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ネット乙

#シルバーレイン #締切済みです


●エゴサの鬼
 彼女は何処にでも現われる、ただしネット上。
 例えばアングラ含む掲示板、例えばネットQ&Aコーナー、例えばニュースに対するお気持ち表明コメント欄、公開型呟きSNS……自分が話題になったなら、がっつり混ざり込んでくる。

 ねえねえ、あたしエモいでしょ? こないだの動画見てくれたよね? どうだった、ねえねえねえねえ――!

 なんて風に自己アピールがっつり、承認してしていいね頂戴と直接的に媚びてくる。
 エゴサの鬼なバーチャル実況者、その名も『アリス』
 なお、推してくれるリスナーの数は増えない。何故ならその多くはエナジーを奪われてぽっくり逝っちゃうからだ。

●銀誓館の教室っぽいグリモアベース
「動画でいいねを取れないから直接クレクレ、つまり実況者としての魅力に乏しいってコトだよね」
 と、淡々とバッサリいったのは、眠たげな瞳の星崎・千鳥(元電波系運命予報士・f35514)である。
「確かにアリスの動画を見たけどさ、真面目にゲームに取り組んでないし、てか、ゲーム楽しむよりあたしを見てみてだから、お察しだよね」
 ゲーム実況やってるからか、ヲタクの血が騒ぐのか、言いたいコトはゴマンとあるが黙る。久しぶりとは言え、運命予報とよく似た予知のやり方は心得ているつもりだ。
 千鳥は皆を呼び寄せると、タブレットで『アリス』動画を再生して見せる。
 童話からでてきたような水色ワンピースにフリルエプロン、愛らしいヴァーチャル少女がアクションゲームの実況をしている。
 が、
 途中からゲームはおざなりになり、視聴者への媚びトークが始まった。まぁコメント返しはマメだから好きな人は好きだろう。
 だが、彼女に圧倒的に欠けているのは、視聴者を持ち上げることをしないで自分のことばっか喋る。
「見た目が可愛いけど、次から指名が入んないホストとかキャバクラおねーさんって感じなんだよね」
 好きなことをして共有するタイプの実況者は、承認より魅せるコトで満足するが、彼女はそのタイプではない。とにかく承認シテシテちゃん。

「アリスはエゴサの鬼だから、ネット上で話してたら本人が飛んでくるよ。で、そこで知り合った人達をターゲットにして、後日、本体でエナジー啜るってわけ」
 なのでまずはネットのたまり場で会話をしてアリスを吊り出して欲しい。
「好きなアバターで入れるチャットスペースを用意したからさ、そこで会話してよ」
 種族バーチャルキャラクターならそのまんまOK
 他の人もイメージ通りのキャラクターが組めるぞ。
 頃合いを見て『アリス』の話題を出すのだ。そうしたら『アリス』が乱入してくる。
 あとはもう、褒めてもいい、ディスってもいい、好きなようにアリスをいじろう。

「猟兵以外のアカウントが来てもボクがシャットアウトするから、安心してチャットに集中していーよ。じゃ、よろしく」
 一般人が巻き込まれる心配もなし、リリス化オブリビオンのアリスをここでしっかりと狩りとってしまおう!


一縷野望
あんまりシルバーレインっぽくないかもしれない。正直すまんかった
裏を返すとどなたでもカモンでございます

また2章目だけ趣がかなり違うので(いつものトラウマ心情系テイスト)2章目だけの参加も歓迎です
逆に1と3章だけとか、1章だけとかお好きにどうぞ

1章目の採用は3名~6名で考えてます
オーバーロードありなしはご自由にどうぞ、採用率は変わりません
締め切りは10日の18時59分までです、それ以降に執筆に入ります

>1章目
※全員ひとつの章のリプレイとなります。他の人やアリス(敵)と絡みます

必須:ハンドルネーム(ネット上の名前)とアバターの大体の外見(なしならデフォルトの素っ気ないのになります)

インターネットのオープンたまり場のチャットスペースで会話してください
※『アリス』が動画でとりあげたネタはPLさんがお好きに捏造してください、拾います

アリスを話題に出したらホイホイやってくるので絡んであげましょう
絡み方はチヤホヤでもディスりでも普通にでもその他でも、なにやっても依頼は失敗にはならないのでお好きにどうぞ!


>2章目
「あなたの隠し事」が幻影で現われます
隠し事と己の向き合い方を延々と、ネガティブポジティブなんでもOKです
詳細は2章目冒頭のマスターコメントでお知らせします

>3章目
ボス戦
リリス化オブリビオンがやっつけられて悔しがる懐かしめテイストの予定です

>同行
お二人まで
冒頭に【チーム名】をつけてください
加えて、二人きりのリプレイを希望される場合は冒頭に『×』をお願いします

それではご参加をお待ちしております
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第1章 日常 『SNSだべり場』

POW   :    多くの友達や知らない人と積極的に話す

SPD   :    気の利いた返しやジョークで盛り上げる

WIZ   :    タイムラインを眺めながら気に入った発言に「いいね」する

👑5
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陽殿蘇・燐
動画配信者としてなってないわね?その『アリス』。
配信者たるもの、題材や視聴者に敬意を払うものよ?

ああ、ちょうど私、バーチャルキャラクターだから、アバター外見は『私』のままで。
ハンドルネームは…そうね、『クロアゲハ』としましょう。私だもの。

『アリス』の話題の時には生配信なし。視聴者の安全のためよ。
そうね、このために見たゲーム実況系動画だけれど。
コメントにつられてゲームそっちのけ。その回はアクション系で…それまではいい感じに進んでいたのに、話し出してからはミスが多いわね。
まあ、そのミスが多いところも気にせず、自分語りで塗りつぶすのはさすがだけれど(誉めてない)


待鳥・鎬
デジタル機器の扱いにも大分慣れたし、きっと大丈夫!
キーを打つのが少々遅いのは御愛嬌ってことで

ハンドルネームって皆どうやって考えてるんだろ
思い付かないから今回は適当に……AiUeo、っと
外見も黒髪ボブヘアの女の子とかにしておこう
心にも無い事は別人になりきった方が言い易いからね!

で、これでもかってくらいべた褒め
動画コメントで見掛けた言葉も参考に
アリスちゃんって建築も上手いよね
今回のスキン可愛くて好き!
敵mob出た時のリアクション可愛かった
それまだ見てないかも!誰かタイトル教えて

本人が来たらもう全力でよいしょだ
え、本人!?
可愛い~
また生放送して欲しいな!

……いや、これ、ちょっと楽しくなってきちゃうな


ウルスラ・ロザーノ
ゴーストがネットと絡む案件、いかにも戦いの最前線って感じやね
ボクらも時代の変化にきっちり対応してかんとな

ハンドルネームは「小熊」
アバター外見は特に変えず、……ちょっと背ぇ伸ばそか、あと体型もいい感じに調整な?
服装はスポーツウェアにしとこ

ボクは主にスポーツ系実況を見とるよ、やっぱ主にサッカー!
で、今注目してる実況者はアリスちゃんやな
声がとっても可愛らしーし、トークも面白い!

なはは、アリスちゃんの方から絡んできてくれるなんて!
アリスちゃんの大ファンなんや♪ お願いだから名前を呼んでくれへんかな~?

ルールは分かっとらんし選手名間違えるし、ホンマは完全赤点やで
とにかく逆に、徹底的にチヤホヤ持ち上げる!


和田町・いずみ
電脳魔術士×バトルゲーマーです。
大人しい18歳の女性で、何かに熱中すると猪突猛進します。
天然クールで少々ポンコツです。
基本的口調は一人称は私、相手に対しては~さん付け、です、ます、でしょう、でしょうか?と穏やかで丁寧な話し方。
電脳魔術でハッキングするのが得意。
酔うとふらついきます。
趣味は鉄道が好きな乗り鉄です。

アドリブ・連携は大歓迎。
 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


ティオレンシア・シーディア
あー…またなんというか、典型的な「承認欲求こじらしたSNS廃」ムーブねぇ。
秀でたところのない手合いほどどーでもいい些細なところで反応を欲しがるっていうけれど。
オブリビオンじゃなきゃただのよくいるイタい子で済んでたんだけどねぇ…

ハンドルネーム:黒曜石
アバターイメージ:ロリータ服のちびっこ
あたしこの声だから、こういうアバターのほうが違和感持たれないのよねぇ。アバターに合わせて小中学生くらいの○演技で応対しとこうかしらぁ?

ん-、と。「主役はあくまでコンテンツ」とか「ナレーターやレポーターがドヤ顔して前面出てきてどーすんだ」とか、そーゆー方向の反応しとこうかしらねぇ。
一応ディスり、になるのかしらぁ?


紅林・すぐり
アドリブアレンジ歓迎

HN:はやし
アバター:デフォルト

いんたーねっと、ちゃっと……
故郷じゃ触れたこともないような物事がたくさんで、少々不安でもありますが楽しみでもあります
とりあえずこの、あばたーという人形?を動かしてアリスさんのお話をすればいいんですよね

事前にゲーム実況とやらも拝見させていただきました
ゲームというのは面白いですね
格好いい登場人物が格好よく活躍するのは、どんな創作でも楽しいと思います

たまたま見たのはアリスさん、という方のでした
可愛らしいお嬢さんと重厚なゲーム画面のギャップがよかったですね
ただ感動的なシーンでもお喋りを続けているのはちょっと……
決めセリフとお喋りが被るのは、こういうものの初心者でもよくないのは分かります

せっかくなのですから、ゲームをやらずに雑談だけの動画を作ってみてはいかがですか?
それなら可愛らしいアリスさんに皆が集中できますし
……こういう風に指図されるのは嫌いそうですね、彼女


神崎・零央
ハンドルネーム:Leo
アバター:ライオンの着ぐるみ少年

動画:ネコちゃんズぱらだいす(withアリス)

子猫たちが戯れている動画、なんだけど……
途中でアリスが入ってきて子猫と一緒に遊びだすんだ。

「えいっ」
ああっ、ヒゲを引っ張っちゃダメだよ!
「うふふ、そーれ!」
わっ、ネコが身軽だからって放り投げない!
「ほーら、ミルクの時間でちゅよ~」
それ、人間用の牛乳じゃない?
お腹壊しちゃうよーっ!

しまいには嫌がる子猫を押さえつけてニッコリ。
「私とネコちゃんとどっちが可愛い~?」
いいから子猫を、は・な・せーっ!!

動物好きの自分には許せない所業の数々。
もー、あったま来たぞーっ!
出てこい、アリス!ぶっとばしてやるっ!!



●電脳時空で待ち合わせ
「あぁ、はやく来すぎてしまったでしょうか……?」
 黒色髪のデフォルト男子のアバターで現われた紅林・すぐり(しんくの月・f34952)は、誰も来ていない空間で瞳をぱちくり。
 毛足の長い赤絨毯、ロココ調? の豪奢な長椅子と宝石で飾られた硝子のテーブル。座って良いのだろうかとおろおろしていたら、すぐ側に身を深く沈められそうな1人掛けソファが現われる。
「わわ!」
 それだけで画面外のすぐりは大慌てである。
 いんたーねっと、ちゃっと……故郷じゃ触れたこともないような物事がたくさんで不安いっぱい。でもそれを覆して余りある楽しみもある。
「ふかふかぁ……じゃあ、ない、です?」
 アバターが腰掛けても己は座布団敷きでこたつでアクセスのまんま。座っているけど据わりが悪い感覚できょろきょろと周囲を見回していたら、

 ♪りんごーん! “クロアゲハ”さん と “黒曜石”さん が ログインしました!

 そんな文字がてれてれと虚空に踊り、誰もいなかったアンティーク調長椅子の左右が突如和と洋の娘で華やかになる。
「ふう」
 和装の裾を揃えてしゃなりと腰掛けた陽殿蘇・燐(f33567)は虚空に手を翳す。するとリアルなティセットが現われた。
「給仕はいないのかしら?」
「そうねぇ、あたしが淹れてもいいんだけど」
 むしろ本職だしとの内心の呟き。漆黒のレースをふんだんにあしらったゴスロリ少女、洋のティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)はおっとりと小鳥めいた所作で首を傾けた。
「そういう役回りじゃなさそうね」
 燐こと“クロアゲハ”は軽く鼻を鳴らすと指をさげる。
 すとん。
 リアルならガチャンと割れる勢いで落とされたティセットだが、傷一つなく注ぎ口から湯気を漏らしテーブルに誂えてある。
「すごいですね、割れないし、とってもあたたかそうですし」
 現われたばかりの黒髪ボブヘアの少女が目をぱちくりさせた。
 リアルの待鳥・鎬(f25865)は、画面外であたふたと電子機器に向かっているのだが。現代的な衣装を着こなすアバターはどこかモガっぽい。しかし茶葉と茶匙に視線を向けるのはやっぱり鎬である。
「本当にすごいですよねえ」
 こくこくと頷くすぐりの頭上には“はやし”のネームが光る。
「はい、びっくりです。このようなことは私の世界にはないので」
「奇遇ですね、ぼくもです」
 はいてくいんたーねっと に無縁のふたりだが、瞳は好奇心で輝いている。
「あなたがメイドさんかしら? お茶の用意をしてくださる? 名前は……“AiUeo”様???」
「なんや、タイピングミスか?」
 しゅんっ!
 赤のラインが鮮やかなスポーツウェアがよく似合う褐色少女が鎬の隣に像を結んだ。ウルスラ・ロザーノ(鈴振り燕・f35438)は頭上に明滅する名前を指さして“AiUeo”を見た。
「今やったら変更できんで? AiUeoさん」
「変えた方がいいでしょうか? 割とこれでもいいかなぁ、なんて思うんですが」
 次々に現われ賑やかになる場に“はやし”の口から感嘆が漏れた。さっきまでのひとりぼっちが嘘みたいだ。
「あなたは“小熊”様でよろしいの?」
「せやで。よろしくな“クロアゲハ”さんに“黒曜石”さん。あと“はやし”さんか」
「よろしくお願いしますねぇ。ふふふ小熊ちゃんだなんて可愛いですねぇ」
 で、皆の視線が“AiUeo”さんに向くわけだ。
“AiUeo”は、物珍しげに茶匙をつまみあげたあと、さくっと茶葉をティポットに入れてカップに注ぎ分けていた。緑茶と同じぐらい入れて蒸らしたけど、これでいいんだろうか。
「は、はい! だいじょぶですゆ」
 変換ミスってて、だいじょばない。
「音声入力にした方が楽やで?」
「どっやって」
 やいやいと“小熊”が“AiUeo”にレクチャーするのを横目に、普段と全く変わらぬ姿の“クロアゲハ”こと燐は、真っ直ぐな黒髪を耳にかけ、ティカップに口につける。
 薄い。紅茶は3分ほど蒸らすのに対し、緑茶は1分ちょい、まぁそうなる。
(「……と、感じるのは、私がバーチャルキャラだからなのかしら?」)
 感覚的にあれこれ簡単に操作できる自分に比べて、中の人がいる皆は手間が大変そうだ。
「あらぁ、もう2人いらっしゃったみたいねぇ」
 “黒曜石”の真横に、ほぼ素のアバターの黒髪眼鏡女子が現われた。彼女は和田町・いずみ(人間の電脳魔術士・f07456)だ。ハンドルネームも“いずみ”
「ネコお! がおー」
 元気いっぱい、ふっかりライオンの着ぐるみの少年は神崎・零央(百獣王・f35441)だ。“Leo”のハンドルの少年が両手を広げると、にゃんにゃかにゃんにゃかと3Dポリゴン細やかなにゃんこたちが現われた!
「すごい、そんなことも出来るんですね」
「ふふーん! 動画配信だっておまかせだよ!」
 しゃがんだ“はやし”がそっとネコを撫でる、うん、その優しい扱いなら合格! と“Leo”は馴染みを入れるチャトラの喉を擽った。
「そうだ、打ち合わせはこちらでできますよ」
 いずみが手を翳すとレクチャー中の2人に青色のフィルターがかかる。そして“黒曜石”と“クロアゲハ”“Leo”に“はやし”は、一面黒の古き良きダンジョン画面のような空間に招かれた。
「余り長居するとアリスに気取られますかね?」
「手短に済ますわ、いずみ様はネットの事に秀でてらっしゃるご様子」
「はい、得意ですよ」
 えへんと胸を反らすアバター。だが名前がまんまだったりそこはかとなくポンコツである。
“クロアゲハ”は虚空を視線でなぞり続ける。
「アリスが『生配信』をやろうとしてもブロックするようにはしておきましたけれど、念のための確認と会話中の統制をお任せできるかしら?」
 丁寧だが不遜なのは、リンが元々ラスボス悪女だからであろう。いずみは「はい、わかりました」としゅたっと敬礼。
「本当ねぇ、典型的な『承認欲求こじらしたSNS廃』ムーブよねぇ。突然生配信って暴走は大いにありえるわねぇ」
 ハイパーロリボイスで喋り方はおねーさん、アバターもゴスロリ(幼女としてもロリ)なティオレンシア、ギャップ萌えという奴を誘う。
「配信しちゃダメなのか?」
 唇を尖らせる“Leo”に“クロアゲハ”はふっと口元を崩す。
「視聴者が巻き込むわけにはいかないでしょう?」
 ラスボス悪女優しい。
「たしかに、わかった!」
 ライオンっ子も聞き分け良し。
「アリスが来たら私はネット制御に専任しますんで。みなさんは好き勝手やっちゃってくださっていいですよ」
 サポートはお任せといずみがどぉんと請け負う。
「わ、お待たせしました。小熊さんに色々教えてもらいましたー」
 真っ黒画面に驚いて顔を覆う“AiUeo”と“小熊”も秘密チャットに現われた。
「しかし、ゴーストがネットと絡む案件、いかにも戦いの最前線って感じやね」
 懐かしむような“小熊”ことウルスラに、
「もしかして銀誓館のご出身の方ですか?」
 と、鎬。
「うん。卒業後はスペインで能力者の教官してたけど、また銀誓館へ復帰や。ボクらも時代の変化にきっちり対応してかんとな」
 壁に見えてなにもない空間を手のひらで叩きウルスラは大きく頷いた。
「そうですね。新しいことを覚えるのは楽しいです。あ、どうしよう、お話が直接だと、私のままになりそうです」
「そこは演技力でカバー。あたしはこの見目でぶっきらぼう系女子の予定」
 ティオレンシアさん、脳みそ溶かすロリボイスでそれはズルイよ。

