禁軍猟書家〜黄金麦酒飲放題之計〜
●第二次聖杯戦争の決着
聖杯剣揺籠の君によって引き起こされた第二次聖杯戦争は、多くの謎を残しつつ幕を閉じた。
この戦争に参戦していたオブリビオンの多くは猟兵達の手によって撃破されたが、この戦争の裏で暗躍していた猟書家『ハビタント・フォーミュラ』はいち早く戦場を離れ、逃走してしまったのであった。
しかし、戦後の調査によって、猟兵達はハビタント・フォーミュラが拠点を構えた金沢市・卯辰山公園に自転車のような痕跡を発見した。その先には、精神を強く集中した時だけに見える、直径5mほどの超空間の渦。それはハビタント・フォーミュラの残した次元の門「
全能計算域限界突破」の入り口であった。
ハビタント・フォーミュラは、猟兵達が戦場を早期制圧したことで、逃走経路を消し、隠すことが出来なかったのだ。
●黄金麦酒飲放題之計
「お待ちくださいまし」
次元の門に入ろうとした猟兵達を、エリル・メアリアル(
孤城の女王・f03064)が呼び止めた。
「その先に、ハビタント・フォーミュラの用意した罠を予知しましたわ!」
エリルがそう言うと次元の門の前に立ち、予知の内容を語り始めた。
「この先には本来の書架の王『ブックドミネーター』を守護するために編成された近衛兵……『禁軍』に属する猟書家が待ち構えていますの」
禁軍は精鋭。さらに、これから向かう空間はその禁軍達にとって戦いやすい空間が作られているというのだ。
エリルはさらに予知の精度を高めるべく、グリモアに念じると、見えてきた光景に目を開いた。
「この先に繋がっている空間は……麦酒、の海?」
エリルが首を傾げた。
麦酒。ビール、お酒である。
「骸の海の中に、ビールで満たされた海があるみたいですの。……うーん、どうやらそのお酒は、普通のお酒みたい」
ますます謎な空間だ。しかし、そのビールこそが、待ち構える禁軍猟書家にとっては最高のポテンシャルを発揮できる空間なのだという。
「禁軍猟書家の配下オブリビオン達は、ビールの海の底から泡のように現れますわ。さらに、お酒を飲めば飲むほどパワーアップする性質を持っていますの」
お酒の強さはオブリビオンにとって様々だが、酔っていてもそれを利用して戦う者もいるようだ。
「そして、そのビールの海を作り出すのが、禁軍猟書家『きりんさま』ですわ」
きりんさまは、きりんである。麦酒を無限に湧き出させるという力を持っており、周囲にはその能力を喜び、酒を浴びるように飲み続ける酒豪オブリビオン達が付き従っているのだ。
「きりんさま自体は強い力を持っていないみたいだけれど、お酒を飲むほど強くなるというオブリビオン達が非常に厄介ですわね。どうにかお酒を飲ませないようにする工夫が必要そうですわ!」
なお、麦酒の海は無限に湧き出ているせいか、常に清潔だ。性質も普通のビールで、しかも美味しいらしい。
当然お酒なので、未成年は飲んではいけないぞ。
「ふふふ、たとえ罠といえど、それがあるとわかっているのならば怖くなんてありませんわ。ですから皆様、ここで禁軍猟書家を撃破してしまいましょう!」
エリルはそう言い、超空間へ向かってゆく猟兵達を見送るのであった。
ついに登場した猟書家の精鋭たち。彼らを倒すことが出来れば、猟書家殲滅の可能性が現れるかもしれない。
長きに渡る猟書家達との戦いの終わりへの道、その行方を示す鍵は今、猟兵達に委ねられた。
G.Y.
こんにちは。G.Y.です。
ハビタント・フォーミュラを追うことによって新たに発生した、禁軍猟書家との対決が始まりました!
禁軍とは、書架の王『ブック・ドミネーター』を守護する精鋭の近衛兵軍団です。ハビタント・フォーミュラは逃げ帰るための次元の門『
全能計算域限界突破』から繋がる空間に、彼らを配置して待ち伏せしていたのです。
今回向かう先は、骸の海に浮かぶような球体で出来た空間の内部です。そこには一面ビールの海が広がっており、その海を作り出しているのが禁軍猟書家『きりんさま』になります。
第1章は集団戦です。
きりんさま配下のオブリビオン達が、海の底から泡のように湧き出して襲い掛かってきます。蹴散らしてきりんさまのもとへ向かいましょう。
オブリビオン達はお酒を飲めば飲むほど強くなります。初期状態で既にそこそこ飲んでいますが、もっともっと強くなる余地が残されていますので、手が付けられなくなる前に対処しましょう。
お酒を飲ませないような工夫をすれば、戦いは楽になるでしょう。
第2章はきりんさまとの対決です。
きりんさまの能力はともかく、周囲にはきりんさまに付き従うオブリビオン達が周辺でお酒を飲み続けています。
こちらのオブリビオンもm第1章同様、酒を飲めば強化されますので、酒を飲ませない工夫が有効でしょう。
オブリビオンの護衛をかいくぐり、きりんさまを撃破しましょう!
