7thKING WAR③〜お料理競技、殺ってCRY
●
悪魔王遊戯(デビルアトラクション)の一角、グルメコロシアム。
そこはありとあらゆる美食が揃う魔界最強の超巨大食堂。コロシアムの名に相応しい殺伐とした空間は、大食い客、うるさい食通、飛び入り料理人、食材希望、なんでも大歓迎! ……の、カオスかつエキサイティングな空間だった。
「でもね、それこそがスーパーカオスドラゴンの卑劣な罠なのよ」
そう少女は――ラヴィ・ルージュブランシュ(甘惑プロロンジェ・f35723)は語るのだ。
ここで少しスーパーカオスドラゴンについても触れておこう。
スーパーカオスドラゴンとはスーパーでカオスなドラゴンである。今回白羽の矢が立ったというか突き刺さった、7thKING候補の一人(?)である。KING候補というだけあってとってもワルいやつで、丁寧な立ち退き交渉の後に暴れまくって辺り一面を崩壊し続ける混沌領域に変えてしまったり、カオスなバイクで変身するライダー集団を従えていたりする、魔界随一のニセ乱暴者だ。
「で、そんなワルいこちゃんなドラゴンが、7thKINGの座に就くべくここグルメコロシアムで悪事を企てているらしいの。といってもここは人の出入りが多いから、ドラゴンは暴れまわったりはしないわ。立ち退き交渉が追い付かないから皆が痛い目に遭っちゃうもの」
その代わり、奴は郷に従う形で悪事を打ち立ててきた。
「それがね、食レポなの」
何故。
「グルメコロシアムはいつでもだれでも出入り自由の夢の食堂。だからお料理自慢だけじゃなくて、お料理を練習したい初心者の悪魔も来るんだけど――そんな悪魔たちが一生懸命作った料理を、スーパーカオスドラゴン配下の一流悪魔評論家がケチョンケチョンにけなして心をボキボキ折ってしまうの」
なんという極★悪★非★道!
身体の無駄な丈夫さに定評のある悪魔たちにしてみれば、カオスに暴れ回られた方がまだマシかもしれない。
「そんなワルい事されたら、カオスエネルギーがいっぱい溜まってスーパーカオスドラゴンが7thKINGになっちゃうかも! カオスエネルギーが何なのかよくわかんないけど。7thKINGになられても別にそんなに困らなそうだけど。でもとにかくそんなインケンなのは駄目よ。悪事はもっと明るく楽しく働かなくちゃ!」
明るく楽しい悪事とは。
「だからね、おまえ達には評論家役としてグルメコロシアムに行って欲しいの。カオス評論家たちが素人料理をけなす前に、うーんと褒めてあげて! 奴らが口を挟む暇もないくらいにね!」
つまり、明るく楽しく食レポしていれば勝手にカオス派の野望は打ち砕かれるわけだ。
随分簡単な仕事に思えるが……?
「あ、云い忘れてたけど、悪魔たちって色々ブッ飛んだ子が多いから、失敗料理もブッ飛んでるみたい。もちろん美味しい料理もあると思うけど、唐辛子を一振りするつもりが内蓋が外れて一瓶入れちゃったとか、人参と間違えてマンドラゴラ入れちゃったとか、そういうのが出てくるかもしれないから、ちょっとだけ覚悟はしておいた方がいいと思うのよ!」
ここは戦場である。
楽な仕事なんて、ないのである。
ion
●お世話になっております。ionです。
真の敵はガチデビルでもラスボスでも悪魔評論家でもなく一般悪魔かもしれない。
プレイングボーナス……素人料理を褒めまくる。
オープニング以上の情報は特にありません。
食べる料理は美味しいやつもあるし、世界中の不味さという不味さが地獄の狂騒曲を奏でているやつもあるし、猟兵じゃなかったら普通に死んでるようなやつもあります。
プレイングでそれとなく触れて頂けると助かります。お任せの場合はそんなに酷いことにはならないはずです。多分。きっと。
●プレイングについて
現在他のシナリオ執筆中ですので、受付までに少しお時間を頂きます。ご了承くださいませ。(追加OPでご案内予定です)
オーバーロードはいつ送って頂いても大丈夫です。
第1章 日常
『魔界グルメ食レポバトル!』
|
POW : 胃袋の頑丈さに任せて何でも食べる
SPD : 素人悪魔の調理技術に褒めるところを見つける
WIZ : 感動的な言葉を並べ、なんとなくいい雰囲気に持ち込む
|
●
「お前はオムライスというものが何もわかっとらんッ
!!!!」
ずだん、と四本腕の悪魔がテーブルを叩きつけた。
「いいか、半生みたいな中途半端な卵を“ふわとろ~💖”なんて言葉で誤魔化した奴を私はオムライスだとは認めん! 断じて認めんぞッ!!」
「そんな……! そんなのあなたの個人的な意見じゃないですか! 評論でもなんでもない!」
負けじと食って掛かる素人悪魔。何だコイツだの、生意気だぞーだの、いいぞもっとやれだのとヤジを飛ばすギャラリー。
「口ばかり達者だな。文句はせめて人様、いいや悪魔様に出せる料理を作ってから云うがいい」
評論家悪魔が新しいスプーンでオムライスをひと掬い、素人悪魔にずずいと押し付ける。
「ふわとろオムライスは悪魔の食べ物じゃないとでも?」
顔を悔しさでくしゃくしゃに歪めながら、素人悪魔はスプーンを受け取り自分の料理を口にする。
「う゛……っ! なんだこのしょっぱさは」
「ほれ見た事か」
やれやれ、と肩を竦める評論家。
「不味い料理だとしてもあまりに芸がない。砂糖と塩を間違えるだなんて何十年前のネタだ? お前の料理は失敗作としても失敗なんだよッ!!」
「し、しっぱいさくとしても、しっぱい……?」
がくり、哀れな素人悪魔は膝をつく。
え、これ明らかに素人悪魔の方が悪くない?
こんな連中を猟兵は褒めまくらなければならないの? 大変だねー、頑張ってね(他人事)。
==============
プレイング受付:5/8(日)朝8:31~
==============
乱獅子・梓
【不死蝶】
初めからけなすのが目的なのは許せんな
料理にも、一生懸命作った人にも失礼極まりない行為だ
そのふざけた野望、俺が打ち砕いてやる…!
…とは言うものの、ブッ飛んだ代物に当たったらどうしよう
と、戦々恐々しながら差し出されたのは、カレーライス
勇気を出して食べてみれば……あ、全然いける
煮込みが足りなくて人参やじゃがいもを噛むとガリッと音がするが
野菜のシャキシャキ感が好きな人にはこれもありだろう
「自分の子供が頑張って初めて一人で作った料理」
という感じで心が暖かくなるな…いや、子供居ないが俺
綾の方はどうだ? …何だその赤さ!!?
明らかにブッ飛んだ類の料理をニコニコと食べる綾…
俺に当たらなくて良かった…
灰神楽・綾
【不死蝶】
わぁ、梓がいつになくやる気満々だ
料理男子の血が騒ぐってやつだね
まぁ俺は美味しい料理が食べられれば何でもオッケーだけど
俺の前に出されたのは、多分カレーライス
というのも色がなんかものすごく赤い
綺麗な赤色だね、紅白みたいで縁起良さそう
一口食べてみれば、ガツンと来るような凄まじい辛さがやって来る
えっ…なにこれすっごい美味しい(←大の激辛料理好き)
こんなに刺激的な料理初めて食べたよ
辛い料理には愛用の激辛ソースをかけて食べることが多いんだけど
今回はその必要が無いくらいに美味しい
このカレーを作った子は将来ビッグになる気がするよ
むしろデビキン界の料理KINGになれるんじゃない?(べた褒め)
●ピリピリとゴリゴリ
そこは地獄の窯の蓋を開けたかのような光景だった。
――というよりもまあ、実際に魔界の窯があるのだけれど。
お料理がうまくなりたい悪魔が一生懸命創意工夫を凝らしたり(だいたいの場合においてド素人の創意工夫なんて無い方がマシなのである)、あるいは真面目に悪事を頑張りたい悪魔が一生懸命周りをあっと言わせる料理を作ろうとしていたりする、そもそもがカオスな場所であった。
そんなカオスワールドに愛が一切ない口が悪いだけの辛口評論家が来ちゃったのだから、さあ大変。
「初めからけなすのが目的なのは許せんな。料理にも、一生懸命作った人にも失礼極まりない行為だ」
料理への批判とは、問題点を明確にし、改善へと導くために行われるべきだと乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は思う。愛や優しさのない批判など、ただの言葉の暴力だ。
「そのふざけた野望、俺が打ち砕いてやる……!」
「わぁ、梓がいつになくやる気満々だ」
まるで少年漫画の熱血主人公みたいなセリフだと、灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)は感心したように云う。何だかんだ長い付き合いになるが、梓がここまで燃えている光景にはそんなにお目にかかれない。確かに彼は正義漢のお人好しではあるが、そもそも頻繁に怒りをあらわにするタイプではないのだ。その梓が、握りしめた拳をわなわなと震わせている。
「料理男子の血が騒ぐってやつだね。まぁ俺は美味しい料理が食べられれば何でもオッケーだけど」
「美味しい料理……美味しい料理なぁ」
我に返ったかのように力を抜き、美味しいのが来るといいな、と呟く梓だった。
「せめてブッ飛んだ代物じゃなければ……」
「あのっ、審査員さんですよね!?」
「オレ達二人でカレー作ったんだ! 味見してみてくれないか?」
審査員が座る長テーブルに座った二人組に、今まさにカレーをよそいながらお願いしてくる悪魔が二人。
「カレーか」
梓がホッと息をついた。カレーはとても懐が広い食べ物である。カレーなら多少隠し味が隠しきれていなかろうとどうとでもなる。
「いいね、カレー。是非味見させてよ」
わくわく楽しそうな綾の前に、ことりと置かれるカレーライス。
「…………」
ちょっと考えこみながら、サングラスをかけたり外したりしている綾。
何故そんな事をしているかというと、赤いレンズのせいでカレーの見た目を正しく認識できていないのではないかと考えたからだ。でもサングラスを外してもカレーは最初のイメージ通りの色をしていた。のみならず、レンズという盾を取り除かれた眼球は空気に乗って漂って来るカプサイシンの刺激をガッツリ受ける事になった。
「綺麗な赤色だね、紅白みたいで縁起良さそう」
そう。カレーは唐辛子の入れ過ぎで真っ赤だった。でも綾は平然としていた。
