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租界を泳ぐ

#封神武侠界 #戦後 #租界 #九龍城砦

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 薄暗いはずの九龍城砦に、ひとつ、ふたつと明かりが灯る。
 今日はちょっとしたお祭りだから、小さく光を灯していこう。
 まずはガラクタで組んだ椅子や机を置いて、その周囲にはいくつもの屋台を広げていって。
 更に周りに置かれるのは――何匹もの金魚を入れた、水槽だ。

 水槽の中で、金魚達はゆらゆらゆれる。
 赤、白、黒、金。
 小さな明かりで鱗を煌めかせつつ、ゆらゆらゆらり。
 気が付くと見物客達も集まって、水槽の周りでは金魚の鑑賞会が始まったようだ。
 人々は食事や酒を片手に、金魚達をのんびりと楽しんでいる。
 ゆらゆら、ゆらゆら。
 次第に世界全体が夢心地に変わっていって――金魚もぷかりと空を舞う。

 誰かが言った。あれは仙女様が育てた金魚なんだって。
 だから羽衣の代わりに、鰭で空を舞い踊るんだ。
 それが嘘か本当かは分からない。そんなこと、ここではきっと些細なことだろうから。

 ゆらゆら、ゆらり。
 舞い踊る金魚と、笑う人々。
 その後ろで誰かが何かを企んでいても、きっと誰にも気付かれない。


「集合に感謝する。今回は封神武侠界、九龍城砦で起こる事件の解決を頼みたい」
 集まった猟兵達を確認しつつ、口を開くのは呉・深(星星之火・f30169)だ。
 彼の語った『九龍城砦』は封神武侠界の香港租界に存在する地域で、人も仙人もオブリビオンも暮らす不安定な場所だ。一帯を支配していたコンキスタドール『編笠』は倒れたが、彼女亡き後も事件には事欠かない場所だろう。
「どうやら九龍城砦で行われる祭りに乗じて、虐殺を企てているオブリビオンがいるようでな。そいつを誘き寄せるため、まずは祭りに参加して欲しい」
 話を続けつつ、深はグリモアで九龍城砦の様子を映し出す。
 どこか薄暗く、様々な建物が入り組んだ高層建築はいつ見ても圧巻で。暮らす人々はどこか退廃的な雰囲気を纏い、街の様相も相変わらず混沌としている。
 けれど映し出された光景には、更に不可思議なものも映り込んでいた。

 まず目に付くのは、並べられた沢山の水槽達。
 その中には赤や金、白色などの鮮やかな色を纏う金魚達が泳いでいた。
 更に数匹の金魚は水槽を飛び出して、ふわふわと空中を舞い踊っている。
 人々はその様子を眺めながら食事を取ったり、金魚に餌をやったりして楽しんでいるようだ。
「……これは『桃源郷で育てられた』という名目の金魚を楽しむ祭りだそうだ。実際空を泳ぐ金魚なんか、仙人でなければ育てられなさそうだが……」
 本当に仙人が育てた金魚を披露しているのか。それともどこかの盗人が桃源郷から持ち出して来たのか。
 実際の真偽は不明だし、九龍城砦でそんなことに拘る者も多くはない。
 とにかく人々は多種多様な金魚を楽しみながら、祭りの時間をゆるりと過ごしているようだ。

「オブリビオンを誘き出すために、皆にはこの金魚の祭りに参加して欲しい。のんびり金魚を眺めたり、餌をやったり……店によっては金魚すくいなんかをやっているかもしれないな」
 九龍城砦の内部では、祭りに合わせて様々な出店も賑わっているようだ。
 屋台では肉包や春巻き、大餅や小籠包といったグルメが提供されており、それらを片手に金魚を楽しむことが出来るだろう。
 成人ならば酒を片手に過ごすのもきっと楽しい。
 不思議な建造物と金魚の組み合わせは、ぼんやり眺めているだけでもふわふわとした気持ちになれそうだ。

「ただし、ここは治安がとても悪い。手癖の悪い者もいるだろうし、その辺りは気をつけてくれよ」
 一言そう付け加え、深は更にグリモアを操作する。
 そこに映し出されたのは、どこか凶悪な雰囲気を纏った少女達だ。
「こいつが虐殺を企てているオブリビオン『混沌霊珠・詩歌』、宝貝あがりの邪仙の集団だ。敵味方問わず好き勝手に殺す危険な輩だ、出現したら出来るだけ速やかに討伐してくれ」
 敵を倒すなら、戦場にあった雰囲気で。
 時にどこかノワールに、時にアクロバティックに。全力で敵を打ち倒せば、金魚の祭りだって問題なく続けられるはずだろう。

「租界はまだまだ謎の多い場所だ。けれど一つ一つ事件を解決していけば、何かしらの影響は及ぼせるだろう」
 グリモアを転移のための状態に切り替えつつ、深は猟兵達の方へと顔を向ける。
「祭りは楽しみ、そして事件は止めてくれ。よろしく頼むぞ」


ささかまかまだ
 こんにちは、ささかまかまだです。
 よく分からない生き物もお祭りの華です。

●一章『優雅に泳ぐ金魚たち』
 九龍城砦にて不思議な金魚を楽しむ催しが行われています。
 水槽の中、あるいは空中を自由に動く金魚を楽しんでいって下さい。
 餌をあげたり、金魚すくいの店に行ってみるのもいいでしょう。
 また、周りには屋台も展開され、中華料理や飲み物を楽しんだりも出来ます。成人ならお酒も飲めます。
 能力値は気にせず自由に行動して下さい。

●二章『混沌霊珠・詩歌』
 祭りに乗じて虐殺を企てる邪仙の集団です。
 彼女達は目立つ相手を狙うため、猟兵だとアピールしたり目立ったりするといいでしょう。
 租界らしいアクロバティックなアクションやノワールな戦い方をするのもいい感じです。


 どの章からでも参加していただいて大丈夫ですし、特定の章だけ参加していただくのも歓迎です。
 進行状況や募集状況はマスターページに適宜記載していく予定です。
 締め切りの告知もそちらで行っているので確認していただけると幸いです。

 それでは今回もよろしくお願いします。
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第1章 日常 『優雅に泳ぐ金魚たち』

POW   :    金魚すくいに挑戦!

SPD   :    金魚に餌やり体験!

WIZ   :    泳ぐ金魚を鑑賞!

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 転移して真っ先に感知したのは、薄闇の中に灯る光か、あるいは漂う香ばしい香りか。
 猟兵達を出迎えるのは金魚の祭りの光景だ。
 人々は疎らにテーブルや椅子に身を預けつつ、周りの様子や食事を楽しんでいる。
 屋台の人々は忙しく動き回りつつ、美味しい食事を提供してくれている。
 その合間を縫うようにふわりと泳ぐのは――摩訶不思議な金魚達だ。

 水槽の中に、あるいは空中に、ふわふわ泳ぐ金魚達。
 時に彼らを眺めたり、金魚すくいに挑んでみたり。
 そんな風に戯れてみるのはどうだろうか。
 屋台で買った食べ物片手に、ゆるりと過ごすのだってまた楽しい。

 邪悪なる者が現れるまで、九龍城砦は丸ごと不思議な空間へと変わる。
 その中で、自分達も暫し泳いでみようか。
鳴上・冬季
「これは、なかなか」
空飛ぶ金魚を眺める

「店主、これの餌と育て方は。ずっと飛ぶのか、それとも寝る時のために水を張った金魚鉢は必要か」
特に丸々として鰭が華やかな空飛ぶ金魚を指差す

「あれとあれとあれが気に入りました。祭りの帰りに、是非購入して帰りたい」
同じく丸々として鰭が華やかな空飛ぶ数匹を指差す
「必要なら手付けを払いましょう…それではまた後で」
人混みの中を歩き出す

「さて。やりやすい場所はどこでしょう」
空飛ぶ金魚を目で追いつつ移動しながら式神も放ち会場の空間把握に努める


空飛ぶ金魚…師の洞に持ち込んだら、最初の宴で全て喰われてしまうでしょうが
師の目を一時でも楽しませるなら、悪くない
胸の内で考え嗤う




 少し薄暗い街の中、橙色の明かりに照らされぷかぷか泳ぐのは摩訶不思議な金魚達。
 目の前に繰り広げられる光景を見遣り、鳴上・冬季(野狐上がりの妖仙・f32734)は小さく笑みを浮かべる。
「これは、なかなか」
 空飛ぶ金魚とは、また変わったものだ。
 適当な場所に留まって、ぼんやり眺めているだけでもなかなか飽きることはないだろう。
 けれどぼんやり時間を過ごすのも勿体ない。冬季はふらりと街の中を進んでいき、面白そうなものを探していく。
 その最中すれ違う人々にも、金魚達にも緩く笑みを向けて。そうして辿り着いたのは一軒の店だった。

 どうやらこの店は、普通の金魚や空飛ぶ金魚を売っている場所らしい。
 店主らしき老人の元まで歩み寄り、冬季ははきはきと言葉を紡ぐ。
「良ければここの金魚を買いたい。だから店主、これの餌と育て方は。ずっと飛ぶのか、それとも寝る時のために水を張った金魚鉢は必要か」
 冬季が頭上を泳ぐ金魚を指差し、視線もちらりとそちらに向ける。
 そこに泳いでいたのは、丸々とした身体が愛らしく、それでいて鰭が華やかな金魚だ。
「ああ、そいつな。持ち運ぶんだったら金魚鉢はあった方がいいだろう、それから休むための柔らかい植物も。餌なんかは……」
 店主の説明を聞きつつ、冬季は店の中を観察していく。
 ぷかぷか、ぷかぷか。金魚と一口に言っても、意外と種類や見た目も多いらしい。
 説明が終わる頃を見計らい、冬季は更に言葉を紡いだ。
「あれとあれとあれが気に入りました。祭りの帰りに、是非購入して帰りたい」
 選んでいたのは、同じく丸々としていて、鰭が美しい金魚達だ。
 店主は数度頷き、持ち帰るための小さな金魚鉢の用意も進めてくれた。
「まいどあり。沢山買ってくれて嬉しいよ」
「こちらこそ。必要なら手付けを払いましょう……それではまた後で」
 さてさて、この後の戦いで店に被害を出さないようにしなくては。
 そんなことを思いつつ、冬季は店主に頭を下げつつ人混みの中へ加わっていく。

「……さて。やりやすい場所はどこでしょう」
 ぷかぷか、ぷかぷか。浮かぶ金魚の合間に見えるのは、九龍城砦の独特の風景。
 表通りですら混沌としているこの都市ならば、裏まで回ればもっと沢山の混沌がある。
 式神達にそちらを偵察させつつ、冬季は暫し適当な壁に身体を預ける。
 ――あの金魚達は師の洞にでも持ち込もう。きっと最初の宴で全て喰われてしまうだろうが、師の目を一時でも楽しませるなら、悪くない。
 この都市でこれから起こる狂乱と、帰ってからの愉しみ。
 それらを浮かべつつ、冬季はくつくつと嗤いを零す。
 そんな彼の眼前を、何も気にせず金魚達が泳いでいくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

杼糸・絡新婦
「こりゃまた壮観。」
と水槽の合間を抜けながら光景を楽しみつつ、
屋台で適当につまめるものを買い、
事件が起きるまで、
酒を傾けつつ、のんびり祭りの様子や
金魚を楽しそうに眺めています。
「舞うみたいやねえ」と
気が向けば、サイギョウを楽しそうに舞わせてます。

