●君に捧げる花冠
「冒険者の皆さん宛てに、素敵な招待状を頂きました」
そう言ってにこりと笑顔を浮かべるのは、太宰・寿(f18704)だ。その手には若草色の便箋が一通。随分と小さいその便箋の差出人は、アックス&ウィザーズのフェアリーだと寿は話す。
「名前はアステルさん。この度は自慢のフェアリーランドに、皆さんをご招待したいとのことです」
『拝啓、親愛なる冒険者の皆さま。』
そんな書き出しで始まる生真面目な文面の手紙によれば、彼のフェアリーランドは自然に溢れた場所のようだ。そこで、美しい星夜のひとときに花筏を楽しんで欲しい、とそう綴られている。
「ちょっとしたお願い事もあるようです。なんでも皆さんに花を見繕って欲しいのだとか。詳しくは直接話したいと書かれていますね」
寿が手にするスケッチブックに光が灯る。
「最近暑くなってきましたし、避暑も兼ねて如何ですか?」
小さく首を傾げたなら、開いた頁からゲートが描き出された。
●星影の騎士の願い
満天の星空には月がない。それでも充分に明るく感じさせるだけの輝きが星々にあった。
さやさやとそよぐ風は爽やかで、草木の香りを乗せてどこか瑞々しさを感じさせる。
そんな美しい夜に、彼はいた。夜色を宿す髪は星灯りを映して、彼が動くたびにその色を変えた。僅かに幼さを残したかんばせに穏やかな笑みを浮かべて、フェアリーのアステルは冒険者たる猟兵たちを迎えた。
「ようこそお越しくださいました」
恭しいお辞儀の所作は慣れたもので、よくよく話を聞けば高貴な方に仕える騎士であると言う。
「早速ですが、こちらへ」
そうして案内された先は、夜の空の下でなお鮮やかな色彩を宿す湖だった。目を凝らせば、一面に花が揺蕩っているのが分かる。見たことのある花もあれば、初めてみるような花まで。様々に游ぐ花々は、その花弁に水滴を煌かせて猟兵たちを迎えた。
花の隙間から湖底を覗き込めば、水中にも花が咲いているらしい。深さは浅いところは踝程、深いところならば2m程度だろうか。指先をつけたなら、程よい冷たさが心地良いことが分かるだろう。
「まずはこちらでお寛ぎください。水中でも呼吸出来る様になっています」
それでですね、とアステルは言葉を継ぐ。
「……ついででよいのです。一輪ずつ、花を見繕って頂けませんか」
理由を尋ねる猟兵に、どこか恥ずかしそうに彼は小さく言葉にする。
──ある方に花冠を贈りたいのです。
「自由に出歩けない身の上の方で、外への憧れを冒険譚を読むことで満たしていらっしゃるのです。だから、世界を旅する貴方達に選んで欲しいな、と。きっと貴方達に選んで貰えたものなら、喜んでくださると」
こほん、とひとつ咳払い。
「それから、浮かぶ花には守護の呪いをかけてあります。皆さんも、気に入る花があれば好きに持ち帰ってくださって構いません」
どこか落ち着きなく視線が彷徨うアステルの耳は、ほんのりと赤く染まっていた。
105
オープニングをご覧頂きありがとうございます。105と申します。アックス&ウィザーズにて、フェアリーランドへのご招待です。とにかく楽しむ! そんな感じの気軽なお遊びシナリオを想定しています。
●シナリオ構成
二章構成のシナリオです。
一章では、花筏の美しい湖でのひとときです。雰囲気はオープニングの通りです。過ごし方は自由です。そして、よろしければ花を一輪、フェアリーのアステルへ見繕ってあげてください(強制ではありません)。花の大きさは、気にせず選んで大丈夫です。フェアリーランドなので、必要に応じてアステルが大きさを調整するでしょう。
アステルも湖にいますので、話すことができます。
二章では、アステルからお礼という名のご褒美があるようです。詳細は、断章にてお知らせいたします。
●フェアリー
名前はアステル、16歳くらいの少年です。ある方に花冠をあげたいそうです。話しかければ友好的に応じてくれます。性格は真面目ですが、冗談も通じます。
●プレイング受付
一章:公開〜7/18、二章:7/19〜7/23のスケジュールで進行予定です。詳細はタグにてお知らせ致します。
可能な限り採用したく思いますが、時間的に書けなければ不採用が発生します。
グループは2名様までを推奨です。力不足で恐縮ですが、予めご了承ください。
●その他
二章のみ太宰・寿が同行します。お声かけを頂いた場合のみ登場します。
以上となります。よろしくお願いいたします。
第1章 冒険
『花筏に溺れて』
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POW : 花びらや水飛沫を跳ね上げながら渡る
SPD : 花びらの合間をたゆたうように泳ぐ
WIZ : ゆらゆらしてる花筏を眺める
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小宮・あき
素敵なご招待をありがとう。
花冠のお手伝い、させてくださいね。
アステルさんにご挨拶。
夜の湖、浮かぶ花々、湖底に咲く花、なんて幻想的なんでしょう…!
水の中で息が出来る、と伺いました。こんな体験、早々できないわ!
水中の中にあるお花から一輪、花冠に向けて採取させていただきたいと考えています。
着の身着のまま、ちゃぽんと湖に。
服は後でUCで乾かします。揺れるスカートを抑えつつ、揺蕩うよう花を探します。
花の種類は詳しいつもり。
目に入る花の名前を反芻しながら、目当てのお花を探しましょう。
きっとあるはず。私の大好きな花。
トルコ桔梗。
白と紫が美しい花を一輪、いえ、二輪ほど。
一輪は、愛する夫に持って帰りたいな。
●
夜でも翳らない春色が、風に遊んで星光に踊る。
晴れた日の澄んだ空を思わせる瞳を柔らかく緩めて、小宮・あき(人間の聖者・f03848)は笑んだ。
「素敵なご招待をありがとう」
スカートを摘んでお辞儀をすれば、アステルも右手を胸に笑顔を返した。
「こちらこそ。楽しんで頂けたら幸いです」
「花冠のお手伝い、させてくださいね」
あきから真っ直ぐに向けられた言葉と笑顔に、
「ありがとうございます」
と、アステルははにかむ。
軽く雑談を交わし生まれた和やかな空気の中、あきは早速と湖へ近づき指先を水面へ。そっと指を浸すと、澄んだ水に波紋が生まれた。見慣れた花も初めて見るような花も数多揺蕩う姿に、あきのかんばせが輝く。
「夜の湖、浮かぶ花々、湖底に咲く花、なんて幻想的なんでしょう……!」
花筏を映していたあきの瞳が、再びアステルを映す。
「水の中で息が出来る、と伺いました。こんな体験、早々できないわ!」
明るく響く声は好奇心に満ちている。そんなあきの様子に、アステルはくすりと笑う。
「最初は不思議な感覚がするかもしれませんが、ご安心を」
どうぞお楽しみください、と告げるアステルにあきはこくりと頷く。早速靴だけ脱いだなら、そっと湖に足を浸した。足に触れる花がちょっとだけ擽ったくて、思わず吐息混じりの笑みが溢れた。
そのまま湖の中へ進もうとして、
「そのまま入られるんですか?」
アステルが驚いたように声を上げたけれど、
「後で乾かします。水中から一輪、花冠のお花を選んで来ますね」
楽しげに笑って、あきはとぷんと花の中へ。
ふわりと広がる髪とスカートが、まるで蕾が花開くかのように広がり揺れる。それをそっと抑えながら、あきは水にその身を委ねた。花と一緒に揺蕩って、視界に游ぐ花々の名前を反芻する。その度に一輪一輪にそっと触れて。あきはその色や形を楽しんでいく。
「どれも綺麗」
蒼穹に映えそうな青いネモフィラ。水の中なのに、甘やかな香りを纏う水仙。小さなピンクをいっぱいにつけたペチュニア。
「(きっとあるはず。私の大好きな花)」
沢山の彩とすれ違い、やがてあきは柔らかに笑みを深めた。伸ばした指の先、花弁は白のドレスに紫のフリルを配したようなバイカラー。水の流れに誘われて、ふわりと花弁が広がる美しいトルコ桔梗を一輪摘み取る。
それをそっと身に寄せて、
「……もう一輪、いいかな」
脳裡に浮かぶ愛しい姿を大好きな花に重ねて、あきはもう一度指を伸ばした。
「あの人に持って帰りたいの」
そうして優しく手折った花を、大切に抱えて。あきは、くるりと水面を仰いで再び水に身を任せる。
揺蕩う世界、華やかな水面の隙間からきらきらと星灯りが降り注いでいた。
大成功
🔵🔵🔵
萃神・むい
星あかりだけでこんなに明るいんだね
むいは夜空が好きなの
でも、きょうはそれだけではなくて
夜でも色彩がそのままの花筏
きれいな景色
むいの生まれは銀世界だったから
こんなに沢山の彩をみると
なんだかとてもわくわくするの
…そういえば、アステル
プレゼントの相手のこと好きなの?
そっか、しっかり選ぶね!
色とりどりの花が浮かぶ湖を眺めていたら
花筏の下が見えて目に映った花
踝くらいの浅いところ
見えたのは淡い白のマーガレット
ねぇ、アステル
もしよかったら、花冠に
この花を使ってほしいな
理由はね、この花がかわいいから
…なぁんて
ほんとの理由は、ひみつなの
きっとそれを聞いたら、りんごみたいに真っ赤になっちゃうだろうから
アドリブ歓迎
●
きらきらと夜空の星を映す青い瞳が、ぱちりと瞬く。生まれた森で見上げる空とは異なる夜空に、萃神・むい(まもりがみ・f33802)の声は驚きの色を滲ませた。
「星あかりだけでこんなに明るいんだね」
「本来なら月があってこそでしょうから、不思議に見えるかもしれませんね」
むいの傍で同じように煌めく星空を見上げ、アステルはそう告げる。
「むいは夜空が好きなの。でも、きょうはそれだけではなくて」
北の森とは違って暖かくて、空と雪以外の色があるのも新鮮だった。日の下でなくても鮮やかな色彩を見せる花筏が、むいのこころも彩っていくようで。
「むいの生まれは銀世界だったから。こんなに沢山の彩をみると、なんだかとてもわくわくするの。とっても綺麗な景色で素敵」
楽しそうに笑顔を浮かべるむいに、アステルも嬉しそうに笑う。
「ありがとうございます。気に入って頂けたなら何よりの喜びです」
優しい空気に包まれたところで、むいははっと思い出したようにじっとアステルを見た。
「……そういえば、アステル。プレゼントの相手のこと好きなの?」
「………………えっ!!」
アステルを見つめるむいの瞳は、心なしかきらきらと輝いている。アステルは願いを口にした時のように耳を赤く染めて、口を開けたり閉じたり。
「そ、そんな僕なんかが畏れ多い……!」
うっかり一人称が素になってしまっているアステル。その様子に、むいは得心いったと言わんばかりにうんうんと頷く。
「そっか、しっかり選ぶね!」
むいはふわりと笑みを浮かべて、
「むい、夜は元気なのよ。お昼はねむいけれど。だから任せて!」
気合充分にぐっと拳を握って見せて、むいは花筏でその水面を色とりどりに染めた湖を眺める。どの彩も花も素敵に映ってしまうけれど。その中で目を引く一輪の花。花筏の隙間から覗くその花へ、足の甲で浅瀬の水を掻き分けて進む。
そっと摘み取った花は、淡い白のマーガレット。
「ねぇ、アステル」
花弁から雫が伝い落ちるマーガレットを、むいはアステルへと差し出した。
「もしよかったら、花冠にこの花を使ってほしいな。理由はね、この花がかわいいから」
「あ、ありがとうございます。本当だ、小ぶりな花弁が可憐で愛らしいですね」
きっと素敵な花冠になると目を細めるアステルに、むいもにこりと笑みを浮かべる。
「(……なぁんて)」
──ほんとの理由は、ひみつなの。
「(きっとそれを聞いたら、りんごみたいに真っ赤になっちゃうだろうから)」
「……? どうされました?」
「なんでもないの」
マーガレットに込められた言葉は、『心に秘めた愛』だから。
たった一言問われた言葉に慌てふためく彼の姿を思い出して、むいはいたずらな笑みを浮かべたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
夜鳥・藍
WIZ
十分も皆も楽しめる箱庭、フェアリーランドって素敵。
そっと湖の縁に腰掛け足を浸してみましょうか。
このところ連日暑い日続きだったから冷たさが心地よいわ。
足元をただよう花は見た事がある物もないものも多種多様ね。
この世界にしか咲かないものもあるでしょうし……。
一応母が園芸が趣味でしたけど、身近な桜以外は何となくでこの種類かなって程度の知識がないのよね。猟兵になってコスモスとマーガレットが誕生花だって知ったぐらい。
脚を上げ下げして水の流れを作って見ると、花筏が動いてその合間に星々も映ってとても静かで、そしてとても賑やかね。
ちょうどピンクのコスモスも見つけたから、これをアステルさんへ渡しましょう。
●
そっと水を蹴る。飛沫が跳ねて花が揺れる。ちゃぷりと鳴る音が、澄んだ空気の中に涼やかだ。水を蹴ったことで作れ出された流れが、彩る花々を游がせる。花が揺蕩うたびに水面に星が煌めいて、
「……とっても賑やかね。万華鏡みたい」
自然と口元が綻んだ。
「(それに、このところ連日暑い日続きだったから、湖の冷たさが心地よいわ)」
浸した足から伝わる心地よさに、夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)はそっと目を閉じた。さやさやと抜ける風が、フードに隠れた藍の前髪を優しく攫っていく。水と同じように、空気も心地よい。すぅっと息を吸い込んで、ゆっくり瞼を上げた。見上げた空は、藍の好きな星空だ。月のない夜、いつもなら見えない星まで見えるような、そんな夜空。
「綺麗、吸い込まれそう」
見上げたことで脱げそうになったフードを被り直して、藍は湖を眺める。足元には、本当に沢山の花が思い思いに咲いていて。
「見た事がある物もないものも多種多様ね。この世界にしか咲かないものもあるでしょうし……」
星のような形に見えるのは、桔梗に似ているが見慣れないオレンジ色だ。母親の趣味が園芸だったが、果たしてオレンジの桔梗はあっただろうか。
「何かありましたか?」
知らぬ間に真顔で記憶を辿っていただろうか、アステルが気遣うように声をかけてきた。
「いえ。ただ、色んな花があるんだなって。身近な桜以外だと何となくで……この種類かなって程度の知識しかないものですから」
猟兵になってコスモスとマーガレットが誕生花だって知ったぐらいなのだと告げる藍に、アステルはなるほどと頷いた。
「実は私も詳しいわけではないのです。見せて頂いた本に載っていた花を咲かせているだけで」
「花冠をあげたい人の本ですか?」
「……はい」
はにかむように笑うアステルに、藍は僅かに表情を緩めた。
「自分も皆も楽しめる箱庭、フェアリーランドって素敵ですね」
知識がなくてもこれだけ素敵な景色が生まれるのだから。きっと彼が目にした本も素敵な本なのね、と思いながら。なんとなく漬けた足で水を掻く。ふと足元に流れ着いたピンクのコスモスを、藍は静かに掬い上げた。
「こちらをどうぞ」
「華やかな色の花ですね。ありがとうございます」
「私の世界では、コスモスと言います。秋の桜と書くんですよ」
見慣れた桜よりはっきりした薄紅色が、藍の手からアステルの手へ。
「この湖の花で作る花冠、きっと素敵なものになりますね」
藍の静かだけれど優しい声音にアステルもまた穏やかに笑んで、受け取ったコスモスを大切に両の手に収めるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
朱赫七・カムイ
⛩神歌
思わず零した感嘆の吐息は湖だけが美しかったからでは無い
星空映す湖に揺蕩う、美しい白の人魚の─いと美しきこと
まるで絵画のようだ、なんて思ったのも束の間
明るいリルの声が私を招いてくれる
心地よさそうだね
人魚と共にならば幾らでも泳げそうだ
リルの真似をして揺蕩う
花冠に相応しい花を見つけよう
アステルの頼みだからね
愛色の桜か
今は隠れた空を映す花か
リルの言う月の花も美しいね
どれがいいか、どの花が愛しきに捧ぐ冠に相応しいか
悩ましいな
リル?
