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ああ愛しき娘、君の声が聞きたいよ

#UDCアース #グリモアエフェクト


 エドワード・グレンジャーは困惑していた。
 愛娘の声が聞こえないのだ。
 しっかり目を合わせて、顔をできるだけ口に近づけても、何も聞こえない。
 以前から娘の体調は思わしくなかった。故郷であるイギリスから遠く離れた異邦の地、その更に片田舎で静養を始めたのは、果たしていつからだったか。
 娘の身に何が起きたのか? エドワードは手を尽くして原因を究明した。
 エドワードは医者だ。しかも腕利きの外科医であることを自認している。
 そうして彼が辿り着いた結論は、娘の調子が悪い方へ変化したのではなく、自分の身に変化が起きていたということ。
 なんと、自分で気づかぬうちにエドワードは怪物になっていたのだ!

 エドワード・グレンジャーは家族想いだ。娘のことを深く愛している。
 自身が人ならぬモノになった驚きよりも、娘の声が聞こえなくなってしまっているという現実の方が悲しい。
 娘の声が聞きたい。だから人間に戻りたい。
 原因を判明させると、彼は躊躇せず早急に手術儀式をして治療することを決断した。
 エドワードは、使用人配下に命じる。
「お前たち、手術に必要な素材人間を集めてきてはくれないか。できるだけ新鮮なままでね」
「はい、かしこまりました」
 体に蛇を巻き付かせた歳若い少女たちが、エドワードに恭しくお辞儀をして命令の遂行のために発っていく。
 素材の調達は彼女たちに任せよう。エドワードは使用人の手際を信用している。きっと満足する素材を調達してきてくれるだろう。
「さて、早くもう一度君の声が聞きたいよ。
 愛してる」
 ああ、とても待ち遠しい。
 腕に抱いた『愛しい娘』の赤い髪を撫でながら、エドワードは慈しむような微笑みを浮かべた。

 ――臨場感あふれる渾身の小芝居を終えると、スピーカーから流していたBGMも止めて、御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)は猟兵たちにニヤリと笑いかけた。
「……とまあ、これが妾の予知した、『あちら側』の主観による、今回の事件の発生の経緯だ」
 ここはグリモアベース。菘の周りに集った猟兵たちは皆、一様に押し黙ってしまっていた。正気がごっそりと削られる、菘による素晴らしいパフォーマンスを存分に堪能してしまったからだろう。
 お通夜のようなムードの猟兵たちを、さすがにやりすぎたかと謝りながら菘は話を続ける。
「はっはっは、改めて詳しく説明をしていこうか。
 お主らに向かってもらいたいのは、UDCアースのとある田舎町と、その近くの今は誰も住んでいない廃村だ。そこに『人間になりたい』と切望するUDC怪物が潜んでおる。
 その名は、エドワード・グレンジャー」
 エドワードは『人になる』ことを強く望んでいて、そのために一般人を生贄にした儀式を行おうと目論んでいる。
「犠牲者を出す前に、お主らで儀式を止めてもらう。
 まずはエドワードの配下使用人に攫われそうになっている一般人を助けて儀式を阻止、しかる後にエドワードの居る住まう廃村へと急行して、最後にエドワードを討伐するというのが、大まかな作戦の流れとなるぞ」

 今回の件はグリモアエフェクトによる大いなる危機の発生、その前段階での阻止となる。
「妾たちが介入できるのは、エドワードに命令された配下が田舎町へと現れて、人々を攫っていこうとしているタイミングだ。
 遭遇した人々を片っ端からとか、ターゲットは本当に無差別のようだな。まずはこの配下どもをブッ倒してくれ」
 配下たちは誘拐を目的としているが、猟兵が邪魔をするようであればその排除を優先してくる。一般人は勝手に逃げ出すので、避難誘導などをする必要はない。
「見た目は少女で、主に毒を使って戦うようだのう。広範囲に対しての攻撃手段を持つが、エドワードからは一般人を生きたまま攫うようにと命令されているから、その攻撃が一般人を巻き込む心配は無いというのは助かる点ではあるな」

 配下を殲滅し誘拐を阻止できたら、次はエドワードが居るところへと向かうことになる。
「田舎町よりも、さらに奥まった場所にかつてあった廃村でな。数十年も前に住民は去っているから、道路も寸断されてすっかり道筋が途絶した状態となっておる。
 だが猟兵であるお主らであれば、どうにかできるであろう? 各人がそれぞれの方法で向かってほしい」
 菘が右手で指を鳴らすと、立体スクリーンが浮かび上がる。
 上空からの衛星写真らしき現場の画像には、森の中にぽっかりと開いた場所といくつかの建造物らしきものが見える。そしてそこに向かう道路は、途中で途切れてしまっていた。
 つまり木々生い茂る森の中、道なき道を目的地まで切り拓いて進むということだ。
「そして、そこに潜んでいるエドワードUDC怪物をブッ飛ばす! それで事件は解決だ!」
 エドワードの為人について、改めて詳しく説明する必要はなかろう? と菘は猟兵たちに念を押した。

 ――それにしても。エドワードは『儀式』とやらを実行したら本当に人間になれるのか?
 転送に入る前に、猟兵が菘に質問する。
「無理だ」
 菘はあっさりと断言した。
「絶対に無理だ。そして駄目だ。
 ただの一般人をたくさん集めてバラバラに切り刻み、その中から『相応しいと感じた』パーツを選定して、自分の身体へと、入れ替えるように移植する。
 ……仮に、最大限に、限界まで譲歩したとして。そんな方法で、万が一にもUDC怪物エドワードが人間になれるなら。お主らはそれを実行するのを認められるか?」
 菘も言葉を選んでいるのだろう。言い含めるように、猟兵たちに告げる。

 ――ちなみに、説明では触れられなかった今件のそもそもの原因、エドワードの娘というのはどんな子なのか?
「エドワードが常に抱いている人形のことだ。名前は不明」
 ……分かってはいたが、最初から噛み合うはずのないことだったのだ。
「歩み寄る余地だとか、そんなモノは最初から一切存在せんよ」
 愛娘のために人に戻りたいなりたい。エドワードの願いは、一方向から見ればとても真摯で美しい。だがそれは、おぞましき狂気の産物でしかない。
「さて、妾から話すべきことはすべて話した。では皆には現地に向かってもらうとしよう。
 ……狂気に呑まれるなよ? さあ、頑張ってくるがよい!」
 そうして、猟兵たちは転送されていった。


雨森
 娘を愛する、優しき父の奮闘の物語。
 OPをご覧頂きありがとうございます。雨森です。
 今回はUDCアースで、UDC怪物が引き起こす事件を解決して頂きます。

●第一章
 集団戦です。
 エドワードの配下、使用人として仕えている(とエドワードは認識している)『『揺篭の眷属』ブルーアイズ』たちとの戦闘となります。
 町中の、開けた屋外での戦闘となります。一般人を巻き込む心配はありません。

●第二章
 冒険です。エドワードが居る廃村まで向かいます。
 道路などの一般的なアクセス方法が完全に途絶えているので、何とかして進んで行きましょう。
 なおエドワード側からの妨害工作、例えば罠や特殊空間のようなものを仕掛けてきたりはしていません。山奥の森の中なので、純粋に物理的に行きづらいという状況です。別に空や地中からでも問題なく行けます。

●第三章
 ボス戦です。
 エドワード・グレンジャーとは会話ができます。彼は『極上の素材』である猟兵たちに対して、紳士的に丁寧に受け応えてくれるでしょう。ただしそれは、会話が成立するという意味ではないかもしれませんが。
 また、エドワードは絶対に『娘』に攻撃を当てさせようとしません。庇います。この情報を活用すれば、プレイングボーナスとなり戦闘で有利な状況を作れますが、狙って利用するかは自由です。

 プレイングの募集状況はタグをご確認ください。
 それでは、皆様の素敵なプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『『揺篭の眷属』ブルーアイズ』

POW   :    毒蛇の咬みつき
【蛇の咬みつき 】が命中した部位に【強力な神経毒】を流し込み、部位を爆破、もしくはレベル秒間操作する(抵抗は可能)。
SPD   :    ポイズンパフューム
【香水の芳香 】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【強力な神経毒】で攻撃する。
WIZ   :    メガリス『魅惑の香炉』
自身が装備する【香炉 】から【嗅いでいたい香り】と【毒の霧】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【体力回復不能】【状態異常回復不能】の状態異常を与える。
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ブラミエ・トゥカーズ
猟兵であるからこそ現世に出られる吸血鬼
余等、妖が幽世に閉じこもっておるのに、生まれも分からぬ輩が現世で遊んでおると、八つ当たりの一つはしてやりたくなるな。
ところで貴公等は何れに属する者であるか?

