●花神の里
仙界、桃源郷には花神の里と呼ばれる美しき地が在る。
常に四季折々の花が咲き誇る、仙界の中でも有数の秘境。
其れと同時に、花を司る仙人や花神達が集う地でもあった。
――ふわり、桃色の花弁が舞う境内の庭園で。
ひとりの少女が東屋の長椅子に腰を下ろし、熱心に竹簡へと眼を通していた。
『――紅花(ホンファ)、どうです? 鍛練のほうは、』
不意に自分の名を呼ばれ、少女はわわっと小さく声をあげる。
視線を向ければ、花神の女が柔く微笑み小首を傾げて此方を見つめていた。
『……啊、はい。ええと。何とか、進んでいます』
紅花は少し言葉を濁しつつも、心配させまいと相手へ精一杯の笑顔を返す。
『なら良いけれど……。解らないことがあれば聴いて頂戴ね?』
そう言い残し、花神の女を見送った紅花は小さく息を洩らした。
『わからないこと、かあ……。花の言葉なら全部わかるのだけど』
紅花は椅子から腰を上げ、東屋から伸びる欄干にそっと手を置いた。
――自分は、この地で生まれてずっとこの地で育ってきた。
その出世故か、花と対話する力が元来備わっていたけれど。
それ以外の知恵や能力は何もなかった。
『花神……仙人の修行って大変。ね、玲玲(リンリン)?』
紅花が喚ぶように声を掛ければ、傍らに一匹の仔龍が舞い降りて来て相槌を打つように小さく鳴いた。
この地に生まれた者として、花神と成るのは当然。それに不満は全く無い。
――けれど、
『外の世界がどんなものか、一度自分の目で見てみたいな……』
ふと過ったその想いを紅花は蒼い空に向けて零してしまい、はたと我に返る。
(『な、何考えてるのかしら。まだ修行中の身なのに
……!』)
ぺしぺしと自身の頬を手で抑え、雑念を振り払った少女はひらりと絹衣を翻す。
『さ、玲玲!修行の続きをしに行きましょう!』
花神の見習い少女と仔龍は、ふわりと花舞う桃源郷の奥地へと飛び立った。
●願いの行方
「皆、集まってくれてありがとう。今回の依頼は、少々厄介なものなのだが……」
そう切り出した、ノヴァ・フォルモント(月蝕・f32296)は集った猟兵達に向けて事の概要を話し始める。
「これから皆に向かって貰いたいのは封神武侠界。けれど敵はオブリビオンではなく、エリクシルなんだ」
エリクシル――。
聞き馴染みのない者も、中には居るかもしれない。
先より発見された、”悪しき未来”を破壊する超人、”エンドブレイカー”達の世界に巣食う敵。
それが、万能の魔神、エリクシルだ。
魔神エリクシルは全員が”生命体の願いを叶える力”を有する、然しその願いは歪められ、願った者が意図しない悪しき未来を引き起こす。
このエリクシルは、本来彼等の世界特有の敵だったはずだが、今回のように他世界への侵攻も目論んでいるようだ。
「……まあ、俺達のやるべきことは何も変わらない。相手がオブリビオンかエリクシルか、ただそれだけの違いだ」
そして今回、エリクシルが現れると予知出来たのは封神武侠界の仙界。
花神の里と呼ばれる桃源郷のひとつ。
どうやら其処に住む、一人の少女の願いにエリクシルが目を付けたらしい。
「その子の願いは……『外の世界を見たい』というもの」
でもそれは、少女が間際に過った細やかな願望。真に叶えたい願いではなかった。
然しエリクシルが遠く異世界から、その願いを掬い上げてしまったのだ。
当然、エリクシルは少女の願いを歪ませ叶えようとする。
――少女が外の世界を見るために、『この世界を壊してしまえばいい』と。
引き寄せられた悪しき未来は、少女が見る世界の全て。即ち、花神の里の破壊。
そしてエリクシルは既に里へと入り込み、周囲に覚られる事なく潜んで機を伺っている状態だ。
当然、里の者達も誰一人としてそれに気付いていない。
このまま放置すれば、悪しき未来は確定されたものになってしまう。
「……そんな結末を迎えさせるわけには行かない。皆の力を貸して欲しい」
ノヴァは集った猟兵達を改めて見返し、静かに目を伏せた。
朧月
こんにちは、朧月です。
封神武侠界の桃源郷に潜むエリクシルの討伐依頼です。
どうぞよろしくお願い致します。
※此方のシナリオは、舞台は封神武侠界、
シナリオ内容はエンドブレイカー!のフラグメントになっております。
●第1章『花舞う結界』(冒険)
花に纏わる過去の幻影が行く手を遮ります。
それはいい思い出かもしれないし、悪い思い出かもしれません。
幻影を振り払い、花吹雪の結界を突破してください。
●第2章『薄明逍遥』(日常)
無事に花神の里へ到着すれば、穏やかな花の桃源郷が広がっています。
のんびり散策したり花見をすることも出来ますし、
里に潜むエリクシルの情報を集めることも出来ます。
プレイングは何方かに絞って書いていただくことをオススメします。
●第3章
『???』(ボス戦)
里に潜んでいたエリクシルが本性を表します。
2章での情報収集に成功していた場合、追加の冒頭が挟まります。
※情報収集が十分でなくとも、戦闘で猟兵側が不利になる事はありません。
●NPC『紅花(ホンファ)』
花神の里で生まれた羽衣人の少女。ふわふわの桃色髪に赤い瞳。
性格は明朗快活で花が大好き。虫がちょっぴり苦手のようです。
花神見習いとして、里に訪れた者の案内役を務めています。
傍らには常に紅い仔龍の『玲玲(リンリン)』が居ます。
紅花とは家族同然のように育った姉妹のような関係です。
●進行・プレイング受付について
マスターページ、シナリオタグでご案内します。
お手数ですが都度ご確認いただきますようお願いします。
●共同プレイングについて
同伴者はご自身含めて3名様まで、でお願いします。
【相手のお名前(ID)】or【グループ名】をご明記ください。
送信日は可能な限り揃えていただけると助かります。
●再送について
ご参加人数によっては再送をお願いする場合があります。
再送対応OKだよ、という方はプレイング冒頭に◎を記述してください。
プレイングが戻ってきた際は同日24時までに再送をお願いいたします。
以上です。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。
第1章 冒険
『花舞う結界』
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POW : 花と往く
SPD : 花を見る
WIZ : 花と知る
👑7
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仙界に在る花神の里は、花舞う結界で護られていた。
雪積もる険しい山の谷間に沿って進むと、やがて花吹雪が行く手を遮るように吹き荒れる。
訪れるもの全てを拒むように、結界は征く者へ幻惑を見せるのだ。
―花の影に、何かが見える。
―花の香に、記憶が呼び起こされる。
それは見知った花の花弁や、香りかも知れない。全く知らない花かも知れない。
花弁が視界を覆い、身体に纏わり付く。
まるで腕を、足を掴まれて、この先には往かせないと留まらせるように。
それでもこの結界を抜けなければ、花神の里へは辿り着けない。
徳川・家光
詳細は朧月マスターにおまかせします!
基本的に「羅刹大伽藍」による力仕事か、名馬「火産霊丸」を召喚し、騎乗技能を駆使した早駆けを利用したスピード勝負を得意としています。
また、冒険では「鎚曇斬剣」をよく使います。頑丈で折れにくいので、鉈や斧、岩盤に打ち込むくさびの代わりに重宝しています。
他には「念動力」技能で離れた場所の物体を動かして驚かせたり、ロープを浮遊させて対岸にくくりつけたりできます。
嫁が何百人もいるので色仕掛けには反応しません。また、エンパイアの偉い人には会いません(話がややこしくなるので)。
普段の一人称は「僕」、真剣な時は「余」です。
あとはおまかせ。よろしくです!
●花紅葉
封神武侠界は冬の凍てつく寒さに包まれていた。
雪の白に染まる世界に、紅い焔が揺れる。
仙界に在ると云う花神の里へ向かうべく、徳川・家光(江戸幕府将軍・f04430)は彼の名馬、火産霊丸に跨がり颯爽と雪道を駆け抜ける。
(「エンパイアの冬の寒さも厳しいけれど、此の地は一段と深い冬模様ですね……」)
それは仙界への通り道、険しい山中だからなのかもしれないが。
凍てつく空気が家光の頬を掠めれば、思わず寒さで縮こまり、首に巻く白布を口元まで手繰り寄せた。
(「……けど、僕には火産霊丸が居てくれてよかった」)
火産霊丸はその名の通り、焔を纏う雪のような白馬だ。
その白き気高き姿は、まさに火の神の如く。
鞍や手綱の様に身に着ける焔の馬具は勿論、家光が触れても彼自身が燃えることは無い。
寧ろその暖かさが此の場においては別の意味で助けとなっている。
焔の籠る手綱を握りしめながら、ふと家光は視界の異変に気付く。
冬の空に舞う白い雪とともに、舞い散る朱。
それは次第に数を増し、何時しか視界に降る雪は朱と橙に塗り替えられてゆく。
(「――これは、紅葉?」)
はらはらと舞う花弁のように、風に吹かれるのは色鮮やかに染まった紅葉の葉だった。
何故こんな場所で、と葉を一枚捕まえてみれば、家光の中に呼び起こされる記憶。
故郷、エンパイアに在る山々は秋になると美しい朱色に染まる。
活気溢れる城下の町並みに、遠く望む山の彩り。
それを自らの城の天守閣より一望する、その僅かなひと時を家光は気に入っていた。
多忙ゆえ、のんびりと浸れる事は殆どなかったけれど……。それでもふとした瞬間に感じる故郷の美しい景色。
心の裡で想えば、眼の前の幻影もそれに合わせるように歪んでゆく。
エンパイアの、秋の美しい景色へと。――けれど。
「本物は、もっともっと綺麗ですよ。まぼろし等には騙されません……!」
家光は掛け声とともに手綱を強く引き、火産霊丸と幻影の景色の中を勢いよく駆け出した。
大成功
🔵🔵🔵
バレンティン・レルマ
封神武侠界の桃源郷、まるで絵画の如く美しい場所ですね。
この様な場所に住んでいても、やはり外の世界は気になるか……。
久々の依頼ですからね。
気合入れて、若人の輝かしい未来を守りに行きますか。
俺の花に纏わる過去の想い出、ですか……。
エンドブレイカーの世界にて旅団員達と依頼で行った、百年に一度の桜でしょうか。
あの美しさには不思議と心が洗われたものです。
俺にも桜を愛でる感性があったのだと、思ったのと同時に、
誰かと過ごす時間を心地良いと感じた幸ある時間でしたね。
……。今は少し、哀愁すら感じますが。
囚われ過ぎるのも性に合わない。
指定UCを発動します。
過去を生きるのではなく、今を生き、そして楽しまなくてはね。
●想い出桜
さく、さくりと雪を踏みしめて。
久方振りの依頼へ意気込み新たに、バレンティン・レルマ(戦商人・f39008)は、ふぅと白い息を零した。
雲海と樹氷、聳える山々。まるで山水画の様な風景に密かに心躍らせて。
尚美しいとされる仙界の桃源郷とは一体どの様な場所なのだろうかと、初めて訪れる地に思いも馳せた。
(「然しこの様な場所に住んでいても、外の世界は気になるか……」)
美しい景色の中を歩みながら、過ったのは転送前にグリモア猟兵から聴いた話だった。
冒険商人として各地を旅してきたバレンティンとは謂わば全く逆の境遇に置かれている少女。
その少女の未来を守るため、”エンドブレイカー”としてバレンティンは徐々に険しくなる雪道をひたすらに突き進んでゆく。
そして突如、凍てつく雪が収まったかと顔を上げれば、バレンティンの視界に薄紅の欠片が舞った。
(「――この花弁は、桜か
……?」)
思わず手を伸ばせば、ふわりと優しく、ひとひらの桜の花弁がそっと掌に収まった。
吹けば飛び去ってしまう、儚い感触もまるで本物のようで。
(「……旅団員達と依頼で行った、百年に一度の桜を思い出しますね」)
心の裡でそう呟けば、目の前に広がる桜吹雪。
故郷、エンドブレイカーの世界で仲間達と共に見上げた月夜の桜だ。
あの美しさには不思議と心が洗われた。
そして自分自身でも気付かなかった、何かを愛でる感性に。仲間達と、誰かと共に同じ時を過ごす心地良さや幸福感にも満たされて。
桜の想い出は、バレンティンにとってはそんな幸せな記憶が詰まった花だった。
……けれどそれは、全て過去のこと。
あれから時が過ぎた今では少し、哀愁も感じてしまって。
バレンティンは視線を落とすと、ふるりと小さく首を横に振る。
(「囚われ過ぎるのは、俺の性に合わないな」)
掌の桜の花弁をそっと放し、代わりに手にしたのはポケットから取り出した小さな金貨。
空へ向かって、ピン。と指で弾けば、クルクルと回転しながら金色が桜吹雪の宙を抜けて駆け上がる。その金色の輝きが、幻惑の桜吹雪を消し去ってゆく。
――過去は全て想い出の中に在る。
自身が存在する今を生き、そして楽しまなくてはね。
大成功
🔵🔵🔵
冴島・類
◎
【白夜】
万能の魔神に
ささやかな願いが歪められるなど
止めたいからね
花神さん達の里楽しみだね
花の力を使う仙人さん、かな?
歩みを進めていると
不意にはらり舞う花弁
それは、過去に焼かれ
かつてと同じは見ること叶わぬ故郷の山桜
懐かしい…
けれど、囚われるより先に
隣のリティに伸ばした手を繋ぐ
幻惑を共有できないかな
君の心に根付く景色を知りたい
これが、リティの生まれたくに?
歌う薔薇達が楽しげで
幻が重なれば
まるで共に育てる庭園の先を垣間見るよう
懐かしさは胸を締めつけるが
自分達で紡ぎ
未来で見たい欲が強まったと笑い
君が呼ぶ風の力で身体が軽くなる
嗚呼、息がしやすい
僕は結界術と封印を解く術の応用で
魔力を周囲に流し、解きたい
城野・いばら
◎
【白夜】
愛称:リティ
万能でも…
願うコの想いを歪めてしまうなら
それは押しつけでしかないから
ええ
花神さんってどんな方かしら
魔女とは違う?
お花を慈しむコの里…
考えてたら頬を擽る花弁
あら?
目の前には失った筈の、故郷の薔薇園
お喋りで彩鮮やかなきょうだい薔薇達が歌う光景
花の記憶
それは私には育った記憶で…
彼に手を引かれて、はっと
握り返し隣を見て
景色が、また広がる様子に
わぁ
いつか見たかった
彼の山桜さん
…綺麗で、優しいお顔をしているの
その下でそよそよ揺れるきょうだい薔薇達
それは夢見る
白夜の未来の姿
笑う彼に頷き返し
トロイメライで浄化の風を紡ぐ
幻影から二人を護るオーラ防御に
想いを、あなたの術を導に
さぁ進みましょう
●花かさね
眞白の雪、足跡かさね。
花咲く桃源郷へと征く白の世界に、ふたつの影。
「花神さん達の里、楽しみだね」
深々と降る雪をときおり目で追いながら、冴島・類(公孫樹・f13398)は傍らで共に歩む彼女へふわりと零す。
「ええ、花神さんってどんな方かしら。魔女とは違う?」
自身も花だからと、城野・いばら(白夜の魔女・f20406)は花神の存在に少し興味が湧いてしまって。
「うーん。花の力を使う仙人さん、かな?」
類の言葉に、いばらは花緑青の瞳をぱちりと瞬かせる。
「花のちから……。お花を慈しむコの里、なのかしら」
どの様な景色が広がる場所なのだろうと想像を膨らませれば、視界にふわりと、見知った花びらが舞い降りる。
「……あら?」
それは、薔薇の花弁だった。けれど自分からこぼれ落ちたものではない。
視線を上げれば、いばらの目の前には失った筈の故郷の薔薇園が広がっていた。
――美しく佇む不思議の国の城。
燦々と陽が差し込む緑の庭園で、色鮮やかに着飾ったお喋りなきょうだい薔薇達が、愉しく賑やかに歌を奏でている。
懐かしい花の香り、花の記憶。
それは、白薔薇が育った記憶。
……そう、私はこの場所で……。
「――リティ」
名を呼ばれ、手を引かれて。いばらは、はっと現実へ舞い戻る。
「類……? そっか、今のは花びらが見せた、まぼろしなのね。……懐かしい、故郷の光景が見えたの」
「君も?うん、僕も見えたんだ。懐かしい故郷の山桜が」