そう感じるのはそなたの心が美しく、優しいからだよ
私もリルという同志に恵まれて幸いだ
私はこれにしよう
スターチス
永遠に想いを咲かせていられるように
勿論
幸福を祈り、約しておくよ
リル・ルリ
🐟神歌
綺麗な湖だね、カムイ
星空を切り取ったみたいだ!
明るい声で笑ってぽちゃり湖のなか
ぐるりと泳いだならば、微笑む同志に向かって手を伸ばす
君もおいで
すごく心地いいよ!
一緒に泳げるのうれしいな
どんな花が見つかるかな?
嗚呼、桜色の月のような花かもしれない
そんな風に言葉を交わしながら花を探して進む
カムイはいつも一生懸命だ
真剣な横顔も、ひとの心を想う優しさも
あったかくて優しくて
僕、君のそういう所大好きだよ
だから彼も、君が好きなんだろうな
例えカムイが禍津の神だったとしても僕にとっては幸いだ
見つけた!僕はこれにする
君のように真っ赤な、薔薇をあげる!
きっと、美しい愛の彩が咲いた
とっておきになるよ
ね、カムイ!
●
薄く整った唇から、ほうと吐息が零れる。柔らかな眼差しを花筏游ぐ湖に向けて、感じ入るままに零れた感嘆は、その湖の美しさを讃えるだけのものではない。
煌く星空をそのままに映す湖には、美しい白が揺蕩っているからだ。花明りがその美しい人魚の姿を、やわく色づかせる。
「(まるで絵画のようだ)」
幻想的なその光景を、朱赫七・カムイ(厄する約倖・f30062)は陶然と見つめていた。気ままに游ぐその様は、永遠にだって眺めていられるよう。そんなカムイの視線に気づいてか気づかずか――優美な白は、花の中ぱっと明るく声を響かせた。
「綺麗な湖だね、カムイ。星空を切り取ったみたいだ!」
リル・ルリ(『櫻沫の匣舟』・f10762)は、尾ひれを躍らせてぽちゃりと水を跳ねさせて遊ぶ。すいと水中を楽しんで、秘色の髪を花筏の花弁で飾る。
「君もおいで。すごく心地いいよ!」
見守る様に微笑むカムイを手招きするリルに、カムイも柔らかな笑みで頷き応える。
「心地よさそうだね」
人魚と共にならば幾らでも泳げそうだ、なんて。
楽しげに言葉を紡ぐと、躊躇いなく湖へと身を任せる。長い銀朱の髪が、水面に散って新たな色を添えて揺蕩う。そんなカムイの傍へ、すいとリルが寄ったなら花咲くような笑みを浮かべた。
「一緒に泳げるのうれしいな」
そんな真っ直ぐな笑顔に、カムイの心にも花咲くようで。
「私もだよ。花冠に相応しい花を見つけよう。アステルの頼みだからね」
「どんな花が見つかるかな?」
時にくるりと舞うように游ぐリルの美しさに、自然口元を緩めながらカムイは頷く。
「愛色の桜か――今は隠れた空を映す花か」
「嗚呼、桜色の月のような花かもしれない」
「リルの言う月の花も美しいね」
ふたり言葉を交わしながら、花を探して水の中の花畑を進む。花筏の美しさも然ることながら、水中の花々も水の彩を浴びて美しい。
「(……悩ましいな)」
どれがいいか、どの花が愛しきに捧ぐ冠に相応しいか。どの花も美しく優劣などつけられないし、愛しきものに捧げるのならば――真剣な表情で花を見つめるカムイの横顔をリルはじっと見つめて。
「――カムイはいつも一生懸命だ」
「リル?」
聞き慣れた声は、先ほどの燥ぐ音と少し違っていて。首を傾げて見つめ返すカムイに、リルはふわりと笑う。
「真剣な横顔も、ひとの心を想う優しさもあったかくて、優しくて」
歌うように紡がれる言葉は、リルの偽りない思い。
「僕、君のそういう所大好きだよ」
――だから彼も、君が好きなんだろうな。
共に想う愛しい人の姿を思い浮かべて、リルは咲う。僅か目を見開くカムイだけれど、
「そう感じるのはそなたの心が美しく、優しいからだよ」
返す言葉はどこまでも穏やかだ。
「例えカムイが禍津の神だったとしても僕にとっては幸いだ」
「私もリルという同志に恵まれて幸いだ」
ふたりの声に、心に、宿る幸い。
笑みを交わすふたりだったが、その時リルの瞳にカムイではない色が混じる。それにリルはぱっと瞳を輝かせた。
「見つけた! 僕はこれにする」
すいとその彩を追いリルが手にしたのは――、
「君のように真っ赤な、薔薇をあげる!」
幾重にも花弁が重なる優美な一輪。燃えるような色が情熱的な薔薇。
「噫、とても素敵だね。――私はこれにしよう」
カムイの指先が触れたのは、淡く揺れるピンクのスターチス。
「(永遠に想いを咲かせていられるように)」
願いを込めて手折る。
「きっと、美しい愛の彩が咲いたとっておきになるよ。ね、カムイ!」
「勿論。幸福を祈り、約しておくよ」
渡すのが楽しみだね、と笑うリルにカムイも頷いて。
「早く渡してあげたいけれど――叶うならもう少しだけ、この美しい景色を楽しみたいな」
「嗚呼、そうしよう!」
――彼にお土産の探すのもいいかもしれない、なんて。
思いついた言葉を口にすれば、今からの時間はもっと素敵なひと時になるだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
有栖川・夏介
お招きいただき、ありがとうございます。
ここは、とても綺麗なところですね。
水中にも花が咲いているなんて……すごいな。
一面に咲く花をほうっと眺める。
しばらくの間立ち尽くしていたことに気づきはっとする。
えっと、花は……嫌いではないので(好き、とは言えず)
花冠のための花を選べばよいのですよね。お手伝いします
薔薇―
どの花も綺麗ですが、どうしてもこの花に目がいってしまいます。
アステルさんが贈る相手のことを考えるなら、ピンクが相応しいのではないかと
この花の花言葉は……(言いかけてやめる)
いえ、蛇足ですね。
こういったものは、花言葉よりも相手を想う気持ちが大事ですし。
……久しぶりに俺も作ってみようかな、花冠。
●
―― お招きいただき、ありがとうございます。
そう告げる有栖川・夏介(白兎の夢はみない・f06470)の表情は語るもの少なく。だけど景色を見遣って零れるため息には、確かに感嘆の気持ちが滲んでいて。
「ここは、とても綺麗なところですね」
「ありがとうございます。そう言って頂けて嬉しいです」
「水中にも花が咲いているなんて……すごいな」
アステルの言葉に応えながらも、視線は鮮やかに咲き誇る一面の花々を見つめて居た。ゆらゆら気侭に漂うように、花は水面で揺れている。全体の移ろいを眺めてみたり、時にひとつの花を追ってみたり。少しずつ流れに合わせて表情を変える花筏は、不思議と眺めて居て飽きないもので。
「退屈ではありませんか?」
気付けば暫く立ち尽くして居たらしい、気遣う色したアステルの声に夏介ははっと顔を上げた。
「えっと、花は……嫌いではないので」
大丈夫です、と口にした。
――『好き』。
そう言葉にすることを躊躇い、夏介は『嫌いてはない』と口にした。明確に感情を言葉にする事が出来ないのは、そうしてきた時が長かったからかもしれない。
そんな夏介に、アステルはそうですか、とだけ応えて、どこか安心したように微笑んだ。言葉を素直に受け取ったのだろう。
「花冠のための花を選べばよいのですよね。お手伝いします」
湖の畔にしゃがみ込んで浸した指の先を、するりと花が逃げてゆく。どの花も確かに綺麗なのだけれど、夏介の瞳が引き寄せられるのはどうしても――。
掬い上げる一輪は、淡いピンク色の薔薇だ。花弁が美しく重なり合う様は優美だが、その色が愛らしさを引き立てている。
「アステルさんが贈る相手のことを考えるなら、ピンクが相応しいのではないかと」
「ありがとうございます。この色にも意味があるのですか?」
首を傾げ尋ねるアステルに、夏介はこくんと頷き、
「ええ、この花の花言葉は……いえ、蛇足ですね」
小さく首を振った。
「そう言われると気になります……!」
「こういったものは、花言葉よりも相手を想う気持ちが大事ですし」
受け取った薔薇と夏介を交互に見るアステルだったが、夏介の言葉に「それは確かそうですね……我慢しましょう」と真面目な口調で応えた。
「……久しぶりに俺も作ってみようかな、花冠」
寄ってきた花を何となく掬い上げて、夏介が零した言葉にアステルが薔薇からぱっと顔を上げた。
「作られた事があるのですか? それならば、是非御指南を!」
そうして恥ずかしそうに、「実は作るの初めてなんです」とアステルは継ぐ。じっと伺う様に夏介を見るアステルの瞳は真っ直ぐで。
「えっと……ちゃんと教えられるか分からないけど、俺でよければ」
大成功
🔵🔵🔵
フィロメラ・アーティア
フェアリーランドには初めて来ました
お招きありがとうアステルさん
満天の星空と花筏の湖
とてもステキなところですね
フィロメラは花も夜も好きですから
水面に咲くような花たちと
指先で触れて涼しさを楽しみながら
そういえば花冠を贈りたいそうで
大切な方でしょうか
愛…までは行かなくとも
好意を抱いている方でしょうか
フィロメラも大切な人に花冠を編んで
贈ったことがありますよ昔の話ですけれど
どんな花が良いでしょうか考えて
見かけた青くて小さな花を渡します
私の好きな花に似ていた気がしたのです
蒼い星のようにも見えてステキですね
貴方の想いが届きますように
アドリブ歓迎
●
見上げれば、降り注ぎそうな程の星を抱いた空。視界いっぱいに広がる夜の帳の中で、星灯りを浴びて煌めく花筏の湖。
「お招きありがとう、アステルさん」
くるりとアステルへその身を向けて、フィロメラ・アーティア(花盗人・f33351)は軽やかに告げる。
「フェアリーランドには初めて来ました。とてもステキなところですね」
「気に入って頂けてなによりです」
「フィロメラは花も夜も好きですから」
雁の羽風がフィロメラの夜光に照らされ輝く銀糸の髪を撫ぜる。緩やかに揺れては遊ぶ髪と纏う花を見遣って、アステルが口を開く。
「貴女自身も花の様な方ですね」
「……あら、ありがとうございます。でも、そういう事は思い人に言ってあげなくては、ね?」
水面に揺れる花に指先で触れて、戯れていたフィロメラが花からアステルへ視線を遣る。
「す、すみません!」
「いいえ、嬉しい言葉でしたよ。だからこそです」
慌てて頭を下げるアステルに、くすくすと笑みを溢すフィロメラ。飾り気のない素直な言葉であったが、彼がもし彼の人に告げる時にはどんな彩を載せるのかしら、なんて。
「そういえば花冠を贈りたいそうで」
「はい。花が好きな方なのです」
「大切な方でしょうか」
「はい」
衒いなく、ただ真っ直ぐな答えだった。
「……フィロメラも大切な人に花冠を編んで、贈ったことがありますよ」
昔の話ですけれど、と小さく付け足してフィロメラは紡ぐ。失われる前の話だったかもしれない。わずかな沈黙が生まれて、風が凪いだ。不思議そうに首を傾げるアステルに、フィロメラはくすりと笑って首を傾いだ。
――愛……までは行かなくとも、好意を抱いている方でしょうか。
――それなら、選ぶ花はどんな花がいいでしょう。
指先の涼しさを楽しみながらも、視線は水面に咲く花を渡る。目移りしてしまいそうになるほどにたくさんの彩。どれも可愛いし、綺麗だけれど。白磁の指先は、花弁に触れては放す。それを繰り返して、ようやく見つけたひとひら。流れくる先を追って、掬い上げたのは小さな蒼い星。
「こちらは如何でしょうか。私の好きな花に似ていた気がしたのです」
そっとアステルに差し出すと、彼は感謝の言葉と共に手元へ花を引き寄せた。
「貴方の想いが届きますように」
己の願いも込めるように、フィロメラはそう告げるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
落浜・語
【狐扇】
すごいなぁ……ここまで色々あると、本当に綺麗だ……。
はしゃぐ狐珀もかわいいと少し見惚れて。
うん、せっかくだもの、もっと近くまで行こう。
湖の畔で並んで眺めながら、花だけでなくて隣りにいてくれる狐珀のこともそっと盗み見たり。いや、盗み見る必要はないけど、何となくな?
アステルさんに渡すのは、ツルニチニチソウとか、どうだろう?花言葉は、確か『楽しい思い出』だったかな
渡す相手が、花束をもらったこともアステルさんとの事も楽しいものと思ってもらえたらいいな、って
桔梗、狐珀好きだものね。ありがとう(花言葉をわかってない)
俺から狐珀にはオキザリスを
名前はこんなだけれども花言葉は『決してあなたを離さない』
吉備・狐珀
【狐扇】
わぁ…‼
語さん、見て下さい。湖にお花がたくさん‼
夜空の下だからでしょうか、とても神秘的ですね!
(色彩豊かな花々と夜空の美しさに見惚れはしゃいでいたことに、はたと気が付いて)
あ…、ええと。その、もう少し近くで見てもいいですか?
(恥ずかしそうに、もじもじ)
湖のほとりに腰をおろし、湖面に浮かぶ花を眺めたり、花と花の間から水中に咲きほこる花を眺めたり。
私がアステル殿に渡すのはこの「ミセバヤ」の花。
ふふ、「大切な貴方」という花言葉があるのですよ。
それから語さんに桔梗をそっと手渡して。
…私が一番好きな花なので(恥ずかしさはとっくに落ち着いたけれど、ほんのり頬が赤いのは―)
桔梗の花言葉「永遠の愛」
●
「わぁ
……!!」
煌く星空に、色彩豊かな花筏。
月のない夜なのに、灯りに困らない。
明るすぎないのに明るい、ちょっと不思議な感覚。
今にも湖に零れ落ちそうな星空は、湖に視線を移せばきらきらと写り込んでいて、もう落っこちてきたみたいだ。普段は物静かな色を湛えた吉備・狐珀(狐像のヤドリガミ・f17210)の藍色の瞳は、夜空の星に負けないくらいにきらきら輝いている。
「語さん、見て下さい。湖にお花がたくさん!!」
振り向いた先には、落浜・語(ヤドリガミの天狗連・f03558)の姿があって。彼もまた視界を彩る鮮やかな色彩に、感嘆のため息を零していた。
「すごいなぁ……ここまで色々あると、本当に綺麗だ……」
「夜空の下だからでしょうか、とても神秘的ですね!」
「そうだね」
語から零れる同意の声は、どこまでも優しい。燥いで頬を染める目の前の娘への愛情が、その声音にじんわりと滲んでる。己を見つめる穏やかな瞳に、狐珀ははたっと我に返る。
「あ……、ええと。その、もう少し近くで見てもいいですか?」
あまりに美しくて幻想的で、燥いでいたことに気づくと何だか急に恥ずかしくなってしまって。狐珀は俯き加減に言葉を探して、そっと上目遣いに彼の顔を覗き見る。
そんな狐珀の様子に、恥ずかしそうに合わせた指先が心許なげに動く様も可愛いな、なんて。見惚れていることを悟られないように、語はそっと手を差し出す。
「うん、せっかくだもの、もっと近くまで行こう」
重なる手を握り合って、湖の畔へ。ふたり並んで腰掛けて、花筏を眺める。
狐珀が少しだけ身を乗り出して花筏の隙間を覗き込めば、花と花の間から水中に咲きほこる花の姿が見えた。つん、と水面の花をつつけばゆうらり揺蕩って、水面が揺れて。湖底の彩が混ざり合うよう。
静かな、だけと確かに楽しそうな笑みを零す狐珀を、語はそっと盗み見る。そんな必要はないはずなのだから、これはなんとなく――なんて、誰にでもなく言い訳をして、いつも隣に居てくれる彼女への愛しさを重ねた。
「アステル殿には、どんな花を渡しますか?」
ふっと己を仰ぎ見る狐珀に、語はちょっとだけどきっとしつつも何でもない風を装って、
「ツルニチニチソウとか、どうだろう? 花言葉は、確か『楽しい思い出』だったかな」
そうして水面に指を浸すと、控えめに咲く紫の花をそっと手にする。
「渡す相手が、花冠をもらったこともアステルさんとのことも、楽しいものと思ってもらえたらいいな、って」
「きっと喜んでもらえますよ。私は……この花にします」
そうして狐珀が優しく水面から掬い上げたのは、ミセバヤ。多肉の葉に、小ぶりなピンク色が集まって咲いている。
「ふふ、『大切な貴方』という花言葉があるのですよ」
「彼から渡すのにぴったりかもしれないね」
ふふ、と笑みを零す狐珀に語も笑顔で頷いた。
「それから……語さんには、こちらを。受け取ってくれますか? その……私が一番好きな花なので」
もう恥ずかしさが引いたはずなのに、ほんのり頬に熱を感じてなんだか語の目を真っ直ぐに見られない。
「桔梗、狐珀好きだものね。ありがとう」
『永遠の愛』――込められたその意味を知らなかった語は、嬉しそうに受け取るのみ。きっと言葉の意味を知れば、胸に湧き上がる思いはまた違う熱を与えるだろうけれど、それはまたの機会になるようだ。
「俺からは……はい。オキザリスだよ」
滴が零れる花弁は、やはり控えめだが淡いピンク色が愛らしい。
「(名前はこんなだけれども)」
『決してあなたを離さない』――そんな思いを込めて、語は狐珀へ花を贈る。
「ありがとうございます」
うれしい、と花に顔を寄せる狐珀。
永い時を経てこの身を得たふたり。
互いに未来を誓う花を贈り合い、そっとその身を寄せ合うのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アオイ・フジミヤ
素敵なあなたの世界にご招待ありがとう
こんなに涼やかな夜が落ちる世界、最高ね
ここでは花は大地に根を張るものではなく水に揺蕩うものなのね
たくさんのlimuに心を奪われる
水中で咲く花のことを、私の故郷ではlimuと呼ぶの
躊躇いなくぴょんと跳ねてつま先から水へ浸かれば
水面に立つナミノハナ
オレンジのアンスリウムを手にとってハートの花弁に唇で触れる
このハートと私の心は恋人へ
何でもない日に贈る花は好きの言葉の代わり
そうしてもう一輪はピカケ
白く柔らかい香りの花をアステルさんに
花冠を贈る人はあなたの大切なひと?
これは空と海が同じ彩をして微笑む
それは綺麗な南の島の朝に咲く花なんだよ
ふたりの旅の代わりになるといいな
●
花風が、アオイ・フジミヤ(青碧海の欠片・f04633)の勿忘草を揺らす。見上げた先、煌めきを湛える夜の空からひとしずくの星が零れた。
「素敵なあなたの世界にご招待ありがとう。こんなに涼やかな夜が落ちる世界、最高ね」
旅をしてたくさんの世界を見てきたつもりだけれど、こうして美しい景色に出会うのは何度だって新鮮に感じる。
「ありがとうございます。危ないものはありませんから、楽しんでいってください」
褒められて嬉しいのだろう、笑みを零すアステルにアオイも笑みを返す。
「ここでは花は大地に根を張るものではなく水に揺蕩うものなのね」
軽やかに跳ねる言葉のように、アオイはぴょんと跳ねて水面へ。ちゃぷんという音と一緒に、飛沫が跳ねて揺れる花筏の合間に咲くナミノハナ。泡沫に消えては咲いて、たくさんの彩が水面に游ぐ。
「本当にとっても綺麗。こんなにたくさんのlimu、一度には中々見られないわ」
「この花はりむ、と言うですか?」
「水中で咲く花のことを、私の故郷ではlimuと呼ぶの」
首を傾げるアステルに、アオイはくすりと笑って言葉の意味を教える。
「そうなんですね。limu……覚えました。花冠をお渡しするとき、これはlimuで作ったのですと伝えてみようかな」
「ふふ、それも素敵ね!」
柔らかなアステルの声に、アオイの快活な声が重なる。
「花冠を贈る人はあなたの大切なひと?」
水の中で遊びながら、アオイは心のままに尋ねてみる。
「うっ……そう、です」
「分かったわ」
きっと他の猟兵たちにも聞かれているだろうに、その度に誤魔化さず素直に答えては頬に朱を差しているらしいアステルに、アオイは優しく笑みを向けた。
花を傷つけないように、優しく水の中を浚っていく。最初に目に留まったのは、オレンジのアンスリウム。いつだって心の中にいる彼を思って、優しく摘む。そっと唇を寄せたなら、ハートの花弁に優しく触れた。
「(この花は彼へ)」
何でもない日に贈る花は好きの言葉の代わりだから。渡した時にきっと見れる大好きな笑顔を思い浮かべて、アオイの心にも花が咲く。
それからもう一輪。白くて愛らしい花を摘み取る。
「ピカケと言うの。綺麗な南の島の朝に咲く花なんだよ」
アンスリウムもピカケも、故郷に馴染みのある花。どうぞ、とアステルへ差し出す。
「ありがとうございます。花にお詳しいんですね」
「ふふ、お花屋さんだからね」
「そうだったんですね」
差し出される花を受け取って、アステルが鼻を花弁に寄せる。
「良い香りですね」
「ふたりの旅の代わりになるといいな」
優しく目を細めるアステルに、アオイも嬉しくなって笑みを浮かべた。なんだかとても恋しくなって、もう一度アオイはアンスリウムに唇を寄せる。
優しくそよぐ薫風に、愛しい香りを感じた気がした。
大成功
🔵🔵🔵
氷雫森・レイン
男の依頼…
「…まぁいいわ」
久方ぶりの、狂っても堕ちてもない、今を生きる同族の頼みですもの
聞いてあげてもいいわ
「多少ヘタレだとしてもね」
さて、お嬢様だかお姫様だか知らないけど察するにお相手は大体そんな感じなんでしょう
何の花にしましょうか
こういうのってあまり考えすぎない方がいいと思うのよね
「…ん、あれにしましょう。天泣、私の願いを潤して」
念動力の手を水中へ伸ばして水上の私の許へ摘んできたのはレインリリー
雨上がりに一斉に咲く花
雨の名を持つ私から差し出すに相応しい
あともうひとつ…
「アステルといったかしら。これは貴方にあげる」
差し出したのはツマトリソウ
迂闊に冷やかせないくらい純真そうだから
きっと似合うわ
●
「(男の依頼……)」
そう胸の裡に零して、真っ先に口から転がり落ちたのは小さなため息だ。氷雫森・レイン(雨垂れ雫の氷王冠・f10073)はちょっぴり男に厳しい。
「……まぁいいわ」
それでもアステルの願いを聞いて此処にやって来たのは、偏に彼女の気質だろう。
澄んだ瞳が、揺れる花筏を見遣る。
「(久方ぶりの、狂っても堕ちてもない、今を生きる同族の頼みですもの)」
――聞いてあげてもいいわ。
「多少ヘタレだとしてもね」
ちら、と視線を移した先。ぱちりと視線がぶつかったアステルが、ちょっとだけ肩を揺らしたようだった。
*
四枚の透き通る翅を広げて、レインは湖の上を飛ぶ。足元には数えきれない程の花が様々な色を纏って、気ままに游いでいる。水面に反射する星の煌めきが、星を湖に閉じ込めたようにも見えて美しい。
「(さて、お嬢様だかお姫様だか知らないけど察するにお相手は大体そんな感じなんでしょう)」
これまで見た彼の反応を思い出して、レインは当たりを付ける。だったら、可愛い花がいいだろうか? でも、お相手の好みなど知るはずもない。控えめな花が好きかもしれないし、優美な花が好みかもしれない。
「(聞いてみてもいいけれど……いいえ、こういうのってあまり考えすぎない方がいいと思うのよね)」
足下の花を見る。相変わらずたくさんの色が水面を揺蕩う花筏の向こう側、水面にはなかった白く揺れる花を見つけて、レインはそっと水面に手を掲げた。
「……ん、あれにしましょう。――天泣、私の願いを潤して」
詠唱と共に発動する『見えざる輝きの手(ルーセント・フェイヴァー)』。伸ばす念動力の手は水中へ、繊細な動きで摘み取られたのはレインリリーだ。雨粒の様に水滴を溢して、レインの許へと運ばれる。それから、もう一輪。合わせて抱えたなら、すいと羽ばたきアステルのもとへと飛ぶ。
「はい、レインリリーよ。雨上がりに一斉に咲く花」
この花が雨の名を持つレインから差し出すのに相応しい花と言えるだろう。
「それから……アステルといったかしら。これは貴方にあげる」
「これは?」
「ツマトリソウよ。貴方にきっと似合うわ」
迂闊に冷やかせないくらい純真そうだから、とは胸の裡に収めて、レインは白い花弁が星のように開いた花を差し出した。
「私にまで頂けるなんて……光栄です」
レインリリーとツマトリソウ。二輪の白い花を大切に胸に抱いて、アステルは笑う。その期待を裏切らない純真な笑顔に、分かりやすいわね……と思いながらも、不思議と悪い気はしないレインだった。
大成功
🔵🔵🔵
ラファエラ・エヴァンジェリスタ
嗚呼、美しい場所だ
きっと昼間の色彩は眩しすぎよう
こうして星明かりに眺めるのがちょうど良いのだろうね
水底にも咲く花を覗き込んだり、一通り楽しもう
アステルとやら
素敵な招待をありがとう
花は貴公の仕える主人へのものだろうか?
さぞ喜ばれることだろう
私から贈る花は…これを
かすみ草だよ
脇役の様な花ではあるが、もう十分に他の皆が美しく素晴らしい花を贈っただろうから
これは他を引き立てるであろうし
花言葉が、「幸福」、だから
…貴公らの幸せを祈っているよ
もし、むかし、我が騎士が私に花などくれていたなら、
…いや、よそう
これから私が贈るのも一興よな
向日葵を一輪、貰って行こう
夏だし、…太陽の様でよく似合いそうなので
●
「嗚呼、美しい場所だ」
夜の帳にも似た黒のヴェール。その裾から覗く花唇が、ほうと吐息を零してゆるりと弧を描く。ヴェールに隠れたラファエラ・エヴァンジェリスタ(貴腐の薔薇・f32871)の瞳は、確かに世界の彩を映している。
「きっと昼間の色彩は眩しすぎよう」
こうして星明かりに眺めるのがちょうど良いのだろうね、そう紡いでそっと湖の畔へと近づく。水面に揺れる花は見知ったものから、初めて見るようなものまで様々だ。気侭に漂うアネモネや菖蒲といった花々の隙間に覗く水底には、楽しそうにオレンジやピンクのポーチュラカが揺れている。
「ふふ、随分と愛らしい」
くるくると表情を変えるように移ろう花筏は、見ていて飽きない。
「アステルとやら、素敵な招待をありがとう」
「こちらこそ、お越しくださり感謝申し上げます」
この幻想的な世界の主人にラファエラが告げれば、優しい声が返ってくる。
「花は貴公の仕える主人へのものだろうか?」
「はい」
「そうか。さぞ喜ばれることだろう」
実直に返された言葉に、くすりとラファエラは笑みを浮かべる。
「私から贈る花は……これを」
白く繊細な指先が、一輪の花を優美な仕草でもって掬い上げる。
「小さくて可愛らしいですね。なんというのでしょう」
「かすみ草だよ。脇役の様な花ではあるが、もう十分に他の皆が美しく素晴らしい花を贈っただろうから」
小さな白が集まる花ぶりは可愛らしいけれど、真ん中にあることの少ない花。仕える主人に差し出すには、少々見劣りするかもしれない。だけど、
「(これは他を引き立てるであろうし、花言葉が『幸福』、だから)」
と。アステルに差し出せば、
「――どの花も皆さまに選んで頂いたものだから主役です」
纏う彩は夜を思わせる少年騎士の昼中のように屈託なく笑う姿が、ラファエラにはどこか眩しく感じた。
「……貴公らの幸せを祈っているよ」
「ありがとうございます」
「(もし、むかし、我が騎士が私に花などくれていたなら、)」
目の前の騎士に、在りし日の姿をつい重ねかけて、ラファエラは緩く首を振った。沿う紅に指が伸びかけたのは、殆ど無意識だった。
「……いや、よそう。これから私が贈るのも一興よな」
そうして水面からもう一輪、掬い上げる。
「向日葵を一輪、貰って行こう」
騎士を思うとき、浮かんだ彩。
「向日葵ですか。贈られる方は、きっと明るい方なのですね」
「……そうだな。夏だし、……太陽の様でよく似合いそうなので」
そう紡ぐラファエラの声は、澄んだ空気に優しく溶けていった。
大成功
🔵🔵🔵
メノン・メルヴォルド
ネロくん(f02187)と
すごい…星を映して、水面の花が輝いているのよ
ね?
