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アポカリプス・ランページ⑯~永遠のスカーヴァティー

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 デトロイト・急造機械軍製造工場に自らを据え置いた女性――フィールド・オブ・ナイン『マザー・コンピュータ』は、目の当たりにした事実を元に、思索を続けていた。
「まさか、6体のオブリビオン・フォーミュラを圧倒するとは。私は、自らの理論を訂正しなければなりません」
 未来と希望を求める人の意志。
 それは、『永遠』をも破壊する「究極の力オーバーロード」足り得る、と。
 しかし、マザー・コンピュータが本来欲しいのは、そんな事実ではない。
「私は、真理を求める時間が欲しいだけ。時間を停止すれば……すなわち永遠の中では、私は無限の思索を続けられる。私が欲するは思索であって、その過程で生まれた力に興味はありません」
 マザーは、そこで機械と繋がった髪を大きく振るうと、双眸をひらきつぶやいた。
「……それにしても。あの『グリモア』は、厄介な存在です」
 かの存在を排除しない限り、己の欲する永遠の思索は訪れることはない。
 そう理解し、自身が創造した超巨大コンピュータにアクセスを開始。
 デトロイトの都市すべての『機械化』を開始する。
「物事はシンプルにいきましょう。増殖無限戦闘機械都市によるグリモア必殺計画。これが、私の決戦兵器です」
 ――さあ、猟兵達。かかっていらっしゃい。


「『フィールド・オブ・ナイン』の1体であり、あらゆる物質や概念を機械化する能力を持つ女――マザー・コンピュータが動きだした」
 マザーは、デトロイトの都市すべてを『増殖無限戦闘機械都市』に変形させ、大地も空も、ありとあらゆる戦闘機械で埋め尽くし、猟兵たちを待ち構えている。
 このまま放置すれば、アメリカ大陸でさえ、マザーの戦闘機械獣と化すだろう。
 ヴォルフラム・ヴンダー(ダンピールの黒騎士・f01774)がそう説明を続けるも、眉間にしわを寄せ、険しい表情をしたままで。
「常であれば、その撃破を依頼し、転送をかけるところだが。……どうやら今回の敵は、一筋縄ではいかないらしい」
 どういうことだ、と問いかける猟兵たちに、ヴォルフラムは言った。
「かの女は、猟兵たちと異世界への転送を担う者――グリモア猟兵を戦場へ呼び寄せ、機械都市の内部(体内)に閉じ込める能力を持っている」
 つまり転移後は、猟兵とグリモア猟兵が、強制的にマザーの支配する戦闘機械都市に閉じ込められてしまうのだ。
 ヴォルフラムも一介の猟兵であり、戦闘ともなれば前線に出て戦う覚悟はもっている。
 しかし、グリモア猟兵として働いている時は、別だ。
 己に危険が迫り、万が一にも命を落とそうものなら、猟兵を呼び寄せることも、送り帰すこともできなくなってしまう。
 それでも。
 男は猟兵たちを信じ、己の安全を託し転送を行いたいと、言った。
「――俺が剣を振るうのは、最終手段と決めておく。俺はおまえたちを信じ、手持ちのユーベルコードで、おまえたちの戦闘力強化に徹する」
 ヴォルフラムがグリモアを掲げると、周囲の情景が、マザーの腹の中――戦闘機械で埋め尽くされた都市のそれへと、変じていく。
 いつもなら安全地帯を選んで送りだすが、今回は転移すれば即、戦場だ。
「……俺の命がある限り、だれひとり欠くことなく、送り帰すと約束する。そのためにも、おまえたちの力を貸してくれ」
 ヴォルフラムはグリモアをより高く掲げると、力強く、叫んだ。
「――往くぞ!」


西東西
 こんにちは、西東西です。
 『アポカリプスヘル』にて。
 大地も空も戦闘機械で埋め尽くされた戦場で戦い、マザーを撃破してください。

 プレイングボーナス……グリモア猟兵を守りつつ、増殖無限戦闘機械都市の攻撃を凌ぎつつ、マザーと戦う。

●グリモア猟兵
 本任務には、ヴォルフラム・ヴンダー(f01774)が同行しますが、彼自身が戦うのは得策ではありません。
 以下のユーベルコードを用意し、挑戦くださる方々の強化支援に徹します。
 強化をより強固なものとする意味でも、挑戦下さった方々の連携描写を予定しています。

 ユーベルコード『絶対防衛戦線(カメラーデン)』
 【拠点を死守すべく共に戦う仲間】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[拠点を死守すべく共に戦う仲間]の能力が強化される。
 さらに意思を統一するほど強化。

 それでは、まいりましょう。
 暗黒の竜巻に蹂躙されし、崩壊世界へ――。
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第1章 ボス戦 『マザー・コンピュータ増殖無限戦闘機械都市』

POW   :    マシン・マザー
全長=年齢mの【巨大戦闘機械】に変身し、レベル×100km/hの飛翔、年齢×1人の運搬、【出現し続ける機械兵器群】による攻撃を可能にする。
SPD   :    トランスフォーム・デトロイト
自身が装備する【デトロイト市(増殖無限戦闘機械都市)】を変形させ騎乗する事で、自身の移動速度と戦闘力を増強する。
WIZ   :    マザーズ・コール
【増殖無限戦闘機械都市の地面】から、対象の【猟兵を撃破する】という願いを叶える【対猟兵戦闘機械】を創造する。[対猟兵戦闘機械]をうまく使わないと願いは叶わない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 転送ゲートを越えた後、眼前に広がっていたのは、怪しく明滅する空だった。
 ――朝焼け、昼空、夕暮れ、満点の星空。
 それぞれが上空のあちこちでめまぐるしく入れ替わり、その上を極光(オーロラ)のごとき光がひるがえっている。
 その様はまるで、天変地異か終末が世界を覆っているかのよう。
 もっとも、現在このデトロイトのすべてを支配しているのは、フィールド・オブ・ナイン『マザー・コンピュータ』。
 あらゆる物質や概念を機械化する能力を持つその女が、この戦場を異空間たらしめているのは明らかだ。
 ヴォルフラム・ヴンダー(ダンピールの黒騎士・f01774)は転送ゲートの前に立つと、いびつなしつらえの黒剣を地面へと突き立てて。
「ナハト」
 連れていた身長30cm程のブラックドラゴンに呼びかけると、一瞬で竜騎士の槍へと変身させる。
 片手で扱えて投擲も可能な槍であれば、最低限、グリモアを扱いながら己の身を守ることができる。
 ――転送の力は、発動と維持に相応の時間を要する。
 一度閉じてしまえば、もう一度繋ぎ直すまでに意識を注がねばならない。
 ゆえにこれまでは、緊急時や戦闘中の使用を避け、発動者自身は戦闘には参加しないものとされてきた。
「しかし。今回ばかりは、武器を手に転送門を維持するしかあるまい」
 ヴォルフラムは黒槍を手に猟兵たちを見やると、地に突き立てた黒剣を示し、言った。
「この場所が、防衛線だ。敵軍がここまで押し寄せたなら、俺は己の身を護るために剣を抜き、戦う」
 だが先ほども言ったように、それは最終手段であり。
 ヴォルフラムは、仲間たちが己を支えてくれると、信じている。
 そう信じられるようになるほど、多くの猟兵たちの背中を見送り、帰還する様を見届けてきた。
「おまえたちとなら。どんなに絶望的な状況でも『奇跡』をたぐり寄せられると。俺はもう、知っている」
 拠点を死守すべくともに戦う仲間――戦友たちが居れば。
 どこまでも強くなれる。
 ヴォルフラムは次々と転送されてくる仲間たちを頼もしく見やりながら、ユーベルコードを発動すべく、唱えた。
「――『夜明け』を、ともに」
 集まった仲間たちの身体に、戦闘力強化の効果が発動して。
 そうして。
 四面楚歌の戦いが、始まった。

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【マスターより】

・『グリモア猟兵を守る行動』をとるプレイングにはボーナスが付きますが、戦闘に全力を注ぐプレイングでも大丈夫です。

・戦場の様子や、機械敵の姿、敵に向けての行動は、想定される範囲で自由に設定いただけます。
 希望があれば、プレイング内でご指定ください。
 (内容によってはマスタリングして描写を行いますので、あらかじめご了承ください)

・グリモア猟兵は転送門を死守するべく、その場周辺に留まります。
 門の維持を最優先し、槍を手に最低限の自己防衛に努めます(本格戦闘は避けます)。

・グリモア猟兵は、以下のユーベルコードを持って行きます。
 ユーベルコード『A:絶対防衛戦線(戦闘力強化)』『B:夜狩人の遺志(全体回復)』
 共闘等のきっかけにしたいという場合、どちらか1つご指定いただいてもOKです。
 (2つの記載があった場合は、こちらで1つを選びます)

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フィユ・メルク
【アドリブ・連携歓迎】

地上も空も敵だらけだ
圧倒的な数の敵を前にしても恐怖は感じない
一人ではないから、心強い仲間達がいるから

拠点から離れすぎない距離を保ち[空中浮遊]で周囲を警戒して行動
攻撃手段は[高速詠唱][多重詠唱]での隙を与えない魔法攻撃
敵の攻撃は[オーラ防御][拠点防御]で防ぐよ
[継戦能力]で最後まで戦い抜いてみせる

ヴォルフラムさんのUC【A】の支援を受け
UC【夜駆けの耀星】を発動、範囲内の敵の一斉撃破を狙おう
わたしがみんなの道を開くよ!
マザーへの道が開いて他の猟兵さんのサポートになればいいな
後方からサポートは継続するよ

みんな頑張っているんだ、わたしも引かないよ
みんなで夜明けを迎えよう


エリシャ・パルティエル
グリモアの必殺…そんなことはさせないわ!

ヴォルフラム
あたしも戦うわ
あなたを信頼してるから、こそよ

人と関わるのが苦手なように見えた彼が
仲間たちを信頼して送り出してくれて
思わず胸が熱くなるけど戦闘に集中よ

ええ、仲間と一緒なら強くなれるわ
どこまでも!

あなたの願いや無機質な機械では
こちらの結束や思いを崩すことなんてできないわ!
理解できないかもしれないけどね

ありがとうヴォルフラム
いつもより力が出せそうよ
UCで戦闘機械の攻撃を凌ぎつつ
仲間が傷つけば回復に務めるわ

あなたにあるのは善悪ではなくて
真理を求める探求心
けれど時を止めさせはしない

絶対に退いたりしない
この戦線は守り抜くわ
必ずみんなで夜明けをもたらすの


ヒルデガルト・アオスライセン
彼だけではない
グリモア猟兵の方々には数え切れない恩と感謝がある
ですがその有無に関わらずここに立っていたでしょう

無限の質量を奪います
増やしても無駄かな、と逡巡を挟ませる程度で十分です

防衛線で拠点防御
不可視の光を編んだ防壁を生み出して妨害
イーコアで身振り、会話、熱からマザーの搭乗部を探り
凛然の黒騎士へ向かう兵器を天罰大剣で斬り裂きます

どうやら思考不足だったようね、必殺が聞いて呆れるわ
誘き寄せの盾で無意識に注意を引いて
増産タイミングに、カウンターで銀貨を弾きます

機械都市の頭上で光の渦を巻き、兵器群を飲み込んで熱の塊に防具改造
UC解除後、グラップル+投擲、吹き降ろす風の属性攻撃で
重量攻撃を仕掛けます


パラス・アテナ
連携歓迎
マザー
ヴォルフラムはアタシ達の大事な仲間なんだ
アンタの好きにはさせないよ

常にヴォルフラムを庇える場所に立って
後方から味方の援護に徹するよ
【絶対防衛線】の援護は有り難く活用させてもらって
援護射撃、2回攻撃、鎧無視攻撃を乗せた指定UC
味方の力が最大限に発揮できるよう弾幕を張り続けるよ
無論隙を見せたら即座に弾幕を集中させて有効打を狙う
敵の攻撃は激痛態勢と継戦能力、武器受けで引き受ける

永遠に思索するなら思索しないのと同じさ
大事なのは思索の先で得たことを糧に何かを成すことだからね
考えたいだけなら猟兵の前に出ずに
大人しくしてりゃ良かったんだよ
まあアンタに言っても理解できないだろうがね

骸の海へお還り


館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎

ヴォルフラム、久しぶりだな
…無事に帰るために、俺も手を貸す

ヴォルフラム護衛優先
指定UC発動、高速移動を可能に

戦闘機械は雷の「属性攻撃」を帯びた衝撃波で「鎧無視攻撃、なぎ払い、範囲攻撃」しつつ一気に潰そう
防衛線に向かう敵を「視力、見切り」で見極めたら優先撃破

もし防衛線を突破されそうになったら
漆黒の「オーラ防御」展開しながら高速移動で駆けつけヴォルフラムを「かばう」

隙が生じたら「地形の利用」で機械都市に身を隠しつつ高速移動
マザー・コンピュータの死角から「不意討ち」しつつ「2回攻撃、怪力、鎧砕き」で外のポッドごと叩き割る!!

シンプルにはシンプルで対抗だ
骸の海へ還るんだな!


冴島・類
送り、帰す。
それがなければ、どの世にも駆けることすら叶わない。
果たし続けてくれる、グリモア猟兵さん達への敬意は尽きない。

人を世界を、と言うのは常からだけど。
夜明けを、に笑んで彼や他の猟兵さんに拳をあげ機械の群れに目を向ける。
ええ、皆さんでお疲れ様を言いましょう。

(共闘UCは、絶対防衛戦線希望)

埋め尽くす敵を、全部自由に動かれれば、数の暴力だ。
射程に入った機械、特にヴォルフラムさんに近いものから順に、
綾繋の糸を飛ばし主導権奪い、動きを崩したい。

完全に彼らの母の命を奪い、上書きで来るとは到底思ってない、
全霊で、ほんの数秒でも。

絶対に、貴方と一緒に帰ります

乱したものから薙ぎ払いで、斬り落とす。
次!




 ――天も地も、地平の向こうまでもが蠢く機械に支配されている。
 埋め尽くす機械群の向こうに、巨大戦闘機械と化したマザー・コンピュータの姿があり。
 すべてを機械へと変える女は、まるで王座にでも君臨するように、機械化したデトロイト市に己が身を埋め、言った。
『きっと来ると思っていました』
 見あげるほどに巨大な機械兵器の姿は、猟兵たちの転送が行われた地点からは遥かに遠い。
 しかしその声は、戦場に増殖する機械兵器たちの拡声器を通じて、ありとあらゆる場所に展開する猟兵たちへ語り掛ける。
『――私にも、あなた達にも、それぞれに譲れない願いがある。だからこそ、全力で相手をしましょう。私が、私自身の望みを叶えるために。あなた達が、あなた達の望みを叶えるために』

 その言葉が戦闘開始の合図だとでも言うように、戦場の周囲に展開していた機械兵器たちが距離を詰めてくる。
「マザー。ヴォルフラムは、アタシ達の大事な仲間なんだ。アンタの好きにはさせないよ」
 両手に愛用の銃火器を構え、そう告げたのはパラス・アテナ(都市防衛の死神・f10709)だ。
 己の声が直接マザーの元まで届くとは思わないが、機械兵器経由にでも届く可能性はある。
 そもそも。
 己の思索のために他を巻き込もうとする者と対話をするつもりなど、パラスにはなかった。
 いつでもヴォルフラムを庇いに入れる場所に立ち、これまで何度もそうしてきたように、後方から仲間たちの援護にかかる。
「ヴォルフラム、久しぶりだな。……無事に帰るために、俺も手を貸す」
 声に顔を向ければ、黒剣を手にした館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)の姿があって。
 黒剣を持つ者同士の、親近感がそうさせるのか。
 ヴォルフラムは多くの言葉を交わす必要はないと判じ、ただ強く、頷き返した。
「ここは、お前たちに託した」
 男の言葉を聞き終えるより早く、敬輔は心の中で、唱えている。
(「喰らった魂を、力に替えて――」)
 黒剣がかつて喰らった魂をまとった瞬間、眼前に迫っていた機械兵器へと高速で接近し、斬撃による衝撃波の先制攻撃を撃ちはなつ。
 雷の属性攻撃としていたからか、戦闘機械たちは依り代とする身体を震わせ、すぐに動かなくなる。
 と、その時だ。
「――弾幕ってのは、こう張るのさ」
 ふいに聞こえた声に続き、敬輔へと突進してきていた自動車兵器が、爆発する。
 パラスが眼にも留まらぬ早業で銃弾の雨を叩き込み、立て続けに有効打を撃ちこんだのだ。
 礼を告げようとしたところで、パラスが叱咤する。
「よそ見してる暇はないよ」
「ああ……!」
 礼を告げるよりも、戦果をあげる事を、この女は良しとするだろう。
 敬輔は仲間たちに背中を任せ、次に迫る敵へと刃を向けた。

(「グリモアの必殺……。そんなことは、させないわ!」)
 銀のロザリオを固く握りしめ、エリシャ・パルティエル(暁の星・f03249)はそう胸に誓う。
「あなたの願いや無機質な機械では、こちらの結束や思いを崩すことなんてできないんだから……!」
 「理解できないかもしれないけどね」と憤った勢いのまま付け加え、寡黙なグリモア猟兵の横に並び立ち、告げる。
「ヴォルフラム、あたしも戦うわ!」
 呼びかけられた男――ヴォルフラム・ヴンダー(ダンピールの黒騎士・f01774)は、口を開こうとして。
 隣立つ娘が、己の言葉を聞き入れようはずもないことを思い出し、「好きにしろ」と口の端をもたげる。
 エリシャは、男の考えていることなどお見通しといった様子で、微笑んで。
「あなたを信頼してるからこそ、ここへ来たのよ」
 それまで、積極的に人と関わることを苦手としてきた――ように見えていた、男だ。
 仲間たちを信頼して送り出してきたことは知っているが、それをはっきりと言葉にして表したことに、思わず胸が熱くなる。
(「だけど今は、戦闘に集中よ」)
 戦端をひらき始めた仲間たちへと視線を送り、ユーベルコード『聖ヨハネの審判(サンクトゥス・アルビテル)』による、聖なる癒しの光を展開させる。
 ヴォルフラムの展開するユーベルコードのおかげもあり、いつもより力が出せそうだ。
「ええ。仲間と一緒なら強くなれるわ、――どこまでも!」

(「送り、帰す。それがなければ、どの世にも駆けることすら叶わない」)
 冴島・類(公孫樹・f13398)の脳裏には、これまでに関わったグリモア猟兵たちの顔が浮かんでいた。
 直に依頼を受けた者。
 ともに依頼に出かけた者。
 報告書を読み知った者。
(「果たし続けてくれる、グリモア猟兵さん達への敬意は尽きない」)
 そのうちの一人でもあるヴォルフラムが戦場に立つ姿を見やり、微笑みを向ける。
「なんだ」
 いぶかった男に、類は「いえ」と、頭を振り応える。
 この男が、人を世界を、と言うのは常からではあったが。
 「夜明けを」という言葉を聞いたのは、ついぞ初めてであったから。
 男の本心の一端を垣間見たようで、つい、笑みがこぼれたのだ。
「絶対に、貴方と一緒に帰ります。――そうしたら、皆さんでお疲れ様を言いましょう」
 ヴォルフラムをはじめ、他の猟兵たちに拳をあげ、機械の群れに目を向ける。
 ユーベルコード『絶対防衛戦線』の効果を受け戦場に立つ仲間たちは、誰もが底から湧き上がるような力を感じていた。
(「しかし、いかに能力が上がろうと。埋め尽くす敵たちが全部自由に動いてしまえば、それは数の暴力だ」)
 類は、ヴォルフラムへと襲い掛かった機械植物に不可視の糸を絡め、その制御権を一次的にでも剥奪。
 動きを崩し、手にした短刀で次々と薙いでいく。
 ――完全に彼らの母の命を奪い、上書きできるとは思っていない。
 しかし、ひとではない、ものだからこそ繋ぐ縁もあるはずだ。
 そうと願い、人ならざるものを呼び、繋ぐ。
(「全霊で、ほんの数秒でも操作できたら……!」)
「次!」
 類が次々と敵をいなしていくのを、フィユ・メルク(星河の魔術師・f30882)は頼もしく見ていた。
 地上も空も、敵だらけで。
 だけど、圧倒的な数の敵を前にしても、恐怖は感じない。
(「一人ではないから、心強い仲間達がいるから」)
 その事実を噛みしめるように、フィユは空中浮遊で上空からの敵に備える。
 地上で戦う仲間は多くいたが、空を守れる者はそう多くなかった。
 ゆえに、己が立つならこの場所だろうと。
 フィユは星を映した瞳を空へと向け、迫りくる「それ」と対峙していた。
 猟兵たちをめがけ、一直線に飛来する飛行機。
 飛行機の胴体部分を浸食するように、いくつものコードが張り巡らされているところを見ると、マザーの操る機械兵器のひとつなのだろう。
 巨大な質量のそれが戦場に堕ちれば、猟兵たちはひとたまりもない。
 フィユは機械化された鳥たちの攻撃をオーラ防御でいなし、星の魔力と呪詛が込められた魔杖『宵の星瓶』を掲げる。
「猛りの星、汝の牙を以て禍を貫け!」
 オーロラのひるがえる空に、星纏う光剣が幾重にも流れて。
 幾何学模様を描き複雑に飛翔するその軌跡が、次々と機械化した飛行機に向かっていく。
 ――星の名は、デンス。
 自信家で真っ直ぐな心の星は、その身をもって飛行機を包囲し、戦場の空を煌々と照らした。
 攻撃を受けた飛行機が、爆発炎上する。
 姿勢を崩し、軌道を逸らしながら、それは別の場所へと堕ちていった。
 眼前には、今もなお、おそろしい戦いの光景が広がっている。
 けれど。
 ――マザーへの道が開き、他の猟兵のサポートになればいい。
 その強い想いを胸に、フィユは改めて魔杖を握りしめ、呼びかけた。
「このまま! わたしが、みんなの道を開くよ!」


 一定区画の敵を一掃するごとに、ヴォルフラムは地に突き立てた剣を抜き、マザーの君臨する場所へ向けて前進を繰り返していた。
 新たな拠点を定める度に、仲間たちと戦闘を継続する。
 進軍に追従しながら、ヒルデガルト・アオスライセン(リベリアス・f15994)は、無限増殖する敵の恐ろしさを噛みしめていた。
 ――倒しても、倒してもきりがなく、常に全方位の警戒を迫られる。
 攻撃を軽減させるべく、ヒルデガルト自身も、不可視の光を編んだ防壁を生み出し妨害を行っていた。
 しかし、そんな戦闘が延々と続けば、いかにユーベルコード『絶対防衛戦線』の支えがあったとしても、いずれは仲間たちの気力が先に尽きてしまうかもしれない。
 拠点とするグリモア猟兵の男も仲間たちに守られているとはいえ、転送ゲートを維持しながらの継続戦闘を続けており、負担は大きい。
 ヒルデガルトは、凛然の黒騎士へ向かう兵器たちを、手にした大剣で次々と斬り伏せながら胸中で呟いた。
(「彼だけではない。グリモア猟兵の方々には、数え切れない恩と感謝がある。――ですが、その有無に関わらず、私はここに立っていたでしょう」)
 当初は遠くに見えていた巨大戦闘機械と化したマザー・コンピュータの姿は、着実に進んできた甲斐もあり、今では眼前に見えるまでに迫っている。
 ヒルデガルトはすべらかな銀靴『モーメントグリーヴ』のヒールを鳴らし、仲間たちへと呼びかけた。
「無限の質量を奪います」
 増殖を、抑え込むために。
 マザーに、敵の無限増殖は無駄なのではないか、と逡巡を挟ませる程度で十分。
 準備を整える合間の援護を、仲間たちに依頼して。
 無尽蔵に悪を引き寄せる聖銀のバックラーを構え、周囲の機械兵器を通し声を聞いているであろう、マザーへと呼びかける。
「どう? ついにここまで来たわよ。『永遠』を求めるには、どうやら思考不足だったようね、必殺が聞いて呆れるわ」
 自らの勝利を確信しているのか。
 明らかな挑発と理解しつつも、マザーはふたたび戦場に声を響かせた。
『よくぞここまで、と言いたいところですが。あなた方には、勝利の可能性などありません』
 声を聞きながら、ヒルデガルトはイーコア――身の内に流れる不尽の生命力を齎す霊液の力をもって、マザーの搭乗部を探った。
 機械同士を融合させ、ヒト型の兵器と化したその心臓部に、マザーの気配を認めて。
 ヒルデガルトは仲間たちへ目くばせをすると、そっと、己の胸に手を置いた。
 そうして、マザーが対猟兵戦闘機械の対策として増殖するタイミングで、敵を睨みつける。
(「……大丈夫、一人でも出来るわ」)
 手の内に秘めていた銀のコインを指先で弾けば、ヒルデガルトの姿は瞬く間に、触れた者を融解させる光速プラズマへと変化!
 そのスピードと反応速度は凄まじく、仲間たちも姿を視認できなかったほどだ。
 一条の光となった当のヒルデガルトは機械都市の頭上で光の渦を巻き、兵器群を飲み込むと、防具を熱の塊に改造する。
 ユーベルコードを解除した姿で吹き降ろす風の属性攻撃を仕掛ければ、少女の一撃は会心の重量攻撃となって、戦場に新たな道を築いた。
 間近に迫った、マザーへ。
 ヒルデガルトは微かに笑んだ。
(「――ええ、そうよ。貴方の期待も、裏切ってみせるわ」)

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鎹・たから
この街の生き物は、すべて機械にされてしまったのですね
言葉も意識も奪われて
だけど、悲しんでいるだけではいけません

真の姿をお見せします
いつだって信頼してくれるヴォルフラムに
指一本触れさせません

危険があればすぐ駆けつけられるよう
ヴォルフラムに少し近い距離に居るのを意識
彼とたからにオーラの膜を張ります【オーラ防御

埋め尽くす機械群にぐるりと掌を向けて
雪と霰の奔流で一気に凍りつかせ押し返します【念動力、衝撃波

うち漏らすことのないよう味方と声を掛け合い
万が一ヴォルフラムへ攻撃が及べば身を呈して守ります【ダッシュ、かばう

この程度の傷は我慢できます
彼は守るべき大切な仲間です
いのちを慈しむ、優しく尊敬できる人を
絶対に失いたくありません【覚悟、勇気

ヴォルフラム、援護をお願いします
戦力強化も癒しの力も、たからには大きな助けになります

もう一度奔流を放ち
今度は一点集中でマザーへの道をつくります【貫通攻撃

攻撃には残像を組み合わせダッシュ
大太刀を振るい果敢に切り込みましょう【早業、暗殺

母と呼ばれた孤独なあなた
さようなら


ハルア・ガーラント
ヴォルフラムさんは此処にいるみんなの帰る場所であり目印
戻るところがある、それだけで頑張れる

頑張って作るのは強気の笑顔
突き立つ剣より前へ
ふふ、やっぱり最初は彼の後ろからになってしまう

≪パニッシャー≫を手に戦闘態勢
地上の敵は仲間に任せ、わたしは空から襲い来る敵の撃破を重視
実弾と[誘導性能を持つ魔弾]を使い分け攻撃、[第六感と視力]を使い敵の行動にも注意を払います
対応しきれない時もあるかもしれない
けれど此処には仲間がいてヴォルフラムさんのUCの力もある
全部ひとりでしなくてもいいの

地面が蠢いたら急ぎヴォルフラムさんの前へ移動
彼と自分に[オーラの障壁を張り防御]力を高めましょう
ヴォルフラムさんの頭が敵から思いきり見えてそうだけど……大きく翼を広げ守る気概を見せます
予め剣より前に設置しておいた増幅装置
そこに戦闘機械が侵入したらUCを発動し破壊したい

『永遠』は憧れのまま終わらせるのがいいって思う
それに、わたしは夜明けを見たい
だから世界には止まって欲しくない

うんと[魔力溜め]した一撃を彼女へ放ちましょう




 仲間たちが穿ち、切りひらいた道なき道。
 それは今や、終末の世を覆いつくすと思われたマザーの元へ、着実に道を繋ぎつつあった。
 集いし猟兵たちは己が役目をまっとうせんと、ひとりも振り返ることなく、ただ前だけを見据え、力をふるい続ける。
(「ヴォルフラムさんは、此処にいるみんなの帰る場所であり、『目印』」)
 ――突き立つ剣よりも、前へ!
 時には大地さえも機械敵と化し襲い来るなか、ハルア・ガーラント(宵啼鳥・f23517)は地上の敵を仲間たちに任せ、天獄製の狙撃銃を手に両翼をひろげ、空へと舞い上がる。
(「戻るところがある、それだけで頑張れる……!」)
 実弾と魔弾を使い分け黒騎士へ迫る敵を撃ちはらう中には、己の手が回らず、対応しきれない敵もいた。
 しかし。
「ヴォルフラムには、指一本触れさせません」
 真の姿をさらし、冷気をはらみ疾風のごとく駆ける娘――鎹・たから(雪氣硝・f01148)が、瞬時に男の間合いへと入って。
「凍えなさい、ほろびなさい」
 埋め尽くす機械群にぐるりと掌を向ければ、天から降り注ぐ雪と霰の奔流が、怒涛のごとく一気に凍りつかせて。
 その勢いのままに、敵軍を押し返していく。
 ハルアと、たから。
 ふたりの娘の奮戦と気づかい、そして疲労は、仲間たちの中心に立つヴォルフラムにももちろん、伝わっている。
「――支援する」
 黒槍を掲げた黒騎士が唱えれば、周囲を守り、戦う娘たちの傷はたちどころに癒えてゆき。
「この程度の傷は、我慢できます」
 無表情で返した羅刹の娘に、
「ふふ、やっぱり最初は、後ろからになってしまう」
 強気ではにかむハルアに、男がかすかに嘆息するのがわかった。
「……言ったはずだ。『俺の命がある限り、だれひとり欠くことなく、送り帰す』」
 娘たちも頑ななら、男もまた、不器用で。
 たからは、色硝子の瞳を伏せ、静かにひらき、言った。
「ヴォルフラム、援護をお願いします。戦力強化も癒しの力も、たからには大きな助けになります」
「……いいだろう」
 ――『夜明け』を、ともに。
 この戦場で、何度繰り返したかわからない。
 拠点を死守するのだと。
 ただひたすらに、まっすぐな、想い。
 たからは身の内に再び力が満ち溢れるのを感じながら、向かい来る敵たちの攻撃をひるがえし、力強く地を蹴る。
(「彼は、守るべき大切な仲間です。いのちを慈しむ、優しく尊敬できる人を、絶対に失いたくありません」)
 ハルアもまた、男の足元の地面が蠢くのを察知し、オーラの障壁を展開する。
 あらかじめ、剣より前に設置しておいた増幅装置。
 そこに戦闘機械が侵入したのを見計らい、純白の翼を大きく広げて。
「天に怒られてください!」
 怪しく明滅する空が引き裂かれ、幾重にも地に堕ちたのは裁きの光。
 極光がひるがえるなか、光は次々と敵を屠って――。


 それからさらに、どれほどの機械を撃ちはらっただろう。
 ようやくマザーの足元に迫った時には、ここまでの猟兵たちの獅子奮迅ぶりを前に、女はゆるりと首を振った。
「どれほどの思索を巡らせようと、どれほどの戦略をたてようとも。猟兵達はこうして、あらゆる状況を覆していくのでしょう」
 無機質にも感じられたその口端に、わずかに笑みが浮かんだようにも見えて。
 しかし。
「猟兵達。あなた達がそうするように、私もまた、自らの理論と思索のために、可能性をなげうつことはできないのです」
 世界を飲み込まんとする女は、最後まで己の主張を曲げはしない。
「永遠に思索するなら、思索しないのと同じさ。なぜって? 大事なのは、『思索の先で得たことを糧に、何かを成すこと』だからね」
 「そんなこともわからないのかい」と、パラス(f10709)はやはり呆れたように告げて。
「考えたいだけなら、猟兵の前に出ずに大人しくしてりゃ良かったんだよ。――まあ、アンタに言っても理解できないだろうがね」
 その通りだと、敬輔(f14505)もまた、黒剣を構え頷く。
「シンプルにはシンプルで対抗だ、――骸の海へ還るんだな!」
「あなたにあるのは善悪ではなくて、真理を求める探求心。けれど、絶対に! 時を止めさせはしない」
 エリシャ(f03249)も決意を胸に、宣言する。
「絶対に退いたりしない。この戦線は守り抜くわ、必ずみんなで『夜明け』をもたらすの……!」
「そう、みんなでここまで頑張って来たんだ、わたしも退かないよ!」
 天駆けていたフィユ(f30882)が、己の声も届けと、精一杯に声を張って。
「みんなで、夜明けを迎えよう……!」
「ええ、必ず。皆さんでそろって、お疲れ様を言いましょう」
 類(f13398)も頷き、銀杏色の組紐飾りの付いた短刀を構える。
 ヒルデガルト(f15994)は、と言えば。
 語る言葉など持たぬとばかりに、だれよりも早く、マザーへ向けてヒールの踵を鳴らし、跳ねている。
 流星が堕ちるがごとく、銀の髪が流れる。
 それに連なるように、仲間たちもまた、次々と武器を手にしマザーへと立ち向かっていった。
 もはや、マザーの呼びかけに応える機械はわずかとなり。
 無残に力尽きようとする『母』を前に、ハルアは逡巡したのち、声を発した。
「『永遠』は、憧れのまま終わらせるのがいいって思う。それに――」
 『日常』とはかけ離れた天上を仰ぎ見て、娘は言った。
「わたしは『夜明け』を見たい。だから世界には、止まって欲しくない」
 その言葉に同意し、うなだれた女の前で大太刀を振りかぶったのは、たからだ。
「母と呼ばれた孤独なあなた」
 悲しんでいるだけではいけないのだと、胸中でもう一度、念じるように呟いて。
 すべきことを、成した。
「さようなら――」


 すべてを見届け、男――ヴォルフラムはおもむろに天を仰いだ。
 先ほどまでめまぐるしく入れ替わっていた空は、ようやく落ち着きを取り戻して。
 地平の先に光がさしたと思うと、それはあっという間に世界を明るく塗り替えていった。
 ――故郷の空では、どれほど願っても見ることのできない光景。
 まぶたを閉ざしてもなお、世を貫かんと輝く光に、思わず灰の眼を細めて。
 いつか、己の故郷にも『奇跡』を届けられるはずだと。
 男は、ともに戦い抜いた仲間たちを振り返り。
 そうして。
 ごく微かに、微笑んでみせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年01月17日


挿絵イラスト