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アンダードックの楽園

#サイバーザナドゥ #ダストエリア


●ある男のいうことには
 サイバーザナドゥの都市最下層『ダストエリア』――ジャンクに埋もれた、吹きだまり。
 好きでやってきた変わり者もいるが、その概ねは、わけありの落伍者ばっかりだ。
 ――あっ、別にダストエリア全域がそうってわけじゃない。
 少なくとも、『その区画』はって話ね。
 落ちぶれたヤクザ、心まで戦いに取り憑かれたカンパニーマン。捨てられた戦車に、暴力での制圧が癖になった武装警官……まあ、経歴はなんでもいいけど、真っ当なヤツはいないよ。
 怠惰に、自堕落に。
 そのくせ、暴力だけで心を洗う厄介者達が集まって――やることもないから、ストリートで戦ってる。
 積み上げられたガラクタの壁、赤いスプレーのラインが見えたら、その内部が戦場だ。
 チームだったり、個人だったり。その辺は自由なんだけど。
 そこに踏み込んだら、あとはもう出遭った相手に死ぬほどボコられても文句は言えない。背中から鉄パイプならラッキーだ。
 いきなりバイクで轢かれたりするのだって、ままある話なんだって。
 おっかないよねえ。
 でも、ひとつだけルールがある。
 ――殺しちゃいけないんだ。
 紳士協定っていうと笑っちゃうけどさ。
 なにせ、皆で納得して、本気で『遊んで』るんだ。中には、どれだけ改造を施して強くなれるか追求してるサイボーグとかね……。
 観戦者もいるんだけどね。単純に暴力沙汰が好きって奴もいるけど、大体は――瀕死の奴を連れて帰って、勝手に改造する機会を狙ってたりするみたいだよ。
 はは、そうだね、おっかないね。

 ええっと、そう。で、その区画に目を付けたオブリビオンがいてね。
 暴力で支配すればいいんだから、超絶わかりやすい。挙げ句、負けた奴らはいいなりに改造手術も受け容れてくれるんだもん、狩りに来るよね、大人げなく。
 だったら猟兵も同じ事をすればいい――っていうお話だ。
 つまり、ストリートで豪快に立ち回って、オブリビオンを引き寄せながら、最後はあちらさんの根城に殴り込むのさ。
 どうだい、単純な仕事だろ?

「ダストエリアは複雑怪奇。住民にお話聴く方が、根城も曝きやすいだろうけど……まあ、そこはご自由に。暴れてるだけで一目おかれる奇特な空間だし」
 敢えて、普段やらない戦い方とかしてみるのもいいかもね?
 グルナ・エタンセル(soldat・f36653)はそういって、へらりと笑った。
「メガコーポに兵士くれてやるわけにはいかないもんねぇ? ひとつ、オジサンの代わりにさ、よろしく頼むよ」


黒塚婁
どうも、黒塚です。
アングラのド定番ワールド(アングラとはいってない)

●1章補足
ストリートの内部で戦う場合ですが、猟兵同士で戦ってもいいですし、適当な一般人を相手にしても大丈夫ですが、殺さないのがルールです。
観戦する設定も可能です。
なお一部にはオブリビオンの動きはほんのり伝わっているようです。

特に調査しなくても2章になったら勝手に敵は襲いかかってくるので、雰囲気を楽しむ感じで問題ありません。

●プレイングに関して
毎章、導入公開後から受付となります。
日付はタグでのご案内となります。
またプレイング内容問わず、全員採用はお約束できません。
ご了承の上、参加いただければ幸いです。

それでは、皆様の活躍を楽しみにしております。
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第1章 日常 『サイバネモーターファイト』

POW   :    選手として出場する

SPD   :    観客として試合を観戦

WIZ   :    トトカルチョをしてみる

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●phase:0
 辺りには見渡す限り、何の用途に使うのか解らないガラクタが、堆く積まれていた。少し均衡を損なえば崩壊しそうなものも、びっちりと組み込まれ抜き取ることもできない壁が路地や町を作っている。地面を見れば、焼き付いたタイヤ痕や血痕が残り、片隅には生ゴミなども散らばっていて、お世辞にも清潔とは言えぬ。
 そんな空間の中に潜むように、建物の扉が紛れている――住民でなければ、何処に何があるのか、到底解るまい。
 街は薄暗いが、脈絡もなく妖しい光を放つネオンや、強烈な光を放つスポットライトが突き出し、奇妙な陰影を浮かび上がらせていた。
 ガラクタ積みの壁には、案内人の言う通り、真横に赤いスプレーが吹きつけられて、内側と外側を明確に区切っている。
 奇襲に向いた手狭な路地は大概戦闘区画外で、野次馬が見物していたり、生活しているものが過ごす空間に使われているようだ。
 では広い空間はどうかといえば、地面に大きく赤いラインが引かれて、無視できぬようけばけばしいライトで照らされている。
 時間帯の所為だろうか――あまり時間の概念はなさそうだが――今は、殴り合う人々の姿は疎らだ。
 単独で挑戦者を待つ者もいれば、団体で獲物を探るようにして目を光らせている者もいる。風景に溶け込むような乗り物の類いも、自律した参加者かもしれぬ。
 兎にも角にも猟兵が耳目を集めれば、オブリビオンの目に留まるであろう――。
シキ・ジルモント
戦闘区域で戦いオブリビオンを誘い出す
適当な相手を探すか、奇襲でも仕掛けてくれるのを期待
荒っぽい歓迎も喜んで受け、ルールに則って“遊び”に乗ってやろう
一対一に拘らず多数を相手にしてもいい
多少不利な状況でも、仕事の為には目立つように動く事が重要だ

ここでは殺さないのがルールらしい
ダメージを抑える為に相手の生身の部位には銃は出来るだけ使わず、拳打や蹴撃を中心に立ち回る

一対一なら相手の間合いの外から一気に接近、攻撃を入れたらすぐに距離を取る一撃離脱
複数なら手近な一人に連撃を叩き込んで包囲を崩す方向で考える
銃を使うならユーベルコードで武装や義体部位のみを狙い、戦闘不能に追い込みたい

倒した相手には何もするつもりはないが
戦利品がわりに情報収集として、ここで負けたらどうなるのかくらいは聞いておくか
オブリビオンに繋がる話が聞けるかもしれない

生きる為ではなく、倒すべき敵でもない相手との、ただ力をぶつけ合う戦い
そんな戦いを愉しむ感覚はよく理解できてしまって
…場の空気に流されそうになる自分を律しつつ、冷静に交戦を



●衝
 赤い境界線の内側で、シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)は佇む。
 極めて冷静な表情で、泰然と。
(「狙いは、あくまでもオブリビオンだが――」)
 周囲を窺う。
 値踏みするような視線は、至る所から感じる。
 臆するものもいれば、血気盛んな気を見せるもの、遠いところではエンジンの戦き。
 なるほど、空間全体が廃棄物で構築されて不安定であるからか――耳を欹てるまでもなく、そういった喧騒はすべて空気から伝わる。
 そして、常時存在する物々しさは、狂乱を肯定する熱気となっている。
 シキは青の双眸を、細めた――。
 来る。
 思うや、身を低く倒しながら素早く下がり、背に躍り掛かってきたシールドを躱す。
 視線だけで確認すれば、二メートル近い鉄塊のような物体。猟兵ならば、珍しい得物とは言いがたいが。
 振りかざしているのは全身殆どを機械化した大男だ。顔の向きを無視したサイバーモノアイがシキの位置追いかけ、口元はにっと笑っている。
「この“遊び”は、殺しは厳禁だったな――」
 確認するかのように呟き、強く地を蹴る。
 最短距離を結んだシキの拳は、男が庇う生身の半身にめり込んでいた。
 彼の尾が描く白い影すら、男には見えなかったはずだ。
 潰れたような呻き声が頭上で聞こえたが、毛が逆立つような悪寒を感じ、すかさず一歩退きながら、横蹴りを喰らわせる。同時、足先にびりっとした電撃の反応が返ってくる――シールドを手放した指先に、小さな雷電が揺蕩っていた。
「なるほど、気が抜けんな」
 全く実感の伴わぬ声で囁き、大男を放り出すように強く蹴り上げ、距離を取る。
 ――路地裏から、冷やかすような、賞賛するような声が聞こえてくる。ひっそりと、しっかりと、観衆は見ているらしい。
 路面に転がった大男は、クソッ、と呻いた。回路がショートしたらしく、すぐには動けないと愚痴りつつも、シキを湛えた。
「見たところ生身の癖に、あんた強いな」
「……」
「目も腐ってねえ、訳ありか」
 ヒヒ、と男は笑う。その目は細いデバイスを取り付けたようなモノアイなので、感情はよくわからない。
 少し悩んだが、シキは大男の腕を引いて、壁際に退避させてやりながら、問いかける。
「ひとつ聴かせろ――ここで負けたらどうなる?」
「ケースバイケースだな。基本は手術台直行だ」
 男は淡淡と言う。
「機械化されたやつらも――AIを書き換えられたり、装備を変えられたり……それで性能が向上するなら良い。悪質なヤツに捕まると、質の良いパーツを奪われて、粗悪品にされたり、散々だ」
 昨日奪われたパーツを、今日別のヤツが装着している――などは日常茶飯事だと。
「けどまあ、一番ヤバいのは、生身が多いヤツだよ。勝手な強化手術も、命に関わるが――後は、臓器を抜かれたり、新しい薬の実験台とかだな」
 俺も此所に流れ着いた時は、ここまで機械化してなかったんだぜ、と男は頬をこつんと叩く。
 だが、シキに印象深く響いたのは『薬』という一言だった。
「此所じゃ、生体が一番価値の高い“ゴミ”だ。気をつけろよ」
 男の警告に頷きかけたシキは――自分を取り囲む気配に意識を向けた。
 そして、瞬時にその意味を理解する。機械化していない肉体を持つシキは、格好の獲物なのだと――。
 状況として、願ってもないことでは、ある。
 派手に立ち回って敵の目を引くという目的においては。
 シキは素早く銃を抜くと、振り向きざまに、撃つ。乾いた音と、遠くでガラクタが爆ぜる騒音が続く。
 それを合図に、バイクの轟音が迫ってくる。銃を手にしたままシキは前方の壁を駆け上がり、宙から躍り掛かる。
 バイクは無人、頭脳戦車なのだろう――威力を抑えた雰囲気の機銃を備えている。ならば遠慮はいるまいと、シキはエンジン部を容赦なく銃撃する。
 油の臭いが漂う空間に着地すれば、脇から跳びかかって来たサイボーグどもの間を掻い潜りながら、顎の辺りを掌底で揺さぶり、拳を振り抜き追撃する。
 彼は獣のように滑らかに戦場を駆け、笑いながら掛かってくる相手をあしらう。殆ど意識せぬ一挙一動は、繰り返す度に冴えてくる。
 その感覚は――心地良い。
(「生きる為ではなく、倒すべき敵でもない相手との、ただ力をぶつけ合う戦い」)
 粗野な熱気。膚を刺す暴力的な気配。
 走り、殴り、殴られ、殴り返し――否が応でも昂ぶる本能的な衝動。
 愉しい、と――。
 同調しすぎぬよう、爪を立てるように、強く拳を握り込めた。
 場の空気に流されぬよう、逸る身を、心を――理性で諫めながら、シキは応戦を続けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

新田・にこたま
UCを発動しドローン9機を召喚。特化させる技能は索敵。
ドローンを戦闘区画上空に飛ばして待機させ、自身も戦闘区画に侵入。

スポットライトを浴び、ドスソード1本を手に、仁王立ちして挑戦者を待ちます。
襲いかかる住民たちの動きをサイバーアイで見切り、ダンスの要領で踊るように攻撃を躱し、そのまま死なない程度に切りつけて倒します。
視覚外からの不意打ち等も、上空のドローンが索敵した情報が私に共有されているので余裕を持って対処します。

さて、これだけ暴れていれば怪しい動きをする輩も出てくると思いますが…ドローンの索敵に引っ掛かることを期待します。

それはそれとして…全員纏めてかかって来なさい!
(楽しくなってきた)



●舞
 赤いラインを超えぬ位置で、周囲をガタガタ震わせていたエンジン音が、唸りを止めた。
 ひらりと飛び降りたのは、明らかに警官スタイルの少女――なれど、この辺りを徘徊する警官は概ね真っ当ではないので、誰も気にしない。
「行きなさい! 翁丸ドローン!」
 新田・にこたま(普通の武装警官・f36679)が告げるや、彼女がミニパトと頑なに呼んでいる四輪装甲車から、軍用ドローンが召喚される。
 ドローンは可能な限り高く飛ぶ――ダストエリアの地形を見るに、これはこれで、うっかり撃ち落とされそうである。
 あくまで索敵用と、戦闘補佐の役割だから、九台のドローンの一台でも残り役割を果たしてくれれば、にこたまとしては問題はないのだが。
(「心配しても仕方がありません」)
 電脳無線接続機能から、ドローンの視界が共有できていることを確認すると、彼女は毅然と歩き出す。
 鍔のない無骨な日本刀片手に、敢えてスポットライトの下に仁王立ちする。
「さあ、私は逃げも隠れもしませんよ!」
 堂々と宣言するのは、周囲を探るように動く挑戦者たちの姿を、既に観測しているからだ。ドローンが見せる俯瞰図、細道を行く人々の動きをチェックしながら、にこたまは依然、正面をきりっと見据えている。
 そんな彼女の頭上に、しなやかな影が降ってくる――機械化された黒い四肢を刃と尖らせた妙齢の女性。
 頭上からの蹴撃にして斬り下ろし、その奇襲を、にこたまはするりと潜り、軽やかな跳躍とともに刀を振り上げる。
 火花を散らしたが、弾き飛ばされたのはサイボーグの女性。
 片足を容赦なく切断しながら、即座に横へと剣を薙ぐ。金のサイバーアイは横からの攻撃を視ていた――真っ黒な全身装甲の敵は、負けじと追い縋って、低くタックルしてくる。
 脚に加速装置を仕込んであるらしい。弾丸のような突撃は、正面から受けとめると、装甲車すら潰れてしまうかもしれない――臆さず、にこたまは前へと地を蹴った。
 宙へと舞うように駆って、躰を捻りながら刀を脳天へと叩き込む。
 装甲が砕け、敵は地に沈む。死にはしない。彼女は手加減したし、そのための装甲だ。
 軽やかに着地して、ドローンの映像を切り替える。
(「さて、これだけ暴れていれば怪しい動きをする輩も出てくると思いますが……」)
 裏通りをこそこそと、這い回る影がちらりと見える――何処か、目的を持った動きに見える。それを記憶に止めながら、にこたまは大きく刀を薙いで、間合いを計る挑戦者達へと向き直る。
「それはそれとして……全員纏めてかかって来なさい!」
 ――血が騒ぐ、とでもいうのだろうか。。
 にこたまは愉しそうに、大立ち回りを続けるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真梨木・言杷
はみ出し者同士が殴り合い、仲良く生の実感を分かち合う……ガラクタ山のファイト・クラブ、か。オブリビオンに目をつけられるのも当然だね。分かりやすい仕事は嫌いじゃないよ。

九字護詞撫形代を召喚、身代わり義体の技能は【捕縛】に設定。義体達を赤いラインの内側へ、私自身は外側で観戦者を装い【情報収集】。安全圏から身代わり義体の操作に注力するよ。

9体の内の1~2体を【陽動】に使い、戦いになったら側面や背後から集団で襲って拘束する。数体は壊されるだろうけど問題無し。突然バイクで轢かれることもあるんだったね。なら私も自律制御の『機動重転輪』で先人に倣うよ。

……トネリ、死なない程度にね。「Certainly」



●視
 赤いラインの外側で、物憂げな眼差しを虚空に投げ、彼女は呟く。
「はみ出し者同士が殴り合い、仲良く生の実感を分かち合う……ガラクタ山のファイト・クラブ、か」
 真梨木・言杷(呪言.txt・f36741)は笑うでもなく、嗤うでもなく、戦場を見る。
 否、戦場なんて呼べるだろうか。
 そこにあるのは究極の暇つぶし。
 高尚な理想ひとつ無い、肉体言語。知性体が選ぶ生活だとは思えない――原始的な遊技場。
「――オブリビオンに目をつけられるのも当然だね。分かりやすい仕事は嫌いじゃないよ」
 フードの奥で密やかな息を零し、彼女は呪をささめく。
「禍根渦中過透──"いでていきぬる かえりくな"」
 捕縛に特化した九体の義体――言杷そっくりの義体たちが、彼女の前に、ずらりと並ぶ。
 いっておいで、と送り出せば、義体はそれぞれに役割を果たすべく、てらいもなく赤い境界線を越えていく。
 そして、言杷自身は、観客としてそれを見守る。
 しかし義体には操作が必要である――その感覚は、言杷本体と共有している。
 つまり、言杷は安全だが、其処で奮うのは言杷でもある――まあ、些細な事だ。
 果たして、二人組で義体を無防備に歩かせれば、グループに囲まれた。屈強な機械化義体の両腕をつけたサイボーグの集団が、警告もなしに躍り掛かって来る。
「五人か」
 呟いたのは言杷だ。どの義体が代弁したかは解らない。
「恨むなよ」
 サイボーグの言葉は淡淡としていた。女を嬲ろうという下卑た音声ではない。
「そっちこそ、ね」
 言杷のいらえも、淡淡としたものだった。
 男達の背後から、七体の義体が一斉に跳びかかる――捕縛の呪詛を与えられた義体達は、易々とその背に乗りかかりながら、彼らを拘束する。
 腕を拉ぎ、身動きが取れなくなったサイボーグは藻掻いたが、力にあまり意味は無い。
 だが、横から迫る轟音への対処は、一歩遅れた。
 ブレーキ音は聞こえぬ。激しい衝突音と同時、一体の義体と、サイボーグが一緒に吹き飛ばされていった。
 それはサイボーグどもの仲間ではない、別勢力――単独なのだろう――自律型のバイクが、嘲笑うように笑顔の絵文字を、ディスプレイに浮かべてる。
 ふぅん、と一人の言杷はオレンジの瞳を剣呑に細めるや、その傍らに大型バイクがやってくる――AI"トネリ"に制御された、それは。小型ミサイルも搭載している。
「……トネリ、死なない程度にね」
『Certainly』
 ――と、トネリは恭順して答えたけれど、果たして。
 暴れ回る形代たちと、バイクを見守り――言杷は、自分たちを観察するものがいないか、周囲に変化が無いかと探る。
 戦闘区域内に、特別変わった様子は感じ取れぬ――ふと、近くを見れば、観戦するもの達の中に異質な空気を放つもの達がいた。
 冷静に何かを見極めるかのように、じっと言杷達だけを眺めている。全身を覆うマント姿も異様だが、此所ではさほど奇妙な風体でもない。
 改造狙いの者達だろうか――しかし、その屈強な体つき、身のこなしは、むしろ戦闘特化した存在に見えた。
 そっと視線を外しながら。義体を戦わせながら、意識を彼らに向けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

未丘・柘良
おー、闘ってやがんな
赤線の外、見物に絶好の場所には人も集まってるだろ
俺様は殴り合いには向かねぇ
違う戦いが待ってる筈だ

つまり賭けな訳だが
殴り合いの喧嘩ってぇ面白いモン、勝ち負け予想せずに見物する莫迦はいねぇだろ
賭博の輪があれば加わるし、無きゃ俺様が始めるだけよ
ズルは無し、マジな賭けで勝負

…猟兵連中は多少手加減と言うか負けてやろうとか言う奴いるかと思ってたんだが
一般人同士に賭けても外れがこうも重なると苛々してくるな?
特にそこの見掛け倒し野郎…どんな安いオイル使ってんだテメェ!
線の外から野次飛ばし
我ながら卑怯だとは思う、うん
腹立つしその辺のクレーンこっそりUCで操ってフックぶつけとくか(偽装事故)



●賭
「おー、闘ってやがんな」
 人だかり、というには奇妙な風体が集う大広場の片隅で、未丘・柘良(天眼・f36659)が煙管を手に、片頬を上げた。
 喧騒と、殴りあう鈍い音に――重火器の咆哮も轟く。
(「殺しは御法度だったよな?」)
 ちらっと脳裏を過ったものの、柘良は気にしない。最初から、殴り合いに参加する気はないからだ。
「俺様は殴り合いには向かねぇ」
 零しつつ、辺りを見渡し――観戦者達の中でも騒がしい一群を見出す。
 この辺りは特に見晴らしが良く、応戦も活発だ。繰り広げられる戦いは塩っぱい雰囲気だが――。
「見つけた。あそこが俺様の戦場に違いねぇ」
 壁に取り付けられたサイネージ。目の前で香具師と座るサイボーグとケーブルが繋がっている。
 ――賭場。
 にやりと柘良は笑みを深める。えたり、といった表情だ。
「殴り合いの喧嘩ってぇ面白いモン、勝ち負け予想せずに見物する莫迦はいねぇだろ」
 ――なけりゃ、自分で始めるわけだが。
 その方が胴元で稼げるのでは、という天の声も聞こえたが、莫迦言っちゃいけねぇ、稼ぐのは目的じゃねぇんだと、彼は天の声に言い返す。
 人の波を割って、堂々と進み出た柘良は、高らかに叫ぶ。
「あの姉ちゃんと戦うサイボーグ野郎に賭けるぜ!」

 ――かれこれ小一時間後。
「決着したな」
 胴元のサイボーグが淡淡と配分を告げる。
「……おかしい」
 柘良は腕組み、不機嫌さを隠さぬ低音で吐き捨てた。
(「……猟兵連中は多少手加減と言うか負けてやろうとか言う奴いるかと思ってたんだが」)
「誰か様子見に負ける猟兵がいたっていいだろうが――」
 第三の目以外の双眸を伏せながら、自身を落ち着かせるように煙管を含む。
 まあ、いい。
 猟兵と一般人の実力差が乖離しているのは仕方が無い。
(「外れがこうも重なると苛々してくるな?」)
 だが、同時に賭けた一般人同士――サイボーグ対AI戦車、レプリカント対レプリカント……その他色々、片っ端から賭けた方が負けていく。
「はい、35番、決着だ――」
 勝手にナンバリングされた戦闘が終わる。柘良の賭けた方は善戦したが、負けた。
 こめかみの辺りが引き攣るのを感じ――自分を宥めてきたが、そろそろ限界だ。
 青い戦車と、赤い戦車がぶつかり合う――自分の賭けた青い戦車が壁際に押し込まれ、煙を立てて、すんと沈黙する。決着だ、という淡淡とした音声が敗北を告げる。
「――特にそこの見掛け倒し野郎……どんな安いオイル使ってんだテメェ!」
 赤いラインの外側から、耐えきれなくなった柘良はヤジを飛ばす。
 怒りのあまり――彼は千里眼で、ほど近く放棄されたクレーンの制御をハックした。
 何も知らぬ戦車たちは、哀れ――突如アームを振り乱したクレーンのフックで、薙ぎ払われていった。
 すわ事故かと騒ぎ出した周囲を遠巻きに。溜飲を下げた柘良は。
 ――美味そうに、一服していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

冴島・類
紳士協定?
こちらからしても有難い
殺し合い、したいわけじゃなし

全力で遊びたい方が多いなら…
黒曜、行こうか

慣れぬ地うろつき、奇襲されたら迎撃
武装少ないから油断してくれたら御の字

相手が生身なら近接で対応
武器の間合い、手数を見切り
周囲に転がる機械や壊れた子達
綾繋ぎの糸を繋いで
操り、飛び道具の狙いを防いだり
死角から不意打ちを仕掛ける
隙に接近し生身部分を急所外し狙い
黒曜で攻撃を

傷をつけたら相手の血に魔力を注ぎ
彼の縛る呪の力で自由を奪い拘束

機械操る方なら、同じく糸繋ぎ
僅かだけでも制御奪えたら
距離詰め操縦者を引き摺り出し
同様に縛る

終われば呪解き情報収集
ここらで派手に狩りをしている
強い方の噂とか、聞きたいんです



●糸
 不要、有用、解らぬガラクタが積み重ねられたダストエリアを見渡して、冴島・類(公孫樹・f13398)はゆっくりと目を瞬いた。
 暗く、眩く。騒がしいようで、ひどく静か。相反する空間の中、赤いラインの向こう側は時間経過とともに熱気を増している。
 紳士協定なるものがあるなら、こちらからしても有難い、吐息を零すように類は囁く。
「殺し合い、したいわけじゃなし」
 正直に言えば、わざわざ暴力に訴えなくてもよいのでは、という気持ちはある。きっとそういう情報収集の方法もあるにはあるのだろう。
 しかし、郷に入っては郷に従う――という素直さも、類は持ち合わせていた。それは、大概の相手に、後れは取らぬという自負からかもしれない。
「全力で遊びたい方が多いなら……黒曜、行こうか」
 刀身から柄まで全てが黒い一振りのナイフを手の内に。
 散策するように歩く、類の姿は――傍から見るに、無防備に近かっただろう。
 土地柄においてメタリックな武装を持たぬ彼は、何もしらぬ哀れな子羊のように見える。唯一の相棒がナイフで、そぞろ歩きする者。
 見かけたならば、それは二者択一。
 ――度の過ぎた愚か者か、卓越した達人か。
 いずれにせよ、この赤い境界線の内側にいる者達はどちらも怖れぬ。
 類という獲物を見つけた狩人は、舌なめずりすらせず。呼気を伝えるより先に加速装置を吹かし、彼に接近した――しかし、間で、キンと高い音がして、類は即座に振り返った。
 表情は困ったような、余裕を感じさせるものだった。
「機械の躰だけど、熱も音も立てないのか……」
 類は呟きながら、体を傾ぐことで、その奇襲を回避し、肘で相手の伸びた腕を打ち、引きこむような動作で身体を捌く。黒く細い四肢をもつレプリカントは、その軽量さを活かして加速し、彼を追い越し、対峙の形を選ぶ。
 マスクをつけた相手は――そんなわけで性別不明だった――類を見て「ふーん」と零す。
 蟷螂のようなブレードを備えた相手は、風と舞い、相手の首を掻き斬る戦法らしい。
「でもそうしたら、死んじゃうよね、君」
「死にませんよ――けれど、首を斬られるわけにもいかないので」
 攻めあぐねる理由がそれか、と類は笑いながら、心配は無用だとナイフを構えながら言う。
「結んだならば、解くまで」
 彼の手より伸びる不可視の糸は先刻奇襲に気付いたように、既に辺りの鉄屑と結んでいた。ぐっと引きこむように腕を動かせば、レプリカントの頭上に、大小様々な鉄屑が浮かび上がり――糸を解けば、重力に従って、落ちる。
 今度こそ息を呑み、前へと逃れたレプリカントへ、類も素早く距離を詰め、交差の折、刃を短く振り下ろす。
 機械の体といえど、生命体――傷つけば、血を流す。
 類の注いだ呪いに縛られ、それはぎこちなく震えながら、膝を突く。
 抵抗しているらしいがままならぬその喉元に、再び刃を突き付ける。別に、どの部位でも構わない……殺すわけではないのだ。
「勝負あり、ですよね?」
 敗北を呑ませればいい――レプリカントは、細い双眸を更に細めて、溜息をついた。
 呪縛を解きつつ、類は問う。戦いの熱ももたぬ涼やかな声音で。
「ここらで派手に狩りをしている強い方の噂とか、知りませんか?」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴァシリッサ・フロレスク
Hey!Y'all♪イカれたHustler共
“噛ませ”じゃねェってヤツは掛かってきナ?まァ、ンな見上げたタマは居ねェだろうがね

堂々と独り、徒手空拳で挑発する様にストリートのど真ん中を練り歩く
骨の有る奴を物色して、まるでブリーフィング通り本当に“ボディ・スナッチ《同じ事》”をするような調子で
UC【キリング・イン・ザ・ネーム】を発動
激昂して食って掛かる程度のイキり散らした三下には用は無い
何匹来ようが睨みを効かせて指一本遣わずに黙らす
狙いは片端から無力化して戦闘自体を抑止する事によるオブリビオンの妨害
序に見かねた奴サンを炙り出せりゃ締めたモノだ

それでもUCを潜って仕掛ける上玉が居れば見切り、怪力で往なしつつUCの第2フェーズ
身を傷付けず戦闘力のみ奪い去る獄炎で苛む

此方を噂の輩と見紛って
義憤に駆られて来た奴がいりゃ
素性を明かして共闘を募るのも一興か

Hm?好い筋してンじゃないか

アタシらはどーせ
Not Dead, Can't Quit《死ぬ迄“こう”だ》

Get at me dog《コッチに来なよ》♪



●威
 薄暗い路地、ケバケバしいネオンに照らされて、赤毛が輝く。
 鼻歌交じりに、足取り軽く――ヴァシリッサ・フロレスク(浄火の血胤(自称)・f09894)は一番交戦激しいという大通りを悠々と歩く。
 気性の荒いタイプが集う場所らしく、確かにあちこちと抉られ、焦げ付いて、物々しい空気が漂っている。
 そんな場所で――彼女は相棒たる重火器を何一つ持たぬ丸腰――否、徒手で、彼女は楽しげに、口元には軽薄な笑みを溜め、周囲に値踏みの眼差しを向けていた。
「Hey! Y'all♪ イカれたHustler共――“噛ませ”じゃねェってヤツは掛かってきナ? ……まァ、ンな見上げたタマは居ねェだろうがね」
 高らかに挑発すれば、熱烈な視線が集まった。つい、口元が歪む。解りやすくっていい、とも。可愛らしい、とも――。
 いずれにせよ、こんな軽口で気色ばむようでは、お話にならない。
 彼女はあくまでも、彼女の物差しで――出来るか、出来ないか、『骨の有る奴を物色』していた。
 不意に、その進路を遮るスクラムが出来る。
 一応、脚を止め――ヴァシリッサはじとりと見やる。
「てめェ、新顔が言うじゃねえか」
 冷静に努める声音は、怒りに細微な揺れが滲む。黒いタコみたいなヘルメットは、鎧装なのか素顔なのか解らないが、二メートル近い体躯のデスブリンガーどもだ。
 どいつもこいつも鎧装だけは立派、だが。
「Huh……」
 ヴァシリッサは解りやすく、溜息を漏らし――“ボディ・スナッチ”の品定めよろしく、上から下まで、冷たく相手を眺めると。
 壁のように並んだ木偶の坊ども全員に「Junkじゃ意味ねェんだよ」と、鼻であしらう。
「ンだと!」
「黙ってりゃァいい気になりやがって」
 とことん莫迦にしたような態度に、ヘルメットどもは排気のような怒号で、激昂したが。
「――なァ、一寸通せよ……?」
 佇む姿も態度も一切変えず、ヴァシリッサはただ其れ等を睨めつける。
 その灰の眼光が不穏な光を放ったのは一瞬。
 決して大柄では無い彼女の全身より吹きつける殺気、凄味を前に――彼らは為す術も無く、身体の機能が殆ど停止した。指先ひとつ、動かせぬ。
 彼女はその真ん中を悠々と歩いて、先へと進み出す。
 サイボーグ達はヴァシリッサに触れることも、追うことも出来ず呆然と立ち尽くしている。毒気が抜けるまで、暫くはあのままだろう。
 ヴァシリッサが、敢えてユーベルコードを使ってこんな選別を行うのかといえば――嫌がらせだ。
 オブリビオンが何処かでこの戦場を視て、何やら企んでいるというならば、戦闘行為そのものを抑制すれば、不審な動きは目立ち、或いは己に向けられる関心に気づけよう。
(「見かねた奴サン自身を炙り出せりゃ締めたモノだが」)
 我ながら地味な活動だと自嘲する。とっとと飛びだしてこい、と思いながら、ブーツの底を荒れた地に叩きつける。
 その横っ面に、奇襲の風音が届き――彼女は即座に膝を曲げた。赤毛の先がカットされただろうか。艶ひとつ無い黒く塗られたブレードの薙ぎ払い、首を狙った、相手を殺しかねない一撃は誘導で、当然次の一撃に繋がる。
 どういう身体捌きか、屈んだヴァシリッサを、続けて蹴撃が襲う――上玉だ、と彼女はニヤけながら、それを正面から受け止めた。
 掴んだ脚が運動を止めきる前に、捻るようにして投げ飛ばす、その膂力。
 襲撃者も落ち着いた様子で、ふわりと空を跳んで間合いの外へと退く。揚々と構えを取り直す。恐らくサイボーグの男性は、微笑みながら言葉を発した。
「勝負を挑む」
 周囲の喧騒が、ぴたりと凪いだ――それだけ、この男が注目されているのだろう。
「正義の味方……ッテ雰囲気でもないか」
 ヴァシリッサは、そのまま、指先で手招く。
 風が動く。重力を感じさせぬ跳躍から加速した男の一閃を、彼女は限界まで目視して潜り抜ける。顔面に向かって拳を叩き込む――流石にヴァシリッサの怪力を目の当たりにした男は、回避を選んだ。無理な姿勢からブレードを捻って横へと転がる。
「Hm? 好い筋してンじゃないか」
 笑いながら――ヴァシリッサは、次を仕掛けると見せかけて、身を翻した。
 刹那、男は彼女を見失った。気配を探ろうと集中した男は。突如と凄まじい熱を感じて、振り返る。
 ほど近く。赫と燃える拳があった。迫り来るヴァシリッサの威圧感は、死を感じる程、凄まじく重いはずだ――。
 それでも男は、戦意を失わず、対抗しようと身体を捻る――そんな相手が、此所で燻っているのも奇妙な縁だ。
「アタシらはどーせ、Not Dead, Can't Quit《死ぬ迄“こう”だ》」
 だが、容赦なく彼女は、獄炎を相手に叩き込む。
「Get at me dog《コッチに来なよ》♪」
 機械部分だったらしい腹を砕かれ――そこから這うように絡みつく炎に苛まれ、男は膝を突いた。苦痛に呻きながらも、ブレードを手放さぬ相手に。
 立て、とヴァシリッサは再度手招きをした。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『悪徳武装警官』

POW   :    正義の鉄槌を喰らえッ!この蛆虫どもォオッ!!!
【サイバーザナドゥ化した剛腕】で超加速した武器を振るい、近接範囲内の全員を20m吹き飛ばし、しばらく行動不能にする。
SPD   :    公務執行妨害でぇ……死刑ッ!!!
【銃火器による無差別乱射】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    助かりたいならわかるよな…袖・の・下(ワイロ)♪
対象にひとつ要求する。対象が要求を否定しなければ【顔に唾や痰を吐きつけながら金品】、否定したら【胸ぐらを掴み顔面を殴り付けて闘争心】、理解不能なら【殴る蹴るの集団リンチで生命】を奪う。
👑11
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●phase:1
 ――生体は、高く売れる。
 それはこの一帯では元々言われてきたことだ。
 ――怪しい薬が出回る噂がある。
 これについては、比較的最近のこと。薬の実験台にされる、というのも、都市伝説的に広まってはいるが、最近とみに聴くようになった。
 そこにとあるメガコーポが噛んでいるのではないかというのは、サイバーザナドゥにおいて、当たり前の推測ではあるが。
「根拠はあるぜ。趣味と利益で改造を楽しんでたヤツらの羽振りが、急によくなった。腕を見込まれたとかいって吹聴してたりな――しかし、そいつらを最近見かけねぇ」
 気味が悪いと、サイボーグは苦々しい表情で、そう語った。

 ある猟兵と対峙したレプリカントは、幾人かの『強い人物』の名をあげたが、同時に表情を曇らせた。彼らの殆どは、現在行方不明だという。
「その人達が、特定の誰に負けた……って話は聞いてないから。狩られるとしたら、境界線の外側で、だよ」
 だから、『殺されはしない』境界線の内側に、弱いヤツが結構いるんだよね。
 結局男だか女だか解らないレプリカントは、つまらなさそうに、そう呟いた。

 黒いブレード使いのサイボーグの男は――奇しくも、そのレプリカントに強者として列挙された内の一人であった――身を蝕む炎が鎮火した後、猟兵にかく語る。
「……いずれの者達も、皆、あるメガコーポのエージェントから接触を受けていた。基本的には、スカウトの話だ。承ければ破格の良待遇だ」
 しかし、此所に好き好んで留まる奴らは、メガコーポの介入を嫌う。
 ゆえに、大体の者は断った――が、彼らは次々と行方知れずとなり、その後見かけたという話は聞かぬ。
 ひとり、二人と顔なじみが減って、いよいよ、自分の番かと戦う覚悟を決めた時。
 このダストエリアに、猟兵達がやってきた――。

「栄転であれ、誘拐であれ、買収であれ……全ての噂の結末はどれも同じだ――“最近、ヤツらの姿を見かけない”」
 皆の証言を裏付けるように、賭場の胴元は、ぼやいた。
「最近はどうも小粒だ。めざましい人材は、新人のうちから刈り取ってくヤツがいやがる」
 迷惑な話だ、と怒りよりも諦念を浮かべて、胴元は溜息を零す。

 やがて――幾人かの猟兵が観測していた、境界線の外側で怪しい動きを見せた団体が、それぞれ猟兵の元へ辿り着く。
「よぉ、相変わらず、治安を乱す大馬鹿どもが。全員逮捕だ」
「活きの良い逸材をつれてきゃ、俺達も大出世――」
「黙ってろ。……意識があると厄介だ。ちゃーんと、沈黙させてからだ」
 下卑た笑みを浮かべた悪徳武装警官どもは、悪意を隠さぬ。
 メガコーポとの関係を匂わせてはいないが、猟兵達には此奴らがオブリビオンであることを見抜いている。
 ゆえに――彼らは気付いていない。
 自ら接触してくれたことで、猟兵達が観測していた『拠点』の位置が、乗り込むべき場所が、明らかになったと。
 ただ、そのために、まずは。この厄介者どもを叩きのめす必要が、あった。
新田・にこたま
警察手帳を掲げて大声で叫びUCを発動します。

ホールド・アップ!動くな!
ちゃんとした警察です。あなたたちには何の権利もありません。正義の鉄槌を喰らいなさい。

サイバー軽機関銃で先制攻撃を仕掛けます。UCの効果で行動速度が半減した敵を乱れ撃ちにするなど造作もないことです。
敵の攻撃についても、速度が半減したから威力が半減などという単純な計算にはならないはずです。そもそも半減した速度を超加速と言えるのか、半減した速度で吹き飛ばしが可能なのかも疑問ですしね。
それはそれとして、念のため義腕に力を込める挙動をする敵がいないか見切り、その兆候が見られたらその敵を即座に撃ち抜きます。

公務執行妨害で死刑です。



●正義の鉄火
 新田・にこたま(普通の武装警官・f36679)は凜然と、にやつく悪徳武装警官を一瞥するや、
「ホールド・アップ! 動くな!」
 左手に警察手帳を掲げ、叫ぶ。
「ちゃんとした警察です。あなたたちには何の権利もありません。正義の鉄槌を喰らいなさい」
 言って、突き出した右手――機械化義体に対応した軽機関銃を握った彼女は、躊躇いなく引き鉄を引いた。
 それを目の当たりにしながら、悪徳警官どもは、動けなかった。警察手帳を突きつけている限り、敵の行動速度は半減する――たったそれだけのことだが、軽量化しているとはいえ特別製の機関銃が撃ち出す弾丸の前では致命的だ。
 けたたましく吼える銃声、見る見るうちに血霞が立つ――。
「チッ!」
「グェッ、な、何しやがっ……!」
 舌打ちした悪徳警官は、緩慢と、前に立つ同僚を盾と、犠牲に捧げる。
「判断は悪くありませんね――行動は悪党そのものですが」
 にこたまの言葉は冷ややかだった。
 腕を下げる事無く、肉壁を掴んだものたちの動きを銃口で追う。
「黙れェ、力こそ正義だッ!」
「正義の鉄槌を喰らえッ! この蛆虫どもォオッ!!!」
 肉壁をにこたまに向けて放り出しながら、生き延びた警官どもは、機械化義体の剛腕で特殊警棒を振り下ろしてくる。
「無駄です」
 怯えなど欠片も見せず、にこたまの腕先で機関銃が吼えた。
 規則正しい銃弾は正面から踏み込んできた悪徳警官を一瞬でミンチにした。
 それとほぼ同時に、左側面、荒々しい息づかいが聞こえた。
「舐めんな蛆虫がァ!」
 大上段に振りかざされた警棒が、風を斬る――その鋭さも、きっと常よりは鈍いのだろう。
 それを機械化した身体と重量で反動を付け、捨て身のように踏み込んでくる。
 思っていたよりは根性がありますね、と微塵も感心せぬ声で、にこたまは囁く。
 彼女が首を微かに回す間に、警棒はその肩に触れようとしていた。
 果たせるかな、触れるより早く、その腕は儚く吹き飛んだ――。
 彼女は対象を見ること無く銃口を肩越しに突きつけ、撃ち抜いていた。耳元で轟く爆音に、自分の耳に甚大なダメージが来たことへ、嘆息しながら。
「公務執行妨害で死刑です」
 冷徹な声で告げ、にこたまは、念入りに敵を蜂の巣にしていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

冴島・類
わあ
釣られて出てきたのが警邏姿の方とは…
こんにちは、何か御用で?
明白だろうと一応

多分僕は土産にはならないと思うけど
正確には生体ではないし
そんな理論は通じないだろうな

助かりたいなら何か、と要求されたら
拒否
と言うか…お渡しできるもの無いんです
巻き上げられる事明白の場に、持って来ませんよ
多勢に無勢だと、逃亡図るように見せ
軽武装を舐めてくれるよう狙いたい

殴打されるなら
飛び道具ではなく、距離を向こうから詰めてくれる
彼らの生体箇所を見定める為注視
掴まれる瞬間見切り、糸を放ち繋ぎ炎で攻撃
動きを抑え武装を奪いたい

狩られるのも、実験されるのも慣れてるけど
楽しいもんじゃないし
そんな方、これ以上出すわけにはいかない



●業滅
「わあ、」
 釣られて出てきたのが警邏姿の方とは――驚きと呆れが、思わず声に出た冴島・類(公孫樹・f13398)は、それでも平然と返してみた。
「……こんにちは、何か御用で?」
「御用も御用よ、余所モノが好き勝手にやりやがって」
 何となく筋が通っているが、私利私欲が裏にあると本人達が言い切った後だ、類は苦笑するしかない。
「多分僕は土産にはならないと思うけど。正確には生体ではないし」
 通じないだろうな、と思いつつ、一応対話を試みてみる。
 それを、弱きの表れと見たか。下卑た笑みを浮かべた悪徳武装警官どもは、無遠慮に距離を詰めてきた。
「関係ねぇなあ?」
「助かりたいならわかるよな……?」
 その威圧感に怖じるように半歩下がりつつ、類は毅然と言い放つ。こうすれば健気な獲物であるように見えるだろうか――。
「拒否します」
 簡潔ながら、断固とした拒絶が響く。
 鼻白む警官どもから、類はそっと視線を逸らす。やや足元に落とした視線は――互いの距離、四肢の動きを観察している。
「と言うか……お渡しできるもの無いんです。巻き上げられる事明白の場に、持って来ませんよ」
 持っていたところで寄越す気は全くないが、類はしおらしい様子で言い、じりじりと後退する。あたかも真っ向から戦うのを厭い、逃げだそうとしているかのように。
「いい度胸してるなァ?」
「出すもんは出して貰わなきゃな」
 ますます嗜虐心を煽られた警官どもは、彼を逃がさぬよう取り囲んでくる。代表するように正面にいる警官が、類の胸ぐらを掴もうと腕を伸ばしてくる。
 完全に油断しきった動作――相手の抵抗など、気に掛けぬ無造作な動きであった。
「さあ兄ちゃん、お話しようじゃねぇか」
 ――瞬間、さっと顔をあげた類が腕を広げる――その指先から伸びる、赤い絡繰糸が周囲にぱっと朱を放つ。
「燃えよ、祓え」
 糸が空を躍るや、炎が舞う。
 距離を詰めていた警官どもは鼻先に赫と燃ゆる火の粉を突きつけられ、ぎゃあと間抜けな声を上げて仰け反る。
「てめぇ!」
 猛々しい声を潜り抜け、再度、類は跳躍しながら糸を繰る。
 炎の鞭はしなり、警官の顔や、肩、腰などの、生体部分――炎に耐性持たぬであろう部位を重点的に狙う。
「狩られるのも、実験されるのも慣れてるけど――」
 焦げる臭いを前に、類はやや目を伏せ、ささめく。
「楽しいもんじゃないし――そんな方、これ以上出すわけにはいかない」
 乱暴な腕は空を掻き、脚も悉く空転し、焔に撒かれ。
 縁を拒絶する赤い糸が、その場を沈黙させるまで、さほどの時間は掛からなかった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シキ・ジルモント
ヴァシリッサ(f09894)と
居合わせたのは幸運だ、共闘を頼む

頭数はそれなりだが…この程度では物足りないか、ヴァシリッサ
ヴァシリッサの車が敵陣に突っ込みつつ乱入するのを見届けて
敵が体制を立て直す前に運転席に乗り込む
ああ、任せろ

メインの火力は屋根の上の彼女に頼り、運転を担う
ヴァシリッサを振り落とさないように、また車体への余計なダメージを抑えるような運転を

搭載AIのヴィッキーに運転操作のサポートを依頼
宜しく頼むヴィッキー
敵が固まっている場所等、ヴァシリッサの弾幕が上手く機能する位置へ車を走り込ませ
進路を敵が妨害するなら車のパワーで撥ね飛ばす

装甲も申し分ない車だが、火器の乱射は流石に直撃しないよう警戒
乱射の範囲内に留まらない為、車のスピードに任せて止まらず走り続ける
ヴァシリッサの撃ち漏らしは、窓から銃を突き出して攻撃速度を重視したユーベルコードで処理する
バイクではなく車の運転もたまには悪くない

ヴァシリッサ、乗り心地は…聞くまでもなく楽しそうだな
これで紳士的とは普段どんな運転を
…お手柔らかに頼む


ヴァシリッサ・フロレスク
シキ(f09107)と合流
※『』はAIヴィッキーの台詞
あら?キグウじゃない♪もう一寸洒落たトコだッたら良かったけど

あァ、全ッ然役不足だね、他の同志達の手を煩わせる迄も無い
“アタシら”だけで十分
一集団相手に銃撃を見切りながら相変わらずステゴロでへらへらと挑発しつつ
誰が”ふたりだけ”だッて?
掛かって来たところでUC発動
AI・ヴィッキーを搭載した愛車アルスヴィズを敵陣に突込ませる
遅いよSweety♪『バカ。マシン使い荒過ぎ』フフッ♪ソレじゃ休ませたげるサ♪シキ、お願いしてイイ?
車内に積載していたディヤーヴォルを掴み、自身は車のルーフ上へ
左手はルーフからポップアップしたグリップを掴み、怪力でディヤーヴォルを右腕のみで構える
Hey♪シキに操舵権限《ハンドル》渡しナ♪ロデオだ、Cowboy♪
シキの運転に身を任せ弾幕で蹂躙する
Yee-Haw!サイコーにHOTなドライヴじゃない♪
『ほんと。あんたの運転よりよっぽど紳士ね』
ッと、惚れンじゃないよ?ヴィッキー?
『どうだか?』

フフッ
今度ゆっくり味合わせたげる♪



●Trinity
「あら? キグウじゃない♪」
 シキの旦那、と呼ぶ馴染みの声に、シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)は耳を欹て、ゆっくりと振り返る。
「もう一寸洒落たトコだッたら良かったけど」
 ヴァシリッサ・フロレスク(浄火の血胤(自称)・f09894)は口の端をニッと上げた。
 少々癖の滲む笑みに、柔らかな調子で頷きつつ――顔をあげたシキの、敵を一瞥した青い瞳は、鋭い光を宿していた。
「居合わせたのは幸運だ、共闘を頼む」
「共闘ねェ」
 言いながら、彼女は目を眇めた――悪徳武装警官どもは、どいつもこいつも下卑た笑みを浮かべ、此方を舐めきっている。
 仮にもオブリビオンなのだから、それなりの手応えはあるのかもしれないが、先程ストリートで見かけた三下と、さほどの差を感じぬのだ。
 歯切れが悪いようなヴァシリッサの声音の意味を、シキは正しく理解し、薄く笑った。
「頭数はそれなりだが……この程度では物足りないか、ヴァシリッサ」
「あァ、全ッ然役不足だね、他の同志達の手を煩わせる迄も無い――“アタシら”だけで十分」
 肩すくめて、相変わらず何も持たぬ両手をひらひら振る。
「ァア?」
 警官どもは解りやすくいきり立つ。
 挑発を受けてではなかろうが――シキとヴァシリッサの前方、ガラクタを積み重ねたストリートの彼方此方から、同じような面が合流し続々と増えていく。
「たった二人でこの数の差を覆せると思ってやがンのか!」
 優勢を疑わぬ大声に、静かに溜息を吐いたのは、ヴァシリッサだろうか、シキだろうか。
 少なくとも、獰猛な笑みを湛えたヴァシリッサは。双眸を不穏に輝かせた。
「誰が”ふたりだけ”だッて?」
 低い声音を掻き消したのは、噴き上げる轟音。遠くから音を斬り裂きながら疾駆してきたのは、目を引く真っ赤なボンネット――ヴァシリッサの、愛車アルスヴィズ。
「――Viva la Victoria♪」
 大排気量V8ターボ搭載、最新鋭技術で限界迄チューンされた4桁馬力のモンスターカーは。操縦席を空席の儘、加速し――警官どもの隊列に突っ込んだ。
 其れ等の驚きや情けない悲鳴は、すべてアルスヴィズの叫声に掻き消された。高らかなエンジン音は、車体と半機械の身体がぶつかりあう鈍い音すら呑み込む。
「遅いよSweety♪」
 などというヴァシリッサへ。アルスヴィズを制御しているAI・ヴィッキー――戦場展開補助兵器用AI/Type-C:F-A・BSs“ヴィクトリア”は、表示できる表情があれば、彼女を鋭く睨めつけていただろう。
『バカ。マシン使い荒過ぎ』
 ヴィッキーの不満は、今も警官どもを轢き潰すモンスターカーへのいたわりだ。
 反撃の銃撃をスピンしながら弾き飛ばし、ヴァシリッサが手招く儘、地面を焼き焦がしながら、彼女の元へぴたっと止まる。
「フフッ♪ ソレじゃ休ませたげるサ♪ シキ、お願いしてイイ?」
 AIの機嫌とは裏腹にご機嫌なヴァシリッサは、鼻歌交じりに車内からディヤーヴォル――特別仕様の重機関銃を担ぎ出す。
「ああ、任せろ」
 目配せ貰ったシキは、短く答え、自然にアルスヴィズに乗り込み――ハンドルを握る。同時、ひらりとヴァシリッサは愛車のルーフに飛び乗る。
「Hey♪ シキに操舵権限《ハンドル》渡しナ♪ ロデオだ、Cowboy♪」
『承認――任せたわよ』
「宜しく頼むヴィッキー」
 準備万端、ますます笑みを深めたヴァシリッサは。
 機関銃を片手に、片手で警官どもを手招く。
「調子に乗りやがってッ!」
「公務執行妨害でぇ……死刑ッ!!!」
 わざわざ高いところに乗って、いい的だ、と赤毛の女に銃口を向けるや、デタラメに乱射する――。
 その影は、一瞬で消えた。正確には、途方もない熱量と重量に薙ぎ払われていた。
 突如再加速したアルスヴィズが、銃弾を撥ね除けながら、突進したのだ。ハンドルを握るのはシキだが、加速の調整はヴィッキーが巧みに熟す。
 車そのものが一種の武器であることは間違いないのだが、そのルーフから、雨あられと弾丸が降ってくる。
 吹き飛ばされそうな風圧と、デタラメな圧を、片腕でグリップを掴むだけで平然と耐え、ヴァシリッサは残る片腕で担いだ機関銃を撃ち放つ。
 ともすれば好き勝手に暴れる愛銃を、膂力で押さえ込み、絶え間ない重低音と振動を奏で、警官どもを肉片に変えていく。
 血と肉で滑る足元を、小刻みなハンドル捌きで抑えつつ。ヴァシリッサが吹き飛ばされぬよう意識は残しながら、シキは其れを繰る。
 敵が固まっている方角へ、銃口が向くように。
 或いは集中砲火に襲われぬよう、加速して掻き乱す。
 最早敵陣からは潰れたような悲鳴しか聞こえない。だが、オブリビオンの矜持か性質か、臆することなく向かってくる。
 突如と増援が横から出てくることもあって、気は休まらぬ――シキは顔色ひとつ変えず、冷静に捌いていくが、急に角を曲がった時などは、車体のダメージや、ルーフの上のヴァシリッサを密かに案じる。
 それを感じ取ったわけではなく、偶然のタイミングなのだろうが。
『この程度、心配はいらないわ。どっちも呆れるほど頑丈よ』
 不意に飛びだしたヴィッキーの皮肉に、けたたましい銃声が重なる。
 その時――掃討のために減速した車の脇で、
「クソッタレ!」
 運良く生き延びたであろう血まみれの警官が、火炎放射器を掲げて吼えた。舌打ち混じり、ヴァシリッサの眼差しがぎろりと其れを睨んだ刹那。
 車窓から迸る、マズルフラッシュを、彼女は見た。
 鮮やかな銃撃は警官の脳天を貫いて、砕く。まさかその小さな孔に、二発の銃弾が貫通していたなど、シキの技を知らねば、解らぬだろう。
 仕留めた事を確認することもなく――事もなげに腕を引き、彼はぽつりと呟く。
「バイクではなく車の運転もたまには悪くない」
 ルーフから感じる異音すら内側に響かせぬほど頑丈な――まさにモンスターと呼ぶべき車だが、思いの外、細やかに動く。全身を駆使してこの屈強なモンスターを御す感覚は、新鮮であった。
 極めて不穏なドライブではあるが――風を全身で受けるバイクとは異なる、爽快感がある。
 ともすれば上に乗っているオーナーの状況は。
「ヴァシリッサ、乗り心地は……」
「Yee-Haw! サイコーにHOTなドライヴじゃない♪」
 聞くまでもなく楽しそうだな、シキは笑う。その音声は、ヴィッキーが中継して、クリアに届いている。
 AIは、わざわざ息を溜めたような声音で、呟く。
『ほんと。あんたの運転よりよっぽど紳士ね』
「ッと、惚れンじゃないよ?ヴィッキー?」
『どうだか?』
 そんな女二人の軽口に、余計な口を挟む男ではないが。ひとつ気になって、彼はどちらにでもなく、問いかける。
「これで紳士的とは普段どんな運転を」
 ヴィッキーはノーコメントを決め込み、ルーフの上のヴァシリッサは艶美とも言える笑みを浮かべた。
「フフッ、今度ゆっくり味合わせたげる♪」
「……お手柔らかに頼む」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

真梨木・言杷
なんだ、マント姿でこそこそしてたのはお巡りさん達か。こんな場所までご苦労なことだね。お生憎様、警察は嫌いだよ。

他人に分けられるほどお金は持ってないな。賄賂はもちろん拒否するよ。胸ぐらを捕まれる前にSlowlorisを展開。敵の行動を遅延させてユーベルコードを回避する。そのまま相対的加速を維持して、【クライミング】で上を取り『高周波振動山伏刀』と『超高圧自動釘打銃』で一人ずつ【暗殺】していく。ゴミ山とガラクタ壁だらけの地形を利用させてもらおうか。

延促由於一念 寛窄係之寸心。このユーベルコードは反動が大きいからね。1分で決着をつける。

「……"正義"ね。そんな言葉は軽すぎるよ」



●寸刻
 幽霊の正体見たり枯れ尾花、とはいうが。
「なんだ、マント姿でこそこそしてたのはお巡りさん達か」
 真梨木・言杷(呪言.txt・f36741)は憮然と息を吐く。まあ、悪いカンパニーに加担している警官というのは、幽霊よりタチが悪い。
 善人面をしていないだけ、未だマシかもしれない。
「こんな場所までご苦労なことだね。お生憎様、警察は嫌いだよ」
 つっけんどんに吐き捨てた小柄な女に、下卑た笑みを向ける悪徳武装警官どもは。
「好きとか嫌いとかじゃねえんだよなあ」
「おうおう、大事なもんがあるだろうが――」
 現金あらわすハンドサインを披露しながら、無遠慮に距離を詰めてくる巨漢どもを言杷は下から睨み上げる。
 下劣を絵に描いたような奴らである。
 侮蔑の感情を隠さず、彼女は断る。
「他人に分けられるほどお金は持ってないな」
「ほーお。しかし大体の犯罪者は嘘をつく。……確かめねぇとなァ」
 正面からぺっと吐き捨てられた唾を、さっと避けた言杷の胸ぐらを、別の警官が掴もうと機械化された剛腕が伸びる。
 届くか届かないか、その一瞬。
 俯いたフードの奥から、念じるような声が虚空に響く――。
「重力場干渉真言復号──」
 無数の手指を模した大型演算装置兼パワーアームユニットから、自身以外の時の流れを歪める莫大な呪言列が放出された。
「延促由於一念 寛窄係之寸心――このユーベルコードは反動が大きいからね。1分で決着をつける」
 呟くや、彼女は地を蹴る。
 腕を伸ばし続ける警官は、彼女からすればほぼ動きが止まった状態で膠着している。するりと軽やかに地を蹴って、警官の腕を駆け上がると、頭上より高周波振動山伏刀を振り下ろす。
 知覚できぬほど細やかに振動する刃は、機械化された首すら容易に落とす――その断面を確かめるより先に。
 彼女は獣のようにしなやかに横へと跳ぶと、真横に伸ばした腕の先で、パシュッと何かが射出される音が連続する。
 見る間に、五寸釘を額から顎まで縦一列に打ち込まれた悪党面ができあがる。
 ガス圧作動型オートネイルガンで撃ち出された五寸釘が、脳まで貫いたのは言うまでも無い――。
 そして、それを成し遂げる言杷の表情は微塵も揺らがぬ。
 刻限まで、淡淡と敵を処理し、陰る眼差しで進路を見つめ、歩き出す。
 ユーベルコードを解除した彼女の背越し。警官どもの肉体に、正常に時が流れ出した時――彼らは絶命と共に地に倒れ込んだ。
「……"正義"ね。そんな言葉は軽すぎるよ」
 虚空に零れた言杷の声は――何処にも行けずに彷徨うようだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

未丘・柘良
おや、サツの旦那達にしょっぴかれる真似はした覚えは無いぜ?
自分は見物に興じてただけだ
仲間の猟兵達と警官共の戦いすら煙管ふかして眺めてた俺様、余裕綽々

…って賭博は流石にバレてるか
胴元の野郎、金持って逃げたか?
見ての通り荒事には向いてねぇんだ
脳のメモリ分クソ力に割り振ったテメェらとは違ってな

向こうが近接攻撃で来る前、距離がある内に終わらせようか
既に準備は整った
咥えてた煙管を杖のように翳してUC発動

四方の壁床より次々射出されるダイヤの槍
テメェらの仲間が俺様の仲間に手ぇ出したその分、数も威力も増す
実際は殆ど空振ってたみてぇだが、喧嘩売ったのは其方だろ

ダイヤはショバ代にくれてやらぁ
耐え抜いたらの話だがな



●石と屑
「おい、貴様、ちょっと止まれ」
 仲間達の熱い戦い――というか一方的な破壊を横目に、悠々と歩いていた男の前に、悪徳武装警官どもが警棒を手に現れる。
 男――未丘・柘良(天眼・f36659)は片目と第三の目を瞑り、落ち着いた様子で其れ等を一瞥した。
「おや、サツの旦那達にしょっぴかれる真似はした覚えは無いぜ?」
 片手をひらひらと揺らして、柘良は無実を訴える。
 余裕を滲ませながら煙管を咥えて、片頬で笑う。
「自分は見物に興じてただけだ――」
「っるせぇ! 博徒は全員御用だ」
 ついでに金を寄越せ、とニヤついた顔に書いてあるのを、半眼で見つめる。
 全部スッたっつってんだろうが――という本音は隠し、大きく溜息を吐く。
「……って賭博は流石にバレてるか。胴元の野郎、金持って逃げたか?」
 ひとりぶつくさ言う彼に、警官どもは指を鳴らしながら近づいてくる。
 明らかに腕に物言わせる気満々である。元々よろしくない翠瞳が、睨み付けるように彼らを一瞥したことで、ますます相手は粗野な気配を放出した。
 警棒を素振りしながら、歯を剥き笑う。
「痛い目見る前に、大人しくするんだな」
「見ての通り荒事には向いてねぇんだ――脳のメモリ分クソ力に割り振ったテメェらとは違ってな」
 柘良は嘆息したが、依然、泰然と構えている。
「正義の鉄槌を喰らえッ! この蛆虫どもォオッ!!!」
 警官どもが最後の距離を詰めてくる、その瞬間。
 唇を笑みに歪めた柘良は、ゆっくり紫煙を吐き出して、煙管を翳す。
「既に準備は整った――売られた喧嘩は俺様が代表して返してやらぁ」
 眩い煌めきが、全方位から突き出し、全身をデタラメに貫く。
「ぐ、ガ……?」
 何せ、道という道、壁という壁から矢衾よろしく透明な槍が飛びだしてきたのだ、知覚した時にはもう動けない。
 次々射出されたダイヤモンドスピアが機械の身体を幾度と穿って、巨躯を縫い止めていた――。
 それを悠々を見つめて、柘良は煙管を咥え直す。
「そいつは、テメェらの仲間が俺様の仲間に手ぇ出したその分、数も威力も増す……実際は殆ど空振ってたみてぇだが、喧嘩売ったのは其方だろ」
 賭けにもなりゃしねぇ、吐き捨てるように言って、袴の裾を翻す。
 ああ、金目のもんが欲しいんだったな、皮肉に片頬で笑って、半身振り返り、柘良は告げる。
「ダイヤはショバ代にくれてやらぁ――耐え抜いたらの話だがな」
 彼が歩き出すや、砕け散ったダイヤモンドの屑の下――宝石求め動ける警官は、いなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『オブリビオン・カンパニーマン』

POW   :    キャリアアップ・プログラム
自身の【メガコーポ社内での出世】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD   :    メガコーポ式交渉術
対象にひとつ要求する。対象が要求を否定しなければ【論理的思考力】、否定したら【冷静な判断力】、理解不能なら【オブリビオンへの注目度】を奪う。
WIZ   :    メガコーポ・アーティラリー
【砲撃部隊への通信】を合図に、予め仕掛けておいた複数の【発信機】で囲まれた内部に【メガコーポ私設軍による砲撃】を落とし、極大ダメージを与える。
👑11
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●phase:2
 その一画は、より煩雑にガラクタが積み重なり、崩れる寸前を絶妙なバランスで維持している――ひとつ欠ければ、すべて崩壊してしまいそうな、ともすれば巻き添えになると確信できる場所に。
 埋もれたように、鉄板の扉があった。
 その扉の向こう――下へ伸びる階段は、表とは全く違い、頑強に作られていた。飾り気のない無機質な通路は、足元から浮かび上がるような青い光がガイドラインのように猟兵達を導く。
 何処までも地下に降りていくような階段の果て。
 辿り着いた空間は、目を疑うほどに広い――曾て工場か何かであった名残のレールを残し、無駄なモノが取り外されたそこは――手術台のようなものが幾つか設置された、巨大な工房であった。
 ひとつの台に腰掛けた女が、憮然と息を吐く。
「……やはり、あの屑どもは使えない」
 呆れは先に派遣した悪徳武装警官に向けたものでもあり、自嘲でもあった。
「貴様らは、此所で何が行われていたか、大体知っているようだな」
 煙草を咥えたまま、彼女は鋭い眼差しで猟兵達を一瞥する。
「だがご覧の通り。証拠は消させて貰った」
 これも私の仕事でね、と彼女は肩を竦めながら立ち上がる。
「私が残っている理由は、解るだろう? ……これ以上猟兵に嗅ぎ回られては困る、ということだ。まったく雇われの身は、疲れるよ」
 微塵も感情を含まぬ声音でそう嘆くと、オブリビオン・カンパニーマンは煙草を床に捨て、踏み潰した。
「ではさっさと片付けるとするか」
 不敵に笑って、剣の柄に、手をかけた――。
新田・にこたま
今ここに存在しているあなたという個体に言っても仕方ないのでしょうが、現在、私とあなたの戦績は1勝1敗です。なので、ここで勝ち越させてもらいます。

UCを発動し特殊警棒をフォトンセイバーに。
敵はこうして猟兵を迎え撃つために1人で残っている時点でUCの発動条件を満たし、スペックが強化されているはず。ならば、こちらは寿命を削ってでも武器のスペックを上げます。
このサイバー猫丸で敵のことを剣ごと切断してやります。しかし、刀身を伸ばす能力もありますし、敵には不用意に近づきません。ある程度の距離で敵の動きを見切りながら慎重に切り刻んでいきます。

あなたのメモリーには証拠が残っていることを祈って、その首貰います。



●勝敗
 オブリビオン・カンパニーマンの顔をきりっと睨み、新田・にこたま(普通の武装警官・f36679)は言い放つ――。
「今ここに存在しているあなたという個体に言っても仕方ないのでしょうが、現在、私とあなたの戦績は1勝1敗です――なので、ここで勝ち越させてもらいます」
 カンパニーマンは冷めた表情の儘、彼女を見つめる。
 オブリビオンとして、言わんとする意味はわかっているが――まさしく、にこたまのいう通り……『此所にいる彼女』には関与せぬ挿話である。
 ゆえに、敵意を燃やすにこたまへ、其れから、特にいらえもなく。ただ、その出方を窺うだけだ。
「循環系接続…炉心出力上昇…ブレードフィールド展開…炉心出力最大…フォトンジェネレータ起動準備完了、サイバー猫丸! 抜刀!!」
 正義の特殊警棒を構えるや、無数の光の粒子が刀身を形作る。
 そして、その場で、振り抜く――迸る光の斬撃が、カンパニーマンの胸先を裂く。
 そのまま決着といけば話は早かったが、相手も剣を抜き払い、彼女の刃を弾いていた。にこたまの金の瞳は、事実を無感動に一瞥し、その身体は次の一撃のために撓る。
「そちら、死すら怖れず、メガコーポに仕える覚悟と見ました」
 敵はひとりで猟兵の足止めに此所に残っていることで、既に『不利な行動』の条件を整えている。
「ならば、こちらは寿命を削ってでも武器のスペックを上げます!」
 叫びながら、半身の捻りを加えたサイバー猫丸の振り下ろしは、先程よりも刀身を伸ばした。
 輝く刀身は相手の守りをも貫く――カンパニーマンは最初の一撃でそれを察し、極力その刀身を掻い潜ろうと身を翻す。
 ふっ、と小さく深い吐息と共に、女は距離を詰めてくる。
 動きを予測していたにこたまは、既に警棒たる柄を薙いで、その動きを阻む。舌打ちと共に、女は銃を構えるや、即時撃ってくる。
 その銃弾――被弾するや爆発するバースト弾は、数メートルも手前で爆破する。
 当然、にこたまが斬り伏せたのだ。
 互いに息を忘れる応酬の果て――そこまで耐えることこそ、オブリビオンの実力であっただろうが――気付けば、女は、部屋の隅に追い込まれていた。
 大上段に剣を掲げたにこたまは、勝利に笑むこともなく。真摯であり剣呑な眼差しでもって告げる。
「あなたのメモリーには証拠が残っていることを祈って――その首貰います」
 一閃は、まさしく光の奔流。
 防御空しく、女の身体を斬り裂いたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

冴島・類
上の指示には逆らえぬ、ってことですかね
其方の事情を慮ることを、望んでる訳ではないだろう嘆息
まだ本音が滲んで見える笑みに応えるように黒曜を構え

簡単に掃除はされませんよ
お嬢さん
この地に生きる人も猟兵も
搾取されるばかりでは無いでしょう

剣とまともに斬り合うのは長さの分不利だ
近付く為に、薙ぎ払いによる衝撃波の中距離攻撃で挑み
相手がそれを捌く隙に、踏み込む
強化された力で反撃を受けるとしても、致命傷は避けるよう見切り

刃の届く距離まで来た時点で…
黒曜、噛みついてくれるかい
生体部分を狙い二回攻撃で斬り強化解除を

清い水では生きられぬ世もある
貴女を倒しても、会社を潰すには至ら無いんでしょうが
知った以上は、ひとつでも



●馳走
「くっ、」
 思わず声を出し、オブリビオン・カンパニーマンはすぐさま跳び退く――夥しい血溜まりを足元に残りながら、即座に動けるのは、彼女自身その殆どが機械化された肉体だからだろう。
 実際、出血なのか循環液漏れなのかは解らぬが、それは直ぐに修復され、傷痕こそ残しながら、女は変わらぬ速度で戦場に復帰する。
「これだから、厄介だ……猟兵案件は」
 忌々しげにしたカンパニーマンに、
「上の指示には逆らえぬ、ってことですかね」
 冴島・類(公孫樹・f13398)は嘆息とともに囁くや、刀身から柄まで黒一色のナイフを構える。
 オブリビオンにもなって、一介の勤め人としての苦労から逃れられぬとは――という感慨も無きにしもないが、女はそんな事を慮られたいわけではなかろう。
「簡単に掃除はされませんよ、お嬢さん」
 落ちついた翠の双眸が、ゆっくりと瞬く。
 手前に構える刃は短いが、類の構えに隙はない。
「この地に生きる人も猟兵も――搾取されるばかりでは無いでしょう」
「此所では、そんな権利も力に呑まれる」
 彼の穏やかな言葉に。それがどうしたというように女は冷ややかに笑い、地を蹴る。攻勢に打って出ねば勝利はないと解っているような、思い切りの良い斬り込みだった。
 類も前へと躍りながら、ナイフを薙ぐ。
 生じた衝撃波が女を襲う――横薙ぎの剣風を、女は脚を止めて剣を振るうことで打ち消す。
 彼女が類へと再び転身するより早く。
 畳みかけるように、衝撃波を結ぶ。柳眉をひそめた女は、「小賢しい」と呟くや、剣を払いながら銃を抜く。
 浴びせられた銃弾を、類は落ち着いて刀身で弾く――と、眼前で小さな爆発が起きた。真っ直ぐ推進していた彼の身体は、微かに蹌踉めくが、むしろその力に身を委ね、相手の視野から逃れるよう、横へと転がった。
 衝撃を逃し、獣が跳ねるかのようにしなやかに、類は床を蹴って、女へ、最後の間合いを詰める。
 ながら、広げた腕の先、相棒に囁きかける――。
「黒曜、噛みついてくれるかい」
 黒い刀身は、応と返事をすることもなければ、見目には何の変化もしなかったが――類の力を受け、ひそり、魔力捕食形体へと変じていく。
「存分に、喰らいつけ」
 言うや、肩、そして傷ついた胸元まで一気に、黒刃を突き立て、引き裂くよう滑らせた。
 その力は、女がユーベルコードより得ている力を削ぎ……また、彼女が周囲に与えてきた理不尽な死を呪いとし還す。
 斬りつけられた痛みと呪いによる二重の苦痛。
 明確に顔をしかめた女を、彼は真剣な眼差しで射る。
「清い水では生きられぬ世もある――貴女を倒しても、会社を潰すには至ら無いんでしょうが……」
 知った以上は、ひとつでも。赤い飛沫の舞う中で、彼はまだまだと言わんばかり、刃をくるりと返した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

未丘・柘良
千里眼にて周囲を一通り確認してから対峙
ここ、地下だろ?
此方狙う砲塔が随分と視えたが…撃たせりゃ此処の崩壊は免れねぇだろ
工場の証拠隠滅にゃもってこいとは言え…テメェ、俺様達と心中するつもりか?
は、大した給料貰ってる訳でもねぇのによ
とんだ社畜だな姐さんは

ま、撃たせる気も更々ねぇが
通信機を手にしたら牌を礫に撃って阻止
体内無線にせよ落ち着いて通信させぬ様に刀を手に迫り、間髪与えず斬り込み
距離取られたら額からレーザーぶちかます

その間にも小さく詠唱続け
頃合い見て術の発動
薄汚い世界でも竜はお住まいよ
大地の怒り、その身に受けな

残務手当に危険手当、それと死亡見舞金…御社はキチンと支給されんのかね?(紫煙吐き)



●天命委ねず
 煙管を咥えたまま、未丘・柘良(天眼・f36659)はオブリビオン・カンパニーマンや周囲を三眼で見やり、嘆息と共に煙を吐き出し、
「ここ、地下だろ?」
 当然のことを尋ねる。
 その意味に気づいたらしい女は、口元を笑みの形に歪めた。
 猟兵達から受けた傷はそのまま――痛覚を遮断したのか、滑らかに身を起こした彼女は、周囲を示すように顎をつんと上げた。
「見ての通りだが」
 相手の表情から、半ば答えを聞いてしまったかのように、苦々しい表情を浮かべ柘良は続ける。
「此方狙う砲塔が随分と視えたが……撃たせりゃ此処の崩壊は免れねぇだろ」
 柘良は千里眼で周囲をスキャンし、確認していた――女が戦法の一つとして用意した、砲塔は。
 恐らくメガコーポの権威に物言わせて用意したものであり……どんなに分厚い建材であれ貫き、此所に届く威力でなければ意味がない。
 さすれば、どうなるか。そんなことは子供でも解る。
「工場の証拠隠滅にゃもってこいとは言え……テメェ、俺様達と心中するつもりか?」
「好んで使いたいものではないが――やむを得んこともあるだろう」
 憮然とした柘良に対し、女のいらえは平然としたものであった。
 命すら、メガコーポに賭けるか。死なぬ自信の表れやもしれぬが――。
「は、大した給料貰ってる訳でもねぇのによ、とんだ社畜だな姐さんは」
 長い溜息を披露しつつ、彼が片頬で笑うと、女は淡淡と剣を抜いた。
「では良いことを教えてやろう。此処は、あれを一度か二度撃ち込んだくらいでは崩れんよ」
「まったく喜べねぇ情報をどうも」
(「――ま、撃たせる気も更々ねぇが」)
 はてさて、しかし通信機が内蔵式だったらどうしようかと、女の身体を無遠慮に眺めつつ、麻雀牌を親指でぴんと弾く。それは弾丸のように加速し、女の眼球目掛けて飛来したが――同時、低い姿勢から女は踏み切り、躍り掛かった。
 一直線に柘良へ迫る大きく掲げられたブレードが、頼りない光を受けて鈍く輝く。
「そっちから距離を詰めてくれるなんざ、ありがてぇ」
 一尺五寸、レアメタル合金鋼製の刀身が閃く。
「それとも心中したいくらい俺様に惚れたか?」
 嘯きながら、容赦なく上から打ち込む。合わせた鋼が火花を立て跳ね上がるや、今度は柘良が距離を開けぬよう追い縋る。
 直後、双方の間に小規模な爆発が起こる――銃撃された、と思った瞬間、女は間合いの外まで離れている。
 果たせるかな、女は砲撃が起こっても安全なところまで逃れた――ゆえに、気付かなかった。柘良の唇が、ずっと何やら詠唱を続けていたことを。
 突如と柘良が、脇差しを下ろし、棒立ちで。煙管を口元に運んだ事に、彼女が訝しげな視線を送った、その時。
「大地を駆け巡りし龍の咆吼を聞かせてやろう――薄汚い世界でも竜はお住まいよ。大地の怒り、その身に受けな」
 ――地が、鳴動した。
 刹那、堅く整えられているはずの床が、一直線に、裂けた。
 轟音と共に飛び出すは龍。大地の力を与えられ象られたそれは、容赦なく女の身体に牙を立て、砕く。
「残務手当に危険手当、それと死亡見舞金……御社はキチンと支給されんのかね?」
 彼は女のいるあたりまで歩きながら、深く吸った紫煙を、ゆっくり吐き出す。直後、天より、斜めに深い衝撃が降ってきたのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴァシリッサ・フロレスク
シキ(f09107)と

ヴィッキーは表でお留守番
右手にはディヤーヴォル、左手にスヴァローグを携え

Hm?オツトメご苦労サマ、随分と精が出るこって
その勤勉さをもちッとマシな方面に活かしてくれりゃアね?
それとも、アンタのトコはそンだけボーナスでも弾むのかい?

向うは一人、アタシらと相対した時点で最上級に不利、UC効果は不可避
相変わらず挑発しながら、先ずはディヤーヴォルの弾幕を浴びせて気を引きつつ出方と能力を計る
様子見とは言っても悟られぬよう手加減抜き
シキへは指一本触れさせるものか

おッと?妬けるねェ、アンタの相手はコッチさ

相手の反撃は見切り、致命傷は受けない程度に此方に惹き付ける
頃合いを見て近接攻撃を嫌う様に見せて距離を取り、UC【囚獄の燎火】発動
怒涛の爆炎で攻め立てる
が、地面に得物を突き立てたアタシは相手にすれば此方も隙を晒す格好に

然し躱されるまでも織り込み済み
本命は、火焔で退路と進路を制限し、シキのキルゾーンへ誘導すること

炎を制御しシキの射線を拓く

感謝しナ?お望み通り、“二階級特進”コースだ――


シキ・ジルモント
ヴァシリッサ(f09894)と

奴を倒せば“薬”の開発を妨害出来るなら、証拠が無くとも一先ずは良しとしよう
…全く、その会社の何が良くてそうまで尽くすのやら

ヴァシリッサと挟撃できる立ち位置を意識
敵を弾幕へ追い込み、挑発する彼女が危険なら援護射撃で救援を
敵の接近時は増大した身体能力から繰り出される斬撃を警戒
ヴァシリッサの援護も受けつつ、射撃で牽制し距離を取る

敵を観察して行動の癖や義体の有無を確認
癖が分かれば先の動きの予測に利用
義体部位には打撃は効果が薄い、近距離でも銃で反撃

ヴァシリッサの炎での進路制限に合わせ、炎に身を隠しつつ予測される退避先へ先回り
ユーベルコードでの攻撃を試みる
炎で体勢を崩している事も期待、義体ごと破壊するつもりで

先回りの際に炎へ接近するが躊躇わず
ヴァシリッサの炎は自分を傷付けないと信頼、鼓舞されるように迷わず駆ける
与えられた好機を活かす為、そして隙が出来てしまうヴァシリッサを傷付けさせない為

仕事を果たそうとする事は理解できるが…
命懸けで働くに値する組織には、やはり思えないな



●灰燼
 オブリビオン・カンパニーマンの言った通り――一度の砲撃では、地下がまるごと崩落するような事は無かった。
 だが、天井を貫き、床に穿たれた穴を一瞥して、ヴァシリッサ・フロレスク(浄火の血胤(自称)・f09894)は両腕それぞれ、重機関銃と射突杭を手にした物々しい風体で、肩を竦めた。
「Hm? オツトメご苦労サマ、随分と精が出るこって、その勤勉さをもちッとマシな方面に活かしてくれりゃアね?」
 足元に転がる小さな瓦礫を蹴り飛ばして、唇をニッと歪める。
「それとも、アンタのトコはそンだけボーナスでも弾むのかい?」
 その問いに、女は困ったように笑う。
「我々はメガコーポに付属する処理装置のようなものだ」
 自虐でもなければ、プロの矜持というわけでもなさそうな、乾いた言葉に。
「……全く、その会社の何が良くてそうまで尽くすのやら」
 シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)は静かな感想を漏らす。
 自称装置であるこのオブリビオンが、メガコーポの証拠を何処まで隠滅する気なのかは解らぬが――。
「――奴を倒せば“薬”の開発を妨害出来るなら、証拠が無くとも一先ずは良しとしよう」
 女を中心に、ヴァシリッサと対峙するように、位置取り、銃を構えた。
 果たして二対一。腕を信頼する、気心の知れた相手と追い込んだのだ――本来であれば、優位を疑うことはない。
 だが、この女は、不利に陥った分だけ能力が向上するタイプだ。
 猟兵達が付けた疵も、更に彼女の能力を高めているに違いない。
「それにしても、傷ついた兵隊ひとりで何処まで出来るやら。外のごろつきの方が手強かったとなったら、あの外道警官どもを笑ってらんないねェ」
「試して、みるか?」
 敢えて知りつつ、挑発を投げつけたヴァシリッサに、女は低く言い。
 膝が撓んだ、と思うや、風が吹いた。
 向上しきった身体能力は、ヴァシリッサ、シキをもっても追い切れぬ速度で刀を振り下ろす――無論、そのまま斬りつけられるヴァシリッサではない。
「Haaa!」
 腰撓めに構えた50口径が吼える。リンクベルトは容赦なく短くなっていき、小さな火花が工場の床や天井を穿つ。高く掠める金属音は、女の剣に弾かれた弾の悲鳴だ。
 弾が尽きぬ限り、間合いを詰めるは難しい。
 瞬時に思考を切り替えたらしい女は、怒濤の連射を横に駆け抜け、躱す。弾切れ狙いなのは充分承知の上で、ヴァシリッサも追う。
 更に、シキの銃撃が、追い込みをかける。一撃一撃の精密な銃撃を、女は刃を薙ぐ――彼女の踵が高い音を立て、その動きが変わる。
 前進から、上昇。
 跳ねて天井を蹴り、空中からシキへと斬り込んでくる。青い眼差しで射貫きながら、彼は身を屈めつつ、撃った。
 女は銃弾ごと、斬り下ろす。剣風がシキの肩を撫でる――寸前、脇から激しい銃撃が襲いかかり、双方ともに後ろへと跳んだ。
「おッと? 妬けるねェ、アンタの相手はコッチさ」
 ヴァシリッサは不器用に笑いながら、いよいよ銃弾が切れた事をわざわざ見せつけるように、リロードする。
 好機と見た女は、にこりともせず、静かに距離を詰めてきた。
 弾丸よりも早いだろう、そう思わせる突撃に、ヴァシリッサは武器の重量を感じさせぬ軽やかな跳躍で後退する。鞘が鳴る音がして、視界の隅で白刃が光る。
 そうだ、追ってこい――灰の瞳を眇める理由を、女はどうとも思わぬだろう。
 斬撃が、赤毛の先を、少し刈っていく。もしかすれば、浅く膚も裂けたやもしれぬ。
 だがその程度、これから女が払う対価に比べれば安いものだ。
 ハッと笑声を上げるや、ヴァシリッサは、今まで抱えるだけであった身の丈程の長さを持つ射突杭を起動させ、床へと撃ち込む。
 破壊の轟音と、ほぼ同時。途方もない熱波が、足元から襲いかかる――。
「避けてみな。」
 彼女の血液を注入された射突杭は、地脈を通じ、爆炎を噴き上げ、女の身体を焼いた。酸素とともに喉すら焼く炎の上で、さしものオブリビオンも、判断に悩んだか――否。
 抜き身の剣を構えた女は、炎に焼かれるにもかかわらず足を止め、深く身を沈めた。それが、強力な跳躍のための前動作であることは、間違いない。
 ――だが、そんなことは解っている。
 射突杭を突き立てたまま動けぬヴァシリッサと。一刻も早く決着をつけるための進路は限られている。
 シキは迷わず炎の中に跳び込んだ。
 息も出来ぬ激しい炎は、ヴァシリッサが定めた相手のみを攻撃する――なれば、自分を傷つけることはない。むしろ、これはシキのために敷かれた路である。
 片や、敵である女には容赦なく牙を剥く。女が仕掛けるタイミングを崩すため、大波のように火炎が躍り――視界を埋めつくす炎は、カンパニーマンの生体部分を容赦なく焼いていく。
 其れは、肉の焦げる臭いにも、表情ひとつ変えず、
「――演算完了」
 静かな声で、女が呟くや。機械義肢である彼女の脚が、甲高い音で啼く。
 直後、炎すら掻き消すような速度で、其れは斜めに飛び、壁面を蹴って、一直線にヴァシリッサの首元へ、白刃の弧を振り下ろす。
「感謝しナ? お望み通り、“二階級特進”コースだ――」
 暢気に嗤う赤い女の、すぐ傍には、白い影――彼女の肩越しに拳銃を構えたシキが、いた。
「これなら、どうだ?」
 銃声は常と殆ど変わらぬ。なれど、充填した特注弾は、シキをもって反動に体勢を崩すほど強力だ。
 引き鉄を幾度引いたか、女には解らなかった。片目は最初の弾丸に撃ち抜かれ、残る視界で認識した時には、心臓部を。そして最後に、頭部を打ち砕かれていた。
 機械義肢の四肢による守りを無視する、正中線狙い――この角度を取るには、この判断しかなかった。
「ふ……」
 残された口元が、吐息のような笑いを零した刹那、得物が鈍い音を立て何処かへと飛んでいった。
 地に崩れ落ちた身体は、炎に焼き尽くされていく。
 倒れた女を見下ろし――シキは双眸を伏せた。
「仕事を果たそうとする事は理解できるが――」
 自分も、受けた仕事は完璧にこなすという理念とともに生きている。
 だがそれは、それに見合う対価と――何より、弱者に寄り添う――すべてに誇れる仕事であるべきだ。
「……命懸けで働くに値する組織には、やはり思えないな」

●凱旋
 ヴァシリッサがユーベルコードを解除し、炎が消える。元々敵の体を燃やす性質の炎であれば、狙わなければ、内部を燃焼させるものでもない。
 よって、なんやかんや、工場内部に残った疵は、直接戦闘で刻まれた小さなものばかりであった――はずなのだが。
 小さな地鳴りが断続的に起こって、天井から頻繁に砂塵が降ってくる。
「早く脱出した方が良さそうですね」
 暫し、証拠の見逃しは無いかと最後の捜査をしていたにこたまが、厳しい表情で呟く。
 大きく破壊されているが恐らく女の頭部だった部分から、不穏な輝きを発している装置に気付いた柘良が、忌々しげに舌打ちした。
「チッ、……社畜舐めてたぜ」
 最初に地を抉り、ついでに天井を穿たせた彼が、千里眼で天を仰ぐ――女が埋め込んだ発信機が、すべて起動していた。
 つまり、砲塔からの一斉掃射で、これより工場は破壊されるというわけだ……。
「今からでは、ハックしての解除は間に合いません」
 冷静ににこたまが言う。
「見た目に似合わず、派手好きだねェ――」
「熱での破壊も、間に合わないか」
 ヴァシリッサの技を頼りに、シキが周囲を一瞥する。
「どうしてもッテ言うんなら、やってみてもいいけどサ――アタシが生き埋めになったら、掘り出してくれル?」
 射突杭を担いで、彼女が楽しそうに笑う。肩を竦めて、シキはならいい、と返す。
 掘り返すのは構わないが、わざわざ選ぶ手段ではあるまい。
「おう、こういう時の選択は一択だぜ、猟兵ども」
 柘良は暢気に煙管をふかしながら――何気なく、瓦礫をさっさと乗り越えて、その向こうに渡っている。
「即時撤退ですね、押収できるものもなさそうですし――残りは、迷惑な置き土産と共に、勝手に破壊してくれるわけですから……随分と悪名も伝わっていたようですし、此所で二度と活動できないでしょう」
 真顔で頷いたにこたまが言って、軽やかに駆けた。
 やれやれ、ヴァシリッサは「端っから、捨て駒前提カ。理解不能だね」と呟く。その表情が不快そうであったことを、シキは敢えて知らぬふりをして、出口へと歩き出す。
 これがカンパニーマンの思惑通りなのか、メガコーポがそうするつもりであったのか、彼らには解らない。組織に対する評は既に告げている。それが覆ることは、ない。

 果たして人知れぬ一画、粉塵に埋もれゆく工場があらば。
 空も見えぬガラクタに埋もれた地上では、相変わらず暢気な喧騒狂瀾が続いて、いた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年07月10日


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 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#サイバーザナドゥ
🔒
#ダストエリア


30




種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト