それぞれの邂逅 UDCと彷徨えるアリス
●UDCアース とある廃ビル
「みんな、コンビニでご飯買ってきたよ」
廃墟の中にそんな声が響く。
「わあ……」
「色々買ってきたら、喧嘩しないでね」
身を寄せていた少年少女達はホッとした表情になる。が、それも食事を進めるごとに表情はまた暗くなってゆく。
「いっ
…………」
誰かが、思わず、『いつまで続くんだろう』と呟きそうになるが、言葉を飲み込む。その答えを誰も知る由はないし、完全に口にすれば緊張の糸が切れて感情が抑えられなくなる。最悪、仲間同士で大喧嘩になってしまうかもしれない。だからみんな思っていても口には出さないようにしていた。
彼らは異世界『アリスラビリンス』からの帰還者。心に傷を負った少年少女達が人喰いオウガ達とのデスゲームを生き延び、自分達の世界へと帰ってきたのだ。
だが、彼らを待っていたのは平穏な日常ではなかった。彼らの心を苛む生活環境、そしてアリスラビリンスの帰還者『アリス』の能力に目をつけた邪教集団。怪物がいたのはアリスラビリンスだけではなかったのだ。元の世界でも逃げ続ける彼らを誰が呼んだか『
彷徨えるアリス』と呼ばれるようになっていた。
「次は、どこへ行こうか? 山にする? 海にする? えっと、海沿いの方が冬でも暖かいんだっけ?」
そんな中でもリーダー格の少女は気丈にみんなに声をかける。そうやってみんなで励まし合ってギリギリのところを耐えてきたのだ。
(本当は愉快な仲間達の国みたいな、もっと安全に休める所に居られればいいんだけど……)
この逃亡生活はある意味アリスラビリンスの頃よりも過酷であり、支援も目標もない状態での旅路はいずれ良くない結末を迎えるだろう。
そして、その逃亡生活は終わりを告げる。
「ッ! 誰か、来た!?」
複数人の足音が聞こえ、緊張が走る。先頭に慣れているアリス達が押し音の方向を警戒し、他のメンバーをいつでも逃がせるように準備を整える。そして、屋内に集団が雪崩れ込むと開口一番、
「私達はUDC組織です! あなた達を保護しにきました!」
スーツを着た集団の先頭にいたのはアリス達の中に混じっていても違和感のない少女。彼女が、アリス達へとそう声をかけていたのだ。
「もう、大丈夫です。貴方達は私達が保護……」
そして少女はアリス達を見回しながら、ある事に気づいて言い淀む。その少女、藤野・蓮華の視線の先にはアリス達のリーダー、桐原・一美の姿があった。
「一美……なの?」
「蓮華?」
長い間、顔を合わせていなかった親友との再会が意外な形でされたのだった。
●グリモアベース
「こうして二人は感動の再会を果たした訳だ。めでたしめでたし……じゃ、終わらなくてよ。お前達に頼みたいことがあるんだ」
そう話すのは東方妖怪のグリモア猟兵、陽環・柳火(突撃爆砕火の玉キャット・f28629)だ。
「ここまで話した事をまとめると、アリスラビリンスから帰還したアリス達が邪神組織に狙われている。それをリーダー格の一美を中心として助け合って、追っ手をなんとか撃退しつつ逃げていたわけだ。退魔組織みたいなイメージを持ってくれていい」
その集団の呼称として定着した呼び方の一つが『
彷徨えるアリス』らしい。
「で、その集団を保護する事にUDC組織が成功するんだが、問題は追っ手の邪教集団だ」
アリス達を保護し、元の生活に戻す上でも、アリス達を狙っている組織が残っているのはよろしくない。しかも、アリス達が逃げていたということは、彼等では太刀打ちできない戦闘力・規模のオブリビオンがいると思って問題ないはずだ。
「そこで、お前達にはその組織をぶっ潰して欲しい。アリス達が安心した生活を送れるようにな」
柳火の予知した戦力は、アリス達が束にかかれば一体は相手できそうなオブリビオンが数十体、それを統率する邪神が一体とのことだ。
「ただ、ボスの邪神が相当に手強い。バイクみたいなのに乗って戦うんだが、邪神の加護なのか、防御力が高くて硬い。機動力もあるし正攻法では苦戦する相手だ」
乗っているバイクを損壊させる、加護的な力を無理矢理引き剥がすなどすれば勝機が見えるかもしれないが、そう都合いい能力を持ったメンバーが猟兵の中にいるとは限らない。
「だが、今回保護したアリスの中に都合のいい能力持ちがいる」
それが『彷徨えるアリス』リーダーの桐原・一美だというのだ。彼女のユーベルコードで『相手を消し飛ばすレイピアを射出する』というものがあるそうだ。
「防御無視でバイクをぶっ壊すのに丁度いいユーベルコードだ。もちろん、彼女だけじゃ攻撃を当てるのは難しいだろうから、お前達の助けが必要になるだろうが。……あと、もう一人、UDC組織側にもいたな」
UDC組織の職員である藤野・蓮華も彼女と共生しているUDC『ベルトくん』の力を借りれば相手に施された特殊効果を打ち消す力を使えるらしい。
「ただまあ、なんか一美と蓮華、二人の間で過去に色々あったみたいだからよ、なんかギクシャクしてるんだわ。このままだと協力してもらってもうまく行かないみたいだろうから、その辺りもなんとかしてもらえっと助かる」
邪教集団に攻撃を仕掛ける前に、アリス達の警戒を解いてもらうことも兼ねてお店を貸し切ってアリス達と食事会をする事になっている。
「一時的にでもいいから、そこで何とかうまいこと、ことが運んでくれればいい」
ものすごいフンワリとしたオーダーだ。おそらく柳火自身、この手の問題とかを解決するのはあまり得意ではないのかもしれない。
「それに、やっと元の世界に戻れても、逃げ続けるのは辛いからな。アリス達の為に、よろしく頼んだぜ」
そういうと柳火は猟兵達をUDCアースへと送るのだった。
麦門冬
どうも、マスターの
麦門冬です。過去に同じNPCが登場しているシリーズはありますが、初めて参加される方も大歓迎です。
第1章では、アリス達とお食事会です。食事を楽しむ他、邪教集団殲滅を手伝ってもらう一美や蓮華の緊張や微妙な人間関係を解きほぐすのも目的の一つです。
第2章ではアジトに乗り込み集団敵を蹴散らしてもらいます。アリス達では集団で戦ってやっと一体倒せる感じですが、猟兵なら敵ではないでしょう。
第3章のボスは正攻法で戦うと強敵です。乗っているバイクから高い防御力の加護を受けているようなので、何とかしましょう。それ等に対して相性のいいユーベルコードを使える一美や蓮華の手を借りるといいでしょう。
以下、補足事項です。
●
彷徨えるアリス
邪教から追われた、帰還後も自分の居場所を見出せなかったなどの理由で集まり、力を合わせて邪教組織から逃げていたアリスの集団です。UDC組織に保護されたので、今後はUDCに保護されたままか日常生活に戻るか、彼ら自身が選ぶでしょう。戦闘能力はアリスラビリンスのアリス達と変わりません。
●桐原・一美
アリスの少女です。UDCアースに帰還後は『彷徨えるアリス』のリーダーとしてアリス達をまとめていました。彼女が登場した話は『#アリスナイト・一美』で検索できます。過去に親友の蓮華をいじめから救いきれずに逃げたことを悔やんでいます。
レイピアとユーベルコードでそこそこ戦えますが、猟兵には及びません。
●藤野・蓮華
UDC組織に所属する少女です。今回、年の近い少年少女の説得に役立ちそうだからとアリス達の保護に行ったら、親友と再会しました。彼女が登場した話は『#グールドライバー・蓮華』で検索できます。過去にいじめの標的が一美に映った際に何もできなかったことを悔やんでいます。
彼女と共生する変身ベルト型UDC『ベルトくん』の力を借りてそこそこ戦えますが、猟兵には及びません。
●食事会
ファミレスみたいなところを貸し切っています。大体のメニューがそこそこのクオリティであり、希望すれば厨房も使わせてくれます。ただし未成年はお酒は飲めません。
●邪教組織
教義として『優秀な肉体を捧げれば、その恩恵を自分が得られる』みたいな感じのヤバげな組織。アリス達の体を狙っています。
それでは皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 日常
『ファミレスでキャッキャウフフ』
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POW : 肉!ハンバーグやステーキを食いまくる
SPD : パンケーキなどスイーツを味わう
WIZ : ドリンクバーでミックスジュースを作る
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●気まずい二人
「おいしい……おいしいよぉ」
「本当に、好きなだけ食べていいの?」
「ええ、大丈夫ですよ。これからどうするかはお腹いっぱいになってから考えましょう」
久々の暖かいご飯にありつくアリス達にUDCエージェントである蓮華がそう微笑みかける。襲撃者に怯えることなく食事をとれたのは何時ぶりだろうか。ホッとした表情で食事をするアリス達の様子を見た後、蓮華は緊張に顔を強ばらせる。
「一美……」「蓮華……」
蓮華が喋ろうとした瞬間、アリス達のリーダーである一美も蓮華に話しかけようとしたのだが、互いに出会い頭でぶつかってしまい、沈黙が起きる。
「蓮華が先に言いなよ」
「一美が先でいいよ」
「……」「……」
あの時助けられなくてごめん。私はもう今は大丈夫だよ。実は今までにこんなことがあったんだよ。言いたい事は山ほどあるのだが、相手を助けることができなかったという後ろめたさが互いの口を重くする。
「ええっと……私達の組織、UDCってところなんだけど、しばらくはそこにいればみんな安全だと思うんだ。狙ってくる邪教集団をやっつけちゃう必要があるだろうけど」
「……算段はあるの? 相手はかなり強いけれど」
「私達に協力してくれる人たちの手を借りればきっと大丈夫だと思う。猟兵っていう人達なんだけど」
「確か、この世界にも猟兵はいたんだね」
とりあえず、一番話したい話題から逃げて、互いの立場としての今後の話をし始める二人。この二人の周りだけが周囲の和気藹々とした空気から切り取られているようだった、
樂文・スイ
帰る場所がないってのは気の毒だねぇ
シケたツラが並んでんのは気に入らねえ、人生は楽しくいかなくちゃ
邪教の輩ぶち殺す前の前祝いだと思って盛り上げるぜ
ちっさい子多そうだし俺も酒は我慢して、甘いもんたくさん奢ってやろう
しっかり食って大きくなれよなー
アリスの子ら、UCで狐火だしてお手玉してみせたりしたら喜ばねえかな?
