トリック・トリートの悪戯
●悪戯お化けのお遊戯会
ゆらり、ゆらりと揺れるのは。
ぼんやり光が漏れる愛らしい南瓜のランタン。鮮やかなオレンジ色の南瓜達は悪戯な笑みを浮かべており、その隙間からぼんやりと光が零れ世界を照らす。
『とりっく?』
『とりっく・おあ・とりーとだよ』
ふわふわとランタンに近付くと、お化け達は不思議そうに円らな瞳を瞬いた。彼等はおしくらまんじゅうのようにぎゅぎゅっと近付いて、じいっと瞳を交わし合うと。
『やだやだ、とりっくしたい!』
『じゃあキャンディあーげない』
『やだやだ、とりーとほしい!』
駄々をこねるようにぷるぷると身体を振るう小さなお化け。すると他のお化け達も、そうだそうだと言いたげにぽよんぽよんと身体を弾ませる。
『とりっくしたい?』
一匹が尋ねればこくりと一斉に彼等は頷く。
『とりーとほしい?』
また問い掛ければ、うんうんと彼等は頷く。
トリック・オア・トリート――お菓子をくれないと悪戯するぞ。それはハロウィンならば定番の合言葉。しかし彼等はそれでは満足しないらしい。
『……とりっく・とりーと?』
一匹が零した言葉に、ぱちりと瞳を瞬いて。ぴょんっと身体を跳ねさせて反応をした。
『とりっく?』
『とりーと!!』
繰り返すようにまた他のお化けが呟けば。その言葉は次々に広がり、あらゆるところで楽しそうに騒がれ彼等はぴょんぴょんと跳ねだした。
此処はいつだって浮かれ騒ぐハロウィンの国。
悪戯もお菓子も。そんな我が儘を語る彼等の元に――忍び寄る影が居た。
●とりっく・とりーと
「世界はどこもハロウィン一色ですね。どこも特別な雰囲気で、なんだかワクワクしちゃいます」
楽しげに頬を染めながら笑みを零すと、ラナ・スピラエア(苺色の魔法・f06644)は弾む声で猟兵へとそう告げる。――数多の世界を渡り歩く猟兵達は、その世界ならではの景色を数多見る。ハロウィンと一言で言っても世界によってその色は様々。景色も、楽しみ方も、そしてそのお祭りを楽しむ人々の姿も。
「今回はですね、アリスラビリンスでのハロウィンのお誘いなんです」
その数多の世界の中で、ラナが招くのは悪戯とお菓子に満ちた世界だった。
今回訪れる国は、空を覆うのは夜色に、ほんのり赤みがかったどこか禍々しい満月が浮かぶ世界。辺りの木々は枯れており、ぐるり渦を巻くようにしなっている。すっかり細くなってしまった枝にぶら下がるのはジャック・オ・ランタン型のランプで、至る所で笑みを浮かべた口元から光を零し世界を照らしている。
――そんな、どこか毒々しくも愛らしいハロウィンの国。
「この世界に居る愉快な仲間はお化けさんです。大きさは色々ですけど、どの子も無邪気でとっても可愛いですよ!」
円らな瞳にふにふにとした触り心地。お化けというのは見た目だけで、どの子も愛らしく邪気は無い。ただ、愉しいこと……特に悪戯が大好きというのはいかにもハロウィンらしい性格だろう。そんな彼等はふと、お菓子も悪戯も楽しみたいと思ったらしく、今は独自の『トリック・トリート』と云う両方を望む合言葉を互いに掛け合っているらしい。
無論それは訪れた猟兵達へも及ぶだろう。彼等は森の中で、ジャック・オ・ランタン型の容器が至る所に積み重なる中に潜んでいる。時にはその辺りの枝の上から落ちてきたり、大きなキノコの影から現れて猟兵達を驚かすかもしれないが――それはあくまで戯れで、傷付けるようなことは一切しない。
「お化けさんがいなければ、入れ物の中にはお菓子や飲み物が入っています。何が入っているかのワクワクを楽しむのがお勧めです!」
楽しそうにラナが微笑む通り、このひと時に危険は一切無いのだろう。ただ、宝探しのように南瓜を覗いて、お菓子が出てくればラッキー。お化けが出てくれば悪戯とお菓子をお互いに交換する。そんな、少しだけ欲張りなハロウィンのひと時。
宝探しは無視して、持参したお菓子やお茶を楽しんだり、共に訪れた知人とハロウィンらしい合言葉を紡いでも良いだろう。そう、過ごし方に決まりは無い。ただ、ハロウィンというひと時を、各々の好きなように過ごしさえすれば――この国の愉快な仲間達は満足をし、この世界はほんの少し明るい世界へと変わっていくだろうから。
「目いっぱいハロウィンを楽しんだら、現れるのはオウガ……純白の薔薇を纏う美しい女性です。とても綺麗ですけど、見た目には騙されないで下さいね」
纏う香りは高貴な薔薇の香。花弁のようなドレスに華やかな薔薇飾りの彼女は、所作も美しくまるで薔薇の番人。――けれど、『赤』に特別な思い入れがある彼女は全てを赤に染め上げようとする。
その為、真っ白なお化け達のことは気に入らないようだが――お化け達は怖がりながらも、美しい彼女に興味があるらしい。赤を用いれば仲良くなれるのではないかと、そわそわしながらも遠巻きに猟兵とオウガを眺めているだろう。
「勿論、相手は敵です。仲良くなることなんて出来ないですけど……ハロウィンらしいひと時を一緒に過ごすことは可能だと思います」
赤があれば彼女はそこまで敵意は向けてこないだろうから、一緒に赤いお菓子を楽しんでも良いだろう。または、悪戯と称して攻撃を純粋に攻撃をしても良いだろう。
どのように彼女と過ごすかは、各々の猟兵次第。写し見のように数多の個体がいるようだが、皆同じような特性を持っている。
尚、お化け達と仲良くなりハロウィンを十分楽しんでいれば。地に咲く花々から花火が上がり世界を染め上げる。その熱は世界や猟兵に影響は無いが、不思議なことにオウガへは攻撃となるようだ。
その為、花火が上がればそれだけでオウガにダメージは与えられるだろう。攻撃は花火に任せて、その熱を利用した楽しいひと時を過ごすのもまたひとつの過ごし方。
「お話が長くてすみません。……つまりは、ハロウィンを楽しんで下さいってことです」
最後に今回の依頼を一言に纏めて、ラナは猟兵へと笑いかける。
毎年訪れるイベントではあるが、今年のハロウィンは今日だけ。ハロウィンの国でもそれは特別な日のようで、お化け達も猟兵の姿を今か今かと待っているだろう。
トリック・トリート。
魔法のような悪戯な言葉を、語る瞬間を。
公塚杏
こんにちは、公塚杏(きみづか・あんず)です。
『アリスラビリンス』でのお話をお届け致します。
●シナリオの流れ
・1章 日常(ハロウィン・マーチ)
・2章 集団戦(ブランシュ)
●不思議の国について
常に夜のハロウィンの国。
枯れた木々には、瞳と口から光を漏らすジャック・オ・ランタンが吊るされて。木々に生る実もジャック・オ・ランタン型の器です。
雰囲気的にいかにもハロウィンっぽい感じです。
●愉快な仲間について
まんまるシルエットのお化け達。
手に乗るくらい~抱きかかえられるくらいまでサイズは様々。マシュマロみたいな触り心地。
全体的にゆるキャラみ。お菓子と悪戯が大好きです。
彼等のハロウィンの合図は「トリック・トリート」。出会うと悪戯とお菓子の両方をくれます。お返しすると喜びます。
●1章について
ジャック・オ・ランタンの明かりの下の、宝探しみたいな感じです。
いたるところにあるジャック・オ・ランタンを開けると、中にはお菓子か愉快な仲間どちらかが入っています。
至るところにテーブルもあり、お茶会の用意もされています。
ハロウィンな雰囲気を楽しんで頂ければ大丈夫です。
●仮装について
特に指定が無ければ言及は致しません。
仮装をする場合はお好きな仮装をご指定下さい。南瓜行列の装いでも大丈夫です。『何年の南瓜行列で、何の仮装』かをご記載下さい。(その場合、執筆完了までステータスに活性化しておいて頂けると大変助かります。強制ではありません)
●その他
・全体的にお遊びシナリオです。
・同伴者がいる場合、プレイング内に【お相手の名前とID】を。グループの場合は【グループ名】をそれぞれお書きください。記載無い場合ご一緒出来ない可能性があります。
・全体的に少人数の運営を想定しておりますが、ご参加頂きました人数で調整致します。
・受付や締め切り等の連絡は、マスターページにて随時行います。受付前に頂きましたプレイングは、基本的にはお返しさせて頂きますのでご注意下さい。
以上。
皆様のご参加、心よりお待ちしております。
第1章 日常
『ハロウィン・マーチ』
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POW : 全力でパフォーマンスをする
SPD : 可愛くオシャレな仮装をみんなに見せる
WIZ : 怪しい妖しいお話を始めよう
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●Trick & Treat
ゆらゆら揺れる悪戯南瓜。
秋の仄かに冷ややかさを帯びた風が肌を撫でる中、花々と枯れ木の広場には数多のジャック・オ・ランタンが積み上がっていた。
にっこり笑顔に怒った顔に悲しい顔。様々な表情のその容れ物が、カタカタと揺れ動いたのは気のせいだろうか。
まだかな、まだかな。
なにがもらえるかな。
ひそひそお喋りの声が聞こえてくる気がする中。
さあ、ハロウィンの魔法の一夜を始めよう。
――オレンジからほんの少しはみ出した白いのがいるのは、内緒だよ。
瑞月・苺々子
とりっく・おあ・とりーと!
ももはキョンシ―の仮装で楽しむの!
ジャック・オ・ランタンの中には何があるかしら?
ちょっとドキドキするけれど、開けてみないとわからないからね
ももが見たことのないお菓子、たくさん出会えればいいな!
まかろんとか、どーなつとか!
可愛い可愛いイタズラおばけさん
ももはどんなイタズラも受けて立つの!
折角出会えたのだから、お返しにこの真っ赤なキャンディーをあげるね
ふふふ。イチゴ味のキャンディーだと思ったかしら?
実は……酸っぱい梅味なのだ!
イタズラとお菓子を一緒に楽しめるなんてステキでしょ?
……おいしくないって怒らないといいのだけど……
※2021年11月2日完成のJCの服装で参加します
●
ひらり、ひらりと。夜の世界に浮かぶ照明に、楽しげな足取りに合わせ揺れる動く蜘蛛の巣スカートが照らされる。
「ジャック・オ・ランタンの中には何があるかしら?」
辺りいっぱいに積まれたジャック・オ・ランタンの容れ物を見回して。大きな瞳を輝く水面のように輝かせながら、瑞月・苺々子(苺の花詞・f29455)はことりと小首を傾げる。ドキドキと逸る鼓動。同時にそれはワクワクとした心地も混ざっている。
「ももが見たことのないお菓子、たくさん出会えればいいな!」
キョンシーらしい長い袖を揺らして、ぴょんっと跳ねてジャック・オ・ランタンへと近付き、恐る恐るパカリと開けてみれば――。
『とりっく・とりーとー!!』
その中から飛び出してきたのは、真っ白なお化け。すっぽり容器に収まる彼は、今か今かと蓋が開く瞬間を待っていたのだろう。
「可愛い可愛いイタズラおばけさん、ももはどんなイタズラも受けて立つの!」
水面の瞳と円らな瞳が交われば、苺々子はとんっと自身の胸を軽く叩き彼へとアピールをする。その真っ直ぐな苺々子の言葉に、お化けはキラキラと瞳を輝かせて。
『どーん!』
擬音と共に、小さなおててを振り上げて――パチパチと光る粒がお化けの手から放たれた。その光が苺々子の頬へと触れれば、弾けるようなほんの少しぴりっとした感覚が。
悪戯と云うには随分と可愛らしい気もするが。どう? と言いたげにキラキラ瞳を向けてくるお化け的には満足らしい。次に降ってきた芳ばしいコウモリ型のクッキーを受け取って、嬉しそうに笑った苺々子はお返しに真っ赤なキャンディーを差し出した。
「ふふふ。イチゴ味のキャンディーだと思ったかしら? 実は……酸っぱい梅味なのだ!」
えへん、と少しだけ胸を反らせて苺々子は紡ぐ。悪戯とお菓子を一緒に楽しめるなんてステキでしょ? と紡ぐ通り、これが彼女のトリック・トリート。
『~~~~っ!』
苺々子の言葉の時、お化けは既にお菓子を大きな口を開けて頬張った後。その酸味にかぷるぷる身体を震えさせて驚いたようだけれど――。
『びっくり! おいしい!』
おいしくない、と怒られることを少し心配した苺々子の心とは真逆に、お化けは嬉しそうに瞳を輝かせて、ぽよぽよと身体を揺らしている。どうやら両方が味わえることが特にご満悦の様子。
『おいしい?』
『なあに?』
嬉しそうなお化けの反応に、辺りに隠れていたお化け達が何時の間にやら姿を現して。むぎゅっと苺々子へと近付いていた。
大成功
🔵🔵🔵
浮世・綾華
【灼熱】
だな、まさにハロウィンの国
俺は黒猫のシーツおばけ
お菓子じゃなくて、おばけを探すの?