●トークなう
小熊:みんな、どんな実況みるの? ボクはスポーツ系実況を見とるよ、サッカーが最高や!

はやし:ぼくはゲーム実況を見ましたよ、まだ見始めたばかりですが
    格好いい登場人物が格好よく活躍するのは、どんな創作でも楽しいですね

AiUeo :え、私もゲーム実況に嵌まってるよ!
    街作成してるアレ、実況の人によってリアクション違っておもしろくって

黒曜石:ゲームはそれ自体が面白いから、誰がやっても盛り上がるね

クロアゲハ:そうね。売りを自覚してる配信者は視聴者を楽しませてくれるわ
      私もそうありたいものですわ

いずみ:クロアゲハさんの配信見ました、まさかこうやって話せるなんて!

AiUeo:きゃ☆ネコちゃんまた増えてない? やぁん可愛い~☆

“AiUeo”はソファを降りると足下で寝そべるネコのおなかをもふっとしようとして、避けられた。

AiUeo:><

Leo:とつぜんおなかはむずかしいよ。目元をやさしくスリスリッてしたげてよ

AiUeo:ゴロゴロ言ってる

小熊:動物はずるいなあ(1匹黒猫を膝にのせて)
   それでもって、みんなゲーム派かいな、ボク肩身狭いなぁ
   でもサッカーの実況もおもろいで?
   特にアリスちゃんっていう子がトークが面白い!

 ルールは分かっとらんし選手名間違えるし、ホンマは完全赤点やで――ウルスラさんの本音ですが、今は胸にしまっとく。

はやし:! アリスさんって、童話のアリスみたいな愛らしいお嬢さんでしょうか?
    ぼくも知ってますよ。たまたま見たのがアリスさんのだったんですが
    ゴシックホラーの画面とリリカルなアリスさんのミスマッチがたまりません

黒曜石:アリスかー……(猫をリボンでじゃらしつつ)

いずみ:最近名前を聞きますね。私が見たのはゲームじゃなくて鉄道動画でしたけど

クロアゲハ:手広くやってるようね。でも広くても浅薄す……

AiUeo :そう! アリスちゃんの今回のスキン可愛くて好き!

 リンゴーン、と、新たな者の入室を告げる鐘の音が部屋に響き渡った。
 いずみは皆に目配せし眼鏡をきゅいっと持ち上げる。するとキャラクターが灰色の『離席中』になった。
 と、同時に、皆の眼前に文字列が並ぶ――『アリスさん が ログインしました!』


●アリスさんがログインしました!
 中央の硝子テーブルがかしゃんと砕けたかと思うと、王の玉座と見まがう豪勢な椅子が現われた。そこにしゅぅんっとおみ足揃えて降り立ったのは、此度のオブリビオン『アリス』である。
 ゆるく二つに結わえた金髪をふわっと靡かせて、玉座の前でスカートを持ち上げてお辞儀。

アリス:みんなぁ、アリスちゃんの話したりしちゃってたでしょお?

AiUeo :え、本人!? 可愛い~!
    今丁度『キャンディドロップのキラキラアバター』の話しをしてて

アリス:これかしら?

 くるりん☆と一回転、じゃらじゃらと極彩色のキャンディをちりばめたポップンドレスに早変わり。

AiUeo :きゃああ! アリスちゃんって建築も上手いよね?
    敵mob出た時のリアクション可愛かった。わきゃっ☆てやつ

ハヤシ:ああ、これは確かにkawaiiですね、え、この変換なんでしょう

小熊:マジか、マジや。あとkawaiiは万国共通語やで

 なるほど、と画面に頷くすぐり君である。

小熊:いやホンマ、声がとっても可愛らしーって思ってたけど、間近やと破壊力マシマシやな

アリス:ふっふっふー、可愛いのは声だけかしら?

小熊:なはは、かなわんな、全部や。アリスちゃんの方から絡んできてくれるなんて!
   アリスちゃんの大ファンなんや♪ お願いだから名前を呼んでくれへんかな~?

アリス:小熊、あたしのサポート三号の権利をあげるわよ!

 ちやほやちやほや。
 しかし承認欲求お化けのアリスは、腕を組み冷ややかに見下す“クロアゲハ”とヘッドセットのリボンを解いて猫をじゃらす“黒曜石”がとおっても気になる。てか、気に入らない。

アリス:アンタ達、もしかしてアリスちゃんのこと知らないとか言っちゃう~?

 どんと踏み出した先で、びっくりした子猫が尻尾を膨らませて転がり下がる。

アリス:へぇ、良く出来てるじゃないの、ネコ。どれどれ、えい!

 首筋をつまんで持ち上げるとほっそいヒゲをつまんで引っ張ってみた。

白猫:ふしゃあぁぁあああ!

Leo:ああっ、ヒゲを引っ張っちゃダメだよ! かわいそうなことをしないで!

アリス:うふふ、そーれ!

Leo:わっ、ネコが身軽だからって放り投げない!

 らいおんもこもこ、小さな腕を前に出して白猫をキャッチすると零央は優しく抱きしめた。

Leo:ごめんよ、ごめんよ、こわかったよね……ねえ、ちゃんとごめんなさいって言ってよ!

アリス:はぁ、何言っちゃってるんですかぁ? 作り物のネコじゃあないですかぁ!

 蹴散らそうとするのを、デフォルト男子アバターとボブを揺らす少女のアバターが体を張って庇う。

AiUeo:やめてあげて

ハヤシ:幻滅させないでください

Leo:そうだそうだ、これ以上のいじわるは赦さないからな!

アリス:ふん! いじめてないわよ。わかったわ、動画配信のイロハってのをこのアリスちゃんが教えてあげる!

 逃げ遅れた子猫をぎゅむと押さえアリスは満面の笑み。

アリス:アリスちゃんとネコちゃんと、どっちが可愛い~?

Leo:いいから子猫を、は・な・せーっ!!

 はぁっと、長椅子の左右から同時に呆れの深いため息が吐き出された。

黒曜石:お里が知れたわね。まぁよくいるただのイタい子だとは思ってたけど

 ぱさり、と、黒曜石は耳元で切りそろえた髪を払うと立ち上がる。苦々しげにアリスの手を払いのけ黒猫をLeoの腕に返した。

クロアゲハ:可愛いのは自分だけ。動画配信者としてなってないわね。三流以下よ

 一方の和装美女は相変わらず腰掛けたまま。だが畏怖のオーラが場をじわじわと支配していく。

クロアゲハ:配信者たるもの、題材や視聴者に敬意を払うものよ?

アリス:し、素人がなに言っちゃってんですか?

 アリスさんビビル。

クロアゲハ:配信者だって誇示してる時点で小物の証だわ。そもそも視聴者が見てくれるからこそ私たちは存在しえるのよ

黒曜石:秀でたところのない手合いほどどーでもいい些細なところで反応を欲しがるっていうけれど、ここまで性根が腐ってるとはね

クロアゲハ:コメントにつられてゲームそっちのけ。隙あらば自分語りでゲームのプレイミスも何もかも塗りつぶす。さすがね

黒曜石:本当は自信がないんでしょ?

クロアゲハ:向いてないどころの話じゃないわ、もう止めたら?

黒曜石:そうね、主役はあくまでコンテンツ。さっきなら猫でしょ? ナレーターやレポーターがドヤ顔して前面出てきてどーすんのよ

 確かに、としたり顔で混ざるのはハヤシだ。

ハヤシ:わかります。感動的なシーンでもお喋りを続けているのはちょっと……
    決めセリフとお喋りが被るのは、こういうものの初心者でもよくないのは分かります

アリス:なによ! ゲームよりアリスちゃんがメインディッシュなのよ! どこ見てんのよ、あんた動画の見方が初心者だわ

 クロアゲハは処置なしとでも言いたげに、真っ直ぐな黒髪を左右に揺らした。

クロアゲハ:あらゆる面で、あなたって自分のこと以外へは『雑』なのよ。アクション系で……それまではいい感じに進んでいたのに、話し出してからはミスが多いし

 滅多打ち。
 アリスは子供じみた泣きべそでファンだというAiUeoと小熊、ハヤシへと振り返った。

AiUeo:私はゲームをやるアリスちゃん好きだよ? 猫ちゃんも、ゲームのブロックとかと同じ感じに思っちゃった……のかな?

小熊:そのフォローめっちゃ苦しないか?

 いずみのアバターが一瞬色づいた。なんだかアリスが泣きながら帰りそうなので、自分の要望も伝えておきたい。

いずみ:あ、あのですね! もっと電車に乗ってください。あなたの選ぶ路線、普通は遠回りだからその乗り方しないよねーっていうのがマニア心を擽ってですね……

アリス:べ、別に路線図が読めなかったわけじゃないんだからね!?

 いずみのフォローは通じなかった!
 ああそうだ、とハヤシがのんびりと手を打つ。

ハヤシ:せっかくなのですから、ゲームをやらずに雑談だけの動画を作ってみてはいかがですか?

アリス:………………

ハヤシ:それなら可愛らしいアリスさんに皆が集中できますし

アリス:あたしに指図しないで!!!! アリスちゃんがいっちばん可愛いんだからぁああ!

 ……うん、指図すると嫌がるだろうなあって、すぐりさんは判っててやったさ。

アリス:愚かな視聴者どもはアリスちゃんを崇めてればいいんだからぁあああ!

 そんなだからアリスのいいねは増えないのだ。

Leo:あたまにきてるのはこっちだー! アリス! 次にあったらぶっとばしてやるっ!!

アリス:ふんだっ! ぶっとばせるもんならぶっとばしてみなさいよ!

 身を翻し消える刹那、歯をむき出しにして嗤ったのは、人間なんぞ所詮は餌だと高をくくったオブリビオンであった。
 ああしかし、狩られるのはアリスなのだよ、残念ながらね?

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『幻影を呼ぶもの』

POW   :    気合で幻影を振り払う

SPD   :    幻影の発生源を攻撃する

WIZ   :    魔術防護で幻影に対抗する

👑7
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●邪悪の国のアリス
 ふくれっ面のアリスが姿を現したのは、ねぐらの一つである極彩色のケバケバしい『お菓子の国』だ。
 ひとしきり毒づいた後で唇が歪む。
 ぱたたたたたたた!
 手のひらの上に無数の紙切れが現われて積み上がった。綴られているのはアリスだけが理解できる術式で刻まれた、本日逢った者達の『アドレス』だ。アリスは、電子の痕跡を辿り相手の『リアル』にまで悪しき干渉を及ぼせるのだ。
「こいつらをまとめていただいちゃおっと。むかついた時はヤケ食いに限るわ」
 ひょいっと電子データのペロペロキャンディを掴んで舌を這わす。
 味はない。
 でも、リアルキャンディを食べたところでこのリリスにとっては味気ないに違いない。
 ――いつだって美味しいのは、人のエナジーだけだ。
「みーんなの秘密を暴いちゃって、全部全部アリスちゃんが味わってあ・げ・る♪」


=============
【2章目について】
 1章目に不参加の方は『リプレイ外でアリスと邂逅していた』ことになります
 この点にはプレイングで触れなくてもOKです。また2章目のリプレイにアリスは現われません

>プレイング募集期間
15日朝8:31~16日の朝8:30まで
(オーバーロードの方は受付前、締め切り後に送っていただいてもOKです)

>採用人数
オーバーロードなしの方から4名ほど
オーバーロードありの方は趣旨に反する、書きこなせない、以外は全て採用します

>概要
『あなたの隠し事』が幻影で現われます
 己と向き合ったり逃げたりな心情系です
 ネガティブポジティブそれ以外、なんでもOKです(シナリオ失敗にはならないのでご自由にどうぞ!)

