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租界を泳ぐ(作者 ささかまかまだ
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#封神武侠界  #戦後  #租界  #九龍城砦 


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 薄暗いはずの九龍城砦に、ひとつ、ふたつと明かりが灯る。
 今日はちょっとしたお祭りだから、小さく光を灯していこう。
 まずはガラクタで組んだ椅子や机を置いて、その周囲にはいくつもの屋台を広げていって。
 更に周りに置かれるのは――何匹もの金魚を入れた、水槽だ。

 水槽の中で、金魚達はゆらゆらゆれる。
 赤、白、黒、金。
 小さな明かりで鱗を煌めかせつつ、ゆらゆらゆらり。
 気が付くと見物客達も集まって、水槽の周りでは金魚の鑑賞会が始まったようだ。
 人々は食事や酒を片手に、金魚達をのんびりと楽しんでいる。
 ゆらゆら、ゆらゆら。
 次第に世界全体が夢心地に変わっていって――金魚もぷかりと空を舞う。

 誰かが言った。あれは仙女様が育てた金魚なんだって。
 だから羽衣の代わりに、鰭で空を舞い踊るんだ。
 それが嘘か本当かは分からない。そんなこと、ここではきっと些細なことだろうから。

 ゆらゆら、ゆらり。
 舞い踊る金魚と、笑う人々。
 その後ろで誰かが何かを企んでいても、きっと誰にも気付かれない。


「集合に感謝する。今回は封神武侠界、九龍城砦で起こる事件の解決を頼みたい」
 集まった猟兵達を確認しつつ、口を開くのは呉・深(星星之火・f30169)だ。
 彼の語った『九龍城砦』は封神武侠界の香港租界に存在する地域で、人も仙人もオブリビオンも暮らす不安定な場所だ。一帯を支配していたコンキスタドール『編笠』は倒れたが、彼女亡き後も事件には事欠かない場所だろう。
「どうやら九龍城砦で行われる祭りに乗じて、虐殺を企てているオブリビオンがいるようでな。そいつを誘き寄せるため、まずは祭りに参加して欲しい」
 話を続けつつ、深はグリモアで九龍城砦の様子を映し出す。
 どこか薄暗く、様々な建物が入り組んだ高層建築はいつ見ても圧巻で。暮らす人々はどこか退廃的な雰囲気を纏い、街の様相も相変わらず混沌としている。
 けれど映し出された光景には、更に不可思議なものも映り込んでいた。

 まず目に付くのは、並べられた沢山の水槽達。
 その中には赤や金、白色などの鮮やかな色を纏う金魚達が泳いでいた。
 更に数匹の金魚は水槽を飛び出して、ふわふわと空中を舞い踊っている。
 人々はその様子を眺めながら食事を取ったり、金魚に餌をやったりして楽しんでいるようだ。
「……これは『桃源郷で育てられた』という名目の金魚を楽しむ祭りだそうだ。実際空を泳ぐ金魚なんか、仙人でなければ育てられなさそうだが……」
 本当に仙人が育てた金魚を披露しているのか。それともどこかの盗人が桃源郷から持ち出して来たのか。
 実際の真偽は不明だし、九龍城砦でそんなことに拘る者も多くはない。
 とにかく人々は多種多様な金魚を楽しみながら、祭りの時間をゆるりと過ごしているようだ。

「オブリビオンを誘き出すために、皆にはこの金魚の祭りに参加して欲しい。のんびり金魚を眺めたり、餌をやったり……店によっては金魚すくいなんかをやっているかもしれないな」
 九龍城砦の内部では、祭りに合わせて様々な出店も賑わっているようだ。
 屋台では肉包や春巻き、大餅や小籠包といったグルメが提供されており、それらを片手に金魚を楽しむことが出来るだろう。
 成人ならば酒を片手に過ごすのもきっと楽しい。
 不思議な建造物と金魚の組み合わせは、ぼんやり眺めているだけでもふわふわとした気持ちになれそうだ。

「ただし、ここは治安がとても悪い。手癖の悪い者もいるだろうし、その辺りは気をつけてくれよ」
 一言そう付け加え、深は更にグリモアを操作する。
 そこに映し出されたのは、どこか凶悪な雰囲気を纏った少女達だ。
「こいつが虐殺を企てているオブリビオン『混沌霊珠・詩歌』、宝貝あがりの邪仙の集団だ。敵味方問わず好き勝手に殺す危険な輩だ、出現したら出来るだけ速やかに討伐してくれ」
 敵を倒すなら、戦場にあった雰囲気で。
 時にどこかノワールに、時にアクロバティックに。全力で敵を打ち倒せば、金魚の祭りだって問題なく続けられるはずだろう。

「租界はまだまだ謎の多い場所だ。けれど一つ一つ事件を解決していけば、何かしらの影響は及ぼせるだろう」
 グリモアを転移のための状態に切り替えつつ、深は猟兵達の方へと顔を向ける。
「祭りは楽しみ、そして事件は止めてくれ。よろしく頼むぞ」





第2章 集団戦 『混沌霊珠・詩歌』

POW ●電撃翔
全身を【自他ともに傷つける電撃 】で覆い、自身の【殺意】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD ●指雷矢
【指先 】を向けた対象に、【電撃】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ ●放天雷掌
【掲げた手のひら 】から、戦場全体に「敵味方を識別する【電撃】」を放ち、ダメージと【電撃による麻痺と火傷】の状態異常を与える。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 ふいに聞こえてきたのは、爆竹なんかと比べ物にならない破裂音。
 無人の屋台を破壊しつつ、そこに姿を現したのは――異質な気配を纏った少女達だ。
「あー、誰も殺せなかった? つまらない」
「大丈夫。まだまだ殺せるやつは沢山いる。間抜けな人も魚も、好きなだけ殺し尽くそう」
 物騒な言葉を交わしつつ、少女は周囲の様子を眺める。
 幸いなことに、この都市は騒動に慣れている。これだけの異変が起これば、人も金魚もさっさと逃げ出すだろう。

 しかし何もしなければ、少女――の姿をした邪仙『混沌霊珠・詩歌』達は人々を追い、殺していくだろう。
 いくら物騒な九龍城砦といえど、大量の虐殺が起こるとなれば見過ごすことは出来ない。
 彼女達を止めるには、猟兵達が戦うしかないだろう。
 詩歌は殺し甲斐のない一般人や金魚より、猟兵のような強者を叩き潰すことを好む。
 その性質やこの都市を利用しつつ立ち回れば、勝機はきっと掴めるはずだ。

「あは、あはは! 歌い、謳え! お前も、アタシも!」
 からから笑う邪悪な声が開戦の合図。
 誰が九龍城砦という水槽を制すのか、はじまり、はじまり。
ガーネット・グレイローズ
騒がしくなったと思えば…どうやら
オブリビオンが現れたらしいな。
仙術を身につけながら、力に溺れた俗物か。
その力を発電にでも使えば、有用なものを。

敵の攻撃能力は電撃だけあって、速度はかなりのもの。
ここは私も機動力を強化しよう。
《仙術》を応用して【グラビティマスター】を発動、回避力を
強化しての《空中戦》だ。ひらひらと水槽を泳ぐ金魚のように、
3次元機動と緩急をつけた《フェイント》で攪乱しつつ、
空からクロスグレイブの《レーザー射撃》。
…スピードは速いが、直線的で単調だな!
ビルディングの壁を蹴って、620km/hの速さで急降下し、
敵の頭上から《功夫》を使った足技で顔面を蹴りまくる!



 造りのしっかりした店の中からでも分かる、異質な喧騒や破壊音。
 それらに気付いた瞬間、ガーネット・グレイローズは勢いよく料理店を飛び出す。
「騒がしくなったと思えば……どうやらオブリビオンが現れたらしいな」
 敵の姿は確認出来た。見た目こそ少女のそれだが、彼女の纏う気配は仙界のそれが淀んだものだ。
「仙術を身につけながら、力に溺れた俗物か。その力を発電にでも使えば、有用なものを」
「そんな下らないことを楽しめるものか。さあ、お前も踊れ!」
 ガーネットの言葉を受けて詩歌が嗤う。それと同時に迸るのは凄まじい電撃だ。
 その速度は光そのもの、油断していては一瞬で飲み込まれてしまうだろう。
 だからこそ、此方も対抗するなら仙術を。ガーネットは静かに呼吸を整え全身に気を巡らし――そして高く飛び上がる!
 負けじと詩歌も空を飛び、ガーネットを追いかけている様子。それに合わせて奔る電撃は、薄暗い世界を煌々と照らしていた。
「待て!」
「待てと言われて待つやつはいないさ。さあ……競争でもしようじゃないか!」
 思ったよりも相手が手練だったことを察してか、詩歌の顔には怒りが滲む。
 一方ガーネットの顔にあるのはどこか無邪気な、それでいて真意の読めない意味。
 ゆらゆら、ゆらゆら。先程まで眺めていた金魚のように。この九龍城砦で、より美しく泳げるのは自分だと――その顔が何よりも強く示している。

 二人の仙術使いの空中戦は、アクション映画のような派手さと苛烈さを帯びたものとなった。
 詩歌はただひたすらに電撃を放ちつつ、雷光のように空を駆ける。
 一方ガーネットは見事な緩急をつけつつ、ひらりひらりと優雅に立ち回っていた。
 時折二人の拳がぶつかり合い、その度に火花が舞って。そうして生まれた隙を見つけ、ガーネットは手近なネオン看板へ足をかける。
 そうして体躯を安定させつつ取り出すのはクロスグレイブ!
 詩歌のスピードは確かに見事で追いかけるのは一苦労だ。それでも――赤い瞳からは逃れられない。
「……スピードは速いが、直線的で単調だな!」
 相手の動きを予測し放たれたレーザーは、見事に邪仙の足を穿つ。
 衝撃で動きを止めた詩歌へ向かって、勢いよく看板を蹴って飛び出せば――。
「私もここの世界ではしっかり修行させてもらったからね。その成果を――受け取れ!」
 頭上から放たれた蹴りが見事に邪戦の頭に叩きつけられる!
 相手の消滅を確認しガーネットも地上へ戻れば、聞こえてきたのは疎らな拍手。
 やれやれ、こんな状況でも観戦していた奴がいるとは。この世界の混沌を改めて認識し、ガーネットは小さく笑みを浮かべるのだった。
大成功 🔵🔵🔵

葛籠雄・九雀
話が通じる類の敵ではなさそうであるな。それならばこちらも容赦なく戦えるというものである。
さて…戦場にあった雰囲気か。ふむ。
生憎要望の歌も謳も苦手でな。

だが曲芸なら出来る。

足場になりそうなところを経由して、金魚の中、祭りの余興の見せて跳ぶ走るでおびき寄せ、幾らかを分断して対処するか。オレはこう見えて綱渡りなども得意でな、ハハハ!

雷撃は見切り、周囲に被害が出にくいところまで誘導したところで、カウンターでウルティカ・ディオイカを叩き込む。目や口内、延髄などに10cmほどの針が突き刺さればある程度は痛かろう?
もし体液があれば、猶更。
…人型である故急所も人体として予想しておるが、合っておるのであるかな。



 響く轟音、悲鳴、それから哄笑。
 これだけの騒ぎになれば、表に出たほうがいいだろう。葛籠雄・九雀は路地裏からのそりと身を乗り出し、周囲の様子をざっと伺う。
 見えたのは――人々を追い立てる邪仙・詩歌の姿。幸い追いかけられていた人々はどうにか逃げ切れそうだ。
 それなら自分はどうすべきか。ヒトの姿をしている相手だし、ちょっと会話でもしてみようか。
 けれど聞こえてくるのは一方的な言い分や笑い声だけ。
「……話が通じる類の敵ではなさそうであるな」
 けれどそれは良いことでもある。そんな相手なら、容赦せずに戦えるだろうし。
 それなら早速戦いに向かいたいが――この薄暗い都市らしい戦いとは、どのようなものだろう。
「あはは、逃げるだけではつまらない! 歌い、謳え!」
 けたけた嗤う邪仙の声。ううむ、歌も謳も苦手だ。彼女の要望には応えられないだろう。
 それでも――九雀は頭上に輝くネオンを見上げ、足にぐっと力を入れる。
 そのまま高く高く飛び上がり、泳ぐ金魚さんとこんにちは。そのまま足をつけるのは、張り巡らされた電線の上だ。
「なんだ、曲芸師か?」
「どうだろう。だが曲芸なら出来る」
 細い電線や崩れ落ちそうな看板を足場にし、九雀は自在に薄暗い空を行く。
 その背後から何人もの少女の声が聞こえてくれば、結果としては上々だ。

「オレはこう見えて綱渡りなども得意でな、ハハハ!」
「あは、やっぱり曲芸師だったんじゃないか。もっと踊れ、踊れ!」
 背後から聞こえる声に時折振り返りつつ、九雀は更に九龍城砦を進んでいく。
 飛んで跳ねて笑って。九雀の足取りは踊るように軽やかだが、その間もずっと周囲の観察は怠らない。
 見えたのは人の気配がほぼ消えた広場。あの場所なら戦闘だって問題なく行えるだろう。
 だから九雀は勢いよく建物の壁を蹴り地上を目指して――すぐ隣で指先を向けた邪仙と視線を交わす。
 同時に身を捩らせ、飛んできた光の矢を回避して。勢いのまま長い手足をぐるりと踊らせ、九雀の周囲に展開されたのは無数の思念針だ。
 その針は煌めく雷光を反射しつつ、次々に少女の元へと殺到していく。
 愉しげな笑みを浮かべる目、口、細い首、その他人体の急所になりそうなところ諸々。
 それらを貫かれた瞬間、邪仙が上げたのは声にならない悲鳴。
 彼女の身体は地面に激突するより早く、骸の海へとずぶりと溶けた。
 九雀の方はきちんと地面に足をつけ、自分が通ってきた空をさっと見上げる。
 そこには戦闘のことを知ってか知らずか、ゆらりと金魚が浮いている。なんともマイペースなものだ。
 彼らともう少し戯れていたいけれど、戦闘音はまだまだ響いている。
「……うむ、敵の急所の予想は合っていたな。この調子で行こうではないか」
 ぷかぷか金魚に見送られつつ、九雀は再び九龍城砦を駆け回る。
 その姿もさながら、この都市を自由に泳ぐようだった。
大成功 🔵🔵🔵

夜鳥・藍
無粋な方々ですね。
こういったお祭りで多少のトラブルは許容範囲ではありますが、ここまでの物ですと、ね。

電撃避けもかねて一旦身を隠しましょう。昔のように存在感を薄くして目立たないようにして。
あとは索敵で相手の位置を補足して、鳴神を投擲しかつ念動力で操作してマヒ攻撃をします。最低でも掠るだけで十分です。あとは竜王さんの雷撃が当たれば。同じ雷による攻撃ですのでどこまで通用するかわかりませんが……。
あれだけ騒がしいのですから見つからないようにだけ気を付ければ音で見つかる事も避けられるでしょう。
電撃耐性で耐えるようにしますが、万が一向こうの攻撃が当たったなら火炎・激痛耐性で我慢します。



 破壊された建物や逃げる人々の声。明らかに感じ取れる異変を前に、夜鳥・藍の顔に浮かぶのは真剣な表情だ。
「……こういったお祭りで多少のトラブルは許容範囲ではありますが、ここまでの物ですと、ね」
 邪仙達はなんと無粋な方々か。
 けれど相手が分かりやすい暴れん坊なら相応のやり方がある。それこそ、この混沌の都市に相応しいやり方が。
 だから藍は散らばる物や入り組んだ建物の影へ身を潜め、静かに呼吸を整える。
 手にはしっかりと鳴神を握りしめて、必要以上の戦意は表に出さないように。
 響く雷の音、邪仙の笑い声、何かが崩れ壊れる音、金魚、混沌の世界の影。
 それら全てに溶け込むように気配を薄れさせた藍は――ただ静かに、邪悪なる者の元を目指す。

「あは、あはは! どこだ、どこだ!」
 邪仙達はただひたすら破壊に没頭しているようで、その在り方は滅茶苦茶だ。
 彼女達は目に付く建物や気配に向けて、ただひたすら攻撃を繰り出している。
 その対象は仲間でもお構いなしのようで、それでも彼女達はただ嗤う。
 このまま自滅を待つのも作戦としては考えられるかもしれないが――その間も、きっと多くの人が傷ついてしまう。
 だから藍は鳴神を握る手に力を籠めて、宙色の瞳でじぃっと敵を睨む。
 相手が雷を放つ瞬間、立ち止まった瞬間を狙って――まずは鳴神を投擲。
 その刃は邪仙の腕を掠め、建物の壁へと突き刺さる。
「誰だッ!」
「――竜王招来!」
 邪仙の視線が藍へと突き刺さると同時に、叫ぶ。
 神器によって刻まれた傷に呼応するように姿を現したのは巨大な竜王だ。
 彼の放つ電撃は邪仙のそれよりもよっぽど凄まじい。天罰の如き雷光が薄暗い世界を奔れば、残るは何かの黒い影だ。
 そのまま藍は刺さった鳴神を回収し、再び影の中に身を潜める。それと同時に竜王の気配も薄れるが、彼もまた呼べばすぐにやってきてくれるはずだ。
 今の攻撃でなかなかの音と光が弾けたのだが、それに呼び寄せられる者はいない。ただの人なら恐れをなして逃げるだろうが、敵も来ないということは――。
「……それだけ周囲が騒がしいということですよね」
 好都合だけど、好ましくはない状況。それを再認識し、藍は小さく息を吐く。
 ならば一刻も早く止めなければ。藍は決意を固めつつ、更に別の敵を探す。
 邪仙を見つければ何度でも刃を振るい、竜王と共に倒していこう。
 だから今だけは、混沌都市の薄闇を味方につけて。藍は自分の仕事をしっかりとこなしていくのだった。
大成功 🔵🔵🔵

葉山・鈴成
カエナちゃん(f27672)と

せっかくの楽しい雰囲気が台無しっすねぇ
あの電撃さ、すげーヤバくないっすか?
ほら、カエナちゃんは人魚だし金魚もさぁ

ひゃはっ、驚いた?
いつの間に入れ替わったかの答えは『どっちも俺だから』っスよ

ビリビリ電撃なら俺も負けてないッス!
カエナちゃんにも金魚にもアンタの電撃は当てないっすよ!

額には敵の電撃を集める避雷針の一本角
鬣を靡かせ荘厳な雰囲気と雷を纏う雷獣へ『ナリキル』

さぁ行くぞ!
天より轟く我が雷、逃れる術はなし!
敵の雷を弾き飛ばす勢いで放ち感電にて敵の動きを封じる
あとは深海の魔女へと託すとしよう

儚く消える呪いには最大の賛辞を
フハハハ、なんと美しくも酷な御業よの。我が友よ


カエナ・ネオフォカエナ
鈴成(f28041)と

今宵の祭りに似合わぬ歌声だこと
ちょっとばかし灸をすえてやらねばいかんの

確かに水と雷、相性が悪い
とりあえず金魚達は安全な場所に隠れておいで?
わらわ達が必ず守るからのう

ね!鈴成り…っていつの間に入れ替わったのじゃ!?
さすがのわらわも驚きなのじゃ!
妖怪ナリキリ恐るべし…

頼もしいのう、鈴成
電撃集める避雷針に巻き込まれぬよう距離を取り
攻撃の機を伺う

愛しき友
偉大なる雷獣『霹靂百雷』よ
天より降りし神の雷、実に見事じゃった!

後はわらわに任せて貰おうか
これでも深海の魔女を自称しておるのじゃ
舐めていると後悔するぞ?

短杖振るい放つバブル
敵へ振れれば発動する呪い
泡となる痛み、とくと味わっておゆき



 何処かから響いていた楽しげな声や歌は、強烈な破壊音によって掻き消される。
 その後ろで響くのは、邪仙の少女の笑い声。
 それを耳にし、カエナ・ネオフォカエナは真剣な表情を宿す。
「今宵の祭りに似合わぬ歌声だこと。ちょっとばかし灸をすえてやらねばいかんの」
「せっかくの楽しい雰囲気が台無しっすねぇ。それに、ほら」
 声をかけた青年が上を指差せば、迸ったのは青白い光。
 邪仙の放った雷から逃げるよう、金魚がわっと空を舞う。
「あの電撃さ、すげーヤバくないっすか? ほら、カエナちゃんは人魚だし金魚もさぁ」
「ううむ。確かに水と雷、相性が悪い。じゃが……」
 カナエはぷかりと空を浮かび、逃げ惑う金魚達を優しく撫でる。
 ひんやりした鱗を通し、大丈夫だと伝わるように。そっと、そっと。
「とりあえず金魚達は安全な場所に隠れておいで? わらわ達が必ず守るからのう」
 カナエの言葉を受け、金魚達は軒下や住民達の家に入っていく。
 邪仙は目に付く相手を狙っているようで、彼女達の目から逃れられれば暫くは安全だろう。
 けれどその安全もずっとじゃない。早くなんとかしなくては。
「早く行かねばな。ね! 鈴成り……って」
 カナエは地上へ降りると同時に隣に立っていた青年を見つめ――目を見開く。
 そこにいたのは先程までいた青年とは違う、黒い青年だ。
「いつの間に入れ替わったのじゃ!?」
「ひゃはっ、驚いた?」
 からから笑う青年の名は葉山・鈴成(右魂・f28041)。彼もまた『ナリキリ』の妖怪で、鈴成りの片割れだ。
「いつの間に入れ替わったかの答えは『どっちも俺だから』っスよ。でもカナエちゃんの驚く顔が見れたから満足っス!」
「さすがのわらわも驚きなのじゃ! 妖怪ナリキリ恐るべし……」
 カナエの方も驚いているが、同時に滲むのは微笑みだ。
 悪戯好きの友人がいつもの調子でいてくれることが、きっと今は心強いから。
「そんな恐ろしい妖怪と一緒なら、きっと大丈夫じゃな」
「俺もカナエちゃんと一緒なら百人力っス! それじゃあ行くっスよ!」
 二人並んで戦場へ。見送る金魚の視線を背中で受け止め、猟兵達は邪仙の前へ姿を現した。

「あは、なんだあれ? ただのヒトじゃない」
 邪仙達は鈴成とカナエの姿を見るや興味津々。彼女達の狙いがこちらに向くのは好都合だ。
 だから鈴成は堂々と前に出て、声を張り上げる。
「ビリビリ電撃なら俺も負けてないッス! カエナちゃんにも金魚にもアンタの電撃は当てないっすよ!」
 宣言と共に『ナリキル』のは、鬣を靡かせた荘厳な存在。
 ばちばちと弾ける雷を纏いつつ、鈴成の姿は一本角の雷獣へと変化した。
「カナエちゃん、こっちは俺が!」
「頼もしいのう、鈴成。少し時間を稼いでおくれ」
 鈴成が周囲を駆け出すと同時に、カナエは少し距離を取る。短杖をぎゅっと握りしめて備えるのは、魔女の呪いだ。
 必要なタイミングは友人が示してくれる。だからそれまでには必ず。
 響く雷撃の音を耳にしつつ、カナエの周囲に幾つもの泡が浮かび上がっていく。
 その様子を確認し、鈴成は更に力強く地面を踏みしめ、入り組んだ路地を駆け回りだした。

「雷の獣だ。あいつは絶対面白い」
「さあ踊れ、走れ!」
 邪仙達の関心はすっかり鈴成へと向いている。
 それだけでなく雷撃も向けられて入るが、多少の攻撃なら避雷針の角が受け止めてくれるだろう。
 敵を十分な数だけ釣れたと判断すれば、壁や地面を蹴って方向転換。
 目指すは準備を整えた魔女の元へ。つられた邪仙達が笑顔でこちらを一気に落とそうとすれば――。
「さぁ行くぞ! 天より轟く我が雷、逃れる術はなし!」
 邪な術で生み出されたものよりよっぽど強い雷で、強かな罰を下してやろう。
 雷に撃たれた少女達は身体を痙攣させ、その場に膝をついていく。
「……よし。あとは深海の魔女へと託すとしよう」
「愛しき友、偉大なる雷獣『霹靂百雷』よ。天より降りし神の雷、実に見事じゃった、後はわらわに任せて貰おうか!」
 ここまで頑張ってくれた友への賛美は互いに忘れず、後はやるべきことを。
 鈴成が道を開けたのを確認し、カナエは杖を掲げて彼の隣に並び立つ。
 その背後には――溢れんばかりの泡が舞い踊っていた。
「これでも深海の魔女を自称しておるのじゃ。舐めていると後悔するぞ?」
 この世界において邪仙というのは悪しきものだろうが、それよりも恐ろしいものが世界に存在するのだと叩き込んでやらなくては。
 例えば何にでも『ナリキル』妖怪だったり。例えばおとぎ話の魔女だったり。
「――泡となる痛み、とくと味わっておゆき」
 それを示すようにふわりと泡が邪仙達を包み込めば――彼女達の身体は溶けて、溶けて、一緒に泡と化していく。

 ふわふわと、邪仙だった泡は九龍城砦の空を舞う。
 それこそさっきまで優雅に舞っていた金魚のように。けれど彼女達が向かうのは精霊の元ではなく、骸の海だ。
 だからこそ鈴成は霊獣の姿のまま、からからと笑う。
「フハハハ、なんと美しくも酷な御業よの。我が友よ」
「そちらの『ナリキリ』もな。美しく、そして見事であった」
 泡がぱちんと弾ければ、聞こえてきたのはぱちぱちと雷光が爆ぜる音。
 その様子を見上げつつ、鈴成とカナエは笑い合う。
 そんな二人の様子を隠れていた金魚達も、穏やかに――そして感謝を籠めて見つめるのだった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