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第二次聖杯戦争⑳〜蒼き角鹿

#シルバーレイン #第二次聖杯戦争 #槍持つ男 #都怒我阿羅斯等 #ディアボロスランサー #夕狩こあら



 男が槍を一揮するや、鋩に結ばれた稲妻が雷轟を哮る。
 銀灰色を搖らす大野湊の波を激しく蹴立てて疾った蒼き閃雷は、忽ち形姿を得るや生命を宿し、嘗て見た事の無い新しい生命を創造していく。

 ひとつは、鷲の頭と翼を有しながら獅子の肢を生やしたグリュプス。
 ひとつは、雄鹿の頭と脚を持つ上、鳥の胴体に翼を生やしたペリュトン。
 ひとつは、身体の前半分を牛に、後半分を蛇としたオフィオタウルス。

 男が無造作に槍を振るう度、疾ッとたばしる霹靂が生む、異形、異形、異形――。
 部分的には見覚えのある動物の、複数を切り取って集めたような奇怪を目の当たりにした者は余程居まい。
 嘗て幻想にあった、然し今や聢と生命を得て海上を翔けた異質の嵌合――否、「新生命体」は、嘗て人々が抱いた畏怖や恐怖を齎すべく襲い來る。
 目下、凄まじい斬撃と共に肉薄する狂牙が、猟兵の喉笛めがけて嚙み付いた。


「都怒我阿羅斯等が持つ槍は、ディアボロスランサーを小型化したとしか思えない……寧ろ“そのもの”なの」
 嘗て「銀色の雨の時代」に発見された巨大槍、ディアボロスランサー。
 其は「シルバーレイン世界の全ての生命を創造した」創造主であり、宇宙船にもなる存在だと言を添えたニコリネ・ユーリカ(花屋・f02123)は、かの時代に銀誓館の能力者達の一部を載せて次の宇宙に旅立った筈なのだけど――と、声色を落とす。
「……だから、あの中に『時間を停止された能力者達』が閉じ込められているわ」
 救出方法は、ひとつ――都怒我阿羅斯等を倒すこと。
 かの男を撃破すれば、ディアボロスランサーはその時点の破損状態に関わらず、完全修復状態で新しい宇宙に戻るので、中に居る人達も無事を得ると説明した花屋は、然しこれが厄介だと柳眉を顰めた。
「彼は過去の記録にも殆ど存在しない、全てが謎の敵……。紛れも無い強敵である事だけは分かってる」
 ディアボロスランサーを扱う事の出来る男の力や技量は申し分なし。
 通常攻撃が強力である上、男が無造作にディアボロスランサーを振るう度、その軌跡から「見た事のある動物を継ぎ合わせた見た事の無い生命体」を次々と生み出しては襲い掛からせる為、こちらの対応もしなくてはならない。
「グリュプス、ペリュトン、オフィオタウルス……他にも居るみたいだけど、そのどれもが複数の動物を組み合わせた合成獣らは、都怒我阿羅斯等の神気に触れて発狂してて、それこそ獣のように襲い掛かってくるわ」
 知性を持たぬ生命体は、或る意味、知性を手放したからこそ得た狂暴を有する。
 其の力は決して侮れないと紫瞳を烱々とさせたニコリネは、然し猟兵なら必ずや「中の人達」を救ってくれると凛然を萌し、いつも通りにウインクひとつ、而してニッコリ笑って見せる。
「ディアボロスランサーの猛攻を凌ぎつつ、新生命体にも対抗する……ばっちり二刀流を決めてきて!」
 だって、貴方にはそれが出來るから――。
 信頼に輝くグリモアが、精鋭なる猟兵を花瓣に包んだ。


夕狩こあら
 オープニングをご覧下さりありがとうございます。
 はじめまして、または、こんにちは。
 夕狩(ゆうかり)こあらと申します。

 このシナリオは、『第二次聖杯戦争』第二十の戦場である金沢港に現れた、神気漂う一柱のオブリビオン『都怒我阿羅斯等』と戦うボス戦シナリオ(難易度:普通)です。

●戦場の情報
 石川県金沢市、金沢港。
 当シナリオでは「大野お台場公園」周辺を戦場とし、周辺に民間人は居ないものとします。

●敵の情報:『都怒我阿羅斯等』(ボス戦)
 謎の槍『ディアボロスランサー』による宇宙生命誕生以来、唯一無二の『ディアボロスランサーを装備できる英雄』。それが都怒我阿羅斯等(つぬがあらしと)です。オブリビオン化し、槍の力で望む生命を誕生させます。

●プレイングボーナス:『都怒我阿羅斯等の先制攻撃に対処する/新生命体の群れに対処する』
 このシナリオフレームには、特別な「プレイングボーナス」があります。
 これに基づく行動をすると、戦闘が有利になります。

●リプレイ描写について
 フレンドと一緒に行動する場合、お相手のお名前(ID)や呼び方をお書き下さい。
 団体様は【グループ名】を冒頭に記載願います。
 また、このシナリオに導入の文章はありません。
 先着で5名程度の採用とし、サポートも採用しつつ早期の完結に努めます。

 以上が猟兵が任務を遂行する為に提供できる情報です。
 皆様の武運長久をお祈り申し上げます。
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第1章 ボス戦 『都怒我阿羅斯等』

POW   :    天地開闢の祝詞槍
詠唱時間に応じて無限に威力が上昇する【純粋生命力 】属性の【ディアボロスランサー】を、レベル×5mの直線上に放つ。
SPD   :    舒弗邯閼智(ソブルハンアルチ)
【全身に生えた七本の蒼き角 】を纏い空中高く舞い上がった後、敵めがけて急降下し、[全身に生えた七本の蒼き角 ]が尽きるまで【ディアボロスランサー】で攻撃し続ける。
WIZ   :    魂よわだつみに還れ
【ディアボロスランサーから生命の奔流 】を放ち、レベルm半径内の指定した対象全てを「対象の棲家」に転移する。転移を拒否するとダメージ。
👑11
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戒道・蔵乃祐
プリンセス・エメラルド曰く、善龍スターゲイザーの血族
銀河皇帝として統一国家銀河帝国の権勢を誇ったリスアット・スターゲイザーオブリビオン・フォーミュラもまた、知られざる『黒き槍の船』の担い手でした
彼も異なる世界異なる時代で『槍の持ち手』に選ばれた者だったのでしょうか

神人よ、貴方もその傲慢さ故に世界を滅ぼしますか
過去は覆らず。永久不変であるが故に未来を切り開くこと能わず
その権能、度し難し

僕達はまだ、何も絶望してはいない!

◆鷹蝙剣阿陀呂
殺戮の獣を以てヒトを駆逐せんとする都怒我阿羅斯等に、人類に火を基盤とした文明や技術を齎したプロメテウスの神話再現で対抗
弱肉強食の本能に特化するが故に根付く火への畏れを利用し、念動力+焼却で刃を振るう
灼刃逆巻く早業+乱れ撃ちで切り込み、怯んだ神獣から悉くを鏖殺

舒弗邯閼智の強襲には武器受け+ジャストガードで応じ
怪力+重量攻撃で鍔迫り合い
限界突破+浄化でディアボロスランサーの純粋生命力を我が身に取り込み。破魔+心眼で蒼角ごと偽りのマレビトを滅多切りにします



 冬の日本海、荒々しく繁吹く銀灰色の波濤なみの向こうに、蒼く照る槍が見える。
「――彼槍あれが」
 あれこそ生命の槍『ディアボロスランサー』――原初、都怒我阿羅斯等つぬがあらしとを唯一無二の『槍の持ち手』と選んだと彼は語っていたが、新たな宇宙へと渡る宇宙船でもあったと聽けば、或る存在が記憶の波から浮かんでくる。
「プリンセス・エメラルド曰く、正当なる宇宙の支配者……善龍スターゲイザーの血族」
 銀河皇帝として統一国家銀河帝国の権勢を誇ったリスアット・スターゲイザー。
 スペースシップワールドのオブリビオン・フォーミュラとして猟兵が對峙した男もまた、知られざる『黒き槍の船』の担い手であったと、彼が操った「ワープドライブ・ペネトレーション」が腦裏を掠める。
「彼もまた異なる世界、異なる時代で『槍の持ち手』に選ばれた者だったのでしょうか」
 今一度、“リスアット”と名を捺擦る沈思のハイ・バリトン。
 佳聲の主は、戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)。
 骸の海を潜った者達が紡ぐ言の葉が、パズルの欠片ピースの如く組み合わさろうとしているのを感じる彼は、然しまだ全貌は見えぬと烱瞳を煌々、荒波に据わる英雄に鋭い星眸まなざしを向けた。
「神人よ、貴方もその傲慢さ故に世界を滅ぼしますか」
 かの男は、「強制テレポート術式」を“悪用する”と確言した。
 生命の槍に赦されずとも“構わない”と云った。
 骸の海で何を見たのか――語らぬ男に問う事も無いと、唯だ潮騒のみを聽いた蔵乃祐は、間もなく閃めく斬撃を前に嚴然と訣別を告げた。
「過去は覆らず。永久不變であるが故に未來を切り開くこと能わず」
 目前に迫るは、蒼き霹靂を纏った斬撃。
 波飛沫を蹴散らしながら駆け疾る槍の軌跡に目を凝らせば、其は忽ち輪郭を得て新たなる異形に――鷲の鋭さと獅子の猛々しさを併せ持つグリュプスとなって迫るが、蔵乃祐は望む生命を創る力にこそ柳眉を顰めた。
「――その権能、度し難し」
 言は短く冷然と、然し胸裡に萌した鬪志は赫々と熾え上がろう。
 合成獣の歪な咆哮を前に魔刃『英雄幻妄パラドクスメサイア』を抜いた蔵乃祐は、念じるなり烈々と火燄を發して刀身に纏わせると、猛禽が巨嘴を開けた瞬間に渾身一揮ッ! 灼刃を搏ちつけた!
「弱肉強食の本能に特化するが故に、火への畏れは根深く――」
『ゲェァァアアッッ!!』
「狂獸須く灼滅す可し」
 神人が殺戮の獸を以てヒトを駆逐せんとするなら、人類ヒトは、蔵乃祐は火に基く文明や技術を齎した「プロメテウスの神話」を以て對抗しよう。
 如何に猛牙鋭爪を組み合わせようと、獸は火への恐怖に組み敷かれると、其を證左するように赫灼の魔刃を亂打した荒法師は、獅子の脚が竦んだ瞬間に鷲頭を切り落とし、忽ち掻き消える稲妻に英姿を白ませた。
『キィェェエエエエ!!』
『――汝も我を絶望させるか』
 而して槍持つ男が口開いたのは、飛燕の如き劍筋が斬ッッと鷲の大翼を切り落した瞬間とき
 有翼の獸に併せて冬空に舞い上がっていた都怒我阿羅斯等は、無数に散って踊る羽根の中を抜けて強襲――!
 全身より生え出でた七本の角を冱々と燿わせながら、膂力いっぱいディアボロスランサーを振り回した!
『望んだ力では無い。選ばれて與えられた力だ』
「ッ、ッッ!」
 眼路いっぱいに滿つ蒼き光に鋭瞳を眇めつつ、咄嗟に鍔を嚙み合せる蔵乃祐。
 怪力と怪力が衝突すれば、放射状に衝き上がる波動が大野湊を搖り動かすが、濤と躍り上がる潮沫しぶきの中で鍔競合を、抗衡を破ったのは――猟兵!
虚妄いつわりのマレビト。その絶望は人域を出ない」
『ッ――!!』
 ディアボロスランサーを押し込んだと思ったのは、蔵乃祐がそう嚮導いたからで、八相の構えを起點に爪先を彈いた彼は、そこから素早い足捌きで魔刃を飜すと、間隙なき變則機動、大胆な跳躍で怒涛の斬撃を浴びせた!
「そして――僕達はまだ、何も絶望してはいない!」
『な、に……をッッ!!』
 合成獸との連携攻撃は想定済み。
 先刻の鍔競合でディアボロスランサーの純粋生命力を取り込んでいた蔵乃祐は、舒弗邯閼智ソブルハンアルチと同じ神氣を帯びながら滅多斬りッ! 眩むほど蒼き軌跡を心眼を以て見切り、英雄の槍鋩に被せるよう魔刃を叩き付ける――!
貴殿あなたこそ蒼溟わだつみに還るべきだ」
 劍閃は烈々と。
 蓋し佳脣を滑る科白は凪の如く閑々としていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