 リプレイはおひとり様ずつの描写となります
 2名まででしたら同じリプレイでの描写が可能です
 その際は冒頭に【チーム名】をお願いします

>プレイングに書いて欲しいこと
『あなたの隠し事』を具体的に指定してください
 過去の出来事、関係する人物(台詞例歓迎)などなど……めいっぱいつめこんでください
 次に、あなたが『隠し事』に対してどのように向き合うか、逃げるか、をお願いします

※関係する人物が他PC様の場合は【同行参加】以外は描写しかねます

 その他で、リプレイに描写して欲しいことがあればなんでもどうぞ

>冒頭記号
×:アドリブなし、プレイングに忠実に
(文字数は他より少なめになります、ご了承ください)

抉:トラウマ抉り歓迎

(冒頭記号なしの場合は「トラウマ抉りは控えめ、アドリブはPC様との齟齬がないよう気をつけつつできそうなら入れる」となります←いつもの感じです)

>過去作、雰囲気参考にどうぞ
あなたの「恐るべき敵」を描写します。のりこえありなしお任せ
https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=37585

※オーバーロードなしの方は文字数がこれより控えめ、ありの方はこれぐらい~になります


以上です
みなさまのプレイングをお待ちしています
ウルスラ・ロザーノ
なるほど、こーいう姿を客観的に見させられるんか
夜に独りで寝るとき、今でも時々こっそり泣いてるなんて、他人には言えんよ
結構ヤバめに泣いとる感じやんか! ホンマにちっちゃな子供みたいやな~

戦闘経験って意味じゃ、ボクは能力者として慣れてベテランの部類に入るんやろうけど
でもゴーストとの戦い、今でもしんどいで?
ボク自身が痛いとか辛い目に遭うってとこでなく、なんも関係あらへん人たちが被害を受けるのがね
理不尽に巻き込まれる、なんでや!ってな

まーでも、しっかり泣けるのは悪いことやあらへんと思っとるで
ボクなりのストレス解消法や
メンタル柔くてすぐ曲がるけど、決して折れずに元通り!
しかし、皆にバレたら恥ずかしいね…



●鈴振り燕
 まるでしとどに降る雨の中に佇むようだ、けれど雨が染みる筈の肩も腕も不思議とあたたかい。
 ああ、と、ウルスラは唐突に気づく。これは、自分が夜に零す涙なんだと。
『……ッ』
 毛布を抱えて縮こまり、燦々と輝く太陽の瞳は絞り出すような涙で濡れる。
(「なるほど、こーいう姿を客観的に見させられるんか」)
 今よりあどけない姿は10年近く前の姿だろうか? だがもっと幼い子供みたいだ。しゃくり上げる度に震える肩と、普段の明朗快活さからは思いもしないか細い涙声に、ウルスラは頬を掻いた。
(「結構ヤバめに泣いとる感じやんか!」)
 これは人には見せられない、紛れもない隠し事だ。
 思わず頭を撫でたくなって伸ばした手が何も掴まずに空を切る。幻影なのだと思い知らされた上で、ウルスラは膝を折って泣きじゃくる自分のそばに寄り添った。
 この子は/ウルスラは、ずっと長く能力者として戦ってきた。重ねた経験の重みと数は間違いなくベテランの域だ。
 戦いで傷つくことは数あった、命の危機を感じたことも一度や二度ではない。でも、それが嘆きの理由ではないのだ。
『……なんでや、あの人らは……なんも関係あらへんッ……や……』
 なんの前触れもなく奪われた平和な人生。
 被害者達に命を奪われるまでの瑕疵はない。抗うことすら赦されず散っていく、その理不尽さに少女は嘆き、大人になっても……そう、今だって涙する夜はある。
「まーでも、しっかり泣けるのは悪いことやあらへん」
 触れられぬ黒髪に手のひらを宛がって何度も滑らせる。大人が娘をあやすように撫でても変わらず幻影は泣きじゃくる。そうして泣き疲れたらいつの間にか眠りに落ちるのだ。
『……すぅ』
 こんな風に。
「明日起きたらひどい顔やで? ちゃんと顔洗いや」
 ぴんっとしょっぱそうな頬を弾くと立ち上がる。
 どうしようもないことへのストレスを吐き出して、起きたらまた元気に元通り。柔くすぐ曲がってしまうメンタルは、けれど決して折れやしないのだ。
「おやすみ、そして、明日もまたがんばろな」

大成功 🔵​🔵​🔵​

陽殿蘇・燐
隠し事。故郷に設定資料集や小説、IFゲームまで出ているゲーム出身の私に、隠し事なんて…

出てくる中性的な主人公。しかも、その腕にはふかふかのぬいぐるみ。
「はい、燐さん。これ、欲しがってたでしょ?」

っ!ライターたちがあえて描かなかった『ぬいぐるみ好きな燐は、主人公に恋をしていた』でくるなんて!
ええ、ええ。そうよそうなのよ。『炎術士・燐』は悪女であるから、敵でラスボスであるから、全てがプレイヤーに伝わるとは限らない、とあえて描かなかったと。

…いいわ、燃やしてあげる。何がなんでも燃やしてあげるわ。
こんなの、私だけでなく相対した主人公、描いたライターたちへの冒涜だもの。



●元悪女NPC
 燐は非常に馴染む電脳空間に降り立った。
 翳した手のひらには設定資料と小説、本編ゲームにIFゲーム、扇に開くには少々コツがいる質量の代物達。
「ここまで語り尽くされている私に隠し事なんて……」
 プライベートとはなんでしょう? な思考回路。人々に遊ばれるのが身上のゲームが燐の全てだったから。
 かりそめの命を得て猟兵となった今でもそんな認識に縛られている。だから『悪女NPC(ラスボス)だったけど、猟兵になってみた』をリアリティを伴い配信し好評を得られるのだ。
 作り物じゃない、つくりもの。
 ……なのだが。
「!!」
 サッと燐の眉目秀麗な容に朱が走る。
 いつの間にか足は佇み慣れたゲーム背景のアスファルトを踏みしめていて、その目の前では――。
『はい、燐さん。これ、欲しがってたでしょ?』
 ほのぼのとした雰囲気で出過ぎない、中性的な彼はゲームの“主人公”だ。
『……なんのことかしら』
 こほん、と咳払いをして斜め上へと目をそらす、ああそれは紛れもなく今電柱の影に隠れている“私”と同じ燐。
 主人公が抱えて差し出すのは、ふかふかの愛らしいぬいぐるみ。くりっとした黒目が主人公を思わせる。気づかず選んできたのなら天然の人たらしもいいところ!
(「っ! ライターたちがあえて描かなかった『ぬいぐるみ好きな燐は、主人公に恋をしていた』でくるなんて!」)
 ワナワナと肩を震わせる電柱越しの燐は、裾をぎゅうとつかみ何かを堪える己の姿から視線が外せない。

 嬉しい、し、受け取って「ありがとう」ってお礼を言いたい。不器用でぎこちなくても、笑って。
 ほのかな恋心が満たされたら悪のフラグが壊れて、もしかしたら超隠しキャラとして攻略対象に――…………。

「……いいわ、燃やしてあげる。何がなんでも燃やしてあげるわ」

 すぅっと息を吸い込んで、電柱越しの燐は芭蕉扇をそよがせる。
 涼しげな仕草と相反し羽ばたく黒揚羽の纏うは業火。主人公と燐と境目にあるぬいぐるへめがけ炎を見舞う。彼らは表情を変えずくしゃくしゃの紙が燃えるように朽ちていく。
『炎術士・燐』は悪女であるから、敵でラスボスであるから、全てがプレイヤーに伝わるとは限らない、とあえて描かなかったと、燐は知っている。
「こんなの、私だけでなく相対した主人公、描いたライターたちへの冒涜だもの」
 見せられない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真月・正人
長髪をゴムで一まとめにし、白衣でスマホとジェラルミンケースを手にやや疲れた表情
「運命予報の有難味をしみじみと感じてしまいますね……っ!?」
独自に調査を続け四苦八苦しながら遅れて幻影に取り込まれる
その場は銀誓館学園の廊下、目の前には閉じられた教室の引き戸

●隠し事
2012年1月25日、星宮キャンパス1年8組
そこで友人と慕う先輩が命を狙われた、多くの能力者が守るために居たその場に己は居なかった
運命の糸が結ばれなかったから仕方ない、けれどもし結ばれていたとして
己はその戸を開ける事が出来たのだろうか
強敵に立ち向かう技量があったのか、些細なミスが友人の命に直結する緊張感を乗り越え戦いに挑めただろうか
結ばれなかったという言い訳を与えられた事に、彼の目の前で不甲斐ない姿を見せて、頼りにならないと思われる可能性を回避できたことに
安堵しなかったか

忘れ消える筈だった傷は新たな敵に自分の力が通じなかった事で再び広がった
呼吸が乱れ震え汗が伝う恐ろしい、けど、それでも
ケースを握る手に力を込め教室の戸を開け飛び込む



●マサトと正人
 真月・正人(人間のアームドヒーロー・f35573)は、かつて銀誓館で能力者として戦っていた。
 ゴーストという脅威に勝利した後は、何れ訪れる神秘復活に備え勉学と研究に没頭する日々――だがそれも、数年前からの異変で再び戦いに塗り替えられた。
 独自の調査は闇雲、効率は良いものではない。
 ゴースト絡みに目星をつけては駆けつける、能力者とは似て非なる新たな力の扱いにも不慣れで、撤退を余儀なくされることも数知れず。
 今も、そう。そうである、筈だった……。
「ふう……」
 伸ばしっぱなしの髪をゴムで束ね、くたびれた白衣姿の青年は、銀色のジェラルミンケースを置くと壁にもたれスマホを取り出す。
「運命予報の有難味をしみじみと感じてしまいますね……っ!?」
 突如、棒を飲まされたように立ち尽くす正人。彼はここにいてここじゃない幻影に囚われてしまった。

 ドアは閉ざされていた。
「今回の被害者は銀誓館学園に通う学生だよ」
 その内側からは、聞き慣れた平坦な声が聞こえてくる。
「星宮キャンパス1年8組……」
 続けて名乗った彼とマサトは親友だ。
 運命の糸のつながった依頼で顔を合わせる内に友達になって、一緒に出かけて遊ぶ仲になった。学年は違うけど廊下で見かけたら声を掛けて笑い合う関係。
 でも、彼の命が危険に晒された時、マサトの運命の糸は結ばれなかった。
『………………』
 ドアに手を伸ばして触れずに項垂れる。
 指を掛けて物理的にドアを開けたとしても彼を救う側にはなれない。悔しさを奥歯で擦り潰して、糸がつながった皆へと託し全員の無事を祈ることしかできないのだ。
「ああ……」
 正人はドアに縋り付くように膝を折ったかつての自分に嘆息を漏らした。
 悔しかった悲しかった、でも、その中身には“怖かった”はなかっただろうか。
 がむしゃらで無我夢中な強さも、強敵に立ち向かう技量も、その他、あれもこれもそれも――当時の自分にはなかった、気が、するのだ。
「――ここは世界で一番安全な場所。そうだよね?」
 内側の彼はこんな時なのに少し笑った時の温度の声を響かせた。平坦だけど、仲良くなったら聞き分けられる。彼は存外感情豊かだ。
 絶大なる信頼を前にして、マサトはドアから後ずさり、がんっと窓枠に背をぶつけてしまう。
 痛い。
 背中より、情けない心が。
 些細なミスが彼の落命に直結する、そうでなくても仲間の足を引っ張って、彼の目の前で不甲斐ない姿を見せて、頼りにならないと思われたかもしれない。
(「その何れにも晒されることなく、ただ祈り、時間が経過するのを待って……当時の僕は、全てが終わった後で皆が無事だったことに安堵し、彼に会いに行った」)

 ――運命の糸がつながらないを言い訳にしていたかもしれない。その仄かな後ろめたさが『隠し事』だ。

 時間薬が効き、なによりそれを経ても互いの友情は変わらなかったから、記憶の狭間に鎖された筈のもの。
 冷静に言うならば、運命の糸がつながるかどうかはマサトにも彼にもどうすることもできはしない。
 つながったならマサトは8人となんら変わらず死力を尽くしてくれただろうと――恐らく、彼なら、迷いなく信頼と共に返す。
 それでも今は、かつての傷と新たな敵には通じなかった己の力という“無力感”が根底の恐怖を浮上させる。
 ケースを握る手がじっとりと汗ばむ、戦慄く唇は制御できず忙しない呼吸音が己の恐怖を物語る。
 あの時は運命の糸がつながらなくてドアをあけなかった。
 違う。
 違う。
 あけられなかった。
「…………もう、いやだ」
 普段の丁寧な口調ではなくて剥きだしの独り言。
 戦えず下がるより、前に征きたい。内面の傷は命こそ落とさずに済むかも知れないが心を腐らせる。
 正人は手のひらの汗をズボンに擦ると、改めてしっかりとケースを握りしめた。そして一度だけ窓に凭れて唇を噛む己を振り返る。
「その無念も弱さも恐怖も、何もかも連れていきますよ」
 だってそこにいるのも“僕”だから。
 手をさしのべてみせてから振り返り正人はドア睨み据える。そうして取っ手に手を掛けて思い切り横に引いた。

 ――ようこそ、新たなる戦いへ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

紅林・すぐり
薄暗くて赤い部屋……ここはぼくがずっといた場所

物心がついた時には新興宗教「あかつき教」の神子として扱われていました
薄暗くて赤い部屋で、ずっとかみさまと勘違いされた影朧と過ごしていたのです
彼女はいつも泣いていました
部屋から出た今も、時折ぼくの側で泣いています

信者の人達はどうにかかみさまを慰めたくて
……生け贄を用意したんです
ぼくと同い年くらいの女の子でした
少しの間一緒に過ごしたけれど、とても素敵な子で
何も分からない様子で、けれどにこにこしていたあの子
次に会った時にはもう冷たい身体になっていました

人が死ぬような事件となれば帝都桜學府もすぐに異変に気付き、そしてぼくは助け出されました
かみさまも討伐されましたが、彼女は転生せずにぼくの側にいます
暫くはこのままでいいと思っています

……ぼくは、幼少期からの癖でずっと微笑んでしまいます
そうしていれば周りの人が喜ぶから
けれどその笑顔は、あの女の子のものとは程遠いんでしょうね
だって、幻の中で見えているあの子の笑顔は今も暖かいんですから
……ぼくとは全然違います



●しんくの月
 ――いっそ此処が真闇ならば、連れ出された事への感謝や自由を得た解放感に浸れるのだろうか?
 紅林・すぐり(しんくの月・f34952)は、幼き頃から寝食を過ごしたた“籠、牢、匣”という表現が似合う部屋に、いた。
 今は、俗世の衣類を身につけてまるでひとのように過ごしているすぐり。彼は幼い自分が今と寸分変わらぬ笑みを浮かべて“かみさま”を眺める様を見せられている。
 かみさまは“あかつき教”という新興宗教にて崇められていた。
 さて、教義はなんだったか? 夜明けの暁ならいつか朝になり辛さも去るとかそういうのが元だったかも知れないし、違ったかもしれない。
 ただ信者は決して“かみさま”のお心を察することができなかったのは憶えている。
 ――何故なら、いつだって“かみさま”は泣いていた。
“かみさま”の正体は影朧であり、某かを抱え彷徨っていた所を祭り上げられたようだ。
 娘の影朧には、即物的に信者の願いを叶える力なぞない。周囲は称え望むだけで、誰も己の願いは聞いちゃくれない。
 常に傍らに神子として侍ったすぐりだが、やはり彼も“かみさま”を慰められなかった。
 信者や周囲の人間が喜ぶ微笑みを浮かべても“かみさま”は泣き止んではくれなかった。しくしくしくしくしくしくと、日のささぬじっとりとしめった床を常に霧雨で塗らすように“かみさま”は泣き続けるばかりであった。

(「ぼくは、此処で、何をしていたのでしたっけ?」)

 あかつき教の信者との間は、滞りなく。
 彼らは神子のすぐりも崇めたし、閉鎖的な集団はさしたる問題もなく日々を重ねていた。
 けれど、すぐりは――己が何を成したのかが思い出せない。
(「確かに、かみさまの神子だったなどとおいそれと口にすることではないけれども……」)
 隠し事を目の当たりにしてもすぐりの心は平坦を保っている、なんら苦もなく。
 影朧と幽閉という異常な環境下でも平静に育ってきたのだ、その逸脱した精神性は、すぐりから様々なモノを欠けさせているのかもしれない。
 不意に、
 外界と“かみさま”の間を隔てるドアが開き、当時のすぐりと同じ年頃の少女が信者の手で突き入れられた。
 同時に、幻影を俯瞰していたすぐりは「ああ、あの子か」と思い当たった。平坦さが僅かに波立ったのをすぐり自身は把握できていないのだが、さしたる問題はない。
『よろしくおねがいします。かみさまとみこさま』
 外の香りを纏う娘の微笑みは恵みの太陽のようにあたたかみがあった。
 誘拐か信者の娘かわからぬが、理不尽に幽閉されたというのに――いや、それよりも非道だ、なにしろ生け贄なのだから――彼女は笑みを絶やすことは決してなかった。
 名前は、聞いただろうか? ……そうか、幻影が見せてこぬ以上は、聞いていないのか憶えていないのかの何れかだ。
 ああ、当時の“すぐり”の感情が見つからない。
「あ、いいえ……素敵な子でしたよね」
 その笑顔が。
 それ、だけ。
“かみさま”の啜り泣きと得体の知れなさと信者達の身勝手な欲望しか詰まっていない空間に、彼女の存在は異質であり、であるが故に清涼感に満ちていた。
 けれど、
 次に会った時には、すぐりを拒むように固く冷たい遺体に成り果てていた。
 誰がどのように、彼女から命を奪ったのか? ……その部分は欠け落ちている。“かみさま”の仕業だった? ならばどうして、帝都桜學府が動いたのに――

“かみさま”は、今も僕の隣で泣きじゃくっているのだろう?

 それともこの“かみさま”は、僕が呼び寄せ無理に傍らに置いているのだろうか? 僕が“神子様”として人生を捧げさせられたように? それとも自主的に転生せずにいてくれるだけ?
「……………………」
 己の気持ちがかくれんぼ。
 然れどひとつハッキリしていることはあるのだ。すぐりは、暫くこのままでいいと思っているって。

 片目が赤くない僕は、冷たくなったあの子を前にして黙りこくっています。
“かみさま”は相も変わらず泣きじゃくっています。
 でも、
 ドアが開いたら、彼ら(信者達)が訪れたなら、
 唇の端を持ち上げて、瞳を少しだけ伏せて、やや首を相手に傾け気味にして、微笑むのです。
 そうしたら、皆が喜んでくれるから。
 ――その笑い方は、片方の目が赤くなった今のすぐりとも同じもの。

 活動映画のフィルムがふつり終点、画面がブレたかと思うと、再びあの子がやって来た時点に戻る。
『よろしくおねがいします。かみさまとみこさま』
 あの子の笑顔は今も暖かい。
 ……ぼくとは全然違います。あの子のぬくもりには程遠い。

大成功 🔵​🔵​🔵​

グラディス・プロトワン


俺の吸収能力は表向きにはエネルギー補給手段
だが試作型ゆえなのか、いつからか妙な感覚が生じるようになった

相手のエネルギーが自分の中に流れ込んでくると、堪らなく心地良いのだ
もちろん本来の目的である補給による充足感だろう
しかしそれ以上に、相手を自分のものにする…征服感や独占欲のようなものが満たされる
機械がそんな事のために行動するなど、あってはならないのだがな…

あの幻影は…?
そうだ、この感覚を初めて味わったのは、敵対する強力なウォーマシンを『食事』にした時だったか
相手のエネルギーで全身が満たされていく俺に対し、徐々に弱っていく強敵
得体の知れない心地良さに支配された俺は制御不能になった

不要なのに胸部装甲を展開して相手に組み付く
緊急補給用の大小様々で歪な吸収口が禍々しく蠢き、エネルギーを貪っていく
燃費が悪いせいでいくらでも吸収できてしまった

相手のエネルギーが尽きた事で正気に戻ったが、俺の行動基準は変わってしまった
もう修正するのは不可能だろう

だが今の俺は猟兵
この狂った欲求を敵に向ければ良いだけの事だ



●グラディス・プロトワン(f16655)
“プロトワン”
 プロトは試作機をワンはひとつを意味する。
 ひとつは、以降同型機種が作られなかった事に起因する。試作機は、最初で最後の一体となってしまった。

 作戦遂行のための頭脳は必要である。しかし判断を迷わせる不純物は邪魔だ。
 だから、グラディス・プロトワン(黒の機甲騎士・f16655)には感情という曖昧模糊なものは搭載されていない。
 ウォーマシンは堅忍質直に作戦を遂行し続ける。最適解を弾き出す為には敵の思考をトレースしそれを上回らねばならぬ。
 確かに、敵の判断が揺れを孕むなら、グラディスもそれを含めての行動が求められる。
 けれど、カサカサの大地に幾ら水を与えたところで命は芽吹かないように、クラディスが敵の感情に触れ続けた所で対処データのパターンとして蓄積されるのみである。
 では、このウォーマシンは如何にして感情を備えたのか――。

 クラディスは、敵からエネルギーを奪うことで補給が可能である。この機能は、補給困難な僻地だろうが遜色ないスペックを発揮するために搭載されている。
 敵の行動時間を減じクラディスの停止を避ける、非常に素晴らしい機能だ。
 実戦投入されたクラディスは吸収能力を遺憾なく発揮して、単機での作戦遂行において著しい成果をあげた。
「――ああ、あの日からだったか」
 黒き鋼に細い腰の騎士は防御機構と瞳にのみ赤色(せきしょく)を灯し、いつかの戦場に立っていた。
 眼前には、己がいる。
 幻影のクラディスは、腕がもがれた敵機を組み敷いている。
 勝敗は既に決している。だが怖ろしく強い敵で、辛うじて拾えた勝ちだ。しかも周囲に敵はまだ2機、窮地は未だ脱していない。
『対象を捕捉……システム起動』
 クラディスは減じたエネルギーを目の前から回収しつつ続けての行動パターンを幾つもシミュレートする。
 金色の頭を鷲づかめば、フォン……! と聴覚を震わせる機械音は、まるで断末魔のようだ。
 無事な側の腕を振り回しもがくも命脈尽きたり。びくり、と、痙攣からの機能休止に引きずりこまれてしまう。
『……あ、あ、ぁ、あぁああ……ッ、ハハッ!』
 幻影の己は全くもって不必要な嗤いを突如発した。
 ここだ、と、確定するクラディスは幻影に取り込まれてもなお冷静であり冷徹な儘である。
 ギギ、と命がきしみ上がる。
 指が相手の命の金に煌めいて幻影の顔を照らす。
 甲冑めいたデザインで覆われた口元が悪魔のように割けてつり上がるのを前に、クラディスは自分の頬に振れて角度を確かめる。
 高揚。
 黄金に輝く幻影と同じく、見ているだけでクラディスの胸は高ぶりに占拠される。

“あの命は俺のものだ。二度と奴として自律行動できぬが、何も悲しいことはない。俺として生きるのは光栄なのだからな”

 クラディスに命を吸収されたアレはクラディスだけのモノ。
 ところで、吸収作業に執心する幻影は格好の的である。実際、過去の幻影を眺めているクラディスでも今が好機と判断を下す。
 だが同時に、この後のお話の結末も知っているので、微妙な気持ちにもなるのだ。
 背後から襲いかかる二機に対し、幻影は食い尽くした機体を投げ捨てて振り返る。だが、敵の方がはやい。
 頭頂を狙うハンマーを躱す術は、ない!
 ――だが、躱す必要なんぞないのだ。
『もっとくれるのか、足りねぇんだよ……』
 まるで飢えた餓鬼。
 幻影が両腕を広げたとたん、飛びかかる2機は突如重力が増したかのような不自然な軌跡で落下した。
 2機から紫のエナジーが絞り出させる、それは幻影の体中に開いた赤色の顎門に吸われていくのだ。
 燃費が悪いクラディスは充ちるを知らない。
 細くくびれた幻影の腰が膨れ、人間の腹筋のように爆ぜ質量自体を増して姿を変えようとも、エネルギーを貪るのを止められない。
「やめろ。もう不要なんだ」
 制止は効かない。
 全ての色が混じり合い、クラディスの“赤”に書き換えられる。
 弱者は奪われ征服されて、強者に所有される――それが、己の身体で起こっている。幻影は……クラディスは歓喜を感じ、雄叫びをあげた。
(「機械がそんな事のために行動するなど、あってはならないのだがな……」)
 嗤いの形に開いた口は幻影と同じ雄叫びをあげる、だがクラディスの心は冷静に渇いていてそのギャップが心を追い詰める。

 ――この日を契機に、クラディスの戦場に出る理由が変わってしまった。

 より強い存在を貪りたい。
 作戦遂行のために倒すのではなく、吸収し同化という征服を成したい。
 良質なエネルギーを感知したら最後、其奴を貪ることが最優先事項となる。
 より強い存在は、敵だけではない――そう気づいてしまった時点で、クラディスという機械は完全に狂ってしまったのかもしれない。
「…………」
 斯くしてクラディスはプロトワンとなった。
 開発は中止された。
 味方も敵も喰らいつくす狂った機械を製造した者達は畏れ、逃れた。
 然れど案ずることはない。クラディスは自律行動が可能である。何より今は猟兵として喰らうだけ平和に近づくと喜ばれる立場ですらあるのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神崎・零央


隠し事:亡くなった両親のオブリビオン化への不安

小学校に上がって間もないころ、パパとママが死んだ。
ゴーストに襲われた僕を守って。
その時助けてくれた能力者が、今の父ちゃんと母ちゃん。

実の両親を亡くしたことが辛くないわけじゃない。
でも、今の両親の愛情に包まれて、
涙を自分で拭けるくらいには強くなれたと思う。


最近、猟兵になって知ったことがある。
死んだ者はオブリビオンとなって骸の海から蘇ることがある。
もしも、パパとママがオブリビオンになって現れたら、
僕は、俺は、戦えるんだろうかー

「!」
目を見開いて固まる俺に、慰めるように身を寄せる子猫たち。

母ちゃんが教えてくれた。
そこに助けを求める手があるのなら、掴みに行く。
例えどんな相手に立ち向かうことになっても。

次は、俺の番だ!

「うわ!」
光を放ち、一つになる子猫たち。
そして現れる黄金色の獅子の様な獣。
「いっしょに、行ってくれるのか?」
大きく吠えて自分の傍に寄り添う獣。
「よーし行こう!えーと…」
自分がLeoでこいつがライオンなら、名前は。
「キング!よろしくなー」



●百獣王
 パパとママの顔はまだ思い出せる。
 でも、想い出アルバムは2年前で止まったまま、ページが増えることは二度とない。
 神崎・零央(f35441)は、小学校にあがったばかり。いきなり世界が広がって、両親から離れて歩き出したところだった。
 親の心子知らず。
 息子が大人になる過程で、様々な困難にぶつかったり反抗してきたり――そんな時にどうしようなんて考えながら、零央の成長を見守っていた両親。
 だが彼らはある日唐突に命を絶たれた。
 ゴーストという到底抗うことの出来ぬバケモノから、宝物の零央を身を挺して庇い命を落としたのだ……。
 熱が失せていく母の腕に抱かれて泣くことも出来なかった子供は、駆けつけた2人の能力者に救われた。
「ッ、これ以上させるか」
 畏れずゴーストへ一気に距離を詰めて打ち払った青年と、
「……ごめん、ごめんね。間に合わなくて」
 零央の傷を白く輝く光で治療してくれた女性――この2人が、いまの父ちゃんと母ちゃんだ。
「僕は、すごく幸せだったと思う。今だって、父ちゃんと母ちゃんが一杯大事にしてくれてるし」
 2年の月日が経ち、今は強がらずに本心からそう言える。
 実の両親を亡くしたことが辛くないわけじゃない。でも、今の両親の愛情に包まれて、涙を自分で拭けるくらいには強くなれた。
 猟兵として母ちゃんと似た力を宿した。もう何も出来ない子供じゃない。
 誰かがの大切な人が亡くならないように、父ちゃんと母ちゃんのように果敢に戦って護るのだ。
 斯様に、百獣の王の如く強くあれと名付けられた零央は、その名に恥じず気高く勇気ある少年に成長している。

 ――強くなったから、別の恐怖を心に隠すようになった。

 猟兵が戦うのはオブリビオン。死んだ者はオブリビオンとなって骸の海から蘇ることがあるという。
 パパとママは死んでしまった。
 もしも、もしも、パパとママがオブリビオンになって現れたら……。
 だめだ、と思った時には遅かった。
 このアリスは隠し事を貪って一般人を死に至らしめると聞いていた。
(「呼び寄せるには考えた方がいいのか? でももっと他の隠しごとの方が……」)
 ふるりと頭を揺らした刹那、目の前にパパとママが現われてしまった。
 一番に零央を庇いお腹を割かれたパパと、抱きしめ背中を切られたママが、ほの青い肌で瞳孔のない真っ白な目で、ゆらゆらと零央に向けて歩いてくる。
「あ……あ、ああ…………」
 がしゃり、と手にしていた武器が玩具のような音をたてて地面に落ちた。
 どうしよう、どうしようと、心臓が跳ね上がる。
 あの日襲いかかってきたゴーストを倒す様は何度も頭で描いてきた、けれどやっぱりパパとママは……だめだよ、むりだよ。
「やだ……戦いたく、ないよ……」
 頭を抱えて蹲る零央は、もふり、と肩に頬に寄り添う感触に見開いていた瞳を緩めた。
「にぃ」
「にゃあん」
「みぃ」
 心配そうに小さな顔を持ち上げる白い子猫。ざりざりと手の甲を舐めて励ます黒猫……他にも沢山の子猫たちが零央をみつめている。アリスとの邂逅の際に一緒に来てくれた電子の海から産まれた子猫たちだ。
 猫たちは零央の硬直が解けたと同時に、目の前に集うと眩い光を放った。その光はオブリビオンの実の両親をつかの間覆い隠す。
「……うわ!」
 思わず目を覆った手のひらをしばらくして剥がすと、そこには輝きの色に包まれた荘厳たる獅子が立っている。
 獅子めいた獣は零央を見ると、額をすりっと腕にこすりつけてくる。それは先ほどの子猫たちと同じ仕草。
「いっしょに、行ってくれるのか?」
 咆吼。
 そうしてもう一度だけ頭をこすりつけると、四つ足を確りとついてオブリビオンの幻影を見据えた。
「よーし行こう! えーと……」
 呼びかけようとした少年の声が止まった。名前をどうしよう?
(「自分がLeoでこいつがライオンなら、名前は……」)
「キング! よろしくなー」
 百獣の王たれと名付けられた少年は、相棒へ王との名を与える。
(「母ちゃんが教えてくれた。そこに助けを求める手があるのなら、掴みに行く」)
 パパとママが誰かを害するなんて、絶対にさせちゃいけない。それを防ぐため、例えどんな相手に立ち向かうことになっても。
「次は、俺の番だ!」
 零央は武器を拾うと力強く構えた。もう目をそらさない。これは幻影、けれど起こりえるかもしれぬ未来。
 ――その時に、パパとママを苦しめず安らかなる海へと帰す、その覚悟を決める予行練習に丁度良い!

大成功 🔵​🔵​🔵​

石守・舞花


いしがみさんは…いいえ「私」は、故郷を滅ぼしかけました

銀河皇帝が倒された後、私たち「石守の巫女」は一般市民として居住区に迎え入れられました
コロニーでの暮らしは平和で満ち足りていて
共に戦争を生き抜いた仲間たちは皆新しい居場所を見つけました

けれど私は手遅れだったのです
戦い以外の日常を知らない心
誰より多く敵の血肉を喰らい、鎮まらない体内の欠片
そして、危険を知らず平和に暮らしていた皆への、静かな憎しみ

気付いたら私の手の中には、血まみれの薙刀が握られていました
平和ボケした警官たちを切り捨て、この平和な世界の象徴――『神殿』へと、私はひとり進軍しました

そして私の憎悪の刃が、神官を継ぐために大切に育てられた双子の兄へ向いたとき、
大好きだったお兄ちゃんは、優しく微笑んで言ったのです
「今まで、ごめんね」
と。

そうして居場所を失った私は、「いしがみさん」になったのです
「私」を出すと、また仲間まで手にかけてしまうかもしれないから
だから…今は、見なかったことにしたいです
もう一度、居場所を失いたくはないから



●神石の巫女
“いしがみさん”とラベリング。
 戦巫女として効率よく機能するために己を示す一人称は禁じられた。
 神石の御力を遮らぬよう己を封じ『石守家の戦巫女』として生きる……それが皮肉にも神石と癒着した『私』を抑制するのに一役買っている。
 このラベルさえあったなら『私』は出てこない、大丈夫。
 いしがみさんは、安心安全大丈夫なのですよ。
 ――あんしん? あんぜん?
 舞花は足の下がにじりと柔らかくしっとりしていると感じる。
 蹴爪の生えたつま先は、警邏を司る制服の切れ端を踏みつけている。ああ、そうそう、コレは安心と安全を民に届ける警官達だ。
 けれどまぁ、彼らなんて形だけの存在だ。なにしろ銀河皇帝が倒された後のコロニーときたら平和一辺倒。安心も安全も一々守らなくてもそこかしこに満ち足りているのだ。
 戦いが終わった後で、帝国軍への牙であった“石守の巫女”達は一般市民として受け入れられた。
 個を奪われ敵を狩り贄とし続けて戦闘兵器たる娘達は、それぞれに新しい居場所を見つけヒトとして歩み出した。

 でも、
 いしがみさんは、いいえ『私』は手遅れだったのです。

「あ」
 足を持ち上げたら裏側は真っ赤に染まっていた。
 同化するようにしっくりと手に馴染む薙刀は、尊敬と親しみの声でもって話しかけてくれた警官達の肉がこびりついている。
 彼らは敵ではないのに、神石は久々の充足を寿ぎ歓喜の波動で舞花の内側をゆらす。
 ここは平和。
 彼らは危険を知らない。
 ――何故なら戦巫女が身を挺して護り、欠片たりとも同胞を危険に晒さぬよう心血注いだから。
 神石は闘争を欲し、血肉を貪る。
 戦巫女は、神石へ供え物を切らさぬよう、死の舞踏を心と身体が擦りきれるまで踊り狂った。
 狂っていないと、自分を思い出して、恨み悲しみ憎んでしまうから。
 ……そんな“モノ”を植えつけられて、時に散りゆく戦巫女の仲間を目の当たりにしていた日々。そこから解放されて与えられた平和を『私』は酷く憎悪した。
 コロニーに詰め込まれた羊たちが、徹頭徹尾人を疑わず善良に生きられたのは、全ては戦巫女という狼が外敵に牙を剥き食らいついていたからだ。
 そんなおぞましい辛苦も知らず彼らはぬくぬくと……。
「――」
“どうしよう? こんな怖ろしいことをしでかしてしまった”って怯みは誰の声なんだろう?
『私』は心の雑音を踏みにじり、淡々とした足取りで警官達が護衛する神殿へと歩を進める
 石段についた血の足跡は獣のような形をしている。あがる度に、埋められた神石は膨張しかこりかこりと質量を増やす。そしてとうとう舞花の背から溢れ翼のように纏わり付いた。
 かつて戦場で馴染んだ形が足下に影をつくるのに、舞花は安寧の笑みを形作った。
 ――この神殿には、なにがあるんでしたっけ?
 格子戸に爪を引っかけ乱暴に引いたなら、現われたのは鏡写しのようにそっくりな誰かだった。
 そっくり、だけど、少し違う。
 胸の膨らみは一切なく、財を集め誂えた上等の神官服を身に纏う。少しだけ角張った作りの手のひらをしたこの人は――。
「…………お兄ちゃん」
 己の声が酷くひび割れていたことに、舞花ははじめて動揺する。大好きだった人を呼ぶ割りに、なんて醜くて汚くて泥のような感情を連れているんだ、この声は。
 そう、
 大好き、だった。
 今は?
“憎い”
「舞花」
 私は、この人を護りたかった。だから神石の侵食にも抗わず授けられる力を受け入れた。
「そしたら、  になっちゃった…………」

 私は自分を見失ってるのに、お兄ちゃんはお兄ちゃんのままだなんて、ずるいよ。

 ひゅ。
 刃が空を切る。手元で柄がくるりと回転するのを、舞花の兄はじっと凝視して――外すことなく、舞花の手首をつかみ取った。
 産まれる前から胎で一緒だったから、動きを見切るなんて容易いよ――と、説明してくれることなんて、なく。
 兄は舞花の手を引き寄せて切っ先の元へ身を進めた。
「今まで、ごめんね……」
 穏やかな微笑みは一切の濁りなどなくて、兄は舞花をかき抱くように倒れ伏すと、それっきり。

「それっきり――」
 舞花の視界には、無機質な自室の壁だけが写る。チカチカと瞬くブルーライトが翡翠色の瞳に四角く映り込む。
「そうして居場所を失った私は、『いしがみさん』になったのです」
 電脳でつながる向こう側で秘密を貪り嘲笑うアリスに向けての声は、絵本を読み聞かせる母親のように落ち着いている。
 ――『私』を出すと、また仲間まで手にかけてしまうかもしれないから。だから……今は、見なかったことにしたいです。
 もう居場所を失いたくないから、いしがみさんはオブリビオンを狩り続けるのです、かつてのように。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア


――それは、数秒前まで談笑していた相手を、刹那の躊躇いもなく撃ち殺す光景。
――それは、共に歩んだ仲間を、一切の逡巡もなく置き去りにする光景。
――それは、信頼を向けてくれた相手を、微塵の呵責もなく裏切る光景。

…あー、うん。確かにこれは「隠し事」だわねぇ。
他人に見られる類じゃなくてよかったわぁ。
だって――




こんなの見られたら、アタシの味方が減るじゃない。

一応足は洗ったけど、裏切り盗みに騙しに殺し、色々散々やらかしてきたし。
前科と余罪全部ひっくるめたら人生五回分くらい牢にブチこまれた後二・三回縛り首になるんじゃないか、程度の自覚はあるわね。
…まぁ、正直な感想としては「ふーん、それで?」としか思えないけれど。反省はしてるけど別に後悔とかカケラもないし。

――普段の口調・言動は「そのほうが得だから」という思考によって作られた仮面。
悲観主義にして利己主義な現実主義者。それがこの女の本性である。

苦いか辛いか酸っぱいかは知ったことじゃないけれど。
アタシの記憶なんてロクでもない味よね、きっと。ご愁傷様。



●イエロー・パロット
 人生を悲劇的に飾るアクセサリーは両手に余るほど。
 孤児、スラムの産まれ、ゴロツキになるしかなかった環境、等々……でもそれがなんだというのだ。
 それこそ自分と似たような境遇の女は掃いて捨てるほどいると、強固な現実主義たるティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は思うのだ。
 生き残れなかったか、色業に身を落とし常に奪われ続けるか、もしくは――成り上がるか。
 ティオレンシアの身の売り方は、よくある落ちぶれる女達と違い銃弾でもって高級娼婦を護るもの。ただ、些細な違いでしかない。

『……そんなに、自分を“普通”ってしておきたいのね』

 からかうような声は先だって電脳世界で相手をしたアリスだ。
 だが、ティオレンシアが応じる前に“とてもよく聞き慣れた”銃声が鼓膜を打った。
 アリスの声がたゆたう空間に現われたのは――テーブルを挟んだ向こう側、額を撃ち抜かれてひっくり返る男の無様。
 今より若いティオレンシアは、対話で浮かべた微笑みのままでピースメーカーを懐にしまう。
 この男が仮面の内側を覗き見したかどうかなんてティオレンシアは歯牙にかけてもいない。
 背を向けて部屋を出る娘は、ある時は仲間と共にあるダンジョンにいた。
「待ってくれ、まだ歩ける」
「――」
 罠に掛かり足首を砕かれた仲間を片目だけ僅かに空いて品定め。刺すような血色の視線は一瞬で瞼の向こうに隠される。そうして女は足を引きずる男に背を向けるのだ。
「なぁ、頼む……ッ、手当だけでもしてくれ。こんな所において行かれたら、俺は生きて帰れない」
 こつこつと石畳を打つ足音は、怨嗟に変じた仲間の声を踏みにじり行く。
「あの時助けてやったじゃないかっ、おい!!」
 簡単な話だ。
 怪我をした男は足手まとい、その割りに報酬を半分持っていく。敵に襲われた際に盾に使うよりは、肩を貸して歩くところを襲撃される危険性の方が遙かに高い。
「死ね! お前みたいな外道には地獄が相応しい!」
 ――死ねと罵られたなんて数えきれぬ程ある。
「……まっ、て。何故なの?」
 信じられないと瞠目した相手の瞳は血走り、臓腑が焼け爛れたせいで吐き出された血は臭い。
 相手が口をつけたアプリコットのカクテルは、誰かを嘲笑う太陽の色をしているが、ティオレンシアは何時ものように瞳を閉ざし困ったように少し下がる微笑みを浮かべるのみだ。
 ……そんなかつてのティオレンシアの像がぶれてアリスに重なるのを目にして、さすがにうんざりと鼻の上に皺が寄った。でもそれは一瞬、視認される隙なぞみせず、いつもの強固な“仮面”で塗りつぶされる。
「……あー、うん。確かにこれは“隠し事”だわねぇ。見られたのがあなただけでよかったわぁ」
 それ以外の“人”に見られる類いの仕掛けだったら、一大事だったとのティオレンシアは、誰となく付け加える。

「こんなの見られたら、アタシの味方が減るじゃない」

 味方、なんて言いながら、この女は相手を信じちゃいない。利用価値があるかないか、判断基準はそれだけだ。
 この女は、信頼は裏切ることもあるし、仲間だからって情で救ったりもしない。殺せという巡り合わせになったなら、親愛を交わし合った者とて躊躇わず事を成す。
 彼女を司法で裁ける者がいたとしたら、5回分の終身刑と軽く3回は縛り首に処せるだろう。
 足は洗った。
 でも、ダンジョンで捨てた仲間も、信じ合う誓いを交わした人も、支援を申し出てくれて相応に金を搾り取った人も、他にも――あれやこれやそれや全部、弾丸にて血の露に変えた者達が、足下の釜の蓋から恨み辛みを吐き出している。
 中にはとても気の毒な人もいた。殺されるような人生じゃなかった善良さを持つ者も。
 だからと言って、反省の文句を呟いて懺悔した所で彼らは蘇らないし、なにより赦してくれるとも思えない。ティオレンシアが同じ立場なら赦しはしないだろうから。
 故に、糸目の淑女はいつも通りに一蹴する。
「ふーん、それで?」
『あ、あなたねぇ……』
 呆れたように口をぽかんとあけるアリスは所詮幻影だ。だから今、自分の手札を見せる愚をティオレンシアは犯さない。
 ことり、と、首を傾けるこう呟くのみ。
「ご愁傷様」
 苦いか辛いか酸っぱいかは知ったことじゃないけれど、アタシの記憶なんてロクでもない味よね、きっと。

大成功 🔵​🔵​🔵​

待鳥・鎬
※抉アドリブ何でも

いつもしっかり閉じている襟元が、何時の間にかはだけていて
傍らには、深い疵が刻まれ今にも千切れそうな薬匙
一瞬で血の気が引いた

僕の本体には鋳掛の跡があって
胸元にはそれを示す鈍色の傷痕が袈裟懸けに走っている
秘密という程のことじゃないけど
何となく隠してしまうのは、不安定な姿を見せたくないから

暫く眠っていて……なんて普段婉曲に言ってるけど、一度完全に死んでるんだよね
人斬りから親友を庇おうとして、本体ごとばっさり
それから百有余年、親友の……さやの家で代々大切にしてくれたお陰で、二度目の生を受けたのが十七年前のこと

友人達は疾うに鬼籍に入っていて
薬匙として十分な強度もなくて
御神体のように祭られていたからか、存在自体変質してしまって
……傷痕を見る度、昔が恋しくなるけれど

それでも、あの子が泣きながら繋いでくれたものだから
ちょっと動揺させられたけど、大丈夫
今の自分を悔いなく生きて、いつかさやに会った時笑ってもらうって決めたんだから


なに淑女の貧相な胸元暴いてくれてるのかなぁ、アリス
覚悟しとけ



●草径の探究者
 咄嗟にはだけた襟元を隠すのは女性ならば特段奇異ではない、むしろ真っ当だ。
 弾かれるように引けた白い指の主は、そそけだつように青ざめる待鳥・鎬(草径の探究者・f25865)へ露悪的な笑いを見せつける。
『みぃちゃった、みぃちゃった♪』
 ケラケラ騒ぎ踵を踏み鳴らすアリスはおもむろに片足を大きく振り上げた。随分と下品な所作だ。そんな少女の直下には疵付いた薬匙が転がっている。
「……ッ」
 思考するよりはやく片手で足首を掴むと引き込むように受け流す。そうして素早くしゃがみ薬匙を確保した。
 アリスも元より踏みつぶす気はなかったのだろう。着地を優先して危なげなく立つと、くるり振り返り鎬のはだけた胸元を指さした。
『なにそれ、すっごくグロテスク! 女の子でそんな疵があるなんて、恥ずかしいったらないわね』
 火鉢棒を押し当てられたような疵痕がぷくり膨らみ斜めに走る。その軌跡は鈍色に覆われ鎬の身をつなぎとめているようにも、見える。
「……」
 不機嫌さで膨らませた頬の鎬は薬匙を包み抱く。その所作からヤドリガミの仕組みをうっすら悟ったようで、アリスはへぇと感慨深げだ。
『それ、壊れてるじゃないの。ポッキリ折れた役立たずだわ。柄の側は捨てて、匙の根元をつまんで使うの? あーあ、不便ねぇ』

 ――だから、棄てられたんじゃないのぉ?

 隠し事を暴いて疵を抉った気になっているアリス。でも、それは余りに滑稽で、焦りが拭ったようになくなった。
 暴かれたことへの動揺は綺麗さっぱりと虚空の彼方。
『あんた、新しいのに買い換えられたんでしょ』
「……」
 代わりに胸を占めるのは、もう戻らない懐かしき日々への懐旧。
「なるほど、よくわかったよ。あなたは、一寸でも壊れたら棄てられるって怯えてる」
 疵を隠すのは不安定な己を見せたくないからであって、疵自体は鎬の勲章ですらある。
 あの子は……親友のさやは、瞳が融けるぐらいに泣きながら、鋳を溶かし役目を果たせなくなった薬匙を懸命につないでくれた。
 もう一度、もう一度……後悔と悲しみに沈む嘆願を、当時の鎬は聞き届けること叶わなかった。眠りといえば穏当だが、実際は完全に命を絶たれ人の姿も失ってしまったのだから。
「……」
 鋳でつながれた部分を優しく握りしめる。ちらりとのぞく疵痕と同じ色のつなぎは、さやの想いがめいっぱいに籠められていて、撫でると心があたたかくなる。
(「――さやが生きている間には間に合わなかったけど」)
 親友を人斬りから庇ったのは百有余年も前の話だ。
 再び相まみえること叶わなかったことや、さや以外の友人達とも別れねばならなかった無念や寂寞はあれど、さやが悪刃に散らされることと引き替えならば安いもの。
 さやは寿命尽きるまでずっと再会を願っていてくれた。代々大切にと遺言を残したのがその証だ。
 ……大切にした物品は、魂が宿り人の姿を持つ。だからまたこれからもずっと大切にすれば鎬は現われてくれる、と。
「本当の“隠し事”を暴けないんだね」
『な、なによ……』
 鎬の面差しには、隠し事を暴き立てられた者の焦りも弱さもない。却って暴く側のアリスの方がそんな顔をしているぐらいだ。
 鼻白むゴーストを歯牙にもかけず、鎬は鋳掛の膨らみを何度もなぞりあげる。
 さやの子孫は義理堅く、遺言を護った。ただし、薬匙として使われるのではなくて、御神体のように祭られていたのだ。
 人からの扱いがヤドリガミの有り様を変える、もうあの頃のように親友として気安く笑い合うことは叶わない。
 失われてしまった昔への愛しさ故に鎬の眉根がぎゅっと寄る。だが、哀愁を嗅ぎつけて嘴を挟まんとする輩が目の前にいるのだ、だから纏うは凜、キッと睨み据えた。
「なに淑女の貧相な胸元暴いてくれてるのかなぁ、アリス」
 相手を呑むように、嗤う。
 でも歪んだ嗤いがちょっと厭になって、鎬はスッと桜色の唇を切り結ぶ。
 今の自分を悔いなく生きて、いつかさやに会った時笑ってもらう。勿論、私だって笑うんだ。
 お互いに現世のお土産話を広げて、またあの頃のように他愛なく過ごすその為に――。
「覚悟しとけ」
 まずはこのゴーストを片付けようか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

涼風・穹


【隠し事】
実はグリモア猟兵である事に内心では怯えている
怯えの本質は大なり小なり誰にでもあるような『自分の失敗のせいで別の誰かに被害が及ぶかも』という恐れであって何をどうやっても消せないし、もしそれを全く感じなくなったとしたらそれはそれで危険だというのも理解してしまっています

もし天災のように防ぎようのないものや、或いは解決には猟兵の犠牲が伴うような事件を予知してしまったらどうすればよいのか…

一般的(?)な事件であっても予知の内容を依頼として猟兵に伝える際に何か齟齬が発生していないか、そもそも予知に何か見落としはないか…
もし参加した猟兵の身になにかあれば…

予知を見なかった事にして逃げたとしても、それならそれで予知で被害が出るのが分かっていたのならその被害者は自分が見殺しにしたようなものではないか…

結果としてまだいずれも実際にはありえなかった事態ではありますが、今後も自分の力なり誰かの助けを借りればどうにかなるような事態だけとは限らない訳で…
八つ当たりに近いですがグリモアが重いと感じています



●人間の探索者
 透明な匣。
 持ち主の髪色に似た蒼色の中身は空に見える。
 だが、この匣には持ち主である涼風・穹(人間の探索者・f02404)の心を幾重にも撃ちすえる『 』が沢山詰まっている。
 敢えてラベルを貼るとしたら『不安』だろうか?
「――」
 薄暗がりの中、蒼燐光に浮かぶのは疎ましげな穹の横顔。
 ただの学生が何故このように重たい代物を授かってしまったのか。
「視えたことを伝える、でもその内容が完璧じゃなかったとしたら……」
 特段に穹が劣っているわけではない、こんな怯えは大なり小なり誰もが抱くもの。囚われないように肝が据わっているか否かに過ぎない。
 言い訳でもなく、根拠なく危険なんぞないと言い切ってしまう奴の方が全くもって信頼できない。だからこの怯え自体はなくしてはいけない。
 ふわふわとたゆたうグリモアへ指を被せて握りつぶす。だが消えない、穹が消えろと考えなかったからだ。
「もう視せないでくれよ……なんて表じゃあ言えないな」
 視えたものが、解決に猟兵の犠牲を強いるものであったり、どうしようもなく防げない天災めいた事件だとしたら……?
 ごくりとのど仏が上下する。黒々とした不安を腹に落とそう落とそうとするのに唾が出ない、喉はからっからだ。
 グリモアを透過した指は同じ色をした髪を引っ掴み頭皮には鈍く伸びた爪が刺さる。
 がりがり、がりがり、がりがり、と、赤いバンダナの周囲を掻きむしる、音。
「他のグリモア持ちはどうやってこの懸念を処理してるんだ……色々な命が手のひらにのっちまってんだぞ?」
 でも、殆どの場合、自分は介入できない。
 仲間という他人(ひと)任せ。
 自分の身を危険に晒して戦場に立った方が余程気楽だ! なにしろ全ては自己責任で――。

 いや、
 もし、もしも、だ、予知の不備で俺が死んでしまったら……?

 予知したグリモア猟兵が、解釈に齟齬をきたして予測外の危険が発生したり、そもそも予知の中で見落としていて、そのミスさえなければ穹は落命に至らずに済んだ、なんてことがあったとして――。
「俺は、赦せるのか」
 引きちぎるようにバンダナが外される、つられて毟られた髪が痛い。
 赦せるなんて奇麗事過ぎる、己に落ち度がないのに死ぬだなんて、絶対に納得がいくわけがない。災禍をもたらしたあれやこれやを恨みがましく思うやもしれぬ。
「そうだよな、当たり前だ……」
 想像の悔しさで歪んだ穹の顔が鏡映しになり、そのまま“グリモア猟兵である穹”を苛む。
 予知に失敗は赦されない。赴く猟兵の命や、事件に巻き込まれる人々が少しでも多く救われるよう、常に“完璧”でなくてはならない!
 穹の表情の歪みは、悔しさから相も変わらず浮遊するグリモアへの疎ましさへと再び移行する。
「どうしてこんなもんが……」
 い、と口が横に伸びた。白い歯は息を隙間から零し「いらない」と続ける代わりにグリモアを叩き落とすように手のひらが落ちた。
 予知には大抵無辜の人々の命が掛かる。見て見ぬ振りをして猟兵を招聘しなければ、彼らは為す術もなく命を踏みにじられてしまう。
 助かるはずの命が助からなくなる。
 でも、
 ……そもそもが予知がイレギュラーなのだから、本来彼らは事件に巻き込まれて死ぬはずだったのだ。
 だから予知して命を救うことは、マイナスが0になるんじゃなくて、0がプラスになる。予知を広げるのはあくまで善意であり義務が伴うわけではな――。
「ああ、なんて俺は……」

 汚いんだ。

「最低過ぎる。猟兵の風上にも置けない」
 己への罵りがやけに空虚で態とらしく聞こえる。何をどう叩いても、一瞬浮上した逃げは消せない。奥歯を噛んでそれら汚らしいものを擦り潰しにかかる。だが所詮滓は心のあちらこちらにへばりついているわけで……。
 結局は、清廉潔白なんかじゃないんだと受け入れるしかないのだ。
「なぁ頼むから」
 指ぬき手袋の指を緩め現われた蒼色の輝きにため息交じりの嘆願。
「俺や誰かの助けを借りればどうにかなるような事件だけを持ってきてくれよ」
 常にキャパシティを超えて逃げ出したくなる弱さには向き合っておくから嫌な実現はしないでくれと、穹はからっぽなのにやけに重たい匣に横目をくれるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『バーチャルアイドル『アリス』』

POW   :    いい夢見せてあげる♥
レベルm半径内に【夢想空間】を放ち、命中した敵から【エナジー】を奪う。範囲内が暗闇なら威力3倍。
SPD   :    電子の壁を越えてあなたの元に♥
自身のオリキャラ「【『アリス』】」を具現化する。設定通りの能力を持つが、強さは自身の【フォロワーから向けられた欲望の数】に比例する。
WIZ   :    私の作った夢の世界へようこそ♪
戦場全体に、【メタバース】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●アリスのありか
「なんなのよ、もう! 当たる奴当たる奴、みーーんな猟兵じゃないのぉ!」
 思うようにエナジーを奪えず、アリスはブルーのマニキュアに染めた爪を噛みしめる。
 しかも猟兵たちはこちらの攻撃を辿り着々と近づいてきている。
 ほら、もうそこに、足音が……。
「こ、殺されるなんていやよ、絶対にいやぁ!」
 悲鳴と共にアリスを中心としたメタバースの迷宮が具現化した。猟兵たちは手分けしてアリスの殲滅に取りかかる!
 
*****
>3章目 マスターより
【募集期間、採用人数】
この断章が公開された時点で募集しています
締め切りは6日の23時まで
採用人数は多くても8名ぐらいの予定です

【プレイングについて】
迷宮探索のプレイングは不要です
アリスとエンカウントした所からリプレイははじまります
アリスは命乞いをして逃げようとするので、騙し討ちしたり、絶対に許さないと戦ったり……その他お好きにどうぞ
戦闘のみのプレイングでも合わせて仕上げますので、書きたいようにしていただければと思います

【同行】
お二人までで、冒頭に【チーム名】の記載お願いします

それではプレイングをお待ちしています
神崎・零央
パパとママをダシに使うなんて。
アリス、許さないぞーっ!

黄金の獅子、キングの背中に乗って疾走。
……あれ、アリスがもう一人いる。
構うもんか。相手が何人だろうと、まとめてドーンだ!
(キングもガオーッ)

おわっ、アイツなんか強いぞ!
でも、あの技見たことあるような……
おーい、それ(作品名)のパクリ?
あ、逆切れした。
リスペクトって、そんな紛い物に当たるもんかー!

知らず知らず炎上フラグを立てる
アリスのフォロワーは減るばかり。
いつの間にやらオリキャラアリスは
本体よりもヘロヘロの姿に。

「いっくぞー!キング!!」
光となってアリス達に突っ込む。
パパ、ママ、俺は大丈夫だよ。
俺には、キングがいる!




 パパとママを倒す恐怖感を克服した神崎・零央(f35441)は、キングを抱きしめる腕を解く。すると、くんくんと、キングは電子の痕跡をかぎ取り歩き出す。
『きゃぁ!』
 猛獣とばったりのアリスが悲鳴で居場所を知らせてきたぞ!
「パパとママをダシに使うなんて。アリス、許さないぞーっ!」
 キングも咆吼で同意を示す。
『お子様には話しが通じなさそうね。いいわ、実力行使よ』
 アリスを庇うように電脳で描き出されたのは、はたまたアリス。
「……あれ、アリスがもう一人いる???」
『『フォロワーのみんなぁ、ダブルアリスでの握手会だよ♪ 概要ボタンをぽちして参加エントリーよろしくね』』
 そっくり二人は猫招きポーズで画面の向こう側へと媚びっ媚び。
『猫なんかよりアリスの方が可愛いの、ワカラセテあ・げ・る』
 ユーベルコードで具現化したアリスはにょきんとネコミミをはやすと、猫パンチの仕草でキングと零央をぺちぺちぺちぺち。
「いた、いたたたた!」
『くらうのにゃあん』
 おっと尻尾まではえたぞ! ぴこぴこ揺れて画面の向こうのお友達に更なるアピールに余念がない。
「おわっ、なんか強いぞ!」
 画面外からの『いいね』が増える度、猫パンチの痛みは強くなっていく。前足で立ち上がったキングがべしべしと応戦するも押され気味。
「いてて、キングだいじょうぶ? でも、あの技見たことあるような……」
 寅縞ゴスロリで猫パンチが必殺技、そんなアニメがあった筈。
「おーい、それの『にゃふっと★チェンジガール』のパクリ?」
『トラ子よりアリスの方がかわいさ爆発なんだからぁ♪』 
 ――あ、やらかした。
 全国のトラ子ファンのヘイトを集め瞬く間にいいねの数が減っていく。コメント欄は叩きコメが山となり、トラ子ファン以外も『原案へのリスペクトなしのコスプレはどうかと思う』と苦言を呈す。
「ふふん、そんなヘロヘロパンチなんて痛くもかゆくもないぞ!」
「ガウッ」
 べっしと巨大肉球でオリキャラアリスを薙ぎ払ったキングは、背に乗せた主と共に眩い光に包まれる。
「いっくぞー! キング!!」
 へたり込むオリキャラと背を向けたアリスめがけて光弾は疾走する。
『きゃあああ!』
 逃走アリスの背中にどすんっと頭突きが刺さる。けたたましい悲鳴の中で、零央は脳裏に浮かぶパパとママへ語りかける。
「パパ、ママ、俺は大丈夫だよ。俺には、キングがいる!」
 これからも元気に強くなるから見てて――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

陽殿蘇・燐
UC発動しつつ、優雅に。
あらあら、愛しのアリス様(敵認定なのでこの呼び方)がみっともない。
『ぶっとばせるもんなら、ぶっとばしてみなさい』でしょう?
そして、逃げようなんて虫のいいこと、考えてないわよね?
何を驚いてるのかしら?ゲームのお約束じゃない?

『紅紋揚羽』の超重力で押さえつつ。『紋黄揚羽』で底上げした『黒揚羽』の炎属性魔法…炎術で燃やしてあげるわ。
ふふ、ラスボスが隠していた秘密を暴いておいて、無事ですむと思ってたわけ?主人公でもないヒトが?

そういえば…バーチャルなのよね。愛しのアリス様。
なら、『尾長揚羽』に仕込んだウイルス…どう感じるのかしら?もちろん、主である私には効かないのだけれど。




 ここは勝手知ったる迷宮、この路地を抜ければそうそう見つからない筈……。
「あらあら、愛しのアリス様がみっともない。御髪も心も乱れていてよ?」
『きゃん?!』
 眼前には、燦然とした装いで渦巻く(矛盾した表現だがまさに両立しているのだ、さすがラスボス!)闇色蝶を引きつれた陽殿蘇・燐(元悪女NPC・f33567)が微笑み佇んでいるではないか!
『どうして見つかっちゃったの』
 それは、ラスボスだから。
 ラスボスからは誰しも逃げられないのだ。
『アリスは勇者じゃなくてか弱いヒロインだから戦えないの、見逃してぇ』
「ここは『ぶっとばせるもんなら、ぶっとばしてみなさい』でしょう?」
 あくまで穏やかな燐だが、絶えず靡く黒髪と翻る袖が迫力と威厳を視覚に訴えてくる。
「逃げようなんて虫のいいこと、考えてないわよね?」
 アリスが後ろを向くよりはやく、ぬらりと回り込む燐。
「何を驚いてるのかしら? ゲームのお約束じゃない?」
 逃げられねーのですよ、ラスボスからは。
 すかさず人差し指に止めた紅紋揚羽を遣わせる。慌ててアリスがオリキャラを招聘するも、遅い。
 羽ばたく度に数を増やす紅い羽根に纏わり付かれて地へと押しつけられた。
『何をしたのよ、動けないぃ!!』
 蜘蛛の巣に掛かった獲物のようにじたばた手足を動かすアリスを燐は冷たく睥睨する。手品のように指先には新たなモンキアゲハが羽根を休めている。
「ふふ、ラスボスが隠していた秘密を暴いておいて、無事ですむと思ってたわけ?」
 羽ばたく度に黄と黒に輝く頬、黒髪越しの瞳は見えず表情はわからない。
『ラスボス! なら倒されなさいよ、お約束でしょ?』
 呼び出したオリキャラはプ燐セスドレスで指を組み震え、本体と共に語りだす。
『それに、ラスト戦闘の前に過去暴露イベントはあるあるだわ』
「それを見ていいのは主役だけよ。あなた、先ほど言ったじゃないの――勇者じゃなくてか弱いヒロインだって。常に受け身で勇者の人生を彩る、実は“脇役”」
 それこそ乙女ゲーのヒロイン(主人公)じゃないのなら。
 燐のまなじりから黒い糸が横に溢れ無数の黒揚羽に姿を変える。涙に見えるなんてのはただの演出だ、そうよくあるゲームの。
 凜然と顎を持ち上げて口元を歪める。艶然たる笑みはラスボスの嗜み、威風堂々、格の違いを見せつけてあげる。
「燃え尽きて仕舞いなさい」
 全て、総て。
 オリキャラは一瞬で灰に、当然後方の本体も無傷ではいられない。
「そういえば……バーチャルなのよね。愛しのアリス様。なら『尾長揚羽』に仕込んだウイルス……どう感じるのかしら?」
 応える代わりに魔女のような悲鳴が響き渡った。
 付与された不運はラスボスの燐がこの迷宮に君臨する限り有功、つまりアリスはもう猟兵達をまくことは叶わないのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ウルスラ・ロザーノ
なるほど、お前の言いたいことはよく分かったわ
もちろん許さへんで? 一通り命乞いを聞き取ったし、とっとと蹴り飛ばして討ち滅ぼすよ

理由か? 授業の時に教え子たちに経験談の一つとして語るんやけど?
この手のリリス…今はオブリビオンやね、どんな事を言うんかってな
相手の言うことに耳を傾けるな、トドメ刺すまで気ぃ抜いちゃあかんよって話や

ボクのこと、うまく言いくるめられそうなタイプだとか勘違いさせてまったかな
お前が手にかけてきた被害者のたちのこと思うと、別に心も痛まんわ
現にボクと話しながら、逃走経路とか方法を必死に考えとるやろ
シューズの回転動力炉が今もフル回転しとるのは、どうやってもお前を逃がさんためやで?




『あーもう! アリスのお肌が台無しだわ! ……きゃん!』
 ウイルスに蝕まれた腕を袖で隠しふくれっ面のアリスは、振り返り様何者かにぶつかり尻餅ぺったり。
「こんなとこにおったんか、逃がさへんで」
 軽やかな滑走音を奏で近づくのはウルスラ・ロザーノ(鈴振り燕・f35438)である。
『“小熊”ちゃんも猟兵だったなんて……! ファンじゃなかったのぉ?』
 その“小熊”ちゃんの秘密を暴きエナジーを奪おうとしたのを棚に上げ、アリスはえーんと泣き真似開始。
 ウルスラはテンプレ行動に懐かしさすら感じ鷹揚に腕組み。
『ファンのみんなはアリスが返事したらすっごく喜んでくれるんだよぉ? 楽しく交流してただけだよぅ』
「……」
『もしアリスが死んじゃったら、ファンのみんなは生きがいを失っちゃうわ』
 しな垂れかかってくるアリスは電子データ、なのに甘く生暖かい吐息を感じさせる……さすがはリリスだ。
「なるほど」
 肩に置かれた手首をとれば、ひたり握り返してきた。でも「ちょろい」って見くびりが隠しきれぬ辺り、詰めが甘すぎる。
(「こんなん、生徒の教材にしたらボーナス問題すぎるわ」)
 やれやれと首を揺らしウルスラは口火をきる。
「……お前の言いたいことはよく分かったわ」
『あはっ、わかってくれたぁ? アリス嬉し……』
「もちろん許さへんで?」
『ぎゃ』
 即座に手首をねじり上げ回し蹴り。吹っ飛んだ体は壁にめり込み電脳の欠片を周囲にまき散らす。その時既にウルスラは空中を滑走、破片を足場に踏み切ると、盾がわりのオリキャラアリスごと揃えた足で踏みしめた。
 その一打でオリキャラはあっさり霧散し、ウルスラの足下では本体がヒキガエルめいた悲鳴を漏らしている。
『ど、どぼじで……ゆるじで、ぐでないのぉ』
「お前が手にかけてきた被害者のたちのこと思うと、別に心も痛まんわ。授業の時に教え子たちに経験談の一つとして語るんやけど――この手のリリスの言うことに耳を傾けるな、トドメ刺すまで気ぃ抜いちゃあかんよってな」
 今はオブリビオンか、なんて付け加え三日月の軌跡でしっかりと蹴り上げ燕の宙返り。
「ボクのこと、うまく言いくるめられそうなタイプだとか勘違いさせてまったかな? ……その目、まだ諦めてへんもんな、逃走経路とか方法を必死に考えとるやろ」
 顔に赤々とした筋をつけたアリスはぶんぶんと首を横に振る。しかし足はウルスラと反対方向へ走り出しているのだ!
「逃がさんで」
 シューズの回転動力炉がゴォと火を噴きフル回転。壁や天井を縦横無尽に走りアリスの行く先々へと回り込み続ける!

大成功 🔵​🔵​🔵​

蓮見・双良
外面良くも
夢を軽んじる相手には忌避感しかない

そもそもネットってあまり興味ないんですよね
必要な情報が得られれば十分なので

ですから、彼女の事も知りませんし、興味もありません
猟兵の務めを果たしに来ただけです
こういう輩は百害あって一利なしですから

話も聞く気はないので速攻UCで攻撃
時間は有限、先手必勝

僕も似たような事、できるんですよ
――見せてあげてよ、ナイトメア
とっておきの悪夢を

彼女の望む喝采を見せた後
世界全てから無視される…なんてどうでしょう
空気ですらない完全なる無
誰からも必要とされない、認識されない…そんな悪夢

…この程度の悪夢すら”適合”できないのなら
あなたが満たされる事はありません
未来永劫、ずっと




 アリスが逃げてくることを知っていたかの如く、蓮見・双良(夏暁・f35515)はそこに佇んでいた。
『助け……』
 夢を軽んじる女の戯れ言に耳を貸すなぞ時間の無駄だ。
「――見せてあげてよ、ナイトメア。とっておきの悪夢を」
 先手必勝。
 召喚されたのは双良にだけは従順な悪夢の権化。すっと人差し指をアリスへ向ければ白馬は真っ直ぐな軌跡を描き指先へ向かう。
『ちょっ……?!』 
 戦慄く唇は命乞いを慌てて止めた。
『くぅ、だったら“いい夢”を魅せてあげるわ、アリスの虜になっちゃえばいいのよ!』
 だがアリスより溢れ出る電夢の欠片はあっさりとナイトメアに食い荒された。前菜の次はメインディッシュと言わんばかりに白馬は女の胸に消えた。
『あ……あれ……?』
「僕と似たような事ができると思ったんですが、買いかぶりだったようですね」
 ぽかんと口をあき自失の瞳で立ち尽くすアリスへ、双良は疎ましげに短い嘆息を漏らした。
 ネットは便利な道具とは思えども、アリスのような承認欲求が作る娯楽にはさしたる興味もない。
 それでも敵の殲滅という猟兵の勤めを果たす為、この女の願望は調べてある――それはリスナーからの賞賛。

『はぁい、今日も見てくれてありがとぉ♪』
 瞬きの刹那に桁が変わる勢いで増える接続数に、アバターを操る少女リリスは天にも昇る気持ちでうっとり。
“今日のアリスちゃん、超可愛くね?”
“アリス一番! アリスだけがいればいいわ”
“アリス以外の実況なんていらないな、クソだわー”

『んふふふ、そうでしょ、ようやくわかったぁ?』
 外面ばかりで人気取り腹ではエナジーを奪う事ばかり考えている、こういう輩は百害あって一利なし。
「もう充分楽しめたようですね……ナイトメア」
 ――最期の夢に魘されるがいい。そう命じればアリスの顔色が青ざめる。
『!! え、どうして、みんな接続切ってるの?!』
 相変わらず知性の蕩けきった表情ながら、声は悲しみの驚愕塗れだ。
 手をさしのべ引き留めようとする無様なひとり芝居を前に、双良は髪を払い退屈露わだ。
 悪夢の中、彼女の『接続数』はゼロから動かない。
 度々顔を出しているチャットでも、自分そっくりのアバターでインするゲームでも、アリスが来たとたんに水が引くように人が去って行く。
『今度クエスト行きたいって誘ってきたじゃないのーー!』

 ねえ、ねえ、ねえねえねえねえねえねえねえねえねえ……!

 何度も何度も縋っても行き交う誰かは見向きもせずにアリスをすり抜ける。ネガティブすら向けられぬ無に頬に一筋の涙が伝った。
「……この程度の悪夢すら”適合”できないのなら、あなたが満たされる事はありません」
 未来永劫、ずっと。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真月・正人
「っ!イグニッショぐぁ!」
具現化したアリスに反応してイグニッションカードを出し力を開放するも敢え無く吹き飛ばされる
衝撃で開いたトランクから出てきたベルトの様な装置と先程とは異なるカードを持ちふらつきながらも立ち上がる
ただの能力者かと嘲笑う彼女を見て
「どうも昔のクセが抜けませんね」
装置を腰に装着し新しいカードをセットする
「もうドアは開けた、今の僕は、猟兵です!Eイグニッション!」
装置が輝きエアシューズが装着される
装置によってUCに変換模倣された、月のエアライダーの能力エアライドでどんな高さからでもノーダメ、更に長年培ってきた自前のテクニックを駆使して街のあらゆる場所を『道』にしてまるで翼がある様に翔びまわり翻弄
最後はアリスの反撃を上空に翔んで避け、月光を反射させて三日月の牙を叩き込みます

倒せたら良しですが逃げられたとしても空を街を駆け追撃します

全てが終われば久しぶりに友人に会おうと、きっと笑顔で会えると思いながら
そんな友人の姿が大変な事になっているのを知って驚かされるのはもう少し後の事




 度重なる猟兵からの攻撃で身も心も痛めつけられたアリスが、真月・正人(新たな『翼(ちから)』で月夜を翔ぶ・f35573)の前に倒れ込むように現われた。
「っ! イグニッショ……」
 イグニッションカードを出すのが遅れてしまったのは気負いすぎがまず大きい。
 乗り越える過程にあるとはいえ、先ほど引きずり出された心の深淵(みたくなかったもの)が未だに尾を引いている。その隙を逃すアリスではない。
『おいでなさい、アリスの化身!』
 素早く招聘したオリキャラは本体とそっくり、空色の裾を翻し左右から正人を囲むと全く同じ動きでパンチ蹴打とリズミカルにたたき込む。
「ぐぁ!」
 最後の回し蹴りでとうとう堪えきれずに吹き飛ばされる。背中をしこたまぶつけた正人の手前では、銀のトランクが割れるように開き中身を晒している。
『イグニッションって……レトロタイプの能力者ってやつ? ま、猟兵じゃないなら怖くないわ……なによ、これ?』
「触るな」
 らしくない乱暴な口調と共に腹ばいで素早く握り取ったのは、読み取り装置のついたベルトと別のカードだ。
「……どうも昔のクセが抜けませんね」
 口元についた血を乱暴に拭い白衣を払いのけベルトを腰に宛がった。すると求めるようにベルトは正人の腰にしゅるりと巻き付く。
「もうドアは開けた」
 指先に挟んだカードを眼前に掲げる。
 正人は能力者であった。
 そして今の正人は――ヒーローである。
「今の僕は、猟兵です! Eイグニッション!」
 全身集中、力を招くポーズをとり装置にカードを宛がう。
『きゃああ、なに?! なんなのよー!』
 電子の迷宮に満ちる眩い輝きに、アリス達は同じポーズで顔を覆った。

 光の中から滑り出て来たのはエアシューズを装着した猟兵『真月正人』である。

 足下を削り電脳の欠片を幾つも生み出しながら床壁天井を自由自在に往く。先ほどはあれほどに脅威であったアリスの蹴打も、三日月ラインの軌跡で難なく回避。
『ちょこまかとー、もう!』
 がんっと踏切りトリプルアクセス、伸ばした手刀で本体のアリスをたたき伏せた。追いすがるユーベルコード製の分身はすげなく躱し、そのまま勢いよく電子のビルを軽快に滑り登っていく。
 アリス達が豆粒ぐらいに小さくなった所で空中ターン。
 髪留めが風圧に耐えきれず弾け、散らばる黒髪。それらまるで鴉の翼のように靡かせて急降下。
(「……ああ、気持ちいいな」)
 恐怖など欠片も感じない落下感はエアライダーの特権だ。落下ダメージ? そんなものは重力に縛られぬ者に関係ない!
 白衣をマントのようにはためかせ、両手を広げ立ちはだかる分身は真っ直ぐ伸ばした右足で蹴り貫く。
『きゃああぁ……』
 腹に大穴をあけて電子屑を散らし落ちていく残骸に併走、いやそれよりはやくビル壁を滑る。
『分身が一体だと思ってるの? 行けッ』
 そう叫ぶアリスが招聘した2体目の肩から頭を滑走路代わりに滑り頭頂を踏みつける。
 描かれた軌跡は三日月。
 砕け散る分身と同時に、ぎらりと輝く光は優しい月より強く容赦なく、アリスの瞳を灼いた。
『うぅ…… 』
 眩しさに怯む娘へ、諸々の物理法則を無視して宙返りからの三角蹴りをお見舞いだ!
 悲鳴をあげて床に投げ出されたアリスは、更なる分身を盾にして這いずり逃げる。
「逃がしません」
 3体目の分身も露と消して、正人はアリスの追跡を開始する。
 軽快な滑走音を聞きながら、脳裏に浮かぶのは先の『隠し事』の中にいた友人の姿だ。
 全てが終われば久しぶりに彼に会おう、きっと笑顔で会える――もしかして、彼も猟兵に覚醒していたりするんだろうか……なんて、戦いの最中なのにリラックスして考えることができている。
 その間も、油断なくアリスの眼前に先回りしては蹴りを加え、己はひらりと飛翔し遙か彼方の壁を往く。
(その年上の友人が「あっとびっくり自分より若返っている!」と知るのは、まぁまた別の話)
 直線を逃げるアリスに対して、壁を使い回り込む正人。アリスの庭の筈が、すっかり迷宮の主のお株は正人に取られてしまっている!
 行く先々で回し蹴りトリプルアクセスの手刀、アリスは防戦で手一杯だ。
 追跡劇の終わりは見えない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

涼風・穹
アリスに命乞いをされてあっさりと躊躇してしまいます
立場的には他の猟兵達にオブリビオンなら始末しろと言わなければいけないグリモア猟兵ではありますが…
悪い意味でも非情に徹しきれない超大甘です
それでも刀を振り上げて斬りつけようとしたものの躱された上に、アリスから金的をくらって悶絶している間に逃げられてしまうという間抜けぶりを…

周囲に他の猟兵達がいなければ具現化されたアリスにはアカウントをフォローした後に敢えて自分で色々と邪な欲望を向けて強化した後に戦います
明らかに不要な激戦をした挙句に不必要なまでに負傷してしまった後にアリスを追いかけますが…
可能なら《贋作者》で銃でも作り出して狙撃するなりして彼女が自分の死にすら気付けないように仕留めます

無理ならせめて顔は傷付けないようにして恐怖や苦しみを感じる暇もないように一撃で終わらせます




 物憂げに俯く涼風・穹(人間の探索者・f02404)の空色髪は、電脳空間にとても馴染む。
 アリスはオブリビオンだ。
 でも、こんな風にポップでcawaiiが好きで、なんだかんだでゲームも楽しんでるし、承認して欲しい先には視聴者がいる。
「人間と変わらないじゃないか……」
 アリスというかリリスお得意の嘘つきだって人間の中にゴマンといる。
 いけないいけない、自分は立場的には「始末しろ」と言わねばならないグリモア猟兵だというのに。

 ――あの魅力的な笑顔は、本当に動画に出ることが好きなんだろうな。

 と、また宜しくない(と定義したいが本音は違ってモヤモヤする)考えが頭にもたげて来た刹那、
「!!!」
『ねぇ……あなたも、アリスを……いじめるの……?』
 額から一筋の血を流してしゃくり上げるイタイケな少女が穹の眼前を占拠した。
 潤む瞳には大粒の涙を浮かべ、映り込んだ穹の悲しげな困惑顔が波を打つ。
『アリス、そんなに悪いことしたのかなぁ……? もう電脳世界の中にいるだけにするわ……それならいいでしょぉ?』
 チョロイ、と口元が一瞬つり上がったのも、穹は見ない振りをした。
 戦慄く穹の唇は今にも“猟兵として不適格”な台詞をもっと口走ってしまいそうだ。なんとか堪えた所で刀を持つ手は力なく垂れ下がっている。
 もし、近くに一人でも他の猟兵がいたら、穹は心を鬼にして刀を振り下ろしただろう。
『おにーさん、名前は?』
「……穹」
『穹さんはぁ、アリスが好き?』
 答えになんてわかりきってると言わんばかりの表情で、アリスは手のひらを翳しユーベルコード製のアバターを生み出した。
『見て見て♪ レッドチェックの新衣装だよ~♪ アイドルアリスちゃんでーす☆』
 ぎこちない振り付けの未熟アイドル、そんな仕草でくるり♪ タイする穹は緩やかに笑った後で目を伏せた。
「…………フォローしたいんだ、いいかい?」
 絞り出された言葉には苦悩が塗り込まれている。
『もっちろん! じゃあこれからぁ、穹さんとアリスの一対一番組だね。すっごい贅沢! 穹さん超ラッキー☆』
 知ってか知らずか、アリスは画面を区切るように四角く指を動かして「おさわりは禁止でーす☆」なんて大はしゃぎだ。

『えー……アリスの好み? あはっ、穹さんみたいな人ー、なんて言わないよー、やだぁ! あっはははははははは!』
「ちっ、やっぱイケメンかよ」
『なぁに? 好きになって欲しいの?』
 おさわり禁止だなんて言っておいて、自分から手のひらをさしのべて穹の頬を撫であげる。
 アイドルに気安くして欲しくない――なんて建前と、
 今だけは独占できている――なんて邪な欲望が、ない交ぜ。
 ……。
 虚空に広がる電子のいいねボタンをぽちぽち、ぽちぽち、ぽちぽち。アリスの手を取りかけては押さえ却って燃え上がる欲望。
 ――ある瞬間、アリスはぺろりと唇を舌で舐めた。
『遊びはおしまい!』
 ヒュッ!
 穹は一瞬何が起こったかわからなかった。直後に急所である股間に鋭い痛みを感じた。
『アハハ! バーカバーカバーカ! 猟兵だって時点でごめんだわッ! ……でも、猟兵でもこんな人もいるんだぁ、欲望だ・だ・も・れ』
 悶絶し床を転がる穹の腹を踏みつけるアリスのアバターは、たった今どんどん強化されていく。
(「このアングルはズルイだろ……」)
 安心のホットパンツ着用ですが☆
「……くッ……つぅ……ッ。そう、か、やはり無理か」
 それでも、ここまで強くなってくれた事自体、短時間ながら自分が強く推せた証。嬉しいのは自己満足で、アリスが応えて欲しかったまでいくと過剰で歪んだ承認欲求――なんだ、同じだ。
 色めく嘆息で翳した手には長銃が現われる。刀傷はどうしても醜くなる、綺麗に作ったのならばそのままの姿で息の根を止めてやりたい。
 タァン……! と響く銃声の元、穹が望んだままの額に一粒の苺をつけ、チェックのワンポイントの裾を翻しアリスは倒れた。
 本体は穹に背を向け既に逃走に入っている。逃すわけにはいかないと、銃を構え直すがズキリと痛む下肢に目がくらむ。
「……くっ!」
 脂汗を浮かべトリガーを引いた。
 悲鳴は、した。
 でも、
 足音は、止まらない。
 ブレる視界の中、肩を押さえたアリスが遠ざかっていく。
「待……て……」
 綺麗に殺してやりたいなんて、怖ろしく傲慢だ。それでも、彼女が護りたいcawaiiを穢したくない。
「ッ、く、はぁ、はぁ……」
 願わくば、彼女の命脈を絶つ猟兵も、そんな風に考えてくれりゃあいいなぁ…………。

大成功 🔵​🔵​🔵​

待鳥・鎬
花びら舞う中、鋼切を携えて笑い掛けよう
アリスさんみぃつけた
あっそびーましょー?

……なぁんてね
確かに怒っちゃいるけど、そんなに怯えられたら気が削がれるよ
こんなナリでも薬匙は薬匙、人の苦しむ姿を好みはしないからね
え、今のは故意に脅したのではって?
やだなぁ、ちょっとした挨拶じゃないですカ

とか言いつつ、さっきからUCはしっかり発動しているわけで
花の嵐は目暗ましのように見えて、実はそちらが本命だ

全身麻酔と呼ばれる猛毒はね、まず痛覚と意識が消失する
そうして眠っているうちに、呼吸や循環が抑制されて速やかに死に至る
ちなみに、非生物だろうがバーチャルだろうが関係なく毒の症状を付与する安心設計です
さぁ、おやすみの時間だよ、アリス

人間をただの餌だと嗤うくせに、本当は周りからの評価に過敏な少女なのかもしれない
それこそ、疵が付けば見放されると思うくらいには
でも……いくら褒められても、彼女の不安や不満は晴れなさそうかな
人を食い物にするばかりで、端から信用なんてしていないのだろうから




 肩を貫いた弾丸が前方に抜けて転がった。それを切っ掛けに、今まで猟兵達につけられた傷から止めどない痛みが噴き出してくる。
『……ッ、つぁ……く、はぁ、はぁ……逃げなくちゃ』
 何処へ?
 心に湧いた自問自答に唇が戦慄いた。何処に逃げても猟兵達は追いついてくるというのに?
『もう、さっきの奴で最後なら……いいのに、な……』
「アリスさんみぃつけた」
 願望はあっさりと裏切られる。
 恐る恐る振り返るアリスの目に入ったのは、桃紅色の花びらの乱舞と鈍色の人斬り刀と、
「あっそびーましょー?」
 先ほど秘密を暴いてからかった薬匙の彼女。
 鋼切を携えて距離を詰めてくる待鳥・鎬(草径の探究者・f25865)を前に、アリスは肩を震わせた。
『さっき、は……グロテスク、なんて言ってごめんなさい……お願い、赦して……』
 息も絶え絶えの命乞いを紡ぎ後ずさる。背中がゴンッと電脳の壁にぶち当たっただけですくみ上がり、子供のようにいやいやと首を揺らす。
「……なぁんてね」
 鋼切をおろして苦笑い。
「確かに怒っちゃいるけど、そんなに怯えられたら気が削がれるよ」
『その刀で切り刻むんでしょ……』
「やだなぁ、ちょっとした挨拶じゃないですカ」
 故意に脅すぐらいは、ありでしょ? なんてリラックスを促すように微笑む鎬。こんなナリでも薬匙は薬匙。人の痛みを取り去りたいと願えども苦しむ姿を好みはしない。
『……』
 随分と息が落ち着いてきたアリスは、鎬の胸元にちらりと視線を向けた
 ――そこにある疵痕の秘密を暴いて、嗤った。
『今はアリスの方がグロテスクよね』
 ――今、アリスの全身で疼くのは、これっぽっちも誇れない疵痕。
『醜いでしょ、アリスってば……ふふ、ふふふふ……もう、どうだっていいわ。ダメになっちゃったもの……』
 ああ、やっぱり、周りからの評価に過敏な少女なんだ。人間をただの餌だと嗤うくせに。
 疵が付けば見放されると怯える少女に向けて、取り返しがつかない疵がついたってちゃんと“在れる”と知るヤドリガミは、なんと告げれば救えるだろうか、なんて考え出している。
(「でも……いくら褒められても、彼女の不安や不満は晴れなさそうかな」)
 すぅっと大きく息を吸い込む気配に鎬は唇を閉ざし相手に譲る。
『もう! みんなみんな、あんたたち猟兵のせいなんだからぁ! アリスはただ愉しんでいただけなのに……!』
 強い感情の吐露は、非常に滑らかな話調で行われた。辿り着いたばかりの頃の息も絶え絶えな様子から比べると見違えるようだ。
 だが尻餅をついた体は、手首を踏ん張っても立ち上がることが叶わない。
『こんな目くらましの花びらなんて、ちっとも綺麗じゃないんだからぁ……!』
 ランダムに見えて志向性を持ちアリスの元に降り積もる花びらを、口とは裏腹に片手に集めて掬いあげる。
 淡く、とろりんと、徐々に煌めく瞳が微睡んでいく。
 ――全て、滞りなく、進んでいる。
「綺麗だと思うんだけど、気に入らないかな? この迷宮は綺麗より可愛いと思うけど」
 もうすぐ消え去るであろう電脳迷宮を、鎬は改めて見回した。
 パステルカラーで、ふわんとした踏み心地の道。周辺を彩るのは、遊園地で売っている甘いお菓子の包み紙に似て、チープで鮮やかで可憐だ。
(「包み紙で騙して毒を喰わせて奪うような真似をするのはタチが悪いね」)
『アンタ、なんらいーたいこと、あるろ……?』
 ほら“予定通り”呂律が回らなくなってきてる。
 座り込むアリスの周囲には、夾竹桃の花びらがたき火の落ち葉のように降り積もり堆く集う。
 鎬はアリスの元に近づくと、膝を折って視線を合わせた。
 端から人を信用なんてしていないリリス。少女は瞼を時折必死に持ち上げて怨嗟で尖った眼差しを必死に作る。
 本当は恐がりアリス。捕食してやるって人間を見下して、辛うじて心の平静を保っていた――それがわかっても、幕の引き方は此しかできない。
『……ッ、な……ん』
「何もしないよ」
 実は、もうしてしまっている。
(「騙し云々でアリスのことを言えないよね」)
 踏み込みメスを入れても、それでよしんば考えを改めたとしても、彼女を見逃すわけにはいかないのだ。
 メスを振るうのは医者であって、薬匙にはまた違った役割がある。どのような状態であれ――人の苦痛をできうる限り取り去り安らかに。
「アリス」
『……うぅ、うー…………』
 かくんっと首が前に項垂れさせた少女の肩に手を添える。
「全身麻酔と呼ばれる猛毒はね、まず痛覚と意識が消失する――もう、痛くないよね?」
 こくんっと頷いたのか、麻酔が進んで意識がますます飛んだのか、傍目にはわからない。しかし苦悩の皺は消え、赤子が無心に眠る顔が、ゆうらりゆうらりと船をこいでいる。
 あらゆる疵のついた腕を取り、そっとさする。アバターだろうが命を示す鼓動を今の鎬は感じ取ることができる。
 ……その回数は、どんどん緩慢に数を減らしている。

 この夾竹桃の花びらは、猛毒。
 生物無生物関わらず、何人たりとも逃れることは叶わない。

「さぁ、おやすみの時間だよ」
 すぅっ……と、最期に一度だけ、大きくアリスの胸が膨らんだ。
「アリス」
『――…………………………んー』
 息づかいめいたそれが、ラストコール。それっきり。
 鼓動を止めた主に殉じるように、アバターの輪郭が細かな電子の欠片になって散っていく。
「アリス、どうかいい夢を」
 夢を魅せたであろうあなたにも等しく安らかなる眠りを、どうか、どうか。

ー終ー

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年01月14日


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#シルバーレイン
#締切済みです


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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠アリス・セカンドカラーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト