第二次聖杯戦争⑥〜ノー・トレーニング、ノー・サヴァイヴ
●
そいつは遅れてやってくる
「うわあああ! もう嫌だぁああ!!」
「助けてくれぇええ!」
「もう無理よぉおお!」
金沢市西茶屋街に九尾の尾『艱難』が顕現させた、『苦難の迷宮』……その中は、阿鼻叫喚と化していた。
平和な正月休みを堪能していたはずの人々が、老若男女の区別なく、迷宮を彷徨わされている。
彼らを苛む苦難のヴィジョンとは、いったいなんなのか!?
「もう無理! 足攣る!」
「腹筋痛い! 上がんない!」
「もう無理ほんと無理! ヨガってこんなキツいの!?」
おやー急にシリアス濃度下がりましたねーどういうことかなー?
彼らの前に用意されたのは、トレッドミルやウェイトリフティングにエアロバイクなどなど、ジムにありそうな様々なトレーニング器具だ。もちろん水分はいつでも摂れるようになっている! ただの水だけど。
「「「お餅食べたいよぉ
!!」」」
彼らは皆、正月に
罪業を重ねてしまった方々だった……。
●グリモアベース
「まあ、お正月明けってなおさら苦しいし難しいよねえ、こういうの」
クイン・クェンビーは、あははと苦笑していた。
「えっとね、何者かに殺されてオブリビオン化した『艱難』は、本来なら「敵対者に苦難と苦痛のヴィジョン』を流し込んで、生命体の精神を破壊するっていう、恐ろしい能力を持った敵なんだ!
で、その艱難が生み出したヴィジョンの一部が、『苦難の迷宮』となって現実化した、んだけど……」
それが、さきほどの無限運動空間というわけである。コワイ!
「厄介なのは、この『苦難の迷宮』は、どれだけ運動しても絶対に脱出出来ないようになってるとこなんだ。
でも、それは一般人の話。クインたち猟兵なら、『ある方法』で迷宮を突破することができるんだよ!」
と、クインは豪語した。果たしてその方法とは?
「それはずばり……トレーニング器具が過負荷で爆発する勢いで運動しまくることなんだ!!」
なんて?
「え? 何って……だって、コンピュータに負荷が爆発するのは当たり前のこと、だよね……?
野球とかで、1イニング間に128点取っちゃったら、計算機が暴走してドームが爆発するもんね!」
クインは不思議そうに首を傾げている。フィクションの悪影響だ!
「とにかく、みんなの強靭・豪快・強大な運動能力で、迷宮にあるトレーニング器具を爆発させるんだ!
そうすれば苦難の迷宮を突破して、囚われている人を助けることができるから、ミッション完了だよ!」
簡単だよね! と、クイン。見かけによらず、彼は割と脳筋である。
そこで、ある猟兵から質問が挙がった。
「へ? 運動が苦手な猟兵もいるけど、どうすればいい?
正直寝正月で割と太ったから、いきなりの運動は避けたい
……??」
クインは上半身ごと首を傾げた。
「じゃあせっかくの機会だし、これをいいきっかけってことで運動しまくればおっけー! 一石二鳥だね!」
よかったねー! と、クイン。見かけによらず、彼は割と脳筋である。
「さあさあ、さっそく転移開始するよー! え? やだ? うーん無理もうグリモア起動しちゃった!」
天然で無邪気ゆえに残酷な笑顔だった。さあ、運動の時間だ!
唐揚げ
皆さんお餅はどのぐらい食べましたか? コチュジャンです。
ハロウィンの時のネタの焼き直し? そうですが……何か!?
シナリオの話。
プレイングボーナスの条件は『苦難の迷宮をできる限り素早く探索する』です。
そして今回のその「素早く探索」とは、つまり、トレーニング器具がばくはつするぐらいの勢いで運動をしまくることです!
猟兵の素晴らしい運動能力で努力して、未来の美しい星を掴んじゃいましょう!
え? うちのキャラは運動とかしない? 肉体労働が苦手?
じゃあいい機会ですね! ひいこら言いながら運動するプレイングを出すチャンスですよ!
はい、そうです。ほぼネタです。気楽にいきましょう!
第1章 冒険
『巡り巡る世界』
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POW : 空間内で暴れ回っておびき寄せる
SPD : 敢えてスタート地点に戻ってみる
WIZ : 弱ったフリをして誘い出す
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ウインザー・アニマーテ
フハハハハ!
いかに歴戦のエンドブレイカーとはいえ
猟兵としては新兵も良いところで戦争サバイバルにも勝てんわ!
(意訳:経験値欲しいので詳細一切お任せします、連携やアドリブ歓迎です)
断章に噛ませとしてやられる役に使うもよし、特殊能力系UCである天賦の才で初期レベルでも運ゲーでなんとかするもよし、
仲間の🔴数比例UCのために噛ませとして使うもよし!
(大事なキャラ属性『噛ませエリート』なので2回言いました)
エンドブレイカー世界の事は詳しいが、それ以外は知らぬ!
幸いにして騎士爵として余裕のない立場ではない故に、観光系も悪くはないな!
(意訳:歓迎です)
●誇り高きエンドブレイカー、異世界に馳せ参ず!
「……どうしてこうなった」
ウインザー・アニマーテは愕然としていた。
「俺は歴戦のエンドブレイカー、数多の戦いを勝ち抜いた騎士だぞ!?
それが、なんで――なんでこんなトンチキな
迷宮に来ちゃったんだぁあ!?」
ウインザーは天を仰いだ。残念ながらそこには天井しかない。
そして彼の回りにはトレーニングジムにありそうな無数のトレーニング器具があった。つまりここは、運動しないと絶対に出られない迷宮なのだ……!
シルバーレインとやらで戦争が勃発したらしい。それはウインザーとて把握している。それにしても他の世界でも戦争あるんだな、とぼんやり思った。
とはいえ彼が知ってるのはその程度のことで、シルバーレインで起きたかつての戦いや、この世界の詳しい情勢までは把握していなかった。
でも、これだけはわかるということが、ひとつあった。
「こんな迷宮が生まれるような戦争じゃないはずだろ!?」
ごもっともである。けどね、生まれた以上はどうしようもないんだ。
しかも迷宮の奥からは、「お餅食べたい」だの「足上がんない」だの、あきらかにぐうたら好き放題飲み食いして正月過ごしたツケを払わされている、一般人の悲鳴が聞こえてくる。つまりここには人が囚われている!
となれば、歴戦のエンドブレイカー[独自研究][要出典][誰によって?]としては、黙っているわけにはいかない!
たしかそんなノリで、よく確認せずにグリモア猟兵の転移に相乗りした気がする。うん。そんな気がしてきた。
「……フハハハハ! 俺としたことが狼狽してしまったが、なんだ簡単な話だ!
ようは運動をしまくればいいのだろう? その程度、歴戦のエンドブレイカー[誰によって?]にとっては朝飯前だ!」
ウインザーはいい気マント(いい気になると顕現するマント。物理的には存在しないことが多い)をばさりとはためかせ、軽やかにトレッドミルに着地!
「死闘をくぐり抜けたこの俺が、いまさらただの運動器具に負けるなどありえん! 終焉を叩き潰してきた天誓騎士の腕前を見せてやろう!」
そして流れるような噛ませムーブ! これがプロの技だ!
「えーと、ここを押せばいいのか? よし、スイッチ・オンッ!」
ウインザーはカッコよくトレッドミルのスタートボタンを押した! その他のことはよくわからない。なんか数字出てるけどこれもわかんない。でも多分デカいほうが自分に合ってると思ったので、ひたすら数字を大きくした!
数分後。
「ぜー、ぜー、ぜー、ぜー!」
ガーガーガーガー! と、ぶっ壊れかけた洗濯機みてえなやべえ音させながら、コンプレッサーかなんか? みてえな速度でぐるぐる回るトレッドミル。
ウインザーはその上で、死にそうな顔になりながら走っていた。後悔と「こんなはずでは」という疑問が滝の汗となって流れていた。
「お、おか、おかしいだろ! なんだこれは! こんな……こんなの拷問だぞ!? 運動ってレベルではないだろ!!」
ガーガーガーガー! うるせえ黙れとばかりにさらに早まるトレッドミル! でも別に器具に意志はないので、こんな状況になってしまったのはウインザーがよくわからずスピードを最大設定しちゃったせいなんだね。
「ええいオブリビオンめ! この歴戦のエンドブレイカーが負けてぶべーっ!!」
黙って走りゃいいもんを、叫んだせいで呼吸のリズムが乱れ、そのまま前のめりにぶっ倒れた。高速回転するベルトの上にべちゃっと倒れ込み、そのままトレッドミルから排出される。ウインザー、敗北!
「……って終われるかぁああ!!」
ウインザー、復活! 噛ませエリートは負けただけでは終わらない! 敗北した程度では折れないからこその噛ませなのだ! でも学習はしろ!
「うおおおお! エンドブレイカーを嘗めるなァアア!!」
トレッドミルに飛び乗り、走る走る走る! トレッドミルは加速加速加速! なぜさらに加速を!? つまりそれは、最大速度を突破する状態……ようはぶっ壊れかけていたのだ! あと一歩だ!
「うおおおお! これも人々のためだ!」
もはや両足が見えなくなるほどの速度で走るウインザー。体力は人一倍な彼の脚力は、トレッドミルの暴走に追従する! そして……!
ピーガー! トレッドミルが異音を放つ! ディスプレイ部分がスパーク!
「エラーエラーエラー。速度計測不能」
現在速度の部分がエラーを示す「8888」の表示に変わる。ウインザーは哄笑した!
「フハハハハ! 見たか異世界の機械め! この歴戦のエンドブレイカーに歯向かうからこんなことに」
「ピガー。エラー発生。過負荷により爆発します」
「えっ!? おい待てこの世界の機械ってそんな危険ギャー!!」
KA-BOOOOM!! トレッドミル爆発! ふっとばされるウインザー! だがこれで目的は達成できているのだ!
「おかしいだろこの世界いいいい」
迷宮に開いた風穴の向こうから木霊する断末魔。噛ませエリートウインザー、どうか永遠に……(死んではいない)
大成功
🔵🔵🔵
フェリデル・ナイトホーク
郵便配達は身体が資本ですので、勿論運動には自信あります!
が、流石に時速100kmオーバーで24時間耐久マラソンしろと言われると無理です!
…そこまでは要求されませんよね?
ともあれ運動ですね!
ルームランナーでひたすら走ってマシンをばくはしましょう!
いつもの靴(OstrichFeet)で走れば足も軽いものです!
…ルームランナーってなんかコンセプトが怖いですよね。終わりが無いというかなんというか。
いえ終わりはあるはずですけど。
…しかし流石に段々疲れてきますね。
ですが、お手紙を待ってる人がこの向こうにいるとイメージすれば【根性】も奮い起こされるというもの!
もう少し頑張りましょう!
(と叫んでUC発動)
●その胸は豊満だった(もうタイトルに書いておくライフハック)
ルームランナー。それはいわば、泳ぎ続けるマグロのようなものだ。
マグロは泳ぎ始めたら、死ぬまで止まれない。止まりたいと思っても止まれはしない。終わるのは死ぬときだけ。なんたるサツバツだろうか。
「うっ、なぜかわからないですがイルカの幻影が……!」
フェリデル・ナイトホークは頭を抱えた。存在しないはずのワイヤフレームめいたイルカのヴィジョンが視界に浮かんだような気がしなくもないという錯覚を得た気分が去来した感じがしたのである。実際はそんなことはない。
「いけません、苦しんでいる人たちを救うために、急いで突破しないと! そう、電撃的に……英語で言うとサンダーボルトなスピードで!」
フェリデルはぐっと拳を握りしめ、ルームランナーに戦いを挑んだ。
その傍にはなぜかドクロめいた模様の描かれた月の絵が飾られていて、フェリデルに向かって「インガオホー」と嘲笑っているように思えた。あとその胸は豊満だった。
……数分後!
「早い! 速くないですかこれ!?」
フェリデルは甘く見ていたことを後悔した。このルームランナー、(制限速度が高すぎるという意味での落とし穴が)深いッ!
「ま、まさかこれ、本当に時速100kmオーバーで走らされることに!? そんなことになったら、機械より先にわたしのほうがばくはつしちゃいます!」
最悪の事態を予想し、フェリデルは焦った。傍に飾られたドクロめいた模様の描かれた月の絵が、フェリデルに「インガオホー」と囁く。
「ですが、わたしはマグロでもイルカでもありません! そうです、この先にお手紙を待っている人たちがいるんだ……負けられないっ!」
フェリデルは
根性を振り絞り、走った。もはやペース配分なんてものは考えていられない、
根性だ、
根性あるのみ!
