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水中ブーケのアンダンテ

#カクリヨファンタズム #お祭り2021 #夏休み

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#夏休み


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●爆ぜる水中花
 注ぐ夏光はキラキラと輝き、青い水面を眩く輝かせる。
 そよぐ風は熱を帯びているが、濡れた肌を撫でれば身体の熱を奪っていくかのよう。
 爆ぜる火花の音色と彩。
 輝く世界から沈む青へと光が落ちれば、水中での輝きは眩しい程に心に残る。

 これはひと時の憩いの時間。
 巡る季節の中。この輝きを楽しめるのは僅かなひと時――。

●沈む花
「毎日忙しいと思いますけど、たまにはお仕事を忘れて遊ぶのはどうですか?」
 ラナ・スピラエア(苺色の魔法・f06644)は、猟兵に向けそう紡ぐ。彼女の大きな苺色の瞳はキラキラと輝き、楽しくてしょうがないと語るよう。
 日々数多の世界を渡り、任務をこなす猟兵達。その依頼の中でひと時の安らぎを得ることはあるけれど、基本的に戦いは切り離せないもの。
 だからこそ、夏のひと時だけでもゆっくり出来たらと。ラナは猟兵達を憩いの時間へと誘おうと、手招きするかのように言葉を掛けた。

 彼女が案内するのは、カクリヨファンタズムにあるひとつの海。
 透き通る程に澄んだ海はどこまでも続く程に広大で。赤や白と云った花々が水中を揺蕩い、鮮やかな色の魚達が泳いでいるなんとも華やかな海。
「今回は妖怪の皆さんが、花火を用意してくれているんです。それがちょっと特別なもので……海の中でも楽しめるそうなんです」
 手持ち花火に小さな打ち上げ花火。形は様々だけれど、海に向けて落ちればその光は輝き続け、海の中で花火の色を楽しめるという。
 手持ち花火が奏でる火花の音色。色とりどりに変わる炎の色。
 それら全てが水中で爆ぜれば――揺らめく視界と水の流れる音の中、共にイロとなり輝くのだ。儚く消えゆく、その一瞬まで。
 見た目は普通の花火のようだが、火を使わずとも手にした時に自然と光が灯る不思議なもの。故に自然や生き物に特に害は無いようで、触れても火傷の心配も無いらしい。
 勿論浜辺でも楽しめるので、陸と水中と2つの世界での変化を楽しめるだろう。

 夜になれば、照明の無い海は闇に包まれる。
 穏やかな波の音。浮かぶ月がぼんやりと闇色の水面を照らし、瞬く星空は満点で、夏の星座を読み解くことが出来るだろう。
 静寂に包まれた夜の海。けれどこの日は、不思議な世界が広がるのだとか。
「日中楽しんだ妖怪花火……それがですね、実は一夜の間海に残るそうなんです」
 詳しく言えば、残るのは花火の残滓のようなもの。火花として爆ぜ、輝いた色が海の中に残り――闇に包まれた夜になると、海の中が色とりどりに輝くのだという。
 深い、深い、海で輝く不思議な光。
 それは眩い程強いものでは無く、ほんの僅かな色を浮かべるだけ。
 けれど、だからこそ瞬く星も、浮かぶ月も邪魔しないのだ。天と海とで瞬く世界を眺めながら、どのようなことをするのか――それは、各々の自由。
 気をつけて欲しいのは、夜の海は危険なので波打ち際までしか入ってはいけないこと。それでも十分、輝く海水が足を撫でる世界を楽しめるはずだ。

「昼も夜も、楽しいひと時を皆さんが過ごせたら嬉しいです」
 楽しそうにラナは微笑むと、猟兵に向けそう語る。
 今年は落ち着いた世界でも再びの戦いが起きたりと、慌ただしい日々が続いていた。
 だからこそ、ほんの僅かな時間でも全てを忘れて楽しめたら――そう想うのは、きっと悪いことでは無いだろう。
 夏はまだ始まったばかりではあるけれど。
 気付けばあっという間に過ぎてしまうものだから。
 注ぐ太陽。瞬く星。
 溢れる程の世界の光の中、灯る花は今このひと時だけの輝きを抱いている。


公塚杏
 こんにちは、公塚杏(きみづか・あんず)です。
 『カクリヨファンタズム』でのお話をお届け致します。

●シナリオの流れ
 1章のみ『日常』を扱うお遊びシナリオです。

●舞台
 透き通る程澄んだ海は、鮮やかなブルー。
 注ぐ陽射しも夏色で、人も妖怪もいないので猟兵達だけで楽しめます。

 時間帯によって情景が変化します。どちらかひとつを選んで下さい。(プレイング冒頭に記載お願いします)

・昼
 強い陽射しの中、青い海でのひと時です。
 透き通る水中には揺らめく白と赤の花々。色とりどりの魚達。
 妖怪花火は特別製で、海の中でも光が見えます。(生き物や自然に害の無いものです。火の心配もありません)

 花火を楽しむことは必須ではありません。
 想い想いの過ごし方で楽しんで頂ければ大丈夫です。

・夜
 昼間に注いだ花火の残滓が海に残る僅かな時間です。
 数多の色が水中で輝き、海を輝かせます。
 波の音と仄かに花火が爆ぜる中のひと時です。

 夜の為、危険なので海の中に入れるのは波打ち際のみ。(足が浸けられる程度です)
 浜辺で楽しむ際も、必要な物はご持参ください。

●装い
 特に指定が無ければ言及は致しません。
 水着コンテストの装いの場合は、記載頂ければ拝見致します。(文章の流れによっては反映出来ない可能性がありますので、ご了承のうえお願いします。ステータスでそのイラストを活性化しておいて頂けますと、探しやすくて助かります)

●その他
 ・昼はほのぼのと、夜はしっとりとした雰囲気での描写予定です。
 ・同伴者がいる場合、プレイング内に【お相手の名前とID】を。グループの場合は【グループ名】をそれぞれお書きください。記載無い場合ご一緒出来ない可能性があります。また、3人以上での団体様は優先順位が下がりますご了承下さい。
 ・許容量を超えた場合は早めに締め切る、又は不採用の場合があります事をご了承下さい。
 ・受付や締め切り等の連絡は、マスターページにて随時行います。受付前に頂きましたプレイングは、基本的にはお返しさせて頂きますのでご注意下さい。
 ・お声掛け頂いた場合のみ、ラナがご一緒させて頂きます。

 以上。
 皆様のご参加、心よりお待ちしております。
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第1章 日常 『猟兵達の夏休み2021』

POW   :    妖怪花火で空へGO!

SPD   :    妖怪花火の上で空中散歩

WIZ   :    静かに花火を楽しもう

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●昼と夜の双世界
 どこまでも澄んだ色の海――それはどこかも知れない海の色。けれど知っているような、そんな気がする不思議な世界。

 眩い光が降り注ぐ日中は、世界は青に包まれる。
 遠い遠い青空は、すっかり夏の色に大きな白い雲が立ち上がり。その雲の隙間から注がれる陽射しはどこまでもどこまでも照らすように力強く、世界を熱に染め上げる。
 陽射しを浴びて煌めく水面は穏やかで。心地良い波の音の中、水中に舞うは鮮やかな花に優雅に泳ぐ魚達。ひらり、ひらりと舞うその色の中、落ちるように瞬く光があった。
 己の手から生まれる魔法の花火は世界を照らし、水中を照らす。そして辺りに浮かぶ浮き輪に備え付けられた花火からは、不思議なことに絶えず花火が落ちていた。
 パチパチと爆ぜる音色が水中にまで響き渡る。
 色を咲かせる花の火は、まるで水中花のように――青の世界に咲き誇る。

 太陽が沈めば世界は闇に包まれる。
 浮かぶ月と星明かりが世界を照らし、穏やかな波の音の中――暗い世界を照らすのは、手元の花火の光だけでは無い。
 ぽうっと水中で灯るかのように。深い深い底から光が生まれる海の姿。穏やかな波が揺れ動けば、その光も揺蕩うかのように波間を揺れる。それはまるで、波に踊る小さな生物のような、不思議な心地。
 海の中から立ち上がるのは、仄かな仄かな花の火が爆ぜる音。
 それは穏やかな波の音に掻き消えてしまいそうな程、儚い音色が奏でられている。
 少し離れれば、他人の手で咲く花火の届かない闇の世界もあるだろう。
 己だけが光を咲かせても良いし、敢えて闇の中煌めく海を眺めるのも良いだろう。
 ――穏やかな夜の海は、きっと優しくアナタを包み込んでくれるから。
ミラ・ホワイト
クラウンさま(f03642)と


夜の海はほんの少し怖いけれど
今宵はあなたが居てくださるから
うふふ。楽しくってうきうきするわ!
波に攫われてしまわぬよに、離さないでね
はにかみながら、きぅと握る手

わぁぁ、綺麗…!
波間に漂う淡い光は息衝くようで
微かに聴こえる音は、光の花達の内緒噺かしら

あっ、みてみて!
とりどりの瞬きの中指差したのは
いっとう輝く明るい金色
クラウンさまのお色、みーつけたっ
まぁ、隣にわたしの色も?
ふふ、あの子達も手を繋いでるみたい!

ずぅと眺めていたいような
一夜限りの儚い花
でもね、寂しくはないの
隣り合う優しい笑顔に頷いて

包み込む手を
繋ぐ指先でそうと撫ぜ

――わたしのだいすきな光は、此処に在るから


クラウン・メリー
ミラ(f27844)と


夜の海は怖い?
えへへ、そう言ってもらえて嬉しい!
もっと楽しい気持ちに
もっと幸せな気持ちに塗り替えれたら良いな

もちろん!なんて
応えるようにきゅっと握る

わあ!とっても綺麗だねっ!
俺達も内緒話に混ざれないかな?
耳を澄ませば煌めく音に
ふふー、とっても楽しそう!

わ、わ!ほんとだ!俺の色みっけ!
そして隣に寄り添うのは柔らかな赤色
――あ、ミラの色もみっけ!