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております!
第1章 集団戦
『隻眼女僵屍』
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POW : 幻獣拳術『檮杌爪』
【拳や爪】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD : 幻獣拳術『鳳凰翔』
レベル×5km/hで飛翔しながら、【両足】で「🔵取得数+2回」攻撃する。
WIZ : 幻獣拳術『禍躯鱗』
自身の【衣類】を捨て【麒麟憑依状態】に変身する。防御力10倍と欠損部位再生力を得るが、太陽光でダメージを受ける。
👑11
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たぷたぷと溢れる黄金の海に、きめ細かい白い泡が雲のようにしゅわしゅわ揺れる。
ふわりと麦の香ばしい香りが漂う世界に、ぼこり、ぼこりとオブリビオンが浮かび上がる。
現れたのは隻眼女僵屍の集団だ。麦酒の海を大ジョッキにたっぷりとすくって、がぶり、がぶりと注ぎ込む。
「……ひっく」
もうすでにできあがってる。
ぽたぽたと麦酒が胸元に垂れるのも気にならない。だってここには、文字通り浴びる程の酒があるのだから。
このビールはあくまでただの美味しい普通のビール。
しかしオブリビオン達は、それを美味しく頂くことでどこまでも強くなれるのだ。
この麦酒の海を泳ぐオブリビオン達を、どう対処すれば良いだろうか。
なお、これらのビールは飲んでも害はない。
もちろん、アルコールが入ってるから未成年は飲んじゃだめだぞ!
鞍馬・景正
ほう、麦酒の海。
それを無限に生み出す、きりん……。
何と恐ろしい敵でしょう、ええ。
これは私も出なくてはなりますまい。
是が非でも。是が非でも。
◆
心は麦酒に奪われつつ、泳ぎながら敵と切り結ぶのは聊か心許ない。
【鬼騎乗崩】にて愛馬に跨り、酒上を滑空しながら進みましょう。
道中、敵と遭遇すれば、酒を飲むより先に遠方から【早業】の矢を射込んで妨害。
【騎乗突撃】で一気に距離を詰め、斬撃の【衝撃波】で酒を吹き払いつつ、そのまま首級を頂戴する。
敵からの攻撃は視線や肩の動きから狙いを【見切り】、馬首を巡らして回避しつつ即座に後の先の太刀を。
襲撃が落ち着けば、走りつつ徳利で酒を掬い、そのまま馬上の盃を堪能しましょう。
「ほう、麦酒の海。それを無限に生み出す、きりん……」
門を抜けた空間の情報を聞いて、鞍馬・景正(言ヲ成ス・f02972)は呟いた。
「なんと恐ろしい敵でしょう、ええ」
その言葉とは裏腹に、どことなく嬉しそうな声色だ。
「これは私も出なくてはなりますまい」
景正はそう言い聞かせるように語りながら、門の前に立つ。
「是が非でも。是が非でも」
そうして、門の向こうへと足を踏み入れた――!
「おぉ、これは……!」
門を出れば、そこは空の上だった。足元には一面麦酒の海。美しい金色の海はキラキラと輝いていて、思わずごくりと喉を鳴らす。
その海の中から、泡のように浮かび上がってくる隻眼女僵屍達を見て、景正は気を引き締めなおす。
「おぉっと、いけませんね」
このまま麦酒の海に落ちるのもいいが、泳ぎながら敵と切り結ぶのは聊か心許ない。となれば。
景正は海へと落下しながら指笛を吹く。すると門より、彼の愛馬『夙夜』が勢いよく飛び出してきた。
「夙夜、よくぞ来た!」
景正は夙夜の手綱を取ると、器用にその背に跨った。主を乗せた夙夜は、一度強くいなないて、力強く麦酒の海へと蹄を踏みしめた。
「弓馬刀槍、すべてが合わさった武士の神髄をお見せしよう」
沈むことなく海を蹴り続け、麦酒の上をまるで黄金の原野のように走り回る夙夜の上で、景正はオブリビオン達にそう告げるのであった。
「うふふ……ひっく」
僵屍達は泡から浮き上がると、海の上を俊足で駆け出した。
腕から伸ばした爪をきらりと光らせ、腕を振り上げ大きく跳ねる。その動きは通常のオブリビオンとは比較にならないほどのスピードで、それはこの場にいる僵屍達が酒を飲んで強化されたことの証左であった――が。
「がっ!?」
突如、僵屍が海へと落下した。
何が起きたのか、一瞬理解出来なかった。だが、矢が僵屍の身体に深々と突き刺さっていて、景正が持つ弓の弦が激しく揺れていることで、全てを悟る。
景正は跳躍に合わせ、矢を打ち込んだのだ。
何という早業か。怯んだ僵屍達は距離を取りながら、各々『自分の得物』を懐から取り出す。
「もっと、飲まないと」
そう、得物とはつまり盃や升、ジョッキ類である。それらで足元の麦酒の海をすくって豪快に飲み干せば、さらに力を増すことが出来る、筈だった。
「ひっ!?」
がしゃんとジョッキが砕け散った。距離を置いてもなお、景正の矢は正確であったのだ。
ぎりりと弓を引き絞り、狙いを定めて放てば、盃は吹き飛び、升は大きな穴が開く。これでは新たに酒を飲むことも出来ない。
「駆けよ夙夜!!」
打たれた手綱とその号令に応じて、夙夜が麦酒の海を駆ける。そして景正は大太刀『鞍切正宗』抜き去って、海を抉るように振り上げた。
どぅ、と海が割れるかの如き衝撃波が、麦酒もろとも僵屍達を吹き飛ばす。
「ま、まだよっ!」
体勢を必死で立て直しながら、僵屍が爪を向ける。だがそれは所詮悪あがき。景正は僵屍の動きを見切ると、馬首を巡らせ容易く躱す。
そして生まれた隙を見逃さず、景正は刃を一気に振りかぶった。
「首級、頂戴する!!」
斬撃は深く、僵屍達を斬り裂いた。僵屍達は断末魔の悲鳴を上げる暇さえないまま、骸の海へと消えてゆくのであった。
こうして周囲にオブリビオンの気配は消え去った。再び現れるまで、多少の猶予はあるだろう。その間に、と、景正は徳利を取り出し、海の麦酒を掬いあげた。
「ふふ、良い色です」
このまま馬上の盃と洒落込もう。景正は徳利から酒をとくとくと盃に流すと、小さくシュワシュワ炭酸が弾けた。それをくいっと傾ければ、のど越しの良い爽やかな苦味とともに、麦の香りが鼻を抜けてゆく。
「いやあ、恐ろしいですね」
携帯した干魚を一口齧って、再び盃をぐいと呷る。
戦いの合間の僅かな時間。だけれど景正は、たっぷりとその時間を堪能するのであった。
大成功
🔵🔵🔵
マックス・トール
ちょっとちょっとぉ!!
なんか、妙な感じがするよ!!
きりんさまって、呼びましたか??
え?呼んでないって??
ビール生み出すって、ぼく、そんな事出来ないからね!
こうなったら、首だけ伸ばして鞭のように敵を薙いでみるよ。
首をぶんぶんしてれば、相手も酒飲む前に避けに専念するね。
もしくは、誤認であちら側だと思ってくれれば当たるよね。
だから、これは、当たるまで首をぶんぶん振っていくよ!!
そういや、どこぞのお猿さんが飲んでいたのって、オリoンビールってのがあったような??
「ちょっとちょっとぉ!! なんか、妙な感じがするよ!!」
麦酒の海の上で、マックス・トール(伸縮自在・f38807)が叫んだ。
彼はキリンの賢い動物。幻獣ではなく、サバンナにいる方のキリンだ。そんな彼が立ち向かうのは、禁軍猟書家というとんでもない敵なのに、なんたってその中の一人が『きりんさま』なのだ。
「呼びましたか??」
いいえ、呼んでません。
「あ、そう」
マックスが素直に向こうを向く。ともあれ、禁軍猟書家の『きりんさま』の姿に何かシンパシー的なものも感じたりするのだろうか。
「ビールを生み出すって、ぼく、そんな事出来ないからね!」
……もしかしたら対抗心かもしれない。
とにもかくにも、まずは配下のオブリビオン退治が先決だ。麦酒の海の底から泡のように浮かび上がってくる隻眼女僵屍達は、手にジョッキや盃を持って現れる。彼女らはお酒を飲めば飲むほど強くなる、酒豪オブリビオンなのだ!
「お酒を飲んだら強くなる……こうなったら!」
ぶん!! マックスが首を伸ばし、思いっきり振り回した!
「ひゃっ!?」
「きゃあっ!」
僵屍達が、お酒を飲む間もなく飛びのいた。マックスの首が鞭のようにしなって、豪快に風を切る。これではお酒を飲む暇もない。さらに、そのスイングが麦酒の海を波立たせて、僵屍達にお酒をうまく掬わせない。
それだけではない。当然、当たれば痛い。
「当たるまでぶんぶん振っていくよ!!」
ハイテンションで巨体を揺らしながら、マックスがとにかく首をぐんぐん振るう。それは振り回すほどに勢いづいて、僵屍達の回避の足を鈍らせる。
そして、ごん! という鈍い音と共に、僵屍にマックスの頭がぶつかった。
「あぐっ」
思い切り横薙ぎで吹き飛ばされ、僵屍が麦酒の海に頭から突っ込んだ。待望のお酒だが、もはや僵屍にそれを飲む余力などなく、失意のうちにずぶずぶと沈んでいっていしまう。
残る僵屍達も次々と蹴散らされ、その勢いのまま麦酒の海に沈んでいった。それはなかなかに凄い光景であった。
「えいやー!!」
最後の1体を薙ぎ払って、マックスはようやく一息ついた。静かになったビールの海を眺めて、ふと思い出す。
「そういや、どこぞのお猿さんが飲んでいたのって、オリ○ンビールってのがあったような??」
これは多分銘柄が違うと思う。
大成功
🔵🔵🔵
天・音
お酒の飲み過ぎ、体に毒ネ
ここハ、ワタシが酔い醒ましの一発くれてやるヨ
【戦闘】
とても美味しい料理なら作れるケド
その中で、お酒の酔いを覚ます料理もかんがえてみるネ
ここは栄養満点のスープを作って酔い醒ましするヨ
ついでにお酒を飲む気も失せるような後口の良さも付け加えるネ
さらにお腹に優しいフルーツも添えるヨ
これで彼等はもうお酒を飲む気が起きなくなるはずネ。
「凄い量のお酒ネ」
次元の門を越え、一面の麦酒の海を見下ろし、天・音(僵尸の超級料理人・f32729)は呟いた。
その麦酒の海からは、オブリビオン『隻眼女僵屍』達が、泡のように浮かんで出現してきており、それぞれが手にした盃で麦酒を掬いあげて、それを美味そうに飲んでいる。
「お酒の飲み過ぎ、体に毒ネ」
音は言いながら、袖を振った。すると、包丁、まないた、中華鍋、おたまなどが飛び出してきた。
「ここハ、ワタシが酔い醒ましの一発くれてやるヨ」
おたまと中華鍋を手に、音はびしっとポーズを取るのであった。
「……ん?」
麦酒を浴びていた僵屍が、鼻を鳴らした。
どこからか、なんとも食欲をそそるような匂いが漂ってきたのだ。
匂いのほうへと顔を向ければ、今度はトトトトと小気味よく響く音、カッ、カッと金属を擦る音、ジャァーッと水の弾ける音が耳をくすぐった。
「……ごくり」
僵屍も思わず生唾を飲んでしまう、音と香りのハーモニー。近付いてみれば、なんと麦酒の海の上で、音が中華鍋を振い、料理を作っていたのだ。
「お待ちどおサマ」
どんぶりに注がれ差し出されたのは、野菜たっぷりのスープであった。
「良い飯は良い心、そして良いチカラになるネ。いっぱい食べるがヨロシヨ」
僵屍達は思わず顔を見合わせ、おそるおそるれんげを手に取った。口元にゆっくりと近付けて、ふぅと一息湯気を飛ばす。そして。
「……!!」
僵屍の目が見開いた。あっさりとした味わいながらも、炒めた野菜の旨味がたっぷり詰まって香ばしい。それに、一口飲めば、もう一口飲みたくなるような後を引く旨さが、僵屍達の手を止めさせない。
「あぁ、美味しい……こんなの初めて!」
「お、おかわり!」
気付けば僵屍達は、誰もお酒に手を付けていなかった。栄養満点のスープが、お酒を飲む気を失せさせたのだ。
さらにさらに。
「お腹に優しいフルーツヨ」
スープを飲み干して満足した頃に差し出されたフルーツがとっても嬉しい。
それらにまで手を付けたならば、もはや僵屍達の酔いは覚め、彼女らの強みあった『お酒を飲めばどこまでも強くなる』といった力は完全に失われていた。
こうなればもはや、オブリビオン達は有象無象。猟兵達によって容易に蹴散らさてしまったのであった。
「お粗末様ヨ」
大成功
🔵🔵🔵
御形・菘(サポート)
※語尾に「のじゃ」は不使用
はっはっは、妾、推っ参!
敵は決してディスらんよ、バトルを彩るもう一人の主役なのでな!
強さも信念も、その悪っぷりも誉める! だが妾の方が、もっとスゴくて強い!
バトルや行動は常に生中継+後で編集しての動画配信(視聴者が直視しては危ない系は除く!)
いかにカッコ良く魅せるか、見映えの良いアクションが最優先よ
とはいえ自身の不利は全く気にせんが、共にバトる仲間にまで不利を及ぼす行動はNGだぞ?