するとフェリデルを嘲笑うように、ルームランナーはさらに加速した。だがそれはあちらにとっても限界が近いことを意味している。
ディスプレイ上では、なぜかウサギとカエルの水墨画がスピードを告げてくれているのだが、その文字が一部文字化けを起こしていた! ばくはつ寸前なのだ!
「くっ、さ、さすがに体力が……でも、まだです! わたしたちは――負けないんだからっ!!」
フェリデルは
根性を振り絞った。それはある種の
叫びであり、彼女に残された
根性を引き出す。
ノー・トレーニング、ノー・サヴァイヴ。手綱を握るのはわたし自身。そして運動にもっとも重要なのは……! 光の羽根の嵐のなかで、フェリデルは目を見開いた!
「スゥーッ! ハァーッ! スゥーッ! ハァーッ!」
呼吸だ! 呼吸である! 呼吸を鍛えれば筋肉も鍛えられるとどこかのマンガに書いてあった! 太陽のエネルギーを汲み上げることも可能! フェリデルは星のエアライダーだけど! まあその星も白金色なんだろ多分!
「ランニング、レター、そしてランニング……!」
フェリデルはある種のゼンめいた境地に至った。そして彼女だけが暗闇に浮かび上がる。このままどこまでも飛べる。彼女はそう思った。
近くの壁に掛けられたドクロ模様の描かれた月が、フェリデルに「インガオホー」とKA-BOOOM!! KRA-TOOOOM!! DOOOOOOOOOOOOOOM!!
「やった! わたしの勝ちです!」
フェリデルはばくはつ寸前に素早くルームランナーを蹴り、巻き込まれないようにムーンサルトをした。そして爆発地点に生まれた亀裂へ落ちていく。
「皆さん、待っててくださいね! 希望のお手紙を、いま届けにいきますよ!」
光り輝く羽根とともに、乙女が舞う。彼女はマグロでもイルカでもなく、そしてもちろんニンジャでもなく、平和を意味する白き鳩だった。
大成功
🔵🔵🔵
秋山・軍犬
超人プロレスのリング(ドン!)
デビル超人 ダンベルマン(ドン!)
軍犬「なにコレ?」
ジョン「デビキンとアスリートアースで購入した
トレーニング器具」
■ダンベルマン
デビキンのキング屋デパートで購入?
してきたトレーニング器具?
体重変化の能力を使いこなし
自身の超重量を活かした、必殺ダンベルドロップや
ダンベル大雪山落としを繰り出してくるぞ!
なお爆発しても、しれっと復活するんで
良心も痛まないぞ! 常識?整合性?
そんな物デビキンに求めるな!デビキン理論だ!
ナンシー「という訳で、始まりました
超人プロレスinシルバーレイン!」
ダンベルマン「ダーダダダッ!」
果たして、軍犬はこの強敵に勝てるのか!?
●リングにサンダー走る時!
超人プロレスのリング ドン!
デビル超人ダンベルマン ドン!
……デビル超人ダンベルマンとは??
「なにコレ?」
秋山・軍犬も同じ疑問を抱いていた。
「HAHAHA! いい質問だね! これはデビルキングワールドとアスリートアースで購入した、グレイテストなトレーニングマシーンさ!」
「ワオ! なんだかわくわくしてきちゃう! 速く使ってみたいわ!」
80年代の海外通販みてえなうさんくせえノリで、胡乱なアイテムを紹介するジョン&ナンシー。軍犬はジト目になった。
「……いや超人はトレーニング器具じゃなくないっすか!!?」
ごもっともである。
だが、そこはそれ、あのデビルキングワールド生まれのアイテムだ。
「ダーダダダッ!(笑い声)このダンベルマン様の体重変化プロレスを見せてやるぜ~ッ」
そこはかとなく茹でたエッグって感じのキャラ付けで、トレーニングを楽しくしてくれるぞ!
「ええ……」
軍犬はオブリビオンじゃねえのこれと思いつつ、リングに上がった。
「というわけで始まりました、超人プロレス in シルバーレイン!」
「解説を務めるのは、俺たちジョン&ナンシーだ! 今日のマッチは見ものだぜ!」
なぜか実況解説席にはあのうさんくせえふたりが座っていた。
「ダーダダダ~ッ! デビル超人でもない輩がリングに立つんじゃねぇ~!」
ダンベルマンが仕掛けた! 高くジャンプして軍犬の頭上に位置すると、自分の体重をものすごく重くし、強烈なボディプレスを仕掛けるのだ!
「ダダ~ッ! これぞ必殺ダンベルドロップよォ~!」
「で、出たーっ! ダンベルマン必殺のダンベルドロップだーッ!」
「ダンベルドロップで相手を押しつぶし、さらにダンベル大雪山落としで容赦なく破壊する残虐ファイトがダンベルマンの持ち味ね!」
「トレーニングに出す超人じゃねーっすよねそれ!? まあいいやトアーッ!」
軍犬はツッコミを入れつつ、ジャンプした! 自殺行為だ!
「ダダダーッ! 自ら死にに来るとはバカな奴め~!」
「そいつはどうっすかね!」
「な、何ーッ!?」
空中で組み合った瞬間、軍犬がダンベルマンの直上を取っている!
「そ、そうかーッ! たとえ人体を破壊するほどの超重量でも、落下中の重量は実質0! 激突する前にホールドして、先にダンベルマンを落としてしまえばいいのかーッ!」
ジョンは快哉を上げた! 冷静に考えると別に空中にあろうが重量がなくなるわけはないのだが、今この瞬間だけはそういう物理法則が発動している! 何故なら……茹でた卵は美味しいから!
「ダダダーッ! こ、こんなバカな……ウギャーッ!!」
リングに激突したダンベルマンは、自らの重量をそのまま喰らってしまう! 軍犬が背中に乗っているのでダメージはさらに12倍だ!(謎計算)
ダンベルマンは盛大に爆発した。なお、そのうちしれっと元通りになって出てくるので問題ない。超人は理屈ではないのだ。
「……これ、爆発は爆発でも迷宮と一切関係なくないっすか!?」
軍犬はいいところに気付いたが、ゴングと歓声が響くリングでは、誰も聞いていなかった。狂気!
大成功
🔵🔵🔵
スミス・ガランティア
いや、その、我、魔法使い系ジョブに運動能力は必要ないと思うんだよね……だから運動できなくても仕方ないと思うんだ別に我が怠け者というわけでは
だからやめろー! 適材適所という言葉を知らんのかァー!!(威厳もへったくれもない抵抗をするかみさま(だが無情。現場に転移される
……まあ、ここで苦痛の迷宮に囚われている人の子達を思えば……ぐっ……
とりあえずここにある機械を使えば良いのか……(ふと目に止まるサイクリングマシーン
座ってやれるならまだ大丈夫sいやこれそんなゆったり出来るやつでは無いな結構足に……来る……うおおおおお
……?!(ひいこら
不思議だな……体温がないはずの我が……あせでびっしょり……(ぐてー
●神だろうが魔法使いだろうが運動は必要です
スミス・ガランティアは頭を抱えていた。
「何故だ……あんなに論理的に説得しようとしたのに……」
どうやら、半ば無理やり転送されたことに異議があるらしい。
では、彼の言う「説得」がどんなものだったのか、実際に見てみよう!
『いや、その、我はどちらかというと魔法使いというか、後衛タイプでね?
そういう戦い方に、運動能力は必要ないと思うんだよね……。
だから運動できなくても仕方ないと思うんだ別に我が怠け者というわけでは(早口)
……おい? おい待て! そんな強引な転送の仕方あるか!?
だからやめろー! 適材適所という言葉を知らんのかァーッ!!(実際は言葉を、のあたりで転移されている)』
……威厳もへったくれも、神としての格も、論理性も皆無だった。
「うぐぐ……ま、まあ人々が囚われているのは事実なんだし、彼らのことを思えば……」
スミスは気を取り直して立ち上がった。猟兵の仕事として意義があるのは確かだ。
が、そんな彼を嘲笑うかのように、迷宮のはるか彼方から聞こえてきた囚われの人々の声はというと、
「お雑煮もっと食べたいよ~!」
「伊達巻! 伊達巻!」
「寿司がいいです! あっサーモン多めで!」
……こんな感じだった。
「これ本当に助ける必要あるのか?」
言ってはならないことを思わず呟いてしまうスミス。それ以上いけない!
とまあこのように、およそ運動という概念を自主的に行ったためしがないスミス。トレーニング器具と言われても、まず使い方がわからないものすらあった。
「なんだあれは、わからん……ん? あれはわかるぞ」
スミスが目に留めたのは、ごく普通のサイクリングマシーンだ。
「座ってやれるならまだ大丈夫だな、よし!」
スミスはウキウキとエアロバイクに跨がり、スイッチを入れる。どうやら、使用者の運動状態に合わせて、ペダルの重さを調節してくれる便利機能があるようだ。
「……」
スミスは無言で、負荷を最低に設定した。そして漕ぎ始める。
「おお、なんだこのぐらいなら全然楽じゃないか。いやー案外なんとか」
最初こそ余裕ぶっていたスミスだが、ほどなくして表情が切羽詰まってくる。早くない?
「……いやこれそんなゆったり出来るやつではないな!? えっこれ最低負荷だよな……?」
ピッピッ。よくわからないのであちこちいじっていたら、「チャレンジモード」とやらが起動した。だんだん負荷が上がっていくらしい。
「おい!? い、いや待て、そうだ、爆発させればいいんだ! とにかく漕ぎまくって、負荷がヤバいことになる前に爆発させれば!」
スミスは閃き、一気にガシャガシャと全力でペダルを漕いだ。
が、これがよくなかった!
「うおおおお足に! 足に来る! うおおおお!?」
運動でもっとも重要なのは、ペース配分だ。有酸素運動は、長く続ければ続けるほど効果がある。そして当然、体力を消費すればするだけキツくなる。
自分のスタミナも考慮せず全力漕ぎしてしまったスミスは、すぐにバテてしまった。結果として、じわじわと高まる負荷に苦しめられる!
「なんで……なんで我が……こんな……おおおおお……」
足つぼマッサージ喰らってる人みたいな声が出ていた。それでも頑張りはする、猟兵としての責任感の強いスミス。
パンパンの太ももに活を入れ、漕ぐ。漕ぐ、漕ぐ……KA-BOOM!!
「ウワーッ!?」
いきなりエアロバイクが爆発し、すてーんと仰向けにふっとばされるスミス。彼は人々を助けに行くため立ち上が……ろうとしたが、ばたりと倒れた。
「ふ、不思議、だな……体温の、ぜぇ……ないはずの、我が……ぜぇ……あせでびっしょり……ぐふぅ」
大の字のままぐてって動けない。彼はその後数日、両足の筋肉痛に苦しめられたという。
大成功
🔵🔵🔵
穂村・理恵
うぅ……おもちがおいしくて……
ダメですダメです、ヒーローとして、女子学生としてもこのままじゃダメです……!穂村理恵、人助けの為にも頑張って運動します……!
装束を少し身軽な感じに変えてひたすら運動します!
これでもヒーロー見習いとして少しは運動だってこなしてきてるんですから
…最近は学業優先だったから減ってましたけど……
(数分後)
……こ、ここまでキツいなんて……
でも、此処で倒れる訳には……そうだ、フレイムにゃんこに応援してもらおう……!
(主の危機に現れたのは癒し系の顔と筋肉レスラーボディなフレイムにゃんこ。ポージング後トレーニング機器へ果敢に挑む!)
「にゃーん!(低音)」
……え?え?
※オチはお任せ
●さあ、お前の
罪を数えろ
お餅。
それは、とっても美味しい日本の伝統料理。
お餅。
それは、お米で出来た白い悪魔。
お餅。
それは――カロリーと糖質の化け物。
「うぅ……」
穂村・理恵は転移しても、しばらくぐったりして動けなかった。
別に迷宮にそういう特性があるとか、理恵の体調が悪いとかではない。むしろ体調はいい。そりゃそうだ、戦争やってるとはいえお正月休みあったんだし。そんで、お正月休みの間……美味しいもん食べまくってたんだから!!!
「おもち……おもちはどうしてあんなに美味しいんでしょう……」
理恵は顔を覆った。よく見ると、理恵の足元には、あの真実を映し出す鏡があった。どんな人間でも近づくことを躊躇う悪魔の機械――体重計だ。
転移した場所が悪かった。理恵は偶然にも体重計の上に着地してしまい、そして目の当たりにしたのである。自分の
罪の重さを。
「……ダメです」
理恵は、意を決して顔を上げた。
「ダメですダメです、このままじゃヒーローとして……ううん、女学生としてもダメです! あんな数字知られたら……わああああ……」
理恵は絶望的な未来に頭を抱えたくなったが、ヒーロー見習いとしての強い心で自分を奮い立たせた。そうだ、ここから痩せればいいんだ!
というわけで、さっそく運動しやすい身軽なコスチュームに着替えた理恵。
「これも人助けのため。そしてヒーローとしてもっと立派になるため……」
トレーニング器具の前で、精神統一。
「穂村理恵、頑張って――運動します!」
それは自分に対しての宣誓だった。言葉にしないと、なんだかんだ理由づけてサボりそうだったからだ。誰の心にも
奴は存在している。
とかなんとか言ってるけど、実は理恵は心のなかでちょーっとだけ、ほんのちょっぴりだけナメてかかっていた。
(「まあそうは言っても、ヒーロー見習いとして少しは運動だってこなしてるんだし。いきなりバテるなんてこと、ないよね!」)
最近は学業を優先していたから全然出動していなかったとか、そういう都合の悪いことは忘れる。人間は忘れて前に進む生き物だからね。
「……行きます!」
理恵はトレッドミルに乗った! 強気にも設定スピードは相当早めだ! ガコンガコンとベルトが動き始めると、理恵はピンと背筋を伸ばしたとてもよいランニングフォームになり、リズムよく走り始めた……!
で、数分後。
「……こ、ここまで、き、キツい……なんて……!」
残念ながら、現実は非情だった。運動には無酸素運動と有酸素運動の二種類が存在し、瞬発的な動きはおおよそ無酸素運動に分類される。
たしかにヒーローとしてヴィランと戦うのは、ハードな運動だ。
しかし、戦闘中はなんだかんだバイオモンスターとしての怪力とか、あとユーベルコードで召喚した火の精霊獣とかが助けてくれるし、こういうスタミナを要求される一定ペースの運動とは色々勝手が違ったのである。
ていうかまあそもそもブランクがあった! 認めざるを得ない! 理恵は鈍っていた!!
「で、でも……此処、でっ、倒れる……わけ、には……っ!」
そこで理恵は閃いた。そうだ、ユーベルコードを使えばいいんだ!
「お願いフレイムにゃんこ……手を、貸して……!」
息も絶え絶えに、頼れる相棒を呼ぶ。光が生まれた!
「やった、来てくれたのねフレイムにゃんこ! さあ、私を応援して!」
「にゃーん(低音)」
「え?」
「にゃーん(バリ低音)」
「え???」
理恵はぽかんとして、フレイムにゃんこを二度見した。顔は癒し系のにゃんこなのに、首から下はテッカテカでバッキバキの筋肉レスラー怪人を。いやちげえフレイムにゃんこを。あまりに予想外すぎて普通にトレッドミルから脱落しそうになった。
「誰!? 誰なの!? どちらさま!!?」
「にゃーん!(ポージング)」
「誰ーッ!? あーっ!」
ツッコミしてたらやっぱりトレッドミルからずっこけ脱落! が、フレイムにゃんこ(Ver.
Ma)は理恵を優しく紳士的にキャッチすると、無駄にスタイリッシュな動きでトレッドミルに着地! そして猛スピードで走る走る走る!
「にゃあああああああん!!(超低音)」
「にゃ、にゃんこ!? フレイムにゃんこなの!? まさか、私の代わりに
……!?」
「にゃああああああん!!(洋画吹き替えみたいな低音)」
もはやフレイムにゃんこの手足は、あまりのスピードにブレて見えない! するとトレッドミルのスピード表示がバグり……ピガガガー! KA-BOOOM!
「フレイムにゃんこーっ!!」
「にゃーん……(低音)」
フレイムにゃんこは爆炎に呑まれていった。理恵が最後に見たのは、こちらを振り返りサムズアップする癒し系スマイルだった。
「そんな……フレイムにゃんこ……」
理恵は呆然と、メラメラ燃える爆発後を眺めていることしかできない。
やがて、爆煙が晴れた。
「にゃーん!(低音)(ダブルバイセップス)」
「って生きてるーッ!?」
それどころか無傷だった。すげえぜ、フレイムにゃんこ! ところでこいつ誰だよ!!
大成功
🔵🔵🔵
大倉・新月
ウインザーくん(後輩…?)、あなたの勇士は忘れない…!
(死んではいない)
さて、私はまったりお茶でも飲みながら満月ちゃんに走ってもらっ…
あれ、そっちは操作盤よ?
え、骨だと何も生まれないし減らないし骨折のリスクがあるだけなので走るのは…私…!?
「死がふたりを分かつまで」まで発動した…!?
ああー!
待って待って私ソフトボール大会ではベンチに入りたい勢だったのに
こんな高負荷な運動…ぜぇぜぇ…
(赤い糸をクイッとして「涅槃が見えても大丈夫👍」みたいなサムズアップをする満月)
(限界を超えようとしてる新月)
この戦いがおわ…おわったら…
金沢を普通に観光、するの…
…ハネムーンみたいだねぇ…(走馬灯みたいなやつ)
●使役ゴーストが運動してもカロリーは落ちない(骨だし)
時系列的には、ウインザーが穴の中に落ちていった直後に遡る。
「……なんだか、悲痛な叫び声が聞こえたような」
遅れて転移してきた大倉・新月は、爆発で生じた穴が瞬時に修復されていくのを目の当たりにした。
「あなたの勇姿は忘れない……!」
新月は敬礼した。なお、ウインザーは別に死んではいない。
それはそれとして、穴を生み出しても、どうやらすぐにもとに戻ってしまうようだ。なので、新月も運動をしないといけないのである。
「さて、それじゃあ満月ちゃん。あとお願いね」
が、新月はサボるつもり満々だ、 こいつ使役ゴーストにやらせるつもりでいやがる!
持ってきた水筒からこぽこぽと暖かいお茶を注ぎ、休憩用のチェアに腰掛けて観戦モードだ。微笑ましい絵面だが、この迷宮では許されない!
「…………」
スカルロードの『満月』は新月のほうをじーっと見ていたが、どうやらマジで動くつもりがないらしいということを察すると、無言で操作盤をポチポチといじり始める。
「……あれ、満月ちゃん? そっちは操作盤よ?」
満月はスルー。ぽちぽち。すると、新月の座っていたチェアがハイテク機構で床に収納され、代わりに大型トレッドミルがせり出してきた!
「あいたぁ!? 何このシステム!?」
お尻をさすりながら立ち上がる新月。そこで気がつく――なんかソフトな鉄格子みたいなやつが下からせり出してきて、出られなくなってる!
「待って!? 満月ちゃん、もとに戻して!」
ぽちぽち。満月は聞いていない!
だが、新月はスカルロードの花嫁なので、満月の言いたいことがわかった。なんかこう、分かるんだと思う。手相みたいに骨相とかあるんだろう。多分。
「え、骨だと何も生まれないし減りもしない? そもそも骨折のリスクがある?
いやでも骨は筋肉で出来て……関係ない?? だから走るのは……私!!?」
ぽちり。満月は「スタートザマシーン」と書かれたボタンを押し、勝手にユーベルコードを発動した。満月と新月の間に、一本の赤い糸が生まれる。
「満月ちゃん!? わたしが死ぬこと前提なの!? 満月ちゃん!!?」
満月はグッとサムズアップした。なんのエールにもなってねえ!
「ああー! 待って待って私ソフトボール大会ではベンチに入りたい勢だったのにああああー!」
新月の足元のベルトが動き始める! 新月、倒れないためにやむを得ず走ることを余儀なくされる!
そうして地獄が始まった……!
5分後。
「ぜぇ、ぜぇ……!」
新月は死にそうな顔になっていた。でも赤い糸が結ばれてるから、ユーベルコードのおかげで死ぬことはないんだ。やったぜ!
「こ、こんな……せめて、ぜぇ……ウォーミングアップから……」
満月はふるふると首を振り、操作盤にくっついたスピード表示計を指差す。
「え? これが最低負荷? 老人向け??? そんなバカな
……!?」
新月は愕然とした。たしかに自主的に運動してるかっつーとまったくしてねえけど、よもやそこまで体力が落ちていたとは思わなかったのだ。
大倉・新月、31歳。とうの立った女である。体力というのは割と本当に簡単に下がっていくということを、彼女は身を以て痛感した……。
さらに5分後。
「ひい、ひい……ぜえ、ぜえ……」
新月は頑張って走っていた。なお、負荷はほとんど上がっていない。
「こ、この戦いが……おわ、終わったら……」
朦朧としているのか、急に死亡フラグを立て始めた。負荷は上がっていない。
「金沢を……普通に観光、するの……ふふ、楽しみね満月ちゃん……」
新月の目からハイライトが消えていた。もともとないが。あと、ヤンデレみたいな表情に見えるが、ただ単にぼんやりするぐらいバテてるだけだ。
「……ハネムーンみたいだねぇ……ふふ、うふふふ……」
言ってることもヤンデレみたいだが、単にバテて走馬灯を見ているだけだった。なお、負荷はやっぱり大して上がっていなかった。
大成功
🔵🔵🔵
有栖川・夏介
※アドリブ歓迎
運動するだけでいいとは、なんだか拍子抜けですね。
では、さっさと運動してぶっ壊してしまいましょうか。
(見た目に反してわりと脳筋)
ベンチプレスに挑戦します。
こういった器具で鍛えるのは初めてなので、何kgで挑戦するのがいいのか迷いますね。
とりあえず軽めに設定して、徐々に重くしていきます。
ん、40は軽すぎるな。
60…80…100……。
なんだろう、まだ物足りないような……?
(見た目に反してわりと【怪力】)
ひたすら無心でバーベルを上げ下げ。
そういえば、この器具が爆発したら私どうなるんでしょう?
危険を察知したらバーを投げて脱出。
重くて投げられない?【怪力】なのでなんとかなります。なんとかなれ。
●キックしてバックする
なんでも、運動するだけで突破できるらしい。とっても簡単な任務だ。
一部の猟兵は崩れ落ちたり喚いたり絶望していたが、有栖川・夏介にはあまりピンとこなかった。なぜなら、彼は割と脳筋だからである。
「なんだか拍子抜けですね……まあ、厄介なのよりはマシですが。
さっさと運動してぶっ壊してしまいましょう。ちょうどいい機会です」
夏介はトレーニング器具の山を見渡す。
トレッドミル。別に体脂肪を落としたいわけではないのでパス。
エアロバイク。時間がかかりそうなのでこれもパス。
「ベンチプレスもあるんですね。じゃあこれにしますか」
夏介はストレッチもそこそこに、台の上に寝転んだ。
しかし夏介は、体力に自信はあったが、この手の近代的トレーニングは未体験だった。
「なるほど、この状態で上げ下げすればいいんですね。たしかにこれなら、楽に運動できますね。あの人たちは、なぜ嘆いていたんでしょうか……?」
グリモア猟兵に食ってかかったり、「お餅がお餅が」と呪文みたいにブツブツ言っていた猟兵たちの姿が頭をよぎる。なんだったんだろうあれは。
「まずは軽めに……うーん」
夏介は試しに腕を上げ下げして、首を傾げると台から身を起こした。
バーベルの仕組みをためつすがめつ確認し、近くにあった
重りをガコンと装着した。いきなり20キロアップ!
「これなら少しは張り合いもあるでしょうか」
夏介はもう一度横になり、あっさり持ち上げて……また首を傾げる。
「……物足りない」
試しにさらにプレートを追加。上げる。降ろす。起き上がる。
「初心者用の器具なんでしょうか? もっとたくさん着けてみましょう」
ガコンガコンガコン。夏介は正気とは思えない枚数のプレートを追加する。
彼はただの脳筋ではなかった。怪力を併せ持つ脳筋だったのだ……!
そして、ようやく筋肉に効いてそうないい感じの負荷を見つけた夏介。
バーベルシャフトの両側には、オリンピック選手もかくやの枚数のプレートがはめこまれている。
「……ふっ」
それを平然とした顔で上げ下げしているのだ。もしも重量挙げのスカウトがこの光景を見たら、泡を食って夏介をスカウトするだろう。
夏介は無心で上げ下げする。だんだん筋肉が慣れてきて負荷が軽くなって(きたように感じて)くると、上げ下げするスピードを速める。ガコンガコンガコン! コワイ! 彼は筋肉の神なのか!?
「これはいいですね。腕の筋肉が鍛えられているのが感じられ……!」
夏介は危険を感じた。どういう原理かわからないが、バーベルシャフト自体が爆発しようとしている! デジタル器具でもないのに何故!? 迷宮だからだ!