眷属に話しかけ確認
主と彼女達はこの星に属する者か否か
異界、異星産なら異物を排除する抗体として
地球の進化に属するなら生存競争の試験官として
人の感情から生じた妖なら現世で暴れる事への八つ当たり

攻撃は回避しない
猟兵になった脳みそも無い細菌の集合体に神経などあるはずも無く
霧化し集団敵を包囲感染吸血殺害する
病は何者も区別しない
一般人も死なない程度に巻き込む
ワクチンも特効薬もある古臭い病なので現代一般人にこそ効果薄



「主のために、人間生贄を探しましょう」
 UDC怪物エドワードに目を付けられた山間の田舎町ではあるが、そこは未だ戦場という様相ではなかった。
 なにしろ近隣に廃村が存在するぐらい人口が少ない地域なのだ。主のために儀式に使う人間を探しに来ていた『揺篭の眷属』ブルーアイズたちは、閑散とした町中で探索をするために散開した。

「ふむ、貴公等に尋ねたいことがある、宜しいか?」
 そんなエドワード配下の眷族たちに、ブラミエ・トゥカーズ(《妖怪》ヴァンパイア・f27968)は尊大な態度で話しかけた。
「はい、何でしょうか?」
 ブルーアイズは声を掛けられ一瞬警戒するも、従僕に日傘を差させた麗人――装いを見るに、主と同じく身分の高い方なのだろう――であることを認め、恭しく返事を返す。
「貴公等は何いずれに属する者か? 異界や異星か、それともこの地球の進化に因って生まれ出たのか。或いは人の感情より生じた者なのか? 
 生まれも分からぬ輩が現世で遊んでおるのは、世には看過できぬ」
 ブラミエはカクリヨファンタズム出身の吸血鬼だ。医療や衛生に無知であった頃の世を蹂躙した致死性伝染病が、伝承に縛られて名と身体を得たもの。
 妖怪は幽世カクリヨへと閉じこもり、そして猟兵であるからこそ現世UDCアースに出られるというのに。出身不明の者たちに跳梁されるなど、八つ当たりの一つもしてやりたくなるというものだ。
 質問の返答によっては、異物を排除する抗体として、あるいは生存競争の試験官として、あるいは現世で暴れる事への八つ当たりと、どのみち倒すという結果は同じだが、その心構えは変わってくるというものだ。
「私たちはエドワード様とお嬢様に仕える使用人。何に属するかと問われたら、それはグレンジャー家より生まれ出て、そこに所属する者となります」
 ブルーアイズの回答に逡巡はない。主への忠誠に疑いなど見せない。
「……成程。貴公らは主と同じなのか。己の由来ルーツを知らず、気にもせず、偽りの目標に邁進する」
「主の愚弄は許しません」
 ならばこちらも大義など掲げず、シンプルに八つ当たりとするのが良いのだろう。ブラミエは戦闘態勢に入った。

 ブルーアイズが伸ばしてきた蛇がブラミエの首筋に噛み付く。特に回避もせずに受けたかのように見えたが、次の瞬間には霧へと変身し姿を消した。
「何処へ?」
 ――此処に居るのだがね。
 そもそも彼女は転移性血球腫瘍ウィルスの集合体であり、毒も何も効く身ではない。一気に戦場全体へと拡散し、ブルーアイズたちを包囲、感染して吸血していく。その効果範囲には一般人も混じっていたが、死なない程度で巻き込んでおくことにする。
「病は何者も区別しないのでね。
 なに、ワクチンも特効薬もある古臭い病だ。命を助けたことの代償として、数日ぐらい身を休ませ、余のことを口の端に上らせてくれ給え」
 気分が悪そうにふらつく一般人へと囁きながら、ブラミエは狂乱するブルーアイズたちに吸血を続けていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

緋薙・冬香
事実、は常にひとつしかないけれども
誰にとって何が本当のことで何が嘘なのか
それは周りからはわからないものね
エドワードの心境は良いとも悪いとも私には言えないけれども
『あちら』と『こちら』の主観を戦わせるというのなら

「ごめんなさいね。ここを通すわけにはいかないわ」

【血筋に眠る浄化の炎】で仕掛けていきましょう
96個も炎があったら多すぎる感じかもだけど
炎を旋回させて空気の対流を生み出す
敵を取り囲んで逃がさない
そして空から降らせて敵を倒す
ために分ければいい感じにならないかしら?

空気の対流で香りと毒の霧を押し戻しつつ
緋色の炎の雨を降らせて攻撃よ
「冬の香りがもたらすのは、破滅の兆しよ?」
1体たりとも逃さないわ



 今回の事件、余計な要素を削ぎ落していけば、構図は至ってシンプルとなる。
 人々を犠牲にした儀式を行おうとするUDC怪物、それを阻止する猟兵たち。それがただ一つの事実。
 だが、そこに各々の主観や想いが入り交じってしまい、関わる者たちにとっては途轍もなく深刻な話のようになっているのだ。
「『事実』は常にひとつしかないけれども、誰にとって何が本当のことで何が嘘なのか。それは、周りからは分からないものね」
 町を駆けるブルーアイズたちの前に、緋薙・冬香(針入り水晶・f05538)立ち塞がる。
 冬香にとって、グリモア猟兵から聞かされたUDC怪物エドワードの心境とは、良いとも悪いとも言えないものであった。それはエドワードに仕える使用人だと信じきっているUDCの少女たちに対する心境でもある。
 だが、冬香はこの場に居る。
「ごめんなさいね。ここを通すわけにはいかないわ」
『あちら』と『こちら』の主観がぶつかり争わなくてはならないなら、自分は『こちら』の事情を通すのみだ。

「邪魔をするのであれば排除します」
 ブルーアイズが手に持つ香炉から、ふわりと毒の霧が振り撒かれる。
「緋は火なりて、私はこの世ならざるを薙ぎ、祓うモノなり。目覚めよ……!」
 血筋に眠る浄化の炎を目覚めさせ、冬香は百近い数の浄化の炎を放った。緋色に輝く炎弾は、ブルーアイズへと直接向かうでもなくばらばらに飛んでいく。少女たちは訝るが、冬香は当然気にしない。
「一体どこを狙っているのですか?」
「狙い通りよ、分業させていい感じにしたいのよね」
 冬香とブルーアイズたち双方を取り囲むように周り、逃亡を防ぐもの。
 複数個を旋回させて空気の対流を生み出し、毒霧と香気を押し戻すもの。
 すべて冬香が細かく制御を行っており、もちろん目論見通りの動きとなっている。そして、
「こちらの動きを封じる作戦ですか」
「いいえ、ちゃんと攻撃もするわよ。冬の香りがもたらすのは、破滅の兆しよ?」
「!?」
 ……そして、高く打ち上げておいて、空から攻撃するもの。
 眼前や包囲する炎へと意識を向けさせておいて、完全に意識の範囲外となっていた直上から、炎弾の雨を降らせる。
「一体たりとも逃さないわ」
 少女たちを呑みこみ、緋色の炎は眩しく燃え広がる。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リオ・ウィンディア
可愛らしい使用人さんだこと
でもその香炉は危険ね
UC発動させて範囲内の無機物の香炉を無力化するわ
「ねぇ私の曲を聴いて行って?」
吹き荒れる闇の嵐に紛れて、呪詛のこもった楽器で持って精神破壊を試みる
一体ずつとは言わず、範囲内にある生ける者もの全てが観客
遠くの客席までしっかり届くようにギターを掻き鳴らす
どこか情熱的な異国を思わす曲調に、この世のものならざる音色を混ぜて
狂っているなら、どこまでも、狂い落ちていけばいい
私はただそれを表現する
まだ前奏曲が始まったばかりなのだから

闇の嵐の中、白髪の少女が一人
愛しい人がいる気持ちはわかるけれども、ね
これも仕事だものきっちり冷酷に
そして曲は楽しむもの



「あら、可愛らしい使用人さんだこと」
 ブルーアイズたちを発見したリオ・ウィンディア(黄泉の国民的スタア・f24250)はふんわりと微笑んだ。といってもリオも背丈は同じぐらいであり、少女たちが集まっている光景は傍目から見れば癒されたかもしれない。
 もっとも、そこに生み出されたのは、毒や呪詛に浸された争いの空間ではあったのだが。
「歓迎するわ。ねぇ、私の曲を聴いて行って?」
「そんな、香炉が!」
 ブルーアイズの持つ香炉が、リオの問いかけとともに黒い闇へと形を変えていく。そのまま手から零れ、ぶわりと勢いよく嵐のように広がっていく。
 戦場は、闇の嵐が吹き荒れる舞台へと姿を変えた。

 ごうごうと悲鳴のように鳴る嵐の中で、リオは呪詛の籠ったクラシックギターを構える。ぽろりと指で弦を弾くと、呼応するように一際強く嵐が啼いた。
 遠くの観客まで届けとばかりに掻き鳴らすギターの音に、リオの澄んだ声が乗る。
 陽光の欠片を感じさせる、どこか情熱的な異国を思わす曲調。そこに、この世のものならざる音色が溶け込んでゆく。
 ――狂っているなら、どこまでも、狂い落ちていけばいい。
 それをただ表現していく。歌声として、爪弾くギターの音として。
「どう、楽しんでもらえているかしら?」
 闇に呑まれ、膝を突き呻吟する少女たちにリオは尋ねる。闇の嵐の中にあって、黒い喪服に身を固めたリオの素肌と髪だけが、浮かび上がるように白い。
 壊れていく。ブルーアイズたちの精神が、千々に砕けていく。
「愛しい人がいる気持ちはわかるけれども、ね」
 リオは演奏の手を止めない。きっちりと冷酷に、そして楽しみながら曲を続ける。
 まだ前奏曲が始まったばかりだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雪・兼光
人になりたがるUDC怪物か
…え?精神が可笑しくなったやつがUDC怪物になったって?