穂村・耶子
あの槍の中には、僕に秘伝書を託してくれた先輩もいるからね
ここで負けるわけにはいかないんだよ

最初は回避と防御に専念して新生命体の群れから逃げつつ隙を窺う

君のUCは悪いけど僕には効かないよ
だって今の僕は流浪の根なし草だから、決まった住処なんてないんだ
敢えて言うなら、この地球そのものが僕の住処だから、転移で飛ばされることもないよ

先制攻撃を凌いだら反撃開始
モラストラップを100m級まで巨大化させ、自分はその口の中に入り身を守る
巨大モラはライトニングスピリットを使えるから物理攻撃は無効
新生命体の爪も牙も無効化して蹴散らし、都怒我阿羅斯等に体当たり
最後は巨大モラの口から飛び出して、頭を刀でかぶと割りだ!



 穂村・耶子(甘党残念剣士・f35497)の得意料理は、稲荷寿司。
 お手製の油揚げに確りと甘味が浸み込んでいるのは、銀誓館の先輩に極意を授かったからだ。
「――あの槍の中には、僕に秘伝書を託してくれた先輩もいる」
 先輩は宇宙船となったディアボロスランサーに乗って、次なる宇宙へと旅立った。
 嘗ての記憶を今も鮮明に持つ耶子は、かの能力者達の未來へと進む時間を止めてはならぬと、美し翡翠の瞳を煌々、眼路いっぱいに迫る合成獸らを見据えた。
「ここで負ける訳にはいかないんだよ。絶対にね」
『シギャァァアアッッ!!』
 櫻脣を滑る佳聲が、狂獸の咆哮に掻き消されたのも一瞬。
 蒼き霹靂に像を結んだペリュトンが、稲妻の如き巨角を迫り出して肉薄した瞬間には、極限まで高めた集中力を以て全力回避ッ! 花車を翻して突撃を躱し、先ずは群れを散す事に専念する。
(「無造作に生命を創造しているとはいえ、戰術はある筈。譬えば――」)
 而して予想した通り。
 荒ぶる新生命体の群れに紛れ、都怒我阿羅斯等つぬがあらしとがディアボロスランサーを一閃して生命の奔流を放った刹那、耶子は小気味佳い微咲えみを湛えた。
『汝が魂も、蒼溟わだつみに還るがいい』
「――生憎だけど。根なし草の僕に棲家なんて無いんだ」
 今や流浪の身となった耶子には、我が住処と決めた場所は無し。
 その一撃は効くまいと確言した耶子は、幾許の諧謔を添えて攻勢に転じた。
「敢えて言うなら、この地球そのものが僕の住処かな。果して、飛ばされるかどうか――」
 無論、飛ばされる心意つもりは毛頭無い。
 先輩の爲にも此處で・・・決着を付けるのだと、刀の柄に搖れる『モラストラップ』を一撫でした耶子は、【モーラット・ジャイアント】――そのフワフワをモコモコと膨らませ、100m級のモーラットに巨大化させた。
「モキュ~ッ!」
「この子に雷鳴電撃や物理攻撃は通じない。シェルター代わりにさせて貰うよ」
 云って、あんぐりと開いたお口の中に身を滑らせる。ジャストフィット。
 この中に居る限り、如何な猛牙鋭爪もモフモフを削る事は出來ないと、耶子は悪戯な笑みを浮べたか分からないが、彼女を含んだ超巨大モーラットは槍持つ男めがけてドーンッと体当たり! この瞬間に耶子を射出したッ!
『ッ、毛玉の中から……!!』
「こっちが本命だ!」
 もっふりアタックに巨邪が目を白黑させた隙に、眞上に振り被った冱刀を振り下ろす――兜割り!
 不意を討たれた都怒我阿羅斯等つぬがあらしとは、額部に生え出でる蒼き鹿角を折られるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニーニアルーフ・メーベルナッハ
このような形で、またディアボロスランサーを見ることとなりましょうとは…。
骸の海で何を見たかは知りませんが、かつての戦いの果てに得たもの、無に還させはしません…!