戦法は基本的に、テンションをアゲてボコる! 左腕とか尾で!
敵の攻撃は回避せず、受けて耐える! その方がカッコ良いからのう!
はーっはっはっは! さあ全力で来るがよい、妾も全力で応えよう!
「はーっはっはっはっは!!」
麦酒の海に、高笑いが響く。
金沢市・卯辰山公園にあった次元の門『
全能計算域限界突破』から威勢よく現れたのは御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)であった。
「妾、推っ参!!」
蛇の下半身をうねらせて、麦酒の海へと落下しながら、ドローンにカメラ目線で呼びかける。
「今日の『妾が色んな世界で怪人どもをボコってみた』の舞台は、シルバーレイン……か?」
ここはハビタント・フォーミュラの逃げ込んだ先、禁軍猟書家の待ち構える世界。どの世界ともつかない球体の内側に、なみなみ注がれて揺れる麦酒の海という光景は、ちょっとシルバーレインとは言い難い。
「まぁ良い! ともかくここには強敵がおるという!」
言いながらドローンで広大な麦酒の海を映し出すと、ドローンは何かを見つけたか、ぐぐっと海面をアップし始めた。
「おぉ、来たぞ来たぞ!」
海の底から泡のように現れたのは、隻眼女僵屍。酒を飲めば飲むほど強くなる、禁軍猟書家に従う強敵オブリビオン達だ。
「……ひっく」
盃にたっぷり掬った麦酒を流し込み、目をとろんとさせる僵屍達。すでに出来上がっているのだろう。並のオブリビオンに比べても、強い圧を感じさせた。
だが菘は高らかに笑ってみせる。
「はーっはっは! さあ全力で来るがよい、妾も全力で応えよう!」
直後、菘が麦酒の海へと着水する。そして上がった大きな水柱が、戦闘開始の合図となった。
「ふふ、ひっく!」
麦酒の海を泳ぎ始めた僵屍達が、おもむろに服を脱ぎ捨てた。すわ放送事故かと思ったのも束の間、僵屍達の姿が幻獣『麒麟』の姿へと変わってゆく。
「はっはっは! 麦酒の海に麒麟とは相性が良い!」
菘は突進してくる僵屍の頭突きを受け止めて、左腕で殴り飛ばす。吹き飛ばされた僵屍は二、三度水面を跳ねて、麦酒の海へと沈んでいった。
「もっとだ、どんどん来るがいい!」
どんと胸を叩いて僵屍達を挑発する菘。その態度に、避けようという意思は見られない。
受け止めて耐えて、そして殴り返す。それが菘のポリシーだ。何故ならそのほうが格好良いから!
「ぶるるっ……ひっく」
続く僵屍が麦酒の海を蹴り上げて、大きく跳躍した。そのまま蹄に体重を乗せて叩きつけようというのだろう。
「だがぁ!!」
菘が腕をクロスして、蹄を受け止める。直後、菘の影から風雷の鎖が伸びた。
「絡め取られて墜ちるがよい!」
鎖が僵屍へと巻き付いて、雷が迸った。凄まじい衝撃が僵屍の全身を駆け巡り、風が逆巻いて吹き飛ばす。
その様子を見て、菘が再び、力を籠めて笑う。
「はーっはっは!! 良いバトルが出来た! その強さ見事……だが!」
菘がカメラ目線で決めポーズを取った。
「妾のほうが、もっとスゴくて強い!」
成功
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第2章 ボス戦
『きりんさま』
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POW : 敵が冷えてる〜 心ウキウキワクワク~
自身の【麦酒を冷やして格納しているどこかの場所】から、戦場の仲間が受けた【冷たい麦酒が飲みたくて仕方がない切望】に比例した威力と攻撃範囲の【麦酒を冷やすのに最適な高威力の冷気】を放つ。
SPD : キリン↓スゥパァ↑ドゥルァァァァイ↓
戦場全体に【喉が乾き麦酒がとてもうまそうに見える状態】を発生させる。レベル分後まで、敵は【麦酒が飲みたくなって集中できない状態異常】の攻撃を、味方は【喉が渇いてる時の麦酒すげーうめー!】の回復を受け続ける。
WIZ : デデデン デデ デデン(ちょっと贅沢な麦酒~)
【飲みたくて仕方が無くなる贅沢な麦酒 】を降らせる事で、戦場全体が【誰もが麦酒を飲みたくて仕方がない宴会場】と同じ環境に変化する。[誰もが麦酒を飲みたくて仕方がない宴会場]に適応した者の行動成功率が上昇する。
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酒豪オブリビオン達を蹴散らして、猟兵達はとうとう広大な麦酒の海の源へと辿り着いた。
しゅわあああああ……。爽やかな白い泡の弾けるその視界の先。そこに無限に麦酒を生み出す禁軍猟書家『きりんさま』が立っていたのである。
きりんさまの周辺には、なんだか軽快だったりムーディーだったり、多種多様な音楽が流れていて、なんとも麦酒を飲みたい気分にさせる。
そんな雰囲気につられているのか、周囲には僵屍達をはじめとした酒豪のオブリビオン達が無限に湧き出る麦酒を、ぐびぐびと飲んだくれている。
「ウフフ、この夢は覚めさせないわ……ひっく」
猟兵達に気が付いたオブリビオン達は、きりんさまを守るように立ちはだかった。
酒をたっぷりと腹におさめたオブリビオン達は、既に十分に強くなっている。だが、まだまだ強くなれるポテンシャルを秘めている状況だ。そんな彼らを蹴散らして、猟兵達はきりんさまを撃破せねばならない。
この戦いに勝利すれば、猟書家達との決着へ向けて大きく前進できるかもしれないのだから。
冷たい風が吹き、麦の香りが鼻をくすぐった。
禁軍猟書家との戦いが、今始まる!
御形・菘
酒は好きだし大して酔わんし、いくらでも飲めるのだがな
しかーし! 妾は自分の動画では酒と煙草は基本NG!
未成年への影響をちゃんと考慮しておるよ!
右手を上げ、指を鳴らし、さあ緑よ、存分に伸び生い茂るがよい!
はーっはっはっは! 護衛どもを木々の上へと持ち上げて、酒を飲むのを物理的に邪魔してくれよう!
木々の間を隠れ突き進む妾を探すのであれば酒は飲めず、酒を飲もうと頑張るなら妾を索敵はできん
どちらにせよ、妾の突破は阻めん!
はっはっは、木々の茂る酒泉なんて、世界観に合って実に趣があるのう
だが空気は読まず、酔い覚ましになるような左腕の一撃をブチ込んでやろう
妾のチャンネルでは暴力は全然OKだ!
「いよいよ本題とご対面だ!」
どこからか軽快な歌が響く戦場で、菘はドローンを回しながらバッチリとツーショットを収める。
きりんさまの周囲からは麦酒が延々と湧き出しており、酒豪オブリビオン達は飲めや歌えやの乱痴気騒ぎ。
そんな光景ながら、菘はその酒に手を付けようとはしない。菘は酒好きだし、いくらでも飲めるほど酒に強い。のにも関わらず、である。
「はーっはっはっは! 妾は自分の動画では酒と煙草は基本NGなのだ!」
同時にぺろん、とテロップが流れる。
『※この動画は未成年への影響に考慮しております』
なのであくまで、今回菘がここに立っているのは『きりんさま』をぶちのめす為!
「ではいくぞ!!」
菘が右手を上げ、指をぱちぃんと鳴らした。
すると、麦酒の海の底からずどどと激しい地響きを鳴らしながら、巨大な植物が伸びてくる。
「さあ緑よ、存分に伸び生い茂るがよい!」
その言葉に呼応するように枝は伸び、葉は生い茂り、幹は太くなる。
大きくなった樹木は人間などいともたやすく持ち上げるほどに力強く成長し、酒豪オブリビオン達を掬いあげて天高くまでと運んで行ってしまった。
「おぉぉっ!?」
「はーっはっはっは! 良い眺めだろう!」
オブリビオン達が巨大な葉っぱの下を覗き込む。気が付けばオブリビオン達は、目も眩むような高さまで持ち上げられてしまっていた。
だが、オブリビオン達も負けてはいない。
「わ、私たちも酒飲みの名折れ! こんなのっ!!」
がっしと幹に掴まって、必死に樹を降りてゆく。彼らは何が何でも酒を飲んでいたいのだ。
「だがそれでは妾の突破は阻めん!!」
菘は笑いながら、成長しきった木々の根元を一気に駆ける。
目の前にはこの世界の元凶、きりんさまが無防備な姿でひんやりとした空気を吹き荒らしている。
今、きりんさまの周囲の麦酒はキンッキンに冷えている。しかし菘はそれに目もくれず、きりんさま目掛けて一直線だ。
「はっはっは、木々の生い茂る酒泉なんて、世界観に合って実に趣があるのう」
だが、菘の言った通りこの配信は酒NG。ぐっと神殺しの左拳を握り、空気を読まずに腕を振り上げる!
そう。酒はNGと言った。言ったが……!
「妾のチャンネルでは暴力は全然OKだ!!!」
どがぁあっ、と思い切りきりんさまが吹き飛ばされた。
きりんさまは麦酒をぶしゅーっと吹きながら、海の向こうへと跳んで行くのであった。
大成功
🔵🔵🔵
天・音
【アドリブOK】
残念、ワタシハ未成年なのでお酒はアウトヨ。
キョンシーでもそこは大事ネ。
さっきのお料理は残ってるけど食べるカ?
【戦闘】
作った料理で他のオブリビオンを封じられるといいんだけド…
流石にキリンさんはそうもいかないカ?
それならちょっと本気だすヨ。
制御符を剥がして全力モードを発動させるネ。
この酒の度数はわからないけど
高火力でアルコールを飛ばしてしまうヨ。
全力パワーでキリンをぶん殴ってやるヨ。
いっぱい溜まったお酒に引火してしまったら申し訳ないアルヨ。
しゅわしゅわと喉越し爽やかな黄金色。世の大人たちを魅了する魅惑の水は、オブリビオン達をも狂乱させる。だが。
「残念、ワタシハ未成年なのでお酒はアウトヨ」
音は鍋を手にしてそう告げた。
キョンシーだとはいえ、その辺はとっても大事である。音は凄くしっかりしている。
「さっきのお料理は残ってるけど食べるカ?」
そう言ってスープの香りを漂わせれば、何人かのオブリビオン達はふらりとスープに惹かれて酔いを醒まし始めた。
「とはいえ……流石にキリンさんはそうもいかないカ?」
護衛達の奥、ずぅうん、と立つきりんさまは、無表情で何を考えているのかわからない。
そもそもなんか食べるんだろうか。そこらへんから疑問である。
「それならちょっと本気だすヨ」
そう言って、音は制御符を剥がした。すると、その身体から炎が吹きあがり始める。
音の中にある複製火竜乾坤圏が、音の全身を炎で包んだのだ。
「超アツイから覚悟するがいいヨ!」
炎が、足元の麦酒を一気に蒸発させた。
「ひ、ひぇっ!?」
「きゃああっ!」
さらに超火力が戦場に吹き荒れて、その衝撃波で護衛達までもが吹き飛んでゆく。
だが、それだけではない。音を中心に広がっていく熱波は、麦酒の海のアルコールに引火し、炎の海に変えてしまったのだ。
その時、きりんさまの周囲で、軽快な音楽が流れだした。周囲の護衛達の『酒が飲みたいという切望』を力に、冷た~い風が吹き始めた。
しかし、それでは全然足りない。炎の勢いは増すばかりだし、ひんやりした風も心なしか少しぬるい。何故なら護衛達の一部は、音の美味しいスープに満足してしまっていて、お酒を切望する思いが弱まっていたのだから。
「さぁ、全力ヨ!」
音が炎の海を一気に駆ける。炎が麦酒を干上がらせ、海に軌跡が描かれる。
そうして狙うはきりんさま。拳にいっぱいの力を籠めて。
「ハイィィーっ!!」
きりんさまへ、音の全力の拳が叩き込まれた。
「!!!」
きりんさまの首が「く」の字に曲がって、激しい衝撃とともに吹き飛ばされてゆく。さらに。
「いっぱい溜まったお酒に引火してしまったら……申し訳ないアルヨ」
どぉおんっ! と吹き飛ばされた先できりんさまが爆発した。
音の予言がばっちりと的中した瞬間であった。
大成功
🔵🔵🔵
鞍馬・景正
辿り着きましたか。
辿り着いてしまいましたか……。(ぐびぐび)
確かにこの楽園は素晴らしいものですが、夢も酔いもいずれ醒めるものです。
況や、オブリビオンは疾く去るべし。
◆
景気づけに盃の残りを干し、太刀の鯉口を切りましょう。
そのまま【曇耀剣】にて、雷電を宿した【斬撃波】を敵目掛けて抜き打ち。
躱されようと麦酒の海なれば、よく電流は通すはず。
その目論見が当たれば隙を逃さずに【騎乗突撃】にて守りを粉砕し、きりん様ごと仕留めにかかりましょう。
こちらへの感電は【電撃耐性】で封じ、敵の迎撃は甲冑の【結界術】で耐えつつ掃討。
麦酒は良いものですが、私は他の酒も好きなもので。
早く終わらせて呑みに行かせて頂く――!
「辿り着きましたか」
麦酒の海を泳いだ先に、その源泉は存在した。
無限に麦酒の海を作り出す存在、きりんさま。
「辿り着いてしまいましたか……」
景正は、どこか残念そうに呟いた。
酒の好きな景正にとってこの世界は極楽、このまま酒を楽しむこともやぶさかではない心持ちだ。
とはいえ、相手はオブリビオン。なれば、なればと景正は盃を掲げて告げる。
「確かにこの楽園は素晴らしいものですが、夢も酔いもいずれ醒めるものです」
掲げた盃を傾ける。
「況や、オブリビオンは疾く去るべし」
そう言いぐいと盃の残りを干せば、するりと腕は太刀へと伸びて、鯉口を切って刃を晒す。
「当流が守護神、建御雷に願い奉る」
邪心をいささかも感じさせぬその動作に、雷は景正へと味方をし、白銀の刃に雷を宿す。
「――神征の剣、貸し与え給え」
そうして振り下ろした一閃は、麦酒の海を通して、オブリビオン達へと広がってゆく。
「あぎゃああっ」
「み゛ぃぃっ!!」
電撃はオブリビオン達を痺れさせ、戦闘力を奪う。電撃を受けぬ景正は、無力化されたオブリビオン達の中に一筋の軌跡を描く。
「夙夜!」
景正の呼びかけに応じて、愛馬が駆ける。景正の描いた軌跡をなぞり、人馬一体、景正と夙夜は、オブリビオン達のか弱い守りを粉々に砕きながら、一気にきりんさまへと肉薄する。
きりんさまは無言で、景正の姿を見上げていた。そんな立ち振る舞いながらも、心がワクワクしてしまいがちな、軽快な音とともにひんやりとした空気を流し込み、景正を麦酒への誘惑へと誘うが……。
「麦酒は良いものですが、私は他の酒も好きなもので……」
景正がにこりと首を振る。この世界にあるものはあくまで麦酒。麦酒のみを愛する者ならともかく、景正の人生には、もっともっと、他の酒との出会いも待ってる――!!
白刃を振り上げ、景正が告げる。
「早く終わらせて呑みに行かせて頂く――!!」
刃が、きりんさまへと振り下ろされた。
袈裟のように穿たれた斬傷に、電撃がばちりと入り込んで弾け飛ぶ。
その勢いに吹き飛ばされるきりんさま。
嗚呼、この一撃がこの世界との別れの時を早めた。それを実感しつつも、オブリビオンは倒されねばならぬ。
再び切っ先をきりんさまに向けた景正。周囲には麦酒の爽やかな香りが立ち込めていた。
大成功
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マックス・トール
あ、同族が出てきたね。
んじゃ、彼にない能力で戦うかな。
てなわけで、ぼくの能力で首を伸ばして彼の首と頭の間の付け根狙って僕の頭部を叩き込むね。
きりんさまは無限に麦酒を湧き出す力を持つ。
対してマックスは、同じような姿をしているがそんなことは出来ない。
けれど逆に、マックスに出来ることだって、きりんさまが出来るとは限らないのだ。
「てなわけで、ぼくの能力で戦うよ」
そう言うと、マックスは自身の首をぐんと伸ばし、きりんさまへと向かってゆく。
ぶんっと首をしならせれば、きりんさまの首へ向かって、強烈な一撃が叩き込まれた。
まさしく、きりんの喧嘩である。
だが、きりんさまもただやられているだけではない。
『キリン↓スゥパァ↑ドゥルァァァァイ↓』
やたらと巻き舌の効いた掛け声がどこからともなく聞こえ始めると、きりんさまの周辺の麦酒がやたらとキラキラ輝いているように見え始めた。
「う、美味そう……!」
「喉が渇いた……!」
周囲の酒豪オブリビオン達が、麦酒を思わず掬い取り、ぐびぐびと飲み始める。
「ぷはー!! 麦酒すげーうめー!!」
飲めば飲むだけ強くなるオブリビオンは、きりんさまによって刺激された欲求のままに、どんどん強くなる。だが。
「とりあえずどっか行っててね」
ぶぅんと伸びたマックスの首が、そんな彼らを一網打尽に薙ぎ払った。
きりんである彼にはお酒を飲みたいという欲求を与えたところで……という感じだったのだろう。護衛のオブリビオン達はマックスへと攻撃することすら出来ないまま、麦酒の海の底へと沈んでゆく。
ともあれ、これできりんさまへの攻撃を邪魔する者はいなくなった。きりんさまも何を考えているのかよくわからない、無表情のままで麦酒を湧き出させているのみ。
「よぉし、んじゃあこれで……!」
そう言うと、マックスの首が一際伸びる。通常よりもよぉくしならせて、一気に力を籠めて、きりんさまへと叩きつける!
ばちぃん! と乾いた音が響きわたって、マックスの頭部が、きりんさまの首と頭の付け根へ沈み込んだ。
それは、間違いなく致命傷となる一撃だった。きりんさまはゆらりと身体を揺すってから、ばたりと倒れ伏したのだ。ぐったりしたまま、麦酒の海へと沈んでゆくきりんさま。同時に、麦酒の海も消えてゆく。禁軍猟書家『きりんさま』を撃破した瞬間であった。
こうして、ハビタント・フォーミュラの罠は破られた。
新たな世界、新たな謎……それらが絡み合って、猟兵達の物語はまた一つ、大きな転換点を迎えようとしているのかもしれない。
大成功
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