「いただきまーす。……えっなにこれすっごい美味しい!」
「やったァ!」
っょぃ。
一方、梓に差し出されたカレーライス。
「見た目は普通だが……」
だからこそ余計に怖い。ほら、この手のシチュエーションは見た目がクリーチャーな方が美味しかったりするじゃない。
(「めげるな、俺。カレーの懐を信じろ」)
恐る恐るスプーンでカレーをすくい、口に運んでみる。
(「あ、全然いける」)
美味しいかと云われれば、正直疑問は残る。でもこれはこれで。
「野菜に噛み応えがあって、シャキシャキ感が好きな人にはいいな」
実際にはシャキッというかガリッとする煮込みの足りなさだが、そしてルーも若干シャバシャバだが、まあまあまあ。
「本当ですか!?」
「ああ。何より愛情を感じるな。自分の子供が頑張って初めて一人で作った料理という感じで心が暖かくなる」
ちょうど持って来てくれた悪魔が幼い外見をしていたので、ついそんな感想も出てくる梓だった。
「まあ私魔女なのでこう見えて500歳なんですけどね」
「マジか」
魔界、カオス。
「また梓がお母さんみたいな事云ってる」
「せめてお父さんといえ。そういう綾の方はどうだ?」
からかうような声をあしらいつつ、梓は隣の皿を盗み見てみる。
「何だその赤さ!?」
仕事を忘れてついつい素の感想が漏れ出してしまった。
「さっきから妙に目がしぱしぱしていた原因はそれか……」
「これすごく美味しいよ。一口でガツンとすさまじい辛さがやってきてさ。こんな刺激的な料理初めて食べたよ」
みるみるうちに減っていくカレー。そばでは作った悪魔が照れくさそうに頭を搔いている。
「辛い料理には愛用の激辛ソースをかけて食べることが多いんだけど、今回はその必要が無いくらいに美味しい」
「ぁー…そういえばそんな事してたなぁ」
「君、将来ビッグになる気がするよ。むしろデビキン界の料理KINGになれるんじゃない?」
仕事で褒めているというよりも、本当にただただ素直な心からの称賛だった。
「その……何だ、適材適所だな」
梓が食べている少し味が薄めなカレーでは、綾は物足りなかっただろう。いやそれよりも、この激辛カレーだったら自分は完食どころか一口目で噎せ込んでいたに違いない。
(「俺に当たらなくて良かった……」)
とてつもなく機嫌のよい綾を見つつ、心からそう思うのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鵜飼・章
僕は鵜飼章…魔獣解体士
辺境グルメには一家言ある
珍しい魔界料理が食べられるんだってね
悪目立ちと審美眼と落ち着き効果で
何となく大物ゲスト感を出そう
これはとても独創的なスパゲッティだ
青と紫のケミカルなグラデーションに染まるソースへ
アラザンを散らし悪魔的甘さの誘惑をプラス
麺がミミズのように蠢いているのは
鮮度が抜群に優れている証だ
こんなグルメ見た事がない
よくわからない物こそ
口に入れる好奇心を持つべきだ
人間はそういう生物だから…
色々耐性はあるから平然と召し上がる
これトマトベースだったんだ
美しい…夜更けのポモドーロと名付けよう
一生懸命作った手料理は
真心が最大の隠し味だよね
貶すなんて酷いや(鵜飼流人間奥義正論
●夜更けのポモドーロ
「僕は鵜飼章……魔獣解体士。辺境グルメには一家言ある」
颯爽と現れたその人は、恐ろしく整った容貌で、謎の貫禄と共に云い放った。
「珍しい魔界料理が食べられるんだってね」
楽しみだ、と微かに微笑むその人は名乗りの通り鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)。
――誰? 知ってる? いいや。魔界の悪魔じゃないっぽいな。
悪魔たちからはそんなヒソヒソ話。でもなんだか。
「すごそう」
「わかる。すごそう」
「なんか貴族っぽいひらひらしたコートとか、首元のわしゃわしゃしたやつとか」
「なんか……只者じゃ無さそう」
いい子過ぎて真面目に悪い子している悪魔たちの世界である。カッコはとても大事だ。章の大物っぽい装いと所作は一瞬で受け入れられた。
「というわけで!」
「俺達の自信作、ぜひ食べてみてください!」
ずずい、と出されたのは小山もかくやという大盛の、……えーとなんだろう、多分スパゲッティだと思われる。
「これはとても独創的なスパゲッティだ」
大物ゲストが云うのだからスパゲッティで間違いないのだろう。具体的なビジュアルは彼の華麗なるトークから想像して頂こう。
「青と紫のケミカルなグラデーションに染まるソースへ、アラザンを散らし悪魔的甘さの誘惑をプラス。麺がミミズのように蠢いているのは鮮度が抜群に優れている証だ。こんなグルメ見た事がない」
――だ、そうである。普通スパゲッティには入らない筈のアラザンが一番マシな気がしてきた。
「さすが魔獣解体士さん」
「さっき他の評論家に、この麺は仕留め損ねてるゲテモノだってけちょんけちょんにけなされたんスよ」
「それは済まなかった。評論家を代表して謝罪しよう。彼らは新鮮なスパゲッティというものを知らないのだ」
僕も知らなかったけれど、とは云わない章である。
(「よくわからない物こそ口に入れる好奇心を持つべきだ」)
好奇心は時に猫をも殺す。
鵜飼章は、きっと人間である。だから多分死なない。狂気耐性とか激痛耐性とか環境耐性とか色々あるし――耐性? 料理ってそういうものだっけ?
どれがうまくいったのかは知らないが、平然と召し上がりナフキンで優雅に口元を拭う大物ゲスト。
「これトマトベースだったんだ。美しい……夜更けのポモドーロと名付けよう」
極彩色の銀河にゴリッゴリのお星様を散らした、実にアーティスティックな一品であった。
「一生懸命作った手料理は真心が最大の隠し味だよね。貶すなんて酷いや」
人の形をした誰かさんは、経験と思考からとびきり人間らしい事を口にするのだった。
「ぐぅ……っ!」
正論と、ついでに涼しい容姿からのとびきりの爽やかさに、カオス評論家は何も言い返せず悔しそうに唸るのだった。
大成功
🔵🔵🔵
鍋島・小百合子
評論なぞ料理の全てを決める要因にはならぬであろうに
出されたものを残さず平らげる事こそ人の道なり
鬼が出るか蛇が出るかいざ行かん魔境の底へ
ぐっ・・・
想像はできたが出された料理は混沌としたものばかりじゃの!
あれなぞは人の顔をした野菜を具に据えたかれー?(しかも真っ赤な色をした)じゃし、これなぞは味噌汁に毒々しい色をした茸類が入っておるぞ!
それでも!
食べれるものであると信じるしかあるまいて
うむ・・・
かれー?はあの見た目から想像のつかぬ程に甘々しく辛さと調和されておったし、味噌汁は毒は(激痛耐性のおかげで)そこまで効かなんだ
悪魔の料理、しかと堪能させてもろうたぞ
ごちそうさまじゃ!
アドリブ・絡み可
●かれー? と味噌汁
「評論なぞ料理の全てを決める要因にはならぬであろうに」
鍋島・小百合子(朱舞の女丈夫・f04799)はやれやれと肩をすくめる。由緒正しき女武者である小百合子だが、その前に食べ盛りの女性でもある。素性も知れぬ評論家とやらの言葉より、自分の舌で実際に味わう事実の方がよほど信頼に値する。
――が、今回はどうだろうか。何か既にコロシアムのあちこちから阿鼻叫喚が轟いている気がする。
「何が待ち受けていようと、出されたものを残さず平らげる事こそ人の道なり。鬼が出るか蛇が出るかいざ行かん魔境の底へ」
武士に二言はない。覚悟を決めて小百合子は色んな意味で魔境な場所へと身を投じていくのだった。
「ぐっ……」
が、すぐさまくぐもった呻き声を上げる事となった。なんかこう、色々な言葉が口から出てしまいそうになるのを一生懸命堪えた声だった。えらい。
(「想像はできたが出された料理は混沌としたものばかりじゃの!」)
白いご飯(これはちゃんと炊けてて立派じゃな/小百合子談)の上に乗ったどろどろしたものはきっと「かれー」なのだろうが、確信が持てないのは小百合子が西洋文化に疎いからというわけではない。いや詳しいわけではないが、それでもかれーが茶色くてとろっとした煮込み料理であることは知っている。
(「そう。普通はあれほどまでに真っ赤にはならぬはずじゃ」)
いっそ着色料であって欲しい真っ赤な液体に、何故か人の顔にしか見えない野菜たち。煮込まれて型崩れしているのがとってもホラーだ。
「地獄の窯で煮込まれる罪人風カレーです! きっと魔界の新たな名物になりますよ!」
作者は何故か自信満々だった。
「なかなかに前衛的じゃの。それでこれは……」
添えられているのはキノコの味噌汁だった。カレーと味噌汁の組み合わせは好みが分かれそうだがそんなものはこの際些細な問題である。問題はそのキノコである。
赤と白の水玉模様。お手本みたいな食べちゃいけないキノコの色をしていた。
「どうぞ、召し上がれ!」
天使のようなスマイルで悪魔が云う。意を決してカレーを口に運ぶ小百合子。
「うむ……?」
意外そうに眼をぱちくりさせた。
「確かに辛いが、甘さも効いておるの。辛さとの調和が素晴らしい」
「罪にn……野菜をしっかり煮込んだので甘さが出ているのです」
「ふむ。味噌汁も少し舌がピリピリはするが、それ以上にキノコの旨味が素晴らしい」
毒キノコとは実は美味いものも多いのだという。だからこそ罪深い訳であるが、幸い小百合子は耐性を持っているのでセーフだった。猟兵パワーのごり押しである。良い子も悪い子も真似しないように。
「悪魔の料理、しかと堪能させてもろうたぞ。ごちそうさまじゃ!」
大盛かれーと味噌汁を軽々平らげた小百合子は、満足そうに魔界のきっちんを去っていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
栗花落・澪
誰だって初めは皆初心者なんだから
多少失敗したくらいで貶すのはダメだと思うの
だから存分に褒めるね
※義理姉がスライム的物体作り出すレベルの激ヤバ料理人なので、慣れ過ぎて失敗の基準が若干狂ってます。激辛以外はなんでも大丈夫です
【料理】する身なので見た目や一口目から即座に使用食材を見抜き
貴方は、料理は初めて?
それでここまで作れたなら充分だよ
何より制作工程見てたけど分量も細かく計ってたし
材料を混ぜる時や焼く時の手捌きとか
凄く丁寧だなって思った
(そこからなんでこんな事態になるのかはわかんないけど)
あとはそうだな…料理、食べさせたい相手とかいる?
想像しながら作るといいよ
貴方ならもっと上達出来る
がんばってね
●長くて活きのいい何か
「ふぇ……失敗しちゃったよぉ」
涙目の悪魔に、なんかいかにも口が悪そうな評論家がずんずんと歩み寄って来る。
「なんだァ、それ?」
「いやこれは、その……」
ああ、きっと手酷くけなされてしまう! 一生懸命皿の上のものを隠そうとするが丸見えだ。それを横から覗き込む者がいた。
「誰だって初めは皆初心者なんだから、多少失敗したくらいで貶すのはダメだと思うの」
駄目だよ、と評論家を制止するのは栗花落・澪(泡沫の花・f03165)という名の猟兵だ。背に宿る純白の翼、髪に生えた可憐な花。ワルい事こそが良しとされるこの世界では、いっそとびきり掟破りな存在。
「て、天使……?」
にっこり澪は悪魔に微笑みかける。容姿も優しげな言葉もその微笑みも、料理を失敗した上追い打ちをかけられそうになっていた悪魔からしてみれば何もかもが天使のようだった。
「これは……パンケーキかな?」
「! そうです!」
こくこく頷く悪魔。そのわずかな風圧で、皿の上のパンケーキ(?)はぶるんぶるんと揺れる。一体何がどうなったのか、パンケーキ(?)は高さが10メートルくらいあった。
「良く分かったな。俺はてっきり電柱か何かかと」
辛口評論家の容赦ない攻撃。いやそんなに辛口かな。事実じゃないかな。
「わかるよ。だってバニラエッセンスのいい香りがしたし、メープルシロップとバターも用意されていたしね。食べてもいい?」
「も、もちろん」
ぶるんぶるんの柱の一部をナイフで切り取り口に運ぶ。ぶるんぶるんなのになぜか噛むとゴリゴリしたが、まあ、しかし。
「貴方は、料理は初めて?」
「はい」
「それでここまで作れたなら充分だよ」
実は製作工程を見てたんだけど、と澪は続ける。
「ミックスじゃなくて自分で一から作ってみようって心意気がすごいって思ったんだ。それに分量も細かく計ってたし、材料を混ぜる時や焼く時の手捌きとか凄く丁寧だなって思った」
料理上手ならではの着眼点だ。義姉の料理が斜め上すぎるので料理上手にならざるを得なかったともいう。
そう。よく見ていたのだ。良く見ていたが。
(「何でこうなるかは結局分からなかったけど」)
なんか材料の一部もしくは全部が魔界の外とは違う感じのやつなんだろう。ベーキングパウダーが異様に元気すぎるとか。
「あとはそうだな……料理、食べさせたい相手とかいる?」
「えっ、あっ、……はい」
顔を赤らめる悪魔。なんだか甘酸っぱいエピソードがあるようだ。
「想像しながら作るといいよ。貴方ならもっと上達出来る。がんばってね」
優しく手を握りながら微笑む天使に、悪魔は顔をぱあっと明るくさせる。
「はい! 頑張ってもっと活きのいいパンケーキを作ります!」
あちゃー、と辛口評論家が天を仰いでいた。
大成功
🔵🔵🔵
茜崎・トヲル
【白黒翠】
この料理をほめてー、たべればいーんだね!
おっけい!がんばろー!(ぐっ)
わー。このメロンまるごとパフェすごーい!メロンが骸骨みたいにくりぬかれてるう!
この赤あきらかに果汁じゃないよね?いろどりがいいね!(デスソース的な物)(痛みを感じないので辛いがわかりません)
えっこのパフェで地獄を表してるの?
つまり、このウニは針山?どくそーせーがあるね!他で見たことないよ!
えー兄ちゃんのおいしそー!食べる食べるー!(痛み(中略)食べます!)
わーわたぱちなつk兄ちゃん?!(アフロにびっくり!)
やーさんも一口いるー?いい?そっかー!(もぐ)
ごちそーさまでした!
(肉体改造で味覚を消してたべきります)
結・縁貴
【白黒翠】
…見応えのある料理達だねェ…
俺、実は刺激物が苦手で…(棒読み)
だから俺は見た目を精一杯褒めるね!(※料理は一切食べない)
い、一周回って芸術感じるパフェ…!
デビキン最先端の美?
追いソースで更にワルーイ!見た目も匂いも倍増!
小雲珠、それ一見まともだけど臭いが、
噫…やっぱり…
偽装力高いね!褒めてる褒めてる
へェ、雲みたい。菓子かな?
(隣で爆裂音)
えっ爆発…!?わたパチの過激なやつ!?
二人とも味はともかく衝撃は平気なの?
髪が乱れる程の…小雲珠なんでそんな頭になった??
この惨事見て勧めるトヲル帅哥の心臓強いな。いらない。
スー帅哥とトヲル帅哥で食い切ってる…
すげェな、俺達には真似できないねェ小雲珠
雨野・雲珠
【白黒翠】
頑張って作ったお料理をけちょんけちょんにされたら、
上達するものもしなくなるというもの。
頑張りますよ俺は!
がんっ
ひぇ……
(目の前の光景に完全に及び腰)
よし。俺も覚悟を決めて…
甘そうなの選んでぺろっと舐めます
あ、ふつうにおいし……ふぐっ
みっ…見た目を裏切り鼻に突き抜ける辛さ
おいしくて涙が止まりません
と、トヲルくん…これおいしいので食べてみてください…
(そっと救援要請)
縁さん、わたあめ一口くださ…ぶわー!
(爆発の衝撃で何故かアフロに)
爆発は芸術…つまり芸術的なお料理。独創的です!
ふふふスーくん、髪ぼさぼさ、ふふふ(※アフロ)
はい…おのこししないのはえらいれすねえ…
(たらこ唇&アフロで頷く)
スキアファール・イリャルギ
【白黒翠】
Oh……(半笑い)
……トーさん雲珠さん、頑張りましょう!(ぐっ)
縁さんは見た目の評価をお願いします!
このメロンまるごとパフェは見てヨシ匂いも刺激的でヨシ……
えっ追加のソースもあるんですか?
……和のテイストを入れる為にワサビを??
うーむ、さらに涙があふれる程に美味しく(鼻ツーン)
地獄を表現した一品、素晴らしいです
多少の衝撃ならなんとか……ってウワーッ雲珠さん!?
なるほど芸術は爆発、料理も爆発ってことですね!
(自分の頭もさらにぼさぼさになった)
……うん、残りは怪奇の口で食べますか
腕の一部を怪奇に変化させて……
(怪奇の口だと味はしない)(食感はある)
ご馳走様でした、美味しかったです(※嘘)
●地獄のおやつタイム
「頑張って作ったお料理をけちょんけちょんにされたら、上達するものもしなくなるというもの。頑張りますよ俺は!」
――と、パーラーメイド的使命感に燃えている童子がいた。雨野・雲珠(慚愧・f22865)である。
誰でも最初は初心者なのだ。ちょっとくらいうまくいかなかったからって、見ず知らずの他人に好き勝手けなされていい訳がない。
と、意気込みたっぷりやる気バッチリでキッチン(と書いて戦場と読む)を訪れたのだ、が。
「ひぇ……」
ちょっとくらいでは済まされない光景がそこには広がっていた。
「Oh……」
となりの影人間ことスキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)などは、もはや言葉も失って半笑いをすることしかできなくなっていた。人間であるために自分が怪奇であることを常日頃己に言い聞かせているスキアファールだが、なんというかこの反応は極めて人間らしかった。
というのも。
「この料理をほめてー、たべればいーんだね! おっけい! がんばろー!」
キマイラの茜崎・トヲル(Life_goes_on・f18631)などは、無垢極まる笑顔でそう云ってのけているのだからとんでもなく人間離れしている。頼もしさを通り越して若干の畏怖さえも覚えるピュアスマイルにスキアファールも雲珠も、そしてもう一人、結・縁貴(翠縁・f33070)もごくりと唾を呑み込んだ。
「俺、実は刺激物が苦手で……」
トゲトゲしてたり、ピリピリしてたりする料理を眺めながら、極めて自然な逃げ道を口にする縁貴。できたと本人は思っていた。実際はとっても棒読みだった。
「だから俺は見た目を精一杯褒めるね!」
箸を取らない潔さ。それを咎めるには他の面々はあまりにも優しかった。
「縁さんは見た目の評価をいっぱいお願いします! あとは……トーさん雲珠さん、頑張りましょう!」
「うん、楽しみだねー!」
「俺も……覚悟を決めます……!」
トヲル以外は半泣きだったけど。
●
「わー。このメロンまるごとパフェすごーい! メロンが骸骨みたいにくりぬかれてるう!」
「……果物や野菜の皮を器にした料理は、帝都でも見たことがありますが」
「い、一周回って芸術感じるパフェ……! デビキン最先端の美?」
もう帰りたくなっている雲珠。声が上擦っている縁貴。後者は御縁を扱う異能持ち、切れるものなら切りたい縁というのもある。
「スプーンを取らなくてもわかる刺激的な味わい。料理って五感で楽しむものだね」
精一杯それらしいコメントをする縁貴だが、目がしぱしぱしていた。
「このメロンまるごとパフェは見てヨシ匂いも刺激的でヨシ……何故パフェなのにこんなスパイシーな香りがするんでしょう?」
明らかに唐辛子系統の何かに血の気の無い顔を更に蒼ざめさせるスキアファール。
「この赤あきらかに果汁じゃないよね? いろどりがいいね!」
骸骨の眼窩からこぼれ出ている赤い液体をトヲルが掬って口に含んだ瞬間、彼では無く雲珠の喉からひっと声が漏れた。
「も、ものすごく辛そう……!」
それが幸か不幸かはともかく、痛覚が存在しないトヲルである。痛覚で感じる辛味という感覚はわからない。でもなんか、なんというか、それにしてもあまりにも平然と、あっけらかんとしている。
「地獄のメロンパフェです! パフェは甘いという固定観念に真っ向から抗ってみました!」
えへんと胸を張るパフェの作者。お手本みたいなダメなやつである。
「えっこのパフェで地獄を表してるの? つまり、このウニは針山?」
「はい!」
「どくそーせーがあるね! 他で見たことないよ!」
おっきい体とピュアっピュアな笑顔で何でも褒めてくれる青年に作者はえへへと満更でもなさそうである。ある意味この場で一番ワルい奴はなんちゃらカオスドラゴンでも辛口批評家でもなくトヲルかもしれない。飯テロ(本当にテロなほう)を助長するという意味で。
「物足りなければ追加ソースもありますので!」
真っ赤でどろでろな液体が入った瓶がどでんと置かれる。好意はありがたく受け取らねばとばかりにトヲルがパフェに振りかける。
「追いソースで更にワルーイ! 見た目も匂いも倍増!」
もはや半分やけくそみたいな縁貴のコメント。
「先程から思っていたのですが、少し唐辛子とは異なる香りがしますね?」
危険物みたいに手をぱたぱたさせながらスキアファールが呟いた。
「ご名答! 和のテイストを入れるためにワサビを入れてみたんです!」
和のテイストからそこ抽出しちゃった!? トヲル以外の誰もが思った。誰も言葉にはしなかった。皆とっても大人である。
「うーむ、さらに涙があふれる程に美味しく……」
なんとかソースが少ない部分をすくって口にしてみたスキアファールが鼻を抑える。悶え転がりそうになるのは辛うじて耐えた。
「……地獄を表現した一品、素晴らしいです」
「よし、俺も……腹を括ります」
何とか食べられそうなものを探す雲珠の目に飛び込んできたのは、色とりどりの果物たちがあま~いシロップに漬けられた――そう、フルーツポンチ!
「……うん」
これなら捻りようがない。シロップの甘味が強すぎ弱すぎとか、入っている白玉が失敗しているとか、その程度のものだろう。カオスだらけのこの場では救世主に見えた。
「頂きます」
「小雲珠、それ一見まともだけど臭いが……」
縁貴の忠告はちょっとだけ遅かった。シロップを舐めとった雲珠が「あ、ふつうに美味しい」と頬をほころばせる。つかの間の平和。だが辛さとはワンテンポ遅れてやってくるものである。
「ふぐっ」
噎せ込むのを辛うじて堪えた弊害で変な声が出た。
「みっ……見た目を裏切り鼻に突き抜ける辛さ」
「噫……やっぱり……」
お水を汲んで持ってきてあげる縁貴。ありがたく飲み干す雲珠。水にも激辛トラップが仕掛けられているなんて事は、いくら魔界といえどなかった。そこまで極悪非道な奴、多分とっくにKING的白羽の矢がブッ刺さっている。
「偽装力高いね! 褒めてる褒めてる」
料理に偽装力スキルが求められるかはさておき、褒めとは勢いが大事である。内容よりも全力で肯定していそうな笑顔と声音で押し切るのだ。モノには限界がある? そうかなあ。
「と、トヲルくん……これおいしいので食べてみてください……」
「えー兄ちゃんのおいしそー! 食べる食べるー!」
お勧めという名の救援要請。何でも受け入れるトヲルの懐が三人には天使に見えた。
「と、いうよりも」
「ひょっとしてトヲル帅哥、味覚シャットダウンしてる?」
「やっぱり?」
ヒソヒソ話し合う未成年組。いくら彼がいろんなことに強いからって、なんか今日は明らかに“強すぎる”。
「縁さん、わたあめ一口くださ……」
フルーツポンチで泣きを見た雲珠は、もっと究極にシンプルなおやつでリベンジを図る。
「わたあめ? 雲みたい。菓子かな?」
一応匂いを嗅いだ後、とりあえず辛くはなさそうだと手渡す縁貴。
「ああ、それは大丈夫そうですね――……」
スキアファールも覗き込んだ瞬間、何故かわたあめが爆ぜた。
「「「…………」」」
あまりに予想外だったので三人ともしばし無言だった。
「なるほど芸術は爆発、料理も爆発ってことですね!」
「爆発は芸術……つまり芸術的なお料理。独創的です!」
何とかフォローを入れるスキアファール。ぼさぼさ髪がさらにぼさぼさになっていた。同調する雲珠も自分の頭を撫でつけ――ん?
「……ぶわー!?」
「二人とも平気!? ……んんん!?」
「多少の衝撃ならなんとか……ってウワーッ雲珠さん!?」
爆発を中心部で受けたせいか、なぜか雲珠の髪型が見事なアフロに! トレードマークの桜枝がちょっぴりだけ出ているのがシュール。
「髪が乱れる程の……小雲珠なんでそんな頭になった??」
「ふふふスーくん、髪ぼさぼさ、ふふふ」
「いや、雲珠さんの方が衝撃的です」
「一体どうしてこんな事に……わたパチの過激なやつって事?」
「わたぱち!? なつかしー!」
久々に聞く単語に、トヲルが目を輝かせて駆け寄ってきた。
「うわっ兄ちゃんアフロ!?」
「わたあめよりもふわふわです……」
倍くらいになった頭で残るわたあめをどうしたものかと考えあぐねている雲珠だった。
「やーさんも一口いるー?」
「この惨事見て勧めるトヲル帅哥の心臓強いな。いらない」
「そっかー!」
人に勧める神経も縁貴には信じ難かったが、直後もぐっと美味しそうに爆発物を口にするトヲルにはもはや呆気にとられるしかなかった。明らかにトヲルの体内で\ボンっ/て音がしていたが、いやー痛覚がないってすごいですねー(いろいろなものを放棄したコメント)。
「……うん、残りは怪奇の口で食べますか」
スキアファールの腕が何の脈絡もなく裂けた。かと思えば、それは舌を出し、牙を生やし、大きな口となる。悍ましく冒涜的な"恐怖の影"の本領発揮だ。
なにもこんなところで、とお思いだろう。しかしこれほど適したものはないのだ。不定形の身体は多少の衝撃ではびくともしないし、何せ怪奇の口は味覚を持たない。
「すごーい! いっぱいたべられそうだね!」
はしゃぐトヲルと一緒に、もしゃもしゃもぐり。味覚は無いが食感はあるので最低限のコメントにも困らない。というかまあ、大体の料理は「刺激的」「前衛的」の言いかえでどうにかなるみたいなところがあったが。
「スー帅哥とトヲル帅哥で食い切ってる……」
世間一般的にはわりかし神秘的な部類に入るはずの瑞獣が、己の凡人っぷりをまざまざと見せつけられていた。
「すげェな、俺達には真似できないねェ小雲珠」
「はい……おのこししないのはえらいれすねえ……」
アフロにたらこ唇ですっかり人相の変わってしまった雲珠が、なんか色々複雑そうな面持ちで頷くのだった。
「ごちそーさまでした!」
「ご馳走様でした、美味しかったです(※大嘘)」
空っぽになったお皿たちと、なのに今だ空気中に残る刺激的な香りの前で、二人は丁寧に手を合わせていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
三上・くぬぎ
お料理をたべて、ほめればいいですね
くぬぎにもできそうです!
んーと、これは、きのこを焼いたやつですね!
いろんな色のきのこが入ってて、とってもきれいです
真ん中にどーんとのった、水玉もようのきのこがおしゃれですね
これはバズることまちがいないですよ!
では、いただきますですー
ピリッとしてて、ちょっとにがいです
きっと塩コショウがきいてるですね
きれいな白いきのこ(猛毒)
脳みそみたいなおもしろいかたちのきのこ(猛毒)
炎のかたちの赤いきのこ(触るだけでもアウトな猛毒)
どれもとってもしげきてきで、おとなの味です!
ごちそうさまでした!
●殺戮の天使
猟兵といっても、必ずしも戦いが得意な者ばかりではない。
モーラットの三上・くぬぎ(アウトドア派・f35607)もそうだ。だからといって猟兵としての役目を果たせないのかというと、そんな事は決してないのである。
彼女は探検が大好きだ。猟兵の仕事が無い時は愛用の虫かご片手に色々なところを飛び回っている。探検中は色々な物を触るし、おなかが空いた時には何でも食べなければならないから、彼女は並大抵の毒ではびくともしない。
「お料理をたべて、ほめればいいですね。くぬぎにもできそうです!」
――そう。まさに今日の戦場は彼女の為にあるようなものである。天真爛漫な彼女がそこまで理解して云っているかは、定かではないが。
「んーと、これは、きのこを焼いたやつですね!」
網の上に乗っかった“それ”を見てくぬぎが云う。よくわかったねーとイイコイイコしたくなるくらいには、“それ”は世間一般で云う焼ききのこ料理とはかけ離れたビジュアルをしていた。
「いろんな色のきのこが入ってて、とってもきれいです。真ん中にどーんとのった、水玉もようのきのこがおしゃれですね」
――例外は勿論あるが、カラフルなきのこや水玉もようのきのこは一般的にヤバい。むちゃくちゃ知識に自信が無い限りは避けなければいけないやつである。でもくぬぎの目には別のものが見えていた。
「カラフルで、形もいろいろで、おかしやさんのショーケースみたいです。これはバズることまちがいないですよ!」
あー、まー、丸っこくてカラフルなので、ものすごく薄目で見ればマカロンとか一粒チョコが並んでいるみたいな可愛い光景に見え……やっぱ見えないや。
「では、いただきますですー」
モラのちっちゃなおててをぱちんと合わせ、いざ実食!
「まずはせっかくなので、水玉もようのかわいいきのこから……ピリッとしてて、ちょっとにがいです。きっと塩コショウがきいてるですね」
プレーンな毒キノコを“ちょっとにがい”で飲み下すモーラット。っょぃ。
「これはつるっとしててきれいな白いきのこですね」
それ、殺戮の天使とかいう物騒な異名持ってませんでした?
「これは脳みそみたいなおもしろいかたちのきのこ」
それ、頑張れば食べられるらしいですね。注意しないと調理中に発生したガスだけで人が死ぬらしいですが。
「こっちは炎みたいなかたちです」
それ確か毒が強すぎて触る事すら危険、いかにもな“私毒キノコです”というビジュアルだけが良心のやつ。
でもくぬぎは全部平然と平らげた。どころか、
「どれもとってもしげきてきで、おとなの味です! ごちそうさまでした!」
初めて食べる味に、実に満足そうな様子だった。
――猟兵に求められるスキルって色々ですねえ。だからこんなにいっぱいいるのかな、猟兵って。
大成功
🔵🔵🔵
ファラリス・ミルメレク
【魔王のおやつタイム】
説明!ファラちゃんの胃は四つあって……まぁなんでも食べられるのだ!
オムライス〜オムライス〜オムオムオムレツ〜♪
ふははは、今日もファラちゃんなのですよ。
ふわとろオムライスは大歓迎なのですよ!ファラちゃんがくるくる卵に包まれたオムライスになるのはゴメンなのですよ。
(オムライス(悪魔)と戦ってきて返りケチャップまみれ)
さぁ、出してくるのですよ!オムライス!
しょっぱいとか甘いとかはあんまり気にしないファラちゃん、普通のオムライスの閾値がだいぶ低いので、美味しく完食!
今日のオムライスはおとなしいオムライスでした、暴れオムライスは一苦労しやがります!
🌟3つあげちまうのです!
●おむらいす🌟🌟🌟
『ファラリス』と『牛』と聞いて嫌な予感がした人は、きっと正し――「ファラちゃん牛じゃねぇです!」あっそれは失礼しました。
とにかくファラリスである。ファラリス・ミルメレク(牛の悪魔・f31771)である。とっても悪いうs――生贄の炉の悪魔なので、食べてすぐ横になる怠惰っぷりなのにひっこむところはひっこんで出っ張る所は限界まで出っ張って、その上めちゃくちゃに可愛い顔をしている。存在がワルだ。許されない。彼女のしでかす悪事より彼女そのものが悪だ。未来の7thKINGは彼女かも知れない。
「オムライス〜オムライス〜オムオムオムレツ〜♪」
そんなファラちゃんは全身を真っ赤に染めていた。一体どんな死線を潜り抜けて来たのか。
「オムライスにしようとしてきたオムライスを返り食べにしてやったんですよ」
そんな、返り討ちみたいな言い方。で、返り血ならぬ返りケチャップだったわけである。
でもそれじゃあ、もうお腹いっぱいでは?
「説明! ファラちゃんの胃は四つあって……まぁなんでも食べられるのだ!」
やっぱり牛じゃn「ファラちゃん牛じゃねーです」あっはい。
「ふわとろオムライスは大歓迎なのですよ! でもファラちゃんがくるくる卵に包まれたオムライスになるのはもうゴメンなのですよ。さぁ、出してくるのですよ! オムライス!」
悪いファラちゃんは悪い子なのでお皿をスプーンでチンチン叩いてご飯を催促。すぐさまとろんと見た目は綺麗なオムライスが運ばれてきた。ついでにいつの間にか隣にいた辛口評論家にも運ばれてきた。
「ぐぬぅ、またこの手の邪道か」
「ふははは、いただきますですよー」
美味しそうにもぐもぐ食べ始めるファラちゃんの隣で、不服そうに食べ始めた辛口評論家がスプーンを取り落とす。
「あっっっっま!? 何だこれプリンか!? プリンをケチャップライスにかけたのか!?」
「んー、ぷるんぷるんで美味しいですねー、いい仕事してやがります」
しょっぱオムの次は激甘オムだった。でもファラちゃんは普通のオムライスの閾値が低いので全然気にしていなかった。多分しょっぱオムでも美味しく食べていた。さすが魔王である。
「今日のオムライスはおとなしいオムライスでした、暴れオムライスは一苦労しやがります!」
そうそう。お皿の上で大人しくしてくれてるだけで、とーってもいい子! 魔界の料理って活きが良すぎて逃げ出したりオブリビオンになったりするからね。
呆然とする評論家の横で、ファラちゃんは米粒ひとつ残さずオムライスを完食した。めっちゃいい子じゃん。
「🌟3つあげちまうのです!」
燦々と輝くお星様は、お料理ビギナーの自信となったことだろう。
大成功
🔵🔵🔵
シウム・ジョイグルミット
おおー、白熱してるねぇ
美味しく食べられる料理が出てきますように(指でコインを弾いてキャッチ)
……裏だぁ(ウサ耳へにょん)
(グツグツ煮えたぎったマグマのようなスープが出てきて)
目と鼻を刺すような湯気の匂い……辛さへのこだわりを感じるねぇ
それじゃあ、ひと口……
(辛さが口中に広がって、痛いだけで味が全く分からない)
わあぁ、パーティが開かれたみたいに口の中が賑やかになってるよ
すごく盛り上がってる、ボクも元気になっちゃうな!
(麻痺した口にどんどんスープを運んでいって完食)
食べる手が止まらないくらい楽しかったよ!
(皆から見えない場所に戻った後、舌出して仰向けダウン)
料理って本当に面白いな~(目がぐるぐる)
●マグマのような何か
お菓子の森出身の時計ウサギ、シウム・ジョイグルミット(風の吹くまま気の向くまま・f20781)。まだ見ぬ美味しいものを求めて世界を巡る彼女が、何をどう間違えたのか今日は魔界のお料理コロシアムを訪れてしまった。
「おおー、白熱してるねぇ」
会場のいろんな意味で鬼気迫る雰囲気に、ごくりと息を呑むシウム。いつものように自分の行く末をコインに委ねてみる。
「美味しく食べられる料理が出てきますように」
ぴんと指ではじいたコインをキャッチする。
「……裏だぁ」
嫌な予感。自慢のふわふわ兎耳もへにょんと項垂れてしまう。
「でも、ひょっとしたら」
「お待たせしました!」
やたら元気に料理を持って来る一般悪魔。まだ皿の中身を見てもいないのに、シウムの目や鼻がツンと刺されるような感覚に見舞われる。
(「あっこれ危険なやつ」)
本能が察知した。でももう逃げ場がない。
果たしてその中身は――なんだろうこれ。
「旨辛スープです!」
スープだった。あまりに赤くてグッツグツしているのでマグマを盛ってきたのかと思った。
「……辛さへのこだわりを感じるねぇ」
刺激と他にも色々こみ上げるもので涙目になりそうなのをぐっとこらえながら、シウムはスプーンを手にする。
「それじゃあ、ひと口……」
旨辛スープっていってたし。食べたら旨味の方が勝ってとっても美味しいかもしれないし。
果たして、期待は見事に裏切られた。舌が味を感知し、それを脳に伝える前に、暴力的な辛さが口の中を荒らしまわって全部掻き消していく。
(「く、口の中が……痛い!!」)
スープは煮込まれ過ぎて具材がでろでろで、視覚からでも歯ざわりからでも何が入っているかよくわからない。つまり熱くて辛い以外の情報が全く入ってこない!
でもシウムは食べることが大好きな時計ウサギ。なんちゃらドラゴンの野望を阻止するだなんて目的が無かったとしても、食を冒涜することなんてしたくない。
「わあぁ、パーティが開かれたみたいに口の中が賑やかになってるよ。すごく盛り上がってる、ボクも元気になっちゃうな!」
なので、愛くるしい笑みと共に精一杯の賛辞を贈る。スプーンを口に運ぶ手が止まらない。というか、一度手を止めたらそこで気力が尽きる気がするので止められない。
「すっごく美味しくてあっという間に食べちゃった。ご馳走様!」
後半はなんかもう口の中が麻痺しきっていて、いっそちょっとだけ楽だった。
にこやかな笑顔のまま、会場を去る。角を曲がり、人の気配がない小道に差し掛かった途端。
「……ふみゅう」
精も根も尽き果て、舌を出して仰向けダウンした。もう正直限界であった。
「料理って、本当に面白いな~……」
ぐるぐるおめめが天を仰ぐ。ああ、空が回ってる。魔界は空も不思議なんだねえと思ったところで、シウムの意識は途切れてしまった。
大成功
🔵🔵🔵
ベルベナ・ラウンドディー
さて、このコーヒーは…
…パサつきを許さぬスーパーモイスチャー製法で抽出…?
え…飲み心地シルキー…?
…と、とりあえず笑顔で。
挽いた豆を丸ごと投入したカップに広がるこのゴリゴリ感
鋭利な豆の破片は宛らガラスの食感で
口内ズタズタに切り裂いて血のフレーバーを楽しませてくれます
歯ぁ磨く必要ねえな!便利!(なげやり
更に、このメタリックに輝く銀色の牛乳を注いで飲めばあら不思議
始皇帝が愛したあの味を,
視界いっぱいに広がる不思議な川と花畑の世界でお楽しみ出来ます
まさにコーヒー史と自らの命に挑戦する意欲作です!(ヤケクソ
明るく楽しい悪事を働き猟兵を殺せるステキな一杯を
貴方もどうぞグボベファ!!(←限界
たすけ
たす…
●コーヒー(多分)
ことり。カップが置かれた。
「ほう、コーヒーですか」
案外シンプルなものが来たなとベルベナ・ラウンドディー(berbenah·∂・f07708)は顎を撫でる。差し出してきたのはラスボスっぽい異形だ。身振り手振り何かを一生懸命説明してくるが、ベルベナにはでたらめな音の羅列にしか聞こえなかった。少し困っていると、異形は紙にあれこれ書いて寄越してきた。
「えーと………パサつきを許さぬスーパーモイスチャー製法で抽出……? 飲み心地シルキー……?」
――コーヒーだよな? シャンプーとかじゃなくて。
この時点で既に嫌な予感しかしないが、持ち前の礼儀正しさを崩さずにこやかに微笑んでやりすごすベルベナ。笑うしか出来ないともいう。
「それじゃあ、いただきま……」
わくわくどきどきな視線を送って来るラスボスの前で飲んだ。
「ぶっふぉう!? ……失礼、あまりの美味しさが衝撃的で」
まずは吐き出さなかったのを褒めて欲しい。
「挽いた豆を丸ごと投入したカップに広がるこのゴリゴリ感! 鋭利な豆の破片は宛らガラスの食感で口内ズタズタに切り裂いて血のフレーバーを楽しませてくれます! ……歯ぁ磨く必要ねえな! 便利!」
嬉しそうにラスボスが紙を掲げる。「トッピングです!」そうかあトッピングかあ。お洒落だねえ。豆はチョコチップじゃねえんだぞ。
というかこれで飲み心地シルキーってどういうこと? 普段小川を小石ごと飲んでるタイプ?
口を抑えて悶絶しているベルベナを、彼の言葉通り“美味しくてびっくりしている”と受け取ったダメな方向にピュアな異形は、「牛乳を入れても美味しいですよ」とカップを差し出してくる。
「えーと……」
ベルベナの暮らしてきた宇宙世界も宇宙船によって様々な文化がある。並大抵の事では驚かない、つもりだった。でも牛乳ってのは――どの宇宙船、どの世界で見ても白いと思っていたんだよなあ。
謎にメタリックな銀色の液体を揺らして、ベルベナは遠い目をする。
ええい、ままよ。入れてみた。飲んでみた。
「あら不思議! 始皇帝が愛したあの味を、視界いっぱいに広がる不思議な川と花畑の世界でお楽しみ出来ます」
焦点の合わない目でナレーション風のヤケクソ解説をするベルベナ。多分死んだじいちゃんとか見えてる。生い立ち的にじいちゃんの顔知らなそうだね、ごめんね今のは無かったことに。
「まさにコーヒー史と自らの命に挑戦する意欲作です! 明るく楽しい悪事を働き猟兵を殺せるステキな一杯を貴方もどうぞグボベファ!!」
彼は頑張った。頑張りすぎて、いきなりプッツンと限界を迎えてしまった。
「たすけ、……たす……」
地面に倒れ込み、泡を吹きながらうわごとの様に繰り返す。
あっ、その川渡っちゃ駄目です。誰かとめてあげてください。
大成功
🔵🔵🔵
ハズキ・トーン
十字路・冬月とともに
お料理だって。冬月ちゃんは食べるの好きだったよねぇ
一緒に美味しく食べれるといいねぇ
もし前衛的なお味でも、
褒めて伸ばそうね、私も褒められるの大好きだからねぇ
おやあ、これはなかなかカラフルだね
見た目から味が想像できない、ワクワク感があるね
ではいただきます。(もぐもぐ)
うっ…!ぐっ…!
口の中で何かがはじけているよ
舌に絡みつくこう…ねっとりとした味が…
はじける刺激で緩和…?うやむやになり…
のど越しに…マリアージュが…
…
君の頑張り、伝わってくるよ(パタリ)
十字路・冬月
ハズキさん(f04256)と一緒!
グルメレポかぁ
食べるのは好きだけど、作るのはあんまりしないから、
もう料理をするってだけですごいよね!
まずはお調理の見た目から
ふんふん、茶色いね!茶色いものは大抵美味しいんだよ
ハズキさんのはカラフルだね
カラフルなのは、色んな食材使っているから栄養満点!ってやつだね
いっただっきまーす!
…これは!ソースのお味!
ソースは美味しいよねっ
ちょっと濃いけど、お水を飲んで調整すれば大丈夫だよ
いけるいける!
ハズキさんは…
あー、ハズキさん!どうしたの!?
マリアージュ?マリアージュってなんだっけ?
あ、美味しいってこと?つまり、どっちも美味しいってことだね!
合格!
●何かの炒め物
いつからだろうか。十字路・冬月(ダンス大好き!・f24135)は、不思議な声を聞いていた。
早く寝てとか、野菜も食べてとか。オカンみたいな事を云うので、オカンと呼んでいた。その正体はさておき、オカンの助言の甲斐あってか冬月はよく食べ良く寝て良く動く元気で健康的な女性に育った。
「グルメレポかぁ。食べるのは好きだけど、作るのはあんまりしないから、もう料理をするってだけですごいよね!」
「お料理だって。冬月ちゃんは食べるの好きだったよねぇ。一緒に美味しく食べれるといいねぇ」
そんな冬月を見守るように優しく頷くのはハズキ・トーン(キマイラの聖者・f04256)。中性的な美しい顔立ちを派手な仮面で隠した人目を引く外見とは裏腹に、穏やかな口調で微笑むのだった。
「もし前衛的なお味でも、褒めて伸ばそうね、私も褒められるの大好きだからねぇ」
「そうだよね。いっぱい頑張って作ってくれたんだもん、きっと美味しいよ!」
どんなのが来るかなあ。楽しみだなあ。そわそわしながら待つ二人の元へ、二人の悪魔が料理をおずおずと持ってきた。
「初めてでも簡単で、栄養満点らしいので、肉野菜炒めを作ってきたんです」
「お、美味しく出来たか見て貰えませんか?」
「ふんふん、茶色いね! 茶色いものは大抵美味しいんだよ」
家庭的な味っていうのかな、ね、ハズキさん。自分の前に置かれた皿を眺めていた視線を隣に映した冬月がおやと目を瞬かせる。
「ハズキさんのはカラフルだね」
赤とか黄色とかピンクとか――ピンク? 明らかに炒め物っぽくない色合いも混ざっている気がする。というよりも素材の色というにはどうにも全体的に原色すぎる。
「本当だね、画家のキャンパスみたいだ。見た目から味が想像できない、ワクワク感があるね」
でもハズキは涼しい顔だ。これくらいは予想の範疇である。何せ魔界なんだから何が出てくるかなんてわからない。事前説明じゃマンドラゴラが出てくる可能性すらあるとか云われていたのだから、多少カラフル過ぎるくらいが何だ。
「カラフルなのは、色んな食材使っているから栄養満点! ってやつだね」
そう冬月も云っている。
「冬月ちゃんは褒め上手だねぇ。私もしっかり味わって、負けないくらい良いコメントをしなければ」
「えへへ、照れちゃうなぁ。じゃあ」
「うん」
「いっただっきまーす!」
「いただきます」
揃って箸を手に取り、まずは一口。
「……これは! ソースのお味!」
冬月の口にガツンと飛び込んでくるソース味。茶色はソース色。茶色は美味しい。つまり!
「ソースは美味しいよねっ。ちょっと濃いけど、お水を飲んで調整すれば大丈夫だよ」
「ごめんなさい、味付け失敗しちゃいました?」
「ううん、ご飯が進みそうだよ。いけるいける!」
正直ちょっとというよりだいぶ濃かったけれど、そこはばっちりフォローする冬月である。
「ハズキさんは……」
ちらと隣を見ると、ハズキは一口目を口に入れた姿勢のまま固まっていた。
「うっ……! ぐっ……!」
時折呻き声が聞こえる。
「あー、ハズキさん!どうしたの!?」
冬月の言葉に返事をしようとして、ハズキはまた呻いた。コップのお冷を一気に飲み下し、ようやく口を開く。
「口の中で……何かがはじけていたよ」
「何か? 何かって?」
「あと舌に絡みつくこう……ねっとりとした味が……」
「ねっとりしているのは、多分魔界名物のスライムポテトを使っているからですね!」
「……そう。あれお芋だったんだぁ」
無駄に自信満々な素人悪魔に、心なしか遠い目になるハズキ。
「じゃあ、この刺激はなんだろう……?」
「刺激。刺激……そんな刺激物は入れてな……」
使用したキッチンを見直す素人悪魔。
「っ、あー!!」
「どうしたの!?」
「コショウの内蓋が外れてる!! 入れ過ぎちゃいましたー!」
あちゃー。
「ごめんなさいー! 大丈夫でしたー!?」
「大丈夫。大丈夫……。むしろこの舌から離れてくれないねっとりがはじける刺激で……緩和? というか、うやむやになるというか……素敵な組み合わせだよ、のど越しに、マリアージュが……」
「マリアージュ? マリアージュってなんだっけ?」
きょとんと首を傾げる冬月。聞いた事はある気がする。
「あ、美味しいってこと? つまり、どっちも美味しいってことだね!」
「うん、そんな感じ。そんな……」
冬月の純粋さと天真爛漫さとついでにちょびっと天然なところが、苦しむハズキをフォローして全てを丸く収めてくれた。カラフル炒め物の製造者も「よかったー」と胸を撫でおろしている。
本人は意図していなさそうなところがまたすごい。尊敬すら感じるハズキであった。
(「彼女のように、私も最後までやり遂げよう」)
何が出て来ても褒めて伸ばすと誓ったのだ。精一杯にこやかな笑みを浮かべ――なあにちょっとくらい眉間に皺が寄っていたとしても仮面が隠してくれるさ、やっぱり仮面は好いものだね――ハズキはぐっとサムズアップするのだった。
「君の頑張り、伝わって来るよ」
「うん。合格!」
にっぱり笑う冬月の隣で、力尽きたハズキがぱたりと倒れていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルルチェリア・グレイブキーパー
※アドリブ歓迎
ふふん、天才美少女料理評論家(自称)として
悪魔たちの料理をジャッジするのよ!
「私は料理の味にはとっても厳しいのよ!」
厳しい物言いはするけど、なんやかんやで褒めるのよ
「フン、私の料理に比べればまだまだだけど……良いじゃない」
ゲテモノや失敗料理も
「斬新なアイディアね、嫌いじゃ無いわ」
「沢山の失敗から最高の料理は生まれるのよ、未来の満点よ!」
とか言ったりして褒める
ぶっ飛んだ料理は苦しんだり泣きそうになりながらも
なんやかんや食べるわ
(か、辛すぎるのよーーーーーーー!!)
●いろいろいっぱい
スーパーカオスドラゴンの卑劣な罠が辛口批評家だというのなら、こちらにも考えがある。
「ふふん、私は天才美少女料理評論家。悪魔たちの料理をジャッジするのよ!」
そう云って胸を張るのはルルチェリア・グレイブキーパー(墓守のルル・f09202)。十五歳のキマイラれでぃだが、低めの背のせいか愛らしい動物耳のせいか、もう少しばかり幼く見える。
ちなみに天才美少女料理評論家は自称である。美少女なのは事実のようだが、それ以外はちょっと怪しい。
「天才美少女料理評論家……ですか」
「ええ。私は料理の味にはとっても厳しいのよ!」
厳しいのはいやだなあ、と料理を作った悪魔はちょっぴり気後れした様子だが。
「いいから寄越しなさい」
有無を言わさず料理の乗ったお皿を奪うルルチェリア。
「あっ」
「ふーん、これは煮物かしら。悪くないチョイスね」
もぐもぐと噛めば、野菜のほろほろ柔らかい食感が心地よい。
「フン、私の料理に比べればまだまだだけど……良いじゃない」
「本当ですか!? 実は料理って初めてなんです!」
「あら、そうなの? 良いセンスしてるじゃない。そうね、次にやる時は彩りにも気を付けたらもっとよくなると思うわ!」
ちょっぴりツンとはしてるけど愛のあるコメント。厳しい料理評論家の優しさに触れたお料理初心者は感動で涙ぐんでいる。
「ありがとうございます、がんばります!」
ハートフルな光景に、周りの悪魔たちがどよめいた。僕のも私のも食べて下さいとルルチェリアの周りに押し寄せてくる。
「仕方ないわね。全部食べてあげるから、順番に並びなさい」
こっそり人間の友達が少ないのを気にしているルルチェリア。頼られるのにはとても弱い。めちゃくちゃいい子。
その証拠に甘いステーキだの辛いプリンだのの斬新な料理も、焦がしすぎちゃった料理も、眉一つ顰めずに平らげ、批評してくれる。
「斬新なアイディアね、嫌いじゃ無いわ」
「沢山の失敗から最高の料理は生まれるのよ、未来の満点よ!」
トゲトゲしていても根は良い子ちゃんな悪魔たちは、そんなルルチェリアの優しさにすっかり魅了されていた。
「ルルチェリア先生!」
「ルルチェリア先生~!!」
「な、何よ。私は思ったことを云ったまでよ」
ぷいっとそっぽを向いちゃうルルチェリア。とっても可愛い。
「先生、これも食べてください!!」
最後にどどんと現れたのは、真っっっっっ赤なラーメンだった。
「うっ!!」
見るからに危険な色合いに、ルルチェリアがさすがに顔をしかめる。
「……先生でも、この辛さは無理ですか」
「そ、そんなわけないじゃない。食べられない料理があるなんて、天才美少女料理評論家の名が廃るわ」
料理評論家ってそういうものでしたっけ。わからないが、ルルチェリアは律儀に箸を割り、食べ始める。
(「か、か、辛すぎるのよーーーーーーー!!」)
お水をお代わりしたり、泣きそうになったり、もたもたしていたら麺が伸びてさらに泣きそうになったりしながらも。
「ご馳走様! 刺激的で魔界らしい味わいね!」
ちゃあんと食べきって、バッチリ褒めて、やり遂げたのだった。💮
大成功
🔵🔵🔵
大土・かごめ
○心情
遅れてごめんなさい、注文はステーキで、…え、食レポ?
何話せばいいかわかんないから、まずは他の猟兵の対応を観察しよう
…なるほど、味がアレでも調理技術を褒めればいいんだ
様子見してた間にまともな料理が粗方食べられてしまったことを除けば楽勝だね
残るは常人が食べたら死ぬ系の料理だけど、私は妖怪だし多分大丈夫
○食レポ
(ユーベルコードで変身して)重金属たっぷりのステーキを頂きます
身体が岩や金属で出来ている人にとっては栄養満点で健康的
調理の過程で流れ出してしまうことが多いから、金属部分をこれほど残して調理できるのはすごいことなんだよ
○食後
うーん、あまり大丈夫じゃなかったな
(変身効果時間切れで寝込む)
●歯ごたえ抜群のステーキ
髪も眸も、そして服も、闇に溶け込むような黒。
「遅れてごめんなさい、注文はステーキで、……え、食レポ?」
儚げな容姿の大土・かごめ(東方妖怪の悪霊・f28360)は、案外ガッツリお肉が好き。魔界世界のステーキがどのようなものか期待していたけれど、その為にはそう、食べたものを何でも肯定的に食レポしなければならないのである。
「何話せばいいかわかんないから、まずは他の猟兵の対応を観察しよう」
ちょっと見た目は悪いけれど、ちゃんと美味しそうな料理。
見るからにヤバそうで、やっぱり食べてみたらヤバかった料理。
どれも猟兵達は頑張って食べて褒めまくっている。かごめは感心しきりだ。
「なるほど、味がアレでも調理技術を褒めればいいんだ。これなら私にも楽勝だね」
ただ、ちょっとした問題もあるとかごめは呟いた。
「様子見してた間にまともな料理が粗方食べられてしまったことを除けば、楽勝」
――全然ちょっとしてなかった。
残る奴は、なんかもう、食べなくても近づくだけで刺激が感じられるほどの激辛とか、危険生物図鑑で見たことあるヤバいタコの酢の物とか、そんな感じのしかない。
「常人が食べたら死ぬ系の料理だけど、私は妖怪だし多分大丈夫」
それに、こんな事も出来るし。
かごめは骸魂【オオツチグモ】に身を委ね、一時的に強大なオブリビオンと化した。これぞ妖怪パワーのごり押しである。力を実に正しいことに使っている。……ほんとかなぁ。
「これなら何が来ても大丈夫」
意気込むかごめの元にやってきたのは――肉は肉でも、重金属たっぷりのステーキだった。なんで?
「私達妖怪もそうだけど、魔界の住人も色々な人がいるだろうからね。こんな料理もあるんじゃないかな」
かごめは驚かない。多様性ってすごい。
平然とステーキを口にする。がりがりぼり、ごきり。
「身体が岩や金属で出来ている人にとっては栄養満点で健康的だし、それに調理の過程で流れ出してしまうことが多いから、金属部分をこれほど残して調理できるのはすごいことなんだよ」
おお、なんか説得力がある。切ったり加熱したり色々流れ出ちゃいそうなタイミングありますもんね。……肉汁じゃないんだから。
ごっきり。ぼきり。かごめの口からはすごい音がし続けている。土蜘蛛の咀嚼力と口と内臓の丈夫さすごい。
「美味しかったよ。ごちそうさま」
平然と平らげて、かごめはコロシアムを後にする。
「うーん……」
――はずが、物陰でこっそりふらふら倒れ込んでしまった。
「あまり大丈夫じゃなかったな……」
食べることは出来ても、美味しいか、そして無害かは別問題である。ステーキはあまりに固く、伸びに伸びた変身時間で霊力は底を尽き、猛烈な眠気に襲われてしまったのだ。
なお、ステーキを焼いた悪魔はかごめに褒められまくって上機嫌だったので、「お腹いっぱいで眠くなっちゃったんだな」と能天気に解釈していたという。
大成功
🔵🔵🔵
馬飼家・ヤング
食レポならまかせろー
伊達にキマフューでタダ飯くいだおれ生活送ってへんでー
おっ、これは美味そうなトンカツやな!
ほな早速いただきま…ってこれ脂身やんけ!?
赤身のとこちょびっとしかあらへんやん
ってかこれもう殆どラード!?
でもこんな時こそ慌てず騒がず
付け合わせのキャベツをいただくんや
キャベツの酵素が消化を助けてくれるからの
脂身トンカツの脂っこさにうえっぷってなりかけたら
野菜を交互に食べて口の中をさっぱりさせるんや
キャベツに飽きたら海藻サラダはどない?
野菜だけ大量に食べるんはしんどいけど
脂の乗ったカツのお供なら結構いけるやろ!
これって一周回ってヘルシーちゃう?
…ホンマはちゃんとした肉食いたかったけどな…
●とんかつ(しぼう99パーセント)
「食レポならまかせろー、伊達にキマフューでタダ飯くいだおれ生活送ってへんでー」
まんまるおなかをゆっさゆっさと揺らしながらやってきたのは……タコ焼き?
共食いでもしに来たんかいと云いたくなるようなビジュアルだが、彼はれっきとした猟兵。テレビウムの馬飼家・ヤング(テレビウムのちっさいおっちゃん・f12992)である。
そして出てきたのはタコ焼きではなくトンカツだったので、共食い疑惑も免れた。
「おっ、これは美味そうなトンカツやな! ほな早速いただきま……」
一切れ箸で取って断面を見てみた。なんか色がおかしい。
「ってこれ脂身やんけ!? 赤身のとこちょびっとしかあらへんやん……」
おそるおそる食べてみた。うーん、期待を裏切らないお味。
「ってかこれもう殆どラード!?」
某国ではバターに衣をつけて揚げた狂気じみた料理があるらしいが、ヤングの口の中を支配するまっ……たり濃厚な味わいもいい勝負である。
「つーかなんやっけ、こういうキャラおったなあ。はじっこすまいみたいな名前のやつ……妙にギャルに人気があって、ぷりちーなゆるキャラなヤングさん的にはちょっぴり妬いてまうやつや……せやなくて!!」
妙に噛み切れない脂身をようやく呑み下しながら、ヤングはお口の中の平和を手繰り寄せる。
「こんな時こそ慌てず騒がず付け合わせのキャベツをいただくんや。キャベツの酵素が消化を助けてくれるからの」
千切りキャベツはちょっぴり不揃いだったが、この際そんな事はどうでもいい。大事なのは野菜の爽やかさである。
「おっ海藻サラダもあるやん。気が利くなー」
何せトンカツを一切れ食べると猛烈にさっぱりしたものが欲しくなるので、ソースもドレッシングも殆ど要らない。素材の味っておいしいね。失敗しようがないしね。
明らかにキャベツのぶっとい芯の部分がそのまんま切られもせずに乗っかった大雑把すぎる千切りキャベツを、ヤングは実に美味しそうに食すのだった。
「野菜だけ大量に食べるんはしんどいけど脂の乗ったカツのお供なら結構いけるな! カツはほんのちょっぴりでいけるし、これって一周回ってヘルシーちゃう?」
ヤングの頭には『トンカツダイエット』なる本を出版してウハウハする未来が浮かび上がって来ていた。といっても食うには困らないキマフューの民、ウハウハといっても金銭的にではなくギャルにチヤホヤされるほうである。
「はーごっそさん。お腹はいっぱいになるし、ちょっとした夢も出来たし、ええ料理やったでー」
持ち前の気の良さでニッコニコ対応するヤング。
まあ、でもさあ。
(「……ホンマはちゃんとした肉食いたかったけどな……」)
そうなのである。やっぱりメインが美味しいのが一番だよね。
大成功
🔵🔵🔵
百鳥・円
【まる】
スーパーでカオスなドラゴンってなんですか?
属性盛り盛りで飽和しちゃいそうです
おにーさんは興味無いってカンジですね
食レポってご存知です?
まあ所謂感想をお伝えするってヤツです
今の時代は食レポもレビューも大事なんですよ
お店や料理人の腕の評価になっちゃいますからね
んまあ、そんなことは置いておいて
一生懸命作った料理人を貶されちゃあ辛いでしょう
めいっぱい、うーんと!ですよ
おにーさんも評論家(仮)の皮を被ってください
派手に爆発して四散した一品料理
中央に鎮座する生焼けっぽい肉塊
それを彩るのは掛け過ぎか?ってケチャップです
あーらまあ、これまた吹っ飛んだ見た目のお料理
相当グロテスクでものすんごい見た目をしてますけど
思いはぎゅうっと詰まってそうです
派手に爆発しちゃうくらいに、ね
それに。わたしはお肉はレア派なんです
血が滴るようなお肉だってどんとこい
彩りが殺人現場風になっていても構いっこナシです
じゃ、いただきます
――うんうん、美味しい!
柔らかさも味の加減もバッチリですよ
評論家さん方も一口食べたらどうです?
ゼロ・クローフィ
【まる】
スーパーカオスドラゴンねぇ
あ?ただの変人って事だろ?
まぁ正直どうでもいい
食レポ?
あぁ、食べてなんか言うアレか
ふーん、そんな必要な事か?
美味いもんは美味い。不味いもんは不味い。
好みの味なんて人それぞれだろうに面倒くさい世の中だな
お前さんは食レポ向いてそうだな
それりゃま、作ったのを貶されれば良い気はしないが
はいはい。嫌だと言ってもお前さん俺の口に放り込むだろう
ん?それほぼ生だろ?お前さんそれ食う気か?
殺人現場風生肉を食う円
普通に似合うじゃね?と思ったが口は出さず
俺のは……
茶色い丸い物体。ぷすぷすと煙の様なモンが出て、そこから流れる紫の液体。
……これ食いモンか??
彼女の視線を感じつつ、溜息一つ
仕方ないと口に運ぶ
一瞬意識が飛びそうになった
まぁ、何だ
ここまで丸く卵をふっくらさせるのは難しいな
その中に餡。綺麗な紫色にするのは至難の技
それを焦げ目で閉じ込め、客が割って楽しませるという
芸術的な一品じゃないか
ふっ、これが限界だと彼女に視線を送る
●ステーキと……何?
グルメコロシアムにやってくる悪魔たちは、たくさんのどきどきわくわくとちょっぴりのこわごわを浮かべた表情。
そんな悪魔たちも、コロシアムを去る頃には皆一様ににこにこと幸せそうな笑みを浮かべている。
だってここには、どんな料理も褒めてくれる審査員たちがいるからだ。
そんな審査員の席に、新たに二人の男女がついた。
「スーパーでカオスなドラゴンってなんですか? 属性盛り盛りで飽和しちゃいそうです」
感心半分、呆れ半分といった様子で呟くのは、赤と青の眸持つキマイラ、百鳥・円(華回帰・f10932)。
「スーパーカオスドラゴンねぇ」
「おにーさんは興味無いってカンジですね」
おにーさんと呼ばれた青年はゼロ・クローフィ(黒狼ノ影・f03934)。瞳の片方を包帯で覆い隠した彼は気だるげに円へと視線を寄越す。
「あ? ただの変人って事だろ? まぁ正直どうでもいい」
これに限らず色んな事に興味が無いゼロである。ゼロだけに――などという下らないジョークはさておき。
「食レポってご存知です?」
「食レポ?」
「まあ所謂感想をお伝えするってヤツです」
「あぁ、食べてなんか言うアレか」
存在は知っている。もちろん興味はない。そんなのは円も承知済みなので、何故それが必要なのかもかいつまんで説明する。
「今の時代は食レポもレビューも大事なんですよ。お店や料理人の腕の評価になっちゃいますからね」
評判って良いのも悪いのもあっという間に広まっちゃいますから、と手を広げて見せる円。ふーん、とゼロは相変わらず興味が無さそうだった。
「そんな必要な事か? 美味いもんは美味い。不味いもんは不味い。好みの味なんて人それぞれだろうに面倒くさい世の中だな」
「ま、おにーさんみたいに正しい人ばかりじゃないってことですよ」
理解は出来ても、共感は出来そうにない。ましてや今回は店やプロの料理人でなく一般個人である。
「お前さんは食レポ向いてそうだな」
ふと、思い付いた事を口にしてみた。百鳥・円という女性を印象付けるのは記憶に残りやすい声に、滞るなく紡がれていく言葉に、それから見た目からは想像できない胃のキャパシティに。どれをとっても適性が高い気がする。
「えへへ、そーですか? やる気出てきました」
「お前さんが一人で来ればよかったんじゃないか」
「んまあ、そんなことは置いておいて」
置いといて、にこれまたわかりやすいジェスチャーを交える円。
「一生懸命作った料理人を貶されちゃあ辛いでしょう、めいっぱい、うーんと! ですよ」
そう、今日は正確に味を伝える事は二の次なのである。大事なのはとにかく褒めて褒めて褒め斃す事!
「それりゃま、作ったのを貶されれば良い気はしないが」
「おにーさんも評論家(仮)の皮を被ってください」
「はいはい。嫌だと言ってもお前さん俺の口に放り込むだろう」
たとえば胡散臭い笑顔の“神父”の方だったらもう少しまともに食レポとやらをこなしただろうかとゼロは思案する。いやあっちはあっちでどうだろう。どうせ壊され尽くした人格の欠片から生まれたやつだ、俺もあいつも碌なもんじゃあない。
なんてとりとめもない事を考えていたら、いきなり何の脈絡もなく背後でボンって爆発音がした。戦い慣れている猟兵達ならともかく、普通日常生活では耳にする事のない音である。ワルが美徳のデビルキングワールドではそうではないのかもしれないが、少なくとももうちょっと常識的な世界だったらしない。
円は期待に目を輝かせ、ゼロはちょっとうんざりしながら振り返った。
「お待たせしました!!」
満面の笑みを浮かべた料理人が、黒々とした湯気(湯気と言い張るがきっと煙である)をほかほか漂わせる料理をふたつ、運んできた。
「あーらまあ、これまた吹っ飛んだ見た目のお料理」
「……それは何だ?」
円の前に置かれたのは謎の肉塊を乗せた皿。
「ステーキです!」
「ステーキ……」
でっかい皿の中心にどでんと鎮座する肉。
そこを中心に爆発四散したとしか思えない、勢いのある(控えめな表現)盛り付けの付け合わせたち。
それを彩る掛け過ぎか? ってくらいのケチャップ――ケチャップ? ステーキに?
「相当グロテスクでものすんごい見た目をしてますけど、思いはぎゅうっと詰まってそうです。派手に爆発しちゃうくらいに、ね」
「それほぼ生だろ? お前さんそれ食う気か?」
「わたしはお肉はレア派なんです」
じゅるり。赤い舌が、ほんの少しだけちらと覗いて舌なめずり。
「血が滴るようなお肉だってどんとこい。彩りが殺人現場風になっていても構いっこナシです」
なるほどこれが流行の肉食系女子。比喩でも何でもない。
ヒトではないものが混ざるキマイラの血がそうさせるのか、それとも円に宿る魔性か。何にせよあれは円の仕事だ、ゼロが向き合わねばならないものではない。
「俺のは……」
ゼロは自分が向き合うべきもの、目の前の皿に目を落とす。これは……なんだ?
茶色い丸い物体。ぷすぷすと煙の様な物が出て、そこから流れる紫の液体。
「私の創作料理です! 名前はまだありません!」
(「……これ食いモンか??」)
喉元まで出かかった言葉は必死で呑み込んだ。少なくとも作った本人の中では食べ物なのだろうから。
「じゃ、いただきます」
きちんと手を合わせた円がこちらを見てにっこり微笑んだ。――おにーさんも、美味しく食べましょうよう?
いっそ怖いくらいの笑顔に溜息ひとつ。
「……いただきます」
仕方ないと口に運ぶ。
一瞬。
意識が飛びそうになった。いや多分飛んでた。
「――うんうん、美味しい!」
倒れ込まないように必死に意識を手繰り寄せるゼロの隣で、円がにこにことお肉を口に運んでいる。
「柔らかさも味の加減もバッチリですよ。評論家さん方も一口食べたらどうです?」
後ずさる辛口評論家たち。勿体ないですねぇと口をとがらせつつ、残りも美味しく頂く円。無邪気な笑みはいくじなしな評論家たちを嘲笑っているようですらあった。
(「……何だか妙に似合ってんな」)
殺人現場風生肉をにこにこ食べる円の図。口には出さないゼロだった。さっき呑み込んだ言葉よりも出してはいけない気がした。
「……まぁ、何だ」
代わりに何とか必死で料理の褒めポイントを探す。
「ここまで丸く卵をふっくらさせるのは難しいな。その中に餡。綺麗な紫色にするのは至難の技。それを焦げ目で閉じ込め、客が割って楽しませるという――……芸術的な一品じゃないか」
「さっすが評論家さん! わかってくださってるぅ」
嬉しそうに笑う作者。でもあの焦げって意図的なやつじゃない気がする。ちょっと目が泳いでたし。
――……その火加減、ちょっとだけ生肉に分けてやればいいものを。
ふっ、とあきらめたような笑みと共に円に視線を送る。
やるじゃないですか、と嬉しそうに片目ウィンクが返ってきた。
その口元は血ともケチャップともつかないもので赤く彩られていた。やっぱり、妙に似合っていた。
そうして未来の料理人たち、あるいは口にするのも憚られるほどおぞましい何かを作り上げる人たちは、みーんなその頑張りを認められ、ほこほこと嬉しそうに帰路についたのである。
猟兵の方はといえばお腹いっぱいで美味しそうに帰還する者、ふらふらで斃れそうになりつつ帰還先で手当てを受ける者など、実に様々だったという。
しかしまだまだ対峙すべき存在はたくさんいる。こんな悪事を働いたスーパーでカオスなやつとか、エセ高飛車な美女とか、突如現れた魔王たちとか、それからその頂点に君臨するガチデビルとか。
こんなところでへばっている場合ではないのである。ないのだけれども――。
取り敢えず皆、死なずに帰ってきただけでもえらい。
皆を褒め続けてきた猟兵も、やっぱりうーんと褒められるべきだろう。
よくできました。💮
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