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闇の救済者戦争⑪〜闘技場の華

#ダークセイヴァー #闇の救済者戦争

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#闇の救済者戦争


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 決闘者達が命を賭ける舞台、白く輝く闘技場は、丁重に扱われた芸術品のように、美しく磨き抜かれていた。
 しかしそこに立った猟兵は、隠し切れない血の臭いを感じ取る。
 壁も何もない、外縁部から見下ろせば、眼下に広がる草原には、草花の代わりに無数の剣が生えていた。そこにはきっと、無数の敗北者が捨てられて、時には落ちた闘技者を敗者に変えて、いくつも命と幾重もの血肉が折り重なっているのだろう。

 素っ気なく、物騒で、しかし輝いて見える鉄の花畑から、ひとつの光が天に上る。

 それは風を裂くように真っ直ぐに飛んで、あなたの手の中へと収まった。
 飛来したのは、シンプルな一振りの短剣。同時に現れた、黒い鎧のオブリビオン、彼の手元にもまた、同じように|短剣《グラディウス》が齎される。
 どうやら「この武器のみを用いて戦う」ことが、この闘いの唯一のルールであるらしい。

 黒鎧の騎士は剣に魔術の闇を纏わせ、こちらに一歩、踏み込む。

●剣に願いを
「腕に覚えのある人を探しているんだけど、君達がそうかな?」
 ざっくばらんな調子で、オブシダン・ソード(黒耀石の剣・f00250)が一同へとそう告げる。この度、新たに現れた戦場は、いかにもシンプルな決闘場だった。
 「自生する無数の剣の草原」の上に建造されたこのアリーナは、魂人の奴隷同士や奴隷と凶悪な魔獣を戦わせる興行は勿論、時には「何らかの罪を犯した闇の種族」を痛めつけ、発狂に追い込んで下層へ放逐する手段としても利用されていたらしい。
「どうもここに踏み込むと、闘技場の流儀に従った戦いが始まっちゃうらしくてね。ここを制圧するために、君達にも付き合ってもらわないといけないわけさ」
 今回のルールは、『得物を制限した一対一の戦い』。互いに平等に、一振りの短剣――グラディウスのみを武器とし、戦う必要があるらしい。
「ルールの違反者に何が起こるのかは、僕もよくわからないんだよね。でもそんな実験したくないし、この程度の縛りで負けるほど、君達もやわじゃないでしょう?」
 煽るようにそう言って、オブシダンは闘技場への道を示す。
「これも良い機会じゃないかな。さあ、君達の実力を見せてみてよ」


つじ
 当シナリオは『闇の救済者戦争』の内の一幕、一章構成の戦争シナリオになります。

●戦場
 「自生する無数の剣の草原」の上に建造された闘技場です。
 闘技場自体は広い円形のフィールドとなっており、障害物などは特にありません。

●魔装騎士ガイウス
 優れた剣士であると同時に闇の魔術の使い手。生前は騎士の称号に恥じぬ人格者だと謳われていたらしく、今回も正々堂々戦います。
 今回の得物は魔剣デスブリンガーではなくグラディウスですが、彼の魔剣術(UC)は同様の効果を発揮します。

●プレイングボーナス
 飛来した|短剣《グラディウス》を用いて戦う。
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第1章 ボス戦 『魔装騎士ガイウス』

POW   :    魔剣術の奥義
【闇の魔術】によって、自身の装備する【魔剣デスブリンガー】を遠隔操作(限界距離はレベルの二乗m)しながら、自身も行動できる。
SPD   :    魔剣術の絶技
自身の【柄頭の魔石】が輝く間、【魔剣デスブリンガー】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    魔剣術の神髄
【闇の魔術】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【魔剣デスブリンガー】で攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はセシリア・サヴェージです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

仇死原・アンナ
アドリブ歓迎

…時は来たれり!さぁ行くぞ…私は…処刑人だッ!!!

処刑人の覚悟を胸に飛来した短剣を手に取り相手をしよう

敵の斬撃を心眼で見切りつ武器受けで受け止め攻撃を凌ごう
短剣で受け止められそうにないならジャンプと軽業で回避する

騎士め…申し訳ないが貴様に構ってる暇はない…!私は…処刑人だッ!!!

短剣を早業で振るい【処刑人の一撃】を放ち
敵の急所目掛け突き串刺し、鎧無視攻撃で傷口をえぐり鎧砕きで
そのまま引き裂き切り捨ててやろう…!

言っただろう…私はアンナ…処刑人が娘也ッ!!!



●覚悟の一太刀
 時は来たれり。剣の草原から飛来した一振りの短剣を、仇死原・アンナ(地獄の炎の花嫁御 或いは 処刑人の娘・f09978)はその手に握る。そして重さを確かめるように一度振るった刃を、黒色の騎士へと突き付けた。
「さぁ行くぞ……私は……処刑人だッ!!!」
 自らの使命、そして覚悟を胸に、高らかに名乗りを上げて、彼女は征く。対する騎士もまた、アンナと同じ素っ気ない鋼色の刃を振るい、応戦。互いの誇りを乗せた剣がぶつかり合い、アリーナの舞台を火花で彩る。
 全身を甲冑で包みながらも、騎士の動きは素早く的確。重量と速度の乗った斬撃は、確実にアンナを両断せんと狙う。その刃を見切った彼女は、軽やかな跳躍でそれを躱すと、反撃の一太刀を入れた。
 闇色の鎧をグラディウスが引っ掻く、しかし甲冑の上からではさしたる効果はないのだろう、騎士は一切動じた様子もなく、着地したアンナに蹴りを見舞った。
 騎士が剣を振るう際に、多少の隙が見受けられるが、それは鎧の防御に任せてあえて作られたものに見える。そう分析しながら後ろに跳んで、衝撃を逃がしたアンナだが、一旦離れたはずのその間合いを、騎士の放った短剣が瞬時に切り裂いた。魔剣術――闇の魔術によって操られた剣は、騎士の手元を離れてなお鋭さを失わず、彼女に迫る。
 瞬く間に目の前に迫ったそれを、咄嗟に短剣の腹で逸らす。空中で反転し、さらに襲い来るそれを見切り、斬撃で弾くと。
「騎士め……申し訳ないが貴様に構ってる暇はない……!」
 強く地を蹴り、アンナは一気に間合いを詰める。空中を舞う敵の剣は、弾かれた方向から迂回するように騎士の手元に戻る、それに追いつくように、駆けて。
「私は……処刑人だッ!!!」
 名乗りと共に、短剣を繰り出す。敵もまた咄嗟に防御を期して、狙われると判断した鎧の隙間を塞ぐように構えるが。
 アンナの突き出した刃は、鎧の上から真っ直ぐに敵を貫いた。
『何だと……!?』
 急所を串刺しにした刃に力が篭る。『処刑人の一撃』は、まだ終わってはいない。
 咎人に死と救済を。突き刺したそこから、引き裂くように刃が振るわれる。傷口を抉り、広げ、鎧さえも斬り裂いて、グラディウスが振り抜かれた。
「言っただろう……私はアンナ……処刑人が娘也ッ!!!」
 剣から散った赤が闘技場を濡らす。闇色の騎士が膝をつき、自らの流した血の海へと倒れ込んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

紫・藍
藍ちゃんくん、剣での戦いは得意ではないのでっしてー。
剣で戦うのなら本家の騎士さんには敵わないかと!
ですが。それがダンスならどうでっしょかー?
藍ちゃんくん、剣舞はできないとは言ってないのでっすよー?
騎士さんの斬撃を踊るように受け流していくのでっす!
相手の動きに息を合わせて舞い踊る。
それは藍ドルの得意とするところ!
騎士さんも剣だけでは捉えきれないのならと魔剣術を使うでっしょうがー!
魅せてこその藍ドルなのでっしてー!
剣舞という形で藍ちゃんくんと舞っていた騎士さんの短剣は藍ちゃんくんのファンになってるのでっす!
愛用の魔剣でしたら忠誠心はあったかもでっすが!
借り物の剣なことが勝負を分けたのでっす!



