アルカディア争奪戦⑮~空賊団と仔竜の少女
――姉さま、私の大切な姉さま。
「ヒャッハァー! 獲物だ獲物だぁ!」
「俺達の力を分からせてやるぜメスガキめぇ!」
「ヒャァーッハッハァ! 俺様の自慢の太くて長いモノでブチ抜いてやるぜ!」
――ああいう、下品なのとはちょっと関わりたくなかったです。それでも私は今日も飛びます。貴女の守った空を、私も守り続ける為に。
「なお、太くて長いモノってのは大砲の事だぞ」
違うなんかではなく卑猥は無い。いいね?
「ミッションの概要を説明する」
(自称)レイリス・ミィ・リヴァーレ・輝・スカーレット(厨二系姉キャラSTG狂・f03431)がいつもの如くゆったりと椅子に座って手を組んでいる。
「戦場はブルーアルカディアなのは言うまでもないな。相手の長射程砲を躱しながら肉薄して敵の大型戦艦を沈めればいい。要点はそれだけだ」
敵の大型戦艦の立体映像を表示する。大型の
飛空艇にハリネズミめいて大量の長射程砲を満載しているようだ。
「見ての通り、相手は大きいが重い。射程距離と連装数に特化しているようでそれなりの弾幕を張って来る……まあ、諸君なら何とかするだろう。ただ、こっちも長射程で撃ち返すのは推奨できないな。相手が大きくて頑丈だからと言うのもあるのだが……」
今度は別の
飛空艇の3Dモデルを表示する。先のモデルより小型だ。
「このエリアには味方の
飛空艇艦隊が居る。小型で射程距離は長くないから砲戦になると撃ち負けてしまう。しかし、上手い事
空雷の射程距離まで持ち込めば相手を容易く轟沈させる事も出来るだろう」
空雷は強力だが低速で遠距離から当てるのはほぼ不可能。それでも
巨艦殺しには最適な武器ではある。
「つまり、君達は相手のバカデカい
飛空艇を落す必要は無いという事だ。相手の対空砲を掻い潜って接近、白兵戦に持ち込んでしまえば砲手を失った大砲に意味など無い。とは言え、相手はただの大砲では無いから普通に飛んで行っても撃ち落とされるから長距離砲対策はしておけ。ああ、それと」
一枚の少女の写真を表示する。青い仔竜と少女だ。
「知ってる者も居るかもしれないが、彼女はティナリア。空気を操る魔術の使い手で、無口だが腕は立つ。この
飛空艇艦隊に随行していたようでな。共に作戦に参加する事になるだろう。別に彼女の協力無しには勝てないという話ではないが、結構無茶する奴なので落とされない様にはして欲しいかな」
すっと、横に手を振って全ての表示物を消す。椅子に深く座って偉そうに手を組むレイリス。
「いつもの事だが、私は見えた事件を解説するだけ……少女を助けようが、放置しようが、諸君の好きにするといい」
そして、戦場の空域へと繋がる転送用のゲートを開く。
「では、往くがよい」
Chirs
ドーモ、Chirs(クリス)です。今回は空中で艦隊戦です。
『空と仔竜、姉と妹』で出て来た仔竜と少女が再び登場します。まあ、特に誰も触れなければ居るだけで終わるかもしれませんが。
相手の砲撃を掻い潜って接近しなければならないので、何らかの飛行手段を持つ事を推奨します。味方の飛空艇艦隊《ガレオンフリート》も居るのでそっちに乗って長距離砲から味方を守っててもいいんですけどね。
今回もいつも通りアドリブも連携もマシマシになります。ある程度の人数が集まってから書き始めます。戦争だけど、手早く書くより納得できるリプレイをお届けしたい。皆さんに空の世界の艦隊戦を提供出来れば良いなと思う所存でございます。
第1章 集団戦
『空賊団』
|
POW : 力づくでわからせてやる!
【下賤な欲望を滾らせて戦う仲間】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[下賤な欲望を滾らせて戦う仲間]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
SPD : 速攻でわからせてやる!
【徒党を組んだ集団での】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【欲望を暴走させた仲間】の協力があれば威力が倍増する。
WIZ : あらゆる手段でわからせてやる!
【欲望のままに相手を弄びたい】という願いを【周りにいる自分の仲間】に呼びかけ、「賛同人数÷願いの荒唐無稽さ」の度合いに応じた範囲で実現する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
朱鷺透・小枝子
お味方に砲火向かぬよう突撃します。
その為にまず突撃し敵の注意を引きます。
そして突撃いたします!
回点号【操縦】
『吶喊弾雨』メガスラスターで高速推力移動!
戦艦へ突撃しつつ【オーラ防御】サイキックシールドで砲撃を逸らしつつ、
【空中機動】で砲火を避け敵の注意を引きます!
吶喊する。この身など、何するものかァアアア!!!
【エネルギー充填】敵銃砲へウィングキャノンの【念動力衝撃波】を放ち、突破口を作成、【早業】その隙へ飛び込む!!
壊れろ、壊せ!!
【
闘争心】を燃やし加速!
シールドを広く張り、
キャバリアを最高速で戦艦に激突!敵集団も轢く!!
ああるるるらぁあァァア
!!!!!
黒木・摩那
相手の船の方が大きくて頑丈で、射程の長い砲もあるというと不利なことばかりですね。これはさすがに苦しいです。
相手の得意な長射程砲をなんとかしないと勝機がないですね。
マジカルボード『アキレウス』に乗って戦います。
砲撃はスマートグラスで弾道を解析。当たりそうなものは【念動力】で弾道をそらしたり、ボードの耐弾性で乗り切ります。
敵の船団に近づいたところでUC【乱舞雷花】を発動。
魔法剣『緋月絢爛』からの花びらで船員をまとめて片付けます。
ティナリアも元気そうで何よりだけど、飛び方とか、見てるこっちの方がハラハラするんですよね。
さり気なく弾道を【念動力】で逸らす程度のサポートはします。
鳳凰院・ひりょ
ふむふむ…結構無茶する子が戦場にいるのか
そう聞くと、つい手助けしたくなっちゃうのは性格故だろうか(汗
ひとまず飛行手段は必須になりそうだ
よし、今回は君に決めた!
【召喚術】で隼を召喚しUCを発動
隼の翼を生やしたひりょ参上!最速の鳥の飛行速度、見せてやる!
敵艦からの砲撃を【空中機動】+【野生の勘】で【見切り】回避!
あれが気がかりな子かな?
戦場で見つけたらその子の事も気にかけ、必要なら【オーラ防御】で防御力高めつつ【かばう】
白兵戦に突入する前に敵の周囲へ護符を【乱れ撃ち】
護符を起点として内部を無音とする結界を【結界術】で形成
これで周囲への呼びかけも相手には聞こえまい
後は隼型闘気弾と刀による接近戦で勝負
●
作戦会議
「俺達五隻の
飛空艇艦隊が今回の主戦力だな」
その旗艦に全員が集まり、まずは作戦会議。
「相手の船の方が大きくて頑丈で、射程の長い砲もあるというと不利なことばかりですね。これはさすがに苦しいです。相手の得意な長射程砲をなんとかしないと勝機がないですね」
黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)が端的に纏めた現状を告げる。猟兵達は事前にグリモアベースで聞いているのでこの辺りの内容把握済み。その上で現場ではどう動くかを決める会議だ。
「俺達飛行隊が囮になって敵の注意を引き付ける。そうだろ?」
木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)は自分達猟兵の負うべき
役割を口にした。
「確かに、今回君達以外の航空戦力は嬢ちゃんしか居ない。相性が悪くてな……余程の腕っこきじゃないとこの戦場には出せない。いや、本当は嬢ちゃんも出したくないんだが」
「それは無理。集中砲火で旗艦が堕ちる」
件の少女、ティナリアが一言挟んだ。
「敵艦の主兵装は長射程高精度のカルバリン砲」
ラテン語で”ヘビのような”と言う言葉に由来するカルバリン砲はブルーアルカディアにおける一般的な艦載砲の一つだ。UDCアースのように火砲技術が発展している世界ではカルバリン砲など凡そ実戦に使えた物ではない遺物でしかない。だが、ブルーアルカディアのカルバリン砲は違う。
主な役割は主砲となるカノン砲の補助ではあるのだが、その長い銃身から撃ち出される9ポンド砲弾はやたらと高精度かつ高速で飛んでくる質量弾だ。UDCアースの史実上に存在した火砲は、基本そこまで狙える物では無い。魔法的な力が働いているのか、火薬が違うのか、銃身が違うのか。ともかく、このカルバリン砲は戦艦で言えばやたらと射程の長い高角砲に相当する物と言える。
本来は小型の
飛空艇相手に使う艤装だが、数を揃えれば対空砲火としても使えるという訳だ。
「それを避けるなら、慣れてる」
「ああ、成程」
ウタと摩那はその言葉に納得した。それは彼女の姉の得意分野だった物だ。アレと比べたら豆鉄砲もいい所だろう。
「それで?
前衛が囮に徹し、
後衛が接近したらどうするんですか?」
「決まってる。空雷戦隊のお家芸、
空雷の一斉射だ。相手の装甲がいくら厚くてもコレなら抜ける」
ブルーアルカディアには基本的に海は無い。当然、魚雷と言う武器が産まれる余地は無い。だが、艦隊戦をするとなると似たような武器は産まれるらしい。それが
空雷だ。静音で視認性も低く偽装した自走爆弾。対重装甲
飛空艇用に開発された
軽量級飛空艇向けの艤装だ。
威力に関しては申し分が無いが、自走する爆弾と言う観点上射程距離は短く、艦砲と比較すると圧倒的に遅い。撃ち込むには接近し、艦の舷側を向ける必要がある。
「この重雷装
軽量級飛空艇には十基の空雷発射管が備わってる。片舷側で五基、五隻で二十五基だ。あの
弩級飛空艇でもひとたまりも無いだろうさ!」
「ほう、空雷ですか……面白い」
フカヒレ・フォルネウス(鮫の悪魔の四天王・f31596)はこの
空雷と言う兵器に興味を引かれた様子。
「うーん……無理じゃないですかね」
摩那は提供された
空雷のデータと
弩級飛空艇のデータを比較して推測する。
「一か所の装甲を抜く事は出来ても、轟沈まではいかないかと」
「そこはな、気合と根性と度胸だ!」
「……いや、そこで精神論を持ち出されても」
「いえ、行けますよ? 私の助力があればですが」
フカヒレはそこに反論した。
「なるほど、確かにその方法なら単に装甲一枚抜いて終わりと言う事にはならないでしょうね」
提供された情報を基に再精査。今度は行けると摩那も太鼓判を押した。
「では、私は
後衛に詰めますか。他の方はどうしますか?」
「俺は当然
前衛だ」
「私も
前衛に行きましょう」
「私も
前衛」
ウタ、摩那、ティナリアが名乗りを上げた。
「はいはい! 俺も
前衛希望だ!」
鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)が続けて名乗りを上げる。
(ふむふむ…結構無茶する子が戦場に行くのか。そう聞くと、つい手助けしたくなっちゃうのは性格故だろうか💦)
「お味方に砲火向かぬよう突撃します」
更に朱鷺透・小枝子(
亡国の戦塵・f29924)も追加。
「その為にまず突撃し敵の注意を引きます」
「うん?」
「そして突撃いたします!」
「いや、どんだけ突撃したいんだ!」
「何でもいいから突撃です。突撃は全てを解決します!」
「おう、この物騒なのしまっとけ!」
「はいはい、小枝子さんは
後衛組と言う事で」
「何ぃ!? 貴殿、自分の玉砕を邪魔するおつもりですか!」
「ちゃんとタイミングを見て突撃させてあげますとも。どの道、ここまでの
作戦では
天使核を抜く役割が欠けていましたので」
「ならば良し」
そういう事で、小枝子は
後衛に配属された。
「
中衛は不要なのですか?」
ヴィクトリア・ノウェム(はらぺこ空戦天使・f33941)がそこに一つ提案する。
「どうも、囮役は足りているようなので。攪乱役が居るとより効果的ではないかと」
「確かにそうだな。なら、頼めるか?」
「頼まれます」
言い出すという事は当然自分が出来るという事だ。出来るかどうかを聞く必要は無い。
「じゃあ、大体の事は決まったか」
「ええ、本当に大体と言う感じでしたけど」
「大体でいいんだよ。俺達の武器は!」
「「「「「気合! 根性! 度胸
!」」」」」
「……何とも頼もしい方々で」
「ああ、突っ込んで焼き滅ぼすだけだぜ」
「こっちにも頼もしい方がいるようで」
●
空中戦
「よし、今回は君に決めた!」
ひりょは甲板に手早く召喚陣を描き、隼を召喚した。呼び出した隼を腕に泊まらせ、優しく抱く様にして融合合体。【
超獣化身】だ。
「鳳凰院ひりょ、出撃するぜ!」
隼の翼を背中に生やし、ブルーアルカディアの空に向けて飛び立つ。
「ああいうの、やった方がいいのか?」
「さあ?」
ティナリアは仔竜ブラックの背に跨り、ふわりと飛び立つ。
「では私はやっておきますか。黒木摩那、往きます」
甲板の端からマジカルボード『アキレウス』に乗って大空を
滑空する摩那。
「ティナリアとブラックも頑張ってるみたいだ。負けてられないな」
轟! と、赤黒い獄炎が燃え上がり背中に翼の形で収束する。迦楼羅の炎翼だ。
「木霊ウタ、行くぜぇッ!」
旗艦の甲板から前衛組が飛び立つ。ウタ、ティナリア、摩那、ひりょの四人だ。
「あの小さいのが敵なのか?」
炎翼を広げたウタがそれを指差した。
「そうだけど違う」
肯定と否定。ティナリアは端的に間違いを正す。
「敵はアレだけど、小さいんじゃなくて遠いだけ」
「随分と距離を取って発艦しましたね」
「それだけ敵の射程が長いって事か。注意しないとな」
『諸君! この先は君達の働きにかかっている。頑張ってくれたまえ!』
艦長の大音量が拡声器で響く。
「煩いハゲね」
『ハーゲではない! 剃っているのだ! 人にそんなこと言っちゃダメだってパパから教わらなかったのか!? いいか、もう一度言ってみろ。貴様に一週間甲板清掃をさせてやる!』
「もう行ってしまいましたよ」
妙に早口の脅し文句を悠長に聞いている暇などありはしない。飛行隊は既に遥か彼方へ。
「ぬぅ! 我々も後れを取るな! 機関最大、両舷全速!」
「両舷全速ヨーソロー!」
五隻の重雷装
軽量級飛空艇は旗艦を先頭に単縦陣で巡航速度から戦闘速度に移行した。
戦いが始まる。
「最速の鳥の飛行速度、見せてやる!」
先陣を切って飛ぶのはひりょ。敵艦に向けて一直線に飛ぶ。
その敵艦から点が飛んできた。目視ではそうとしか視認できなかった。だからひりょは己の猟兵第六感を信じて急上昇した。コンマ5秒後、9ポンド砲弾が直撃だったコースを突き抜けた。
「嘘だろ、この距離でこんな正確に撃てるのか!?」
続けて飛んでくる9ポンドをバレルロール、ピッチアップ、ブレイクを多角的に駆使して避ける。
「回避先に偏差射撃までしてくるし!」
これでは後ろの少女など気にしている場合ではない。そう、思った瞬間。
「お先に」
仔竜に乗った少女に抜かれた。風を操り、凄まじいスピードで突き抜けて行く。かと思えばいきなり直角に曲がったり、フェイントをかけて偏差射撃を誘ったりしている。
「確かに、無茶はしてるが」
無茶に釣り合う実力がある。6つの風の精霊を引き連れて少女と仔竜は空を駆ける。
「こりゃ、負けてらんないな!」
かばうつもりなら、最低でも並んで飛ばなければならない! 先頭が入れ替わった事でティナリアに多めの砲弾が集まっていく。流石に、それでは先頭は維持出来ない。
「交代です」
だから摩那が前に出た。マジカルボードによる
滑空は急な方向転換に強い!
摩那はマジカルボード『アキレウス』の切っ先を90度旋回して回避、と見せかけ即座に元の向きに戻すカットバック。そこから更に右手で端を掴んで左手を伸ばしボードごと飛びながら後方宙返り! カットバックドロップターン!
「ハイヤーッ!」
華麗な
滑空はターゲットを絞らせない! 回避運動に費やした分速度は失われるが。
「今度は俺だな!」
ウタが獄炎を纏いながら突撃! ウタは攻撃を避けずに突っ込んで行く!
「生憎と俺はひょいひょい避けられる程器用じゃない」
『焔摩天』を正眼に構えたまま真っ直ぐ飛ぶ! 後方で獄炎爆発を起こし更に加速! 砲弾が集中する、アブナイ!
「全部纏めて、焼き祓うぜ!」
9ポンドの鉄塊をチーズめいて次々と両断していく!
「この作戦、無茶する奴しかいないのか!」
ひりょ、再び前へ!
「飛んでくる砲弾のパターンは大体分かった!」
空を舞うように飛ぶ。掠める砲弾はさっきより近い。だが、その分速度が落ちない。回避を最適化しギリギリで避ける! 隼の翼による飛行力だけではない、隼の目による動体視力だ! ワザマエ!
(しっかし、本当にかばう必要無いなぁ……)
ひりょだけでなく、摩那も念動力でティナリアに当たる弾道を逸らそうとしていた。だが、思った以上に弾道が正確だった事と、ティナリアが思った以上に自力で避けるので、リソースを全体に振り分け飛行隊全体への命中弾逸らしに切り替えている。
「あの時と同じだ、全部纏めて一気に焼き払おうぜ」
ウタはティナリアに提案した。あの時と同じ事をすれば出来る、と。
「それは駄目」
だが、ティナリアはそれを否定した。
「あの火力は必要になった時に一発で決められる手札。ここで切って対策されたくない」
「必要になった時?」
「あの艦、舷側に大量の砲台を配置している」
グリモアベースで見た3Dモデルを思い出す。ハリネズミめいて大量の砲台。
「砲弾を飛ばすには何が必要?」
「ああ、成程な」
ウタはそれで自分が何を燃やすべきかを理解した。
「だから、今は使わない」
ウタの獄炎ならばこの状況を力付くでねじ伏せて全員無傷で通過させる事は出来る。だが、ここでそれを見せると相手に対応する時間を与えてしまう。
「それでいい、切り札は切るべき時に切る物」
「……なんか、あの子ウタさんにだけちょっと態度違くない?」
「さー、どうなんでしょうね?」
◆続きます。期限が来る分だけ採用していますが、この後も出番はあります。備えよう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
●
亜空間奇襲
「ん、つまり一気に近づいて攻撃して遠距離砲撃なんかしてる場合じゃ無くせばいい、です?」
「そうですねぇ。でも、問題はどうやってあの砲撃を掻い潜って近付くかですが」
それだけの長射程砲を装備しているという事は、それだけ目のいい砲手が詰めているという事だ。遮蔽物がほとんど存在しない空域では普通は隠密行動は不可能に近い。
だが、海と空の違いはあっても似たような手法は産まれる物であった。
「わかったです、それじゃ、行くです、エル・セプス」
ヴィクトリアは愛機に乗り、空へと躍り出た。
何事もタイミングと言う物は大事である。特に、奇襲攻撃と言う物は相手が最も油断するタイミングを狙ってやるのが効果的だ。
だが、戦闘中であれば油断とは程遠い状態にある……と、思いがちだが、戦闘中だからこそ生じる油断、即ち隙が生じるのである。
前衛組が注意を引き付けている逆舷側にはそもそも砲手すら配置していなかった。何せこの艦、砲台が多過ぎて空夫(空の水夫)が足りてない。狙いを付ける砲手に、砲弾を運ぶ役、砲弾を装填する役。一つの砲台に三人付いている。オブリビオンとは言えど何も食べずに存在していると言う事も無いので艦の大きさに対して空夫の数は少なめであった。運用上それで問題は生じない筈だったのだ。
だからこそ
奇襲攻撃が生きる訳だが。
「げひゃひゃひゃひゃ! 踊れ踊れー!」
「撃て撃て! 撃ちまくれ!」
「砲弾の味はどうだぁ?」
「もっと欲しいのか! 欲張りメスガキぃ!」
空夫の皆さん、絶好調。彼等の目には自分の放った砲弾で無様に右往左往しているように見えているらしい。偏差射撃や回避先の読み合いをするような知能は無さそうなんだが、なんかその辺は勘で出来てしまうあたりがオブリビオンの恐ろしさか。いつだって失敗する奴はマヌケで、自分はいつも上手くやっているのだ。
だから当然、背後に気を配るなんて事はしてなかった。
ガラスが粉々に砕けたような音が響き、突き破られた空間の欠片が舞う。
【
Dダイバー】、即ち亜空間潜航。視覚と嗅覚による感知を不可能とし、通常空間への復帰時に生じる空間の歪みの欠片を攻撃転用できる恐るべきユーベルコードだ。
「「「アバーッ!」」」
至近距離で空間の散弾を喰らった空夫数名が切り刻まれ即死!
「アイエェェーッ!?」
続けて放たれた『ケルベロスファング』に掴まれた一人が空に放り出され死!
「ナンテッコラーッ!」
威圧的空賊スラングで罵倒するも、白兵戦の準備などしていなかったので短マスケット拳銃を抜くのも遅れる始末。この短マスケット拳銃もやはり一撃の殺傷力は油断ならない携行武器だったのだが撃たれなければ意味は無い!
その間にヴィクトリアは既に非殺傷用ガトリング砲『デビルアヴェンジャー』を構え、スピンアップを済ませている!
BRATATATATATATATATATATATATATA!!
「「「アイエェェェー! トリモチアイエェェェl
!?」」」
オブリビオンの空賊相手にわざわざ非殺傷武器を使ってやる理由はそんなに無いのだが、この場合はかえって有効と言える。死んでいれば助ける必要は無いが、生きているなら助ける……と、言うよりヘマした結果サボる事になった奴の存在を許しておけないサンシタ思考から、捕まった奴を引っぺがして戦いに向わせたくなる為対応がさらに遅れるからだ。
「思った以上に楽勝、です?」
奇襲攻撃から物の数秒で甲板はヴィクトリアに制圧されてしまった。
「「「ソシャマッテコラーッ
!!」」」
「まあ、そう簡単には行かないですね」
船室から上がって来る空賊の足音。甲板に出る出入り口の一つをガム弾で封鎖するも、出入り口は複数あり全てを封鎖する事は出来ない。
と、言うより目的を考えれば相手が甲板に上がって来るのは都合がいい。
「ひりょ参上!」
囮役だった
前衛組が一気に近付けるからだ。砲手が減れば当然抜けやすくなる。
ひりょはそのまま大量の護符を甲板に張り付けて音を遮断。そうとは知らずに次々と乗り込んで来る空賊たち。
「ドシタンス!」
「ナンテメッコラー!」
「ドタマテッパダマオラーッ!」
空賊スラングも勇ましく一階船室から上がってきた空賊が見たのはべたべたのガム弾で拘束された空賊だけ。
「ナンテメッコラーッ!」
「チャーシッテンジャネッコラーッ!」
「ハヤタッケロッコラーッ!」
「そこをちょっと失礼」
ふわり、と赤い風がその上空を滑ると舞い散る七色の花弁。甲板中にそれが降り注げば次に起きるのは、
「「「「アバババババババーッ
!」」」」
【
乱舞雷花】による高圧電流死!
「このまま甲板の相手は引き受けます!」
摩那が華麗に甲板に降り立ち、既にこの場に居ない二人に向けて声をかける。
そう、ひりょもヴィクトリアも既に甲板には居ない。
「ドシタンス!」
「ナンコラーッ!」
音が封鎖されているとは言え、甲板に上がった奴らが戻って来なければそれを訝しみ下の船室から空賊は上がって来る。確かに、艦のサイズと比すれば空夫の数は少ないが、そもそも艦が大き過ぎるので空夫の数は十分多いのだ。
「ハイヤーッ!」
超可変ヨーヨー『エクリプス』を投げ付け、魔法剣『緋月絢爛』を構える!
「「グワーッ!!」」
「「「「スッゾコラーッ
!」」」」
流石に、この状況ではマスケット拳銃を抜き忘れる程マヌケではないようだ。飛来する致命銃弾を連続側転で回避!
「ハイヤーッ!」
そのまま艦から飛び降りる! アナヤ、キヨミズか!?
「ナンコラー……?」
これでは射線が通らない。ウカツにも艦の端から下を覗き込んだ空賊の顔に七色の花弁!
「アイエッ!?」
「ハイヤーッ!」
赤い風が空を滑る! 艦の真上でトリプルコーク1440をキメながら七色の花弁を舞散らせる!
「「「「アバババババババーッ
!」」」」
【
乱舞雷花】による高圧電流死!
もう少し彼らが注意深ければ感電死した仲間が目に入ったかもしれない。だが、ひりょの遮音結界によりそれとなく死因は隠されている。だからこそ、同じ手を使っても気付かれない。
「ぶっこ抜きます」
舷側に回ったヴィクトリアは【ケルベロスバイト】をご自慢された長い砲に食い込ませ、愛機『エル・セプス』のパワーに任せて引っこ抜いた!
「そこにひりょ参上だ!」
砲を抜いた穴にするりと単身身を滑り込ませるひりょ! アイサツ代わりの隼型闘気弾をその場にいた空賊に撃ち込む!
「「グワーッ!」」
「「ザッケンナコラーッ!」」
BING! BING! BING! 反撃の銃撃! 既に艦全体がエマージェントモードだ! ひりょは隼動体視力で銃弾を見切り、最小限の動きで回避!
「イヤーッ!」
「「グワーッ!」」
刀で続けて撫で斬る! 鎧袖一触! 油断なく護符による遮音を施し、どこが奇襲されたのかは音では判別できない。気付いた時にはもう襲撃者の姿は無い。
ヴィクトリア・ノウェム
ん、つまり一気に近づいて攻撃して遠距離砲撃なんかしてる場合じゃ無くせばいい、です?
わかったです、それじゃ、行くです、エル・セプス。
という訳で、エル・セプス飛空艇形態を駆り、【Dダイバー】を使って姿を隠して突っ込むです
幾ら火砲を増やしたって、当てるためには“目”が良くなきゃいけないです
……まあデタラメにバラ撒いてくる可能性もあるですけど、その時は空間の歪みを飛ばして弾幕を遅滞させつつ気合で全部良ければいいです
近づいたら姿を消したまま『ケルベロスファング』を使って、可能なら甲板上の奴を捕まえて船外に引っ張り出したり、『デビルアヴェンジャー』でガム弾をばら撒いて甲板中べたべたにしてやるです
◆ウカツにもヴィクトリアの採用を忘れたのでもうちょっと書きます。担当はケジメし送りました。
●
空雷
「
前衛組は上手い事やったようだ」
「そうですね。いいタイミングです」
フカヒレは旗艦に防御魔法で傾斜装甲を張り、対空砲から守りながら進めていた。どうやら砲弾は火と風の魔法が使われているらしく、それが異様な長射程高精度を実現しているようである。
なので、反属性である水と土の
防御膜を展開。単縦陣故に、旗艦さえ守れば従属艦の被害は最小限。
「では、私達の出番ですね」
『突撃ですか! 突撃ですね! 突撃いたします!』
「えー……まあ、もう行っちゃっていいですかね」
小枝子は自らのキャバリアを唸らせる。待ちに待った出番が来たのだ。
「全艦! 空雷発射管、右舷一番から五番、左舷六番から十番! 発射準備!」
「「「アイアイ、サー! 発射準備ヨシ! サー!」」」
砲撃主たちから即座に返答が来る。
「空雷、一斉射!」
本来、空雷と言う武器は一斉に撃つべきではない。誘導ミサイルと違って発射後に軌道を曲げられないからだ。艦砲よしも更に発射可能な角度は狭い。ならばどう狙うのかと言えば、発射するタイミングで当てるのだ。しかも、右舷と左舷に五基ずつ配置している以上双方に向って発射する意味は本来無い。
しかも、艦の向きはT字不利状態である。舷側を向けてすらいない。当てるなら通常は回頭し、同航戦に持ち込むべきである。
だが、恐るべきはやはり、戦闘の常識すら書き換えるユーベルコードなのだ。
「さあ、行きなさい戦兵鮫!」
「「「YAAAAHAAAAA!」」」
誰も居ない方向に向けて放たれた五十発の空雷にフカヒレの放った【
戦兵鮫】が取り付き、その方向を変えたのだ! 悪魔的回天戦法!
「吶喊する。この身など、何するものかァアアア!!!」
『
回点号』でオーバードブースターを全開にし、その先頭を進は小枝子の
回点号! 五十発分の空雷を引き連れ、敵艦に向けカミカゼ・アタックを仕掛ける!
「撃て! 撃て! アレを落せ!」
「無理だ! この距離じゃ、ってか他の砲手気付いてすらねぇーッ!」
一部、気付いた砲手が手遅れな砲弾をぶつけて来るもサイキックシールドで弾かれる。確かに、長時間は完全防御を維持できないがごく短時間であれば問題無い!
「「こ、こっちに来るなァァァーッ!?」」
激突直前、小枝子の
回点号は唐突に宙返りを挟む!
「「へ?」」
アレがそのまま突っ込んで来る、と思っていた空賊の安心は0.1秒も続かなかった。単に、五十発の空雷に
突撃の名誉を先に譲っただけなのだから。
「「ツッコメーッ!!」」
「「アイエェェェーーッ!!」」
KABUUUUUUUUUUUUUUUUUM!!
空雷が爆ぜる。重厚な装甲も五十発もの一点突破に耐えられる作りはしていない!
「ああるるるらぁあァァア
!!!!!」
更に、その突破口を『BXS-Bウィングキャノン』の念動力衝撃波で抉りながら
回点号が吶喊! 装甲の一部が展開し、本来防御用のエネルギーを瞬間的な攻撃力として転用する!
闘争心を燃やし、
シールドを広く張り、
キャバリアの最高速での【
吶喊弾雨】!
表面装甲を消し飛ばされた状態で受けたソレは敵艦を深々と抉り続け、遂には巨大な
天使核すら露出する程の大損害! 勢い余って敵艦を貫通!
「ほぅら、あなたたちが大好きなアツアツなモノですよ! 欲望のままに貪るがいいわ!」
「「「「アババババーッ
!!」」」」
抉られた断面に
戦兵鮫が侵入し、空賊の口に突っ込む!
「爆発しますが」
「「「「アバーッ
!」」」」
爆死!
「今ですよ。ウタさん、ティナリアさん」
「ああ、後は任せろ!」
「全く……よくその戦い方で他人を無茶とか言えるわよね」
大成功
🔵🔵🔵
フカヒレ・フォルネウス
WIZ アドリブ連携歓迎。
ほう、空雷ですか。……面白い。
ティナリアさんやほかの勇士たちがならず者の手にかかるのも見過ごせませんね。
悪魔らしく、空賊団を懲らしめるとしましょうか。
僕は飛空艇艦隊の甲板に乗って、敵の砲撃から防御魔術で守りましょう。
対空砲と言えど、射線が目に見えるなら防ぐのは難しくありません。
ウォーター・シールドとかファイア・ウォールとか、状況に合わせた属性魔法を斜めに展開して受け流せば船への負担も少ないでしょう。
さて、射程に入れば、空雷の出番というわけですが……。
僕の召還した《戦兵鮫》の親機を空雷に載せるとしましょう。(悪魔的回天戦法)
さあ、行きなさい戦兵鮫!
大量の子機を射出して敵艦の攻撃から空雷を守るのです。チャフやデコイみたいな運用ですね。
余裕があるなら甲板にいる敵の口に突っ込ませてみましょうか。
ほぅら、あなたたちが大好きなアツアツなモノですよ!
欲望のままに貪るがいいわ! 爆発しますが。
無事に着弾すれば、活躍した戦兵鮫に敬礼を。
まあ、再召喚すれば復活するんですけどね?
木霊・ウタ
心情
オブリビオンを海へ還すぜ
ティナリアとブラックも
頑張ってるみたいだ
負けてられないぜ
行動
迦楼羅を炎翼として顕現
焔摩天を振るい炎の剣風を放つ
頼むぜ、ティナリア!
いつかの時みたいに
空気を操作してもらって
火力と範囲を一気に増し増しだ
狙いは大型戦艦と視界内全ての空間
(味方は除く
空を紅蓮に染めて
砲弾も全て燃やし溶かし
或いは誘爆させたり爆風で吹き飛ばす
ほんの一瞬だけど静かな空が生まれる
突撃して一気に懐に入り込む
翔るぜ、ブラック
ここでも空気を操作してもらって速度upだ
猟兵じゃない奴に無理させちまって悪いけど
遠慮したら勇士に対して失礼だろ
勿論すぐに対空砲火は再開するだろう
ブラックを庇いつつ剣を振るい
再度紅蓮の嵐を起こす
さっきよりは小規模に
主に進行方向正面の砲弾を排除
これで辿り着く
二人共良くやったな
砲手を中心に空賊どもを薙ぎ払う
如何にもゲスな奴らで
オブリビオンだし遠慮はしない
空雷の射程に入るまで射たせないぜ
事後
鎮魂曲を奏でる
安らかに
これも風に乗って
何時もよりも遠くまで届くかも
お疲れさん>ティナリア
●
焼灼
ウタが『焔摩天』を空にかざす。ティナリアはその後ろで両手で錫杖を握り、風を操る。
単独で戦う事が多い彼女は常に攻撃、防御、回避を同時に一人でこなさなければならない。相棒のブラックがある程度は勝手に避けてくれるが、だからこそ戦場を俯瞰して先を見据えて動く必要がある。だが、今ならばブラックを甲板に着地させ、攻撃だけに集中できる。
業ッ! と輝く獄炎が広がる。ウタの掲げた『焔摩天』を中心に、ティナリアが風を操作し新鮮な酸素の供給と熱の広域化を同時に行う。
「防御はこちらに任せて、存分にやっちゃって下さいね」
フカヒレは【
戦兵鮫】を空に放ってデコイとし、炎の壁で従属艦を守る。旗艦も高熱に晒されないようにティナリアが空気を操作する。
だからこそ、ウタも獄炎の制御に集中できる。
「もっと、もっとだ。今はただ、熱く熱く熱く熱くッ!」
「な、なんだ!? 今度は何をする気だ!」
「ええいヤッチマエーッ! 砲弾を喰らわせればいい!」
「ビカビカ輝きやがってよぉーッ!」
「そう簡単に、させると思っているのです? それは目算が甘いのです」
ヴィクトリアがアンカーで砲身を引っこ抜き、
「甘いぜ!」
ひりょが滑り込みんで牽制、
「チョロアマですねぇ」
摩那が範囲制圧で仕上げる。既に遠距離砲戦が出来る状態ではない。
紅蓮に染まっていく空。飛来する砲弾を雨粒の如く溶け散らし、発射した砲身も歪ませる程の焼灼空間。
太陽の如き輝きを放つ『焔摩天』の名の下に、一瞬の静寂が作られた。
「全てはこの瞬間の為……機関全速! 突っ込むぞッ!」
「「「全速前進ヨーソロー
!!」」」
「味方の突撃を援護するッ!」
回点号が旗艦後方に回り、オーバードブースト!
「たかが
軽量級飛空艇一つ、推し通して見せる!」
「帆を張れ! 風を掴めッ!」
帆船のような見た目をしているのは伊達ではない。遮蔽物が無い空では常に強風が吹き荒れている。特に、風使いが居る艦ではマストを広げて風を掴んで動く事は実際有効だ。何せ、一切燃料を必要としない。
「このまま突っ込むぜッ!」
ウタは『焔摩天』を獄炎で包んで『大焔摩天』に進化させ、艦首に乗せるように構える。以前、一人ではどうする事も出来なかったサイズだが、艦首衝角代わりに使うなら問題はない!
「なんだアイツ等、回頭しないぞ?」
「何でもいい! 早く入れ替えろ!」
空賊達は捻じ曲げられたカルバリン砲を投棄し、重カノン砲に換装していた。重カノン砲はカルバリンより飛ばないが、一発の重さが倍以上ある。相手が回頭し、舷側を見せた時にコレを叩き込んで轟沈させるつもりだった。
「まさか、衝角突撃か?」
「ハァ? 何倍の質量差があると思ってんだよ!」
「でも、回頭しないし突っ込んで来るぞ」
「バカめ! 穴一つ開けた位で勝ったつもりかよ! ははぁ~ん、分かったぞ! アレが狙いだ」
空賊が露出した
天使核を指差した。
「アレでコイツをぶち割って沈めるつもりだ!」
「「「げひゃ~っはっはっは!」」」
「ソイツは傑作だぁ~!」
天使核はどんな
飛空艇にとっても明確な弱点であり、文字通りの心臓部である。
弩級飛空艇であってもそれは同じだが、
弩級以上が持つ性質がある。
名の由来となった飛空艇『ドレットノート』は革新的な飛空艇であった。それまでの
天使核一つに付き一隻と言う常識をひっくり返したのだ。複数の
天使核を搭載する事により、より大きく、より重い飛空艇となり
戦艦級飛空艇をも蹂躙したのだ。もちろん、その分建造にかかる費用も普通に数隻作るより跳ね上がる。それでも、大きく、より重くという思想は根強く育って行った。大艦巨砲主義はやはり浪漫を引き付けるようである。
「この艦には六つの大型
天使核が搭載されてる! 一つくらいぶっ壊されても沈みはしねぇ!」
「そんな事も知らずに玉砕特攻かよぉ~! 全く傑作だぜぇ~!」
「バカめ、と言ってやりなさい」
フカヒレは嗤う。
「「「バカめ!」」」
船員も笑う!
「わぁ~っはっはっは!」
船長ももちろん大笑い!
「突っ込むぜぇーッ!」
「ああるるるらぁあァァア
!!!!!」」
再び炸裂する
重量×速度《ゼンソクゼンシン》×継戦能力《リョウヘイイイカゲンニシロ》の突撃。それは、既に開けた穴を抉るように突っ込んで……止まった。
「乗り込め! 分からせろ!」
「「「ヒャッハァ~~ッ
!!」」」
という空賊達の歓喜の声は、
「この瞬間を待っていたぜッ!」
ウタの放った獄炎に吹き飛ばされた。
轟音。天変地異めいて立て続けに起こり続ける轟音と衝撃。
「「「アバーッ
!!」」」
それと空賊の悲鳴。
「これだけ大量の大砲を抱えてるって事は」
「それだけ大量の火薬を積んでるって事だよなぁ!」
猟兵達の狙いは最初からコレだった。弾薬庫爆破。これだけ大量の砲を積み、継戦能力を備えるならば当然大量の、しかも良質な火薬を満載している。それは、普段なら装甲の奥に守られていた筈だが、ヴィクトリアが致命部位を亜空間偵察し、小枝子がそこに引火できる穴を空け、ウタが着火する。
「「「アバーッ
!!」」」
後は突撃した旗艦を全力で守るだけでいい。爆発に次ぐ爆発が巨艦を揺らし、ばらばらと堕ちて行く。
堕ちて行く。巨艦のパーツも、乗っていたオブリビオンも、結局使われなかった重カノン砲も。
全てが雲海へと還っていく……残されたのは、動力に使われていた六つの大型
天使核だけ。
「敵影、残存0!」
「我々の勝利だ!」
「「「うおぉぉぉーーー
!!」」」
旗艦が歓声に包まれる。飛行隊も当然無事旗艦。
「活躍した戦兵鮫に敬礼を」
散って逝った多くの戦兵鮫へ敬礼。
「まあ、再召喚すれば復活するんですけどね?」
台無しだ!
「二人共良くやったな」
「そっちもね。全く猟兵って言うのは皆こんなのばっかりなのかしら」
手を挙げたウタに、ティナリアが静かにハイタッチ。ブラックが嬉しそうに唸る。
戦いはまだ続く。始まった戦火は、どちらかが終わるまでは消える事は無い。
だが、この戦いは猟兵と勇士達の勝利に終わった。
安寧を願う鎮魂歌を空に響かせながら、猟兵達は進む。次なる戦場へと。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