もし、手癖の悪いもんが財布でもねらってきたら、
知らんふりして、
【早業】で飴ちゃんと入れ替えたろ。
腹は膨れると思うで。




 ただでさえものが溢れる九龍城砦の合間で、ぼんやり明かりを灯すのは幾つもの水槽だ。
 その中では金魚達が、租界の喧騒にも気づかずぷかぷかと泳いでいる。
 そんな周囲の様子を眺めつつ、泳ぐように進むのは杼糸・絡新婦(繰るモノ・f01494)だ。
「こりゃまた壮観」
 水槽を覗き込めば見える美しい世界、視線を変えれば目に付く九龍城砦の光景。
 そのどちらも楽しくて、絡新婦は思わずくすりと微笑む。
 けれどせっかくのお祭りだ、金魚以外のものも楽しもうか。
 水槽の間を潜り抜け、辿り着いたのは屋台の並ぶ一角だ。様々な料理が目の前で作られる様も、見ているだけで面白い。
 その中の適当な店に目星をつけて、絡新婦は店員の男へと声をかける。
「そこの肉包と春巻き、あとはお酒なんか頂けるやろか?」
「まいどりあり。お客さん、金魚を見に来たのかい?」
「せやね。こういうお祭り、楽しいからねぇ」
 食事の用意をしてもらいつつ雑談を交わし、おすすめの席なんかも教えてもらって。
 出来たての軽食と冷たい酒を受け取ったなら、その場所まで歩いて行こう。
 屋外に置かれた椅子に腰掛ければ、周りの様子もよく見えた。
「わ、結構高い所も泳ぐんや……舞うみたいやねえ」
 お酒を頂く際に頭上を見上げれば、そこを金魚がふわりと飛んでいく。
 積み重なった建物のせいで空を見ることは出来ないが、それでも優雅に泳ぐ金魚はとても自由に見えた。

 ぷかぷか、ふわふわ。
 美味しい料理と酒、優雅に泳ぐ金魚、街の人々の声。
 それらをのんびり堪能すれば、次第に気分も上がってくる。
「……サイギョウ、ちょっと行こか」
 気付けば絡新婦はからくり人形・サイギョウを片手に席の周囲を動き回っていた。
 ゆらり、ゆらり。金魚の動きに合わせてサイギョウを舞い踊らせば、一緒に世界を泳いでいるようで。
 そんな絡新婦とサイギョウの様子は街の人にとっても面白いものであり、数人のギャラリーも集まってきているようだ。
 芸を楽しんで貰えるのは嬉しいこと。けれど――ここにいるのは、無邪気な客ばかりではない。
 ふと後ろに視線を感じれば、そこにいたのは顔を伏せつつ歩く青年だ。
 彼は絡新婦と軽くぶつかると、小声で謝り足早に雑踏へと駆けていく。
「……気にせんでええよ。腹は膨れると思うで」
 青年の後ろ姿に、絡新婦はゆるり微笑む。
 青年が懐の財布を狙っていたことも、それを持っていったことも分かっている。
 けれど彼の持っていった財布の中身は――舞の最中に星くず飴へと変えておいたのだ。
 ある意味租界らしい体験が出来たことも、悪くない経験だろう。
 ならば後は気分よく、時間が来るまで踊るだけ。
 ゆらゆらふわり、金魚と共に絡新婦達は楽しい時間を過ごしていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御堂・伽藍
アドリブ、即席連携歓迎

うふふ きれい
嗚呼、水面の下に在るが如く

忍び足にてゆるゆると通りを漫ろ歩き
好奇心のまま水槽を覗き込み、色とりどりの金魚を飽きる事無く眺める

6つの手で餌をやり金魚をお誘いしつつ軽くダンスなど舞ってみる

お誘い誘き寄せ釣りUC
治安の悪さを逆手に取り
手癖の悪いスリたちにカモられる振りをしてすてぜにを掴ませ拡散してもらう

つかみどり おどりぐい
泳ぐが如く、舞うが如く
よってらっしゃい みてらっしゃい
お代は…見てのお帰り♪




 今日の九龍城砦は大きな水槽。それならその中を進むわたし達は、金魚の仲間?
 ふわふわ泳ぐ金魚達に微笑みかけつつ、御堂・伽藍(がらんどう・f33020)もぷかぷかと街を行く。
「うふふ きれい」
 まるで自分の水面の下にいるような、不思議な浮遊感。自分の足はしっかり地に着いているのに、なんだか夢心地のようで。
 時折金魚と歩調を合わせつつ、伽藍は静かに通りを進んでいく。
 大きな通りまで来れば、幾つもの水槽が伽藍を出迎えてくれていた。
 ぼんやりとした明かりに照らされつつ、水槽の中の金魚達ものんびり過ごしているようだ。
 伽藍はそっと水槽の中を覗き込み、きらきら煌めく金魚達に微笑みを向ける。
 金魚達は色も形も、一匹一匹それぞれ違う。彼らをぼんやり眺めているだけでも、きっと楽しい時間が過ごせるはずだ。
 そんな風に金魚を楽しむ伽藍の元に、気付けば一人の女性が近づいてきていた。
「お嬢ちゃん、その子達が気になるの? よかったら、これをどうぞ」
 女性が手渡してくれたのは金魚の餌だ。どうやら彼女は、この金魚達の世話をしている人らしい。
「ありがとう。それじゃあ……」
 ぺこりと頭を下げて、伽藍は6つの手に餌を乗せていく。
 そのまま水槽の中に餌を入れてやれば――金魚達は元気いっぱい、餌を求めて水面の方へと上がっていく。
 ぐんぐん浮かぶ彼らを見遣り一つの疑問が浮かんでくれば、そのまま女性の方へと声をかけて。
「お姉さん この子達は空を飛ぶの?」
「んー、そうだね。機嫌が良い時は飛ぶよ」
 それはきっと素敵なことだ。伽藍は金魚達を見つめつつ、その場でふわりと踊りだす。

 ふわふわ、たん、たん。軽くステップを踏み込めば、その音に合わせて金魚もぷかりと浮かび上がる。
「つかみどり おどりぐい。泳ぐが如く、舞うが如く……」
 よってらっしゃい みてらっしゃい。
 伽藍は空飛ぶ金魚と共に、九龍城砦の中を舞い踊る。
 最初の観客は先程のお姉さん。次の観客は賑やかな気配を察知してきた人々。
 彼らに向かって笑顔を向けて、また楽しくステップを踏んで。
 けれどここは、楽しいだけの場所ではない。舞い踊る6つの腕の間から見え隠れするのは――この街らしい、どこか危険な匂いのする人々だ。
 彼らは時折伽藍へと近づき、時に一瞬だけ手を伸ばして去っていく。
 分かってる。彼らはスリの類だろう。けれど伽藍は、彼らを追い求めはしなかった。
「お代は……見てのお帰り♪」
 踊りを楽しんでくれる人には弾むような思い出を。
 悪い人たちには――打ち捨てられたすてぜに達を。あの子達が街に散らばってくれれば、これからの行動にも役立つはずだ。
 けれどその必要が来るまでは、まだまだ泳いで踊ろう。ふわふわ心地の伽藍の隣で、金魚がぷかりと空を舞った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ガーネット・グレイローズ
香港租界、想像以上に賑やかな場所だな。
『編笠』は骸の海に沈めてやったが、ここにはまだ奴のお仲間が
潜んでいるのだろう…地の利は敵にあるが、関係ない。
見つけ出して、片付けてやるさ。

金魚市とやらが気になるね。
料理屋の店先で店員にゴールドを見せ、
一番いい席を用意してもらうよ。こういう物は
特等席で見るのが一番だからね。
食事は老酒と、魚介の蒸し料理で。煙草に火を点け、
大水槽の金魚を眺めてみる。
大きな尾びれは、まさに天女の羽衣だ。
本当に宙を泳ぐというのなら、仙界から持ち込まれたのだろうな。

ところで君たちは、誰かに命令されて私を見張っているのかな?
嘘は言わない方がいい。私の蝙蝠も、
君たちをずっと見ているよ。




 九龍城砦の中では多くの人が行き交い、その中を金魚もぷかぷか泳いでいく。
 これほどの活気は祭りがあるから故だろうか。いいや、きっと普段から多くの人々がここで生きているからだろう。
 独特の気配を肌で感じつつ、ガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)もゆっくりと道を進む。
(香港租界、想像以上に賑やかな場所だな)
 ここの主であった『編笠』は骸の海に沈めてやったが、奴の同胞や同類はまだまだ租界に蔓延っているのだろう。
 つまり戦いが起きれば地の利は向こうにあるはずだ。だからといって一人も見逃すつもりはないのだけれど。
 そのために、まずはこの街の様子と金魚を楽しもう。そこでガーネットが目を付けたのは、通りに面した料理屋だ。

 ガーネットは早速料理屋まで足を運び、入口に立っていた男と向かい合う。
 どうやらここはなかなか高級な店のようで、男はボディーガードか何かの類だろう。
 じぃ、とこちらを睨む男に対し、ガーネットが差し出したのは――海の世界で稼いできた金貨だ。
「一番良い席を頼みたい。こういう祭りは、特等席で見るのが一番だからね」
「……分かった」
 男は金貨を受け取ると、ガーネットを店の中へと迎え入れる。
 そうして案内されたのは、大きな窓のある席だ。ここからなら通りの様子もよく見えた。
 席のすぐ側には大水槽も備え付けられているようだ。こちらにも大きな金魚が数匹、悠々自適に泳ぎ回っている。
 そんな光景を楽しみつつ頂くのは、老酒と魚介の蒸し料理。高級な店だけに料理の味も抜群で、食べているだけで心が弾むようだ。
 酒が回ってきたら、煙草に火をつけ一息吐いて。背もたれに体重を預けると同時に、側の大水槽の中で大きな金魚がふわりと泳ぐ。
「……まさに天女の羽衣だ」
 水の中でゆらゆら揺らめく大きな尾びれは、なんとも美しいものだ。
 窓の外では空舞う金魚達も自在に泳いでいる。彼らはきっと、桃源郷からやって来たのだろう。

 料理と煙草、それから金魚達を楽しみつつ。ガーネットが視線を向けるのは――少し離れた席にいた男達だ。
 彼らもガーネットの視線に気付いたのか、顔を此方へ向けている。
「……ところで君たちは、誰かに命令されて私を見張っているのかな? 嘘は言わない方がいい」
 窓の外で小さく鳴くのは、血族に従う蝙蝠達。その気配に圧倒されたのか、男達はそそくさと店から逃げていく。
 あの態度こそ何よりの答えだと言うのに。やはりこの街は、簡単に気の抜ける場所ではなさそうだ。
「やれやれ。あいつらは蝙蝠に見張らせておこう……」
 飛び立つ蝙蝠を見送りつつ、ガーネットは再び金魚に視線を向ける。
 ゆるり、ゆるりと。危険な街の中で、不思議なまでにふわふわした時間が流れていく。それもまた悪くない、とガーネットは笑うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜鳥・藍
夏祭りともなれば金魚の屋台があるのはよく見かけますが、こちらのは金魚その物のお祭りですか。
花茶を片手に椅子に座ってゆっくりと眺めましょうか。
間近で水槽を覗く事には向かないかもしれませんが、ですが金魚だけでなく人々の様子を見る事も出来るでしょう。
租界は初めてですし、周りを見ながらも一応周囲には気を使って。
金魚はフナの形に似たものもスマートで好きですが、でも大きなヒレをゆらゆら泳ぐ様は確かに羽衣を纏って天人のようですね。
様々な模様がありますけど濃いオレンジの様な赤一色の金魚が水草の水槽に映えるような気がするんですよね。一方で空を泳ぐ姿を見ると白が多い方が雲のようでそれもまた良いなと思います。




 街の至る所で、金魚が泳ぐ。水槽の中を、ネオンの合間を、ぷかぷかぷかり。
 繰り広げられる不可思議な光景に息を吐きつつ、夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)もまた祭りの輪へと加わっていた。
「夏祭りともなれば金魚の屋台があるのはよく見かけますが、こちらのは金魚その物のお祭りですか」
 しかも彼らは、桃源郷から持ち込まれたのだとか。その話も本当かは分からないが、封神武侠界らしい筋書きは面白いと感じる。
 それなら、楽しむもそれらしく。藍は適当な店で花茶のカップを頂き、備え付けられた椅子に腰掛ける。
 屋台通りに近い椅子からは、街の様子もよく見えるだろう。
 お茶はジャスミン茶だったらしく、一口飲むだけでも心が安らぐ。安堵の息をゆっくり吐きつつ、藍が視線を向けるのは周りの様子だ。
 人々は通りや店を行き交いつつ、金魚の様子を楽しんでいる。備え付けられた水槽を覗き込む者もいれば、食事をひたすら楽しむ者も。
 そんな人々だけなら嬉しいのだけれど――遠くからは喧騒の音も聞こえてきた。やっぱりここは、治安が悪いのだろう。
(少し気をつけないといけないのね……)
 しっかり荷物を引き寄せて、藍は思わず背筋を伸ばす。
 租界という場所に来るのは初めてだ。用心するに越したことはないだろう。
 けれどずっと緊張しているのも勿体ない。再びお茶に口をつけ、上を見れば――ふわふわと金魚達が通り過ぎていった。

 ぷかぷか、ぷかぷか。空舞う金魚は、大きな尾ひれを揺らしつつ自在に泳ぐ。
「……確かに羽衣を纏って天人のようですね」
 金魚といえばフナに似たスマートなものが好きだけれど、この場だと尾鰭の大きな子の方が印象的かもしれない。
 模様だって、どの子も違っていて面白い。
 ネオンの輝きに似た赤い子ならば、水草の水槽にもよく映えるだろう。実際椅子から少し離れた位置にある水槽には、そういう子がいるようだ。
 遠くからも見える深いオレンジ色に、思わず藍も笑みを零す。
 けれど空を舞う子なら――。
「……あ」
 ふわり、頭上を通り抜けるのは雲に似た白い金魚だ。
 九龍城砦は建築を重ねた影響で、空を見ることは難しい。
 けれどあんな風に空を舞う子なら――この閉じられた空間にも、空を齎してくれているようで。
「……こういうのもあって、金魚のお祭りが開かれたのでしょうか」
 空のない場所に雲を。水のない場所に金魚を。
 この祭りは不可思議だけれど、それもきっと悪くない。夢心地のような祭りを堪能しつつ、藍はまたお茶に口をつけるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

山崎・圭一
(煙管を吹かす。吹いた白煙からは白燐蟲)
この殺伐として混沌な九龍城砦。俺結構好き
まだまだ俺の知らね―世界はあるんだな
宇宙で満足してる場合じゃねーか
このカメラにもっと収めとかねぇとな

お、金魚すくい
ちっとやってみっかな!子供の頃以来だし。行くぞ、白燐蟲共

――ん?こんな難しかったっけ?
ガキの頃はもっと掬えたんだけんなァ
駄目だ。1匹も取れんかった。まぁいいや

(宙を泳ぐ金魚と自身の白燐蟲が飛び交う光景を見ながら
屋台で貰った白酒を飲み、再び煙管を吹かす)
優美だねぇ。たまにゃ良いか。空っぽになる日があっても
泳ぎに泳ぎ続けて…何処へ行くんだろうなぁ
俺もまた、水槽飛び出した一匹の金魚…なんて。




 金魚を楽しみ笑い合う人々の声も、どこかで誰かが争う音も、九龍城砦においては等しく響く。
 その喧騒に耳を傾けつつ、山崎・圭一(宇宙帰りの蟲使い・f35364)はゆっくりと煙管を吹かす。
 吹いた煙は白燐蟲となって、金魚と一緒に上空をぷかりと浮かんでいた。
 なんというか、この場所の混沌具合は結構好きだ。良いも悪いもごたまぜに、どちらも一緒にある様が不思議と心地いい。
「まだまだ俺の知らね―世界はあるんだな」
 見えない空を見上げつつ、思いを馳せるのは少し前までいた宇宙の光景。
 あの場所も楽しかったけれど、それだけで満足するのは勿体ないだろうか。
「……このカメラにもっと収めとかねぇとな」
 愛用のカメラをそっと撫でつつ、圭一は周囲の方へと視線を向ける。
 ぷかぷか金魚に、小さな人集り。あれはなんだろうと観察してみれば――。
「お、金魚すくいか。せっかくだし、ちっとやってみっかな!」
 子供の頃を思い出しつつ、圭一は白燐蟲と共に歩を進める。
 大人になった今ならば、きっと沢山の金魚を手に入れられるはず。そう思って、早速挑戦してみるが――。

「――ん? こんな難しかったっけ?」
 破れたポイをじーっと見つめ、圭一は小さく首を傾げる。
 次に視線を向けるのは、空っぽのままの器。おかしい、子供の頃はもうちょっと上手く出来たものだが。
 しょうがない、気分転換しよう。圭一は店主に道具を返し、今度は屋台の方へと向かっていく。
 購入したのは白酒だ。本場のものなら、きっと美味しい違いない。
 そう信じて口をつけてみれば――予想通り。独特の薫りと酩酊感が身体を癒やしてくれた。
「こんな風にのんびりするのも悪かないかな……」
 再び煙管を吹かしつつ、頭上を見れば――優雅に舞い踊る金魚達と、白燐蟲が自在に空を飛ぶ。
 ふわふわ、ぷかぷか。少しだけ目を細め、圭一はゆっくりと煙を吐く。
 たまにゃ良いか。空っぽになる日があっても。
 飛び交う生き物、煌めくネオン、喧騒。混沌としているはずなのに、繰り広げられる光景は不思議と優雅で。
 あの金魚達はどこに向かっていくのだろう。泳いで泳いで、それから?
「……俺も似たようなものか」
 銀の雨降る世界から宇宙へ、そしてもっと別の世界へ。
 色々な場所を巡る俺も、きっと水槽飛び出した一匹の金魚みたいな……なんて。
 それなら同胞達のことをしっかり記録しておかなくては。圭一はカメラを構えて、金魚達の姿をしっかりと写し取る。
 泳いで泳いで遠くに行っても――この景色をまた思い出せるように。

大成功 🔵​🔵​🔵​

葛籠雄・九雀
空飛ぶ金魚!
…池は手入れが面倒で断念しておったが、こういったものならオレの屋敷にも置いておけるのではあるまいか。
…買う…否、盗品かもしれぬのか…うぅむ。それはいかんであるよなあ…。はあ。

仕方あるまい。人込みで食事をするのはあまり好まぬし、金魚たちに餌でもやりつつ観賞のみに留めるか。

そう言えば手癖の悪い者もいると聞いたが。
まあ、妙な者を見つけるなり、オレが標的になっておるなりしたならば、騙し討ちですれ違いざまにでも適当にブレスレットの蛇に噛ませておくか。何、死にはせぬ。動けなくはなるが。

…しかしこの蛇も中々謎であるな。面白かったから買ったが…。
…。金魚の餌など…まあ、食わぬか。金属であるしなあ。




 九龍城砦の空は閉じられていて、青空なんかは見えやしない。
 けれど空舞う金魚達はそんなことを微塵も気にせず、自由にぷかぷかと泳ぎ回っているようだ。
 そんな彼らの様子を見上げつつ、葛籠雄・九雀(支離滅裂な仮面・f17337)はゆっくりと路地を進んでいく。
(……池は手入れが面倒で断念しておったが、こういったものならオレの屋敷にも置いておけるのではあるまいか)
 ぼんやり思い浮かべる、金魚のいる生活。それはきっと楽しいものになるだろう。
 けれど――あの金魚がどこから来たのか考えれれば、手元に置いておくのは少し抵抗が出る。
 彼らが自分の意思で桃源郷から泳いできたのならいいのだけれど、盗品である可能性も十分に高いのだ。
「うぅむ。それはいかんであるよなあ……」
 はあ、と大きく肩を落としつつ、九雀が向かうのは裏路地の方だ。
 屋台なんかも気になるけれど、それ以上に人混みで食事することは好ましくない。
 適当な店で餌だけ購入して、時間まで金魚とのんびり過ごそうか。

 路地裏の方は更に薄暗く、どこかじめっとした空気が漂っている。
 けれどここにも金魚達は入り込んでいるようだ。そんな彼らに向かって餌を差し出せば、すぐに九雀の元へと集まってくる。
「おお、良い食べっぷりだのう」
 桃源郷から来たかもしれない金魚達も、美味しそうに餌を食べる様は親しみやすさを感じさせる。
 こうやって愛らしい者とのんびり過ごせればいいのだけれど――この都市ではそうもいかないだろう。
 気付けば数人の男達が、金魚と戯れる九雀の元へと向かってきている。
(……妙な者なら、オレを標的にしてくれる方が良いかもしれぬ)
 予想通り、男達は軽く九雀にぶつかると謝りもせずに去っていく。
 そしてそのまま表通りの方まで向かっていくが――突如男達は、その場にぱたりと倒れ伏した。
「心配するな、死にはせぬ。暫く動けなくはなるが」
 九雀は苦しそうに視線だけ向ける男達に言葉をかけつつ、腕を小さく掲げる。
 そこに巻き付いていたのは――きらきら輝く金属の蛇。九雀は男達とぶつかる寸前、この蛇に命じて彼らを噛ませていたのだ。

 しっかり仕事をこなしてくれた蛇の頭を撫でつつ、九雀小さく首を傾げる。
「……しかしこの蛇も中々謎であるな」
 買った理由は『面白かったから』。こうやって命じれば働いてくれるのも助かる。けれど――やっぱり何者だろう?
 反対側の手で金魚の餌を差し出しても、蛇も首を傾げるだけ。二人でじーっと見つめ合って、一緒に空飛ぶ金魚を見上げて。
「……まあ、食わぬか。金属であるしなあ」
 今日の所は『有り難かった』で終わっておこうか。
 ぷかぷか空飛ぶ金魚達も、気ままに泳ぎ回っている訳だし。
 二人でのんびり景色を眺めていれば、ゆっくりとした時間が穏やかに過ぎていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

葉山・鈴成り
カエナちゃん(f27672)と

お揃いの蓮ランプ
揺れる小さな灯火に合わせる足取りは軽い

おお!ホントだ!
金魚がプカプカ泳いでるッス
シシシッ、カエナちゃんと同じっスねぇ

優雅に泳ぐ人魚と金魚
青と赤、反する色の舞う光景がきれいだ
ひゃは、白に赤黒混じりの金魚なら
確かに『オレ』ッス!
よぉーく動きを観察して
金魚にだって化けてみせるッスよ

あわわわ、カエナちゃんってば
気に入っちゃった?
飼うのは良いけど一匹じゃ可哀想っす
一匹より二匹、二匹より三匹の方がきっと楽しい

よーし、金魚掬いやるっすよ!
ついでにどっちが多く掬えるか勝負ッス
ポイを片手にやる気満々
上手な人をよく観察して『ナリキル』

幽幻亭を彩が舞うのを想像して笑った


カエナ・ネオフォカエナ
鈴成り(f28040)と

提灯風の蓮ランプを手に君と泳ぐ

見てみて鈴成り
金魚がお空を飛んでいるのじゃ!
わらわと同じじゃ!可愛らしいのう…!

鱗煌かせた魚達を見渡し
この子、鈴成りと同じ色
うふふ、化け上手じゃのう
この尾鰭なんてまるでシルクのよう

ご飯いるかえ?
金魚の口元へ一粒、二粒餌を与え
ぱくぱくしておる~
お持ち帰りしちゃあ駄目じゃろうか
幽幻亭で飼いたいのじゃ

確かに、一匹だけじゃ寂しい思いをさせるかも…
金魚掬いで仲間を探すのじゃな
お手柔らかに頼むぞ鈴成りや

『ナリキル』彼の姿に
さすがじゃのう!と称賛贈って

鰭や体傷つけぬよう優しく掬い
お前、うちの子にならない?
此処以上に充実した日々を過ごせるよ、きっと




 薄暗い世界の中で、薄桃色の光がゆらゆら揺れる。
 お揃いの蓮ランプを掲げて進むのは、妖怪の青年と人魚の少女だ。
 軽やかな足取りで二人が道を進んでいけば、頭上をふわりと金魚が泳ぐ。
 その様子に気付き、嬉しそうに上を指差すのは人魚のカエナ・ネオフォカエナ(彼の背骨・f27672)の方だ。
「見てみて鈴成り、金魚がお空を飛んでいるのじゃ!」
「おお! ホントだ! 金魚がプカプカ泳いでるッス」
 妖怪の方、葉山・鈴成り(左魂・f28040)もつられて空を見る。
 ふわふわ、ふわり。優雅に世界を泳ぎ回る金魚達。彼らの様子に、鈴成りは楽しげに笑みを零す。
「シシシッ、カエナちゃんと同じっスねぇ。とっても綺麗ッス」
「ああ、わらわと同じじゃ! 可愛らしいのう……!」
 二人で一緒に空飛ぶ金魚を見ているだけで、なんだかとっても気分が弾む。
 鈴成りは地上から、カエナは一緒に空を泳ぎつつ金魚と戯れていく。
 あの赤い子は愛嬌があっていいな、あの白い子は綺麗だな、あの子はとっても尾鰭が長い。
 それじゃああの子は――近くを通り過ぎようした金魚を見つめ、カエナが少し目を細める。
「この子、鈴成りと同じ色」
 なるべく驚かさないように、カエナは見つけた金魚の側にそっと近寄る。
 鈴成りもカナエと金魚に視線を向ければ、またまた笑顔が溢れた。
「ひゃは、白に赤黒混じりの金魚なら確かに『オレ』ッス!」
 ふわふわ、ふわり。鈴成りに似た金魚は、青いカナエの身体と並ぶとなんだか綺麗だ。
 カナエと一緒に泳ぎ回る金魚の姿を、鈴成りはじーっと見つける。
 そう、じーっと、じーっと――。
「……っと!」
 ふいに鈴成りが大きくジャンプすれば、同時に彼の姿が消え去る。
 いいや、彼は消えていない。そこにいたのは――。

「あ、鈴成り、まさか……」
「その通りッス! 金魚にだって化けられるッス!」
 元気な声の元にいたのは、三色のぷかぷか金魚。きっと鈴成りが変身しているのだろう。
 鈴成り金魚とカナエの側にいた子は、一緒に並ぶと双子のようでどこか可笑しい。
「うふふ、化け上手じゃのう。この尾鰭なんてまるでシルクのようじゃ」
 ふわふわ、ゆらゆら。金魚と一緒に泳ぎ始めた鈴成りにカナエも優しく微笑みを向ける。
 せっかくだ、可愛らしい金魚との交流も楽しもうか。カナエは事前に買っておいた餌を取り出し、近づいてきた金魚へとそっと差し出す。
「ご飯いるかえ?」
 餌を貰った金魚達は大喜び。一匹、また一匹とカナエの元へ飛んできて、餌を貰って。彼らの表情は読み取れないけれど、その見事な食べっぷりは見ているこちらも元気になる。
「ぱくぱくしておる~。本当に可愛いのぅ……お持ち帰りしちゃあ駄目じゃろうか」
「あわわわ、カエナちゃんってば気に入っちゃった?」
「うむ。幽幻亭で飼いたいのじゃ。あの中を自由に泳がせたら、きっと綺麗じゃろう?」
 金魚達をじっと見つめるカナエを見遣り、鈴成りは変身を解いて彼女の側まで歩み寄る。
 確かにあそこに金魚がいれば、きっと楽しい時間が過ごせるだろう。
 けれど――それだけでは少し気になることがある。
「飼うのは良いけど一匹じゃ可哀想っす」
「確かに、一匹だけじゃ寂しい思いをさせるかも……この子達は、こうやって仲間と過ごしていた訳だしのう」
 特に懐いた三色金魚を撫で、カナエは少し目を伏せる。
「一匹より二匹、二匹より三匹の方がきっと楽しいッス! きっと何か方法が……」
 解決策を探して鈴成りが周囲を見れば、目に入ったのは一つの屋台だ。
 あそこなら、きっと。
「カナエ、見て! ほら、あそこ!」
「ん……?」
 カナエも鈴成りが指した方向を見つけ、目を凝らす。
 そこにあったのは――。
「よーし、金魚掬いやるっすよ!」
「おお、金魚掬いで仲間を探すのじゃな」
 せっかくのお祭りだ。ああいった場で縁を探すのもきっと楽しい。
 二人は再び薄桃色の明かりを掲げ、道を進んでいく。
「ついでにどっちが多く掬えるか勝負ッス!」
「お手柔らかに頼むぞ鈴成りや」
 鈴成りとカナエはくすくす笑い合って、足取りはやっぱり軽くて。
 けれど一つだけ先程と違うのは――二人の後ろに、三色の金魚がいたことだ。

「よーし、それじゃあ早速やるッス!」
 店主からポイを貰って、鈴成りは気合十分。
 カナエもポイをぎゅっと握り、水槽の中を覗き込んでいた。
「ふふ、魚のことならわらわもよく知っておるぞ」
「それだったら俺は……」
 自信有りげに微笑むカナエに対抗すべく、鈴成りは周囲を見遣る。
 金魚すくいの屋台は盛り上がっているようで、何人もの客がいるようだ。その中から特に上手い人を見定めて――そして『ナリキル』。
 そのままポイを動かせば、鈴成りの器には次々金魚がすくわれていく。
「どうっすか、あの上手な人に『ナリキル』とこんな感じッス!」
「さすがじゃのう! それじゃあわらわも……」
 鈴成りに素直な賞賛の言葉を紡ぎ、カナエもそっとポイを動かす。
 傷つけないよう、そーっとそっと。
「……お前、うちの子にならない? 此処以上に充実した日々を過ごせるよ、きっと」
 問いかけに応えるように器に導かれたのは、真っ赤でちょっとちっちゃな金魚。
 けれどこの子も三色金魚と一緒に幽幻亭を舞えば、素敵な彩になってくれるに違いない。
 帰ってから訪れる光景を思い、猟兵達は顔を見合わせ微笑み合う。
「勝負は俺の勝ちッスけど……思い出は二人でいっぱい残せたッスね!」
「うむ、勿論。この子達とも出会えたしのう」
 ゆらゆら、ゆらゆら。
 色とりどりの金魚と、妖怪と人魚。
 皆の間に新しく紡がれた縁が、暖かくゆらゆら揺れる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

天星・零
【零鏡】
enigmaで夕夜(別人格)も

お祭りでも人通りが少ない場所

零『わー、きれー!!ぷかぷか浮かぶ金魚さん!かわいいー!』
夕夜「こんな景色見れるとはなぁ!おっ、アイツら(金魚のこと)あそこで戯れあってて楽しそうだな!」

ちょっと景色を楽しんだら鏡介さんとお話し


手にはここに来るまでに買った大きいりんご飴
宝石の様なそれを屋台の仄かな光に重ねて覗き込んだりして興味津々に

虚鏡霊術で作った自分の金魚と遊ばせる

『どうだろう。でも、僕は羨ましいと思うよ。
こんな自由に空を泳げてて…とても素敵だ』

終わったら鏡介さんに一つ噂話。

ーねぇ、知ってる?夜のお祭りはね。この世じゃないものが紛れ込んでいるんだ。だから、気をつけて。悪い子は連れていかれちゃうから。

くすりと笑って。
りんご飴を齧って。

「さて、そろそろだな…」
『鏡介さん、遊びに行こっ!!
 まだ、金魚さん達と遊びたいけど僕達は先にやるべきことがあるからね!』
 
零は○○さん呼び、夕夜は呼び捨てになります

会話、その他セリフ細部はアドリブでいい様に変えてください


夜刀神・鏡介
【零鏡】
呼称は零/夕夜

久々に来たが、支配者が変わっても様子は変わらない……と
まあ、ここはそれが良いんだろうな、とか思いながら歩く

道中で適当に饅頭でも買って、泳ぐ金魚を眺めよう
ああ、本当に綺麗なもんだ。桃源郷で育てられたってのはあながち嘘じゃないみたいだな?

そこで、ふと金魚について思い出した事を話す
昔の話だけどな。故郷の祭りで金魚すくいをやって連れて帰った奴がいたんだ
大切に育ててたんだが、友人が連れてきた猫に襲われてなぁ……あれはへこんだ
いや、それで思ったんだが、この空を泳ぐ金魚は猫とかに襲われる心配はないんだろうか?
零が生み出したのには、そういう心配は不要だろうけど

なんとなく空を泳ぐ金魚に手を差し出してみる。寄ってくるかは運次第?

ああ、この世とあの世の境界が混じりやすくなる日って事かな
尤も、俺はもう悪い子って呼ばれる年齢じゃないと思うけど。折角の忠告だし、一応注意しておくよ

ん、これはそろそろ頃合いかな?
よし、それじゃあ行くとしよう。やるべきことを片付けてからまた戻ってくれば良い




 人通りの多い表から少し外れて、裏路地。
 どこかじめっとした空気も、ある意味この場所らしいだろうか。
 夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は積み重なる建物を見上げつつ、小さく息を零す。
「久々に来たが、支配者が変わっても様子は変わらない……と」
 『編笠』がいてもいなくても、この都市の根本は変わらないのだろう。
 混沌として薄暗くて、けれど誰かを拒むような場所ではない。
 きっとそれがこの場所の良いところでもあるのだろう。そんなことを考えつつ、鏡介は視線を横へと移す。
 そこにいたのは――楽しそうに周りの景色を眺める二人の少年だ。
『わー、きれー!! ぷかぷか浮かぶ金魚さん! かわいいー!』
 元気いっぱいはしゃぐのは天星・零(零と夢幻、真実と虚構・f02413)、銀と葡萄酒色の瞳を持つ猟兵だ。
 彼の傍らにいるのは夕夜、銀と瑠璃色の瞳を持つ零の片割れ。
 彼もまた周囲の景色と飛び交う金魚を見上げ、嬉しそうに表情を綻ばせていた。
「こんな景色見れるとはなぁ! おっ、アイツら、あそこで戯れあってて楽しそうだな!」
『ほんとだ! 金魚も友達がいっぱいなんだね!』
 無邪気にはしゃぐ少年達を見ていれば、鏡介の気分も和らぐ。
 せっかく金魚を楽しむのだから、ついでに何か摘もうか。猟兵達は道中で買った饅頭やりんご飴を堪能しつつ、ぷかぷか金魚をゆらゆらしよう。

「……こうやってりんご飴に透かしたら、屋台も金魚も綺麗だよね」
『わ、本当だ。きらきらしてて良いなぁ……』
 真っ赤な宝石みたいなりんご飴と、仄かな明かりと金魚達。
 その組み合わせは幻想的で、なんだか自分も水中にいるようだ。
 鏡介も小さな饅頭を一つ飲み込んで、零と夕夜が見つめる景色を覗き込む。
「ああ、本当に綺麗なもんだ。桃源郷で育てられたってのはあながち嘘じゃないみたいだな?」
「そっか。アイツら、仙人の所からやってきたかもしれないんだな」
『僕らは仙人様じゃないけれど、こういうことなら……出来るよね』
 鏡介の言葉に夕夜が頷き、その隣では零が簡単な魔術を組み上げる。
 ふわりと浮かんだ魔力の光は金魚の形を取って、一緒にぷかぷか。
 ここは閉じられた都市なのに、目の前の光景はとてもいきいきしていて。
 薄明かりの中泳ぐ金魚達を眺めつつ、猟兵達は更に言葉を重ねていく。

 楽しい話のあとは、ちょっと昔話でもしてみようか。
 鏡介は緩く腕を組み、懐かしい光景を脳裏に浮かび上がらせていく。
「昔の話だけどな。故郷の祭りで金魚すくいをやって連れて帰った奴がいたんだ」
『確かにサクラミラージュだと、そういうお祭りも多そうだよね』
「そうだな、だからよくある話なのかもしれないが……そいつも金魚は大切に育ててたんだが、友人が連れてきた猫に襲われてなぁ……あれはへこんだ」
 肩を落とす鏡介に合わせるように、零と夕夜もついつい悲しげな表情を浮かべる。
 この手の話は誰にだって降りかかる可能性はあるけれど、やっぱり胸が痛むものなのだ。
「いや、悲しい話だけじゃなくて……一つ気になることもあるんだ」
「気になること?」
「それで思ったんだが、この空を泳ぐ金魚は猫とかに襲われる心配はないんだろうか?」
 零が生み出したのには、そういう心配は不要だろうけど、と付け加え鏡介は金魚達に手を伸ばす。
 先程の饅頭の香りに惹かれてか、数匹の金魚が指先に触れる、ちょっと冷たくて、柔らかい。なんというか、生きている。
 零も鏡介の元へと集まってきた金魚を見つめ、少し柔らかな笑みを浮かべた。
『他の子に襲われるかは分からないけど……でも、僕はこの金魚達が羨ましいと思うよ。こんな自由に空を泳げてて……とても素敵だ』
 ぷかり、自分も金魚に触れて。
 零の言葉を受けて、鏡介も夕夜もゆるり微笑む。
 例えどこにいたとしても、きっとこの子達にとってはそこが桃源郷になるのだろう。
 この曖昧な都市なら尚更――そんなことを考えていると、零の脳裏にも一つのお話が浮かび上がった。
『――ねぇ、知ってる? 夜のお祭りはね。この世じゃないものが紛れ込んでいるんだ』
「ああ、この世とあの世の境界が混じりやすくなる日って事かな」
 その手の物語も桜の世界ならよくある話だ。けれど零の言葉は静かに響き、鏡介も思わず聞き入っていた。
『だから、気をつけて。悪い子は連れていかれちゃうから』
 くすり、どこか妖しげに微笑みりんご飴を齧る零に、鏡介が返すのは穏やかな言葉。
「尤も、俺はもう悪い子って呼ばれる年齢じゃないと思うけど。折角の忠告だし、一応注意しておくよ」
「そうだな、せっかく皆でいるのに誰かはぐれちゃったら悲しいし」
 夕夜もこくこく頷いて、りんご飴を齧って。
 大丈夫、自分達も金魚もちゃんとここにいる。
 薄暗い都市の中でも、ふわふわの世界でも、ちゃんと。

 けれど楽しいだけではいられない。そろそろ、自分達がやるべき事の準備を進めようか。
 猟兵達が意識を表通りへ向けた瞬間、何か妙な気配が感じ取れた。
 人ならざる者だってこの都市にはありふれているし、悪意だって見えないけれど滲んでいる。
 けれど今感じ取れたそれは――あまりにもはっきりとしている。何かが起きるまでは、きっとあと少しだ。
「さて、そろそろだな……」
「ああ、そろそろ頃合いかな?」
 表情を引き締める夕夜と鏡介の隣に、零もぱたぱた駆け寄る。
 ここからのお仕事はきっと大変だ。けれどこの都市なら、それすら祭りに組み込むに違いない。
『鏡介さん、遊びに行こっ!! まだ、金魚さん達と遊びたいけど僕達は先にやるべきことがあるからね!』
「よし、それじゃあ行くとしよう。零の言う通り、やるべきことを片付けてからまた戻ってくれば良い」
 ぷかぷか金魚と都市を守るため、一行は表通りを目指して歩く。
 彼らを見送るように、金魚達は優雅に空を舞って泳いでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『混沌霊珠・詩歌』

POW   :    電撃翔
全身を【自他ともに傷つける電撃 】で覆い、自身の【殺意】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    指雷矢
【指先 】を向けた対象に、【電撃】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    放天雷掌
【掲げた手のひら 】から、戦場全体に「敵味方を識別する【電撃】」を放ち、ダメージと【電撃による麻痺と火傷】の状態異常を与える。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 ふいに聞こえてきたのは、爆竹なんかと比べ物にならない破裂音。
 無人の屋台を破壊しつつ、そこに姿を現したのは――異質な気配を纏った少女達だ。
「あー、誰も殺せなかった? つまらない」
「大丈夫。まだまだ殺せるやつは沢山いる。間抜けな人も魚も、好きなだけ殺し尽くそう」
 物騒な言葉を交わしつつ、少女は周囲の様子を眺める。
 幸いなことに、この都市は騒動に慣れている。これだけの異変が起これば、人も金魚もさっさと逃げ出すだろう。

 しかし何もしなければ、少女――の姿をした邪仙『混沌霊珠・詩歌』達は人々を追い、殺していくだろう。
 いくら物騒な九龍城砦といえど、大量の虐殺が起こるとなれば見過ごすことは出来ない。
 彼女達を止めるには、猟兵達が戦うしかないだろう。
 詩歌は殺し甲斐のない一般人や金魚より、猟兵のような強者を叩き潰すことを好む。
 その性質やこの都市を利用しつつ立ち回れば、勝機はきっと掴めるはずだ。

「あは、あはは! 歌い、謳え! お前も、アタシも!」
 からから笑う邪悪な声が開戦の合図。
 誰が九龍城砦という水槽を制すのか、はじまり、はじまり。
ガーネット・グレイローズ
騒がしくなったと思えば…どうやら
オブリビオンが現れたらしいな。
仙術を身につけながら、力に溺れた俗物か。
その力を発電にでも使えば、有用なものを。

敵の攻撃能力は電撃だけあって、速度はかなりのもの。
ここは私も機動力を強化しよう。
《仙術》を応用して【グラビティマスター】を発動、回避力を
強化しての《空中戦》だ。ひらひらと水槽を泳ぐ金魚のように、
3次元機動と緩急をつけた《フェイント》で攪乱しつつ、
空からクロスグレイブの《レーザー射撃》。
…スピードは速いが、直線的で単調だな!
ビルディングの壁を蹴って、620km/hの速さで急降下し、
敵の頭上から《功夫》を使った足技で顔面を蹴りまくる!




 造りのしっかりした店の中からでも分かる、異質な喧騒や破壊音。
 それらに気付いた瞬間、ガーネット・グレイローズは勢いよく料理店を飛び出す。
「騒がしくなったと思えば……どうやらオブリビオンが現れたらしいな」
 敵の姿は確認出来た。見た目こそ少女のそれだが、彼女の纏う気配は仙界のそれが淀んだものだ。
「仙術を身につけながら、力に溺れた俗物か。その力を発電にでも使えば、有用なものを」
「そんな下らないことを楽しめるものか。さあ、お前も踊れ!」
 ガーネットの言葉を受けて詩歌が嗤う。それと同時に迸るのは凄まじい電撃だ。
 その速度は光そのもの、油断していては一瞬で飲み込まれてしまうだろう。
 だからこそ、此方も対抗するなら仙術を。ガーネットは静かに呼吸を整え全身に気を巡らし――そして高く飛び上がる!
 負けじと詩歌も空を飛び、ガーネットを追いかけている様子。それに合わせて奔る電撃は、薄暗い世界を煌々と照らしていた。
「待て!」
「待てと言われて待つやつはいないさ。さあ……競争でもしようじゃないか!」
 思ったよりも相手が手練だったことを察してか、詩歌の顔には怒りが滲む。
 一方ガーネットの顔にあるのはどこか無邪気な、それでいて真意の読めない意味。
 ゆらゆら、ゆらゆら。先程まで眺めていた金魚のように。この九龍城砦で、より美しく泳げるのは自分だと――その顔が何よりも強く示している。

 二人の仙術使いの空中戦は、アクション映画のような派手さと苛烈さを帯びたものとなった。
 詩歌はただひたすらに電撃を放ちつつ、雷光のように空を駆ける。
 一方ガーネットは見事な緩急をつけつつ、ひらりひらりと優雅に立ち回っていた。
 時折二人の拳がぶつかり合い、その度に火花が舞って。そうして生まれた隙を見つけ、ガーネットは手近なネオン看板へ足をかける。
 そうして体躯を安定させつつ取り出すのはクロスグレイブ!
 詩歌のスピードは確かに見事で追いかけるのは一苦労だ。それでも――赤い瞳からは逃れられない。
「……スピードは速いが、直線的で単調だな!」
 相手の動きを予測し放たれたレーザーは、見事に邪仙の足を穿つ。
 衝撃で動きを止めた詩歌へ向かって、勢いよく看板を蹴って飛び出せば――。
「私もここの世界ではしっかり修行させてもらったからね。その成果を――受け取れ!」
 頭上から放たれた蹴りが見事に邪戦の頭に叩きつけられる!
 相手の消滅を確認しガーネットも地上へ戻れば、聞こえてきたのは疎らな拍手。
 やれやれ、こんな状況でも観戦していた奴がいるとは。この世界の混沌を改めて認識し、ガーネットは小さく笑みを浮かべるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

葛籠雄・九雀
話が通じる類の敵ではなさそうであるな。それならばこちらも容赦なく戦えるというものである。
さて…戦場にあった雰囲気か。ふむ。
生憎要望の歌も謳も苦手でな。

だが曲芸なら出来る。

足場になりそうなところを経由して、金魚の中、祭りの余興の見せて跳ぶ走るでおびき寄せ、幾らかを分断して対処するか。オレはこう見えて綱渡りなども得意でな、ハハハ!

雷撃は見切り、周囲に被害が出にくいところまで誘導したところで、カウンターでウルティカ・ディオイカを叩き込む。目や口内、延髄などに10cmほどの針が突き刺さればある程度は痛かろう?
もし体液があれば、猶更。
…人型である故急所も人体として予想しておるが、合っておるのであるかな。




 響く轟音、悲鳴、それから哄笑。
 これだけの騒ぎになれば、表に出たほうがいいだろう。葛籠雄・九雀は路地裏からのそりと身を乗り出し、周囲の様子をざっと伺う。
 見えたのは――人々を追い立てる邪仙・詩歌の姿。幸い追いかけられていた人々はどうにか逃げ切れそうだ。
 それなら自分はどうすべきか。ヒトの姿をしている相手だし、ちょっと会話でもしてみようか。
 けれど聞こえてくるのは一方的な言い分や笑い声だけ。
「……話が通じる類の敵ではなさそうであるな」
 けれどそれは良いことでもある。そんな相手なら、容赦せずに戦えるだろうし。
 それなら早速戦いに向かいたいが――この薄暗い都市らしい戦いとは、どのようなものだろう。
「あはは、逃げるだけではつまらない! 歌い、謳え!」
 けたけた嗤う邪仙の声。ううむ、歌も謳も苦手だ。彼女の要望には応えられないだろう。
 それでも――九雀は頭上に輝くネオンを見上げ、足にぐっと力を入れる。
 そのまま高く高く飛び上がり、泳ぐ金魚さんとこんにちは。そのまま足をつけるのは、張り巡らされた電線の上だ。
「なんだ、曲芸師か?」
「どうだろう。だが曲芸なら出来る」
 細い電線や崩れ落ちそうな看板を足場にし、九雀は自在に薄暗い空を行く。
 その背後から何人もの少女の声が聞こえてくれば、結果としては上々だ。

「オレはこう見えて綱渡りなども得意でな、ハハハ!」
「あは、やっぱり曲芸師だったんじゃないか。もっと踊れ、踊れ!」
 背後から聞こえる声に時折振り返りつつ、九雀は更に九龍城砦を進んでいく。
 飛んで跳ねて笑って。九雀の足取りは踊るように軽やかだが、その間もずっと周囲の観察は怠らない。
 見えたのは人の気配がほぼ消えた広場。あの場所なら戦闘だって問題なく行えるだろう。
 だから九雀は勢いよく建物の壁を蹴り地上を目指して――すぐ隣で指先を向けた邪仙と視線を交わす。
 同時に身を捩らせ、飛んできた光の矢を回避して。勢いのまま長い手足をぐるりと踊らせ、九雀の周囲に展開されたのは無数の思念針だ。
 その針は煌めく雷光を反射しつつ、次々に少女の元へと殺到していく。
 愉しげな笑みを浮かべる目、口、細い首、その他人体の急所になりそうなところ諸々。
 それらを貫かれた瞬間、邪仙が上げたのは声にならない悲鳴。
 彼女の身体は地面に激突するより早く、骸の海へとずぶりと溶けた。
 九雀の方はきちんと地面に足をつけ、自分が通ってきた空をさっと見上げる。
 そこには戦闘のことを知ってか知らずか、ゆらりと金魚が浮いている。なんともマイペースなものだ。
 彼らともう少し戯れていたいけれど、戦闘音はまだまだ響いている。
「……うむ、敵の急所の予想は合っていたな。この調子で行こうではないか」
 ぷかぷか金魚に見送られつつ、九雀は再び九龍城砦を駆け回る。
 その姿もさながら、この都市を自由に泳ぐようだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜鳥・藍
無粋な方々ですね。
こういったお祭りで多少のトラブルは許容範囲ではありますが、ここまでの物ですと、ね。

電撃避けもかねて一旦身を隠しましょう。昔のように存在感を薄くして目立たないようにして。
あとは索敵で相手の位置を補足して、鳴神を投擲しかつ念動力で操作してマヒ攻撃をします。最低でも掠るだけで十分です。あとは竜王さんの雷撃が当たれば。同じ雷による攻撃ですのでどこまで通用するかわかりませんが……。
あれだけ騒がしいのですから見つからないようにだけ気を付ければ音で見つかる事も避けられるでしょう。
電撃耐性で耐えるようにしますが、万が一向こうの攻撃が当たったなら火炎・激痛耐性で我慢します。




 破壊された建物や逃げる人々の声。明らかに感じ取れる異変を前に、夜鳥・藍の顔に浮かぶのは真剣な表情だ。
「……こういったお祭りで多少のトラブルは許容範囲ではありますが、ここまでの物ですと、ね」
 邪仙達はなんと無粋な方々か。
 けれど相手が分かりやすい暴れん坊なら相応のやり方がある。それこそ、この混沌の都市に相応しいやり方が。
 だから藍は散らばる物や入り組んだ建物の影へ身を潜め、静かに呼吸を整える。
 手にはしっかりと鳴神を握りしめて、必要以上の戦意は表に出さないように。
 響く雷の音、邪仙の笑い声、何かが崩れ壊れる音、金魚、混沌の世界の影。
 それら全てに溶け込むように気配を薄れさせた藍は――ただ静かに、邪悪なる者の元を目指す。

「あは、あはは! どこだ、どこだ!」
 邪仙達はただひたすら破壊に没頭しているようで、その在り方は滅茶苦茶だ。
 彼女達は目に付く建物や気配に向けて、ただひたすら攻撃を繰り出している。
 その対象は仲間でもお構いなしのようで、それでも彼女達はただ嗤う。
 このまま自滅を待つのも作戦としては考えられるかもしれないが――その間も、きっと多くの人が傷ついてしまう。
 だから藍は鳴神を握る手に力を籠めて、宙色の瞳でじぃっと敵を睨む。
 相手が雷を放つ瞬間、立ち止まった瞬間を狙って――まずは鳴神を投擲。
 その刃は邪仙の腕を掠め、建物の壁へと突き刺さる。
「誰だッ!」
「――竜王招来!」
 邪仙の視線が藍へと突き刺さると同時に、叫ぶ。
 神器によって刻まれた傷に呼応するように姿を現したのは巨大な竜王だ。
 彼の放つ電撃は邪仙のそれよりもよっぽど凄まじい。天罰の如き雷光が薄暗い世界を奔れば、残るは何かの黒い影だ。
 そのまま藍は刺さった鳴神を回収し、再び影の中に身を潜める。それと同時に竜王の気配も薄れるが、彼もまた呼べばすぐにやってきてくれるはずだ。
 今の攻撃でなかなかの音と光が弾けたのだが、それに呼び寄せられる者はいない。ただの人なら恐れをなして逃げるだろうが、敵も来ないということは――。
「……それだけ周囲が騒がしいということですよね」
 好都合だけど、好ましくはない状況。それを再認識し、藍は小さく息を吐く。
 ならば一刻も早く止めなければ。藍は決意を固めつつ、更に別の敵を探す。
 邪仙を見つければ何度でも刃を振るい、竜王と共に倒していこう。
 だから今だけは、混沌都市の薄闇を味方につけて。藍は自分の仕事をしっかりとこなしていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

葉山・鈴成
カエナちゃん(f27672)と

せっかくの楽しい雰囲気が台無しっすねぇ
あの電撃さ、すげーヤバくないっすか?
ほら、カエナちゃんは人魚だし金魚もさぁ

ひゃはっ、驚いた?
いつの間に入れ替わったかの答えは『どっちも俺だから』っスよ

ビリビリ電撃なら俺も負けてないッス!
カエナちゃんにも金魚にもアンタの電撃は当てないっすよ!

額には敵の電撃を集める避雷針の一本角
鬣を靡かせ荘厳な雰囲気と雷を纏う雷獣へ『ナリキル』

さぁ行くぞ!
天より轟く我が雷、逃れる術はなし!
敵の雷を弾き飛ばす勢いで放ち感電にて敵の動きを封じる
あとは深海の魔女へと託すとしよう

儚く消える呪いには最大の賛辞を
フハハハ、なんと美しくも酷な御業よの。我が友よ


カエナ・ネオフォカエナ
鈴成(f28041)と

今宵の祭りに似合わぬ歌声だこと
ちょっとばかし灸をすえてやらねばいかんの

確かに水と雷、相性が悪い
とりあえず金魚達は安全な場所に隠れておいで?
わらわ達が必ず守るからのう

ね!鈴成り…っていつの間に入れ替わったのじゃ!?
さすがのわらわも驚きなのじゃ!
妖怪ナリキリ恐るべし…

頼もしいのう、鈴成
電撃集める避雷針に巻き込まれぬよう距離を取り
攻撃の機を伺う

愛しき友
偉大なる雷獣『霹靂百雷』よ
天より降りし神の雷、実に見事じゃった!

後はわらわに任せて貰おうか
これでも深海の魔女を自称しておるのじゃ
舐めていると後悔するぞ?

短杖振るい放つバブル
敵へ振れれば発動する呪い
泡となる痛み、とくと味わっておゆき




 何処かから響いていた楽しげな声や歌は、強烈な破壊音によって掻き消される。
 その後ろで響くのは、邪仙の少女の笑い声。
 それを耳にし、カエナ・ネオフォカエナは真剣な表情を宿す。
「今宵の祭りに似合わぬ歌声だこと。ちょっとばかし灸をすえてやらねばいかんの」
「せっかくの楽しい雰囲気が台無しっすねぇ。それに、ほら」
 声をかけた青年が上を指差せば、迸ったのは青白い光。
 邪仙の放った雷から逃げるよう、金魚がわっと空を舞う。
「あの電撃さ、すげーヤバくないっすか? ほら、カエナちゃんは人魚だし金魚もさぁ」
「ううむ。確かに水と雷、相性が悪い。じゃが……」
 カナエはぷかりと空を浮かび、逃げ惑う金魚達を優しく撫でる。
 ひんやりした鱗を通し、大丈夫だと伝わるように。そっと、そっと。
「とりあえず金魚達は安全な場所に隠れておいで? わらわ達が必ず守るからのう」
 カナエの言葉を受け、金魚達は軒下や住民達の家に入っていく。
 邪仙は目に付く相手を狙っているようで、彼女達の目から逃れられれば暫くは安全だろう。
 けれどその安全もずっとじゃない。早くなんとかしなくては。
「早く行かねばな。ね! 鈴成り……って」
 カナエは地上へ降りると同時に隣に立っていた青年を見つめ――目を見開く。
 そこにいたのは先程までいた青年とは違う、黒い青年だ。
「いつの間に入れ替わったのじゃ!?」
「ひゃはっ、驚いた?」
 からから笑う青年の名は葉山・鈴成(右魂・f28041)。彼もまた『ナリキリ』の妖怪で、鈴成りの片割れだ。
「いつの間に入れ替わったかの答えは『どっちも俺だから』っスよ。でもカナエちゃんの驚く顔が見れたから満足っス!」
「さすがのわらわも驚きなのじゃ! 妖怪ナリキリ恐るべし……」
 カナエの方も驚いているが、同時に滲むのは微笑みだ。
 悪戯好きの友人がいつもの調子でいてくれることが、きっと今は心強いから。
「そんな恐ろしい妖怪と一緒なら、きっと大丈夫じゃな」
「俺もカナエちゃんと一緒なら百人力っス! それじゃあ行くっスよ!」
 二人並んで戦場へ。見送る金魚の視線を背中で受け止め、猟兵達は邪仙の前へ姿を現した。

「あは、なんだあれ? ただのヒトじゃない」
 邪仙達は鈴成とカナエの姿を見るや興味津々。彼女達の狙いがこちらに向くのは好都合だ。
 だから鈴成は堂々と前に出て、声を張り上げる。
「ビリビリ電撃なら俺も負けてないッス! カエナちゃんにも金魚にもアンタの電撃は当てないっすよ!」
 宣言と共に『ナリキル』のは、鬣を靡かせた荘厳な存在。
 ばちばちと弾ける雷を纏いつつ、鈴成の姿は一本角の雷獣へと変化した。
「カナエちゃん、こっちは俺が!」
「頼もしいのう、鈴成。少し時間を稼いでおくれ」
 鈴成が周囲を駆け出すと同時に、カナエは少し距離を取る。短杖をぎゅっと握りしめて備えるのは、魔女の呪いだ。
 必要なタイミングは友人が示してくれる。だからそれまでには必ず。
 響く雷撃の音を耳にしつつ、カナエの周囲に幾つもの泡が浮かび上がっていく。
 その様子を確認し、鈴成は更に力強く地面を踏みしめ、入り組んだ路地を駆け回りだした。

「雷の獣だ。あいつは絶対面白い」
「さあ踊れ、走れ!」
 邪仙達の関心はすっかり鈴成へと向いている。
 それだけでなく雷撃も向けられて入るが、多少の攻撃なら避雷針の角が受け止めてくれるだろう。
 敵を十分な数だけ釣れたと判断すれば、壁や地面を蹴って方向転換。
 目指すは準備を整えた魔女の元へ。つられた邪仙達が笑顔でこちらを一気に落とそうとすれば――。
「さぁ行くぞ! 天より轟く我が雷、逃れる術はなし!」
 邪な術で生み出されたものよりよっぽど強い雷で、強かな罰を下してやろう。
 雷に撃たれた少女達は身体を痙攣させ、その場に膝をついていく。
「……よし。あとは深海の魔女へと託すとしよう」
「愛しき友、偉大なる雷獣『霹靂百雷』よ。天より降りし神の雷、実に見事じゃった、後はわらわに任せて貰おうか!」
 ここまで頑張ってくれた友への賛美は互いに忘れず、後はやるべきことを。
 鈴成が道を開けたのを確認し、カナエは杖を掲げて彼の隣に並び立つ。
 その背後には――溢れんばかりの泡が舞い踊っていた。
「これでも深海の魔女を自称しておるのじゃ。舐めていると後悔するぞ?」
 この世界において邪仙というのは悪しきものだろうが、それよりも恐ろしいものが世界に存在するのだと叩き込んでやらなくては。
 例えば何にでも『ナリキル』妖怪だったり。例えばおとぎ話の魔女だったり。
「――泡となる痛み、とくと味わっておゆき」
 それを示すようにふわりと泡が邪仙達を包み込めば――彼女達の身体は溶けて、溶けて、一緒に泡と化していく。

 ふわふわと、邪仙だった泡は九龍城砦の空を舞う。
 それこそさっきまで優雅に舞っていた金魚のように。けれど彼女達が向かうのは精霊の元ではなく、骸の海だ。
 だからこそ鈴成は霊獣の姿のまま、からからと笑う。
「フハハハ、なんと美しくも酷な御業よの。我が友よ」
「そちらの『ナリキリ』もな。美しく、そして見事であった」
 泡がぱちんと弾ければ、聞こえてきたのはぱちぱちと雷光が爆ぜる音。
 その様子を見上げつつ、鈴成とカナエは笑い合う。
 そんな二人の様子を隠れていた金魚達も、穏やかに――そして感謝を籠めて見つめるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

山崎・圭一
日常のブレイクタイムをブレイクされちゃたまったもんじゃねぇ
カラフルなネオンはもう充分足りてンのよ

よいしょ。自身の霊気から命捕網取り出す
バイクや鉄骨やら無機物をUCで蟲化
躱せる電撃は躱すけど
駄目そうなら蟲化した無機物投げて電撃からガード

けどま…キリねーなぁ
煙管の白煙からスズメバチ白燐蟲カモン
敵の頭上飛んで毒液を飛ばせ!なんなら噛み付いても構わねぇ
おっと。近付くなよ。俺一応体術出来ンだかんな【功夫】

たくよォ…ンーなビリビリしたかったら…
もっと盛り上げてやるよ、俺が。
あらゆる水槽の水を蟲化、合体させて大きな水球に。
上から落ちてコイツら全員水球に包んじまえ
蟲化したネオン看板落として…
全員感電しろ!




 何かが崩れ壊れる音を耳にして、山崎・圭一は急いで音の方へと歩を進める。
 今鳴ったのは楽しい喧騒の音ではない。戦いの中で何度も耳にしてきた破壊の音だ。
「日常のブレイクタイムをブレイクされちゃたまったもんじゃねぇ……」
 小さく呟きつつ空を見れば、飛び込んできたのは雷撃から逃れる金魚。
 カラフルなネオンは十分足りているのだ。これ以上のぎらぎらは要らない。
 そんな憤りを籠めて、手を伸ばすのは自身の霊気。そこから愛用の命捕網を取り出せば、戦う準備は完了だ。
「蟲使いたる者、死んだ蟲だって操ったらァ」
 網をゆらりと振りかぶれば、そこから溢れるのは蟲型のゴースト達。
 彼らはその辺のガラクタや転がされたバイク等に取り憑き、無機物に次々と虫の特徴を生やしていく。
 そうして生まれた奇妙な蟲達とパレードすれば、邪仙の興味を引くのに十分だろう。

「あは、なんだあれは。蟲だ、蟲だ!」
 予想通り。頭上から聞こえてきたのは楽しげな、けれど邪悪な声。
 同時に降り注いできた雷撃には頑丈な蟲に阻んでもらい、圭一もまた飛び交う邪仙の姿を見た。
(ちまちまやり合うのは良くないかな。それじゃあ……)
 先程のブレイクタイムと同じく煙管を吹かし、白煙を周囲へ漂わせて。
 そこから形作られるのは――スズメバチのような白燐蟲だ。
「いい感じにあいつらに毒液飛ばしてやれ! 暫く頼む!」
 圭一の言葉を受ければ、白燐蟲達は一斉に少女達の元へと向かい彼女達を毒で侵していく。
 それで止まる相手ならそれでいい。けれど無理やり接近してくる相手には無機物蟲達と連携し、時に圭一も直接殴りつけて足を止めて。
 そうして少しずつ少女達の動きを止めつつ、圭一は周囲を駆け回る。
 その最中彼が引っ張ってきたのは――金魚が入っていた水槽だ。中の金魚達は危険を察してか、空の上に退避しているようだ。
「よし、ちょうどよかった。それじゃあ……おい、あんた等!」
 圭一が声を張り上げれば、毒にやられた少女達が忌々しげに視線と電撃を飛ばす。
 それを華麗な足取りで回避して、圭一はニヤリと笑みを浮かべる。
「たくよォ……ンーなビリビリしたかったら……」
 宣言と共に飛び出すのは無数の蟲型ゴースト達だ。
 彼らは水槽の中の水に次々憑依し、意思を持って少女達の元へと殺到していく。
 ぶくぶく、ぶくぶく。逃げられない水の牢獄へと収められた悪人へとぶつけるのは――。
「――もっと盛り上げてやるよ、俺が」
 とどめはこの都市特有のネオン看板達。彼らを蟲へと変えさせて水の牢獄へと叩き込めば、次に起こるのは大爆発だ。
 すっかり感電した少女達は地面に叩きつけられるより早く、骸の海へと還っていく。
 一際大きな花火をぶち挙げられたのを確認し、圭一は安堵の息を吐くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

杼糸・絡新婦
九龍城砦の建物を利用し、
建物の影から【闇に紛れて】不意打ちを狙い
飴翔で攻撃、【援護射撃】を行いつつ
鋼糸【絡新婦】をひっかけ、足場にして【空中戦】
絡みつくように【捕縛】した【敵を盾にする】ことで防御。
タイミングを図り脱力し敵の攻撃を受け止め、
オペラツィオンマカブル発動
排し、返せサイギョウ
祭りにはちと耳障りやね。




 わいわい、がやがや。聞こえてくるのは破壊の音。
 派手な雷光と共に大暴れする邪仙をこっそり観察しつつ、杼糸・絡新婦は呆れたように息を吐いた。
「こういうのは嫌やねぇ、サイギョウ」
 先程まで共に舞い踊っていた人形に苦笑いを向けて、再び視線は表通りへ。
 邪仙達は破壊が目的のようで、ただひたすら気になるものへと雷撃をぶつけている。
 その分気にしているのは目立つものや逃げるものだろう。ならば――。
 絡新婦は飴翔を取り出しつつ、自身の気配を建物の影へと馴染ませる。
 ゆっくり呼吸を整えてその銃口を向けるのは、ちょうど適当な住民達へ指先を向ける個体にだ。
「……っと」
 乾いた銃声が鳴り響けば、少女の身体はカラフルな弾丸によって砕かれていく。
 その光景を見ても腰を抜かさずしっかり逃げ出す住民にちょっぴり感心しつつ、更に一発。
 銃声と倒れ伏した少女を見れば、彼女の仲間も異変を察知するだろう。
「どこから?」
「あそこだ!」
 絡新婦は敢えて物陰から身体を出して、邪仙の声に笑顔で応える。
 そのまま再び闇の中へと身を翻すが――その後ろからは、姦しい声と弾ける雷光の音も響いていた。

「あいつはどこだ? 路地裏に逃げたはず……」
 邪仙達は路地を暫く進み、絡新婦の姿を探す。
 入り組んだ路地裏とはいえ、オブリビオンのスピードならば追いつくことも難しくないはずなのに。
 苛立たしげに周囲を見回す邪仙の頬に触れたのは――ぴんと張った、鋼糸の感触だ。
 それに気付いた彼女が上を見上げれば、もう遅い。
「そうそう、こっちこっち」
 そこにいたのはぷかぷか金魚と、鋼糸を足場に空を駆ける絡新婦の姿。
 絡新婦は手にした糸を更にしゅるりと動かし、哀れな獲物をさっと捕らえる。
 その子の悲鳴を聞きつけて突っ込んできた個体もいるが、そいつには捕らえた獲物をぶつけてやろう。
 そうして隙を作り出し、絡新婦は自身の身体からゆるりと力を抜いた。
「この……」
「殺してやる!」
 怒りに任せて邪仙達は電撃を放つが――。
「――返せサイギョウ」
 その攻撃は埒外の力を通し、絡新婦からサイギョウへと流れていく。
 そのままサイギョウが腕を構えれば、流れ出たエネルギーはそのまま敵を貫く雷の矢と化した。
 次の瞬間聞こえたのは悲鳴と何かが爆ぜる音。それが止めば、残るのは静かな路地裏と金魚だけだ。
「祭りにはちと耳障りやったね。このくらいの方が自分はええかな」
 危機感があるのかないのか、ぷかぷか金魚をにっこり見上げ。絡新婦はしっかりと自分の戦いを進めていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳴上・冬季
「…邪仙ごときが嗤わせる」

「我が名は迅雷公。貴様らごとき児戯が比肩しようなどとは片腹痛い。塵も残さず消えるがいい」
敵の攻撃は全て黄巾力士にオーラ防御で庇わせ青天の霹靂
術範囲内の敵が全て動かなくなるまで術継続
敵殲滅のためなら黄巾力士が全損しても気にしない
術範囲外の敵には雷公鞭振り回し直接雷撃

「邪仙ごときに後れを取ったとあっては後で師になんと言われるか。しかも雷撃で人形ごときに負けたとなれば恥ずかしくて一生師の洞に伺候出来なくなります。絶対に負けられないのですよ」
仙術+功夫で縮地して敵を盾代わりに使ったりもする




 姦しく嗤いつつ邪仙達は無意味な破壊を進めていく。
 その光景は妖仙である鳴上・冬季からすれば、ただただ不快なものだった。
「……邪仙ごときが嗤わせる」
 怒りは背を正す力に変えて、一歩一歩彼女達の元へ。
 冬季の纏う気配に気付いた邪仙達は暫し雷を飛ばすの止め、視線を冬季の元へと向けた。
「我が名は迅雷公。貴様らごとき児戯が比肩しようなどとは片腹痛い。塵も残さず消えるがいい」
「なるほど、お前も仙人の類か……ならば踊れ!」
 言葉と共に放たれたのは青白く迸る雷光。
 けれどそれは冬季の元へと辿り着くことはない。彼の前に堂々と姿を現した黄巾力士が不可思議な力と共に盾となったからだ。
 その大きな背を頼りにしつつ、冬季は意識を集中していく。
 放たれた攻撃は確かに脅威。けれどよりによって雷使いの邪仙などに敗ける訳にはいかないのだ。
「野鼠の如く逃げ惑え……八卦天雷陣」
 すぐさま陣を組み上げて、発動するのは埒外の力。
 邪仙の放った雷撃を打ち消すように、冬季が生み出したのは世界を覆う稲妻だ。
 最初の一撃で近くにいた者は焼け焦がした。けれど敵の数はまだまだ多い。
「黄巾力士、今日は少しばかり無茶をしてもらいますよ。邪仙ごときに後れを取ったとあっては後で師になんと言われるか。しかも雷撃で人形ごときに負けたとなれば恥ずかしくて一生師の洞に伺候出来なくなります」
 にやりと笑みを浮かべ、冬季は雷公鞭を強く握る。
 さてさて、どのような戦いを繰り広げようか。

 敵の攻撃は苛烈だが、守りは黄巾力士に任せておけば大丈夫。
 戦いが終わった頃にはボロボロになってしまうかもしれないが――今日のところは必要経費と割り切ろう。
 冬季は術式を絶えず展開し続け、迫る邪仙達を次々に撃ち抜いていく。
 その最中に敵の様子を観察すれば、彼女達の行動方針もよく理解できた。それなら利用させてもらおうか。
「このッ……!」
 ちょうどいいところに、無鉄砲な個体が冬季の懐目指して飛んできた。
 だから冬季は身体を傾け――一瞬で彼女の元へと肉薄する。
「なっ……」
「油断しましたね?」
 流れるような体術で邪仙を捕らえ、そのまま彼女の身体を自分の前へ。
 同時に飛んできた雷へ向けて邪仙を投げつければ、聞こえてきたのは悲鳴と哄笑。同士討ちすら楽しむとは、難儀な存在だ。
「――ええ、邪仙の少女達よ。私は絶対に負けられないのですよ。持てる力の全てを以って、勝たせて頂きます」
 冬季は雷公鞭を振るい、死した仲間を嘲笑った個体を強かに打ち付ける。同時に眩い雷光が弾ければ、出来上がるのは黒焦げになった何かだ。
 その姿を一瞥し、冬季は――雷使いの妖仙は薄闇の都市を駆ける。
 その後ろに残るのは、きっと数多の邪仙だったものだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御堂・伽藍
アドリブ、即席連携歓迎

まう おどる
闇と光に泳ぐ…得手なれば

地形を利用し水属性の魔力を増幅
先制UC発動
氷水地空を攻撃と状態異常力
雷水地闇光空を防御力
に付与

情報収集世界知識追跡偵察索敵
前章にてばら蒔いたすてぜにから全敵の位置を把握

くものめからは にげられない

残像忍び足陽動迷彩フェイント闇に紛れる
残像を残し姿を隠しするすると接敵

射程に入り次第念動怪力4属uc
びょうしんで次々と串刺しマヒ捕縛気絶結界術
敵を凍らせて氷像を次々作成
二回攻撃フェイント念動怪力4属性UC罠遣い
地に転がってるすてぜにを踏ませて敵だけを凍らせる

敵の攻撃を落ち着いて見切り
フェイント誘き寄せ陽動釣り敵を盾にする
凍った敵を避雷針にして攻撃を逸らす

窮地の仲間は積極的にかばい援護射撃

おにさんこちら てのなるほうへ
残念、それは大外れ♪

すいそうのそこ うみのそこ
鎮め沈め骸の海へ

さようなら
さようなら
御然らば
御然らば




 異変が起きてすぐに聞こえたのは、街中に散らばったすてぜに達の声なき声。
 それをしっかりと聞き届け、御堂・伽藍は雷鳴響く街を駆けていく。
 その最中に六腕をゆらりと踊らせれば、伽藍の元に集まるのはたくさんの魔力達だ。
 ネオンの輝きや薄闇の魔力は自分を守る盾に。店先に置かれた氷や微かに感じられる地脈の魔力は矛に。
 そして幾つもの水槽から水の魔力を拝借すれば、戦う準備は万全だ。
「まう おどる。闇と光に泳ぐ……得手なれば」
 すてぜに達の声を聞き、路地裏や入り組んだ建物の壁を蹴って進んで。
 辿り着いたのは自他ともに傷つける雷で暴れ続ける邪仙の元だ。
「おっと、どうしてここに?」
「くものめからは にげられない」
「面白い、お前も踊れ!」
 ニヤリと笑みを浮かべる邪仙に対し、伽藍が向けたのはあどけなくも真剣な眼差しだ。
 挨拶代わりに放たれた雷撃を水の盾で弾きつつ、軽くステップを踏んで飛び込むのは都市の影。
 気配を殺して、一歩一歩相手に近づいて。敵の攻撃は強力だが大雑把、回避するのは難しくない。
 それよりも気がかりなのは――彼女達が暴れれば暴れるほど、様々なものが傷つくこと。
 悪い鬼さんは早く退治しなくては。薄闇の中、伽藍は静かに呼吸を整え――そして再び舞台へ躍り出る。

「おにさんこちら てのなるほうへ」
 するする、ふわり。一瞬の隙を突いて伽藍が飛び出したのは敵の背後だ。
 相手の驚く表情を無視し、突き刺すのはびょうしんの細い針。
 けれどその一撃は幾つもの魔力を籠めて放たれて、一瞬にして敵の力を奪い去る。
「このッ!」
 破れかぶれに放たれた雷撃は軽やかなステップで回避して。そうしてさらなる隙を生んだ敵には――。
「きって、むすぶ。わけて、まぜる。時の刃が切り分けし渾沌の魔力、転輪せり」
 突き刺した針に更に魔力を注ぎ込めば、邪仙の身体は内側から凍りつく。
 出来上がった氷の像から針を引き抜き、また一歩。
 そんな伽藍の様子に怒り狂ったように、飛び出してきたのは別の邪仙達だ。
 彼女らは仲間だったものを打ち砕くことすら厭わずに、激しい雷撃を伽藍へと向ける。
 それは敵討ちのための攻撃なんかじゃない。ただ自分達の怒りや嫌悪感をぶつけるだけの、醜い攻撃。
「残念、それは大外れ♪」
 金魚のように緩やかに、けれど確かな動きで雷撃は回避して。
 同時に敵が一気に迫ってきたのを確認するが、伽藍の顔に焦りの色は滲んでいない。
 だって、ここは既に蜘蛛の巣なのだから。

 怒りのままに突き進む邪仙達は、足元の奇妙な感触に目を見開く。
 気付けば彼女達の足元には――幾つものすてぜにが落ちていたのだ。
「すいそうのそこ うみのそこ。鎮め沈め骸の海へ」
 歌うような伽藍の声に合わせて、炸裂するのはすてぜに達の魔力。
 それらは踏み込んできた愚かな邪仙達を凍らせ、彼女達も仲間のような氷の像へと変えていく。
 ――邪仙達は気付いていない。ここは水槽、蜘蛛の巣、みんなの場所。
 彼女達がいくら踏み荒らそうとも、既に張って巡らされた様々なものが、強固な守りとなっている場所。
「さようなら、さようなら。御然らば、御然らば」
 氷の像を砕きつつ、伽藍は再び踊るように街を行く。
 すてぜに達の声を聞き、金魚や人々を守るため。
 獲物が全部消えて無くなるまで、蜘蛛の踊りは終わらない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天星・零
【零鏡】
enigmaで夕夜も一緒に

基本的に常に【第六感】を働かせてどんな状況になっても対応できる様にしておく

使う武器

虚鏡霊術
零域鏡界

夕夜
Punishment Blaster

共通
Ø

【行動】
零『もー、お姉さん。そんなことしないで僕達と遊ぼうよー。
普通に金魚見たり、りんご飴食べたりさ。その方が楽しいと思うんだ!』

そんな事はできないので

夕夜「やっぱりこうなるよなぁ…あぁ、残念だ』

夕夜がメインで戦闘します。
鏡介さんにも気を配り戦況を把握して上記武器を臨機応変に使い対応

彼女が気を取られてる間に零は零域鏡界の結界と指定UCを発動
舞台は非現実な無限に続く神社の中
歌いながら彼女を追い詰めます
彼女が逃げようとしても【追跡】して逃さず
【結界術】に閉じ込め彼女からは認識できないところからの攻撃と零域鏡界の自身を含めた悪霊で徹底的に容赦なく攻撃
虚鏡霊術で作った斧を投げたり鏡の中から攻撃したりホラーのように攻撃
姿とかも血塗れの姿に変わって日本ホラーゲームに出てくるような悪霊の感じに

台詞やアレンジは臨機応変にお任せ


夜刀神・鏡介
【零鏡】
まずは屋台を足場に高くジャンプ。何処かにいこうとする邪仙達の頭上を飛び越え正面に立って注意を引いておこう

いやまったく。折角の祭りを台無しにしようなど無粋にも程がある
今ならまだ間に合う……が通じるならそもそもこんな事はやらないだろうし。そうなれば戦うしかないよな

神刀を抜いて敵と相対
性格を考えれば敵が逃げる事はないだろうが、一応逃げられないように注意を払いつつ積極的に切り込み、遠くの敵には斬撃波を飛ばして対処
敵が飛ばしてくる電撃には絶技【無為】。さっと切り払って零達をカバーしよう

零がUCを発動すれば、一瞬巻き込まれて混乱しかけるが、素早く状況を把握
一度足を止めて精神統一で息を吸い、吐き出すと共に神気を開放
振り払ってみれば、周囲には攻撃を受ける邪仙達……

夜の祭りには悪霊が出て、悪い子を連れて行く……さっきの話通りってか?
いや、こいつらは邪仙だし実際は子供って事はないだろうけど

思わずそんな益体もない事を口に出してしまうが、さておき改めて残りを倒してしまおう
最後まで油断せずきっちりとな




 敵の数はかなり減っているようで、残っているのは数人グループの一団のみだ。
 けれど彼女達は命ある限り、何かを壊し殺そうとし続けるだろう。
 そんな邪仙の頭上からふわりと姿を現したのは――三人の猟兵だ。
 彼らは屋台を踏み越えて、堂々と敵の前へ姿を現す。好戦的な相手だ、こうやって勝負を挑めば決して逃げたりしないだろう。
『もー、お姉さん。そんなことしないで僕達と遊ぼうよー。普通に金魚見たり、りんご飴食べたりさ。その方が楽しいと思うんだ!』
 無邪気な笑みと共に語りかけるのは天星・零。彼の言葉に、邪仙達が返したのは呆れたような笑みだ。
「下らない。そんな遊び、私達には何の価値もないものだ」
「今ならまだ間に合う……が通じるならそもそもこんな事はやらないだろうな。いやまったく。折角の祭りを台無しにしようなど無粋にも程がある」
 返された言葉に夜刀神・鏡介が向けるのは、諦観の混ざった溜息だ。
 その隣では天星・夕夜も小さく息を吐く。
「やっぱりこうなるよなぁ……あぁ、残念だ」
「ああ、戦うしかないな」
 鏡介が神刀を引き抜けば、夕夜も合わせてPunishment Blasterを構える。
 それなら相応しい戦場を用意しようか。邪仙達が雷撃を弾けさせようとするのを確認し、零は静かに瞳を閉じる。
『鏡介さん、少し時間を稼いでくれる?』
「ああ、任せてくれ。夕夜、行こう」
「分かった。それじゃあ……」
 零がユーベルコードの準備を始めたのを確認し、鏡介と夕夜は武器を片手に前へと躍り出る。
 それに合わせるように、敵もまた彼らの元へと突っ込んでいく。

 夕夜の援護射撃を頼りに、鏡介が始めたのは積極的な切り込みだ。
 相手の数は多くないが、攻撃は苛烈。気を抜けばすぐにやられてしまうだろう。
 そう思った瞬間に、飛び込んでくるのは眩い光。合わせるように鏡介は神刀を構え意識を集中する。
「我が刃にて、その一撃を絶つ――」
 絶技【無為】。力の流れを見極め放つ斬撃は迫る雷を切り裂いて、進むべき道を切り開く。
 そのまま更に前へと踏み込み、一閃。その衝撃で数体の邪仙を斬ったのを確認し、一歩下がって。
 同時に聞こえてきたのは、零が紡ぐ歌声だ。
「良い子や良い子 静かにお休みなさい 良い子にしないと悪魔がやってきて 君の脇腹を割いて――」
 ――暗闇へ連れて行っちゃうよ。
 歌声に合わせ、周囲の景色がぐにゃりと歪む。
 ネオンの光も逃げ惑う人々や金魚も、全て闇へと溶けていって――出来上がるのは無限に続く神社の世界。
「これは……」
「鏡介、大丈夫だ。零の結界だよ」
 一瞬面食らったように立ち止まった鏡介だが、夕夜の言葉ですぐに現状を理解する。
 見れば零の姿は消えているが、それも彼の作戦通りなのだろう。
「ありがとう、状況は把握出来た。それなら……」
 鏡介は改めて地面にしっかり足を付け、呼吸を整え直す。ゆっくり息を吸って、吐いて――同時に神気を開放して。
 その流れで刀を振り払えば、聞こえてきたのは少女の悲鳴。邪仙達も突然の異変に混乱し、逃げ惑っているようだ。
「なるほど、この調子で戦えば大丈夫そうだ。けれど……彼女達の様子もおかしいな」
 安堵と共に鏡介の脳裏に浮かんだのは疑問だ。
 敵はあれだけ好戦的で危険な存在。そう簡単に逃げ惑うとは思えないが――。
「ああ、あそこを見て」
 Punishment Blasterによる砲撃で逃げる敵を追い詰めつつ、夕夜が指差したのは少し向こうの道だ。
 そこにあったのは――何枚もの鏡だった。

 鏡の間を駆ける邪仙達は、顔に恐怖を滲ませひた走る。
 走っても走っても、聞こえてくるのは不気味な歌声。なぜ、どうして振り切れない?
 恐怖と疑問に支配される彼女達が見つけたのは、鳥居の片隅に置かれた鏡だ。
 その鏡を見つめた瞬間、彼女の顔は弾け飛ぶ。鏡の中から飛び出した斧が、邪仙の頭を叩き割ったのだ。
『――捕まえた』
 くすくす笑うような少年の声に、慌てて残りの邪仙は走る。
 けれど彼女達も逃げられはしないだろう。不可思議な力で足を止められ、動けなくなってしまうのだから。
「夕夜、合わせてくれ!」
「任せろ!」
 そこに飛び込んでくるのは神気を纏った鏡介と大きな剣を構えた夕夜だ。
 二人の放つ斬撃は足を止めた少女達を一瞬で切り裂き、骸の海へと叩き込む。
 そんな二人の視線に入ったのは、やはり鏡だ。その中にいたのは――血塗れの少年だ。
 鏡介も予想外の光景に少し驚くが、夕夜が落ち着いているのを確認すればすぐに肩の力を抜いた。

「そうか、零はそちらにいるんだな」
『うん、びっくりした? ここは僕の結界だから、雰囲気もそれっぽくって感じかな』
 零が仲間に向けるのは、穏やかな笑み。けれど敵にはきっと何よりも恐ろしい笑みを向けつつ戦うのだろう。
 そんな友人の姿を見遣り、鏡介が思い出すのは戦いが始まる前の会話だ。
「夜の祭りには悪霊が出て、悪い子を連れて行く……さっきの話通りってか?」
 邪仙が子供かどうかは判断に迷うところだが、話の筋としては通っているように思える。
 まさか零はここまで考えていたのだろうか。悪戯っぽい笑みからは、なかなか真意が読み取れない。
『いいよね、こういう特別な日の怖い話って』
「仕掛け人は俺達だけどな。お化け屋敷のスタッフってこんな気分なのかな」
 苛烈な戦いの最中、零と夕夜が浮かべるのは子供っぽい笑み。
 そんな二人の様子を見れば、鏡介も少しリラックスして――そして再び戦う力が湧いてくる。
「よし、この調子で残りの敵も倒してしまおう。最後まで油断せずきっちりとな」
『はーい!』
「ああ、行こう!」
 三人の様子は仲良しの友人らしい和やかなそれだが、再び戦いへと没頭すれば勇ましいものへと変わる。
 零が悪霊らしく邪仙達を恐怖の世界へ叩き込めば、夕夜がそこにすかさず刃を叩き込む。
 そして鏡介が神気と共に刀を振るえば――悪しきものは全て消え去るだろう。

 戦いが終わり、結界が溶けてなくなれば――戻ってくるのはお祭りの景色。
 そこに残るのは猟兵達と、金魚と九龍城砦だけだ。


 こうして猟兵達は邪仙の企みを打ち砕き、楽しいお祭りを取り戻す。
 猟兵達の活躍により、お祭りの被害も大きなものにはなっていない。金魚も人々も、みんな無事だ。
 壊れたものをある程度片付ければ、祭りも再開するだろう。

 九龍城砦を、再び金魚が泳いでいく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年05月29日


挿絵イラスト