●ソードダンス
 高く掲げたその腕に、一振りの剣が飛来する。手にした者の在り方によるものか、剣闘士、グラディエーターの語源ともなったそのシンプルな剣は、美しく輝いて見えた。
『――いざ』
 勝負の時。全く同じ形の剣を手にした黒騎士は、紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)にその切っ先を突きつけ、静かにそう告げた。
 甲冑に包まれた足が闘技場の床を鳴らす。無造作だが隙の無い歩みに対し、藍の足取りは軽やかに踊るよう。その違い、その差は、接触の瞬間にさえも変わらなかった。
 弧を描く剣閃、探るようなそれに続いては籠手に覆われた左腕が伸ばされる。捕まえる、押し退ける、相手の状況に対応した形で姿勢を崩し、貫く一太刀に繋げる一手。防御力を活かした騎士の動きに、藍はその手を合わせるような素振りで身を躱す。
『……ほう』
 感心したような声が騎士の兜の内から聞こえる。剣術のやり取りであればガイウスに劣るところはなく、早々に決着がついただろう。だが藍の動きはまるで、そう。
「藍ちゃんくん、剣舞はできないとは言ってないのでっすよー?」
 円形の舞台で演るのは殺し合いに限らず、ダンスもまた相応しいもの。騎士の手から繰り出される斬撃を、両手に抱いた刀身で受け、その身を反らして舞うように流す。
 輝く『星の瞳』は敵の動きを余さず捉え、一方的に息を合わせた命がけのダンスは続く。
『ならば――!』
 剣術では捉えられぬと悟った騎士は、そこで調子を変えた。マントを翻し、藍の視界から手の動きを隠す。その間に放たれたのは、闇の魔術。騎士の手元から剣が舞い、空中を切り裂いて藍へと迫った。
『……我が、闇の魔術が……!?』
 その結果に、騎士が驚愕する。奇襲を仕掛け、相手を貫くはずだった短剣は、しかし藍を貫くのではなく、彼に沿うように周囲を旋回し始めていた。
「この短剣も、藍ちゃんくんのファンになってくれたようでっす」
 たとえばこれが、『愛用の魔剣』であればガイウスを裏切るようなことはなかっただろうが。
「借り物の剣なことが勝負を分けたのでっす!」
 フラットな条件から、相手を魅せる剣舞とファンサービスは、闇の魔術の支配を上回った。
 ダンスの最後に、手にした剣を振り下ろす。藍の動きに合わせて空中を旋回した剣は、元の持ち手、魔装騎士ガイウスを貫いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レナータ・バルダーヌ
闘技場ですから決闘はわかりますけど、闇の種族を発狂させて下層に放つとは一体……。
今は考えている場合ではありませんね。
この世界には珍しく、相手が律儀な方のようで助かりました。
それでは、よろしくお願いします!

相手の戦い方を見るに、武器として以外なら力を使ってもよさそうです。
正々堂々と仰るなら、わたしも【サイコキネシス】で剣を操作、同じ方法で戦います。
サイキック【オーラで防御】も固めますけど、鎧の隙間を狙う必要がある分、こちらが些か不利でしょうか。
【痛みに耐え】つつ戦いながら機を窺い、まだ余力のある【念動力】で相手の剣を抑えます。
同時に相手に抱きついて視界を塞ぎ、操作する剣の一撃を差し込みます。



●空中剣戟
 剣の草原を見下ろす高み、アリーナの舞台に上がったレナータ・バルダーヌ(護望天・f13031)の手元に、一振りの|短剣《グラディウス》が収まる。シンプルで素っ気なく、それでいて鋭い。単純に殺すことだけを考えたようなその得物は、ある意味闘技場に相応しく思える。
 まあ、これからその『決闘』に、自分自身が赴くことになるのだが。
「闘技場ですから決闘はわかりますけど、闇の種族を発狂させて下層に放つとは一体……」
 先に受けた、この地に関する説明を思い出し、レナータは呟く。見世物であると同時に、処刑場としての役割もあったのだろうか――と、その思案は途中で打ち切ることになった。
 現れた黒鎧の騎士、ガイウスは、レナータと同様に飛来した短剣を手にする。
『――行くぞ』
「よろしくお願いします!」
 真正面からそう言葉を交わして、両者はどちらかが死ぬ闘いへと身を投じた。
 白刃と白刃がぶつかり合い、闘技場を火花で彩る。だが膂力の差に、鎧で固められた防御――接近戦では分が悪いと判断したレナータは、深入りせず逐一距離を取るように立ち回る。
 だがそこに、騎士の操る魔剣術による一手が繰り出された。
 血の色に輝く騎士の右腕、そこから伸びた光は短剣に絡みつくと、それを空中へと浮かばせる。レナータがそれに気付いた次の瞬間には、鋭い刺突の形で短剣の切っ先が突っ込んできていた。
「――ッ!」
 防護用のオーラを纏わせ、咄嗟に剣で防御する。だが螺旋を描くその切っ先を受け止め切れず、レナータの手から短剣が弾き飛ばされた。
 とどめとばかりに騎士の剣が空中で旋回し、こちらを狙う。しかし彼女の視線は、真っ直ぐに敵の方を向いていた。
「それがありなのでしたら……!」
 後方に弾き飛ばされた剣を、『サイコキネシス』――念動力の腕が掴み、大きな弧を描いて振り下ろす。天空から降り注ぐそれを、騎士は引き戻した剣で受け止めた。
『見事。我が魔剣術の奥義に抗するとは』
 だが、それもいつまで続くか。騎士の態度には、どこか余裕が滲んでいた。
 それぞれの技術により、短剣のみが両者の間でぶつかり合う。剣士の肉体という頸木を解かれ、空を舞う剣による剣戟。だがその技術については、魔剣術として体系化したあちらに一日の長があるようだ。
 しかし、彼女には彼女のやり方がある。躊躇うことなく地を蹴った彼女は、火花を散らす剣戟の間へと身を躍らせる。虚を突かれた様子の騎士の剣を、こちらの念動力で一時抑えると、そのまま敵の頭部へ、兜の上から飛び着いた。
『何を……!?』
 その身を挺した奇襲だが、彼女の膂力では大したダメージは与えられない。瞬く間に、力ずくで引き剥がされてしまうが――その一時、視界を塞ぐことには成功していた。
 視界を奪われたことで、ガイウスの剣の操作に遅れが生じ、空中で一瞬停滞する。逆に、レナータの投げた刃は、既に騎士の死角に回っていた。
「――あなたが律儀な相手で助かりました」
 おかげで正々堂々と、こちらも手を尽くすことができた。そんなレナータの言葉と同時に、彼女の短剣が鎧の隙間を貫く。
 決着は成った。敗者の剣はぎりぎりのところで制御を失い、レナータの傍らに突き刺さった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夢幻・天魔
(※超絶厨二病。厨二なら何でもOK)

ククク……ここは異世界にて剣術を極め、『剣神』とまで呼ばれた俺の出番だな
(そんな事実はなく、全て天魔の妄想である)

あらゆる剣術を体得した俺にとって、得物が何かなど問題にはならない
かつてはバターナイフで暗殺者を撃退したくらいだ
(やっぱり適当な設定を思いつくままに言っているだけ)

身の程を思い知らせてやろう!
これが最強の剣技だ!
(『無双設定撃』を発動! グラディウスを手に剣戟戦)

これで終わりだ
(なんかかっこいい技名:おまかせ)!!!



●言った者勝ち
 今回の闘技場で定められたルールはひとつ。剣と剣、同じ得物を手にし、正々堂々と戦うことだ。真っ当に、一対一で戦うのであれば、単純に剣術の腕の優れた方が勝利することになるだろう。
「ククク……ここは異世界にて剣術を極め、『剣神』とまで呼ばれた俺の出番だな」
 自信に満ちた様子で舞台に上がった男――夢幻・天魔(千の設定を持つ男・f00720)は、剣の草原から飛来した短剣をその手に取った。
「ふん……軽いな。やはりこの程度か」
 それは彼の普段の得物、選ばれし者にしか扱えない(という設定の)神剣や魔剣とは違う、素っ気ない代物だ。究極にして完璧な戦士である天魔にしてみれば物足りない武器だろうが。
「まあいい。あらゆる剣術を体得した俺にとって、得物が何かなど問題にはならない……バターナイフで暗殺者を倒した時に比べれば、容易い事だろう」
 さっき思い付いた無双エピソードを披露しながら、天魔は此度闘う対戦相手、魔装騎士ガイウスと向かい合った。光を拒絶する黒い鎧と、使い込まれボロボロになった様子の見えるマント。その出で立ちは実のところ天魔の趣味にかなり合っている。どうやらかなりやるようだ、「フッ」と好敵手を認める強キャラ風に笑ってみせると、彼は余裕の表情で敵の攻撃を迎え撃つ。
 双方の剣が互いに噛み合い、闘技場に相応しい音色を奏でる。相手の力量を確かめるようなやり取り。そこで最初に動いたのは、騎士の側だった。
『容易いと言うのなら、その目で確かめてみるが良い! 我が魔剣術の粋を!!』
 彼が操るのは闇の魔術。赤く滲む力の軌跡が短剣を覆うと、それが手元を離れて浮かび上がる。そして騎士の意のままに、空中で鋭い弧を描き出した。剣のみが浮いているとは思えぬ重い斬撃を、天魔は受け流す形で捌く。
 徐々に追い詰められ、後退していくそこに――。
『貫け!』
 振り被る動きに合わせて大きく引いた刃が、螺旋を描きながら真っ直ぐに突っ込んできた。
 抉るようなそれは、天魔の短剣を穿たんばかりの勢いで衝突し、甲高い音と火花を散らせる。が、そこで。
「闇の力のみに頼るなど所詮は二流! 身の程を思い知らせてやろう!」
 構えた剣ごと大きく弾き飛ばされながら、天魔は高らかに宣言した。
「光と闇を併せ持つ――これこそが最強の剣技!!」
『何だと……!?』
 まあまあ無茶苦茶なことを言っているが、設定を盛った方がやる気が出るのがこの男。特にこうしてマウンティングを取れた場合はなおさらである。
「これで終わりだ! 顕現せし白夜極光の銀剣舞!!!」
 やけに長い名前の必殺剣が、騎士の守りを切り裂いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

シキ・ジルモント
濃い血の臭いには閉口するが、戦闘に影響は無い
拳銃は使わず、ルールに従って飛来した短剣で戦おう

ユーベルコードを発動しつつ相手の柄頭の魔石に注目
輝いている間は連撃を警戒、増大した行動速度で回避したい
攻撃に合わせて側面や背後に回り込む等、短剣の範囲外への退避を試みる
短剣という軽量武器を扱うなら、身軽さを活かす方向で戦法を組み立てた方が自分には合っている
避けきれない場合は刀身の腹で相手の剣先を受け、滑らせるように受け流して逸らす

連撃が終わるタイミングで深く踏み込み跳躍、距離を一気に詰める
相手が短剣を持つ腕を、自分の短剣の柄で殴打し弾く
腕を弾く事でガードを崩し、鎧の隙間を狙える喉元へ刺突での反撃を試みる



●刃の風
 剣の草原は遥か下、だがそこに墜ちた敗者の名残は、この舞台にも色濃く香る。一体これまで何人呑み込んで来たのか、欲と業を煮詰めたこの闘技場は、今日も犠牲者を求めるように幕を開ける。
 血の臭いの根的、剣の草原から飛来した一振りの剣を、シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)がその手に収める。血みどろの園から来たにも関わらず、その刃は白く、無機質に輝いていた。
『あそこに墜ちる覚悟はできたか?』
 同じ刃を手にした者、対峙する魔装騎士ガイウスが、兜の奥からそう問いかける。
「さあな。だが――」
 互いの間の距離は僅か。ゆえに、シキの刻んだその一歩が、始まりの合図となった。
「堕ちるのは、あんたの方だ」
 秘めたる獣性を解放。血の臭いが一層はっきりと感じられ、敵の動きが細部まで認識できる。敵の放つ鋭い刺突も、斬撃も、動きの起こりを捉えた上でなら素早く捌ける。逆にこちらは、鎧の上から刃を通す方法を探さねばならないようだが――。
『速いな。ならば』
 身軽さを活かした立ち回りで、シキは攻撃を躱しながらその隙を探っていた。その動きに応じながらも捕まえきれず、騎士は次の一手に出た。
『――我が魔剣術の粋を見よ!』
 赤く滲む魔力の光が剣を捉える。柄頭にその輝きが集まると同時に、騎士が深く踏み込む。放たれた斬撃、これまでとは比べものにならない速度でシキに迫る。だが、彼もその赤い光が力を発揮する瞬間を、その五感でしっかりと捕捉していた。
 常人ではとても捉えきれないであろう剣閃、人狼の眼力を以てしても、視界に赤い残像だけを残して奔るそれに、肉体のリミッターを外したシキはぎりぎりで対応する。
 一撃一撃に対応していてはすぐに追いつかれてしまう、時に大きく後退し、時に回り込むように跳んで、『次の一撃』を制限するように身を躱す。それでもなお危ういものには剣を盾に、刀身を滑らせるようにして受け流す。嵐のような連撃を、能動的にやり過ごし、シキはついにその切れ間を見つけた。
 刃を振り切り、騎士の動きが止まった瞬間に、一息に深く踏み込む。短剣の柄で以て相手の腕を打ち、握っていた得物を取り落とさせ――。
「言っただろう、堕ちるのはあんただと」
 防御に回されたもう片方の腕を次の一撃で跳ね上げる。
 騎士の魔力によるものか、取り落とされたはずの短剣が空中で止まる。だがその切っ先がシキを貫くその前に、最短距離で放たれた刺突が、鎧の隙間から騎士の喉元を切り裂いていた。
 制御を失った騎士の剣は、シキから逸れて虚空を舞う。自らの血に溺れるように、騎士の身体がその場に倒れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