あれこれ考えても良く解らんな

沢山の人間を殺されることになるなら止めないとなァ

やぁ、お嬢さん達、俺とよかったら遊ばないかい?

どんな遊びかって?

君たちをふっ飛ばすっていう面白い遊びだよ(だまし討ちと暗殺)

乱れ撃ちと範囲攻撃、2回攻撃のユーベルコードをばら撒き相手を蹴散らして行こう

神経毒については、オーラ防御で防御防ぎきれないなら、浄化と継戦能力で軽減できるか試す

無駄なら急いで相手は倒すのみ
部位破壊で、頭を狙いがら乱れ打ち、2回攻撃のクイックドロウ

毒蛇が噛みつこうとしたら、毒蛇の口へシュートこれでも喰ってろ



「あれこれ考えても、良く解らんな」
 今回の事件の概要を聞いて色々と考えた結果、雪・兼光(ブラスターガンナー・f14765)はそう結論付けた。
「人になりたがるUDC怪物、……いや、精神がおかしくなった奴がUDC怪物になった?」
 そもそもこのエドワードという奴、当初は本当に人間だったのか? それとも最初からUDC怪物なのか? とまあそういった考察は、自分にとっては別にどうでも良いのだ。
「沢山の人間を殺されることになるなら、止めないとなァ」
 動機や理由の部分なんて何も関係ない。その行動の結果として人々に害を齎すのであれば排除する、実にシンプルな行動原理であり、それで正解だろう。

「ってことで、だ。
 やぁお嬢さんたち、俺とよかったら遊ばないかい?」
 兼光は、鋭い目つきをそれでもなんとか緩ませ、フレンドリーな態度でブルーアイズたちに歩み寄る。あるいはもう少し端的に表現すれば、典型的なナンパの取っ掛かりのような気安い感じのアプローチであった。
「えっ? その、申し訳ありません、私たちは用事がありまして」
 そのあまりに無警戒な接近に、思わず返事をして断ってしまう少女たち。
「そんな、つれないなァ。ちょっとだけでも良いからさ? 多分、君たちも楽しめる遊びだぜ」
「というと、どんな遊びなのですか?」
「ああ。……アンタらをふっ飛ばすっていう、とても面白い遊びだよ」
 まるで、暗殺者が暗器を取り出すかのように。
 100分の1秒よりも更に短い刹那、慣れた手つきで抜かれた熱線銃ブラスターから熱線が発射される。
 零距離から騙し討ちで放たれた乱射を、まともに食らってしまうブルーアイズたち。
 兼光はそのままひたすらに乱射していく。手を伸ばせば届くような距離だ、よほど方向さえ間違えなければ敵に大体当たる。時間を掛けて狙いを定めたりせず、奇襲で混乱している間にできるだけ撃ち込んでしまおうという魂胆だ。
 とにかく神経毒は恐ろしいので、息を止めている間に片を付ける。念のため更に防御のために全身にオーラを纏っておく。
「このっ、……がっ!?」
 何かを仕掛けてくると察知した少女の頭に、クイックドロウで一発。併せてその身に絡む毒蛇の口の中へも熱線を撃ち込む。
「これでも喰らってろ」
 距離を放しながら、兼光はひたすらに射撃を繰り返していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レーゲン・シュトゥルム
猟兵となって初めて赴いた異世界だが…
ここは住んでいた世界シルバーレインに近い文明世界なのだな
尤も、似ているからこそ微妙な違いを気持ち悪い違和感として感じるのだろう

まあ気にしても仕方ない
今日は猟兵・・としての役目を果たすとしよう
お前達に恨みは無いが、世界の敵と成るならば容赦はしない

【ヘヴンリィ・シルバー・ストーム】を使う
雨の方に【浄化】の力を籠める事で、神経毒に対抗するつもりだ
仮に動きが鈍ったとしても、万色の稲妻は変わらずお前達を攻撃し続けるぞ

その上で【乱れ撃ち】による【弾幕】を見舞う事で駄目押しだ
【スナイパー】の腕を活かした【クイックドロウ】で、此方を視認する隙を与えるつもりは無い



 空気が、……あるいはもう少し感傷を巡らすなら、『湿度』が違うとでも例えるべきだろうか。
 UDCアース。レーゲン・シュトゥルム(黒風白雨・f36427)が猟兵となって初めて赴いた異世界は、住んでいた世界シルバーレインに近い、そして銀の雨の降らぬ文明世界であった。
「なんとも微妙な違和感が……」
 逆に、あまりにも似通っているからこその僅かな差異が、気持ち悪さを感じさせるのだろう。
 まあなんにせよ、今そんなことを気にしても仕方がない。何処の世界であろうと、猟兵がすべきことは同じだ。
「間違い探しのように観光をして周るのも楽しいかもしれんが、今日のところは猟兵・・としての役目を果たすとしよう」
 町角で物陰に隠れて待機していたレーゲンは、ブルーアイズたちが道を走り、こちらに迫るってくるのを確認する。そして、自分の前を通り過ぎる直前に、行動を開始した。

「あれ、……えっ、雨?」
 ざあっと、まるで驟雨のように突如降りだした雨に、足を止めてしまうシルバーアイズたち。その少女たちの後方へとレーゲンは躍り出る。足音は、完全に雨音に紛れていた。
「お前達に個人的に恨みは無いが、世界の敵と成るならば容赦はしない」
 背中へ向けて、嵐のように銃弾を乱れ撃つ。
「うあっ!」
 攻撃を受けて振り返るシルバーアイズ。レーゲンを視認したことで神経毒の芳香を放つも、優しい浄化の雨に香気は薄められてしまう。更に追撃として、稲妻が空から降り注いだ。
「万色の稲妻か、それとも私の銃弾か。死に方なんて選ばせんよ」
 此方を視認させる隙を与えるつもりはない。魔法弾ゆえにリロードを挟まず無尽蔵に射出できる、絶え間ない速射の弾幕を、レーゲンは浴びせ続けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

グウェンドリン・グレンジャー
【煉鴉】
……………………。
(暫しの沈黙。無表情な顔は何を考えているのか分からない、が)
行こう、源次

この、街並み、療養してたとこ……スコットランドの方、に、ちょっと似てる、ような
(ぽつりと呟くも、頭を振って考えを切り替えて)

(蛇と一体化したUDCを一瞥し)
神話の、分類学、では
蛇と、鳥は、対立するモノ、と、言われている
なら
(皮膚を突き破って腰から広がる黒翼――父が娘を救うため、身体を強くするために移植した生体内蔵式クランケヴァッフェ)
噛みつかれた瞬間に、噛み付いた蛇、掴んで、逆に生命吸収。そのまま、クランケヴァッフェ、突き刺して捕食

……進もう、源次
(顔の返り血を拭いながら師の方を振り返って)


叢雲・源次
【煉鴉】
………。
(俺は今、一人の女の岐路に立ち会っている。此処に居合わせる事になったのも、宿業の一つなのだろう。深く息を吸い気を整える)
承知した。

(インターセプター起動。地形及び動体反応把握。数が多い…が、所詮それだけだ。邪神を屠る為に生み出された二振りの刀を抜き、グウェンへ向け)
今のお前には「油断」などという言葉は無縁なのだろうよ。
その気迫、気概、これまでにない高みに至っているのが分かる…しかし…

執行【屍山血河】
(半径113m圏内、全ての敵を斬り捨てんと縦横無尽に駆け抜け、二刀を振るい)

気が逸いているようにも見受けられる。
本命までは取っておけ。その為に俺がいるのだからな。



「……………………」
 その長い、長い沈黙の、本当の意味を推し量ることは、余人には決してできないだろう。
 現場へと降り立ったグウェンドリン・グレンジャー(Imaginary Heart・f00712)は、内心で何を考えているのか分からぬ無表情で、そのまま暫し瞑目していた。
 グウェンドリンと共にこの場に赴いた叢雲・源次(DEAD SET・f14403)は、声を掛けず、ただ静かに口を開かぬ彼女を眺めている。
 源次は今、一人の女の岐路に立ち会っているのだ。此処に居合わせることになったのも宿業の一つなのだろう。
 UDC怪物の討伐、あるいは猟兵とオブリビオンの相容れぬ関係という大義名分以上の何かが始まろうとしていた。
 そして、
「行こう、源次」
 目を開き、決意するかのようにグウェンドリンは告げる。それに対する源次の返答は普段通りとても短く。
「承知した」
 深く息を吸い、気を整えて、二人は戦場へと突き進む。
「この、街並み、療養してたとこ……スコットランドの方、に、ちょっと似てる、ような」
 ぽつりと呟き、感傷を払うかのように頭を振ったグウェンドリンの独り言を、源次はあえて聞き流した。
 もちろん細かい部分を指摘していけば、全く異なると断言できるだろう。しかし直感的に、郷愁、あるいは原風景としてグウェンドリンが感じたのは、エドワードがこの地に現れた理由と近いのかもしれない。

 視界に入ったブルーアイズたちにまず躍りかかったのは、グウェンドリンだった。
「あなた方は、主の命令を邪魔するというのですか?」
 少女たちはその身に巻き付けた蛇を長く伸ばし、詰め寄ってくるグウェンドリンへと噛み付かせようと襲い掛かってくる。
「邪魔?」
 ブルーアイズと、迫る蛇を一瞥し、グウェンドリンは冷たく呟く。
「そもそも、娘が、望んでいる、はずも、ないのに」
「失礼な、何を根拠に!」
 グウェンドリンはあえてその身を蛇たちに噛み付かせた。蛇は神経毒を流し込まんと試みるが、そのために動きを止めたことは致命的であった。
「お前たち、には、永遠に、分からないよ」
 伸ばしたグウェンドリンの腕が蛇を掴み、生命力を吸収していく。と同時に、皮膚を突き破り黒翼――父が娘を救うため、身体を強くするために移植した生体内蔵式クランケヴァッフェ『Mórrígan』――が、腰から大きく広げられた。
「神話の、分類学、では、蛇と、鳥は、対立するモノ、と、言われている」
 黒翼が、蛇に突き刺さる。
「全部、喰って、あげる」
 咆哮する烏が、蛇たちを捕食し殺戮していく。

 一方で源次は、腕時計型の戦闘補助デバイス『インターセプタ―』を起動して、周囲の地形や動体反応を把握を行っていた。
「数が多い……が、所詮それだけだ」
 邪神を屠る二振りの刀、『灰ノ災厄』『黒ノ混沌』を抜刀。焦点に立つ捕食者であるグウェンドリンへ向ける。
「今のお前には、『油断』などという言葉は無縁なのだろうよ」
 膝を脱力させ、真っすぐに身を落とす。
「しかし……」
 戦靴も用いて発条のように爆ぜた源次の身が、戦場を縦横無尽に駆け抜ける。振るわれる二刀の前に、ブルーアイズたちは次々と斬り捨てられていく。
「気が逸いているようにも見受けられる。本命までは取っておけ、その為に俺がいるのだからな」
 屍山血河にすべてのブルーアイズを沈め、源次はグウェンドリンを軽く窘めた。
「ええ。……進もう、源次」
 立ち尽くしたまま返り血を拭い、グウェンドリンは師である源次の方に振り返る。拭きそびれた顔の血を、源次はスーツの胸ポケットから出したハンカチで拭ってやった。

 儀式のために町に襲撃を仕掛けてきた配下は全滅した。次はUDC怪物エドワードの居る廃村まで向かわなくてはならない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『発見、秘境の廃村に巣食う悪』

POW   :    道が無くても関係ない、気合いとフィジカルで道を切り開き山を進んでいく

SPD   :    教団の信徒たちはどうやって現地へ? 彼らの後を追跡していく

WIZ   :    古い地図や衛星写真などを事前に調査、容易に進めそうな道に当たりをつけていく

👑7
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 町から伸びる、かつて廃村へと繋がっていた唯一の道路からの進攻は、通行止めのバリケードにすぐに止められた。
 バリケードの向こうの道路は酷い有り様となっている。整備もされずに数十年が経ち、視認できるだけでも大きな陥没がいくつも見受けられる。それに土砂や大きな瓦礫が道路上に大量に積もっており、更に雑草や木々が盛大に生い茂っていた。
 徒歩であろうが乗り物を使ってであろうが、一般人であれば、この道路を辿って廃村まで向かうのは不可能だろう。
 どんな手段を用いても構わない、廃村まで向かうとしよう。
緋薙・冬香
さて、と
まともにいくとどうにもならなさそうっていうか
本気で人の往来を拒んでるわねこの有り様

でもまぁ足場があるなら問題なし
シンプルに【スカイステッパー】で跳んでいくとしましょ
回数限界までよりは足場を見つけたらいったん着地する方向で
高さを確保したら
あまり上がりすぎないようにジグザグ跳びね
それにしてもひどい荒廃のしよう
廃村になってから本当に放置されているのね

となればエドワードが籠り始めてからだいぶ放置されているはず
その分、力を蓄えているとするなら気を引き締めていかないとね
想いが強さになるのは誰でも一緒だけど
猟兵ならオブリビオンを放置する訳にはいかないわ
猟兵の辛いところね



「さて、と」
 眼前の、かつて道路であったものの惨状を観察しながら、緋薙・冬香(針入り水晶・f05538)は軽く思案をしていた。
「まともに行くと、どうにもならなさそうっていうか、本気で人の往来を拒んでいるわね、この有り様」
 それでも元道路を辿っていくのが、廃村までの道筋としては確実ではないかという考えは、さすがにすぐに放棄した。不可能ではないが、精神的にも肉体的にも余計な消耗をしてしまいそうだ。
「でもまぁ、足場があるから問題なしね」
 ということで当初からの本命の作戦、冬香はごく自然に、何もない空中へと跳んで駆け上がった。

 不可視の足場を蹴りながら、冬香は進んでいく。
 別に着地したら危険な地形というわけでもないので、約百歩という歩数制限ギリギリまで空中で粘る必要はない。適当な足場を発見したらいったん着地をして、再び空へ。
 また、空中の一点に立ち続けることはできないので、ある程度の高度を確保したらそのまま維持、ジグザグのステップに切り替えて前に進んでいく。
「それにしても酷い荒廃のしようね」
 眼下に広がる青々とした山並みを眺め、冬香はそんな感想を漏らす。やはりというか、道路を上空から探してみたが途中で完全に消えており、今は廃村があるらしき大体の方角へと向かっている状況だ。
「廃村になってからも多少は人の往来があったでしょうけど、それも年月を経て、完全に途絶えてしまったと」
 エドワードの出現と、村から住民が去ったことには関連性はない。廃村になった時期の方が遥かに昔のことだ。
「エドワードが籠り始めるずっと前から既に訪れる人は絶え、誰にも知られずにだいぶ放置されていたのね」
 オブリビオンに時間を与えるというは、それだけで危険極まりない。その分だけ力を蓄えているとするなら、気を引き締めていけないといけない。
「……猟兵の辛いところね」
 思いが強さになるのは誰でも一緒だ、しかし猟兵であればオブリビオンを放置する訳にはいかない。
あなたエドワードは何故、そんなに強い愛情を?」
 その問いに、答えは示されるのだろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レーゲン・シュトゥルム
【SPD】を使用

如何にオブリビオンと言えど、飛翔能力を持たない以上は足跡を残す筈だ
放置されていた場所を集団で通過したなら猶更だな
彼女らの通った痕跡を【踏みつけ】て廃村へと至るとしよう

それにしても「娘」か…
実情は兎も角、それ程までに愛情を注げる相手が居ると言う事自体は良い事なのだろう
現に真に狂っていた時は其処だけで世界が完結していたのだからな
声が聞こえない、つまり感性が真面に近づいた故に人を襲う様になったのだと考えると遣る瀬無いな

とある物語の話だが…
人が石榑に、一つの機械人形が美女に見えていた男は、果たして幸福だったのか不幸だったのか…
その答えは本人の中にしかないのだろうな
エドワードも同じだろう



 ――いかにオブリビオンといえど、飛翔能力を持たない以上は足跡を残すはず。
 レーゲン・シュトゥルム(黒風白雨・f36427)は、先ほど交戦したUDC怪物の配下たちの姿を思い出していた。彼女らが何らかの飛ぶ手段を持っていたとは、少なくとも戦法などから鑑みても考えづらい。
 そして、長期間放置されていた場所から集団で来たのであれば、何らかの通過の痕跡があるのではないか。そう当たりを付けて、レーゲンは周囲を探索していた。
「……見つけた」
 廃道路の側面部、おそらくは落石や土砂崩れ対策として固められているほぼ壁のような斜面に、複数の足跡を発見する。風のように軽やかにジャンプすると、一歩、二歩で壁を駆け上がり、侵入経路の痕跡を逆向きに辿っていく。

 辿る道は人が通れる程度には草木の隙間ができており、少なくともレーゲン一人が痕跡を追っていく分には問題は無い。
「それにしても『娘』か……」
 踏み込む足元には注意しながら、レーゲンは今回の件について考える。
 実情はともかく、それ程までに愛情を注げる相手が居るということ自体は良いことなのだろうと彼女は思っている。
「現に、真に狂っていた時は、其処だけで世界が完結していたのだからな」
 愛そのものに善悪などない。それがたとえオブリビオンであっても、だ。
「だが声が聞こえない、つまり感性が真面に近づいた故に人を襲う様になったのだと考えると、遣る瀬無いな」
 どうして今になって、と思わなくもない。しかし大いなる危機として予知されたのだから、遅かれ早かれエドワードが娘の声を求め、行動を起こしたのは間違いない。

 レーゲンは、似たような、とある壮大な物語の中の一編のことを思い浮かべた。
 人が石榑に、一つの機械人形が美女に見えていた男の物語。果たして彼は、幸福だったのか不幸だったのか。
「エドワードと同じく、その答えも、本人の中にしか無いのだろうな」
 かの男は、最終的にその美女と結ばれた……いや、一つにはなれた。そして、ならばエドワードの愛情は、彼自身の中でどう決着するのだろうか?
「……いかんな、余計なことを考えすぎる」
 縺れる思考を振り払うかのように首を振り、レーゲンは先へと進む。

大成功 🔵​🔵​🔵​

グウェンドリン・グレンジャー
【煉鴉】
(バリケードを片手で軽々と片付けて)
……この先、に
(見渡す限り山、というか森。倒木もあちこちにある。およそ人がいそうな場所ではないが、確信を持って見つめる)

源次、レーダーとか、GPS、とか、使える?
私……も、目を、増やそう
(ユーベルコードで呼び出したカラス達を飛ばす)
あんまり、鳴いちゃダメ。静かに、探してきて

倒木や、落石、とか、道を阻むもの、怪力で片付けつつ、進む
(瞬間思考で頭の中を整理しつつ、カラス達の教える方向へ歩みを進める)

(ふと気づいて、足元の草を観察し)
……この辺に、自生はしないはず……の、ブルーベル
故郷の春の……私の、好きな花
……近いね、急ごう


叢雲・源次
【煉鴉】
(この状況、下手にユーベルコードを使用すれば気取られる可能性があるか…ならば…と行動に移そうとしたところグウェンも同じ事を考えていたらしい)
任された。
(アナライザー、インターセプター起動。視覚情報取得…広域走査開始… … … … 侵攻ルート構築……完了。グウェンが飛ばしたカラスをロック。動向を注視し連携、ルート再構築に役立てる)

(足元の草、ブルーベルというらしい。花の種類には疎いが……一輪、頂いていくか。それを摘み取ってグウェンへ差し出す)
優しい思い出を持つ者は幸福だ。それだけで今を生きる糧になる。大切にしろ。
(そういって、摘み取った一輪のブルーベルを差し出した)



 空を跳んだり眷族の進攻経路を逆に辿ったりと猟兵たちが様々な方法を選ぶ中で、グウェンドリン・グレンジャー(Imaginary Heart・f00712)と叢雲・源次(DEAD SET・f14403)は、ある意味で非常に猟兵らしい素直な方法を選択していた。
 つまり、一般人には踏破困難となっている道路を進攻ルートの基本として、歩行を邪魔する障害物は力押しで踏破するということだ。
 グウェンドリンが、道を塞ぐバリケードを、片手で軽々と道路の端へと片づけていく。
「……この先、に」
 先が見通せない道路から、視線を周囲へと巡らせる。見渡す限りに山、というよりも森だ。倒木が撤去されるでもなく、地面から生える背の低い雑草や草木を刈るわけでもなく、人間の管理の手はまったく行き届いていない。
 しかしグウェンドリンは、この先に人が居るとは到底思えないこの場所を、何かしらの確信を持って見つめていた。

 傍目には無表情のままとも見えるそんな相方のことを気に留めながら、源次はこの先について思案していた。
 この状況で闇雲にユーベルコードを使用すれば、此方の存在について早期に気取られる可能性がある。少なくとも現段階ではそれは避けたい。そんな彼に対してグウェンドリンが提案をする。
「源次、レーダーとか、GPS、とか、使える?」
「任された」
 どうやら二人とも同じことを考えていたらしい。源次は左眼と腕時計の、演算、索敵や走査のためのデバイスを起動した。
 ――アナライザー、インターセプター起動。視覚情報取得……広域走査開始。
「私……も、目を、増やそう」
 グウェンドリンは様々な種類の烏を召喚する。
「あんまり、鳴いちゃダメ。静かに、探してきて」
 カアカアと喧しく鳴くのを窘められ、少し静かになった烏たちが方々へと飛んでいく。そんな烏たちを源次の走査はロックし、動向を注視して情報連携を実行、進攻ルートの構築まで完了させた。

 ルートはリアルタイムで再構築させている。時には曲がりくねった道路からは外れ、また道路へと合流し、烏と源次のナビゲートに従い、道を阻む落石や倒木を怪力で片付けながらグウェンドリンは進んでいく。
 障害物をどかすのに苦労はないが、ただその数が多いのは煩わしい。そして代わり映えのしない風景が精神的に少々しんどくもある。
「……あれ?」
 ふと、グウェンドリンは足元の草の色彩に気が付いた。その反応に源次が一瞬警戒を強めるも、彼女が首を横に振ることで気を抜く。
「どうした?」
 春の青。この国では見掛けることのなかった色。
「……この辺に、自生はしないはず……の、ブルーベル。
 故郷の春の……私の、好きな花」
「……聞いたことがない名だ」
 花の種類に疎い源次には、当然のように見たことも聞いたこともない花であった。
 愛おしむような、あるいは僅かに物悲しい雰囲気で花々を眺めているグウェンドリン。少なくとも彼女の表情から、負の感情は読み取れない。
 ――郷愁? それだけだろうか? そもそも、この花は何故こんなところに?
 源次は知る由もないことだが、本来は今の時期に開花もしない。自生云々だけではなく、様々な意味で『ありえない』存在。
 だが、しかし、此処に咲いていることは、とある一点から見れば、とても自然で当然であるともいえた。
 群生するようにいくつも咲いているそのブルーベルを、源次は一輪、摘み取る。
「優しい思い出を持つ者は幸福だ。それだけで今を生きる糧になる。大切にしろ」
 何かを源次に問おうとして、一度口を噤み、グウェンドリンは差し出された花を受け取った。
「……近いね、急ごう」
 ブルーベルを大切そうに服のポケットに入れる。
 グウェンドリンたちは気持ちを断ち切るかのように花咲く場所から離れ、進攻を再開したのであった。

 ――すべてが終わった時、この花はどうなるのだろう?

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ブラミエ・トゥカーズ
人間がいれば運んでもらえたかもしれぬが、期待はできぬな。

霧になって飛んで行こうと考えるが、直射日光を避けられない所や川や殺菌作用のある植物の群生地があった場合、それ以上進めなくなる
仕方が無いので自信の従者に運んでもらう事にする

山道に慣れた妖怪
天狗として活動させ、自身を抱えて運ばせる

貴公等の様に人を元とした妖は珍しくはないが、人になりたがる妖とは珍しい話であるな。

天狗は返す
鶴に蛤、雪女
人に惚れ、人になる妖など世間にごまんとある話だと
今時は吸血鬼もだろうと
最後は正体がバレて去るか退治されるまでがお約束だと

余はその手の感情は分からぬな。
そういった関係をやってやっていいと思う人間は少しはいるがな。



 猟兵たちが各々の方法で廃村へと向かう中で、ブラミエ・トゥカーズ(《妖怪》ヴァンパイア・f27968)はゆっくりと最後尾から行動を開始していた。特に急く必要もない、最終的に現地で他の者と合流ができれば良いと考えている。
 というよりも、
「人間がいれば運んでもらえたかも知れぬが、無理であったか」
 騎乗物だとか運転系の乗り物を扱う仲間がいれば、それに同乗させてもらおうかと考えていたのだが、今回は残念ながらそういう手段を選ぶ者がいなかった。なので自力で進攻していくことになったわけだ。
「霧になって飛んで行くか? ……いや、この旺盛な自然の中では、様々に都合が悪かろう」
 伝承存在として人ならざる力を行使できるということは、斯く在るべしと規定された制約に縛られるということでもある。ブラミエの場合、直射日光や流水、殺菌作用のある植物の群生地とカチ合った場合には、それ以上進めなくなってしまう。
「已む無し、余の従者に任せるとしよう」
 追加手当を出さなくてはならないが仕方あるまい。ブラミエはこの場に適した存在として、山神ともいえる存在、天狗を召喚した。
 ――宜しく頼み申す。
 天狗はブラミエへと一声掛け、軽々と抱えると空高く跳び上がった。

 廃村のおおよその方向を示すと、敵側からの妨害もないようなので、後は優雅ともいえる空の旅となる。あるいは一般人に目撃される懸念もあるが、『天狗が人を抱えて空を駆けていた』などという証言が生まれるならば、カクリヨファンタズム的には大歓迎である。
「貴公等の様に、人を元とした妖は珍しくはないが、人になりたがる妖とは珍しい話であるな」
 なのでブラミエは、邪魔をしない程度に天狗と会話を始めた。話のネタは此度の首魁についてだ。
 ――鶴に蛤、雪女。人に惚れ、人になる妖など世間にごまんとある話だ。
「ふむ、そういうものか。だが国柄もあるのではないかね」
 ――今時は吸血鬼も、だろう? 最後は正体がバレて、去るか退治されるまでがお約束だ。ならば英国由来の化生とて、この国に在ることで此度は感化されたやもしれん。
「成程、そのような見方もあるか」
 今在る場所の伝承に引かれる、中々に面白い議論だ。
「余はその手の感情は分からぬな。そういった関係をしてやっていいと思う人間は、少しはいるがな」
 ――それは、新しい妖怪の領分だ。確かつんでれとか云う……。
「貴公、割と適当に物を申しておらんか?」
 ……割と白熱した議論となった、ということにしておこう。
 そんなこんなでブラミエたちは空を駆け抜け、廃村へと到着したのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『エドワード・グレンジャー』

POW   :    オペの邪魔だよ
単純で重い【異形の腕】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    高速執刀
【鋭いメス】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    娘はそこにいるじゃないか
自身が装備する【娘だと思い込んでいる人形】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

 エドワード・グレンジャーは久々に上機嫌であった。
 かねてから憂慮していた問題に、ようやく解決の目途が立ったからだ。

 エドワードは不意に現れた来客猟兵たちをにこやかに歓迎した。
「ようこそ、歓迎するよ。君たちが協力してくれるのだね」
 彼らの存在の、強さ、眩さが、一目見ただけで理解できた。
 とてもありがたい。彼らを素材として用いて手術儀式をすれば、自分は人間へと戻りなり、娘の声が聞こえるようになると確信できた。
 エドワードは、既に儀式の準備のために送り出した使用人配下のことなど完全に忘却していた。役立たずの配下のことなど、覚えている意味も価値もない。
「娘もとても喜んでいるよ」
 腕に抱く『娘』の髪を優しく撫でる。笑い声は聞こえてくれないが、嬉しそうな表情を見るだけで、とても心が温かくなる。

「さあ、誰から手術解体しようか」
 ――ああ、人になって、早く声を聞きたいよ。
 切望とともに、エドワード・グレンジャーは優しく微笑んだ。
レーゲン・シュトゥルム
エドワード・グレンジャー
お前の狂気を止めさせて貰うぞ

お前の「家族を愛する気持ち」は本物なのだろうさ
だが、その為に他人の家族を犠牲にする事を許容するのか?
他ならぬ医者であるお前が?
お前の『娘』は、その外道を笑って許すのか?

その結論を是とするならば、お前も娘も共に人でなし怪物だよ

【ヘヴンリィ・シルバー・ストーム】を使う
好きなだけ雨粒を解体すると良い

その上で【乱れ撃ち】による【弾幕】をお見舞いしよう
【スナイパー】の腕を活かした【クイックドロウ】でメスを弾きながら、魔法弾を当てていく

私達が妨害したからだが、結果としてお前達は誰も殺していない
だから、せめてもの情けだ
『娘』と共に、安らかに眠ると良い



 違和感の塊のような存在だった。
 首から上だけを見れば、なるほど顔の整ったイギリス人の中年男性ではある。しかしそれ以外のすべてが――それは猟兵でなくても、誰でも一目見れば確信できるだろう――見た目も雰囲気も、あまりにも悍ましい。
 ――人の皮を被った怪物。
 レーゲン・シュトゥルム(黒風白雨・f36427)は、そんな表現こそがありきたりだがあまりにも適切だと、エドワードに対して感じていた。
「お前の『家族を愛する気持ち』は本物なのだろうさ。だが、そのために他人の家族を犠牲にすることを許容するのか?」
「私が人間となるのに必要なのだから、たとえば協力と言ってほしいね。犠牲なんてネガティブな表現は良くないよ」
 雨が、降り始める。冷たい銀の雨だ。エドワードは娘が濡れてしまわないように優しく庇う。
「他ならぬ医者であるお前が? お前の『娘』は、その外道を笑って許すのか?」
「もちろんだとも。そもそも、外道などと責められる謂れもない。娘はね、笑ってくれる」
 エドワードは言い切る。
 空に雷鳴がとどろき始める。それは抑えきれないレーゲンの心中を代弁しているのかもしれない。
「……その結論を是とするならば、お前も娘も、共に人でなし怪物だよ」
「おやおや。大して知りもしない私たち親子のことを侮辱する、君の方が人でなしではないかな」
 エドワードは、にこやかな笑顔のままで答え続ける。彼は根本的に人間とは異なる存在であると、レーゲンは改めて確信した。
「エドワード・グレンジャー。お前の狂気を止めさせて貰うぞ」
 万色の稲妻が落ち、そして両者は爆ぜるように戦闘に移行した。

「邪魔な雨だね、娘が身体を冷やしてしまうじゃないか」
 エドワードの腕が凄まじい勢いで振るわれ、ぱぱぱっと頭上の雨粒が飛沫と化す。
 レーゲンは相棒の『Sturm』と『Drang』で魔法弾を乱れ撃つ。早打ちによって弾幕のように面で放たれる銃弾すら、エドワードはメスで弾いていく。
「風邪薬を処方してやればいい、医者なのだから」
「そもそも引かないようにするのが一番だからね」
 時にはメスを投擲してレーゲンへと反撃もするが、次第に攻撃を捌ききれなくなってくるエドワード。だがそれでも、片腕に抱く娘を雨に打たせるという選択肢なんて、エドワードには存在しない。
「……私たちが妨害したからだが、結果としてお前たちは誰も殺していない」
 どうしてそこまで、そんな言葉を吐いてしまいそうになるも堪える。
「だから、せめてもの情けだ。『娘』と共に、安らかに眠ると良い」
 レーゲンはこの戦いで、あえて『娘』を狙わなかった。
 無数の銃弾が、エドワードの身体へと撃ち込まれていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雪・兼光
グレンジャーさーん!
おっじゃっまっしまぁ〜すッ!

アンタを倒しに獲物(猟兵)がやってきたぜ
さぁ、楽しもうかぁ

飛んできたりしてきた鋭いメスは第六感で出来るだけ避ける

避けきれない場合は、クイックドロウの範囲攻撃と乱れ打ちと2回攻撃でグレンジャー事撃つ

攻撃で狙うのはグレンジャーの『娘』
部位破壊、範囲攻撃と乱れ打ちと2回攻撃のユーベルコードで娘ごと撃つ
これは、娘が増えた場合も同じ様に撃つ

娘を攻撃して卑怯だぁ?
悪いね、卑怯にならないとアンタら倒せ無いんだわ

ほら、ほら、庇わないと娘さんが蜂の巣だぜぇ?

頑張って守らなきゃ

な?

お父さぁ〜ん

……何で人になりたかったんだろうな
狂人の戯言かそれとも…?