「――ッ!」
夏介は……な、投げた! バーベルシャフトを! 殺人的重量が空中に舞い上がり……KA-BOOOM!!
「……なるほど、こうやってさらに負荷を高めるんですね。トレーニング器具は合理的で悪くないですね」
なんだか致命的な誤解をしている気がする。彼は一般人のいるトレーニングジムには通ってはいけなさそうだ。
大成功
🔵🔵🔵
ベロニカ・サインボード
私自身の身体能力は、猟兵の中では低い方だと思ってる(チンピラ程度なら問題なくノせるという自負はあるけどね)
だからワーニン・フォレストに騎乗し、全力で走り続けるわ
騎乗はイカサマだと思う?だったらジョッキーを見てみるといいわ
時速60kmで走る生物に綱と足の筋力でしがみつき、その上でバランスをとるアスリートに相応しい体格をしてるでしょ?
ちなみにワーニン・フォレストは本気出すと…時速500kmを超えるわ
それにワーニン・フォレストはスタ…フォースオーラだから痩せないけど、能力の使い方という点で訓練になるはず(きっと…)
いずれにせよ、私は止まらない
希望を失おうとしている誰かに、手を差し伸べるためならば…!
●鋼鉄のボールでランする
競馬・競輪・競艇……一般的にはギャンブルのひとつとしか思われていないが、その実、こうしたスポーツは非常に過酷なトレーニングを要する。
まず前提として、ウェイトの問題だ。どの競技も騎乗してスピードを競うことになるので、乗り手は軽ければ軽いほどいい。
かといって、ただ体重を落とせばいいというわけではない。フェザー級ボクサーがそうであるように、競技者たちは皆、強靭なフィジカルを兼ね備えているのだ。
その中でもジョッキーに求められるのは、他の器械競技とまた異なる。
馬という生物を御すのは、文字通りの大仕事だ。両足の筋力で背にしがみつき、荒ぶる手綱を強く握りしめる。もちろんバランス感覚も重要。
わずかな体重移動が馬の方向を決めるし、振り落とされないまま1キロ以上を駆け抜けるには常人ではとても務まらない。
まさしく、アスリートである。人も馬も、どちらも強くあらねば、勝利の栄光を掴むことは出来ないのだ。
「……というわけで、ワーニン・フォレスト。私とアンタで駆け抜けるわよ」
迷宮の中に何故か存在していた楕円形コースのターフの上、ベロニカ・サインボードは相棒を見上げた。
ワーニン・フォレストは後ろに立つモノという名前で呼ばれたりするわけでない、ごくごく普通(?)で様々な意味でなんら問題のない
(???)フォースオーラなので、四足になって走ることも出来る。別に時を加速させたりはしない。
「まあ、アンタは痩せたりしないけどね。けれどこういうのも、能力の使い方の『訓練』としては悪くないでしょ」
そこらのチンピラなら軽くノせると豪語するベロニカだが、体力に自信があるかというと、他の猟兵と比べた場合は正直不安があった。
だから自分で運動するよりは、ワーニン・フォレストと共同で挑んだほうが効率的だと判断したのである。そして、時速500kmで走るワーニン・フォレストを全身で制御するのは、いくらスタ……じゃなくて幽波……でもなくてフォースオーラとはいえ、楽なことではない。
「行くわよッ! ワーニン・フォレストッ!」
ベロニカは相棒の背に飛び乗る。ひとりでにスタートフラッグが上がった瞬間、ひとりと一体は疾風となった!
「冗談キツいわ……アンタもノッてるわね、ワーニン・フォレストッ!」
いつもよりもトップスピードへの到達が速い。そのぶん制御は困難を要するが、ベロニカは上等だとばかりにタフなスマイルを浮かべた。
「私は止まらない……希望を失おうとしている誰かに、手を差し伸べるためならばッ!」
もしもコースを見物している人がいたら、楕円形のターフを色のある風がぐるぐると渦巻いているような錯覚を得ただろう。
ワーニン・フォレストの最高速度は、それほどまでに速い。風が毛並みを撫でる。ベロニカは手綱をけして緩めない、すべては人々のための――!
「もうやだぁ~、お餅食べたいよ~」
「海苔巻いて醤油つけて食べるのいいよね!」
「私はバターを中に入れて焼いて食べるの好き!」
「…………ワーニン・フォレスト、スピードダウンしちゃダメよ。わかるけど。わかるけどダメよ!」
肝心の救うべき皆さんがあまりにもアレなのでちょっと精神力が萎えかけたが、スピードチェッカーが爆発するまでなんとかペースを維持するベロニカだった。
大成功
🔵🔵🔵
鈴鹿・小春
艱難…なんておそろしいのうりょく…!
運動能力自体は自信あるけど…持久力…(自信なさげ)
でも頑張るしかないか。健康の為にも!
…え、正月太りじゃないか?元々この体型だよ!
剣の素振りとか水泳系の機器はなさそうかなー…ならエアロバイクで。
腿がきついけどぶっ壊す勢いで頑張るよ!
膝が壊れる前に機械を壊す位のテンションで!
全力全開、クルースニクとしての根性で限界超える…!あ、倒れちゃあれだから水は適宜補充ね。
もう足上がらない限界…いやまだやれる。周りで頑張ってる人いるし早く脱落するのはこう、プライド的に?
絞り尽くす気合で力込めて機器ぶっ壊すよ!
…頑張ったけど減った気はしないかなー。
※アドリブ絡み等お任せ
●苦難(ごく一部の人にとって)
艱難。大陸妖狐の首魁、金毛九尾の『尾』がひとつ――だったモノ。
何者かに殺された艱難は、オブリビオンと化し、大陸妖狐の軛を逃れた。もとより奴は生命根絶を願う、この世界の『正しき』ゴーストであり、本来的な意味での和合など決してあり得ない。
穢らわしき生命を苦しめ、絶望させ、殺す。それだけが奴の存在理由だ。
猟兵として、けして見逃してはならない仇敵。
奴を逃せば、多くの人々が嘆き苦しむことになるのだから!
……ってカッコよく書いてみたけど、ここはネタシナリオなんですよね。
「艱難……なんておそろしいのうりょく……!」
なので、さも私はシリアスなキャラでございみてえなツラして、カッコいい感じのことを言ってる鈴鹿・小春も、残念ながらさっぱりキマってなかった。
たとえシリアスなキャラだとしても、場とタイミングというものがある。ただの現実逃避であることがまるわかりだった。
「はぁ……持久力、持久力かぁ」
小春は、運動能力自体『には』自信があった。まあ猟兵なので当然だ。
が、それが有酸素運動を継続するためのスタミナとなると、ご覧の通りしょんぼりしてしまう。瞬発力とスタミナはまったく別の
筋力ゆえ、仕方ないことだ。
「まあでも、健康のためにも頑張るしかないか!」
ぐっと意気込んだ小春のお腹がぷにょんと揺れた。特に正月太りとかではなく、もともとこういう体型である。学生時代からネ!
ここには様々なトレーニング器具があったが、小春はあえてエアロバイクに挑むことにした。
そう、剣道場だってあるのだ。艱難は何を考えてこんなヴィジョン作ったんだ?
「みんな頑張ってるね……僕が人狼騎士として、手本を見せないと!」
小春がなぜエアロバイクを選んだかというと、そこには艱難の迷宮に囚われ、苦しむ人たちの幻影がいたからだ。
囚われた人々の本体は、おそらく迷宮のもっと奥で苦しんでいる。これは、猟兵たちを威嚇するための悪辣な仕掛けなのだろう。
「あーあー! お酒飲みたいなー!!」
「肉食べたい肉! 魚でもいいけどさ!」
「カニ食いて~」
うん、やっぱ怠惰すぎる現代人を晒し上げてるだけな気がするね。
「カニ……肉……」
小春はじゅるりとよだれを垂らしてしまった。これからストイックに運動しようってときに、美味しそうな食べ物の名前は聞かせないでほしい!
「はっ、いけないいけない。みんな! 今はまだ届かないけど、もし僕の姿がそちらからも見えるなら、見ていて!」
小春が幻影に語りかけると、人々は小春に注目した。
「え? もしかしてデリバリーですか?」
「違うよ! どういう勘違いしてるの!? っていうか運動しようよ!」
「でもピザ食べたいし……」
「ピザ……ってダメだよ! なんで人を誘惑するの!?」
なんてこった! 敵は艱難の生み出したヴィジョンだけじゃなかったのだ!
「と、とにかく僕が頑張るところを見て、みんなも頑張って!」
なんか目的が変わってきているような気がするが、この際置いとこう。
小春は人々の注目を集めることで、自分の退路を断ったのだ。
彼は意を決して、エアロバイクにまたがる。そして負荷を一気に上げ、ものすごい勢いでペダルを漕いだ!
「うおおおおおお!!」
目的は器械の破壊。であれば、膝が壊れる前にばくはつさせればいい。
エアロバイクのスピード計が、ものすごい時速を計測する。小春は、ペダルが炎の車輪に見えるほどの勢いで漕いで漕いで漕ぎまくった!
「す、すごいぜあの身体の大きい人!」
「なんてパワーなんだ、ふくよかな人!」
「あんなにぷにっとした人が頑張ってたら、負けられないぜ!」
「応援ありがとう! でもなんか一言余計じゃない!?」
小春は水分補給をきちんとしつつ、一応バテてしまわないようペース配分も考えて、できるだけ器具に負荷がかかるよう隙間を開けずに漕ぎまくった。
それでもやはり、限界はやってくる。もう腿がパンパンだ!
「うぐぐ……いや、まだやれる。僕だって人狼騎士なんだぁー!」
あんな酒飲みてえカニ食いてえ言ってるだけの奴らの前で、無様に脱落するのだけは嫌だった! プライドは時として肉体を凌駕する!
「うおおおお……おりゃーっ!!」
そしてスピードメーターの表示が、「スゴイハヤイ」になり……ピガーピガー!
「おっと、危ない!」
小春は咄嗟にジャンプし、安全な位置に着地……したが、もう腿がパンパンなのでそのままごろんと転んだ。その背後でKA-BOOOM!!
「いててて……ふう、これで迷宮を突破できそうだね」
小春は腿をマッサージしつつ立ち上がり、ちょっとだけお腹をぷにぷにしてみる。
「……頑張ったけど、減った気はしないかなー」
現実は無情だった。小春は、何事も継続が肝心だという事実を改めて噛み締めた……。
大成功
🔵🔵🔵
紫・藍
あやー、運動でっすかー。
体型維持は中々に大変でっすからねー。
ただ艱難の精神破壊に対してエクササイズがまず思い浮かぶというのはかなり心身ともに健康的な方々なのではー?
運動するほど良いわけでもないですしねー。
この辺りで終わりにしちゃいましょう!
藍ちゃんくんでっすよー!
藍ちゃんくん、何せ着飾った上で歌って踊って常在ライブな藍ドルでっすのでー!
これでも体力ありますし、結構鍛えてるのでっすよー?
ではでは藍ちゃんくんのトレーニングシーン、どうぞー!
なんなら器具が爆発するごとに早着替えなのでっす!
するとどうしたことでしょう!
次の藍ちゃんくん見たさに器具が次々と爆発していくのでっす!
芸術は爆発なのでっすよー!
●でたらめをやってごらん(というまでもない)
体型維持……それはアイドルにとって、義務であり最大の試練だ。
アイドルとは偶像を意味する。ゆえに理想の姿のままで居続けなければ、やがて愛されなくなってしまう。実に人間らしい、因果な商売といえよう。
食事・運動・睡眠、どれを欠かしても体型維持は出来ないのだ!
まあそういう世知辛い話は関係ない。だってネタシナリオだし。
「……それにしても、精神破壊に対してエクササイズがまず思い浮かぶというのは、かなり心身ともに健康的な方々なのではー?」
で、こういうときに限って紫・藍は常識的な正論を言う。ずるいぞ!
「でもでも、運動はすればするほどいいというわけでもないですしー。
早く終わらせてあげないと、皆々様が大変なことになってしまうのでっす!」
やる気があるのはいいことだ。藍は意気込んで迷宮に挑んだ!
「藍ちゃんくんでっすよー!」
藍がいつものスマイルで登場すると、殺風景なジムめいたトレーニング場も、なんだか華やいだ気がする。実際は別に運動は楽にならない。
ところで、一見すると藍のようなマッシブでない男性は、運動とはあまり縁がないように見えるが……?
「ふっふっふ、藍ちゃんくんの魅力はこの元気さにあるのでっす!
藍ドルたるもの、ステージの上では常に笑顔が基本なのでっす!」
そう、アイドルは体力仕事だ。なにせアイドルといえば歌と踊り。
歌うとはつまり呼吸が制限される。踊るはもちろん全身運動だ。
それを愛嬌のある笑顔や身振り手振りを維持しながら、下手すれば数時間も続ける仕事がアイドル……水鳥が水面下で足をばたつかせるように、アイドルたちの魅力はたゆまぬ鍛錬と努力によって成り立っている。すごいぜ!
あ、ちなみに今回の藍は、もちろんジャージ姿だってかわいらしい。そういうの選んでますからね。オーダーメイドなんだって。
藍はまず、トレッドミルに飛び乗った。
「藍ちゃんくんのトレーニングシーン、いってみるのでっす!」
藍は慣れた様子だ。ペース配分も呼吸リズムも完璧である。
流れ落ちる汗すらもきらめいていた。なんて顔のよさだ!
『ピガーピガーピガー。エラーエラーエラー。爆発するドスエ』
「あやや?」
トレッドミルはまともすぎてばくはつした! なんだこの器具!
爆煙がもうもうと立ち込め晴れると……あれっ藍ちゃんくん着替えてる!?
「次はあのエアロバイクなのでっす!」
けろっとした顔の藍は、そのまま次の器具にチャレンジ!
流れるリラクゼーション映像を楽しみながら、けして無理せず適切な負荷で運動を続ける! もちろん合間合間に水分補給もばっちりだ!
『ピガガガー! ばくはつします』
「あやややー?」
エアロバイク無惨! 爆煙……次の藍はラフなスポーティングアイドル衣装だ!
「次はウェイトトレーニングに挑戦でっすよー!」
う、美しい! レジスタンス運動すらも美しい! これが藍ドルの力!
『ばくはつします』
『ピガガガーエラー』
『アイドルこれが大好き』
「あややややー!」
KA-BOOM!! 器具連鎖爆発! すべては藍の藍ドルとしての魅力ゆえ!
「芸術は爆発なのでっすよー!」
爆発を背景にポーズ! ……ところで芸術要素はどこなんだろうか? まさか藍本人がひとつの芸術……ってコト!?
大成功
🔵🔵🔵
サフィーナ・エスト
市民を救いながら自己鍛錬にも励むことが出来る、これは大変素晴らしい機会です!
この迷宮の性質、利用させてもらいましょう
前々から思っていたのです
私はスピードには自信があるのですが、如何せんパワー足りてないとこあるな、と
特に腕力が。フォースブレードを使って切り合うことがよくあるのですが、鍔迫り合い等で不利を受けることが多いのです
なので今回は上半身の筋力増強を目的にトレーニングを行います!
使う器具は迷宮に着いてから決めましょう。どんな器具が待っているのか、今から楽しみですね
1つ爆発させたら次の器具に移りますよ
完全に体力が尽きてダウンするまで私は止まりません!
目標は10個!それではレッツトレーニング!
●議題:ブラックタールに筋肉は存在するのか
サフィーナ・エストは脳筋である。
……いや結論から急ぎすぎた。もう少しオブラートに包もう。
サフィーナはストイックでハングリー精神が強く、とても健康的な女性である。なんか別のニュアンス混ざった気がするがまあ置いとこう。
「市民を救いながら、自己鍛錬に励むことまで出来るだなんて……!
これは大変素晴らしい機会です! むしろ常設してもいいのでは!?」
なので、ご覧のように今回の仕事には大変前向きだった。
目がキラキラしている。強敵と戦うときと似ているが違った感じで。
「……それにしても、艱難の精神破壊は苦難のヴィジョンによるもののはず。
囚われてしまった市民の皆さんは、どうして運動が嫌なんでしょうか……?」
あまりに脳き……じゃなくてストイックなので、囚われた人々の怠惰な精神を理解出来ていないようだ。異種族ゆえの悲しいすれ違いってことにしたらシリアスになりません? ならない? そうだね。
ともあれ、運動して人助けも出来るなんて、まさにWIN-WIN。
この迷宮の性質、利用するっきゃない。サフィーナには以前からひとつの懸念があったようだ。
「この間の『光のオロチ』との戦いでも感じましたが、やはり私はパワー不足ですね……。
スピードなら誰にも負けるつもりはありませんが、かといってスピードだけに頼っているようでは、さらなる強敵との戦いに挑めませんし」
こんな時でも戦闘のことを考えているあたり、筋金入りだ。
もちろん、単独としての破壊力は言うまでもなく折り紙付きである。
これはあくまで、サフィーナ個人が、これまでの戦いの経験や自分の能力の長短などから、不足しているものを分析した結論だ。
「鍔迫り合いで不利を受けることが多いのは、要改善点ですね……。
よし、今回は上半身の筋力増強を目的にしましょう! 頑張るぞー!」
ぐっと手を握って意気込む姿は可憐だが、頭の中は筋肉ぎっしりだった。
おそらく彼女が自分の力量に満足することはないだろう。戦い続ける限り。
上半身の筋肉といっても、鍛えるべき部位は目的によって異なる。
色々考えた結果、サフィーナは様々な部位を鍛えられる、ケーブルマシンを使うことにした。
え?ケーブルマシンって何か、ご存知でない?
名前の通り、器具とアタッチメントをケーブルで繋ぎ、引っ張り上げたり限界まで伸ばしたりすることで、上腕二頭筋や背筋・腹筋を鍛えられるマシンのことだ。
「……デジタルな機械がついてないようですがどう爆発するんでしょう?」
サフィーナは考えてはいけない部分に気付いてしまった。よそう!
「まあいいでしょう。ではまずは上腕二頭筋から!」
サフィーナはハンドル型のアタッチメントを両逆手で握りしめ、腕を身体に沿って下に伸ばした状態から、肘だけを曲げてアタッチメントを持ち上げる。
「ふっ……なるほど、これは……効きますね!」
動作は肘を曲げるだけ、というのがこのトレーニングのコツだ。
見た目以上の負荷ががっつりと上腕二頭筋にかかる。サフィーナは手応えに爽やかな笑みを見せた。体力お化けはそう簡単にバテない。
慣れてきたところで一気にペースを上げると、なんかだんだんケーブルマシンが赤くなり始めた。で、なぜか蒸気が噴き出している。機械ついてないのに。
「もしやこれはもう少しなのでは? スパートをかけないと!」
ガコガコガコ! サフィーナはものすごい勢いで腕を上げ下げした! ケーブルの摩擦熱とかがなんかあれして、とにかくマシンがバチバチと電気を放つ!
「おっと!」
サフィーナが飛び退った瞬間、KA-BOOM!! 燃料もないはずなのにマシン爆発! まあ苦難のヴィジョンの実体化だからね。
「よし……残り9個、つぎは背筋いきますよー!」
サフィーナはイキイキしていた。脳筋こええ!
大成功
🔵🔵🔵
花邨・八千代
俺が来た!!!説明不要!!!
(アドリブ大歓迎です。遊びに来ました)
でもトレーニングジムって初めて来たなぁ、こんな感じなのかぁ。
アレだよな、筋トレするといきなり両腕ムッキムキになったりするんだよな!楽しみ!!!
とりあえずおすすめ!おすすめのトレーニング器具で遊ぶぞ!
俺の怪力とかが火を噴くぜ!
トレッドミルやエアロバイクは全力疾走!
ウェイトリフティングならディスクでお手玉!
サンドバッグの限界までスパーリング!
ジムって楽しいな~。
トレーニング器具がばくはつしたらしっかり水分補給するぞ。
大事なことだからな!
よーし、いっぱい遊んだしおもち10個食うか!
●精神年齢が一桁でいらっしゃる?
「俺が来た
!!!!」
バーン! 陰鬱とした迷宮(トレーニング場)に花邨・八千代見参!
目をキラッキラさせ、どう
遊ぼようか居ても立ってもいられない様子でウキウキしている。艱難がかわいそうに思えてきましたね。
「いやー、身体動かすのって楽しいよなー! なんでヤなんだろうなー」
八千代は心底不思議そうな顔だ。
「食べたぶんだけ動きゃいいだけなんだし、そんな悩む理由がわかんねー!
まあ俺の場合、別に動かなくても全部筋肉になってるし問題ねーんだけど!」
けろっとした顔だ。ここに囚われた人々がいなくてよかった。
「それにストレス解消にもなんのになー、
運動って!」
え? ルビがおかしい? はっはっは、何もおかしくはないでしょう。
八千代の頭の中の「身体を動かす」とは、「とりあえず力いっぱい腕とか足を振り回す」ぐらいの意味でしかない。ヒューマノイドタイフーンかな?
「まーいいや! たっぷり
遊ぼよーっと!」
八千代は腕をぐるんぐるん振り回し、殺る気で器具を物色する!
え? ルビと変換がおかしい? はっはっは、何もおかしくはないでしょう。
「お! さっそくあんじゃん、これなんだっけ、トレ、トレ……」
ランニングマシーンあるいはトレッドミルと呼ばれるものを前に長考。
「……まあいいやぶっ壊すんだし! おりゃおりゃおりゃー!!」
やおら飛び乗り、開幕から全力スパート! スタミナ配分? 知ったこっちゃねえ
脳筋羅刹暴走成人女性に理屈は不要だ!
すさまじいスピードにベルトが悲鳴を上げ、ギャギャギャギャ! とモーターが火を吹く! これ迷宮の特別製じゃなくても爆発してんじゃねえ?
『ピガガー! エラーにより爆発します!』
「えっ速っ!? んだよまだウォーミングアップ中な(KA-BOOM!!)」
爆発した。爆煙が晴れると、頬が焦げた八千代がけほっと黒い炭を吐く。
「ギャハハハ! 爆発すんの面白いなこれー! じゃあ次エアロバイクー!」
そして初めての大型公園ではしゃぐ子供みたいにすっ飛んでいく。ミサイル?
……それからというもの……。
「オラオラオラー!(ペダルをガシャガシャガシャガシャ)」
『ピガガー! 過負荷により爆発するドスエ(KA-BOOM!!)』
「ヒャッホー! こんなん軽い軽ーい! お手玉しちゃうぜー!(ウェイトトレーニング用のディスクでジャグリング)」
『ブガーブガーブガー! 過重量により爆発です』
「どこまで鎖保つかなー? その前にサンドバッグ真っ二つになっかな? おりゃおりゃおりゃおりゃー!!(ズドドドドドド)」
『ダメージ致命的! 爆発します』
八千代がハイテンションになればなるほど、あとには焦げた焼け跡と散乱した器具の残骸が転がる。天災かな?
「あっれー、おっかしいなー」
八千代はなぜか首を傾げていた。おかしいのはあなたのパワーですが?
「筋トレしたらいきなり両腕ムッキムキになったりすんじゃねえのかな?」
なんらかのフィクションと現実を混同している! よくない!
でもまあ八千代の頭の中にはビューティフルで星のように輝く未来図しかないし、楽して生きて全部めちゃくちゃにしたい(というかしている)で頭がいっぱいなので、おおよそ間違ってないのだが。
「まあいいや、遊んだしお餅食ーべよ!」
八千代はどこまでも自由だった。天は知性の代わりに大変なものを与えたのかもしれない。
大成功
🔵🔵🔵
歌獣・苺
うぅ、館の皆のさすがに太り過ぎって視線が痛すぎて運動するような依頼を選んで来ちゃったけど…
この阿鼻叫喚の地獄絵図は一体…。
こわいよぉ、かえりたいよぉ…!
私が出来そうなトレーニングってなんだろう……。この手だからダンベル?とかは上手く掴めなくて危なそうだし…あ。キックボクシングならできるかな…?よし!
──フッ、フッ。(意外とキツイ…!どうして私がこんな目に!ちょっと館中のみかんとか、つきたてのお餅とか、特大おせちとか、手作りケーキワンホールとか食べただけなのに、ヒトの身体ってどうしてこんなに脂肪がついちゃうの?!)
──あ~~~!もうッ!!!(怒り任せにサンドバッグを蹴飛ばすと見事に吹き飛んだ)
●プレイングの温度差で風邪ひきそう
「……」
歌獣・苺は神妙な面持ちじっとしていた。動けなかったのである。
いや違います、身体が重くなりすぎてとかそういう話ではなくてですね。
「あぁ~お餅食べたいよぉ~!」
「こたつでぬくぬくみかん~!!」
「どうせなら寿司も~!!」
……と、迷宮の奥からずーっとこだまみたいに響いてくる、怠惰なダメ人間……もとい囚われた人々の自堕落な甘え……もとい苦しみの悲鳴で、身体がわなないていたのだ。
「こわいよぉ、かえりたいよぉ……!」
苺は頭を抱えてうずくまった。そりゃそうだ、普通こうなる。
ネタシナリオに来て、ノリノリで器具ぶっ壊したりするような
脳筋がおかしいのであって、苺の反応が正常だ。そういうの待ってました。
「うぅ、館のみんなの「さすがに太りすぎ」って視線が痛すぎて、運動するような依頼があったから軽い気分で来たらどうしてこんなことに……」
苺は自分の判断を後悔していた。注意一生なんとやら、である。
入る依頼は選ばねばならない。さもなくばこういう狂気に曝されることになる!
「この阿鼻叫喚の地獄絵図はいったいなんなの……。転移する
猟兵の反応も、目ギラギラさせてる人もいれば目が死んでる人もいたし……」
苺は震え上がった。時折、何処かから狂った猟兵の笑い声(嬉々としてトレーニングして器具ぶっ壊してる)や、狂った猟兵の嘆き声(運動不足が露呈して苦悶してる)が届き、苺をさらに恐怖させた。ていうか何この迷宮。
「そもそも私、そんなに食べてないのに……ちょっとハメを外しただけなのに!」
苺は両目に涙をじわりとにじませ、心の底から悲しんだ。
食べれば太る。それがこの世の基本原理であることを、まだ幼い彼女は知らなか……ん? 年齢? いやまあ苺は色々あったので実質幼女ということでいいはずだ。ほら俗世間とか今の自分の体質に詳しくない的な意味でね。ね!
ともあれ、こうして転移したからには仕事をやるしかない。
そもそも運動を求めていたのだから、動かないことには痩せられないのだ。しかし走り続けるのは疲れるから嫌だし、エアロバイクも脚がパンパンになりそうなのであんまりヤだった。あと飽きそう。
「ダンベル? とかはうまく掴めなくて危なそうだし……あ」
そこで苺が見つけたのは、キックボクシング用のサンドバッグだった。
かなり強靭(なんせ苦難のヴィジョン製である)そうなので、苺の脚力で蹴り上げても問題ないはずだ。
「よ、よし! 頑張るぞ……っ」
苺はウォーミングアップがてら体操をしたあと、サンドバッグの前に立った!
ひたすら走ったりペダルを漕いだりに比べると、身体を動かすのは
時計ウサギとしてのサガもあるのか、それとも踊りと似ている感じがして楽しいのか、意外と飽きずに続いた。
「フッ……せいっ、やっ!」
苺は蹴る。ウサギの脚力で飛び跳ね、できるだけ派手に動くことで消費カロリーを底上げし、なるべく足を高く上げて蹴った。けなげだ。
(「い、意外とキツい
……!」)
苺の額に汗が滲む。有酸素運動は、瞬発力が求められる戦闘とはまた違った筋肉を使う。ようはスタミナの問題だ。じんわりした疲労が苺を苦しめる。
(「そもそもどうして私がこんな目に!? そんなに食べてないのに!」)
だんだん、現状に対する不満がふつふつと怒りの炎を燃やした。
高まるストレスをサンドバッグに叩きつけるように、蹴る、蹴る、蹴る!
(「三食以外に食べたものといえば……館中のみかんとか
……?」)
おっと話が変わってきたぞ。
(「あとはつきたてのお餅に、特大おせち……あ、そうだ手作りケーキのワンホールも食べたっけ。あとえっと、お雑煮とおしるこひと鍋と」)
おやおや~? もしかして苺も
狂人側かな~???
(「ただそれだけなのに、なんでヒトの身体ってこんなに脂肪がついちゃうの!? ……あ、あとこたつでアイスも食べて……」)
苺は蹴る。
世界の理不尽に対して怒り、蹴る!
「――あ~~~~! もうッ!!!」
SMASH!! ひときわ強烈な蹴り! サンドバッグの鎖が紙くずみたいにちぎれ、壁にKRAAASH!!
『ピガガー! 過負荷により爆発します』
KBAM!! サンドバック無惨! 迷宮の壁はクモの巣状にひび割れ砕け、爆発で風穴が開いた。
「もー! 帰ったらストレス解消にケーキ食べる、絶対!!」
苺はぷんすかと迷宮の奥へ飛び込んだ。コワ~……。
大成功
🔵🔵🔵
新田・にこたま
機械化義体の体にトレーニングなんて…まあ、生身の部分がないわけではありませんが。(心臓が炉心なので見た目以上に肉体を義体に換装した箇所は多い)
運動自体はクリスマス前から働き通しなのでそこは目的とせず、トレーニング器具を破壊することに注力します。
なので限界突破のUCを使用。これにより8倍の速度と力でトレーニングを重ねれば器具に効率的に負荷をかけることが可能になるでしょう。
…何か事故一つで死にますが。滑って転ぶことすら許されません。私の足元はお留守ではないので大丈夫だと思いますが。
しかし囚われた人々を迅速に救出するため。つまりはこれも正義の為。命をかけるのは当然のこと―――なっ、床にワセリンが…!
●サイボーグだってトレーニングは必要だぜ!
新田・にこたまは、かなりの重サイボーグである。
なにせ、心臓を炉心に置換しているのだ。見た目は以前とできるだけ変わらないように意識して保っているが(信じられないかもしれないが、にこたまも女の子なのである。信じられないかもしれないが)中身は相当に義体化されていた。
「そんな私がトレーニングしても、あまり意味がない気がしますが……」
とは言うが、実はサイボーグこそフィジカルは重要である。
義体化したパーツの出力が高ければ高いほど、生身の肉体とのコンフリクトが致命的になりやすく、特に筋肉や骨格などはどちらが劣ってもいけない。
義体化手術そのものが相当の負荷を身体にかける行為だ。脆弱な肉体では、どれほど強力なサイバーザナドゥを入れようと耐えられないのである。
え? じゃあなんでにこたまにはその自覚がないのかって?
それはね、彼女が義体化する前から
正義で、メンタルがフィジカルを凌駕しているからなんだね。狂人に理屈は不要ってワケ!
「まあ、どうせ運動はクリスマス前から働き通しで十分していますし、今回は目的を迅速に遂行しましょう。まだまだ悪はのさばっていますからね」
今は戦争中だ。ていうかここもその一環だし、なんかさっきから奥から「餅食べたい」だの「動きたくない」だの甘えた嘆きが聞こえてくるが、さっさと救助して次の戦場へ向かう必要がある。となれば
正義だ!
「やはりここは一番わかりやすく、トレッドミルを使いましょう」
にこたまはトレーニングマシンの前に立つと、おもむろに目を閉じた。
脳内で臓器系の管理システムを起動。論理トリガを引く。
すると彼女の身体から、原子炉めいた明らかにエマージェントな高音がかすかに響き始めた。
「……リミッター解除、完了。さあ、いきますよ!」
なんとにこたまは人工心臓のリミッターを解除し、最高速でトレッドミルに負荷をかけるつもりなのだ!
目的があってるんだかあってないんだかわからないが、にこたまらしいシンプルな作戦だ。彼女はトレッドミルの設定速度をめいっぱい上げ、ランニングを開始した!
するとベルトがガガガガガガ! とヤバい音を立て、マシンそのものが振動するレベルで高速回転する。
にこたまはもはや両足が霞んで見えなくなるほどのスピードでスパート開始! 両足とベルトの接触面が火花を散らし、摩擦熱で煙を吹き上げた!
「運動が苦難などと軟弱な。正義を甘く見ないことです!」
絵面はギャグだが(いやまあこのシナリオも迷宮もすべてギャグなのだが)にこたまは真剣だ。ついでに言うと、この状態はめちゃくちゃ効率的だが同じぐらい危険でもあった。
リミッター解除した状態での活動は、一歩間違えば些細な事故が致命傷に繋がる。たとえばすっ転んだりでもしたら、このスピードとパワーが臨界寸前のボディにダイレクトにかかるわけで、下手したら大爆発だ。
「私の足元はお留守ではありません、たとえどんなトラブルがあろうと、囚われた人々のため、正義のため! 私は決して負けません!」
にこたまは、狂ってはいたがやってること自体は正義であり、そして人々のために命を懸ける警察官のお手本であった。
「そもそもただの運動なのです、一発で死ぬとはいえ、そんな単純なミスを犯すわけありませんからね! ええ絶対ありえません!」
ところでなんでにこたまはひとりでフラグ立ててんだろうね?
『ピガガガー! エラーエラーエラー。過負荷によりこのままだと爆発します』
「ふっ、しょせんはトレーニング器具ですね。スピードアップといきましょう!」
ズガガガガガガ!! にこたまはさらに限界を越えたスピードへ!
もはやマシンどころかトレーニング場全体が振動している!
「さあ道を開きなさい、正義に屈服するのです! はああああ!!」
にこたまの目が光った! トレーニング場が揺れている! 揺れているので当然棚にあるトレーニング器具などもガタガタ揺れる! 物が落ちる!
「ん? あっ」
がたん、ごろごろごろ! ワセリン入りのケースが転がる! 振動でさらに転がる!
「なっえっこんなそんな馬鹿な! いえ待ってくださいいくらなんでもこちらにワセリンが転がってくるわけなんでこっちにピンポイントに向かってくるんですかちょっ」
すてんっKRAAAAAAAASH!!
『エラーエラーエラーエラーエ』
KA-BOOOOM!! KRA-TOOOOM!!
……にこたまよ、正義の警察官よ、どうか永遠に。
人々はキミの勇姿を忘れない、フラグ立てるからそんなことになるんだよ、無茶しやがって……!
大成功
🔵🔵🔵
マシュマローネ・アラモード
◎
(王族として、力試し、お淑やかだが、近接パワータイプで、モワモワ(謎感嘆詞で喋る)
モワ!運動は得意でしてよ!
カンストさせればよろしいのですわね!
サンドバッグがちょうど良いですわ!
UCステイシスビーム!
停止した時間の中で、連打するのですわ!(キネティックリパルサーを構え)
モワモワモワモワモワモワモワモワモワモワモワモワモワモワモワモワモワモワモワモワモワモワッ!
そして、時は動き出しますわ!(UC解除)
停止した時間の中で受けた衝撃が一気に弾ければ、一瞬でKOですわね!
そして、ダメ押しのモワーッ!!!(力溜めからのラッシュ)
ふぅ、もとより運動不足とは無縁、王族たるもの修練はかかさなくってよ!
●
突きのスピード測定か……
運動をして、トレーニング器具を爆発させる。
常人が聞くと頭がおかしくなりそうな依頼だが、マシュマローネ・アラモードにとっては朝飯前の仕事だった。
「モワ! ここが話に聞いていた苦難の迷宮ですのね」
マシュマローネは自慢の縦ロールをいじりながら、周りを見渡す。
トレッドミルにエアロバイク、ウェイトトレーニング用のダンベルにケーブルマシン……およそトレーニング器具と聞いて思いつくものは、一通り揃っているようだ。
「艱難は、マッチョなオブリビオンでしたかしら……予兆で見た姿はずいぶん違ったような……?」
マシュマローネは訝しんだ。別に艱難が脳筋なわけではない。
ただちょっと、正月にぐうたらしすぎた地元市民の皆さんの苦難のヴィジョンというのが、ご覧の通りの運動ばかりだっただけである。
金沢市民の方々に大変な風評被害を与えている気がするけれど、現実に迷宮が現れちゃってるんだから、解決しないとね!
ところで、なぜマシュマローネにとって、この仕事が朝飯前なのかというと。
「まあ、いいですわ。ちょうど肩慣らしの運動がしたかったんですの!」
そう、マシュマローネはこう見えて、かなりの……それこそ一族揃っての近接パワータイプな思考をしている。謎のバロメータで言えばパワー:A(超スゴい)って感じだ。
「サンドバッグがちょうどいいですわね……モワ! いい感じのがありましたわ!」
ひときわ巨大で頑丈そうなサンドバッグを見つけると、おもむろにユーベルコード発動!
「モワーッ!」
突き出した両手から時間停滞ウェーブが放たれ、サンドバッグの時間だけが停止する。
時間停滞領域のちょっとした応用というやつだ。
「さて、それでは……」
ずしり。どこからともなくキネティックリパルサーを取り出し、構える。
そして!
「モワモワモワモワモワモワモワモワモワモワモワモワモワモワモワ!!」
ドガガガガガ!! マシュマローネはものすごい勢いでキネティックリパルサーを左右に振るう! 拳ならぬ杵での
突きだ!
時間が停滞しているサンドバッグは、くの字に折れ曲がった状態で停止。そこへ叩き込まれる超パワー!
「モワモワモワモワモワモワモワッ! モワーッ!!」
ロードローラー並の質量を感じさせるとどめのスマッシュを叩き込み、マシュマローネはサンドバッグに背を向けた。
キネティックリパルサーをくるくると回転させ、石突を床に……叩きつける!
「そして、時は動き出しますわ!」
直後、KRAAAAASH!!
『ピガガガー! 過剰ダメージにより爆発します』
これまで停滞状態で叩き込まれたインパクトがコンマ秒以下の一瞬に
戻ってきたサンドバッグは、まるで砲弾のような勢いで壁に激突。
衝撃で壁にほぼ全体がめりこみ、くぐもった謎のシステム音声が流れた瞬間、クモの巣状にヒビの入った壁を巻き込み盛大に爆発四散した!
「ふぅ、いっちょうあがりですわ」
爆風が縦ロールをなびかせる。マシュマローネは髪を抑えながら、不敵に微笑んだ。
「もとより運動不足とは無縁、王族たるもの修練はかかさなくってよ!
さあ、囚われた人たちを助け出し、運動の大切さを知らしめますわ!」
モワ! と杵を突き上げ気合を入れると、マシュマローネは壁が破砕して生まれた穴から、迷宮の奥へと突撃していった。
彼女に救助された人々は、王族直伝のトレーニングを伝授され、仕事初めの時には元通りの(下手すれば元以上の)体型を手に入れたとか。
大成功
🔵🔵🔵
結・縁貴
俺、この依頼に向いてそうなグリモア猟兵知ってるんだけど呼べない?
正月食っちゃ寝してまた肥えてそうな100歳越えの少年の如き容姿のクリスタリアンなんだけど
駄目?そっかァ、残念
俺、肉体労働不得手なんだよな
異能は安全圏で集中して使った方がいいからさ
でも運動しろって場所だからすべき?
そうだよな~辛いな~
此の機械って一般的な人間仕様なんだよね?
そうだ、獣形態になろう
莫迦になるけど負荷量は飛躍的に上がるだろ
依頼の早期解決を考えてる俺って偉い~!
(3m程の虎に似た獣形態になる
人語は口にしない、幼児くらいの頭の弱さ)
うごくぞ、はしるぞ~
(獣型の膂力で全力でトレーニング機械を使う)
※ネタ成分はお任せします
茜崎・トヲル
えーっと?よーするにー?たーっくさん、運動すればいーい、って……コト?!
なーんだ!それならおれ、ちょーとくいじゃんね!だっておれは!疲れないから!
ガショーだからねー!うんうん!
とりあえず、機械が壊れるまで運動すればいーんだよね?
まずはしっかり体を伸ばしてー、
ラットプルダウン!めざせ一分500回!煙を噴いたら退避!つぎ!
ベンチプレス!100kg!150kg!200kg!煙を噴くまでやるよー!
スクワット!おもりつき!懸垂!おもり付き!レッグエクステンション!どんどん重く!ランニング!マシンの最大速度!最後にハイクリーン!
あっははふはー!たのしいー!ねーねー、まだ残ってるトレーニング器具、あるー?!
深山・鴇
【逢魔ヶ時】
努力も未来も美しい星とやらも興味はないが――さあ逢真君、運動の時間だよ
うん、運動とか縁なさそうだものな
そんな君にもお勧め、なんと初心者や高齢の方にもできる陰ヨガだ
なんだろうね、陰ヨガ。言ってみたもののよくわからんが
逢真君軟体動物みたいだな??
さて、俺はトレーニング器具とやらを…へぇ、これはいい負荷が掛かってるね
効率的に鍛えたい筋肉を鍛えられそう(爆発)だな(爆発)
いちいち運動するたびに爆発する仕様なのかい??(爆発)
二分に一回くらい爆発してないか?なぁ逢真君、うわぁ…
コホンッ!こう見えても彼は俺のところのかみさまでね
俺が倍運動するから勘弁してやって(爆発と共に堪えきれない笑いが)
朱酉・逢真
【逢魔ヶ時】
心情)イヤだーーーーーーーーーーーー!!!! クソがよ!!! 昨年は海の地獄がなかったから安心してたらコレだよ!!! てかココすげェ陽の氣が オエ ハ? 陰、ヨガ……?? ヨガぁ? マット爆発すンの??? マア柔軟とか得意だけどよ。"柔"は俺の管轄だから。
行動)とりま180度開脚して。そっから長座体前屈(*完全に二つ折り)から足を後ろやって閉じて、うつ伏せでごろん。疲れた。もうやらね。宿はやらけェよ、俺は。すぐ疲れッけど。旦那ポンポン爆発すンなァ。景気イイなァ。(寝っ転がったまま)
(*ここから運動を強制されると、マシンを腐らせようとして無様を晒して死にます)
●やったぁかみさまが苦しんでるぞ! やぁったぁーっ!!
結・縁貴は肉体労働が不得意だ。額に汗するとかマジで無理。
世の中できるだけ楽して、できるだけ自分は動かず、そして手を汚さず責任も負わずに利益を得るのが一番いい。縁貴は本気でそう思っていた。
つまるところずる賢い悪人(悪獣と呼ぶべきか)であり、そんな輩が毎日地道にトレーニングするとか向いてるわけなかった。ずりぃなあ霊獣は!
「辛いな~、困ったな~。此処に来るべき人材は知ってんのに、俺が運動しねえと駄目なのかァ……誰か向いた人」
「495ー496ー497ー498ー499ーごひゃく! あっ煙吹いた! たいひー!(ドカーン!!)」
「いたわ」
そこらじゅうの器具を爆破して回る茜崎・トヲルがそこにいた。
一方その頃、こっちにも運動大嫌いなヤツがいた。
「さあ逢真君、運動の時間だよ」
「イヤだーーーーーーーーーーーーーー
!!!!!!」
まるで保護者のような深山・鴇と、全力で拒否する朱酉・逢真。
すでに逢真はぐったりしていた。そりゃそうだ。運動とはつまり健康になるための活動であり、しかも此処自体が「健康になるために運動する場所」というイメージで出来ているのだから、逢真は体温40度の状態でサウナにぶちこまれているも同然だった。
「うん、そうだろうな。エクササイズとか縁なさそうだし、絶対やらないもんな君」
「そうじゃねェよ旦那!! ワカッだろ! 海で!!! 言っただろ俺ァ!!!」
「うんうん、逢真君が嫌がる気持ちもわかるがね。これは今失われようとしているいのちを救うための大事な依頼でだな」
「ッてかワカってて連れてきてンなこれェ!! クソがよ!!!」
逢真は完全にしてやられていた。いつもいつもいつもいつもいつも好き放題してばかりの逢真にも弱点はあるのだ(むしろ「弱点」で言うとそっちのが多い
宿をしているが、そういう話じゃねえんだ)。
「何を言っているのかわからないな。俺が君を苦しめているとでも?」
「一昨年の夏何したよ旦那はよ」
「楽しかったな、海(いい笑顔)」
「コレだよ!!! 昨年は海の地獄がなかったから安心してたらよォ
!!!!」
逢真は叫びまくり、叫びすぎたせいでゲホゲホと咳き込んだ。
鴇はいい笑顔をしていた。他意はない。ないよ。決してない。鴇に他意はないかもしれないけど世界の何処かで誰かが快哉を上げた。やったぁああ!!(タイトルぶり二回目)
「わー! かみさまじゃーん!」
「ウッソだろオイ」
とか叫んでたらトヲルが来たもんだから、逢真は真顔になった。
地獄の環境×地獄の運動×超天敵=いじめ。そういう方程式が成り立つ。
「なンで白いのが此処にいンだよォ」
「えーっとねー、おれガンジョーだから!」
「そォいう話してンじゃねェんだよ
!!!!!」
「すげぇ……かみさまがツッコミ入れてる……」
後ろからひょこひょこついてきた縁貴はハイパーびっくり顔になっていた。
「おや、縁君じゃないか。そちらもふたりで此処に来たのかい?」
「んーん! おれとやーさんは、さっきそこであったんだー!」
トヲルはニコニコと笑いながら、腕を上下させていた。ブンブンと。あまりのスピードのせいで霞んでて見えないが、ダンベル持ってるらしい。
「オイやめろ白いの、その健康的な汗を俺ン前で流すのマジやめろ」
「かみさまもやるー? 初心者よーのあるよ!」
「トヲル帅哥の話聞かない加減がいつもよりすげェや」
縁貴は半笑いだった。面白おかしくて笑っているというより、逢真相手にここまで"攻め"るトヲルが色んな意味で怖かったからである。
「トヲル君、悪いがそのダンベルは戻しておいてくれ。多分逢真君だと、それでも持ち上げられないだろうからな」
「あーそっかー、ごめんねかみさま!(腕ブンブンブンブン)」
「謝ンなら人の話聞けや……」
逢真はすでにヨガマットの上に横になっており、トリアージが必要な患者みたいになっていた。鴇とトヲルは別に心配していない(いつものことだから)
「さっきすごい声聞こえたんで来たんですが……かみさま、
没事吧?」
「兄さん、大丈夫に見えッかいこれが」
「不是……」
縁貴は、逢真はすげー難儀な
宿してるなぁ、と改めて思った。が、それはそれとして、別に縁貴に助けられるようなことではないので、彼はそう思っただけである、トヲルはダンベルが爆発したので、逢真用に持ってきた初心者ダンベルをブンブンしている。
「トヲル君の勢いがすごいな。さすがのフィジカルだ」
「うん! おれちょーとくいだかんねー! 疲れるとかないし!」
「もうこれ全部トヲル帅哥に任せといていいんじゃね?」
「まあまあ、いい機会だし俺たちも運動しようじゃないか、なあ逢真君」
「かみさまホントに大丈夫な……かみさま? かみさま……
し、死んでる」
「(宿は)生きてッよォ。旦那マジで俺に何さす気だよ……」
鴇は逢真が寝転がっている、その下を指さした。
「それだよ、それ」
「あァ?」
「ヨガだよ。ただし普通のヨガじゃないぞ、陰ヨガだ」
「鴇帅哥何言ってんの???」
誰も聞いたことのない概念を差も当然とばかりに持ち出してくる鴇。そんな鴇の正気を割と真剣に疑う縁貴。
トンチキが始まっていた。
「ヨガぁ? マット爆発すンの??? 機械もねェのに???」
「あ、それね! おれさっきから20個ぐらいばくはつさせてるけど、めっちゃうんどーするとなんかどかーんってなるよ!」
「俺が合流する前からずっとやってたんだ、トヲル帅哥。やっぱ帅哥に任せとけばよくない???」
「俺も兄さんに同意見だけどよォ……」
逢真はけだるげに起き上がった。
そしておもむろに両足を広げると、キモいぐらいスムーズに180度開脚する。ぺったーんと。
「
ウソでしょ!?」
骨格という概念が失われていそうなレベルの柔軟に、縁貴はビビった。
「マア柔軟ッつーか、"柔"は俺の管轄だかッさ。こォやって」
さらにそのまま長座体前屈。もはや二つ折り状態! キモい!(失礼)
「逢真君軟体動物だな??? ていうか、なんだ。出来るじゃないか運動」
「(ごろん)疲れた。もうやらね」
「早いな! もうちょっと頑張ったらどうだい、宿が長持ちするかもだぞ」
「むしろ寿命縮まンだよなァ……」
逢真は寝っ転がったまま遠い目をした。日頃の好き勝手の因果応報というやつである。
「まあそろそろ無茶ぶりはやめておこうか(逢真から「やっぱ確信犯じゃねェか!!!」という抗議があったが鴇はスルーした)トヲル君、いい器具を見繕ってくれないかな?」
「ん、わかったー! ちょっとまっててねー(←ズダダダダ……ズダダダダ→)はい持ってきたー!(どすん!)」
子供のお使いみたいなノリで行って器具担いで戻ってくるトヲル。いまさらなことなので特に誰も驚かない。
「ありがとう。これは背筋を鍛えるマシンだね? ちょうどいいな」
鴇もフィジカルタイプなので、苦もなく汗を流す。逢真は弱っていた。
そして、こうなると困ってくるのが縁貴だ。
「兄さんよォ」
「えっ、なんですかみさま」
「兄さんだけ見てるッてのは、不公平じゃねェの?」
(「かみさま弱ってっからすげぇ雑な絡み方してきたな……」)
信徒にいじめられてる逢真が不憫で仕方なかったが、縁貴はしばし考え込み、言った。
「俺さ、そもそも思うんですよ」
「何をだい」
「俺らよりずっとこの依頼に向いてる人材がいるんじゃないかって」
「えー? だれだれ! そんな人いんなら連れてこないとー!(バーベルガッチャガッチャ)」
「そうだな、運動不足はよくない(アタッチメントギチギチ)」
「いつになく汗臭いな帅哥たち! ……いやさ、わかんない? みんな知ってる人だよ」
縁貴は言った。はて、そんな運動すべき輩で、しかも4人共通の知り合いなんているんだろうか? スキアファールのことかな?
あっそれとも雲珠かな? 背伸ばしたいって言ってたもんネ!
「正月食っちゃ寝して、また肥えてそうなグリモア猟兵いるじゃん。なんならクリスマスもケーキバカスカ食って、絶対今頃後悔しつつ餅ツマミに酒飲んでる100歳越えの少年の如き容姿のクリスタリアンがさ」
「「「あー」」」
納得の声が揃っていた。あれぇ? 誰だろうなぁ!?
「もう三ヶ月前のことだもんね、うんどーしたの! たしかにムーさんにまたうんどーさせたほうがいいかもなー! ムーさん本読んでばっかだしなー!」
「トヲル君が善意しかないのはわかりきってるんだが、それは事実上の死刑宣告なのを多少は自覚したほうがいいかもしれないよ」
「今現在進行形で俺が死にかけてンですけど旦那ァ」
「でもそうだな、彼が予知していないのは珍しいな」
「旦那最近鬱憤溜まってたとかか???」
彼らの言っている人間が誰なのかは皆目見当もつかないが、縁貴の思っている通り年末は予知を視なかったからってゴロゴロしていたし、年始も自分が予知した時以外は割とゴロゴロしているのは事実だ。いや誰のことかわかんないけど。ぜーんぜんわかんないけど! 日本酒美味しいってさ。
「でもさー、もうあとちょっとしか器具ないし、おれたちでやっちゃおーよ!」
「そっかァ、残念。苦しむところ見れそうだったのにな(たしかに時間かかったら囚われた人たち可哀想ォだもんね)」
「清清しいぐらいに本音と建前が逆転してるね。一周回ってそれが正しいのかもしれないが」
縁貴は心の底から残念そうだった。なんなら自分が運動させられることよりも、誰か全くわからない人を連れてこられないことのほうがずっと残念って感じの顔だった。やめたげてよぉ!
さすがの縁貴も、トヲルと鴇がガッションガッションガキンガキンと次々に器具を爆発させているのを見たら、自分だけ働かないわけにもいかない気分になってくる(あとさっきから
同胞を求めるような逢真の視線がいつも以上に怖い)
「此の機械ってさ、一般的な人間仕様なんだよね?」
「そうだな。さすがに動物用のはないと思うが……」
「よし。じゃあちょっと莫迦になるわ。帅哥たちにかみさま、迷惑かけたら
对不起」
というや否や、縁貴はどろりんぱと二倍近い大きさの虎獣形態に変じた。
そしてトヲルが運んできたトレッドミルにひらりと降りると、のほほんとアホ満開な表情でドタタッドタタッ! とすげえ肢音させながら走り始める!
「あ、兄さんずッけェ! それインチキだろ!」
逢真が非難がましく言うが、
頭園児になってしまった縁貴は気にしない。はしるのたのしー! って顔でドタタタと忙しなく全力疾走している。あっという間に煙を噴き上げるトレッドミル!
『ピガガガー! 負荷につき爆発ドスエ』
KA-BOOOM!! 縁貴は爆発の勢いで隣の器具に飛び乗りさらに走る!
「うおーやーさんすげー! 俺も負けてらんねー!(超高速スクワット開始)」
「白いのが
拷問かけてくるゥ……」
「仕方ない、ここは逢真君のぶんも俺が倍運動しよう。行くぞ!(超高負荷ウェイトトレーニング開始)」
トヲルの器具爆発! 鴇の器具爆発! 爆発爆発爆発爆発!
「旦那も白いのも虎兄さんもポンポン爆発すンなァ。景気いいなァ」
逢真のヨガマットは特に爆発していなかった。そして陽の気を放射させられ続ける逢真だった。
やがてちのうしすうが合計で10くらいしかなさそうなフィジカルトリオの無双により、最後の器具が爆発! KA-BOOOM!!
「よっしゃー! これでおしまい! あとは救助するだけだねー!」
「いい運動になったな。こういうのも悪くない」
「……ふ~、依頼の早期解決を考えてる俺、偉いな~! 帅哥たちも
大家辛苦了!」
人型に戻った縁貴は比較的爽やかに笑った。なんだかんだ、身体を動かすとスッキリするものだ。
「さあ、そろそろ行くぞ逢真君。……逢真君?」
鴇は何気なく振り返り、動かない逢真を見て訝しんだ。
「かみさま? かみ……し、死んでる!」
「天丼かよトヲル帅哥! もうあとさっさと帰って終わらせるだけなんだからそういうのい……ほ、ほんとに死んでる……!」
逢真は真っ白に燃え尽きていた。別に自分は運動していないのに、見ているだけで受動喫煙ならぬ受動運動(もしくはもらいゲロならぬもらい運動)で体力が尽きたらしい。貧弱ここに極まれり。
消費期限が尽きたのでサラ~っと砂に崩れていく元逢真の肉体を見て、3人は苦笑を浮かべた。こういう日もあるものだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
紫崎・宗田
【元ヤン組】
※元ヤンで元傭兵なバーバリアン
運動だとよ
お前自信は
んなもん決まってんだろ
余裕だな
持ち前の怪力と気合いでどんな運動もそつなくこなす
腕っぷしは百トン程度までは軽々と持ち上げる程度
とりあえず、適当にぶっ壊してまわるぞ
2人で分担して破壊活動
俺は元々格闘技もやってたからな
触ったことのある器具も多いが…
そういや鉄馬の筋トレ見たこと無ェが、わかんのかあいつ
案の定か…
お前いつもどうやって筋トレしてんだよ
なるほど
たまにどこぞの大木持ち歩いてんのはそれか?
俺の部屋ならいつでも来い
色々持ってっから、貸してやるよ
万一周囲に一般人がいるなら
つい器具の使い方に口出したくなっちまうかもな
そのやり方は腰痛めるぞ
不知火・鉄馬
【元ヤン組】
※元ヤンで元傭兵なドラゴニアン
そういうお前はどうなんだ
余裕だな
服の上からだと細身に見えるが怪力度合いは宗田と大差無い程度
了解
なら俺はまずあっちからな
とはいえ俺は普段こういう器具を使って鍛えてるわけじゃねぇから
動作に詳しいわけじゃないんだよな
形状で大体の判断は出来るだろうが
形からどうしても見分けがつかないものは素直に聞くか
なぁ宗田、これどうやって使うんだ
どう……その辺にあるもの使って適当に、だな
(特技は片手親指逆立ち腕立て(重り付き))
お、いいのか?助かる
……普通とは違う使い方してるとはいえ
壊れるの早くねぇか
もし一般人が周囲にいるなら
全部片付いたら正しい鍛え方を教えてやってもいい
●運動で一番大事なコト
「いまさらだけど、お前自信は」
「そういうお前はどうなんだ、宗田」
不知火・鉄馬に逆に問われ、紫崎・宗田はムッと眉根を寄せた。
「んなもん、決まってんだろ」
「なら、俺の答えもわかってんじゃねえの?」
ふたりはそう言って……揃って、悪童めかしてニヤリと笑う。
「「余裕だな」」
宗田と鉄馬。いかにも不良って感じの、実際元ヤンな二人組。
ご多分に漏れず、ふたりのフィジカルはまさしく生命の埒外だった。
猟兵にも様々なタイプがいる。魔法を使ったり機械に頼ったり。
そういう連中の戦い方が悪いとは、ふたりは言うまい。
確かなのは、ふたりはそういうやり方でなく、ヤンキーであった頃から傭兵であった頃から、ずっと拳と身体と得物で生き抜いてきたということ。
「とりあえず、適当にぶっ壊して回るぞ」
「了解。なら俺はまずあっちからな」
ふたりは左右に分かれ、目についたトレーニング器具を使うことに。
が、いざトレーニング開始という段になると、鉄馬の様子がおかしい。
おかしいというか、マシンを様々な角度から眺めたり、それっぽいとこをいじったりしている。
「……なぁ宗田、これどう使うんだ?」
「だろうと思ったよ」
宗田はある程度予想していたらしい。
というのも、身体が資本であるからには当然トレーニングを積むことも多いふたりだが、宗田は鉄馬の筋トレ風景を見たことがないのである。
なので、そもそもこの手の器具に触れたことがないんじゃないか、と薄々予想していたというわけだ。
「なんだよ、予想してたなら説明しといてくれてもよかったのにな」
「もしそれでアテが外れてたら、めちゃくちゃ失礼だろ普通に」
「まぁ、たしかに。……っつーか宗田、なんで知ってんだ?」
今度は鉄馬のほうが疑問を持った。
「そりゃお前、格闘技やってりゃこういうのは触るもんだしな」
「ふーん、そうなのか」
あっさり答えが返ってきたので、鉄馬はそっけない声で言った。
「……つーかお前、いつもどうやって筋トレしてんだよ」
「どう、って」
鉄馬は腕を組み、片手を顎に添えて考える。
「……そのへんにあるものを使って適当に、だな」
「適当に、って……もしかして、たまにどこぞの大木持ち歩いてんのはそれか?」
「おう」
大木は持ち歩くものではない気がするのだが、ふたりのフィジカルレベルからすると、お買い物のエコバッグと同じぐらいの意識らしい。怖い。
「なるほど。じゃあ今度からは俺の部屋に来いよ。色々持ってっから、貸してやるよ
「お、いいのか? 助かる。場所探すのも毎回だと面倒だったしよ」
なお、その鉄馬の「筋トレ」というのは、大木をバットみたいに振り回したり、重り代わりに乗せた状態で片手親指一本で逆立ち腕立てしたり、平成の少年漫画の修行シーンみたいなことになっている。怖い。
「で、ここをこうして……このハンドルを握って引っ張るんだよ」
「あー、なるほどな。で、これをこうするわけだ」
鉄馬が軽くアタッチメントを引っ張ると、高負荷のケーブルが張り詰めギチギチといった。なお、設定負荷はオリンピックの重量挙げ選手ですらかくやというレベルだ。
「そうそう。じゃ、改めてやるか」
「よし。少しは筋トレになっかな」
ふたりはそれぞれの器具を使い始める。宗田のほうも宗田のほうで、設定限界めいっぱいに運動負荷を上げ、いきなりスパートをかけるシンプルさだ。
猟兵らしい体力お化けが相手では、一般人を苦しめるために生み出されたトレーニング器具(苦難のすがた)が耐えきれるわけもない。
「52、53……」
『ピガガー! 高負荷により爆発します』
KBAM!! 特に機械を搭載してないはずのケーブルマシンが自爆した。何故?
「……普段と違う使い方してるとはいえ、壊れるの早くねぇか?」
「こっちもだ。いつもの速度で走る前に火ィ噴いちまった」
と、このようにして、触って数分以内に爆発していた。
まるで、触れるものをすべて壊してしまう不器用な巨人のようだ。ふたりに自覚がないのがなおさら怖い。まあ人命救助なのでそのほうがいいのだが!
と、こんな感じのペースで次々に破壊し終えたふたりは、あっさりと迷宮を突破し、最後に囚われていた人々を救い出した。
「ありがとうございます! これで家に帰れる!」
「閉じ込められてたぶん呑むぞー!」
「こたつでみかん食べるぞー!」
肝心の一般人は怠惰宣言全開だった。反省という文字はないらしい。
「おう、無事でなによりだぜ。けど……なあ鉄馬、どう思う」
「俺も同じこと考えてた。ちょうどいいんじゃねえか?」
「「「?」」」
なにやら意味深な会話をするふたりに、首を傾げる色々油断した体型の皆さん。
「またこういうことになっちまわねェように、運動のやり方ってのを教えてやるよ」
「「「えっ
!?」」」
「変なやり方すると身体ぶっ壊すっつーもんな。軽く(※ふたり基準)鍛えとこうぜ」
「「「ええっ
!!?」」」
ふたりは純粋な善意で言っていたが、一般人たちは苦難以上の地獄(※ふたりにその気はなくとも怠惰の極みで運動不足だったので)が待っていることを察し、汗をダラダラ流した。
「いや~気持ちは嬉しいですがご遠慮」
「そもそも助けに行った時、姿勢が間違ってたんだよ。あのやり方は腰痛めるぞ」
「もうインストラクションモード入ってる!!」
「ついでに宗田んとこの器具試しに使うのもいいしな。じゃ、行くか」
「アイエエエ! アイエエエー!?」
悲鳴は遠ざかっていった。自業自得だし健康になることはとてもいいことなので、誰も助けなかったからである。
その後、救助された皆さんはしばらく続く筋肉痛と引き換えに、きちんとした運動のやり方を(身体で)マスターしたそうな。
今年の金沢の健康指数はちょっぴり上がるかもしれない。ちょびっとだけだけど。
大成功
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