紅呉・月都
アドリブ・連携歓迎

あ?コレ使えって?
…いいぜ、やってやる
飛来した短剣を掴み取り眼前の剣士を見やり
慣れた手つきでグルリ回したら
浮かべるのは獲物を見つけた刃のような笑み

片刃だろうが両刃だろうがそんなもん大した問題じゃねえ
俺自身が“短剣”だ
扱えねえ訳がねえ…おら、始めようぜ!
戦闘知識を活かし立ち回る
敵の攻撃は野生の勘も合わせ、見切るもしくは武器で受流す

テメエも魔術なんつーもん使ってんじゃねえか
だったら…
俺がコレに細工するようなもん使ってもルール違反にはなんねえよなあ?
UCを発動
鎧そのものを砕くように攻撃を叩き込み
部分的にでも破壊できたならそこめがけて刃を振るう

此処でくたばるのは俺じゃねえ
テメエだ



●剣の在り方
 意思を持つように宙を舞い、一振りの短剣が紅呉・月都(銀藍の紅牙・f02995)の前に浮かぶ。「使え」と言わんばかりのそれに溜息を吐いて、月都は手を伸ばした。
「……いいぜ、やってやる」
 長さや重さを確かめるように、刃をその手の内でぐるりと回す。手慣れた得物、普段扱う刀と比べれば短く、ナイフと比べれば長く重い、少々中途半端な立ち位置だろうか。さらに言うならこちらは両刃……だが、その程度は大した問題ではない。『短剣』を如何に扱うか、それは月都が一番よく知っているのだから。
「おら、始めようぜ!」
 剣呑な瞳でそう告げると、同じ剣を手にした甲冑の男、魔装騎士ガイウスも静かにそれに応じた。
『――いざ』
 落ち着いた声音に反し、繰り出される斬撃は重く、鋭い。全身鎧という装備を思わせぬ素早い動きで、騎士は短剣を意のままに振るう。
 基本に忠実、かつ正確な剣を、月都は経験と本能を元に見切り、受け流しつつ立ち回っていく。相手の斬撃をかろうじて捌く月都だったが、若干攻めあぐねても居た。何度か腕に足にと反撃で斬りつけることは成功したが、鎧に阻まれさしたる成果はあげられていない。
 そうして、突破口を探す内に。
『我が奥義、その身で味わえ』
 一手早く、相手が動いた。振り下ろされる刃、それを受けるべく月都も短剣を盾代わりに構えるが、手応えはなく。代わりに宙を舞い、防御を掻い潜るように飛来した敵のグラディウスが、月都の肩口を切り裂いた。
「――!?」
 咄嗟に身を翻し、追撃を避けた月都の目の前を、反転した刃が駆けて、騎士の手元へと素早く戻される。
 剣を握る様子はない。だがその代わりに、敵の掌から揺らぐ赤が、その柄へと伸びていた。
「……これが魔剣術ってやつか」
 なるほどなあ、と頷く。通常の剣術を下敷きにしながら、剣士の身体という障害を廃した斬撃は効率的で、動きの予測が難しい。
 だがそれは、まともに剣術で相手をした場合の話だ。魔術による剣の操作――そういったものが可能であるのなら。
「だったら、俺がコレに細工するようなもん使ってもルール違反にはなんねえよなあ?」
 そう言うと、月都は流れた血を自らの手にした短剣に垂らす。『奮迅する諸破の紅牙』、血を注がれた|短剣《グラディウス》は、そこで剣の草原の一員に相応しい本性を露にする。
 敗北者をその刃で貫き、血を浴び、啜る、それこそが自らの存在意義だと言わんばかりに変貌したグラディウス。その禍々しい刃を一閃し、月都は騎士の鎧を切り裂いた。
『おのれ……!』
「逃がさねえぜ――こいつもまだ血が足りねえって言ってるしなあ」
 破れた鎧はそのまま彼の弱点となる。喉笛を狙う肉食獣の目でそれを捉え、月都は短剣と共に駆け出した。
 闇の魔術で宙を舞う剣よりも自由に、凶暴に、馳せる刃は防御の及ばぬそこを貫く。
「此処でくたばるのは俺じゃねえ、テメエだ」
 刃の並んだ草原の遥か上、白く磨かれた舞台の上に、大きな血の花が咲いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