なんだか、花の中へ潜っていくみたいなの
先に足を入れ、振り返って誘うように微笑む
水の中は思った以上に幻想的な世界で胸が躍る
呼吸ができる不思議
夢中になり過ぎて広がる裾を慌てて押さえる
ちらっとネロくんを窺えば、良かった…気づいてないみたい
ん、上?
視線向ければ
わあ、なんてキレイ…!
ワタシ、いい事を思いついたの(ふふっと笑み
ネロくん、見て?
ふわり横になる
寝転ぶような、浮いているような感覚
面白い、ね
ずっとこのまま、眺めていられる世界なのよ
並んで揺蕩いつつ
ネロくん?どうしたの?
アステルくんにはブルースターを
想いが伝わるよう願っているの
ネロ・バロック
メノン(f12134)と
水中に咲く花を求め一緒に水の中へ
呼吸が出来るのは不思議な感覚だ、でも嫌じゃない
メノンに視線を向けると裾がふわりとして……おおっ
素知らぬフリで視線を逸らすぜ
それにしても……
星の光が水面から射している光景
静かで……それに、危ういくらいに綺麗だ
上を見てみると揺らめく光が見えるぜ
ん、横になってみるって?そいつは名案だ
こうしていると星も空も自分も……水に溶けてるみたいだ
隣を見ると更に一輪、綺麗な花があることに気づくけど
そんなことは言えず目が泳ぐのはご愛敬
誤魔化すように花を探そうと誘う
水中散歩を楽しみながらメノンが選ぶ花を楽しみに
俺はアルストロメリアを一輪見繕う
未来に幸あれってな
●
時折吹く雁の羽風に、優しく花筏が揺らぐ。その度に水面が煌めいて、湖すらも夜空の一部のようだった。
「すごい……星を映して、水面の花が輝いているのよ」
そんなメノン・メルヴォルド(wander and wander・f12134)の瞳もまた、星が宿るようにきらきらと輝いている。
「へぇ……不思議なもんだな」
珍しそうにまじまじと湖を眺めるネロ・バロック(餓狼・f02187)も、その景色に緩く息を吐き出した。そんな彼の隣で、メノンがぽちゃりと水音を立てる。
「ね? なんだか、花の中へ潜っていくみたいなの」
ネロよりも先に湖へ足を入れたなら、ちゃぷちゃぷ音を立てて浅瀬を歩く。優しく水を蹴り上げてネロを振り返ったなら、彼を誘うようにメノンは微笑む。その姿に、小さく笑んで頷くとネロもメノンの後を追った。
浅瀬から先へ、なだらかに湖底は深くなっていく。ふたり一緒に花を求めて、ゆっくりと泳いでいく。花明かりで淡く照らされたような水の中は、思った以上に幻想的な世界が広がっていて、ふたりの胸はわくわくと躍るよう。
こぽりと吐き出す息は、確かに泡沫を生んで水面に向かって消えて行くのに。水の中で呼吸ができる感覚は、不思議だけれど嫌ではない。
そんな思考に耽りながら、ちらりとメノンに視線を向けると、湖底の花に夢中になっている様だ。ふわふわ花と揺れて、スカートもふわり――。
「(……おおっ)」
慌ててスカートを抑えるメノンから、いや〜花綺麗だな〜みたいな感じでそこら辺の花をつついて、素知らぬふりのネロ。後ちょっと遅かったら、ネロをちらっと伺ってきたメノンと目が合うところだった。
「(良かった……気づいてないみたい)」
ほっと胸を撫で下ろすメノンに、ことなきを得たネロだった。
「(それにしても……)」
ほっとした様子のメノンにほっとするのはネロもだったようで。気を取り直すように、周囲に視線を向ける。水の中はどこまでも透き通っていて、星の光が水面から射している。
「(静かで……それに、危ういくらいに綺麗だ)」
明る過ぎないのに眩いようなその光景は、空に架かる天使の階段のようで。僅かに目を細めてネロは天を見上げる。
「メノン、上」
「ん、上?」
メノンがネロの指し示す先に、視線向ければ時に淡く、時に眩く揺らめく光。
「わあ、なんてキレイ……!」
湖底の夜空は、感嘆に煌めく瞳に映り込んで一層輝きを増すよう。ぱっと華やぐ表情は、ふわりと楽しげな笑みを宿してネロを振り返る。
「ワタシ、いい事を思いついたの」
聞いてくれる? なんて、花唇に指を当てるメノンにネロは目を瞬きながらも首肯する。
「ネロくん、見て?」
メノンがふわりと身を水中に投げ出して、横になる。
「ん、横になってみるって? そいつは名案だ」
笑ってネロもメノンの真似をする。寝転ぶような、浮いているような、不思議で楽しい感覚をふたりで分かち合う。
「こうしていると星も空も自分も……水に溶けてるみたいだ」
「面白い、ね。ずっとこのまま、眺めていられる世界なのよ」
ふたり並んで揺蕩いながら、水も花も星も堪能する。ネロが隣を見ると更に一輪、綺麗な花があることに気づくけど。
「(いやいや、そんな事言えるはずないだろ)」
いつかのようにすいっと目が泳ぐのはご愛敬だろう。そんなネロに今度は気づいたのだろう、メノンが不思議そうにネロを見つめていた。
「ネロくん? どうしたの?」
「なんでもない。花を探そう」
ネロは誤魔化すようにメノンに手を差し伸べた。
*
気侭に水中散歩を楽しみながら、ネロがアステルへ見繕ったのはアルストロメリア。メノンは何を選ぶのだろう? 気になってそわりとネロが口を開く。
「メノンは何にした?」
「ブルースターだよ。想いが伝わるよう願っているの」
ふふっと笑って、青くて愛らしい花をネロに見せる。そうして、
「ネロくんは?」
と楽しそうに首を傾げる。
「俺はこれ。アルストロメリアだ。未来に幸あれってな」
にっと笑うネロの手の中、赤く綻ぶ花弁が美しく揺れた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
橙樹・千織
【桜舞】
あらまあ!
水面だけでなく水中にも花が咲いているのですねぇ
ふふ、心地良い冷たさですよ
水中の花を傷付けないようそっと入ってふわり笑む
花冠の贈り物、ですか
アステルさんにとってその方はどんな存在なのでしょうねぇ?
ふふふ、さて…
気合いを入れて花を選ばないといけませんねぇ
浮かぶ花々からそっと選ぶのはクチナシの花
様々な想いが込められた花々を編み込んだ花冠が
“喜びを運んで”くれますように
いつか、思うまま歩ける術を得られますようにと願って
清史郎さんは何の花を?
ふふ、想いが届くと良いですねぇ
せっかくですから、花の交換してみます?
あら、素敵なラナンキュラス
私はこれを
手渡すのは矢車菊
優雅な友人へ信頼の証を
筧・清史郎
【桜舞】
とても涼やかで美しい世界だな
水面にそっと触れれば、ひやりとした感触と揺れる花たちの彩
滑らぬよう気を付けてな、と声掛け笑みつつ
千織と共に水中へ
花冠か
俺は箱で在った為か、人の感情の機微はまだよく分からないが
花冠を贈りたい相手に抱く気持ちは、きっと好意的なものであろうことはわかる
ああ、喜んで貰えるような花を選ぼう
会話を交わし楽しみながらも、花を探してみよう
ふと手にしたのは、白のカランコエ
贈る相手にも、そしてアステルにも、幸福が訪れるようにと
交換か、良いな
千織に似合いそうだと、丁度この花を贈ろうと思っていた
そう手渡すは、黄から橙へと彩り移ろうラナンキュラス
心優しい貴女に、きっと似合うだろう花を
●
煌めく水面は花と星を湛えた万華鏡。花風に撫でられて、その表情をくるくると変化させる。そんな花筏の美しさも然ることながら、覗き込んだ水面の向こうの鮮やかな景色に、橙樹・千織(藍櫻を舞唄う面影草・f02428)は感嘆の声を上げる。
「あらまあ! 水面だけでなく水中にも花が咲いているのですねぇ」
山吹色の瞳を輝かせ声を弾ませる千織に、筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)もゆるりと笑みを浮かべて首肯する。
「とても涼やかで美しい世界だな」
本当に――そう応えながら千織はうずうずと弾む気持ちに従って、湖に足を浸す。揺蕩う花たちを傷付けないように、そっと水の中へ一歩二歩と進んでふわりと笑む千織。
「ふふ、心地良い冷たさですよ」
「滑らぬよう気を付けてな」
くすりと笑んで声を掛けながら、清史郎も千織の後を追う。屈んで水面にそっと触れれば、ひやりとした感触と揺れる花たちの彩。
さて、と千織は頬に指を当て首を傾げる。
「花冠の贈り物、ですか。アステルさんにとってその方はどんな存在なのでしょうねぇ?」
「花冠か。俺は箱で在った為か、人の感情の機微はまだよく分からないが……花冠を贈りたい相手に抱く気持ちは、きっと好意的なものであろうことはわかる」
清史郎の言葉に、千織はひとつ頷いて、
「ふふふ、さて……気合いを入れて花を選ばないといけませんねぇ」
「ああ、喜んで貰えるような花を選ぼう」
言葉を交わしながら花に触れるたびに、水音が澄んだ空気に跳ねる。
「思いを込めた花ならば、見た目も意味も大切にしたいですねぇ」
そうして千織が、浮かぶ花々の中から選んだのはクチナシの花だ。優しく掬い上げて、花弁の雫を指先で拭う。
「(様々な想いが込められた花々を編み込んだ花冠が、“喜びを運んで”くれますように)」
――そして、
「(いつか、思うまま歩ける術を得られますように)」
そう、願いを込めて。
そんな千織の様子を見守っていた清史郎が、指先に触れた感触に視線を落とす。そして、柔く笑みを浮かべてその花を手にした。
「清史郎さんは何の花を?」
「これにしようと思う」
清史郎の手にあるのは、白のカランコエ。
「贈る相手にも、そしてアステルにも、幸福が訪れるようにと」
「ふふ、想いが届くと良いですねぇ」
「あぁ、そうだな」
「せっかくですから、花の交換してみます?」
贈る花も無事に決まったところで、千織がぱちと手を叩いて提案する。
「交換か、良いな」
さらりと藍色の髪を揺らしながら、楽しそうに同意する。そんな清史郎から千織に贈るのは、黄から橙へと彩り移ろうラナンキュラス。幾重にも重なり合う花弁が美しくも愛らしい一輪。
「千織に似合いそうだと、丁度この花を贈ろうと思っていた」
「あら、素敵なラナンキュラス。ありがとうございますねぇ」
心優しい貴女にきっと似合うだろう、なんて。衒いもなく雅やかに告げられる言葉に、千織はやはりふわふわと笑う。
「私はこれを」
千織から清史郎へ手渡すのは矢車菊。優雅な友人へ信頼の証として。清史郎の髪色にも似た深く美しい彩を、清史郎はそっと受け取った。
「ありがとう、千織」
「ふふふ、こちらこそ」
「選んでもらう、というのは嬉しいものだな」
さやさやと吹く風に揺れる矢車菊を眺めながら、清史郎が紡ぐ。
「そうですねぇ。アステルさんも、花冠を受け取られる方も、こうしてあたたかな気持ちになれるといいですね」
清史郎の言葉に千織も頷いて、ラナンキュラスを見つめる。
花明かりの中で優しく彩づくその花は、いっとう特別な一輪に見えた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヘルガ・リープフラウ
❄花狼
ヴォルフと二人、花筏で湖に揺られ
水面に浮かぶ花、湖底に咲く花、
どれも瑞々しく色とりどりに咲き誇る
それはとても幻想的な光景
清浄な水に手を伸ばせば、ひんやりとした感触が心地よい
そして隣には愛する人がいる
このひとときを共に過ごせる幸せを
アステル様、此度は素敵なご招待、本当にありがとうございます
愛する人に贈る花……とても素敵ですわ
是非とも協力させてくださいまし
浅瀬に手を伸ばし、白い梔子の花を2輪
1輪はアステル様に、もう1輪は愛する旦那様に捧げます
その花言葉は「私は幸せ」
花冠を被れば甘やかな香りが降り注ぐ
きっとかの女性にも、幸福を運んでくださいますわ
ヴォルフガング・エアレーザー
❄花狼
愛する妻と共に
此度の招待、誠に感謝する
俺はヘルガのように水面を飛んで渡ることは出来ない
湖底の深い場所を探すならどうしても潜らねばならんが
幸い水中でも呼吸はできるようだ
濡れるに任せ、花咲く湖底を泳ぐ
見つけた花はヘリオトロープ
以前別の場所で、俺が胸に咲かせた花だ
太陽に焦がれ、一心に陽光を見つめる花
湖底から空を臨めば、水面に反射した光の煌めき
花たちよ、お前もこんな光景を見ていたのか
湖底を覗き込むヘルガに心配いらないと手を振り返して
目的の花を2輪摘んで帰還
1輪はアステルに、もう1輪はヘルガに
これも梔子と同様、甘い香りの花だ
きっと素敵な思い出になるだろう
お互いに幸多からんことを祈って
●
瞬く星々の下で寄り添い並び立つヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)とヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)の姿に、アステルはようこそ、と頭を垂れた。
「此度の招待、誠に感謝する」
「アステル様、此度は素敵なご招待、本当にありがとうございます」
エスコートするヴォルフガングの腕に嫋やかな指を添えて、ヘルガが柔らかに笑みを浮かべる。
「水面に浮かぶ花、湖底に咲く花、どれも瑞々しく色とりどりに咲き誇る……とても幻想的で本当に美しいですわ」
湖に視線を向けて、思わずほうとため息を零すヘルガに、アステルが嬉しそうに笑みを浮かべる。
「愛する人に贈る花……とても素敵ですわ。是非とも協力させてくださいまし」
「過分なお言葉とお心遣い、感謝致します。どうぞ楽しんでください」
アステルの言葉にふたり頷いて、湖畔へと足を向ける。澄んだ水は星の光を浴びてきらきら瞬き、揺れる水面は花筏で華やかに着飾るよう。ひんやりとした心地よい感触が、そっと浸した指先から伝わってくる。
そしてなにより――隣には愛する人の姿がある。その事実がヘルガの心をじんわりと温めていく。そっとヴォルフガングを見上げれば、優しい眼差しが己を見つめていた。それだけで満ちる幸福が、隣の熱がなんて愛おしいのだろう。
「ヘルガは浅瀬を探すといい。俺は水中を探してみよう」
気遣う色をしたヴォルフガングの声に、ヘルガは素直に頷いた。
「ええ、気をつけてくださいましね」
「幸い水中でも呼吸はできるようだ。何も心配することはない」
ヘルガのように水面を飛んで渡ることは出来ないが、潜れば済むことと躊躇うことなくヴォルフガングは水中へと進む。探すのは、湖底でも深い場所だ。
「(花たちよ、お前もこんな光景を見ていたのか)」
差し込む星明かりは優しく煌めき、どこまでも透明な水越しに花を照らす。思わず息を呑むような幻想的な世界。星を追って空を見上げれば、反射した煌めきの向こうに心配したらしいヘルガの姿。羽ばたく為に羽を広げて、こちらを見ていた。その思いやりに思わず口許が緩むのを感じながらも、心配ないと手を振って見せる。ヘルガが頷き浅瀬へ戻ったのを確認すると、ヴォルフガングは再び湖底の花畑を見遣る。
そうして見つけた花はヘリオトロープだ。以前別の場所で、ヴォルフガングが胸に咲かせた花だった。
「(太陽に焦がれ、一心に陽光を見つめる花)」
それはどこか自分に重なるようで。無骨な指先で丁寧に二輪摘み取る。大切に手の中に収めて、ヴォルフガングは地上へ戻る。
一方のヘルガ。ヴォルフガングの様子を確認して湖畔へ戻ると、そこから浅瀬に手を伸ばす。白磁の指先で摘むのは、白い梔子の花だ。
「一輪はアステル様へ」
側で見守っていたアステルへ、ヘルガが花を差し出す。
「ありがとうございます」
笑顔で受け取り、アステルはヘルガの手に残った一輪を見る。
「ふふ、もう一輪は愛する旦那様に捧げます」
「それは、きっと喜ばれるでしょう」
アステルの言葉に柔らかに微笑んで、ヘルガは梔子の花に顔を寄せる。
『私は幸せ』――その花言葉通りの幸福を全身に感じで。
「花冠を被れば甘やかな香りが降り注ぐことでしょう。きっとかの女性にも、幸福を運んでくださいますわ」
そこへヴォルフガングが水中から姿を見せる。濡れるままのヴォルフガングの頬にヘルガが触れる。
「おかえりなさいませ」
「ああ、ただいま」
濡れた髪をかきあげて、ヴォルフガングはふたりにヘリオトロープを手渡す。
「ヘルガは梔子にしたのか」
「ええ、甘やかな香りを喜んで頂けたらと思ったのです」
「これも梔子と同様、甘い香りの花だ。きっと素敵な思い出になるだろう」
「そうですわね」
睦まじく微笑みあって、ヴォルフガングはアステルへ向き直る。
「お互いに幸多からんことを祈って」
そんなふたりの姿を、アステルはどこか眩しげに見つめていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ディイ・ディー
🎲🌸
水面に浮かぶ花と、映り込む星の光
隣にいる志桜の横顔
そこに宿る微笑みがいとおしい
いいぜ
こっちも良い花を見つけたから
交換ってことにしよう
アザレアか、綺麗で可愛いな
意味は……そっか。ふふ、俺も同じ思いだ
でも、まだまだ満たしてやりたい
溢れるほどの気持ちを重ねて咲かせたい
此方からは薄紅色のスイートピーを
俺は花言葉は贈らないけれど
連理草に属する花を贈る意味は勿論、決まってる
同じものを見て、同じ気持ちを抱いて
連理の枝や、比翼の鳥のように共に過ごす日々をずっと
この想いは志桜だけに捧ぐもの
アステルには志桜と連名で同じ花を
大切な人を思って捧げる花には
言の葉を越えた想いが宿るはずだから
想望が集う花よ、どうか
荻原・志桜
🎲🌸
夜の静かな空気の中
馨しい花の香に笑みを深め
ねえ、ディイくんにお花選んでいい?
