闇の救済者戦争⑥〜謎かけパラドクス
●無人の城塞と徘徊する影
ダークセイヴァーの第三層で始まった戦い『闇の救済者戦争』。
その目的のひとつ『鮮血の洪水』の阻止のために、猟兵たちは各地の制圧を進めていく……。
ここはその攻略対象のうちのひとつ、壮麗な黄金造りの城塞。ここでは奇怪な姿のオブリビオンが徘徊していた。
このオブリビオンを『タロット』と呼称しよう。そこはタロットたちを除き無人であり、何かの拠点として運用されている様子もない。彼らはまばゆい黄金の城塞でただ何かを探している様子であった。
そこに猟兵たちが姿を現すと、22種類のタロットたちは無限とも言える増殖をしながら猟兵へと襲い掛かるのだった。
●弱点を推理しよう
「来てくださり、ありがとうございます! 『闇の救済者戦争』の黄金城砦の攻略に関するお知らせです!」
グリモア猟兵のユーノ・エスメラルダ(f10751)はグリモアベースに集まった猟兵たちにぺこりとお辞儀をすると戦場の説明を開始する。
そこは黄金で出来た要塞である様だ。城があり、それを壁が取り囲んでいるオードソックスな構造である様子。しかしそこには見張りや守りは無く、建物内を22種類の奇怪な姿のオブリビオン――『タロット』が徘徊するのみであるらしい。
ユーノは持参するホワイトボードへと予知で得られた敵の特徴を書き連ねていく。
「これがここにいる敵さんです。このタロットは、形が22種類ある様です」
まるでタロットカードの大アルカナの絵柄を乱雑に混ぜて摘まんだ様な奇怪な形は、しかしその特徴を知っていればひと目でそれと分かる事だろう。
問題はこのオブリビオンの形状ではない。彼らがもつ増殖能力が少々厄介なのだ。
「このタロットたちは、一体の強さは大したことないのですが無限に増殖するため、正面から戦えば少してこずるかもしれません。具体的には、一種類を全滅させても次の種類を全て倒している間に、最初に全滅させたものが復活し始めてしまいます」
幸い一体一体は対して強くないため強引に全てを倒す事も可能だが……この無限の増殖を何とかしなければ、非常に手間がかかる戦いとなってしまうだろう。
「ですが、彼らには『弱点』があります!」
そう宣言したユーノだが、しかし勢いはすぐに萎んでいく。
「……ですが、すみません。その弱点の詳細までは解っていないのです。どうやら『彼らが呟く言葉がヒント』の様なのですが……。弱点となる種類のタロットを倒すと、残る21種類も連動して数が減っていくので全滅させ易くなる筈です。今から敵が呟く言葉を書きますね」
そう言いながら、ユーノはホワイトボードへ次の表を記載した。
────────────────────
|種類 |言葉 |
────────────────────
|愚者 |月の美しさに目を奪われる |
|魔術師 |悪魔を友とせよ |
|女教皇 |われらに嘘は一つもない |
|女帝 |皇帝と共に歩もう |
|皇帝 |私は世界の事が解らない |
|法皇 |節制は備えである |
|恋人 |運命の輪は気まぐれだ |
|戦車 |審判に、私が扱えるのか |
|力 |太陽こそ我が象徴 |
|隠者 |星は月を愛している |
|運命の輪 |星と太陽は仲が悪い |
|正義 |審判は我が友 |
|吊られた男|星の輝きが唯一の癒し |
|死神 |運命の輪に従おう |
|節制 |吊られた男に試練を与えよう |
|悪魔 |世界がわれらの弱点を指し示す|
|塔 |隠者は気が付いているようだ |
|星 |太陽は愚かだ |
|月 |恋人に歓喜と狂気を送ろう |
|太陽 |愚者に祝福を |
|審判 |死神にゆだねよう |
|世界 |嘘をつく者がひとりだけ居る |
────────────────────
「彼らは他の言葉は喋れない様です。そのため何かを問いかけても、無意味になってしまいます。事前に分かっている情報は以上となります」
説明を終えたユーノは手組んで祈りを開始した……すると地面に魔法陣が展開されていく。
これに乗ればそのまま黄金城砦へと転移されることだろう。
「ユーノは皆さんの転移のために同行は出来ません。どうか、みなさまに幸運がありますように……」
ウノ アキラ
はじめましての方は初めまして。そしてこんにちわ。
生活の方が落ち着いてきたので、ちょっとずつ復活予定です。ウノ アキラです。
このオープニングに興味を持っていただき、ありがとうございます。
●
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プレイングボーナス……ヒントを頼りに、タロットの弱点を推理する。
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●その他の情報
人数によっては全員の採用は難しいかもしれません。書き易そうな方から採用していく見込みです。
今回は5/6日(土)の朝から、ちょっとずつ執筆に充てる予定です。
他にもマスター紹介のページは一読頂けると文字数を少し節約できるかもしれません。
※オーバーロード時もリプレイの文字数はほぼ変わらない予定です。推敲時間に余裕が出来るため文章は安定すると思います。
●依頼について
冒険になります。
敵は一体一体はとても弱く、そこら辺の棒でもなんとかなるくらいで想定しています。数と増殖のみが敵の強みです。
今回は建物の屋根、壁、床は不思議な力で破壊不可能とさせてください。屋根、壁、床は移動も不可とします。
OPで示唆したとおり、弱点となる種類を倒すと残る21種類も連動して数が減る仕組みです。それを無視して攻撃する場合は、増え続ける敵を相手にものすごくがんばる内容になるでしょう。
よろしくお願いいたします。
第1章 冒険
『インフィニット・タロット』
|
POW : 片っ端からタロットを倒し、仲間の進路を作る
SPD : なるべく多くのタロットと交戦し、ヒントを集める
WIZ : 集めたヒントを総合し、答えを導く
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城田・紗希
【WIZ判定&WIZ攻撃】
……まぁ少なくとも「嘘つきが1人いる」と「嘘つきは居ない」のどっちかは嘘だよね、というのは置いといて。
太陽は愚者、愚者は月…恋人、運命、星、太陽、と循環参照するんだよねぇ(手書きでごちゃごちゃになった紙を見つつ)
で、「誰かを参照する」で纏めても「誰かに言及される」で纏めても、女教皇だけ仲間外れ。
という訳で、悪魔を信じて世界が弱点を言ってるはず、女教皇は覚悟しろー!
……あれ、これは女帝だった?(謎がわかっても、見分けはついてない)
…まぁ、手当たり次第に打ち込めば、女教皇を倒せるでしょ(脳筋ウィザード)
「……まぁ少なくとも『嘘つきが1人いる』と『嘘つきは居ない』のどっちかは嘘だよね、というのは置いといて」
無人の城塞の物陰に身を隠し、城田・紗希(人間の探索者・f01927)はそう独り言ちる。紗希の目線は手に持った紙に向いていた。
その紙には、あたりをうろつく奇怪な姿のオブリビオン――タロットたちの関係性と図が書き込まれている。
「太陽は愚者、愚者は月……恋人、運命、星、太陽、と循環参照するんだよねぇ。で、『誰かを参照する』で纏めても『誰かに言及される』で纏めても、女教皇だけ仲間外れ」
その手書きのメモはごちゃごちゃしており、紗希が深く考えを巡らせた事が垣間見えた。
紗希は最初の推測……嘘つきの矛盾を根拠とした絞り込みから、さらに絞り込むための推理を重ねて確認を終わらせる。
(これで大丈夫なはず……? よしっ!)
「という訳で、悪魔を信じて世界が弱点を言ってるはず、『女教皇』は覚悟しろー!」
紗希は被っていたダンボールを捨てて立ち上がるとユーベルコード『ウィザード・ミサイル』を放った。標的は……なんかこう、偉そうなデザインのやつ!!!
炎の矢が敵へと突き刺さり爆音を上げて燃やしていく。斯くしてタロット『女帝』の身を焼いた。
「……あれ、これは女帝だった?」
紗希は、タロットたちの見分けがついていなかった。
「だったら……こいつが女教皇だー!」
炎の矢がタロット『教皇』を貫いた!
紗希の姿を見つけた22種類のタロットたちが増殖を始める……。女教皇を倒せば他の21種類も消えていくので各段に楽になるのだが、紗希はまだその特徴を把握できていない。
「……まぁ、手当たり次第に打ち込めば、女教皇を倒せるでしょ」
紗希は再び『ウィザード・ミサイル』の用意をする。その炎の矢の数は655本。見える範囲を一気に殲滅するには十分な数だ。
女教皇に当たれば分かりやすい程に一気に減るため、特徴もすぐ覚えて効率も上がる事だろう。
「という訳で、覚悟しろタロットどもー!」
脳筋ウィザードは、大胆不敵な笑みと共にタロット『女教皇』っぽいやつを中心に火の雨を降らせていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
戒道・蔵乃祐
女教皇の言を信じるならば、世界が嘘つきを言及していることへの肯定
悪魔は世界が弱点を示していると言う
悪魔が嘘つきなら女教皇は矛盾するが、女教皇が嘘つきなら世界は矛盾しない
嘘つきがひとり居ること自体が嘘ではないとしても、悪魔を信じろという魔術師と悪魔の2つが嘘をついていることになってしまいます
故に弱点は…『女教皇』
推理が違っていたとしても、数減らしの一助になれば幸いか
◆デモリッションOD
空中戦+早業で標的を足蹴にしながら駆け上がり、怪力+グラップルでガトリングキャノンを振り回す。見切り+心眼で狙いを定めて限界突破+乱れ撃ちで次々とタロットを撃墜します
まあなんというか…
ごちゃごちゃと五月蝿いんですよ
城塞の中のひとつの廊下で大量の榴弾が次々と炸裂していく。その爆発に限りはなく、無限の様に思えた。
その榴弾は戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)のユーベルコード『
デモリッションOD』によるもの。ユーベルコードの力により、RSガトリングキャノンから絶え間なく榴弾が放たれているのだ。
しかし無策のまま乱れ撃っている訳では無い。蔵乃祐は無限に増えるタロットたちを抑え込みながら、敵の群れの動きを見定めていた。その眼光が探すのは、タロットたちの弱点である『女教皇』。
(女教皇の言を信じるならば、世界が嘘つきを言及していることへの肯定。そして悪魔は世界が弱点を示していると言う。悪魔が嘘つきなら女教皇は矛盾しますが、女教皇が嘘つきなら世界は矛盾しませんからね)
蔵乃祐が着目したのは、嘘つきについての『女教皇』と『世界』のつじつまであり、つじつまが合わないのは、嘘が『ひとつ有る』か、『ひとつも無い』かだ。加えるなら、この情報だけでも嘘は『多くてもひとつ』である事が推測できる。嘘は二つも無いのだ。
(故に弱点は……『女教皇』)
その時、蔵乃祐の視界に書物を持つ聖職者風のタロット――『女教皇』が映った。蔵乃祐は短く息を吐くとガトリングキャノンを抱えたまま最も近いタロットへと駆け寄って。
「ふんっ!」
そのタロットを足蹴にし、『女教皇』に向けて飛び上がった。そして空中からガトリングキャノンを叩きつけ、タロット『女教皇』を討ち倒す。『弱点』を安全地帯へ遠ざけようとしていたのか、他の『女教皇』も近くに居たため蔵乃祐はそれらもまとめて榴弾の乱れ撃ちで破砕した。
するとタロットの群れの一部もごっそりと消滅する。
「ふむ。推理は当たっていた様ですね。推理が違っていたとしても、数減らしの一助になれば幸いかと思っていましたが」
言葉を放ち続けるタロットが消えた事で蔵乃祐の周囲にはしばしの静寂が訪れていた。
「しかしまあなんというか……ごちゃごちゃと五月蝿いんですよ」
消えたタロットたちへの感想を漏らすと、蔵乃祐はガトリングキャノンを担ぎ直して城塞の中を歩んでいった。
大成功
🔵🔵🔵
ロベリア・エリヌス
&&&
無限に増殖し続ける存在…ね
面白そうな『記録』になりそうだけれど、最後までは付き合えないわ
だから、そこそこで自重しておかなくちゃね
こういう頭脳労働は好きよ
得意かどうかは別の話だけどね
ええと…そうね
気になるのは『女教皇』かしら?
「嘘は一つもない」のなら、『世界』の「嘘をつく者がひとりだけ居る」に矛盾するわ
そして、噓つきは一人だけ
魔術師が友とすべき悪魔が「世界がわれらの弱点を指し示す」のであれば嘘つきが弱点でしょ?
ここまでドヤっておいて外したら恥ずかしいけどね
じゃあ答え合わせと行きましょうか
【其の答えを識るまで、僕は死ぬ事もままならぬ】のよ
まあ、誰か正解するでしょうけど…
もしもの時は総当たりね
城塞、ということは防護の機能だけではなくある程度の生活空間と、何より集団を扱うための広い場もある。
そんな城塞の最も大きな広間。その天井にある巨大なシャンデリアにロベリア・エリヌス(
recorder・f23533)は隠れていた。
見下ろす空間では様々な形のタロットが何かを探す様に動き回っているのが見える。
「無限に増殖し続ける存在……ね。面白そうな『記録』になりそうだけれど、最後までは付き合えないわね」
高度な知能がある様子もなく、問いかけにも答えないとあれば邂逅の意味さえも薄いだろう。
ただそういう存在が在った。それだけを記録として記すと、ロベリアはシャンデリアから飛び降りて下の広間へ身を躍らせる。
「最後までは付き合えない……だから、そこそこで自重しておかなくちゃね。じゃあ『答え合わせ』と行きましょう」
観察は終わり。ここからはオブリビオンの退治の時間だ。
(気になるのは『女教皇』かしら? 『嘘は一つもない』のなら、『世界』の『嘘をつく者がひとりだけ居る』に矛盾するわ。そして、噓つきは一人だけ)
タロットたちはロベリアに気が付くも、ロベリアの戦闘ドローン
O.W.Lが『女教皇』を撃ち抜き22体が一気に消滅した。
「魔術師が友とすべき悪魔が『世界がわれらの弱点を指し示す』のであれば嘘つきが弱点でしょ? 幸いなことにこの推理は当たっていたみたい。こういう頭脳労働は好きよ。得意かどうかは別の話だけどね」
(最も、ここまでドヤっておいて外したら恥ずかしかったのだけれど。まあ、その場合でも誰かが正解したでしょう。総当たりする手間が省けて良かったわ)
残るタロットたちは、この強襲を迎え撃つべく増殖を開始する。
「成る程、そうやって増えるのね」
影が染み出す様に、瞬きの瞬間にソコに在る。2つ、4つ、8つ、16、そして――。
「この増え方、やっぱり最後までは付き合えないわ。ところで――あなた達、特に女教皇は『何を探している』のかしら? 『其の答えを識るまで、僕は死ぬ事もままならぬ』のよ」
ロベリアのユーベルコードが『情念の獣』を召喚する。その獣は召喚者が満足な答えを得られるまで敵を貪り続けるだろう。
しかし、ここでその答えは得られない。
大成功
🔵🔵🔵
メニス・ソルタ
うわぁ、なんか不思議で不気味なオブリビオンがいっぱいいる…
えっと、この中から弱点になる敵を探し出せば良いんだね…?
で、ヒントは敵自身が口にしている、と。
えーと…
悪魔は「世界が我らの弱点を指し示す」、
その世界は「嘘をつく者が一人だけ居る」って言ってるとなると。
嘘をついてる敵が弱点、なのかな。
となると怪しいのは…
「嘘をつく者が一人だけ居る」のに「われらに嘘は一つも無い」って言ってる女教皇!
嘘をついてる可能性があるとしたらこの敵だけだと思う!
ってコトで、把握できる限りの女教皇の個体を目掛けてウィザード・ミサイルを撃ち込むよ。
「うわぁ、なんか不思議で不気味なオブリビオンがいっぱいいる……」
メニス・ソルタ(リトルヴィジランテ・f19811)は、部屋のドアをちょっとだけ開けて廊下の様子をうかがっていた。彼が居るのは倉庫の様な部屋であり、すでに探索は終わったためかタロットが興味を示す気配はない。
この奇怪な姿のオブリビオンは、タロットカードの大アルカナに類似した特徴があった。そのためよくよく観察していけば次第に見分けもついてくる。メニスはそうやって22種類の特徴を確認していた。
「えっと、この中から弱点になる敵を探し出せば良いんだね……? で、ヒントは敵自身が口にしている、と」
ウサギの耳をぴょこりと立てて耳をすませてみれば、確かにタロットたちは同じ言葉を繰り返している。メニスは事前の説明にも在ったその内容を思い返しながら敵の『弱点』を推測していった。
(えーと……悪魔は『世界が我らの弱点を指し示す』、その世界は『嘘をつく者が一人だけ居る』って言ってるとなると。嘘をついてる敵が弱点、なのかな)
あごに手をあて、首をかしげてううーんと考えるメニス。タロットたちの言葉を並べた時、特に相反する様が目立つのは『嘘』の有無についてだろう。
(となると怪しいのは……『嘘をつく者が一人だけ居る』のに『われらに嘘は一つも無い』って言ってる女教皇! 嘘をついてる可能性があるとしたらこの敵だけだと思う!)
この矛盾の存在そのものが嘘がある証拠となる。故にタロット『女教皇』の言は成り立たない。
メニスは書物を持つ聖職者風のタロット――『女教皇』を見つけるとユーべルコード『ウィザード・ミサイル』の用意をして扉を開けた。
「くらえー!」
放たれる炎の矢が女教皇を貫くと、周辺の残る21種類のタロットも消滅する。推理は正解だった様だ。
この攻撃で他のタロットたちがメニスに気付き増殖を開始するが、女教皇を狙えば増えるより減る方が早い。
魔法を放つ姿はどこか勇ましく、さすがに男の子。魔法の木の枝をえいやと振って、メニスはタロットたちを殲滅していった。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
謎かけか。キーワードを全部表にしてくれたユーノには感謝ね。
それにしても、無駄に数がいる。ゆりゆり、ちょっと考えまとめたいから、タロットたちを適当に消し飛ばして。
気になるのは三つ。
・《女教皇》|われらに嘘は一つもない
・《世界》 |嘘をつく者がひとりだけ居る
・《審判》への言及が二つある
《力》や《
神の家》みたいに言及されてない大アルカナもあるから、《審判》もたまたまかな?
となると、互いに矛盾する《女教皇》と《世界》が問題になる。《女教皇》の言葉が正しいなら、《世界》の「嘘吐きが一人いる」も真。嘘吐きは《女教皇》。
とりあえず《女教皇》から討滅してみましょうか。行くよ、ゆりゆり!
「急急如律令! 疾く来たりませ。我が愛しき淫祠の女王にして、心を縛るもの。骸の海より戻り来たれ!」
村崎・ゆかり(
“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)の声が木霊する。其のユーベルコードが呼ぶのは或る強大なリリスの女王――
淫雅召喚。
「無駄に数がいる。ゆりゆり、ちょっと考えまとめたいから、タロットたちを適当に消し飛ばして」
ゆかりは、そうリリスの女王に伝えると思考を巡らせた。
(
謎かけか。キーワードを全部表にしてくれたユーノには感謝ね。気になるのは三つ、≪女教皇≫、≪世界≫、≪審判≫……)
ゆかりはタロットたちの言葉の中に『審判』への言及が二つある事と、女教皇と世界の言葉である『われらに嘘は一つもない』『嘘をつく者がひとりだけ居る』の矛盾が気になっていた。
(でも≪力≫や
≪神の家≫みたいに言及されてない大アルカナもあるから、≪審判≫もたまたまかな?)
他のタロットの言葉も深い意味は無さそうだ。ならば意味が隠されているのは――。
(――となると、互いに矛盾する≪女教皇≫と≪世界≫が問題になる)
こうしてゆかりが考えを巡らせる一方で、タロットたちは2つ、4つ、8つ、と倍の数で増えていく。
時おり偶然弱点を巻き込めているのかごっそり減ることはあるものの、流石のリリスの女王でもタロットの群れを排除しきれず手こずっていた。その最中でゆかりは狙う対象、弱点と思われる敵を決める。
「……≪女教皇≫の言葉が正しいなら、≪世界≫の『嘘吐きが一人いる』も真。なら嘘吐きは≪女教皇≫かしら」
この矛盾こそが嘘がある証拠である。つまりタロットたちの言葉の中で女教皇の言葉のみが成り立たないのだ。
「とりあえず≪女教皇≫から討滅してみましょうか。行くよ、ゆりゆり!」
リリスの女王が、書物を持つ聖職者風のタロット――『女教皇』へと攻撃を絞るとタロットが22体ずつ消えていく。正解の様だ。
同時にゆかりも女教皇を狙った。個々のタロットは非常に弱く、他のタロットが女教皇を守ろうとしても鎧袖一触。何の抵抗にもならず消えていく。
こうして、これらタロットの群れは消滅した。無人であった黄金造りの城塞に再び静寂が訪れる――。
大成功
🔵🔵🔵