第二次聖杯戦争⑰〜二人で一人の悪夢獣
●二人はナイ×ビス!?
「『魔槌しなもん』と『雪降ここあ』……ついに追い詰めたよ。ここで逃がしたら面倒なことになるし、なんとしても倒さないと……」
ただし、今までのような力押しだけで、彼女達を倒すことは不可能だと穂村・耶子(甘党残念剣士・f35497)は猟兵達に告げた。なんと、彼女達は片方が死んでも、もう一方が相手を持ち物ごと完全復活させることができるという、恐るべきユーベルコードを持っているのだ。
「このユーベルコードがある限り、どっちか片方を倒しても、直ぐに復活されちゃうんだ。おまけに、彼女達は自分の死を恐れずに戦ってくるから、片方が生き返らせてくれる前提で、自分が死ぬのも構わず相方を庇ったりもするんだよ」
その場合、当然のことながら、庇って死んだ方は直ぐに完全な状態で蘇生される。また、それを見越してか『雪降ここあ』は自らを省みないユーベルコードを用いるようで、自分の内臓を生贄に強力な聖餐獣を呼び出したり、あるいは自身の肉体を『魔槌しなもん』の使うユーベルコードの代償として差し出したりもするようだ。
当然、それらの反動や代償で『雪降ここあ』が死ぬこともあるが、その場合は『魔槌しなもん』が直ぐに蘇生させてしまう。そうなると、今まで『雪降ここあ』に与えていたダメージもチャラとなるため、場合によっては反動や代償による死を利用することで、逆に回復して状況を立て直してくることもあるという。
「どっちか片方を狙うような戦い方だと、今まで与えて来たダメージもゼロに戻されちゃうからね。特に『雪降ここあ』の方は、ユーベルコードを使うだけでも自分から死ねちゃうから……それを利用されて延々と蘇生されたら、いくら頑張っても全部無意味にされちゃうよ」
彼女達を倒すための手段。それは、彼女達を同時に撃破する他にない。ダメージ計算もそうだが、場合によってはこちらの不利を承知で彼女達の片方を敢えて生かし、蘇生による回復を妨害する必要も出て来るかもしれない。
「同時に撃破しないと復活する敵……なんか、昔見た特撮番組とか、ロボットアニメのラスボスで、そんなのがいたような……」
その時は、いったいどうやって倒していただろうか。記憶を辿って思い出そうとする耶子だったが、フィクションはあくまでフィクション。耶子のアドバイスを待つよりも、自分なりに作戦を考えて、『魔槌しなもん』と『雪降ここあ』の二人に挑んだ方が良さそうだ。
雷紋寺音弥
こんにちは、マスターの雷紋寺音弥です。
このシナリオは戦争シナリオです。
1章だけで終了する、特別なシナリオです。
互いに相方を完全な状態で蘇生できるユーベルコード、『ふたりでひとり』に対処する行動を取ると、プレイングボーナスが得られます。
同時撃破は勿論ですが、意図的な自害による蘇生回復を阻止することでも、戦闘を有利に進められます。
第1章 ボス戦
『『ふたりでひとり』』
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POW : しなもんの自爆特攻
自身が戦闘不能となる事で、【しなもんが体当りした】敵1体に大ダメージを与える。【死に対する躊躇の無さ】を語ると更にダメージ増。
SPD : しなもんがここあから悪夢を取り出す
自身の【ここあの悪夢世界】から【夢魔ナイトメアの群れ】を放出し、戦場内全ての【ふたりに敵対する対象】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。
WIZ : ここあの聖餐獣
自身の【鮮血と内臓(ここあの肉体を切り裂き摘出)】を代償に、1〜12体の【聖餐獣「ギガンティックナイトメア」】を召喚する。戦闘力は高いが、召喚数に応じた量の代償が必要。
👑11
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中村・裕美
「……ふたりでひとり……ね」「なら、わたくし達も負けていられませんわね」
【オルタナティブ・ダブル】で副人格のシルヴァーナを召喚して挑みます
シルヴァーナは【早業】で惨殺ナイフを操り敵を【切断】する間、裕美は電脳魔術で空間に【ハッキング】して【罠使い】でナイトメアの群れにトラップを生成して動きを抑えつつ、自身もドラゴンランスによる【串刺し】で攻撃し、同時撃破を狙う