にひひ。実は渡したい花を見つけてるんだ
水面に浮かぶ花を手に取り
白いアザレアを彼に贈る
この花知ってる?アザレアっていうの
レースみたいに重なる花びらが可愛いんだ
花に込められた意味も贈りたかったの
少し恥ずかしいけど
愛されてる想いが伝わるから
幸せで満ち溢れる日々がいとしい
全部、ぜんぶ
わたしだけのもの
わあ、かわいい!スイートピーだっ
連理……うん、ずっと離れずに
同じ時間を重ねて、想いを育んで
いつまでもずっとアナタと共に
だいすき
アステルさんには紫のトルコキキョウを
アナタと花冠を贈りたい相手が
希望に満ちた未来を歩めますように
●
髪を撫ぜる風が、さぁと水面の花筏を揺らす。夜の静かな空気の中に、馨しい花の香りが満ちている。すうと息を吸い込んで、荻原・志桜(春燈の魔女・f01141)はふくりと笑みを深めて、桜色の髪が靡くのを抑えた。そんな志桜の姿を隣で見つめるディイ・ディー(Six Sides・f21861)の眼差しも、いつになく柔らかい。水面に浮かぶ花と、映り込む星の光。どちらも美しい光景だけれど、なにより隣にある愛らしい少女の横顔。ディイにとっては、そこに宿る微笑みが何よりもいとおしい。
「ねえ、ディイくんにお花選んでいい?」
鈴を転がすように楽しげな声が、ディイを捉える。志桜がふわりと笑って首を傾げているのを見やり、ディイはにっと笑って頷く。
「いいぜ」
「にひひ。実は渡したい花を見つけてるんだ」
「こっちも良い花を見つけたから、交換ってことにしよう」
景色を楽しむように眺めていたつもりだけれど、いつだって考えているのは互いのこと。たくさんの花の中で、渡したい一輪はもうふたりの中にあるようで。
志桜はその場にちょこんとしゃがむと、水面にそっと手を伸ばす。浮かぶ一輪に指が伸び、水面がぴちゃんと音を立てる。
「この花知ってる? アザレアっていうの」
「アザレアか、綺麗で可愛いな」
「うんっ。レースみたいに重なる花びらが可愛いんだ」
満面の笑顔でアザレアをディイに手渡して、それからちょっとだけ視線を落とす。
「それにね……花に込められた意味も贈りたかったの」
ぽぽ、と桜色に染まる頬。それを隠すように、志桜は両手で頬を抑えた。
そんな志桜にディイは心の裡で「(可愛すぎる)」と思いながら、そっと志桜の頭を撫でる。
「意味は……そっか。ふふ、俺も同じ思いだ」
「えへへ」
――少し恥ずかしいけど、愛されてる想いが伝わるから。
「(幸せで満ち溢れる日々がいとしい。全部、ぜんぶ。わたしだけのもの)」
「(でも、まだまだ満たしてやりたい。溢れるほどの気持ちを重ねて咲かせたい)」
恋は欲張りにさせるもの。裡から溢れ出す気持ちは、それでも『もっと』を願ってしまう。
「俺からはこれだ」
「わあ、かわいい! スイートピーだっ」
ディイが差し出す薄紅色のスイートピーを、志桜はぱあっと笑顔を咲かせて受け取る。
「これは連理草なんだ。連理の枝や、比翼の鳥のように共に過ごす日々をずっと」
ディイが、スイートピーごと志桜の両手をそっと包む。
「俺は花言葉は贈らないけれど」
「(連理草に属する花を贈る意味は勿論、決まってる。同じものを見て、同じ気持ちを抱いて)」
ディイのこの想いは、志桜だけに捧ぐもの。
「連理……うん、ずっと離れずに同じ時間を重ねて、想いを育んで。いつまでもずっとアナタと共に」
自分の手を包む大きな手に、志桜はこつりと額を寄せる。
「ディイくん、だいすき」
「俺もだ、志桜」
そんな志桜の額にディイも額をこつりと当てる。すぐ目の前で交わる視線に、ふたりの吐息混じりの笑顔が溢れる。
美しい世界にふたり、溢れる幸いを抱きしめて――。
*
ふたり交換した花とは別に、アステルのために選んだのは紫の花弁が優美なトルコキキョウ。
「アナタと花冠を贈りたい相手が、希望に満ちた未来を歩めますように」
「大切な人を思って捧げる花には、言の葉を越えた想いが宿るはずだから」
ふたりの言葉にアステルはありがとうございますとはにかんで、大切に花を受け取った。
――想望が集う花よ、どうか。
その願いは、きっと届くだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 日常
『摩訶不思議な夜に』
|
POW : 竜の骨付き肉、大海蛇の串焼き。一風変わった料理を食べ歩く。
SPD : 揺蕩う星が浮かぶ街並みや川。幻想的な風景を見に行く。
WIZ : お喋りな本、勝手に動くペン。摩訶不思議な魔法具店に行ってみる。
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●不思議な夜の、水路の街
湖から一本だけ伸びる支流は、森の奥へと向かっていた。どこにでもありそうな、何の変哲もない森を抜けた先、現れたのは水路が張り巡らされた小さな町だった。水路には、湖と同じく花が揺らめいている。
船着場に用意された小さなゴンドラはお二人まで。先端に百合の形をモチーフにしたガラスのランプが吊るされているから、道行を優しく照らしてくれるだろう。
水路に面した建物には、扉がないものが多い。代わりに大きな窓にショーケースを備えた構えをしているようだ。どうやら店が建ち並んでいるらしい。
ある店のショーケースの中には、花の添えられたスモアのようなお菓子や、同じく花で飾られたソフトクリームやソーダ。花は口に含めば甘くとろける。普通の花ではないらしい。
またある店には、フェアリーランドの花が軸に封じられた魔法のガラスペンが並んでいる。ハーバリウムのように中で花が揺れている。
ふんわり漂ってくる馨しい香りに辺りを見回すと、小瓶に詰められたドライフラワーが並んでいる。ポプリの店のようだ。望めば貴方だけのオーダーメイドポプリを作ることもできるだろう。
探せば色々見つかりそうな不思議な町。
なにより不思議なのは、そこに人型の姿はなく、猫や小鳥、ねずみといった動物が店番をしている光景だ。喋れないけれど、どうやら言葉は理解できるよう。
脇に逸れた水路の先にも、なにやらありそうだ。冒険してみるのもいいかもしれない。
アステルいわく、動物たちは自分と友だちだから不思議はあっても危険はない、自由に食べたり買ったりして大丈夫だということだった。
*
●ショップリスト
【くまの洋菓子屋さん】
店番:くまさん
おすすめ:お花を使ったお菓子、ソーダ(くまさんの気分でシロップが変わるよ)、ソフトクリーム(バニラ、チョコミント、ローズ)
【小鳥の魔法雑貨店】
店番:とりさんたち
オススメ:ガラスペン、ハーバリウム、アクセサリー
【ねずみのお花屋さん】
店番:ねずみさんたち
オススメ:ポプリ、押し花の栞
【ねこの占い?処】
店番:黒猫さん(大体寝ている)
オススメ:お神籤(箱から引いてね、の札が立っている。占いとは?)
【???】
何があるかはその人次第(上記にないお店や建物を指定してください)
●イメージ
街の作りは、ベネツィアみたいな感じです。
●できること
ゴンドラに乗って、お買い物をしたり町を探検してみたり。見つかるもの、不思議な出来事、お好きに考えて頂いて構いません。動物と戯れるのもOKです。欲しいものは尋ねてみると、もしかしたら奥から出してくれるかもしれません。
また、やりたいことをざっくり指定で、詳細お任せも大丈夫です(何がきても許せる方向け)
アステルは、町の一角にある工房にて早速花冠を作っています。引き続き、アステルにお声かけ頂くことも可能です。
鳴上・冬季
「甘い花、ですか。行きますよ、黄巾力士」
リスト眺め
「くまの洋菓子屋さんへ案内して貰えますか。一風変わった甘い花の菓子があるそうですから」
店に着いたら
「この町特有の甘い花の菓子があるそうですね。それを1通りお願いします」
普通の甘さの花に
「ふむ…確かに仄かに甘い。そして確かに珍しい。他のお菓子も全種類いただいても?」
砂糖をたっぷり入れたお茶(紅茶でも緑茶でも)と一緒に摘まむ
「確かにここでなければ食べられない珍しいお菓子で、上品な甘さでした。美味しかったですよ。ところで私はそこそこの甘党でして。これと同等か、それ以上に甘い菓子はありますか?」
仙丹渡す
「異世界菓子巡り、今後の楽しみが増えましたね」
●
船着場の案内板に添えられた一枚の紙――水路の街の地図とお店の概要が書かれたリーフレット――を手に、鳴上・冬季(野狐上がりの妖仙・f32734)はどこか楽しそうに笑みを浮かべる。
「甘い花、ですか。行きますよ、黄巾力士」
側に控える戦闘用人型自律思考戦車の宝具に声を掛けて、冬季はゴンドラへと乗り込んだ。後を追って乗ってきた黄巾力士にオールを任せて、冬季はもう一度リーフレットに視線を落とす。とはいえ、冬季の中で向かう先はもう決まっている。
「くまの洋菓子屋さんへ案内して貰えますか。一風変わった甘い花の菓子があるそうですから」
冬季は甘いものが好きだ。一番の好みは桜舞う帝都のものだけれど、新しい甘味に出会えるならば世界を渡ってみるのもいいかなと思う。
ゆらりと揺られ、一軒の店の前。焦茶色の壁は木で出来ていて、ショーケースの木枠は優しい緑。冬季よりちょっと背の低い、だけど大きなくまさんがつぶらな瞳をぱちぱちさせて新たな客を出迎えてくれた。
「この町特有の甘い花の菓子があるそうですね。それを一通りお願いします」
くまさんは『一通り』という言葉に驚いて目を瞬いていたけれど、いくつも買ってくれるのが嬉しいよう。ショーケースの中から早速花の飾られたお菓子をトレーに載せて見せてくれる。
「ありがとう。早速いただいても?」
くまさんが頷くのを待って、冬季は淡い桜色の花弁とクリームで飾られたカップケーキを手に取った。早速花弁を一枚口に含む。
「ふむ……確かに仄かに甘い。そして確かに珍しい。他のお菓子も全種類いただいても?」
冬季はショーケースを指差して、端から端まで指し示す。いわゆる、「ここからここまでください」というやつだ。
ぱぁっとくまさんの表情が輝いて、せっせと箱に詰めてくれる。
「早速頂きたいので、お茶も頂けるとありがたい」
うんうんと頷くくまさん。あったかい紅茶と角砂糖の入った小瓶を小さなトレーに載せて差し出してくれた。あっち、と建物の脇に備えられたテラス席を指差している。そこでお食べという事らしい。
席に着いたら、まずはカップに角砂糖たくさん入れて。口にするのは、ふんわりシフォン。次はサクサクのクッキー。気になるものから順に食べていく。何にも添えられた花が、優しい甘さと香りで冬季楽しませてくれた。
「確かにここでなければ食べられない珍しいお菓子で、上品な甘さでした。美味しかったですよ」
にこりと笑んで、冬季はくまさんに仙丹渡す。
「――ところで私はそこそこの甘党でして。これと同等か、それ以上に甘い菓子はありますか?」
仙丹を受け取って、くまさんは少しだけ考えるようにして奥へと消える。きっととびっきりのお菓子を持ってきてくれるに違いない。
「異世界菓子巡り、今後の楽しみが増えましたね」
待つ時間も楽しみながら、冬季は新たな出会いを思って胸を膨らませるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
夜鳥・藍
SPD
美味しいお菓子も不思議な雑貨も全部全部気になっちゃう。
少しゴンドラの先端の百合モチーフのランプに心惹かれつつ、でもそれ以上に街のお店に目移りしながらも散策しましょう。
ふわふわふらふら歩いた先についたのは黒猫さんの所。
御神籤も十分占いよ、卜占って種類のね。ちょっと違うかもだけど、運も実力のうちっていうのと似てるかもしれないわ。
一応黒猫さんに声がけして箱から一枚(内容おまかせします)
あと猫さんの様子を見ながら尋ねてみるけど……撫でるとかしてもいいのかしら?
街中を見てきて撫でたいとか遊びたいとか思ってたのだけど、お仕事の邪魔をしちゃ悪いかなってずっと我慢してきたの。
●
優しく道行を照らすランプにそっと触れた。乙女が首を傾げるように百合の花が揺れて、水面に淡く反射した。ゴンドラに乗って進む水路は誘惑がいっぱいだ。
甘くて芳ばしい香りはきっとお菓子の香り。
魔法雑貨のお店のショーケースには、いろんな色のきらきらしたガラスペンやハーバリウム、ブレスレットに指輪などのアクセサリーが並んでいる。
お花屋さんの前では、いっとう華やかな香りが鼻腔をくすぐった。
どのお店も品物も心躍るものばかり。夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)の表情もどこか柔らかく、淡い花の色に頬を染めて。目移りしながら水路の街をそぞろ歩く。
やがてたどり着いたのは、黒猫さんが店番をする占い処。とはいえ、占ってくれるという訳でもなく、黒猫さんは机の上に微睡んでいる。
「こんばんは」
藍が黒猫さんに声を掛けると、ちらと目を開けて藍を見る。
「一枚引いてもいいかしら?」
まだ眠そうな黒猫さんにくす、と笑みを浮かべ藍は尋ねる。にゃぁ、と黒猫さんが鳴いて、箱を見る。
「御神籤も十分占いよ、卜占って種類のね。ちょっと違うかもだけど、運も実力のうちっていうのと似てるかもしれないわ」
そうして箱の中で一番初めに指に触れた一枚を選ぶ。花の形に折られたそれは、朝顔の形をしている。朝焼け空のような紫が、淡く色づく一枚をそっと開く。書かれた運勢は所謂大吉。商いや学問などの項目について、『今が勝負時』とか『焦らず打ち込め』など、一言書かれている。
「『旅行 楽しき旅になる』……」
元通りに折り畳んで、藍はちらりと黒猫さんの様子を伺う。
「猫さん、撫でてもいいかしら?」
もう一つ楽しい思い出が欲しいの、なんて柔く笑って尋ねてみる。
「街中を見てきて撫でたいとか遊びたいとか思ってたのだけど、お仕事の邪魔をしちゃ悪いかなってずっと我慢してきたの」
黒猫さんは、そう話す藍をじっと見つめて。くありと欠伸をして体を伸ばす。
「やっぱりダメかしら……」
嫌なら仕方がないわよね、と諦めて街の探検に戻ろうとした藍だけれど。
――にゃあ。
するりと触れる感触は猫の毛並み。黒猫さんが、自ら藍に擦り寄って来たのだ。
「ふふ、くすぐったい」
そっと黒猫さんの顎の下を撫でると、気持ちよさそうに喉を鳴らす。
「ありがとう、猫さん。とても楽しい思い出が増えたわ」
優しく眦を緩める藍に、黒猫さんはにゃあと鳴く。もう暫くは撫でさせてくれそうな様子に、黒猫さんをしっかり堪能しようと思う藍だった。
大成功
🔵🔵🔵
有栖川・夏介
まずはアステルさんの様子を見に行きます。
花冠の作り方を教えるという、約束でしたし。
それにしても、素敵な花が揃いましたね。……私が作れるのは、シロツメクサのシンプルな花冠なのですが、その応用でいけるだろうか。
アステルさんに花の編み方をレクチャー。
「花冠が貴方の想いと一緒に相手に届きますように」
アステルさんと別れた後は、行く先のあてもなく町をぷらぷら。
ふと【小鳥の魔法雑貨店】のショーケースに置かれていたハーバリウムに目がいく。
じっと見ていると吸い込まれてしまいそうな深い青色に、友人を想起する。
気が付くと購入していた。
大切な人を想って贈り物をしようとするアステルさんに、俺も触発されたのかな……。
●
水路の街の入り口に、工房はあった。灯りのついた扉の向こうを覗き込む。ここでアステルが花冠を作ると聞いて、有栖川・夏介(白兎の夢はみない・f06470)は先ほどの約束を守るためにやって来たのだ。どうやら今から始めるらしい、工房の作業テーブルには猟兵たちが手ずから選んだ色とりどりの花が並べてあった。側ではアステルが真剣な顔で花を見つめている、どのように編むか考えているのだろう。
「良かった、間に合ったみたいですね」
夏介の姿を認め、アステルは花を並べていた作業テーブルから顔を上げた。
「あれ? 何かご不便がありましたか?」
「いいえ。とても素敵で何処を見ようか迷うくらいです。花冠の作り方を教えるという、約束でしたし」
まずはそちらを、という夏介の言葉に、アステルの表情がパッと明るくなる。嬉しそうに笑って、助かります、と椅子を勧めてきた。
「それにしても、素敵な花が揃いましたね」
「はい、皆さんのお陰です」
「(……私が作れるのは、シロツメクサのシンプルな花冠なのですが、その応用でいけるだろうか)」
そんな不安を覚えながらも、夏介はアステルに花冠の編み方をレクチャーする。アステルは夏介の説明に耳を傾け、着実に編み進めていった。段々と形になる花冠に嬉しそうにしているのが、どこか微笑ましく感じられて。
「花冠が貴方の想いと一緒に相手に届きますように」
「ありがとうございます。……最初は喜んで頂けたなら、それだけでいいと思ってたんです。だけど、皆さんそう言ってくださるから」
――少しだけ、欲張ってもいいのかな。
そう小さく零してはにかむアステルに、夏介も小さく頷いて返す。
*
アステルの作業を見届けて、夏介は街へと足を向けた。特に目的があるわけでもなく、逍遥する。甘やかな香りに華やかな香り、目移りしそうになるけれどそれでも夏介の足を止めるには至らない。
そんな中、視界に止まる見慣れた色が夏介の足を止めさせる。小鳥さんの店番する魔法雑貨店のショーケース。色とりどりのハーバリウムの中、友人を思わせる青がある。まるで吸い込まれそうになるような深い色が、縦長の瓶の中で揺蕩っている。
目が離せなくて、暫く動けなくて――。
「大切な人を想って贈り物をしようとするアステルさんに、俺も触発されたのかな……」
揺れるゴンドラの上で、夏介が呟く。気がつくと購入していたハーバリウムは、小鳥さんたちが丁寧にラッピングしてくれている。透明なケースの中、深い青がゴンドラの動きに合わせて小さく揺れる。空に翳せば、星が装飾を施すよう。
「まぁ、たまにはいいですよね」
なんだか不思議な感じだけれど。なぜだろう、悪くはない。
――きっと、この不思議な夜のせい。
心の裡で零して、夏介は深い青を両手に包み込むのだった。
大成功
🔵🔵🔵
萃神・むい
わあ、いろんなお店があるの!
ゴンドラに揺られながら
お店のショーケースに並ぶ品物の数々を眺める
全部すてきで、迷っちゃうの
全部みるのはむずかしいから
まずはくまの洋菓子屋さんへ
くまさん、このお店の今日のオススメをください!
えへへ、どれもすてきで迷っちゃったの。
オススメを買えたら
るんるん気分で堪能
きっと、他のものもおいしいんだろうなあ。なんて。
次に小鳥の魔法雑貨店へ
魔法にまつわるものを売ってるのかな?
うんうん、どれもすてき!
むいに合いそうな、ガラスペン
見繕ってもらえたり、する?
選んでもらえたなら
買って、大事にお持ち帰り
ありがとうも鳥さんに伝えるの
ふふ。また来れるといいな。
アドリブ・絡み歓迎です
●
「わあ、いろんなお店があるの!」
浮かぶ花を掻き分けて、ゆっくり進むゴンドラの上。両岸に立ち並ぶお店に目を輝かせて萃神・むい(まもりがみ・f33802)は歓声を上げた。並ぶ店々のショーケースには、心躍る綺麗なもの、可愛いもの、美味しそうなもの。たくさんの彩が、夜の煌めきの中でむいの心を惹きつけてやまない。
「全部すてきで、迷っちゃうの」
常は白い頬をほんのり薄紅に染めて、輝く瞳はあちらへ、こちらへ。
「うーん、全部みるのはむずかしいから……」
むいは、むむむと悩んで甘やかでお腹が鳴っちゃいそうな香りの方へ。
「くまさん、このお店の今日のオススメをください!」
むいは気持ちがそうさせるのかちょっとだけ背伸びして、ショーケースの前でおっきなくまさんを見上げた。目の前のショーケースには、焼き立てスモアにしっとりマドレーヌ、花の形と色をした見た目も可愛いクッキーなどなど。
「えへへ、どれもすてきで迷っちゃったの」
ふにゃと笑うむいに、くまさんもにこにこ笑顔。ちょっと待ってね、と身振りで伝えたなら、くまさんは暫く思案して。漸くショーケースから取り出したのは花を閉じ込めたゼリー。角度によってうっすら青く見える涼やかなゼリーの中、ぽつりぽつりと金平糖みたいな花が咲いていて、ゼリーの上には星を見立てたアラザンが散りばめられている。
「わあ……! 今日行った湖みたいなの!」
喜ぶむいにくまさんはこれも、と色んな花を象ったのクッキーが入った小袋を添えてくれた。
「ありがとうなの!」
お皿を持って側のテーブルへ。つんつんとゼリーを突くと、ふるりと揺れる。口に含めばひんやりしていて、ソーダみたいな爽やかな甘味が口いっぱいに広がった。
「……美味しい! きっと、他のものもおいしいんだろうなあ」
クッキーは帰って食べよう、と仕舞って。むいは、くまさんに別れを告げる。
それから向かったのは魔法雑貨店。文具のような雑貨からアクセサリーに、ハーバリウム。どれも綺麗で、やっぱり悩ましい。
「魔法にまつわるものを売ってるのかな?」
むいの問いかけに自慢げな小鳥さんたち。各々があれこれ雑貨を示すように、羽根を羽ばたかせて愛らしく囀っている。
「うんうん、どれもすてき!」
むいの笑顔に、えっへん、とばかりにふかふかの胸を張る小鳥さんたち。
「むいに合いそうな、ガラスペン。見繕ってもらえたり、する?」
そんなむいのお願いに、小鳥さんたちはぴっと愛らしい鳴き声をはもらせる。相談するようにひよひよ鳴きあって。そんな姿も可愛くて、むいは顔を綻ばせてその様子を見守った。
ありがとう、とお礼を告げて受け取ったケースの中にはむいの手の大きさに合わせたサイズのガラスペンが入っている。小さな小さな霞草がマリンスノウのように揺れる中、優しいピンクのアルメリアが雪の中に咲く一輪の花のようで。
「ふふ。また来れるといいな」
このガラスペンを見れば、今日の事は鮮やかに甦るだろうけれど。それでもまたを願うくらいに、むいにとって楽しい思い出になったのだった。
大成功
🔵🔵🔵
コイスル・スズリズム
オーナーさん(f03848)と
オーナーさんに案内され、彼女の大好きな世界へ。
親密で魔法の様な灯に照らされると
この水路の上いつまでもおしゃべりしていたくなっちゃうね
周囲にある新鮮な驚きを眺めては
行き交うゴンドラに、大きく手を振ったりすると
自然と表情は笑顔になって
オーナーさんのさっきまでの話をきく
可愛い店員さんたちも彼女の好みだろうなと思うと
オーナーさんの大好きがいっぱいの世界だね、と笑いつつ
私も同じソーダを頼んじゃおっかな
お花もお任せで添えてもらお
どれくらい甘いかな!甘いものが好きだから楽しみだよ
そっちは?
お互いのソーダの味を確認したら
次は何の話をしよっか?
まだ私たちにはたくさんの時間があるね。
小宮・あき
すずちゃん(f02317)と。
とっても素敵なフェアリーランド。
ねえ、アステルさん、お友達を呼んでもいいですか?
街の水路にも、お花があるのね。
さっきね、水の中からお花を見つけたのよ、と楽しそうに話しながら街中探索。
月明りの中、水中で呼吸をしながら花畑を歩くなんて、ロマンチックな体験をしたの。
すれ違うゴンドラ達にゆるく手を振って。
店番中の可愛い店員さんに微笑んで、すずちゃんと笑いながら街中を進みます。
くまさんのお店へ。
こんばんは、ソーダをいただきたいな。
くまさんのご機嫌はいかがかしら?
そうだわ、お花を1つだけ、ソーダに添えてもいいかしら?
華やかなカップを手にして、すずちゃんと夜の街を探索します。
●
花と星が溢れるとっても素敵なフェアリーランド。折角なら、大好きなあの子と遊びたい。そんな小宮・あき(人間の聖者・f03848)の願いに、フェアリーランドの主であるアステルは、もちろんと笑って頷いた。
誘った友人は、早速このフェアリーランドへ足を運ぶと楽しそうにぱっと笑みを見せた。
「街の水路にも、お花があるのね」
親密で魔法の様な灯、と、この世界の輝きを彼女らしい感性で表したコイスル・スズリズム(人間のシンフォニア・f02317)は、ゴンドラの上からそっと水面に指先を浸している。冷たい、と楽しそうに笑って、ぴちゃんと水を跳ねさせて遊ぶ。
「この水路の上いつまでもおしゃべりしていたくなっちゃうね」
ゆらゆら揺れる花筏も、ゴンドラに据えられた百合のランプも。それに、動物たちが店番をしている不思議なお店の数々も。どれも新鮮で、コイスルの表情も驚いたり笑ったり、くるくる変化している。
行き交うゴンドラにも手を振る友人を見て、あきも同じようにゆるく手を振り応える。「楽しいね」と笑みを零すコイスルに嬉しくなって、あきもふわりと笑みを零す。
いつものように会話を交わしながら、時折店番の動物さんたちと目が合って。動物さんたちは懐っこい様子で、こちらに手や羽を振って来てくれる。その度に、彼らの愛らしさにも笑みが浮かぶあき。
「さっきね、水の中からお花を見つけたのよ」
ふたり気ままに街中を探索をしながら、そういえば、とあきが楽しそうに話すのは先ほどまでいた湖での出来事。
「月明りの中、水中で呼吸をしながら花畑を歩くなんて、ロマンチックな体験をしたの」
「わぁ、素敵だね! 息ができるなら、時間も忘れて花畑を楽しんじゃいそう」
幻想的な花畑に、街の可愛い店員さんたち。どれもあきの好みだろうなと思うと、
「ここは、オーナーさんの大好きがいっぱいの世界だね」
弾む会話の中に、笑顔が咲く。
そうして二人が向かったお店は、くまさんの洋菓子屋さん。
「こんばんは、ソーダをいただきたいな」
おっきな体にくるくる円らな瞳のくまさんに、あきはソーダを注文する。
「私も同じソーダを頼んじゃおっかな」
「くまさんのご機嫌はいかがかしら?」
そんなあきの言葉に、器用に両手でまるっとしながら、くまさんがシロップを選ぶ。くまさんの後ろに据えられた棚には、色とりどりのシロップが瓶に詰められていて、作っているところを見ているだけでも楽しい。
「そうだわ。お花を1つだけ、ソーダに添えてもいいかしら?」
「あ、スズもお願いしちゃお」
あきの言葉を楽しそうに笑ってコイスルが継ぐ。ふたりにつられるように楽しそうに頷くくまさんが、どれにしようかな、と指先を弾ませながら花を選んでいって。
やがてくまさんが差し出したのは、あきには鮮やかな赤が透き通るソーダに、瞳の色に似た青い花を。コイスルにはハワイアンブルーとレモンイエローのグラデーションのソーダ。添えられているのは紫色の花だ。
ふたり色違いの花に、お揃いだね、と笑い合ってお礼を告げたなら、くまさんのお店を後にする。
「どれくらい甘いかな! 甘いものが好きだから楽しみだよ」
「せーので、飲んでみる?」
あきの提案に頷き合って同時に一口。
「……甘い! でもさっぱりしてる、レモンベースかな? そっちは?」
「私はいちご味みたい。ふふ、美味しいな」
しゅわしゅわ弾ける感触も味わいながら、ゴンドラの進むままに水路を遊ぶ。
「次は何の話をしよっか?」
ソーダを手の中で遊ばせながら、ふたり会話を弾ませる。
きらきらの水面に反射する星は、まだふたりにたくさんの時間があることを知らせているみたいだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
メノン・メルヴォルド
ネロくん(f02187)と
硝子のランプが柔らかく夜を照らして、2人で乗ったゴンドラが滑り出す
…っ!
どうしよう、全部、大好き…
思わず興奮して声を上げそうになり、恥ずかしそうに両手で口許を押さえながら笑顔を向ける
いいの?(嬉しくて、ぱぁっ
お目当ては、リスのリラクゼーション屋さん
ふわっと広がる花の香り
間接照明で落ち着いた空間に癒される
ステキなご褒美にリラックスできそう
ふふ、つい小声になってしまう、ね
ん、足湯と花のオイルがあるみたいなのよ
ネロくんは、どんな香りが好き?
ワタシもその香り好き
並んでちゃぷんと足を浸せば
きもちいい…(ほわっ
仕上げはオイルを手に掬い
これですべすべになる、かしら?(くすりと笑んで
ネロ・バロック
メノン(f12134)と
ゴンドラに乗って綺麗な街並みを眺めていると
日常とは違う世界に来た実感はあるものの
幻想的な光景と緩やかなゴンドラの動きに気持ちは柔らぐ
メノンのこんなに興奮する姿を見たことは無いかもしれない
…お前の好きなところに行こうぜ、心行くまでさ
リラクゼーション……こういうのもあるんだなァ
ゆったりとした店内と優しい香りに導かれるままサービスを受けるぜ
足湯もあるのか?んじゃ何でも試してみよう
香りはそんなに詳しくないけど、
カモミールとかラベンダー辺りは好きだ
足湯に入るとポカポカして気持ち良いな
メノンがほんわかしてるのを見てると自分も緩み
すべすべのつやつやにして帰ったら皆を驚かしてやろうぜ
メノン・メルヴォルド、ネロ・バロック
●
街に灯る明かりは、星の煌めきを邪魔しない程度に店々の外観を照らす。だから、メノン・メルヴォルド(wander and wander・f12134)とネロ・バロック(餓狼・f02187)の道行を照らすのは、ゴンドラに灯るランプの灯りだけ。ガラス越しに優しく灯るそれは、柔らかくふたりと夜を照らし出す。
ゆっくりと進むゴンドラに乗って眺める街並みは幻想的だ。嫌でも日常とは違う世界に来た実感が湧くけれど、それも緩やかなゴンドラの動きに身を任せれば、不思議と気持ちも和らぐもので。そんな風に凪いだ心で景色を眺めるネロとは異なり、
「……っ!」
はっとして両手で口許を抑えるメノン。興奮して思わず声を上げそうになったらしい。恥ずかしそうに両手で口許を覆ったまま、はにかむような笑顔をネロへと向ける。
「どうしよう、全部、大好き……」
煌めきを瞳に宿すメノンに、こんなに興奮する姿を見たことは無いかもしれないと思うネロ。
「……お前の好きなところに行こうぜ、心行くまでさ」
「いいの?」
嬉しさを隠しきれなくて、ぱぁっと花咲くメノンの笑顔に、ネロは笑って頷く。
「えっとね、それじゃあ……――」
案内のリーフレットを手に、やって来たのはリスさんのリラクゼーション屋さんだ。
「わ、いい香り……」
お店の扉を潜れば、ふわっと広がる花の香りにメノンは顔を綻ばせる。床や壁に配置された間接照明は、ゴンドラのランプのように花を象ったもの。こちらは磨りガラス製で、落ち着いた空間を演出している。
「ステキなご褒美にリラックスできそう」
「リラクゼーション……こういうのもあるんだなァ」
へぇ、と零すネロの声は、癒したっぷりの空間で思わず小声だ。
「ふふ、つい小声になってしまう、ね」
そんなネロにくすりと楽しそうに笑うメノンの声もまた密やかに響く。ふたりでくつくつと笑って、リスさんに案内されるまま店内へ。
耳を澄ますとゆったりとした音楽が流れている店内は優しい香りに包まれていて、ここにいるだけでもほっこりと癒されそうだ。
部屋の中央には小さな石造の足湯、側に添えられた籠には様々な花のオイルがある。小瓶の中に花とオイルが詰められていて、見た目にも可愛らしい。
「ん、足湯と花のオイルがあるみたいなのよ」
「足湯もあるのか? んじゃ何でも試してみよう」
「うんっ。ネロくんは、どんな香りが好き?」
メノンはネロの提案に嬉しそうに頷いて、それから小さく首を傾げた。
「香りはそんなに詳しくないけど、カモミールとかラベンダー辺りは好きだ」
「ワタシもその香り好き」
リスさんにその二つからオススメをお願いすると、ラベンダーの香油を足湯へ垂らしてくれた。どうぞ、と促してくれるリスさんにお礼を伝えて、ふたり並んでちゃぷんと足をお湯へ。
「きもちいい……」
「ポカポカして気持ち良いな」
メノンがほんわかしてるのを見て、ネロもほんわり心が解れていくよう。まったりとした空気がふたりを包む。そこへリスさんが運んできてくれたのは、カモミールティ。程よい温かさで淹れられたそれは、ふたりが好きだと話していたからだろう。
「わ、頂いていいの?」
メノンが尋ねると、リスさんはこくこく頷いた。
「悪いな」
「ありがとう、リスさん」
優しい香りに包まれながら、心も体も温もっていって。
仕上げにと手に掬ったオイルもラベンダーの香り。メノンは優しく手のひらで伸ばして、くすりと笑う。
「これですべすべになる、かしら?」
冗談めかしたメノンの笑顔に、
「すべすべのつやつやにして、帰ったら皆を驚かしてやろうぜ」
にっとネロも笑って応える。
「楽しそう、ね」
「皆どんな顔するかな」
静かな夜の楽しげな内緒話は、もう暫く続くのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
橙樹・千織
【桜舞】
清史郎さん、お菓子屋さんですって
少し寄っても?
ふふ、良かった
このお菓子可愛いですねぇ
見た目も可愛く、甘くて美味しいなんて…
スモアのようなお菓子をひとつぱくり
幸せな甘さにふわほわ笑んで
自分用とお土産用にと少し多めに
清史郎さんはどのお菓子を?
それも美味しそうですねぇ
あら、ソーダも?
ぜひお一つくださいな
何味かしら、とそわり
こちらは…魔法雑貨?
まあ!ガラスペンの中に花が
ゆらゆら揺蕩って綺麗ねぇ
ひとつ買っていこうかしら
ゆるり尻尾を揺らし選ぶのは
桜に桔梗、金木犀、椿…色とりどりの花が揺れる一本
字を書いても飾っても楽しめそう
清史郎さんの蒲公英も不思議で、素敵ですねぇ
お神籤!
ふふ、では私も(結果お任せ
筧・清史郎
【桜舞】
おお、くまさんのお菓子屋さん
勿論だ、俺も気になっていた
甘い物はとても好きだ(超絶甘党
可愛くて美味とは…とても良いな
千織に続き、ひとつスモアを頂けば、にこにこ
ふふ、やはり甘い物も可愛い物も正義だな
俺は先程のスモアと、この店で一番甘い菓子を
くまさんに訊ね購入しようと
俺もソーダをひとつ
味はお任せで
千織は何味だったか?
俺は筆記する道具を収める箱だからな
縁深い桜咲く逸品も良いが…
ふと手に取るのは、愛らしい蒲公英咲く硝子ペン
そっと揺れる様を見てみれば
黄花が綿毛になり、また再び黄花咲く魔法の1本
千織のものも、数多のいろが咲いて美しいな
揺れる尻尾に微笑んで
黒猫さんの神籤も引いてみようか(結果お任せ)
●
緩やかに進むゴンドラの上、ガラスのランプの明かりでふたり覗き込むリーフレット。橙樹・千織(藍櫻を舞唄う面影草・f02428)が、ぱっと表情を輝かせる。
「清史郎さん、お菓子屋さんですって」
「おお、くまさんのお菓子屋さん」
千織の言葉に、筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)も千織と同じように――いや、千織よりも瞳をきらきらと輝かせた。
「少し寄っても?」
「勿論だ、俺も気になっていた。甘い物はとても好きだ」
単純に好きという括りにしてしまっても良いかは疑問が残る――そう、清史郎は超絶甘党なのだ。甘味があれば必ず食し、ホイップにホイップを重ねる魔法の呪文ホイップ増し増しの使い手(イメージです)
「ふふ、良かった」
――ともかく清史郎の同意に千織は笑みを零し、早速美味しそうな香りを辿ってくまの洋菓子屋さんへと向かう。
「このお菓子可愛いですねぇ」
「可愛くて美味とは……とても良いな」
ショーケースに並ぶお菓子は、どれも魅力的でふたりを誘惑してくるよう。
「本当に。見た目も可愛く、甘くて美味しいなんて……」
まずは、花で彩られたスモアのようなお菓子をひとつ頼んで、ぱくりと口へ。蕩けるマシュマロとチョコレートにビスケットが香ばしい。美味しさにぱっと表情を明るくする千織に続き、清史郎もぱくり。
「ふふ、やはり甘い物も可愛い物も正義だな」
清史郎と千織、幸せな甘さににこにこふんわり微笑み合う。
目移りしてしまうショーケースから、くまさんに頼んで自分用とお土産用に、少し多めにお菓子を見繕う千織。
「清史郎さんはどのお菓子を?」
「俺は先程のスモアと、この店で一番甘い菓子を」
どんなものがあるだろうか、とくまさんに尋ねる清史郎。いいのかな? 一番甘くて、なんて、挑戦者を見つめるようなくまさんの視線にも清史郎はにこにこ笑みを崩さない。
ならばとくまさんが用意したお菓子は、一口サイズのミルクドーナツを甘々なシロップに浸したもの。カップにころんと入れられ、仕上げに七色の花弁が飾られている。
「それも美味しそうですねぇ」
くまさんがお嬢さんにはソーダもおすすめ、とサンプルを指差す。
「あら、ソーダも? ふふふ、ぜひお一つくださいな」
「俺もソーダをひとつ頂こう」
何味かしら、と出来上がりをそわりと待つ千織。くまさんが差し出したのは、それぞれ異なる色のソーダだ。千織には、山吹色のソーダ。清史郎には、晴れた空のような水色と桜色の二層のソーダだ。
「千織は何味だったか?」
「私はパイン味のようです。清史郎さんは?」
「俺のは、ほんのり桃の味がするようだ」
しゅわしゅわと弾けるソーダを楽しみながら、ゴンドラに乗る。次にたどり着いたのは、
「こちらは……魔法雑貨?」
「そのようだ。どんなものに出会えるだろうか」
ふたり楽しみに笑みを交わして、ショーケースを覗き込む。
「まあ! ガラスペンの中に花がゆらゆら揺蕩って綺麗ねぇ。ひとつ買っていこうかしら」
ゆるり尻尾を揺らして千織が選ぶのは、桜に桔梗、金木犀、椿。色とりどりの花が揺れる一本。
「字を書いても飾っても楽しめそう」
ふふ、と笑みを零す千織の隣。
「(俺は筆記する道具を収める箱だからな。縁深い桜咲く逸品も良いが……)」
清史郎がふと手に取るのは、愛らしい蒲公英の咲くガラスペンだ。試し書きをしてみると、中で蒲公英がそっと揺れて愛らしい。その姿に目を細めていると、黄花がいつの間にか綿毛になり、また再び黄花が咲く。
「まさに魔法仕掛けだな。こちらを頂こうと思う」
とても可愛い、と満足げな清史郎。
「清史郎さんの蒲公英も不思議で、素敵ですねぇ」
「千織のものも、数多のいろが咲いて美しいな」
楽しそうに揺れる千織の尻尾に清史郎が微笑んで。
「黒猫さんの神籤も引いてみようか」
「お神籤! ふふ、では私も」
黒猫さんの占い処。箱から引き当てたのは、清史郎は桜、千織は山吹の花の神籤。早速開いてみると、
「ふむ、西に吉ありと出た」
「私は良い出会いあり、だそうです」
「それは――」
「――西に行くしかありませんね?」
ふたり顔を合わせて、笑い合う。
「ああ、何に出会えるか楽しみだ」
「早速行ってみましょう」
そうして、ゴンドラは次の出会いのために、水路をゆっくりと進んで行くのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
吉備・狐珀
【狐扇】
案内を見ればどのお店も魅力的で…
うぅ、全部気になります…っ!
その悩みを占ってもらおうとゴンドラに乗って占い処へ
こんにち―、寝ていらっしゃいます…?
あ、このお御籤を引くのですね(箱をごそごそ)
語さん、甘いものが吉とあります!
くまさんのお店に行きましょう!
起こさないよう小声で黒猫さんにお礼を告げて、くまの洋菓子屋さんへ
すもあとそーだを頂きたいです
初めて食べましたが、すもあ美味しいですね!
その白いふわふわしたものとチョコを…ふむふむ(身振り手振りの説明に真剣)
そーだも口の中で弾けて楽しいです!
くまさん、アステル殿にお菓子を差し入れしたいので見繕って頂けますか?
花冠を渡す方の分もお願いしますね
落浜・語
【狐扇】
街並みもすごくきれいだな……
これだけ色々お店があると、全部回ってみたくもあるけれど全部ってのはちょっと欲張りすぎるかもなぁ
黒猫の占い処で、お神籤をゴソゴソ。寝てるけれど、店番の意味とは……?
俺の方は、知り合いに会いに行くと吉、だな
じゃあ、お菓子を買ってアステルさんの所に行ってみようか
洋菓子屋さんでお菓子を色々。眺めてるだけでも楽しいな
俺も、狐珀と同じ物を。スモア、ってあれだよな?キャンプとかでよく食べられてるやつ
ソーダは味が違うのにしてくれたのか。狐珀、そっちのも一口頂戴
差し入れのお菓子、二人で一緒に食べられるものとかが良いんじゃないかな、って思うんだけれど、そう言ったの、あるかな?
●
淡い光を浴びて、ほんのりと照らされるアンティークな建物の外壁。揺れるゴンドラに合わせて、揺蕩う花と星。
「街並みもすごくきれいだな……」
ゴンドラから見る幻想的な景色。零れるため息と共に落浜・語(ヤドリガミの天狗連・f03558)がそう告げれば、
「案内を見ればどのお店も魅力的で……うぅ、全部気になります……っ!」
隣に座る吉備・狐珀(狐像のヤドリガミ・f17210)は、こくこくと頷きながら手元のリーフレットをきゅっと抱きしめる。心惹かれるお店の多さに、何処に向かうか決めきれない。
「これだけ色々お店があると、全部回ってみたくもあるけれど全部ってのはちょっと欲張りすぎるかもなぁ」
「やっぱりそうですよね……っ」
時間が足りないかも、と言う語に残念そうにしながらも狐珀が頷く。でも、あっちも気になるし、こっちも気になる。そうしてリーフレットを真剣な面持ちで見つめる狐珀だったが、
「あ、それじゃあこうしませんか?」
――その悩みを占ってもらいましょう!
と言うわけで、ふたりは今黒猫さんの占い処に来ている。
「こんにち――、寝ていらっしゃいます……?」
「みたいだな」
挨拶しかけて、あっと口許を抑えて声を潜める狐珀に、語も遠慮がちに頷く。起こしたら悪いかな、ときょろきょろ。
「あ、このお御籤を引くのですね」
一枚引きますね、と小さく黒猫さんに声を掛けて、狐珀が箱から御神籤を一枚引く。語はそれを待ちながら、黒猫さんへ視線をちらり。
「(寝てるけれど、店番の意味とは
……?)」
最もな疑問を浮かべて、語も御神籤を一枚選ぶ。
「語さん、甘いものが吉とあります! くまさんのお店に行きましょう!」
引き当てた桔梗の御神籤を嬉しそうに見せる狐珀に、語も己の籤を狐珀に見せる。
「俺の方は、知り合いに会いに行くと吉、だな。じゃあ、お菓子を買ってアステルさんの所に行ってみようか」
「はいっ!」
黒猫さんを起こさないよう小声でお礼を告げて、次に向かうのはくまの洋菓子屋さん。
「わぁ……どれも可愛くて美味しそうです」
ふたり並んでショーケースを眺める。飾られたお菓子に夢中な様子の狐珀を語は優しく見つめて。
「眺めてるだけでも楽しいな」
語の言葉に頷き微笑む狐珀。暫く悩んで、漸くくまさんに注文する。
「私、すもあとそーだを頂きたいです」
「俺も、狐珀と同じ物を」
急かすでもなく待っていたくまさんは、注文を受けて手際良く準備を始めた。やがて出てきたスモアは、まだ温かい。
「……! 初めて食べましたが、すもあ美味しいですね!」
「スモア、ってあれだよな? キャンプとかでよく食べられてるやつ」
そうして語も一口。あ、美味い、と語の表情も明るくなる。そんな語の隣で狐珀は、
「その白いふわふわしたものとチョコを……ふむふむ」
と、くまさんのジェスチャーによる説明を真剣に聞いている。
「(え、分かるのか?)」
語は内心つっこむが、真剣な狐珀が愛らしくてただ見守るに留めた。そして、手元のソーダを見比べて。
「ソーダは味が違うのにしてくれたのか」
語のソーダはライムグリーン、狐珀のソーダは紫色だ。
「そーだも口の中で弾けて楽しいです!」
「狐珀、そっちのも一口頂戴」
語の言葉に狐珀はぽぽぽ、と頬を染めて。くまさんはそんなふたりをにこにこと眺めている。
「そ、そうでした。くまさん、アステル殿にお菓子を差し入れしたいので見繕って頂けますか?」
「二人で一緒に食べられるものとかが良いんじゃないかな、って思うんだけれど。そう言ったの、あるかな?」
「アステル殿にとって大切な方のものも用意したいのです」
ふたりの言葉に、くまさんはとんと自分の胸を叩く。任せてという事だろう。焼き菓子を中心に詰められた小箱はフェアリーサイズで。それとは別に差し出された花を添えたクッキーもふたり分。
――それは大好きな友達を気遣ってくれる語と狐珀へ、くまさんからのプレゼント。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヘルガ・リープフラウ
❄花狼
ヴォルフと二人、ゴンドラに揺られて
湖の向こうにこんな街があるなんて、本当に素敵ね
色々散策してみたいわ
あそこに見えるのは……ブティックかしら
ショーウィンドウには洋服がたくさん
店番の動物さんに声をかけて
よろしければ似合いの服を見立てていただけるかしら
わたくしはいつもの白から気分を変えて
色味のあるワンピースがいいわ
このフェアリーランドに咲く花のモチーフがあると嬉しいかも
せっかくだからヴォルフも新しい服を買いましょう
とてもよく似合っているわ
次は小鳥の魔法雑貨店へ
キラキラ輝く花のガラスペンがとても綺麗
今日の思い出、いつまでも忘れないわ
※アドリブ歓迎
服デザインは特に記載の無い部分の詳細お任せ
ヴォルフガング・エアレーザー
❄花狼
ヘルガと二人、ゴンドラに乗って
アステルの方も上手くいくと良いな
洋品店ではヘルガの勧めで服を見繕ってもらう
……似合っているだろうか?
どうにもこういうことには疎いのでな……
次は小鳥の雑貨店へ
花の入ったガラスペンに目を輝かせるヘルガを愛し気に眺め
ペンを買うのなら、インクと紙も必要だろう
色とりどりのインク瓶
紙に書くとその色に応じた香りが漂うのか
この薄紫のインクは、先ほどのヘリオトロープの香りだな
赤い薔薇にピンクのツツジ、こちらの緑はペパーミント
濃茶色のインクはチョコレートの、金のインクは蜂蜜の香り……
そして上質な便箋と、日記帳も買っておこう
二人の思い出を、文字と香りでいつまでも残せるように
●
ゆっくり進むゴンドラは、ゆりかごのように優しく揺れる。ふたりで過ごす、いつもより幻想的で静かな時間。
「湖の向こうにこんな街があるなんて、本当に素敵ね。色々散策してみたいわ」
「そうしよう。アステルの方も上手くいくと良いな」
ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)が穏やかに笑めば、ヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)もまた精悍な顔に優しさを滲ませて首肯する。
「そうですわね」
ふふ、と笑みを零して頷くと、さぁと抜ける風がヘルガの髪をさらう。抑えてなおさらりと流れる髪越しに見えた白亜の建物。
「あそこに見えるのは……ブティックかしら」
扉の横に据えられたショーウィンドウには、色合いも様々な洋服がたくさん並んでいる。
「行ってみるか?」
「えぇ、行ってみたいわ」
ヘルガの言葉にヴォルフガングは、舵をブティックへ向ける。
扉を押せば、カランとベルが鳴る。ひょこんと顔を覗かせたのは、白うさぎさんだ。ぴこぴこ耳を動かして、ぺこりと会釈。じっとふたりを見上げている。
「よろしければ似合いの服を見立てていただけるかしら」
ヘルガが白うさぎさんに視線を合わせて尋ねれば、ぱっと瞳を輝かせてこちらへどうぞ、と店の奥へと進んでいく。
「ふふ、可愛らしい」
眦を緩めヘルガとヴォルフガングが後に続いて。
いくつか白うさぎさんが出してくれたのはワンピース。その中で、ヘルガが目を止めたのはマーメードラインの優雅なシルエットが特徴の一着だ。裾に向かうグラデーションは、清楚な白から優しい空色へ変じてゆく。肩口にはヘリオトロープが優美に揺れて、裾を中心に草花をモチーフにした刺繍が施されている。
「どうかしら?」
「……美しいな、よく似合っている」
首傾げ尋ねるヘルガの美しさに、ヴォルフガングは一瞬言葉を失った。
「本当に素敵だ」
「ふふ、ありがとうございます。せっかくだからヴォルフも新しい服を買いましょう」
ヴォルフガングへの一着は、白うさぎさんからいくつかお勧めを出してもらい、その中からヘルガが選ぶことにした。紺のベストにジャケット、白のブラウスはシンプルながら洗練されていて。ループタイは、湖で咲く花が石の中に埋め込まれているものにした。
「……似合っているだろうか?」
「とてもよく似合っているわ」
「そうか、どうにもこういうことには疎いのでな……」
どこか窮屈そうに首元を触るヴォルフガングの手を、ヘルガは微笑みながらそっと抑えループタイの位置を整える。
「こちらを頂くわ」
せっかくならば、このままと着てきた服を袋に入れてもらってブティックを後にする。
そして、次に向かったのは小鳥の魔法雑貨店だ。花のガラスペンは、ショーケースの中でキラキラと輝いていて。眺めてはヘルガの花唇から感嘆の溜息が零れる。
「綺麗ですわ……」
花の入ったガラスペンに目を輝かせるヘルガを愛し気に見つめ、ヴォルフガングは別の棚を指差した。
「ペンを買うのなら、インクと紙も必要だろう」
アンティークな棚に色とりどりのインク瓶が並ぶ姿は、ガラスペンと同じに心が弾むよう。
「紙に書くとその色に応じた香りが漂うのか」
試し書きした用紙から香る華やかな香りにヴォルフガングは僅かに目を瞬く。薄紫のインクは、湖で摘んだヘリオトロープの香りだった。
他にも、赤い薔薇にピンクのツツジ、緑はペパーミント。濃茶色のインクはチョコレートで、金のインクは蜂蜜の香り。
「まぁ、どれも綺麗な色ね。香りも素敵だわ」
「ヘルガも気に入ったものがあれば、選ぶといい」
ほう、と香りと色を楽しむヘルガに柔らかく笑んで、ヴォルフガングは便箋と日記帳も手に取る。どちらも質がよさそうで、ペンを走らせるのが楽しみな一品だ。
「(二人の思い出を、文字と香りでいつまでも残せるように)」
心の裡でそう思っていたヴォルフガングに、ヘルガがふわと笑って。
「今日の思い出、いつまでも忘れないわ」
以心伝心、そんな彼女の言葉にじんわりと胸が暖かくなるのを感じて、ヴォルフガングもまた頷き返すのだった。
大成功
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氷雫森・レイン
雑貨店に入るわ
ゆっくり見て、自分用の青い硝子ペンと贈物用に紫陽花が入った普通サイズの白い硝子ペンを買う
「じゃあ頂いて行くわね。どうも有難う」
ちゃんとお代を置いて、首飾りに品物を仕舞ってアステルの許へ
「1つ訊ねたいの。雨に纏わるフェアリーの一族を知らないかしら」(答えお任せ)
唯一幼少から持つバックカチューシャも見せる
私のルーツを知る為今は噂話すら大事
でも何も知らずとも罪はない
「聞かせてくれて有難う」
誠実に応じてくれたのだから返すべき誠意があるわね
「ねぇアステル、物に力を借りてもいいけれど。大切な事は全て、言葉できちんと伝えるのよ」
貴方の純真さを大切にしたい同族からのお節介
後悔しない様に生きなさい
●
目の前のショケースには、使い道の分かるものから、ちょっと何に使うか尋ねなければ分からないようなものまで並んでいる。
小鳥の魔法雑貨店。そう書かれた看板が飾られた建物に据えられたショーケースは、カラフルできらきらしていて。氷雫森・レイン(雨垂れ雫の氷王冠・f10073)は、飾られた雑貨ひとつひとつを楽しむように、のんびりと眺める。
その中でも目に留まったガラスペンを二本、買うことにした。一本は自分用に、澄んだ青の小さなガラスペンを。もう一本は、紫陽花が入った白のガラスペンだ。こちらは、いわゆる人間が使うようなサイズのもの。
それぞれを、ガラスペンに合わせた小箱に入れて小鳥さん達がラッピングしてくれた。
「じゃあ頂いて行くわね。どうも有難う」
ちゃんとお代を小鳥さんへ払うのも忘れずに。受け取った小箱を、レインは首飾りに大切に仕舞う。
「さて、それじゃ様子でも見に行きましょうか」
レインはそう零して、アステルの許へと向かう。街の入口へ戻ると、工房はすぐに見つかった。扉を潜れば、今しがた出来上がったらしい花冠を優しい眼差しで見つめるアステルの姿がある。
「あら、結構上手に作ったじゃない」
そんなレインの言葉に、アステルははっと顔を上げると、
「は、はい。皆さんのおかげです」
笑ってたのが見られたかなぁ、なんて考えてそうな表情でこほんと咳払いアステル。取り繕うように、にこっと笑顔を浮かべている。
「(心配になるくらい分かりやすいわね……)」
レインは心の裡で零すに留めて、やや表情を改めてアステルへと向き直った。
「――1つ訊ねたいの。雨に纏わるフェアリーの一族を知らないかしら」
尋ねながらアステルへ見せるのはバックカチューシャ。繊細なチェーンで纏う青い宝石は雫の形をして、清廉な輝きを宿している。
「――それは?」
「私が唯一幼少の頃から持っているものよ」
今、レインのルーツを知る手がかりになる唯一のもの。レインの表情や声を察し、アステルは柔和な表情を潜め、真剣な眼差しでバックカチューシャを見つめている。記憶を手繰る様に、しばらく考え込んで。
「……すみません。何か心当たりがあればと思ったのですが、今はなにも……」
「そう……聞かせてくれて有難う」
「私も自然に縁の深い一族、仲間内に知っているものがいるかもしれません」
ですから、何か分かればきっとお伝えします、とアステルは告げる。
「お人よしね。――でも、感謝するわ」
誠実に応じてくれるアステルだから、
「(私にも、返すべき誠意があるわね)」
とレインは口を開く。
「ねぇアステル、物に力を借りてもいいけれど。大切な事は全て、言葉できちんと伝えるのよ」
そんなレインの言葉に、アステルは目を瞬く。
――貴方の純真さを大切にしたい同族からのお節介。
「後悔しない様に生きなさい」
「――はい」
レインの言葉に返ったのは、どこか決意の籠った笑顔。だけれど、彼らしく柔らかな笑みだった。
●
彼の花冠と想いの行方は、幸せそうな筆跡の手紙でいずれ猟兵たちの手元に届くだろうけれど。
――それはまた、別の話。
大成功
🔵🔵🔵