一度瞬いたが確かにベルらしい行動だ
おばけ、探したらお菓子も貰えるかもだしな
分かったふと笑う
そいじゃ、俺は高めのところから探そうかしら
鍵刀に掴まってベルの傍らでふいと浮かぶ
え、どこどこ
おわ、いた
ベルみたい?
よ、おばけくん
ふわふわと堪能するベルともふられおばけを眺める
触る。そう告げてキャッチ
ほんとだ
お前、柔らかいねえ
やっぱ両方狙ってたのか
じゃあ俺も
トリック・トリート
悪戯はベル行きでよろしく
俺は代わりに用意して来た猫饅頭あげる
まさかの悪戯には、きっと瞬いて
けれども楽しい悪戯には
きっと笑顔がこぼれてしまうのだろう
ベル・ルヴェール
【灼熱】
雰囲気のある国だな。
僕はコアラのシーツを被って参加をする。
お化けはどこだ?
僕は悪戯が好きなお化けに会いたいんだ。
アヤカ、お化けを探すぞ!!!
僕は辺りを見渡しながらお化けを探そう。
ランタンの影に何かがいたな……。
もしかしてお化けか?
僕みたいなお化けだ。
お化けを捕まえて触るぞ。
これはマシュマロみたいな触り心地だ。
僕はお化けを初めて触った。
アヤカも触ってみないか?
トリック・トリートって言えばお菓子も悪戯もくれるみたいだ。
僕は両方欲しいから迷わずに言うぞ!
「トリック・トリート!!!」
どんなお菓子と悪戯をくれるのだろう!
悪戯は僕行きか。
楽しい悪戯だったらアヤカにもよろしくな。
●
「雰囲気のある国だな」
ぴょこんと揺れる大きな耳のついた、グレーのコアラシーツの下から覗く緑色の瞳をひとつ瞬いて、ベル・ルヴェール(灼熱の衣・f18504)が呟けば。傍らの黒猫シーツの浮世・綾華(千日紅・f01194)もこくりと頷きを返した。
「お化けはどこだ?」
きょろきょろとベルが辺りを見回せば、所狭しと詰まれたジャック・オ・ランタンがランタンの灯りに照らされぼんやりと浮かび上がっている。木々の影に、花々の影に。お化けはいるのかもしれないが、今のところは上手に彼等は隠れている様子。
「お菓子じゃなくて、おばけを探すの?」
「僕は悪戯が好きなお化けに会いたいんだ。アヤカ、お化けを探すぞ!!!」
真っ直ぐな眼差しで語るベルの言葉に、綾華は緋色の瞳を瞬いた後笑みを零す。――確かに、ベルらしい行動だと思ったから。
そして悪戯とお菓子が大好きな彼等に出会えば、お菓子を貰えるだろうと気付き。綾華も頷きと共に歩み出す。じゃらりと鎖の音を響かせて、鍵刀と共に高い所を探し出す長身の男。そんな彼の背中を見送った後、ベルが怪しそうなゆらゆら揺れるランタンの影を覗いてみれば――。
『っ! と、とりっく・とりーと!』
見つかったことに驚いたのか、びくりと身体を揺らしたお化けは負けずに合言葉を。響いた言葉にお化けを見つけたのだと気付いた綾華も、慌てて駆け寄ってくる。
キラキラ期待に満ちた視線にどこか似たものを感じたベルは、そっと抱きかかえられる程の大きさの身体へと手を伸ばす。初めて触れるお化け。その触り心地は――。
「これはマシュマロみたいな触り心地だ。アヤカも触ってみないか?」
「触る」
隣へと問い掛ければ、綾華は即答。その姿に小さな笑い声を零しながら化けを差し出した。勿論お化けも嫌がる様子は無く、綾華にも合言葉を紡ぎ期待の眼差しを。
「ほんとだ。お前、柔らかいねえ」
ふにふにと、ふんわりマシュマロな触り心地を堪能しながら語り掛ければ。お化けは褒められたと思ったのか、嬉しそうに笑っている。
「トリック・トリートって言えばお菓子も悪戯もくれるみたいだ」
戯れる綾華とお化けを見ながら、そのふわふわの頬辺りと突いて。両方欲しいと素直に欲を紡ぐベル。そのまま彼が合言葉を紡げば――綾華の腕の中のお化けは嬉しそうに小さな手をパタパタと動かした。
「じゃあ俺も。トリック・トリート。悪戯はベル行きでよろしく」
愛らしい猫饅頭をお化けの口許へと運びながら、綾華がそう紡げば。ベルが少し驚いた様子だけれど、言葉を返す間もなくお化けが動く。
『とっておきー!』
瞳を閉じて。ぷるぷる身体を震わせて――小さな手を伸ばした彼から飛び出したのは、キラキラ輝く花の欠片。ひらりひらり、ベルの上から降り注ぐそれは悪戯と呼ぶには随分と可愛らしい気もするが、驚かすことが出来たことがお化け的には満足の様子。どやっとした表情を浮かべている辺り、先程の言葉通り彼的にはとっておきの悪戯らしい。
ふんわり鼻をくすぐる花弁の香り。
ひらりひらりと落ちる花弁がベルの鼻をくすぐれば、ぽんっと小さく弾けほんの少しのくずぐったさが訪れる。けれど弾けると共に花の香りでは無く、辺りに漂うのは甘い甘いお菓子の香りへと変化する。
「アヤカにもよろしくな」
その可愛らしくも楽しい悪戯に、猫饅頭を頬張るお化けを撫でながらベルが紡げば――綾華はほんの少し驚いたように瞳を瞬く。
「俺に?」
その反応が精一杯。すぐにお化けは手を伸ばし、先程ベルへと降らせたのと同じように花を宙から降らせた。先程は寒色系だったが、今度は暖色系の色合いで。香る色もほんの少し甘さが強い気がする。
その香りに、猫耳に触れて弾ける心地に。綾華は驚いたように瞳を瞬き、そんな彼の姿を見れば『どうだ』と言いたげに身体を逸らすお化けの姿はとても楽しげで。
綾華の腕の中の彼を見下ろして、二人の男は自然と笑みを零し合っていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ラクシュミー・マリ
【花姫】
仮装:真っ白ふわふわ狐
「このジャック・オ・ランタンにお化けさんかお菓子が入っているのですね。
ローザ姉さまとミュゲちゃんと…お菓子のお宝探しの始まりね」
大きな耳としっぽをふわふわさせて
てくてく歩いて、ジャックを見つければ
コンコン小さなノックをひとつ
さぁさ、現れるのは…??
「ミュゲちゃん、一緒に覗き込んでみましょう?」
お菓子を見せ合いっこしたら楽しいね
お化けさんには、まあるい鈴カステラをあげますね
今夜のわたしは真っ白な化け狐さんです
ふわふわな尻尾がローザの髪の先をそよそよ揺らす
「トリック・トリート……ローザ姉さま」
慣れないことに、そっとはにかんで
控えめに、お菓子をおねだりする両手を差し出す
ローザ・ブラッド
【花姫】
仮装:茨姫
「宝探し…
何が出るかはお楽しみね
どんな宝と出逢えるかしら?」
楽しそうに2人に微笑向ける
噫、2人の仮装はとても愛らしいこと
ジャックの明かりを見つけて覗き込む
「これ、かしら…?」
心躍らせながら見るもお化けが出てくれば驚いて目を丸くし
「ええ、ミュゲ
この子が噂のお化けさんみたい
お化けさんも楽しそうね
いいわ。お菓子、交換してあげましょうか」
背中に隠れるミュゲを安心させるように撫でてあげながら
楽し気にお化けにお菓子を贈る
はにかむラクシュミーの魔法の言葉
尻尾が揺らす髪を心地よく思いながら
愛らしい姿に笑みを1つ零す
「それでは貴女にも特別なお菓子を…」
可愛らしい手に乗せたのは南瓜のマフィン
ミュゲ・ブランシュ
【花姫】
仮装:シスター
「いっぱいジャックをみつけられたらうれしいわ!
みつけたぶんだけおもいでもおかしもふえるんだもの!ね!」
大きく頷いてにっこり咲う
そうして2人の手を取って出発するの
「あ、あった!あれがジャックね!」
居ても立っても居られないミュゲにミーちゃんは声を掛けてくれた
わくわくしながら一緒に中身を覗くのよ!
出てくるおばけちゃんは可愛いといいなあ…
「ローちゃん、ローちゃん!そのこがうわさのおばけちゃん?かしら?…かしら?」
ジャックからふよふよと浮き上がる何かをローちゃんの背中に隠れながらまじまじ見つめたの
「まんまるでとってもキュートね!ミュゲもみつけたおかしをあげちゃうわ!とくべつ、よ?」
●
ゆらゆら揺れるランタンの灯りに照らされるのは、沢山詰まれたジャック・オ・ランタン。怒っていたり泣いていたり、様々な表情を浮かべるそれは大きさも様々で。
「このジャック・オ・ランタンにお化けさんかお菓子が入っているのですね」
金とピンク、二色の瞳でじっとそれらを見回すと、ラクシュミー・マリ(Code:Lotus・f29578)はぽつりと言葉を零す。大きな瞳に宿る輝きが隠せないのは、共に訪れた者達との宝探しに嬉しさが満ち溢れているからか。
「宝探し……。何が出るかはお楽しみね。どんな宝と出逢えるかしら?」
同じように辺りを見回して、にっこりと楽しそうに笑みを零すローザ・ブラッド(Code:Rose・f29560)。その笑みを見れば、ミュゲ・ブランシュ(Code:Muguet・f29677)の若葉のような瞳をキラキラと輝いた。
「いっぱいジャックをみつけられたらうれしいわ! みつけたぶんだけおもいでもおかしもふえるんだもの! ね!」
満面の笑みと共に差し出される小さな手を取って、三人は一緒に歩み出す。どの南瓜にしようと笑い合って、語り合って。歩みを進めればひょこひょこと揺れ動くラクシュミーの真っ白な尾と、ひらひら揺れるミュゲの純白のヴェール。――そんな、歩む二人の姿を見て。ローザは愛らしいとこっそり心に想う。
「あ、あった! あれがジャックね!」
ひそりと笑んだローザに気付かずに、跳ねるような声を上げたのはミュゲだった。
彼女の声に合わせて金とピンク、そして薔薇色の四つの瞳が向かう先には、特別大きなジャック・オ・ランタンが置いてあった。いかにも何かありそうな大きさだけれど、お宝が入っているとしたら特別大きなお菓子が入っていそうなワクワク感もある。
手を繋いだまま近付いて、コンコンっとラクシュミーは控えめにノックをする。暫し耳を澄ませてみるけれど、特に物音などはしない。
「ミュゲちゃん、一緒に覗き込んでみましょう?」
傍らのミュゲがそわそわしているのに気付いたのか、ラクシュミーが声を掛ければ、彼女はぱあっと嬉しそうに笑みを零し大きく頷く。
蓋に二人で手を伸ばして、こくりと頷き合って、大きくて重い蓋を開けてみれば――。
『とりっく・とりーとーー
!!!!』
待ってましたと言わんばかりに、飛び出てくるのは大きなお化け。魔女の帽子をちょこんと乗せた愛らしい彼は、飛び出たと同時に辺りにキラキラ輝く星を散らした。
「ローちゃん、ローちゃん! そのこがうわさのおばけちゃん? かしら? ……かしら?」
「ええ、ミュゲ。この子が噂のお化けさんみたい」
不意に現れたお化けにびっくりして、慌ててローザの後ろに隠れるミュゲ。あわあわと慌てながらも、ジャック・オ・ランタンからふよふよと浮き上がる彼をミュゲは大きな瞳で凝視する。少し怯える彼女に気付き、そっとローザが背に隠れるミュゲを撫でてあげれば、その温もりに彼女はほっと安堵の息を零した。――落ち着いて見てみれば、真っ白の身体に円らな瞳。見た目は確かにお化けだけれど、同時に愛らしさも持っているとミュゲは気付き、しっかりとローザの背から白のドレスを掴む手の力が緩んだ。
その様子に気付いたローザは微笑んで。純白のドレスの裾をひらりと揺らして、茨の纏う腕をお化けへと伸ばす。
「お化けさんも楽しそうね。いいわ。お菓子、交換してあげましょうか」
「お化けさんには、まあるい鈴カステラをあげますね」
ローザの言葉を合図にするように、ラクシュミーも笑みと共に用意していたまん丸の鈴カステラを差し出した。ころんと小さな手に転がれば、甘い香りが漂いお化けは嬉しそうに瞳を閉じて身体を揺する。
そんな彼の姿に、そして穏やかに笑む二人の姿に。ミュゲも大丈夫だと思ったのか、お化けへと近付くと。
「まんまるでとってもキュートね! ミュゲもみつけたおかしをあげちゃうわ! とくべつ、よ?」
先程別のジャック・オ・ランタンから見つけた鈴蘭の形をしたアイシングクッキーを差し出せば、小さなお手てを伸ばして嬉しそうにお化けは受け取った。
『とりーと、とりーと』
お返しと言いたいのだろう。お菓子をくれた彼女達に、呪文のようにお化けが紡ぐと同時に、不思議なことにぽろぽろと袋に入ったキャンディーが降ってきた。
ぽてん、と頭に落ちる衝撃がほんの少し痛かったけれど。それは彼なりの悪戯心なのかもしれない。頭をさすりながら、ころころとヴェールを伝ったキャンディーを手にすればミュゲは嬉しそうにその場で跳ねている。
そんな愛らしい彼女を見守るようにローザが眺めていれば――そっと彼女の近くへと近付く真っ白な化け狐の姿が。大きな尾が長いローザの銀髪を揺らせば、どうしたのとローザは小首を傾げる。
赤い瞳と交わる二色の瞳。
そうっと息を整えて、唇を開いたラクシュミーから零れるのは。
「トリック・トリート……ローザ姉さま」
この日、此の場限りの魔法の言葉。
はにかむ彼女の姿に、くすぐる尻尾の柔らかさに、心地良さを覚えながら。
「それでは貴女にも特別なお菓子を……」
そうっと笑みを零しながら、ローザが取り出したのは南瓜のマフィン。温かな橙色の欠片が小さなラクシュミーの掌に乗せられれば、彼女は嬉しそうに笑みを深める。
慣れないことだけれど。こうして言葉を繋いだ証を手に出来れば、幸せが満ちる。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
紫・藍
【藍九十】
仮装は今年の南瓜行列で懸衣翁なのでっす!
ことのおねーさんと合わせなのでっす!
ふ、夫婦、なのでっす!
気分はすっかり肝試しデートな藍ちゃんくんなのでっす!
手を繋いで森を探検なのでっすよー!
南瓜を見つけたら一緒に開けたり覗いたり!
驚かされたら あやーっ! とびっくり!
怖がると言うよりも、驚かそうとしてくださる方のノリや雰囲気に自然とノッちゃう感じなのでっす!
でっすがでっすが、今日の藍ちゃんくんとおねーさんは懸衣翁と奪衣婆なのでっしてー。
いたずらにはお仕置き……お化けさんにお洋服はないのでっしたー!
降参なのでっす!
藍ちゃんくんからはコーヒーや紅茶なのでっす!
落雁を溶かしても美味しいのでっす!
末代之光・九十
【藍九十】
仮装は奪衣婆だよー。その……ええと。藍の仮装と合わせでその(ごにょごにょ)
そう夫……ふ。ふ。ふうあわわわわわ(熱暴走)
一緒にハロウィンを楽しもうって誘われて来たんだけど…肝試しデート……デート……!
(照れながらしっかり手は繋ぐ)
宝さがし?
成る程。じゃあええと……あ。これか。これを開けるのかな?
(パカリと開けて、お化けが出て)
わひゃあ!?
わわっ何この子!?え。トリック・トリート?両方!?我儘だな君達!
そんな悪い子は奪衣婆らしく服を剥いじゃ……えないね服着て無いし!?
何と言う深謀遠慮…(言いがかり)
ぐぬぬ、完敗だよ…大人しくお菓子を渡そう。
ん?お菓子は羊羹と落雁だよ?仮装に合わせた感じ!
●
夜の森で、輝く明りは橙色の優しくもどこか不気味な光。
ひらりお揃いの着物をはためかせて、繋いだ手を揺らしながら二人の姿が森を歩む。
「気分はすっかり肝試しデートな藍ちゃんくんなのでっす!」
楽しげに声を上げ、歩む紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)の少し後ろで、繋いだ手に引っ張られるようにして歩む末代之光・九十(何時かまた出会う物語・f27635)の顔は彼の声で真っ赤に染まっていた。
(「肝試しデート……デート
……!」)
一緒にハロウィンを楽しもうと誘われて来たのは良いが、改めて彼の紡いだ言葉に動揺が走る。合わせて、纏う装いがお揃いの懸衣翁と奪衣婆であることも、彼女の動揺を更に強くさせていた。
そんな彼女の姿に気付いてかいないのか、手は離さずに藍は目の前のジャック・オ・ランタンへと手を伸ばす。
「てや!」
勢いよく開けてみれば、ふんわり漂う甘い香り。覗き込めばそこにはジャック・オ・ランタン型の器に入った南瓜プリンが眠っていて、嬉しそうに彼は手に取りひとつを九十へと差し出してくれた。
プリンを手に取り、そうか……と。九十は宝探しをしに来たのだと思い出す。
「成る程。じゃあええと……あ。これか。これを開けるのかな?」
きょろきょろと辺りを見回して。目に留まったジャック・オ・ランタンへと手を伸ばせば、藍も一緒になって覗き込む。
恐る恐る。ゆっくりとした手付きで九十が蓋を開ければ――。
『とりっく・とりーとーー!!』
「わひゃあ!?」
「あやーっ! とびっくり!」
飛び出たお化けの声と姿に、思わず声を上げてしまう二人。――だが、素直に驚き藍の後ろへ隠れた九十とは違い、藍はその驚かそうとしているお化けのノリや雰囲気に自然とノって声を上げてしまった様子。
その証拠に目を丸くする九十とは違い、お腹を抱えて藍は笑っている。
「わわっ何この子!? え。トリック・トリート? 両方!? 我儘だな君達!」
我儘、と言われればどうやら褒め言葉だったらしく、お化けはえへんと胸を張る。再び強請るように『とりっく・とりーと』と彼が言えば、キラリと藍の瞳が光った。
「でっすがでっすが、今日の藍ちゃんくんとおねーさんは懸衣翁と奪衣婆なのでっしてー」
「そんな悪い子は奪衣婆らしく服を剥いじゃ……えないね服着て無いし!?」
悪戯をしようと彼をじっと見れば、つるつるの白い身体は一切の服を纏わずに。服を剥ぐ妖怪である彼等らしい悪戯は出来ない。衣服が無い場合は亡者の生皮を剥ぎ取るとのことだが、さすがにそれは出来ないから――。
「降参なのでっす!」
「ぐぬぬ、完敗だよ……大人しくお菓子を渡そう」
繋いでいないほうの手を挙げて藍が降参をアピールすれば、九十が用意していたお菓子をお化けへと差し出した。
『なあにー?』
差し出されたお菓子を見て、きょとんと瞳を瞬くお化けさん。彼の反応に不思議そうに九十は小首を傾げる。
「ん? お菓子は羊羹と落雁だよ? 仮装に合わせた感じ!」
自信満々に語る通り、和風な装いに合わせたお菓子も和風で揃えて。艶々羊羹に、秋らしい紅葉の落雁はハロウィンらしさはあまり無い為此の世界には無いのだろうか。
好奇心旺盛なお化けは、初めて見るお菓子に瞳を輝かせて。小さな手を伸ばして九十からお菓子を受け取れば、迷うこと無くぱくりと落雁を口に含んだ。
『あまーい! とけるー!』
ほろほろ溶ける心地が嬉しかったのだろう。頬の辺りに手を当てて、嬉しそうに身体を揺するそんな彼の様子を見て、藍は湯気の立つカップを差し出した。
「藍ちゃんくんからはコーヒーや紅茶なのでっす! 落雁を溶かしても美味しいのでっす!」
ふんわり漂う優しい香り。
その湯気の奥で、藍はギザ歯を輝かせながら笑みを浮かべていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
葬・祝
【彼岸花】
カフカに合わせ、三月うさぎの仮装
本人は「不思議の国のアリス」を良く知らない
兎の仮装って流行ってるんです?
この間も、ばにぃぼぉい?の仮装を渡されましたけど
先日、某鏡のヤドリガミと出掛けた少し早いハロウィンを思い出して
籠を手に、カフカと手を繋いで入れ物を見て回りましょう
私自身はお菓子より、私の愛い子が楽しそうにしているのを見ているのが楽しいんですよ
良かったですね、なんて笑って
カフカったら、あんまり調子に乗ると……嗚呼、ほら
くふふ、驚かされちゃいましたねぇ
はい、ちいさなおばけさん
君もお菓子をどうぞ
自分の籠から蝙蝠チョコをひとつ
ふふ、だってお前が慌ててるのを見るのも好きなんですもの
神狩・カフカ
【彼岸花】
2020南瓜でアリスの帽子屋
おっ、はふりも似合ってンじゃねェか
流行り?そうなのか?
ばにぃぼぉい…ンだそりゃ
なんだかよからぬ仮装な気がするが…
あいつ、また余計なこと吹き込んでやがるな
はふりに手を引かれて
気を取り直して宝探しといこうか
こりゃ隠れ鬼ってところかねェ
ばればれの隠れ方を見つければくすくす
とりあえずお菓子をいただこうか
手近の容れ物を開けて
おっ、見ろよはふり
早速見つけられるとはなァ
童心に返りつつ楽しんでいれば
大きな容れ物を見つけて
こりゃ何が入ってるんだか
なんて開けてみれば
油断していたところを驚かされて
うわっ…!やるなァ、お前さん
おばけの頭を撫でてやる
笑い過ぎじゃねェか?
…そうかよ
●
「兎の仮装って流行ってるんです?」
黒の髪からぴょこんと生える兎の耳を弄りながら、葬・祝( ・f27942)は不思議そうに声を零した。ベストを合わせた少しきっちりした装いは、いつもの彼とは随分と違った雰囲気に見せている。
それは和装にシルクハットを合わせた、和風帽子屋スタイルの神狩・カフカ(朱鴉・f22830)に合わせた仮装なのだが、本人はどうやら何の仮装だかわかっていない様子。この間出掛けた際にばにぃぼぉいの仮装を渡されたと祝が紡げば、カフカはどこか心配そうに溜息を零した。
けれど、何も知らないのならそれで良い。
今此の場での、装いが似合っているのならば。
祝が手を伸ばせば、自然と二人の手は繋がれる。ぼんやりと温かな橙色の光がランタンから零れる中、彼等はジャック・オ・ランタンが積み上がる様子を見つめた。
「こりゃ隠れ鬼ってところかねェ」
様々なジャック・オ・ランタンに隠れる存在が居ると聞いたが――オレンジのそれからはみ出る白いのを見つければ、カフカは思わずくすくすと小さな声を零してしまう。
今か今かと、見つかるのを待っているあの子を見つけても良いけれど。ここはちょっぴり意地悪をして、まずは手近のジャック・オ・ランタンから。少し小さな容れ物の蓋を、戸惑い無く開けてみれば――。
「おっ、見ろよはふり。早速見つけられるとはなァ」
どこかワクワクとした色を隠せずにいる金の瞳で、開けた中を覗けばそこには色とりどりのキャンディが詰め込まれていた。オレンジに紫に黒に、包装はハロウィンっぽい配色だが、味にも少しだけ悪戯が潜んでいるかもしれない。
輝かしいキャンディを見て、楽しげに笑うカフカを見て。祝はひとつ笑みを零すと。
「良かったですね」
微笑みながら、手にした籠を揺らしてそう紡ぐ。――祝にとっては。お菓子を探したり貰うよりも、彼の愛い子が楽しそうにしているのを見ているのが楽しいのだ。だから、キャンディを手にして次なるジャック・オ・ランタンへと歩み寄る彼の姿を見ているだけで充分に満たされた気持ちになる。
「こりゃ何が入ってるんだか」
カフカの目に留まったのは、一際大きな容れ物。大人の彼が抱きかかえられる程の大きさの立派なジャック・オ・ランタンには、どんなお宝が眠っているだろう。その大きさに相応しい大きな大きなお菓子だったらと、ワクワクとした心地が隠せないのは、少し童心に返ったかのようにも見える。
「カフカったら、あんまり調子に乗ると……」
祝の心配する言葉を無視して、期待を隠し切れずに蓋へと手を掛け開けてみれば――。
『とりっく・とりーとー!』
「うわっ……!」
飛び出たお化けに、思わず覗く左目を見開き声を上げるカフカ。その声にお化けはどうだ、と言いたげな満足げな表情を浮かべている。
「くふふ、驚かされちゃいましたねぇ」
「やるなァ、お前さん」
その姿に楽しげに祝が紡ぐ通り、すっかり油断していたカフカは素直に驚かされたことに完全に負けを認め。目の前のお化けをそっと撫でてやれば、彼は嬉しそうに瞳を閉じてきゃっきゃとはしゃいでいる。
「はい、ちいさなおばけさん。君もお菓子をどうぞ」
そんな小さなお化けへと近付いて、祝が持参した籠からコウモリ型のチョコを差し出せば、お化けは『きゃー!』と嬉しそうな声を上げた。どこから取り出したのか、オレンジと紫の縞々模様のマシュマロを、お返しにと二人へと手渡してくれる。
ふにふにしたマシュマロは、先程触れたお化けと同じ触り心地。
思い出すようにカフカが手元を弄っていれば――変わらず祝は小さな笑みを零しており。ちらりと横目で彼を見て、カフカは唇を開く。
「笑い過ぎじゃねェか?」
「ふふ、だってお前が慌ててるのを見るのも好きなんですもの」
どこか満足げな祝の姿を見れば、これ以上の言葉は出てこない。溜息と共にカフカは「……そうかよ」の一言だけを零して、マシュマロを口へと放り込んだ。
――広がるオレンジの香りに、ほんの少しの苦みが混じっていたのは何のお味だろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
朧・ユェー
【月光】
今年の南瓜衣装のヴァンパイア
おやおや、沢山の南瓜のお顔があるね
お菓子を焼いて来たんだ
テーブルと紅茶を用意するから
ルーシーちゃんは宝探しをしておいで
この子と一緒に
肩に乗ってた黒雛をルーシーちゃんの両手にそっと置く
ぴぃぴぃと鳴いて、一緒に探そうと言っている
黒雛がそっと南瓜の瞳を突く
同じサイズの小さなお化けが出てきて
びっくりしてぴぃぴぃ鳴く
撫でられて手をスリスリ
もう一つの方はお菓子
ぴぃーと嬉しそうに鳴く
小さな二人の冒険を椅子に座ってくすくすと眺めて
小さな冒険者達、用意が出来たからお食べ
そしてお化けさん達も出ておいで
悪戯したらお腹すいたでしょう
トリック・オア・トリート
こっちで一緒に食べようか?
ルーシー・ブルーベル
【月光】今年の仮装、お花の妖精さんよ!
イタズラもお菓子も楽しみたいなんて
本当にハロウィンがお好きな方々なのね!
ゆぇパパのお菓子!?
うんうん!宝探しはルーシーと黒ヒナさんにお任せよ
黒ヒナさん、がんばりましょうね
えいえいおー!
あの南瓜さんがアヤシイと思うの
あっ黒ヒナさんが突きに…わわっ
だ、大丈夫よ!ルーシーがついてる
鳴く小さな丸い体を指先で撫で
…自分もビックリしたのは秘密、ヒミツよ
ねえこっちはどう?
大きな南瓜さんを開けてみると…お菓子!
黒ヒナさん見て見て!
一人と一羽で大喜び!
はあーい、パパ!
お化けさんたち出てきて…えっ、こんなに居たの?
ふふー、素敵なお茶会はビックリして下さる?
トリック・トリート!
●
ひらり、ひらり。
橙色の光に照らされるは、花々を纏う可憐な妖精――では無く、妖精の装いをしたルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)だった。
「イタズラもお菓子も楽しみたいなんて、本当にハロウィンがお好きな方々なのね!」
キラキラ楽しげに左の青い目を輝かせるルーシーも、負けずにハロウィンを楽しみたい様子。そんな愛らしい彼女の背中を眺めて笑みを零すと、朧・ユェー(零月ノ鬼・f06712)は辺りの南瓜の様々な表情を眺めた後――。
「お菓子を焼いて来たんだ。テーブルと紅茶を用意するから、ルーシーちゃんは宝探しをしておいで」
「ゆぇパパのお菓子!?」
上がる声と同時にそっと小さな彼女の両手に乗るのは、ふわふわの黒雛。ぴぃぴぃと愛らしい鳴き声を上げる彼と一緒に、頑張ろうとルーシーは腕を上げて歩み出した。
さくり、さくり。
小さな足音を立てて歩むルーシー。あっちにもこっちにも南瓜はいっぱいだけれど、彼女の目に留まったのは楽しそうなにっこり笑顔を浮かべる南瓜。
「あの南瓜さんがアヤシイと思うの」
少し声を控えめに黒雛へと少女が語り掛ければ、パタパタ小さな翼を羽ばたかせて黒雛が目の前にある南瓜の瞳をクチバシで突いた。すると――。
『とりっく・とりーと!』
「ぴぃー!」
飛び出てきたのは、掌サイズの小さなお化け。けれど小さな黒雛とはほぼ同じサイズで、彼は驚いてしまいぴぃぴぃ鳴いて身体を震わせる。
「だ、大丈夫よ! ルーシーがついてる」
掌の彼を優しくルーシーが撫でてあげれば、徐々にその震えは収まって。黒雛は甘えるようにルーシーの手へとその身を擦り付けた。
小さなお化けをひとつ突いて悪戯をあげて、お菓子はまた後でとルーシーはお別れを告げれば次なる南瓜へと跳ねるように歩む。
「ねえこっちはどう?」
次なる目標は、大きな南瓜。さっきと同じでお化けがいるか、甘いお菓子があるのかは外からでは分からない。迷うようにうろうろ見回して、意を決したように蓋を開ければ。
「黒ヒナさん見て見て!」
「ぴぃー」
キラキラと輝く美しさで眠っていたのは、ステンドグラスのような飴装飾が美しいクッキー。南瓜にコウモリに棺桶に、どれもハロウィンらしい形だがその装飾は芸術品のように美しい。輝くその色にルーシーが嬉しそうに声を上げれば、黒雛も小さな翼を広げて嬉しさをアピールした。
――そんな小さな少女と小さな雛の大冒険を、眺めるユェーの眼差しはどこまでも優しい。くすくすと小さな笑みを零しながら、慣れた手付きでお茶会のセットを終えれば、丁度彼女達の大冒険も区切りが良い様子で。
「小さな冒険者達、用意が出来たからお食べ」
「はあーい、パパ!」
掛かる声にルーシーは手を挙げて返事をする。彼女の肩の黒雛も、同じように鳴き声を上げて返事をしたが――このお茶会の参加者は、彼女達だけでは無かった。
「そしてお化けさん達も出ておいで。悪戯したらお腹すいたでしょう」
「お化けさんたち出てきて……えっ、こんなに居たの?」
ユェーの声に、『おかし?』『あまい?』『いたずら?』等々、それぞれに言葉を零しながらお化け達が姿を現す。ある者はジャック・オ・ランタンから。ある者は木の影から。ある者は枝の上から――次々に出てくるお化けの数はいっぱいで、その姿にルーシーは瞳を見開いて驚きを露わにした。
けれど、大好きなユェーのお菓子を一緒に食べてくれる人なら大歓迎。切り株のテーブルに用意されたお菓子はどれもこれも美味しそうな香りをしていて。南瓜や栗を使った季節のお菓子が多いような気がするが、その鮮やかさにお化け達は瞳をキラキラさせて、喜びを表しているのか身体を伸び縮みさせている。
「ふふー、素敵なお茶会はビックリして下さる?」
「トリック・オア・トリート。こっちで一緒に食べようか?」
黒の装いからすらりと伸びる足を組んで、長いマントから伸びる腕でカップを差し出して。微笑むユェーの声を合図にするようにハロウィンのお茶会は始まった。
――さあ一斉に、トリック・トリートと叫ぼうか。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
小宮・あき
すずちゃん(f02317)と。
仮装なし。
すずちゃんの仮装に、おお、と拍手。
スマホを向けて、あとでSNSあげていい? って聞いて。
持参したのはジャーマンクッキー。
宝探しでお会いした方に、お渡しするために。
アイシングで可愛くハロウィンの仮装を施したクッキー。
赤い月を見上げて。
禍々しいはずなのに、周囲のハロウィンに溶け込んで、それさえファンシー。
テンション高めに先を歩くすずちゃんの後ろを微笑みながら進みます。
すずちゃんと話をしながら、時折、ジャック・オ・ランタンの容器を覗いて。
こんにちは。トリートをどうぞ。
あら、こちらはお菓子の容器でしたね。
雨の日に?
怪談話を聞きながら進みますが、きっと私は怪談話と気付けないでしょう。
西洋人の私にとって、ホラーの主流は、ゾンビとか、殺人鬼とか、吸血鬼とか。
日本人のすずちゃんの怪談話は、呪いとか、そういうのよね。
日本人形の黒髪が伸びる、と聞いて、思うのは。
「それ、湿気では?」
えっ、違う? ああ、今の怖い話!?
笑いながら道を進みます。
トリック・オア・トリート!
コイスル・スズリズム
オーナーさん(f03848)と同行だよ!
衣装は2021年、今年のかぼちゃの妖精の装いで
お菓子はかぼちゃ色のいろんな味のキャンディを用意して参加するよ
年中ハロウィンの国。
味も形も大好きなかぼちゃ
大好きなジャック・オ・ランタンに囲まれて
すーごいっ、全部がストーリーみたい!
すず、ここに住んじゃいたいな
とオーナーさんにウインクとばしてはしゃぐ
あがりまくったテンションの中で
オーナーさんと一緒に、さっそく宝探し!
ハロウィン好きからすると、もうこの国自体がお宝みたいなんだけど
探してる間に、すずから今年のハロウィンのいたずらとして
オーナーさんに怪談の話をふってみよう
この人が怖がるなんてことは思っちゃいないんだけどね
あのね、ある雨の日にね……
と怪談をしかけてみるよ
あ、やっぱぜんぜん怖がってない
お菓子を見つけたら、さっそくその場で食べちゃおっと。
これおいしいよ、なんてオーナーさんと分け合いながら!
愉快な仲間には、かわいい~!と思いながら
トリック・トリート!
と言葉をあわせ
お返しに、持参したキャンディをくばる
●
夜の世界に舞うのは、淡く輝く翅が美しい妖精の姫君。
花弁のようなオレンジ色のスカートを翻して、ジャック・オ・ランタンを模したお団子から伸びる髪をくるりと躍らせて。楽しそうにコイスル・スズリズム(人間のシンフォニア・f02317)はハロウィンの国を全身で味わうかのように軽やかに跳ねた。
「すーごいっ、全部がストーリーみたい!」
キラキラと輝く大きな藍色の瞳が映すのは、世界をぼんやりと照らすジャック・オ・ランタンの灯り。コイスルの装いと似た暖色系の色合いは、まるで彼女がこの世界の一登場人物だと語り掛けてくれているかのよう。
妖精の装いでこの世界に立つ彼女の姿は、あまりにも絵になる。何時もの装いの小宮・あき(人間の聖者・f03848)は空の瞳をひとつ瞬いて、感嘆の声と共に拍手を。
「あとでSNSあげていい?」
スマートフォンを構えあきがそう紡ぐのと同時、コイスルはくるくると回りながらあきに向けウィンクを送っていた。
「すず、ここに住んじゃいたいな」
コイスルにとって、南瓜は味も形も大好き。そしてランタン以外にも、ジャック・オ・ランタンで出来た容れ物が積み上がっているこの光景は心が踊ってしまう。
軽やかな足取りで南瓜へと近付いて。じっと南瓜を見つめながらコイスルは。
「さっそく宝探し!」
自分用のジャック・オ・ランタンを持つ手とは逆の手をぐぐっと握って、やる気をアピールする。――ハロウィン好きとしてはこの国自体がお宝のように魅力的だけれど、トリックとトリートを楽しむこともハロウィンの醍醐味だ。
やる気満々の彼女を微笑ましく見守るように、あきは微笑むとコイスルが覗き込むジャック・オ・ランタンへと近付いた。二人で目を合わせて、呼吸を整えて。せーの、と蓋を開けてみれば――。
『とりっく・とりーと!』
ぴょんっと飛び出してきたお化けが、待ってましたと言わんばかりに声を上げる。その声に少しだけ驚いた声を上げるけれど、すぐにあきは笑顔を浮かべてジャーマンクッキーを差し出した。
「こんにちは。トリートをどうぞ」
ジャーマンクッキーは可愛いお化けの仮装がアイシングで施されており、ハロウィン気分を味わえる特別なお菓子。続きコイスルが差し出してくれたのは、愛らしい南瓜色のキャンディだった。
『あまーくてかわいいの』
ご機嫌に笑う小さなお化け。その姿が見た目も相まってとても可愛らしく感じ、コイスルは思わず頬を緩めてしまう。そんな彼女の姿をじっと見て、嬉しそうに身体を揺らしていたお化けは――お返しにと、どこから取り出したのか自分の身体程もあるカップケーキを差し出してくれた。
あきにはピンクと水色のクリームが愛らしく、飴玉のような煌めく装飾が美しい。
コイスルには、その仮装に合わせたのかジャック・オ・ランタンな表情に花と蝶が止まる華やかなデザインだった。
ひとつ、ひとつ南瓜を開けながら。
ふと、コイスルの心に悪戯心が過ぎった。
「あのね、ある雨の日にね……」
コイスルの蕾のような唇から零れたのは、ひとつの怪談話。ハロウィンのどこか禍々しい空間で語れば、少しは驚きのひとつにはなるかもしれない。
(「この人が怖がるなんてことは思っちゃいないんだけどね」)
そう分かってはいるのだけれども、コイスルは先程までのキラキラ輝く瞳から一変、真剣な色をその瞳に宿す。
彼女のその声に、眼差しに。あきはくるりと振り返るとぱちぱちと瞳を瞬いた。
「雨の日に?」
返す言葉はきょとんとしたいつもの声色。
コイスルが続ける話の先に気付いてはいないようで、彼女は静かに耳を傾ける。
――雨のせいか暗い暗い部屋の中で。ある女の子がおばあさまが大事にしていた人形を手にしてみると、おかっぱだった筈のその黒髪が肩の下まで伸びていたのだとか。
「それ、湿気では?」
精一杯真剣に、怖がらせるようにコイスルは語ったけれど。あきの唇から零れた言葉は全く怖がっていないようで、単純明快と言わんばかりに真っ直ぐな声色。
「あ、やっぱぜんぜん怖がってない」
「えっ、違う? ああ、今の怖い話!?」
あきの反応はコイスルにとっては想定内で、残念そうだけれど素直に受け止め笑っている。彼女の言葉に、あきは怖い話をコイスルがしていたのだと今初めて気付いた。
――あきが気付かない理由、それはあきとコイスルでは育って来た世界が違う為、怖いことに関しての目線が違うのだ。
あきは西洋人の為、ホラーの主流はゾンビや殺人鬼、吸血鬼などの恐怖の対象と対面する話。逆にコイスルは日本人なので、呪いや妖怪と云った実話と思わせる話。
それぞれで感じ方が違うのだから、あきが怪談にピンとこなかったのも当然のことなのだ。少し申し訳なさそうにあきは息を零したが、目の前のコイスルは気にした様子は無く次々にジャック・オ・ランタンを開けてはお化けと対面し、お菓子を交換している。
「トリック・オア・トリート!」
高らかな声を上げて、あきが駆け寄れば。コイスルもお化けも歓迎の声をあげ迎えてくれる。皆で一緒にお菓子を食べれば楽しい笑い声が零れた。
次々と南瓜を開けて、山盛りのお菓子を見つけても、お化けを見つけても。共にお菓子を分け合えばどこか暗い世界もほんの少しだけ明るくなっていくのは気のせいだろうか。
楽しげな声を響かせながら。
一年に一度のハロウィンなひと時はもう少し続くのだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
飛砂・煉月
【月旅】
21南瓜
オレが酒呑童子
ハクがお供の鴉天狗だよ
本来狼は満ちた月に狂うけど
此処は不思議の国で今日のオレは鬼
だからきっと――大丈夫
それに安心の月はオレの傍にいるし?
ノヴァ、何処見てもジャックだよ
すげーハロウィンて感じ
やっぱり宝探しするよね?
色んなジャックを開けての宝探し
オレもハクも少年心擽られちゃうや
見つかるのは――
お菓子か悪戯か
悪戯には飴あーげよ
(※見つけるお菓子お任せで中身はノヴァとお揃い)
ね、お菓子も手に入れたしさ、折角だし近くでお茶会しよーよ
うん、紅茶好きだけど
もしかしてノヴァが淹れてくれんの?
ハクと一緒に緋色煌めかせて
あ、そーだ
折角だし見つけた菓子交換しない?
…ん?
ふは、お揃いとかすげー偶然じゃんね
ノヴァ、一寸躊躇ってる?
でもさ一緒に食べた想い出もきっと最高の宝物だよ
キミの紅茶と揃いの菓子で時間を彩ったら最高じゃん?
酒呑童子と吸血鬼
和洋の首領が交わる秘密のお茶会
楽しくて美味しい宴だ
つーかノヴァの吸血鬼、かっけー
ねぇねぇ、オレ達は似合うー?
威厳も何も無いけどオレ達らし〜かもね
ノヴァ・フォルモント
【月旅】
吸血鬼伯爵の仮装('21南瓜行列)
頭に大きなシルクハットを乗せて
黒いマントを翻し
コウモリの翼は偽物だけどね
不思議の国の夜は他の世界とは何か違うのか
何ともなさそうな友人を見て
安心する様に微笑む
今宵限りのお茶会を一緒に楽しめそうだね
そうだな、まずは宝探しをしてみようか
沢山のジャック・オ・ランタンの中から
ひときわ輝いている灯りへと手を伸ばす
開けた中身、見つかるのはお菓子か悪戯か
(何を見つけるかはお任せ。でも手に入れるお菓子はレンと揃い)
宝探しで手に入れたお菓子も加えてお茶会にしようか
せっかくなら甘い菓子に合う紅茶が飲みたいな
…なんて思えば丁度良く用意されたティーセット
レンも紅茶でいい?
香りよい紅茶を注いで
宝探しで見つけたお菓子を見せ合い
お揃いで少し驚いた顔
ふふ、何だか食べるのが勿体ない
……でもレンがそう言ってくれるのなら
確かにこの時間こそが一番の宝物だね
酒呑童子と吸血鬼
和洋の首領で今宵限り
秘密のお茶会を
ふふ、ありがとう
満更でもなく微笑んで
レンとハクも似合ってるよ
何だか君たちらしいなって
●
空に浮かぶは赤い月。
その色を緋色の瞳に映せば、飛砂・煉月(渇望・f00719)の胸が微かにざわついた。
ぎゅっと和衣の胸元を握り締めるけれど、その感覚は一瞬過ぎっただけで幻のように消え去っていく。
本来狼は満ちた月で狂うけれど、此処は不思議の国で、今日の煉月は鬼だから。
(「だからきっと――大丈夫」)
先程のざわついた心も、きっと気のせい。条件反射のようなものだったのだろう。
ひとつ、ふたつ。何時もの息遣いのまま呼吸を整えて。傍らを見れば、穏やかな月のような瞳が煉月を見ていた。
「今宵限りのお茶会を一緒に楽しめそうだね」
一瞬心配をしたけれど、何時もの彼の姿でいることに安堵の笑みを浮かべて。そっとノヴァ・フォルモント(月蝕・f32296)は穏やかな声でそう告げる。
不思議の国の夜は、他の世界とは何か違うのか。そう不思議には思うけれど、こうして月の晩に同じ時を過ごせることはとても貴重な事。
そう、今宵の煉月には安心の月が傍に居る――傍らの笑みに、何時ものような輝く笑顔を返せば、彼は大きな頷きを返した。
響く踵の音色はノヴァの履く黒い革靴から。
ぺたぺたと微かな音は素足で歩む煉月から奏でられ、夜の森へと響き渡る。
枯れた木々に浮かぶ月が世界を照らすけれど、それよりも強く彼等を照らすのは垂れ下がるジャック・オ・ランタンの瞳から零れる橙色の灯り。そしてその光が照らすのは人だけでは無く、辺りに積まれた大小様々なジャック・オ・ランタンを浮かび上がらせる。
「ノヴァ、何処見てもジャックだよ。すげーハロウィンて感じ」
右に左に、顔を動かして。キラキラと瞳を輝かせながら、あっちにこっちに差した指を動かして煉月は声を上げた。表情も様々な彼等はひとつも同じ物は無いようで、何が眠っているのか開ける前からワクワクする。そんな彼の気持ちと同じなのか、肩に止まっていたハクも嬉しそうに声を上げた。彼が本物の白い翼を動かせば、飾りの鴉の翼も不思議なことに揺れ動く。
「そうだな、まずは宝探しをしてみようか」
きょろきょろと辺りを見回して、ノヴァの瞳に止まったのは一際輝く灯り。それは彼が普段から灯りと共に歩んでいるからか。それとも、自身の温かな瞳の色に近かったからか。真意は定かでは無いか、揺らめく灯りにそっと近付くと、彼は迷い無く蓋を開ける。
何が出てくるか、一瞬構えるが――驚かされることも無く、そこに輝くお菓子はまるで宝石のような琥珀糖。輝く欠片が、器いっぱいに詰め込まれていた。
灯りが照らせば宝石が輝き、ノヴァの瞳が眩しそうに細められる。そんな彼の姿を遠くから見て、煉月は楽しそうに笑みを浮かべる。
「やっぱり宝探しするよね? オレもハクも少年心擽られちゃうや」
ワクワクする心地が隠さずに、煉月がジャック・オ・ランタンを開けてみると――。
『とりっく・とりーと!!』
器から声と共に飛び出すお化け。
「わああ!」
思わず煉月は声を上げるが、ノヴァはひとつ息を呑んだだけだった。『びっくりした?』と言いたげにキラキラした眼差しを向けてくるお化けを見れば、煉月とノヴァは顔を見合わせ思わず笑い声をあげてしまう。
煉月が飴をあげれば嬉しそうな声を上げ、お化けは黒色のマカロンを手渡してくれた。
暫し探索を楽しめば、すっかり彼等の手にはお菓子が溢れていて。
「ね、お菓子も手に入れたしさ、折角だし近くでお茶会しよーよ」
「せっかくなら甘い菓子に合う紅茶が飲みたいな」
煉月の提案に頷きを返しつつ、ノヴァが辺りを見回せば――そこには切り株のテーブルがあり。ご丁寧にテーブルクロス、そしてティーセットまで置いてある。
一瞬不思議に想うけれど、なんて言ったって此処は不思議の国。どんな楽しいことが起きても不思議では無い。だからノヴァは疑いもせずに、テーブルへと近付くと。
「レンも紅茶でいい?」
「うん、紅茶好きだけど。もしかしてノヴァが淹れてくれんの?」
彼の問い掛けに煉月はこくりと頷きつつ、ハクと一緒にキラキラと輝く期待の眼差しを浮かべている。彼等の瞳に笑みを返して、慣れた手付きでノヴァが紅茶を淹れれば――カップに注ぐと同時に、芳しい香りが不思議の国に広がった。
紅茶を一口飲んで、ひとつ息を吐いて。
「あ、そーだ。折角だし見つけた菓子交換しない?」
あちらこちらの南瓜を開けたから、その成果を見せ合おうと煉月が誘えば当然ノヴァも頷きを返す。手にしたジャック・オ・ランタンの籠から、せーのでテーブルに乗ったのは――キラキラ輝く、琥珀と緋色、そして青白が美しく混ざり合うの宝石のような琥珀糖。
ランタンに照らされ、キラキラ輝くその宝石は形は不揃いだが偶然にも同じお菓子。
「……ん? ふは、お揃いとかすげー偶然じゃんね」
その輝きにノヴァが目を奪われていると、目の前から零れた声に現実へと戻される。彼のその姿に気付いた煉月は、ハクと共に小首を傾げじっとノヴァを見つめた。
「ノヴァ、一寸躊躇ってる?」
「ふふ、何だか食べるのが勿体ない」
一瞬呆気に取られたけれど、すぐに穏やかな笑みと共にノヴァはそう告げる。輝く琥珀を手に取って、光に当たればなんと美しいことだろう。――その輝きが、今此処に二人分合わさったという偶然が、尚輝きを美しくさせている。
だから、勿体ないと思ってしまうけれど――。
「でもさ一緒に食べた想い出もきっと最高の宝物だよ。キミの紅茶と揃いの菓子で時間を彩ったら最高じゃん?」
宝石を手に語る煉月の姿は晴れやかで。何時ものように真っ直ぐな彼の言葉とその笑顔に、そっとノヴァは笑みを返す。
「確かにこの時間こそが一番の宝物だね」
瞳を閉じて、笑みを零して。
こくりと頷きながら、彼等はカップの中の琥珀色を傾げた。
此処はハロウィンの国。
今此の場では酒呑童子と吸血鬼。和洋の首領が交わる秘密のお茶会が開かれる。
「つーかノヴァの吸血鬼、かっけー」
まじまじと見てみれば、シルクハットに悪魔の角。そして紳士らしくぴしっとしたスーツは、色が薄くすらりとした彼によく似合っている。
「ふふ、ありがとう。レンとハクも似合ってるよ」
穏やかに微笑みながらノヴァがそう返せば、煉月とハクは無邪気に笑った。
――威厳も何も無いけど、オレ達らし~と語る通り。黒の髪によく合う和装はしっかりとこの世界にマッチしている。
ふわり漂う湯気が空へと伸びれば、輝く月が二人の姿を照らしていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『ブランシュ』
|
POW : 女王様は白がお嫌いと
自身の装備武器を無数の【触れるものを切り裂く白薔薇】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : 赤に染まれと命じられ
戦場全体に、【血を啜る人喰いの茨】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
WIZ : 求む内に魅せられた、綺麗な血の色
命中した【自在に伸びる茨】の【棘】が【鋭い刃】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
👑11
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●美しき番人
真白の番人が現れた。
華やかで高貴な香りはまるで生花の薔薇のよう。
ひらひら踊る白のドレスの裾は瑞々しい朝咲きの薔薇のように輝いていて、茨を纏う彼女は優雅に笑う。
――女王様は白がお嫌い。
――それなら全てを赤に染めましょう。
――ペンキでも苺のジャムでも、はたまた人の血でも良い。
――此の世界を全て赤に染めましょう。
唄うように優雅に紡がれる言葉は、穏やかながらも確かな狂気を孕んでいた。そう、それは確かに彼女がこの世界を滅ぼすオウガであることを表している。
彼女と共に楽しむ終演は無い。
けれど優雅に笑う彼女には、きっと真っ赤な血では無く美しいティーカップと甘い甘いお菓子が似合うだろう。
地に咲く花からは色とりどりの花火が上がり、世界を鮮やかに染め上げている。その火弾に当たれば、オウガはきっとすぐに燃えて消えてしまうから。それまでのひと時をどう過ごすかは、猟兵達次第。
『だあれ?』
『なかよしできる?』
ひそひそ声でちらちら覗いている、白いのがほら、あちらこちらにいるよ。
ラクシュミー・マリ
【花姫】
アドリブ可
美しい白薔薇…見事ですね
でも、赤がお好きなら
きっときっと、貴女を満足させて差し上げられる
そうでしょう?ーーねぇ、ローザ姉さま。
おばけさん達も彼女達と仲良くなりたそう
赤くなれば、いいのよね
ドライストロベリーを一緒に食べましょう?
真っ赤な苺を沢山食べたら、おばけさん達も赤くなってしまうかも…なんて、ふふ。
ルビーチョコレート…って、本当に赤やピンク色をしていて、可愛らしいですね
お花達から、花火が…こんな光景が見られるなんて
ミュゲが指さした先の花火を一緒に見上げながら、こくんと頷く
花は儚い。それは、きっとわたし達が痛いくらいに分かっていること
だからこそ、白薔薇の貴女の気高さを忘れない
ローザ・ブラッド
【花姫】
アドリブ可
「あら、本当ね。ミュゲと同じ真白のお色」
白薔薇の彼女達
叶う事なら、薔薇を持つ者同士
私も共に語らいたかった
それが叶わぬというのなら、せめてこのひと時は楽しまないと勿体無いわよね
赤が好き…。ふふ、私と一緒ね
「私も、赤が好き。赤い薔薇が好き
ミュゲ、私にもルビーチョコを分けてちょうだいな?」
共に白い薔薇を赤の薔薇へと彩ってあげる
ついでに美味しいお菓子も味わって?愛しい白薔薇に幸福なる時間を
「ええ、ラクシュミー。みんな一緒に彼女達と仲良くなりたいと思っているわ」
花火と共に消えゆくブランシュを見送る
そうね…。とても綺麗
儚くとも、彼女達は美しい
「彼女達にも好きひと時になっていたらいいわね」
ミュゲ・ブランシュ
【花姫】
アドリブ可
「ハロー、ミストレス!
ミュゲとおんなじ!まっしろけ、ね!」
彼女とお話がしたかったけれど…
そうもいかないみたい
残念、なのよ
…でも、赤が大好きって聞いたの!
「はい!あなたもきっときにいるはずよ!」
ジャックから見つけた薔薇のルビーチョコレートを渡して咲うの
みんなで食べるんだから美味しいに決まってるわ!
「もちろんよ!…おばけちゃんたちもいかが?」
しばらくお菓子を楽しんでたら
周りから花火が上がり始めたのに気づいたのよ
「あっ…!ローちゃん、ミーちゃんみて!みてみて!」
綺麗ね、なんて空を指差して見上げる傍
ミュゲと同じまっしろけは少しずつ消えていった
……チョコレート、楽しんでもらえたかしら?
●
「ハロー、ミストレス! ミュゲとおんなじ! まっしろけ、ね!」
優雅に微笑むブランシュの姿を見て、とんっと一歩前へと出るとミュゲ・ブランシュはキラキラと緑の瞳を輝かせそう紡ぐ。
純白の姿も。仄かに葉の緑を添えた装いも。ミュゲと同じに感じて、幼い彼女は親近感を覚え嬉しそう。そんな弾むような彼女の姿と、オブリビオンの姿を見比べると。
「あら、本当ね。ミュゲと同じ真白のお色」
ブランシュのように優雅に微笑みながら、ローザ・ブラッドは赤い瞳を細め言葉を続けた。そして、彼女は白いだけでは無く薔薇を纏う者。それはローザとも同じ部分があり、こちらもまた親近感を抱いている。
出来る事ならば、薔薇を持つ者同士。共に語らいたかったと思うけれど。相手はオブリビオンだから、平穏では終わら無いのだとローザも、そしてミュゲも分かっている。
「美しい白薔薇……見事ですね」
どこか寂しげに瞳を伏せる少女達の横で、目の前の彼女の美しさにラクシュミー・マリはひとつ溜息を零していた。――けれども、彼女が赤を好きだというのなら。
「きっときっと、貴女を満足させて差し上げられる。そうでしょう?」
――ねぇ、ローザ姉さま。
信頼の笑みと共に向けられるラクシュミーの眼差し。その瞳に、ローザは笑みと共にこくりと同意の頷きを返した。
そう、例え分かり合えなくとも。今この一瞬を共に楽しむことは悪いことでは無い筈。
「はい! あなたもきっときにいるはずよ!」
ローザがそう想った時、ブランシュへと小走りに駆け寄ると、ミュゲが真っ直ぐな眼差しでチョコを差し出していた。
小さな掌に咲くチョコは、小さな薔薇の形。そして色は仄かにピンク掛かった赤をしており、それは先程この国でミュゲが見つけた、ルビーチョコレート。
『まあ、わたくしに?』
無邪気な彼女の掌で輝く赤に目を奪われた後、少し驚いたようにオブリビオンは語る。そのまま大きくミュゲが頷くから、恐る恐るといった様子で彼女は薔薇を手に取った。
「私も、赤が好き。赤い薔薇が好き。ミュゲ、私にもルビーチョコを分けてちょうだいな?」
「もちろんよ! ……おばけちゃんたちもいかが?」
ミュゲの傍へと近付いて、ブランシュに同意の言葉を零しながらローザが紡げば。キラキラと瞳を楽しそうに輝かせるミュゲはローザにだけでなく、辺りで様子を伺うお化けへも声を掛けた。
『チョコ?』
『あまーいあかいの?』
『どうする?』
彼等は互いに顔を見合わせ、そわそわとしている。
甘いお菓子は欲しい。白い彼女が気になる。けれどちょっと怖い。
様々な感情と戦っている彼等の様子を見て、ラクシュミーは笑みを浮かべる。そう、悪戯好きだけれど優しい彼等は、純白の番人と仲良くなりたそう。
「ええ、ラクシュミー。みんな一緒に彼女達と仲良くなりたいと思っているわ」
彼女の様子に、ローザは穏やかな笑みと共にそう紡ぐ。白から赤に染まる白薔薇へと、幸福なる時間を捧げるのならば、きっとお化けとのひと時も大事な時間。
「赤くなれば、いいのよね」
こくり頷き、ラクシュミーはお化けへと手を差し伸べた。
「ドライストロベリーを一緒に食べましょう? 真っ赤な苺を沢山食べたら、おばけさん達も赤くなってしまうかも……なんて、ふふ」
差し伸べた彼女の手には、鮮やかな赤のドライストロベリーが乗っている。ふわふわと漂う甘酸っぱい香りに導かれるように、ちょこちょこ恐る恐るお化けが出てくる。
ラクシュミーの手から苺を貰って、ぱくりと食べたお化けは――ぷるぷると震えると、真っ白な身体はほんのりとピンク色に染まった気がした。
そんな特性が元からあるのか、無いのか。
それは分からないけれど、そんなことも叶ってしまう此処は不思議を詰めた世界。
『ふふ、素敵なひと時ですわ』
口の中でとろける赤い薔薇を味わいながら、優雅に白薔薇は笑みを浮かべる。
――その姿はあまりにも美しく、穏やかな淑女のもので。流れる雰囲気も相まって、今この場が戦いの場だと云うことを忘れそうな程。
けれど――現実へと返すかのように、辺りの花が震えると一斉に夜の世界へと花の火が打ちあがる。ジャック・オ・ランタンの灯りと共に、世界が鮮やかな色に染められた。
「あっ……! ローちゃん、ミーちゃんみて! みてみて!」
キラキラと瞳を輝かせながら、前のめりにミュゲは花火を指差しながら二人へと声を掛ける。その美しさに目を奪われ、息を呑みながらラクシュミーはこくりと頷きを返した。
言葉には出来ない美しさ。
この花の火が、辺りの花から打ちあがっていく様子も不思議で美しく、ただ眺める事しか出来ない。そして、この花火はただ美しいだけで無く、もうひとつの残酷な要素を持っていることが不思議の国の存在らしさを物語っていた。
大きな音と共にぱらぱらと火花が落ちれば、一瞬で白の君を焔の赤へと染めていく。
悲鳴を上げ、燃え上がる焔に包まれて。儚く消えていく白の君。
ミュゲも、ラクシュミーも、ローザも。
静かに彼女が純白の彼女は消えていく姿を見送った。
「……チョコレート、楽しんでもらえたかしら?」
「ええ、きっと」
ミュゲの問いに、こくりと頷きを返すローザ。儚くとも美しい彼女達は、最期にきっと素敵なひと時を味わってくれたのだろう。それは願いのようなものかもしれないが、あの穏やかな笑みを思い返せばきっと嘘では無い筈だから。
ちらちらと零れる白の花弁。
薄いそれが地面に落ちたのを見守ると――ラクシュミーは祈るように手を合わせる。
花は儚い。
それは、きっとわたし達が痛いくらいに分かっていること。
(「だからこそ、白薔薇の貴女の気高さを忘れない」)
きゅうっと掌を握り、唇を結んでラクシュミーが耽れば。彼女へと寄り添うように、いつの間にやらミュゲとローザがそっと近付いていた。
大成功
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末代之光・九十
【藍九十】
ユーベルコードで薔薇を生やすよ。
勿論。トランプ兵見たく色を間違えたりしない。赤い薔薇だ。
ブランシュさんとお揃な感じの咲かせ方で自分自身に。
あ。お化けの皆も生やす?
赤い薔薇を生やせば後は身体の白さえ何とかすれば…
(言ってる所に藍がステージ召喚)
…どひゃあ
(苺ジャム発射で直撃を喰らい)
…わわー
……うん!
パワープレイ。流石藍は男の子だなあ
(真っ赤に染まりつつ何故か感心顔でニッコニコな全肯定ぶり)
後必要なのはお茶の支度と美味しいスコーン、焼きたてのトーストでも良い。
それから後は、楽しいお喋り話。
さて。それじゃあブランシュさん
(歩み寄り、赤薔薇を一輪差し出して)
良かったら僕等とお茶しませんか?
紫・藍
【藍九十】
あやー!
花も恥じらうことのおねーさんなのでっす!
薔薇もとってもお似合いなのでっす!
お綺麗なのでっす!
ではでは藍ちゃんくんもお色直し!
可愛らしい苺型のステージを召喚するのでっす!
ペンキ発射機能の如く、皆さまを苺ジャムで染めちゃうギミック付きなのでっす!
自身やお化けの皆さんを甘い赤色の雨で変装させちゃうのでっす!
……藍ちゃんくんは藍も紫も大好きなのでっすがー。
ブランシェのお嬢さんは、お白い自分のことはどうなのでっしょかー。
白いご自分がお嫌いでないようなら良いのでっすが、もしも赤くなりたそうならおじょーさんも苺色にアートしちゃうのでっす!
お嬢さんにとっても素敵な一時ならなによりなのでっす!
●
美しき女性を目の前にして――ひとつ息を吐くと、末代之光・九十は呪文を唱えた。
ひとつ、ふたつ。
九十の身体に咲いていくのは、鮮やかな赤。
うっかり間違えたりなどしない。赤に塗り潰さなくても良いような、瑞々しくも鮮やかな赤を、目の前のブランシュのように髪に、首元に、手首に――咲かせていく。
それは戦いの合図では無い。ひと時の甘い時間を過ごす為の、九十なりの心遣いの力。
「あ。お化けの皆も生やす?」
じいっとこちらの様子を円らな瞳で見守っているお化けに気付き、そう紡いだ後。
「あやー! 花も恥じらうことのおねーさんなのでっす!」
そんな薔薇を纏う彼女の姿に、紫・藍は綺麗だと手を叩きながら真っ直ぐな賛辞を述べる。そして、彼女の姿に釣られるように――。
「ではでは藍ちゃんくんもお色直し!」
言葉と共に紡がれる呪文。その後すぐに、不思議の国には可愛らしい苺型のステージが現れた。そしてどんっと大きな音が鳴ったかと思えば、辺りに降り注ぐは赤い雨。
ぼとぼとと、満ちる甘い香りと共に落ちるその音は、とても雨とは思えない。
「……わわー。……うん! パワープレイ。流石藍は男の子だなあ」
突如現れたステージに驚き。降り注ぐ赤い雨に直撃した九十は、その粘度の高さと甘い香りから、すぐに正体が苺ジャムなのだと察する。
それは悪戯などでは無い。赤に染め上げる彼女から逃れる為、自身を、そしてお化けをも赤に染め上げてしまおうという彼なりの優しさだと分かっているから。九十は自身も赤に染まりながらも、満面の笑みで彼へと頷きを返す。
九十の言葉に、勿論藍は嬉しそうに胸を張る。――苺を浴びたお化け達も、『きゃー!』と驚きの声を上げながら、きゃっきゃと楽しそうにはしゃいだ声をあげたり、ぺろりと苺ジャムを舐めてその美味しさに嬉しそうに笑っている。
お化けの纏った赤い薔薇が、赤いジャムに濡れているのはまるで塗り潰したかのよう。
そんな考えが九十の頭に一瞬過ぎりながら、彼女は切り株の上にお茶会の準備を進めていく。綺麗なカップに注がれるのは美しい琥珀色の紅茶。お話が弾んだ小腹を満たす、ほかほかと湯気の立つ焼き立てさくさくのスコーンを添えて。
「さて。それじゃあブランシュさん」
準備が整のったところで、九十はブランシュへと近付くと――赤薔薇を一輪差し出して、微笑みながらお辞儀をする。
「良かったら僕等とお茶しませんか?」
紡ぐ言葉はどこまでも穏やかで。
力を用いても、それは直接害を成す目的では無かったのだと語っているよう。
その言葉が、姿勢が通じたのだろう。ブランシュは赤薔薇を手に取ると、導かれるままテーブルへと腰を下ろした。
「……藍ちゃんくんは藍も紫も大好きなのでっすがー。ブランシェのお嬢さんは、お白い自分のことはどうなのでっしょかー」
同じテーブルを囲み、自身も紅茶を一口飲んだ後。藍は藍色の瞳を真っ直ぐに向けながら、ブランシュへと問い掛ける。彼の目の前に、九十が苺ジャムを添えたスコーンを差し出してくれれば一瞬視線を交え礼を紡いだ。
『そうですわね……、赤は美しいとは思いますわ』
彼の問いに、淑女は優雅な笑みと共にそう紡ぐ。
自身の純白な姿を見た後に。赤に染まる藍を、九十を、こちらの様子を伺っているお化け達を、そして世界を見渡して。どこか羨ましそうに頬を染めれば、その部分が仄かな赤に染まっている。
そんな彼女の姿を見れば、藍はすっくと立ちあがる。すると世界に、再びの苺の雨が降り注ぎ始めた。
「おじょーさんも苺色にアートしちゃうのでっす!」
その雨はハロウィンの世界を赤に満たし、純白の彼女達の身体をも染め上げていく。立ち上がる甘い香り。白を覆う程の赤。その姿に、光景に、ブランシュは上品に、けれどどこか嬉しそうにくすくすと笑みを零した。
「お嬢さんにとっても素敵な一時ならなによりなのでっす!」
そんな彼女の姿を見て、藍は満面の笑みを返しながらそう紡ぐ。
――その瞬間。ハロウィンの終わりを告げるかのように、花火が世界を染め上げた。
大成功
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葬・祝
【彼岸花】
引き続き三月うさぎの仮装
あら、どうやらあのオブリビオンは赤がお好きだそうですよ、カフカ
果たして朱の神と緋の悪霊はお気に召すのやら
私たちはのんびりお茶会しましょうか
そうなんです?元の物語を知らないので今度読んでみましょう
カフカが読んでくれます?なんて
ふふ、カフカったら気障ですねぇ
自分相手の照れ屋を知っているから余計に可愛らしい
真っ赤なお菓子というのもちょっと気になってるんですよね
これ、どんなお菓子なんです?
……ん、甘い
これ甘酸っぱくて美味しいですよ、カフカ
赤いの、苺です
くふふ、花火も綺麗ですねぇ
秋の澄んだ空気で、夜空に良く映える
ええ、褒めてますよ
だって可愛いお前の季節ですもの、愛しい子
神狩・カフカ
【彼岸花】
おれたちはお眼鏡に適うかねェ
血の赤ではなく秋の朱だけどな
不思議の国のアリスでもなァ
帽子屋と三月うさぎはお茶会を開いているのサ
ふふ、適役ってわけだな
赤が映える真白の美しいお嬢さん
おれたちとお茶会でも如何かな?なんて
格好つけすぎちまったか
お嬢さんにも紅茶を注いであげて
なんでもない日に乾杯といこうか
アリスの筋書きにあるのサ
紅茶を一口飲んで
赤いお菓子を摘んでみる
菓子っつーくらいだから甘いンだろうが…
赤は辛いイメージもあるよなァ
恐る恐るぱくり
…ん、本当だ
甘くて美味い
苺で一安心だな
花火が上がればお茶会も終わりか
秋に花火が見れるとはなァ
いきなりだな、お前さんは
…そうかい
秋色に染まった頬を誤魔化す
●
純白を纏う美しきオブリビオンを見て――葬・祝の口許には笑みが浮かんだ。
「あら、どうやらあのオブリビオンは赤がお好きだそうですよ、カフカ」
小首を傾げれば、彼の髪に飾られた彼岸花の赤が揺れ動く。その銀の眼差しを見返して、神狩・カフカも同じように笑むと。
「おれたちはお眼鏡に適うかねェ」
さらりと赤い髪を揺らしながら、頷きと共にそう語る。
カフカと祝の赤。それは赤ではあるけれど、血の赤では無く秋の赤。朱と緋と云う、仄かな色の違いに彼女は満足するだろうか。
微かな疑問を抱くが――ちらりと向けられる敵の視線は感じるけれど、それ以上動かない様子に彼等の色は赤として認識されている様子。少しの安堵を覚えながら、帽子屋と三月兎はひと時のお茶会を開始する。
テーブルに不思議と準備されていたポットには、これまた不思議なことに紅茶が満たされており。とぷとぷと水音を立てカップへと注げば湯気が立ち上がる。
「ふふ、適役ってわけだな」
その姿がまるで、物語をなぞっているかのようで。くすりと笑みを零しながらカフカが紡げば、祝は不思議そうにぱちぱちと瞳を瞬く。
「そうなんです? 元の物語を知らないので今度読んでみましょう」
興味を覚え微かにワクワクとした心地を感じながら、祝はそう告げた。こうしてカフカとお揃いの衣装を纏ったからこそ余計気になるのだろう。兎の耳を揺らしながらカフカが読んでくれるのかと、ひとつ問おうとした時――。
「赤が映える真白の美しいお嬢さん。おれたちとお茶会でも如何かな?」
ひらり花弁のような純白のドレスを揺らしたオブリビオンが近付いてきたのに気付き、切り株の椅子から立ち上がるとそうっとカフカは彼女の細い手を取る。
「ふふ、カフカったら気障ですねぇ」
ゆるりと紡ぐ祝。――彼にとっては、自分相手には照れ屋な姿を知っているから。余計に可愛らしく見えるのだろう。その証拠に、彼の言葉にカフカは仄かに頬を染めている。カフカも格好つけすぎたとは少し思っていたから、誤魔化すように新しいカップをオブリビオンへと差し出した。
「なんでもない日に乾杯といこうか」
――そんな、この一場面をあの物語へと導くかのような言葉を紡ぎながら。
皆、紅茶をこくりと飲んで。次に気になるのは、切り株のテーブルに並ぶお菓子たち。どれもこれも赤い色合いをしているけれど、どんな味だろう。
「これ、どんなお菓子なんです?」
「菓子っつーくらいだから甘いンだろうが……赤は辛いイメージもあるよなァ」
どれもこれも鮮やかだけれど、その味は分からない。不思議の国のお菓子と云うことで、少しの警戒を隠さないカフカの言葉を聞きながら。祝は鮮やかな赤に輝くミニタルトを手に取り、恐る恐る口に含む。さくり、と響くクッキー生地の音と小麦の香り。そして甘酸っぱくも甘い香りがすぐに口に広がる。
「……ん、甘い。これ甘酸っぱくて美味しいですよ、カフカ。赤いの、苺です」
仄かに粒々が見えている赤い部分は苺ジャム。嬉しそうに食べる祝の姿を見て、カフカは釣られるように真っ赤なクッキーへと手を伸ばす。
「……ん、本当だ。甘くて美味い」
『EAT ME』と書かれているのが尚物語らしいと思いながら、広がる苺の香りにほっと安堵の息を零しカフカは微笑んだ。
――そんな、楽しいひと時を楽しんでいれば。突然辺りの花が震え出し、瞬時に上がる鮮やかな花の火。大きな音と共に、秋夜の世界へと光の花が咲き誇る。
「くふふ、花火も綺麗ですねぇ。秋の澄んだ空気で、夜空に良く映える」
秋に見れるとは思わなかった。そう想うカフカに乗せるように紡がれる祝の言葉。肌寒い季節に見る新たな一面は、この季節だからこそ美しく見える。そう、だって秋は。
「だって可愛いお前の季節ですもの、愛しい子」
続く言葉はあまりにも不意で、カフカの頬は瞬時に秋色に染まっていく。
その色を誤魔化すかのように――カフカはふいっと顔を逸らすと、「……そうかい」とぶっきらぼうに返した。
秋に染まる、新たな花の光は。
きっと彼等の心に新たな思い出となり残るのだろう。
大成功
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朧・ユェー
【月光】
えぇ、とても綺麗なんだ方ですね
お化けさんも黒雛も彼女が気になる様子ですね
でもダメですよ?
黒雛はソワソワしながらもルーシーちゃんの手の中で大人しくしているが黒が好きでぴぃと嬉しそうに
赤が好き、それは僕も共感が出来ますね
でもそうですね、最近は僕も好きな色が増えました
この子や皆さんのおかげで
そうですね
金や黄色は向日葵やルーシーちゃんの髪の色が綺麗で好きです
青はブルーベルやブルーベリーの色、美味しいそうですよね
後はと…想い出の色が出てくる
他の色も美しく愛おしいモノ
だからどうぞ、召し上がれ
赤だけでは無く色々な色のクッキーをそっと彼女へ
【大喰】
彼女の赤を食べていく。
綺麗な花が咲きましたね
嗚呼、彼女にもこの美しさがわかればいいのですが
色とは美しい
ルーシーちゃん、お化けさん達もクッキー食べますか?
ぴぃぴぃと要求する黒雛
ふふっ、この子にもあげてね
ぴぃぴぃと美味しいに食べる黒雛
皆さんが美味しそうに食べる姿を愛おしげに見つめて
ルーシー・ブルーベル
【月光】
とてもきれいなひと、だけれど
黒ヒナさんもお化けさん達も
ルーシー達の前に出てきてはダメよ
ルーシーはね、白も赤もだいすきよ
どちらもステキな思い出につながる色だもの
青も、ヒマワリみたいな黄色も、今は大事な色
黒もだーいすき!と、黒ヒナさんを撫でて
だからね、世界を一色に染めてしまうのはもったいない、と思うの
パパも赤お好きだものね
増えた好きな色って?
金や黄色、青?そう、そう……えへへー
ニコニコしちゃうわ
『ふたいろ芥子』
お化けさんや黒ヒナさん、もちろんパパをお守りして
ほんの少し、世界に色を添えましょう
あ、見てパパ!
地面のお花たちが、花火を咲かせてる
南瓜ランタンの世界を彩るようね
パパの世界も、ルーシーの世界ももっとたくさんの色にあふれるわ!
クッキー?たべる!
おばけさん達、パパのクッキーはとってもおいしいのよ!
黒ヒナさんには小さく割って
はい、あーん
紅茶ももう一度いれましょう
パパが何だかゴキゲンに見える
とってもうれしいな
●
ひらりと揺れるドレスの裾は、まるで瑞々しい朝薔薇の花弁のよう。
白く透き通る肌に、細い手足。纏う薔薇の花飾りが相応しい、とても美しい女性の姿を見て、ルーシー・ブルーベルはほうっと溜息を零した。
「えぇ、とても綺麗な方ですね」
少女のその姿に朧・ユェーは笑みを浮かべつつ、落ち着いた声色で告げるけれど――敵を見る金色の眼差しに油断は無い。今此の場には愛する小さな娘だけでなく、小さな相棒とこの世界に住まう白色のお化けが居るから。
「黒ヒナさんもお化けさん達も、ルーシー達の前に出てきてはダメよ」
そっと守るように腕を伸ばし、黒のマントを広げるユェーの一歩後ろから。少女が小さな存在へと声を掛ければ、応援をするかのように手の中で「ぴぃぴぃ」と奏でる黒雛の声が聞こえた。
そっと息を潜ませて、けれど気になるのか木の影から姿を覗かせる白色お化けの様子に、きゅっと空いた小さな掌をルーシーは握る。
そのまま彼女はユェーの広げる腕の後ろから、一歩前へと出ると番人へと瞳を向ける。彼女の銀色の瞳と、ルーシーの青い左目が交われば――ルーシーは深く、息を吸うと。
「ルーシーはね、白も赤もだいすきよ。どちらもステキな思い出につながる色だもの」
赤以外を拒絶する彼女へと、真っ直ぐな想いを零した。
白や赤だけでは無い。青も、ヒマワリみたいな黄色も、今は大事な色。
「黒もだーいすき!」
にっこり笑顔でそう告げて、掌の中の黒雛を撫でれば。彼は嬉しそうに小さな翼をパタパタと羽ばたかせ、ぴぃぴぃと鳴いている。
「だからね、世界を一色に染めてしまうのはもったいない、と思うの」
小さな黒色へ優しい眼差しを向けた後、顔を上げるとルーシーは真っ直ぐにオブリビオンである彼女へとそう告げた。赤だけではない、様々な色が絡み合い、世界を染め上げる豊かなキャンバスこそが、美しい。赤の美しさも、より強くなるのだ。
『それでも女王様は、赤色がお好きなの。白い色はお嫌いなの』
そうっと銀色の瞳を伏せれば、彼女の長い睫毛が影を作る。その所作すら美しいけれど、彼女の紡ぐ言葉は変わらない。ただ、ただ。『赤』を求める人の為に、彼女は世界を染め上げるのだ。――けれど、その女王はどこにいるのだろう。
「赤が好き、それは僕も共感が出来ますね。でもそうですね、最近は僕も好きな色が増えました」
この子や皆さんのおかげで。
そっとルーシーの頭を撫でれば、艶やかな金の髪がひらひらと揺れる。その眩さに愛おしそうに瞳を細めれば、少女は嬉しそうに瞳を輝かせ彼を見上げる。
「パパも赤お好きだものね。増えた好きな色って?」
真っ直ぐな眼差しで問われれば、ユェーは相応しい言葉を手繰るように瞳を揺らす。
「金や黄色は向日葵やルーシーちゃんの髪の色が綺麗で好きです。青はブルーベルやブルーベリーの色、美味しそうですよね」
「金や黄色、青? そう、そう……えへへー」
頬を染めながら、ほわりと幸せそうに笑む少女。白い肌が染まるその色もまた、新たにユェーの胸に残る想い出の色。
さらりと揺れる淡い金の髪を手で撫でれば、彼女の髪飾りの水色花が揺れその色も愛おしさが胸に満ちてくる。愛らしい少女の色も、そして少女と、そして知人と共に見た景色、触れた物、感じた物。湧き上がる程に浮かぶ全ての想い出の色は、どれも美しく愛おしいモノだ。
「だからどうぞ、召し上がれ」
ルーシーの髪から手を離し、ユェーが白薔薇の番人へと差し出したのは――アイシングで飾り付けたクッキー。赤だけではなく、様々な色合いで飾られたクッキーは鮮やかで美しく、瞳に映ればキラキラと輝いているかのよう。
『……食べ物に罪は無いですからね』
ほんの少し恐る恐ると、淑女は細い指を伸ばし白のアイシングで花が描かれたクッキーを手に取った。パキリと音を響かせて、蕾のような唇で『白』が彼女へと飲まれていく。
『……甘い』
どこか愛おしそうに、銀色の瞳を細める女性。
そんな彼女の姿を眺めた後――辺りには無数の暴食グールの口や手が溢れ、花菱草色と蒼芥子色の二色の炎が世界を照らした。
二色の炎がくるくると世界を照らせば、地に咲く鮮やかな花々がちりちりと音を立て。
「あ、見てパパ! 地面のお花たちが、花火を咲かせてる」
炎に触れれば花が一斉に震え出し、大きな音と共に世界に火の花を咲かせていく。ぱらぱらと火花が散ればまた新たな花が咲き、ハロウィンの夜を彩っていく。
「嗚呼、彼女にもこの美しさがわかればいいのですが」
「パパの世界も、ルーシーの世界ももっとたくさんの色にあふれるわ!」
嬉しそうに笑む少女を見て、静かにユェーは笑みを返す。――色とは美しい、と。
鮮やかな火の花を見上げる二人の傍で、燃えゆく白は儚く消えていった。
白が燃えつきても尚、世界に花は咲き誇る。
その光が少女を照らす中――ユェーは笑みと共に、愛しい娘へと声を掛ける。
「ルーシーちゃん、お化けさん達もクッキー食べますか?」
「クッキー? たべる!」
大きく頷きながらキラキラと瞳を輝かせる少女を見て、次に辺りをぐるりと見て、彼が語り掛けるのはずっと様子を見ていたお化け達。戦いが終わったことは分かっていたけれど、出ても良いのかとそわそわしていた彼等は、ユェーの声に導かれるようにあちらこちらから姿を現した。
『ありがとう』ときゅうっとルーシーと、ユェーへと抱き着く彼等を撫でながら。ルーシーはにこにこと嬉しそうに笑う。
「おばけさん達、パパのクッキーはとってもおいしいのよ!」
新しく紅茶を淹れて。
芳ばしいクッキーと共に、お茶会を再開しよう。
「ふふっ、この子にもあげてね」
「はい、あーん」
ぴぃぴぃと物欲しそうに鳴き声をあげる黒雛を一瞥してユェーが紡げば、ルーシーは頷き小さく割ったクッキーを差し出した。嬉しそうについばむ黒雛と、様々な色にきゃっきゃとはしゃぐお化け達。大好きなパパのクッキーを一緒に、美味しそうに食べる彼等に囲まれて嬉しそうなルーシー。そんな彼等の姿を見れば、自然とユェーの口許には笑みが咲いていた。
(「パパが何だかゴキゲン」)
カップに口を付けて紅茶を飲みながら、そんな彼の姿にルーシーの心が温かくなる。
――ハロウィンの夜に咲く花火の元での賑やかなお茶会は、まだもう暫く終わらない。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
小宮・あき
すずちゃん(f02317)と。
赤がお好きなのね。
それなら、と、髪色を赤色に変えて。
真の姿は赤髪と藍色の瞳。黒に近い藍色の目を何度かぱちぱち、とさせて。
2人で話したの、私達は攻撃はしない、って。
UC発動。
発動の言葉は、いつもより優しく甘く変えて。
「私達と紅茶、いかがですか?」
赤いタルトタタン、綺麗で素敵でしょう?
どうか楽しんで。あなたに危害を加える気はないのよ。
いっぱいのお菓子は、赤色を沢山。
薔薇を模した赤色マドレーヌ。
真っ赤なハートのアイシングクッキー。
苺を挟んだフルーツサンドに、ラズベリーもマカロン!
タルトタタンは透明な赤に林檎が沢山。1ホールあるよ。
さあどうぞ、召し上がれ。
紅茶にお砂糖とミルクはどうします?
素敵な白薔薇ね。
私達の世界にも、白い薔薇を赤く染める女王がいますよ。
きっとあなたと仲良くなれると思うわ。
上がる花火に、目を伏せて。
ティーカップを手に取り、ゆっくりと紅茶を飲みます。
楽しかったですよ、白の女王様。
次はオウガではなく、敵ではなく。友として、紅茶が飲めたら嬉しいな。
コイスル・スズリズム
赤い髪のオーナーさん(f03848)と引き続き同行だよ
赤い髪の毛の音を少し感じながら
白と染め上げられた周囲を眺めて
花やかな空間にいると
私はあと何回くらいこの人と同じ景色を見るんだろう
とそんなことを思ったよ
相手に気付かれないように
オーナーさんとあわせて、私もUCを発動
お茶請けのキャンディを準備
オーナーさんの用意してくれたテーブルの近くに添えていこう
今日はこの世界にも合わせ、敵意がないことを向けるために
赤い色のいろんな種類の飴を
オーナーさんのお紅茶も頂いて
すずもお砂糖とミルクで!と笑顔で
赤い髪の色で、紅茶を呑む仕草を頬杖をついて眺めると
指先のじんわりとしたあたたかさを
オーナーさんとオウガさんとも一緒に感じられるといいな
花火が来るのが、惜しくなっちゃうね
静かな曲とかが合いそうだな、とちょと思う
お付き合いありがとう、女王様とお茶をのむのは、ほとんど、はじめてのことだったよ
無事に集団戦をおえることができたら
もう少しお茶会しよっかとオーナーさんに提案
オーナーさんに好きなお茶のことでもそっと語り掛ける
●
「赤がお好きなのね」
微笑みを浮かべ、瞳を閉じて。
小宮・あきが深く深く呼吸をすれば、さらりと夜の世界に揺れる淡いピンクの髪は、一瞬で赤へと移り変わった。
ゆるりと瞳を開ければ、彼女の空色の瞳は黒に近い深い藍へと変わっていて。その大きな瞳をぱちぱちと瞬く彼女を見て、溢れる程の純白の世界を見て――コイスル・スズリズムは小さな溜息を零す。
(「私はあと何回くらいこの人と同じ景色を見るんだろう」)
鮮やかな世界。華やかな空間。今この瞬間は、一体何度目だろう。この先は――そんな、未知の未来を想えばコイスルは胸元で手袋覆われた掌をきゅっと握っていた。
『あら、素敵なお色ですこと』
そんなコイスルには気付かずに。あきの髪色を見れば、番人は優雅な笑みと共に控えめな拍手と賛辞を送ってくれる。彼女の姿にあきは嬉しそうに笑むと――ひとつ息をした後、呪文を唱える。
それは誘いの言葉。いつもより優しく、甘い声色はあきとコイスルが戦いをしないと誓っている証。
優雅な誘いの後、くるくると切り株のテーブルには赤いお菓子の乗ったティースタンドとティーセットが並ぶ。赤と琥珀、キラキラと宝石のように輝くそれらを前にして。
「私達と紅茶、いかがですか?」
優雅な一礼と共に、あきは淑女を招いた。
彼女の言葉と誘いと共に、コイスルもこっそり気付かれぬ程の小さな呪文を唱えると、零れる程のキャンディをお皿の上へと並べていく。何時もならば鮮やかな色で満ちる筈なのだけれど、今日ばかりは此の世界と彼女へと敵意が無いことを表す為に赤い色だけ。けれど仄かに色が違えば、味も違うキャンディは本物の宝石のように美しい。
『まあ、素晴らしいですわ。それではお言葉に甘えましょうか』
お仕事の最中なのですけれど、と少しだけ悪戯な笑みを浮かべて。切り株の椅子へとブランシュは腰を下ろす。ふわりと広がるドレスの裾は、まるで花開いた花弁のように美しく見え、その姿にほうっとコイスルは溜息を零していた。
細い手を伸ばし、赤いキャンディをまずは口にする番人。ころりと優雅に口の中を転がる音色を響かせながら、どうおもてなししてくれるのかと楽しみにしている様子。
――そんな楽しげで穏やかな銀色の瞳が見ているのは、真っ赤なお菓子。
「赤いタルトタタン、綺麗で素敵でしょう?」
あきの手により赤いティーカップに注がれるのは温かな紅茶。美しい琥珀色と共にふわりと香る紅茶の香りを胸いっぱいに吸い込みながら、ブランシュは口許に笑みを咲かせる。鮮やかな林檎を詰めた真っ赤なタルトタタンだけでなく、赤のマドレーヌは美しい薔薇の形をしており真紅の薔薇が咲いたよう。赤いハートはアイシングクッキーで、フルーツサンドは瑞々しい苺の赤色。仄かにピンク掛かった赤のマカロンは甘酸っぱいラズベリーの香り。
『……ええ、本当に美しい』
その全てのお菓子をうっとりと見つめて、ブランシュは嬉しそうに言葉を零す。そんな彼女の様子に嬉しそうに笑みを返すと、カップを差し出しながらあきは問い掛ける。
「紅茶にお砂糖とミルクはどうします?」
『そうですわね……本日はミルクを頂きましょうか』
「すずもお砂糖とミルクで!」
思考を巡らせ、言葉を紡ぐブランシュに乗せるように、コイスルも手を挙げてリクエストを。二人の言葉にあきは頷くと、シュガーポットとミルクポットを置いてくれた。
後に広がる空気は、穏やかな淑女のお茶会。
温かなジャック・オ・ランタンの灯りが世界を照らす中、優雅に紅茶を楽しむブランシュとあき。白と赤の対照的な色を目の前にすれば、コイスルの藍色の瞳にはさらさらと風に揺れるあきの赤色が強く残った。
頬杖をつきながら、コイスルがぼーっとあきの紅茶を飲む仕草を眺めていれば。秋風が肌を撫でる中、じんわりと指先を温めるティーカップが心地良いと改めて想う。
――オーナーさんとオウガさんとも一緒に感じられるといいな。
同じように、目の前の彼女達は思っているだろうか。
背中の翅を震わせ、そっと笑みを浮かべて。コイスルはこくりと紅茶で喉を潤しながら、そんなことを考えた。
勿論、お茶会につきものなのは楽しい会話に花を咲かせること。優雅に紅茶を楽しむブランシュを見て、あきは笑みと共に言葉を紡ぐ。
「素敵な白薔薇ね。私達の世界にも、白い薔薇を赤く染める女王がいますよ」
きっとあなたと仲良くなれると思う。そう語れば彼女は少しだけ驚いたように瞳を瞬いた後、仲良くなれるの言葉には嬉しそうな笑みを零す。
『そう……、一度お会いしてみたいものですわ』
――交わす会話は、今この場が戦いの最中で。この国に危険が訪れているとはとても思えない。だからこそ、コイスルは心に想うのだ。
(「花火が来るのが、惜しくなっちゃうね」)
静かな曲とかが合いそう――そう想った時、不意に辺りの花々が震えたかと思うと、一斉に夜空に花火が咲いた。
大きな月の下、鮮やかに咲き誇る大輪の花。その花が散ったかと思うと、ぱらぱらと小さな炎がハロウィンの世界へと落ちてくる。
その花火を濃い藍色の瞳に映して――あきはそっと瞳を伏せると、手元のティーカップを唇へと寄せ紅茶を楽しむ。
こくり、こくり。
ゆっくり、ゆっくりと鳴る喉の音。
ぱらぱらと落ちる火は地へと落ちると、不思議なことに白の番人の身を燃え上がらせた。染まる赤色は淑女以外には広がらず、ゆっくりと足元から燃え上がってくる。
「お付き合いありがとう、女王様とお茶をのむのは、ほとんど、はじめてのことだったよ」
その姿を見送るように、コイスルは悲しげな色を瞳に映しながら言葉を零す。敵だとは分かっている。けれど、こうして自身の手で骸の海へと送らなくとも、悲しみを感じる程に穏やかな時間を過ごすことが出来たから。
「楽しかったですよ、白の女王様。次はオウガではなく、敵ではなく。友として、紅茶が飲めたら嬉しいな」
その気持ちはあきも同じ。燃えゆく彼女を見送るようにそう告げれば――ブランシュは最期に笑みを見せ、そのまま全てが燃え盛った。
ひらり、ひらり。
最後にハロウィンの世界に残ったのは、真白の薔薇の花弁だけ。
静寂の中、ただ響くのは打ち上げ花火の音色だけ。
ぱらぱらと炎は落ちて来るけれど、不思議なことに世界は炎に包まれずに静かに消えていく。そんな美しくも幻想的な空を見上げた後――。
「もう少しお茶会しよっか」
傍らの赤い彼女に向け、コイスルは静かに紡いだ。
彼女の言葉に、あきは空から視線を落とす。交わる二色の藍色の瞳。そのまま瞳を瞬いて、満面の笑みと頷きを返せば――ハロウィンの一夜のお茶会が再開する。
「ねえ、オーナーさんの好きなお茶ってなあに?」
お茶とお菓子の会話は尽きない。
だって、甘い甘いお茶会の時間は。女の子にとっては特別なひと時だから。
大成功
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