熱くて暑い夏のバトルは、言霊使いの戦いだ!
●奥義は心の中に
「ちょっと特殊な競技なんだけど、誰か参加してもらえないかな? もちろん、ルールの解説はちゃんとするから」
フィンブル・テュール(オラトリオの聖者・f01804)は少し困っている様子だった。とあるインドア系の競技の参加者が全く集まらないのだ。このままではダーク化されたアスリートの不戦勝となり、アスリートはダーク化から解放されない。猟兵にはダーク化されたアスリートと戦い、勝利して彼らを解放して欲しいのだ。
「どちらかというと、ラップ対決に似ているかな? とにかく、武器は自分の中にある魂のこもった『言葉』なんだ」
言葉の持つ真の力を引き出し、新しい言葉を生み出して戦う、それがフィンブルが参加を求めている新しい競技、ニューワードだ。
「もし参加してくれるなら、まずはチュートリアルに参加してもらいたいんだ。やっぱり新しい競技だからね、ルールややり方を把握してからのほうがいい、よね」
と、言いながらもフィンブルは手にしたスケッチブック(A4版)にさらさらと文字を書く。
「たとえば、僕のユーベルコードには鈴蘭の嵐という銘がついているけれど」
そう言って、ちょっと改まってフィンブルは声を張る。
「
鈴蘭の嵐とかね。つまり、心の赴くままに古い言葉に新しい意味を持たせて、より深く強く人の心に訴えかける競技、それはニューワードなんだ」
なんだかよくわからないけれど、これは百聞は一見にしかず、かもしれない。やってみたら、楽しいのかもしれない。とにかく、新しい競技は新しいアスリートを大募集しているのだった。
霧原澪
こん日は、あるいはこんばんは、またはおはようございます。マスターの霧腹です。
今回は新しい競技を一緒に遊びたいと思っています。それは、新しいルビの機能をふんだんに使うことです。今こそ、厨二病と謗られようとも、ルビを使いまくってプレイングをしましょう。その言葉は必ず戦いの武器になるでしょう。きっと、多分。言葉は単語でも、和歌のような形式でも、なんでも構いません。まだ新しい競技ですからね、皆さんで一緒に作っていきましょう。
まずは、チュートリアルでお待ちしています。
第1章 冒険
『その他スポーツを練習しよう』
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POW : 体当たりで果敢にチャレンジする
SPD : 器用にコツを掴みながら練習する
WIZ : ルールや戦術の理解を深める
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狭野・実琴
うーん…なんとなく分かったよ。
それじゃ…とりあえず自己紹介を。
私は狭野・実琴だよ。13歳のバトロワシューターで、ちょっとは強い選手のつもり。
最近ちょっと昔の仲間や家族と揉めちゃって、今はこうして猟兵として働いてるんだ。
今回はよろしくね。
どうかな?
色々伝わった?
●新しいタレント
「えっと、ここでいいのかな?」
グリモア猟兵の案内であっちに進み、こちらに向かい、階段を昇り、下り、もはやダンジョン制覇が目的だっけ? と思い始めるころ、狭野・実琴(元天才・f38190)は目的地に到着した。そこはどうやら地下にある大きな部屋であった。
「ようこそいらっしゃいました。わたくし、あなたを歓迎いたしますわ」
平安時代の女性が持っていそうな扇で顔の下半分を隠した女性が出迎えてくれた。
「どうも、よろしくお願い、します」
ぶっきらぼうに言い、ぺこりと頭を小さくさげる。あまり大人に接するのは得意ではない。信頼していい大人なんて実琴の中ではとっくに絶滅しているのだから。
「簡単にレクチャーは受けているの? そう、それはよかったわ。この競技はね、まだほんとうに始まったばかりなの。それでね……」
平安時代なら叱られそうな早口で女性はどんどん話続ける。もはや、実琴が聞いているのかどうか、確認しているかさえ怪しいほどだ。
「どう、わかったかしら?」
たっぷり20分ほどの独演が終わると女性はにっこり笑って実琴に問いかける。
「うーん……なんとなく分かったよ」
たぶん、これでわからないと言えばもう一度女性の説明が繰り返されるに決まっている。実琴の答えは一択だ。
「では、言葉を紡いでみてくださるかしら?」
「それじゃ……とりあえず自己紹介を」
実琴は大きく息を吸う。
「
私は狭野・実琴だよ。13歳のバトロワシューターで、ちょっとは強い選手のつもり。 最近ちょっと昔の仲間や家族と揉めちゃって、今はこうして猟兵として働いてるんだ。 今回はよろしくね。どうかな? 色々伝わった?」
少し心配そうに実琴は女性を見る。沈黙、まだ沈黙、え、反応はない? 不安な気持ちが湧き上がる。
「
素晴らしいですわ! もう何も押しえることはありませんわ」
女性は実琴を特待生に昇進だと言った。
大成功
🔵🔵🔵
アヴリール・ベルノワール
素晴らしい…
わたしもシャルムーンの神官としていざ、尋常に…
終焉を
終焉させる者
それが
終焉破壊者
罪なき者の瞳に映る
悲劇の終焉を
終わらせるべく、
終焉に抗う勇士たちは
誰かの瞳を閉ざす悲劇の仮面に立ち向かう
その果てにあるのは己の
我欲で全ての悲劇を生み出した
棘歪めし
全ての生命の瞳を閉ざす大魔女
その
終焉総てを…
終焉を終焉させる者は打ち砕く!