冴島・類
慣れない武器でも
正々堂々と言うならば
この地ではまともな条件な方ですよね

短い間とは言えよろしく頼むよ
短剣君に挨拶し、いざ尋常に

刃渡だけ考えたら射程が短いが
あちらも魔術使うなら、力乗せるのは有り判定?

物理軌道は見切り
魔術は第六感で、可能な範囲で深傷回避狙う

とは言え、避けてばかりではね…
風の全力魔法込めた短剣での薙ぎ払いで
中距離攻撃で牽制や
足元狙い放ち闘技場の床破壊で障害物作りながら駆け至近に接近

短剣の届く範囲まで踏み込めたら
破魔の力乗せ、相手の手元狙い……
力負けし弾かれたふりをし短剣を宙に放り
綾繋ぎで短剣に繋いだ糸で操り
死角から鎧の隙間目掛け、貫く

膂力勝負で勝てる気はしないのでね
隙を、突けたなら



●技比べ
 剣の草原、舞台から遥か下に見えるその一角が輝くと、飛来した一振りの剣が、冴島・類(公孫樹・f13398)の手元に収まった。グラディウス、世界によっては|剣闘士《グラディエーター》の語源ともなったその短剣は、もちろん類にとっては慣れない得物ではあるが。
 ちらと戦う相手――甲冑を着込んだ騎士を見遣る。その手にはこちらと同じ、|短剣《グラディウス》が握られていた。正々堂々、一対一。そう考えれば、この地で戦う条件としてはまともな方と言えるだろう。
「それじゃ、よろしく頼むよ」
 決着までの時間はそう長くはあるまい。けれどその間、命を預けるであろう短剣に一声かけると、類は半身に構えた。
 刃渡りだけならば短刀に近いか。少々心許ないが、それは相手も同じはず――素早く踏み込み、探るように二、三度剣を合わせる。斬撃の重さを、そして甲冑を着てなお自在に剣を振るう腕前を確かめながら、数歩後退、攻め方を組み立てて。
 ――その最中に、間合いの外で騎士が刃を小さく振りかぶる。その手から伸び、短剣に絡みつく赤色の闇、明確な殺気を感じ、類は咄嗟に身を屈めた。
『我が魔剣術の神髄、とくと味わえ』
「……ッ!」
 瞬間、腕から離れた敵の短剣が頭上を薙ぐ。突然の遠距離攻撃、さらに空中で反転して襲い来るそれに、短剣を盾代わりにして咄嗟に応じる。
「……それも『有り』なんだ?」
 ならばこちらにも考えがある。類の側も風の魔力を纏わせて、同じ間合いで風の刃を解き放った。相手もまたそれを察知し、引き戻した剣と闇の魔術でそれに抗う。
 反撃は綺麗に防がれた形だが、そもそも甲冑相手では効果が薄いか。牽制程度と見て取ったのだろう、騎士は短剣を再度手元から繰り出す。
 その軌道は、最短距離を貫く刺突。螺旋を描き、抉るように回転しながら突っ込んでくる刃。必殺を期したその一撃を、類は剣に纏った風を解き放つことで逸らしてみせた。
 掠めて行き過ぎた敵の刃とは逆に、類は深く、短剣の間合いへと踏み込む。
「これで……!」
 手にした刃に破魔の力を込めて、渾身の一太刀を放つ。
『一歩、足りなかったな』
 しかしそれは、手の内へと引き戻された敵の刃に防がれる。短剣と短剣、白刃同士が火花を散らし――。
 弾かき飛ばされる形で、類の取り落とした刃が宙を舞う。やはり、膂力勝負では騎士の側に分がある。
 誰しもにそう思わせた、そこで。
 『綾繋』、不可視の糸が弾かれた短剣を絡め捕る。そこからの動きは敵の魔剣術と同様だ。
 丸腰になった類にとどめを刺さんと振りかぶる敵。その攻撃の際に生まれる隙を、死角を、自在に舞う類の短剣が貫いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アレクシス・ミラ
アドリブ◎

1対1か…ならばこれは騎士の決闘でもあるね
闇には光をと、僕も光属性の魔力を短剣に纏わせる
同じ騎士として、正々堂々お相手致そう!

防御重視に戦おう
真っ向に打ち合いではなく
短剣や籠手で覆った腕で相手の剣を往なしていく
僅かな隙を見切れれば、鋭く突きを放とう
カウンターには剣で受け止めた後、滑らせるように接近
斬撃を放つ
素早く連撃へ繋げ此方の隙は与えさせない

相手の闇の魔術…強い攻撃への気配を感知すれば
【蒼穹眼】で行動を予測
脚鎧に光の魔力を充填
光を爆ぜさせその推進力で回避しつつも
目を逸らさない
全ての運命を見通すように隙の看破してみせる
見つければ…今度は真っ直ぐ、全力で!
鎧をも断ち貫く一撃を叩き込む!



●決闘
 互いに同じ剣のみを手にし、一対一で雌雄を決する。それがこの剣闘の醍醐味だろう。グラディウス・アリーナで催された、興行じみた戦いではあるが、舞台の上で相対するのは騎士と騎士、アレクシス・ミラ(赤暁の盾・f14882)と魔装騎士ガイウス。その様は見世物の殺し合いというよりは、騎士の決闘の方が似合いに見えた。
「同じ騎士として、正々堂々お相手致そう!」
『――いざ、勝負』
 ガイウスの手元から滲む赤い闇が短剣を覆い、アレクシスの短剣には彼の使う光が宿る。白銀の鎧と闇色の甲冑、光と闇、正反対の両者の戦い方は、やはり対照的なものだった。
 積極的に踏み込み、攻め立てるガイウスに対し、アレクシスは守りに重点を置いた構えで応じる。
 真っ向からの力比べではなく、刀身や籠手を上手く使い、敵の剣を滑らせ往なす。敵の攻撃は力強く、重い。だが双方ともこの手の戦いには慣れているのか、決定的な隙は生じさせず、互角の剣戟は続く。
 そんな中、先に相手を制したのはアレクシスの側。逸らされるのを加味したのであろう甘い一撃を見切り、剣で受けると、光の騎士はそのまま刃を滑らせるようにして接近、斬撃を放つ。
 鋭い一撃は鎧に阻まれるものの、そこからは攻守を一変させたように、アレクシスが連撃を見舞った。相手の防御を弾き、隙を生み出し、そこを突く。絶え間のないそれに手を焼いたか、ガイウスは左腕を犠牲にするようにしてアレクシスの攻撃を断ち切る。籠手の内で腕がひしゃげ、しかし殴りつける形でアレクシスを押し出すと。
「――!」
 一瞬開いた両者の間で、めぐる魔力の流れ。
 ガイウスのそれを察知し、アレクシスは咄嗟に剣を掲げる。
『――喰らうが良い!』
 短剣の間合いの遥か外でそれが振るわれる。ガイウスの手を離れた剣は、螺旋を描く回転を伴い、アレクシスを抉るように空を裂いた。
 刃と刃がぶつかり合い、擦れ合う異音。距離を無視し、防御を貫く必殺の一撃。だがそこに生じる隙を、『蒼穹眼』は既に捕まえていた。空中で反転し引き戻される刃、本来ならばその間隙は一瞬で終わる程度のもの。だがそれを看破していたアレクシスは、脚鎧に集中させた光の魔力を解き放っていた。
 空を舞う敵の刃よりも早く、爆ぜる光と共に駆ける。
 全て運命を見通したような最適な一手。真っ直ぐに突き進んだ光の騎士の一太刀は、闇色の甲冑ごと敵を断ち切った。
『――我が魔剣術が破られるとは』
 見事。零れ落ちた賞賛の言葉は血に塗れ、闇の騎士は闘技場の地に倒れ込む。

●闘技場の勝者
 剣の草原に吹く風が、アリーナを彩る。それぞれに一対一の勝負を制し、猟兵達が勝利を飾った。
 この闘技場を制圧するときは、もはやそう遠くはないだろう。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2023年05月10日


挿絵イラスト