海に出られなかったらお茶会すればいいじゃない!
●海は在れど海鮮は無し
島民達が猟兵と共にコンキスタドールの脅威を退けてから凡そ4か月の月日が流れた。海へ出ることへの恐怖も少しずつ薄らいでいき、島民達は食卓に様々な海産物を加えて生活を豊かにしていた。
そうすると人は欲が出るもので、もっと遠く、もっともっと遠くと航海範囲を広げていく。
そしてついには、自分達と同じように困っているであろう島の人々の助けになりたいと――志は立派だったが、そこにはいくつかの困難が付き纏っていた。
一つ、その島は古くから語り継がれている伝説の島で、実在するかは不明である。
二つ、実在するとして、伝説上その島の周囲には無数の巨大鮫が回遊していて船は近づけないという。
三つ、大ハズレのくじを引く可能性の高い危険な航海に乗り出そうと手を上げる豪気な海賊はやっぱりいなかった。我が身可愛さ故、それは致し方の無いこと。
であるから、島の海賊達はたまたま非番で訪れたグリモア猟兵を頼ったのだった。
●グリードオーシャン・6thラウンド
「久し振りに海の旅といきましょう! というのもですね、以前私がお世話をした島の皆さんに、伝説の島を探してほしいと頼まれてしまったんです」
ロザリア・ムーンドロップ(薔薇十字と月夜の雫・f00270)が持ち込んだ事件の話はグリードオーシャンの海賊達から齎されたものだった。ロザリアは島民達の話を「ぐりもあのーと」にまとめ、猟兵の力を頼るべくグリモアベースで案内を始めている。
「その伝説の島は『血の亡者達の領域を侵しているが為に世界から孤立しており、ただ大地の恵みにおいてのみ生き永らえているこの世の監獄』と伝えられているそうで、これをもう少し噛み砕いて解釈すると、『無数の巨大鮫の海域にある島で誰も近づくことができず、海の恵みを得ることができないために農作物だけで暮らしている地獄のような島』という感じになるようです。どれほどの規模の島かは分かりませんが、海があるのに巨大鮫のせいで島に閉じ込められている状況は大変辛いだろう、と皆さん思われているようで、助けに行きたい、けど巨大鮫はやっぱり怖いし、そもそも実在するかどうかもわからない……というわけで、私達の出番になるわけですね」
猟兵達ならば巨大鮫すら打ち倒して、島に辿り着いてくれるかもしれない――。期待は日に日に膨らむ一方で、この日、猟兵達への依頼と相成ったのである。
「私達が達成すべきは二つです! 一つ、伝説の島を発見する! 一つ、交易路の基礎を作り上げる! ……そうでした、伝説の島の話には続きがあって、本当に海の恵みが全く無いのなら、自分達の島の近海で獲れた海産物を持っていってくれないか、とも頼まれていまして。それで島間の交易が成り立てば、お互いの島にとってメリットになるだろう、ということで、なんだかお使いみたいな状況になってしまいましたが、たまにはちょっとのんびりした感じの依頼もいいのかもしれません! とは言え巨大鮫がいたとしたら船に襲い掛かってくるでしょうし、注意は必要ですね。そんなわけで、伝説の島を探してくれる方々をお待ちしていまーす!」
沙雪海都
沙雪海都(さゆきかいと)です。
島探しリターンズです。前回はサポート優先依頼でしたけども。
●フラグメント詳細
第1章:冒険『伝説の島を目指せ』
拙作「【サポート優先】強さを知らぬ海賊達」にて登場した島の海賊達からの依頼になります。ですが本依頼に参加するにあたり、読む必要は一切ありません。
ちょっとした舞台設定ですが、この島の人達もコンキスタドールのせいで長いこと封鎖された島状態になっていたので、伝説の島の境遇に共感している、という感じですね。
伝説の島があるらしい海域に行くと、巨大鮫の群れが襲い掛かってきます。何かしらのオブリビオンの影響を受けているようですが、今回の依頼ではオブリビオンを直接叩くことはできないので、襲い来る巨大鮫の群れに対処しながら海路を切り拓いていきましょう。
巨大鮫は船底に齧りつくとか船体に体当たりするとか、果ては海面から跳び上がって鉄甲船に圧し掛かってくるとか色々してくると思います。
第2章:日常『みんなでお茶会!』
この島はお茶会さえできれば海に出なくても大丈夫な人達ばっかりだったので実は島は割と平和でした!
というわけで海賊達の心配は杞憂だったわけですが、交易自体はものすごく有益かと思いますので島民達のもてなしを受けながら交渉しましょう。
ちなみに貰える物はほぼお茶会関係のものだと思います。
第1章 冒険
『伝説の島を目指せ』
|
POW : 目の前の問題を力任せに解決します。満載された積荷が崩れそうな場合などは、全力で支えたりします
SPD : 敵が想定しない速度で鉄甲船を操ったり、類まれな操船技術によって困難を乗り切ります
WIZ : 伝説の島の謎を解いたり、策略を逆手にとって利用する事で、島を目指します
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
今回は霹靂からのおねだりなんですよねー。船旅もしてみたい、と。
考えてみれば…霹靂、海での初めての船が自然破壊のあれ(武を汚す傲慢王の狼藉)だったんですよね…。
というわけで。UCで強化した結界を船全体に張りつつ。ああ、出港前に船底を陰海月がぺしぺししてましたので、満遍なく。
ははは、鮫に壊させるわけないじゃないですかー。
まあ、跳び上がってきたら、風属性攻撃つけた漆黒風投擲して撃ち落としますけどねー?
※
霹靂、海の船旅わくわくクエクエ。
陰海月、今回は里帰り(グリオー出身)兼ねてる。海に潜るのはぼくの仕事(結界設置ぺしぺし)。
●故郷の船旅、喰わせやしない
鉄甲船の舳先に悠然と立つヒポグリフ、霹靂の姿があった。潮風を翼に受けながら、クエエ、と蒼海に鳴いている。
それは馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の友であり、義透が伝説の島探しに出向くきっかけでもあった。船旅がしたい――思えば、霹靂の初めての船旅は行く先々でオブリビオンが自然を荒らし回っており、楽しい船旅とはお世辞にも言い難かった。
結局そのオブリビオンは倒されはしたものの、船旅に馳せる思いは日に日に強くなる一方で。そして年を跨いでようやく、念願の機会を得たのである。
「海はいいですねー。ここは陰海月の故郷でもありますから」
義透が霹靂に並び立って水平線を眺めながら呟くと、霹靂はまた一つ鳴いて頷いていた。澄んだ晴れ空に浮かぶ白雲、風はまだ少し冷たいけれど、霹靂は羽毛が暖になっている。ざばばばば、と掻き分ける波音、ごおごお唸るエンジン音をBGMに揺られて行くのも船旅の醍醐味の一つであろう。
さて、気になる旅先だが、鉄甲船は大海をかなり大きく蛇行しながら進んでいる。目的地を定めていないのか、と問われればある意味その通りで、伝説の島探しは未知なる海域を突き進んでいく当てのない旅だった。どれほどの長旅になるか。しかし旅は突然終わってしまうかもしれない。だから霹靂は今という瞬間を存分に楽しもうと、甲板を船の縁に沿ってぐるぐると走り回りだしていた。
何処を見ても雲の形は違っていて、陽光が乱反射する水面は宝石箱の様。友達の故郷のことをできるだけたくさん知っておきたい――目に映る全て、耳に届く全て、肌に触れる全てを全身で受け止めている霹靂の姿を義透は我が子のように見守っていたが、微かに混ざってくる波のノイズに気付いて振り返り、海の先を臨む。
海は一面暗く染まっていた。日が翳ったのではない。光をも喰らう黒々としたそれは鉄甲船の接近を感じ取ると悪食の腕を伸ばすかのように猛然と海中を迫り来る。
刹那、まるで大陸にぶつかったかのような衝撃音と振動が走り、同時に海底火山の爆発を思わせる水柱が無数に噴き上がっていた。その中より雷撃となって現れたのは、上顎、下顎いっぱいに鋭い牙を並べた巨大鮫の群れだ。今度こそ日は巨大鮫によって翳り、鉄甲船に影が落ちる。
「今回は『足掻けばどうにかなる相手』ですからねー、足掻かせていただきますよえぇ」
義透は両手に棒手裏剣、漆黒風を揃えると風を纏わせて、牙のギラつく巨大鮫達の口内目掛けて投げ放った。疾風と化した棒手裏剣は、がちん、と巨大鮫達の口が閉じる前に大気を突き抜け飛び込むと、喉奥を破って再び宙に飛び出してくる。
棒手裏剣を喰えずに肉塊となった巨大鮫達。しかし投げ出された巨体もまた凶器になる。棒手裏剣は巨大鮫達の軌道を僅かにずらしたのみで鉄甲船への落下は防げていない。巨大鮫諸共海の藻屑か――だが義透ほどの練達がむざむざ襲撃を食おうものか。
落下する巨体は宙で弾かれ転げ落ちていく。鉄甲船を包み込むように張り巡らせていた義透の結界があった。先の船底への突撃を防いだのもまた同じで、里帰りと言うのに船上へ姿を見せていない陰海月はぴたりと船に貼り付き海の中にいる。ぐらぐら揺さぶられながらも鉄甲船が航行を続けているのは海上に飛び出してくる何倍もの巨大鮫達の突進、あるいは噛み付きといった猛攻を義透の結界が凌いでいるからであるが、猛攻に晒されて生じたほつれをあちらこちらへと泳ぎ回ってぺたぺた貼り直している陰海月がいてこそ、義透は海上の巨大鮫達に集中できていた。
腕がしなり、棒手裏剣が飛翔する。義透の面持ちは穏やかを貫いていたが、攻撃の手は一切緩むことなく巨大鮫達を撃ち落とし続ける。怒りや憎しみなどではない。今回の船旅が良い思い出の内に終わってほしいという願い。友を思えばこそ腕を振り続けられるし、海を泳ぎ続けられる。
海中の黒影はそんな彼らの輝きを嫌うように割れ始めている。鉄甲船は着実に伝説の兆しを辿っていた。
大成功
🔵🔵🔵
ニクロム・チタノ
成る程人食い鮫が沢山いるなら大変そうだねなんとか助けてあげなきゃ
航路はこのまま、あそこにあるのが例の島だね?だとすると・・・
やっぱり来たね、巨大な人食い鮫の群れだ!
自然の脅威にも抗うよチタノどうかボクに反抗の力を
鮫の噛みつきを蒼焔の盾を展開して防御して重力操作で空中に浮かべてあげる
流石の巨大鮫も空中じゃどうにもならないでしょ?
さあ重力槍をお見舞いするよ!
島の住民達のためにもここでモタモタしていられない、待っててすぐに行くからね
●鮫は空を自由に跳ぶか
「航路はこのままでお願い!」
ニクロム・チタノ(反抗者・f32208)は舵を取る者に叫んでいた。巨大鮫の海域に突入した以上、引き返すことは許されない。飛び魚のように跳ね飛んで襲い掛かってきた巨大鮫の大群は他の猟兵に撃ち落とされているが、海域に深く進入していくにつれて左右、そして後方からも巨大鮫が迫っていた。
島影は微かに見えてきている。だがまだ巨大鮫の海域は分厚い。耐え凌ぐ時間帯。ニクロムは蒼焔の盾を展開しながら船尾方向へ駆け出していた。
手薄になりやすい後方だが、重要な機関部もある。航行を続ける上では絶対に守り通さなければならない場所だ。水面の下から背びれを突き出して泳ぎ迫ってきた巨大鮫の群れが一斉に飛び出してくる。牙を剥き噛み砕く。鉄甲船であろうと何だろうとお構いなしだ。
「チタノ――どうかボクに反抗の力を!」
ニクロムは蒼焔の盾を重力操作で飛翔させ、巨大鮫の牙を全面で受けた。ガチンと噛みついた盾は強固でなかなか牙が通っていかない。巨大鮫は尾びれをばたばたと動かして反動をつけ、力で牙を食い込ませようとする。
巨大鮫は諦めが悪い。ならば――ニクロムは重力操作で盾ごと巨大鮫達の動きを縛り上げて宙に浮かせる。暴れていた巨体が皆、一直線、空に向かうようにピンと伸び、食いついた盾から離れていく。
「島の住民達はボク達を待ってるんだ――こんなところでキミ達に邪魔されるわけにはいかないよ!」
ニクロムは船上に八本の超重力槍を並べた。先端が狙うのは空中に固定された巨大鮫達の胴体。八本同時に射出された槍は硬直した巨大鮫と垂直交差するように巨体を穿ち貫いた。
重力から解放された巨大鮫達は鉄甲船が通り過ぎた海域にぼちゃぼちゃんと飛沫を上げて落ち、二度と浮上してこない。血生臭さが漂う海中で、巨大鮫達は躍起になって鉄甲船へ襲い掛からんとする。
だが重力とチタノの加護がある内は――。ニクロムは殿を務めて巨大鮫の前に立ちはだかり続け、鉄甲船は減速することなく島へと突き進むのだった。
大成功
🔵🔵🔵
真宮・響
【真宮家】で参加
ああ、危険な海域じゃ船で乗り出すのに勇気がいるだろうね。何とかするか。まあ、家族で協力すれば何とかなるさ。
真紅の騎士団を召喚し、体当たりしてくる鮫とか跳び上がって船に圧しかかってくる敵を【怪力】【グラップル】で叩き落としたり、槍で【気合い】を入れて【串刺し】して海に沈めていく。ああ、船底のケアの方は瞬に任せるよ。
ああ、何とか鮫の群れは捌けたかい?さあ、目的の島を目指そうか。
真宮・奏
【真宮家】で参加
ああ、噂とはいえ、怖すぎる話だと乗り出すのを躊躇いますよね・・・何とかしてあげたいですよね。はい、力を尽くしましょう。
蒼穹の騎士を呼び出して、一緒に巨大鮫を【怪力】【グラップル】【シールドバッシュ】で海に叩き落としていきます。念の為に瞬兄さんを手伝って船底に【オーラ防御】【結界術】で鮫の攻撃に耐えれる防護術を掛けておきますね。
貿易が出来ないなんて不便ですよね。何とかしてあげたい所ですが、やれる事をやっときますかね。さあ、目的の島へ行きましょう。
神城・瞬
【真宮家】で参加
ああ、噂って絶大な威力を持ちますよね。噂に過ぎなくても危険にはなるべく触れたくないもの。島の皆さんの安心と貿易の発展の為に頑張りましょう。
精霊顕現で氷の精霊を呼び出し、【結界術】を100レベルにして船底に絶対の防護を付与。術を行使の終わったら、【衝撃波】で巨大鮫を海に叩き返すのに協力します。船は沈めさせませんよ!!
戦争が終わった後でも海には危険が一杯ですね。島の行き来の安全を確保するのも僕達猟兵の役目ですかね。さあ、目的の島は近いですよ。
●解き放たれた伝説
巨大鮫の軍勢は回遊する全てをつぎ込んで鉄甲船を止めにかかっていた。相手は自らが支配する危険海域に果敢にも突入してきたとあって相当な手練れ。そうでもしなければ止められないし、そうしてでも止めなければならない――裏で操る謎のオブリビオンの影が、巨大鮫の軍勢の中に薄ら透けて見えている。
「あの海賊達は見る目があるね。こいつは勇気だけじゃあ……どうにもならないだろうさ!」
真宮・響(赫灼の炎・f00434)は一直線に飛びついてきた巨大鮫の上下の顎を力尽くで押さえ込み、びたびたと海水を散らして暴れるそれを豪快に鉄甲船の右側方へ投げ飛ばす。次の巨大鮫は待つまでもなく、ヒレを大きく広げてのフライングダイブ。どん、と圧し掛かってくるそれに響は両足で踏ん張って堪えると、力強く押し返して海の中へと叩き落とした。
鉄甲船の前方外縁は響が召喚した真紅の鎧の騎士達が守っていた。低く突っ込んでくる巨大鮫達に対し、剣を薙ぎ払い槍を突き出す。巨大鮫はそれすら喰らおうと牙を剥いて食いついて、どちらが落ちるか、という力比べに響がまさに横槍を入れ騎士達を援護する。
一旦は退けたが仕留めてはいない。海中にどぼんと落ちた巨体はそのまま深く潜って見えなくなった。
「瞬! 船底にも行ってるよ!」
「任せてください! 力を借りますよ、精霊顕現!!」
神城・瞬(清光の月・f06558)が甲板中央で六花の杖を高々と掲げ、周囲に九体の氷の精霊を召喚する。それらのうち一体はそのまま中央に、残る八体が八方に散って、九位一体で巨大魔法陣を作り上げた。
絶対防御の結界魔法陣。もともと高い結界術の力をさらに高める秘術であった。海中では我が物顔の巨大鮫達が魚雷の如き突進を繰り出し結界にぶち当たってくる。牙を突き立て噛み砕かんとする者達もあり、結界にかかる負荷が術を行使する瞬にも伝わっていた。
持ちこたえてはいるが、少しでも気を抜けば一気に砕かれる。結界を突破されれば船底を食い破られて一巻の終わりだ。瞬の存在は鉄甲船の命綱であった。
「私もお手伝いします! 島の人達のためにも……ここは私達家族で乗り切りましょう!」
鉄甲船の前方を響、中央を瞬が担当し、真宮・奏(絢爛の星・f03210)は後方に襲い来る巨大鮫に対処していた。一度は突き落とされた巨大鮫達が二の矢、三の矢としてしぶとく付き纏い海面から跳んでくる。奏は船底に結界を重ねて防御を厚くした後にエレメンタル・シールドを掲げて、召喚した蒼穹の騎士と共に巨大鮫の前へ立ちはだかっていた。
牙を並べて喰いかかってくる巨大砲弾と言うに相応しい激突が船上にあった。並ぶ盾に上下から牙が突き立つ。奏と蒼穹の騎士の二人をして尚、ずりずりと船上を押され巨体が乗り上げてくる。
「乗らせは……しません……!」
真宮の家族だけではない。他の猟兵達も船上を動き回って巨大鮫の襲撃を食い止めている。ここで押し負けたとあっては全てが水の泡であり、奏は歯を食いしばり眼光強く巨大鮫を睨みつけると、
「――はああぁぁっっ!!」
腹に力を込め、重量のかかった盾を脚力の馬力で押し戻し突き落とした。
海面に飛沫を上げて落ちた巨大鮫は船速に置き去りにされて遠のいていく。しかし脅威が過ぎ去ったわけではない。仲間の犠牲を無駄にはしまい、という奇妙な心意気で他の巨大鮫達が奏の頭上を高々飛び越えてくる。引き返しての防御、一体は間に合うかもしれないが、二体、三体は間に合わない。
「――っ!」
それでも引き返すしかないが――入れ違いに飛んできた衝撃波が巨大鮫達の鼻頭を打ち飛ばし、巨体がひっくり返って海に落ちていく。奏が受け止めた巨大鮫は蒼穹の騎士が横っ腹を斬りつけて怯んだところを奏が盾で切り返して殴り退けた。
「お互い助け合い、ですよ」
船底の結界が強化された分、瞬に周りを見渡す余裕ができていた。巨大鮫の連携には家族の絆をぶつけて守る。巨大鮫の軍勢の猛攻を前にしても三人は崩れない。
「……! あれが目的の島ですね!?」
瞬が再び進行方向に目を向けた時には、伝説の島ははっきりと三人の前に姿を現していた。強固な防御布陣に巨大鮫は歯が立たず勢力を大きく削られて、少数生き残った者達も根負けしついには鉄甲船を追うのをやめて深海に逃げてしまう。
「ああ、そうだろうね! アタシ達は伝説を目の当たりにしてるんだ、胸を張って行こうじゃないか!」
響が上げた勝鬨に、鉄甲船は今日一番の加速を見せて島へと向かっていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 日常
『みんなでお茶会!』
|
POW : お茶菓子を楽しむ!
SPD : お茶を楽しむ!
WIZ : 島民との会話を楽しむ!
|
●お茶とお菓子でどこでもお茶会
巨大鮫に閉ざされた島は今、世界へと開かれた。
「あら、お客様……何時以来でしたかしら」
その島民達は一風変わっていた。海岸沿いにティーテーブルとチェアを設置し、海風に吹かれながら優雅にお茶会を決め込んでいる。船が岸に辿り着いても姿勢は崩さず、船から人が降りてきてようやく立ち上がる。
出迎えではあるが、それはあたかも自宅に客を招いたかのような。
「アールグリン島へようこそおいで下さいました。どうぞこちらへ。お茶とお菓子でごゆっくりお楽しみくださいませ」
ニクロム・チタノ
わあ、なんてアットホームな島なのなんだか聞いていた話と全然ちがうような・・・まあいいか
あ、お茶ありがとうございます頂きますね
美味しいですねお菓子も一つ、うんこれもなかなかっとこの島に来た理由をすっかり忘れてた
実は海産物を持って交易をしに来たんです、姉妹達荷物を降ろすの手伝ってお菓子を食べるのは仕事の後だよ
姉妹達初めて来る島だから舞い上がってるね・・・
仕方ないねここはボクが(お腹が鳴る音)・・・もう少しぐらいお茶会楽しんでもバチは当たらないよね?
結局そのまま姉妹達とお茶会や島の散策を満喫してしまう
●きっと誰かがやるでしょう
促されるまま、流されるままに。ニクロムは「姉妹達」と共に茶会の席へと招かれた。
「あれをご用意致して」
「かしこまりました」
淑女風の女性に指示され、執事風の男性がトランクケースを開けて何やら取り出していた。透き通るガラスの器に盛られたそれは、赤紫色をしたクッキーのようなもの。
「小麦を挽いて練ったものに、うちの畑で採れた果実の汁を混ぜ合わせた焼き菓子ですの。甘さの中に程良い酸味があってとても美味しいんですのよ。どうぞお召し上がりになって」
「ありがとうございます……なんだか聞いていた話と全然違うような……まあいいか」
グリモア猟兵の案内はやけに物々しかった覚えもあるが、目の前にあるものが真実だ。ニクロムはアットホームに世話してくれる島民達に感謝を述べて、焼き菓子をかじり、添えられた紅茶を一口。甘酸っぱくてシャクシャクした食感に悠然とした茶葉の味わい。一回り年を重ねたような感覚だった。
「わたくし、今日はカステラを焼いて持ってきましたのよ! いらした皆様に是非!」
「うちの者はコーヒーをご用意しているわ。ミルクも砂糖もありますから、お口直しの際はお声掛けくだされば」
「わあ、色々とありがとうございます……っと、この島に来た理由をすっかり忘れてた」
怒涛のもてなしは有難かったが、世話されてそのまま帰ったのでは託してくれた海賊達に示しがつかない。役目を果たさねば、とニクロムは席を立ち、同じようにまったり過ごしていた姉妹達をぺしぺし叩いて回る。
「ほら、仕事仕事。お菓子を食べるのは仕事の後だよ」
ニクロムは姉妹達に発破をかけていくが、姉妹達はなかなか言うことを聞かない。初めて来た島で押し寄せるもてなしの数々を前にしては、姉妹達も数の力で強く出る。
「……仕方ないね、ここはボクが――」
言った傍で、ぐうう、と腹の音。誰だろう、と姉妹達は揃って見回す。当の本人は当然誰の仕業か分かっているのでその場に立ち尽くしていた。
「……もう少しぐらいお茶会楽しんでもバチは当たらないよね?」
せっかくの心遣い、無下にしてはそれこそ悪い、と言い訳のように己の使命感へ言い聞かせてニクロムは席に戻り、二つ目の焼き菓子を齧る。
やっぱり美味しい。巨大鮫をやっつけて辿り着いた島なのだ。これくらいの御褒美があっても――。
結局ニクロムは姉妹達と共にお茶とお菓子を楽しんでいた。もてなした側ももてなされた側も幸せな一時。誰の不幸も呼んでいない、ニクロムの冒険の結末だった。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
引き続き『疾き者』にて
おやまあ…想像していたより平和ですねー。ある意味の工夫でしょうかー。
せっかくですので、いただきましょう。陰海月もお腹空かせてるでしょうし、霹靂も香りにつられてますしねー。
ああ、そういえばー。船に海産物載せてるんですよー。ええ、近隣の島で獲れたものですー。
ふふふ、実はー、その島の人に頼まれたのですー。交易できないかと思いましてー。
だってねぇ、その島の海産物も、この島の茶と菓子も美味しいものですからー。お互いによいものと思いますー。
※
陰海月、久しぶりの海で泳げてつやつやぷきゅぷきゅ、お腹空いたー。船旅楽しかった?
霹靂、つやつやクエクエ、いい香り。船旅楽しかった!
●海が開けて世界が広がる
どたどたと鉄甲船から降りていった集団があって。少し落ち着いてから、と義透は甲板から島の風景を眺めていた。海岸に沿って防砂林が広がっており、遥か先にはてっぺんが白む山を望む。自然が豊か、の印象は前評判と比べると長閑で平和な趣があった。
(今日の今日まで外界から全く切り離されていたはずですが……それでも不満無く暮らす秘訣があるのでしょうかねー)
鉄甲船から降りた者達への対応も見る限り歓迎ムード一色で、何一つ不自由のない理想郷のように映る。隣の霹靂も四本足ですっくと立ち、義透と同じように島を見つめている――と思ったのも束の間、霹靂はぴくりと鼻を震わせると、その場を離れてタカタカとタラップへ向かっていく。
「おや、何か見つけ――いえ、そういうことですかー」
ややあって義透も感じた。風に乗ってやってきたフルーティな甘い匂い。花より団子。素晴らしい自然も然ることながら、やっぱりお腹は満たしたい。
先に上陸した霹靂のところへ、海からざぱっと飛び出してきた陰海月が合流していた。故郷の海にどっぷり浸って潤い満点。ぷるぷるでつやつやな傘を霹靂がちょんと額で触れてじゃれ合いながら、仲良く匂いに釣られていた。
「まあ、見たこともないお客様! どうしましょう、丁度いいお席のご用意が……」
「いえいえ、そのままで構いませんよー。お気遣い感謝します」
陰海月と霹靂の登場に驚きの声を上げていた女性に義透は会釈して、二体が自分の連れであることを説明する。大人しいですのね、と声を掛けられると、陰海月はゆらゆら、霹靂はクエと鳴いて喜びを表現していた。
それから義透は執事風の男性が整えた席に案内された。おそらくは西洋風の茶会の席。背筋を伸ばして着席すると、「お口に合いましたら」と、女性がアップルタルトの乗った皿と温かい紅茶のカップを静かに置いた。
「――では、ありがたく」
義透は女性にもう一度会釈して、添えられたナイフとフォークでアップルタルトを一口分切り分ける。傍では陰海月と霹靂にも大皿に乗ったアップルタルトが差し出されており、陰海月は触手で器用に持ち上げ、霹靂は丁寧に啄んでいた。
大皿を手にした女性は実ににこやかで、固いマナーはどうやら存在しないらしい。義透も今回ばかりは二体を見習い、肩肘張らずにぱくりと一口。りんごの柔らかい甘さが溶けだし広がって、後に仄かなシナモンの香りがすっと鼻を抜けていく。飲み込むまで存分に味わった義透の両手は次の一口を求めて自然に動き出していた。
「険しい船旅だったかと存じます。どうぞ、この島では心行くまでお寛ぎ下さいませ」
「ええ、そうさせて――ああ、そういえばー」
忘れてはいない。忘れてはいないが、義透もたまにはうっかりすることだってある。
「船に海産物を載せてるんですよー。この島では海の幸が食べられないのではないか……そんなことを考えた方々がいましてー」
「海……まさか、あの鮫を捕らえてしまいましたの?」
「その反応であれば、持ってきた物はきっと喜んでもらえますよー」
それなりに見識を深めていそうな淑女であっても、海のこと、海の先にある島々のことはほとんど知らないといった風だった。義透は陰海月と霹靂を引き連れて一旦鉄甲船に戻ると、海産物が詰め込まれたクーラーボックスを運んで戻り、集まっていた島民達に披露した。
何かしら、見たこともない――島民達にとっては未知なる海の産物。揃って目を丸くしていた。
「こういったものが海の中にいるんですよー。実は、これらの海産物を持たせてくださった方々が、この島と交易をしたいと仰っていましてー。だってねぇ、その島の海産物も、この島の茶と菓子も美味しいものですからー。お互いによいものと思いますー」
考えもしなかったこと、と島民達は顔を見合わせる。少なからず不安は漂っていたが、口を突いて出ていたのは、自分達の作る物は交易に足るほど価値あるものか、相手方の口に合わない物ではないのか、といった謙虚な不安だ。
「……で、では、皆様の最も自信があるものをお持ちして! それで満足していただけないようであれば、諦めるということに致しましょう……。それでどうか、よろしくお願い致します……!」
島民達は前向きで、これから海産物に見合った返礼を準備するようだ。それがどんなものなのか、義透としても楽しみであり、それが何であっても件の島の島民達が喜ぶであろうことは陰海月と霹靂の楽しむ様を見れば自ずと分かること。
「今日の船旅はどうでしたかー?」
義透の声に陰海月はふよんと傘を弾ませて、霹靂は飛び跳ね踊っていた。
大成功
🔵🔵🔵
真宮・響
【真宮家】で参加
やれやれ、邪魔が入ったが、無事目標の島に辿り着いたね。頼まれた品を渡して、貿易の事を話したら、お茶会なんだね。とっとと【怪力】で運んで終わらせよう。よいしょ。
ああ、大変な経路に島があるようだから分からないだろうが、別に島はあるんだよ。こうして交流を求めてるんだよ。いい品があるようだから考えてみてもいいんじゃないか?
まあ、こうして危ない経路を乗り越えて人々の交流を繋ぐのも猟兵の役目ってね。子供達はそれよりもてなしのお菓子に夢中みたいだが。(微笑)
真宮・奏
【真宮家】で参加
これが伝説の島!!なんか香ばしいいい匂いがしますね。(じゅるり)いけないいけない。まずは託された品を【怪力】で運んでと。(目の前に用意されているお茶会の準備に)詳しい話は母さんがしてくれるようですし、お茶会いっていいですか?(瞬の手をぐいぐい)
ああ、美味しそうなお菓子に香ばしいお茶!!堪りません。このお菓子はいい交易の品になりますよね!!もしかしてレシピも!!調子良く捲し立てながらお茶会を満喫します!!ああ幸せ。こういう生活を守るのも猟兵の役目ですよね!!
神城・瞬
【真宮家】で参加
まあ、ここまで辿り着くまで苦労しましたが、無事着きましたね。ふむ、とてもいい匂いがしますね。力仕事は僕には無理なので少し交渉しときますか。
この島のように他にも脅威に囲まれてる島がありまして。海の幸が足りないと心配していらっしゃいます。依頼主の願いもありますし、皆さんの作るお菓子もいいものです。経路の危険は僕達を何とかしますので、交易、開始してみませんか?お互いの交易の品は間違いなく生活を豊かにします。
母さんと奏の仕事が終わったら、お茶会を満喫します。隠れ甘味好きですから。このお茶会にシーフードが加わったら・・・夢のようですね。
●奇跡ではなくそれは必然
丁度、先に島へ降りた者達が鉄甲船に戻ってくるのと入れ違いだった。瞬はタラップを降りながら、忙しなく茶席を整えている島民達を見つけた。あまりじろじろと見るものではないか、と目を伏せようとしたが、メイドらしき女性とぱちりと視線が合ってしまったので互いに軽く会釈を交わす。
「ようこそ、おいで下さいました」
それから。島民達に足を向けた瞬を出迎えたのは身なりの良い男性だった。女性達はさっとその後ろに控えている。彼が所謂「主人」らしい。
「最上の幸運がありましたこと、真に嬉しく思います。こちらにて感謝と祝福の席を設けさせていただきましたので、どうぞご随意にお過ごしください」
「歓迎いただきありがとうございます。ですが……その前に」
ちら、と瞬が背後を伺えば、両手にクーラーボックスを抱え積み上げて運んでくる響と奏の姿があった。流石の怪力。瞬には真似のしようもないが、その代わりと任された役目がある。
「僕達は、ある方々の使いとしてやってきました。その方々は、この島のように海を閉ざされ苦しんできた方々――彼らはこの島を案じておられました。海の幸が足りない……あるいは、全く無いのではないかと。ですから僕達はこうして――」
見計らったかのように、瞬の説明に絶妙な間合いで響と奏はどかどかクーラーボックスを地面に下ろす。
「ふああああ! これが伝説の島!! なんか香ばしい良い匂いがしますね!! やっぱり私の見立ては当たってました!! お茶会です!! 詳しい話は母さんがしてくれるようですし、お茶会いっていいですか!!?」
言うが早く奏は瞬の手を握りぐいぐい引っ張る。許可を求めながら半ば道連れにしようとする仕草だが、使者としての矜持が瞬を辛うじて踏み止まらせていた。
「落ち着いてください。僕達の振る舞い如何で依頼主の品性が疑われてしまうかもしれないんですよ。……気持ちはわかりますが」
「やれやれ、しょうがないね。運ぶ物は運んだし、小難しい話はとっとと終わらせてしまおうか。ここに並べたのは交易品――早い話が物々交換さ。ここに島があるように、海のずっと向こう側にも人が住む島がある。アタシらはその島の人間がこの島と交流したいと言ってるから代わりにこうして持ってきたんだよ」
「交易……この島が、その島と……? しかし、我々がそのようなことをできるとは……」
この島の属する海域の危険性は彼ら島民が最も良く知っている。臆するのは当然と言えたが、彼らはまだ知らないのだ。鉄甲船がこの島に辿り着いたのは決して幸運に恵まれたからではないことを。
「航行経路の危険は僕達で何とかします。時間はそうかからないでしょう。ですから……交易、開始してみませんか? お互いの交易の品は間違いなく生活を豊かにします」
「そうですよ!! 私には見えます!! ああ、美味しそうなお菓子に香ばしいお茶!! 堪りません!! きっといい交易の品になりますよね!! レシピもお互いに教え合えば皆が幸せです!! お茶会が!! 私を呼んでます!!」
「母さん、奏がもう限界です」
「まったく……いいよいいよ、瞬も一緒に呼ばれてきな」
察していたメイド達はすでに二人の席を整えていた。響の許可が出たおかげで奏は猛然とダッシュで着席する。それを申し訳なさそうに追う瞬も実はまんざらではないのだが。
「いただきます!!」
最後に残った理性のようなもので礼儀だけはしっかり弁えた奏は、目の前のほんのり桃色に染まったクリームのショートケーキにフォークの縁を滑り込ませて一気に両断。型崩れせず半分の体積に割れた片割れに今度はずぶりとフォークを突き刺し、一口でいった。
「ひひふぉはひ!」
「えぇ……苺クリームですね、これ」
瞬はしっかりと、落ち着いて食べられる一口を切り分けている。
「あーあー口の周りにクリームつけて。あれだけ夢中になるんだから余程いいものなんだろうねえ。……で、海の危険をアタシらが解決したとして、他に心配事なんてないだろうさ。交易、考えてみてもいいんじゃないか?」
「そのようなことが……! でしたら仰る通り、迷う理由は……ああ、私だけで完結してはいけませんね……。しかし、他の者達も必ずや賛同してくれることでしょう」
男性の表情は日が照るように晴れやかで。この島――アールグリン島は今日、新たなる日の出を迎えるのだ。
(このお茶会にシーフードが加わったら……夢のようですね)
そして瞬は地の恵みに感謝し、海の恵みを祝福する。この場は感謝と祝福の席なのだから。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