更には敵の攻撃には【残像】で幻像作って攻撃を逸らしたり、【武器受け】で受け流す
「そちらの絆をとやかくいうつもりはありませんが、この世界で好き勝手させる訳にはいきませんわ」「……覚悟しといて」
その他、味方と連携できるようなら、その方向で
●二人で一人、一人で二人
同時に死なない限り、絶対に消滅することのないバビロンの獣。そんな彼女達を叩くためには、彼女達が合流した瞬間を突くしかない。
薔薇に覆われた迷宮を越えれば、そこには魔槌・しなもんと雪降・ここあが待っていた。彼女達は一見して人間にしか見えないが、しかし危険なナイトメアビーストであることに変わりはなく。
「……ふたりでひとり……ね」
「なら、わたくし達も負けていられませんわね」
邂逅と同時に、中村・裕美(捻じくれクラッカー・f01705)はユーベルコードで自らの副人格を実体化させる。この二人がどのような存在であれ、問答する時間も惜しかったから。
「へぇ、アンタ達も、二人で一人なのか」
「でも、負けないよ。わたしとしなもんちゃんの絆は、絶対に……」
そう、ここあが呟くと同時に、彼女の中から溢れ出すのは夢魔ナイトメア。それらは触れた対象の力を問答無用で奪い去り、無力な存在に変えてしまう。
「裕美……ここは任せましたわよ」
そんな夢魔ナイトメアの群れに、シルヴァーナはナイフ片手に単身斬り込んで行った。そのまま飲み込まれ、泡として消えてしまうと思われたが……しかし、見えない何かが夢魔ナイトメアの行く手を阻み、その動きを阻害する。
「……座標確認……空間干渉アクセス開始……。量子波動関数誤差修正完了……ベクトル方程式反転……」
夢魔ナイトメアの行く手を阻む力の正体は、裕美が空間に張り巡らせた電脳魔術によるものだった。勿論、それだけで夢魔の集団を全て抑え込むことはできないが、少なくとも動きを怠慢にさせることくらいはできる。
「くっ……! こいつら
……!!」
「ど、どうするの、しなもんちゃん!?」
頼みの綱の夢魔ナイトメアが満足に機能しないため、しなもんとここあの二人は防戦一方だ。互いに互いを庇おうとも、シルヴァーナがしなもんを、裕美がここあを、それぞれ攻撃して来るので、お互いに自分を守ることで精一杯。
「そちらの絆をとやかくいうつもりはありませんが、この世界で好き勝手させる訳にはいきませんわ」
「……覚悟しといて」
もはや、二人が倒されるのは時間の問題だった。怠慢な動きしかできない夢魔ナイトメアでは、裕美とシルヴァーナの足止めにもならない。このまま一気に押し切れるかと……そう、誰もが疑わなかったが、しかし突然、ここあが全身を痙攣させたかと思うと、その場に力なく崩れ落ちた。
「……っ! 削り過ぎた!?」
「いえ、そうではありませんわ。これは……」
先にここあが倒れてしまったことで、裕美とシルヴァーナも思わず手を止めた。敵の消耗度合いの調整は完璧だったはず。それなのに、何故先にここあだけが死んでしまったのか。
その答えは、二人が使ったユーベルコード。しなもんはここあの中から悪夢を取り出し具現化させるが、その代償を受けるのは、他でもないここあだ。彼女が夢魔ナイトメアを展開できる時間は、長くとも数分。5分も展開できれば良い方で、6分以上は確実に代償として、自分の命を失ってしまう。
「ここあ! 今、生き返らせてあげるからね!」
自分が攻撃されることも厭わず、しなもんは両目を閉じて精神を集中させた。慌てて止めようとする裕美とシルヴァーナだったが、今のしなもんに物理的な干渉は無意味だ。
彼女達だけのユーベルコード、ふたりでひとり。その効果は二人が離れていても発生させられる以上、一度でも発動の条件を満たしたら、止める術は存在しない。
「あ……しなもんちゃん?」
「無事だよね、ここあ。さあ、仕切り直そう!」
完全な状態で蘇生したここあに、しなもんが笑顔で返す。死に戻りを使われたことで、ここあへのダメージは全て振り出しに戻された。状況は未だ猟兵達に有利ではあったが、この体力差をどう埋め合わせるのかが、後の戦いを左右することになりそうだ。
成功
🔵🔵🔴
ティエル・ティエリエル
むむむーっ、二人同時にやっつけなきゃダメなんだね!
ようし、同時撃破するチャンスを狙うぞー☆
まずは背中の翅で飛び回って、フェイントかけた後にレイピアでつんつんしていっちゃうぞ!
呼び出された聖餐獣の攻撃も空中を駆けながら「見切り」で避けていくよ♪
相手がしびれを切らせてさらに聖餐獣を呼び出そうとここあのお腹を斬り裂いた瞬間を狙って攻撃だ☆
ボクにばかり注目していたんじゃないかな!
【妖精姫と金魚型飛空艇】で呼び出して、空中に待機していた金魚さんからの一斉射撃で同時撃破を狙っちゃうぞ♪
※アドリブや他の方との連携も大歓迎です
●悪夢の臓腑
互いに互いを庇い、蘇生させ合う敵を同時に撃破する。なんとも難しい任務であったが、それでもティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)は、臆することなくバビロンの獣の二人へと向かって行く。
「むむむーっ、二人同時にやっつけなきゃダメなんだね! ようし、同時撃破するチャンスを狙うぞー☆」
果たして、そう簡単に同時撃破などできるだろうか。そもそも、ティエルは一人しかいないので、攻撃できるチャンスも1回だけのはずなのだが。
「その小さな身体で、本当にアタシ達を倒せると思ってるの?」
「油断しないで……。しなもんちゃんは、さっきの戦いで怪我しているから……」
負傷したしなもんを庇うように、ここあが前に出る。それでも構わず、ティエルはレイピアを構えて一直線に向かって行くと……瞬間、二人の前で急上昇してからの急降下で、あっという間に背後に回り。
「……っ! 痛っ!」
鋭い痛みにしなもんが悲鳴を上げる。慌てて振り返ると、そこにいたティエルは再び背後に回り込み、今度はここあの背中を刺す。
「きゃっ! この子、素早い……」
ティエルを払いのけようとするここあだったが、そんなものに叩き落とされれるティエルではない。だが、このまま一撃離脱を繰り返していても、決定打に至らないのもまた事実。ならば、先に自分達が大技を使えば良いのだと判断したのか、ここあはしなもんに自らの身体を差し出した。
「しなもんちゃん、お願い。わたしは、まだ大丈夫だから」
「ごめん、ここあ……。後で、必ず戻してあげるから……」
ここあの腹に貫手を突き刺し、しなもんがその中から血と内臓を取り出して行く。そんなことをすれば、普通の人間であれば確実に即死だ。それでも死なないのは、彼女達がバビロンの獣にしてオブリビオンでもあるからなのだが……当然、ただ内臓を傷つけるだけは終わらない。
「……ゥゥ……オォォォォ!!」
「ググ……ガァァァァァッ!!」
ここあの血と内臓を生贄に、呼び出されたのは合わせて6体の聖餐獣。おぞましき悪夢の化身は爪と牙を振るい立て、一撃の下にティエルを叩き潰さんと襲い掛かって来た。
「うわわ! こ、これはちょっと、危ないかも……」
先程とは打って変わって、今度はティエルが防戦一方になってしまった。
攻撃を避けられないわけではない。だが、下手に突っ込めば、その瞬間に聖餐獣の餌食となる。回避に専念する他にないわけだが、その行動は、しなもんとここあの二人を更に苛立たせることになり。
「このまま、時間をかけるわけにはいかないね」
「うん……。わたしは大丈夫だから……わたしの身体、全部使って」
一気に勝負を決めるべく、ここあは自らの血と内臓を、全てしなもんに差し出した。それは即ち、彼女の肉体を極限まで利用し、その代償に死を選ぶ行為。だが、それでも臆さず、しなもんはここあから内臓を引き摺り出すと、それらを全て生贄として、更なる聖餐獣を召喚する。
「行け! アイツをやっつけろ!!」
しなもんが叫ぶと同時に、全ての聖餐獣が、ティエルを食らうべく襲い掛かって来た。さすがに、これだけの数は捌けない。絶体絶命に思われたティエルだったが……しかし、何故か彼女は余裕の笑みを浮かべており。
「ふふ~ん、ボクにばかり注目していたんじゃないかな? 本命は……こっちだぁぁぁっ!!」
なんと、彼女の背後には、いつの間にか彼女の操る金魚型飛空艇が待機していた。その飛空艇が艦載砲の一斉射撃にて、真下にいるしなもんとここあを攻撃し始めたのだから、堪らない。