でも、一番綺麗なのは隣に咲く君の笑顔
彼女の瞳に映る花火も綺麗で
笑顔をじっと眺めれば
花火が消える寂しい思いも吹き飛んじゃう

ミラと視線が合えばにっこりと笑みを浮かべ

綺麗だねっ

この幸せな一時をもっと味わっていたいから
もう一度柔く手を握った




 闇に包まれた世界に響くは、穏やかな波の音色だけ。
「夜の海は怖い?」
 ふるりと震えた小さな身体に向け、優しい声色でクラウン・メリー(愉快なピエロ・f03642)は問い掛けた。瞬く星々と優しい月、そして海で煌めく仄かな光に染まる互いの淡い髪はキラキラと輝いていて。彼のその色にミラ・ホワイト(幸福の跫音・f27844)はほんの少しだけ眩しそうに瞳を瞬く。
 確かに、夜の海はほんの少し怖い。
 けれど――今宵はあなたが居てくださるから。
「うふふ。楽しくってうきうきするわ!」
 頬を仄かに染め、嬉しそうに笑う少女。その笑みを見れば、クラウンの顔にも笑みの花が咲いた。その笑みを見れば、ミラの心には更なる安堵が満ちてくる。
 そっと彼との距離を詰めて、手を伸ばした先には彼の大きな手の熱が。
「波に攫われてしまわぬよに、離さないでね」
 するりと滑り込む掌。冷える夜、視界が悪いからこそ熱はしっかりと伝わるのだ。
 もっと楽しい気持ちに、もっと幸せな気持ちに塗り替えられたらと。願うように、祈るように。そして同意の意味を込め彼は少女の細い手をきゅっと、優しく握る。
 そのまま繋いだ手を揺らしながら、砂浜を踏みしめて海へと近付けば――仄かに水中が煌めき、月を映す水面との輝きが世界を染め上げる。
「わぁぁ、綺麗……!」
 波間に揺蕩う淡い光は、息づくようで。微かに聴こえる音は、光の花達の内緒話かしら――大きな瞳を輝かせて、ミラから上がる声は弾ける花火に負けぬ程に輝いていて。そんな彼女の言葉に、クラウンも静かに頷いた。
「俺達も内緒話に混ざれないかな?」
 そうっと金の瞳を閉じて、耳を澄ますクラウン。
 掌の温もりは変わらぬ中――闇に包まれた世界では、仄かなパチパチという花火の爆ぜる音色がしっかりと耳に届いた。
「ふふー、とっても楽しそう!」
 その爆ぜる音色に、とくんと鳴る心音が重なるようで。互いの輝く瞳が交わり、笑みを零し合った後。再び視線を海へと向ければ――。
「あっ、みてみて!」
 不意に上がるミラの言葉。その音は先程の弾ける花火に似た色よりも更なる弾みを帯びていて。彼女が指差す先は海のほう。何があるのかと、クラウンが視線を動かせば。
「クラウンさまのお色、みーつけたっ」
 輝くような笑顔で、そう紡いだ彼女の言う通り。キラキラと輝く水中に、浮かぶ色はクラウンの瞳によく似た輝く金色。それは、一等強く輝いていて。皆を楽しさへと導く道化師をする彼らしい色だった。
「わ、わ! ほんとだ! 俺の色みっけ!」
 彼女の指差す先の色を見て、クラウンの瞳は同じくらいキラキラと輝いている。深い深い海の中、闇にも負けじと輝くその金はどこか儚くも眩しさを宿す。
 その時。パチリ、と音が弾ければ、新たな色が海に浮かんだ。
「?」
 何だろうとクラウンは瞳を瞬いて、水面を凝視する。
 そこにあるのはミラがクラウンのようだと言ってくれた金の光。――そこに、不意に柔らかな赤色が浮かび上がり弾ける音色を奏でだしたのだ。
「――あ、ミラの色もみっけ!」
 その色に、少し前のめりにクラウンが紡げば。ミラも釣られたように視線を向ける。彼女の大きな瞳に似たような色。その横で爆ぜるのは、クラウンの輝く色。
「ふふ、あの子達も手を繋いでるみたい!」
 仲良く並んで輝くその姿に、ミラは嬉しそうに笑みを零す。彼女の言葉に、クラウンはそうだねと頷きを返した。
 ――でも、一番綺麗なのは隣に咲く君の笑顔。
 彼女の笑顔を見れば、クラウンは静かに心に想う。
 ミラの赤い瞳に映る花火も美しく、彼女の瞳を更に輝かせている。その瞳は吸い込まれる程に美しく、笑顔咲く姿を見れば花火が消える寂しさも吹き飛んでしまう程。
 ずっとずっと、見ていたい。
 そう願ってしまう程に幻想的で美しい景色。けれど、これは一夜限りの儚い水中花。
 ――でもね、寂しくはないの。
 そうっと瞳を細め、ミラは想う。そんな彼女の横顔をクラウンが見ていれば、視線に気付いたのか2人の赤と金の瞳が交わった。するとクラウンが――。
「綺麗だねっ」
 そう、笑顔で紡がれる言葉。
 するとミラの顔にも、釣られるように笑みが咲く。優しい優しい隣の笑顔に、応えるように頷いて、熱を確かめるようにクラウンは柔く手を握る。するとその熱に応えるように、ミラが繋ぐ指先をそうっと逆の手で撫でた。
 熱を、存在を、確かめるように――。
 ――わたしのだいすきな光は、此処に在るから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朱赫七・カムイ
⛩神櫻

今年の和装水着

生まれて初めての海

夜の海に咲く花火なんてと心が踊るが
水が苦手なサヨは不安そうだ
大丈夫だよと手を握り体温を伝える
そばに居る
怖くないよと優しく抱き締めよう

波打ち際まで一緒にいこう、サヨ
愛しいきみにはいつだって笑っていて欲しいんだ
わぁ、サヨ……!海の中にも花火が咲いているよ!
初めての光景に胸が熱くなる
私は花火が好きなんだ
……私と君を、出会わせてくれた大切な
そう思えば嬉しくなって、自然笑みが溢れる

誠に、美しいね

歓喜するサヨの姿に幸いを噛み締める
噫、本当に美しいね
花火に照らされ笑う、私の巫女よ
唯一無二の私の伴侶(とも)よ

きみの笑う世界が忘れられない
そう、ずっと
私はこの夜を忘れないよ


誘名・櫻宵
🌸神櫻
サマーワンピース水着+和装の羽織

夜の海は深淵に呑まれそうで怖いわ
私の手を引く神に不安そうに零せば、優しい手のひらと抱擁が帰ってきて安堵する

私は泳げなくて水が好きでなくて
けれども、海にはしゃぐカムイが可愛くて、もっと生まれて初めての楽しんで欲しいから…私も頑張るの

波打ち際までだもの!

海の中に花火が咲くなんて不思議ね
私達にとって花火は大切な、出会いを象徴する宝物
みて!カムイ!
海の中に満開の万華鏡が乱れ咲くよう
光と花の火が綺麗よ!

なんて見上げた神の顔は、花火の彩に照らされた無邪気な満面の笑み
噫、綺麗
なんて見蕩れてしまう

カムイが笑ってる
そうと手を握り寄り添おう
あなたの笑うこの世界は
何より美しい




 闇の中。
 浮かぶ月と星明かり。水中に輝く色を受け止めながら――朱赫七・カムイ(厄する約倖・f30062)は心が弾むのを押さえるように、胸元できゅっと手を握った。
「夜の海は深淵に呑まれそうで怖いわ」
 その理由は、傍らの誘名・櫻宵(爛漫咲櫻・f02768)が水が苦手だから。闇の世界に包まれ、穏やかな波の音が響く世界は彼を恐怖で包んでいくだろうから。
「大丈夫だよ」
 安心させるように、笑みと共に彼の細い手を握るカムイ。
 そのまま優しく握る手を寄せると、今度は彼の身体を優しく抱き締めた。
 夜風が吹けば、彼の鮮やかな銀朱の髪を撫で。初めて纏った水着の装いを揺らしていく。闇の世界に舞う着物の袖のような部分は、まるで夜桜のように闇に浮かんでいて。まるで櫻宵の身体を包み込む桜吹雪のように美しく――櫻宵も薄手のワンピース越しに、彼の温もりを感じ安堵の息を零した。
「波打ち際まで一緒にいこう、サヨ」
 大丈夫かと確認するように、すぐ傍で語り掛けるカムイ。
 いつだって櫻宵を優先してくれるけれど。彼が夜の海に咲く花火に興味を持っていることも、海にはしゃいでいることも櫻宵は分かっている。そんな彼が可愛らしくて、もっと生まれて初めてのこの景色を楽しんで欲しいから――。
「波打ち際までだもの!」
 微かに震える身体を隠すように、笑みを咲かせて櫻宵は頷いた。
 さくりと踏みしめる砂の音。
 並び、熱を確かめるように抱き寄せながら。波の元へと近付いていけば――キラキラと輝く水が、寄せては去っていく不思議な世界。
「わぁ、サヨ……! 海の中にも花火が咲いているよ!」
 その輝きの元へと、一歩近付けば輝く波がカムイの花飾り咲く足元を撫でる。
 輝きが足を撫で、水の冷たさが一瞬触れたかと思えばすぐに消えていく。
 それは初めて見る光景。初めて触れる世界。じわりと胸が熱くなるのを、確かにカムイは感じていた。どうしてだろう、こんなにも胸が震えるのは。不思議に想っていれば、恐る恐る足を浸けた櫻宵が同じ程の高さの彼の眼差しを見つめ、優雅に笑んだ。
「海の中に花火が咲くなんて不思議ね」
 そう、私達にとって花火は大切な、出会いを象徴する宝物だから。
 爆ぜる光に染まる彼の細い足。花の火に負けぬ程美しき笑顔。その全てが美しいと思うけれど――その言葉に、カムイは何故自分が花火を好きなのかと理由を再認識する。
 私と君を、出会わせてくれた大切なもの。
 そう想えば嬉しくなり、自然と顔には笑顔が浮かんでしまう。
 きゅうっと震える心を伝えるように、寄せた腕に力を込めれば。櫻宵は身体を預けるようにカムイへと寄り添う。彼の熱をすぐ傍で感じるから、闇の中水に触れても思ったより恐怖を感じることは無かった。寄せれば2人を撫でる海は、変わらずキラキラと輝き。
「みて! カムイ! 海の中に満開の万華鏡が乱れ咲くよう。光と花の火が綺麗よ!」
 闇の中の光にパチパチと目が眩んだように瞳を瞬いた後、頭に過ぎった美しさについ櫻宵は声を上げていた。頬を染め、歓喜の声を上げるそんな彼の姿に。心配が消えゆくのを感じながらも、カムイの心は幸せに包み込まれる。
「噫、本当に美しいね」
 そう、それは――花火に照らされ笑う、私の巫女が。
 視線を海からカムイへと向ければ、彼の顔に浮かぶのはとろけるような甘くも幸せそうな満面の笑み。その顔は水中花火に照らされ、数多の色に輝く幻想的ながらも美しき姿で。ひとつ、櫻宵は深く深く溜息を零していた。
 噫、綺麗――。
 浮かんだ言葉はただ吐息となり世界へと零れ、言の葉とはならずに散っていく。けれど交わるその瞳が、熱が、互いの想いを伝えてくれるよう。
 互いに笑みを浮かべれば、そうっと櫻宵が手を繋ぐ力を強めた。その熱をしっかりと返しながら、彼等は水中花火を沈めた海へと身を委ねる。
 あなたの、きみの笑う世界を永遠に忘れないようにしよう。
 心に満ちる誓いは、同じカタチを宿し。夏の光にも負けぬ程強く強く煌めいている。
 ――唯一無二の私の伴侶(とも)よ。
 初めて纏った装いを撫でながら、カムイは静かに瞳を閉じた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

皐月・灯
【夜】

ユア(f00261)と

本当に海の色が変わってるし、輝いて見えるんだな。
オレもあのナイトプールのことを思い出してたよ。お前も覚えてたんだな、ユア。
……あのときは、勢い余ってって感じだったな。
今思えば余裕がなかったと思うぜ。……でも、それでよかったんだよな。

そう見えるなら、誇っていいぜ。
オレを成長させたのはお前だ。
お前って女に相応しくなるために生きたから、今のオレがあるんだ。

(肩に触れる温もりに、そっと頬を寄せ)

あれから始まったのかもしれねーな、オレ達は。
オレの気持ちにお前が気付いて、全てが巡り始めたんだ。
――なあ、ユア。
……ふ。そう言うと思ったぜ。わかってるよ、ほら。


ユア・アラマート
【夜】

灯(f00069)と

この辺りかな。のんびり座って海を眺めるにはいい場所だ
それにしても綺麗だな…いつだったか、二人でいったアルダワのナイトプールを思い出す
ん?勿論覚えているよ。お前が初めて、私にキスをした時だからな

あれから、思ったより時間が流れたんだな
すっかり男らしくなったじゃないか、灯。本当、毎日惚れ直してる気分だよ

(傍らに寄り掛かる)

正直、あの時は驚かされたが…今もこうしてお前が隣にいてくれることが嬉しい
お前があの時、勢い余ってくれたことに感謝しなくちゃな
そうだな…うん。あの時はお前から仕掛けられたが、今日は私からにしようか
あ、ほら…目は閉じてくれないと恥ずかしいぞ?
――愛してるよ、灯