…これが、わたしが承った神託です
●新しい星がまたひとつ
アヴリール・ベルノワール(破邪の真言を超えし始原言語使い・f36348)は黄金の瞳をキラキラと夜空に君臨する満月の様に輝かせていた。
「素晴らしい……」
胸元で組んだ両手は祈りを捧げるかのようにきゅっと握られている。
「わたしもシャルムーンの神官としていざ、このような場に挑まないわけにはまいりません。尋常に……」
「まぁ、あなたもこの競技に参加してくださいますの?」
扇で顔の下半分を隠した、平安貴族の様な女性がアヴリールの前に駆け寄ってきた。扇のせいで表情は良く見えないが、なんとなく歓迎してくれているようすが伝わってくる。
「はい。言葉とはまったく大切なものですもの。神様とわたし達を繋いでくれる素晴らしいものです」
「まぁ! まぁ! あなたはこんなにお若いのに、もう言葉の真髄を会得していらっしゃいますのね」
女性は感激しているようだ。
「では、えっと……」
「アヴリール・ベルノワールです」
「では、ベルノワールさん。どうぞ、あなたの心をあなたの言葉で表現してくださいまし!」
もう一つ、扇を取り出し女性はアヴリールをそよそよとあおぐ。たぶん、なんか言え! ということなのだろう。アヴリールは気負うことなく言葉を紡ぐ。
「
終焉を
終焉せる者。それが
終焉破壊者 」
「
罪なき者の瞳に映る
悲劇の終焉を
終わらせ るべく
終焉に抗う勇者たちは
誰かの瞳を閉ざす悲劇の仮面に立ち向かう」
「その果てにあるのは己の
我欲で全ての悲劇を生みだした
棘歪めし
全ての命の瞳を閉ざす大魔女」
「その
終焉総てを……
終焉を終焉させる者は打ち砕く!」
長い様々なフレーズをアヴリールはよどみなく、押さえた情熱を調べに乗せて滔々と語った。それは言葉で紡がれた遠いどこかのビジョンのようで、アヴリールが言葉を止めても扇を持つ女性はぼうっとしていた。
「……これが、わたしが承った神託です」
沈黙の後、女性は両手の扇をひらひらさせながら、感激した様子で言った。
「
素晴らしいです。とても初めてとは思えません。あなたには
才能があります。特待生です!」
女性はたいそう興奮して言った。
大成功
🔵🔵🔵
吉岡・紅葉
身体能力よりも言語能力で戦う競技ですか。
これは帝都でも流行らせてみたいです!
幻朧桜が咲き誇る世界からやって来た
猟兵、
吉岡紅葉と申します。
よろしくお願いしますね!
普段は女学生として勉学に励み、有事には學徒兵として勇ましく闘い、
様々な難事件を解決しますよ。
どんな危険な任務も、桜學府の
超弩級戦力である私にかかれば朝飯前。
東に傷ついた
影朧あれば
超常の力で救済し、西に陰謀を企む
幻朧戦線あれば
怪盗仕込みの武術と
愛用のキャバリアで成敗しますよ!