「いけいけごーごー! 金魚さん、一斉射撃だー☆」
「くっ……! 獣たち、ここあを守るんだ!!」
迫り来る砲撃の嵐から瀕死のここあを守らせるべく、しなもんは仕方なく聖餐獣を盾にした。雄叫びと共に、獣の身体が弾け跳び、次々と地面に倒れ伏して行く。ここあの血と肉を犠牲に降臨させたはずの獣達は、その全てが満足に力を振るうこともできないまま、血溜まりの中に沈んで行く。
「うんうん、これだけ攻撃したら、かなり追い込んだはずだよね」
爆煙を前に、ティエルは満足そうに頷いた。そんな中、煙が晴れて現れたのは……防御も空しく絶命したここあと、その傍らで辛うじて息をしているしなもんだった。
「ここあ……やっぱり、耐えられなかったんだね。でも、心配要らないよ。直ぐに生き返らせてあげるから」
そう言うが早いか、しなもんは自分のことも顧みず、再びここあを蘇生させた。瞬間、先程までの傷が嘘のように消滅し、ここあが完全な状態で復活する。
蘇生を利用した死に戻り。それが使えるからこそ、彼女達は自分の命も厭わずに、一見して無謀な行動に出ることができた。その結果、こちらの与えたダメージをも消滅させられるのは、確かに厄介といえば厄介だ。
もっとも、二度に渡る戦いにおいて、死に戻りできたのはここあのみ。しなもんの身体には今までの負傷が蓄積し続けており、ティエルの攻撃によって互いの負傷のバランスが更に崩れ、差が開いたことは、この先の戦いで大いに猟兵達を助けることになるのであった。
成功
🔵🔵🔴
鈴乃宮・影華
昔からナイトメアビーストはどいつもこいつも能力がチートで……
まぁ、そのチート共をかつての私達は倒しましたけどね
そして今度も、やってみせましょう
お互いがお互いの為に死ぬ事を恐れない――なるほど美しい愛ですね?
「でも、私も独りじゃないので」
指定UC起動
貴女達は『ふたりでひとり』、つまり蟲達が変身するのも貴女達二人です
さぁ貴女達は誰を、何時狙う、何時死ぬ、何時蘇生させる?
「その全てを、
蟲達は知っています」
貴女達の特攻は、蟲達が防いでくれる
そうして残った貴女達を私が
黒の葬華で斬殺します――お休みなさい、良き
悪夢を
※空腹は『ペルフェクティオ』と『めしや3』でカバー
●かつてと同じく
ナイトメアビースト。それは、かつて銀誓館学園の能力者達が戦った相手の中でも、殊更異質な存在だった。
能力者やゴーストが用いるアビリティとも、抗体ゴーストの使用する特殊能力とも異なる何か。純粋な強さとは別方面のベクトルで厄介な能力を兼ね備え、幾度となく銀誓館学園の能力者達を苦戦させた。
ゲームで喩えるなら間違いなくチート。レベルの高さや技量の高さではなく、世界の理を根本から覆す何かを持っているのが悪夢の獣。そして、その能力が全てユーベルコードであったとすれば……今までの疑問にも合点が行く。
「まぁ、そのチート共をかつての私達は倒しましたけどね。そして今度も、やってみせましょう」
それだけ言って、鈴乃宮・影華(暗がりにて咲く影の華・f35699)はしなもんとここあの二人を前に身構える。銀誓館学園の出身者である影華にとっても、ナイトメアビーストの厄介さは十分に知るところ。しかし、数多の資料に戦いの軌跡が記されているからこそ、かつてと同じ能力であれば、対処法はいくらでも考えつくわけで。
「しなもんちゃん、下がって。あなたは怪我をし過ぎているわ」
「そういうここあこそ、後ろにいてよ。アタシは死んでも、ここあがいれば、直ぐに生き返れるんだからさ」
互いに互いを庇い合う二人。お互いのためなら死をも恐れない姿は、確かに美しい愛情にも思える。
だが、それは影華も同じこと。彼女の中には、彼女に力を貸す黒き蟲の来訪者達が無数に蠢いているのだ。そして、その蟲達は単に敵を食らうだけではない。
「なるほど、美しい愛ですね。でも、私も独りじゃないので……」
その言葉に合わせ、影華の身体から現れる大量の黒燐蟲。いつもであれば、これを使って敵を蹂躙するか、あるいは地形諸共に爆破してしまうのだが、今回は少しばかり勝手が違う。
呼び出された黒燐蟲は瞬く間に集結すると、やがて二つの人影を成して行った。片方はしなもん、片方はここあ……今、影華が対峙しているナイトメアビーストの少女二人と、全く同じ姿へと。
「貴女達は『ふたりでひとり』……つまり、蟲達が変身するのも貴女達二人です」
対象の姿を黒燐蟲に複製させ、元になった存在と同じ手段で攻撃させる。それこそが、影華の繰り出したユーベルコード。しなもんとここあの二人を複製した以上、今の影華はその手の内まで、黒燐蟲を通して全て手に取るように分かるのだ。
「さぁ、貴女達は誰を、何時狙う、何時死ぬ、何時蘇生させる? その全てを、蟲達貴女達は知っています」
来るならいつでも来い。敢えて自分からは仕掛けず、影華はしなもんとここあを誘った。深手を負ったしなもんではなく、余裕のあるここあの方が仕掛けて来ると思ったが、その予想に反して最初に動いたのはしなもんだった。
「しなもんちゃん!?」
「心配しないで! どうせ、アタシはズタボロなんだ。だったら、この命……ここあを守るために使うよ!」
自分の余裕が既にないからこそ、命を捨てることも怖くはない。そう言って、しなもんは影華に決死の特攻を仕掛けて来る。その特攻を迎え撃つのは、黒燐蟲が再現したしなもんの複製体。こちらも怯むことなく特攻を仕掛け……両者は互いに空中で激突し、盛大な爆発と共に吹き飛ばされた。
「……っ! そんな……死にきれなかった!?」
大地に叩きつけられたしなもんが、身体の痛みを堪えながら立ち上がる。互いに同じ技を使ったものの、やはり本家本元の方が地力で上回っていたのか、しなもんはギリギリのところで自分の複製体に打ち勝っていた。
もっとも、今の状況において、それは必ずしも影華の不利には働かない。いや、ともすれば有利に働く流れだろう。どれだけ満身創痍であっても、死んでいない以上、ここあはしなもんを蘇生できない。つまり……今の二人は切り札を封じられ、かつ迂闊にここあが死ねない状況でもあるのだ。
(「さて……問題は、こちらの代償ですね。さすがに薬や食料の摂取だけで、これ以上の持久戦はできそうにありませんね」)
そんな中、影華は起死回生の一撃を放つべく、徐々にここあへと距離を詰めて行く。彼女のユーベルコードは3日分の消費カロリーを代償とするため、体力の消耗もそれに比例して激しい。最悪の場合、この場で動けなくなってしまうか、あるいは身体に重大な障害が出る可能性もあった。ならば、時間をかけている余裕はない。速やかに補給を済ませると、影華は一気にここあへと肉薄し、その身体を魔剣で貫いた。
「きゃぁっ! そ、そんな……」
迸る鮮血。しなもんに続き、ここあも深手を負った今、そう簡単に死に戻りの回復も使えない。互いのバランスが崩れたところを突き崩し、敢えて均等に悪い流れへと導くことで、影華は二人を同時に追い込むことに成功したのだ。
「それ以上、ここあはやらせないよ!」
見兼ねたしなもんが、自分の身も顧みずに再び突撃して来るが、その攻撃を影華は黒燐蟲が作り出したここあの複製体を盾として相殺する。砕け散った蟲が飛散するのに合わせ、影華は静かに踵を返すと、そのまま戦場を後にした。
「……お休みなさい、良き悪夢を」
大成功
🔵🔵🔵
瀬河・苺子
マオ・イェンフー(f36169)と参加
「マオ先輩、行きましょう。イグニッション!」
【心情】
その力に目覚めてしまい、戦うしかなかった相手ですね
せめて眠りについたままであれば良かったのですが……
目覚めた以上は、わたしも大事なものを守るために戦います
【戦闘】
しなもんの自爆のタイミングに合わせてUCを使用
しなもんに集中して行動不能にして、使ってくるUCと復活を防ぐ
ここあに対しては「部位破壊」「鎧砕き」で体力をそぐ
しなもんとここあが同時に倒せるタイミングを「瞬間思考力」で見切り、マオ先輩と合わせて同時撃破
「(倒したら)もう目覚めずに眠ってください。そうすれば、もう誰もあなた達を傷つけませんから」
マオ・イェンフー
瀬河・苺子(f36282)と参加
▼心情
以前の闘いでも心苦しかったが、輪を掛けてやりづれエぜ…
それでも立ち向かう以上甘い事は言えねエ。倒すぜ。
▼戦闘
カードを取り出しイグニッションで「限界突破」
「応!今度も勝つぜ!イグニッション!」
【シルフィード・クローク】で姿を隠して相手を翻弄し連携を乱す手法で対抗
【悪夢を取り出す】中に横から攻撃して妨害したり、連携しようとする二人に姿消し状態で竜巻をぶつけて妨害を徹底
主にここあを攻撃して同時撃破を目指す
相手の攻撃や自爆で苺子と一緒に巻き込まれないように注意して立ち回る
「悪いが俺の仲間はやらせねエ!仲間が大事なのはお前等だけじゃねエからな!」
リリスフィア・スターライト
アドリブ、プリズム以外との共闘可
【星と月】
お嬢様風だけど妖艶な闇人格の
星闇で参加
向こうも二人一緒なら、こっちも二人で挑みますわ
プリズムにはこの人格を見せるのは初めてでしたわね
変幻自在で適した人格に変えながら二人を追い込んで均等に消耗させますわ
焦らずにじっくりとナイトメアビーストを蹴散らしながら
魔剣による接近戦か魔法による遠距離戦を使い分けますわね
どちらか一人が先に死んでしまいそうでしたら
プリズムに知らせて回復してもらいますわね
どちらもあと一息で止めをさせそうならプリズムと
息を合わせて同時に魔剣で止めを刺しますわ
私は魔槌・しなもんを狙いますわ
「また会えましたわね。そしてさようなら」
プリズム・アストランティア
【星と月】
こちらも二人で挑ませてもらうわ
リリスフィアの意外な一面に驚いたわ
それでも息は合わせられそうかしら
月光星夜でしなもんとここあだけでなく
呼び出されたナイトメアビースト達の生命力と魔力を奪っていくわ
しなもんとここあのどちらかが先に死んで復活してしまわないよう
倒れそうな子には奪った生命力を逆に与えるようにして、
程々に回復させるわ
長い戦いになるだろうけど、星闇も協力してくれているし
この世界の者として先に音をあげるわけにはいかないわ
二人同時に止めを刺せそうな状況となったら
星闇とタイミングを合わせるわ
私は雪降・ここあを義帝の剣で止めね
「今度こそさようなら…もう離ればなれにならないでね」
●かつてと同じく
二人で一人のナイトメアビースト。彼女達は、かつて銀誓館学園の能力者達とも戦ったことのある存在。
あの時も、彼女達は最後まで、決して離れようとしなかった。その在り方に問題はあったが、それでも想いだけは純粋だった。
そんな事情を知っているからこそ、銀誓館学園に身を置いた経験のある者からすれば、しなもんやここあは戦い難い相手だ。瀬河・苺子(人間のゾンビハンター・f36282)とマオ・イェンフー(その漢トゥーハンド・f36169)にとっても、それは同じ。力を持ったが故に、人間の敵にならざるを得なかったという境遇に、同情してしまいたくもなるのだが。
「マオ先輩、行きましょう。イグニッション!」
「応! 今度も勝つぜ! イグニッション!」
迷いを振り切るようにして、二人はイグニッションカードを起動させる。詠唱兵器を見に纏い、かつて銀誓館学園の能力者として、数多のゴーストを駆逐して来たのと同じように。
「し、しなもんちゃん……」
「心配しないで、ここあ。誰であろうと、アタシ達の絆を断ち切ることなんて……」
そんな二人と対峙するしなもんとここあだが、明らかに今までと比べても勢いがない。先程までの戦いで、互いに傷を負い過ぎたのだ。どちらか片方が無傷であれば、もう片方を容易に蘇生することで死に戻りが使えたのだが、この状況では下手に片方が死んだ場合、もう片方が確実に蘇生できるとは限らない。
「ここあ……アタシが突破口を開くから、その間に逃げて」
「そんな! しなもんちゃんを置いてなんていけないよ!」
互いに互いを庇い合う二人。果たして、どちらが残り、どちらが逃げるのか。時間のない中で二人が出した結論。それは、少しでも時間を稼いだ上で、二人ともこの場から逃げ出すこと。
「しなもんちゃん、わたしの命を使って……」