あと具合悪そうな子いたら【医術】で介抱できりゃいいなーって
一美ちゃんと蓮華ちゃんはさ、ふたりきりになってきちんと話した方がいいんじゃね?
堅苦しい話もアリスの子らもいったんお兄さんにまかしときな、その年であれもこれも背負いすぎなんだよ
お互い大事だと思ってんなら、口に出さなきゃ伝わんないぞ
グラファイル・パランニウム
【アドリブ・交流歓迎】
邪教組織許すまじ。かつての俺のように肉体を捧げて何かを得ることが正しいわけがない。
おっと、危うくジュースカクテルを作るためのコップを握りつぶす所だった…。
というわけで、ミックスジュースを作ります。
甘いザクロジュースに、ほんのりと渋い濃い目のオレンジジュース。それにソーダ水を混ぜて、グラファイル特製、アメールピコンハイボール風ジュースカクテルの完成。
これを二人の席にそっと置きます。
アメールピコンハイボールのカクテル言葉は、分かり合えたら。これで乾杯して、渋かった過去を飲み込んじゃいましょう。
ジュースで分かり合えるほどの過去じゃなくても、その切っ掛けになれば嬉しい。
●人払いと取り計らい
「邪教組織許すまじ。かつての俺のように肉体を捧げて何かを得ることが正しいわけがない」
アリス達を狙う邪教集団に静かに怒りを燃やすのはグラファイル・パランニウム(サイボーグの戦場傭兵・f18989)だ。
「そこのお兄サン大丈夫かい?」
グラファイルにそう声をかけたのは樂文・スイ(欺瞞と忘却・f39286)である。
「おっと、危うくジュースカクテルを作るためのコップを握りつぶす所だった…」
グラファイルは一見柔和な青年に見えるが、体の半分は機械化されたサイボーグ。うっかりその力を解放してしまえば、コップなど簡単に砕けてしまうだろう。
「帰る場所がないってのは気の毒だねぇ」
そういったスイの視線の先には食事をするアリス達の姿がある。自分達の居場所に帰る為に異世界で命懸けの冒険をしてきたのだ。それなのに、やっと元の世界に戻れたと思ったら、そこでも自分の居場所がない、もしくは邪教集団に狙われ『彷徨えるアリス』として居場所を失っているのである。
「シケたツラが並んでんのは気に入らねえ、人生は楽しくいかなくちゃ。お兄サンもそう思うだろ?」
今、この店にいるアリス達は逃亡生活から解放されてホッとしているものが大半だが、中にはまだ警戒している子もいるし、一美のような浮かないかの者もいる。
「ここは俺が場を盛り上げてくるから、お兄サンはお兄サンのやりたいことやってきな」
そう言うとスイはアリス達のところへと足を運んでゆく。
「ああ、そうだね。俺もやることをやりに行こうか」
グラファイルもそう口にすると、厨房とへと足を向けるのだった。
「さあ、邪教の輩ぶち殺す前の前祝いだ! しっかり食って大きくなれよなー」
そう言ってアリス達の元へ大量のデザートを持ってきたのはスイだ。
「わ、こんなに!」
「おっきいパフェもあるー」
その様子にはしゃぐアリス達。
「さらに景気付けにこんなのはどうだい?」
更には
【燐火】で狐火を呼び出してお手玉をする。
「すごい、きれ〜い!」
「炎とか熱くないのかな?」
「あの勢いの炎をこんな風に制御できてるなんて……」
スイの芸にアリス達の目は釘付けだ。
(とりあえず、介抱の必要そうな具合の悪そうな子はいないようだね)
アリス達の様子を見て、スイはアリス達を誘う。
「もっとすごいもの見せてあげるから、もうちょっと開けた場所に行こう。あそこのあたりのテーブルとかを寄せてさ」
スイの言葉に賛同して席を移動するアリス達。そんな中、スイは動かないでいる二人、一美と蓮華に小さく声をかける。
「一美ちゃんと蓮華ちゃんはさ、ふたりきりになってきちんと話した方がいいんじゃね? 堅苦しい話もアリスの子らもいったんお兄さんにまかしときな、その年であれもこれも背負いすぎなんだよ」
その言葉にどこかハッとするような顔を二人。
「お互い大事だと思ってんなら、口に出さなきゃ伝わんないぞ」
そしてスイはそう言い残すとアリス達を連れて席を離れてゆく。
「それは……」「分かっているけど……」
残された二人は再び言い淀む。そこへ、
「そんな今のお二人におすすめのカクテルをお持ちました。もちろん未成年ですからノンアルコールですが」
グラファイルがそっと二人の前に飲み物を置いてゆく。甘いザクロジュースに、ほんのりと渋い濃い目のオレンジジュース、それにソーダ水を混ぜて作ったそれは、
「グラファイル特製、アメールピコンハイボール風ジュースカクテルです」
「アメールビコン?」
「ジュースカクテル?」
この歳ではカクテルもあまり詳しくないだろう。聞きなれない言葉にキョトンとする二人。
「アメールピコンハイボールのカクテル言葉は、分かり合えたら。これで乾杯して、渋かった過去を飲み込んじゃいましょう」
ジュースで分かり合えるほどの過去じゃなくても、その切っ掛けになれば嬉しい。そう思いを込めてグラファイルは言葉を紡ぐ。
自身の想いを伝えたグラファイルはそのまま席を外す。今度は二人が互いに想いを伝える番だ。
成功
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数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】
はぁー……
ギクシャクしてるのもなんだかなぁ。
仕方ねぇ、自分の身の上話なんてガラじゃないけど、
ちょいと言い聞かせてやらないといけないかな。
ちょいといいかい?と『コミュ力』交えて二人の間に割って入り、
「伝えたい事を伝えない事」の悲しさを教えるよ。
友と思っていた奴の心の内を知らないままソイツが居なくなって残された側の心の辛さを、アタシ自身の経験からしみじみと語って聞かせる。
……自分の心の傷口を抉るのもなかなか気分の良いもんじゃないけれどね。
ま、だからこそさ。
今こうして居られる時に、お互い溜め込んだ思いを吐き出しときな。
その方がこれから出てくるデザートも美味しく食えるだろ?
波狼・拓哉
めでたしめでたしで終われば良かったんですけどねぇ
ラビリンスもアースもどっちもどっちですねぇ…
珈琲でも頂きつつ、周囲をよく観察して彼らの状況を見極めましょう
と言ってもどう見てもあの二人よなぁ
何か言って今のギリギリの関係性が壊れてしまうのを恐れているんですかね
それじゃお節介しに行きますか
心配するような事はないのですのけど...まあ、おまじないの1つでも
化け転がしなと
とりあえずこれで希望さえあれば失敗はしませんよ
...え?話し合いのクリティカルって?さあ?
2人共ユーベルコードを知ってますからそう言っとけば安心もできるでしょ、嘘でもないですし
...というか失敗しようないでしょあれ
アドリブ絡み歓迎)
●サイ後の一押し
「めでたしめでたしで終われば良かったんですけどねぇ。ラビリンスもアースもどっちもどっちですねぇ……」
手に持ったコーヒーを燻らせながら、店内の様子を眺めているのは波狼・拓哉(ミミクリーサモナー・f04253)だ。
「と言ってもどう見てもあの二人よなぁ」
保護されたアリス達はしばらくはUDC組織の施設で厄介になるだろう。炎を操る猟兵の妙技に魅入っている様子を見ていれば、当面の心配はなさそうなのは見てとれる。
一方で、問題となるのは一美と蓮華だ。邪教集団を率いる邪神を倒す為には、どちらかの協力が必要だ。今の精神状態では実力以上に足を引っ張りかねない。いや、自分の過去の過ちを取り返そうとスタンドプレーに走った場合は目も当てられないだろう。
「何か言って今のギリギリの関係性が壊れてしまうのを恐れているんですかね」
二人の境遇は過去の事件から把握している。互いが互いの事を自分の過失として悔いている。客観的に見れば、話し合いに漕ぎ出しさえできれば、うまくいくだろうことも。
「それじゃお節介しに行きますか」
そう呟いた彼の手にはサイコロが握られていた。
「はぁー……ギクシャクしてるのもなんだかなぁ」
黙りこくっている一美の蓮華の様子を心配していたもう一人の猟兵、数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)はため息をつく。
「仕方ねぇ、自分の身の上話なんてガラじゃないけど、ちょいと言い聞かせてやらないといけないかな」
そう呟くと一美と蓮華の元へと向かってゆく。
「……」「……」
「ちょいといいかい?」
二人に割って入るような形で席に着く多喜。
「どーもあんた達を見てると他人とは思えなくてね。ちょっと昔話を聞いてくれるかい?」
「え? ええ……」「はい……まあ、いいですけど」
戸惑いながらも耳を傾ける二人に多喜は語り出す。己の過去を。
失踪した友人を追っていた事、そしてオブリビオンと化していた友人を『送った』事。そして、友が何故オブリビオンになったのか、その真相も胸の内も未だに分からないという事。
そして更に多喜が語るのは、友と思っていた奴の心の内を知らないままソイツが居なくなって残された側の心の辛さ。
(……自分の心の傷口を抉るのもなかなか気分の良いもんじゃないけれどね)
そう心の中で思うも、その分効果はあったようで、話を聞いていた二人の表情は深刻そのものだ。
「ま、だからこそさ。今こうして居られる時に、お互い溜め込んだ思いを吐き出しときな」
そう言って多喜は席を立つ。
それからしばらくの間、カラカラと賽の音が聞こえるほどの静寂が流れる。
だが、意を決したかのように一美と蓮華は目の前の飲み物……猟兵が用意してくれたジュースカクテルを一気に飲み干すと、同時に口を開く。
「「ごめん」」
「私、一美が私の代わりにいじめの標的になった時に何もしてあげられなかった」
「私こそ、蓮華を守るって言ったのに、結局は逃げ出した。守れなかった」
そして互いの胸の内を、伝えたかったことを吐き出す。そして、互いに悔いていることが伝わる。
「一美、怒ってないの?」
「蓮華こそ……」
そこから二人は泣いているような笑っているような表情になり、笑い声とも嗚咽とも思えるような声を上げる。
「何なのもう、人が良すぎでしょ」
「それはこっちの台詞だよぉ」
そこから二人のおしゃべりは加速するのだった。
「やあ、お疲れ様です」
席を離れた多喜にそう声をかけたのは拓哉だ。
「あんたも、だろ。何かユーベルコードを使ったか?」
多喜の視線の先には拓也が握っているモノ、
「心配するような事はないのですのけど……まあ、おまじないの1つでもと思いまして。化け転がしなと」
そう言って握っていたもの、サイコロだ。拓哉のユーベルコード
【偽正・決成賽子】は希望を与えられた対象に『クリティカルを起こす謎の力』を送る効果がある。
「とりあえずこれで希望さえあれば失敗はしませんよ。そしてあなた達が希望を与えてくれた。その結果が出たって訳ですよ」
「話し合いのクリティカルって何だよ」
「さあ? ……というか失敗しようないでしょあれ」
おどけた態度で一美と蓮華の様子を見守る拓哉。
「……だな」
多喜も楽しそうにおしゃべりする二人を見て、ほっとした表情を見せるのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
九重・灯
表に出ている人格は「わたし」です。
桐原さんと藤野さんは……微妙な雰囲気ですね。
二人の資料は少しだけ目を通したけど、何て言えば良いのか……。
(下手につついてもメンドクセエだけだぞ)
頭の中でもう一人の自分の声が響くけど、心の迷いは彼女たちの命取りになりかねない
二人の会話の切っ掛けになればと話し掛けます
「藤野さんも戦うのですか? あなたは非戦闘員として登録されていたような気がしますが」
彼、「ベルトくん」を研究する上での補助隊員でしたっけ。
桐原さんたちアリスは狙われている以上、猟兵といた方が安全なのかも知れないけど、藤野さんは違う。
「危険ですから、わたし達に任せて待機していたほうが良いと思いますよ?」
●問うは覚悟
「桐原さんと藤野さんは……微妙な雰囲気……だったみたいですけど、もう大丈夫そうですね」
互いに、気兼ねなく会話できるようになった一美と蓮華の様子を見て、九重・灯(多重人格者の探索者・f17073)はそう呟く。
二人の境遇については少しではあるが資料に目を通して確認している。
「でも……」
懸念事項はある。彼女達を本当に戦場に送り出して大丈夫なのか。
(下手につついてもメンドクセエだけだぞ)
頭の中でもう一人の自分の声が響くが、心の迷いは彼女たちの命取りになりかねない。
「これが彼女達の為になるのならば」
そう決心した灯に迷いはなかった。
「藤野さんと桐原さんですね。席、失礼しますね」
そう言って灯は蓮華と一美の顔が見える位置に席へ着く。
「申し遅れましたが、わたしは九重・灯。こことは違う支部に所属している局員であり、今回の件で応援に来た猟兵です」
手短に自己紹介をし、それに返すように自己紹介を返す二人。
「それでは、単刀直入にお窺いします。藤野さんも戦うのですか? あなたは非戦闘員として登録されていたような気がしますが」
蓮華の現在の肩書きは『UDCーP補助隊員』。友好的なUDC『UDC-P』研究の為に、単独では活動困難なUDCの補助をするのが役目であり、UDC組織に入って日も浅く学生である蓮華に出来るだけ荒事へ巻き込まないようにするための組織側からの配慮である。
「桐原さんはこの先の戦いにおいて切り札となりうる存在ですので、猟兵といた方がいいのかも知れないけど、藤野さんは違う」
蓮華がわざわざ戦いに赴く必要はないだろう。他のアリス達と一緒にUDCの施設内で待っていればいい。
「危険ですから、わたし達に任せて待機していたほうが良いと思いますよ?」
ここで引き下がってくれるのであれば、それでよし。そうでない場合は……
「私も、一美と一緒に連れて行って欲しいです」
「何故?」
蓮華の答えに追及の手を加える灯。
「確信を、持ちたいからです」
「……蓮華?」
「……続けて」
「私と一美は過去にひどい状況にいました。きっと、もしかしたらあの時2人で協力してしても事態が好転していなかったような状況に陥っていたかもしれません」
灯に向かって一気に捲し立てる蓮華。その様子に一実は驚きを隠せないようだ。
「だからこそ、今は頼れる相手がいる。一美に何かあってもちゃんと守ってもらえるって確信が欲しいんです。その為にも一緒について行きたい、それに和美を狙っている組織なら、ちゃんと大丈夫になったか見届けておきたい、っていうのもあります」
「なるほど……」
(ここいらが潮時だろ。覚悟も熱意も伝わった。自分達の弱さも高尚に捩じ込む
強)さもある。あまり自己主張の強いタイプではないって資料にはあったが、意外と頑固なタイプかもなコイツは)
(分かってる)
元々、本気で同行させないつもりではない。彼女達の気持ちを引き出すことができればそれでいい。
「分かりました。藤野さんの同行も認めます。切り札は多いことに越したことはないでしょうし。その代わり、ちゃんとこちらの指示には従ってくださいね」
「はい!」
「桐原さんもそれでいいですか?」
「えっと……」
突然話を振られて少し口籠る一美。
「蓮華、いいの?」