敵のユーベルコードは時間が経つ程に威力の上昇するもの。
ならば早期に撃たせるべく、肉薄するのが得策でしょう。
【蟲使い】で放った蟲達に新生命体達を攻撃させ、自分でもブレンネン・ナーゲルを【怪力】にて振るい、道を開きます。
敵のユーベルコードの発動は、槍を構える動きにて判断、軌道に対し直角の跳躍で回避を試みます。

凌いだら白燐拡散弾を発動、新生命体諸共彼を攻撃にかかります…!



 かの乙女の月の如く澄める瞳は、銀誓館學園の歩みの全てを見届けた。
 勿論、當時発見された巨大槍が宇宙船となり、能力者の一部を載せて次の宇宙に旅立った事も、鮮明に覺えている。
豈夫まさかこのような形で、再びディアボロスランサーを見るとは……誰が予想したでしょう」
 ニーニアルーフ・メーベルナッハ(黒き楽園の月・f35280)――ニーナの銀瞳に映るは、唯の槍では無い。
 原初、世界の諸有る生命を創造した「生命の槍」の中には、嘗て學舎を、幾つもの戰鬪たたかいを共にした同胞が居るのだと凛然を萌したニーナは、冬の日本海、荒々しい波濤なみの奧に構える都怒我阿羅斯等つぬがあらしとを凛乎と見据えた。
「骸の海で何を見たかは知りませんし、語らぬ以上は問いもしません」
 理由を聽いて収める矛は無い。
 かの男が持つ槍には、無造作に創られる生命以上に大切な命があると、蟲笛『ヴァイス・リート』を構えた佳人は、淑艶なる旋律に白燐蟲を喚び出した。
「私も銀誓館學園で研鑽を積んだ者の一人。嘗ての戰いの果てに得たものを、無に還させはしません……!」
 疾ッとたばしる蒼き斬撃が、無数の合成獸となるのを聢と捉えるニーナ。
 白磁の纎手が滑らかに踊って玉音を奏でれば、白燐蟲は新しき生命体に勢い良く群がり、如何なる獸も有する視界を潰して突進の威力を弱める。
 この隙に動いたのは、術者自身。
「ここから先へは、通しません!」
 彼女も力いっぱい紅炎手『ブレンネン・ナーゲル』を振るい、鋭い鉤爪を疾らせては歪な生命体を元の霹靂に變えて散していく。
(「迎撃するだけでは後手を踏みますから、ここは肉薄するのが得策……!」)
 槍持つ男が祝詞を唱え切るより迅く攻める――!
 早期に撃たせるのが最良と、強く踏み込んで道を切り開いたニーナは、蒼く光れる奔流の渦中、生命の槍を振り被る巨邪に烱瞳を結んだ。
『今こそ天地開闢の刻。生命の奔流に俯伏ひれふすが佳い』
(「初撃は、回避……!」)
 命を生むにも斬撃を疾らせるにも、身丈ほどある槍を振るうには相應の動きがある。
 男の身構えや鋩の位置を怜悧に捉えたニーナは、閃々と燿く軌跡に對し直角の跳躍で回避!
『ッ、逸したか――』
「二度目はありません! 消えて、なくなってくださーい!」
 而して怪腕が鋩を返すより早く【白燐拡散弾シュツルム・フォスフォール】を解き放つと、男と、男が生んだ新生命体を白燐蟲に喰らわせ、徒に膨れ上がる生命力を鹵掠うばうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

狼姫・荒哉
俺はディアボロスランサーから帰還した元旅行者さ
当然、その武装に見覚えがあるよ
旅行者の皆の旅をこんなところで停めないでおくれよ
一緒に旅立った友達が、世界創造に携わってた能力者たちがその中にたくさんいるんだからさ

俺はね、刻がどれほど経とうとも
誇り高き人狼騎士の端くれなんだ
武装になんて、こだわらないよ――連続攻撃で踏破する(UC)