「すまない、ここあ。また、夢を貸してもらうよ」
そう言って、ここあの中から悪夢を取り出そうとするしなもん。それを封じるべくマオが動いたが、しかし竜巻で吹き飛ばされたにも関わらず、しなもんは不敵な笑みを浮かべ。
「……っ! 残念だったね。内臓を犠牲にするやつと違って、こっちの技は、アタシがここあに触れてなきゃいけないなんて制約はないよ!」
「なんだと!?」
気付いた時には、ここあの身体から溢れ出した夢魔ナイトメアが、苺子とマオの周囲を取り囲んでいた。咄嗟に背中合わせになって身を守るが、それもどこまで通用するか分からない。
夢魔ナイトメア達の能力は、敵対者の力を奪うこと。迂闊に触れられたが最後、それだけで無力化させられてしまう。多勢に無勢なだけでなく、状況も圧倒的に不利。おまけに、あまり時間を掛け過ぎると、その時点でここあが自動的に死亡し、それをしなもんが蘇生することで、彼女達は死に戻りを果たしてしまうだろう。
「どうする、苺子?」
「ちょっと拙いですね。この状況じゃ、とてもじゃないけど二人の相手をできそうにありません……」
まずは、この夢魔ナイトメアの群れをなんとかしなければ話にならない。マオだけならば、敵の視界から身を隠して脱出もできるだろうが、ここで苺子が無力化されてしまえば、その分だけ敵の同時撃破が難しくなる。
果たして、どのようにこの状況を切り抜けるか。一転して追い込まれた二人であったが、その答えを出すよりも早く、夢魔ナイトメアは一斉に苺子とマオに襲い掛かって来た。
●星と月
迫り来る夢魔ナイトメア。その攻撃を少しでも掠めたが最後、ユーベルコードの効果によって、瞬く間に無力化させられてしまう。
戦場のド真ん中で、神秘の力やユーベルコードを使えなくなった猟兵など、非力な一般人と大差ない。そうなったら最後、間違いなく夢魔ナイトメアに蹂躙され、命を奪われてしまうのがオチだ。
だが、そんな夢魔ナイトメア達の集団を、突如として強力な魔法弾が襲った。それだけでなく、辛うじて逃げ延びた夢魔ナイトメア達も、次々に力を失い倒れて行く。
「油断しましたわねぇ……。お生憎様、こちらの相手もしていただけるかしら?」
いつになく妖艶な雰囲気を纏い、降り立ったのはリリスフィア・スターライト(プリズムジョーカー・f02074)。そんなリリスフィアの言動や行動に違和感を覚えつつも、プリズム・アストランティア(万色の光・f35662)もまた、星辰の力を行使する。
「この夢魔ナイトメア達は、私達に任せて。今なら、しなもんとここあの二人も、力を十分に発揮できないわ」
そう言いながらプリズムが指差せば、果たしてその先にいたしなもんとここあは、先程にも増して動きが鈍くなっていた。
これでは、もはやその辺にいる少女と大差がない。残っているのは、オブリビオン由来のしぶとさだけだ。プリズムの齎す月と星の光。それに触れた者は等しく力を奪われて、生命力も魔力も失ってしまうのだから。
「それにしても……あなたに、そんな人格があったなんて……」
「プリズムには、この人格を見せるのは初めてでしたわね。この人格の時は……
星闇とでも呼んでいただけるかしら?」
未だ驚きを隠せないプリズムに、リリスフィアこと星闇が告げる。人格を変えても、連携は身体が覚えているはず。ならば、それを信じて戦えば、夢魔ナイトメアなど蹴散らすのは容易いはずだと。
「さあ、行きますわよ。準備はよろしくて?」
力を失った夢魔ナイトメア達に尋ね、しかし答えも聞かないまま、星闇が次々と蹴散らして行く。それを見たここあは、慌ててしなもんの傍へと駆け寄ると、今度は自らの身体そのものを差し出した。
「しなもんちゃん、お願い。もう、これしか方法がないの」
「……っ! わ、わかったよ……」
何が何でも猟兵達の手から逃れるべく、しなもんがここあの身体から取り出したもの。それは、ここア自身の血と内臓。ただでさえ先のユーベルコードのタイムリミットが迫る中、リスクの大きなユーベルコードを使用すれば……。
「しなもんちゃん……生きて……」