「この辺りかな」
 そうユア・アラマート(フロラシオン・f00261)が紡ぎ腰を下ろした世界は、闇の中に輝く水中が遠く遠く見える広い世界。
「本当に海の色が変わってるし、輝いて見えるんだな」
 傍らの皐月・灯(追憶のヴァナルガンド・f00069)の唇から紡がれる言葉。ふうっと零れるその吐息は、彼の心を表しているようで――彼のその言葉に、ユアは頷くと共にひとつ笑みを浮かべる。
「……いつだったか、二人でいったアルダワのナイトプールを思い出す」
 過ぎる記憶の闇の中の光と水音。
 あの日と同じ、いやそれ以上に広い世界が目の前には存在している。
「オレもあのナイトプールのことを思い出してたよ。お前も覚えてたんだな、ユア」
 彼女の言葉にひとつ、二色の瞳を瞬いて。その後嬉しそうに笑うと灯は紡いだ。2人の景色に色濃く残るあの景色――その様子を頭に思い描きながら、彼の言葉にユアは頷くと共に口許に笑みを咲かせる。
「ん? 勿論覚えているよ」
 ――お前が初めて、私にキスをした時だからな。
 それは、さらりと零れた言葉。
 不意な言葉に灯は少しだけ驚いたように息を呑む。今でも鮮明に思い出せる。勢い余ってだったと、今更ながらに冷静に思う。
「今思えば余裕がなかったと思うぜ。……でも、それでよかったんだよな」
 あの時があるから、今が――。
 水中で爆ぜる輝きへと視線を向け、ひとつ伸びをしながら語る彼。
 そんな、光に染まる灯の姿を見て。ユアは改めて、思ったよりも時間が流れたのだと感じる。隣の彼の姿を眩しく見るように瞳を細めると、座る距離をそっと縮め灯の肩へと寄り掛かった。
「すっかり男らしくなったじゃないか、灯。本当、毎日惚れ直してる気分だよ」
 瞳を閉じながら、彼の存在を確かめながら、紡ぐユアの言葉は甘く甘く溶けるよう。彼女のその重みを感じながら、灯はそっと包み込むように彼女の頭へと触れる。
「そう見えるなら、誇っていいぜ。オレを成長させたのはお前だ。」
 ――お前って女に相応しくなるために生きたから、今のオレがあるんだ。
 それが、心からの言葉。
 今の姿は、確かにユアが居てくれたから――。
 言葉を誓いにするように、傍らの温もりへと唇を近付ける。闇の中、はっきりとは見えないからこそ、唇に触れる熱を強く強く感じる。
 熱が離れれば二色と交わる緑の瞳。
 互いを映したその瞳を交わしながら――溜息の後、灯が口を開いた。
「あれから始まったのかもしれねーな、オレ達は」
 オレの気持ちにお前が気付いて、全てが巡り始めた。運命の時。全ての、はじまり。
「正直、あの時は驚かされたが……今もこうしてお前が隣にいてくれることが嬉しい」
 その時のことを思い出し、ユアは笑みを零しながらそう語る。そう、灯があの時。勢い余ってくれたことに感謝しなくてはならない。そして、その心を伝えるには――。
「――なあ、ユア」
 じいっと、変わらず傍にある眼差し。
 名前を呼ばれれば心が跳ね、とろけるような心地が包み込む。
「そうだな……うん。あの時はお前から仕掛けられたが、今日は私からにしようか」
 笑みと共に一度離れた顔を近付ければ、闇の中でも確かに互いの存在を確認出来る。彼の瞳に映る自分の姿を確認すれば、少し困ったようにユアは笑い。
「あ、ほら……目は閉じてくれないと恥ずかしいぞ?」
 紡がれるその言葉に、灯は笑うとそっと瞳を閉じ身を任せた。
 再び訪れる温もり。
 ――愛してるよ、灯。
 一瞬離れた彼女の唇から零れた囁くような言葉は、爆ぜる花火にも消す事は出来ない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フィロメラ・アーティア
夜の海に咲く花があるそうですね
珍しい花火のようです
せっかくの夏を楽しみましょう

穏やかな波の音
浮かぶ月が水面を照らして、
見上げた瞬く星空は満点で
とてもステキな夜ですね
フィロメラは花も夜も好きですから
水面に咲く花のような風景を
指先で触れて涼しさを楽しみながら

こんな夜だから数多の色が輝くのでしょう
まるで限られた時間にだけ咲く花のようですね
それよりも珍しい光景なのかもしれません
フィロメラは夜が好きなので
今日こうして出会えた時間に感謝しましょう
やがて消えてしまうまで
見届けられると良いですね




 夜の海に咲く花がある――。
 その言葉に興味を持ち、フィロメラ・アーティア(花盗人・f33351)は此の地へと足を向けた。一夜限りの夢世界。珍しい花火が魅せる景色は、水中で色とりどりの色が煌めく不思議な景色。
 身を包むは穏やかな波の音。
 浮かぶ月が水面を照らし、見上げた空は満天の星空。
「とてもステキな夜ですね」
 溜息と共に、フィロメラが紡いだ言葉は夜風に攫われていく。泳ぐ波打つ淡い髪を優雅に押さえながら、彼女はこの景色に静かに身を委ねた。
 フィロメラは、花も夜も好き。
 だからだろうか、この景色が一等美しく見えるのは。
 その花が、自然に咲く花とは少し違くとも――夜の海に新たな一面をみせるその色に、魅せられてしまう。
 砂に足を取られぬように注意をしながら、優雅に歩むと彼女は波の傍へと近付いた。寄せて、離れて――規則正しい波の動きと共に、キラキラと輝く光も揺れ動く。
 近くで見ればその輝きはまるで水面に咲く花のよう。静かに微笑むと、フィロメラは確かめるように細い指先を伸ばし、海水の冷たさを感じる。
「こんな夜だから数多の色が輝くのでしょう。まるで限られた時間にだけ咲く花のようですね」
 輝く水に濡れた指先を確認すれば、そこに輝きは残っていない。
 彼等が残るのは、海の中だけなのだろうか。
 日中の楽しい思い出がまるで海に残って、輝いているかのような幻想的な世界。一夜限りの、水中花が咲き誇る景色。それは――きっと一夜よりも珍しい光景なのだろう。
 星々が、月が、輝く夜の世界をフィロメラは愛しているけれど。その世界に溢れるこの輝きも愛おしいと想うのだ。
「今日こうして出会えた時間に感謝しましょう」
 波音響く海辺に、優雅なその声が零れれば――海へと届けるように、優しく風が吹いた。そのまま彼女はそうっと瞳を閉じると、仄かに響く爆ぜる音色へと耳を傾ける。
(「やがて消えてしまうまで、見届けられると良いですね」)
 それはきっと、夜が明けるまで――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
【狼兎/昼】
・今年の水着。月の女神がモチーフ

海中で花火ができるなんて貴重な経験だよね
花もキラキラ、魚もキラキラ
ふふ、なんだか理想の楽園って感じ

魚達と併走するように泳ぎ
くるりと旋回しながら再び紫崎君の元へ

あ、ありがとー!
手持ち花火を受け取り灯をつける
揺らめく光の中色とりどりに輝く小さな光達がとても綺麗で
思わず手を伸ばし

こう…いつもなら危なくもある花火なのに
触れるのが凄いよね
ひゃっ、もー紫崎君びっくりするじゃんー!

条件反射で一瞬驚くものの降り注ぐ煌めきに笑顔に
手に掬えたりもするのかな
宝物みたいにそっと、優しく

わーい打ち上げ花火ー!
煌めく光の中を花と魚に囲まれながら優雅に舞うように泳ぐ
時間の許す限り


紫崎・宗田
【狼兎/昼】
・今年の水着。星の王子様がモチーフ

海中の景色を眺めつつ
まぁ……確かに、チビ(澪)が好きそうな雰囲気ではあるな
俺にはあまり馴染みが無ェが

泳ぎ回る澪を見守り
頃合いを見て声掛けを

こっちがお前の分だ

光に触ろうとする澪を眺めていたらふと思い立ち
安全らしいし、澪の頭上に光を降らせてやる

お前好きだろ、こういうの
ほれ、次いくぞ

口には出さないが
花火の光を見て同じくらいに輝く澪の瞳に和み
思わず目を細める
例え儚く消えてしまうようなものでも
コイツの心になにかの形で残ってくれるなら

よし、そろそろ打ち上げ花火も行っとくか
順番につけてくからな

俺が点灯役を
美しい景色の中はしゃぐ澪を
記憶にしっかりと焼き付けながら




「海中で花火ができるなんて貴重な経験だよね」
 花もキラキラ、魚もキラキラ。
 ――なんだか理想の楽園って感じ。
 楽しそうに瞳を輝かせて、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)はそう紡ぐ。くるくると青の世界を舞う澪は、まるで海を飛び回る天使のよう。淡い桃色の翼が水の中ひらめき、ひらひらと舞う赤のリボンに興味を持ったのか辺りの魚達もくるくると楽しげに追い掛けてくる。ひらりと純白の衣を靡かせて、水面から零れる光を浴びる彼はどこか神々しい。
 そんな彼の姿を水中から見つめ――。
(「まぁ……確かに、チビが好きそうな雰囲気ではあるな」)
 紫崎・宗田(孤高の獣・f03527)はそう想った。
 舞い踊る鮮やかな花弁。一緒に魚と泳ぐ澪の姿は本当に楽しそうで、此処に花が咲くとなれば喜ぶ姿は目に浮かぶよう。
 宗田にとっては馴染みの無い景色だけれど、澪が喜ぶなら……と思ってしまうから不思議なもの。楽しそうに泳ぐ姿を暫し見つめていたが、彼はそろそろかと思うと。
「おい、澪」
 彼の名を呼ぶと、こっちへ来いと手招いた。
 彼の言葉にくるりと旋回すると、澪は呼んだ? と言いたそうに大きな瞳で見つめる。その視線を一瞬受け止めた後、宗田は手にしていた花火を差し出すと――。
「こっちがお前の分だ」
 その言葉と、彼の掌の手持ち花火に澪の瞳がさらに輝く。
「あ、ありがとー!」
 嬉しそうな声を上げ、そうっと花火を手にしてみる。持ち手へと触れれば――不思議なことに花火が一瞬で灯り、パチパチと音を立てながら海の中へと花を散らしていく。
 ゆらり揺れれば光も揺れて。色とりどりに輝く小さな光がとても綺麗で、うっとりとしたように瞳を細める澪。そのまま興味本位でか、思わず彼は手を伸ばしていた。
「こう……いつもなら危なくもある花火なのに。触れるのが凄いよね」
 ほら、と言いながら彼は零れる花をすくうように手を揺らす。
 光の華を捕まえることは勿論叶わないけれど、一瞬だけでも触れられるのはこの花火だからか。それとも、此処が水中だからか――。楽しそうな彼の姿を見ていれば、ふと宗田が思い立ちひらりと上へと泳ぎだせば、纏う布がひらひらと水中に揺蕩う。数多の金属が立てる音は響かないからこそ、水中独特の厳かさを感じた。
 そのまま彼は――花火に触れると、澪の元へと光を降り注ぐ。
「ひゃっ、もー紫崎君びっくりするじゃんー!」
 花火の光が降り注ぐのに、一瞬だけ身構える澪。
 見た目は普通の花火なのだからその条件反射は当然のことだけれど、いざ触れてみれば熱くは無いことを実感し、その降り注ぐ煌めきに笑みが零れる。
「お前好きだろ、こういうの。ほれ、次いくぞ」
 尽きればすぐに次へ。
 光が零れ落ちれば、澪は見惚れるように頬を染めじいっと見上げていた。これならばすくえないかと、優しく手を伸ばせば一瞬だけ小さな掌に光が残る。すぐに水の流れに攫われてしまうけれど、その一瞬だけでも澪は嬉しそうに微笑んだ。
 その微笑みに、煌めきを纏う純白の澪の姿に。宗田が静かに息を吐けば泡が生まれる。
 上からでも分かる。花火の光を見て、同じくらいに輝く澪の瞳が。
 まるで宝石のようにキラキラと輝く琥珀色の瞳。その眼差しを見れば、自然と宗田は和み、瞳を細めてしまうのだ。
(「例え儚く消えてしまうようなものでも、コイツの心になにかの形で残ってくれるなら」)
 花弁の雨のように降り注がせながら、そう願わずにはいられない。
 だからこそ彼は、手持ちが尽きるまでその一時を楽しんだ。
 しかし、花降るひと時が終わってもまだ終わりでは無い。
「よし、そろそろ打ち上げ花火も行っとくか」
「わーい打ち上げ花火ー!」
 手持ちとは違う花の咲く花火を手にすれば、澪も嬉しそうに笑う。ひとつふたつ、順番に。澪の居るほうへと向け放てば、水中で一瞬音が響いたかと思えば大輪の花が咲く。
 咲き誇る花が青の世界に満ちていく。
 それは色とりどりの魚にも、揺蕩う花弁にも負けぬ美しさ。キラキラ注ぐ光の中、咲き誇る色は夜の世界とは全く別の花を咲かせていて――澪は導かれるように、大輪の花の中を泳ぎ出す。ひらり、ひらり。純白を揺らし、優雅に舞うように。
 ――そんな澪の姿を、宗田はしっかりと記憶に焼き付けていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