神様だろうと、武器を持って立つなら俺は事実上同胞を相手取られてるきがして殺気立って赦さないかも
勝負事に、正々堂々をしないのは騎士の誇りが赦さない

先制攻撃には対処しないよ、闘気のオーラを纏って受けて立つ
怪我は厭わないし、流血は気分があがるね
闘いはスリルが在る方が気分があがるよ



 神氣を漾わせる男は、創造主に「選ばれた」と云っていたか。
 骸の海で何を見たかは知らぬが、ディアボロスランサーを「武器」として構え持つならば、嘗てかの槍を「宇宙船」として外宇宙を渡った“当事者”は穩やかでは居られまい。
「――実際、同胞を盾に取られたような気分だ。旅行者の皆の旅を、こんなところで停めないでおくれよ」
 次なる宇宙へ旅立った友達、世界創造に携わった能力者達。
 沢山の顏が思い起されると、共にディアボロスランサーに乗り込んだ仲間を懷しんだ狼姫・荒哉(吹雪謳う爪牙・f35761)は、彼等を人質に取るような卑怯をする都怒我阿羅斯等つぬがあらしとにこそ騎士の矜持を煽られた。
「俺はね、刻がどれほど経とうとも、誇り高き人狼騎士の端くれなんだ」
 無造作に生まれる禽獸の嵌合に怯懦を覺える種に非ず。
 暴悪の儘に襲い掛かる牙や爪など、幾星霜をかけて練り上げられた武術には敵わぬと、数体の合成獸の突撃を躱した荒哉は、颯然と棚引く黒鴉の端すら嚙ませない。
 宙空に翻りざま、胸裡に滾る殺氣を研ぎ澄した彼は、佳脣より赤い舌を覗かせながら云った。
「ディアボロスランサーに乗る命に較べれば、随分薄っぺらい生命体だね」
『――ゲェァァアアッッ!!』
 魂の練度の差を突き付けるは、【龍顎龍尾龍撃乱舞】――!
 猛然と牙を剝く獅子の眉間に正拳突き「龍顎拳」を叩き込むや、次いで襲い掛かる猛牛の四肢は回転蹴り「龍尾脚」で躓かせ、かの巨躯が勢い良く倒れる間に「龍撃砲」ッ! 波濤なみすら引かせる衝撃波で獸らを蹂躙する!
『……手練か』
 合成獸が次々と蹲う中、槍持つ男が言ちたのは――遙か上空。
 数多の有翼獸を從えて急降下した巨邪は、淸かに光れるディアボロスランサーの鋩を荒哉へと結ぶが、彼は蒼く燿く生命の光に白皙を照らすと、刹那、十字に構えた腕の二本で重々しい斬撃を受け止めたッ!
『ほう、何も持たずして抗うとは』
鬪爭たたかいはスリルが在る方が気分があがるからね」
 極限まで高めた鬪氣を全身に巡らせ、ディアボロスランサーを摑む。宛ら槍と拳の鍔迫合。
 間もなく兩掌から鮮血が噴き、熱い血汐が荒哉の頬を打って滴るが、其も上等だと佳脣に弧を描いた彼は、角逐した状態から蹴撃一閃ッ、變則的な軌道で次々と衝撃を叩き込み、かの巨躯を押し返した!!
「勝負事は正々堂々じゃないと」
 一縷と呼吸を亂さぬ紅脣が科白を零したのは、この瞬間とき
 告ぐや腿の脇より生え出でた蒼き角が、神速で閃いた踵撃に折られ、落ちた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
【剣花】

家に帰るにはまだ早いと思うんだ
先制攻撃UCの転送拒否
ダメージは【オーラ防御】と【激痛耐性】で耐え

名前覚えられないのでラッシー呼び
他人巻き込むのはダメだよラッシー

新生命体は翼の【空中戦】と
【聞き耳、集中力、気配感知】による位置把握で回避
セノサキさんの合図と共に浄化と祝福発動

【破魔】を乗せた炎の鳥を、初めは合体させずに操作
代わりに【高速詠唱】で風魔法の【属性攻撃、範囲攻撃】を発生させ
炎を煽る事で火力増強

一部は新生命体の対処に回せるし
なにより囲まれて追われて突かれ燃やされ…鬱陶しいでしょ
確実に消火しなきゃ減らないよ
ああ…ラッシーになら【浄化】としても効くかな

必要なら締めだけは合体させて突撃


レモン・セノサキ
【剣花】

先制攻撃UCの転送は拒否
ダメージは▲オーラ防御で対応
着弾の瞬間に最大放出、▲ジャストガードを狙いたい

さぁて、……律儀に名前を呼ぶのも面倒だ
おい、ラッシー
ディアボロスランサーばかりか
中にいる能力者まで危機に曝してくれて
覚悟は出来てるんだろうなぁ?

【指定UC】を起動
仲間の傷を癒し、再行動を可能にしたうえで「トラップダイス」をばら蒔き起爆
麻痺毒(▲マヒ攻撃)の煙だ、覿面まで行かずとも鬱陶しいだろ?
新生命体には「Forte.50」に「C.T.弾頭」を▲早業で装填・発砲
上手く行けば全ての爆発に追撃が容赦なく乗るだろう

ま、こっちの大本命はC.T.弾頭じゃなくて……
澪ちゃん、決めてやれ!!