「ええ。それに、私も一美にもう大丈夫ってところを見てもらいたい。昔までの我慢してるだけの子じゃないってところを」
「蓮華、ほんと変わったね」
そんなやりとりを見届け、灯はこの2人を連れて行っても問題ないと判断するのだった。
成功
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第2章 集団戦
『偽りの自由を手に入れた人形』
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POW : 存在を代価に願うもの
自身が戦闘で瀕死になると【邪神と再契約をし、ボロボロになった自身】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD : 略奪をもってしても得られぬもの
技能名「【盗み攻撃】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
WIZ : 手に入れたものを捨ててでも手に入れたいもの
【自身の動く体の一部】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【邪神の加護をさらに増した形態】に変化させ、殺傷力を増す。
👑11
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●突入! 邪教のアジト
「侵入者だ!」
「急いで教祖様に伝えろ!」
邪教集団のアジトに突入する猟兵達。邪教の信者達が何やら騒ぎ立てるが、周辺の情報封鎖は既にUDC組織が行なっており、一般人の信者達もUDC組織のエージェント達が鎮圧していっている。相手が一般人だけでは問題ないが……
「あら、侵入者?」
「私達の仲間をコソコソと倒していたアリスもいるみたいね」
そう口々にしながら現れたのは人形のように整った容姿の……実際に人形なのだろう。『偽りの自由を手に入れた人形』達だ。
「アリスの子は1人だけで、他は見ない顔ね。目をつけてた子がいなくて残念」
「私はあの子の右腕が欲しかったから、いいけど。後で左腕の方はあげましょうか?」
「嫌よ。あの子の左腕、傷だらけなんですもの。それなら、新しい子達から見繕うわ」
何やらおぞましい会話を、まるでおやつに何を食べるかくらいのノリで続けてゆく人形達。
「何で今まで逃げてたのに、急にここに来たのかは分からないけれど……体を捧げに来たというのなら、丁寧にバラしてあげるわ」
「一番いい肉体はあの方に捧げるのも忘れないようにね」
そして、どこからともなく刃物を取り出して斬りかかってくるのだった。
(※集団戦です。戦場には同行したUDC組織の人達や一美や蓮華もいますが、特にプレイングで指定がなければ、一般人の鎮圧などにまわり、リプレイでの描写はありません。その為、特に彼らを守るようなプレイングがなくてもペナルティ等はありません。
もしも一美や蓮華に協力を仰ぐ場合、2人は以下の行動やユーベルコードが使えます。
一美:アリスラビリンスで入手したレイピアを使って戦います。ユーベルコードは【アリスナイトイマジネイション】と【アリスオブヴォーパルソード(8m半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、80本の【触れた個所を消し飛ばすレイピア 】で包囲攻撃する)】が使用可能です。
蓮華:UDC-P『ベルトくん』の力で変身ヒーローのような姿になって戦います。武器は刀や散弾銃などがあります。ユーベルコードは【ロータスフィニッシュ(自身の装備武器に【ベルトに装着されたUDCのメダル】を搭載し、破壊力を増加する)】と【ロータスラッシュ(【
大蓮金剛刀】で攻撃する。[大蓮金剛刀]に施された【術や特殊効果を打ち消す破魔の力】の封印を解除する毎に威力が増加するが、解除度に応じた寿命を削る)】が使用可能です(寿命云々は倒したUDCのエネルギーをグールドライバー的な力で吸収して補填可能とするので、深く考えなくていいです)。
それでは皆様のプレイングをお待ちしております)
樂文・スイ
連携、アドリブ歓迎
身体が動かせりゃ自由なのかい?
もっと大きなもんに操られてんなら人形のまんまだよなぁ
指定UCで人形たちを口説く
ヒトの肉なんか捧げるより俺と遊ばねえ?
俺さぁ、お人形さん遊びってだぁい好きなの
一番きれいな形にバラして並べてあげるから、大人しーくしててな?
【誘惑】【コミュ力】【幸運】で成功率を上げたいね
向こうが手を緩めた隙をついて攻撃してく
【部位破壊】【傷口をえぐる】【ナイフ投げ】でダメージと命中を増したい
なんか盗まれそうになったら【威圧】ですごむか【幸運】【勝負勘】で避けられりゃいいな
メインディッシュの前座ごときに負けるかっての
まだお楽しみはこれからだもんな?
●操り人形
「身体が動かせりゃ自由なのかい?」
人形達にそう言葉を投げかけたのは樂文・スイ(欺瞞と忘却・f39286)だ。
「もっと大きなもんに操られてんなら人形のまんまだよなぁ」
そう言いながら人形達へと歩み寄ってゆく姿は,今が戦闘中であることを感じさせない。
「なあ」
人形に嗤いかけるスイ。
「ヒトの肉なんか捧げるより俺と遊ばねえ? 俺さぁ、お人形さん遊びってだぁい好きなの」
この言葉こそが彼のユーベルコード【狐の嫁入り】。口説いた相手に『彼に尽くし添い遂げたいという感情を与える』ユーベルコードだ。
「ええ、お兄さん素敵だもの。その金色の瞳,ずっとそばに置いておきたいわ」
「私はその耳がいいわ」
「私は……」
ユーベルコードの効果なのか人形達がジリジリとスイへと集まってゆく。相手が人形だからなのか,ユーベルコードの相性からなのか,期待した効果とは若干違うようだが。
「おいおい,そんな熱烈なアプローチは予想外だな」
スイは口元をひくつかせながら嘆くが,嘘である。
「ぎゃあっ!?」
「なっ!? いつの間に?」
いつの間にか人形達の足にナイフが刺さっている。
「一番きれいな形にバラして並べてあげるから、大人しーくしててな?」
スイの放った暗器が人形達の意識の外から襲いかかってきたのだ。人と異なる感性を持つのがUDC故,狙った効果と違った結果とはなったが,そんなことは想定内である。
「あなたこそ大人しくしていなさいよ!」
人形の持つ刃物が凶悪に変貌する。【手に入れたものを捨ててでも手に入れたいもの】として,自身の肉体を犠牲にして殺傷力を上げる。
「その顔,私達に寄越しなさいいいいいい!!!」
「そう。いーい子だ」
傷ついた身体で跳躍し襲いかかる人形達にスイは笑みをこぼす。
「ぐああああ!!」
「どうして! こんな!」
今度はスイの【拷問器材】が人形達を束縛する。
「視野狭窄。思い通りに動いてくれる。本当に人形そのものなんだよなぁ」
人形達の執着を利用し,意識を集め,意識外から攻め立てる。まさにトリックスターの面目躍如である。
「
メインディッシュの前座ごときに負けるかっての。まだお楽しみはこれからだもんな?」
そう言い放つと共に,スイはトドメの一撃を放つのだった。
大成功
🔵🔵🔵
グリゼルダ・クラウディウス
麦門冬マスターにおまかせします。かっこいいグリゼルダ・クラウディウスをお願いします!
余は氷銀竜。永久凍土の覇王である。
余は強者との闘いを求めて、数多の世界を流離う者だ。
ゆえに、そこにオブリビオンが存在するというだけで、余が事件に介入する理由になる。
余が得意とするものは、強靭なる竜の肉体を活かした格闘戦だ。
余の闘法は、無双の剛力をもって、あらゆるものを打ち砕き、その身に纏う冷気は、たちまちのうちに万物を凍結させる。
それがたとえ、どのような戦場、どのような強敵であろうとも、堂々と正面から打ち砕く。
それこそが余の王道である。
他の猟兵との連携などに関しては自由にしても構わぬぞ。
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】
コソコソ倒してた、なぁ。
お前らもコソコソと襲ってたんだろうがよ!
そう言うのはお相子様って言うんだ、
第一こうしてアタシらにも大っぴらになった以上は、
無事で済むと思うなよ?
そう『挑発』して人形共をアタシに引き付け、
接近戦での乱戦に持ち込むよ。
『電撃』の『オーラ防御』を纏いながら『グラップル』で応戦するけど、
攻撃に関しちゃ狙うのはただ一つ、一撃必殺さ。
体内で練って整え、研ぎ澄ませたサイキックエナジーを掌中から敵の体内にぶち込む、【漢女の徹し】……
再契約の暇なんて与えるかよ、そのまま骸の海へ還ってけ!
さあ、次はどいつだい?
●似ているようで異なる二人
「コソコソ倒してた、なぁ。お前らもコソコソと襲ってたんだろうがよ!」
力で劣るアリス達に各個撃破された恨みが『偽りの自由を手に入れた人形』達にあるのだろうが,数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)にとっては知ったことではない。
「そう言うのはお相子様って言うんだ、第一こうしてアタシらにも大っぴらになった以上は、無事で済むと思うなよ?」
そう言って構えをとる多喜に人形達はそれぞれの武器を構える。
「あの方に優秀な肉体を捧げる為にも,贄になって頂戴な」
人形達は多喜へ襲い掛かろうとするが,
「っ! 何!?」
轟! と突然吹いた身を切るような凍えるような風が吹く。そして,その風が収まった時には美女が一人,そこに佇んでいた。
「余である」
堂々とした態度でその美女,グリゼルダ・クラウディウス(氷銀竜・f39138)は言い放つ。
「余は氷銀竜。永久凍土の覇王である。余は強者との闘いを求めて、数多の世界を流離う者だ」
更には人形達に向けてクイっと手招きをする。
「貴様らの都合は知らぬ。そこにオブリビオンが存在するというだけで、余がここに立つ理由となる」
「何にせよ,こちらの味方なら歓迎だ。」
毒気を抜かれた空気の中,いち早く立ち直った多喜が人形達へと殴りかかる。
「っ,獲物が増えようが同じこと!」
「あなたの身体も私達が使ってあげる!」
人形達は多喜に応戦,もしくはグリゼルダへと襲いかかる。
多喜とグリゼルダの戦闘スタイルは奇しくも似ており,双方とも格闘戦にて人形達の刃と戦っている。多喜が技によって相手の攻撃をいなすのに対し,グリゼルダは竜の肉体を生かしたパワーファイトという違いはあるが。
「おっと」
「む」
人形達の連携攻撃が二人の猟兵を掠める。
「これは!?」
「あうっ!」
だが,攻撃された二人以上に人形が苦しむ。一人は電撃で腕が焦げ,もう一人は腕半分が凍りついていた。
「言い忘れたけど気をつけな。感電注意だ」
「余の闘法は、無双の剛力をもって、あらゆるものを打ち砕き、その身に纏う冷気は、たちまちのうちに万物を凍結させる。気安く触れて無事で済むと思うな」
「ならば!」
ここで慎重になるかと思われたが,人形達は捨て身の攻撃に移る。攻撃を失敗すれば致命傷になる諸刃の剣ではあるが,彼女達には瀕死状態で発動できる奥の手がある。【存在を代価に願うもの】として邪神と再契約して戦闘力を上げるというものだ。
「本当はこの手の相手と相性が悪いみたいなんだが,わざわざ隙を作ってくれたんだ。練って、整え、ぶち込むっ!」
「余の拳に砕けぬものはない」
捨て身の特攻に多喜はサイキックエナジーを込めた掌底【漢女の徹し】を,グリゼルダは冷気をまとった拳【氷竜拳】を叩き込む。
「かはっ!」
「むぅっ!」
攻撃をまともに喰らい,吹き飛ぶ人形達。その一撃でかなりの致命傷となったが,彼女達の本番はここからである。ここからがあればの話であるが。
「ぐばあああああああ!!」
「身体が! そんな!」
多喜の攻撃を受けた人形は体からサイキックエナジーを噴き出しながら爆発し,グリゼルダの攻撃を受けた人形はその身を凍結させ,そのまま砕け散る。
「再契約の暇なんて与えるかよ、そのまま骸の海へ還ってけ!」
「余の拳に砕けぬものはない」
方法が違えど,二人のとった敵のユーベルコード対策は『再契約の暇も与えない一撃必殺』。方法は違えど,奇しくも同じ戦術であった。
「さあ、次はどいつだい?」
そう言って次に敵の動きを見定める多喜に鋭い視線。
「貴様はかなりの使い手のようだな。あちらの人形達よりもよほど歯応えがあろう」
グリゼルダだった。
「あー……そういうのは……」
「戯れだ。まだ奥に強者が控えているのだろう?」
どこからどこまでが戯れかは分からないが,氷竜は敵へと向き直る。
「どのような戦場、どのような強敵であろうとも、堂々と正面から打ち砕く。それこそが余の王道である。邪魔するならば容赦はせぬぞ」
二人の強者に立ち塞がる敵がいなくなるまで,そう時間はかからなかった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
九重・灯
表に出る人格が替わる。
切った張ったは「オレ」の出番だ。
「ハッ、バラされるのはテメエらの方なんだよ!」
背負っていた片刃の剣、アザレアを抜いて切っ先を人形どもに向けてやる。
(邪教組織の活動記録とか回収したいから、なるべく物を壊さないで)
頭の中でもう一人の自分の声が響くが、そんなモンは相手次第だろ。
UC【剣劇】。
敵が瀕死になったら増えるのなら、攻撃力重視のアザレアの一撃で瀕死といわずに息の根を止めてやる。
倒し損ねたなら、攻撃回数重視。瀕死のヤツに止め刺して、すかさず返す刀で召喚されてきたヤツに斬り掛かる
(なぎ払い10、串刺し10、怪力7)
まあ、体は温まってきたな。いい準備運動にはなったんじゃねえか?
●準備運動
「ハッ、バラされるのはテメエらの方なんだよ!」
眼鏡を外した瞬間、切った張ったは自分の出番と言わんばかりに九重・灯(多重人格者の探索者・f17073)のもう一つの人格が表に出る。
(邪教組織の活動記録とか回収したいから、なるべく物を壊さないで)
「あぁ?」
赤みを帯びた片刃の剣、斬鎧剣『アザレア』を抜く灯の頭の中で面の人格が警告する。
「そんなモンは相手次第だろ。それに、そうならねーようにすんのがアイツらの役割だろ?」
顎をしゃくった先にはUDC組織のエージェント達が邪教集団の非戦闘員の確保と資料の応酬に駆け回っているところだ。
「だから、『オレ』はオレのやりてぇようにやるだけなんだよ」
(ああもう! エージェントの人は巻き込まないでよ)
「向こうが気をつけりゃいいだろうが!」
灯はそこで会話を切り、『偽りの自由を手に入れた人形』達へと駆け出す。
「何をごちゃごちゃ言っていたのか知らないけど、あなたも私達のから」
人形の一人のが言葉を言い終わる前に頭をかち割られる。
「お人形はお喋りするよりブンドドしてる方が性に合ってるんだよ『オレ』は」
ユーベルコード
【剣劇】で瞬間的に間合いを詰めた灯の斬撃に対応できなかった人形達は【存在を代価に願うもの】でジャシント再契約をする暇なく屠られてゆく。何とか致命傷を逃れた個体もいたが、
「邪神様、どうか私の身体を」
「させるかっての」
倒し損ねた人形を手数重視に切り替えた『アザレア』の斬撃によってトドメを刺し、
「っと、間に合わなかったみてーだが、関係ねえか」
返す刀で契約によって再召喚された人形を斬り刻む。
「まあ、体は温まってきたな。いい準備運動にはなったんじゃねえか?」
とん、と『アザレア』を肩の上に置き一息つく灯。そして本当に倒すべき敵がいるであろう方向をじっと見据えるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
レパイア・グラスボトル
1章の時点では食い放題と勘違いしてアリス達を無視して家族総出で食べまくっていた
そもそも本能に忠実な黙示録世界の住人に年頃の少女の機微など分かろうはずも無し
身から出た錆は自分で綺麗にしてくれよ?
戦闘はアリス達に全任せ
家族は一般人。自身も非戦闘型フラスコチャイルド
アリス達の戦闘補佐に徹する
医療特化型の矜持と本能と仕様に乗っ取り一美と蓮華を治療・強化する
どの様な状態になろうとも決して死なせない
ワタシの前で死ねると思うなよ。
バラバラになってもキチンと綺麗に治してやるから安心しな。
そっちの人形共もワタシらの世界に来てりゃあ肉の体くらい造れたかもしれないのにな。残念だったな。
うちの家族共はアンタらより弱いと言っても小娘共の相手をする事を薦めるぞ。
コイツらは人形《フラスコチャイルド》相手でもお構いなしの前科持ちだからな。ソースはワタシだ。
その発言に家族は抗議する。
変態はレパイアの娘(13歳)の父親(故人)を含めたごく一部だと
勝利と平和を引き換えに自由を手に入れたアリスと人でなし達は笑う
●治せるものは
時間は邪教組織突入前に遡る。
「そこのアリスのお嬢ちゃん、ちょいと診せてもらえないかねえ」
一美と蓮華にそう声をかけたのはフラスコチャイルドの闇医者、レパイア・グラスボトル(勝利期限切れアリス・f25718)だ。
「身から出た錆は自分で綺麗にする。そういうものじゃないかい?」
「それってどういう……」
訝しむ一美に対し、レパイアはカラリと咲う。
「自分の手で問題解決する手助けをしてやろうと思ってねえ。いいものをたらふく食わせてもらったからね」
曰く、アリス達との食事会の時に食べ放題と勘違いして家族も召喚して食べまくっており、お土産も包んでもらったとのこと。
余談ではあるが、大食いの猟兵が来ることを想定していたらしく、UDC組織も店内の食材が尽きるほどの食事を提供しても今回の予算内で収まる店をチョイスしていたらしい。
「今の状況になっているのには自分達にもどこか原因がある。そこに負い目を感じているところがあるんじゃないのかい?」
「う……」
ズケズケと言い辛いことを引き摺り出すレパイア。
黙示録世界では相手の事情がどうであろうと側にいる者同士が助け合わなければ死ぬ。相手の心の機微を慮っている暇などない世界の住人であるレパイアにはそうした配慮はない。
「そこのアリスは左腕の傷が神経の方まで入っちまっているから食事の時、少しぎこちなかった。利き腕でなくても戦闘に多少は影響が出るんじゃないのか?」
「そんなところまで!」
闇医者の目はそうしたところを見逃さなかった。そして、彼女の強化できる伸び代も。
「その神経の怪我、治してやろうか。何なら、利き腕と同じ位にまで動くようにしてやろう」
「本当ですか!?」
「ああ。ちょっと痛いのと、利き腕ぐらいに動くのは一時的だがね」
こうして一美はレパイアの【ギタギタ血まみれ外科手術】を受けるのだった。
「ああ、ついでにそこのお嬢ちゃんも。グールドライバーの体の構造を知っておけば、今後色々役立つかもしれないからね」
「え?」
「ワタシの前で死ねると思うなよ。バラバラになってもキチンと綺麗に治してやるから安心しな」
「はい!」
「一美、援護は任せて。変身!」
こうして邪教組織のアジトに突入した際、一美と蓮華も『偽りの自由を手に入れた人形』相手に戦闘を開始することとなった。
蓮華が散弾銃で相手の動きを牽制している間に一美が二刀のレイピアで斬り伏せて行く。
「その腕、私に寄越しなさい」
人形達が【手に入れたものを捨ててでも手に入れたいもの】で殺傷力を強化した武器で切り付けようとするが、
「その程度、今の私には効かない!」
攻撃はことごとく【アリスナイト・イマジネイション】で一美に装着された戦闘鎧に阻まれる。性能に疑念を感じれば大幅に弱体化するが、レパイアの強化もあってか、一美が疑念を抱く隙は一分もない。
「そっちの人形共もワタシらの世界に来てりゃあ肉の体くらい造れたかもしれないのにな。残念だったな」
そう独りごちるレパイア。そして人形達に忠告する。
「うちの家族共はアンタらより弱いと言っても小娘共の相手をする事を薦めるぞ」
その家族達は邪教集団の金品を略奪もとい押収するのに夢中な状態である。後でUDC組織に有益なものがあれば売り叩くつもりだろう。
「コイツらは
人形相手でもお構いなしの前科持ちだからな。ソースはワタシだ」
「何言ってんだカーチャンよお! 変態はアイツの親父を含めたごく一部だぜ!」
「それに人形って言ってもあっちのマネキンの出来損ないとフラスコチャイルドとじゃあ、抱き心地も違うぜ!」
「おいおい、お前マネキンを試したことあるのかよ?」
「知らなかったか? ギャハハハハ!」
ドッと笑うレパイアの家族達。
「何なのあの人達。どっちが悪者か分からないじゃない」
その様子に一美は呆れるのだが、
「確かにそうだよね。まあ、悪い事をしているのを見つけたら、その時は容赦なく取り締まればいいんじゃないかな」
「蓮華、本当にたくましくなったよね。UDC組織ってところのおかげなの?」
「そう、なのかな? 一美も来てみる? 」
「うん。考えとく」
だいぶ昔よりも強くなった親友に対して、今はそれどころじゃないんだけど、とも思いつつ一美は笑うしかなかった。
成功
🔵🔵🔴
第3章 ボス戦
『ジャシンドライバー・死神騎兵形態』
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POW : ファントム・スラッシュ
【マシン・ザルバルカー】を操縦中、自身と[マシン・ザルバルカー]は地形からの激突ダメージを受けず、攻撃時に敵のあらゆる防護を無視する。
SPD : 冥兵招聘
レベル×1体の【量産型死神騎兵と化した死霊】を召喚する。[量産型死神騎兵と化した死霊]は【生前の特性に相応しい特殊能力と冥】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。
WIZ : スラッシュエンド・レクイエム
【マシン・ザルバルカーによる空中機動】で敵の間合いに踏み込み、【大鎌による斬撃波】を放ちながら4回攻撃する。全て命中すると敵は死ぬ。
👑11
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●邪神『死神騎兵』
邪教集団の教徒達や活動の証拠は抑えられ、UDCの人形達も全て倒された。だが、彼らが祀っていた邪神そのものを倒さなければ、似たような組織がまた現れるだろう。
アジトの奥、集会などに使われていたであろう広い場所に、『それ』は佇んでいた。何かの骨を思わせるような白い鎧に包まれた邪神の姿。
「よもやあの人形達を退けるとはな。アリスだけではなく、猟兵も来ていたか」
ふぅ、とため息をつくそぶりを見せる邪神。
「まあ良い。あのような人形達はいくらでも呼び出せる」
そう言って手にしている大鎌の柄で床を軽く叩けば、先ほど倒した人形達が手に邪神と同じ大鎌を持ち、出現する。それと共に、邪神の横には深海魚をモチーフにしたような禍々しいデザインのバイクが出現する。
「さあ、我を倒しに来たのであろう。ならば、かかってくるがいい。我が気に入った者には我の依代となれる栄誉をやろう」
そう言ってバイクに跨った邪神『ジャシンドライバー・死神騎兵形態』は悠然と宣戦布告する。
「情報によれば、あの邪神はバイクに乗っている限り加護による防御力で倒すことは困難。私か一美がその加護を打ち消せれば、有効打を与えられるようになるはずです。皆さん、協力お願いします。……行くよ、ベルトくん」
蓮華は猟兵達にそう言うと、腰に装着したベルトにメダルをはめ込み、特撮ヒーローのような戦闘服姿に変身する。
「アリスラビリンスだけでなく、私達の世界でも貴方達は助けに来てくれた。私だけじゃきっとできないことだらけだった。でも、今は蓮華がいて、貴方達がいる。私にできる限りのことはするので、また、助けてもらってもいいですか?」
一美もレイピアを構え、【アリスナイト・イマジネイション】で戦闘鎧を装着する。
猟兵達よ、彼女達と共に傲慢な邪神を討ち倒せ!
(※断章の演出でボスが配下を召喚しましたが、SPDのユーベルコードを使用していない限りは配下に対抗する必要はありません。リプレイに登場していない猟兵や一美や蓮華の手の相手いる方が相手をしてくれていると思ってください。
この章のプレイングボーナスとして『一美か蓮華と協力してボスの加護を打ち消す』があります。どちらか片方だけの協力で問題ありません。
一美は『あらゆるものを消し飛ばすレイピアを加護の根源であるバイクに当てること』で、蓮華は『刀に封印されている『特殊効果を打ち消す破魔の力』を行使する』ことでボスの加護を打ち消せます。もう少し詳しい使い方は2章断章にも載っています。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております)
樂文・スイ
とうとうラスボスのおでましだねぇ
色々手間かけさせてくれたぶんのお返しだ
お前みたいな趣味悪いヤツの傀儡になるなんてごめんだね
まずはあのだせぇバイクをなんとかしねえと
騎乗して攻撃してきたとこにUCででかい炎を出して目眩まし
ダメージは入らんでも、視界が遮られりゃ無暗につっこめねえだろ?
一美ちゃん蓮華ちゃんは炎で相手が怯んだとこに攻撃叩き込んでくれ
俺が標的になるように【威圧】でイラッとさせて挑発しつつ【闇に紛れる】【勝負勘】で回避しよう
死霊の召喚がありゃそっちも炎で攻撃を
加護がなくなりゃこっちのもんだ、本気出して燃やし尽くすぜ
さんざ楽しんできたんだろ、色んなもんを弄んだ代償は払ってもらわなきゃな?
九重・灯
表に出ている人格は「オレ」だ。
依り代だあ? 木っ端の邪教組織に祭られてる程度のヤツがエラそうにいいやがる。
とは言え、守りの加護ってのがメンドウだ。
(ここは彼女に任せましょう)
頭の生でもう一人の自分の声が響く。
藤野・蓮華を援護する。
「アンタの覚悟は聞いた。見せ場は譲ってやるよ」
UC【影の森】。生命力を代償にして会場の床に影を広げる。
影から無数の黒刃を突き上げて取り巻きの人形どもを串刺しにしてやる。
(串刺し10、貫通攻撃5、範囲攻撃5)
邪神に有効打は与えられないが、蔦のように伸ばした黒縄を相手に絡め、バイクのタイヤに巻き込ませて動きを封じる
(捕縛5、体勢を崩す5)
「いけ! ブチかましてやれ!!」
●蓮華を彩るは影と炎の共演と
「とうとうラスボスのおでましだねぇ」
飄々とした様子で喋るのは樂文・スイ(欺瞞と忘却・f39286)である。
「お前みたいな趣味悪いヤツの傀儡になるなんてごめんだね」
「依り代だあ? 木っ端の邪教組織に祭られてる程度のヤツがエラそうにいいやがる」
そしてスイの言葉にもう一つの人格のままの九重・灯(多重人格者の探索者・f17073)が続く。
「とは言え、守りの加護ってのがメンドウだ」
「まずはあのだせぇバイクをなんとかしねえと」
そして邪神の乗るバイクの加護が厄介なものであるという認識は二人とも共通している。だからこそ、
(ここは彼女に任せましょう)
灯の頭の中でもう一人の自分の声が響く。
「藤野・蓮華」
灯は蓮華に語りかける。
「アンタの覚悟は聞いた。見せ場は譲ってやるよ」
「一美ちゃん蓮華ちゃんはこちらので相手が怯んだとこに攻撃叩き込んでくれ」
灯と、それに続くスイの言葉に二人は静かに頷く。
「さて、色々手間かけさせてくれたぶんのお返しだ。火の気無く、人気無く。畏み畏み参り申す」
スイの
【燐火】が取り巻きの人形ともども邪神を焼き払おうとする。
「加護でダメージは入らんでも、視界が遮られりゃ無暗につっこめねえだろ?」
「抜かせ!」
スイの言葉と裏腹に邪神は燃え盛る人形達を引き連れ、炎を突っ切ってくる。加護による防御の自信からか、ユーベルコードの相性的に対した影響がないと思ってか、そのまま【スラッシュエンド・レクイエム】の斬撃を繰り出そうとする。
「こう言っておけば、そう来るとは思ったねぇ」
スイもこの程度では目眩し程度にしかならないと自覚はしていた。だからこそ、すでに仲間と回避行動には入っており、邪神の斬撃は空を斬る。そして、反撃の準備もすでに済んでいる。
「影よ、我が力を喰らえ。くびきから外れ、地を黒く覆い尽くせ」
寄生型呪具『カゲツムギ』を床に突き立てた灯はユーベルコード【影の森】を発動させる。『カゲツムギ』を中心に影が広がり、床から這い出し、無数の刃となって人形達に突き刺さる。
「いけ! ブチかましてやれ!!」
更には『カゲツムギ』を黒縄形態にしてバイクに絡めて動きを抑えた灯が蓮華に呼びかける。
「はい! 行くよ、ベルトくん!」
蓮華は手にした刀に破魔の力を込め、【ロータスラッシュ】の一撃をバイクに叩きつける。
「むぅ、力が!」
バイクからの守りの加護が弱まるのを感じ、邪神から焦りの声が聞こえる。
「加護がなくなりゃこっちのもんだ、本気出して燃やし尽くすぜ」
スイが【燐火】を収束して解き放つ。
「ぐあああああああああ!!!」
「さんざ楽しんできたんだろ、色んなもんを弄んだ代償は払ってもらわなきゃな?」
ダメージの入った手応えにニヤリとしつつもスイは邪神にそう語りかけるのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
レパイア・グラスボトル
彷徨えるアリス達でも対抗できたので調子に乗って敵に吶喊する
相手は良さそうなバイクを略奪しない道理は無かった
レパイアを含め敵の間合いに踏み込み衝撃波で吹き飛ぶ
吹っ飛びつつも重傷者を治す
無理と判断、敵前逃亡開始
逃走方向から砂塵が漂い始める
そして雑魚の様に吹き飛ばされる
狂ったお茶会の乱痴気騒ぎはこれで終わり
勝利期限の切れたアリスの下にジャバウォックがやってくる
なんで異世界にまでお前が来るんだよ!
加護により不利な黙示録救世主をフォローするため、家族を彷徨えるアリスの盾にして吶喊
レパイアはその肉の盾へ情も倫理も無い修復《Repair》作業に徹する
アンタらをあそこに送り届けりゃ勝ちなんだろ?
アレ絡歓迎
●腐れ縁なアイツ
「お前達、あの良さそうなバイクを奪い取ってやるよ!」
「ヒャッハー!」
邪神との戦闘という緊迫した状況の中、レパイア・グラスボトル(勝利期限切れアリス・f25718)が、家族であるレイダー達と突撃する。蓮華や一美が人形達と戦えていた事に気が大きくなって、調子に乗っての突撃である。
「くだらぬ」
邪神は自身のバイク『マシン・ザルバルカー』にエンジンを入れ、レパイア達に向かって走り抜け、【ファントム・スラッシュ】による衝撃波を叩き込む。
「ぎゃあ〜」
「ほげぇ〜」
その攻撃になすすべもなく吹き飛ぶレパイアとレイダー達。そこで彼女達は認識する。あ、これは無理だと。
レパイアの補助で一美達は人形ともなんとか渡り合えていた。だが、今の敵はそれを上回る邪神。一般人のレイダーと非戦闘員ノレパイアでは手に余る相手だったのだ。
「お前達、撤退だよ!」
衝撃波で重傷を負った家族をテキパキと治療しつつレパイアは命令する。判断してしまえば行動は早い。逃げ足だって
世紀末世界で鍛えられたのだから。だが、
「ん? 砂埃ぃ……あべし!」
「ゲ、ゲェー! これは!」
先人を切って逃げ出していた家族が雑魚のように吹き飛ばされ、逃走方向から砂塵が舞い始める。
「げ!? アイツはまさか……なんでこっちにいるんだよ!」
勝利期限の切れたアリスの下にジャバウォックがやってくる。現れたのは、精悍な身体つきをした青年。悪を挫き、弱者を救う神話級の拳法を操る世紀末救世主であった。
「貴様らが俺達の世界に厄介な物を持ち込んだりはしないか、それらの監視を兼ねて、だ」
「ああーっ!!」
そう言って世紀末救世主は吹き飛ばしたレイダーから荷物を漁り、その中から装飾品を引き摺り出して握り潰す。どうやら、先ほどレパイアの家族達が略奪していた金品の中に、UDC絡みの危険なものも混ざっているらしい。
「わわわ分かっているよ! ここの世界の物品はここで全部換金する! 危険なものは持ち込まない! それでいいだろう? 悪いやつから奪ったものだ。見逃してくれてもいいだろ?」
世紀末救世主に縋り付くように懇願するレパイア。
「いいだろう。問題ないか元々監視させてもらうつもりだ」
大成功
🔵🔵🔵
コキコキと体を鳴らしつつ。邪神の元へと歩み寄ってゆく【レジェンド・オブ・アポカリプス・ヒーロー】。
「茶番は終わったか? そこの男も我が依代にふさわしいようだ。抵抗しなければ、傷つけずに有効に……」
「ホワタァ!」
偉そうな態度をとる邪神に飛び蹴りを仕掛ける世紀末救世主。
「アタタタタタタタタタタ!」
「効かぬわ!」
そこから拳の連打を浴びせるが、邪神は大鎌の一撃を食らわせて世紀末救世主を吹き飛ばす。雑魚レイダーを原形が無くなるまで潰せる威力のある攻撃を受けても邪神はまだピンピンしているこれがバイクの加護というものか。
「ぬぅ!」
パックリと腕から血を噴き出す世紀末救世主。
「アイツでも一筋縄ではいかないか。お前達、今のうちにアイツに恩をたんまり売っとくよ!」
「おう!」
「まかせろぉ!」
「ヒャッハー!」
「おい、お嬢ちゃん」
家族に命令を出したレパイアが一美に声をかける。
「アンタらをあそこに送り届けりゃ勝ちなんだろ?」
「……ええ。やってみます」
レパイアの問いかけに一美は頷く。
「お前達、この嬢ちゃんの肉壁になりな! 修復はいくらでもしてやる!」
「ヒャッハー!」
レパイアの号令で吶喊してゆくレイダー達。
「鬱陶しいカトンボどもが!」
「ぎゃああ!!」
再びレイダー達を吹き飛ばす邪神。だが、吹き飛ばした先で待ち構えていたのは、【アリスオブヴォーパルソード】で必殺の威力を持ったレイピアを空中に無数展開させた一美だ。
「いっけぇ!」
一美の号令で複雑な軌道を描き邪神へと飛んでゆくレイピア。
「これは! ぐううう!」
振り払おうとした大鎌が消し飛ばされたことで咄嗟に回避行動に入る邪神。しかし、その卓越した身体能力でもレイピアをかわし切ることはできず、鎧の一部、そして乗っているバイクのボディを削り取られる。
「おのれ! よくも私の乗機にここまでの傷を……」
「念仏は済んだか」
一美に怒りを向ける邪神。だが、そのそばまでいつの間にか世紀末救世主が近づいていた。
「オワタァ!」
「グオオッ!!」
容赦ない拳を浴びせられ、バイクごと吹き飛ぶ邪神。
「どうやら先程より攻撃は通るようだな」
「何を……ぐふっ」
世紀末救世主の言葉とともに全身から血を噴き出す邪神。どうやらバイクの加護による防御はだいぶ削れたようだ。もう少しで邪神の命にまで手が届く。
「なあ、ここまで手伝ってやったんだ。ちょっとぐらいワタシらのことを多めにみてくれてもいいよなあ?」
「それはそれ、これはこれだ」
「そんなぁ」
家族の『修復』を終えたレパイアが世紀末救世主に擦り寄ってみるのだが、にべもない返事にちょっとガッカリするのだった。
数宮・多喜
【アドリブ改変大歓迎】
……まったく、同じライダーとして悲しくなってくるね。
その所業、目一杯ぶち壊してやらぁ。
蓮華さん、力を貸しとくれ。
アタシとアンタ、そしてカブ。
2人と一台で、一美さんをこれ以上困らせないようけりをつけようぜ!
さあ、後ろに乗りな!
2人が『騎乗』した宇宙カブを『操縦』し、奴のマシンと並んでデッドヒートしつつ『衝撃波』や『電撃』で攻撃するよ。
ただ、これは牽制。蓮華さんの刀の力を至近距離でぶち当ててもらうためのブラフ!
その破魔の力が効果を発揮したなら、勝利のゴールまでのルートは明白だろうさ。
体勢を崩したマシン・ザルバルカーへ対して、二人乗りの【サイキック・ブレイカー】で突っ込むよ!
●神に打ち克つのは、いつだって……
「我が、ここまで追い詰められるとは……」
「……まったく、同じライダーとして悲しくなってくるね」
破魔を力を浴びせられ、加護の根源であるバイクも削られてダメージが大分蓄積している邪神に、数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)は呆れた様子で感想を口にする。彼女は邪神と相対するにあたり自身の乗機である宇宙カブ『JD-1725』に乗り、既に臨戦体制である。
目の前の相手にはもはや威厳などはなく、加護の守りも、後少しで全て剥ぎ取れるだろう。
「その所業、目一杯ぶち壊してやらぁ。蓮華さん、力を貸しとくれ」
「はい!」
多喜の呼びかけに蓮華が元気よく応える。
「アタシとアンタ、そしてカブ。2人と一台で、一美さんをこれ以上困らせないようけりをつけようぜ! さあ、後ろに乗りな!」
「そんなバイクで我の『マシン・ザルバルカー』に挑むというのか。ふざけるのも大概にするがいい!」
蓮華をカブの後部座席に乗せる多喜に対して邪神が吠える。
「ほう。このカブをふざけてる、だって? アタシの相棒に舐めた口を開いて無事だった奴なんていないよ」
言うが早いかエンジンを噴かし走り出す多喜。
「抜かせ!」
邪神もそれを追うように走り出す。
「そうだ、ついて来い! ついて来れるならな!」
大鎌を振り上げ追ってくる邪神を多喜は卓越した操縦技術でひらりとかわす。
「マシンの性能頼りの雑な運転じゃアタシにゃ届かないよ」
「おのれ!」
邪神の攻撃を回避し続ける多喜。邪神の操縦技術も悪いわけではないのはあるが、多喜相手では部が悪い。
「さあ、これでも食らいな!」
多喜は己のサイキックで衝撃波や電撃を飛ばす。
「ユーベルコードの乗らぬ、その程度の攻撃で我を止められると思うな!」
だいぶ削れらたと言っても加護の力は残っている。加護による防御頼りに多喜の攻撃を【ファントム・スラッシュ】を仕掛けながら突っ切る邪神。
「能力頼りのパワープレイ。アンタも学ばないな。蓮華さん、今だ!」
「せいやぁ!」
相手の動きを読み、巧みに攻撃を避けつつ蓮華のいる後部座席を敵へと寄せる多喜。そして、蓮華の【ロータスラッシュ】による一撃が邪神のバイクへと当たり、その加護の力を完全に打ち砕く。
「おのれ! おのれえええええ!!」
バイクからの加護の力が消え去り、激昂する邪神。勿論、その隙を見逃す多喜ではない。
「勝利のゴールまでのルートは見えた…! 食らいなっ、【サイキック・ブレイカー!】」
サイキックエナジーを放出し、邪神を拘束する多喜。
「これでトドメだ! 行くよ、蓮華さん」
「はい! ベルトくんも一緒にやるよ!」
多喜の言葉に応え、ベルトからメダルを取り出し散弾銃へと搭載する蓮華。そしてそのまま二人を乗せた宇宙カブが邪神へと突進する。
「我が、このようなことで! 人間如きに!」
散弾銃を撃たれた後、宇宙バイクの突撃を食らった邪神は爆発四散する。
「人間を舐めすぎなんだよアンタは」
爆炎を背に、多喜はそう言葉を漏らすのだった。
大成功
🔵🔵🔵
●これからの二人
邪神が倒された後の展開早かった。既に人間の教団員も確保され、活動記録などの証拠品も抑えられていたので、邪教集団はそのまま消滅することになった。一美が率いていた『
彷徨えるアリス』のメンバーも狙われることはないだろう。
付け狙う敵がいなくなった、そしてUDC組織というこの世界でも有力な組織に保護されたということで、『彷徨えるアリス』は解散することとなった。帰るべき場所がある者は帰るべき場所へ、家庭の事情などで帰るところがない者はそのままUDC組織に保護されることとなった。
そして、『彷徨えるアリス』のリーダーだった一美はというと……、
「一美もUDCに入ってくれるの?」
「ええ」
親友である蓮華の言葉に一美は頷く。一美がアリスラビリンスへ行くほどの心の傷を負ったのは学校でのいじめが原因だ。そしてその問題も過去に蓮華が関わった事件で解決している。
UDCの保護を必要としていない一美が自ら自分と同じ組織に入りたいと知って、蓮華は素直に嬉しかった。
「迷惑じゃなかったらだけど……」
「そんなことないって、歓迎するよ。一美は昔から正義感強かったし、合ってるんじゃないかなって思うよ」
「うん。その事なんだけど……」
明るく歓迎する蓮華に対して、一美の表情が少し陰る。
「昔の私は正義感が強いっていうよりはどこか独善的なところがあったと思うんだ。自分の正義を周りに押し付けていた。だから、私が蓮華を助けようとした時も周りは手を貸してくれなかった。きっと、クラスからうっすら嫌われていたんだと思うよ私」
「一美?」
そこまで話した後、一美はフーーッと息を吐き顔を上げる。
「だからこそ、自分を変えたい」
そう言って蓮華をまっすぐに見つめる。
「自分の押し付けの正義じゃなくてちゃんと正しいことができるようになりたい。その『正しさ』を学べるのは学校とかじゃなくてこういうところだと思うの。だから、自分勝手なのは分かってはいるんだけど」
「一美」
とめどなく話し続ける一美の手を蓮華が握る。
「一美もきっと新しい自分に『変身』したいんだね。分かるよ、その気持ち。だからこそ歓迎するよ。私も一美の『変身』を応援するよ」
「蓮華……」
それから数日後、UDCの施設内で組織の一員として訓練を行う一美と、そんな彼女の支える蓮華の姿があった。住んでいる世界さえバラバラになった二人の少女はこうして再び一緒になることができたのだった。
この先の二人がどうなるのか。それが語られるのは、また別のお話である。