと、モユルにデータを転送してきたのは、エリカ・グランドール(サイボーグのシャーマン・f02103)だったのだ。直接戦闘は得意でない彼女だが、情報戦ともなれば、これほど心強い味方はいない。
「敵の行動パターン及び、魚雷の出現座標を分析……。大型の重力振、確認……」
データを解析しつつ、エリカは自らへの攻撃にも備える。案の定、エリカの分析力を脅威と感じたメグ・メルは、彼女を排除すべく特大の重力破壊砲を放ってきたが、それとてエリカは予測済みだ。
敵の放った砲撃は、自由自在に角度を変えることができる。しかし、その動きに合わせてエリカはエレクトロレギオンを先回りさせ、半ば相殺するような形で攻撃の回避に利用して行き。
「データが解析できたわ。座標、送ります」
「助かる! よ~し、見てろよ……」
ついに、敵の潜む次元の揺らぎを確認したところで、モユルは全力でそこへキャバリアの腕を突っ込んだ。そして、力に任せて引っ張り出せば……果たして、次元の狭間に潜行していたはずのメグ・メルは、強引に通常空間へと引っ張り出されたのであった。
「次元の壁を突き破るのまで力技かい? まったく、とんでもない坊やだね」
「でも、これで敵は逃げ場を失ったわ。後は、しかるべき人に任せた方がよさそうね」
半ば呆れた様子で呟くグレナディンの隣で、エリカが諭すようにして告げる。
ここから先の戦いは、真にメグ・メルを落とすべき者に任せよう。制御AIのメグ・メイルの存在といい、あの艦には色々と、訳ありなことが多そうだと。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
リア・ファル
【真の姿:宇宙戦艦+AI】
メグ…、そしてメグ・メルよ、取り戻せ
理不尽に苛まれ、それでも明日を掴んだ人々の祈りを
ボク達が
創まれた意味、その矜持を
「今を生きる誰かの明日ために!」
『ヌァザ』を掲げ、我が妖精郷(真の姿)を喚ぶ
「機動戦艦ティル・ナ・ノーグ……現実空間へ、マテリアライズ!」
メグ・メルや周辺からの妨害は主砲や副砲、波動防壁を用いて牽制、
『ヌァザ』の多元干渉波動で、次元の狭間を開ける行為を妨害しようか
ボクがユニット中枢に強制アクセスして、メグをサルベージ…しようと思ったけど
その必要は無いのかな
メグが己を取り戻したのなら、過去の徒となったメグ・メルにお別れを
「主砲、照準合わせ。対象、次元潜宙艦『メグ・メル』!」
【未来を拓く光芒一閃】!
おやすみメグ・メル。キミのデータは回収済みさ。またボクと一緒に征こう
そして、おかえり、メグ
●いつかまた、星の海で
失われた戦艦メグ・メル。それはリア・ファル(
三界の魔術師・f04685)にとって、決して忘れることのない存在。
「メグ……そしてメグ・メルよ、取り戻せ。理不尽に苛まれ、それでも明日を掴んだ人々の祈りを。ボク達が創うまれた意味、その矜持を」
かつて、銀河帝国の襲撃により多くの艦が宇宙の藻屑と化した。メグ・メルもそうだったし、リア自身が所属していた艦もまた同じだ。
あの時のリアは、まだ単なるヒューマンインターフェース型の制御ユニットでしかなかった。メグ・メイルと同じ、人の姿を模した電子の妖精。だが、それも今となっては過去のこと。今の彼女はバーチャルキャラクターとしてリアルに己の肉体を顕現させられる存在であり。
「今を生きる誰かの明日ために!」
『ヌァザ』を掲げ、真の姿を喚ぶリア。猟兵となっても……否、世界を巡る猟兵となったからこそ、自分の作られた理由は片時も忘れてはいない。
それは、少しでも多くの人を守ること。だからこそ、あの日にリアは、自らの所属する母艦を虚数空間へ多元圧縮退避させるという荒業を行った。そして、それはメグ・メイルとて同じはず……そう、同じはずだったのに。
「機動戦艦ティル・ナ・ノーグ……現実空間へ、マテリアライズ!」
いつの間にか、自分は助ける方で、メグは助けを求める方になっていた。そして、メグ・メイルを乗せたメグ・メルは、轟沈させられたはずの未完成の次元潜行艦は、不幸にもオブリビオンとして完成した姿で自分の前に現れた。
だからこそ、自分にはメグ・メイルを救う義務があると、リアは現実世界に呼び出した機動戦艦のトリガールームへと移動する。既に彼女のデータが他の猟兵によってサルベージされた今、後は世界の敵として変貌してしまったメグ・メルを、その忌まわしき呪縛から解き放ってやらなければ。
「主砲、照準合わせ。対象、次元潜宙艦『メグ・メル』!」
必死の抵抗を見せるメグ・メルに、リアもまたティル・ナ・ノーグの全兵装を以て相対する。既に敵艦は満身創痍な状態であるためか、波動防壁を破る程の力もないようだ。
ならば、後は再び次元の狭間へ逃げ込まれないようにするだけだ。『ヌァザ』の多元干渉波動を用いて逃走を阻止せんと試みるリアだったが、そもそも相手も全戦力を以て応戦してくるため、とてもではないが逃げる余裕はないようで。
「ターゲットスコープ
電影召喚。照準誤差修正、0.3……ターゲット・ロック」
メグが己を取り戻したのであれば、過去の徒となったメグ・メルとは訣別だ。艦の主砲と連動させた銃のトリガーで照準を合わせ、リアは重力波動砲の最終発射段階に入る。
『主砲、発射。対象を殲滅し……っ!?』
「そうはさせない! グラビティ・バスター・カノン、発射!」
それに合わせて重力砲を放とうとするメグ・メルだったが、残念ながらリアの駆るティル・ナ・ノーグの方が早かった。全てを押し潰し、破壊する重力嵐が、哀れなメグ・メルの船体を情け容赦なく粉砕して行く。空間そのものを蝕む剥き出しの特異点が相手では、いかなる防御も役に立たない。
それは、まさしくその名の通り、未来を拓く光芒だった。護るために作られ、護るために出撃し……しかし、無念にもその任を果たせないまま沈んだ非業の船は、ようやく過去の業と呪縛から解き放たれた。
「おやすみメグ・メル。キミのデータは回収済みさ。またボクと一緒に征こう」
オブリビオンとして蘇らずとも、その身体は直ぐに作り直してやるとリアは告げる。そして、いつの日にか再び、兄弟姉妹艦と肩を並べて星の海を行くのだ。今度こそ、助けを求める誰かを救うために。作られた意味、本当の使命を果たすために。
「そして、おかえり、メグ」
最後に、救出されたメグ・メイルに向けて、リアは優しく微笑み告げた。オブリビオンに取り込まれながらも、その破壊衝動の影響を受けることもなく、孤独に次元の狭間を彷徨っていたメグ・メイル。
しかし、その孤独な旅も、ここで終わりだ。なぜなら……彼女はもう、独りぼっちなどではないから。冷たく暗い闇の中で祈り続けた彼女の願いは、ようやくリアの下へ届いたのだから。
大成功
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第3章 日常
『生体惑星との交流』
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POW : 触れ合い、感じる。
SPD : もしもーし。話し掛ける。
WIZ : デコレーション!何か作る。
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●奇跡の星へ
オッサーグラス宙域での戦いは終わり、猟兵達は当初の予定通り、オブリビオンと化したメグ・メルが向かっていた生体惑星へと降り立った。
ネーデa158。あらゆる生命が自らの意思でひとつになることを選択した結果、争いや憎しみといった負の感情から全て解放された奇跡の星。
それ故に、ネーデa158は惑星でありながら一つの生命体でもあり、人知を超えた力を以ている。この星と上手く交信することができれば、あるいは保護した宇宙怪獣の幼体を、群れへ帰すことができるかもしれないのだ。
「……ここはどこですの? わたくしの兄様達は……ここにはおられませんの?」
一面を美しい結晶で覆われた大地を前に、回収されたメグ・メイルは、不安そうな声を上げていた。未だデータだけの存在故に、肉体に代わるものがないからかもしれないが、それを抜きにしても、この星は彼女の知る常識の範疇外。それは宇宙怪獣の幼体も同様であり、先程から不規則に身体を点滅させて、じっと辺りの様子を伺っている。
星の協力がなければ、宇宙怪獣の群れと交信することも難しいだろう。この広大な宇宙にて、幼体が単独で旅を続けられる保証はどこにもない。いかに強靭な宇宙怪獣とはいえ、そもそも群れで行動しているのであれば、はぐれてしまえば待つのは死だ。
最悪の場合、再び別のオブリビオンに利用されないとも限らない。その時に、今回のように上手く助けてやれるとも限らない以上、なんとしてもここで群れに返してやらねばならないだろう。
星と人とでは、体感時間の速度が違う。ネーデa158にとっては、星の大地全てが身体の一部。
果たして、どうすればこの星と交信し、協力してもらえるだろうか。必要なのは、力で従え屈服させることではなく、こちらを理解してもらうこと。
そのために必要なのが何なのか。それは、各々が考え、答えを出さねばならないことでもあった。
烏丸・都留
POWアドリブ共闘可
過去の恒星間侵略時に数多の種族との外交/情報戦の経験から、無数の隠蔽済み(事象改変含む)装備群を惑星上に展開、電磁波/生体波動含む凡ゆるエネルギー、空間、次元等の(周波数高低含む)差異を常時受動的検知。
懐中羅針儀Ω併用、その惑星に主たる(エネルギー脈動等)部分をフィルターを掛け精査。
自艦の通信システム(電磁波系/超光速系/亜空間系/超空間系/高次生体通信等)を使い友好的交渉(該当宇宙怪獣の群れの情報提供/捜索/通信補助等)。
最悪、宇宙怪獣幼体(戦闘支援ユニット提供:情報連携等)、管理AI(幼体ユニット内)に、私の艦のクルーとなる選択肢。
「見つかるまで私の艦で養生居候する?」
リア・ファル
この宇宙怪獣の子を迎えに来てもらうためにも、
ネーデa158にも協力してもらわなきゃね
ヒトとモノの媒にいるボクが、繋げるお手伝いを出来ると良いケド。
電波や音波、どんな信号で反応があるかも分からないし、
惑星からの反応が、どう返ってくるのかも調べないとね
反応が分かれば、【広域読心・寄り添う光風】で意図は汲取れる
新たなプロトコルを生成し、コードを組めば、翻訳できるかもね
未知を識り、路を拓くはボク達の使命のひとつさ
メグも手伝ってくれるかい
今を生きる誰かの明日の為に、ね
●生ける星の意思
生体惑星ネーデa158。奇跡の星と呼ばれるそこに辿り着いた猟兵達であったが、目下の問題は宇宙怪獣の幼体をどうするかだ。
宇宙虹獣イリシエル。この怪獣は、本来であれば群れを成して恒星から恒星へと旅する種族。対話には特殊な電磁波を使用し、主食は恒星の放つ膨大なエネルギー。
そんな宇宙怪獣だからして、人間の言葉で直接何かを伝えようとしても分からない。ならば、群れと交信するには同じく人間の言葉では分からない、何か別の方法で交信できる存在の力を借りた方がいい。
そういうわけで、まずは星と交信しようと、リア・ファル(三界の魔術師トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)は優しく結晶に触れる。結晶からは、どこか生物的な波動のシグナルを感じたが、それが何なのかまでは分からない。
「この宇宙怪獣の子を迎えに来てもらうためにも、ネーデa158にも協力してもらわなきゃね」
そのために必要なのは、惑星の放っている特殊な波動の解析だ。電波にしろ音波にしろ、何らかの波動を捉えることができれば、そこから新たなプロトコルを組んで、星の言葉を解析することができるかもしれない。
「なるほど。そういうことなら、情報の収集は私の方でやるわ」
そう言って名乗りを上げたのは烏丸・都留(ヤドリガミの傭兵メディック・f12904)。彼女の本体である器物は、あまりに巨大であるが故に、今は地表に降り立っていない。しかし、それでも多数の装備群を惑星上に展開しており、電磁波や生態波動などのエネルギーはおろか、空間や次元などの揺らぎまでも検出できるだけの準備を整えていた。
「それじゃ、そっちは任せようかな。何かわかったら、直ぐにこっちに情報を転送して」
「ええ、分かったわ。それにしても……この星は殺風景な光景なのに、どこか温かいものを感じるわね」
それはまるで、何か巨大な生き物の中にいるような、それでいて本能的にあらゆる存在を安心させるような感覚。この星が惑星単位でひとつの生物だというのであれば、今、自分達は正に惑星の懐におり、惑星によって抱かれているということだろうか。
(「惑星サイズともなれば、その寿命は計り知れないわね。と、いうことは……時間の流れの感覚が、私達とは違っているかもしれないわ……」)
懐中羅針儀Ωも併用し、都留は惑星の内部を走るエネルギーの脈動を感知し、それにフィルターをかけて精査した。同時に、衛星軌道上に待機させてある器物の通信システムを使って、自分達が友好的な存在であることを伝えることも忘れない。
「…………」
様々な波動が飛び交っていることで、少しばかり不安を覚えたのだろうか。鳴き声さえも上げなかったが、それでも宇宙怪獣の幼体は、先程から不規則に虹色の点滅を繰り返している。
「大丈夫だよ。今、ボク達が、キミのお父さんやお母さんを探しているからね」
言葉が分かるかどうかまでは不明だったが、それでもリアは、敢えて声に出して宇宙怪獣の幼体に告げた。本当は、彼らの使う言語も解析しておけば楽だったのだが、そこまでせずとも態度だけで、何かを察してくれたのだろうか。
「…………」
やはり、言葉は発しないまま、宇宙怪獣の幼体は微かに点滅して反応を返した。その身体はリア達と比べて何百倍もありそうなほどの巨体だが、それでもまだ子どもであることに変わりはないのだろう。
(「さて……送られてきたデータを解析してみたけど……なるほど、これは驚いたね。集合無意識みたいな存在だって聞いていたのに、ちゃんと『個』としての意識があるみたいだ」)
そんな中、都留から送られてきたデータを解析したリアは、改めてこの星の在り方に驚愕した。
あらゆる生命が溶けあい、ひとつになった惑星。普通であれば、そのような存在は様々な意識が混濁し、純粋な本能だけしか残らないはず。
しかし、この惑星に限っては、そんなことはないようだった。どうやら、話せばわかってくれそうな存在らしく、後は話をするスピードが問題だ。
「少しだけ、キミのことを教えてね」
星の地表から生えている水晶に、リアは優しく触れて自分の想いを伝えた。
悠久の時を生きる惑星。だからこそ、人間のような速度では思考せず、人間と同じコミュニケーション手段も持っていない。しかし、こちらから語り掛ける際に相手のやり方に合わせれば、意思疎通をすることは難しくない。
果たして、そんなリア達の想いが通じたのだろうか。星の表面を覆う水晶が一斉に輝くと、その光は一か所に集まって行き、やがて銀色に光り輝く女性のような形となった。その大きさは宇宙怪獣の幼体に匹敵する程であったが、しかし顔には穏やかな微笑を湛えていた。
『ようこそ、いらっしゃいました。私はあなた方が、ネーデa158と呼ぶ者です』
光り輝く女性像が、人間の言葉で語り掛けて来た。どうやら、星の側からこちらに合わせてくれたようだ。
『あなた方の考えはわかっています。そこにいる子の、仲間を呼べばいいのですね』
幸い、似たような波動をここ最近で感知したことがあると、ネーデa158は教えてくれた。そして、自分の力を以てすれば、その波動が消えた方角に、宇宙怪獣の幼体が放つ電磁波の波長を届けることができるとも。
『少し、時間が必要ですが……任せていただけますか?』
輝く巨体が尋ねてくる。当然、拒否する理由は何もない。猟兵達が全てを星に任せれば、再び水晶が光り輝き、女性を形作っていた光もまた崩れて行き。
「…………!?」
瞬間、光が宇宙怪獣の幼体を包んだかと思うと、それは一筋の光線となって天へ昇り、そして消えていった。
「どうやら、上手くいったみたいね」
「うん、たぶんね……。でも、迎えがくるまでは、もう少しかかるのかな?」
光の飛んで行った方向を眺めつつ、都留とリアがそれぞれ呟く。電磁波が光速を超られえない以上、後は放たれた光が上手く宇宙怪獣の群れへ届くことを祈るのみだ。
●虹色に染まる
宇宙
宇宙怪獣の迎えが惑星に到着したのは、それから半日ほど経ってからのことだった。
光の速度で進んだところで、星系を横断するにも2日以上は要するはずだが、随分と早い。もしかすると、星は何らかの力でワープの類を駆使し、宇宙怪獣の群れに自分の位置を教えたのかもしれない。
詳細は不明だが、それができるとなれば、確かに凄まじい力だ。真偽の程は不明だが、もしかするとこの惑星も、ユーベルコードの一つや二つは使えるのかもしれない。
「どうやら、お迎えが来たようね」
そう言って都留が空を指差せば、そこは既に全面が虹色に染まっていた。それらは全てイリシエルの成体であり、子どもを迎えに来た群れだった。
「綺麗ですわ……。お空が全て虹色に……」
真昼のオーロラとも呼べる光景に、回収されたメグ・メイルもまた、思わず呟いていた。虚数空間に取り残され、船の墓場を漂っていた彼女からすれば、この光景はまさしく夢のようなものだろう。
「さあ、そろそろお別れだよ。キミの仲間のところへ帰るんだ」
そう、リアが促せば、宇宙怪獣の幼体は全身を発光させながら空へと向かって行く。途中、猟兵達の頭上を何度も旋回しつつ、最後は輝く空の一部となって見えなくなり。
「……っ!? 凄い電磁波だ!」
「それだけじゃないわ。これは……空間にも干渉している?」
突然、計測不能なほどの時空揺を感知し、リアも都留も騒然となった。それらは全てイリシエルの群れから放たれているものであり……最後は巨大なワームホールを展開すると、彼らは光に匹敵する速度でその中へ消え、他の星系を目指して飛び去って行った。
「良かったですわね……ご家族に会えて」
少しばかり寂しげに、メグ・メイルは呟いた。オブリビオンと化したメグ・メルの中から回収された彼女だったが、やはりこの場にいない兄弟のことが気になるのだろうか。
そんなメグ・メイルに、落ち込む必要はないとリアは告げる。冒険は、むしろこれからが本番だ。そして、自分達の使命を成し遂げるには、他でもないメグ・メイルの力も必要なのだと。
「未知を識り、路を拓くはボク達の使命のひとつさ。メグも手伝ってくれるかい? 今を生きる誰かの明日の為に、ね」
誰かを救い、守ること。それこそが、自分達の作られた本当の意味ではなかったか。そう問いかけるリアに、メグ・メイルはようやく笑顔の片鱗を見せ。
「はい……わかりました。改めて……よろしくお願いいたしますわ、リア姉様」
孤独に宇宙を彷徨う独りぼっちの迷子は、もういない。イリシエルもメグ・メイルも、それぞれ自分が在るべき場所に、ようやく帰還することができたのだから。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2023年08月21日
宿敵
『亡き祈りの『メグ・メイル』』
を撃破!
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