●ある結末
少女は、袈裟斬りにされた和服の男の前に立ち、暫くそれを眺めていた。
"人間がやったとは到底考えられない"凄惨な太刀筋。尋常な立ち合いではなかったことが窺える。眼前に横たわる骸が手にするは名刀であり、その刀身には傷ひとつ無い。鍔迫り合いすらもなく、一刀で絶命まで至ったのだ。
「……父上」
少女は"かつて父親だったもの"に向け言葉を紡ぐ。その場には死の静寂が支配し、月も見えぬ深い夜にただ雪がしんしんと降りゆくのみ。
「"次はわたくしの番"なのでしょう――必ずや"当代"にて終わらせてみせます」
●グリモアベース、泰山曰く
「去年の年末、一人の剣術家が死んだ。死因は――斬殺」
泰山・敏郎(錆びた冠・f35267)は"分厚いリリック帳"を閉じると、事のあらましを語り始めた。
昨年末、都内某所の道場にて一人の剣術家が死体で発見された。司法解剖によれば【鋭利な刃物】により【袈裟斬り】にされた結果の【臓器損傷・失血死】が死因となっている。また【遺体に残された痕跡から、被害者に加えられた斬撃はただ一度】であるというのだ。
「このシルバーレイン世界の日本において、一刀で人を殺せる奴はそういない」
死亡した剣術家は表稼業として剣道場を営む男であったが、裏の稼業として"掃除屋"の顔を持っていた。法では裁けぬ者、都合の悪い存在、様々な"ゴミ"を己の剣で始末する――純粋な"殺しの業"を持つ男。
そして遂に、自らも斬ってきた者と同じ末路を辿ったのだ。
●業を継ぐ者
「では本題だ。その剣術家の一人娘が"ナンバード"に狙われている」
泰山の予知によれば、その剣術家の娘が"ナンバード"に【袈裟斬り】にされ殺されるという。彼女が通う公立高校、その帰り道の裏通りで――極限まで肉薄するも、最期は一刀にて父親と同じ末路を迎えて。
「彼女は巧妙どころか偏執的なまでに日常に溶け込み、自らの能力を隠している」
彼女とその父親は【苛烈なまでの修行及び実戦により己の剣を人外の領域まで至らせている】のだ。その剣技は世界結界の"常識"に抵触し、同じ領域に居る存在でなくては察知すらも難しい。並のゴーストであれば斬り伏せることができるのだ――少なくともこのシルバーレイン世界において、世俗に披露は出来ないだろう。
「彼女の境遇も含めた詳細について、俺は予知しきれなかった」
分かっていることは【父親は猟兵レベルまで高まった暗殺剣の使い手】【その娘も父親同様の剣技を修めている】【娘は"ナンバード"に狙われている】ことだけだ。彼女が覚醒している能力について、そして"ナンバード"との因果についても不明。簡単な依頼ではない。
「しかも、だ。彼女はここまで説明した通り"暗殺剣"の遣い手だ。つまりは」
"猟兵を認識した場合、敵対存在と判断する"可能性がある。猟兵として学ぶべき最低限を"実地"で習得した剣術家だ。注意を怠った場合【彼女が敵対行動をとる】ことがあり得るのだ。ただの道場剣法ではない――【猟兵レベルの暗殺剣】を振るってくる。力押しの解決は事態をより悪い方へと導くだろう。
彼女に気取られることなく事態の把握を行い"ナンバード"の討滅を行う。さらにその上で彼女をひとりの猟兵として導き、後顧の憂いを断つ。猟兵として、総合的な戦略と戦術運用が求められる依頼だ。
「彼女自身のことについても勿論だが、親父さんの事件周りも調べておいた方がいい」
今回の予知には空白が多い。それを踏まえた上で、年末にあった事件の資料から彼ら親子の家系、勿論彼女自身についても調べておくべきであろう。【十分な情報が得られていない場合、拗れた事態になり得る】ことは十分に留意しておく必要がある。
「難しい依頼だが、あんたらは俺よりもずっと頭もいいだろ?頼むぜ」
泰山が指を鳴らすと、眼前にテレポートゲートが現れる。
シルバーレイン世界、東京郊外某所。
呪われし剣が纏う血の螺旋。
その果てにあるのは、やはり地獄なのだろうか?
ノブ=オーカミ
●お久しぶりです
もう二月とかびっくりですよね。オーカミです。遅まきながらナンバード案件で一本出させていただきます。どうしましたか?聞いてたんと違うみたいな顔して。
●今回の依頼についての補足
これまで二本ほどシナリオを出しましたが、全章の概要をこちらの項目で書かせていただいてました。が、今回は非公開です。章またぎのタイミングで断章切りますので、その内容を踏まえプレイングを書いていただければ。第一章にて猟兵の皆様がどう行動するかによって、第二章以降の動向がそれなりに変化します。【オープニングにある要素をバランス良く情報収集しておく】と第二章以降でボーナスが入ります。ある程度フレンドリーに判定しますので、是非とも現代伝奇ライクな調査フェーズと戦闘フェーズをお楽しみください。
●今年の冬寒いっすよね
プレイヤーの皆様、そして同胞たるマスター、運営の皆様。ホント今年の冬は色々キツいですが、お身体を自愛いただき、今年一年も楽しんで行きましょう。命の輝きに満ちたプレイング、お待ちしております。
第1章 日常
『かつての事件の真相』
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POW : 過去の新聞や雑誌を片っ端から調べ、不自然な点を探す
SPD : 現場周辺を調べ、それらしい噂話の断片を探す
WIZ : 関係者を探し、「常識」によって修正された証言から真相を推理する
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ジョン・シゲルソン
なるほど……全てが予知で見えているならば猟兵の領分だが、明かすべき余地があるのなら、我々探偵の出番だ。
親父さんの事件周りに関して探りを入れよう。
ユーベルコード『明かす者』……僕の積み上げて来た経験であり、技術だ。
まずは気取られぬように、彼女が登校している昼間に、事件の現場周辺を当たろう。
いや、人となりより起きた事件に興味が向いてしまってね。ただ、事件の話に付随して娘さんについても聞ければなおいい。
持ち前のコミュ力を使った聞き込みで情報収集。読心術も活用して、顔色等から情報の確度を測っていく。
後々嗅ぎ回っている事を察されて敵対されるのも不味いのでね。情報料としていくらか謝礼を握らせよう、取引だ。
●探偵という名の舞台装置
ジョン・シゲルソン(明かす者・f36105)はグリモア猟兵より指定された座標へとジェントルに降り立った。そこは静かなベッドタウンで、まるで過日に起きた凄絶な事件など忘れてしまっているかのようである。事実、世界結界の影響により"常識"のヴェールがこの事件とそれに絡みつく因果を覆い隠していた。
――これから、それを"真実"の刃により剥ぎ取る。
『真実は常に人を傷つける』とは的を得たもので、己の行いにより明らかになる"真実"は決して万人を幸せにするものではない。ジョンはそれを十二分に理解している。理解の上で、傲岸不遜とも言えるそのスタイルを通す。
何故ならば。
ジョン・シゲルソンは"探偵"として己自身を定義したからだ。
●調査1:影に沈みし足跡
予知された惨劇の被害者は"学生"であり、秘めたる"暗殺剣"の業を悟られぬよう徹底して日常への適応を行っている。で、あるならば――彼女は日中確実に拘束されるはずだ。街並みの様子から見るに、休日ではないことはすぐに判断が出来た。事前情報として判明している事件現場へとジョンは足を向ける。
既に事件から一ヶ月が経過した事件現場である被害者の道場は、近寄る者もなく閑散としていた。外観から見るに、整理の予定もなくただ放置されていると予測できる。ジョンは周囲を確認し、敷地内へと侵入した。
道場のすべての戸という戸に霊的な封印が施されている。
明らかに世界結界の常識"外"の技術だ。うかつに封印へ干渉した場合、これを施した本人には確実に察知されるだろう。その理由は現段階では伺えないが、確実にこの道場には"常識のヴェールに隠された何か"がある。数瞬の思考演算の結果、これ以上は踏み込まないでおくことにした。ここで踏み込むことによるリスクは、踏み込んで得るリターンよりも遥かに大きい。今回予知された惨劇の被害者は、無辜の市民ではない――猟兵に比肩するほどの暗殺剣の遣い手である。
現場を確認出来ない以上、事件について周辺情報を聞き込む方向に舵を切ることにしたジョン。
進入時と同様に周囲を確認し敷地を出ようとしたその時。
彼を、銃口が出迎えた。
●死すべき者、それを決める者
「あからさまに探偵じみた格好してるが、調べ物かい?ちょっと話を聞かせてもらえないかなあ」
声色――慣れている。
呼吸――平静。こういう鉄火場が得意な手合い。
手に持つ銃――一般的なもの。猟兵には決定打とはならないし、この地点で"こちら側"の存在ではない。
構え――素人ではない。だが、実戦経験が豊富とも言えない。脅威ではないが、事故の可能性はあり。
ジョンは一瞬で相手の脅威度を見抜き、次の刹那で眼前の襲撃者を鎮圧した。"探偵"の嗜みの一つ――バリツの前には、悪漢の卵レベルの相手では銃があってもどうにもならない。怪我をさせず、心だけへし折るように丁寧に躾けたジョン。こうなれば後は聞き込みだけだ。
「手荒な真似をしてしまってすまなかったね。それでは、君の用件を聞こうじゃないか」
彼はかつて"この道場関係者に身内を皆殺しにされた者"であると告げる。首元に見える入れ墨、手に持っている銃、使い慣れた様子、明らかに堅気の人間ではない。どうやら"裏稼業"の仕事で始末された側の人間のようだ。幸運なことに"仕事"が行われた日、現場に居合わせなかったのだという。
「それで……この道場に出入りする人間を待ち受けて、仇であれば殺し、そうでなくとも力づくで情報を得ようとした、と」
深くため息をつくジョン。これは、アテが外れる流れだ。掃いて捨てるほど居る己の度量を知らぬ小物であり、何も知らぬまま面子のために動き、死ぬ。自分だからまだこの程度で済んだものの、万が一件の娘であったなら――後を追うことになっていたかもしれない。
「もし知らなかったのであれば教えておくけれど。此処の道場主は、過日、君の仲間達と同じように殺されている。仇はもう居ない」
ジョンの言葉への答えは、意外なものであった。
「探偵の癖にマジで何も知らないんだな……そこの道場主は、随分昔に"殺し"の稼業は辞めてるよ」
●ある暴力組織の結末
襲撃者は、銃をしまうことも忘れ自分が見たものについて語り始めた。
監視カメラで捉えられていた幻のスナッフフィルム。彼が一度確認後、復旧不能のデータとなり警察も証拠として扱えなかったモノ。
「何の前触れもなく来たんだよ。事務所の前でさ、おじさん、ここの組の人?って聞いてるんだよ。
そうだ、って答えた次の瞬間には肩からバッサリ、周りは血の海だ」
ジョンは彼がすべてを吐き出せるよう、徹底的に聞き役へと回った。この情報は、漏れなく入手する必要がある。
彼の精神衛生には一切興味がないが、最後まで語りきる為のケアはやり切らなくてはならない。
「その後はひどいもんだった。兄貴も、舎弟も、みんな呆気なくぶち殺された。武闘派だったんだぜうちの組。
それが、たった一人の小娘に皆殺しだ。確かに俺らは日陰者のクズで、まともに死ねないとは思ってたけどさ」
ジョンは最大限彼の精神に寄り添う言葉を演算し、それを発した。
「……せめて、一矢報いるくらいはしたかった、と」
彼は頷き、そして大声で泣き始めた。
最後まで迷惑な小物ではあったが、結果的には重要な事実を知るに至ったことには感謝しつつすぐにその場を離れる。
彼に付き合ってこの世界の官憲に連れて行かれるのは、時間の無駄であるからだ。
●父と娘
暗殺剣の遣い手であった父は"裏稼業"についてかなり前に引退しているということ。
その業を引き継いだ娘がここ最近も"裏稼業"で人を斬っていたということ。
こうなると件の事件、様相が変わってくる。
達人である父親を一刀で絶命せしえる脅威が"一番近くに存在していた"のだ。
「……少し、スコープを広くとる必要がありそうだね」
"探偵"ジョン・シゲルソンは演算を高速化する。
その表情には、微かに笑みが浮かんでいた。
成功
🔵🔵🔴
白幡・修理亮
残酷無惨!
戦場の槍働きや山賊の狼藉ならともかく暗殺剣とは。それがしの故郷でもあまり聞きませぬ。コワイ(さめざめ)
ましてこの地は日ノ本に近いとは言え、戦からは遠き世との事。
刀は置いて、この霊的天竺編『銀雨』を着用して臨みまするぞ!
さて、此度の事件。
『稼業』ゆえに死を招いたと推察致す。
父親の『稼業』の足跡を辿ろう。
似たような傷や死因の事件は無い物か。
被害者に共通する特徴とは?
稼業の狙いは、ただの殺し屋ではなく、
何がしか目的があったように思えるのです。
たとえば、古い時代から続く退魔の業とか。
一族を挙げて、ずっと追っている魔の物がいるとか。
この時代に剣の技を受け継ぎ伝えるなど、
尋常の覚悟とは思えぬ……
●薪割り侍、暗殺剣に纏わる因果に挑むの事
シルバーレイン世界、東京郊外某所。その中心で。
銀誓館学園女子体操服を着て白幡・修理亮(薪割り侍・f10806)はガン泣きをキメていた。
暗殺剣の遣い手である父とそれを引き継いだ娘、そしてその娘を狙う"ナンバード"。
予知の空白に潜む謎。薪割り侍にはあまりにも荷が重い依頼なのだろう。
その結果、結構な勢いでギャン泣きする女装男子侍が爆誕している。
諜報を行うことを意識して『洩矢』と刀はしまい込むところまでは良いのだが、どうして女子体操服なのか。
ツッコミ役不在である。『洩矢』がもし居たらツッコミのオーバーワークで壊れるかもしれない。
「戦場の槍働きや山賊の狼藉ならともかく暗殺剣とは。それがしの故郷でもあまり聞きませぬ。コワイ!」
でもやるんだよ白幡修理亮。お前が受けた依頼だろうに。
●流石にサムライキングダムの出身だけはある
ひとしきり泣くだけ泣いてすっきりしたのか白幡は事前情報で引っかかった情報について調査を開始した。
それは――"裏稼業"である。
シルバーレイン世界はいわゆる"平時"の世界であり、戦争も近代的兵器を用いたものだ。白兵戦闘は勿論必要があれば行われるだろうが、それも近接戦用の銃器が用いられる。殺しの剣など、そもそもが"不要"なのだ。法律も整備されており、暗殺剣以前に法律にかかれば刀剣の所持だけでも逮捕される。あらゆる角度から見ても、無駄であり不要なのだ。
それでは何故、かの道場主は"暗殺剣"などという無用の長物を娘に継承した?
白幡の故郷、出身世界において刀を帯びるというのはそれだけで意味が、義務が生じる。必然、刀を帯びるならばそれを遣うための技術も興る。技術が興るならばそれを遣う場も生まれる。場があるならば其処において振るえるようにするのが嗜みとなる。"そういうもの"だからだ。
理由がない。
どう頭を捻ってみても、その道場主も娘も"暗殺剣"を会得しなくてはならない理由がない。文化としても認められぬ邪剣、ただの殺しの業だ。むしろ断絶して然るべきだろうとまで思う。怖いし。暗殺剣って字面からもう怖いし。
ここで白幡にとって最大の問題が発生した。
「……自分の世界のことすらよく分からぬと言うに、よその世界のそんな暗部などどうやって調べれば良いというのか!熱出てきた!」
●そしてまさかのグリモアベース
「なるほど。言うことは一理ある」
泰山・敏郎(錆びた冠・f35267)はテレポートゲートより帰還してきた白幡の言に頷いてみせた。"シルバーレイン世界からの視点"でこの依頼を捉えた場合、白幡のような余所者が手詰まりになるのは道理である。そう、余所者は余所者にしか出来ない視点から切り込むべきなのだ。
「そのようなわけで、シルバーレイン世界に存在する"魔剣士の能力"についての資料をお借りしたく!」
今回の焦点となる父と娘が振るう"暗殺剣"について、該当する猟兵としての能力は現状ただ一つ――"魔剣士"。彼らが練達を以て猟兵と並ぶところまで高めた技量、かの世界でたどり着き得る唯一の可能性。少なくとも既に故人となっている"父を殺めた剣筋"については間違いなく《黒影剣》であろう。
実際の遺骸をこの目に出来れば決して誤ることなく見極めることが出来るが、白幡の立場上それは極めて難しい。だが、うろ覚えであった知識を改めて正確に調べ上げた結果、白幡は確信した。この父親は"己と同じ剣筋にて斬られていた"のだ。
では、誰が?
すぐに娘のことが思い浮かび、白幡は頭を振った。あり得ぬ。娘が父より継いだ剣でその父親を斬るなど、悪夢以外の何者でもない。そんな酷いことが起きるなど想像するだけで涙が出てくる。というかもうちょっと泣いてる。そういう怖い想像はどんどん具体化するもので、白幡の中で解像度が上がり続ける。
●シルバーレイン世界にしか存在せぬもの
詠唱銀。かつてシルバーレイン世界で"能力者"と呼ばれた者たちの覚醒を励起したもの。猟兵としての能力も、これまで発見されてきたほとんどのものは"能力者"と呼ばれていた彼らの能力がベースとなっている。
「……あの詠唱銀とやら、確か、思念や怨念とかそういう怖いのと合わさって何か大変なことになっちゃうのでは……?」
当たり前のことだが"剣術という技術様式そのものに善悪は存在しない"。あくまでそれは一つの技術体系であり、それを遣う者が善を成すか悪を成すか、それだけである。医術は人を活かすがその性質上殺す事もできる。だから医学を悪とするのか――答えは否である。
「で、で、でも、かの世界の能力の成り立ちには、え、詠唱銀が」
思念と結びつきゴーストという敵対存在を生み出していた詠唱銀。
詠唱銀により励起されたかつての能力者、そしてその異能。
その異能と並びうるほどまで練達し続けた剣術家。
【詠唱銀により遣い手を呪う何かに変質した剣術そのもの】
「剣術そのものが、遣い手を、振るうように、仕向ける?」
グリモアベースに響き渡る悲鳴と泣き声。
"常識のヴェール"が、裂かれていく。
成功
🔵🔵🔴
剣・光輝
迅速に状況把握することが大事ってわけだ。
それなら出し惜しみしないよ
指定UC起動
【Brack Box 閃】【LaLune-文月堂-】をネットに接続、[多重詠唱]による高速演算でこの地域一帯の歴史、地理などくまなく[ハッキング][情報収集]し【AutoStreamMap】にてデータを選別
彼女と彼女の父親の家系、そして流派の源まで確認
同時に情報収集してる猟兵の人達と情報共有
[ハッキング]はバレないように[迷彩]かけて消してくけど、彼女が気取りそうな事柄には痕跡を消しすぎて不自然にならない様注意
裏稼業のある家柄ってのは、どうしてこう血生臭くなるかねぇ。
兎に角、救える可能性があるなら全力で事にあたるよ。
●雷光、電脳空間を疾走る
剣・光輝(ライトニングソード・f16737)には明確な勝算があった。
事前に他の猟兵への情報展開を想定し仕込んでいたことから、現状オープンになった情報は既にインプット済。そして今回の保護対象は"電脳空間に利する能力は一切持っていない"ことがほぼ確定している。安い先入観は仕事を仕損じることも承知しているので、念のための迷彩はかけるにしても――少なくとも自身と同等の専門家でも無い限りまずカウンターすることは不可能だ。
「迅速に状況把握することが大事ってわけだ――それなら、出し惜しみしないよ」
その上でのフル稼働である。
剣は自身にかかる負荷の予測値まで出し切った上で、オペレーションを開始した。
●調査2:アザーサイド・オブ・ザ・ヴェール
本来想定していたのは大規模なウェブへのローラー的データ抽出からのフィルタリング、そこに残った情報を組み上げて真実を導き出すフローだった。もうそれは必要ない。ここまでに得た情報をまとめると次の通りとなる。
【父娘のうち父は"裏稼業"を退き、娘がその後を継いでいる】
【娘は人を既に斬っている】
【父は自身の剣筋に限りなく近い業で殺害されている】
ここまでにほぼ触れられていない情報――"ナンバード"の動向。
"ナンバード"自身が持つ明確な法則性は【能力者を狙い、それを喰らうことで生き長らえようとする】ことのみ。
だが、ここまでの情報が出揃っている以上因果関係を否定するにしても、勿論肯定するにしても裏取りを行う必要があるだろう。
本件と関連が予想される事件について抽出……完了。
【都内にある暴力組織襲撃・殺害事件および重度犯罪容疑者襲撃・殺害事件の遺体状況が複数本件と合致】
いずれも世界結界による"常識のヴェール"により迷宮入り事件として扱われたものだ。犯人は一切の足跡を残さず、命のやり取りも経験している手合をいずれも一刀で絶命させている。そして、その犯人についての断片的な情報――もはやうわさ話を通り越してネットロアと化しているトピック。
人を斬り、嗤う少女。
彼女は――暗殺剣を継ぐその娘は。
殺しを愉しんでいたのだ。
●深淵を見つめる者は、己が深淵そのものと成り果てる
明確に相手を選んで彼女は殺しを行っている。すべては状況証拠であり"こちら側"の存在でなければ実証は難しい。だが、剥がれつつある"常識のヴェール"から漏れ出している真実の欠片は、明らかに忌むべき事実を示していた。
「裏稼業のある家柄ってのは、どうしてこう血生臭くなるかねぇ」
合わせて、彼女の父親は抽出された事件以前より、道場に引きこもり外部との接触を絶っている。
まるで――【彼を立たせていた力を何者かに奪われたように】
決定的な情報はもはや当人に尋ねる以外に裏を取ることは出来ないだろう。
断定できること。それは『オブリビオンに狙われる条件は完全に揃っている』ということだ。
一線を超えた異能にて繰り返し行われた虐殺。
その業はシルバーレイン世界に存在する"詠唱銀"を呼び、形を為す。
殺められた者の思念が結びつき、そして――
"ナンバード"を呼び寄せるには十分な返り血を、彼女は浴びてしまっている。
そして恐らくは、彼女の父親も同じ。
このままでは、その末路までも同様となることだろう。
「……時間がないね」
既にハックを完了している彼女のスマートフォンが示すGPS座標が動くのを察知した。
現在時間確認……一般的な学校の終業時間帯と一致。
彼女は、帰宅に使うには明確に違和感のある方向へと移動している。
地域の詳細な地理は既に掌握している。明確に人気のない場所へと彼女は動いている。
誘き寄せるつもりだ。
彼女は"父親を襲った何か"が次に自分を狙うだろうということを自覚しているのだろう。
そこで誰に知られるでもなく己の暗殺剣ですべてを迎え撃とうと試み、そして。
「"救える"可能性があるなら――全力で事にあたらねばね」
彼女が死に場所に選ぶであろう場所の座標を予測し、本件に動く猟兵すべてに展開する。
剣は予測した負荷値通りの稼働を終え、終着の地へと向かうひとつの信号を睨みつけた。
大成功
🔵🔵🔵
●断章:血の螺旋
父上、と呼んではいるが実際に血を分けた人ではなかった。
むしろ彼は、本当の父親の仇と呼ぶべき人殺しなのだ。
お金は十分にあった。それが汚れたものであるということは後になって知ったけど、生活に不便を感じたことはない。欲しいと思ったものはすぐに手元に来たし、一度たりとも自分の願いを拒否されたことはない。それがどれだけ薄っぺらいものであったとしても、愛されていた自覚はある。
ある日、家族だと思っていた本当の父親の部下たちも含め、父上が一刀で皆殺しにしていった。はっきりと覚えている。一人一人が"人だったもの"に変わっていくのを呆然としながら眺めていた。自分もそうなるのかな、と思いながら本当の父親も"肉の袋"に変わっていくのをぼんやりと見ていた。
特に悲しいという気持ちはなかった。みんな悪事を働いていることはもう理解していたし、自分が贅沢をしていたそのお金は、彼らが人を踏みにじり、それこそ殺して手に入れてきたものだと言うことは認めていた。
だから、自分も同じように死ぬのだろうと思っていた。
自分のすべてを奪った殺人者は、私を見て"共に来るか"と尋ねた。彼曰く、自分は眼前で死んでいく者たちを見て嗤っていたらしい。
"お前は呪われている、だから同じように呪われた俺と共に来い。
俺は呪いに負けて死ぬだろうが、お前ならば乗り越えられるかもしれない"
●邪剣の系譜
自分はそれに応え、彼と共に旅をした。この世界には法で裁けない外道がいる。それを殺して報酬を受け取る。その"裏稼業"を繰り返すことで剣の腕を高めていった。影から振るわれる一刀は、気取られることなく外道を肉塊に変えていった。
その旅を続けていくうちに、父上は少しずつおかしくなっていった。誰かに見られているという譫言を繰り返し、徐々に正気を失っていく。その気配は当時の自分は感じられなかったけれど、今となっては理解できる。
"何故、このような剣を修めたのですか"と一度だけ尋ねたことがある。
"魅入られてしまったのだ"と彼は言った。
自分も、恐らくはそうだ。
●ある、終わりへと
父上が言っていた、そして恐らくは父上を斬った【見ていた誰か】が自分を追い詰めてきているのを感じる。呪いに魅入られ、呪いを受け容れた自分。
嗚呼、ならば。
呪いを以て呪いを斬り伏せたならば、この乾きも収まるのでしょう。
この呪われた身で、呪いそのものを斬ったなら!
どれだけ美しい光景が目の前に広がるか楽しみで仕方がない!
自分の呪われた刃に斃れた者の怨念ならば、もう一度斬って捨てるのみ。
怨念に塗れた返り血を浴び、愛しき"呪い"と向かい合いましょう!
第2章 集団戦
『ガンジャ』
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POW : 復讐の炎弾
【復讐の弾丸】が命中した対象を燃やす。放たれた【復讐心の具現化した】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : 復讐の嵐
【拳銃】から、戦場全体に「敵味方を識別する【無数の「復讐の弾丸」】」を放ち、ダメージと【狂乱】の状態異常を与える。
WIZ : ガンジャバレット
【銃口】を向けた対象に、【四丁の拳銃からの弾丸】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
剣・光輝
剣の呪いに魅入られたのか、
それとも人を斬る呪いに魅入られたのか。
魔剣士だけじゃなく、カースブレイドな気配もするんだよねぇ。
どっちにしても、呪いを斬り伏せることができた時、その乾きは本当に癒えるのだろうか。
そして、彼女がその呪いから解放されたとして、
彼女は生きていけるのか。ってのも心配かな。
とはいえ彼女にとっての本当の救いを判断するのは、彼女自身がコレを乗り越えない事には判断が難しいだろうね。
僕はUCを起動、【紅桜蒼月】を振るいながら、
【LaLune-文月堂-】にて敵の動きと彼女の動きを[多重詠唱][情報収集][瞬間思考力]で把握して対応。
彼女や一緒に戦っている皆の戦闘サポートもするよ。
秋枝・昇一郎
最初に取り憑かれた父親は力を奪われ、次の獲物とばかりに娘に魅入った、みてえな感じかね?現れるのは他でもない、内側からってか。
知った特徴じゃあないが、オブリビオンってのはそういうモンなんだろ。
そして、当人は殺す対象を選ぶ程度には狂っちゃいない。
まだ、どうにかなるかね?今は多少矛先をずらすだけでも構わねえさ。
〇接触
初撃は黒影剣での死角からの一撃と踏んでUCで炙り出しつつ姿を見せ、
娘に届きそうな攻撃は割って入って”武器受け”でガード。そのまま加勢する形で参戦する。得物は取り回しを重視して長剣、及び各種投擲品。
「その力を、目の前のそいつ以外に存分に振るえる先を知ってる、と言えば興味ぐらいは持つかね?」
雨倉・桜木
(展開された情報を受け取り)
ふふ、シルバーレインは面白いな。世界結界によって娘さんはネットロアか。案外、こうして怪異と語られている能力者は多いのかもかね。
さて、行こうか。
呪いを越えようとするならば、無事越えることができるよう呪いという呪い(まじない)をかけてあげよう。
たった一度でも肉を断ち血を浴び命を奪ったならば後戻りは難しい。ましてや繰り返したなら尚更だ。だからね、ぼくは、ぼくらは、君が呪いを乗り越えて先に進めるよう手助けをする。
余計なお世話だとしても、ね。女の子に死なれちゃ格好つかないだろう?
ナンバードは確か時間がなくて焦っているのだったっけ?じゃあ……近寄らせなければいいね?(指定UC)
ジョン・シゲルソン
魅入られてしまったのだ、恐らく。
若い娘がそうだという事に思う所が無いわけではない。
……が、理解は出来る。
僕もまた斬ってきたのだ、真実という刃で。そして、魅入られている……真実という呪いに。
止める?……どうして。
振るう得物の質が違っただけだ。
僕と彼女は同類だよ。
斬らねばいられぬのだ、目の前のそれを……収まらんよ、もっと欲しくなる。
とはいえ、僕の刃は鋭き剣のそれではない。
その刃を振るわねばならぬのは彼女だ。
で、あれば……僕は寄り添おう。
彼女の場所は割れている。並び立ち共闘を申し出る。
探偵の観察眼を使いオブリビオンの攻撃を予測。
彼女が思うまま立ち回れるよう、銃弾を見極め、ステッキを用いて受け流そう。
白幡・修理亮
それがしも自分の生育に何らの犠牲が無いとは思わぬ。
首実検も刈田狼藉も、実際に目にした事は無いが、
父も兄もそうした槍働きで我が故郷を護り治めていたのじゃ。
それが戦国の習い。謂わば「稼業」よな。
それがしも猟兵にならずば、「稼業」を受け継いでいた。
しかしそれは、呪いなどでは無いと思いたい。
父も兄も、振るう刀に魅入られてなど居なかったはず!
呪いと化した技、必ず打ち払わねば…
まずは呼び寄せられた復讐の具現を討つ!
敵は複数、しかも飛び道具!
鎧の袖で体の中心を防御しながら、
一気に距離を詰める!
敵の射撃に身を晒さないように、
刀を振りかぶらずに突くのだ!
どれだけ数がいるのか分からぬが、
確実に倒して後に続けねば!
●視点A
剣・光輝(ライトニングソード・f16737)は演算された複数のルートの中で最も効率的なものをチョイスし、この依頼にやってくる後詰めのために収集した情報を展開しつつ急行しながらもどこか暗澹たる気持ちでいた。
彼女が呪いを斬り伏せたとして、その乾きは癒えるのだろうか。
彼女が呪いを乗り越えたとして、その後生きることができるだろうか。
今回の"ナンバード"が何処から顕れたのか、だいたいの見当はついている。そしてその読み通りであれば、彼女を放置はできない。呪いに殺されるか、呪いと共に死ぬかのどちらかだ。魅入られ狂い果てたならば呪いそのものとなり、狂うことができなければ呪いと向かい合い――そして。
浮かんだ最悪のシミュレート結果をかき消すように、剣は路地裏を駆けていく。
●視点B
展開された情報を確認しつつ、秋枝・昇一郎(ジャンク・リスターター・f35579)は被害者と思われる娘に対しどうすべきかを考えていた。既にオブリビオン出現予測座標に到着していたが、今の所出現の予兆はない。
「まだ、どうにかなるかね?」
父親の呪いが子に移り、このままではその呪いが解き放たれてしまう。最後の最後、乗り越えられるのは彼女だけであるのは間違いない。けれど、そこに至るまでに独りで戦い抜けられるかといえば、これも間違いなく――否。
せめて、終焉まで向かう彼女の刃――その切っ先を少しでも逸らせれば。
彼女に未だ残っている"人間性"に賭けるより今は選択肢がない。
どちらにしろ、やれることをやり切るのみ。
今までも、これからも、秋枝昇一郎はそういう男である。
●視点C
「ふふ、シルバーレインは面白いな。世界結界によって娘さんはネットロアか」
雨倉・桜木(花残華・f35324)は展開された情報に強い興味を持ち、この依頼への支援を承諾している。刹那主義である彼は雨倉の父娘について特別な感情を抱いてはいない。ただ、予知対象である娘の顛末が気になったのだ。このシルバーレイン世界において、能力者が都市伝説と化した例が間近にあるのだ。気に入る唄を耳にしたなら、終わりまで聞き届けたいと思うのが情というもの。
「余計なお世話だとしても、ね。女の子に死なれちゃ格好つかないだろう?」
"ナンバード"の習性について最低限は把握している。【己の存在を維持するため、能力者などの魂魄を喰らい続けるため常に焦燥している】オブリビオンだ。それを顧みて、何故彼女をそれが付け狙うのか。自ずと、答えは導かれつつある。
だからなお、この一件、捨て置けぬのだ。
●視点D
ジョン・シゲルソン(明かす者・f36105)は複雑な思いでここまでの情報を整理していた。
――斬ることに魅せられ
――斬られ散りゆく命に魅せられ
――斬ることに呪われ
彼女が歩んでいる道は、自身の足跡と代わりがない。
"探偵"ジョン・シゲルソンは定めた自分のスタイルが故に、推理という刃を以て"真実という血"を流し続けている。
その血が流れることに、ジョンは一切の呵責はない。
自分自身を"そうあれかし"と定義したからだ。
そんな自分が彼女を咎める、止める資格などあるのだろうか。
――答えは、否。
展開された予測座標へと足を向けながら、彼女とどのように向かい合うかを思っていた。
寄り添うことしか出来ないだろう。せめて、彼女が呪いを斬り伏せられるように。
だが、ジョン・シゲルソンは同時に理解していた。
――"探偵"という生き様は、"真実"に呪われていることに。
●視点E
自身の生まれを思う。
戦の世、武家に生まれたならば。その足元にある骸について必ず知る日が来る。薪割り侍と謗られた白幡・修理亮(薪割り侍・f10806)すら例外ではなく、これから相対するであろう"呪われし娘"の境遇と重ね、改めて侍としての習いを思い返していた。
首実検も刈田狼藉も幸運なことに目にしたことはない。だが、それが何を意味するかは分かっている。"自分は、槍働きにて民を護る家"に生まれたのだ。殺すことで何かを護らなくてはならない家に生まれ、そして護られて育ったのだ。
『修理亮』
霊的動甲冑『洩矢』が声をかける。彼は白幡の相棒のようなものだ。他の誰よりも、彼のことは理解できている。
「む?どうしたのだ洩矢。それがしならば何も問題は」
二の句を継がせず『洩矢』は続ける。
『気負っているな……お主はいつもそうだ。自分のことになるとからきしだが、いざ情が入ると猪武者に早変わりだ』
白幡修理亮は"仁"の侍である。そこに理不尽な天命あれば、例え相手が悪鬼羅刹であろうとも構わずに突き進む。己の痛みや恐れは泣いて済まし、誰かの為になら血を流すことも厭わぬ男。『洩矢』がその心身を救ったことも一度や二度ではない。
「……のう、洩矢。それがしは、かの娘に何が出来るのかのう」
『洩矢』は大きくため息を吐いた。
自分のことなどまるで頭に無い。こうなれば梃子でも動かないのが白幡修理亮なのだ。
『斬れ。お主が斬るべきだと思ったものを斬れ。そして――刃の使い方を、その娘に見せてやればいい』
白幡はしっかりとした表情でその言に頷き、足を早める。
少なくとも此処に、確かに存在するのだ。
誰かを活かす剣を持つ、サムライが。
●事実A
その場に集った五人の猟兵は、来るであろう邪剣を継ぎし娘と、呪いそのものを待ち受ける。剣の適切な情報展開により、十全な支度を以て予知が示した時刻を迎えることが出来たのだ。それぞれの思いと戦術運用を邪魔するものは何もない。
そして、猟兵たちは娘と相対した。
「……あなた、たちは」
娘は、呆然とした顔で五人を眺める。一切想定になかったのだろう、その表情は年相応の少女のそれと代わりはない。
――ただ、肩に下げている竹刀入れが尋常とは思えぬほどの瘴気を放っている。
「その力を、あんたが追われてる相手以外に存分に振るえる先を知ってる、と言えば興味ぐらいは持つかね?」
秋枝は目線を竹刀入れに向け、娘の出方を伺いながら言葉を投げる。一見して平静に見えても、次の瞬間に豹変することもあり得るのだ。今回の依頼、その根源を思うなら――最悪いきなり抜刀されることもあり得る。そうならないことを信じては居るが、いざ相対するとその瘴気は想像以上だ。
「……なるほど。少なくとも、わたくしが斬るべき方々ではないご様子」
冷静な対応に安心する五人。だが、その後に返した言葉はある意味想定通りの返答であった。
「すぐにこの場を離れて下さいまし。これは"わたくしたち"の呪い。父上が"敗けた"今、わたくしが決着をつけねばなりません」
ジョンは一歩前に進み出た。
彼女に対し寄り添うことを決めた以上、その戦いに対し助勢する。その意図を告げようと口を開く。
声が出ない。
ジョン・シゲルソンは"探偵"である。己を"探偵"であると定めた舞台装置である。どのような演算であれ、その結果はすべて"真実"に向かうよう自らを設定している。己の知恵で"謎"を斬り、"真実"という血を流すもの。"真実"という呪いと共に生きるもの――"探偵"。
その勘が、寄り添うという意思を拒絶している。助勢するという選択を拒絶している。彼女にそれを伝えることを拒絶している。思考ではなく、感情でもなく、根源にある魂が――"探偵であるという呪い"が、それを押し止めた。
ジョンは言えなかった言葉を飲み込み、この後起きるであろうことのために構えた。【彼女にただ寄り添うことでは真実にたどり着けない】のであれば、次善の策を執るより他はない。
「嗚呼、来てしまった」
其処は裏路地であった。大通りの灯りも届くことはなく、日が沈みきれば闇一色にもなり得るであろう場所。
時計は逢魔が刻を指し示し、深くなっていく闇より、無数の気配が顕れゆく。
「……腕が立つのでしょう、皆様?ご自分の身くらいは護ってくださいませね?」
娘は、竹刀入れから"影そのもので出来たような刀身の日本刀"を抜く。それに応えるかのように"人型にして多腕、その手に拳銃を持ったオブリビオン"の群れが姿を顕す。剣はその顔を見てすぐに理解をした――かつて、この娘が斬った悪漢。その残留思念である。
「もしも皆様がわたくしと同じように"狂っている"のであれば、一緒に踊りましょう!
ただ、うっかりわたくしの刃が皆様の方に向いたら、その時はお好きなように!」
謳うように娘はそう言うと、ゆっくりと影の刃をオブリビオンへと向ける。
彼女は、嗤っていた。
●事実B
銃弾の雨を自らが発した燃える花びらの幕でしのぎつつ、雨倉は思案していた。
眼前の呪われた女剣客は何故そうも自身の呪いと向かい合い続けるのか。
出自、境遇、もしくは情愛?
当人も理解出来ていないのだろうな、とは思う。
だが、このままではいずれ呪いに追いつかれることは間違いない。
『遊べ、風は花とも舞いて翔け吹く』
試しに、オブリビオンと娘を完全に切り離すように花びらで覆ってみた。
オブリビオンは復讐相手にご執心の上、娘は娘でこちらのことなど気にせずオブリビオンたちを鱠切りにしている。
そうして全体を眺めているうちに、ひとつの気づきを得た。
「兄さん、あんたも見えたか」
秋枝は得意の攪乱戦術でオブリビオンの銃撃を娘は勿論猟兵たちにも向かうことがないよう徹底的に遂行している。
その上、雨倉のユーベルコードによる範囲殲滅だ。この遭遇戦の結末は、それこそ火を見るより明らかというものだろう。
「そうだね。君が場を整えてくれたおかげでゆっくり見通せたよ」
【このオブリビオンは娘の刀が発する瘴気に操られている】
オブリビオンたちは瘴気に煽られ、憎悪を無理矢理に引き出され娘を狙い、結果的に刀の錆となるはずだったのだ――
"ここに猟兵が居なかったなら"、の話だが。
詠唱銀の扱いに秀でている秋枝は、交戦直後からその流れについて把握に努めていた。【彼女が連れてきたのはこんな小物たちではない】こと、そして【本命は彼女の刀にこそ宿っている】ことはすぐに確認ができた。娘の刀が彼女につきまとう残留思念を励起させ、オブリビオン化に及んだのだ。
「で、桜の兄さん。この流れでいいんですかね」
秋枝は雨木が舞わせた炎の花弁を眺めつつ、ユーベルコードの残弾を確認し問う。
雨木は悠然と微笑み、思うようにオブリビオンを斬れず戸惑う娘を眺めつつ返した。
「勿論さ……むしろ上々といったところかな。"呪い"は十全に働くことはない」
そして、その表情から笑みは消え。
「むしろ"問題"はここからだからね」
●事実C
ジョンと白幡は娘の剣技を間近に見ることとなり、畏怖ともいえる感情を抱いた。
これほどの剣技を振るうようになるまでに、何人斬ったのだろうか。
ジョンは娘が"斬る"ことがないよう、徹底的に先回りをして遊撃を続ける。何よりも"自分≒探偵"の勘が、己の魂まで染み着いた呪いがそうしろと告げているのだ。彼女がその呪剣を振るうたびに"真実"は遠のく。
呪い、ではない。
オブリビオン、でもない。
"真実"は彼女の残された"人間性"にこそある。
ならば"探偵≒自分"がすべきことは一つ。
「……わかりませんわ。わたくしへの手助けは無用。何故、この無益な殺し合いに割り込んできますの?」
その問いに応えるは白幡である。
彼女の背中を護るように『洩矢』を活かした身のこなしで復讐の銃弾をいなしつつオブリビオンを斬り捨てている。
「それがしには、どうしても理解出来ぬのです」
銃弾と斬撃が交差する鉄火場に、まるで似合わぬ優しい声色で白幡は語る。
「貴殿は、凄まじい剣技をお持ちだ。【まるで魔を宿しているかのように】剣を振るう」
娘はその言葉に反応し、睨みつける。
「……何故、そのような苦行を己に課したのですかのう」
次の瞬間、娘の刃が白幡の首元に突きつけられる。
「それがしには、貴殿がまるで【償い】でもしているように見えてならぬ」
娘は悲鳴のように拒絶の叫びを発し、オブリビオンの群れに突き進もうとする。
だが――そこまで読み切ったジョンのバリツが、既に群れを鎮圧し終えたところであった。
「……苦しいだろうけれど、それが君の幸せではないかもしれないけれど。"真実"を暴かせてもらうよ」
ジョンの魂を染める"呪い"、その乾きは潤いつつある。
●事実D
剣は戦場全体の状況を把握し、この後に顕現するであろう本命への準備を整えつつこの依頼のクロージングについて思いを巡らせていた。
戦力はこちらが上だ。"ナンバード"案件としては珍しく予知対象の戦闘能力が極めて高い上、猟兵側の戦力も充実している。当たり前のオペレーションをこなせば結果は自ずと得られるだろう。
――問題は、その後だ。
娘の境遇、それに伴う歪み。それに対しての【回答】を猟兵側が用意できない限り、自ら新たな道を選ぶことはないだろう。
"呪い"を殺しきった後、娘が何を縁に生きていくのか。彼女に自ら道を"切り開け"というのはあまりにも酷だ。
「難しい、な。彼女がまず"呪い"を乗り越えなくては、何も始まらない」
残酷な事実だが、剣ははっきりと確信している。
【娘は呪いに苦しみながらも、殺しの快楽に依存しつつある】ことを。
娘が加勢している猟兵を煩わしく感じていることは明らかだった。剣自身もこの遭遇戦において前線に出るつもりであったが、下手に刺激することで状況悪化する可能性が情勢から見通せたため全面的に諜報に役割を倒した。結果として、それは正解である。
「彼女が結果的に斬ったオブリビオンの数、二割に届かず。現実的な線としてはベストかな」
娘がもし多量のオブリビオンを斬っていたならば、"本命"の思惑通りになっていたことだろう。
娘が"剣技"を遣い斬ってきた存在の残留思念を喰って、最終的に現世に完全顕現を果たす。
"本命"の性質、最終シミュレート結果。欠けている要素は唯一つ。
【では、何がそれを喰っていたのか?】
「……周囲の詠唱銀に急激な変化を確認。――来るよ」
猟兵たちを取り巻くオブリビオンの群れが一掃されたころ、深まった闇より、ひとつの人影が顕れる。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
●断章:死合狂い
娘は、いつしか血涙を流していた。
悪党の家に生まれ、搾取と蹂躙によって得た富を貪り、それを知ってなお甘受し続けていた。"父上"が家族を皆殺しにしていった時も、恐れよりも好奇心が、そして何より――快楽を得ていたのだ。
命が壊れていく、命が死んでいく、命を奪う、命を蹂躙する――紛れもなくそれは自分にとって愉悦であった。世を生きるには許されぬ歪みを抱えていることなど百も承知している。
『壊したい』
『奪いたい』
『貪りたい』
それは血が為したものなのか、それとも自分の魂が穢れているのか、この期に及んでは最早どちらでもよいのだ。自分はそういう人間であり、救いなどない。
だから"父上"の手を取ったのだ。
そして、共に修羅の道を歩むことに決めたのだ。
●真実
「わたくしは"父上"を殺めました」
娘は、猟兵に向け血を吐くように告げる。血涙を流し、黒髪をかき乱し、その有様は夜叉という他にない。
「わたくしに悪行で得た富を与え、悪行で得た安らぎを与え、悪行で得た場所で育ててくれた家族を殺した仇を"父上"と呼び、"父上"が抱いていた業を己の意思で受け継ぎ、その業が呪いという形を為し、そしてそれは父上に返報しました」
【殺し、奪いたいという欲望を消せなかった業】と向かい合い、結果"掃除屋"となった男。男はその"稼業"を続ける中で、自らの業と詠唱銀が結びついた結果"邪剣"を見出した。その剣技は人の命を吸い続ける中で、遂にはそれそのものが呪いとなり、形を持って現界を試みるに至る。
「わたくしの"影"はわたくしたちを見ていた」
ずっと、父娘の傍で。
修羅の道行きを、ねめつくような視線で。
「"父上"もわたくしも、このような醜き業を抱え日向を歩むことは叶わぬ身」
もはや一筋の光も差さぬ闇、その彼方から。
「だから、決めたのです。この"呪い"を斬ることが"父上"と"わたくし"の使命」
足音もなく、ただ殺気そのものがゆっくりと顕れ。
「壊し、奪い、殺す――それを"魂から求めてしまう"醜きわたくしたちの使命」
鞘走りの音が響き。
「ただ一人の同胞であった"父上"が己の影に殺められる様に美しさを見たわたくしの」
不可視の斬撃が、娘の肩口を襲い。
「"人"としての、最期のけじめ」
娘はそれを造作もなく受け流し、猟兵の前に襲撃者を晒す。
その姿は、娘の父と瓜二つの姿をしていた。
第3章 ボス戦
『人斬り与吉』
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POW : 斬らせい
自身と武装を【触れた存在を切断する剣気】で覆い、視聴嗅覚での感知を不可能にする。また、[触れた存在を切断する剣気]に触れた敵からは【剣に対する防御力】を奪う。
SPD : 斬らせい
レベルm半径内に【範囲内を埋め尽くす不可視の斬撃】を放ち、命中した敵から【移動力】を奪う。範囲内が暗闇なら威力3倍。
WIZ : 斬らせい
【止まることなく放たれ続ける斬撃】が命中した対象を切断する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ベリル・モルガナイト」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
雨倉・桜木
ふーん、いいんじゃない?別に。
魂から其れを求めていても君は人だ。相手を選び、世に役立つ道を選ぶ理性があるだけ君ら親子はただ人よりはるかに『善人』だ。悔い、悩み、涙を流せるんだから尚更さ。無辜の人々が振り翳す正義や善意という排斥や殺戮や暴力をぼくは嫌と言うほど知っている。
だからね、君は此方に来ればいい。君の求めるままに力を振るえば正しく世を救う。殺し尽くした後のことはその時に考えればいいさ。
ま、とりあえずまずは其のケジメとやらをつけようか。対象がひとりなら此方の方がいいかな。檻に捕らえ、身動きを制限し、力を奪って弱らせる。トドメは娘さんに任せた方がいいだろう、其れが償いでもケジメでも、ね。
剣・光輝
「人として最期のけじめ」て言っちゃう辺り、その呪いさえなければ生きていたいってことなんじゃないかなとか思ってはみるけど。
どっちにしても、彼女を守り切ってからじゃないと話にならないからね!全力でいくよ。
指定UC起動
「人を斬りたいってのはまぁ、わからないなんて僕は言えないけど。それでも君は相手を選んでたでしょう?」
【紅桜蒼月】を振るいながら、
【LaLune-文月堂-】にて敵の動きと彼女の動きを[多重詠唱][情報収集][瞬間思考力]で把握して[暗殺][迷彩]などで対応。
今回、彼女のサポートメインで動くよ。
戦闘後、生きていきたいと言ってくれるのであれば、そのサポートを私はしたいと思う。
●対人斬り与吉:八重桜 微笑み咲くは 修羅の道
"無辜"の人々が正義を自認した時の残酷さを雨倉・桜木(花残華・f35324)はよく知っていた。
自分の足元に転がる骸を顧みることなく、生を謳歌する者たち。
"人間"とはそういうものだと、諦観にも似た結論を抱いている。
血涙を流し呪いと向かい合う眼前の女剣客、そして彼女に"邪剣"を継がせた男は多分"善人"であったのだ。そうであったが故に己の業、己の穢れ、己の歪みを見過ごすことは出来ず、自ら修羅道へと堕ち、始末をしようと足掻いた。その果てがこの地獄。
だから、雨倉は彼女に対し微笑みと共に言葉を投げた。
「ふーん、いいんじゃない?別に」
少なくとも雨倉にとって、彼女は"善くあろうとする人間"であった。これを良縁と云うにはあまりにも血生臭い有様だが、せめてこの"唄"の終わりくらいは、綺麗に締めても良い。そう思えたのだ。
『留まれ、冬は花すら檻に囚われ』
冬を越えれば春が来る。
雨倉は決して有情な存在ではないが、その事実だけは示そうと決めていた。
●対人斬り与吉:陰陽、糺すべし
"継承"という概念について剣・光輝(ライトニングソード・f16737)は思うところがあった。陰陽師一族の元に生まれ、様々な実験と因果の結果今の自分が形作られていることについて、今のところ剣は肯定的に捉えている。
もしも自分が眼前の女剣客のように世俗に拒まれるような"歪み"を抱えていたならどうなっていただろうか。
世俗に刃を向けるか、それとも同じように日陰を歩むか。結論付けることは出来ないけれど。
ただ【生きたい】とは思ってしまうだろう。
どれだけ昏い炎を内側に宿していても、どれだけ醜い歪みを抱えていても、そう思ってしまうことは止められない。
彼女が口にした"人としての最期のけじめ"という言葉は人間にしか吐くことは出来ない。
そうであるならば――【生きたい】はずだ。
人間の心は、魂はそのように出来ている。
眼前の女剣客は、すべてを抱え"陰"へと沈もうとしている。
"陽"に己の歪みを、呪いを染み出させぬ為に。
ならば、剣に出来ることはある。
彼女の"陽"を、この呪われた闇より救い出す。
「――全力でいくよ」
指を鳴らし、高速戦闘モードへと移行する。
予想負荷の算出は放棄した――ただ一つの目標のために、剣は全力稼働を開始する。
●対人斬り与吉:卑剣
雨倉の仕掛けたユーベルコードによる拘束は、ある程度の効果は発揮したものの呆気なく"斬人の呪い"による一刀で砕かれることとなる。だが、雨倉は悠然とした振る舞いを崩さない。
「うん、やはり君は完全な顕現を果たせていないね――"彼女"が十分に斬れなかったから」
"呪い"が顕現のための餌として招いたオブリビオンは、猟兵がほとんど片付けている。
そのためか"呪い"が纏う剣気は不安定であり、切れ味も鈍っているように見えた。
「――何故、わたくしを喰らわぬのですか。その者たちは関係ないはず!」
雨倉に意識を向けた様子の"呪い"に何の躊躇いもなく斬撃を加える娘。
その剣に纏う"影≒陰"は薄らぎ、先程までの魔性を宿した剣技はなかった。
「……僕たちが支援する。今の君じゃ、独りでこの"呪い"は斬れないよ」
剣はこの戦闘空間に起きている環境変化を把握していた。娘の剣技、その根幹であった"呪い"が不完全とはいえ娘の影から離れ顕現を果たしたのだ。必然、その実力は格段に落ちることとなる。それでも十二分に剣術家としては強いのだが、如何せん相手が悪すぎる。
「それに。どうやら、彼は別に君でなくとも構わないようだよ」
雨倉はこの"呪い"の本質を見抜いていた。
【彼女は依代として使いやすい存在であっただけで、根源的な因果は結ばれていない】ことを。
"ナンバード"の本質は"喰らい、生き延びる"ことである。喰えるのならばより大きな、強いエネルギーを喰らい己を維持しようと求める。
現在この場に居るのは、自分が依代として魔性を与えていた道半ばの剣術家と、実戦経験豊富な猟兵たち。
「まあ、気を落とさなくていい。この手の化生など、だいたいそんなものさ」
"呪い"が放つ不可視の斬撃をすべて半歩外して捌きながら、雨木は微笑む。
●対人斬り与吉:人斬りのさだめ
「此方に来ないか」
雨木は、"呪い"の相手をしながら事も無げに言葉を投げた。
「君の求めるままに力を振るえば正しく世を救う。
殺し尽くした後のことはその時に考えればいいさ」
剣は、その言葉に残酷な響きを感じた。言われる側からすれば、そこに至るまでの道が如何に遠いかを思い知るだけだろうと。
娘の反応によっては、介入の必要があるかもしれない。
「……お二人がわたくしよりも強いことは重々承知」
"呪い"に対し、自身の状態を認識したのか引き気味に立ち回りつつ、娘は雨木の言に応える。
「そして、お二人がわたくしを救おうとしてくださっていることも」
娘はなお"呪い"に対して向き合い続けている。"呪い"が不完全に顕現していることが幸いし、なんとか娘は致命的一撃を受けてはいないものの、押されているのは明確であった。だが――その目には、光が宿りつつある。
「ですが、わたくしは"人斬り"でございます――"斬った"なら、"斬られる"のがさだめ」
己の歪みを、穢れを、罪を、業を見せつけられ、遂にはその苦しみを理解してくれた同胞すらも己が抱える呪いで殺めようとも。
彼女は、狂いきれなかったのだ。
「人を斬りたいってのはまぁ、わからないなんて僕は言えないけど。それでも君は相手を選んでたでしょう?」
剣は"呪い"から娘を引き離すよう、常に戦況に気を配りながら立ち回る。
口を出すことは終わるまでは止めておくつもりであったが、その痛ましい覚悟に反射的に言葉が出た。
「君はもう少し、運命に恨み言を吐いてもいいと思うんだ」
相対する"呪い"の存在強度が確実に下がっていることを確認し、遅滞戦術へと移行する剣。
同時に【彼女の精神状態が"呪い"に影響している】こともほぼ確証がとれた。
「生きたいかい?」
剣は、踏み込むことにした。
最終的な選択は娘が自らしなくてはならないけれど、その選択肢もあるということは告げる意味はある。
「もし生きたいなら、これが終わってから相談に乗るから」
娘が振るう剣が止まる。
そしてその隙を見逃さなかった"呪い"の必殺の袈裟斬りが襲い――
雨木と剣、二人の猟兵がそれを弾き返した。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
白幡・修理亮
『父上』は、貴殿に自分と同じ末路を辿って欲しくは無かったのではないか。
悪人正機。
みな救われるべき凡夫でござる。
壊・奪・殺を求め、
美しいと感じる性(さが)を生まれ持っていたとしても、
その力を他者のためにのみ振るう道はあるはず!
お下がりあれ!
この者は我らが倒さねばならぬ。
こやつは、貴殿の業と、その自責に付け込んで顕現した、
人の世に仇成す妖し化生の類に過ぎぬ!!
斬らせいと言うたな、人斬り?
だが斬らせぬ! そして、斬らぬ! ていうか斬れぬ!
どこに出しても恥ずかしくない、薪割り道場剣法ゆえな!?
(こちらの狙いは敵の刀の破壊!
人斬りならば、斬りかからずにはおられまい)
わざと隙を見せて斬撃を誘い、
洩矢(防御は任せた!)で受け止めて刀を奪い、叩き折る!
視聴嗅覚での感知が不可能でも届こうぞ……
鎧で止まらずば、腕の一本くれてやる!!
白幡の白刃取り、そして有情の拳、受けてみよや!!
ときに、貴殿。
名はなんと申されるのか?
人として生きるのに、名は必須でござろう。
猟兵として生きる道も、あるいはいかがかな……なんて。
秋枝・昇一郎
抹殺対象の子息なんて裏稼業からすりゃ、その場に居合わせたのなら禍根しか残さねえ対象を何で生かしたんだろうな?
見ず知らずの娘を育てるぐらいだ。情が移ったって話も無くはないのだろうが、自身の業への回答を欲したのかね……。
最後は”娘”の影に斬られる事自体もある意味本望ではあったのかも知れねえが。そっから先、自身と同じような結末を娘にも望んでいたか。
考えても仕方ねえし、見過ごせないのは確かだな。
〇戦闘・提案その他
敵のUCを見て、太刀筋ではなく詠唱銀の流れで把握し妨害UCを起動。
投擲物、手投弾、ワイヤー、手持ち武器等を駆使して動きを阻害。
「手を取った、と言ったが。出くわした時点で親父さんはあんたを切り捨てる選択を何故しなかったんだろうな……?」
「さてな。そこも含めて、全部の回答を出すにはまだ早いんじゃねえかってオレは思うだけだ」
「あんたは本当に強い。斬り甲斐のあるのはこの世界の外にも居るって話を伝えたい。そこで振るってから回答を出すのも悪くねえんじゃねえかってオレは提案するぜ。割と真面目な話だ」
●対人斬り与吉:"呪う"者
娘にこの"呪い"を継がせた父親のことについて、秋枝・昇一郎(ジャンク・リスターター・f35579)は思いを巡らせていた。
己の業が故に"裏稼業"に身を置き"死すべき者"を斬り続けた男。その返り血と怨念、そして何より斬り続けた男の"歪み"は呪いとして結実する。一線を越えてしまったことは当人も自覚があったはずだ。人外の域に到達した殺しの剣、よもや無自覚に振るったなどという言い訳は決して通りはしない。
自分の代わりに"依代"と出来る者を見つけたからなのか。
自分独りでは引き受けられぬ"呪い"でも、二人ならばと思ったのか。
もはや真意は幽世の向こうへと去った。何故彼女を男は選んだのか、この期に及んでは一切の意味を持たない。
秋枝は、手持ちの詠唱兵器のうち"遅滞"と"撹乱"の装備について再装填を開始した。
既にこの交戦自体は、完全に決着がついている。
この場に秋枝昇一郎が来た地点で、ゲームエンドなのだ。
●対人斬り与吉:悪人正機
白幡・修理亮(薪割り侍・f10806)は、娘のために泣いていた。
彼女の真実、血を吐くように語られた告解。彼女は修羅道に落ちてなお、その道を歩き続けてなお、己を修羅と化すことが出来なかった。自身の穢れと歪みを以て、それを糧にする"呪い"と共に地獄に落ちる。戦なき平穏の時代であるこの世界でそのような覚悟に至るまでの痛みを思い、ただ泣いていた。
『……修理亮』
白幡は『洩矢』の呼びかけに、涙を拭い応える。
「応」
納刀し、二度、その両拳に力を籠める。
『お主が為したいと思うようにするがいい。護りは気にするな』
へらり、といつもの笑みを浮かべる。
人懐っこい、いつもの白幡の笑み。
「いつもいつも、世話をかけるのう。洩矢」
鼻で笑うような空気。
洩矢は、白幡を真の姿で包み込む。
『毎度の事よ、今更じゃな。
それに――あの娘を地獄に堕とすなど、白幡武者の名折れ』
嫌味や小言はあれどこの『洩矢』、白幡の覚悟には一度たりとも否を告げたことはない。
白幡は呪われし女剣客を救うため、無手にて歩み出る。
「お下がりあれ!この者は我らが倒さねばならぬ。
こやつは、貴殿の業と、その自責に付け込んで顕現した、人の世に仇成す妖し化生の類に過ぎぬ!」
●対人斬り与吉:有情以て無刀取りを為す
秋枝の詠唱兵器、その残弾は再装填された。詠唱銀の取り扱いについては、この場の誰よりも熟知している。眼前の"呪い"が何を媒体として構成されているかも当然ながら同様であり、つまりは、この状況――秋枝にとっては完全な狩り場である。
『そぉらっ、弾けて打ち消せ!その"呪い"ごとなぁ!』
【呪いそのものがオブリビオンとして形を成したユーベルコード】なのだ。
娘にけしかけた復讐者の残留思念も、顕現に使った器も、詠唱銀が根源なのだ。
撹乱や妨害の為に拵えた詠唱グレネードは、ただの足止めどころか明確な殺傷能力を発揮する。完全顕現を成し得ていたならばまだ話は変わったろうが、娘を通して残留思念から回収しようとした詠唱銀はほとんどが猟兵の手により霧散している。そのような不完全な顕現では、このグレネードに対して存在を維持することすら難しいだろう。狙い通り、眼前の"呪い"は致命的な綻びをみせ、その無形の構えは崩れている。
「サムライの兄さん!今ならソイツ、まともに剣も振れないはずだ!」
"ナンバード"の習性である能力者喰らいと生存本能、それはより強い獲物である猟兵に向けられている。
その上で、秋枝の決定的な対詠唱銀兵器による撹乱は、斬人の刃を止めるには十分であった。
『好機ぞ、修理亮ッ!』
腕の一本も覚悟していたが、結果的には無傷にて間合いへと踏み込む白幡。
普段なら安堵の言葉一つくらい漏れるものであるが、その気迫と意思は鬼神の如く。
「人斬りよ――白幡が作法、無刀取りッ!受けてみよや!!」
それは仏の如く柔らかで、"仁"の徳を示す合掌。
人斬りの刀、その刀身を確かに覆い。
「ケェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェッ!」
白幡渾身の捻りを以て、圧し折られた。
●最終断章:ある狂人の書付
"武術"と"魔術"には共通点がある。
その"出力"は異なれど、決められた『所作』を正しく執り行うことで期待される『出力』を行う。
魔術においてそれは時に魔法陣であったり、詠唱であったり様々だ。
武術においてそれは時に型として、呼吸として示される。
また、出力のために決められた術具を用いることも多い。
魔術でいえば枝、貴金属、タロットカード、トランプなど――これを読む貴方も、知らずに手にしているかもしれない。
武術は術者の五体そのものは勿論、剣、刀、棍、その他様々な武器――これは分かりやすく存在しているとは思う。
ひとつの仮定を提示する。
【あくまで一つの武術でしかなかったものに、魔術的な触媒が混入することで魔術となることはあり得るか?】
武術――勿論、剣術も含めて――はあくまでただの技術体系であり、それそのものに善悪は存在しない。
ましてや"それそのものに意思が、魂が、肉体が宿るなどということはあり得ない"――
武術はごく一部の例外を除き、かならず相手を傷つけ、時と場合によっては死に至らせしめる。
【武術という術式の出力により血を、人命を奪うことにより魔術的な意味が後付けされることはあり得るか?】
●対"斬人最終術式"人斬り与吉:展開せし殺意の領域
白幡が圧し折った刀身から、夕闇よりも深いものが噴き出していく。
それは周囲に薄く広がり、大通りへの唯一の道をも塞ぐ。
その"黒"は世界そのものを染めていき、いつしか一色の空間を作り上げた。
「なるほどねえ。こいつはキツいことになってきたな」
唖然とした顔で惨状を眺めていた娘は、遂に自身の愛刀を取り落す。
秋枝はそれを拾い上げ、娘にそっと握らせた。
「あんたは強い。本当に強いよ」
顔面蒼白、完全に心が折れた様相の娘を励ますように秋枝は続ける。
「斬り甲斐のあるのはこの世界の外にも居るって話を伝えたい。
そこで振るってから回答を出すのも悪くねえんじゃねえかってオレは提案するぜ。割と真面目な話だ」
溶け出した闇より振るわれる全方位からの不可視の斬撃を、残弾僅かなグレネードで引受けつつ。
秋枝はおどけてみせた。
「まあ、まずはここから生き延びられるかって話か。はは」
●対"斬人最終術式"人斬り与吉:仁剣、折れることなし
白幡は再び抜刀し、闇より一斉に振るわれる確殺の意籠もりし刃を力ずくでねじ伏せてゆく。
娘は完全に心が砕けたのか、もう自分の身を護れるかは怪しい。
幸いにしてこの"闇"は猟兵に的を絞っているため、自分たちが斃れぬ限りは娘に刃が向くことはないだろう。
『さて、修理亮。この死地、どう凌ぐ』
白幡は何の躊躇もなく、大音声にて応える。
「生き残る!娘も、我らも、誰一人として屍で還すつもり無しッ!」
『結構!白幡武者の心意気、見せてやるとしよう!』
白幡は次々と振るわれる闇からの一刀を捌き、受け、切り返し、娘と秋枝を護り、そしてまた捌く。
どこまで凌げば良いのか、勝算はあるのか、そんなことはもう頭にはない。
生き残ること。
娘をこの闇より救うこと。
決して退かぬこと。
ただそれだけで、際限なく襲いかかる斬撃を尽く退け、護り続けていた。
「もう、もうお退き下さいまし!
どうしてわたくしの如き外道を、そこまで救おうとしてくださるのですか!」
闇からの刃を凌ぎながらも、背にいる娘に微笑みかける。
「ときに、貴殿。名はなんと申されるのか?
人として生きるのに、名は必須でござろう」
あまりに場違いな言葉に、言葉を失う娘。
まるで不死身かのように、傷つきながらもその人懐っこい笑みで白幡は続ける。
「その道に名など要らぬと捨て申したか。いやいや、これまでは不要でもこれからは違う。
これが終われば、貴殿は自由。世渡りに名は必要ですぞ」
娘は、初めて大声でただ泣いた。
彼ら猟兵が、本気で自分の明日を想っている事実に、ただただ泣いた。
大成功
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ジョン・シゲルソン
真実は白日の下に晒された。
探偵としての領分はそこまでだ。
暴いた後は然るべき者へと仕事が引き継がれる。
この場合は、こちら側の人間ーー能力者、或いは猟兵……ああ、僕は能力者であり、猟兵でもあった。
舞台装置も場面に応じて転換されなければならない、そうでなければ物語は終わりへと辿り着かない。
それではこれより果たさせて貰うとしようか、猟兵の領分を。
奪われるのが移動力であるのであれば、移動をせずに済む仕事をすれば良いだけの話だ。
ブラックボックスを介し、ライトニングフォーミュラを使う。
不可視なのは斬撃だけだ。
ホーミングレーザーであれば、問題なく穿つ事が可能だろう。
●対"斬人最終術式"人斬り与吉:真実への収束
その闇を払うかのように、ジョン・シゲルソン(明かす者・f36105)はステッキで一度地面を突いた。
呪われし剣を引き受けた娘、その真実はすべて開かれた。
"探偵"という舞台装置であるジョンの役割は終わった。後は、この物語を収束させるのみ。
泣き崩れ、最早まともに構えることも出来ない娘に、ジョンは告げる。
「総ての真実は明かされた。探偵としての僕の領分は、ここまでだ」
見上げる娘。その瞳には、ただ不安だけが浮かぶ。
「後は、この真実を未来へと引き継ぐだけ」
気づけば、この殺意の闇に明かりが灯っている。
それが、眼前のジョンが発するものであることに娘は気づく。
「では、これより"猟兵"としての領分を果たすとしよう」
サーコートが舞うほどの強烈な電光を纏うジョン。
事件への舞台装置である彼の、幕引きが始まろうとしていた。
●終撃:デウス・エクス・マキナ
斬人の闇は、すぐにジョンの光を察知しそれを絶たんと無数の斬撃を放つ。
だが、それは須くジョンの電光により灰燼と化した。
「君は」
未だ膝をついたままの娘に、神気すら感じるほどの荘厳さを伴いジョンは告げる。
「己自身の"真実"と向き合うことが出来なかった。それには様々な理由がある。
それについて糺すこともしない、その資格も義理もない」
ジョンの纏う電圧はさらに上がり、闇を切り裂かんばかりだ。
娘はジョンの言葉に耳を傾けている。
「僕は"探偵"であり"猟兵"だ。"真実"が葬られることを決して許しはしない」
目を伏せる娘。ジョンの言葉が突き刺さる。
「そして、"真実"を葬ろうとする存在も」
気づけば、ジョンの纏う電光は闇を突き、雷とも思えるほどまで高まっている。
「さあ、この事件の加害者にして被害者よ。
真実を未来へと残すために、もう一度その剣を執るといい」
ジョンは高らかに謳うと、その両手を大きく広げる。
纏っていた電光は三本の槍となって収束し、闇へと突き刺さった。
●終撃:刃は鞘に
ジョンが放った神の雷は斬人の闇を灼いていく。
業と因果が織りなす陰惨な舞台は、真実を明かす神の光により終わりを迎えようとしていた。
娘は、取り落した愛刀を手にする。
その刀は、父と呼んだ人斬りが決して稼業には使わなかった一振り。
自らの意思で血を吸わせた、自分自身の罪そのもの。
曇り一つない刀身に、娘の顔が映る。
疲れ果て、精気の抜け落ちた顔。
「此処から、始めるのですね」
眼前には、燃え尽きていく舞台を眺め、呆然としている"父上"が居た。
娘の方を見やり、穏やかに微笑んでいる。
「"父上"、これで終わりです。わたくしたちはもう、抱え込まなくてもよいのですよ」
"父上"は、向き直りその場に座した。
その有様は凛としたもので、彼が人斬りであることなど想像もつかぬであろうほどに。
「さようなら。地獄で、また」
娘は、"父上"を一刀に斬り伏せた。
その太刀筋は、斬られた者が苦痛を感じる余地もない、鮮やかなものであったという。
●分岐:そして、流離いの旅へと
すべてが終わり、そこはただの路地裏へと風景を変えていた。
大通りからは日常の喧騒が漏れ聞こえてくる。
業と因果の地獄舞台が広がっていたことなど、まるで嘘のようだ。
「お手数、おかけいたしました」
娘は、猟兵たちに深々と頭を下げた。
「わたくしはもう、この街には――いえ、この世界には身を置けぬ身」
猟兵の素性――界渡りの戦士であることを、娘は察したようだ。
猟兵たちの技量、異能、それに自分自身が起こした事件。
必然、そういう結論となるであろう。
「別れのための支度を終え次第、皆様の元へと合流致します」
娘は、明らかに慣れていない風に笑顔を作り、もう一度深々と頭を下げた。
「この身に染み着いた業、罪を贖えるとは思っておりません。
ただ、贖い続けようとすることくらいは、やってみるつもりです」
【支度が済み次第、彼女は猟兵の道を歩むことに決めたようだ。
動向をもし気にかけるならば、手紙を受け取れるようにしても良いだろう】
大成功
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