 その戦端は、唐突に開かれた。
「グレンジャーさーん! おっじゃっまっしまぁ〜すッ!」
「むっ!?」
 エドワードは咄嗟に身をひるがえし、そしてその身に熱線が突き刺さった。
 回避をしたのに何故当たったのか?
 理由は単純、エドワードは『身を挺して娘を庇った』からだ。
「なるほど、マジだったんだな」
 雪・兼光(ブラスターガンナー・f14765)は呆れたような声を出した。攻撃の直前に何も言わなければ人形に攻撃が直撃していたはずだ。
「アンタを倒しに獲物猟兵がやってきたぜ。さぁ、楽しもうかぁ」
 獰猛に笑う。兼光のブラスターの銃口は、違わずに『娘』を向いていた。

「君はなんと酷いことをするのだい? あまりにも卑怯極まりないよ」
 兼光の目には捉えられないほどの速さでエドワードの手が振られる。飛来する銀光を、兼光はほぼ第六感と射撃手としての経験による勘から避けていった。
 挑発が効いたのか、エドワードが素直なぐらいに頭や心臓といった急所を的確に狙ってきているのが逆に助かる。さすがは人体構造を熟知した医者であると褒めるべきだろうか。
「娘を攻撃して卑怯だぁ? 悪いね、卑怯にならないとアンタら倒せないんだわ」
 何ら躊躇なく、エドワードにとっての弱点へと狙いをつける。クイックドロウによる乱れ打ちは、メスを迎撃しながらも確実に人形へも狙いをつけている。
 もちろん、それは父の献身によって、決して当たりはしないのだが。
「ほら、ほら、庇わないと娘さんが蜂の巣だぜぇ?
 頑張って守らなきゃ……な? お父さぁ〜ん」
 次々と熱線がエドワードの身に突き刺さる。
「……ちっ」
 わざとらしく行う露悪的な挑発が、あまりにも面白くない。血も涙もない存在が見せる偽物の愛情が、しかしあまりにも真に迫っているようにしか見えない。
「……アンタ、なんで人になりたかったんだろうな」
 毒されるつもりはなかったが、その振る舞いが、言動が、狂人の戯言だとは思えなくなってくる。
 抱いてしまった疑問ごと砕くように、兼光はブラスターをひらすら乱射していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ブラミエ・トゥカーズ
よくぞ歓迎してくれた。感謝するぞ。
余は迎えられないと貴公に会えなかった故にな。

ただ、医者が見知らぬ輩を招き入れるのは不用心に過ぎるぞと言っておこう。
余はその方が嬉しいがな。
人でない生き物が人になるのは不可能ではないが、貴公の方法では不可能であるぞ。

真正面から御伽噺の吸血鬼そのままの不死性に任せて殴り殺しにゆく
相手が人間を止めているのであれば、吸血鬼の倒し方《お約束》を守る必要もない
周辺の人形、器材、器具を暴威に巻き込む
彼が現代医者且つ外科医であり抗生物質など保管されている場合、それらを暴威に巻き込み自滅する恐れがある
所詮、微生物よりも下等な病原菌なのだから

アドアレ絡み歓迎



「よくぞ歓迎してくれた、感謝するぞ」
 ブラミエ・トゥカーズ(《妖怪》ヴァンパイア・f27968)は、眼前の紳士に対して優雅に一礼し、相応の謝意を表した。
「余は、迎えられないと貴公に会えなかった故にな」
「当然だよ。真っ当な人間ではなくとも、だからこそ私の手術儀式に役立つかもしれないだろう?」
 負傷が積み重なってはいるも、エドワードの表情からは焦りや怒りなどの感情は窺えない。
 この怪物は、特定の感情を最初から持ち合わせていないのだろう。ただひたすらに娘への愛情を見せるその姿は――人間の側が望んだかは別にして――、人間に近しく寄り添ってきたブラミエにとって、あまりにも人間からは遠い存在に見えた。
「ただ、医者が見知らぬ輩を招き入れるのは不用心に過ぎるぞと言っておこう。世はその方が嬉しいがな」
 だからこそ、苦言を呈したくもなるというものだ。
「人でない生き物が人になるのは不可能ではないが、貴公の方法では不可能であるぞ」
「それを決めるのは君ではなく私だよ。根拠がない。そして私は、不可能だと諭す声には耳なんて傾けず、支え励ます声を大切にするよ。
 私を応援してくれているはずの、娘の声をね」
「……貴公の専心を、つくづく残念に思う」
 互いの会話は噛み合わぬまま、戦いは始まる。

 ブラミエの採った作戦は至ってシンプルなものだった。
 ――真正面から、エドワードを殴り殺しに行く。
 不死にして無敵な暴力の塊。御伽噺に恐れられる吸血鬼とは斯く在るもの。極めて純粋に身体能力のみで、エドワードに対して突貫する。
 相手が人間を辞めている存在であれば、吸血鬼によるお約束殺し方を守る必要もない。そもそも、いくらなんでも血を吸うのは遠慮したい。
「肉片になったとしても、君なら有効活用はできそうだ……ねっ!!」
「戯けたことを」
 打撃というよりは爆発のような音が響いた。
 全力で振り下ろしてきたエドワードの右腕を、両腕を交差させて防ぐ。周囲の地面が破壊され、腕の骨すら砕けた痛みを堪えながら、なんでもないかのようにその腕をエドワードへとぶち込む。
 意表を突かれた反撃が胴体に刺さり、エドワードの身体は大きく折れ曲がる。
「余を人ならぬ者と看破したであろうに」
 ブラミエの力の暴威が、エドワードへと次々と叩き込まれていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

緋薙・冬香
愛はどこまでも残酷な物語になる
あなたの狂気はまさにそんなタイプね
残念ながらあなたの夢は叶わない
だからここで砕いてあげる

「さぁ、イイ悲鳴こえを聞かせてね?」

【血統覚醒】で戦闘能力を底上げしつつ
ダッシュとジャンプとスライディングを駆使して接近
【魅せる脚】で仕掛けるわ
「娘さんがいなくなればあなたの存在意義も無くなるわよね?」
徹底的に狙わせてもらうわよ
遠慮はしない

その異形の腕の一撃は脅威ね
回避できるのが一番だけど
喰らったところで耐えられないものじゃない
しのいだ後、単純な攻撃だからこその隙をつく

「冬の香りがもたらすのは、夢の終わりよ?」

全身を使った後ろ回し蹴り
その夢ごと蹴り抜いてあげる



 緋薙・冬香(針入り水晶・f05538)にとっては、UDC怪物エドワードが語る愛が真であるか偽であるかというのは、大した問題ではなかった。
 冬香と相対してもなお、エドワードはまるで人のように紳士然とした態度を崩さない。その身に刻まれた負傷は深刻なものとなっているにも関わらずだ。
「あなたの言うところの『愛』が、人間のそれと同一のものなのか、酷似した何かか、それとも遠くかけ離れた別種のものであるのか、なんてのは別にどうでもいいのよ」
「ごもっともだ、お嬢さんレディ。それは愛の本質とは何ら関係がない」
 重要なのは、その愛情狂気を動機として何をするか、だ。
「愛はどこまでも残酷な物語になる。あなたの狂気はまさにそんなタイプね」
「残酷? 分からないな。私の物語には、どこまでも幸せしか綴られていないよ。きらきらと輝く宝石のように美しく輝くのさ」
「……残念ながら、あなたの夢は叶わない。ここで砕いてあげる」
 愛に疑問を抱かない。迷わない。通じない。どこまでも話は通じない。
 かつんと一つ、レガリアスシューズの踵を合図のように地面に打ち付ける。瞳を真紅に変え、冬香は一気にエドワードへの懐へと跳び込んでいった。
「さぁ、イイ悲鳴こえを聞かせてね?」

「おやおや、足癖の悪いお嬢さんだ」
 地を這うようにして迫るかと思いきや、ステップを踏んで一気に高く跳び上がる。地を薙ぐようにして突進を迎撃しようとしたエドワードの巨腕が空振った。
「あなたの方こそ、手癖が大分悪いのではないかしら?」
 エドワードの異形の腕の一撃は脅威だ。食らって耐えられないものではないだろうが、しかし削り合いに付き合う気はない。遠慮せずに策を弄してしまえばいい。
「人間になりたいそうだけど、娘さんがいなくなれば、あなたの存在意義も無くなるわよね?」
「……む」
『娘』に向けて目を合わせるようにしてから、にこやかに微笑んで冬香は再び突っ込む。
 娘へ迫る攻撃だと読んだエドワードが、冬香を粉砕せんとばかりに巨腕を振り落とす。しかし異形の巨槌は、一歩手前で止まった冬香には当たらず、ただ地面を割り砕いた。
 冬香はあえて攻撃を誘発させたのだ。どんな手段の迎撃が、どんなタイミングで来るかが分かっていれば回避は容易い。
 そして、今度こそ本命の一撃。エドワードの拳を跳び越え、全身をバネのように使った全力の後ろ回し蹴り。
「冬の香りがもたらすのは、夢の終わりよ?」
 そのごと蹴り抜く、過たずに人形を狙った一撃は、しかしエドワードが庇うことで無防備となった身体へと突き刺さった。
「……哀しい夢からは、もう覚めてしまいなさいな」
 その呟きは、きっとエドワードには届かない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

グウェンドリン・グレンジャー
【煉鴉】
パパの記憶の、中、私は、ママ譲りの、赤毛
目も、パパと同じ、青
同い年の子、より、ずっと小柄
今のこの色、この背丈の、私、娘と、認識できるか、怪しい
(手術後、髪も目も邪神の色に染まってしまった)
余命宣告されてた、子が、19歳になってるなんて、思わないだろうし

ドクター・グレンジャー、あなたを、人間に、戻す
(生きたまま人間へ戻すことは不可能だ。だから、せめて最期は人間として弔いたい)

私の名前は……グウェンドリン。奇遇、でしょ
(真の姿、妖鳥の女神のデッドコピーへと変貌しながら)

力と力のぶつかり合い。異形の腕の一撃、へ、真っ向からぶつかるように、飛び込んで、Raven's Roar
そのまま、突き刺した翼、から、生命力吸収し、捕食
パパを蝕む、邪神の力の……全て、食い尽くす!

終わった、ね
(父を抱き上げながら、師に振り向いて)

……あ
(砂のように崩れる父。UDC怪物と化した代償か)
……パパ。会いたかった、んだ
こんなに、大きくなったよ
(崩れ去った父がいたところへ、ブルーベルの花を捧げて)


叢雲・源次
【煉鴉】
俺は今、一人の女の岐路に立ち会っている。
これは別れだ。訣別の儀だ。
彼女を形作る優しき思い出が、今に至る凄惨な過程が、この瞬間の為に収束していく。
ヒトがヒトであらんが為に剣を教えた。その身体を蝕む異形と如何に向き合うかを示した。
ならば、今この瞬間俺に出来る事は何か。

娘が父に引導を渡す。その一瞬の先駆けとなる事だ。
(インターセプター、奴の行動を捕捉しろ。アナライザー、奴を見極めろ。三十式特殊戦靴、最大戦速。唸れ、炎獄機関。瞬け、三十式刀身加速装置)

「その異形たる腕……親が子に向けるには聊か無粋だろうよ。」

執行【無明抜刀】

(納刀、親子の別れに背を向けたまま。介入するのは無粋だろう。父を抱き上げる娘を一瞥し)
「……子が親にしてやれる事などさほどあるまい。精々見送ってやれ。」
ましてや、俺は当事者ではない。手向けなら、もうその手にあるだろう。親子水入らずだ…俺は先に行く。

ブルーベルの花弁が舞い、霧散していくのを視界の端に捉え、只々、見送った。



 今回の事件には幾つも不可解な点があった。
 エドワードが徹底して愛情を傾けている人形、当事者にとっての娘とは、はたして何物、いや何者なのか。そしてその娘の名前は?
 もちろんUDC怪物としての単なる特性、あるいは習性であるとすれば、それで済む話であろう。怪物の感情、狂気など人間には理解できるはずもない。

 だからこの先に綴られるのは、事件を予知したグリモア猟兵すらも知り得なかった、余人を挟まぬ『当事者』たちの、岐路と訣別の物語だ。

「私のことを邪魔するなんて、まったく酷いものだ。君たちもそうなのかね?」
「……」
「邪魔、とは少し違うな。俺は見届けに来たのだ、別れと訣別の儀を」
 グウェンドリン・グレンジャー(Imaginary Heart・f00712)は、目を伏せ首を横に振り、否定の意を示した。そして叢雲・源次(DEAD SET・f14403)は意図の間違いを指摘する。
 二人の持つ雰囲気は、他の猟兵とは明らかに異なっていた。しかしそんなことに、いやもっと根本的に重要なことに、エドワード・グレンジャーは気づかない。
 グウェンドリンがエドワードの抱く『娘』人形を見る。
「愛されて、いる、のね」
 赤毛に青い瞳のその子に向けた呟きには、万感が籠められていた。
 グウェンドリンの容貌は、生まれた頃とは大分違っている。瞳や髪の色彩が変わってしまったのだ、その身に移植された復讐の女神モリガンと同じ色に。
 もし、もしも、自分の姿が手術をする前とは変わりないものであったら。余命を宣告されていた少女が、両親の愛情を受けて宿痾を治し、そのまま無事にすくすくと成長できていたのなら。
 ――怪物となってなお、エドワードは、グウェンドリンのことを正しく認識できたのだろうか。

「ドクター・グレンジャー、あなたを、人間に、戻す」
 グウェンドリンが、真の姿へと変貌していく。
「そうかい、協力してくれるなら嬉しいよ」
 言葉は噛み合わない。にこやかに笑いながら、奇襲のようにグウェンドリンへと巨腕を振り下ろすエドワード。
「させんよ」
 しかしその一撃は、無粋は止めよとばかりに、親子の間に割り込んだ源次の右手の刀によって防がれる。
 源次は、己がこの場に立ち会う意味を考えていた。
 彼はずっと導いてきた。グウェンドリンを形作る優しき思い出が、今に至る凄惨な過程が、この瞬間のために収束している。
 ヒトがヒトであらんがために剣を教えた。その身体を蝕む異形と如何に向き合うかを示した。
 ならば、今この瞬間、源次に出来ることは何か。
 ――娘が父に引導を渡す。その一瞬の先駆けとなることだ。
 エドワードの異形の腕を刀で受けたまま、源次は奥の手を放つ。
「インターセプター、奴の行動を捕捉しろ。アナライザー、奴を見極めろ。三十式特殊戦靴、最大戦速。唸れ、炎獄機関。瞬け、三十式刀身加速装置」
 刹那、紫電が迸った。
 左手一本での逆手抜き電磁抜刀。超至近での無明抜刀が、エドワードの右腕を半ばまで斬り裂く。
「……そんな」
「その異形たる腕……親が子に向けるには聊か無粋だろうよ」
 納刀は静かに行われた。そして源次は素早く数歩退く。
 その後ろには、真の姿である妖鳥の女神のデッドコピーへと変貌したグウェンドリンが居た。
「私の名前は……グウェンドリン。奇遇、でしょ」
「奇遇、どういうことかな? 良い名だとは思うがね」
「ええ、自慢の、名前」
 烏の足で地面を蹴り、真っ向からぶつかるようにエドワードの懐へと飛び込む。腰から生やした黒い翼は、力が込められないエドワードの右腕の防御を弾き、その身へと突き刺さった。
「パパを蝕む、邪神の力の……全て、食い尽くす!」
「あ、……がっ!」
 あの日の母のように、吸われ、喰われていく。
「っぐ、グウ……」
 エドワードの左手から、人形がこぼれ落ちる。それは地面に落ちると同時に、夢のようにばさりと崩れて消え去る。
 何も持たなくなったエドワードの左手が、翼を掴む。しかしその力もゆっくりと抜けていった。

 持ち上げた父の身体は、悲しいほどに軽かった。もうほとんど何も残っていないのだ、エドワードを形作っていたものは。
 でも目を閉じたエドワードの表情は、安らかだった。
「終わった、ね」
 振り向いた時、師匠は介入するのは無粋とばかりに背を向けていた。
 グウェンドリンの視線に気づき、源次は二人をちらりと一瞥する。
「……子が親にしてやれることなど然程あるまい、精々見送ってやれ」
 ましてや、源次は当事者ではない。
「手向けなら、もうその手にあるだろう。親子水入らずだ……俺は先に行く」
 源次はそのまま立ち去っていく。グウェンドリンはその背に、ありがとうと感謝の言葉をかけた。
「……あ」
 崩れていく、エドワードの身体が。身体の末端、手足の方からぼろぼろと。
「……パパ。会いたかった、んだ。こんなに、大きくなったよ」
 身体の崩壊が胸より上ぐらいまで迫った時、娘の絞り出す声に反応したかのように、父の瞳が僅かに開いた。
 目が合った。
 最期の瞬間のエドワード・グレンジャーの眼差しは澄んでいた。そう信じた。

 すべては崩れ去り、何も残らなかった。ブルーベルの花を捧げ、グウェンドリン・グレンジャーはその場から長いこと動かなかった。
 先に去った源次は、青い花の花弁が舞い、霧散していくのを視界の端に捉え、只々、見送った。

 人になることを望んだ怪物の狂気の物語が、あるいは娘へ献身的な愛を注ぐ父親の物語が、静かに幕を閉じた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年09月06日
宿敵 『エドワード・グレンジャー』 を撃破!


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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠グウェンドリン・グレンジャーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト