アルカディア争奪戦⑤〜クールキャラ以外死ぬ戦場
降りしきる雪の冷たさに震える豆粒のような人々と、それらを管理する雪の木偶。
美しい氷の翼をはためかせ、天使ははるか空から、白ばかりの大陸を見下ろしていた。
一体のスノーゴーレムが、働き疲れて倒れこむ奴隷へ、執拗に攻撃を加えていた。天使はただちに地上へと急降下し、そのゴーレムを杖の一振りで粉砕してみせる。
「あ……有難うございま」
『礼はいらない』
奴隷が何か言うよりも速く、天使はふたたび上空へと舞い戻る。多くを語らぬその背に注がれるのが、常に困惑の視線であろうとも、けして振り返る事はない。必要以上の情も、非情も、不要なことだった。
――あれらが奴隷であることは知っている。
しかし、天帝騎士団たる彼らの誇りは、人々を必要以上に虐げる事を許さない。
彼らの役割は、天帝『冬のアスタルシャ』が命じた通り、この地に訪れた敵を正面から迎え討ち、排除するのみ。氷の天使達は汗ひとつかかず、与えられた使命を冷静に遂行することだろう。
何故なら――彼は、もしくは彼女は、常にクールでいる事が信条だから。
●Be COOL
天帝『冬のアスタルシャ』がかつて創造したという、雪と氷に閉ざされた浮遊大陸。
それが飛空氷塊アリステラ。現在、ここに囚われた奴隷の人々を救出する作戦が進行中だが、大陸に点在する天帝騎士団のオブリビオン達も捨て置けない存在だ。
『冬のアスタルシャ』に忠誠を誓う彼らは、オブリビオンでありながら、騎士道精神を何より重んじている。
卑怯な戦法や、汚い言葉を好まず、正々堂々とした戦いを信条とする精鋭揃いだ。
更には、今から向かう地区にて立ち塞がる敵は、氷を操る天使・クールエンジェル。
ただでさえ極寒であるこの地は、クールエンジェルの力の影響で超低音の世界と化している。無対策で向かうと身体が凍りつき、動けなくなるほどだというが――。
「クールだと凍結ダメージを受けない」
なんで?
「知らね」
柊・はとり(死に損ないのニケ・f25213)はスマホを弄りながら言い捨てた。
突然理不尽なおもしろ設定をぶつけられてもノーリアクション。こういうのがCOOLってやつだぜの一例である。
「クールにも色々パターンがあると思う。単に格好よく戦うとか、スカした態度を取るとか、んー……まあ自分がクールだと思えばクールなんじゃね」
本物のクールキャラは自分で「俺クールだな……」とか思ってないものだが。
クールエンジェルがCOOLだな! って思えば、それはもうCOOLである。
そしてクールエンジェルさん達のクール判定は、割とガバである。
むずかしいことは考えなくてもいいが、ぶっちゃけなんかむずかしそうなことを言っているだけでも、クールには見えるのでCOOLだ。
「そろそろ転送してもいいか? ふざけた敵に思えるかもしれないが、奴らは名誉と誓約を穢す者を決して許さない。逆鱗に触れないよう気をつけてくれ」
クールキャラあるある、送り出す時に気の利いた一言を添えるのが苦手。
はとりはグリモアを浮かべた。彼のグリモアは、頭部が欠けた雪の結晶の形をしている。ここまでやるか、みたいなクールさだった。
ここで挙げたクールはあくまで一例。
クールを愛する人の数だけクールがあるのだ。
それがCOOLってやつだから――。
蜩ひかり
蜩です。クールな戦いをするシナリオです。
よろしくお願いいたします。
●プレイングについて
受付状況はタグでご確認ください。
今回は採用人数を定めず、概ね先着順で書けるだけ書く方針です。
初見の方、お久しぶりの方、過去流してしまった方は極力優先します。
趣旨から外れた行動、理解に時間がかかるプレイングは優先度繰り下げとなります。
フォームが物理的に閉まった時が締切となります。
MSページも一度ご確認いただけますと幸いです。
●状況
集団戦ですが、1対複数はクールじゃないのでタイマン勝負になります。
奴隷やゴーレム、障害物なども何もない戦場です。
クールなら寒さ無効ですが、敵UCでの攻撃は普通に受けますのでご注意ください。
●クールとは
ギャグでもシリアスでも大丈夫です。
プレイング内容に応じたリプレイになります。
元々クールな方はごく普通に戦うだけでクールですし、クールじゃない方が頑張ってクールキャラをやってみたけど全然クールじゃないのもCOOLだと判定されます。
私の意表を突くクールも歓迎しておりますが、騎士道精神は大事にして下さい。
普段はルビ非推奨ですが、このシナリオではクールなら使ってOKとします。
以上です。COOLなプレイングをお待ちしております。
●プレイングボーナス:騎士道に則り、誇りをもって戦う。
第1章 集団戦
『クールエンジェル』
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POW : サブゼロ・ジャッジメント
【頭上の『天使の輪』が光るの】を合図に、予め仕掛けておいた複数の【詠唱中のクールエンジェル】で囲まれた内部に【絶対零度のダウンバースト】を落とし、極大ダメージを与える。
SPD : エンジェリック・アサルト
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【氷杖】から【レベル×5本の氷魔法の矢】を放つ。
WIZ : クール・エンジェル
敵より【クールな】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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播州・クロリア
クールとはカッコいいもの
つまりダンスですね
(敵の前に立ち恭しくお辞儀をする)
私は播州・クロリア
ここの奴隷の皆様を解放しにやってまいりました
なので皆様と戦うことになりますが
その前に戦意高揚も兼ねたダンスをさせていただきます
(直立し目を閉じて両腕で自分を抱きしめるようなポーズをした後{白銀の旋律}で『ダンス』を始める)
この旋律は朝日に照らされた雪のような静寂と純真さを表現した旋律です
まっさらな気持ちで皆様と戦いという私の気持ちを表現しました
お待たせしました
では、いきます
(翅を震わせUC【蠱の翅】を発動すると足元から立ち昇る{蜂蜜色の陽炎}を身に纏い『オーラ防御』をしながら『衝撃波』と共に突撃する)
●1
播州・クロリア(踊る蟲・f23522)は思う。
クールとは、カッコいいものであると。単純明快にして不変の真理だ。
「つまり……ダンスですね」
つまりダンスである。ダンス=カッコいい=クール、隙のない方程式。クールだ。
歌って踊れるアイドルも、ブレイクダンスが上手いパリピも、優雅に社交ダンスを踊る紳士淑女もカッコいい。ダンサーという生き様を選んだ時点で、誰もが逃れようもなくクール。なので、クロリアは少しも寒くなかった。
クールの気配を察知し、舞い降りたクールエンジェルの女性も『そうだな、つまりダンスだな』と思ったのだろうか。腕を組み無言でうなずく彼女に、クロリアは恭しく一礼した。
「私は播州・クロリア。ここの奴隷の皆様を解放しにやってまいりました」
余分な装飾のない黒のスーツが、二メートルを超す長身をよりスタイリッシュに魅せる。華美な衣装に頼ることなく、ダンスの実力のみで勝負する――矜持を感じさせる佇まいだ。
「なので皆様と戦うことになりますが、その前に戦意高揚も兼ねたダンスをさせていただきます」
紳士。実に紳士。
紳士って性別じゃない、概念だ。クロリアの振る舞いはそれを教えてくれる。
もちろん、クールエンジェルも挨拶中に攻撃するような無粋はしない。
それどころか、真っ白な雪原に直立して瞳を閉じ、集中するクロリアを眺め、厳かに拍手を送るほどである。猟兵とオブリビオンとの戦いにおいて、これほど紳士的な一幕があっただろうか。
瞳を伏せたクロリアは、両の手をひろげて己の肩をいだき締め、深く腰を落とす。
ゆっくりと立ち上がりながら天へと腕を伸ばせば、鬱々たる雪雲に閉ざされた空から朝の光が差し、白き大地が希望の光に照らされる情景が目に浮かぶよう。
静寂の中、楽しげに笑みを浮かべ、軽やかに雪を踏む。はじめて雪を目にした幼子のはしゃぐ姿を連想させながらも、洗練され、余分な力を感じさせないステップ。
クールエンジェル達も思わず時を忘れ、クロリアの表現する世界観に魅入る。
そして、どのくらい経過しただろうか――。
「……以上、『白銀の旋律』になります。朝日に照らされた雪のような静寂と純真さ、まっさらな気持ちで皆様と戦いという私の気持ち、感じていただけましたでしょうか」
クロリアが締めの挨拶をすると、コンサート会場の如く拍手が起こった。
クールエンジェル達の反応はあくまでクールだ。言葉こそないが、この拍手にはクロリアの素晴らしいダンスに対するリスペクトと、賞賛の想いが込められている。
「楽しんでいただき光栄です。では、お待たせしました。いきます」
騎士道に則り、勝負開始の予告まで欠かさないクロリア。舞台を鑑賞していたクールエンジェル達も、最低限の人数だけを残し、しっかりはけていく。
クロリアの蜂に似た翅が大気を震わせると共に、クールエンジェルの天使の輪が輝く。
バックダンサーのクールエンジェル達が踊り始めるのに合わせ、メインボーカルのクールエンジェルが、聞いた事のない言語で歌唱し始めた。どうやら、これが詠唱らしい。彼女らもまた、歌って踊れるタイプのクールなエンジェルだった。
凍てつく冬を感じさせる壮大な歌声が響く中、絶対零度のダウンバーストがクロリアへ迫る。
しかし、クロリアの足元から立ち昇る蜂蜜色と白銀の覇気が、激しい気流を受け流した。
『何
……!?』
そう、クロリアの戦闘力は、彼女がダンスをしていた時間のぶんだけ増強されるのだ。
大気を切り裂き、蟲の踊子が翔ぶ。
肉眼では捉えられない速度から生まれた衝撃波は、冬の嵐のようにクールエンジェルを貫き、氷でできた肉体を粉々に砕いた。消えゆく寸前、クールエンジェルはふっと笑みをのぞかせる。
『そうか。貴殿のダンスに魅入ってしまった時点で、私の敗北だったのだな』
「いえ、貴方の歌声も素晴らしかったです。良い勝負を有難うございました」
クロリアには彼女の『色』が見えていた。クールな白の中に秘められた、情熱の赤が。
凍てつく冬の冷たさも、雪融けの温もりには勝てぬ。
ダンスってカッコいい。ダンサー道、それは騎士道なのかもしれない――。
大成功
🔵🔵🔵
リーヴァルディ・カーライル
…元々、口数が多い方じゃ無いけど改めてクールかと云われると…。
…いや、そもそもクールだと凍結ダメージを受けないとは一体…?
…カクリヨファンタズムとかデビルキングワールドとか、
あっち系の異世界特有のよく分からない理不尽な法則?
…だけど私も幾つかの異世界の戦争を経て学んだ事がある
…よく分からない法則はよく分からないなりに従えば良い、と(思考放棄)
…とりあえず、クールに見えるよう必要なこと以外は喋らないでおきましょうか
UCを発動し限界突破した魔力を溜めた光熱属性攻撃の荷電粒子砲を放ち、
魔力が尽きるまで持続する光熱波のオーラが防御や敵UCを貫き敵をなぎ払う
…私の名はリーヴァルディ。お前を倒しにきた者よ
●2
雪と氷に覆われた真白の大地に、夜を封じたような漆黒がひとつの風穴を穿つ。
長い白銀の髪を雪風に遊ばせる、その娘の生業は吸血鬼狩り。身に纏う黒装束には、今なお闇深き故郷に、いつか光をもたらすという誓いが秘められている。
物憂げな紫の眸も、小さく結ばれた唇も、けして多くを語らず、彼女は今日も無辜の民へと手を差し伸べるため戦地に赴く。
そんなTHE・クールみたいな少女、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は――当然少しも寒くなかったが、正直、かなり困惑していた。
――私がクール……? ……確かに元々、口数が多い方じゃ無いけど……。
改めてクールかと云われると、実はあんまり自信がなかった。かわいい。
ヴァンパイアを狩る事だけがリーヴァルディの使命だ。その行為や過程がクールでスタイリッシュかどうかなど、全然気にかけていないし、興味もない。
だが、それでいい。それこそがナチュラルボーンクールなのだ。その証拠に、上空のクールエンジェルも『あのクール、只者ではない……』という目線をリーヴァルディへ注いでいた。
『我が名はクールエンジェル。貴殿との勝負を所望する』
一方、リーヴァルディはすごくシリアスに見える顔をしながら、内心こんな事を考えていた。
――……そもそもクールだと凍結ダメージを受けないとは一体……?
――……ブルーアルカディアも、あっち系……?
カクリヨファンタズムやデビルキングワールドのことを纏めて『あっち系』って言わないであげてほしいが、クールなリーヴァルディからしたらあっち系である。たぶんキマイラフューチャーやアスリートアースもあっち系だ。
あっち系特有のよく分からない理不尽な法則に巻き込まれる可能性もあったが、戦争で民が虐げられていると聞けば、黒騎士道に則り助太刀に来る。まさにCOOL。こんな戦場でうっかり死んでいい人材ではない。
それに、あっち系の文化に触れて、何も学ばないリーヴァルディではなかった。
――……ん、学んだわ。よく分からない法則はよく分からないなりに従えば良い、と。
無言で頷き、決闘を受諾するリーヴァルディ。
一見COOLに見えるが、実は思考放棄しただけ。
だんだんあっち系に侵食され、クールさが損なわれてきている。
しかし、逆に問おう。あっち系への無理解こそ真なるクールの証なのでは?
クールエンジェルも『ん? 審議か?』って顔をしだしたので、これ以上は実力で語るのみ――リーヴァルディは漆黒の大鎌を構えると、この極寒の地で息絶えた者たちの想念に意識を傾けた。
――故郷で苦しむ魂たちと同じだ。
力なき人々の無念と、助けを求める声が、リーヴァルディの魔力を本来の限界以上まで高めていく。
大鎌を振るい、吹雪を切り裂くように魔法陣を描く。
魔法陣を通して放たれる粒子は、亜高速まで加速し、荷電粒子砲となって辺り一面を眩い光熱波で覆いつくした。
全てを滅ぼす裁きの光は、一切の防御を許さず、圧倒的熱量と威力をもって絶対零度の気流を制圧した。クールエンジェル達はその威力に驚愕する間も、逃げる隙も与えられず、光に呑まれて崩壊していく。
なおも溢れる光熱が雪を、氷を、大地を融かし、大陸の一角が焦土と化すまで。
リーヴァルディは魔力を放ち続ける。これが虐げられた人々の痛みだとでも言うように。
灼やして、灼やして、灼やして――灼やし尽くして、魔力を使い果たしたリーヴァルディは、不意に片膝をついた。
大鎌でその身を支えながら、誇り高き吸血鬼狩りの少女はただ一言、こう呟く。
「……私の名はリーヴァルディ。お前を倒しにきた者よ」
その言葉を聞く者はもう誰も居ない。
荒涼たる大地を吹き抜ける風だけが饒舌だった。
彼女の脚を止め、矜持を凍りつかせる事など、何者にも出来ないのだ。
大成功
🔵🔵🔵
高峰・勇人
フッ……サシでの決闘をお望みとは、見上げた騎士道精神だ
受けて立つぜ
見せてやるよ、クールなオトナの戦い方ってやつをな……!
ヘルメットを片手で押さえて、もう片方をホルスターに収めた詠唱銃に伸ばし、斜に構える
この手のシーンなら、台詞は決まってるよな
「先に抜きな」
ちなみにサブマシンガンで抜き撃ちなんてやったことない
だが俺にはこの自慢の
『鼻』がある
『風』が教えてくれるのさ
お前の攻撃のタイミングは既に見切って
見切っ……
ンー
展開次第だが多少強引に乱れ撃ってでも撃ち倒しを狙おう
最終的に俺が立っていればいい
これもまたクレバーなオトナの戦い方ってやつだ
言ったもの勝ちの精神を大事にしていきたい
●3
雨と同じく、雪にも独特のにおいがある。
それは生命や物質でなく、鼻腔を突き抜ける低温がもたらす、感覚的なものであるのかもしれない。少なくとも、
高峰・
勇人(再発性頭痛・f37719)が学生時代、親しくはなれずとも慣れてはいた、屍体特有の鼻をつく腐臭は混じってはいなかった。
スーツの上に着込んだ迷彩ジャケットと、頭部を守るヘルメットは、当時から勇人のトレードマークだった。堂々としていれば、案外様になるものだった。悲しい哉、単なるカンパニーマン未満よりも、この戦闘服のほうが身に馴染む。
歳を重ねた今、友の形見の詠唱銃を手に、死と隣り合わせの青春へと舞い戻る。雪上を注意深く歩くその姿に、冷たい熱視線を注ぐクールエンジェルを仰ぎみて――彼は言った。
「フッ……サシでの決闘をお望みとは、見上げた騎士道精神だ。受けて立つぜ。見せてやるよ、クールなオトナの戦い方ってやつをな……!」
黙ってた方がクールなのにってよく言われませんか?
だが、勇人は少しも寒くなかった。たぶん内心ちょっとホッとしていたと思う。
ヘルメットを左手で押さえ、目深に被る。
右手はホルスターに収めた詠唱銃の上へ。右足に重心を偏らせ、左足はちょっと前に出し、肩をいい感じに右へ下げておく。
立っただけで熟練の
狙撃手感を醸し出す、闇魔法・斜に構えるポーズ。超COOLなので真似してみてほしい。
「先に抜きな」
決まった――勇人はそう思った。
実はサブマシンガンで抜き撃ちなんてやったことないが、言ったもん勝ちである。
西部劇とかでよく見る一度はやりたいクールな決闘シーン、今やらないでいつする。クールエンジェルも『しまった、先に言われたか……』みたいな顔をしていた。
『大した余裕だな。地獄で後悔しても知らんぞ』
クールに反射クールを返された。どうする俺。
だが、俺にはこの自慢の
『鼻』がある――勇人は余裕ありげに鼻をひくつかせた。
「『風』が教えてくれるのさ。お前の攻撃のタイミングは既に見切って」
スチャッ。
当たり前のように胸元から天使核リボルバーを取り出すクールエンジェル。杖どうした?
「見切っ……」
『ふ……斃れた
戦友の形見でな。役に立つものだ』
ンー、どっかで聞いたクールな過去。その展開は予想してなかったぞ。
『凍えて眠れ――
絶対零度の風』
あ、これはポーズだけで、普通に絶対零度のダウンバーストが来るらしい。
成程、相手の土俵には乗っても卑怯な攻撃はしない、それが騎士――経験を重ねた勇人の嗅覚は、そういった思惑を直感的に読み取る事が可能だ。
本当に余計な事言わなければ普通にクールな気がするのだが、この滲み出るオトナの茶目っ気がCOOLなのだ――
理解るだろう?
ところで生身で絶対零度のダウンバーストを受ける方法だが、それは全然わからない。
しかし、シンプルな戦法で理不尽な攻撃に打ち勝つ猟兵は最高にクール。そして、それを黙々と実行に移せるのが勇人の強みであった。
クールエンジェルの頭の輪が輝く気配を察知するや、ぶっつけ本番で詠唱銃をホルスターから抜き、魔法の弾丸を乱れ撃つ。上空から叩きつける絶対零度の気流に只管耐え、直感と使命感だけを頼りに、壊れそうな指先を動かし、引き金をひき続ける。
たとえ瞼が凍りつこうと、嗅覚が生きている限りは撃つ。正確な位置こそ判らないが、敵がそこにいることを、確かに感じる。
そして、ようやくダウンバーストが治まった時――戦場に立っていたのは勇人の方だった。
穴だらけになり倒れ伏すクールエンジェルを横目に、詠唱銃をホルスターに収め、彼は精一杯の強がりを言ってのけるのだ。
「悪いな。これもまたクレバーなオトナの戦い方ってやつだ」
勝因、言ったもの勝ち。クレバーだったかはともかくクールであった。
いや、クールが新たなクレバーを創るのだ――明日は筋肉痛どころじゃすまなそうだとしても。
大成功
🔵🔵🔵
夢幻・天魔
【超絶厨二病:厨二であれば何でもOKです】
フッ……クールだと?
誰にものを言っている。
かつて異世界にて永久凍土の覇王と呼ばれた俺のクールさを見せてやろう
(※異世界云々は全て妄想です)
【異世界での最強にして無敵なる伝説的な俺】を発動、なんかそれっぽい姿に変身する
そう……あれは第4の世界だったか
俺は永久凍土の覇王として、数多の国家を侵略した
ある時は命乞いに耳を貸さずに無慈悲に蹂躙し、
またある時は部下の全滅に一切の表情すら変えなかった
ククク……最強のクールさを持つ俺に敗北は無い
●4
「フッ……クールだと? 誰にものを言っている」
包帯やベルトや十字架やシルバーがこれでもかというほど施された
†Darkness clothes†を身に纏い、紅き血の如き色に染まりし髪を持つ堕天使は、今宵もまた不敵な笑みと共に白き大地の上に降臨した――男の名は
夢幻・
天魔。(千の設定を持つ男・f00720)。種族的には人間だが、彼のクールさの前では些末事だ。
「クク……知らないか、この俺の名を。まああれも数ある伝説の一つに過ぎん」
かつては永久凍土の覇王と恐れられていた天魔である、勿論少しも寒くない。
そういう設定なだけだったとしても、あらゆるクールは厨二病へと回帰するのだから――。
「そう……あれは第4の世界だったか。俺は永久凍土の覇王として、数多の国家を侵略した」
唐突な設定語り。長くなりそうだ。
しかし、相手はクールエンジェル。この道の達人も当然いた。
舞い降りてきた彼は、他のクールエンジェルとは違い、騎士道に則って
†Darkness clothes†を着用している。
『第四の世界から来た猟兵、永久凍土の覇王だと……無敗と呼ばれた『背徳の将軍バルドヴィーノ』をネプフータ煉獄の決戦にて打ち破り、絶対に動かないと言われたアルトトネール魔道学園の重鎮『怠惰の魔道士インゲルベアト』をも動かしたというあの』
「ほう……少しは話の通じる奴がいたか。ならば見せてやろう、永久凍土の覇王の力を――!」
天魔は「その設定、使える」とほくそ笑みながら、左手を顔の前に翳し、右手でマントを翻す。覇王、いつにも増してノリノリである。俺の考えた最強のクールを見せつけていいって言われたんだもの。
世界観を共有できる仲間までいる最高の環境を手に入れ、天魔の
無限に拡大する夢幻の設定は、無敵の輝きを放つ――!
「目覚めよ、冷艶たる大地に眠る銀嶺の覇王よ。我が紡ぎしは遥か頂に坐する夢幻の果て、此度を持ちて再び現世に降臨せん――深淵より出でよ、
異世界での最強にして無敵なる伝説的な俺!」
蒼き閃光が迸る。
封印を解かれた
究極神剣は、紅い氷の刀身を持つ禍々しい蛇腹剣へと姿を変え、
災厄魔銃に封じた異界の悪魔が目覚め、六対の翼を持つ漆黒の
天馬となった。
†Darkness clothes†も普段は既製品の布だが、覇王らしく白と黒が複雑に入り乱れ、永久凍土をイメージした水晶があしらわれた、デザイナーも構造理解してなさそうなクールすぎる重鎧に変わっている。
『その鎧はまさか』
「フッ……そうだ。命乞いをする背徳の将軍バルドヴィーノを無慈悲に蹂躙し、奪い取った」
今生やしたクールな設定を早速採用する覇王。クールエンジェルもあまりのクールさに震えるばかりだ。詠唱を始める彼に、天魔は容赦なく蛇腹剣を振るい、その白い肌を切り裂く。
「ククク……この血もまた新たな力となろう」
『き、貴様……人の心がないのか!』
立場逆転してないか? それも覇王様がクールすぎる所為である、当然の展開。
天魔はフッとニヒルな笑みを浮かべ、昔を懐かしむように、暗雲たちこめる空を見上げた。
「アルトトネール魔道学園との大戦では俺も追い詰められたものだ。部下は全滅し、今や孤独。しかしそれが如何した」
『まさか、孤独が更に力を高めたというのか
……!?』
「ククク……理解出来たか。そう、あの時も俺は一切の表情すら変えなかった。仲間など不要、最強のクールさを持つ俺に敗北は無い!」
ここまで全て二人の妄想。天魔にそんな過去はない。全然ない。
ないのだが――俺の考えた最強のCOOLに一切の疑念を抱いていない今の天魔は、完全無敵状態である!
永久凍土の鎧は絶対零度のダウンバーストをいとも簡単に反射し、漆黒の
天馬が、雪と氷の大地に災厄をもたらす蒼き炎の弾丸を天より降りそそがせた。
凍りついたクールエンジェルを
究極神剣の一閃で粉砕すると、天魔は前髪をかき上げ、COOLに言い放つ。
「クク……また武勇伝が増えてしまったか。72の封印が解けるのはいつになる事やら……」
そして、伝説は無限に続く――天魔先生の次回の
厨二病にご期待ください。
大成功
🔵🔵🔵
スキアファール・イリャルギ
クールとはなんだろう
カッコいいことですかね
よく友人に「カッコいい!イケメン!今日もイケメてる!」と言われていますが、
いつも「いえそんなことは……」と返して照れています
何もしていないのにカッコいいと言われるのです、不思議です
……ふむ、でもそれをヒントに考えてみると
こう……いつもより背筋を伸ばして、キリッとした表情をして、
UCで影手を召喚して「さぁ行け」みたいな一言のみを発して
影手が敵の繰り出す氷を呑み込みながら攻撃する様子を、ただ立って見つめていて
どんな敵の言葉にも動じず
私は寒くないですよーみたいな涼しい顔をして
いや、クールだと凍結無効とはいえ寒いです
包帯って意外と防寒にならないんですよね
●5
その男の持つ雰囲気は、一見して『異様』であった。
ひょろりと縦に細長い身体を猫背ぎみに折り曲げて歩き、隈が刻まれた瞳の底は真っ暗で光を感じない。身体は黒い包帯に覆われ、わずかに露出する地肌は死人のように白い。
明らかに人間を逸脱するような特徴は――見える限りでは――何もないのにもかかわらず、不気味で不吉な印象を残す、影。そのさまは、まさに怪奇。怪奇の名を、人はスキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)、または
真境名・
左右と呼ぶことだろう。
なんかもう特徴を羅列しているだけでバリバリクールな気がしてきた。強い。
「クールとはなんだろう。カッコいいことですかね」
そしてこの発言である。やっぱり黒い面積が多いって大事。クールなメンズは大体黒着てる。キャースキアファールさ〜ん! カッコいい! イケメン! 今日もイケメてる〜!!
「い、いえそんなことは……おや。誰もいない……」
よく賑やかな友人達にもそう持て囃されているせいか、吹雪の向こうに幻聴を聞いてしまったようだ。恥ずかしい……スキアファールはぽっと頬を赤らめた。この影人間、意外と表情豊かだったりする。
そんなスキアファールに冷たい熱視線を送るクールエンジェルがいた。どうやら若い女性の個体のようだ。『クールなのに照れ屋で謙虚……やだ、すごくCOOL……』って顔をしている。キュンである。
――もしや私モテてます? 何もしていないのに……。
困惑。実はSUKEBE BOOKもまともに読めないぐらい初心なのに。心に決めた相手もいるのに。
でもそういう所もクール要素だからな、モテちゃうのも仕方ない、陰キャ系クール男子最近大人気だし……だが、そんなクール事情知らないスキアファールは、本気で不思議がっていた。なんで?
『はっ……私はクールエンジェル。貴公より私の方がよりクールであると証明しよう』
信条を思い出したクールエンジェルは、杖を器用にくるくると回して突きつけ、宣戦布告のポーズを取る。彼女はスタイリッシュ系クールのようだ。このままだと陰のクールにマウントを取れてしまう、どうするスキアファール。
――何もしないことがクールなのでしょうか? ……ふむ、それをヒントに考えてみると……。
スキアファールは急に背筋をしゃんと伸ばし、眉と目尻をつり上げ、口元を一文字に結んだ。えっカッコいい!
じわりじわりとインクが滲むように、男の長い影が雪原を侵食していく。泥梨の底から這いずり出た痩せぎすの影手が乱れ咲き、貪欲な亡者が生へ群がるが如く、奇奇怪怪と蠢きだした。濁った血色の蓮華を咲かせる其の腕らは、果たしてなにを啜ってきたのか。
クールエンジェルが杖を振るう。凄惨に彩られた影の花畑を散らすべく、無数の氷柱が弾丸のように飛来し、スキアファールを襲う。
「さぁ行け」
指示はただの一言。命に応じた影手たちは、たちまち氷柱を闇の底へと引き摺りこんでいった。怪奇の手は動揺するクールエンジェルにも及び、その腕を、足を、首を絡め取る。幾ら杖で殴りつけ、払おうとしても、飢えた影たちは捕らえた獲物をけして逃しはしない。
『な、何者なのだ貴様……くっ、離さぬか!』
底の見えない影の中へ半ば沈みかけながら、クールエンジェルは、得体の知れぬ長身の男を畏怖するように見上げた。スキアファールは何も言わず、眉ひとつ動かさず、ただ影を煮詰めたような瞳でその様子を眺めているだけだ。
――恐ろしい。
――だが、それ以上に――。
『か……カッコいい……ッ!』
This is COOL。クールエンジェルは二重の意味で沼に落ちた。
このユーベルコード、実はすごくカッコいい名前なんだよな……秘密の設定までカッコいいんだよな……でも言わない。そこがとってもクール。
そんなスキアファールは、当然少しも寒くなかった……かと思いきや。
「くしゅんっ」
え? 今くしゃみした? 寒かったの?
「寒いです。包帯って意外と防寒にならないんですよね」
そっか、ここ永久凍土だもんな……帰ったら暖かいもの食べてほしい。kawaii×COOL、最強である。
大成功
🔵🔵🔵
ヴォルフガング・ディーツェ
OK、状況は把握した
つまり始終こういう顔をして小難しい事を言えば良いわけだ
……正直何でやねんツッコミを入れたいが、クールでないから止めておこうねぇ
精霊ジベザベスくんと共に戦域へ
俺の「全力魔法」「高速詠唱」「属性攻撃」技能をリンクさせ、全力の水魔法で援護して貰おうか
ゆるっと可愛らしい顔をしているが、ひんやりとCOOLだろう?(ザル判定に乗るザルCOOL)
正々堂々を好むなら真っ向から行くのが礼儀
【指定UC】で加速
速度による残像にフェイントや近接戦に使える技能を用いて、攻撃を回避しながら懐へ
氷の矢はジベくんに打ち落として貰う
勢いと風を纏わせた魔爪で腸を抉り、返す刃で羽を断とう
地に堕ちよ、異界の騎士よ
●6
「OK、状況は把握した。つまり始終こういう顔をして小難しい事を言えば良いわけだ」
ヴォルフガング・ディーツェ(花葬ラメント・f09192)は口許から魔狼の牙を覗かせ、眉間に皺が寄るほどに眉を釣り上げると、享楽的で残忍な笑みを浮かべた。
一〇三の齢を重ねた身に宿すは、逃れる事能わぬ罪と呪詛。ぎらり輝く紅玉の瞳は血に飢え、牙剥く者を魂の髄までいたぶり尽くそうと、愚かな獲物を狙っている……ように、見えなくもない。ポーズだと思いたいが本性です。
最近すっかり後期高齢者芸人が板についてしまっていたおじいちゃんだが、そういえば本業は闇のクールイケメンだった。脱いだら凄いし、その辺の若者よりテクノロジーに詳しい。そんなジジイ、COOL。お前のようなジジイがいるかである。
ヴォルフガングは少しも寒くなかった。
……しかし。
何でやねん。
なんでクールだとダメージ受けんのや。
ツッコミたい――物凄くツッコミたい――イケ面から三頭身のギャグ顔になって、目の前の敵にこう、バシッと――そもそもCOOLなエンジェルって何――封じられし闇の後期高齢者が暴走し、徘徊老人寸前であった。おじいちゃんステイ。ノットクール。
「恐らく特定の色彩や言霊に反応する特殊な魔術結界が用いられているのだろうね」
クールエンジェルは『わかってるな』みたいな顔で頷いた。
ヴォルフガング選手、ここは堪えた。ナイスリカバー。
一度芸人枠にハマると抜け出すのが大変である。だから、クールキャラは今日も、ヘンテコ設定を華麗にスルーし続けるのだ――。
「よし。それでは行こうか、ジベザベスくん」
え? ジンベイザメの精霊・ジベザベスⅦ世様をご存知でない?
地球で圧倒的人気を誇る水族を統べし者・ジベザベス3世様の化身か何かであらせられるぞ。キューッと鳴きそうなお顔をしているが、サメ補正でクール。ギリクール。
魔力を注がれたジベザベスくんは、ひらべったいお口をかぽっと開けると、メイルストローム的な何かを発射し、詠唱中のクールエンジェルを弾き飛ばした!
co……いや……これは……cuでは
………??? cuはcuteのcu! cuだよ!!
「ゆるっと可愛らしい顔をしているが、ひんやりとCOOLだろう?」
ヴォルフガングはすかさずキメ顔で誤魔化した。全アトリエ
力が結集された渾身のキメで言った。
『邪魔をするか……しかしこれは避けられぬだろう!』
クールエンジェルは高速で飛び立った。
ザル判定、通過――!
cuはCUULのcuだった。ギリクール! ザルCOOL! ちょっと線閉じ忘れただけ!
次の行からクールになるから……ごめザベス……。
さて、どう料理してくれようか。絡め手なら幾らでも使えるが――相手が正々堂々を好むなら、此方も真っ向から挑むのが礼儀。胎の底に獣を飼おうと、そこを弁えないほど粗野ではない。
「指令、『惑えよ法則、従えよ蒼穹』」
全身を覆うように展開するは破空の領域。この小規模空間においては、意志の力が物理法則を叩き伏せ、魔狼と従属する精霊に不可視の翼を与える。
『馬鹿な、私の速度に追いついただと
……!?』
クールエンジェルも超高速で飛翔しながら、無数の氷の矢を放ち続けるが、それらは残像を掠めるにとどまる。精霊が放つ高圧の水流が、その矢を無慈悲にも撃墜する間に、ヴォルフガングは口笛をひとつ吹いた。
瀟洒な腕輪が鋭い魔爪に変化する。複雑な幾何学模様を描いて飛翔しながら、ヴォルフガングはクールエンジェルの懐に潜り、喉元へその爪を突き立てようとした。
『甘い……!』
杖で爪を防御するクールエンジェル。甘いのはそちらだとばかりに、魔狼が老獪に嗤う。
クールエンジェルがごふりと血を吐いた。喉を狙ったのはフェイクだ。勢いと風の魔力を乗せた本命の爪が、天使の腸を抉りとっていた――返す刃で氷の翼を断てば、敵は羽をもがれた蝶のように落下していく。
雪上に紅が咲く。顔に浴びた返り血を拭いながら、ヴォルフガングは囁いた。
「――地に堕ちよ、異界の騎士よ」
ところでたぶん『クールになりたい』って意志の力で飛んでますよねこれ。
時に物理法則すら歪める、それがクール。ナイスクール……!
大成功
🔵🔵🔵
栗花落・澪
一度でいいからクールキャラになってみたい僕だった
まぁでもそれはそれとして、奴隷はちょっと見過ごせないので…
斬るよ
★鎌を両手で構えつつ宙を蹴り翼の【空中戦】で接敵
鎌の刃に【高速詠唱】で炎魔法の【属性攻撃】を纏わせ
【なぎ払い】による斬撃と同時に火炎ダメージを与える狙い
炎と言えば熱血イメージはあるけどね
属性ばかり気にして本気でやらないのは失礼でしょう?
正々堂々真っ向勝負
お相手願えますか、レディ
敵の攻撃は【オーラ防御】で防ぎつつ
積極的に接敵して鎌を振るい
相手がバランスを崩したところで【指定UC】
増殖はさせず武器も1対1
お相手ありがとうございました(一例
…ところで今のってクールです??(わかってなかった
●7
ここまでクールを極めてきた戦場だが、ちょっとここで雰囲気が一変する。
続いて現れたのは、一見するとクールとは程遠い、むしろ可憐で暖かな印象すら与える、栗色の長い髪の美少女……いや美少年。ゆるく波打つ髪に赤い金蓮花を咲かせ、純白の翼が眩しいまさに天使、
栗花落・
澪(泡沫の花・f03165)だ。
そんな澪をちらりと見て、フッと勝ち誇ったように笑うクールエンジェルの美少女。
「……わっ、寒い!」
澪は……寒かった。ノットCOOL、イエスCUTE判定である。
でも、いつもそんな扱いの澪だから、一度でいいからクールキャラになってみたかったのだ。
もうね、その気持ちがCOOLなんだよ……頑張れ澪、嫌味クールに負けるな。伸び代はすごくある!
「まぁでもそれはそれとして、奴隷はちょっと見過ごせないので……」
澪は愛らしい瞳をきりりとつり上げ、敵と、その向こうの天帝へ譲れぬ想いを向ける。澪も今の伴侶に救われるまでは、奴隷として手酷い扱いを受けていたのだ。
彼らはいま、どれほど辛い思いをしているか――共感は赤い花弁となって、雪深い暗雲から降りそそぎ、美しく透き通った薄紅色の鎌となる。澪は鎌を両手に握ると、宙を蹴り、敵を見据えた。
「斬るよ」
えっカッコいい!
もっと知られてほしい。澪くん、実は意外にこういうとこある――!
翼をはためかせ敵へ突撃すると同時に、高速で詠唱を終わらせ、鎌の刃に魔力の炎を纏わせる。予想外の鋭い斬撃に驚いたのはクールエンジェルだ。澪を甘く見た彼女は、杖でなぎ払いを受けきれず、早速腕を斬り裂かれることになる。
傷口はじわじわと燻り続け、耐火能力の低い腕を著しい速度で溶かしていく。
『――生意気よ。炎を使うなんて、貴方やっぱりクールの風上にも置けないわ』
「確かに、炎と言えば熱血イメージはあるけどね。属性ばかり気にして本気でやらないのは失礼でしょう?」
その言葉に、クールエンジェルはハッとした。
ぱっと見の属性で相手を見下してはいなかっただろうか?
氷や水ばかりがクールだと決めつけ、炎が来るわけがないと油断してはいなかったか?
違う。そんなのクールじゃない。騎士道でもない。クールじゃないのは私の方だった。
だから、あんなにも簡単に初撃を喰らってしまったのだ――!
「改めて……お相手願えますか、レディ」
そんな堕ちたクールエンジェルにも、澪は紳士的に対応する。その姿に、彼女も思う所があったようだ。
『……貴方の力を侮っていたことをお詫びするわ。参りましょう――正々堂々と』
誘惑も歌唱も封印し、鎌一本で戦う澪に敬意を表し、クールエンジェルも杖一本で応戦する。
氷の魔力を宿して振りかざされた杖は、鎌に炎のオーラを纏わせる事で相殺して、なんとか受け切る。守りには入らない。負傷も厭わない勇気を出して、真っ向から敵へ突き進む。
空中で激突する炎と氷が、鉛色の空に激しい火花を描いた。
『……っ!』
澪のなぎ払いが氷の杖を弾き飛ばし、重心が崩れたクールエンジェルの身体がかしぐ。その一瞬を見逃さない。敵を討ち、人々を解放するのだという決意を炎に乗せて、澪は渾身の一閃を放つ。
武器を増殖させる事だってできた。けれど、それはきっと、この場に相応しくないと思った。
澪が選んだ唯一の道筋は、クールエンジェルを袈裟斬りにし、ただ一本の傷を刻む。
『そんな……』
致命傷だ――炎上しながら墜落していく彼女を追い、澪も地上に降り立った。
「お相手ありがとうございました」
決して分かり合えぬ相手だろうと、最後には敬意を表し一礼を。そんな騎士道精神溢れる澪の姿に、クールエンジェルもすっかり心を浄化されたようだ。
『此方こそ。最期に貴方と勝負が出来た事、誇りに思うわ……』
こうして一人のクールエンジェルを救った所で、澪はふと素に戻った。
「……ところで今のってクールです??」
『な……く、クールよ! 言わせないでよ、バカっ!』
クールには付き物のツンデレである。気づけば、澪も少しも寒くなかった。
大成功
🔵🔵🔵
双代・雅一
いつものスーツに白衣姿、静かな薄ら笑みで戦場に
クールの定義が大分ゴチャゴチャになっている気がする
チルドより冷たいのは間違い無さそうだけど
で、君がクールを気取った天使さん?
その程度の冷気でクールを気取るなぞ、生温いにも程がある
極地の氷も溶けてしまうな
さぁラサルハグェ、準備はイイか?
左腕駆け上がる白蛇が手元で槍に変じ
スマートに回転させながら己の身に突き立て強化を
クールを超えしクール…フリージングな世界をお目にかけようじゃあないか
冷静に淡々と視線向け
声に一切熱は無く
正々堂々とした槍捌きを以てお相手しよう
本当は搦め手の方が得意だけど、今は君らに併せよう
最大威力の冷気を叩き付け
凍り付け…
永遠に
●8
クールにも色々なクールがある。
クールに貴賤はなく、己が信じたクールがただ一つのCOOLなのである。
それはそれとして――やっぱりいるんだな。
どうあがいてもこの戦場では絶対死なない人が――。
「やれやれ…… クールの定義が大分ゴチャゴチャになっているな。チルドより冷たいのは間違い無さそうだけど」
ご覧の有様ですよ
双代・
雅一(氷鏡・f19412)さん。
スーツ、白衣、氷属性、青目青髪色白、多重人格者のUDCメカニックにして闇医者。唯一特徴欄にもクールって書いてる、バチバチの正統派ど真ん中クール王子が遂に降臨した。基本プロフィールだけで勝ち目ない。隙がなさすぎる。
今日は眼鏡をかけていないので、兄で医者の雅一さん人格だ。
眼鏡をかけている時は、弟でUDC技術者の
惟人さんである。
兄が愛想良き偽善者で? 弟が毒舌の善人? うーんステシ全部コピペしそうなので強制終了。寒いわけない、戦闘しよう。
上空から舞い降りたクールエンジェルに向けられる雅一の笑みは、深い雪景色に溶けるように静かで、穏やかで、しかしどこか底冷えのするものだった。お人好しの片割れがよく着けている眼鏡は、スーツの上に羽織った白衣の胸ポケットへ無造作に引っ掛けられている。
「で、君がクールを気取った天使さん?」
くすりと微笑む雅一に対し、クールエンジェルも身体を強張らせ頷くことしかできない。明らかに格上のCOOLを前にしても、己が信条を貫かんとするのは騎士の誇りであるのか。
敵の反応を淡々と眺める雅一の柔らかな笑みは、まるで子供の戯れでも眺めているようにすら映る。
「その程度の冷気でクールを気取るなぞ、生温いにも程がある。極地の氷も溶けてしまうな」
実際、雅一にとっては児戯の如きものであるのだろう。その声に熱は籠らず、氷雪を宿した両の眼は少しも笑ってはいない。
『アスタルシャ様に忠誠を誓った我々の誇りを甘く見積もるな。永久凍土に沈めてくれる』
「挑発に乗せられているようでは、甘いと言わざるを得ないな。さぁラサルハグェ、準備はイイか?」
雅一が空へ左腕を掲げると、医術の神たる蛇使い座が抱く恒星の名を与えられた白蛇が、白衣の胸ポケットから顔を覗かせた。ラサルハグェは雅一の腕を駆け上がり、掌まで辿り着くと、雪の結晶を模した意匠が特徴的な白銀の槍に姿を変えた。
その槍が己の身を貫くと思ったか、クールエンジェルは胸の前に杖を構え、防御姿勢を取る。しかし、雅一はくるりと矛先を下に向けると――自分の腹に槍を突き立てた。
『――!?』
気でも違ったか。クールエンジェルはそう思ったが、そこはクール、切り替えが速い。このまま押し通すべきと見て、杖から氷のダイヤモンドカッターを複数発射する。勿論雪の結晶型。
雅一お兄ちゃん、クールキャラなんですぐ自傷に走るん?
それはな……COOLだからだ。ですよね? 雅一はふっと、僅かに口角を上げる。
「クールを超えしクール……フリージングな世界をお目にかけようじゃあないか」
クールじゃなかった――!
ついに世界はCOOLを超越し、FREEZINGに突入した――!
雅一はカーブを描きながら飛来する巨大な雪の結晶を順繰りに見やると、どれが、どういう軌道を辿り、どの順番で此方へ到達するかを瞬時に計算し、演算の結果通りに槍を振るった。
最初に弾き返した結晶が、後続の結晶を巻き込みながら跳ね返り、そのままクールエンジェルの肉体を斬り裂く。ひとつ残った結晶は穂先で貫き、横薙ぎに槍を振るって地面に打ち捨てる。
そう、先程自身の身に突き立てた槍は、肉体改造を施すためのもの。頭脳も、瞬発力も、普段より格段に冴え渡っている。
『な、何故だ……何故貴様には傷ひとつついておらぬのだ』
「これでも君らに併せたんだ。本当は搦め手の方が得意なんだけど、偶には悪くない」
けれど戯れも此処で終わり。この感情を制御し切れなくなれば、心の奥底に鎮めた火が、すべてを焼き尽くしてしまうから。ゆえに、雅一は氷の仮面を被り、凍てつかせることですべてを護る。
「凍り付け……
永遠に」
ラサルハグェが最後のクールエンジェルを貫く。
穂先から流れ込む強大な冷気が、氷の天使を飲み込み、巨大な氷柱の中に封じこめる。最早ぴくりとも動かぬそれは、美しいオブジェのようだった。
これがCOOLを超えしCOOL。つまり、FREEZING――!
クールにも色々なクールがある。
ブレない、ポーカーフェイスの、洒落っ気のある、カッコいい、ハイセンスな、イケてる、ホットな、冷静さを保つ、これ全部クール。類語辞典にもそう書いてある。
ホットすら内包するクールは、騎士道でもあり、ステキである。
クールなバトルを有難う、クールな猟兵達よ――極めてほしい、これからもそのCOOLを!
大成功
🔵🔵🔵