類のそれは、過去に焼かれ、嘗てと同じ姿はもう見れることが無いと思っていたけれど。
手を伸ばせば、直ぐにでも触れられそうな春色が視界に広がっている。
けれど懐かしさに囚われる前にと、伸ばした手は隣の白薔薇のもとへと繋がれていた。
「……この幻惑を、共有できないかな。君の心に根付く景色を知りたい」
共有?といばらが小さく首を傾げて類を見上げれば、ひらひらと舞う小さな花弁。
「……わぁ!」
視界に新たに広がる景色は、春の柔らかな空気だった。
風に揺れる満開の山桜に囲まれるようにして建つのは、小さな社。
「ここが、類の故郷なのね?あなたの山桜さん、いつか見たいと思っていたの」
きらきらと咲ういばらの表情に、類は嬉しそうに目を細める。
「ふふ、それなら良かった。――僕にも、リティの生まれたくにが見えるよ」
緑の庭園で、愉しげに音を刻む色鮮やかな薔薇たちの姿が。
そうして、互いの記憶を重ねれば。見えるまぼろしも重なって。
柔らかな山桜の樹の下で、そよそよと揺れて歌う不思議の国の薔薇たち。
それはふたりが共に育て夢見る、白夜の庭園の未来のようだった。
焼けて、喪った懐かしい故郷の花には胸を締め付けられるけれど。
それ以上に、二人で共に描く花の景色を、自分達で紡ぎ未来で見てみたい。
――そう、気付かされたと。類は小さく笑って。
いばらもそれに微笑みながら頷き返した。
「さぁ、進みましょう。ふたりで」
「うん、リティ」
いばらが魔法の紡錘トロイメライで浄化の風を紡ぎ出す。
それに合わせて、類も結界術を解く要領で魔力を周囲に解き放った。
二人のちからが重なり、合わされば。
懐かしい花の記憶たちはゆらゆらと綻び、解けていった。
故郷の鮮明な記憶は、心の裡に大事にしまったまま。
紡ぐ未来は、白夜の庭園に託して。
大成功
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真宮・響
夫の律(f38364)と参加
ふむ、外の世界を見たい、か。アタシ達家族は猟兵として戦い始めるまでダークセイヴァーの荒れ果てた暗闇しか知らなかった。去年の夏に世界に還ってきたばかりの律は外の世界は眩しく見えたそうだ。そう思うと、気持ちは分かる。
律と歩けば見えるのは暗い月夜に映える忘れな草の花畑。このダークセイヴァーに花畑は珍しい。忘れな草の花言葉も律に教えてもらった。
でもこの風景は最早過去だ。今アタシは家族と共に光溢れる世界を歩いている。口ずさむのは赫灼のグロリア。歌と共に花畑に別れを告げるよ。愛する夫と共に。
真宮・律
妻の響(f00434)と参加
外の世界を見たい、か。魂人としてこの世界に戻ってくるまで、俺はいつまでも暗闇で、荒れ果てたダークセイヴァーしか知らなかった。光溢れる世界を知ったのは去年の夏だ。胸に積まされる話だな。
響の傍で歩いてると暗い月夜に映える忘れな草の花畑。ダークセイヴァーに花畑は珍しいので、記憶に強く残ってる。そういえば、忘れな草の花言葉を響に教えてな。
まあ、この花畑は最早過去だ。ようやく最近そう思えるようになった。さあ、戻ろうか。光溢れる世界へ。白銀の行進曲と共に響と先へ進む。
●常闇の花畑
「……ふむ、外の世界を見たい、か」
ふぅ、と白い吐息を零しつつ。
真宮・響(赫灼の炎・f00434)は雪の舞い降る天をそっと仰いだ。
「アタシ達家族は猟兵として戦い始めるまで、ダークセイヴァーの荒れ果てた暗闇しか知らなかったからね。……そう思うと、別の世界を見たいという気持ちも、少し分かる」
常夜の限られた世界の中で見る、薄闇の空。
太陽の無いあの地から抜け出せたら、一体どんな光景が広がっているのだろうかと、当時は思わず過ることもあっただろうか。
「律も今なら、そう思うんじゃない?」
傍らに歩む夫に声を掛ければ、真宮・律(黄昏の雷鳴・f38364)も小さく頷きつつ振り返って。
「……そうだな。俺は魂人としてこの世界に戻ってくるまで、あの暗闇しか知らなかったしな」
家族と共に、澄んだ空を見上げる日々が来るとは、自分自身も考えに及ばなかった事だった。
律が廻り廻って、またこうして家族の元に舞い戻ってきたのも、様々な因果が働いた結果なのだろう。
今は改めて、この幸運に感謝をしているのかもしれない――。
そんな律の横顔を見上げ、響も嬉しそうに目を細めた。
何より、愛する夫とまたこうして共に在れる幸せを一番に感じていたのだから。
そうして雪降る白い景色の中、歩みを進める二人の脚がふと止まる。
「……律、これは、」
先程まで白く明るかった視界が、揺らめきながら徐々に薄闇を帯びてゆく。
歪んだ視界から現れたのは、嘗て自分達が居た常闇の世界の光景。
「ああ、どうやらコレが幻惑ってやつなのか……」
里に巡らされた結界に因るものだと聞いては居たが、律は反射的に身構える。
やがて二人の視界は完全に常闇の夜に覆い尽くされた。
闇に浮かぶ、大きな月。
その下に広がるのは――、花畑だった。
「此処は……、忘れな草の花畑、か」
響が思わず一歩踏み出せば、月明かりに照らされた瑠璃色の花の絨毯が夜の風にさやさやと揺れ動く。
陽の光の無いあの世界で、抑々花は珍しい存在だ。
こうして広く群生しているのは特に稀で、だからこそ二人の記憶にも強く残っていたのだろう。
「……そういえば、律に忘れな草の花言葉も教えてもらったっけ」
「ああ、そうだったな。まだ覚えているか?」
それは勿論、と。響は律に向かって微笑んだ。
花言葉の通り、互いが互いを忘れ事など、なかったのだから。
「でもこの風景は最早過去だ、今アタシは家族と共に光溢れる世界を歩いている」
「……そうだな、俺もようやく最近そう思えるようになった」
二人が出会ったあの頃の記憶が消えることは無いけれど、再び共に歩めるようになった今ならば、過去に囚われる事など決して無い。
言葉にせずとも伝わるように、夫婦は互いに小さく頷いた。
共に奏でるのは瑠璃色の花畑に別れを告げる歌。赫と白の旋律が折り重なり、響き渡る。
――舞い戻ろう、光溢れる今の世界へ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 日常
『薄明逍遥』
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POW : 周囲を散策して過ごす
SPD : 花を愛でながら過ごす
WIZ : 東屋でのんびりと過ごす
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●花の桃源郷
凍てつく雪の中、幻惑の花吹雪を抜け、仙界に繋がると云われる洞穴を潜る先。
猟兵達が辿り着いたのは仙界、花神の里。
人界の冬の寒さとは裏腹に、花の桃源郷は穏やかな春の陽気に包まれていた。
宵空に薄紅交る薄明の空には、細い弓なり月が静かに佇む。
蓮が咲く美しい庭園の池に浮かぶのは、荘厳な造りの東屋。
そして、空に舞う桃源郷の桃の花弁。
その桃色は視界の遠く何処迄も、続いているようだった。
美しい景色に思わず脚を止めていれば、天からふわりと一人の少女が舞い降りる。
『あら……?』
猟兵等を見た少女は一瞬、眼を丸くして驚いたような声を上げたが、慌てて口元を手で覆う。
『……啊、ごめんなさい!一度に何人もの方がこの里を訪れるのは珍しくて、少し驚いてしまって』
改めて少女は猟兵等に向き直ると、手を胸の前で組み、軽く頭を垂れた。
『――ようこそ、花神の里へ。わたしは紅花(ホンファ)と言います。この仔は玲玲(リンリン)』
傍らの紅い仔龍に目配せしつつ、紅花は花咲く笑みを零す。
『あなた方は……修行に来られた、という感じでは無さそうですね。人界から迷い込んだのでしょうか?』
紅花は興味津々と外の世界の住人である猟兵等の姿に、赤い瞳をきらきらと輝かせた。
『理由はどう在れ、この里は来るものを拒みません。どうぞゆっくりしていってくださいね』
少女の招きで、猟兵等は花神の里へ足を踏み入れる。
そよそよと暖かな風が頬を撫で、聴こえるのは穏やかな風の音。
ときおり目にする人影も疎らに。
誰一人、此の里に潜む不穏な影には気付いていないようだった――。
********
●マスターより
この章では主に以下2つの行動が出来ます。
プレイングはどちらかに絞っていただくことを推奨します。
①…里を散策、花見を楽しむ。
花神の里には汎ゆる世界の花が在ると云われています。
この世界ゆかりの花でなくとも、探せば貴方が見たい花が見つかるかも知れません。
また、里の案内はNPCの紅花に頼めば快く引き受けてくれます。
②…エリクシルに関する情報収集。
里には紅花をはじめ、仙界の住人や花神、仙人などが疎らに居るようです。
彼等への質問等も可能ですが、彼等自身が識る事にしか答えられません。
声を掛ける具体的な人物指定があれば、可能な範囲で反映します。
※何れもPOW/SPD/WIZは行動例ですので、自由な発想でどうぞ。
詳細、説明は以上となります。
それでは、佳き時間をお過ごしください。
真宮・響
夫の律(f38364)と参加
この子が件の紅花か。まあ、外の世界から来る人すら物珍しそうだし、異界の服装をした夫婦連れだけってだけで凄いインパクトを与えるだろうから、エリクシルとか重すぎる事は出さないで置くか。実際、アタシも律もエリクシルを良く知らないしな。
ああ、花神の里だけあって生命溢れる花に満ちてる。律に取っては夢のような風景だろう。
紅花に案内を頼む。ああ、夫婦連れでね。夫は余り花の種類を知らないんだ。色々教えて欲しい
。・・・・デートだね、うん。体力には自信あるんで一杯歩き回っても大丈夫。
この子は玲玲と言うんだね。ああ、アタシも竜使いで相棒は紅い竜だ。まあ、この子より凄く大きいね。
真宮・律
妻の響(f00434)と参加
このお嬢さんが紅花か。まあ、人の事言えないが、この桃源郷で外の世界も見ずに大事に育てられたという感じだ。変わった服の夫婦連れだからそれだけでインパクト凄いだろうからエリクシルとか物騒な話はやめとくか。俺と響もエリクシルは良く知らないから。
ああ、隣の妻の言う通り、俺は余り花の種類を知らない。紅花に色々案内して貰えたら嬉しい。この里は俺にとって楽園そのものだ。
まあ、デートだな。うん。紅花には珍しいか?まあ、色々あったが、こうして無事に一緒にいる。一杯生命溢れる花の種類を教えて欲しい。
桃の花弁舞う景色の中、ふわりと同じ彩り纏う少女を先導に。
真宮・響(赫灼の炎・f00434)と真宮・律(黄昏の雷鳴・f38364)は周囲の光景を眺めながら緩りと里の散策をしていた。
互いにエリクシルに関しては詳しくないのも有り、紅花に里の案内を頼んだのだ。
「……さすが。花神の里だけあって、何処も生命溢れる花に満ちているな」
これだけの様々な花が咲く地、響自身にとっても珍しくて興味深い地だが、長い年月を常夜の世界で過ごした夫の律にとっては当に夢のような風景だろう。
「ああ、本当に。この色鮮やかさは少し眩しいくらいだ」
律も己の境遇を思い出し、今こうして妻と供に穏やかに花を愉しめることに、改めて幸せを感じていた。
そんな二人並んで談笑する姿に、案内をしていた紅花が振り返りふわりと微笑む。
『ふふ、御二人は仲がとても良いのですね』
「ん?……ああ、夫婦だからね」
響がそうサラリと告げれば、紅花はえっ!?と小さく声を上げて驚いて。
『そ、そうだったのですね。御夫婦……というよりも、恋人同士に見えたので』
ちょっぴり慌てふためく紅花の様子に、響と律は顔を見合わせて思わず笑みを零す。
「はは。まあ、デートだな。うん。紅花には珍しいか?……まあ、色々あったが、こうして無事に一緒にいる」
「……うん。デート、みたいなものだね」
律に次いで、響も横目に少し繕いつつ頷いて。
『でぇと……逢引みたいなものでしょうか?御夫婦でいつまでも仲良しなのはとても良いことだと思います!』
珍しい、と言う問いには。紅花はうーん、と顎に手を添えて思案をしながら。
『わたしは、羽衣人なので。仙界の果実から生まれたんです。なのでヒトが当たり前に持つ親という存在がまだよく解らなくて……』
それでも、書物や見聞で沢山勉強はしてるんです!と息巻いて見せれば、響と律も可愛らしい少女の様子に自然と頬が緩む。
「……ふふ、そうか。なら案内のお礼に、外の世界の話も色々と聞かせてあげようか?」
響の提案に、紅花はわぁっと紅い瞳を丸くさせて。
『御二人のはなし、ぜひ聞きたいです!……あ、の前にちゃんとご案内しなくちゃですね』
時間は十分あるからゆっくりで良いよ、と何方がとも無く諭せば、紅花も眉を下げて咲った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
桜彩・ユコ(サポート)
こんにちは、桜とお茶の時間が大好きな錬金術士のユコです
パンやお菓子なんかも自分で作ってるよ!
おいしいお茶とおいしいお菓子があればみんな幸せ、そんな世の中であればいいと思いません?
ゆるゆるっといこうよ 焦ってもいいことなんてないよ
ほらほら席について、おいしいお茶が冷めちゃうよ?
ふふっユコお手製のジャムも出しちゃおっと
ユコのおすすめは桃
おいしくできたんだよ
ユコは、指定したユーベルコードをどれでも使用するよ
他の猟兵に迷惑をかける行為と公序良俗に反する行動は一切しないよ
ユーベルコード、略してユコ(思案顔)…なんちゃってなんちゃって
あとはおまかせします
よろしくおねがいします
「わあ、ここが桃源郷……!」
視界いっぱい花溢れる光景に、桜彩・ユコ(桜彩る錬金術士・f38931)は桜色の瞳をキラキラと輝かせた。
思わず景色に見惚れていると、ユコの前にふわりと天からひとりの少女が舞い降りる。
波打つ桃色の髪に赤い瞳、天の羽衣と紅い仔龍を連れた姿は、宛ら天界からの使者のようで。
『――您好、ようこそ花の桃源郷へ。わたしは紅花(ホンファ)と云います、この仔は玲玲(りんりん)。よかったら、この里をご案内しますよ?』
ふわりと花笑む少女、紅花の姿に。ユコはぱあっと表情を煌めかせる。
「それじゃあ、案内お願いしちゃおうかな!……あ、私はユコ。錬金術士のユコです」
『ユコ、さんですね。わかりました、ご案内します。えっと、……れんきんじゅつし?』
紅花は初めて聞く言葉に小さく首を傾げつつも、ユコを里の奥へと案内してゆく。
二人が訪れたのは蓮が咲く美しい庭園の東屋。
ユコが自ら「ここが良いな!」と立ち寄った場所でも在った。
『ユコさん、そういえば大きな荷物をお持ちなのですね、それは……?』
紅花が気になっていたユコの鞄。心做しか甘い香りを漂わせている気もして。
「ふふ、紅花さんは外の世界に出たこと無いんだよね。だったら外の世界のお菓子もあまり知らないかな?」
道すがらの会話で紅花の境遇を軽く聴いたユコは、それならと自信満々に提案する。
「よーし、じゃあちょっとココでお茶しようよ!今用意するからね。紅花さんは座ってて!」
『えっ……えっ!?』
勢いに圧されてストンと椅子に着席した紅花と玲玲を他所に、ユコはティータイムの準備を始める。
鞄から取り出したのは、可愛らしいチェックのテーブルクロスに桜モチーフのティーセット、魔法の容器で出来たてホカホカなままのパンや焼き菓子、それにユコお手製のコンフィチュール。
『わ、わあ……!ユコさん凄いです』
広げたクロスの上に、テキパキとセッティングしてく様子に、紅花は驚きと感動の声を上げて。
「よし、出来た!それじゃあ、一緒においしいお茶を楽しもう。お菓子もいっぱいあるよ!」
魔法で沸かしたお湯をティーポットに注げば、紅花の識らない葉の芳がふわりと薫る。
ユコの淹れた紅茶と手作り焼き菓子、自慢の桃のコンフィチュールも添えて。
花咲く桃源郷の景色の中、ふたりの少女の楽しいティータイムが幕を上げた。
成功
🔵🔵🔴
バレンティン・レルマ
◎ ①を選択し、紅花に里の案内をお願いします。
警戒されても困るので、冒険商人として里を訪れたのだと話します。
純粋に里の人々の生活に興味がありますが、やはり花を拝見したいですね。
この里にしか咲かない花もあるのでしょうか?
しかし、紅花の外が見たい気持ちは理解出来る。
俺はアクスヘイムの下層都市の生まれです。
例えば今、紅花の上に広がる空を俺は見た事がありませんでした。
初めて見たのは夕焼け空で。
まるで全て焼かれた様に、視界も思考もクリアになった様な気持ちになりました。
……結局、拠点を構えたのは故郷でしたが。
紅花にも何時か必ず、外に触れる機会が訪れるはず。
焦らず、美しい故郷の魅力に気がついて欲しいですね。
一見すると長閑に見える此の場所に、既にエリクシルは潜んでいるらしい。
さて、どうしたものかと暫し思案した バレンティン・レルマ(戦商人・f39008)は、ちょうど独り通りかかった花神見習いの少女に声を掛ける。
「どうも。紅花、でしたっけ。よければ里の案内、お願いできます?」
下手に質問をして警戒や不安にさせてしまうのも困るだろうと、バレンティンは飽く迄も冒険商人として訪れた風を装うことにした。
『あ。はい、もちろん!何か見てみたい所はありますか』
声を掛けられた少女、紅花は寧ろ待ってましたと嬉しそうに案内役を引き受ける。
「見てみたい所……。そうですね、純粋に里の人々の生活にも興味がありますが。やはり花を拝見したいですね。この里にしか咲かない花もあるのでしょうか?」
『この里だけ、……かはわかりませんが。光る桃の枝がたまにあるんです。そういった樹には特別な精霊が宿っていたりするんですよね』
よかったら案内しましょうか?と微笑む紅花に、バレンティンは小さく頷き応えた。
案内される道すがら。そういえば、とバレンティンは紅花を横目で見ながら。
「紅花はこの里の外の世界を見てみたいと、思ったことは無いのですか?」
予知で知った事は敢えて隠しつつ、何気なく少女に話を振ってみる。
『……興味はあります。けれど、わたしはまだまだ半人前ですから。里を出る資格は無いんです』
へらりと眉を下げて困ったように咲う紅花の表情に曇りや陰りは無く、言葉通りに彼女の気持ちも確りと納得はしているようだった。その様子を見たバレンティンは少し安心したように口元に微笑を浮かべつつ、次いでぽつぽつと言葉を零す。
「……俺は、アクスヘイムの下層都市の生まれです」
『あくすへいむ……?』
初めて聞く言葉にきょとりと首を傾げた紅花に、そういった都市の名前だと軽く添えながら。
「俺の故郷では超高層の建築が当たり前でしてね。地上から空を突き抜けるほど高く、何層にも重ねられた街が積まれて巨大都市になっていると想像してくれたらわかりやすいです」
うぅん、と紅花はバレンティンの話に想像を膨らませつつ、頷き返しながら。
「なので。例えば今、紅花の上に広がるようなこの空を、俺は見た事がありませんでした」
『……空を?』
積み重なって出来た都市。その最下層ともなると、太陽の光は疎か、空も拝めなくなってしまう。
「……ええ、ですが。或る切掛で俺は下層から上がって、本物の空を見たんです」
――初めて此の眼で見た本物の空は、茜色に染まる美しい夕焼け空だった。
その瞬間、全てが赤く燃えて焼かれた様に。
自身の視界や思考も澄み切って、そして同時に世界の広さも知ったのだ。
「……まあでも結局、拠点を構えたのは故郷でしたが」
冒険商人として各地を放浪する旅に出ても、最終的に落ち着けたのはやはり生まれ育った地だった。
ふと紅花の赤い瞳がじっと自分を見上げているのに気付き、らしくなく自分語りし過ぎただろうかと、バレンティンは軽く頭を掻いて。
「紅花にも何時か必ず、外に触れる機会が訪れるはずです。その時は焦らず、美しい自分の故郷の魅力に気がついて欲しいですね」
この桃源郷の様な鮮やかな美しさとは違ったけれど、バレンティン自身がそうであったように。
『……ふふ、はい!覚えておきます。でもきっと大丈夫ですよ。わたしも自分の故郷、此の里のことが大好きですから!』
花のように笑む少女に、バレンティンは赤い瞳をそっと細めた。
大成功
🔵🔵🔵
冴島・類
◎
【白夜】
②情報収集
四季の花溢れる景色は麗らかで
危険の芽が潜んでるようには…見えないな
紅花さんと玲玲さんに拱手で挨拶
素直に僕らが猟兵なこと
郷に外界からの侵略者が紛れ込んだと
情報を得て来たので
調査に回らせてもらいたいこと話し
案内をお願いをしてみようか
この美しい郷のことや
花神さん達の日常も聞けたら良いね
花と話せる力…
リティと同じかな?
親近感湧くし交流も出来れば
聞くばかりでなく
彼女が気になったら僕らの駆けて来た世のことも
ふ、僕で良ければ幾らでも
紅花さんや花神さんに
最近郷で知らない花を見たり
見慣れぬ結晶を見かけたりしませんでしたか?と聞き込み
花が気付いてる可能性もあるだろうが
リティと彼女の友を頼れたら
城野・いばら
◎
【白夜】
愛称:リティ
②隠れん坊するコ探し
穏やかな風景は故郷に似ていて
陽気はお花にとても優しい
想いきり深呼吸し
うん…でも、物語はいつも突然
類と並んで拱手
出迎えてくれたアリス達、不思議そう
ふふっ、気持ちわかるわ
リティもそうだったから
ええ、隠さないとダメな事は無いから
お願いできたら
お話にもお花を咲かせたいね
私は茨だから植物同士お喋りできるけど
紅花もお花さん?
ね、修行って何をするのかしらって
聞きたい事も沢山だから
ええ、素敵
知りたい事をね交換しましょ
類は教えるのお上手だから
何でも聞いてね!と彼頼りに咲って
私は、植物と話す力とお友達と
植物さん達の噂話もチェック
最近変わった事や、虫さん達のご様子も伺えたら
「リティ、どう? なにか収穫はあった?」
「……ううん、こっちの方はめぼしい情報はなかったの。類は?」
冴島・類(公孫樹・f13398)と城野・いばら(白夜の魔女・f20406)は手分けをし、里に潜んでいるとされるエリクシルに関する情報を集めていたが、何方も今のところ成果は挙がっていなかった。
「僕はこの辺りに居る花神さん達に声を掛けてみたのだけど、特に変わった様子は無いみたいなんだよね……」
「うん、リティも。お友達と一緒に植物さんや虫さんたちにも訪ねてみたけどね、いつも通りってみんな云うわ」
あと詳しく話を聴けていないのは、客人の案内に忙しそうにしていた「あの子」だけだ。
四季の花溢れる麗らかな陽気の中、紅花と玲玲は一仕事終え、花に囲まれのんびりと寛いでいた。
「……こんにちは、紅花さん。少しいいかな?」
うたたね気味の紅花に類がそっと声を掛ければ、少女は小さく声を上げて飛び跳ねる。
「ふふ、起こしてごめんなさい。こんなに穏やかな陽気だと、ついのんびりしちゃうものね」
いばらもこの里の心地好さを感じ、想い切り深呼吸をしてみる。
穏やかな風景は故郷にも似ていて、花にとって優しい場所であることは確かだった。
だからこそ、こんな穏やかな場所に危険の芽が潜んでるようには思えなかったのだけど。
二人は拱手で挨拶を交わし、改めて紅花に此の地を訪れた理由の説明をした。
自分達が猟兵であること、郷に外界からの侵略者が紛れ込んだため、その調査に来たのだと。
紅花は少し驚きつつも、二人の話に熱心に耳を傾ける。
『……なるほど、猟兵さんと云う方々だったのですね。突然、何人ものお客様が訪れたのも納得です』
「うん、もしよければ紅花さんの話も聴いてみたいな。何か手掛かりがあるかもしれない」
類の言葉に、自分でよければと、少女は花咲く笑顔で小さく頷いた。
二人が識らない里のこと、少女が識らない外界のこと。
他愛も無いお喋りにも花咲かせつつ。それでもやっぱり里の異変には紅花も心当たりが無いようで。
「それじゃあ、知らない内に里に侵入されて。今は何処かに隠れているのかな?」
類の呟きに、紅花は思わず首を傾げる。
『どうでしょう……。不穏な者が里に侵入すれば、すぐわかると思うのですけど』
「それはかくれんぼしても、すぐにバレちゃうってことなの?」
いばらの問いに、紅花は振り返り首を縦に振る。
『はい。皆さんも通ってきた結界がありますよね。わたしの様に此の里に住む者ならば、結界に何者かが侵入した時点でも既に察知は出来るんです』
「そうか……云われてみれば。僕らが里に辿り着いて直ぐ様、君は出迎えてくれたものね」
あれは自分達が里に向かっていたのが予め解っていたからなのだろうと類は納得をしつつ。
調査が振りだしに戻り、三人は揃ってうーん、と頭を傾けた。
「あ、もしかしたら、」
沈黙に声を響かせたのは、いばらだった。
「おっきな子、ヒトや動物の姿をしていないのかもしれないわね。紅花もちっちゃな子たち全てを察知は出来ないんじゃないかしら?」
『……そう、ですね。確かに。神経を研ぎ澄まさなければ、普段からそこまで把握は出来ないかもしれないです。でも、その侵入者はそんなに小さな者なのですか?』
「そうだね……僕らが探している侵入者。エリクシルというのだけど、奴等は姿容も様々だから。ありえなくは無いかな」
そもそも魔神エリクシル自体が概念のような存在だ、何にでも化ける可能性はあるだろう。
「例えば、最近郷で知らない花を見たり、見慣れぬ結晶を見かけたり……とかはないかな?」
此の里にも有りそうなもので類が試しに挙げてみれば、紅花の赤い瞳がパチリと瞬く。
『……知らない花、は。お二人が他の花たちにも訪ねたなら、おそらく無いと思います。植物たちの情報網って凄いですから』
『それと、結晶ですか……。うーん、関係が在るかは解りませんが……』
何か思い当たる節が在るのだろう、紅花は少し言葉を詰まらせた。
「些細な事でもいいんだ、何か気になることがあれば教えて?」
はじめて見つけた手掛かりだ。小さな情報でも、と次いで言葉を促す。
『ええと、実は此の仔、玲玲はキラキラしたものを集めるのが好きで。よく外界から拾ってきて、見せてくれるんです。外に出れないわたしのために……と言うのもあるのかも知れませんが』
その殆どは身に着けず、自分の部屋に大事に仕舞ってあるのだという。
手掛かりになりそうなら、其れ等を見てみますか?と提案した紅花に二人は同意を示し、少女の後を着いていこうとした時だった。
「――類、」
いばらが一歩先に踏み出していた類の服の袖を、軽くつかむ。
彼の名を呼んだ声は幽かに震えた気もして。
「リティ?」
普段とは明らかに違う彼女の様子に心配そうに顔を覗き込むも、その視線は自分を通り越した先に向けられていて。
いばらの視線を辿った先に居るのは、少女の傍らに浮かぶ仔龍。
――その仔龍の首元に光る、紅い宝石だった。
その小さな結晶を意識した瞬間、異様な気配を感じ取り、類の表情も強張る。
きっと、ずっと其処にあったのだろう。けれど誰も意識を向けず、気にも留めなかった。
『……お二人とも、どうかされましたか?』
突然立ち止まった類といばらに気付き、紅花と玲玲は小さく首を傾げた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
朱赫七・カムイ
⛩神櫻
①◎
花の里は落ち着くね
ホムラ、あまり遠くに飛んでいってはいけない
花々を見渡しながら、愛しい巫女の手を握る
心地いいのは、仙界の空気がきみにあっているからでは無いかな?
私の巫女は何れ神仙となるのだから
イザナは…神斬と嬉しそうにしているからそっとしておこう
私だってサヨをみているよ!
仙界の花見だね
私は勿論、桜…え?駄目なのかい?
少し頬を膨らませば、咲う巫女の言葉に理由がわかる
なんて可愛らしい嫉妬だろうと
では、梅にしよう
春を告げる花だ
桜とは花の形が違うんだね…ホムラ、食べてはいけないよ
甘い香りが心地いい…噫、イザナの姉君は高潔で美しい梅の龍神であったのか
…そうだね
この美しい場所を壊させてはいけない
誘名・櫻宵
🌸神櫻
①◎
美しい場所ね、カムイ
揺れる桃花に微笑み、己の神を見る
仙界とは、何だか過ごしやすい気がするわ
そうなれるよう頑張ってるもの!
傍らの神斬師匠も楽しそう
いつも通りイザナをみてるわ
少し早い花見をしましょ
あらゆる世界の花が咲いているとか
カムイは見たい花はある?
桜以外で
かぁいい神様の頬をつつく
だって
あなたの瞳に映る桜は私だけでいい
梅ね!梅詣よ
白に赤、黄…見事な梅の花ね
イザナが懐かしそうにしてるけど何か縁が?
あなたの姉が…つまり私の祖先が…梅の花龍神なのね
誘七の分家の家紋は梅の花だったわ
何だか嬉し
外でも縁ある花と出逢えて
外に出られるのは
安心して帰れる場所があるから
何時だって故郷は特別で恋しい場所よ
揺れる桃花、薄紅煌めく世界。
麗らかな春の陽気は、朱桜咲き誇る神域にも似て。
朱い不死烏の雛もその光景に、思わずちゅん!ぴぃ!と愉しげに飛び回る。
「ホムラ、あまり遠くに飛んでいってはいけないよ」
燥ぐ雛鳥にそっと言葉を掛けて、朱赫七・カムイ(禍福ノ禍津・f30062)は花々の咲き誇る桃源郷の景色を改めて見やる。ホムラが喜々とするのも頷けるものだと。
「花の里は落ち着くね」
花々を見渡しながら、カムイは愛しい巫女の手をそっと取る。
「ええ、ほんとう。美しい場所ね、カムイ」
添う神の手を柔く握り返し、誘名・櫻宵(咲樂咲麗・f02768)は嫋やかに花笑んだ。
薄明の空に薄紅舞う世界は、うつろう刻も全てが永久に美しさを残したまま切り取られたようで。けれど澄んだ此の空気は櫻宵にとっては不思議と心地好さも感じていた。
「此処、仙界の空気は何だか過ごしやすい気がするわ……不思議ね」
「心地いいのは、仙界の空気がきみにあっているからでは無いかな?私の巫女は何れ神仙となるのだから」
「……!そうね、そうなれるよう、頑張ってるもの!」
カムイの言葉に、櫻宵は嬉しそうに花のかんばせを綻ばせる。
互いの傍らに添うイザナと神斬も嬉しそうに、一行は穏やかな里の陽気にすっかり和んでゆく。
「ねえ、カムイ。せっかくだし、少し早い花見をしましょ」
下界では雪解けも未だ遠い季節、一足早い春を愉しむのもまた一興だろう。
聴けば、此の里には汎ゆる世界の花が咲いているのだという。
「カムイは見たい花はある?……――桜以外で、」
「仙界の花見だね。私は勿論、桜……え?駄目なのかい?」
思わずぷく、と膨らませたカムイの頬を、櫻宵はつんつんと軽くつついてみせる。
「……だって。あなたの瞳に映る桜は、私だけでいいんですもの」
カムイは瞳を瞬かせ、咲う巫女の可愛らしい嫉妬に自身にも思わず笑みが零れ落つ。
「ふふ、わかったよ。では、梅にしよう。春を告げる花だ」
「ええ、梅ね!梅詣よ」
花の里を散策しながら、二人が辿り着いたのは里の一画にある美しい梅園。
様々な花の彩りに、梅の甘い芳が仄かに風に解けて薫る。
「白に赤、黄……見事な梅の花ね。……あら?」
ふとイザナが懐かしそうに梅の花を見つめる様子に気付き、何か縁がある花なのだろうかと櫻宵は小首を傾げた。
「……噫、イザナの姉君は高潔で美しい梅の龍神であったのか」
イザナの想いをカムイが言葉で紡ぎ直せば、櫻宵は桜色の瞳を丸くする。
「あなたの姉が……。つまり私の祖先が、梅の花龍神なのね。そういえば誘七の分家の家紋は、梅の花だったわ」
桜も梅も、辿れば同じ種の花である。
似て非なる其れを祖が宿していたと識れたこと、自分に縁ある花と出逢えたことも嬉しくて。
外界で巡り合うこうした様々な縁も、一つ一つが大切な想い出だ。
「外に出られるのは、安心して帰れる場所があるからよね」
櫻宵は咲き誇る梅の花を見つめつつ、小さく零した。
どんなに遠くへ来たとしても、何時だって故郷は特別で恋しい場所。還るべき場所でもある。
「……そうだね、この美しい場所を壊させてはいけない」
カムイも櫻宵の横顔を見つめながら、緩く頷きを返した。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『エリクシルドラゴン』
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POW : エリクシルブレス
詠唱時間に応じて無限に威力が上昇する【宝石】属性の【ドラゴンブレス】を、レベル×5mの直線上に放つ。
SPD : 願望喰らい
噛み付きが命中した部位を捕食し、【対象の願望にもとづく強化】を得る。
WIZ : 絶望の龍牙
【龍の首】が命中した敵から剥ぎ取った部位を喰らう事で、敵の弱点に対応した形状の【龍またはドラゴン】に変身する。
👑11
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●貴女と共に
――猟兵達が里に訪れる数日前。
「玲玲ー?……またお散歩かしら」
紅花はいつも傍らに居るはずの仔龍の名を呼んでいた。
(「たまに、ふらっと遊びに出掛けちゃうのよね……一言伝えてくれればいいのに」)
幼い頃から一緒に育ってきた仔龍の玲玲。
言葉は交わせないものの、彼女とは意思疎通が出来る、家族のような存在だ。
自分達を姉妹に例えるならきっと玲玲の方が姉だろうと、紅花は小さく咲った。
その姉はマイペースで自由人、けれど家族や故郷のこともちゃんと気に掛けてくれる。優しい家族だ。
「……噂をすれば帰ってきた。你回来了、玲玲!」
薄明の空から紅い仔龍が舞い戻ってきたのを確認すると、紅花は小走りで駆け寄る。
「もう、出掛ける時は心配するから一言伝えてって言ったでしょう。……ん?」
ぷく、と頬を膨らませる紅花を他所に、玲玲は何やら嬉しげな様子で。
「……手を出せって?――はい、」
紅花が両手を差し出せば、ころりと真っ赤な宝石が掌に落とされた。
「わぁ!きれい。……どうしたの?これ」
陽光に照らされた小さな宝石はキラキラと美しく輝いて、其の煌めきに思わず吸い込まれそうになる。
玲玲は紅花の嬉しそうな様子を見て、愉しげにぱたぱたと翼を羽ばたかせた。
「え?わたしへのお土産?……そっか、里にはこんな綺麗な宝石無いものね。お花はいっぱいあるけれど」
玲玲はいつも外の世界の綺麗なものを拾って来て、こうして自分に見せてくれる。
今はまだ外の世界を識らない自分のために。いつか共に旅立てる期待も込めて。
「ふふ、いつもありがと!……でも今回のこの宝石は、何だか凄く特別な感じ」
不思議と肌身離さず持って居たくなるような気がした。
けれど自分で身に着けるのは、里の者の眼も気になってしまう。
それなら、と。思い付いたように紅花は紅い宝石をそっと玲玲の首元に添えた。
玲玲が不思議そうに鳴きながら、小首を傾げる。
「玲玲の紅い鱗なら目立たないし……今はあなたが持っていて。いつか旅立った時、わたしが受け取って身に着けるね」
あとで首に掛けられるように加工しなくちゃ、と嬉々として話す紅花はもう一度、大事そうに小さな宝石をきゅっと握りしめた。
●願いの代償
――其れは『紅い宝石』だ。
エリクシルは小さな宝石の結晶として、里の内部へと紛れ込んでいた。
少女の傍らに居た紅い仔龍の首元で光り輝く其れが、突如眩い光を放ち始める。
「――玲玲?どうし……きゃあっ!?」
異変に気付いた紅花が心配そうに手を伸ばそうとすると、宝石の光は鋭い閃光となって小さな龍の身体を包み込む。紅花は驚いた反動でそのまま後ろに倒れ込んでしまった。
光の中から現れ出るは、紅く輝く水晶を纏った龍の首。一本、二本、三本と。
そして伸びた龍の首に繋がるように、紅い髪を靡かせた女の姿。
女は倒れ込んだ紅花を一度見やり、次いで花神の里を見回した。
『――此の里がお前を妨げるモノならば、私が破壊してあげましょう。其れがお前の、延いてはこの仔龍の願いなのだから』
「……え?願いって……、あなたはいったい、」
胸を抑えつつ小さく噎せながら、紅花は眼の前の女を見上げた。
其の女の首には、あの時の紅い宝石が輝いていた。
それは家族に、共に育った貴女に渡した筈の、
「……玲玲、なの……?」
紅花の唇が、小さく震えた。
********
●マスターより
三章は本性を表したエリクシルとの戦闘です。
場所は引き続き花神の里、敵の直ぐ側には紅花が身動きできずに硬直しています。
エリクシルの目的は『紅花が外に出られるように、花神の里を破壊する』ことです。
そのため、紅花には直接危害を加える事はありません。
逆にそれ意外は全て破壊の対象に含まれます。
猟兵の皆さんが立ち塞がれば敵はその排除を真っ先に優先するため、
周辺に居る里の者の避難誘導などは必須ではありません。
●エリクシルドラゴン
本体は紅い宝石。言語を介します。
下等な生命体を進化させる力で、仔龍の玲玲の体を進化させ操っている状態です。
首元に付けられた紅い宝石を破壊するか、エリクシルドラゴン自体を倒せばエリクシルは消滅します。
攻撃方法は能力通りです。WIZの形状変化は龍の三つ首のどれか一つが変化します。
詳細、説明は以上となります。
それでは、よろしくお願いいたします。
シン・クレスケンス(サポート)
◆人物像
落ち着いた雰囲気を持つ穏やかな青年。窮地でも動じず冷静な状況判断で切り抜ける
◆スタンス
エージェントとして、猟兵として、人々の平穏を護る為戦うのが使命
悪しき相手→容赦無し
善良だが、戦いが避けられない相手→心を痛めるが、非情に徹する
回避可能→回避に注力
◆戦闘
詠唱銃での銃撃(【破魔】の魔力を込めた銀の銃弾)や魔術による攻撃を得意としている
◆UDC『ツキ』
シンに取り憑いているUDC。闇色の狼の姿をしている
追跡が得意(魔力を嗅ぎ分けている)で、戦闘は鋭い牙や爪を用いて行う
◆口調
・シン→使役の名は呼び捨て。丁寧で穏やかな話し方
・ツキ
俺/お前、呼び捨て。
~だぜ、~だろ、~じゃないか?等男性的な話し方
綺咲・ノア(サポート)
次世代の探偵騎士の一人だ。
皆が幸せになる解決法を提示したり、事件が起こる前に解決できるような"名探偵"を目指しているぞ。
同時に"騎士"だからな戦って人々を守る事も大切だと思ってる。
指定ユーベルコードを使いながら戦闘や推理をいい感じに行うぞ!
絶対では無いが、なにか推理をする時は
『─さて、』
からはじめてもらえると少し嬉しいな。ただ無理していれなくても大丈夫だ。
UCを使わない通常戦闘なら
複合護身術が得意だ。
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
ハロ・シエラ(サポート)
私はハロ・シエラ。
戦う事以外は不得手です。
また、オブリビオンによる問題に対しては説得などより戦いで蹴りをつけるのを好みます。
口調は(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、でしょうか?)。
基本的には誰に対しても敬語です。
戦術としては【第六感】と【見切り】を駆使して勝機を見出し【カウンター】や【鎧無視攻撃】で敵を仕留めるスタイルです。
真面目に戦いますが、強敵が相手なら【毒使い】や【投擲】、【物を隠す】による【だまし討ち】も視野に入れましょう。
ユーベルコードは戦況に応じて何でも使用しますが、味方や一般人は巻き込まない様に努力します。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
紅い龍、エリクシルドラゴンは傍らにへたり込む紅花を余所に上空へ飛び立とうとした矢先、立ち塞がるように現れた複数の人影。
其れを邪魔者と見做したエリクシルドラゴンは不快そうに眉を顰めた。
立ち塞がった者達の一人、粉ラムネ入りのパイプ煙をふぅと吹かせた少年が、ぴっと人差し指を勢いよく向ける。
「事件が起こる前の解決は間に合わなかったが、これ以上好きにはさせないぞ!」
綺咲・ノア(人間の探偵騎士・f35956)は探偵でもあり、同時に騎士でもある。
戦って人々を守る事も彼にとっては推理を巡らすのと同じくらい大切なことだ。
「……私は戦う事以外は不得手、だから。正々堂々立ち塞がらせてもらいますね」
長い黒髪を風に靡かせ、軍帽の鍔を抑えながら。
ハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)もエリクシルドラゴンを真正面から見据える。
「紅花さん……、でしたっけ。危険ですので貴女は少し離れていてください」
物腰柔らかに、へたり込んでいた紅花に声を掛けた シン・クレスケンス(真理を探求する眼・f09866)は静かに銃を構えた。
それを見た紅花が、ハッと顔色を変える。
『あ、あの仔は……!』
その声に振り返ったシンは、安心させるように穏やかな微笑みを返す。
「大丈夫です、事情は伺っていますよ。命を取ることまではしません」
「うん、犯人を懲らしめる事だけが戦いではないからな!」
「手加減は仕留める以上に難しいこともありますが、努力はします」
三人の声を聞き、紅花は不安げながらも漸く自分の足で立ち上がり、納得したように一歩身を引いた。
『要するにあなた達は、私の邪魔をするというのですね?それならば、排除するまでです』
エリクシルドラゴンが静かに紅い体躯を揺らしながら、立ち塞がる猟兵を敵として見定めた。
最初に地を蹴ったのはノアだった。
小柄な身体でエリクシルドラゴンの懐に潜り込むと、腰に携えていたステッキを振り上げる。相手は龍の片腕で攻撃を受け止めるが、それでもノアの動きはまだ止まらない。
「倒すのが目的でないなら、翻弄して勝機を見出すまで!」
ステッキと身体の動きを組み合わせた複合護身術、通称バリツを駆使してノアはエリクシルドラゴンの注意を自らに引き付ける。
「……首元の紅い宝石、が本体でしたね。其処だけを狙うのはなかなか難しいですが」
「はい、でも彼が引き付けてくれている間に、」
シンとハロは其れ其れエリクシルドラゴンの死角から敵の首元を狙う。
破魔の力を込めたシンの詠唱中、魔弾を込めたハロの魔銃から放たれた弾丸が軌跡を描きエリクシルドラゴンの首に輝く宝石を砕かんとするが、相手もノアの攻撃をいなしつつ、二人の弾丸を既の所で躱す。
やはり、首元の小さな的を正確に狙うのは難しい。
けれど掠めた攻撃は、宝石に小さな傷を僅かに与え続けているのも事実。
三人は休まず攻撃を繰り返し、敵の体力を確実に消耗させていった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
冴島・類
◎
【白夜】
よりにもよって玲玲さんを…
動揺している紅花さんに
彼女は首元の石に操られてるようだ
リティがエリクシルへ向けた声に頷き
あの石は…意思を拡大解釈や捻じ曲げる
郷を破壊なんて言ってるのは
石の勝手で
貴女や玲玲さん起因じゃないですからね
石を倒せば戻せる
戻っておいでと呼んであげて
声で、帰る場所を
きっと意識の拠り所になる
守護の茨が伸び鈍らせてくれるのがありがたい
僕は石へ接近する為に駆け
息での攻撃は注視、放つ動作見切ったら
庇おうとするリティへ声を
捕縛する茨を足場に登り
宝石に届く距離に来たら黒曜を抜く
僕も同意見だね
君も、いないと
呪い返しは使わず
魔力捕食と強化解除能力のみを使い
石だけ破壊し玲玲を元へ戻したい
城野・いばら
◎
【白夜】
破壊が玲玲の願いですって?
それはアナタが勝手に描いたものでしょう
玲玲の願い…返してもらうわ
狙うのは勝手な宝石さん
類が紅花へ声掛けてくれる間に
歪んだ願いから皆を護れるよう
直ぐ茨を張巡らせ
大きな体を眠りの茨で捕縛し動きを止めに
数勝る茨でコッチよアッチよと視線もお誘いしお邪魔虫
類達の時間稼ぎを
玲玲はこんなに成長するのねと
私も紅花へ
勝手さんは私達が止めるわ
だから紅花の気持ち伝えてあげて
類の掛け声に頷き
しーってお口縛って
詠唱停止狙いつつ
紅花にも茨護りを咲かせ
茨で武器受けて皆をかばうの
紅花がいずれ叶えたい願いでも
でもね、そこに貴女がいなきゃダメなのよ
おきて玲玲
類、黒曜…あのコの優しい想いを護って
「よりにもよって玲玲さんを……」
先にエリクシルドラゴンと応戦する猟兵等を視界に捉えつつ、冴島・類(公孫樹・f13398)は動揺して立ち竦む紅花にそっと声を掛けた。
「紅花さん、彼女……玲玲さんは首元の石に操られているようなんだ」
『石……、あの宝石ですか? でもどうして……』
きっと二人にとっては淡い未来への約束を交わした小さな宝石だ。
けれど其れこそが今回の事件の発端と成るものだったとは直ぐ様言えず、類は一瞬口を噤み、今は安心させるようにと小さく頷き返した。
「詳しい事情は後で必ず説明するよ。けれど今は、僕たちを信じて欲しい。玲玲さんも無事に取り戻してみせるから」
紅花は類の真っ直ぐな言葉に紅い瞳を瞬かせながら、やがて瞼をそっと伏せた。
『……分かりました、あの仔を。玲玲をどうか、お願いします』
不安に染まる少女の声に、類は柔く笑みを零し。
「うん、ありがとう。後はまかせて」
そう云うと、軽く片腕で紅花を制止ながら。改めて敵の方へと向き直る。
エリクシルドラゴンの周囲は既に茨に覆われていた。
周囲の建物や植物、花達を護るように張り巡らせた其れは、同時に紅い龍の大きな身体の動きを奪ってゆく。数多から這い寄る茨に、三ツ首の龍の腕は翻弄されていた。
「植物はとっても渋太いのよ、勝手な宝石さん」
城野・いばら(白夜の魔女・f20406)は敵を見据えながら茨を誘導し、時間稼ぎと体力の消耗を図ってゆく。
「リティ、足止めありがとう」
類が隣に並び立てば、いばらの表情が柔く緩んだ。
「うん、足止めも……だけど。周囲も護りたかったから」
玲玲が無事戻れた時に、自分自身の手で大切な里を傷付けていたと識ったら、きっと悲しいだろうから。
「……里の破壊が玲玲の願いだなんて。それは宝石さん、アナタが勝手に描いたものでしょう」
いばらの言葉に、類も頷きながら龍の首に輝く紅い宝石を見据えた。
「エリクシル……。あの石は、願いを捻じ曲げて叶える代物だからね」
茨に身体の自由を奪われたまま、エリクシルドラゴンは類といばら、そして後方から此方を見つめる紅花に視線を移し、表情の無い笑みを浮かべる。
『……この躰、仔龍の願いは其処の少女と共に外の世界を見ること。それにはこの里の存在が障害となっている。それを取り除くことの、何が悪い?』
願いの代償は当然といった口振りに、驚いた紅花は眼を丸くして口元を抑えた。
「耳を貸しちゃだめよ、紅花。勝手さんは私達が止めるわ、だから貴女の本当の気持ちを伝えてあげて?」
「……そうだね、きっと僕らの言葉よりも。紅花さんが掛ける言葉の方が玲玲にも届くはず」
そう、身体を操られているならば。きっと玲玲自体の意識は其処にある。
戻っておいでと呼ぶ声を、帰る場所を示してあげれば、幽かな意識の拠り所になるはずだ。
『わたしの、気持ち……?』
紅花はきゅっと小さく胸の前で手を握りしめ、そっと紅い龍、玲玲に向けて言葉を紡いだ。
『――外に出たい気持ちは、確かにあるわ。でもこの花神の里も、其れ以上に大切。自分が生まれた故郷だもの。その気持ちはきっと、貴女も同じなはずよ。……それに、里を出る時は一人前になって。玲玲と一緒じゃなきゃって、約束したもの』
真っ直ぐに響くその声は、紅い龍に届いただろうか。
エリクシルドラゴンは紅花の言葉に怪訝そうに顔を歪ませて、なにかに苦しむように頭を抱えた。エリクシルが抑え込んでいる玲玲の意識が呼び起こされたのだろうか。
――相手の思考が鈍っている、今ならば。
類といばらは視線を合わせると、戦闘態勢を取る。
狙うは一点。願いを歪ませる力の根源、紅い宝石結晶エリクシル。
操られているだけの玲玲の身体も出来る限り傷付けたくはない。
守護の茨が伸び、隙の出来た紅い龍の身体に絡みつき、その動きを封じてゆく。類は張り巡らされた茨を足掛かりに、浮遊する相手へ一気に距離を詰めていった。
対するエリクシルも強引に龍の腕を振り上げ、接近する類を振り払おうとするが、その腕は数多に伸びる茨に即座に絡め取られてしまう。
「類も、みんなにも、誰にも手出しはさせないわ!」
歪んだ願いから皆を護れるようにと、いばらは全ての攻撃を一手に受け止めてゆく。
そうして捕縛する茨を登り、紅い龍の眼前に辿り着いた類はスラリと黒に染まるナイフを抜いた。
黒曜と名付けた其れは、痛みを操る呪殺のナイフ。けれど、今は其の呪いの力は使わず、相手の力を捕食し糧とする能力を行使する。エリクシルの力だけを捕食し、その身体は元の持ち主へ返すために。
「類、黒曜……。おねがいね、あのコの優しい想いを護って。紅花がいずれ叶えたい願いでも、そこには貴女がいなきゃダメなのよ」
「そうだね。君も、いないと。だから玲玲、帰っておいで」
完全に身体を捕縛された紅い龍の首元に鈍く光る煌めき、其の厄へ目掛けて黒曜の切先が振り下ろされる。
エリクシルの小さな結晶は折り重ねられた傷、そして黒曜の一撃に耐えきれず、勢いよく砕け散った。
煌めく紅い粒子が宙に舞う。
同時に、紅い龍も眩い光に包まれていった。
大成功
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眩い光の中から現れたのは、小さな紅い仔龍。
エリクシルの力から解放された玲玲だった。
やがて輝きが収束すると、玲玲の身体が上空からふわりと落下する。
周囲に居た猟兵等が動き出そうとするが、それより早く紅花が駆け出していた。
『……玲玲!!』
落ちる仔龍の身体を両手で確りと受け止め、其の反動で足元が蹌踉めいてしまう。
何とか体制を整えて腕に抱えた玲玲を心配そうに覗き込む。
その身体はとても小さくて、軽くて――。
けれど温かく、微かな呼吸音も確認すると、紅花は力が抜けたようにその場にへたり込んだ。
『よかった、本当に……』
大切そうに紅花は腕の中の玲玲をぎゅっと抱きしめた。
無事平穏が戻った様子に、周囲の猟兵達も安堵の表情を浮かべる。
――斯くして、エリクシルの驚異から花神の里は護られたのだった。