死にこそしなかったものの、ここあは倒れて動かなくなった。代償に次ぐ代償を重ね、もはや身体が限界寸前なのだろう。
「グ……ォォォォ……」
「ガァァァ……」
そして、血肉を代償に現れるのは、極めて獰猛なる最凶の悪夢。聖餐獣と呼ばれた化け物が、夢魔ナイトメア達に代わり降臨する。
「あら、随分と無茶をするわねぇ、あちらも。このままだと、ここあが先に死にそうかしら?」
「そういうことであれば、お任せください」
聖餐獣の力をも奪いつつ、プリズムがユーベルコードの流れを反転させる。奪った力を与える先。それは他でもない、内臓を奪われたここあであり。
「……え?」
これには他の猟兵達だけでなく、回復させられたここあも面食らっていた。
だが、結果としては、これで良いのだ。安易に命を散らして死に戻りされるくらいなら、ほどほどに生かして蘇生を阻害し、後で纏めて倒せばよい。
「くっ……! なんだか知らないけど、そんなもので、アタシ達が騙せると思うの?」
プリズムの真意が読めないまま、ついに焦れたしなもんが、その身を省みず突貫してきた。
もっとも、それは苺子とマオの二人にとって待ち望んでいた展開だ。一直線に突っ込んで来るしなもんに合わせ、まずはマオが身を挺して苺子を庇い。
「悪いが俺の仲間はやらせねエ! 仲間が大事なのはお前等だけじゃねエからな!」
自分の身体が吹っ飛ばされるのもお構いなしに、しなもんの攻撃を相殺する。その上で、今度は彼と入れ替わりに現れた苺子が、強烈な一撃をお見舞いだ。
「そろそろ、年貢の納め時です。目覚めた以上、容赦はしません」
それは一見して、単に武器を振るっただけにしか見えなかった。だが、強烈なロケット噴射による反動は、しなもんの身体を想像以上に吹き飛ばし、そして動きさえも阻害して。
「な、なんだ、これ……。か、身体が……」
全身が思うように動かなくなったことで、しなもんは初めて、自分の行動の愚かさを理解した。
あそこで自分が飛び出さなければ、こんなことにはならなかったはず。自分が動けない今、ここあを蘇生できる者はいない。そして、ここあの命はユーベルコードの反動で、今直ぐにでも消えようとしているのだから。
「しなもんちゃん……ごめんなさい……。わたしも……限界だから……」
ここで自分が死ぬのは拙いと判断したのか、ここあはついに、夢魔ナイトメア達を呼び出すユーベルコードを解除した。こうなれば、後の障害は聖餐獣のみ。もっとも、それらもまたプリズムの繰り出す光によって力を奪われているため、はっきり言って肉壁程度にしか役に立たず。
「そろそろ終わりにしてさしあげましょう」
「ええ、わかったわ」
動けないしなもんに星闇の魔剣が、内臓を奪われ回復を施されてもなお瀕死のここあに、プリズムの握る義帝の剣が、それぞれ迫る。力の大半を奪われた二人の身体は、もはや限界。満身創痍のところを貫かれれば、バビロンの獣であろうと無事では済まない。
「うぅ……ここ……あ……」
「しなもん……ちゃん……。ずっと……一緒に……」
互いに手を伸ばす二人。しかし、その指先が触れ合おうとした瞬間、彼女達は互いに力尽き動かなくなった。
「また会えましたわね。そしてさようなら」
「今度こそさようなら……もう、離ればなれにならないでね」
勝敗はついたと、そこから先は星闇もプリズムも、何もせずに刃を納めた。見れば、二人の身体は徐々に溶け、最後は霧のように周囲の空気と混ざって消えてしまった。
「もう目覚めずに眠ってください。そうすれば、もう誰もあなた達を傷つけませんから」
願わくは、二度と骸の海から戻って来ないように。そう願い、苺子もまた静かに目を閉じる。深く、暗い闇の底であっても、その中で互いに溶け合ってしまえば、もう二度と離れることもなければ、誰かに傷つけられることもないのだから。
ふたりでひとり。美しくも悲しいユーベルコードの使い手は、かくして二度目の死を与えられ、静かに消滅したのであった。
成功
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