霄・月希
【42hz】昼の海

水中でのみキマイラの特徴を表出す身
尾の長さの分、更に全長がデカくなる

海から顔を出して偶然見掛けた姿にぱっと表情が華やいだ
なかなかねェだろ、好きな子と偶然出逢うとか

や、Edi、ご機嫌だね
ふ、あははっ、そんっなに驚かんでも
そりゃシロナガスクジラのキマイラだもん、俺
……ってか、Edi、その水着どうしたの?
へぇ……綺麗だなァ、Edi
違うよ、俺はEdiが綺麗だって言ってんの
すごく良く似合ってる

あ、そーだ
折角だし、海中から花火見ねェ?
呼吸は精霊に頼んで何とかするからさ
手を取って、海へ

煌めく花火と差し込む陽光
やっぱり綺麗だ、と見る先は花火より君ってことは内緒にしておこう
逃げられちゃうからね


井手・アルマ
【42hz】昼の海へ
花火を見るのはアタシも好きだけど人が多いのはNGですんで
離れた岩場からのんびり遠くを眺め……

ビャッッッ鯨の唄サァン!!!
え、尻尾生えて……あ、そっか人魚……いやいやホントデッカイですねぇ!?
え、この格好すか
モデルのバイトで着ることに……あ、はい水着がっすよねそういうことにしてひぃっ褒め殺される!!

え、海中から?
やー僕人間っすから息続かないし……
なんとかするって……いや、う、え、はい、なら……

ビビりながら手を引かれ、海の中へ
本当に呼吸は平気だったけどそんなことより
見上げる海面の眩さや揺らめいて咲く花火の綺麗さがどうにも目に焼き付いて
きれいだな、と呟いてました




 キラキラ光を浴びて輝く青い海。
 美しく透き通るその世界へと、身を沈めれば霄・月希(鯨の唄・f28533)は心地良さそうに伸びをした。
 ぷくぷくと上がる泡の中、優雅に舞うのは花びらや花の火だけではない。、元々大きな彼の身体がすらりと伸びれば、鯨の尾がゆるりと舞った。
 辺りをくるくると舞う鮮やかな魚に挨拶をしながら、息継ぎをする為に水面から顔を出せば――彼の表情は、先程までとは違い一気に華やぐ。
「なかなかねェだろ、好きな子と偶然出逢うとか」
 零れる笑みと共に言葉は無意識に。
 そのまま、すいっと泳ぐと彼は深い深い海から陸へと近付いていった。

 強い陽射しが注ぐ中。
 井手・アルマ(Edi・f24587)は気だるげな様子で岩場に腰掛けていた。
 足を撫でるは冷たくも美しき夏の海。ところどころで弾ける花火は綺麗で眺めるのは好きだけれど、人が多いのは苦手なのでこうして人気の無い岩場へと逃げて来たのだ。
 遠く遠くを眺めれば、どこまでも続く地平線。空と海の蒼の世界は美しく――淡い緑の髪が風に泳ぐのを押さえながらこの世界に浸っていると。
「や、Edi、ご機嫌だね」
「ビャッッッ鯨の唄サァン!!!」
 水音と共に水中から現れた姿に、思わず悲鳴を上げながら身を縮こませてしまった。そう、それはよく見なくともよく知った人の顔。けれどその姿は知っている彼とは違って見えて。見て分かる程彼女は狼狽えたように視線を泳がせる。
「え、尻尾生えて……あ、そっか人魚……いやいやホントデッカイですねぇ!?」
「ふ、あははっ、そんっなに驚かんでも。そりゃシロナガスクジラのキマイラだもん、俺」
 ほら、とアピールするように水面から尾を出して。軽くパシャリと水面を叩けば辺りには水飛沫が舞った。光を浴びる雫はキラキラと輝いて、宝石にも負けない輝きのまま海の中へと返っていく。
 その輝きの中、腰掛けるアルマの姿はいつもより美しく見え――月希は溜息を零す。
「……ってか、Edi、その水着どうしたの?」
 そう、彼女の装いはいつもと違っていた。褐色の肌に映える白の装い。ふわりと上品に広がる白の布地は花火にも負けぬ輝きを秘めていて、腰掛けるこの姿だからこそ一番美しい姿を魅せている。
「え、この格好すか。モデルのバイトで着ることに……」
 少し驚いたように瞳を瞬いて、ぽつぽつと紡ぐ彼女。そんな彼女の姿を見惚れたようにじっと見つめながら、仄かに頬を染めながら月希は一言。
「へぇ……綺麗だなァ、Edi」
 自然と零れる、賛美の言葉。
 その言葉にアルマは少し驚いたように息を呑んだが。すぐに水着のことだと納得したように頷いた。しかし、月希は首を軽く振ると――。
「違うよ、俺はEdiが綺麗だって言ってんの。すごく良く似合ってる」
「ひぃっ褒め殺される!!」
 零れる笑みに真っ直ぐな言葉。輝く彼の様子に、アルマは恥ずかしそうに顔を手で隠してしまう。そんな彼女の様子を微笑ましく見ながら――そーだと月希は一言。
「折角だし、海中から花火見ねェ?」
 手を差し伸べながらの、誘いの一言。
「え、海中から?」
 驚いたように瞳を瞬くアルマ彼女。けれど、彼女は普通の人間だから。月希のように水中で呼吸は出来ないし優雅に泳ぐことも出来ない。そう言葉を続けていけば、月希は首を振りこう紡ぐ。呼吸なら、精霊に頼んでどうにかする、と。悪戯坊主のやんちゃ坊主だけれど、こういう時は頼りになる彼がいるから。
「なんとかするって……いや、う、え、はい、なら……」
 少しだけ困ったように眉を寄せながらも、頷きを返せばアルマは差し出された手を取った。そのまま引き寄せられる力は思ったよりも力強く、水面へと身体が触れればまた大きな飛沫が世界を舞った。
 身を沈める時。王子様の姿をした小さな彼がどこか自慢げに笑っていた。
 ぷくぷくと上がる泡。
 揺蕩う鮮やかな花びらに、色とりどりの魚達。視界は青に包まれて、光が差し込み揺れる水中はどこか儚くも美しい。――そして、地上から降り注ぐ花の光は水の底へと落ちていく。海には無い光と色を放ち、水中音とは違う音色が仄かに響く。
 アルマは口許に当てていた手を恐る恐る離してみれば、確かに呼吸が出来る。見上げる海面の眩さや、揺らめいて咲く花火の綺麗さは目に焼き付くような色をしていて。
「きれいだな」
 零れる言葉はどこまでも自然に。
 そんな彼女の姿を見つめながら、月希も綺麗だと零すのだ。
 それは――花火より君だけれど。
 でも言葉にはしないで心の内に秘めるだけ。
 だって――言葉にしたら彼女は逃げてしまうだろうから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朧・ユェー
【月光】昼

ふふっ、ルーシーちゃん可愛らしい水着ですね
水玉の水着に大きなリボンが可愛らしい。
向日葵のサンダル嬉しいです。
とても似合ってますよ
えぇ、桔梗です。猫耳は可愛らし過ぎたでしょうか?
似合いますか?ありがとうねぇ
可愛いなとにこにこと眺めて
でも誰かに攫われたらいけませんからね
手を握って海へ

海の中で花火が出来るようです
どうですか?

でも彼女と一緒に海の中に
彼女が持つ花火に火を着けて
火傷しないように気をつけて
万が一と言うこともありますからね

彩りどりの花、水の中でも咲くのですねぇ
とても綺麗ですね
ルーシーちゃんと楽しめて良かったです。


ルーシー・ブルーベル
【月光】昼

ゆぇパパも水着お似合いよ!
猫耳さんなフードも、キキョウ?柄も、とっても
可愛いのがいいの!
えへ、水着、パパにほめて頂けるとうれしい
う?さらわれる?……波にかな?
だいじょうぶよう、パパと手をつないでいるから!

海の中で手持ち花火が出来るのね
面白そうだわ、やるやる!
いっしょに海の中へ行きましょう

あおい海の中で白や赤のお花が揺蕩う
なんて夢のよう

ありがとう
咲いた花火を受け取るわ
ふふふ、触れてもだいじょうぶっていわれてるのに
お気遣いがくすぐったくて、うれしくて
くすりと微笑んでしまう

手持ち花火は白、青、赤、黄……とりどりの彩に変わっていく
ええ、水の中でみる花火
とてもトクベツな光景ね
わたしもよ、パパ




「ふふっ、ルーシーちゃん可愛らしい水着ですね」
 キラキラ輝く陽射しの中、光を浴びて輝く少女の金の髪に眩しげに瞳を細めながら。朧・ユェー(零月ノ鬼・f06712)は彼女がとびきり愛らしい装いをしていることを紳士的に褒め称えた。
 水色地に黄色のドット柄はレモンスカッシュのような爽やかな中に混じる愛らしさ。風に揺れる大きなリボンは愛らしく、足元を飾る向日葵は嬉しくて笑みが零れてしまう程。
 とても似合ってますよ。そう紡がれればルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)は少しだけ恥ずかしそうに頬を染めて。けれど嬉しそうに笑みを零すと、お礼の後じいっとユェーの姿を見る。
「ゆぇパパも水着お似合いよ! 猫耳さんなフードも、キキョウ? 柄も、とっても」
 頭から足元まで、日の下で見てみればいつもとは少し違う装いで。くいっとフードを調整するように引っ張りながら、ユェーは少女の感想を受け止め穏やかに笑む。
「えぇ、桔梗です。猫耳は可愛らし過ぎたでしょうか?」
「可愛いのがいいの!」
 こくりと強く頷くルーシー。カッコいい彼の頭にぴょこんと伸びる黒猫耳が愛らしくて、ルーシーはついつい頬が緩んでしまう。それは、ルーシーが作った黒い猫さんのぬいぐるみに似ているようにも思えた。
 真っ直ぐ見つめてくれる小さな少女の愛らしさに、褒めてくれる言葉に。くすぐったくも幸せな心地で満たされながら――辺りを見回して、そっと彼は少女の手を取る。
「でも誰かに攫われたらいけませんからね」
「う? さらわれる? ……波にかな?」
 きょとんと瞳を瞬いて、小首を傾げた後。きゅうっと繋いだ手を離れないようにと握り返して、ルーシーは大丈夫だと紡いだ。
 ――だって、パパと手を繋いでいるから。
 優しくて頼もしいユェーがいれば大丈夫。絶対の信頼を見せれば嬉しそうにユェーは笑みを返し、青く透き通る海を見ながらひとつ唇を開く。
「海の中で花火が出来るようです。どうですか?」
「面白そうだわ、やるやる!」
 彼の誘いにルーシーの大きな左目がキラキラと好奇心で輝いた。
 行こうと逸る心を表すように、ぐいぐいとユェーの手を引いて海へと向かう少女を、ユェーは微笑ましく見守っていた。
 透き通る程に海は美しく、見通しに不安は無い。
 けれど小さな少女に危険が無いようにと、あまり遠くまではいかないように注意をしながらユェーはルーシーを導いた。ひらひら揺蕩う鮮やかな花弁。優雅に泳ぐ魚達に、水面から注ぐ光のカーテン。
(「なんて夢のよう」)
 ルーシーが小さく溜息を零せば、こぽりと泡が立ち上がった。
 そのままユェーが差し出してくれたのは、手にしたことで光を放つ手持ち花火。
「火傷しないように気をつけて」
 万が一ということもあるから。そっと口許に手を当てて、注意をすることも忘れない。
「ふふふ、触れてもだいじょうぶっていわれてるのに」
 ありがとうと受け取りながら、優しい気遣いがくすぐったくて、嬉しくて。ついついルーシーの顔には笑顔の花が咲く。その笑みを見れば、ユェーはまた嬉しそうに笑みを返していた。そのまま自分も花火に触れれば――2つの花が、水中に咲く。
 水音に混じる花火の音色。
 しとしとと雨のように落ちる火の花は、輝きながらも水の底へと落ちていく。
 水面から注ぐ光にも負けぬ鮮やかな彩りに、自然と2人は瞳を細め見惚れてしまう。
「色とりどりの花、水の中でも咲くのですねぇ。とても綺麗ですね」
 ゆるゆるとユェーから零れる言葉は、心からの言葉だと分かる程。その言葉に、表情に、そして美しいこの景色に――ルーシーの心には、更なる温もりが満ちていく。
「ええ、水の中でみる花火。とてもトクベツな光景ね」
 冷たい海の中で感じる熱。それは決して、花火が作り出したものでは無い。
 特別で、大切だから――。
「ルーシーちゃんと楽しめて良かったです」
 彼の金色の瞳が真っ直ぐにルーシーを見る。水中故にフードは取れてしまっているけれど、ベルトの黒が揺蕩う様はまるで猫の尾のようで。視線で一瞬追った後、少女はその瞳を見返して頬を染めて微笑んだ。
「わたしもよ、パパ」
 こくりと頷き、改めて花火を見つめるルーシー。
 水の中に咲く花。
 それはきっと、この夏を彩る大切な花となるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