●溢れでる
才能
そこは新しい競技を説明するチュートリアルのための部屋であった。いかにも裏方風の地味な服装の少女に案内され、吉岡・紅葉(ハイカラさんが通り過ぎた後・f22838)は開け放たれた扉の前で一礼した。
「お初におめにかかります。私は吉岡家の紅葉と申します。このたび、大変興味深い身体能力よりも言語能力で戦う競技があるとお聞きしました。是非、故郷の帝都でも流行らせてみたいです! ぜひともご教授いただけないかと推参いたしました」
まるで軍人であるかのようなぴっちりとした所作と口上をよどみなく話す。
「まぁ。まぁ、まぁ、まぁ!」
広げた扇で顔の下半分を隠した女性は感嘆の声をあげ、扉の外にいる紅葉へと駆け寄ってきた。
「まぁ、お若い方なのになんて礼儀正しい方なんでしょう。きっとご両親たちのご指導が素晴らしいのでしょうね。わたくし、感動しましたわ!」
女性はにっこりと微笑んだ(ようだった)
「さぁ、さあ、中にお入りくださいませ。これからこの生まれたばかりの競技の説明をいたします」
女性は紅葉を部屋の中に招き、色々と詳しく競技の説明をした。
「では、もう一度、自己紹介をしていだけますか?」
紅葉はこくりと頷いて、息を吸う。
「
幻朧桜が咲き誇る世界からやってきた
猟兵、
吉岡紅葉と申します。よろしくお願いしますね」
紅葉が女性を見ると、女性は大変結構です、と微笑み(たぶん)先を促す。
「普段は女学生として勉学に励み、有事には學徒兵として勇ましく闘い、様々な難事件を解決しますよ。どんな危険な任務も、桜學府の
超弩級戦力である私にかかれば朝飯前」
紅葉はちょっと楽しくなる。
「東に傷ついた
影朧あれば
超常の力で救済し、西に陰謀を企む
幻朧戦線あれば怪盗仕込みの武術と
愛用のキャバリアで成敗しますよ!」
自己紹介を最後まで言い切った紅葉は達成感に清々しさを感じる。これは、まさに言葉に新たな意味を付与する新しい創作の競技なのだと実感する。
「まぁ、まぁ、まぁ! こんな逸材がまだいらっしゃったのね、感激ですわ。
素晴らしいです!」
女性は喜びに打ち震えているようであった。
「もう、チュートリアルは必要ありませんわね。あとは実践あるのみですわ」
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『ヘル・マジシャン・ガールズ』
|
POW : 助っ人さんいらっしゃ〜い
【大鍵で異空間の扉を開き、助っ人外国人】の霊を召喚する。これは【外国人というより人外なパワーと特殊能力】や【ものすごく派手な乱闘行為】で攻撃する能力を持つ。
SPD : 先程お借りしましたユーベルコードでございます
自身が触れた物体ひとつに【ボス級ダークリーガーの力を宿したモフモフ】を憑依させ、物体の近接範囲に入った敵を【そのダークリーガーの持つユーベルコード】で攻撃させる。
WIZ : タネも仕掛けも詰め放題
【シルクハット】から、対象の【競技に勝利したい】という願いを叶える【ルールギリギリアウトな凶器や凶悪モフモフ】を創造する。[ルールギリギリアウトな凶器や凶悪モフモフ]をうまく使わないと願いは叶わない。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
|
●最初の対戦相手は
地獄・
魔術・
女子達
あまり大きくない会場だが、周囲には沢山のギャラリーがいた。あちこちにカメラもあるので配信もあるのかもしれない。
「では、対戦相手の入場です。
地獄・
魔術・
女子達です!」
「はーい! 呼ばれてやってきたよー。よろしくね」
バニーガール姿の女の子たちはキャッキャと楽しそうだ。
「では、バトルのお題です。それは、人に広めたい自分の好きなもの、です!」
「えー、どうしよう?!」
「わかんなーい」
バニーさん達は楽しそうに困っている。先行は
猟兵だ!
禍沼・黒絵(サポート)
『クロエと遊んでくれる?』
人間の人形遣い×ビーストマスター、13歳の女の子です。
普段の口調は「無感情(自分の愛称、アナタ、ね、よ、なの、かしら?)」、独り言は「ちょっと病んでる(自分の愛称、アナタ、ね、わ、~よ、~の?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
一人称はクロエ、人からクロエと呼ばれると喜ぶ。
ちょっと暗い感じの無表情なキャラ
武器は装備している物を自由に使って構いません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
●クロエと言葉遊び
チュートリアルの終わったアスリートたちが会場に入ると、そこではエキシビションマッチが行われていた。
「あら、あら。そんな予定でしたかしら?」
チュートリアルを担当した扇を持った女性が首を傾げる。しかし、四角い壇上では2人のアスリートが頭脳をフル活動させている(はずである)。
「やぁやぁ、皆さん、ようこそお集まりいただきました。先ほどご紹介に預かりました、ヘル・マジシャン・ガールズです。どうぞ、華麗なるマジックをご堪能ください」
バニーガール姿のセクシーコスチュームなお姉さんたちが、ウィンクしたり投げキッスをしたりしてギャラリーにアッピールをしている。
そんなセクシー美女軍団と対峙するのは一人の可憐な少女、禍沼・黒絵(災禍の輩・f19241)だった。
「アナタたち、
黒絵と遊んでくれる?」
濃淡様々な色の黒をまとったゴシックロリータがそこにいた。軽やかなフリル、繊細なレースを施したワンピースはそれだけならばスイートすぎるデザインだが、色味を押さえたこと着ているのが黒絵だったことから、得も言われぬ一体感を醸し出している。
「いいわよ。だって私たちって
多勢に無勢って大好きだもん!」
バニー姿のお姉さんたちが次々に鍵型の武器を振るう。すると、空間に亀裂が生じそこから何かが飛び出してきた。
「きゅー!」
白くて少し黄色い、ほわほわした何かがあちこちに亀裂からぽいぽい出現する。
「もふもふだ! かわいい!」
「おお、こっちもこいー!」
「もふ、もふらせてー!」
途端にギャラリーたちがその白くて黄色くてほわほわした何かに魅了される。しかし、黒絵は違う。
「
呪装改造」
表情ひとつ変えずにつぶやく。
「呪いの力よ、
黒絵の身に纏ってその力を強化せよ」
黒いオーラが黒絵の身体を守護するように包み込む。
「きゅー」
この絶対的な防御の前にはもふもふの可愛らしさも太刀打ちできない。
「
黒絵はぬいぐるみと遊ぶのが大好き」
双方、自分の好きな物を宣言していて、条件はクリアしている。
成功
🔵🔵🔴
吉岡・紅葉
私が暮らす帝都は、流行の最先端!
最新の
芸術に
娯楽、
美食や
服飾が目白押しなのですよ。
中でも殊更華やかなのは、
国民的スタアによる歌やお芝居のパフォーマンス!
スタアともなれば、チケットも
入手困難。
レコヲドが発売されると皆こぞって買い求め、
ラヂヲから歌声が聞こえてくると仕事の手を止めて
聞き入ってしまうほどです。
活動寫眞もメジャーな娯楽のひとつです。
皆さんどんな作品がお好きですか?
私はやっぱり心トキメク
純愛劇
ですかねぇ。王女と庶民の青年の身分違いの恋とか、憧れませんか?
●レッツ、スタート
「それでは、先鋒は私にお任せください」
エキシビション・マッチが終わると、入れ替わるように
舞台に立ったには吉岡・紅葉(ハイカラさんが通り過ぎた後・f22838)だった。
「私が暮らす帝都は、流行の最先端! 最新の
芸術に
娯楽、
美食や
服飾が目白押しなのですよ」
紅葉の言葉が途切れると、バニーたちが口を挟む。
「サクラミラージュの流行?」
「時代遅れの大正ロマンしか、ないんじゃね?」
バニーたちが野次を飛ばすが、そんなことで紅葉の言葉は止まらない。
「中でも殊更華やかなのは、
国民的スタアによる歌やお芝居のパフォーマンス! スタアともなれば、チケットも入手困難激レア。レコヲドが発売されると皆こぞって買い求め、ラヂヲから歌声が聞こえてくると仕事の手を止めて聞き入ってしまうほどです」
「スタアなんて、存在するの?」
「妄想だったりしないかな?」
バニーさんたちが首を傾げる。しかし、それが何になるというのだろう。紅葉の表情は少しも変わらない。
「
活動寫眞もメジャーな娯楽のひとつです。皆さんどんな作品がお好きですか? 私はやっぱり心トキメク
純愛劇ですかねぇ。王女と庶民の青年の身分違いの恋とか、憧れませんか?」
「憧れる!」
「恋してみたい!」
「王子様と庶民もいい!」
「王子様とバニーガールの恋もいい!」
「はっ! あの子の言葉に酔わされてしまってる!」
数人のバニーガール姿のお姉さんは正気に戻ったが、大半は妄想ちっくな
純愛劇に脳内を侵食されて戻って来ない。
「さ、さすがね。サクラミラージュの言葉の使い手!」
バニーのお姉さんたちも反撃しようとするが、なかなか言葉が出てこない。
大成功
🔵🔵🔵
アヴリール・ベルノワール
言葉です!
私が世に広めたいもの、シャルムーン様の教え……言葉の神の神官として、破邪の真言を超えた境地に立つ者として、言葉のすばらしさを伝えましょう
そうして言葉の力を持ってアルダワ魔王戦争の戦いの様子を報告書から取り出し、物語として伝えていきます
黄金の楽団を始めとして
獅子の王、
脳の眼、
涙の性欲、そして
死の支配者を超えた先に
希望を糧として反証する魔王と猟兵は対峙し、これを打ち破りました!
言葉の力で魔王戦争の物語を語っていきましょう
「適切な言葉が出てこないというのでしたら、私が言葉を紡ぎましょう」
長い癖のない髪を背に流し、軽やかに
舞台に上がったのはアヴリール・ベルノワール(破邪の真言を超えし始原言語使い・f36348)だった。自分の好きなものを誰かに言う、それは自分の心をさらけ出すことにも等しい。だから通常、よほどのことがない限り自分の好きなものは親密な間柄になるまで言わない。けれど、アヴリールには教義がある。教義は広めることにためらいはない。
「
言葉です!」
だからサラリ口に出来る。
「私が世に広めたいもの、シャルムーン様の教え……言葉の神の神官として、破邪の真言を超えた境地に立つ者として、言葉のすばらしさを伝えましょう」
アヴリールは嬉しそうに微笑んだ。
「そうして言葉の力を持ってアルダワ魔王戦争の戦いの様子を報告書から取り出し、物語として伝えていきます」
言葉はもう頭の中に浮かんでいる。ただ、これを言葉として紡いでいけばいい。
「
黄金の楽団を始めとして
獅子の王、
脳の眼、
涙の性欲、そして
死の支配者を超えた先に
希望を糧として反証する魔王と猟兵は対峙し、これを打ち破りました!」
それはあまりにも教義を詳しく知るからこその言葉であり、詩であったため、バニーガール姿のお姉さんたちには少しも刺さらなかった。そのため、野次さえ思いつかなかったから、アヴリールの言葉は何の障害もなくスラスラと立て板に水が流れるがごとく、大瀑布であるかのように滔々と流れゆく。
「ねー、あの子の言葉の意味、わかる?」
「わからないわよ。どういう事よ!」
「あの子、神官なんでしょう? 神様からの神託ってことじゃないの?」
「え? 私たちの対戦相手って神様?」
「じゃ、私たちも神様を喚んだらいいってこと?」
バニーガール姿のお姉さんがポンと手を打つ。
「言葉の力で魔王戦争の物語を語っていきましょう」
アヴリールが言葉を終えると、バニーガール姿のお姉さんたちが鍵を振るう。鍵は空間を切り裂き、そこから巨大なもふもふが出現した。
「もふ~~~~!」
巨大もふもふは雄たけびをあげる。
「これは言葉とは認められませんわよ」
舞台の下から扇を持った女性が抗議の声をあげる。
大成功
🔵🔵🔵
狭野・実琴
好きなもの…しかも人に広めたいくらい…?
別にないんだけど…いや、ここはあれにしようかな。
言葉の銃弾をセット。UCで一斉に放つよ。
焼肉!
焼肉!
焼肉!
焼肉!
焼肉!
焼肉!
焼肉!
焼肉!
焼肉!
焼肉!
焼肉!
焼肉!
焼肉!
焼肉!
焼肉!
焼肉!
焼肉!
焼肉!
焼肉!
焼肉!
焼肉!
焼肉!
焼肉!
焼肉!
打ち上げで皆で行こうよ。
「所詮こんなもんだよ、私なんて」
巨大もふもふは中心を撃ち抜かれ、何百という普通サイズのもふもふに分裂した。
「かわいい!」
「わ、こっちにもきた~」
「ぎゅーってしていいよね、ぎゅー」
ギャラリーたちは頭上から降ってきた、たくさんのもふもふに歓声をあげる。
巨大もふもふの狙撃をした狭野・実琴(元天才・f38190)は武骨な黒い重火器を手から外した。
「好きなもの……しかも人に広めたいくらい……? 別にないんだけど……いや、ここはあれにしようかな」
心は決まったのか、実琴は晴れやかな笑顔を浮かべる。そして言葉の銃弾をセット。ユーベルコードで一斉に放つ、つもりだ。ここからは本当の銃器ではなく、言葉の銃弾が火を噴く番だからだ。脳内でラッパーが伴奏に使うようなサイケデリックな音楽が再生される。思わず身体もリズムを刻む。
「
焼肉!
焼肉!
焼肉!
焼肉!
焼肉!
焼肉!
焼肉!
焼肉!
焼肉!
焼肉!
焼肉!
焼肉!
焼肉!
焼肉!
焼肉!
焼肉!
焼肉!
焼肉!
焼肉!
焼肉!
焼肉!
焼肉!
焼肉!
焼肉!」
その頃にはバニーガール姿のお姉さんたちは全員がぶっ倒れていた。
「もう、無理。気持ち、わる」
「こんなの胃がもたれるに決まってるわよ!」
「これがあなたの好きなモノ、なの!」
へたり込んでしまったバニーガール姿のお姉さんたちが涙目で実琴を見る。
「全部、大好きだよ。だから、これが終わったら、打ち上げで皆で行こうよ。おいしい焼肉屋さん、知ってるんだよね」
実琴は倒れたバニーガール姿のお姉さんたちを不思議そうに見下ろし、それから同じ戦いを勝ち抜いた
猟兵達へと振り返った。
「勝敗は決しました」
バニーガール姿のお姉さんたちは敗退し、そして
猟兵達の前に最後の敵が現れる。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『熱血アスリート『大炎・丈』』
|
POW : 強敵と闘って…燃えるぜえええええええ!!!!!
【アスリート魂から生じる熱く燃え盛る炎】を纏い、攻撃力が8倍になる。ただし防御力は0となり、全ての攻撃が致命傷になる。
SPD : 例え逆境でも…燃えるぜえええええええ!!!!!
戦場全体に【激しく吹きすさぶ逆風】を発生させる。敵にはダメージを、味方には【逆境から生じる燃える闘魂と不屈の闘志】による攻撃力と防御力の強化を与える。
WIZ : どんな時でも…燃えるぜえええええええ!!!!!
【アスリート魂から生じる熱く燃え盛る炎】を放ち、命中した敵を【そう簡単に消せないどこまでも燃え広がる炎】に包み継続ダメージを与える。自身が【SNSでの問題発言や攻撃的な発言で大炎上】していると威力アップ。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
|
●これが俺の
情熱だ!
可愛いバニー姿の女の子達が退場すると、なんとなく会場は蒸し暑くなった気がした。
「おかしいですね。室温は同じなのですが」
「湿度も変化ありませんよ」
会場にいる関係者っぽい人々がひそひそと囁き合う。そんな中、出入り口の扉がダーン! と激しく開かれ、そこから燃え上がる闘志が視覚的にも見えそうな、熱血青年が飛び込んできた(暑苦しいとも言えるが)。
「とうとう俺の番が回ってきたぜ! テメェら! 俺に心に灯る
情熱を見せやがれ!」
そう宣言したのは、『熱血アスリート『大炎・丈』』で、あった。
「今回のテーマは必殺技ですよ。何か素敵な技名を渾身の
情熱で披露してくださいませ」
扇を持った女性が穏やかに言った。
吉岡・紅葉
今回のテーマは必殺技、ですか!いいですね、胸がアツくなりますよ。
猟兵たるもの、必殺技のひとつやふたつ持っていなければなりません。
しかし、この人が来てから急に部屋の温度が上がりましたね…。
愛用の
退魔刀を鞘から抜き、静かに構えますよ。
燃え盛る
闘志で自身を鼓舞するもよし!ですが!
この奥義を使うためには、心を鎮める必要があります。
心頭滅却すれば火もまた涼し、
燃え盛る丈さんの炎を切り払いながら繰り出す
奥義・強制改心刀で、
彼の肉体を傷つけることなく
邪心のみを断ち切りますよ。
「今回のテーマは必殺技、ですか! いいですね、胸がアツくなりますよ」
熱血アスリート『大炎・丈』に触発されたかのように、すっと彼と同じ壇上に上がったのは吉岡・紅葉(ハイカラさんが通り過ぎた後・f22838)であった。
「
猟兵たるもの、必殺技のひとつやふたつ持っていなければなりません」
と、爽やかに微笑んだが、右手はひらひらと無意識に動き自身に風を送っている。
「しかし、この人が来てから急に部屋の温度が上がりましたね……」
ガンガンエアコンが稼働しているのにも関わらず、体感温度は壇上に上がる前よりも格段に上昇している。
「俺は熱血アスリートだからな。俺がいる場所は……なんだか暑い!」
「夏には同席したくない御仁ですね」
「そうなのだ! 誰も彼も、俺と対戦してくれない。流れ流れてここまで来た。さぁ、必殺技を披露しろ! お前の魂の叫びを俺に聞かせるんだぁぁああ!!!」
喋りながら興奮してきたのか、丈の言葉の最後はほとんど絶叫だ。
「わかりました」
紅葉はすらりと愛用の
退魔刀を鞘から抜き、静かに構えた。
「な、何故、刃を……」
驚く丈。しかし、紅葉はその言葉に直接反応はしなかった。丈のように、燃え盛る
闘志で自身を鼓舞するもよし! と思う。だが、この奥義を使うためには、心を鎮める必要がある。
心頭滅却すれば火もまた涼し、静謐なる瞳が見据えるのは丈を守るように燃え盛る、熱血の炎だ。
「お前、いい
瞳をしているな」
嬉しそうに、ワクワクしているのかのように丈が言う。そう、きっと丈の本質はただの熱血アスリートなのだろう。自己を鍛え、強敵に心震わせ、切磋琢磨し高みを目指す。子供のような純真さを持っているのだ。ただ、その熱血の炎は
闇に侵食されている。
「
奥義・強制改心刀」
静かに宣言し、放たれた紅葉のユーベルコードは丈の肉体を傷つけることなく
邪心のみを断ち切った。一瞬、壇上の温度がガクンと下がる。
「涼しい……」
しかし、次の瞬間、前にも増して温度があがる。
「燃えるぜえええええええ
!!!!! なんて、すげぇ必殺技だ。俺は猛烈に感動しているぞぉおおおお
!!!!」
「えぇえええ?」
けれど、丈から放たれるオーラのような炎から邪な波動がごっそりと消えている。紅葉のユーベルコードは確実に丈の邪心を払っている。
大成功
🔵🔵🔵
狭野・実琴
情熱ね…苦手分野だな。
でも、クールさでも心に火を灯すことはできる。
開錠言語、
入力。
Rome was built in a day.
制限解除、
30%。
Speech is silver, silence is gold.。
あなたに金貨を与えよう、
天凛の魔弾。
Requiescat In Pace.
そろそろ黙れという意図を込めて威力3倍のアサルトライフルで撃ち抜くよ。
ごちゃごちゃ五月蝿いんだよ、この競技。
「いい必殺技だったぜ。さぁ、次は誰が披露してくれるんだ!」
闇をほとんど払拭した炎をまき散らしながら、丈が言う。
「次は私ね」
壇上にあがった狭野・実琴(元天才・f38190)は、もうアスリートの顔をしていた。冷静に敵を観察し、適切な行動を最小限の労力で行う冷徹な体現者だ。
「おっ、お前は前の奴とはずいぶんと雰囲気が違うんだな」
「当たり前だよ。同じ人間なんてどこにもいないんだから、同じ雰囲気なわけ、ないよ」
至極当然、と、言う様子で実琴が言う。
「そうか……そう、だな。お前は子供なのに、物事の理解が深い、な」
なんとなく、ハッとした様子で丈が言った。もしかしたら、丈が闇に囚われたのは何かそういう不遇な状況にあったから、なのかもしれない。けれど、実琴は考慮しない。ここは競技の場なのだから、勝利を得ることしか考えなくていい場所なのだ。
情熱は苦手でも、クールさで心に火を灯すことはできる。
「もう子供じゃないよ。
開錠言語、
入力」
真正面の丈は目をギラギラと燃え上がらせている。実琴の必殺技がどのようなものなのか、期待してうずうず、ワクワクしているのだ。アスリートなのに変な人だと実琴は思う。強敵と書いて友と読みたがる人は確かにいるし、対戦相手の力量を讃える人もいる。けれどそれは競技中じゃない。戦いが終わった後で思うもので、今じゃない。
「
Rome was built in a day. 」
「|制限解除《リミットリリース、
30%」
実琴はバトロワ式アサルトライフルを丈を狙って構え直した。もちろん、これはモデルガンだ。知ってか知らずか、丈は銃口を突き付けられても驚かない。
「
Speech is silver, silence is gold. あなたに金貨を与えよう、
天凛の魔弾Requiescat In Pace. 」
そろそろ黙れという意図を込めて威力3倍のアサルトライフルで実琴は丈を撃った。
「例え
逆境でも……燃えるぜえええええええ
!!!!!」
壇上に熱風が発生する。
「え? 何、暑っ!」
吹きすさぶ熱風は実琴の髪を、服をはためかせる。そして撃たれて負傷したと思った丈を不屈の闘志で燃え上がらせた。
「えー、また燃えあがっちゃった。ごちゃごちゃ五月蝿いんだよ、この競技」
帽子を飛ばされないように押さえながら実琴が言った。
大成功
🔵🔵🔵
高階・茉莉(サポート)
『貴方も読書、いかがですか?』
スペースノイドのウィザード×フォースナイトの女性です。
普段の口調は「司書さん(私、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、時々「眠い(私、キミ、ですぅ、ますぅ、でしょ~、でしょお?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
読書と掃除が趣味で、おっとりとした性格の女性です。
戦闘では主に魔導書やロッドなど、魔法を使って戦う事が多いです。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
「あの、室内の温度や湿度を急激に変化させるのは止めてください。それから炎もダメです」
どうしても我慢できなくて、観客席にいた高階・茉莉(秘密の司書さん・f01985)は勇気を出して立ち上がった。
「え?」
思いがけない観客席からのクレームに熱血アスリートであり、炎は友達な丈はきょとんとして茉莉を見た。
「見て下さい!」
普段はおっとりしていて、穏やかな茉莉が重そうなハードカバーの本を掲げる。随分と古そうな本だが、大切にされているのだろう。装丁は美麗で何の問題もないように見える。
「本だな」
「本だな、じゃありません。この熱気で紙が痛んでいます。装丁の金属部分にもゆがみが出ています」
「え? どこ? わからねぇ
!!!!」
丈が目を凝らすけれど、本に対して特に思い入れのない丈にはわからない。
「私も、わかりませんわねぇ」
扇を持った女性も遠目ではよくわからないようだ。しかし、茉莉は違う。
「ここです。ほら、紙の端が変色しています。金属のゆがみは肉眼でハッキリしているではないですか」
可愛らしい印象を受ける丸いフレームの眼鏡の奥で茉莉の瞳は厳しい光を讃えている。
「でも、ほら、これは競技で……」
「競技だからといって、なんでも許されるわけではありません!」
「え? そうなの?」
丈は不安そうにきょろきょろとあたりを見渡す。観客席はおおむね茉莉に賛成している。
「うん、暑いのはヤダなぁ」
「汗かいちゃうよね」
「言葉で戦うって、もっと雅なイメージじゃない?」
「炎噴き出すとか、マジあり得ないから!」
観客席からの声に丈はすっかりアウェイ状態だ。
「わ、わかりました。これからは炎を出しません」
丈は高校球児たちのように勢いよく頭を下げ、茉莉はやっとにっこりと笑顔を見せた。
「よくわかりました。では、続けてください。あ、丈さんもぜひ、読書、いかがですか。言葉を知るには本を読むことが一番の近道、ですよ」
「お、おぉ。わかった」
炎の消えた丈はすっかり小学生の様に素直で純真な心を見せ始めていた。
成功
🔵🔵🔴
アヴリール・ベルノワール
燃える……情熱という概念を操るUCですか
ですが、相手が悪かったですね
私は始原言語のUCを使う猟兵
この舞台では相手が悪すぎますね
我が
始原言語により理を紡ぐ。
生命無き世界にて暴虐を振るった
獣。其れを神々と共に討ち、その骸を
人の理とする事すら不可能ではない――
――『
新世界の理乱す獣を討ち骸を人世界の理へ』
神々の時代に周囲の空間を書き換え、あらゆる不死の怪物の骸を核とする生命賛歌の法則が、オブリビオンを駆逐していきます――
●
最後の対戦
「燃える……情熱という概念を操る
UCですか」
言いながら、アヴリール・ベルノワール(破邪の真言を超えし始原言語使い・f36348)はゆっくりと壇上に上がっていく。最後の戦場だ。
「ですが、相手が悪かったですね。私は始原言語の
UCを使う
猟兵。この舞台では相手が悪すぎますね」
アヴリールは嫣然と笑う。
「しかも、もうその燃えることも許されないのでしょう? それでどこまで戦えるのでしょう?」
勝利を確信する女王のようなアヴリールと追い詰められたかのような丈。これがありきたりな物語ならば、丈は奇跡的な攻撃を放つか、奇跡的な援軍が到着して勝利を掴むことになるだろう。しかし、そんな
ご都合主義はここにはない。
「受けて立つぜ、どこからでも来い!」
丈は立派なアスリートの姿勢でアヴリールの言葉を待つ。アヴリールは手にした黄金の杖で壇上の床を強く打った。衝撃があたりに広がる。
「我が
始原言語により理を紡ぐ。
生命無き世界にて暴虐を振るった
獣。其れを神々と共に討ち、その骸を
人の理とする事すら不可能ではない……」
そこでアヴリールは言葉を断ち切り、新たなる言葉を紡ぐ。
「
新世界の理乱す獣を討ち骸を人世界の理へ」
今の時間と過去の時間が入れ替わる。
神々の時代に周囲の空間を書き換え、あらゆる不死の怪物の骸を核とする生命賛歌の法則が、丈の中に今も残る昏い影を駆逐してゆく。
「こ、これは……俺は……」
がっくりと丈が膝をついた。
「俺から力ある言葉が消えて、なんだか、もう燃えるねえええええええ
!!!!!」
絶叫した丈はそのまま力尽きて倒れる。
「これはドクターストップね。今回の勝敗は決しましたわ」
あの扇を持った女性が高らかに宣言する。新しい言葉の競技の第一回大会はこれで終了です。みなさま、お疲れ様でした、ってあら?」
もう壇上にアヴリールはいない。勝利を確信していた彼女は既に別の戦いに旅立っていた。
大成功
🔵🔵🔵