 創造主に『槍の持ち手』と選ばれし男の名は、都怒我阿羅斯等つぬがあらしと
 額に角を有する彼が「角鹿つぬが」、後に転訛して「敦賀つるが」の地が生まれたと言われているが、此處は石川県だし、何より「つぬがあらしと」は言い難いし覺え難い。
「都怒、我……阿……ラッシーっていいかな」
「慥かに、律儀に名前を呼ぶのも面倒だ。ラッシーでいいだろ」
 ヤダめちゃ言い易い。
 而して親しみ溢れる名前で呼ぶ事に決めた栗花落・澪(泡沫の花・f03165)とレモン・セノサキ(Gun's Magus魔砲使い・f29870)は、冬の日本海、鞺鞳と荒ぶる波濤なみの奧に佳聲を投げた。
「おい、ラッシー! ディアボロスランサーばかりか、中にいる能力者まで危機に曝してくれたな」
「骸の海で何を見たのか分からないけど、他人を巻き込むのはダメだよ、ラッシー」
 兩者の纎指が指し示すは、生命の槍『ディアボロスランサー』。
 ラッシーは「武器」として扱っているが、原初に生命を創造した其は「宇宙船」――能力者の一部を載せて次なる宇宙に旅立ったのだと語氣を強めたレモンは、敵意を露わに瞳を眇める。
「學園の仲間を人質みたいにして……覺悟は出來てるんだろうなぁ?」
「槍に選ばれたからって、槍が赦さない事はしちゃダメだよ……ラッシー」
 隣する澪も、彼の所業には柳眉を寄せて。
 猟兵として予兆を見た以上、ラッシーにも事情があるとは察せられるが、悪事を悪事と知って働くなど見過ごせず、矢張り、止めねばならぬと思うのだ。
『……ラッシー……』
 銀灰色の海が潮騒を轟かせる中、芙蓉二花の思いはどれだけ届いたか。
 ラッシーは二人を認めるなり、蒼槍一揮ッ! 煌々と輝く奔流を放ち、その魂を棲家に還さんと押し流した――!
「ッッ……家に帰るには、まだ早いよね……!」
「噫。勿論――“拒否する”」
 気を抜けば忽ち足元が掬われる激流を、強く踏み込めて堪える。
 オーラを纏ってダメージを軽減した澪とレモンは、己に絡む蒼溟わだつみを振り払うように踏み出すや、攻勢に転じた。

「そっちが奔流なら、こっちは颶風を呉れて遣る」
 美し金彩の瞳が烱々と輝いたのは、この瞬間とき
 忽ち閃く斬撃に併せ、合成獸が続々と生まれるのを見たレモンは、その奔流、その咆哮に向かって玉臂を掲げる。
 巻き起こるは【天雨豪嵐テンペストフィールド】――万難を枯の葉の如くする「戰いの暴風雨」が吹き荒び、生命の奔流とぶつかって脅威を相殺すると同時、味方の負傷を回復する。
「私達は何度でも立ち上がり、そしてお前達には……万障万災が降り掛かる」
『ッ、ッ……シギャァァアアッ!!』
 漆黑の艶髪を猛風に梳りながら、佳人が取り出したのは『トラップダイス』。
 猶も巻き起こる暴風に時限式発煙彈を擲げて混ぜれば、忽ち起爆した賽転サイコロが麻痺毒を噴出した!
「覿面まで行かずとも、鬱陶しいだろ?」
『ゲェアッ……ギギィィイイ!!』
 而して彼女の云う通り。
 骸の海を潜った者だろうと、槍の一振りで創られた生命だろうと、半径133m圏内に侵入した者は悉く躰を痺れさせ、佳人が構える『Forte.50フォルテ・イーブン』、神速で装填された『C.T.弾頭』の格好の標的マトとなった。
「上手く行けば、海上いっぱいが――……ほら、赫の海になる」
 次々に爆ぜる発煙彈が視界を遮り、挙措を鈍らせた處に炸裂彈頭が子彈を撒き散らす――閃光烈火の景。
 これにはラッシーも手を翳して煙幕や焦熱を遮らんとするが、此れは槍撃を止める爲の“フリ”。
「扨て、大本命を見せようか……澪ちゃん、決めてやれ!!」
 照準器越しに颯爽と翔ける白翼を見たレモンは、佳脣に小気味佳い弧を描いて叫んだ。

「これ以上、生命を弄ぶ行爲はさせないよ!」
 雪嶺の鼻梁を敵群に向けた儘、決然と告ぐは澪。
 レモンの【天雨豪嵐テンペストフィールド】によって優位を得た澪は、敵が煙に巻かれる間に極限まで集中力を高め、続々と鈍麻する敵を躱しながら最短距離を飛翔する。
 戰場の半ばまで至った澪は、戰友の佳聲を合圖に【浄化と祝福ピュリフィカシオン・エト・ベネディクション】――総計135羽の炎の鳥を召喚し、赫々と熾ゆる翼を羽搏かせた。
「鳥たちよ、歪な姿を與えられた生命を淨めて」
『ギィ……ァアッ……!!』
 合成獸の形姿と動作、位置を把握した今は向かわせるだけ。
 破魔の氣を帯びた火燄の翼は四方に飛び立ち、また麗人が紡ぐ風の魔法によって火力を強め、歪に嵌合された狂獸らを掻き消す。
「新生命体は勿論、ラッシーも鬱陶しいでしょ」
『な、んの……ッ!!』
 囲繞まれ、追われ、突かれ、熾やされ。
 大きさも種族も異なる鳥は斬ろうにも炎を別つのみで、而して消す術も無し。
「ラッシーも淨められるべきなのかな」
 澪が靜かに言ちた瞬間、周囲に飛翔していた炎鳥が集まり、集合して巨きな鳥になる。
 強く空気を搏いた赫翼は、ラッシーめがけて勢い良く突撃した!

『雄、雄雄――!!』

 豈夫まさか、まさかとラッシーは喫驚いたか。
 巨躯を強く彈き飛ばされた男は、今や完全に「ラッシー呼び」が馴染んでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
どんな形だろうと獣は獣だ!

ディスポーザブル01を操縦、
ホーミングレーザー射撃でペリュトンを撃ち落とし、
【怪力】でオフィオタウルスの突進を受け止めパワークローで握り潰し、
【ロープワーク】フォースウィップでグリュプスを拘束、

恐れる理由などない!!