高塔・梟示
まどか(f18469)君と


花火は夏の風物詩だけれど
水中で咲くのは中々見られないな
打上げでも手持ちでも、喜んでお供するさ

潮風に帽子を飛ばされないように
彼の後を追って、沖へ歩を進め
照付ける陽射しは眩しいが
景色と波が涼しげな心地をくれるようで

ふふ、こいつは景気が良いな
次々と咲き乱れる花で
一瞬にして彩られた水面に瞬いて
菊か牡丹か――何方でも満開で綺麗だ

すり抜けて行く魚影には、まるで光の珊瑚礁だと
…これかい?枝垂れる花も風情があるさ
取って置きのナイアガラを波間に放ち

夜空を見上げる風情も良いが
見下ろす水面に、ぱっと華やぐ一瞬も良いものだ
ああ、わたしも楽しかった
君の夏に彩りが増えたなら何よりだとも


旭・まどか
梟示(f24788)と


海の中でも花火を楽しめるのだって
あの菊も素晴らしかったけれど
それだけじゃあ物足りなかったんだ
もう少し付き合って

陽射しをフードで遮って
海の中をざぶざぶ進む
膝上が浸かるくらいまで来れば
花火玉へと持ち換えた種を海に蒔こう

鮮やかな海中に負けぬ色彩が
パチパチと咲き、其処彼処を染め上げる
あれは何て種類?
うん、どっちの花も綺麗だ

君の手に在るものは?
未だ見ぬ大輪に声色弾ませ
もっと見せてと強請る一輪
流水の様に流れる趣向に瞬いて

沢山見たけれど、どれも違っていてどれも綺麗だった
花火は、凄いね
技術の結晶だ
去年は楽しめなかったから
今年は花火の良い所に気付けたような気がする
教えてくれて、ありがとう




「海の中でも花火を楽しめるのだって」
 白熊フードから覗く旭・まどか(MementoMori・f18469)の淡いピンクの瞳に浮かぶのは、好奇心に満ちた色。
 あの菊も素晴らしかったけれど、それだけじゃあ足りなかったから――もう少し付き合ってと、いつもと変わらぬ淡々とした物言いに高塔・梟示(カラカの街へ・f24788)は口許に笑みを浮かべる。
「打上げでも手持ちでも、喜んでお供するさ」
 花火は夏の風物詩だけれど、水中で咲くのは中々見られないから。彼だって興味はあるのだ。海の風は強いから、流れてしまいそうなシャツを押さえて。帽子も飛ばされないようにと手で押さえながら、好奇心を隠せず進むまどかを梟示をゆるりと追い掛けた。
 真夏故に陽射しは強い。
 けれど海の中へ入ればその冷たさが心地良く、むしろ陽射しの熱が心地良いと感じるから不思議なもの。水面が光に照らされればキラキラと輝いていて、景色と波が涼しげな心地をくれるようだと梟示は想った。
 きゅっと陽射しを遮るようにフードを被っていたまどかだが、膝上が浸かる程の位置で立ち止まるとくるりと振り向いた。ゆるゆる歩いていた梟示が追い付くまでには少しの時間が掛かったけれど、彼がすぐ目の前まで来てくれたのを確認するとひとつ頷く。
 まどかがフードから取り出したのは小さな花火玉。
 梟示の赤茶の瞳を見た後に――するりと掌から花火玉が滑り落ちたかと思えば、水音を立てながら海の中へと沈んでいく。
 暫しの沈黙。2人とも水中を見つめていれば――鮮やかな花が水中に咲いた。
 ひとつ、ふたつ。
 咲き誇る花は満開で、一瞬にして水面を彩っていく。海の中から仄かに花火の打ちあがる音が聞こえてくる中、梟示は瞳を細め心地良さそうに笑みを零す。
「ふふ、こいつは景気が良いな」
 正に夏の風物詩。
 透き通る程に美しい青だからこそ、見える色。そして、昼間でも楽しめる珍しさ。
「あれは何て種類?」
 興味深げにまどかが花火から顔を上げ、梟示へと問い掛ける。その言葉に彼はまどかを一瞬見た後、咲き続ける花を見つめて――。
「菊か牡丹か――何方でも満開で綺麗だ」
「うん、どっちの花も綺麗だ」
 浮かんだことを言葉にするが、最終的にはその答えにいきつくのだ。
 そう、花の火が美しいことに変わりはない。
 すいっと足元を縫っていく別の彩。それがこの地に住む魚だと気付けば、彼等は花火の中をくるくると楽しげに泳ぎ――梟示はまるで光の珊瑚礁のようだと想う。
「君の手に在るものは?」
 回る魚へと意識が奪われていれば、不意にまどかから声が掛かった。顔を上げて彼を見れば、そのピンクの瞳は梟示の手の中――細い枝のようなものへと釘付けに。
「……これかい? 枝垂れる花も風情があるさ」
 にっと微笑み、そのまま持ち手へと手を移せば――放たれるように咲く鮮やかな光。
 それはまるで枝垂れる花のようで、これも風情があるだろうと梟示が笑いながらまどかを見れば、彼はキラキラと瞳を輝かせ初めて見る大輪に釘付けに。
「もっと見せて」
 強請るように紡がれる言葉。
 その言葉に、彼の表情に。梟示は勿論応えるように、新たなる花火を手にしてまた別の色の花を咲かせるのだ。
 赤、青、緑に白に――色とりどりの花が水中に落ちていく様は、まるで流水のようにも見えてついついまどかは瞳を瞬いてしまう。
 注ぐ陽射しは変わらず眩しい。
 夜空を見上げる花火とは、真逆の世界での花火だっただろう。見下ろす水面に、ぱっと華やぐ一瞬も良いものだと、梟示は改めて心に想う。
「沢山見たけれど、どれも違っていてどれも綺麗だった」
 満足そうに息を零すまどか。今日の結論は、花火はすごいということ。技術の結晶だと実感すると共に、去年は楽しめなかったものを今年は知ることが出来て、花火の良いところに気付けたことがとても嬉しい。
「教えてくれて、ありがとう」
 そっと微笑み、真っ直ぐに梟示を見上げるまどか。そのピンク色を見返して、ふっと彼は静かに微笑んだ。
「ああ、わたしも楽しかった」
 ――君の夏に彩りが増えたなら何よりだとも。
 そう紡ぎながら、彼は長い手を伸ばしフードを被ったまどかの頭へ軽く手を置いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リーヴル・ブック
シルヴィア◆f30095と
今年7月24日水着
時間:昼頃
アドリブ◎

この海にはどんな物語が流れ着くのかしら
ドキドキ浜辺を歩いていたら
目を惹く鮮やかな輝きに逢った
物語の主人公みたいな眩しい子
何か…困ってる?
暫く影から見つめ
悩んだけれど、勇気を出して
あ、あの…!
潜るのが、苦手なら
わ、私が手伝いましょうか
その、私は水だから
一緒なら溺れないと思うんです…

見つめ返す目が眩しくて少し俯いて
それでも触れたあたたかい手にそっと力を入れる
船の上から見る花もとても素敵で
私も…小さな花火なら咲かせられるかしら?
線香花火に火をつけて

怖くても海に向かう勇気につられるようにそっと手を繋ぎ
これなら…怖くないですか?
ふたりで海へ


シルヴィア・セーリング
リーヴル◆f30327と
アドリブ◎
水着2021参照


海の中で花火だなんて素敵だわ!
でも、私は元々船だったから潜るのはまだ少し不安…上手に潜れるかしら?
難しい顔してると海の髪の女の子に声をかけられて
彼女の言葉に不安は喜びに変わって!
なんて幸運なのかしら!
ありがとう!とても心強いわ!
私はシルヴィア。宜しくね!

ボトルから出した船に乗って
打ち上げ花火を海へ落とせば…わあ!咲いた!
貴女の花火も素敵!
海の中ではどんな景色だろう…!
…本当はまだ不安はあるけど
この先に新しい冒険が待っている
それに今の私なら海の中でもきっと大丈夫!
繋いでくれた手もあたたかくて
ええ!ぜーんぶ吹き飛んじゃった!
せーのとふたりで海へ!




 ――この海にはどんな物語が流れ着くのかしら。
 きゅうっと本を胸に抱きしめて。リーヴル・ブック(セイレーンの精霊術士・f30327)は鮮やかな海辺を歩んでいく。
 風に泳ぐ髪は青から白へと移り変わり。水を宿したその髪は光を浴びてキラキラと輝く。深い紺色のセーラーワンピは歩く度に鎖が微かな音を奏で、サンダルで踏みしめる砂もまた別の音色を奏でている。
 此処は、彼女が知る海とは少し違う海。
 世界も、色も、広がりも――違うからこそ、胸に宿る高鳴りを感じる。きっと何か素敵な物語があると想っていれば不意に惹かれる光が見えた。
 ひらひらと、ワンピースのような裾から伸びる足を海辺へと浸けて。けれど中には入らない少女の姿。目を惹く鮮やかな輝きは、まるで物語の主人公のように眩しくて。
「何か……困ってる?」
 そうっとリーヴルは、彼女に気付かれないように近付いた。

「海の中で花火だなんて素敵だわ!」
 キラキラと輝く透き通る海へと足を踏み入れたシルヴィア・セーリング(Sailing!・f30095)は、大きな青い瞳をキラキラと輝かせる。
 ――けれど、彼女は冒険家の船のヤドリガミ。浮かぶことを絶対とする存在は、潜ることは不得手で。宿る不安についつい海に入るのを躊躇ってしまい、花々とフラミンゴの柄が描かれた愛らしい水着から覗く足を、海に浸けるのがやっとだった。
「あ、あの……!」
「きゃあ!」
 不意に掛けられた声にシルヴィアは驚きの声を上げる。振り返るとそこには、海のように青い愛らしい少女が立っていて――不思議そうに小首を傾げれば、少女は本を抱き締める力を強めながら。けれど、勇気を出したように言葉を紡ぐ。
「潜るのが、苦手なら。わ、私が手伝いましょうか。その、私は水だから。一緒なら溺れないと思うんです……」
 恥ずかしそうに頬を染め、けれど優しい言葉を掛けてくれる愛らしい少女。
「なんて幸運なのかしら! ありがとう! とても心強いわ!」
 彼女の誘いにシルヴィアはキラキラと瞳を輝かせ、満面の笑みで自己紹介を。その輝く眼差しが眩しくて、ついつい少女は俯いてしまう。けれど、きゅうっと手を握られればその温かさに勇気を出して前を向き。シルヴィアが風の祝福を帆に宿したカヌーを取り出せば、二人は一緒に海へと旅立った。
 慣れた手付きでオールを操るシルヴィア。
 そんな彼女を見惚れるようにリーヴルが見上げていれば――いつしかカヌーは随分と沖のほうまで辿り着いていた。
 此処がいいだろうか。そっとオールを操る手を止めると、シルヴィアは持参していた打ち上げ花火の弾を海へと落とす。
「わあ! 咲いた!」
 ぽちゃりと小さな水音が響いたかと思えば、一瞬の間のあと音が響き。華やかな花が海中にと咲き誇る。強く光を放ち、花は次々に咲き乱れるように浮かんでいく。キラキラ輝くその光を眩しそうに見つめるリーヴル。
「私も……小さな花火なら咲かせられるかしら?」
 少しだけそわりとして、そうっと彼女は儚い花に光を灯せばパチパチと爆ぜる音色が。
「貴女の花火も素敵! 海の中ではどんな景色だろう……!」
 好奇心が隠せない様子のシルヴィア。そんな彼女の細い手を取って、こくりと頷き合う二人の少女。シルヴィアの心には、正直まだ不安はあるけれど――この先には新しい冒険が待っていると、分かるから。
「それに今の私なら海の中でもきっと大丈夫!」
 この、繋いだ温かな手があるから。
 だから大丈夫だと、晴れやかな笑顔を返せば。リーヴルも笑みを返し、二人はそのまま小さな身体を海の中へと預けるように飛び込んだ。
 上がる飛沫。響く水音。爆ぜる花火。
 ――後の世界は、青く青く染まる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ベル・プリンシパル
ルビィ(f33967)と一緒に昼の海へ

初めて来る世界の海…もうすっごくワクワクして、俺、張り切って水着を選んじゃったんだ
ルビィは…わぁ、すごく可愛い!とっても似合ってるよ!
へへ、ありがとうね!

アルテミスの自動詠唱で、俺とルビィを水の魔力で包むよ
これで海の中でも呼吸や会話ができるし、歩くことも出来るんだ
揺らめく花に鮮やかな魚達をすぐ傍に感じながら花火を見上げたら、きっと最高に楽しいよ!
空に上げる花火とはまた違った感じがして…そうだね、本当に綺麗
ルビィと一緒に見れて良かった

その後は俺も手持ちの花火を持って
大丈夫、笑わないよ!
あ、でもルビィが楽しそうにしてたら、その時は嬉しくて笑顔になっちゃうかも…


ルビィ・フォルティス
ベル様(f33954)と一緒に昼の海で遊ぶ

これが海ですのね……! わたくし、初めて見ましたわ!
水着コンテストでも着た水着を着用
ふふ、お褒め頂きありがとうございますわ。ベル様も素敵でしてよ。
それでは今日もエスコート、よしなにお願いいたしますわ。

ベル様と一緒に水中を散歩。
わたくし、空の散歩はずっとしてきましたけれど、水の中の散歩は初めてですわ。
光る水面を見上げながら色とりどりの花火を打ち上げる
ベル様、見てくださいませ!
花火が水の中でふわふわと……綺麗ですわね……
ひとしきり打ち上げ花火を見たら手持ち花火を持ち
水中を魚たちと一緒に泳ぐ
空を舞うようにはうまく泳げませんけれど、笑わないでくださいませ?




「これが海ですのね……! わたくし、初めて見ましたわ!」
 キラキラと輝く青の瞳は、いつもの自信に溢れた表情とはまた違った色を魅せている。嬉しそうに声を上げるルビィ・フォルティス(空の国の家出娘・f33967)の言葉に、傍らに立つベル・プリンシパル(いつか空へ届いて・f33954)もこくりと頷きを返した。
「初めて来る世界の海……もうすっごくワクワクして、俺、張り切って水着を選んじゃったんだ」
 そう語り少しだけ恥ずかしそうに笑う少年。けれど、その行動は今日の日をとても楽しみにしていたことを意味するので、ルビィにとっても悪いことは無いだろう。そんな彼女が纏う水着は白地にピンクで模様が描かれた愛らしいもの。胸元のリボンや首元の装飾が貴族である彼女を美しく飾り立てており、此の地の中佇めばまた違って見えて。
「わぁ、すごく可愛い! とっても似合ってるよ!」
 素直に零れるベルの感想。その声に優雅に笑むと、ルビィはお礼と共にベルの装いも褒めてくれた。――それから、慣れた手付きで手を差し出すと。
「それでは今日もエスコート、よしなにお願いいたしますわ」
 優雅に笑む彼女。その姿に笑みを零しつつ、そっとベルは彼女の手を取った。
 彼等が今回楽しみたいのは、水中の散歩。
「わたくし、空の散歩はずっとしてきましたけれど、水の中の散歩は初めてですわ」
 背に大きな白い翼を抱く彼女にとっては、水中は管轄外なのだろう。その翼が水を含んでしまえば飛ぶのが難しくなるかもしれないので、いくらかの不安はある。
 ――けれど、今日はベルがいるから大丈夫。
 弓を手にしたまま、ふいっと彼が腕を振るえばキラキラとした光が二人を包み込んだ。なんだろうとその光を見つめるルビィ。そんな彼女にベルは微笑みかけると。
「これで海の中でも呼吸や会話ができるし、歩くことも出来るんだ」
 光の応えは、水の魔力。そのままでは危険だからと、慣れた手付きで彼は魔法を操ったのだ。それはまだ幼い少年とは思えぬ程、強い力を宿しているように思えたが。
「揺らめく花に鮮やかな魚達をすぐ傍に感じながら花火を見上げたら、きっと最高に楽しいよ!」
 楽しげに海へと駆ける姿は、やはり年相応の姿で。
 そんな彼の姿に、くすくすとルビィは優雅な笑い声をあげていた。
 ちゃぷりと響く水音。穏やかな波が世界を揺らす中、身を預けてみれば感じたことも無い冷たさがルビィの身を包み込む。
 透き通る程に美しい為視界には困らない程。ゆらりゆらり揺らめく赤と白の花々。くるくると泳ぐ魚達に視界に広がる蒼い世界と、彼女にとっては知らない事ばかりだけれど――やはり一番気になるのは、水中で咲く花火だろう。
 呼吸が出来れば、恐怖も無い。
 ルビィは優雅な手付きで水中に花火を放つと――音と共に、光の花が咲いた。
「ベル様、見てくださいませ! 花火が水の中でふわふわと……綺麗ですわね……」
 そのあまりの美しさに、溜息と共にルビィは声を上げていた。
 光が、二人の姿を染め上げる。水中故に響く音は空よりも鈍いけれど、夜空に咲く花火とはまた違う、青に咲く花は美しくも幻想的。
「空に上げる花火とはまた違った感じがして……そうだね、本当に綺麗」
 パラパラと散りゆくまで、ベルは瞳を細め見つめていた。
 鮮やかな色とりどりの花弁も、蒼の世界だからこその色を魅せる。光を魅せる。次々とルビィの手から打ち上げられる彩豊かな花火たち。その花が尽きれば、次なる花は零れ落ちるように咲く手持ち花火。
 互いに手に花を抱き、折角だから泳ごうと足を動かしたのはどちらが先か。
「空を舞うようにはうまく泳げませんけれど、笑わないでくださいませ?」
「大丈夫、笑わないよ!」
 少し頬を染め、恥ずかしそうにルビィがそう言えば。ベルは大きく首を振った。
 ――でも、ルビィが楽しそうにしていたら。その時は嬉しくて笑顔になってしまうかもしれないけれど。
 それはまた、別の御話。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エルザ・メレディウス
ア◎
●バンリ・ガリャンテ(f10655)と一緒に
●舞台:昼の海
●装い:TOP水着を参照
 まずは、小さな小岩を目印にしてそこまでバンリと水泳勝負です
 腹黒な私は、不意を突いてスタートダッシュしちゃうずるい女。全力で水面をかいて、泳ぎ、目標地点を目指します(結果はおまかせ致します)
 競争後は、二人でじゃれあい、その後、妖怪花火を片手に水中遊泳を開始です。
 透き通った海底の世界で赤と白の花々、色とりどりの魚たちを実際に自分たちの目で見て、触れ、楽しみます。
 バンリ。私ね、あなたとこの海はそっくりだなって思う。煌びやかなのに奢ることなく、美しく、すべてを優しく包んでくれる。あなたみたいでとても綺麗。


バンリ・ガリャンテ
●エルザさん(f19492)と一緒に
●時間帯:昼の海
●水着:TOP参照

カクリヨの海。黒の淑女が先をゆく。
勝負だってのに、俺は宛ら彼女に導かれる心地なんだ。
掻いて。焦れて。掻いて。泡と消える前に取り縋ろうとして、俺は手を伸ばす。
つかまえられたかい?
そんな妄想を一人頭に、水泳勝負を二人楽しんだなら仲良しタイム!存分に水中花火といこう。
…嗚呼なんてこと。
碧天に二人、赤白の華に囲われ浮かぶようなの。
俺が……この透明な海?
そんなら、そう…あなたを良うく見つめていたいが為さ。
エルザさんが何処かへ隠れてしまわぬよう。俺から遠ざかることが無いように、
全て透かし見る為さ。




 青い空に透き通る蒼い海。
 強い陽射しに煌めく眩いカクリヨファンタズムの世界は、非現実のように美しく――白い砂浜にさくりと足を踏み入れながら、バンリ・ガリャンテ(Remember Me・f10655)はその陽射しよりも眩しそうに前方を見つめ瞳を細めた。
 彼女の前を行くのは、黒の淑女。
 黒のストールを揺らし、大振りのフリルのついた大人びた装いで歩むエルザ・メレディウス(執政官・f19492)の姿は、見惚れてしまう程に美しい。
 そんな彼女とは対照的に、バンリが纏うのは純白のドレスのよう。上品なフリルを重ねた裾をひらひらと揺らしながら、振り向いた彼女へと追い付くべく慌てて駆け出した。
 彼女の口から紡がれたのは――水泳勝負という言葉。
 指差す先には遠いところにある小岩。キラキラと輝く海の奥に見えるそこを目指して勝負をしようとエルザが紡げば、バンリは笑顔で頷いた。
 二人しかいない故、審判はいないから。駆け出す合図はエルザから。――紡がれるその瞬間、ほんの少しだけエルザが駆け出すのが早かったのはバンリも気付いたけれど。そんな彼女の後姿を見つめて、少女は楽しそうに微笑むのだ。
 ひらり、ひらり。
 後の砂浜に残るのは、黒と白の上着だけ。

 穏やかな故に波も激しくは無く、泳ぐ速度は落ちずに迷うことも無い。
 上がる飛沫が世界を輝かせ、輝く粒はまた海へと返ってくる。その輝きを纏うエルザを、ただただバンリは見惚れるように追い掛けていた。
(「勝負だってのに……」)
 追い抜こう、とどうしても思えない。どうしても彼女に導かれる心地が抜けない。
 だからこそ、置いてかれてはいけない。掻いて、焦れて、掻いて。泡と消える前に取り繕うとして、懸命に泳ぐとバンリは――手を伸ばしていた。
 そこはもう岩の前。
 水面から顔を上げた彼女の腕を掴もうと、伸ばされるバンリの手は宙を泳ぐ。
 顔を上げれば飛沫が飛び、キラキラと輝きが散る中バンリを見つめるエルザの黒い瞳。交わり、互いの姿を確かめながらバンリは心に声を響かせる。
 ――つかまえられたかい?
 なんて、唇から零したいと想ったけれど。
 泳ぎ続けた為、荒い息を吐きながらバンリは笑顔を浮かべる。するとそんな彼女の姿を見て、そうっとエルザが彼女の腕へと触れ岩の傍へと導いた。
 気付けば此処は岸からは随分と離れた位置のようで、辺りに人の気配は無い。
 元々美しかった海は更に透明度が上がり、美しき蒼の世界が広がっている。揺蕩う赤と白の花も、色とりどりの魚達も。岸近くの人が多い場で見るのとはまた違った姿を見せていて、水中に潜らなくても随分と鮮やかな世界だ。
 けれども、やはりこの世界に身を委ねたい。
 こっそり持っていた花火を改めて握り、彼女達は顔を見合わせると頷き合い、とぷんと水中へと身を潜らせる。
 ぷくぷく上がる泡。水面から注ぐ光が蒼の世界を照らし、その光を浴びる色とりどりの魚達は楽しげにくるくると泳いでいる。
 彼等へとエルザが手を伸ばせば、人懐っこいのかこちらへと寄ってきて彼女の指先に触れるか触れないかの位置で舞う彼等。
(「……嗚呼なんてこと。碧天に二人、赤白の華に囲われ浮かぶようなの」)
 戯れるエルザの姿を見て、唇からぷくりと泡を零しながらバンリは想う。
 そのまま二人同時に花火へと触れれば、不思議なことに一気に火がつき世界を染め上げる。蒼の世界に、咲くは赤に白、青、緑と鮮やかな光の花々。魚の元へ、揺蕩う花々は、落ちては海の底へと消えていく儚い光。
「バンリ。私ね、あなたとこの海はそっくりだなって思う」
「俺が……この透明な海?」
 その花火を見つめながら、唐突にエルザの唇から零れる言葉。その言葉に、バンリは驚いたように瞳を瞬いていた。
 煌びやかなのに奢ることなく、美しく、すべてを優しく包んでくれる。そんな、海。紡がれる言葉は変わらず優雅で、海の中を揺蕩うように心地良い。
「あなたみたいでとても綺麗」
 ふっと微笑む彼女の笑顔はとても眩しい。だからこそ、このくすぐったさを胸にバンリはこう続けるのだ。
「そんなら、そう……あなたを良うく見つめていたいが為さ」
 エルザさんが何処かへ隠れてしまわぬよう。俺から遠ざかることが無いように。
 ――全て透かし見る為さ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夏目・晴夜
帷さん(f00445)と昼の海へ

眩しいというか暑いですね…
ああ、その日傘は私が持ちますよ
どうぞ此方へ

幽世での戦いは確かに翻弄されっぱなしでした
帷さんの偽物にも遭いましたし
…というか本物ですよね?
言われる儘に頬へ手を伸ばして
それはそれは、頼もしいです!

帷さん、海で花火をしましょう
夏のひと時と麗しい海を存分に楽しまなくては!
静かに線香花火を眺める彼女の眼前へ
複数本まとめて作った花火のブーケの大きな花を

驚いた顔をしてくれたなら、してやったりと笑ってみせて
あれ、前に言いましたよね
このハレルヤが傍にいる間は永遠に生きていけると思えるような記憶を沢山差し上げる、と
そんな寂しそうな顔をしている暇は無いですよ


枢囹院・帷
晴夜(f00145)と昼の海へ
水着id=102449

眩しいな
陽の強さに晴夜が茹だっては敵わない
日傘の影に彼を招き浜辺を歩こう

幽世が平和になって良かった
粋狂な戦いが多くて晴夜も翻弄されたろう
うん?私は本物だよ
ほら触って御覧
君より先に彼岸には行かないよ

ダークセイヴァーにも平和が来るだろうか
故郷では見られぬ佳景に心が弾む
雄牛型フロートを手に海で涼む花や魚達に混ざろう

先ずは線香花火でささやかな彩を
美しく咲いて散る花火の儚さに君が重なる
消えて呉れるなという我儘を咽喉の奥に
光と解けた残滓を掌に包む
夜にも残るという燈りを胸に寄せ
私の内にも留まりますようにと祈る

噫、綺麗な
光に照る君の花顔に心からの咲みを注ごう




「眩しいな」
 世界に降り注ぐのは強い強い夏の陽射し。それは此処カクリヨファンタズムでも変わらないようで、白薔薇で飾られた黒の日傘で影を作りながらも、枢囹院・帷(麗し白薔薇・f00445)は眩しそうに赤い瞳を細めた。
「眩しいというか暑いですね……。ああ、その日傘は私が持ちますよ」
 彼女の心から零れる声に、こくりと同意を示しつつ。さりげなく夏目・晴夜(不夜狼・f00145)は帷の手にしていた傘の柄を受け取ると、どうぞと手招いた。
 素直に傘の影へと案内されつつ、伝う汗を拭う帷。強い陽射しも、日差しを浴びて輝く水面もキラキラと眩く、目が眩む程だけれど――。
「幽世が平和になって良かった」
 その口許に笑みを浮かべ、そっと静かに紡ぐ。
 平和になったからこそ、今この瞬間がある。穏やかに過ごせる。それは猟兵としては誇りであり、猟兵でなければどうすることも出来なかった重要な事。
 あの戦いを思い出せば、また随分と変わった戦いだったと思う。――粋狂な戦いが多くて晴夜も翻弄されたろう、と。帳が傍らの彼を見上げれば、晴夜はあの時のことを思い出し小さく苦笑を浮かべる。
「幽世での戦いは確かに翻弄されっぱなしでした」
 純粋な戦いでは無い、様々な仕掛け。戦争と云う言葉の通り、殺伐とした戦いが多い中、大分異色であったことは確かだろう。
「帷さんの偽物にも遭いましたし……というか本物ですよね?」
 ひとつ、ひとつ。思い出の頁を捲っていれば、ふとした疑問が湧き上がり。晴夜はじいっと帳を見つめていた。紫と赤の瞳が交わる中、彼の言葉に帳は少し不思議そうに。
「うん? 私は本物だよ」
 小さく首を傾げた後、触って御覧と彼の手を自身の頬へと導いた。――晴夜の大きな手が触れるのは、柔らかな人の感触。滑らかな頬は驚くほどに真っ白で、確かにヒトの。帷の息吹を感じる。
「君より先に彼岸には行かないよ」
「それはそれは、頼もしいです!」
 掌の温度を感じながら、帳がそっと微笑めば。返る言葉は弾む程に晴れやかだった。

 穏やかな波に浮かぶのは、雄牛型フロート。傘とお揃いの薔薇装飾がお洒落な彼に乗りながら、帳は辺りを見回していた。
 穏やかな世界。――こんな風に、ダークセイヴァーにも平和がくるだろうか。
 そんな風に、つい故郷のことを考えてしまう。この眩さも、いつかは常夜の世界に訪れる日が来るのならばと、願わずにはいられない。
「帷さん、海で花火をしましょう」
 足元の揺蕩う花と共に泳ぐ魚達と、すらりと伸びた足を泳がせ戯れていれば、水に浸かる晴夜からお誘いが。夏のひと時と麗しい海を存分に楽しまなくては! そんな強い意志を持つ彼の瞳は嬉しそうに輝いていて、帳は大人びた笑みを浮かべるとそっと彼の手にした花火の中から、線香花火を細い指先でひとつ摘まんだ。
 パチリ。
 爆ぜる花火の音。
 パチリ、パチリ――それは段々と強くなり、仄かな光となり海の中へと散っていく。
 とても美しく咲く姿に。散りゆく儚さに。ついつい帳は晴夜を重ねてしまう。
 ――消えて呉れるな。
 きゅうっと結んだ唇から、零れることは無い言葉。ぐうっと奥へと押し込んで、けれど祈るようについつい彼女は、光として海に溶ける残滓を掌に優しく包み込んでいた。
 その、夜にも残ると語られた灯りを胸に寄せ――。
(「私の内にも留まりますように」)
 瞳を閉じ、祈りを捧げている時だった。
「帷さん!」
 不意に掛かる声に、慌てて彼女は瞳を開く。――するとそこには、複数本の線香花火をまとめて作った巨大な花火のブーケが差し出されていた。
 何かと、少しだけ驚いたように帳は瞳をひとつふたつ瞬く。その姿に、晴夜は笑みを浮かべるが――変わらず状況が掴めずにいる彼女の様子に、小首を傾げた。
「あれ、前に言いましたよね。このハレルヤが傍にいる間は永遠に生きていけると思えるような記憶を沢山差し上げる、と」
 ――そんな寂しそうな顔をしている暇は無いですよ。
 先程の祈りを捧げる彼女の顔を見て、だから彼は花を差し出したのだ。
 持ち前の明るさ。真っ直ぐな気遣い。輝く瞳に温かな心。
 ――噫、綺麗な。
 陽射しよりも眩しそうに、瞳を細める帷。
 光に照る君の花顔に心からの咲みを注ごう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

千波・せら
ラナに声をかけるよ!

ラナ、こんにちは!
海を楽しんでいるかな?

私はもちろん楽しんでいるよ。
海がね、大好きなんだ!

きらきらと反射する海が眩しくて、懐かしくてはしゃいじゃうんだ。
夏の海は特に好き!

あっ、見て。あれ!
あんなに近くに魚がいるよ!
花の影に隠れちゃった。
少しだけ近寄ってみない?

赤と白の花々。その影に彩り鮮やかな小魚が隠れていて
海の中できらきらしているんだ。
やっぱり眩しいな。綺麗だな。
そこにね、妖怪の花火が弾けたら、ソーダ水よりも刺激的で
とっても素敵な思い出が出来上がりそう!
なんだか花入りのラムネが飲みたくなってきちゃった……!

ラナ、次はどこに行く?
とってもわくわくするね!




 大きな空。日差しを浴びてキラキラと輝く水面に、どこまでも続く蒼い世界。
「ラナ、こんにちは! 海を楽しんでいるかな?」
 千波・せら(Clione・f20106)は楽しくて仕方が無いと、表情で分かる程嬉しそうな笑顔を浮かべて、春色の少女へと声を掛けた。
「ふふ、はい楽しいです! 今年最初の海ですから」
 こんにちはとせらへと挨拶を交わしながら、ラナはそう返す。彼女の様子を見れば分かるけれど、改めてせらさんはどうですか? とラナが問い掛ければ、せらは大きな瞳を本物の宝石のように輝かせながら大きく頷いた。
「私はもちろん楽しんでいるよ。海がね、大好きなんだ!」
 空に、そして海へと手を伸ばしながら少女はそう語る。
 寄せて、離れる波の音。透き通る程に蒼い海はせらが纏う蒼と同じ色を映していて。揺蕩う彼女はすぐにでも海に溶けてしまいそうな印象を受ける。
 けれどその儚さを打ち消す程、せらは楽しそうで。きらきらと反射する海が眩しくて、懐かしくてはしゃいでしまう。夏の海は特に好きなのだと、楽しげに笑う彼女の姿を見て、ラナも嬉しそうに微笑みを返した。
 美しい景色よりも、何よりも、目の前のせらが楽しそうなのが嬉しいから。
「あっ、見て。あれ! あんなに近くに魚がいるよ!」
 足元を撫でる海辺にて、視認出来る程近くを舞う魚に気付くとせらは指を差した。彼等はくるくると楽しげに泳いだかと思えば、揺蕩う花へと隠れてしまう。
「少しだけ近寄ってみない?」
 興味津々な笑みでせらが問い掛ければ、こくりとラナは頷きを返す。少しだけ泳ぐのは怖い彼女の手を取って、2人の少女は海の中へと入っていく――。
 ゆらり、ゆらりと揺蕩う先は。水音響く水中世界。
 赤と白の花々が水中を揺蕩い。色とりどりの小さな魚達が楽しげに泳いだり隠れたり。水面から零れる陽射しは海の世界を照らしていて――きらきらと全てが輝いている。
(「やっぱり眩しいな。綺麗だな」)
 大好きな世界を見て、せらは瞳を細め幸せそうに微笑む。
 すると突然――しゅわりと弾ける光が見えた。
 パチパチと水音に混じり聞こえる火花の爆ぜる音。色とりどりの光の花が咲けば、ソーダ水よりも刺激的な世界が広がって――新たな海の一面に、せらはまた瞳を輝かせる。
「なんだか花入りのラムネが飲みたくなってきちゃった……!」
「わあ、素敵ですね! 海は広いですし、探せばどこかにあるでしょうか?」
 息継ぎの為に水中から顔を上げ、真っ先にせらがそう紡げば。ラナは大きく頷いた。
 次は何処に行こうかと思ったけれど、海中は一旦お休みにして海のソーダ探しも良いかもしれない。だって、ワクワクする時間はまだまだ続くのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

逢海・夾
夜、水着着用

波の音も、花火も、月明かりだってある
なのに、静かだ
残り火が終わりを思わせるのかもな

静かに打ち寄せる波に、気付けば足を浸していた
危険だなんて欠片すら頭になく、呼ばれるように
揺蕩う水底の光に、波の音に、眠るように、誘われるように

…海。一度は見たいと思いながら、どこか目を逸らしてきた
手の届かないもの、であってほしかったのかもしれない
その景色さえ心にあれば、どうなったって進めるような気がしていた
それがどこか怖かったのかもしれない
壊れるまで戦い続けることに変わりはねぇのにな

…呼ばれている、ように思うのは、オレがどこかでそう思っているからだ
ぽたりと落ちた花火が流れていくのを見送って、背を向けた




 夜風が吹けば、逢海・夾(反照・f10226)の肌を撫でていく。
 日中の熱気はもうすっかり消えていて。今響くの静かな波の音と、仄かに爆ぜる花火の音色のみ。世界を照らす大きな月明かり、瞬く星々、そして揺蕩う海中花火。
 ――静かだ。
 確かに響いている、世界に在ることを強調するように彼等は存在する。けれど、こんなにも静かなのは残り火が終わりを思わせるのだろうか。
 吹いた風に熱を奪われぬように、夾は纏う上着を身に強く寄せるように抱き締める。はたはたと揺れる長い袖、裾――ゆらり揺れる淡い尾を泳がせながら、気付けば彼の足元は波間へと踏み入れていた。
 寄せては離れていく穏やかな波間は、キラキラと仄かな光で輝いていて。これが夏の残滓なのだと想えば、夾の二色の瞳が細められる。
 危険だなんて、欠片すら頭に無かった。
 そう、それはまるで呼ばれるように――揺蕩う水底の光に、波の音に、眠るように、誘われるように。彼は気付けば足を浸していた。
 一度は見たいと思っていた海。
 けれど、どこか目を逸らし続けていた。
 その景色が、今目の前にある。――手の届かないもの、であって欲しかったのかもしれない。けれど今、彼は確かに海に触れている。
 撫でて、離れて。規則的に繰り返される足元を流れる波の動き。
 知らない景色。それさえ心に在れば、どうなったって進めるような気がしていた。それが、どこか怖かったのかもしれないと今なら想う。
「壊れるまで戦い続けることに変わりはねぇのにな」
 くしゃりと笑みを零しながら、夾は一人言葉を零した。
 その心の声は、夏夜の風が世界へと広げ消していく。此処に流れるのは、穏やかな音色と花火の爆ぜる音のみ。
 静かで、静かで――。
「……呼ばれている、ように思うのは、オレがどこかでそう思っているからだ」
 ぽたり。
 落ちた花火が爆ぜると共に、海へと流されていく。――そのまま彼は、くるりと海に背を向けた。
 夜の闇に包まれた海の世界は遠く遠くに感じる程に広く。全てを包み込む程の温かさと共に恐怖を孕んでいるような気がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スキアファール・イリャルギ
・夜
傍らにコローロを呼んで
波打ち際で海の花火の残滓を楽しみます

色とりどりな花火を嬉しそうに眺めながら
ぴったりとくっつくきみは時折心配そうに明滅してる
……やっぱり、まだ根に持ってるのかな
私がきみの静止を振り切って、邪神が生んだきみの幻と共に海に沈んでしまったことを
あれもう一年以上前なのにな……
ごめん、本当にごめん

……もう大丈夫だよ
きみをひとりにはさせないって決めた
きみと共に生きていくって決めた
再び海に沈む時があるならば、
それはこの命を終えてきみと共に海に還る時だ――

だから、コローロ――

(少し頬が赤くなる)
(言うのが少し恥ずかしい言葉だけど)

……け、
けっこん、してくれますか

(ひそりと、意を決して)




 キラキラと輝く星々の下。水中で爆ぜる花火の音色響く中――闇夜に一等美しく煌めくのは、スキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)の傍らで揺蕩う優しい光。
 海の近くから、水中で爆ぜる色とりどりの花火の色を眺めながら。彼の傍にぴったりと寄り添いながらきみ――コローロは、時折心配そうに明滅しているのがよく分かる。
「……やっぱり、まだ根に持ってるのかな」
 そっと傍らの彼へと黒い瞳を向けて、そう紡げば応えるようにきみは瞬いた。
 それは、スキアファールがコローロの静止を振り切って、邪神が生んだきみの幻と共に海に沈んでしまったこと。
「あれもう一年以上前なのにな……ごめん、本当にごめん」
 ふうっと、あの日を思い出しながら息を零せば風がその息を海へと運んでいく。遠い遠い過去の気がするけれど、ついこの間のように鮮明に思い出せる。蘇る感覚の中、スキアファールは震える声で謝罪を述べていた。
 その言葉に、彼の姿に、コローロはまた明滅を繰り返す。
 闇を照らす光がスキアファールを照らす。その光に勇気づけられるかのように、彼は伏せていた瞳を上げると――まっすぐにコローロを見て、眉を寄せた。
「……もう大丈夫だよ」
 そうっと包み込むかのように、優しく光へと手を伸ばす。
 きみをひとりにはさせないって決めた。
 きみと共に生きていくって決めた。
 再び海に沈む時があるならば、それはこの命を終えてきみと共に海に還る時――。
「だから、コローロ――」
 絞り出すように紡いだ言葉。
 どくんと心臓が強く跳ねる。夜風に撫でられた頬が、先程までと違い少しだけ熱を持っているのが分かる。震える身体。満ちる心ももう知っている、恥ずかしいという想い。けれど、それは今言わなくてはいけないから――。
「……け、けっこん、してくれますか」
 名を呼び掛けた『きみ』に向け、スキアファールは意を決して言葉を紡いだ。
 優しい夜の風が撫でる中。
 穏やかな波音を、パチパチと爆ぜる仄かな花の火の音色は。まるで彼等を祝福するかのように、応援するかのように輝いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

音海・心結

💎🌈
アドリブ歓迎
2021水着着用

浜辺に腰を下ろし、
寄せては引く波に時折体を濡らす

もう夜になっちゃいました
一日あっとゆう間ですね
でもでも、今日はまだ終わりません

……ねっ、零時
お昼のこと覚えていますか?

朝も、昼も、夕方も、夜も
二人で過ごした時間は贅沢で、幸せになっちゃいました
今日が終わっちゃうのはほんの少し残念ですが
夏が終わるわけじゃありません
また、一緒に――……ふたりだけで、遊びにゆきたいのです
今年も、来年も、……その先も

この姿を、また見せてくれますか?
……今度は、みゆだけの為に

舞い降る言葉たち
ひとつひとつがみゆを笑顔にしてくれる大切なもの
真似してつけた鱗を模したタトゥシールに指を這わせた


兎乃・零時

💎🌈
アドリブ歓迎
2021年水着着用(UCによって人魚に成って着替えた形態)

浜辺に腰を下ろす
普段の体は宝石人魚のそれへと変わり
髪も尾も、浮かぶ月の光で淡く反射され輝いている


どうした、心結
昼の事なら勿論覚えてるさ

全部の時間、すっごい楽しかったもんな
幸せも分かるぜ…
まぁ楽しい時間はあっという間だからなぁ
終わるのは残念だけど夏はまだまだこれからだし!
あぁ勿論だとも、俺様も心結と一緒に遊びてぇし、二人だけで遊ぶのも大歓迎さ!
また一緒に、二人だけでこの夏どっか遊びに行こうぜ

この姿か?
少しきょとんとした後
…心結が見たいなら…良いぜ
そんときゃお前だけの為に見せるとも

満面の笑みを浮かべつつ、そう応えるのだ




 世界を闇に染める夜のひと時。
 浮かぶ月に満天の星空――日中とは全く違う姿を魅せる海の世界で、音海・心結(桜ノ薔薇・f04636)達は浜辺に腰を下ろしていた。
「もう夜になっちゃいました。一日あっとゆう間ですね」
 闇に広がる遠い遠い世界を見つめながら、ぽつりと心結は零す。
 波が寄せて、引いて。身体に一瞬触れる水は仄かに煌めいていて、パチパチと爆ぜる音色を仄かに奏でている不思議な世界。
 心結の人魚姫のごとき装飾纏う足元を濡らすのと同じように、傍らの兎乃・零時(其は断崖を駆けあがるもの・f00283)に触れるのは、キラキラと輝く魚の尾。普段とは違い髪も尾も宝石のように輝いていて、浮かぶ月光に反射し淡く輝いている。
 ――今日は、まだ終わらない。
「……ねっ、零時。お昼のこと覚えていますか?」
 傍らの少女に名を呼ばれれば、零時はどうした? と返事をし。彼女の言葉には勿論覚えていると笑みを返した。
 彼のその言葉に、仄かな光に浮かび上がる優しい眼差しに。心結はほっとしたように笑みを零す。――そしてそのまま、今日の日を思い返した。
 朝も、昼も、夕方も、そして今この時間も。
 二人で過ごした時間は贅沢で、心結は幸せになった。
「全部の時間、すっごい楽しかったもんな。幸せも分かるぜ……」
 今日の日を思い返すように瞳を細め、零時は頷きと共にそう返す。彼女と彼の想いは一緒。今日の日の思い出がとても輝かしいものになったと云うこと。
 輝く海も、輝かく零時の身体も。
 この煌めきに満ちた一日が――。
 だからこそ、今日が終わってしまうことが残念に想うのも一緒なのだろう。終わってしまえば、同じ日は訪れない。この景色も再び見れるのかは分からない。
 けれど、夏はまだ始まったばかり。そして季節は、巡るのだ。
「また、一緒に――……ふたりだけで、遊びにゆきたいのです」
 ――今年も、来年も、……その先も。
 きゅうっと胸元で掌を握り。心結は心の中を言葉にして零していく。
 何度だって、何度だって。夏の日を楽しみたいと云う強い強い彼女の想い。それはどこまでも続く、切れることの無い縁の約束。
 彼女の言葉に、そして心からの願いを。受け止めれば零時はどこか眩しそうに瞳を見開いた。水色藍玉の輝き帯びる瞳を、隠すようにひとつふたつ瞬いて――。
「あぁ勿論だとも、俺様も心結と一緒に遊びてぇし、二人だけで遊ぶのも大歓迎さ!」
 また一緒に、二人だけでこの夏どっか遊びに行こうぜ。
 笑みと共に、交わされる約束。
 その瞬間、確かに彼等の縁は繋がったのだ。
 来年も、その次も――夏は訪れるけれど、見える景色はどんなものだろう。どんな景色でも良い。二人一緒ならば。けれど、大丈夫ならその時は――。
「この姿を、また見せてくれますか? ……今度は、みゆだけの為に」
 すうっと甘い蜂蜜色の瞳を零時の輝く足元へと向けると、心結は願うように言葉にする。キラキラ輝く彼の姿は普段とは全く違っていて、少しだけドキドキする。
「この姿か?」
 彼女のそんな様子を見ながら、少しだけ意外な言葉に零時はきょとんとして瞬いた。少しだけ意外だった言葉。けれど、彼女が望むのならば迷うことは無い。
「……心結が見たいなら……良いぜ」
 にっと零れる笑みの花。その時には、お前だけの為に見せるとの続く降り注ぐ言葉に、心結は仄かに頬を染めながら微笑んだ。
 そう、彼のこの言葉たち。それらひとつひとつが心結を笑顔にしてくれる、大切なもの。胸の中で輝くような、言葉たち。
 海のような彼の姿を模してつけた、細い足を飾る鱗のタトゥーシール。それに細い指をそっと這わせながら、心結は交わした約束を胸の中で繰り返していた。
 寄せて、離れて。
 規則正しい輝く波は、相も変わらず海色の彼等を濡らしていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年08月02日


挿絵イラスト