グリュプスを都怒我阿羅斯等へ投げ付ける敵を盾にする
メガスラスターで【推力移動】祝詞槍から逃れ『禍葬凶星』発動!

あのオブリビオンもだ!
『凶星展開』壊れろぉッッ!!

【超念動力】重装甲の重さを感じさせない派手な動きで【空中機動】からRX騎兵刀で切断攻撃!
【追撃】死角から剣型ビットで【串刺し】
【早業】体勢を崩した所へ爆発手甲の【吹き飛ばし重量攻撃】



 鞺鞳たる波濤の向こうで槍を構え持つ男が、生命に絶望した理由など知らぬ。
 唯だ奴が骸の海を潜ったと云うなら、己が幾度と駆逐した機体と同じ運命を辿らせるのみと、鐵騎ディスポーザブル01を駆った朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵ジカクナキアクリョウ・f29924)は、センサが感知した新生命体群――合成獸の襲來をモニタ越しに視認した。
「どんな形だろうと獸は獸だ!」
 使い潰しの複製腦は、眼路に滿つ異形を「敵」と見れば迅速。
 視覺に飛び込む情報を逸早く「撃滅対象」と処理した小枝子は、兩肩部に備えた全方位誘導レーザー砲台を展開して即時連続発射ッ! 先ずは最前線に羽搏くペリュトンに照準を結んで撃ち落とす。
「只の継ぎ接ぎ……千切れろぉッ!」
『シギァァアアッ!!』
 幾丈の光条が猛禽の翼を灼き切る中、操縦士は次なる獲物も聢と捉えている。
 素早く纎手を動かした小枝子は、爆炎を裂いて突進するオフィオタウルスを身ごと受け止めると、衝撃に搖れる中で重機型パワークローを操作し、蛇の身を摑むや圧倒的パワーで握り潰したッ!
『ゲェ……ァアッッ!!』
「まだだ、まだ居る! 生まれている!」
 赫々と繁吹く血汐が装甲を染め、ブツ斬りになった肉片が機体を叩くが構わない。
 蒼き槍の一揮によって閃く衝撃波めがけて兩機掌を構えた小枝子は、ガントレットからフォースウィップを放出し、斬撃が新たな生命体へ――グリュプスへと像を結んだ瞬間に拘束したッ!
『ギギッ……ギギィィイ!!』
「たとえ百獸が組み合さったとしても、恐れる理由など無い!!」
 嘗て人類が怖れた獸だろうと、同じ畏怖を抱く理は無し。
 其は神人とて同じだと、光熱の縛鎖に捕えた異形をブン回した小枝子は、槍持つ男へと擲げ放ッた!
「然う――あのオブリビオンもだ!」
『オブリビオン、か。そう呼ばれて然るべしだ』
 轟然と迫る一撃に目を眇めつつ、祝詞を唱える巨邪。
 蒼き斬撃が大河の如く迸った瞬間、佳人はメガスラスターの出力全開! 重装甲の機体とは思えぬほど俊敏且つ派手な機動で駆け疾った鐵機は、空中に躍るや騎兵刀を抜いた。
「――『凶星展開』、壊れろぉッッ!!」
 しとど血を浴びた鐵機が、闇より昏い漆黑に染まったのも一瞬。
 墜下しざま鋼の巨刃を切り結んだ小枝子は、周囲に從えた劍型ビットの鋩を“槍の持ち手”へ集めて串刺しにすると、男が痛撃に顏を歪めた瞬間に手甲を差し出す。
『ッ、ッッ!!』
 兩者を閃光に白ませたのは、【禍葬凶星ブラックスター】ッ!
 凄まじい爆熱が衝き上がるや、都怒我阿羅斯等つぬがあらしとは銀灰色の海の向こうへ吹き飛ばされるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カイム・クローバー
命を生み出す巨大槍。生み出した歪な獣に担ぎ上げられて、気分はお山の大将状態か?強敵っつっても可愛らしいモンだ。それぐらいで気分良くなれるなんて羨ましいぜ。

右手で魔剣を肩に担いで。
獣の群れを両断し、左手の銃撃で撃ち落とし、【焼却】で焼き焦がし。
掃討した辺りで両手を広げて歩きながら【挑発】を送るか。
Hey!これで見世物は終わりかい?詠唱時間はたっぷりくれてやったんだ。
特別な――ドデカい打ち上げ花火を見せてくれるんだろ?

純粋な生命力。
熱がある。生み出した獣の命の比じゃあない。焼き滅ぼして焦がそうとする蒼き閃雷。
――命の煌きか。悪くねぇ。
右手の魔剣を蒼い雷に向けて振るう。神が生み出した命の奔流と終末の黄昏を宿したUCのぶつかり合い。奔流に押されながらも笑みは止まず。
…ハッ、皮肉なモンだぜ。神を殺す剣が神が生み出した命を喰らい尽くす。なのに、依頼内容は能力者達の救出だってんだからよ。
覚えときな。便利屋Black Jackは一度、請けた依頼は投げ出さねぇのさ。
【覚悟】と共にその奔流、叩き斬る



 人間など安酒でも酔わねばならぬ時があるが、神人は如何にして酩酊を得るか――。
 鞺鞳の浪の凄然すさまじき冬の日本海、銀白色の波濤なみの向こうに立つ“蒼き角鹿”を烱瞳に射たカイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)は、飄然と皮肉を零した。
「命を生み出す巨大槍、か。そんな大層なモノに選ばれたなら、気分は悪くないだろう?」
 創造主たる槍に選ばれ、其を一振りすれば己も命を創れるのだ。
 先に視た予兆では「生命に絶望した」と言っていたが、ならば何故、その生命を武器に戰うのか――。
 樣々な神を始末してきたカイムにとっては、『都怒我阿羅斯等つぬがあらしと』も幼稚な神の一柱に相違ちがいなかった。
「――やれやれ、神守こもりは苦手なんだが」
 蓋し請けたからには、己の爲方やりかたあやして遣ろうと溜息を置いた便利屋は、右手に持つ魔劍を肩に担ぐと、左手に握る黑銃の銃口を向け、大胆に言ってのけた。
「生み出した歪な獸に担ぎ上げられて、気分は如何だい? お山の大将」
『……我が虚勢を張っているとでも』
「噫、強敵っつっても可愛らしいモンだ。それぐらいで気分良くなれるなんて羨ましいぜ」
 畢竟、絶望という名の酒に酔っているだけ。
 骸の海で何を見たか知らぬが、如何な理由があったとて、生命を創造しては冒瀆する神を見逃す贔屓は出來ないと、餘裕たっぷり平等主義を示したカイムは、挑発が効いた瞬間を聢と捉えた。

『……汝こそ骸の海を潜って“視る”可きだ』

 直ぐに嚮導みちびいて遣ると、斬ッッと閃いた刃撃が生命に結ばれる。
 グリュプス、ペリュトン、オフィオタウルス――歪な生命の群れが猛々しく突進すれば、カイムは魔劍を振り被って一刀兩斷ッ! 胴を別つと同時、烈々と迸發ほとばしる黑銀の炎に灼いた。
『ギィァアッ!!』
『ッゲェェエ!!』
 しとど返り血を浴びる麗人に恐怖の色は無し。
 而してまた一閃、続々と生まれては襲い來る狂獸に今度は銀彈を沈めた彼は、銃聲の合間にも諧謔を零した。
「槍が赦さないと理解っていて嗔らせる……宛如まるでガキのする事だ。何なら一緒に謝罪あやまってやろうか」
『生意氣な口よ、噤め』
 然し幾度と切り払おうとも、獸では彼に敵うまい。
 熾え盛る炎は本能が怖れようし、翼より迅く飛ぶ銃彈を避ける術は無く――合成獸は次々と焼き焦がされていく。
 物足りぬと空腹を訴えたのは、寧ろカイムの方。
「Hey! これで見世物ショウは終わりかい?」
『……不遜な男め』
「詠唱時間はたっぷりくれてやったんだ。特別な――ドデカい打ち上げ花火を見せてくれるんだろ?」
 獸の咆吼が消え、潮騒だけが轟く戰場に佳聲が渡りゆく。
 カイムが手持ち無沙汰を示すように兩手を広げて近附けば、神人も愈々赦すまい。
 求めるなら與えようと腰を落とした蒼き角鹿は、祝詞を捧げて殺傷力を高めたディアボロスランサーを渾身一揮! 天地開闢の冱撃に大海を別ッた――!

『堕ちよ、猟兵。汝も絶望を視るが佳い』

 だが、この刹那とき
 カイムは慥かに咲ったろう。
「――命の煌きか。悪くねぇ」
 力強い熱を持った、純粋な生命力。
 其は斬撃が生み出した獸の命の比じゃあない。
「全てを焼き滅ぼして焦がそうとする蒼き閃雷……魔劍の相手にピッタリだ!」
 眼路に飛び込む蒼の霹靂を塊麗の微笑に迎えたカイムは、【必滅の刃スキル・スレイヤー】――神殺しの魔劍を眞一文字に薙ぎ払い、猛然と逆巻く黑銀の炎を咬み合わせる――!
「神が生み出した命の奔流と、終末の黄昏を宿したユーベルコードのぶつかり合いだ。愉しめるだろ?」
『角逐! 相剋! 其も佳かろう!』
 遂にカイムの胆力を認めたか、小気味佳い男だと口角を持ち上げた巨邪が、今度は身ごと踏み込む。
 一瞬でも気を緩めれば押し潰される――凄まじい奔流に押されながらも踏み留まったカイムは、前髪に触れんばかりディアボロスランサーを見て自虐を零した。
「……ハッ、皮肉なモンだぜ。神を殺す劍が神が生み出した命を喰らい尽くす。なのに、依頼内容は能力者達の救出だってんだからよ」
『ッ、この力……ッッ!!』
 蒼き閃光に照るは、變わらぬ艶笑。
 我が魔力を一滴残さず燃焼させたカイムは、轟然と哮る黑銀の炎を膨らませて刃鳴一閃!
 槍持つ男が迸發る生命の奔流を叩ッ斬り、己が麗顔を見せつけるよう大胆に咲んで見せた。
「覺えときな。便利屋Black Jackは、一度請けた依頼は投げ出さねぇのさ」
『ッッ――!!』
 噫、嗚呼。
 仮令たとえ、骸の海に沈んだとて忘れようものか。

『――名を』

 神氣漾う益荒男『都怒我阿羅斯等つぬがあらしと』は、彼の名を訊ねる事で敗北を示すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年01月19日


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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト